2011年10月1期創作発表PerfumeでSS!!じゃけえ
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PerfumeでSS!!じゃけえ
- 1 :10/11/08 〜 最終レス :11/11/27
- 落ちてたから立てた。
- 2 :
-
<206X年>
発展途上国の都市開発や人口増加が勢いを増し、資源が枯渇、化石燃料も底をつきエネルギー問題が表面化。
国連は新たなエネルギーシステムを開発すべく、各国の有能な科学者を集わせ“新世界機構”通称ONW(=Organization for neo world)を設立。
<208X年>
科学技術の極度な発展により環境問題が深刻化、大都市ではコロナと呼ばれる空間内での生活が余儀なくされる。
その頃ONWが新世界の開発に着手、しかしその内容は表明されない。
そして21XX年…
- 3 :
-
東京-エリア3某所
空気は澄んでいる。
流れる雲、透き通るような青空。
そんなありふれた光景も、ここでは人工的に造り出されている。
そして、空とはこの様なもの。
いつからかそんな時代になっていた。
人口100万人以上が暮らすこのエリアは、コロナという薄く頑丈な膜ので覆われ、その中で人々は不自由なく暮らしている。
「綾香!あんた友達待たせてるわよ!」
「分かってる!」
綾香と呼ばれた女の子は友達と髪のブローを天秤に掛け、髪をとったようだ。
そのおかげで納得のいく髪型になったが、待ち人の顔は明らかに納得してはいなかった。
「あ〜ちゃん遅いよ!」
真っ黒のロングヘアーをブラッシングしながら、彼女は綾香の顔を軽く睨む。
髪がちゃんとセットしてあることにも腹が立ったのだろう。
「有香ごめんねぇー」
「なんで今日に限って遅れるん?!」
二人は駅に向かって駆け出した。
- 4 :
-
「こんな朝から全体講義って何よ、それに絶対出席しろとか」
有香は駅のホームでリニアを待ちながら不満を漏らす。
「でも有香はええねぇ。朝はお手伝いさんが起こしてくれて、朝食にはいちごのタルトを」
「私タルト食べれない」
「えぇ?!じゃあ代わりに食べてあげよっか?!」
「なんでそうなるん…」
『お客様へご連絡申し上げます。ただいま、通電障害により、
いくつかのリニアを一時停車させていただきます。ご了承ください』
「嘘ぉ〜」
綾香はため息を吐きながらホームの椅子に腰を下ろした。
ガックリと肩を落とした彼女に向かって、有香は冷静に言い放つ。
「もう完全に遅刻だね」
しばらくの沈黙の後、綾香は思い出した様に口を開いた。
「そういえば今日何で早いかって言うと、ONWの人が来て人体汚染調査(?)するらしいよ」
「へぇ、でも今さらどうでもいいでしょ」
「そだね〜」
時間だけが進むまま、二人はホームに取り残された。
- 5 :
-
「やはりそうでしたか」
「はい、ですので全ての作業が終わるには後数時間は必要かと…」
スーツ姿の男性と駅員が話している。
「あ〜ちゃん聞いた?数時間だってよ、歩いた方早くない?」
「そやね…、あたし裏道知ってるよ!」
「その道大丈夫なの?」
「エリア3に綾香ありじゃけぇ」
二人は駅を出て人通りの少ない路地裏へ出た。
「あ、なんか裏道っぽい」
「昔おにごっこしてた時よくここ使ってましたから」
「子供の知恵ですか」
「その通り」
路地の奥にある古びた階段を下ると、
そこにはいくつもの道が広がる大きなトンネルがあった。
幸いにも明かりは点いている。
「ここ本当に大丈夫なの?」
「多分…、この矢印に従って進めば大学の近くに抜けるはずなんだけど」
有香は綾香のその信憑性のない言葉を無理矢理信じた。
- 6 :
-
「4番出口…、4番出口…」
「これじゃない?」
「あ!ほんとだ」
出口を見つけ安堵の表情を取り戻した、その瞬間だった。
ガサッ
二人の後方で何かが動いた。
「い、今のなんだろ…」
「さぁ…、見に行く?」
「怖いからえぇよ」
「ここまで来させといて怖いはないでしょー」
有香は微笑をうかばせながら綾香を見つめる。
「黒有香…」
「とりあえず見に行こっ♪」
言われるがまま音のした方へ向かう。が、何もない。
「ほら、もういい?行こ」
「うん、つまんないのー」
道を戻ろうと振り替える、すると綾香は今までなかったはずの壁にぶつかった。
ドンッ
「痛っ、ん…?」
人だ。
- 7 :
-
真っ白な宇宙服のようなものを身にまとった輩が4〜5人立ちはだかっている。
「きゃー!!!」
自分の声か隣の声か分からないほど同時に叫び、同時に走り出した。
白い服を着た者たちは、ゆっくりとこっちに向かって来る。
「あの人たち何?!」
「し、知らんよ!だから戻りたくなかったのに!」
全速力で走っていると、目の前に大きな換気口が見えた。
行き止まりだ。
「はぁ、はぁ…あ〜ちゃんどうする?道ないよ」
「隠れるしかないでしょ…」
彼女たちは息を潜めて、換気口の前に置いてあった小さなコンテナの後ろに隠れた。
コトン コトン
コトン コトン コトン
足音が近づく。
脈の間隔が短くなっているのを感じた。
シュコー…
彼らのマスクから漏れた空気音が、より緊張感をかき立てる。
5mほど先で足音は止まった。
(このままあっち行って…!)
その願いも及ばず、再び彼らの足が動きだした。
- 8 :
-
お互い今にも泣きそうな顔を見合せながら、声を出さないようじっと堪えている。
「出てこい」
無機質な男の声が辺りに響く。
綾香は有香を促し、ゆっくりと立ち上がった。
「君達、ここで何してる」
感情の込もっていないその言葉に、怒鳴られるよりもずっと威圧感を抱いた。
「あのですね…。学校に行こうと思ったんですけど、リニアが止まっちゃって動けなくて。
だからこのトンネル使っちゃおうかなぁ〜とか」
こういう時あ〜ちゃんは本当に頼れる人だ、と有香はつくづく感じた。
「そしたら物音がするからなんだろーって思って」
「君達はONWの者と会っていないんだな?」
「は、はい?」
「今日エリア3では集会があったはずだ、ONWの者に会ったのか?」
「いや、会ってません…」
なんだかよく分からないまま返事をした。
「分かった。よし、確保しろ」
うわあミスった…、と綾香は後悔した。
白い服の者たちが迫ってくる、後ろは換気口。
「終わった…」
二人がそう思った瞬間。
とてつもない爆発音とともに辺りは粉塵で覆われた。
まるで映画のような光景に叫ぶこともできないまま身体は委縮する。
「なっ、なんだ?!」
彼らも動揺しているようだ。
「早く!こっち!」
煙の中から現れた両手は、二人の腕を掴む。
そのまま彼女らは側面の方へ引っ張られた。
- 9 :
-
人一人がやっとの狭い道。
古いオイルの匂いが漂っている。
二人は壁の隙間から漏れる微かな光で自分達の腕を引いた女の子を確認した。
髪型はショートで水色のつなぎを着ている。
年は同じくらいだろうか。
「ここに入って」
つなぎの女の子は道の途中にある錆び付いた扉をこじ開け、二人を誘導した。
扉の外は今までの小さなトンネルとは違い、四車線になっていて広々としている。
明かりは点いているのに驚くほど静かだ。
「ここで待ってれば仲間が来るから」
「はぁ…。えっと、さっきは助けてくれてありがと。
それで、あなたは何の人?さっきの奴らは?仲間って何?」
綾香は聞きたいことを素直にぶつけた、彼女は少し困惑しながら話す。
「んとね、とりあえず私の名前は彩乃っていいます。エリア5に住んでいて」
その発言に有香は鋭く切り返した。
「ちょっと待って、エリア5は完全な産業都市で人は住んでないんじゃないの?」
「…一般的にはそう言われてるけど、実際はたくさんの人が住んでるよ。ただ政府がそれを公認してないだけ」
「そうなんだ…」
「そしてさっきの人達は…その前にあなた達の名前、教えてもらっていい?」
綾香と有香はそれぞれ自己紹介をし、彩乃はここに来るまでの経緯を語った。
- 10 :
- エリア5にはコロナ設立のために雇われ、
完成と共にその場を追い出された人々が自分たちで街をつくり暮らしている。
彼らはAIで統制された街の、唯一の住民となっていた。
彩乃の親は元々エリア5の管理職に就いていた。
しかし政府の労働者に対するずさんな態度に反抗し、自ら職務を下りた。
そしてエリア5に住む人々の中心となって住民を支えている。
時は彩乃が二人に会う二日前にさかのぼる。
椅子に腰掛けながら、彩乃の父は少し神妙な面持ちで遠くを見つめていた。
「お父さんどうしたの?」
「明日の朝エリア1に行かなければならなくなった…」
「何、用事?」
「まぁ、な。それでお前に頼みごとがあるんだが、いいか?」
普段は命令ばかりの父が自分を頼りにしてきたことに少し驚いた。
「あ、うん。いいけど何すればいいの?」
「エリア3一緒に来てもらいたいんだ、
そしてこの荷物を古い友人に渡してくれないか」
そう言うと、彼はPCのメモリを娘に預けた。
「そこまでのルートはお前の携帯に転送しておいた、頼むぞ」
「うん、それで誰に渡せばいいの?」
「それは行けば分かる。今日は早く寝なさい」
データなんて直接渡さないで送信すればいいのに、
そんなことを考えながら彩乃は自分の部屋に戻った。
- 11 :
- 次の日。
見送る母親の顔も冴えない。
色んなことが頭で渦を巻く中、彩乃はエリア3へ向かう。
空気と電気を燃料として動く車、バグラム。
二人はそのバグラムに乗り無駄に広い地下通路を走る。
そこは昔エリア開発の為の作業用道路として活用されていたが、今はあまり使われていない。
移動中、父親はふいに呟いた。
「お前を信じてるぞ」
その発言に対していくつもの言葉が頭を過ったが、それは口に出さなかった。
「そうだ、一つだけ忠告するぞ。ONWの人間がいたらすぐに離れろ。分かったな?」
「う、うん…」
「…ごめんな、何も教えれなくて。そこに着いたらいずれ分かるはずだ、我慢してくれ」
「分かった、帰りはどうすればいいの?」
「明日になったら父さんが迎えに行くから、一泊するよう相手にも伝えてある」
エリア3に着くと彩乃はバグラムを下りて目的地へ向かった。
そこで何者かに追い詰められている彼女たちを目撃する。
- 12 :
- 「なるほどねぇ。じゃあ、さっきの爆発はどうやったの?!」
有香は興味津々に質問した。
「私、小さい頃から父さんの仕事を手伝ってたから電子機器には詳しくて…。
ここら辺細いガス管が通ってたからそれにショートさせた回路をぶつけてみたらヨッシャ!みたいな」
「すごいね!今度ゆかにも教えて!」
「うん、いいよ〜」
「…で、結局あの白い人達は何なの?」
しびれを切らした綾香が尋ねる。
「多分だけど、ONWの人間だと思う。きっとこのデータを狙って」
「待って、ONWの人たちなら自分たちと会ったかなんて聞かなくない?」
「それもそうだけど…」
綾香の鋭いツッコミに対し、彩乃は返す言葉が見つからなかった。
「で、でも迎えが来ると思うから。そしたら分かるよ!」
三人が15分程雑談をしていると、エリア1につながる道の奥にバグラムの光が見えた。
「あ!来た!」
彩乃は立ち上がり嬉しそうに手を振る。
その様子に他の二人も安心して腰を上げる、しかしすぐに彩乃は合図をおくるのを止めた。
「どうしたん?」
綾香が彩乃の顔を覗き込みながら尋ねる。
「あれは…」
- 13 :
- 近づくにつれ、乗っている者が誰かはっきりと確認出来きる。
白い服に身を包んだ人々。
「ど、どうする?」
有香が肩を縮ませながら二人に聞く。
「こ、こうなったらちゃんと話さなくちゃ…」
「父さんのことも知ってるかもしれないし」
目の前に停まった大型のバグラムから、何人もの人が降りてきた。
相手も一度逃げられたとあって慎重になっているのだろう。
一通り彼女たちの周りを囲むと、今度は優しい口調で話しかけてきた。
「さっきは悪かったね、少々説明をしなくなくてはならないようだ」
「その前に聞きたいんですが、父さんを知っていますか?」
眉間にシワをよせながら彩乃が口を開いた。
「そうか、君が大本君の娘さんか。
言いにくいんだが、彼が戻るにはもう少し時間がかかるかもしれない」
「いったい…あなたたちは、父さんは何なんですか?!」
これまで溜め込んできた言葉をついに吐き出した。
「私たちは反政府組織“wonder2”」
「そしてあなたの父親も私達の仲間よ」
「じゃあ、父さんがメモリを渡せって言ってた相手は…」
「私達だ。そして彼から君の保護も頼まれている」
「そんな…」
彩乃はショックで口を開けたまま黙ってしまった。
「でも反政府組織って言っても悪い人達じゃないんでしょ?
それで、なんであたしたちも捕まらなくちゃいけないの?」
綾香が前に出て切り出した。
「それについても詳しく説明する、とりあえず来てもらえないか?」
そういうと自分達をwonder2と名乗る者逹は、彼女たちに前に進むよう促した。
- 14 :
-
彼女逹は言われるがまま車内に乗り込んだ。
父を信じる彼女と、その彼女を信じる二人。
逃げ出すわけにはいかなかった。
これからの出来事をおおよそも予測出来ていない中、バグラムはどこかの施設に入ってゆく。
辺り一面真っ白な伐としたフロア。
その真ん中には、どこまでも続きそうな通路が一本あるだけだった。
「こっちだ」
指示に従いただ着いていく。
細部まで管理が行き届いているのだろう。
周りにはホコリ一つなく、あるのは20m感覚で現れる扉だけ。
そんな中、彩乃は最新のセキュリティシステムをいくつも確認した。
「驚いた?」
「えっ…?」
彩乃の隣を歩いている“wonder2”の一人が話しかけてきた。
穏やかな大人の女性の声だ。
「ここはね、あなたのお父さんも立ち会って建設された場所なの」
「そうなんですか…」
「そう気構えないで、私達に敵意なんてないのよ?」
彩乃は彼らが普通に話しかけてきたことに、何より驚いた。
- 15 :
-
足に疲れが表れてきた頃、先導者が立ち止まった。
大きく頑丈そうな扉。
扉には何重ものセキュリティが掛かっている。
それだけで、ここが普通でないことは容易に想像出来た。
扉が開き辺りを見回す。
少し薄暗いその部屋は、室内に並ぶ膨大な機材のためか少し肌寒く乾燥しきっていた。
部屋自体は広いはずなのに、今の時代では考えられないほど大きな機器の数々で窮屈に感じる。
「ずいぶん歩かせてしまったね、それでは説明に入ろう」
そう言うと、その者は何人かに指示を出し部屋の中央にある円卓のような機械を動かし語り始めた。
「まずはONWについてだ、君たちはこの組織を知っているかね?」
「えーっと、新しい世界をつくる…みたいな?」
この場面で適当に返答する綾香に対して軽く睨みを効かせた後、有香は答えた。
「『Organization for Neo World』通称ONWは資源の枯渇化や環境問題が悪化した
この世界に新たな命を吹き込むため、政府によって設立された組織です。
ですが実際の目的や活動はあまり表明されておらず、多くの謎があります」
「さっすがやね…」
呆れとも思える顔で綾香が漏らした。
「ほぅ感心だな、私が担任なら満点をやりたいよ。
では今からその謎について、君たちに教えよう」
彼が中央の機械にそっと触れると、円の中心から球体のホログラフィーが写し出された。
- 16 :
- 目の前に現れたホログラフィーは、青くところどころが緑色に染まっていた。
綾香が首を傾げながら呟く。
「これって…地球?」
緑の部分を地形とすると実際とは異なるものの、誰もがそう答えるだろう。
「地球に見えるかい?」
「は、はい…」
「だがこれは地球であって地球でない。もちろんこの世界にも人々は存在するし文明だって築かれている」
きょとんとした三人を見て、目の前にいる男性らしき人物が
マスクの奥でクスッと笑ったような気がした。
「そうだな、何を言っているか分からないのも当然だ。
むしろこちらとしてはここまで真剣に聞いてもらえるだけでありがたい。」
咳ばらいを一つし、キーを少し下げて男は語り始めた。
「君たちの今見ているこれは我々が住む地球に似て非なるもの。
そこには我々とは違う独自の文化が存在し、その中で人々が暮らしている。
一般的にはまだ知られていないもう一つの世界だ。
しかし突然もう一つ世界があると言われても信じられないだろ?」
そう言うと男は手を挙げた。
少しの間をおいて、キーンというハウリングのような音が辺りに響き、空気がビシビシと波を打つ。
彼女たちは急な音に驚き耳と目を塞いだ。
- 17 :
-
慣れない音に反射が起こる。
「キャッ!
…え?…こ、ここって?!」
有香の声を聞いて二人とも目を開けた。
「有香どうし…あ、花だ。あれ?花ぁ?!」
「何これー?!」
機器と配線に支配されていた部屋が、一瞬にして辺り一面花に包まれていた。
「直接触れてもらってもかまわない、映像ではなく実物だ。
いや、実物のような物とでも言っておこうか。」
綾香と有香は顔を見合わせ、恐る恐る花に触れた。
錯覚でも作りものでもなく本物としか思えない。
「うわあ、虫だー。生きてるよー、うっわー。」
彩乃のやる気のない発言で場の空気が止る。
「えーっ、ここはさっきまで我々がいた世界とそのもう一つの世界の狭間の空間だ。
もう一つの世界を疑似的につくったと言ってもいい。
そしてこの空間を構築しているのは、プログラムだ。
ここまで言ったら何か気付いたかな?」
考えながら有香が口を開いた。
「ヒューマン、プログラミング…?」
「…ご名答」
- 18 :
-
「えっ?何それ?」
「あっ、私もお父さんから聞いたことあるかも。
人間の感覚をプログラム化してそれを元に架空現実を見せるってやつだよ、多分。
一度あるゲーム会社がそれを利用して超リアリティMMOを作ろうとしたんだけど、
危険すぎるってことで廃案になったことがあるんだー。楽しみにしてたのに…」
「それじゃ、私たちは今プログラムになっちゃってるってこと?」
「半分正解だ、この部屋にいる人の感覚はプログラムとして処理されている。
しかしそれは錯覚ではなく一つの世界として確立された上での話だ」
「だめだ、意味わかんない…」
綾香は考えるのをやめた。
「…待ってください。それじゃあ、この空間自体をプログラミング化させて
一種の電脳世界をつくりあげてるってことですか?!」
「さすがだね。そういうことだ」
彩乃は顎に手を当て答えた。
「じゃあもう一つの世界って…コンピューターの世界?」
「はは、勘がいい子たちで助かるよ」
その発言に綾香だけが納得しなかった。
「今私たちの世界と重なるように、違う次元、異なる空間に世界が存在している。
そこはプログラムによって構築され、ソースコードによって支配されている世界。
ONWによって発見され、今もなお広がり続けている。これを知っているのはごく一部の機関と我々だけだ。
そしてその一部の者たちはこの世界をこう呼んでいる…」
「“エレクトロ・ワールド”」
- 19 :
- 「でも、なんでそんなことを…私たちに?」
有香は恐る恐る口を開いた。
「そうだね、君たちに言わせてみたらただの空事か他人事にすぎないだろう。
だけど話さなくてはならないんだ、もう途中では止められない。そんなところまで来てしまったからね…」
また耳鳴りが響く。
しかし先ほどのものより小さかったためか、少し冷静に辺りの光景を見ることができた。
視界がまるでモザイクをかけるようにドット化していく、そして気づくと真っ白な入道雲の上に彼女らはいた。
「うわあ!」
「な、なんか落ちそうで怖いね…」
綾香と彩乃が変化に戸惑っている中、男は間を入れず話し出した。
「ここはエレクトロ・ワールドの一角、“コンピューターシティ”の上空だ。
実際はその光景を模写したものにすぎないわけだが…。あれが見えるかい?
」
男の指の先をたどっていくと、遠くに真っ白な球体が歯車のような物の上に浮いているのが見える。
http://tubox.skr.jp/ch/big/src/1289178596912.jpg
「あれはこの“エレクトロ・ワールド”の心臓であり、世界の全てを司るエネルギーの源、“マカロニ”だ」
「きれいだね」
「うん」
「でも、なんか怖いよ…」
その不思議な造形物から、なぜか彼女たちは目を離せないでいた。
- 20 :
- 「この世界の事象は、全て“マカロニ”に基因していると言っても過言ではない。
あの冷たく幻想的な球の中には、無限のエネルギーが存在する。
何も傷つけることなく、必要なだけ燃料を取り出せることのできる夢のような機関。
そんなものがあると知ってしまったら、人間は必ず手に入れようとする。
今それを狙っているのがONW、新世界機構だ」
綾香が不思議そうに聞く。
「でもそれってすごい発見っていうか、いいことなんじゃないの?」
「そう思うだろう?しかしそれもただの夢に過ぎなかった。
まず、エネルギーをこっちにもってくる術がまだない。
何より“マカロニ”は完全ではなく、あれを絶対的なものにするには膨大な情報(データ)が必要なんだ。」
「情報ですか?」
有香の疑心はいつの間にか好奇心へ変わっていた。
「“エレクトロ・ワールド”はプログラムの世界、情報がエネルギーだ。
そして“マカロニ”もまた、ある情報を食べて成長している」
「…カレー、とか?」
「あははっ、彩乃ちゃん面白い!ww」
少し小馬鹿にするように綾香は笑った。
「えー、マジメなのに」
「…ねぇ」
「「ごめんなさい」」
「君たちといるとほんと退屈しない楽しいよ、だからこそ言いにくいな…。
“マカロニ”を成長させる糧は、我々“人間”なんだよ」
- 21 :
- 「じゃあ、人間を食べるってことですか…?」
「厳密に言えば我々のプログラムを餌にするということだがね。
しかしだからと言ってこちらの世界と関係がないわけでは、ない…。」
心なしか彼の声に、寂しさのようなものを感じた。
男はまた手をあげた。
そして耳鳴りとともに、元の伐としたあの部屋に戻った。
「さて、話もこれで最後だ。この世には“エレクトロ・ワールド”というもう一つの世界があり、
そこには誰もが羨む永久機関“マカロニ”が存在する。
しかしその“マカロニ”は人のプログラムを餌にして成長を続けている。
その餌にされたプログラムの持ち主はどうなるか…」
そう言うと、語り部の男を含め周りにいた者たちが、自分たちの着ている宇宙服のような白装束を脱ぎ始めた。
「え、何なに?!」
綾香が戸惑う。
皆いたって普通の人たちだ、中には外人もいる。
廊下で声をかけてきたのはあの白人の女性だろう。
彩乃はそんなこと考えていると、ふとあることに気づいた。
「あっ!み、みんな身体が…」
その者たちの身体の一部は、まるで荒い映像のようにぼやけてブレていた。
- 22 :
-
モザイク、とも違う。
確実にブレていて、まるで実体がないような。
「これは錯覚でないよ」
「よかったら触ってみる?」
彩乃は恐る恐る隣にいた白人女性の腕に触れようとする。
しかしそれは立体映像のように、いとも簡単に手がすり抜けていった。
「これが、マカロニに食われた代償だ。
エレクロト・ワールドとこの世界は繋がっている、あっちで私のプログラムが壊れた結果
実物にも影響が出たんだ」
「それ、大丈夫なんですか?」
綾香が心配そうに尋ねる。
「そうだな、笑顔で大丈夫と言えたらいいんだが。もう何人かやられてしまっていてね」
「…やられる?」
「このドット化はいずれ全体に広がり、物質として維持できなくなる。
そしたら消えてしまうんだよ、まるでテレビのスイッチを切るように。
いままでの全てが最初から幻だったように…」
三人とも黙って話を聞くとこしか出来なかった。
- 23 :
-
「政府はマカロニ完成のために一般人のヒューマンプログラムを使おうしている。
膨大なデータを集め、何十万人とも言える犠牲の上に世界の復興を夢みているわけだ」
「で、でもそんな壮大なデータ集めなんて出来っこない!」
綾香の発言にとともに、有香の頭に一つ嫌な仮説が生まれた。
「人体汚染調査…」
「え?なに?」
「この人たちの言ってることが本当だったら、今日の人体汚染調査って…」
「残酷な話だが、正解だよ。今日エリア3で行われた汚染調査なるものは
人々をデータ化するためのただのうたい文句だ」
「有香、私…信じたくない!」
「うん、だけど…もう分かんないよ」
「あなた達は、私たちにそれを知らせてどうしようと?
お父さんのことも全然分からないし…」
「…大本君から預かっているものがあるだろ?」
彩乃は黙って彼にチップを渡した。
「このチップの中には我々の希望が入っている。
マカロニを止めるためのウィルス“edge”、全ての愚行を終わらせる唯一の鍵だ」
男はドット化している腕を服で隠し、一呼吸置くと
まるで何かを覚悟したように真剣な目つきで彼女たちを見つめた。
「本当に勝手だと思っているよ、君たちの幸せな日々に
死刑を宣告してしまったようなものだからね、…いや失礼。
しかし私はこれが始まりだと感じてしまったんだ。
君たちに託したい、エレクトロワールドを」
- 24 :
- エリア1―国際センタービル
冷たい鉄のような、とても重い空気、それは彼が会議に遅れているからではない。
各国の代表者たちは、大きな円卓を囲みながらONWが出した
巨大すぎるプロジェクトに対し大きな期待と疑心を抱いている。
その表れなのだろうか…。
奥の扉が開くと、その場にいた者たちの視線が彼に注がれた。
「まったく何をやっているんだ!もう時間を過ぎてるぞ!」
「すみません、先客がいまして」
金髪の男はその重圧感にも、集まる視線にもまったく動揺することなく
さも当たり前のように中央の台へと上がった。
「この度、皆様に来ていただいたのは我々ONWの新設プラン『Eternity』の
理解と協力を求めるものであります」
話しが進むにつれ、疑いの色を隠せなかった者たちも
まるで魔法にかかったよう、その話に乗せろと言わんばかりに身を乗り出して彼の話しに耳を傾けていた。
「どうでしょう?私たちのこの手で、新たな時代を世界を」
会場は盛大な拍手に包まれた。
金髪の男はその場の空気を味わうこともなく、そっと会場を後にした。
「いやぁ、若いのに堂々として大したもんだ」
「同じ日本人として鼻が高いよ。うちの若いのは相手が外人だと緊張してしまって、どうもダメだ」
「ははは、君だって変らんじゃないか。そういえば、彼はなんと言ったかな?えー…」
「中田ヤスタカ君、だったかな。ONWの期待の星だそうだ」
「才気ある若者がいるってのはいいものだ。
しかし若さ故、その身を焦がすこともあるっていうのを忘れないでほしいね…」
- 25 :
- ロビーのソファに腰を下ろし、天井をボーっと見ていると女の人の顔が現れた。
「お疲れさまッ」
「なんだ、君か」
ヤスタカに話しかけた女性も彼と同様金髪で、傍から見たらとても不思議な二人だ。
「うわー反応薄いよ、はいコーヒー」
「ありがとう」
「それよりさっきの『新たな時代を世界を』ってやつ、中田くんが考えたの?(笑)」
「時にはああいう映画みたいなセリフもいいんだよ、
聞いてる人たちもまるで物語の一員になった気がするしね」
「そう、まぁなんでもいいけど。それより、やっとスタートラインに立ったって感じ?」
「僕にはまだ準備運動さえしてないように思えるけどね」
「あら、ずいぶん謙虚ね」
「だけど始まってしまえば瞬きしてる間に終わってしまう、そんなレースなんだ。
だからこそ僕たちがその続きを綴ってやらなければならない。期待してるよ、こしじまくん」
「えぇ、どこまでも付いていきますわ。ボス♪」
軽い笑みを浮かばせながら二人はロビーを後にした。
- 26 :
- 前スレ貼っとけっつったろボケ
脳みそ存在してねーのかお前は? あァ?
PerfumeでSS書きたいやつって絶対いるよな
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1246287043/
- 27 :
- ほしゅ
- 28 :
- 守り
- 29 :
- 続きマダー?
- 30 :
- 残念だけど書きたい奴いないんじゃない?
- 31 :
- これは懐かしい。PerfumeのSSの中で1番大好きだったんだよなコレ
残念な感じになるかもだけど、もし書けたら投下していいかな?
- 32 :
- q
- 33 :
- ほしゆ
- 34 :11/11/27
- ほ
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