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2012年08月創作発表6: 多ジャンルバトルロワイアル Part.14 (200)
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ゲームキャラ・バトルロワイアル Part4 (457)
多ジャンルバトルロワイアル Part.14
- 1 :2012/11/10 〜 最終レス :2012/11/27
- ここは様々な作品のキャラを使ってバトルロワイアルの企画をリレー小説で行おうというスレです。
みんなでワイワイSSをつないで楽しみましょう。一見さんも、SSを書いたことのない人も大歓迎。
初投下で空気が読めないかもしれない? SS自体あまり書いたことがなくて不安?
気にせずにどうぞ! 投下しなくちゃ始まりません。
キン肉マンのラーメンマン先生曰く「最後に勝負を決めるのは技(SSの質)ではない! 精神力だ! 心だ!」
リレー小説バトルロワイアル企画とは……
原作バトルロワイアル同様にルールなし、特定会場で最後の一人が生き残るまで続くという企画です。
キャラをみんなでリレーし、交わらせ、最後の一人になるまでリレーを行う、みんなで物語を作るスレです。
ここしか書けない、このキャラしか書けないという人も分かる範囲で書けるし、
次どうなるかを期待して次の人にバトンを渡すこともできます。
全ての作品を知りつくてしなければ参加できない企画ではないので、興味が沸いたらぜひ参加を!
詳細ルールに関してはこちらを
ttp://www44.atwiki.jp/tarowa/pages/13.html
〜予約、トリップについて〜
予約する際はトリップをつけてしたらばの予約スレに書き込んでおいてください。
トリップのつけかたは、名前欄に #の後に半角8文字以下、全角4文字以下の好きな言葉を打ち込んで書きこんで。
したらばに予約するのは、「他の人が書いてるから避けよう」という心理を利用し、予約だけして放置することで
企画を妨げる「予約荒らし」という行為を防ぐためです。予約期間は5日(120時間)ですが、
間に合わないからもうちょっと伸ばして!という報告があればさらに2日予約期間を追加(48時間)できます。
したらば(予約などいろいろな時にご利用を)
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/11918/
wiki(まとめサイトです)
http://www44.atwiki.jp/tarowa
- 2 :
- ★キャラクター能力制限★
・シャナ@灼眼のシャナ、C.C.@コードギアスは再生能力を落とす&急所(頭)をぶち抜かれたら即死。
・ルルーシュ・ランペルージ@コードギアスのギアス能力は、「R」「殺せ」など、 直接相手や自分の生死に関わる命令は無効。(「死ぬ気で頑張れ」などはあり)
・らき☆すたキャラのオタ知識、ラノベ知識は制限。
・仮面ライダー龍騎キャラのミラーワールドへの侵入禁止。
・ローゼンメイデンキャラのnのフィールドへの侵入は禁止。
・泉新一@寄生獣はミギー付き。
・シャナ@灼眼のシャナの封絶は禁止。
・雛見沢症候群@ひぐらしのなく頃には、まあ、空気読む方向で。
★支給品としてのアイテム制限
・KMF@コードギアスなどのロボ系は禁止。
・仮面ライダー龍騎キャラには、自分のカードデッキを支給品枠2つ分としてカウントして支給。それ以外のキャラに支給される場合は支給品1つの扱い。
・デスノート@DEATH NOTEは禁止。
・サタンサーベル@仮面ライダーBLACKはシャドームーンから没収&世紀王の呼び寄せ禁止。
・カードデッキの変身は10分で解除。
・カードデッキは変身すれば1時間、ファイナルベントを使えば更に1時間使用不可となる。
- 3 :
- 3/6【コードギアス 反逆のルルーシュ@アニメ】
● ルルーシュ・ランペルージ/○枢木スザク/○C.C./ ● ロロ・ランペルージ/ ● 篠崎咲世子/○ジェレミア・ゴットバルト
1/6【ひぐらしのなく頃に@ゲーム】
● 前原圭一/○竜宮レナ/ ● 園崎魅音/ ● 北条沙都子/ ● 園崎詩音/ ● 北条悟史
1/5【スクライド@アニメ】
● カズマ/ ● 劉鳳/ ● 由詑かなみ/○ストレイト・クーガー/ ● 橘あすか
1/5【らき☆すた@漫画】
● 泉こなた/○柊つかさ/ ● 柊かがみ/ ● 高良みゆき/ ● 岩崎みなみ
2/5【るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-@漫画】
● 緋村剣心/ ● 斎藤一/○志々雄真実/ ● 瀬田宗次郎/○雪代縁
2/4【仮面ライダー龍騎@実写】
○城戸真司/○北岡秀一/ ● 浅倉威/ ● 東條悟
0/4【ルパン三世@アニメ】
● ルパン三世/ ● 次元大介/ ● 石川五ェ門/ ● 銭形警部
1/4【ローゼンメイデン@アニメ】
● 真紅/ ● 水銀燈/○翠星石/ ● 蒼星石
1/3【ガン×ソード@アニメ】
○ヴァン/ ● レイ・ラングレン/ ● ミハエル・ギャレット
0/3【寄生獣@漫画】
● 泉新一/ ● 田村玲子/ ● 後藤
0/3【ゼロの使い魔@小説】
● ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール/ ● 平賀才人/ ● タバサ(シャルロット・エレーヌ・オルレアン)
0/3【バトルロワイアル@小説】
● 稲田瑞穂/ ● 千草貴子/ ● 三村信史
0/2【相棒@実写】
● 杉下右京/ ● 亀山薫
1/2【仮面ライダーBLACK@実写】
● 南光太郎/○シャドームーン
1/2【真・女神転生if...@ゲーム】
● 男主人公/○狭間偉出夫
0/2【DEATH NOTE@漫画】
● 夜神月/ ● L
1/2【TRICK@実写】
● 山田奈緒子/○上田次郎
0/2【バトルロワイアル@漫画】
● 織田敏憲/ ● 桐山和雄
0/1【ヴィオラートのアトリエ@ゲーム】
● アイゼル・ワイマール
0/1【灼眼のシャナ@小説】
● シャナ
15/65
- 4 :
- スレ立て乙です
- 5 :
- >>1
乙です。
ここまで来てまとめを何度も読み返してるが、どのキャラも濃くていいね。
特にスクライド勢の男性陣はどれも熱い生き様だと思った。
かなみも上田先生のオプション兼マジキチ測定器としてキャラが立ってたし。
- 6 :
- >>1
スレ立て乙です
序盤から暴れてた浅倉や後藤が落ちるとなんかもう多ロワも終盤だなぁって感じるわ
- 7 :
- 浅倉は殺害数が少なかったのに関わらず
後藤と遜色ない強さを感じたなあ
- 8 :
- >>1
スレ立て乙です。
- 9 :
- スレ立て乙です
- 10 :
- >>1
スレ立て乙です
ヴァン、真司、上田教授、クーガー兄貴、ジェレミア卿、北岡先生、狭間と残った男の対主催のおっさん臭さがすごい
狭間が優男なだけじゃないか
- 11 :
- >>1
スレ立て乙です
クーガーにパラサイト同化ってヤベェな、元々アルター無しでも常夏が知覚できないのに
新一なみのスペック強化が付いたら影月にも勝てそうだ
- 12 :
- >>11
次の予約にクーガーは入っていない…
あとはわかるな
- 13 :
- それにしても影月の発光現象って北岡達と縁達にも感知されてるんじゃ?
- 14 :
- 主人公で残ってるのは真司とヴァンと上田の3人かー
主人公不在の作品もあったとはいえだいぶ減ってるなー
- 15 :
- ヒーローキャラ:ヴァン、真司、上田
ヒロインキャラ:つかさ、レナ、C.C.
ライバルキャラ:縁、スザク
大ボスキャラ:シャドームーン、志々雄、ハザマ
脇をしめるキャラ:クーガー、翠星石、ジェレミア、北岡
並べてみると残ったキャラのバランスは順当すぎるバランスだなぁ
女の子が少なめ成人男性多めってぐらいか
- 16 :
- 翠星石がヒロインではなく脇に入ってるのはツッコミを入れるべきなのか…?www
- 17 :
- 正直、C.C.、シャドームーン、上田以外は
ここまで生き残るとは思わなかった
- 18 :
- 真司って他のロワだと、だいたい中盤くらいで死ぬからなぁ…
ていうか、龍騎勢はマーダー二名だけ死んで対主催二名だけ生き残ってるんだね
- 19 :
- へ、平成ライダーだとまだ生き残ってるから(震え
- 20 :
- もし秋山が参加していたらマーダーになったかねー?
それにしてもルパン勢、相棒の全滅はショックだなー
ルパン達ならTVSPの如く華麗にロワを解決してくれる、
そう考えていた時期が私にもありました
- 21 :
- 次元もルパンも頑張ったし
五ェ門先生はアニ1の鬱憤を晴らすほど活躍したから満足
とっつぁんは・・・いつか放送越せるといいね
- 22 :
- >>16
翠星石はローゼン勢の全能力使えるから、強すぎてヒロイン張るにはちょっと……
- 23 :
- ルパンは間接的にクーガーの命を救ったからな
- 24 :
- それにしても上田先生のみならず、『疑惑の男』北岡先生や
『V.V.公認ボッチ皇』狭間や第二次被対主催包囲網トリオの
レナ・ヴァン・C.C.の5人がここまで生き残っているのは胸熱だな。
- 25 :
- スザク・北岡・狭間以外全員どっかで後藤か影月に接触してるんだよなぁ
みんないつ死んでもおかしくなかった
- 26 :
- 正直C.C.は原作で不死キャラってのもあってもっと早く落ちると思ってたわw
- 27 :
- ルルーシュが早期退場しなかったらそうなってたんじゃないかな。
あとハザマも蒼嶋が縁に負傷させられなかったら中ボスになってたと思う。
- 28 :
- そう言えばもう終盤になってるのに、C.C.はまだ自分が不死じゃなくなったって気付いてないんだよなw
それ気付いたらどう行動するんだろ
- 29 :
- 集計お疲れ様です。
多ジャンル 157話(+ 14) 15/65 (- 10) 23.1(- 15.4)
- 30 :
- 前スレ、一か月ちょっとで消化したんだな
- 31 :
- 一月で10人も逝ったのか
どうりで怒涛の展開と感じるわけだ
- 32 :
- >>31
二ヶ月だよ
それでも速いけど
- 33 :
- このロワに影響されて龍騎をまた視聴したんだが
ローゼンのnフィールドとミラーワールドを絡めたのは上手いと思った
ていうか、神崎兄妹とは別にミラーワールドって元からあるのな、あの作品
- 34 :
- >>28
翠星石の影月や後藤のパワー制限はギアスによるものだったけど
C.C.の不死もギアスで制限?うーん・・・C.C.だけ首輪による制限なんかね
あと未成年男子もそれなりに参加してたのに次々と脱落していったな
- 35 :
- 本当に怒涛の投下ラッシュだったよなぁ
マーダー四天王のうち三人がこの二ヶ月で落ちたとか信じられん
そして仮予約が本予約になったあああああああああああああ!!!!
- 36 :
- >>34
首輪で制限されてたんなら首輪外れたんだからC.C.もう死ななくね?
まぁそれはなさそうだからギアス+会場全体に何かしらの方法でっていう扱いになるのかしら
- 37 :
- しかしここでクーガー痛恨の一人予約はずれ
どっちも激戦の予感だしまた人を救うには兄貴スロウリィな予感がする・・・・・・w
- 38 :
- 後藤を倒してくれただけマシでしょ。
影月戦、鷹野戦後に後藤や桐山が残っていたらと思うとゾッとする。
それよりも作戦立案や考察ができるLの脱落が痛い。
- 39 :
- 上田さんが作戦立案、考察してくれるから大丈夫(震え声)
- 40 :
- 無理言うなwwwww
- 41 :
- 上田さんはぶっつり学者で日本技科大の教授で頭がいい上に多人数戦闘にも慣れているし女性関係には奥手だけど高身長の甘いマスクっていうモテる要素満載だからいざという時なんとかしてくれる
- 42 :
- HAHAHA、なんだ、こうやって特徴を書くとなんか最低系のラノベ主人公みたいじゃないか!
- 43 :
- なんとなくこれまで出たマーダーを挙げてみた。
シャドームーン、縁、スザク(洗脳)、志々雄(三村殺したので)
後藤、水銀燈(一応優勝狙い)、シャナ(実質マーダー)浅倉、桐山
田村玲子(一時期殆どマーダー)みなみ(ほぼ一瞬)、詩音、こなた、ロロ
宗次郎、レイ兄さん、東條、圭一、ミハエル
才人、織田様、城戸(初期のみライダー限定)、つかさ(初期のみギアス下)
参加者の3分の1を越えるマーダー率だった。
企画的に実にいい感じ。
- 44 :
- >>42
ただしフラグはたたない
- 45 :
- >>42
役にもたたない
- 46 :
- >>33
ミラーワールドとは別にミラクルワールドもあるからな
- 47 :
- >>46
あれは夢オチw
……とも言い切れないか
- 48 :
- ローゼンメイデンが再アニメ化決定だと!?
- 49 :
- あぁ 驚きだよ!
原作を軸にするのかな
- 50 :
- 城戸真司、翠星石、ヴァン、C.C.、上田次郎、シャドームーン
投下します。
- 51 :
-
- 52 :
- 不規則に煌めく原色のネオン。
汚物の掃き溜めとなった路地。
無計画に放棄された薄汚いビル。
醜い人間の街が、月の光に青ざめている。
シャドームーンは市街地を歩いていた。
生物の気配はない。
滅びた街に、足音だけが響く。
カシャン、カシャンと。無抵抗の空気が奴隷のように音を運ぶ。
兎顔の道化を始末してから、生き物が死に絶えたかのようだ。
キングストーンを強制的に召還したことによる疲労はほぼなくなっている。
位置を探ることはできないが、世紀王の力は盤石だ。
これがある限り、石はいずれ自らシャドームーンの手に収まることを望む。
それは、そう遠くのことではない。
シャドームーンに刃向かう人間共を抹Rる。獲物は向こうからやってくる。
シャドームーンが敵と認めた者たちが、愚かにも死に急いでいる。
戦いは近い。
王者は静かにその時を待つだけでいい。
強者の意思は、更なる強者によって踏みにじられる。
それが、いかなる奇跡にも覆すことのできない、この世の真理なのだから。
シャドームーンは凍りついた世界を歩き続ける。
カシャン。カシャン。カシャン。カシャン。カシャン。カシャン。
◆ ◇ ◆ ◇
- 53 :
-
- 54 :
- C
- 55 :
- 鞭のような苦しみに全身を引き裂かれそうだった。
腹の底が火を飲んだように熱くなっている。
焼かれた体の内側が、逃げ場を求めて爆発しそうだ。
両腕が抑えきれない衝動の引き受け先を求め震えている。
喚き散らす子供のように、何もかもぶちまけてしまいたい。
頭をかきむしり、嫌な記憶を元から削ぎ落としてしまいたい。
責めるように見下ろすもう一人の自分に、仕方なかったんだと許しを乞う。
全て、耐えるしかない。
また人が死んでしまった。
城戸真司は龍騎のデッキを両手で握りしめていた。
パスケース状のデッキにすがるように背中を曲げ、額を押し付ける。
ライダーに変身する力を持ちながら、仲間を助けられなかった。
Lを死なせてしまった。
あのとき真司を押しとどめたのがLの本意だったとしても。
その結果自分の身が危険にさらされることを、あの真司より何十倍も良い頭で理解していたとしても。
この状況がLの用意した最善のものだったとしても。
死にたかったはずがないではないか。
あのとき真司が迷わずライダーになっていれば。
どこにいるかもはっきりしないシャドームーンより目の前の後藤を優先していれば。
頭が良く、少し得体が知れない所はあったが、強い意志と正義を持っていた仲間を、失わずに済んだかも知れない。
真司の正義はまた破れてしまった。
車内では、真司の膝程しかないエプロンドレスの人形、翠星石が泣いている。
色の違う瞳から止めどなく涙を流し、動くことのない姉妹の体を抱き抱えている。
失ったものへの嘆きは消えそうもない。
黒い羽根と銀髪を持つ人形、水銀燈。翠星石の姉妹の数少ない生き残りさえ、真司は守ることができなかった。
欠けた蛇口から吹き出る空気のように乱れた悲鳴を、重苦しいエンジン音が隙間なく埋めていた。
真司は唇を噛みしめる。
助手席の男は、扉にもたれた形のまま動かない。
上田は無言のまま、遅い速度で車を操っていた。
誰も死なせない。誰も殺させない。誰も泣かせたりなんかしない。
炎の中で誓った正義は乾いた紙のように容易く燃え落ちた。
何度も何度も。事態は真司を嘲るかのように残酷な方へ転がっていく。
真司は無力だ。そして遅い。
だが。
それでもなお最速であろうとする男を、真司はもう知っている。
「……な、泣くのはここまでです……!」
- 56 :
- 支援
- 57 :
-
- 58 :
- 支援
- 59 :
- 支援
- 60 :
- 支援
- 61 :
- 目の端に残る涙を拭いながら翠星石が立ち上がった。
伏せていた顔を上げる。ルームミラー越しの上田が気遣うように様子を見ていた。
「あんまり泣いてると水銀燈や真紅たちにも笑われるです。
す、翠星石まで頼りねぇ奴だと思われるのはま、まっぴらごめんです……!」
「翠星石……」
泣きはらした目。震える声。強く握られた拳。
明らかに無理をしている。
「お、お前もいつまでぼさっとしてやがるですか! 翠星石たちにはやることがあるです!
めそめそ泣いてる暇なんかこれっぽっちもないんですよ!」
「いってぇ!? お、お前何も殴ることはないだろ!」
背中を叩いた翠星石の手はその大きさからは想像できないくらい痛かった。
「あんまりみっともない顔してるからお灸を据えてやったです! ちょっとはシャキっとしろです!」
フンと鼻を鳴らしそっぽをむく。
少しだけ間を置いて、つけ加えるように続けた。
「……そこの人間だって、翠星石たちを悲しませるために死んだんじゃねぇんです……」
「翠星石、お前……」
翠星石は無理をしている。
だがそれだけではない。真司には分かった。
無理をして、砕けそうな心を必死に押し殺し、力尽くで前に進もうとしている。
背中に残る痛みは翠星石の焼け付くような悲しみそのものだ。
ひりひりとした刺激がデッキを握る手に力を与える。
膝を抱えて泣き言を言うのは簡単だ。
仲間を失うことは悲しいに決まってる。
しかし、今求められているのは足を止めることではない。
そんなことのために、仲間は死んだわけではない。
そんなことのために、真司はライダーになったのではない。
真司が掴んだ『正義』は、そんなこととは真逆のものだ。
真司は、何度取りこぼそうと己の道を曲げない男の姿を思い出す。
嘆くのを止めて、翠星石は意思を押し通した。
エゴにも似た強い意思が人の身を変える力になったのだ。
- 62 :
- 支援
- 63 :
-
- 64 :
- 支援
- 65 :
- 支援
- 66 :
- 「……そうだな。翠星石の言う通りだ!
まだシャドームーンがいるんだ。いつまでも弱気になっていられる場合じゃないんだよな!」
「そうです! 翠星石がその気になったらあんな銀色オバケイチコロです!
目玉なんかきゅうりみたいにひっぺ返してやるです!」
「お、俺なんか、あいつの悪趣味な剣ぶんどってお箸にしてやるからな!」
「中々いいセンスです〜。お前も少しは翠星石のような教養が身に付いてきたとみえるです〜」
「あったりまえだろ! 怖いと思うから余計怖くなるんだ!
今度会ったら前みたいにはいかないんだからな!」
「翠星石たちが負けるわけないんです!
ぎたぎたにしてやるから覚悟しとけですよ!
だから……」
「だから?」
止まっていた時間を吹き飛ばすような決意を打ち切り、翠星石は瞳を伏せた。
「だから、水銀燈は安心して眠っていればいいですよ……」
お前のプライドは翠星石が取り返してやるです。
過ぎた日々を想う小さな声で、そっと続けた。
胸の前で、祈るように細い手を重ねる。
遠いどこかに語りかけるような、慈しみに満ちた姿だった。
「真紅たちと仲良くするんですよ……」
- 67 :
- 支援
- 68 :
-
- 69 :
- 支援
- 70 :
-
- 71 :
- 支援
- 72 :
- 目を閉じる翠星石を前に、真司は心に火が灯るのを感じた。
(何度失敗したって俺は俺なんだ。やれるとこまでやるしかない)
どうしたところで真司は全力でぶつかることしかできない。
右京の正義に適うかも分からない。でもやるしかない。
次に会ったとき、またクーガーに泣きつくようなことは死んでもゴメンだ。
少なくとも、今の真司には力がある。
誰かを守るために手にした戦う力だ。
悩んだところで真司の『正義』は、がむらしゃらに体を動かすことでしか手に入らない。
そのことを、真司はようやく思い出すことができた。
「ドゥオ!? なに、それは本当か……!?」
運転席から野太い声がした。
見ると、いつの間にか上田側の窓が下ろされている。
叩きつけるような風圧が威勢を良くし、真司たちをせき立てる。
どうやら、外の二人が何かを伝えようとしているらしい。
顔を出した上田が早口で話すが、荒々しい走行音にかき消されて真司の耳には届かない。
聞こえるのは上田の怪人めいた驚きの声だけで、これで良い想像をしろというのは無理な相談だった。
「ど、どうしたんだよ上田さん。血相変えちゃって。な、何かあったんですか!」
「い、いいか二人とも。冷静に、冷静に聞くんだぞ。
こういうとき、最も危険なのは焦って冷静な判断力を失うことだ……!」
「もったいぶらずに早く言いやがれです」
翠星石もしびれを切らしていたらしい。ばっさりと切り捨てた。
少し前から何となく分かっていたことだが、上田はその恵まれた風貌や体格に反して、どうやら、かなりの怖がりらしい。
それだけに、焦らすような形で出し惜しみされると真司にまで恐怖が伝わってしまう。
先を求めると、上田は今にも気を失いそうな声でこう言った。
「シャドームーンが、この近くまできている……!」
一度はやわらいだ空気が、鏡を軋ませたような狂った音を立てた。
◆ ◇ ◆ ◇
- 73 :
- 支援
- 74 :
-
- 75 :
- C
- 76 :
- 支援
- 77 :
- 「確かなのか、ヴァン?」
「ああ……? こいつがそう言うんだから、そうなんだろうよ」
「機械と話ができるとはな。知らなかったぞ」
「そんなんじゃねぇ。ただ、他に説明がつかないだろうが」
ひとまず、身を隠せる場所で対策を練ることになったらしい。
ビービーとうるさいバイクのハンドルを握りながら、ヴァンの目は眠たげなままだ。
あの銀色の野郎が近くにいる。
バイクがそう言ったわけではないが、いきなり耳障りな音で鳴き出したのだから、そういうことなのだろう。
確認のため聞くと、鳴き声は少し聞きやすいものに変わった。
このバイクは元々奴の物だったというし、だったら分かることもあるのだろう。
「あちらは大分盛り上がっていたようだが、弔い合戦、ということになるのかな……?」
同乗する女がヴァンの背中にささやいた。服が黒い。
名前はさっき覚えた。忘れたわけではない。今すぐには出てこないだけだ。
あちらの騒ぎはヴァンも見ていた。結構なことだ。
やる気のある奴が多ければ、ヴァンの仕事もやりやすくなる。
「関係ねぇよ。あんたはあの銀色の奴とやろうってんだろ。俺は単なるその護衛だ」
「そうかな……? にしては、えらくやる気になっているじゃないか、ヴァン?」
「けっ……」
あのとき、ヴァンの見たイメージは一つではなかった。
親友との強制的な別れ。
怪しげな儀式。改造される体。
家族と思しき人間からの拒絶。
無くしたはずの心が、僅かに揺れる瞬間。
非道の限りを尽くす化け物が、確かに人間だったことを知るのはヴァンだけだ。
だから、どうということはない。
多少記憶を覗き見たくらいで、何かを分かった気になるつもりはない。
お互い様だろう。
邪魔をするなら倒すだけだ。バイクも返さなくてはならない。
何があろうと、ヴァンのすることは変わらない。変わらないのだが。
「ま、ちょっとばかし気にいらねぇのは確かだな……」
傾きざま、テンガロンハットに結ばれたリングが、苛立つようにチリンと鳴った。
◆ ◇ ◆ ◇
- 78 :
-
- 79 :
- そっか、縁だけじゃなくて影月とも……
- 80 :
- 支援
- 81 :
-
- 82 :
- 上田次郎は天才物理学者である。
神に愛されたとしか表現しようがない頭脳と、一流の武道家にも引けを取らない屈強な肉体を合わせ持つ。
当然外見も優れている。
美醜などささいなことだと考えているが、上田のそれがダビデ像のように完璧な均整を誇ることは、客観的事実として認めざるを得ないところだ。
さらに、それら類い希な才能に溺れることをよしとせず、日々己を磨くことにも余念がない。ストイックな精神はさながら修行者である。
そう。上田には数え上げれば十指に余る輝かしい才能がある。
若くして日本科学技術大学の教授として招かれたことなど、上田の才能を凡人にも分かりやすく証明する好例と言えるだろう。
にも関わらず、上田は決して驕らない。
上田の才能は、例えば物理学一つとっても、凡人ならその人格、人生を歪めてしまいかねない強大なものだ。
行き過ぎた力は時に危険とさえ言える。
事実、上田はなまじ才能があったせいで道を誤ったインチキ霊能力者を何人も見てきた。
自らの能力を愚かにも人を騙すことに使った哀れなペテン師たちは、
真実の徒である上田の追求をかわしきれるはずもなく、次々と醜い正体を晒していった。
もし彼らに、上田の半分、いや十分の一でも人を愛する心があったら。
そう思わずにはいられない。
上田にできるのは起きてしまった事件を完膚無きまでに解決することだけだ。
後には、いつも苦い気持ちが残る。
上田は悪を憎むが、同時に人の弱さを知っている。
いかに上田次郎といえど、すべての人間を救うことはできない。
神の如き才能とは、つまり神ではないということなのだ。
そのようなとき、上田は己の無力さを嘆くことを止められない。
そして、その度ごとに、上田は天才として生まれた者の決意を新たにするのだ。
せめて自分だけは、この才能を正しいことに使おう。
それが栄光と共に生まれてしまった者の務めなのだから。
この謙虚さ。
これこそが、上田を上田次郎たらしめている最も素晴らしい才能なのだ。
少なくとも、自分ではそう思っている。
さて。
そのように、人々の尊敬の視線を集めて止まない、
必要のない場面でさえ記さずにはいられない溢れるカリスマ性を持つ、天才上田次郎であるが。
状況は、その上田をもってしても、楽とは言い難いものだった。
「本当なのかよ! シャドームーンが近くにいるって!」
- 83 :
- 支援
- 84 :
-
- 85 :
- 支援
- 86 :
- そこまでにしとけよ上田w
- 87 :
- 真司が叫ぶ。
緊急の作戦会議は名もない小さな診療所で行われていた。
こういう場所には病院程ではないにせよ、一時的な遺体の安置所が設けられている。
Lの体は今そちらに移されている。口を開くことを止めた仲間が少しでも休めるように、上田が運んだのだ。
志を同じくした仲間との別れは上田の心にも爪痕のような痛みを残している。
Lという少年は、別れるには辛すぎる人物だった。
上田から見ても優秀だと断言できる頭脳と、何より強い正義感を持っていた。
加えて、上田には警察署で共に死線を潜った者としての奇妙な連帯感もある。
どことも知れない場所に放置することに上田はもちろんそれ以外の者も納得したわけではない。
水銀燈の体は鞄に安置しまだ車の中だ。だが彼の場合はそうもいかない。
何より、亡骸を連れ回すことを許さない過酷な現実があった。
シャドームーンという、上田の波乱に満ちた生涯でも最強の敵が。
「まぁ……間違いないだろうな。私たちの使っているバイクは元々奴の物だ。何らかの通信機能が備わっていても不思議じゃない」
「だったら迎え撃てばいいじゃないか! 迷ってる時間なんてないんだ!」
「ここにいる全員でか?」
真司の反論がブレーキを踏んだかのように止まる。
このC.C.とかいう女性のミステリアスな美しさに呑まれたわけでもあるまい。
上田には彼が答えを探すように目を泳がせている理由が分からなかった。
確かに敵は強大だが、ここにいる者は皆戦う理由を持っているように見える。
わざわざ士気を下げる理由はない。
現に上田も、先程から、どうしようもないくらい武者震いが止まらないのだ。
「ヴァンや変身できるお前はともかく、そこの人形はどうだ? 戦えるのか?」
「翠星石をバカにすんなです! 止められたって行くです!」
噛み付くようないい答えだ。彼女も満足したらしい。
上田もその意気には感じるものがある。
人形を名乗る彼女に関する物理学上の多くの問題は、今は詮索せずともよいだろう。
問題は消えた。そのはずが、C.C.は続いて妙なことを言った。
「では……『こいつ』はどうだ?」
その瞬間、理解しがたいことに、全員の目が上田を向いた。
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「まぁ……」
「ちょっと考えてしまうですね」
「な、何だ……何故皆して私を見る……?」
その視線と、意図が明瞭でない非文明的な言語の意味を察することができない。
天才故の孤独といったところか。
凡人のレベルに合わせるのも技量の内とはいえ、上田クラスになるとやはり限界がある。
いや、考えてみると、これは演説においても指折りの実力を持つ上田に、何かを期待しているのではないか。
出陣を前に、全員の心を強くまとめあげるような言葉を求めているということか。
間違いないだろう。ならば、断る理由はない。
次々と失われていく仲間。
人を人とも思わぬ殺戮者。
それらを未だ打開できずにいる上田自身。
物理学者として、それ以前に一人の人間として、現状に強い憤りを感じていることは、紛れもない事実なのだから。
「私は……」
「上田さんは無理しなくてもいいと思うな」
「な、何!? やはり君もそう思うか……!」
全人類の財産たる上田の頭脳を気遣った発言に、感動の余り頷いてしまった。
「シャドームーンの強さは皆分かってる。俺だって怖い。ライダーの力があるから、何とか逃げずにいられるんだ」
「お前がどうしようもないビビりだってことは皆分かってるです。ここは翠星石たちにどーんと任せておくです」
「まぁ……的になりやすいしな。こう、大きいと」
表現にはクセがあり内容にもかなりの誤解が含まれている。
だが、上田を、引いては日本物理学会の未来を案じる彼らの言葉は疑いようのないものだ。
ここは、彼らを信じ、潔く道を譲るのが、上に立つ者の務めではないだろうか。
「……まったく、お優しいことだな」
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