2012年09月アニキャラ総合145: 【ジョジョ】ゼロの奇妙な使い魔【召喚91人目】 (818) TOP カテ一覧 スレ一覧 2ch元 削除依頼
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【ジョジョ】ゼロの奇妙な使い魔【召喚91人目】


1 :2010/11/12 〜 最終レス :2012/10/28
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【iMona】http://imona.net/
     _      ここは「ゼロの使い魔」と「ジョジョの奇妙な冒険」のクロスSSスレよ。
    〃  `ヽ     他にも避難所にしか掲載されてないSSとかもあるから一度見てみなさい
    l lf小从} l /    投下中は空気読んで支援しなさいよ 荒らしはスルーだかんね
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/     職人さんは荒らし防止にトリップを付けてよね
  ((/} )犬({つ'      次スレは900か950を踏んだ人が立てること
   / '"/_jl〉` j      480KBを超えた場合も立てるのよ。 わかった?
   ヽ_/ィヘ_)〜′
【ジョジョ】ゼロの奇妙な使い魔【召喚90人目】
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1262539577/l50
●まとめサイト                               ,〜'´  ̄ヽ
http://www22.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1.html         ミハ^^ヽヽ(  | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
●避難所.                           ____. -' ヽル::::д)ζ <批判は避難所だ!君の意見を聞こうッ!
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9292/     =='、 ̄ニ|::... . . . . ...::::: :: ::〉:::.:ヽ     |_________________
●ジョジョの奇妙なAA集               ' ´   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`!:::::::::::.. :i
ttp://jojoaa.web.fc2.com/                         `y::::::. ::ト、
●ジョジョスレUPローダ                            〉::::::::. .::`ヽ
ttp://vblave.hp.infoseek.co.jp/                        ハ:::::::: ..:λ:i
●アニメAA保管庫 ゼロの使い魔ページ                /:::::::::: .:/::::i´
ttp://aa.tamanegi.org/anime/zero-tsukaima/
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*スレ運営について意見のある方は運営議論スレへどうぞ    . *
*http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9292/1184936505/ *
*******************************************************

2 :
1乙

3 :
最高に『>>1乙!』ってやつだアアアアア!

4 :
                ハ
   =``````````````{ }"'r
  ミ     ,rrrrrrr、  | | =      ∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧
  =゙    0「「「「「「「l0 | | =   <  次スレ立てた>>1は   >
   ミ   /_..ノilヽ._ヽ |.| ミ    <  全員で乙じゃッ! >
    ゞ__( lヾ・北・フl )_|.|゙     <  キイイイイーッ!!   >
   r'uuぅ lヨ C=う lヨ〃|」ヽ     ∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨
  /ト=l  ハ`= ''ハ (三)ヽ
 |l `ー| |  |` ゙̄|  |l 「| ノ l}

5 :
いちおつぅ!

6 :
>>1乙ッ!
ところで、サンタナ召喚したら普通に使い魔契約できるかね?

7 :
ハッピーうれピーよろピくねーといいながらコントラクト・サーヴァント

8 :
DIO復活でザワールドか

9 :
虚無の世界
か…俺得だな

10 :
ハッピー

11 :
うれピー

12 :
気が付いたらスレが換わってた

13 :
くっ、前スレのログ981までしか取得して無いや…982以降に何か投下なり動きなりあった?

14 :
>>13
ジャイロ召喚短編の投下があったよ
それで埋まって落ちた

15 :
>>14
おうふ…まとめ待ちか…。

16 :
反省する使い魔!  第十一話「アヌビス◇ビート」

時は既に夕方。夕日で照らされた城下町。
多くの人々がにぎわうなか、
夕日のように赤い綺麗な髪をしたキュルケと
赤とはまた対称的な青い髪をしたタバサが
城下町を歩いていた。いや、探索していた言ったほうが
この場合は正しいのかもしれない。
「………いないわ、どこに行ったのかしら」
「……………あの二人が乗ってきた馬は
まだ街に置いてあるからいるのは確実
もしも馬で学院に戻ろうとしたら見張らしてる
シルフィードが教えてくれる」
「そう……よね……、さっきの仕立て屋の話から
推測するとまだこの近くに居るはずだし………
もう、一体どこ行ったのよルイズたち…………」
キュルケは苛立ちと不安を顔に表しながら、
出店をやっている街人に聞き込みをしながら
ルイズと音石を追っていたが、
いつの間にか同じところをぐるぐる回っていることに
気付き現在に至る。
「………………」
タバサは何か言いたそうな目でキュルケを見ていたが
親友であるタバサの視線の意味をキュルケは
ちゃんと理解していた。
「タバサ、貴方が言いたいことはわかるわ
『学院に戻ってあの二人の帰りを持つのも1つの手』
って言いたいんでしょ?でもそれじゃだめなのよ……
一刻も早く彼に会って直接言わなきゃ私の気がすまないのよ
ごめんなさいタバサ、こんなことに貴方を付き合わせて……」
「別にいい」
「……ホントにありがとうタバサ」

17 :

【ガシャーーーーーンッ】

「「!?」」
突然、どこかのガラスが割れるような音が鳴り響いた。
いや、ガラスだけじゃない。ガラスの音に続いて
ガラガラっと木材が崩れ落ちるような音が二人の耳に入った。
「タ、タバサ。今の何!?」
キュルケとタバサは周囲を見渡した。
そして気付いたことがある。
見渡す限りどうやら自分たち以外、
さっきのガラスや木材の音に気付いている者はいないらしい。
つまり…………、
「こっち…………」
タバサが指差した先、それは二人の丁度背後にある
路地裏に入る入り組んだ道だった。
つまり、音の発信源は路地裏の先から鳴り響いたようだが
キュルケとタバサのいる位置で丁度音が
街の賑わいでかき消されてしまったのだろう。
「なにかあったのかしら?」
「……………」
キュルケは最初、ゴロツキとかの喧嘩かと推定したが
考えているうちにあることに気付いた。
「そういえば………この路地調べてなかったわね……」
キュルケの言葉にタバサもコクリと頷き
手に持っていた本を懐にしまった。
「嫌の予感がするわ………。タバサ、行ってみましょ!」
キュルケとタバサはそのまま路地裏に駆けて入っていった。
その先には恐ろしい敵がいるとも知らずに………。

18 :


そしてその音の発信源。夕焼けに照らされた路地裏。
発信源は音石が武器屋の出入り口の扉を突き破った音だった。
わざと突き破ったわけじゃない。
何気ない街巡りに突然現れた敵によって弾き飛ばされたのだ。
「いってぇぇ……、レッド・ホット・チリ・ペッパーで
咄嗟に防御してなかったら首が飛んでたぜ………」
「ひ、ひィィィ!?」
音石が吹っ飛ばされた勢いで一緒に吹っ飛ばされた店主は
頭を抱えながら震え上がっていた。
「ふっふっふっふ、惜しい……
やっぱりそう簡単にはいかないわね……
でもまあ、そうでなくちゃ面白くない……」
突き破った扉の奥の店の中から剣を持ったルイズが
不気味な笑みを浮かべながら近づいてきた。
「………ルイズじゃねぇな、どうなってやがる?」
「ひィィィッ!!なんてこった!!
よりによって『あの剣』を抜いちまうなんてっ!!
もうだめだァ……おしまいだァ………」
音石の後ろで震え上がっている店主が
まるでこの世の終わりのように絶望していた。


19 :
支援だ!支援するね

20 :
「おいじじィ!『あの剣』って言ったな!!
どうゆうことだ、説明しろ!!あの剣が原因なのか!?
あの剣は何だってんだっ!!?あれも魔法なのか!?」
音石はゆっくりと接近するルイズに警戒しながら
店主の胸倉を掴み上げ問いただした。
「ひィッ!?あ、あの剣は今朝入荷された代物で、
見ての通り美しい刀身が目立った値打ちモノなんですが
出荷先が言うにはなんでも道端に落ちてあったらしんですわ!
そ、それどころかその時、あの剣を拾った仕事仲間が
突然、その場所に居合わせた仲間連中に襲い掛かったそうなんです」
店主の説明に音石は眉を潜ませたが、
聞いていくうちにあることを理解した。
「剣を拾った瞬間襲い掛かったッ!?
つまりあの剣に操られたってことか!?
今のルイズみてぇによぉ!!」
「そ、そうなんです!!
で、でもその時は運よく仕事仲間が連れていた馬が驚いて、
その操られた仕事仲間の剣を偶然蹴り飛ばしたんですぜっ!!
そしたら操られていた仕事仲間も正気に戻って
事無きを得たそうなんですわ!!」
「なんでそんなやべぇ剣をこんな店に置いてんだッ!!?」
「厄介払いされたんですわ!!
入荷された時、あっしもその事を説明されて………
さ、最初は断ったんですぜ!?
『そんなあぶなっかしい剣をウチに置けるか!!』って……
で、でも出荷先の連中に………
『見た目は上等なんだ、うまく扱えれば高値で売れる』って
そそのかされて………ついつい受け取ってしまったんですわ!!」
「結局てめぇのせいでもあるんじゃねーかコラァッ!!?」
音石が店主の胸倉を掴む力がより一層強くなった。


21 :
姉ちゃん、支援って今さ

22 :
「う……く、くるじィ………勘弁してくだせぇ………
あ、あっしだって処分するつもりだったんです……
『思い返してみればこんなモノを
誰かに売っ払う自体が間違ってる』って………
あっしにだって……げほっ…商人としての誇りがありやす
客は騙しても、危険な目に遭わすことなんて絶対にしやしません!!
さっきだって、どう処分するか店奥で考えていたところを
あんた等が来て………そしたらあの貴族様が勝手に………
なにも……あっしにだけ全責任があるわけでもありませんぜ……」
「………チッ!」
忌々しいがコイツの言うとおりだ。
そう判断した音石は店主の胸倉を掴む手を解き
店主はその場で尻餅をついた。
「げほっ……げほっ……」
「おいオヤジ、最後にひとつだけ教えろ。
あの剣から手を離せば元にもどるんだな?」
「う……げほっ、へ、へい!少なくとも
あっしはそう聞いています………」
「……わかった、とっととどっかに避難してろ
ガラじゃねぇが、俺がどうにかしなくちゃいけねぇようだ」
音石の言葉に店主は安堵の息を吐き、
その場からすたこらさっさと走り去っていった。
(さて…と、あのおっさんが助けを呼んで
大勢人だかりが出来たり、この街の衛兵が来たりすると
いろいろめんどくせぇからな…………。
とっととルイズ助けてこの場からバイバイしたいんだが………)
「そろそろいいかしら?」
店主を見送った音石の背後から
ドスのきいたルイズの声が耳に入り込む。
(……いやな気分だ、『簡単にはいかない』。なぜかそう思っちまう)
ゆっくりと首を後ろに向けると5メートル程離れた位置で
店の扉の瓦礫の上に乗っている剣を持ったルイズが
自分を見下していた。


23 :
「ああ……、わざわざ待ってくれて………」
首だけを後ろにしていた音石は
ゆっくりと体も前に向けようとする………次の瞬間!!
「ありがとよっ!!!」
体を半分のところまでゆっくりと振り向かせていたところ
音石はそこから一気に素早くルイズのいる前方に向き直った。
しかしただ向き直ったわけじゃない!
体の回転の軸を利用し足元の瓦礫をルイズ目掛けて蹴り飛ばしたのだ!!
「っ!?小癪な真似をッ!!?」
蹴り飛ばしたことによって大量に飛散した瓦礫の山。
操られているルイズは予想外の攻撃に対抗手段もなく
手に持つ元凶である剣で体をガードした。
「もらったァッ!!」
ガードしたことによって隙が出来た瞬間を音石は見逃さず
すかさずレッド・ホット・チリ・ペッパーを発現し
ガードしているルイズの手に持つ剣を
力尽くで叩き落すつもりで手刀を振り下ろした。
「このタイミングならその剣での反撃もできねぇぜ!!」
「甘いわァッ!!」
「なにィッ!!?」
勝利を確信していた音石は驚きの声を上げた。
なんとルイズは身を低くして後ろにステップすることによって
レッド・ホット・チリ・ペッパーの攻撃を回避したのだ!
「ば、ばかなっ!?ありえねぇ!!
俺のレッド・ホット・チリ・ペッパーの攻撃をかわすなんて……」


24 :
音石は驚異的なスピードを誇る自分のスタンドの攻撃を
かわされたことによって驚きを隠せないでいた。
強力なスタンド使いならともかく、相手はあのルイズだ。
あんな温室育ちの子供に回避されるなんて普通では考えられない。
「お前がここぞって時に詰めが甘い奴で助かったぜ……」
「んだとぉ……!?」
身を低くしていた体勢を立て直し、
操られているルイズは醜悪な笑みを浮かべて自分を見ていた。
音石はそんなルイズを睨む。
「たしかに今の攻撃はオレを正確に捉えていた……
だがご親切にお前はオレに教えてくれていたんだよ……
『今から攻撃するぞ』ってなァッ!!!」
「………チッ!!なるほど。そういうわけか……」
音石は理解した。そして頭に数十秒前の自分の行動を回想する。
『もらったァッ!!』というあの掛け声。
あの発言は攻撃する前に発したため
それに反応されてしまったせいでレッド・ホット・チリ・ペッパーが
攻撃するよりもさきにあのルイズは回避行動に移すことが出来たのだ。
「今度はこっちの番だな、ハアァッ!!」
今度は操られているルイズが音石に飛び掛り
剣による連続斬り攻撃を仕掛けてきた。
(ルイズが小柄なだけあってちょいと素早いな……だが!!)
しかしその剣による攻撃もむなしく
レッド・ホット・チリ・ペッパーが全てをガードした。
しかもなんとそのガードというのが両腕の指一本だけという
並のスタンドとは桁外れな実力あってのものだった。
操られているルイズはその防御法に
肝を抜かれたのか眉を深くひそめ、音石と距離をとった。


25 :
「………驚いたな。承太郎のスタープラチナでさえ
両コブシを使ってガードしたというのに………
それを指でガードするとは、大したスタンドだ……」
その操られたルイズの言葉に今度は音石が眉をひそめた。
「承太郎………だと!?それにスタンドって………まさかお前!?」
「ふんっ、今更気づいたのか?
ああ、だがまあ、自己紹介もしてなかったな、くっくっく
そう!俺は冥界の神『アヌビス』のカードを暗示としているスタンド!!
よぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜くっ!!覚えておくんだなァッ!!」
ウッシャアッ!!っと雄叫びを上げ、
操られているルイズもといアヌビスが剣を横に薙ぎ払ってきたッ!
「ぬおぉッ!?」【ガキィンッ】
ルイズを操っている正体がスタンドだったということに
驚いた音石は反応が遅れてしまい、咄嗟に腕でガードしたものの
勢い良く弾き飛ばされてしまった。
「くそっ!」
このまま地面に倒れたりでもしたら確実に追撃してくる!
そこで音石はレッド・ホット・チリ・ペッパーの両腕を
おもいっきり地面に叩きつけうまいこと体勢を立て直した。
「しかもどうやら貴様も承太郎のことを知っているようだな。
そこらあたりには驚いたぜ、一体どういう因縁だこれは?」
「そんなもん俺が聞きたいな」
「ふん、まあそんなもんはどうでもいい
おれはより強い相手と戦ってさらなる高みを目指すだけだァ!!
うっしゃァッ!!!」
咆哮と共に操られているルイズ曰くアヌビスが
その手に持つ剣で勢い良く横に薙ぎ払ってきた!
しかしその時の音石にはフッと薄ら笑みが浮かび、
手に持つギターをビイィィィンっと鳴らした。
「てめぇなめてんじゃねーぞ!
そんなすっトロイ攻撃が何度も俺に通用すると思ってんのかァ〜?
この音石明さまによぉ〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
こんな薙ぎ払い、刀身を手刀でルイズの手から弾き飛ばしてやる!
そうすりゃあルイズも元に戻るだろ〜よ〜〜!
レッド・ホット・チリ・ペッパーの素早く強力な手刀が
アヌビスの刀身目掛けて振り下ろされた。
捕らえた!!そう音石は確信した。
だが音石は知らない。アヌビスの真の恐ろしさを………
真の凶暴さを彼はまだ知らないのだ!


26 :
もいっぱーつ支援

27 :
「なっ!!?」
音石は目を疑った。
さっき弾き飛ばされたとき、実は頭を打ったのではとも思った。
そう思ったほうが気が楽だからだ。
それほどまでに、自分の目に入った光景を受け入りたくないのだ。
薙ぎ払いのスピードが一気に上がったのだ!!!
「なぁにいいいいいィィィィィィッ!!!??」
「間抜けめっ!!
貴様の動きはもうほとんど『憶えた』わァ!!!
Rぇぇぇ!!!」
その瞬間、すべてがスローモーションに
動いているような錯覚を音石はその身に味わった。
(このタイミング…。だめだ、間に合わない!
なんてこった。こんな隠し玉を持っていたなんて……
くそったれが、俺の判断ミスだ。
もっと……慎重にやるべきだったんだ。
相手の能力もまだ完全にわかってもねぇのに……
ちくしょう、いてぇんだろーなァ…、
腹切られるのって…………………)
その瞬間、音石は死を覚悟した。
あーあ、あの世に行ったら
形兆にボゴボゴにされるだろーなー……
「ファイヤーボール!!」
「「!?」」【ドゴォォォンッ】
その時だ!
音石とアヌビス、二人の間に火球が突っ込んで
地面に当たって爆発した!
煙が立ち上がり、その中から音石とアヌビスが
それぞれ反対側の方向に、対峙した状態で
飛び出してきた。
「チッ、邪魔が入ったか…」
アヌビスのルイズの口からそんな言葉が漏れる。
音石は危うく死を迎えかけたことに冷や汗をかきながら
火球が飛び出した方向を見た。


28 :
「…………………………キュルケ?それにタバサまで……」
「……はァい、昨日ぶりねオトイシ」
「……………」
そう、入り組んだ路地裏の一角から現れたのは
杖を構えているキュルケとタバサだった。
「わけは……さっきそこですれ違った
武器屋の店主から聞いたわ……
ヴァリエールが操られているらしいじゃない」
「………正直、半信半疑だった。剣が人を操るなんて……
でもこの状況で確信に変わった」
キュルケの言葉にタバサが続けてしゃべる。
そんな二人をアヌビスに操られているルイズが睨む。
殺気の篭った形相。今のルイズの顔をうまく言い表すなら
これが適任だろう。
「あ〜ら、キュルケに………タバサじゃない。
奇遇ねぇ。それとも私を追ってきたの?
もしそうならこんな嬉しいことはないわ………。
わざわざ私に殺されに来てくれるなんてね!!」
アヌビスが宿主であるルイズの記憶から
キュルケとタバサに異様な威圧感を纏った声を投げ掛ける。
そしてそのまま剣を振り上げ、二人のほうへ駆け出した。
音石はアヌビスが自分からキュルケたちに
標的を変えたことを理解すると同時に咄嗟に叫んだ。
「ルイズの手から剣を離させるんだ!
そうすりゃあルイズは元に戻る!!」
音石が咄嗟に敵の情報を簡単に教えると
キュルケが不適に微笑んだ。
「魔法は既に完成してるわ!
ルイズ!聞こえてるかわからないけど
火傷したって文句言わないでよね!
できる限りは手加減してあげるから!
ファイヤー・ボール!!」

29 :

キュルケがアヌビスに杖を向けると
杖からバスケットボール並の火球が現れ
ルイズの剣目掛けて襲い掛かった。
それに続いてタバサもなにかを発動しようする………が!
「だめだキュルケ!そいつに同じ技は通用しねぇ!!」
「えっ!!?」
【ピクッ!】
音石の言葉にキュルケの口から疑問の声をあげ、
タバサはその声に反応し咄嗟に魔法の発動を止めた。
そして次にキュルケの口からは疑問から驚愕の声が出る!
「うっしゃあァッ!!!」【ぶぅわっ】
「嘘!?私のファイヤー・ボールが掻き消された!?」
アヌビスは、剣を大きく振り下ろすと
キュルケの放った火球をスイカ割りのように
真っ二つにし掻き消したのだ!
キュルケが驚いたのと同様に
タバサも音石もその光景に肝を冷やした。
(なんてスタンドだ。
さっき一回見ただけなのに
もうほとんど『憶えて』やがる!!)
音石がアヌビスの真の恐ろしさを実感するも
その間にアヌビスはキュルケの元に辿り着いていた。
「あっ……」
「Rぇぇッ!!!」


30 :
キュルケは自分のファイヤー・ボールが
あっさりと掻き消されたことの驚きの衝撃からか
猛スピードで迫りくるアヌビスが
もう自分の目の前まで接近してきていることを
認識するのがひどく遅れてしまっていた。
認識したときにはもう振り上げていた最中で
死の恐怖に対する悲鳴を上げる暇すらも失っていた。
だが幸運はまだ彼女を見放してはいなかった。
【ドンッ!】「えっ!?」
【シュンッ!】「チィッ!!」
アヌビスから空気を斬る音が鳴る。空振ったのだ!
横にいたタバサがキュルケの体に体当たりし
タバサ自身もその勢いで回避に成功したことによって!
「あ、ありがとうタバサ!」
「後で。今は距離を取らないと………」
「逃がさん!!」
「「!!?」」
突き飛ばしたことで地面に倒れこんでいる二人を
アヌビスが体勢を整えられる前に斬ってかかってきた!
(間に合わない………!)
タバサは魔法の詠唱を始める
しかし距離があまりにも近すぎる!
どんな凄腕のメイジだろうと間に合わない距離を
既にアヌビスは見切っていたのだ!!
「もらった!二人まとめて!!」
「させるかよッ!!」
「ぬぅッ!!?」
アヌビスは気づいていなかった。
いつの間にか音石も自分に接近していたことに。
レッド・ホット・チリ・ペッパーのラッシュが
アヌビス目掛けて襲い掛かる。

31 :
支援支援支援支援

32 :
「ほう、この小娘の体なのにも
関わらず本気で攻撃する気か?」
「情けねぇが、てめぇが手加減して
勝てる相手じゃないって実感したんでなァ!!
ルイズには悪いが全力でやってやる!!!」
「くっはっはっ!おもしろい!!
だが忘れたか!?貴様の攻撃は完全に『憶えて』いるんだぞ!!」
【ガンッガンッガンッギンガンッガンッ】
レッド・ホット・チリ・ペッパーの拳と
アヌビスの剣での攻防が炸裂する。
「・・・・すごい」
キュルケかタバサ、どちらの口から漏れたのかわからない
しかしスタンド同士の目にも留まらぬ攻防が
二人を呆然とさせた。

(くそ、やべえぞ。さらに『憶えて』やがる!
最初は俺のほうが攻めてたのに………、
徐々に防御に追いやられてるっ!!!)
【ガァッッンッ!!】「うおぉっ!!?」
とうとう、レッド・ホット・チリ・ペッパーの攻撃が
はじき返され、ボディがガラ空きの状態になってしまう。
「はっーーーーはっはっはっ、勝ったッ!!」
「いや、そいつはまだ速いんじゃねーのか?」
「!?」
「そらよ!!」【シュバババババッ!】
「なっ!?貴様いつの間にこれだけ無数のナイフを!!」
「てめぇがキュルケたちに気を取られてた間に
こっそり武器屋から拝借させてもらったぜっ!」


33 :
なんと音石はアヌビスの死角にナイフを隠し持っていたのだ。
アヌビスがナイフに驚き、反応が遅れたおかげで
すぐさまレッド・ホット・チリ・ペッパーの素早い動きで
無数のナイフをアヌビス目掛けて飛来させた。
「おのれ、くだらん小細工ぅ!!」【ガキィンガキガキィン】
アヌビスはナイフを剣であい程度防御し
サイドステップで見事にナイフを回避した。
すぐ傍で見ていたキュルケは驚愕した。
なんて事!これも通用しないなんて!!
「なるほどな。なんとなくわかってきたぜ。
お前の憶える仕組みが…………。」
「なにィ?」
「え!?」
「……………………」
音石の言葉にそれぞれが反応を示した。
一体どういうこと!?
キュルケの頭にそんな疑問が浮かび上がると
それに答えるかのように音石が解説を始めた。
「アヌビス。どうやらお前、
俺のスタンド攻撃を完全に『憶えて』対処しても、
『それとはまったく違う攻撃』には憶えるまで
対処が遅れるようだな。違うかァ、ええおい?」
「……………!?」
アヌビスを通して、ルイズの顔の眉が潜まる。


34 :
今必要なのは支援だ…

35 :
「お前は俺のレッド・ホット・チリ・ペッパーを
上回るスピードを持っているのにも関わらず
さっきのナイフをわざわざ横に避けてまで回避した。
レッド・ホット・チリ・ペッパーのスピードを
上回ってる状態なら、あのまま一気に
俺に斬りかかる事なんて簡単の事だろ?
だがお前は『避けた』。なぜだ?簡単だ。
俺のナイフの攻撃はお前が『憶えた攻撃』とはまったく違う
『憶えていない攻撃』だからだ。
互いに『剣』を持った戦士同士の戦いで
片方が突然途中で『槍』に持ち変えることによって、
今まで対剣による戦闘スタイルが変わるようにな………。
う〜ん、自分で言ったのになんだが………
ど〜もなんかこの例えいまいちだなァ〜……」
ビィィィィィィンっとギターの弦を指で弾く。
今、音石の顔には焦りが消えていた。
いや、消えただけじゃない!
その顔はむしろ勝利への確信!
余裕の笑みをその顔に浮かべていた!!
しかしそれと対照的に、
アヌビスを通してのルイズの顔は
音石の余裕に対しての怒りからなのか
形相と殺気がさらに濃くなっていた。
「確かに鋭いやつだ。褒めてやる。
だが今更気付いたところでもう遅い!!
貴様のスタンドもナイフも完璧に憶えたのだ!!
もう俺には通用しない!
絶っ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜対に負けんのだァ!!!
さらにそれだけじゃねぇ!
これから俺がやるとっておきのダメ押しに
貴様は絶望することになる!!」
するとアヌビスはルイズの懐から『なにか』を取り出し
空中に放り投げ、落ちてくるところをキャッチした。

36 :
そしてアヌビスの剣と、落ちてきた『モノ』……、
『杖』をクロスさせポーズをとった!!
「『ルイズの魔法』プラス『アヌビス神』
        二刀流!!!!!」
この行動に音石の余裕の笑みは消えた。
「操ってる宿主の能力も扱えるのか!?」
「その通り!!この小娘の魔法はどうやら
ちょいと特殊なようだが、扱えないことはない!!
俺は貴様を完璧に超越している!!!」
「………かかってきな」
「…………………何?」
「かかってきなって言ったんだぜアヌビス。
さっきからよぉ〜、ギャーギャーうるせぇんだよぉ〜
そんなに自信があるならさっさとかかってこいよ。
それともあれか?弱い奴ほど良く吠えるって奴か?
はっはっはっ、お似合いかもなァ〜。
他人操らなきゃなーんにもできねぇような
なまくら野郎にはよぉ〜〜………」
「……………………………」
音石の言葉にアヌビスは物凄い形相で黙り込んだ。
キュルケは音石の妙な自信が理解できなかった。
何か策だあるのだろうか?
そんなものがあの剣に通用するのか?
キュルケは不安に惑わされた。
彼女自身、自分の自慢の魔法がハエをつぶすかのように
あっさりと掻き消されたからであろう。
隣にいるタバサも押し黙った状態で
音石の考えを考えているようだ。
キュルケの不安が渦巻くなか、
音石のアヌビスの間の空間に爆発が起こった!!


37 :
(これはルイズの魔法!?いつも失敗してる爆発!!)
いつも授業で散々な目にあってきた
この失敗魔法が今これほどまでに
恐ろしいと思ったことはなかった。
(このままじゃオトイシは……
この爆発で舞い上がった煙にまぎれたあいつに!)
そう思った瞬間。キュルケが手に持つ杖に力が入った。
正直に言うと怖い。足がすくんで仕方がない。
アレほどまでに凶暴で凶悪な相手に自分に何ができるのか?
ありとあらゆる不安が彼女の中で渦巻いた。
でも助けなければ!まだ自分は彼に昨日の償いをしていない。
このまま彼とお別れするかもしれないなんて………
そんなの絶対に嫌だ!
気が付けば、キュルケのすくんでいた足は
いつの間にか立ち上がっていた。
そして彼女は、隣で自分を制止していた
友人タバサを振りほどき、煙の中に入っていった!

音石は余裕の表情をとっていたとは裏腹に
内心ではかなり焦っていた。
(やべぇな…、『アレ』さえ成功すれば勝算はあったが
ルイズの魔法を使える上に、爆発で視界を遮るとは
予想外だったぜぇ〜〜〜……。
だがもう覚悟を決めなくちゃいけねぇ……
ここが正念場だぜ。さあどうくる?後ろか?)
音石は後ずさりながら周囲を警戒していると
背中になにかがぶつかった。
目を後ろに向けて見ると、そこにあったのは建物の壁だった。
これ以上の後退はできないということを物語っていた。
しかしまさにこの時!
音石の脳裏に実に奇妙な発想の物語が出来上がった!

38 :

ギャァァァン!!ギャァァァァァァァァァァァァンッ!!!

(!………この音、彼の楽器の………)
煙の外にいるタバサの耳には
音石のギターの音が届く。
煙の外にいるタバサに聞こえたのだ。
当然この音は煙の中のキュルケやアヌビスにも届いている。
(これは…………位置を教えている?)

(後ろは壁だ。だがこれは追い詰められてるんじゃねぇ。
逆だ!後ろに壁があることによって
本来警戒するべき範囲が半分にも減らすことができた!!
きやがれアヌビス。てめぇをおびき寄せるための
『エサ』は撒いてやったぜ!!)
【……………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………
…………………………………………………………ザッ】
「そこか!!」
音が聞こえたのは音石の位置にして右側のほうだった。
しかしそこにいたのは………。
「ま、待ってオトイシ、わたしよ!」
煙が少し晴れてくる。
そこにいたのは間違いなくキュルケだった。


39 :
支援と思ったときには既に支援しているんだね

40 :
「てめぇ……、なんで煙の中に入ってきやがった!?」
「説教なら後でいくらでも聞かせてもらうわ!
でもあなたの役に立ちたいの!
わたしは昨日、あなたに失礼なことをしたわ。
あなたに言われるまで気付かなかった!
わたしはあなたの言う通り、
無意識のうちに男を暇つぶしの道具に扱っていた。
だから償いたいの!貴族として!一人の女として!!」
「……………お前」
その時キュルケは気付いた!
音石の前に影があったのだ。
しかしその影の上には誰も立っていない。
………………つまり!
「オトイシ、上よ!!」
「なにィ!?」
音石とキュルケはバッ!と上を見上げた。
そしてキュルケの言う通り、
奴は思いっきりジャンプしていた!
なにかを踏み台にしたのか、
アヌビスは上空7メートル程の高さで
落下する勢いで剣を振り下ろそうとしていた!!
「気付いたかァッ!!!だがもう遅い!!
貴様らに避ける暇はぬぅあァいッ!!!」
「いいえ!誰も避けたりはしないわ!!
逆よ!この場でアンタを迎え撃つ!
ルイズも助ける!オトイシも助ける!!
くらいなさい!『ファイヤー・ボール』!!!」
キュルケの手に持つ杖から
先程よりもさらに強大な火の玉が発射された!
「間抜けがッ!!忘れたか!!?
その魔法は完璧に『憶え』たのだっ!!
例え空中だろうと、俺には通用しない!!」
「ええ、誰もあんたに同じ技が通用するとは思ってないわ。
でもわたしが狙ったのはあんたじゃない!
私たちが今こうして背にしてるこの壁よ!!」
【ドグォッン!】
「な、なんだとぉ!!?」


41 :
キュルケの火球は壁に衝突し、
その時飛び散った壁の『残骸』がアヌビスに襲い掛かったのだ。
その衝撃で煙は一気に晴れ、アヌビスは攻撃を中断し
ガードしたものの、音石たちとは少しズレた位置に撃ち落された。

「今よオトイシ!あなたにどんな『策』があるのか私は知らない。
でも私は信じてる!あなたがルイズを救うことができる男だって!」
キュルケの言葉を合図に、音石は一気に駆け出した。
狙うルイズの手に持つ邪悪な剣、アヌビス神!!
「見直したぜぇ〜キュルケ。
まったくお前は……、俺には勿体ねぇほどのいい女だよぉ!!
いけェ!レッド・ホット・チリ・ペッパー!!!」
レッド・ホット・チリ・ペッパーが手刀を振り下ろす。
「なめるなァ!!『憶えて』いない壁の残骸ならまだしも、
完璧に『憶えた』貴様のスタンドには!
絶〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜対に負けんのだァッ!!」
怒りの雄叫びとともに、
アヌビスは剣を横に向けて防御体勢をとる。
(この手刀を受け止めて一気に反撃して切り刻んでやるっ!!)
「アヌビス、剣のお前に教えてやるぜ。
そういうのを世間様じゃあァ〜『墓穴を掘る』って言うんだよ。
それがてめぇの敗因よぉ〜〜。」
「『敗因』?『敗因』だとぉ〜〜〜〜〜!?」
「てめぇは俺のスタンドにしか警戒していない!
それがお前の敗因だぜ!そしてもうひとつ!
俺が武器屋からくすねてきたのがナイフだけだと思ったかァ〜〜?」
その時、アヌビスは宿主であるルイズの目を疑った。
なんと、音石の持つギターのカゲから剣が現れたのだ!
「な!?その剣は………」
「ルイズの記憶から知ってんだろぉ〜〜?
 実はギターを持ってると見せかけてずっと隠し持っていたんだよぉ
こいつを……インテリジェンスソード……」
「デルフリンガー様をよぉ!!」
音石の後に、デルフリンガーが続けて叫ぶ。
そしてそのまま一気に鞘から引き抜き、
左手のルーンを光らせ、音石はデルフリンガーを
力一杯振り上げた。

【キーーーーーー…………ン】

42 :

ルイズの手に持っていた凶剣が、宙を舞う。
「まさか……スタンドではなく、
本体が、この俺を弾き飛ばすとは………
なるほど。恐ろしいのは奴のスタンドではなく………
あの男そのものだったのか…………ぬかったわ……」
アヌビスの剣はそのまま地面に突き刺さった。

アヌビスの呪縛から解放され、
倒れこもうとしたルイズを音石が支えた。
体中あちこちを戦いの影響で擦りむいているが
どうやら気を失っているだけのようだ。
「キュルケ、悪いがルイズを見てやってくれ。タバサも」
キュルケとタバサはそれぞれ頷き、ルイズの元に駆け寄った。
手に持つデルフリンガーを地面に置き、
音石はアヌビスの元に向かった。
「おいアヌビス。
スタンドなんだから剣の状態でも話せんだろ?
てめぇに聞きてぇことがある」
音石はこの時、その剣の後ろにうっすらと
犬の頭をした体が人間の怪物が見えていた。
おそらくこれがアヌビス本来のビジョンなのだろう。


43 :
「……ふん、敗れてしまっては仕方がない。
しかし予想は付くぞ。どうやってこの世界に来たのか…。
貴様はそれが聞きたいんだろう?」
「……………何か知ってるのか?」
「生憎となにも知らんな。
承太郎に敗れ、ナイル河に沈み、絶望していた時
いつの間にかこの世界にいたんだ」
「ちっ、使えねぇな」
ペッ!と音石は地面に唾を吐き捨てた。
すると今度はアヌビスのほうから話しかけた。
「さあ、これで十分だろ?………やれ」
「ああン?」
「俺は貴様に敗れたのだ。もう未練はない
俺を貴様のスタンドで破壊しろ
最後に貴様のような強者と闘えてよかった。
さあ、破壊しろ。もともと俺はスタンドだ
死など存在せん。ただ無に還るだけよ………」
「……………わかった。レッド・ホット・チリ・ペッパー」
音石がスタンドを発現させる。
そして手で触れるのは危険と判断し、
剣を足で大きく蹴り上げる。
そして落ちてきたところにラッシュをぶち込んだ。
【バゴバゴバゴバゴバゴバゴバゴバッキーーンッ】





44 :
「……………………………あれ?
なんで俺まだ生きてんだ?」
「まだ刀身がちょっぴり残ってるからだろ?」
「ん?おお、ホントだ!!………………って
ちょっと待てぇぇぇぇぇぇッ!!!!??
なんでこんなちょぴっと残してんの!??
俺めっちゃかっこ良く腹くくってたのに
これじゃ台無しじゃねぇーーか!!」
「はァ?おまえ剣の分際で人様に
こんなシンドイ思いさせといて楽にRると思ってんのか?」
「え?ちょっと待て。まさかこの展開は……………」
「おらいくぞ…………、シューーーーーートォォォォッ!!!!」
「やっぱりいいィィィィィィィィィィィィ!!!?」
音石のレッド・ホット・チリ・ペッパーが
アヌビスをうまく破壊しないようなテクニカルな蹴りで
遥か彼方へと、蹴り飛ばしていった。

「キュルケ、タバサ。急いでここを離れようぜ
ややっこしいことが起こらないうちによぉ〜〜……」
音石がそういうと、デルフリンガーを拾い上げ鞘に納めた。
二人もその意見に賛成した。
「そうね、さすがにそろそろ野次馬が
湧いてくるかもしれないし、急いで離れましょう」
「………ついてきて、私の使い魔で脱出する」
タバサが口笛を吹くと、
街の空からタバサの使い魔、シルフィードが現れ
音石、ルイズ、キュルケ、タバサの4人を背負い
街から速やかに脱出した。
この時、竜に乗っての空の飛行に音石はちょっと興奮した。



45 :
ついでにアヌビスはというと…………、
【ヒューーーーーーーーン】
「ヒィィィィィィィィー、またこんな扱いかァーー!!
誰か今度こそ止めてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
あっ!屋根だ!!ラッキーッ。おっとだが落ち着け!
エジプトでの二の舞は御免だ、透過能力解除!!
おっけぇ!これでばっちしィィィィ!!」
【カーンッ】
「よぅし!屋根に当たったァ!!」
【スルスルスルスル】
「おお、屋根の斜面を滑る滑るぅ!!」
【ヒュー】
「おっほほーい。落ちる落ちる!」
【ボチャン】
「…………………………へ?」
【プーーーーンッ】
「お、おい。なんだこの桶の中の泥は?
なんでハエがこんなに集ってる?
はっ!ひょっとしてここって…………
ぎゃああああああああああああッ!!!!
よりによって牧場の屋根にぶつかって!
肥溜めに落ちちまったァァァ!!!うげぇ!!バッチィ!!!
ぬぅああ!!どんどん沈んでいくぅ!!
だ、だれかァーーーーー、助けてくれぇぇぇぇぇぇ!!
不潔だよーーーーーーーーーーーーーっ、うぷっ……………」

この肥溜めを肥料として撒き散らされた畑には
時々、変なうめき声が聞こえるという奇怪現象が起こったという……

46 :
支援

47 :
はっきり言ってアヌビス戦の話
書いてておもしろかったけど、すっごい疲れました……。
今回 !マークがいつもより多いんですが、
まあアヌビス戦ですから仕方ないんですよマジでwww
それとまとめサイトのほうなんですが
以前 第十話の文章に、名前と日付年月が一緒に入ってるのを
言ったと思いますが、十話後半あたりにまだあるんですよwww
できればだれか直しといていただけないでしょうか?お願いします!
それと今回音石が隠し持ったナイフを投げるシーンがありますが
このシーンはジョジョ一部でのジョナサン対ディオで
ジョナサンが最初に薔薇を使ったあのシーンを参考にしました。
それと最後にこれだけは言わせていただきます。
最新現行スレに一番最初にストーリー投稿しましたがかまいませんね!!

48 :
反省の人乙!

49 :
面白かった乙!

50 :
乙だった!
擬音表記が多すぎる気もしたけど…
ザ・ニュー音石はカッコイいね!

51 :
ふと思ったが、透過能力使えば肥溜めすり抜けて地面に埋まるんじゃなかろうか?
ただその場合は一生地面に出れることはないだろうけどw

52 :
反省の人乙!
DIO様の様に両手広げてナイフ投げてるの想像してたぜww

53 :
まとめ更新したけどこれで良いのかな?

54 :
君の投下に敬意を表する!!
露伴短編に出てたしいつか帰るんだろうけど長く続いて欲しいもんだ

55 :
投下乙です

56 :
まとめ更新乙です

57 :
露伴の短編は6年後位の話だっけか?

58 :
まとめの仕方がわからん・・・・・・
誰か反省する使い魔11話まとめておくれ

59 :
フゥゥーー……
初めて…………まとめを編集しちまったァ〜〜〜〜〜♪

60 :
まとめ乙。
褒美に、鉄塔の上で暮らす権利をくれてやろう。

61 :
まとめ乙だ
褒美にチープトリックを装備する権利を与えよう

62 :
>>59! おまえの命がけの編集ッ! ぼくは敬意を表するッ!

63 :
よし高級なスモークサーモンをくれてやろう

64 :
仮面の続きは…続きはまだか…
久しぶりに仮面のルイズ最初から通しで読んだら面白過ぎて睡眠時間がガオンガオン削られたわ
おかげで今日は頭にダメージ受けだDIO様状態だった

65 :
SBRで世界だし
DIO様需要やで

66 :
ジョジョってただのバトルじゃなくて人物同士の心理戦が特色だけど
ゼロ魔のキャラって基本的に力押しだよな
ワルドですら最後は偏在+ライトニングクラウドだーでごり押しするし

67 :
戦いはどんな戦いであれ、力押しで決まるものだ
オラオラで力押し

68 :
力を使うには知性が必要だろう

69 :
わたしの使い魔「ラバーズ」は力が弱い…………
髪の毛一本動かす力さえもない 史上最弱の使い魔さ……
だがね……人間をRのに 力なんぞいらないのだよ……

70 :
『魔法』には『知識』が必要だ

71 :
>>69
あれ?ラバーズなら直接アルビオンまで行ってクロムウェル暗殺できんじゃね?

72 :
ラバーズの台詞はジョジョの戦闘の真髄を語ってるよな
荒木はドラゴンボール全盛期の時代に
強い力に強い力をぶつけるタイプの戦闘に疑問を持って
アンチテーゼ的にスタンドでの戦闘を描いてたらしいからな
まあ一部力押しのバトルとかもあるけどさ

73 :
力押しは力押し、知略戦は知略戦と使い分けてるな

74 :
知略なんて聞こえがいいけど結局博打、
力押しで勝てる状況なら力押しで勝つのが一番だってヤン・ウェンリーが言ってた。

75 :
力押しはたいていの場合コストが掛かるので最後の手段です

76 :
Exactly(その通りでございます)

77 :
まぁ博打っちゃ博打だなw
結局は凄みがものを言うのがジョジョ

78 :
今まとめ読んできたがサブ・ゼロの使い魔の続きはまだか・・・くそぅ・・・
ギアッチョ好きになったんに・・・

79 :
sage忘れごめんぬ

80 :
まぁこれぐらいのタイミングで一回上がるのはむしろよかったんじゃね?
別の停止中作者だけど来年は今年より復活できる余裕ができそうな可能性が高くなってきました

81 :
俺達の世界では(中略)復活したッ!なら使っていい

82 :
数ヶ月ぶりの投下!
緊張せずにはいられない!
十分後…投下します。

83 :
なん・・・だと・・・!

84 :
ナプキンをどうぞ

85 :
投下…開始します

86 :

われわれは現在だけを耐え忍べばよい。 過去にも未来にも苦しむ必要はない。
なぜなら過去はもう存在しないし、 未来はまだ存在していないのだから。
                    byアラン


・・・・・・ガリア王国 首都ロンディニウム王城
「そうか・・・デルフリンガーは確保できたか・・・シェフィールド」
玉座に座った人物がシェフィールドという女性に首尾を確認する
「はい、ジョゼフ様、確かにここに・・・」
シェフィールドは恭しく鞘に収められたデルフリンガーを差し出す、
「して・・・依然ガンダールウ゛の行方は知れずか」
差し出されたデルフリンガーを手に取り、眺めながらシェフィールドに尋ねる
「はい、ですがデルフリンガーがこちらにあればいつか姿を現すかと・・・」
「いつか、か・・・私が生きている間であればよいが・・・」
ジョゼフが少し自虐的な言葉を吐くのを聞きシェフィールドが不安そうな顔をする。
「すでに神の心臓の所在はつかんでいる、いまだ存在が確認できていないのは左手だけだ
そして、神の頭脳と右手は既に我々の手の内にある」
ジョゼフは膝をついているシェフィールドの頭に手を置き、愛おしそうに額に刻まれているルーンを撫でる、
そして撫でているそのジョゼフの右手にも、同じようにルーンが刻まれていた。

ところ変わってトリスティン魔法学院
大統領とルイズは買い物に出かけたときの疲れが出たのか、早めに眠ってしまっていた。
大統領は静かな寝息をたてながら夢を見ていた・・・
「ここは・・・どこだ?貴方は・・・だれだ?」
大統領が夢の中で会った人物、夢と言うにはあまりにも鮮明な目の前に居る人物のその姿、
だが顔だけはぼやけていた、傷だらけの体、薄い布を纏い、茨の冠を頭に載せている・・・
その姿を見て大統領は絶句する・・・。
「貴方は・・・まさか・・・」
驚いている大統領を前にその人物は悲しそうに顔を歪ませる。
「なぜ・・・そのように悲しいお顔をなされるのです・・・?」
その言葉を聞き、大統領が恐れ、敬うその人物が口を開き言葉を発そうとしたその瞬間。

轟音が鳴り響き、大統領をまどろみから覚醒させた。

87 :
「なっ!何この音!?」
布団から飛び起きるルイズ、
大統領は最後にあの人物が何を言をうとしたのか気になったが非常事態のため直ぐに頭を切り替える、
弾ける様に窓へ飛び出し、外の様子を伺う。
「何か大きな物体が壁を叩いている様だな・・・」
そう大統領が告げるとルイズは服を取り出し、大統領が外をうかがっている隙に
下半身の部分を穿き終えると部屋を飛び出す、上半身の部分は移動しながら着るようだ。
「待て!ルイズどこへ行く!?」
ルイズの後を追いながら大統領はルイズが何をしようとしているのか薄々気づき始めた
(頼む・・・思慮深く行動してくれよ・・・)
ルイズが外へ飛び出し、ポツリと呟く・・・「ゴーレム」
(ゴーレム!?話には聞いたがあんな巨体も作れるのか!?数十メートルはあるぞ!)
大統領が驚いてる間にルイズは最短の詠唱を唱える、そして・・・爆発
(!なるほど、どんな詠唱を唱えても爆発するならいっそ短い詠唱で速射性をあげるか・・・
だが、倒すべきゴーレムが大きすぎる、その上にそれを上回る命中精度の低さ・・・
あれを相手にするならせめてルイズと同じ爆発を起こせるものが最低5人は必要だ)
考えながらもルイズへと駆け寄り、ルイズを止めようとする、
「ルイズ!危険だ、離れるぞ!」
「離して!あのゴーレムが叩いている場所には宝物庫があるの!きっと賊だわ!」
「なら尚更だ!先生たちに知らせた方がいい!」
「知らせに行っている間に逃げられたら如何するのよ!!ウル・カーノ!」
ルイズが詠唱を唱え失敗魔法で攻撃を加えようとするが命中せず、
当たった場所はゴーレムが叩いていた宝物庫の壁だった
ピシリッと壁に亀裂が入る、そこにゴーレムが攻撃を加えると、ものの見事に壁は壊され、
ゴーレムが宝物庫から何かを取り出し、帰っていく。
その間にもルイズは必死で失敗魔法を唱えるがゴーレムの体を削るだけだった、

88 :
支援だ

89 :
やがてゴーレムが倒れ、動かなくなるとそこには一枚の紙切れがありこう書かれていた、
「破壊の杖、確かに頂きました 土くれのフーケ」と・・・
これを見た瞬間ルイズは崩れ落ちた、大統領も結果はどうあれ何もできなかった自分に内心腹が立っていた
少なくともルイズは爆発でゴーレムの体を削ることは出来ていた・・・。
(やれやれだぜ・・・ってやつだな、アクセル・ROとの戦い・・・
横合いから遺体を私にかっさられたジョニィ・ジョースターもこんな気分だったのか?)
破壊の杖がどういうものかは知らないが、無力感という意味でなら同じだろうと大統領は考える

それから数時間後、夜が明け、学院は大騒ぎとなっていた。
賊が侵入しただけでなく、宝物を奪って逃げたのだから当然ではあるが、大統領はそれを冷めた眼で見ている。
(やれ当直がどうしただの王室がどうだのと…責任逃れだな、まあ何時の時代も、誰だって下手は引きたくないものだ)
すると校長の秘書であるロングビルと呼ばれた女性が入ってきてフーケの居所を掴んだと述べる。
大統領はこの時点で“違和感”と、自分がまたフーケと戦うこととなる“直感”を感じていた。
校長であるオールド・オスマンがフーケ討伐隊を組もうとするが、教師はだれも入ろうとしない、
そもそも教職についている者のほぼ全員が実戦を知らないので出ようとしないのだ。
ようやく杖を上げた者が居たがその人物は・・・
(やはりルイズか…)
それに釣られてか、他二人も杖を上げるが、
(タバサとキュルケか、案外心配性だな)
教師達は止めようとするが、「だったらお前らが行けよ」という話になり結局この三人が行く事となる。
因みに馬車の御者としてロングビルが自分から行くという言葉を大統領は聞き逃さなかった、
「話は纏まったようなので私はロングビルと一緒に馬車の用意に行って来る」
そう言って出て行こうとする大統領の背中に向けてキュルケは質問する
「ねえダーリン、随分と余裕みたいだけど、決闘の時みたいに手品で倒せるの?」
そう聞かれた大統領は少しだけ振り返り
「ああ、あのゴーレムがすっぽりかぶれるほどの布があれば余裕だ」
キュルケはそれを冗談だと受け取ったが、大統領にしてみれば半分本気だった。

90 :

馬車に揺られながら大統領は少しの間眠りにつく
フーケのゴーレムに叩き起こされ削られた睡眠時間を取り戻すというのもあるが
夢の中でまた「あのお方」に会えるかもしれないという願望も含まれていたが…
馬車の揺れが止まり目が覚める、
(会えなかったか…)
大統領はあの夢のせいでかなり不安になっていた
「あのお方」は道を指し示すことはあっても悲しむという事は無かった
レースでも「あのお方」の遺体が全ての中心にあり、運命そのものと言っても過言ではない
(あの夢には何か意味がある…見逃してはいけない決定的な意味が…)
「ファニー!はやく来なさい!」
ルイズは目が覚めたというのに馬車の中で座ったままの大統領を寝ぼけていると思い
大きな声で呼びかけるがすかさずタバサの杖で頭を叩かれる
「なにすんのよ!」
「声が大きい、フーケに気づかれる」
そう言われ仕方なく口を紡ぐが、遅れてきた大統領に「あんたのせいだからね」と小声で怒る
大統領は「すまない」と一言終え気分を切り替える
(あの夢も気になるが…今しなければならない事はフーケをどうやって倒すかだ)
ファニーの不安と呼応するかのようにルイズは焦っていた
フーケを倒せばこれまでの自分の汚名、「ゼロ」という二つ名を返上できると考えているのだ
(今フーケを倒せば…昔の失敗を取り消せる!)

二人は共に確かな足取りでフーケとの再戦へと向かう

91 :
今こそ支援だ

92 :
以上、投下終了です
ようやく書けるようになりましたが…
来年の四月までに終わらないといよいよ持ってエタしかねない。

93 :
D0Cさんお疲れ様でした

94 :
支援ありがとうございます、
因みに一応最後までのストーリー構成は出来てるのでもうちょっと早く書けそうです
(細かい部分はまだですが…)

95 :
>>94
そういう方は『信頼』できる

96 :
保障
OK

97 :
>>94
久方ぶりの投下乙。
誤字指摘スレと迷ったがとりあえずこっちで。
ガリアの王都はリュティスですよ。ロンディニウムはアルビオン。

98 :
>>97
報告ありがとうございます、とりあえず書き直して載せておきますね


99 :
改訂版

われわれは現在だけを耐え忍べばよい。 過去にも未来にも苦しむ必要はない。
なぜなら過去はもう存在しないし、 未来はまだ存在していないのだから。
                    byアラン


・・・・・・ガリア王国 首都リュティス王城
「そうか・・・デルフリンガーは確保できたか・・・シェフィールド」
玉座に座った人物がシェフィールドという女性に首尾を確認する
「はい、ジョゼフ様、確かにここに・・・」
シェフィールドは恭しく鞘に収められたデルフリンガーを差し出す、
「して・・・依然ガンダールウ゛の行方は知れずか」
差し出されたデルフリンガーを手に取り、眺めながらシェフィールドに尋ねる
「はい、ですがデルフリンガーがこちらにあればいつか姿を現すかと・・・」
「いつか、か・・・私が生きている間であればよいが・・・」
ジョゼフが少し自虐的な言葉を吐くのを聞きシェフィールドが不安そうな顔をする。
「すでに神の心臓の所在はつかんでいる、いまだ存在が確認できていないのは左手だけだ
そして、神の頭脳と右手は既に我々の手の内にある」
ジョゼフは膝をついているシェフィールドの頭に手を置き、愛おしそうに額に刻まれているルーンを撫でる、
そして撫でているそのジョゼフの右手にも、同じようにルーンが刻まれていた。

ところ変わってトリスティン魔法学院
大統領とルイズは買い物に出かけたときの疲れが出たのか、早めに眠ってしまっていた。
大統領は静かな寝息をたてながら夢を見ていた・・・
「ここは・・・どこだ?貴方は・・・だれだ?」
大統領が夢の中で会った人物、夢と言うにはあまりにも鮮明な目の前に居る人物のその姿、
だが顔だけはぼやけていた、傷だらけの体、薄い布を纏い、茨の冠を頭に載せている・・・
その姿を見て大統領は絶句する・・・。
「貴方は・・・まさか・・・」
驚いている大統領を前にその人物は悲しそうに顔を歪ませる。
「なぜ・・・そのように悲しいお顔をなされるのです・・・?」
その言葉を聞き、大統領が恐れ、敬うその人物が口を開き言葉を発そうとしたその瞬間。

轟音が鳴り響き、大統領をまどろみから覚醒させた。

100 :
DOCの人乙です
俺はアンタを信じてる・・・・・・

101 :
間違えたD0Cだった

102 :
D0Cの人超GJ!
続きも楽しみにしてるぜ

103 :
最近読み始めたんだけど、オススメ教えてくれ
ゼロの兄貴と銃は杖よりも強し
は読んだ

104 :
サブ・ゼロの使い魔なんかどうだ?ギアッチョメイン。
完結はしてないが

105 :
仮面のルイズとぜろいぬは泣けるぜ
逆に腹筋を鍛えたいならアヌビス神だ

106 :
奇妙な鉄だな
リゾットメインだ

107 :
10分後に投下します…


108 :
事前支援

109 :
眠気が・・クソ・・・・
あとで楽しませてもらうぜ・・・

110 :
投下開始します

111 :

大統領はフーケがいると思われる小屋を茂みから覗き見る、
(罠である事は間違いない、すぐ逃げられる体勢はとっておくべきだが…)
自分の主人に視線を移す
(ルイズは“それ”を拒否するだろうな…)
ルイズはこの世界で魔法を使えないという最大級の下手を引いた
そのせいでルイズに逃げるという選択肢を消してしまっているのだ
(本来なら破壊の杖を取り返す事ができればそれだけでいい、倒す必要はどこにもない)
だが…と大統領は再び考える、(倒さない必要もどこにもないか…)

ここでルイズが仲間と一緒にフーケを捕まえれば(過程にもよるが)
“自信”がつく、過信になると危険だがそれでも今の状態よりはマシになるはずだと大統領は考える
(仮にも私の主人になるんだ…成長してもらうぞ、ルイズ)

112 :

「で?どうするの」
ルイズは痺れを切らしたように言い放つ
「とりあえず何人かを偵察、のこりをここで待たせる」
タバサはそう言うと大統領に目を向ける
(まあ私は偵察役確定だろうな…)
結局偵察役にロングビルを除く全員が行く事となった
タバサが探知魔法で小屋内部を調べるが、誰もいないことを確認したため、中へ入っていく
小屋の中は思ったよりも広かったが破壊の杖は直ぐに見つかった
「これが破壊の杖?」
大統領の問いにタバサは無言で頷く
(なんだこれは?…引き金や砲身があるところを見ると銃か!?しかしこの大きさは…もはや砲と言っても…)
大統領が破壊の杖に対して推測しているうちに外から地響きが聞こえ始める

大統領達が小屋から出るとフーケのゴーレムが暴れていた
ルイズが一足先に爆発する魔法を叩き込んでいる
大統領はルイズの元へ走った
(ここまでは予想通りだが…さて、)
大統領は先ほどの破壊の杖を見てフーケの目的をかなり把握していた
(恐らくはアレの使い道が知りたいと言った所なのだろうが…)
自分でも正確な使い方がわからないのだ、科学技術が発達していないこの世界では仕方ないだろうと
大統領は続けて考える
(最悪の場合の交渉材料にはなるだろう…使い方を教えて逃げる…逃がしてくれるわけはないだろうが)
考えを終えると同時にルイズまで辿り着き…ルイズを抱えてゴーレムから遠ざかる!

113 :

「ちょっと!何すんのよ!!」
いきなりの事で動転したがすぐに怒鳴り声を上げるルイズに大統領は叱咤する
「何をしているかはこちらのセリフだ!学院の時でも同じ事をやったが駄目だっただろう!無駄だ!」
「無駄でもよ!魔法を使えるのが貴族なんじゃない、敵に後ろを見せないものを貴族というのよ!!」
「ルイズ…」
大統領はフーケのゴーレムがタバサ、キュルケが牽制している為こちらにはすぐには来れない事を確認し
ルイズを降ろし、肩を掴んでルイズの目を見ながらゆっくりと話す
「ルイズ…誇りを引き合いに出せるのは自分の命までだ…それ以上は駄目だ」
それならっ…と言いかけたルイズの口元に指をそなえる
「ルイズ言った筈だ…思慮深く行動しろと、君が死んだら家族はどんなに悲しむ?それだけじゃない
君を行かせてしまったオールド・オスマン校長にも迷惑がかかる」
ルイズはその言葉を聞きすこしずつ頭が冷静になっていく…
「私に…どうしろって言うのよ…」
冷静になったと同時に力も抜けていくのがわかり、ルイズは大統領に問う
「今この場では生きる事を前提に考えればいい、」
そう言った大統領の頭上に竜が1頭羽ばたいていた
「たしかあの風竜はタバサの…」
「あの子が呼んでくれていたらしいな、あの竜に乗れば逃走は可能だろう」
ルイズは大統領の言葉を“理解”できたし逃げられることが可能にもなった…
しかしやはり己の誇りを取り戻せる絶対の好機を手放す事に絶対の“納得”ができなかった
それは大統領も理解している…自身の言葉一つ二つ程度で感情を左右できるほど
ルイズの人生は軽いものではない筈だ
(心の隅に留めておいてくれればいい…そもそも、相手がそう簡単に逃がしてくれるはずも無いだろうしな)
使い方がわからないために敵に使わせるという綱渡りなやり方を試すという事は
逆に使わずに取ったらそのまま逃げるという相手側の思考も考えてるはずだ
(あの程度の誤算でどうにかなる訳がない、竜の背中は安全だろうが乗せてくれないだろうな)

114 :
支援だ、ここで支援するね

115 :

破壊の杖を所持しているのはタバサであり、ゴーレムもタバサを狙っていた
しかし中々攻撃にでようとしなかった、でたとしても狙いを外した踏み付けや拳の叩きつけである
大統領はルイズを風竜の背中に乗せ自身はタバサ達を助けに行き、
ルイズには上空から失敗魔法で牽制するように伝えた
(恐らくは破壊の杖を持っている奴に使わせようと生かさず殺さず嬲り殺しにするつもりだろうな…
その間はタバサは大丈夫だろう、だが…破壊の杖を使えないとわかったら迷わず殺される)
大統領はタバサとキュルケの元へ向かう間に考える
(この状況を打破するには…、 1ゴーレムを撃破 2フーケを見つけ拿捕 3逃げる現実は非情である のどれかだが…
私が○を付けたいのは2だがまず無理だろう、この森の中から盗賊のフーケを見つけ出すのは至難の業だ
とすれば1だが…正直骨が折れる、下手すりゃ2より難しいだろう…3はルイズの成長の為には選びたくないな)
そして最後にもう一つの可能性を大統領は考える…
ギーシュとの戦いの前に行った…平行世界へ行き攻略法を覗き見るという反則技である
(正直現時点で一番現実的な方法はこれだろう…ただこれの問題点は私が他の世界へ行っている間に
仲間の身が心配だという点だが)
自分が他人の心配できる程実力があるのか?と考え直す
(どの道にしろこれ以外では全て現実味がない…しかし、ルイズは自分の一時的とは言え主だ、
死なせる訳にも行かない…何か無いか?ルイズ達の身の安全を約束しつつ並行世界へ行ける方法…
“有る”な一つ…簡単な方法が)
考えを終えた大統領が覚悟を決めさらに速度を上げて突っ走る、
そしてタバサ、キュルケを庇うようにゴーレムの前に立つ


116 :

「ミス・タバサ!破壊の杖を貸してくれ!」
大統領の叫び声にタバサは一瞬だけ躊躇するが破壊の杖を大統領に放り投げる
破壊の杖を受け取った大統領は回りこむようにゴーレムへ接近する
タバサ、キュルケは主人の身を案じ、助けようとしていた風竜の背中へ飛び乗る
ゴーレムはというと本来タバサ、キュルケを風竜に乗せないようにするべきだが
本命である破壊の杖を大統領が持っているため反応しきれず、
結果としてゴーレムと大統領が一対一で対峙する形となった

(さあて…二人が竜に乗れたのは計算通りだが…ここからは運だな、基本の世界がゴーレムを倒していることを祈ろうか)
大統領は更にゴーレムに接近し、攻撃を誘う…ゴーレムは当てるつもりの無いパンチを大統領に向けて放つ。
ゴーレムの拳が加速し、止められなくなるあたりで大統領は、ゴーレムの拳へ向かっていった…
(ルイズがパニックを起こさないといいが…まあタバサ、キュルケがいれば大丈夫だろう)
拳が当たる寸前で大統領は自分が異世界へ行っている間のルイズの行動を考えていた

「ま…まさかファニーが…アイツが死んじゃうなんて…」
ルイズは目を潤ませ、震えていた…キュルケも顔を青ざめて言葉を無くしている…
唯一タバサだけが無表情を貫いていた
「大丈夫」
ぽつりと呟いたタバサの言葉にルイズとキュルケは振り向く
「血が流れていないし彼は自分から向かって行ったように見えた、だから多分…」
タバサの言葉に呼応するかのようにゴーレムが拳を退かせた場所に大統領の亡骸は無かった
拳の方に引っ付いてるようにも見えない
「本当!ギーシュの時と同じ手だわ!!でもそれならダーリンはどこへ?」
キュルケの言葉にタバサも疑問を抱く
(確かにどこへ行ったか気になる…でもそれ以上にどうやったらこんな真似ができるのか?
ギーシュの時とは違い今度は手品を仕込む暇など無かった…それさえわかれば“どこへ行ったのかも”わかるはず)

117 :
支援

118 :

タバサが大統領の技を疑問視している頃、大統領は暗闇の中にいた
(さて…破壊の杖も一緒に持ってきたことだ…向こうではゴーレムが私を探して躍起になっているだろう
ルイズ達は風竜に乗っているから安全も確保されている、しかしまあ…策というほどのものでもなかったな)
大統領の考えは破壊の杖を自身が持ち平行世界へ行くというものであった
フーケの狙いである破壊の杖を持った状態で平行世界へ行けばフーケは世界から居なくなった大統領を探そうとする
そしてタバサ、キュルケを風竜に乗せればゴーレムも直ぐには手が出せず、仲間全員の一時的な安全は確保できるのである
(竜がいなければ人質を取られて出なければいけない可能性もあったが…まあいても可能性自体はあるわけだが、
ほんの少しの時間ならまず安全だし、フーケとの戦闘からこれだけ時間が経てば基本の世界で倒したか、逃げたかくらいならわかる、
ただまあ…手品という言い訳はもう苦しいだろうが…)

大統領の強みとはD4Cだけではない、
Dioやホット・P、ジャイロ・ツェペリとジョニィ・ジョースター達を圧倒したのはD4Cだけでなく
“大統領自身の思考速度と状況を即座に理解する力にあった”


119 :

「あのゴーレム、ファニーを探しているみたい…」
ルイズが慌てて木を弾き飛ばし、小屋を倒壊させているゴーレムを見てそう呟く
「ダーリンはどこに行っているのかしら?もうずっと姿が見えないわ、ルイズ!アンタわからない?主人でしょう」
キュルケに言われてばつが悪そうに俯くルイズ、視界の共有は使い魔を持っているものにとっては基本的な事だが、
人間という事もあってかルイズではできなかったのだ
タバサは二人を尻目にじっと視線をゴーレムから放さなかった、警戒という意味だが
大統領が何かするのでは?という直感もあった

やがてゴーレムが一旦動きを止めると風竜に襲い掛かる、十分に距離が離れているため安全に逃げられるはずだったが
ゴーレムが腕を振り上げたと思うと大きな塊が飛んできた
慌てて風竜を旋回させるが完全に不意を突かれたのと途中で塊が幾つにもばらけたため避けきれず、翼や胴体に当たる
そのまま三人とも落ちる所だったがすんでのところでタバサがレビテーションで浮かせる
(抜かった!)
先ほどの塊は弾き飛ばした木や小屋を倒壊させた時の瓦礫をゴーレムに握らせ、丸めたものだ
丸めたというよりも握りつぶしたため途中でばらける
(先ほどのはルイズの使い魔を探しているのと同時に飛び道具を用意したと気づかせない為…)

落ちた三人を捕まえようと近づくゴーレム、風竜は気絶していて飛べない
三人は諦めず魔法を放つが、ゴーレムは意に返さずゆっくり手を伸ばす…
もう駄目だと三人が諦めかけたその瞬間

爆音と共にゴーレムは破壊された


120 :
無限の回転でもくらったか?

121 :
連投規制が掛かった!
全部の投下が終了した後なのは
不幸中の幸いでした

122 :
乙でした

123 :


124 :
とりあえず、
投下自体は終了してますので安心してください、
現在携帯から書き込んでいます。
恐らく次回の投下は来年になりそうなので、皆さん良いお年を。
(今更ながら最初以外ロングビルの存在完全に忘れてる…どうしよ)

125 :

良いお年を

126 :
年明け前にもう一本来る方に…魂を賭けるぜっ!!!

127 :
グッド!

128 :
>>126のために新作書いてたが時すでに時間切れ

129 :
エジプトではまだ12月31日だ

130 :
なら問題は無いな。投下しろ

131 :
ハワイでも31日23時になってしまった
このままでは>>126

132 :
さーて、この>>126の魂は誰が救い出すんだ?んん〜?

133 :
◎ ←>>126

134 :
よし…今度は誰かが、「○月×日まで新規の投下はない」という条件で魂を掛けるんだ!

135 :
1月8日まで投下が無いことに>>132>>134の魂を賭けよう

136 :
あけおめ

137 :
うろジョジョの人が銃杖の宣伝してたぞw
作者頑張って!

138 :
反省する使い魔!  第十二話「無尊敬な過去、そして香水」

「なんと、お主意外のスタンド使いが………!」
「ああ、なんとか撃退したがな………」
アヌビス神との激戦から勝利した次の日、
時間にして午前11時頃、音石は学院長室でオスマンに
昨日、武器屋での出来事を報告していた。
当たり前だが、来たときに部屋に同席していた
コルベールとロングビルには退席してもらっている。
「ふ〜む、他人を操る剣のスタンドとはのぉ〜〜
して、その後ミス・ヴァリエールはどうしたのかね?」
「タバサのシルフィードで学院に戻る最中に無事目ぇ覚ましたよ
筋肉痛で元気な悲鳴あげるたくらいだ。問題ねぇよ」
「ふむ、それを聞いて安心したわい。
しかしわからんのぉ、そのアヌビスというスタンド。
君のようにサモン・サーヴァントで
呼び出されたわけでもないのに、
なぜ君の世界地球からこのハルケギニアに……………」
「………………………………」
この時。音石の頭にはある人物の言葉が浮かび上がっていた。
三年前、彼のかつての部下であった少年、間田敏和だ。
スタンド使いとスタンド使いは引かれ合う……。
(…………まさか、だろ)
「まあしかし、無事解決してよかったわい。
あやうくワシの学院の生徒が
殺人鬼になるところじゃったわい。
ここはこの学院の長として何か礼をはずまんと……」
オスマンのその言葉に音石はピクッと反応した。
「お!なんかくれんの?」
「……お前さん、そこは普通遠慮するところじゃろ?」
「くっくっくっ悪いなじィさん。おれはそこまで善人じゃねぇんだよ♪」
「やれやれ、現金な小僧じゃのぉ。
まあ、言っちまったモノは仕方がない………
ホレ持ってけ、この悪党め!」


139 :
オスマンが机の中を漁り、小さな袋を取り出した。
音石は素早い動きで袋の中を確認し、
オオッ!!と歓喜の声を上げた。
以前、キュルケに対して現金な女と評価したことがあったが
これでは俗に言うどっちもどっちである。
「ああそうだ、報告のついでにアンタに頼みたいことがあんだよ」
「ほう、一体なんじゃ?」
「万が一なんだが、俺やアヌビスのような
スタンド使いがこの世界にいる可能性がある。
だからもし、アンタ耳に『魔法とはちょっと違う奇妙な情報』が
入ったら、俺に伝えてほしいんだ。
あんたのほうが俺よりよっぽどその手の情報が入るだろ?」
「なるほどのぉ………ふむ、あいわかった。了解じゃ」
オスマンの承諾を確認し、音石はもらった袋を懐にしまい
座っていた席を立つ。
(この世界に電気回線が走ってたら
こんな回りくどいことする必要もねぇんだがなァ……
まっ!いまさら悔やんだってしょうがねぇか)
「しかしまァ、何から何まで悪いなじいさん」
「なァに、気にせんでもよい。
こちらとしても、異世界の住人である君を呼び出した
ミス・ヴァリエールの学院長としての責任があるからのぉ。
それにワシ自身、お主と話していると退屈せんしの。
スタンドだのギターだの、なかなか新鮮な体験を
させてもらっておるんじゃ。そのお礼とでも思っておくれ」
オスマンの返答に音石が小さく鼻で笑う、
そのままオスマンに背を向け、
部屋の扉を開けたところでまたオスマンが話しかけてきた。
「気が向いたらお主の世界の話でも聞かせておくれ。
この年寄りにも今をより楽しく生きていく薬になるわい」
「その歳で縁起でもねぇこと言わねぇほうがいいぜ爺さん。
そういうのに限ってロクなことねぇからな。
まっ、気が向いたら話してやるよ。そんじゃ」
フォフォフォフォッと学院長の愉快な笑い声を
聞きながら、音石は学院長室を後にした。



140 :
「…ふむっ、しかし彼とはまた別のスタンド使いか…
ウチの生徒が被害にあった以上、
もしもの時の為に…なにか対抗策を考えんといかんのぉ………。
しかしのぉ〜、一人一人が別々の能力をもっている以上
これといった対策法もないじゃろうし……、
なにより能力以前にスタンドそのものが強力じゃしのぉ〜
彼のレッド・ホット・チリ・ペッパーのような
素早く、破壊力があるようなスタンドでは
生半可なメイジなどでは歯がたたん。
はてさて……なにかうまい対策法はないものか……」
途中で椅子から立ち上がり、学院長室をぐるぐる回りながら
オスマンは独り言を自分に言い聞かせ、
髭をいじりながら思考に耽っていた。
もしも恐れている事態がこの学院で起こった場合
唯一頼りになるのは彼だけじゃろう。
生徒を危険にさらすわけにもいかんしの〜、
しかも学院の教師たちはほとんどが口先だけの腑抜けばかりじゃ。
ふ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜む…………………あっ!
「しまった!彼に『あのこと』を伝えるのを忘れとったわ!
やれやれ、歳をとると物忘れが多くて難儀じゃわい……
仕方ない、モートソグニル」
オスマンが自分の使い魔の名を言うと、
部屋の中央の机の上で横になっていたネズミ、
モートソグニルが起き上がった。
「起こしてしまってすまんのぅ。ちと頼みがあるんじゃ
コルベールくんを呼んできてくれんか?
今日のこの時間は、あやつの授業はないはずじゃから……
いつもの研究室にいるはずじゃ。頼むぞ………なに?
あそこは臭いがひどく鼻をつつくからいや?
そう堅いこと言わんでおくれ。
この歳であそこまで出向くのもホネなんじゃよ」
モートソグニルは嫌そうな顔をしながら
仕方がないと自分に言いつけ、学院長室から姿を消した。




141 :
音石はというと、ルイズと昼食時間に食堂で待ち合わせしていたため
学院のいつもの食堂の壁にもたれ掛っていた。
この時、音石も音石で、オスマンと同じように悩んでいた。
スタンド使いは引かれあうか…。
うまいこと考えたもんだな間田のやつ、
そう言えばあいつ今何してんだろ?おっと、そんなことはどうでもいいな。
だがまあ、俺以外のスタンド使いが現れたからといって
まだほかにもスタンド使いがいるって確証もねぇしな……、
この引かれあう法則はほかの連中にはまだ黙っておくか…。
一通りの思考を終了させ、音石はハァッと一息吐き捨てる。
すると食堂が賑わい始めていることに気付いた。
どうやら生徒たちが授業を終了させ、
昼食をとろうと集まり始めたようだ。
音石は目を凝らしながら、そのギャラリーを見ていると
ルイズ、キュルケ、タバサの三人組を発見した。
彼女たちがそれぞれの席に着いたのを確認すると、
音石もその席に向かった。
「お疲れさん、どうだ調子は?」
音石がルイズに話しかけると、ルイズが首をギギギギギッと鳴らし
こちらを見てきた。髪の毛が顔を隠し、青ざめたルイズの顔。
それは一種のホラーだったため、
音石の口から「うへぇ…」という声がこぼれ落ちた。
「……最悪よ、体中は痛いったらありゃしないわ…
椅子に座るのも一苦労よ……体がギシギシいって…」
「ああ、そういえば椅子に座るときなんかギコチなかったな」
「それだけならまだしも……見てよこの手のタコ!
ペンを握るときも痛くて仕方なかったんだから……」
「まったくよ、授業中ルイズの苦痛の声を聞いてると
こっちまでなんか痛くなってくるくらいなんだから……」
近くの席に座っているキュルケがそう言ってはいるものの
皮肉で言っているわけではない。
純粋にルイズを心配してでの言葉だった。
「それぐらいのタコがなんだ。
オレがいた町にはなァ〜、手のタコが発達しすぎて
そのタコん中にナイフとか仕込んでいるやつがいんだぜ?」
「………どんなやつよそれ…」
「一言で言えば変人だな。
それ以上もそれ以下もなく間違いなくな」


142 :
その変人、『スーパーフライ』のスタンド使い
『鋼田一豊大』と音石は面識があった。
いや、面識といっても鋼田一は音石を知らない。
時期にして仗助たちが間田を打ち倒した後、
康一が由花子に誘拐される前あたりといったところだろう。
その時に音石はたまたまスーパーフライの鋼田一を発見した。
そして何の因果なのか、鋼田一はその時も仗助のときと同じように
鉄塔のボトルで魔法の絨毯のように移動していたため
音石はすぐ鋼田一がスタンド使いだと確信した。
当然、音石は鋼田一を仲間にしようと考えたが
仲間にする前にいざという時を考え、
鋼田一のスーパーフライの全貌を知る必要があった。
スーパーフライのその姿は『鉄塔』といった巨大さだ。
下手をすれば自分のチリ・ペッパーを上回る能力を
秘めている可能性があったため、
音石は一旦定期的に鋼田一を監視する必要があった。
だが生憎のこと、音石は鋼田一を仲間にする前に
仗助たちに敗北したため、結果的に無駄足となってしまった。
ついでに言うと、SPW財団に尋問されたとき
音石が鋼田一のことを黙っていたのは
当時、邪悪な精神に染まっていた彼の心が
うまくいけば鋼田一が自分の代わりに仗助たちを
殺してくれるかもしれないという
姑息な考えを生んだからである。
それと疲労回復剤と偽って飲まされた自白剤。
あの時、SPW財団が質問してきた内容はあくまで
『弓と矢で射たやつ』であったため、
弓と矢が形兆によって杜王町で乱用される以前から
スタンド能力に目覚めているタイプの鋼田一は
その質問の対象にあてはまっていなかったこともあってか
音石の口から漏れることはなかった。


143 :
「だがまあ、その程度で済んで幸運だったと思うべきだぜルイズ」
「うっ……そ、それはわかってるわよ!
あのままじゃ私がずっとその……アヌビス、だったわよね?
ソイツに操られたままで、下手したらそのまま人斬りの殺人鬼に
なっていたかもしれないって自覚してるし…………、
元々の原因は勝手に剣を抜いた私にあるってのも反省してる……、
でも……痛いのは痛いんだから仕方ないじゃない!!」
涙目で語るルイズの訴えに音石はやれやれと吐き捨てた。
するとキュルケが、なにかを思い当たったかのような口ぶりで
ルイズに話しかけた。
「そんなに痛いんだったら、
医務室に行って治療してもらったらどうなのヴァリエール?
治癒の魔法ならそんな痛み一瞬じゃない」
(さすが魔法)
キュルケの内容に音石は素直な感想を心の中で呟いた。
しかしルイズは………、
「……わたしだってそうしたいわよ……、
でも…、昨日こいつの為にいろいろ買ったから……」
「金銭不足ってわけかい、たくよ〜……ほらよ!」
すると音石は懐を漁り、
先ほど学院長にもらった金貨の入った袋を
取り出し、ルイズの前に放り投げた。
「なによこれ?…………えッ!?ちょ、ちょっとオトイシ!?
あんたこれどうしたのよ!!?
しかも結構入ってるじゃない!!?」
ルイズは信じられないという目で音石を見た。
キュルケも少し驚いてる感じだったが
タバサは関しては相変わらず黙々と本を読んでいた。


144 :
支援

145 :
「さっき学院長の爺さんに昨日のことを話した。
ルイズを助けた礼としてもらったんだよ」
「…っ!?あんた…!私に何も言わずに何勝手なことしてんのよ!!
しかも偉大なるオールド・オスマンから
お金巻き上げるなんて!!」
「……彼はそれに見積もった十分な働きをした」
意外にも、黙々と本を読んでいたタバサが
突然ルイズにそう言った。正直意外な助け舟だ。
「タバサのいう通りよルイズ。
あんたは操られてたから覚えてないんでしょーけど………
操られていたあんたははっきり言って、恐ろしく強かったわ。
でもねルイズ。あんたの使い魔は、
そんなあんたを精一杯、傷付けないとように気配りしながら
命懸けで戦って、あんたを救ったのよ?」
「…………………」
キュルケの付け足しにルイズは押し黙るしかなかった。
「でもオトイシ、学院長に話してよかったの?
色々と不味いんじゃ……」
「いや、俺とあの爺さんには
それなりの信頼関係があるからな…
あの爺さんは結構信用できるタイプの人間だ」
「あら?それじゃあ私とタバサは信用してないってことかしら?」
「俺の『能力(チカラ)』のことを言ってんのか?
生憎悪いがその通り。まだお前らに教えるわけにはいかねぇよ…」
「……そう、でもまァ。
結構ワケありっぽいし…、仕方ないわね」
「…………………………」
少し残念そうな顔でキュルケがそう言った。
タバサは手に持つ本を机に置いた。
その動作を合図に、音石は食堂中の生徒たちが
食事前のお祈りに入ろうとしていたことに気付いた。
「ルイズ、どうせ俺が持ってたって
価値もわからねぇし、使い道がねぇんだ。
メシ食ったらこの金で傷治してもらってこい………
ああでもツリは返せよ」
「……………………………………」
音石はそのまま、ルイズたちに背を向け
厨房のほうへ向かっていった。


146 :
「…………なんか私、オトイシに助けられてばかりね」
「え?」
「…………」
音石が厨房に姿を消したと同時に
ルイズの口から突然こぼれた一言だった。
「それが使い魔としての役目だからでしょ?」
「そんな簡単な一言の問題じゃないのよキュルケ…
覚えてる?あいつが召喚さえた日、
ミスタ・コルベールが言ったこと……
『彼は使い魔ではあるが人間だ』………
あいつはね、わざわざ私の使い魔でいる必要もないのよ。
なのにあいつは私に使い魔でいてくれている……、
いいえ、それどころか……私を助けてくれている……」
「……ルイズ、なにが言いたいの?」
「………なんだか、自分が情けないのよ
仮にも誇り高い貴族の称号をもつ私が………
使い魔だからって、所詮他人でしかない筈のあいつに
助けられてばかりの自分が…………」
「ルイズ………」
貴族。それは誇り高き血を受け継ぐ人種を意味している。
当然ルイズは自分のヴァリエールという家名に誇りを持っている。
だからこそ複雑なのだろう。ルイズぐらいの年頃なら尚更だ。

「…………彼は……」
「「え?」」
ルイズとキュルケの声が重なる。
意外、突然口を開いたのはタバサだったのだ。


147 :
支援だ

148 :
「彼は……召喚される前は自分は牢屋に入っていたと言っていた」
「ええっ!?」
「あいつがっ!?」
はじめはキュルケ、その次にルイズが驚きの声を上げる。
「……彼は過去に取り返しのない過ちを犯している
私にはわかる…、理由は聞かないで………」
ふと、ルイズは音石が以前、
殺人を犯してしまった過去のことを
自分に教えてくれたことを思い出した。
「で、でもそれになんの関係が……」
「彼自身は気付いていないと思う…
無意識……そう言ったほうが正しいかもしれない…
彼は…あなたの使い魔としてあなたを守ることによって、
自分の中にある罪に償いをしているんだと思う…………」
ルイズは反射的に振り返り、音石が向かった厨房の入り口を見た。
しかし既に音石は厨房の中に消えていた。
「……………………」
ルイズが黙り込んだ沈黙の空気の中、
その静寂に、キュルケが口をあけた。
「ねぇルイズ、一体……彼にどんな過去があるっていうの?」
「……私も知らないわ……、でもいつかわかる時が来ると思う」
「え?」
「あいつが……私の使い魔でいることが……例え無意識でも、
罪滅ぼしだと思っているなら……私は受け入れるわ。
あいつの罪を、あいつの主人として………ね
だから、あいつがそれに気付くときがくるまで……
私は待つわ。あいつが自分からすべて打ち明けてくれるのを…」
キュルケも、タバサさえも、意外そうな顔でルイズを見た。
しかしキュルケの口が徐々ににやけた。
「な、なによ?」
「………ふふっ、いいえなんでもないわ
さっ!ルイズ、食事のお祈りをしましょう
後でわたしも一緒に医務室に行ってあげるわ」
「……?……あ、ありがと?」
日頃、口喧嘩している相手の妙な優しさに違和感を感じながらも
ルイズはそのまま食事前の祈りを終え、
生徒たちと一緒に一斉に食事を開始した。




149 :
「今日もウマかったぜマルトー
また明日もよろしく頼むわ」
「おう!遠慮せずいつだって来い!!」
厨房で食事を終え、マルトーに別れの挨拶を済ました音石は
厨房を出て、食堂の様子を見渡した。
(生徒たちもメシ済ました後の昼休みの最中みてぇだな)
次に音石はルイズたちが座っていた席を見た。
(……いねぇな、キュルケが言ってた医務室か?
まっ、今日は別にやることねぇし………
ルイズに付き添ってやるかな)
その場を移動いようと、音石が一歩食堂を踏み出した瞬間。
彼はある重大なことに気付いた。
「オレ医務室の場所知れねぇな」
「だったら案内してあげましょうか?」
「ああン?」
音石の愚痴を誰かが聞いていたのか、
いきなり横から声をかけられた。
その声がした方角を見てみると、
特徴的なリボンをした少女、
モンモランシーが音石を見上げていた。
「またお前かよ、えーっとぉ確か名前は………」
「またで悪かったわね、モンモランシーよ
覚えときなさい、『香水』のモンモランシー」
「………『洪水』?」
「『香水』ッ!!」
(ぷっ、おもしろいなこいつ)
自分の二つ名の間違いを否定する際の
モンモランシーのリアクションに音石はちょっとニヤけた。
「で?その『香水』のモンモランシーさまは
どういう心境の変化でこの俺の手助けなんかしてんだぁ?」
以前も言ったが、モンモランシーは
音石が決闘で半殺しにしたギーシュの恋仲だ。(ルイズに聞いて確認した)
そんな女が自分の手助けなど、気味の悪い話である。
(相当変わり者なのかぁ、こいつはぁ?)
音石からしてみれば、この考えが一番妥当である。

150 :
もいっぱーつ!(支援)

151 :
「別に、ただいつまでもそんなトコに突っ立ってられても迷惑だし
わたしもちょうど医務室に用があるし…………
ついでよ、ついで!ほら、ついて来なさい」
モンモランシーはそのまま音石を通り過ぎ食堂から廊下に向かう。
ルイズみてぇな奴だな、などとデジャヴ感を覚えながら
音石はそのままモンモランシーの後を追った。

「……おめぇ一体どういうつもりなんだ?」
「え?」
医務室に向かう廊下の途中、
音石はモンモランシーに自分の疑問をぶつけた。
「普通によぉ、考えてみたって変な話じゃねーか?
ルイズから聞いたぜ?
お前、俺が決闘で半殺しにしたギーシュの恋人らしいじゃねーか
こっちはただでさえその件で学院の生徒連中にびびられてるってのに、
どういうつもりなんだぁ?気味が悪いったらありゃしねぇ…」
「………………………」
その言葉にモンモランシーが黙り込んで足を止めた。
音石もそれに続いて足を止める。
モンモランシーは少しまじもじした様子でそっと口を開いた。
「た、たしかに今のあんたはこの学院のお尋ね者よ!
みんなあんたのことを恐れてるし、
なかにはあんたのことを『貴族の敵だ』って言ってる人もいる……、
私だって……あんたがギーシュを
あんな目に合わせたのは正直言うと、許せない気持ちはある」
すると次にモンモランシーは音石から視線を外し、
照れたような口調で言葉を連ねた。
「………でも、あんたは………あなたは私を助けてくれた。
それに、あなたがギーシュと決闘した理由は
ギーシュに二股の罪を擦り付けられた
給仕を助けるためだってのも知ってます。
だからその……なんていうか………
わ、わたしは……あ、あなたのことを尊敬してるのよ、
貴族とか…平民とか、関係なく………
ひとりの人間として………」
モンモランシーがそう言い終わると
赤くした顔を隠すために前に向きなおり
廊下にあるひとつの扉に入っていった。
どうやらそこが医務室らしい。
「……おれは、誰かに『尊敬』されるような人間じゃない」
モンモランシーに言ったたわけじゃない、
ただ……音石はだれにも聞こえることなく、ポツリと呟いた。
どこか複雑で、どこか悲しさを感じさせるような表情で………。

152 :
これで…>>126>>135の勝利だ。
今回はちょっと短めです(決した、ブタだったァーー!!じゃないからな!)
リゾットの鉄の使い魔では リゾットとフーケとの絡みがよかったので
自分もなにか独自のヒロインでも作ろうと思い、
ゼロ魔の女キャラで
一番好きなモンモンランシーと絡ませましたが、かまいませんね!!
でもそうなるとルイズがモンモランシーと口調が被って
ややっこしくなるので、
今回モンモランシーを音石に対してこういう口調に変更しました。

153 :
おつ

154 :
この味は…モンモンがNTRれる味だぜッ!!!

155 :
乙ー!
アンタの作品大好きやー!

156 :
>>152
投下乙でした!
以前ゼロ魔はアニメ版しか観たことが無いとおっしゃられてましたが、
外伝小説タバサの冒険に「持った人間を操る」インテリジェンスナイフの
地下水が登場することはご存知でしたでしょうか?
時間軸的にこの時期のタバサは多分まだ出会っていないので、
反省さんが前回の描写(アヌビス神を見たタバサの反応)を気にする必要はありませんが、
後々のことを考えて確認されたほうがよろしいかと思います。
以上、一読者の余計なおせっかいでした。

157 :
乙!
ギーシュがモンモンの態度にメメタァされるのが目に浮かぶぜ

158 :
うろジョジョの人が銃は杖よりも強しを宣伝してたので久しぶりにきました
結構続き読みたい作品多いんだけど叶わないんだろうなぁ

159 :
助かったぜ・・・・・・承太郎並みに頼りになる反省の人に最高の乙を

160 :
ギーシュが成長しないとモンモンが、モンモンがーっ!

161 :
音モン!そういうのもあるのか乙!

162 :
仮面の人とかまだかなー?

163 :
11時30に投下します。

164 :

「やれやれ…こいつを開発したのが我が愛しの祖国だと良いんだが。」
ゴーレムから少し離れたところから破壊の杖を使った大統領がそう呟く。
(ベストタイミングって奴だな、あそこまで破壊されればもうゴーレムも動くまい)
破壊の杖を降ろし、ゆっくりとルイズ達の方へ歩いていく
(さて、どう言い訳しようか…)

爆発が終わった後も、ルイズ、キュルケ、タバサの三人は唖然としていた、
タバサは多少の予想はしていたのでいち早く大統領の仕業だと気がついた。
周りを見回し、大統領の姿を見つけ、駆け出していく
そんなタバサの後姿を見て、残りの二人も気づき、大統領へと向かう
特にルイズは全力疾走で向かっていく。

大統領は三人を見て(特にルイズを)無事を確認し安心したと同時に焦る、
「ファニィィィィーーー!!」
絶叫と同時にルイズは大統領に飛び掛る、大統領はルイズを受け止めたため破壊の杖を手放し、
それをタバサが素早くキャッチする。

大統領はルイズの顔を覗く、ムスっとした顔から徐々に目に涙が溜まっていく、
「ゴーレムに…踏まれて、死んだかと思ったわよ…バカ。」
消え入りそうに呟くルイズの顔を胸に寄せる。
キュルケはやれやれと言った表情でルイズの後姿を眺めている
タバサの方は破壊の杖を調べた後、大統領をジッと見つめ、ボソリと呟く。
「どうやって?」
大統領はタバサと睨み合いになる形で視線を合わせる、
ルイズも泣き止み、疑問が噴出す事となったが、大統領は話を逸らす
「なあ、その前にミス・ロングビルを探さないか?ずっと姿が見えないんだが」
「「あ!」」
ルイズ、キュルケは忘れていた為、バツが悪そうに顔色を悪くするが
(話を逸らされた…)
タバサ一人だけが大統領が秘密にしたいことに気づいた。

165 :
マンインザミラーッ!
>>163の投下を許可しろぉーッ!

166 :

「皆さん!ご無事でしたか!?」
話に出た直後、ロングビルが姿を現す。
(タイミング計ってたようだな…)
目元を歪ませながら大統領はロングビルを見る、
ロングビルは全員の無事を確認した後、破壊の杖を自身に預けるように言う、
タバサは大統領の目を見ると、大統領が頷くのを確認し、ロングビルに破壊の杖を手渡す。

「しかし…ゴーレムを一撃で倒すとは凄まじい破壊力ですね…」
うっとりと破壊の杖を眺めながらロングビルはゆっくりとルイズ達から距離を取り、
破壊の杖をこちらに構えた。

「ミス・ロングビル、やはりお前がフーケか…」
大統領の発言にルイズとキュルケはパニックに陥ったのか動きが完全に止まっていた、
「あら?気づいてたの?」
「あまりにも不自然すぎたんだよ…フーケの発見、行動、どれも“納得できない”」
「フフフ、で・も、破壊の杖がこちらにある以上貴方達はチェックメイトよ。」

大統領は腕を組みながら目を瞑り、苦笑し始める
「ククク…チェックメイト、ね…」
ミス・ロングビル、改め土くれのフーケはその様子を見て訝しむ。
「何がおかしい、頭がイカレちゃったのかしら?」
「こういう風に笑うのはな、勝利を確認できた時の笑いだ…フーケ、お前の敗因は相手を知らなかった事だ」
大統領の言葉にフーケは混乱する
「敗…因?」

フーケが言い終わったと同時に弾ける様に大統領はフーケに向かって走り出す、
「なっ!…くっ」
少し意表を突く形になったが、フーケは素早く反応し、破壊の杖を使おうとするが
ゴーレムの時のような爆発は起こらず、ただ虚しく引き金の音が鳴る。
「残念だがそれは単発型でね…」
「!ああっそうかい!」
フーケは片手に杖を持ち、大統領へ構える。
「詠唱は終えてるよ!勝った!」
予め詠唱を唱え終えているらしく、構えただけで放てるようだしかし…
「なんども言わせるな、勝ちはこちらだ。」
大統領が言い終えた瞬間、フーケの杖が手元から弾き飛ばされる。

167 :
支援って今さ

168 :

「ご苦労様だ、ミス・タバサ」
「…問題ない。」
フーケと同じように詠唱を終えていたタバサは
大統領がフーケを捕まえるのに手間取った時に放てるようにしていたのだ。
再び意表を突く形となり、D4Cを重ねた手刀をフーケの首筋に叩き込む、
「フン、少し注意深ければ勝てた知恵比べだったな、フーケ。」
(まあ、今の魔法が無くともD4Cの射程距離内まで近づけていたからいざとなったら
殴って気絶させていたが…)
倒れこんでいるフーケを見つめていると、ルイズ達三人が近づく。

「あ、アンタ最初っから気づいてたわけ!?ミス・ロングビルがフーケだって!」
「いや、怪しいとは思っていたが確証がなくてな、自分から言い出すのを待っていた、
…それにしても、ミス・タバサも魔法を詠唱しておいてくれて、助かったよ。」
その言葉を聞いて、少し間を空けながらタバサは答える
「念のため、…それも読んでいた?」
大統領はフーケを背負いながら「さあてね…」と少しぶっきらぼうに答える、
そして三人の方を向き「早く帰ろう」と呟いて、タバサの使い魔の方へ歩いていく。
ルイズとキュルケはその後を追いかけるが、タバサだけはじっと大統領の方を見つめていた。
(彼は…敵に回ると想像できないほど恐ろしい…)
「けど」っと呟く、
(彼が敵に回る所は“想像”できない)
「タバサー!早く来なさーい!」
キュルケの呼ぶ声に従って、タバサは歩き出す。

ゴーレムが暴れたせいで馬車は壊れ、馬も逃げ出していたが、タバサの風竜のおかげで
帰りの道は早く帰れた、大統領は風竜の背中で行き道と同じく熟睡していた
「どんだけ寝れば気が済むのよ…」
「寝かしておいてあげなさい、ダーリンが一番活躍したんだから。」
(そこまで聞かれたくない事?…彼の手品の種は)
それ以外にも理由があった事をタバサは知るよしもない。

169 :

学院に戻った四人はオスマン校長に事のあらましを説明し、破壊の杖を学院に返した。
フーケの正体が自身の秘書だということにあまり驚いていなかったが、
ルイズが雇った理由を聞いたところ、「セクハラをしても怒らなかったから」
という理由で雇ったと聞き、オスマン以外の全員が(このエロ爺)と心中で繋がった。
その後大統領が破壊の杖を使用した事で使用方法をなぜ知っていたのか?という質問に
「故郷に似たものがあったから」という当たり障りの無い答えを出す。
(別に嘘でもないしな)
そして最後にフーケ捕獲の恩賞の話になったが大統領が貴族でないという理由で
恩賞から外れたため、ルイズが抗議にでようとするが…
「別に恩賞のためにやったわけではないし、この国の者でもない私が勲章を貰っても仕方が無い」
と言ってルイズを止め、結局恩賞は無しという形になった。
納得がいかないルイズの機嫌を直そうとオスマン校長が話題を変え、
今夜は舞踏会があると伝える、フーケ捕獲の名誉もあり、今日の主役だとも言っておき
それで話を終わらせる。


170 :
しえーん

171 :

大統領はルイズと部屋に戻って舞踏会の衣装を着るためにルイズの服を着替えさせていた
最初は女性の使用人に着替えさせようとしたが大統領が「私がやらなくて大丈夫なのか?」
という問いに「アンタできるの?」と少し驚いていた。
実際はスカーレットが夜の誘いで着せたり脱がせたりを大統領にねだっていた為、
覚えざるをえなかったのだ、大統領に就任し、ファーストレディーになってからは流石に無いが。
「ねえ、本当に恩賞無しでいいの?」
「ああ、私は故郷で公職に就いていたから尚更な…」
ドレスを着せながら大統領は自身の国を思い浮かべた
(私が居なくなったせいで混乱しているだろうな…戻れるあても無し。
だが、遺体と遺体は引き合う、その時、私がここに来た意味もわかるだろう…。しかし、)
続けてフーケが破壊の杖を盗んだ夜の夢を思い出す
(あの夢はなんなのか?…あれだけが目下最大の“警告”だ、決してただの夢ではない!)
思索に耽りながらもルイズのドレスを着せ終え、一息つく。
「よし、立派な淑女になった」
「子ども扱いは止めなさい…」
顔を少し赤らめながらムッとさせるルイズを尻目に、大統領はドアを開ける
「さて、不肖ながら、会場までエスコートさせてもらおう」
大統領のその言葉にルイズはクスリと笑う。
「いっその事、会場までと言わずその後のダンスもお願いするわ、ジェントルマン。」
ルイズの誘いの言葉に、一瞬驚くが直ぐにフッ、と笑いながら答える。
「…畏まりました、レディ」

172 :
以上、投下終了です。
フーケの討伐後を書いただけなので正直、見所あんまりありませんが…
折り返し地点だと思ってください。

173 :


174 :
うひょー!安定感があるね!乙

175 :
乙ー!

176 :
乙!
大統領は成熟した大人って感じで格好良い!!

177 :
保守

178 :
D0C、まとめサイトには途中までしか載ってないな…

179 :
最近まとめ知識ある人が居ないのか?
自分はまとめよく分からんのだが

180 :
保守

181 :
出かけ先で携帯から書き込もうとしたら規制で困った

182 :
避難所のサル用のところに書き込むのはありなのかね

183 :
投稿したらしたでこっちにそのこと書いてほしい

184 :
D0Cの大統領マジかっこいい
続きをwktkしながら待ってます

185 :
保守

186 :
また賭けるか・・・・・・次はいつ投稿されるかをな

187 :
俺は今日中に投稿されることに>>186の魂を賭ける!

188 :
それじゃあ僕は>>187の魂!

189 :
俺のたまきんを賭けるぜっ!!

190 :
この賭けはアリなのかダービー?

191 :
フン! いいだろう?
ギーシュの魂に加えてマリコルヌの貞操でコールだ…

192 :
しかしこれだけではあまりに寂しいので…
さらに!
“タバ茶”をレイズする!
さあ、これに相応しいものを掛けてもらおうッ!

193 :
てめーに それはッ! 
ちいねえさまの下の毛が頭髪と同じ色なのかどうかしゃべってもらう・・・・・・

194 :
なにをいってるのかね?
下に毛なんか無いに決まっているだろうよ!
“タバ茶”に相応しいものとして“キュル毛”を賭けるぜ

195 :
こ、こいつ…知っている!
この反応!ちいねえさまの秘密を知っているな!
しかし…しゃべればダービーの命はない…
誰にとは言わんが消されてしまう…
コーラを飲んだらゲップが出るくらい確実に…

196 :
タバ茶ってどっちの意味のタバ茶だ・・・・・・

197 :
さあ! 飲む(コール)か! 飲まない(ドロップ)のか!
ハッキリ言葉に出して言ってもらおうッ! >>196

198 :
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

199 :
タバ茶とは魅惑の響きだな、感動的だ

200 :
だが無意味だ

201 :
タバ茶ならいくらでも飲めるよね
むしろ直のみしたい
催すたびに直のみしたい

202 :
「あ… あのタバサの>>201を見る目……… 養豚場のブタでもみるかのように冷たい目だ。残酷な目だ… 『
かわいそうだけどあしたの朝にはお肉屋さんの店先にならぶ運命なのね』ってかんじの!


203 :
お…恐ろしいッ おれは恐ろしい!
なにが恐ろしいかって タバサ! 軽蔑の眼差しが痛くないんだ
快感に変わっているんだぜーーーーッ!!

204 :
>>203
オーノーだズラ おめえもうだめズラ
ジョゼフに召喚されちまったズラ 波紋入り契約のキスをされてしまったズラ

205 :
         _..  - ―‐ - ._
        , '"          \
      /"レ'/  /\_. へ、 ∧lヽ
     / /´ {/ノノ ,ィ爪Yハ`′  ',
   /  / // ノ´    ヽ ', l
   |  /   //   :    ', l |
   | l| l  /     .::     ,,l !l |       
   |l |l |  ド==、、::  ,r='"-| ! |
  ノ|| |l l  |t‐t・ッテ,  ィrt・ッラ|l  |       
≦ノノll│ |  |. ´¨~〃 .,,_ ヾ~´ .|l lト、        
_./ノ|l | |  l:.   ゙:. ′゙    ,'|l l|ヽヾニ=‐
‐''"ノ| | |  ト、     `''"__  /:l  l\ー-`ニ=-
:::´ノ,l li l  | ヽ、 '‐ニ-'' ,イ:::l  lヾミヽ::l    さて…今日の投下は10時頃に行なおうと思う、  
:::‐"/ / ハ l  | ヽ ヽ、._"_/ l:::! l`ヽ、`二>‐      その間は…まあゆっくりと噂のタバ茶でも飲んで話でもしようや。
:::::/ノ/ } i l― -、ヾ三/ __ll l::::::::::::::`>― ---- 、
::::"´:::::::;.' ノ、 ', ⊂) 〈フフ  _,l l::::::::::::r'´ /¨>'" )
:::::::::::::://::| ヽ ⊂⊃ノ7 '"´l _l. ― 、`='-、/( _,∠ヽ
:::::::::/´:::(cl=  ⊂二ノ   ,r'‐、  ‐= }   `ヽ |   }
:::::::::::::::::::::::`l   ⊆¨l  ハ __ノ} <l ,' ⊂) 〈フフ\-‐'´}
::::::⊂) 〈フフ:::l    ⊂ 」  { `¨´ l_> / ⊂⊃ノ7  ヽ/}
::::⊂⊃ノ7:(cl"´┌i 00 V ム Δ /   ⊂二ノ    l/}
::::⊂二ノ:::::::::l`⊂ ⊃   {` ー''"     ⊆¨l   l/
:::::::::::⊆¨l::::::::l (フl」<)=、‐-∨⌒ヽ     ⊂ 」   /
 ̄ ̄⊂ 」 ̄ ̄ ̄r'rブノ   `  ',   ┌i 00 // ̄ ̄
  ┌i 00'" ̄ ̄} }} ̄ ¨''‐、____ノ_  ⊂ ⊃ //
  ⊂ ⊃ |`` ========''"r==、ヽ-(フl.」<)‐'´
  (フl」<) ',          ノ   } }

206 :
まさかの投下ズラ。

207 :
それでは投下開始します。

208 :
大統領がフーケ討伐の時に自らの運命を知らせる夢を見たように、
ルイズもまた夢を見る、

自分の実家であるラ・ヴァリエールの屋敷の中庭にある池、
その真ん中ポツリと浮かんでいる小船の上でルイズは泣いていた。
魔法が使えないことへの不甲斐なさ、母と自分の将来にたいする恐怖、
どれだけ泣いただろうか?ふと、小船にもう一人、自分以外の人がいつの間にか乗っているのに気づく。
涙でぼやけた目を擦りながら尋ねる
「貴方はだあれ?」
尋ねられた人物はゆっくりと立ち上がる、スラリと背が高く、真っ白い布を体にまとっている
体つきと顔に生えた髭から男であることがわかるが顔は太陽の逆行のせいでよくは見えない。
男はルイズを抱きかかえる、
ルイズは抵抗しようと思ったがあまりにも“安心感”があり、暖かさと心地よさに包まれたため。
それを止める…、
男はルイズの顔を覗き込む、男の顔は…やはりよく見えない。
少し間をおき、男はゆっくりと呟き始める、
「…この世界に意味の無いものは無い…どんな物事にも…かならず意味はある。
君がこれから辿る道筋は…一見して無駄かもしれない、だが…必ずそこには意味がある、理由がある、必要がある。
そしてなにより…糧がある。」
その最後の言葉を聞き、ルイズの目がゆっくりと暗くなっていく、
ルイズは男の言葉を反芻しながら視界が完全に真っ暗になったときに覚醒した。

目覚めたルイズはまだ若干頭の中をカラッポにしていたがだんだん意識がはっきりしてくると
床で寝ている大統領を見つめる、なぜ見つめたのか理由は無かった、あえて言うなら
夢の中の男と大統領の雰囲気が少し似ていたからかもしれない。

完全に意識が覚醒すると視線を外さぬまま大統領を起こす。
「…今日はやけに早いな…」
大統領が仰向けのままうっすらとあけた目を向ける。
「ん…良い(?)夢見たからかもね、さあ早く起きて」
大統領がルイズの寝具を直し、その間にルイズが顔を洗い髪を整え、大統領が服を着替えさせるという
いつものサイクルを終え、授業に赴く、

209 :
その日はギトーという教師による授業だが、どうも自身の得意系統である風の魔法に完全に陶酔しているらしく、
長い時間つかって風の魔法の長所しか語っていなかった。
大統領はうんざりした目でギトーを見つめていたが、
あの過信とも言える(というかそうとしか言えない)自信はスタンド使いにも(ある程度は)通じるものだ。

(自らのスタンドへの絶対の自信…それは最大のスタンドパワーになる…
そういった点ではあの教師も一応尊敬はできる…筈だ…多分)
やがてギトーが実際に風魔法の強さを知らしめるためにキュルケを挑発し魔法を唱えさせる、
キュルケの放つ炎の魔法をギトーは風の魔法で掻き消し、そのままキュルケを弾き飛ばす。
一連の動きを大統領は瞬き一つせずに見つめていた。
やがて授業が終盤に入ると不意に教室のドアが開き、
頭にカツラを付け、派手な衣装に身を包んだコルベールが大慌てで入ってくる、
学園に王女殿下が視察にやってくる事を知らせに来たようだ。
(昔の貴族のような格好をしているがここではあれが正装なのか?)
大統領の見当を外れたことを知らしめるかのようにコルベールの服装(主にカツラがずれた為に)で
教室内が爆笑の渦に包まれる。
王女が視察にくるのはかなり急な話だったようで、授業が終わった直ぐ後にやってきた、
大統領とルイズは行列の中、ユニコーンの馬車に乗った王女を眺める、
大統領は王女を見定めてこの国をそれなりに理解する為の判断材料とすることにした。
(かなりの器量良しだな…民衆からの人気も高いらしい…)
行列の中には学院の貴族ではない平民も混じっていることからも察せられる
そして馬車の中で王女の隣に座っている男に目をつける、
(かなり痩せてはいるが服装と王女の隣に座っていることから察してかなり地位が高い
さらに注意を引いたのは目だ、政治内での修羅場のやりとりを経験している目、
一見穏やかだが隙あらば喰らいついてくるあの目、外交でなんども見たことがある…)
恐らくは国家の政治、それもかなり重要な事に携わっている者だろうと大統領は判断した。
(そんな人間が来る…フンッ、ただの視察じゃあないな。)
大統領が思索を巡らしているといつの間にか大統領の隣にいたキュルケが
「トリステインの王女って言っても、あんなものね…。あたしの方が美人じゃない、ダーリンはどっちが綺麗だと思う?」
それを聞いて大統領は少し考え込むふりをして
「さて、美しさで言えばキュルケだが清楚な部分では王女様だろう…可愛さで言えばうちのご主人様だが…」
その言葉を聞いたキュルケはクスリと笑いながら同意した。

そんな中ふと大統領はルイズのほうを振り返る、普段のルイズならキュルケと話していれば大目玉を食らうはずだがそれがなかったため、違和感を感じたのだ。
どうもルイズは何かに目を奪われているらしい、大統領が目線を追いかけるとグリフォンに乗った羽根付き帽子の貴族がいた、
護衛役なのだろう、ルイズの目は完全に恋する乙女になっていた、キュルケもルイズと大統領の視線に気づいたらしく
その護衛役を見て顔を赤らめる、
(キュルケはいつもの事らしいからほっとくとしても…ルイズは違うだろう…何かあるな。
だがまあ…人の恋路に関わるつもりは無い…少なくとも私に関わらない以上はな…)

210 :
支援

211 :
王女の凱旋が終わり、その日の授業も終えて、大統領とルイズは部屋に戻る、すでに外は真っ暗になっていた。
ルイズは凱旋の時に見た護衛役の事が忘れられないのだろう…窓の外を眺めていて、たまにため息もついている、
大統領もやることがないためそんなルイズを見ているしかない、壁に背をもたれさせていた。
しかしそんな静寂をやぶりドアをノックする音が響く、
長いノックを二回、短いノックを三回。
それを聞いたルイズは立ち上がって急いでドアを開ける。
そこにいたのは黒いローブに身を包んだ女性だった、顔もフードを被っていて見えないようにしている。
異様な風体に大統領は驚くが殺意が無いため警戒はしたが直ぐに如何こうはしなかった、
ルイズもその姿に驚いたが黒いローブを着込んだ女性は口元に指を立てる、
「静かに」という意味だろう、そして女性はローブの隙間から杖を出し、ルーンを唱える、
部屋に光の粉が舞いながらルイズがポツリと呟く「ディクトマジック?」
(たしか探知魔法だったか?)
ルイズの質問に女性は頷く。
「どこに目や耳があるか判りませんから」
そういってその女性はフードを外し顔を見せる。
黒いローブの女性はなんとアンリエッタ王女だった、
「姫殿下!」
と、ルイズは慌てて膝をつく、
しかし大統領の脳内はこの事態に対して軽いパニックを起こす、
「アンタ何やってるの!」
自分に続いて膝をつかない大統領を叱咤するルイズ。
それに気づいて大統領も膝をつく
昼間に凱旋したこの国の王女、つまりトップが自分の主人の部屋にいる…
しかも人目を忍んでくるというトドメつき、
大統領は背骨に氷を詰められたような気分となる。

212 :
ルイズと王女の昔話は咲きに咲いた
王女という身分があるあたり同年代の友達が従姉妹のルイズぐらいというのも頷ける話だろうと
大統領は氷よりも冷めた瞳で二人のやりとりを眺めてる。
(ルイズは別に構わない…あの表情は純粋に楽しんでいる…だが王女の方はヤバイ、楽しんでいる反面どこか芝居がかっている)
嘘を見抜く技術を持った人間がいるが、単純に嘘を見抜くよりも本当の事を交えた隠し事の方が見抜くのは難しいものである、
しかし大統領はそれらを多用する政治家、企業家、スタンド使いを相手取り勝利してきたのだ
王族とはいえ政権闘争の前線にもでていない王女では大統領の目に偽るのは無理があった。

過去の先人達の例に習い自分がこれからくるであろう“厄介事”にどうやって対処しようかと考える反面、
この手の類は避けて通れた例が無いという諦めという感情も沸いて出てきた…
やがて王女の表情が暗くなり始め、「あの頃は楽しかった」等という台詞がでてきて大統領は
(ああ意外と早かったな)と死刑が執行される囚人の気分になった。
ルイズが王女を心配すると王女は「なんでもない」、「自分が恥ずかしい」「頼めるようなことじゃないのに」と
(Dioではないが「ウザイ態度はもう止めとけ」と言いたくなるな…)
第三者であるなら誰でもわざとらしく聞こえる台詞だがどうも大の親友であるルイズにはそうきこなかったらしく。
「昔はなんでも話し合った仲じゃございませんか!」と頼れる友人として接している。
大統領は自らは席を外すと二人に伝えたが
「メイジにとって使い魔は一心同体」と王女に言われ引き止められた。
使い魔なんぞ私的なものであって公的なものの方が重要だろうが!っと大統領は怒鳴りたい気持ちをグッと押さえ聞きたくない話しに耳を傾ける。
王女の話を要約すると
アルビオンでクーデターが起こり、反乱軍であるレコン・キスタが勝利する直前であるということ
レコン・キスタが次に攻めてくるのはトリステインの可能性が一番高いということ
レコン・キスタに対抗するためにゲルマニア皇帝との婚姻を成立させなければいけないということ
その婚姻、及び軍事同盟を妨害する材料をレコン・キスタが探しているということ
最後に、かつてアルビオンの皇太子と王女は恋仲で手紙を送った事
手紙が公になれば婚姻が破棄されてしまうということ

大統領は手紙を送った事を聞いたあたりで王女の首をD4Cで切り飛ばしたい思いに駆られたが。
自身が民主主義の時代に生きていたことを思い出し溜飲を下げる

213 :
王女の方はもう隠す気も無いらしい
「貴族と王党派が争いを繰り広げているアルビオンに赴くなんて危険な事、
頼めるわけがありませんわ!」
(全部自分で言ってるぞオイ)
そしてルイズの方はルイズの方で
「姫さまの御為とあらば、何処なりと向かいますわ!姫さまとトリステインの危機を、
ラ・ヴァリ エール公爵家の三女、ルイズ・フランソワーズ、見過ごすわけにはまいりません! 」
(勇ましいことだなうちのご主人様は…)
大統領はトントン拍子で進む会話を聞き流し、今回の件を少しだけ考える。
(そもそも昔のラブレターがばれた程度で婚約破棄ってどうなんだ?いや待て、
戦争で疲弊しているであろう反乱軍に対して単独で防衛できないという点から考えれば…
ゲルマニアへの取引材料は王女の純潔ぐらいしかない?あるいは単純に皇帝の趣味か?
というか今気づいたが王女の隣に座っていたあの男は王女のお目付け役か、
コイツが馬鹿な真似をしない為に一緒にいたのか、ちゃんと仕事しろよ!
それよりなんでルイズに頼むんだ!他に優秀な奴がいるだろ!信頼できるからか?何を信頼したんだ?!)
大統領はこの王女の“真の目的”に気づき始めていた…その時、
「姫殿下!その困難な任務!!是非ともこのギーシュ・ド・グラモンに仰せつけますよう!」
大統領と決闘したあのギーシュが扉を開けて入ってきた
(…厄介者の二乗だ…)
大統領は頭を抱えたが王女は大歓迎らしい、ギーシュの父親が元帥ということで信頼できたのだろう。

ルイズの目を見て、そして王女、ギーシュの二人がいる今、説得が無駄だということを悟り…
ルイズから荷造りの命令を受けた瞬間、大統領は…一時的にではあるが考えることを止めた。

214 :
支援のオーバードライブ

215 :
以上、投下終了です。
若干アンリエッタにアンチ的なものが入っていますが
大統領の主観から見た点のみなのでご了承ください。

216 :
投下乙でした

217 :
改めて考えると、この辺ツッコミどころ満載だわなw
俺なら逃げるね

218 :
急に最低オリ主みたいになっててわろたwwwまあしゃーないけどな。乙

219 :
アニキは手を踏みつけたんだっけか

220 :
アン様、小娘だからなw そこがいいと言われればそうなんだけどさw

221 :
保守

222 :
つまりこういうことか?
私はビッチの依頼をこなさない限りルイズをゲットできない…

223 :
メローネ「俺はジャッポーネでやった『バハムート何某』というゲームでビッチな姫には慣れているッ。
     この程度ならどうということはないぜ…」

224 :
保守

225 :
小娘が育つか否か…
ジョジョ時空に影響されると小娘もたくましくなるから楽しみだ。
それか、一瞬でフェードアウトする脇役になってしまう危険もあるが…。

226 :
重要な役だと思ったら即効であっさり死んだり

227 :
ゼロ魔小説について語るスレなんて物があったから目を通してみたが
ちょくちょくここの作品の名前も挙がってるね
ゼロ魔はまだまだ元気なんだって事がわかった…だからこのスレも現役だ!

228 :
しかしゼロ魔完結決定ですよ?

229 :
むしろその辺の流れは殆どここが発端なんだぜ。
ベイダー卿があったここが出来て一気にブレイクして他に広がった

230 :
逆に考えるんだ、完結してしまえば
後から設定が変わって書き手の人が苦労することも無くなry

231 :
>>227
しかもあそこ、レビューwikiなんてあるんだぜ…

232 :
>>228
あら本当。でも逆に考えよう、後一年ぐらいは楽しめると
それとも烈風カリンの時代が来たと考えるべきか

233 :
もう終わりなのか
ワルドさんどうなったの?

234 :
完結後のストーリーをジョジョ色に染めちまえ

235 :
ネタバレスレでどうぞ
ttp://kamome.2ch.net/test/read.cgi/bookall/1298540713/

236 :
安価付け忘れた
235は233

237 :
  Hoshu
.  ┌─┐
.  │  │
.  │  │
.┌┘  └┐
 \    /
   \/

238 :
性別変更ジョジョキャラを召喚するとか
(ブチャ子さん、ナラ子さん、プロシュート姉貴、エルメスの兄貴etc)

239 :
何言ってんだエルメェスは元から兄貴だろ
小ネタとかならまだ面白そうだけどな、性転換

240 :
アナスイ…

241 :
完全なる人類の夜明けに到達したエルメェス兄貴
世界が一巡したのに兄貴が男になっていなかったことに絶望したッ!

242 :
「小説家になろう」ででもやってろ

243 :
素直にジョセフを召喚して女装ネタをやればいいんだよ!

244 :
ティータイムいつまでも待ってる

245 :
どれかといわず、すべての未完作品の続きを待っているぜ

246 :
語るスレレビューで仮面が気になり、一気に読んでしまった…
他にオススメありませんか?

247 :
スターダスト アヌビス神 鉄
辺りは彼方此方で名前見るかな

248 :
個人的にはギアッチョ。未完だが。

249 :
銃は杖よりも強し
タバサとエルザがニコニコに出張中だぜ

250 :
どういうことだ?

251 :
うろジョジョでぐぐれ

252 :
ルイズ魔改造ならぬサイト魔改造なんてのを妄想した。
例えば、サイトと石仮面を同時召喚して、サイトが持ち前の好奇心でそれを被って吸血鬼と化す、とか。

253 :
不謹慎ながら、以前このスレであった、スタンドで災害救助って話を思い出す。
やはりクレイジーダイヤモンドが最高かな。
けが人を瞬時に治療できるし、パワーや直す能力で瓦礫を撤去して救出活動もできる。
壊れた建物も、道路や電気や水といったライフラインも元通りだ。

254 :
ただ、失われてしまった命は・・・

255 :
>255
失われた人々の意思は、我々が未来に繋げなければならない。
それが残されたものの義務だ。

256 :
>>255
自己レスしなきゃカッコ良かったのに…

257 :
原発冷やす為にペットショップとギアッチョを

258 :
ペットショップはあれ冷やすっつーか冷やした物体ぶん投げてくるというか

259 :
カビをばら撒け『グリーン・デイ』ッ! 放射性物質を朽ちさせてやるッ!

260 :
クレイジーダイヤモンドで原発を直せば万事解決
至近距離まで直しに行くジョースケの身が心配だが…
トニオさんの料理かヘブンズドアーがあれば多分大丈夫さ

261 :
万事解決って直せばいいってワケじゃないから手が出せないんだろ……
キチンと情勢知っとけよ

262 :
知ってるよ
だがクレイジーダイヤモンドなら放射性物質も元の場所に戻るし反応も収められると思うんだが
スパゲティーを原料に戻したり、コンクリをタールにしてしまうくらいの柔軟性だぞ?
飛散した放射性物質を元の場所に戻したり反応を巻き戻して止めるくらい出来ないはずが無い

263 :
むしろグリーン・デイが放射性物質を朽ちさせるというのがありえんだろ
あのスタンドは生きているモノにしかカビは生えない
死体状態になっていたブチャラティは有機物にもかかわらず朽ちなかった
放射性物質なんか朽ちる訳がない

264 :
>>262
壊れた貯金箱を直しても飛び散った中のお金は戻ってこない
つまりそういう事だ

265 :
素直に全てガオンした方がいいよな

266 :
ウェザーリポートでピンポイント集中豪雨をだな

267 :
億泰がひたすら周辺の空気ごと削り続ければ

268 :
>>267
ギャァー
汚染区域が丸ごとこっちへ吹っ飛んで来るー!
そんな事態が

269 :
話は変わるんだが、その・・・。
今回の地震と津波で『鉄塔』が受けたダメージは・・・。
どこに返っていったんだ?

270 :
地球

271 :
知るかよ。

272 :
>>269
普通の鉄塔にゴムボールを思い切りぶつけたらどこへ行くか?
普通に鉄塔の外に飛び出すだけだな。
そもそもスーパーフライは受けたダメージを返すスタンドじゃないぞ。

273 :
>>272
俺はディアボロの大冒険のせいで反射ってイメージがついてしまった
本来はなんだっけ

274 :
>>273
受けたエネルギーを放出する能力じゃなかったけか?
鉄塔がダメージを放出して、その攻撃は外に逃げて行き、鉄塔は無事。ただのそれだけ。

275 :
ゼロ使はキャラを数人知ってる程度だったがジョジョSSに飢えてたんでまとめ読んでみた
かなり堪能させてもらった。サンクス

276 :
そろそろ投下を期待してるぜ

277 :
まとめ読んで最高にハイッになったぜ

278 :
こわいこわい

279 :
反省する使い魔!  第十三話「土の略奪●雷鳴の起動」

「ねぇタバサ、あなたはどう思う?」
「………?」
食事を終え、ルイズに付き添って医務室にいるキュルケとタバサ。
メイジの女医師に音石からもらった金を支払い、
治療をしてもらっているルイズの後ろで
キュルケがタバサの耳元で、ルイズに聞こえないように呟いた。
「……何が?」
「オトイシの『アレ』の事よ」
『アレ』とは言うまでもなく
『レッド・ホット・チリ・ペッパー』のことである。
「彼の能力のこと?」
「そうよ、あたりまえでしょ?
あららァ〜、それともなにィ?もしかして変の意味で考えちゃったァ〜?」
「………あなたと一緒にしないでほしい」
「ふふっ、それもそうね。そう睨まないで頂戴
それで、どう思う?」
「………どう、とは?」
「なんでもいいのよ、いろいろと疑問はあるでしょ?
いくつか聞かせてくれるだけでいいの、
わたしも考えたんだけどさァ〜、
いろいろと疑問が多すぎて逆にサッパリなのよ」
ある意味キュルケらしいとタバサは思った。
次にタバサの口から小さくやれやれと溜め息が出る、
なんでもかんでも自分に意見を求めるのはキュルケの悪い癖だ。
でもそれはそれでキュルケらしいと、妙に納得もいった。
そしてそんな親友キュルケの為に、頭の中で疑問点をまとめる。


280 :
「彼は……ただの平民じゃない」
「そりゃそうよ、あんな強い亜人を操れる彼が
『ただ』の平民だったら、私たちメイジの立場がないわ!
あ……でも、それならあの亜人は一体何なのかしら?
やっぱり、あのギターって楽器がマジックアイテムになってるのかしら?」
「………たぶん、ちがう」
「どうしてそう言い切れるの?」
「正直言うとこれは勘。でも少しだけ思い当たるところはある。
以前彼自身もマジックアイテムを使っていると言っていた
でもあれはたぶん嘘、態度があまりにも素っ気無かったし
それに彼が『能力の正体がマジックアイテムを使っている』と
すんなり答えたところがとてもひっかかる」
「…確かに、彼の性格から考えてそんなに自分の能力の秘密を
すんなり他人に教えるなんて奇妙で不気味ね……
でもじゃあそれって………」
キュルケが顎に手をあてて考える仕草をとる。
そしてそんなキュルケの考えを予想できたタバサは
彼女のために結論を口にした。
「あれは……マジックアイテムとも……魔法ともまるで違う
わたしたちの常識を遥かに超越したナニか」
「……もしかして、未知の先住魔法とか?」
「それも考えにくい、彼はエルフには見えないし
そもそもあの亜人には、魔力の流れを感じなかった」
「そう…よね…、ギーシュとの決闘のときは
距離があったからわからなかったけど、
昨日の戦いでは彼と彼の亜人のすぐ傍に私いたけど
そんな感じ全然しなかったわ………」
なにやら更なる疑問が増えてしまった気がして、
キュルケは両手でわしゃわしゃと頭を掻き回した。


281 :
「あァーーもうッ!わっかんないわねぇ!!
一体彼って何者なのよ!!」
「病室では静かに!!」
(まったく、仮にも貴族がなにやってんだか…)
後ろで突然叫んだことで、医務室の専属メイジに
元気よく怒鳴り怒られたキュルケにルイズは胸の中で溜め息をついた。

【ガチャリ】「失礼します」
するとキュルケたちのさらに後ろで、
医務室の扉が開く音と同じくしてモンモランシーが入ってきた。
「あら、モンモランシーじゃないの
一体どうしたのよ?熱でもあるの?」
「はァ?な、なんでそうなるのよ?」
キュルケの挨拶に続いた質問にモンモランシーは首を傾げた。
しかしキュルケは別に皮肉で言っているわけじゃない。
本当にモンモランシーを心配して質問したのだ。
なぜなら………、
「だって…あなた顔すっごい赤いわよ?」
「え、ええぇッ!!?」
モンモランシーはすぐさま両側の頬っぺたに手を当てた。
………熱い、とても熱い。熱と勘違いされて当然の熱さ。
原因はわかってる、わかってはいるけど……
まさかここまで自分は顔を紅くしているとは思わなかった。
そんな自分の顔をルイズたちがまっすぐ見ている。
実際は純粋にクラスメイトを心配している視線なのだが、
モンモランシーはそんな視線をとても直視できなかった。
「ちょ、ちょっと!ひ、ひ、人の顔をまじまじ見ないでよ!?」

282 :
おぉおおお!!
アンタを待ってたぜぇ!!!

283 :

くるり、っとモンモランシーは顔を隠すために体ごと後ろを向いた。
しかしそこに最高のタイミングで…………、
【ガチャリッ】「よー、ルイズいるかァ?」
「キャアアアアアアアアァァァァァッ!!!??」
「おわァッ!!?」【ビックゥッ】
原因である男、音石明が入ってきた。
モンモランシーの壮大な絶叫が鳴り響く。
当然この後、医務室専属メイジに
「病室では静かにッ!!!」
とキュルケと同じように怒鳴られたのは言うまでもない。
まあこの医務室専属メイジ自身もけっこう大概のような気もするが………

「てめぇ一体どういうつもりだァ?
俺が日頃大音量に慣れてるギタリストじゃなかったら
今頃耳の鼓膜がブチ破れてるぜ!」
「あ、あなたがいきなり現れるからいけないんでしょう!?」
「てめぇの頭は間抜けかァ?
ついさっきまで一緒にここまで来たんだから当たり前だろーが!!」
また怒鳴られないために結構セーブした声で音石がモンモランシーに抗議する。
ついでに言うとこの医務室は貴族専門で、
給仕以外の平民は立ち入り禁止されている。
その証拠として、医務室専属メイジに怒鳴られた後
「ここは平民の立ち入りは禁止よ!」と睨まれたが
ルイズの計らいのおかげで、
今は問題なく医務室内でモンモランシーに講義できている。
そんなドアの前の二人のやり取りに、キュルケとルイズは意外そうな顔をした。
毎度のコトながら、そんなキュルケとルイズに対して
タバサはいつものように本を読んでおり、
モンモランシーの絶叫の際も一切動じなかった。
「あの二人、いつの間にあんなに仲良くなったのかしら?」
キュルケの口から当たり前の疑問がこぼれた。

284 :
まあ無理もない、はたから見れば実に奇妙な光景だ、
外見的にも十分奇妙。
顔に古傷を持ち、学院の女子生徒にも引きを取らない長髪の男。
ロールヘアーと大きなリボンとロール頭が特徴的な少女。
絵になってるようでなってないような組み合わせだ。

当然外見だけじゃない、その人間関係的にも実に奇妙。
方や不思議な能力を使い、この学院の生徒一人を半殺しにし、
生徒たちの間でお尋ね者扱いされているなぞが多い男。
方やその半殺しにされた生徒の恋人関係にあった香水の少女。
『奇妙』、実にシンプルにひと言である。
そんなひと言が、この二人にはとてもよく似合っていた。

「で?ふたりして一体何しに来たのよ?
しかもオトイシ!なんであんたがモンモランシーと一緒にいんのよ!?」
「治療してもらったばっかなんだろルイズ?
傷が治ってすぐにそうカッカすんなよ、気分がダルくなるぞ?」
(誰のせいだと思って………!!)
ルイズが心の中ではき捨てた。
彼女からしてみれば、自分の使い魔が
よその女の子(しかもクラスメイト)と仲良くしているのは
あまりいい気分ではない。
普段こういう感情の対象はキュルケだと相場が決まっているが、
とうの本人は奇妙な事に音石に対して
そういうアプローチは今のところ一切していない。
おそらく二日前、音石がキュルケの部屋から出てきたあのとき
自分の知らないなにかがあったのだろう……
少なからず、キュルケを人間的に変えるなにかが……。


285 :
「でもまあ勘違いすんなよルイズ
おれはお前らが医務室にいると思って様子見に来たんだよ
でも肝心の医務室の場所がわかんなかったんだが
そこをこいつが親切に案内してくれたっつ〜なりゆきよ〜」
「そういうことよ、変な勘違いしないでよね
まったく、これだから『ゼロ』のルイズは……」
「だれが『ゼロ』よ!!」
「たくっ、お前ら二人そろってカッカしてんじゃねぇ!
また怒鳴られちまうだろうがッ!!
まったく、ルイズの性格考えて、変な勘違いして怒らねぇように
わざわざわかりやすく簡潔に説明してやったってのによぉーー、
これじゃ無駄骨もいいとこだぜ………
モンモランシー!頼むからルイズをしょうもねぇことで
怒らせんのはやめてくれ、ルイズが怒りのまま爆発起こして
その後片付けっつー二次被害受けんのは俺なんだぞ!?
ルイズもルイズだぜぇ〜?いちいち相手の挑発にのるようじゃ
周りが見えなくなって、おまえ自身が一番損する羽目になるぜぇ?」
「「…………………う〜〜…」」
ルイズとモンモランシーは小さな唸り声をあげる。
(普段の俺ならこういううっとおしい状況はとりあえずギター響かせて
押し黙らせるんだが……、まあ場所が場所だしな…
てゆーかよ〜、他人に説教すること自体俺らしくもねぇな
他人に説教できるほど立派な人間ってわけでもねぇぞ俺)
いろいろと呆れた仕草を音石は髪を掻くことで表した。
「そうよ、よく考えてみればこんなことしてる場合じゃないわ!
え〜〜とっ【ガチャリッ】……………あれ?」
モンモランシーがルイズたちを通り過ぎると、
医務室に設置されてあるいくつかの扉のうち、
手前から二番目の扉を開いた。しかしその扉の先には、
窓から太陽の光に照らされた高級そうなベッドや
棚などの家具が置いてあるだけで
そのベッドにもその部屋にもだれもいなかった。


286 :
(さすが貴族の学校の医務室だぜ
この医務室だけでもこんなに豪華な個室が設置されているとは。
個室ひとつひとつがまるで高級ホテルの宿泊部屋だぜ、
なんだってたかが医務室にこんな無駄な作りするかねぇ〜〜〜)
音石がその無駄に豪華な医療用個室にも呆れるが
モンモランシーはなぜか少し混乱していた。
しかし、モンモランシーのその混乱の正体を察した
医療室専属メイジがモンモランシーを助けた。
「ああ、ミスタ・グラモンなら一番奥の部屋ですよ」
「え?ですが前はここに………」
「なんでも『奥のほうが静かで落ち着く』だそうです
それで今日の朝、部屋を移したんです」
「あ…、そういうことですか。ありがとうございます」
トテトテとした足どりでモンモランシーは
医務室の一番奥の扉に向かっていった。
こう見ると扉まで意外に距離があった。
音石がそんなモンモランシーを眺めていると
モンモランシーはそのまま扉をノックし、個室の中へと入っていった。
するとルイズが急に音石の上着の袖を引っ張ってきた。
「なんだよ?」
「はいこれ、言われたとおり残りは返すわ」
手渡されたのは彼がルイズに託した金貨が入った袋だった。
音石が中身を確認すると、まだある程度の量は残っていた。
「はっ、意外だな」
「…なにがよ?」
「自分でもわかってるくせに聞くなよ、俺を試してんのかァ?」
使い魔の責任は主人の責任、主人の責任は使い魔の責任。
これがメイジと使い魔の間での鉄則だ。
音石が言う意外とは、
『使い魔のものは主人のもの』という理由で
ルイズが金を没収してこなかったことに対してだ。


287 :
「フフフッ、でもルイズの気持ちなんとなくわかるわ、
わたしだって仮にオトイシが使い魔だったら同じことしそうだもの」
「どういうこった?」
「あなたがそれだけ『特別』だってことよ
使い魔らしくないって言ったほうが正しいかしら?」
「あー…、なるほどな」
音石が袋を懐に仕舞う。
『特別』―――――――、たしかに音石は『特別』だろう。
使い魔らしくないというのもそのまま的を射ている。
サモン・サーヴァントで前例のない召喚された人間。
『忠実』とまで主人に従わない使い魔らしくない使い魔。
不思議で奇妙な『特別』な能力・スタンドを扱う人間。
その上、そんなスタンド使いのなかでも
あの『弓と矢』を手にしていた『特別』なスタンド使い。
ここまで特別だとかえって清々しいものだ。
その特別のおかげで、ルイズは本来の使い魔の扱い方を
特別な音石に同等に扱うのが滑稽に感じているから
すんなりと金を返してくれたのだ。
(ん?まてよ………)
袋を懐に仕舞い終え、上着から手を出したときに
音石はあることに気がついた。
医務室専属メイジが口にしたとある名前だ。
「ミスタ・グラモン?おいおいおい、
それって俺が決闘で半殺しにしてやった小僧のことか?
あの野郎、あれからだいぶ経ったのにまだ治ってねぇのかよ
どれどれぇ、おれも様子を見に行ってみるか」
「あ、ちょっとオトイシッ!?」
急に奥へと向かっていった音石に
ルイズは驚いて声をかけたが、
音石はそれを無視しモンモランシーの後を追った。
(ふっふっふっ、ベッドで安心して寝ているところに
寝かした理由の張本人が突然現れたら……………
ギヒヒッ、あいつ慌てふとめくぜ!)


288 :
よし、支援だ

289 :
早い話タチの悪い嫌がらせである。
22にもなるいい歳した大人なのに
どうもこういう子供じみた嫌がらせをするのは
どちらかというと音石本来の性格の悪さにあるのだろう。
【ガチャリ】「おらァ、入るぜ」
ノックもせず、モンモランシーが入っていった個室のドアを開ける。
部屋の構造は最初の個室と大して変わらず、
中央の壁際にベッドが置いてあり、窓がひとつ、
ドアの近くに花瓶がのった小さな机と椅子。床にしかれた絨毯。
どれもこれもが気品溢れる豪華な代物だった。
そしてその豪華なベッドの上で横になっている
ギーシュが入ってきた音石を見た瞬間
顔を蒼白にし、全身がガタガタ震え始めた。
そしてその音石もギーシュが自分に完全に恐怖する様を見て
気分がいいのか、悪どい笑みを浮かべはじめる。
「ようクソガキ、思ったより元気そうじゃねぇか
さすが魔法だな。あれだけぐちゃぐちゃにしてやったってのに
たった数日でほとんど治ってるじゃねーかァ。ええおい?」
「き…き、き、き、君は!?
な、な、なぜ!?き、き、きみがここにィ!!?」
ギーシュの体は魔法の治癒のおかげで音石の予想以上に回復していた。
半殺しにされた当初こそは、バイクで事故って間もない墳上裕也を
余裕で上回る包帯やギブスなどでの施されようだっただろうが
数日経った今となっては片手と片足を包帯でぶら下げているだけの
この世界の治癒の魔法の凄さを思い知らされる傷の治りようである。
「ちょ、ちょっとオトイシさん!?
一体なんのつもり、きゃあっ!?」
モンモランシーが二人の間に割って出ようとしたが
音石がすかさずモンモランシーの腕につかみかかり
彼女を自分の傍に引き寄せ、彼女の耳元で話しかけた。
「べつになんもしやしねぇよモンモランシー
ちょっとばかしからかってやるだけさ」


290 :
普段のモンモランシーならそれでも止めに入るだろうが
今の彼女の状況が彼女をそうさせないでいた。
その状況というのが………、
(か、顔が!……あわわ、か、か、顔が近い……)
そう、モンモランシーの耳元で呟く必要があったため
二人の顔の距離が必要以上に接近しているのである。
それこそ、鼻息の生温かさまで感じ取れる程の
ウェザー・リポートといい勝負であった。
しかもモンモランシーは異性にここまで顔を近づかれた経験など
ギーシュのときですらなかったため、
モンモランシーの顔にどんどん赤みがかかっていく。
【ボォンッ!】
そしてとうとうその赤みが限界値に達したのか
モンモランシーの頭の上で小さな噴火が起こり、
次に湯気が立ち昇り、彼女はそのまま硬直してしまった。
立ったまま赤面で硬直してしまったモンモランシーを通り過ぎ
音石はさらにギーシュのベッドに接近した。
「ぼ、ぼ、僕をどうするつもりだッ!?」
ギーシュはこのとき、
自分をこんな目に合わせた元凶に対する恐怖のせいで
その元凶に対するモンモランシーの態度の異変に気付かないでいた。
まあその元凶本人もモンモランシーの態度に気付いちゃいないが……
「さてなァ…、どうすると思うよ?」
ギーシュの恐怖からくる冷や汗と心臓の鼓動が増す、
普通なら平民が貴族に対して手を出すことは絶対的なタブーだ。
今だってそうだ、互いの承諾の元で行われる決闘とはワケが違う。
だが目の前の男は…………『例外』すぎる!!
平民でありながら自分を凌駕したチカラを使い、
平民でありながら自分をここまでボコボコにした例外者である。
(ま、まさか……こんな大怪我で動けない僕を
さらにボコボコにする気かァーーッ!!?)
ギーシュはあわてて枕元においてある
自分の杖の薔薇に手を伸ばした。
しかし虚しいことに、その伸ばした手は薔薇を掴むことはなかった。
なぜなら薔薇を掴む寸前に、音石に横取りされてしまったからである。
「おいおい、物騒なことすんなよなァ〜〜
ここは医療室だぜ?静かにしねぇと駄目じゃねぇか
俺みたいに、ここ担当してるメイジの女に怒られちまうぜ?」


291 :
支援

292 :
希望が奪われたことにギーシュは泣きそうになった。
いや、これから泣かされるのだろう。
できればその程度であることを願った。
「へ、平民の君が貴族である僕に手を出したらどうなるか
わかっているのか!?決闘のときは運良く問題にならなかったが
今回はそうはいかないぞ!?君がどれぐらい強くても
世界中のメイジが君を追い、間違いなく処刑するぞッ!?」
ギーシュの混乱した様を眺めながら
音石は内心でおおいに爆笑していた。
ギャハはァーーッ!なにもしねぇってのにバカが吠えてやがるぜ!!
音石からしてみればギーシュのその姿は滑稽でしかなかった。
包帯で手足を固定されているためベッドから動くことができず
頼みの綱であった杖も手元になく、ただ自分に威嚇するその姿、
動物園の檻の中で観客に威嚇する小動物、まさにそれである。
音石はそのまま、ギーシュの虚しい威嚇を眺めていると
ある人物が部屋に入ってきた――――――。
「ちょっとオトイシ!やめときなさいよ
さすがにギーシュに悪いわよ!」
治癒のおかげで完全に回復したルイズである。
音石は首だけ後ろに向け、それを確認する。
そのルイズに反応して硬直していたモンモランシーも
別の意味で帰ってきたようだ。
まあ、ルイズがそういうならここらあたりで勘弁してやるか
音石は満足そうに息を吐き、ギーシュから背を向けようとした
しかしまさにその時だった。ギーシュが言葉を発したのは……
「お、おいゼロのルイズ!!
はやくこの使い魔をなんとかしてくれ!!
主人なら使い魔の管理ぐらいちゃんと【グイッ!】ひ、ひィッ!!?」
言葉の途中に音石は瞬発的にギーシュの胸倉を掴みかかった!
そしてそのまま手足の包帯での固定もお構いなしに
ギーシュを無理やり力尽くで自分のほうへと引き寄せた。
「おいテメェ……、マジで入院期間先延ばししてやろうか……?」
「う、……うう、…うああ…あ………」
とうとうギーシュの目から涙が溢れる。
その音石の行動にすぐさまルイズとモンモランシーが止めに入った。

293 :
「なにやってるのよオトイシ!?いくらなんでもやりすぎよッ!?」
「そ、そうよオトイシさん!さっきなにもしないって言ってたでしょう!?」
「てめぇらは黙ってろッ!!!」
【ビクゥッ!!】
音石の怒鳴り声にその部屋にいた全員がびびった!
そこには先程までの年下の小僧に嫌がらせをする大人気ない姿ではなく、
なにか怒りに触れた悪鬼の如き、威圧ある姿があった。
「う、う………ゆ、許してくれ……」
涙で顔を濡らしたギーシュから謝罪の言葉が出る。
しかしその言葉は音石の怒りにさらに触れるだけだった。
「決闘の時もそんなこと言ってたなァ〜〜〜〜、ええおい?
お前は謝ることしかできねぇのか?よぉ、どうなんだ小僧?」
「う………うう…それ以外なにをすれば………
お、お金が……う、う……ほしいんなら幾らでも払う……だ、だから……」
「このボケがァッ!!
金で治まるよーな問題なら俺もここまでマジになりゃしねぇよッ!!
俺が頭にきてんのはな〜、てめぇがやるべきことに気付いていねぇことだッ!!」
胸倉を掴んでいた手を離し、ギーシュをベットに叩きつけた。
ギーシュは喉を押さえて咳き込みながら、
音石を恐る恐る見上げ、そして呟いた。
「やるべき……こと………?」
「……………………………」
音石は何も言わず黙り込んでいる。
聞かずとも自分で考えろ。そう示しているのだろう。
そしてギーシュは考える…………。
一体自分のなにが悪かったのだろう?
二股をしていたこと事態はあくまで自分の個人的な問題に過ぎない。
ならばその罪を無関係な給仕になすりつけたことだろうか?
いや、近い気もするが一番の理由はそうではないような気もする。
考え方を客観的にしてみよう………、
一番重要なのは『目の前の男が何に対して反応した』かだ………。
              ・
              ・
              ・
              ・
              ・
           『ゼロのルイズ』!!

294 :
ギーシュは一気に理解した!
目の前の男はルイズを侮辱したことに怒りを表しているのだ!
だが何故だ?使い魔としての本能がそうさせているのか?
それとも彼の元からの性格がただのお人よしなのか?
いいや、そんなものはどうでもいい!問題はそこではない!!
一番の問題は、自分がルイズを今まで侮辱し続けたことにある!
自分の誇り高き家柄、グラモン家の教訓はなんだ?
薔薇である女性を守る棘であることだろう!?
それなのに自分は今まで彼女になにをしてきた!?
魔法が使えないから!?確かに彼女は魔法は使えない、
だがそれでも魔法が使えるようにと必死で努力している
事実彼女は筆記試験では常にトップだ。
……………だからこそ尚更なのかもしれない。
魔法が使えない故に実技では常にルイズはゼロ点だ。
それに対して筆記試験では常にルイズはマン点だ。
それがものすごく気に入らなかったんだ………、
ゼロに嫉妬している自分に苛立ちを覚えてしまっていたのだ。
自分だけじゃない、ほとんどのクラスメイトがきっとそうだ。
だからみんなルイズを罵倒したのだ、見下していたのだ、
侮辱していたのだ、『ゼロのルイズ』と……………。

295 :
刹那、個室の外の廊下から足音が聞こえてきた。
このタイミングでやってくるような人物は大体予想できる。
扉が開かれる、予想通り医務室専属のメイジの女性だ。
「一体なんの騒ぎですか!?」
「え……あッ!?い、いえ!これは………その…事情がッ……」
ルイズは焦った、自分の使い魔がまた同じ生徒相手に
しかも重症の状態で暴行を働こうとしたなどと
学院側に知られたら今度こそ退学になる恐れがあったからだ。
なんとか誤魔化そうとルイズが必死で思考を廻らせる。
「……いいえ、なんでもありませんよ」
ルイズは自分の耳に届いた声を疑った、
何を隠そう、その声は間違いなくギーシュの声だったのだ。
「お騒がせしてすみません
急に窓から虫が入ってきたので、つい慌ててしまって……」
「む、虫ですか?」
「ご心配なく、もう追い払いましたので……
本当に申し訳ない、ご迷惑をお掛けしてしまい……」
それならいいんですが……、と言い残し
そのメイジの女性は扉を閉め、部屋を後にしていった。
足音が遠退いていくにつれ静寂が部屋を支配する。
しかしその静寂のなか、ギーシュは深く息を吸い、目を閉じた。
そして静かに吸った息を吐き捨てると、開いた彼の目はルイズを見た。

296 :
「な、なによ……?」
「ルイズ……………すまなかった……」
「………え?」
足が動けないせいで
ベットの上で横になっている状態の体を精一杯前に傾け
ギーシュはルイズに向けて頭を下ろした。
「僕は、いままで君に酷い事をしてきた……
だが今更僕がなにを言ったところで、言い訳にしか感じないだろう
いままで君に対しての侮辱してきたのは事実なんだからね……
だが一言、これだけは言わせて欲しい………、本当にすまなかった」
「ギーシュ………」
モンモランシーから彼の名が零れた………。
ルイズ自身もどこか複雑な表情を浮かべながら、
何を言うべきか考えているといったところだろう。
(ここまでくりゃあ、後はこいつら自身の問題だな
せいぜい達者にやんな、時間はたっぷりあるんだからよ)
自慢の長髪をなびかせながら、音石は静かにその個室を後にした。
医務室を出る途中にキュルケたちに何があったのか質問されたが、
音石は「でけぇお邪魔虫が部屋を出て行ったんだよ」とだけ述べ
扉を開き、そして閉め、医務室を後にしていくのだった…………。


「な、なによ……?」
「ルイズ……………すまなかった……」
「………え?」
足が動けないせいで
ベットの上で横になっている状態の体を精一杯前に傾け
ギーシュはルイズに向けて頭を下ろした。
「僕は、いままで君に酷い事をしてきた……
だが今更僕がなにを言ったところで、言い訳にしか感じないだろう
いままで君に対しての侮辱してきたのは事実なんだからね……
だが一言、これだけは言わせて欲しい………、本当にすまなかった」
「ギーシュ………」
モンモランシーから彼の名が零れた………。
ルイズ自身もどこか複雑な表情を浮かべながら、
何を言うべきか考えているといったところだろう。
(ここまでくりゃあ、後はこいつら自身の問題だな
せいぜい達者にやんな、時間はたっぷりあるんだからよ)
自慢の長髪をなびかせながら、音石は静かにその個室を後にした。
医務室を出る途中にキュルケたちに何があったのか質問されたが、
音石は「でけぇお邪魔虫が部屋を出て行ったんだよ」とだけ述べ
扉を開き、そして閉め、医務室を後にしていくのだった…………。

297 :
時は流れ夜、眩しい夕日の光もとうの昔に沈んでいき
空に浮かぶ二つの月が神秘的な輝きを発している。
そんな月の光に浴びながら、音石は目を覚ました。
医務室を後にしたあと、特にやることもなかったので
部屋に戻り昼寝をしていたのだ。当然藁の上で。
「あーあ……、ヒデェ中途半端な時間に起きちまったな…」
確実に狂ってしまっている自分の睡眠の習慣に頭を抱える
外の静けさから考えて、学院の生徒たちもとっくに夕食を終え
部屋に戻って寝静まり始めているくらいの時間だろう。
少し遅くはあるがシエスタに頼んでメシを恵んでもらおうかなと考えていると
壁に掛けてあったデルフリンガーが突然話しかけてきた。
ついでにその隣では音石のギターが掛かっている。
「気分が最悪のお目覚めだな相棒、どうだ気分は?」
「てめぇ自身が最悪だって言っといて喧嘩売ってんのかコラ」
「冗談だよ冗談、そんなに睨まねぇでくれよ、
でもよぉ、剣の俺様が言うのなんだが
そんなんなるんだったら最初っから昼寝なんてしなきゃいいだろうよ」
「眠くもねぇのに無性に寝たいって気分があんだよ
たくっ、これ俺夜寝れんのかねぇ〜?」
【コンッコンッ】
音石とデルフリンガーの何気ない会話の最中、誰かが扉をノックした。
「あン?だれだよ?ルイズなら今いねぇぞ」
誰かわからないがわざわざ扉を開けるのも面倒なので
音石は扉越しに声をかけた。しかし帰ってきた言葉から、
訪問者が意外な人物だというのが判明した。
「私だオトイシ君、コルベールだ。
夜分遅くにすまない、君に用があるんだ」
「なにぃ〜〜?」
訪問者はなんとコルベールだった。
それがわかると音石は藁から立ち上がり、すぐさま扉を開けた。
それと同時に、部屋から差し出す月の光が扉を開けた先にある
『とあるモノ』によって反射し音石の目を刺激した。

298 :
「目…目がくらむッ!げ…限界なく明るくなるゥ!」
「……………なにか言ったかね?」
「あ、いや、なんでもないッス」
つい口が滑った発言にコルベールの嫌な視線を向けられたが
音石はすぐさまそっぽ向くことによってその視線を受け流した。
そして何事もなかったようにコルベールに質問する。
「召喚されと日の時といい、また俺になんか用ッスか?」
「いや、今回は学院長の頼みで君に会いに来たんだよ
詳しいことは私の研究室で話をしたいんだが…………
ミス・ヴァリエールはいないのかね?」
「あの爺さんからの頼みで?
…………いいッスよ、特に今やることもないんで。
ルイズもまだ帰ってきてねぇし、丁度いいでしょう?」
「ふむ、それはよかった
では案内しよう、私についてきてくれ」
(あの爺さんからの頼みってコトはおそらく
スタンド使いに関すること、あるいは地球の手掛かりがあるってことか?
だがそれにしたって早すぎねぇか?頼んだのは今日の昼だぞ?
それに学院長室じゃなくこの先生の研究室ってのも妙だ、
………なにか……あるのか?この学院に、こんなすぐ傍に、
スタンド使いか、地球に関する手掛かりかなにかが………)
自分のなかに渦巻く疑問を胸に、音石はコルベールの後にを追うため
留守番をデルフリンガーに任せ、ギターを手にルイズの部屋を出て行った。

コルベールの後についていく内に音石は塔と塔に挟まれたいっかくにある
小汚い掘っ立て小屋に辿り着いた。
「これが………研究室?」
音石の呆然とした声にコルベールは苦笑した。

299 :
「はははっ…、以前はちゃんとした部屋があったのだがね
薬品などの臭いが理由で場所を移されてしまったのさ」
「はっ、随分優遇されてるなアンタ」
「君は嫌味で言っているんだろうが、実際そうなのかもしれない」
コルベールが扉を開き中に入り、音石もその後に続いた。
まず目に入ったのは薬品のビンや試験管、さまざまな実験器具だった。
壁は書物の詰まった本棚に覆われ、
蛇や蜥蜴や得体の知れない生物が檻に入れられている。
そして次に音石が感じたのは強烈な刺激臭だった。
「うあァ、こりゃ追い出されても文句いえねーわ」
「なぁに、これぐらいの臭いすぐに慣れるさ
しかし、ご婦人方には慣れるということはないらしく
私はこの通りまだ独身だがね」
コルベールは慣れた表情で言うが、音石はそうはいかない。
ある程度の臭いは刑務所で多少慣れてはいるものの、
この研究室に漂う臭いはそれはまた別の臭みをもっていたため、
音石は自分の顔の前を手で振り払う仕草を示した。
「それでっ?どんな用件なんッスか?
人をわざわざこんなところまで連れてきて」
「こんなところとは酷いじゃないか、
しかしそう言われても文句は言えないね
とりあえず本題に入ろう、実はオールド・オスマンから
君にあるモノを見せて欲しいと頼まれたんだよ」
「……ここに連れてきたってことは、
ここにそのあるモノってのがあるってわけかい?」
「さすがに察しがいいね、そして学院長から聞いたよ
君がこのハルケギニアとは違う別の世界から来たということも」
「げっ!?あのジジィしゃべりやがったのかよ!!」
「ああ、だが勘違いしないでほしい。
私が聞いたのはあくまで君が異世界の住人だということだけだよ
それ以上のことは聞いていない。君の不思議なチカラのこともね
仮に聞いたとしても、私はそれを他人に話すつもりはないよ
当然、君が異世界の住人だということもね」
コルベールはそう言うが、それでも音石は苦い表情を浮かべた。
あの学院長が話す程の相手ならそれなりに信用性はあるのだろうが
やはりどちらかといえば複雑な気分があった。

300 :
「だと嬉しいんだがなァ〜、
ていうかアンタ、俺が異世界の人間だってのにえらく冷静だな
それ以前に信じてんのかよ?こんな突拍子もない話」
「もちろん驚いたとも、しかしそれと同時に納得もした。
いままでの君の行動、その服装、見たことない楽器、
すべてハルケギニアの常識を覆しているからね。実に興味深いよ」
「あんた変わり者って言われたことないか?
あっ、図星だな?めちゃくちゃ顔に出てるぜ?
そんなんだからいい歳ぶっこいて独身なんだよ」
いつの間にか音石のコルベールに対しての言葉遣いが荒くなっていた。
ある意味これは秘密を知るもの同士の親近感を表しているのだろう。
「ゴホンッ!私のことはどうだっていい
話がそれてしまったが、君に見せたいあるモノというのが
…………これなんだよ」
コルベールが研究所の奥から、キャスター付きの机を持ってきた。
その机の上には何かが黒い布で覆いかぶされていた。
なんだこりゃ?と音石は疑問を感じた。
しかしコルベールがその布を引っ剥がした瞬間、
その疑問は…………驚愕へと変わった!
「………ばかなっ!?おいおいタチの悪い冗談だろ?
なんで………、なんだって『コレ』がここにあるんだ!!?」

301 :
支援

302 :
時間は少しさかのぼり、
ルイズは今、食堂でキュルケ、タバサと一緒に夕食をとっていた。
そしてルイズはキュルケとタバサに医務室での出来事を話していた。
「へぇ〜、前々から思ってたけど
オトイシって結構やること容赦ないのね、
傷もまだ完治していないギーシュに掴みかかるなんて」
「………でもある意味、彼らしいといえば彼らしい」
「ふふっ、確かにそうかも♪
………それでルイズ?結局ギーシュのことは許してあげたの?」
キュルケの質問にルイズは食事の手を止め、
難しそうな表情を浮かべた。
「正直………なんとも言えなかったわ、
ギーシュはああ言ってくれたけど………ギーシュが今まで
わたしのことを侮辱してきたのは紛れもない事実だもの……
ギーシュ自身が言ってたようにね、
…………だから…………なんとも言えなかった」
重い静寂な空気が流れた。とても気まずく、とてもぎこちない空気、
しかし間もなくしてその空気の中で
キュルケがグラスに入ったワインを
口に軽く流し込んだのに続いて言葉を発した。
「だったら……それでいいんじゃない?
ギーシュが本気であんたにしてきたことを『反省』してるのなら
これから先、あいつの行動がそれをあらわすはずよ」
「それこそ……あなたの使い魔のように……」
キュルケに続いてタバサまでが言葉を並べた。
「……………なんかさ……」
「「?」」
「あんたたちがなんで親友同士なのかちょっとわかったような気がしたわ
だって、息がピッタリなんだもの」
その言葉にキュルケは笑い出し、ルイズもそれにつられて笑った。
そしてタバサも……その小さな口が薄く笑みを浮かべてるように見えた。

303 :
夕食を終えると生徒たちは自分の部屋に戻り寝静まっていく、
しかしルイズたちは寮から少し離れた広場にいた。
ルイズの魔法の練習が目的だ。しかもそのために
キュルケとタバサに協力を求め、キュルケたちもそれに承諾した。
タバサならともかく、ルイズがあの犬猿の仲だったキュルケに
こんなことを頼むなど、少し前の彼女なら考えられないだろう。
もちろんキュルケだって同じことだ。
ある意味これも音石明という男に関わったことによる
二人の変化………いや、成長なのだろう。
だが実際は…………、
【ドゴォォォンッ!】
「だからちがうでしょうヴァリエール!
この魔法での詠唱はそうじゃなくてっ!」
とキュルケが説教をし、
「だからちゃんとその通りにしてるって言ってるでしょう!?」
ルイズが抗議し、
「…………………………」
タバサが黙って本を読む、……………の繰り返しである。
実はその口論の最中に音石とコルベールが研究室に向かって
ルイズたちと入れ違いになったというのは誰も知る由もない。
「でもなんで詠唱も杖の振り方も完璧なのに
爆発ばっか起こんのよっ!!ホントわっけわかんない!!」
「そんなの私に聞かれても知るわけないでしょヴァリエール
ほら!もう少し付き合ってあげるからがんばって………」
【ドオォンッ】
「「「!!?」」」
キュルケが喋っている最中に突然どこからか轟音が響いた。
「なんなの今の音!?
ルイズ、あなた杖を振った?」
「振ってないわよ!
『大きな音=わたしの魔法』って認識しないでよね!!」
「あそこ」

304 :
タバサが冷静に、学院の中央塔の方角を指差した。
その指の沿ってルイズとキュルケも中央塔を見ると
10m以上はある巨大な何かが蠢いていた。
夜の暗闇でよく見えなかったが、目を凝らしてみると
徐々にその何かの正体が明らかとなった!
「あれは………ゴーレム!?なんて大きさなの!!
それにあんなところで一体なにを………」
キュルケが驚愕の声をあげるが、
頭の中では自然に状況の分析が行われていた。
そしてその分析の中で『ある人物』の名前が浮かび上がった。
しかしその名を口にしようとする前に
親友タバサに先にその名を出されてしまった。
「『土くれ』の……フーケ…」
「フーケッ!?最近このあたりを荒し回っている盗賊じゃない!!」
一人だけ分析に遅れていたルイズが
キュルケと同じような驚愕の声を上げた。
しかしそれでもキュルケに引きをとることもなく
すぐさま次なる状況分析結果に辿り着いた。
「まさか宝物庫の宝を狙ってるんじゃ!?」
「おそらくその通りでしょうね、
さっきの大きな音………きっと宝物庫の壁を攻撃した音だわ。
でもまぁ随分とナメられたものね、
あんな堂々と大胆に学院の宝を盗もうとするなんて………
タバサ、急いで先生たちに………」
タバサに視線を向け、指示を送ろうとしたとき
キュルケはあることに気付いた。
さっきまで自分の隣にいたルイズがいなかったのだ。
まさか!と思い、キュルケは視線を前方の塔の方角に移した。
予想した最悪の通り、ルイズがゴーレムに向かって走っているのだ!
「ルイズ!なにをするつもりよ!?危険よ!!」
「先生たちを呼んでいたら逃げられるでしょう!!
フーケはわたしが捕まえて見せる!!」
「そんなの無茶よ!!あなたもわかってるでしょうルイズ!?
あんな巨大なゴーレムを作り出せるなんて
フーケは相当腕の立つメイジの筈だわ!!」
キュルケがいくら叫び止めようと、ルイズにも意地があった。
キュルケの言葉に耳を傾けることなくゴーレムに向かっていった。
「このままじゃルイズが危険だわ!
急いで追うわよタバサッ!!
もうっ!ルイズッたらほんっと手間かけさせるんだか!!」
その言葉を合図にキュルケとタバサは走り出した!
そしてタバサは走りながら口笛を吹くと空から月をバックに
風竜シルフィードが姿を現し、キュルケとタバサの横に近寄り
低空ギリギリを飛行する。そして二人は空飛ぶ魔法『フライ』を唱え
シルフィードの背中に飛び乗り、塔の方角へと駆けていった。

305 :
そしてそのゴーレム自身は再度腕を振り上げ、全体重をかけて
宝物庫の壁に巨大な腕のパンチをぶつける。
しかしヒビも入らなければビクともしないその現実に
ゴーレムの肩に乗りマントで顔と体を隠しているフーケが一番苛立っていた。
「くそったれっ!硬いッたらないねぇホントにっ!!
あの禿げ、なにが外側の物理的衝撃には弱いよっ!!
外が『禿げてる』なら中も『剥げてる』ってことだねまったく!」
【ドゴォンッ】
「っ!?爆発!?一体どこの命知らずだいっ!!?」
突如自分のゴーレムの脇腹部分が爆発によって軽く削り取られた。
巨大なゴーレムに乗っていたせいで気付かなかったが、
よく見ると自分のゴーレムの足元に誰かがいた。
「『土くれ』のフーケ!
これ以上、神聖なる学院で好き勝手にはさせないわ!」
しかしとうのフーケは相手がルイズだと認識すると鼻で嘲笑った。
「はっ!だれかと思えば落ちこぼれの『ゼロ』のルイズじゃないか
驚かせんじゃないよ!
あんたごとき『障害』と呼ぶ以前に論外なのよ!!」
距離があるせいか、ルイズもフーケも互いに
相手の声が聞こえることはなった。
しかしフーケのゴーレムはルイズを攻撃しようとせず
再び宝物庫の壁に向けて腕を振り上げようとした。
その行動にルイズは自分が相手にされていないことに気付いた。
「わたしなんて相手に眼中にないってことっ!?舐めないで!
由緒正しきヴァリエールの血統のおそろしさ、
思い知らせてやるんだから!!」
ルイズが再び杖を振り上げようとしたとき、
自分の頭上にタバサのシルフィードが通ったのに気付いた。
よく見るとシルフィードの背中にはキュルケとタバサが乗っている。
しかし今はそれどころじゃない、
ルイズは再び目の前のゴーレムに視線を戻した。

306 :
「タバサ、はやくルイズをゴーレムから離れさせないと
あのままじゃ危険だわ!」
シルフィードに跨ったままキュルケは現状を把握していった。
もちろんタバサも同じことだ。
しかし状況はそう簡単なものではなかった。
それを理解していたタバサは冷静にキュルケに伝えた。
「彼女を無理やり引き離すなら、『フライ』を使わないといけない」
「じゃあはやくそうしましょうよ!」
「落ち着いて。そうしたいのは山々だけど
簡単にはいかない、飛行している私たちと彼女との距離は
『フライ』の範囲外、近づこうとすれば間違いなく
フーケのゴーレムが攻撃してくる」
迅速かつ簡潔な説明にキュルケは歯を強く噛んだ。
「じゃあ一体どうすれば……」
「幸い、フーケは彼女を敵と認識していない
でもいつ攻撃されても人質にされてもおかしくない
今は無闇に攻撃するのはかえって危険」
せっかくわざわざ危険を冒してゴーレムに向かったというのに
手も足も出ないなど屈辱意外何者でもなかった。
そしてフーケも竜に乗ったふたりが攻撃してこないことでそれに気付いた。
「はっ、どうやら『ゼロ』のルイズのおかげで
余計な邪魔が入らずに済んだみたいね…………でも……」
【ドォォンッ】
フーケが乗っているゴーレムの肩の反対側の肩が爆発した。
「もうっ!なんでそっちで爆発するのよ!
反対よ!逆よ、逆!!」
ゴーレムではなく本体のフーケを狙って魔法を発動したが
なんの嫌がらせか反対側で爆発した自分の魔法を起こした
手に持つ杖に向かって、ルイズは惜しむ声を上げた。
だがその行動が命取りとなってしまった!

307 :
危うく自分が爆発に巻き込まれそうになったことに
危機感を覚えたフーケが、標的をルイズに移したのだ。
壁を向いていたゴーレムがゆっくりとルイズのほうに体を傾けていく。
それにいち早く気付いたのはキュルケたちだった。
「まずいわ!ルイズを攻撃しようとしてる!
タバサ、こうなったら一か八かの賭けに……」
「待って……」
焦るキュルケにタバサは静止の声をかけた。
「なにか……聞こえる……」
「え?」
【………ブゥ……ゥウ……………ウ……】
「なに………この音?」
珍しくタバサが不思議そうな声をだした。
二人はシルフィードに乗りながら辺りを見渡した。
しかし暗闇で何も見えはしない。
微かに聞こえる音もなぜかそこらじゅうから聞こえるような気がした。
もちろんこの音にフーケもルイズも気付いた。
「い、一体なんだいこの音は?」
「…………………?」
ルイズが無言のままキュルケたちのように辺りを見渡す。
しかしすぐにその視線はゴーレムのほうに戻った。
目の前のゴーレムが自分に向かって拳を振り上げているからだ。
「ちっ!なにかは知らないけど、
耳元でハエがさえずっているようでイライラするったら
ありゃしないね、この苛立ちをアンタにぶつけてやるわ!!」
「ルイズッ!お願いにげてぇっ!!」
キュルケの願望も虚しく、
ルイズはゴーレムを前に勇気を振り絞って、誇りをかけて
ゴーレムに向かって杖を振りかざした。
ルイズにとってこれが最後のチャンス、
呪文を口で唱え、魔法の名をゴーレムに……
フーケに向かって吐き出した!
「ファイヤーボールッ!!」【ドゴォオンッ】
…………最後の足掻きは虚しく宝物庫の壁へとぶつかった。

308 :
【ドゴバァンッ!】
「な、なにぃっ!?」
「えっ!?」
だが次の瞬間、
なんと振り上げられていたゴーレムの腕が粉々に粉砕していった!
「なっ、あいつの爆発は間違いなく壁に当たったのに
なんであたしのゴーレムの腕が粉々に………ッ!?」
【ブゥウ……………ウウウゥ…………】
「はっ!またこの音!!
さっきから聞こえるこの音は一体なんだってんだい!?
一体どこから聞こえ…………」
一瞬、フーケは自分の横を何かが横切ったのを感じた。
咄嗟に視線を向けてもそこにはなにもありはしない。
だが自分の横に間違いなく何かが横切った………、
そして気付いた。この音…………はじめはどこか遠くからかに
聞こえてくる音だと思っていた。だが実際はそうじゃなかった。
自分の耳が……脳での認識が、その音に追いついていなかったのだ。
『ソレ』が……あまりにも高速でゴーレムの周りを飛び回っていたから……
「タ、タバサッ………あ、あれって……?」
上から見ていたキュルケたちもようやく
『ソレ』を認識することができた。
だが認識したことによって二人の混乱は増すばかりだった。
そしてタバサの口からぽつりと言葉が零れた………。
「鉄の……竜の子供……?」

「な、なんなのよあれ!?
あんなの……今まで見たことがないわ……」
ゴーレムの足元でルイズが唖然として立ち尽くし、
視認した『ソレ』を目で追っていた。
すると空飛ぶ『ソレ』が再びゴーレムに急接近すると、
あるもの飛び出してきた。『光る腕』だった!
「あ、あの腕!あれってまさかっ!!」

309 :
支援

310 :
その光る腕は強烈なラッシュをゴーレムの腹部に炸裂した!
ラッシュによって抉られた腹部の影響で
ゴーレムは大きくバランスを崩した。
不安定に全体がぐらぐらと揺れている。
「うっ……ッ!くそっ、なんだってんだいあれは!?」
フーケはすぐさま杖を振り、抉られたゴーレムの腹部を修復し、
体勢を立て直すと、すかさず空飛ぶ『ソレ』に向けて
ゴーレムで攻撃させたが…………
(は、速いッ!?)
『ソレ』の驚異的な速さにフーケは肝を冷やした。
ゴーレムの攻撃を回避した『ソレ』は一旦距離をとった。
するとルイズたちの耳につい最近聴き慣れた音が鳴り響いた!
ドギュウァーーーーーーーーーンッ!!!
音が鳴ったのはルイズの後方!
その場にいた全員がその方向に目を向けた。
そこに居たのは、ギターを構え、特徴的な長髪と
顔に大きな傷のある青年!ルイズの使い魔!!
「オトイシッ!!」
「On、YEAH!!」

311 :
数分前、コルベールの研究室にて。
「なんだって『コレ』がここにあるんだ!!?」
「……………やはりコレを知っているんだね
オトイシ君、私はめずらしい噂や情報を耳に入れると
よく休暇をとって研究しに行ったりしているのだが………
これはその中で一番興味深い代物だよ、
数ヶ月ほど前のことなのだが……ある田舎の村で
『奇妙な鉄の竜の子』が拝められているという情報を耳に挟んでね
非常に興味深かったので、実際に見に行ってみたら
私の中の研究意欲を最高に刺激してね、村人たちに頼んで
譲ってもらったんだよ、私の財産の四割程が消し飛んだがね。
それから色々と研究してみたのだが、いっこうに謎ばかりだよ。
だがこのハルケギニアで作れるような代物じゃないこと理解できる。
そして君は異世界の住人、私も………学院長も………
これは君の世界から来たモノなのではないかと予想しているんだよ」
「………ああ先生、あんたの言うとおりだよ。………こいつは…」
【ドオォンッ】
「!?」
「な、なんだ今の音はッ!?」
コルベールは素早い動きで研究室から飛び出すと
音石もそんな彼の後に続いて外に飛び出した。
そして二人の目に入ったのは本塔の前に蠢いている
巨大なゴーレムだった。
「な、なんだありゃ!?」
「ゴーレムだよ!それにあの大きさ、相当腕の立つメイジの仕業だ
おそらく『土くれ』のフーケだ!」
「誰だそりゃ?」
「貴族を相手に盗みを働く盗賊だよ、
最近トリスティンにも現れはじめたとは聞いていたが
まさかこの学院をねらってくるとは………ハッ!?」
するとコルベールはその巨大なゴーレムに走り向かっていく人影に気付いた。
「あれは………ミス・ヴァリエール!?
まずい、彼女はフーケを捕まえるつもりだ!!危険だッ!!
急いで止めないと取り返しが付かなくなる!!」
コルベールがルイズを止めるため、駆け出そうとしたが
肩をグッと音石につかまれ静止された。

312 :
「あんたは学院長のジジィにこのことを伝えなよ!
ルイズは俺がなんとかする、フーケもその間足止めしといてやるよ」
「だ、だが!いくら君でもあれだけ巨大なゴーレムが相手では………」
コルベールが音石の方へと向くと、音石の手には
先ほど見せた『ソレ』が脇に抱えられていた。
「きみ………それは………」
「まあ、確かに普通じゃ厳しいだろうーな…
だが『コイツ』があるんだったら……勝算はあるかもな!」
そう言って音石はルイズを助けるために駆け出した!
そしてルイズを助けるために己が分身の名を叫ぶ!
「レッド・ホット・チリ・ペッパー!!
そして飛べェッ!『ラジコン飛行機スピットファイヤー』!!」


そしてゴーレムに攻撃されそうになった
ルイズの危機を音石は見事に救った!!
「よ〜うルイズぅ、随分と無茶やってんじゃねぇか?
まあ後は任せろよ、なんで三年前に俺がジョセフをRために
使おうとしてた『ラジコン飛行機スピットファイヤー』が
この世界に来てるのかは理解できねぇが…………
まあ、せっかくだぁ。三年前あんまり使ってやれなかった分……
思う存分暴れさせてやるぜぇっ!!」
ギュアァアーーーーーーーーーーンッ!!
【ブウゥゥゥゥゥゥゥゥンッ】
ギターの音を響かせ、ラジコン飛行機の機動音が鳴り響く!
スピットファイヤーinレッド・ホット・チリ・ペッパーは
フーケのゴーレム目掛けて飛来していった!!

313 :
支援

314 :
885 名前:反省の人 [sage] :2011/04/10(日) 23:08:29
お久しぶりです!
車の免許取りに行くため合宿してたら
投稿がめちゃくちゃ遅くなりました!もっと速く投稿できたんですけど
ギーシュとの会話あたり会話の流れにいろいろ悩まされてしまいましてね…
医務室とかの構造もいろいろ調べたんですが全然わからなかったから
自分なりに適当に捏造しましたがかまいませんねッ!!
----------
以上、代理でした
貼り忘れがないだよな

315 :
乙!!
アンタの作品を読んで、このジョジョ×使い魔SSに興味を持ったんだぜ…
次回も超楽しみにしてる!
代理の人も乙でした!

316 :
反省の人も代理の人も乙

317 :
うん、貼り忘れがないだな、よかったよかった
反省の人さん乙でした
そして支援してくれた皆さん、ありがとうございました

318 :
きてたー!乙!
代理の方も乙!

319 :
乙乙

320 :
乙 2 U

321 :
ルイズがノトーリアス・BIGを召還したSSを探してるんだけど知らないか?
確か短編でノトーリアスを召還したけど姿が見えなかったから何も召還できなかったと思ったルイズが自殺してノトーリアスが発動
周りを次々取り込んで最後はハルゲニア中を食い尽くして目の前に現れた召還の鏡の中に入ってendだったと思うんだけど
まとめサイトにないってことは作者さんがまとめられるのを嫌がったのかもしれないけど
是非もう一度見たいので情報がほしい

322 :
>ルイズがノトーリアス・BIGを召還
【ジョジョ】ゼロの奇妙な使い魔【召喚86人目】 の、『ノトーリアスルイズ』ではないでしょうか?

323 :
そういえば某理想郷で知ったけど、
桃髪の爆発魔と銀髪の騎士というタイトルも消えてるな

324 :
それは消えてるんじゃなくてもともとwikiに乗ってなかった・・・気がする
避難所のほうで見てたわ

325 :
>>322
確認できました
情報ありがとうございました

326 :
そーいやSBRが完結したな…

327 :
次のジョジョリオン楽しみだな

328 :
荒木さんは昔の時点で9部までの構想が出来てるって言ってたな

329 :
彼がそう言うって事は実際はその3倍は直ぐできるって事だ

330 :
単行本派の俺は5月17日と6月7日が楽しみすぎて困る

331 :
楽しみ

332 :
第8部ってどんなのかもう発表されたの?

333 :
ウルトラジャンプの今月号に主人公っぽいキャラのカットと次号スタートって出てる

334 :
保守

335 :
とりあえずあげとこう

336 :
久々にまとめの更新履歴してみたら、今月の十日に仮面のルイズの人が過去作の改訂しているようだった。
まだ続き書く気があるんだなーと思うとうれしくなった。
今日はいい気分でいられそうだ。

337 :
>>336
おぉwそれは朗報w

338 :
>>336
俺も寝る前に更新履歴チェックしたら記録があったんで、
翌日仕事だってのについ仮面のルイズ全部読み直しちまった
寝不足で仕事に響くのはわかってるってのによォ〜〜
一旦読み出すと面白くて止められねえんだクソックソッ

339 :
更新こないねぇ〜〜〜

340 :
「ヒヒ、更新待ってるぜ! カモォ〜ン、ホルホルくぅーん」

341 :
第8部が始まるね
これで7部SSも書きやすくなったか・・・な?

342 :
どうだろうな…

343 :
タマ4つか・・・

344 :
今更だが歩き出す使い魔見直したら普通に面白いわ…
ボス、続き…待ってます…。

345 :
反省の人もD0Cの人も最高だ
応援してるぜ

346 :
復活とか続きとか期待

347 :
過疎ですなぁ

348 :
DOCおもすれー

349 :
奇妙な使い魔スレよ永遠なれ

350 :
DIOが使い魔の復活を今でも願っています

351 :
ギアッチョの話を今でも待ってるぜー

352 :
現実が見えない子がいる

353 :
触手…

354 :
あの作者の復活・・・・・・祈っておこうかな

355 :
最近読み始めたのですが「奇妙なルイズ」を読んでいたところ
12以降が編集モードが@wikiじゃなくそのまんまテキストモードで
前へ目次次へが正常に働いてないみたいなのでモード変更できる方いません?

356 :
反省する使い魔!  第十四話「追跡計画中計画実行中」

音石明はこの世界でルイズの使い魔を続けている内に
何度も同じ疑問を自分の頭のなかで浮かべていたことがある。
別によ〜〜、このオレがわざわざルイズみてぇな
やかましい小娘に仕える必要なんて本当はどこにもねぇんぜぇ〜〜?
仮にだ、ルイズに義理みてぇなモンがあったとしよう。
オレがそんなモンわざわざ守ると思うかぁ?
オレは御伽噺や漫画に出てくるような
義理堅い勇者野郎でもなんでもねぇんだよぉ〜〜〜〜……………。
しかしだ!よく考えてみてくれよ。俺は刑務所で三年の月日を費やした。
三年だ!たったの三年!!
あの杜王町で俺がやったことがたった三年で許されるだとぉ〜〜〜ッ!?
わざわざ殺人まで覚悟してやった俺のあの行いが
たった三年で許されるような安っぽいモノだとでも思ってんのかッ!!
はやく出所できたんだから得だとかそういう問題じゃねぇ!
俺は納得したいんだよ!
三年前俺は間違いなく罪を犯した。
そして刑務所を出たと思ったら、今度はワケのわからねぇ世界で
小娘のお守りときたもんだ。まったくお笑いだぜ………。

357 :
最初にルイズの使い魔になれという要求を承諾したのも
はっきり言っちまえば召喚の時にクラスメイトから
バカにされてたルイズに対してのくだらんねぇ同情からだった。
だがルイズを見ていくうちにわかったことがある。
ルイズは魔法が使えない魔法使いだ、
どんな魔法を使ってもお決まりに爆発する。
クラスメイトの連中はそんなルイズを見下していたがよぉ
あの爆発は使い方によっちゃあ間違いなく兇器になる。
このままじゃルイズはいずれ、
自分の中で押さえ込んでいる劣等感をクラスメイトを
傷つける武器にしちまう………。
だからよぉ、そんなルイズだからこそ
オレを召喚したんじゃねぇかって時々思うんだよ
道を踏み外して過ちを犯すということを知っていて
今なおそんな自分の罪滅ぼしに納得していない俺だからこそな………
そして今、ルイズはやべぇ状況にいる。
なんでも今度の相手は結構名の知れた盗賊らしいじゃねぇか、
そういう奴をやっつけてルイズを守ってやればよ〜〜〜
少しでも俺の中にあるこのモヤモヤが晴れるかもしれねぇ!
だから今はこの目の前のデカブツをぶっ壊すことに集中するぜ!!


358 :

「しっかしでけぇーなー、
ギーシュの『ワルキューレ』は2メートルくらいあったが
こいつぁ10メートルは超えてんじゃねぇのか?」
ゴーレムから30メートル程の距離をあけて
音石は土くれのフーケの操る巨大ゴーレムを見上げていた。
「まあ、それくらいのほうがやりごたえがあるってもんか?」
「オトイシッ!!」
自分の使い魔の登場にルイズはゴーレムの足元で
歓喜と驚きの声を上げた。
「おいルイズゥ、そこ危ねぇからはやくこっち来い!」
音石はルイズの身を案じ、
自分の元に来るように手招きのジェスチャーを送る。
ルイズもソレに応じ、音石の元に駆け寄ろうとしたが
ソレを許すフーケではない!
「おっと、逃がしゃあしないよ!」
先程破壊された腕が回復され、すぐさま元通りになる。
そしてその腕は瞬く間にルイズ目掛けて襲い掛かってきた!
しかしその行為を安々許す音石でもない!


359 :
し、支援だー!

360 :
「ふっふっふっ生憎とな、そう易々攻撃を当てさせないところが
俺と『レッド・ホット・チリ・ペッパー』のいいトコなんだぜぇ?」

ゴーレムの上空を飛び回っていたスピットファイヤーが
ルイズ目指して滑空を始める。
そのスピードはゴーレムの攻撃速度を圧倒的に上回っていた。
ルイズの近くまで接近すると、スピットファイヤーから
レッド・ホット・チリ・ペッパーの腕だけを出現させ、
ルイズのマントを掴み取った。
「いいいいぃぃぃやああああぁぁぁぁっ!!?」
時速150キロという高スピードのなか、
ルイズは悲鳴をあげてマントからぶら下がった形で音石の元まで移動し
ゴーレムの攻撃を回避した。
音石の近くまでやってくるとスピットファイヤーのスピードを緩め
ルイズを自分の隣に落とすようにレッド・ホット・チリ・ペッパーは手を離した。
【ドスンッ】「キャアッ!」

361 :
「ウ〜〜シッ!ルイズを回収すりゃこっちのもんだぜ
あのゴーレムを操ってるフーケってやつはあそこの壁の向こうにある
宝物庫を狙ってんだろ?だったらゴーレムをあそこから動かすって真似は
しねぇはずだ、奴自身無駄に時間を喰ってる暇なんてないはずだからな
空中にはキュルケとタバサ、こっちだってスピットファイヤーがあるんだ
本体の俺が攻撃されないように距離も十分にとってある、
今のあの野郎は将棋で言う『詰み』に入ってるっつーわけだぁっ!」
「こ……こ……この馬鹿ギタリストォーーーーッ!!!」
ルイズが音石目掛けて飛び蹴りを放った!!
【ガスッ】「オガァッ!!?」
蹴りはものの見事に音石の横腹に命中した。


362 :
反省したので支援しますー

363 :
「いっててぇぇぇっ!!?いきなりなにすんだコラァッ!!」
「ソレはこっちの台詞よぉ!ご主人様に対してなんて事すんのよっ!!
助けてくれたことには感謝してるけど、もっとマシな方法なかったの!?
あの持ち方!!もう少しで首が絞まるトコだったじゃない!!」
「おいバカ!杖をこっち向けんなって!あーするしかなかったんだよ!
仮にマントじゃなく腕や脇から持ち上げたりしたらその長い髪が
あのスピットファイヤーのプロペラに巻き込まれかねねぇだろうがっ!」
「ハッ!そうよオトイシッ、説明しなさい!
あれは一体何なの!?もしかして竜の子供!?」
オトイシとの会話中にルイズは自分の中にある一番の疑問に気付き、
その疑問にむかって怒鳴るように指差した。

364 :
「竜の子供だぁ?そんなんじゃねぇーよぉー、
『スピットファイヤー』
イギリスのスーパーマリン製単発レシプロ単座戦闘機
大戦時にはイギリス空軍をはじめとする連合軍が使用していた戦闘機で
ロールス・ロイス製の強力なエンジンを搭載、空気抵抗も少なく
その性能はその手のレースで三度も優勝してるほどの優秀さを誇る。
主任設計技師であるR.J.ミッチェルとジョセフ・スミスを
始めとする後継者たちによって設計され、パイロットたちの支持も厚く
1950年代まで23,000機あまりが生産され
さまざまな戦場で活躍した…………そのラジコンバージョンだ」
「……………ごめん、あんたが何を言ってるのか理解できないわ」
「………………………………まあいい、話は後だ
今重要なのはあの盗賊フーケなんだからな〜〜〜」
巨大なゴーレムを眺めながら音石は勝利の確信の笑みを浮かべるが
ルイズは対照的にどこか腑に落ちない顔をしていた。
しかし音石の予想通り、フーケにとってこの状況は
非常に不味いものだった。

365 :
「まずい、非常にやばいわね
アレが何かは検討も付かないけど、あの使い魔は厄介だわ
しかも制空権を完璧に向こうに取られてる………
あの使い魔が操ってる思わしき鉄の子竜、そしてもう一人、
さっきから距離をとってこっちの様子を伺ってるあの風竜……」
フーケは首を上に傾け、タバサとキュルケを乗せたシルフィードを睨んだ。
「多少の邪魔は想定内だったけど、竜が二体なんて反則だよ!
『フライ』を使って飛んで逃げることもできやしない!」
苛立ちを隠せないフーケだったが、自分の中で無理やり心を落ち着かせ
状況整理と作戦を冷静に練り始める。
(これ以上グズグズしていられない!
いずれ学院長や教師連中がやってくる、
その前にこの状況を打破しなければ………ッ!
しかしどうする!?連中はこっちの時間が少ない焦りを利用して
距離をとってやがるし、ゴーレムを操る魔力もそろそろ限界に来てる
考えろ!なにか策があるはず………………ッ!?)

366 :
思考を張り巡らしているうちにフーケはあることに気付いた。
自分と対峙している竜たちが一向に自分に攻撃してくる様子を
見せていないのだ。まさか!と思い、フーケは咄嗟に音石を見た……。
かなり距離が離れているはずなのに、フーケにはそれがはっきりと見えた。
笑っていた。音石のその表情がすべてを悟っていた!
(降参を誘っているつもりかいッ!!?
こっちの不利な状況を理解して……ッ!舐めやがってッ!!
この『土くれ』のフーケをここまでコケにしやがるなんてっ………!!)

ギュゥィィイイイイイイアァァァァンッ!
音石は愛用のギターを絶好調に響かせた。

367 :
「ハッハァーッ!よかったなぁルイズ!
コレでお前は明日から英雄だぜ、より胸はって学生生活も送れるってわけだぁっ!
実家で病弱だっていうお前の姉貴も喜ぶぜぇっ!ギャハハハハッ!!
よっしゃあせっかくだぁ、なにか弾いてやるからリクエストしてみろよ!
おっとしまった、この世界の住人のお前じゃリクエストなんて無理だな
仕方ねぇな、だったら俺が選曲して聞かせてやるぜっ!
そうだな……………よしっ!
『エアロスミス』の『WALK THIS WAY』あたりでも…………」
(たしかにオトイシの言う通り、この状況は圧倒的にこっちが有利……
でもなんなの!?さっきからわたしのなかで渦巻いている
このモヤモヤ感は!?いやな予感がしてならない………ってこと?)
未だルイズが不安を隠せないことも気付かずに、
いつの間にか音石はルイズの隣で………
ズッタンッズッズッタン!と勝利の確信に酔い踊っていた。

368 :
「なっ!?この『土くれ』のフーケを前にして踊ってやがるッ!?
なんてムカつく奴なんだい!思えばあいつの登場で
なにもかもぶち壊しだよっ!
当初の目的だった宝物庫の宝も結局取れまず仕舞い………え!?」
一瞬宝物庫の壁に目を向けたとき、フーケは目を疑った。
なんと壁に『ヒビ』が入っていたのだ!
ばかなっ!さっきまでいくらゴーレムで攻撃しても駄目だった
壁にどうして今になってヒビが!?とフーケは疑問に思ったが
その原因であるべき正体を思い出した。
「まさか………、あのゼロのルイズがさっき放った爆発でッ!?」
ますます理解不能だった、なぜあのゼロの失敗の爆発でこの壁が?
しかし、これは二度とないチャンスであるという事実が
そんな疑問を掻き消した。
そして閃いてしまった、この状況を打破する策を………!
「アンタにはもう少し働いてもらうよ!!」
フーケは杖を振り、ゴーレムを再び動かし始めた。
ソレを見た音石が踊りと演奏を止め、行動に移った。

369 :
「ゴーレムを動かしやがったか、
その行動………、殺されちまっても文句はねぇモンだと判断するぜっ!」
音石はシルフィードを操っているタバサを見てアイコンタクトを送る。
それを合図にスピットファイヤーとシルフィードは
ゴーレムに向かって飛来していった。
ただ一人、自分がなにもしていないことに気付いた
ルイズは精一杯の手助けをと思い、音石アドバイスを送った。
「オトイシ!ゴーレムの肩に乗っているフーケ本体を狙うのよ!
そうすればあのゴーレムは動かないわ!!」
「それぐらいは言われなくたってわかってるぜぇルイズ!
そこらへんの原理はスタンド使いと一緒だからなぁ〜!!」
(お願い!わたしのなかのこの予感が、どうかわたしの勘違いであって……!)
ルイズは自分の胸に手を当てて、祈った。
生命の予感や察知とはなんとも不思議なものだ。
自分の身にナニかが迫ると無意識のうちに自分の中でそれを感じ取る、
犬や猫などが、飼い主が帰ってくること時にソワソワするのと同じだ。
ルイズは正確にその嫌な予感を的中させてしまった。
なぜなら、その嫌な予感の元凶を作ったのがルイズ本人であるのだから………。

370 :
フーケのゴーレムがスピットファイヤーたちを無視して、
宝物庫の壁に拳を飛ばし、なんと壁を粉砕してしまったのだ!
「ナニィッ!?」「そんなっ!?」
音石とキュルケの驚きの声が重なった。
壁がえぐれた部分にゴーレムの肩に乗っていたフーケが飛び移った、
「まずいわ!宝を盗まれてしまうわ!」
キュルケがバッと音石にアイコンタクトを送った、
えぐれた壁の隙間に入っていったフーケを攻撃できるのは
音石が操るスピットファイヤーしかないと判断したからこその合図だ。
音石もそのキュルケの合図には気付いていたが、
一方でゴーレムのある変化にも気付いた。そして驚愕した!
「タバサァッ!!ゴーレムに近づくんじゃねぇっ!!
こっちに向かって倒れて来てるぞぉ!!」

371 :
それを合図に、シルフィードとスピットファイヤーはすぐさま真上に上昇したが、
30メートル近くあるゴーレムの転倒の衝撃は並なものではない。
凄まじい砂煙が広範囲に広がり始めていった。
地上にいる音石とルイズがそれに巻き込まれはじめたのも当然のことだった。
「伏せろルイズッ!絶対に目をあけるんじゃねぇぞ!!」
「きゃあぁぁぁぁっ!!」
咄嗟の行動だった、目の前まで迫ってきている砂塵に襲われる前に
音石はルイズのマントを引っぺがし、彼女を片手で抱き寄せると
体の体勢を低くし、引っぺがしたマントを二人の体を覆うように被り
迫り来る砂塵を受け流した。
【ビュオオオオォォォォォォ……………】


「オトイシくん、大丈夫かい!?」

372 :
マントを覆い被って数分、遠くから聞こえるコルベールの声が聞こえ
音石は覆い被っていたマントから顔を覗くと、
コルベールとオールド・オスマンがこっちに向かってきていた。
そのほかにも大勢の教師や生徒、衛兵がぞろぞろとやってきていた。
「………ふう、おらよルイズ。マント返すぜ
砂埃だらけだが、洗えば取れるよ」
ルイズは「ありがとオトイシ」と礼を言ってマントを受け取ると、
すぐさまオールド・オスマンたちのもとへと駆け寄った。
「ほっほ、ミス・ヴァリエール。
随分と無茶したようじゃが、怪我はないかの?」
「お気遣い感謝いたしますオールド・オスマン
ですが大丈夫です、私の使い魔が守ってくれましたから……」
その時一瞬、ルイズは軽く頬を染め誇らしそうな顔をすると
すぐにまたスイッチを繰り返した。
「それよりも学院長!たった今緊急事態がッ!」
「ふむ、コルベール君に事情は聞いておる
『土くれ』のフーケ、まさかこのトリスティン魔法学院を狙うとはの……
その上、固定化をかけておいた壁をも打ち破るとはたいした奴じゃわい」

373 :
それに対してはルイズも共感した。
固定化の魔法とは、その名の通り。
対象の物質などを時を止めたかのように固定し、
固定された物質は腐ることもなく、壊れることもない。
並みのメイジがかけた固定化ならばそれなりの実力者のメイジでも
破壊することはむずかしくはないが
あそこの宝物庫の壁は学院長直々に固定化の魔法をかけているほどのものだ
それを破るなんて、フーケとはそれほどの実力者だったとは………と
ルイズは少し身震いした。しかしルイズは永遠に知ることはない、
その固定化を打ち破った本当の原因は紛れもなく自分だということを………。
「学院長!」
宝物庫を調べていた教師の一人がフライの魔法で上から降りてきた。
「ほとんどの宝は無事だったのですが、ただひとつ
『破壊の杖』だけがどこにもありません」
「ふぅーむ、フーケめ
よりにもよって『破壊の杖』を………、ほかに手掛かりは?」
「はい、この置手紙がひとつ」
「なになに〜、『破壊の杖、確かに頂戴しました  土くれのフーケ』か
フォフォフォッ、なんとも律儀なもんじゃわい」

374 :
口では笑ってはいるオールド・オスマンだが
その目は真剣そのものだ、今この老人のなかでは
これからどうするかの方針が練りこまれているのだろう。
「ねえオトイシ、あんたのあの竜の子でフーケを探せないの?」
「だから竜じゃなくて………、はぁ……上見てみろ」
そう言われてルイズが顔を上に上げると、スピットファイヤーと
シルフィードが学院の上空をグルグルと飛び回っていた。
何人かの教師がスピットファイヤーの姿に「オオッ!?」と驚きの声をあげた。
「さっきからタバサのシルフィードと一緒に探しちゃいるんだが、
なにしろあの砂煙だし、フーケは名の知れた盗賊だからな
見つからないように身を潜めることに関しちゃあ、
向こうのほうが圧倒的上手だ。どうしようもねぇよ……」
スピットファイヤーを地上まで下ろすと、音石は片手でそれを持ち上げると
その姿にコルベールは感動と歓喜の声をあげ始めた。

375 :
支援

376 :
「おお!なんとも素晴らしい!!
見ましたか学院長!?あれほどの文化が彼の故郷には
当たり前のように発達しているのですぞ!」
「コルベール君、君が喜ぶのも理解できるは
今もっとも重要なのは『破壊の杖』を持ち去ったフーケのほうじゃぞ?」
「あっ……こ、これは失礼しました」
どこか残念そうだが興奮を落ち着かせたコルベールだったが、
タイミングを見計らったように、タバサとキュルケを乗せたシルフィードが
降下しはじめ、地上へと舞い降り、そんな二人に音石は声をかけた。
「そっちはどうだったよ?」
「やっぱりだめだったわ、フーケがどっちの方角逃げたかもわからないし
第一こんなに暗いんじゃねぇ………」
「もっともだな、………なあタバサ、お前なら奴をどう探す?」
「………夜明けを待つ、それに情報も…………」

377 :
――夜が明け始め、現在学院長室――
タバサの意見がもっともだと賛成した一同が学院長室に集まっていた。
今ここにいるのは、音石たちとオールド・オスマン、コルベール
そして何人かの教師陣たちだった。
「さて………こうして夜が明け始めたのはよいが
周囲を捜索させた衛兵たちの報告はどうなんじゃ、コルベール君?」
「残念ながら……、現在のところそう言った報告はまだ………」
「はっ、衛兵と言えど所詮平民、
平民のような役立たずなどあてにしても仕方ありませんぞ!」
「じゃあテメェはどうにかできんのかよ?」
「なにぃっ!!?」
一人の教師が鼻で笑った言葉に、音石がポツリと嫌味を呟き
その教師が音石を睨むが、しかし音石は眼中にないかのように
その教師と目を合わせなかった。
「コレコレよさんか二人とも、今はフーケが問題じゃろう
しかし、オヌシの今の発言はいささか言葉が過ぎるぞ?」
「………ッ、申し訳…ありません…」
その教師が詫びると、オールド・オスマンはやれやれと息を吐いた。
こんな非常時に相変わらずな教師たちに呆れながら
見渡しているとあることに気付いた。

378 :
「おや?ミス・ロングビルの姿が見えんの」
【ガチャッ】「私ならここにいます学院長、ハァッ…、遅れて申し訳ありません」
噂をすればなんとやらだ、
突然扉が開かれ、ミス・ロングビルが息を切らしながら入ってきた。
「おお、心配したぞミス・ロングビル
ん?えらく息がきれているようじゃが……なにかあったのかの?」
「はぁ…はぁ…、土くれのフーケの件で…調査していました」
「ふむ、仕事がはやくて助かるのミス・ロングビル」
「お褒めにあずかり光栄です、それで調査の結果なのですが
土くれのフーケの居場所が掴めました」
その言葉に学院長室が一気にどよめきはじめるが
オールド・オスマンは落ち着いた物腰と口調で問う。

379 :
「ほう、フーケめの居場所をのぉ〜〜……
一体それはどうやって調べたのじゃ?」
「はい、実はフーケが破壊の杖を持ち出し
逃亡したところを私が目撃したのです」
周囲のどよめきが一層に増す、ルイズたちもその言葉には驚いた。
しかし音石はなにか引っかかるものを感じていたが、
今は黙ってロングビルの話を聞いておくことにした。
「まさかだと思うがミス・ロングビル………
君はそのまま…………フーケの後を尾行したのかね?」
「身勝手な行動をお許しくださいオールド・オスマン
学院の衛兵である、『サリー』と『エンリケス』を連れて………
そしてフーケがここから馬で2時間〜3時間ほどの
とある森の廃屋を拠点にしていたことがわかりました」
「ふ〜〜〜む、ミス・ロングビル……
叱ってやるのはこの騒ぎが終わってからとしよう………。
しかし『サリー』と『エンリケス』?聞かん名じゃのぉ」

380 :
コルベールが手元にあったファイルを開き始める。
どうやらそれは学院に所属する衛兵や使用人などのプロフィールのようだ。
ページをめくっていくと発見したのか、詳細をオールド・オスマンに伝える。
「つい最近この学院に所属したばかりの二人組の衛兵ですね」
「はい、現在フーケが潜んでいる廃屋を見張らしています」
「なんじゃとっ!?ミス・ロングビル!
君はそんな危険なところに衛兵を置いてきたのかッ!?
もしもその二人になにかあったらどうするつもりじゃッ!!」
オールド・オスマンが珍しく声を荒げて張り上げ、椅子から立ち上がった。
心優しいこの老人のことだ、危険で凶暴なメイジの近くに
平民でしかない衛兵を置いとくなどどれだけ酷なことか、
それに対して怒っているのだろう。
今まで見たことなかった学院長の怒りの光景に教師たちが動揺し始めた。
しかしコルベールがロングビルをサポートするかのように言葉を挟み
その場を落ち着かせようとした。

381 :
「お気持ちは理解できますが学院長!彼らのことを思っているのならっ!
今は一刻も早く王宮にこのことを報告して助けを呼ぶべきかとッ!!」
コルベールが間に入ったことによって、
心を落ち着かせたオールド・オスマンは椅子に座りなおした
「そんな悠長な時間もないじゃろう、コルベール君………、
王宮に連絡してからでは時間がかかりすぎる、
よってじゃ!この一件は我々魔法学院内で解決するとしよう
そうとなれば早速捜査隊を編成する!
我こそはと思うものは杖をかかげ志を示すがよいッ!!」
しかし残念なことに、この学院の教師たちは
口だけが達者なトーシロの集まりのようなものだ。
教師それぞれが顔を見合すだけで、誰も杖を上げようとはしなかった。
そんな教師たちにオールド・オスマンはますます呆れた溜め息を上げると
たった一人、そう……ルイズだけがそのなかで杖をかかげた!
「ミス・ヴァリエール!あなたは生徒ではありませんか!ここは教師に任せて」

382 :
シュヴルーズが止めようとしたが、ルイズは牙を剥くように怒鳴り返した。
「誰も杖をかかげようとはしません!
ならばわたしがフーケを追います!
元々フーケをみすみす取り逃がした責任はわたしにあります
あの場に私はいたのですから!」
「それだったら私たちにもその責任はあるわよヴァリエール?
あんたと同じように、私たちだってあそこにいたのだから………」
ルイズに続くように、キュルケとタバサが杖をかかげる。
その行為に次に驚いたのはコルベールだった。
「ミス・テェルプストー!気持ちはわかるがあまりにも危険だッ!!
君たちもあのゴーレムを見ただろう!?」
「お気遣い感謝しますがミスと・コルベール
ですがヴァリエールには負けたくありませんので………
ねぇ、タバサ?」
「………別に家名なんてどうでもいい……でも心配」
「ありがとうタバサ、やっぱりあなたは最高の親友だわ!」

383 :
キュルケとタバサが友情を深め合う中、教師達は猛反対を開始した。
だがオールド・オスマンが「では君が行くかね?」と問うと、
皆体調不良などを訴えて断る。
オールド・オスマンは勇気ある志願者三人を見て微笑んだ。
「彼女達は、我々より敵を知っている。実際に見ておるのじゃからな
その上、ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だと聞いておる
実力は保証できるじゃろう」
教師達は驚いたようにタバサを見つめ、キュルケも驚いた。
「そんなの初耳よ!?それ本当なのタバサ?
なんで黙っていたのよ?教えてくれればよかったのに……」
「騒がしくなるから……」
「ウフッ、もうっ、タバサらしいんだから!」
キュルケが納得とばかりに微笑んだ。
音石が後から聞いた話だが、
『シュヴァリエ』というのは王室から与えられる爵位であり
階級で言えば最下級のものだが、
ルイズ達のような若さで与えられるような生易しいものではないらしい、

384 :
しかもシュヴァリエは他の爵位と違い純粋な業績に対して与えられる爵位。
いわば戦果と実力の称号である。
するとオールド・オスマンが話を続ける。
「ミス・ツェルプストーは、
ゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した家系の出で、
彼女自身の炎の魔法も、かなり強力と聞いておるぞ」
キュルケは得意げに髪をかき上げた。
さて次はルイズの番と、オールド・オスマンは視線を向けて、
褒める場所を探し、コホンッと咳払い。
「その……ミス・ヴァリエールは数々の優秀なメイジを輩出した
ヴァリエール公爵家の息女で、うむ、それにじゃ……
将来有望なメイジと聞いておる。
しかもその使い魔は、平民でありながらも
あのグラモン元帥の息子である
ギーシュ・ド・グラモンと決闘して勝ったという戦績がある」
明らかにルイズよりを音石を褒めている発言に、
ルイズは少しムッとしたが事実だから仕方ない。
音石は思わず少し苦笑してしまった。

385 :
「………オトイシくん」
「あん?」
ルイズたちが並んで前に出ている後ろのほうで、
壁にもたれ掛っている音石にオスマンは突然声を掛けた。
「これはこの年寄りからの………いや、学院長であるワシからの頼みじゃ
君も彼女たちと共にフーケを追ってくれんか?
当然、君が望むのであればいくらでも礼は弾む」
「が、学院長ッ!?」
このオールド・オスマンの言葉に教師たちが驚きの声をあげた。
由緒正しき魔法学院の長が、一人の平民……しかも使い魔相手に
そのような頼みを言うなどこの世界の常識では考えられないことだった。
だが音石からしてみれば、そのようなことを頼まれてもどうしようもないことだ。
なぜなら、頼まれるまでもないのだ…………。
「オトイシ、あんたは私の使い魔よ」
ルイズという自分の主人がこう言われてしまった以上………。

386 :
「まあ、そういうことだジイさん
今のオレはルイズの使い魔、そしてそのルイズがフーケを追う以上
オレが行かねぇわけにもいかねぇだろ?
それに『勝算』だってこっちにはある、任せておけよ」
そう言いながら音石は、先程から脇に抱えている
スピットファイヤーをつよく握り締めた。
(さっきは油断したが次はそうはいかねぇ……
ルイズたちはああ言ったが、フーケを逃がした一番の理由は
オレの過信からきた油断だ……、反省しなくちゃなぁ〜〜〜
次もヘマ踏まねぇようによ〜〜〜〜)


学院の門付近にて、音石とルイズ、キュルケとタバサ、
そしてオスマン、コルベール、ロングビルがそこに集まっていた。

387 :
「ミス・ロングビルはフーケの居場所を知っておる故
君らの道案内役として同行させよう、
なによりミス・ロングビル、君には衛兵の二人の件もある
……………わかっておるな?彼女たちを手伝ってやってくれ」
「はい、オールド・オスマン………
もとよりそのつもりです……」
ロングビルの言葉にオスマンは渋るような顔で頷く。
「ふむ、では馬車を用意せんとな………」
「学院長、その馬車なのですが……
屋根付きの馬車では見通しも限られますし、
なによりいざ何かあった時に動きにくいかと………」
「ふ〜む、コルベールくんの意見がもっともじゃな……」
「でしたら屋根のない荷馬車を用意しましょう」
「うむ、任せたぞミス・ロングビル」
そう言って、ロングビルは厩舎小屋へと駆け出していった。
そんなロングビルを見送っていた音石だったが、
そんな彼の上着の裾を突然誰かが引っ張ってきた。
見てみると、引っ張っていたのはタバサだった。
「………質問がある」
「こいつ(スピットファイヤー)のことなら黙秘するが?」
「………………そう……」

388 :
表情こそ変えなかったタバサだったが、どこか残念そうな雰囲気で
裾から手を離し、本を読む作業に戻った。
その様子を見ていたキュルケは溜め息をはいた。
(やっぱり教えてくれないか………
オトイシって、ほんと何者なのかしら………
でも彼と一緒にフーケを追えば、少しでも真実に近づくような気がするわね)
「コルベールさん、今更なんだがあんたに頼みが………」
「言わなくてもわかっているよ、それは(スピットファイヤー)君に譲るよ」
コルベールはスピットファイヤーに目を向けそう言ったが
さすがにこの発言には音石も驚いた。
あくまで「借りたい」と言うつもりだったのだが
まさか譲るとまで言ってくれるとは予想してなかったのだ。
「いいのか!?あんたが大金払って手に入れたモンなんだろ?」
「確かに、しかしオトイシくん。私はとても満足している
君がそれを動かすのを見たとき感動で涙がでそうにもなった……
なにより誇りにすら思っているのだよ私は………
少しでも君やミス・ヴァリエールの助けになるなら
私は君に手を貸すのを惜しまないよ………」
「…………感謝します、コルベールさん」

389 :
もう一回支援

390 :
音石は目の前の聖人のような男に軽く頭を下げるのだった………。
すると横から見ていたルイズがあるモノに気づき声を掛けてきた
「そういえばオトイシ、あんたそれもっていくつもり?」
「なんでぇ娘っ子、おれ様も一緒にいっちゃあ問題でもあんのかよ?」
ルイズが指差したのは、音石が部屋からもってきた
意思を持つ剣、デルフリンガーの事だった。
「だって別にねぇ〜……、オトイシにはレッド・ホット・チリ・ペッパーが
あるんだから、わざわざあんたみたいな薄汚い剣持っていかなくても……」
「ひっでぇなっ!あんまりだぜ、そんな言い草ッ!!?」
「事実を言ってるだけでしょうっ!」
自分を挟んでのやかましいいい争いに、
音石はやれやれと呟き二人の間に助け舟を出した。
「まぁ、ルイズが言ってることがもっともなんだがな」
「おいおい相棒、そりゃあねぇよ〜〜ッ!?」

391 :
「だがまあルイズ、ないよりはマシだろ?
それにこいつの助けが必要になる状況もあるかもしれねぇしな、
例えば俺がスピット・ファイヤーでフーケのゴーレムを攻撃してる時に
フーケ本体がオレ本体を狙ってくるかもしれねぇ………。
手元に武器がありゃ幾分かマシだぜ?ナイフも何本か持ってきたしな」
そう言って音石は、上着の内ポケットに仕舞っているナイフを
ルイズにチラつかせた。
内側のナイフをチラつかせている音石の姿が
あまりにも様になっていたのにルイズは苦笑いを浮かべるのであった。
「まあ、薄汚いボロ剣ってのは事実だから仕方ねぇがな」
「なに勝手に『ボロ』付け足してんだよっ!?
使い魔、主人そろってひでぇぜお前らッ!!」
デルフの虚しい叫びも、音石とルイズが目を黒い影で塗りつぶし
無視されるのであった。

392 :



ミス・ロングビルはまず、荷台を引くための馬を用意するために
厩舎小屋で適度な馬を選んでいた。
本来、大盗賊土くれのフーケを追うような危険な調査では
誰もが不安を隠せない表情を浮かべるのが普通だろう。
しかしこの時彼女の顔は、邪悪な笑みで口元を歪めていた。
「ふっふっふっ、まずは第一段落終了だね………
できれば教師に出てきてほしかったけど、まぁ仕方ないわね
この学校の教師たちったら口だけで腑抜けばかりだもの……」
「どうやら計画は順調に進んでるようじゃねぇかフーケ」
「!?」
すると突然、厩舎小屋の奥から声が聞こえてきた。
暗闇で顔こそは見えなかったものの、
ミス・ロングビルもとい土くれのフーケはその声に聞き覚えがあった。
「ッ!?あんた、なんでこんなところにいるんだいっ!?
私が獲物を連れてくるまで持ち場で待機してろって………」

393 :
「ヒヒヒヒッ、そう硬いこと言わないでほしぃ〜ね〜
あんたを捕まえようなんて考えている馬鹿な命知らずがどんなヤツらか
ちょいと気になったからよ〜〜、見に来ただけじゃねぇか〜
あんたまさか『土くれ』って ふたつ名のくせして
人のおちゃめも通じねえコチコチのクソ石頭の持ち主って
こたあないでしょうね〜〜〜〜〜?」
暗闇のなかにいる相手の言葉にフーケは苛立ちを覚えるが
こいつの人を頭から馬鹿にしたようなしゃべり方は今に始まったことじゃないと
自分に言い聞かせ、怒りを堪えた。
「どうせそっちは馬車なんだからナメクジみてぇにノロノロ来るんだろう?
あんたの考えた計画をおれがわざわざめちゃくちゃにするとでも思ったかい?
そこらへんはちゃ〜〜〜〜〜んと考えてるぜぇ〜〜〜〜〜?」
「………ふんっ、そりゃよかったね。
だったらとっとと持ち場に戻って………」
「いんや〜〜、おれも最初はそうしようと思ったんだけどなぁ〜〜……
これだけはあんたに伝えといといたほうがいいかなぁ〜〜っと思って、
わざわざこんな馬糞くせぇところであんたを待ってやったってわけだぜ?」
「伝えたいこと?」
「ああ、あんたが言ってた妙な使い魔………
ありゃ〜〜〜十中八九『スタンド使い』だぜ
以前あんたは伝説の使い魔ガンダーなんとかの能力とかなんとかって
バカづらさげて言ってたがよ〜〜〜………」

394 :
その言葉にフーケは身目を見開かせ、驚きを隠せない顔をしていた。
「そうそう、丁度そんな感じのバカづらだぁ〜、ヒヒヒヒヒ
あんた顔面の表情操作が意外とうまいねぇ〜」
「つまりあの使い魔はあんたの世界から召喚されたっていうのかいっ!?」
「ケッ、そこはあえてスルーですか……
まぁ、そういうことになるんだろうなぁ〜〜〜〜
あいつの格好、ぶら下げてるギター。間違いなくおれの世界の文化だ
しかもギタリストとは………なかなかイカシてると思わねぇかい?」
フーケは爪を歯で噛みながら、なにかを考えふけっていた。
「あんた………あの使い魔を倒せるのかい?
あの使い魔、はっきり言ってかなり強力だよ…………」
「モノは考えてから言えやこのボゲ、このおれが負けるとでも思ってんのかよ?
もしそうだとしたら、アンタ今からこのガキのションベンくせぇ
学院の医務室に行って、ケツの穴に温度計ブッ刺されたほうが
いいって助言してやるぜ?」
「ふんっ、相変わらず減らず口が絶えないやつだよ
まあ、それを聞いて安心したよ。
今回の作戦はあんたの働きに掛かってるんだからね」

395 :

そういってフーケは相手が潜んでいる暗闇から視線を外し、
馬を二頭選び、厩舎小屋から引っ張り出した。
そして自分が気になっていたことを思い出し、
再度小屋の奥の暗闇に視線を戻した。
「そう言えば、あんたに言われたから攫ってきた衛兵の二人
一体なにに使うんだい?」
しかし、その時には暗闇には誰もおらず、
ただ小屋のなかにいる馬の鳴き声と窓から流れる風の音が
静寂に小さく唸るだけだった………………。

396 :
投稿してサルに引っかかる際常に思うことがある。
代理の人、いつも本当にありがとうございます!
なんだかんだで一年ぐらい続けているこの『反省する使い魔』!
はじめこそは投稿する際にビクビクしていましたが
ここまで続けて、皆様から評価される今となっては胸を張って投稿できる!
そして今回の最後に現れたフーケと話していたなぞの人物、
一体何者なのか!?その正体は次話で明かされる!!
まあ、察しのいい人はもう気付いてるだろうけどね…………
SBRも無事終わり、次の新たなるジョジョが超楽しみです!
どうでもいい余談でした!それでは!!


代理終了

397 :
音石のキャラの良さと相変わらずの面白さ!!
最後の人物も気になり、次回も楽しみです!
投稿乙でした!

398 :
乙だ。
この作品には乙が必要だ

399 :
GOOD!
敵は何者なんだ

400 :
GJ
敵さんは何者かねエンヤ婆だったり?

401 :
乙!
まったく予想付かないなァァー

402 :

発言からしてイエローテンパランスっぽいけど誰なのか…

403 :
投下乙

404 :
うーむ、ちょろい外道系は皆口調が似てるからわからん


405 :
ラバーソウルかぁ
電気も阻まれそうだしデルフの出番だな

406 :
保守

407 :
うむ保守ろう
この夏は何か展開あるかな

408 :
この夏の間にエタってる作者が一巡して帰ってくるよ

409 :
一番戻ってきて欲しいSSは

410 :
一つに選べと!?
無理だ……

411 :
新作が見たい
小ネタとか途中からでもいい

412 :
生存報告、
地震でパソコンがぶっ壊れた上、
四月越えで忙しくなり、今日まで延びてしまいました…。
とりあえず、8月辺りにあげるので

413 :
うぇ・・・大変ですね・・・

414 :
おぉう・・・
自分のペースでどうぞです。

415 :
大統領の人戻ってくるか!
期待してる!

416 :
よっ!大統領!

417 :
仮面のルイズが良すぎる。
エターなった??

418 :
逆に考えるんだ
エタってるのはSSじゃない
己自身なのだと!!

419 :
永遠はあるよ…

420 :
おまえにも永遠をやろうではないか!
その傷もなおす…
エリナと永遠を生きれるぞ…ジョジョ!
ジョジョ…!?こ…こいつ……死んでいる……!

421 :
うひょー破牙でたー
使い道がありません

422 :
誤爆

423 :
てすと

424 :
もうオワコンなのか・・・かなしいね


425 :
2007年度 1〜79スレ目
2008年度 79〜87
2009年度 87〜90
2010年度 90〜91
2011年度 91〜

426 :
仮面を待っている

427 :
俺は、未完結作品を残したまま姿を消した作者達が…
いつか目覚める眠れる奴隷であることを信じる

428 :
作者ー帰ってきてくれー

429 :
今日投下できるかな

430 :
日付が変わったか…

431 :
まだ夏は始まったばかりなんだ……諦めるんじゃないッ

432 :
11:45 土曜日 (EDT) - マンハッタン
17:44 土曜日 (CEST) - イタリア
17:45 土曜日 (EET) - エジプト
大丈夫まだ今日だ

433 :
透過します。

434 :
ある日の夜、キュルケはいつもの通りに髪の毛を整え、下着姿のようなラフな格好で隣の部屋へ向かった。
隣の部屋は内側から堅く施錠されているが、部屋の主は魔法による施錠が苦手なので魔法に対する抵抗力がない。
あっけなく、キュルケの『アンロック』で鍵は開かれてしまった。
「ヴァリエール…? 起・き・て・る・?」
「……」
部屋に入り込んだキュルケを無視しているのか、本当に寝ているのか、ルイズはベッドに寝たまま返事をしない。
ルイズに近づいたその時、ガタ、と別の音がして扉が開く。
「キュルケ!今日こそは僕と夜のアバンチュールを」
「フレイム」
キュルケは振り向かずに、使い魔のフレイムを呼んだ。フレイムはキュルケを追ってきた男子生徒の裾を引っ張って転ばせると、火を噴いた。
「あっづあ゛あああああああ〜〜〜!!」
哀れ男子生徒は、丸見えになった尻を押さえながら慌てて逃げ出した。
「ンフフ♪」
フレイムは、舌なめずりをしてベッドに近づく主人を見ながら、器用に尻尾で扉を閉めていた。

■■■

「どーしろって言うのよ」
ルイズはベッドの角に座り込んで、満足そうな表情で眠るキュルケを見た。
いつの間にか部屋にキュルケが居て、いつの間にか自分に覆い被さり、妙に艶っぽい唇で『お願い…』とか言われて何が何だか解らなかった。
なんだコイツついに気が狂ったか、と思ったがそもそもの原因は自分の使い魔である『ハーミット・パープル』にあるのはわかりきっている。
とりあえず追い出そうとしたが、ルイズは両手を掴まれてベッドに押さえつけられてしまった。
これはやばい、と感じたルイズは思わず『ハーミット・パープル』を発動。
棘のついた茨と言うには、ちょっと太くて棘も柔らかい気がするそれは、人を傷つけない程度の刺激を与えるのか、とろけるような感覚(マッサージです)を感じるらしい。
優しいイソギンチャクに全身をくまなくマッサージされ、愉悦の声を上げたキュルケに、ルイズは冷や汗をかいた。
それだけならまだしも、ほんのちょっと、ほんの少し優越感を感じてしまった。
ルイズは「もしかしてこれが私の本心?」と考えて、ああ嫌だ嫌だと頭を振るばかり。
ハーミット・パープルは文字通りルイズと一心同体。使い魔が勝手にやったことだと言い逃れはできない。
ルイズは悩み疲れたのか、それとも考えることを止めたのか、寝ることにした。
満足そうに眠るキュルケの隣に倒れ込み、そのまま寝てしまった。
『…そんなんだから誤解されるんじゃねーの?』
デルフの呟きに返事はなかった。
■■■

435 :
投下なら支援する

436 :

「…………」
「…!」
翌朝、朝食を終えたところで廊下ですれ違ったミス・ロングビルに、熱っぽい視線を送られたルイズ。
冷や汗を流しつつ教室へと逃げ込んだが、さも当然とキュルケが隣に座り、更にその隣にタバサが座る。
タバサはルイズの近くに座ることで周囲の喧噪から離れようとしているのだが、事情を知らない第三者が見れば、キュルケを巡ってタバサとルイズが争っているようにも見えるし、タバサ→キュルケ→ルイズの三角関係にしか見えない。

ちらりと周囲を見ると、興味深そうに三人を見ていた他の生徒は目をそらしてしまう。
「はぁー…」
お手本のようなため息をついて、机に突っ伏した。

しばらくして、教室の扉がガラッと開き、ミスタ・ギトーが現れた。
生徒達が席に着くと、ギトーはわざとらしく咳払いをした。
「では授業を始める。知っての通り、私の二つ名は『疾風』。疾風のギトーだ」
教室を見て、ギトーはつまらなそうにしている一人の生徒を見つけた。
「最強の系統は知っているかね? ミス・ツェルプストー」
「『虚無』じゃないんですか?」
「伝説の話をしているのではない。私は現実的な答えを聞いてるんだ」
キュルケはこの教室唯一の『火』のトライアングルであり、いろいろな意味で目立つ生徒だ、ギトーが挑発している野田すぐに解った。キュルケは不敵な笑みを浮かべて答える。
「「火』に決まっていますわ。すべてを燃やし尽くせるのは火と、じょ・う・ね・つ ですもの」
ちらりとルイズに流し目を送る、ルイズは気まずそうに目をそらした。
「ふむ。残念ながらそうではない。試しに、この私にきみの得意な『火』の魔法をぶつけてきたまえ」
杖を引き抜きつつ、ギトーがとんでもないことを言い出した。
キュルケが火のトライアングルだと知る生徒も、キュルケ自身もこの言葉にはぎょっとした、いくら何でも危険すぎるのだ。
「どうしたね? 君は確か、『火』系統が得意なのではなかったかな?」
「…火傷だけでは済みませんわよ」
他人を小馬鹿にするような、キュルケの笑みが消えた。ゆっくりと胸の谷間から杖を抜き、キュルケが。
「かまわんよ。本気でやりたまえ。有名なツェルプストー家の赤毛が飾りではないのならね」
キュルケの髪の毛がふわりと浮いた、怒髪天を突くということわざがハルキゲニアにあるか解らないが、キュルケが起こっているのは誰の目にも明らかだった。
杖を掲げて呪文を詠唱すると、小さな火の玉が現れ、更に詠唱を続けると直系メイルほどの火の玉となった。
生徒達が驚き、慌てて机の下に隠れたその時、火の玉がギトーに向かって放たれる。
ぼおおおっ、とうなりを上げて襲い来る火の玉を、風系統の魔法でいとも簡単に消し飛ばした。
その瞬間烈風が舞い上がり、火の玉の向こうにいたキュルケはたまらず吹き飛ばされた。
「あ」
尻餅をつくかと思われたその瞬間、キュルケの体がふわりと抱き留められた。
キュルケはきょとんとした顔で、タバサを見た。違う、とタバサが首を横に振る。
ルイズを見ると、やってしまった…と言わんばかりの表情でキュルケを見ている。
いくら何でも吹き飛ばされるのはなー、と思ったときにはもう遅い、ハーミット・パープルはクッションのようにキュルケを抱き留めていた。。
「……べ、べつにあんたなんかを助けようとしたわけじゃないんだからね!」
(ぽっ)
逆効果だった。
■■■


437 :
俺も支援だー!

438 :
■■■

さて、その後ギトーに睨まれもしながら授業は進み、ギトーが風系統の真髄を見せようとしたその時、教室の扉がガラッと開かれた。
「あややや、ミスタ・ギトー。授業中ですが失礼しますぞ」
「ミスタ・コルベール?」
教室に入ってきたコルベールは、礼服と言うには飾りすぎた格好をしていた。
ロールした金髪のカツラや、レースや刺繍の飾りがついたローブは、儀式的なものであって礼服にしては飾りすぎている、普段使われる物ではない。
「おっほん。今日の授業はすべて中止であります!」
コルベールは重々しい調子で告げる、すると教室中から歓声があがった、その歓声を押さえるよう両手を振りつつ、コルベールが言葉を続ける。
「えー、皆さんにお知らせですぞ。恐れ多くも、先の陛下の忘れ形見。
我がトリステインがハルケギニアに誇る、可憐な一輪の花、アンリエッタ姫殿下が、本日ゲルマニアご訪問からのお帰りに、この魔法学院に行幸なされると、お使者からの通達がありました」
その言葉に、どよ…と教室に声が上がった。
「おほん! えー、皆さん、本日はトリステイン魔法学院にとって、始祖ブリミルの降臨祭に並ぶ、めでたい日であります。
よろしいですかな、粗相があってはなりません、急なことですが今から全力を挙げて歓迎式典の準備を行うのです。
授業は中止となりますが、今日は皆さんの授業の成果、貴族としての姿をお見せする大事な日となります!生徒諸君は正装し門に整列、姫殿下をお出迎えする栄誉に預かります!」
生徒たちは、緊張した面持ちで一斉に頷く。コルベールは重々しげに頷き、目を見張って怒鳴った。
「諸君らが立派な貴族にしたことを、殿下にお見せするこの機会! 御覚えがよろしくなるように、しっかりと杖を磨いておきなさい。よろしいですかな!」
「「「「はい!」」」」
生徒達は一斉に返事をした。
満足したコルベールは、勢いよく向きを変えて教室を出ようとしたが、カツラのサイズが合ってないのかそのまま滑り落ちてしまう。
「…よく磨いてる」
タバサの呟きが、静まった教室にはよく通った。
ぷっ、と笑いをこらえる音が教室中から聞こえてくる。
「くくく…」
意外にも一番ウケたのはギトーらしく、口元をひくつかせながら目をそらしている。
「ミスタ・ギトー!」
「い、いや失礼、生徒諸君。小さなミスもないよう気をつけること! ぷっ」

■■■

それから間もなく準備は整い、魔法学院の正門にアンリエッタ姫殿下の一行が現れた。
整列した生徒達が一斉に杖を掲げ、その間を馬車、グリフォンに乗った魔法衛士隊、従騎士達が通り抜けていく。

「…あれがトリステインのお姫様ねえ。私の方がずっといい女だと思わない?ルイズ…って、ルイズは?」
後ろの列にいたキュルケは、近くに並ぶはずのルイズを探したが、どこにもルイズの姿はなかった。

「うぐぐぐ…この馬鹿触手!駄目ったら駄目よ!不敬だから!恐れ多いんだから!」
部屋に戻って着替えていたルイズは、半裸のままハーミット・パープルを踏みつけ、縛り、なんとかお仕置きをしようとしていた。
ルイズはトリステインの王女、アンリエッタの遊び相手を務めたことがある。幼かった王女の姿を思い出し…次に自分より大きな胸に育った数年前の姿を思い出して、今はもっと大きくなっているのかと思い、ハァとため息をついた。
すると、ハーミット・パープルが突然動きだした。
その動きは、ド○ゴン○エストに登場するスライムを2匹、ぐるぐる巻きにして捕まえるような形で、これはヤバイ!と感じたルイズは「大変な腹痛で整列できません!」と言い訳をしてお出迎えをサボり、使い魔にお仕置きをしていた。
しかし踏みつけたり、投げたり、乗馬鞭で叩いたりと思いつく限りのことをしても、全く効果がない。

439 :
よし支援だ
あと
イタリアとエジプトは同じ時間だったわ

440 :
「支援」しろ
名作にはそれが必要だ

441 :

「このっ!この…こいつ!」
使い魔とは一心同体、ハーミット・パープルはルイズの動きを読みひょいひょいと躱していく。その上物質をすり抜ける能力があるので、ダメージはゼロであった。
それを見たデルフリンガーは、カタカタと鍔を鳴らして言った。
『やめとけって、無駄だからよー』
「あんたは黙ってなさいバカ剣!」
怒り心頭のルイズにはとりつく島もない。
『俺を握ればコントロールできるのになー』
「知らないわよ!  って、え?」
本当かしら?と疑問に思ったルイズだが、デルフリンガーの言うとおりにしてみると、左手のルーンが輝き、ハーミット・パープルの動きがルイズのコントロール下に入った。
「なるほど…武器を使えるのがガンダールヴのルーンだけど、私とハーミット・パープルはルーンを共有しているだけじゃなくて、ハーミット・パープル自身が武器扱いになるのね」
『そーいうこった。その代わりそいつの利点も一つ殺してることになるぜ』
「どういう事よ」
『俺は人間みたいに目で物を見ちゃいねー。そいつも同じだ。嬢ちゃんがそいつの力を全部操ろうとすると、二人分の体を一人の頭でこなすって事になんだ。
例えば突然後ろから殴られるとすんだろ、そいつが自動的に反撃したり、襲撃をあらかじめ教えてくれる。だけど嬢ちゃんが操っているうちはその力が鈍くなんだ』
「…それは。確かに便利だけど、勝手な動きをされちゃ困るときがあるの!それに、ずーっとデルフを握ってるのは大変よ、それじゃ教室にも入れないわ」
『そういうのは…まあ、小さな隠し武器でも持ってるしかないなあ』
「それじゃ暗殺者だと思われるわよ! あっ……それじゃ、もしかして私、一生貴族のパーティーにも出られないんじゃ…」
『あー、その、何だ。なんとかなるって。多分』

「…寝るわ」
ルイズは着替え途中のまま。拗ねたようにベッドに潜り込んだ。
「うう…姫様申し訳ありません…ルイズはもう姫様に近づけません。 お友達と呼んでくれた姫様だからこそ近づけません……」

「でも…私のことを覚えていて下さるなら、お話したかったわ…」

■■■■

その夜。
「お久しぶりね。ルイズ・フランソワーズ」
ルイズの部屋に現れたアンリエッタ王女は、感極まった表情を浮かべて、この世の終わりのような顔をしたルイズを抱きしめた。
「ああ、ルイズ、ルイズ、懐かしいルイズ!」
「姫殿下、いけません。こんな色魔のような触手の餌食にもといこんな下賤な場所へ、お越しになられるなんてホント……」

ルイズの苦労はまだまだ続くらしい。


■■■■■■■■■■■■■■
続かない。

442 :
続かない?続かないって・・・嘘だろ承太郎!?
投下オつでした

443 :
この作品は奇妙なルイズ・仮面のルイズの息抜きに書いたのが始まりだから「続かない」と書いたけど、もう五度目になるのか。
気に入ってくれた人、待っていてくれた人には大変ありがたく、申し訳ないです。時間を見つけて少しずつ書いてます。
支援ありがとうございました。

444 :
投下乙っ楽しく読めた
フラグがキュルケに立ってしまっているw

445 :
投下乙
ハーミット・パープルww

446 :
投下乙! 生存報告してもらえるだけでも本当に安心するなぁ。
>>409
亀だけど、銃杖さえ戻ってきてくれれば、俺はそれだけでもう……。

447 :
乙です!ちょうどこのあいだ読み返したところでした

448 :
乙!キュルケの、こう、なんというか
誘惑とかそんなんじゃない、自然のエロさが出てていいなぁ
というか奇妙、仮面、茨って同一作者さんだったのか!
新参だから知らなかったぜ、スタンドも月までry
仮面も茨も、いつまでも続きをまってます!
姫さまにもエロスを!!

449 :
まさかの投下でかなりびびったわ
アン様が茨の餌食になるのか不安だなw

450 :
楽しみだの間違いだろw

451 :
えーと、「奇妙なルイズ」の作者さんだったんですか?
前々から気になったんですが「奇妙なルイズ」って完結してるんですか?
本編では完結してるけど番外編を見る限りなんか続きそうな感じでしたので……

452 :
>>451
完結してます。
ですが、ゼロの使い魔自体が連載中なため、続きを描く余地があれば描きたいと思って、投下しました。
実際に続きを書くのが難しくて、ゼロの茨と同じ「いつ続きが書けるか解らない番外編」になってますが…。

453 :
よくわかりました。
つまり原作のラストがはっきりしない限り続きを書くのが難しいということですか。

454 :
一応あげとこう

455 :
J・ガイルがヴィンダールヴになったら、両手にルーンが刻まれるってことでいいのかね

456 :
ガンダールヴだとどうするねん

457 :
左についてるほうの右手だけでよくね

458 :
阿修羅マンとかジャンクマンがガンダorヴィンダになったらどうなるのかね。
かたや複数、かたや魔技・ダブルフェイスで右とか左とかそもそもない男。

459 :
>>458
スレチ
あの作品のキャラがルイズに召喚されましたスレで語ってくれ

460 :
ゼロ魔読んだこと無い分際で聞くのもあれなんだが、
使い魔の契約って、主人側が死んだらどうなるんだ?
ジョジョキャラが勝手に使い魔になんかされたら、ルイズを殺しちゃいそうなんだが

461 :
設定まとめ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9292/1183522825/

462 :
虚無が死ぬ→次の虚無が覚醒
ただしそこで契約打ち切りになるのかはわからない

463 :
いや、使い魔は静かに暮らしたいを読んで気になってね
主人が死んでも使い魔のルーンは消えないのか
殺し損になるな

464 :
作品投下ならともかく、雑談なら話の流れにあってたら多少のずれはいいじゃん。
というかそこまで厳密化して一体何と戦っているんだ?>>459

465 :
>>464
たぶん、久しぶりに書き込みがあったと思ったら、
阿修羅マンとかジャンクマンとか自分の知らない作品だされたから、話広げらんねーよチクショーって思ったんじゃないかな……
俺も知らなくて悪いな

466 :
>>464
こっちはジョジョもしくは荒木作品という縛りで進んでるからさ
そこら辺はお互いに・・・ね

467 :
保守?

468 :
ここって保守必要だっけ?

469 :
「保守」…そんな言葉は使う必要がねーんだ。
なぜなら、オレや、オレたちの仲間は、その言葉を頭の中に思い浮かべた時には!
実際に保守しちまって、もうすでに終わってるからだッ!
だから使った事がねェーッ。
『保守しました』なら、使ってもいいッ!

470 :
お待たせしました、12時から投下開始です

471 :
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!待ってたあー

472 :
では投下開始します

473 :
大統領の思考が再開したのは出発直前の早朝だった。
朝靄の中、眉間に手を当て、これからどうするかを考え始める
(まず…アルビオンに行く事はほぼ確定だろう、私一人ならともかくルイズがいる以上は止むを得ない
 そうなると行く為のルートはどうするかだが土地勘がない上に現場は戦地だ、どうなるかわからない、
 いずれにせよ情報が少なすぎる)
これ以上考えても仕方がないと大統領は軽くため息をつき、自分の身を任せることとなる馬の首を少しだけ撫で、
ルイズとギーシュ、二人の方へ向く。
「アンタねえ、これから行く所はアルビオンよ!ジャイアントモールを連れて行けるわけないでしょ!」
「そ、そんな!離れ離れなんて辛すぎるよ、ヴェルダンデ!」
(どうもギーシュが使い魔を連れて行けなくてぐずってるようだな。)
暫く見つめていたが、ギーシュの使い魔の巨大モグラがルイズに覆いかぶさるようにすりよってルイズを押し倒す、
「おい、アレは何をやってるんだ?」
「う〜ん…多分ルイズが持ってる宝石じゃないかな?僕のヴェルダンデは希少な宝石に目がないから」
「そうか、主従そろって女癖が悪いかと思ったよ。」
ギーシュの心にグサリとくる一言を言い放つ、大統領は内心自分がイラついてる事を自覚しだす、
だが、運は大統領を見放したのかそんな大統領の神経を更に逆撫でする人物がやって来る事となる。

大統領がルイズから巨大モグラをどかそうとすると突風が吹き荒れ、モグラを弾き飛ばした。
敵か?と大統領は警戒し、レイピアを抜き放つ、ギーシュは自分の使い魔が傷ついたことに絶叫していた。

474 :

ゆっくりと…恐らくは風の魔法を放ったであろう人影が近づいてくる、朝靄で姿が見えない。
やがて立ち止まり、落ち着いた口調で人影は話し始めた。
「僕は味方だ、武器を下ろしてくれないか?」
朝靄が晴れていき、姿が鮮明になっていく…蓄えたヒゲと羽根飾りの帽子が目立つ男だった。
「いきなり攻撃してきて“味方”だと?」
てめー頭脳がマヌケか?と言いたそうな大統領の顔を一瞥すると、男はルイズの方に顔を向ける。
「すまない、婚約者がモグラに襲われていて、いてもたってもいられなくてね」
大統領が口を開こうとすると脇からルイズが大統領を押し退ける、
「ワルド様!」
駆け寄っていくルイズをワルドと呼ばれた男は抱きかかえる
「おお!僕のルイズ!相変わらず軽いな、君は!まるで羽根の様だ!」
甘ったるい空気というのはああいうのを言うんだろうな、と大統領は冷めた目で眺めてながら再び現在の状況を確認する
(アイツがルイズの婚約者か、なぜこの任務を知っているか…あの王女に聞いたか?身内なら心配ないとでも思ったのか?)
そこまで考えると、ワルドがこちらに振り向く
「自己紹介が遅れたね、女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」
「…ルイズの使い魔、ファニー・ヴァレンタインだ。」
少し、困惑したような表情を“作る”
(爵位持ちでしかも近衛…実力は間違いなくスクエア、最低でもトライアングル以上は確実か)
大統領の頭はさらに回転する
(王女はなぜコイツを…このワルドだけを行かせなかったか?簡単だ、信頼できないからだ、あくまでコイツはルイズのオマケ
 …ルイズの護衛役でしかない、だがルイズにコイツを御せると思っていたのか?)
そこまでで大統領は考えを止める、ワルドに関しては今のところはどうもしないが“警戒することは絶対に止めない”という事で落ち着く。
というより、これから戦地に行くことを考えると内憂にこれ以上関わっていられないのだ。

ついに出発となるところでワルドが加わった為。
ルイズがワルドと共にグリフォンに乗り、大統領、ギーシュは馬に乗ってそれに追随する形となった、

大統領自身SBRの上位選手に匹敵できる程の名騎手だが
空を飛ぶグリフォンに地面を走る馬が平行できる筈もなく、距離はどんどん離されていく。
ギーシュは普段馬に乗っていないため、大統領についていくので精一杯である。
(状況が状況だから急ぐのはわかるが…あそこまで速めるか?)
グリフォンの速度があまりにも速すぎるため疑問に思ったが思考を即座に中断すると同時に手綱を引いて馬も止める。
先行した大統領が止まったのを見てギーシュも大統領に近づいた頃合で馬を止めると大統領に声をかける
「どうしたんだい?急に止まって」
「ギーシュ、魔法を放てる準備をしておけ、ゴーレムでいい」
切り立った崖…更に自分たちの方に遮蔽物がない為、襲撃に適した場所だと大統領は理解する。
その上で大統領の第六感が警報を鳴らす…。
ギーシュは困惑したが大統領の真剣な目を見て青銅のゴーレムを即座に作れる準備をする
「ギーシュ、ゆっくりと進め、ゆっくりとだ」
大統領の声に応じ、馬を歩かせる、大統領もギーシュより一歩出遅れた形で進む。
進むにつれ大統領の“布”を握る手が強くなる、ギーシュも大統領の雰囲気にただならぬ事と感じ、周囲を警戒する
すでに空にグリフォンの姿は見えなかった。

475 :
支援

476 :

鋭い音を立てて馬の足元に矢が突き刺さると同時に崖の上に幾つもの松明の明かりが見え始めた。
いきなりの事で驚いた馬を大統領は落ち着かせる、
「ギーシュ!ゴーレムを出せ!盾にする!」
大統領の声に一喝されると同時に準備していたゴーレムを出現させる。
(数が多すぎるな…さてどうするか)
大統領は崖の上の松明と撃たれる矢の量からおおよその敵の数を把握するとその対応に悩む。
(D4Cはこういう一対多数は苦手なんだが…まあいい、“やりよう”はある)
「ギーシュ、ゴーレムで馬と自分の身を守っていろ、いいな?」
「君はどうするんだい!?」
「何、連中を片付けてくる」
言った後、大統領はゴーレムにその巨体を守られるよう“伏せさせた馬”と地面に挟まれた。
ギーシュが一瞬唖然としたが気を取り直し、どこにいるとも知れない大統領に告げる
「僕のゴーレムはあくまで青銅だ、そう長くは持たない!速くしてくれよ!」
ギーシュがそういい終わった時、すでにゴーレムの身に何本かの矢が刺さっていた。


[視点変換]〜襲撃者side〜
(運が良いねえ〜俺たちは…)
ホクホク顔で状況を見ていたその盗賊は振って沸いた儲け話に喜んでいた、
(あの“白い仮面の男”から貰った金+こいつ等を即片付けてアルビオンへ行き略奪で大儲け…ウプププ!)
本来、戦況が決まるまで両者に加担せずどちらか一方が圧倒的優位になるまでまつつもりだった、
そして現状、反乱軍が圧倒的有利という条件で“略奪専門”で加担する腹積もりなのである。
(もしヤバそうな相手だったら即トンズラ!あのヤローに義理立てするつもりもないしな。)
彼らにとってこの襲撃は“頼まれたもの”であって“前菜”なのだメインは王家の宝の略奪であり、
そもそもグリフォンがそのままいたらする気も起きなかった、そのまま金を頂きアルビオンへ直行すれば良い、
それでも彼らが襲撃を起こしたのは何か金目の“モノ”でもあるかもしれないという文字通り、骨の髄までを地で行った結果である。
(本当に運が良いぜ…低レベルのメイジなんてよ〜)
当初相手がゴーレムを使ってきたのには驚いたが、遠目からみても数が少なく、盾代わりにしているため、
大きな魔法を使うための時間稼ぎかと思われたがその様子もない、つまり守るので精一杯だと言う事だ
(つまりこの数をどうこうできるほどの実力はない、それなら か〜んたんに捕まえれるぜ、メイジなら高く売れるだろうしな)
そうして満面の笑みを浮かべ、今から奴隷屋との交渉を考える事にした
虎穴に入らずんば虎子を得ず、しかし虎子が虎穴からでてくるとは僥倖と言えただろう、
しかし…虎子が虎穴から出てくるのならば“親”も一緒に出てくるのも当然といえる。

不意に「なあ」と後ろから声をかけられる、
取らぬ狸の皮算用を中断され、不機嫌そうに振り返った瞬間、
声帯ごと頚動脈を切断され男は果てた。

[視点変換]〜大統領side〜
(とりあえず、声を出させずに始末したがこの数は骨が折れるな…)
D4Cによって平行世界に移動した大統領は襲撃者達の後ろ側に回りこみ、無防備な後ろから攻撃していく算段であった、
(ギーシュの方は…悩んでる時間もないらしいな、仕方ない、片っ端から仕留めていくとしよう。)
足跡がしないという特性を活かし、あるものは首を切断し、あるものは異世界へ飛ばす、やられたものは声を出す暇もない。
そんな形で十数人ほど減らした辺りで竜の嘶きを聞く。

477 :
大統領が空を見上げると自分の使い魔に乗ったタバサとキュルケの二人が居た、
襲撃者はいきなりの事態に戸惑い、混乱していた、大統領は手近な一人に当身をおこない気絶させて置く。
タバサの唱えた風の魔法だろう、突風が吹き荒れ襲撃者達を吹き飛ばしていった、
風竜から降りたタバサとキュルケに笑いながら話しかける、
「なぜここに?」
「…付き添い」
「ダーリンがルイズと一緒に朝早く出かけるのを見かけて大急ぎで追っかけてきたの」
逃がさないわよ?と言った目でこちらを見てくるキュルケにフッと大統領は息を吐く
(自分はつくづく…しつこい女性に“助けられる”らしいな…)
そうして見上げた空にはグリフォンが飛んでいた。

478 :
しぇん

479 :
以上で投下終了です。

480 :
乙乙!

481 :
最高に乙ってやつだーハハハー
次回も楽しみよのぅ

482 :
投下きてたー乙ゥ
描写が丁寧だなー
大統領の敵の倒し方が淡々としているw危なげねえ

483 :
            /    /    \ ヽ   ヽ ヽ
             //  / ∧    :.  \\   :.',:.. ',
             // : { /:.ハ :l:.  ト;.: |l_ハ_:|   :.:l:.:. l
          l ハ 从丁≧ュ、}:.: 厶斗矛廾   :.|:.:. l
          レ' ヽ:|:.:} ,仟:r'} j/ 之:ン゙ |   .:.|:.:. l
              ト-ゝ ゞ'´ ' __      |   .:.|:.: ',
             / | ∧   f'ー ヽ     !   .:.ト、  \ 無駄無駄無駄無駄無駄無駄
               / .|  ヽ   ヽ _,ノ  イ   .:.|:.}:.   \
            /   |   :.:> 、_,. < |/   .:.|:.:',:.:.   \
           / .:.:.:ノ ,z==|テ廾ァ、/  .:.:.:/\\:.:.:.:.:.  ` ̄` ー- 、
         /.:.:.:.:./  〃.:.:/{=//\.:.:.:.:/:::::::`ヽ\:.:.:.:.:.:.:.      ヽ
       / .:.:.:.:/   //{/!::::::レ'/  .:.:.:\/::::::::、:::::::::}:.:\:.:.:.:.:.:.:.:.     〉
       〈  :.:〈    /∧|::::::ヽ:::::〈   :.:.:.:./\:::::::::\:::l.:.:.:.:.\:.:.:.:.:.:.:.:  /
        \ 人.  /7゙  \::::::::::::ヽ   :.:.\::ヾ!:::::::::::ヾ、__:.:.:.:.〉:.:.:.:.:.   /
        /::::::ヽ//     \:::::::::::\   :.:.:ヽ;||:::::::\::::::::}:.:./:.:.:.:.:.  /
         {::::rー// .:.      ∧:::::::::::::〉 :.:  :.:.l:||::::::::::::\:::l:.:{:.:.:.:.   〈
       / {二}ソ.:.:.:.   / || \::/ .:.:.  /}ヽ\:::::::::::::ヾ、\:.     \

484 :
ゴーゴーゴーゴーゴーゴー

485 :
wikiまとめてくれる優しい人いない?

486 :
485さんってすごい優しいらしいぜ

487 :
ぱねぇ

488 :
仮面のルイズぺろぺろ

489 :
仮面のルイズは、吸血鬼になっても人間さを失わない、
強いけどか弱いルイズが可愛すぎる

490 :
俺も語るスレレビューwikiでハマったクチだが、強くて弱いルイズが魅力なんだよね。

491 :
ブルリン召還のとこで泣いた

492 :
むうう

493 :
きれいなワルド

494 :
R男爵とギーシュさんは最高だった

495 :
才人とアヌビスを同時召喚しても面白くなりそうな気がしないでもない

496 :
アヌビス+デルフ+地下水三刀流!海賊王に俺はなる!

497 :
才人とアヌビスを召喚した仮面ルイズ茨付きなら?

498 :
ハルケゲニアが二人の手に落ちるなw

499 :
ハルケゲニア

500 :
「おとなはウソつきだ」 と思った少年少女のみなさん、 どうもすみませんでした。
おとなはウソつきではないのです。 まちがいをするだけなのです……。

501 :
Rはウソつきだ
に何故か見えた

502 :
はっはっは

503 :
新手のスタンド攻撃かっ!

504 :
R子爵が鏃に貫かれて目覚めたんだな

505 :
ところで>>498は一体何処にいってしまったんだ

506 :
今こそ名乗ろう俺が498だ

507 :
一体どんなスタンド攻撃を食らったんですか?

508 :
>>501
このRはウソをついている『味』だぜ……

509 :
今起こった事をありのままに話すぜ
俺は「ハルキゲニアって間違えちゃう人いるよねーププッ」
と思って「ハルケ」と慎重に打ち込んだら後半部分が感染してしまっていた
頭がどうにかなっていたみたいだ

510 :
google日本語入力ならハルケまで入れればハルケギニアが出てくる

511 :
なるほど
これがR子爵のスタンド『Rはうそつきだ』の威力か

512 :
アヌビスにはR子爵のために“Rがいっぱい”を歌ってほしかった

513 :
大統領はまだかッ

514 :
大統領「全てが女神の下へ集いつつある…SSさえも…」
ってなったらいいな

515 :
カーズ

516 :
うおおおッやってられるかあああ!
誰かなんか召喚しろよオオオオ!
最近ハマっちまってパッションが爆発寸前なんだよぉおおお

517 :
逆に考えるんだ、自分が書けばいいと

518 :
そんな実も蓋も無いこと言ったらもうお前
あれだからなお前もう絶対いつか投下してやるからな覚えとけよ

519 :
じゃ「最も邪悪な絵(に潜む生き物)」で頼む

520 :
今旬なのはフーゴだな

521 :
>>519
ルイズがその黒い絵を召喚して触ろうとしたら
始祖ブリミルと初代ガンダールヴが出てきて殺されるところまでしか想像できなかった

522 :
アヴドゥルの続き書いて

523 :
ハルケギニアに転生して今度こそ幸せになりたいのに幸せになれないヴェルサスを誰か書いて

524 :
アブドゥルをもっと活躍させて

525 :
SBRにもアブドゥルっていなかった?

526 :
アラブ諸国のエジプトからウルムド・アブドゥルはラクダでの参加!
サハラ砂漠を年に3回も横断する!

527 :
い…いや!突っ込んだぁーーーッ!サボテンですッ!
アブドゥルが群生サボテンに突っ込んでいるうーッ!

528 :
噂のアニメ最終章が起動すれば再びこのスレにも栄光が訪れる

529 :
楽しみ

530 :
誰もいない……投下するなら今のうち
おれはROMをやめるぞ!ルイズーッ!このSSでだァーッ!

531 :

何度目かの爆発音。
教師コルベールは、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールが召喚に失敗した回数を数えることをとっくに諦めて、彼女の巻き起こす爆風を達観の態で受けていた。
爆発を起こしている張本人は誰よりもその爆心地に近いところで爆発の余波を受け、肩で息をしながらも一片も諦めを見せなかった。
少女の健気な努力に水を差すことはためらわれた。
召喚の儀式は、学院内の中庭などで行うことも可能だったが、今年度はルイズという予測不能な危険要素があるため、大事をとって学院の敷地外で行われていた。
彼女の失敗魔法によって、建物の崩落が起これば周りの生徒に危険が及ぶからだ。
今、辺りはだだっ広い草原である。
しかし、最低限の措置はしたといっても、彼女の爆撃がこれ以上長引けば、周囲の生徒が怪我をしない保証はできない。
教師としてはこの不毛な危険行為を止めなければならなかった。
それに、遠巻きにしている生徒達の野次が、笑いとからかいの混じった他愛ないものから、罵倒と批難という攻撃的な類に変わってきている。
永遠に続くかと思われるこの爆音に、生徒たちは疲れと飽きを主張しているのだ。
生徒の安全と彼女の名誉のために、そろそろこの苦行を終わらせるべきだ。
コルベールはルイズの背中に声をかけた。
「よろしいですかな、ミス・ヴァリエール。あなたに与えられた時間も無限ではありません。
 サモン・サーヴァントの呪文を唱えるのは、次で最後にしましょう」
彼女はちらとだけ肩越しにコルベールを振り返り、すぐに正面に向き直った。
これが最後のチャンス、ということだ。
ルイズは今の今までだって欠片も気を抜かずに呪文を唱えていたが、最後の一回、いっそう真剣に口を動かした。
(これが最後のチャンスなのよ。犬でも鼠でも何でもいいわ。だからここに来なさいよ。
 わたしは、あなたが何であろうと使い魔にするから)
ルイズは祈るように目を伏せる。
そして、杖を振り下ろすと、最後の爆発が起こった。

爆発の様子が今までと違うようだった。
爆音に続いて、大量の水が滝のように流れ落ちて地面を打つ音が聞こえた。
ルイズは、頬に水滴が数粒飛んだのを感じた。
爆風が止み、ルイズは閉じていた目を開けた。
短い草の生えた地面が、大雨が降ったあとのように濡れていた。
草についた露が、中天の太陽の光を反射して光っている。
爆発の起きた箇所が水浸しになり、水溜りが広がっていた。
ルイズはその中心に、生物らしきものが倒れているのを発見した。
そして、それがサモン・サーヴァントの成功を意味していると悟ると、歓喜のままにそれに向かって駆け出した。
しかし、その喜びはすぐに失望で打ち消されることになる。
確かに彼女は「何でもいい」とは願ったが、人間の男を、それも平民を使い魔にする気はなかったからだ。

532 :

この一帯の地面は水はけがよい。
雲ひとつ無い晴天であることもあって、召喚とともに現れた水溜まりが乾ききるのにそれほど時間はかからないはずだ。
ルイズは、服が汚れることを嫌って、水で湿った地面に膝をつかなかった。
ただ少しかがんで、自らが召喚したと思われる男の様子を見る。
男は背中を丸めた体勢で、大地に横たわっている。
自分の体を守るように抱いたまま、まるで眠っているようだ。
シルクハットのような帽子が頭にかぶさっていて、顔を伺うことはできない。
全身黒ずくめの、ここらでは見たことがない奇妙な服を着ているが、ローブやそれに類する貴族の服ではないのは一目で分かる。
この男が平民であるのは明らかだった。
平民の成人男性。
ルイズは眩暈を覚えた。
サモン・サーヴァントで平民を召喚するなど、我ながら前代未聞だった。
「見ろよ!ゼロのルイズが平民を召喚したぜ!」
他の生徒もこの事態を把握し始めた。
何が楽しいのか、歓声と笑いが沸いている。
ルイズは自分が召喚した平民を指差してコルベールに向き直り、訴えた。
「ミスタ・コルベール!サモン・サーヴァントのやり直しを要求します!」
コルベールは神妙な顔で首を横に振る。
「最後のチャンスと言ったはずです。さあ、あなたが呼び出した者とコントラクト・サーヴァントを。
 儀式は終わっていませんよ」
ルイズは倒れている男を振り返って歯噛みした。
これだけ周囲が騒がしくなっているのに、男は地面に寝転がったまま微動だにしない。
我関せずとのんきに眠っているかのように思えた。
ルイズは少々八つ当たりぎみの怒りを覚えた。わたしが窮地に陥っているのにこの男は!
生徒たちのひやかしの声が大きくなってきている。
人間とコントラクト・サーヴァントということは、つまり。
「キース!キース!」
聞こえて来るのは、声をあわせたキスコール。小学生かあんたらは。
「あーもう!うるさーい!」
こんな衆人環境で平民の男とキスができるか。
ルイズは頭に血が上るのを感じた。
顔が赤くなっているかもしれないが、これは怒りのためであって、恥じらいのためではない。断じてない。
しかも、ファーストキス………。
「いやいや!違うわ!使い魔となんてキスに数えないわ!これはただのコントラクト・サーヴァントなのよ!」
思わずルイズが口に出して叫ぶと、わーっと歓声が上がった。
まずい。これは墓穴だ。
それを聞いた生徒の一人が高い声を上げた。この声はキュルケだ。
「ただのコントラクト・サーヴァントならできるわよねー!
 それとも、ゼロのルイズは使い魔との契約も失敗するのかしら?また爆発が起こったりしてねー!」
どっ、と笑いが沸く。
ルイズは羞恥で、前にも後ろにも動けない背水の陣となってしまった。

533 :

召喚された男は、まだ地面に寝ていて、起き上がるそぶりすら見せない。
ルイズは悲壮な覚悟を決めた。
「やってやるわよ……失敗なんてするもんですか!
 サモン・サーヴァントが成功したのよ………コントラクト・サーヴァントだって成功するはずよ!」
ルイズはとうとう、露で濡れた草原に膝をついた。
ローブのすそとニーソが湿る。
ルイズは屈み、倒れている男の帽子を押し上げようと肩に触れたところで、違和感に気がついた。
男の服が露ほども濡れていない。
召喚のときの状況を考えれば、彼が大量の水と一緒に流されるように召喚されたことは明白だ。
それなのに、男の黒い髪も、服の白い襟も、上から下まで湿ってすらいない。
乾くにしても速すぎる。
ルイズは疑問を置き去りにしたまま、男の顔を覗きこんだ。
お世辞にも整っているとは言えない顔で、まだ眠るように両目を閉じたままだった。
しかし、一番初めにルイズの目に入ったのは、左目を抉るように縦に一本走っている傷跡だった。
ルイズの固めた決意が削げそうになった。
それでもなんとか持ち直す。このコントラクト・サーヴァントを避けては、ルイズは進級できないのだ。
観客共の歓声がいよいよクライマックスをむかえようとしている。
ルイズは、男の黒い帽子を手でずらし、生徒たちの視線を遮断するついたてにして、男の顔に自分の顔を近づける。
こうすれば少なくとも、周囲の目からは隠れられる。
もはやどうにでもなれ、とコントラクト・サーヴァントの呪文を小さく唱える。半ば自棄だった。
どうせ、決定的瞬間を見ているのは自分の方だけだ。
男はまだ目を覚まさない。いい加減に気がついてもよさそうなのに、何をしても反応すらしない。
気絶しているようにも見えるし、深い眠りに陥っているようにも見える。
体温が感じられるので、死んでいるわけではないだろう。
動かない男の様子を見て、根拠のない考えが一瞬浮かんだ。
(放っておけば、彼はいつまでも眠り続けるのではないか)
この広い草原のど真ん中に置き去りにされたまま、昏々と眠り続ける人間。
ルイズはいたたまれなくなって目を閉じた。
同時に、不思議な確信が振ってわいたからだ。 
今から自分がしようとしていることを実行すれば、彼は目を覚ますのではないか、という確信が。
悪夢のようなことに、これではまるで………
眠り続ける呪いを口づけで解く、おとぎ話だ。

そして、爆発。

◆ 

534 :

左手の甲に熱が走る。
長らく止まっていた思考が、徐々に動き出していく。
ぼんやりと、左手から痛みが伝わってくるのを感じる。
感覚神経が痛覚を、シナプスからシナプスへのろのろとしたバケツリレーで受け渡し、やっとこさ中枢神経に辿り着く。
激しいはずの痛みが脳に伝わるまで、馬鹿馬鹿しいほど多大な時間を要した。
やって来た痛みというものを脳が認識する。
すっかり停止状態にあった思考回路が、無視できない刺激をうけて、重い腰をあげてえっちらおっちら動きだす。
(痛い………『痛い』?
 スタンドを発動しているのに?!) 
とんでもない時間をかけ、やっとそこに行き着いた。
ついに彼ははっきりと覚醒した。
(なんだ?!左手が熱い、焼けているような痛みだ。
 そうだ、久しぶりだがこれは『痛み』だ。スタンドを被っている限り、二度と縁は無いと思っていた)
彼のスタンドは絶対防御だ。
彼がスタンドを発動している限り、全ての苦痛から彼は無縁となる。
誰も彼に痛みを与えることはできないはずだ。
スタンドを発動している限り………すなわち、誰かが河の底から引き上げてくれるまで。
彼は顔を上げた。
同時に身を守っていたスタンドを解除した。
彼の目に映ったのは、川底から見上げる水の世界ではなく、青く、広大な晴天だった。
草原を風がわたって、ささやかな小波の音をたてる。
草と土の匂いがする風が、彼の頬をかすめていった。
風が、目の前に立つ少女の、桃色の髪の毛を揺らしていた。

535 :



今回のルイズのサモン・サーヴァントは、成功したとはいえ、爆発を伴うものだった。
ならば、コントラクト・サーヴァントが爆発を伴わない根拠は無い。
正直言ってこれは殆どの観客にとって予想された事態であった。
しかし、彼らは一つ見落としをしていた。
コントラクト・サーヴァントによる爆発は、召喚された男の左手を爆心地としていたのだが、彼がそれによって被害を受けることは一切なかった。
ルーンが刻まれる以外は全くの無傷で済んだのだ。
教師も、ルイズも、このことに疑問を持つタイミングを逃していた。
コントラクト・サーヴァントによって起こった爆風が収まったあと、ルイズは彼の左手にルーンが刻まれるのを緊張した顔で見つめていた。
少々の不測の事態はあったが、コントラクト・サーヴァントは成功したのだ。
コルベールは、召喚された使い魔に無事ルーンが刻まれていることを確認すると、召喚の儀式が終わった生徒たちに教室に戻るよう号令をかけた。
生徒たちはルイズをひやかしたり野次ったりしながら、魔法によって宙を滑って帰っていった。
コルベールは教師として、平民などというものを使い魔にしてしまった生徒と残ろうとルイズに声をかけた。
使い魔のルーンが珍しいものだったことを告げた。
しかし、ルイズはコルベールの助力を断った。
ルイズは使い魔と二人きりになることに不安を感じる必要は無いと思っていた。
過保護になるつもりはなかったので、コルベールは後ろ髪を引かれながらも先に学院に戻っていった。
はじめて成功した魔法らしい魔法に、ルイズは喜びを感じていた。
キスされようと爆発が起ころうと目を覚まさなかった男が、眉をよせて身じろぎした。
この鈍い平民は今、わたしの使い魔となったのだ。
男がおっくうそうに左手の甲を押さえ、緩慢な動きで身を起こし、顔を上げた。
黒い右目と目が合う。左目は潰れていて開かなかった。
辺りには彼とルイズ以外誰もいない。
広い草原に風が吹いている。
男が呆然と呟くのを聞いた。
「あんたが………オレを助けてくれたのか?」

ピンクブロンドの女の子が救い主である。
全く、マジェントにとって白馬の王子様、改めお姫様はルイズに他ならなかった。


536 :
短いが投下終了
とりあえず召喚した
続けられるかどうかはわかんね

537 :
マジェント・マジェントとか俺得すぎんだろ……!!
乙ーッ!!応援させていただきますッ!続き期待ッッ!!

538 :
乙ですううう
遅れてすまんの

539 :
いいかげん誰か引き上げてやれよと思って召喚してみたものの
正直20thCenturyBoyでどう戦えと
銃とか爆弾とか無いし、魔法って基本遠距離攻撃だから間合いをつめられない

540 :
なにマジェント・マジェント?銃も爆弾もないから戦えない?
マジェント・マジェント、それは無理に戦おうとするからだよ
逆に考えるんだ、「戦わなくてもいいさ」とかんg(ry

銃はアニエスの使ってたやつならどっかで買えるんじゃね
爆弾ならコルベールの空飛ぶ蛇くんで代用できるんじゃないか
地球産のが欲しかったらロマリアからぶんどってくればいいと思うよ

541 :
固まってればムキになって魔法連発してくるから精神力切れで判定勝利

542 :
上から押し潰せばおk
ルイズ「マジェント・マジェントだッ!!ぶっつぶれよおおおおおおおお!!」

543 :
前に一度やったネタだが
―ルイズは―
2度と使い魔を持てなかった・・・。
マジェント・マジェントは鉱物と生物の中間の生命体となり、永遠に学院のオブジェとなるのだ。
声をかけてもキスしても爆破しても受け流されて契約できないので
―そのうちルイズは考えるのをやめた。

544 :
>>542
これいいなwww
>>543
ていうかむしろこれが正しい姿だ
絶対コントラクト・サーヴァントも受け流しちゃうはずだよ……

545 :
となると地面が使い魔になるわけか
胸が厚くなるな

546 :
ハルケギニア全土を使い魔とする究極メイジ・ルイズの誕生だな

547 :
CSってゴーレムにも出来るんだな
半鉱物の究極生物には成功するな

548 :
ルイズ「おい マジェント!謙虚にふるまえッ!」

549 :
やっと久々に書く余裕が若干出来た気がするけど
流れを覚えなおすのが大変ですわい
余裕がある内に把握しなおす工程が間に合うかどうかみたいな

550 :
どのSSの人だろう
とにかく楽しみ

551 :
楽しみがまた一つ増えたぜ

552 :
保守

553 :
最近、パワーバランス的に召喚されるのはジョジョキャラが一番いいような気がしてきた

554 :
だがウンガロおめーはダメだ

555 :
面白そうだけどなウンガロ
なぜダメなんだ

556 :
ボヘミアン・ラプソディは強力だけど現代と比べて圧倒的にコンテンツの少ないハルケギニアではどうなんだろう
公式で創作の人物として出てきたのはイーヴァルディの勇者とバタフライ婦人ぐらいか


557 :
流れ着いたエロ本から実体化でモットモット!か……

558 :
ボヘミアンラプソディは強すぎる

559 :
ウンガロは『ゼロの奇妙な使い魔』を読んだ!

560 :
誰か召喚してくれよぉぉぉぉ
このスレの知名度が低いのか?

561 :
逆に考えるんだ「自分が召喚しちゃえばいいや」って考えるんだ
ついでに上げてみておこう

562 :
まんまゴッドファーザーの冒頭部分だな

563 :
このスレで書いてる人達の何が凄えって
あれだけ濃いキャラを書いて置いてオリキャラ(笑)みたいになってねーとこだよな
まあそんだけ荒木先生の力が凄えってことの証左かも知らんが

564 :
仮面のルイズのイラストがあると聞いたんだがマジか?

565 :
ここにあったんだが今じゃ見れないな
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9292/1182410544/

566 :
その画像投下スレの何も残ってないんもったいなさすぎるよな
誰か当時保存してた奴がいたらwikiにまとめられるんだけどな

567 :
S.H.I.T!
それは残念だぜ…
神の降臨を待つしかないのか

568 :
神の降臨は待つものではない。
儀式なり祭事なりで呼ぶものだろう……。
つまりSSの投下こそ神を呼ぶ儀式だ。
つ ま り 誰 か 書 い て お く れ 

569 :
最初にSSを投下した者を尊敬する……チラ裏でやれと言われたかもしれないのにな……

570 :
じゃあベイダー卿のを書いた人を尊敬してくるといい
ここはあれの盛り上がりから派生した感じだから

571 :
おお一番最初に読んだゼロ魔SSじゃないか
改めて敬意を表さねばいけないな

572 :
ゼロ魔クロスSSの9割があれからの派生と言っても過言じゃないぐらいだよ

573 :
流行したキャラではなく、ベイダー卿というのがシブいな
万人に受け入れられるキャラだからこそ、そこから沢山派生していったのだろうな
ぼくは敬意を表する!

574 :
ちなみに二番目に影響を与えたのはここのスレなんだぜ
そう考えると凄い渋い界隈だ

575 :
渋い(笑)

576 :
渋いねぇまったくおたく渋いぜと返せない人って…

577 :
>>576
かまぼこにされないための用心に違いない

578 :
イラスト流れてしまったのか…保存したのあるけどどうしよう

579 :
見たいぜ

580 :
zipでくれ

581 :
待つことだ…
今は何もしないってのが…俺の覚悟だ…

582 :
てs

583 :
投下しろ
スレにはそれが必要だ

584 :
時間が空くと何をやってたか把握するのに時間が掛かっちまうんです

585 :
そろそろむこうと統合したほうがよくない?

586 :
うむ、いっそ統合した方が投下が増えるかも知れん

587 :
するメリットが見当たらん
向こうで投下する奴ならこっちでしてるし
向こうは色々管理上問題を起こしてこっちで書いてる人も向こうでhは撤収してる人がいるのも忘れちゃいかん

588 :
HELLSINGスレも独立したままだしな
現状維持で良いだろう

589 :
向こう
向こう
向こう

590 :
??

591 :
新手のスタンド使いかッ!

592 :
このスレはOVER HEAVENにたどり着けるだろうか

593 :
待ってます
投下…

594 :
ほっす

595 :
ageてえ

596 :
7人目のスタンド使いの作品はあるのか

597 :
投下します。

598 :
ラ・ロシェールの街は、アルビオンとトリステインを繋ぐ港町として栄えているが、元々は戦争のために作られた砦であった。
現在は宿として使われているが、この街一番の宿『女神の杵』亭は砦を改装した店だと言われ有名である。
ふだんは旅行客と船乗りを相手にするラ・ロシェールの酒場も、神聖アルビオン帝国との戦いを目前に控えた現在、客層は兵士・傭兵・人夫・商隊がほとんどであった。
娼婦達も稼ぎ時だとばかりに馴染みの酒場へ出かけ、客をとっては宿へ行き、金のない者は倉庫で済ませ、あげく人気のなさそうな路地へと引き込むものもいる。
そんな娼婦達にも、近寄るべきではない場所というものがある。
たちの悪い盗賊や人攫いが、寂れていそうな酒場に集まると、すぐに女達の噂となり、ごく自然にその一角から姿を消していく。
彼女たちはお互いが商売敵ではあるが、互いの境遇から来る同情心と、身を守るための仲間意識を捨てた訳ではないのである。
だからこそ、女たちの近寄らない酒場の裏手から、華奢な女が出てくるというのは、同業者にしてみれば異常な光景なのであった。

(嫌な視線ね…)
ルイズは自分に向けられた視線を気にして、フードの端をつまみ深く被り直した。
とぼとぼと夜の街を歩きながら、自分がここに来た理由を思い出していた。
(表面上は平和でも、裏通りは油断のならない街だわ)
ラ・ロシェールを警備する衛兵達は、衛兵と自警団だけのは治安の維持に限界があると考え、市内の管理を任されているメルクス男爵に改善の措置を訴えていた。
しかし、提出された嘆願書はもみ消された。
アルビオン人(戦争前にアルビオンから疎開した者、戦時にアルビオンから逃げ出した者)と旧来のラ・ロシェール住民の間に、意図して対立を深めようとする第三者の行動があると分かっていながら、それを無視するのがどうにも不可解であった。
また、着の身着のままアルビオンを脱出した者は、行き場もなく飢えに苦しんでいる。
ウェールズの纏める亡命政権が、旧来のアルビオン民と連絡を取り合い救済に奔走しているが、食料も場所も用意できてはいない。
奴隷商人や人さらいの餌食になっているのが現状であった。
傭兵もまた、雇われたからといって、命令通りに戦うとは限らない。
商人と結託し、トリステイン軍の内情をアルビオン帝国に売ろうとする者も出てくるだろう。
最悪、補給線の崩壊もありうるのだ。

ラ・ロシェールの街は補給を行う上で重要な拠点だが、王宮の目が行き届かない場所でもある。
アンリエッタは戦争を機に、ラ・ロシェールに信頼できる銃士隊を送り込んで監督をさせようかと思ったこともあるが、ウェールズが反対した。
船乗りの集まる街の気風は、ウェールズのほうがよく知っている。
少しでも疑問があるなら念入りに調査するべきだが、監督という名目では現地の人間と軋轢を生むのは得策ではないと忠告した。
マザリーニもそれには同意見だが、どの貴族も戦争の準備で忙しい上、銃士隊も魔法学院の警備・訓練で手一杯。
魔法衛士隊やトリステイン軍を使って内偵を進めるにも、顔が広い貴族がいてはやりにくい。
なので、ルイズがこの件に興味を持ったのは渡りに船であった。
(それにしても、やっぱり、話し相手が居ないと寂しいわね)
ルイズは無意識のうちに、今は背中にない鞘の感触を確かめようと背後に手を回していた。

599 :
支援

600 :
(お父様が時々呟いた言葉、今ならよくわかる)
ルイズの記憶には、父であるヴァリエール公爵の言葉がこびり付いていた。
『兵を食わせなければならない』単純だが、自分が生き血を必要とするように、普通の人間には食事が必要だと再認識すれば、その言葉はとても重くなる。
貴族・国家が集めた傭兵の数は膨大であり、食料の確保だけでも一つの事業と言える。
『まず食糧、次に人数』
そう言ったのは父だろうか、父と話している誰かだろうか、はっきりとは思い出せないが、とても重要な言葉だと思えた。
ずっと昔に父や、近しい人から聞いた話が今頃になって重要な話しだと解る。
おそらく自分が魔法学院に残っていたら、この記憶が引き出されることも無かっただろう。
皮肉にも父親から離れて初めて、父母や家庭教師の何気ない言葉が、大切な知識だと思えてくる。
でも、ウェールズやアンリエッタよりずっと自分は幸福な気がする。
たとえ会えなくても、家族は元気でやっているのだから。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ラ・ロシェールの朝は早い。
北側の岸壁は朝焼けで赤く染まり、反射光が街中を優しく照らしだすと、夜を生きる人々は眠りにつき、昼を生きる人達は仕事の準備をする。
日が昇るにつれて人通りが多くなり、店の軒先には果物や野菜が並び始めた。
街道沿いの店で、今日最初の客がリンゴを買う、客はラ・ロシェールは初めてなのか、桟橋の場所を店主に聞いて店を離れていく。
店主は、今の客は旅慣れているようだが傭兵には見えない、貴族でないメイジかもしれない等とくだらない想像をめぐらして見送る。
そんな朝のひとときに、本日一軒目の事件が起きた。
「おう!こいつ、俺にぶつかって財布を盗もうとしやがったぞ!」
「なに、ふざけるな!」
店主が声の方を見ると、大柄で色黒の男が、身なりの良い男の腕をひねりあげている姿があった。
多くの人はこんな光景に慣れており、またスリが出たか、最近は特に多いな、と思う程度だった。
「それにしても身なりのよさそうな奴がスリなんてなあ、その服を売れば多少の金になるのに」
「おい、また泥棒が出たのか」
「またアルビオンの奴らか」
「いや、どうもそうじゃあないんだ、同じ奴が何度もやられたって叫んでるらしい」
「なんだそりゃあ」
どこからともなく聞こえてきたその噂は、静かにラ・ロシェールの街で広まっていった。

衛兵の詰所は世界樹に近い高台にあり、街道沿いの壁を繰り抜いて作られている。
奥には倉庫、牢屋、そして見張り台に通じる階段があり、そこからラ・ロシェールのほとんどを見下ろすことができた。
朝から見張りを続けている衛兵は、岸壁に映る影の角度から昼飯が近いのを知る。
そろそろ交代の時間だ、ようやく休憩だ、昼飯だ。と考えながら後ろの階段を見た。
丁度良く交代の衛兵が上がってくる、今日も時間ぴったりだなと言って、弓矢を壁際のテーブルに置いた。
「おいアルヴィン。交代だぞ」
「やっとか。今日は騒がしいみたいだな」
「さんざん騒がれたスリが、ついさっき捕まった。仲間割れを起こして何人か殺してるらしいぞ。休憩してる暇はなさそうだな」
「げえ、何て日だ。戦争も近いってのによう」
「早くいけよ、隊長にどやされるぞ」
「へいへい」
アルヴィンと呼ばれた衛兵が階段を降りると、詰所の正面に人だかりができているのが見えた。
入口前の歩哨が「見世物じゃないぞ」「さあ散った散った、通行の邪魔だ」と言って人だかりを散らしている。アルビンは興味なさそうに詰め所の奥へと入っていき、とっとと硬いパンを食べることにした。

詰め所の一番奥には牢屋があり、今しがた逮捕された男は手枷をはめられて牢屋に放り込まれている。

601 :
その目前には見張り用のテーブルと椅子があり、衛兵隊の隊長は銃士隊の女に椅子を譲って、事情を聞いていた。
隊長は白髪混じりの髪を後ろで纏めた初老の男性で、顔にはナイフで切られたような傷もあり、傭兵団の隊長と言われても違和感のない厳しい顔をしている。
銃士隊の女性は、戦えるとは思えない華奢な体付きをしているが、男を軽くひねり上げる実力はたった今証明されたばかりである。
「ご協力に感謝いたします。まさか銃士隊の方に来ていただけるとは思ってもいませんでした」
「成り行きとはいえ、これも仕事のうちよ」
この男を逮捕したのは銃士隊のロイズ(ルイズ)である、衛兵隊の隊長は逮捕の一部始終を聞いて呆れ返った。
銃士隊であるロイズをスリ呼ばわりしたので、股間を二三度蹴り上げて昏倒させ、衛兵の詰め所に連行してきたらしい。
うつろな目で宙を見ている犯人は、よほど強く蹴り上げられたのか、文句ひとつ言わず牢屋へと連行されていた。
「銃士隊の方が逮捕してくださるのは有難いですが、我が衛兵隊の不甲斐なさが露呈したようで大変申し訳無いことです。この男が根城にしていた酒場で死体が見つかりましたが、あなたが逮捕してくれなければ逃げられていたかもしれません」
「こいつがドジなだけよ、さっさと逃げずに欲をかいたのね」
「まったくです」
ところで隊長さん…ラ・ロシェールは衛兵が足りていないと聞いているわ。その点、どうなの?」
「おっしゃるとおり、自警団と協力しておりますが、平民ばかりでは限界があります」
「伯爵には訴えなかったの?」
「ラ・ロシェールは、メルクス男爵が実質的に統括しておられます。何度か窮状を訴えましたが、考え過ぎだとか、桟橋の警備で手一杯だと言われまして」
「それは…」
「人も金も足りないのは分かっているのです。しかし、現実にこういった争いが積み重なって、暴動に発展する恐れがあります、それだけは避けたいのです」
隊長の表情からは、苦労がにじみ出ていた。
「隊長さん、あなたにとっては大変つらい知らせだと思うけど…」

ロイズ(ルイズ)は、銃士隊である自分がここに来た理由を説明した。
衛兵たちが達が提出した嘆願書に応じてこの街に来たのではなく、嘆願書が破棄されていると報告があったので内偵に来た。
王宮へ届く報告書は『貴族の手で安全を維持され、万全である』という内容だが、この矛盾は何であるのかを調べるという。
場合によっては街の治安に関わるメルクス男爵の内偵も進めると聞き、衛兵隊長は両拳を握りしめて、悔しさに耐えていた。
「直属の上司たる男爵に疑いがあっても、我々には直接どうすることもできません。どうか、この街のためにも、真実を明らかにしてください」
「…あなたは、ずっと衛兵を? 失礼かもしれないけど、あなた言葉に品があるわ。執事の経験があるみたい」
「私の父はメイジの傭兵団で身辺の世話をしていました。私も父の手伝いをしていたので、よく可愛がられたものです。言葉遣いはその頃に習いました」
「だから嘆願書を書くなんて知識があったのね」
「ええ。傭兵団が解散した時、故郷であるこの街に戻って来ました。父は報告書を書くのに役に立つと言われ衛兵になり、私も同じ仕事しようと思っていました。この街は、私と父の思い出で溢れているのです」
「……そうなの」
ロイズ(ルイズ)は何か心に感じるものがあったが、それが何なのか言い表せなかったので、余計なことを考えないようにと表情を固くした。
「ええと、それじゃ、そろそろロバートって子を預かっていくわ」
「はい、あの子にも悪いことをしました」
「ねえ隊長さん。 …ロバートが財布をすったって話、信じたの?」
「言わないでください。私も、悩んだのです」

602 :


パンをかじっていたアルヴィンは、奥の部屋から隊長が出てきたのを見て、どっこいしょと椅子から立ち上がり敬礼をした。
「隊長。アルヴィンです。見張りをコーラスに引き継ぎました」
「ご苦労、しばらく休んだらリック達と『金の酒樽亭』に”掃除に”行ってこい」
「掃除…つーと、あのボロ酒場でまた?」
「喧嘩じゃないぞ。奥の倉庫で五人死んでる、盗賊の仲間割れだ。ひどい有様だよ」
「うへえ。了解しやした」
飯を食ったあとに死体を片付けるのは嫌だが、仕方がない。
「そういや、誰か捕まえたって話で?」
「ああ…それはな」
と、隊長が言いかけた所で、奥の扉が開き、フードを被った女が少年を連れて牢屋から出てきた。
「ほら、ロバート。胸をはりなさい。あんたの疑いは晴れたんだから」
「……」
女が少年の背中を軽く叩くと、少年は歯を食いしばりながらも、目の前に立つ隊長を見上げるようにして胸を張った。
「君の疑いは晴れた、もう行ってよろしい」
隊長がぶっきらぼうに告げると、女は不満気に腕を交差させた。
「あら、隊長さん、それだけ?」
「それだけ…とは? あ、いや、そうだったな。ロバートの名誉を回復することをここに宣言する。後ほど君が厄介になっている酒場へ行き、改めて説明させてもらおう」
「隊長さんはそう言ってるけど、あなたはそれでいい?」
女が少年の顔を覗き込むと、ロバートは汚れた袖で涙を拭う。
「いい、早く帰りたい」
ロバートはそう呟くと、ぐっと両手を握りしめた。
「…じゃ、後のことは任せるわ」
「はっ」
敬礼で二人を見送ると、隊長はふぅと息を漏らした。どうやらかなり緊張していたらしい。
「隊長?今の女はいったい?」
ためらいつつも、好奇心に負けたアルヴィンが聞く。
「ああ、あんまり本人に聞こえるようなところで言うなよ、ありゃ女王陛下直属の銃士隊だ。俺たちがちゃんと働いているか見に来たんだとさ」
「そりゃまた、厳しいことで」
アルヴィンが軽口を叩くと、隊長はふと思い出したように呟いた。
「そうだな、アルヴィン、これから話すことを休憩中にでも仲間に伝えてくれ。巡回中にもこの件について質問されればなるべく答えるように」
「へい」
「、アルビオン難民ならびに疎開民と、ラ・ロシェール市民の対立を目論んでいたらしい。ラ・ロシェールを荒らすよう雇われていると自白した」
「今のやつがですか」
「何者かに金貨で雇われたらしいが、その取り分で仲間割れを起こして『金の酒樽亭』に死体が転がってる。さっきの女は銃士隊の一員で、この件には偶然関わったんだと」
「なるほどねえ、この街にもアルビオン帝国の間諜が入り込んでるってことですかい」
「そうなるな。手口は、いわゆる狂言スリだが、なにせ被害者の数が多い、銃士隊からは『被害者の名誉回復に努めよ』ときつく命令されたよ」
「わかりやした」
アルヴィンは、道理で隊長のしかめっ面がいつもより厳しいはずだ、と納得して詰め所の仲間のもとに向かった。

隊長はそれを見届けると、緊張が解けたのか自然と深呼吸をしていた。
「つれぇなあ」
隊長は、誰に言うでもなく呟いた。無性にエールを飲みたい気がした。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

603 :

「ロバート!よく帰ってきたねえ、ほんとうに大変な思いをさせたね。お腹が空いているかい?すぐ何か作ってやるよ」
酒場の女将がうれしそうに目元をほころばせて、ロバートを抱きしめた。
ロバートは少し苦しそうだが、決して嫌そうではない。
「おばさん、苦しいよ。このお姉さんが屋台で買ってくれたから、食べ物はいいよ」
「ああ、ごめんよ。つい嬉しくてねえ。あんたもよくやってくれた。銃士隊のロイズさまさまだ、今日はいくらでも飲んでおくれ」
ルイズは自分がロイズと名乗っているのを思い出しつつ、女将の豪快な言葉に苦笑した。
「これも仕事のうちよ。まだやることがあるから夕食は遠慮するわ」
「食べて行かないのかい?そんなんじゃ筋肉はつかないよ」
「ややこしい用事があるから、また時間のあるときに来るわ。ロバートもその時また会いましょう、元気でね」
女将から解放されたロバートがルイズを見上げる。
「おねえちゃん、ありがとう。でも、俺だけじゃなくて、もっと嫌な思いをしてる奴が居るんだ。俺はコーラのおばちゃんを知ってたからいいけど、友達は、どこに行ったかわかんない。わかんないんだ」
ルイズは、思わずロバートの前に跪いて目線を合わせた。
「私はそれを調べに来たの。もし、あなたが知っていることがあれば、教えてくれない?」
「……人買い」
「人買い?」
「この街の、東の山間にある貴族の家、あそこに出入りしてる奴、人買いなんだ。絶対そうだ、あいつら、アルビオンから逃げてきた俺達を捕まえてるんだ」
「その話、もっとよく聞かせて」
ルイズの目付きが鋭くなったのを、女将は見逃さなかった。
「ロバート、その前にあんたは体を拭いて、着替えてきな。鼻声で何言ってるか分かりゃしないよ」
「う゛ん」
「ノミが付いてたら困るから、ちゃんと洗うんだよ」
ロバートはぐしっ、と鼻を袖で拭うと、酒場の奥へと駆け込んでいった。
「悪いね。この話は、あたしから先に伝えておこうと思ってね」
女将はいつの間にかワインを開けて、ルイズと自分の分を準備していた。
客の居ない酒場で、丸いテーブルの上に置かれたワインがふわりと香った。こんな酒場にあるのが不思議な上物のワインだとも分かる。
「一杯ぐらい飲みなよ」と言って女将が勧めるので、ルイズは酒の価値に気づかないふりをしつつワインを口に含んだ。確かに上物だった。女将なりの御礼なのだろう。
「本当はね。銃士隊だからといって信じられなかったんだ、あたしたちのためにロバートを取り返してくれるのか、どんな手で取り返すのか、それが疑問だった。悪いね疑い深くて」
「本当ならアニエスに来て欲しかったんでしょう? 銃士隊としてではなく、友人として聞いて欲しい話があった。違う?」
「その通りさ。そのへんを理解してくれると助かるよ。」
「…で、そこまで用心深くなる理由は?」
ルイズがそう聞くと、女将は神妙な顔つきになって、小声で話しだした。
「まず聞くけど…ロバートは狙われたのかい?それとも偶然に疑いをかけられたのかい?」
「偶然、よ。狙われる理由でもあるの?」
「ロバートと同じ時期に疎開してきたアルビオン人には子供もいたが、身寄りがなくてね、この街の実験を握ってるメルクス男爵の屋敷に連れていかれたのさ」
「男爵の屋敷に…どうして」
「仕事ができる場所や孤児院を紹介するって名目で連れていかれたのさ。だけどロバートは見ちまった。男爵の屋敷から、アルビオンで見た奴隷商人が出てくるのをね」
「それって、男爵と奴隷商人が結託してるって事?」
「ああ、その通りさ。ロバートはその子らに会って、ここから逃げようと説得したんだが、衛兵に追い出されてねえ。それから数日して、逮捕されたわけだから、あたしゃ肝を冷やしたよ」
「そういう事情があったのね…」
「あたしは、傭兵上がりってだけじゃ信用できなくてね。お偉い貴族に雇われていい気になる奴を見てきた、だから」
「アニエスに紹介された銃士隊といえど、すぐには信用しなかったって訳ね」
「悪いね」
「それぐらいの用心、アニエスなら『当然だ』で済ませるわよ」
ルイズは笑って答えると、ワインを飲み干した。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

604 :

夕方。
世界樹に停泊しているトリステイン軍の軍艦内では、トリステイン軍の軍議が開かれていた。
大型戦艦の中に設置された会議室では、教導士官、技術士官、軍参謀など、二十名ほどが集まり、物資搬入が予定通り行われているか、人員は、将軍はいつ乗艦するのかと報告を受け、最終的な打ち合わせをしている。
その中には、レキシントン号の艦長を務めた、サー・ヘンリ・ボーウッドの姿もあった。
彼は上官の命令に従い、反乱軍として王党派と戦ったが、トリステインとの戦いに負けて捕虜になった男である。
教導士官には相応しく無いという声もあったが、トリステインはアルビオン空軍の戦略、戦術を知る必要があった。
ウェールズ皇太子とはじめとするアルビオン亡命政権と、アンリエッタ女王陛下の助言、そして本人の強い希望により、ボーウッドは教導士官に任命されたのである。
もちろん皆が納得するわけではなかった、「敗軍の将は何をお考えですかな」と皮肉を込めてボーウッドに質問する将校もいた。
しかし打てば響くように、ボーウッドは軍務関係の質問であれば難なく答えてしまう、豊富な経験に裏打ちされた知識は、士官達の関心を引き、尊敬の念すら抱かせたのだ。
護衛として壁際に立つワルドも、ボーウッドの言葉には学ぶものがあった。
彼の上官が無能でなければ、トリステインは前回の戦で負けていただろう……素直に、そう思えた。

その日、月が高くなる時間になって、ようやく軍議が終わった。
士官達は、ラ・ロシェールの駐屯地に戻って行ったが、ボーウッドだけはラ・ロシェール領主から晩餐会に招かれ、領主の屋敷で宿泊することになっている。
晩餐会に出席させてやるから軟禁は我慢しろ、という意図があるのだが承知のうえである。
ボーウッドはワルドと共に馬車に乗り、屋敷へと向かっていった。
コツコツと蹄の音が、ガラガラと車輪の音が聞こえる馬車の中で、ボーウッドはふとワルドの顔を見た。
静かに馬車の外を見つめ、自分のことなど気にしているとは思えなかった。
「気になりますかな」ワルドが呟く。
「気にならぬといえば嘘になる。…正直に言えば、貴公とこのような形で同席するとは思わなかった」
「同意見です。見る者が見れば、おかしな組み合わせだと思うことでしょう」
ワルドは無表情で答えているが、どこか自嘲気味に見える。
「…祖国を裏切った者同士という事かね」とボーウッドが聞く、ワルドは今度こそ自嘲気味に笑った。
「はは、慣れませんか」
「慣れないな」
少しの間、がらがら、がらがらと馬車の音だけが響いた。
「私も、正直に言えば慣れません。しかし…」
「しかし?」
「裏切るよりも、辛い生き方を知りました。裏切り者として祖国の貴族から非難されても、大した事ではないと思えたのです」
「なるほど」
すこし間があって、膝に肘をつくようにしてワルドに顔を近づけたボーウッドが、重々しく声を出した。
「これは…私の個人的な興味として、聞いてみたいのだが。君は最初から二重スパイだったのか。それとも途中で?」
「後者です」
ワルドは躊躇わずに答えた。
それが予想外だったのか、ボーウッドの目に一瞬動揺が浮かんだが、すぐに気を落ち着けて背もたれに体を預けた。
貴族は名誉を重んじるが、名誉のためならば多少の不都合は目をつぶるという一面もある。
彼と、トリステインと、レコン・キスタの間にどんな関わりがあったのか、どんな理由があって彼が今の立場にいるのか、そんな事を聞いても正直に答えてくれるはずはないのだ。
「…余計なことを聞いたな」
「いえ」

605 :

それから間もなく、ボーウッドとワルドを乗せた馬車が、ラ・ロシェール伯の別邸へ到着した。
ラ・ロシェールは港という性質上、王宮が直接統治している土地であり、ラ・ロシェール伯爵はある種の名誉職として扱われている。
何百年も前に、トリステイン大公の別荘として立てられた宮殿を現在でも用いて、ラ・ロシェール伯の別邸として利用されているのである。
馬車が門をくぐり抜け、庭園を超えて正面玄関に到着すると、魔法衛士隊のマントを着たワルドが馬車から降り先導を務めた。
表情には出さないものの、晩餐会に招かれた貴族の中にはワルドを嫌うものもいる。
トリステインを裏切り、仲間を殺した男である以上、蔑むような視線は当然だろう。

晩餐会は立食の形式で行われた、ラ・ロシェール伯の挨拶が終わると、ボーウッドは空軍関係者に親しげに声をかけられて、歓談に興じた。
船上では、上官の命令に過不足なく答えることが唯一絶対であると聞いたが、そういった気風はトリステインもアルビオンも変わらぬらしい。
歴戦の勇士であるボーウッドは、間違いなく尊敬を集めているようだ。

「お客様、本日はガリア産のリキュールと、タルブ産のワインに良いものがございます」ワルドはふと、その言葉が自分に向けられたものだと気づいた。
銀製のトレイを持ったメイドに酒を勧められるなど久しぶりだが、ボーウッドの護衛と監視があるので酒は飲む気がしない。
「酒はいい。果実を絞ったものはあるか」
「赤いオレンジが冷えております、他にも…」
「それでいい」
「かしこまりました」
不思議と、飲み物をもらうだけの会話で、少し気が晴れる気がした。
「…僕に話しかけてくれるのは、メイドだけか」
カタカタとデルフリンガーが揺れ、ワルドだけに聞こえるような声でつぶやく。
『遍在じゃなく、自分が嬢ちゃんのところに行けば良かったんじゃねーか?』
「僕も今それを考えてた所だ」
デルフリンガーが人間なら、やれやれと言って首や手を振っていただろう。
『やれやれ、嬢ちゃんもおめーも、難儀な性格だ』


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

時を同じくして、ラ・ロシェールの酒場では、釈放されたロバートを一目見に自警団が集まっていた。
「ロバートの疑いが晴れた!ラ・ロシェール万歳!トリステイン万歳!アルビオン万歳!」
「「「「「おおーーー!」」」」」
女将のコーラは「自警団全員が酔いつぶれちゃ困るよ!」と怒鳴るものの、うれしさは隠しきれていない。
自警団の団長は服飾の卸をしている初老の男性で、仕事でも見回りでも革製のエプロンを愛用している。ぷはぁエールを飲み干し、自警団の仲間たちを一括した。
「おい!酔っ払うのは後だ、見回りに出るぞ!」
「へい!」「おう!」「もう一杯!」「さあ行くか!」
自警団の面々は気合を入れると巡回に出発し、酒場は急に静かになってしまった。
「コーラ、ロバートの疑いが晴れたのは嬉しいがよ。この街でアルビオン人とトリステイン人を喧嘩させようって企ては終わっちゃいねえ、これから酷くなるかもしれねえ」
「わかってるよ、この酒場が狙われるかもしれないってんだろ?いざとなればこの子だけでも逃がすよ」
「安心しな!そんな事はさせねえ、何かあったらすぐ俺達にも連絡がくるように、今夜から酒場への巡回を増やす。なにか怪しいことがあったらすぐ伝えてくれ」
「頼りにしてるよ」
この街で、お互い古くからの付き合いがあるのだろう。団長と女将の間には信頼関係が見えた。
ロバートが「おっちゃん、ありがとう」と言うと、団長はロバートの頭に優しくてを乗せた。
「おっちゃん達がおめえ達を守ってやるから、安心しな。おめえの友達も、見つけたらちゃんと教えてやるからよ、な」
「うん」
ロバートの返事に気を良くしたのか、団長ははははと笑って、巡回に出た仲間たちの後を追って出ていった。

606 :
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!

607 :

自警団と女将のやりとりを聞いて、酒場の奥を借りているルイズが感心のため息を漏らした。
「ずいぶん仲がいいのねえ、酒場って、厄介な人も来るけど、こういう人も集まるのね」
「旅行者も盗賊も、アルビオンに向かうのならこの街を通るからな。強い結束でよそ者を排除する必要があるのさ」
相槌を打ったのはワルド、もっとも彼は今晩餐会に出席しているので、ここにいるのは風の遍在である。
二人は木箱の上に座り、一日の出来事を報告しあった。
「私が捕まえたのは金で雇われた盗賊よ、誰に依頼されたかは探れそうにないわ。その代わりロバートって子から、目当てに近い話を聞けた。…メルクス男爵の屋敷に人買いが出入りしてるそうよ」
「本当か?だとすれば、早くそのことを知りたかったな。今僕は晩餐会に出席しているから、聞き耳を立てるには調度良かったのだが」
「晩餐会?」
「レキシントンの艦長、サー・ヘンリ・ボーウッドが教導士官に任命されたのは知っているだろう。ラ・ロシェール伯が彼を招いたんだ」
「…ふうん。自領を攻撃した戦艦の艦長でしょう?晩餐会に招いて暗殺なんて、よくある話よ」
「可能性は無いと言い切れないが…ボーウッドは他の士官にも一目置かれ、この戦いの鍵を握るといっても過言ではない。伯爵も暗殺されては困ると理解しているさ」
「実際、あなたの見立てでは、どう?」
ルイズの質問に、ワルドはあごひげを撫でながらううんと唸った。
「…勉強になる。これが素直な感想だよ」
「いいなあ。私も勉強したいかな」
勉強したい、というルイズの言葉から、寂しげな雰囲気を感じたが、余計なことを言って気にさせるのも悪かろうと思い、聞かなかったふりをした。
二人が黙ってしまうと、酒場から聞こえてくる喧騒がやけに響く気がした。
「…ねえワルド、ちょっと考えたのだけど、私って子どもっぽいでしょう?」
「子供ではないよ。君は十分に大人だ。ミ・レイディ」
「いじわる。それじゃ子供扱いじゃない。でも今回はそれが役に立つと思うの。孤児として屋敷に入り込むなんて、いいと思わない?」
「しかし、病気の有無ぐらいは調べるだろう。男爵は水系統のメイジだと聞いているし、君の体のことが…」
「たぶん大丈夫よ。考えはあるから」
「ならいいんだが」
「心配、してくれるのね。ありがと」
「ああ」
「そうだ…せっかくだから、乾杯しましょ」
「次は本体で飲みたいね」
二人は話を終えると、安物のグラスで乾杯した。
ルイズは念のため、ワルドに酒場の警備を頼むと、自身は酒場の二階から抜け出してある場所へと向かっていった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


608 :
町外れにある通路は、獣道と見紛うような細い道となり、雑木林の奥へと続いていた。
ここまでくるとラ・ロシェールは巨大な岩山にしか見えない。街の灯は隠れ、見上げても世界樹はちょうど岩陰になっている。
この場所が隠されている理由はすぐに分かるだろう。
林立する石碑や、乱雑に置かれた石、そこら中に立てられた杭、そして鼻を突く腐臭…。
そう、ここは行き倒れや、身元の分からぬ者が埋められた共同墓地である。
「おうぅうう、おおお…」
幽鬼のような唸り声を上げて、墓場を徘徊する女がいた。
「どこ、どこにいるの」と弱々しく呻いては、石をひっくり返そうとしたり、手で地面を掘り返そうとしている。
エプロンは泥で汚れ、指先はぼろぼろに荒れていた。
「あううあああ、ああああああ」
四十前の彼女は、飢えと涙とで顔をくしゃくしゃにして、まるで老婆のような顔をしている。
この地に埋められた子供を掘り返そうとするが、手に力が入らない。
諦めてまた泣くが、すぐにまた地面に指を伸ばす。
それが延々と続けられていた。
「お父さんはどこに行ったの、エリーはどこにいるの、エリー、えりぃいいい…」
正気ではない女の背後に、ゆっくりと近づいていく。
小声でルーンを詠唱し、消すべき記憶を定めて、杖を向ける。
「…忘却」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「ああ、エリー、ここにいたんだね!ここにいたんだねえ、ああ、エリー、おおお…」
女は、娘を抱きしめて泣き出した。
女はひとしきり泣くと、娘の顔を月あかりに照らして、泥だらけになった顔を拭おうとした。
「…お母さま」
「ああ、エリー、よく顔を見せておくれ、泥だらけになっているよ」
そう言って子供の顔を拭おうとするが、女の手についた泥がつくばかりで、かえって顔を汚している。
「お母様こそ泥だらけよ、ねえ、もっと暖かい所へ。もっと明るいところへいきましょう」
「そうだねえ、明るいところへ行こうねえ、お前の文だけでもパンを貰ってくるから、もう少し我慢しておくれ」
「ありがとう、お母様。でも、お母様こそ食べて欲しいの」
「優しいんだねえエリーは、いいんだよ、私はお腹いっぱいだから…」
「お母さま…」
親子は手をとりあって、街へと歩いていった。


あとに残るのは、カラスの鳴き声と、掘り返されたエリーの遺体。顔のない遺体。髪の毛と顔が剥がされた娘の遺体。

「お母様、この街の男爵様が私たちを助けてくれるそうよ。きっと二人分のパンをくださるわ、行きましょう」
月明かりの中。仮面を被ったルイズのほほえみ、まさしく娘の微笑みだった。


========================
今回はここまでです。

609 :
復活!復活ゥ!
乙であります!!

610 :
オイオイオイオイオイオイオイーーーーー
ここに来て仮面さんかよォォォォォー
GJGJGJ

611 :
まさかの更新に大興奮。
乙です乙です乙です乙です。

612 :
俺はこの日を待っていた。
乙!!!!!!!!!

613 :
マジか

614 :
待っていました、仮面さん。本当に…『待っていました』…それしか言う言葉が見つからない…。

615 :
うれしすぎて涙腺が刺激されました。

616 :
URYYYYYY

617 :
お前は次に「更新乙!」と言う

更新乙!・・・ハッ!
言っていたのは俺でしたァぁぁぁーいつの間にかぁぁぁー

618 :
更新乙!

619 :
…まさか、この後、お母さまを吸血鬼的な意味で食っちゃうんだろうか?

620 :
おおお、1ヶ月ぶりにこのスレ覗いたら仮面さんが更新されてるw
GJですw 更新乙w

621 :
>>596
設定的に難しいと思われ。
7人目のポジにルイズ逆召還なら何とかなるか・・・?

622 :
問題はスタンドだな
誰かルイズになりきって性格診断を受けれる奴はいるかね?

623 :
敬意を表するぜ

624 :
>>622
ツンモードかデレモードか、それが問題だw

625 :
あのう、そのう。なんと言えばいいのか悩んだけど、おくれてごめんなさい。
ゆっくりとですがなんとかレスを励みに書いております。
ところで、画像について要望があったようなので、気になる人は避難所の画像投下スレッドを見てください。

626 :
イェアアアアアアア!!

627 :
v(^□^)vアリガトオオオオオオオオオオオオオオオ
 ││

628 :
WRYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!

629 :
使い魔が聖人だったら…!

630 :
仮面も来たことだし、そろそろ銃杖があってもいいんじゃないかなって思うんだ
……いやホント、お願いします。後生ですから

631 :
なん…だと?!仮面が更新だと!!!

632 :
金玉4つがなかなかバランスよさそうな存在で嬉しい。

633 :
仮面きてるーーーーー!!!
ありがたやありがたや
……さて第1話からまた全部読み直すか

634 :
>>633
俺も更新来てから、毎日少しずつ1話から読み直してる

635 :
じゃあ俺は今日から読み直そう
最初のころの初々しいロイズちゃんもちゅっちゅ

636 :
最高だ

637 :
!!!!!!!!!!!!

638 :
気がつきゃ仮面が来てた。ありがたいことじゃ

639 :
ちょうど1ヶ月後に気付いたのは早い方なのか遅い方なのか判断難しいですね

640 :
なんらかのスタンド攻撃を受けてたんだよ多分

641 :
更新に気付く感覚を奪われたんだよ

642 :
ホワイトスネイクの命令ディスクでハルケギニアを裏から操るルイズ
ディスクに汚染された人をヘブンズ・ドアーで浄化するティファニア
ハーミットパープルと悪魔的頭脳で横槍をいれるジョゼフ
ボヘミアンラプソディで始祖ブリミルを召喚し絶頂するヴィットーリオ

643 :
何その世紀末

644 :
世紀末と言えば第4部だな

645 :
マッシモ・ヴォルペ召喚とか夢想してみる
対7万で命を落とすがティファニアに救われて存命。その後ティファニアの下で生活するように
一方ルイズはマッシモが死んだと思い新たな使い魔召喚
思想の違いからぶつかったり対立したりすれば面白くなるか…?

646 :
仮面のルイズ来てた―! 市販の下手なラノベより全然面白いから困る…

647 :
ヤク中のゴロツキは死んだッ!大袈裟かもしれんが世界は救われた!
ジョナサンなんぞノミと同類よぉ〜ッ!

648 :
ツェペリさんレクイエム以外のダンジョンでも憑いてきて下さいよォォ〜

649 :
プロシュート兄貴を「ブッ殺した」ッ!

650 :
同じジョジョゲーで7人目のスタンド使いから召喚は無いのか

651 :
エンポリオさん続きまだっすかねぇ〜?

652 :
ヴァレンタイン大統領!大統領選が近づいております!

653 :
久しぶりにディアボロのver0.15やったらうっかりジョリーンに決着ゥつけられてしまった…

654 :
メインに据えるかどうかはともかく、敵役とかのサブキャラに使えるネタは増えたと言えるのかなぁ<7人目
やられ役モブメイジとして血管針のやつらが使われるような感じ、フレウあたりとか
試しに原作開始時点ルイズっぽく診断受けてみたらディープ・パープルになった
能力的にはこれかナパーム・デスがそれっぽいけど、性格的にはどうなんだろうな……

655 :
過疎ってるぜぇ〜〜〜

656 :
ほっす

657 :
PCを整理していたら、昔書いた短編が出てきたんだけど投下していいかな?
まとめにも無いし多分投下して無いと思うんだけど。
う〜む どうだったかな……?自信がない…

658 :
「投下していいかな?」…そんな言葉は使う必要がねーんだ。
『投下した!』なら、使ってもいいッ!

659 :
では投下します
って久々だから緊張するw

660 :
夜、陽気に賑わう酒場に、一人の男が入ってきた。
マントを着けているが、身なりからすると貴族とは思えない。
幅の広い帽子と、担いでいるこざっぱりとした荷物からすると旅人の様だ。
だが、酒場の喧騒の中その男に注目する者は居なかった。
その男は、大声で歌っている男の側を通り抜け、踊っている者たちを押しのけ、喧嘩をしている連中を避けてやっとカウンターにたどり着いた。
「お隣よろしいかな?」
緑色の髪の女に声を掛け男は席に着いた。
声を掛けられた女は気だるそうに顔を上げた。
「はん?…あんた誰よ?……さっきまで居たボーヤは?」
かなり呑んでいるらしい。ワリと整った顔は酒の為に火照っている。
年齢は二十代後半ぐらいだろか。
「坊やって…こいつの事かい?」
足元を指差す男。
見ると16、7の少年が酔いつぶれて寝ている。
「そうよ…いや、違ったかも………もうどうでもいいわ。マスター!もう一杯!」
「それじゃあ」
足元の少年を跨いで席に着く男。
「僕に奢らせてくれないか?」
「あら〜いいの?じゃあ一番高い奴」
「おいおい…まあいいか。僕にも同じのを頼むよ。僕はジャック。君の名前は?」
少しの間、酒が注がれているグラスを見つめてから、女は答えた。
「…マチルダよ」
「マチルダか…ステキな名前だ」
「あら、口説いてるの?」
「そう聞こえるかい?」
グラスを受け取ると、ジャックはマチルダに向き直って言った。
「乾杯しないかい?」
「何によ」
「僕らのRに」
「プッ。何よそれ」
「では、アルビオン共和国の戦勝一周年を記念して」
「いいわよ」
「乾杯」
「乾ぱ〜い」
神聖アルビオン共和国がトリステインに宣戦布告をしてから2年。
戦争はたった1年で終結してしまった。
当初、トリステインとゲルマニアが同盟を組むというと言う噂もあったのだが、開戦とほぼ同時に反故にされてしまった。
さらにトリステインのカリスマであるアンリエッタ王女が、開戦直後のタルブで戦死してしまったのだ。
突然の悲報に兵士達の士気は落ち、王宮勤めの貴族たちはアルビオンの事よりも、王女をタルブへ行かせたのは誰か?と責任を押し付け合った。
その様な状態では『空の怪物』『羽を持つ悪魔』『灰の塔』等とあざなされるレキシントン号率いる空中艦隊と戦えるはずも無く、トリステインはアッサリと降伏したのだった。

661 :
その後、ジャックとマチルダは他愛も無い話をしながら酒を楽しんでいた。
深夜に近づいているというのにあたりの騒音はいっそう酷くなってきている。
「所であんた仕事は何?あ!ちょっと待って当てるから……吟遊詩人?」
「ハッハッハ、何でそう思ったんだい?」
「いや、何か帽子がそう見えたからね。で、本当は何さ?」
「こいつだよ」
そういってジャックはマントをめくって見せた。
「杖…あんた貴族かい」
マチルダの顔が少し険しくなった。
「いやいや、傭兵さ。とっくの昔に没落しててね。貴族制が廃止されたんで少しスカッとしてるよ」
「フフ、あたしもだよ」
「君も…するとやっぱり傭兵でもやってたのかい?」
「まあね。この戦争のおかげでちょいと稼がせてもらったよ」
頬杖をつくマチルダ。
そんなマチルダにジャックが質問した。
「戦争の前は何をやっていたんだい?」
「何って…まあ色々さ」
「色々とは?」
「…レストランとか、宿屋で働いてたよ」
「それだけじゃないだろう?」
「…どういうことだい?」
ジャックの顔が険しくなった。
「魔法学院でも、だろ?」
「フン!傭兵にしちゃ礼儀正しいと思ったら…あんた何者だい?」
袖口に隠し持っている杖に手を掛けるマチルダ。
「早まるな」
手で制するジャック。
「ちょっと話を聞きたいだけさ」
「話って?」
杖に手を掛けたまま怪訝そうな顔になるマチルダ。
「あの日の事をだ」
「あの日…」
マチルダの顔に、一瞬怯えが過ぎった。
「そう。あの日だよ」
ジャックはマチルダにグッと顔を寄せた。息が掛かるぐらい近くに。
「…一体何があったんだ?」
「何って…」
喧騒に掻き消されそうな声で呟くマチルダ。
「3年4ヶ月前の春の召喚の儀式の日。トリステイン魔法学院の教師・生徒・使用人全員が死んだ。何故だ?」
「……」
「トリスタニアで検分書を読んだよ。全員即死。殆どの者に外傷は無い。被害者の死んだ場所はわりとバラバラで、厨房で死んでいた者。
洗濯物の山に埋もれていた者。廊下に倒れていた者。木に寄りかかっていた者。生徒全員が居眠りしている様に机に突っ伏して死んでいた教室も在るそうだ。
3人ほど、首の骨が折れていた者があったな。フライ中に落ちた様だが、フライを使ってて落ちるか?普通。落ちたために死んだのではなく、死んだために落ちたんだろうな。
そして二年生だけは全員サモン・サーヴァントを行っていたであろう広場で死亡していた…」
ジャックは溜息を付く様に一旦言葉を切った。
「検分書に因ると、二年生の誰かが悪質な病気を持った生物を呼び出したのだろうとある。確かに病気なら被害者たち殆ど無傷という説明が付くかもしれない。
だが、明らかに何者かから逃げて、狼に怯えた羊のように数人で寄り添って死んでいた者たちも見つかっている。病気の感染者から逃げたのか?違う。感染すると即死するのでこれは違うだろう。
では病気を持った生物から逃げていたのか?それも違う。スクウェアのメイジ達が検査したが生徒と生徒の使い魔以外の痕跡は見られなかった。
…というか、病原体や毒物の痕跡すら全く見られなかったのだよ!そしてそんな大惨事のなか…君だけが生き残った。何故だ!!」
ジャックに両腕をつかまれ、ビクッとするマチルダ。
「あ、あたしは……」
一瞬言葉に詰まる。
「あたしは何にも知らないよ」
ジャックの目が鋭くなった。
「隠してもために成らんぞ…」
「隠してるんじゃあない!本当に何も知らないんだよ!!あの日あたしは…」

662 :
支援だ!

663 :

マチルダことロングビルは辟易していた。
魔法学院に潜り込んだはいいが、あのスケベじじいが終始セクハラをして来るわ、忌々しい白鼠を使って下着を覗こうとするわ、あまつさえ昨日は着替えを覗かれたのだ。
これも辛抱、宝物庫からお宝を頂くまでの我慢だ!お宝さえ手に入ればこんな所さっさと辞めてやる!!ついでにセクハラの事を上に訴えてやろうか。
そういえば、今日は使い魔召喚の儀式があるんだっけ?使い魔を手に入れてハシャぐあまり、覗きをやろうとする生徒がいるから気を付けろってシュヴルーズが言ってたが、やれやれそんな奴はオールドオスマン一人で十分だよ…
等と考えながら学院長室の前に来たロングビル。
ノックしてから「失礼します」と声を掛ける。
…………………
おかしい。
いつもならスケベじじいが浮かれた声で招き入れるというのに、返事が無い。
「失礼します。入りますよ」
ドアを開けて中に入ると、いつもの席に座っていたオスマンが、ハッとこちらを向いた。
その瞬間、ロングビルは心臓が締め付けられるような嫌な感じを覚えた。
こちらを見たオスマンの顔には、はっきりと恐怖が表れていた。
何?何がどうしたのよ?まさかフーケだとバレた?!いや、そんな筈は無い!
もしフーケだとバレたとしても、オスマンが恐怖を抱くだろうか?このあたしに。
ここに勤め始めてから初めて見たオスマンの恐怖。他人の恐怖が、ロングビルに言い知れぬ不安を与えた。
「ど、どうかなさったんですか」
オスマンはロングビルの方と遠見の鏡の方を交互に見た。
「大変な…大変な事が起こったんじゃ!!こ、こんな事が!!」
「オールドオスマン。落ち着いて下さい」
と言ったものの、自分も落ち着けぬロングビル。
「何が起きたのですか?」
「こ、これは!こんな事が!!まさかこんな!これはどういう事なんじゃ!!??」
日ごろからボケた様な事を言うオスマン。
しかし、これは違う。これはボケ老人の戯言ではない!
知能の高い者が理解不能の状況を目の当りにして混乱しているんだッ!!。とロングビルは思った。
オスマンはロングビルと遠見の鏡の方を交互に何度も見ている。
「ああ!何ということじゃ!!これは…そ、そういう事か!何ということじゃぁああ〜!!!」
叫ぶと同時にイスから立ち上がり、ロングビルをビシッと指さし指示を出す。
「ミス・ロングビル!!急いでぜんs――」
指示はそこで途切れた。
唐突に。何の前触れも無く。糸が切れた操り人形が倒れるように、オスマンは崩れ落ちた。
「オールドオスマンッ!!」
持っていた書類を投げ出し駆け寄るロングビル。
鼻の前に手をかざすが、呼吸が無い。
首筋に指を当てるが、脈が無い。
死んでいる。
死んでいる、という事には多少慣れていた。
色々危ない橋も渡ってきた。
死を覚悟した事もあった。
目の前で人が死んだことも一度や二度ではない。
もちろん…殺した事もだ。
だが…
だが……この『死』は異常過ぎる!!
矢を射られる訳でもなく、氷を射られる訳でもなく、炎に焼かれる訳でもなく、岩に潰される訳でもなく、唐突に『死』が現れた。
どうする?助けを呼ぶか?いや、死んだ原因は何だ?その原因はまだここにあるのか?オールドオスマンをも殺せるような原因が。
このオールドオスマンを殺せる…?
背筋に激しい悪寒が走った。
胃の中から何かがせり上がってくる。
駄目だ、助けを呼んでいる場合ではない!宝物庫なんて知ったこっちゃあない!!逃げるんだ!!
自分の盗賊としての勘がそう叫んでいる。
部屋を駆け出したロングビルは、手近な窓を見つけると、そこから飛んだ。
今まで出したことも無い速度で。
自分の荷物さえも置いて。
三日後。
トリスタニアの宿屋で、学院の人間が全員死んだと聞いたロングビルは、しばらく震えが止まらなかった。

664 :

「それだけか?」
ジャックの声は、落胆した声で聞いた。
二人は多少静かな方へ席を移していた。
「そうよ。だから言ったでしょ、何も知らないって…がっかりさせて悪かったね」
「いや」
気を取り直すようにジャックが言った。
「疫病ではないと確信できただけでも進展さ」
「フ。目の前で死なれて、その死体を触ったあたしが死ななかったからね」
と自嘲気味に言ってからグラスを煽るマチルダ。
酔いもスッカリ醒めてしまった。
「では僕はこれで失礼させてもらうよ」
そう言って席を立つジャック。
「協力を感謝する」
歩き出そうとした所をマチルダが引き止めた。
「ねぇ…一つ聞いて言いかい」
「何だね?」
「…あんた何でこの事件を調べてるんだい?」
「何でそんな事を聞く?」
「いや、何か随分がっかりしてたからさ…ちょっとした好奇心だよ」
「………大した事じゃあない。トリステイン魔法学院に許婚が居たんだ。それだけさ」
「そう。悪い事聞いちゃったね」
「いや。では今度こそ失礼する」
そう応えると、ジャックは酒場の喧騒の中へ消えていった。
一人残されたマチルダは、少し悩んでから、次のボトルを開ける事にした。
許婚か……一体どの『教師だったんだろう』…。…シュヴルーズ?
「まさかね」
呟いてから、新しいワインに口を付けた。

魔法学院で一体何が起こったのか?ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドは生涯この謎を追い続けた。
家庭を築いて後も、暇を見つけてはトリステイン魔法学院跡地に赴き、時には家族と、時には一人で調査を続けた。
しかし、結局最後まで何も判らぬまま、その生涯を閉じる。

665 :
では、何が起きたのか?時は3年4ヶ月前に遡る。
春の召喚の儀式の日。
進級試験に臨んでいたルイズは、同級生が何の問題も無く使い魔を召喚して行った後に、自分が召喚したものが信じられなかった。
「……先生!召喚のやり直しをさせてください!!」
ルイズが叫ぶ。
現れた物は、一人の『おじさん』だった。
何の変哲も無い、普通の、どう見ても平民にしか見えない『おじさん』だった。
青い帽子を被り、パイプを咥え、青緑の上着を着ている、無精ひげを生やした『おじさん』……。
到底、使い魔にしたい相手でもなければ、コントラクトサーヴァントしたい相手でもない!
「残念ながら、ミス・ヴァリエール。儀式のやり直しは許可できません」
監督をしていた教師のコルベールが言う。
ルイズにとっては無情な言葉だが、コルベール本人も前代未聞の出来事にこれ以上の事を言えないのだ。
「そんな!!でも――」
「すみません」
「!!」
いつの間にか、コルベールとルイズのそばに来た『おじさん』。
「ちょっと質問したいのですが」
「な…なんでしょうか?」
コルベールが答える。顔に少し、緊張の色が見える。
「サンレミの病院は、どちらにいけば良いのでしょうか?」
質問しながら、帽子を取る男。
「サン・レミの…病院ですか?」
「何言ってるのよあんた。それより引っ込んでなさい!今は取り込み中よ!しかも!あんたのせいでね!」
「おや?」とルイズの顔を覗き込む男。
「な、何よ!」
「ちょっと待って。この私の事知ってますよね?そうでしょう?私ですよ」
知ってるんですか?という顔のコルベール。
「知らないわよ!こんなおっさん!見たことなんて無いわ!」
「そうですか…でも、今わたしを見て感動したでしょう?皆さんも」
と周りを見渡す男。え?という顔の生徒達。
確かに、この『おじさん』には何か引きつけられる物がある。何かわからないが。
「…あんた何なの?」
ルイズが聞く。
「わたしは…ヴィンセント」
パイプを咥えなおし、帽子を被る男。
「ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ。『ゴッホの自画像』です。昨日カミソリで耳を切り落としました………所で病院は、どちらでしょう…?」
こうして、同日中にトリステイン魔法学院は全滅した。

666 :
以上です。
何か、短い上にバッドエンドで御免なさい。
しっかし久々だったんで、初投下の時ぐらい緊張したぁ!!

667 :
乙乙!

668 :
乙!

669 :
おつ!

670 :
乙でした!

671 :
乙です。
オスマンの前にいったい誰が出てきたんだろう…危なそうな絵もあるし遠見の鏡に写った誰かも出てきてしまいそうだし。誰がどんな死に方をしたのか謎が深まるばかり…。

672 :
チート臭い能力が多いのに駆け引きが面白い。それがジョジョ。
ゼロ魔とクロスする上で駆け引きにいいのってなんだろ。

673 :
ゼロ魔も意外と駆け引き多目だからな
さり気に相性がいい

674 :
リゾットの続きが読みたいなあ

675 :
ゼロだね・・・

676 :
仮面の人来ないかなぁ・・・

677 :
慌てない慌てない一休み一休み
私もアヌビス神の続きも待ってるぜ

678 :
すまねえすまねえ
外伝1/3 次話2/3ぐらい出来てるけど手が回らない状況が続いてて

679 :
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
待ってっていいんですね!

680 :
アヌビス神完結したら就職活動するわ

681 :
釣りじゃなく本当なら期待!

682 :
仮面の人待ってるよ・・・

683 :
銃杖や来訪者の人も待ってるよ

684 :
暗殺者面子のも舞ってる!

685 :
俺は未完結全てを待っている

686 :
待ってますDIO様

687 :
じゃあ、俺はプロシュートの兄貴を

688 :
では俺はホワイトスネイクを
あの三作、全部それぞれ個性があって好きだぜ

689 :
じゃあ俺来訪者の人とDIO様とアヌビスの…って書き始めたらほとんどのタイトル出すハメになっちゃう!
その前に自分のもやらなきゃ…またせつづけてごめんね。

690 :
どんな作品かは知らんが、いつまでも続きを楽しみにしているぞッ

691 :
待ちに反省もいれてもらおうか

692 :
帰ったら投下する

693 :
待ってるぞ!!

694 :
('A`)ウエーン

695 :
帰ったらとはなんだったのか
まさか未だに帰ってこないのか

696 :
俺、この戦争から無事に帰ったら投下するんだ・・・

697 :
それアカン方のフラグやないかー

698 :
ハルケゲニアからここに帰ってきたら、って意味だったんじゃね?

699 :
な、なんだってー(AAry

700 :
俺は茨の人を待つゥッ

701 :
つかハルケゲニアって何?

702 :
ギアッチョ、リゾット、プロシュート・・・暗殺チーム召喚全部復活しないかなぁ

703 :
>>702
つまりR、本気男、引き籠もり、ペッシの復活もということか
おっといかんいかん輪切りにされた人もいたな

704 :
ウェェザァァァーリポォーーート!!!
帰ってきて続きを読ませてくれ…

705 :
久しぶりに来たら仮面のルイズ更新来てて感動した。続きは最終話までいくらでも待ちますので頑張ってください。

706 :
いつまでも待ってるナリよ

707 :
待っているだけじゃあ駄目だ…スレにはSSという名の栄養を投下しなければ……
まずはゼロ魔ちゃんと読んでくるよ

708 :
鯖自体がスタンド攻撃を受けてたな

709 :
ジョジョゲーム化ァ―――――――――――z_______ッッ!

710 :
アニメ化もな!

711 :
こいつぁあ手に入れるッきゃねぇ〜
アニメはガンダムシリーズみたいに1部から7部まで続けてくれると嬉しい!
中途半端な出来で「え?これが本当にジョジョ?」ってのだけはマジで止めてほしい

712 :
アニメ・ゲーム化でJOJO界隈が活気付いてここも新しい作品や止まってる作品の復活があるといいなぁ
関係ないがディアボロの髪の斑点?がずっと気になってる、染めてんのかねあれは

713 :
チョコラータ「わしが育てた」

714 :
感染してるじゃねーか!

715 :
考えてもみたまえ。ドッピオからボスに入れ替わる短時間の間に髪を斑に染められると思うかね?
あれはズバリ…ズラなのだ!
つまり着替えとズラの着脱により、人格をスイッチしていたのだ!!

716 :
スティッキーフィンガーズ
ザ・ハンド
名前が似てるからか分からんがどっちも触れたところの空間操作なんだよなぁ…
なんか共通点とかあんのかな
名前以外で

717 :
名前の何処が似てるかから説明してくれ
指って単語が入ってるのと手って単語ってくらいしか関係ねぇだろ

718 :
他にも共通点を発見したぜ!


719 :
フィンガーズ
ハンド
この点だけどわざと似たような(聞いたら手の部分を連想するような)スタンドを似たような能力にしたのかなと思っただけどす
ビーチボーイズが「引っ張る」
ボーイUマンが「引きずり出す」とか
変なこと言ってスイマセン!許して下さい!!オネシャス!なんでもしますから!!

720 :
>>719
判った
何か執筆を開始してもらおうかッ

721 :
>>720
頑張るよ
期待はすんなよ

722 :
部屋にGが出やがった……
プッチ神父……Gを殲滅できるスタンドをくれ……頼む……

723 :
>>719
その非凡な連想力…テメェさては新手のスタンド使いだな!
>>719ならロードローラーとタンクローリーの共通点だって余裕で見つけてくれそうだ

724 :
ロードローラーをタンクローリーに変えた理由は当時ロードローラーで子供が死んだから……だったと思う
ロードローラーの代わりがタンクローリーなのは
・語感が似ている(ローラー・ローリー)
・アニメにするに当たって迫力が必要だがロードローラーは割と小さいから馬鹿でかい乗物にした(しかも爆発する)
・外見に「円筒形」を含んでいるから(爆発するガスが封入してあるタンクローリーは断面が真円)
こういう理由だったと思う
共通点……?
そんなモノ……ウチにはないよ……

725 :
爆発で出た炎が時が止まってるのを表すのに手っ取り早かった とか

726 :
サブゼロ続きでないかな

727 :
アヌビスの人は元気だろうか…
サウザーのほうも忘れないでね!

728 :
>>727
この辺を見るんだ
>>678

729 :
無性にドッピオが絡んでくるギーシュの目ん玉グニグニしてこの世はアホだらけなのかァーとか言ってるSSが見たくなってきた
妄想で済ませとこう

730 :
そういや七人目のスタンド使いをver2.2にしてないのに公式でゲーム化か

731 :
まとめにまとめられてないSSってあったっけ?

732 :
このスレのゼロの使い魔像とかか

733 :
http://logsoku.com/thread/hibari.2ch.net/news4vip/1310908826/
今更だけどこのジョナサン召喚したら酷そう

734 :
今更F見たけど、リーヴスラシルや古代竜のおかげで話の終わらせ方が考えやすくなった……気がする
でも今手元にゼロ魔原作ないんだよなぁ
関係ないが、ここって一見寂れてるけど書き込み無いだけでちょくちょく覗いてるって人は多そうだよね

735 :
きさま!見ているなッ!


736 :
荒木先生出演だと…
ttp://www.nhk.or.jp/kokokoza/tv/art/archive/art_12_08.pdf

737 :
ここ以外にもジョジョと他の何かを組み合わせてゴニョゴニョしましょうみたいなスレないのかな

738 :
育郎帰ってこないかな…

739 :
あの作品スレで仮面の作者が復帰してたな

740 :
まじで?どの作品?

741 :
あの作品のキャラがルイズに召喚されましたスレ
略してあの作品スレ

742 :
真・女神転生3より、人修羅らしいよ

743 :
>>741
そういう意味じゃないけど
>>742
thx

744 :
人修羅の人って仮面の人だったのか……

745 :
どっちも大好きなんだが
FC2あたりで個人ブログ立ち上げてくれないもんか

746 :
石仮面

747 :
ジョジョも携帯使う時代だからふと思い出した、今は個人がSSをまとめるにはブログか携帯サイトが主流なのかなあ。
プロバイダのホームページスペースや、広告つき無料ホームページスペースは思ったより増えてない気がする。

748 :
iPadをてにいれたぞ!
これで外出先でもチェックできる。
だから皆様続きを…

749 :
iPhoneでええやん……

750 :
まさかジョジョの格ゲー新作とは。

751 :
SSも復活すればいいのにね

752 :
アニメになるし未来への遺産もさりげなくリメイクしてたし
いつのまにかモンハンともコラボしてたし原画展とかあったしなんか最近ジョジョRュ凄いな

753 :
なんてったって25周年だからな

754 :
投下間隔が長いではないか
書け

755 :
マスを

756 :
シコシコ

757 :
ジョリーンじゃないか

758 :
飛びてェーッ

759 :
今更だがwikiに「ゼロの使い魔像」を収録した
ついでにポルジョルの外伝が別に分けられてるのは読みにくいと思ったんでURL順に直した…投下順になってる…よね?
マジェント・マジェントも収録しようかと思ったけど短編でいいのかなコレ

760 :
>>759
wiki更新乙

761 :
そういやドッピオ召喚って無いんだな
ディアボロのオマケで召喚ならあるみたいだけど

762 :
wikiのページ名って変えられないのかな?
数字が1桁から2桁に変えたい(1→01)

763 :
wiki更新なんかは詳しくないからなぁ……分からない

764 :
>>762
何のために?

765 :
多分だけど01.02表示じゃないと1から飛ぶ次のページが10になるからじゃない?

766 :
マジェントのやつ、投下したのちょうど去年か……
せっかくだから続き投下するわ

767 :



立ち上がり、きょろきょろと辺りを見渡している使い魔の様子を、ルイズは眺めた。
第一印象は、怪しい男、というところだった。
丸くなっていたさっきまでは分からなかったが、この男、縦に長い。
シルクハットにしては鍔の広すぎる黒い帽子を被り、首と襟以外は上も下も黒い服を着ている。
頬骨が角ばっていて、垂れ目の三白眼で、悪人面をしている。
大きい傷跡が、眉の上から左目を抉り、頬の下まで走っている。カタギには思えない風貌だ。
殺し屋と言っても通用しそうであった。
ルイズは少し身構える。
身長差があるので、男の顔を見るためには視線を斜め上に傾けなければならなかった。
男が口を開いた。
ルイズは、「ここはどこだ」とか、「お前は誰だ」とかそういうことを訊かれると予想していたので、男の発言を聞いて拍子抜けした。
男の二言目はこうだったのだ。
「河の底に沈められてよォ〜……誰かが助けに来てくれるのを待ってたんだ。
 ワイヤーで重りつけられて、自力じゃ脱出できなくて……そういえば、ワイヤーどこに行ったんだ?
 絡まってたんだけど………」
「………。わたしが知るわけないじゃない」
彼はそのあとも、自分が今まで陥っていた状況について喋り、微妙にずれた質問をした。
「なんか、クソ長い間寝てたよーな気がするな……。寝てたっつうか……
 待つのダルくなって止めて……なんて言うんだ?寝てたのか」
彼の説明が悪いのか、ルイズには彼の喋っていることは理解しづらかった。
『待つのを止めて寝ていたのか否か?』彼は一体何の命題について語っているのだろうか。
「助けに来てくれたんだよな、あんたが……起こしてくれたのも。
 なんで痛かったのかは知らねえけどよ〜オレはあんたに感謝してるんだ……
 あんた……」
彼はそこで切ってから、ルイズを上から下まで眺めた。
「……背ぇひくいな〜身長いくつ?」
「それ今聞かなきゃいけないこと?
 もっとほかに何か訊くことあるでしょ」
「ん?なんだよ……好きな食べ物でも訊いたほうがよかったか?」
ルイズはもう少し建設的な質問を期待していた。しかしこの男には現状を把握しようという発想が無いらしい。
話の路線がどうでもいい方向に逸れたので、ルイズは彼と話すのを早々に切り上げた。
彼女は、彼の頭の中身は存外に薄い物である、と推定しないわけにいかなかった。
ルイズは学園に戻ろうと、踵を返して塗れた地面を歩き出した。
彼も泥を蹴ってこちらに向かって歩いてくる。
水溜りを跳ねてルイズに追いつくと、彼は自分の帽子の少し上あたりを指差して妙な質問をした。
「なあ、あんたさあ〜これ見えるか?」
「見えるって、その黒い帽子のこと?見えるに決まってるじゃない」
ルイズは足早に歩いている。
彼は自分の姿がよく見えるように、ルイズを少し追い抜いて、後ろ歩きで説明する。
「そうじゃなくてさあ……今帽子の上から、肩らへんにかけて被りかけてるヨロイ的な何かのことなんだけどよお〜」
そう言いながら両手を広げたり、くるくる回ったり身振り手振りで指し示す。
「何もないわよ?訳わからないこと言ってないで前を向いて歩きなさいよ」
ルイズには何も見えなかった。
それでも彼は見えないものが見えるかのように説明を繰り返すので、ルイズは胸中で「この男、頭大丈夫かしら」と疑った。
男の説明が真実だとすると、彼には背後霊でも憑いているようだ。

768 :
続きだと…!?

769 :

彼はまだルイズの前を歩きながら、もう一度質問した。
「本当に見えないのかい?」
「だから何も見えないって言ってるでしょ!あなたが幻覚でも見てるんじゃない?」
彼は大げさにため息をついた。
これ見よがしに肩を落として落胆する。 
「あんたにゃ見えねーか……このデザイン結構気に入ってんだけどなぁ。ツマんねーな」
心底ガッカリという目で見てくる。
いわれ無く見下された気分になり、ルイズは使い魔に怒った。
「主人に向かってその態度はなによ!
 しかも平民が貴族にそんな口をきいていいと思ってるの?
 『あんた』じゃなくて、名前に敬称をつけて呼びなさい!
 あと、使い魔なんだからわたしの後ろを歩くべきよ!」
彼は、意味わかんねえーっと不平を垂れながらも、歩みを緩めてルイズの隣に並んだ。
彼は本当に『使い魔』という言葉の意味がわからなかったのだが、ルイズはそれを駄々をこねているだけと判断して一蹴した。

あー、とマジェントは頭をひねり、頬をかいて、ん?という声を出した。
「あんたの名前……教えてもらってたかな?」
「覚えてないの?!」
「ああー……、いや、知ってる知ってる……ちょっとド忘れしてなあ、ほら、ここまで出かかってるんだけどよォー」
彼は喉をさして言い訳などをする。
ルイズは呆れて言ってやる。
「教えてないんだから、あなたがわたしの名前を知ってるわけないじゃない。
 わたしが自己紹介したかどうかも覚えてないの、ってことよ」
彼は、なるほどなあ、と納得して見せたりしている。
「で、教えてくんないのかい?」
「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 『ルイズ様』って呼んで、敬語を使って、殊勝にするのよ。あなたはわたしの使い魔なんだから」
「わかったぜ………ルイズ・フラなんとか、だな。
 じゃあルイズ、オレの名前聞くかい?言うぜ?
 マジェント・マジェント。
 ファミリーネームでも、ファーストネームでも、好きなほうを呼べよ………どっちでも同じだからな」
何がおかしいのか、にやにや笑っている男の頭をルイズはどついた。
「全然わかってないじゃない!
 敬称つけて、敬語使って、態度改めてって命令したでしょ?!………ああ、もう!」
すったもんだしたあと、ルイズは、ひとまず使い魔の教育は置いておいて学院に戻る道をひた歩くのに専念しようと決めた。
彼女の後ろをついて歩きながら、マジェントが呟いたのを、ルイズは聞いていなかった。
「なら、ルイズはスタンド使いじゃないんだな」
二人の認識は、いまだズレたままであった。


770 :



部屋に戻り、マジェント・マジェントを床に正座させると、ルイズは使い魔のなんたるかを教授しはじめた。
「いいこと、あんたを呼び出して、コントラクト・サーヴァントをしたのはわたしよ。
 あんたの右手に、その証拠のルーンが出ているでしょう?
 わたしと契約して、使い魔になったんだから、わたしの命令をちゃんと聞かなきゃいけないわ」
「その、使い魔とかいうやつが何なのかオレは知らねーけど……あんたがオレを川底から引きあげてくれたんだよな?」
ルイズは少し首を傾げた。
召喚直後の様子を脳裏に描く。マジェントは水流と一緒に現れ、気を失っていた。そういえば彼は、河底に沈められた、と発言もしていた。
気絶でもさせられて、河に放り投げられたところを、彼が溺死する前にわたしが召喚した、といったところだろうか。
「そうね……わたしが召喚したことで、溺れずにすんだなら、わたしがあなたを助けたことになるのかしら」
マジェントは黙って思案顔になる。
彼は何事か考えているようだ。一度ハンカチをとりだして口元をぬぐった。
さりげなく正座からあぐらに足をくずそうとしたので、ルイズはマジェントを足で小突いて言った。
「つまり、わたしはあんたの命の恩人でもあるんだから、わたしの命令を………」
「きっとルイズとオレは、運命の糸で結ばれているから出会ったんだ」
ルイズは絶句した。
次に耳を疑う。
(う、うんめいのいと?)
彼はいたって真剣な顔をしている。
信じたくもないが、正気で言っているらしい。
マジェントは真面目にそう考えていた。
彼は、河の底で、ディエゴが助けに来てくれることを期待していた。
それ以前に一度助けられていたこともあって、ディエゴと運命の糸で結ばれていると思っていたからだ。
しかし実際は、Dioはいつまでたっても来てくれず、マジェントはルイズに助けられた。
つまり、運命の糸は、Dioにではなくルイズに繋がっていたのだ。
至って短絡的な考えでもって彼はそう結論づけた。
間違いない、そういうことだ。

771 :

「しかも、これさあ……その証拠なんだろ?」
マジェントは自分の右手の甲をルイズに見せた。
ルーンが刻まれている。
ルイズは詰まりながら答える。
「まあ、確かに、それは契約の印だけど……」
「完璧だぜ!これはあんたとオレが繋がっている証だ。
 運命の糸が目に見える形ってのがいい」
顔に似合わずロマンティストか、この男。
真顔でそんなことを言うものだから、ルイズは慌てて彼に怒鳴らなければならなかった。
「ちょっと、ふざけないでよ!それはただの使い魔のルーンよ!
 それ以上の意味もなにも無いわ!
 わたしがあんたにコントラクト・サーヴァントをしたっていう、ただそれだけよ!」
ルイズの顔が赤くなっている。
マジェントはまだ続ける。
「だけどよ、オレは寝てる間ずーっとガードしてたから、普通だったらオレを気づかせる方法は無かったんだぜ?
 このマークが刻まれるときの痛みで起きたんだ。
 痛いなんて本来ありえねえぜ……全部受け流すんだからな。
 あんたのその……コントラクト・サーヴァントとかいうのじゃなきゃだめだったんだ……
 オレを助けてくれるのは、あんたじゃなきゃ駄目だったってことだ」
「あーッ聞いてるほうが恥ずかしいのよー!信じらんないわッ」
ルイズはベッドに倒れこみ、枕に顔を押し付けてばたばたと足を動かした。シーツがしわくちゃになる。
彼は自分が感じた事を述べただけで、他意はないのだろう。
いや、発言に出て来る単語を聞けば他意が無いはずがないのだが、それでも、大げさに口説いてどうこうしようという雰囲気ではない。
しかし言われたほうのルイズはたまらない。
先ほど自分が行ったコントラクトサーヴァントの様子を思い出してしまって、記憶を抹消したい気分であった。
つまり、彼と契約するためにしたキスのことだが。
コントラクト・サーヴァントのとき、彼が寝ていたのがせめてもの救いだ。
彼を目覚めさせたのがキスだということを彼が知ったら、また何か運命だとか何とか恥ずかしいことを言ってきそうだ。
古今東西、ファーストキスから始まる恋のヒストリーが多すぎる。キスで目覚めるなんてできすぎじゃないか。
ちなみに、ベッドの上でのたうちまわっているので、ルイズのスカートはめくれる寸前だった。
マジェントはルイズがこちらを見ていないのをいいことに、正座をやめてあぐらをかいた。


772 :

ルイズはやっと頭の中のてんやわんやが落ち着いたようで、マジェントのほうにばっと向き直った。
「とにかく!あんたは使い魔なわけ!
 余計なこと考えないで、わたしの言う事だけ聞いていればいいの!
 それくらいできるでしょう?」
それから、使い魔のすべき仕事などを、ルイズは話はじめた。
主人の目となり耳となり、情報収集をすること、主人の望む物を探してくること、主人の身を守ること、それが無理なら身の回りの世話、雑用などをすること……。
マジェントは再びちょっと考えて言った。
「それをすれば、ルイズは喜んでくれるんだな?」
「そうよ」
と、答えてしまってから、ルイズはその言葉の危険性に思い至った。
案の定、彼は続けて訊いた。
「そしたら、ルイズはオレのこと好きになってくれるんだな」
「すっ……!
 あんた、よくそういうこと真顔で言えるわね!
 好きとか好きじゃないとか、そーゆーのは関係ないのよ!
 それじゃわたしが貢がせてるみたいじゃない。
 個人的なお願いってわけじゃないのよ。
 これは使い魔としての、当然の仕事よ!」
この男はどうやらこちらに好意を向けているのだ。
それを利用して彼をパシリにするのも可能だろうが、変に期待させる態度をとるのはわたしの本意ではない。
彼はわたしを恩人と信じているようだが、それだってなりゆきでそうなっただけだ。
わたしは彼に優しくした覚えは無いのに、彼ときたらわたしに運命を感じている。
気を持たせるようなことを言って、彼の一方的な好意を助長するのは避けたほうがいいだろう。
使い魔とメイジの関係以上に懐かれる筋合いは無い。そう、使い魔と主人の関係とは、もっとクールでビジネスライクな関係なのだ。と、ルイズは標榜している。
「別にあんたが使い魔の仕事をしたからって、わたしがあんたに思うことなんて何もないわよ。
 やって当然の仕事なんだから」
彼はちょっとだけガッカリしたようだ。
「『仕事』な……じゃあ報酬があんのかい?」
「報酬?衣食住の提供で十分でしょ。
 誰があんたを養うと思ってるの?」
ルイズの言い分にも、マジェントはどこ吹く風だ。
「ルイズが養ってくれるんだろ?安心してるよ」
「ヒモか」
彼女は最初から説教をしなおした。
自分は貴族でメイジなのだから、敬うこと、とも釘をさしておいた。
時折、マジェントがよけいな口を挟んだり、くだらない冗談を言ったりするので、彼女はその度に彼を叱り、話を戻さなければならなかった。
はっきり言って、マジェントは彼女の命令を右から左に聞き流していた。
途中、彼が自分のこめかみを指して、こう言う場面があった。
「あのさあ〜……地味に頭痛が……
 ルイズさんのよぉ〜その甲高い声……偏頭痛に響くんだよなあー」
ルイズはその抗議を完璧に無視した。



773 :

ルイズの説教が始まってからしばらくの時間がたったあと、マジェントは唐突に窓の外を指さし、「なあ、なんで月が二つに見えるんだ?」と言った。
ルイズは、説教しているうちにいつの間にか日が暮れていたことをひとしきり嘆いたあと、「月が一つに見える夜なんてめったに無いわよ」と答えた。
するとマジェントは、胡坐をかいていた脚を投げ出し、憮然とした態度になる。
長い説教に飽きていたらしい。
「ウソはよくねえよなあ〜、ルイズ……オレんとこの月はずっと一つだったぜ?」
「何言ってるのよ?髪だけじゃ飽き足らず頭の中身もくるくるしてるのかしら」
「地球の裏側でも月が二つにはならないことくらい知ってるぜ……さっきからわけわかんねえんだよなあ〜ルイズさんはよォー
 メイジとか、へーみんとかよ〜……」
ぶつぶつと文句を垂れている男をルイズは頭ごなしに叱りつける。
「足っ!たたみなさい!
 地球ってとこから来たの?
 メイジも知らないなんて、あんたどれだけ田舎から来たのよ?」
「シカゴはけっこー都会じゃねえかなあ」
「聞いたことないわ。田舎ね」
マジェントは座りなおす気などさらさらないようで、むしろ足を伸ばして後ろに手をつき、なめきった態度をとっている。
とてもじゃないが主人の話を聞く使い魔の態度では無い。
この調子では、ルイズの説教をきちんと聞いていたかどうかも怪しいものだ。
「オレも、トリステインなんて聞いたことねーぜ……」
「ほんとに、ずいぶん遠くから来たようね……」
遠い田舎どころか、こことは別の世界から来た、というのが真相なのだが、二人とも『異世界』という発想に至らなかった。
二人の名誉のために言っておくが、これは彼と彼女の脳みそが足りないからではない。
メルヘンやファンタジーじゃあるまいし、異世界があると思う方がどうかしている。
彼は彼女が使う『魔法』という言葉を、彼女は彼が使う『スタンド』という言葉を、すっぽり聞き落としていた。
人間、自分の理解力を超えた事は耳に入らないものだ。
常に一番大事なことは、目の前の事象である。
「……あんた、故郷に未練とか無いの?」
そう尋ねたのは、勝手に召喚してしまったルイズなりの少々の気遣いだったかもしれない。
帰すにも、帰り道はわからなそうだったが。
しかし、マジェントはしかめっ面になる。
ただでさえ、顔の左側に上から下まで大きい傷跡が走っているのに、さらに歪んで見れた顔ではなくなる。
「別に……向こうで持ってたものなんて何もねーし」

ここに来てしまったことで、失ってしまったものがあるかと聞かれれば、何も無かった。
ただ、あいつにもこいつにも、もう復讐をできないのが残念といえば残念と言えた。
とくにウェカピポには、絶対舞い戻ってこの恨みを晴らしてやると、川底で誓ってもいた。
しかし、舞い戻り、彼らを殺したあと、誰が自分の側に残るのだろう。
結局、Dioもウェカピポと同じように自分を見捨てたのだ。
待てども待てども、Dioは来てくれなかった。
ということは、自分はDioにも裏切られたのだ。
向こうにはRべき人間以外には誰もいない。
だが、ここにはルイズがいる。
彼女だけが来てくれたのだ。
だったら、拾ってくれた彼女についていくのが一番だった。
使い魔の仕事とやらをする気はあんまり無かったが。
ルイズは特に何の感慨もなくマジェントの言葉を受け止めて、とりあえず帰郷するつもりは無いらしい、とだけ解釈した。
彼の事情を深く尋ねる気も無かったし、彼の言った『地球』などの地名の意味を追求する気も無かった。
彼も、『貴族』と『平民』、『メイジ』と『使い魔』、『トリステイン』など聞いたことの無い単語ばかり聞かされたが、興味が無かったので説明を求めるのを放棄した。
そもそも、彼は百回説明されても一度実態を見ないと理解しないタイプである。
なんというか、彼女と彼には歩み寄る姿勢というものが少しばかり足りなかった。

774 :

今日はもう疲れた、と言ってルイズは着替えはじめた。
マジェントが妙な勘違いをしないように、ルイズは忠告しておいた。
「あんたが使い魔だから気にしないだけで、誰の前でも着替えるわけじゃないのよ!
 あんたは男扱いされてないってこと」
彼は床でだらだらしながら、「貴族ってスゲー」とそれを眺めていた。
ルイズはランプを消してベッドにもぐりこむ前に、脱いだ服を床のマジェントに放り投げた。
「明日、洗濯しとくのよ。あと、朝になったら起こして」
そして早々に布団を被る。
しかし、ベッドの隣にマジェントが立っている気配を感じて、体を起こして叫んだ。
「あんたは床よ!」

ルイズは、何も敷かれていない床を指さしてそう言ったきり、再びベッドにもぐって就寝の体勢に入ってしまった。
マジェントには、掛ける布一枚すらよこされなかった。下着等は投げつけられたが。
彼はそんな彼女に「床かよ!ひでえなッ」とはこぼしたが、たいして困りはしなかった。
どんな状況でも何とかする方法を持っていたからだ。
彼は小声でその能力の名前を呼んだ。
「……トゥエンティース・センチュリー・ボーイ」
彼はこの名前を気に入っている。
マジェントは適当にその辺の固い床に寝転がり、身を丸めて自らのスタンドに包まった。
『20thCenturyBOY』は、全てのどんな攻撃エネルギーも受け流すことができるという、いわば絶対防御のスタンドだった。
それに加えて、彼はそのスタンドで身を守っている間、空腹や疲労などの、時間経過による身体的摩耗を起こすことがなかった。
冬眠、もっと言えば冷凍保存された状態に近い。
長い持続力の恩恵で、いざとなればいつまでだって――それこそ、考えるのを止められるほど――スタンドを発動し続けていることができた。
むしろ、持続力が短ければ、考えるのを止めずにすんだのではないだろうか。という発想が、マジェントに浮かぶことは無かった。
ただ、外界から遮断されてなんの影響も受けなくなるのは、けっこう便利だと思っている。
今も、固い床に寝転がっているが、スタンドのおかげで寝にくさはちっとも感じなかった。
ゆりかごでまどろんだ記憶を覚えているとしたら、その感覚に一番近いかもしれない。
しかし、マジェントが今日一日の最後に考えたのは、「永遠に寝ていられるくらいなんだから、墓の下の寝心地ってこんな感じかも」ということだった。



775 :
支援

776 :

翌朝、目覚めたルイズの第一声はこうであった。
「ご主人様より起きるのが遅いってどういうことよ!」
朝、窓から差し込む日光で目が覚め、ベッドの中でうとうとしていたルイズが、床に転がっている黒い塊を見てそう叫んだのだ。
ルイズは布団を跳ね除けて起きあがった。
床に、黒いシルクハットのような帽子を被って、全身真っ黒の服を着た、黒いくせっ毛の男が丸まって寝ている。
どこから見ても、昨日自分が召喚して使い魔にした男だった。
それにしてもこの男、帽子くらい外して寝たらどうか。
責務を果たさないふとどき者に、ルイズは枕を投げつけた。
「起こせって言ったじゃない!もうとっくに朝よ!」
男は起き上がる気配すら見せない。
ルイズはベッドを抜け出して、男のところまで行ってもう一度枕を拾い、投げつけた。
それでもまだ起きないので、枕をばふばふと何度も叩きつけたり、耳元で叫んだり、しまいには蹴飛ばしたり本で殴ったりした。
「こ、ここまでしても……起きないだと!」
不思議と、ルイズが殴っても蹴っても、彼に衝撃が届いているという手ごたえが一切感じられなかった。
彼を起こすための奮闘は、ルイズが朝からちょっとした運動をさせられた、という結果に終わった。
おかげで寝起きの悪いルイズも、健康的なことに、朝のラジオ体操に参加させられたあとのようにすっかり目がさめてしまった。
マジェントは何事もなかったように、寝息も立てずに眠りこんでいる。
ルイズはふと、召喚したときの彼の様子を思い出した。
あの時も、こんな感じに背中を丸めて寝転がっていた。
ルイズは、杖を振り上げることも考えたが、起こすのに時間を食って遅刻するのもバカバカしいと思い直した。
仕方なく、自分で着替えを始める。
せっかく使い魔を得たというのに、この無様な状況はなんだろう。
ルイズの着替えと、ある程度の身支度が終わったころに、やっとマジェントは起きだした。
使い魔はマイペースに伸びやアクビなどをして眠そうに言う。
「……あ、起きてた〜?
 あー……いちおう先に起きようと思ったんだけどなー……オレどのくらい寝てたあ?」
「知らないわよ、この寝ぼすけ!」
ルイズは今度こそマジェントの顔面に枕をぶつけた。
「いでッ」とか言っているので、ちゃんとくらったようだ。 
異常なほど反応が悪いのは寝ているときだけなのだろうか?ルイズはすっきりしないものを感じる。
(こいつは寝ている間、実は眠っているのではなく死んでいるのではないか?)
という不条理な説も浮かんでしまった。
ルイズはしばらくマジェントを罵倒しながら、食堂に行く準備を整えた。朝食の時間には間に合いそうだった。
マジェントはだらだらしているだけで、ルイズの服の洗濯に行こうとするそぶりすら見せない。ド忘れしているのかもしれない。
与太話をするのに余念が無かった。
「その長い髪の毛……ジャマじゃあねえのかい?頭ボサボサだぜ」
「あんたには言われたくないわ!」

777 :

ルイズは、彼に支度を手伝わせようと試みはした。
しかし、脱いだ服を畳ませようとすれば、
「この服の構造どうなってんの?
 着るの面倒くさくねえかい?
 ここんとこの紐なんか何のためについてんだよ……
 ……わかったぜ!この紐を解くとだな、大いなる封印が解けられて……」
「黙って仕事できないの?!」
ベッドのシーツを整えさせようとすれば、彼はブランケットを掴み、
「よし……今、ギャグ思いついた……聞いてくれるかい?」
ルイズは、彼に仕事を任せると余計に時間がかかることに気がつき、使い魔に支度を手伝わせるのを諦めた。
結局、ルイズは彼を叱責するのをほどほどにすることで、いつも通りの時間に部屋を出ることに成功した。


キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー は、「部屋の前で待ち伏せをしていたのか?」と尋ねられれば、NOと答えただろう。
が、待ち伏せをしていなければ不可能なタイミングでルイズと鉢合わせした。
自室を出たとたん目に悪いものを見てしまったルイズは口をへの字にした。
この場合の目に悪いものとは、キュルケの胸にふたつみのっている何かである。
キュルケは腰に手をあてて、からかうように言った。
「あら、おはようルイズ。昨日はあれからどうしたのかしら?
 もしかして本当に、平民を使い魔にしたの?」
「朝から人の心配なんかして、よほど暇なのねキュルケ?」
ルイズはキュルケの忌々しい胸元から視線をはがして、キュルケの顔を睨みつけた。
すると、マジェントがひょっこりとルイズの後ろから部屋をでてきた。
「おっ?なんかまたスゲーのがいるなあ……」
キュルケの開いた胸元を無遠慮にまじまじと見てそんなことを言っている。
キュルケも、ルイズが召喚した使い魔を上から下まで眺める。
男は、頭にシルクハットの形をした鍔の広い帽子を被っていて、その下の髪の毛はくるくると跳ねている。
軽そうな男である。痩せているという意味ではなく、頭蓋骨の中身が軽そうという意味である。
「あなたがルイズの使い魔?
 あなたも災難ね、ゼロのルイズなんかに呼び出されて」
「聞き捨てならないわ、キュルケ!
 わたしは使い魔の召喚に成功したのよ。もうゼロなんかじゃないわ!」
キュルケは笑う。
「『平民』を、ね。
 それ、成功って言えるかしら?
 使い魔っていうのはこういうののことを言うんじゃない?」
一歩ずれて、キュルケは自分の使い魔を二人に見せてやった。
四足歩行のサラマンダーがキュルケの部屋から出てきたのを見て、ルイズの使い魔は「およ?」と言った。
いかにもキュルケの使い魔らしい使い魔に文句のつけようがなく、ルイズは悔しがることしかできなかった。

778 :

マジェントは、サラマンダーの尾の先に炎が灯っているのを見てやたら感動していた。
「火蜥蜴っていたんだな!
 熱くねえのかい?尻尾がヤケドするんじゃあねえか?ずっと火ィついてんのかい?
 確かにこんなんがいりゃあ便利だろーな!……タバコに火つけるときとか……」
でけー、などという感想をぐだぐだと述べる。
一応フレイムを褒めようとしているらしい、と判断したキュルケは気をよくした。
「フレイムを松明代わりにするなんてとんでもないわよ。
 火竜山脈から召喚された由緒正しきサラマンダーなんだから」
マジェントはフレイムの額を指で突こうとしては引っ込めている。
「恐竜みたいなもんか?
 ライターを恐竜化したらこうなったりして……
 Dioは変な生き物色々と生み出してたからなあ〜
 生き物ってあんま好きじゃないけど……
 噛まれるんだよなあ……」
そのあとも何事か呟いていたが、彼は唐突に、フレイムの尾の火の前にしゃがんだ。
何をするのかとルイズは見下ろす。
彼は、フレイムの尻尾の炎に両手をかざして一言、「焚き火」と言った。
「う〜寒い寒いっつって、極寒地帯で暖をとる、っちゅう……」
マジェントは震えて寒がるマネをしている。
そして、反応をうかがうようにルイズとキュルケを見上げた。
「…………」
「…………」
キュルケは、この天然っぽい男に興味がわいてきた。
天然っぽいというより、もはやアホっぽいが。
「わたしはキュルケ・ツェルプストー。
 キュルケって呼んで。あなたは?」
「マジェント」
「ルイズに嫌気がさしたらいつでもわたしの部屋に遊びにきたらいいわ。
 フレイムは噛まないし、馴れれば可愛いものよ」

779 :
9/9…これで終わりかしらん?

780 :
乙……かな

781 :
面白い!期待ィ!

782 :
乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙!!

783 :
避難所の対サルに来てる

784 :
ブラボー……おお、ブラボー……
しかし、ルーンが刻まれたのは“右手”かい? 爆発や焼ける痛みは左手だったけど。

785 :
あっほんとだ
正しくは右手ではなく左手です
ミス報告感謝です!
ついでに、さるさんくらって避難所に投下した分をこっちに転載します
またさるったら寝る

786 :
支援

787 :

自分の使い魔が懐柔されていると見たルイズは、機嫌を悪くしてマジェントの服の襟を引っ張った。
「もう行くわよ!
 そんなのたいして凄くもないでしょ!
 トカゲなんて使い魔にしても全然便利じゃないし!
 物も運ばせられないし、大きくて邪魔になるだけよ……
 い、いっそのこと平民のほうがマシよ!」
「あらルイズ、けっこう彼のこと気に入っているのね?
 そうよね〜じゃなきゃ使い魔になんてできないわ」
「気に、入ってるですって?!
 だれがこんな、脳みそまで天パな平民の男を!とろいし鈍いし!」
ルイズがマジェントの脛を蹴ると、彼は「でっ!ひっで〜。ルイズがひでえ!」と文句を言った。
キュルケはルイズをからかうのをやめない。
「そうかしら?
 わたしはてっきり、ルイズは彼に一目ぼれでもしたのかと思ったわ。
 好きでもなきゃ、男ととコントラクト・サーヴァントなんてできないでしょ」
ルイズは顔を真っ赤にした。
「そ、そ、それ以上しゃべったら、わたしの杖が火を吹くわよキュルケ!」
「あら?言って何か困ることがあるの?」
キュルケは、マジェントをちらちらと横目で睨むルイズの焦り顔を見て思いつく。
「もしかしてルイズ、コントラクト・サーヴァントの方法を、彼は知らないのね?
 契約するために何をやっちゃったか、教えてなかったのね。
 でも、もうしちゃったものはしちゃったじゃない。あんな人前で。
 された本人だけが知らないのは不公平じゃない?」
そうしてキュルケは妖しく笑った。
言葉選びに作意が見える。ルイズは悪寒を感じ、戦略的撤退を選んだ。
「あーッ!遅刻するわ!
 朝食の時間に間に合わない!
 走るわよ!」
「え?でもキュルケの話ききたいんだけど……」
ルイズは彼の服を掴んで廊下を走り出した。
しかし、ルイズの決断は少々遅すぎた。
キュルケが、ルイズとマジェントの背中に向かって叫んだ。
「使い魔の契約の方法はねー!
 リップ・キスよ!お二人さん、末永くお幸せにねー!」
キュルケはゆっくりと食堂にむかって歩き出した。
まだ歩いて行っても間に合う時間だった。

788 :

「…………」
「…………」
ルイズとマジェントの二人は無言で食堂への廊下をひた走っていた。
キュルケの声は、それはもう明らかに二人の耳に届いていた。
ルイズは恥ずかしさで脳みそが爆発しそうだった。
同時に、隣を走るマジェントが何も発言しないことをいぶかしんでいた。
この男が黙っているときは、ろくでもないことしか考えていない、ということをルイズは既に学んでいた。
マジェントがおもむろに口を開いた。
「……こんな話を知ってるか?
 茨に囲まれた城の中で、昏々と眠り続けているお姫様がいた。
 何をやってもそのお姫様は起きなかった。
 だけどある日、白馬にのった王子様がやってきてお姫様にキスをした。
 そしたらたちまち、呪いが解けて目を覚ましたっていう……」
「何それ?!
 まさかとは思うけど、あんたがそのお姫様だって言いたいの?!
 ありえないわ!!
 あ〜もうっ!どうせそういう妙なこと言い出すだろうから、アンタに知られたくなかったのよー!」
「じゃあ……毒りんごを食べて死んじまったお姫様を、王子様がキスで生き返らせるほうの話でもいいぜ」
「同じじゃないっ!!」
ルイズは息を吸い込んで大声を出した。
「あんたなんか野獣がいいとこよ!」
「それ、どんな話だ?」
「知らないの?
 呪いで恐ろしい野獣の姿にさせられてしまった王子様が、美しいお姫様のキスで……」
元の姿に戻る話、と続けようとしたところで、彼が期待に満ち満ちた顔でこちらを見つめていることに気づいた。
慌ててルイズは、走りながら杖を取り出した。
「そ、それだとあんたが王子様ってことになっちゃうじゃない!
 とにかく、わたしとあんたの間には、キスを交わしてハッピーエンドなんておとぎ話はいっさい存在しないのよ!!」
二人は結ばれて一生幸せにすごしました、めでたしめでたし、で終わる童話を認めるわけにはいかない。
走りながらマジェントに杖を向けると、彼は驚いて足を止めた。
呪文を唱える僅かな間で、彼が腰を落として地面に手をつけるのを、ルイズは見ていなかった。
「ファイヤーボールッ!!」
ろくに狙いも定めず放った『火』の魔法が、後ろでいつもの爆発になったのをルイズは感じた。
使い魔に直撃はしていないかもしれないが、無傷ではすまないだろう。医務室送りにでもなんでもなるがいい。
そしてそのまま、振り返りもせずに食堂へと走り去っていった。



789 :

キュルケとマジェントがアルヴィーズの食堂に辿り着いたとき、ルイズは既に二年生のテーブルについていた。
朝食の始まりの祈りはまだされていない。
キュルケがルイズに苦言を呈する。
「ルイズ、廊下すごいことになってたわよ。
 また爆発させたのね?」
ルイズは、並んで入ってきた二人を見ると、驚いて不満をぶつけた。
「ちょっと、なんでキュルケと一緒に来てるの?
 あの爆発でかすり傷もついてないってどういうことよ!」
「キュルケはいいヤツだ……
 オレが煙でむせこんでたら、心配してくれた」
そう言ってマジェントはこれ見よがしに、ゲホ、と咳をする。
キュルケは楽しそうだ。
「目的地と経路が同じなんだから、一緒に来ることになるのは別に普通じゃなあい?」
「ええッ!そうねッ!普通だわ!全然別に!
 わたしの言いたいことはそーじゃないのよ!」
ルイズは椅子に座ったままジタバタする。
ルイズは彼が無傷で歩いてきたことを問い詰めたいのであって、彼がキュルケと歓談しながら来たのを僻んでいるわけではない。
どう考えたって、咳き込む程度ですむ爆発では無かったのだ。
ルイズがやきもちしていると誤解したままのキュルケはまたクスクス笑う。
「あらあら、ごめんなさいねールイズ。お邪魔だったみたい。
 あとは二人でお食事楽しんでくださいな」
キュルケはひやかしながら、ルイズの前から去っていった。
テーブルのどこか別の席について適当な男と食事するのだろう。
あとには棒立ちのマジェントが残る。
豪華絢爛の食堂を眺めて言う。
「それ、すげえ量だな。
 絶対食いきれないよなあ〜………
 あ、残りはさっきの恐竜みたいなのに食わせるんだろ?そうじゃねえかい?
 使い魔って言ったっけ。ああいうのたくさんいるって聞いたぜ」
「知るか!」
つっこむのにも疲れてきたルイズだった。

790 :

ルイズはとりあえずマジェントを床に直接座らせた。
「ねえ、食事のときくらい帽子をはずしたら?」
彼女がそう言うと、マジェントは「似合ってるだろ?」とほざきながらも帽子をはずした。
ルイズは、彼のくるくるパーマの頭から爪先まで眺めた。
痩せすぎというわけではないが、健康的に筋肉がついているというわけでもない。
肩幅はあるが、服の布が余っていて、薄い体格に見える。
不健康そうな雰囲気が全体に感じられる。
首元以外全身まっ黒のデザインは確かに、彼に似合っていた。怪しさ満点、という意味でだ。
一見、只者じゃなさそうに見える。
頭の中身がお花畑すぎて、外見に追いついていないが。
彼はちょっと興味津々にルイズに話しかけた。
「なあ……さっきの、何やったんだ?
 いきなりだったから驚いたぜ!
 ルイズの『能力』ってわけじゃあねえよな〜……あんたはスタンド使いじゃねえから……
 杖でなんかすると見せかけて爆弾を投げたとか……」
「それはこっちのセリフよ。
 あんた、さっきどうやったの?
 最初も朝もそうだったわね。何をやっても無傷なのはなんで?」
彼は歯茎を見せてにやりと笑った。
嬉しそうに、とっておきの秘密を暴露するときのように声をひそめて囁く。
「聞きたいかい?ルイズさんよォ〜……」
言いたくてうずうずしているようだ。
ルイズはウザくなって逆に聞く気が失せた。
まあそれでも、使い魔が重大な隠し事をしているのはしゃくなので、続きを促した。
と、しようとしたところで、
『偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ……』
祈りの唱和が始まった。

791 :

ルイズは、この不敬な使い魔を床で粗末な食事をさせることで、ちょっとでも使い魔の立場というものを理解させるつもりでいた。
そしてその試みはある種成功し、ある種失敗した。
マジェントは座ったまま自分の食事に手をつける前に、食堂の様子を見渡し、こう言った。
「あのさあ、気になったから聞いてくれよ」
「なに?」
「ほかの……使い魔ってやつはこの食堂にいないのか?見当たらないぜ」
「普通は食堂に使い魔なんて連れてこないわ!
 わたしが好意で特別に入れてやってるんじゃない!」
マジェントは彼女の顔を見上げた。
「好意か?ならいいんだぜ……
 てっきり、あんたがオレを見下すためにやってるのかと思ったけど、そんなハズねえよなぁ〜
 あんたはオレのことを、対等に扱ってくれるんだろ……?
 ルイズは来てくれたんだからな……」
言っている内容は軽口のようだったが、彼は剣呑な表情をしていた。
彼は信頼を踏みにじられたことを思い出していた。
ひたとルイズの目を見つめている。
真剣に、確認するように言った。
「オレを道具扱いとかクズ呼ばわりとか……助けに来てくれなかったりとか、ルイズはそんなことしないよな」
ルイズは不穏な雰囲気を感じて唾を飲んだ。
迂闊な返事をしてはいけない気配があった。
彼は床からルイズを、片方しかない目で見上げている。
彼が、『見下されている』と判断するのはどのくらいの範囲だろう。
使い魔はメイジの手となり足となること、と説明しているとき、彼は不満は表したがルイズを見限りはしなかった。
罵倒しても、爆発をくらわせても、平然とルイズについてくる。
今だって、ルイズが「ここの床で食事を与えたのは好意からだ」と説明すれば、彼はルイズの意図など気づかず納得するだろう。
しかし、もしルイズが「最底辺の人間らしく無様を晒せ」と嘲ったら、彼はどうするだろうか。
実際のところ、ルイズが彼を見下しているのは本心だったが、そこまで口に出して言わないと彼は気づかないだろう。
とっくに人間扱いされてないことくらい気づけと思う。いや、この場合、その鈍感さを幸いととるべきなのか。
ルイズが彼を助けたというだけで、彼は彼女を楽観的に信頼しているのだ。
この男、勝手にこちらに入れ込んできている分、蔑ろにされていたと気づけば被害妄想を爆発させて逆恨みしてきそうだった。
好意が一方的なら、恨みも一方的なのだ。
彼ごときに恨まれても深刻な事態に陥るとは思えないが、念のためという言葉もある。

792 :

ルイズは慎重に言葉を選んで言った。
「ねえ……仮によ。
 わたしがあんたを内心では馬鹿にしていて……
 いざというときにあなたを裏切ったら、どうするの?」
彼もまた真摯に答えた。
「まず、この世の地獄の、もっとうすら寒いその底の底をなめさせて、それから、ゆっくりと殺してやる」
悪人面をしているので、据わった目で言われると、冗談に聞こえなかった。
マジェントの心持ちは本気だった。
ルイズは本音を隠すことを選んだ。
下手に彼の名誉を著しく毀損することを避けさえすれば、彼はこちらに素直な信頼を寄せ続けるだろう。
道具扱いを明言して理解させるよりも、舌先三寸で騙して道具扱いしたほうが得策かもしれない。
「別にあんたを馬鹿にしようとしてるわけじゃないわよ。
 これは使い魔としてはかなり良い待遇なんだからね」
「そーか」
彼はルイズを睨むのを止め、簡素な食事に手をつけた。
これで納得するのだから安い男である。

彼はちょっと不満そうにしながらも、たいして文句も言わずに床で食べはじめた。
というか、床に寝転がってパンをつまんで食べるという、だらけきった態度で食っていた。
おかげで、彼の単純な信頼を裏切ったルイズがほんのちょっぴり感じた罪悪感は吹き飛んでいってしまった。
布団に包まったまま飯を食うニートか貴様は。
「やっぱりあんたは外!」
結局ルイズは食堂の扉を指差し、廊下へ彼を追い出したのである。



793 :

朝食が終わり、アルヴィーズの食堂を出たところで、ルイズは何かに躓いた。
「こんなところに物を置いておくのは誰?!」と罵倒しながら振り返ると、それは自分の使い魔であった。
出入り口で寝るな。
例によって、眠っているのか死んでいるのか分からないあの状態で倒れ伏している。
食堂から出てきた他の生徒たちから迷惑そうな視線を浴びている。
ルイズはその物体を、通行の邪魔にならない位置に蹴飛ばした。
すると彼はのそのそと起きだし、開口一番に「メシが足りねー」と文句を言った。
食堂に戻ろうとするマジェントをルイズは教室に引きずっていった。
「なんだよ!いいじゃあねーかよーどーせ何か余ってんだろ?」
「残り物なんて食べないの!
 犬じゃないんだから拾い食いも駄目よ?!」
「食えればいいじゃねーか……」
「わたしが恥ずかしいの!」
マジェントはまだごねていたが、ルイズは腕を引っ張ったり背中を押したりして無理やり歩かせた。
彼は体重がある方ではないし真面目に抵抗はしていなかったが、背の差がかなりあるので悪戦苦闘した。
授業開始時間に間に合わなくなってしまう。
ルイズは彼の背を押しながら説得作戦にでた。
「ほら!教室に行ったら他の使い魔たくさん見れるわよ!
 平民になんて一生縁が無い、魔法の講義が聴けるんだから!
 だからもーさっさと歩いてよー!」
「講義〜?
 堅っ苦しいのはなあ〜……」
そう言いながらも、彼は少し興味をそそられたようだ。
教室に入ると、半分くらいの席が生徒たちで埋まっていた。
皆、昨日召喚したばかりの使い魔をつれていて、教室のあちこちに小動物や得体の知れない生物がいた。
マジェントは使い魔たちをいちいち指さしてルイズに話しかけた。
「なあ、あそこに浮いてる目玉、どーやって飛んでるんだ?
 生物としてバランスおかしーんじゃねーか。
 あのでっけー蛇、窓の外からこっち見てるけど、あれも誰かの使い魔ってやつか?
 日常生活どうすんの?エサ代ぜってーやばいよなアレ。
 あそこに座ってんのキュルケだな。火トカゲもいんのかな?
 猫って鳥食うよな。あっちに鳥と猫が一緒にいるけど平気なのか?
 ルイズ、聞いたことあるか?猫は『ネ』ズミを食うから『ネ』コって言うんだそーだぜ。
 それだとつまり、『ト』リを食う猫は『ト』コで、『サ』カナを食う猫は『サ』コっつーことになるよな!」
ルイズが席に歩いていって座るまでの短い間で、彼はうっとーしくもルイズを質問攻めにした。
よく一人でこれだけべらべらと喋れるものだ。
「うるさいッ!
 ちょっとは口を閉じてられないの?!
 授業が始まるんだから黙っててよ!」
「見ろよルイズ、あの触手はえてるやつ気持ちわりいな」
ルイズは彼の肩に体重をかけて強制的に床に座らせた。
まだ喋り足りない様子だったが、彼の帽子を顔に引きずり降ろして目隠しにしてやった。
彼は文句を言おうと帽子を押し上げたが、ルイズに恐ろしい形相で睨まれると、しぶしぶ口を閉じた。

794 :
支援

795 :
「ウ・ディ・タ」とは? 
・完全無料のゲーム作成ツールです。
・wikiや講座や情報やブログも充実してるので安心。
・作成したゲームは自由に配布したり、コンテストに投稿することも可能。
■「コモンイベント」を利用すれば、難しいゲームシステムも実現できます。
■非暗号化ゲームもあるのでそれで先人に知恵を借りよう。

796 :

講義が始まると、彼は比較的おとなしくしていた。
もっともそれは、マジェントが何かを言おうとするたびに彼を小突いたルイズの努力の賜物なのだが。
教壇で教師シュヴルーズが『系統魔法』や『コモンマジック』について話している間、彼は口を出したくてしょうがないようだった。
特に、シュヴルーズが『錬金』を実践して見せようと言ったとき、彼は今にも立ち上がって教壇まで見に行きそうだったので、ルイズは杖を出して彼におとなしくしているよう脅さねばならなかった。
しかし不運なことに、使い魔を黙らせるためにルイズが出した杖が、シュヴルーズに見咎められた。
「ミス・ヴァリエール。
 私の授業中に魔法の試しうちがしたいのなら、『錬金』の実践はあなたにやってもらいましょうか」
この場合不運だったのは、ルイズだけではなく、教室にいた全員である。
ルイズの失敗魔法を体感したことのある全ての生徒は、ゼロのルイズが『錬金』を試す事に反対したが、時既に遅しだった。
ルイズは緊張した表情の中に少しの希望をこめて、
「やります」
と言ったのだ。
小石を金属に変えるべく教壇に立ったルイズと、何も知らずにそれを見守ろうとするシュヴルーズ以外は、我先にと席を立って総員退避を始めた。
しかし、マジェントは皆が引いている理由に欠片も見当をつけようともせず、前の方の席が空いたのをいいことに、教卓の真ん前の椅子に移動して座った。
ルイズが『魔法』を使うと聞いて興味津々で食いついていた。
そして例に洩れず、ルイズの『錬金』により遠慮会釈もない爆発が起こった。
教室は阿鼻叫喚の地獄絵図となり、黒板に叩きつけられたシュヴルーズのために「タンカだ、タンカー!」というパニくった叫び声が飛び交った。
ルイズも爆風をもろに受け、教壇に転んで膝をついていた。ローブのあちこちがほつれ、擦り傷を負って血がにじんでいた。
今回の爆発は普段より一段とひどいものであった。
ルイズには罵声が浴びさせられ、授業は続行不可能になった。
「ゼロのルイズ!
 何をやっても成功率ゼロなんだから、もう二度と杖を振るなよ!」
生徒たちはお互い肩を貸し合い、怯えたり興奮したりしている使い魔を宥めながら教室を出て行った。
窓ガラスが落ちて割れ、耳障りな騒音を立てた。
教室には、まだ教壇に座り込んでいるルイズと、そのすぐ近くの席に座っているマジェントだけが残った。
爆風はおさまったが、教室は見るも無残な状態で、まだ埃が舞って煙たかった。
破壊のあとは閑散として、静かだった。
壊れた椅子や机が歪んで時々たてる音だけが、やけに煩く感じられた。
ルイズはうなだれて気まずい沈黙を聞いていた。
こぶしを痛いほど握り締める。
(何か言いなさいよ……)
自分の使い魔が珍しく黙っている。
彼は間近で爆発を受けた衝撃の余りか、座ったまま固まっている。
教室は散々な有様だったが、ルイズの心境も負けず劣らず荒んだものだった。
「なによ……ちょっと失敗しただけじゃない……!
 成功すると思ったのよ……ゼロなんかじゃないんだから!
 召喚は成功したじゃない!
 そんな………言わなくても……ッ!
 誰もっ……心配なんか!わたしだって………!!」
そのとき、咳払いがひとつ聞こえて、ルイズは勢いよくそっちを睨みつけた。

797 :
支援

798 :

はたしてそこには、咳き込んでいるマジェントがいた。
「ゴホッゴホッエホッ……ゲホ!ゴホッ
 グッ……ゲホ、あ〜……やっぱ駄目だなあ〜…ゴホッ
 やべ、ハナ水でてきた……ハンカチあったかな」
「…………」
「ゴホッゲホッ、もうちょっと埃おさまるまでスタンド被ってりゃあよかった……」
「なんで……」
「あ、見てた〜?袖で拭いちゃった……ゴホッゴホン
 ハンカチかティッシュ持ってるかい?
 昨晩までは持ってたのにな……なんでかハンカチとかってすぐどっかいくよなあ〜
 ポケットの中は暗黒空間に繋がってるんだろうなあ……ゲホ」
「だから何で、まるで無傷なのよ!!
 わたしがこんな無様を晒してるってのに!!
 卑怯よ!ずるいわ!何様?!」
ルイズはマジェントの座っている席に詰め寄った。
ルイズの服の裾は破れて、かすり傷を受け、顔は煤で汚れている。
彼も同じような至近距離でもろに爆撃をくらったはずだ。
それなのに彼ときたら、爆発など一度として起こらなかったかのようだ。汚れてもいない。
「ゲホッ……確かに間に合うかどうかギリギリだったけど、ルイズが杖を振ったら爆発したのを今朝も見てたからなああ〜
 爆発すんの、なんか唱えてからだし……
 このオレにかかれば余裕だぜ」
「だから、どうやったかって訊いてるのよ!」
「『スタンド』………」
「え?」
彼は言いかけたところで、何か悪い事でも思いついたようにニヤリと笑った。
「なあ……ゲホッ……今、ギャグ考えた…批評してくれる?
 これ聞いてくれりゃあ、『スタンド』について教えてやるぜ」
ルイズは彼の鼻先に杖を突きつけることで返答とした。
ただでさえルイズの虫の居所が悪いのに、彼は人の神経を逆撫でするようなことを言う。
彼は、不適なニヤニヤ笑いをしたまま、椅子の上で行儀悪く膝を立ててルイズを挑発した。
「爆発させてみるかい?
 やってみるのも……いいかもな」
ルイズはできるだけ素早く短いルーンを唱えた。
しかしそれは、彼が『20th・センチュリー・ボーイ』を発動するのに十分に足る時間だった。
そして彼女は、彼が爆発を『受け流す』のを目の当たりにした。
それは異様な光景だった。
彼の眼前で起こった爆発のエネルギーは、彼の身体の表面に触れた瞬間、方向を『逸らされ』、あるいは体表を滑って地に、あるいは空中に散った。
爆発は彼に触れるか触れないかのところを素通りしていく。
爆炎や爆風は彼に一筋の爪痕も残さずに通り過ぎていき、彼が座っている椅子や机を傷つけた。
ルイズは、彼の背後にある机が盛大に半壊したのを見た。
彼女は爆発のあおりを受けて髪の毛を乱していたが、彼の帽子は吹き飛びもしなかった。
軋んだ音を立てて分解寸前の椅子と机に囲まれて、立て膝で座った彼だけが無事だ。
先ほどもこうして、爆発に包まれた教室の中で、彼だけがなんの被害も受けなかったのだろう。
彼はあらゆる衝撃から隔離され、空間からとり残される。
「ありえないわ………何の魔法よ……」

799 :
支援

800 :

彼女はしばらく呆然と立ちすくんでいた。
我に返り、マジェントが何か言い出すのを待ったが、待てども待てども彼が微塵も動かない。
ルイズは痺れを切らして、彼の頭をはたいて、耳元で「座ったまま寝るな!!」と叫んでやった。
「ゴホゴホッ!なんだよ……まだケムいじゃねーか!エホッ…
 室内だからこんなムセるのか?ゲホッゲホッ」
彼は椅子から飛び降りて、ヒビの入ってしまった窓の方に歩いていった。
落ちているガラスの欠片を踏んで、パリンと割れる音がした。
破片の散った教室の窓を開けようとしている。
「あイテ。
 指切っちまった……」
のんきに指の傷口をなめている彼を、ルイズは怒りに震える声で呼んだ。
「こっちを向きなさい、マジェント」
彼は喜色を広げて振り返って言った。
「今のが始めてだよなあ?ゴホッ……ルイズがオレの名前呼ぶの……」
「余計なことほざくなッ!
 いい?!今からあんたが発言していいのは、『スタンド』とやらについてだけよッ!
 ふざけたこと言ったら爆破するわ!
 冗談を言っても爆破!咳をしても爆破!
 爆破を防御しても爆破よ!」
「ゲホッ、咳くらいいいだろ?
 オレがルイズの爆発で困るのはそれだけなんだからなああ〜」
この使い魔は、ルイズの渾身の爆発が効かないことで調子に乗っている。
ルイズは地獄の底から沸きあがってくるような低音で嚇した。
「『スタンド』のことを喋らないと、あんたの新作ギャグ聞いてあげないわよ」
この男にはこっちの方が堪えるだろうというルイズの予想どおりに、彼はころっと態度を変えた。
「お!スタンドのこと言えばいいんだな?
 何でも訊けよ!」
そもそも、『ルイズがマジェントのギャグを聞けば、スタンドのことを話してやる』だったはずだが、『マジェントがスタンドの話をすれば、ルイズがギャグを聞いてやる』に逆転していることに、彼は気づいていない。ちょろい男だ。

801 :

半壊した教室で、ルイズとマジェントは適当な席に腰かけて、会話を始めた。
「まず、そうね……単刀直入に訊くわよ。
 『スタンド』ってなに?」
「スタンドってのは……『能力』だな……
 一人ひとっつだけ使える、摩訶不思議の超能力さ。
 使うときはなんか像が出たりするんだけどよ〜……それが見えないヤツには、スタンドの才能がねえ」
マジェントがルイズに向けた人差し指を、ルイズは叩き落とした。
「人を指差さないの!
 スタンドの『才能』って言ったわね?
 魔法は、貴族に流れているブリミルの血で使うのよ。だから魔法を使えるのは貴族だけ。
 スタンドは平民にも使えるの?」
「血は関係ねえんじゃねえかあ?
 生まれつきで持ってるヤツもいりゃあ、『場所』の影響で発現するヤツもいるし、『道具』の効果で発現するヤツもいる……
 誰にでも可能性はあるんだそーだぜ……才能と精神力があればな。
 そんなにたくさんはいねえだろーけどなあ」
「きっとそうなんでしょうね。
 わたしはスタンドなんて聞いたことないもの。
 一人が使えるのは一つの能力だけなんでしょう?
 平民がそんなもの持っていても大事にはならないわね。
 魔法の方が便利よ」
マジェントはそこでいきなり話に食いついた。
「あ!それだ!
 その『魔法』が便利って話だった。
 さっきの授業聞くまでピンと来なかったんだけどよ、魔法ってマジにあんのな!
 スタンド使いでもねーのに、妙な爆発を起こすから何だと思ってたぜ。
 ルイズのそれがありゃあ、ダイナマイトいらねえなあ〜
 『コモンなんとか』ってめっちゃ楽じゃねえ?
 物浮かせたり飛んだりとか……歩く必要ねえじゃねえか。
 こう……ふいっと杖を動かすだけでいいんだぜ?ラクチンじゃん。
 でもメイジにしか使えないってのはクソだな。
 誰でも使える便利魔法アイテムみたいなのねーの?」
「マジック・アイテムがあるけど、魔法のことは今はどうでもいいのよ!
 あんた固有のスタンドの話よ。
 何度も爆発を受け流したわね。
 それがあんたの『能力』?」

802 :
彼は再び椅子に足を乗っけて片膝を立てた。
破顔し、大げさに両腕を広げて、心底楽しそうに、自慢らしく語る。
「そーさっ!
 これがオレの『20thCenturyBoy』だ。
 コイツは何からでもオレの身を守ってくれるのさ!
 どんなに鋭い刃物も、銃弾の雨も、惑星破壊爆弾も、オレがスタンドを発動している限り手出しできないんだ。
 確かにその間は指一本も動かすことはできねえが、こんなに優秀な鎧は他にはないぜ!
 スタンドを被っている間は何も要らなくなる。
 『二十世紀少年』は永遠に安全を約束してくれるんだ!」
「窒息もしないし、餓死もしない?
 本当に何も効かないの?」
「本当に何も!」
しかし、得意顔のマジェントにルイズは水をさしてやる。
「何かそんな虫がいたわね。
 体を丸めて仮死状態になって、どんな熱にも冷温にも耐えて、空気が無くても一世紀くらい生き延びちゃう虫。
 あんたの『能力』ってその虫と同じね」
その虫を人はクマムシと呼ぶ。
ルイズは畳み掛ける。
「川底に沈められたって言ってたのもそれ?わたしに召喚されたときも、スタンドを発動してたんでしょ。
 スタンドを発動していれば溺れはしないみたいだけど、身動きがとれないんじゃ意味ないわ。
 スタンドを使用中のまま生き埋めにされたりしたらどうしようもないじゃない」
しかし、ルイズの指摘を聞いて、彼は呆れた、というように肩をすくめた。
「それで何かマズいことでもあるのか?」
彼女が口を開こうとするのを制し、マジェントは言うまでも無いこの世の真実のように答えた。
「何も問題は無いじゃあねえか。
 ルイズが助けに来てくれるんだからな」
教室は二度の爆撃をうけてひどい有様だったが、ルイズが最初にこの教室で起こした爆発のせいで広がっていた悲壮な雰囲気は霧散していた。
ルイズだけだったら、その後も彼女は壊滅状態の教室を一人寂しく片付けながら、落ち込んだり荒れたりして最悪の気分だっただろう。
しかし今は、マジェントがボケてルイズがツッコむどつき漫才が繰り広げられている。
ルイズはほんの少しだけ、雀の涙ほどだけマジェントに感謝した。

803 :
代理完了
作者さん乙です

804 :
投下なんて何時ぶりかな

805 :
マジェントの人代理の人乙乙

806 :
乙でしたー

807 :
http://nico2uploader.409.jp/show/picanime/jojo/012384.jpg

808 :
>>807
404

809 :
ジョジョアニメが高熱を放つ今ッ!1部とのクロスが再燃するかもしれない

810 :
流石にDIOに粉々にされたダイアーさんは無理だろうな

811 :
粉微塵になったアヴドゥルですら復活してるんじゃなかったかな?

812 :
子安のノリにノッた怪演のせいで、ここのまとめのDIOも子安調で再生されてしまう(笑)

813 :
子安が凄いのは同意するが長年格ゲーの声で脳内再生してたので揺るぐ気配がないな・・・

814 :
大丈夫
一部と三部で別再生だ

815 :
格ゲーのボイスが実になじむせいで、新しい格ゲーが絶望しかないぜ

816 :
            _
         ,r'"= ニ三`ヽ-=-、)'゙ヽ  r、
        ////,r=三ミヾヽヾ} }'ヽ ノソッ
        /,////,r'" == ミヾヽ 川 l l./ /"リッ
      // /// ///,r三 ミヾ.l リ /ツ/ ノ/ノ ノ
      l l/// /////,r = ミヾ ノノ/ /,r"'"")
      f/// // / //,r`ヾ∨/,,.r''´/,r="ノ
     ノ// // / /// / /ヾ''""ヾ'、'r''''''r=''))     こんなことを言うのもなんだが
      ノ// // / /l l l l l       l.lll   レソ/
.    ////〃 / / l l l l |     リリ   |//       ジョセフの声優に
   //// / / ノ―-ヽトトl、   v-"---ッリノ
.  //// / /,ィl | F〒tテ‐〉  f:r〒tテッ l゙l |       杉田はやめたほうがいい
  l 川 / / f{ {l゙|  ´´ ̄''"   {゙`' ̄゛` |,リ
  |川 〃/ハヽヾ|         l:}     l'ト|、       と思います
  |.ll l / / ヾi`゙l       ヾ_フ    l l゙ト\
  |ll l l /   'il l',    _______  /'|.l | ヽo
  |l l l l    l.l.lヽ.  ''ニニニニ'' / |.l.l  ゙o
  |l l l |     | |  \      /  |リ
  | l l ll       l.|   ヽ____/   リ
  l l l,リ     f==r,===========l
  //./      |r┐ll: : : r―‐┐ : : : : : : : : |
 /.ノ        || .| ||: : : |    |: : : : : : : : : :|_
       _.. -‐|l._| ||: : : |  __|: : : : : : : : : :|: :":'':ー---_-=
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817 :
杉田は敵キャラの声が似合うよね
マジェントとか似合うんじゃないかなあ?

818 :2012/10/28
ここまでグリリバなし
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