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2011年12月2期アニキャラ総合8: あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part304 (310)
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あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part304
- 1 :11/12/07 〜 最終レス :11/12/23
- もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part303
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1320855017/
まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/
_ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
_
〃 ^ヽ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
J{ ハ从{_, ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
ノルノー゚ノjし 内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
/く{ {丈} }つ ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
l く/_jlム! | ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
レ-ヘじフ〜l ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
. ,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
- 2 :
- 乙
- 3 :
- 乙
大隆起におびえるハルケギニアをカイザーベリアル陛下が帝都要塞マレブランデスで風石を吸い上げて救う話を読んでみたい
- 4 :
- 乙
ワンピからのエース召喚が読みたい
- 5 :
- エースか。典型的なお貴族様は心底嫌ってそうだしなぁ。
- 6 :
- カテゴリーエースは俺のものだ!!
- 7 :
- ブレイザードライブの能力があったらルイズは使うだろうか…ミスティッカードライブ!
- 8 :
- >>6
橘さん封印くらいちゃんとしてください(OHO;)
- 9 :
- 火拳だしきゅる毛が召喚すればエース無双でサイト要らねくなるな
- 10 :
- 竜騎士・侍・暗黒騎士を召喚ですな
- 11 :
- トライエースであるな^^
- 12 :
- サボの事があるしなぁ、嫌いなんだろうなぁ
コブラとかビビみたいなのなら別かもしれないけど、
いないもんな、ウェールズあたりが近い感じかな?
- 13 :
- コブラってサイコガンのほうかと思ったけどそういえばワンピースにいたね
クロコダインもといクロコダイルに国乗っ取られかけたよね
- 14 :
- ワンピースはルフィ達に好感を持たない非戦闘員を徹底的にモブ顔orブサイクに書くからな
王族はともかく貴族はクズなキモメンの集まりって縛りがあるみたいだし
召喚の儀式をイラストにすると相当酷い事になりそうだなw
- 15 :
- >>12
ウェールズでもだめだろ、
あれだって見方によれば貴族の自己満足後は野となれ山となれでしかないし。
- 16 :
- >>15
だから「近い感じかな」って
やり方は他にもあっただろうけど一応恋人とか民の事とか
考えて命かけてるっぽかったし
- 17 :
- エースも命がけで助けられた直後にちょっと煽られただけで命捨てちゃう男だから案外気が合うかもよ
- 18 :
- ワンピキャラだったら百計のクロあたりはしれっとヴァリエール家に紛れ込んでておかしくないかも
- 19 :
- >>18
魔改造カトレアさんなら、知った上で雇ってる
- 20 :
- ワンピキャラは体にルーンを刻むあたりが元世界の世界貴族の奴隷への扱いと
重なる要素が多いのでいろいろと相性が悪いと思う
- 21 :
- 喪黒福造をルイズに召喚してほしい
- 22 :
- ジョゼフがドラキュラ(悪魔城シリーズ)を召喚。ガリア城が悪魔城化
とかやったら、タバサがジャンプアクションで魔物を倒しながら城内を進むゲームになってしまうのだろうか
- 23 :
- 最近の喪黒福造は人助けしてるけどな
- 24 :
- 最近も何も昔から人助けしてるぞ、約束守らん奴が悪いだけだ
- 25 :
- あいつは約束破るような状況に追い込むだろう
まあ今の喪黒のセールス相手は間違いなくマリコルヌになるだろうな
- 26 :
- ほっほっほ 使い魔をご所望で?
- 27 :
- 召喚された使い魔が鶏の唐揚げとかを作ったら生徒の間で論争とか起きそうだな。
さっぱりとレモン汁で食べたいギーシュ、こってりとマヨネーズで食べたいマリコルヌ、鶏本来の味を味わいたいタバサとか…
食べ物の味付けで論争するなど貴族にあるまじき振る舞いですよ!!と言いながらもしっかりとスパイスをかけてるコッパゲ。
- 28 :
- だが、残念、鶏唐を作るには下味の醤油が必須なのだ!
そして伝説の醤油を求めて探索の旅へ
- 29 :
- かもすぞー
- 30 :
- 喪黒は人陥れるのが趣味だけど、
それとは逆に人助けを生業としてる喪黒の弟がいることはあまり知られてない
- 31 :
- >>30
というネタを何度かテレビでやってるからそこそこ知られてたりする
- 32 :
- 仮面ライダーカブトから天道総司召喚
もともと完璧超人で喧嘩も強いうえ変身してクロックアップ使ったら無双すぎるな
- 33 :
- だが豆腐が無いぞ
- 34 :
- 天の助「豆腐?ところてんを食えーっ!」
- 35 :
- 剣「トゥーフーなど食えたもんじゃないな」
- 36 :
- どの辺までうけながせるかな?
- 37 :
- >>33
ゼロ魔3期のドラマCDで大豆が出てきたし、
天の人ならハルケギニアでも自分で豆腐も味噌も作れそう
- 38 :
- 味噌は難易度高いけど豆腐は楽じゃね?
- 39 :
- >>37
むしろそれを見つけるトーフフルストーリー
- 40 :
- 綺麗な矢車「天道には豆腐の真髄など分からない」
- 41 :
- 何故に豆腐談義が…?これは豆腐工場勤務の私に投下しろと神が言っているのか…
と、いうわけでこれより使い魔は四代目 11話投下します。
初めて投下一番乗りした気がする。
- 42 :
- 意識を取り戻したシュヴルーズはあっさりとルイズの謝罪を受け入れた。
幸いにして怪我が無かった事、キュルケが制止したのにやらせたという負い目があった事、等もあり自分が爆発に巻き込まれ気絶した事に関しては叱責したりせずに不問にした。
が、それで終わり、とは流石に行かなかった。シュブルーズはそれとは別に教室を破壊した罰としてルイズに後片付けを命じた。
そして、その上で片付けの際に魔法を使う事を禁止したのである。
もっとも、まだ魔法を使えないルイズにとっては無意味なペナルティであったのだが、だからといって事態が好転するわけでもなかった。
今こうして、皆が去った教室でルイズがただ一人、散々溜息をつきながら後片付けを行っているのはそういう経緯があったのである。
ルイズとて流石に一人では惨憺たる現場と化した教室を片付けるのはきついだろうとは薄々感づいていたのだが…
迂闊にも、この程度まぁ一人でもどうにかなるわ等と見得を切ってしまい、じゃあ任せたとばかりにリュオが手伝いをあっさり放棄してどこかへ行ってしまった以上、一人でやるしかなかった。
「あー、しんどい…しっかし全然終わらないわ…これは予想以上にキツいわね…
こんな事なら何としてでもリュオに手伝ってもらうんだったわ」
片付けの手を止めて、げんなりとルイズが呟く。始めてから結構時間がたつが残念な事に余り進んでいない。
が、それも無理も無く、もともと良家の子女であるルイズはこういった作業とはとんと縁が無く、掃除のような雑事は全て使用人に任せていたので、手際も悪ければ手順も悪いのだ。
この後、ここで授業が行われるのなら片付けの途中でも有耶無耶のまま終わる可能性もあったのだが…ルイズにとっては残念ながら、今日はもうこの教室を使用する予定は無かったのである。
「えぇと、やっと半分ってとこかしら…やっぱり、一人じゃ辛いわね…かといってリュオ以外に当てはないし…
悔しいけれど、もしこれがキュルケ辺りだったら鼻の下を伸ばした男達が我先に手伝ってるわよね…
くっ…これだからツェルプストーの女は…リュオもリュオよ。全く、形式上は私は主人なんだから察して手を貸してくれても良いじゃない…」
疲労や片づけが進展しない苛立ち、そしてそれを手伝ってくれる友人や、恋人もいないという事が重なり、ルイズの独り言はどんどん恨み節になっていった。
そもそもキュルケはこんな失敗はしないし、こんな事で恨まれてもキュルケだって困るというものだろうが…まぁ、こんな理不尽な恨み言の前では現実は関係無いのである。
そんな不毛な呟きを中断させたのは、教室に近付く足音だった。
それを聞いたルイズはリュオが手伝いに戻って来たのか?と一瞬喜んだのだが、果たして現れたのはルイズが予想だにしなかった人物、シエスタであった。
- 43 :
- 「あ、あれ?シエスタ?何で?」
「失礼します。ミス・ヴァリエール様。リュオ様から昼食を届けるよう申し付けられたので参上いたしました」
「昼食?ああ、もうそんな時間だったんだ…え?リュオが?」
ルイズは予想もしていなかった差し入れに驚いた。素っ気無く手伝いを断ったからこっちの事はどうでも良いのかと思っていたが、何だかんだで、少しは気に掛けてくれていたようだ。
そう思うと、先程まで散々リュオへ愚痴っていたのが恥ずかしくなったが、態度がはっきりしないリュオが悪い、と自分を無理やり納得させるルイズであった。
「そう…とにかくありがとう。もうくたくたよ…」
割れた窓ガラスの張替えは魔法を使わずに行うと危険だから、という理由で免除されたものの、
煤だらけになった箇所を拭いたり、教壇の残骸を片付けたり…と、肉体労働に慣れていないルイズにとってはそれでも充分ハードであった。
この上に、木っ端微塵となった教壇を新しい物に取り替えねばいけないが、それはまだ手付かずである。
あの重い教壇を倉庫から引っ張り出してここまで持ってくる、その労力を考えると、ルイズは暗澹たる気持ちになるのだった。
「それで、如何いたしましょうか、ミス・ヴァリエール様。お食事は…お部屋まで運びましょうか?」
「ええ、そうしてちょうだ…って、部屋でかぁ…うーん、ちょっと待ってて」
シエスタのその言葉に相槌を打ちかけたルイズは、今から自室まで移動する事を考えて顔をしかめた。はっきりいって億劫なのだ。
勿論食堂か、せめて自室で食べるべきだ。その事は充分承知している。
教室で食事を取るなどはしたない…までは言わないかもしれないが、マナー的に考えて褒められた物ではないだろう。
ここは学ぶ場所であってくつろぐ場所ではない。もしクラスメイトに見られたらまたからかわれるであろう、という思いもある。
しかし、心身ともに疲れきったこの状態で食堂、或いは自室まで移動するのは御免だった。マナーと、疲労とを天秤にかけ、そしてルイズの中では疲労が勝った。
ま、自室まで往復する時間も勿体無いし、この後はこの教室を使う予定も無いし、片付けついでに最後に掃除しておけば問題ないわね、
と内心で幾つか言い訳を並べて自己弁護しながら、ルイズはシエスタに答えた。
「…いいえ、ここで構わないわ。早速だけど用意してくれるかしら。ええと…この席で良いわね。そうそう、冷えた水、ある?」
「ええ、充分に冷えていますわ」
「それは良いわね。じゃぁ、食事の前にまずは一杯頂戴」
「畏まりました。どうぞ」
食事を並べられそうな適当な場所に陣取ると、ルイズの言葉を受けて水の入ったグラスが差し出された。
受け取ったグラスは、シエスタの言葉通り充分に冷えていた。それを額に押し当てて、少しの間その冷たさを味わう。そして一気に飲み干した。
飲み終えてふぅ、と一息つくと、やっと生き返ったような感じがした。乾いて火照った体によく冷えた水がこの上なくありがたかった。
水が体に染み込むような感覚を存分に味わっているうちに、シエスタは手際よく食事を並べ終えていた。
そこから漂う芳香と、今飲んだ水が先程まで感じなかった空腹を猛烈に意識させた。
食堂で出される食事がこれほどまでに美味しそうに見えたのは初めてだった。
ブリミルへの祈りもそこそこに用意された昼食に手を伸ばす。そして、猛烈な勢いで食べ始めた。
そのスピードはルイズが内心呆れ気味だったタバサのそれに匹敵するほどであったが、その事にルイズは気付いていなかった。
やがて、大半の皿が空になる頃には、空腹はほぼ解消されていた。そうなれば多少は気も晴れてくる。
それを見計らったかのように、黙って控えていたシエスタが口を開いた。
- 44 :
- 「ミス・ヴァリエール。実はリュオ様より言伝を預かっております」
「はひ?ひゃんて?…あう」
何の気なしに聞き返したルイズであったが、すぐに赤面し、口に手を当てた。
気が緩んでいた為に食べながら話すという普段なら絶対にしない失策を犯したからである。
何か溢したわけでも無いし、シエスタも気にした様子が無いのが幸いであった。
(…ここが学院で良かったわね。もしこれが母様の前だったらと思うと、ぞっとするわ…
慣れない事をやって疲れきっていたから、ノーカン…駄目だ、母様がそんな言い訳で納得するはずが無いわ。
大体、魔法の失敗で教室を破壊したって時点で駄目駄目じゃない。一体、どんなお仕置きが待っていたか…)
「ヴァリエール様?」
しばしの間、そういった事に厳しい母親からのお仕置きを連想してしまい、冷や汗を流していたルイズだったが、シエスタの呼びかけで何とか戻ってくると、軽く咳払いして続きを促した。
「分かったわ。聞くから言って頂戴」
はて、リュオの言伝って何かしら。言伝という事は急用や重要な用件ではない筈だけど…、と思いを巡らしていたルイズにシエスタはちょっと逡巡しつつ、続けた。
「ええとですね、そのまま言うので…その、怒らないでくださいね?
『疲れたじゃろうから昼食は用意してやる、精々感謝するが良い。
それでは続きを頑張るのじゃぞ。それと、シエスタにはまだ別の仕事があるゆえ、捗らぬからといって手伝わせるのは禁止じゃ』
だそうです。あ、あの、私の言葉じゃないですよ?これはあくまでリュオ様の言伝をそのまま言っただけでして」
「…そ、そう…他に何か言ってなかった?」
「いいえ、特には何も…申し訳ありません」
…先程は感謝したが、やはりリュオはリュオのようだ。この先も一人でやるしかないようである。
まぁ、応援してくれただけマシといったところだろうか。
だが、誰かの助けなくして教壇を持ってくるのは無理だ。そして、現実問題として助けてくれそうなのはリュオしかいない。と、なると…
「…はぁ、解ったからそんな怯えないで。大丈夫よ、分かっているから。
…まぁ、シエスタはリュオのメイドって扱いだし、リュオならそう言うわよね、あんな調子だし…
ああもう、仕方ないか。シエスタ、リュオがどこに居るかわかる?」
「ええと、食堂のロフトでミスタ・コルベールとミス・ロングビルの三人で歓談していらっしゃいましたが…ただ、今も居るかどうかは」
「解ったわ。取り合えず食堂に行ってみるしかないようね。それじゃ、食器の後片付けは頼むわよ」
シエスタにそう声を掛けると、ルイズは立ち上がった。リュオに頭を下げてでも手伝ってもらうしかない、と決意したのである。
「全く…なんでご主人様が使い魔に用を頼むのに一々頭を下げなきゃなんないのよ」
等と、口に出しては見たものの、実際ルイズはそれほど不機嫌なわけでもなかった。
他に道は無いのは分かっていたし、それにリュオは筋を通して頼めば何だかんだで手伝ってくれるだろうと確信していたからである。
「…さて、どう切り出したものかしらね…」
悩みつつ食堂へと足を速めるルイズは、その顔が僅かに楽しそうに見える事には気付いていなかった。
- 45 :
- さて、シエスタがルイズに伝えたとおり、リュオは食堂のロフトでデザートを食べていた。コルベールとロングビルは既に退席しているので一人であった。
あの後、シエスタに用を頼んだリュオが戻ってきてみれば、何故かおかしな雰囲気になっていた。
コルベールとロングビルの間に微妙な空気が流れていた。それだけでなく、リュオを見る二人の視線にも妙な物を感じた。
どうにも気まずく、三人の間にしばし沈黙が流れる。それを打開しようとコルベールが色々と話題を切り出してみるが、すぐに途切れてしまう。そして、
「そうそう、ミス・ロングビル。もう一品デザートなど如何ですかな?なぁに、僕はマルトー親父に顔が利きまして、メニューに無いような珍しいデザート等も…」
と言いかけた所で、訪れたメイドが、
「どうぞリュオ様、マルトーさんから新作のデザートの試作品だそうです。いやぁ、リュオ様が来てるって知ったら是非『我等が杖』に味見してもらうんだ、って聞かなくて」
と、見た目にも豪華なデザートを持ってきたものだから、この上なく微妙な空気になった。それが止めであった。
その沈黙に耐えかねて、リュオは
「あー…何じゃ、その、そういう事らしいんじゃが…二人とも食べるかね?試作品という話じゃから、意見は多い方が良いじゃろうて」
と言ってみたものの、それで空気がどうなるわけでもなかった。だから、
「…ははは、いやいや。どうぞ、お食べ下さい。私はもう、満腹でございまして、ええ。おっと、そろそろ次の授業の用意をせねば!失礼します」
「それでは私も失礼いたしますわ。そろそろ仕事に戻りませんと…」
と、気まずそうに次々二人が席を外した時はリュオは心底ほっとした。が…その事をすぐ後悔する事になろうとは、この時リュオは予想だにしなかったのだ。
ロフトに上がったルイズは目指す姿を見つけると、早速声を掛けた。
「随分と、豪勢な物を食べているのね、リュオ」
「全くじゃ。毎回こう豪華じゃ贅沢に染まりそうじゃなぁ。文句を言うのもおかしな話じゃがな。
それはそうと、何の用かな、ルイズや」
「お気楽でいいわね…こっちは大変だったんだから…。でも、昼食を届けてくれた事に関しては素直に礼を言うわ。ありがとう。とても助かったわ」
「なぁに、届けたのはシエスタじゃよ。礼ならシエスタに言うべきじゃな。全く、熱心なのは良いが食事はしっかりとらねばいかんぞ?全ての活力の元じゃからな」
「分かってるわよ。終わったら食べようとは思ってたんだけど」
「で、全く終わらなかったというわけじゃな?」
「…さ、さすがはリュオね!私の事良く分かってるわ!」
「顔を引きつらせつつもお褒め下さるとは実に光栄じゃな。それじゃぁご主人様、続きを頑張るのじゃぞ」
「ちょ、ちょっと待ってリュオ」
話を打ち切られそうだったので、慌ててルイズは食い下がった。ここで終わっては何の意味も無い。
「…待つも何も、食事中じゃからどこにも行きはせんわい。それで、何じゃ?」
「そのね、私一人ではどうにもならない問題があるのよ」
「ほう?というと?」
「壊れた教壇を新しいのに取り替えなければならないんだけど、私一人じゃ重くて動かせそうにないのよね」
「ふむ。確かにルイズ一人で持ってくるのは辛かろうな。それで?」
「…もう。解ってるくせに。意地が悪いわね…あのね、そういうわけだから是非手伝って欲しいの。
お願いします」
そういうと、ペコリと頭を下げるルイズであった。
- 46 :
- 「ふっふっふ、そうじゃろうそうじゃろう。でなければわざわざここまで来る事も無かろうな。
それはそれとして、手伝ったら世界の半分をくれるのか?」
「……え…?何を…?」
「ふぉっふぉっふぉっ。冗談じゃ。うむ。よろしい。手を貸してやろう。全く、始めからそうやって頼めばわしとて最初から手伝っていたものを…で、教壇はどこにあるんじゃ?」
「そりゃ、やっぱり…倉庫じゃないかしら」
「倉庫…か。そのうち行くつもりじゃったが、意外に早く行く事になったな。よし、早速行こうじゃないか」
「え?倉庫に何の用が?」
「おいおい、忘れおったのか?このルーンに効き目があるかどうか何かの武器で試そうという話になっとったじゃないか」
「…ああ、そうだったわね。思い出したわ。でも、今は片付け優先で頼むわよ。あの時のリストも無いしね」
「それぐらいは心得ておるわい。しかしちょっと物色するぐらいなら構わんじゃろう?面白そうじゃしな」
「はいはい。好きにして頂戴。けど、その代わり教壇の方はしっかり頼むわよ?」
「うむ、任せておけい。だがちと待て。この皿を片付けてからじゃ。…そうじゃ、ルイズも食べるか?」
「え?良いの?始めて見るケーキだし、美味しそうだから気になってたんだけど。じゃあ遠慮なく貰うわよ…う〜美味しい!」
「はっはっは、そりゃ良かった。確か試作品の…バーバーロアだかロアーとか言ったかな。
わしは始めて食べたんじゃが、何でもソースが今までのと違うとか…まぁとにかくどんどん食べてくれ…と?」
「…何その年寄りか理髪店みたいな名前って…え?」
ルイズにデザートを進めていたリュオの顔が言葉の途中で渋いものになった。怪訝に思い、リュオの視線を追うと、
教室から食器を下げて戻ってきた笑顔のシエスタがクリームたっぷりのパフェを載せた皿を持って近づいて来るところだった。
「リュオ様、これも試作品ですが」
「シエスタよ…確かに美味しいがもう満腹じゃ、そう伝えてくれとさっき言ったはずじゃが?」
「はい!ですからこれで最後です!」
満面の笑みで答えるシエスタ。そこには他意は全く感じられない。
「…そうか、最後か…ふう…」
溜息を吐くリュオをみて、ルイズは何となく察した。テーブルの上を改めて見渡せば、甘い香りの漂う空の皿が、ちょっとした山のように積まれている。
匂いから判断すれば、クリーム系、チーズ系、パイ系、フルーツ系…と、種類も豊富だ。
うわ、いくら美味くてもこれでは流石に…
そう思ったルイズは、シエスタに聞こえないよう小声でリュオに尋ねた。
「リュオ、ミス・ロングビルやコルベール先生と一緒って話じゃなかったの?何で一人なのよ」
「いや、何故かどうしようもなく場の空気が気まずくなったんでな、一皿目が出てきた時点で逃げられた」
「そ、そう…じゃぁ、これを全部、一人で?」
「うむ。そういうわけじゃから、ルイズ。お主もしっかり食べるのじゃ、残すでないぞ」
「ちょ、ちょっと…!私ももうキツイんだけど!」
「辛抱せい。タイミングが悪かったと諦めるんじゃ。その代わりばっちり片づけの方は手伝ってやるから、な?」
「あああ…これじゃ一人でやった方がマシだったかも…」
ルイズの嘆きの言葉が虚しく響くのであった。
実際、そのパフェは美味であった。例え満腹であってもまだ食べたくなる魅力があった。
しかし、もう限界の二人にとっては苦行でもある。半ば涙目になって二人は食べ続けた。
「お、美味しい。本当に美味しいけど、お腹が…うぷっ…」
「…なぁルイズ。提案があるんじゃ。片付けは食休みを取ってからにせんか?」
「…異議無し。絶対に異議無し」
どうにか食べきった後、テーブルに突っ伏して燃え尽きた二人がそこにいた。
「…ぐふっ…」
と、一声リュオが呻いた時、皿を下げに来たシエスタが陽気に声を掛けた。
「リュオ様、マルトーさん喜んでましたよ。まだまだ暖めているネタはあるから次の試作品も楽しみにしてくれ、だそうで…どうかしたんですか、リュオ様?」
「シエスタや…その時はせめて量は半分にしてくれ、と強く言っておいてくれ」
突っ伏したままげっそりと呟くリュオであった。マルトーに対し、ある意味二度目の敗北であった。
- 47 :
- 今回の投下はここまでです。
年齢的なイメージがあるのか竜王のひ孫は少食の気がするが実際どうなんだろう…?
- 48 :
- 小津
- 49 :
- そういや妖魔夜行に妖怪豆腐小僧のキャラが居たな。
豆腐の国の王子様という誇大妄想にとりつかれてる人。
この人を召喚したら傷ついたウェールズの口に豆腐を押し込んで回復させたりとか出来るんだよな(ちなみに攻撃方法は強化ガラスを叩き割る威力の豆腐投げ)
- 50 :
- ”豆腐の塊”でできた”60dの鉄下駄”を履いてるヒーローが居たな
- 51 :
- 努力マンとか懐かしすぎるだろw
- 52 :
- 顔面ファイアーは魔法呼ばわりされるか否か。
- 53 :
- >>47
おじいちゃんだからやっぱ小食でしょ
甘い物は別腹で多少入るイメージっつーかうちのじいちゃんがそうだw
- 54 :
- ぬらりひょんの孫にも豆腐小僧って言う一つ目小僧みたいな奴が居るんだがな
納豆小僧とかの小妖怪とセットでよく出て来る
でも多分弱いので戦闘シーンが描写された事は無い
- 55 :
- >>47
つかよんさん乙津。
スライム肉まんってもう売ってないのね。
食べ損なったぜちくしょう。
- 56 :
- 完了形変体刀・鑢七花が召喚と一緒に
完成形変体刀12本もって召喚される奴が読みたい
誰か書いてくれ
- 57 :
- 才人のパソコン「DADAaaaー!」
- 58 :
- サンデー系って召喚少なくね?
- 59 :
- サンデー毛利?
- 60 :
- ストロベリーサンデーを召喚
- 61 :
- Jackpot!
- 62 :
- 偏食が酷いキャラだ
- 63 :
- ふつかものwww
- 64 :
- おっと誤爆失礼
- 65 :
- ストロベリーサンデーか
水瀬名雪を召喚したら、果たして誰が起こしてくれるのか
- 66 :
- 錯乱中のタバサママの背後にワープして、謎ジャムを食わせる秋子さんと、何か毒が裏返って正気を取り戻すタバサママ
- 67 :
- 電波変換、オヒュカス! ルイズ・フランソワーズ!
- 68 :
- 自然界の電波しかないんじゃ薄すぎて持たなそうだな
- 69 :
- TV伝播を受信して自我を形成してる980円は絶望的か。
パソコン通信が届く以上、なんらかの不思議電波が届いてるのかも知れないけど。
ルイズの部屋に集まってみんなでトロともりもりをやってる姿がですね
- 70 :
- 何も異常が無ければ数分後から投下させて頂きます
今回txtで600行をオーバーしましたので途中でおさるさんうきうきしちゃうかも知れません
そうなったらおさるさんを愛でつつ避難所に続きを投下させて頂きます
- 71 :
- フーケが学院の宝物庫を襲った後
「相棒、死んでねぇか?!早速死なれたら困るぜオイ!」
デルフが馬鹿な事を言う
「あ、あぁ……」
ルイズが膝を付き目に涙を浮かべる、ローチが自分を助けるために怪我をした
「ローチ!おい!大丈夫か?!」
ゴーストがローチの元に走り蹲っているローチの肩を叩く
「っぐ…ぁ…ゲホッ!ゴホッ!…すっげぇ…ッづ!…暴徒鎮圧用のゴム弾を至近距離から…ゲホッ!
ぶち込まれたみたいですよ…っはぁっ…!」
顔を上げてゴーストに向かって無理に笑顔を作る、場所が場所の為骨折はしていないだろうが酷い打撲と筋肉の断裂はしている筈だ
「ご…ごめんなさい…ローチ…私のせいで…!ごめんなさい…」
「あぁ?ごめんなさい、だぁ?オイ嬢ちゃん、オマエが何したか分かってんのか?謝って済む問題だと思ってんのか?
ローチはあの時言ったはずだぞ?『俺達にはどうしようもない』ってよぉ、ちゃんと聞いてたか?
けど嬢ちゃんが出たせいでローチは助けに行かざるを得なかった、しかもご丁寧に奴の足元で止まってよぉ!
俺らで考えりゃぁ時速40キロオーバーで走る戦車の前にナイフ持って飛び出すようなクソ以下の行動だ、あぁ戦車はわかんねぇか
んでバンバンとクソの役にもたたねぇ攻撃で見事に敵の注意を引いてよぉ、逃げりゃぁ普通に間に合うのにボーっと突っ立って
挙句ギリギリでローチに助けて貰ってそのせいでローチが負傷だ、下手すりゃ二人とも今頃ミンチ肉だ分かってんのか?
あぁそうだったな、わりぃ、わかんねぇからこんな事になったんだっけなぁ!あぁ?!」
「いいじゃないですかゴースト、ゲホッ、兵士で考えりゃぁ誰も死ななかった、それで勝ちですよ」
ゴーストがルイズに怒鳴るのをローチはゴーストの肩を掴んで止める
「…Shit…!!(クソッ)」
ゴーストが唾を吐き捨てるように言い黙り込む
ルイズは座り込んで顔を両手で押さえ泣きながらうわ言のようにただひたすら「ごめんなさい、ごめんなさい」と言い続けていた
タバサが杖をブンブンと振り回し駆け寄ってくる、ローチの顔を心配そうに覗き込んで一言呟いた
「怪我、見せて」
少し遅れてキュルケが豊満なバストを振り回しながら走ってくる
「タバサは風のトライアングルメイジだけど水もある程度使えるから治療するそうよ、ハァ…」
ローチが無言でベストを脱ぎ捨てBDUを脱ぐ
「ッ…、酷い…」
シャツの上からでも分かるほど負傷した部位が膨れ上がり血が滲んで、否、シャツの一部を血で染めていた
タバサがゆっくりとシャツを捲り上げる、途中で「にちゃっ…」と嫌な音がした、それでもローチは呻き声一つ上げない
「っ…うぇ…」
キュルケが口を押さえる、負傷した箇所は青紫に染まり酷い裂傷を起こし血が出ていた、それ以外にも体中に傷跡がある
「――――」
タバサが短くルーンを唱え目を瞑る、ローチの負傷した所をぽうっと暖かい光が包み傷が徐々に塞がっていく
しばらくすると腫れがある程度治まったところでストップした、額に汗を浮かべ「ふぅ」と一息つくと少し申し訳なさそうな顔をする
「ごめんなさい、私だとコレが限界」
シュンとして少し落ち込んだ様子のタバサの頭にローチが手を乗せ優しく撫でる
「もう全然大丈夫だ、ありがとうなタバサ、助かったよ」
「あぁ、本当に助かった、すまないなタバサ、もうオマエを怖がらせるような事は出来るだけしねぇよ」
ローチがルイズの方に向きしゃがみ込んでルイズの頭に手を置く、一瞬びくりと震え体を硬直させる
「ルイズ、今日はもう部屋に戻って寝るんだ、ほら、行こう」
「あ…ぁ…私……!私のせいでローチを…!」
「大丈夫だ、死んでいないさ、さぁ立って」
ルイズはよろよろと立ち上がりローチに体を支えて貰いゆっくりと歩いて寮に向かう
「ゴースト明日の朝一で起こるであろう事を説明して置いて下さい」
「わかったよ」
ルイズとローチが姿を消した所でゴーストは二人に向き直る
「さて、俺らは明日恐らく何があったかの証人として呼ばれる可能性がスゲェ高い
でだ、もしかしたら俺らが尻拭いしなきゃなんねぇかも知れねぇ、そしたら後は俺とローチに成り行きを任せろ
まぁならねぇにしても…ククッ」
「…なぜ?」
タバサが恐る恐るゴーストの顔を見て…すぐに顔を逸らす
「俺とローチは馬鹿にされてみすみす黙ってるような人間じゃねぇって事だよ」
ゴーストがタバサに目を逸らされた事に少しの悲しみを覚え、それとは別にニヤリと不敵な笑みを浮かべた(見えない)
- 72 :
- トリステイン魔法学院 宝物庫 フーケ襲撃翌日早朝
ゲイリー・「ローチ」・サンダーソン軍曹 サイモン・ライリー「ゴースト」中尉
普段は入る事の出来ない学院宝物庫で数多くの人間が集まりパーティーのように騒がしい状態が続いている
その殆どがこの学院の教師達でありその中で何人かの生徒、およびそのうちの一人の使い魔、そして使い魔でもなければ生徒でも無い人間
教師以外の人間はルイズ、キュルケ、タバサ、ローチ、ゴーストの5人である、つまり現場を見た人間達だ
ルイズは俯きキュルケとタバサはいつもと同じように涼しそうな顔と無表情だ、ローチはルイズの肩に手を置きゴーストは半寝状態
ルイズは先日から全く喋っていない、ゴーストに怒鳴られたためだろうか
「土くれのフーケ!とうとう我が魔法学院に手を出したか!随分とナメた真似をしてくれるじゃないか!盗賊風情が!!」
「衛兵は何を考えてボケッと突っ立ってたんだ!!」
「衛兵も所詮は平民か、役に立たん奴らだ、それより当直は一体誰なのだ?」
ミセス・シュヴルーズがビクリと震える
昨日の当直は彼女だったのだ、しかし賊が襲撃して来るとは思わず他の教員がそうしているように早々に就眠してしまった
ちらと壁を見ると大きく文字が書かれている「破壊の杖、確かに領収いたしました 土くれのフーケ」と
そしてその言葉通り何かが置いてあるべき場所に隙間が開いている、動かぬ証拠である
「昨日の当直は貴女だったのではないのですか!ミセス・シュヴルーズ!!」
一人の教師が怒鳴る、その大きな声に反応してゴーストがビクリと反応し目を覚ました
「うっぜぇ…」
誰にも聞こえないような小さい声でゴーストが文句を言った、彼から言わせて見ればコレは意地汚い罪の擦り付け合いでしかない
そこに扉が重い音を立てゆっくりと開かれる、オールド・オスマンがゆったりとした足取りで入ってきた
「ふむ、全員揃っとるかの?」
「オールド・オスマン!なぜこんな時に落ち着いておられるのですか!」
先程怒鳴った教師が言う
「静かにせんか、今更慌てた所でどうにもならんよ、今は落ち着いて話し合うことこそ優先させるべきことじゃ」
オスマンが柔らかくも威厳のある声で言い返し先程の教師と他の教師を黙らせる
「よろしい、さて先程ミセス・シュヴルーズを攻め立てておったが実に下らん、聞くがこの中でまともに当直をこなした人間がおるかの?
こんな話を聞いたことはないかね?一人の女性の罪人に多くの人間が石を投げておった、そこに一人の人間が現れこう言ったそうじゃ
『この中で一度も罪を犯さなかった人間だけ彼女に石を投げなさい』と、すると今まで石を投げていた者は皆黙り去って行った
まさに今がそうじゃよ、君らは人の事も言えんじゃろう、うん?」
ゴーストがそれを聞いてぼそりと呟く
「あれ?コレってキリストじゃね?イエス・キリストじゃね?」
ゴーストがキリストの話は異世界にも伝わっているのか、さっすが神様だな!なんて思ってうんうんと頷いていると
扉ではない方の仮設入り口(フーケの開けた大穴)から女性がフライで入ってくる、オスマンの秘書ロングビルである
「む?ミス・ロングビルではないか、一体何処におったんじゃね?わしはてっきり居るもんだと思っておったよ」
「申し訳ありません、朝起きて外に出ると宝物庫に穴が開いておりましたので中を見るとフーケのサインがありましたから
急いで調査して参りました」
そう言うロングビルの顔は少し疲れたようになっておりよくよく見ると目の下にうっすらと隈があった
オスマンは感心し早速報告を聞こうとロングビルに尋ねた
「ほう!では早速報告してもらおうかの!さぁしっかりと聞かせてくれたまえ、ミスロングビル」
「はい、聞き込みをしましたところ村はずれの森の奥にある小屋に出入りするフードを被った怪しい男を見たと聞きました」
「…ローチ、ちょっと来い」
ロングビルの報告が始まってすぐにゴーストがローチを呼ぶ、ローチがゴーストの横に移動する、ゴーストの居る場所は宝物庫の隅で
小声で話をするにはなかなか持って来いの場所だった
「どうしました?ゴースト」
「いやな、中々にキナ臭ぇぞ…昨日の夜遠かったが俺はフーケの横顔を、正確に言うと口元だが見たんだ」
「…それで?」
「アレは女の筈だ、だが報告では男と言っている、それにな…男にはねぇもんがちゃんとあった筈だ」
「…」
- 73 :
- 「胸だ、いやそんな目で見るな、確かにあったんだから仕方ねぇだろ」
ローチは変な所を見やがって…なんて思いながら話を聞いていた
「して、ミス・ロングビル、大まかな位置はどこかね?」
「はい、徒歩で半日、馬で約4時間の所です」
「ではすぐに王室に報告しましょう!王室衛士隊に頼んで、兵隊を差し向けて貰わなくては!」
ローチとゴーストがピクリと反応して視線を交わし小さな声で会話する
「決まったな、ローチ」
「えぇ、唯の一点の曇りも無い美しい黒ですね」
「往復馬で8時間を朝から調べているなんて凄ぇなぁ…なぁローチ?今何時だ?」
「大体6時ぐらいじゃないでしょうか?昨日の夜10時が朝だなんてここの時間概念ってどうなんでしょうか…?」
「昨日事の起こったのがガキ共の部屋に篭っている時間だから8時ぐらいで…4時間走って2時間仮眠そして4時間走る、ぴったりだな?」
「見て下さいよ、実に眠そうじゃないですか」
ローチとゴーストが早々に犯人に目星をつける、誰かは言わないが、言わないが!
そうこうしていると丁度フーケ討伐隊の勇士を募っている真っ最中であった、どうやら教師達は口ばかりの根性無しのようだ
ゴーストはニヤリと笑い(見えない)悠々と手を上げる、それと同じようにローチも手を上げる
「ん?君達は…ミス・ヴァリエールの使い魔と…ともに召喚された者かね、ホレ見なさい、彼らでさえこれ程の勇気があるのじゃ
それに比べてお主等教師は皆肝っ玉の小さい…しかし使い魔君、コレは君達が関与することでは…」
すると杖を抜いて高く上げる者が現れた、ローチの主であるルイズである、足は少し震えているもののしっかりと腕を伸ばしている
「君は生徒ではありませんか…ここは教師達に任せて…」
「誰も杖を掲げていないではありませんか!」
漸く出番の回ってきたコルベールの言葉にルイズは反論する、正にその通りである、教師達の内誰一人として行こうとする者はいない
それどころか顔を逸らす者まで居る始末だ、確かにそれならば志願したルイズを選ぶしか無いだろう、が
「勇気と無謀を履き違えるな、嬢ちゃん 死んでも栄誉は得られねぇ、残るのは死体だけだ」
ゴーストがルイズの元に歩み寄り睨みながら(そう見えるだけで実際は睨んで無い)言う
ルイズは「う」と言葉に詰まり下を向く
「だがその根性は気に入った、どこぞの口だけのクソどもよりは遥かにいい、どうだ?オスマンさんよぉ、俺らは志願したルイズの連れだ
それなら関与がどうとかって話じゃぁねぇだろうよ?」
「勿論俺は使い魔としてルイズについて行く、どうだ?」
そこでスイッと一つの杖が掲げられる、キュルケの杖である
「キュルケ…アンタどうして」
「ふふーん、私はツェルプトーよ?ヴァリエールには負けられませんわ」
というのは建前でルイズが心配なので着いて行くのである、憎まれ口を叩くのはアレだ、きっとツンデレ的な何かなんだ、うん
続いてタバサがひょいっと杖を掲げる、持ってる所がやや下なので重さによるもので微妙にプルプルしている
「タバサ、貴女はいいのよ、私が勝手に決めた事なんだから…」
キュルケがプルプルしているタバサの杖を支えながら言った
「心配」
タバサ嬢は何時も通りの無表情で答える、ちなみに心配している人の中にローチが混ざっている
「ふむ!よろしい!ならばおぬし等に破壊の杖奪還の任を与えよう!」
オスマンがバッと手を斜め上に突き出し言い切る、パッと見ナチス式の敬礼に似てる
「お待ち下さい!オールド・オスマン!!私は反対ですぞ!」
コルベールはオスマンを止めようと抗議する
「むぅ、細かい事を気にしおってからに…ハゲるぞ?ミスタ・コルベール」
「既に手遅れです!ハゲてますッ!!」
「むぉ?!ひ、酷い自虐を見た…なに、心配要らんよミスタ・コルベール、彼女らはしっかりと敵を眼に焼き付けとるし
ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だと聞くではないか?」
教師達とキュルケ、ルイズが一斉にタバサを見る、心なしかタバサが少し恥ずかしそうにもじもじしている
コルベールはしぶしぶと納得したようだ
「ローチ、シュヴァリエって何だと思う?俺は食い物だと思う、てか腹減った」
「何をどう転んでも称号が食い物になることは無いと思います、MG○(×タルギアオンライン)の称号みたいな物じゃないですか?
ヘッドショット率で付いたり〜とかの」
「オマエ…他社どころか他国の作品持ってくるのは反則だと思う、あと腹減った」
「そうですね行くにしてもまず腹ごしらえをしないといけませんね」
そんな話をゴーストとローチがしているとこんな声が聞こえてくる
- 74 :
- 「そうですぞ!何せ彼はガンダー…むぶっ?!」
変な状況らしい、それを聞いたゴーストが口ずさむ
「まだ怒りにー燃ーえるー闘志がー」
「ジャパンで人気のあったアニメですね」
そうこうしていると話が纏ったらしい、ルイズたちが「杖にかけて!」と唱和してスカートの裾を摘み一礼していた
ローチが一応しておくかと足並みを揃え敬礼をする、実に美しい敬礼だ
聞いた話だが敬礼には種類があり陸海空でそれぞれ差があるそうだ
陸は普通の敬礼で皆が知っているであろう敬礼だ、海は潜水艦等で横に当たったりして邪魔にならない様角度がほぼ直角らしい
空は映画でも良く目にするビシッとやってピッとする奴だ、絵に描いたりしない事には非常に説明し辛い
ローチがしているのは陸軍式敬礼である
一方ゴーストは別に上官じゃねぇしなぁなんて思いながら今一度宝物庫を見渡していた
急いで腹ごしらえを終えた5人の内3人はさぁ行くぞ!と言わんばかりに張り切っていたが
「俺とゴーストは装備を整えないと駄目だから少し待っててくれ」
と言われ早速出鼻を挫かれた気分になった
待つことおよそ10分
「よしOKだ、待たせたな、行くぞ」
ローチとゴーストが大荷物を持って走ってきた
キュルケとタバサが目を丸くして二人を見る、二人ともローチが決闘で使っていたゴーレムを凄まじい轟音と共に削り取っていった物
つまりM240(※1)を持っていたのだ、そんな恐ろしい物が二つもあることに驚愕する
一方ルイズは決闘を見ていなかったので今一つ驚く事は無い、大荷物に少々驚いた程度だ
フーケが出入りしていたと思われる小屋までは馬車で行くことになる、その馬車を操るのは場所を知っているロングビルだ
ローチとゴーストが馬車にゴトゴトッと銃を置き中に入り込みフーッと一息ついた
「ミス・ロングビル、手綱引きなど付き人に任せてしまえば宜しいのではなくて?」
キュルケが身を乗り出してロングビルに訪ねる
「いえ…私は…貴族の名を無くした者ですから」
そう答えるロングビルの顔はどこか少し哀しそうだ、コレはコレで美味そうだとはゴーストの感想である
「貴女はオールド・オスマンの秘書なのでは…?」
「あの方は貴族や平民なんて拘らないお方ですわ」
スケベなのが無くなれば非の打ち所が無い素晴らしい御方なのですけれど、と言いたそうなのは置いておこう
「差し支えなかったら、事情をお聞かせ願いたいわ」
ロングビルはそれに対し何も答えずただ苦笑いする
「言いたく無いなら、仕方ありませんわね、無理に聞く事もありませんし」
キュルケはあっさりと引き下がり次はローチとゴーストの横に置いてある銃に興味を持ち始める
二人の目を盗むようにこっそりと手を伸ばしじっくりと見ようとするが
「下手に触らない方がいいぞ、その状態で暴発すればオマエがまるで食肉加工所で手を施されたミンチ肉になる」
ローチがキュルケにM240の恐ろしさを説明する、マガジンも抜いてあるしセーフティも掛けてあるが如何せん銃口がキュルケに向いている
勿論弾が出ることは無いがそんなの事は全く知らないキュルケからしてみればとても恐ろしい事この上ない
なにせ目の前で青銅で出来たゴーレムが粉砕されたのだ自分があのターゲットになんてなりたくは無い
ヒッと驚いて手を引っ込める、ルイズはきょとんとした顔になりタバサは冷静に見えてゴーストの銃口がこちらに向いている事に気が気ではない
ゴーストはそれに気付いて寝かせてあったM240を馬車の端に立てかけて銃口を上に向ける、タバサはほっと一息ついた
ローチも同じようにM240を立てかける、キュルケもほっと一息ついた 一方ロングビルは眠そうにあくびをしていた
「ミス・ロングビル、目的地の小屋まではどう進めばよろしいのでしょう?」
ゴーストが身を乗り出し優しい物言いでロングビルに尋ねる
「ん、えっと…もう曲がる所は終わりましたので後は3時間半ほどこの道を真直ぐ進むだけですわ」
「ほう、お疲れでしょう、よろしければお変わりしますよ……ローチが」
「えっ、ちょっ…俺?!」
「ですが…私は…」
「いえ、コイツの事はお気になさらずあと3時間半ほど休眠を取っては如何ですか?せっかくお美しいのですからしっかりと休んで下さい」
「うわぁ、誰だこの人…俺の先輩がこんなにキモイ訳が無い」
- 75 :
- ローチが引いているとゴーストがひょいとロングビルの隣に移り有無をも言わさず抱きかかえる
「え、きゃっ」
「変われ、ローチ」
「ああクソ、分かりましたよ…動かし方なんざ分かりませんよ!」
ゴーストがロングビルを抱きかかえたまま馬車内部に戻り入れ替わるようにローチが馬車の前に移動して手綱を握る
「えと、その…」
ロングビルが頬を少し染めてあたふたする、ゴーストは優しくゆっくりと今までローチが座っていた所(ゴーストの横)にロングビルを置く
「さ、後は任せてください……ローチに」
「あぁ、そうですよね!俺ですよね!畜生!」
「は、はい、ではお言葉に甘えさせて頂いてよろしいでしょうか…?」
ローチが馬を刺激しないように四苦八苦しながら手綱を動かす中ゴーストの提案についてロングビルが尋ねる
「えぇ、構いません、どうぞお休み下さい」
とても優しく、男であるローチから見れば吐き気を催すほど優しくロングビルに接するゴースト
それをぽかんと見続けるルイズ、キュルケ、タバサの生徒三人組
しばらく走っているとローチが慣れたのか幾分か落ち着いて手綱を操作する、コツさえ掴めば割と楽に動かせるらしい
キュルケとルイズは朝早かったからだろう、何故か仲良く二人寄り添って眠っている
ロングビルは何故そうなったのか皆目見当付かないがゴーストの膝枕で眠っている
「これ勃ったらどうなるんだろうな、ローチ」
「まだ起きている女の子が居るんだからアホな事言わずに大人しく休んでて下さい、ゴースト」
「バッカお前そういうのがいるからこそこんな話が面白いんじゃねぇか」
ゴーストは手綱を握るローチと会話をしながら馬車の旅を楽しんでいる
タバサはいつの間にやらローチの隣に陣取って手綱の操作方法をレクチャーしていた
「こっちを引けば右に曲がる、こっちは左、乗馬も大体同じ」
「ん、なるほど…ありがとうなタバサ」
ローチはタバサの頭をわしわしと撫でる、タバサは相も変わらず無表情だが内心狂喜乱舞していた
「ローチ…後方上部にデカイ何かが追ってきてるぞ」
「…何だアレは…?」
ゴーストの声に反応して後をちらと見たローチは疑問の声を上げる
「ヒャッホー!久しぶりに俺っち登場だぜ!ありゃぁ風竜だな、まだガキだが戦うとなっちゃあ相棒もちっとばかしキツイかも知れねぇ
やり過ごすのが無難だな、まぁ俺らを標的にしてるなら戦うしかないが」
「逃げれないのか?デルフ」
「無理だな、風竜は竜族でもブッ飛んで速ぇんだ、時速100リーグ以上は余裕で出るぜ?……あっと、やべぇな…確実に俺らを追ってるぜ
どうする?地上に引き摺り下ろして俺っちでぶった切るしかできねぇぞ?それか風竜にダメージを与えれる強さの遠距離武器だな」
「M240は温存したかったが仕方ねぇか…」
「待って」
ゴーストが手をM240に掛けたときにタバサが止める
「アレは私の使い魔、風竜のシルフィード、危険じゃない」
タバサがそう言うと無言でシルフィード(仮定)と目を合わせる、するとシルフィードが徐々に降下して馬車のすぐ上の高さになる
「きゅいきゅいっ!」
シルフィードがその巨体に合わない可愛い鳴き声を出す、ローチとゴーストはポカンとシルフィードを見つめていた
「すっげぇ…マジ物のドラゴンだ…フィクションでしか見た事ねぇぞ俺…」
「メイジの実力を知るには使い魔を見ろ…だったか、タバサは凄いんだな…」
ゴーストは本物のドラゴンに目を奪われローチはタバサの実力に驚く
「(やったぁ!ミスタ・ローチに褒められた!ありがとっ!シルフィ!)」
「(きゅいっ!お姉様が嬉しそうで何よりなのねっ!)」
傍から見れば無言の見つめ合いだが使い魔と主の意思疎通内ではこんなやり取りが行われていた
ちなみにこの風竜のシルフィード、正確には風竜ではなく風韻竜と言って人語を喋る事ができ
先住魔法と言われる魔法を使える非常に頭の良い種族である、ハルケギニアの人間からしてみれば昔に絶滅した種族と思われており
もし見つかったらアカデミーと呼ばれる所へ連行される可能性が非常に高い、故に風韻竜である事は内緒にされている
余談だがローチ達はタバサの使い魔を街から帰る時に一度も見ていなかった
学院に着いてからもローチ達は後ろから馬で追いかけて来たと思っていた
- 76 :
- 3時間半後
「ほら、起きるんだココからは徒歩じゃないと行けないぞ」
「とっとと起きろ、置いてくぞ?」
ローチとゴーストが馬車を止め深い森の中で寝ているロングビル、ルイズ、キュルケを起こす
「ふ、あ〜ぁ」
「っく〜っ」
「ん、ふぅ…ぁ」
三人が体を起こし欠伸をしなり体を伸ばしたりと様々に目を覚ます
脳が覚醒したであろう頃合にローチが最善に出てM240とは別のF2000-Themal-Sight(※2)を構えながらロングビルの指示に従いゆっくりと移動する
ゴーストは最後尾でACR-ACOG-Sight(※3)を構え1メイル程の間隔をあけて移動する、ルイズ達もそれに倣い杖を抜き警戒しつつ移動する
「ありました、あそこです」
ロングビルが開けた所にポツンと立つ小さな小屋を指差しながらローチ達に教える
木の後に隠れながらローチとゴーストが目を合わせる
タバサが杖でガリガリと地面に絵を描きながら口を開く
「作戦会議」
しかしゴーストとローチが腰に手を回しながらにやりと笑い声を合わせる
「「俺達に任せろ」」
ルイズ達がそれを聞いて何を言っているんだこいつらはと言うような顔で二人を見る
「ローチ、サーマルで周囲に人がいるか確認」
「了解」
ローチが体を木から出しF2000のサイトを覗いてぐるりと周りを2〜3度見回す
「クリア」
「先行してトラップを確認」
「了解」
ローチが匍匐前進し、地面を警戒しながらゆっくりと確実に前に進む、ゴーストはACRを構えながらローチの見えない所を警戒する
しばらくローチが進んだ後にローチがゆっくりと膝を付くように座り左右の地面を見る、その後ハンドシグナルで異常なしと伝える
「待ってろ」
ゴーストがそう言って姿勢を低くしたままローチの移動した所を進む
「何よあれ…」
「洗練された兵士みたい、かっこいい」
「私の十八番がタバサに取られちゃったわ」
「……」
ゴーストがローチの隣に移動し肩を叩く
「他にトラップはあるか?ローチ」
「いえ、地雷なんてあるはず無いですしブービートラップの心配も無さそうです、一旦後退しましょう」
ローチが警戒し続けるゴーストの肩を叩いてルイズ達のいる所へ戻り始める
数秒後ゴーストも警戒方向を変えず後退する、一足先にルイズ達の所へ戻ったローチはすぐさま木の後ろに隠れ周りを警戒する
ゴーストも戻り一息ついた二人はトラップ等が確認出来なかった事を伝える
「そう、もう引き払っちゃったのかしら…」
「…フーケはアレか、もし居たら生きて捕まえなきゃならないのか?」
「いえ、その必要は無いと思うわ…」
「なら話は早ぇな、行くぞローチ」
「了解、確認ですね」
そう言うと二人は先程とは打って変わって堂々と小屋と森の間の距離まで歩いて行き腰に付けている短い筒に何か金具が付いた物を手に取る
フラッシュバンである、二人は同時にピンを引き抜き小屋の窓に向かって投げ入れる
瞬間、小屋から凄まじい光が一瞬溢れ耳が潰れんばかりの音が響く
「きゃっ!!」「っ…」「何?!」「っくぅ…!」
女性陣は反射的に耳を塞ぐが一瞬の事なので耳を塞いだ時には既になり終わっているのだ、既に遅いが鼓膜が破れる程の音ではない
続いてローチが腰につけているもう一種類のグリーンの筒を手に取りピンを抜きもう一度窓に投げ入れる
スモークグレネードである、小屋から白い煙が溢れ小屋の中を白く染める
ゴーストとローチが同時にM240を手に取りコッキングレバーを引き腰だめに構える
「くたばれぇ!!」
- 77 :
- ゴーストの声で二人同時に引き金を絞りM240の銃口から火花を散らし銃弾を撒き散らし薬莢をばら撒く
見る見るうちに轟音と共に小屋の壁に穴が空き、空いた穴から煙が漏れ出て見るも無残な姿になっていく
中に人が居れば伏せでもしなければ今頃ぐちゃぐちゃの肉片となって小屋の中に散らばっているだろう
数秒だろうか、それとも十数秒だろうか、良く分からないが遂に銃口から火花も出ず、轟音も響かぬようになってしまった
ゴーストは上部を開放しマガジンを外し横に放り投げ新たなマガジンを差し込み残った薬莢を弾き上部を閉じてコッキングレバーを引く
ローチはF2000に銃を持ち替えスコープを覗く
「…内部に人は確認できません、恐らく死体か無人かでしょう」
「よし、いいぞローチ」
ゴーストはそう言うとゆったりとした足取りで女性陣の元へ戻る
続いてローチもF2000を小屋に向けたまま戻ってくる
「終わったぞ、中を確認してみよう」
ローチがにっこりと女性陣に話しかける、たった今とてつもない事をした割にはケロッとした声だ
「う…酷い…中に人が居れば……」
「ミンチ肉」
「流石の私もコレは引くわぁ…」
「べ…別にココまでする必要は無かったのでは…」
ゴーストが人差し指を立ててチッチッと振る
「いやいや、ミス・ロングビル…なんとフーケは俺の親友に大怪我を負わせたのですよ…
ひっ捕まえて四股を切り落として目を抉ってしてくださいと懇願しても自然に死ぬまで放置してさえお釣りがきます」
「俺は指一本ずつ切り落としていって泣き叫ぶのを見るのも良いと思いますがね」
ゴーストとローチがケラケラと笑いながら楽しい拷問談義に花を咲かせる
ルイズとキュルケは「うっ」と口を押さえタバサは何時も通りの無表情に眉間のしわを追加
ロングビルは顔面蒼白にして汗を額に浮かべる、目は焦点があっていない、こんな生々しい話を聞いたのは初めてなのだろうか
「まぁそんな事ぁいい、小屋の中を見に行くぞ」
ゴーストが指をパチンと鳴らし全員の注意を自分に向ける
「で、では私が外を見回りますわ」
「いや、ミス・ロングビルだけじゃぁ警戒し切れねぇ俺も外の見回りをする」
「了解ですゴースト、じゃぁルイズ、キュルケ、タバサは俺と一緒に小屋の中を調べるぞ
フーケが生きていて負傷していたなら捕獲、死んでればそれでよし、負傷もしてなければ直ぐに攻撃だ、居なければ何もしなくていい」
「うっ…」
「ルイズ…貴女ミンチ肉想像したでしょ…うっぷ」
「自分で言ってこれである」
ローチが3人を引き連れて小屋へ向かう、タバサとローチは警戒を解かずに慎重に移動、ルイズとキュルケは口を押さえて移動
「ミス・ロングビル、俺はあっち側を見てくるからこちら側はお願いします、何かあったらお呼び下さい
すぐに駆けつけます、なぁに女性をお守りするのは男の…イギリス紳士の義務ですから」
キリッと効果音が聞こえてきそうな非常に似合わないセリフがゴーストの口から漏れ出てくる
ローチが居たら顔を真っ青にしてオ゛エ゛ェ゛ェェェ!!と言って物陰に歩いて行くだろう
「は…はい…」
ところがどっこいロングビルは顔を少々赤らめている、青くしたり赤くしたり実に忙しい人だ
「ではお気をつけて」
ゴーストがそう言い残してACRを構えながら森の中へ入っていく
ローチ達が小屋の扉の前に立つ、タバサが扉を慎重に開けようとするとローチがそれを制する
ローチがMP5KSD(※4)を手に取り一歩後ろに下がる、息を一度吸うとグッと脚を踏みしめる
「ブリーb!!」
叫びながら扉を蹴破りMP5を構え小屋内を素早く見回す、蹴破られた扉はヒンジが千切れ扉自体が吹き飛び向かい側の壁に叩き付けられる
タバサだけがローチに続いて小屋の中に入り杖を構え視線を巡らせる、ルイズとキュルケはそれに続いて中に入り恐る恐る中を見る
「クリア、ふむ…死体も怪我人も無し…無人だったみたいだな」
「うー…ミンチ肉を見ないで済んで良かったわ」
「そうねルイズ…同意するわ」
「あった、破壊の杖」
- 78 :
- タバサが部屋の隅を指差す、奇跡的というのかM240で壁をぶち抜いて小屋を貫通させた弾が「破壊の杖」に当たらなかったようだ
タバサは破壊の杖を運ぶ為に破壊の杖の入った箱を持ち上げようとするが持ち上がらない、かなり重いらしい
「う…んっ!」
どうにか持とうとするが引きずるだけに終わってしまう、そこにローチがやってきてタバサの頭を撫でる
「良く見つけたな、お手柄だぞタバサ よし、取りあえずは中を確認だ」
ローチが箱を開ける、中を確認するとローチの良く見知った物が入っていた
「何コレ…」「コレが杖?」「重そう、訂正、重い」
「コイツはFGM-148…ッ!」
ローチはすぐに外に向けて叫ぶ
「第一ターゲット発見!FGM-148!やれます!!」
その直後に女性の叫び声が聞こえる、ロングビルだ
「きゃああああぁぁぁぁ!!」
タバサが急いで窓から声のした方向を見るとロングビルがフーケの巨大なゴーレムによって森に投げ捨てられる瞬間が目に映った
ゴーレムはゆっくりと小屋の近くに歩いてくると腕を大きく振りかぶった
「そういう事か!伏せろ!!」
その声でキュルケとタバサが倒れ込むように伏せる、ルイズの反応がワンテンポ遅れるがローチが押し倒すようにルイズの頭を抱え込んで地面に伏せる
その直後に小屋の天井を土で出来た大きな拳が殴り吹き飛ばす、破片が小屋の中に降り注ぐが幸運にも大きな破片が当たる事は無かった
「ルイズ!これを持って外に逃げろ!タバサ!キュルケ!お前達もだ!!ルイズ!引き金は絶対に引くな!」
ローチがルイズを立たせ今まで持っていたMP5をルイズに持たせ全員を外に出そうとする
「で、でも!」
「Hurry up(早くしろ)!!」
「行くわよ!ルイズ!」
「…ミスタ・ローチも」
キュルケがルイズの腕を掴み無理やり引っ張っていく、タバサはローチの心配をする
「俺はコイツ(破壊の杖)を運びすぐに出る!」
ローチが破壊の杖が入っていた箱の蓋を閉じ取っ手を掴み、持ち上げる
タバサがこくりと頷き走って小屋を出る、それに一歩遅れローチが小屋を飛び出す、直後に小屋が巨大なゴーレムによって踏み潰された
「ハッ!やっぱりな!!」
ローチは小屋が潰された時の衝撃と風圧を姿勢を低くして耐えながら笑う
続いてローチは顔をゴーレムの肩に向け上に乗っている黒いフードを着た人影を視界にいれる
「タバサ!ルイズ達とコイツ(破壊の杖)をお前の竜に乗せて避難してくれ!頼む!!」「待って!ローチ!」
「分かった」「タバサ!!」
ローチは全力でスプリントし、タバサ達に追いついてやや乱暴に破壊の杖が入った箱を置き、背負っていたSVD(※5)特殊カスタムを手に取る
「相棒!俺を使ってくれても良いんじゃねぇ?!」
「対人だったら考えてやる!」
腰に提げたデルフが文句を言うがどう考えても剣でゴーレムを斬るのはありえない
タバサは口笛を吹きシルフィードを呼び寄せる
それを確認したローチはSVDを手に取ったままゴーレムを中心にして時計回りに走る
「ローチ!死なないで!!絶対に死なないで!!命令よ!」
ルイズはキュルケに引かれながら叫ぶ、そして到着したシルフィードに乗せられた
ローチはちらと後ろを見てルイズがシルフィードに乗せられた事を確認するとニヤリと口元を歪ませる(見えない)
「さーて!土くれのフーケさんよ!!お前は体に穴開けられてどんな反応するのかな!!」
高倍率スコープを低倍率のACOGに変える特殊なカスタムが施されたSVDを走るのと同等の速度で横移動しながらコッキングレバーを引く
ゴーレムが右腕を大きく横に広げ、こちらにゆっくりと歩いてくる
ローチはゴーレムの肩に乗った人型をぶち抜こうと確認するがゴーレムの左腕が邪魔をして狙う事が出来ない
大きく振り上げられた巨大な右腕の拳が握られると土とは思えないおかしな音が響く
- 79 :
- ギギッギィィィィィッ
ォォォォオオオオオオオンッ!!!!
まるで巨大な肉食獣を思わせる咆哮のような音、よく聞けばそれは鉄を擦り合わせたような不快な音だった
鉄、そう鉄である、ゴーレムの拳が土ではなく鉄となっていた、錬金の魔法で出来た産物であろうそれは銀色で鈍い光沢を放っていた
もし直撃すれば死ぬ、それも人の形も残せぬほどの醜い物体となって死ぬだろう、掠る事も許されない絶対的な死
圧倒的な質量と意を持って振り下ろされるソレは確実にローチを叩き潰そうとしていた
すなら虫のほうのローチにして欲しい、そして手で潰すとバッチィから丸めた新聞紙で叩け、なんて事を思いながら脚に力を込める
今まさに叩き潰さんと拳が振り下ろされると同時にローチは左に、つまりゴーレムの右側に走り出す
人間の全力の2倍近くの速度、瞬間的には80kに勝るほどの速度で走る
拳が地面に突き刺さり飛礫をゴーレムの前方にショットガンの散弾のように撒き散らし粉塵を舞い上げる
「いやっ!ローチ!!」
上空でUAVプレデターのようにシルフィードが旋回している上からルイズが叫ぶ
粉塵が薄くなりゆっくりと獲物を始末した余韻を味わうようにゴーレムが右腕を土に戻し腕を引く
ダァン!!
直後に火薬の爆発音が響きゴーレムの肩に乗っていた黒いフードを着た人型の首から上が吹き飛んだ
「ヒューッ、HEAD SHOTだな…だが残念賞か」
粉塵の中からしゃがんでSVDを構えたローチが姿を現す、拳が振り下ろされた瞬間に走り出した後少しの余裕を持って着弾点と距離を置き
衝撃と粉塵をしゃがむ事により耐え、フードを被った人型に大体の狙いをつけ、姿が確認できた瞬間にサイトに収め引き金を引いた
続いてもう一度横に走り出し一瞬だけ止まり引き金を引く、そしてまた走り出し一瞬止まり撃つ、それを何度か繰り返す
首が吹き飛んだ人型の右肩が吹き飛び、左肩が吹き飛び、右膝が吹き飛びバランスを崩し、倒れるよりも早く左膝を吹き飛ばす
「フーケをやった!!」
首さえも無い達磨となってゴーレムの肩に倒れ伏した人型を見てキュルケが声を上げる
「駄目、まだ倒してない」
タバサが一言呟いた瞬間に人型だったものが崩れ砕け消える、しかしゴーレムは術者がいなくなったにも係らず形を保っている、簡単な話だ
まだ術者は生きていてどこかでゴーレムを操作している
ローチが「残念賞」つまり外れだと言ったのはコレである
ローチが外れだと分かったのは頭を撃った時だ、いくら頭を撃ったとしても対物ライフルでも無いのに頭が吹き飛ぶのはおかしい
使った銃はSVD、つまり7.62ミリなのにも係らず頭が吹き飛んだのだ
その瞬間に理解した、といっても実を言うと最初から犯人は分かっていたので最初から的当て気分だったのだが
しかし犯人がまだ姿を現さない所を見るとローチの考えた犯人の行動理由に間違いは無いとローチは確信する
「キュルケッ!タバサッ!どっちでもいいわ!!お願い、私とコレにレビテーションをかけて下に降ろして!!」
ルイズはローチの危機に声を上げる、ルイズがキュルケに頼み事をした事は今まで一度も無い、勿論殆ど接点を持たなかったタバサにもだ
キュルケはルイズの頼みを聞いてやりたい、が
「駄目よ!ルイズ!あなたが行ってどうなるの?!死んじゃうだけよ!!なら絶対に行かせないわ!」
「…私がやる」
「タバサッ!!」
「―――」
タバサは杖を持ちレビテーションを唱え、ルイズと破壊の杖を下に降ろす
「ありがとうタバサ!」
ルイズが礼を言って地面へゆっくりと降りていった
「…タバサ」
「大丈夫、死なせない、私達も援護する」
キュルケがタバサを責めるように見て何かを言おうとした瞬間にタバサが言う
「ゴーレムの上空を旋回、陽動しつつ攻撃する」
「きゅいっ!」
「…わかったわよ、でも援護…ねぇ」
呆れたと言わんばかりに溜息をつきキュルケが胸元から杖を取り出してにやりと笑う
「別に…倒してしまっても構わないんでしょう?」
- 80 :
- ローチがゴーレムの周りを右に左に前に後ろに走り回り攻撃を避け続けながらSVDをゴーレムに撃ち続ける
しかしいくら土といってもこれ程に馬鹿デカイならば銃弾程度で壊れるわけは無い
それに見た所崩れた所はすぐに修復されるようでどれだけちまちまとダメージを与えても無駄でしかない
外部はただの固い土だが5cmも内部になればその強度は戦車装甲レベルとなるであろうゴーレムはそこらの銃火器では破壊不可能
例えM72LAW(ゼロ魔本編に説明があるため除外)やRPG7(※6)を打ち込んでも完全に破壊する事は出来ないだろう
「やっぱアレ使わないと駄目か…」
ローチがゴーレムの股の下を走り抜けながら心底面倒臭そうに呟く、そして視界を前方に向けると何かを引きずった人影が見えた
「おい!おいおい!!嘘だろ!!クソッ!何故来たっ!ルイズ!」
ルイズは息切れを起こしながら乱暴に破壊の杖の箱を開けて中身を取り出そうとする、が
「こっの…!何よコレ!杖がこんなに重いの?!形も変だし!!」
破壊の杖を持ち上げる事が出来ずにただ持つだけとなった格好でルーンを唱える
「何で!何も起こらないのよ!爆発さえも起こらないじゃない!!」
ルイズが破壊の杖に怒鳴る
「だぁクソォッ!」
ローチはC4を二つ取り出しゴーレムの片足、膝周辺に投げつけ貼り付ける
その後すぐにルイズの元へ走って行きルイズを抱き込むように覆いかぶさり起爆スイッチを押す
ズドォォォン!!
「きゃぁっ!」
凄まじい爆発音が響きゴーレムの片足が爆風に包まれる
しかしゴーレムは倒れずに立ったままである、しかし一歩も動かない煙が晴れて見えたのは深く抉れたゴーレムの脚だ
動かなかったのではなく動けなかったのだ、動けば重心が変わる、歩くなど持っての他だ
「後一歩足りなかったか」
ルイズを抱き込んだまま苦そうな顔をする(見えない)
「フレイム・ボール!」「エア・ハンマー!」
瞬間巨大な火の玉がゴーレムの抉れた脚を包み空間の歪みが見えるほど強力な空気の塊が打つ
ズズゥゥン…
ゴーレムの片足が離れバランスを崩し倒れる
「ハハッ!グッドだ!ナイスタイミング!!コイツ使うぞルイズ!」
「でも杖はメイジじゃないと!」
ローチはルイズが先程まで手にしていた破壊の杖を手に取り楽々と肩に担ぐ
「その前提からして間違ってる、コイツは杖なんかじゃない」
ゴーレムがゆっくりと立ち上がり、脚を再生して上空から次々と攻撃を仕掛けてくる風竜を落とそうと腕を振り回す
光景だけ見ればまるで踊っているかのようにゴーレムが翻弄される
ローチは破壊の杖の先端に付いている蓋らしき物を外し捨てる
「さて、ダイレクトアタックモードに設定して……!」
「ローチ…ごめんなさい…行けって言われたのに…」
ルイズがローチの服の裾を掴み顔を伏せる
ローチはフッと笑い破壊の杖を支える右手とは反対の左手をポンとルイズの頭に置く
「確かにそれは頂けないな…でも結果論で言うとグッドタイミングだ」
「…?」
「……丁度いいルイズ、破壊の杖の威力を見せてやろう」
ニイッっと目を細め優しい笑顔を浮かべ(見えない)ルイズの頭を撫でる
「タバサ!キュルケ!そのデカブツから離れろ!!そいつをぶっ飛ばすぞ!!」
シルフィードが一度大きく鳴きこちら側へと飛んで来る、ゴーレムはローチの方へ向き足を踏みしめるような体勢になって動きを止める
直後に体の中心部から先程のように鉄へと変わっていく、不動のままゴーレムの表面が全て鉄となり見た目は鉄の像へと変わった
「耐えて見ようってのか?ハッ!面白ぇ!!こいつぁLAWみたいにショボイ物じゃねぇぞ!?」
ルイズはローチの持つ破壊の杖から音を聞いた ピッ…ピッ…ピッ…ピピピピピピ
その直後破壊の杖から『何か』が飛び出し一瞬落ちたかと思えば急に凄まじい速度でゴーレムへと飛んでいく
そして飛んでいった『何か』が鉄のゴーレムの体に突き刺さり直後に大爆発を起こした
ゴーレムは体の中腹から千切れ、上部が空中に投げ出され、一瞬で土となり、地面に叩きつけられ、砕け散った
足だけとなった下部は数秒そのまま立ち、土に戻り、ボロボロと崩れ落ち、ただの土で出来た山となった
- 81 :
- シルフィードが地面に降り立ち上に乗っていたタバサとキュルケが降りてくる
タバサがゆったりとランニングのように走ってくるのに対しキュルケはまさに全力疾走でこっちに向かってくる
「こっの…!!馬鹿ルイズ!!アンタねぇ…ホント…もうっ!死んじゃったらどうするの?!
ミスタ・ローチが居なきゃアンタ絶対死にに行ってたわ!!全く!」
「…キュルケ…!」
「でも…良かったわ…本当に良かった…心配したんだからね?」
キュルケはルイズの前で急ブレーキし思いっきり叱る、怒鳴るのではない、叱る
タバサがやっとこハフハフと息を切らせて合流する、ローチはその光景に破壊の杖を地面に置き微笑ましそうに見ていた
そこに森からガサガサと音が聞こえてくる、瞬間ローチはDEを引き抜き音のした方向へ向ける
「誰だ!怪しい事をしたら即座に撃ちすぞ!」
「わ、私です!ロングビルです!」
「…驚かせないでくれ」
ルイズとキュルケは思った(ローチのした事が一番相手にとって驚く事だと思う)タバサは思った(かっこいい)
ロングビルはゆっくりと草を掻き分けて慎重に出てきた、この世界にホールドアップの文化は無いのか手は上げていない
「投げ飛ばされて咄嗟に魔法で助かりましたわ、あのゴーレムを倒したのですわね」
「あぁ、コイツでな」
ローチは傍らに置いてある破壊の杖を指差す
「少々見せて頂いてよろしいですか?」
「まぁ待てよ、こいつの説明がまだだろ?
コイツの名前はFGM-148 Javelin(※7) 対戦車ミサイルだ、使い方はこいつを構えてターゲットに向けてロックオン
で、コレをグイッとする、それで発射だ。あークソもうフーケは逃げただろうな…疲れた」
そう言ってローチは次々と武器を地面に投げ置いていく、タバサがジャベリンの単語にピクリと反応したが置いておこう
「あの…ミスタ・ゴーストは…」
「ゴーストは…まだそこら辺ぶらついてるんじゃないか?…ゴーレムとドンパチしてても
戻ってくる気配も援護してくる気配も無かったし、あぁホラよ」
ローチは面倒臭そうに立ち上がりジャベリンをロングビルの元に運び足元に置きまた元の場所に戻る
「失礼しますね、よいしょっと…重いですね」
ロングビルが髪を振り解き眼鏡を外しジャベリンを持ち上げて先程のローチのように肩に担ぎ10歩ほど離れる、そして
「まさか私のゴーレム…それも表面を鉄に錬金したのを倒すなんて流石ガンダールブって所かい?それとも破壊の杖のおかげ?」
ジャベリンをローチ達に構えて笑う
「そん…な…ミス・ロングビル…貴女が…もしかして」
「そう、土くれのフーケさ、おっと変な事をするんじゃないよ?私だって出来れば人しなんてしたくないんだよ」
「なるほどな、見えたぞ?盗んだはいいが使い方が分からないんじゃ売りようが無い
だから学院の教師なら知っているだろうと思い誰かを来させようとした、だが教師共はとんだ腰抜けばかりで結局生徒が来てしまった
だが実に運が良かった、生徒は知らなかったがその使い魔が破壊の杖が何かを知っていてその上使い方も知っていた」
- 82 :
- 「そう、察しが良くて私は嬉しいよ、アンタのおかげで私はコレの使い方を知る事が出来たんだ、礼を言うよ」
「で、どうする?それを撃つか?俺をすか?」
ローチは手を広げて一歩前に踏み出る、武器は無い
「動くな!!」
「無理な相談だ、生物は常に動き続けている」
そう言いながら一歩一歩とゆっくり歩く
「じゃぁ残念だけど死んで貰うしかないみたいだね!!」
ロングビル否、フーケはジャベリンを発射するためにトリガーを押し込む
「ッ!!」
しかし何も起こらない、フーケが何度も何度もトリガーを押す
「教えてやるよ、そいつは値段が馬鹿高いわりに単発式だ、つまりそれはタダの筒なんだよ、既にな
杖を取り出して攻撃しようとしても無駄だと思うぜ?」
「クソッ!」
フーケがジャベリンを捨て即座に杖を取り出す、が
「おぉっと、ミス・ロングビル、いや…土くれのフーケさん?こんな危ない物はおしまい下さい、美しい女性に武器は似合わない」
後ろから掛かってきた声に反応するよりも早く後ろから音と気配をし近づいてきた人物に杖を優しく奪い取られ、手を掴まれ体を引き寄せられる
「ミスタ・ゴースト…?!」
フーケが驚きの声を上げる後ろから近づいて来たのは二手に分かれた以降目にしなかったゴーストだった、ミスタとつけているのは何故だろうか
「えぇその通り…おぉっとタイミングよく戻って来たわけじゃ無いんですよ?ずぅっと貴女を見続けていました、ミス・フーケ?」
体を抱き寄せ腕を取り、まるでダンスのワンシーンのようにフーケを捕らえるゴーストが優しく言う
「ふふ…何処から気付いていたんだい?」
フーケは諦め切ったように自嘲気味に笑い問いかける
「実を言うと…朝宝物庫に貴女が来た時点で…ですよ」
「最初からバレバレだったってわけかい…私の完敗だね…でも貴方に捕らえられるなら…」
フーケは哀しそうに笑い捕らえられた
一応、と言う事で学院まで捕縛したまま学院内で衛士隊へと引き渡す事になった
後手に縄をされ馬車で移動する際もフーケは一切暴れようとせず大人しく護送されていた
道中とても小さな声、一般の人間には聞こえないような小さい声で「ごめんね…お姉ちゃん帰れそうにないや…」と呟いた
それを聞いたのはとても耳がよく尚且つフーケの隣に居たゴーストと能力が凄まじく引き上げられた馬車を操るローチだけだった
- 83 :
- ※1 M240
M240 全長1245mm 重量12500g 使用弾薬7.62mm NATO弾 装弾数100発 フルオート
威力、LMGだから強いとかじゃなくて弾薬で威力が決まるため至って標準的 威力に関して特筆すべき事なし、地味
LMGと言ったらM240派とMINIMI派で大論争が起きてしまう、どちらもFPSゲームで見ることの多い銃
ん?何?ショーシャ機関銃?ハッハッハッ、君にはステンと一緒に持つ権利を上げよう!おっと、取り替えちゃ駄目だゾ!
実際に撃った事は無い、てかLMGセミ撃ちってどんなドMプレイですか、興奮しちゃうじゃないですか
MW2ではLMGの開放順的に最後になる、トップクラスのレートを持ち遠距離でもバースト撃ちをすれば戦える優れもの
とは裏腹にFMJとサイレンサーにバグがありFMJは見た目と音が変わっているのに効果は出ずサイレンサーに至ってはマップに写る
威力が下がると言った安定と信頼のプレイ武器、今回は武器が多い気がする
※2 F2000
FN F2000 全長694mm 重量3600g 使用弾薬5.56x45mm NATO弾 装弾数30発 フルオート
威力 一般的なアサルトライフルだが弾の性能で150メートルほど離れると威力が低下する、しかしそれでも脅威なのは変わらない上に
そもそもそんな遠距離でアサルトライフルを撃ちあうなどそうそう無い、気にする必要性はなし
それとなくP90に似た形をしている銃、鉄男2的な映画にも出てきたし某とあるラノベにも出てきた、しかしそれほど知名度は高くない、不憫
実射経験無し、そもそもコレ置いてる所ってそうそう無い気がする、だってF2000だし
この銃のネガティブな話(そんなに知られていない)がミリオタ会話に出たら「だってF2000だし」で片付く、不憫
MW2ではリロード速度以外なら全体的に高性能、突っ込みさえしなければ勝てる武器、あとは腕
しかし一方では達大喜びの武器筆頭、サーマルを付けるとあら不思議、クソ以下の性能に早変わり腰だめ当たらないサイト狙い辛い
※3 ACR
BM ACR 全長743mm 重量3000g 使用弾薬7.62×39mm弾他 装弾数30発 フルオート
威力 AKと同タイプの弾薬を使用するため中々の威力を持っている、そしてAK-47のマガジンとの互換性あり、複数の弾薬を使用可能
そんな素晴らしい高性能な銃のわりに目にする事は殆ど無い、CoD:MW2をするまで聞いた事も無かったと言う人もあり、不憫
まだ知らないネタとして扱われるF2000と比べミリオタ会話に出てくる事さえ殆ど無い、ネタとか以前の問題、不憫
実射経験無し、そうそう置いていないどころの話じゃない、多分何処にも置いていない、不憫
MW2では普通の銃、可もなく不可もなく、ただしアイアンサイト詐欺、壮絶にどうでもいい武器、しいて言うならゴーストのお気に入りそれだけ、不憫
キャンペーンでは例えグレネード付属でも安定のAKやキワモノ武器にすぐに変えられる為最後まで一貫して持ってる事は殆ど無い、不憫
※4 MP5KSD
MP5K 全長325mm 重量2000g 使用弾薬9mmx19 装弾数30発 フルオート
威力は前回のM92Fと同じ9mmパラベラム弾を使用している為記す意味無し
SMGと言ったらMP5、いやいやUZIだ、いやスコーピオンだろう、そんな有名な武器系列の一つ
かなり有名なSMGで一度は聞いた事があり映画などで目にした事のある人も沢山居るはず、ただしそれはMP5の方だ、Kじゃない
MP5Kも有名だが如何せんMP5に負ける、だって…ねぇ?仕方ないじゃない?
実射経験はMP5Kは無し、MP5ならばあり、なのでMP5で言うとかなり軽くて反動も小さい、狙った所に素直に飛んでくれるいい武器、音は気に入らない
MW2では最初からある武器なのでお世話になる人も必ず居るはず、ただし遠距離には向かないので遠くに敵が居たら弾幕撒きつつ逃げる
デュアルで走り回ると何故か心が温かくなって優しい気持ちになれる、ただし撃つときはちゃんと撃ってす
- 84 :
- ※5 SVD
Снайперская винтовка Драгунова全長1225mm 重量4310g 使用弾薬7.62mm×54R 装弾数10発 セミオート
威力、狙撃銃としては申し分無しの威力、ただし精度は狙撃銃としてはあまり良くないのはご愛嬌
セミオートスナイパーライフルと言ったらコイツ、コレだけは譲らない、かなり有名なはず、間違いない
あらゆるFPSゲームに出ていてむしろ出ないゲームのほうが稀、HALOみたいなSFじゃなくてCoDのようなゲームに出なければそのゲームはクソ
実射経験あり、美しいフォルム、安心感のある重さ、暖かく優しい色のウッドストック、対してどこか冷徹さを持つクールな光沢を放つ銃身
ちょっと変わっててユーモラスのあるスコープ、ロシア製ならではの過酷な状況に答える堅牢さ、撃った時の腹に響く力強い音
そして極めつけは距離が離れればちょっぴり的から外れちゃうドジッ子で可愛い命中率、間違いなく史上最高の長距離用ライフル
MW2ではマルチに出てこない、キャンペーンでは滅多に出ない、獲っても弾が少ない、使い所があまり無い、解せぬ、解せぬ
※6 RPG-7
Ручной Противотанковый Гранатомёт全長950mm 重量6.3kg 使用弾薬…弾薬? 装弾数1発 …?
威力 M1戦車に穴を開けるほどの威力、オールドタイプにもかかわらず素晴らしい威力である
最も有名な爆破兵器である、言っておくがロケットランチャーでは無い、携帯式対戦車擲弾発射器だ分かりやすく言えばグレネードランチャーの延長だ
AK-47とのセットで出てくる事が多い、とても用意が早く、なんと言っても安いし、威力も大きい、早い安い美味い、よしのやっ、すき屋派ですけどね
とても簡単な見た目なのでいろんな漫画にも出される、勿論色んなゲームにも出てくる、有名
実射経験無し、あってたまるか、そもそも一般人で対物火器の実射経験があると思うのがおかしい
MW2ではランチャー枠の最終開放、ランチャーじゃないと(ry、強いが酷い命中率、窓から撃ったら窓枠に当たって死んだなんてザラ
もっぱら対人兵器と化した武器である、カワイソス
※7 ジャベリンミサイル
FGM-148 Javelin 全長1.2m 重量22.3kg 使用弾薬8.4Kgタンデム成型炸薬弾頭 装弾数1発 単発式(再装填可)
威力、戦車を一撃で吹き飛ばすほどの高威力、ただ馬鹿みたいに値段が高いため(一発約850万円)そんなに撃てない
LAWとは比べ物にならない威力と値段、RPGが吉野家の牛丼ならばジャベリンは高級料亭の最上級料理だろうか
トップアタックとダイレクトアタックというモードがありそれぞれ特殊な発射方法である、詳しく説明すると行数が足りない為ご容赦を
実射経験…書くまでも無し
MW2では対空兵器なんて考えて使う武器ではない、使い方によっては最も恐ろしい兵器である、対空は勿論拠点の防衛
果ては芋の大虐も可能、開幕マルチもお手の物、畜生!篭りやがったな!では死ぬが良い、バシュッバシュゥゥゥ…ズドォォン→マルチキル
バンザイアタックよろしく屋内で発射も面白い、ネタとしてもガチとしても使える素晴らしい武器、そんな私は盾ジャベの
- 85 :
- 以上でACT6の投下を終了します
あとwikiの編集ありがとうございました。心より感謝致します
銃解説は完全に私の偏見ですので鵜呑みにしない様にお願い致します
お腹がすきました、大学のAOに二度も落ちました、ですが私は元気です
すき屋のチーズ牛丼が美味しいですよ、あばばばばば
以上で後書き終了です。ありがとうございました
- 86 :
- 結局、ロングビルの四肢は落とさないのかw
- 87 :
- 乙
ジャベリン、すげっ、高っ!
そういや、フーケのゴーレムをM72で倒せるかどうかはよく話題に上がるな。
実際、30mの土の塊だから、どのくらいの武器がいるんだか。
- 88 :
- 乙でしたー
- 89 :
- 乙乙乙
- 90 :
- いや、RPG-7がM-1の装甲を貫通可能ってのは、事実っちゃ事実だけど誤解を招きやすい表現のような
- 91 :
- >>86
ただの脅しです、ガクブルする姿を見たいだけのちょっとした悪戯心です
>>90
穴開いて走行不可能になったのを回収してちょっち修理すればまた元気に前線へと旅立ったらしいですね
- 92 :
- ロケランといったらやっぱり
「薬は注射より飲むのに限るぜ」
が思いつくなあ。俺の知ってるなかで最高の自衛官だ。
- 93 :
- 誰も代理してないようなのでウーターマン行きます
- 94 :
- 第七十話
プライド・オブ・レディース (前編)
悪質宇宙人 メフィラス星人 登場!
倉庫街で巨大化し、自爆して果てたボーグ星人。
その遺体は自然と街の人々の関心を集め、衛士隊が周辺を立ち入り禁止にするまで黒山が続いた。
しかし興味本位で見物にやってきている人間たちとは裏腹に、空の上から冷たい視線をボーグ星人に注いでいる者たちがいた。
「ボーグ星人め、口ほどにもないやつだ。自分の爆弾で自分が死ぬとは、その無様な姿が貴様にはお似合いだ。
今度は永遠に怪獣墓場の闇の中をさまよっているがいい」
作戦失敗に対して、ヤプールの態度は冷断そのものだった。もとより、いくらでも替えが効く捨て駒として蘇らせたので
死んでも惜しくもなんともない。ましてや期待を裏切ったやつなどは、始末する手間がはぶけたとさえ思っていた。
「しかし、いったい何者がボーグ星人を倒したのか。やつめ、それぐらい知らせてからばよかったものを……
つくづく使えんやつだった」
唯一気がかりだったのは、ボーグ星人が何者にやられたのかがわからずじまいだったことだ。恐らくは失態を最期まで
隠しておきたかったのだろうが、おかげで不確定要素が残ってしまった。
だが、ボーグ星人が倒されたからとて、打つ手がなくなってしまったわけではなかった。
正面きって超獣で襲うことは簡単だが、それではウルトラマンAと人間たちに阻まれる。ならば破壊工作員を送って、
内部から落としてやるまでのこと。そしてそれは、姦計を好むヤプールにとって、まさに願ったりな方法であった。
ただし、まだ直接動く必要はない。自分の代わりになって動く、しもべの宇宙人はすでに用意していた。
「ウッハッハッハ! ようやくオレの出番か。待ちくたびれたぞ!」
尊大な態度で、さらに大声で笑いながら現れた宇宙人を、ヤプールはつまらなさげに見返した。もっとも、異次元空間に
たゆとうヤプールの実体は明確な形を持たず、赤紫色をしたとんがり頭ののっぺらぼうが揺らめいているようにしか
見えないのだが、それでも肩をすくめて見せるくらいのことはできた。
「たいした自信だが、貴様もウルトラ兄弟に敗れて一度は死んだ身だということを忘れてはいるまいな。ボーグ星人は
自らの死で失敗をあがなったが、貴様も失敗したら怪獣墓場に送り返してやるからな」
「フン! オレをあんなセコいやつといっしょにするな! 人間なんぞを改造したところでたいした役に立つはずはない。
まったく、ボーグ星人などにまかさず、最初からこのオレにやらせておけばよかったのだ」
無駄に自信にあふれた、黒い体をした宇宙人に対して、ヤプールはその半分も信頼を置いてはいなかった。
この宇宙人は、数いる星人の中では五本の指に入る強豪の一族で、ヤプール自身もかつてはその同族と並んで
ウルトラ兄弟と戦ったことがある。その名はメフィラス星人、かつて同族が初代ウルトラマンとの戦いで引き分けて、
宇宙大皇帝エンペラ星人の配下の四天王の一人であったこともある文句なしの強豪宇宙人だ。
だが、強さに関しては文句をつける者はいない反面、性格に難がある者が多いために、力は認めても内心では
毛嫌いしている星人もまた数多く、ヤプールもその例にもれてはいなかった。
- 95 :
- 「よかろう、超獣軍団を率いてこの世界を一気に攻め落とす日も近い。そのために、不安要素は徹底してつぶしておくのだ」
「むろんだ。そのときはオレも存分に暴れさせてもらおう。が、手始めに頭脳指数一万を誇るオレの作戦を見せてやる。
せいぜい参考にするがいいさ。ウハハハハ!」
品性などまったく感じさせない笑い声を残して、メフィラス星人はヤプールの前から消えていった。
「フン、せいぜいお手並みを拝見させてもらおう……今回はちゃんと見張りもつけていることだしな」
作戦は事前に聞かされていたから問題はない。成功したら、ボーグ星人のやり方とは別な意味で東方号は飛べなく
なるであろう。ただ、失敗したときに、その失態を隠されたら面倒なので、協力者兼監視役として、配下を数人奴の下に
送り込んでおいた。
「あの者たちは、奴の立てた作戦には絶好の素材になる。奴はそれを使わざるを得まい……フフ、だが人間たちも、
まさかこんな手段で自分たちが陥れられるとは思うまいて……クハハハ」
ヤプールは、その作戦が発動したとき、人間たちがどれだけ狼狽し、そして絶望していくのかを想像して、暗夜の
沼地から響いてくるような、暗く湿った笑い声を立てた。
時は一週間ほどを経過し、再び造船所へ返る。
この頃になると、ボーグ星人のせいで起きた騒ぎもだいぶ収まり、造船所は元通りの活気をせいしていた。
コルベール指導の元で水蒸気機関搭載の翼も骨組みまでができ、新・東方号のほうでも取り付けのための事前工事が始まっている。
特に、新・東方号に搭載する水蒸気機関は大きさを旧型の倍のスケールにパワーアップし、発数も双発から四発に
増強されるために、各工場はそれぞれ腕を競い合っている。
これは決してありえないことではない。旧・東方号は元となる船体が小さかったために、エンジンもそれに見合った
大きさにする必要があったのだが、今回ベースとなる船体は大和である。事実上大きさの制限はないに等しいどころか、
十五万トンの超重量を推進させるためには、旧型の馬力ではとても間に合わない。
幸い、大きいものを小さくコンパクトにするのは難しいが、逆に小さなものを大きくするのは比較的容易である。
出力もエンジン数を倍に増やせば単純に倍になる計算だ。コルベールが旧型の設計図を元に、一週間不眠不休で
書き上げた新エンジンの設計図、それは文字通り彼の血と汗と涙の結晶と呼んでよい。ほおをこけさせて、設計図を
書き上げたときのコルベールの姿に、才人は仕事に打ち込む人間の本当の姿を見たような気がした。
「コルベール先生、英雄って言葉はあんたのためにあるぜ……」
かつて地球に、巨大な妖星ゴランが接近して地球滅亡の危機が訪れたときも、TACは兵器開発部の梶隊員を
筆頭に、惑星間弾道ミサイル『マリア二号』をわずか一週間で組み立てるために死力を尽くしたと伝えられている。
そのとき梶隊員は、メトロン星人Jrによって焼却された設計図を、自らの記憶のみを頼りに補填したそうだ。まさに、
天才の頭脳と地球を守る強い意志が合わさったからこそ生まれた奇跡、コルベールの新・東方号のエンジンは
妖星ゴランを見事粉砕したマリア二号の再来となるのだろうか。
新・東方号本体のほうの作業も、外に負けずに頑張られている。
船内の清掃作業もこの頃になるとだいぶんめどがついた。元々が三千人が乗り組む巨艦といえども、今度乗り込むのは
せいぜい数百人だ。清潔に片付いた船内に、今度は大工や家具師が入って、人が住める環境に作り変えていった。
一方で、掃除から解放されたギーシュたちは、来るべき日に備えて毎日を鍛錬にいそしんでいた。木造帆船であった
旧・東方号でも、帆の上げ下げなどで大変な体力がいることを身を持って学んだので、その十倍以上ある巨大戦艦を
動かすためには、今のままではすぐにへばってしまう。
- 96 :
- 全長四百二十メイルの新・東方号の甲板を使って、水精霊騎士隊の少年たちは指導役の銃士隊員に怒鳴られながら走っていた。
「ほらそこ、足を下げるな! なんだお前ら、たった甲板十周駆け足でもうへばったのか」
「はい! 了解です!」
「声が小さい! 遅れた奴は容赦なく舷側から河中に叩き込むぞ!」
苛烈さで知られる銃士隊の指導は、ともすれば自分を甘やかしがちな少年たちにはちょうどいい厳しさで、彼らの
頭上に怒声を響かせていた。旧日本軍で、「月月火水木金金」といい、休日なしで猛訓練を続けたという人的な
激しさにはさすがに及ぶべくもなかったが、半月ほどの猶予では基礎体力をつけるくらいしかできないだろうので、
ひたすら筋力トレーニングにはげむだけで十分ではあった。
日中みっちり体をいじめた少年たちは、若さゆえの元気さで、翌日には元に戻って日々体力作りを繰り返した。
その熱心な訓練風景に、最初は教官役をしぶしぶ請け負っていた銃士隊員たちも、しだいに見方を変えるようになっていった。
「ふぅん、あの小僧ども、戦士としてはまるで役には立たんが、もうしばらくすれば船乗りの卵くらいにはなれるかもしれんな」
強い目的があれば、人はそれに向かって全力で突っ走る。ギーシュたちにとっては、まずは敬愛するアンリエッタ姫の
命令であることがくる。が、現在はそれと同じかそれ以上に、将来夢見ている将軍や元帥たちですら乗ったことのない
超巨大戦艦のクルーになれるという、この上ない名誉が目の前にあったからだ。
「水精霊騎士隊、声出せーっ!」
「おおーっ!」
「ファイト! オーッ! ファイト! オーッ!」
努力がむくわれる日を目指して、少年たちはカレンダーを指折りしながら毎日をひたすら耐えていった。
しかし、彼らはよくも悪くも精気あふれる若者たちであり、若さが自分にとって仇になることがあろうとは夢にも思っていなかった。
そんなある日のことである。彼らにとって、生涯忘れられないであろう、あの事件が幕を上げたのは……
その日も、表面上は何事もない平穏な日常であったように思えた。
朝起きて、銃士隊にしごかれて、昼飯を食って、また銃士隊にしごかれて、やがて日が西の空に沈んでいく。
大和の甲板も朱に染まり、艦橋が作り出す影が数百メートル先にまで届くようになると、きつかった訓練もようやく終わりを告げられた。
「ようし、今日の鍛錬はここまでだ。全員整列!」
「教官方に礼! ありがとうございました」
ギーシュたちは、日暮れと同時に解放されると、疲れを知らないかのように飛び出していった。あっという間に大和の
甲板には水精霊騎士隊は一人もいなくなり、指導に当たっていた隊員は呆れたようにつぶやいた。
「やれやれ、さっきまで死にそうな顔をしていたくせに、あのバカどもめ……いったいどこにあれだけの元気が残っていたのやら」
一応、素人に合わせて手加減してやっていたのだが甘かっただろうか? いや、鍛えていない人間ならば、へたばる
ギリギリの線にしておいたのだが、なんなんだあの連中は? まあ、貴族なのに平民の自分たち銃士隊におとなしく
従ってくれて、訓練も熱心なのはいいのだけれど……
- 97 :
- 「よくわからないが、変わった連中だな」
その隊員は、なにか晴れ晴れとしない思いを抱いたあとで、まあ子供が元気なことに悪いことはないかと、背伸びをして
気分を入れ替えた。
さて、子供のお守りもすんだことだし帰るとしようか、今日のディナーは川魚のソテーだっただろうか? 贅沢さはなくとも、
空腹という最高の調味料がある以上、味に対する期待はいやがうえにも膨らんでいった。
日は落ちて、代わりに月と星が優しく大地を照らす時間がやってきた。
昼間を働く時間とすれば、夜は遊ぶためにあると言って否定する者は少ないだろう。特に、無駄に体力だけは有り余っている
特定の連中からすれば、夜こそ本領を発揮できる時間だと言ってよい。
さて、その特定の一味のリーダーである金髪で、薔薇の花がトレードマークの少年は、悪友たちを引き連れて夜の街を闊歩していた。
「よーし諸君! 今日もまたこのときがやってきたあーっ! こんな辺鄙な場所の男くさい街なんかには、ろくな娯楽もないものと
最初は半ばあきらめていたが、探してみればこんな街だからこそ充実してるところもあるものだ。というわけで、突撃隊長のギムリくん!」
「はいよ! ギーシュ隊長、本日はこのおれに担当を任せたことを心から感謝することになるぜ。街の男たちの噂話を集めて、
工場長のおっさんにわいろを贈ってまで得たこの情報、値千金の価値があるとおれは信じる。さあ、こよいも諸君と繰り出そう、
男のオアシス、うるわしきご婦人方との愛の巣へ!」
少年たちの、魂から響いてくるような掛け声がギーシュとギムリに応えた。
彼らが向かっているのは、酒と食べ物を提供する歓楽街よりさらに奥にある風俗街だった。このような男ばかりが集まるような
職場では、自然と色気が不足する。ならばそれを提供する店が集まってくるのは自然な流れである。
ピンク色の、いかにも怪しげな看板の店が並び立ち、他の場所とは一味違った雰囲気の空気が街に充満している。店舗の
内容は、あの魅惑の妖精亭を基準にして、金額で上げ下げしたようなものばかり。まさしく、男の世界に夜の彩りを与える
花畑と呼んでよく、男としては十分すぎるほど目覚めているギーシュたちがこれに食いつかないはずはなかったのだ。
もっとも、彼らの懐具合では一番のサービスをしてくくれる店には入れず(無理すれば可能だが、抜け駆けをすると多数の
恨みを買ってしまう)、逆に安すぎる店はなにかと危険なので、モンモランシーたちが案ずるようなことにはまだなっていなかった。
それでも、彼らの思考からすれば美人の女性と思う存分たわむれられるだけで、興奮のピークは満足させられていた。
「あら、これはお坊ちゃま方、今日もいらしてくれましたのね。毎日大変だとおうかがいしてましたから、今日はもう来てくれないんじゃと
身を震わしておりましたのよ」
「はっはっは! いや、ぼくたちはいつ何時国のために命を散らせてもいい覚悟、あの程度の訓練はなんでもありませぬ!」
妖絶に誘惑する店の女と、いい気分で誇張した武勇伝を語るギーシュたち。もしこの場にジェシカがいたら、これほどのカモは
めったにいないわねと呆れたことだろう。
この日も、数件の店をはしごして、すっかり酔いもまわった彼らは数組のグループに分かれて街をぶらついていた。
とはいって、よく言って”ぶらついていた”のであって、実態は相当にヤバくなっていた。
「カロリーニちゃーん! 君と会うためだったらたとえ火の中水の中! じゃーんじゃん酒持ってきてちょーだい!」
「こーなったら財布の中身ぜーんぶあげちゃう。店のねーちゃんみんな呼んできてーっ! あーっはっはっ!」
やや酔いがまわりすぎ、危険なレベルにまで達しているが酔っ払いはそれがわからない。しかもまともな大人なら
ともかく女性に免疫のない十代半ばの健康な男子に、たとえば美人でがでかくて露出度の高いドレスを
着たおねえさんが色っぽくアプローチをかけたとしたら……
- 98 :
- 答えは簡単、道を歩いてると母親が子供に「見ちゃいけません」と諭すような顔面が崩壊した、いわゆるバカができあがるのだ。
加速度的に軽くなっていく財布の中身のことなんかは、彼らにとってはまったく知ったことではない。貧乏貴族が大半と
いえども、貴族である以上はそれなりに手持ちはあるが、それは『あった』と過去形になりかけていた。
そんなときである。ギーシュの率いる五人ばかりのグループに、路地の影から扇情的な声で呼びかけてきた女性がいた。
「ねえん、そこのお兄さま方……こっちに来て、いっしょにいいことしない?」
「ぬぉーっ! これはなんと美人のおねえさま! これは前世から定まっていた運命に違いないっ! いくいく、行きますよ!」
「おいギーシュよせよ、そろそろマジで手持ちもヤバくなってるんだしさ」
「お金なんていらないわ……さっ、みんなそろってど・う・ぞ」
「うぉーっ! 喜んでぇーっ!」
金髪ロングヘアの誘惑に、ギーシュが抗うことは不可能だった。わずかに冷静さがあった仲間の言うことも、まるで耳に入らない。
衛士隊に見つかったら、「ちょっと詰め所まで来い」と、怖い顔で声をかけられてもしょうがない連中は、怪しい美人の誘惑に
あっさりとかかって、路地の暗がりの中に足を踏み入れていった。
それが、自らの命取りになるとも知らずに……
「あびゃーっ!」
悲痛だが間抜けな悲鳴が五つ、夜の街にこだました。
翌日……水精霊騎士隊の泊まっている宿に、ギーシュたち五人が病院に担ぎ込まれた知らせが届いた。
なんでも、路地で倒れているところをゴミ清掃の平民に発見されたそうだが、最初はどうせ酔いつぶれてぶっ倒れたんだろうと
誰も相手にしなかった。しかし、どうもただごとではないらしく、銃士隊には遅れますと伝言を頼んで全員で病院に駆けつけた。
「ギーシュ! 無事か」
「おっ? おおサイトにギムリ! いやはや、心配かけてしまったみたいだね」
病室に飛び込むと、意外に平然とした様子でベッドに寝ているギーシュたちがいて、才人たちは気が抜けた思いをした。
「なんだよ、元気そうじゃねえか。ったく、心配かけやがって、なんか大変だって聞いてきたのに」
「あはは、どうやら医師がおおげさに言ってしまったようだね。まあ、ごらんのとおりピンピンしてるさ」
ベッドに寝たままで、ギーシュは上半身で腕を上げ下げして見せた。
- 99 :
- 「うるせえよ、後で銃士隊に叱られるのはおれたちなんだぜ。それに、モンモンなんか半泣きだったんだぞ」
「ギーシュ! あんたが倒れたって聞いて、人がどれだけ心配したと思ってるのよ! バカバカバカ!」
「おおっ! す、すまないモンモランシー、君に心配かけるつもりはなかったんだ」
モンモランシーが叫びながらギーシュのベッドに飛び込んでいくと、さしものギーシュもふざけるのをやめて、彼女の
肩を抱いて慰めた。目を見詰め合って、きざな言葉が連呼される。才人からしてみれば、聞いているほう、見ているほうが
恥ずかしくなる光景であったが、この二人はこれで幸せなようだった。
だが、水をさして悪いが、ばら色……桃色空間を持続されてはこちらの精神衛生上よくない。
「ごほん! 二人とも続きは退院してからでもいいだろう。それよりギーシュ、お前仮にもメイジだろ? 何者かに襲われたようだ
とか聞いたけど、いったい何があったんだよ?」
「ううむ……実は、あまりよく覚えてないんだよ。何軒かの飲み屋をまわって、かなり酔っていたからなあ……気づいたときには
路地の中で腰から下が動かなくなって倒れてて……あっ! でも最後にすっごくきれいなおねえさまに手招きされた、それは間違いない!」
記憶にかたよりがあって、それが女性に傾くあたりはさすがにギーシュだ。ここまで行くと、もはや感心する以外にどうしろというのだろうか。
もしかしたら、ギーシュは出会ったことのある女性すべてを記憶しているのではなかろうか?
しかし、ギーシュは自分で見事に地雷を踏み抜いたことにまだ気づいていなかった。モンモランシーから桃色のオーラが消え去り、
代わって近づくだけで花が枯れ、草木は砂と変わりそうな凶悪な気が全身を包み込んでいる。
「ギーシュ……美人の誘いに乗って暗がりに入って、腰が動かない状態で倒れてたって、あなたまさか……」
「へ? モ、モンモランシー! 違う、ぼくはそんなことしていない!」
何が”違う”で、”していない”なのか明言されていないけれど、暗示されている内容ははっきりしていた。状況とギーシュの
証言からして、それを連想してしまったとしても無理はない。そしてギーシュに好意を抱いているモンモランシーからして、
それは到底容認できる事態ではなかった。
「ギーシュ、あなたの性格や趣味はよく知ってるわ。だから、夜遊びで店の女と金で飲むくらいは見逃してあげてた……
でも、将来あなたのためにと、わたしはわたしを大事にしてきたのに……さ・い・て・い・ね……」
一瞬でギーシュのベッドの周りが無人になる。ほかの寝台の患者は看護婦が素早く室外に連れ出して、才人たちも
ドアの外へと逃げ出した。すさまじい早業に拍手を送ってもよさそうなものだが、たった一人で怒れる大魔神の前に
残されてしまったギーシュはほめるどころではない。
ガクガクと全身を恐怖で震わせ、ギーシュは目の前ですさまじい魔力をほとばしらせている魔女を見上げた。
金髪ロールが悪魔の角のように震え、目が据わって見下げてくる様は怖いなんてものじゃない。すでに彼女得意の
水魔法は空気中の水分を集めてスタンバイ完了であり、あとはウォーターカッターで首を跳ね飛ばすなり、巨大水球で
溺れ死にさせるのも自由。
そして逃げようにも足が動かないので、まな板の上の鯉同然のギーシュにできることはもはやなかった。
「お、おいみんな待ってくれ! た、助けてくれよ、友達だろ!」
「ギーシュ、お前が悪い。罪滅ぼしにおとなしくされろ」
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