1read 100read
2011年11月1期22: 【シェア】みんなで世界を創るスレ7【クロス】 (497) TOP カテ一覧 スレ一覧

【シェア】みんなで世界を創るスレ7【クロス】


1 :10/10/24 〜 最終レス :11/11/10
このスレは皆でシェアードワールドを創るスレです
※シェアードワールドとは※
世界観を共通させ、それ以外のキャラ達を様々な作者がクロスさせる形で物語を進める事です。
要するに自らが考えたキャラが他作者のSSに出たり、また気に入ったキャラを自らのSSにも出せる、
という訳です。
現在すでに複数のシェアードワールドが展開されています。それぞれの世界で楽しんでみたり、新しい
世界設定を提案してみてはどうでしょう。
分からないことはどんどん質問レスしよう、優しいお兄さんやお姉さんが答えてくれるかもしれないよ。
さぁ、貴方も一緒にシェアードワールドを楽しみませんか?
前スレ
ttp://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1281103438/
避難所(規制等の際はこちらへ):みんなで世界を創るスレin避難所その2
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1276257878/
まとめwiki
http://www26.atwiki.jp/sousaku-mite/pages/286.html#id_a459e271
現在このスレでは 4つぐらいの展開されてるよ。この世界、俺が盛り上げてやろうじゃん!て人は
気軽に参加してみたらいいんじゃない?
・閉鎖都市
あらゆる社会から隔絶され、独自の発展を遂げていく「閉鎖都市」。
そこで暮らす様々な人々と文化を作り出そう!
・異形世界
日本を襲った大地震。同時に突如として現れ、人々を襲う「異形」。
異形たちが持つ特殊な元素「魔素」を巡る対立を描こう!
・地獄世界
強大な権力を持った小さな少年、閻魔殿下を中心に繰り広げられる笑いあり、涙ありの物語。
なんでもありの「地獄」で楽しもう!
・温泉界
蒸気沸き立つ謎の世界「温泉界」に住む一人の少女「湯乃香」。
彼女が退屈しのぎに始めたのは、なんと異世界からの住人召喚!?
他スレからの参戦も歓迎だ!あんな人とこんな人が風呂でまったりしちゃう!?
・???界
閉鎖都市・異形世界・地獄世界を監視している境灯の世界。
基本的に何をしても良いので灯ちゃんのせいにして好き勝手しよう。
特に展開はない!

2 :
>>1乙!!

3 :
乙!!

4 :
>>1乙!
…って、な〜んでですかぁ〜!?
あと二日ですよ〜そろそろ当日の事話しといたほうが…。
何時から一年祭始めるんですかぁ〜?

5 :
ふ、では一番槍はこの私が引き受けよう!

6 :
ええと、やっぱりスタートは26日0:00でおkなんでしょうか?

7 :
一日中祭する気ですか!どんだけ元気なんですか!
というか明日だよみんな!静かすぎやしないかい!

8 :
よし、ぼちぼち行くか(キリッ

9 :
気が早いぞw

10 :

 ――ある平行して存在している世界群、それらが唐突に重ね合わせられた。
   世界はその存在を曖昧にし、重ね合わせられた世界間にはそれらのいずれでもない世界が現れた。
   文明の跡だけが見受けられる無人の世界、しかしそこに幾ばくかの影が動いていた。
   世界を重ね合わせた者にとってイレギュラーな彼等の正体は、平行して存在している世界群に居た者達だった――

11 :

            $$$$$
 老朽化して荒れ果てたビル群、そしてそのビル群を飲みこもうとしているかのような森の群れ、それらの光景を一通り眺めまわして若侍は首を傾げた。
 腰に佩いている一振りの太刀を確認して、若侍――迅九郎は呟く。
 「拙者、また別の世界とやらに迷い込んでしまったので御座ろうか?」
            ●
 死の運命から死をもって逃れた者、桐島祐樹は呆れを宿した半目で周囲を見回した。
 そこにあるのは自分の住んでいる日本とも、以前訪れた地獄とも別の風景であり、
「あれか? また俺死んだとか言わねえよな?」
 大きくため息吐いた。
            ●
「作った本人に似てヘンクツな機械になってしまったかな?」
 タイムマシーンと呼ばれる機械から閉鎖都市へと跳んだはずのハカセは困ったように頭を掻いた。
「さて、ワシの他に誰か人はいるのかな?」
 居ないのならそれでも構わないと思いつつ、彼は歩きだす。
            ●
 蛇の目を携えたエリカは背の翼を月光に照らされながらタバサと共にその世界を空から見下ろしていた。
「地平線まで人の作る灯りが無い……人の世界が一晩で終わってしまったとでも言うのかしら?」
 呟く主に羽をはばたかせたタバサが猫の言葉で何やら訴えかけた。
 その声と尻尾が示す先は緑に侵食されているビル群の影で、そこに微かに見受けられるのは、
「火……? 見に言ってみましょう。私の初恋の君があの灯の主かもしれないわ」
 花柄の着物と紺袴が宙を翔けた。

12 :

            $$$$$
 ――異なる世界から来訪した者達はその世界の違い故に対立を経験する。
   互いの素性をどう受け容れるのか、どういう距離感で彼等は相対するのか。
   彼等は共に手を携えるのか、それとも――
            $$$$$

13 :

「先程のその棒から伸びる刃物、その身のこなし、どういう手品かは分からないが貴様からは戦いなれた者の臭いがするな?」
 銃口を突き付けて青年、ゲオルグは問いかけでなく確認を口にする。
 同時にアレックスと呼ばれていた青年は銀髪の少女、クズハへと複雑な視線を向けていた。
 怪しい動きをしたら彼女も攻撃対象になるのだろう。それを理解して、ゲオルグを刺すように見据えた匠も口を開く。
「あんたこそ、相当場数を踏んでるな?」
 墓標の先を突きつけての言葉に頷きは無く、ゲオルグは自分たちに起こった異常の正体を問う。
「今の我々の状況はそちらの手品の仕業か?」
「違う、俺たちも事態が掴めていない」
 綱渡りのような一触即発の空気で状況確認をしている二人。
 その間に金髪の少女が仁王立ちした。
 彼女はいっそ清々しい程の正義感で声を張り上げる。
「閉鎖都市特務室室長、アシュリーだ。今はとりあえず落ち着く事が肝心だろう、そこでこの場を私が預からせてもらう!」
「うわああああ、ほっとけよ室長ぉ」
 彼女の部下であるハーヴィーがめんどくさそうに頭を抱え、状況を見守っていたゲオルグと匠の知り合い達が仲裁に入った。
            ●
 違う世界が重なった時、出会えぬ者達が再び出会う事もある。
 そんな奇跡を目前に示され、汚れたツナギに短髪の女は呆然と呟いた。
「ズ……ズシ?」
 ズシと呼ばれた埃に汚れた白衣の青年はほっとした笑みで応える。
「……アンジュか、やっと、会えた」
            ●
 平賀という名をもつ老人は目の前の若者が語る能力≠聞き、嘆かわしげな声を上げた。
「透視能力じゃと? 覗きの美学が分かっておらんなぁ、君は!」
「視れるという結果こそが重要だろうが! 語って聞かせるだけの美学があるなら是非とも拝聴したいもんだな」
 透視能力を持つ男、天野翔太の言葉を聞き、老人の目に圧倒的な情熱が宿る。

14 :

            $$$$$
 ――集結した各世界の住人達は自分たちが置かれた状況を把握しようと努める。
   ここはどこなのか、なにが原因なのか、元いた世界はどうなってしまったのか――
            $$$$$

15 :

「キッコ君、これは異界や結界の術かの?」
 平賀の言葉を受け、キッコは首を横に振る。
「さて、どうもそのような術と似てはいるが、それにしてはここに居る者達の元いた場所の情景、そして時間帯も文化をもが一定せんの」
 喋る狐という存在をそういう文化≠ノ属していない者達の中ではいち早く受け容れたハカセが私見を述べる。
「ワシから見たらここは元いた場所の時間をえらく経過させた結果に見えなくもないがなあ」
「しかし、ハカセが行こうとしていたという閉鎖都市はこのような場所ではない」
 反論したゲオルグに続くように白髪二本角の鬼が付け足す。
「我々の居た地獄とも大きく違うな」
「俺たちの日本では聡角のような鬼は異形って言われてる。だけどそっちじゃそうでもないみたいだな。桃太郎ごっこしようものなら大罪人だ」
 着流しの男の自嘲気味なシニカルな笑いがあり、
「こりゃアレだ。世界が違うんだな。どうも複数の世界が繋げられたらしい」
「にゃ? 殿下、どういう意味にゃ?」
 侍女長と呼ばれる猫娘の疑問にまだ十代も始めくらいの見た目の少年が「あー」と言葉を探すように悩み、
「うーん、まあ、世界の理に疎い奴は自分達の現実が絵本や漫画の中の世界とごちゃ混ぜに繋がったとでもおもっときゃいい。つまり――」
 殿下と呼ばれた少年は周囲を見回し、自然に飲みこまれつつある文明の跡の様子を見てため息を追加した。
「……ゲームみたいな世界ってことだな」

16 :

            $$$$$
 ――状況を理解した者も一応納得した者も、己の身に降りかかった理不尽にどう対処するか考える事となる。
   各々の悩みの間にも時は流れて生活は営まれる――
            $$$$$

17 :

「わ、匠さん、匠さん! 迅九郎さんが狸になってしまいました!」
 銀の髪を揺らすクズハと共に迅九郎を眺めていた匠は呟く。
「……呪の類か?」
「ああ、気にせんでもよい、あれはわしのかけた罰じゃ」
「藤ノ大姐が?」
「そうさな」と頷く藤ノ大姐の衣服は彼女が常にそうしているままに乱れている。
 それをブロンドの髪を長く伸ばした女性が窘める。
「あの、着物をもう少ししっかり着てはいかがでしょうか?」
「なんじゃセフィリア、別に気にするものでもなかろう」
「そ、そうじゃ! そのしどけなさに混じる重ねた齢からくる老練さがその身体を輝かせるんじゃぞ? 隠すなんてもったいない! なあ官兵君!」
「ええ、まったくですね! 博士!」
 カメラを装備した男二人が藤ノ大姐の言葉を擁護した上で互いにサムズアップでコミュニケーションを交わす。
 そんな男二人に金髪ツインテ型ロボットHR-500、トエルが同じ機関に所属している白石に言う。
「ふぇ、こういう年のとりかたはしたくないですし」
「そうだべな」
            ●
「元の生活に戻る為には皆で固まって原因を探った方が賢そうだな」
 無精ひげが生えた顎を撫でさすりながら呟く神谷を金髪の少年が縋るように見上げた。
「神谷さん、俺たち帰れるかな?」
「その頭でよく考えて行動する事だな。――なるようになるだろう」
 益体無さそうな答えを投げやりに返した神谷は煙草を咥える。
 そのすぐ横では異世界のそれなりに偉い人間であるらしい平賀が、異世界の覗き魔天野翔太に己の生き様を語っていた。
「重要なのは場所取り、これを失敗するとよいアングルで裸体を臨む事はできないんじゃ、
 そしていつばれるかわからないこの緊張感……これが、覗きの美学じゃよ……っ!」
「おお……っ!」
 神谷はなんとはなしに思う。今回の問題、実は難易度低いのではないだろうか。

18 :

            ●
「こんなものかの?」
 キッコは地面を抉り抜いて水を溜めた巨大水たまりに狐火をぶち込んでいた。
「もっと火力強めてー」
 そう指示を出すのは湯乃香、
 彼女は公序良俗が云々と言い出したお堅い連中に着せられた服をここぞとばかりに脱いで即席の風呂に浸かっている。
 そして湯乃香と元の世界で顔なじみであった天野翔太は同じく即席で作られた男湯方面の湯加減を確かめようとして、
「貴様が視姦獣か……覚悟は良いな?」
 これもまた元の世界で愉快な縁が繋がっている高瀬に軍人として鍛え上げたその身のこなしで追い詰められていた。
「あの、高瀬さん?」
 僧形の男、安流は高瀬の不自然な動作に不穏なものを感じ、
「安流さんヘルプ! へループ!!」
 天野翔太の必死の救援要請が響き渡った。
            ●
「あー、夜々重」
「なぁに?」
 同じ湯につかりながら、艶やかな黒髪を結った夜々重は祐樹に身を寄せた。
「ここは男湯でな」
「大丈夫、入ってこないように見張っててってお願いしてるから」
「じゃあせめてタオルくらいは」
「いいじゃない」
 そう言って夜々重は祐樹と更に距離を詰め、祐樹は身体を硬直させる。
 そんな二人を一羽のカラスが見下ろしていた。
 首に付いた通信機から平賀が声をかける。
「ハナたーん、もう少し上から俯瞰していこうかのう」
 足に小型カメラを括りつけたカラスは指示に従い羽を動かす。
 そしてカメラの出元であるクリーヴは、それらのリアルタイム編集作業を続けながら独り言を呟いていた。
「閉鎖都市とも違う、いや、世界が違うと言っていたか……どういう事なんだ、変な生き物はいるし変な機械はあるし、挙句魔法だぁ?」
 世の中の理不尽さに対する愚痴は途中で遮られた。
「クリーヴさん、覗き趣味はよくないよ」
 声をかけてきたのは同じ閉鎖都市からこの世界に流れてきたというクラウスだった。
 微笑をたたえた彼にクリーヴは事件の首謀者の名を出して自分から矛先を逸らそうとして、
「待て、待つんじゃ火燐たん! わしとしてもただの覗きでは無く、そう、研究! 研究じゃよ?!」
「黙れ爺! くそ、五大派閥にはこんな奴しかいないのか……!?」
 既に別の矛が向いていたらしい事に軽く絶望する。
「お兄ちゃーん、こっちにも覗きしてる人がいるよー」
 ミシェルの声を聞いたゲオルグは適当に指示を出す。
「……当てないように撃ちなさい」
 ゲオルグが小さく呟いた瞬間に射撃音。そして湯に何かが落ちる音。
「あ、れ? ミケさんにブチさん?」
「にゃ、ばれたニャ」
「お前のせいニャよブチ」
「そんな事ないニャ! それとお前がブチニャ!」
「そもそもなんであなた達が覗きなんて?」
 湯乃香の声を聞いて火燐がはっと顔を上げた。
「おい! それは囮だ! 春夏秋冬がどこかで奇行を――」
「うふふふふふふ流石は火燐たん! 私の事なんてお見通しってわけね! 以心伝心!
 嗚呼、これこそ真実の絆! 私達を繋ぐ絆はきっと赤い糸!」
 洗濯用に脱がれた衣服を持ちだし、下着類を被った春夏秋冬が満面の笑みで火燐へ駆けより、カウンター気味に殴り飛ばされた。
 クリーヴは幇助の罪に問われるのを予感しながら思う。
 レヴィン、どうも世界はまだまだ撮らなければならないものが多いようだ――。

19 :

            $$$$$
 ――そして現れる敵。
「ごきげんよう、私はアカリと申します。少々越権行為ではありますが、世界を操作させていただきました」
   ――彼女の目的は――
「何故貴方がたがここに居るのか分かりませんが、何かの縁でしょう、
一度世界を破壊してより平和な世界を創ろうと思います。手を貸しくださいな」
   世界の在り様を変えるものだった――
            $$$$$

20 :

「かぐや……殿?」
 呆然と呟かれた安流の言葉に、名を呼ばれた、女性と見まごう程の美貌の男――かぐやらしき者は哀しそうな顔で笑んだ。
「……よくある話です」
 同じ名を冠する魔装同士が相対した。
            ●
「人についたという噂は真だったのか、信太主よ」
「人は面白いぞ? キヨヒメよ。それにしても、貴様がそちらにいるようではアカリとかいう者の創る世界も平和とはいかなさそうだの」
 巨大な蛇と狐は双方を睨み据えて吼える。
            ●
「我は我蛾妃よ、忘れたか? 殿下?」
「馬鹿な……」
 今はとして地獄に有るはずのかつての悪鬼の名に殿下は戦慄を覚えた。
            ●

21 :

            $$$$$
 ――現れた敵はいないはずの者で、
   敵になるのは争いを望むものだった
   そしてかれらは立ち上がる。自らの世界へと帰還するために――
「蒼燈鬼聡角、私にも待つ者が居るのでな、悪いが全力で行かせてもらおう」
「わざわざ嘆願書をしたためてくれた者達に報いるために戻ってしなければならない事があるのデス。邪魔をするのならブッしマスヨ?」
「孤児院に帰らせてもらう、邪魔をするのなら鉛玉の味を教えてやろう」
「拙者、妖異破りの迅九郎。生まれてこの方、妖物に不覚を取った験しはござらん故、覚悟致せ」
「吸血種を嘗めるなよ? 蕃夷の輩が」
「ふぇ! ふえふえふえふえふえふえ! ふえぇぇぇぇぇぇ! ふえぇッ!!」
 ――すーぱーみんつく大戦 君の脳内で放映開始――

22 :

おおぅ、なんかこう、安心の低クオリティ!
関係各所に頭下げにいかないとヤバゲだぜヒャッハー!!!
全キャラ使用とか無理があった! いろいろ詰め込もうとして大きくコースを外れた気もする!
しっかり説得コマンドを活用しないとたぶんBADエンドになるから気をつけろぉ!
一部キャラクターは日常シーンでも油断しているとゲームオーバーになっちゃうぞ! 要注意!
さて、あとはじっくりと祭りを楽しませてもーらおっと

23 :
これはw一周年企画らしい、最初を飾るにふさわしい作品ですね!
さてみなさん、一周年祭はっじまりますよぉー!

24 :
うわっ、投下時間までGJです。お色気絡みも充分ぽいw
ちと寝過ごしましたが一周年おめでとうございます!

25 :
投下乙!!アンド一周年おめ!!
そして
覗きチーム万歳!!

26 :

湯乃香「湯乃香と!」
アリス「アリスの!」
「「みんなで世界を創るスレinレディオ・一年祭スペシャル!」」
湯乃香「とゆーことで始まったわよ一年祭ィ!」
アリス「私元々他スレのキャラなんだけど…いいの?」
湯乃香「こまけぇことは気にすんな!」
湯乃香「みんつくスレは、移転クライシスに巻き込まれた世界の住人の方のご来場を歓迎していま〜す」
アリス「そんな事言って乗っ取られたりしちゃうかもよ〜?今でこそ仲良くしてるけど、私だってなにをするか分かったものじゃないわ」
湯乃香「みんつくスレ住人なめんなよ!ごちゃ混ぜするほど元気になるみんつくスレなめんなよ!」
アリス「それはともかく、一周年なんでしょこのスレ」
湯乃香「いかにも」
湯乃香「たこにも!」
アリス「湯乃香絶対半熟英雄とか好きでしょ?」
湯乃香「一周年っちゅーことでぇ!こんなにも沢山の花束が…!」
アリス「…来てないわね」
湯乃香「薄情者だらけですかこの板は!ショータっち!花束とかお祝いの品とかお祝いの品とかないの!?」
翔太「来てたらとっくに…と言いたいところだが、一個届いてたぞー」
湯乃香「なにこれ!?お祝いの品!やっぱり来てるじゃないですか〜なにかな〜」
アリス「?…何々…『温泉界並びにみんつくスレの者共。一周年とは、まぁ祝ってやらんこともない。コーヒーを奢ってやろう』ってこれってまさか」
湯乃香「何かコーヒーばっかりー!」
翔太「無いよりはマシだろ…」
湯乃香「私一度コーヒー風呂ってしてみたかったの〜」
アリス「って何温泉にコーヒー入れてるのよ!!」
翔太「というかお前らナチュラルに温泉入ってたのな」

27 :
湯乃香「あー、カフェインの刺激臭〜。これから徹夜してる身にとっては助かるわ〜」
アリス「※中の人も徹夜してます」
翔太「勤め先潰れたしな」
湯乃香「それ以上言ったらぶちすぞヒューマン!」
翔太「お前湯乃香か中の人かはっきりしろよ」
湯乃香「嫌だなショータっち!中に誰もいませんよ?」
アリス「中に誰もいませんでしたからねー」
湯乃香「中に誰かいればよかったんですけどねー」
翔太「お前ら深夜のテンションで色々おかしいぞ」
アリス「人はただ流れに身を任せればいいって、そう思わない?」
湯乃香「もはやラジオでも何でもない気がしてきた……
だけどそれは最早些細な問題よ!祭なんだから、盛り上がればそれでいいのよ!
湯乃香「とゆーことで、湯乃香、ぬぎまーす…って、最初から脱いでるじゃないですかぁ〜」
アリス「ノリツッコミ乙」
翔太「……まだ脱げるじゃん?」
湯乃香「へ?」
翔太「その頭のシャンプーハット。そういえば取ったことないよなそれ」
湯乃香「あ、いやそのこれは〜」
翔太「何?なんかマズいことでもあんのかよー」
湯乃香「それはぁ、そのぉ」
アリス「脱いじゃえ。えいっ」
スポッ
湯乃香「」

28 :
翔太「……?おーい、湯乃香ー?」
アリス「なんかシャンプーハット取ったら動かなくなったわね。もしかして、このシャンプーハットが本体なんじゃない?」
翔太「まさか〜…!?」
アリス「あはは、そんなわけ無いよねぇ〜って、どうしたの?ショータくん」
翔太「アリス…う、うしろ」
アリス「うしろ?……ッ!?」
カポッ
翔太「湯乃香のシャンプーハットが…アリスの頭に…!まさか本当にアレが本体…!?」
アリス『ファファファ…どうやら私の正体に気が付いたようだな、天野翔太よ…』
翔太「お前は一体…?」
アリス『私は遥か遠い宇宙からこの星を侵略しにきたシャンプーハット星人な〜のだ〜』
アリス『この星を全てフィンランド式本格派サウナに変えてやるのだ〜』
翔太「サウナにシャンプーハットは使わなくね?」
アリス『だまれ!白樺の葉で叩くぞこらぁ!』
翔太「や、やめろ!血行が良くなる!」
アリス『もうにげられんぞー!』
翔太「うわあぁぁあああ!」
かくして、世界は核の炎に包まれた…
〜BADEND〜
灯「……ハッ!夢か」
湯乃香「違う、それは私の幻術だ」
灯「なんだと?……なるほど、やはり天才か…」
翔太「…もう終われよ」
おしまい

29 :
徹夜してたらテンションがおかしくなった

30 :
バロスwww
中の人頑張れw

31 :
おはよー
ttp://www.gazo.cc/up/18342.jpg

32 :
温泉界は天然温泉ではなかった説

33 :
平賀爺 「……おお、こんな嬢ちゃんたちが何故トルコ風呂なんぞに……」
で、昼休み投下

34 :

果てしない虚空を音もなく漂う、優美な白銀の塔。小天体とも呼べるその巨大な円筒では、幾千の世界の森羅万象を記録し、その正常な運行を人知れず見守る『記録者』たちが日夜忙しく働いている。
黒髪の小柄な少女クロエ=ティリアスはそんな『塔』の一室で時空を遡り、歴史の影に埋もれた真実を見定める『航時調査課』に所属していた。
そして今、彼女がようやく座標設定を終えた航時ポッドに乗り込み、遥かな過去まで時を遡ろうとしている人物こそ、この塔への最初の赴任者にしてクロエたち『記録者』すべての長である境灯(さかいあかり)その人だった。
「……ごめんごめん、遅くなってしまいました……」
使い込んだ革トランクを引きずり、相棒の鳥丸さんを入れた鳥籠を提げてバタバタと航時室に現れたのが灯だ。その姿は遥かな昔、彼女がたった一人この塔に赴任した時といささかの変わりもない。
「……早起きしてあれこれ揃えたんですが、結構な大荷物になっちゃって……」
「あ、後部シートを撤去しました。荷物はそこに置けます」
いつまで経っても『監視界の長』にふさわしい威厳とは無縁な彼女のいでたちに苦笑しながら、クロエはずっしりと重いトランクを受け取る。
クロエにとってはそもそも、今回の時間遡航の目的さえ現在の灯の地位からは考えられぬ奇妙なものなのだ。
「……長よ、貴女自ら時を遡るほどの事案なのでしょうか? 先ほど私が調べた限り、三世界の記録は完全なものでしたが……」
クロエの質問は灯の部下である記録者すべての疑問でもあった。灯が着任して最初に手掛けた『地獄』『異形』『閉鎖』の記録は、いまや数百人の記録者が膨大な異世界の監視に携わる今でも、かたくなに灯が専任で行っている。
全長数kmにも及ぶ塔の頂点、さながら鉛筆の芯のごとくちょこんと存在する古ぼけた煉瓦造りの『最初の塔』と三つの世界は、多忙な灯が唯一部下たちに譲り渡すことない彼女の大切な聖域なのだ。

35 :

「……あはは、優秀なクロエ君たちがいれば、小生なんかどれだけ長いこと留守でも全く大丈夫でありますよ!!」
「……はぁ……」
まだ怪訝な顔のクロエを横目に颯爽と航時機に飛び乗った灯は、見事に脚を滑らせキャノピーで頭を強打した。うっと呻いた彼女に慌てて駆けよったクロエは、そのままじっと動かない灯を少し心配そうに眺める。
ややあって灯はクスリと微笑み、目を瞑ったままこの生真面目な部下に訥々と囁いた。
「クロエ君……小生は一記録者として『第一次掃討作戦』を、『我蛾妃の乱』を、そして『告死天使の大粛清』をどうしてもこの目で見、体験しなければならないのでありますよ。どうか、小生のわがままを許して下さい……」
ようやく顔を上げた灯が長い記録を続けてきた異界、絶え間なく変化する三つの世界は未だ静寂とは程遠い賑やかな世界だ。そこで数多の悲喜劇を繰り返す住人たちを見守ってきた灯の瞳に満ちる信念の輝きは、即座にクロエの困惑を消し去る真摯さに満ちていた。
「……わかりました、長よ」
卓越した手際で航時機の最終チェックを済ませたクロエは恭しく薄いキャノピーを閉じ、笑顔で手を振りながら眩い時間流に包まれてゆく灯を見送る。

36 :

「……どうか、実りある旅を……」
一瞬の低い唸りと閃光に包まれた広い航時室から、灯と鳥丸さんを乗せた最新型の航時機は姿を消した。果たして彼女は何を目撃し、何を記録して帰ってくるのだろう。
もうずっと前、自らが管理していた世界のあっけない終焉を経験し、それからずっと明解な理論のみで付き合える機械だけと向き合ってきたクロエは、迷いつつ手元の端末を操作してある資料を呼び出した。
『新規:M22-1026界:名称未定』
忙しい同僚が持て余している最新の記録対象のひとつだ。もしクロエが担当を申し出れば、航時機オペレーションを務めながらでも専任でこの新世界を見守り、記録することが出来る。
「……テクノロジーは混合特殊型。居住生物、別記2……ええと……」
……いつしか記録者クロエ=ティリアスは夢中でモニタを覗き込み、まだ見ぬ生まれたての世界にその想いを馳せていた。
おわり

37 :
投下終了
また夜にもう一編投下予定

38 :
おつん
本編的にも見たいよねその3つは
投下作品が間に合わなかったから代わりに絵で支援するのぜ
即興で描いてるからクオリテイ低い…匠&クズハちゃん!
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1484.jpg
灯の容姿はこんな感じ…でいいや
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1483.jpg

39 :
ふぎだしにブチの言葉を入れて侍女長を怒らせよう!
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1485.jpg
使用例
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1486.jpg

40 :
中の人www
不況はこんなところまで……
クロエ=ティリアスってことはアリスの親戚さんだろうか?
続きがそろそろ来ないかと楽しみにしてます
絵! 来た! 絵!
匠君も描いて頂いて感涙です!
ブチ超悪い顔www

41 :
一周年なのに勢い弱いよ!何やってんのぉ〜!
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1487.jpg
もし本編がこうなってたら……

42 :
平日だから人少ないんだろ

43 :
四コマみて思ったけど本編もここらへんでとまってんだよな
ハイカラの人にマジで続き書いて欲しい

44 :

「……お、おい、ちょっとタンマだタンマ!! 待て……」
まるで慌てふためく我堂の姿など見えないかのように、刺客たちは手にした武器を収めゆっくりと集まってくる。いずれも風体に似合わぬ、恐るべき手練れの戦士たちだった。
「おい俺!! しっかりしろ!! 冗談じゃねえぞオイ!!」
腹部を貫通した魔素刀の柄を握りしめ、ぴくりとも動かない蘆屋我堂。しかしその周りを右往左往する『もう一人の』我堂が刺客たちの眼に映っている様子はない。
確かに飛来した『アンジュ』の魔素刀を避け、我堂は右に跳んだ筈だった。そのとき一瞬だけ意識が遠のき……彼は傍らでガクリと崩れ落ちる自分自身の姿を見たのだ。
不覚にも敵を侮り、その短く血なまぐさい人生の幕を降ろしたのは……
「……間違いなく蘆屋我堂だ。アンジュ、この首を然るべき所に届ければ結構な賞金が手に入るよ」
シルクハットを被った『伯爵』が言う。しかし見事に我堂を討ちとった女戦士アンジュは、興味の無い表情で小さくかぶりを振った。
「……お金なんか要らない。なんでだろ、こんなに……虚しいなんて……」
「……復讐なんてそんなものよ。それにアンジュ、私たちが賞金稼ぎの真似事なんかしてたら、きっとゴンドーが悲しむわ」
異形の右手を持つ竪琴弾きの女が応える。まさか旅芸人などに不覚をとるなど……我堂は歯軋りしながら一行を睨みつけたが、『ゴンドー一座』はそんな彼に気付きもせず派手な幌付きトラックに向けて歩き始めた。
「……そうさ、和泉の祭りが俺たち一座を待ってるぜ。早く行こう……」
我堂、というより蘆屋の名に深い恨みを抱いていたらしい若い女戦士アンジュ。『伯爵』と呼ばれる気取った異形使い。ついに言葉を発さなかった緋一色の道化師。それから……

45 :
面白半分に相手をするには危険過ぎる連中だったが、今さら嘆いても仕方がない。蘆屋我堂は彼ら『割れ鐘ゴンドー一座』に敗れて死んだのだ。
「……待てコラ人しども!! おいっ!!」
なんとも『霊体』というのは頼りないものだった。ふわふわとゴンドー一座を追おうとした我堂は、残してきた自らの死体に気付いて慌てて向きを変える。大事な体が付近の異形にでも喰われてはかなわない。
「……クソッ、なんで防御魔法が起動しねえんだよ!!」
幾多の追っ手に狙われている彼は重要な臓器にしっかりと保護魔法を掛けていた。首でも飛ばされない限り大抵の貫通創などで即死する筈がないのだ。きっと魔薬の処方に問題があったに違いない。
「……志希の奴、いい加減なクスリ売りやがって……」
呪式と魔薬は旧知である玉梓の術者、春夏秋冬志希から買ったものだ。油断のならぬ相手だがお互い流派の異端児同士、あるときは敵対し、時には共闘してきた腐れ縁だった。無論、我堂は薬の代金を全額踏み倒していることなど都合よく忘れている。
「あのめ……今度会ったら必ずしてやる……」
子供の頃に読んだ『心霊ミステリー!! 恐怖の幽体離脱!!』そのままの状況。『ガドちゃんはお化けだぞ!』といってもいい。当然だが初めての臨死体験に流石の悪党ガドーも途方に暮れた。
「とほほ……ついにあの世行きか……」
賑やかに走り去る一座のバスを恨めしげに見送り、彼は寂しい山道に茫然と佇む。日中にもかかわらず視界がどす黒い靄に覆われてきたのは、早くも死の国が我堂を誘っているからだろう。
見慣れた風景を塗り潰すように、深く濃い闇が我堂を包み込む。しかし柄にもなく戦慄する彼を我に返らせたのは、闇の彼方から響く『わはははは』という呑気な笑い声だった。
「わはははは」

46 :
再び聞こえる声。どうやら若い女のものらしかったが、およそ我堂の置かれた深刻な状況とはかけ離れた無神経な声だ。
その不条理な朗らかさにいささか腹立ちを覚えながら我堂は自らの死体から離れ、憤然と地獄の帳へ向け脚を進めた。
「……おい!! 誰かいるのか!?」
返事はない。だが小走りに暗闇を駆けて徐々に眼が暗さに慣れてくると、およそ冥土からの迎えとは思えぬ風体の人物が、これまた荘厳さのかけらもない格好で我堂の目前に姿を現した。
「おい!! お前……」
「……わはははは!!」
返答がないのは、彼女がヘッドフォンで音楽を聴いているからだった。レジャーシートの上に寝そべってポテトチップスを食べながら、マンガ雑誌に爆笑している黒髪の少女。
彼女は手元のポテトチップス『地獄限定スパイシートマト味』を袋ごと我堂に取り上げられてやっと怪しげな来訪者の存在に気付いた。
「わあっ!?」
「……『わあっ!?』じゃねえだろ!! お前があの世からの迎えか?」
年の頃なら十六、七歳。溌剌と愛らしい少女だった。ヘッドフォンを外し立ち上がった彼女は、ピカピカの反射材が付いた警備用ベストを服の上から羽織っていた。
「……ええと、関係者以外立ち入り禁止です。帰って下さい」
真面目くさった声を出しながら、少女はいつの間にか手にした誘導灯を我堂の鼻先でぶんぶんと振る。首に下げた身分証とホイッスルを見るに、どうやら警備員の真似事のようだ。
「ふざけんな!! この通路は黄泉への入り口かなんかじゃねえのか!?」
「うーん、確かに地獄には通じてますけど、あなたにはぜんっぜん関係ない地獄なの。どうかお引き取りを」
ますますふざけた話だ。身分証によると『大賀美夜々重』という名前のこの少女は、鼻息を荒げる我堂を珍しげに眺め回しながら困った顔で続ける。

47 :
「……ゲヘナゲートが施工ミスでこの異界に繋がっちゃったんで、先週から埋め戻し作業をやってるんです。今日は工事が休みだから、バイトの私がここの警備やってる訳で……」
「ち、ちょっと待て!! 地獄ってそんなにいくつもあるのか!?」
別に平行世界の専門家でもない夜々重の説明は判りにくかったが、どうやらこの先には我堂たちの地獄とは別の地獄が広がっているらしい。
そして彼女は『怜角さん』とやらの紹介で、この場所でのんびりしているだけのお気楽なアルバイト幽霊、ということらしかった。
「……参ったなぁ…とにかくここは誰も通れないのよ。ごめんね」
済まなさそうに我堂を眺める夜々重はどう見ても、この窮地を救ってくれそうには見えなかった。しかし今の我堂にはこのとぼけた幽霊少女以外、今後の身の振り方を相談する相手などいない。
「……じゃあ一体どうすりゃいいんだ!? 俺は出来りゃ生き返るか、無理ならせめて待遇のいい極楽に行きたいんだが!?」
「……生き返る、って言っても、戻る身体がなきゃねぇ……」
思わぬ夜々重の言葉に我堂は飛び上がった。ある。死体なら目と鼻の先の荒れ野にゴロリと転がったままだ。
「あ、あるぞ!! 身体ならすぐそこにある!!」
まさに地獄に仏。とは言ってもアルバイトの仏らしいが救いの神には違いない。俄かに湧き上がる蘇生への希望に、我堂はぴょんぴょんと小躍りした。
「お願いしますっ!! い、家にはまだ病気の母が十人、俺の帰りを待ってるんですっ!!」
「……気の毒なんだけどトラブル起こしたら怜角さんに迷惑掛かるしなぁ……」
人生でこれほど必死に頭を下げねばならぬ状況があるだろうか。我堂は額が割れるほど頭をゴリゴリと地面に擦り付け、この大賀美夜々重という幽霊の慈悲に縋った。

48 :

「そこをなんとか大賀美さん!! いや大賀美先生っ!!」
「しょうがないなぁ……わたしも蘇生なんて一度しかやったことないし……」
異形を使役し魔素を自在に操る五流派にさえ、死者を蘇らせる呪法を編み出した者はいない。夜々重の呟きにちらりと魔道士としての探究心が我堂の心に芽生えたが、今はとりあえず蘇生が最優先だ。
「一度やりゃ充分です先生!! ぜひ是非!!」
「……じゃあやってみるけど……死体はどこにあるの?」
二人を包む濃い闇のむこう、まるで別世界のようにのどかな景色のなかに蘆屋我堂の亡骸は倒れていた。追っ手に付け狙われながら呑気に和泉の祭を見物に行こうなどとした報いとはいえ、なんとも悲惨な最期の姿だ。
「……それじゃ、私は結界から出ちゃいけないから……」
目を閉じた夜々重が我堂も知らぬ不思議な印を結ぶと、彼女の手元から一本の長い縄が伸びる。その縄は見事に捕らえた我堂の骸をズルズルと二人のもとへ引きずってきた。
「せ、先生っ!! ちょっと乱暴じゃ……」
「いいのいいの。どうせ死んでるんだから」
刺のち絞。あちこち擦りむき、泥だらけで運ばれてきた我堂の死体は凄惨な有り様だった。大事な身体とはいえあまり正視したくない。
しかし夜々重は気にする素振りもなく、ウエストポーチからよれよれの紙束を取り出すと、小難しい顔つきでそれを読み始めた。
「ええと、『被呪者が死亡している場合の魂接合法』は……」
神妙な顔でそれを見守る我堂は、ふと自分の腹に突き刺さる魔素刀を睨みつけて眉をしかめた。ただの魔素刀ではない。特徴的な紋が刻まれた……玉梓特製の技物だ。
「……脚部に残された幽体が、自分のものであることを、強く意識してください」

49 :
もっともらしい夜々重の声に従いながら、我堂はその魔素刀をおそるおそる抜き取ってみる。やはり刀身に特殊な術式を練り込まれた、玉梓の特注品だった。
「……幽体部を接合した後、幽体と肉体をゆっくり重ねます」
刀を抜き取られた我堂の傷口は、淡い燐光を発しながらすぐ自己修復を始めていた。いまいましい魔素刀に彫り込まれた、必要以上に複雑でひねくれた呪文式……
「……目を閉じ、力を抜いて呼吸をとめてください……」
もう我堂には判っていた。この魔素刀は間違いなく春夏秋冬志希の手によるものだ。おそらく我堂に防御薬を売ったあと、すぐその薬を無効にする呪式を編み出してこの魔素刀に込めたのだ。
いつか我堂と対峙するときに備えた、いかにも彼女らしい用心深さだ。それがどういう経緯であのアンジュという女戦士の手に渡ったのかはわからないが、いずれにせよ我堂は志希に『一本取られた』訳だ。
「……目を開き、身体が動かせるようなら、接合は成功です……」

……ふと気づくと、我堂は夕暮れ迫る荒れ地に一人倒れていた。節々の痛みに呻きながら身を起こして周囲を見回すが、あの大賀美夜々重という少女の姿はどこにもない。
「……幻覚、だったのか?」
耐え難い空腹と激しい喉の渇きに生の実感を噛み締めた我堂は、やがて獰猛な微笑みを浮かべ愛用の魔素棒を杖によろよろと立ち上がった。
「……へへ……ま、ありがとよ、『夜々重ちゃん』……」
おわり

50 :
投下終了
>>39の台詞は
『ザマみろ!! 夜魔族初イラスト化はこのブチ様にゃ!!』

51 :
投下乙
あれ…?何か文章だけ見たら春夏秋冬が大物っぽく見えるぞww
ガドちゃんの本編続き期待してますぜダンナ!
あ、一周年記念っぽい絵です。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1488.jpg
キャラ全員描くのは無理だったの…ごめんね。
平日じゃなければもっと盛り上がったかな〜?ちょっと寂しい。
まあ作品間に合わなかった自分が言うのもなんだけどね!

52 :
乙!
ガドちゃんが臨死体験ww
割れ鐘ゴンドー一座結成されたのか……
なつかしい
>>51
乙!
ミッ○ーwwww
大作乙でした!

53 :
終わった……皆さんお疲れーって3、4人しかいないかもだけどw

54 :
>>51
記念ポスター(?)超GJ!!
若干湯乃たん目立杉w

55 :
湯乃香は全身絵が見せられないから一番まえなんですねわかります

56 :
>>39
「何が流行るのかニャ?」
「あ……じ、侍女長……」
http://loda.jp/mitemite/?id=1490

57 :
あれ?トリが変だ

58 :
直った直った
皆さん一周年乙でした!

59 :
乙!! 地獄の大祖4c4氏のイラストが来るとはw
SSも待ってますぜ!!

60 :
>>56
濃いwwww

61 :
《ちょっと前の話》3
 ◇ ◇ ◇
 <ファウストの夢の中>
 お嬢様、今日もお休みになるおつもりですか?学校。
 別によいのですよ。
 あのようなものは所詮、弱き人間たちのためのものです。
 あなたのお父様もあまり学校を好きではなかったそうですよ。
 休むと決めたからには存分に寛ぎましょう。いまお茶をご用意いたしますね。
 
 さて、お茶の後には勉強ですよ。
 ほほう?「寛ぐって言ったデショウうそつき黒執事!」とは酷い言い草ですね。
 刻苦勉励なんていいますけど、私は結構教えるの楽しいんですよ?
 私にとっては“寛ぎ勉励”も可能なんです。
 四の五の言わずにノートを開いてペンを持ちなさい。
 言うこと聞かないとスコーン焼いてあげませんよ?
 
 では、今日は魔素物理への導入として核化学を勉強いたしましょう。
 お嬢様の年齢ではまだ習わないと思いますが。
 面白いところから勉強した方が、こういうものは頭に入るものです。
 私、化学はちょっとうるさいですよ。覚悟してくださいね。
 え?「お父様はどんな子供だったんデスか」、ですって?
 うーん、どんな御方だったのでしょうね。
 私が出会った頃には、もう立派な青年でしたから。
 私より歳経た老人だったり、仕事盛りの壮年だったりもしました。
 地獄の深淵に燃え滾る獄炎を纏った大悪魔であったり、須らくを支配する王であったりもしました。
 
 はい、なんですかお嬢様。
 「脳にウジが湧いてカユウマ状態デスか?」って違いますよ。まだボケてはおりません。
 あなたのお父様はとても強大な力をおもちでしたから、姿かたちを自在に変えられたのですよ。
 私の記憶が混濁しているわけじゃないんです。
 というか、お嬢様は無駄話ばかりまじめに聞いて、全然勉強する気なさそうですね……。
 ま、いいでしょう。脱線ついでに私の一家の武勇伝もお聞かせ差し上げます。
 自分の過去を隠したまま人の昔話で盛り上がっては無粋ですからね。
 

62 :
 お嬢様は、16世紀ごろから伝わる『ファウスト博士の伝記』を知っていますか?
 ゲーテの『ファウスト』もファウスト博士の伝記の改変です。ちょっと脚色が掛かってますけどね。
 では、私の名は何ですか。
 「えーと、ピエール!デス」違います。
 「セバスチャン!!」違いますね。
 私の名はファウストです。わざとやってるでしょう。
 そうです、私の先祖はそのファウスト博士なのです。
 
 ファウスト博士はあるとんでもない実験をして、その失敗でこの世を去りました。
 彼は、“世界を作る爆弾”を開発していたのです。
 彼が爆死した町では今でもそのことが観光の目玉になっているんですよ。
 もちろん、観光の目玉になっているのは爆死した事実のほうだけですけど。
 ファウスト博士は宇宙の開闢、つまり宇宙の始まりは、とてつもない爆発だったとの仮説を立て、
 それを再現する爆弾をつくっていたのです。
 そして彼の信望者たちは、今もってその爆弾の開発を続けている。
 
 イルミナティにもフリーメーソンにもファウストの血族はかかわっていました。
 ロスチャイルドのブレインにも私の親戚が名を連ねています。
 秘密結社とでも言うべき存在として成立したのは、実のところファウスト家が一番早いのですけどね。
 今もって裏での活躍が行われているゆえ、表ざたにならないままなのですよ。
 ノーベルの死の床に立ち会った召使というのも、ファウストの血族です。
 放射線を発見したキュリーが事故死したとき、ファウストの血族が暗躍していました。
 ツングースカ大爆発は当時最大出力の魔素核を爆発させる実験だったのです。
 魔素核というのは簡単に言うと魂を燃料にする爆弾です。
 戦争が長引くと兵器目的の開発が進みますので、戦乱を長期化させる運動もしていました。
 ァーファウストというファウスト家が開発した携帯火器は、
 様々な形で模倣され、個人火器として戦乱を混迷に導きました。
 すべては初代ファウストの夢、宇宙を始める爆弾の開発と進展のために行われました。
 はい、何ですかお嬢様。
 「そういう妄想が始まると、アルツハイマー末期だそうデス……」って、ほう、またボケ老人扱いですか。
 やめてくださいお嬢様。そんな可哀そうなものを見る目で私を見ないで下さい。
 というか、そろそろ勉強してくださいね。
 ファウスト家に伝わる爆弾をくらわせますよ?
 常世と冥府と天上の境すら貫くと評判の兵器なんですよ。
 ツングースカの時は七層地獄の最下で爆発実験を行って、見事人間界にまで達したそうですからね。

63 :

 実は私も今、先達の残した資料をひも解いて魔素核を作っているのです。
 ……いつかお嬢様が冥府に君臨するとき、魔素核はきっと助けになるはずです。
 私のような非力な人間が残してあげられるものは、こんなものくらいでして……完成の暁にはどうか、
 お嬢様のお力としてお役立てください。
 
 いや、だめです。「早速いじめっ子を消滅させるデス!」ってそんなことに使わないでください。
 まだ完成してませんし。……お嬢様は奥様に似すぎですよほんとに。思い切りが良いところとか。
 ご利用は計画的に!お願いしますお嬢様。

64 :
 ◇ ◇ ◇
 ファウストが目を覚ましたのはコックピットの運転席だった。
 何やら夢を見ていたようだが、ファウスト自身にとってそのことは埒外にあった。
 焼けるように痛む頬に手を当てると、明らかに腫れあがっているのが自覚でき、触れた
部分がジンと疼いた。
「目が覚めたかニャ?効いたっしょ?猫パンチ。にゃははは」
 不意にかけられた声。
 やや霞む目を凝らしてみれば、視界がとても赤かった。
 鼻を衝く金属臭は間違いなく血液の腥さ。
 ふらついたまま体を捩って席の後方を確認し、ファウストは眉を顰めた。
 下顎から上のない死体が横たわっており、その死体に纏わりついた衣服の破片がべリア
ル航空の制服だったことから、それが先ほどまで食事を運んでくれたりしていたスチュワ
ーデス悪魔だと分かった。そしてその肉塊の上に、品の良い、だが口元がびっしょりと血
に濡れた猫が乗っていた。
 私機嫌が良くってよ。そんな感じで、二本の尻尾が揺れている。顔を洗う仕種は、愛ら
しさと対照的に黒ずんだ血を塗り拡げ、とても禍々しいものだった。
 
「猫又を縛るときは、猫のときか機嫌のいいときにしないと、解けて引っ掻かれちゃうよ?
私は縛られるのは嫌いじゃニャいけど、ちょっと機嫌が悪かったニャ。うふふ」
 楽しそうに笑う猫。
(そうだ……この猫の化生に魔素核の自慢をしたら、変化して急に襲ってきたのだった)
 ファウストは身構えて、コクピットの窮屈な空間で多少なりとも抵抗できるよう席から
身を離した。ほとんど身動きの取れないことに変わりはない。
 猫は踏み台にしている死体を見下ろし、楽しそうに言った。
「この子には悪いことしたニャ。ちょっと、“にゃんにゃん”してくれれば良かったのに、
あんまり嫌がるから、ついっちゃったニャ」
 さも愛おしげに死体の露わになった肌を、もとからの色と血の色で赤い猫の舌で舐る。
 滑らかな動きで死体から飛び上がり、猫はくるりと宙返りをした。
 それと同時にドロンと煙が巻き起こり、煙がはれると、そこにはスレンダーな女性が立っ
て居た。
「あっ、ふ、服……!やば……!!ここ、こっち見るニャ!!!」
 ただし全裸でネコミミだ。
 ファウストがふと副操縦席を見てみると、先ほど女を縛っていた縄と、それに絡むよう
に女がさっきまで着ていた服が残っていた。
続く

65 :
絵の感想ありがとー!
なんのかんのでレスつくとテンションあがります

66 :
投下乙です!!
イラストといい、侍女長は結構怖いのね。そしてロリベル可愛いよロリベル

67 :
投下乙!! 侍女長久しぶりw

68 :
天駆ける覗き魔

69 :
またまた地獄の解説。今回はゲヘナ・ゲートです。

70 :

【ゲヘナ・ゲート】
地獄世界はゲヘナ・ゲート開通から始まりました。なにやら当初は掘削工事っぽいアレでしたが、なぜか竣工したものは地獄上空に浮遊する、超巨大な円環状の構造物でした。(注1)
『いったい閻魔殿下や夜々重ちゃん、ハナちゃんはどこの学校に通っているのか?』
この疑問に未だ答えはありませんが、とにかく現在『滑らかな光沢を放ち、ゆっくり回転する』閻魔殿下通学専用の第二十五番ゲヘナ・ゲートをはじめ、複数機のゲートが地獄上空で稼働しているものと思われます。
地上(?)からの操作による制御が可能で、強大な権限を持つ閻魔殿下が地上までゲートを降ろすシーンがありますので、運用条件はかなり融通が効くようです。
『場所は地獄の三丁目』
『ズシと高瀬中尉が温泉界にも行けるミニチュアゲートを造った(注2)
『リリベルが人間界からデモンズバイパス経由でゲートを強行突破した』
など、殆ど理論や具体的な構造は設定が追いつかない状態ですが、機能をざっくりと定義すれば『地獄界と人間界を瞬時に繋ぐ門』くらいのよいと思います。(ほとんど通り〇けフープですね)

71 :
リリベルのバスはゲート突入用に『ケイオス・シェルコーティング』なる特殊処理を施していたので(注3)閻魔庁は不法侵入防止にかなりの対策をとっていると思われ、人間界から気軽に来訪、という訳にはいきません。
これまでゲートを通じて地獄に入出国したのは上記リリベル一行、閻魔殿下の好意により徒歩で人間界に戻った夜々重ちゃんと桐島少年、人間界から嫁いできた霊木『鬼寒梅』、強制送還された魔王子ジョーイ・ベリアル……
あと、作品内に記述はありませんが田貫迅九郎もゲヘナ・ゲートを通じて召喚されたのでしょうか、いささか地獄界のシステム変革というより閻魔殿下や鬼たちの便利アイテム、という感は否めません。
それでも三途の川に賽の河原、といった旧来の手間を軽減化する地獄界の合理化の一環として導入されたこのテクノロジー、書き手さん次第で今後も便利に運用できるものと思います。(注4)
(注1)施工は地獄随一の巨大企業『朱天グループ』。本拠は朱天楼という地獄市内の高層建築物で、経営者は鬼の酒呑一族。
(注2)『霊位』『虚標』『風車の軸の方程式』などのゲートに関する技術用語が使われているがまったく適当な造語。
(注3)人間の魂を犠牲にする非人道的な遮蔽偽装技術で、開発にはベリアル・コンツェルンなる悪魔財閥が関与。しかし結局検知され、『ゲートロック』が作動した。
(注4)
『殿下と侍女長』においてゲート製造は公共工事らしく描かれていたことによる解釈。実は全て閻魔王家が私的に造り上げたものなのかも知れない。

72 :
以上です。
それにしてもけっこう夜魔族が真面目そうなルックスで驚いたw

73 :
ゲヘナゲートは結構自由度高いんだなww
世界を広く扱えそうでおもしろい

74 :
ゲートまとめ乙です!
>>72
いやいや真面目じゃないはずです!
自堕落お気楽が彼女らのもっとー
鬼子にしてみたり
http://loda.jp/mitemite/?id=1499.jpg
適当に色置いてて思ったけど、髪は何色なんだろう

75 :
「侍女長……なんでウチの鬼子衣装、よりによってコレなのかニャ」
「馬鹿ブチ。文句言うんじゃないニャ。その服にもデザイナーが居るニャ」
「でもこれじゃ鬼子分ほぼゼロにゃ。ウチもヒラヒラした服着たいニャ」
「我慢するニャ。大人の事情ニャ」
「大人の事情ってなんニャ」
気力が尽きました

76 :
イラスト超乙!!
ミケの出番はともかく、いま騒ぎの鬼子ですか……

77 :
鬼子すっかり時の人になったねえ

78 :
うらやましいもんだ

79 :
色塗り直し
http://loda.jp/mitemite/?id=1504

80 :
見れないであります自分!

81 :
自分もであります!!

82 :
ロダが不調みたいなんすよ

83 :
ロダ変えてみました
http://u6.getuploader.com/sousaku/download/325/%E9%AC%BC%E5%AD%90%E7%8C%AB%E8%89%B2.jpg

84 :
見れたよー!!

85 :

遅れましたが
http://u6.getuploader.com/sousaku/download/326/%E3%81%A8%E3%81%88%E3%82%8B%EF%BC%91.PNG

86 :
キャー
等身の少なさがツボったw

87 :
素晴らしい兵器!
少しずつ住人戻って来てるみたいで嬉しいナー

88 :
! 来た!
上手なぁ

89 :
久々に来たら俺のが描かれている……!!
ふえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっぇぇぇぇっうえwwwww
最近書いてなかったからそろそろ続き書くかなぁ…
それにしても一周年のヤツwikiにどうやってまとめりゃいいんだろう…

90 :
とりあえず『一周年記念作』で括っておけばどうかな?
しばらくは間に合わなかったSSの投下あるかも知れないし・・・
それからGJ!!

91 :
一周年祭でまとめるに一票
作者さんがチラホラ戻って来たみたいだけど、勢いがないなぁ
そろそろキャラとか世界を増やす時期なんだろうか

92 :
自分に関してはストーリー見直したり平行して書いたりして、個人的に投下ペースが遅くなってるだけだよー
もちろん新キャラや新しい世界にも大いに興味はあるけどねー

93 :
自分も並行して書いたりゲームの誘惑に負けたりで筆が進んでなかったんだ
そんなわけで大変久しぶりに『狸』を投下します
一周年作品にも出演させていただけたようで嬉しいです

94 :
 第六話『花蔵院家の娘さん出現でござる』
「ふむふむ。なかなか面白い書物でござる」
 色無き大地に座する大邸宅、花の蔵屋敷。夜の帳に包まれたその一室で、田貫迅九郎は一冊の本を読んでいた。
「朝起きたら虫になっているなど、なんと哀れな。それに比べれば拙者は狸。まだまだマシなのかもしれぬ」
 欧州の文豪が著したその本の中で、主人公である一人の男はある日突然到底理解しがたい不条理な局面に
遭遇してしまう。そしてその不条理とは現在の迅九郎にとってまさに身につまされるものであった。
「いやしかしようわからん。拙者もたまに朝目覚めた時点で狸になっていることがあるが、あれはなぜなの
だろう」
 最近の迅九郎目下の悩みはこれである。地獄に落ち、花の蔵屋敷で生活するようになって一週間となったが、
その内三日の目覚めは狸として迎えていた。
「あの冗談みたいな祝詞を読み上げるのは苦痛でござる。あれが続くようでは精神を病んでしまうでござるよ」
 一週間生活したが、迅九郎は未だ例の祝詞を暗記できていない。藤ノ大姐が書き起こしてくれた紙を渋々眺
めて嫌々唱え、なんとかかんとか狸化の解除を行っている次第だ。
「ふぁああぁ。ああ、眠くなってきたでござる。明日こそは……狸には……ならぬ……ぐう」
 眠気を感じるとあっという間に眠れる男、田貫迅九郎。ぶつぶつと呟く言葉も言い終えないうちに、すやす
やと穏やかな眠りについた。
(朝起きると田貫迅九郎は一匹の子狸になっていた。さてどうしたものでござろう)
 不安的中と言うべきなのかなんなのか、迅九郎は狸の姿となって翌日の朝を迎えていた。余談だがこの狸化、
衣服もひっくるめて変化するようだ。なので狸から人間に戻ったら素っ裸、などということにはならないらしい。
(祝詞……。朝一からあの鳥肌ものの祝詞を読み上げる気にはならないしな。そんなことしたらもう一日中鬱な
気持ちになるでござるよ)
 布団からもそもそと、まさに巣穴から顔を出す狸のように這い出ながら、そんなことを思う。もはや四足歩行
にも慣れたものだ。大地についている本数が多い分、こちらのほうがむしろ安心感を得られるななどと、迅九郎
はすでに狸に馴染みつつさえあった。そんな能天気さゆえ、というわけだろうか。
(……屋敷を散歩でもするか。狸目線で見る地獄というのも悪くないかもしれぬし)
 すっかり開き直っていた。

95 :
(……迷ったでござる)
 そしてあっさり道に迷っていた。花の蔵屋敷は単なる邸宅の割には構造が複雑なのである。そのこと自体は一
週間の暮らしの中でわかっていたのだが、迅九郎の行動には彼の世話係となったアカトラが常にくっついており、
道に迷うことはなかったのだ。ちなみにアカトラが迅九郎の世話係をやっているのは藤ノ大姐の厳命があるからで、
アカトラ自身はかなり面倒がっているようだが。
(ああ、腹が空いた……もうきっと朝飯の時間でござるな。うう、屋敷の中で飢え死になんて御免蒙りたいでご
ざる。我ながらさすがに阿呆すぎでござる)
 空腹感を感じるとなぜかすぐに死と結び付ける男、田貫迅九郎。能天気でお気楽な彼が、おそらく唯一後ろ向
きな思考をする瞬間である。そしてこの時の後ろ向きっぷりは、放っておけば際限なくエスカレートしていく。
(ああ、気付けば拙者、こんな一面花まるけのところにいたのであったか。芳しい香りでござるが、花の香りで
腹は満たされんのだ。おのれ、こんな麗しい香りも今はただただ忌々しいだけでござる)
 とぼとぼと周りも見ずに歩き続けた結果、迅九郎は花の世界へと迷い込んでいた。それは正確には花の蔵屋敷
に広がる庭園の一角でしかないのだが、それでもそこは花の世界と呼ぶに相応しい眺めだった。
 そこにある花の名前を、迅九郎は知らない。それは迅九郎が花になどまるで興味のない男だからだという理由
もあり、またそこには地獄でしか咲かない花も多種混じっているからだという理由もある。
 だが悲しいことにいずれ空腹の迅九郎にとっては、腹を満たしてくれるわけでもない花などというものにはま
るで関心が湧かないのだ。
 だから彼がその場にそうして留まっていたのは、それら色鮮やかな花々に目を奪われたからではない。花々が
誇らしげに纏う香りを楽しんでいたわけでももちろんない。まして今の彼は一匹の子狸でしかないのであり、端
から見て彼がその花々に心を奪われていると感じ取れる要素はまるでないはずである。
 が、往々にして例外というのはやはり存在するもののようだ。

96 :
「あら? たぬき? 野良かしら。お花の匂いに惹かれて迷い込んできちゃったの?」
 平時よりも丸みを帯び、ふさふさの毛におおわれた迅九郎の耳に、この地に落ちて以来耳にしたことのない声
が響いてきた。この屋敷主人である花蔵院槐角の野太い声ではなく、その母でありながら童女の姿をした矛盾の
権化、花蔵院藤角の多少舌ったらずな甘ったるい声でもなく、渋々自分の世話を焼いてくれる赤茶色の化け猫ア
カトラの甲高い声でもない。最後のはそもそも喋り方からして違うのだが。
「このお庭は私の……いいえ、花蔵院家の自慢のお庭なのよ。こんな朝からここに遊びに来るなんて、あなたお
花が大好きなのね」
 正直見当違いなことを言いながら声の主は迅九郎へと近づいてくる。正確には迅九郎はその気配しかつかめて
いない。なぜなら迅九郎にはもう周囲を見回して確認するだけの気力が残っていないからだ。空腹過ぎて。
ただ、その声が思わず聞き惚れてしまうほどに柔和で美しい響きを持っていることだけはしっかりと感じていた。
 その美しい声の気配が彼の真後ろに達するのを感じると同時に、迅九郎の体がすっと軽くなり、
「わあ、ふっかふか! かぁわいいなぁ……見た感じまだまだ子だぬきだよね……お母さんいないのかなぁ」
 それからぎゅむっと抱き締められた。喋り方と声でわかりきっていたことだが、やはり気配は女性だった。
抱きかかえられているという体勢故その顔ははっきりとは見えないが、額らへんから角らしきものが確認でき
るあたり、彼女は鬼の類なのだろう。しかし今の迅九郎にはそんなことは割とどうでもいい。
(むむむむねむね胸が! 胸らしきものが! 生前一度も触れることの適わなかったものが!)
 当たっていた。というよりもう埋まっていたと言……うのはさすがに言い過ぎだが、それに近いものはある。
迅九郎の狸姿かわいさのあまりか、名前も知らない女鬼はぎゅうぎゅうと彼を抱きしめているのだから無理もない。
(地獄っていいところでござる! 極楽往生クソくらえでござる!)
 空腹感もしばし忘れて地獄への賛美を叫ぶ中、女鬼は
「ほ、放っておくのも可哀想だし、よしっ、連れて帰っちゃお。あ、名前つけてあげなくちゃ。うーんと……」
 一人ぶつぶつと呟きながら、迅九郎が迷い迷い歩いてきた道へと歩を進めるのだった。

97 :
「お父様、おばあ様。楓角ただいま帰りましたよ」
 迅九郎がたどり着きたかった地、すなわち花蔵院家食堂。迷いもせずすらすらとそこに到着するなり女鬼は、
そこに座る二人の人物、もとい鬼物に元気よくそう挨拶した。無論この二人はすでに迅九郎の見知った顔だ。
彼らは彼らで怪訝そうな顔で目を丸くしている。しばしの沈黙ののちようやく口を開いたのは、「お父様」と
呼ばれたいかつい風貌の鬼、槐角だ。
「楓、お前……なんだってこんな朝一で帰ってきた? 合宿はまだもう少しあるだろう」
「はいそれがねぇ、大変だったの。とりあえずお腹空いてるから、先に朝ごはん食べていい?」
「おい待ちなさい。ちゃんと事の次第を説明しろ。飯はそれか――」
「あそれとね。お花が心配だったから先に庭に行ってみたら、こんなかわいい子だぬきがさまよってたから
保護して来ちゃった。名前はポン作くん。今命名したの。かわいいでしょ」
 迅九郎には理解できない会話の最後、女鬼は槐角に見せつけるように、その鼻先に迅九郎をひょいと掲げた。
この会話から察するに、どうやら迅九郎は「ポン作」と名付けられたらしい。はた迷惑な話だ、自分には田貫
迅九郎という素晴らしい名前があるのにと、見慣れたいかつい鬼の顔を間近に眺めながら思う。
「ま、待て。落ち着け楓。こいつは狸ではない! だまされるな!」
「え? もうお父様何言ってるの? どこからどう見ても子だぬきじゃない。このふかふかな毛並み。くりく
りのお目目。もうかわいくてかわいくて」
 迅九郎は再度抱きかかえられ、すりすりされる。何を? まあ……いろいろである。
「やめい楓! それは人間だ! 人間の男だ! だあああ母上! なんとかしてください! 元はと言えば母
上のせいでしょう!」
「ずず、ずずず……ぷはぁ。さて、食後の団子といくかのう」
「母上!? なんとのんきな! かわいい孫娘が汚れるかどうかの瀬戸際だと言うのに!」
「あーやかましやかまし。落ち着くのはお前のほうじゃ槐角。別によいではないかあれで。狸化した迅九郎が
かわいいのは事実じゃし。白状すると、わしですらたまに心が揺らぐくらいじゃよ」
 よいわけがありますか! などとやり合っている槐角とその母藤ノ大姐。先ほどの女鬼とのやりとりでもそ
うだが、槐角は最初に出会った時に見せた威厳や、氏の長者という立場ほどには尊重されていないらしいこと
を迅九郎は悟った。大変そうだ。少し同情する。
「というわけだから、ポン作くん。今日からよろしくね。あ、私は花蔵院楓角(ふうかく)よ。覚えてね」
 そう言って女鬼、楓角は、迅九郎を自身の目線の高さに掲げる。ようやくまじまじと見たその顔は、あのい
かめしい槐角の血を受け継いでいるとは到底思えない穏やかさ、美しさで。もはや極限まで達していた空腹感
を、迅九郎はしばしの間忘却した。
 第六話『花蔵院家の娘さん出現でござる』終

98 :
以上投下でした

99 :
『変身』を読む迅九郎www
そして新キャラ花蔵院楓角登場と楽しませてもらいました 次回にも期待!!

100read 1read
1read 100read
TOP カテ一覧 スレ一覧