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2012年07月ポケモン385: ピカチュウの人生6 (361)
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ピカチュウの人生6
- 1 :2012/03/20 〜 最終レス :2012/08/20
- 全世界のポケモンの支配を企むピカチュウを主人公とした小説を書くスレのその6
※続きを書く前に前スレ・過去スレ・議論所・保管サイトをしっかり読み、
過去からの流れと設定、キャラの性格と口調等はしっかり掴んでおきましょう。
※小ネタ歓迎。絵も歓迎。
※荒らしはスルーが基本。書き手が降臨するまでまったり待とう。
※sage進行推奨
前スレ
ピカチュウの人生5<小説リレー・進化>
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/poke/1286038834/l50
過去スレ
ピカチュウの人生4<小説リレー・進化>
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/poke/1243265269/l50
ピカチュウの人生Part3<小説リレー・進化>
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/poke/1186585164/
ピカチュウの人生2<小説リレー・進化>
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/poke/1168594628/l50
ピカチュウの人生<小説リレー・進化>
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/poke/1163338618/l50
関連過去スレ
ピカチュウの人生議論スレ
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/poke/1165628880/l50
避難所&議論所
http://jbbs.m.livedoor.jp/b/i.cgi/otaku/11567/#1
携帯版まとめ
http://novel.motekawa.jp/pikatyulife
保管サイト
http://park.geocities.jp/pokepoke0830/pikatyulife.html
- 2 :
- 973 名前: ◆Pc42BttzIw [sage] 投稿日: 2012/03/18(日) 03:37:33.19 ID:???0
”知っていたなら、どうして……君は全く俺を怖がっていなかっただろう”
信じられない、と愕然として俺は問い返した。
〈逃げ遅れ、トラックに積み込まれる寸前まで私にも少し意識はありました。
そこで次々と他の逃げ遅れた方々を運んでいく兵隊さん達と、
一緒にいるあなたの姿がぼんやりと目に入っていました。その時、すぐにピンと来たんです。
あれが噂の『黄色い悪魔』だと。再び目覚めた時、そのあなたが目の前にいてすごく驚いたし、
とても怖かった。でもね、次の瞬間にはそんな気持ち、跡形も無く吹っ飛んじゃいました〉
俺の恐ろしげな噂は兼々聞いてはいたが、実際に目の当たりにしたら恐れは沸いて来なかった、
彼女はそんな風に言って、クスと笑った。
〈時々ね、ここに住むやんちゃな子達が、危ないから行っちゃ駄目っていつも言ってるんだけど、
大人達の目を盗んで近所の森の奥に探検って称して遊びに行っちゃうんです。
普段はちゃんとバレない様に帰ってきているみたいだけれど、その時は奥まで行き過ぎたみたいで、
中々帰ってこないあの子達をみんなで探しました。やっと見つかった時のあの子達いったらもう……
日ごろの強がりで意地っ張りな素振りが嘘みたいに、みんな寂しそうで頼りなげな目をして
わんわん泣きじゃくっちゃって、私までつられちゃいました。
あなたの目を間近で見て、あの時のあの子達の目にとても似ているなって思ったんです。
寂しく儚げで何かに迷っているような目。スカーさん達にも似たものを感じました。
そう思った途端、なんだかまるで怖く無くなったの。そっか、このひと達も同じなんだなって〉
- 3 :
- 974 名前: ◆Pc42BttzIw [sage] 投稿日: 2012/03/18(日) 03:38:24.06 ID:???0
俺や部隊の他の者達も恐れなかったのは、俺達がまるで迷子になった時の子どもと
似たような目をしていたからだと彼女は語った。
”俺がやってきた事は、子どもが言いつけを破ったなんてものとは規模も数も違う。
残虐に冷酷に他者の命を踏み台にして生きてきたんだ。許せるはずが……許されるはずが……!”
また胸が苦しみだし、俺は強く押さえ付けた。爪が食い込み、血が滲んだ。
〈確かに今まであなたは多くのものを奪ってきたのかもしれません。
でも、あなたがその痛みを苦に己の命を投槍にしたところでそれが戻ってくるわけじゃない。
それどころか、あなたの言葉を借りるなら、あなたの代わりに”踏み台”となってきた方々の
命が無駄に終わったことになってしまう……!
前にも話したかもしれませんが、私の両親は私がまだ物心つかない程に幼い頃、
戦禍に巻き込まれて亡くなりました。幼い私だけが生き残っていたという状況からして、
両親はきっと私を庇ったがために亡くなってしまったのでしょう。その事で私も一時期、
思い悩んでいた時期もありました。でも、ある時思ったんです。そして、変わったんです。
両親の分、長く生きた代わりに、誰かの助けになって生きていこう。
それで両親がかえってくるわけじゃないけれど、私だけの力なんてたかが知れているけれど、
同じような悲しみを味わうひとを少しでも減らすことが出来ればそれでいい。
自己満足かもしれないけれど、両親がそれで本当に喜んでくれるか確認しようも無いけれど、
何もしないでずっとうじうじしているよりは絶対いい〉
- 4 :
- テンプレ完了
明日か明後日にでも続き書くよ
- 5 :
- くっさ
- 6 :
- 乙
- 7 :
- ,z'='ゝ、__,ィ!
_ __,,.、/ミミミミミミヲ'__
、___,,ィイミミミ>‐'`'‐v':::::::::`:,'´``ヽミミミミミミミニ=-_,,.ィ!
ヽ,、____\ミミミミ>:::::< 'z::::::::;:ィ' ,i゙ミミミミミミミヾ砂炒′
ミッ、__\ミミミミミ`ミミ〉:::::::`:ッ.._,.ノ `ー^゙ `'ーー'ヾミミミミミミ三=ヌ彳ッ、
兮兌來W=ミミミミミミミ>‐-'゙´ ヾミミミミx自慰或゙´
,>安為益ミミミミミミ'! ,.,,.、,ィ i弌冦圦早ゞ''´
;=弌生理域圧ェェェッミ! _ゝォ;ェ、 ,姉欹ヽ、 ̄`゙`
`゙ヾ冬/変>'゙'y !::傚 s ゙恩てノ 1
/゙´ ,゙ 'つ汐′ ;一'l `~´ ,y′
,-'、、 ヽ_ノ ,ィr〈
,, -―==-! `゙ーャ、___、___,,.ィ<‐'´ 丿
/_ ヾ、_ ゙Yjor、o0゙´_/
'"´ ``‐、- _ `> r' ' !、 |
ヽ、 ! ヽ'´ ゝ゚.r'′/
`ー-ヘ ` ゙ー'′ ヽ
゙t'__ l
``ー ..,,__ く
`ー―‐′
- 8 :
- 6スレ目おめでとうございます
変わらず応援してます
- 9 :
- ごめん、ちょっと用事が立て込んで書くのが遅くなりそうだ
金曜日の深夜〜土曜日の昼頃には投下できるようにするよ
- 10 :
- >>9
スレ立て乙!待ってるよ
- 11 :
- | |
| | ,z'='ゝ、__,ィ!
_ __| |,,.、/ミミミミミミヲ'__
、___,,ィイミミミ>‐'`'‐v'::::| |:::::`:,'´``ヽミミミミミミミニ=-_,,.ィ!
ヽ,、____\ミミミミ>:::::< 'z:::| |:::::;:ィ' ,i゙ミミミミミミミヾ砂炒′
ミッ、__\ミミミミミ`ミミ〉:::::::`:ッ.._,.ノ `| |ー^゙ `'ーー'ヾミミミミミミ三=ヌ彳ッ、
兮兌來W=ミミミミミミミ>‐-'゙´ | | ヾミミミミx自慰或゙´
,>安為益ミミミミミミ'! | | ,.,,.、,ィ i弌冦圦早ゞ''´
;=弌生理域圧ェェェッミ! _ゝ=;=、 | | ,三三Yヽ、 ̄`゙`
`゙ヾ冬/変>'゙'y !::三三 | |s ゙三三ノ 1
/゙´ ,゙ '三三′ ;| |一'l `~´ ,y′ <キャアアアアアアアアアアアアアア!!!
,-'、、 `| |_ノ ,ィr〈
,, -―==-! `゙ーャ、___、_| |__,,.ィ<‐'´ 丿
/_ ヾ、_ ゙Yjor| |、o0゙´_/
'"´ ``‐、- _ `> r' | |' !、 |
ヽ、 ! ヽ'´ ゝ| |゚.r'′/ ←>>10
`ー-ヘ ` ゙ー| |'′ ヽ
゙t'__ | | l
``ー ..,,__ | | く
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- 12 :
- どうして忘れてる?!
- 13 :
- 挙げておけよ…
- 14 :
- 己の所業を悔いて死ぬくらいであれば、犠牲になったものの分まで生きて償え。
彼女は己の境遇になぞらえて言外に言った。
その時の俺に彼女の言葉はとても酷なものに響いた。
ただでさえ一生涯背負っていくには押し潰されそうなほど重く、苦しいというのに、
その荷を積まれる我が身は生まれたばかりのシキジカよりも弱弱しく、
ろくに歩みもおぼつか無い無能の身だ。
”無理だ、無茶だ、出来っこない。最早こんな身で生き長らえたって、
誰の助けにもなれはしないだろう。何の意味も価値も無い、寧ろ負担となるだけ。
ならば死んでしまった方がマシだ。いっそ殺せ、殺してくれ……”
俺は頭を抱えて耳を畳み、駄々をこねる様に首を横にふるって叫んだ。
閉じた眼の裏からじわりと情けない熱が滲む。
まるで子どもみたいに泣きじゃくる俺を前に、彼女は毅然と構えて一息吸った。
〈そんなにいらないって言うのなら、その命、私が貰います!〉
びしりと一喝するように彼女は言った。びくりと俺は顔を上げた。
- 15 :
- 〈何の価値も無くて捨てていいって思っているものだったら、誰かが貰ってもいいでしょ?
それからどんな風に扱われちゃっても文句は言えないはずだわ。
いっそ死んでも構わないぐらいの気構えがあるなら、どんな事だって受け入れられる。
貰った相手がどんな負担を被っていようと、好き勝手に貰っていったんだからあなたには関係ない。
誰の助けにもなれないなんて、そんなの自分一匹だけで測れるもんじゃありません。
やってみなくちゃわからない、出来ないとやらないは違うんです。だから、というわけで――〉
再度、気を入れなおすように彼女は大きく息を吸った。
〈あなたを私にくださいッ!〉
ぴしっと指をさして勢いよく彼女は言い放った。
俺は何だか圧倒されたようになってぽかんとその姿を見ていた。
一拍の沈黙の後、放った言葉の意味が色恋の告白の類にも取れてしまうものと気付いたのか、
彼女はハッとして、黄色い顔がみるみる真っ赤に染まっていった。
〈え、えーと、今のは変な意味じゃあなくって、その……ああ、ダメ、上手く言えない〉
先程までの威勢は途端になりを潜め、しどろもどろになって弁解しようとしていた。
”くく、ははは……なにをやっているんだ”
そんな様子を見ていると、何だか不可思議な笑みが湧いたきた。
良い意味で肩透かしを喰らってしまった様な、奇妙な感覚だった。
”……分かったよ、俺の命をくれてやろう。元々、落としたも同然の所を拾われた身だ。
君の言い分に従おう。煮るなり焼くなり好きにしてくれ。”
- 16 :
- GJです
シスターかわいい
- 17 :
- 保守
- 18 :
- 明日明後日にでも続き書く
- 19 :
- 保守
- 20 :
- 保守
- 21 :
- 保守
- 22 :
- 下げるな!!
- 23 :
- 本人が下げてるので下げます
- 24 :
- 根負けして諦めたように俺はそう答えた。
〈お任せください、決して悪いようにはしませんわ〉
彼女は表情を太陽みたいにパッと晴らして嬉しそうに微笑んだ。
それから俺は彼女の言うことをきちんと守って、まずはしっかりと療養に努めた。
ろくに口もつけていなかった食事をしっかりと取り、例の悪夢に苛まれ寝付けない時は
彼女がいつも傍で宥めてくれた。やがて包帯を外していても大丈夫になった頃、
少しずつ歩けるように訓練を始めた。初めは室内だけで壁伝いに、時に彼女に手を引かれ、
ゆっくりゆっくり一歩一歩踏み出した。時折襲ってくる激しい痛みや、
自在に地を駆け跳んでいた体が赤子のように自由が利かなくなっていることへの焦燥と屈辱感、
情けなさに何度も心が折れてしまいそうになったが、牧師の暖かく見守る目や、
彼女の優しい励まし――時々、叱咤――にその都度奮い立たされた。
そうして挫けず地道に続けている内、壁に手をつかなくとも、誰の補助を受けなくとも、
極めて頼りなくはあるが己の二足で数歩歩めるようになった。その時の二人といったら、
まるで自分の事のような喜びようで、彼女はぐすぐすと感極まった様子で涙を滲ませ、
牧師からはやんやと拍手喝采を送られた。当の俺は、それにどう応えたらいいか分からなくて、
何ともいえない表情をしていたかもしれない。
- 25 :
- 思えば誰かから何の皮肉も嫌味も畏怖も無い称賛を受けたことなんて初めてだった。
今まで俺が成し遂げた事なんて泥やら血やら灰やらに汚れたものばかりで、
それに送られる賛辞なんて悪意や恐れにまみれていて当然かもしれない。
だから、何の混じりけも無く純粋に、それも普通の者なら出来て当然の事なのに褒められて、
暗闇に慣れた目に唐突に陽の光を浴びせかけられたモグリューみたいに驚き竦んでいる自分がいた。
〈本当に、本当におめでとう……! よく頑張ったね〉
ふらつく俺の手を取って支え、彼女は微笑みかけた。細めた目からぽろぽろと涙が零れた。
”あ、ああ……”
何だか胸の中がこそばゆいけれど、やり遂げたのはとても小さな一歩だけれど、
決して悪くない感覚だった。
何もかも失った気でいた俺が、初めて手にした小さくてもかけがえのない栄光。第一歩だった。
〈明日からは少しずつ歩ける距離を増やしていきましょう。それで、十分に歩けるようになったら、
村の中を案内がてら一緒にお散歩しましょ。後それから、村やここに住む子達を紹介するわ。
今まで身体に障るといけないと思って面会謝絶にしていたけれど、みんなあなたの事が気になって、
会えるのを楽しみにしているの〉
- 26 :
- とりあえずここまで
また金、土くらいに続き投下する
- 27 :
- 保守
- 28 :
- 一からのSSじゃあ、久しぶりに感動した!
- 29 :
- GJです
- 30 :
- 保守
- 31 :
- 保守
- 32 :
-
保守
- 33 :
- 朝方ぐらいまでには投下できるようにする
- 34 :
- 歩行訓練はその後も順調に進み、足取りも随分と安定して歩めるようになっていた。
そんなある日の午前中、彼女が何だかご機嫌な様子で部屋へとひょっこり顔を覗かせて、
〈おはよう、外は雲ひとつ無い良い天気ですよ! 前にした約束覚えてる?
あなたの足取りも大分しっかりしてきましたし、今日は村を一緒にお散歩しましょ〉
村を案内がてら一緒に散歩をしようと俺を手招いた。
そういえばそんな約束をしていたと思い返し、”ああ”と俺は頷いてまだ寝起きで
気だるい体を奮い起こして、誘われるまま彼女の待つ部屋の外まで出て行った。
俺が出てくるのを見ると、彼女は後ろ手に隠していた編み籠をいそいそと取り出して見せた。
”なんだ?”
〈今日のために用意したお弁当。中身は、いつもとあまり代わり映えしないけれど……
お日様の下で食べればきっといつもより美味しく感じるはずだわ〉
怪訝に籠の中身を尋ねる俺に、彼女は今日の為に用意した弁当だと微笑んだ。
”なるほど。悪くないな”
〈ふふ、でしょ?〉
ところどころギシギシいう古ぼけた木製の廊下を彼女の少し後ろからついて渡り切ると、
少しばかり広まった空間へと出た。整然と一方向に向かって並んだ長椅子や、
質素ながらあちこちに施されている厳かで独特な雰囲気の装飾からして、
ここが所謂、神々というものを祀る聖堂や礼拝堂といった類の場所なのだろうと判断した。
- 35 :
- 今までまるで縁の無かった光景に、物珍しくて俺はついついきょろきょろと礼拝堂を見回していた。
特に目に付いたのが、ずらりと整列する長椅子達が一斉に正面を向けている最奥、
窓に嵌め込まれた色とりどりのガラスで形作られる絵画――ステンドグラスというのか――だった。
大きな三角形の中心に巨大な円、底辺側の角の両内側に二つの小さな円があり、
左下の円の中には四肢と一対の大きな翼をもつ煌びやかな真珠色をした二足の竜。
――何分、神など信じる性質ではなかったし、懐疑的な目で見ていたせいもあるかもしれないが、
その一つの澱みも許さず磨き抜かれたような流麗な姿は、過ぎた潔癖さと冷酷な印象を抱かせた――
右下の円には屈強な四肢と背に大きな扇状のヒレがある暗い紺色をした四足竜、
――その如何なるものも弾き返してしまえそうな力強い姿は、あまりに無機質で冷淡にも見えた――
そして、中心の最も大きな円には何とも名状し難い、純白のしなやかな体躯に、
後光かはたまた身体の一部か金色の輪を背負った、”何か”が描かれていた。
その”何か”は二頭の竜の特徴を掛け合わせたような、それでいて竜とも獣とも判断しかねる姿だが、
全体のシルエットとしてはメブキジカやギャロップのような蹄のある四足獣に近いだろうか。
こちらを荘厳な面持ちで見下ろす様は、どこか傲慢で独善的に思えた。
〈あのステンドグラスに描かれているのは、この世界を創り出した神様とその御使い様だそうです。
左の円に御座すのが空間を司るというパルキア様。右の円に御座すのが時間を司るというディアルガ様。
そして、中心の一番大きい円に御座すのが、その御二柱を産み出しこの世界を創り出したという、
全知全能のもの、万物の父であり母であるもの、創造神アルセウス様――〉
?々とステンドグラスを見つめる俺に、横から彼女が描かれている者達の意味を教えてくれた。
- 36 :
- ”ふうむ……”
彼女の説明に耳を傾けつつも、俺はいまだにその全体像に対して何となく収まりの悪さというか
何かが欠如しているような違和感がして、ステンドグラスを眺め続けていた。
〈あの、どうかしましたか?〉
”いや、何というのだろうな、ここに描かれているものには何かが足りないような気がするのさ。
底辺の角二つにはその御使いとかいう者達が描かれているのに、頂角にだけ何も無いというのは
どうにもバランスが悪い気がしてな。あの頂角の部分だけ妙に隙間があるというか。
中心の円も不自然に頂角側がもう一つ円が入り込みそうな具合に欠けている”
心配そうに俺の顔を覗きこむ彼女に、俺はステンドグラスに抱いている違和感について話した。
〈やっぱり気になります? 牧師様に聞いたのですが、あの位置には本来、
ディアルガ様、パルキア様、御二柱と同時期に産み出されたとされる、影または反物質を司り、
この世の裏側から時空を安定させているといわれるギラティナ様という御使いの御姿が描かれ、
大昔はパルキア様やディアルガ様と変わらないぐらいに厚く信仰されていたそうです。
ですが、どこかの偉い誰かがいつからか、私達この世に生きる者達は本来は命尽きない不死の身として
アルセウス様に創造された所を、ギラティナ様に死という概念を植え付けられてしまい
定命となってしまったんだーだなんて唱え出して、この世の裏側に潜んでいるのは、
そうして亡くなった方々の魂を引きずり込んで喰らうためだー、神を裏切って逃げ込んだんだー、
だなんてあれやこれや散々に悪者扱いされて、瞬く間にその座を堕ろされてしまった――。
この話を聞いた時、何だか身勝手で酷い話だわって思ったの。神様達なんて目には見えないから、
本当にそんなことしたかなんて誰にも分からない筈なのに、急に勝手に悪者だと決め付けた上に、
手の平を返すみたいに態度を変えちゃって……〉
- 37 :
- 〈それに私達がいつか死ぬ事を定めたというのがもしも本当だとしても、
それは仕方の無いことだったんじゃないかなって思うの。だって、新しい命は常にどこかで
産まれ続けている筈なのに、誰もがいつまでもそのままでいたら、世界の広さだって限りは
あるはずだからいつの日かぎゅうぎゅうになってパンクしちゃうわ。
今日のお弁当だって本当はもっと色々一杯詰め込んできたかったけれど籠には限界があるし、
食べるかして減らさないといつか駄目になって、別の新しいものも入れられないでしょ。
いつか終わりがあるって分かるからもっと今を大事に過ごしたくなる。もっと誰かを大切にしたくなる。
これは牧師様の受け売りですけれどね。……あっ、私ったら、ごめんなさい、ついつい長話を〉
”いや、構わない。そのギラティナというのは一体どんな姿を?”
〈はい、ギラティナ様に関する資料はあまり残されていなくてはっきりとしないらしいのですが、
身体の色は淡くぼんやりと輝く白金色で、背から何本もの影の触手を生やした長虫のような、
あるいは三対の足と一対の影の翼をもつ重厚堂々とした竜の姿で描かれていたそうです。
牧師様曰く、他の御二柱よりも何だかおどろおどろしく描かれていて一見怖そうだけれど、
世界をずっと見守っているという話の方が自分は好きだし事実と仮定するならば、
その姿を怖がって目を背けずにじっくり顔をよく見たら、案外優しい眼をしているんじゃあないかなぁ、
ですって。私もそっちの方が素敵だと思います――って、いけないいけない、
このままじゃお散歩できる時間がどんどん減っちゃいます。さあ、早く外に行きましょ〉
早く外に行こうと促す彼女に頷いて外へと向かうすがら、俺はもう一度ステンドグラスを一瞥して、
あそこで踏ん反り返っている者達よりも、そのギラティナとかいう者の方が幾らか共感できそうだと思った。
- 38 :
- 保守
- 39 :
- 明日明後日にでも続き書くよ
- 40 :
- 保守
- 41 :
- GJです
- 42 :
- たまには上げましょう
- 43 :
- 保守
- 44 :
- 保守
- 45 :
- 遅れてごめん、明日の今くらいには投下するよ
- 46 :
- 無理せずに
保守
- 47 :
- たまに上げないと沈むな…
- 48 :
- 保守
- 49 :
- 沈むことの何が問題なのか
- 50 :
- 別にスレが下に沈んでいてもレスさえあればdat落ちはしないからsageでいい
- 51 :
- いざ正面扉を押し開けて差し込んできた日の光に、思わず俺は後ずさってしまった。
窓越しではなく直接全身に浴びる太陽の光は随分と久しぶりで何だか痛烈に感じられた。
日差しに怯んでしまうなんて本当に悪魔か何かみたいだ、やり場の無い苦笑が漏れた。
〈ほらほら、何やってるんですか。早く行きましょ〉
”む……”
彼女はもたつく俺の手を取り、くいと外へと引っ張り出した。目映い光が全身を包み、
穏やかで清涼な空気が頬を撫でた。目蓋をしぱしぱさせている内に徐々に目は光に慣れていき、
古ぼけた石畳の細い道とその両脇に広がる素朴ながら手入れされた芝生の庭が映った。
その庭できゃいきゃいと賑やかにボールを追い掛け回している数人と数匹の子ども達の姿を見付けた。
子ども達もすぐに俺と彼女に気付き、立ち止まって顔を見合わせ……その後は例えるならば、
とある一人の少年が美味しそうな焼き立てのポップコーンが入ったカップを無防備に抱え、
腹を空かせたマメパト達が屯する公園にうっかり足を踏み入れてしまった、そんな状況を想像してくれ。
好奇心に目を輝かせた彼らの波に押し寄せられ、瞬く間に俺は取り囲まれてしまっていた。
あんなに素早く包囲されたのは、鉄の結束と外殻を誇る脅威の軍隊蟻アイアント達と戦って以来だ。
俺はその勢いにただただ気圧され、輪の中心でどうしていいかもわからず唖然と佇んでいた。
- 52 :
- ――牧師や村の者達、子ども達も彼女の事を”シスター”ではなくちゃんと本当の名前、
あるいはそれに因んだ愛称で実際のところは呼んでいたが、前にも言った通り今の俺には
彼女の名を口にするような資格は無い。だから、仮にシスターとしておく。
すげー、ホントにシスターとそっくりだ! でも、シスターちゃんより、まっ黄色だし、
ちょっと目付きもツンツンね。この子、撫でても大丈夫かな、噛まないかな?
そんな風に人間の子達は俺を見下ろしてわいわいとはしゃぎ声を降り注がせ、
おにいちゃん、おケガはもうだいじょーぶ? なーなー、にぃちゃんどっからきたの?
おでかけいいなー、どこいくの? ポケモンの子達は俺の周りに詰め寄って、
質問の集中砲火を浴びせかけてきた。
上と下からの激しい波状攻撃に堪らず、俺はアーボに見込まれたニョロモのように
ぎこちない動きで彼女の方に振り向いて視線で助けを求めた。彼女は仕方なさそうに微笑んで、
ゆっくりと包囲網に割って入ってきた。
〈はいはい、みんな、ごめんね。お兄ちゃんはね、ただ遊びでお出かけする訳じゃあなくて、
まだ歩く練習の最中なの。紹介はお夕飯の時にでもちゃんとするから、今はジャマしちゃダメよ〉
彼女に優しく窘められ、ちぇっとポケモンの子達は少しぶーたれながらも俺から離れた。
人間の子ども達も彼女の言葉が直接伝わるわけはないが、意図を何となく察して渋々道を開けた。
また後でねー、と子ども達の見送る声を背に受けながら、俺は一時の休戦協定に安堵の息を漏らし、
だが、いずれ直ぐに迫り来る夕飯時という名の開戦合図を思って一匹身震いした。
- 53 :
- 〈びっくりしちゃいましたか?〉
ああ、と半ば嘆くようなへとへとの返事をして、俺は首を振るった。
〈一人一人、一匹一匹はとってもいい子達なんですよ。でも一度、大勢集まっちゃうと、
その元気さは掛け算みたいに増しちゃって、もう大変〉
ふふ、と彼女は笑って言った。
いつもあの集団に対処出来ているのかと思うと、俺には何だか彼女が歴戦の勇士みたいに映った。
〈子ども達にも言った通り、あなたの事は夕飯時にでもゆっくり落ち着いて紹介するわ。
その時は、あなたももうちょっと笑顔で、愛想よくお願いしますね〉
いきなりの難題に俺は思わず”なに?”と顔を顰めた。その逆の相手を挑発、威圧する方法なら部隊の
悪たれ共との生活で十二分に学ばされ染み付いていたが、愛想を振りまくなんてとても無い経験だ。
〈はい、その怖いお顔。今、私の前では別に構いませんけどみんなの前では絶対に止めてくださいね〉
ぴしっ、と指差して彼女はびしりと指摘した。
”と言われてもだな……”
〈つべこべ言わない、皆に怖がられちゃったら嫌でしょ? いつもムスッとしていたら、素敵なお顔も台無しです。
何事もやってみなければわからない、と言うわけで今から練習、ほら、ニコーって〉
後へと続けと言わんばかりに、彼女は微笑んで見せた。
仕方なしに俺はぎくしゃくと自分なりに笑顔を作ったみた。それを見た彼女は一瞬顔を青ざめさせ、
見てはいけないものを見たかのように顔を逸らした。
〈あ、あの……その……これも、歩くのと一緒に少しずつ練習しましょうか。焦らず、少しずつ、ね?〉
”…………”
あの時の俺が浮かべた笑顔のつもりだった別の何かが一体どんな惨状だったのか自分では確認の
しようがないが、彼女の優しい態度がその時は何だか逆に心に突き刺さった。
- 54 :
- 保守
- 55 :
- 明日明後日にでも続き書くよ
- 56 :
- GJです
- 57 :
- 保守
- 58 :
- 新たに課せられてしまった課題に四苦八苦励みつつ、俺は彼女の後に付いて村を見て回った。
村には特にめぼしい物も無く、素朴な造りのこじんまりした家々が点々と並び、
その隙間を埋めるみたいに野菜畑や色とりどりの木の実が生る小さな木立が広がっていた。
だが、寂れた侘しい寒村というような悪印象は受けず、何と言うかまるで絵画の世界から
そっくりそのまま抜き出してきたかのような、時代に取り残されてしまったと言うよりも、
自らの意思でゆっくり歩んで古き良きものを保っている、そんな純朴で牧歌的な温かみを感じた。
時折道を行く人や、農作業に精を出している人、人々に随伴するポケモン達も皆、
俺と彼女に気付くと気さくで朗らかに声をかけたり手を振ってくれた。
彼女は馴れ親しんだ様子でにこやかに応じつつ、練習の成果を試す良い機会だと彼らに愛想よく
挨拶を返してみるようにそっと俺に促した。俺の何だか不慣れでぎくしゃくとしているであろう笑顔に、
彼らは何だか少しだけ不思議そうな顔をしつつも優しく受け入れてくれているようだった。
- 59 :
- 〈まだまだぎこちないけれど、やればできるじゃないですか。皆、あなたを気に入ってくれたみたい。
あの頑固の塊みたいなドテッコツお爺さんが誰かを気に入るなんて滅多に無い事なんですよ、ふふ〉
出発した時よりも増えた荷物、村の人々やポケモン達が俺の回復祝いだと分けてくれた野菜や木の実
を愛おしそうに抱えながら、彼女は俺に微笑みかけた。
俺は疲れて凝り固まった感じる頬を揉んでほぐしながら、素っ気無くも内心満更でも無い気で頷いた。
〈さあ、お散歩も笑顔で優しく対応の練習も目的地までもう少し、あとひと踏ん張りですよ〉
”了解だ。より励む”
頬の筋肉を一通りほぐし終え、ふう、と一息入れていつもの調子で俺は応じた。
〈それじゃあ堅いし重ーい。もっとふんわり柔らかくしないと子ども達が身構えちゃいます〉
そこにすかさず、まだ気を抜くには早いとばかりに彼女の指南が飛ぶ。
”むう……分かった、よ。えーと……頑張ろう、ね”
〈グッドです。じゃあ、次は――〉
まだまだ道は険しそうだ、俺は彼女に見咎められないところでそっと”やれやれ”と首を振るった。
- 60 :
- 一旦ここまで
また明日明後日位に投下するよ
- 61 :
- ピカチュウ「」 ←斬新なこと言わせろ
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/poverty/1334025362/l50
- 62 :
- 保守
- 63 :
- GJです
- 64 :
- 明日の今くらい、遅れても土曜の朝方までには投下する
- 65 :
- 保守
- 66 :
- ☆
- 67 :
- 〈はい、到着ですっ。ここ、私のお気に入りの場所なの〉
ゆるやかな山道の傾斜を登りきり、ようやく目的地に着いたのか彼女は立ち止まって、
小躍りするようにくるりと軽快にこちらへ振り返った。俺はホッと息つき、その場にふらりと座り込む。
〈あ、あら、久しぶりの外出なのに、ちょっと無理させすぎちゃいました……?〉
俺の様子に気付き気遣う彼女に、平気だと首を振った。
部隊での訓練を思い返せばその程度どうということは無かった。確かにへとへとになりはしたが
意識も五体も失わずに無事だ。
〈ごめんなさい、ついつい私一匹で張り切って振り回しちゃったみたいで。
でも、どうしてもあなたをここまで案内したかったんです〉
”どうしてそんなに?”首を傾げる俺に、〈ほら、見て〉と彼女は指差す。
その方を見やると、ひらけた木々の隙間から村の全体像を見下すことができるようだった。
一望に収めた村は、木々の枝が丁度よく額縁のように景観を縁取っているのも相まって、
ますます絵画の一場面みたいに見えた。
〈ね、結構いい眺めだと思いませんか。なんだか絵に描いたみたいでしょ、ふふ〉
”ああ、悪くない”
俺と彼女は横に並んで座り、ぼんやりとその光景を一緒に眺めた。
〈私、ここから見える村の風景が一番好きなんです。何だか色々鬱憤が溜まってどうしようもなく
『うわー!』って気分になっちゃった時は、よくここにこの風景を見ながら風に当たりに来るの。
あ、今日は別にそんな気分というわけじゃないですよ。ただ、あなたにこの村をもうちょっと
好きになってもらえたらいいなーと思って。そして、出来るなら、このままずっと――〉
- 68 :
- 何か言い掛けて、彼女は思いとどまるように口を噤んだ。俺も聞き返すことはせず黙っていた。
一陣の風がさわさわと吹き抜け、彼女の耳と黒いフードが靡いた。
〈おっと、いけない、そろそろお弁当にしましょうか。いいかげんお腹空いちゃいましたよね。
今日の献立は色んな木の実を使ったサンドイッチですよ。えーと、これの中身は大人の辛さノワキの実、
あなたは辛いのがお好きでしたよね。それは、とっても甘ーいカイスの実、私も子ども達も大好きです。
こっちは、後味渋いシーヤの実、子ども達にはイマイチ不評ですけれど私は結構好きなんです。
何より美容に良いらしくて、食べた次の日は毛艶が違う……って、べ、別に普段から美容ばかり
気にしているわけじゃありませんからね? それからこっちは――〉
彼女がいそいそとお弁当を広げていく傍ら、俺は風がどこか遥か遠くから極微かに運んできた、
懐かしく忌まわしい臭い、燃え盛る炎、焼ける何か、灰の臭いを敏感に感じ取っていた。
部隊の者達は、スカー達は今も生き残り、小競り合いを続けさせられているのだろうか。
ふと頭を過ぎった。だが、そうだとしても、今の俺の身体の状態では部隊に戻る事は出来ない。
もし身体能力に問題が無かったとしたら、俺はまたあの中に戻りたいと思うのだろうか?
〈どうしました? もしかして食欲無いですか?〉
心配する彼女に俺はハッとして、頭に立ち込める懸念も振り払うように思い切り首を振るった。
”大丈夫だ、問題ない、よ。どれからがいいか迷っていただけだ”
〈そう、良かった〉
安心したように彼女は微笑んだ。
出来るなら、このままずっと――。儚い想いが交差した。
- 69 :
- 保守
- 70 :
- GJです
- 71 :
- 明日明後日にでも続き書く
- 72 :
- 保守
- 73 :
- 保守
- 74 :
- 投下は明日の夜、遅くなってもあまり深夜にならない内にするよ
- 75 :
- 日が少し傾きかけた頃、俺と彼女は教会へと帰り着いた。
〈いけない、ちょっと遅くなっちゃったわ〉
”俺に合わせたせいで、すまないな”
〈ううん、元はと言えば私があまり遠くまで連れ出しちゃったせいですもの。
大丈夫、偶の寝坊で大急ぎで用意するのは慣れてますから――自慢できることじゃないけれど……
時間までにパパッと仕上げちゃいます、お任せあれ!〉
はりきった様子で拳を握り尻尾と耳をピンと立てて見せる彼女の傍ら、何の事かと俺は首を傾げた。
〈何って、お夕飯に決まってるでしょ〉
”えっ! まさか、ここの食事はいつも君が作っていたのか?”
家事の手伝いをやっていると以前に聞いてはいたが、まさか料理まで賄っているとは知らず、
俺は驚いて聞き返す。今日の弁当だって、てっきり牧師――それもちょっと意外な気もするが――
が拵えた物だと思っていたのだ。
〈あら、言ってませんでしたっけ? とは言っても、ポケモンの子達の分だけですけれどね。
人間の子達と牧師様の分はいつもお手伝いに来てくれている村の女性が賄ってくれていますわ。
私も衛生面には十二分に気を使ってますが、悲しいかな私だって一応はネズミの端くれ、
もしも万が一があったら大変なので……〉
少ししょんぼりとして彼女は答えた。
なるほど、と俺は頷きながら、そういえばニューラやバリヤードがシェフをやっているレストランが
どこぞにあると風の噂程度に聞いたことがあるのをふと思い出した。スカーのツラを思い浮かべると、
奴が作ったものを食らうぐらいならその辺の雑草でも貪った方がマシなのではないかと思ってしまうが、
努力の方向しだいでポケモンであってもシェフが勤まるとは、戦うだけが俺達の能じゃない、か。
- 76 :
- 正面扉をくぐると、例のステンドグラスが聖堂の奥で夕日を背負い、より荘厳そうな面持ちで待ち構えていた。
〈じゃあ、私はお夕飯の仕度をしてきます。準備ができたら呼ぶから、あなたは部屋で待ってて。
その間、笑顔の復習はお忘れなく〉
”分かっているよ”と 苦笑い気味に応じて自室に戻ろうとしたところで、俺は反射的に足を止めた。
”そういえば、俺の部屋はどっちだったかな?”
聖堂から他の部屋に続くドアは幾つかあって、俺は出発の時にどこのドアから来たのか
すっかりと忘れてしまっていた。何分、初めて村の中を出歩いたその日まで俺は殆ど部屋に篭りきりで、
教会の内部すらろくに把握していなかった。俺が呼び止めると、彼女はうっかり失念していた様子で振り返った。
〈ここ、正面扉から見て左手、二箇所ある内の手前側のあの扉から、廊下を渡って一番奥が
あなたの部屋ですわ。その隣が私の部屋、更に隣が牧師様のお部屋となっているので、
何か困ったことがあったらすぐに訪ねてくださいね。左手、奥側の扉は子ども達の部屋に続いています。
そのお向かい、正面扉から右手に同じように二箇所、手前側の扉は食堂と台所に通じます。それから――〉
次は奥側の扉と言う所で、何か言いあぐねるように彼女は言葉を一瞬詰まらせた。
〈あの奥は、物置と祭儀等に使うお酒の貯蔵室となっています。ところで、あなたはお酒はお好きでしたっけ?〉
彼女の様子を少し訝しく思いながらも、”嗜む程度には”と俺は答えた。
〈あら。それじゃあどうしても必要な時はこっそりお分けするので言ってくださいな。
だから忍び込むような真似をしちゃダメですよー〉
”スカーの馬鹿じゃあるまいし、そんな心配はいらないよ”
そんな事を心配しての態度だったのかと俺は一匹勝手に納得して、やれやれと呆れて言った。
〈そうですね、ふふ。それじゃ、私は頑張ってお夕飯の用意をしてきますね〉
”ああ、楽しみにしている”俺は彼女の背を見送った。
- 77 :
- とりあえずここまで
金、土くらいにまた続き投下するよ
- 78 :
- 携帯版保管所が投稿サイトのSFファンタジー部門のランキングで3位にまで上がってるな
おめでとう、そしていつも管理お疲れ様です
- 79 :
- それは凄い!
作者さま、おめでとうございます!
- 80 :
- ランキング3位ですか!
すごいですね・・
思えば、ピカ生もかなり長い時間続いてますよね
これからも応援しています
- 81 :
- 前に見たときは4、5位くらいだったのに地道に上がっているなー
朝方ぐらいには投下する
- 82 :
- 夕飯のお呼びがかかるまでの間、一匹俺は自室のベッドに腰掛けてぼんやりと過ごした。
なるべく何も考えないように無意識に努めていたのはきっと、久々の外出の疲れもあったろうが、
無闇に頭を働かせる事で風が運んできたあの忌まわしい臭いと、伴う暗澹たる不安を
思い返してしまうことを恐れていたんだろう。
やがて、静まり返っていた部屋にコンコンとドアをノックする音が出し抜けに飛び込み、
空白に近くなっていた意識は風船を針でつつかれたみたいにびくりと慌てて飛び起きた。
夕飯の準備ができたとドアから顔を覗かせる彼女に、すぐに行くよと俺は平静に応えた。
彼女の後について食堂を訪れると、他の者達は既に席に着いて俺が来るのを待っているようだった。
集まっている面々は、牧師と見知らぬ若い女性――例のいつも教会の手伝いに来てくれているという
村の女性だろう――と、朝に庭で遊んでいた人間とポケモンの子ども達、それとゾロアークの姿もあった。
牧師は俺の姿に気付くと、皆に注目するように声をかけた。
『さあ、今日の主役の到着だよ。静養の為に紹介できるのが遅れてしまったけれど、
少し前からここで一緒に暮らしていた私達の新しい仲間だ。皆、仲良くしてやってくれ』
”ああ、その、どうもよろしく”
紹介にあずかり、俺は精一杯練習の成果を搾り出して挨拶した。
牧師はパチパチと笑顔で拍手し、他の面々もそれに続いた。
その中で唯一ゾロアークだけは不機嫌に腕を組んだまま俺に鋭い視線を向けていたが、
彼女にじろりと睨まれ、渋々周りに合わせて手を打ち鳴らしていた。
- 83 :
- あまり書き進められなかった、中途半端なところで途切れてすまんorz
- 84 :
- 高順位をとるのはいいけど
多く知られることで変な子がスレに来たりしたら嫌だな
- 85 :
- >>83
あまり無理しないで、自分のペースで進めてください
>>84
sageるしか無いですかね…
- 86 :
- 皆様ありがとうございます。
今更だが、URLのピカチュウのスペル間違えてたw
- 87 :
- あー、正しくはpikatyuじゃなくてpikachuか
言われるまで気づかなかったw
明日明後日にでも続き書きたいです
- 88 :
- GJです
書いてくれるだけでも嬉しいです
- 89 :
- 保守
- 90 :
- 全員席へと着き、食事が始まってしばらく経つと、右隣から『なーなー』と声をかけられた。
ぎくり、と俺は黙々と料理を口に運ぶ手を止めた。彼女のそれはそれはもう粋な計らいにより、
俺と彼女の席はポケモンの子達と同じ列のちょうど真ん中に配置されていた。
子どもと接する機会なんて皆無に近かった当時の俺には、
彼らは全く未知の生命体みたいに感じられた。傍から様子を窺っていても、次の瞬間には何を考え、
何を言い、何をしでかすのかまるで予想がつかない。初接触時に強烈な勢いで迫られたことも、
そんな印象を根強くさせていた。
ゆっくりと声の方へと振り向くと、頭でっかちの黄色いトカゲのような子ポケモンが
好奇心に輝く目で俺を見ていた。この後、一体どんな言葉が砲弾の如く飛び出してくるのか
まるで予想がつかなくて、俺はオクタン達――蛸墨のみならず、水流に怪光線、
機関銃のような威力のタネや岩、果てには炎まで口から吹き出す、手品師もびっくりの化け蛸だ――
に十字砲火を浴びせられる寸前のような嫌な汗が微かに滲んだ。
すぐさま席を立って床に伏せ、安全地帯に転がり込んでしまいたい衝動が沸き起こるが、
左隣からそっと促すように彼女に尻尾でつつかれ、仕方なく俺は腹を括った。
”なに、かな?”恐る恐る、でもそれを悟られぬように俺は問い返した。
『にーちゃんって、ここに来るまえはどこで暮らしてたんだー?』
- 91 :
- 初っ端からヘタに触れたら致命傷になりかねない地雷のような質問だ。
所謂、戦災孤児達の集まる子の場で、よもや軍の下で兵器をやっていたなんて言えよう筈も無い。
例え牧師やあの女性、人間の子達には俺達が何を喋っているかは直接は分からないだろうが、
ポケモンの子達が怯え出すのを見たら何かただならぬものを察してしまうだろう。
『おにいちゃんもセンソーのせいで逃げてきたの……?』
上手い言い逃れを思いつく前に、黄色いトカゲの子の隣に座る、
薄灰色のふさふさとした毛並みをしたネズミかウサギみたいな子が心配そうな目で尋ねてきた。
巻き込まれたどころか、こちらはそのセンソーの加担者側だ。
『そのケガもやっぱりワルい兵隊とそのコワいヘーキ達のせい?』
その更に隣の、ダルマに短い手足を生やしたみたいな姿の子が駄目押しの如く援護射撃を加えた。
重騎兵のような虫ポケモン、シュバルゴ達に密集陣形を組まれ崖際まで追い詰められたような気分だ。
答えを待ち望むその瞳の輝きが、鋭い槍の穂先のように見えた。
〈えっとね、このお兄ちゃんは怪我のショックで色んなことを忘れちゃっているの。ですよね?〉
見兼ねた様子で彼女から助け舟が出され、”あ、ああ。そうなんだよ。名前さえ思い出せない”
と俺はすかさず便乗した。
ええー! そうなんだ? 大変、かわいそう……。記憶そーしつってやつ?
苦し紛れの言い訳だが上手い具合に納得してくれたようで、彼らはがやがやと話し合う。
俺はひとまずホッと胸を撫で下ろした。
- 92 :
- 金、土くらいにまた続き投下するよ
- 93 :
- あげ
- 94 :
- GJです
- 95 :
- ageる必要は無い
- 96 :
- 保守
- 97 :
- 朝方くらいには投下する
- 98 :
- 安心も束の間、何か言いたげなな視線でこちらを睨むゾロアークに俺は気付いた。
『どしたの? そういや、シスターねーちゃんがこのケガしたにーちゃん慌ててつれてきた時、
ゾロアークにーちゃんも一緒だったんだろ? こんなひどいことしたヤツが誰か、見なかった?』
様子に気付いた黄色いトカゲの子が、急に顎下から殴り上げるようなまたしても手痛い質問を
ゾロアークへとぶつけた。思わぬ飛び火にゾロアークの毛並みがぎょっと逆立つ。
『み、見てない。何も知らない』
どぎまぎとゾロアークはしらばくれた。子ども達の前で、それも”ひどいことしたヤツ”と
非難された上で、よもやそれが自分の仕業とはとても言えなかったのだろう。
『ふーん、そっかー』と一応の理解を得、ゾロアークは安堵したようにそそくさと食事に戻った。
立場は違えど、同じように子どもにいいように追い詰められている姿に、
何だか俺はおかしくなってフッと笑いを零す。ゾロアークはばつが悪そうに俺を横目で睨んだ。
〈それより、みんな。あれこれいろいろ尋ねるよりもまずしなきゃいけないことがあるでしょ?
ちゃんと自己紹介しないと失礼よ〉
彼女に諭され、そうだったと子ども達は顔を見合わせた。
- 99 :
- 『忘れててごめーん。俺はズルッグ!』
はきはきと元気よく黄色いトカゲの子は名乗った。
『私、チラーミィ。よろしくね、おにいちゃん』
そう言って、薄灰色のネズミみたいな子はひと懐っこい笑顔を浮かべた。
『僕はダルマッカだよ。えと、仲良くしてね』
もじもじと恥ずかしそうにしてダルマみたいに丸っこい子は名前を言った。
改まって自己紹介され、俺は何だか照れくさくなってぽりぽりと頬を掻きながら
”よろしく”とそれに応じた。
――わんぱくでいたずらっ子のズルッグ。おしゃまでお世話好きのチラーミィ。
泣き虫だけど根は案外しっかり者のダルマッカ。
子ども達はみんな俺に良くしてくれていたが、中でもこの三匹が特に俺に懐いてくれていた。
時にイタズラやワガママに彼女と一緒にほとほと困らせられることもあったけれど……。
みんなみんな、良い子だった。本当に――。
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