2011年10月1期創作発表【没ネタ】未完成作品の墓場【殴りがき】 Part2
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【没ネタ】未完成作品の墓場【殴りがき】 Part2
- 1 :10/08/18 〜 最終レス :11/11/07
- 眠っている未完成作品、適当にかいてみた殴りがき、自主的に没にした作品
ここに投下して成仏させてあげませんか
絵でも文でもなんでも何でもかまいません
前スレ
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1232970057/
- 2 :
- >>1乙!
- 3 :
- こんなところがあったとは・・・
今描いてる創作がどうにもならなくなったときは、お世話になろうと思います。
- 4 :
- ほっしゅっしゅ
自分もそのうちにお世話になります
- 5 :
- いつもは静かなマンションの一室。
それが三毛猫の皮を被った、小さな竜巻によって一気にうるさくなってしまった。
「ハルコ、皿」
「うーごーけーまーせーん〜」
「じゃあグラタンは無し。そうだ、カップ麺にしよう。お前が嫌いな味噌味の
カップ麺だ」
「あああん、ごめんなさいごめんなさい」
二人掛けのソファでだらりと横になっていたハルコが、カップ麺という味気ない言葉に
よって飛び起きる。
ハルコのグラタン発言が現実になってしまい、淺川は帰宅してからも忙しなく動く
羽目になっていたのだ。材料を揃え、鍋で煮詰め、具材を皿に盛って……
何故自宅で――それも恋人でもない女のために!――こんな労働をしなければ
ならないのか。だらだらとした動作で皿を持ってきたハルコの太ももに、淺川の
鍵尾がぺそり。不満を漏らすように当たっていた。
♪
淺川手作りの夕飯を食べてからというもの、ハルコの機嫌はとにかく良かった。久々に
美味いグラタンを食べただの、ホワイトソースが絶妙だの。
こいつが他人を褒める時は必ず何かが起こる。そう、例えば
「トランジット〜。お願い!お酒飲んでも良い?」
「だめ。無理。禁止。お前が飲むとろくなこと無いから」
「一口だけ!ね?お猪口で一杯分でいいからさあ…ね、ね」
要は酒だった。
わがまなな三毛猫姫がこれほど懇願しても、淺川は頑なに断った。だって本当に、ろくな
事がないのだから。
別に酒癖が悪い訳ではない。下戸でもない。ただ、とにかくだらしなくなってしまうのだ。
ある男は「彼女はファム・ファタールを見せる」とか、またある男は「橙色の長髪
くんかくんか」だとか。
ハルコは酒を飲むと、そこいらの男と寝てしまうくらい、だらしなかった。
それで結局、最後に慰めるのは淺川であり、寝かしつけるのも彼の役目だった。こんな事に
過去何度も遭っていれば、そりゃ嫌気がさしても仕方の無いことだった。
- 6 :
- 「良いじゃない、今日くらい!どうせトランジットの部屋で飲むんだから。
どこにも出かけません!部屋から出ません!だからー…ね」
「半月前、まったく同じこと言って俺の部屋で飲んだよな?そんであっさり部屋から出て
慌てて追いかけて行ったら路上でドーベルマンの男とちゅっちゅしてたよな?
そんな奴をどう信用しろってんだ。世話かけさせんのもいい加減にしろよ」
「…ごめんなさい」
急にしおらしくなる。きっと他の男性はこの上目遣いとしょんぼりにやられるのでしょうね。
でも俺は違います。だってこの三毛猫、あっという間に態度が戻るんですから。
淺川がため息を吐き、ハルコの頭をぐしゃぐしゃと撫でる。それに対しハルコが笑顔を
見せるが、その数秒後。彼女の顔から笑顔が消えることとなる。
足袋の足で全力ダッシュ。淺川が冷蔵庫を開け、1本だけ入っていた缶チューハイを勢いよく
飲み出したのだ。ハルコが声にならない声を上げ、淺川に走りより「ひどい!」だの「鬼!」
だの罵声を浴びせる。ジャンプをして缶を奪い取ろうとするが、悲しい事に身長差約20数センチ。
「ぶわははははは!ばーか!飲みたいって予告されりゃ誰だって自分で飲み干すっての!」
「うわあああん!」
ここでもまた子供の痴話喧嘩。淺川の喉が熱くなり、缶を持つ手に力が入る。それでも
何とかハルコが缶を奪い取り、最後の最後、ほんのちょっぴり残っていたチューハイを飲み干す。
それでも不味いのは、ハルコは一口でも酒を飲めば服を脱ぐということだった。
空の缶を片手に持ち、ふにゃふにゃとソファーに沈み込む。尻尾で床を力なくぺしぺしと
叩き、ジーンズのホックとチャックを開く。淺川が「見えてるぞ」と注意するが
ハルコの両耳はそれを逃がす。
何て奴だ、と思う。もし俺相手じゃなかったら襲われているに違いない、と淺川は
ハルコから空の缶を取り返し、飲み口に音を立てて噛む。
金切り音に、床に触れている斑の尻尾がぴくり。それに合わせてハルコが、傍らに
立っていた淺川の足を頼り無さそうに掴む。ついでにジーンズに爪が食い込む。
- 7 :
-
「なに」
「ねえ、どこにも出かけないから許して。私のこと見張ってて」
「…あのねえハルコ。この場に居る男が俺じゃなかったら、どうなってるかちゃんと
理解してんの?」
「ごめんなさい」
「口先ばっかり」
「ちゅうするから許してー」
「間に合ってます」
小さい子供をあやす様に、淺川が床に座りハルコの頭に手を置く。愛の無いちゅうは
間に合っていると断っているものを、ハルコはまるで聞いていなかった。
半ば噛り付くように、淺川の唇にがぶりとハルコが唇を重ねていた。
ときめきも、どきどきもあったもんじゃない。まったくここまで渇いた関係などどこに
あるというのか。
「ここで寝てると冷えるぞ」
「ベッドに連れてって〜」
「嫌だよ、重いし」
「重くない」
噛み付かれた唇が熱い。きっと缶チューハイのせいだと、淺川は信じて疑わなかった。
- 8 :
- ttp://b2.upup.be/XT6wtJlDwE/
もうビルも後ろのワンコも描く気力ない
- 9 :
- 保守
- 10 :
- 即死回避保守
- 11 :
- 片桐アリサという女は、とにかく頑固で薄情だった。
楽しみにしていた雑誌の発売日になったら、例え大雨だろうが風邪をひいていようが
2本の足で歩き、目的地まで向かう。
「何だか今日は嫌な予感がする」そう思った日は、例え喫茶店のバイトがあろうが
外が晴天であろうが、絶対に出歩かなかった。しかし、その予想が当たる方が
珍しいのだが。当たった場合は大抵、どうでもいいようなことしか起こらない。
トイレが詰まったとか、自転車がパンクしていたとか。
そんな彼女も、外では人懐こいし愛想が良く、誰にでも好かれるようなお姉さんだった。
でも、それは「外」だけの話。
♪
喫茶フレンドでのバイトや、近場の雀壮で遊ぶことはアリサにとって空白を埋めてくれる
唯一の場所だった。
彼女はとにかく”無関心”という感情が、普段から強かった。
それでも「外」に居れば、客やマスター、知り合いと雑談することによって、普段の「愛想の良い
アリサ」を演じ続けられていられる。きっと「無愛想なアリサ」は見破られないだろう。
心の中でそれに安堵し、アリサは心地よさと絶望のような無関心さを交互に繰り返す。
(だってきっと、無愛想で冷たい私を見たら皆嫌っていくに違いないわ)
アリサにとって、人に嫌われるのは恐ろしいものでしかなかった。
13歳の頃、祖母が亡くなった。
果たしてその時、自身は悲しみを感じただろうか?
「アリサ、髪の毛が随分と伸びたね」と、骨と皮と皺だらけの手で、いつも頭を優しく
撫でてくれた祖母。アリサは微笑み、一言二言交わす。あれだけ可愛がってくれていたというのに、
今となっては祖母の声すら中々思い出せなかった。
――それは薄情というのだろう。
16歳の頃、飼い犬が亡くなった。
アリサが生まれた時から一緒に暮らしていた、柴犬のコロ。寿命だった。
それでも彼女は、一筋の涙すら流すこともなかった。家族や友人は「いきなりの事で、
きっと理解したくないのだろう」と同情していた。アリサはそれを知った時、ひどく
恥ずかしくなった。
――ああ!自分はなんて薄情で人で無しなのだろう!
- 12 :
- それ以来、彼女は「愛想の良いアリサ」をなるべく、できるだけ、ばれないように、
演じてきたという訳だった。頑固者のアリサは、きっとこの先、それを捻じ曲げることも
ないだろう。幸い、今のところ誰にもばれていないようだ。
♪
「栄太さーん、フリーで空いてるー?」
雀壮・デリカの店内に、明るい声が響いてくる。
床を鳴らすミュールの音、煙草の煙とは不釣合いな愛嬌のある声。フリルをまとったブラウス、
短いデニムのスカート。アリサが片手をふりながら、この雀壮の社長であろう”栄太さん”に
笑顔で歩み近づく。
「やあ、アリサちゃん。残念だけど閉店間際に来られちゃ無謀ってもんだぜえ」
「ええーっ…でもでも、私とおじさんとけーちゃんで三人!これでサンマできるじゃない」
「桂介はテスト勉強だとさ。アリサちゃんこそ、こんな夜更けに出歩いちゃ危ないだろう」
栄太さんが居るから平気だもの!自称最高の笑顔を返し、雀卓用の椅子に腰をかける。栄太が
無造作に伸びた自身の髪を、右手で触る。そして返答代わりにアリサの頭をぽんぽんと撫でた。
周りの人間から見れば、ヤの字に拉致されたいたいけな娘、という感じだろうか。
砂のように埋もれていく感覚を椅子で感じていると、栄太がぼさぼさの前髪越しに
まっすぐアリサを見つめ、ふいに尋ねた。
「麻雀しにきた訳じゃないんだろう」
「えー?」
「アリサちゃんはいつもそうだよな。賭けをしに来てる面じゃないよ」
「またまた!私が可憐でキュートで、こんな博打の場所に似合わないからって!それに私、
スリリングな遊び好きですよ」
どきり。
アリサの心臓が、時計の長針でさされたように動く。大丈夫、この人にはきっとばれてない。
私が空白を埋めているなんて、ばれやしないんだから!
精一杯、嫌われないように当たり障りの無い生温い返事をする。
店内の時計が時を刻む。秒針の音がやたらとうるさく感じる。きっと客が誰もいないせいだ、
きっと焦っているせいだ、きっと店内に音楽が流れていないせいだ。
秒針の音と合うように、アリサの鼓動も早くなる。
- 13 :
- (麻雀しにきた訳じゃない?いいえ、私は遊びに来ただけよ。そうよ。ばれてない。
でも、でも麻雀をするのは、つまらない生活を、埋めるためだけじゃないの!)
「えへへ…閉店時に来ちゃってごめんなさい。また明日来ます!その時はけーちゃんも
誘ってサンマしてね、栄太さん」
半ば椅子から飛び跳ねるように、勢いよく立ち上がり足早に立去ろうとする。
駄目だ、駄目だ駄目だ、この人と居ると怖い!どうして今まで気づかなかったの!
頭をフルにして、自己嫌悪と「無愛想なアリサ」を抑える。
店から出ようとした瞬間、急にアリサの左腕が熱を伝えた。
「お遊戯はもうやめたら?アリサちゃん。ここは幼稚園じゃないんだから」
「…な、んの」
「ばれてるよ。目が違うもの」
「栄太さん、腕…痛いから離して」
「俺んとこにお嫁に来たら離してあげる」
くすくすとアリサが笑い、左腕を握っている栄太の手を払い除けようとするが、まるで接着剤かの
ように、それは離してくれなかった。
「ねえほんと、栄太さん腕…」
「うちにはさ、色んな人が来るけどアリサちゃんは目が笑ってないよねえ、いつも。
笑顔は可愛いけど、もっと心の底から笑ってみたら?今以上にキュートになるって」
「…だから何の話」
「ははは、怒れるじゃないの」
はっとして気づく。もうばれている。もう遅い。どうしてどうして!今までばれなかったのに!
途端にアリサの心の中に真っ暗な闇が訪れる。黒一色で塗りつぶされたように、もう笑顔すら
作れないように。
「アリサちゃんは可愛いなあ」
栄太がアリサの左腕を引き寄せ、柔らかく抱きしめる。煙草の匂いがアリサの長いポニーテールと
鼻にまとわりつく。
「…嫌だなあ、栄太さん酔ってるんですか?」
「ほら、また。演劇ごっこしてる」
口角は上がれど、アリサの両目はもう笑ってなどいなかった。栄太はそれでも、アリサを
離さなかった。
秒針の音が、お前にはもう愛想など無い、薄情で冷酷な女なのだと、叫び続けているように聞こえた。
- 14 :
- おお、おもしろいぞな
- 15 :
- タバコに火をつけると麻紀子が横からそれを奪った。
裸にうすいタオルケットを巻きつけ、俺の顔に煙を吹きつけた。
「これから?」
「ああ」
「よくも懲りずにいくわね」
病院の面会時間は八時までだ。
時計を見ると短針が六と七のあいだを指している。
ベッドから抜け出し、ジーンズに足を通す。
麻紀子の部屋はベッドと食器棚、マガジンラックがあるくらいで
女性のぬくもりも愛らしさもなく、ただ蜜月に利用するためだけの
空間のようだった。
少なくとも俺はここで彼女を抱く以外のことをした覚えがない。
「明日の昼はどうする?」
「インスタントかダイエットで断食」
「ならメシを食いにいこう。一時に駅前、三番バス停前で」
麻紀子は口からタバコを離し、ふかく煙を吐き出した。
窓の外を誰かが横切った。
ブラインドの隙間から差し込む光が俺と彼女のあいだで明滅する。
「三万」
俺にむかって手を差し出した。
「いつから婦になった」
「そろそろ金取ってもいいんじゃないかって思い始めたところ」
彼女と会うのはパR屋かベッドの中だけだ。
大学時代はさまざまな場所で時間を共有した。
いつしか麻紀子に会わせる顔も時間も減っていったが、俺には
それが特別、悲しむべきことではないように感じられた。
部屋に充満した紫煙を追い払うように手を振った。
「また明日な」
俺は寂れたアパートの一室をあとにした。
- 16 :
- 夏も終わりが近づき、日が落ちるのも早くなった。
季節はいつも淡々とめぐり、時間が足をとめることはない。
誰しも子どもから大人へ成長して社会の歯車に
組み込まれていくものだ。
俺とて例外ではなかった。
歯車になれない者は表の世界から姿を消し、
主張すらできない人間は裏にも表にも居場所はない。
もはや生きているとはいえない、形としてのオブジェに
過ぎないのだ。
病院に着くと面会時間が終わる寸前だった。
「こんばんは。もうぎりぎりですよ」
「いつもすみません。ひと目見るだけでいいので」
八時まであと十五分足らず。
一瞥するには五秒あれば事足りる。
「五分前には見回りますので」
「わかりました」
ナースステーションを背にエレベーターで五階へ上がる。
奥から二つ目の個室。飾り気はないが広く、清潔でいい部屋だ。
「ただいま、静子」
月明かりがわずかに差し込むうす暗い室内で、
妻はしずかな寝息を立てていた。
一年前からずっとこうだ。
何を話しかけてやっても返事ひとつしない。
新しい時事ネタも懐かしい思い出も、いまの静子には
べつの世界の出来事に過ぎない。
そっと静子の唇に指をあてる。
彼女に意識があればくすぐったがって払いのけるだろう。
渇いた唇を撫でてやっても妻は眠りから覚めることはなかった。
- 17 :
- 毎日から一日おき、二日おき、三日おき。
いまでは週に一度になった見舞いを終えて病院を去ろうとした。
「こんばんは。来てくれてたんですね」
駐車場でうしろから声をかけられてふり返った。
薄手のカーディガンにこげ茶の地味なスカート。
目もと以外はほとんど静子に似ていない根暗な少女。
あまり会いたくない人物だった。
「美穂ちゃんもお見舞いに?」
「お義兄さんが入っていくのが見えたので」
「今日はもう面会終了だよ。また今度にしたほうがいい」
俺は逃げるように車のドアを開けた。
ドン、と背中に重たいものがぶつかり、それは
逃がすまいと腕をまわして俺に抱きついた。
「……姉さんはどうでしたか?」
「良くもなってないし悪くもなってない」
「そう、ですか」
俺を抱きすくめる腕のちからが強くなった。
街灯が俺たちを照らし、地面にひとつの影をつくった。
秋を感じさせる夜風が吹いた。
逃げられないことから逃げる方法はただひとつ。
すべてを投げ捨てて見なかったことにするだけだ。
- 18 :
- 美穂も大学を卒業して就職はしていたらしい。
だが姉である静子が事故に遭ったショックで仕事が手につかず、
いまは実家で家事の手伝いをしていると聞いた。
俺より二つ下の静子よりさらに三つ下だったので、
はじめて顔を会わせたときはまだ子どもだった。
いつも静子の陰に隠れておどおどしたそぶりで様子をうかがう、
いたいけな少女だったはずの美穂もすっかり大人になっていた。
「……お義兄さんは明日も仕事ですか?」
「ああ、会社の奴隷みたいなものだから遅刻もできない」
ホテルに泊まっていくわけにもいかないと暗に断った。
美穂は腕枕に目をほそめ、俺の体にすがるように抱きついてくる。
彼女は根暗ではあったが姉の静子よりも豊満な体つきをしていた。
静子をありふれた標準的な女とするならば、美穂は容姿と性格で
多少の遅れを取るものの男を魅了する性質には長けていた。
「そうなんですか、残念です」
「美穂ちゃんも男をつくったらどうだ。できない話じゃないだろう」
「わたしはただの家事手伝いですから、そういうのは難しいです」
そういう問題でないのは互いにわかっていたが
あえて言うことはしなかった。
最愛の肉親を失った美穂はもちろん、それなりに妻を
愛していた俺も行き場のない気持ちを溜め込んでいる。
見ず知らずの他人で憂さを晴らせるものではない。
人となりを知っている人にこそ支えてもらいたいと思う気持ちは
けっして悪いものではないはずだ。
ただし、それに罪悪感を覚えなくなるときがくれば、
きっと俺にせよ美穂にせよ、いまのままの関係を
続けていくことは難しくなるだろう。
「……美穂ちゃん」
「はい」
「もう一回いいかい?」
朝までまだ時間がある。
俺はむさぼるように美穂の唇を奪った。
- 19 :
- 物事がうまく立ち行かなくなることを俗にケチがつくというらしい。
だが、俺もいい大人になったからそう思うのか、万事うまくいっている
人間などこの世に存在するのだろうか。
若くして親類縁者を亡くす人もいるだろうし、事業に失敗して
路頭に迷う人もいるだろう。愛する人に捨てられることだって
あるはずだ。
思うに、その人間が幸せか不幸せかを論じるのに客観性など
まったく必要ないのではないかとこのごろ俺はよく考える。
それは体感しなければ実感となりえず、またそれを確かめることは
当事者にしかできないからだ。
動物園でオリに入れられたクマをかわいそうと同情しても
エサに困らない生活に存外クマは満足しているかもしれないし、
貯蓄のない人を哀れんでも生きるか死ぬか、スリル満点の
日々を楽しめる人もいるかもしれない。
ただひとつ、これは真理なのではないかとせつに思うのは
幸不幸には磁力のようなものが備わっており、幸せには
幸せが、不幸せにはなぜか不幸せが寄せ付けられる傾向が
あるということだ。
この仮説はおそらく偶然性や運命論といった言葉からほど遠い、
納得のいく論理によって裏打ちされていると思われる。
課長から呼び出しを受けた。
「渡辺、夕方は空いてるな?」
「急ぎの予定はありませんが」
「佐藤商事との会談が入った」
眼鏡を指で押し上げ、禿げ上がった額をハンカチで拭った。
- 20 :
- うーん、続きがちっと気になる所だ
- 21 :
- >>15-19
これは気になるだろ
でもここに投下したってことは、未完なんかな?
あるいはボツにしたものか? 面白そうだけど…
- 22 :
- 昼下がりのぼんやり停滞した空気に、微かに混じる嗅いだことのある香り。
どうやらお隣りさんの昼食は、ラーメンのようだ。
持ち帰った仕事の山をユンケルに缶コーヒーという低エネルギーで崩し中の俺には、なんとも辛い誘惑だ。
ちゃぶ台に積んだ書類とパソコンモニタを付き合わせながら頭脳をフル回転させ、誘惑に耐える。しかし5分もたたないうちに姿勢はそのまま、思考は何処かへと消え去ってしまった。じわりと唾が湧く。
ゴマ油とにんにく、にらかな、ベースは味噌……いや醤油かと微かな香りでは我慢できず、コソコソベランダへ近づいて忙しく鼻をうごめかせる。
閉じた瞼の裏側には白地に朱の鳳凰が縁を飾った丼、ネギが山のように盛られ、肉厚のチャーシュー、ぷりっとしたしなちくに深緑にも見える焼き海苔を備えた、魅惑の醤油ラーメンが出現していた。
素敵な香りと共にズルズル、ズ、と堪らない音がお隣りから続けざまに聞こえる。
溜まった唾を飲み下したら、熱い鳥ガラ醤油風味のスープと、それに混じった葱の香りが鼻先に抜ける至福を思い出し、妄想と現実が触れ合いそうに近づく。もうあと三回麺を啜りあげる音を聞いたら、 葱のシャキシャキした食感までもが蘇りそうだ。
「限界……」
残り少ない全身のエネルギーを足に集中させて、フルスピードで俺は外に飛び出した。
仕事なんか知らない、資料なんか知らない、会議なんて糞ったれだ。俺は今、ラーメンを食すんだ。
一番近いラーメン屋を目指しながら燃え尽きる前の輝きで俺の足は、ボルトの様に筋肉をしならせ、風をきって跳び進む。徹夜による鈍痛がする事なんて、今は大した問題じゃない。
全身のエネルギーを一カ所に集めたため頭が回らずに着の身着のまま、裸足で駆けてく陽気なサザエさんとは俺の事よ。
- 23 :
- サザエさんかいwww
財布忘れて食えなかった orz とか?
食べ物を美味しそうに描写するって、けっこう難しいよね
以前そんなお題があったのを見た(ハードル高くて挑戦しなかったけどww)
- 24 :
- 食べ物描写練習したかったんだけど、難しくて投げた。そもそもラーメンすきじゃなかったんだ…
餃子でリベンジ練習してる
- 25 :
- http://loda.jp/mitemite/?id=1572.jpg
昔描いた漫画。もはやアナログでは描けなくなってるのでここに埋葬。
- 26 :
- ちょっと読んでみたくなってしまうんだがww
デジタルで描いた版が見られるのはどこですか?
- 27 :
- 夢の中で聞いた話。
ある山中に祠が建っていた。その前を渓流が流れており、旅をする者は
その渓流に沿って山を登ったり降りたりする必要があった。
深い山の中である。飢えと疲労で動けなくなる旅人も少なくなかった。
そんな旅人たちに呼びかけるように、心の中で声が響くという。
その声に導かれるようにして祠の近くまでたどり着くと、旅人の目の前には
小さな扉があった。
扉の中には小さな釣竿と折釘が入っていた。餌は無い。川の流れも急である。
旅人は思う。こんなもので魚が釣れる筈が無い、と。
しかし心の中に声は呼びかける。
その声に従って、旅人は流れに糸を垂れた。竿を片手に、
もう片方の手で折釘を持ち、岩を打つ。
旅人には聞き取れるか聞き取れないかという、高く澄んだ音が響き始める。
程なくして、魚が現れた。旅人の目には魚の姿がはっきりと見えた。
そして、魚は餌の付いていない釣針に食いついた。
中には、その釣竿と折釘さえあれば魚が釣れると考え、それらを持ち去ろうと
した者もいたのだが、
※ ここまで思い出しながら(多少膨らませて)書いてみたが、後は忘れてしまった。
夢の中で見つけた良いアイデアを真空パックして保存できる方法は無いものだろうか。
- 28 :
- つDCミニ
- 29 :
- スレ立てました 遊びにきてください
【漫画・小説】このネタ提供します【夢を託して】
http://kamome.2ch.net/test/read.cgi/bun/1296161435/
- 30 :
- 夜空にまたたく星は数知れねども、この手に掴める星はひとつとして無い。
その歴史の大半を、重力という井戸の底に囚われたまま綴ってきた人類にとって、
この言葉は永らく真理であり続けた。
制御不能となった人工ブラックホールが太陽に落ち、小規模な超新星爆発が
不可避のものとなったとき、人々は決断を迫られた。太陽系全域が吹き飛ぶという
未曾有の人災から逃れるために、故郷を追い出された宇宙の迷子となるか。
あるいは滅びゆく星たちと共に死を選ぶか。
大半の人間は前者、外宇宙への脱出を採った――が、後者を実行した人々もいた。
事態を楽観視していた者、生地の運命に殉ずることを選んだ者。最も多かったのは
様々な事由から脱出船に乗ることを許されなかった者だった。そもそも全人類を
脱出させるだけの船を用意する時間などあるはずもなかったのだ。
限られたパイを奪い合って、太陽系最後の戦争が起きた。この戦いと、
ついに訪れた恒星爆発の衝撃波によって塵となった人命は、合計すれば
当時の総人口の半数に上るとも言われる。
夜空にまたたく星は数知れねども、この手に掴める星はひとつとして無い。
事ここに至って、生き残ったすべての人はようやく知る。今まで無意識下で
常識だと思い込み、大衆に地球人たることを強要し続けたフレーズは、
しょせん出来の悪いポエムの断章に過ぎなかったのだと。
救世主が現れることなく世界が終わり、二千年以上続いてきた西暦が廃されたとき、
人類は何を失い、何を得たのだろうか? 悲嘆に暮れる人々を星の大海へと導き、
弁舌巧みに彼らを煽り立てた指導者の言が今も残る。
「諸君、この船出は人類誕生の瞬間である。往古、人類は類人猿より進化して地上に現れた。
しかしこれは、人類を一つの生き物として見るならば、せいぜい胚が生まれた段階でしかなかった。
ガガーリンが宇宙に軌跡を残し、やがてスペース・コロニーで暮らす人が現れるようになった
時でさえ、胚が子宮に着床した程度のことと言っていい。
先人は言った。『夜空の星は数知れないが、この手に掴める星はひとつも無い』と。だが、
見るがいい! ヒトはその手に届かぬ星を掴むべく、自らが高く飛ぶことを覚えた。
核融合エンジンが吐き出す、蒼きプラズマの光輝を翼として、遥けき大宇宙を翔ける船を作り上げたのだ!
我々はこの喪失を忘れまい。過ぎ去りし日々を永久に悼もう。だが、同時に今こそ我ら人類が、
太陽系という子宮より出でて世界に生まれ落ちる瞬間であると、私は確信する!
前途に広がるはとこしえの夜空、苦難も危機も待つであろう。しかし、大いなる母の胎内で
過ごす数千年に培ってきた叡智は、必ずや我らを新天地に導いてくれると信じている。
人類よ、涙を拭い歩みだせ! 言語や文化の隔たりを越えて手を取り合い、共に久遠の彼方で
輝く星へとその手を伸ばそうではないか。
誇りあれ、我ら『銀河船団連邦』に。栄えあれかし、総ての人類に――!」
その言葉が数万隻の移民船を駆け巡り、狂騒とも言うべき賛辞の唱和が無音の宇宙に
高らかな残響を刻んだ、記念すべき統一銀河暦(C.G.C)元年から六世紀あまり。
時はCGC暦0614。直径およそ十万光年の銀河系は、その七割以上を人類の手で開拓されていた。
- 31 :
- 「浅薄なアジテーションだな」
エネルギー・スクリーンの投影面を絶え間なく横切る雨によって著しく歪んだ映像の
中で演説する男に、青年は簡潔で手厳しい評価を下した。
その映像は連邦発足当初の指導者、フェリックス・アドラーが打った伝説的な演説時のものだ。
連邦政府広報では未だに名演説として賛美し、毎日のようにこうして垂れ流している。
が、青年に言わせればこの『煽動』の価値は「これほどチープな演説で心を動かされるほど
動転していた当時の民衆」の心境が大いに推察できる点にしかない。猜疑も批判も心に余裕の
ある者しか口にし得ないものであったし、そうした人間は決して多数派ではなかった。
むろん彼がそんな映像を好んで見ているはずもなく、それはビル群の壁面近くを回遊する
浮き看板から出力されていた。こんな地上近くで飛ばしたとて、宣伝効果は望めないだろうに。
無価値と断じた過去の映像から目を離した青年だが、代わりに視神経が認識した「現在」も、
さして感慨を呼び起こすものではなかった。ゆうに数千メートルの高さで林立するビル群はその頂を
雲の中へ届かせ、低空にたゆたう黒雲の天蓋を支える柱として、地上に暗影を投げかけている。
ビルの隙間はエアカーやエアバイクの類が飛び交い、その数は高さに比例して多くなる。逆に言えば、
その男が両の足で歩む地上付近などは殆ど人がいない。生まれてから一度も大地を踏まぬ人間が
少なくないことで知られるこの町において、地上はスラム同然の扱いを受けているのだ。
青年は再び浮き看板に目をやり、理想論とすら呼べぬ妄言を吐き続ける煽動屋に無言の野次を投げた。
――人類文明の中心地にしてこの有り様じゃあ、あんたの描いた青写真はとうの昔に忘れ去られたみたいだな?
昼間から薄闇に包まれたこの都市こそが、統一銀河星団連邦の政治機構の中枢たる地。
主星アースガルドの赤道付近に位置する、“星都ガストロープ”。
晴天であれば、ビル群の鏡のような壁面に乱反射した陽光が蒼穹をバックに絶え間なくきらめき、
息を呑むほど美しい街のはずだ。しかしその美景も、視界を灰色に染めてしまう豪雨に見舞われては
片鱗すら窺うことができない。
もっとも、浮浪者らを尻目に歩を進める『彼』にとっては、目的地まで歩けるだけの道があれば、
雨などいくら降っても構わなかった。どうせその一滴とて、防雨力場を抜けて服を濡らすことはできないのだ。
力場の表面を、卵形のカーテンとなって流れ落ちる水越しに見える、ひときわ巨大なビル。
それこそが彼の目的地、連邦宇宙軍本部であった。
↑プロローグで力尽きたスペースオペラ(´・ω・`)
いま読み返すと設定が甘すぎベタ過ぎで
過去の自分をタンホイザに叩きこんでやりたくなります
- 32 :
- あなたは昔私とリレー小説をしていた方かも知れませんね。
- 33 :
- リレー小説?
人違いだと思いますが……
- 34 :
- こんなところが有ったとは。流石は創発板。
スレの空気が変わって、投下出来なくなった長編ネタを抱え込んでいる自分には
正にうってつけの場所。
書き殴りで恐縮ですが、近日中に投下させて頂きたく。
- 35 :
- それは楽しみ
- 36 :
- >>35
現在規制中の為、転載依頼且つプロットの形で投下致します。申し訳ありません。
昨秋、ネット世界に忽然と現れた謎のキャラクター、日本鬼子とは何なのか?
東方やボカロの様な現物を持たないキャラの為、その正体を言霊が実体化したものと
して、それを説明・表現するSSを作成した。
@ キャラの特徴や外観等は、まとめwikiで構築中のものを参照する
まとめwiki
http://www16.atwiki.jp/hinomotooniko/
A @の都合で、作中の時間は現実のそれにシンクロさせる(リアルタイム進行)
B 鬼子自体が構築中のものの為、地の文は周辺のキャラのものとする
C 周辺のキャラの物語を主軸とし、オチを先述する事によって時間軸をずらし、現実
時間との差異を物語進行の原動力とする
D 言霊というものに対する認識を強調する為、舞台と登場人物を日本と米国の二箇所
に設定する(但し中国関係は極力出さない)。
E 鬼子の代表デザインが決定した時点で前半の、小日本の代表デザインが決定した
時点で後半のオチを書く程度の段取り
【プロット】
・米国での舞台を国防総省とし、主人公はそこの所員(ケン)とする
・ケンは日本通の米国人とし、まとめwikiも作中で見させる(ネット漬けの皮肉)
・サイバーテロの電気信号が実体化した“虎”(悪役)を登場させ、ケンとそのボスの
眼前でこれまた唐突に鬼子を登場させ且つ退治するシーンを見させる
・ケンに、それらは人間の認識の段差が生み出したものと推測させる(オチ)
・ケンの同僚であるクリスをお台場に登場させ、鬼子・小日本と遭遇させる
・クリスの暗い性格を表現しつつ、それが外部から宿らされた悪心である事を、鬼子の
祓い(萌え散らし)によって表現する
・(幕間・ヨタ話)クリスから土産として渡された銀の銃弾で、ケンをまとめwikiの
世界に入れ、その中でサブキャラ達から、仕事は真摯な行いが大事との示唆を与える
・国防総省内の局間ミーティング。そこでサイバーテロに関しては、CIAの関与が有る事
を示唆。鬼子の存在はケン達の極秘扱いになっている事も
・鬼子との恋愛的な雰囲気を排除する為、ケンに適当な女性を宛がう。話には絡めない
- 37 :
- ・(廃村編)日本での主人公・山都 武士(以下タケ)を山奥の廃村に登場させる
・タケは不動産屋の外注(ハウスキーパーという架空の職業=ニートの皮肉)
・そこで鬼子・小日本と会わせ、タケに犬の埋葬をさせる
・タケに犬の形見であるペンダントとUSBメモリを入手させる
・ケンに連絡をとらせる(学生時代の友人という設定)
・役場の人間(悪役に操られている)を登場させ、鬼子に撃退させる
・虎と鷲(電脳の獣)を登場させ、鬼子に苦戦させる
・狗(狛犬の片割れ)を登場させ、鬼子を助けさせる
・在日米軍の航空機を登場させ、悪役の親玉は米国由来である事を示唆する
・(幕間・謎解き編)USBメモリの中身を解読する話
・鬼子との恋愛的な雰囲気を排除する為、タケに妹(巫女)を宛がう。
・タケとケン、それぞれに謎解きをさせる。着眼点と導き出された答えの違いから、
現実での言霊の存在を示唆する
・タケを不動産屋に走らせ、獅子(狛犬の片割れ=悪役の親玉)に襲わせる
・ケンには中身を対虎のワクチンであると正しく見抜かせる
・クリスを凶行に及ばせ、ケンとボスを昏倒させる
・(虹編)夢の世界で、ケンと鬼子に禅問答をさせる。中途半端に終わらせる
・妹と人化した狗をタケの元に向かわせ、助ける
・獅子を廃村に逃がし、タケ達に追いかけさせる
・(鬼子視点)クリスが不動産屋の社長と会う
・(鬼子視点)社長は元内閣調査室の室長であり、タケの元上司である事を示す
・(鬼子視点)虎や獅子は左前になったCIAが開発したものであり、今はウィキリークスが使用
している事を表す。また、クリスはその尖兵であった事も
・(鬼子視点)クリスに改心を吐かせ、同時にCIAからの襲撃に遭わせる
・復活したケンとボスに、市警相手にワシントンDC内で派手なカーチェイスをさせる
・(オチ編)クリス・ボス・ケンを国防総省内に集める
・タケ・狗・妹・小日本に、廃村で獅子を追い詰めさせ、獅子の抵抗に遭わせる
・狗は鬼子達を新時代の神と認め仕えようとするが、獅子は拒絶した過去を語らせる
・ワクチンは社長の犬に憑いていた狗の自作である事、またそれをエサにして廃村に
獅子をおびき出そうとした事を語らせる。廃村は社長の実家、鬼子とは無関係
・クリスに社長から渡されたワクチンで、国防総省内のサーバを健全化させる
・が、CIAに唆された他の局員たちの抵抗に遭わせる
・タケに獅子を調伏させる。獅子に反省の言を吐かせるも、逃亡させる
・獅子の調伏の影響でCIA絡みの人間の勢力が消滅した事を表す
・残った凶悪な電脳の獣を、鬼子に撃退させる。その様子が全米に放映されてしまう
・それで鬼子を怯ませ、ケンに銀の銃弾を発射させる事で獣退治を完遂させ、最後は
人の力である事を表す
・(エピローグ)ビッグサイト近くのホテルのレストランに集まった日米の面々
・眼下に広がる冬の祭典の様子を眺めさせ、笑わせたりウンザリさせたりする
・それを遠くの高層ビルの屋上(電脳的に空中庭園の設えになっている)から
笑顔の鬼子と小日本が眺めていて、幕。
……という様なお話だったのですが、虹編を始めたあたりでどうにも投下出来る様な
雰囲気ではなくなって来た為、作製を断念し現在に至ります。
こうして書き出してみると、思ったほど大した話ではなかったなと苦笑しきりです。
その事に気付かせてくれた、この書き込みの機会を与えて下さったこのスレと>>35さん
及び転載頂きました方、また該スレで私の駄文をお読み下さいました方々へ、心からの
感謝を申し上げます。
ありがとうございました。
- 38 :
- 何かか爆発してしばらくたったころあさみはようやく気がついた。
しかし首都にいたはずのあさみは砂漠の中にいる。向こうを見れば首都がみえている。
あさみが起き上がろうとしたらあることに気づいてしまった。それはあさみの首から下がどっかに行ってしまったのだ。何かおかしいと思ったら首から下が無い。大変深刻な状況のはずだが実はあさみには再生機能が備わっているので妙に落ち着いていた。
ところがなかなか再生できない。理由はエネルギーが足りないからである。
そこに一人の少女が通りかかった。あさみは必死に叫んだ。
その少女、ひとみは生首が必死に助けを求めていることに驚愕するも取り合えず近寄りエネルギー補給を施したのだった。
そしてあさみは無事再生したものも全裸である。二人は近くに転がっていたあさみの元胴体から上着を剥ぎ取りあさみに着させた。
二人はあさみの手足を探したが見つからない。ようやく下半身を見つけたらズボンが同じなだけでよく見ると男の下半身だった。
二人は興味にかられズボンのファスナーを開けようとしたその時、やめろ!という少年の怒声が聞こえてきた。
その声の主は寝袋から不十分な再生をした体を少し出してやってきた。その少年、彰は二人から下半身を奪い下半身から服を剥ぎ取ったと思ったら何と自分の局部などを食べたのだった。
これにはあさみとひとみも青ざめるも完全に再生した彰は以前よりパワーアップしたといって寝袋から出てきた。
そして心臓と肝臓を探すといって彰は上半身裸のままどこかに行こうとした。
- 39 :
- 何年か前にワードパッドに書いた架空歴史(教科書風)
・中国と朝鮮の革命
中国では列強による植民地支配とその言いなりである政府への不満が強まり、暴動が頻発し革命へと発展した。
危機感を抱いた列強諸国は中国へ軍隊を派遣し、イギリス・フランス・アメリカ・イタリア・ギリシャの五カ国からなる連合軍が
革命政府の成立した広東を占領、ドイツ軍も権益のある山東半島に出兵し、ロシア軍は満州を占領下に置いた。
こうした列強諸国の侵攻を前に革命軍は粘り強く抵抗を続けた。
朝鮮でも中国の影響を受けて革命が起こり、朝鮮王朝を倒し朝鮮共和国が成立した。しかしアメリカの艦船と交戦した
江華島事件をきっかけに列強の侵攻を招き、朝鮮南部は日本・フランス・キューバの三カ国連合軍に、北部はロシア軍に
占領され、漢城と平壌にそれぞれ傀儡政権が成立した。しかし革命派は列強の支配に対しその後も抵抗を続けた。
・ロシアの北京掌握と日本による南京政府樹立
華北では革命軍の勢力が優勢になり、北京政府の親露派は状況を打破するために満州のロシア軍に援軍を要請した。
ロシア軍は革命軍の鎮圧を名目にモンゴルと中国北部一帯を占領し、北京政府にクーデターを起こし親露派に政権を独占させた。
一方大陸の権益拡大を狙う日本は中国南部に出兵し、革命軍の一部と手を結び南京に傀儡政権(南京政府)を樹立した。
このことは革命派や中国人民だけでなく米英など列強諸国の反発も買った。
- 40 :
- 社会控え室
社会「おい! どういうことだよ!」
少年「何がだ?」
社会「俺のセコンドは少女ちゃんがやってくれるって話だったろ!
どうしてお前が来てるんだ! むさ苦しい!」
少年「あいつなら、中庭の花の元気がないとかで、手入れをしなきゃいけないから
来られないって、もう何度も言っただろう」
社会「少女ちゃん、今日は庭のことは用務員に任せて応援に来てくれるって言ってたのに!」
少年「そんなに庭が心配なら、社会なんか放っておいてそっちを見に行けって、
理事が強引に決めてしまったからな」
社会「余計なことを……」
少年「まあ、向こうが一段落したら応援に来るんじゃないか?
それまでに負けてなければの話だが」
社会「どうせすぐ負けるんだろうみたいな目をするんじゃない!
馬鹿にしやがって! 少女ちゃんが来るまで絶対勝ち残ってやる」
少年「どうだかな」
- 41 :
- 串子控え室
アジョ中「それにしても、今まであんたどうしてたんだい?
G解散からずいぶん経つが」
串子「なに、屋台を引いてほうぼうさまよってただけだよ。
Gがなくなっても、求めるものは変わらない。
あんただって一緒だろ? アジョ中」
アジョ中「俺は鯵クーダだ。なるほど、姿は見えなくてもどこかで
精進は続けてたってわけだ。なら、今回も期待できるな?」
串子「もちろんだよ、アジョ中」
アジョ中「鯵クーダだ。前回は一瞬の隙を突かれて、一回戦敗退となったが
あんたの潜在能力は上位入賞者にも匹敵する。それは俺がよくわかってる」
串子「それに、今回は隠し球もある。伊達に放浪をしてたわけじゃないってことを
新必技で見せてあげるよ、アジョ中」
アジョ中「鯵クー……何!? 必技? それはどういう――」
係員「串子さん、まもなく試合のお時間です。会場へ移動を」
串子「さて、一暴れしてこようかな」
- 42 :
- 闘技場
ワーワーワー
アンテナ「さあ、数々の激戦を生んだ一回戦も残すところあと一試合となりました。
最後の一組は一体どんな戦いを見せてくれるのでしょう」
アンテナ「西側入場門! 前大会からお馴染み! 串子がチャイナ服で登場です!」
ゥォォォォッォォン!!!
串子「フフフ……前のような不覚は取らないよ」
アンテナ「東側入場門! どう戦うのか高校教師! 社会です!」
ゥォォォォッォォン!!!
社会「対戦相手の娘といい、この大会、結構カワイコちゃんが出場してるな」
少年「相変わらず気持ち悪い奴だ」
よし子「武器の持ち込み以外は全てを認めるぞーっ! いいなーっ!?
それでは試合開始っ!」
ワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!
アンテナ「一回戦最終試合開始です!!!!!!!!」
- 43 :
- 試合部分?
無いんだな、それが
- 44 :
- 無いのかよっwww
- 45 :
- なんだ無いのか
- 46 :
- いやいや
無いのもまたよいものじゃよ
- 47 :
- ―幕間劇 呪われし英雄―
男は――眠っていた。
永い眠りの中で、久遠の悪夢を見続ける。
ただ観ることしか出来ぬ、それは贖罪。
それだけでよかった。彼は敗残者なのだ。死んでいった友たちに続くことすら
許されぬ男には、己を呪縛し封印することしかできなかった。
何らの償いにもならぬ逃避だと、心の底では知れども。
しかし――幾星霜のあいだ光が射すことのなかった地底に、白い燐光をまとって
訪れる者があった。その人物は黒い外套に身を包み、貌形は影となって見えず。
「安心したわ。“彼”より先にあなたを見つけられて」
「……何者だ」
呪いもて自縛せる男は問う。かつて大蛇のごとく地の底を這った水脈の抜け殻、
ここミドガルズオルム大空洞に入って来られる時点で、ただ者ではありえない。
「とりあえず、リューネと名乗っておくわ。あなたの力を借りたいのだけれど」
「帰るがいい。私が成すべきことはすべて、成されぬままに終わったのだ」
そう言って、男はわずかな目覚めこそ夢であったかのように、果てしない悪夢の
淵へとその精神を沈めてゆく。呪縛は彼自身でさえ破れない。
破れるとしたら――かつての彼と同じ力を持つ者か、その敵だけだ。
そのはずだった。
「いいえ、あなたはまだ存在している。あなたがないのなら、その使命もまた
存在し続けるのよ――たとえ、ラストブレードは次代に受け継がれようともね」
黒い外套の女がそう言ったとき、男はにわかに時空が『ずれる』のを感じ取った。
同時に、彼を縛り付けていた強力な呪いが、なんの抵抗もなく無力化される。
ありえないことだった。この力は、まさしく。
「剣を介して流れ込んだ残留思念が、これほどの力を与えているのね……充分よ。
守るべきもの、戦う理由は失ったかもしれない。けど、あなたにはまだやれる
ことがある。だから、お願い――ディオノメ」
「どういうことだ……なぜ私の名を知る? まして貴様、“奴”ではないはずだ。
それがなぜ、“奴”と同じ力を……」
女は婉然と微笑んだ。
「ちょっとね。複雑な事情があるの」
- 48 :
- 「ぽぽぽぽ〜ん」
共用冷蔵庫の扉に貼ってあるアドバタイジングモニタに
ここ数日でいやというほど目にしたCMが映った瞬間、
ぶしゅるるるるぴー、と音を立てて手元の1.5?コーラの栓が弾けとんだ。
「?あっ!?」
慌てて飲み口を親指でおさえるも、コーラは茶色い泡の奔流となって飛び散り、
俺の頭やら冷蔵庫やら休憩室のこきたない壁に降り注いだ。
コーラのシャワーが落ち着いた所で、中身を確認すると、半分に減っていた。
思わず舌打ちする。
くそっ! 誰か思いっきり振りやがったな!
辺りを見渡せばぷつぷつと泡の立つ茶色い水たまりがそこかしこにできている。
「わちゃー…」
情けない思いでとりあえず雑巾を探そうとしたその時、頭上のスピーカーから
サイレンが鳴った。
『緊急召集。第7から第13管区で信号停止。信号員は至急担当管区に急行せよ』
今日はツイてなさそうだ。
俺は片手に雑巾、もう片方に半分に減ったコーラを持ち、ため息をついた。
大雑把にコーラの後始末をして現場に向かうと、同じ隊の隊員たちはすべて
持ち場についていた。やばい、と思う間もなく隊長の怒号が飛んできた。
「遅い!! 何をしていた!!」
「すみません!」
反射的に答えて、敬礼する。だが、隊長はぎらりとナイフのように光る眼で
俺を睨みつけている。
「この非常時に何をしていた! 理由を言え!」
コーラがこぼれて片付けていました、と言っても眉を吊り上げている
隊長に分かってもらえるとは思えないが、どうせウソをついてもばれるだろう。
俺は直情的でまじめ一本槍のこの隊長が苦手だった。
「は、こぼれたコーラの後始末をしていて遅れました」
「コーラ?」
「は、休憩室の冷蔵庫にあったコーラを飲もうと栓を明けた所、
突然噴き出てきました。いたずらで誰かが振ったものと思われます」
「……」
ビンタの一つも食らう事を覚悟して言ったが、意外や隊長は表情を
いつもの無愛想に戻し、わかった、と言って持ち場につくよう俺に命じた。
しかし、踵を返した俺の後ろでぶつくさ言う声が聞こえた。
「まったく…猿の手も借りたいというのに…」
「それ、間違ってますよ、隊長。正しくは猫の手です」
思わず訂正すると、隊長はこちらを見てふんっと冷笑した。
「阿呆。猿とはお前の事だ。猫では可愛すぎるだろう? マヌケな猿め。
さっさと持ち場につけ!」
そう言い捨てると靴音を響かせて行ってしまった。
聞こえるように言いやがったんだな、性格悪い。
やっぱり、あの隊長は苦手だ。
- 49 :
- 持ち場の信号はすべて停止していた。
複雑に絡み合う道路を走る車は、普段は複雑に組み立てられた
信号システムが完璧に制御しているが、電力の供給がなければ当然使い物にならない。
そこで俺たち信号員の出番となる。
こう言うとさも高度なことをやるような感じだが、何の事はない、
俺たちは昔ながらのアナログな手旗信号で交通整理をするのだ。
しかし、この階層都市では三叉路は当たり前、場所によっては上や下の層に
行く道もつながっている立体四叉路などもあり、手旗だろうが何だろうが
信号がなければ事故は免れえないのだから責任は重大だ。
しかし…責任ある仕事とはいえ、馬鹿の一つ覚えのように手旗信号を繰り返すのは
あまりぱっとしたものではない。小さい頃、停電したときに
信号塔に登って旗ひとつで車の流れを操る信号員がとてもかっこ良く見えて
この仕事に就いたというのに、実際は停電したとなれば寝ているときでも叩き起こされ、
ひたすら旗を振る日々。目立つような業績が立てられる訳でもなし、世間から顧みられもせず、
したがってモテない。
何を憧れてたんだか、昔の俺は。
あほらしい。
俺は信号を無視して進もうとした車に鋭く警笛を鳴らして「止マレ」のサインを出した。
「あー…疲れた…」
「お疲れ」
休憩室の扉をあけた俺に同僚が声をかけた。
あの後ほとんど休みもなく、あっちこっちの停電現場に回され、結局12時間近く旗を振っていた。
「こんなのありかよ…腕がぱんぱんだ」
「まあなあ、一応俺らも軍属だし、緊急時はこんなもんだ」
「あーあーあー、理想と現実はどうしてこうも違うものなのかねぇ」
缶コーヒーを飲みながら雑誌を見ていた同僚は目を上げずに薄く笑った。
「理想?」
「そう。小さい頃はカッコイイと思ったんだがな。
停電の危機を救う紺色の制服!翻る紅白の旗!あっ危ない!お嬢さん!
いえいえ、御礼には及びませんよ、仕事ですから!みたいな!!」
「たのしいねぇ」
「あーあーあー何か大きな手柄立ててみたい!昇進したい!
んでもって、女の子にモテてみたい!」
「そうかー、まあ、がんばれ」
「ううう…」
気のない相槌にため息をついてソファに沈み込む。
「そういや、お前」
同僚がやっと雑誌から目を離して言った。
「コーラ、開けたんだってな」
「それがどうした。要らねえよ、どうせ気が抜けちまってる」
「ああ、飲まない方がいい」
「全く、誰だか知らんが思いっきり振っておいたんだぜ、あれは。噴水みたいに噴き出してきた」
愚痴を言い始めると同僚がまた興味をなくしたように雑誌に戻ったので、俺はTVをつけた。
『ま・ほ・うのことばで たぁーのし〜ぃなかまぁ〜が』
鬱陶しい例のCMが流れてきたので、すぐに消す。
ソファに凭れて安っぽい天井を見上げる。自然と溜息が漏れる。
「つまんねー…」
「おい」
「何だよ」
「大変なことになった」
同僚の目線の先の道路状況をモニタしている液晶を見た。
一番交通量が多く、交差点が連なっている第38から49路に事故を表す
赤い点が点滅し、渋滞を表す真っ赤な線が道路を埋め尽くしていく。
「事故だ」
そう同僚がつぶやいた瞬間、頭上のスピーカーががなり立てた。
「緊急召集。事故発生。総員各隊ごとに集合せよ」
- 50 :
- 7月4日(月)7:00
リング・らせん、という創作作品の中に「貞子」というホラーヒロインが登場したのは、
今からもう数年前のことで、当時の俺は原作の小説を先に読んでいたため、その姿に儚い
薄幸の美少女を思い描いていたものだった。
ところが映像化されるにあたって俺の目の前に現れた貞子は、長い髪で顔を隠した、恐ろ
しい目つきを持つ奇怪な女であり、その登場シーンのショックと恐怖から、俺の記憶の中
にいた美少女は、得体のしれない不気味な生物へと置き換えられてしまった。
最初はその違和感に嫌悪すら感じていたものの、貞子のビジョンはここ数年のホラー作品
に登場する幽霊(というか妖怪というか)像に示されるとおり、模倣され、デフォルメ
され、ある種恐ろしい女の「記号」のように扱われている。俺も時が経つと共にいつしか
その扱いに感化され、今となっては増殖しすぎた「貞子」の姿に、どちらかと言えば魅力
すら感じざるを得ない。
――さて、何故今このタイミングで俺がこんなことを書いているのかというと、先日(日
付としては最初に書いた7月4日になるが)貞子と出会ったからである。
- 51 :
- 痴呆の進行していた祖母を施設に預けたので、祖母の荷物(収集癖があったのでほとんど
ゴミである)を整理して、必要のない箪笥等を粗大ゴミに出すため、早朝、台車に乗せる。
我が家は割と急勾配な坂の上にあり、収集所はさらにその上にあるので台車も安定せず、
起き抜けには重労働だといえよう。ただ、初夏の朝風というのは思いのほか気持ちがよく、
Tシャツに滲んだ汗を、さらさらと吹き飛ばしてくれる。そんな感覚にふと、子供のころ
に通っていたラジオ体操を思い出し、自然と顔もほころんだ。
ひとつ、ふたつと箪笥を運び(もともと祖母が拾ってきたもので、大量にある)、みっつ
めの箪笥を取りに戻ろうとしたとき、見下ろす町並みの中央、坂の下からぽつりと少女が
登ってくるのに気がついた。
ゆっくりと、しかしリズミカルに揺れる長い黒髪と白いワンピース。この時はまだ俺の中
に「貞子」という言葉は浮かび上がってはいなかった。
彼女は自分の身体の3分の2ほどもあるゴミ袋を両手で横に持ち、ある程度重量があるの
だろう、小さな体躯でバランスを取るべく、身体を逆に倒しながら細い二の腕を震わせて
いた。
(小さいのに偉いなあ)
そう思ったのが一瞬、身体を斜めに倒しているがゆえに、長い黒髪が顔を覆っているのを
見て、俺は思わず口元を押さえた。彼女の姿は記憶の中にあるあの「貞子」だ、とここで
ようやく気がついたからだ。
- 52 :
- いや分かる。貞子でないことは分かる。坂に対して少々前屈しているために髪が前に全部
下りてしまっているのに、一生懸命に大きなゴミ袋を持ち、両手がふさがっているからか、
それをかきあげることすらできない。
(こいつは貞子じゃない、一生懸命な偉い子だ。でも貞子ということにしておきたい)
次第に近づいてくる幼い貞子を目の前にして、俺は呆然とすることしかできなかった。
鼓動が早まる。もし呪われてしまったらどうしよう。いや、小さい貞子だから助けないと
いけないのか、それとも接触したらまずいのだろうか。
巡る思考をまとめられず、呼気だけが荒いでいく末、ついに貞子が俺とすれ違う。
俺の脳裏に、あの不気味な目つきが蘇る。横を向いてはいけない。彼女と目をあわせては
いけない。あの目で見られたらきっと恐怖で死んでしまうに違いない。
――でも、見たい。
- 53 :
- ふと沸いた好奇心が、恐怖を凌駕した。
身体は動かさず、呼吸をし、思い切ってすっと視線だけを彼女に向ける。
すると、垂れきった前髪の隙間から覗く、彼女の小さな瞳もこちらを伺っていた。
(ひいっ!)
その瞳は、ちょっと疲れたような、困ったような、そして何かを訴えるような、そんな瞳
だった。
(貞子だ! ウチの近所にちっさい貞子が住んでた!)
もう限界だった。
俺は堰を切るように台車を押して、家の敷地に駆け込んだ。
荒ぶる心臓をを抑え、靴を脱ぎ捨て、中にいる妻に向かって叫ぶ。
「い、今! ちっさい貞子がゴミ出ししてた!」
「バカじゃないの?」
家の外で「あら、えらいわねー」と近所のおばさんの声がした。
頑張れ、小さい貞子。
- 54 :
- http://loda.jp/mitemite/?id=2364.jpg
下描きまで描いてなんか違うなーとか思って
途中で止まっているのをいくつか
- 55 :
- >>54
ゴキ王っぽいのがいるw
カッコよすぎワロタwww
http://loda.jp/mitemite/?id=2367.jpg
- 56 :
- ゴキかっこいいなおいw
- 57 :
- 橿原研二記念館
神奈川県横浜市青葉区柿の木台28-18
- 58 :
- 以下4〜5レスほど、創作発表板3周年の賑やかしにでも。
- 59 :
- 私が“彼女”を初めて見たのは、今の仕事を始めて間もなかった頃だったと思う。
急に降り出した天気雨に慌てて近くの竹林に駆け込んだ私の、目の前を通り過ぎていった花嫁行列。
その中に、年のころ十代前半とおぼしき少女がいた。時折、淡い黄色の尻尾がちらついていた。
それから数年後、私は職人に頼んであった品物を引き取りに行き、その帰りに
町外れの道を歩いていた。
名も知らぬ小さな花が咲き乱れる小川の岸に二十歳前くらいの女が佇んでいた。
その黒髪は日の光を受けて赤みを帯び、つややかに光っていた。
しかしそれは同時に、狐の姿でもあった。
狐の姿と女の姿が重なり合って見え、これは化かされるかと身構えさせるには充分だった。
彼女は私の姿に気付くと、にこやかに話しかけてきた。
「良いお天気ですね」
彼女は近くにある商家の娘だと名乗った。私には聞き覚えの無い名前だったが、
世間では新しい姓が次々と名乗られていたので、それ自体は奇異な事ではなかった。
彼女は年季奉公から戻ってきて間もなく、この辺りの様子にどんな変化があったのか
聞きたかったのだという。少し話をするうちに、彼女は私の仕事に興味を持ったらしかった。
「何のご商売をされているんですか?」
「筆の卸売りを」
「ふうん、この近くでは筆作りが盛んですものね」
「もしお家の方で何か筆をご入用でしたら、ぜひご用命を」
「あら、商売熱心だこと」
「そりゃまあ、こんなご時世ですから」
その時は少しばかり立ち話をして別れた。あの辺りに行く事は少ないので
彼女にも再び会うことは無いだろう、そう思っていたのだが……
- 60 :
- 再会したのは、雨の季節に変わった頃だった。
季節は変わり、夏になった。
鎮守の森に入ると、暑さも多少は和らいで感じられる。
「狐の毛を使った筆はあるんですか?」
「うーん、主として使ったものは少ないですね」
「それはどうして?」
「毛質が軟らかいので、使い道が限られるんですよ」
「そうなんですか」
「狸毛の筆は書道用として珍重されるんですけどね」
「あら、化ける生き物同士なのに、えらい違いなのね」
彼女はそう言って、くすくすと笑った。その顔が、何故か魅力的に見えた。
「化ける生き物では、鼬の筆が一番高級品ですね」
「それじゃ、沢山捕れたらお金持ちかしら」
「知り合いにイタチ捕り名人の方、いませんか?」
都会で彼女を見かけるようになった。
何度か立ち話をしたが、家の用事だと
新顔の妙な猟師が現れたのだという。
その猟師は決まって一度に4〜5匹のイタチを持ち込み、ほとんど口を利かない。
そして金を受け取るとすぐに消えてしまうらしかった。
- 61 :
- その後3年程の間に彼女はどんどん魅力的になっていった。
光を受けると赤い艶を見せる彼女の黒髪は
いつだったか、彼女とこんな会話を交わした事がある。
「随分とあでやかな感じになりましたね。いつか見た時とは大違いだ」
「そりゃ女は化けますから。狐みたいにね」
「ははは、あまり男たちを化かして不幸にしないでくださいよ」
「化かすのは狸親父に限っていますから、ご心配なく」
「おや、それじゃ私も危ないな。それはそうと、こちらが頼まれていた品です」
「いつもありがとうね。はい、お代。木の葉のお金かもしれないわよ」
「それは困った、音を確かめてみなければ」
「あら大丈夫よ。それよりも、妹分の子が良い筆を欲しがっているんだけど……」
こんな調子であったから、彼女は私の小さな得意先でもあった。
品物の受け渡しは稲荷神社の境内が多く、その静かな雰囲気の中で彼女と話している時間は
日常生活と異なるような感じがしたものである。
だから、彼女が故郷の町外れにある寂れた花街にいると聞いた時には驚いた。
その後も時折見掛ける事はあったが、彼女の身なりは次第に悪くなっているようだった。
そしてある日、彼女からの手紙を受け取ったのだ。
手紙を受け取って翌々日の朝、私はあの狐に出会った小川へ向かった。
果たして彼女は若い男と一緒に立っていた。なかなかの美男子で、彼女の肩に手を回している。
だが私には、同時にそれが偽りだということも分かってしまった。
彼女は私に向かって、精一杯の幸せそうな顔をしてこう言った。
「今までお世話になりました、もう会う事も無いかもしれませんが、どうかお元気で」
狐の毛並みは悪く、幾分痩せているだろうか。道端の地蔵のそばに立っていた。
そんな彼女には、かつての清楚さも妖艶さも無く、老いた異形の生き物がただ見栄を
張っているようにしか見えなかった。私は狐に声を掛けられず、黙って深々と頭を下げた。
そして何も言わずに立ち去ったのだった。
それが2年前の事である。
- 62 :
- さて、ついこの間、私はある筆職人の家を訪れていた。
身寄りの無い彼は数年前に大きな病を得、人づてに死んだと聞いていたのだが
最近になって手紙を受け取ったので、その住所へ訪ねてみたのだ。
職人の家は古びた一軒家だった。隣の家までは歩いて十数分は掛かるだろうか。
“彼”は元気そうに振舞ってはいた。実際、健康状態は良くなっていたのかもしれない。
しかしそれでも私には、“彼”が私に衰えを見せまいとして無理をしているように感じられた。
「その後、お体の方は大丈夫なんですか?」
「ええ、何とかやっていますよ。手紙を出したのは、この筆を見てもらいたいと思ったからでね」
「見た事の無い感じの筆ですね」
「狐の毛ですよ。知り合いが毛皮を持ち込んだのですが、思いのほか毛の質が上等でしてね」
「ほう、狐を単独で……変わった事をなさる」
「最近、その動物だけの毛を使う事で、それぞれの動物の個性が活きると思うようになったんですよ」
「なるほど……」
「まあテンやイタチには及びませんがね。でも狸なんかよりは上等じゃありませんか?」
その筆は、あまり良いものとは思えなかった。毛の質自体は確かに悪くないが、
特に上等と呼べるものでもない。この感じは若い狐の毛ではないだろう。
それに熟練の職人の作にしては作りが雑というか、どうも作り慣れていない感じがする。
彼が病気を患った後の作だからなのだろうか。“彼”は私の様子を心配そうに見ているようだ。
顔を上げてみる。向こうの机にも筆が並んでいた。
使い古しの雑多な筆。どれもが見覚えのあるものだ。
最初に彼女に納めた化粧筆、いつだったか特注で作った白粉刷毛、
確か最後に納めたのは、あの最後の手紙を書いたであろう小筆だったか……
一瞬、目の前に、あの妖しげな赤い艶のある黒が見えたような気がした。
今、私の目の前にあるのは何の変哲も無い、淡い灰色の穂先を持った数本の筆である。
窓から入ってくる日の光を浴びて、机の上で静かに並んでいる小筆。
もしこれを引き取っても売る当ては無いだろう。だが……
しばしの沈黙の後、“彼”が声を発した。
「雨が……降ってきましたね」
「本当だ、天気雨ですね。傘を持ってきておけば良かった」
「狐に化かされないようにしなければ」
「あはは、気をつけて帰ります。……それで、この筆なんですが」
「……はい」
職人の家を出て少し歩くと、竹林の中を通る。
少し立ち止まって何かを待ってみたが、何も起こらなかった。
竹林を出て空を見上げると、そこには細くて淡い、七色の虹が出ていた。
ふと、遠くで嫁入り行列の声が聞こえた気がした。
私の机の上には今、行く当ての無い数本の筆が並んでいる。
- 63 :
- 以上投下終了。
見た夢を元に書いてみたけど途中の展開に行き詰まり、1年ほど放置してた代物。
化けて出てくる前に供養供養。
- 64 :
- 乙です
なんか懐かしさみたいなものを感じるお話でした
さて、わたしも祭りに投下するお話を書くお仕事にもどりますかねw
- 65 :
- 乙です!
行間を読むのが楽しい作品でした
- 66 :
- これは凄い良作
綺麗な描写が素敵でした
- 67 :
- 会話が素敵過ぎるなあ。
- 68 :
- なにか「写真を撮られるのでVサインをしている」といった感じの不自然さを感じたので没にしたラフです。
描き直したラフがあるので、そっちは完成させるかも。
http://loda.jp/mitemite/?id=2386.bmp
それと某スレに書き込もうとしたら規制中でそのままにしてた駄文も貼らせて頂いてみます。
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何かの本で見たのかそれともテレビで聞いたのかなんて忘れたが、現代人は視覚に頼りすぎだなんて言ってる人間がいる。
曰く、そのため他の感覚が普段ないがしろにされているんだと。
そんなのは、またよくある安っぽい現代文明批判の一つに過ぎないと思ってたが、
こうしていざ自分が視覚に頼れない状況に突き落されてみると、
なるほど確かにその通りなんだなあと解らされざるを得なかった。
右手で携帯のいろいろなボタンを無軌道に押しつつ、俺は一歩一歩を恐る恐る踏み出していく。
ここにはまるで光というものが存在しない、何かを見るという行為は全く出来ない。
そのうち目が暗さに慣れてくれるだろうという甘い願望が、完全な闇に消し去られてからもう10分も経っているのだろうか。
今持っているものの中で、たった一つだけなにがしかの光をもたらしてくれる可能性のある携帯は、
この家の扉を開けてからすぐに電池切れのメッセージ音を鳴らしやがった。
何かのはずみで少しの間だけでも電源が入ってくれないかと、とにかくいろいろ押しているのだが、
普段時々遭遇するそういう小さい幸運は、今は全く俺のところに降りてきてくれない。
こんな中で足を踏み出していくのは怖いものだ。次の一歩の先に何があるのかわからない。
しかし、俺が怖がっているのは本当にそのことだろうか?
俺の足が床に落ち、押し込み、軋みを残して離れていく音が、そういうふうに一つ一つ区別できるほどはっきり聞こえる。
それはまるで自分以外の何かの足音を聞いているよう。
一体、俺が怖がっているのはどちらなのか。
いや、本当は理解している。自分が怖がっているのはどちらなのか、本当は理解している。
しかし、それを認めてしまったら、何かが崩れていきそうで、俺は頑迷なまでにそれをわかってしまうのを拒む。
鋭敏になっているのは聴覚だけじゃない。右手は携帯をいじっているが、左手のほうは壁をなぞっている。
その左手が、壁にうっすらと付着している埃を掻き分けるのか、押し退けるのかの違いさえ感じられる。
左手を壁に這わせているのは、照明のスイッチが見付けられないかなどと考えているからではない。
電気なんかとうに来ていないだろうなんて、誰だってこの家の外観からすぐ予測がつく。
壁に手を添えていなければ、こんな闇の中ではただ真っ直ぐに進むのだって難しいからだ。
左手に伝わってくる壁の感触に、周囲の状況が少しは理解出来ることからの、ある種の安堵が得られている。
しかし、この安堵は、本当にそれだけのわけから来るものか?
もしかしたら俺は、ここには少なくとも床の他に壁もある、
つまり自分は、まったくわけのわからない異界にいるのではない、ということが確認出来るから安堵しているんじゃなかろうか。
……何を馬鹿なことを。
そう、まったく馬鹿げた発想だ。そんな当たり前のことに、確認も、確認出来ての安堵もあるものか。
俺は自分で自分のことを少し嘲笑した。
だが、そんなこと、自分が異界にいるのではないのは当たり前なんてことを、
思っていられたうちはまだしも幸せだったと思い知らされることになろうとは、
淀んだ空気を押し分けて進んでいたあの時には、俺はまだ気付いていなかった。
- 69 :
- 没絵シリーズ
http://loda.jp/mitemite/?id=2458.jpg
- 70 :
- アースとはさみさんがかっこいいけどそんなのどうでもいいくらいに、いかづちが可愛いw
- 71 :
- 墓場だからsageてくれると有難かったり。前スレもsage行進
気味だったから。
あと恥ずかしいから…
- 72 :
- その少女の股間には、あってはならない物が根を下ろしていた。
それが男根だったら、まだ、ありかもしれない。
だが少女の陰部に取り憑いているのは、この世の物ではあらざる異形――
一本の触手であった。
- 73 :
-
因幡リオがウーロン茶を口にした途端、親友の芹沢モエが藪から棒に「アヘ顔ダブルピース、見たくね?」と言い出したので、
机の上にぶちまけそうになった。大好物のサンドウィッチと共に平和なまま過ぎていくはずだった学園のお昼休みも、
真顔でとぼけたことをしゃべるモエのおかげですっかり掻き乱されてしまった。
仲良く机を合わせたお昼ご飯のひと時。モエとリオは何気ない女子高生の会話できゃっきゃしていたのに、
いきなり放り込まれた取り扱いに困る話題がリオを困らせる。リアルでネットことばを持ち出されると居た堪れない気持ちになる。
ネットことばにあかるいと尚更だ。残念なことにリオはその部類の子だった。ニーソックスの脚をぎゅっと合わせて背を丸める。
(頼むから、リアルの世界で『アヘ顔ダブルピース』だなんて言わないでくれ!)
一方、モエはハイテンションのまま短いスカートをばたばたと脚で揺らして、昨晩勃発した『芹沢姉弟・アヘ顔ダブルピース事件』の
一部始終を語る。長いウサギの耳を傾けて、リオは黙ってウーロン茶のペットボトルを机に置いた。
モエが自宅のPCでネットを彷徨っていると、ふと好奇心で弟の閲覧履歴を覗きたくなってしまった。
ちょっと前まで弟が使っていた。だから、弟はどんなページを覗いていたんだろうかと、姉として余計な気遣いが回る。
開けてはいけない箱ほど開けなければならない。おそるおそるカーソルを合わせ、お気に入りを開き、履歴タブを左クリックすると
ずらりと曜日順に履歴がモニタ上に並ぶ。当日を選ぶ。検索内容を覗き見したいから、グーグルを選ぼうとモエは目を細める。
「ちょ……。何?『アヘ顔ダブルピース』??」
聞きなれない言葉ほど、その内容を知りたくなってしまう。知るは楽しみなりと昔から言うではないか。
画像検索された跡がある。誘われるがまま開くと、モニタ上に『アヘ顔ダブルピース』が小画面として並んだ。壮観だ。
恍惚と天に昇ったような表情、だらしなくもありこの世の快感を全て独り占めしてしまった夢心地。人はこれを他になんと呼ぶのだ。
その言葉は。
『アヘ顔』
歯と舌に粘りつく唾液は白く光り、つややかに反射している。誘惑とも解釈してもよかろう。瞳から流れ、口元から微かに流れる
汚れなき雫を誰も拒まない。生まれたての呑み児でさえも羨む地上での絶頂への喜び。そして頬には無抵抗の印が重なる。
その言葉は。
『ダブルピース』
己の快楽を誰かに見せ付けるのは、手放すことの出来ない幸せを握ったの証拠ではないか。
見ているうちにモエは獲物を追うケモノの血が騒ぎ出した。
「ちょーうける!」
尻尾を振りながら、モエはPCを閉じて弟のもとへ駆け寄ったのだった。
「……で、タスクくんに?」
「でも、アイツったら全然よがらねーの」
- 74 :
- 『アヘ顔ダブルピース』の肝は「誰かに見せ付けるダブルピース」だ。
だが、身内とあって照れに負けた弟のタスクは拒否してしまった。不完全燃焼の『アヘ顔ダブルピース』などいらない。
「こんなものは『アヘ顔ダブルピース』じゃない!」と、拳をドンと机に叩き付けると、リオのウーロン茶が波を打つ。リオはリオで
(早くこの話題が過ぎ去って欲しい)と冷や汗をかいていた。
「リオー。リアルに見てみたいよね。アヘ顔」
「い、いや……別に」
「クラスの男子にさせちゃう?させちゃおうよ!うけるし!」
ひょいとリオのサンドウィッチをモエがひったくり、むしゃむしゃと口にしてしまうのをじっと見ながらリオは自分のメガネを直した。
ルーズソックスに包まれて女子高生の香りふんふんと撒き散らすモエの脚が、話にイマイチ消極的なリオの脛をつんつんと突付いていた。
ネットの上では平気に口に出来ても、教室の中じゃ裸にされるより恥ずかしい。リオは人一倍それに敏感だ。
自分のテリトリーにずかずかと入り込まれるのは胸が痛む。相手に悪気がなければ尚更だ。
「誰にさせちゃおっか?」
「……大柄な男子の方がいいかも」
ようやく話に乗ったリオの言葉には理由があった。
一つは「もしかして自分がさせられるかもしれない」という危機の回避のため。
そして、もう一つの理由。
「例えば、ちっちゃい女子が厳ついマシンガンを振り回す。ちっちゃい女子がベースやギターを上手に扱う。ちっちゃい女子が
バイクに跨り風になる。相手が大きく、そして立派な体格なほど『アヘ顔ダブルピース』は破壊力があるんじゃないのかなあ」
「もしかして、それって」
「萌え……っていうの?よく知らないけど」
「そっか!さすが、風紀委員長。あったまいい!」
(『よく知らないけど』って言っちゃった……)
本当は自分の得意分野だ。薄い本に住む二次元の子に向かって「むっはー」だなんて、だらしないセリフをはいている。
リオはウソツキな自分がつくづく嫌になってきた。だが、モエが非常に乗り気なのであわせてあげることにした。
(わたしの方がアヘアヘされちゃう!)
でも、モエの笑顔が見たいから……。
モエが手を打って叫ぶ。
「張本丈!」
クラスの男子の名前。身長は2メートルに近い巨漢、それでいて気は優しいオオカミ男子。
リオの脳裏には丈の『アヘ顔ダブルピース』が浮かんでは消えて、浮かんでは消えていた。
- 75 :
- 「張本なら、学校の下のコンビニにいたよ」
お昼を買いに出かけた際、リオは丈を見かけていた。丈は無類の甘い物好き。コンビニの甘味フェアを見逃すはずがなかった。
背中を丸めてじっくりと大柄な男子高校生が女子に混じってデザートコーナーで物色する光景。見慣れると自然に見えてくるものだ。
だが、お昼休みも半分以上過ぎているのに……。
「もうすぐお昼時間終わるのに、張本戻ってこないよ」
「もしかして。丈くん、悩んでる系?」
「かも」
「尚更させてー!」
休み時間が残り少なくなってきたけど、食後は外の風に当たろうとリオとモエは教室を出た。にこにこと人生でも
短い女子高生の時間を楽しむようにモエが頬を緩めるが、リオはまだ頭から離れない『アヘ顔ダブルピース』のことを考えていた。
いまどきの女の子のモエは相手に遠慮がいらない子。
「そういえば。この間メール、うさ返さんきゅー!」
「え?あぁ。うん」
「次の時間、移動教室だよね。まじきつくね?午前にマラソンあって、体動かねーって感じ?」
くるくると目まぐるしく話題を変えるモエは刹那的だ。階段を降りてしまうころには、きっとまた別の話題に移っているに違いない。
同い年のはず。育った環境も、食べてきたものもそんなに変わらないはず。なのにリオは不思議とモエのことがあかぬてけ見える。
昨日も、今日も、明日も、モエの目には違う景色が広がっているのだろう。リオと違って。
だって、リオの頭の中は『アヘ顔ダブルピース』でいっぱいだから。
すれ違う誰もがアヘ顔、周りの誰もがダブルピースで突き抜ける享楽的で産まれたての屈託のない笑顔をリオに焼き付けるような
自分勝手な被害妄想。リオは軌道修正して放課後蒸し返されないように、敢えてモエに『アヘ顔』の話題を振ってみた。
「ねえ、モエ。ア……」
「やっべぇ!教科書忘れたかも?」
モエの会話のローテーションに振り回されて、肝心の話題が振れずにいると、噂をすれば影。
息も絶え絶えにコンビニの袋を手にして急いで学園に戻ってきた。ぱんぱんに膨らんだ袋の中身はシュークリームに
メロンパン、そしてバームクーヘンと全て甘味類。口を開いて目もうつろ。肩で呼吸をしながら髪を振り乱す。
モエは丈の姿を見逃すはずがなかった。彼女は鼻の効くイヌだ。首輪を解かれた猟犬は、まっすぐに獲物の首へと牙をむいて飛びついた。
- 76 :11/11/07
- 「張本!『アヘ顔ダブルピース』して!」
「なに?なに?それ……はぁはぁ」
理解する余裕の無い丈はモエへ顔を向けるだけで精一杯。モエはお手本を見せるように『ダブルピース』を丈に見せ付けた。
モエは花も実もある女子高生。女子高生から誘われて断る男子なんかいるもんか。張本丈も男子高校生だが、彼は大人しい。
果たしてモエの言うことを聞いてくれるのかどうか。しかし、悩むに及ばず。
「こ、こう?はあはあ……」
迷わず丈はダブルピースをモエのやる通りに真似て、口を半開きにしてコンビニの袋を腕にぶら下げていた。
「きゃはははは!アヘった!ばか!ばか!まん……」
「モエ!」
口元から湯気を吐き出すように息を荒くして、丈は疑うことなくモエの言葉通りに動いた。
それがおかしくて、おかしくて。がたいのよい男子が可憐な女子高生の言葉にそそのかされているのが、モエには愉快だった。
一方、訳が分からないまま『ダブルピース』を強要された丈の顔面はとろけそうであった。シューの割れたシュークリームのように。
とろけた顔は無様だ。優越感さえ漂う。だから人々の加虐的快感を喚起させ、拍車をかける。
「うけるー!もっとあえげー!」
「あえ……ぐぅ?」
ツンとモエが丈の両腕の肘の裏をくすぐる。両手をふさがれた巨漢は小柄な少女になすすべもなく、溺れ沈むような声をあげる。
丈が被虐の蜜を吸えばすうほど、モエの加虐の花弁が咲き乱れる。けらけらと少女の笑い声が廊下に響いた。
リオはリオでモエから写メを撮るように指示をされ、言われるがままに、自分の身を守るために携帯のシャッターを切った。
「むっはー」
生気の無いリオの声。
丈の『アヘ顔ダブルピース』は二人が想像していた以上に板についていた。
生身でアヘ顔を見てしまったことの罪悪感、二次元だけの者が見せることの出来る特権だと信じていた過ち。
そしてモエとの間に芽生えた共犯意識がリオを苛めていた。
それでも友のために、携帯電話はリオのシャッターを切り続け丈のアヘ顔を撮り続けた。
おしまい。
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