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2011年11月1期35: この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十五ヶ条 (322) TOP カテ一覧 スレ一覧

この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十五ヶ条


1 :11/01/02 〜 最終レス :11/11/10
即興の魅力!
創造力と妄想を駆使して書きまくれ。
お約束
1: 前の投稿者が決めた3つの語(句)を全て使って文章を書く。
2: 小説・評論・雑文・通告・dj系、ジャンルは自由。官能系はしらけるので自粛。
3: 文章は5行以上15行以下を目安に。横幅は常識の範囲で。でも目安は目安。
4: 最後の行に次の投稿者のために3つの語(句)を示す。ただし、固有名詞は避けること。
5: お題が複数でた場合は先の投稿を優先。前投稿にお題がないときはお題継続。
6: 感想のいらない人は、本文もしくはメール欄にその旨を記入のこと。
前スレ(※途中消滅)
この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十四ヶ条
http://kamome.2ch.net/test/read.cgi/bun/1264244216/
関連スレ(※途中消滅)
この三語で書け! 即興文スレ 感想文集第12巻
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/bun/1140230758/
裏三語スレ より良き即興の為に 第四章(※途中消滅)
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/bun/1106526884/
※2010年9月、kamomeサーバーの大破で、当時の創作文芸板のスレッドは消滅しました。
データ復旧は望み薄?
既に落ちている関連スレ(参考までに)
この三語で書け! 即興文スレ 良作選
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/bun/1033382540/

2 :
この3語で書け!即興文ものスレ
http://cheese.2ch.net/bun/kako/990/990899900.html
この3語で書け! 即興文ものスレ 巻之二
http://cheese.2ch.net/bun/kako/993/993507604.html
この三語で書け! 即興文ものスレ 巻之三
http://cheese.2ch.net/bun/kako/1004/10045/1004525429.html
この三語で書け! 即興文ものスレ 第四幕
http://cheese.2ch.net/bun/kako/1009/10092/1009285339.html
この三語で書け! 即興文ものスレ 第五夜
http://cheese.2ch.net/bun/kako/1013/10133/1013361259.html
この三語で書け! 即興文ものスレ 第六稿
http://book.2ch.net/bun/kako/1018/10184/1018405670.html
この三語で書け! 即興文ものスレ 第七層
http://book.2ch.net/bun/kako/1025/10252/1025200381.html
この三語で書け! 即興文ものスレ 第八層
http://book.2ch.net/bun/kako/1029/10293/1029380859.html
この三語で書け! 即興文ものスレ 第九層
http://book.2ch.net/bun/kako/1032/10325/1032517393.html
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十層
http://book.2ch.net/bun/kako/1035/10359/1035997319.html
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十壱層
http://book.2ch.net/bun/kako/1043/10434/1043474723.html
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十二単
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1050846011/l50

3 :
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十三層
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1058550412/l50
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十四段
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1064168742/l50
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十五連
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1068961618/
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十六期
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/bun/1078024127/
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十七期
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/bun/1085027276/
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十八期
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/bun/1097964102/
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十九ボックス
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/bun/1108748874/
この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十ボックス
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/bun/1127736442/
この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十一ヶ条
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/bun/1158761154/
この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十ニヶ条
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/bun/1182631558/
この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十三ヶ条
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/bun/1214994656/

4 :
テンプレの補完修正等ございましたらお願いいたしますm(_ _)m
では、次のお題(第二十四ヶ条、156番レスより)
「名称未設定フォルダ」「オムライス」「ぬいぐるみ」

5 :
「名称未設定フォルダ」「オムライス」「ぬいぐるみ」
今日は12月24日。クリスマス・イブだ。今日に向けて、彼女のいる男子はデート場所の選定に余念がなかったことだろう。
実は僕もそうだ。生まれて初めての彼女が一ヶ月前にできた。いや……まだ、彼女っていうのは大げさかな。
何せ、ちゃんとした告白はまだなんだから。それでも僕が彼女のことを好きで、彼女も僕を憎からず思ってくれていることに疑いを挟む余地はない。
だからもう、彼女だって言い切っちゃっていいと思うんだ。ま、でも今日こそはちゃんと伝えなきゃね。
「お待たせー。随分早かったんだね。」彼女が笑顔で近づいてくる。
クリスマスを意識したんだろうな。赤を基調にしたワンピース。ふわふわのファーまで付けていてなんて可愛いんだろう。
僕の好きなカントリー調のこの喫茶店によく映えている。
彼女がランチセットのオムライスを品良く食べる口元にうっとり見とれながら会話を楽しんだ。
彼女もずっと良い笑顔を浮かべてくれている。絶対に大丈夫。僕は自分を奮い立たせた。
「あの、さ。これ、たいしたものじゃないんだけど。クリスマスプレゼント、受け取って」
差し出したのは彼女の好きなリラックマのぬいぐるみ。彼女がこのキャラクターを好きなのはリサーチ済み。
「うわぁ。ありがとう。いいのー?うっれしいなぁ。」そんなに喜んでもらえると僕も幸せになれる。
「ごめんね。まさか、君がプレゼントくれるなんて思ってなかったから、私何も用意してなくて」
すまなさそうな彼女の顔に逆に僕が申し訳ない気になってしまう。
「ううん。いいんだ。それよりさ、この後映画行かない?いいのがやってるんだ。正にクリスマスって感じの…・・・」
言いかけた僕の言葉を遮る様に彼女は言った。
「あ、ごめんね。この後、友達と約束があるんだ。」
……12月24日。それは多くの男性が『名称未設定フォルダ』から『男友達フォルダ』に引越しをさせられる日である。
「さかさま言葉」「カルタ」「おせち」

6 :
「さかさま言葉」「カルタ」「おせち」
 正月――。
 俺は妹の作ったおせち料理があまりにもダイエッティなのでこう言うしかない。
「この、おせち、ちーせーおー」
 妹は即座に冷たい視線で俺を興奮させる。
「なにそれ?それで逆さま言葉をいったつもり、なの?」
 キター!その軽蔑に満ちあふれた氷の刃、最高っす。
 その時、いとこの、坂狭間琴葉と小瀬地駈太が遊びに来た。
小瀬地駈太はニヤリと笑い、
「みんなで百人一首しませんか?上物が手に入ったんですよ」
坂狭間琴葉は着物のコスプレをしていた。
「お年玉を賭けるというのはどう? 私、負けませんわよ」
「よし、やるか」と俺。
「ところでさお兄ちゃん……」妹は俺に問うた。
「百人一首って……カルタのことよね?そうよね、ね?」
 結構無知なところもある俺の可愛い妹なのだ。
次「妹」「アバター」「豆まき」

7 :
「おにーたんアバターってな〜に?」「う〜む。ネット上の自分のキャラみたいなの?」
ちょっと情弱な兄妹である。兄妹はキーボードのキーを確かめ確かめぐぐる。
「なんか3Dアニメか?」「サンスクリット語のアヴァターラが語源ですってお」
「アヴァターラっていうのはヒンドゥー教の神様の化身らしいな」
「神様ですか? なにか鬼みたいですね?」
なるほど、妹の指さしたPCのモニターに表示されたイラストのビシュヌ神は
肌を水色で塗られ、派手な宝冠は鬼の角のようにみえなくもない。
(かなり無理があるような気もするが……)
「ねー、おおおじーちゃん。ととが鬼のアバターやってくれたからもういいよ?」
兄のほうの孫の晴太郎が頭を掻き掻き言う。豆まきに夢中になって老人達を忘れていた。
妹のほうの孫の紅月がお盆に載せた深鉢二つを差し出す。
「おばーちゃんとおおおじーちゃんの分。年の数だけ食べてね(ハート)」
屈託の無い孫達の笑顔をよそに、深鉢の中の豆の多さに、ちょとため息の出る
兄妹であった、とさ。
(節分はすこしきがはやくないかい? 過疎だけどさw)
次のお題は
「カイト」「飛行機」「みかん」でお願いします。

8 :
 高く、高く、雲の向こう側まで行ってしまいそうな程、高く昇る凧。
 僕は久々にこの街へ帰ってきた。
 頃…そう小学生ぐらいの頃は、毎日学校帰りに100円玉握りしめて通い詰めた駄菓子屋の看板が角が錆びつく程、時が過ぎた。
 駄菓子屋の店主である老婆の容姿は僕の記憶と代わり映え無かったが、杖を使い弱々しく歩く様は過ぎた時間の長さを覚えずには居られなかった。
 そして、正月でも僕らはその店にお年玉を持って通ったが、老婆と昔話に花を咲かせていた小1日時間の間、子供の影がこちらに現れることは無かった。
 駄菓子屋で、購入した凧をひとつ買った。凧といっても、和凧ではなく、カイトと言ったほうがニュアンスとしては分かりやすいだろう。
(カイトは英語で凧であるが、一般的にカイトといえばゲイラカイトを指す)
 店を後にし、散策に出る。約束の時間まではまだある。変わってしまった街並みの中にも当時の記憶と近いものを見るたびに、センチメンタルになる。
 丘を超えると、河川敷に出た。
 「変わらないものもあるか……」
 当時の記憶と寸分と変わらず、灰色の川と手前に小麦色の床が広がっていた。
 風に乗りある程度高度を保った凧を、老婆からもらったみかんの入った百貨店の紙袋で押さえて、芝生の坂に座る。
 陽が重そうなネズミ色の雲に隠れたり、また顔を出したりして、どれくらいの時がたっただろうか、僕の顔を雲以外の影が覆う。
 二人の人影だ。成人した女性と、娘の影。待ち人来たる。罪を…、あの時逃げた罪を、僕は清算できるかどうかは分からない。
 だけれども、今度は逃げる訳にはいかない。
 大きい方の影が僕の影と重なる。若い時、肌を重ねたその時と同じ温もりを数年振りに戻ってくる。
 立ち上がり、紙袋を持ち上げる。娘が「あっ」と声を出す。同時に、重しを無くした凧が風に乗り、飛行機のようにどこかへ飛んでいく。
 歩き出す。彼女と彼女の…いや、僕と彼女の娘と歩く。
 
 彼女の家へと向かう。あの凧と同じで、どこに行き着くかは分からないけれども、もう逃げ出すわけには行かないんだ。

9 :
すいませんお題出し忘れました
「雪」「神社」「初恋」

10 :
「雪」「神社」「初恋」
娘が結婚したらしい。
我ながらなんて他人事のようなんだろう。妻と離婚したのはもう20年以上も前になる。
いや、こんな言い方はよそう。追い出されたのだ、彼女に。
当時の僕は夢を追いかけ、碌に家に金も入れない屑野郎だった。追い出されたのは至極当然のことだ。
娘が15の頃、元妻は新しい伴侶と共に国外へと旅立った。
それ以来僕は殆ど彼女らの消息を知らなかった。知ろうともしなかった。わが身と引き比べてしまいそうで知るのが怖かった。
結局のところ、あの頃追いかけた夢なんてとっくのとうに諦めて親戚の神社で売店の手伝いなんぞをしながら生計を立ててる有様だ。
妻もなく、子もなく、金もなく、余暇もなく、希望も、夢も当の昔になくした。ただただ生きているだけの毎日。
そんな情けない50男の元に届いたのが一枚の葉書。
「結婚しました。初恋の人と少し似てるかな?」雪の降る中、チャペルでの結婚式。ウィンクしている娘の笑顔がまぶしい。
娘の夫は異国人なのにどこか僕の若い頃を思い出す風貌だった。
身勝手だとは思いながらも、少し、泣いた。
「魚釣り」「御神籤」「耳」

11 :
 初子は、石を蹴り蹴り歩いていたら、いつの間にか集団下校の仲間と逸れていた。
道を一本曲がりそこねた所は、去年、住宅地の造成で森林が切り崩され、
小丘ひとつに今盛りと杜が残された場所だった。
初子が見上げると、鬱蒼とした中、木の杭と板で土を留めた急な階段の上に
小豆色の古びた鳥居が静かにあった。
以前、友達のナカちゃんの家の窓から見て、行ってみようと思い、そのまま忘れていた
神社だった。確か、ナカちゃんは池で魚釣りが出来ると言っていた。
寄り道はあぶないけど、土曜日だし日差しが明るいし、ナカちゃんの家から見えるし、
まあ大丈夫だろうということで、初子は蹴飛ばしていた狐の耳のような形をした石を
拾って、階段を登っていった。
 「あれ、お嬢ちゃん。その石、ちょっと見せて」
鳥居の先の神社には、何故か警察官がいて、寄り道がばれた初子は怒られ、
家まで送ってもらうことになった。神社では、悪質な盗難事件があったらしい。
お賽銭や御神籤の自動販売機の売上の他、大きな石像まで盗まれたと
赤い袴の巫女さんが警察官に話していた。赤い袴の巫女さんは、初子の
手に持っていた石に気づいて声を高く張りあげた。
初子はちょっと、驚きながら、石を巫女さんに渡した。
「ああ、これはうちの御稲荷さまの耳です。接着剤で付けてあったんですが……」
「お嬢ちゃん、これどこで拾ったの?」
「学校のゴミ捨て場の前です」
 初子の証言がもとになって、ゴミのリサイクル業者に扮した盗賊団が捕まった。
初子はナカちゃんと、帰ってきたお稲荷様に油揚げを供えに神社にいった。
巫女の小母さんが、たっぷりお礼を言って、美味しいお茶菓子を出してくれた。
巫女からお稲荷様の逸話を色々聞きながら、不思議なことがあるものだ、と初子は思った。
次は
「魚」「手袋」「階段」でお願いします。

12 :
夜道で会ったその魚は手袋をして階段を降りて来た。
「蟻地獄」「スターバックスコーヒー」「魚釣り」

13 :
「この三語で書け! 即興文スレ 感想文集第13巻」立ちました!
http://kamome.2ch.net/test/read.cgi/bun/1295263192/
このスレの感想・批評・雑談等は上のスレでどうぞです。
※感想の欲しくない方は、>>1のお約束6の通り、本文もしくはメール欄にその旨の記入をどうぞm(_ _)m

14 :
キャラメルマキアートに口をつけ、
量が減ったら、紙コップを振ってかき混ぜる。
小さな渦を巻き、止めたとき水壁が崩れて、
蟻地獄の巣から突き出した二又の蟻地獄の角だか顎だが
みたいだと思った。
出会った頃、真希のマイブームはスターバックスコーヒーで、
デートの度にまだ長蛇の列の出来る銀座の店舗に寄り、
並ぶのが嫌いなわたしはへきえきしていた。
風の噂に、真希の現在のマイブームは魚釣りらしい。
ピサデブにもめげず、
どこかの岬だかダムだかで粘り強く糸を垂れ、眉間にあの三本ジワを寄せる。
真希のどこかユーモラスな姿が思い浮かんで、ふと失笑してしまう。
もういいよね? デッキの中に忘れ残された
『昆虫探偵 ヨシダヨシミ』のDVDをゴミ箱にシュートしようか否か、
しばし、逡巡する。
次のお題は
「星座」「鴎」「相撲」でお願いします。

15 :
 仕事や人付き合いに失敗した俺は何となく旅にでた。
寒いのは嫌だったから南に向かったつもりなのに、さっきまで雪に降られていた。
「沖縄にでも行けばよかったなぁ……」
 日も沈み、騒々しかった鴎(かもめ)もいつの間にか何処かに行ってしまった。何となく、余計寂しく、心細く、寒くなった気がする。
 つい先日振られた相手は、誰が何言おうと自慢の彼女で、メールよりも手紙が好きだといった古臭い趣味を持っていたが、それさえも好きだった。だから自覚のある無しにかかわらず、いろいろとしてきたつもりだった。いや、間違いない、してきた。
だけど
「あなたががんばってくれたのは知ってる、私が好きなものを理解してくれようと
してたのもわかってる。でも、なんていうのかな?梅の花が好きと言ったら、梅酒をもらった……そんな感じ?多分これからも、私の好きなものをあなたは理解したつもりで、わかってくれないだから、もう分かれましょう」
 それが答えだった。
俺のしていた事は一人相撲だったって事だ。
「酒飲んで寝よう」
 防波堤から立ち上がり、気持ちを回りに向けると何故か明るくなった気がする
何となく雪を降らせていた雲が薄くななっていく様を眺めていると、雲の裂け目からプラネタリウムでしか見たことがない量の星が集まっていた。
「天の川……」
 ミルキーウェイを「道」と約して彼女に怒られたことや、彼女に合わせるために星座を覚えたこと、いろいろなことを思い出す。だけど、いつのまにか雲は流れていった満天の空の様に全て忘れて見入ってしまった。
 あまりにも圧倒的で、強く、今にも降って来そうな空
星の光が囁いている……聞こえないけれど、星が歌っている、そんな空だった
 何となくだけど初めて彼女がわかった気がする。
「へっくしょん!さむ……宿に戻るか」
僕は無性に手紙が書きたくなった。
次は「安宿」「迷子」「崖」でお願いします

16 :
火星の安宿でエウロパ鍋を食べながら、
その鄙びた部屋の一角に目を留めた。
床の端になんだか嫌な、原始的な警戒感を抱かせる染みが付いているのである。
血の跡…ガソリン…?
よくはわからない。パラジロマイトのようにも見えた。
そして遠目に見ている私を包む様に部屋全体が歪んで行く感覚を覚えた。
鍋にアレルギー物質でも入っていただろうか?
よろめきながら足を出すと床は思わぬ角度で払いのけ、
頭を打ち据えられた。
部屋全体が染みに包まれていた。
身動きできぬまま、私は世界と切り離され迷子になった。
窓は曇り、部屋は揺れていた。
やがて第13宇宙速度を突破したとのアナウンスが入った。
連邦条約で禁じられていた機能だ。
非常にまずい。
法で罰せられるのではない。
その速度に僅かでも達すると宇宙の端まで行ってしまい、崖から落っこちるのだと言う。
無論、本当に崖の様になっているはずはないが、誰も到達した事がないのでわからないのだ。
正確には宇宙の崖から落ちた者は帰って来た試しが無いのでどうなっているのか誰も知らない。
宇宙物理学でも解明されて居ない。
あれはあくまでも宇宙の内部の法則しかわからないのだ。
やがて部屋の揺れは収まった。
私はもう何年もフードプリンタから出力されるエウロパ鍋を食べながら、「今日は外に出てみようかな?」などと考えて居る。
「カナリヤ」「激突集会」「中華料理」

17 :
「いらっしゃいっ……、と」玄関の引き戸の開く音に顔を上げた番頭は言葉をつまらせた。
どうにもこの安宿に一人で泊まりに来るはずのない姿が立っていたからだ。
「お嬢ちゃんどうしたの?なんかあったの?」それでも受付から出て少女の前に立つ。
ランドセルを背負った姿から近所の小学校からの下校途中だろうと判断したのだ。
「あの、すみません。ここに大野木さんって人泊まってますか?」少女は顔を上げて尋ねた。
「お客さんかい?いやー、今はそういう名前の人はいないねぇ。どんな人だい?」番頭は後頭部に手をやりながら答えた。
「髪の毛が薄くて、ちょっとお腹が出てます。あとメガネかけてて、チェックのシャツ着てリュックしょってると思います。」少女は淀みなく答えた。
番頭はそのオタクっぽい男の風貌に少し心配になって屈み込んで声をひそめて尋ねた。
「……お嬢ちゃん。その男になんかされたのかい?」
「何かって何ですか?」その反応に被害者ではないようだと安堵する番頭だが答えに困ってしまう。
「うーん。先生とかいうだろ。気をつけなさいって。ほら、そのー、な?」子ども相手に直接的なことを言うのは憚られ言いよどむ。
「この前の常田の方の事件ですか?」隣町でおきた事件のことだ。低学年の子が変質者に襲われ、崖の上で落とすぞと脅されて悪戯されたのだ。
「そう、そういうことだ」やっと話が伝わり一息つく。頭頂部が薄くなった頭をがっくりと落とす。
「違いますよ。」少女はくすり、と笑った。「昨日、迷子になった時助けてもらったんです。九州から自転車で来たって言ってたからこの辺に泊まってるんじゃないかなって思って」
少女は別段不審を感じた様子もなく言った。もう一度お礼を言いたかったのだという。
「うーん自転車ねぇ。残念ながらうちには来てないな」「そうでしたか……。ありがとうございました。」少女は頭をぺこりと下げた。
その瞬間、のっそりとした人影が宿に入ってきた。
「あの〜ゔ。ぎょうごごにどめでぼじいんでずげどぉ〜。へやあいでまずかぁ〜」
番頭がぎょっと目を見開いた、その時少女が笑顔で振り向いた。
「あ!大野木さん!やっぱりいたんだ」だが番頭はどうやって気づかれずに警察に通報するかを考えていた。
胡散臭さからではない。男の顔は常田の事件の人相書きそのものだった。
次は「硝子」「九つ」「灯」

18 :
すみませんリロードしてませんでした。次は「カナリヤ」「激突集会」「中華料理」で

19 :
どっちでもいいよ。
おもしろければ。

20 :
一部では激突集会なんて呼ばれてる今回の生徒会会議に、新聞部の代表として早島を送り込むのは、坑道にカナリアを連れて潜るようなもので、かなり気が引けた。
確かに本人も来年度は部長という立場もあり乗り気なのだが、なんと言っても学校内を二分する前期と後期の生徒会長対決の場所に、その前期生徒会長の妹である彼女が取材というのは痛くもない腹を探られない方が奇跡だ。
しかも、目の前の見た目だけ好青年の腹黒顧問は明らかに何かを狙ってる。
私は今度の会議には自分と副部長の高橋が取材に行く事を早口で告げると、帰宅しようと鞄を持って立ち上がったところで、手首を掴まれてしまった。
「まぁ、待ちなさい。これは早島にはいいチャンスだし、生徒会にも起爆剤になる筈だよ」
いちいち耳元で囁くように喋るのがウザいがこの人の場合、これ以上のセクハラには発展しないからその点だけは安心だ。それよりも問題なのは、この後に彼から見せられた携帯の写真だった。
そこにはなんと、中華料理なんてつつきながら見つめ合う早島と、後期生徒会長松山の姿が写っていたのだ。
「どう見ても、デートだよねぇ。若いってうらやま……痛タッ」
私は全体重を目の前の教師の足の甲にかけると、部室を飛び出した。後から考えると、取材行為の一環もしくは早島兄への橋渡しを頼んでいただけかもしれないのにその時の私は酷く短絡的であった。
すみません、次は「硝子」「九つ」「灯」をそのまま使わせてください

21 :
 今私たちの間ではやってるおまじない
硝子の欠片を九つ(ビー玉でもオハジキでもいい)と、ろうそくを一本
机の上に、五芒星と逆五芒星を重ねて書き一番上がろうそく、他の星の先端に
硝子の欠片を並べます。
 真ん中に好きな人の写真を並べて、ろうそくが消えるまで”好き”を唱えることを12日間続けます。
途中でろうそくが消えたり、1日でも忘れると絶対に結ばれない諸刃の剣で、友達には『素人にはお勧めできない』と、訳のわかんない事を言われました。
 私にも意地がるので、天にも負けず風邪にも負けず今日で12日目。
途中ロウソクが私のくしゃみで倒れるというトラブルはありましたが、ロウソクの灯は既に五芒星も好きな人の写真も巻き込んで強く燃えています。
 もうすぐロウソクは無くなるので、最後の灯という奴でしょう。
何となくコタツもいつもより熱くなって来ました。私の愛の炎が燃えています。
流石です私、40度の熱でもおまじないを続けた甲斐があります。
何となく、意識がぼーっぼーっとしてきましたが、いい夢が見られそうです
おやすみなさい。
次は「プリンタ」「フォーマルハウト」「電子レンジ」でお願いします

22 :
温めていたミルクを電子レンジから取り出すと、彼女は2つのマグカップに注ぎ分け、ココアとマシュマロを無造作に加えた。
温かい飲み物にマシュマロをいれた物は彼女と暮らしだしてから、冬の定番だった。ココアはいつものように僕の体を暖めてくれたが、心には冷たい隙間風が吹き続けていた。
「もう、こんな美味しいココアは飲めないのかな」
一瞬、その瞳に悲しげな影を見た気がしたが、彼女は微笑みながら言った。
「あなたはレシピを知っているし、本当は何だって一人で出来る人でしょ。ココアだって、ずっと美味しく淹れられる。私はそうじゃなかったの。飲んでくれる相手がいないと駄目だった。でも、これからは一人でも頑張れる私でいたいの」
その彼女の言葉に、僕はいつか二人で見た秋の星空を思い出していた。南の空に輝く秋のひとつぼし。フォーマルハウトを見つめながら、もしかしたら既に一人で生きていく事も彼女は考えていたのかもしれない。
荷造りが終わって、彼女を送りだし、家具は何一つ減ってないのに妙に広くなった部屋の中で僕は途方にくれた。
部屋の隅では随分と使ってなかった筈のプリンタが接続されたままになっていた。
おそらくは、彼女が職務経歴書か何かを印刷しようとしたのだろうと履歴を見ると、意外にも僕の写真をプリントアウトしていたらしかった。
いつか、屑籠に捨てられるとしても、僕はその写真が羨ましかった。
次は「白紙」「豆腐」「ボール」でお願いします

23 :
今晩のご飯は湯豆腐よ。 from わがママ
白紙撤回を要求する。 from 育ち盛り
買い物めんど臭いし〜
レトルトかなんかないの??
じゃ〜ミートボール入り湯豆腐。
ミートボール オンリーで!!
消費期限あるし〜ペスので味付いてないし〜
おまえんちの犬ダサwww from 自称盟友
それタソんちのピラニアの名前 from 他称悪友
おまえらの家に遊びに行ってもいいか?
いいけど、うちのママンはさいきんプリン丼に凝ってるよ?
俺んちは、晩飯、10時過ぎがデフォ
あーもーコンビニいくからいいわ
あら、じゃあ、ネギと乾し椎茸、白菜なんかもあったらお願いねww
おまえらいい加減、まじめに戦闘やろ〜よ。ここ初期イベントの
やまばだぜー from 二次の彼方総長
と〜ちゃんこのゲームつまんねw
ちゅちゅみません…お題継続で
「白紙」「豆腐」「ボール」

24 :
私はこの時間が嫌いだった。チャイムが鳴り、給食の時間の終わりであり、昼休みの始まりを知らせた。殆どの生徒がチャイムと同時に騒がしくなり、外にドッチボールをしに行っていた。
私は一人、机の上に乗っている食器の中身をじいっと睨んでいた。食器の中には豆腐だけを端に残している。私は豆腐も大嫌いだった。
豆腐さえ無ければ、私は先生にこんなにも嫌われる事はなかったはずであり、チャイムがなった瞬間に私も皆とドッチボールをしに行ったはずだ、と当時は考えていた。
いつまでも動かない私に先生は、好き嫌いは良くないと言ったが、きらいな物をだけ残してしまった後に言われても困る。嫌いなものだけ食べろというのはもはや拷問である。
小学生にとってとても大切な昼休みが刻一刻と過ぎて行く中、たかが豆腐に束縛されている私の小ささが惨めに感じてしまい、涙がこぼれそうになった時、隣の席で、机に寝ていた美術部の無口君が、
「白紙か何か持ってない?」と、聞いてきた。当時、私は線なしのノートがマイブームだったため、ノートからちぎって渡そうとしたが、丁度、先生がいなかったので、交換条件に豆腐を食べてくれることを提案した。
その日以来、豆腐が給食に豆腐が出た日は、彼は絵が描きたくなるらしかった。
お題は「炬燵」「リゾット」「去年のカレンダー」でお願いします。

25 :
お前ら勘違いてるけどたかじんのそこまで言って委員会は日曜お昼のワイドショーだからな。
報道番組じゃないから。

26 :
アメブロ芸能人がペニーオークションで続々落札? サイバーエージェント「一切関与していない」
「iPadを855円で落札」──「アメブロ」でブログを書いている複数の芸能人が、ペニーオークションで
落札した体験談をそろってブログに掲載していたことがネットで波紋を広げている。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1101/24/news077.html

27 :
【炬燵 リゾット 去年のカレンダー】
 俺が何気なく空を見上げると、テレビの超常番組でおなじみの物体が、はるか上空を飛んでいた。
「あ、UFOじゃん」
 妹のハルホがさほど驚いた様子もなく言う。
「あれ、降りてくるよ」
 俺は多少動揺した。物体が近づいてくる。その速度が速い。
「着陸したよ」
 ハルホは、付近の空き地に降りたUFOに走り寄っていった。
「おい、待てよ。危ないって」
 UFOの入り口が開いた。誰も出てくる様子はない。
「ごめんください。とにかく上がります」
 ハルホは待ちきれずに、内部に上がった。なんて妹だ。俺は、仕方なくハルホの後に付いていった。
「なんだよここは?」
 中に入って俺は唖然とした。そんな馬鹿な。
 ハルホは炬燵に入ってまったりしていた。ハルホの対面に入っているのは宇宙人だ。
「おい、UFOに炬燵ってのはおかしいだろ?」
「おかしくありません」と宇宙人が言った。
「この国には炬燵って普通にあるでしょう?どこが変なんですか?」
 俺はあきれて勝手に高速解釈した。
「わかったよ。俺たちを驚かせないために、俺たちの記憶から馴染みのある物を具現化して見せてるってんだろ」
「ところで、おなか空きませんか?」
 宇宙人は、炒飯を出して俺たちに勧めた。
「チャーハンではありませんよ。さっきイタリアにいたとき町の人にもらったのですがこれはリゾットです」
「私知ってる。フランスではピラフって言うんでしょ」
 どうでもええわ。俺はやけ食いした。
 さて、あれから一年、俺は主のいなくなった妹の部屋を片付けていた。あの日以来、ハルホは自分から進んで宇宙人と運命を共にし、旅だった。
 去年のカレンダーにはハルホの消えた日に○がつけてある。このカレンダーを処分しようかどうか俺は今、迷っている。
 だって、けいおんのレアカレンダーなんだもん。
次回「片目」「謎の小動物」「お兄ちゃん」

28 :
私が大型古書店で時間を潰していた時のことだ。私の傍らを通りかかった少女が、私が立ち読みをする本のページをちらりと眺めた。
(まずいかな)と思った私はさりげなく本の表紙を少女に向けた。
(戦記物のマンガだぞ)と無言で主張したのである。
ただし、少女に見られた中身は、激戦をくぐり抜けて帰国したパイロットが馴染みの娼婦と情を通じる場面で、紙面の半分を娼婦の裸体が占めている。確かに女の裸だ、しかし、物語にとって必然性のある裸ではないか。
優しい少女は私の心情をおもんぱかるように片目をつむって、意志を伝えた。
(分かってるって。男の人ってそう言うのが好きなんでしょ?)
この優しさは、自分と同じ人間であるというより、理解不能な得体の知れない小動物という感じを抱かせる。
「よしこ、帰るわよ。」
店の入り口から響いてきたのは少女の母親の声に違いない。少女は可愛い笑顔を浮かべて駆け去った。
「ママ。あのお兄ちゃん、女の人の裸を見ていたの」
その一言で、私は店内で独りぼっちで周囲の冷たい視線に晒された。
次のお題 「チョコレート」、「バレンタインデー」、「彼女」
さぁ、一工夫しないと、ありきたりな物語になっちゃうよ。

29 :
彼女が言った。
「もうすぐバレンタインデーだけど、チョコレートとかどんなのが良いの?」
俺は畳み掛けるように答える。
「エロいの。」
「エロいのかよ!」
彼女が突っ込む。
そっかー。エロいのかーっ…とか言いながらどっかに行ってしまった。
2月14日。午後七時五分。自宅前で部屋の明かりを確認し、携帯で帰ると伝える。
帰宅。部屋の明かりは消えて居る。
…来る…!!
部屋の中央に進み出て明かりを点けようとした俺に襲い来るエロス。
性器はおざなりに愛撫され、口の中に甘いモノを突っ込まれる…
こんなのいやああお!!
「2011」「短くなった鉛筆」「インドネシアの仮面」

30 :
「お土産」そっけない言葉とともにボストンバッグがソファの上に落ちてきた。
直撃は免れたものの、読書の邪魔をされたのは不快でしかない。
「何これ?」怪訝な表情を隠しもせず私は10年来の友人の顔を見上げる。
「好きそうかなって思って」彼女は異国の言葉が書かれたコーラを開けながら、くいっとバッグを顎で示し答えた。
彼女が自由すぎるのは今に始まったことじゃあない。諦めて、読んでいた本をサイドテーブルに置いた。
「どれ、どれ?」異国の香り漂うカバンに手をかける。サイズの割りにずいぶんと軽い。
彼女の土産は嫌げ的な物も多く、期待を抱かせるような言葉には警戒が必要だ。
以前もらったアフリカの某部族で使うRケースや祭祀で使うらしいインドネシアの仮面やヨーロッパの上流貴族が毒薬を溜め込んだ壷のレプリカなど、
貰って困った土産なんか一時間じゃ語りつくせないほどある。
さりとて貰ったものを簡単に捨てたり人にあげられる性分でもないため、うちには今日も趣味に合わないインテリアが増えていく。
さて、バッグの中は新聞紙だらけだ。まさかこの新聞紙が土産というわけでもないだろう。がさごそと探していく。
「あー、さっきまで割れ物入ってたんだ。新聞紙捨てればよかったね」そういうことはあらかじめやっといてくれ、心の中でぼやいていると指先に紙ではない感触が当たった。
小さな細長い箱だ。「今回の土産はこれかな?」まるでクイズの答え合わせをするように、彼女の目の前にその紺色の箱をつまんで突き出す。
「正解。ま、見てみてよ」ゴム紐で閉じられたその蓋を開けると、中には銀色のペンホルダーが入っていた。
珍しい。そう思いながら手に取るとシャツにとめるクリップの部分に『2011/01/31に40回目の誕生日を迎える最愛の友へ 心をこめて Mより』との印字があった。
これを胸ポケットにさしたら自分の年齢公表して歩くようなもんだな、なんて思いも頭を掠めたがただ単純に嬉しかった。
私がいつも短くなった鉛筆をペンホルダーを付けて最後まで使い切るのを知っているからだろう。
「たまの誕生日だしね。不惑おめでとう。」そういって微笑んだ彼女は私の飲みなれた缶ビールを渡してくれた。
ささやかかもしれないが本当に良い誕生日だ。私は目じりに浮かぶ涙を拭きもせず笑顔で彼女と乾杯をした。
「坂」「フライパン」「節分」

31 :
トチ狂って「坂」「フライパン」「豆」で書いてしまった
節分から巡って豆……俺はアホか

32 :
イイヨイイヨー

33 :
>>32
なんでわずか一分で書けるんだよ…怖い

34 :
たまたま43分開いたんだよ。
たまたまだよ。

35 :
というか文字数制限に引っかかって書き込めないよ
諦めますわ

36 :
二つに分けて書き込むんだ。

37 :
そういうのやっていいの?

38 :
いちおう>>1があるので奨励はされないかと思うけど
それより雑談はなるべく簡素スレで

39 :
台所から望むベランダ越しの風景が、そう悪くもないと思い始めたのはいつの頃だったろうか。
芳醇な香りを放つ珈琲豆を、強火で熱したフライパンの上でさらさらと転がした汗だくの私は、半ば空想に耽るような思いで窓の外を眺めた。
潮の香りが風に乗ってやってくる我が住まいからは、夏を色濃く引き写した空と海、それと、私が長年忌み嫌ってきた例の存在を目にする事ができる。
それは坂だ。数年前、地方開発のあおりを受けて設置された、山沿いに走る醜いコンクリートの道路。
まるい山の外周に沿って蛇行するコンクリートの道路が、私の家から望むことのできる風景の、その左側を著しく穢していた。
道路が設置されるまで、そこには海と山があっただけだったのだ。
抜けるような海の青と生い茂った広葉樹林の緑が、その二つをもって美しいコントラストを描いていたというのに、
どこぞの木っ端役人がいらぬ世話を焼いたのか、いまそこにはぎらぎらと日光を反射するコンクリートの黒と、興ざめしそうなガードレールの白が混じっている。
集落の人間たちは「これで移動が楽になった」と皺だらけの面を破顔させたが、私にとってはいらぬ世話以外の何物でもなかった。
私にとってこの景色は、人の手が入り込まない"動く絵画"だった。
寄せては引いていく緩やかな波模様。聞こえてくるわずかな潮騒。波風が揺らす広葉樹林のさざめき、蝉の声――。
この"絵画"には、"生命の複雑さ"が交錯していた。単調なようでありながら、同じ構図になることなど絶対にあり得ない景色。私はそこに、美を見いだしていたのだ。
だがしかし、いまとなってはなんとまあ穢されてしまったことだろうか。この"絵画"に人の営みが描かれるようになって、美しさが急激に損なわれてしまった気がする。
排気ガスをまき散らして通り過ぎていく車、場違いなボディスーツで疾走するロードバイカー。
あの道路だけでなく、そこを通っていくものさえ、なにもかもこの景色から浮いていて、ちぐはぐなように思える。

40 :
この景色は醜い。あの坂が憎い。あんな道路など、無くなってしまえばいい。珈琲豆を煎りながら景色を眺める度に、心の中でそう罵っていた。
あの日、白いワンピースに身を包んだ、勝ち気で生意気な彼女を目にするまでは――。
フライパンの上の珈琲豆が、ばちっ、と爆ぜてかぐわしい香りをあたりに拡散させた。
「しまった」慌ててコンロの火を止め、から煎りでチャフを飛び散らせる。ちょっと煎りすぎてしまったかもしれない。
次いで、皮が充分に飛んだのを確認した私は、ザルに移した珈琲豆を振って冷却作業に入った。
一分かそこらで触れられる温度まで冷めた珈琲豆は、少し焦げてしまっているようだった。
やっちまった。これではハイローストだ。
豆の銘柄的に、このくらいの方が風味が効いて美味いのだが、彼女はミディアムローストがお好みで、ちょっとでも焦がすとすぐ眉をつり上げる。
額に浮かぶ汗を肩にかけたタオルで拭った私は、彼女から下される審判を頭の中で思い描いて、震えがくる思いで台所から望む景色に視線を戻した。
果たしてそこには、潮風に麦わら帽子をさらわれないよう鐔を両手で押さえ込んだ彼女が、いつもの白いワンピースで坂を下っている姿がある。
やれやれ。また今日も怒られるんだろうな。
恐れも期待もないまぜにした複雑な感情が、私の胸中で渦を巻いていた。
だがしかし、遠い坂の上から私の姿を見つけたらしい彼女が、私に向かって大きく手を振っているのを視認して、恐れなど残滓も残さず吹き飛んでいくのがわかる。
あの坂は醜いが、この景色を下ってやってくる彼女は、とても美しい。この風景も、それほど悪くはないのかもしれない。
いつものように、怒られる恐怖よりも彼女と会える期待の方が勝った私は、心地よく鼓動する心臓の音を確かめて、彼女のために煎った珈琲豆をミルに投入した。
次「便器」「テレビ」「虫」
お題間違えたのはマジですまんかった

41 :
『虫を入れてくれてありがとう!』
黄色い虫が画面の中でうごめく。最近私がはまっているゲームだ。
作物や家畜を育て、売却し開墾しレベルアップしていくという他愛も無いゲーム。
一人で進めるにはハードルが高いが友人同士で一緒にやれば、水遣りや害虫駆除を助け合ったりと中々楽しい。
……ネット廃人状態なのがばれてしまうのが玉に瑕だが。
今日も今日とて家に帰ればテレビをつけたリビングでPCを立ち上げビール片手に畑仕事。
本当に向上心の無い生活だ。だがそれが楽しい。なんて駄目な生活。一人身万歳。
廃人とはいっても仕事に影響は及ぼさない。仕事にはちゃんと行く。
「ねー、佐々木先輩って彼女いないんですか」休憩時間に恋話に花を咲かせる女子社員に尋ねられる。
「いやいや時間が無くて中々ね」そんなことを良いながらも、頭の中は今朝植えてきたカボチャのことが気にかかる。
最近、一定のレベルに達したのかそう簡単にレベルを上げられるわけでもなくなってきて行き詰っている。
中々ゲーム内の仮想通貨が貯まらないのだ。これでは新たに畑を開墾することも、家畜を買うこともできない。
作物が育って収穫できるまでにはまだ何時間もある。ここでゲームを辞めとけばいいものを、また新たなものに手を出してしまった。
『こんなに喉が渇いているのに!?』注文したものが無い不満に涙目になる画面の中の女の子。
それを見ながら(申し訳ございません)と謝罪を伝えるボタンを押す。
可愛い泣き顔に、あぁ結婚したいなぁと思う適齢期の夜。
今日も経験地稼ぎのためにひたすら便器掃除のボタンを押します。
ゲームをやめて現実の世界に戻るにはもうしばらく時間が必要そうです。
結婚もまだまだお預け。俺、はやくこのゲームに飽きないかなぁ。
彼女欲しいなぁ。
「南瓜」「白菜」「合成」

42 :
 南瓜はできるだけいちょう切りで薄きらなきゃだめ。白菜は適当にざくざく切って、はごたえがあるくらい。
そうしたら沸騰した鍋にほんだしと一緒にに入れて、十分ぐらい弱火でコトコト煮込む。
その後はちょっとの味噌を溶かせば完成。
こんな素朴な味噌汁が洋介が一番好きだった料理で、何度もわたしにおかわりをせがんだのはいい思い出。
 わたしは鍋が沸騰してる間に、洋介の気に入っていた服をタンスから引っ張り出して洗濯機に突っ込む。
そして合成洗剤を適当にいれて、スタートボタンをピッと鳴らす。
こうして一年に一度は洗ってやらないと、私は洋介に怒鳴られそう。
洋介は夏でも冬でも季節関係なく、一度来た服は洗わないと気がすまないのだ。
わたしが洗濯機から洋介がまだ全然着てない服をハンガーでつりさげておくと、彼は洗ったばかりだと勘違いしてそれを着ていく。
そういったことがわたしには面白く、ひどく愛しいものに感じられたものだ。
 わたしはテーブルに作っておいた味噌汁やご飯を二人分テーブルに用意する。
今日乾かしたばかりの洋介の服を、きれいに畳んで椅子の上に乗せる。そうして自分も椅子に座っていただきますを言った時、わたしはこらえ切れず泣いてしまう
こんなことをしても意味はないのだ。洋介は二度と帰ってこないのだ。わたしは何度も何度も自分に言い聞かせてきた。
でもだめなのだ。わたしはこの洋介の存在を感じさせるアパートにいる限り、この儀式をやめることはできないのだ。
 数ヶ月が過ぎた後、わたしはあの思い出のアパートを出た。そうしてすぐとなりに立つ、背の高いマンションの十階に移り住んだ。
わたしは暇があれば、双眼鏡であの馴染み深い部屋を覗き見ている。
わたしの思い出がちゃんと上書きされるか、確認するためだ。
そしていつかあの部屋に新しい住人が入った時、わたしは新しい一歩を踏み出せる気がするのだ。 

43 :
すみません
次のお題は「大学」「英語」「森」でお願いします

44 :

降り注ぐ木漏れ日、木々や緑の放つ爽やかな香り。何処からともなく聞こえてくる小鳥のさえずり、穏やかな川のせせらぎ。そこは森の奥深い場所にもかかわらず辺り一面温かく柔らかい光に包まれていて明るい。
そんな平和で楽園のような森を私は一人歩いている。鼻歌を歌いながらしばらく行くと開けた場所にたどり着いた。綺麗な花が咲き乱れる美しい場所だ。その広場の中央には腰掛けるのに丁度よい切り株があり私はそこに腰を下ろした。
ふと足元を見ると大中小並んだ白ウサギが私を見上げていた。
「こんにちはウサギさん」
ウサギはぴょこんと耳を曲げ挨拶をした。
辺りを見回すとリスやキツネ、更にはクマなど様々な動物たちがいつの間にか集まっていた。
動物たちは一通り仲間が揃ったのを確認すると一斉に歌を歌いだした。何の歌なのか、何語なのか全く分からないが無邪気で拙いその歌いぶりがかえって可愛らしい。
しかし一匹だけこの調和を乱すものがいた。いや、一羽と言った方が正しい。私の肩に止まった小鳥だけが全くデタラメなメロディーをさえずっているのである。
「ちょっと鳥さん」
鳥は無視してさえずり続ける。
「ちょっとってば」
それでも全く止める様子がない。
「うるさい!」
気付けばそこは見慣れた大学の教室だった。小鳥のさえずりは講師の話す英語だった。
「今日は十五分か」
時計を見て私は呟く、そしてノートに今日の成果を事細かに記すのだった。私が考案した「現実逃避術」を完成させるためのデータを。
次題 「理論」「ターミナル」「神格化」

45 :
 ここはターミナル。いろいろなものがたどり着く場所。
とはいえ、いいイメージのあるものは少なく、どちらかといえば場末、吹溜り……
そういったイメージが強い場所。
 とはいえ、全てがそういうわけではなく、異端といわれ学会を追放された男が、
ターミナルで確立した理論は現在の主流であり、その理論が導いた破滅へと我々は進み続けている。
今日の日記
 たちが悪いことに、破滅を回避するための手法を導き出すほど、破滅への道が加速されていく。
破滅をとめる方法として現在最も有力とされているのが「人類総江戸っ子もしくは、肝っ玉母さん化計画」であるが、
現実的にそれは不可能であり、肝っ玉母さんに当てはまる女性は神格化すらされており
特にアジア産の類似品が出回っている。
 破滅への進行は地域によって異なり、多くの田舎と同様にターミナルではほとんど進んでいない。
 理屈では、破滅を受け入れるのでもなく、抗うのでもなく、ただ淡々とその日を生きていくことが破滅を回避する方法であり、
ターミナルはまさにその典型だったというわけだ。
 しかし、長くは続かないだろう。滅びに近い連中がここに逃げ込んできている。
ターミナルの破滅も進み始めている。
 俺もいつまで日記を書けるかわからない。
まぁ、どうでもいいさ。社会的に俺は既に終わっているのだから。
この緩やかなる破滅をのんびりと眺めよう。

46 :

 その電車がホームを出て行ったのは、彼がちょうどターミナルに着いたときだった。彼はぎりぎり間に合うかと思っていたのだが、どうやら歩いてきたのが悪かったようだ。慣れないことはしないほうが良かった、と彼は心の中で少し悔やんだ。
 彼は切符を買ってターミナルのホームへ入った。そして近くのベンチでまで歩いていくと、そこに疲れたようにどっしりと座った。そうしてなんとなく向かいのホームに目をやると、そこを照らす汚れた蛍光灯が、切れかかってちらちらしているのに気づいた。
 

47 :
――思えば私はもう長くない。半年前にやっと肺炎が完治したと思ったら、最近は風邪をひいたり治ったりの繰り返しだ。階段をいちいち上がるにも足腰は痛むし、座るときはなおさらだ。もう体にがたが来ているのだ。

48 :
 この三十年、私はひたすらグラース理論の研究に身を投じてきた。最先端の研究をするために、ここロンドンまではるばるやって来た。
最初の頃は地位や名声のためでもあったが、今となっては私が生きていた証拠を残すためだ。私には家族もいないし、跡継ぎもない。財産だってに無に等しい。借りている小さなアパートメントだって、私が死んだ後には知らない誰かに貸し出されてしまうだろう。
そうなれば私の痕跡は完全になくなってしまう…

49 :
私は忘れ去られることがひどく怖い。まるで私の生が意味がなかったように扱われることに、耐えられない。
だから私はこの研究をなんとしてでも完成させねばならない。私の理論が認められれば、私の研究は多くの人の知る所となるだろう。
そうすれば私は人々の心の中で神格化され、永遠に生き続ける。そうなった時初めて、私の生は価値あるものになるだろう。それまで私はないのだ……

50 :
 電車がホームに入ってくる低い、大きな音を聞いて、彼ははっと目を覚ました。どうやら彼はまどろんでいたようだ。やはり年だな、と自分を笑いつつ、彼はゆっくりと電車の中に入っていった。
 警笛が鳴り、電車が大きな音を立てながら、のろのろとホームを出発した。しばらくするとターミナルは、すっかり元の静寂を取り戻した。そうしてホームには、わずかに笑みを浮かべた老人がぽつんとベンチに取り残されていた。

51 :
「祈り」 「正義」 「夜」

52 :
正義とはなにか。悪とはなにか。人に善するものが正義で、人に仇なすものが悪ならば、それは蜃気楼の如く掴み所のないものだろう。
腕の先も見えない闇の中、男は両手で構えたる真剣を振り上げ、全身全霊の力を込めた。
刹那、斜めから袈裟懸けに走った男の剣戟が、夜の暗黒を断ち切った。くぐもったあえぎ声が漏れ、地面を叩く水音が静かに響く。
雲に隠れていた月があたりを照らし、男の持つ業物の刀身を赤黒く輝かせた。
闇が払われたその場所には、覚悟を瞳に灯した浪人と、大木の幹に縄で縛られ息絶えた代官の姿があった。
代官の口には猿轡が噛まされ、大量の唾液がしたたっている。絢爛な意匠の施された白い襦袢が、代官自身からあふれ出る血液でどす黒く染まっていた。
この代官は、下々の者から「名君」と言わしめられた善良な男だった。
土地の開墾、住居の提供、医師の誘致、警邏団の派遣。兎角その男は、民のために職務を全うする代官の鏡とも言うべき存在だった。
時折街に現れては民の声を聞き、「必ずや」と約束することもある心優しいその男は、しかしある理由で浪人の怒りを買ってしまう。
想像するに、おそらく代官に罪の意識はなかったと思われる。しかしそれ故に浪人は猛り狂い、復讐にその身を窶した。
この浪人は、代官の管轄するこの街より離れた、寂れた地の人間だった。
流浪の身でありながらも、この寂れた地で恋仲と呼べる女を見つけたその男は、並々ならぬ理由により医師の助けを請うこととなる。
恋仲の女は労咳をその身に宿しており、少しでも気を抜けば命に危険が及ぶ状態であったのだ。
浪人は医師にかかる費用を捻出すべく終日働き続け、それでようやく足りる治療費をもって、女の命を繋げていた。
しかし、寂れた地に居たただ一人の医師は、ある日を境にその行方をくらませる。
浪人は医師を求めて走り回ったが、その地に例の医師を除いて治療を行えるものなど存在せず、ある朝女は血を吐いて息絶えた。
男は後に知った。医師は隣の集落――代官の管轄する土地だ――に強制的に誘致されていたのだと。男の目に、復讐の炎が灯った。
代官は人に善する正義を執行したに違いない。しかしその正義が、浪人にとっての仇となってしまった。
正義も悪も、揺らいでは姿を変える蜃気楼のような存在なのだ。確固たる正義や悪など、どこにも存在しないのである――。

53 :
次「勉強」 「車窓」 「煙突」

54 :
あっ、「祈り」忘れてた…

55 :
正義とはなにか。悪とはなにか。人に善するものが正義で、人に仇なすものが悪ならば、それは蜃気楼の如く掴み所のないものだろう。
腕の先も見えない闇の中、男は両手で構えたる真剣を振り上げ、全身全霊の力を込めた。
刹那、斜めから袈裟懸けに走った男の剣戟が、夜の暗黒を断ち切った。くぐもったあえぎ声が漏れ、地面を叩く水音が静かに響く。
雲に隠れていた月があたりを照らし、男の持つ業物の刀身を赤黒く輝かせた。
闇が払われたその場所には、覚悟を瞳に灯した浪人と、大木の幹に縄で縛られ息絶えた代官の姿があった。
代官の口には猿轡が噛まされ、大量の唾液がしたたっている。絢爛な意匠の施された白い襦袢が、代官自身からあふれ出る血液でどす黒く染まっていた。
この代官は、下々の者から「名君」と言わしめられた善良な男だった。
土地の開墾、住居の提供、医師の誘致、警邏団の派遣。兎角その男は、民のために職務を全うする代官の鏡とも言うべき存在だった。
時折街に現れては民の祈りの声を聞き、「必ずや」と約束することもある心優しいその男は、しかしある理由で浪人の怒りを買ってしまう。
想像するに、おそらく代官に罪の意識はなかったと思われる。しかしそれ故に浪人は猛り狂い、復讐にその身を窶した。
この浪人は、代官の管轄するこの街より離れた、寂れた地の人間だ。
流浪の身でありながらも、この寂れた地で恋仲と呼べる女を見つけたその男は、並々ならぬ理由により医師の助けを請うこととなる。
恋仲の女は労咳をその身に宿しており、少しでも気を抜けば命に危険が及ぶ状態であったのだ。
浪人は医師にかかる費用を捻出すべく終日働き続け、それでようやく足りる治療費をもって、女の命を繋げていた。
しかし、寂れた地に居たただ一人の医師は、ある日を境にその行方をくらませる。
浪人は医師を求めて走り回ったが、その地に例の医師を除いて治療を行えるものなど存在せず、ある朝女は血を吐いて息絶えた。
男は後に知った。医師は隣の集落――代官の管轄する土地だ――に強制的に誘致されていたのだと。男の目に、復讐の炎が灯った。
代官は人に善する正義を執行したに違いない。しかしその正義が、浪人にとっての仇となってしまった。
正義も悪も、揺らいでは姿を変える蜃気楼のような存在なのだ。確固たる正義や悪など、どこにも存在しないのである――。

56 :
>>51 ×
>>52 ○

57 :
このスレはプロがネタ探しに見てそう。

58 :
車窓からの風景は、ノスタルジーに浸らせる。
いつからだろう?銭湯の煙突が工場の煙突へと変貌したのは。
時は流れる。誰にでも、何にでも、平等に、残酷に。
過去へは戻れない。そんな事は分かってる。しかし、願わずにはいられない。
勉強こそが全てだったあの頃。勉学こそが存在理由だったあの時。オールでありオンリーな事柄。たった一つの生き甲斐は、たった一つの生き方で消えた。
いつからだろう?煙突が消えたのは。
心は変わる。誰しもが、残酷に、本当に?
過去は変えられない。そんな事は分かってる。だったら、変わらない心だってあるはずだ。
車窓からはもう、煙突は見えない。沈みゆく太陽が赤く紅く朱く世界を染め上げる。
こりゃポエムだな
次のお題は「生き様」「選択」「道標」

59 :
二月。高校三年生は殆どが自由登校になって校舎が閑散としている。
僕らが四月からこの高校の最上級生になる。クラスには既に受験の準備をしてる奴もいて、上級生につられて何だか
落ち着かない空気を漂わせているけど、僕にはまだこの先が見えない。
「はい、じゃあな机の上、筆記用具のみ。プリントを配るぞ」HRの時間に担任の田端がそう言った。
がたがたっとあちこちで教科書やノートをしまう音が教室に響く。一瞬静かになった後、微妙な緊張感を持った空気の中藁半紙のプリントが回ってきた。
設問1・今後実現可能な範囲内であなたが憧れる生き様を書きなさい。
設問2・なぜ設問1の回答になったのかについて理由を述べなさい。
設問3・設問1を実現するために必要な事は何か。
「えー、これはテストではない。進路調査でもない。これから三年生に進級するが社会に出る前に目標を作ってもらいたい。HRの時間内に書いて提出すること。以上。開始。」
ざっとペンを走らせる音が教室に満たされていく。僕も何か書かなくてはいけない。
何を書けばいいんだろう。憧れ……?特に無い。皆は何を書いているのだろう。教室内で一人取り残されたような気分になった。
過去に憧れを持った職業を思い浮かべた。ウルトラマン、無理だ。バスの運転手、違う。野球選手、無茶言うな。僕は帰宅部だ。
不要な物を選択し捨てていく。夢の無い生き方をしてきたんだな。残ったのは『お父さん』。
子どもの頃、お父さんみたいになりたかった。今じゃそんなこと微塵も思わないけれど、他に残る物は無かった。
結局、設問1の回答は地道に生きて無難な奥さんを貰い、2人の子どもと暮らすこと、と書いた。
校舎に鐘が鳴り響く。「はい、じゃあ回収ー。」皆、手馴れた物であっという間にプリントが集められていく。
プリント用紙を集め終え、その束をまとめ終えた田端は言った。
「設問3はなぁ、今後お前らが生きてくための道標だ。人生は長い、時々目標通過点決めておかないとだれるからな。
ま、今回まだ碌に書けなかった奴もいるだろ。来週の月曜にまた同じ物書かせるからな。真面目に書いた奴も更なる具体性を持たせられるよう調べて来い。じゃ、起立!」
ありがとうございました!の声をだした後、僕はとりあえず志望校でも決めようかなとようやく考え初めていた。
「生物」「心」「教師」

60 :
時間が出来ると良く考えるがいまだに答えは得られない。
 恐怖や、喜びといった感情はどうなのだろうか?
親子の繋がりは?インプリンティングは心につながるのだろうか?
 知識や感情が心だというのであれば、サルや多くの生物がそれを有している。
しかし、人のそれとは違うと思う。
 言葉が心である、確かにそれは納得できる気がする。
日本語と英語で思考すると別の結果になりそうだ。いや、むしろそれは宗教か?
神の生贄になることが最高の名誉という事もあったそうだ。
 結局、心というのは、本能と生きるための方便なのかもしれない。
正義と悪も世界が変われば逆転する。
なんと移ろい易いものだろうか?
---------
 だから教師である堅い両親が俺に禁じた「してはいけない」いろいろな事が
「積極的におこなう」事になっても、それは人として当然のことであり
なんら心に引っ掛かりを覚えるべきことではないと思っていた。
 しかし、子供が出来てみると、俺が親と同じようなことを考えていた
俺にとって「積極的に行う」事は、子供にとっての「してはいけない」事になった
なんと移ろい易いものだろうか?
次は「廃墟」「ムササビ」「人工衛星」でお願いします

61 :
「神の目ってなぁに?」商店街での夕飯の買い物途中に小学校三年生になる娘が突然尋ねてきた。
「さぁ?どこで聞いたの?」変な事を聞く物だなと思いさりげなく尋ね返してみた。
「悪いことをしても空から神の目が見てるぞって言われたの」娘の目は逸らされている。何か隠し事でもあるのだろうか。
「誰に?」気の無い振りして大根を手に取りそっけなく答える。
「……知らないおじさん」少しぶすくれたその表情が気にかかる。
人工衛星搭載のカメラはその唇を尖らせた表情を拡大し、男の下へと高画質で届けた。
「あー、やっぱり。言っちゃったか。駄目だよって口止めしたのになぁ」ニヤニヤと笑いながら男の人差し指は赤いボタンを押した。
「何か悪いことしたの?」私は少し心配になった。
「してないよー。別にー。」この頃自分に都合の悪いことは正直に話さなくなった。
ますます難しい年頃になるのだろうなと思うと気が重い。しかし家に帰ったら話をしなくてはならないと自分に言い聞かせる。
「他は何買うの?」「今日は、これでおしまい。」「ふーん……。あ、ねえ見てリス!」気の無い返事を返した娘の視線が頭上に向く。
釣られて見上げれば電線の上には茶色の小動物が居た。帰化が問題になっていた台湾リスだろうか。
そのリスと目が合ったような気がした瞬間、私達のほうに飛び降りてきた。
「きゃっ!」思わず顔の前を手でかばう私達の頭、すぐ近くをすべる様にして飛んでいった生き物は着地の際ニヤッと笑ったように見えた。
「もーやだー。何あれ」「リス、じゃなかったわねぇ」ため息をつきながらぶつからなかった事にほっと胸をなでおろす。
「モモンガ?」「ムササビかもねぇ。後で調べましょう」居間においた動物図鑑を思い出しながら言った。
「お母さん。私にお豆腐切らせてね」「あら珍しい」そんな他愛無い話をしているうちに私は娘の隠し事をすっかりと忘れてしまった。
「おかーえーりぃー」廃墟の中、モニター群の前に座る男が一人。ドアの隙間に向かって声をかける。
「ちゃーんと、脅かしてきてくれたねぇ。いい子いい子。」男は走りよってきたモモンガの背を愛おしそうに撫でた。
「じゃ、明日またあの子と話をしないとね」男はそうつぶやくと黄色い歯を剥き出しにして笑った。
次は「蜂蜜」「ふわふわ」「白衣」でお願いします。

62 :
「どうだった?」
戻った僕に彼女が無線越しに聞いてきた。機械を通して届く彼女の声は、感情が抜き取られているように感じた。
「だめだった」
「そう……」バイザーの奥の瞳が翳った。
彼女はかろうじて一つだけ壊れていなかったデスクチェアから立ち上がって、今ではテラスと化した窓際に立った。
時刻は午後5時。地平線まで続く街のむこうに今しも太陽が沈もうとしていた。
いつもなら仕事を終えた人々の車でハイウェイは渋滞し、歓楽街のネオンが瞬きはじめて寄り道を誘う。
そんな一日の終わりにふさわしい賑わいに包まれる頃合。でも、今日の街は静かだ。
僕の横で街を眺めていた彼女が、柱に凭れてかすかに息をついた。その吐息も電気信号に変換されて僕の耳に届く。
もう二度と彼女のあたたかい息を直に感じる事はできないのだろうか。
ぼんやりとそんなことを考えていると、不意に彼女が、着ている放射線防護服の横脇をつまんで、
ごきげんいかがとスカートを広げるような仕草をして言った。
「ムササビ」その突飛な行動に僕は思わず笑い出す。
「何だよ、それ……」
「だって、似てるでしょ? 前からそう思ってたの」彼女も笑い出す。
無線のレシーヴァーに彼女と僕の笑い声がこだまして、消えた。戻ってきた静けさがふたたび僕たちを隔てていった。
彼女が突然ヘルメットのボタンに触れた。パシュ、と気密の破られる音。
「マリ!」
「いいの」彼女の髪が外界のかすかな風に躍る。
「もう、いいの」
「……」
「こんなことなら、お気に入りのドレスの一着でもロッカーに入れとけばよかった」
「……」
「そう思わない? この、ださい服」
夕日に満ちた廃墟の中でそう言って笑う彼女を僕は抱きしめた。頬に彼女のあたたかい息を感じた。
人工衛星が、すみれ色に染まっていく空にちかりと瞬いた。
彼はこの尽きていく特別な夜を眺めるただ一つの眼となり、また、いつも通りにやってくるであろう
あくる日の、すべてが静寂に包まれた新しい世界を見ることになるだろう。
凍った眼で。
かぶったけど書いちゃったから投下させてくれ
お題は前の人のを継続で

63 :
#「蜂蜜」「ふわふわ」「白衣」
「シーッ! …なにしろ、密造酒だからね。見つかったら僕たちタイホされるんだよ」
私がミードというお酒の名前を知ったのは、高1の冬、放課後の理科準備室だった。
その部屋は、昔から“科学同好会”の部員の溜まり場で、私は、その副部長だった。
科学同好会に、先輩は1人しかいなかった。その人は、校内の誰よりも頭がよくて、
しかも誰よりも発想が鋭く、そして誰よりも奇抜なことを言いだす唯一の先輩だった。
先輩が制服に白衣を羽織って歩くのを、変人ハカセだとか言って笑う人もいたけれど、
私は、白衣を着ることがかっこいい気がして、いつからかそれを真似するようになった。
先輩がある日、ウィキペディアのプリントアウトを自慢げに見せてくれて、私たちは、
同好会で密造酒を作ることになった。ミードというのは、蜂蜜を発酵させて造る酒だ。
「蜂蜜は糖分が多いけど、多すぎてそのままでは発酵しない。だから水で薄めるんだ」
私は今、3年生になり、放課後は先輩のいない準備室で受験勉強をするのが日課だ。
先輩のような人が集まっているらしい“東大”というところに私も行きたいという思いは、
むしろ先輩に毎日会えなくなってからのほうが、日に日に強くなっている気がする。
先輩の卒業の日、記念にあの瓶を開けて、初めて私もお酒というものを飲んだときの、
あのカッとしてふわふわするような気持ちは今も忘れない。
ミードの酔いは一カ月続くというけれど、私のこの高揚感は一年経っても募るばかりだ。
#ごぶさたしています。新スレ乙です。
#次は「栓抜き」「耳」「インク」で。

64 :
ここは父の家。僕と姉は久しぶりに彼の家に来た。机の上に瓶が一本。
勝手知ったる身内の家。僕と姉は父が帰ってくるまで自由に過ごすことにした。
とりあえず、持って来た本でも読みながら時間をつぶすとしよう。僕はソファに腰を下ろす。
姉は机の前に立ち尽くしていた。何故だかは知らないけれど。
「栓抜きちょうだいな」「はいよ」自分で動けよと思いつつ僕は台所から取ってきて手渡す。
「ちょっとー!開かないわよ、これ!」姉の苛立つ声が僕の耳に突き刺さる。
面倒なので聞こえなかった振りをする。「明!手伝いなさいよ!」切れられても面倒なのでため息ついて立ち上がる。
「何やってんのさ」「これ、開かないの」手渡されたのはモンブランのインクの入った小瓶。
「……捻ればいいんだよ。栓抜きいらないじゃん」「・・・・・・ありがと」姉に渡した小瓶はそのまま思いもよらぬ運命を辿った。
机の上にそのままだらりとインクが流されたのだ。姉はインクの空き瓶を絨毯に投げ捨てた。
「明、帰るよ」姉はそういうと玄関へと向かって歩き出した。
ここは父とその愛人の家。姉は時々ここに嫌がらせをしに来る。直接的なものから間接的なものまで。
帰ってきた父はどんな顔をするのだろう。・・・・・・はやく僕らのうちに帰ってくればいいのに。
次は「猫目」「ティーカップ」「梯子」でお願いします

65 :
 椅子に座りワンルームの部屋を見回すと、ロフトに向かう梯子を猫が登っている。
今の重力は0.8G。今から一時間後には無重力になる予定だ。
 無重力で自分の入れた紅茶を飲むのはかなり難しいので、お気に入りのテーカップを暖めながら茶葉を回す。
はじめはいくつもあったのだが、慣れない重力変化でいくつも割ってしまったものの、お気に入りがまだ残っているだけ良しとしなければいけない。
 今住んでいる所は農業ステーション、初期に作られたこのステーションは遠心力を利用した人工重力と太陽の反対方向に取り付けられた分光ミラーにより、
植物の育成に必要な波長だけを取り込んでいた。離れたところから見ると、目のように見えたことからEye(無理やりな語呂合わせがあったが忘れた)と呼ばれた。
 しかし分光ミラーに質量異常が起こり本来、新円であったものが楕円形になり、猫目と呼ばれるようになって久しい。
これだけ形を崩しながらも、分光ミラーの各ブロックは、担当エリアに光を供給し続け、メイドインジャパンの性の新たな裏づけとなった。
 そんなわけで異常発生から3年間無事動き続けたこのステーションも、水の枯渇の為に作物を育てられなくなり停止させることとなった。
 残された稼動するステーションは後4つ。
人類の300倍いるといわれるこいつらをいつまで養えるのか……いや、我々が生存競争に勝てるのか、まるでわからないが、少しはわかることがある。
 早めに紅茶を飲み終えて、お気に入りのティーカップを割られないように隠すこと
無重力で猫の止まり木にれて怪我をしないために猫のいないところに行くことだ。
 まぁ、まだ時間は少しある、ゆっくり紅茶を飲んで、どこに逃げるか考えよう。

66 :
お題忘れました。
「DVD」「アイスバーン」「宿題」
でお願いします。

67 :
 雨も降らなければ雪も降らない、人生のほとんど全てをこの町で過ごしてきた俺には、なんと言うか「積もった雪」というものは憧れの一つで、今その憧れが目の前にあった。
 しかし、なんと言うか「寒い……寒すぎる」俺にとって初めてで、この町にとっては25年ぶりの大雪(雪国からすれば普通らしいが)がもたらした物は混乱だった。
 喜んでいるのは子供だけで、犬も猫も丸くなっているだろうし、憧れていた筈の俺も寒さに耐えられずに、部屋にこもって宿題とか予習とか、とにかく普段やり慣れない事をして一日を過ごした。
 夕飯のとき、妹に俺が勉強したから雪が降ったとまでいわれたが、まるで順序が逆であり、こんな理解力で受験は大丈夫なのだろうか?と心配になったものの、口では勝てそうにないので無視していると、突然、妹が言い出した事実「DVD返却日今日じゃん?」
 よりにもよってこんな日に何で返却日なんだよ、母に送ってくれと頼んだら「雪道なんて走れんわ」と一言で却下された結果、自転車で恐々走っていた。普段10分程度の道のりなのに、40分もかかってしまった「って歩いても変わらんわ!」何だか虚しくなった。
 お店の中を見ていると浩子がいた。俺と同じような理由で無理してレンタル屋に来たらしい。あっという間に気持ちが上向きになるのは仕方が無いだろう?。結局浩子を家まで送って帰ることになった。
 道すがら今日のことや、いろいろなことを話した。浩子は雪ウサギを大小かまわずいくつも作ったらしい、そのすごく楽しそうな顔は今日一日の澱みを押し流してくれた。
そして、あっという間に付いた浩子の家では、5段積みの雪ウサギを始め、沢山の雪ウサギが俺たちを迎えてくれた。そこで少し話をして、ぐちゅぐちゅになり始めた靴で家路に着いた。
 帰る頃にはネットで話題になったアイスバーン映像のようになるかと思っていたが、そんなこともなく、みぞれ状の路面を足早に、恨み事を口に、浩子の顔と雪ウサギを気持ちに歩いていく。
 自宅に着いたら、俺も雪ウサギを作ろう……手も足も痛いけど、それぐらいなら何とかなるだろう。でも寒いなぁ

68 :
次は「夜光虫」「散歩」「夢」

69 :
夢を見た。
散歩をしている夢だ。
無数の夜光虫の放つ青い光が闇の中に浮かび上がって一筋の道となり、僕を導く。
どこに向かっているのかはわからない。
ただ、何か懐かしいものがその先に待っているような予感がして、僕の胸はいつになく高鳴っていた。
懐かしさの原因は、光の道が銀河鉄道を連想させたからかもしれないし、昔やった白線渡りの遊びを思い起こさせたからかもしれない。
なんにせよ、とても気持ちの良い夢だった。
太もも辺りにくすぐったさを覚えて目覚めると、僕はいつものベッドの上に横たわっていた。
夢の中の線路はいつだって現実へとつながっている。
昨日酔い潰れて帰ってきたせいか、四十数年ぶりにお漏らしをしていた。
白いシーツに黄色い海が広がっていた。
そこから一筋、窓のほうに向かって黒い道が伸びている。
道はせわしく運動している。
無数の黒アリが糖尿の甘い香りに導かれて行列をなしていたのだ。
現実もまた夢へとつながっている。
嗚咽を堪えきれなかった。
お次のお題は「ドーナツ」「ガーデン」「午前二時」で。

70 :
おれスナイパー。エリート中のエリート。ひくてあまたなんだ。
とてもそうは見えないよね。でも本当なんだ。
今も仲間から「庭でドーナツ食おうぜ」とメールがあった。
「庭」は「2」、「ドーナツ」は「OK」、「食おうぜ」は「GO]という意味。
暗号を解くと「準備完了午前二時に決行せよ」ってことになるんだ。
じつはおれ、警察かどこかの組織にマークされてるかもしれないんだよね。
なんとなく携帯電話の雑音がひどくなった気がするんだよね。
さっきのメールもハックされてるかもしれない。
こんな感じに不安になるからおれはメールの内容どおりの行動をすることにしてる。
だからすぐ支度して駅前の「ガーデンハウス」に行ってドーナツを注文する。
そんで相手を待ってるふりをしてコーヒーとドーナツを追加注文したりする。
そんで相手が来ないからあきらめて帰るふりをする。
ほんと、ドーナツを暗号にするのは考えもんだよね。ほぼ毎日こんな調子なんだから。
だからこんなことになってるのはさ、おれがじだらくな生活してるせいじゃないんだ。
ホントだよ。
次のおだいは「牛パック」「パーク」「駅伝」で。

71 :
人気ドラマ『踊る大捜査線』の中で使われる印象的なイントロはみなさんご存じだろうか。
曲名は『RHYTHM ANDPOLICE』と言い松本晃彦氏が独自に作曲したもの。
実はこの曲には元の曲があるというのだ。元の曲の名前はBARCELATA CASTRO LORENZOが
作曲した『El cascabel』という曲だ。2つの曲のイントロを聴いて貰えばわかるがそっくりなのがわかるはずだ。
そんな2つの曲にネット上でパクリ疑惑としての情報が流れてしまったようだ。ソース元はWikipediaと
なってしまうが次のように書かれている。「原曲はBARCELATA CASTRO LORENZOが作曲作詞した
メキシコのEl cascabel(日本音楽著作権協会(JASRAC)作品コード0K3-4404-1)であるが、著作権は
消滅しているため、著作権使用料の観点からは独立した2つの曲として扱われる」とのことだ。
http://getnews.jp/archives/98887
原曲だと言われている『El cascabel』
http://www.youtube.com/watch?v=kkKxN9QJ2wI
踊る大捜査線OP曲『RHYTHM AND POLICE』
http://www.youtube.com/watch?v=kj6L5HI7fE8

72 :
「牛パック」「パーク」「駅伝」
暴力的な眩しさで目を覚まし、部屋の中を彷徨いながら冷蔵庫から氷の様な人工牛を取り出し、胃袋に落とし込む
牛パックをダストシュートに放り込むと、地底人の賛美歌のような禍々しい回収音が響き渡った。
テレビをつけると100年前の駅伝が放送されていた。
駅伝は1000年経っても同じように楽しまれるのだろう。
この「パーク」は人類の結論として地球の衛星軌道上に設置された居住空間だ。
収容人数は5000万人で、全人類が居住して居る。
完全な自給自足を実現し、大地は再び動植物の楽園となった。
それが600年前。
なぜ人類がこの選択をしたかは記録に残っていない。
だが未来はわかっていた。
パークのメンテナンスをできる人間が居ないので人類は滅亡を避けられない。
やがてパークが壊れ、食料や燃料の供給が止まれば終わりだ。
メンテナンスできる人間が最初から居なかったのか、忘れられたのか誰もわからなくなっていた。
パークについての見解は複数あった。
人類が悟りを得、地球を守る為に計画的に居住した空中都市であるという永住説。
核戦争からの一時的な避難を目的としたシェルターであり、そろそろ帰るべきだとする帰還説。
帰還説派は大気圏再突入用の動力の存在を信じ、たびたびパークの内壁を引っぺがして故障させるので永住説派から蔑視されていた。
そして、永住説派はその倦怠からよく自をした。
人類は緑溢れる大地を眼下に収めながら身動きできないでいた。
楽園というものがあるとしたら、それはきっとこの様な地獄の様な場所なのだ。
私は人工りんごを放り投げ、手のひらで受け止めた。
「黒胡椒」「シンガボール」「隣に座っている人」

73 :
私が飲食店に求めるものは極めてシンプルである。
まず間口の広い入り口。出来ればガラガラっと引き戸のタイプが良い。
それから、カウンター席の幅は隣りに座っている人に干渉せずに済む1m弱が理想的である。
定食屋にありがちな盆を、背後から客の前に差し出す隙間を考慮した至高の幅こそが1m弱なのだ。
料理の頼み方に決まりこそないが、女々しく料理のクなど垂れ流すのは愚図の極みである。
例えば、「洋食料理屋のシェフをはかるにはオムレツを作らせろ」
などと戯言を吐くなど、言語道断である。
そんな戯言を私の横で吐いた日には、その輩の頭へ卓上の塩を振りかけ、もしも
スパイスとして黒胡椒も常備してあれば迷わず振りかけるであろうから、
飲食店のカウンター席は幅が大事なのだ。
幅と言えば、カウンターバーの世界規準を定めるならば、シンガポールスリング発祥のホテル……
つまるところ、私は極めてシンプルである。
「雪」「岩」「宇宙」

74 :
 男は山を歩いていた。
彼は地面に積もった茶色い絨毯を踏みしめながら、紅葉した木々の茂る斜面を登っていた。
そうしてちょうど山の中腹まで来た所で、いきなり開けた場所に出くわした。
そこには神々しいほどに大きな岩がそびえるようにたっていた。
 岩は言った。
「お前は何をしにここへ来たのだ」
 男は語った。
「私は世間というものが嫌になったんです。友人はお金の話しかしないし、職場の同僚は自分の自慢ばかり……
おまけに私の妻は町の噂にしか興味がありません。食事の最中でさえ他人の不幸話を持ち出すんです。
僕はそんな周りの人間が嫌になって、ここへ逃げてきたんです」
岩はふむ、と納得したように短く言い、考え込んむように黙り込んだ。
そしてしばらくして、再び男に向かって話し始めた。
「良かろう。この先少し行ったところに、体に大きな穴の開いた私の友人がいる。
ちょうど人ひとりが入れる広さだから、そこで寝泊りするといい。寒さぐらいはしのげるだろう」
男は岩に短く礼を言うと、再び山を登り始めた。

75 :
 それから数年が経ち、季節は冬に移り変わっていた。
辺りには雪が降り積もり、木々は白い化粧をして、山は神秘的な美しさで満たされていた。
その一方で男の肌は血色を失い、頬骨は出て、体は骨ばってしまっていた。
彼はここ数ヶ月病気を繰り返しているのだ。
 
 ある日彼は、いつものように夕食を得るため、重い体を引きずって外へ出かけた。
そして岩の前を通り過ぎようとした時、不意に岩が彼に話しかけた。
「お前はここに来た時と比べて、まるで別人のようにひどく衰弱してしまった。
私はお前にこの山の食べ物のありかを教えたが、それは生きるのに十分な量だったはずだ。
すると今のお前にはいったい何が足りないのだ?」
 男は空を見上げた。辺りは既に暗く、厚い雲が星の光をを遮っている。
 岩は続けた。
「お前はよく、私に町の話をしてくれた。
お前は周囲の人々がいかに無知で欲深く、救いようがない人間か語った。
そしてそのことに自分がどれほど絶望しているか私に教えたな。
でもお前は気づいていたか? そういった話をする時のお前の顔は、
どんな時よりも希望に満ちていたぞ。お前がひどく嫌っていたものは、
もしかするとお前の大きな糧だったのではないか?」
 
 男ははっとした。そしてすぐに顔を上げて、まるで宇宙の最果てまで見通すように暗い空を見つめた。
灰色の厚い雲がゆっくりと移動し、わずかに星が出始めている。
光に照らされた彼の顔は依然としてこけたままだったが、そこにはわずかな微笑と
何かを心得たといった表情が広がっていた。
彼は岩に長い長い感謝の言葉を述べてから急いで自分の穴倉に戻り、山を降りる準備を始めた。

76 :
「巡礼」「夢」「ワイシャツ」

77 :
 疲れた……ワイシャツを脱ぎながらベッドに横になる。ベッド脇で埃をかぶっている写真に写る自分はどこにいるのだろうか?
 若いころは、とにかく働いて金を貯めては旅行に出かけていた。しかし、結婚して定職に付き子供も出来た頃から、自分には自由は無かった。
正確には無いわけではないが、それはすなわち家族の不幸を意味していた。
 結局は自分の意思として今の生活を選んだわけで後悔も何も無い……無いのだが、
個人としての夢が無くなった訳ではない。
 マチュピチュで黄金色に染まる朝焼けを見てみたいし、太平洋航路をのんびり揺られてみたい、色々あるが一番行きたいのはカイラス山。
 ポタラ宮の正面にあるゲーセンでバイクゲームを楽しんだりした不届き者でも、五体倒地で巡礼する人の姿には心を打たれた。それ以来彼らの目指す聖地カイラス山へ行ってみたいのだ。その気持ちは静かに大きくなっている。
 「ん?」マナーモードにしたままの携帯がうねりを上げる。
電池で振動するアレはよく壊れるのに携帯は壊れないよなぁ……どうでもいい事を思いつつ電話に出る。
 たどたどしいけど、疲れが溶けていく声で娘が話しかけてくる。最近電話を覚えたらしく、自分だけでなく祖父母にもよく電話をかけているらしい。
この時間は今の自分にとって、どうでも良い内容であっても大事な時間だ。
ああ……そうか
 各駅停車で旅をする時間、中国の長距離バスに乗ったときの時間。
その行為に意味があるのかどうか分からないが、その時間はかけがえの無い大事な時間だった。
 自然と顔が緩む、娘に今の気持ちを話した。
電話の向こうで娘が妻に説明しようとしている声が聞こえる。
「みぃとゆめはおなじでだいじなんだって」
私も娘も……そして妻も、みんな笑っているだろう。
*次は「色鉛筆」「プラネタリウム」「雪」でお願いします

78 :
 私の名前は『文(あや)』。お婆ちゃんが付けてくれた愛着はあるけど、面倒な名前−−言葉で伝えると綾か彩と思われ、文字で伝えると『ふみ』と読まれる−−
でも、私はワザと『フミ』と名乗るときがある。
2/17 今日はフミ
 真帆はプラネタリウムが好き。プラネタリウムに映し出された、でも降り注ぐ様な星の光は雪ふる夜空にライトを照らしたような圧倒的な光の粒なんだって。
昨日一緒にいくはずだった智君は約束に遅れそうだったから道路を無理に横断して事故にあったって。もう生きてるのが不思議なんだって。
 だから真帆は私に「お願い、このメールを事故の前に……智に届けて」って言ったの。だから私はフミになった。
 「ごめん用事出来たから今日は無理」それだけのメールだけど代償は多分大きい。
今までも過去にメールを送っているから、どれだけの大事な手紙やメールを受け取れないのか見当も付かない。だけど、そんなことは分かっているはず。だから私はメールを届けた。
 真帆はいきなり泣き顔から怒り顔になった。「智君が約束を破って来なかった」からだそうだ。智君も真帆がメールを送ったんだろ?と怒っている。私は色鉛筆で塗るように今を重ねることは出来ない消して書き直すだけ。
 ま、どうせすぐ仲直りするでしょ。喧嘩なんていつものことだし。
2〜3日したらすぐおなか一杯の話をしてくるんだろうな。
2/19 真帆が別れた。
 仲直りのメールが届かなかったんだって。命と恋愛で釣り合うってなんか素敵だよね。明日は1日遊んで愚痴を聞かなきゃね。
*「ミシン」「ねずみ」「ダンス」でお願いします

79 :
今日もカタコトミシンを踏んで。
ペダルに合わせてミシンが動く。
カタコトカタコトミシンが動く。
音に合わせて踊りだす。
ネズミが三匹踊りだす。
壁の穴から顔を出し。
三匹仲良く踊りだす。
カタコトカタコトカタコトカタコト。
上手に軽いステップ踏んで。
カタコトカタコトダンスを踊る。
今日のお仕事これでおしまい。
ミシンの続きはまた明日。
それではネズミもまた明日。
次は「猫」「ギター」「狼」でお願いします

80 :
 大して良い音も出していないフラメンコギターの二人組が自分たちの奏でるサビに酔っている。俺は指3本分の
スコッチの入ったグラスをそっと滑らせた。内心冷や冷やだが平静を装って自分のグラスには別の酒を注ぐ。
カウンターの真ん中で、滑るグラスを止めたのは白く長い指。すっとグラスを引き寄せる。
「貴方が『灰色狼』?」
 女がカウンターに目を落としたまま、酒の量を確かめるように指でグラスを撫で、低い声で尋ねる。
「ああ、そうだ」
 俺は自分の手元の酒を見つめたまま答えた。
 細い煙草を灰皿に置き、女が琥珀色の酒を傾ける。美女と酒をご一緒するのは嫌いじゃないが、
こちらを値踏みするような目が年老いた猫のようだ。女がぺろりと唇を舐め、目が先を促す。
「・・・『紅い月』の居場所を知りたい。あんたが仲介役だと聞いた」
 カラン。グラスが鳴った。瞬間、女の指の間に鋭い刃が現れた。
「『灰色狼』の符牒は、ライウイスキーを3フィンガーと聞いているわ!」
 言い終わる間もなくメスのような刃物が俺の首目がけて飛んでくる。俺はグラスを引っ掴んでしゃがみ、
女の顔に中身を浴びせかけた。ハラペーニョ入りのウォッカだ。女は目を押さえて叫び声を上げる。音楽が止み、
歌っていた二人がギターの胴から銃を引き出す。俺はカウンターに乗り出して強い酒のボトルで女の頭をまず一発。
割れた瓶に煙草で火を付けて二人に投げつけた。二人の衣装は焚き火にはうってつけ。まさに情熱の踊りって奴だ。
 大騒ぎの店内で俺は目を白黒させているマスターに多めに札を握らせると足早に店を後にした。
 全く腐れ情報屋め、なんでこう毎回細部のツメが甘いんだ。そもそも俺はスコッチもバーボンも好きだが、
ライだけは苦手でね。ますます嫌いになりそうだ。仕事も失敗だし今夜はどこかで飲み直すとしますか。

81 :
次は「筆」「天ぷら」「シート」でお願いします。

82 :
 私の名前は『文(あや)』。お婆ちゃんが付けてくれた愛着はあるけど、面倒な名前−−言葉で伝えると綾か彩と思われ、文字で伝えると『ふみ』と読まれる−−
でも、私はワザと『フミ』と名乗るときがある。
2/18 可愛いおばあちゃん
 真帆と一花のお見舞いに行ったんだけど、とても元気で暇をもてあましていて、弟から取り上げたゲームで狩ばかりしているんだって。でも逆に倒されててストレスたまってそう。
 帰りに待合室で真帆の愚痴を聞いていると、かわいいお婆ちゃんが話しかけてきたの「喧嘩したまま会えなくなることもあるんですよ」って寂しそうな声。それで真帆は仲直りのメールを打ち始めた。悩んで悩んで打っていたんだ。
 おばあちゃんは汚れてボロボロな多分会えなくなった人の名前を筆で書いた手紙を取り出し、今みたいに手紙が直ぐに届いたら……と寂しそうな顔になった。
 私は頼まれもしないのに、おばあちゃんの手と手紙を両手で押さえて手紙を送った。
多分リスクは私に来る。でも手紙は消えなかったけどシートに挟まれていた。
私は何食わぬ顔で「そのお手紙は?」と聞いた。おばあちゃんは可愛い笑顔で教えてくれた。
 終戦後、隣町の人が「君が生きていてくれたならうれしい」って伝号を伝えてくれたんだって。
大怪我していてその人を置いて来るしかなかったって……だけど生きていて留まった国の独立の為に戦い最近まで生きていたんだって。
 その人の家族の人から大使館を通して、お婆ちゃんが送ったすごく汚れてボロボロになった手紙と家族からの手紙が送られてきたんだって。
「仲直りは大事よ?」それを聞いて真帆は余計に悩んでメールを打ち直していた。仲直りできるといいね。
 今夜は天ぷら−−サツマイモだらけの−−かぼちゃほしかったなぁ
*「崖」「太陽」「コーヒー」

83 :
「……今日も良い天気だ」目覚めのコーヒーをテラスで飲みながら誰に聞かせるでもなく呟く。
言ってしまってからつい、苦笑いが浮かぶ。ここにいるのは自分の他は猫だけだというのに。
どうして無意味な独り言を言ってしまうのだろうか。一人の生活にまだ慣れていない証拠なのだろうか。
朝日がゆっくりと昇っていくのを見ながら、一杯のブラックコーヒーをゆっくりと飲み干す。
もう妻は亡く、落陽の日々を送る私には気にかけるべきことも殆ど残っていない。
カップを洗うと、水切り籠に置き丁寧に手を拭いた。そしてメールを一通送信する。
玄関でお気に入りの革靴を履いて振り返る。
「じゃ、行って来るよ」今度ははっきりと猫に向かって声をかける。
猫は眠そうな目でこちらを見ただけだった。私は軽く手を上げてそれを返事とした。
近所の岬まで徒歩15分。すぐに見慣れた崖に着く。
雑草の生い茂った、海を臨む景色の良い草原。私は昇りかけの太陽を一度見上げた。
そして何もかもを思い切る。助走をつけて崖から思いっきり遠くへ目掛けて力いっぱい、……飛んだ。
さぁ、後のことはメールを受け取った竜彦が全て上手くやってくれるだろう。
猫は、信彦が引き取ってくれるだろう。家財道具は美晴が処分してくれるはずだ。
皆、ありがとう。ようやく、ようやく、妻に会える。もう、すぐだ。
最後の瞬間は意外と早く訪れた。
ありがとう。ありがとう、皆。
次は「電話」「羽毛」「桃色」でお願いします。

84 :
私の名前は『文(あや)』。お婆ちゃんが付けてくれた愛着はあるけど、面倒な名前−−言葉で伝えると綾か彩と思われ、文字で伝えると『ふみ』と読まれる−−
 一緒に歩く堤防、たくさんの羽毛のような雲が空に浮かんでいて、じっと見つめると羽を震わせるように静かに形を変えていく。もうすぐ綺麗な色に輝きそうな予感。
 真帆は私の目をそっと見つめているけど私が眼をあわすと逸らす。
多分私が知っていることを聞きたいんだと思うけど私からは言わない。
堤防の上をぶらぶらと歩く真帆が話し掛けてくる
「ねぇ文、電話で仲直りしようとしたら伝わった?」
「そうだね電話なら伝わったかな?」
「そっかそれだけ大事なことだったんだ」
「真帆は恋愛に命がけだもんね」
真帆はかばんから桃色のお守りを取り出す。
「恋愛成就ってどこにでもあるけど、恋愛安全とかってないよね」
「あ〜そういえばないね。」
「文ごめんね、ありがと。智が元気でうれしいよ」
 いつのまにか空はオレンジに染まり、ふわふわとやさしかった雲は彫金のような鮮やかさに輝き真帆の周囲を飾っている。だけど真帆はよけい暗くなっている。
「2回は無理なんだよね」確認するだけの口調
「成功したことない……ごめんね」
「いつも思ってたけど文って大変だよね、全部抱え込むんだからさ」
横を向く真帆、夕日が浮き立たせるのはやさしい顔。どうしてこんなときに優しくなれるんだろう。見とれていると、維持の悪そうな顔で笑った。
「じゃあ、文のおごりでモス行こう」
「えっええ〜〜無理だよ、せめてミスドにしてっ!」
「それで手を打つか」
そう言って歩き始めた真帆の後ろを少し離れ、震える肩を眺めながらついて行く。
*「携帯」「氷」「麻雀」

85 :
「どうだ!」えらいドヤ顔をした妹が僕に向かって言い放つ。
「どうだ!じゃねえよ!今日、多治見たち呼ぶって言ってただろうが!」まったくとんでもないことをしてくれたものだ。
「だってー、私だって麻ちんたち家に呼んで遊ぶんだもーん。おっさん達が麻雀なんてしてると感じ悪いんだよね」
ぷいっとそっぽ向いて自分勝手なことを言う。とにかくこうしてはいられない。とっとと連絡を取らねば。
急いで携帯をだして多治見を呼び出す。「あ、多治見!すまん、今日約束してた麻雀なんだけどさ」
そんな俺を尻目に台所を出て行こうとしていた妹が言い放つ。
「あ、そうそう!皆で遊んでるから二階に来ないでねー。」
今、うちの冷凍庫には氷漬けにされた麻雀牌たちが眠っている。
湯をぶっ掛けて、救出することはできるだろうが、その後拭くことなどを考えると何とも面倒くさい。
これぐらいはあとであいつにやらせよう。
昔は可愛いかったのになぁ。
「兄貴」「マッスル」「りぼん」

86 :
そこにはマッスル兄貴が居た。
あそこにリボンを巻いたマッスル兄貴が居た。
兄貴が長い夜を告げた。
「流れ星」「エンジン」「トリケラトプス」

87 :
ペット用に遺伝子改良されたミニチュア・トリケラトプスは
大別して「流星種」と「桃尻種」に分類される。
「流星種」の2本の上眼窩角鼻角は、流れ星が尾を引いたような華麗な弧を描き、
左右の斜め前方に1.2メートルの長さに達する。
「流星種」はミニチュア種とはいえ、角を除いた部分の体長が1.7メートルに達し、
一般の家庭で飼育するのは不適当だろう。
その点、尻尾と角の短い「桃尻種」は体長60センチ、愛らしいお座りのポーズで
数年前にペットとして大ブレークした。しかし、今、新燃岳恐竜公園では、
無責任な飼い主による「桃尻種」の捨て恐竜が問題になっている。
新燃岳恐竜公園のマッスルな飼育員達の兄貴分である舞鶴博士は中指を立てて警告する。
「桃尻はりぼん(DNA:デオキシリボ核酸とグッピーのリボンの♂が極めて生殖力能力が
低いのを掛けた不生殖改良種を表す俗語)とはいえ、何十年と生きるように設計されている。
当公園では去年1年間で実に547頭もの桃尻を保護したが…………(ズォーードドドーードコドー)
ジェットエンジンのような爆音に私は執筆の手を休める。足下で丸まって寝ている桃尻のアイコの
いびきの音。さて、私はいつまで耐えられるだろうか?
次のお題は「火山」「革命」「その後」でお願いします。

88 :
その後、何年も何年も町は何事も無かったかのように静まり返っていた。
人一人おらず、猫の姿さえなかった。
通り過ぎるのはただただ風と木の葉のみ。
ある日、一人の旅人が通りかかった。
旅人はある一つの廃屋に入った。
埃っぽいその家で大きく息を吸い込んだ。
そして、一言。「ただいま」、と。
一つの部屋に入った。灰と砂にまみれたベッドに腰掛けた。
そう、この部屋には天井がない。灰はあの火山から来たものだ。
旅人は肩から荷袋を降ろした。中からはまばゆいばかりの王冠が一つ。
旅人は焦点の合わない目でそれを見つめた。
王冠の持ち主はもう居ない。旅人がしたのだ。
圧制に苦しむ村を通ったとき、村人を助け剣を振るった。
旅人が旅人となったのは些細な理由。もっと他の世界を知りたかったから。
しかし、けして楽な旅ではなかった。盗賊と遭遇し、泥棒と誤認され、あげくに革命騒ぎだ。
何人かの人を手にかけた。そして懐かしの家(や)にたどり着いたのだ。
ため息を一つ、吐き出すと男はベッドに寝転び直ぐに寝息を立て始めた。
この街を襲ったのは旅人がしたあの王だった。
旅人は知らずして自分の町の敵を打っていたのだ。
だがしかし知ったところで何の救いになるだろう。
そう旅人を癒してくれるのはあの村で待っている村娘だけ。
彼女の腹の中の子は旅人の帰りを待つただ一人の身内となった。
眠った旅人の顔につたう涙を見たのは青白い月だけだった。
次は「眠気」「廃屋」「指紋」

89 :

午前二時、廃屋、正確に言えば廃病院の入り口の駐車場で俺は奴らを待っていた。寒いなか眠気にも耐え何故こんなに頑張っているかって?そんなの決まってる、幽霊の醍醐味、そう、「脅かし」だ。
幽霊は生きている人間に直接手出しは出来ない、何故かは分からないがそういう決まりなのだ、でもそんなことはどうでもいい。幽霊は人間の恐怖や悲鳴や絶望に的な快感を覚えるのだ。だから幽霊は生きている人間を脅かす。
しばらくすれば奴らが戻ってくる。ふと一人が車の異変に気付く。フロント、サイド、バック、全てのガラスにびっしりの俺の手形、指紋までくっきりの。彼らは慌てて車に乗り込む。しかしエンジンがかからない、それもそのはず、電気系統を俺が事前に弄っているからだ。
焦る奴ら、そして奴らの恐怖が最高潮に達した瞬間……まあそこから先はまだ考えていないがアドリブでなんとかなるだろう。
しかし寒い、奴ら何してるんだ全く、その廃病院には曰くなんて全くない。院長は優秀で誠実だったし、いまだ現役バリバリだ。患者から恨まれるようなことなんて病院が潰れる最後までなかった。
病院が潰れた原因もただの経営難でそれまで入院していた患者は全員別の病院でぴんぴんしている。
「きゃー」
女の悲鳴。くっくっく、まったくあいつら相当の臆病者だな。どれ、いっちょメインディッシュの前に軽く前菜でも振る舞ってやろうか。
病院のなかに入る。ひっそりとしていて全く気配がない。おかしい、幽霊は恐怖や怯えにはひと一番敏感だ。これではまるで俺と同じだ、死の気配だ。どういう事だ?
「まさか……」
悲鳴の聞こえた方向、霊安室の扉を開けると其処にはバラバラになった男女の死体、そしてそのそばで放心状態の男女の幽体。
「そんな……まさか……」
動けなくなった俺の背後に何かが立っていた。
次題 「天網」「ルミネセンス」「冒涜」

90 :
 また一人、目の前で人間が消えた。おとなしそうな顔をした色白の女性だった。彼女が何をしていた人なのかは
知らない。ただ、青白い光を発しながらだんだん小さくなるように消滅した。誰もが思わず目を伏せ、彼女の顔を
見る者はなかった。独自のトランスファービームが周囲と干渉して起こす光だという者や、強力な電磁バリアの
中で分解を受ける際のルミネセンスだと推測する学者もいた。ただ我々に恐怖を植えつけるためにわざと光らせて
いるのだという者もいた。誰にも真実はわからなかったが、共通して、みな人としての表情を失っていた。
「天網恢恢疎にして漏らさず、なんて言葉があったな」と誰かがつぶやいた。夜の酒場の片隅。酒の勢いか、度が
過ぎた発言の中で、また人が消えるのを見た直後のことだった。空となった席の近くで男が気色ばんで立ち上がった。
「こんなののどこに正義があるというんだ!あんたは天を冒涜するのか!」
空気が凍りついた。まもなく二人の人間が消えた。
 その昔、テロや凶悪な犯罪を防止する目的であらゆる情報を一手に集めていたコンピューターシステムがあった。
その情報収集能力と統制が極度に進み、人類に大きな害を為す恐れの高い集団を人の手を介さずに割り出すことが
可能になった。軍需産業複合体と結びつくのに時間はかからず、最新の攻撃・防御技術が次々と導入されたが、
ミスか偶然か、システムが自衛プログラムを獲得するに至った。関係者も危機に気づき対策を講じたと伝えられるが、
工業都市すら掌握して自ら進化するシステムに追いつくことはできず、今やその誰一人として行方が知れない。
 今夜も地表には光が瞬いている。
次「ガム」「カード」「夕焼け」

91 :

ピカっと空が輝き。それを合図に爆発音と風を切る音が入り混じり、
思い出の公園はあっという間に見る影もなくなってしまった。
彼がクソッタれと呟くのはもう何度目だろうか。
彼がガムを吐き出すのは、あの日から数えて何度目だろうか。
初めて会ったあの日、やっぱり彼はブランコに揺られクソッタレとガムを吐き出していた。
また閃光と爆発が続き、彼と彼の仲間は支給された
ライフルを片手に滑り台の辺りへ走り抜けた。
少し遠くなった彼は、滑り台の影からオートマチックのライフルを打ち鳴らす。
たんたんたたんと乾いた音が数発。彼はまたガムを吐き出し、マガジンを交換すると、
やっぱりクソッタレと叫んでいた。
あの日、ブランコを漕ぐ彼が握り締めていたカード。町内会から送られた赤いカード。
――あれから十五年。あの日は親父、今度は俺だクソッタレ――ってやっぱり言ってたね。
また閃光と爆発と砂煙。
たんたんたたん。たんたんたたん。リズムに乗って彼の仲間はダンスをやめたね。たんたんたたん。たんたんたたん。
ここが前線になる最後の日、ブランコの上からガムを吐き出し、夕焼け空にカードを照らして約束したよね。
私のおなかを二度さすり、小さな声でカードは二枚までだって。俺で終わりにしてやるって。
また……閃光と、爆発と、壊れたブランコと、土煙と夕焼けに染まる真っ赤な彼……と。
――くそったれ――
次「携帯電話」「帽子」「はさみ」

92 :
ちょきちょきちょきちょき鋏を使い。
くるくるくるくる紙を回し。
どんどんどんどん切り抜いて。
でてきたものは小さいぞうさん。
ちょきちょきちょきちょき鋏を使い。
くるくるくるくる紙を回し。
どんどんどんどん切り抜いて。
出てきたものはぞうさんの帽子。
ぞうさんぞうさん可愛くできた。
それではも一つ作りましょう。
ちょきちょきちょきちょき鋏を使い。
くるくるくるくる紙を回し。
どんどんどんどん切り抜いて。
出てきたものは携帯電話。
ぞうさん貼って、いろいろ描いたらできあがり。
これは明日のプレゼント。
あの子は喜んでくれるかな。
「クローゼット」「ガラステーブル」「腹痛」

93 :
クローゼットの中で、内緒でハツカ鼠を飼っていた。
ハツカ鼠は白い毛に赤い目をしている。シッポの耳の内側や指はピンク色をしている。
鼠算式に増えたら困るなと思ったら、全部、雌だから大丈夫とペットショップのおじさんは言っていた。
餌はペレットと給食の残りと野菜の切れっ端。大好物のヘビ苺は、腹痛を起こさないように
やり過ぎに注意する。
日曜日、ママとパパがデートに出掛けたので、
僕は居間のガラステーブルの上で、徒競走をさせて遊んでいた。
ガラスの裏側から覗くと、白い毛がスリスリ、ピンクの足がペタペタして可愛い。
玄関でガサゴソと音がしたので、鼠たちをプラスチックのケースに戻した。
いっぴき、にっひき、さんびき、よんひき、ごひき……あれ、一匹増えている!
ゆっくり見れば、どの子か解るけど、時間がなかった。
何度かそんなことがあったが、真相は解らずじまいになった。
数ヶ月後、僕は鼠アレルギーになってしまい、クローゼットの中味がママにばれてしまったのだ。
それで、ハツカ鼠たちは従兄弟に貰われていった。一匹死んだが残りは元気だそうだ。
今日、僕に妹が出来て病院で対面したのだけれども、僕は、
何故か、クシャミが止まらなくなってしまった。鼠アレルギーのときみたいだった。
妹の顔がハツカ鼠に似ていたせいかもしれないと思った。
次のお題は「鼠」「吹き矢」「草原」でお願いします。

94 :
次の日曜日はディズニーランドに連れて行ってよと、
付き合い始めたばかりの恋人が僕にせがむ。
その時僕はベッドのふちに腰掛けて、裸でタバコを
吸っていたのだけれど、何だか急に不味くなってしまった。
日曜日のディズニーランドなんて、全く行くもんじゃない。
木枯らしの吹きすさぶ中、たかだか10分程度のアトラクションの
為に、その10倍以上もの時間並ぶなんて狂気の沙汰だ。
黙りこくって不味くなったタバコをふかしていると、彼女が答えを
求めてシーツから白い腕を出し、僕の背中をつつく。
「ねえ、いこうよ。駄目?」
幼少の頃、母親にディズニーランドの鼠の像の前に置き去りにされて
捨てられたという嘘の話をしようかとも思ったけれど、彼女は一度僕の
母親を遠目に見ていたので、その案は却下しなければならない。
それで僕は一度煙を肺一杯に満たし、ゆっくりと吐き出してから
振り向いて、にっこり笑っていいよと答えるのだった。
ディズニーランドになんて行きたくない。
人の群れの中、おかしな耳をつけて、歩きたくなんかない。
出来ればサバンナの草原にでも行って、腰ミノ一つ身につけて
槍を持って踊り明かしたい。
草むらに隠れたどこかの野蛮人が、通りかかる女を吹き矢で
昏倒させ浚うのを、サバンナのナンパと銘打って世のバッシングに
合って消えた若手芸人達のネタが、僕は結構好きだ。
「リップクリーム」「定期券」「血糊」

95 :
赤いリップクリームをもらった。
だが実際に唇につけてみると無色透明だった。
その色は血の様に毒々しい色をしていた。
匂いはアメリカンチェリーだった。
色も匂いもまったくもって私の好みじゃない。
きっとPLAZAあたりでかったのだろうソレは、パッケージの説明が全て英語で書かれていた。
女子中学生の買うプレゼントなんてこんなものだ。少ない予算で選ぶので選択の幅が少ない。
結果、好みでないプレゼントを受け取ることもあるわけだ。にっこり嬉しそうに笑いながら。
彼女はきっと一生懸命考えてくれたのだろう。だから無下に処分する気にもなれない。
そんな事を考える自分は可愛くない。なんて可愛くないんだ。素直じゃない。
いっそこの毒々しい赤が付けば、血糊風の化粧をする時にでも使えたかもしれない。
もらった物に罪はない。何とか使う方法はないかな。
そんな事を考えながら、ライブハウスに行く為に家のある駅とは反対へと向かう電車に乗り込む。
定期券外だからそう頻繁には行けないが今日は特別。だってせっかくの誕生日だ。
ハッピバースデートゥーミィー。
「指」「脂肪」「好き」

96 :
大好きだったあの子。だいじょうぶかな?
近所のスーパーに行って
脂肪のたっぷりのった豚コマを買ったよ。
君と僕とあの子で指切りげんまん。
かならず再会しよう、と約束したね。
熱々のトン汁とオニギリを用意して待ってるからね。
お題は継続でお願いします。

97 :

「食べないのか?」
ぺっと指輪を吐き出した彼は俺の足元の死体を指差して言った。転がった指輪とこっちの死体の指輪を見比べながら返す。
「……食べない……」
「じゃあくれよ、こっちは脂肪が多くて食えたもんじゃないからさ」
今晩の飯になった彼等は察するに夫婦だと思われる。机の上や至るところに飾られた二人の写真、そして指輪がそれを示している。
「なあ、もう止めないか?」
「何を?」
「こいつらを食うのをさ」
「どうして?」
「…………」
「……草を家畜が食う。その家畜をこいつらが食う。それを俺たちが食う。この流れが何かおかしいか?それともあれかな?サイショクシュギだっけ?ドウブツアイゴだっけ?」
「そんなんじゃない」
「じゃあ……」
「好きなんだ、愛してるんだ彼女を」
「あの女か……いいじゃないかそれで、俺はそのお前のお気に入りを食べない、もちろんその家族や友達も食べないそれで万々歳じゃないか?」
「……もう止めてくれって……仲間にも止めさせてくれって……」
「俺は食うぞ」
「俺は彼女を愛してる。彼女の願いは全部聞くつもりだ、何があっても……」
「そういう事か」
奴の目付きが変わり、狩り用の二つの刃が腕の甲から鋭く伸びる。こっちの刃は既に出していた。
長いにらみ合いが続いた。やがて月明かりが雲に隠れたその時、それを合図に二人は同時に飛び出した。速さでは奴より俺のほうが上だ、れる。
しかし突如口を開いた大きな穴に二人は吸い込まれた。擬態し闇に潜んでいたそれはぺっと二人の骨を吐き出して言った。
「不味い」
次題 「自己保存」「臨月」「伝播」

98 :
syuryou

99 :
タロウがねむりにおちるとき微かな花の香りがした。
翌日、一人のはずの船内の廊下から、軽やかな女のものらしい足音を聞いた。
貯蔵庫のタンクの影から髪の長い女に手招きをされ、
タロウは狼狽して懐中電灯をとり落とした。
眩暈に襲われる。
船は遠く異界の海へ、地球のDNAを伝播する目的で作られた。
今は人々から忘れられ、地下の核シェルターにある。
冷たい水の流れの向こうに女はいる。
滝のような黒髪に縁取られた白い裸体。臨月の女のそれである腹部の巨大な膨らみ。
柔和さにタウロは惹かれた。
女が口元に湛えた原始の神々の荒々しさすら母性のミルクの息吹のように感じた。
タロウは川に浸かっていった。
古い自己保存のプログラムがアンロードされ、新しいシグナルがインストールされた。
地球からひとすじ光跡が飛び出し、やがてワープアウトして消えた。
次のお題は「終了」「現場」「新生」でお願いします。

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