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2011年10月1期夢・独り言俺が色々書きなぐるスレ
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俺が色々書きなぐるスレ
- 1 :09/11/12 〜 最終レス :11/11/20
- 2ちゃんの書き込み窓でないと調子が出ない。
そんなわけで、色々書き殴る為のスレを立ててみました。
- 2 :
- 許可せん
- 3 :
- わかりました。帰ります。
ノシ バーイ
- 4 :
- 帰らないで〜
- 5 :
- 声が聞こえたので戻ってきました。
- 6 :
- おっと、忘れてたこのスレ。
でもスランプなんです。
- 7 :
- まあ、スランプだからって創作自体全くしてないわけじゃないんですけどね。
- 8 :
- 今日は、過去書いた第一部完の中篇をリテイクしてたり。
あれについては一人遊びスレで色々書きましたが、
設定とかは結構昔っから考えてる奴を使ってるんで、
何とかしてちゃんとした形にしたいと思ってるんですよ。
- 9 :
- 特に終盤のダレダレ加減は。
というわけで、今回は書き溜めて一気に投下して
バーボンにかかる、というのを目指して頑張ってます。
- 10 :
- まあ、そんなこと言いながらさっぱり進んでないわけですが。
小旅行に行ってきたので、その時撮った写真を三、四枚貼る予定。
ってミスってるやんかーw 修正してくれた人にお礼を言わねば。
- 11 :
- 設定は世界から作る
というわけで、某所に投下したアレは、某女王大剣に
インスパイアされてああいう世界になったりするわけです。
そこで、テーマとしてああいうものがあるから、
当然のごとく「強い女の子」という設定が生まれ、
そこからニョキニョキっと他の設定も生えてくるわけです。
・・・これ、うまくいかない時はさっぱりうまくいかないんですよねー。
- 12 :
- さて、例の場所に久しぶりに投下投下。
ストーリー転がす下準備、と。
- 13 :
- 今日はエロい方の板で、14000バイトくらいのを投下。
二時間弱で書いたけど、やっぱり俺はそのくらいの時間で
詰めて書いた方が書ききれるなぁ、と改めて思う。
久しぶりに投下したアレも、時間的には一〜二時間で書いたし。
逆に言うと、そのくらいの時間で書ききれないと、グダグダになるので、
長編を書く時はそのくらいのスパンで話を一段落させないといけなくなり、
結果なかなかうまく書けない、と。
難儀な。
- 14 :
- 鼻毛。。。
- 15 :
- 難儀な鼻毛・・・?
- 16 :
- 鼻毛。。。
- 17 :
- その鼻毛は難儀であった。何が難儀なのかと言えば、伸びるのだ。
鼻毛なのだから伸びて当然であろうと言う人間は、その鼻毛をして
難儀であると言わさしめるその実情を知らないが故に言っているに違いない。
その鼻毛は伸びるのだ。尋常ならざる速さで。
おかげで、その難儀な鼻毛の持ち主である彼は、いつも片方の鼻に
ティッシュを詰めていなければならないハメになっていた。そうでもしなければ、
鼻毛が際限なく伸び、鼻から飛び出し、挙句の果てには三つ編みが可能な
程の長さになるのだから。
無論、鼻にティッシュを詰めていたと言って、それで鼻毛が伸びなくなる
わけでは無い。伸びる余地を失った鼻毛は、鼻の穴内でぐるぐるととぐろを
巻くようにその存在感を増して行く。最終的に、巨大な鼻くそのようになった
その鼻毛は、鼻くそがそうされるように、鼻をほじられて取り出される。毛根が
鼻粘膜とつながっている為、痛みが走りこそするが、それでも伸びっぱなしの
ものを逐一切るよりは効率が良いと言える。
以上のように、その鼻毛が難儀な鼻毛であるという事はご理解いただけたと
思う。一日でラーメンマンな鼻毛が出来上がるのだ。難儀この上無い。
さて、ここで再び「何故」という言葉が出てくる。
何故、鼻毛が伸びるのか。そこまで伸びるのか、と言う疑問に際してである。
何故、彼の鼻毛は、難儀な鼻毛はそこまでの速度で伸びるのか。
これについてはただいま原因究明中であり、ここで多くを語る事はできない。
だが、その鼻毛の持ち主である彼は、ただ一言、言葉を残している。
「これも運命――」
彼は、半ば諦めている様子だ。これも運命であり、受け入れるべきものである、として。
だが、我々は引き続き、その運命(はなげ)と戦う所存である。彼の為にも、彼の
鼻毛をどうにかする為に、戦っていこうと考えている。
例え、それが無駄な戦いに終わろうとも、いつの日か、我々の次を継ぐ物が、
必ず運命(はなげ)を打倒してくれるだろう。
我々は、その日が来るのを信じている――
終わり
- 18 :
- ・・・何書いてんだ。
- 19 :
- はふぅ。
- 20 :
- ボクシング見てました。
何か今回のなんちゃって実況解説はあんまり面白く書けなかったと思います。
だって長谷川速いんやもん! 挑戦者も速いんやもん!
追いかけるの精一杯だもん!
・・・何で駄々っ子化してるんだろう?
このリベンジは大晦日に果たしたい所存。
そもそも総合・プロレス畑の人ですし。
まあ、所詮ただのファンですけどね。
- 21 :
- 昔書いてた設定を何となくツラツラと。
魔術と法術、合わせて魔法と称する、そんな技術がある世界。
魔術は、異世界の法則を召喚する事で、この世界の法則を
ねじ曲げる術。有り体に言うと黒魔法。
法術は、この世界の法則を促進する事で、この世界の法則の
適用速度を増進させる術。有り体に言うと白魔法。
魔術は使い手が数多いるが、法術は使い手が限られる。
なぜなら、そもそもこの世界に括弧として存在する法則を、
この世界の力でもって促進するのは難しいから。
- 22 :
- これで、法術の使い手である所のお姫様と、
魔法の世界なのに魔法が使えない剣士の
ロマンスな奴を書こうとしていたりしました。
テラ厨二w
もちろん、剣士はオッドアイw
で、魔術も法術も使えるものすごい有名な兄貴がいたりw
- 23 :
- 本気で執筆してるから詳しくは書けないけど今書いてる作品の概要だけw
主人公は大学で民俗学を専攻してる青年
フィールドワークで訪れた某県にて事件は起こる
世羅悲夢(セラフィム)と呼ばれる異形の魔者達の襲来
またそれを操る謎の巫女
アナザーワールドと現世を繋ぐとされる社の秘宝
もう少しで100P書き終えるw
- 24 :
- 誰やー!
ちなみに、みのると言ったら鈴木みのるですよ?
- 25 :
- まあ、がんばってください。
というわけで、今日涼宮ハルヒちゃんの憂鬱が二冊も届きました。
あれ?
- 26 :
- 二冊買った甲斐があるくらい面白かったので良し。
いやよくないよw
というわけで、今日はなんとなく思いついた分を投下。
後の方は、ちょっと後悔が残ったかな。
オチが弱い。もっとこう、マスク嫌がるのとか
そういう部分をはっきり表現できた余地があったなぁ、と。
投下する前に推敲しろって話なんですけどね。
- 27 :
- 夢の中にいるから夢を見ない
君に夢が無いのは、君にとっての現が、君にとっての夢であるからに他ならない。
- 28 :
- キレがなくなったなー
かけられる時間が変わったからだろうか。
速攻勢い突っ走り型創作方法が主体だけど、
その為のひらめき待ちの時間が無いと、
やはりまず走り出す事ができんという事か。
- 29 :
- 「なにやら騒がしいのう……もう夜更けじゃと言うに」
彼女が寝ぼけ眼をこすりながら眼下を見れば、そこには何人もの人が彼女の
寝転ぶ鳥居をくぐっている姿があった。
「……なんじゃ、もう新しい年か。どうりでここの所社務所の連中が忙しそうに
しとったと思うたわ……ふぁぁああ」
大きなあくびをしながら、彼女はすっくと鳥居の上に立った。かなりの高さであるが、
その高さに彼女が怖気づく事はなかった。まあ、そもそもその上で体を固定する事も
無く眠りこけていたわけだから、今更怖気づく必要は無いと言えば無い。
そこは彼女のお気に入りの場所であり、そこにいる事は彼女にとってはむしろ自然
な事であった。
「しかし、相変わらずわしの姿が見える者はおらんようじゃな。ま、じゃからと言って
何がどうするというわけでもないが」
そんな彼女の姿を、眼下の群衆は誰ひとりとして見とがめる事が無い。普通、年端
もいかぬ少女が鳥居の上に鎮座していれば、誰かしら騒ぐだろうに、そういった声は
一切上がる事が無い。それどころか、誰も視線すらそちらに向けていない。
彼女はつまり、そういう存在であった。極々一部の、そういった素養のある人間
以外には、彼女の姿は見えないのだ。ここ何十年か、こうして新しい年と共に、大量の
人間を出迎えるのが彼女の習慣となっていたが、彼女の姿を見咎めた人間はいない。
今年も、やはりいないようだった。
「お主ら、真摯に祈れよ。さすれば応えてやらんでもないからな」
誰にともなく、苦笑まじりにつぶやきながら人の流れを視線で追って行く彼女は、
ふと自分を見つめる視線に気づいた。
ここ何十年か、この神社に参る大量の人間の中に、彼女の存在を目にする素養を
持った者はいなかった――“この神社に参る”人間の中には。
「……相も変わらず、こりぬ奴よのう」
苦笑を深くしながらその視線の元をみやれば、そこには一人の男がいた。少年と青年
の間にあるような、あどけなさを残しながら、相応に歳を経たその表情は、彼女の事を
心配しているように、不安に歪んでいた。
「……まったく」
軽くため息を付くと、彼女は飛んだ。跳ぶのではなく、飛んだのだ。
- 30 :
- 「何が不安じゃ、丈明よ」
「……つねちゃん」
ここ何十年か、彼女は自分を見る事のできない人の群れを迎え入れ、見送ってきた。
だが、ここ何年か、その彼女の役務をひっそりと見守る人間がいた。
それが、彼、伊上丈明である。
「その名で未だに呼んでくれるのは嬉しいが、わしは問うておるのじゃぞ、丈明よ」
「……俺もその内、君の事見えなくなるのかなって思って」
彼と出会ったのは、彼がまだ間違いなく少年と言える容姿をしていた頃であり、それ
から数年、彼は彼女の事を見守り、時には会話を交わしたりもしていた。彼はそれが
できる素養を持っていた。だが――
「なぜにそう思うのじゃ?」
問いながら、彼女はその答えを半ば理解していた。
彼女のような存在を見る素養の持ち主は、純粋な心を持っている子供にこそ多い。
成長し、体も心成長していけば、次第にその素養も失われていく。それが人の常だと、
彼女は知っていた。
「最近……つねちゃんがフッと見えなくなる時があって……それで……」
「わしが見えぬと不安か?」
- 31 :
- 「……うん」
「見える者が見えなくなるのじゃから、それは自然な事じゃ……じゃがな、丈明よ」
彼女は、笑顔で言った。
「わしが見えるという事に頼るでないぞ。わしは、お主らの心の支えにはなろう。
じゃが、それはあくまでわしがお主の心の中に居る事で成り立つ。そうでなければ
ならんのじゃ」
「心の、中……?」
「わしのような存在が、実際に居るという事を知り、実際に存在を確認し、それが
当たり前になってしまってはいかんのじゃ。わかるか、丈明よ?」
「……よく、わかんないな」
彼は、困惑しているようだった。青年に近づいたとは言え、まだ少年としての面影
も残している歳だ。突然始まった難しい話に、頭がついていかないのかもしれない。
「わしがおらんようになろうと、動じるでない……つまりは、そういう事じゃ」
「つねちゃん、いなくなっちゃうの?」
「ま、すぐにではなかろうがの。その内、わしの姿はお主には見えんようになる。
わしの声はお主には聞こえんようになる。わしの体にお主は触れられぬようになる。
その日はそう遠くなかろうて」
「そ、そんなの……だって……俺……俺……!」
彼の思いつめたような表情に、彼女の心に――もうずいぶん前にどこかに忘れてきた
と思っていた部分に――チクリと痛みが走った。
「皆まで言うな、丈明よ。お主の想いに、わしは応える事はできん。なんせわしは」
それでも、彼女は笑みを絶やすこと無く、言った。
「わしは、神様じゃからの」
「……神は常に人共にある。八百万に宿りしが故。されど、神は見えず。神は聞こえず。
神は触れられず。神に触れるが叶うは、触れた時のみと知れ……」
「なんじゃ、覚えておるではないか」
「……どうしても、ダメなのかな?」
「残念じゃが、な。まあ、わしが見えなくなるまでは、このように言葉を交わす事も
できるじゃろうから、別れがすぐにやってくるというわけでは無い。そう気を落とす
事もあるまいぞ」
「……でも、いつか来るんだよね」
彼は、寂しそうな声で言った。
- 32 :
- 「そうじゃな……来年か、再来年か……もしかすると、明日いなくなるかもしれぬな」
「……明日、って……」
「じゃから、動じるな。心を構えよ。それができぬ男では無いと、そう思ったがの?」
イタズラめいた笑みで誤魔化してはいたが、彼女の瞳からは今にも涙が溢れそう
だった。いつの頃だっただろうか。神となる前、まだ人であった時、狐の眷属として
祀られるようになる、ずっとずっと前――流し方すら、今の今まで忘れていた涙が、
彼女の瞳に光をたたえ始めていた。
「それに、お主の今の体躯では、わしのこの体には見合うまい。なんじゃったか……
ろりこん、じゃったかの? 何にせよ呼ばわり されてしまうのがオチじゃぞ?
カハハッ!」
声に出して笑ってみても、涙は止まりそうになかった。
「まったく、新年のいの一番からするような話ではないわ。さて、丈明よ。お主も
父の手伝いがあろう。社務所に戻って働くがよい。わしも参拝する者を見守ら
なければならぬからな」
そう言って、彼女は再び飛んだ。彼に背を向けて。流れ落ちそうな涙を気取られまいと。
「……つねちゃん」
彼の、寂しげなつぶやきを、彼女の鋭敏な耳はとらえる。
「……まったく……突然、何を言うかと思えば……そんなもの、いつか来ると
わかりきっておったろうに……」
千年近くを生きる間に、別れはいくつも経験してきていた。
だが、なんど経験しようとも、それに慣れるという事はなさそうだった。
「……動じるな……動じるでないぞ……丈明よ」
まるで自分に言い聞かせるかのように呟きながら、彼女は鳥居の上に
降り立ち、そっと目端ににじんだ涙をぬぐった。
いずれ来る別れの時には、自分はもっと泣くのだろうか――そんな事を考えながら。
- 33 :
- 「何が不安じゃ、丈明よ」
「……つねちゃん」
ここ何十年か、彼女は自分を見る事のできない人の群れを迎え入れ、見送ってきた。
だが、ここ何年か、その彼女の役務をひっそりと見守る人間がいた。
それが、彼、伊上丈明である。
「その名で未だに呼んでくれるのは嬉しいが、わしは問うておるのじゃぞ、丈明よ」
「……俺もその内、君の事見えなくなるのかなって思って」
彼と出会ったのは、彼がまだ間違いなく少年と言える容姿をしていた頃であり、それ
から数年、彼は彼女の事を見守り、時には会話を交わしたりもしていた。彼はそれが
できる素養を持っていた。だが――
「なぜにそう思うのじゃ?」
問いながら、彼女はその答えを半ば理解していた。
彼女のような存在を見る素養の持ち主は、純粋な心を持っている子供にこそ多い。
成長し、体も心成長していけば、次第にその素養も失われていく。それが人の常だと、
彼女は知っていた。
ここ数十年の間は、子供にすら彼女を見る事のできる者は少なくなり、彼は幾年か
ぶりに現れた、その素養を持った人間である。
だが、そんな彼でも、人の常から逃れる事はできない。
「最近……つねちゃんがフッと見えなくなる時があって……それで……」
「わしが見えぬと不安か?」
- 34 :
- 「……うん」
「見える者が見えなくなる。それは自然な事じゃ……じゃからな、丈明よ」
彼女は、笑顔で言った。
「わしが見えるという事に頼るでないぞ。わしは、お主らの心の支えにはなろう。
じゃが、それはあくまでわしがお主の心の中に居る事で成り立つ。そうでなければ
ならんのじゃ」
「心の、中……?」
「わしのような存在が、実際に居るという事を知り、実際に存在を確認し、それが
当たり前になってしまってはいかんのじゃ。わかるか、丈明よ?」
「……よく、わかんないな」
彼は、困惑しているようだった。青年に近づいたとは言え、まだ少年としての面影
も残している歳だ。突然始まった難しい話に、頭がついていかないのかもしれない。
「わしがおらんようになろうと、動じるでない……つまりは、そういう事じゃ」
「つねちゃん、いなくなっちゃうの?」
「ま、すぐにではなかろうがの。その内、わしの姿はお主には見えんようになる。
わしの声はお主には聞こえんようになる。わしの体にお主は触れられぬようになる。
その日はそう遠くなかろうて」
「そ、そんなの……だって……俺……俺……!」
彼の思いつめたような表情に、彼女の心に――もうずいぶん前にどこかに忘れてきた
と思っていた部分に――チクリと痛みが走った。
「皆まで言うな、丈明よ。お主の想いに、わしは応える事はできん。なんせわしは」
それでも、彼女は笑みを絶やすこと無く、言った。
「わしは、神様じゃからの」
笑みを絶やす事なく、されど、痛みもまた絶える事なく。
「神とはなんじゃ?」
「……神は常に人共にある。八百万に宿りしが故。されど、神は見えず。神は聞こえず。
神は触れられず。神に触れるが叶うは、狂(ふ)れた時のみと知れ……」
「覚えておるな。気が狂れるとは、すなわち異界に触れるという事。子は、自然とそれを
為す。じゃが、歳を経れば触れぬようになる」
「……どうしても、無理なのかな?」
- 35 :
- 「残念じゃが、な。それが自然な事じゃからのう。……まあ、わしが見えなくなるまでは、
このように言葉を交わす事もできるじゃろうから、別れがすぐにやってくるというわけでは
無い。そう気を落とす事もなかろう」
「……でも、いつか来るんだよね」
彼は、寂しそうな声で言った。
- 36 :
- 「そうじゃな……来年か、再来年か……もしかすると、明日いなくなるかもしれぬな」
「……明日、って……」
「じゃから、動じるな。心を構えよ。それができぬ男では無いと、そう思ったがの?」
イタズラめいた笑みで誤魔化してはいたが、彼女の瞳からは今にも涙が溢れそう
だった。いつの頃だっただろうか。神となる前、まだ人であった時、狐の眷属として
祀られるようになる、ずっとずっと前――流し方すら、今の今まで忘れていた涙が、
彼女の瞳に光をたたえ始めていた。
「それに、お主の今の体躯では、わしのこの体には見合うまい。なんじゃったか……
ろりこん、じゃったかの? 何にせよ呼ばわり されてしまうのがオチじゃぞ?
カハハッ!」
声に出して笑ってみても、涙は止まりそうになかった。
「まったく、新年のいの一番からするような話ではないわ。さて、丈明よ。お主も
父の手伝いがあろう。社務所に戻って働くがよい。わしも参拝する者を見守ら
なければならぬからな」
そう言って、彼女は再び飛んだ。彼に背を向けて。流れ落ちそうな涙を気取られまいと。
「……つねちゃん」
彼の、寂しげなつぶやきを、彼女の鋭敏な耳はとらえる。
「……まったく……突然、何を言うかと思えば……そんなもの、いつか来ると
わかりきっておったろうに……」
千年近くを生きる間に、別れはいくつも経験してきていた。
だが、なんど経験しようとも、それに慣れるという事はなさそうだった。
別れの悲しさにも。
想われるという事の、嬉しさにも。
「……お主がわしを忘れる事がなければ、それで良い」
そして、自分が彼を忘れる事がなければ――
まるで自分に言い聞かせるかのように呟きながら、彼女は鳥居の上に
降り立ち、そっと目端をぬぐった――その時。
- 37 :
- 「つねちゃん!」
群集が、突然の叫び声にざわめいた。
「俺、ずっと忘れないから! 覚えてるから、つねちゃんの事、忘れないから!」
群衆から向けられる奇異の視線に動じる事無く、彼は自身の思いのたけを、
精一杯の言葉に込めて、放っていた。まるで、彼女の呟きに応じるかのような、彼女の
想いに応えんとするかのようなその言葉に、
「……うつけが」
彼女の瞳からは、一筋の光が零れた。
――その日、その辺りには久方ぶりの雪が舞ったという。
- 38 :
- >29
>33-37
- 39 :
- よし、投下してこよう。
- 40 :
- 綺麗に光り輝く、どこか物悲しい雪が――
- 41 :
- 久しぶりに推敲を遂行した気がする ナンチテ
ダメジャン
- 42 :
- 「なあ、吉野」
彼に話しかけられたのは、いつの事だったか。
はっきりとは覚えていないが、確か教室が夕焼けで真っ赤に染まっていたのは
良く覚えている。私が彼の事を、一人の人間として意識したのは、その時が初め
てだった。
「もう放課後だぞ。いつまで寝てるんだ」
夕焼けが教室に差し込む、そんな時刻。彼の言う通り、もう授業はとっくの昔に
終わっていて、教室が閑散としている所からわかるように、ホームルームも終わり、
皆帰路についている。
……そんな事は、彼に言われるまでもなくわかっていた。
「別に、寝てたわけじゃないし」
応えながら、私は机に伏せていた頭を上げ、彼を見た。
「………………誰?」
見覚えはなかった。……いや、正確に言えば違う。見覚えはあったが、名前と
顔が一致する存在ではなかった、と言うのが妥当だと思う。
そもそも、高校になれば女子と男子は互いに異なるコミュニティーを作り、それ
ぞれに干渉せずに生活を送るものだ。男子の顔と名前が一致しないのは別に
不思議でもなんでもない。
もっとも、私に関して言えば、そういった当たり前の女子高生とはまた違う理由
で、彼の顔と名前が一致しなかったのだけれど。
「うわ、ひでー」
彼は、私の文字通りひどい言葉にも、動じる事なく笑っていた。
……きっと、物好きなんだろう。こんな私に、わざわざ声をかけてくるなんて。
「えっと……同じクラスだって事はわかるんだけど……誰だったっけ?」
「うわー……本気なんだなー。凹むなー」
言葉とは裏腹に、彼の顔からは笑みが消える事はなかった。全くもって物好きな
奴だ。実際に名前が出てこなかったのは事実だけど、それ以上に自分に構って
欲しくないからこういう物言いをしている面もあるというのに、それに全然動じる気配
が無い。……物好きというか、単に鈍感なだけなのかもしれない。
「藤井だよ。藤井克彦」
- 43 :
- 「……藤井、くん?」
「そ。藤井。覚えといてくれ」
「……忘れない間は覚えとく」
それだけ言って、私は立ち上がった。多分、一週間くらいしたら忘れていそうだった
けど、その事は彼には告げない。
「睡眠不足か? いつもホームルーム終わってもしばらく寝てるけど……」
「……聞いてなかった? 寝てたわけじゃないから」
「そうなのか?」
「机に伏せってたら、すぐに寝てると思うのはやめてもらいたい所ね」
……まあ、普通は寝ていると思うだろうけど。
「了解了解。お前は寝てるわけじゃないって事は、忘れない間は覚えておくよ」
彼はにへらと笑って、そんな風に私の物言いを真似した。
この瞬間の彼への印象は「鬱陶しい奴」だった。
夕焼けの紅さと同様に、その事も、はっきりと覚えている。
- 44 :
- 「なあ、吉野」
それから、何故か彼は私に度々話しかけてくるようになった。
それも、決まって放課後になって、私が机に伏せっている時に。
「もう放課後だぞ。いつまで寝てるんだ」
彼が私に、いつものようにそう言う時は、いつも夕焼けが差し込んでいたから、だから
覚えているのかもしれない。最初の日が、そうだったという事を。
「……藤井君」
「あれ、起きてたのか?」
いつも、こうだった。
「寝てるわけじゃない……そう、最初の日に言ったわよね?」
「ああ、ごめんごめん。そうだったよな。すっかり忘れてた」
そう言って、彼はにへらと笑う。
いつも、彼は私を"起こして"くれる。まったく、記憶力という物が無いのかしら。
「それにしても――」
いつもは、私を起こすと、私が帰るのに合わせるかのように――と言っても帰り道
は違うので、教室の前で別れるのだけれど――教室を後にするのに、その日は少々
違った。彼は、相変わらず何が楽しいのか、にへらとした笑い顔のまま、思いもしない
事を言い出した。
「俺は忘れてばっかりいるけど、吉野は記憶力いいよなー」
「何が?」
「俺の名前、覚えてくれてるじゃん」
「……」
- 45 :
- ……それは……。
言われるまで、意識すらしていなかった。
彼の事を記憶にとどめてから、もう一ヶ月になる。その間ほとんど毎日、こうやって
彼は私を"起こして"くれていたのだから、覚えていて当然と言えば当然なのだけれど
……それでも、その事を特に意識していなかったというのは事実だ。
普通、私は人に名前を教えられても、それを長い間覚えておくという事は無い。最初
彼の名前を一週間くらいで忘れるだろうと思ったのは、別に彼の事が嫌いだからとか
そういう事ではなく、単に私が人の名前というものを、その程度の期間しか覚えて
いないというだけの事だった。
なのに……気づけばもう、一ヶ月だ。
「……そんなの、普通でしょう? クラスメイトだもの」
「最初覚えてなかったよな?」
「そ、それは……」
自分でも珍しいと思うほど久方振りに、私は動揺していた。なぜ動揺する必要が
あるのかと、冷静な部分の自分が自問するが、答えは出ない。出せるなら、そもそも
動揺などしていないだろうし。
「ま、いっか! こうして覚えてくれてるんだもんな!」
私の動揺を他所に、彼は勝手にそう結論づけると、手をひらひらとさせながら
「んじゃなー」
と去って行った。
「……」
なんだろう、この、なんとも言えない気分は。
「もうっ!」
八つ当たりに、私は机の足を蹴飛ばしたのだけれど
「……」
……痛かった。
- 46 :
- 気づけば、彼の事を見ている自分がいた。
授業中。普段ならぼーっと窓の外を見ている時間。
昼休み。普段なら一人屋上で手製のお弁当を食べている時間。
そして放課後。彼が私の事を”起こして”くれる時間。
- 47 :
- >>42-45
- 48 :
- 妖魔夜行は面白かったなー。
・・・百鬼夜翔はなんであんなに盛り上がらなかったんだろうなあ。
・・・・・・リボーンリバーry
- 49 :
- ちょっとコクーンワールド引っ張り出して読んでみるか。
ライトノベル読み始めの頃、図書室に置いてあったコクーンとかで
そっちの世界に興味持ったから、一時期は友野詳みたいな
物書きになりたい!なんて思ってたりしたもんだっけ・・・。
最近復活してきてはいるようだけど。
- 50 :
- とかいいつつ、今読んでいるのはブギーポップ。
笑わないは散々読んで、ストーリーがだいたい頭に入ってしまってるので、
リターンズを読書中。
ダークリーとかヴァルプルギスの後悔とか読んで、
以前のを読み返す必要を感じたからなんだけども。
あと、デュラララも読み直したい。
四巻までしか読んでなくて、なおかつ1〜4巻までの
内容がさっぱり思い出せ無くなっているので、
五巻以降積ん読状態。
アニメは面白そうだった。声もイメージにあってたし。
- 51 :
- あー、もー、魔王スレの続きがさっぱり形にならん!
プロットはもう決まってるんですよ。
吸精鬼一族である事とか、勇者と魔王の関係とか、
そこらへん使ってあんな事やこんな事をしよう、と!
でも形にならないorz
- 52 :
- 「……はぁ」
ため息が口をついた。話に聞いたところによると、ため息というのは一度つく度に
幸せが一つ逃げていくのだという。
では、幸せなど持ち合わせていない人間の場合、ため息をつくと何が逃げて
いくというのだろう。
私は、視線の先にいる人を、そんなことを考えながら見つめていた。
そこにいるのは彼だ。藤井君が、友達と談笑していた。
- 53 :
- ブギーポップは面白いなぁ。
パンドラとか、今読むと何か無性に泣きたくなってきた。
- 54 :
- ペパーミントまで読んできた。
何か、夜明けとヴァルプルギスで凪母の設定と
凪の彼女に対する反応変わってね?と思ったが気のせいだと言う事にする。
- 55 :
- シュレーディンガーの猫という話を知っているか?
いまやその名前を知らぬ人間は少ないと思える程に有名になってしまった
話だが、その内容まで詳しく知ってる人間はそう多くは無いんじゃないだろう
かな。何しろ、俺自身が詳しくない。
だがまあ、概略くらいはわかる。それは、一定の確率で毒が散布される
箱の中に入れられた猫が、しばらく時間が経った後、生きているか死んで
いるかを判断するには、箱を開けてみるしか無い、というもの。
そこから逆説的に、確率論的に言えば本来死んでいるはずの猫は、箱を
開けてみるまでは生きているのではないか――そういった、量子論だったか?
ややこしい科学の例え話だ。
俺は文系だからな。そういう話はさっぱりわからん。太陽よりでかい星がある
とかスゲーな、とか、夜空に輝く月って綺麗だよな、とか、そんな事を思うくらい
だ、せいぜいがな。
だからまあ、これは知識として知っているだけで、それが学問的にどういった
意味を持つ例え話なのか、という事についてはさっぱりわからない。
ただわかるのは――人が見ている物という奴は、“人が見ているが故に
そう在るのではないか”という事を言っているんじゃないか、という事くらいだ。
視覚だけに限らない。
聴覚でもいい。触角でもいい。あるいは味覚でもいいかもしれない。
だが、何かの感覚が無いと、人は何かをそこに在ると思えないんじゃないか。
そういう事を、つまりは言っているのではないかと、そう俺は考えている。
実際には違うかもしれないが、な。
我思う。故に我有り。
我感じる。故に汝在り。
人が自分を認識するのは、人が自分が認識していると“思う”からで、
人が他人を認識するのは、人が他人を認識していると“思える”からだ。
前置きが長くなったが、ここからが本題だ。
明日、ってものをどう思う?
今、ってものをどう思う?
過去、ってものをどう思う?
- 56 :
- 実際のところ、何をすれば彼女が喜ぶのか、というのが僕にはさっぱりわからない。
わからないなら彼女に選んでもらえばいいか、という事で、色々な店が立ち並ぶ
ショッピングモールに連れ立ってきたものの、彼女はきょろきょろと辺りを見回すばかり
で、その表情はしかめ面。とても楽しそうには見えない。
僕はといえば、そんな彼女の様子にオロオロするばかりで、時折「あ、じゃああそこ
入ってみようよ」とか「あれとか面白そうじゃない?」と言って彼女を連れて行ってみる
のだが、相変わらず彼女はしかめ面のままきょろきょろしている。何かを探している
という風でもないそのしぐさは、僕には彼女がこの状況を詰まらないものだと感じて
いるようにしか見えず、僕の焦りは募る一方だった。
「……ちょっと、休憩しようか」
そう言って、僕らはフードコートの一角にあるファーストフード店で飲み物と軽い
食事を買い、隅の方に空いていた席に座った。
「ちょっと疲れたね。休日だから、人が多いよね」
僕がそう言うと、彼女はこくりと頷いた。
相変わらず顔はしかめ面のままで、とても楽しそうには見えない。という事は、
彼女はただ単に疲れただけで、そんな場所に連れて来た僕の事は、もう――
そもそも、僕は彼女の事がよくわからない。
わからないから好きになる――なんて、どこかで聞いた事のあるフレーズその
ままに、僕は彼女の事を好きになっていた。一緒にいたいと思うし、彼女に喜んで
ほしいと思うし、だから今日もこうして、その、いわゆるデートという奴を試みて
――そして、無残に失敗している、というわけだ。
もともと、彼女はあまりしゃべらないし、感情という奴を表に出す事が無い。いつも
無口で、独りで、友達らしい友達もいる様子が無く……でも、だからこそ、そんな彼女
の事が、僕は気になっていた。
- 57 :
- 僕が告白に至るまでには、それほどの時間はかからなかった。
どうせ駄目元だし、という事で、あれこれ思い悩み始めるよりも先に、まず行動に
移したのだ。好きだ、付き合ってほしい……そんな、ごくありきたりな、でもとんでもなく
勇気のいる言葉を、僕は彼女にぶつけた。
意外な事に、彼女は僕の告白を聞いて、あっさりOKを出してくれた。
「ん。いいよ」
それだけ言って、そして僕らはその日、初めて一緒に帰り道を歩いた。
こうして僕らは晴れて恋人になったわけなのだけれど……それで何かが変わった
かというと、あまり何も変わらなかった。
彼女は学校ではこれまで通りいつも独りだったし、僕も学校ではそんな彼女を
ただ見ているだけで、はっきり言って告白するまでと、彼女の事が気になって
仕方が無かったころと、やっていることは何も変わっていなかった。
ただ一つ変わったのは、彼女と一緒に帰るようになったという事。ただそれだけだ。
と言っても、これもまた本当に“一緒に帰るだけ”で、最初はそのことをネタに僕を
からかっていた友人たちも「あれ? お前らって付き合ってるんじゃなかったっけ?」と
首を傾げ始める始末だった。
帰り道でも、僕は色々としゃべろうとするのだけど、彼女はそれにこくりこくりと頷いて
くれたりはするのだけれど、当然そんな会話にもなっていない会話が長続きするはず
もなく、彼女の家の前まで着くころには、互いに押し黙ってしまうのが常だった。
「それじゃあ、また明日」
「うん、また明日」
そう言って別れ、僕は自分の家に帰るのだけれど、一人になってしまうと色々な
考えが頭をめぐって止まらない。
果たして、彼女は僕と一緒にいて楽しいのだろうか、とか、ひょっとしたら、とても
詰まらなくて、それなのに、お情けで僕と付き合っているという事にしてくれているんじゃ
ないだろうか、とか……。
そんな事は無いのだろうと思う。……いや、そう思いたいだけなのかもしれないけど、
少なくとも、彼女は“嫌そうな顔”だけはしない。笑ったり喜んだりもしないけれど、嫌だな、
と、そう見える顔は僕に見せたことがなかった。
それだけが僕の救いだった。救いだったのだけれど――
- 58 :
- 「はぁ……」
僕は思わずため息をついてしまった。
これは、どう見ても“嫌な顔”だよな……。
目の前で、僕の買ってきたハンバーガーを、もそもそと小動物のように食べる彼女の
姿は、見ていて何だか愛らしくはあるのだけれど、その表情がしかめ面ではそれも
台無しだ。
「……どうかした?」
彼女は、そんな事を訊いてくる。僕のため息が気にかかったのだろう。
「あ、いや……その……楽しいかい?」
……聞いてどうするんだろうな。楽しければ、こんな顔をするわけが無いだろうに。
「うん、楽しいよ」
彼女はそう言う。だが、それはやはり、気遣いというものなのだろう。僕に気を遣って、
楽しいと言ってくれているだけに違いない。
「すごく、楽しい。初めてだから」
……あれ? 僕は何か違和感……というか、引っかかりのようなものを覚えた。
「本当に、楽しい? それにしては……その……」
「なに?」
迷いはあった。彼女は気を遣ってくれているというのに、そんな事を訊けば、その
気遣いを無碍にする事になるからだ。
とはいえ……引っかかているのに、それを無視してしまえば、それもまた、彼女に
とってよくないような……そんな気もしていた。何か勘違いをしているような、そんな
感じがしたのだ。
彼女の事をわかることができるような……そのきっかけとなるような事なのでは、
これは無いだろうか、という。
そんな事を考え始めた瞬間、迷いが大きくなるその前に、僕は口を開いた。
「……凄い顔、してるなぁ、って」
結果、とんでもない台詞が口をついて出てしまった。何を口走ってるんだ僕は!?
「あ、いや、その、凄い顔って言っても君は綺麗なわけだからそういう意味じゃなくて、
なんだか楽しくないような、しかめ面で……えっと、その……ごめん」
「どうして謝るの?」
「だって……女の子に凄い顔だなんて……変な事言っちゃってホントにごめん」
- 59 :
- 「……大丈夫」
「え?」
「変な事じゃないよ。むしろ……変なのは私の方だから」
僕が変な事を言ったせいだろうか。彼女まで変な事を言い出した。
「しかめ面してたんでしょ? それ、私……笑ってたんだと思う」
……え?
「私は、凄く楽しかった。こんな所来た事無いから。いろんな物、見れたし」
「で、でも……」
「しかめ面してた?」
「……うん」
そうだ。あんなしかめ面してて、それで楽しいなんて……。
「謝らなければならないのは……たぶん、私の方」
……実際、彼女の精神が昂揚しているというのは確かなようだった。普段の無口
ぶりが信じられないくらい、今の彼女は多弁だ。
「私……笑い方、忘れちゃってるみたい」
「……え?」
「人間、ずっとしゃべらないでいると声の出し方を忘れてしまうらしいけど……それと同じ」
「それって……つまり……」
笑い方を忘れてしまうくらい、もうずっと、長い間、笑っていないという事、か?
その意味する所を考えて、そして想像した事実に僕はゾッとした。
「だから、あなたの言うそんな……変な顔をしてたんだと、そう思う」
楽しいのに……その楽しさを、うまく表現できずに、だから……だからなの、か。
「……ごめんなさい」
「謝る必要なんてないよ! ……むしろ、それならなお更僕の方が謝らなけりゃ!」
「どうして?」
「……だって……そんな事、全然知らなかったから」
いや、違う。
「知ろうと……してなかったから」
「……そんな事、ない。私が、隠してたから……」
「いや、僕の方が謝るべきだよ!」
「いいえ、私の方が……」
「いや、僕の方が……って……何やってんだろうね、僕ら」
- 60 :
- 「……そうね」
そういって、彼女はしかめ面になる。それは、彼女にとっての笑顔だ。
でも……。
「しかめ面でもこんなに可愛いんだから、笑ったらもっと可愛いよなぁ……」
と、僕は思った。そして、目の前の彼女の顔が、キョトンとした物になったことで、
その思いが、呟きとして口を吐いて出ていたのに気づいた。
「……」
彼女の顔が、少しだけだが赤くなっている。
「……笑えるように、なってほしいな」
きっと、僕の顔も赤くなっているだろう。
でも、毒食わば皿までだ。僕は、今この瞬間、思っている事を口にした。
「君が……本当の意味で笑えるように、一緒に頑張るから」
「……ずっと?」
彼女のその問いかけに、僕は迷いも何も抱く事なく、すぐさま頷きを返した。
「ああ、ずっとだ。約束する」
いったい僕は何を言っているのだろうか、と、冷静に自分を振り返るもう一人の
自分がいる。これではまるで、結婚でもするみたいじゃないか、と。
神の代理人もいない。周りに僕らを祝福してくれる人もいない。教会でも神社でも
なんでもない、ショッピングモールのフードコートの一角だ。
でも、そんな場所でも――そんな場所だからこそ、僕の今抱いているこの気持ちに、
嘘偽りの入り込む余地は、無かった。
- 61 :
- 「……ありがと」
真っ赤になった彼女は、恐らくはそれが今の彼女の精一杯なのだろう。どこか引き
つった、ただ唇の端をもたげるだけの、それが笑いだと言われたからやっているような、
そんな歪な笑みを浮かべてみせてくれた。
でも、例え歪でも、それが本物であることに違いはなかった。彼女が、今この瞬間、
僕の為に、一生懸命創ってくれた――そういう“本物”である事に。
「きゃっ!?」
僕は、辺りをはばかり事なく、彼女の華奢な身体を抱きしめた。そうしたいと思った
意思そのままに。
一瞬身体を堅くした彼女も、すぐに僕の腕に身を預けてくれた。
「……ありがとぉ」
愛おしさとは、こういう感情の事を言うのだろうか。
耳元で彼女の囁きを、もう一度呟いた感謝の言葉を聴いて瞬間、僕の全身は
彼女に対するそんな気持ちで満たされていく――
わからないから好きになる。
確かにそうだ。でも、それは正確じゃない。
わかった後でも、ずっと好きでいられる。わかったからこそ、もっと好きになる。
それが……それこそが、本当の“好き”なんだと、この瞬間僕は思った。
終わり
- 62 :
- 「はぁ……」
僕は思わずため息をついてしまった。
これは、どう見ても“嫌な顔”だよな……。
目の前で、僕の買ってきたハンバーガーを、もそもそと小動物のように食べる彼女の
姿は、もともと小柄な彼女の体躯と相まって、見ていて何だか愛らしくはあるのだけれど、
その表情がしかめ面ではそれも台無し……かというと、そんな表情でも十分可愛いと
思ってしまう僕は、やはり彼女の事が好きなのだろう。だが、彼女の方はどうなのだろう?
「……どうかした?」
彼女は、そんな事を訊いてくる。僕のため息が気にかかったのだろう。
「あ、いや……その……楽しいかい?」
……聞いてどうするんだろうな。楽しければ、こんな顔をするわけが無いだろうに。
「うん、楽しい」
彼女はそう言う。だが、それはやはり、気遣いというものなのだろう。僕に気を遣って、
楽しいと言ってくれているだけに違いない。
「すごく、楽しい。初めてだから」
……あれ? 僕は何か違和感……というか、引っかかりのようなものを覚えた。
「本当に、楽しい? それにしては……その……」
「なに?」
迷いはあった。彼女は気を遣ってくれているというのに、そんな事を訊けば、その
気遣いを無碍にする事になるからだ。
とはいえ……引っかかているのに、それを無視してしまえば、それもまた、彼女に
とってよくないような……そんな気もしていた。何か勘違いをしているような、そんな
感じがしたのだ。彼女の事をわかることができるような……そのきっかけとなるような
事なのでは、これは無いだろうか、という。
そんな事を考え始めた瞬間、迷いが大きくなるその前に、僕は口を開いた。
「……凄い顔、してるなぁ、って」
結果、とんでもない台詞が口をついて出てしまった。何を口走ってるんだ僕は!?
「あ、いや、その、凄い顔って言っても君は綺麗なわけだからそういう意味じゃなくて、
なんだか楽しくないような、しかめ面で……えっと、その……ごめん」
「どうして謝るの?」
「だって……女の子に凄い顔だなんて……変な事言っちゃってホントにごめん」
- 63 :
- >56,57,62,59-61
- 64 :
- さて、Bサイド。
- 65 :
- もともと、私はこういった場所に縁がなかった。
それはもちろん、行こうと思えばバスなりなんなり交通手段はあるわけで、その意思
があれば、行く事自体は可能だったろうと思う。でも……縁は、無かった。
だから、私にとってそこは、その場所にある全ては、まったく初めて見るに等しい
ものであり、故に新鮮で、それらを見て回るだけで、私はひどく――“楽しい”と、そう
思っていた。
- 66 :
- 家庭環境に色々な問題を抱えて育った私は、対人関係に難がある人間になった。
それで何か問題があるなら、たぶん何とかして直そうとしたのだろうけど、あまり
差し迫った問題が発生しなかったから、だから私はそのままだった。
通う学校の女子グループも、あからさまに自分たちを避ける私を別に敵視する
ようなことはせず、ただ放って置いてくれた。聞けば、それはかなり珍しい事だと
言う。女の子という生き物は、自分たちのグループに入ろうとしない存在は、かなり
の確率で敵とみなし、苛烈な言動をもってあたるようになるらしい。もっとも、それが
本当かどうか、確かめる術も気も、私にはなかったが。そういう意味では、運が良かった
と言えなくも無いのだろうが、それまでの自分の人生、その運の無さというものを考えた
時、この程度で帳尻を合わされたらまったく割に合わないな、と考えないわけでは
なかったが、割に合わなかったらと言ってどうこうするわけでも、どうこうできるわけでも
ないというのはわかりきっていたので、深くは考えなかった。
そうして、私は孤立した。孤立したからと言って特に何か問題が発生するわけでも
無く、やはり私はそのままだった。
適当に――いい加減な、という意味ではなく――勉強し、それなりの成績を残し、
教師からも特に意識されないような、そんなポジションに自分を置くようにしたのは、
そうしなければいけないという意識によるものではなく、これも気づけばそうなっていた
だけだった。
教師からも、クラスメイトからも、誰からも意識されない、そんな存在に私はなっていた。
さびしいと思う事は、特になかった。
楽しいと思う事も、やはり特になかったけれど。
独りでいるという事は、私にとってはごくごく当たり前の、日常だった。
だから、寂しさを感じることはなかった。
だから、楽しさを感じることもなかった。
彼が、私に“告白”をしてくるまでは。
- 67 :
- 「ん。いいよ」
どうして、自分はあんなにもあっさりと、彼の告白を受けてしまったんだろう?
今考えてもわからない。
時々、彼の視線を感じていたから、だろうか。告白以前から、彼は私の事を
何やら奇妙な視線で見つめている事があった。その視線の意味はわからなかった
が、教室にいても特に誰からも意識されることのなかった私にとって、その視線は
どこかイライラさせられるものだった。自分が意識されているという事を、否応無く
意識させられる視線だったから。
どうして、彼がそんな視線を自分に向けるのか。それはつまり、私の事を好きだった
から、ということになるわけだけれど……それがわからなかった。どうして、彼が
私の事を好きになったのか、という事が、私には皆目検討がつかなかった。
だから、あっさり告白を受けたのかもしれない。
独りでいれば、何もわからない事なんてなかった。自分の事は、自分が一番
わかっているから。そして、それで十分だったから。それ以外の事を知る必要なんて、
何もなかったから――
告白を受けたその日、私は彼と一緒に家路についた。
それから毎日、一緒に帰るようになった。
彼は、小柄な私の歩幅に合わせるように、ゆっくりと歩いてくれて、道中では、色々
と話しかけてきてくれた。だが、そのどれも私にはあまり理解できない話題で、私は
ただこくこくと頷きを返す事くらいしかできなかった。
そんな私の様子に、次第に彼も押し黙ってしまう。そんな事が幾度も続いた。
「それじゃあ、また明日」
「うん、また明日」
そう言って、家に入ってしまうと、私の心を後悔が包む。
私がもっとちゃんと話せれば、彼にこんなに気を遣わせるような必要も無いだろうに――
と、そこで私は驚いた。
私は、申し訳なく思っていたのだ。彼に対して。彼と満足に会話できず、彼を困らせて
しまっている自分の事を。
今まで独りだった。それで何の不自由も無かった。でも、今……私は不自由を感じて
いる。彼を、困らせずにすむにはどうすればいいのか、わからないからだ。
- 68 :
- 友人に相談する? ……当然、それはできない。私には友人なんていないから。
親や兄弟に相談する? それもできない。どちらも私にはいないから。……いなく、
なったから。ごく普通の一軒家だから、その前まで送ってきている彼も、気づいて
いないだろう。私も言っていないし、学校でうわさになる程、私は周囲に意識されて
いないから。
結局、わからないまま、私は彼との付き合いを続けた。
こんな自分でも、どうやら彼は嫌いにはならず、むしろどうしてそこまで、と言うくらい
優しくしてくれた。それが嬉しくて……そして、それに応えることができない自分が
悔しくて、でもどうする事もできなくて――
「今度、郊外のショッピングモール、いかないか?」
そうして今、私はここにいる。
今まで行った事の無い場所でなら、私も少しは変われるんじゃないか。そんな
淡い期待を抱いて。
そしてやってきたそこは、私にとってはさながら異世界のようだった――というのは
流石に大げさにしても、そういった光景はテレビなどでしか見たことがなかったので、
初めて見るに等しい感動があった。
人ごみの多さ、装飾に彩られたディスプレイ、そこに飾られたさまざまな商品――
そういった、他の人なら見慣れているようなものでも、私にとっては新鮮で、見る
だけで楽しかった。多くの人は、その多さにうんざりする人ごみも、私にとっては
動物園の動物に等しい……などと思っていることが知れたら、人ごみを構成する
人々は怒るだろうか? 私は少しでも多くの物を見ようと、きょろきょろと辺りを見回して
いた。少しでも、楽しめるように――
――楽しい?
そうだ、楽しいんだ、私は。今、私は楽しんでいる。
いつ以来だろうか、こんな感情を覚えたのは……。
「あ、じゃああそこ入ってみようよ」「あれとか面白そうじゃない?」
この感情を私に与えてくれたのは彼だ。彼が導くがまま、私はそのショッピングモールを
歩き回った。
この楽しさは、彼が与えてくれたもの。
そして、こんなにも楽しいのは……きっと、彼が隣にいるからだ。
- 69 :
- 「……ちょっと、休憩しようか」
その彼に感謝しようと、おそらく生まれて初めての、ありがとうを言おうと、そう思って
いたら、彼がそんな事を言った。確かに、彼の表情には疲れが見えるし、私自身も
あちこち歩き回って少し疲れてきた所だった。
フードコートの隅に腰かけ、彼が買ってきてくれた飲み物と軽い食事を分け合った。
「ちょっと疲れたね。休日だから、人が多いな」
確かに、人は多かった。こくりと私は頷き、目の前のハンバーガー――これもまた
初めて食べるものだった――にかぶりついた。かぶりつくと言っても、私の小さな口
では一気に食べるというわけにもいかず、もそもそとハムスターが種を食べている
ような食べ方になってしまう。でも、それでもそれは美味しかった。
とても楽しい。今いるこの場所が。そして何より、彼が一緒にいてくれるという事が。
どうして思っていたんだろう。独りでいい、なんて。
どうして気づかなかったんだろう。誰かと一緒にいるのが、こんなに楽しいなんて。
- 70 :
- 「ツンデレに萌えを感じるなど、最早古い! だからお前はそのままのお前を俺に
ぶつけてこいっ!」
「アホかぁああああああああ!!!!」
あたしが右で繰り出したロシアンフックは、死角から奴――高部虎彦の左テンプルを
貫き、一回転する勢いで吹き飛ばした。だが、奴にとってはそれでも致命傷にはならな
かったようで、すぐさま起き上がり、驚愕の表情で私を見つめている。
「な、何をするんだ、未砂……」
「あたしはっ! お前の事をっ! まったく! これっぽっちも! 意に介してすらいないっ!」
「……だからよぉ、そんなにツンツンじゃなくても……」
「ツンじゃなくてこれがデフォじゃあああああああ!!!!」
あたしが繰り出した左は、後に黄金の左と言われる事になる。
それは見事に奴の人中穴を突き、奴の目は瞬間くるんと白目になる。
要するに、気絶したのだ。
「……ふんっ! まったく、毎度毎度キモい事しか言わないんだから……」
「それさえなければ、って?」
「ひゃわっ!?」
いつの間に湧いていたのか、私の背後から聞こえた声に驚き振り返ると、
そこには先輩――結城沙理先輩がいた。
「まったく、お互いに難儀よねぇ。もっと素直になればいいのに」
「お互いにって何ですかっ! こいつはこれ以上無いくらいに素直ですし、あたしだって
これ以上無いくらいに素直ですよ! こいつの事なんか、さっき言った通り全く全然
これっぽっちも意に介してないんですからっ!」
「でも、未砂って言わないよね?」
「何をですかっ!」
「トラっちの事、嫌い、って」
………………。
「き、嫌いとか、そ、そのレベルですら無いってだけでしゅよっ!」
「あ、噛んだ」
「先輩が変な事言うからですっ!」
「私は別に変な事は言ってないけどなー」
「言ってますっ! もう、知らないっ!」
- 71 :
- そう言って、私はその場を去った。何故か、頬が真っ赤になっているのを自覚しながら。
こ、これは別に、実はあいつの事を意識してるとか、そういう事じゃないんだからねっ!?
ちょっと運動して、熱くなってるだけだから!
「……ほんと難儀よねぇ、ほれ、起きれ」
未砂がいなくなってすぐ、沙理は眼下に転がる虎彦に声をかけた。
「気絶したフリもそうだけど、あの無駄な一回転受身とか、いったいあんたは何が
やりたいのかね、と。おねーさん気になっちゃうなー」
虎彦は、むくりと起き上がると、半眼で傍らに立つ沙理を見た。その視線は、疑い
半分、怒り半分といった所だ。
「別に……どうだっていいでしょう」
「傍で見てると、ほんと面白いけど……もどかしいのよね、あんたらって」
「何がですか? こうして俺があいつの相手にされないことが、ですか?
それだったらあいつも言ってる通り、俺の事をあいつが別にどうとも思ってない
ってだけの事で――」
「そう思ってた方が楽だから、って事よね?」
「……何がですか」
「本気で行って、玉砕したら立ち直れないし、もし受け入れられても、今みたいな
関係ではなくなる……それが、怖い」
「………………」
虎彦は、彼女の言葉に眉を潜め――だが、反論はしなかった。
「だから、わざとキモいと思われるような事を言って、怒らせて、そういう関係を
いつまでも続けたいと思ってる……ほんともどかしいわ」
「……もどかしかったら、何なんです?」
「別に、何も」
あっけらかんとした口調で言う沙理に、虎彦は唖然としたようだった。
「ま、おねーさんとしては、時にははっぱをかけないと……楽しめないかな、って所?」
「……好きにしてくださいよ」
そう言って、虎彦は立ち去った。
「ホントに……難儀よねぇ、何事も」
その後姿を見送る沙理の顔は、面白がっているようでもあり――そして、どこか
さびしそうでも、あった。
- 72 :
- >65-69
>70-71
- 73 :
- このスレ、すごい役立ってるwww
- 74 :
- 結局の所、俺には恐怖がある。
自分が「お前なんかどうでもいい」と思われているのではないか、という恐怖だ。
そんな事は無いと、俺の周りの人間は言うだろう。実際に自分の恐怖を打ち明けた
事は無いが、まず間違いなくそう言うはずだ。仕事ではそれだけ働いているし、趣味で
書いている小説も、そのくらいは評価されている――そのはずだ。
だが、"そのはず"では駄目だ。絶対にそうでなければ、駄目だ。そうでなければ……
俺はこの恐怖からは逃れられない。
あるいは、逃れられない恐怖など、誰にだってあるのかもしれない。どこまで行っても
確固たる自信が持てない、俺のような人間は、どこにだって転がっているのかもしれない。
そんなの、確かめようが無いだろ? だから、考えたって仕方が無い。確かめられる
のは、自分の気持ちだけだ。ましてや、それすらも確たる物ではない。自信が無いという
その事すらも、確固たる固まった気持ちというわけではないのだから、一体気持ちという
ものはどういう存在なのか、自分のそれすらも、もしかすると考えても仕方が無いのかも
しれない。それはまた、違う種類の恐怖だった。
……だがまあ、それは別に絶対的恐怖ではない。何しろ、それは自分の中でだけ
解決できる問題で、解決してもしなくても同じようなもので、だったらそれは無いような
ものだと、そう言って無視する事ができるからだ。
だから、俺にとっての恐怖はこれしかないと言って差し支えない。
「おまえなんかどうでもいい」と他人に思われる事。
この恐怖は、他人が関わっている。
他人がそう思うという事が恐怖である以上、いかに他人の心の事など考えても
仕方が無いと思っていようとも、無視して考えないという事が、できない。
本質的に、恐怖について無視する事ができなければ、考えないという事もまた恐怖を
招くわけだから、それは当然の道理であった。
結局の所、だから俺は"死神"に出会う事になった。
俺がもしも恐怖を抱かないだけの心の強さを持っていれば。
俺がもしも恐怖を抱いたとしても動じないだけの拠り所を持っていれば。
俺がもしも恐怖を抱かせる相手をそれだと気づかないままでいられれば。
そうすれば――あいつは――
- 75 :
- だが、これは終わってしまった話だ。もう終わってしまった話をこれから語るのだから、
ここで言うIFは、全て現在には通じない。もしも、はもしもであり、現実を変える力には
一切ならないのだ。その事を痛感しながら、それでも俺は語ろう。
"死神"と俺が、なぜ出会う事になり――そしてなぜあいつが"ああなってしまった"のか。
これは――怖がりの男と、なにものをも恐れない女の話――そういう事に、なっている。
- 76 :
- ブギポ二次創作を何となく考えてたり。
それよりもあのスレとあのスレでのアレを何とかするのが
先じゃないのか、と言う話なんだけど。
- 77 :
- 彼にとって、彼女は"拠り所"ではなかった。
だが皮肉にも、彼女にとっては、彼は"拠り所"だった。
そんな二人のはというと、これはまたありふれたもので――
「へえ。佐々目さんって言うんだ。珍しい苗字だね」
「んー? そう? それだったら貴方の貸牧って方が珍しいと思うけど?」
合コンという、男女の出会う場所としてはありふれた場所、状況で、二人は、
そして互いに”引っ掛かり”を感じた。何か、言葉にはできない何かを、互いに感じた。
それが何だったのかは、その時の二人にはわからなかったが、もしも今現在の
彼であれば、きっとこう言うだろう。
「あー……そうだな。結局の所、こいつは俺の欠けてるもんを持ってるな、って……
そう思ったんだわ、きっと。それはあいつも同じじゃねえか?」
こうして、佐々目紫乃花と貸牧亮治は――
「ねえ、貸牧君」
そのから一ヶ月程経った頃。
二人の関係を決定づける出来事は、彼女の行動によって起こった。
「その、ね……私と、お付き合い……してみない?」
後にも先にも、彼女がそわそわと、何か落ち着きがなく――まるで怖がっている
ような、何かを恐れているような雰囲気を見せたのは、その時だけだった。少なくとも、
それからかなりの時間を彼女と一緒に過ごす亮治にとっては、その時が唯一だった。
その瞬間から彼女がそれを忘れたのか、それともずっと以前からそうで、その時だけ
たまたま思い出していたのかはわからない。
だが、そうして二人の関係が決定づけられてから、彼女はまるでそれを忘れて
しまったかのように振舞うようになった。
恐怖を。
何かに対する恐れを、どこかに置き忘れてしまったかのように。
- 78 :
- 動きないなー。
レスつかないなー。
でもまだ焦るような時間じゃない。
きっと。多分。
- 79 :
- Bサイド、やっぱり無意味に重過ぎる。
うーん、一応話としては書ききっておくべきなんだろうけど、
あのスレには投下できんなw
- 80 :
- 「……えっと、その……頼みたい事が、あるんですけど……」
引っ込み思案な彼女は、いつも俺に頼みごとをする時言いよどむ。
そんな気にしなくてもいいのに、と毎回思うが、そんな奥ゆかしさも
彼女の魅力の一つではある。
「何だい?」
「……その、ですね……後ろから、ギューってしても、いいですか?」
後ろから抱きつきたい、という事だろうか。……どうしたんだろう、突然
そんな事を言い出して。普段はハグすら恥ずかしがってなかなかでき
ないというのに、自分から抱きつきたいと言い出すなんて……。
「あ、もちろん後ろからですよ! ……抱きしめあうとか、それは、ちょっと、
その……恥ずかしいですから……すいません、ごめんなさい」
「何謝ってんだよ」
僕は苦笑しながら後ろを向く。
「ほら、どうぞ?」
両手を広げて、彼女が抱きつきやすいようにしてみる。
- 81 :
- 「そ、それじゃあ……いきます、ね?」
「いいよ?」
- 82 :
- それは、悲しいほどに"本当"だった。
私のこの想いも"本当"で、その想いが決して叶う事が無い事も、また、"本当"で――
それでも私は、この想いを捨てるつもりは無い。
- 83 :
- 俺、ブキポ二次創作一通り書き終わったら、ライトノベル総合スレ立てるんだ・・・
- 84 :
- >>118
おまおれ
後これに嵌った
ttp://3-me.net/flashdir/hopten/
- 85 :
- すいません誤爆いたしました
- 86 :
- 何事かとw
- 87 :
- 登場人物オリジナル
樫牧(かしまき)亮治(りょうじ)
怖がり。
大学生で、日々をなんとなく過ごしている。
漣(さざなみ)紫乃花(しのか)
恐れ知らず。
大学生で、日々を活力的に過ごしている。
ポイントにおくもの
恐怖。それに付随するさまざまな“良い所”
- 88 :
- 名は体を表すという言葉がある。
これはつまり、名前はその見た目などを表すという意味であるのだが、場合によって
は外見だけに留まらず、その魂のあり方までもが名前によって規定されるとして考え
られる場合がある。
曰く、それまで誰にも顧みられていなかった一振りの太刀が、村正という名を見出され
て以降、自らも魔を放ちながら、それでも魔を断つ、妖刀として扱われるようになった――
そのような例は、枚挙に暇はあれど、確実に存在する。
名を有したが故に、与えられたが故に、見出されたが故に、それ故に、その太刀は
魔気を孕む物となった――そんな一刀は、どこか儚げな、それでいてその強さとどまる事
を知らぬと言った体を伺わせる無双の気迫を放つ、そんな相反した雰囲気を兼ね備えた
少女の手に握られていた。
では、彼女の場合は――その妖刀を今この瞬間手にしている彼女の場合は、どうだろうか。
彼女の場合、その名はその外見に見事なまでに適合していた。まるでその名が意味
する花の名の如く、彼女は可憐で美しい容姿を有していた。いつ散るとも知らぬ、だが
凛と咲き誇る、花の如き儚さ。
だがしかし、その視線は、見つめる物を貫き通しかねない、それだけで人をせる
のではないかと言わんばかりの鋭さを持つ視線は、その適合を否定していた。儚いのは、
人の夢の如く消え去るのは、彼女ではなく、彼女の目の前に立った物だと、そうその
視線は語っていた。強い、ひたすらに強い意志と、自信と、経験が、その視線から迸って
いた。
- 89 :
- では、彼女の名は体を、魂のあり方を表していないのか。
答えは否である。
文字には、意を含めるという用法がある。同音異字の文字を以て、直接的に過ぎる表現
を避け、それでいて意味を失わせないという、そういう用法だ。
一見迂遠に思えるその行為は、だがしかし、言霊という目に見えぬ魂を信じるが故に
行われ、そして今尚行われ続けている――
彼女は、腰だめに刀を構え、走った。その速度は、女だてらにという言葉すらも生ぬるい、
人の域を超えかねない程の俊足であり、縮地もかくやという神速であった。
彼女が向かうのは、相対する敵に向けてである。
その敵の名は、寄生。虫でもなく、動物でもなく、ただ寄生という名を冠せられ、そして
その名の如く、名は体を表すの言葉通り、寄生し、そして寄生し尽くす。何もかもを。
寄生は、その本体は本来姿を持たない。誰の目にも留まらずやってきて、誰にも
気づかれぬ内に寄生する。それが本来のそれの姿であり、攻撃だった。
だが今、寄生はその姿を、一匹の虫に似た、だが虫ではありえない大きさを備えた
姿を、彼女の眼前に晒していた。彼女の持つ太刀、妖刀村正の放つ気にあてられ、仮初の
姿を得させられているのだ。
本来なら、その姿に怯えても何らおかしくないグロテスクな姿に、だが彼女は怯える事
なく、それどころか敵意すら浴びせ、しかし冷静に肉薄する。
仮初の姿であっても、それは本質を表す姿であり、それを断ち切る事は、すなわちそれ
そのものの終わり――死である。
寄生もまた、その事実を本能的に察知しているのだろう。彼女の肉薄に、神速の接近に
瞬時に対応する。口から伸ばした針のような物で、彼女を迎撃したのだ。神速に対するそれ
もまた、神速と言える速度であり――勝負は一瞬で決した。
「………………」
- 90 :
- 斬ッ。
彼女のまとう和装の、その袖の部分がハラリと落ちる。それは、彼女が敵の一撃を回避し
きれなかった事を表していた。だが――それだけだった。
「……」
彼女は後ろを振り返る事もなく、薙ぎ払った剣を、血曇を払うかのように一度縦に振り、
そして腰に佩いていた鞘へと収めた。
同時に、その背後でドウッと音を立て、何かが倒れた。最早、それは何かと形容するしか
なかった。音を立て、倒れたにも関わらず、その音がした場所には……既に、何も存在して
いなかったのだから。
「……手間を、とらせる」
彼女は呟きを残し、そのまま月明かりの中、歩み始めた。
そしていつものように、思い出す。あの日、あの瞬間……彼女が覚悟を決めた、その時を。
――もしもお前の前に、お前の道を為す妨げとなる物が現れれば、その時は――
脳裏によぎるは、今際の際の父の言葉。
――刃の煌めきの如く生きよ。その為の守護を、お前の名には含ませた――
妖刀と呼ばれる、持てば狂気に囚われるその刃を持って尚、彼女が正気を保っていられる
のは、恐らくは、その名の守護によるものなのだろう。
刃の煌めき。煌めきとは、灯火を映す物。故にそれは火の如く――
刀火――転じて、桃花。それが彼女の名の意味。真の、込められた意味だった。
――できれば、お前には……その真の意味が意味無き物となる人生を――
恐らくは叶わぬと……無間の姓(かばね)を持つ以上は避けては通れぬと知りながら、彼女
の父はそう願い……そして死んだ。その事は、彼女も知っている。だが。
「今は叶わずとも……この私が、無間の運命(さだめ)……終わらせてみせる」
そうすれば、父の願いは叶う。戦う事をせずに済む未来を、自らの手でつかみとってみせる。
それが、彼女の誓いだった。
その誓いが叶うのかは、今はまだ……誰にもわからない……。
終わり
- 91 :
- 名は体を表すという言葉がある。
これはつまり、名前はその見た目などを表すという意味であるのだが、場合によって
は外見だけに留まらず、その魂のあり方までもが名前によって規定されるとして考え
られる場合がある。
曰く、それまで誰にも顧みられていなかった一振りの太刀が、村正という名を見出され
て以降、自らも魔を放ちながら、それでも魔を断つ、妖刀として扱われるようになった――
そのような例は、枚挙に暇はあれど、確実に存在する。
名を有したが故に、与えられたが故に、見出されたが故に、それ故に、その太刀は
魔気を孕む物となった――そんな一刀は、今、一人の少女の手に握られていた。
では、彼女の場合は――その妖刀を今この瞬間手にしている彼女の場合は、どうだろうか。
彼女の場合、その名はその外見に見事なまでに適合していた。まるでその名が意味
する花の名の如く、彼女は可憐で美しい容姿を有していた。いつ散るとも知らぬ、だが
凛と咲き誇る、花の如き儚さ。
だがしかし、その視線は、見つめる物を貫き通しかねない、それだけで人をせる
のではないかと言わんばかりの鋭さを持つ視線は、その適合を否定していた。儚いのは、
人の夢の如く消え去るのは、彼女ではなく、彼女の目の前に立った物だと、そうその
視線は語っていた。強い、ひたすらに強い意志と、自信と、経験が、その視線から迸って
いた。
- 92 :
- >>91 >>89 >>90
- 93 :
- 。
〉
○ノ イヤッホォォ!
<ヽ |
i!i/, |i!ii ガタン
 ̄ ̄ ̄ ̄
受けたようで良かった。小躍り中w
あと、エロい板にも投下完了。でもエロくないw
- 94 :
- 新聞といえば配達であり思わず新聞の日というお題だったことを
忘れたとしても当方には一切その責任は無いといいたいところだが
無理やりねじ込んだ努力は認めていただきたく思うがまあそこまで
いうほどでもないといえばないので気になされるな
という戯言
- 95 :
- いかん、ブギー二次に使えそうな能力を思いついたのに、度忘れしてしまった!
どんなだったっけ・・・
- 96 :
-
―― 一方その頃 ――
「戦那羅・毘津愚兵弐須様! 戦那羅・毘津愚兵弐須様! 大変です戦那羅・毘津愚兵弐須様!」
その男――仮に部下Aとしておこう――は焦っていた。
彼はとある作戦を任されていた。その作戦とは、特殊な薬品を用い、用済みになった駒に曹鉢宗
をコソコソと嗅ぎ回る男を排除させ、然るべき後に駒をも消し去るという物であり、作戦名は彼の
上司である戦那羅・毘津愚兵弐須が付けた。
その名も「ラリってハニー!? スイートホームでサンサーラ大作戦!」。
ちなみに、戦那羅・毘津愚兵弐須にネーミングセンスは無いと、部下Aは思っている。
その作戦が、失敗に終わった事を報告せねばならないと言うのに、肝心の報告相手である上司、
戦那羅・毘津愚兵弐須の姿が見えないのだ。
「どこにおいでですか、戦那羅・毘津愚兵弐須様! ……あ!?」
果たして、彼はいた。そこは曹鉢宗においては上級信者しか使えない娯楽室の一角の隅の方で
あり、そこに彼は巨体を収めて座っていた。
その姿は、まさに異様と称するに相応しいものだった。
まず、彼には顔が二つあった。そのどちらにも口は無く、目鼻は合わせて四つずつで、常に何か
の匂いを嗅ごうと、何かを見ようとしているかのように、ひくひくギョロギョロと蠢いている。
そして、二つの顔の中央部分からは、天にそびえ立つように、肉が盛り上がっていた。彼を初めて
見た物は、その誰もが同じ感想を抱く。
まるで、ペニ○スと睾○丸じゃあないか、と。
そして、その感想を口に出してしまった物は――例外なく、地獄を見る事になる。
そうして、彼は今のこの地位を築きあげた。
曹鉢宗実働実戦部隊『セントリー』。彼は、その部隊長として、曹鉢宗の荒事を一手に引き受ける
立場にあった。
- 97 :
- 眠り損ねた風邪治りかけなのに俺ぇぃ♪
- 98 :
- 俺は、その建物を見上げていた。
エンパイア・ステート・ビル。それは、アメリカにおいて長らく世界最高の高さを誇る建造物として
君臨し、世界最高の座を失って尚、摩天楼の代表格として広く世に知られる、そういう建物だ。
もちろん、ここにそのエンパイア・ステート・ビルそのものがあるわけは無い。これはこの街に
金持ちが趣味で立てたレプリカだ。周りにあまり高い建物が無いこの街では、その超高層ビルは、
なんだか酷く浮いて見える。成金趣味が透けて見えるような、そんな気もする。
「キングコングでも呼びたいのかねぇ……」
変装も兼ねたサングラスの位置を直しながら、俺は目的地があるであろう、ビルの中ほど辺りを
見た。そう。曹鉢宗の本部は、このビルの中にあるのだ。
もちろん、このビル全体が曹鉢宗のものというわけではない……と言いたいところなのだが、
宗教施設はともかく、他に入っている会社や施設、それら諸々は曹鉢宗の息がかかった
会社だったり施設だったりすると言うから、実質このビルは曹鉢宗の持ち物であると言って
差し支えないだろう。
……まあ、しばらくは飲食店や娯楽施設のある階だから、さして心配する必要も無いだろう。
俺の面も割れてはいないはずだ。一応、変装もしてきたしな。……おかげで、妙な視線を向け
られたりもしているような気がするが、逆にこんな変装をして侵入してくるやつがいるとは、
敵さんも思っちゃいまい。
一階には、ファーストフード店やレストランが入っていて、今もそこそこ賑っている。腹は減ってない
から、別に用は無い。俺はそのまま通り過ぎ、エレベーターへ向かおうとしたが、そこである
広告に目が留まった。
二階への通路に、大々的に大きなポスターが飾られていた。タイトルは、「地獄少女VSヘルボーイ」。
監督名が……大塩平八郎、とある。
- 99 :
- 「これか……」
親父さんが言っていた映画とは、おそらくこれだろう。今日はどうやら試写会が行われるらしい。
「言うがままに作らされたが、その意味はわからない……そう言ってたな」
何かのたくらみが、この映画に仕込まれているのは間違いないだろう。だが、それが何かは
わからない。下手にこれをどうにかしようとして、俺の事を察知されるのはまずい、か……。
ひとまずは、置いておくしかないだろう。俺はわずかな懸念を残しつつ、その場を後にした。
今はジュリアを助け出すのが先決だ。
「さて、と」
目的地である曹鉢集本部は、四十八階に存在しているらしい。らしい、と言うのは、それが
はっきりと確認できていないからだ。エレベーターの階数表示も、その階には特に何も無いと
表示されていて、一般人は立ち入り禁止とされているのだろう事が推測できた。
となると、その前の四十七階で、何らかの手がかりを探す必要がある。
……まあ、俺の考えが上手くはまれば、あっさり行けそうな気もするんだが。
「ついたか。速いな、このエレベーター」
考えている内に、エレベーターの人口音声が、四十七階についた事を知らせてくれた。
「さて……では、大博打と行きますか」
―― 一方その頃 ――
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