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2012年07月創作発表62: 僕の魔界を救って!創作スレtake3 (824)
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僕の魔界を救って!創作スレtake3
- 1 :11/12 〜 最終レス :12/07
- このスレは、iPhoneのアプリ「僕の魔界を救って!」の創作スレです。
「僕の魔界を救って!」は無料の放置型クラウド式ファンタジーシミュレーションRPGです。
人間に蹂躙されてしまった魔界で、その世界を取り戻すために魔王が奮闘する物語です。
開発.販売: JAGS
発売日: 2011年06月
価格: 0円
対応機種:iPhone、iPod touch および iPad 互換 iOS 3.1.3 以降が必要
カテゴリ: 放置型RPG
現在のバージョン: 1.1.2
■App Store
http://itunes.apple.com/jp/app/id445773628
■公式・参考・他
JAGS
http://bokumaka.jags.co.jp/main
bokumaka on Twitter
https://twitter.com/bokumaka
■bokumaka @ ウィキ
http://www10.atwiki.jp/bokumaka/
■次スレは>>950が「宣言してから」立てること。
950が「宣言しなかった」時は>>960以降、立てられる人が「宣言してから」立ててください。
- 2 :
- 荒らし批判にめげずにどんどん書きたまえ
SSもこい
落書きもおk
でも先生とよぶのはやめてね
- 3 :
- 乱立させんなよゴミ
何考えてんだ?
- 4 :
- 同人豚はやることなすこと終わってるな
少し批判が出たら新しいスレ立てるのか?いい加減にしろや
とっとと削除依頼出してこいや
まだ2は半分近く残ってんだよ
- 5 :
- テス
- 6 :
- 何で批判厨の方がここ知ってるんだ…
勿体無いから次はここを使えば良さそうだ
- 7 :
- もう駄文専用スレ立てた方がいいんじゃね
- 8 :
- 前スレのインプのやつも面白そうですね
期待
- 9 :
- 中央市場の人ごみを避けて、陽射しを手で塞ぎながら広場を抜け、向かった場所は、傭兵ギルド。
旧北の砦を改築して作られた、いかめしい建物が目に入ってくる。かつて、魔王軍の兵力を支えた傭兵酒場は、いまや国営化し、肉体労働関係全般の仕事の斡旋をするに至る。
魔王は現在、捕虜の奪還を名目に軍を境界に差し向けていることもあり、街道や辺境地域の治安、安全維持の大半は、ギルドで雇われた【冒険者】の仕事である。
既に、大半の冒険者は仕事に向かったのであろう。
傭兵ギルドのロビーはほとんど人がいなかった。
前から目をつけていた依頼を、依頼のリクエストボードからはずし、受付にもっていく。依頼書は紙製だ。人間の侵略によってもたらされた物は、恐怖と災厄だけではなかったのだ。
- 10 :
- 受付の職員は、シフトがあるのかいつものグールのおっさんではなく、リザードマンの若い女性だった。
「これ、お願いします」
「あ、はい。アブラシティ、グレートヒル間の街道整備の護衛、3500文ですね。ランクE+の依頼ですが、ランクは大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だ。問題ない」
俺はランクの刻まれた登録票を見せた。統一ランクC+と刻まれている。
「依頼、受理しました。お気をつけて行ってらっしゃいませ」
ギルド職員の定型句も、グールの冴えないおっさんに言われるより、よほどやる気が出る。
俺はギルドを出て、中央広場から、グレートヒルの外に続く東街道に向かった。
- 11 :
- ホモールはこっちでやった方がいいんじゃね
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1281160180/
- 12 :
- あんまりスレ伸びるわけでもないし、折角の魔界SSだからここでいいんじゃないの?
- 13 :
- すごく良い感じですね
目が疲れてても読むのが苦じゃないです
別にここでいいだろ
- 14 :
- グレートヒル東街道は、街の端にあるためか、他の場所に比べて、怪しげなモノも多い。道の端に並ぶ、薄汚れた屋台の群れもその一つだ。
「おっ!インプのニイさんじゃねえか。ちょっとみていきなよ」
その屋台のひとつからしゃがれ声が俺を呼んだ。
「違法営業もほどほどにしとけよ、おっさん」
「次も頼むぜ、ニイさん。ほらよ」
汚い毛並みのコボルトのおっさんが小者っぽく笑ながら300文ほど渡してきた。俺も笑いながらすぐにバッグにしまう。
大都市では、商業ギルドの許可無く露天を出せるのは祭りの時に限られる。
大侵攻から逃げ延びた現魔王を初期からサポートし、豪商にまで成り上がった古物商が作りあげた商業ギルドは、傭兵ギルドと並んで半ば国営組織として、魔界の流通を支配している。
露天を許可無く操業することは、法に抵触するのだ。
傭兵ギルドの仕事には、違法操業の取り締まりというのがある。ギルドに登録した、ある程度以上のランクのものは強制的に依頼を受けさせられる。
報酬も安く、検挙も手間がかかるため、このような袖の下での操業も多い。
俺はこのおっさんを格安の賄賂で見逃す代わりに、情報をタダでもらっている。
「……特にめぼしい情報はねえな。
治安も悪くねぇ。ま、面白いものは手に入ったがな。ほらよ」
服のポケットからぼろぼろの本を取り出して渡してくる。
「なんだ、これ? 」
「西大陸から来た行商人から買った。面白えから、気が向いたら読んでみな」
そんなことより、おっさんのポケットからチラリと見えた杖のほうが気になった。
恐らくだが、ライトニングワンドだろう。
……魔法使えたのか、あのおっさん。
- 15 :
- 投下開始。
どんどんストックが溜まっていく…
- 16 :
- ―魔界
ティムティムの日記では知り得なかった話が、次々にわかる。
どうやら、ティムティムは踊らされていただけに過ぎないらしい。
まあ、この本は意訳と憶測が混じっている。間違っていない自信はあるが。
この本には書かなかったが、彼等の本で実際にファルコン家が彼等を口説いている。
アーサー王との会話は、彼に相談した騎士の本に記されていた。
しかし先が気になる。
どんどん読み進めよう。気になって仕方がない。
骨には感謝せねばならないな。
伝記としてはありふれているものの、心を躍らされる展開だった。
―魔王が倒されたとき、魔界に強大な魔物が生み出される。
その魔物が起こす災いは世界を滅ぼすだろう…
という伝説を信じ、愛剣エクスカリバーの力を借りて、魔物を打ち倒すお話だ。
勿論ここからは創作だ。そんな話は聞いたことがない。
…いや、ある。あった。間違いなく。
ここで私は気付いた。この話は恐ろしいほど似ていたのだ。
もしかしたら私は触れてはいけないものに触れているのかもしれない。
いや、忘れよう。そんなことはあり得ない。
トントン、とドアをたたく音がした。
中に招き入れると、その客は閣下であった。
「どこまですすみましたか?」
「ちょうど今から魔界に進むところだ。
…ちょっと聞きたいんだけど、この話を読んでどう思った?」
「…伝記物にありがちな展開ですよね。おもしろいですが。」
「他に感じたことはないか?明らかに似ている気がするんだよ。
魔界の話に。」
「…あとで、聖都に来てください。一緒に話し合いましょう。」
「わかった。」
やはり閣下も気付いていたらしい。
この話のおかしさに。
- 17 :
- ヒロインどうしようか…
種族何にしよう。
駄文さん、待ってますたよ。
- 18 :
- 詳しく話を説明しよう。
ここから、ティムティムとファルコンの名は出てこなくなった。
魔界に乗り込んだ人間軍は、魔界全土を制圧。
そこで大きな雄叫びを聞く。恐ろしい魔物が魔界に生まれたのだ。
強大な魔物は世界を滅ぼそうとするのだ。
そこである貴族が現れる。
その貴族は、魔物を倒し、その栄誉を持って世界を握ろうとしている。
アーサー王は強大な魔物とずる賢い男の二人から、世界を山分けしようと誘われる。
しかし、どちらの味方にもならず、アーサー王は、その二人を倒そうとする。
しかし、ただ倒そうとしたわけではなかった。
同時に生まれた心の清らかな魔物と共に戦うのだ。
一応、アーサー王はその両方の味方となった。
強大な魔物は、魔界にすむ他の魔物を殺し、力を蓄えた。
貴族は、持ち前の権力を振りかざし、魔物の邪魔をし続けた。
しかし、貴族は表だって動かなかった。魔界の魔物達にその役をやらせたのだ。
アーサー王はというと、清らかな魔物を見つけその魔物を逃がした。
力を付けさせるために。
ここで、ルーカンが清らかな魔物の観察の担当となり、アーサー王の元を離れた。
話は進む。
魔界の魔物達と、強大な魔物の戦いが起こった。
しかし、魔界の魔物達は簡単につぶされ、貴族の計画は頓挫した。
そこで、清らかな魔物がついに強大な魔物を打ち倒そうとする。
アーサー王も共に戦おうとするが、清らかな魔物はアーサー王ごと、強大な魔物を打ち倒した。
アーサー王は命からがら逃げ出すものの、貴族に倒され息絶えてしまった。
だが、後々清らかな魔物も汚れてしまい、それをファルコンが打ち倒した。
- 19 :
- というお話だ。
ただ、この話の単語を入れ替えると、この創作された話は現実へと変わる。
強大な魔物は、ティムティム。
ずる賢い貴族は、ファルコン。
この2語だけで、話は魔界の戦いのことが書かれているとわかる。
問題は、このほかに入れ替えられる言葉があるのだ。
魔物達は、法王軍。
清らかな魔物は、我らが魔王。
この言葉を入れて考えると、この話は恐ろしいことになる。
第一に、法王軍が私利私欲のために戦っていたかもしれないと言うこと。
法王軍は、魔界奪還後に英雄としてあがめられ、大きな慰霊碑まで作られている。
しかし彼等の主は、魔界の敵だったかもしれないのだ。
第二に、アーサー王が、魔王軍に手を貸していた。
この戦いは、魔王軍が自力で忌まわしき人間を打ち倒した、ということになっている。
そこに人間の手が加わっていた。これだけで、魔王の威厳が損なわれる。
それ以上に、魔王軍に人間がいるかもしれないのだ。
後半のファルコンが魔界を征服した、というのは完全な創作だ。
どうせ人間界では、未だに魔界は人のものだと言うことになっているのだろう。
この話は、触れてはいけなかった。改めてそう感じさせる。
私は、魔界の謎に向かって進んでいた。
- 20 :
- 私は古物商へと向かった。骨の話が聞きたい。
「いらっしゃいませ…どうしたんですか?そんな顔して。」
「一つ聞かせろ。あの本を進めた理由は何だ。」
「なにって…あの本がおもしろいと思っているからですよ?
アーサー王が強大な魔物と戦うシーンが特に好きで…」
「お前はあの本がそんな話だとでも思っているのか?
あの話は下手を討てば魔界がひっくり返るぞ?」
え、といって骨は手に持っていた瓶を落とした。
まさか本当に気付いていなかったのか?
「すまなかったな。取り乱して。」
と一言だけ謝って、私は司令部に戻った。
さて、どうしようか。
私は本を睨みながら思った。
このまま書き続けようか、それとも…
いや、私は気になり始めていた。この魔界の謎。
まだまだ深い。これを解き明かしてみよう。
それを白日の下にさらすか否かは、自分で決める。
そう思って書き進めることにした。
本当の物語を。
- 21 :
- 今日はここまで。
>>17
おもしろいです。
独自の設定とかユーモアがおもしろくって読みこんでしまいました。
これからも頑張ってください。
- 22 :
- >>21
ちょっとアーサーとか、法王とかの設定借りてもいいですか?
続き楽しみにしてます。
- 23 :
- 馴れ合うなよ気持ち悪い
- 24 :
- >>22
もちろんです。
逆に、使ってもらえればとてもうれしいです。
- 25 :
- 駄文さんおつです
ちょっとシリアス路線に入ったみたいですね
続きも楽しみにしてます
>>22
実はホモールさんの、現魔王を初期からサポートし豪商にまでなった古物商ってのは、駄文さんの骨なんじゃないかとか期待してました
インプボーイにはサキュバスがお似合いかなあとw
- 26 :
- 大きな石の上で、大男がダミ声を響かせて指示を飛ばし始めた。
2mを越える身長に筋肉で盛り上がった濃い褐色の肌。
鬼族の中でも巨躯を誇るオーガの壮年だ。凶暴な面相を引き立てるように凹んだ鉄兜とピッケルを身につけている。
白いものが混じった髭とあいまって、たたき上げの前線下士官を思わせる。恐らく、従軍経験もあるのだろう。
ひしゃげて錆の浮いた鉄兜には先代魔王軍の紋章がついている。
「アブラシティからの物資は境界の魔王軍の生命線だ!早く終わったらアブラシティで酒の一杯でもおごってやる。キリキリ働け!いいな!」
「「「「「「「オッー!!」」」」」」
夏の強い陽射しの中、街道整備がはじまった。
- 27 :
- 25と26の間ぬけてしもうた……
「よし、揃ったみてえだな。各自持ち場につけ!職人はそっちに、労働者はあっちに行け!護衛!索敵怠るな!馬車がきたら道を誘導しろ!わかったら仕事を始めろ!」
- 28 :
- ここって何人住人いるのだろうか……
- 29 :
- 駄文とホモールと荒らししかいません
- 30 :
- 気持ち悪い粘着がいるからROMってるだけで人はいると思う。
- 31 :
- 褒めても粘着に自演言われるだけだからね
殆どはROM専なはずだよ
ちゃんと見てる
- 32 :
- ここまでホモールの自演
- 33 :
- 「しっかし、あっついですねー」
モンスターの索敵についた俺に、ドヴェルクの少年が話かけてきた。分厚そうな皮鎧をつけ、斧をかついでいる。
「確かに暑いな。あれ、もう一人はまだか?」
「あとで来るってさ。僕はターク。見ての通りのドヴェルクさ。」
「インプのレクトだ。よろしく」
雑談しながら、近くに転がっている大きな岩に腰掛ける。
タークがかついでいた斧を地面に突き刺した。
「レクトさんはグレートヒルから?」
「レクトでいいよ。うん、グレートヒルからだ」
「そういえば、最近グレートヒルの傭兵ギルドにすごい美人なリザードマンの受付の人が見習いで入ったらしいよ」
「今日受付にいたぞ、その人。確かに美人だった」
会ってみたいなぁー と人懐こく笑いながらドヴェルクの少年は街道整備の作業場の方を見た。
「あっ、もう一人がきたみたいだよ」
弓を手に持った女が、遠くから歩いてくるのが見えた。
- 34 :
- 投下しようと思ってたらホモールさんのが来ましたね。
流れぶった切るのも悪いので少し静観。
- 35 :
- あ、お先どうぞ。
書き溜めてるわけじゃないので、次の投下はしばらく後になるので。
- 36 :
- >>35
それではすいません。
投下開始。
- 37 :
- 第三章 アーサー、画策する。
ついに魔界侵略が始まった。
しかし、ティムティムの独断で数日早く始められ、ファルコン軍はいない。
これも全て、彼の策略だが。
魔界の門は、魔王の城近くにつながっていた。
―好都合だ。そのまま攻め落とすぞ。
と彼は言い、そのまま部隊編成を始めた。
アーサー王は予定通り、魔王軍との遊撃部隊に入った。
魔界での第一戦、後に“魔城の悲劇”として謳われる戦いが始まる。
人間軍が魔王の城に突撃したのは、魔界に来て数十分後だった。
彼等は敵陣が整う前に、崩してしまおうと考えていた。
そちらの方が確実だと。
しかし、突然現れた数多くの人間に対し、注意をしないわけがない。
魔王軍主力は城門前に集まり、そこで両主力は激突した。
戦いの勝敗は誰が見ても即座にわかるものだった。
人間軍から抜け出るように、三人の男が出てきた。
一人は高速で魔王軍をかき回し、一人は魔法で魔法軍を弱らせ、
もう一人はただただ突き進んでいった。そして彼が通った後には無残な姿になった魔物が倒れていた。
それに人間軍が続く。魔王軍は崩壊し、多数の死者と逃走者が出た。
- 38 :
- 人間の手により、城門は押さえられ中に突入された。
無論、中にも魔王軍は残っているが、彼等はバタバタとなぎ払われた。
魔王“軍”だけではない。魔王の城にいたものは誰を問わず皆殺しながら進んでいた。
アーサー王も全力で駆けた。しかし彼は魔王軍はものの一般の者どもは許し、進んでいた。
彼の作戦を行うためには、あるものを助けなければならない。
全力で駆けた。それに円卓の騎士13名にマーリンは続いた。
ティムティムの話に戻る。
ティムティムは既に玉座にたどり着いた。勿論そこには魔王がいる。
「貴様が魔王か。」
「そうだ。」
魔王は人間語を話した。これにティムティムは少しだけ驚かされた。
魔王は、魔界では変革者として称えられていた。
―全てのものに知恵を与えよ。
彼の即位の言葉は、後にスローガンとなり、魔界革命が行われた。
その結果、今までの学校の他に下等学校というものが作られ、義務教育が行われた。
そこで、様々な言葉をまとめた共通語や、魔界文字などを定め、魔界は発展した。
彼はとても賢く知恵を愛していた。
その結果、魔界の生活レベルすら数段引き上げたのだ。
- 39 :
- 「人間よ。何故魔界を狙うのだ?何が望みだ。
いきなり攻め込み、虐殺を行うなど信じられぬ。
これが人間なのか。」
「知ったことか。ただ、貴様には死んで貰う。それだけだ。」
ティムティムが動いた。彼はいきなり魔王を切りつけた。
魔王はそれをよけようとしたが、既に切りつけられた左手は床に転がっていた。
反撃が始まる。
魔王は雷の呪文を唱え、頭上に雲が現れる。
それだけではなく突然、水が竜巻状になり、ティムティムを包み、その頭上に雷が落ちた。
魔王はそれで安心し、治癒の呪文を唱え、左手が生えてきた。
しかし、ティムティムは予想以上に強かった。
彼は呪文に当たっておらず、魔王の左手が生えた刹那、後ろから魔王をふたつに切り分けた。
悲鳴が聞こえる。
辺りを見回すと、魔王の后がたっていた。
魔王の后は火球を使い攻撃してきたものの、その火球が地に着く頃には后も床を転がった。
―さて、後は子供がいるかもしれぬ。
ティムティムは子供を捜し始めた。
- 40 :
- 魔王の子供は図書館で本を読んでいた。
子は親に似るのだろう。彼も知恵が好きだった。
彼は魔導書を読みながら、必死にまねをしていた。
それが魔王の子供だったら、やることは一つ。
即座に彼の後ろに回り、彼の口をふさいだ。
そして…
「ここは危ない。すぐに東に逃げなさい。キミの親の敵を討つんだ。」
アーサー王は、そう語りかけた。
- 41 :
- 今日はここまで。
もしかしたら明日はこれに加え、講義も出来るかもしれません。
講義が好きな方もいるので、一生懸命頑張りたいです。
- 42 :
- >>41
乙です
明日も頑張ってください
- 43 :
- 「あなたたち、モンスターが来てるわよ。座ってないで戦いなさい」
女は俺たちの近くに来るなり言い放った。
女、というよりは少女と言った方がしっくりくる雰囲気だ。怜悧ではないが整った顔に水色の肩口で切り揃えられた髪が風に揺れている。
少女が草原の一点を指差した。
タークと俺は、反射的に雑談をやめて、少女の指差した方を向く。
「あれ?……どこにいんの?」
タークが呟いた。
俺も目をこらすが、茶色い岩の転がった草原と、雲を纏ってそびえる魔山の遠景しか見えない。モンスターの姿など、どこにも見当たらない。
「いないじゃん」
タークが言った。
「ほら、あそこよ、あそこ。あの岩の向こう側の木の下。巨大グモが二匹いるじゃない」
じっと目をこらすと、確かに視界の隅に動く黒い点が二つ。
「ほんとだ……よくあんなのがわかるな」
タークも気づいたようで、慌てて斧を担いだ。
「まあね、弓使いは近づかれたら終わりだから。美人のギルドのお姉さんの話もバッチリ聞こえてたわよ」
うへぇ。 タークが声を漏らした。
あの距離からの声が聞こえるとは……俺も内心驚いた。なんという地獄耳だ。
そうこうしている内に、クモ二匹はシャカシャカと足音を立ててこちらに向かって来ている。
「俺が陽動、タークがトドメ、で、えーと---」
「リリアよ」
「リリアさんが援護で問題ないな?」
「おう!」
「問題ないわ。ただし、飛行型モンスターが出たら私が指揮をとるわ、いい?」
「あー……飛行型っていうとフォルスラコスか?魔山が近いからなぁ。その時は頼むよ」
飛行型が相手なら、弓使いの方が戦闘経験もあるだろう。
「僕も問題ないよ」
タークも了承。
「さて、行くか」
俺は腰から剣を引き抜いた。
- 44 :
- 読むだけですが、いつも両先生の作品とも楽しく読ませてもらってます。
それぞれ個性があらわれててどちらも素晴らしいと思います。
ありがとうございます。
- 45 :
-
「見たところ、ヤツらはバブーンスパイダーよ。毒に気をつけて!」
背後で叫ぶリリアの声を聞き流し、背負ってい小型の鉄の丸盾を左手の甲に固定しながらクモに向かって走る。
右から、回り込む様に肉厚の斧をかついだタークが走って行く。ヤツラはあまり頭が良くない。後ろからトドメをさすつもりだろう。
走る俺を追い越して、リリアの矢が後ろにいるクモの複眼に突き立った。
ハ対十六の真っ赤な複眼が俺を捉えた。キシャァァと奇声をあげて俺に殺到する。
一匹目が高速で吐き出した粘着性の糸弾を半身になって避け、ヤツらの目前で剣を盾に打ちつけて挑発。
巨大な顎を用いた噛み付きを右に避け、剣を首の甲殻の継ぎ目に叩きこむ。ザシュッと肉の避ける音とともに、体液が迸る。
直後、クモの胸部の甲殻をタークの斧が打ち砕いた。
キシャァァァァァ!!
断末魔の絶叫をあげるクモを尻目に剣を引き抜き、せまる二匹目の顔に向かって、剣にこびりついた体液を振り払いながら向き直る。矢の突き立った複眼は怒りを孕んでいる。二連続で放たれた噛み付きをバックステップで避け、盾で防ぐ。鈍く、強烈な衝撃。
だが、クモの複眼を鋭い二本目の矢が貫き、よろめいた俺を援護する。
体勢を立て直し、距離をとる。
が、クモは大顎を広げて突っ込んでくる。咄嗟に盾を投げ捨て、身をひねりながら回避。
すれ違いざま、俺が両手持ちで振り抜いた剣が、クモの下顎を切り飛ばした。
クモはそのままの勢いで岩にぶち当たり、頭部を爆散させ、絶命した。
- 46 :
- 遅くなりました。
残念ながら講義は未完成…
では投下開始。
- 47 :
- 正直、賭けだった。
もしこの子供が言葉を知らねば、伝わらないだろう。そうであればどうしようか。
と考えてるうちに、口を塞ぐ腕を離させ、子供の口が開いた。
「あなたは、だれ?」
と聞かれた。ただの人間だ、と語った後、彼は今の状況を伝えた。
魔王の子供は青ざめ、泣き始めたが、アーサー王は
「辛いだろう。しかし、泣くだけじゃどうにもならない。君だけでも逃げてくれ。」
そう言うとアーサー王は、子供を逃がした。
その後、アーサー王は杖を取り出した。
魔王の力が込められた杖だ。
彼がそれをルーカンに向けて振ると、ルーカンは魔物になった。
アーサー王はルーカンに、
「彼を追いかけなさい。彼を助けて再起の手伝いをするのです。」
ルーカンは戸惑ったが、意を決し飛び出していった。
- 48 :
- 戦いは終わった。
魔界から魔物の勢力は一掃され、人間の世となった。
その中、
「目星は付けたか?アーサー殿」
「ええ、勿論です。ファルコン様。」
二人の密談が行われた。
「ならよかった。で、どこで蜂起をさせるのだ?」
「中央の大陸で蜂起させます。少しティムティムに近いですが、我々の支援があれば大丈夫でしょう。
それに、彼等の地盤がそこにあるので、民の信頼も一掃得られる物と思います。」
アーサー王とファルコンは今後について話していた。
目的はレジスタンス活動についてだ。
ティムティムは予想以上に強かった。ならば、ここで弱らせるべきだ、とファルコンは考えた。
だったら、魔物をぶつけてやればいい。
そうかんがえ、ファルコンはアーサー王に魔物達の反乱集団に接触させていた。
交渉には、境界の魔物が当たった。
そして、彼等には金と、物資での支援を行うことにした。
境界の魔物に店を開かせ、各地の反乱を支援したのだ。
既に、反乱は抑えられはじめ、残りは4つとなっていた。その中の最大勢力は魔界宗教の法王軍だ。
ファルコンはそこを重点的に支援させることにし、他への支援を打ち切った。
そして、彼自身も法王と会談した。そこで、法王は買収された。
- 49 :
- 多少困ったことになった、とアーサー王は思った。
彼は自分が逃がした魔王の息子を応援していたからだ。
彼は仕方が無く、そこに自分の力で店を残させた。
ここで、こちらの支援がなければ、彼等も負けてしまうだろう、と思ったのだ。
法王軍がティムティムに勝てるはずがない。
それはアーサー王もファルコンもわかっていた。
ただの当て馬だ。彼を弱らせるための。
そこに魔王の息子を使わせてはいけなかった。
彼には後々ここを治めて貰わねばならぬ。
ここでアーサー王の策謀について述べよう。
彼は、魔界を侵略する気などさらさら無かった。
彼は、魔界を元に戻そうと考えたのだ。攻め込まれる前の世界に。
アーサー王はどこか違う考えを持っていた。
それぞれがそれぞれにあったことをすべきだと。
彼は、魔界は人間ではなく魔物が治めるべきだと考えていた。
そのために、魔王の息子を生かしたのだ。
ただ、個人的な欲も持っていた。
ここで、魔界征伐が失敗すれば、A国は弱る。そこを攻め、傭兵国家を復活させる。
そして、その傭兵国家で治めるのだ。
自分の愛する民のために。
- 50 :
- アーサー王に命令が下った。
中央大陸における反乱軍の制圧だ。
総大将はティムティムで、前線指揮官として選ばれた。
出来るだけ長引かせねばならないと思ったが、ティムティムがいる時点で引き延ばしは不可能だった。
しかし、なんとしても中央大陸で引き留めねばならない。
今現在、魔王の息子の軍隊は彼には勝てない。
ここで潰されてしまったら終わりだ。
アーサー王は、ちょっとした恐怖を覚えながら戦場へと向かった。
第三章 終
- 51 :
- 今日はここまで。
- 52 :
- ゴブゼロの本か本当の方か分からなくなった
なんにしてもルーカンに拒否権は無かったのだろうかwww
今もルーカンは魔王のそばに居るのだろうか・・・まさか
ギルドのリザードレディはタークのロマンス伏線だったのか
- 53 :
- 盾を拾い、剣をぼろ布で拭う。
タークはクモの生死を確認している。軽やかな足取りで、転がっている岩を避けつつ、リリアさんが走りよってきた。
「なかなかやるわね。いきなりで慌てたけど、怪我もなさそうで良かったわ」
「慌てたって割には、随分正確な射撃だったな。助かったよリリアさん」
お互いに健闘を讃え合い、握手する。
「おやおやお二人さん、何時の間にやら仲良くなっちゃって」
タークはやってくるなり、いきなり茶化しやがった。
ひとまず、頭をはたいておく。
それにベシィッ! と鋭い音が重なった。
リリアさんが弓でタークをぶっ叩いていた。
お互いに顔を見合わせて苦笑する。
「気が合うわね」
「当然の反応さ」
「……惚気やがって……」
タークが涙目で何事か呟いたが、無視した。
そういえば、まだまともな自己紹介もしていない。タークにも、名前しか言っていないし、聞いてもいない。リリアさんに至っては、名前しか聞いていない。
- 54 :
- 今日の分行きます。
今日からしばらくは本ではなく現実の方に。
- 55 :
- ―魔界
結構な部分が意訳になっている。
仕方がないのだが。
だが、気になるのはルーカンだ。もしかしたらまだ魔王軍に残ってるのかもしれない。
まあ、魔王の息子を追っていたのに、魔王のそばにいないと言うことは、殺されたか捕まっているかだ。
気にするほどではないかもしれない。
一応、ここから先の訳も浮かんでいるが、ルーカンは出なさそうだ。
それにしても疲れた、ふとレッドカウに手を伸ばすと飲み干してあった。
箱を見たがもう残っていない。
仕方がないから買いに行こう、と部屋を出たところ血まみれの斥候がやってきた。
魔王軍が崩壊した、と。
- 56 :
- あれから10日がたった。
魔王軍は1号がたてた育成計画で徐々に復興している。
しかし、失ったものは2度と帰ってこない。
あの後、魔界で大暴動が起きた。
カリスマ法王の討死は、信徒が狂うにふさわしいものだった。
魔王軍全滅の知らせが聖都に入ると、魔界宗教の枢機卿達は信徒を率いて挙兵した。
関係者達を罪人として処刑せよとのものだった。
魔王軍指令(最近は行っていないが)の私と一号の命を求め、命令が果たされぬならば魔王を討つ、とまでなった。
しかし魔王は拒否、戦いが始まった。
魔王軍は精鋭部隊が壊滅したものの、残存兵力も勿論残っていた。
私自らが指揮し、聖都を押さえ、枢機卿達を反乱の罪で裁いた。
魔王の命により、までではなく禁固となったが。
特に私に対する迫害は激しかった。
私は最大の敵と見なされ、魔王軍の中にいた信徒から命を狙われるまでだった。
しかし、魔王軍に勤めており、法王の養子となっていた「若」という僧が法王になってから収まった。
彼もなかなかカリスマがあった。彼がいなければ今頃どうなっていたか。
そういえば執筆活動を忘れていた。
そんな気分ではないが。
私はぼんやりと考え事をしていた。
すると、ドアをたたく音がしたので、その客を中に招き入れた。
客は新法王だった。
- 57 :
- 「あの、これ、先代が残していたものです。」
そこにあったのは、一冊の本と杖だった。
「なんでこれを?」
「…あの人の遺言です。死に際に、本棚にあるこの本と、杖を渡せとのことでしたので…」
「そうか…ありがとう。お前はこれからもっと忙しくなるだろうけど頑張ってくれよ?」
「…したんですか。」
「?何か言ったか?」
「いえ、何も。ではこれで。」
そそくさと出て行った。
ところでこの本は何だろうか。私は気になってパラパラとめくった。。
…人間の言葉がぎっしりと書かれている。
しかし、きちんとした文法で読みやすい。
これは人間軍の日記だろう、と思い最初のページを開いた。
中には魔界語のメモがあった。
「君にこれを読ませた理由はわかるだろう。中には君の望むものがある。
きちんと読み込んでくれ。そして、物語が出来たら私にも読ませてくれよ?
もし他に資料が欲しいならアックスデスの南海岸にある小屋を訪ねなさい。
詳しく話が聞けるだろう。」
と書いてあった。閣下はこれで私に伝えたいことがあったのだ。
私はその日記を一心不乱に読んだ。
そしてある結論を下した。
これは、アーサー王の日記であると。
- 58 :
- 「おじゃましますよ。」
私はそう言って、アックスデスの南海岸沿いにある小屋に入った。
そこには、置いたドヴェルクがいた。
「どうかしたかね。お宅は何者じゃ?」
「私は魔王軍指令〜というものです。」
「そうかい、それで人間様がどうしたのじゃ?」
「単刀直入に聞きます、アーサー王の事について詳しくお聞かせして貰いたいのです。」
「アーサー王?しらんなあ、そんな輩。」
「隠さなくてもいい、貴方が誰だかわかっているんだ、ルーカス。」
ドヴェルクは突然笑い出した。
「ははは、そりゃあ人違いだ。私はルーカスではない。」
そう言いながらそばにあった斧を持ち、振り回し始めた。
すると、突然形が変わりだし、収まった頃、
「私はルーカスじゃない、マーリンだ。だから、特に君にお礼を言われる筋合いもないよ。」
魔法使いはよくわからないことを言い始めた。
- 59 :
- 「お礼?どういう意味ですか?」
「しらないのか?あの坊さんから聞いてここに来たのだろう?」
「…その方は先日お亡くなりに。」
「ありゃ、あのときの軍にいたのかい。なるほど、それで暴動が。」
「ええ、随分お詳しいんですね。」
「まあな。でも、アーサー様の日記は渡されなかったのかい?
そこに書いてあったはずだが。」
「忙しくてまだ全部は…」
「そりゃあいかん。さっさと全部読みなさい。
ほら、私の日記も貸してあげるから。」
そう言って古ぼけた日記も貰った。
「あの坊さんがね、言ってたんだよ。あんた今小説書いてるんだろう?
これでアーサー様の偉業が伝わるんだ。どんなことでも手伝うよ。
それにしても、よくあんな出来の悪い騎士のを訳してたなあ。
苦労しただろう。」
「ええ、そういえば、今ここに原稿があるので読みますか?」
「ありがたいなあ。早速読ませて貰おう…と思ったが魔界語か。
読めるには読めるんだが、時間がかかるなあ。」
「じゃあ貸しますよ。後で取りに来ますから。
そのときに感想も聞かせてください。」
「わかった。楽しみに待ってるぞ。」
そういって魔法使いは杖を振り、斧を持ったドヴェルクへと変わった。
- 60 :
- 今日はここまで。
明日は午前、午後の二回やります。
実は昨日の夜に、本スレで名前出されて嬉しかったり。
荒れるかと思ってハラハラしましたが…
- 61 :
- >>58からルーカンがルーカスに変わってる→どっちが正しいんだっけ?→敵一覧見る→どっちもいなかった
俺の目が節穴なだけか…?
- 62 :
- >>61
すいません、ルーカンでした。
- 63 :
- >>62
ググったらアーサー王に出てましたルーカン
何でもないっす
- 64 :
- 過去先生、鐘の音先生、裸王先生、
ハウル先生、絵描きの先生にコテなしの先生、戻ってこないかなぁ。
いろいろ読みたいな。
ひとまず、次のスレには【僕まか】をつけよう。
- 65 :
- >>53
リリアの種族が気になる
弓を使うのはオリジナル設定だよな?
>>58
「そりゃあ人違いだ」
確かにルーカスじゃないなw
若が何を言ったのか気になる
- 66 :
- >>65
オリジナル要素。
種族は次の更新で。
グレートヒルが大阪だと気づいてる人いるかな?
- 67 :
- いや全く
- 68 :
- なるほど気づかんかった
- 69 :
- 「自己紹介が遅れたな。ランクC+、インプのレクト・レクターだ。拠点はグレートヒル、よろしく」
「ランクD、実はドヴェルクと人間のハーフな16才、ターク・メルディンです。よろしく、リリアさん」
……なぜリリアさんに限定する…俺の時はみたまんまのドヴェルクとか言ってたはずだが……
「リリア・ラステアよ。ランクはB。リリアはあまり好きじゃないから、リリーって呼んで欲しいな。さん付けもいらないかな。拠点はアブラシティよ。種族はエルフとバンパイアのハーフ。よろしく」
言いながら、リリアさん、いやリリーさんは片頬の髪をかきあげながらいたずらっぽく笑った。
淡い水色の髪から、やや尖った耳が現れる。血に濡れたような紅い唇の下から、白い牙が顔を覗かせた。
酷く妖艶な表情に、何かを見透かされた様な気分になって、慌てて目をそらした。タークをみたが、案外平然としていた。なんだか負けた気分だ。
「混血ばかりね。あなたも純粋なインプってわけじゃないでしょ?」
本当に見透かされたようだ。
「あ、ああ。祖母がリリス族だ。よく分かったな」
「だって尻尾がないじゃない。インプにしては顔が鋭くないと思ったら、案の定、ってところね」
確かにインプ族の特徴である尻尾はないが、同属でもないと普通は気づかない。鋭い観察力だ。実は無いんじゃなくて短いだけなんだが……
そのあとも三人で話しながら歩いていると、すぐに最初の岩まで戻ってきた。
「じゃあ、昼ご飯にしよーー」
「静かにっ!羽の音が近づいてるわ。……おかしいわね。フォルスラコスにしてはやけに羽音が煩いわ。二人とも、武器を構えて!」
タークの言葉を遮ってリリーさんが警告する。相変わらず、俺には何も聞こえない。
が、すぐに異変に気づいた。一瞬、辺りが暗くなったのだ。見上げると太陽を背にして黒々とした巨大な生き物のシルエットが羽を広げている。
「ウソだろ……ワイバーンかよ……」
タークの呟きが近づく羽の轟音に飲まれた。
- 70 :
- もっと早く来たかったのですが…
それでは投下。
- 71 :
- 司令部に戻ろうとしたとき、門の前に気配があった。
そこには1号がたっていた。
「どうしたんだ一号?出迎えか?」
「ああ、そのままお見送りになるけどな。」
「ああ、育成の途中だからな。最近は忙しくって仕方がないだろう。」
といってケルベロスから降りると、突然切りつけられた。
「くそ、はずしたか。」
1号は突然斬りかかってきた。とっさによけたが血が出ている。
「どうしたんだ1号?何があったんだ。」
「だまれ、本当だったらお前は処刑されるべきなんだ。
それを俺が英雄のまま殺してやるんだ。感謝しろ。」
「どうしたんだよ!」
1号が切りつけてくるのを、必死に杖で防いだ。
しかし、切っ先が当たり、体のそこら中から出血している。
「簡単なことだよ。お前が軍を滅ぼしたからだ。」
「何を言ってる?あれには何も関わっていないってお前もわかっているだろう?それになんの得があるんだ?」
「わかっているだろう?お前は祖国を救いたかったんだよな。だからだよ。」
「軍を滅ぼすのと祖国になんの関係があるんだ?」
「簡単だろう。あの軍はお前の祖国、人間界を滅ぼすためのものだからだよ。」
「だから何を言っているんだ?私は魔王城の城下町出身だぞ?」
「黙れ人間!私に従い斬られろ!」
彼はそう言ってまた切り込んできた。
- 72 :
- 「はあ?私のどこが人間だ。」
「知っているんだよ!お前がゴブリンに化けてることも!」
ここでやっとわかった。
たぶん彼は勘違いしている。私をルーカンだと。
彼の攻撃は熾烈を極めた。
何とか避けているものの体力の消耗が激しい。
このままだと殺される。
「終わりだ。」
彼は大きく振りかぶり、剣を縦に振った。
私はそれを避け、彼の後頭部を全力で杖で殴った。
「く…だがそれで終わりか?」
「ああ、終わりだ。」
持ってきた杖が閣下の杖で助かった。
1号は立ち上がり、もう一度斬りかかろうとしてきたが、麻痺で倒れた。
- 73 :
- 「殺せ、これ以上人間におとしめられたくはない。」
あいつは手足を縛られながらそんなことを言った。
「なんで俺が人間なんだよ?どうせ誰かから教えられたんだろう?」
「ああ、騎士の生き残りだとな。お前が書いてる小説に出てくる。」
「はあ、俺はそいつじゃない。ただのゴブリンだよ。」
「証拠を見せてくれ。」
「証拠って言ってもなあ…」
証拠はないな、疑われても仕方がないかもしれん。
「…まあな、うすうす気付いてたんだよ。お前が違うって。だから最後の一太刀はわざと大振りしたんだ。」
「だからってあれで死んだらどうするつもりだったんだ?体ボロボロだったし、避けられなかったかもしれないぞ?」
「すまんな。」
「いい…わけないだろ!てかしばらく縛っておくぞ?いまから若のとこ行って怪我治して貰うから…」
「あ!ちょちょちょっとまって!今はダメだ…」
彼の言葉はきちんと聞いた。駄目らしい。
いや、この部屋の前に広がる状況でわかる。
自室の外は信徒達が囲っており、その中央に若がいた。
急いでドアを閉じようとしたが、有無を言わさず捕らえられた。
- 74 :
- 「今より裁判を始める。被告人は〜、本名はルーカン。彼は人間であるが、魔物に化け、先代、先々代の法王を殺し魔界を恐怖に脅かした。
彼の罪は死を持って償われるべきである。」
ここは宗教裁判所。宗敵を裁く場所だ。
かつてより魔界宗教に逆らったものはここで処刑されてきた。
先代法王の閣下はこの規律に疑問を唱え、宗教改革を起こした。
わずか100日近くしかいなかったが、彼の宗教改革は功を奏し、宗教裁判所は廃止。
その他にも様々な規律が廃止され、魔界宗教は健全化した。
しかし、それに異を唱えるものも多かった。
閣下が戦死したあと、軍をたてたのは異を唱えていた枢機卿達だ。
彼等は新法王に圧力をかけ、廃止されたものを次々と復活させた。
勿論、宗教裁判所もだ。
そして私が復活後第一号となる。
「異議あり!」
元気に異議を唱えたのは一号だ。どうやら解放されたらしい。
「彼は魔界のために尽くしてきました。聖都も彼が率いる魔王軍に助けられたのです。」
よかった。一号が助けてくれようとしている。持つべきものは友だな。
「なので、減刑し終身刑が妥当だと思います!」
前言撤回。駄目だこいつ。
「法王様、彼の言うことが本当だとしても、人間は裁くべきです。しかも先代、先々代を殺したのですぞ!」
枢機卿の魔獣が言った。彼は先々代からずっと法王に使えている。
「よし。それでは判決を出す。被告人は火刑とする。また、刑は即日執行するものとす。」
もうだめだ、おしまいだ。
私は警護官に腕を捕まれて、法廷を出ようとした。
「異議あり!」
突然大きな声が響いた。
周りはざわざわとうるさくなり、ちょっとした騒ぎになった。
- 75 :
- とりあえずここまで。
まさかストックが切れてたなんて…
意見や質問があればどうぞ。
- 76 :
- 続きが気になるじゃないか…
- 77 :
- 二人とも良いところとめらっしゃる
- 78 :
- ワイバーンの強靭な脚爪が大地を穿つ。
響き渡る轟音と舞い上がる土煙。
無様に転がって避けたタークが投げ出された斧を掴んで距離をとる。そこに間断なく放たれる、複数の矢と下級魔法。
だが、それらは強靭な鱗に防がれ、地に落ち、霧散する。
「行くぞ!」
オーク族の男が俺たちに支持を出し、突進する。俺と、コボルトの槍使いがそれに続く。
だが、オークの男は翼爪に打ち据えられ、地面に叩きつけられた。そのスキをついて、俺はワイバーンの首の下を駆け抜けざま、剣を一閃。だが、俺の剣は鱗に傷をつけるにとどまり、ダメージを与えられない。
続くはずのコボルトの槍士が倒れたオークの男を安全圏まで運び出す。
荒々しい光を宿す目に、片方の牙のおれた顎。古傷にまみれた鱗がこの龍もどきの長い戦歴を示している。
戦いを初めて既に15分が経過している。総力を動員した迎撃は未だ続いている。
- 79 :
- この世界には、レベルというものがある。いや、あるらしい、というべきか。殆どの生き物に備わっていると言われているが、普通に暮している限り、それを知る術はない。
代々魔王の子孫は、他人や自分のレベルを見る目をもって生まれてくるというが、一般人がそれを知るには、傭兵ギルドの魔法装置を使うしかない。
レベルは、戦闘経験を積む、大きな困難を切り抜ける、などで上がると言われている。
その恩恵は非常に大きく、老齢による身体能力の減衰すら打ち消してしまうほどだ。故に、闘いに明け暮れた熟練兵ほど強い者はない。
それは、野生においても同じだ。卓越した戦闘経験と、レベルによる補正。
俺は目の前のワイバーンを見た。荒々しく戦いながらも、理性の色を失わない瞳。
野生の古強者の放つ、凶悪な威圧。
既に、二人が死に、三人が負傷している。
戦況は良くない。元がEランク程度の依頼にそう強い冒険者が来ているはずがない。戦線の崩壊は時間の問題だ。
俺は周囲に視線を巡らせる。
タークは後方に下がり、リリーさんはもとより後衛だ。
……こんなところでみすみす死ぬのは馬鹿らしい。依頼失敗となっても、逃げるべきだろう。俺はただのしがない冒険者だ。勇者じゃない。二人を連れてここを離れよう。
そう考えた時だった。
肩に力強くてが乗せられる。
「いい判断だ。剣の腕も悪くねぇ。冒険者としちゃ合格だ。……だがな、男としちゃ最低だ。……ボウズ、手ェかしな。あのトカゲ野郎を追い払うぞ」
背後に、見事な筋肉の鎧を纏う、鬼族の大男が立っていた。
- 80 :
- 二人ともレベル高いなー
続きが気になるわ
- 81 :
- やっと出来た…
それでは投下。
- 82 :
- 「どうしてこんな場所に魔王軍指令がいるのだ。連れて行かせて貰うぞ。」
そう言って警護官を払い、私の手を握った。
「お待ちくだされ、彼は罪人でございます。」
「罪人だと?そんな話は初めて聞いたぞ?それに、私にはその判決を無効化させる権力がある。」
枢機卿は簡単にあしらわれ、悔しげな顔をしていた。しかし、反抗出来なかった。
彼等の前に立っていたのは魔王だったからだ。
「さあ、行くぞ〜。一号もさっさと育成計画を見せろ。どこまで進んだ。」
しかし、私の知っている魔王ではない。彼はいつも弱気で、私と一号を頼り切っているような男だった。
まあ、威圧するためだろうが。
一号も慌てて魔王の横につき、外に出ようとするが、警備兵に止められた。
「魔王様、なぜ人間をかばうのですか?そいつは魔王軍も壊滅させたんですよ?」
「おもしろいことを言う。ここに人間などいないではないか。」
「魔王様、そのゴブリンがそうです。さあ、身柄をこちらに。」
「こいつは人間ではない。証拠を見せてやる。」
魔王はその右手にあった杖を振るった瞬間、冷ややかな冷気に私は包まれた。
しかし何も起きない。
「何をなさったのですか?」
と一号が聞くと、
「魔法を打ち消す技だ。これで何も変わらないと言うことが、彼がゴブリンであることの何よりの証拠だ。」
- 83 :
- 「それで信じろと言うのですか?証明にはほど遠い。」
と枢機卿が言ったのに対し、
「だったら、もう一度やって見せよう。」
といって、魔王は再び杖を振ったが、次に出てきた光は黄色だった。その光を浴びると、私はギガンテスに変わった。
周りが驚いているのを尻目に、再び杖を振り次に出てきた冷ややかな冷気を浴び、元の姿に戻った。
「これで満足か?」
魔王は笑みを浮かべ、枢機卿は唇をかんだ。
「まだ、まだです。彼が人間でなかったとしても、軍を負けさせたのは変わりません。法王様、彼に裁きを!」
枢機卿は法王にも語りかけたが、法王の私に対しての疑念は全て取り払われていた。
「すいません。先程からずっと気になっていたので、一つだけ言わせて貰います。」
私はそう口を開き、今回の全滅について語った。
そもそも今回の全滅の理由はこうだ。
魔王軍が塔を探索する際、補給部隊が突然消え、補給がままならず全滅した。
しかし補給の担当は私ではない。一号だ。
勿論、彼のせいでもない。彼には理由がない。
彼はとても熱い男だ。迷宮での敗北の時は涙を流して殴りかかってきて、今回の全滅では弔いだと行って一人で出撃しようとしたぐらいだ。
彼は魔界のために戦い続けてきた。私の復讐に比べれば遙かに崇高な考えだ。
- 84 :
- 私が言いたいことを全て言い切ったとき、場内は静まりかえった。
「これでよろしいかな。それでは帰ろう。」
そう言って魔王は、私の手を引いて外に出ようとしたが、再び遮られた。
もう少しお待ちください魔王様。ただ今結果が出ましたので。」
彼は迷宮の全滅後に仲間になった、エースという名のゴブリンだ。
彼は今回の事件を追い、調査していた。
その彼が私兵を率いてやってきたのには勿論理由がある。
「今回の事件はわかりましたよ。随分おもしろいことをしましたねぇ。枢機卿の××!」
「な、何を言うんだ?私が何をしたのだ?」
「貴様の罪は三つ。一つ、先々代法王を討ち、二つ、魔王軍を壊滅させ、そして、一番の罪は人間に与したことだ!」
そういってエースは語り出した。今回の事件について。
「そもそも貴方、随分前から人間の味方だったらしいですねぇ。時期で言えば、侵略から15日後くらいですかね。貴方が法王軍で司令をしていたときだ。」
そういえば法王についていたのだったか。ということは、こいつも買収されてたんだな。
「そして貴方は人間の命により、法王軍を壊滅に導いた。違いますか。」
違うだろう。法王軍の敗北は彼等の主からすれば、想定外だったはずだ。
話は続く。
「そして、その後魔界が再び統一された後、人間から命令が来たのでしょう、魔王軍を壊滅に導けと。そして貴方は補給部隊を襲い、見事壊滅させた。違いますか?」
「ち、ち、違う、私がなぜそんなことをせねばならないのですか?」
「決まっているでしょう。貴方は法王になりたかったのだ!そして、軍壊滅の罪を英雄である〜殿に被せた。この罪は許すべき物ではない。者ども、捕らえよ!」
彼は私兵の巨人族を使い、取り押さえようとした。枢機卿は必死に抵抗したが、抵抗かなわず、巨人によって振り下ろされた棍棒に当たり、絶命した。
- 85 :
- 「大丈夫だった?〜、一号。」
私、一号、魔王の三人で帰るとき、ふと魔王が問いかけてきた。
「大丈夫でしたよ。それもこれも魔王様のおかげです。」
「よかった…一時期はどうなることかと思ったよ。〜が連れて行かれたって聞いたときは、焦って違う方向に向かっちゃってね。着くのが遅れちゃった。」
魔王は側近には親しみを込めて話す。まるで魔王の威厳など無い。
「それにしても魔法使えたんですね。」
「もちろんだよ。お父さんもお爺ちゃんも魔法が得意だったんだから。私だって出来るんだよ。」
そう言って杖を振ったが、音を立てただけだった。
「あれ、火球が出るはずなんだけど…おかしいなぁ。」
やっぱり魔王は若い。裁判所に出てきた魔王と今ここにいる彼では別人のようだ。
私も一号も、そんな彼に我々は付き従ってきたのだ。
部屋に着いた。やっとゆったり出来る。
今日は色々とあって疲れてしまった。本を読もうと思ったが、そんな力も残っていない。
あきらめて日記を書いて寝よう。
私はさらさらと、235日目の日記を書いて、そのままベッドに入った。
- 86 :
- 240日目
ここ最近は忙しくってたまらない。
軍再興に目処がつき始めたが、次は我々ゴブリン達を鍛えるらしい。
今まで遠くから見ていた洞穴に入り浸り、自らの手で敵と戦った。
その結果、レベルが上がり、儀式を経て、いまはゴブリンの伯爵となっている。
そういえば、枢機卿の死後、魔界宗教は閣下の望んだ通りに戻った。
私の元にも、この前の判決を取り消す、という通知が来た。
それだけでなく、法王も詫びに来たのだが。
それと、今日マーリンの元を尋ね、原稿を返して貰った。
その後話を聞いて、帰ってきた。
全てがわかった。我々から見た魔界、人間から見た魔界。この二つの謎をつなぐのが、アーサー王物語。
私はこれを書ききり、侵略戦争の全てをまとめるのだ。
- 87 :
- 今日はここまで。
これからしばらくは本に戻ります。
- 88 :
-
「壁役!扇状にワイバーンを囲め!回復役はもっと後ろに下がれ!ブレスに巻き込まれる位置に近づくな!遠距離攻撃役は当たりやすい場所にとにかく当てることだけ考えろ!下手に頭や首を狙うな!リリーと遊撃手はこっちに集まれ!」
オーガの壮年は、一息に、だが的確に指示を出していく。圧倒的なワイバーンの戦闘力に浮き足立っていた冒険者達が、ようやく組織的な攻撃をはじめた。
俺とオーガの周りに、遊撃手達が集まってくる。リリーもやって来た。
「端的に言うぞ。奴はただのワイバーンじゃねぇ。本来ワイバーンは単独かつがいで、山に縄張りを張って暮らす生きモンだ。それが人里近くまで降りてきてやがる。あの実力なら縄張りを追われることも無いはずだ。
と、なるとーー」
「バトル・ジャンキーか」
思い当たる節があった俺が呟いた。
「そうだろうな。レベルアップで頭まで良くなった結果、自我に目覚めた個体だろう。レベルアップで体の衰えを和らげる事ができると知っているんだろうな。
と、いうことは、だ。余計な傷を負わないように、引き際をわきまえてるはずだ。死んじまったら元も子もねえからな。俺たちはそこを突く。要するに、しの危険を感じさせて撤退させるってわけだ」
大男が驚愕の作戦を俺たちに伝えはじめた。
- 89 :
- オーガの指揮官の指示で、扇状に展開した重武装の冒険者達がワイバーンにプレッシャーをかける。
作戦を告げられた遊撃手達は各々散会し、岩陰に隠れたリリーさんが弓を引き絞ると同時に、遠距離攻撃役達も一斉に矢弾を放つ。わざとワイバーンの足元の地面に向けられた火球が着弾し、轟音と砂煙をまきあげる。
「行くぞ!」
俺の指示に従い、俺を含めた遊撃手達が岩陰から飛び出し、土煙の晴れないうちから脚や翼手に次々と攻撃を浴びせ、ヒットアンドアウェイの戦法で、反撃をされない内に撤退する。
もうもうと巻き上がった土煙が晴れた時、プレッシャーと散発的な攻撃に集中力を欠いたワイバーンの前に、ひしゃげた兜をかぶった無手の大男が立ちはだかり、一瞬の隙を突いて、顎が開かない様に両手で押さえ込んだ。遠くから見ていても、肩の筋肉が盛り上がるのがわかる。
……作戦通りとはいえ、本当にやられると目を疑うものがある。
「射て!リリー!」
オーガが大音声をあげた直後、飛来した矢が、ワイバーンの左の眼球を貫いた。
- 90 :
- ワイバーンが激しく首を振り、左目からの鮮血と共に、オーガが吹き飛んだ。
グギャォォォォォ!!!
「弓、魔法、放てェ!」
リリーさんの掛け声にあわせて、痛みに絶叫をあげているワイバーンに魔法と矢がこれでもかと襲いかかる。
大したダメージにはなっていないが、怯んだワイバーンは冒険者達に尻尾を向けて走り出す。
誰もがほっと息を吐いたその時、最前列から一人の男がワイバーンを追いかけて走り出した。タークだ。
「おい、深追いするな!」
前衛の誰かが叫んだが、どこ吹く風。
タークは助走をつけて飛びたとうとするワイバーンに追いすがり、離陸する直前、その尻尾に振りかぶった戦斧を振り下ろした。
- 91 :
- 今日はもう終わりかなー?
- 92 :
- ターク!
- 93 :
- まだだ!まだ終わらんよ!
応援ありがとうございます!
今日中は無理かもしれないです。
軽く予告
しばらくしたらトール・アンダーブリッジという男がでてきます。
- 94 :
- 出来た…
投下開始。
- 95 :
- 第四章 アーサー、暗躍する
中央大陸における戦いは本軍の到着後、たった二、三日で終わった。
今回の侵略戦争で最も活躍しているのは間違いなく彼等の部隊であろう。
ティムティム軍の最大の特徴は高速行軍であろう。
彼等の進軍速度は目を見張る物がある。
特に、今回の魔界侵略ではたった一日で全土を手中に収めたのだ。
そのときは後続に防備を任せ、彼等は恐ろしい早さで進撃していた。
それには理由があった。
彼等は禁呪という物を使っていた。本人達の身体能力を高める物だ。
しかし、それには効果が切れると数日間の間、身体能力が著しくかかるという副作用がある。
命に関わる危険性というのも否定できず、他では使われない魔法をどんどんと使った。
その結果ティムティム軍は恐ろしい部隊となっていた。
もっとも、その禁呪は魔物達に副作用は起こらず、昔から使われていたのだが。
そんな彼等の部隊は中央大陸にいる。今は体を休めているのだ。
しかし、彼は既に東大陸の反乱鎮圧に動こうとしていた。魔王の息子の軍だ。
ここを潰させるわけにはいかない、とアーサー王はファルコンの元に向かった。
- 96 :
- 移動魔法という物はとても便利な物らしい。
一度行った場所であればすぐにでも移動できるのだ。
多数の人間を運ぶことは出来ず、また魔界には結界があり使うことは出来なかったが、今は結界も弱まっていた。
彼は部下のマーリンに移動魔法を使って貰い、ファルコンの元へと向かった。
「おやおや、いったいどうしたのかアーサー殿。」
「既にお耳に入っているかもしれませんが、法王軍が敗北しました。」
「聞いておる。しかし困った物だ。アーサー殿ならどうなさるか?」
「それで今回はお願いに来ました。境界軍に反乱を起こさせてください。」
「そうか、しかし境界軍など出しても時間稼ぎにしかならんと思うぞ?」
「その時間稼ぎをしていただいて欲しいのです。まだ魔界には反乱軍が残っています。」
「ほお。で、どんな軍なのだ?」
「首領は魔王の息子で、まだか弱いですがもう少し時間が稼げれば、どうにかなるかもしれません。」
「そうか。わかったアーサー殿。すぐに境界軍に各地で反乱を起こさせ、王命で奴を呼び寄せよう。」
「お願いします。ファルコン様。」
これで魔王の息子が助かる。しかし、何日引き延ばせるだろうか。出来るだけ引き延ばしてもらわねば。
アーサー王は、そんな考えをしながら城に戻った。
- 97 :
- 「すまんな、アーサー。しばらく魔界を頼むぞ。」
「大丈夫です、しっかり守り抜きます。ティムティム様。」
ティムティムはそう言って境界に向かった。
さて、どうしようか。
ただ魔界にいるだけだと後々に響く。何か行動を起こさねば。
かといって私が出たら、あんな軍はすぐに崩れる。
そうだ、いいことを思いついた。と、アーサー王は行動に移した。
彼は全ての軍の責任をイーグリットに預け、魔界の魔物の討伐に向かった、ということにした。
イーグリットは前にも述べたが、ファルコンの部下である。彼に任せれば悪いようにはしないだろう。
勿論、アーサー王にも目的がある。魔物討伐を名目としていたが、実際、彼は魔物を集めていた。
後々のためにである。
境界での時間稼ぎはうまくいっていた。5日間で半分は終わってしまっていたのだが。
しかし魔王の息子達は、中央大陸をほぼ取り返し、力も付いてきている。
こちらも急がなければならない、とアーサ王は作戦を続けていた。
しかし、境界軍はその後5日間でつぶれた。逃げようとした境界王もファルコンの手により殺され、もはや境界軍も使えなくなった。
しかし、ファルコンもぬからない。知将で知られた頭脳が光る。
彼は人間界にティムティムを閉じ込めることに成功したのだ。これでしばらくの間、魔界は安泰だ。
アーサー王は安心しきっていた。しかし、そううまくもいかない。
ファルコンは考えていたのだ。魔王軍も調整しなければならないと。
- 98 :
- ファルコンも魔界を掌握しようとしている。そのためには魔王軍も潰さなければならない。
ティムティム軍と魔王軍が同じくらいになったときにぶつけ、両方とも潰す。
彼はそう考えていた。
そして、まず彼は魔王軍の掌握に向かったのだ。
彼は首領の魔王の息子ではなく、その周りから落とそうと考えた。
そう考えた彼は、法王軍の生き残りの枢機卿を向かわせた。魔王軍にいる二人の僧侶に。
しかし結果は芳しくなかった。二人は魔界のことだけを考えていたからだ。
彼等は人間界への布教の許可と、戦後も、聖都を残し魔界宗教も守るという条件を出された。
その言葉を聞いた二人は大笑いした。
「そんなことが信じられるわけ無いでしょう。それに布教よりも大事なことがある。魔界にすむ者達を守らねばいかんのだ。」
枢機卿は、それでも必死に説得したが受け入れられなかった。
挙げ句の果てに法王の名前まで出した。貴方の前の法王も人間に与し共に戦っていたのだと。
それを聞くと二人の顔色が変わった。怒りの顔だ。
あの法王はそんなことまでしていたのか、とその二人はショックを受けたのだ。
「貴方のおかげでよくわかった。やはり魔界宗教は汚れてしまっているようだ。我ら二人が立て直して見せよう。」
そう言って枢機卿は追い出されてしまった。
彼は後々魔界宗教の権力を握るのだが、不正を明かされ、討たれている。
- 99 :
- 今日はここまで。
時間はあったのですが、過去ログ見てたら時間がたってて…
ホモール先生の描写は素晴らしいですし、裸王先生の洗練されたネタや、無反省先生の引き込まれる文章…
これからも他の先生の作品を参考に頑張っていきたいです。
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