バイキングの“太陽の石”、正体解明か Lucas Laursen for National Geographic News November 14, 2011 大昔のバイキングは、透明度の高い方解石の結晶「アイスランドスパー(氷州石)」を使い、方位を 把握していた可能性があるという。 アイスランドには、バイキングは空が曇っているとき、「サンストーン(太陽の石)」と名付けた石を 方位磁針代わりにして船の舵を取っていたという伝説がある。この石によって、太陽光の偏光度を検出 できたと考えられている。 自然光は、あらゆる方向に振動する光が混合している。結晶や霧などの物質を通過すると、規則的な 振動に変わって特定の方向に向きが変わる。これを偏光という。 太陽光は大気を通過した後に偏光して方向が変わる。光の偏光を感知する能力は、ハチなどの生物に 生来的に備わっているという。 1969年にはデンマークの考古学者が、「バイキングはサンストーンを使って光の偏光を検出していた 可能性がある。日時計や星の位置を知る補完手段として、航海に活用していたのかもしれない」と指摘 している。 以来、数々の研究者がサンストーンの用途に関する研究を進めてきたが、伝説をいくら調べても わからなかった。 ◆方解石と偏光 そして今回、フランスのレンヌ大学に所属する物理学者ギー・ロパール(Guy Ropars)氏が、 バイキングのサンストーンと考えられる鉱石で実験を行った。1592年、エリザベス朝時代に沈没 した「オールダニー(Alderney)」というイギリス船から最近発見された、アイスランドスパーの 破片である。 ロパール氏のチームは、レーザー光をアイスランドスパーの破片に照射。偏光された光とそうで ない光が分割される様子を分析した。アイスランドスパー(方解石の結晶)には、透過した光が 複屈折する特徴がある。入射した光が、結晶を通過後に2つの光線に分けられる。つまり、結晶を 通して向こう側を見ると物が 2重に見える。 光線を照射しながらアイスランドスパーの向きを変えてみると、ある1点でのみ、2つの光の 強度が同じになった。また、光源の位置によってその角度は変わることがわかった。 天気の良い日に太陽の位置を示す印をパーに書き込んでおけば、空が曇ってもその印を頼りに 太陽の位置を把握することができる。曇りの日には、アイスランドスパーに入射して2本に分かれた 光の強さを見比べていたようだ。 (>>2以降に続く) ▽記事引用元 ナショナルジオグラフィック ニュース http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20111114002&expand#title ▽画像 透明度の高い方解石の一種、「アイスランドスパー(氷州石)」。バイキングはこの石を 使って船の方位を把握していた可能性があるという http://www.nationalgeographic.co.jp/news/bigphotos/images/sunstones-vikings-iceland-spar_43430_big.jpg ▽Proceedings of the Royal Society A掲載の論文要旨 "A depolarizer as a possible precise sunstone for Viking navigation by polarized skylight" http://rspa.royalsocietypublishing.org/content/early/2011/10/28/rspa.2011.0369.abstract?sid=cb008630-88e0-489b-b3b4-cbb98de724af
2 :
(>>1からの続き) ◆方位の把握には“最適” 同チームはその後20人のボランティアを募り、曇りの屋外で交代にアイスランドスパーを観察 させた。雲の向こうに隠れている太陽の位置を、どの程度正確に把握できるかを測定するためで ある。すると、誤差1度以内の精度で突きとめられることがわかった。 「研究に直接関わったわけではないが、今回の結果から、太陽の位置を把握するのにアイスランド スパーが最適だと言える。精度もかなり高い」と、スウェーデンのルンド大学に所属する生態学者 スザンヌ・アケソン氏は話す。 2010年にアケソン氏のチームは、局所的な気象状況が、北極地方での空の偏光に影響を及ぼして いた可能性を指摘した。バイキングが方位を把握する際にも考慮する必要があっただろう。 「だが、この鉱石を利用した方法が、実際にバイキングの時代に広く使われていたのかは不明だ」と 同氏は話す。この点に関しては、物理学でも答えが出ないだろう。今回の研究の詳細は、11月2日 公開の「Proceedings of the Royal Society A」誌オンライン版に掲載されている。 (記事引用ここまで)