2011年10月1期ゲームサロンホラーゲームバトルロワイアル 第屍幕 TOP カテ一覧 スレ一覧 削除依頼
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ホラーゲームバトルロワイアル 第屍幕


1 :11/12/13 〜 最終レス :11/12/19
ここは、様々なホラーゲームのキャラクター達がそれぞれに不思議な経緯により
"ある場所"へと招き寄せられ、異常な状況下で生き残り生還することが出来るかという物語を綴る、
パロロワ派生の参加型リレー式二次創作スレッドです。
企画への参加はどなたでもOKです。
興味を持たれた方は、まずはまとめWikiからご覧下さい。
・まとめWiki
ttp://www23.atwiki.jp/deruze/
・したらば掲示板
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/13999/
・企画発祥スレ
ホラーゲームバトルロワイアル企画スレ
ttp://toki.2ch.net/test/read.cgi/event/1201873545/
・過去スレ
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/gsaloon/1209650564(第一幕)
ttp://toki.2ch.net/test/read.cgi/gsaloon/1285236575/(第二幕)
ttp://toki.2ch.net/test/read.cgi/gsaloon/1299388606/(第惨幕)
詳しいルール・解説は>>2以降

2 :
【基本ルール】
・様々な時代、世界から様々な形で「サイレントヒル "らしき" 場所」へと招かれた「呼ばれし者」達は、
 「何らかの手段」を講じなければそこから出ることは出来ない「らしい」。
 この「場所」には「クリーチャー」が徘徊しており、「呼ばれし者」に襲いかかってくる。
 「町にいる他の呼ばれし者達を滅ぼす」事で、解放される「らしい」という話もあるが、詳細は不明。
 何故呼ばれたか、呼ばれたことに意味があるのかなどは現段階では不明。
【「呼ばれし者」と「クリーチャー」】
・新しい参加者(呼ばれし者)、クリーチャーを登場させる際には、出典と詳細情報を書く。
 (参加者枠は既に定員に達している為、新たな「呼ばれし者」を登場させる事は不可)
 出来る限り、該当ゲームをプレイしていなくとも書ける様にし、
 また曖昧にしか分からない部分なども含め、ここやSS内で示された以上の事は無理に書かなくても良い。
 他の書き手が必ずしも出典元を参照できるとは限らないことを前提に、
 SS内や補足情報で巧く補完することを心がけ、ルートによるゲーム内での変化なども含めて、
 ある程度「いいとこどり」でも調整する方向で。
・ゲームならではのお遊びやシステム上の都合としての不自然さなどは、無理に持ち込まない様にする。
 (『サイレントヒル』のUFOエンドや犬エンド、『バイオハザード』の豆腐モードからキャラを出す等)
・「呼ばれし者」は、呼ばれたときのアイテム、能力をそのまま持っている。ただし、必ずしも元通りに使えるとは限らない。
 
・アイテムはこの「場所」の中で様々なものを得ることもあるが、持ちうる範囲を超えて持ち運ぶことはない。
 あまりに展開上不自然なもの、展開を妨げうるものなどは考慮が必要。
 (逆に展開に不自然さがなければ、ちょwwこんな所にロケランあったんだけどww、というのもあり)
・この場所にいる際には、「呼ばれし者」同士、多言語での会話が可能。知らない言葉でも何故か意味が伝わる。
・アイテムは現実に存在するもの、又は既存のホラーゲームに登場するものを出典として持たせる、登場させる事が出来る。
 登場させたSSの最後に、出典と共にその内容に関しての解説を記しておく。
・「クリーチャー」は、この「場所」に置いて、各々の元の性質に近い行動をとる。
 場合によっては「呼ばれし者」が「クリーチャー」に転ずることもある。
・クリーチャーの初期情報を書く際のおおまかな能力基準は以下を元に。
 [能力の★について]
 ★ … 一般人以下。虚弱、病弱。愚鈍。
 ★★ … 一般人並み。特殊な訓練や能力のない人間キャラと同等。
 ★★★ … 一般人の中でも頑強。特殊な訓練をしている、軍属、アスリートレベルの身体能力など。
 ★★★★ … 人外の能力。野生の猛獣並みの身体能力など。
 ★★★★★ … 人外にして超越。不死、半不死等。

3 :
【エリアと地図】
・エリアは、特別な施設名以外は、大まかな位置を地名で表記する。
 進入や移動に制限のある場所、施設などはその旨も表記する。
 後のSSでは、それら既出の位置関係を元に展開させる。
 地図は、SSに描かれて内容から随時設定される。また、進行によって変化することもある。
【サイレンと裏世界】
・物語内時間では一日目の18時から6時間毎に「サイレン」が鳴り「特別なイベント」が起きる。
 「特別なイベント」には、「世界/地形が変容する」、「新たなもの/施設などが呼ばれる」、
 「クリーチャーが現れる」、「屍人が起きあがる」 等、様々なものがあり、
 実際にどういうイベントが起きるかはその時の展開などにより決められる。
 
・サイレンが何なのかは現段階では不明。
【作中での時間表記】
 深夜:0〜2時
 黎明:2〜4時
 早朝:4〜6時
 朝:6〜8時
 午前:8〜10時
 昼:10〜12時
 日中:12〜14時
 午後:14〜16時
 夕刻:16〜18時
 夜:18〜20時
 夜中:20〜22時
 真夜中:22〜24時
(OPの時刻は夕刻:16〜18時)

4 :
【書き手の注意点】
作品(SS)を書き込む際などにはトリップを推奨。SSの最後には状態表を記載し、投下終了したことを明示する。
障害、書き込み制限などで書き込みが出来ない場合は、したらば掲示板を活用し、
出来ればその旨を代行書き込みなどを利用して本スレに書くか、代理投下をして貰う。
以前書かれたSSや、元となった作品設定などとの明らかな矛盾、事実誤認、企画進行に支障をきたす不自然な展開などがある場合、
話し合いなどにより修正、破棄を行うこともある。ホラーなのはSSの中のみで。進行はノーホラーに行きましょう。
【予約制度】
一定期間特定のキャラを優先して書く権利が与えられるシステム。
このロワでは任意制となっているが、複数の書き手が同一キャラを扱った場合、
先に予約した者が優越し、一定の正当性を持つ性質は変わらない。
予約をする場合は、トリップを付けて本スレか、したらばの投下スレで該当キャラクター、クリーチャー名を書き込むこと。
予約期間の最中に他の書き手は、該当キャラクター及びクリーチャーのSSは投下できない。
期限が過ぎた場合は予約は破棄されたものと扱い、予約した書き手以外の方でも予約したりSSを投下したり出来る。
期限を過ぎても、他の人の予約やSSが入らない場合はそのまま投下できる。
・基本予約期限5日間。
・延長期限3日間。
・予約期限が切れた後は予約破棄。
・予約破棄から5日間は同じパートを再度予約出来ない。(ただしSSが完成すれば投下は可能)
・予約出来るのは基本的に1つの話にまとめられるパートのみ。
 1つの話にまとめられない全く別のパートを同時に予約を出来ない。
おまけ
トリップ作成テストツール
ttp://www.dawgsdk.org/tripmona/tools
【読み手の心得】
・このスレは投下・雑談を兼用しています。きたんなく雑談しましょう。
・この企画ではどのキャラもバイオ2のガンショップの親父の様にあっさり死ぬ可能性があります。
・好きなキャラがピンチになっても騒がない、愚痴らない。
・好きなキャラが死んでも泣かない、絡まない。
・荒らしは透明あぼーん推奨。
・批判意見に対する過度な擁護は、事態を泥沼化させる元です。
 同じ意見に基づいた擁護レスを見つけたら、書き込むのを止めましょう。
・擁護レスに対する噛み付きは、事態を泥沼化させる元です。
 修正要望を満たしていない場合、自分の意見を押し通そうとするのは止めましょう。
・「空気嫁」は、言っている本人が一番空気を読めていない諸刃の剣。玄人でもお勧めしません。
・「フラグ潰し」はNGワード。2chのリレー小説に完璧なクオリティなんてものは存在しません。
 やり場のない気持ちや怒りをぶつける前に、TVを付けてラジオ体操でもしてみましょう。
 冷たい牛を飲んでカルシウムを摂取したり、一旦眠ったりするのも効果的です。
・感想は書き手の心の糧です。指摘は書き手の腕の研ぎ石です。
 丁寧な感想や鋭い指摘は、書き手のモチベーションを上げ、引いては作品の質の向上に繋がります。
・ロワスレの繁栄や良作を望むなら、書き手のモチベーションを下げるような行動は極力慎みましょう。

5 :
【呼ばれし者一覧】(31/50)
【トワイライト・シンドローム】(2/3)
○岸井ミカ/●逸島チサト/○長谷川ユカリ
【SIREN】(3/6)
○須田恭也/○宮田司郎 /●美浜奈保子/○八尾比沙子/●神代美耶子/●牧野慶
【SIREN2】(3/4)
○阿部倉司/●藤田茂/○三沢岳明/○太田ともえ
【学校であった怖い話】(2/5)
●日野貞夫/○新堂誠/●岩下明美/●風間望/○福沢玲子
【ひぐらしのなく頃に】(3/6)
○前原圭一/●竜宮レナ/●園崎魅音/●園崎詩音/○古手梨花/○鷹野三四
【流行り神】(4/4)
○風海純也/○霧崎水明/○式部人見/○小暮宗一郎
【サイレントヒル】(2/3)
○ハリー・メイソン/○シビル・ベネット/●マイケル・カウフマン
【サイレントヒル2】(1/2)
●ジェイムス・サンダーランド/○エディー・ドンブラウスキー
【サイレントヒル3】(2/3)
○ヘザー・モリス/●ダグラス・カートランド/○クローディア・ウルフ
【バイオハザードアンブレラ・クロニクルズ】(2/4)
○ジル・バレンタイン/●カルロス・オリヴェイラ/○ハンク/●ブラッド・ヴィッカーズ
【バイオハザード2】(1/2)
○レオン・S・ケネディ/●シェリー・バーキン
【バイオハザードアウトブレイク】(1/3)
●ケビン・ライマン/●ヨーコ・スズキ/○ジム・チャップマン
【零〜zero〜】(3/3)
○雛咲深紅/○雛咲真冬/○霧絵
【クロックタワー2】(2/2)
○ジェニファー・シンプソン/○エドワード(シザーマン)

6 :

【登場クリーチャー一覧】
【複数存在】(15)
【SIRENシリーズ】(2)
○屍人/○古のもの(屍人、闇人)
【サイレントヒルシリーズ】(5)
○レッドピラミッドシング/○バブルヘッドナース/○ロビー/○ライイングフィギュア/○ナイト・フラッター
【バイオハザードシリーズ】(6)
○ゾンビ/○ケルベロス/○タイラント/○ハンター/○プラーガ/○ラージ・ローチ
【零シリーズ】 (1)
○幽霊
【流行り神シリーズ】 (1)
○死者の霊魂
【唯一存在】(6/7)
【バイオハザードシリーズ】(3/3)
○女王ヒル(@北条沙都子)/○ヨーン/○デルラゴ
【学校であった怖い話】(0/1)
●人形(荒井昭二)
【トワイライトシンドローム】(1/1)
○花子さん
【ひぐらしのなく頃に】(1/1)
○羽入
【サイレントヒルシリーズ】(1/1)
○スプリットヘッド

7 :
            <   ヒャッハー!スレ立て乙だー!    >
             //∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨
            n    ∧ =   ∧          ____ | | |
        ,、,、. l l   /::;;ヽ    /;;:::ヽ    =  |__  | ̄
      _ ( ´ロ`),! |  /::::::;;;;ヽ.= /;;;;::::::ヽ        _/ ./ ミ
     ιニニ   \/::::::::::;;;;;ヽ三/;;;;;::::::::::ヽ      |__/
    /     \  ∠::::::::::::;;;/三\;;;::::::::::/ヽ          ___    ヾ
            \    /, i ! .= i  ̄´ノ__!_       |___| ┌┐
  /         ,, `=- | | |  三 |`''ヽ〈 __,, ヽ       ___/ /
          / / ̄二ノ ノ = !、_nm\,ヽ、\    |___/   ‖
 i |      / ./ / |` ヽノ = ヽ.__,,ノ、  ヽ''  ヽ、   _____, -、
       /  ´  /  /     三     ヽ\      ̄ ̄      !
 ヽヽ  /     /  /    . 三      \ヽ、 _    __   ( 、Ц, )←>>1
    ナ/    /  (      = ヽ、    ヽ    ̄ ̄/ ノ∨ ̄∨
   //(、Ц , | |   ヽ,____;_ 三_,______;_ i'^、_,, -ー''´  彡
  /,,ノ  ∨ ∨| | .― | |_ヽ三    ||   | =`''ー---‐‐''´
         | |    ノ 」   三    ,|.|:  |
         し   `ー´    .= ヽ,,_>,__ >

8 :
 (一)
 空になった弾倉を入れ替えながら、ハンクは己が視ているものに対して首を傾げた。
 "研究所"と手軽な方法で訂正された看板には"ラクーン大学"と書かれている。懐中電灯を仕舞って、マスクを被り直す。
 白と黒で構成された世界に鎮座する、風格を感じさせる洋館めいた建築物。その三階部分にちらちらと光が見えた。先客がいるようだ。
 ハンクは溜息を吐いて、方向を変えた。
 誰かがいると分かった以上、正面から侵入するのは得策ではない。もし、三階にいる人間がこちらに害意を持つ相手であれば、格好の狙撃ポイントを取られたことになる。
 そうでなかったとしても、こちらの位置を既に把握されるような事態だけは避けたかった。有利にことを運ぶためには、如何に相手よりも情報を多く集められるかにある。
 なにより、相手を過小評価しないこと――。
 もっとも、相手は既にハンクに居場所を知らせるような悪手を打っている。そこから、少なくとも狙撃のために三階にいるわけではないと推察できる。
 しかしながら、襲いかかってきた"U.S.S."の同胞たちや、気の触れた東洋人のようなケースを除外できるほど楽観的にもなれなかった。
 少し通りを行くと、大学の裏側に出た。柵を乗り越え、ハンクは放置された車両の影に潜みながら校舎に近づいていく。
 周囲に気を張りながらも、芽生えた奇妙な感覚を消すことはできなかった。
 額面通り受け取れば、あれが"ラクーン大学"ということになる。
 それが腑に落ちない。他所の土地にも"ラクーン大学"というものはあるのかもしれない。しかし、"アライグマ"の大学に通う学生の羞恥は想像に余りある。まともな考えの親なら、そんな大学に子供を通わせたりはしまい。
 マンハッタンでもないのに、わざわざ"酔っ払い"の大学と名づけるようなものだ。
 どちらにせよ、そのような大学施設は経営的に存在しえないことは火を見るより明らかだ。紛らわしいので必ずの対象となるだろう。なにせアメリカ人はが大好きだ。
 そうなると、これは紛れもなく"ラクーン大学"という可能性しか残らなくなる。だが、それはそれで納得しがたい。
 だが、任務の前に頭に叩き込んだラクーンシティーの知識――その中に含まれていた"ラクーン大学"の校舎やその関連施設と目の前の風景は一致するのだ。おそらくは構造も一緒だろう。違うとすれば、河ではなく湖が傍にあることぐらいか。
 何か大がかりな悪戯に巻き込まれているのか。それとも、単に悪い夢を見ているのか。
 前者は、己が盤上にいる内は確かめようがない。
 後者は頬を張れば分かるらしいが、かつて夢の中で実行して痛みがあったことを思い出して直前でやめた。
 構えていた拳を解き、十分に接近した建物を観察する。一階の窓ガラスにライトのものらしき光が見えた。別の入り口をと首を巡らすも、目視できる扉は建物の中央付近の一つだけだ。しかも、電子ロックらしき機器が備え付けられている。
 待つことは苦でないが、しかし肝心の侵入経路に支障が出来てしまった。
 扉は如何にも頑強に作ってあり、蝶番を破壊するのも現状の装備では難しいだろう。下手に音を鳴らせば、先客に気付かれるだけでなく、要らぬ来客を引き寄せてしまうかもしれない。
 電子ロックが機能していない可能性を期待するのは元より愚かでしかない。
 もっと迅速かつ理知的で合理的な手段が必要だ――。
「……ひとまず、その辺の窓撃ち抜くか――」
 ふと、聞き慣れたローター音を耳が拾った。ハンクは上空を見上げた。その響きは、段々と夜の空気を大きく震わせていく。
 音は大学のすぐ上空ほどで漂っているのに、視界には星ひとつない夜空が広がるだけだ。
 ただただ夜の静寂が乱されていく。眠りを妨げられたか、駐車場の奥から怒りに満ち満ちた吼え声が上がった。
 即座に銃を構えたハンクの目に映ったのは、重々しい響きと共に突進してくる禿頭の大男だった。

9 :

(二)
 深紅の持つライトの光が"研究所"の纏う夜闇を剥いでいく。しかし、その光の輪は心許なく、返って"研究所"の広大さと不気味さを増幅させているように思えた。
 静寂に包まれた敷地は大半が闇の中にあり、取り返しのつかない袋小路に迷い込まされてしまったような不安感がしこりの様に広がっていく。
 植物か何かのように壁面を覆う血錆の装飾も然るところながら、"ラクーン大学"と記された看板に上書きされた血文字を見てしまったことがそう思わせるのだろう。
 警戒とは裏腹に、問題なくホテルから出られたこと、そしてこの大学に来るまで特段何もなかったことが罠という印象を強固なものにしていく。
 何かがいるはずなのだ。ゾンビたちを潰れた肉片に変えるような大物が――。
 誠は背中にかかる気障りな重みに内心舌打ちしながら、先行する深紅の背中を追った。圭一のどこか軽い足音がすぐ後に続く。
 幽霊が教える、得体の知れない薬――。それに頼らざるをえない状況が非常に腹立たしかった。日野が提案した、"クラブ活動"の余興を思い出し、臍を噛む。これまで使い捨ててきた玩具たちの嘲笑が今にも聞こえてきそうだ。
「――あれ、行き止まり?」
 
 深紅の戸惑いの声があがる。目を凝らせば、数メートル先に鉄柵が立ちふさがり、その先で石畳が途切れているようだ。
 ライトの移動に合わせて視線を這わせると、光の中に弧を描く縁が現れた。広場に大きな穴が空いているようだが、行く手を寸断するほどのものではない。別のルートを探す必要がないことに安堵の吐息をつく。
 穴の縁に、コンソールの様な影が視えた。
「……何の穴なんだろうな。やたら深いみたいだし」
「知るかよ。薬と無関係なことに気ぃ逸らしてねえで、もっと集中しろ」
 好奇心のままに呟いた圭一に対し、棘を隠さずに誠は告げた。襲撃を受けた際、一番不利なのは己だ。当然ジェニファーは捨てるにしても、そのために回避行動が遅れることは否めない。
 これまでのように圭一が応戦してくれるとは思うものの、それを信用しきることは愚かだ。万が一はどのようなときも存在する。それをカバーできるのは、結局己自身でしかない。
「――あっ!」
「今度はなんだ?」
 こちらの舌の根が乾かぬうちにまた声を上げた圭一に、誠は思わず足を止めて振り返った。一拍遅れて、上方に向けられた圭一の顔が照らし出される。
「上の方で何か光った……ような」
「光ったのか光ってないのか、どっちだ?」
「いや、目の端にチラッてしただけだから……気のせいかもしれないけど」
 語気の荒さに驚いたのか、圭一はばつが悪そうに言葉を濁した。
「誰かいるのかも。これまでも銃声が聞こえてきましたし」
「雛咲、"ヨーコさん"に偵察頼めるか?」
「………………。無理そうです。ここに来てから何故か感情が昂ぶってて、まともに答えてくれません」
「役立たずめ。だから地に足のついてねえやつは信用できねえんだ」
 吐き捨てる。ホテルを無傷で脱出できたのはヨーコの存在が大きかったが、"今"使えないのならば無意味だ。深紅が僅かに息を詰まらせた。
 緩やかな階段を上がり、深紅が年季のこもった扉を開ける。
 潜ると、弾力すら感じられそうな血生臭い空気が誠たちを出迎えた。
 エントランスホールは二階部分まで吹き抜けになっており、廻廊がこちらを見下ろしている。
 中央には受付らしきカウンターと大きな階段が据えられており、大学というよりも金持ちの屋敷かホテルのような装いだ。ビバリーヒルズ青春白書に出てくる大学もこのようなものであったが。
 内部も外と変わらず、不気味な静けさに包まれている。

10 :

「ヨーコさんが言っています。ここの三階に、薬を生成する機械……? があるみたいです。向こうの扉から行くんだとか」
「……この階段じゃ行けないのか? てか、何でわかるんだ? 偵察できねえってのは嘘か」
「……分かりません。ヨーコさんはずっと呟くばかりで……あとは頻りに"T‐ブラッド"と」
 舌打ちし、誠は深紅の示す扉に目を向ける。
 どこまで信用しきれるのか。深紅に視線を戻す。彼女は不安げな表情で腕を掻いていた。その様子が更に苛立ちを募らせる。
 行動を誘導されているような、この状況が気に入らない。
 勿論、感染していない可能性もある。そもそも、感染すること自体が出まかせかもしれない。ただし、存分に狩りを楽しむ以上は薬が必要だ。
 それが例え偽薬だとしても――。
 それでも他者に操られているような閉塞感は拭えない。
「新堂さん、ひとまずその機械のとこ行ってみようぜ」
「そう、だな」
 
 頷くと、圭一が先行し扉の先の安全を確かめた。問題ないという圭一の仕草を待って、誠は足を進めた。
 警備室か何かだろうか。電源の入っていないパソコンや監視用のモニターが設置された部屋を抜け、ロッカーの並ぶ細い通路に出た。
 その奥にエレベーターの扉はあった。しばし待って、降りてきたエレベーターの中に乗り込む。
 血錆に覆われた操作パネルに、深紅が一瞬躊躇いを見せた。圭一が小さく詫びて、代わりに三階のボタンを押した。
 唸り声のような駆動音と共に籠が上がっていく。
 到着後、素早く周囲の安全を確認し、深紅が急かされるように対面にある扉を開けた。薬品棚が並ぶ部屋――準備室だろう――を抜ける。
 流し台付きの机の並ぶ大部屋は、機器の電源が幾つも入っていて仄かに明るい。お互いの影が闇から浮き上がって見える。しかし、肝心の電燈はスイッチに汚れが詰まっているのか、ぴくりとも動かなかった。
 この部屋の奥に生成装置はあった。大きめの洗濯機のような無骨な姿だが、これに材料さえ供給できれば自動で薬を生成してくれる優れものらしい。
 下ろしたリュックサックから二つの容器を取出し、深紅がたどたどしい手つきで装置にセットする。
「これで薬作る場所は確認できたわけだな」
「ええ……」
 深紅の同意が返ってくるが、なぜか顔をゆがめている。とりあえず彼女のことは無視し、手近な机の上にジェニファーを下ろす。床に放り捨ててしまいたいところだが、どうにかその欲求を自制する。
「……こいつはこれでいいだろ。"T‐ブラッド"ってのを探しに行こうぜ」
 肩を揉みほぐしながら、誠は圭一に目を向けた。圭一もまた、似つかわしくない表情を浮かべている。何かを言うか言うまいか、悩んでいる顔だ。
 視線で促すと、圭一は小さく頷いた。
「材料探しは俺と雛咲さんで行くよ。新堂さんはここに残ってくれないかな?」
「……理由を聞こうか?」
 睨みつけながら、抑えた声音で問う。圭一は真っ直ぐにこちらを見ながら微笑して見せた。
「新堂さんは雛咲さんをまだ信用できていないんだろ? それじゃ、お互いにいいことはないと思う。だからって、女の子二人を置いていく訳にもいかないじゃないか。だから、役割分担しようぜ。新堂さんは、ジェニファーさんと装置を守ってくれよ」

11 :

 成程と、誠は胸中で呟いた。誠が深紅を信用していないから、圭一は深紅と行くのだという。つまり、圭一は己よりも深紅の方を信用しているわけだ。尤もらしく言い繕ってはいるが、要点はそこだ。
 加えて、自分の意志をその程度のことで遮られたことが何より腹立たしかった。澱が音を立てて、自分の中に溜まっていくのを感じる。
 圭一は裏切り者だ。その判断を下すと、膨れ上がっていた怒気は急速に萎んでいった。圭一もまた、その他のどうでもいい有象無象と同じだっただけのことだ。
「そうかい。分かったよ。さっさと行きな」
「……頼むぜ、新堂さん」
 無理やり笑ってみせると、圭一は屈託のない笑みを返した。戸惑った様子の深紅の背を押しながら、部屋を出ていく。
 残されて、誠は唾を床に吐き捨てた。机の上に転がるジェニファーの影が目に入る。彼女を壊すか。ざらついた衝動が首をもたげた。手を伸ばせばすぐ届く脆い獲物。その誘惑は抗しがたいものがあった。
 どうやって壊すか。ここは実験室だ。大概の器具はあるだろう。バットで叩き壊すだけでは詰まらない。
 しかし、誠は首を振った。魅力的な案だが、まだ圭一は利用価値がある。感情に任せて下手を打つわけには行かない。ましてや、今回の件でほぼ無関係のジェニファーを巻き込むのは若干気が咎めた。
 深呼吸を数度し、誠は隣の準備室に向かった。
 薬品棚は品質の変化を抑えるために冷却機能も付けられているようだ。唸るような駆動音が部屋に満ちている。
 軋みを上げるガラス戸を開け、誠は蛍光灯で照らされた小瓶を手に取る。ラベルは周囲と同様に汚れていて読めない。ひんやりとした空気が足元を流れていく中、漸くの目当てのアンモニア溶液らしき小瓶を探し当てた。ついでに生きているペンライトも見つけた。
 それらを手にジェニファーの元へ戻ると、誠は蓋を取って小瓶の口をジェニファーの鼻に近づけた。
 目が見開かれ、ジェニファーは咳き込みながら身を起こした。その激しさに、少々憂さが晴れる。
 漸く発作が止まり、彼女は辺りを見渡した。涙目になりながら、眩しそうに誠を見上げる。
「ここは? み、ミクとケーイチ……は!?」
「ここは研究所だ。そこにあるのが薬の生成機だそうだ。あの二人は残りの材料を探しに行った。俺は……あんたのお守りだ」
 ジェニファーが安堵したように深く息を吐いた。無意識に傍らの虚空を手で撫でようとして、彼女は動きを止めた。
「……ツカサは?」
「おまえの想像通りだよ」
「…………。そう」
 泣き叫ぶかと思ったが、ジェニファーは小さく呟いただけだった。感情を全部抑え込んでしまったらしい。
 舌打ちし、誠は腕を組んだ。
 風でも強くなってきたのか、外から断続的な重低音が聞こえる。音はどんどんと大きくなっていく。いや、近づいてきているのか。
 風などではない、もっと機械的な――。

12 :

「ヘリコプター?」
 誠とジェニファーが口にしたのは同時だった。
 窓を見やるが、星ひとつない闇が広がるだけだ。また、不思議なことに音が反響していて方角がつかめない。
 窓に駆け寄ったジェニファーが格子を持ち上げ、自分の存在を報せようと大きなジェスチャーで声を張り上げる。
「ここよ! 気付いて! お願い!」
 その様に、誠は皮肉気に口をゆがめた。
 どれほど声を上げてもコクピットまでは届きやしないだろう。それに、こんな早くにヘリコプターで救助されるなんて終わりは求めていない。ケチはついたが、まだこのサイレントヒルを楽しみ切っていない。
 と、近くで立て続けに銃声が響いた。他にも人がいるのだ。
 斬り下げるような風切音が混ざる――
「圭一の見間違いじゃなかったのか――」
 そう呟いた直後、耳を劈く破砕音が轟き、建物を振動が襲った。衝撃で窓ガラスが砕け散り、天井の一部分が軋みを上げながら崩れ落ちる。甲高い不協和音と粉塵の舞い散る中、実験準備室の中央付近に大きな人影が存在していた。
 影はゆっくりと立ち上がる。さらりと衣擦れの音が鳴った。
 全体像は分からないが、ホテルで襲ってきた三角頭と同じような巨体であることが分かる。煙霧の中で爛と光る双眸が誠を捉えた。
 その瞬間、誠は身体が硬直するのを感じた。指すら自由に動かせない。ただ視界に入っただけだというのに、巨人から漏れる鬼気に当てられてしまった。
 意も何もなく、ただ虚無そのもののような瞳――。
 これが畏怖というものだろうか。
 震えすら走らない。ただただ心と体が冷たく――無感覚になっていく。まるで周囲の大気が凍てついてしまったかのようだ。
 ジェニファーが悲鳴を上げた。
 巨人の視線が逸れた。途端、身体を抑えつけていた圧力が霧散するのを感じた。誠は踵を返すと脇目も振らずに実験室を飛び出した。
 半透明のカーテンが幾つも吊り下げられた部屋を駆け抜ける。ジェニファーは勿論、薬のことも、圭一たちのこともどうでもよくなった。
 死んでしまっては意味がない。
 あれはそういう相手だ。
 相対してはならない相手だ。
 己は上位の存在でもなんでもなかった。
 ただの、狩られる兎だ――。
 血流にのって怯怖が全身を駆け巡っていく。前方をふさぐカーテンをバットで振り払いながら、誠は漸く悲鳴を上げた。

13 :

(三)
 圭一がパネルを操作し、箱が効果を始める。旋毛を引っ張られるような独特の浮遊感は何回経験しても慣れるものではない。
 深紅は背負ったリュックの中にある、あのノートブックのことを思った。
 中年男性のこと以外にも読み取れたことはあったのだ。
 視えたのは中年男性だが、感じ取れたのは父親を慕う子供の心だ。狂おしいまでに純粋な、奔流のごとき父親への思慕――それは深紅がずっと抑え込んできた兄への想いを膨れ上がらせた。込み上がる熱いものを堪えるのに精いっぱいで、そこまで告げる余裕がなかった。
 だが、告げられなかった理由はもう一つある。
 そのイメージの奥から結ばれる像は一つではなかった。幼い子供と、己とそう変わらない年頃の少女の二つだった。
 噛み合わない異なる魂が混ざり合っているような、奇妙な感覚。
 そのことに戸惑い、結局その後も口にすることができなかった。
 あれはおそらくはハリー・メイソンなる人物の娘なのだろうが、ああも違って視えるものだろうか。
 
「……ヨーコさんは何て言ってる?」
 圭一が階層を示すパネルを見上げながら呟いた。
 
「……"T-ブラッドを探して"って。あとは人の名前。多分、ヨーコさんにとって大切な人たちだと思う」
 深紅は眦のあたりを抑えた。ヨーコはずっと急かし続けている。思念は前後の繋がりが曖昧で、感情そのものをぶつけられているような形だ。混乱しているようでもあり、歓喜しているようでもある。
 それでも単語は拾い上げることができる。特に"ここ"、"ケビン"、"アリッサ"、"T-ブラッド"、"時間がない"の四つの単語は繰り返し呟かれている。偶に"ジム"という名前が思い出したようにそこに加わる。
 腕のかゆみは気障りなほどに悪化していた。ゾンビに引っかかれた場所だということが気にかかる。
 ――時間がない。
 ヨーコの独り言は、深紅自身にも向けられている気がしてならなかった。
 本当に――。
 深紅は皮肉気に口を歪めた。本当に、己の人生はひとつも思い通りにならない。悪いことだけが積み重なっていく。
「探してって言ってもな。具体的にどんなものか分からねえもんな。ここのどこかにあるもんなのか? ゾンビ化させるウイルスに感染した奴の血ってことならゾンビ自体も当てはまるけど、それならとっくにヨーコさんそう言ってるはずだろうし」
 圭一は腕組みしながら首をひねった。
 "T-ブラッド"が具体的に何なのか、ヨーコ自身から聞いていなかった。圭一の言うとおり、ウイルスに感染した者の血でよければ深紅のものでも代用できるはずだ。
 メモには"サンプルを受け取る"とあった。きっと、何か特別なものなのだ。
 しかし、それが分からない。ヨーコはといえば、急かすばかりで要領を得ない。
 焦燥ばかりが募り、不安が胸を締め付けていく。
 電子音が鳴り、エレベーターが停まる。開いた扉から伸びるライトの中に動くものはない。
 それでも、圭一はいつでも振り下ろせるようにバットを構えてゆっくりと歩き出した。
 成長期特有の華奢な背中を見つめながら、深紅は素朴な疑問を投げかけた。
 
「……圭一さんは、ヨーコさんのこと信じてるんだね」
 圭一は立ち止まって、深紅を顧みた。
「勿論。俺、雛咲さんを信じてるからな。だから、ヨーコさんのことも信じられるよ」
 
 事もなげに、むしろ何故問われたのか分からないといった表情で圭一は答えた。
 その簡潔さに深紅は苦笑を浮かべた。
「何を根拠に? 居るかどうか確かめられないものを、どうやって信じられるの? 私が嘘を言っているっていう方が現実的でしょう?」

14 :
 意地の悪い問い掛けだと、深紅は認めた。
 圭一は事あるごとに"信じる"ことを強調してきた。その言葉に、彼がこれ以上ない拘りがあることは容易に想像がつく。
 ただ、だからこそ訊いてみたかったのかもしれない。兄以外の誰とも分かち合うことのできなかった秘密を抱えてきたからこそ、"信じてもらう"ことへの抵抗があった。
 圭一はドアノブに手を掛けながら頭を振った。
「根拠なんて、人を信じる理由にならないよ。どんなに情報を揃えたって確信にはならないだろ」
 圭一が慎重に扉を開く。深紅は隙間に懐中電灯を差し込んだ。エントランスホールは、変わらぬ静寂に包まれている。
 ふうと、圭一が息を吐いた。
「……根拠なんてさ、結局自分を納得させるだけの都合のいい材料でしかないんだ。その人を自分が本当に信じたいかどうかなんだよ。大事なことはさ」
「それって、とても危ないことのように思えるんだけど。悪い人に会ったら格好の餌食だよ」
「かもね。でもさ、信じるってそういうリスクも呑み込んじまうことだろ。騙されることはあるかもしれない。だけど、例え騙されても許すって覚悟を決めていればそんなのは全然怖くないんだ。
 そんなことよりも、信じなかったことで大切なものを無くしちまうことの方が、俺は怖いな」
「………………」
 二つの足音がホールに響く。忍び足を意識しても、嘲るように靴は床を鳴り響かせた。 
「新堂さんはさ、まだそういう覚悟はできないんだと思う。リーダーの責任があるし、俺と違って慎重だし。だけど、もう少し時間をおいたら分かってくれる。なんせ、新堂さんは会ったばっかの俺のこと信じてくれてんだぜ?
 お人よしには変わりねえよな。気長に待とうぜ。なんとかなる。どんなことでもさ」
 圭一が、人を惹き付けるあの笑顔を浮かべているのが分かる。
 望んでいた答えではなかったが、だがそれでも心を縛っていた枷が幾つか消えていく。
 信じるに値しないものを信じる。もしかしたら、それが本当に信じるということなのかもしれない。
 希望もまた、同じものだ。まず、なんとかなると己が信じなければ。
 これからの人生も――。
 孤独も――。
 今の深紅を取り巻く状況の全ても――なんとかなる。
「ありがとう」
 自然と口に出た言葉だが、少しばかり気恥ずかしかった。圭一も照れたように笑った。
「それに、人に言えない秘密って分かるしさ。ずっと秘密にしておく辛さも、話した時の怖さも」
 ふと、ヨーコが文字通り流れるようにしてホールの奥、階段の下にある扉の向こうに消えていった。
 突然走り出した深紅に、圭一が戸惑いの声を上げた。
 ヨーコのことを告げながら、勢いよく扉を開ける。通路に、ばちばちと何かが弾ける音が響いていた。
 ライトで周囲を照らすと、"危険"と書かれた柵の中に大きな機械が見えた。その傍には、裏口にしては立派な扉がある。反対側の奥には白いペンキで"C−3"と記されたシャッターがあった。
 ヨーコはそのシャッターの傍らに立っていた。
 付近に火の粉が舞っている。深紅はヨーコに走り寄った。
 ヨーコは一点を見つめていた。釣られて、深紅はライトをそちらへ向けた。
 切れた配線が蛇のように垂れ下がり、揺れながら火花を散らしている。これが異音の正体か。

15 :

「あっぶねえなあ。そこのスイッチで悪戯されちまうじゃんか」
 圭一は壁にあるスイッチにちょんとつついて見せた。
 深紅はヨーコに視線で問い掛けた。ヨーコは深紅に向けて、同じと一言告げた。大分落ち着きを取り戻してきたようだ。
 この建物なのだという。仲間と共に特効薬の材料を求めて歩き回っていたのだと、彼女は告げた。
 改めて"T-ブラッド"のことを問おうとしたとき、遠雷のような重低音が校舎を震わせた。音は段々と、建物と鳴動するように大きくなっていく。
「ヘリコプターかな、これ――」
 圭一がつぶやいた。
 と、大きな吼え声が上がった。それと共に、どこか軽妙な炸裂音が立て続けに響く。ほんのすぐ近くだ。
 一旦外へと出て行ったヨーコが、戻ってくるなり逃げてと叫んだ。しかし、それを圭一に告げることはできなかった。建物を轟音が揺るがしたからだ。天井から埃や塵がぱらぱらと落ちてくる。
 重い何かが降ってきて、校舎の屋根を突き破った。そんな噪音と衝撃だった。
 窓ガラスを影が横切ったような気がした。重い何かが外壁へとぶつかって拉げる鈍い音が耳朶を打つ。銃声と破壊音が交錯し、調べの如く闇に踊った。
 外で光が瞬き、窓ガラスを貫いた。深紅の頬を灼熱を帯びた何かが掠めていく。背後で、シャッターが甲高い金属音を奏でた。
「雛咲さん、無事か!?」
 壁に張り付くような態勢の圭一が叫んだ。頬に触れると、血が指先を濡らした。深紅は悲鳴を上げながら後ずさった。ぶつかったシャッターががちゃりと揺れる。
 穴の開いた窓ガラスを枠ごと突き破り、黒い何かが飛び込んできた。
 それは黒ずくめの衣装に身を包んだ男だった。顔はガスマスクで覆われていて、歳は分からない。手には拳銃が握られ、肩にも少し大きめの銃を下げている。
 男が床で一回転して立ち上がるのと同時に、裏口の扉が吹っ飛んだ。男が舌打ちする。
 吼え声を上げながら大男が現れる。黒ずくめの男の倍はある巨躯だが、それ以上に大男は異様な姿をしていた。
 右腕は欠損し、その替りとでもいうように肥大した左腕。
 その先端には五指の骨が穂先のように並んでいる。
 ライトに照らされる肌は黒く、顔の半分は火傷でどろどろに溶けて癒着していた。何よりも、上半身の一角を占める剥き出しの巨大な心臓が、大男が"人"ではないことを告げている。
 それでも陰部を覆うブーメランが、大男が"人間"であったことの印のようで嫌悪感が募った。
 照らし出された悍ましい姿に圭一も深紅も言葉を無くした。ヨーコの声は、もう絶叫となっていた。逃げるべきだ。そんなことは分かっている。だが、魅入られたかのごとく体が動かない。それでも無理に動かすと、三歩もいかずに足がもつれ、深紅は尻餅をついた。
 破裂音を轟かせて、大男が床を蹴りあげた。床板を踏み割るような響きが通路に反響する。
 黒ずくめの男が一歩後退して拳銃を構えた。
 銃声と焔が闇を裂く。
 飛び出した空薬莢が床に跳ね、大男の悲鳴が迸った。右目から血を噴かせた大男が、角口で僅かに蹈鞴を踏む。黒ずくめの男は踵を返すと、立ち上がる深紅の横を走り去った。
「こンのぉ!」

16 :

 圭一が自分を鼓舞するように声を上げながら、壁のスイッチを操作した。配線の断面から青い稲妻が迸り、圭一の後姿を包む。
「あれ――?」
 圭一が間の抜けた声を漏らした。圭一の背中からは、白い大爪が生えていた。白い先端は血と肉片に飾られ、ぬめりと光っている。
 稲妻は大男を貫かなかった――。
 悲鳴は出なかった。代わりに、逆流した胃酸が深紅の喉を焼いた。
 圭一がごぼごぼと嗽の様な音を零した。その身体がゆっくりと持ち上げられる。独眼が、無感情に圭一の身体を見つめている。痙攣する圭一の真下に、真紅の池が作られていく。
 深紅は廊下を走り出した。壊れた人形の様に吊り下げられる圭一の姿は、抉りこむようにして網膜に突き刺さっていた。
 残ったヨーコが圭一の名を叫んでいる。
 圭一は助からない――。
 自分でも驚くほど冷静に、そう判断を下していた。同時に、彼を見捨てたことも認める。
 無駄と知りつつも助けようとするのが筋だとも思う。
 しかし、それは出来ない――。
 この大学に圭一を導いたのは己だ。圭一を死なせたのは深紅自身だ。
 圭一に縋りつき、"仲間を助けようとする女"としてば、心は満足するかもしれない。
 だが、誠とジェニファーはどうなる。彼らはこの事態を知らない。
 真相を知れば、誠たちは深紅から離れていくだろう。しかし、そんなことは些細なものだ。
 彼らまで死なせてなるものか――。
 その一念が、己を引き裂いてやりたいほどの慚愧を抑え込んだ。
 まずは二人の安全を確かめるのだ。あの、建物を揺るがした轟音。それは誠たちのいる実験室の方向に思えてならなかった。
 肉が引き千切られる音と圭一の絶叫が深紅を追いかけてくる。それを振り切って、深紅は開けっ放しの扉に飛び込んだ。
 廊下にはゾンビたちが転がっていた。動く様子はない。どれもが脳漿を壁や床にぶちまけていた。前方から銃声と打撃音が聞こえてくる。
 角を二つ曲がると、待合室の薄明の中に影が躍っていた。
 影は寄ってくるゾンビの懐に躊躇なく踏み込むと、そのゾンビの踝を踏み抜いた。態勢を崩すゾンビの頭部を掴み、無造作に壁へと叩きつける。吐き気を覚えさせる、重い軋みが響いた。
 踏み抜いた足を軸に影は僅かに方向を変えると、肘鉄で別のゾンビを突き飛ばした。そのゾンビが数歩後退する僅かな時間に、影は半身をずらして三体目のゾンビの背後に回り込んで膝裏を蹴りつける。膝をついたゾンビの後頭部に踵が振り下ろされ、そのまま床に叩き潰される。
 脛骨を踏み折るその遺響の中で、影は軽妙に足を踏みかえて残ったゾンビに向き直った。息ひとつ乱さぬまま、右手に握られた拳銃が火を噴き、先ほど突き飛ばしたゾンビの頭の半分が爆ぜ跳ぶ――。
 瞬く間に三体のゾンビを無力化し、影がエントランスホールへの扉を蹴破った。
 
「待って! お願い、助けて! 私に、協力してください!」
 深紅は叫んだ。
 三階が、自分一人ではどうにもできない事態に陥っている可能性に思い当たったのだ。たとえば、二人が瓦礫に埋まっているとか――。
 倒れたゾンビを飛び越え、深紅は待合室を駆け抜けた。ヨーコはまだ追いついてこない。
 影――あの黒ずくめの男は足を止め、肩越しに深紅を見た。後方で、壁を壊すこもった音が鼓膜を揺らす。
 乱れる呼吸を鎮める深紅に、黒ずくめの男は首を傾げて見せた。
「三階にいたのは君たちか。エレベーターはあそこに?」

17 :
 低く落ち着いた声音で発せられたのは、しかし、深紅への返答ではなかった。手袋に包まれた指が奥を示す。
「そうですけれど……あの?」
「降りてきてどのぐらいになる?」
「ついさっき、です」
 多少戸惑いながら答える。破壊音は続いていた。あの巨人の足音と雄叫びが聞こえる。
 しばし考え込んでから、黒ずくめの男は頷いて見せた。
「ふむ。協力と言ったな。私の記憶が間違っていなければ、協力とは、互いの役割をこなすことで不可能を可能にすることだ。たしかに、奴から逃げ切るのは難しいだろう。あれは戮本能の塊のようなものだ。せるものはすべてさないと気が済まない。厄介な手合いだな」
「ええと……」
 黒ずくめの男は拳銃から一旦弾倉を引出し、すぐにそれを戻した。音はすぐ隣の部屋に到達していた。
「猶予はないな。私からも頼もう。私に協力して欲しい」
「それは……勿論です。とにかく、私のとも――」
「ありがとう」
 短い礼と重なるようにして銃声が響いた。深紅は先ほどとは比べようもない熱と衝撃を膝に感じた。突き抜けた衝撃に足を払われる形で深紅の身体は突然バランスを崩した。どうにか床に手をついて体を支える。
 からからという金属音が床を転がった。
 熱い液体が膝から流れ出て広がっていくのを感じる。
「時間を出来る限り稼いでくれ」
 子供に使いを頼むような気安さで言い残し、黒ずくめの男はエレベーターに続く扉へと消えて行った。
 深紅は呆然とその背中を見送った。立ち上がろうとし、苦痛に深紅は身を捩った。左膝を拳銃で撃ち抜かれたのだと、深紅は漸く理解した。理解した途端、耐え難い痛みが体の中を暴れまわった。
 ずしんという鈍い響きが二階から聞こえた。次いで、階段を駆け下りてくる足音が耳に入る。
 痛みに耐えながら、深紅は音の方へ顔を向けた。ライトが顔を照らし、深紅は目を細めた。
「し、新堂、さん?」
 降りてきたのは誠だった。ジェニファーの姿はない。誠は深紅を無感情な表情で一瞥すると、すぐに正面扉に向けて走り出した。
 激痛の合間を縫って、深紅は誠の背に向かって叫んだ。
 
「じ、ジェニファー、さんは!?」
「知るかよ!」
 誠は険悪に吐き捨てると、正面扉を押し開けた。ひんやりとした夜気が床を這って流れ込んでくる。
 ついにエントランスホールの壁が破られた。轟音の幕を掻き分け、材木も鉄骨も区別なく粉々にしてあの巨人が入ってくる。思わずそちらにライトを向けた誠が短く悲鳴を上げ、外へと駆け出した。
 深紅は呆然と誠のライトを見送った。腕の痒みが全身へと広がっていく――。
 横殴りの衝撃が深紅の身体を弾き飛ばした。成す術もなく深紅は宙を舞い、床の上で幾度となく叩きのめされるように転がる。その最中、巨人が正面扉を殴り壊す音が聞こえた。
 漸く止まって、深紅は咥内を満たす血に咽た。だが、うまく腹に力が入らない。しかし一方で、身体を苛んでいた痛みが、波が引くように消えていくのを感じた。
 目を開けると、ヨーコが立っていた。彼女は悲しげに深紅を見つめている。
 
 ――ジェニファーは……――
 ヨーコが口を開いた。彼女が何を言っているのか、深紅にはもう分からなかった。

18 :

 (四)
 三四は興奮に乱れようとする吐息を抑えながら、次のページに目を落とした。
 手にしているのは一冊のノートだ。
 それ自体は"アンブレラ"なる製薬企業の社員の研究メモのようなものだ。
 しかし、その書かれている内容に、三四はページをめくる手を止められなかった。
 本人にしか分からない箇条書きの羅列のため、書かれている内容全てに理解は及ばないが、それでも読み取れることは大いにある。
 大まかに言えば、この研究員、引いては"アンブレラ"は"T-ウイルス"なるウイルスの軍事利用を目的に据えて研究してきたらしい。
 このウイルスの特性は、一つに適応性の高さ、二つに感染率の高さが上げられるようだ。そして、副作用として齎させる生物の狂暴化。
 それだけならさりとて珍しいものではない。
 この特性はインフルエンザ・ウイルスやエボラウイルスに見られるものだし、何より副作用も含めれば狂犬病ウイルスが連想させられる。まさか植物を含む全生物に感染するなどということはあるまい。
 それらと際立って違うのは、生物の遺伝子構造を恣意的に組み替え、融合させるという特性だ。インフルエンザ・ウイルスの様に、容易に突然変異を起こす場合はある。
 しかし、感染した宿主の遺伝子情報に変異を起こすウイルスなど聞いたことがない。悔しいが、世紀の大発見だ。遺伝子組み換えのため、制限酵素やDNAリガーゼを用いる過程すらいらなくなるかもしれない。
 ともすれば"キメラ生物"の研究を容易にし、それこそ神話の中の"キマイラ"さえ実現可能となりうる。
 いや、実のところ、それは可能だったのだろう。
 隣の部屋に吊るされていた、鱗の生えた大型類人猿のような生物。それこそ、哺類と爬虫類の"キメラ"にしか見えない。残念ながら、あの死体に対する記述はないようだが。
 この研究員は"タイラント"なる人型兵器の開発に心血を注いでいたようだ。ネグロイドを素体にした試作品を、死を司る神"タナトス"の名を授け、傑作と評している。
 しかし、現代のフランケンシュタインの理念は雇用主とは相容れないものであったようだ。企業は量産化を求め、彼は"タナトス"を唯一無二の存在にしようとした。
 彼にとって、量産化は考えられないほどに無粋で愚昧なことだったらしい。そこに至る筆跡の乱れから、綴られた痛罵以上に企業への失望が垣間見えた。
 それから彼は、ここの大学職員を利用してウイルスの特効薬を作ろうとしたようだ。その薬を作るための材料の一つが"タナトス"の血液であるとは皮肉なことだが。
 あるいは、それすら想定していたことなのか。
 ポール・バーグによって初の遺伝子組み換え実験が行われて十年ばかりだというのに、この企業による技術の進展には薄ら寒ささえ感じられる。
 いや、"十年"ではないのかもしれない。
 今現在を、レオンは"一九九八年"と言っていた。それをそのまま信じるわけではないが、このウイルスが発見されて二十年近く経過したのだとすれば、まだあり得る未来のように思う。所詮、可能性の海の彼方の話でしかないが。
 懐中電灯の光のみで読むのに少し疲れ、三四はノートから顔を上げた。
 この部屋は多目的ホールか何かなのだろう。汚れすぎていて分かりづらいが、ホワイトボードのようなものが確認できる。三四の前にある机の上には壊れた複数の小型モニターに、プロジェクターもあった。
 しかし、大きさの割に風景な内装で、居心地はあまりよくない。もう呑み込んだはずの過去を――あの児童養護施設の風景が重なる。三四は身じろぎして、マントを引き寄せて体に纏わりつけた。
 机の前には初老の男性が倒れていた。おそらくは、彼がこの手帳の持ち主だろう。そうでなければ、ただの覗き趣味の男か。
 アサルトライフルを傍らに置き、レオンはその男の死体を念入りに調べている。調べることで、どうにか現実感を取り戻そうとしているように見えた。もしくは、警察官の本分に徹することで平静を保っているのか。
 大学の事務室で目にした、死んでいるはずの状態で生きている人間たち。少し前に封切られたアメリカ映画の宣伝そのままの姿で、彼らはいた。レオンも同じことを考えたようで、彼らを"ゾンビ"と呼んだ。
 言葉による制止も聞かず、熱に浮かされたような足取りで近寄ってくる彼らの前から逃げ出したのがつい二時間ほど前か。死人憑きか、はたまた新手の感染症か。

19 :
 最近特定された、人バクテリア――ビブリオ・バルニフィカスという線もなくはない。しかし、組織が壊死しているのであれば歩けるはずがない。ということは、壊死しているのは表皮や脂肪だけなのか。
 三四は小さく吐息を吐いた。自分の知識だけでは、見たものの答えを見つけようにもピースが足りなすぎる。
 この大学は"ラクーンシティ"なる都市にあるものと同じ名前であるらしい。レオン自身は実際に目にしたことはないようだが、もし仮に"ラクーンシティ"と同じものだとしたら――腹立たしいことだが、好奇心が疼くのも確かだ。
 常識の範囲で考えれば、知らない内に海外旅行などできるはずがない。確実な記憶に依れば、三四は入江診療所で眠りに落ちている。三四自身はそれから朝まで入江診療所から一歩も出ていないはずなのだ。
(身体は今も入江診療所にある?)
 ならば、これは夢か。
 現実にはありえない、悪夢のような風景。だが、夢の風景とて何処かで見たことがあるものなのだ。本当に見たことがないものを人は作り出せない。
 もし、複数の夢が融合したとすれば、それはやはり悪夢のような風景を形作るに違いない。色を重ねれば、行き着く果ては澱んだ黒だ。
 そうでなければ、これは本当に――祟りなのか。
 三四の視線に気づいたのか、レオンは調査の手を止めて顔を上げた。いや、とうに調査自体は終わっていて、三四が読み終わるのを待っていたのかもしれない。
 成果を尋ねてくる彼に情報を掻い摘んで伝える。レオンは苦笑しながら頭を抱えた。
「そいつはもう非主流科学(フリンジ・サイエンス)だよ。常軌を逸している。スカリーも真っ青だ」
「何か主流で、何が非主流なのか。その線引きをすることは不可能なのよ。何が正しくて、何が狂っているのかもね」
「……じゃあ、時速88マイルで走ればタイムスリップ出来るって考えも馬鹿にできないな」
「随分とお手軽な時間旅行ね。その突飛な発想もジャンクじゃないわ。立証さえできれば」
 鼻で笑ってから、三四はノートに目を落とした。だが、レオンの呼びかけに遮られた。
「……時間っていうのは戻れないものなのか。全部リセットして、やり直せないものかな」
 随分と幼稚な問いかけをするものだと、三四は内心苦笑した。
 戻れないからこそ、人は必死に生きるのではないか。他を食いつぶし、懸命に己の価値を、場所を求めていくのではないか。
 加えて、やり直しはこれまで自分の時間に関わってきたもの全てを否定することにも繋がる。それはその時を生きたものに対する最大の冒涜だ。ましてや、祖父の存在を忘れることなど出来ようはずがない。
 忌まわしい記憶もすべて、大切な自分の歴史の一部だ。後悔することと、否定することは全く違うものだ。やり直しの利く人生などに価値はないし、あってはならない。
 答えないでいると、レオンは構わず続けた。
「俺がもっとうまく立ち回りさえすれば、あの二人を死なせずに済んだはずなんだ」
「……残酷ねえ。またその二人に死を味あわせるなんて」
 軽く嘲笑してやると、レオンは苦々しく三四を見やった。
「……今度は違う結果になるかもしれないだろ。少なくとも、どちらかは助けられたかもしれない」
「そうしたら、今度はその救えなかった方のことで悩むんでしょう? どうあっても、人は死ぬのよ。レオンくん。それにね、二人はもう生きてはいない。これはね、絶対に変わらないことよ」
「首尾一貫の法則ってやつだな。……そういう、逃れられない運命だったって納得するしかないってことかよ。俺には……小さい女の子も救えないって」
 レオンは自虐的な、泣き顔とも取れる表情で嗤った。聞いたことのない法則だったが、それを訊くのは止める。
 見ず知らずの男と少女のことでここまで気を病むとは、甚だしいまでのお人よしだ。引いては、彼がそれなりに幸せな人生を歩んできた証拠でもある。
 苦労知らずの坊やが、初めて壁にぶちあたった。そんなところなのだろう。時がたてば、過去を彩る傷の一つでしかなくなる。
 どうにもならないことなど、どこにだって溢れている。それでも、どうにか折り合いをつけていかなければ生きていけない。
 三四は肩を竦めた。

20 :

「運命なんて、逃げる口実にするには少し大仰すぎるわね。どうしても逃れられないなら、それは天災と一緒よ。意味を持たない単なる事象。そういうのは運命とは言わないんじゃない? むしろ、人が逃げたくなくて、立ち向かっていくものを運命って呼ぶんじゃないかしら」
「手厳しいね。なるほど、運命はカードを混ぜるだけ……か」
「ええ。勝負するのは自分自身。私なら、逃げないわねえ」
「……勝負するだけじゃ駄目だ。勝負するからには、勝たなきゃな」
 レオンは言い聞かせるように力強く頷いた。
 勝手に自己完結して立ち直ってしまったらしい。男とはこうまで単純なものかと、三四は呆れた。 
 だが、決して不愉快ではない。レオンの、真っ直ぐで力強い瞳には見覚えがあった。
 そうかと、三四は胸中で呟いた。自らの手でした男の幻影が一瞬映り込んだ気がした。郷愁に近いものが胸を突く。
 悲願を達成したはずなのに拭えなかった、己の中の虚ろ。
 富竹ジロウを失ってしまったことを己は悔いている。
 認めたくはなかったが、気づいてしまった以上、それは無駄なことだった。
 諦めを吐息に混ぜ、三四はノートを仕舞った。もう、読む気分ではなくなってしまった。
「レオンくん。そろそろ、地下に行ってみない?」
 髪を指先で弄りつつ告げる。レオンは頷きかけて、ふと動きを止めた。その理由はすぐに分かった。
 音だ。ヘリコプターのローターが回る、独特の重低音。それが段々と近づいてくる。
 しかし、窓ガラスから覗く夜空にはヘリコプターの姿はどこにもない。耳を塞ぎたくなるほどの大きさになっても、それは変わらなかった。
 銃声が聞こえた。そして、それを掻き消すように轟音と衝撃が建物を貫いた。
 三四は机をしっかりと掴んで身体を支えた。
 似たような態勢で、レオンが何事かと声を上げる。ローター音はいつの間にか前触れもなく消えていた。
 そして――医療用カーテンの向こうから悲鳴が聞こえた。
 この部屋で手に入れた拳銃を引き抜き、レオンが声のした方へ飛び出した。運命と立ち向かう絶好の機会とでも思ったのだろう。悲鳴を聞くと興奮する性癖だとしたら少し面白いが。
 確実なのは、他にまともな人間がいたということだ。三四も拳銃を握ってから、レオンに続いてカーテンを捲った。
 今度は情けない、男の裏返った悲鳴が聞こえてきた。
 同時にレオンが仰け反る。バットでカーテンを掻き分けながら、少年が飛び出してきたからだ。高校生だろうか。白いワイシャツに黒い学生ズボン姿だ。顔は青ざめ、まるで死人のようだ。滂沱のような汗が額に光っている。
「人しめ」
 少年はレオンを見るなり、目を見開いてそう呟いた。そしてレオンの制止も聞かず、そのまま脇を駆け抜けていく。アサルトライフルの持ち主が簡易ベットに横たわっているので、それで勘違いしたのかもしれない。
 少年が出てきた方向から、女性の悲鳴が聞こえた。困惑の色を消し、レオンは駆け寄ってドアを開けた。彼の懐中電灯が部屋の中を照らす。
 映し出されたのは、天井に大穴を空けて、他にも大幅に見た目を変えた実験室だ。
 粉塵の舞う室内には二つの人影があった。一つは、赤いハーフコートにロングヘアーの少女。歳は、園崎魅音とそう変わらないだろう。ゲルマン系だろうか。身震いするほどに整った容姿だった。
 そして、もう一つは――。
 銃声の響く中、レオンが息を呑んだのが分かる。
 二メートルを優に超す禿頭の大男がそこにはいた。巨体を踝まですっぽりと覆い隠すトレンチコートを纏い、肌は岸壁のような灰色だ。それだけならまだ奇妙の一言で済むかもしれない。
 しかし、目を見た瞬間に違うと知れた。水銀を流し込んだように底光りする双眸は何の感情も込められてなかった。
 人間にそっくりで、人間ではない――それは、怪物だ。

21 :

「君! こっちだ!」
 レオンが少女に向かって叫んだ。少女はレオンの声に素早く反応すると、こちらへと走ってくる。
 大男は黙して、少女の逃走を見送った。視線を動かし、レオンと三四に向き直った。大男は、ゆっくりと足を踏み出した。
「おい、止まれ! 警察だ。両手を頭の上で組んで、ゆっくり後ろを向け!」
 少女を背中に庇い、レオンが銃を構える。しかし、大男は逡巡する様子も見せずにこちらへと接近する。
 レオンが舌打ちし、コートに覆われた膝のあたりに向けて発砲した。一瞬の閃光が、舞い散る塵に煌めいた。
 しかし、銃弾はコートの表面にめり込んだだけだ。続けて三発銃声が上がるが、大男を抑止する役には立たなかった。胸への発砲も同様だ。潰れた弾丸が床に落ち、虚しい響きを残す。
「……ターミネーターかよ、くそ」
「レオンくん、一旦引きましょう。向こうからでも降りられるわ」
「……そうだな。君、走れるか?」
 少女が頷く。顔は恐怖で強張っているが、見た目に反して胆力は中々のものらしい。
 少しでも時間稼ぎをしようというのだろう。レオンが扉を閉めるのを音で確認した。
 三四は多目的ホールに戻り、奥の扉に手を掛けた。背後で、付いてきた少女が小さく悲鳴を上げた。死体に驚いたようだ。
 気にせず、三四は進んだ。壁の反対側から、実験室の扉が砕かれた音が聞こえた。
 三つの足音がグレーOの上を転がっていく。梯子を下り、開けっ放しの扉を潜る。学長室だろうか。厚みのある絨毯と大ぶりの調度品、壁には肖像画らしき額縁が複数並んでいた。
 一階からは、壁を穿つような音と振動が床を震わせていた。
「この先の安全を確かめてくる。少し待っててくれ」
 告げて、レオンが部屋を出て行った。予想が正しければ、この先はゾンビがいた通路に繋がるはずだ。
「――マコトは……アジア系の男性が、そっちに、来ません、でしたか?」
 肩を激しく上下させながら、初めて少女が言葉を発した。マコトとは、先ほどの少年のことだろう。
 三四は彼女に微笑んで見せた。
「その子なら、さっさと逃げて行ったわよ。ご愁傷様。ババを押し付けられちゃったみたいねえ」
 少女は、そうですかと呟いた。傷ついたようだが、歳に似合わない諦観めいた覚悟が顔に浮かんでいる。
 ババを押し付けられたのは、むしろこちらかもしれないと胸中で付け足した。
 これでは、この大学を調査するというわけにも行かなくなってしまった。
 “ゾンビ”だけでなく、あんな怪物までいることも判明してしまったし、何よりこの女の子を放ってまでレオンが調査を続行するようにも思えない。
 かといって、彼と別れて拳銃一挺で動く気にもならない。己は絶対に脱出しなくてはならないのだから。
 三四は小さく溜息を漏らした。
 レオンが戻ってきた。安全だという彼の言葉を否定するように、銃声が響く。上から鉄が拉げる音が聞こえた。ついで、重い物をコンクリートの床が受け止めた響きが足元に伝わる。
 あの大男だ。グレーOを叩き壊したのだろう。しつこいものだ。少女の美貌に魅せられでもしたか。
 理由はどうあれ、それを考える時間はない。
 三四たちは応接間らしき部屋を抜け、通路に出た。あの少年の仕業だろうか。通路に居たゾンビは、頭を砕かれて床に倒れていた。
 それを踏み越え、角を曲がる。大きな破砕音が、エントランスホールへ続く扉の先から響いた。
 ホールに出た。先の衝撃で砕けたのだろうか。廻廊の窓ガラスの穴から、正門の方へと動く懐中電灯の光が見えた。同時に、大きな吼え声も聞こえる。光がふっと掻き消えた。
 ひとつ溜息を吐いて、三四はレオンと少女の後を追った。

22 :

「外は危険みたいよ。一旦地下に行きましょう。あの大きな彼、エレベーターが使えるほど頭がいいようには見えないわ」
 特に同意は返ってこなかったが、異論があったわけでもないらしい。
 正面階段を下りて、レオンの足取りはエレベーターに続く管理部屋へと向かった。
 微かな呻き声と、ずりずりと何かが這いずっている音を耳が拾った。
 三四はそちらへと懐中電灯を向けた。受付カウンターの前に、高校生ぐらいの女の子が腹這いになっていた。日本人のようだ。女の子はライトの中で虚ろな表情を浮かべ、呆けたように口を開けている。
 血だらけだった床は、真新しい真紅で塗り直されていた。左腕は付け根から深く大きく抉れ、皮と腱だけでぶら下がっている状態だ。重度の傷を負っているのは明らかだ。まともに動くこともできないはずだ。
 しかし、女の子は残った右腕を使って、能面のような表情のまま三四たちの方へとにじり寄ってくる。割けた腹腔から飛び出した腸を気に留める様子もない。
「ミク……――」
 少女が息を詰まらせた。
 二階の壁が打ち破られる音が響いた。女の子の背後で、重々しい響きを立てて大男が降り立つ。纏ったコートの裾が、ばさりと音を立てて翼の様に翻った。
 立ち尽くす少女の手を引くレオンと共に、三四は先を急いだ。
 エレベーターの前に辿り着き、ボタンを押す。苛々するほどゆっくりと、箱が上がってくる。背後の壁が殴り壊され、通路の奥にあの大男が姿を見せた。
 扉が開くと同時に入り込み、地下一階へのボタンを押す。大男は、もう扉の前まで迫ってきていた。
 扉が閉まり、軋みを上げながらエレベーターは降下を始めた。
 少女は耐えるように歯を食いしばっていた。彼女の鼻を啜る音が場を占めた。
 レオンが何か励まそうと手を上げた。が、結局諦めたようだ。指が力なく宙を泳いだ。
 降下が停まった。ちんという音を立てて、扉が開く。
 レオンが三四を見やってから、少女にも目を馳せた。静かに、しかし力を込めて呟いた。
「俺が君たちを守るよ。絶対にだ。今度は、間違えない」
 外に出ると、そこは壁に剥き出しのパイプが血管の様に複雑に入り組んだ空間であった。無機質な光が辺りを照らしている。地下は照明が生きているらしい。
 辺りに反響する低い唸りは、あたかも獣の息遣いのようだ。
 学び舎の施設には似つわしくない光景だった。
 背後でエレベーターの扉が閉まろうとする。と、その向こうで金属の甲高い悲鳴が上がった。閉まりかけた扉の隙間から太い指が覗いていた。大きな軋みを上げながら、エレベーターの扉がこじ開けられていく。
 三四たちは奥へと一直線に続く長い道を走り出した。
 やがて――大きな足音が響いた。

23 :
 (五)
 大きな物音に、比沙子は顔を上げた。
 物思いにふける内に微睡んでしまったらしい。電車の椅子から腰を浮かす。
 結局、この数時間は無駄に過ぎて行った。
 この電車の傍にある機械で何かを操作するらしいことまでは分かった。機械には鍵穴があった。この機械を使うには、車の様に鍵を差し込む必要があるのだ。
 しかしながら、それはどこにも見当たらなかった。
 手詰まりとなり、比沙子は唯一外気に晒されているこの場所に戻ってきてしまっていた。
 先ほど響いたのは、ぐちゃりと、水の入った風船が潰れるような音だ。
 電車の外に出てみようか。漸く訪れた変化に、比沙子は自問する。
 がん、がんと、間を置いた音が段々と近づいてくる。金属を刃物で切り付けるような、甲走った音も混じる。音は――上から降ってくる。
 そう気づいたとき、大きな響きがすぐ外で上がり、比沙子の心臓は跳ね上がった。壁一枚を隔てて、人の様な、獣の様な、そんな吼え声が上がる。
 足音が遠ざかっていくのを待って、比沙子は電車の外に出た。
 ぱさと、髪に何かが落ちた。摘まみ上げて目の前に持ってくると、背面に気味の悪いイラストの描かれたトランプだった。
 それを捨て、足を踏み出した。底の薄い靴越しに、柔らかい感触が這い上がってくる。
 金属の床に、朱色が加わっていた。激しく潰れた肉片が辺りに散乱し、床へと張り付いている。今足の下にあるのも同じものだろう。確認したくないので無視したが。
 比沙子は一番大きな肉片に近づいた。それは血みどろの、人間の胴体だった。顔は完全に潰れている。背中には大きな足跡がくっきりと残っていた。押し出された内臓が、床の上で生々しく艶を帯びていた。
 それらは夏の朝に目にする、車に轢かれた蟇蛙を連想させた。
 体つきから男だと判別出来るが、歳などは分かりそうにない。少し離れた所に、へし折れたバットと粉々になった懐中電灯が転がっていた。
 惨状は一つの事実を比沙子に伝えた。
 ここには羽生蛇村とは違う、しかし同質かそれ以上の脅威が存在する。
 そして、恭也や村の人々が、この男と同じ末路を辿るかもしれないということも。
 比沙子は人の残骸から目を背け、出口に足を運んだ。足音は聞こえないが、代わりに何かを壊す音が流れてきていた。
 比沙子は大きく息を吸ってから、その音の正体を確かめるために目を閉じた。
 
 
【前原圭一@ひぐらしの鳴く頃に 死亡】
【雛咲深紅@零〜zero〜 死亡】※
【新堂誠@学校であった怖い話 死亡】
※厳密には死亡ではありませんが、深紅としての再起が不能であることから死亡扱いとしました。

24 :
【Dー3/地下研究所・地下1階・エレベーター前通路付近/一日目真夜中】
【鷹野三四@ひぐらしのなく頃に】
 [状態]:健康、自分を呼んだ者に対する強い怒りと憎悪、雛見沢症候群発症?
 [装備]:9mm拳銃(9/9)、懐中電灯
 [道具]:手提げバッグ(中身不明)、プラーガに関する資料、サイレントヒルから来た手紙、グレッグのノート
 [思考・状況]
 基本行動方針:野望の成就の為に、一刻も早くサイレントヒルから脱出する。手段は選ばない。
 0:T-103型から逃げる。
 1:プラーガの被験体(北条悟史)も探しておく。
 2:『あるもの』の効力とは……?
 ※手提げバッグにはまだ何か入っているようです。
 ※鷹野がレオンに伝えた情報がどの程度のものなのかは後続の書き手さんに一任します。
 ※グレッグのノートにはまだ情報が書かれているかもしれません。
【レオン・S・ケネディ@バイオハザード2】
 [状態]:打ち身、頭部に擦過傷、決意
 [装備]:ベレッタM92(10/15)、懐中電灯
 [道具]:ブローニングHP(装弾数5/13)、コルトM4A1(30/30)、コンバットナイフ、ライター、ポリスバッジ、シェリーのペンダント@バイオハザードシリーズ
 [思考・状況]
 基本行動方針:鷹野とジェニファーを守る
 1:T-103型から逃げる。
 2:人のいる場所を探して情報を集める。
 3:弱者は保護する。
 4:ラクーン市警に連絡をとって応援を要請する?
【ジェニファー・シンプソン@クロックタワー2】
 [状態]:健康、悲しみ
 [装備]:私服
 [道具]:なし
 [思考・状況]
 基本行動方針:ここが何処なのか知りたい
 1:レオンたちについていく
 2:安全な場所で二人から情報を得る
 3:ここは普通の街ではないみたい……
 4:ヘレン、心配してるかしら

25 :
【Dー3/地下研究所・???/一日目真夜中】
【ハンク@バイオハザード アンブレラ・クロニクルズ】
 [状態]:健康
 [装備]:USS制式特殊戦用ガスマスク、H&K MP5(0/30)、 H&K VP70(残弾10/18)、コンバットナイフ
 [道具]:MP5の弾倉(30/30)×3、コルトSAA(6/6)×2、無線機、G-ウィルスのサンプル、懐中電灯、地図
 [思考・状況]
 基本行動方針:この街を脱出し、サンプルを持ち帰る。
 1:地下研究所で通信機器を探す。
 2:現状では出来るだけ戦闘は回避する。
 3:アンブレラ社と連絡を取る。
 ※足跡の人物(ヘザー)を危険人物と認識しました。
 ※具体的にどこにいるかはお任せします。
【Dー3/研究所・地下4階・ターンテーブル付近/一日目真夜中】
【八尾比沙子@SIREN】
 [状態]:半不死身、健康、人格が変わったことによる混乱
 [装備]:無し
 [道具]:ルールのチラシ、サイレンサー
 [思考・状況]
 基本行動方針:須田恭也と前田知子の捜索。
 0:幻視を駆使して状況を把握する。
 1:須田恭也と前田知子がいるならば、探し出して保護する。
 2:建物(研究所地下)の調査、及び脱出。
 ※主人格での基本行動方針は「神が提示した『し合い』という『試練』を乗り越える」です。
※大学のエントランスホールに這いずりゾンビ化した深紅がいます。ラクーン大学裏口付近には寸断された圭一の残骸が、地下研究所のターンテーブルの床には転落死した誠の残骸が散らばっています。
※深紅はゾンビ化した状態であるため、現段階で浮遊霊等にはなれません。
※大学一階の裏口からエントランスホール、二階の学長室からバルコニーまでの壁がそれぞれ壊されています。また、実験室とエレベーターの天井には大きな穴があいています。
※上記の破壊痕はサイレン後の世界には影響がないかもしれません。
※大学の3階実験室に、丈夫な手提げ鞄(分厚い参考書と辞書、筆記用具入り)、ヨーコのリュックサック(ハンドガンの弾×20発、試薬生成メモ、ハリー・メイソンの日記@サイレントヒル3)が置かれています。また生成機にはV-ポイズン、P-ベースが設置されています。
※研究所地下は、ラクーンシティの地下研究所にエレベーターで直結しています。エレベーター前の通路は原作よりも長くなっているようです。
※ターンテーブルには、新堂の持ち物(学生証、ギャンブル・トランプ(男)、地図(ルールと名簿付き))が散乱しています。
※今回登場したT-103型はバイオハザード2に登場した個体です。G-ウイルスの回収を目的とし、その障害となるものは排除しようとします。
※ヨーコが今後どういう行動を取るのか。どうなったのかは後続の方にお任せします。
※ターンテーブルを動かすには専用の鍵が必要です。
※地上の穴の縁、及びターンテーブルそのものにコンソールが設置されています。

26 :11/12/19

・T-103型(通常形態)
形態:複数存在
外見:モスグリーンの防護コートを纏った大男。禿頭で、表皮は灰色。
武器:全身
能力:両腕を活かした肉弾戦、優れた自己再生能力。防弾・耐爆性能と暴走抑制のための防護コート。
攻撃力★★★★☆
生命力★★★★☆
敏捷性★★☆☆☆
行動パターン:受けた命令を実行するため、その障害となるものも徹底的に排除する。
備考:
"T-102型"のデータを元に作られたタイラントの発展型。
武器を扱えるほどではないが、命令に従えるだけの知性は有している。
コートを破壊されたり、生命の危機に瀕すると攻撃性の高いスーパータイラントへと移行する場合がある。
・タナトス(リミッター解除)
形態:唯一存在
外見:右腕が欠損し、左腕が巨大化し、手には鋭い爪が生えている。胸部の右側に心臓が露出している。黒い表皮はところどころケロイド状になっている。黒のアンダーを着用。
武器:全身
能力:左腕を使った振り回しや突進、跳躍してからの踏み潰し。高い自己再生能力。
攻撃力★★★★★
生命力★★★★☆
敏捷性★★★★☆
行動パターン:視界に入る生物を執拗に追い、戮する。
備考:
アンブレラ研究員グレッグ・ミューラーが黒人を素体に作り上げたタイラントの亜種。
既にリミッターの外れた状態であるため、防御力・再生能力は落ちているものの、身体能力・攻撃力は向上している。
T-ウイルスの特効薬"デイライト"の作成のために必要な"T-ブラッド"が体内に流れている。
弱点は剥き出しの心臓のほかに、"デイライト"を撃ち込まれると肉体を維持できなくなる模様。
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