2011年10月1期卓上ゲームTOMBOY 復活!!おめでとう!!!! TOP カテ一覧 スレ一覧 削除依頼
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TOMBOY 復活!!おめでとう!!!!


1 :09/05/29 〜 最終レス :11/12/31
あのファンタジーボードゲームの鬼才
プレイステーション トムボーイ が装い新たに帰ってきた!
なんかメイドカフェとかに手を伸ばしているようだが、そんなの全然関係ないぜ!
・プリンセスクエスト
・ドラゴンパニック

・列強の興亡

・HPラブクラフト
クトゥルフホラー


http://ps-tomboy.com/home.html

2 :
2get!

3 :
>>1
ウェブサイトみたんだが
なにこのギャルゲーと思った
ボードゲームの記事はどこにあるん?
メイドカフェの宣伝と漫画・アニメの宣伝にしか見えんのですけど

4 :
>>1は立て逃げか?
ボードゲームの情報はどこにあるんだ?

5 :
>>1をきちんと読めば見当つきそうなもんだが。

6 :
いや、だが、だからどうした、>>1よ、お前は何が言いたいんだと言いたいが

7 :
>>1
どのカードゲームもやったことないんだけど、そんなに良かったのか?

8 :
どれも名作です。

9 :
規制解けたか。
>>3
もっとちゃんと読んでみてくれ
メイドカフェの宣伝にだまされるなw
>>4
WORKのタブから「過去制作」だな。
 >>1に挙げたタイトルがそこにある。
>>6
知らないなら、とりあえず知ってもらえるだけでいいぜ
ちなみに、↓ここに有名な人の「プリンセスクエスト」のレビュー記事もあり。
http://moon.livedoor.biz/archives/12235121.html

10 :
いや、わかりにくいのだが

11 :
で、でびるとむぼーい?

12 :
テスト

13 :
列強の興亡はもう一度販売しませんか?とても購入したいです。情報あったらメールください

14 :
age

15 :
>>1
指定されたサイトが見つかりませんだってよ
詐欺サイトだったんじゃねえのか?

16 :
http://iup.2ch-library.com/i/i0465957-1320323081.jpg

17 :
無主物の責任:7
先生2人 話は正反対

福島市飯野町は、福島第一原発から約50キロのところにある。

11月13日、町の学習センターで、福島市社会福祉協議会飯野協議会が主催する講演会が開かれた。約90人の住民が集まった。

「平常時の25倍の放射線の中でどう生活すればいいか。異なる見方の2人の先生の話を参考にしてください」。
会長の古関善一郎(73)のあいさつで講演会は始まった。飯野町は空間線量が毎時1マイクロシーベルトを上回るレベルで推移している。

招かれたのは、兵庫医科大学講師の振津(ふりつ)かつみ(52)と、東北大学大学院教授の石井慶造(63)の2人。

振津は、被爆医師の肥田舜太郎(94)と同じように、大阪で原爆被爆者の健康管理に携わってきた医師だ。

振津は、避難しないで福島に残っている人にどう話したらいいか悩んだが、率直に話すことにした。

「みなさんは放射線管理区域の基準を上回るところに住んでいます。この現実から出発しないといけません」

日本の法律は、3カ月で1.3ミリシーベルトを超えるところを放射線管理区域として、一般の場所とは違う取り扱いを定めている。振津の話はこの現実を踏まえたものだ。

「被曝(ひばく)すれば病気になるリスクが高まる。食べ物からの被曝を減らさないといけない。リスクがあることを認め、万全の態勢で臨まないといけません」

18 :
続いて石井が立った。福島市の放射能対策アドバイザーを務めている。
話は振津とは対照的だった。

石井は、県の測定結果などを示しながら「水道水も野菜も果物も、放射線量はほとんどゼロ。
だから、内部被曝なんてものはないのです」。

自身の研究では、セシウムが土壌中の粘土に吸着されたことから、「粘土が福島を救った」という。

そして、低線量の放射線はむしろ体に良いのだというデータを示し、
「内部被曝も外部被曝も大丈夫だよということを、もっと広めて風評被害をなくし、東北に人が来るようにする必要があります」と結んだ。

司会が「質問は2人まで受け付けます」と呼びかけた。
しかし、振津の話にも石井の話にも質問は出ない。
住民は2人の話をじっと聞いているだけだった。

「不安と安心が入り乱れていると思いますが、それぞれの頭で考えて放射線対策をしてください」。
古関がそうあいさつし、3時間に及ぶ講演会は終わった。(前田基行)

19 :
無主物の責任:8

私たちには全部実害

福島市飯野町で開かれた原発事故講演会。
出席した住民の中に、松崎三枝子(62)がいた。
会場の近くの自宅で、夫と2人で暮らしている。

いったい自分たちはこれからどうなるのか。
このまま、ここに住んでいて大丈夫なのか。
専門家の話が聞けるので参考になると思い、講演会に出かけた。

しかし話を聞いても、結局どうしたらいいのか分からなかった。
2人の研究者の意見は正反対で、専門的なことが分からない自分には判断がつかない。
「結局これまでと同じように、自分で気をつけていくしかないと思いました」

松崎は、近くのスーパーで買い物をするとき、なるべく県外産を買う。
片道2時間かけて、食料品を新潟県まで買いに行くこともある。
トマトは地元産が2個で148円、北海道産は2個で398円だが、北海道産を買う。

「だって、心配しながら食べたっておいしくないじゃないですか」

自宅の庭は土だったが、150万円かけて全部コンクリートを打った。
放射線の測定器で地表を測ると、土のときは1.7マイクロシーベルトだったのが、
コンクリートにした後は0.4マイクロシーベルトに下がった。

「東京電力や国など補償をする側の人たちは風評被害といいたいのでしょうけど、
私たちにとっては全部実害ですよ。だって自分で測って数値が分かっていますから」

20 :
農家の人も風評という言葉を使う。
「それは国や東電がきちんと補償してくれないからです」

原発から離れた飯野地区は、避難対象からは外れている。

「避難できる経済的な余裕があるなら私はすぐにも避難したい。
それがないからここにいるしかない。
今日も明確な答えは見つかりませんでしたが、最後は自分で決断します」

講演会を主催した福島市社会福祉協議会飯野協議会の会長、古関善一郎(73)はいう。

「私たちはそう簡単にふるさとを捨てられないのです。
それまでは心配しながら生活するしかありません。
病気も全員がなるわけでないでしょうし。
病気が出たら補償してもらうしかない。
私たちはモルモットなんですから」

古関自身、米は地元では買わず、80キロの道のりの会津若松市まで買いに行く。
家では19歳と16歳の孫が一緒に暮らしている。

「米は毎日のもの。孫に食べさせるわけにいきません」

21 :
無主物の責任:9  

我が子の鼻血、なぜ

福島から遠く離れた東京でも、お母さんたちは判断材料がなく、迷いに迷っている。

たとえば東京都町田市の主婦、有馬理恵(39)のケース。
6歳になる男の子が原発事故後、様子がおかしい。4カ月の間に鼻血が10回以上出た。30分近くも止まらず、シーツが真っ赤になった。

近くの医師は「ただの鼻血です」と薬をくれた。
しかし鼻血はまた続く。鼻の奥に茶色のうみがたまり、中耳炎が2カ月半続いた。

医師に「放射能の影響ではないのか」と聞いてみたが、はっきり否定された。

しかし、子どもにこんなことが起きるのは初めてのことだ。気持ちはすっきりしなかった。

心配になって7月、知人から聞いてさいたま市の医師の肥田舜太郎(94)に電話した。

肥田とは、JR北浦和駅近くの喫茶店で会った。
「お母さん、落ち着いて」
席に着くと、まずそういわれた。肥田は、広島原爆でも同じような症状が起きていたことを話した。

放射能の影響があったのなら、これからは放射能の対策をとればいい。有馬はそう考え、やっと落ち着いた。

22 :
周囲の母親たちに聞くと、同じように悩んでいた。
そこで、10月20日、地元の町田市に、子どもたちの異変を調べてほしいと要望した。

しかし市からは、「市では今はできないので、お母さんたちが自分でやってください」といわれたと有馬はいう。
いても立ってもいられず、その夜、母親仲間にメールを送った。

「原発事故後、子どもたちの体調に明らかな変化はありませんか」

すると5時間後、有馬のもとに43の事例が届いた。
いずれも、鼻血や下痢、口内炎などを訴えていた。
こうした症状が原発事故と関係があるかどうかは不明だ。

かつて肥田と共訳で低線量被曝(ひばく)の本を出した
福島市の医師、斎藤紀(おさむ)は、子どもらの異変を「心理的な要因が大きいのではないか」とみる。

それでも有馬は心配なのだ。

首都圏で内部被曝というのは心配しすぎではないかという声もある。
しかし、母親たちの不安感は相当に深刻だ。

たとえば埼玉県東松山市のある母親グループのメンバーは、各自がそれぞれ線量計を持ち歩いている。

23 :
無主物の責任:10

自力で測ってみると

広島で被爆した医師、肥田舜太郎(94)は10月22日、埼玉県東松山市で講演し、
自身の経験を引きながら内部被曝(ひばく)について語った。

その会場に、東松山市の主婦、江頭有希(えがしら・ゆき=44)がいた。
原発事故後、4歳の息子のおねしょがやまなくなっていた。
国は「大丈夫」というが、自分が住む地域はどうなっているのか。
顔なじみの母親らと放射線の測定を始めた。

1人が子どもの尿を検査機関に持ち込んだ。
セシウム137が1キロあたり0.24ベクレル検出されたので、食べ物に気をつけ始めた。
別の母親は8千円の検査費を自腹で払い、小学校の敷地の土を調べてもらった。
1キロあたり1410ベクレルが出た。

国の規則では、原子炉施設から出るごみ1キロあたり放射性セシウムが100ベクレルを超えると
それは放射性廃棄物だ。その14倍を超えていた。

江頭たちは、東松山市に要望書を出した。署名は計3千集まった。

一、給食で使う食材の産地を公開し、放射線量を測定してほしい。
一、きめ細かい放射性物質の計測をしてほしい。

24 :
しかし話は進まなかった。

市は学校の放射線を測定する場合、校庭の1カ所のみを測っていた。
江頭は、子どもたちが過ごす校舎の中も測ってほしいと要望した。

市によると、校舎の放射線の数値は校庭の測定値に0.4をかけて算出していて、実測していない。

「校舎の中も測ればいいじゃない。
計算上の数値ではなくて、実際の数値を知りたい」。
しかし市は、現在も校舎の中は測っていない。

江頭は議会にも働きかけた。
議員に会うのは初めてだったが、放射能が心配だと伝えた。
12月議会には請願書も出した。

市も最近、ホットスポットの調査を始めるなど、江頭たちの要望を一部では受け入れ始めた。
それでも、母親たちの危機感から離れている。

仲間の母親(38)が、小学校で教材にドングリを使うというので心配になり、市に電話をした。

「口にドングリを入れるわけじゃないですから、といわれました。福島だって人が住んでいるじゃないですか、と」

だが、その福島では人々の感情の行き違いが目立つようになっている。

25 :
無主物の責任:11

おおっぴらにいえない

「町を出る人はこっそり出ていきます、誰にもいわずに」

福島市飯野町の松崎三枝子(62)はそういった。

松崎の親戚が7月、被曝(ひばく)を避けて山形に避難したときも、周囲にいわず、こそっと避難していった。
小学校では子どもたちが、お別れ会もないまま、ある日突然いなくなる。

「私たちは避難します」とおおっぴらにはいえない。そんな空気が周りにあるという。

「裏切った、逃げ出したみたいにいわれるからです。非国民、みたいな目で見られると感じます」

同じ福島市内に住む斎藤道子(47)は原発の事故後、県外の知人から避難するよう勧められた。
しかし、中3と高2の息子は「絶対に避難しない」といった。友だち関係があってのことらしかった。

最近は放射能のことを話題にしないようにしている。
「放射能が心配だ」といおうものなら、「県や市が大丈夫だといっているのにあんたは何だといわれる雰囲気だ」という。

斎藤は子どもの部活動もあり、今すぐの避難は考えてはいない。
しかし、本当に危ないなら避難したい。その気持ちにブレーキがかかる。

「県や市は大丈夫だというし……。結局、動けなくなってしまうのです」

26 :
11月16日、福島市内の米から基準値超の放射性セシウムが検出された。
福島市の放射能対策アドバイザーで東北大大学院教授、石井慶造が、飯野町で開かれた講演会で「福島市では内部被曝はない」と語ったが、
そのわずか3日後のことだ。福島県知事はその1カ月前、10月にすでに安全宣言を出している。

「いったい何を信じていいのか」

その講演会に出ていた松崎は途方に暮れる。自分の身は自分で守るしかない。
だから、なるべく内部被曝しないように、県内産の食材を控えている。

「命は二つありませんから」

さいたま市の医師の肥田舜太郎(94)はいう。

「政府が被害を小さく見せようとし、事実をきちんといわないから、住民の間で反目が生まれるのです。
そして住民の対立は、政府や東電にとっては都合のよいことなのです」

放射線は見えず、においもない。被害はまだはっきりと分からない。

「被害が出てくるのはこれからです。
66年前の原爆で、被害者がいまだに国を相手にを起こしている。
これが事実です」

27 :
無主物の責任:12

福島の子たちが心配

被爆者以上に、病気との因果関係を証明するのが難しいのが被爆2世だ。
国は「遺伝的な影響が解明されていない」と、希望者に年1回の健康診断をしているだけだ。

広島市の佐上順子(さがみ・じゅんこ)(63)は被爆2世だ。
父が爆心地から2キロ以内で被爆し、その3年後に生まれた。

小さいころから体が弱く、貧血でよく倒れた。頭痛もひどかった。
目にものもらいがよくできた。
おなかの調子は悪く、においのきついものは食べられなかった。

2年前に人間ドックを受けたとき、胃に奇形があることが初めて分かった。
X線で見ると、胃はヒョウタンのような形をしていた。医者は「小さいときはもっとひどかったはずですよ」といった。

貧血や胃の奇形が原爆と関係があるかどうかは分からない。
佐上自身、気にはかかるが、努めて「自分はおなかの調子が悪い人」と思うようにしてきた。

しかし7年前に亡くなった父は、「順子の症状は原爆のせいだと思う」と家族に語っていたという。

だから佐上は福島の子どもたちのことが心配だ。
政府は内部被曝(ひばく)の実態をしっかり調べてほしいと願う。
「子どもが私のようになってほしくない。親が子どものことを心配するのはもっと大変です」


28 :
しかし、鼻血や下痢を原発事故に結び付けて考えるのは「非科学的」といわれる状況だ。

政府の「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ」では議論が続いている。

研究者が11月から話し合いを始め、年内に報告書をまとめる予定だが、
日本弁護士連合会は11月25日、そんなワーキンググループの即時中止を求める声明を出した。

低線量被曝の健康影響に否定的な見解の研究者が多すぎる、というのだ。

京都の弁護士、尾藤廣喜(びとう・ひろき)(64)は「いったい何を土台に議論しているのか」と首をひねる。

尾藤は厚生省のキャリア官僚だった。
水俣病では、国が原因企業であるチッソを擁護し、患者を切り崩した。
それに失望して弁護士に転身した経歴を持つ。
肥田舜太郎(94)が証言した7年前の大阪地裁ので、被爆者側の弁護士だった。

「まずは被害の実態を把握しなければ始まらないでしょう。
加害者側や行政側に被害の線引きを絶対にさせてはいけない。
水俣病や薬害、原爆症の再現になる」 

29 :
無主物の責任:13

自分で守るしかない

広島で被爆した医師、肥田舜太郎(94)は11月7日、大阪へ講演に行く途中で転び、胸の骨にひびが入った。
しかし「内部被曝(ひばく)を話せるのは、被爆者を見続けた自分以外いない」。
入院もせず、各地を飛び回っている。

肥田は、今回の原発事故で日本の国土の多くが汚染されてしまったとみる。
それに対して政府は何ら有効な手を打っていない。

「66年前の原爆の放射線の影響を、政府はきちんと調べてこなかった。だから何も知らないのです」

肥田は講演ではそれを踏まえて語る。
「内部被曝はもうゼロにはできない。あとは自分で健康を守る努力をすることだ。僕たちはそうやって放射線に勝ってきた」

たばこをやめ、早寝早起きし、ご飯をよくかむ――。
そんな例を挙げながら、心構えを説く。


30 :
子どもが鼻血を出した東京都町田市の有馬理恵(39)はそんな肥田の話に、救われた気持ちになる。
「うちの子も内部被曝したんだ、けれどそれは対処できるんだ、と」

有馬は原発事故後、行政のいうことが信じられなくなった。

被災地のがれきの受け入れもそうだ。
環境省は1キロあたり8千ベクレル以下の焼却灰ならそのまま埋め立てしてもいいと決めた。
しかし原子炉施設からのごみは、放射性セシウムであれば同100ベクレル超は放射性廃棄物になり、特別な処分が必要だ。
環境省が認めたのは、その80倍もの濃度である。
有馬たちは東京都や町田市に見直しを求めている。

事故直後、当時官房長官だった枝野幸男は「ただちに人体には影響はありません」と繰り返した。
11月8日、衆議院予算委員会の質疑で、経済産業大臣となった枝野がその言葉について釈明をした。

「39回の記者会見のうち、そういったのは7回で、うち5回は食べ物、飲み物の話です」

「一般論でいったのではなく、一度か二度摂取してもただちに問題とはならないと申し上げたのです」

有馬はネットの動画サイトでこの答弁を聞いて耳を疑った。

「食べ物の話なんかじゃなかった。まったく違う」

政府は事実を過小評価する一方で「安全」を強調している。
有馬はそう考える。
それが国民の疑心と分断をつくりだしているのだ。

「まわりからなんといわれようと、自己防衛するしかないと思います」 

31 :
無主物の責任:14

被曝から目そらすな

原発事故からまもなく9カ月。
浪江町から避難した菅野(かんの)みずえ(59)は、
福島市に隣接する桑折町(こおりまち)の仮設住宅で暮らしている。

雪の季節を迎え、福島はめっきり寒くなった。
鉄骨づくりの仮設住宅は結露がひどく、すきま風が遠慮なく入ってくる。

原発から飛散した放射性物質は「無主物」である――。
東京電力は、福島のゴルフ場が除染を求めた仮処分申請の答弁書でこう述べた。

みずえは無主物の話を聞くと、しばらく黙りこんだ。

「誰のせいでこうなったんですか。あなたたちのせいなんですよ、といってやりたい」

みずえも長男の純一(27)も、自分がどれだけ内部被曝(ひばく)したのか分かっていない。
だから余計心配だ。

「将来、私たちの体に何かあったとしても、このまま被曝はなかったことにされるのでしょうか」

32 :
ゴルフ場の仮処分事件では、東京地裁が一つの判断を示している。

それは、文部科学省が決めた校庭利用の暫定基準値「毎時3.8マイクロシーベルト」についてのものだ。

福島政幸長は「ゴルフ場はそれを下回っており、
子どもでも屋外で活動しているのだから、営業に支障はない」と述べた。

3.8マイクロシーベルトは年間だと33ミリシーベルトになる。
私たちがこれまで経験したことのない環境だ。

スーパーのイオンは11月8日、放射性物質が検出された食品は原則売らないと発表した。
消費者から6千件の要望があったからだ。
食品に対する国の暫定基準値がいかに信用されていないかを示している。

7年前の大阪地裁。広島で被爆した医師の肥田舜太郎(ひだ・しゅんたろう、94)は4時間の証言をこんな言葉で結んだ。

「人類がこれからどうするのか議論をするときは、被爆者を大事にし、自分の理解を深める努力をすることが一番大事です。
官の皆さんも、いいか悪いかを裁くという狭い視野ではなく、大きな立場から、被爆者を見て判断願いたい」

その思いはいまも変わらない。

「原爆では、米国が内部被曝をなかったことにしました。福島が同じ軌道をたどることは絶対にあってはならないのです」


明日から第5シリーズ「学長の逮捕」

33 :
学長の逮捕:1

エリート医師が突然

ベラルーシ共和国第2の都市、ゴメリ。人口約50万人。
1999年夏、その町で事件が起きた。
ゴメリ医科大学の学長、ユーリー・バンダジェフスキー(54)が突然逮捕されたのだ。

学生から賄賂を受け取った疑いと伝えられるが真相はわからない。
バンダジェフスキーは90年にゴメリ医大を創設したエリート医師だ。
その逮捕は国際的に波紋を広げた。

86年、チェルノブイリで原発事故が起きた。
原発の北にあるベラルーシには大量の放射能がまき散らされた。
バンダジェフスキーは事故後、死亡した人を解剖して臓器ごとにセシウム137の量を調べた。

その結果、大人と子供、男性と女性で、臓器ごとに量が違うことを突き止めた。
たとえば97年に死亡した人の平均では、子供の心臓には、体重1キロあたりで大人の約4倍のセシウム137が集まっていた。

放射線医学総合研究所の元主任研究官、崎山比早子〈さきやま・ひさこ〉(72)は
「彼の論文にはさまざまな批判がある。
しかし、人の内臓にどのくらいの放射能があるか、解剖して実際に確かめたのは彼しかいない」と評価する。

34 :
ベラルーシ当局は、放射線による健康被害は大量の被曝(ひばく)の場合しか認めていない。
少量の被曝も影響すると主張するバンダジェフスキーは、政府にとって目障りな存在だ。

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、
彼が政府の被災者への対応を公然と批判したためにでっちあげられた事件だとし、救援活動に乗り出した。
しかしバンダジェフスキーは01年、禁錮8年の判決を受け、服役した。
05年に釈放される。
そして09年、ウクライナのキエフ市に移って研究を再開したのである。

キエフ市郊外に、チェルノブイリで被災した子供たちの保養施設が集まる地区がある。
施設は現在は機能しておらず、周囲には廃虚のような建物も多い。
敷地に入ると野犬が集まってくる。バンダジェフスキーとはそこで会った。

「日本の子供がセシウム137で体重1キロあたり20〜30ベクレルの内部被曝をしていると伝えられましたが、この事態は大変に深刻です。
特に子供の体に入ったセシウムは、心臓に凝縮されて心筋や血管の障害につながるためです」 (松浦新)

35 :
学長の逮捕:2

研究やめるわけには

チェルノブイリ被災者の研究を続けるゴメリ医科大学の元学長、バンダジェフスキー(54)は警告する。

「1キロ当たり20〜30ベクレルの放射能は、体外にあれば大きな危険はありません。
それが内部被曝(ひばく)で深刻なのは、全身の平均値だからです。
心筋細胞はほとんど分裂しないため放射能が蓄積しやすい。
子供の心臓は全身平均の10倍以上ということもあるのです」

実際はどうか。
チェルノブイリ原発から約3キロのプリピャチ市から、130キロほど離れたキエフ市郊外に移住した人たちに聞いた。

1986年4月26日。その日は土曜日で暑い日だった。
未明にチェルノブイリ原発が爆発していたが、住民には何も知らされなかった。

いつも通りの週末。
結婚式や運動会が予定通り行われ、窓を開けて掃除をする人、家庭菜園の手入れをする人がいた。
27日昼になって、やっと避難が指示された。

36 :
移住者代表のタマラ・クラシツカヤ(55)はいう。

「脳卒中や心筋梗塞(こうそく)で亡くなる人が多い。
子供も大人も免疫系が弱っていて、いろんな病気にかかりやすい。
子供たちはみんな病気があって、孫の世代でも体が弱い。遺伝の影響があるのだろうと思います」

移住者の一人、ターニャ(59)の夫は心筋梗塞で死亡した。

「健康で長生きの家系なのに、事故後はぜんそくや心臓病を抱えた
。原発事故との関係を認定してもらおうとしたのですが、無理でした」

3年間事故処理作業をしたゲンナージイ(48)は30歳で糖尿病になった。
高血圧で甲状腺に腫瘤(しゅりゅう)がある。

「夜になると足が痛くなる。ストロンチウムが骨に沈着したためと思います」

リュドミーラ(62)の夫は糖尿病がもとで死亡した。

「夫の両親にも祖父母にも糖尿病はなかった。母は、今も私よりずっと健康です。
当時12歳だった息子は自律神経失調と心臓病があって、私より体が悪いです」

バンダジェフスキーは、汚染地域で子供たちに病気が増えていることに関心を持って研究を始めた。

「被曝の影響は、胎児や小さい子供に大きく出る。
遺伝の影響で次世代に現れる可能性もあります」

こうした警告がベラルーシでの逮捕につながった可能性がある。
しかし「住民にいろいろな危険があることが分かっている以上、研究はやめられません」。

37 :
学長の逮捕:3

体から放射能を抜く

茨城県日立市に「チェルノブイリの子供を救おう会」という団体がある。
原発事故の汚染地域に住むベラルーシの子どもを呼び寄せ、「放射能抜き」をする活動だ。
茨城大名誉教授で工学博士の久保田護(まもる)(87)が1993年から続けている。

体内の放射能は、新たな放射能を摂取しなければ確実に減る。
「救おう会」では、ベラルーシから毎年4〜5人の子どもを招待し、約1カ月、日立市の保養施設で暮らしてもらう。
放射能汚染がない場所で汚染がない食べ物を食べる。
体重1キロ当たり30〜40ベクレルのセシウム137があった子どもたちが、
帰国するころには5ベクレル程度まで減った実績がある。
こうした活動は世界中にある。

今年6月、久保田はベラルーシのゴメリ医科大学元学長のバンダジェフスキー(54)が書いた論文を日本語に訳し、自費出版した。
「人体に入った放射性セシウムの医学的生物学的影響」というタイトルだ。

論文はバンダジェフスキーが禁錮刑判決を受ける前の2000年に出た。
久保田は「以前に翻訳したが、そのままになっていた」。

38 :
自費出版のきっかけは、長崎大学教授の山下俊一(現・福島県立医科大学副学長)が
「チェルノブイリ原発事故によるセシウム137の内部被曝(ひばく)で疾患が増えたという事実は確認されていない」と話していると知ったことだった。

救おう会の設立以来、久保田はベラルーシに18回通った。
山下の発言は、久保田が自分の目で見た現実とは違っていた。

「放射能が原因と断定はできないが、知り合いやその家族が若くして亡くなる。
たとえば、かぜをひいて肺炎で亡くなったのが放射能のためとはいえない。
でも、免疫力が落ちたのは放射能のためではないか」

医師としてベラルーシで子どもの甲状腺手術を多数手がけた
長野県松本市長の菅谷昭(すげのや・あきら)(68)は、久保田からこの論文を送られて読んだ。

「ベラルーシにいる時に、心臓血管系の病気が増えていることを不思議に思っていましたが、この論文で納得しました。
解剖した結果ですから、非常に信頼性が高い。
がんもさることながら、今後は福島の子どもたちの心臓が心配です」

新たな放射能を取り込まなければ体内の放射能は減っていく。
一時的に保養に行ったり、食べ物に気をつけたりするなど、多くの方法がベラルーシでは試されている。

39 :
学長の逮捕:4

免疫力 異なる見解

ウクライナのジトミール州コロステン市。チェルノブイリ原発に近く、放射能の汚染度がとくに高いとされている。

ここにある検診センターは州内8地区を管轄する。
内部被曝(ひばく)量の検査や甲状腺の超音波診断などで訪れた人たちでごった返していた。

センターは被災者の健康診断のために笹川記念保健協力財団の支援で設立された。
1991年以来で甲状腺がんを129件確認した。多くが96年からの5年間でみつかった。

副所長のオレクサンドル・グーテビッチは、放射能と子どもの甲状腺がんの関係は明確に認めた。

「事故の時、放射性ヨウ素への対策がとれませんでした。事故前は子どもの甲状腺がんの例はなく、成人もごくわずか。
成人の甲状腺がんにはチェルノブイリの影響がないものも含まれるかもしれません」

がん一般では大きな変化はない。

「とくに増えていません。非汚染地区のほうが、汚染地区よりもがん発生率が高いこともある」

しかし免疫力低下について聞くと、歯切れが悪くなった。

40 :
「そういう意見も聞いたことはある。
ただ、調査には資金と検査機器が必要です。その予算がない」

事故後の早い段階では、日本の他にカナダやキューバなどの支援があった。
しかし、いま残るのは長崎大学だけ。
甲状腺がん以外に関する調査は優先順位が低いようだ。

センターの管轄内にあるナロジチ地区。
診療所で33年にわたり住民を診続けてきた医師のビクトル・ゴルディエンコ(62)は、免疫系への影響を実感していた。

「確かに、がんがとくに増えているとはいえません。
しかし、免疫系がダメージを受けているのは確実だと思います」

ふつうなら悪化しない病気が悪化しやすい。
子どもの場合、かぜなどの呼吸器疾患が目立つ。

「研究者ではないので理由は分からないが、10年ぐらい前から増えてきているように思います」

受け持つ住民は約1300人。
18歳未満は230人で、小中学生は134人。
若者は出て行くため、高齢化が進む。
ゴルディエンコも老齢年金がもらえる年だが、後継の医師が来ないため診療を続けている。
自身も畑を耕し、ニワトリを飼って暮らす。指は農夫のように太い。

住民を見続けてきた彼の言葉は、検診センターが調べ切れていない部分を埋めていた。

41 :
学長の逮捕:5

森のキノコ食べても

「キノコもベリーも食べている。死んだりしないよ。90歳とか86歳の人だっているし」

チェルノブイリ原発の西約60キロのジトミール州ナロジチ地区の村で、
主婦のガーリャ(78)は、森のキノコやベリーを採って食べる昔からの生活を、今も続けている。

放射線量が高いため、旧ソ連時代に移住が義務づけられた地域だ。
ガーリャも一度は避難したが、移住先になじめずに6年前に戻ってきた。
事故から25年、周りには屋根も落ちたような廃屋が多い。

地区の人口は原発事故にともなう移住で大きく減り、約3万人から約1万人に減った。

地区保健所の放射線技師ビラデーミル・ミハイルビッチは嘆く。

「森のキノコの汚染度は許容値の5〜6倍。
イノシシなどの野生動物は原発30キロ圏にも入るからでしょう、8〜9倍です。
食べないように指導しているが、住民は聞き飽きたという顔をするだけなんです」

42 :
もっとも、放射線の害ばかりでなく、移住のストレスなどの要因も考えたほうがよい人もいるようだ。
ナロジチ地区の診療所で33年間住民を診続けてきた医師のビクトル・ゴルディエンコ(62)は言う。

「移住した人と残った人を比べると、むしろ、移住した人のほうが早く亡くなる傾向もある。
移住した人だって事故の時すでに被曝(ひばく)しているんです。新しい環境に対応できるかどうかも考えたほうがいい」

しかし統計的に見れば、住民の健康悪化は明白だ。

医薬品などの支援をしている日本のNPO法人「チェルノブイリ救援・中部」(名古屋市)へのナロジチ地区中央病院からの報告によると、
児童の呼吸器系疾患が急増しているという。
人口当たりの発生率は、1988年の11.6%が08年には同60.4%と、約5倍になった。
大人の場合、心臓血管系疾患が最近の10年で急増している。
98年の1.2%が08年には3.0%と、3倍近い。

ベラルーシ当局に逮捕された経験を持つゴメリ医大元学長のバンダジェフスキー(54)はいう。

「放射能の影響には個人差がある。
汚染されたものを食べて何でもない人もいるが、みんなが大丈夫なわけではない。
キノコやベリーを食べて元気な人がいても、それは希望を持てる材料ではないのです」

では、食品の放射能に対する姿勢は、そのウクライナと日本でどう違うのだろうか。

43 :
学長の逮捕:6

日本より厳しい基準

ウクライナの食肉市場に併設された保健所の職員の朝は早い。販売される牛、豚、羊は、販売の前に、全頭の放射能検査をするためだ。

その日、キエフ市中心部に近いルクヤニフスカ市場では、42頭分の牛と豚が販売された。
一頭の中からも様々な部位が切り取られ、合計500グラムが検査される。42頭で21キロ分が検査後に処分された。

検体はマリネリ容器と呼ばれる円筒形の器に詰め込まれる。
底に外から内に向けた大きなへこみのある容器だ。
突起型のセンサーに、上から容器の底のへこみをかぶせる。数分すると、放射能の量が算出される。

ウクライナの場合、食肉の規制値は、放射性セシウムで1キロあたり200ベクレルだが、この日は10〜40ベクレルの間に収まり、すべてが「合格」した。

日本は来春に向けて食品の安全基準の見直し作業が進んでいるが、「暫定」の規制値は同500ベクレルだ。

日本の暫定値は水と牛・製品が同200ベクレルだが、ほかの食品は一律で500ベクレル。
これに対して、ウクライナの飲料水は2ベクレルと厳しく、牛も100ベクレルとされる。
食品も、ジャガイモは60ベクレルで野菜類は40ベクレル、パンは20ベクレルというように細かく決まっている。

隣国のベラルーシ共和国も、飲料水は10ベクレル、牛は100ベクレル、牛肉は500ベクレルだが
豚・鶏肉は180ベクレル、ジャガイモは80ベクレルで野菜類は100ベクレルなどと決めている。

ベラルーシの民間研究機関であるベルラド放射能安全研究所の副所長、ウラジーミル・バベンコは
「国民の食生活に合わせて変更してきた」と話す。

44 :
ウクライナでは、国内にある45の市場の全てに保健所の検査場があり、
大きな市場には野菜、魚、加工食品というように、部門ごとに検査場がある。

同じキエフ市のペチェルスカヤ市場では、ジャガイモを一つ一つ皮をむいて、ミキサーにかけてマリネリ容器に入れていた。
手間がかかるが、正確に測るためには、食べる部分をすきまなく容器に入れる必要があるためだ。
汚染リスクが高い野生のキノコ、ベリー類は全ロットを検査する。
2000年ごろに規制値を超えた牛肉が見つかり、その後、牛、豚、羊は全頭検査が続いている。
野菜や果物などは市場の販売店ごとに検査している。

取材しながら、日本の検査態勢が気になった。

45 :
学長の逮捕:7

たった1台で検査

東京都はチェルノブイリ原発事故の1986年から輸入食品の放射能検査を続けてきた。
しかし今年3月の福島原発事故で、それが続けられなくなってしまった。

事故後、国内産のホウレンソウなどから甲状腺がんにつながる放射性ヨウ素が見つかる。
ところが放射性ヨウ素を測れる装置が、輸入食品の検査をしてきた1台だけだった。

ほかにも4台の検査装置があることはある。
しかしそれは86年以来使っている年代もので、セシウム137しか測定できない。

都はすぐに補正予算を組んで新しい測定器4台を発注した。
しかし納入は9月以降で、それまでは輸入食品用の1台で都内の検査需要に対応せざるを得なかった。
 
国内産の食品の放射能検査は主に都道府県の役割だ。
厚生労働省は3月17日に食品の暫定規制値を定め、都道府県などに食品の検査をするよう求めた。

都は地元産の米、肉、野菜、果実、魚介類などを検査する。
当然、1台では限界があるのでサンプル調査にならざるを得ない。
さらに、都内で食肉処理される福島県など4県産の牛は、全頭検査などが求められた。
そのため、ほかの食品のサンプルの割合は減ることになった。

46 :
東北、関東甲信越などの14都県を対象に、国が検査の具体的方法を示したのは6月だった。
それは「問題がない場合」には、
野菜・果実は月単位、牛は2週間おき、水産物は週1回などを原則とするものだ。
「問題がない場合」とはどういう意味なのだろう。

厚労省食品安全部の技官、富田耕太郎は
「一般的には1キロ当たり500ベクレルを超えないということです」。

となると、500ベクレルを超えるまでは、
野菜・果物の検査の頻度は変わらないことになる。

「実際に影響が出る値はもっと高い。
しかしその値に設定することはできないので、いまは500ベクレルで線を引いています」

だが、500ベクレルはあくまでも暫定規制値のはずだ。
いま見直し作業をしているのではないか。

「いまの値でも十分に安全性を考慮している。
より安全性を考慮するため、さらに厳しい規制を検討している、ということです」

ゴメリ医大元学長のバンダジェフスキー(54)は警告する。
「遠慮抜きにいわせてもらえば、日本の暫定規制値は大変に危険です」

47 :
学長の逮捕:8

輸入品 すり抜けて

東京都は福島原発の事故の後、25年間続けてきた輸入食品の放射能検査ができなくなった。

実は、輸入食品の検査は、本来は国の担当で、検疫所が実施している。
食品が国内に入る時点で、1986年の暫定限度値、1キロ当たり370ベクレルで25年間検査してきた。

これに対して東京都は、独自の事業として、小売店で買った輸入食品を検査してきた。

それによると、09年度は328検体を調べて、フランス産ブルーベリージャムで暫定限度値を超える500ベクレルのセシウム137を検出した。
検疫所のサンプリングから外れたものが店頭に並んだと見ることができる。
さらに、限度値を下回るものの一定の放射能が検出された食品がほかにもあった。

キノコ類4検体から100〜230ベクレル、ブルーベリー加工品3検体から90〜140ベクレルのセシウム137。
国民は、知らずに基準を下回る放射能を体内に取り込んでいる。

48 :
基準となる値の考え方について、ベラルーシのベルラド放射能安全研究所副所長、ウラジーミル・バベンコはこう話す。

「ベラルーシは基準を下回る食品に認定証を発行します。
認定証には1キロ当たり何ベクレルだったかが書いてある。
消費者は実際の数値を知ることができます」

当局が白黒をつけてしまわず、消費者に情報を提供することで、市場原理が働く。
これで、放射能濃度が低い食品は売りやすい一方、高い食品は売れにくいことになる。

「生産者はどうしたら売れるかを考えるので、農地の除染などの対策が進むことにつながります」

都の調査によると、フランス、ベルギーなど、
チェルノブイリ原発から1500キロ以上離れた国の食品からも放射能が見つかっている。
放射能の影響は広範囲に及ぶ。

しかし現在の日本では、福島県でさえ、測定器10台を
郡山市の県農業総合センターに置いて検査する態勢ができたのは9月だった。

それにしても、輸入食品の暫定限度値は370ベクレルなのに、
国内食品の暫定規制値はなぜ500ベクレルなのか。

厚生労働省食品安全部はいう。

「輸入食品は欧州の一部の地域が対象で、平常時の基準値です。
それに対し、今回の事故は日本にとって緊急時なので、少し緩める必要がある。
それは国際的にも認められています」

49 :
学長の逮捕:9

規制値 食器にまで

「このカップは552ベクレル入っています。こっちは533……」

ウクライナのキエフ市にある国家規格研究所の製品検査の責任者、ウラジーミル・ブイコフスキーは、
棚に並んだコーヒーカップから検出された放射能測定値を読み上げた。
ウクライナでは、食器にも規制値があり、1キロあたり370ベクレルを超えると販売が認められない。

「産地で放射能の核種が変わります。パラジウムだったり、トリウムだったり
チェルノブイリ事故で汚染されたので、なるべく身の回りの放射能を減らしたい」

食器だけではない。
子どものおもちゃや、バーベキューの炭も規制値を超えると販売できない。
建築資材は住宅用が一番厳しく、次はオフィス用、さらにオフィス以外用と、それぞれ基準が決まっている。

ウクライナでは、旧ソ連の崩壊後、放射能に関する規制を緩めた。
ところが、食品の放射能汚染度が高くなり、1990年代後半に国民の内部被曝(ひばく)量が増えてしまった。
そのため、国内の規制をふたたび強化した経緯がある。
今は、その厳しいウクライナの基準を国際基準にする提案もしているという。

50 :
「この研究所では、ストロンチウムの計測もしています」

ウクライナ衛生局の食品研究所には、
ストロンチウム90が計測できる装置があった。

測定しやすいガンマ線を出すセシウムに対して、
ストロンチウムが出すベータ線の測定は難しく、
日本では時間がかかるとされる。
ウクライナの測定器は、粉状にした検体をトレーに載せて計測する。
コーヒー豆のミキサーが使われていた。

測定器を開発したアトム・コンプレックス・プルイラド社の社長オレクサンドル・カジミーロフはいう。

「ストロンチウムは、体内に取り込むと骨に沈着する。
危険度が非常に高いため、ウクライナの規制値は厳しく設定されています」

たとえば、肉はセシウム137の場合1キロ200ベクレルだが、
ストロンチウム90は20ベクレル。
ジャガイモはセシウム137の60ベクレルに対して20ベクレルと低い。

日本にはストロンチウムを短時間で測る態勢がない。
そのため規制自体がまだない状態だ。

ゴメリ医大元学長のバンダジェフスキー(54)はいう。

「今後、放射能が土壌に浸透して野菜が吸収しやすくなる。内部被曝の心配はこれからです」

51 :
学長の逮捕10

検査 提案したら

11月14日、南相馬市の市立総合病院非常勤医師、坪倉正治(29)に、
副市長の村田崇(たかし)(37)から電子メールが届いた。
激しい非難の文言に、坪倉はびっくりした。

「特別職に対して原因を調べろという趣旨のメールになっていますから、
私に対してはともかく、市長に対しては失礼極まりない……」

坪倉は東大医科学研究所の医師だが、原発事故後、希望して南相馬にやってきた。
福島原発から23キロの地点で、多くの医師が避難し、医師不足に陥っていた。そこで週の半分を勤務する。

坪倉が力を入れているのは市民の内部被曝(ひばく)の検査だ。

検査は7月に始まった。ホールボディーカウンターと呼ばれる装置で体内の放射能量を測定する。
東大理学部教授で物理専攻長の
早野龍五(りゅうご)(59)に相談しながら進めてきた。

早野は学校給食の放射能検査を各地の自治体に提唱している。
南相馬市長にも提案した。

「学校給食を1週間分まとめて検査する、という提案です。
費用はこちらで負担するとも伝えました」

しかし返事が来ない。
早野から話を聞いた坪倉は、市長と副市長あてにメールを送った。

「今後は食べ物の検査態勢の強化が重要と考えております。ご検討いただけますと幸いです」

52 :
これに対する返信が、冒頭の激しいメールだった。メールは続く。

「市職員として最低限守るべきことは何なのかを再度見つめなおしていただき、日ごろの業務にあたっていただければと思います」
「ご自身の責任や立場を踏まえられた行動をお願いしたい」――

坪倉の要請にはいっさい触れず、
「職員の立場で特別職に指図するとは何事か」という内容である。

副市長の村田は、総務省から4月に出向してきたキャリア官僚だ。
この件について取材を申し込んだ。
秘書課から「この取材には応じないことになりました」と電話が来た。

直接、南相馬市の秘書課を訪れ、
再び取材を申し入れた。
秘書課長補佐が対応したが、
あくまで市役所内部の行き違いの話でしかないと、話が進まない。

重ねて面会を求めると、
秘書課長が出てきた。

「市立病院をいかに守り、市民のために機能させていくか検討している最中なので、いまは回答できません。
それより、市役所内の話がどうして外部にもれたのか」

53 :
学長の逮捕 11

給食を確かめたい

「きょうは実習つきで、そのあと試験をやります。……ウソ、ウソ」

11月末、福島県相馬市役所の会議室で、
東大理学部教授の早野龍五(59)が、市職員を笑わせていた。

早野は南相馬市に学校給食の放射能検査を申し入れ、断られた。
しかし北隣の相馬市は、すぐに全小中学校、15校で検査することを決め、早野の助言を受けることにした。

この日は、相馬市が導入した市民向けの放射能測定器の研修講師として呼ばれた。
講義後、市庁舎1階で測定器の実習をした。

果物や魚、塩などいくつかの食品を測る。
柿から放射性セシウムが検出された。
職員からため息が出る。
コンピューターがグラフを映し出す。
波線がポンとはね上がっている部分がある。
「これは30ベクレルぐらいです。出ると残念だけどね」

早野の提案の特徴は、1週間分の学校給食をまとめて後で検査することで、測りきれない放射能量を減らすことにある。

学校給食はお昼までに作らないとならないので、届いた食材を前もって全部測るのは難しく、抜き取り調査になりがちだ。
抜き取りだと計測漏れが出るので、毎日1膳ずつ冷凍保存し、1週間分をまとめてミキサーにかけ、漏れのないようにする。

54 :
検査機器には検出できる放射能量の限界があって、不信の要因になっている。
早野方式はすでに神奈川県海老名市、千葉市などで採用されている。
高性能の機器で時間をかけて測定しており、
実績を見ると、検出限界は放射性セシウムで1キロ当たり1ベクレル程度と、かなり精密に測れている。

10月に採用して8週の検査をした神奈川県横須賀市では、11月第4週に検出限界をわずかに超える値が検出された。
保護者から数件の問い合わせがあったが、簡単な説明で理解を得られているという。

この方式の費用は1週間分で1万5千円。
早野は自分で払うと南相馬市に提案したが、無視された。

南相馬市立総合病院医師の坪倉正治(29)はこの不採用に驚き、市長と副市長にメールを送った。
その結果、副市長の村田崇(37)から厳しく注意されることとなった。

坪倉には知りたいことがある。
南相馬市の子どもたちの体内の放射能量は減る傾向にある。
一方、親たちの中には増えている人もいる。

それはなぜか。食品に関係があるはずだ。
それを知るには、子どもの給食を確かめたい。

55 :
学長の逮捕:12

同じ一家、異なる値

福島県南相馬市の市立総合病院医師、坪倉正治(29)は住民の放射能汚染の状況を調べていて、
同じ一家の親と子どもでも、内部被曝(ひばく)の値に差があることに注目した。

「親子で体内のセシウムの量が20倍も違う例もありました。
聞いてみると、親は自宅で採れた野菜や果物を食べていましたが、
子どもの食事には注意をしていました」

坪倉らがこの秋行った調査で、
小中学生527人のうち268人から、セシウム137が見つかった。
中には体重1キロ当たり20ベクレルを超える子が4人いた。

しかし追跡調査で、比較的高かった子どもたちの数値も、多くが半分以下に下がっている。

北隣の相馬市の教育部長、臺内(だいうち)吉重は、その理由をこう見る。

「親は、自分では畑で採れた野菜を食べても、子どもの食事にはスーパーで買った食材を使う。
親子の料理を作り分けている家庭も多い。
家族が子どもの食事に真剣に気を配っています」

56 :
相馬市は12月から、市民の自家消費用の野菜や果物の放射能測定を始めた。

検査の初日、キウイから1キロあたり518ベクレルが検出された。
暫定規制値を超えている。
県に持ち込んで精密計測したところ、590ベクレルが検出された。
8日、県は相馬市のキウイを「出荷制限」の扱いにした。

相馬市は測定結果をホームページで公開している。
食材ごとに、市内のどの地区から持ち込まれたものからどれだけの放射能が検出されたかが、一覧表でわかる。

同市農林水産課の課長補佐、伊東博之は、そのねらいを話す。

「私は専門家ではないので、結果の分析について説明するわけにはいきません。
しかし公表された数値から、市民は放射能汚染の傾向をある程度つかむことができます」

これまでの公表結果を見ると、ユズやブルーベリー、ミカンなどの果物から一定量の放射性セシウムが検出されている。
特にキウイの検出頻度が高く、数値も比較的高い。
米からの頻度は今のところ低く、野菜も比較的少量にとどまっている。

しかし、野生の食べ物には注意が必要だ。

干した野生キノコのコウタケからは、3893ベクレルと、高い数値が出た。
相馬市の計測結果ではないが、県内各地で捕れたイノシシからは高い数値が出ており、県は食べないよう求めている。

57 :
学長の逮捕 13

自分たちで測るんだ

南相馬市の高橋慶(けい)〈41〉は10月、放射能対策の市民団体「アクティブ&セイフティー(A&S)福島」を設立した。

2009年まで原発技術者として福島など各地の原発で働いた。

福島原発事故で一番驚いたのは、大量の放射能が飛散したのに、
政府も県も「大丈夫、大丈夫」と繰り返していたことだ。

「原発で働いていた時は、液体と粉末を外に持ち出すには必ず放射能の分析をした。
汚染物質を誤って外に出すと報告書を求められた。あの厳しさはいったい何だったのか」

一部が原発の20キロ圏にある南相馬市では、高橋が09年から始めた水産加工の仕事はできなくなった。

6月、NPO法人「チェルノブイリ救援・中部」(名古屋)が、南相馬市の放射能汚染地図を作る活動を始めた。
500メートル四方のブロックごとに市内の放射能を測定する。

名古屋からわざわざ来てくれた人に協力したい、自分で測定して確かめたい。
そんな住民が集まって手伝い始めた。
高橋もその中にいた。その地元住民が設立したのが「A&S」である。

「救援・中部」は90年以来、チェルノブイリ事故のウクライナで被災者を支援してきた。
福島の事故で、今度はウクライナの人たちが募金活動をし、線量計100台を「救援・中部」に贈ってきた。

そのうち50台が11月、A&Sに託され、住民に貸し出された。
「救援・中部」からは食品の測定装置の運営も任された。
高橋は来年から、それを使った測定を始める予定だ。

58 :
「市役所も測定を受け付けています。
しかし、すでに出荷停止になった柿やビワなどは測らない。
スーパーの食品も測らない。
私たちは区別せずに測るつもりです」

政府は来年度から放射性セシウムの規制値を1キロ当たりで
水10ベクレル、牛50ベクレルに下げる方針だが、水も牛も毎日飲むものだ。
心配なので、自分たちの測定値は定期的に公表する考えでいる。

高橋は11月に市立総合病院で、体全体の被曝(ひばく)量を測る「ホールボディーカウンター」の検査を受けた。
体重1キロ当たり約15ベクレルで、大きな値ではなかった。

「でも、事故直後に検査を受けていればずっと高かったはずです」

高橋は事故後、装置を持つ施設を探しては電話し、計測を依頼した。
しかし、すべて断られた。

それはなぜか。

59 :
学長の逮捕:14

「逆に不安招くから」:

南相馬市の市民団体「アクティブ&セイフティー福島」代表、高橋慶(けい)(41)は、原発事故後に自分の内部被曝(ひばく)を知りたくて、
ホールボディーカウンター装置を持つ各地の機関に検査を要請した。
しかし、電話したすべての機関に断られた。

全身の放射能量を推計して内部被曝を調べる装置だ。
立ったり座ったり、装置によって計測方法に違いはあるが、国が確認している分で全国に106台ある。

なぜ高橋の要請は断られたのだろう。
茨城県立中央病院は、一般市民の検査を一件もしていない。茨城県保健予防課はこう説明する。

一、福島県が公表した県民約6600人の被曝量が極めて低かった。
一、福島県が内部被曝の検査対象とした地域に比べ、茨城県の空間放射線量は極めて低い。
一、以上をもとに放射線被曝の専門家に聞いた結果、「内部被曝検査などの健康調査は必要ない」という判断となった――。
その専門家は6人という。名前を尋ねたが、県は明かさなかった。

茨城県は11月28日、「放射線の健康影響に関する専門家による意見交換会」を開いた。

その内容について、茨城県知事の橋本昌(66)は、翌29日の記者会見でこう語っている。

「行政が必要と判断したからと住民側が判断し、受けなくてはいけないと思われてしまい、
逆に不安を招いてしまうといったようなご意見もございました」

ホールボディーカウンターで検査すること自体が、住民の不安をあおりかねないという発想なのだ。

60 :
佐賀県唐津市の唐津赤十字病院も検査を受け付けていない。

「健康に影響を及ぼすような明らかな内部被曝の可能性があれば、装置を所有する佐賀県と相談して検査も検討する。
しかし不安解消のための検査は受け付けない」

神奈川県相模原市の北里大学病院は回答を拒否した。

「担当部署が多忙なので北里病院としては回答しない」

これに対し、長崎大学病院国際ヒバクシャ医療センターは、10月末までに653人の検査をした。

対象は原則として福島県民。
長崎に避難していたり、検査を希望してやってきたりした人々だ。
福島県民以外でも、医師が必要と認めたり、検査を強く希望したりする人には応じている。

61 :
学長の逮捕:15

検査してもらえない

内部被曝(ひばく)を測るホールボディーカウンター。長崎大のほかにも検査を受け付けている機関はあった。

北海道がんセンターは358人を検査した。
対象は福島県から避難してきた人たちだった。
新たな放射能が入らなければ、体内の放射能は減る。
検出が難しくなったことから、9月末で検査をやめた。

新潟県立がんセンター新潟病院。
12月7日までに159人を検査した。
対象は「福島県が選定した者」だけだ。

愛媛県は伊方町民会館で12月、福島県から避難した11人の検査をした。
ほかにも避難してきた人を把握しているが、対象はやはり「福島県の指定」だった。

検査をしていない機関の多くは、「国や県から依頼がない」としている。

調べていくと、石川県のように独自の基準を設定している自治体もあった。
石川県立中央病院は検査をしていない。理由は「検査基準を超える人がいない」だ。「スクリーニング検査」の結果だという。

同県医療対策課によると、それはこのような検査だった。
(1)上着を着た状態で線量計をあてる。
(2)10万cpm(1分間に計測する放射線の数)を超えた場合、上着を取り、ウエットティッシュで体をふいてもう一度測る。
(3)それでも10万cpmを超えた場合、ホールボディーカウンターの対象とする――。

62 :
福島県内で避難した人の多くはこうしたスクリーニング検査を受けたが、
福島から石川に避難した人の中には受けていない人もいた。

そうした人たちの要望を受け、3〜4月に保健所などで検査した。
約100人を検査したが、いずれも「基準」に達しなかったという。

上着を脱いでウエットティッシュでふいてなお10万cpmが測定される。
それほど多くの放射能が体についた人でなければ、ホールボディーカウンターにたどり着けないのだ。

しかも食事を通じて体内に入った放射能量は、線量計をあてるだけでは測りようがない。

それに対し、人々の不安に応えようという動きも出てきた。

広島大学緊急被ばく医療推進センターは、19日までに54人を検査した。
いまのところ、福島県民と、国が指定した避難指示区域に立ち入った人が対象だ。
しかし今後は対象を広げる予定という。

63 :
不具合を抱えたまま

7月末、南相馬市立総合病院の医師、坪倉正治(29)は、病院駐車場にとめた
バス移動式のホールボディーカウンター(WBC)で、住民の内部被曝(ひばく)の検査をしていた。

しかし、どうも検査結果がおかしい。
体が大きい人の放射能量は低く出て、小さい人は高く出る傾向があるのだ。

この検査機は市長の桜井勝延(かつのぶ、55)が全市民を対象とした内部被曝調査の方針を打ち出したのを受け、
副市長の村田崇(たかし、37)がいち早く動いて鳥取県から借りてきたものだ。
7月11日から検査を始め、1日40人のペースで検査を進めていた。

その検査結果がおかしいのだ。
市立病院は、福島県から別のWBCを借り、8月中で鳥取県の検査機の使用をやめた。

検査結果がおかしいのは分かった。
しかし、これまでの検査データだけは何とか救いたい。
坪倉は機械のメーカーに問い合わせた。
ところが、社長が菓子折りを持って謝りに来ただけで返事がない。

11月に東大理学部教授の早野龍五(59)に相談した。
早野が問い合わせたところ、メーカーはプログラムに間違いがあることを認めた。
WBCは、空中を放射線が飛び交う中で、人の体内にある放射能だけを測る検査機だ。
それをより分けて、放射能の種類ごとに体内に存在する量を推計するようプログラムされている。そのソフトにミスがあったのだ。

メーカー担当者は説明する。

「ソフトにバグがありました。
ほとんど使われていないのでバグはわかりませんでした。
検査データは大丈夫です。メンテナンスも不十分で、部品を交換しました」

64 :
WBC検査機は1999年の東海村JCO臨界事故で、各地の自治体や病院が約30台を備え付けた。
1台が数千万円もする高価な機械だ。

部品には消耗品もあり、一定期間で取り換えなければ使えない。
しかしJCO事故以来、一般人がWBCを必要とする放射能事故は起きていない。

そのため、多くの検査機はほとんど使われない状態だった。
少なくとも、このメーカーは全国で10台を納入したが、
部品交換などで呼ばれることは少なかったという。

全国のWBCを持つ機関は動きが鈍い。
しかし、坪倉は内部被曝を正確に測ろうと突き進む。
坪倉のその行動で、WBCが活用されない真相が明るみに出始めた。

65 :
学長の逮捕:17

お前ら寝るな休むな

南相馬市立総合病院院長の金沢幸夫(58)は3月13日、X線写真のフィルムが感光していることに気づいた。
院内に原発事故の放射能が入ったのだ。
病院の表玄関を閉めて、窓に目張りをし、換気を止めた。

「これは内部被曝(ひばく)した人がいるだろう、と思いました」

病院は原発から23キロ地点にある。海岸からは3キロ。
震災後、泥まみれの患者が次々に運び込まれ、待合室にマットを敷いて対応した。

福島第一原発3号機が爆発した14日、職員に自己判断で避難するよう伝えた。
入院患者も避難させ、3月20日にはゼロになった。
約7万人の市民は避難で約1万人に減った。
震災前に14人いた常勤医師は4月30日には4人に減った。

5月半ばに救急患者の入院が認められ、少しずつだが病院の機能が戻り始める。
6月に入り、気になっていた内部被曝の検査に向けて動き始めた。

そして6月末、鳥取県が貸与してくれたバス移動式の検査装置、ホールボディーカウンターが届く。
避難者を含む約7万人の内部被曝検査プロジェクトが動き出した。

バス式検査装置は1日40人の検査が限界だった。
そこで、2011年度末までに約7千人の検査をする計画を立てた。

7月6日に受け付けが始まると希望が到する。
病院の電話はパンク状態になった。
7月25日には予定を3千人上回る約1万人に達した。

66 :
職員は予約の確認に追われた。
放射線量が高い地区の住民から優先的に電話をかけ、日程を決めていく。

「早くしてくれ」と催促する電話がひっきりなしにかかる。
わずかな人数の職員は「対応が遅い」と責められた。

事務職員(53)は、検査が市の健康診断プロジェクトだったことも影響したと見る。

「公的病院の職員なので、行き場のない気持ちをぶつけやすいのでしょう。
事務処理が遅いのはお役所仕事のせい。
お前ら寝るな、休むな、という調子で、こたえました」

9月、市が約5千万円を出した最新式の検査装置が入った。
精度が高く、検査時間も短くなった。
今では1日6時間で110人の検査をしている。
身長体重を測定し、記録を残す担当者も含めて7人がかりだ。
数少ない職員が激務に耐えている。

しかし大きな問題がある。
検査で病院には1円の診療報酬も入ってこないのだ。

67 :
学長の逮捕:18

7月にホールボディーカウンターによる内部被曝(ひばく)検査を始めた福島県南相馬市立総合病院。
検査自体は2分で終わる。その説明が大変だ。

「50年とか70年とか、そんな長期の話を聞きに来たんじゃない。これまでの被曝量を知りたいんだ!」

「そういわれても、この検査は現在の体内の放射能量を出すだけなんです。
今までの内部被曝量を正確に出すことはできないのです」

「難しそうなことをいって、都合が悪いことを隠しているのでしょう。ちゃんと教えてよ」

検査結果は郵送で知らせ、説明を希望する人に来院してもらう。
ところが、通知には「預託実効線量」など聞き慣れない言葉が並んでいて理解しにくい。

預託実効線量は推計値でしかない。
検査でわかるのは体内にある放射能量(単位・ベクレル)だ。
そこから一定の仮定に基づいて、大人で50年間、子どもで70歳までという長期にわたる被曝量(単位・シーベルト)を推計する。

放射能汚染に直面している南相馬市民は、外部被曝にどれだけの内部被曝が加わるかに強い関心がある。
そのため、知りたいのは年間被曝量(単位・シーベルト)なので話がかみ合わない。

68 :
説明は1人20分で計画されているが、長い人は1時間を超える。

待たされる人も多く、難しい説明に我慢できなくなる人もいる。

事務職員がいう。

「説明を聞きに来て、最初からけんか腰の人もいます。
説明するのが医師でなければ殴りかかりかねない、そんな勢いです」

病院本来の業務も増えてきて説明する医師も疲弊しているが、院長の金沢幸夫(58)の意志は固い。

「調べておけば、何かあった時に役立つ。
万一の時に『調べていない』では、何のために市民がこんなにひどい目にあったのか、わからなくなります」

検査装置がもう1台ほしい。
7万人市民を考えると、検査はまだ始まったばかりだ。
食品からの摂取も心配なので、定期的に調べたい。

その前に立ちはだかるのが、資金の壁だ。
検査は公的医療保険の診療として認められていない。
長時間にわたる説明をしても、病院の収入は増えない。

「公立病院は募金ができません。
誰かが買って、運用を病院に任せてくれないか。
そんな可能性を探っているところです」

69 :
学長の逮捕:19

提案を断った福島県

茨城県日立市の「チェルノブイリの子供を救おう会」代表、久保田護(87)は、今年9月にもベラルーシに行った。
体内の放射能を抜くため、ベラルーシの子どもを日本に招待する活動を続けている。

着いた翌日にホールボディーカウンターで自身の内部被曝(ひばく)量を測った。
体重1キロ当たり21ベクレルが検出された。
明らかに日本での内部被曝だ。
同行した同県常陸太田市の教員、畠山弘恵(57)は19ベクレルあった。

もう1人の日立市の事務職、西野和枝(59)は10ベクレルと少ない。
思い当たるのは7〜8月の欧州旅行だ。
久保田はいう。

「汚染のない食物を食べていた間に放射能が抜けたのでしょう」

ホールボディーカウンターは、測定時点で体内にある放射能量を調べる装置だ。
久保田らの測定結果は、食品による内部被曝が広がっていることを示唆している。

ところが、福島県はいまだに食事を通じた内部被曝を認めない。
検査で体内に確認された放射能は、3月12日に福島第一原発1号機が爆発した時に取り込んだものだけとして
健康への影響を計算しているのだ。
放射能は新たに取り込まなければ減っていく。
子どもは新陳代謝が速いので、小学校低学年だと1カ月前後で半分に減る。
いま1キロ当たり10ベクレルの放射能がある子どもがいるとする。食事から新たな放射能をとっていないとすると、
12月に10ベクレルになるには、3月の事故直後に1キロ当たり5千ベクレル超もの放射能を吸い込んだ計算となる。
事故直後、子どもだけが大量の放射能を吸い込んでいたなんてあり得ない。

70 :
「福島県のやり方では、当初はともかく、今後は問題があります」

そう懸念するのは日本原子力研究開発機構の福島技術本部部長、飯島隆。
9月末、同機構は放射線医学総合研究所とともに、福島県に推計方法の見直しを提案した。
食事から放射能を取り込むことを認めないと、実態にそぐわないためだ。

しかし福島県は提案を断った。
地域医療課副課長の川島博文はいう。

「食品に対する不信感、不安感をあおる心配があるからです。
内部被曝がわかった人に聞いても、食品からとったとは誰も言わない」

こうした福島県の態度に、ベラルーシを見続けてきた久保田は疑問を募らせている。

「食事による内部被曝は広がっています。
ベラルーシのように気楽に測れる態勢が必要です」

71 :
学長の逮捕:20

学校で毎日飲むもの

仙台市教育委員会の健康教育課長、佐藤順は、宮城県が12月7日に公表した原の放射能検査の結果を見て驚いた。

宮城県は、県内3カ所で原の放射能を測定している。
その濃度が、2カ所で1キロ当たり20ベクレル、21ベクレルと、前週の2倍を超えていたためだ。

県内では10月、大崎市が給食を検査したときに、牛で25ベクレルが計測されていた。
仙台市の小学生の母親が、子どもの学校給食で使っている牛から放射能が出たと市教委に相談に来たことも聞いた。
何らかの対策がいるな、と佐藤は思った。

仙台の牛を測定したのは福島県二本松市のNPO「TEAM二本松」だった。
持ち込んだのは仙台市の自営業、横田美保(51)だ。
その後も同じブランドの1リットル入り牛3本から17〜23ベクレルが検出された。

これを含めて、TEAM二本松は22日までに複数メーカーの37本を測定し、11本からセシウムを検出した。
いずれも暫定基準値の1キロ当たり200ベクレルを下回り、来年度から実施予定の50ベクレルよりも低かった。

国が「飲んでも安全」とするレベルだ。
しかし、学校給食は半ば強制的に子どもたちの口に入る。より厳しい基準が要るのではないか、という意見も少なくない。
TEAM二本松理事長の佐々木道範(みちのり、39)もいう。

「給食に出す牛の放射能はゼロにしてほしい。たとえ他県から持ってきてでも」

横田は、小学4年生の息子に給食の牛を飲むのをやめさせた。いまはお茶を持たせている。

72 :
「栄養バランスに優れた牛は給食のメニューから外しにくい」と佐藤はいう。
当面の対策として、「放射能を理由にして飲まない子が代金を払わなくてすむ措置ができるかどうか検討しています」。

横田が指摘したメーカーは、関東・東北各県の原について、6月から週1回、放射能検査をしてきた。
検出の下限である10ベクレルを超える放射能が検知されることもある。

メーカーに原を供給するのは販売農協。
メーカーの担当者は「二本松の検査結果も含め、販売農協に伝えて改善を求めている」と話す。

生産者団体の宮城県酪農農協は11月半ばから動き始めている。
所属の酪農農家全180戸を回り、えさの放射能を測定中だ。
半沢善輝組合長は「放射能ゼロを目指す」という。
自分で測って確かめる消費者の動きが、メーカー、農家、自治体の対応を促している。(

73 :
学長の逮捕:21

最新式との差は10倍

福島第一原発の30キロ圏内に市域の多くが入る南相馬市の医師会は4月14日、緊急理事会を開き、解散を決議した。
住民の避難にともなって医師も避難し、事務局の維持ができなくなったためだ。

翌日、長崎市医師会長の野田剛稔(たかとし=67)が現れ、義援金300万円を現金で手渡してくれた。
そのおかげで南相馬市医師会は解散を避けられた。
医師会長の高橋亨平(73)は「涙が出るほどうれしかった」という。

野田は「そこまで厳しいとは知らずに行った」と振り返る。
「災害の時には現金が必要だと思っているので、直接行って手渡しました」

そんな厳しい状況の中、高橋は内部被曝(ひばく)を測るホールボディーカウンターが欲しいと考えていた。
高橋は市内で産婦人科を開業している。
妊婦の不安を考えると、少しでも早く内部被曝の実態を知りたかった。

6月、米国製の最新式が購入できる可能性があると知る。
ところが、現金での取引を求められた。
銀行は融資に応じない。そこで、市に買うよう働きかけた。
市長の桜井勝延(55)に了解を得るものの、役所の手続きに時間がかかった。
市立総合病院に入ったのは9月下旬だった。

そのころ市立病院は、原発20キロ圏内にある研究施設のホールボディーカウンターを借りて使っていた。
最新式との差は歴然だった。

「古い機械でとれるデータは検出限界が高く、漫画みたいなレベルだった」と高橋はいう。
「この国の国民を守る仕組みはいかにいい加減か、それが分かりました」

74 :
旧式は能率も低かった。
たとえば福島県立医科大学は
警察、消防など原発事故の関連で働く人を対象に
ホールボディーカウンターを使っている。
だがその能力は、1日に10時間使って
20人を検査するのが限界。
それゆえ一般市民まで手が回らない、と説明する。
南相馬市が導入した最新式は2分で結果が出るため、1時間で20人を検査できる。

福島県は最新式を5台買い、トラックに積んで県内各地で計測する計画を立てている。
すでに1台がいわき市で計測を始めている。

放射能は目に見えず、影響が出るまで時間がかかることが多い。
それだけに、「内部被曝はいまの状況を知ることが大切」と長崎市医師会の野田は指摘する。

「検査の数値に過敏に反応する必要はありません。
大事なのは免疫力を低下させないため生活習慣に気をつけることです」

75 :
学長の逮捕:22

日本には技術がある

この夏、「チェルノブイリ・ハート」という映画が封切られた。

ベラルーシの放射能汚染地帯で生まれる先天性障害の子どもたちを取材したドキュメンタリー映画だ。

ベラルーシのお隣、ウクライナ放射線医学研究センターのエフゲーニャ・ステパノワは、
チェルノブイリ原発の事故処理作業者の子どもたちを研究の対象にしている。

肩書は放射線・小児・先天・遺伝研究室長。
専門分野について語る時、彼女の言い方は慎重になる。

「最初は全く否定されていましたが、仮説を立ててもよいという考え方も出てきました。
被曝した両親から先天性の障害がある子どもが生まれるリスクがあるという仮説です」

もちろんあくまで仮説であり、証明はされていない。

仮説を立てたら立証したいところだが、それには調査が要る。

「国際機関や団体の資金援助を求めていますが、調査には多大な資金が必要で、とてもできません」

そして、こう言った。

「はっきりしているのは放射性ヨウ素で甲状腺がんが発生したこと。
そのほかのことは分かりません」

76 :11/12/31
学術的な証明のあるなしに関係なく、旧ソ連では行動があった。
チェルノブイリから約130キロの現在の首都キエフから子どもたちを一時的に疎開させたのだ、と彼女はいう。
いまも、ウクライナでは全国の市場で毎日、食品検査を行っている。

「旧ソ連時代にチェリャビンスク州で核事故が起きました。
その経験で、悪い影響が出ることは予測できていたということです」

核事故は1957年。
極秘扱いだったが、当局は放射能の人体への影響を把握していた、という。

放射能が体に与える影響を研究していてベラルーシ当局に逮捕された経験を持つ
バンダジェフスキーは、日本の現状を見てこう話す。

「私が研究を始めた時も国は全く協力しなかった。
日本には技術がある。
国民は、自分たちで健康を守るシステムを作ることが必要です」

住民自身の健康を守るため、東大理学部教授の早野龍五が提案したのが学校給食の放射能検査だった。
福島県南相馬市がそれを断ったことをこの欄で紹介したが、同市は28日、早野に提案の受け入れを伝えた。

少しずつ、健康を守るシステムがつくられ始めている。
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