2011年10月1期創作発表超常現象バスターズ!【リレーSS】 TOP カテ一覧 スレ一覧 削除依頼

超常現象バスターズ!【リレーSS】


1 :11/03/23 〜 最終レス :11/08/21

我々は知らない...
得体の知れぬ何かがいることを
我々は感じない
得体の知らぬ何かの力を
我々は思ってもいない
得体の知れぬ何かに狙われても
……我々は知らない
彼らが得体の知らぬ何かから守っていることを

2 :
【設定】
「超自然災害対策庁」
防衛省下に配置された極秘組織
超自然災害に対抗するために1990年に設置された
※1.異常電磁波…幽霊のこと。この世界では、幽霊=意思を持つ電波・電磁波の塊だと結論付けられている
        この世界での成仏は、幽霊の体を構成する組織の崩壊を意味する。例えるなら、安楽死に近いものである
        また、時間を経つほど力が増す傾向がある。特に強い恨みを持ち死んだ者程力を増大させやすい
この力が「呪い」であり、場所を移動せず土地や人に害を及ぼす自縛霊タイプや人から人に伝染するタイプ
        も存在する。自縛霊タイプは、根源を断てば時間がかかるが自然に浄化される。伝染するタイプは、伝染
        させる媒体を破壊すること、呪いの一部となった犠牲者を排除することで解決する。       
        実体化しているとき以外では実弾兵器は通用しない。が、電磁波兵器・レーザー、紫外線などに弱い
        水場で死んだ霊以外は、水分(特に塩水)も有効
        通常目視は不可能。ただ襲うときのみ一般人でも姿をみることができる
        特殊なスコープで確認できるが、無くてもみることができる能力持つ者も確認されている
        憑依された場合は体を痛めつけることで追い出すことができる。ただし、初期段階のみ有効で末期の段階だと方法は無い
※2.超自然災害…超常現象のこと。幽霊や未確認生物、UFOなどが該当する
【重要事項】
・事件にかかわった民間人は原則記憶を消される
・職員は民間人と不用意な接触をしてはならない
異常電磁波対策部門=悪霊の排除、幽霊の成仏(=安楽死に近い)を行う、促す部門
未確認生物(UMA)対策部門=UMAの排除・監視を行う部門
[異常電磁波対策部門]
・交渉班-悪霊でない幽霊に成仏するように説得する部隊
・RTK(再部隊)-悪霊など危険な存在を排除するために組織された部門
        電磁波兵器やレーザーなど主に非実弾兵器を使用する
        RTKは「Re Troops Killed」の略称
[未確認生物(UMA)対策部門]
・駆除班-危険な未確認生物の駆除を行う部隊
    軍隊並みの実弾兵器を主に使用する
    最近、外来種(モスマン、カブラetc..)が増え出動件数が増えている
[地球外生命体部門]
ほとんど仕事がない
「人材の墓場」と呼ばれている
[分析部門]
[医療部門]
[処理部門]-事件の隠蔽処理を行う部門
・このSSはリレー小説で進行します

3 :
なにこのスレ
よーわからんけど、この設定の中で適当に物語書いていいの?

4 :
>>3
その通りです
破たんしないレベルで適当にハリウッド的ノリで進めていければと思ってます

5 :
リレーってあるけどどの程度まで書いていいの?
事件の導入まで書いてもよかったりする?

6 :
――見えない、というのは見ようとしないだけだ。
§プロローグ
「お友達ね。今日はあの子の為に来てくれて本当にありがとう」
 私は小雨の中、"彼女"の叔母と名乗る女性に声をかけられた。
「いえ、そんな……」
 今日はおじさんとおばさん("彼女"の両親)ともに忙しいだろうから挨拶をする機会なんてないものと思っていた。
そこへまさか親類との対面があり少々困惑してしまう。
「ほら濡れちゃうから中に入りましょう」
 たくさんの花と人がごったがえす会場に足を踏み入れる。
いくら十六の小娘にだって、普段なら社交辞令くらいなんとか言える。
でも今回ばかりは言葉が後に続かない。緊張だとか慣れだとかそういう問題ではなかった。
「さあ、ここに名前書いてね」
「あ、ネクタイ曲がってるじゃない。ほらこっち来て」
 うまくいかない挨拶を終えた私の耳に雨音の狭間から会話が潜り込んでくる。
振り返ると受付をクラスメートの豊崎さんと戸松ちゃんが手伝っていていた。
戸松ちゃんに襟元をいじられ鼻の下を伸ばす男子。
それを見た私は少なからず彼らに腹が立った。
この私の感情が理不尽な事は分かっている。
彼に悪気はないんだし、女の私だってモデルみたいな戸松ちゃんにあんなに接近されたらドキドキしてしまうに違いない。
だけど今日の私は自分自身の感情がうまくコントロールできないでいた。
 そんな嫌な自分から抜け出す為に私は周囲を見渡す。
担任の若本先生はさっきまで引率で会場の入り口付近にいたはずだったけれど、
どうやら先ほど挨拶をした"彼女"の叔母とエレベーターのベンチに腰かけ話し込んでいるようだった。
 会場の中は私たち訪問者が連れてきた雨とホールの花の匂いに混じって、祖母のタンスの匂いも紛れ込んでいた。
防虫剤の臭いと言うより、私はこの言い方の方がしっくりするし落ちつくのだ。優しかった祖母の面影が脳裏をかすめ少し気分が和らぐ。
きっと大人たちは何度か今日身に纏っている服に袖を通した事があるのだろう。
私はそんな経験、積み重ねたくない。
黒だかりの人ごみに酔いそうだったから、少しレストルームに逃げ込む事にした。
「あ……大丈夫?」
 心配そうに、そして遠慮がちに声をかけてくれるクラスメートの女子に精いっぱいの笑顔で対応する。
と、急に私の後方が少し騒がしくなった。

7 :
 私が振り返ると視界に飛び込む長身の学生。私と同じ高校の制服。どこかで見た事がある。
 そうだ。
 二か月前に転校してきた当日のHRのみ出席し、以来、ずっと欠席していた変わり者。
「テメーがやったんだろ!」
 突然怒号と共に何かが騒々しく倒れる音が響き、女子たちの悲鳴が上がる。会場にいる全ての視線がそこに注がれた。
私の足は確固たる意志を持ってその騒ぎに向かって歩き出す。
もう我慢の限界だった。自分の感情が爆発しそうだった。
なんでこんな時に、みんな好き勝手できるんだろう。
「ちょっと! いい加減にし――」
 しかしそんな私のやり場のない振り上げた拳は降ろす機会を失った。
クラスメートの保志くんが、その転校生に向かって殴りかかる瞬間だったからだ。
また女子の悲鳴が起こる。それに私もつられて軽く目を閉じた事は酷く情けない。
 その一瞬降ろした瞼を開けると、転校生は気だるそうに立ち、殴りかかった保志くんは地面に倒れてた。
保志くんと私を含めた周囲の野次馬は何が起きたのか分からなかった。おかしな沈黙が私達を支配しようとする。
 突然、転校生と保志くんの周りに出来た人だかりが蜘蛛の子を散らすように引いていった。
「やべえ俺しーらねっと」「おいきたぞ」「関係者にされたらたまんないもんね」「サイテー」「行こ行こ」
 自己愛に満ちたひそひそ声をかき消すように若本先生が飛びつけてきた。
「何やってるんだ、お前ら!」
「だって……」
 周囲に残っていた女子はそれっきり黙り込む。
彼女らの気持ちが私には分かった。まずは驚きで硬直して体が動かなかった。そして保志くんと同じように転校生を気味悪がっているのだ。
「知りませんよ。勝手にこいつが殴りかかってきたんで自分の身を守ったまでというか」
 転校生は若本先生の視線をかわして淡々と述べた。
「うるせぇ……テメーのせいだろ!」
 痛々しい調子で、保志くんは転校生を睨みつけて立ち上がる。若本先生は「静かにしろ」と言って彼を羽交い絞めにした。
「テメーが、テメー、よくも顔出せたもんだな! 自分のやった事、テメーの分かってるのかよ! 常識あんのか!?」
保志くんは興奮していて言葉が散らかっている。
「ここどこか分かってる?」
「なんだ文句あんのか!?」
 呆れたように転校生が独特の間で続けた。
「今日何するか分かってんの? だったら静かにする位の常識は守ってから自分が常識語れよ」
「おい、お前も黙りなさい。二人とも、こっちに来るんだ」
 若本先生は頭ごなしに怒る事はなく、冷静に転校生と保志くんを外に出そうとした。
ふと私の視界の端で"彼女"の叔母さんと目があった。叔母さんは心配そうな、悲しい顔をしていた。私の胸はちくりと疼く。
「おい、お前たち。ちょっと先生たちは外に出てくる。きちんと記帳を済ませたら永井先生と委員長の指示に従って大人しくしていろよ」
 そう言って会場のエントランスの自動ドアが閉まった。私は若本先生たちを追った。
<故池澤春菜儀葬儀式場>
出入り口で目に飛び込む看板を私は見なかった事にした。

8 :
「ねえ。聞いてもいい?」
 彼の返事はない。
「あなた何してたの?」
 車中の私は外の流れる雨模様を眺めながら呟いた。
「あの。なんでずっと学校来なかったのに、今日は来たの?」
 薄く窓ガラスに反射した私の顔は酷く疲れた顔をしていた。
「保志くんも悪気があった訳じゃないと思うから許してあげてね……もしかして、もしかしたら春菜の知り合いだったりする?」
「あんたもあいつと同じように俺を疑ってるのか」
 私にはそんなつもりはない。そんなつもりで聞いたのではなかった。今、口から出ている言葉は私の意思を持っていない。
ただ黙っているのが嫌だっただけなのだ。
「別にいいぜ。大切な誰かを失った時ってのは夫婦でさえお互いを責め合うもんなんだよ。心理として正常」
 淡々とした彼の言葉に私の心臓は飛び跳ねた。
<ダレカヲウシナッタ>
 窓ガラスに映った転校生は私の隣の座席で黙々と携帯ゲーム機をいじっている。
「え? ごめん、そんなつもりじゃ……」
 彼からの返事はなかった。暫く沈黙のまま車はすすむ。運転席で無線のやりとりが何度かあった。
 私は結局、この転校生を追ったせいなのか、あの後あの場にいる事が許されなかった。迷惑な厄介者の一人として排除されたらしい。
会場の関係者と"彼女"の親族の誰かが警察を呼んだらしく、私と隣にいる転校生は警察の車で現在、最寄りの警察署に連行されている途中。
保志くんはあの後、私の隣にいる転校生に二度投げ飛ばされた傷が酷くて―と言っても保志くんが一方的に殴りかかったのだけれど―救急車に。
若本先生もそれに同乗していく形で、私たちとは別々に任意の事情聴取を受ける事になったようだった。
 もうすぐ着くぞ、と警察官からのお達しがあった後に私はふと聞いてみたくなった。
「あなたの名前なんだっけ」
「名前か。そうか、名前……それが真実にたどり着く一番の近道か」
 私の質問をまるで理解していないのか、一人合点で会話を完結させる転校生。
「気持ち悪い」
 苛立つ保志くんの気持ちが伝播したかのように、私には珍しく表だって悪態をついた。
 雨足は強まって、歩く人々はみな往々にして傘をさしたりレインコートを着たりして、町並みは酷くゴチャゴチャとしたものになっていた。

9 :
「なんでこんな事になっちゃったんだろう」
「俺が聞きたいね。事情聴取なんてな」
 転校生は携帯ゲーム機をいじったままだ。私は窓を見たまま言った。
「その事じゃないの。なんで……なんで春菜がその……あんなふうに――」
 その先を躊躇して言葉を濁す私。
「なぜバラバラにされてされたのか」
 だが転校生はたやすくその言葉を口にした。私は"彼女"の名前を出してしまった事で、その言葉を言う事がためらわれた。
酷く恐ろしい言葉で、口に出せばとても深く黒いなにかに飲み込まれそうな気がしたから言えなかった。
そして、本当に春菜が死んだという事実を受け入れなければいけない現実と向かい合うのが怖かったのだ。
クラスメートも仲の良かったコはみんな私と同じ状態だった。
みな禁句のように"彼女"の名前を極力避け、そして転校生が口にした現実は決して口にしなかった。幻想に逃げていたのだ。
しかし彼はいともたやすく、その幻想をブチ壊した。
「池澤春菜がいつかされるだろう可能性は俺が以前に忠告したはずだ」
 車中にかわいた破裂音が響く。
運転している中年の警察官と、助手席に乗る青年の警察官が私たちを見た。
 掌が熱い。呼吸するのも苦しい。喉がチリチリする。
 私は転校生の頬を思いっきり叩いていた。転校生は何も言わずに私をゆっくりと見た。
「池澤春菜は死んだ。されたんだ。何かに」
 転校生がどんな顔をして私にその事実を告げたのかは分からない。私の視界に映る彼も彼の周りの景色も滲んでしまっていた。
頬に涙がつたう。一度流れるともう止まらなかった。瞼の裏では記憶の中の春菜が私に微笑みかける。
学校帰りに校則を破ってお茶した時の春菜。昨日見たディスカバリーチャンネルの話をする春菜。好きな人の事を話してくれた春菜。
そして囁いた。
「警察では犯人を見つけられない。放っておけば被害が広がる」
 驚いて涙を拭うと転校生が私をじっと見つめていた。
「聞いてるのか? なぜ俺が来たか。したヤツを見つけ始末する為だ。お前が協力すれば近道になる」
 静かに車は停止した。
「さあ、着いた。これ以上喧嘩するんじゃあないぞ」
 青年の警察官が言った。

10 :
プロローグ
女子高生「花澤香奈」編   了

11 :

「ほら、どうだ?」
 警察署のロビーの一角。そのベンチに腰掛けて仮眠を取っていた俺に警部がコーヒーを差し出した。
「ああ。ども」
相変わらずまずい。そして温い。が今ではこれがないと仕事が始まらない。
「で、新聞記者さん。今日の試合はどうだった? 阪神勝った?」
「警部、俺ずっとこの事件にかかりっきりですよ? 知ってるでしょ」
 意地の悪い質問をしてきた。テレビ放送されないプロ野球のオープン戦の結果を知りたがるなんて嘘だ。この人はそんな事に興味はないのを知っている。
ここで眠っていた俺をみて少しからかっただけだろう。彼は人のよさそうな顔をしていて仕事ぶりも真面目。
その所為か意外と冗談が好き、という性格に気付かない人が多い。俺も彼の冗談のニュアンスを読みとれるようになったのはごく最近だ。
「家にも帰ってないのか?」
「警部こそ」
「今日は帰る。女房もそろそろオカンムリだろうからな」
 そういうと警部はわざとらしく苦々しい顔をした。自動販売機の上にかかっている時計が指した時刻は十時半過ぎ。もうすぐで一日が終わる。
「はは、ちがいないですね」
「何か機嫌をとるのに、いい方法はないか? 最近流行りのモノとか知ってるだろ? いい手土産でも――」
「いいですか? 花より団子。すぐに帰って顔を見せればいいだけですよ」
「それだけ?」
「ええ、それだけです。他に必要ならそのままキスをしてベッドに押し倒す」
 俺は本心からそう言った。
「アメリカ帰りの君らしいな。日本じゃそんな事したって女はまともに取り合わんよ。君、彼女はいないだろう?」
 違いない。
「そういう事です。俺の恋人は事件だけ。で、進展は?」
 本題に入る事にした。きっと警部もその事が気に掛かっているから俺に話をしてきたのだから。
だが警部は口をつぐんだ。
「ちょっと、急に無口になるのは勘弁してくださいよ」
 沈黙に耐え切れなくなり俺は間を埋めた。しかし、その後の警部は「んん……」と言ったきり、また黙り込む。
 沈黙は苦手だ。なにか話さないといけない強迫観念にさらされる。
小学生のころ、アメリカにいた。俺はずっと落ち着きのない子供だったらしく、常に口を動かしていなければいけなかった。
俺を黙らせるには、眠らせるかキスをするかアニメを見せるかしか方法はなかったとは母の弁だ。
当時、アメリカでは宇宙戦艦ヤマトが輸入されてモーニングトーストを食べている時間に放送されていた。
俺はそこで初めて生まれ故郷の文化に触れたのだった。
地球を救う為にイスカンダルへ向かう人類唯一の希望、ヤマト。そして彼らは宇宙人のデスラーにその旅路を何度も脅かされそうになる。

12 :
「宇宙人」
 突然、警部が俺の頭の中を盗み見たように呟き、俺は彼を見る。
「……ここだけの話、宇宙人とか幽霊とかを専門に扱っている特殊機関があるらしい。そいつらが出張ってきてるって話があってな」
「……警部。取り調べ、うまく行ってなさそうですね冗談なんて。で、どうなったんです?」
 警部は始め真剣なまなざしで俺を見ていたが、俺が噴き出しそうな笑いをこらえて返事をすると、やがて表情を崩し肩をすくましておどけて見せた。
「バカ。そんな事ここで言えるか。記者クラブも通さずに警察所属の一個人が捜査情報を漏らしたとすればだな……コーヒーでも飲みに行くか」
 だんまりの警部をうまく釣りだす事に成功した。
 この世の中は、デスラーのように誰が見ても分かりやすく「俺が悪だ」なんて主張する存在なんてない。
世間に晒される事実など、氷山の一角で、その奥深くにどれだけのモノが潜んでいるのか明かされる事などないのだ。
今の仕事を始める以前、アメリカ時代の俺は恋人を失った時に気付いた。

13 :
「うまい」
 警部は舌鼓を打った。
「でしょ。たまにはこういう所使いましょうよ、せっかく警察署の近くにあるんだから。タダのまずいコーヒーとこっちの250円のうまいコーヒー、どっち選ぶって言ったら――」
「タダほど高いモノはないぞ」
「……ですね。じゃ、さっそくですけどこれ見てもらえます?」
 ショルダーバッグに手を突っ込んで、無造作にまさぐった後、写真を取り出した。
「女の扱いもそんなに雑か?」
「まさか」
 警察署から徒歩一分、目と鼻の先にある喫茶・スネーク。俺は警部をここまでお連れして、事件の情報をなんとか聞き出す最中だ。
「フルーツパフェお持ちいたしました」
 この渋い声はこの店のオーナの大塚さん。コーヒーと同じく声にも深みとコクがある。
「で、それは何だ?」
パフェをさっそく頬張りながら、警部は俺に尋ねた。
「事件直後、現場である人物を目撃したって垂れ込みを持ってる、と言ったらどうします?」
「どうしてほしい」
 話が分かるおっさんだ。警部は見かけは窓際に追いやられたサラリーマンのようにくたびれているが、非常にスマートな付き合いができる。
「捜査の進展状況が知りたい」
 警部はパフェをもくもくと食べ続ける。俺の次の言葉を待っているようだ。
「外国人留学生害事件と今回起きた池澤春菜害事件をなぜ同一性の事件として扱わないんですか?」
「……それはな――」
「害対象が外国人だから、ってだけでとりあえず頭の固い上層部の連中がはずしました、って所でしょ」
 警部は答えを言わずに眉をおどけるようにして動かした。
「――で、その垂れ込みの信用度はどの程度なんだ?」
「警部が奥さんに会いたがっている位かな」
「あてにならんな」
 俺のジョークは大抵一笑にふされる事が多いが、今回の警部は笑いもしなかった。
「で、目撃者ってのはどこの現場で誰なんだ」
「情報の出所は聞かない約束でお願いしますよ」
「分かった、それじゃどこの現場だ?」
 警部はすっかり俺を尋問する気のようだ。先ほどまでの目と違う。すると向こうから女の制服警官がこちらスネーク(喫茶)にやってきた。
入店のベルと共に大塚さんの渋みのある声が聞こえる。そして彼が気を利かせて彼女に目配せでもしたのだろうか、彼女がこちらを見た。
「あれ警部、まだ帰ってなかったんですか? あ、コップまだいたんだ」
 彼女が言うコップとは俺のこと。記者のくせに警察署に入り浸り、それから甲府という俺の苗字からできた専用のスラングらしい。

14 :
馬鹿にされている気分だ。こんな田舎の無能警察と一緒にされるなんてとんでもない。目の前の警部だけは別だが。
「警部に奥さんへのプレゼントの相談をうけてる」
 とりあえずそう答えておいた。
「あなたが? 警部、彼に聞いてもロクな事ないですよ」
「言ってくれるね」
 俺は笑って呟いた。反論したいのはやまやまだったが、今はそんな事をして彼女を引きとめている時ではない。早々にお帰り頂かなければ。
「キミ、すまないんだがそういうワケで。できれば男同士で頼むよ」
「あ、はい警部。気が付きませんで申し訳ありません。見回りで顔を出しただけですのでこれで失礼します」
 警部がうまく彼女を追い出した。本来、俺たちがいなければあの婦警は勤務中にも関わらず、ここでコーヒーをすすっているのだろう。
 さて始めようかという目で俺を見た警部が告げる。
「いいか、お前の持っているその目撃情報は俺に見せても恐らくは無意味だ。取引にならんよ。
お前さんが何か知りたいならウチの署に勾留している高校生に会え」
「高校生?」
 素っ頓狂な声。ヘリウムガスでも吸ったのだろうか俺は。
「ああ、3日前にな。ウチの署に来たというか、保護しているというか……とにかくあの子に会うのがいい。お前が今からでもというならすぐにでも会わせてやる」
「事情がよく飲み込めないんですが。人事件の情報を高校生に見せろ? さっぱりだ。警部、いくらなんでも冗談が――」
「冗談じゃない! いいか、この事件の捜査本部は抜け殻なんだよ、ハリボテだ。上は本気で捜査しようとしていない」

15 :
導入おわり。よろしく

16 :
45口径の「SIG Sauer P220」 を構えトラックに揺られていた。他の隊員は笑っている。
死ぬのは怖い。頭には「死」という言葉しかなかった。
「おいおい、緊張しすぎだぜ新人。楽に行こうや。」
声をかけたのは袴田利光さん。僕より二つ上の先輩で経験もあるひとだった。
肩にM4を携えた、袴田さんはアドバイスをしてくれるいい先輩だった。
「死ぬのが怖いんです。初めてUMAをすので・・・。」
震える声をこらえていったつもりだが、ビビっていると察しられ他の隊員が笑い声を上げた。
「死ぬのが怖い?ハハハそう簡単に死にやしねぇよ。」
「すのが楽しいんだろうが。仕事を楽しまなくてどうするんだ?楽しめ!!」
隊員たちは優しくてよかった。そう思って、緊張する心を沈めた。
作戦地域のハイキングコースにたどり着く。トラックから隊員たちが降りた。
「必ず離れるな、離れたものは死ぬ。以上だ。」
頭にかけたスコープを掛けた。「SIG Sauer P220」を構えた 。装弾数は9発、マガジンは5個。
目標のUMAは不明だが、観光バスを襲撃し一般市民5名を害しているらしい。
大丈夫なのか?本当に簡単に死なないのか?不安と絶望がつのる中、お土産屋の窓に人影が見えた。
「たっ隊長!!あそこに、っひひひ人影が・・・・。」
「避難命令を聞いとらんのか?新人!避難するように指示して来い。」
「はっはい!!」残り数百メートルのお土産屋までの道を震えながら歩いた。
確かにそれは人だった。窓にもたれかかっていた。そしてとてつもない異臭がしていた。
「避難命令が出ています。速やかに非難してください。」
窓をノックしながら言ったが、黙ったままで応答はない。
「大丈夫ですか?」異様さを察知して窓を拳銃で割った。ガラスが飛散する。
窓にもたれかかっていた者は確かに人だった。血だまりに気づいたのはそれからだった。
シャツにはびりびりに破られ内蔵は食い荒らされていた。両腕も無かった。
爪で両足はボロボロに裂かれ、目は白目を剥いて傷口はほとんど壊死していた。
思わず悲鳴を上げてしまい、他の隊員が異常に気づきこちらえと来た。
‘UMAによる最悪の事態’その言葉が頭によぎる。起きてしまったのだ・・・。

17 :
 血が新しい。UMAによる襲撃から間もない証拠だ。僕は混乱する頭をなんとか理性で抑えつけ観察する。
すると、この死体現場の異常さにすぐに気が付いた。
 まず、間違いなくお土産小屋のドアは施錠されていたな。窓も開いていなかった。
という事はヤツ(もしくはヤツら)はどこから侵入したのか。
"ギタイ"と呼ばれるタイプのUMAは実態を持たない代わりに知性があり人に憑依する。世間では幽霊と騒がれるようなものに近い。
その"ギタイ"ならば人間を装っている為に、この被害者が小屋の中に招き入れる可能性はある。
しかし"ギタイ"は人に憑依している以上力にも限界があって、この現場のように食い散らかすような事は当然できるはずがない。
その手のヤツらはもっぱら道具を使って対象をす。知性がある分、そうしたがる傾向にある。
つまり今回のUMAはその手のタイプではないという事だ。
そして、ここまで無残に食いされているにも関わらず小屋の中は綺麗なまま、と言うこの状況にも違和感を覚えた。
さらには意図もなく残虐に食いした死体を"なぜか"ヤツは窓に立てかけていたのだ。僕らに発見されるように。
以上の事から、このUMAは間違いなく――。
<ワナを作って僕らをおびき寄せた>
 ここまで狡猾で凶暴、かつ冷静なタイプは僕は知らない。習ったサンプルの中にない。
UMAにもいくつか種類がある。
生きていく為に年に数度、人を捕食するタイプもあるがそういうタイプは基本的に証拠を残さない。自分が見つかるのを恐れているからだ。
<こいつはヤバい>
 そこまで悟ってしまった僕の耳には嫌でも自らの心臓の鼓動が響く。
周囲にUMAが潜んでいればヤツらにも聞かれてしまうのではないかと思う程だったが、止められない。
 パニックに陥りかけたその時、そっと袴田先輩が僕の肩に手を添えた。取り乱すな、と目で訴えられた後、隊長を見るように視線で促された。
どうやら隊長他、みんなもこの異常性に気付いたようだった。隊長はハンドシグナルで僕たちに指示する。お土産屋の周囲を左右ふた手に分けた。
 僕と袴田先輩、他3名は右手へ回る。枯れ木混じりの地面を注意深くゆっくりと足を運ぶ。
 もし。もしもまだこの周囲にUMAが潜んでいるのならば。
僕の生存権は目の前の袴田先輩と背後のベテラン隊員3名、そしてこの手に握っている「SIG Sauer P220」に委ねられている事になる。
逆に僕も彼らの生存権を握っているのだ。ヘマなんかできない。何度も訓練で叩きこまれた基本だ。
その事を心臓の音がうるさい中思い出す。すると自らの手にかかる拳銃の重みが僕の気持ちを少し落ち着かせてくれた。
 建物を半周した時、急に袴田先輩は歩みを止めた。左側から来るはずの隊長たちがいない。
彼の3メートル後に尾く僕にも静止しろとの合図だ。僕も後ろに3人に向けて彼の指示を伝える。
 嫌な汗が僕の眉間から鼻筋を通って顎の先端まで流れ落ちた。
 そのわずかに数秒の間に起きた事を僕は一生忘れないだろう。
 袴田先輩からの指示を受けて止まった後、生温かい臭気が僕の背後から一瞬流れた。
恐ろしい気配がした。僕は振りむけない。僕の後ろには3人のベテラン隊員がいたはずだ。
袴田先輩がこちらを見るに違いない。
僕の見る世界はスローモーションの中で進み始める。
やがて予測通り、彼は僕を見た。僕はそれでもまだ自分の後ろを振り返る事ができない。
袴田先輩の瞳孔が開くのが分かる。僕の背後にいる異質の存在を認めたという事だ。
そこまで分かっていても僕の体はまだ動かない。
脳からの指令を受けて伝達するまでの僕のテストの結果はゼロコンマ11秒。エリートクラスだった。
しかし。
訓練と実践は違う。命の奪い合いに加え、未知の存在との対峙への恐怖、それらが僕の反応速度を弱めている。
「伏せろッ!!」
 僕は袴田先輩の声と同時に金縛りから解き放たれる。
放たれた弾丸2発を辛うじて回避、地面に仰向けに倒れこみながら銃口は先ほどまで僕の背後だった場所に向けた。
だが引き金は弾けない。
何もいなかったからだ。
僕の視界にあるのは宙をキャンバスに周囲の枝がもがくように伸びた姿を晒しているだけ。
「――!?」
 僕の顔に液体が飛散する。その後、袴田先輩の追撃の2発が僕の鼓膜を震えさせた。
「ちくしょうっ! あの野郎!」
 僕は袴田先輩の元に走ろうと起き上がろうとした。
「無暗に立つな!」
 怒号に近い彼の指示を守り、地面に伏せたままの状態で周囲の確認をすると、僕の足元には数秒前までは人間だったベテラン隊員の肉塊が散乱している。

18 :

19 :
残酷な真実にただ呆然と立ち尽くし、最悪な事態を想像した。
店に仕掛けられた惨体のようにトラップに使われる姿だ。
 確実にされる。
「おい、しっかりしろ!!」
袴田先輩の声がかすかに聞こえ、目が覚めた。気絶してしまっていたのだ。
「馬鹿か!?全滅させるつもりか?早く隊に合流するぞ。」
袴田先輩は冷静に言い放つと、素早くM4A1をリロードした。銃弾の一発が生死を分けるのだ。
弾切れや弾詰まりで訓練で何度も上官に注意されていた。戦場では、些細なことで命を失う。
だから、生存するには命令を無視して隊に戻ることが最善の策なのだ。
生き残りたい。そう願って袴田先輩とともに周囲を警戒しながら前進した。
暗視スコープには何も映っていない。どこから襲撃される?どんな武器を使うのか?
息が荒くなってくる。拳銃の構える腕が震えた。どこにUMAがいるのだ?
またしても、「最悪の事態」が起きてしまう。
僕達はもう生きて帰ることはできない。炎上する兵士輸送トラックを呆然と見ていた。
 嘘だろ・・・なんで・・・?         

20 :
「クソッ、こんな話は聞いてねぇぞ」
 燃え盛る炎が揺らめいて、周囲が真白になり視界が奪われる。
僕はスコープを外して先輩を横目に見る。精悍な横顔には焦りが見える。
「着いてこい」
 何処へ? 勿論、僕たちは今呑気に突っ立っている場合じゃない。だけど僕が今しなければならない事は何だ。
逃げる? 否。相手の正体すら不明。このまま逃げ帰った所で、隊長以下多くの隊員の命を失った事以外に何の報告もできない。
勿論、ここまで執念深く周到に僕らを追い詰めるヤツの事だ。素直に逃がしてくれる訳もないだろう。
闘う? 否、こちらからすれば未知の敵に対して、相手からするとこちらは丸裸にしているようなものだ。籠の中の鳥。
僕らの使命は、これ以上の被害拡大を防ぐ事。しかし相手が分からないのならば知るしかない。
仮に僕らが全滅したとしても本部にヤツの情報を送る事ができれば、それだけで僕らの意味はある。
「先輩、どうするんですか!?」
 情けない事だが、決断は彼に任せる事にした。僕は臆病者だ。
いつもそうだ。5歳の頃に天才だと褒めそやされ、10歳で大学に入学した。だけど、全て自分の選択で生きた人生ではなかった。
親が決めたから、先生が決めたから。何一つ自分で決断した事などなかった。無責任な男だ。
彼が逃げる、と言えばそれに従う。正直、死にたくない。
「ここで死ぬ」
 僕は彼の背中を見た。
「いいか。俺達の使命はUMAの被害を食い止める事だ。こいつは野放しにはできない。凶悪すぎる。だが今のままだとどうにもならねぇ。せめて刺し違えてでも情報を本部に送る。お前もU対(UMA対策部門)なら覚悟決めろ」
 先輩の背中がいつも以上に大きく見えた。
「お前の顔についてるのはヤツの体液だ。俺が2発お見舞いした。まずは簡易キットでそいつのデータを取れ」
 頼もしく、そして誇らしかった。こんな先輩が僕の傍にいてくれて。そして僕は臆病者だからこそ彼が死線に踏み込まない最後の防波堤になろう。
「それからガキみたいに泣いてんじゃねえ、スコープつけてろバカ野郎」
 僕は泣いていたのか、と今に至って知る。顔を拭おうとしたが涙はトラックの炎ですぐに蒸発していた。
 僕と先輩は装備を確認し、ハイキングコースの脇道に入って行った。

21 :
「香菜」
 階下から私を呼ぶ声がする。もう朝なんだ。まだ惰眠を貪っていたい。
「母さん、寝かしといてあげなさい」
 父の声だ。
「でも……もう塞ぎ込んで3日よ?」
「分かってる」
「だけど、ほら昨日、春菜ちゃんの葬儀の時に警察に連れて行かれたでしょ? 心配なのよ」
「だがあれは、あの子に何の否もなかっただろう? 救いの手を求めてきたら優しく助けてあげよう。もう少し様子をみよう、な?」
 両親の会話に私の胸は締め付けられる。
「ごめんね、ごめんねお父さんお母さん。ありがとう」
 布団にくるまって何度か呟いていると何やら騒々しく階段を上がってくる音がする。
「おっきろー!」
 扉を豪快に開け放った声の主は私のベッドに難なく潜り込んでくる。そして華奢な手が私の体を寄せパジャマの隙間から無防備な房をまさぐった。
「きゃっ、つめたっ」
 無意識にその手を押さえつけ、私は口の端が持ち上がる。その反応に気を良くしたのか、ますます華奢な手は私の体を蠢く 。
「くすぐったいよぅ! 分かった、分かった! 起きるからっ!」
 布団を足で蹴飛ばして、過呼吸気味になりながら外の新鮮な空気を吸って吐く。私は華奢な手の持ち主を涙目で睨みつけた。
「圭吾! やめてってば!」
「おねーちゃん、起きる?」
「起きたでしょ? だからもう手、離して。何してんのよほんと。信じられない」
「C……Bカップ?」
「うるさいっ、どこで覚えたのよ! マセガキッ!」
 枕を投げつけるより弟の圭吾の逃げ足は早く、涙が少し染みた私の枕は扉に当たって落ちた。
 その後、カーテンを開ける。昨日の雨とは打って変わって天気のいい朝だ。窓の外をふと見ると隣の家の傍の電柱にいた男の人と目があった。
 ご飯をよそって父に手渡す。テレビでは水樹奈々が熱愛、という報道がなされていた。
「ねえ、今日休んでもいいのよ?」
 母がキッチンから私に告げる。
「大丈夫だよ。もう少しで期末も近いじゃない? テスト始まったら部活動停止でしょ? 勉強と部活、どちらも今大事な時期なんです」
 えへん、と胸を張ってみせる。母はそうなの、と優しく同意した。
「お姉ちゃん、醤油取って」
「こら、自分で取りなさい圭吾。お前ももう小学3年だろ? お姉ちゃんばっかり頼っていても恥ずかしいぞ」
 父と弟のやりとりもいつもの調子だ。私もこの空間にいる事で、少しずつ日常に戻れるのだろうか。春菜は私に何を望むのだろう。
<池澤春菜は死んだ。されたんだ。何かに>
 突然、昨日の転校生の言葉が蘇り、オカズを通り越した私の手は迷い箸。
「お姉ちゃん、おかわり」
 昨日、確かに転校生は私に言った。
<警察では犯人を見つけられない。放っておけば被害が広がる>
 警察では見つけられない? 一体どういう事だろう。
 私は昨日、転校生と保志くんの喧嘩を包み隠さず話したら解放された。いや、どちらかと言えば保志君びいきになっていたかもしれない。
あの時の私は、転校生の彼の言葉に傷つけられた気でいたから。その後、両親が迎えに来て私は家に帰った。だけどアイツはまだ残っているみたいだった。
私のせいなのだろうか……。
「では、ニュースです。昨夜未明、I県のM山中で山火事が起きました」
 私の耳と目はテレビに注がれた。I県のM山? 春菜が死んだ場所――。
「県道から外れた場所に住む人から大きな爆発音のような破裂音が聞えたと警察に通報があった後、警察と消防が確認したところ既に大規模の山火事が起きていたという事です。
今現在も消火活動を行っているところです。ここは有名なハイキングコースがあり、先日、観光客を乗せたバスが失踪。
後に失踪した人数分のバラバラにされた遺体が発見されていた場所の近くにもなります。警察からの見解はまだありませんが、入り次第速報でお伝えいたし――」
 ぷつっ、とテレビが消える。
 彼女が命を落とした事件についてニュースが触れた。そこで山火事が起きたと言っている。
 ふと周りを見ると父と母、そして弟が心配そうに私を覗き込んでいた。
「やっぱり今日は休みなさい」
 父の優しさは有り難かったけれど、私は何か喉の奥に何かがひっかかる。そしてその何かを取り除くには、彼に会うしかないと直感していた。

22 :
‘無差別連続惨事件’の現場として立ち入り禁止とされていた現場が大火事?
何が起きている?いったいどうなっている?
我々の知らないところで何かが起きている。私もその何も知らされない市民の一人だ。
昔は熱を入れていたが、外部からの重圧で出版社をクビになってからは、穏健にフリー活動している。
「結局は逃げたのでしょ。」別れ際の女房の言葉だ。何年あってないだろうか。
そんな私を訪ねて来たのは新人記者の烏丸だった。彼は未確認生物について調べているという。
「そんなものいる分けない。創造の産物だ。」すぐに否定するしかない。
しかし彼は、「逃げるのですか?」と冷たく答えた。
「逃げるのですか?」という言葉が女房の「逃げるのでしょ?」という言葉と重なる。
烏丸の最後の言葉だった。烏丸は名刺を渡すと無言で立ち去った。
あくる日に、烏丸の携帯に電話をすると警察につながっていた。
烏丸は情報調達中に通り魔に遭ってしまい、腹部を刺され死亡した。荷物とPCも盗まれたらしい。
結局熱を入れたらろくな目には会いやしない。そう自分に言い聞かせた。
それから一ヶ月‘無差別連続惨事件’が発生し何人もの命が犠牲になった。
その現場周辺が火事に遭った。二つの事件は何かおかしい。何かかが隠されていく。
‘無差別連続惨事件’。バス失踪。女子高生バラバラ害。通り魔。そしてM山の不審火。
私なりのルールを破り、M山に向かうことにした。久しぶりの現場復帰になる。
(もう失うものはないだろう・・・。やるだけやるか・・・・。)
登山の用意にカメラ、手帳、そして護身用のトカレフTT-33。暴力団から譲ってもらったものだ。
「I県まで残り2km」そう看板に書かれた。車を止め、M山を裏から向かう。
‘未確認生物なんている分けない’ ‘逃げるのですか?’
立ち向かった烏丸と逃げた私。彼は何がしたかったのか?そしてここに何があるのか?
まだ見ぬ絶望へと向かい、私は車のキーを抜いて立ち入り禁止のテープを跨いだ。

23 :
「そこでなにをしている!?」

24 :
 私を呼びとめる声。後ろの道路側を振り返ると老人が私に歩みよってくる。
「えっと、どうも。その――」
 どういったご用件で、と伝えようとしたが被せて老人が話しかける。
「あんた死ぬ気か?」
 ドキリと心臓が疼く。
「いえ、そういう訳では。ただ先日の火事の現場を取材に来たんですよ。ほらこれ」
 ただの携帯電話料金の督促状を老人にそれらしく見せる。
はっきりとどこかの名前を出した訳でもないし、後はあちらさんが勝手に想像してくれる事だそう。
「……あんた警察の人かな」
 ほら来た。私も伊達に長い間、インチキ記者やってた訳じゃあない。まあ、ばれて何度か警察にお世話になった事もあるが。
「……まあそっち系です。ところで、ここから先どの位焼けたんです?」
 私ははぐらかすようにして疑問をぶつけた。しかし老人は怪訝な顔をするばかりで、明瞭な答えは返ってこなかった。
「何? 焼けた? 火事なんぞ起きとらんわい。どこぞと間違えたんじゃなか?」
「え? イヤイヤ、そんなはずはないです。この先、M山に続くハイキングコースありますよね?」
 すると老人は切って返す。
「そうじゃ」
「だとしたら、この先は――」
「焼けてなぞおらんぞ。この先は迷いやすいでな、富士の樹海程ではないにしろ、死にたがりの阿呆どもがたまにやってくるんじゃよ。
わしはそういう輩を追い返すようにしとるんじゃ。あんたは警察の用じゃから止めはせんが」
 私は軽い混乱に襲われていた。どういう事なのだろう。あれほど大々的に報じられた山火事を知らない訳がない。
もしかしてこの老人は呆けてしまっているんだろうか。
などと混乱から抜け出す為に俯き思案していると、あるはずのそれが見当たらない事に気がついた。
「テープが……ない?」
 たしかについ先ほど、私は立ち入り禁止のテープを跨いだはずだ。慌てて乗って来た車を見ると、まるで煙のように消えていた。
「そんな馬鹿な……」
「なに狐につままれたような顔しとるんじゃ」

25 :
 本当に狐につままれたのかもしれない、と脳裏をよぎる。
「あの、だから、1週間ほど前に大火事があったでしょ!? さらにその数日前にバラバラ死体が!」
 思わず語気を強めてしまう。これじゃ私の方が呆けた老人みたいじゃないか。
老人は私の剣幕にあてられたのか驚いた顔をして何か喋るのを一度逡巡したが、すぐさま私の手を握ってこう言った。
「あんた、もしかして烏丸という男を知っとるかね」
 一体どういう事なのかさっぱりだ。私は夢でも見ているのだろうか。
「なぜ烏丸を知っているんですか!?」
「いやこりゃ本当に驚いた。わしも半信半疑で来てみたが本当だったとはの」
 方言独特の感嘆は、私には妙に芝居がかって聞えた。
 老人が沸かしてくれたコーヒーの香りが部屋いっぱいに広がる。
檜の香りと混ざり合い、心地よいハーモニーを鼻腔にとどめる。
「ありがとうございます」
「これ飲んでまんずは落ちつけ」
 湯気立つマグカップから、中身の熱さは容易に想像できる。口をすぼめて息を何度も拭きかけた。
「猫舌か?」
「ええ、まあ。あの、それで申し遅れました私――」
「神谷さんじゃろ。神谷浩史」
「はは、その通りだ、驚いちゃうなぁ」
 そう、本当に驚く。この老人は私が今日あの場所に来る事を知っていた。そして烏丸の事、私の名前も知っている。

26 :
「何から聞いていいのやら」
 本音を呟く私に、ちょっと待ってろと老人は一度席を立ち奥の部屋に消えて行った。
 私はコーヒーをすすりながら部屋を見渡した。
しかしまあ見事なものだ。様々な郷土品が所狭しと並んでいる。
それとまるで横町の飯屋のようにジュースの冷蔵庫がどかんとあり、その中には炭酸ジュースなどが気持ちよく汗をかいて居座っている。
そして地元のお菓子だろうか、せんべいだとかそういったものが値段を貼られて置かれていた。
「お土産屋なんですか、御主人」
 奥にいる老人に聞えるように少し声を張ったつもりだったが、返事は「なに」だった。
 手持無沙汰でポケットに手を入れる。そこには少し前に許可証だと偽った携帯電話料金の督促状。
何気なしにそれを取り出してぼうっと見る。日付は今日のものだ。
<逃げるんですか?>
 せめて烏丸に二度もそう言わせない為に、私は自分で逃げずに確かめる事に決めたのだが、支払いからは逃げている。
「くっ……くくくっ」
 そう思うと情けないやら可笑しいやらで笑いがこみ上げてきた。
「はははっ」
「どうしたんじゃ気色悪いのう」
 老人が紙袋を持ち戻って来た。私の耳が熱くなったのは決してコーヒーの所為ではないのは明白だ。
「いえ、お恥ずかしい。ちょっとした思い出し笑いみたいなもんです。ところで、そちらは?」
 老人はどか、と椅子に腰を据えて持っていた紙袋をテーブルの上に置いた。
「これをあんたに渡すようにと言われておる」
「烏丸?」
「そう烏丸さんからじゃな」

27 :
>>26の11行目訂正です。すいません
× 何気なしにそれを取り出してぼうっと見る。日付は今日のものだ。
○ 何気なしにそれを取り出してぼうっと見る。日付は昨日のものだ。

28 :
 私は老人に暫くこの場所を借りて目を通して構わないか確認をとってから、その厚み1センチほどの紙袋から中身を取り出した。
「わしはちょっと薪を集めに行ってくるから、ハイキングの客が来て何か欲しがったらその代金もらっといてくれ」
 戸惑う私に断りの文句を告げさせる前に老人は部屋から出て行った。
「やっぱり土産物屋だったんだなここ」
 取りだした中身は、なにやらメモがいくつかと資料、そしてUSBメモリがあった。
護身用のトカレフなんか持ってこずにノートPCを持ってくるべきだったと後悔する。あの老人がパソコンを持っている望みも薄い。
山で歩き回る事を想定して荷造りした私のリュックが虚しそうに椅子にある。
 やや厚みのある資料の書き出しは10月15日から始まっていた。今から約1カ月前だ。この日付の1週間後に烏丸は死んだ。
そう思うと、私はこの資料が彼の遺書のような気がして持つ手が震える。
 一度深呼吸をして、温くなったコーヒーを飲みほして、そして私は読み始めた。
10月15日
まず最初にここに記すのは真実にもっとも近いものだと思う。私が抱く疑惑についてだ。
この疑惑は今までにも過去、多くの人が抱いてきたがいつもその思いは気がつくと霧散していた。
決して世に形として現れないモノ。
もっと現実的に言えば、それは恐怖であり、呪いであり、そして未知の存在の可能性についてだ。

29 :
 ここまで読んで、もう烏丸の事を馬鹿にできない自分がいることが分かる。
「あの、すいません」
 続きに目を通そうとした私に声をかける者がいたが私は烏丸の資料から目を離さない。
「なにか?」
「ちょっと喉が乾いちゃって」
 声の調子は若く快活で、その主はつかつかとトレッキングシューズを響かせて小屋の中に入った。
老人にこの場を預かった以上、この先はもう無視はできない。
「この冷蔵庫のジュース、いくらですか?」
 その娘は非常に美しかった。可憐と言った方がいいのかもしれない。
ただ可憐と言っても、防寒着を着て額に汗を流すその少女は、
月光の下で儚げに歌を歌っているよりも、陽光の中で麗しくダンスをしているのが似合っている可憐さだ。
「あー、値札貼ってない?」
「でもこのジュースだけは値札ないですよ?」
 見るとたしかに値札がなかった。私は素直に自分の状況を申し出ることにする。
「今、留守役を仰せつかっていてね。勝手がよく分からないんだ。値札のあるものなら分かるんだけど……そうだ、代金は後払い、って事でかまわないかな」
 気持ちのいい笑顔で首をかしげる少女は了承してくれた。彼女はミネラルウォーターを選んだ。
「何してるんですか?」
 ボトルキャプを外しながら、私の資料を覗き込むようにして傍に立つ。
「ああ、これは仕事の書類なんだ」
 慌てて私は袋にしまいこんだ。それを見て少女は申し訳ない事をしたと、平に謝ってくるものだから、こちらが逆に申し訳ない気分になった。
「座りなよ」
 空いた椅子をすすめ、彼女は感謝とともにそれに応じた。
「おじさん、私に気にせずにお仕事すすめても構わないですよ?」
「いやいや、お客様がいるんだ。そんなの後回しさ」
 当然だ。あんなもの、他人がいる前で読む訳にはいかない。老人が早く帰ってきてくれる事を願うまでだ。
「で、一人でこんな危ない所によく入れたね。立ち入り禁止だったでしょ」
 あんな事件が立て続けにあった場所にやってくるなんて、いくら可愛い顔をしていても相当な変わり者に違いない。親はどんな育て方をしたんだろう、と興味がわく。
「え? もう登山禁止期間? 私、インターネットでもちゃんと調べて来たんですよ? 登山禁止になるのはまだ1カ月先でしょう?」
 やはり老人の時と同じで話がかみ合わない。

30 :
 怪訝な顔をした私を少女はわざとらしくねめつけた。
「ちょっと待って下さい――ほら、見てください」
 胸ポケットから手帳を手渡される。
「何これ」
「それ裏ですよ」
 手帳をひっくり返すと学生手帳だった。
「M県立……S東高等学校……イケザワ……ハルナ?」
「そです」
 見ると彼女は微笑んでいる。
「あ、私申し遅れました、神谷浩史と申します」
「よろしくお願いします」
 彼女が深々と頭を下げるものだから、私もつられて頭を下げる。鈍い音と痛みを味わう。
 暫し静まり返る部屋。おでこをぶつけた余韻をどちらからともなく笑って消し去った。
「あ〜、おかしい! 神谷さんおでこ大丈夫ですか?」
「そりゃもうね。しかし君、イケザワさんだって身分証を私に見せてどうするつもりだったの」
 お互いに打ち解けた所で、私は彼女に聞きたかった事を聞いてみた。
「さっき私が立ち入り禁止が、って話をしただろ? 本当にテープもなかったの?」
「え? そんなのなかったですよ?」
 そうか、と私は半ばあきらめ気味にため息をつこうとした時に彼女が「あっ」と声をあげた。
「どうしたの?」
「これ見てください!」
 彼女は椅子から飛び出すようにして走って私の背後に回る。
振り向くと向こうの壁にかかってあるカレンダーを指さして微笑んでいる彼女が幸せそうに見えた。
「ここ、これ見てください。ほら、ここです」
 彼女が指差した場所を凝視して見るが、いかんせん視力の減退により文字がよく見えない。
 彼女に手招きにつられるようにしてカレンダーの傍による。10月のままだ。
「まったく不精な爺さんだ」
 私はまだ戻ってこない老人を茶化す。彼女が首を傾げてその意図を問いかけてきそうだったので、何でもない、と言っておいた。
「ここ、ほら! でしょ?」
「ん? ああ、これは」
 彼女が私に教えたかった事は、冷蔵庫のドリンクの値段だった。
カレンダーの下の方に、コーラ250円、オレンジジュース250円、ミネラルウオーター100円と書いてあった。
「ウォーターじゃなくてウオーターか、ウオーターね」
 彼女は私の呟きを楽しそうに聞きながら、何やらポシェットの中から小銭を取り出す。
「はい。どうぞ。遅ればせながら」
「何だよその日本語は。はい、ありがとう」

31 :
「それじゃお買いものの件は店主が戻ってこなくても解決した訳だ。いつまでもオッサンに付き合っていないでも大丈夫だよ。申し訳なかったね」
 半ば自嘲気味に言って見せた。彼女に否定してもらいたい気持ちがあったからだ。まだ老けてはいない、と。
少しの間だったが、この娘には不思議な魅力があると思った。快活に笑い、そして笑顔をふりまく。見ているこちらも自然と明るくさせられるのだ。
「私の方こそお付き合いしてもらってごめんなさい。神谷さんのお仕事中にお邪魔してしまって」
 まだ資料の事を気にしているようだった。気配りもよくできる娘だと、私は心底感心した。
私も高校生の頃、彼女位の心遣いができていれば、今は思慮深い大人になれていただろうか。結婚生活も破たんせずにすんだのだろうか。
そして烏丸を一人にさせる事もなかったのかもしれない。
そんな事がふと頭をよぎった所為か、お節介だろうと思ったが、カレンダーの10月部分をそのままにするのも何だか可笑しかったので破り捨てる。
その行為に思ってもいなかったリアクションが返ってきた。
「え? なんで破るんですか?」
 きょとんとした彼女はまさに目が点だ。
「いや、いつまでも先月のにしておくのはどうかなって」
「もう〜! 先月じゃないですよ〜! ほら見てください! 10月って書いてる」
「うん、だから」
 彼女はもう一度きょとんとする。私も事情が呑み込めない。
「えっと、今月が11月だから、10月を破ったんだけど……」
 私も何か歯切れが悪い。それとともに、何かこのM山に来てから感じていた違和感が強烈に恐怖となって私を包み込んだ。
「かーみやさん、質問です。今日は何月何日でしょうかっ!?」
 彼女はまだ私が冗談を言っていると思っているのだろうか、少しおどけて私に問いかけた。私は11月20日だと答える。
彼女の3度目のきょとん顔を見る羽目になる事は予想どうりだった。
私はポケットから11月19日発送と書かれた督促状を取り出して、昨日届いたものだと説明する。

32 :
どうやら私は10月20日に迷い込んでしまったようだった。   了

33 :
>>32は取り消しでお願いします。センスなさすぎた

34 :
一方その頃 東京都某所...超自然災害対策庁
本部では今起こっている出来事に関して会議が開かれていた

35 :
ペニス一郎「…以上。今の説明に質問のある者は?」

36 :
>>35エロパロにいけ。嫌ならキチガイ。世界感を壊すな。」
外務大臣がつぶやいた。

37 :

―――驚きだった。
この男がそう平然と説明したのが。
まるで例え話をするかの如く、男、ペ○ス一郎(伏せ字は致し方ない)は私に聞いてきたのだ。
…いや、大体こんな卑猥な名前自体に突っ込むべきなのだろうが、私には今突っ込む程の気力が無い。
しかし、少し彼に聞いてみる事にした。

38 :
>>31続き
 その時だ。
ドンドンと部屋の扉が叩かれた。
私と彼女は驚き飛び上る。間髪いれず、大きな物音が外で騒々しく響いた。
何事かと私は扉に駆け寄ると、窓ガラスから見える位置に、薪を散乱させたこの店の主人である老人が倒れている。
慌てて飛び出して彼の上半身を膝に乗せる。
「どうしたんです、大丈夫ですか!?」
 脈はある。息もしている。しかし体が燃えているように熱い。
少女が自分のミネラルウォーターと店の商品の手ぬぐいを持って駆けつけてきた。
「これ……」
 心配そうな面持ちで使ってくれと差しだす。
「助かるよ」
 水を手ぬぐいに漬して、老人の顔を拭いてやる。水を含ませようとしたが、何やらうわ言のように呟いているので耳を傾けた。
「な、中に……危な」
「『中に』『危ない』って言ってる!」
 彼女にもそう聞えたらしい。
「そうだな、このままって訳にもいかない。取りあえず中に連れて入ろうか」
私は急いで老人を抱えて彼女と共に土産物屋に駆けこんだ。
この時に気付くべきだった。
いくつもの違和感。
烏丸のメモ。
イケザワハルナという名。
日付。
そしてお土産小屋。
私はそれらの真実からまた"逃げた"。
<逃げるんですか、先輩>

 軽音学部のみんなは各々の楽器をいじりながら私を見た。
窓の外では運動部の掛け声と、ブラスバンド部の金管が奏でる倍音を伴った綺麗な練習音が聞えている。
「だから、私、今日ちょっとお休みさせて。だから人数足りないだろうし男子部の小野くんにそこはお願いしてあるから。ごめんね」
 女子メンバーは私を含めて5人。私以外にドラムを叩ける人がいない事の解決策は男子部員を借りる事で手を打った。
普段なら各自練習で問題はないけれど、もうすぐ期末試験に入る。そうなったら部活動は中止。
その期末後にライブを控えているものからみんなで練習する時間も貴重という訳。
 みんな笑顔で私のわがままを許してくれた。春菜と一番仲のよかった私に、まだみんなもどう接していいのか分からずに戸惑っているのが分かる。
「大丈夫? 一緒に帰ろうか?」
「ダメダメ! も〜、みんな練習して!」
「ちぇ〜っ、ゆかりがサボれるいい口実だったのな〜」
 ベースのゆかりんがワザとおどけてくれたおかげで、私はとりあえず過度にギクシャクした空気を残さずに退出する事ができた。ありがとう。
 中庭では弓道部員が何やら弓をひく練習のようなものをしていて、その中のクラスメートの男子と目が合う。
彼は私を見なかったフリをして練習を続けた。
 正直、今の私ってみんなから見たら本当に厄介な存在なんだろうな。
 そんな思いが浮かんでも悲しくはなかった。それも全て、これから会う彼の事を思えば。
――転校生。
一体何者なんだろう。顔は悪くない。というよりも格好いい部類だ。でもどこか陰がある。昨日、パトカーで私を覗き込んだ目は何も映っていなかった。
……たしかあれは文化祭の準備が解禁になる日だったと思う。二か月前。まだ暑さが残る朝の教室に、彼はやってきた。
「はい、おはよう」
 担任の若本先生がいつものように挨拶をして教室に入ってくると、軟体動物のように腑抜けたみんなの背筋がしゃんと立つ。

39 :
リレーじゃないの?

40 :
じゃあなしで

41 :
と現場主任があっさりと言い放った

42 :
主任としては、どうでもいい事だったのだろうが、やはり納得がいかないままだ。

43 :
リレーじゃない方がおもしろかったなw

44 :
と田中一郎が言った

45 :
さて…どうしたものか

46 :
帰ってこいよ
リレーと趣旨は変わるけどあんたの物語見たいわ俺は

47 :
むむ

48 :
こいこいはやくこい

49 :
人はいつ死ぬ?
自らの命を引き換えに怪物をすときか?
体を怪物にバラバラに裂かれたときか?
通り魔に腹を刺され無念のうちにもがき苦しむときか?
違う!
もっと難しい。人に忘れられたときさ。
五丁目の平屋でまたしが起きた。先週から2件起きている強盗人だ。
―――されたのはまだ小さいガキ。何でこんなことを・・・。
「おい!池沢。邪魔だどいてろ。」
俺の名前は池沢耕平。数ヶ月前に妹をされた不運な警官。
ガキをす奴の気が知れない。俺みたいに苦しむ奴ばかり増える一方じゃないか・・。
―――こんな世の中おかしいぜまったくよぉ。
「おいおい。大丈夫か池沢?」
この人は袴田俊彦警部補。俺より一回り上で頼りがいのあるいい先輩だ。
この人の息子は行方不明になっていて俺の気持ちをよく理解してくれた。
「またこんな落書きがあった・・・。」
‘帰ってきた酔っ払い。君は死んじゃった’
どう考えても愉快犯か快楽人鬼の犯行でしかない。なんだよこんなのありか?
「あのすみません・・・。トイレってどっちすか?」
現れたのは二枚目名顔つきの若い巡査部長だった。
「そこ出て左。あれ・・・?どこかであったことないか?」
「さぁ?俺いろんな有名人に似てるって言われますから。」
若いハンサム刑事は、自慢を少しすると玄関から外へと出て行った。
―――どこかで見たことある・・・。誰だ?
被害者の子供が運ばれてくる。―――まだ若いのに・・・。
待てよ・・?
この子供・・・。まさか!さっきのアイツ・・・。
「おい!お前!何者だ?神奈川県警に神谷伍郎なんていないぞ。」
男はおそるおそるこちらへと顔を向けると不敵な笑みを見せた。
ハンサム刑事はこちらへと奇妙なたとえ話をしだした。
「貴方は人はどのように死ぬか決まっているか誰かから問われたことがありますか?」

50 :
夢見る中高年 あの私、さっき近所の河原で妖精と会話してきましたw
FAIRY TAIL  Fairies caught on my video / Cottingley Fairies Afterwards 多摩川に妖精を見た 
http://www.youtube.com/watch?v=nfVDjKibmbk

51 :
>>50 訳分からん。

52 :
ワクテカ

53 :
>>49
ワンピの丸パクリw

54 :
>>38のが読みたい

55 :
>>48 の方が面白そうだけど・・

56 :
ID:y+5xgvmb
ID:q0SBIVRw
ID:+QySkgnE
早くもどってこいよ。普通にサイトで続きでも書いて欲しいレベル

57 :
>>56
同意だけど、ここリレースレだからスレチ

58 :
>>49の続き
一方その頃 ―
「いたぞー!撃て!撃て!撃ちまくれ!」
ドガガガガガガ!!!!!!!!!

59 :
この板シェアにしたらよくない?リレー嫌なようだから

60 :
好きにすればいいんじゃね?

61 :
shien

62 :
もう誰もこないのかよ

63 :11/08/21
こりゃぁペニス一郎のせいだな。

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