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村上春樹風のショートショートを書くスレ


1 :2010/08/17(火)?2BP(791) 〜 最終レス :11/11/08
昨日、「風の歌を聴け」を読んで、とても気に入った。
なので、スレまで立ててしまう。
村上春樹風のさわやかで幻想的な作品を書きましょう。
書かれたショートショートには、自由に感想を書いてね。

2 :
  イソギンチャクからの手紙
「ねえ、わたしって、動物に例えると何だろう」
「イソギンチャクだな」
 そんな会話をしていた午後の休憩時間。風音は、頬をふくらました。
 しばらく、黙っている風音。
「なんだよ、イソギンチャクじゃ不満なのか」
「わたしがイソギンチャクなら、あなたは何なのよ。調子にのったら、怒る」
 どうやら、本気で機嫌を損ねたようだ。
「おれはクラゲだよ。クラゲが好きなんだ」
 それから、十ヵ月がたった。大学の試験があったり、未成年なのに飲み会をしたり、
一台五万円の自動車を買って乗りまわしたりして、いろいろなことをしていたけど、
風音ともちょくちょく会っていた。
 もじもじする風音に誘われ、彼女のアパートの部屋を訪れた。
緊張して、部屋の中に入ってみたおれは、
風音がクラゲを水槽に入れて飼っているのを知ったのだった。
「ねえ、このクラゲ、きれいでしょ」
 風音はもじもじしていった。
「うん。かなり、きれいだと思う」
 それから、おれは、クラゲがいかに偉大な生物であるかを
とうとうと語りはじめたのだった。クラゲはクジラより
大きくなることもあり、また、不老不死のクラゲも存在するのだ。
 それから、おれは彼女と寝た。彼女は、感激して泣いていた。
「うれしい」
 といっていた。
 そんな風音とは、それ以来、ぱったり会わなくなり、また十ヵ月がたった。
 風音が首を吊って死んだのを知ったのは、大学でのことだった。
「ゲババ、あなたに風音から手紙があるの」
 風音の友だちから、死ぬ前に書いたものであろう手紙を受けとり、
慌てて開く。そこには、たった一行で遺言が書いてあった。
「わたしは世界にいらないのだとわかりました。イソギンチャクより」
 バカやろう。大バカやろう。
 おれは拳を握りしめた。結局、彼氏であったはずのおれは、
彼女のことを何ひとつわかってなかったのだ。

3 :
  水舞い雑記
 水でできたドレスを着るきみ。
 いろんなところが、見えそうで見えない不思議なドレス。
「おれは、いじめとか、不平等とかが大嫌いなんだ」
「だって、あなたがいじめられてるじゃん」
 ぐうの音も出ない。
「いや、そうじゃない。おれより酷い目にあってるやつらがいるんだ。なんとかしたいんだ」
「どうするの」
「ただ、嫌うだけだけど」
「ふうん」
「内緒だぞ。絶対に内緒だ」
 おれは風音に念を押した。だが、風音は、ぽかんと知らん顔だ。
「でも、男子って、バカだよね。そうやって、男だけで争ってて、
女の子のことに気づかないんだから」
「そんなこというけど、例えば、ブランドものにきゃあきゃあいってる女や、
ジャニーズにきゃあきゃあいってる女なんて、
付き合ってもこちらのこと見てくれないんじゃないかと不安になる。
要するに、そんな女は、大嫌いだってことだ」
「うわあ、最悪。超ダサいよ、その考え」
「ダサくない。これが日本の真実なんだよ。バカとバカがすれちがいをつづけるのさ」
 風音の水のドレスが舞う。やっぱり、見えそうで、見えない。
「じゃあ、わたしとしよ。今日は大丈夫な日なの」
 なんという展開だろうか。ぼくは優しく彼女に手を伸ばした。
彼女の髪を触る。なでなでしてから、水でできたドレスを脱がそうとする。
水でできたドレスは脱げないけど、ぼくの体は、彼女の素肌に触れた。
このドレスの下は全裸なんだ。
 ぼくは急いで自分の服を全部脱ぐ。
 しばらくして、彼女はいった。
「終わってから聞く質問ですけど、わたしたちに愛はあったのでしょうか」
「だって、おまえ、初めてだったじゃんかよ」
「重要な問題なの。わたしって、あなたのことを好きなのかな?」
「その答えは、神さまが知っている」
「ええ、神さま頼り? すごく他人任せ」
「でも、嫌いじゃないだろ」
「うわ、最悪。嫌いじゃない程度の男に抱かれたくないわ」
「つまり、おれはきみのことが、いわせんな恥ずかしい」

4 :
  千年戦争
 宇宙人が月を盗んでいった頃、おれは風音と一緒に近所の滝にいた。
風音は、とても、感度の敏感な子で、世界の異変が起こるたびに苦悶の表情を見せた。
「ねえ、風音、これはいってはいけないことなのかもしれないけど、
もう人類は滅亡するんじゃないかな」
 ぼくの重いひとことに対して、風音はやはり苦痛を受けた顔をして答えた。
「ゲババは、宇宙人にされるつもりなの? あのひよわな宇宙人と戦っても勝てない?」
 風音のことばに、ぼくは大きく尊厳を傷つけられて答えた。
「宇宙人にだって、負けはしないさ。ぼくをあまくみるなよ」
 そして、二人は黙って滝の音を聞いた。どどどどどど、と心地よい音がする。
 次に、声を出したのは、ぼくの方だった。
「もし、本当に宇宙人がいるのならね。存在するものに弱点のないものは存在しないよ」
「でも、月は持ち去られたのよ。あれから、毒素の入った雨が降るでしょ。
あなた、それなのに、まだ宇宙人の存在を疑ってるの?」
「だって、見たことないもの」
「そう。そうなんだ」
 風音は、とても悲しい顔をしていた。ぼくは風音のために何かをしてあげたくて、
しかたない気持ちになった。風音が愛おしい。
「ねえ、もし、わたしが実は宇宙人と戦ってる志願兵の一人で、
いつ死ぬかもわからないのだとしたらどうする?」
 ぼくは、緊張して、呼吸ができなくなった。
「もし、わたしがもうすぐ、月を盗んだ宇宙人を追いかける遠征に出るのだとしたら、
どうする?」
 嘘だろ。それとも、本当か? 風音が世界の異変を苦痛として感じるのは、
志願兵として情報を集める手術を受けたからなのだろうか。
 ぼくに、そんなぼくに彼女に何をしてあげられるだろう。
 何も知らない男女の時間がむなしくすぎた。
 ぼくは、風音に、地球での思い出に、一晩、抱いてあげることにした。
「ねえ、これって恋愛?」
 風音は行為の最中に聞いてきたけれど、
「宇宙的な恋愛さ」
 などと、嘘をぼくはついた。
 空には月はない。傷だらけの彼女が帰ってきたのは、
それから七百十七年も後のことだ。

5 :
  風が嵐を呼ぶ
 世界が死んでいる。
 何ひとつ価値のあるものを見出せずに、むなしく時がすぎていく。
 きみはずいぶん昔に去ってしまった。
 それは、おれが死んでいるからだ。おれは死んでいる。ゾンビだ。
死んだまま動くゾンビだ。
「だからって、おれにはこれが限界だったんだよ」
 本当の限界を知らないおれがいった。
 まわりのせせらぎが嘲笑った。それはまるで、きみの声のようで。
「あなたのどこが限界を試したというの。研究もせず、鍛錬もせず、
批評も受けず、何を頑張ったというの。あなたは死ぬの。死んで、塵になれ」
「待て。待ってくれ。おれだって、それなりに頑張ったんじゃないか。
それを全部、見捨てるのかよ」
 すると、せせらぎが答えていった。
「あなたは世界の何も見えていない。心が読めなければ、真理も知らぬ。
宝の在り処も知らなければ、風も見えない」
「おれに、おれに、心を読ませてくれ。真理を教えてくれ。
宝の在り処を教えてくれ。せめて、せめて、風を教えてくれ」
 おれは必死に訴えた。
 せせらぎは困ったようだった。それで、
せせらぎはおれに風を教えてくれることになった。
「風を見よ」
「いうことはそれだけか」
 そして、せせらぎは去った。それはまるできみが去った時のことのようだった。
 おれは呆然として、道端に立ち尽くした。風を見るとは、どういうことだ。風とは何だ。
 風とは何だろうか。風とは、きみだ。きみは空気か。
いや、ちがう。空気の動きだ。風とは、空気の動きだ。
 風は、空気の動きだろうか。いや、まだちがう。
風は、活力をもった空気の動きだ。きみは活力をもった空気の動きだ。
 そうだ。重要なのは、活力なのだ。風のもつ生命力、そして、リズム。
 風は、生命力をもち、リズムを刻む空気の動きだ。
 これで、正解にしよう。
 風は、生命力をもち、リズムを刻む空気の動きだ。
きみは、生命力をもち、リズムを刻んでいたんだ。きみは、風だったんだね。
 風よ。今日も向かい風が吹いている。
 そして、おれはただ、遠くへ旅に出た。
 世界で、風が待っている。きみの行方が、わかるような気がした。

6 :
「風の歌を聴け」を読んで、翌日に書き上げた四作。
書かれた順番は、逆で、
「風が嵐を呼ぶ」「千年戦争」「水舞い雑記」「イソギンチャクからの手紙」
の順に書いた。だんだんよくなってると思う。
感想ほしい。

7 :
  アップルジュースの友人
 真夏の昼間に、ビリー・ジョエルの「ストレンジャー」をかける。
自宅にいても、どこかさすらいの旅をしている気分がするじゃないか。
 ぼくは孤独に一日をすごしているけど、飲み食いには困らない。
炒飯にアップルジュースをつけて、昼食を終わらせる。
 ぼくはカミュの「カリギュラ」が好きで、ちょうど、
ぼくの家を訪ねてきた女の子に、こんな命令を出してしまった。
「きみよ、月をとってまいれ」
 女の子は、ぼくと一緒に勉強をしに来た女子大生だったから、
突然、命令されて、戸惑ってしまった。
「陛下、わたしに月など、とれましょうか」
 女の子がいう。
「なに? ぼくの命令の聞けない配下など、いるわけがない。
きみが誠にぼくに忠誠を誓うのならば、きみは月をとってこれるはずだ」
「それで、月をもってきたら、どうするの?」
 女の子は冷静に答えた。
「え?」
 ぼくはちょっと及び腰になる。
「月なんてもってきたら、大きすぎて、この部屋に入らないんじゃないの?」
 女の子は冷静だ。
 それで、ぼくは、女の子の服を脱がせた。
「月が盗めないなら、きみを盗むしかない」
「わお」
 その晩は、とても素敵な夜だった。月は盗まれることなく、
女の子は、ぼくの命令に従った。
「ああ」
 女の子の小さな喘ぎ声が聞こえる。
 次の日の朝も、やっぱり、ぼくはビリー・ジョエルの「ストレンジャー」をかけるんだった。

8 :
  角頭攻めの女の子
「わたし、どうしたらいいかわからないの」
 風音はそういった。なにがわからないというのだろうか。
「わたし、毎日、何をしたらいいかわからないの」
 ああ、彼女はたぶん、軽い鬱病なんだ。
 ぼくは彼女の気晴らしになるように、彼女に将棋を教えることにした。
「将棋なんてわからないし、興味ないよ」
「いいから。これで、将棋好きのおじさんを口説き落とすんだよ。
美女のたしなみだよ。銀座の女は経済ニュースを読むらしいよ。
仕事好きなサラリーマンと付き合うためさ。将棋も同じだよ」
「ええ、どうすればいいの」
「まず、角の頭の歩を突くんだ。たぶん、おじさんが自分の角道を開けるから、
さっきの歩をさらに突くんだ。これでもうおじさんはメロメロさ」
 ぼくは、風音と将棋を指し、全部、負けてあげた。
彼女は、ちょっとは上機嫌だ。
「あげるよ、将棋版」
「ええ、いらないよ。女の子がもってたら、格好悪いんじゃないかな」
 それで、風音は帰っていった。
 それから、ぼくは別の女の子と付き合うようになり、風音とは疎遠だった。
ぼくは、その間、風音が何をしていたのか、まるで知らなかった。
 風音は、ただひたすら、家で眠っていたのだという。
 女の子にふられてしまい、ぼくは再び、風音に会いにいった。
「あれから、おじさんと将棋を指したよ。おじさん、すごい喜んでた」
 ぼくは満足だった。
「わたしの周りに十人くらいのおじさんが集まってた。わたし、
十連敗したんだよ。全部、負けたの。でも、おじさんはすごく喜んでた。
ねえ、これでよかったのかなあ」
「いいんだよ。きみはとびきりの美人だと思われたさ」
 そのおじさんと、きみは何の関係もなかったんだよね。
そんな心配をしてしまうのが、ぼくの悪い癖だった。
嫉妬しているのだ。すべての男に。

9 :
どこが村上春樹だ、という感じになってきた。
要は、おれの作品を読んでくれれば、それでいいのである。

10 :
  いないんだってば
「やあ、風音。今のぼくは宇宙人に操られているんだ」
 ぼくはとても胸がつまり、もどかしくなり、心臓がどくんどくんとなっていた。
 ぼくが宇宙人に操られているということは、ぼくの体を動かしているのは、
どこか遠くにいる宇宙人だということで、ぼくの体はぼく自身の意思によって動いていないのだ。
「宇宙人がね、きみのことを気に入ってるらしいんだ」
「え? なに?」
「宇宙人がね、きみのことを気に入っているぼくを気に入っているらしいんだ」
「まあ」
 ぼくは宇宙人に操られて、風音とちゅっちゅし合い、風音はそれを喜んで、
ぼくらはお互いに全裸になった。
 ぼくは宇宙人に操られているんだ。だから、宇宙人は風音と交尾するぼくの
心を観察しているはずだった。ぼくはみずから望んで風音と交尾しているのか、
それとも、宇宙人に操られて、交尾しているのか。胸が張り裂けそうだ。
 ぼくは風音が何を考えているのか、とても気になった。
風音はぼくを好きなのだろうか。それとも、風音も宇宙人に操られているのだろうか。
「風音、宇宙人がいなくなっても、ぼくと会ってくれるかい」
「それは、宇宙人によるんじゃないかな」
「風音はなぜ、ぼくと交尾をしたんだ。宇宙人の差し金かい?」
「それは教えるわけにはいかないの。わたしがわたしの意志で、
宇宙人に操られているあなたと交尾をしたのだとバレたら、
わたしは抵抗運動の過激派に蜂の巣にされちゃう。だから、
教えるわけにはいかないの。わたし、夜景を見るのは好きよ」
「ぼくは、ぼくの心は宇宙人によって操られてる。もはや、
自分で何を考えているのかもわからない。ぼくの意思は宇宙人の差し金で、
ぼくは宇宙人に操られて、きみを犯しに来たんだ。こんな交尾は、都会的といえるかい」
 裸の風音は少し考えたようだった。形のいいが揺れる。
「わたし、思うの。いつになったら、宇宙人なんていないことにあなたが気づくのかなって」

11 :
  都会的な森
「ここは都会的な森だね。すごく、いろんな植物が生えている。それにまぎれて、
動物たちがうごめいている。ぼくには、小さな音が絶え間なく聞こえるよ」
 そんなことをぼくがいったのは、大通りのコンビニの前だった。
「樹一本もなく、人工の住宅地がひしめいているわよ」
 風音がいった。
「家々は森の木のように、ぼくらは、森をさすらう獣のように」
「獣のようにどうするの」
「餌を探すのさ」
 それで、ぼくらはコンビニの中に入って、牛プリンを買った。
外に出て、軽く食事をとる。
「ねえ、ぼくの部屋に来ないかい」
「なんで」
「ぼくの部屋は、都会的な森の洞窟になってるんだ」
 それで、風音はぼくの部屋に来た。
「わたし、狼なのかな」
「きみは狼だよ。毛なみがすごくそろってる」
「で、ここはどこなの」
「都会的な森だよ。きみを誘いに来たんだ。森の獣のようにね」
「森の獣のようね」
 それで、ぼくらはをした。
「大丈夫かな。妊娠しちゃう」
「妊娠したら、毎日のようにしよう。最後はおろせばいいさ。
お金は払うよ」
 そして、ぼくらは毎日、ずっと肌と肌と合わせて、しつづけた。
人生の中で最高に幸せな時期だったと思う。

12 :
  最後の詩を埋める墓地
「きみはアンドロメダ星人だ。
 だから、詩人の手紙は届かない。
 墓守りは手紙を受けとると、詩人を打ち捨てて、手紙を埋めた。
 ここに死すべき命が眠る。
 ここは最後の詩を埋める墓地」
 風音が恥ずかしげもなく、教室で自作の詩を朗読していた。
ぼくは、それを楽しく聞き入っていた。他の数十人の観衆は、残念ながら、
詩を解さない。というか、発表という行為を歓迎しない。
だから、風音の詩を称える声は聞かれなかった。
 それで、唯一、風音の詩を褒めたぼくと、風音は付き合うようになった。
 二年間、付き合ったあと、風音はいった。
「わたしが好きなのは、あなたじゃないの」
 この二年間は拷問だったわ。まるで、ぼくにはそう聞こえた。
 そして、風音は首を吊って死んでしまった。
 ぼくは、風音に教えられて知っていた最後の詩を埋める墓地に行き、
故人の最後の詩を埋めた。
「わたしが好きなのは、あなたじゃないの」
 そう、その詩には書いてあった。

13 :
以上の9個の掌編の良いところを集めて、一作に凝縮しました。

14 :
  都会的な詩を埋める墓地
「ねえ、わたしって、動物に例えると何だろう」
「イソギンチャクだな」
 そんな会話をしていた午後の休憩時間。風音は、頬をふくらました。
 しばらく、黙っている風音。
「なんだよ、イソギンチャクじゃ不満なのか」
「わたしがイソギンチャクなら、あなたは何なのよ。調子にのったら、怒る」
 どうやら、本気で機嫌を損ねたようだ。
「おれはクラゲだよ。クラゲが好きなんだ」
「イソギンチャクにクラゲ、まるで、ここは水族館だね」
「いや、森だよ。ここは都会的な森さ」
 ぼくらは、ぼくの部屋に移動した。風音は裸になり、形のよいを揺らした。
「都会的な森で、わたしたちは獣のように」
「いいね。そう、ぼくらは獣のように」
「何をするの」
「餌を探すのさ」
 風音のがっかりした顔を見ながら、
ぼくは冷蔵庫から牛プリンをとりだした。
「ねえ、あなたって、アンドロメダ星人ね」
 風音がそんないじわるをいった。
「そうさ。地球は宇宙人に占領されたんだ。
ぼくは宇宙人に操られてるんだよ」

15 :
「まあ、宇宙人とは会話ができないわね」
「そんなことはない。きみ、宇宙人の命令だ。月を盗んで来い」
「無理よ」
「不可能を可能にするのが、忠義というものだ」
 それ以来、風音は、ぼくとするのをやめてしまった。
すべては月と宇宙人のせいだ。
「終わってから聞きますけど、わたしたちに愛はあったのでしょうか」
 ぼくは答えに窮した。愛など、軽々しく口にすることばではない。
「きみはアンドロメダ星人だ。
 だから、詩人の手紙は届かない。
 墓守りは手紙を受けとると、詩人を打ち捨てて、手紙を埋めた。
 ここに死すべき命が眠る。
 ここは最後の詩を埋める墓地」
 風音が自作の詩を朗読した。ああ、ぼくらは何度も、
最後の詩を埋める墓地に一緒に出かけている。
「これがわたしの最後の詩」
 一枚の紙を手渡して、風音は、ぼくの前から去った。紙には、
「わたしが好きだったのは、あなたじゃないの」
 と書いてあった。この二年間は拷問でした。そう、いわれてる気がした。
 しばらくして、風音が自したという報を聞いた。
 ぼくとの二年間は拷問だったのか。
 ぼくは、最後の詩を埋める墓地に、風音の詩を埋めにいった。
「わたしが好きだったのは、あなたじゃないの」
 そんなことばが、未来永劫に残されるのだ。受けとった相手がぼくだということを記しながら。

16 :
「もう少し本を読むべきよ。」
と208が言った。
「せめて3部作くらいわね」
と209が言った。

17 :
「高校生乙」
と208が言った。
「夏休み乙」
と209が言った。

18 :
「ここでこうしていることは」庸子は言った。
「死んでいるのと大して変わりはないわ」
庸子は深いため息をついて地下鉄の窓の外を見る。
「何か見えるのかい?」僕は庸子の耳元で小さな声を出した。庸子の耳はミルクの匂いがする。
「私の顔よ」
闇が無いと自分の姿が見えない。
庸子が最後に言った言葉だ。

19 :
地下鉄には毎日乗る。
僕は窓の外を時々思い出したように見ることがある。
見えるのは自分の顔だ。
「地下鉄の匂い」、フランスの俳優は昔映画の中でそう言った。
東京の地下鉄には独特の匂いがある。
僕はよく地下鉄の中で目を瞑る。
庸子の耳の匂いを思い出す為だ。

20 :
面白いよ

21 :
やれやれ

22 :
そして僕はゆっくりと射精した。 特別な射精だった。
その射精はとてもゆっくりとおこなわれ、いつまでも続いた。
いつまでも終わらない。よっぱらったみすぼらしい中年男がする昔の自慢話のように
いつまでも続いた。そのうち精液は彼女の体内におさまりきれずにあふれてきた
彼女の体内でうけとめられるべきっだのかもしれないのに
そして精液は部屋中に充満し僕も彼女をののみこみ、なおもその体積をふやしつづけ
街へと向かった。

23 :
あれから三ヶ月がたった。
3:11。
でも、僕にはピンとこない。東京では何も変わらない生活の歌が聞こえているからか?
カメラマンの仕事も、代官山のマンションも、ブルーのアストンマーチンも、何一つ以前のままだ。
「ねえ?放射能とか私たち、どうなるの?」と21のモデルでガールフレンドが聞いてきた。
「何も変わらないよ。そんなに簡単に世界は崩壊しないものさ。」と39の僕はタバコを吸いながらつぶやいた。
「そうかしら?私、何だかこわい。島根から東京に来た時、まるでディズニーランドみたいだと思ってたの。凄く毎日が楽しかった。
でも、あの事故で周りを囲んでる書割みたいなの?そういうのが見えちゃったのよね。今まで全然意識してなかったんだけど。
ず〜っと街が続いてるとばっか思ってた。でも、そういう書割があったのね。そんでそこに穴が開いてたのよ。そこから福島の妙に暗い風景が見えたの。
原発はもちろんだけど、何か田舎を思い出しそうなイヤな感じの臭いもしたわ。そしたらこの東京という楽しい街が急にそうでもなくなってきたの。」
「なるほどね・・・でも、そう簡単に東京は色あせたりはしないと思うよ。本物のディズニーランドも再開したろ?また、元の素敵な街に戻るよ、きっとね。」
「そうね・・・じゃ、しようよ。」
そして、僕たちは夜明けまでした。

24 :
>>1
とりあえず『千年戦争』が好きだ。

25 :
僕はリッキー・ネルソンの「ハロー・メリー・ルウ」を唄うように、直子と出会った。
風邪をこじらせた飼い犬が1973年にステイシービルからあやまって落ちた日だ。
そのとき僕は、23歳だった。
「ワタナベ君でしょ?」と直子は言った。「脱いで」
やれやれ、と僕は思った。そして、とてもゆっくりと僕は路上で服を脱ぎはじめた。
「ねえ、ワタナベ君」と直子は言った。「路上で服を脱ぐのは、どんな気持ち?」
「悪くないな」と僕は言った。「悪くない」
繰り返すようだが、そのとき僕は23歳だった。

26 :
そう僕は23歳だった。 もちろん僕の性器は激しくしていた。
僕の性器を手にとって、直子は言った。
「こんなに硬くしているのに、先端の包皮はあまっているのね。
あなたはこの包皮をなくしてはいけないわ。そこなわれてはいけない。
虫垂炎で盲腸をうしなった私のように。私はもうもとには戻れないの。」
直子の言葉が全部終わらないうちに、僕は射精した。

27 :
について語りたい。
昔の話だ。耳の大きな女の子と山火事みたいなタイミングでをしていた時の事だ。
「ねえ、変な事聞いていい?」
その耳の大きな女の子は言った。
「何だい?」
毛布の中のささやかな暗闇の中に我々はいた。クリスマスに近い冬の日だった。
もしかするとイブの夜だったかもしれない。
「して欲しい?」
多分その夜はイブの夜だったのだろう。

28 :
ひどいな 実にひどい

29 :
彼の父親の愛人だという女と鼠はカウンターに並んで座っていた。
3杯目のスコッチウィスキーのオンザロックを鼠は彼女の話を聞きながら飲んだ。
ピーナツの小皿はもうすでに空っぽだった。
「あなたはお父様に似てないわ」
彼女のその一言が鼠を無口にさせた。
数時間後、彼女は鼠の部屋のベッドの中にいた。
父親のペニスが何回も入っている筈のヴァギナに鼠は入っていった。
「俺は父親に似ていない、か」
鼠は彼女に聞こえないような小さな声でそう呟いた。

30 :
「ねえ、形而上学的って言葉、お話の中で良く使うでしょ?」
毛布から顔だけ出して彼女は言った。
「そうかな」
「そうよ」
そう言って彼女は(名前は何だっけ?)僕の吸っているタバコを取り上げた。
「ねえ、意味は何なの?形而上学的って」
「意味は無いよ」
「嘘つき」
彼女とはそのまま別れて二度と会うことは無かった。
彼女は勘違いしている。意味が無いのではない。意味を知らないのだ。

31 :11/11/08
村上春樹的憩い散歩 - おさんぽマイスター http://sanpoway.com/walks/view/103

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