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2011年11月1期36: 星新一っぽいショートショートを作るスレ3 (546)
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星新一っぽいショートショートを作るスレ3
- 1 :10/08/07 〜 最終レス :11/11/09
- スレタイの通り、星新一っぽいショートショートを作ってみようというスレです
ジャンルはSFでもコメディーでも何でも良い
「ショートショート」なので、長くても1レス(=60行)に収まる程度が望ましいかと
二次創作は他所でお願いします
コツというか特徴
・人名は極力使わない(変わりに有名な「エヌ氏」や「エフ氏」を使う)
・細かい描写は省く
・激しい性描写は使わない
前スレ
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1256549898/
- 2 :
- Wikipediaにもう少し詳しく書いてあったので一応
作品の特徴
星の作品、特にショートショートにおいては通俗性を出来る限り排し、具体的な地名・人名といった固有名詞はあまり登場させない。
また、例えば「100万円」とは書かずに「大金」・「豪勢な食事を2回すれば消えてしまう額」などと表現するなど、
地域・社会環境・時代に関係なく読めるよう工夫されている。また、機会あるごとに時代にそぐわなくなった部分を
手直し(「電子頭脳」を「コンピュータ」に、「ダイヤルを回す」を「電話をかける」に直すなど)したという。
激しい暴力や人シーン、性行為の描写は非常に少ない。このことについて星は「希少価値を狙っているだけで、
別に道徳的な主張からではない」「単に書くのが苦手」という説明をしている。加えて、時事風俗は扱わない、
前衛的な手法を使わない等の制約を自らに課していた。
星新一 - Wikipedia
ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%9F%E6%96%B0%E4%B8%80#.E4.BD.9C.E5.93.81.E3.81.AE.E7.89.B9.E5.BE.B4
- 3 :
- 保管庫
http://www26.atwiki.jp/sousaku-mite/pages/804.html
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1280710474/
- 4 :
- >>1 スレ立て乙です
このスレの雰囲気が大好きだったので、
復活してくれて嬉しいです!
これからもどうぞよろしくー
- 5 :
- よかったー
復活してた・・・
とりあえず、灰色さんが戻ってくるのを待ちつつage
- 6 :
- >>5さん
自分を呼んでもらえたようで、とても嬉し恥ずかしです。ありがとうございます( ・∀・)∩
しかしもう3つ目になるとは思いませんでしたw
- 7 :
- >>1 乙
&即死回避支援
- 8 :
- 保守
- 9 :
- ネタが思いつかない・・・
このままじゃ落ちちまうぜ・・・
- 10 :
- もう1回、保守w
- 11 :
- なんか落ちそうなので適当に作ったショート
『不幸な男』
ある不幸な男がいた。
彼はことあるごとに自転車を盗まれるのだ。
鍵をかけ忘れたら当然、鍵をかけていても盗まれてしまう。
男は折り畳み自転車を買い常に持ち歩くことにした。しかし、今度は家の保管場所で盗まれてしまった。
怒った男は自転車の保管場所に張り付き、盗む奴を懲らしめようとした。
しかし、男が疲れてうたた寝している隙に、またもや盗まれてしまった。
自分で監視しては寝てしまう、ならば機械を使おう。男は保管場所に赤外線センサーを張り巡らし、警報をならすようにした。
これでひと安心と思った男だが、運の悪いことにその夜、町中が停電し機械が止まってしまった。その隙にまたもや自転車を盗まれてしまった。
途方にくれた男は一つの作戦を考え付く。買った自転車を鉄の箱にいれ、蓋を溶接する。これをシャベルカーで掘った穴に埋める。これで誰も自転車を盗むことはできない。
男は安心して夜眠ることができた。
- 12 :
- そんなになるくらいならいっそ
自転車を椅子代わりにでもして
一生乗り続けてたほうがまだよかったんじゃ…
男にとって自転車は乗るものじゃなく盗まれるものになってたんですね
- 13 :
- >>11
投下乙です!
即興に近い形でこれだけ書けるなんて、すごいなぁ
このスレも10レス超えたから、もう落ちないと思うので、
また、マイペースで投下してね
次の作品も期待してるよ
- 14 :
- >>11
ラストもうちょいひねりが欲しかったけど、楽しく拝読させてもらいました。
- 15 :
- 下ネタっぽくてすいません…
◆七歳
「……でもお姉ちゃん、『ペニス』ってどういういみなの?」
「いみなんかないよ。でも『名犬ペニス』ってすっごく素敵な名前じゃない?」
「うん……じゃあ今日からボクたちの家族だから、こいつは斎藤ペニスだね」
「あはは、ペニスよろこんでる!! よおし、おうちまで競争よ!!」
◆二十歳
「……で、新製品の名称ですが、私は『ゼリー』というのを考えました」
「ささ、斎藤くんっ!?」
「スカっとしているのに、トロみのある食感で『ゼリー』です。このネーミングにはかなり自信が……」
「斎藤くんっ!! ち、ちょっと来なさいっ!!」
◆二十五歳
「……弁護人の発言を許可します」
「有難うございます。さて、被害者の斎藤リツコさんは執拗に被告を『インポさん』と呼び続け、同被告に耐え難い精神的苦痛を与えました。員各位においては、何卒この点に留意して……」
おわり
- 16 :
- ◆でんとう
家にあった電灯が切れた。
若い男は電灯を買いに出かけようとした。
その時チャイムが鳴った。ドアを開けると中年のビジネスマンが立っていた。
電灯のセールスらしい。丁度いい、と思い若い男は「末永くもつ」電灯を契約して買った。
届いた電灯の仰々しいダンボールの箱には「わが国伝統の一品だ」と書いてあった。
洒落にしてはつまらないと思いながらも電灯を取り付けた。
電灯は今も光っていた。
取り付けた電灯は電気のスイッチに関係なく昼夜部屋を照らし続け、電気代を圧迫した。
苦情を言おうとしたが契約した会社はもぬけの殻。電話も繋がらない。
電灯を外そうとも昼夜照らし続けた電灯はとても熱く外せず…
壊そうにも割れたら危ない。とうとう男は外すのを諦めた。
時々男は思う。「伝統の一品?こんな詐欺に引っかかる奴今の時代でも俺しかいないな…ハハハ…ハァ。」
了。
星新一にはまってた頃に書いたやつを引っ張り出して書き直してみた(書いた当時:中一)
中一に書いたやつだから色々変なとこもあるが…どうよ?
- 17 :
- sage忘れてたすまん。。。
- 18 :
- 星新一っていうよりは世にも奇妙な物語っぽいのに近い感じだけど、それにしてもインパクトが足りないかも
ぶっちゃけ、伝統のスイッチが消えないくらいじゃ、大して困らないしなあ
詐欺っていうのもなんかおかしいし
- 19 :
- >>18
確かにな。中一の俺は何を思ってこれを書いたんだか…(笑)
- 20 :
- ・新薬の実験
ある製薬会社での実験室。
ここでは実用に耐えうる新薬を作り出す為、動物実験が日夜行われていた。
其処を歩いていた白衣姿の研究員Fが、無数に並ぶ実験用マウスの入ったケースの内の一つに目を止め、
その傍の机でノートに研究データを書き込んでいた、もう一人の研究員Nへ声を掛ける。
「おい、15番ケースのマウスが弱り始めてるぞ? そろそろやべーんじゃねーか?」
「あー、こりゃちょっと失敗臭いな…原因は注射した試薬の副作用かな」
研究員Aの指差す先には、ケースの隅っこで毛を逆立てて震えるマウスの姿があった。
数時間前、実験を行う前のマウスは元気に動きまわっていた事から見ても、
元気を失った原因は実験で注射した試薬であるのは間違いなかった。
「どうする? このまま放っておいても死にそうだし、とっとと安楽死させるか?」
「いやいやまてまて、まだ失敗と決めつけるのは早いと思うぜ? ひょっとしたら持ち直す可能性もある」
「まぁ、そうだったら良いんだけど。本格的に駄目だったら処分してくれよ?」
「へいへい」
適当に相槌を返すと、研究員Nは再びノートへと意識を傾けた。
それを見て溜息を付いた研究員Aは立ち去る間際、ケースの隅で震えるマウスに声をかける。
「お前、命拾いしたな……」
その頃、大宇宙の、人間には知覚出来ない領域の世界。
ここでは外宇宙へと漕ぎ出す強き生命を生み出すべく、惑星へ対する実験が数百億年行われていた。
世界を揺らいでいた大いなる存在の一人が、無数に並ぶ銀河の内の一つに目を止めて
その傍で新たな秩序と混沌を生み出そうとしていた、もう一人の大いなる存在へ声を掛ける。
「おい、15番目の銀河の第三惑星が弱り始めているぞ? そろそろ危ないのではないか?」
「むむ、これは少し失敗の様だな……原因は、この惑星に生み出した人間の副作用かもしれん…」
―――――――――了―――――――――
ちょっとした勢いに任せて書いた、反省していない。
- 21 :
- >>20
ちょっと間違い、研究員Aは研究員Fへ脳内変換してくださいorz
- 22 :
- 本格的にダメになったら人間は地球ごと処分されるのか
外宇宙に存在する者から見れば、人間って副作用が強すぎる試薬のような物なのかもね
- 23 :
- test
- 24 :
- 『タイムトラベラー』
カチカチカチカチ……。
オレは三十歳無職。このまま引きこもって一生を終えるのかもしれない。
……ん? 待てよ! もし、親が死んじまったら、オレはいったいどうなっちまうんだ!?
「心配はいらないよ」
「だ、誰だよ! おまえ? 何でここにいるんだ」
「ああ、ごめん。ボクはアナタの孫の龍馬。家族で時間旅行に来たついでに寄ってみたんだ。ボクの名前はお爺ちゃんが付けてくれたんだよ」
「おまえがオレの孫?! ってことは……オレは結婚もできるし、子供だって作れるってことだよな? オレはこのまま一生ではないってことか!」
「残念だけれど……パパは体外受精だったみたいだよ。つまり、お爺ちゃんはこの先ものままってわけだね」
「そ、そんな……」
「それじゃ、お婆ちゃんにも挨拶してくるから、またね!」
「待てよ! お婆ちゃんって誰なんだよ? おいっ!」
……ん? 夢か。オレに孫なんて有り得ないもんな。何だよ、時間旅行って……。
カチカチカチカチ……。
えっ!?
【驚愕の新事実!】坂本龍馬の未発表書簡が発見される……名付け親は祖父、自分は未来から来た?!
- 25 :
- ネタはいいけど分かりづらいね
- 26 :
-
よかったら読んでください
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1284090735/l50
- 27 :
- 『高度映像社会』
30年前、世界的企業の某社が開発した小型軽量の空間への立体映像化装置は、開発競争による価格破壊も進み、個人が複数台所有できるまでになっていた。
少し大きい街で上を見れば、立体広告がところせましとならんでいる。
交通の関係で5m以下の立体広告は規制されているのが幸いと言ったところだ。ここも、大都市の例に漏れず、巨大なうさぎの立体映像が空で熱心にシリアルの宣伝をしている。
「気味の悪いことだ」
元々どがつく田舎の出身で立体映像など無縁の生活をしていたので、未だにこういった映像には慣れない。触れそうなほどリアルな物が空にある、それがどうも納得できないのだ。
周りのやつらは、生まれた頃からあったものなので、この違和感を理解してはもらえない。
「異物か…」
何となくわいて出た言葉に返す者はなく、相変わらずウサギは空で笑っていた。
「おわっ」
ぼんやり上を眺めていたのがいけなかったのだろう、人にぶつかり、壁に向かってよろめいてしまう。
壁に手をついて止まろうとするが、壁は手を支えることはなく、体は壁の中に入り込んでしまう。
「いつつ…」
少し皮が剥け血がにじむ手をなめながら、辺りを見回す。
人一人がようやく入れる程度の細い路地。後ろを向くと、入り口は立体映像で偽装されている。
「シークレットドア?」
入り口を映像で偽装する、シークレットドア。ドアに壁の映像を写し隠すことからこの名前がきているらしい。
テーマパークなどで似たような物を見たことがあるが、せいぜい子供だまし程度のものだった。
しかし、これは通路を一つ完全に隠している。それも、完璧なほどに。これほどの精度の装置ならば相当な値段がするはずだ。
理由は分からないが、誰かが大金を払ってでもこの通路を隠したいと思っている。
得てしてこういった場合は危ないものが隠されている。直ぐに逃げた方がいいだろう。
しかし、俺の考えとは裏腹にいきなり世界が歪む。今まで通路だったところが、極彩飾の、抽象画に移り変わる。壁も床も無くなり、場所の起点が無くなる。
合わせるべき起点が無くなったことで平衡感覚が失われる。すぐに立っていられなくなり、吐き気もしてくる。もしかしたらこれが噂で聞いたことがある、映像兵器なのかもしれない。
この状態から精神を守るためか、いきなり意識が失われた。
- 28 :
- まず、この状況はなんだろう。起きたらいきなり草原に寝かされていた。
気絶している間に、草原に運ばれたという可能性もあるが、たぶんそれはないだろう。
この場所には草の臭いがしない、それに床はリノリウムのような感触。
つまり、これは立体映像。
「起きたかね」
目の前に茶色のスーツをきた老人が立っている。
「何らかの偶然で我々の秘密通路を見つけてしまったようだね。我々の手違いで侵入者撃退用の装置が作動して君には迷惑をかけた」
やはり、何らかの施設の通路を隠していたようだ。
「一体ここはどこなんですか?」
老人はその質問に答えず、質問を返してきた。
「君は、ここをどこだと思うかね?」
?何を言っているんだろうか。
「周りを見てみたまえ。どこまでも広がる草原。素敵だとは思わないかね?」
その言葉で少し理解できた。つまり、この映像の元の場所はどこかと聞いているのかも知れない。だが、映像は映像だ。その場所に移動しているわけではない。
「映像は映像。そう思っているのかね?」
心を見透かされたような言葉にドキリと心臓が跳ねる。
「たしかにこれは映像、まやかしだ。しかし、それを確認するためにはどうすればいい?」
いきなり老人の姿が掻き消える。
「我々が映像を映像として確認するにはどうしたらいい。現実と変わらないリアルな映像はどうしたら虚像と確認できる」
いきなり後ろにあらわれる老人。声も後ろに移っている。
「触ってみる。これは原始的だが確実な方法だ。しかし、触れられないものはどうすればいい?」
今度は上にあらわれる。
「確認できないなら、それは本物だってことが言いたいのか?」
また消え、今度は最初と同じく真正面にあらわれる。
「その通り、触れられないならばそれはいかに馬鹿げていてもそれは現実の可能性もあるということだ」
老紳士は本当にうれしそうに笑う。何がそんなに嬉しいのだろう。
「さて、私も時間がなくなってきた。君は最初にここはどこか、と聞いたね?今からその答えを示そう」
老紳士が指をパチンと鳴らす。すると、いきなり床が開く。捕まるものも無く、為す術も無く下に落ちていく。
軽い浮遊感のあと、硬い地面に叩きつけられる。
打ちっ放しのコンクリートの床、周りを覆うフェンス、どうやらビルの屋上のようだ。
上を見ると、ピンク色の巨大な何かが見える。
「え?ウサギ?」
そうそれは、さっき見た広告用の巨大ウサギの映像。そう映像のはずだ。しかし、俺はその映像から落ちてきた。
呆然としていると、元から無かったかのようにウサギは消えてしまう。
「どうなっているんだ……」
『確認できないならそれは本物かもしれない』
さっき自分で言った言葉が頭で繰り返される。
空に浮かんでるウサギは本物で俺は中にはいった。こんなこと誰が信じてくれるんだろうか。精神障害を疑われて終わりだ。
だが、それでも構わないではないか。今やこの世界はリアルな虚像に満ちている、その中に実在する虚像があったとしても。
ビルを降り、外に出る。空を見上げると新しい広告が映し出されるところだった。
どうやら、紳士用の靴の広告らしい。俺は苦笑しながら、空に一礼して再び街を歩き始めた。
- 29 :
- こうゆうSFチックな作品はすごく好き
未来っていうのはいいものじゃないけど悪いもんでもないみたいな感じのがいい
- 30 :
- 最近のこのスレは不条理系の作品が多くなってきてるな
嫌いじゃないぜ
- 31 :
- >>28
アイディアがすごくいいと思う。
現実→混沌→仮想草原→現実 と、元いた場所に戻ってるから話が纏まってる感じがしていい。
- 32 :
- 感想ありがとうございます
>>29
個人的にもSFっぽいの好きですね。個人的にガチガチのSFじゃなくてゆるい、こうなるんじゃないかとか
こうなったらいいなって感じのが好きなんで、設定上無理があったりすることが多いんですよねw
>>30
不条理系ってアメリカンジョークっぽいですよね。あとこのスレみたいにかなり短くまとめるってなると、落ちがつきやすい
不条理系によちゃうんですかね
>>31
特に意識したわけではないんですが、そうなってますねw
話まとめようと、いじってたらそうなったのかもしれないです
- 33 :
- 『王の頷き』
ある国に絶対に賛成しない王さまがいた。大臣がどんなにいい案を持っていっても首を横に振り、美女が誘惑しても決して流されない。
そんなことをしていれば、国が運営できないものだが、しばらくすると皆が持ってきた案より優れたものを、王自身が考えついてしまうので、皆は文句も言えず国もうまく回っていた。
しかし、大臣たちは面白くない。かといって、王に歯向かう気もない。王としては歴代でも1、2を争う名君なのだ。しかし、大臣たちは王が皆の意見に賛成する場面をどうしても見てみたかった。
そんなある日、ある男が王の謁見にやって来た。
王は民衆の知恵を借りるために、様々な国民と謁見を行っている。この男もそういった一人だった。基本的には、王との謁見は1対1で行われる。これは大勢の前では気後れするものもあるだろうという王の配慮だった。しかし、王の安全のため何人かの兵士は配備されている。
さて、その謁見をおこなっていた男は王にある紙を渡す。その様子を窓の奥から偶然見ていた見ていた大臣は驚いた。王はなんと首を縦に振ったのだ。
大臣はあの男が渡した手紙の内容を知りたくて仕方がなかった。しかし、王に直接聞くわけにもいかないだろう。わざとではないにしろ、盗み見たようなものだからだ。
いったいどんなに素晴らしい内容だったのだろう。最高の統治方法、最高のレシピ、想像は膨らむ。
大臣は謁見を管理する部門に立ち寄り、男の素性を聞いた。
男はどうも街で服屋を営む仕立て屋らしい。大臣は男に使いをやり内密で自宅に呼び出した。
なぜ呼び出されたのかわからないのか、少し緊張気味の男に大臣は聞いた。
「お前はどんな内容の進言をしたのだ?内容を言えばこの金貨をやろう」
そう言って家が二つは建つであろう量の金貨を男の前においた。
それに驚いた男は
「私は王の服の新しいデザインを、献上に来ただけです。王が新しい服を考えていると、掲示があったので。それだけです、決して怪しいものではありません。そんな金貨を貰うほどのものではありませんよ」
男は慌てて答えた。
「別に君をどうにかしたいわけじゃないさ。ただ、私は王がなぜ頷いたのかを知りたかっただけなんだよ」
それを聞いて多少安心したのか、男は冷静になる。
「そうなんですか。しかし大臣様が見た、王が首を振る動作は、肯定をする動作ではないでしょうね。今着ている服をを確認した動作を大臣様が勘違いしただけでしょう」
そう言って男は金貨を貰うのを辞退した。
「そうか。それならば、お前を宮廷専属の仕立て人として採用する」
「え?なんででしょうか?」
男は狼狽えた。王の動作の謎も勘違いとわかったのだ、一介の街の仕立て屋である自分がいきなり宮廷専属なんて名誉職取り立てられるなんて、わけがわからない。
「確かに、王が首を縦に振ったのは、服を確認するためかもしれない。しかし、あの後、王は首を横に振らなかった。君のデザインが優れていたためだ。それに、これだけの金貨を前にして誠実に答えたのも良い。私は誠実な人間は好きだ、それは王もおなじであろう」
そう大臣は答えた。
大臣の頼みを聞き入れた男はこの後、王や王の側近のために数々の素晴らしい服を仕立てるが、それはまた別のお話だ。
- 34 :
- 服を見る動作が首肯にみえたんだね
もし腕を横に伸ばして袖を見ようとしてたら首を振ったように見えたんだろうか
- 35 :
- 星新一のイソップ物語があったけど
それに雰囲気が似てるな
- 36 :
- 【屋上】
「またここへ来てしまった」
S氏はそうつぶやくと、錆付いたパイプ椅子に腰を下ろした。
ここはとあるビルディングの屋上。さほど高層でもない、どこにでもありそうな場所だ。
彼は悩み事があるとこの場所に来る。いや厳密に言うと来てしまうのだ。
ここが、どこの何ていうビルディングなのかはまったく覚えていないし
また覚えていたとしても、きっと自分の意思ではたどり着けない所なんだと
何となく感じていた。いづれにしてもここがどこであろうとどうでも良かった。
S氏は平凡なサラリーマン、上司からは叱られ部下からは突き上げられ
御多聞にもれない中間管理職であった。
悩み事と言っても、大それたものではなく些細なことが多い。
自分の成果を上司に横取りされたり、データ収集や難交渉など人がやりたがらない
仕事を押し付けられたり。だがS氏は仕事にそれ程不満があるわけではなかった。
彼にとって常にそれが自分の役回りであると思っていたからだ。
いつものように小一時間ここでぼんやりと夜景を眺め、ため息をひとつつくと
そろそろ帰ろうかと腰を上げた。その時、「カチャリ」とドアのノブが回る音がした。
『誰か来る』
勝手に入り込んだ後ろめたさもありS氏は物陰に身を潜めた。
ここには明かりがなく、どんな風体なのか良く見えない。警備員なのか住人なのか…。
すると、
「誰かいますか?いますよね」
『しまった!見られてた!』
いきなり声を掛けられ、S氏は体が硬直し声も出ない。不法侵入という言葉が頭をよぎる。
「いることは判っています。何もしませんから、そのまま私の話を聞いてください」
『?』
「これからもあなたは何度もここに来ることになるでしょう。でも、決して会社を
辞めようなどとは思わないでください。」
誰とも判らぬ人影は勝手に話を続ける。
「今あなたがやっている仕事は、将来きっとあなたの出世の足がかりになります。
どうか、この調子で仕事を続けてください。」
『何なんだこの人は、何で私の事を知っている?もしかして!』
もしかしたら未来の自分がタイムマシンで自分を励ましにやって来たのか?
S氏は、星新一でも思いつきそうにないベタな空想をしてしまった。
「では、これで失礼します。決してあきらめないでくださいね!」
最後にそう言い残すと誰とも判らぬ人影は去っていった。
S氏はしばらく放心状態になっていたが、やがて正気を取り戻した。
「いったい何だったんだ?」
そう言いつつ、なんだか笑いが込み上げてきた。
おかしな事にいつもより元気が出てきたような気がする。
自分の努力を認めてくれる人がいるのはうれしいものだ。
あの人影がどこの誰であれ、とても感謝したい気持ちになった。
それから何日かして、S氏は思いきってある行動に出た。
会社からの帰り道、適当なビルディングの屋上にのぼり、こう話しかけるのだ。
「誰かいますか?いますよね…」
終わり
- 37 :
- これは面白い
- 38 :
- これ俺もたまにやるなぁ
なんか誰もいないけど「いるんだろう?」って
ぁ
ゆ
き
ぃ
ぃ
- 39 :
- 読後感がすっきりしますね
正のサイクルが繋がっていく良いショートショートです
- 40 :
- 【最強の兵器】
F博士の研究室
「これでよし、完成じゃ」
「やりましたね博士!と言っても僕はこの装置のことをよく教えてもらってませんが…」
「そうじゃったな。完成する前にこの装置の情報が漏れては命が危なかったのでな。すまんかった」
「もしや兵器…ですか?」
「まあそんなもんじゃ。この装置はミニブラックホールを発生させて一瞬に周囲の物をすべて飲み込んでしまう」
「それはすごい!」
「そこまで知らんかったとは。君を助手に採用して正解だったようじゃ」
「お褒めに預かり恐縮です。ところでいったいどれくらいの範囲まで有効なのですか?」
「それは設定次第。半径1センチから1万3千キロ以上」
「それでは地球も一飲みじゃないですか」
「そういう事になるな」
「しかし博士、もしこれが悪人の手に渡ったら大変ですね」
「そう思うじゃろうが、この装置の最大のポイントはそこなのじゃ」
「どういう事ですか?」
「ブラックホールの中心がこの装置だからじゃよ」
「と言うと」
「…もしや君はかつてどこかで頭をぶつけたことがあるのでは?」
「ええ、小学校の頃に1度」
「そうじゃろうな。打ち所が悪かったのか良かったのか。まあ良い、この装置がブラックホールの中心に
あるということは、この装置もろとも飲み込まれてしまうということなのじゃよ」
「なるほど、つまりこの装置を作動させた人間も消えてしまうわけですね。しかし遠隔操作で…」
「この装置は所有者自身が自らの手で操作した時だけ作動すようにプログラミングしてある」
「自爆テロならぬ、自滅テロですか…ぷぷっ」
「笑い事ではない」
「でも何だか売れそうにないですね」
「売るつもりはない。進呈するのじゃ」
「誰にですか?」
「この世で最も不甲斐無く、心配性で、臆病で、周囲の国からも馬鹿にされている…」
「わが国の国王!?まさかこれで消えていなくなれと?」
「いや、国王がこの装置を持っていることを周辺国にアピールするのじゃよ」
「あそうか、周辺国が下手な行動に出れば、いつ何時あの臆病国王がスイッチを押すかもしれないと…」
「今度はいやに察しがいいな。その通り、だからこれはわが国にとって最強の兵器になる」
「でも、あの国王のことですよ。ちょっと自信喪失しただけで使ってしまいそうだ」
「それはさすがに側近が止めるじゃろうが、まあわしもそう長くはないその時はあきらめよう」
「博士!」
次の日、博士は国王に謁見し予定通りその装置を献上することができた。
世界的に有名な大科学者F博士の発明とあって、すぐさま新兵器として採用され
その情報は瞬く間に周辺国に伝えられた。その抑止力たるや、言うまでもない。
「これでしばらくの間、この国も安泰じゃろう」
その後博士は失踪した。どうしても隠しておかねばならない秘密があったからだ。
実はその装置は空っぽで、ブラックホールなどまったくのハッタリだったのだ。
終わり
- 41 :
- しまった上げてから気づいた。
装置の有効範囲は「1センチから」じゃなくて「1メートルから」です。
- 42 :
- 面白かったです
「もしや君はかつてどこかで頭をぶつけたことがあるのでは?」ってF博士のきつい冗談ww
- 43 :
- ありがとうございます。
どこかで聞いたような話かもしれないですけと、まあアレンジということで。
- 44 :
- すごいなあ
独創的だからというか、短い話だけどすごく引き込まれるような魅力があるよね
- 45 :
- 【移植】
「どうかね、その後の調子は」
N医師はやさしく青年に語りかけた。
「ええ、だいぶ良くなりました。自分で食事も食べれるようになりました」
「うむ、やっぱりちゃんと口から栄養を摂らないと早く回復できんからね」
「でも…」
「どこかに痛みでも?」
「いえ痛みはないんですけど、なんとなく…その…」
「なんとなく?」
「自分が自分でないような…」
「ああ、それならしばらくすれば段々と慣れてくるはずだよ。移植患者にはよくあることだよ」
「よくあること?」
「移植された患者さんは最初のうち、漠然とした違和感を訴える。体に他人の臓器を
入れたことによる精神的なものなんだがね」
「そんなもんでしょうか」
「ああ、そんなもんだよ。では、しっかりと体力をつけて早く退院できるようにしなさい」
「ありがとうございます、先生」
N医師はそんな会話をした後で、青年の両親が待機する部屋へと向かった。
「先生、いかがでしょうか」
「ええ、まだ記憶は戻っていないようですが順調に回復されていますよ」
「ですが、あの子は病室で話をするたびに、何だか自分じゃない…と」
「私にも同じ事をおっしゃいましたよ。いづれ理解できるようになると思いますが」
「実は、私達もなかなかなじめなくて…」
「無理もないでしょうな。あの大事故で奇跡的に無傷なのは彼の脳だけだったのですから」
終わり
- 46 :
- これも似たような話があったかも知れませんね。
- 47 :
- 今日はもう一つ、いいオチではないんですけど…
【世界がもし100人の村だったら】
「『世界がもし100人の村だったら』のみなさんの感想文、読ませていただきましたよ。
とってもよく書けていました。じゃあ今からお返ししますね」
「M子ちゃん、ちょっと」
「はい、先生」
「少しお話があります。放課後、職員室まで来てくださいね」
「はい…」
放課後
「先生、何でしょうかお話って」
「M子ちゃん、感想文のことなんだけど」
「はい」
「M子ちゃんの感想文はみんなとちょっと違うのよね」
「どういうことですか?何がいけなかったんですか?先生」
「ううん、いけないわけじゃないのよ…」
「先生は、『みなさんがその100人の中の一人だったらどう思いますか?』っておっしゃいましたよね」
「ええ言いました」
「だから私も100人の中の一人になったつもりで書きました」
「そうよね、だけど『その内の二人は私のパパとママです…』っていう所からがね…」
「でも、私がその中の一人ってことはパパとママがいないとおかしいじゃないですか?」
「それはそうなんだけど、このお話は例え話で…でね、その次の『その内の4人は私の
おじいちゃまとおばあちゃまです…』になってってるでしょ」
「パパとママはおじいちゃまとおばあちゃまの子供ですもん」
「ええ、その通りね。そのあとどんどん遡って、締めくくりが『だから100人はみんな私の家族です。』
ってなってるでしょ?」
「はい」
「先生や友達や世界の人達はどこ行っちゃったのかなあ?」
「知りません」
「先生も入れて欲しかったなあ」
「なら、先生も自分で100人の村作ったらいいじゃないですか」
「そういう問題ではなくて…」
「もしかして先生、私の家族になりたいんですか?」
「何だか話が違うような気が…いいわ、今日はもうお帰りなさい」
「はい、先生。あっ、パパに話しておきますね、先生が家族になりたいみたいって」
「ちょっ…M子ちゃん…」
終わり
- 48 :
- まとめ保管庫に転載していただいた方、修正までしていただきありがとうございました
- 49 :
- すいません、今日は3本立てという事で
【家族の記憶】
「ねえN子、最近パパの様子がおかしいのよ」
携帯から聞こえる母の口調は弱々しいものだった。
「え、病気?」
「よくわからないんだけど…」
「いったいどうしたの?」
「記憶がだんだんと無くなって行くみたいなの」
「ええっ!アルツハイマー?」
「そうなのかしら」
「記憶って、どんな?」
「家族のこと…昔のこと…」
「どうしてわかったの?」
「最近やたらといろんなことを聞いてくるようになったの。『お前の誕生日いつだったっけ』とか
『昔遊びに言った遊園地ってなんていう名前だったっけ』とか」
「それただの物忘れじゃないの?」
「私も初めはそう思ってたんだけど、今日ね…」
「うん」
「『お前の名前なんだっけ』って言うわけ。私悲しくなって…でも『何言ってるのよK子ですよ』って
笑ってごまかしたんだけど…」
「ママ、早くパパを病院へ連れて行ったほうがいいわよ」
「ええそうね、そうするわ」
1週間後、N子から母への電話
「ママ、パパを病院へ連れて行った?」
「え?まだよ」
「早くしないと手遅れになるわよ。で、あれから何か変化あった?パパの物忘れ」
「そうね、今日はあんたの住所とか旦那さんの名前とか聞かれたわ」
「まだ大丈夫よね。近いうちにそちらへ行くから、あまり思い詰めないでね!」
「ええ…」
N子の実家にて
「N子いらっしゃい」
「パパはどこ?」
「書斎かしら」
「私、直接パパと話してみる」
父の書斎にて
「パパ!私の名前言える?誕生日は?電話番号は?私の通った幼稚園は?」
「おいおい、何だよ薮から棒に」
「いいから答えてよ!」
「ああ、そうか…ママが連絡したんだね。もうしばらく黙っておくつもりだったんだが…」
「どういうこと?」
「びっくりしないで欲しい。実はママは軽いアルツハイマーに罹っているんだ」
「え?パパじゃなくてママ?だってパパが物忘れがひどいって」
「あれはママの記憶を試すために、わざと忘れた振りをして聞いていたんだよ」
「病院へは?」
「連れて行ったよ、もうだいぶ前に。ママは忘れているかもしれんが…」
終わり
ありがちな発想で、途中からオチがわかっちゃったかも。
なんか、悲しい終わり方でごめんなさい。
- 50 :
- またやってしまった!
「遊びに言った」→「遊びに行った」
- 51 :
- BADENDは見慣れた
今ちょうど地獄少女見終わった後だった
- 52 :
- >>50
乙です!
1日に3つも書けるなんてすごいなw
どれも楽しませてもらったよ
- 53 :
-
最強の兵器のオチが良かったと思います
- 54 :
- 読んでいただいてどうもです
今日はちとネタ切れで…
- 55 :
- 【緊急避難】
遥か彼方のS星からこれまた遥か彼方のN星へ航行する
大移民団を乗せた巨大宇宙船。
機械の故障により発生した非常事態に最早猶予はなかった。
当面の危機回避の為には何としても近隣の恒星を見つける必要があった。
「船長、あの恒星までが最短距離のようです」
「周辺の惑星への影響は?」
「おそらく皆無と思われます」
「そうか、では早速作業に取り掛かってくれ」
「間もなく再接近!」
「準備はまだか!」
「準備完了しました!」
「よしっ、発射!」
「発射!」
巨大宇宙船から巨大なカプセルが勢いよく放出された。
「これでしばらくは安心ですね、船長」
「ああ、運良く処理できる所が見つかって何よりだったよ」
「へたに処分すると最近では宇宙環境監視団体がうるさいですからね」
「次の恒星まではまだ遠い、早急に故障した『ゴミ焼却炉』の修理を急いでくれ!」
「はい船長!」
その頃、地球では…
『太陽に巨大黒点発生!天変地異の前兆か!』
終わり
- 56 :
- ここんところ自分しか上げてないんだけどこのまま続けていいものやら…
- 57 :
- 投下乙です!
気にせず、どんどん投下しちゃってくださいなw
このスレの過去の賢人達も皆、そうだったから、大丈夫だよ
またの投下を楽しみにしてるよ
- 58 :
- >>56
いや、リスナーはいるよ
- 59 :
- リスナーじゃねえええ
自分の語彙の少なさに絶望した
- 60 :
- >57-59
ありがとうございます!
- 61 :
- 遠慮せずかけばいいんじゃないかね
このスレ、投稿ないとき全くないし、投稿があるだけで違うもんだよ
自分は結構時間かけて書くほうだから投稿時間あくし、他の人の作品読むのも好きだしねw
- 62 :
- >>55
またしくじってた!
「再接近」→「最接近」
- 63 :
- >61
ありがとうございます。
お言葉に甘えて、
ちょっと長かったんで「他に行き場所の無い」スレに書き込んだやつを上げときます。
- 64 :
- 【本当の価値】
その男は焦っていた。
働き口がないまま所持金が底を突き、しばらくは手持ちの物を売り払って
なんとかやってきたものの、滞納した家賃も大家の許容範囲を超え
わずかでも支払ができなければ、すぐに出て行けと言われている。
ただ、それよりも深刻なのは今日の飯代すらないということだ。
『このままでは、泥棒とかするしかないかも』
男は善人とは言えないまでも社会人になってからはまともに働いてきたのだが…。
そんな時、
「ただいまM公園にてフリーマーケットを開催しております。お時間のある方は…」
と広報車がやってきた。
男の家財はほとんど売り払ってしまったが、本と少しのガラクタがある
『なんとかフリマで金に換えよう』
それが、男にとって最後の良心だったかもしれない。
男は片っ端から部屋の中のものをバッグに詰めるとM公園へ駆けつけた。
運の良いことに参加料は無料だった。
適当な場所を見つけると、男は地面の上に直接、本やガラクタをならべた。
1時間、2時間と時が経っても、客は皆素通りして行く。それもそのはず
並んでいるものはどれとしてまともなものは無く、手垢にまみれた本や
人気の無い古臭いフィギュア、その辺で拾ったようなちょっと綺麗な石ころ
といったものばかりなのだ。
終了まであとわずかという時間になって、ひとりの老人が男の前に立った。
「君、それはいくらかね?」
老人の指差すものを見ると、それは石ころの中に混じったタイルだった。
男が中学生の頃、後輩から巻き上げた財布の中に入っていたもので
瑠璃色に光る魅力的なアーモンド形のタイルだったが、宝石の類ではなかった。
今の境遇から察すれば、幸運のお守りですらないだろう。
- 65 :
- 「君、それはいくらかね?」
老人に再び問われると、男はここぞとばかりに言った。
「ご、5万円…です」
「おお、そうか。君にとっても大切なものなんじゃな、ではあきらめよう」
『しまった!』男は吹っかけすぎたことに後悔した。
この老人を逃してしまったら後が無いかもしれない。
「待ってくれ!3万…いや1万でいい!買ってくれ…買ってください!」
「本当にいいのかね?1万円でも?」
「ええ、それでけっこうです」
「ではいただこう。どうやら訳ありのようじゃ、3万円でどうかな?」
『ありがたい、これで2ヶ月は暮らせる』
男の顔に安堵の表情が浮かび上がる。
老人はタイルを受け取るとしみじみと眺め、本当にうれしそうに去っていった。
『待てよ…』
男はしばらくして、老人の言葉に何か引っ掛かりを感じた。
『あの爺さん「君にとっても」って言ってたな。「君にとっても」ってことは
「わしにとっても」ってことだろ?もしかしてすごいお宝だったのかも!』
男は老人にまんまとだまされたと思った。
『だからあの爺さん余裕で3万払ったんだ!』
あわてて周囲を見渡すと、あの老人が公園から出て行くところだった。
『じじい!』
男の心は欲望に乗っ取られ、良心はすでに吹き飛んでいた。
『あいつの家をつきとめて、相応の金額を巻き上げてやる!』
男は老人の後をつけて行く。山の手のほうへ向かう、高級住宅街だ。
やがて老人は一軒の邸宅に入っていった。
老人の物腰にたがわぬ大邸宅だ。
- 66 :
- 『10万…50万か』
勝手に値踏みをすると、意を決してチャイムを鳴らす。
屋敷の奥で重厚な音が鳴っている。インターホンではなさそうだ。
分厚い木製の扉が開くと、先ほどの老人が門の所までやって来た。
「ああ、先ほどの青年か、何か…」
言い終わらないうちに男はずかずかと敷地の中に入り込む。
「じじい、だましたな!」
「何のことじゃ?」
「とぼけんじゃねえ、さっきのタイルだよ!お宝なんだろ?」
「何を、あれはただのタイルじゃよ」
「嘘つけ!ただのタイルに3万も払うなんて、考えられねえ!」
「君だって大切にしておったんじゃ…」
「うるせえ!」
思わず手が出てしまった。老人は転倒し、鈍い音がした。
『意識が無い、やべえ死んだかも』
男は逃げようと思った、が
『いかん、タイル、俺の指紋がべったり!』
あわてて老人のポケットを探す。無い。
『くそっ、屋敷の中か』
男は袖にくるんだ手で分厚い扉を開けると、慎重に屋敷の中へ忍び込む。
人気は無い、一人暮らしのようだ。
目が慣れるまでは薄暗くてよく見えない。
しばらくすると重厚な造りが見え始めた。高そうな調度品の数々。
シャンデリア、螺旋階段、テレビでしか見たことの無い洋館風の内装。
ふと、床に目を落とす。大きく絵が描かれている。鳳凰か?
さらに目が慣れてくる。絵だと思ったのは、モザイクだった。
細かい破片を埋め込んで、大きな模様を形作っている。
男の目にもそれは荘厳で完璧なものに見えた、たった1箇所
鳳凰の目に当たる部分にぽっかりと開いたアーモンド形の穴を除いて…。
終わり
- 67 :
- 【物質記憶薬】
F博士の研究室
「よしっ、これで完成じゃ」
「博士、今度の発明は何ですか?」
「キミにはこれが発明品に見えるのかね?」
「いいえ、ただのハンバーグに見えます」
「そうじゃろう。どうもキミはわしが『完成じゃ』と言うと必ず何かを発明したと思うようじゃな」
「一種の職業病ですかね」
「わっはっはっ!すまんすまん、本当はこれもわしの発明品じゃ」
「えっ?どこから見てもハンバーグですが」
「これ自体は本物のハンバーグなのじゃが…」
そう言うとF博士はナイフでハンバーグを二つに切り分けた。
「食べるんですね」
「待て待て、早まるでない」
しばらくすると半分のハンバーグがそれぞれ1つのハンバーグにみるみる形を変えた。
「わっこれはすごい2つになった!これならどんどん数を増やせますよね」
「このハンバーグにふりかけた薬品が元の形を記憶し、まったく同じ物質で再形成するのじゃ」
「言うならば物質記憶薬ですね」
「その通り」
「では、いただきます」
「どうぞ召し上がれ」
「いえ、この薬品をいただくのです」
「何じゃと?」
「博士、もうこんな貧乏研究所が嫌になりました。博士はいつも気前よく発明品を手放し
儲けが少ないばかりか、私の給料だって上がりゃしない!」
「それはすまんかった。考え直す気はないか?給料は上げれんが…」
「考え直す気はありません、この薬品で財産を増やして大儲けしますよ。ではさようなら!」
「困ったもんじゃ、気の早いやつで。あの薬品が記憶できるのはハンバーグだけなんじゃが…
まあハンバーガーショップでも開けば、当分は今よりましな生活ができるかも知れんがのう」
終わり
- 68 :
- 面白いですけど、盗みが多いですね・・・
- 69 :
- >>68
投下乙です! 博士がなんかかわいいw
- 70 :
- 助手の短絡的な性格が生きてるオチだね
最後にひっくり返すところが星っぽい
- 71 :
- 【物質記憶薬(後日談)】
F博士の研究室
「博士っ!」
「誰じゃ、いきなり入ってきて…おおキミか。何じゃね今日は、ハンバーガーショップ開店の宣伝かね?」
「とんだ失敗作をつかませましたね」
「失敗作?」
「あの日家に帰ってさっそく試してみたんですよ、あの物質記憶薬を…チクワで!そしたら…」
「そしたら?」
「チクワからチクワ形のハンバーグが生えてきたじゃないですか!」
「そうじゃろうな」
「何でそれを先に言ってくれなかったんですか!」
「言う前にキミが出て行ってしまったからのう」
「しかも、それをやけ食いしたらおなかの中でどんどん増えていって危うく死ぬところでした!」
「なるほど…そこまでは気が付かなかった。何せわしはハンバーグが嫌いでのう」
「じゃ何で実験材料にハンバーグなんか使ったんですか」
「キミの大好物じゃからな」
「最初から私が実験台だったんですね!」
「まあまあ、とりあえず助かって良かった」
「良くないです!家のトイレが、吐き出したチクワハンバーグでつまってしまったんですよ!」
「で、トイレを貸せと…」
「違います!」
「では、何じゃね?」
「博士!こうなったらこの薬品を完成させるしかありません!」
「と言う事は?」
「もう一度雇ってくれませんか?」
「初めからそう言えば良いのに…」
終わり
- 72 :
- これはwwwww
こうゆうの好きだwww
- 73 :
- >>72
ありがとうございます。
盗みが多いって言われちゃったんで、ちょっと改心させました。
- 74 :
- 【貧乏性症候群】
「先生、いかがでしょうか?」
「あなたの症状を総合して判断しますと『貧乏性症候群』でしょうな」
「『貧乏性症候群』…ですか?」
「ええ女性に多いのですが、輪ゴムをいくつも水道の蛇口に掛けておいたり、
食堂で爪楊枝を余分に失敬したり、一番多いのはいつ使うとも分からない
紙袋や空き箱をためこんだり…」
「いえ、私はそんなことはしていませんが」
「以前そういうことをしていたのに最近できなくなったとかはないですか?」
「思い当たりませんな」
「そうですか。大体の方はその収集作業ができなくなったことで発症するんですがねえ」
「もう結構だ!」
最近の体調不良の原因を知りたかったY氏は医師の診断に激怒して医務室を立ち去った。
Y氏の怒りは自分の事務室へ戻ってからも収まらない。
「とんだ藪医者だ!私がちまちまと使いもしない紙袋や空き箱を集めるような人間だとでも
言うのか、まったく!専属医師とは言え信用ならん!」
Y氏の机の上に置かれたプレートにはこう書かれていた。
『防衛省武器調達室長』
終わり
- 75 :
- 兵器類の値段は桁が違うからか……w
- 76 :
- いつ使うとも解らないだなんてひどいw
- 77 :
- 【天国の控室】
ここは通称「天国の控室」、正式名称は「国立終末介護医療センター」である。
比較的裕福で身寄りの少ない重病患者が終の棲家として選択する医療機関だ。
ただ、すでに危篤状態になっている患者はここに入院することは無い。
なぜなら、寿命を全うするまでの期間たとえそれが数日であろうと、本人の意思で
至福の時間を過ごす事を目的としているからだ。
人によっては数年間の長期入院になる事もある。幸せな時間を1日でも多く
過ごしたいという欲求がその命を永らえるのかもしれない。
N氏もそんな患者の一人であった。
「Yさん、ちょっとこちらへ来てくれないか」
「はいN様」
そう応えたのは、N氏が入院してからずっと付きっ切りで介護してきたY看護婦だった。
「もうどれくらいになるかな…」
「約4年7ヶ月になりますわ。正しくは4年6ヶ月と28日8時間46分…」
「ははは、君はいつも正確無比だな」
「恐れ入りますN様」
「私にはもう近々お迎えが来る。君には本当に世話になった」
「そんな気の弱いことをおっしゃってはいけませんわ」
「いや、分かるんだよ自分の事は」
「N様がそんな気持ちになってしまわれると、私が担当の先生に叱られます」
「そんな医者、私が怒鳴りつけてやる!わっはっは」
「うふふ…患者様から気を使われるなんて、看護婦失格ですわね」
「ところで、私が死んでからの事なんだが…私にはこれまで苦労の末築いた財産がある
それを君に相続してもらうわけにはいかんだろうか?」
「唐突なお話ですのね。しかし私には財産をいただく権利はございません。それに
N様もご存知のように…」
「そう、君はロボットだ。だがロボットが相続してはいけない法律はないだろう」
「いいえN様、法律の問題ではなくて、私にとってはその財産が無意味なのですわ」
「そうなのか、私の財産は君には何の価値も無いということなのか…」
「申し訳ございません、私には物の価値を認識するデータがプログラムされていないのです」
「…確かにな、金や不動産や贅沢品は人の欲望が造り上げた物。君には無用か…」
「ご好意には感謝いたします」
「Yさん、今だから言えるが、私は起業には成功したが良い家庭は築けなかった。
家族ほったらかしで仕事に没頭し、愛想をつかした妻は一人息子を連れて家を出て行った」
「そうだったのですか」
「だが、今私はとても幸せだ。君のお陰で最高の死を迎えられそうだよ」
- 78 :
- >>77つづき
その時、一人の男性が病室に入ってきた。
「お、お前は…」
「父さん、久しぶりです」
「今更名乗りをあげても、お前達には財産はやらんぞ!」
「父さん、母さんはもう5年前にここで亡くなりました。最期まで父さんを愛していましたよ」
「そ…そんな人情話は通用せん!」
「僕は財産が欲しくてここに来たんじゃありません。本当のことをお話しに来たのです」
「何だと?」
「母さんは家を出たあと、大変な苦労をして僕を育ててくれ、大学にまで入れてくれました。
お陰で僕は思う存分自分の好きなロボット工学の勉強をすることができました」
「ロボット工学…」
「そうです。実は、この施設の介護ロボットはすべて僕が開発したものなんです」
「では、このYさんも…」
「ええ、今まではロックがかかっていたのでお話できませんでした。申し訳ございません」
「父さんは先程、彼女のお陰で幸せだと言っていましたね。どうしてだか分かりますか?」
「ああ、彼女は親切でよく気が利いて私の好みも分かってくれていて、まるで…」
「まるで?」
「…かつての私の妻のように…!」
「そうです、Yには僕の覚えている限りの母さんの性格やしぐさをプログラミングしてあります。
ただ、父さんの好みまでは僕は知りませんが」
「そ…そうだったのか」
「母さんは本当に最期まで父さんを愛していました。これを聞いてください」
息子はY看護婦の耳たぶにそっと触れた。
「お父さん、お久しぶりです。もう、お互いに昔の事になってしまいましたね。
あの時は突然出て行ってしまってごめんなさい。ご苦労されたでしょうね。」
Y看護婦はN氏の妻の声で話し続ける。
「お父さんのお仕事の邪魔になってはいけない。私達が出て行かなければいけないって
勝手に思い込んでしまって。でも大成功されたんですものこれで良かったんだと思います。
私が先にくことになってしまったけれど、本当に愛していました、さようなら…」
その後、幾日かしてN氏は天寿を全うしこの世を去った。
病室には1通のメモ書きがサインを添えて残してあった。
『遺言 私Nの全財産を Y看護婦の開発者に贈与する』
終わり
- 79 :
-
全米が泣いた・・・
- 80 :
- いい話だな
- 81 :
- 話を作ってくれる人がいてよかった
僕も頑張って作ろうかな
- 82 :
- みんな上手いよね。感心するわ。
- 83 :
- こう上手いのが投稿されちゃうと書き込み難いなぁ……
- 84 :
- よし、星新一に触発された俺が思いつきで書いてみるぜ!
- 85 :
- ショートショート 『鈍感な男』
ああ、また今日も会社に行かなければならない。もういかなくては。
テレビでは最近起こった人事件を頻繁にやっている。生まれたばかりの子供が
された事件だ。「なんとも可哀相だ。生まれたばかりでされるなんて。」
本当にそう思った。だが人間というものは鈍感な生き物だ。
そのときはそう思ってもテレビから離れればそんなことは忘れてしまう。
嫌なニュースを見て私はひとつ、ふたつ、せきをした。そういえば喉の調子が悪い。そりゃそうだ。
先週まで38度の猛暑日の連続、今日は20度を切っている。
夏にはクーラーでがんがんに部屋を冷やし、アイスキャンディーを食べながら
ああはやく冬になればいいのにと嘆き
冬にはこたつで温まりみかんをほおばりああ寒い、早く夏になればいいのにとわがままを言う。
ひどく鈍感な生き物なのだ人間という生き物は。
おっともうこんな時間だ。もう出なくては電車に遅れる。私は家を出た。
ちょうど途中の駅まで電車がすぎたころだった。猛烈な腹の痛さが襲ってきた。
もうこの世のものとは思えないほどの痛みだった。痛すぎる。
駄目だ、この電車は特急だからあと20分は止まらない。やばい、これはもたない。
となりのやつらがえらく幸せそうに見えた。ふざけるな。何で俺ばっかりこんな目に。
だんだん脂汗が出てきた。神様すいませんでしたもう悪いことはしません。
考えれば便所に行きたくなったら行きたい時に行って大をする。こんな当たり前のことが
とてつもない幸せだったのだ。そうだ、そうなのだ。
そのときになって苦しんでも遅いのだ。なんて私は鈍感な男だったんだ…。
神様、これからは幸せをかみ締めながら大をします。大をしたならば
必ず「ふぅー今日も大ができました。私は幸せでした」と唱えながらしますから。
結局なんとか、トイレには間に合った。
私は変なせきをして大好きなタバコを2本いつもより余計に味わって吸った。
なにやら喉がイガイガするが「ああなんて上手いんだ。何気ないことがこんなに幸せだったんだ」
そういいながら吸い終わったタバコを2本道端にポイ捨てして、歩き出した。
- 86 :
- 文章書くのムズ杉ワロタ・・・
- 87 :
- 発想が面白いと思った
- 88 :
- 『美女と野獣』
暑い。しかし、暑い。外は35度を超えている。
仕事帰りに拾った財布を交番に届けて帰って来た所だった。
「普通100万も入った分厚い財布落とさないだろまったく…」
お巡りさんにはこんなの届けるなんて
あんた今時の若者にしては珍しいなと言われたが
何が珍しいのか分からなかった。
テレビをつけると、今日から始まる月9のドラマが始まっていた。
ジャニーズ事務所の売れっ子超イケ面俳優と超美人女優の恋愛ものだ。
おそらく視聴率は軒並み30%超えだろう。
しばらくドラマを見ていると耳元で夏にはおなじみの嫌な羽音が聞こえてきた。
私の血を吸おうとしている。「しょうがないなぁ… どうだ旨いか?俺の血は」
たっぷり吸わせてやり、手で叩くのは可哀相だから窓から逃がしてやった。
窓に誘導するのに10分近くかかってしまった。
汗だくになった顔を洗おうと洗面所の前に立った。
「しかし不細工だなぁ俺は。もうちょっとましな顔だったらもてたのになぁ」
その時だった。誰かに後頭部をハンマーで打ち抜かれたような衝撃とともに
私は意識を失った。数分で意識を取り戻したが、どこか悪いのだろうか。
翌日何事もなかったように会社に行くために電車に乗った。
なぜか今日は自分を見る周りの視線が多い気がする。特に女性からの。
ふと女子高生の会話が耳に飛び込んできた。
「てか見た?ゲツク。主役不細工すぎじゃない?ヒロインもやばいでしょあの顔は」
『わかるわかる。あれはおかしい。もっと美男美女使うべきよ』
この子たちは美的感覚がおかしいのか?
会社に着き、午前中の仕事を滞りなく終え昼休みに入った私の前に行列ができた。
「これ食べてください。」 『お返しはいらないです…』
今日はバレンタインだった。だがおかしい。おかしすぎる。
私は生まれてこの方チョコレートをもらったことなんてない。
周りを見ると毎年山のようにチョコレートをもらう同期のNには誰もあげていない。
天地がひっくり返ったとしか思えない。
…そ、そうか天地がひっくり返ったのだ。
あの瞬間以来 世間の価値観がひっくり返ったのかもしれない。
つまり「イケ面は不細工に見え、美人はブスに見える。」
=俺はめちゃめちゃイケ面 ということになる。
そして美人がブスに見えるということは…誰も美人に見向きもしなくなる!
つづく
- 89 :
- >>85
文章は大分ぎこちないけど、やりたいことは何となくわかる
- 90 :
- 私はあこがれの超美人のMさんに告白し、成功。やがて結婚することになった。
同僚、家族口々に皆こう言った。
「こんな美人な嫁さんもらうなんてお前は幸せだな」
【絵に書いたような美男美女カップル】周りはみんなそう言った。
本当にその通りだ。本来不細工な俺がこんなに美人な奥さんを…
あれ?Mさんは新しい価値観ではブスなはずだが…まぁそんなことはどうでもいい。
やっぱり新しい価値観では私はイケ面なのだろう。
Mさんは「あなたは本当にいい男ね」と言う。
3年後のある日、洗面所に立つとまた後頭部を殴られたような衝撃とともに私は意識を失った。
それ以来あれほど人気があった私には、誰も振り向かなくなった。
イケ面イケ面ともてはやされることも全くなくなってしまった。
そしていつしか私達夫婦は【世界有数の美女と野獣カップル】と呼ばれるようになった。
一つだけ変わらないことがあった。
それはMがいまだに私を「いい男」だと言っていることだ。
おわり。
文章書くのムズ杉ワロタ・・・
- 91 :
- あああああああああああ夏なのにバレンタインにしちまったあああああ…
- 92 :
- よくあること めげずにがんばれ!
- 93 :
- 『卒アルカメラマン』
夕方、中学時代からの親友Nが家に遊びに来た。
こいつとは何をするときも一緒だった。完全に腐れ縁だ。
中学を卒業してもう何年が経つだろう。二人とも年を食った。
ふと中学時代のアルバムを久しぶりに見てみようということになった。
何もかも懐かしい。一枚一枚が記憶の片隅にあった風景を呼び覚ました。
「懐かしいなぁ。しかし、卒業アルバムってのは運動会とか修学旅行とか
イベントの写真も多いけど授業中とか休み時間とか何気ない日常を取ってるのがいいな。
しかも取られてる側がカメラマンを意識してないからすごくいい写真が取れてる」
『いや、実際バリバリに意識してたけどなー。でみんなカメラマンの方向に目向けちゃって
普通でいられなくなってんの。そんで見かねたカメラマンが
あー…私はいないものと思って普通にしててね
私目に入るとさ、いい写真とれないからさ、って』
「そういやそうだったな。おーこれも懐かしい。昨日のことのように覚えてるなぁ。
こう考えると人生ってあっという間かもな。」
『うーん、なんだかさみしいな。死ぬ時に神様が人生の卒業アルバムみたいなの
くれたらいいのにな。』
こんな会話を交わしているうちに私はある一つの事実に気がついた。
過去の記憶がふと思い出される時、なぜか決まって思い出されるのは毎回同じような場面が多いこと、
そしてそれはなぜこんなことを覚えているのだろうというような、取り立てて特に印象深いことも起こらない
本当に些細な日常の場面が多いことに。まるでだれかがその些細な日常の場面でシャッターを押しているかのように。
「きっと、神様が卒アルカメラマンを派遣してんじゃない?
死ぬ時に見せるためにってさ。あーもうこんな時間だ、帰るわ」
友人はおどけて帰っていった。
外はすっかり暗くなってしまった。私は卒業アルバムを元の場所に戻し、
部屋のカーテンを勢いよく引いた。
その瞬間、カーテンを引く「シャーッ」という音と同じくらいのタイミングで
かすかに【カシャッ】という音が聞こえた気がしたのだが、まぁ、気のせいだろう。
【あー…私はいないものと思って普通にしててね
私目に入るとさ、いい写真とれないからさ】
- 94 :
- 前スレで例の薬を書いた人です。覚えてくれてると嬉しいんだぜ!
その部屋には、一人の男が一日中酒を飲んで過ごしていた。
とは言っても、今日は休日ではない。男はかなり前から会社には行っていなかった。
普通は、すぐにお金に困るはずだが、男はそうならなかった。
彼は鞄を持っていた。それは少し大きめでの色あせた、時代を感じさせる鞄だった。
もう一年ほど前になるだろうか。男がまだ会社にきちんと勤めていた頃。
彼はとても真面目な人物だった。真面目に働き、誤魔化しをしない。嫌がられている仕事を進んでやる。良い人の良い所ばかりを集めたような人物だった。
その人の良さが認められて、男は異例の昇進をした。もちろん、昇進してもきちんと働いた。
むしろ責任のある地位ということで、仕事にかける熱心さはさらに強くなった。
それからしばらくした頃である。男がベッドで寝ていると、夢の中で声を聞いた。
「君は真面目でしっかりした人物だ。そんな君にちょっとしたプレゼントをあげよう」
「あなたは一体……」
「うむ。名乗っても分かるまいが、強いて言えばお前たちの言うところの神だ」
「か、神様ですって」
「そうだ。そしてプレゼントというのは、この鞄だ」
「鞄ですか……」
「もちろんただの鞄ではない。なんでも取り出せる鞄だ」
「と、言うと」
「欲しいと思ったものを思い浮かべながら手を入れると、なんでも出てくるのだ。忙しいお前さんにはちょうどいいだろう」
「なんというすばらしい鞄でしょう」
「うむ。ただし一つ注意してくれよ。その鞄は……」
その時、ベッドから転がり落ちて、男は目が覚めた。
「なんだ、夢か。しかしあんな鞄が本当にあったら便利だろうな……」
しかし、男はそこで言葉を詰まらせた。
部屋の中で先ほど神様が言っていたらしい鞄があったのだ。
「や、するとさっきのは本当のことだったのか」
彼はおそるおそる鞄に手を入れた。酒を思い浮かべながら。
最初は何もなかったはずの鞄に、手ごたえがあった。
引き抜いてみると、まさしく酒が出てきた。しかも、思い浮べた通りの高級品だった。
それを飲む。確かに本物だ。ということは、この鞄も本物ということになる。
かくして、男は会社に行かなくなった。
いつでも好きな物が好きなだけ手に入るのだ。働いてなんになる。
「まさか遊んで暮らすのがこんなにおもしろいとはなあ。今まで忙しく働いてきたのがばからしくなってきたぞ」
最初こそ、同僚やら社長やらが男の家に訪ねてきたものの、彼が会社を辞めると言ってからは全く来なくなった。
もちろん鞄のことは誰にも言わなかったし、誰にも見せなかった。
「そういえば神様が何か注意しようとしていたけど、なんのことだったのだろう。きっとこの鞄を自慢するなと言いたかったんだろう。誰も欲しいと言うに決まっている」
腹が空けば鞄からあらゆる料理を取りだして食べる。暇になれば鞄はあらゆる娯楽を提供してくれた。
まさに至れり尽くせりの生活だった。
今ではこの部屋に来るのは、部屋代を取りに来る大家くらいのものだった。そんなときも鞄からお金を出せばいい。
男は完全に働く気が失せていた。
そんな生活が続いていたある日。
ノックの音がした。今日は部屋代の日だったかなと思いながら、男は鞄からお金を取り出そうとした。
蓄えなどあるはずがない。いつでも何でも手に入るのだから。
しかし、紙は紙でも紙幣ではなく、ただの紙が一枚だけ出てきた。
よく見ると、このような文章が書かれていた。
毎度ながら、ご利用ありがとうございます。初使用から一年が経ちましたので、本日を決算日とさせていただきます。
あなたは支出と収入のバランスが悪く、すでに貯金は底をついております。
それでも使用されたため、多額の借金が発生しております。次回の使用は借金を片付けてから……
そしてその下には、信じられない額の数字が書き込まれていた。
「や、この鞄はなんでも無限に出せる鞄ではなく、神様の買い物道具だったのだな」
借金を返さないといけないからか、もはや鞄に手を入れても、何も出てこなかった。
- 95 :
- 星新一先生のショートショートコピペしてんじゃねーの?
とでも疑いたくなるような次元の再限度の高さ
惚れた
- 96 :
- >>93
OLとか主婦向けにいい話集めた本とかにありそう
>>94
これはうまい
星っぽくもある
- 97 :
- >>94
「一杯の水」も覚えてますよー。
- 98 :
- 『見えなかったもの』
2040年、ガソリン車はすっかり影を潜め電気自動車が主流となり
テレビは全て3D、テレビゲームも3D、音楽でさえも科学的にも目の前で歌手が歌っているのと
変わらないと証明されるほどの3D音質なるプレーヤーも出回るような時代になった。
おじいさんとおばあさんは孫のN君に3Dメガネをつけるとまるで目の前に敵がいるかのような
最新のシューティングゲームソフトをプレゼントするためにN君宅へ向っていた。
「喜んでくれますかねぇ?」
「きっと喜んでくれるとも。なんたって最新のゲームじゃからのう。
店員さんも本当に画面上の敵がこっちに向ってくるように見える3Dだからとすすめてたしのう
まるでゲームなのに本当の人間がそこにいるみたいにみえるそうじゃよ。きっと気に入ってくれるじゃろ」
「喜んでくれるといいですねぇ。しかし、時代も進化しましたねえ…私らの時代には考えられないような
ものばかりです」
「そうじゃな。3Dばかりで、本当にある大事なものが見えなくなるようにも思えるわい…」
無事N君宅につき、プレゼントを渡すとN君は大変嬉しがった。
「おじいちゃん、おばあちゃん、ありがとう!!さっそくやってみるよ!
わぁーすっげー!本当に敵がいるように見えるよ!バン!バン!
面白い!ありがとうおじいちゃんおばあちゃん!」
「ほう、それはよかったのう。わしらは用事があるもんでこれで帰るよ
物騒な世の中じゃからお父さんお母さんが帰るまでおうちで留守番しているんだよ」
N君はゲームに熱中していた。3Dメガネをつけて次から次へと本物に見える敵を
おもちゃのピストルでやっつけた。
ふと玄関のドアが開いた気がした。おかあさんが帰ってきたみたいだ。
「おおっ!?なんだ?いきなり強そうなやつがきたぞ。こいつが最後のボスか!?
黒いマスクをつけて顔が分からないな。カモフラージュだな!?そうはいくか!」
パーン! 乾いた音とともに火薬の臭いが立ち込めた。
その後おじいさんとおばあさんは100歳まで長生きしたが
死ぬ間際まであんなゲームを贈らなければと、自分達を責め続けた。
- 99 :
- 星新一らしさを出したいならば2040年みたいな直接的な表現ではなくて
20XX年とかにした方が良いかもしれないです。
それと「その後おじいさん〜責め続けた。」はないほうがスッキリすると思いました。
それかその文は残して「おかあさんが帰ってきたみたいだ。」をなくしてもスッキリすると思います。
つたないアドバイス済みませんでした。
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