2011年10月1期冬スポーツ【カーリング】楓【小説】
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懺悔してチーム青森の誰かに弾かれるスレ
狭山スキー場のスキーの検定会最低!!!!
アイスホッケーと同じ板にいると思うと吐き気がする
【チャット】チーム青森と愉快な仲間達【ライブ】
【カーリング】楓【小説】
- 1 :06/03/19 〜 最終レス :09/09/28
- 小説など書いたことのない俺が
カーリングを題材に執筆してみるスレです
さわりの部分だけカキコしてみますので
ご意見、ご感想を聞かせて下さい。
基本的にSage進行でやっていきたいと思います。
では、よろしくお願いします。
- 2 :
- 「短い」
ベンチに座る林にも判るほど
それは頼りないショットだった。
弟6エンド、サード小野寺の2投目は
目標地点に達することなく
与えられた力を使い果たした。
セカンド目黒萌絵は何度目かのため息をついた。
リード寺田桜子は呆れたように目を伏せた。
そしてスキップ本橋麻里は・・・
大きく頭を振った。
- 3 :
- <2頁>
メンバーの誰もが小野寺の実力を知っている。
その強さ、そして弱さもすべて。
1勝3敗で迎えたアメリカ戦。
このゲームを落とせば、2009年世界女子カーリング選手権の
決勝トーナメント進出が厳しいものとなる。
初戦のスイス戦こそ大勝したが
その後3戦を連敗した。
その原因が小野寺の不調のせいであることは、
カーリングを知る人間ならば誰もが理解できたはずだ。
- 4 :
- 糞スレ立て過ぎ
自治で目に余るカーリングスレ立てが問題になってる現状がわからんのか
これだからにわかカーリング厨は(r
削除依頼出しておけよ
- 5 :
- <3頁>
集中力を切らした日本女子チーム、
正確に記すなら「チーム青森」は最終エンド、
3投を残しギブアップを宣言した。
試合から2時間後、宿舎の一室でミーティングが開かれた。
最初に口を開いたのは本橋。
小野寺に対する不満の言葉だった。
「歩ちゃん、やる気あるの?!」
怒りをこめた糾弾の言葉。
しかし、それを諌める物はいない。
その場にいた全員が同じ思いだったからだ。
- 6 :
- >>1
むりりん
- 7 :
- <4頁>
本橋がどれほど小野寺を慕っているか
林はよく知っている。
だからこそ、本橋の言葉に込められた「思い」が
林には理解できた。
「ゴメン・・・」
小野寺が消えそうな声で言った。
それに続く本橋の言葉をさえぎるように
小野寺は林の方へ向き直った。
「・・・弓枝ちゃんゴメン・・・。明日からお願い」
言い終えると同時に、それまでこらえていた涙が
小野寺の眼から溢れた。
- 8 :
- <5頁>
「歩ちゃん、でも・・・」
林の言葉が聞こえていないフリをして、
小野寺は足早にドアの方へ向かった。
ドアノブに手をかけたまま数秒が過ぎたが、
何かを断ち切る、或いは、何かに決別するように
小野寺は部屋を出て行った。
重苦しい沈黙の中、コーチである小林が言った。
「明日はサード林でいく。予選ラウンド突破は厳しくなったが、
出直すつもりで明日からの試合を戦おう」
- 9 :
- 「一緒スレ」で今みたいに鳥つけて続ければいいのでは?
カーリングスレが乱立しすぎなので、一人の創作のために1スレってどうかと思う。
1000まで使い切るから他スレで間借りできないってのなら仕方ないかもしれんが。
- 10 :
- >>9さん
解りました。
2CHもまだまだ初心者なもので、ご迷惑かけてしまいました。
アドバイスありがとうございました。
- 11 :
- 小野寺=サード
マリリン=スキップ
林=リザーブ
設定がコレな時点で付いて行けない
- 12 :
- スレ立てしてトリップつけて初心者って。確信犯の痛い本橋ヲタだろ。
全く、春だね。
- 13 :
- 全然創作なんかじゃなく、既存の報道の焼き直しだろ
- 14 :
- >>1
むりりん
- 15 :
- 男子カーリングにして試合をアグレッシブに書けば?
サイドストーリーよりもスポーツ物は試合そのものが重要だろ。
- 16 :
- 執筆が嫌になったのかww
- 17 :
- 興味の失せたカーヲタ晒しage
- 18 :
- 楓アイル
- 19 :
- >15
さっき、試合でやった六尺兄貴凄かったです!ガチムチの色黒兄貴がイエス連呼で
ストーン投げられブラシでこすってました。俺もくわえさせられてストーン食らい無様に
テイクアウトさらしました。8点取られたときは一瞬引いたけど、兄貴の「いやなら
止めていいんだぜ!」の一言で覚悟決め、生まれて初めて握手求めました。そ
の後、脇・Qも刈られてビンビンのマラ、思いっきりしごかれ派手にガチムチ
兄貴の顔に飛ばしました。スッゲー男らしく気持ちよかったです。また行くとき
カキコして下さい!帰ってから丸刈りの頭見て、また感じまくってます!
- 20 :
- >>4 >>12
もう立ててしまったスレに途中でちゃちゃを入れて企画倒れにすんじゃねーよ。
モマイらがちゃちゃを入れることで糞スレになるんだよ。
確かにスレ立てすぎはあるけど、面白そうなスレもあるんだから全面否定すんじゃねー。
モライらこそスレあらし、糞スレづくりの張本人だ。
- 21 :
- >>4
こいつバカか!
削除依頼なんかだしてすぐ削除になると思ってんのか、アホ!
>>12
ナニ言ってんだかわかんねーよ。
もうちょっと勉強してから、カキコするよーにしようね、ガキ!
- 22 :
- >>20-21
かえで必死だな
悔しかったら小説書いてみせろよキモヲタww
- 23 :
- >>22
お前みたいなキモヲタに聞かせる小説はねえっ!
- 24 :
- >>23
かえでの執筆断念宣言キタワァww
- 25 :
- ば
- 26 :
- このスレ、お休み中のようなので、お借りします。
- 27 :
- 生まれてこのかた、この私が、これほどまでに大量のレンズの標的にされ
たことがあっただろうか。私がこれまでにもっとも注目を集めた出来事とい
えば、ある競技大会に出場し、あれよあれよという間に3位に入賞してしま
ったことくらいだろう。その時でさえ、レンズの数はこの十分の一にも満た
なかったはずだ。
私が今いる場所は、五輪で活躍した二人のアスリートの引退会見の席上だ。
雛壇というのだろうか、記者の人たちよりも一段高い場所に座らされている。
そして私は、こともあろうにこの二人の後継者として、私の左隣に座ってい
る少女とともに選出されたのである。目の前のテーブルにはたくさんのマイ
クが不揃いに並んでいる。この後、このマイクたちを通して、私の声が日本
中に中継されるのだ。
腿の上で軽く握っていた手が、自分の意思とは切り離されているように勝
手に震えている。その手の上に私の隣の少女、いまや私にとってかけがえの
ない親友が片手をそっと重ねてきた。思い起こせば、この少女とのは、
桜が散って間もない5月初旬のことだった。
- 28 :
- 青森でこの冬一番の話題と言えば、何を差し置いてもカーリングだろう。
青森県代表のカーリングチーム「フォルティウス」が、日本代表としてトリ
ノオリンピックで大活躍し、一躍時の人となったのである。オリンピック後
に開催された日本カーリング選手権大会の期間中などは、マスコミやファン
の人たちによって青森市内及び近郊のホテルが占領されてしまった、などと
いう噂を聞いたほどだ。
そして私、須藤真美も、この冬カーリングに関わった一人である。
スポーツ店の陳列棚のどこを探しても冬物商品など見つからない季節にな
ろうというのに、フォルティウスの話題は尽きることがない。
今も始業前の教室で男子が騒いでいる。「CMの小野ワロスw」とか「ゆ
りりんの胸に顔を埋めてえ!」とか「林田さんになじられたいいぃぃい!」
とか言っちゃってんの、もう見てらんない。
かくいう私も、小野さん命なんですけどね。いやいや、小野さんなんて言
ったら罰が当たります。「菜摘お姉さまっ!」もうこれだね!
できることならば直々に、菜摘お姉さまにタイを・・・じゃなかった、デリ
バリーを直されたい!!
「ところでよ、小野と林田がこのままチームを抜けちゃったら、補充メンバ
ーを入れないとヤバイだろ。こうなりゃカー娘も、テレビ局とタイアップし
て、全国オーディションでもやりゃいいんじゃねえの?な、いぐねいぐね
?」
また能天気な男子がアホなこと言っちゃってるよ。モーニング娘。をパク
って、テレビでオーディションかよっ。菜摘お姉さまが仰るとおり、カーリ
ングはスポーツなんだから、勘違いしないでよね。
そりゃ私だって、小学生の頃にはモーニング娘。に入りたくて、応募した
ことくらいあるわよ。一時審査で落とされたのは、近所の商店街に設置して
あったインスタントの証明写真ボックスがオンボロだったからという、ちゃ
んとした理由だってあるんですからね。
それに、菜摘お姉さまはフォルティウスをやめるんじゃなくて、ちょっと
休養するだけなんだからね。必ず戻ってきてくれるんですから。
- 29 :
- 「ねえ真美。あんたさぁ、フォルティウスの新メンバーに立候補してみた
ら?」
隣の席の泰子が突然こっちに話を振ってきた。
「え、あたしが?」
「そうだよ、なんたって真美は高校選手権3位のスキップさまじゃん、うま
くいきゃリザーブくらいに滑り込めるかもよ」
確かに私はこの冬、カーリングでちょっとばかり活躍しましたよ。たった
4ヶ月の練習期間で高校カーリング選手権大会、通称カーリング甲子園に出
場できて、ビギナーズラックで3位に入賞までしちゃいました。大会後は地
元のテレビにインタビューされたりして、ちょっぴり有名人気分も味わえち
ゃったりして。でも、それもほんの一過性のもの。今じゃ誰も私のことなん
か覚えちゃいませんから、残念!
カーリングの技術だって、準決勝戦での一方的な展開、あれが本当の実力
なんだよね。圧倒的に有利な後攻なのに、連続スチールを決められちゃって、
もう手も足も出ませんでした。私のドローショットが下手っぴーなのは置い
ておくとしても、ドローを難しくするように確実にセンターガードを置いて
くるし、弾き出せない位置にカマーランドを決めてくるし、負けたのはもう
明らかに技術と戦術の差だよ。3位になれたからって自惚れるほどずうずう
しくないですよ、私は。
それでも、第6エンドだったかな。サードの真理ちゃんが私の指示したコ
ースに絶妙のウェイトで投げてくれて、春香と舞っちががんばってスウィー
プしてくれて、狙った通りのダブルテイクアウト&ステイのスーパーショッ
トが決まった時の感動は、忘れられない。
スキップって、みんなの最高の力を引き出すことが一番の喜びなんだって、
その時思った。それと同時に、連続スチールをされたのは、全部スキップの
私のせいなんだと、痛感した・・・。
周りの人たちはよくがんばったって褒めてくれたけど、私は泣いた。家に
帰って一人になったとき、1点も取れなかったことが悔しくて、大泣きして
しまった。
そういえばなんて名だったかな、私たちを破ってそのまま優勝したチーム
のスキップの子。同じ学年なのに、本当に凄いと思った。彼女はおそらく子
供の頃からカーリングの英才教育を受けてきたのだろうから、私のような付
け焼刃じゃどう足掻いたって歯が立たないよね。あーあ、もっと早くカーリ
ングの魅力に気付いていたらなぁ、なんて言ってもしかたないよねぇ。私も
努力しだいで、あんな凄いカーラーになれるのだろうか。死ぬ気でがんばれ
ば、追いつくことができるのだろうか。
- 30 :
- 「ねえちょっと、聞いてるの。真美ってば!」
「・・・えっ?ええ〜っ、無理だよあたしなんて。まぐれでメダルもらっただ
けだもの」
危ない危ない、一瞬別の世界に行ってたかも。この妄想癖はなんとかしな
いといけないな。
「でも短期間で上達したのは事実なんだからさ、あんたマジで才能あるんじ
ゃないの?」
「ないない。それにあたし程度の実力の人なんて、いくらスウィープしてテ
イクアウトしても追いつかないくらいいっぱい居るよっ」
「・・・真美さん、そこは笑ってあげるべきなのでしょうか〜?」
「うへへ・・・。ところでさ、今朝からあたしの後ろにあるこの机は何なのか
なぁ?」
「ああそれ。転校生らしいよ、さっき職員室で話してた」
「え、この時期に?」
ゴールデンウィークも終わり、とっくに桜も散ってしまったこの中途半端
な時期に転校生。これは無い頭を使わずとも『訳有り』という言葉が浮かん
でくる。どんな『訳有り』なんだろうと想像する間もなく、担任の先生が教
室に入ってきた。
「起立!、令!、着席!」
号令は私の役目だ。
「今日からこのクラスに新しい仲間が加わることになった、さあ、入って」
現れたのは女子だった。結構可愛い子だな。でも眼鏡のせいでちょっと神
経質そうに見えなくもない。あれ?どこかで会ったような気が・・・。でもそ
んなはずないよね?
「おおみやあんなと言います。父の仕事の関係で北海道から引っ越して来ま
した。よろしくお願いします」
黒板に自分の名前を書き終え、深々と下げた顔が正面を向いた時、何故か
私と視線が合ったような気がした。それもなんだか棘があるような・・・。
もう一度黒板を確認すると『大宮杏奈』と書いてあった。・・・大宮・・・あっ。
こんなことってあるのだろうか、つい先刻まで考えていた、同じ学年で憧れ
のスキップ、まさにその人じゃないか。ど、どうして貴方が・・・。
「それじゃあみんな、仲良くやっていこうな。席は窓側の、そう須藤の後ろ
の席だな。須藤はこのクラスの委員長なので、分からないことがあったら須
藤に聞くんだぞ。それじゃあ、この前の続きから始める・・・」
えっ、それだけ?何の説明もなしなの?彼女は常呂町のカーリングエリー
トのはずなのに。青森に引っ越してきたのにまさかそれを先生が知らないな
んて事は・・・。
彼女が私の横を通った時、一瞬無言のプレッシャーを感じたような気がし
た。
続くかどうか不明
- 31 :
- >>27-30
生まれてこのかた、
まで読んだ
- 32 :
- と、とにかく続きを希望してみようw
- 33 :
- 一時間目の授業はちっとも集中できなかった。背中に感じる視線が気にな
ってしかたがなかったのである。彼女はあの大宮さんに違いない。なぜこん
な時期に転校してきたのだろうか。それよりも、彼女はこっちでもカーリン
グをやるのだろうか。私たちのチームに入ってもらえるのかな。そうなった
らうれしいかも。
でもうちのチームは今4人ちょうどだから、彼女が入ったら一人あふれち
ゃうよね。彼女のポジションはスキップだから、私があふれちゃうかも、ガ
ーン。でも彼女と一緒にやれたら色んなことが勉強になるだろうな。そんな
ことを考えているうちにチャイムが鳴った。それとほぼ同時に、『3年C組、
須藤真美と大宮杏奈、至急校長室に来るように』突然校内放送が流れた。
ええ〜、私ぃ?校内放送で名前を呼ばれるなんて、17年生きてきて初め
ての経験だよ。
「ちょっと真美、何やらかしたのよ〜」
泰子が他人事だと思って、お気楽な笑顔ではやしたてる。男子たちもなん
かわいわい言ってるし。
「知らないよ、それに大宮さんも一緒だなんて・・・」振り返ると彼女は冷や
やかな目で私を見つめながら、
「さあ、早く校長室へ連れて行ってちょうだい、委員長の須藤真美さん」そ
う言って私の袖を掴みながら立ち上がった。
「あたしはあなたの名前以外、この学校のことをほとんど何も知らないのだ
から」
- 34 :
- ノックをし、「失礼します」と告げてから校長室に入ると、校長先生の他
にも私たちを待っている大人の人がいた。
「授業中に突然呼び出してすまなかった。別に君たちを取って食おうという
わけじゃないから、まあそこに坐って」
校長先生が妙に愛想のいい笑顔でそう言って、私たちにソファーを勧めて
くれた。そして、私たちの前の初老の男性とその人よりも少し若い男性の二
人が名刺を差し出してきた。名刺を貰うなんて、これまた初めての体験であ
る。名刺には『青森県カーリング協会』と印刷されてあった。簡単な挨拶の
後、初老の男性が本題を話し始めた。
「フォルティウスの小野選手と林田選手が休養に入っているのは知っていま
すね」
「はい」もちろん知らないわけがありません。大好きな菜摘お姉さまのニュ
ースは逐一チェックしているのだ。
「彼女たちがこの秋にも復帰して、来年の世界選手権はもちろんのこと、次
の五輪も目指してもらえるのではないかと、一部で憶測的な報道が流れてい
るが、実は彼女たちが競技から一線を退くのはもう決定事項なのです。それ
を公にできないのは、まあ、この世界の大人の事情というやつなのですが・
・・」
ええ?そんな、菜摘お姉さまが現役引退?そんなことを考える間も与えて
くれずに、どんどん話が進んでいく。
「単刀直入に言うと、現在県の協会では二人の後継者を探しているのです。
秋のパシフィック選手権前に新メンバーを決定し、発表しなければなりませ
ん。そこで、あなたたち二人を新メンバー候補として推挙しようと考えたわ
けです」
ま、マジですか。
「ちょっとまってください!大宮さんは過去の実績から選ばれるのは当然と
しても、どうしてあたしなんですか!あたしよりも上手な人はいっぱい居る
のにっ」
私は慌てふためき、手をばたばたしながらそう言った。
- 35 :
- 「ご存知のようにフォルティウスは、青森県の代表チームなのに、全員が北
海道出身者で構成されている。どうせ新メンバーを入れるなら青森出身の子
を一人は入れたい、という県のお偉方の意向があるのです。ただしこれは絶
対条件ではない。実はあなたたちの他にも、他県の大学生を候補としてピッ
クアップしています。正直に言うと、そちらの候補の方が即戦力になりうる、
言わば本命です。で、対抗を選ぶならだめ元・・・いや失敬、できるなら青森
の子も候補に入れようと考えたわけです。須藤君の実績と言えばこの冬の高
校選手権で3位になったことだけだが、逆を言えば競技を始めてたったの4
ヶ月でその成績を収めたというその成長率から、更なる将来性を期待してい
るのです。それにあなたを選んだのはそちらの大宮君の・・・」
協会の人はそう言いかけて、急に言葉尻を濁し視線を逸らした。横目でち
らりと見た大宮さんの眉が、険しい形になっているようにも見えた。
「おほん、大宮君には須藤君を鍛えてもらって、その別候補と選考会を行っ
てもらおうと思っている。どんな形式のトライアルにするかはまだ決まって
いないがね。とりあえず君たち二人には、優秀なコーチと共にこの夏合宿を
過ごしてもらうつもりだ。合宿の詳細については、後日決まり次第連絡する。
もちろんやってもらえるだろうね」
「はいやらせていただきます。必ず二人でその本命の候補に勝ってみせま
す」
おいおい、私の意見は聞かないのかよっ。
「それと、この選考会はあくまでも内密にやっていこうと思っている。君た
ちもマスコミに追われたりしたら困るだろう?」
「幸い、あたしが北海道でカーリングをやっていることに気付いたのは須藤
さんだけのようですし、須藤さんにはチームメイトにもうまく取り繕っても
らうようにお願いしておきます」
えええ〜、なんか私を蚊帳の外に置いておいたまま、どんどん話が進んで
いるみたいなんですけど〜。
- 36 :
- 「ようするに長野の大学生がAプランで、あたしたちがBプランというわけ
ね。面白いじゃない」
校長室を出て、並んで廊下を歩きながら、彼女は不敵な笑みを浮かべつつ
そうつぶやいた。あれ、大学生が長野の人って、さっきの話で出ていたっ
け?
「あの・・・大宮さん。なんだか安請け合いしちゃったようなんだけど、本当
にあたしなんかとコンビでいいの?」
「勘違いしないでよ。べ、別にあたしは、あなたとカーリングをやりたくて
この学校に来たわけじゃないんだからねっ」
大宮さんはそう言うとぷいっと顔を横に向け、窓の外を見つめた。
「あたしは必ずフォルティウスに入ってみせる、そのためなら多少の悪条件
でも引き受けるわよ。あなたには、あたしの足を引っ張らないようにがんば
ってもらわなくちゃ」
「でもあたしなんかどれだけがんばっても、大宮さんと釣り合いがとれるよ
うになれるとは思えないよ。それにカーリングってチームワークが大切な競
技だよね、あなたのチームメイトの方があたしなんかよりもずっと適任だ
よ」
「元シムソンズの和ちゃん・・・伊藤和子さんだって、長野五輪の時にたった
一人で日本代表選抜チームに参加して、その経験をシムソンズで生かしたの
よ。あたしも伊藤さんのようにチャンスを掴み、それをいつかGLAYSで生か
したい。GLAYSのみんなも、あたしの思いを分かってくれたわ」
「そうか、武者修行でもあるんだね」
「もちろんやるからには腰掛のつもりなんかじゃなく、フォルティウスのス
キップの座を奪うくらいの気持ちでがんばるけどね」
「大宮さんは凄いね、カーリングに対する思いが、こうやって話しているだ
けでビンビン伝わってくるよ」
大宮さんは振り返り、眼鏡の奥の瞳が私を見据えた。
「須藤さんはどうなの、あなたはカーリングに一生を掛ける心積もりがあ
る?」
- 37 :
- え、な・・・いきなり何を言い出すのだこの子は・・・。
「あたしはあるわ。常呂に生まれた子供は一度はカーリングで上手くなりた
いと思う。でもストーンは限られた人の思うとおりにしかカールしてくれな
いの。ほとんどの子は、趣味で楽しむレベル以上にはなれないことに、すぐ
に気が付くものなの。誰にでも楽しめるけど、極めるためには持って生まれ
た何かが必要なのがカーリングなのよ。うぬぼれに聞こえるかもしれないけ
ど、あたしがカーリングをすることは、宿命なの。カーリングのためなら、
あたしは人生の総てを投げ打ってもかまわない」
私は驚きで言葉を失った。私と同じ年の高校生がここまで一つの競技に人
生を掛けているなんて・・・。
「そのために、さっそく今日からトレーニングの開始よ、あなたは陸上部だ
ったわね、あたしも陸上部に入部するのでよろしく」
「ちょ、大宮さん・・・」
なんで陸上部って知ってるのよ・・・。
「杏奈でいいわ、あなたのことは真美でいいよね」
「え、ええ」
「さあ、まだ2時間目の授業に間に合うよ、走ろう」
大宮さんは私の袖を引っ張って走り出した。
「ちょ、大宮さん・・・杏奈、廊下を走っちゃだめだってば」
「これもトレーニングだよ、さあ真美ダッシュ!」
続く?
- 38 :
- ツンデレキタコレw
- 39 :
- ふむふむ
- 40 :
- 駄作
- 41 :
- >>40
自覚してます。小説もどきのものを書いたのは初めてなので、勘弁してください。
つうか、もっとガンガン煽られるのを覚悟してたけど、ほとんど反応なくて拍子抜け。
新メンバー決まっちゃって、書きにくくなったのでもう続かないかもしれません。
このスレ、もったいないので他の人も利用してくれればいいのになと。
- 42 :
- >>41
上の方のレスで、「既存報道の焼き直し」というのがあるが、
かえでもそうだし、◆6o71hPpWcYもおそらく該当するだろうと思うが、
カーリング中継や報道を見ただけで自分でカーリングをやっていないから、
報道の焼き直し以上のものが書けないのでは?
- 43 :
- >>42
カーリング、やりたくてもなかなかできないですよねw
あえてモデルに工藤さんと近江谷を選んだのは、ほとんど報道された情報が無かったからというのもあります。
事実を参考にしたのは、試合結果と準決勝第6エンドのスーパーショットくらいです(FBで動画を見ました)。
作中でのその時の須藤さんの心境や、後半で大宮さんがまなじりをあげて主張している内容などは、
完全に想像による(妄想ともいう)でっちあげですので、念のため。
- 44 :
- 近江谷さんと書かなかったのは書き損じです。
Janeだとあまり推敲せずに書いてしまう・・・orz
- 45 :
- 下がりすぎ
- 46 :
- えっ、よくできてるじゃん。なんでそんに腐すんだろ。
- 47 :
- >>41
あまり気にせず書きたい時は書けばいいじゃん。
新メンバー決定っていう新しい材料で書いてみたら?
- 48 :
- 夕方の河川敷は、散歩には最高の環境だ。心地よい風に涼やかなせせらぎ
の音。子供たちの笑い声が心を和ませてくれる。しかし、走るとなると話は
別だ。景色を楽しむ余裕なんて、今の私には全然ない。
杏奈が私の前に現れてから、かれこれ一ヶ月になるだろうか。転校してき
た日に陸上部に入部届を提出し、その日から毎日一緒にトレーニングである。
それもランニングばかり・・・。だいたい私は長距離走が苦手なのだ。100
mと走り幅跳びが私の得意種目なのだから。いや、得意といっても、県の大
会の地区予選すら突破したことはないんだけどね・・・。
「ねえ杏奈〜、ちょっと休もうよ〜」
「何言ってるの、走り出してからまだ20分も経ってないじゃない。いつも
の折り返しポイントまでノンストップだからね。安定したショットは鍛え抜
かれた足腰から放たれるものなんだから。さあファイト!」
まったく杏奈ときたら、全然容赦ないんだから。でも私は分かってるんだ、
彼女の半分は優しさでできているんだって。残りの半分は鬼だけどね・・・。
最初のうちは杏奈のペースに全然付いていけなかったのだが、最近ようや
く同じペースで走れるようになってきた。そうなると、更にペースアップを
要求してくるんだもの・・・。それでも杏奈は、決して私を置いて先に行くこ
とはない。私の横に付かず離れず並走してくれるのだ。
「ほらペースが落ちたよ! そんなんでベテランの大学生に勝てると思って
るの! 甘えは許さないからね!」
口調は鬼軍曹である。
- 49 :
- あくまで基礎トレーニングでしかないランニングでこれだけきついのだか
ら、夏の合宿に入ったらいったいどれくらい大変なことになるのだろう。
それにしても、合宿ってどんなところでやるのかな。カーリングの合宿な
のだから、カーリング場があるところでやるんだよね。そうなると今がシー
ズンのニュージーランドか、オーストラリアあたりまで行くのかな。いやい
や、いくらなんでもBプランの私たちにそれはないか。
やっぱり田舎の民宿あたりなのかな。それでもって、コーチはやっぱり黒
いサングラスのおじさんだよね。髭がぼーぼーってのもありかも。
「お前たちに氷上トレーニングなど10年早い! 夏場は体力作りだけで充
分だ!」なんて言いながら、竹刀で地面をバシバシ叩くんだろうな。でもサ
ングラスを外すと、わりと可愛い目だったりするんだよね、これがまた。
近くの山の上にある寂れたお寺への階段を、うさぎ跳びで10往復くらい
させられるのは当たり前かもね。もしかしたら、噂に聞いた鉄下駄なんての
もあったりして。それが終わったら、スウィープの練習も兼ねて、お寺の長
ーい廊下をモップがけ・・・。うわー、体が持たないよ〜。
それでもなぜか、民宿のくせに天然の温泉が引かれた大浴場があったりし
て、一日の疲れを癒せるんだよね。杏奈と一緒に温泉か・・・うへへ・・・。
「ちょ、真美、危ない!」
「え?うあ〜!!!」
私は走りながら妄想していたようで、目の前に自転車が接近していること
に気付くのが遅れてしまったのだ。杏奈が横からタックルを仕掛けてきた。
そのまま、土手の芝生にもつれるように転がった。
「あたた〜、杏奈ごめん、大丈夫?」
「ちょ、真美、そこ!」
「うわっと! ごめんね杏奈、うへへ・・・」
「・・・ううん、むしろこっちが・・・・・・・・・だよ・・・」
「?」
夕日に照らされた杏奈の頬は、赤く染まってとても可愛いと思った。
- 50 :
- まだ走っているのである・・・。
「ねえ杏奈〜、おなか空いたね〜。おやつタイムは重要だってユリリンも言
ってたよ〜」
「ランニング中におやつなんて駄目に決まってるでしょ! もうしょうがな
いな。それじゃトレーニングが終わってから、帰りにジャスコにでも寄って
何か食べていこうか? あっ、でもこの時間におやつタイムにしたら、夕ご
飯が食べられなくなっちゃわない?」
「大丈夫、おやつは別腹だよーん。よーしがんばるぞっと! ところでさぁ、
おやつタイムの定番がバナナということが世間に浸透するのはまずいよね」
「え、どうして?」
「だって、バナナ=おやつということが定着しちゃうと、『バナナはおやつ
に入らない』という生徒側の主張が通用しなくなっちゃうじゃない?そうな
ったらおやつ代がバナナの分だけ削られちゃうもの」
「・・・まったくあんたって子は、高3にもなって遠足のおやつ代の心配をし
ているわけ?」
杏奈は走りながら冷ややかな流し目をくれた。
きたきたキタ━━(゚∀゚)━━!!!!、杏奈のクールな目。
私はこれが大好きなのだ。その後に決まって密かに微笑んでくれるのも、
決して見逃さないのであった。
続く
- 51 :
- がんばってますねえ。
とりあえず続きを。
- 52 :
- あげあげ
- 53 :
- 眼鏡っコのツーショット、いいね
ttp://aomori.photo-web.cc/curling/2006school/03.jpg
- 54 :
- ブラックが近江谷さんでホワイトが工藤さんだね。
- 55 :
- 学校を出て、私と杏奈は自転車でジャスコに向かった。私も杏奈も自転車
通学なのである。ジャスコに寄り道するとどちらにとっても遠回りになるの
だが、それもまたトレーニングの一環と考えることにしよう。
ジャスコの飲食店スペースは、女子高生のたまり場と化していた。私以外
の女の子も皆別腹を持っているらしく、夕方のこの時間になっても、食べて
話して笑っている。
私はハンバーガーとナゲットとコーラ、杏奈はハンバーガーとポテトとオ
レンジジュースを注文した。本当はダブルバーガーにしたかったのだけれど、
ローテーション的に今夜あたり大好きなカレーになりそうなので、シングル
で抑えておこうと考えたのだ。そう言えば、前に一度持ち帰りの時に「ハン
バーガー、ダブルテイクアウトでお願いします」と言って注文したことがあ
るけれど、普通にスルーされてしまったっけ。
私たちは売り場から少し離れた場所の、観葉植物の鉢のそばのテーブルに
着いた。
杏奈はハンバーガーをほおばりながら、顔で円を描くように視線をぐるり
と回した。
「ジャスコの中って広いよね。こんなに大きくて綺麗な大型ショッピングセ
ンターが常呂にもあったらなぁ・・・。なんせ、常呂で一番広い空間を持つ建
物がカーリングホールなんだもの、ちょっとさびしくなるよ」と言いながら
顔では笑っている。
「ふーん、でも北見まで行けばあるんでしょ?ジャスコ」
「北見にジャスコはないよ。似たような大型店やデパートならあるけどね。
それに、常呂は北見と合併したけれど、いまだに自分の地元が北見とは考え
にくいのよねぇ」
杏奈はふっとため息をついた。
- 56 :
- そうか、杏奈にとっては常呂こそが故郷なのだ。これまで常呂町民として
育ってきて、ある日を境に「あなたは北見市民になりましたよ」と言われて
も、そう簡単に受け入れられるものではないだろう。この間までお隣同士で、
場合によってはライバル関係にあった町なのだろうし、突然パートナーにな
れと言われたって、当事者にとっては複雑な思いがあって当然だ。
それでは、私たちはどうなのだ?
突然見ず知らずの町に転校させられて、まったく面識のない子といきなり
コンビを組まされた杏奈は、私を心からパートナーとして受け入れてくれて
いるのだろうか。口にはしなくとも、心の奥底には不満が溜まっているので
はないだろうか。貧乏くじを掴まされたという思いはないのだろうか。
町の規模からして、北見市が常呂町を吸収合併したようなものと思われる。
どうみても対等な合併ではないだろう。私と杏奈も、まさに北見市と常呂町
のようにアンバランスな関係ではないか。
私は杏奈を頼りにしようと最初から当てにしているのではないだろうか。
杏奈のお荷物になっているのではないだろうか・・・。
杏奈は私の瞳の奥の揺らぎを見逃さなかったようだ。
「心配はしてないよ、北見と常呂はきっとうまくやっていける。カーリング
は二つの町の絆を結ぶ架け橋として浸透していくよ。そして、あたしと真美
も同じ・・・。ただ、これからもあたしは、常呂町出身だということを誇りに
思って生きていくのは変わらない。この気持ちは北見市と仲良くすることと
は別問題なの」
杏奈は人の気持ちが分かるやさしい子だ。私は彼女の頭の良さと、人を思
いやる心が大好きだ。
「あっ、そのナゲット残すの?だったらもーらいっ!」
杏奈は私の返事を待たずに、最後まで残しておいたナゲットを素早くかす
めとって、自分の口に放り込んだ。
前言撤回、杏奈は単なる食い意地の張った女子高生だ!
- 57 :
- 「ところでさ、杏奈は以前、カーリングを極めるには持って生まれた何かが
必要だって言ってたよね。それって具体的にはどういうものなのかな」
私は以前から思っていたことを何となく口にしてみた。
「さあ」
「さあ、って・・・。何よ、さあ、って」
「だってあれは、お父さんの受け売りだもんね」
杏奈は、しれっとした顔で言った。
「お父さんが言うには、たとえばコントロールの良いピッチャーにコントロ
ールが良くなるコツを教わっても、本人にも説明できないんだって。それは
もう、持って生まれたセンスとしか言いようがないんだそうよ」
それじゃ、カーリングのセンスがあるかどうかなんて、実際にやってみな
ければ分からないってことじゃない。もう無責任だなぁ・・・。
「後は氷を読むセンスや、ストーンの速度を見極める能力とかかな。これも
やってみてある程度努力してみなければ、それがあるかどうかは分からない
わね」
なんじゃそりゃ・・・。
「そういえば杏奈のお父さんもカーリングの選手だったよね」
「うん、2年前に腰を痛めてから、第一線からは退いているけどね。今では
ずいぶん良くなったから、次のシーズンにはまた代表の座を狙うって張り切
ってるよ」
そう、彼女の父君は元日本代表のカーラーなのだ。どんな人なんだろうな、
杏奈に似た感じの、ちょっぴりクールなチョイ悪オヤジ風なのかな。
そう、ちょうどあそこに坐っている、ちょっとダンディーなおじさんのよ
うな・・・。
10数メートル先のテーブルで、ノートパソコンを開いてしきりに指を動
かしているおじさんの姿が、さっきから視界の片隅に引っ掛かっていたのだ。
あ、私と目が合っちゃった。杏奈からは背後の死角になるため、彼女はおじ
さんの存在に気付いていない。あ、パソコンの蓋を閉じて鞄にしまいこんだ。
そしてなんかこっちに向かって歩いてくるし。この展開はもしかして・・・。
私の視線が背後の何かを捉えていることに気づいた杏奈が振り返った。
「お嬢さんがた、ちょっとよろしいでしょうか?」
「お久しぶりです、田中さん。こんな場所で会うとは奇遇ですね」
なんだ、杏奈の知り合いか。一瞬杏奈パパの登場かと思っちゃったけど、
やっぱりそんなマンガみたいな展開になるわけないよね、うへへ。それにし
ても、お久しぶりですなんて言いながら、結構険しい目つきになっているよ
うなんですけど、杏奈さん・・・。
おじさんは隣のテーブルの空いている椅子を一脚拝借して、私と杏奈の横
に置いて腰を掛けた。
「歓談中におじゃまして申し訳ない。はじめまして、須藤真美さん。あっと、
僕はこういうものです」
なんとこのおじさんは私の名を知っていた。田中孝一と大きく印刷された
名刺をくれた。フリー・ルポライターという肩書が小さい字で添えられてい
る。ふーん、そういう肩書きがあるのかと漠然と思ったが、ようするにマス
コミ関係の人なのかな・・・って、えええ〜! もしかして、これってまずいこ
となんじゃないですか〜?
続くと思う・・・
- 58 :
- >>55-56
いくら小説だからとはいえ、市町村合併を題材にした地域ネタは止めた方がいいぞ
- 59 :
- 了解、やめておきます。
自分の意図は大宮さんの台詞にありますので、念のため。
- 60 :
- 合併問題以前に、一般人の高校生をモデルにするのはどうなんだろう
一応名前は変えてるけど
- 61 :
- age
- 62 :
- イーッ\(゚д゚ )\(゚д゚ )\(゚д゚ )\(゚д゚ )
\(゚д゚ )\(゚д゚ )\(゚д゚ )\(゚д゚ )
- 63 :
- >>60
それを言い出したらオノハヤスレの立場はw
- 64 :
- 私は、田中さんというおじさんが私たちの前に現れたことの意味を考えた。
協会の人が今回の選考会を内密に実施すると言っていたのは、私たちがマス
コミの人に追いかけられたりすることがないように、との配慮なのだろう。
マスコミの人は、プライベートの時間など関係なく接触してくるのだという
ことを、今まさに実感した。
田中さんは、杏奈と私がフォルティウスの新メンバー候補として秘密裏に
選考されていることをどこからか嗅ぎ付け、写真週刊誌にこのネタを売りつ
けるつもりなのだろう。うん、きっとそうに違いない。
来週かその次の週の号に、私たちの写真が載るんだろうな。見出しはきっ
とこんな感じだろう。
『フォルティウスの新メンバー候補はカーリング甲子園で活躍した地元高校
生。パートナーは常呂高校から引き抜いた元日本代表を父に持つサラブレッ
ド。二人仲良く猛特訓中!』
杏奈と私のランニング中のショットとジャスコで談笑中のショットが、顔
に目隠し線付きで掲載されるんだろうな。はっ、もしかしたらさっきのラン
ニング中に土手で転がってうへへ状態のシーンも隠し撮りされていて、使わ
れたりして! 見出しの『仲良く』の後にハートマークなんか入れられたら、
どうしましょう・・・。
当然学校中で話題になるよね。顔の目隠し線なんてバレて当たり前みたい
になっているに決まってるもの。クラスのみんなに問い詰められるかな。
「これって真美でしょ?」「やっぱり須藤さんと大宮さんはそういう関係だ
ったのね!」ってどういう関係ですかっ!
このことが発端になって、他のマスコミからも付け狙われちゃうのかな。
そうなると練習もやりにくくなっちゃうな。杏奈と二人で走ってたら格好の
ツーショットだもんね。「もう真美とは一緒に走れない。これからは一人で
トレーニングしてちょうだい!」なんて杏奈に言われたら、悲しすぎるよ〜。
よく考えてみたら、今は水面下で選考が行われているのでうっかり忘れて
いたけれど、もしも私がフォルティウスのメンバーに選ばれたりしたら、マ
スコミからの攻勢は大変なことになるんだよね。家族へのインタビューなん
かもあるのかな。お母さんなんてマスコミに対してちゃんと受け答えできる
のかな。私の子供のころの失敗談なんかを調子に乗って話しちゃったりしな
いかな。お父さんなんかお調子者だから、Wカップのサプライズの選手のお
父さんみたいにテレビカメラの前ではしゃいじゃったりしたら恥ずかしい
な・・・。
- 65 :
- 「ねえ真美、聞こえてる?」
私は目の前でひらひら振られている杏奈の手によって現実の世界に引き戻
された。どうやら田中さんの名刺を凝視したままフリーズしていたようだ。
「もうしっかりしてよ。マスコミの人だと分かったとたんに固まるなんて、
意識しすぎだよ。大丈夫、この人はそれほど悪い人ではないから、ねえ田中
さん」
「それほどってなんだよ杏奈ちゃん・・・。いやすまなかったね須藤さん、そ
んなに緊張させてしまうとは思わなかったよ。もしかしたら僕のことをパパ
ラッチのようなものと勘違いしたのかもしれないけど、それは誤解だよ。僕
はカーリング精神に則って公明正大に行動するジャーナリストなんだからね。
まあ選手としては、氷を読むセンスがないことが分かったので早々に諦めた
んだけどさ・・・。基本的に僕は、君たちのような将来のあるカーラーの味方
だから安心してくれたまえ」
「ふーん、味方ですかぁ。ところで田中さん、新聞社はお辞めになったんで
すか?」
「一年ほど前にね。今じゃ根無し草のフリーライターさ。幸いにも昨今のカ
ーリングブームのおかげで食いはぐれずにすんでるよ」
「ほほう、フリーライターさんですかぁ。フリーターにならずにすんで良か
ったですねぇ」
「そうツンケンしないでよ。あの時のことは反省しているし、もう考えを改
めたんだからさ。常呂町のカーラーが青森に引き抜かれることが耐えられな
くて、あえて問題提議を投げかけてみただけなんだから。今の僕はフォルテ
ィウスの熱烈なサポーターだよ」
「ふーん、公明正大なマスコミさんが、一つのチームに肩入れするのはい
かがなものなのでしょうか。長野の代表チームにも密着取材してあげてくだ
さいよ」
「あいかわらず杏奈ちゃんは厳しいなぁ。そりゃ誰だって自分の出身地で育
った選手が所属するチームを応援したくなるだろう。カーリング精神とは別
問題だよ」
「ことさらにカーリング精神を口にする人を、あまり信用したくありません
ね。だいたい田中さん、今日ここで出会ったのはまったくの偶然とでも言い
たげですけど、まさかそんなことが通ると思ってるわけじゃありませんよ
ね?」
「いやまあ、固いことは言いっこなしにしようよ、ははは・・・」
この後も二人の掛け合いは続いた。会話の中に見え隠れする情報から推察
すると、田中さんが新聞記者時代に書いた記事によって常呂町のカーリング
関係者の間で一悶着があったらしい。杏奈のお父さんはもろに余波をこうむ
ったようだ。察するところ、田中さんという人は心からカーリングを愛して
いるのは間違いないようだが、その方向性に若干の問題があるようだ。
- 66 :
- 二人の会話が途切れた時に、私は恐る恐る口を挟んだ。
「あの・・・田中さんは、というかマスコミの人は、あたしたちのことをどこ
までご存じなんですか?」
「長野の大学生に打診しているということまでは、ほとんどのマスコミが察
知しているようだが、今のところ君たちの存在にまでは到達していないと思
うよ。僕はまあ色々とツテがあるから、大筋で掌握しているんだけどね」
田中さんは自分が他のマスコミとは一線を画しているのだということを強
調したいような口ぶりだ。引き続き田中さんが口にしたことは、私にとって
驚くべき内容だった。
「青森の協会が、地元の高校生とペアを組むことを条件に、杏奈ちゃんにフ
ォルティウスの新メンバー候補への参加を打診した。杏奈ちゃんはその話し
に乗る代わりに交換条件を出してきた。その交換条件というのが須藤さん、
あなたをパートナーに指名するということだった。高校選手権で戦った青森
の選手の中で、須藤さんとならペアでやってみたい、と言ったらしいじゃな
いか」
杏奈の顔が一瞬険しくなった後、みるみるうちに赤くなった。あ、そうだ
ったんだ。私は杏奈と組めてとてもうれしかったけれど、その気持ちは一方
通行に過ぎないと思っていた。杏奈が私と一緒のトレーニングに熱心に付き
合ってくれるのは、フォルティウスに入りたい思いと彼女の優しさからであ
って、私はたまたま彼女にあてがわれた存在に過ぎないのだと思っていたの
だ。杏奈自身が私を選んでくれていたなんて・・・。私は胸の奥が熱くなるの
を感じた。
「その後はとんとん拍子で話が進んで、杏奈ちゃんが須藤さんの学校に転校
して来たってわけだね。ところで君たちは長野の大学生の方が本命だと思っ
ているようだけど、僕は君たちの方こそ本命と見込んで期待しているんだ
よ」
「あたしたちが本命!とんでもない、あたしたちなんてBプランですよ〜」
私は両手をぶんぶん振りながらそう言った。
「ははは、須藤さんはなかなか面白い子だな。僕は思うんだけど、Aプラン
とかBプランとかはこの際どうでもいいことじゃないかな。そんなものは後
からどうにでも変化するものなのだから。実力第一で候補を選抜する方法も
あれば、杏奈ちゃんと須藤さんのように複雑な思惑の元に選抜される候補も
いたってかまわないんだよ。要はフォルティウスの未来に貢献できる人材で
ありさえすれば良いってことさ。通常のカーリングシューズと初心者の体験
用シューズの違いを思い出してごらん。前者は被せるカバーによって滑らな
くするのに対して、後者はカバーによって滑らせる。目的が同じであっても、
まるっきり逆のアプローチだってありえるってことなんだよ」
そうか、私が青森のお偉いさんの思惑で選ばれたBプランだからといって、
卑屈になる必要なんてないんだ。後で外野からあれこれ言われようが、堂々
としていればいいんだよね。
- 67 :
- 「兎にも角にも、僕は大宮杏奈と須藤真美ペアの最初のサポーターとして応
援させてもらうよ。もちろん選考会まで取材を続けさせてもらうつもりだ。
おっと、当然ながら協会の許可ももらっているからね。杏奈ちゃん真美ちゃ
ん、がんばってトレーニングに励んでくれよ。それじゃ近いうちにまた」
田中さんはキザな笑顔とともに去って行った。いつのまにか真美ちゃんに
なってるし・・・。
「田中さんっていつもああいう調子なの?」
「そうなの、あの人は昔から場の空気が読めない人だったんだよね。決して
悪い人ではないんだけど」
「そうか分かった! 空気が読めない人は氷も読めないからカーリングが下
手なんだね」
「真美、あんた今うまいことを言ったな、なんて思ってるでしょ」
「うへへ・・・。ところで杏奈、あの・・・、あたしを選んでくれてありがとう
ね」
「・・・な、何言ってるのよ、青森の選手の中では真美が一番見込みがありそ
うだったから指名しただけなんだから、勘違いしないでよね。さあそろそろ
帰るよ」
杏奈は私に顔色の変化を見られたくないのか、ぷいっと横を向きながら立
ち上がり、田中さんが持ってきた椅子を元のテーブルの位置に戻した。
「ほら真美、トレーを忘れてるでしょ。もう世話が焼けるんだから」
「はーい杏奈さまー、ただいまお持ちしまーす」
来月になれば合宿か。
杏奈と私の未来にはどんなラインが刻まれるのだろうか。ストレートなの
かカールしているのか。お互いにガードストーンになったり、一緒にはじき
出されたり・・・。どんな軌跡が残るにしても、杏奈の未来に私が、私の未来
に杏奈が、お互いに良い影響を与えあっていけたらいいなと思う。そう、声
を掛け合って。
「イエース!イエース!」
「ウォー!ウォー!」
- 68 :
- おつ〜〜〜。
「私」の一人称で書いているので、会話以外の文章が「私」の視点でしか書けない点が、読んでいて厳しい。
「小説もどき」が「初めて」らしいので、「私」の一人称ならごく短編、長めなら三人称を薦める。
偉そうだけど、書くのが好きなら、また見せてね。
- 69 :
- >>68
拙作を読んでいただいて感謝です。
一人称だと状況説明がしづらいですよね。でもあえてそれにしたのは、妄想の部分をキモにしたかったからなのですw
実を言うと書くのは好きじゃないんです。小説は読む方が好き。
でも創作の面白さ(と大変さ)を知ったので、これからも書いていきたいと思います。
この作品も続きが書けたら続けたいと思っています。
- 70 :
- Age
- 71 :
- アンチカーリングが駄作糞スレをageてやる
- 72 :
- あげます
- 73 :
- 涙目
- 74 :
- てすと。
- 75 :
- 新型インフルに注意
- 76 :
- ウィンター・ゲームズ
- 77 :
- 保釈金
- 78 :
- 渋滞
- 79 :
- 巨人優勝
- 80 :09/09/28
- おめ
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