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2012年09月なりきりネタ443: 【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!9thシーズン (232)
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【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!9thシーズン
- 1 :2012/04/03 〜 最終レス :2012/10/20
- 統一基準歴355年。
魔法文明は隆盛を極め、あらゆる場所、場面に魔法が活用されていた。
そんな栄華の果てにいつしか異変が起きる。
確認されたのは20年前にもなるだろうか?
ある属性の魔法に異常なまでの適性を示す。
ある魔法を生まれつき能力として有している。
未知なる力に開眼する。
今までは天才と言われて来た種類の子供たちが、続々と生まれ始めたのだ。
このことに世界は大いに恐れ、憂慮した。
なぜならば、本来数十年単位の修行と研究の果てに身につけていく力を僅か数年の学習で身につけてしまうのだ。
あるいは持って生まれてくるのだ。
修行と研究は何も力を得るためだけの時間ではない。
力を振るう為の経験や知識をも身につけるための時間でもあるのだ。
仮に、今は凡人同然であったとしても、何かのきっかけで潜在能力が一気に発現することもある。
大きな力を当たり前のように使える事への危惧は、やがて現実のものとなる。
世界各地で引き起こされる悲劇に、統一魔法評議会は一つの決定をなした。
魔法学園の開設!
魔海域を回遊するとも、海と空の狭間にあるとも言われるフィジル諸島に魔法学園を開校し、子供たちに学ばせるのだ。
己が力を振るう術を。
―――― 【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!9thシーズン ――――
- 2 :
- ■舞台はファンタジー世界。謎多きフィジル諸島にある全寮制の魔法学園です。
フィジル付近は気流や海流が乱れがちなので、島には基本的に、転移装置を使ってくる場合が多いです。
■学園が舞台だからといって参加資格は学生キャラのみではありません。
参加キャラは生徒でも、学園関係者でも、全く無関係な侵入者でも可。敵役大歓迎。
また、舞台が必ずしも学園の敷地内で起きるとは限りません。
いきなり見知らぬ土地に放り出されても泣かないで下さい。 貴方の傍にはいつも名無しさんと仲間がいます。
■当学園には種族制限はありません。お好きな種族と得意分野でどうぞ。
■オリジナルキャラクターでも版権キャラクターでも参加できます。
完走したスレのキャラを使ってもOKですが、過去の因縁は水に流しておきましょう。
また版権キャラの人は、原作を知らなくても支障が無いような説明をお願いします。
■途中参加、一発ネタ、短期ネタ大大大歓迎。
ネタ投下の場合、テンプレは必ずしも埋める必要はありません。
ただしテンプレが無い場合、受け手が設定をでっち上げたり改変したりする可能性があります。ご了承を。
■名無しでのネタ投下も、もちろん大歓迎!
スレに新風を吹き込み、思いもよらぬ展開のきっかけを作るのは貴方のレスかも!
■(重要)
このスレでは、決定リール、後手キャンセル採用しています。
決定リールとは、他コテに対する自分の行動の結果までを、自分の裁量で決定し書けるというものです。
後手キャンセルとは、決定リールで行動を制限されたキャラが、自分のターンの時に
「前の人に指定された自分の未来」を変えることが出来るというシステムです。
例:AがBに殴りかかった。
その行動の結果(Bに命中・ガード・回避など)をAが書く事が可能です。
これを実行すると、話のテンポが早くなるし、大胆な展開が可能となります。
その反面、相手の行動を制限してしまう事にもなるので、後からレスを書く人は、「前の人に指定された行動結果」
つまり決定リールをキャンセル(後手キャンセル)する事が出来ます。
先の例に当てはめると、
AがBに殴りかかった→Bはまともに喰らって受けては吹き飛んだ。
と決定リールで書いてしまっても、受け手(B)が自分の行動の時に、
「Bはまともに喰らったように見えたが紙一重で避けていた」
と書けば、先に書いたレスの決定書き(BはAの拳をまともに受けては吹き飛んだ。)をキャンセル出来るのです。
ただし、操作する人の存在するキャラを、相手の許可無く決定リールで喋らせるのは歓迎されません。要注意です。
※参加に関して不安があったり、何かわからないことがあったら(説明が下手でごめんね)、どうか避難所にお越しください。
相談、質問、雑談何でもOKです。気軽に遊びに来てね。
- 3 :
- 【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!8thシーズン(前スレ)
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1316207939/
TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!7thシーズン
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1302609427/
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!6thシーズン
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1294657842
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!5thシーズン
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1291300916
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!4thシーズン
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1284645469
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!3rdシーズン
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1278699028
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!2ndシーズン
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1273242531
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1270216495
■避難所
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!避難所
http://yy44.kakiko.com/test/read.cgi/figtree/1329748719/
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!避難所 (前スレ。板消滅でデータ消失/wikiにログあり)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/42940/1295181582
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/20066/1270211641
規制の巻き添えで書き込めないときは、上記の避難所か代理投稿スレでレスの代行を依頼してみてください。
代理投稿スレ(なな板TRPGまとめサイト、千夜万夜さん内)
ttp://yy44.kakiko.com/test/read.cgi/figtree/1277996017
■テンプレ
名前・
性別・
年齢・
髪型・
瞳色・
容姿・
備考・
得意技・
好きなもの・
苦手なもの・
うわさ1・
うわさ2・
【備考】
全部埋める必要はありません。
テンプレはあくまでキャラのイメージを掴みやすくしたりするものです。
また使える技や魔法も、物語をより楽しむためのエッセンスです。
余り悩まず、気楽に行きましょう。
(外部参考サイト)
TRPに関する用語の確認はこちらでどうぞ
過去ログやテンプレも見やすく纏めて下さっています
(ボランティア編集人様に感謝!)
なな板TRPG広辞苑
http://www43.atwiki.jp/nanaitatrp/pages/80.html
- 4 :
- 「ざ・ぱんでみっく」
フィジル魔法学園最大の危機!?〜学園の命運は劣等生たちに託された!〜
「成程…わかった、が…少々遅かったな」
分析結果に目を通しながら保険医は肩で息をしながらうなだれた。
もはや椅子から立つ力すら残っていない。
「それ」が生まれたのは三週間ほど前だろう。
しかし「それ」が姿を現したのは二週間前。
流行の風邪と同じような症状で静かに、そして瞬く間に学園に蔓延してしまった。
次々に倒れていく学園関係者たち。
今になって「それ」がなんであるか突き止めたのだが、あまりにも遅すぎた。
「それ」は魔力の高い者ほど早く広く感染し、症状も重い。
「それ」は魔力や気等を有する生命体に感染する為、人、人外、人造、問わず感染する。
「それ」にかかった者は大幅に魔力が衰弱し、能力も減退する。
「それ」に気づいた時には学園教師や上級生たちはもはや起き上がれない程になっていた。
魔力が高いがゆえに。
〜〜親愛なるフィジル魔法学園生徒諸君〜〜
諸君らも身をもって知っているであろう。
今フィジル島に蔓延する奇病。
これは魔界から持ち込まれた未知なるウィルスが人体に入ったことにより突然変異して生まれたものだとわかった。
感染力は凄まじく、魔力が強い者ほど重篤な症状に見舞われる。
故にこの手紙を受け取るものは普段魔力が低かったり、病に侵されても何とか動ける者であろう。
己の力のなさを自覚している者や、ウィルスにより力の減退を感じている者だと思う。
いまフィジル魔法学園でまともに動けるのはこの手紙を受け取った諸君らのみなのだ。
学園は重大な危機に陥っている。
その危機を救う手段は解明された。
この未知なるウィルスの抗体を持つ者がいる。
魔界からの留学生「ササミ・テバサコーチン」の。彼女の生血が必要なのだ。
彼女は現在この学園において唯一万全の存在といえる。
ウィルスに侵された者やウィルスの影響をほとんど受けない者にササミ・テバサコーチンの捕縛は難しいかもしれない。
だがしかし、繰り返し言うが、動けるのは諸君のみなんだ。
学園の命運を握る存在になった気分はどうだろうか?
保険医としてあるまじきことだが、フィジル魔法学園の精神にのっとり言わせてもらおう。
協力し、奮戦せよ!今日の主人公は君たちだ!
各自ササミ・テバサコーチンに説得もしくは捕縛を試みるのもよいだろう。
しかし万全を期したい者は保健室に来たまえ。
部外秘故に出せぬササミ・テバサコーチンに関する資料を用意しておこう。
手紙を書き終えると、保険医は紙を優しく撫でる。
紙は無数に分裂し、それぞれ折れ曲がり、畳み、広がり、様々な動物を模した折り紙となって学園中に散らばっていった。
保険医もウィルスに侵され衰弱しているので、折り紙たちは途中で力尽きるかもしれない。
だが何割かはまだ健在そうな魔力を嗅ぎ当て、その者の元へと届くだろう。
一斉テレパシーや校内放送を使わなかったのは補足対象であるササミに学園の動きを察知されないようにだった。
手紙を受け取ったフィジル魔法学園の生徒たちの奮闘が今ここに始まる!
- 5 :
- 保健室に行けば保険医がベッドで横になっている。
症状が進んだ為か、問いかけても返事はなく、そしてそれに対処するすべもないのも既知のことである。
できる事と言えば、手紙に書かれた通り、ササミの生血を手に入れる事なのだ。
机の上に魔法陣が描かれ、手をかざせば資料が浮かび上がるだろう。
【部外秘】
ササミ・テバサコーチン
体力 A・血中の再生酵素もあり、多少の怪我はダメージにならない。
魔力 A・魔力は高いが、切り札の儀式魔法用に温存する傾向があり、普段は小魔法しか使わない。
持久力C・長時間連続の活動には向かない
攻撃力A-
斬撃 A・超振動ブレードによりなで斬りに特化している。
打撃 D・なで斬りに特化しているため打撃は殆どない
格闘 C・ヒットアンドウェイが基本で格闘能力は低いが足技には注意
守備力C
対物理C・再生酵素を含む血を持っているが、それでも防御力は低い
対魔法C・魔法への抵抗力は低く、特化防御属性はない
機動力A-
飛行能力AA・超高速飛行が可能。旋回能力も高く、守備力の低さを補って有り余る。
地上 C・歩くのには向かない
水中 D・飛び込むことはできるが泳げない
特殊能力
石化ブレス・
石化ブレスを各所の口から吐き出すがその射程距離は息を吹きかけるのと同じ距離であり1Mほど。
有効射程距離に至っては50pほど。
ただし、空気より重いので上空から散布の場合はその限りではない。
また風向きに影響を受ける
怪音波
怪音波を各所の口から発するが、超振動による破砕が可能なレベルではない。
音波を重ね合わせることにより打撃も可能であるが、座標演算が難しいため実践的ではない。
ただし、怪音波による三半規管への攻撃には注意が必要だが、発声と同じく長くは続かない。
また、怪音波を発することによって水晶体である枝分刀を共振させて超振動ブレードとすることができる。
七面体
種族特性として七つの顔を持つ
視力、動体視力は優れており、室内に張り巡らされた糸を躱しての高速飛行をしたとの報告もあり。
各面の視界を共有しており、死角はないものと思われる
七面と手袋操作により七人分の呪文詠唱と魔法動作ができ、多人数による儀式魔法を単独で行使可能。
ただし魔力はあくまでひとり分なので多用はできない模様
多頭類の類に漏れず再生能力が高い。
血に再生酵素が含まれているためだが、傷は回復できても体力や魔力までは回復できない。
戦法
全天視界と高速飛行、枝分刀による多刀流を用いた高速機動剣術は強力といえる。
剣術といっても機動力をかんがみればその間合いはロングレンジと言って差支えがない。
性質
光るものが大好きで、集める習性がある。
磁場の変化に弱く、平衡感覚を失うらしい。
次世代魔王候補生と言われるだけあって、強力な個体といえる。
魔界にて学園創設の動きがあり、学園というものの視察および人間の危機に対する行動の観察を目的としていると思われる。
- 6 :
- 興味を持ってくださった方へ。
学園校舎内に手袋がばら撒かれており、その指先でササミのいる方向を知ることができます。
現在参加している方も、この先乱入する方も折り紙と手袋拾えば即参戦可能です。
ただし、参加する方は全員ウィルスに感染していることになります。
能力に比例して体調も悪くなります。
思い通りにならない不自由さを、学園の仲間とともに心行くまで楽しんでいただけたら幸いです。
テンプレは以上です。
では、よき学園生活を!
- 7 :
- 混濁した意識のルナはトイレ内でグレンを見かけたような気もしたけれど
そんなことをするようなR少年ではないと信じ、見間違いと思って廊下に出る。
扉を開けるとぐにゃっと世界が回っているような気持ちがした。
「ふぇ…ふらふらする……」
廊下の状況はよくわからなかったけど目の前には紙くずのように四散しているフリードの作った罠の籠。
それと魔法武士のエンドウユウキ。やはりリリィの姿はなくペンギンがいるだけ。
もちろんササミもいる。トモエと何かを話している。
目をしぱしぱし凝らして見ると、手袋の指し示す方向にだけ集中し過ぎて前方不注意のプリメもいるようだ。
「セラはどこだよ〜?あいつは回復魔法が使えるんだろ?
オレのふらふらを治しやがれぇ…こんちくしょ〜。う、うっぷ…」
酔っ払いのようにふらふらと千鳥足のルナ。
ちなみに周りに人が大勢いると舐められないように乱暴な言葉遣いになる。
ゆらりと立ち尽くしたルナは、虚ろな視線でササミを射抜く。
兎にも角にも七個も顔があればどれかとは目が合うだろう。
「てめぇこんにゃろー、さっき無視してトイレから出ていかなかったかぁ?
感染源女のくせにでけーR、じゃなくて顔しやがってさ!みんなを病気持ちにもしちゃってホントに邪魔なやつ。
おめーがいなかったらこんなことにはならなかったんだぜっ!わかってんのかよーっ!?」
叫び終わったルナは頭に血が昇り過ぎたせいかフラつき倒れそうになる。
でもビジュアル系なので人前で無様に倒れることを良しとしない。
ペンギンの頭を支えにしたりフリードの大切な部分を手摺りの代わりにしたりと
吉本新喜劇のおじいちゃんみたいにあっちへふらふらこっちへふらふらしつつ耐えた。
先程のササミの怪音波は、ルナの三半規管やら脳的なものをダメにしてしまっていたらしい。
そして体の制御を失ったルナは、足をもつらせながらササミへむかって転がるように倒れこむ。
- 8 :
- 前スレ>228-250
>尖塔まで来ていたクリスは急降下してくる熱源に気付いただろう。(略)
上から、何かが来る。猛烈な勢いで、凶暴な風を伴って。
「……ハハッ」
乾いた笑いを漏らしたのも束の間、暴風とも呼べるそれに
元々華奢な上拒食症に陥っていてすっかり鶏がらに逆戻りしたクリスは
ほんのわずかな抵抗も出来ず吹き飛ばされてしまう。
結果、左肩を強打し脱臼。応急処置と称して外れた肩を壁に打ちつけ
無理やり骨を嵌め直したのだった。本来は右手で左腕を押さえてやる行動、
支えもなく行えば必然歪みが生じる。きちんと嵌ってないせいか、腕全体が痺れている。
「一応、動く。万々歳じゃないか」
>「これって、もしかして…ササミの場所を指し示してるんじゃ?あ!ごめんなさい!」
崩れた屋根板を避け、降り立った先には先程保健室にいた……誰かがいた。
熱で存在を認識できるクリスだったが、それは大雑把であり瞬時に個人を特定できる物ではない。
……片割れが近くで何かを拾ったかと思えば、気付いた時には鼻を塞がれていた。
塞いだ張本人は平謝りしながら去っていき、残されたクリスはと言えば……
「……クック…鈍った、な。あの程度にも反応できない。
役立たずの、ゴミクズだな」
強烈な自嘲を吐出し、後を追う。傍にいたプリメは、本人だと気付かぬまま。
>「フィジルのみんな!ササミ・テバサコーチンだてよぉ。(略)
ルナの後を、残熱を頼りに追っていると今回のターゲットであるササミからのメッセージが響く。
それを聞いたクリスは……肩を震わせ、声もなく笑う。
「……鶏肉の化け物が、何を偉そうに。
まったく、どうにも鳥の化生と言うのには碌なのがいないらしい……クハハ」
罵倒にも取れる呟きは、やはり自嘲へと帰結する。
精神状態が不安定と言うレベルを超えているとしか思えない。
もしかしたら、りりぃの考えるとおり……またしても『何かに憑かれた』のかも知れない。
>「女子便所だと……」
>「ぼ、僕男の子だよ!女子トイレなんて入れないよ!
着いた先は女子トイレ、そしてその前に立ち尽くすのは……声から判断するに
炎道勇気とフリード。れっきとした男子(?)であるこの二人には、女子トイレと言う場所は
踏み込みがたい禁域なのだろう。そんな二人を確認したクリスは、あろう事か挑発をかます。
「クク、一体何をしているのやら……
誇りだとかなんだとか、命と引き換えにするような物なのかね……
私にはわからんよ、そんな物を後生大事に抱えて首を落とされるのを待つなどと。
……そんな物に拘って、本当に大事な物を失う。阿呆だな」
クリスは三週間、一度たりとも部屋からでなかったし炎道が訪ねる事も無かった。
編入初日に出会った、どこかぼけた少女のあまりの変貌、炎道は何かを思うのかそれとも?
>「どいつもこいつもこんな手しか思い浮かばせえへんのきゃ!出てきて捕まえてみやーせ!」
>「正面から行かせてもらうわ。それしか能がないもの。」
女子トイレでの一悶着は、トイレ前に場を移した様である。
つまらない手練手管におかんむりのササミ、それを見つけて正面から挑むトモエ。
……クリスは瞬間的に、『魔術』で、自分の、姿を、匂いを、音を消し、自らの経験で気配を消した。
瞑った瞼の奥に目は無いが、あればそこには獲物を狙う獣の光が宿っていただろう。
(「なら私は背中からだ……まぁ、当たりはしないだろうがな」)
クリスの左手には、錆びた短剣が握られている。
握力が弱まっているとは言え、数年来の付き合いだ。嫌でも手に馴染む。
そのままササミの背後から『心臓』を狙う……ありきたりな殺気を、わざと乗せて。
- 9 :
- 「頭痛……」
朝。 シャオロンは自室として与えられた部屋で、いつものように目を覚ました。
シャオロンがこの学園に無理やり転入させられてから、およそ3週間。
そろそろ学園の状況にも慣れてきた頃だ。
最初はどんな田舎だと馬鹿にしていた学園も、慣れてみればなかなか悪くは無い。
住めば都とはよく言ったものである。
ただ、今朝の目覚めは、シャオロンが学園に来てから一番最悪の目覚めだ。
理由は彼女の独白にあった、頭痛と倦怠感。
額に手を当ててみるに、熱もありそうだ。
思い当たるのは、最近学内に流行っている奇妙な風邪のこと。
風邪にかかるのは普段の鍛錬が足りないからだと豪語していたシャオロンには、別の意味で頭の痛い状況といえよう。
「風邪…? 私としたことが不覚な……
まあ、あれよね……弘法にも筆の誤りってやつよね…」
自分に都合の良い言葉を口にしながら起き上がったシャオロンは、ゴーレムを操って着替えと水を手元に持ってこようとする。
彼女のゴーレムは自立型ではないので操作はしなければならないが、面倒な作業を省けるのはありがたかった。
……ゴーレムが正常に作動していればの話だが。
部屋の中にいた手足の生えた雪だるまのようなゴーレムは、普段の3倍の遅さでぎこちなくシャオロンの操作に従った。
どう考えても自分で動いた方が速いスピードだ。
シャオロンは起き上がってゴーレムの手から服を奪い取ると、その丸い胴体に回し蹴りを叩き込んだ。
吹き飛んだゴーレムは壁に激突してあっけなく潰れ、土塊に戻った。
「私の指示にちゃんと従えないなんて、やっぱり急ごしらえの粗雑品じゃダメね。
今度からは家事用のゴーレムも手抜きしないで作る事にしないと」
腰に手を当ててそう言い放ってから、シャオロンはシャワーを浴びるために浴室に向かった。
頭をすっきりさせれば風邪も治るかもと考えたのだ。
「あ〜……やっぱりダメだわこれは……」
結局、シャワーを浴びて頭はすっきりしたが、頭痛は収まりはしなかった。
当たり前である。
恥を忍んで今日は寝ていようと心に決めたとき、シャオロンは、浴室に入る前には無かった物がゴーレムの残骸の上に乗っているのを見つけた。
それは、保険医が最後の力で放った手紙だった。
- 10 :
- 無言のままにシャオロンは手紙を読み、終えると同時に、ぐしゃりと手紙を握りつぶす。
「……そう、これはあいつの持ち込んだ病気ってわけね……」
あいつ。とは言わずと知れたササミの事。
偶然とはいえ、ササミはシャオロンと同時期の転入生だ。
親しく会話した事はなくとも、顔や名前は知っている。
当然、ササミが魔界出身であることも。
「前から怪しい奴だとは思っていたけど、ついに本性表して侵略を開始したってとこね。
そうはいかないわよ。
私より先に世界征服なんて……ゆ る さ ん!」
身勝手な怒りに燃えながら部屋を出ようとしたシャオロンは、別の可能性を思いついて足を止めた。
これがササミの侵略ではなく、教師たちの仕組んだ試験かなにかである可能性だ。
あるいは手紙に書かれている事は真実で、なおかつササミに侵略の意図がないのなら……?
あれこれ考えてはみたが、とにかく情報が足りない。
となると、最初に保健室に向かうべきだとシャオロンは結論を出す。
「トラコウ! アクライ!」
出かける時にゴーレムを用意するのは、ゴーレムマスターの基本だ。
呼びかけに応じて動き出したスライム型のトラコウを鷲掴みにして窓を開けたシャオロンの前に、竜型のアクライが頭をもたげてくる。
大きすぎて寮に入らないアクライは普段は寮の外にいるので、上に乗って外出するときは実に便利なのだ。
スライム型のトラコウは肩に張り付けて落ちないように固定して。
お気に入りの竜型ゴーレムの頭の上に乗り移ったシャオロンは、アクライを操って保健室に移動を開始した。
- 11 :
- ササミの宣戦布告を聞いたのは、ふよふよという擬音が聞こえてきそうな速度で保健室に向けて飛行中の時。
なかなか痛烈な皮肉入りではあるが、ほいほい釣られるほどお間抜けではない。
罵声で相手を怒らせるなど中つ国では初歩の初歩の戦術である。
「吠えてなさい吠えてなさい。 すぐにそんな事言ってられないようになるから」
涼しい顔で挑発を受け流して保健室にたどり着くと、シャオロンは窓をアクライの頭で突き破って室内に入った。
いちいち入り口から入るのが面倒だったのだ。
周囲を見回して保険医以外に誰もいない事を確認し、シャオロンは机の上の魔法陣から情報を引き出す。
展開される詳細かつ貴重な情報を見ながら、シャオロンはしばし考え込んだ。
まともに相対しては撃破は難しいだろうが、ササミが本当にゲーム感覚でいるなら……?
シャオロンは、保険医が仮病ではないことを確認するために保険医を(文字通り)叩き起こそうとした。
重症で寝込んでいる保険医にはいい迷惑である。
「ふん……ササミの奴魔王候補なんて言われてるけど、鳥なき里のコウモリなんじゃないの?」
保険医が本当に動けないのを確認したシャオロンはササミに対する失礼な感想を述べ、安全を確認してから保険室を出る。
今度は校舎内を移動して職員室に向かうつもりなのだ。
保健室に頭を突っ込んだまま動かなかったアクライも、主人の意向を受けて職員室方向への移動し始めた。
もちろんこちらは校舎の外を。だ。
- 12 :
- 前>244-250>8-11
>「にゃ〜って。女子トイレに入ってくるような男にはこれだぎゃ!」
『うぎゃぁーフリードリッヒィ!!』(猫語)
古代象男の回転牙を食らった戦争男のような断末魔をあげるグレン
説明しよう耳が四つもあるグレンは
耳を抑えて怪音波を回避するということができないのだ!
すなわちまるごとダメージを食らうのである
「グレンの魔圧が・・・・消えた!?」
『ちょっと死んだみたいなこと言わないでよ!!』(猫語)
どうやらなんとか生還したらしいグレン
「おかえりなさい、どうやらひどい目にあったみたいですね
だから女装しろって言ったのに」
『男としてのプライドが許せなかったんだ』(猫語)
「恥や外聞でご飯は食べれないでしょうに」
貴族として言ってはいけないことを平気で言うフリードリッヒ
こいつ本当に貴族なんだろうか?
>「なめとんのきゃーー!」
何故かまんまと鳥の罠に引っ掛かるササミ
「う〜んせめて鉄の鍋にしたほうが良かったですかねぇ?」
だがそれだと概念的なものが弱まり引っ掛かりもしなかっただろう
>「どいつもこいつもこんな手しか思い浮かばせえへんのきゃ!出てきて捕まえてみやーせ!」
「だが断ります!正面からぶつかるなんて事は戦士にでも任せておけばいいんです
だって僕らは魔法使いなんですからね、戦士の仕事をとっちゃいけません」
だがここは魔法学園である・・・・すなわち戦士なんて居ない
>「正面から行かせてもらうわ。それしか能がないもの。」
そして魔法使いなのに真正面から突っ込んでいくトモエ
「ちょっと今みんな弱体化してるってこと忘れてるんじゃないですかやだぁ!?」
普通に考えて勝てるわけ無いのだが・・・・さて?
>フリードの大切な部分を手摺りの代わりにしたりと
「ちょっと何処触ってるんですか!R!R!R!!」
『え?何で?』(猫語)
とさわさわと同じ所を触るグレン
「あなたまで触らないでくださいよ」
『何がどういけないのかさっぱりわからないよ』(猫語)
やはり猫と人とは感性が違うようだ
後ろからササミを狙うクリス
「確かササミさんって顔がいっぱいあったような・・・・・・」
はたして死角なんて存在するのだろうか?
「一応怪我を直してもらった恩がありますから
タバスコの霧で全部の目をっていう手はあまりにもあれですよね・・・・・・」
グレンは耳が増えたから防御しきれなかったのだ
ササミもあれだけ目があるのだから何処か一箇所はダメージを受けるだろう
だがそれは想像するだけでも痛すぎる
故にフリードはその手を封印した
『あのでっかい肉の塊の下とかどうよ?』(猫語)
猫であるグレンにとっては巨Rなぞ単なる肉の塊に過ぎないようだ
胸の下とかどうやって潜り込めというのだろうか?
「小さいことは便利ですからね
今一番小さいリリィペンギンさんならもしかして?」
はたして貧Rは巨Rを凌駕できるか?それが勝利への鍵である
- 13 :
- 前スレ>246-250 >7-8 >111-12
ササミ曰く、彼女は魔界から来たスパイスらしい。
(退屈な日常生活にちょっとした潤いとアクセントを、という意味・・・かなぁ?)
ちょっと言葉の齟齬があったようだ。
まあササミは魔界の住人だ。
今回の騒動を通じて、人間というものがどういう行動をするか観察したいという気持ちもわからなくもない。
もし捕まえられなかったらどうなるのか?と聞こうとして、止めた。変にその後のことについて考えられても困るからだ。
今のところ、ササミの目的は観察だ。つまり、対象者が全員息絶えては意味がなくなる。
つまり、ササミは、どんな形であれ血液を渡す気はある、ということだ。
変に意識させたり気持ちを拗らせたりするよりは、今のままそっとしておくほうがいいだろう。
また、リリィを抱っこしているササミは両手がふさがることになる。
リリィは意識していなかったが、これは、ある意味ハンデと言えるだろう。
(それにしても、ササミちゃんって饒舌だったのね。それとも、同じ鳥のよしみってことなのかな?)
まさか母性補正までかかってるとは、夢にも思わないリリィだっただった。
ササミはルナのヒカリモノトラップに引っかかって、ふらふらと女子トイレへ。
その後は、まるで目まぐるしい舞台劇のようだった。
ルナが何もないところから現れたり、ササミがよろけたら今起きたことを全部忘れたり。
突如グレンが女子トイレに入って来て、ばったり倒れたり。
「ピー!!(グレン、いったいどうしたのー!!)」
耳を押さえられているリリィは、何があったかさっぱりわからなかった。
「ピピイ!(訳:とりあえず、ルミちゃんじゃなくてルナちゃんなんだからね?)」
かなりずれた事を話すリリィは、空気が読めないペンギンだった。
「ピー!」
トイレから出たリリィは歓喜した。
なんと彼女の目の前には、おいしそうなご馳走が待っていたのだ!
「わーいわーい!ご飯だごはんだぁ!」
リリィはササミの腕をすり抜け飛び降りると、わーいわーいと大喜びで皿に飛びついた。
食べ物に夢中になっているリリィは、周りが全く見えていなかった。
「ピギッ?!」
ルナに押し付けられ、皿に顔を突っ込むリリィ。
その直後、ひょいとササミの小脇に抱えられる。
(ちなみに、今回も捕獲したのではなく捕獲されたため、鬼ごっことしてはノーカウントである。)
そう遠くない場所で、何かが破壊されたような音と振動(>11)がしたが、今はそれどころではなかった。
「待たせたわね、ササミさん。」
ササミがその声のする方へ視線を向ければ、ふらふらとした足取りで階段を降りてきた無表情の少女、
トモエ・ユミと視線が合うだろう。
『あ、ほらほらトモエ!笑うんだろう?』
「ピイイイイイイイイ!!!!」
ぶわっ!とリリィの羽毛が逆立った。
真正面から迫るトモエ、よろけて突っ込んでいくルナ、そして背後から近づくクリス。
エンドウとフリード、セラと、別行動のシャオロンははたしてどう動くのか?
興味は尽きない。
一方のリリィといえば。
「ピー・・・・・(訳:め、目が回るー!!)」
食べた直後に上へ下へと激しくシェイクされることになり、目をぐるぐる回していた。
フリードに何か考えがあるようだが、死角を狙うなら、まずペンギンリリィに何をするか指示する必要があるだろう。
- 14 :
- 炎道勇気に女子便所を覗く趣味はなかった。
いや、覗く趣味があっても困るんだけど……
>「あ、炎道さんこんにちはってここは・・・・・」
「よう、フリード。ササミはおそらくこんなかだ、ってどうやらそんなことはわかってるみたいだな」
なぜか冷静さを装っている勇気くん、カッコ付けたがりなんでしょう
女子トイレの前でカッコつけても意味は無いですが、むしろかっこ悪い
とまあ、なんやかんや小芝居があって女子トイレに突入するグレン
どうやら中にササミはいたようです
>「きっと理性では抗っても本能には逆らえないはずです」
その間にフリードが用意したのは罠
野鳥を捕まえるのに誰でも作れるかごの罠である
「いや、さすがにそれは引っかからないだろ
むしろ罠にかかったほうが嫌な気持ちになるぜ」
>「なめとんのきゃーー!」
「ほらみろ!怒らしただけじゃねーか」
>「クク、一体何をしているのやら……
「うぼぉ!クリスどうしたんだ、そんな思春期特有の病気にかかったみたいな口調は!お前にはまだ早いんじゃねぇか?
それにしてもひっさしぶりだな〜元気だったか?いや〜変な病気がかかってれるけど、このササミの鳥野郎のせいだな!!」
などと勘違いも甚だしいことを言っております
一瞬引っかかったかもと思った自分が恥ずかしくなった勇気くんでした
>「待たせたわね、ササミさん。」
「誰だてめぇ!……え、おばさん?」
二十代後半の女性はもはやおばさんに見えるのです!!
>「ふぇ…ふらふらする……」
「おいおい、大丈夫かルナ
あんまりむりすんなよ。この総代!総代である俺!炎道勇気様が来たからにはササミなんてチョチョイのちょいでやっつけてやるぜ!」
大事なことなので2回言いました。ちょっちょいのちょいでやられないことを祈るばかりです
>「だが断ります!正面からぶつかるなんて事は戦士にでも任せておけばいいんです
だって僕らは魔法使いなんですからね、戦士の仕事をとっちゃいけません」
「なら俺!魔法武士の俺が相手だ!なぜか魔力は使えないけどな!そんなこと武士には微塵も関係ないぜ!
俺の愛刀のサビにしてやるぜ!!」
勇気は刀を抜いてササミに上段から斬りかかる。特になんの考えもなく
(クリスが後ろから斬りかかってることには気づいてません)
- 15 :
- 前スレ>247-249
>「危ないわ。」
あまりの危なかっしさからか、トモエが見るに見かねてプリメの肩を抱き寄せる。
当人のプリメも思わぬ行動にビクっと体を強ばらせるが、決して不快そうではない。
いや、むしろどことなく嬉しそうですらある。トモエの気遣いが嬉しかったのだろうか。
そうして手袋の指さすままにトモエに支えられながら歩いていくと、
あっけないほど簡単にササミを発見することができた。
どうやらすでに結構な人が集まっているようで、保健室で見かけた少年達や途中で合流したと思われる男子生徒の姿もある。
>「どいつもこいつもこんな手しか思い浮かばせえへんのきゃ!出てきて捕まえてみやーせ!」
そう吼えるササミの手には水晶でできたシミター、更に周囲に浮かぶ手袋もまた同じように刃を携えている。
それらは周りを警戒するように周囲を回っており、その姿を見た瞬間、恐怖からかプリメは後ずさりする。
先ほどは調子のいいことを言って見せたが、いざ面と向かってみると、やはりどことなく恐ろしい雰囲気が漂っている。
>「待たせたわね、ササミさん。」
しかしトモエは気圧されることもなく、威圧することもなく、
いつもどおりの無表情と平常心を保っているようだ。
暑苦しい赤毛の男子生徒からおばさん呼ばわりされても、その顔は一切歪まない。
というより、言われ慣れているのだろうか?
>『あ、ほらほらトモエ!笑うんだろう?』
「お、おいトモエ……その笑い方なんか気持ち悪いぞ……」
それどころかプリメでさえも思わず引くような。不気味な笑みを浮かべる。
トモエの少しばかし何かが欠落したような雰囲気にプリメは違和感と不安を感じた。
>7-9>14
そうしていると、トモエを始めとして一斉が動き始める。
意を決したのか真正面から突進するトモエ、先ほどの少女はちどれ足でササミへと倒れこみ
更に暑苦しく芝居がかった口上を述べながら男子生徒は刀を抜いてササミへと切りかかる。
このままでは乱戦は必須、最悪味方同士でぶつかり合うことすら考えられる。
「よ、よしお前たち!やってしまえーっ!あ、あとトモエは無茶するなよ!」
最もこれだけの数がいれば何とかなると思ったのか、プリメは懲りずにササミを指さし高らかに宣言する。
このまま他力本願のまま傍観を決め込もうとしたプリメだったが、予想外の出来事が起こる。
指さした手が本人の意思とは関係なく暴れ始めたのだ。
「ひぃっ!な、なんなのこれぇ〜!?」
いきなりのことにプリメは錯乱し、暴れている方の手を押さえつけようとしている。
だがよく見ると手ではなく、異常な動きを見せているのは手袋のほうだ。
何かが作用したのか、手袋は主人であるササミの元へと戻ろうとしているようだ。
「だ、だれかこれなんとかしてぇっ!!」
プリメの懇願は聞き届けられず、手袋の力は増すばかりで、足を踏ん張っても耐えられないほどになる。
そしてとうとう手袋はプリメごと、とんでもない勢いでササミ達の方角へと飛んでいく。
「いやぁぁぁぁぁッ!!」
このままではササミに正面衝突してしまう。
そうでなくても誰かに思い切りパンチを食らわせてしまうのは必然かもしれない。
- 16 :
- 目的地に到着したシャオロンは、道中拾ったササミの手袋を手に職員室の中に入った。
手袋を踏んだり蹴ったりしたり結果と騒ぎの音を照らし合わせたりした結果、手袋の効果は把握済みである。
「こんなものばらまいて自分の居場所を教えて回ってるなんて、あれね。
ササミの奴本当にゲーム気分なのね。
そんなので魔王候補なんて、魔界もずいぶんおめでたい奴らが揃ってるものだわ。
……ま、その方がこっちも都合が良いんだけど」
体調が悪くとも機嫌は良くなってきたシャオロンは、教員用の机の上に目当ての物を見つけて、それを持ち上げる。
“それ”は、広域連絡用の魔道具だった。
魔道具が正常に動くことを確かめたシャオロンは、外にいるアクライに校舎を飛び越えて反対側に回るよう指示を出す。
アクライの移動用に少し間を置いてから、シャオロンは魔道具を作動させて校舎中に聞こえる演説を始めた。
「ササミ・テバサコーチン討伐隊の諸君。 討伐隊隊長シャオロン様から連絡よ。
まずは降伏勧告から。 ササミは私の声を聞いているなら、つべこべ言わずにさっさと血をありったけ差し出す事。
従わない場合、学園への反逆行為とみなして討伐隊員による一層の武力行使を行うからそのつもりでいなさい。
それからササミと交戦していない隊員は、速やかに校舎内を職員室側に移動するように。
……ササミと一緒に丸焼きになりたくなかったらね!」
短い演説終了の合図の代わりに、校舎内に大きな音が響いた。
職員室から反対側に回り込んだアクライが、尻尾で校舎の壁を強く叩いたのだ。
もちろんこれは挨拶代わりで、本命の行動はこの後のものである。
尻尾の一撃の後校舎から少し離れたアクライは、校舎に向けて炎を吐きかけ始める。
校舎は頑丈に出来ているが、窓が壊れたり開いている場所には校舎内にも炎が入り込む。
可燃性の物があれば燃え上がるだろうし、壁が火に炙られた場所の温度も急上昇するだろう。
学園に放火しているのと大差ない無茶であるが、シャオロンからすればこれも敵の行動範囲を狭める作戦のうち。
悪いのは病気の原因のササミであって、シャオロンではないのだ。
「ま、これだけやってれば誰か釣れるでしょ」
教員の机の上に魔道具と手袋をぽいと放り投げ、シャオロンは窓にもたれて誰かが来るのを待つことにした。
病気のために歩き回って探すのが大変なら、あちらから来るように仕向ければ良いという考えだ。
ちなみに誰も来なかったら、アクライに火炎放射の場所を広げさせる予定である。
腕組みするシャオロンの肩の上で、スライム状のトラコウが、龍に花にと次々と形を変えていた。
- 17 :
- >「待たせたわね、ササミさん。」
「きやーしたかね、魔法R!」
籠の残骸が散らばるその中心に立つササミの前に現れたのはトモエだった。
無表情の顔を無理矢理笑ったように作るのはリリペンギンの悲鳴を上げさせるのに十分なものだった。
が、ササミはそれ以外のものに意識が向かう。
それはトモエの魔力。
尖塔であった時は衰弱していたはずなのだが、どうやったか今はかなり回復している。
「…魔力が回復しとりゃあすけど、どうしたーね?」
注意深く観察しながらトモエの肩越しのプリメに視線を巡らせにたりと笑った。
その時トイレの扉が開き、ルナが千鳥足で出てきて文句をつける。
>「ピピイ!(訳:とりあえず、ルミちゃんじゃなくてルナちゃんなんだからね?)」
「あ、あー、思い出した!」
リリペンギンに言われて思い出したのはルナの名前だけではない。
トイレで天井から突然落ちてきて気づいた時には消えていた事。
そしてそれ以前に、遺跡でのルナの特徴を思い出したのだ。
天性の隠密体質(影が薄いだけ)それも自分の視界からいや、認識から外れるほどの。
一度は脅威と認識し、殺害まで考えた事を。
「ひゃっひゃっひゃ!因果を突き詰めて吼えりゃーすな。
今ある現状にケリつけてみやーせ。できるんならやけど!」
挑発するように応えたのは自分の認識からルナが外れないようにだ。
数人に囲まれた現状であっても最大の脅威はルナなのだから。
いくら目に映っていても認識できないのなら見えていないのも同然なのだから。
ようやく自分の思った展開となり、ペースを取り戻したかのように見えたが実はまだ取り戻せていなかった。
フリードの籠の罠とルナという存在がいつもの注意力と観察力を低下させていたのだ。
その証拠に、散らばった籠の破片が不自然に潰れ、その位置が近づいてきているのに気付いていない。
>俺の愛刀のサビにしてやるぜ!!」
勇気の啖呵と共に全員が一斉に動く。
トモエが正面から突進し、ルナが千鳥足で近づく。
勇気は上段から切りかかる。
それらに対してササミは的確に戦術を立て、迅く、的確に行動に出た。
ただし、姿と音と匂いと気配を消したクリスの存在に気付かぬままに。
それに気づいたのはササミの第一手、枝分刀を持った三つの手袋が勇気に殺到してからだった。
白々と見える殺気に足元で潰れる籠の破片。
不可視の何かが攻撃を向けているのがわかった時には既に手遅れだった。
が、それを救ったのは勇気だった。
何も考えず踏み込んだ勇気の足が姿を消したクリスの背中に躓き、殺気は霧散する。
それと共にササミの背中は錆びたナイフの振るった波動を感じた。
「あっぶ!」
思わず口をつく言葉と共にササミは急上昇した。
タイミング的には完全にナイフを突き立てられていたのだが、連携の拙さに救われた格好だ。
勇気に殺到していた三本の枝分刀は本来その動きを止めるだけのつもりだったが、状況が変わった。
クリスに躓き体勢の崩れた勇気を押込め後退させる。
めまぐるしくしかも同時に三方から放たれる斬撃を捌くのは至難の技だろう。
急上昇することで転がるように倒れこむルナを躱す。
トモエからすれば急な上昇に消えたように感じるかもしれない。
たとえその動きを察知できたとしても、この動きについてくることはない。
なぜならば、その背を強く押されるのだから。
プリメが手袋を嵌めているのをいいことに、背後からの伏兵として利用したのだ。
>「だ、だれかこれなんとかしてぇっ!!」「いやぁぁぁぁぁッ!!」
悲痛な叫びが届くころにはその手はトモエの背中を押して、倒れこんでいるルナの上にくんずほぐれつ仲良く倒れこむことになった。
- 18 :
- そして直上から降り注ぐ石化ガス。
ルナ、トモエ、プリメが折り重なる中、その更に下にガスが避けていく透明なスペース。
すなわち透明になったクリスが浮かびあたったのだった。
「あひゃひゃひゃひゃ!やっぱり本命がいやーしたかね!
おしーけど連携がなっとりゃせんがね!」
正面のトモエ、派手な動きで注意をそらすルナ、背後からの勇気は全てお取りで本命は姿を消したクリス。
その前のフリードの罠も含め一連の作戦は評価に値すると思ったが、タイミングの取り方が悪かった。
今回の包囲をササミはそう分析評価し、自分の目的である観察を遂行していく。
「ガスの濃度は薄めてあるけど、あんまりゆっくりしとると服が石になるだぎゃーよ。気をつけんせえ」
面白そうにそう告げると天井付近から勇気に向かい飛び去っていく。
四人が折り重なるように倒れているので起き上がるのも手間がかかるだろう。
濃度が薄めてあるので体が石になることはないだろうが、服は別だ。
服が石になれば布の柔軟性は失われ、またその薄さ故に石の頑強さもないも同然。
つまるところ、速く石化ガス圏内から出ないと、動くだけで【服】は粉々に砕け散ってしまうという事だ。
そんな姿を想像しながら三本の枝分刀に牽制されている勇気の隣を猛スピードで抜き去った。
抜き去る瞬間、四本の刃が超振動の切れ味をもって勇気を襲う。
が、その斬撃を受ければ勇気ならばわかるだろう。
殺気が込められていない、いやそれ以前に、面白半分にあしらわれているだけだ、と。
その証拠に避け切れなかった刃もその身を斬ることなくあえて服だけを切っているのだから。
すれ違う瞬間、ササミの左手の甲に着いた顔と視線がぶつかる。
凝縮され間延びした時間間隔の中、確かに聞くだろう。
「顔や肩書はかっこいいのに、ガッカリだがね」
すれ違うほんの一瞬ではあるが、確かに聞こえたはずだ。
そのあとに続くつまらなさそうなため息までも!
勇気の脇をすり抜けた後、フリードの横も通り過ぎてから一旦止まった。
背中に着いた顔がフリードに声をかける。
「ボクは捕まえようとしないの?君にならおねーさん捕まえられてもいいかもしれないんだけどなー?」
セリフが終わるか終らないかですでにササミの姿は遠く離れていた。
廊下の突き当りまで一気に飛び、振り返る。
「結果だけ見れば間抜けやけど、中々やりゃーすがね!
正直なめとったし、もう少し難易度アップするでねー!」
よく通る声で正面玄関トイレ前の面々に叫ぶと、一旦リリペンギンを降ろす。
スカートを構成していた手袋が次々と分離し複雑な印を結んでいく。
七つの顔が異なる旋律の呪文を唱え一つの儀式魔法を完成させた!
ササミは煙に包まれる。
その煙が晴れた時、二人のササミが浮いていた。
「「さあ、どっちが本物やと思うー?あひゃひゃひゃひゃひゃ!」」
ササミの執り行った儀式魔法は【複製魔法】
己の体を複製し、二つに分けたのだ。
ただの複製ではなく、見分けるのは至難の業、少なくとも今動ける者たちに判別する術はない。
ササミが二人に分かれたところで校内にシャオロンの声が響き渡る。
挑発的な物言いに二人のササミは全く同じような笑みを浮かべる。
シャオロンの言葉を証明するように大きな音と共に衝撃が走る。
「あはっ!つまり職員室に来いってことかね!面白いがねー!」
ササミA(便宜上)はふわりと浮きあがると、職員室の方向へと飛んでいく。
「ほしたらこっちはアリーナ席のおやつの魚でも取りにいこまい」
ササミB(便宜上)は食堂に向かって飛んでいく。
別方向へ向かう二人のササミ。
手袋は人差し指が食堂方面に、中指が職員室方面を指すのだが、手袋をハメたプリメは大丈夫だろうか?
- 19 :
- ササミA【職員室】
廊下を滑るように職員室に進むササミ。
校舎から出られないので移動速度が速くとも時間はかかる。
正面玄関から中庭を突っ切り職員室に向かえばササミと到着時間は変わらないかもしれない。
職員室の扉に幾本かの閃光が走った直後、扉は細切れになって落ちる。
その向こう側に佇むのは枝分刀を両手に持ち、更に手袋が四つ同じく枝分刀を持ち浮遊していた。
お蔭でスカートは股下から数えた方が早いくらい短くなっているが気にした様子はない。
「シャオロン、あんたも意外と回りくどい子やねえ。
あがーな大がかりな事せんでもやり合いたいならきたったに!」
不敵な笑みを浮かべながら職員室へと入っていった。
好戦的なオーラが噴出し、周囲が歪んで見えるほどに。
ササミB【食堂】
食堂へ向かう途中、窓の外に巨大な龍が見える。
放たれる炎にササミの顔は歓喜に満ちる。
校舎から出ないという条件がある以上、校舎ごと燃やす。
実に合理的な考えだ。
こういった手段に出るシャオロンを少なからず気に入ってしまう。
校舎に浴びせかけられる炎は開いた窓から侵入し、廊下を嘗め尽くす。
リリペンギンを大事そうに抱え、炎の中旋回し風で散らしながら進むのだ。
いつまでも耐えられるものでもないが、炎もいつまでも続かない。
なぜならば、ウィルスによって魔力や能力が減退するのは命ある者のみ。
それが負の者であっても偽りの者であってもだが、命無き無機の物には影響がない。
すなわち、学園の防御機構は健在なのだから。
炎を浴びせかけられた校舎から突風が吹き荒れ炎を吹き飛ばす。
また、各所に備え付けられた無数の魔導砲が攻撃者であるアクライに向かい一斉掃射される。
ガーディアンゴーレムもすぐに現れるだろう。
一方廊下では天井に等間隔に備え付けられた消火装置が雨のように水を降らしていた。
炎の勢いは瞬く間に弱まり、間もなくして消えるだろう。
だがそれはいいことばかりではない。
ササミにとって、いや、飛行にとって雨は障害以外何物でもない。
更に大量にフル水滴に視界は遮られ、石化ガスは叩き落され流され、怪音波もほとんど効果を出せないだろう。
かなり不利な条件となっているのだがササミの関心事はそこにはない。
「ペンギンは水浴び好きやろー?気持ちえーかね?
さ、もう食堂やし、お魚たべーや。」
降り注ぐ水滴を垂らしたがら食堂へと入った。
【まとめ】
職員室:ドアを切り刻んでササミ登場。中庭を抜ければ正面玄関からショートカット可能
食堂:食堂から廊下一体消火用の水が降り注ぐ。校舎外では学園防衛システムとアクライの怪獣バトル?
- 20 :
- >13-19
>「ピー・・・・・(訳:め、目が回るー!!)」
「ダメだ!使いものにならない!?」
『小さいからだで死角を突いてもらおうにもこれじゃあね』(猫語)
>「なら俺!魔法武士の俺が相手だ!なぜか魔力は使えないけどな!そんなこと武士には微塵も関係ないぜ!
俺の愛刀のサビにしてやるぜ!!」
「う〜んせめて僕も本物の剣を持ってくれば・・・・・・」
フリードリッヒの剣は剣ではなく柄だけのサーベルに魔法で生やす氷の刃
今生み出したとしてもペーパーナイフ程度の大きさでしか生成できないだろう
『そもそも今の体力でまともに使えるの?』(猫語)
「ライトレイピアまでならなんとか・・・・・」
>「いやぁぁぁぁぁッ!!」
何故か突っ込んでくるトモエ
「危ないグレン!?」
『おわぁ!?』(猫語)
グレンを突き飛ばし一緒に転がるフリード
もしかしたらそのまま当たってた方が楽だったかもしれない
>「ササミと一緒に丸焼きになりたくなかったらね!」
「さてどうしましょうか?」
『どうしましょうかってフィー坊って氷の魔法使いじゃんやばくね』(猫語)
氷の弱点は炎・・・ではなく電気なのだが
そんな事はどうでもいい人間は焼ければ死ぬのだ
「病気のウィルスも焼けRばいいのに・・・・・」
『サウナで死ぬ程度のウィルスなら誰も苦労しないよ』(猫語)
>「ボクは捕まえようとしないの?君にならおねーさん捕まえられてもいいかもしれないんだけどなー?」
「すみませんせめて哺R類でお願いします」
まさに外道である
『じゃあ僕とかどうよ』(猫語)
「野郎は却下の方向で」
『まあくだらない冗談はともかくこのままじゃ服が使い物に何なくなっちゃうよ
まあ僕は一向にかまわないけど猫だから』(猫語)
「あなた今は人間の姿でしょうが!とりあえず困ったときはユニオン(合体)です
合体すれば能力は倍以上になるはずです!!」
『今の倍って普段の何分の一よ?』(猫語)
ユニオンすれば衣装が変わるぞ!つまり全裸は避けられる
原理はあれだシンデレラのドレスだ
「学園に火が付けば消化活動をせざる終えませんね」
とか何とかグダグダ言っているうちに消火装置が雨のように水を降らし始める
「学園が・・・泣いている!?」
『これで氷作り放題だねフィー坊』(猫語)
- 21 :
- >「「さあ、どっちが本物やと思うー?あひゃひゃひゃひゃひゃ!」」
二手に分かれ逃げていくササミAとB
「・・・ええとどうしましょうか?」
『とりあえず食堂の方へ行こうよ』(猫語)
「グレンはお腹空いてるだけでは?」
『おばちゃん焼き魚定食一丁!』(猫語)
「今の時間そんな人いませんよグレン・・・・ってササミさんがいた!?」
『よしササミさんを捕まえるふりしてリリィペンギンさんの魚を強奪だ!』(猫語)
まさに猫である
「真面目にやってくださいよグレン
僕の病気が治らなくていいんですか?」
『え?だって人間の体便利だし』(猫語)
「僕は普段の”猫の”グレンが好きなんです!!」
とぐだぐだな会話を繰り広げる二人
本当にこんなのでササミを捕まえられるのか?
- 22 :
- 「こほ…体がだるい」
魔法薬調合と、空間移動などの補助魔法を得意とする魔法使い、青葉草介もウィルスの影響を受けていた
「魔力を抑える薬、『魔力抑制薬(アンチウィザードリキッド)』でウィルスの影響を少なくしてるけど…それでもきついな」
勿論、魔法使いを一般人に変える禁薬、『魔女狩りの狂薬(マグライズリキッド)』も製薬(つく)れるのだが、材料が足りない
- 23 :
- >13
>「ピギッ?!」
「おめぇ〜、もしかしてササミの使い魔か?可愛い姿で油断させて保健室でスパイしてやがったな」
>12
>「ちょっと何処触ってるんですか!R!R!R!!」
「うひひ…手摺棒にしてはちょっち小さいねぇ」
>14
>「おいおい、大丈夫かルナ
あんまりむりすんなよ。この総代!総代である俺!炎道勇気様が来たからにはササミなんてチョチョイのちょいでやっつけてやるぜ!」
「なにぉ〜?あいつぁオレの獲物だぜぇ。おめーは総会でも開いて檀家さんとお茶でも飲んでやがれ」
>8-22
>「ひゃっひゃっひゃ!因果を突き詰めて吼えりゃーすな。
>今ある現状にケリつけてみやーせ。できるんならやけど!」
「お、おらー!やってやんぜ!」
空元気と同伴のルナは、狂った平衡感覚を操り何とかササミへと倒れこむ。
しかしササミは宙へ回避。虚しく床(?)に張り付いたルナの上にはプリメとトモエが覆い被さった。
おまけにそこへ石化ガス。
>「ガスの濃度は薄めてあるけど、あんまりゆっくりしとると服が石になるだぎゃーよ。気をつけんせえ」
「うそー!?あわわわわ…ん?ひ、ひぃいいい!!」
ルナは驚愕した。床と思っていたのは煙で浮き彫りになった透明のクリス。
上に覆いかぶさっている人物をよく見たら無表情のトモエ。その上には背後霊のようにプリメもいた。
「いやぁあああ!」
四肢をバタつかせるルナ。
>「「さあ、どっちが本物やと思うー?あひゃひゃひゃひゃひゃ!」」
すると遠くからササミの声。
「……ペンギンを持ってるのが本物よ」
安易過ぎる勝手な結論を出しながら、ルナは転げるように人間サンドイッチから這い出て四つん這い。
石化ガスの視界不良のなか消化水の雨のなかを、ほうほうのていで脱出し食堂へとむかう。
- 24 :
- 食堂についたルナは半裸の状態だった。
衣服は生乾きのように所々石化していて壊れやすい状態。
ずぶぬれの体からは水が滴る。
「ん〜…私一人の力ではササミを捕まえるのはムリかも」
先程ササミから受けた怪音波の影響で、まだルナの頭はおかしかった。
「よし、誰かを利用しよう」
フリードの肩に手をおくと、本人に利用すると宣言。
天井の消火用のスプリンクラー指差す。
「なあ、あのパイプの中を流れてる大量の水をさ、ササミの胃袋にオレが逆詰めするから
おめーはそれを凍らせてくれよ。オレの予想だと大きな氷柱の中にササミを閉じ込めることができるはずだぜ。
ちょっとの水を凍らせたくらいじゃササミの動きを封じることはたぶん出来ねえと思う…。たのむぜフリード坊や」
実際にどうなるのかは予想はつかない。しかしルナの瞳は根拠のない自信で輝いていた。
「いくぜ!」
と、タクトを取り出しワディワジを使うその前にルナはあることに気がつく。
――ペンギンリリィのグルグルメガネ。
「あー!おめえなんだよ。そのメガネはリリィのじゃねえか。
どこで手に入れたんだよ?リリィはどこにいんだよ!?」
今さらであるが、ペンギンリリィが気になったルナは彼女の元へ駆けた。
そしてササミの手袋を踏んでしまい、滑って転んでリリィの目の前で尻餅。
半石化状態の衣服がパリーンと粉々に砕け散る。
「きゃ、きゃぁあああああ!!み、見ちゃらめー!」
パニックになったルナはペンギンリリィで体を隠しながら食堂を右往左往し始めた。
- 25 :
- >14-21 >23
ササミが操る枝分刀の猛攻により、後退を余儀なくさせられたエンドウ。
そして、床に倒れてしまったトモエ、プリメ、ルナと、もう一人透明な刺客達を襲う石化ガス。
>「ガスの濃度は薄めてあるけど、あんまりゆっくりしとると服が石になるだぎゃーよ。気をつけんせえ」
>「うそー!?あわわわわ…ん?ひ、ひぃいいい!!」
ルナの悲鳴や、
服が石になって剥がれ落ちたとしたら・・・・・・きっとトモエの相棒フォクすけ☆は狂喜乱舞にちがいない。
だがそうなる前に、自身が石化する可能性を視野に入れる必要があるだろう。
空を自由自在に飛ぶ時は平気でも、自分の意思と無関係で上下左右にシェイクされれば目を回す。
人間・・・否、ペンギンとは不便な生き物である。
>「結果だけ見れば間抜けやけど、中々やりゃーすがね!
>正直なめとったし、もう少し難易度アップするでねー!」
床に下ろされたリリィペンギンはふらふら2、3歩たたらを踏んだ後、ばったりとその場に倒れた。
「きゅー」
ぐるぐるメガネの下の目もぐるぐる回っているようだ。
そうしている間に、ササミは儀式魔法を執り行い・・・・・・なんと二人に増えてしまった!
>「「さあ、どっちが本物やと思うー?あひゃひゃひゃひゃひゃ!」」
「・・・・・・・ピ!(だっこ!)」
リリィは両羽を上に向け、「だっこして」のポーズを取った。
分身の術か、本当に分裂したのかまではリリィにはわからない。
だが、おそらく自分を連れて行くほうが「強い方」のササミだ。漠然とだが、そうリリィは考えていた。
(だってササミちゃん、「芸夢をアリーナ席で楽しませてあげますよ」って言ってたもんね)
ササミはきわめて合理的で、有言実行派だ。
それは最初に出会った遺跡内での行動から、嫌というほどよくわかっていた。
そのササミが、リリィを楽しませると言ったのだ。
そのためには、リリィが、最後の最後までササミの芸夢を見られる位置にいるのが必須条件になるのだ。
>「……ペンギンを持ってるのが本物よ」
「ピー!(ルナちゃんすごい、何でわかったの?!)」
再び片方のササミに抱っこされながら、はーい!とばかりに片羽を上げていた。
- 26 :
- そこに、シャオロンの恐るべき発言が響き渡る。
>「(略) それからササミと交戦していない隊員は、速やかに校舎内を職員室側に移動するように。
> ……ササミと一緒に丸焼きになりたくなかったらね!」
「ピィイィィィィ!!」
おたおたと慌てふためくペンギン一羽を尻目に、ササミーず達は楽しくて仕方ないという顔をしていた。
一人は嬉々として、文字通り職員室へと飛んでいってしまった。
残されたリリィはまだおたおたしている。
「ピー(ペンギンは肉食だよぅ、丸焼きにしてもおいしくないよぅ)」
だが、そんな狼狽ぶりも、ササミの放った
>「ほしたらこっちはアリーナ席のおやつの魚でも取りにいこまい」
という一言で霧散してしまった。
「ピッ!(わーいわーい、おやつおやつー)」
リリィは大喜びだ。
・・・・・なんだかもう、人としてどうなの?という領域まで来てしまった気がする。
ササミB(便宜上)は食堂に向かって飛んでいく。
途中、窓の外に巨大な龍が見える。
放たれる炎にササミの顔は歓喜に満ちるが、リリィの顔からは血の気が引いていく。
「ピィイ!ピピピピピ!!(死ぬ!死ぬ死ぬ死ぬー!!)」
巨大な龍が吐き出す炎を、ササミは器用に避けていく(ようにリリィには見えた)。
頭上からは滝のような水が落ちて火勢を落としていく。
「ペンギンは水浴び好きやろー?気持ちえーかね? 」
「ピー!(うん!気持ちいいよ!ササミちゃんはどう?)」
わーいわーいとはしゃぐペンギンを連れて食堂へたどり着くササミ。
だが、魔界育ちのササミはまだ知らない。
服というのは、水にぬれるといろいろドッキリイベントが起こってですな・・・・・・。
食堂のおばちゃんは不在だったが、ちゃっかり新鮮な魚をせしめたリリィ。
皿に盛られた魚を前に、見てるのが恥ずかしくなるほどの喜びようである。
「ピー!(いただきまーす!)」
- 27 :
- そこに颯爽と登場したのが、二人の少年だ。
>『おばちゃん焼き魚定食一丁!』(猫語)
>「今の時間そんな人いませんよグレン・・・・ってササミさんがいた!?」
「ピ!(あっ!フリード君にグレン!」
>『よしササミさんを捕まえるふりしてリリィペンギンさんの魚を強奪だ!』(猫語)
がああん!!と大ショックを受けているリリィ。
「・・・・・・・・。」
うるうるとなみだ目になりながら、皿に盛られた魚のうちの一匹を、断腸の思いでグレンの方に押しやる。
(どうやらこの一匹が、グレンの取り分らしい)
だがグレンは魚を取りにくるわけでもなく、フリードと漫才を繰り広げている。
「ピー・・・?(魚、いらないなら食べちゃうよ?)」
ルナとフリードとの間で何らかの作戦が立てられたかもしれないのだが、リリィが知る由も無かった。
「ピー?(食べちゃってもいいよね?答えは聞いてない)」
>「いくぜ!」
リリィの困惑を吹き飛ばすように、タクトを握り締めたルナの声が食堂に響く。
ルナの服はあちこち破れていて、ひどい有様だった。
「ピ?(ルナちゃん?どうしたのその格好!!)」
>「あー!おめえなんだよ。そのメガネはリリィのじゃねえか。
>どこで手に入れたんだよ?リリィはどこにいんだよ!?」
「ピー!!」
あまりの剣幕に驚き、リリィが両羽をばたばたさせた。
その羽の先に、水を吸って重くなっていたササミのチューブトップが引っかかる。
「・・・・・・・ピ?」
羽先に変な違和感を感じたのと、パリーン!という乾いた音とともに、ルナの服が砕け散ったのは同時だった。
今さらであるが、ペンギンリリィが気になったルナは彼女の元へ駆けた。
そしてササミの手袋を踏んでしまい、滑って転んでリリィの目の前で尻餅。
>「きゃ、きゃぁあああああ!!み、見ちゃらめー!」
>パニックになったルナはペンギンリリィで体を隠しながら食堂を右往左往し始めた。
「ピー!!(ルナちゃん落ち着いて!グレンは男の子だけど猫よ!裸を見られてもノーカウントよ!)」
・・・・・・・・いろいろな意味で問題発言である。
「カーテン!カーテンがあるじゃない!!)」
残念ながら、リリィの話すペンギン語は、この場にいる猫と人間には通じなかった。
(そ、そうだ!私の箒!!)
保健室に忘れてきた箒には、リリィの鞄がくくりつけてあった。
あの鞄の中を探せば、何かルナの助けになるような品があるかもしれない。
リリィは片翼を上げると、箒を召喚すべく高らかにこう唱えた。
「ピー!!(来い!)」と。
だがここでの最大の問題は、ペンギン語で唱えた呪文に効力があるかどうかである。
箒が来なければ、ルナが落ち着くのを待ってから、リリィ以外で体を隠すものを探す必要があるだろう。
- 28 :
- >19
窓枠にシャオロンがもたれてからすぐ、机の上のササミの手袋が奇妙な動きを見せた。
人差し指と中指が別々の方向を指し示したのだ。
「……何よこれ…。 陽動?」
真っ先に思い浮かぶのは、手袋の動きを利用したかく乱作戦の可能性。
さすがにシャオロンも、まさかササミが分身したなどとは考えられなかったのだ。
何にせよ、これはササミが自分の演説を受けて動いた結果だと考え、シャオロンはそれなりの準備をした。
した事といえば心構えとアクライの呼び戻し、そして肩のトラコウの変化をバラの花の形で止めた事ぐらいだったが。
>「シャオロン、あんたも意外と回りくどい子やねえ。
>あがーな大がかりな事せんでもやり合いたいならきたったに!」
「私くらい大物になったら、やることなすこと全部大がかりになっちゃうものなのよ。
あんたこそ、ウイルスばら撒いて学園ごと病気に感染させるなんてなかなかやるじゃない。
ちょっと見直したわ」
扉を切り裂いて姿を見せたササミに不敵な笑顔でそう返すシャオロンだが、内心はそこまで穏やかでもなかった。
切り札になりうるアクライは校舎の向こう側で、おそらくはガーディアンと交戦中だろう。
今頃は、校舎の外でドラゴン対巨人の怪獣大決戦が行われているに違いない。
移動が遅い上にそんな妨害にあっては、すぐの援護は不可能。
さらに来たのが当面ササミだけで1対1となれば、どうしても苦戦は免れない。
本っ当に使えない奴らね!とシャオロンは心の中で他のササミ討伐隊隊員(仮名)に悪態をつく。
「まー、でも、魔王候補にしちゃ芸武だなんて志が低すぎるんじゃないの?
まさかとは思うけど、魔界の魔王候補の連中ってお互い競争した後で
『みんな頑張ったんだから全員1位で…』なんて言いながら相手の健闘を称えたりとかしてるんじゃないでしょうね?」
ササミの前進に合わせるように、シャオロンも一歩二歩と距離を詰め、近くの机の端に手を乗せる。
ただでさえ複数の刀を操るササミには相性が良くない上に、シャオロンは病気療養中の身。
戦いが長引けば不利になるばかりだ。
となると、不意打ちが一番の選択肢となる。
「昔の魔王の奈良セントだかナラシンハだかは、地上侵略に来たんでしょ。
追い返されたのはざまあとしか言いようが無いけど、あんたも同じくらいの気概は持ちなさい……よっ!!」
どんと音がして、シャオロンが手を置いていた机が回転しながら天井近くにまで真上に飛び上がった。
”気”を使った中つ国の武術の応用だ。
「覇!!」
目線の高さにまで落ちてきた机に、シャオロンは気合と共に掌を叩き込む。
机はまっすぐササミに向けて、猛スピードで飛んでいくだろう。
こちらは目くらましで、シャオロンの本命の攻撃は別にある。
飛んでいく机の影から、バラの花と化していたトラコウが槍状になって伸びるのだ。
いかに全方位視界であろうとも、正面からの飛行物体の影までは見えないだろうと考えての攻撃である。
- 29 :
- >23-27
>「たのむぜフリード坊や」
「ちょっと待ってください魔族の胃って何処に在るんですか?」
『大丈夫だよ間違っても体に流れている血を凍らせたりは出来ないから』(猫語)
たぶん超高位の氷の魔法使いなら触るだけで相手の体液をすべて凍らせたり
服だけ凍らせてパリンパリンとかいろいろ外道なことが出来るだろう
だがしかしそんなことは普段の健康なフリードにすら出来やしない
所詮天才といわれようが学生風情であるからだ
「ササミさんがお腹を冷やして下痢になったりしなければいいんですが・・・・」
さすがのフリードもそれはあまりにもあまりだと思ったようであるが
そもそも体の中の液体を凍らせることなど出来るのだろうか?
すってんと転んで服がメリメリバリーンと破けるルナ
>「きゃ、きゃぁあああああ!!み、見ちゃらめー!」
「これはいけない!グレンお脱ぎなさい!!」
とグレンの服を脱がしに掛かるフリードリッヒ
『やだよフィー坊が脱げばいいじゃん』(猫語)
だが断ると拒否するグレン
「グレンあなた普段は全裸の癖に・・・・仕方がありません僕のマントも半分石化してますけど」
とフリードリッヒは魔法使いのマストアイテムであるマントを脱ぎ
「落ち着いてこれを羽織りなさい」
とルナに投げ渡す
>「ピー!!(来い!)」
突然飛んできた箒に投げたマントを攫われてしまうフリードリッヒ
どうやら例え呪文が何語であっても魔法は効果があるようだ
『あれだねバットタイミングってやつだね』(猫語)
「ええと代えのマントって在りましたっけ?」
『フィー坊の箪笥の引き出しの二番目だよ』(猫語)
「仕方がありませんではこの帽子で体を隠してください」
と今度は頭にかぶっていた魔法使いの三角帽子を投げるフリード
『半分石化してるから途中で重さで落ちるんじゃね?
って言うかよく今までそんな重いものをかぶってたね』(猫語)
「普段からグレンを頭に載せてますからね
首は丈夫なんですよ」
と言いつつ帽子を投擲するフリード
そして次の瞬間
『げぇーーーーー!?さっき帽子を投げ捨てたはずのフィー坊が帽子を被ってる!?』(猫語)
「予備ですよ、マントの予備は持ってくるのを忘れましたけど」
はたしてルナは体を隠すことができるのだろうか?
そしてササミを捕まえる件はどうなったのか?
「ええと落ち着いたところでルナさんに残念なお知らせがあります
そのペンギンさんがリリィさんです」
『でもそれってトモエさんが言ってただけなんでしょ?』(猫語)
「魔力には波動があります・・・・そしてそれは一人ひとり違う
そう・・・・まるで指紋のように・・・後は分かりますよね」
『ああだから僕を知らない男の子じゃなくて僕って分かったのね納得』(猫語)
- 30 :
- トモエがササミに飛びかかっていくと、彼女は急上昇してトモエの体をかわした。
「逃さないわ。」
トモエは手袋を取り出した。先程、東方の銀貨を詰めた方の手袋だ。
ササミを視線で追い、彼女に向けて魔法を放とうとした。
「キロ・バレッt…「いやぁぁぁぁぁッ!!」
魔法は失敗した。後ろからプリメに押されて倒れてしまったからだ。
トモエはすでに倒れているルナに覆いかぶさるように倒れこんだ。
> 「いやぁあああ!」
> 四肢をバタつかせるルナ。
なかなか脱出できないのは、トモエの上に、さらにプリメも乗っているからだ。
『まるでケモノのようなプレイだね。』
とフォクすけ☆。
トモエはうつぶせに倒れているので表情は見えないが、恥ずかしいらしく、耳まで真っ赤になった。
ササミは石化ガスをまき、その場から離脱した。
早くそこから離れなければ、服が石になって砕けてしまうらしい。
トモエは首だけを回して、なんとか脱出したルナの服の様子を見た。
『服だけを破壊するガスとかwこの世の春がキター(゚∀゚)―!
…って、うわああああっ!?』
「フォクすけ…!」
魔法少女トモエ・ユミの頼れるパートナー、フォクすけ☆は所詮ぬいぐるみである。
そう、石化ガスによって彼の体はボロボロに崩壊してしまったのだ。
トモエは自分のセーラー服をボロボロにしながら、フォクすけ☆を持ってガスの圏外に脱出した。
『…ごめんよぅ、トモエ。ずっと君のそばにいてあげられたら、って思ってたのに。
トモエの友達は僕だけだっていうのに…』
「……もう、何も言わないで。」
トモエは座り込み、もう動かなくなった(別に動いていたわけではないけど)フォクすけ☆の遺骸をぎゅっと抱きしめた。
学園の校舎内の天気は雨。トモエはもう一人なので、傘はささなくてもよかった。
- 31 :
- その時、不思議なことが起こった。
トモエ・ユミの体が暗闇に包まれたのだ。その暗闇はすぐに消え、
トモエは白い着物姿、つまり魔法少女に変身する前の姿に戻った。
誰が言ったか、シンデレラのドレスの原理である。
彼女の手には、フォクすけ☆の背中に付いていた四次元ポケットが握られていた。
トモエはそれに手を入れて、中から鉄の輪が不規則に嵌められた大きな木刀のようなものを取り出した。
「………」
彼女の顔はいつものように、笑いも、怒りも、悲しみもなかった。
彼女の顔にはいつも、雨の中で薫り立つ、菖蒲の花のような静けさしかなかった。
だから彼女に誰が何を話しかけても、きっと彼女は何も応えないだろう。
四次元ポケットを帯に挟み、トモエは職員室に向けて歩いて行った。
「…ササミさん、あなたは二人いたのね?」
職員室にトモエがついた時には、既にササミとシャオロンの闘争が始まっていた。
「ササミさん、実は私も二人いるんです。
一人は魔法少女のトモエ・ユミ。そして、もう一人は…」
トモエはゆっくりとササミに近づいて行った。
トモエには殺気が無いが、ササミがトモエに近づいたなら、
トモエは、ただRばよい、とばかりに攻撃をするだろう。
- 32 :
- 名前:炎道勇気 ◆hCjEHNrkek [sage] 投稿日:12/04/10(火) 19:30:57 ID:???
うおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっと威勢良く切り掛かったところまではよかった……が!
「うがぁぁつ!」
踏み込んで迫り来る3振りの枝分刀をさばこうとしたのは勇気に取っては幸か不幸かなにかにつまずいてこけてしまった
そこを見逃すことはササミがすることはなかった
同時に三方向から絶妙のタイミングで打ち込まれる残撃に勇気は防戦一方
「3刀流かよ!魔界流か!」
勘違いしつつもなんとかさばいているが他のことには集中出来ていない
襲い来る攻撃に四苦八苦していると
>抜き去る瞬間、四本の刃が超振動の切れ味をもって勇気を襲う。
他を丸め込んだササミがその場を向けだそうしての行動だった
「いったいぜんたい何刀流なんだよ!」
勇気はそのほとんどを受けることが出来たがそれは当然
「全然殺気が乗ってないだと……」
その証拠と言わんばかりに切られたのは制服の袖だけだった
さらに追い打ちをかけるように
>「顔や肩書はかっこいいのに、ガッカリだがね」
ため息まで聞こえたきた日には
「……」
勇気は黙って下を向いているだけ
「駄目だ、完全にキレちまったよ……ぶっちぎりになぁ!!」
さて、完全にササミにこけにされた勇気は怒り沸騰、怒髪天をつくといったようす
真っ赤な髪は山火事かといった感じ
怒り狂った勇気は雄叫びをあげながら食堂に向かった
野生の勘としかいえないご都合主義でササミを発見した勇気は開口一番
「ぶっR!!」
物騒な言葉と血走った目でササミを睨みつける
「焼き鳥にしてやる!!」
勇気は刀を抜き、鞘を投げ捨てるとさっきとは違うRつもりで刀を振る
- 33 :
- >「落ち着いてこれを羽織りなさい」
「お〜フリード!こころの友よ〜」
宙に舞うフリードのマントを羽織るべく、全裸のルナはペンギンリリィを床において万歳。
広げた両手でマントを掴まんとした。しかしその時、信じられないことが起きる。
なんと箒がマントを攫って行ってしまったのだ。
「なんだあの箒はよー?邪魔しやがってぇ!」
と目を三角にして怒るルナに、すかさず三角帽子を投げ渡してくれるのはフリード。
でも半分石化されている重さで帽子は床に落ち砕け散ってしまう。
それを見たルナは、なんだか悲しくなって逆ギレる。
「てめえら冷やかしてんのかよぉ!そんなにオレの裸が見てえのかよー?」
眉根を寄せ握り拳固を振り上げる。とそこへ宙を旋回して戻ってくる箒。
そして箒にぶら下がっていた鞄はルナの後頭部に見事にぶちあたった。
「ふきゅ〜!」
カランと箒は床に落ち鞄もゴトンと一緒に床に落ちればルナもペタンと床に倒れこむ。
>「ええと落ち着いたところでルナさんに残念なお知らせがあります
そのペンギンさんがリリィさんです」
「えーなんだってー?よくも真相を教えてくれちゃったなフリードやろう〜、名探偵ポワロも真っ青だぜ。
これからの展開で、ペンギンをリリィとは露知らずにオレの心のうちに秘めた心情を吐露する名場面を考えてったつーのによ!(うそ)
やっぱリリィもウイルスにやられちまってたのかよ。おのれササミめぃゆるさねぇですねい〜!」
ルナは床に落ちている鞄に手をかけペンギンリリィを見つめながらジェスチャー。
開けていい?と手真似し、ぺこりとお辞儀。
別にリリィは人間の言葉はわかるのだからジェスチャーにまったく意味はなく
逆に普通に喋ればいいのだが、ルナはコクコクと頷きながら身に着けられるものがないものかと鞄チェックを始める。
「……リリィの服、小っちゃい」
内容は割愛してなんとか着替えたルナは、首から下が人間リリィと同じ姿となった。
- 34 :
- そこへ現れたのは炎道勇気。
>「焼き鳥にしてやる!!」
「あは〜焼いたら美味しそうな匂いとかするんだろうなぁ…って抜け駆けはさせねえぜ!」
ルナは天井の消火用スプリンクラーに逆詰め魔法を使用するためにタクトを構える。
詰め込み先はササミの胃袋。通常、逆詰めは詰め込み先が満タンになった時点で終了する。
しかし詰め込み先がそれを拒絶し隙間スペースを内部に作っている限り、詰め込むことを指定されているものは
ルナが魔法の使用をやめるか魔力が尽きるまで内部に侵入を繰り返そうとする。そうアホのように。
「リリィはオレの友達だー!ササミになんか抱っこさせねえ!」
ルナのタクトから雷のように放出された光が消火用スプリンクラーに当たると
噴出した大量の水は水龍のようにササミに向かって押し寄せてゆく。
果たしてササミは炎道と交戦しつつワディワジで生み出された水龍から
逃げ続けることが出来るであろうか。ちなみに水龍の追尾時間は十秒弱。
十秒ほどでルナの魔力は半分ほどになる。これで捕らえ切れなかった場合、
ルナは魔力を温存するためにワディワジの使用を中止することだろう。
- 35 :
- ササミB【食堂】
無人の食堂に着いたササミはさっそく厨房の中へ。
廊下は滝のように散水が続いているが、食堂内の散水は既におさまっており、一息つけたというところだった。
リリペンギンが魚を漁る間に自分も食べるものを探していると、追跡者たちが追いついてきた。
>『おばちゃん焼き魚定食一丁!』(猫語)
グレンの猫語はササミにはニャーとしか聞こえないが、魚の一匹を押しやるリリペンギンをそっと制して。
「魚は売り切れだぎゃー。これでも食ってちょーせ」
そういいながらグツグツと煮えたぎる味噌煮込みうどんをカウンターの上に乗せる。
知らぬとはいえ猫のグレンにアツアツお鍋のうどんを出すのは外道の所業であろう。
とはいえ肝心のグレンはフリードと漫才中。
それならばとズルズル音を立てながら味噌煮込みうどんを食べだした。
つかの間のお食事タイムだ。
はふはふ言いながらアツアツの味噌煮込みうどんを食べているササミが食堂に到着し作戦を立てるルナに気付くだろうか?
いいや気づきはしない。
よほど注意していないと存在を認識できないのに、熱いうどんに立ち向かっている時に気付けるわけがない。
その存在に気付いたのは手袋を踏んですっころび、悲鳴が上がった時になってからだった。
「うぉ!?いつのまにって、あひゃひゃひゃひゃ!恥ずかしい奴だぎゃー!」
転んだ衝撃で半ば赤化した服が粉々になったルナに驚きながらも大笑い。
だが笑っていられない事に気付いたのはその直後だった。
ルナの剣幕に驚いて羽根をばたつかした拍子にチューブトップが引っかかってしまったのだから。
元々R圧でパンパンになっていたものが水を吸って重くなっている状態ではほんの少し引っかかっただけでバランスは崩壊する。
弾けるように魔Rが飛び出しチューブトップが下に下がってしまう。
「ちょっ、ぎゃああああ!!!」
あわててチューブトップを引っ張るが、水を吸って重くなっており引き上げられない。
ルナの方もマントが箒にさらわれたり帽子は石と化して砕け散ったりでどうにもならない。
女二人でいったい何をやっているのかカオスな状態に怒りの炎で燃え盛った男が現れた!
正面玄関女子トイレ前でコケにされた炎道勇気である!
>「焼き鳥にしてやる!!」
怒りに燃えた勇気に本来ササミとしてはしてやったりなのだが、今はそれどころではない。
チューブトップの引き上げは諦めたが、両腕で抱えてもまだ有り余る魔Rに対応もおぼつかない。
「ちょっ、今はダメ〜!」
大きすぎるRはチューブトップに収まっている時はまだ固定されてよいのだが。
一旦その封印を解かれるとその重さに体の軸はブレ、素早い動きが出来なくなるのだ。
もちろんササミとてうら若き乙女である。
そういった実用性以上に胸を男に見られるのは耐え難い羞恥なのだ。
なんとか勇気の一撃を躱すことができたのだが、そんな状態でルナの放った水龍を躱せるはずもない。
羞恥に混乱するササミはここでミスを犯した。
迫ってくるのが水龍だとわかっていながら枝分刀を振るったのだ。
超振動ブレードとなった枝分刀は斬る事に特化しているがためにそれ以外の打撃力などは皆無に等しい。
水龍を正確にとらえたのだが、その鋭さ故に水飛沫一つ上げることなく水龍を素通りしてしまう。
そして水龍は何事もなかったかのようにササミの胃の中へと詰め込まれていった!
ササミのお腹は見る見るうちに膨らんで、はいかない!
風船でもないので簡単には膨らまないのだ!
が、それでも詰め込まれる水の量は膨大でその容量は許容量を遥かに超えている!
「うぅ〜!仕方がにゃーでよ!ありがたくくらやーせ!」
ぎろりと勇気を睨んだササミが急加速を始めた。
- 36 :
- 魔Rモロ出し状態で急加速ができたのにはわけがある。
大量に詰め込まれ続ける水を項と背中の口から噴出させその反動で急加速したのだ。
どういった構造で胃からそれぞれの口に繋がっているのか?なんて野暮なことを気にしてはいけない!
ファンタジーな生き物でしかも魔界の怪鳥が人間の姿をしているだけなので不思議構造でもいいのである!
兎にも角にも勇気からは視界を覆い潰す魔Rが見えるだろう。
傍から見ればボディープレス、Rミサイル。
Rで体当たりして勇気を押し潰し、バウンドしてルナ、フリード&グレンそしてリリペンギンの近くへ着地。
「自業自得やでおこりゃーすなよ!」
その言葉と共に七つの口から一斉に詰め込まれた水を放出するのだった。
その勢いはもはや水砲とでも言えるだろう。
噴水像と化したササミが全方位に向かって放水しルナとフリード&グレンを押しのける。
詰め込まれた水をすべて出し切った時、ササミの胸は手袋が六つ張り付いていた。
文字通り手ブラなのだが、おかげでスカートはすっかりなくなってパンチらどころかパンモロである。
胸もRも晒すのは恥ずかしいが、胸を固定しないと禄に動けないという判断が働いたようだ。
「なかなかやるでにゃーの。これは健闘賞だぎゃ」
いつの間にかリリペンギンを小脇に抱えたササミハそういって羽を投げてルナの髪にさした。
ルナの攻撃に敬意を表したわけだが、もちろんそれだけではない。
この羽は一種のマーキングなのだ。
存在感が薄く認識から外れがちなルナに自分の羽を一枚身につけさす事で認識から外れないように、と。
「それにしてもあんたぁリリィやったんね!可愛いわけだわ。このまま私と一緒の鳥ってのも悪くあらせんね」
フリードとルナのやり取りをしっかりと聞いていたようだった。
ペンギンがリリィと知って上機嫌に声をかける。
そしてルナに向き直り鼻で笑いながら
「おみゃーさんがリリィの友達という事と私がだっこしちゃいかへん因果関係がさっぱりだがね。
理屈の通らんことを押し通したかったら力づくで奪い返してみやーせ。
それからそっちの二人、イマイチやる気がなさそうやけどどうしたら本気になるん?
どっちか片方石になったらやる気になりゃあすかねえ?」
ルナに続きフリード&グレンを脅すように睨みつけた。
「まあそれより先に、乙女のR味わった代償を払ってもらわにゃーね。こんくらいでリタイアはせえへんのやろ?」
先ほどRアタックで押し倒した勇気に向かって声をかける。
だがそのササミの背中と項の顔が目を回している事に気づくだろうか?
詰め込まれた水を一気に噴き出した負担で気絶しているのだった。
水を猛烈な勢いで吐き出すのはそれほど負担であり、目を回しているのは二つの顔だが体力消耗も激しいようで肩で息をしている。
- 37 :
- ササミA【職員室】
> 『みんな頑張ったんだから全員1位で…』なんて言いながら相手の健闘を称えたりとかしてるんじゃないでしょうね?」
「頑張ることに意味があるんだきゃ?それに競争し合った後、負けた奴はいなくなってる訳だし、讃える必要って?」
じりじりと距離を狭める緊張感の中、シャオロンの挑発に純粋に首をかしげる。
合理的で成果主義な魔界から見れば目標達成が第一であり、そこに至るまでの過程や努力はさほど重視されない。
言ってしまえば努力しようとしまいと結果さえ達成できれば同じなのだから。
そして生まれて20年に満たないササミの世代であっても競争に負ける=死が常識であることを表していた。
しばらく首をかしげてから思いついたように首を戻した。
「そうやねぇ、魔界に必要なのはそういうものなんかもしれせんね!
気概?気概や強さだけでは勝てなかったから、私らの世代は人間に学ぶことにした。
だから私がフィジルに来たのよっっ!」
ほとんどノーモーションで机を宙に上げたシャオロンはそのまま机に掌打を叩きこみ、砲と化す。
それに反応しササミは急速に後退。
だが後退したのはササミだけで、四本の枝分刀は飛来する机を迎え撃つ。
凄まじい速さで交錯する刃は机をバラバラにし、その陰に隠れたトラコウの姿を露わにさせる。
「はっ!この程度で!」
机の迎撃地点とササミの位置は数歩分しかないが、それでもトラコウに対処するには十分な距離である。
伸びてくるトラコウを見切り半身躱して切り払い、一気に間合いを詰める。
その間にも机を切り刻んだ四本の枝分刀はシャオロンへと殺到しているのだ。
だが、枝分刀の切っ先がトラコウを捉えた瞬間、ササミは大きく横に飛びずさる。
トラコウに触れた切っ先を介し、その手ごたえから粘土状だとわかったからだ。
超振動ブレードは切れすぎるが故に、粘土やゲル状のモノを切ることができない。
斬ったそばから切り口がくっついてしまうのだから。
振動しているので刀身が絡め取られる事はないとはいえ、切り払いが出来ないのは危険なのだ。
槍の形状してはいてもそこからどんな変化が起こるかもわからない。
警戒し大きく距離を取ったところでトモエが現れた。
「ササミさん、実は私も二人いるんです。
一人は魔法少女のトモエ・ユミ。そして、もう一人は…」
トラコウからの回避運動のその軌道上にトモエが近寄り、凄まじい一撃を繰り出した。
尖塔からこちらまで、穏やかな印象を受けていたこと。
先ほど正面玄関トイレ前の攻防で苦も無く躱したこと。
そしてあまりにも殺気がなさ過ぎたこと。
様々な要因が絡みつき、その一撃への対処を誤った。
絶妙なタイミングと躊躇のない一撃に回避が間に合わず思わず枝分刀で受けてしまったのだ。
切れ味に特化したその刃は代償として脆さを背負っている。
振るわれた木刀は受けに回った枝分刀を砕き、ササミの体ごと吹き飛ばした。
ササミは悲鳴と共に吹き飛ばされ、職員の机を砕く弾丸となったのだ。
それと共にシャオロンに襲いかかっていた四本の枝分刀が消えうせる。
枝分刀の枝分かれした刀は本体より10メートル以上離れると消えてしまう。
すなわち、ササミがトモエに吹き飛ばされ、限界距離の10メートルを超えたからだ。
「あはっ!あははははは!」
砕けた机の残骸から歓喜の笑い声と共に浮かび上がるササミ。
左の二の腕と手首は不自然に膨らみ曲がっており、骨折していることがうかがえる。
左手の甲についた顔も目を回しているようだ。
全身打ち身や切り傷で血を流している。
その姿は一撃で満身創痍と言えよう。
- 38 :
- だが、それぞれの口から溢れ出るのは喜びの笑い。
「やるがねー!ようやくやる気になったきゃ〜」
トモエに向かい満面の笑みを浮かべる。
これほどの一撃を放てるとは思っていなかった。
それを引き出せた自分を、そしてそれを持ち出したトモエに喜んでいるのだ。
「強力な一撃を食らわせたはええけんど、追撃せえへんとすぐに回復するでよ〜」
その言葉通り、ササミの血に含まれる再生酵素が傷を回復させていく。
切り傷などは既に血が止まっており、打ち身を表す痣も薄くなりつつある。
骨折も時間はかかるであろうが、治っていくだろう。
「でも、追撃待つほど気長じゃにゃーでよぉ。
いいこと教えたるで聞きんさい」
そういいながら右手に持つ枝分刀をトモエとシャオロンに突きつける。
その刀身に先ほどまでとは違い、灰色の靄がかかっていることがわかるだろう。
更によく見れば右手の甲についた顔が石化ガスを吐き出し、そのガスが振動によって刀身に纏わりついているのだ。
しかしそれは石化ガスを吐く口と怪音波を出す口、一本の刀に二つの顔を使用している事を表していた。
「見ての通り、石化ガスを刀身にまとった私の奥の手だぎゃ。
シャオロンのスライムはええアイディアやけど、この石化刃を使えば、わかるやあね。
もちろん、あんたら二人もこれだとカスリ傷一つで石化だきゃら気おつけんさい」
ギラリとした笑みを浮かべ二人を睨むササミだったが、大きな勘違いをしていた。
石化ガスは有機物と結合して石化させるものである。
木やスライムなどには有効ではあるが、粘土が材質なトラコウには意味をなさない。
ササミはトラコウをスライムの亜種だと思っていたのだ。
手袋を呼び寄せ、枝分刀を増やすが、今回は三本だった。
そして分離した枝分刀は石化ガスがまとわりついていない。
石化ガスを纏わりつかせるには近くから石化ガスを流さなくてはならないので、手元から分離している分に関しては不可能なのだ。
そして何より、石化刃には石化用と怪音波用の二つの口が必要となる。
更に呼吸用の口を確保するとなると、どうしても本数が限られてくるのだった。
「さ〜て、どっちからいこまいかねえ〜」
ゆらりゆらりと浮遊しながら二人の間を行き来しながら間合いを詰める。
再生するとはいえ先ほどの一撃のダメージは大きく、普段の機動力は期待すべくもない。
ならば緩急をつけた動きで相手の間合いとタイミングを外し、虚を突き一気に勝負に出るのだ。
ぐらりと体がトモエに傾いた瞬間、三本の枝分刀を残しササミの姿は消えていた。
残された三本の枝分刀はそのままトモエに突進していく。
ササミはそれまでの緩慢な動きとは打って変わり素早い動きでシャオロンへと向かう。
途中トラコウで妨害されても石になって砕け散れと言わんばかりにその刃を振るうだろう。
窓の外からは大きな音と共にアクライと数体のガーディアンゴーレムが職員室へと近づいて来ていた。
- 39 :
- >31 >37-38
ササミに攻撃を仕掛けた姿勢はそのままに、シャオロンは肩で息をしながら固まっていた。
半病人なのに無理をした結果がこれである。
>「はっ!この程度で!」
視界の先でササミが、机を切り裂きながら自身は後方に跳んで難を逃れたのが見えた。
体力的にも状況的にも、反撃を避けるのは不可能。
ならば死中に活を求めるしかないと判断し、シャオロンはトラコウの形を変えて迫るササミを迎え撃とうとする。
だが、ササミはその思考を読んだかのように、トラコウから大きく距離を取ったのだ。
それでも、ササミが操る刀だけは勢いを変えずにシャオロンに殺到する!
「こんの……!」
絶体絶命の危機に、さしものシャオロンもササミを睨みつける以外に打つ手がなかった。
しかし、助け船は思わぬ場所からやってきたのだ。
>「ササミさん、実は私も二人いるんです。
現れたトモエの一撃を受けたササミが、受けた刀を砕かれながら吹き飛ばされる。
同時に、シャオロンの身体を切り刻む寸前だった4本の刀が霧のように消え失せたのだ。
助かった。と思うと同時に助かった理由について考えたシャオロンは、それが“距離”ではないかとの仮定を立てる。
本体から離れさえすれば多刀による攻撃を消せるなら、それは有用な情報だろう。
ササミの速度からして容易ではないという点に目をつぶれば、距離を取って戦うのが最善だとわかったのだから。
仮説を立て終わってからシャオロンは、ようやくトモエに目を向ける。
「遅い! いつまでのんびりしてるの!
この私がもう少しで開きになる所だったじゃないのよ!」
命の恩人に対してあまりの暴言ではある。
槍状に伸びたトラコウを肩に戻しながら言いたい放題言っていたシャオロンは、恩人がトモエだということにようやく気づいた。
「……あなた確か、トモエ……だったっけ?
普段は昼行灯のくせに、ササミを防御の上から吹き飛ばすなんてなかなかやるじゃない。
ま、それも私が命を張っておとりをしてたからなんだけどね。
それより、さっきササミが2人とか言ってたのはどういう意味?
他にササミと戦ってる奴はいないの?
前に持ってた妙なぬいぐるみはどこに置いてきたのよ?」
矢継ぎ早に質問を投げかけておいたのに、まあいいわ。とシャオロンは会話を適当に切り上げる。
笑い声と共に起き上がって来たササミは戦意を失ってはいない。
満身創痍に見えてものんびり会話している場合ではないのだ。
- 40 :
- >「やるがねー!ようやくやる気になったきゃ〜」
まだまだ余裕があるように見えるササミは、自身の再生能力を(シャオロンからすれば自慢気に)説明する。
>「見ての通り、石化ガスを刀身にまとった私の奥の手だぎゃ。
>シャオロンのスライムはええアイディアやけど、この石化刃を使えば、わかるやあね。
>もちろん、あんたら二人もこれだとカスリ傷一つで石化だきゃら気おつけんさい」
続く石化刀の奥の手の説明は、ササミなりの芸武説明のつもりだろうか。
ははあ、本物のスライムと勘違いしてるわけね。と内心ほくそ笑むシャオロンだが、事はそう簡単でもない。
石化はしなくても、ゴーレムであるトラコウは本物のスライムよりも弾性の面で大きく劣るのだ。
普通に切り払われて、体勢を立て直す前にこちらがばっさりという可能性が極めて高い。
>「さ〜て、どっちからいこまいかねえ〜」
「出来るだけ時間を稼いでくれたら、こちらの援軍に焼き払わせるわ。
別に臨機応変にさっきの要領で倒してくれちゃっても構わないけど」
顔は近寄るササミに向けたまま、シャオロンはトモエに話しかける。
ゆらゆらと近寄ってきていたササミが、一気に速度を上げてシャオロンとの距離を詰めてきた。
先ほどの攻撃の影響かその速度は最高速にはほど遠いが、今のシャオロンには十二分に脅威となる速さだ。
こうなるとシャオロンとしても、自身の身の安全を図るのが第一でトモエへの援護は出来ない。
「これでも……くらいなさい!」
後ろに跳んで窓に背中を預け、シャオロンは足下の床に肩からむしり取ったトラコウを叩きつけた。
トラコウは薄く広がって壁のようになり、シャオロンを守るような動きを見せる。
ササミが近づけば、鋭いトゲが伸びてササミを攻撃するだろう。
無論、トラコウが棘ごと切られて防御壁としては役に立たないことは予想のうち。
ササミがトラコウを切って迫ればすぐに、シャオロンは窓から校舎の外に逃げ出すのだ。
ササミは校舎の外に出ないと言ったが、そんな約束をした覚えはないシャオロンにはある意味安全地帯と言えるだろう。
さらにササミが窓側に近づけば、トラコウがロープのように姿を変じてササミを縛り上げ、動きを封じようとする。
「来たわね!」
ガーディアンゴーレムと一緒にとはいえ、近づくアクライに気づいたシャオロンは凶暴な笑みを浮かべた。
策がうまく運んでトモエがササミを切れればよし。
失敗してもアクライで部屋ごと焼き払ってよしだ。
- 41 :
- >29 >32-36
>「魚は売り切れだぎゃー。これでも食ってちょーせ」
ササミが戻した魚をもぐもぐしながら、煮えたぎる味噌煮込みうどんを啜るササミ。
ササミの顔はたくさんあるが、とりあえず食べるときは、首の上についた口から食べるようだ。
(ほかの口は文句言わないのかなぁ?)
じーっとササミの胸元の顔を見つめるが、目が合ったので慌ててそらした。
「うぉ!?いつのまにって、あひゃひゃひゃひゃ!恥ずかしい奴だぎゃー!」
大笑いしていたササミだったが、いつの間にかぺろんとチューブトップがずれてしまった。
>「ちょっ、ぎゃああああ!!!」
「ピイイイイ?!(うそーん!!)」
大慌てで服を直そうとするササミ。
服がなくなってしまったルナ。
フォクすけ☆がこの場にいないのが、返す返すも残念である。
こんなときだと言うのに、貴族らしくフリードは冷静に対処した。
服が砕けていまったルナに、自分のマントを投げ渡そうとする。
だが、なんとも間の悪いことに、リリィが呼んだ箒がマントを掻っ攫ってしまった。
>「なんだあの箒はよー?邪魔しやがってぇ!」
「ピー!(ご、ごめんよー!今こっちに戻すから!)」
怒っているルナに、すかさず三角帽子を投げ渡してくれるのはフリード。
でも半分石化されている重さで帽子は床に落ち砕け散ってしまう。
>「てめえら冷やかしてんのかよぉ!そんなにオレの裸が見てえのかよー?」
「ピー!!(あ、ルナちゃん危ない!!)」
リリィが呼び戻した箒にぶら下がっていた鞄は、ルナの後頭部に見事にぶちあたった。
「ピー(あわわわ。ルナちゃんしっかりしてー)」
右往左往するペンギン。
>「ええと落ち着いたところでルナさんに残念なお知らせがあります
> そのペンギンさんがリリィさんです」
「ピ!」
そうです!とばかりに片方の羽を高く掲げる。
それをみて、ぷんすか怒り出したルナ。
「ピー(そんな・・・見ず知らずのペンギンに話すなら、元に戻った私に聞かせてよ。
事件が解決したら、パジャマパーティなんてよくない?)」
残念ながらウィジャ盤を使ってないため、リリィの言葉はササミ以外には通じていない。
そのためか、ルナは、リリィが人間の言葉を解さないと勘違いしたようだ。
ジェスチャーで許可を取り、鞄からリリィの着替えを取り出し身に着ける。
>「……リリィの服、小っちゃい」
があああん!とショックを受けるリリィ。
・・・・・・どの部分か、とはあえて言うまい。
服はそれなりにゆとりのある黒ワンピースだったのだが、小柄なリリィの服は、ルナには少々きつかったようだ。
- 42 :
- そこに現れたのはエンドウだった。
挑発に乗った彼は怒り心頭で、赤い髪はまるでそれ自体が燃えているように見える。
>「焼き鳥にしてやる!!」
>「あは〜焼いたら美味しそうな匂いとかするんだろうなぁ…って抜け駆けはさせねえぜ!」
>「ちょっ、今はダメ〜!」
「ピー!!(うわー!私は焼いてもおいしくないよ!!)」
自分のことかと右往左往するリリィを尻目に、タクトを構えるルナ。
>「リリィはオレの友達だー!ササミになんか抱っこさせねえ!」
わーいわーい、友達友達!と喜んだ後、「・・・・・?」と小首をかしげるペンギン一羽。
その後の状況はめまぐるしく変化した。
ルナのワディワジが発動したとたん、エンドウと交戦しているササミに大量の水が襲い掛かった。
(もしもエンドウが、炎系の魔法剣を使っていたとしたら、ご愁傷様である)
ルナのタクトから雷のように放出された光が消火用スプリンクラーに当たると
噴出した大量の水は水龍のようにササミに向かって押し寄せてゆく。
ササミの枝分刀は大量の水の前にはなすすべもなく、彼女の口へと詰め込まれていく!
>「うぅ〜!仕方がにゃーでよ!ありがたくくらやーせ!」
顔以外の口から言葉を発したらしきササミは、水を浴びつつぎろりと勇気を睨み急加速。
(ほかの口から水を吐き出し方向転換、ということは、リリィにはわからなかった)
エンドウにボディプレスという名のRミサイルを食らわせる。
「ピー!!(エンドウ君!ササミちゃんを捕まえてー!!」
だがエンドウの上に乗っかったのはほんの一瞬で、あっという間にササミは距離を取り、大量の水を吐き出した。
「ピー!・・・・・ピ?(わーいわーいお水だー!わーいわーい・・・・・あれ?)」
ペンギンの本能で大喜びしている間に、ササミがひょいとリリィを小脇に抱えた。
>「それにしてもあんたぁリリィやったんね!可愛いわけだわ。このまま私と一緒の鳥ってのも悪くあらせんね」
「ピ(あ、胸の顔にちゅーしちゃったのは、なんというか不幸な事故で故意というわけでは・・・・!」
テンバってしまって、ササミと会話が全くかみ合っていないリリィ。
顔が赤いのは、かわいいと言われたせいである。
もっとも、リリィは、今の自分がペンギンだからとかわいいと解釈していたのだが。
なぜなら、ササミにはお世話になったものの、そのあと親しく会話する機会に恵まれていなかったからだ。
ササミと一緒に行動しているリリィは、考えていた。
先ほど箒の召還に成功した。ペンギン語でも、魔法が使えるということだ。
ということは、テレパシーもうまくすれば通じるのかもしれない。
テレパシーで皆に逐一状況を教えれば、きっと芸武も少しは有利に進められるかもしれない。
(やってみる価値、あるよね?)
リリィは、ササミ以外の者に向かって、無差別にテレパシーを発した。
『えっと、聞こえますか?
私は、ペンギン姿になったリリィです。今はササミちゃんと一緒に行動しています。
実はササミちゃん、どういう魔法か知りませんが、今は二人に分裂して行動してます』
このテレパシーは、学園校舎内にいるササミ以外の者に一方的に送りつけられるテレパシーだ。
もし感じ取れたら、リリィが見聞きした事は逐一報告が行き、常に情報を共有することになるだろう。
「ピ(とりあえず、ササミちゃんはどこかで服を調達したほうがいいよ。
今のままじゃ皆、目のやり場に困って、全力で戦えないよ?
建物内だと、運動場近くの女子更衣室か、職員室隣の職員準備室に着替えがあると思・・・・・」
リリィは絶句した。
なぜなら、遠くの窓の外側に、巨大な金色の龍とガーディアンゴーレムが音を立てて移動していくのが見えたからだ。
「(な、なに今の?!龍が、本物の龍がいる!!)」
もしかしてリリィ達を焼き鳥にしようとしたのは、あの龍だろうか?
「(しょ・・・・職員準備室に行くのはやめたほうがいいかも・・・・・・)」
- 43 :
- >37>38>39>40>42
ササミが射程距離に入ると、トモエは持っていた白鞘拵の刀を抜いた。
居合。刀を鞘に収めた状態から抜刀と同時に斬りつける東方の剣術である。
トモエの抜き打ちは甲高い音と共にササミの枝分刀で受けられた。
が、すぐにトモエはその上から鞘を叩きつけた。
> ササミは悲鳴と共に吹き飛ばされ、職員の机を砕く弾丸となったのだ。
> 「遅い! いつまでのんびりしてるの!
> この私がもう少しで開きになる所だったじゃないのよ!」
シャオロンに怒鳴られながらトモエは、しかし全く気にしていないように布で刀身を払った。
> 切れ味に特化したその刃は代償として脆さを背負っている。
それはトモエの刀も同じであった。ササミの枝分刀と打ち合った箇所が少し刃こぼれしていた。
“折れず、曲がらず、よく斬れる”とは東方の刃物の売り文句だが、その耐久性神話はだいたい幻想なのである。
> 「……あなた確か、トモエ……だったっけ?
> 普段は昼行灯のくせに、ササミを防御の上から吹き飛ばすなんてなかなかやるじゃない。
> ま、それも私が命を張っておとりをしてたからなんだけどね。
> それより、さっきササミが2人とか言ってたのはどういう意味?
> 他にササミと戦ってる奴はいないの?
> 前に持ってた妙なぬいぐるみはどこに置いてきたのよ?」
シャオロンは立て続けにトモエに質問をした。
トモエは音をたてずに刀を鞘に収めた後口を開きかけたが、思わぬところからその返答が飛んできた。
> 『えっと、聞こえますか?
> 私は、ペンギン姿になったリリィです。今はササミちゃんと一緒に行動しています。
> 実はササミちゃん、どういう魔法か知りませんが、今は二人に分裂して行動してます』
「…これでお察しください。フォクすけは、そう、あなたの考えている通りですよ。シャオロンさん。」
トモエもまたシャオロンのことを知っていた。それぞれに事情は異なるが、
奇しくもここにいる三人はほぼ同じ日に学園に通い始めた仲なのだ。
もっともシャオロンがそうであるように、トモエも今呑気にお喋りをするような気分ではなかった。
> 「あはっ!あははははは!」
> 砕けた机の残骸から歓喜の笑い声と共に浮かび上がるササミ。
> 左の二の腕と手首は不自然に膨らみ曲がっており、骨折していることがうかがえる。
> 「やるがねー!ようやくやる気になったきゃ〜」
> トモエに向かい満面の笑みを浮かべる。
トモエはササミに笑い返そうとは思わなかったので、無表情のまま彼女の説明を聞いていた。
> 「さ〜て、どっちからいこまいかねえ〜」
とササミ。
> 「出来るだけ時間を稼いでくれたら、こちらの援軍に焼き払わせるわ。
> 別に臨機応変にさっきの要領で倒してくれちゃっても構わないけど」
> 顔は近寄るササミに向けたまま、シャオロンはトモエに話しかける。
「…正面から行くわ。」
> ぐらりと体がトモエに傾いた瞬間、三本の枝分刀を残しササミの姿は消えていた。
> 残された三本の枝分刀はそのままトモエに突進していく。
トモエもまたササミに向けて突進した。ちょうどシャオロンに迫るササミを後ろから追いかける形だ。
トモエの動きは防御など、まるで考えていない動きであった。
最短距離を、まっすぐ、無駄のないように、ただ速やかに相手を斬り捨てるためだけの動きだ。
三本の枝分刀はまともにトモエの胴体を貫き、すぐさまそこから石化が始まる。
しかし、体が石化しきるまでには“少しの時間”がある。トモエはその“少しの時間”に今の自分の全てを賭けた。
「南無阿弥陀仏…!」
トモエは鞘から刀を抜いてササミに突きを放った。
この攻撃に成功しようが失敗しようが、すぐにトモエは石化して動かなくなるだろう。
- 44 :
- ササミのチューブトップをリリペンギンがずらしてあられもない姿にさせたあと、炎道勇気がササミに斬りかかった。
その隙をついてルナは間髪入れずに逆詰め魔法。ここまでは良かった。
あとはフリードの氷結魔法でササミを水龍ごとどうにか固めてもらってルナがササミにタッチ。
そんなご都合主義全開のルナ・チップルだったが物事はそんなに上手くいかない。
「ひゃ!」
目の前では恐ろしいことが起きていた。
なんとササミのRアタックが炎道に炸裂したのだ!
(あわわ…、人体の中で一番柔らかいであろう場所で反撃するなんて、
恐るべし!ササミ・テバサコーチンっ!!)
「うくく…」
ワディワジの効果はほとんどなかった。逆詰め魔法を停止させ瞠目するルナ。傍らに降り立つササミ。
その七つの口からは一斉に詰め込まれた水が放出される。
「あばばばっ!」
まさに水砲とも言えるその攻撃は、その圧力でルナを軽々と吹き飛ばし
食堂のテーブルや椅子を巻き込んで壁際まで押し退けてゆく。
>「なかなかやるでにゃーの。これは健闘賞だぎゃ」
壁を支えに立ち上がるルナの髪に、ササミの投げた何かがささる。
ルナがコンパクトの丸い鏡で見てみると綺麗な羽がふわふわと揺れていた。
ササミの投げた物が羽じゃなくて針的なものならコロッと死んでいたのだけれど
ルナは頬を朱に染めて口角を緩ませてしまう。(これってササミが私を認めたってこと?)
「も…もらっといてやるぅ」口をちょこんと尖がらせて呟く。
>「おみゃーさんがリリィの友達という事と私がだっこしちゃいかへん因果関係がさっぱりだがね。
>理屈の通らんことを押し通したかったら力づくで奪い返してみやーせ。
「あーやってやるぜ。言われなくたってやってやるぜーっ!」
化粧の剥げかけた顔を細かく引き攣らせ、ルナは憤懣やる方ないといった様子でササミをねめつける。
- 45 :
- ―――そもそも存在感の薄いルナはアイドルのように注目を浴びたかった。
そのためにはササミに鬼ごっこで勝ち抗体を手に入れる必要があった。
救世主として学園に名を轟かせて有名人になるために。
でも、事情は変わってきていた。ルナはリリィがペンギンになってしまっていることを知ってしまった。
目を閉じれば瞼の裏にリリィの優しい眼差し。(ぐるぐるめがねの奥深く)
リリィは存在感のないルナをじっとりと見てくれる一番のお友達。
だから、どんなことをしてでも守りたいと決意を新たにする。
ルナはササミの一部の視界が奪われたことに気がついていない。
だからこのままリリィがササミにくっ付いていた状態では炎道もフリードも思い切ったことができないと思案する。
二人もつむじと背中の顔の気絶に気がついていないとしたら、
焼きペンギンか蒸しペンギンが出来上がってしまうかもしれない。
どうにかしてササミからリリペンギンを引き剥がさなければ。
(にしてもあのパンモロには考えらせられちゃったなあ。ローライズとミニスカートが同時に流行っちゃったみたい。
もうスカートの定義が破綻しちゃってるもの。つか今のササミの姿を男の人に変換したらあの格好はやばい。特に手ブラが……。
男の人のものの根元がみえてるくらいに匹敵してる)
と決意してすぐにルナがどうでもいいことを考えているとリリィのテレパシーが飛んでくる。
リリィはペンギンの姿になっているというのにテレパシーで皆にお得なササミ情報を伝えようとしてくれているのだ。
その献身的な姿勢にまるで一喝されてしまったかのようにルナは思考を元に戻すと
厨房の冷蔵庫から巨大な大タコを持ってきてササミに抱っこしているリリィに突き出した。
「リリィ…こっちへおいで。このタコはきっと美味しいよ。それにササミに抱っこしてると危ないから」
袖に隠したタクトの先端からタコにむけて、ジジジと静電気のように魔法が流す。
もちろんそれはワディワジだった。
「ササミもリリィのことを大切に思うのなら離してやれよ。
それとも困ったときに盾にするつもりかよ?ほーんと、魔族らしい考え方だぜ」
そう言い終えた刹那、ササミの視界の一部は漆黒に染まるかもしれない。
ルナは詰め込み先を指定せずにタコの墨袋にワディワジをかけて、ササミにむけて適当に噴出させた。
- 46 :
- ササミA【職員室】
それは刹那の出来事だった。
緩急をつけた動きから一気にシャオロンとの間合いを詰める。
取り残された三本の枝分刀はそのままトモエへと向かう。
必殺の間合いに入る直前、シャオロンが床に叩きつけたトラコウが薄く広がり防壁となる。
そのまま鋭い棘が現れるこの一連の流れをササミの驚異的な動体視力はまるでコマ送りのように捉えていた。
伸びる棘を悠々と躱し切り落とし、防壁となったトラコウを切り裂く。
切り口が石化しない事に小さく舌打ちしつつも防壁の向こう側にいたシャオロンへ横薙ぎの一線を……
この段に至りてササミの動きが一瞬にぶった。
トラコウがロープへと変じ、ササミに絡みついたからである。
「ちぃいい。見誤ったぎゃ!」
シャオロンは一瞬の差で窓の外へと飛び出し、石化刃が空を切る。
石化させれば、という思い込みをした痛恨のミスを恨みながらその先を見ていた。
「個人の武技など所詮は匹夫の蛮技、将たる者としてむしろ恥たる心得…
なんてゆーても、逃げの一手ゆーのは情けにゃーでいかんわ」
勢い余り窓の縁に足をかけながら吼えるが、そのセリフとは裏腹に口調と表情には非難の色はない。
輝く目を見せながら勢いを利用して方向転換。
後ろから迫るトモエを迎え撃つ為に!
ササミの項と背中に位置する顔は刹那に起こったその一部始終を見ていた。
三本の枝分刀が突き進む先のトモエの行動が。
それは単純明快一直線。
もしかしたらトモエには三本の枝分刀が、いや、それどころかササミ以外見えていないのではないのだろうか?
そんな考えが浮かんでしまうほど躊躇いのない動きだった。
迫りくる枝分刀を避けようともせず、実際に刺さろうとも一切の反応がない。
痛みや恐怖というものを感じていない、まるで鮫や鰐のような原初の攻撃本能の塊かのように。
回避運動皆無のその動きに枝分刀はやすやすとその身を捉える。
服を突き破り柔肌に刷り込むように沈んでいく水晶の刀身は吹き出る血潮と共にその切っ先から消えていく。
所詮はわかれた枝であり、ササミの胸先三寸で消すことができるのだ。
深さ一センチほどの傷をつけ柄だけがトモエの体に押し付けられる形となっていた。
だがたとえ刀身を消さずそのまま貫いたといえども突進は止まらなかっただろう。
その確信と共に絡みつくトラコウをそのままに身を翻したササミはその遠心力も利用してトモエの首に刃を一閃させた!
もしトラコウがササミの動きを阻害していなかったら?
いや、三本の枝分刀を突き刺していたら?と同じように、結果は変わらなかっただろう。
最速で最短距離を一切の躊躇も微塵の迷いもなく突き出されたトモエの刃。
振られた一閃がその首に触れたところで既にササミの左胸に深々と突き刺さっていたのだから。
「あんたは、『何』なんだがね?
まあええわ。リリィがパジャマパーティーやるってゆーてるからそん時にゆっくりと聞かせてもらうしぃ」
二人の激突の瞬間。
圧縮された時間感覚の中、トモエに声をかけ、満面の笑みを浮かべた。
そして時は解放され、通常の動きを取り戻す。
トモエは首筋から急速に石化が始まり、ほどなくして石像となるだろう。
ササミはトモエの首に赤い筋を残し、左胸に刺さった日本刀ごと吹き飛び窓を突き破る。
その時既にトラコウのロープによってがんじがらめになっており、その勢いをRことはできなかった。
「まさか半病人二人にやられるとはおもっとらせんかったがね。
シャオロン、将を気取るならトモエを助けてやりゃーせよ。
ま、これは残念賞だぎゃ。うけとりぃ。」
この言葉を最後に、ササミはポンという破裂音と共に煙に包まれた。
職員室に現れたササミは魔法によって複製されたもので、負けを認めて消滅したのだった。
あとに残されたのは刺さっていたトモエの刀と小さなケース。
それは石化状態を解除するアイテム「金の針」十本セットだった。
- 47 :
- >9-46
結果としてササミへの奇襲は失敗に終わった。
連携などはなから考えてないし、考えてたとしても即興で連携できるほど
互いの関わりが深いわけでもないのだから。無論、そんな事ササミがしる訳も無い。
その後少年少女三人に圧し掛かられる形となったクリスは、
全員がどいた後もしばらくの間身じろぎ一つしなかった。
ガスで姿が浮かび上がったが、あくまで『ガスの色が消えてしまう』から分かるだけであり
意識を失っている間も何故か術は解けていない。そのまま周囲と同化したまま時間は過ぎ……
唐突に何も無い空間に校舎に燃え移った火が吸い込まれていく。
その中心にいたのは……『クリス』ではなかった。
石化ガスの影響だろう、制服は崩れ落ちていて。
視線こそなかれど公共の場で裸身を晒したそいつは……『男』だった。
もっとも吸収した炎が局部を隠しているので辛うじて猥褻物陳列罪に問われる事はなさそうだが。
「……『あいつ』もえげつない事をする。
いくら計画のキモとは言え……そんなに『寄る辺』を得て欲しくないのか。
まぁいいさ、どの道今のままじゃ事を成す前に…『死ぬ』だけだもんな」
そんな独り言を呟く間も男に炎は吸い込まれていき、最終的に鎮火させてしまう。
吸い込んだ方は、羽が炎を纏っており見方によっては羽が燃えている様だった。
「人形、ね……俺もそうなんだろうよ。
三文芝居にも程がある、役を終えた筈の役者に無理矢理役を与えて
また舞台に立たせるなぞ。これも、生き恥と言うのかねぇ…?」
ぶつくさと呟きながら食堂に向かう、その男の右腕は『鈍い金色の甲冑』じみていた。
食堂のドアを蹴り開けると、そこもてんやわんやだった。
後の事を何も考えてない、ある意味羨ましい連中である。
「こんな所にいやがったか悪たれども。
そろそろお遊びも終わりにしようじゃないか。もう十分だろ?
……遊びたきゃ、元気になってからやれや」
言い放ち、ササミに向かって途中の障害物を片手で払い除けながら向かうスッパの野郎一人。
ササミにとっては、先頃自分に殺気を向けてきた透明な奴そっくりの気配を漂わせる
そいつは……ペンギンと猫と飼い主にとっては『もういないはずの人間』だった。
どう見ても柔らかそうには見えない右手はしっかと握られており、何をしようとしているかは
明白だった。すなわち『まっすぐ行って右でぶっ飛ばす』である。
- 48 :
- 冷静さとは真逆の位置にある現在の勇気
いつものササミなら子供扱いでちょちょいのちょいで倒して-いたのだろうが、それがどうしたことか動きが悪い
怒りに任せた一撃を危機一髪で避けたところまでは良かった
しかし、そのあとの水龍に飲まれた、いや飲んだ
ササミからしたら胸を見られて恥ずかしいらしいがいまの勇気には魔Rですらめには入っていなかった
>「うぅ〜!仕方がにゃーでよ!ありがたくくらやーせ!
勇気を睨みつけたと思うと弾丸のように飛んでくるササミ
「きやがれこのとりや・・・・へぶらっ!!」
無駄に迎撃しようとするにもその高速あんど魔Rの圧力に怒りの勇気も気圧される
衝突、圧倒的肉厚、R圧に潰される勇気
その圧倒的圧力によって吹っ飛ばされる勇気
>「まあそれより先に、乙女のR味わった代償を払ってもらわにゃーね。こんくらいでリタイアはせえへんのやろ?」
通常ならご褒美といえる光景だが怒り心頭の勇気はそれに
ガブリ
噛み付いた。噛み切るぐらい、まるでスッポンのように噛み付いた
もはや獣とかした勇気はササミにかぶりつく
噛み付きながらも時折獣のような叫び声をあげながらササミを離さない
- 49 :
- 【食堂】
Rミサイルで倒れた勇気に刀を向けて啖呵を切ったものの反応がない。
フリードもどこかへ隠れたのか、攻撃する様子がない。
けげんに重い首をかしげたところでリリペンギンから疑問の回答が寄せられた。
>「ピ(とりあえず、ササミちゃんはどこかで服を調達したほうがいいよ。
> 今のままじゃ皆、目のやり場に困って、全力で戦えないよ?
> 建物内だと、運動場近くの女子更衣室か、職員室隣の職員準備室に着替えがあると思・・・・・」
「……!」
今まで戦闘モードだったので気にしていなかったが、言われてようやく気が付いて声にならない悲鳴を上げた。
今の自分の姿がどういったものか。
戦闘中ならばそんなものどうという事もないのだが、一旦気がそれ気づいてしまうとやっぱり気になってしまう。
手袋の手ブラに水に濡れて腹巻状態のシャツ、そして下はパンモロと来たものだ。
集中力が切れたことにより、色々と余計な事に考えが巡ってしまう。
儀式呪文二つで魔力は殆ど残っていない。
先ほどの水龍噴射で腹の中もからっぽだ。
職員室に向かった複製はシャオロンとトモエとの激闘の果てに打ち取られた。
「あー、そやねえ。収穫はいろいろあったし、えー加減つかれてしもーたし。
どこかで落としどころ見つけて芸武の記録見ながらパジャマパーティーもえーなもなし」
ぽつりと呟いたところでルナが大きなタコをもって現れた。
>「ササミもリリィのことを大切に思うのなら離してやれよ。
>それとも困ったときに盾にするつもりかよ?ほーんと、魔族らしい考え方だぜ」
タコでリリィを誘い、ササミに解放するように挑発じみた言葉を発するのだった。
ルナの言葉に従いリリィを降ろしたが、その視線はルナから離れはしない。
何かを仕掛けようとしているのは明白。
はげた化粧からのぞく素顔に書いてあるのだから。
もちろん普段なら気づきはしないのだが、先ほど渡した羽飾りによってルナに対する認識力が高まっている。
それ故に見落とすことなくわずかな変化から察することができたのだ。
「何度もそんな不意打ちが効くとおもやーすなよ!」
ワディワジによって噴出されたタコ墨を華麗に避けて一気に間合いを詰める。
リリペンギンを掻っ攫い運動場近くの女子更衣室に案内させようとしたのだ。
流石に今の心理状態でこのままの姿をさらし続けるのには抵抗がある。
が、その思惑は乱入者によって打ち砕かれた。
- 50 :
- 食堂のドアが蹴破られ、現れたのは炎を纏う羽を持つ男(真っ裸)
一思いに一糸まとわぬ姿ならば彫刻のような美しさを感じたかもしれない。
だがしかし、局部を隠す炎のお蔭で逆に卑猥さをアピールしているかのようだ。
もちろん現れた瞬間からその視界に入っているササミは全身の毛を逆立たせながら悲鳴を上げる。
「ぎゃーーーー!!HENTAI!!!!!」
片手で障害物を払いのけながら何気にかっこいい事を言う乱入者だが、その姿では全くの逆効果。
かっこいいセリフで決めれば決めるほどその姿と局部の炎がセリフ自体滑稽に貶める。
真っ直ぐ進んできた乱入者は金色の甲冑じみた右腕を振りかぶり、風を切るように繰り出した。
轟音を立てる拳を躱し懐に潜り込んだササミはそのままカウンターを放つ。
さすがに素手で触るのは乙女の恥じらいが許さない。
テーブルにあったドレッシングの瓶を至近距離から目の前の局所を隠す炎に投げつけたのだ。
「は!あかへんわ!リリィ!こんなもん見ちゃダメ!」
カウンター投擲をした流れのまま乱入者をすり抜けたササミが最初にそして唯一思ったことがこれだった。
突然現れた全裸のHENTAIからリリィを守る。
それ以外の事は頭になかった。
悶絶しているであろう乱入者も、タコを与えているルナも。
そしてもちろん、怒り心頭の勇気すらも。
リリペンギンに向かい低空で飛ぶササミに飛びつく勇気。
ガブリと魔Rを噛まれてそのまま縺れて落ちた。
すぐに起き上がり引き離そうとするがスッポンの様に噛みついた勇気は離れない。
「ギャーー!こっちはケダモノだぎゃーーー!
はなしゃーせ!あんた前もRに噛みついて、まだ噛みつくんか!
痛いぎゃ!強く噛めば喜ぶとか妄想しとるクチなんか!?
大体あんた婚約者いるでねーのきゃ!
こんなケダモノだなんて!欠片でも良い男と思ったあたしがタワケやったわ!はなせしゃー!」
口汚く罵りなんとか浮き上がろうとするが、魔力も体力もない今のササミに勇気を引き離すことができない。
というか、半裸状態の女のRに噛みつき離れない男の図。
絵面的にはかなり危険な構図なのだが大丈夫なのだろうか?
そしてこの事が後日婚約者に伝わった時、勇気の運命はどうなるのだろうか?
- 51 :
- >43 >46
>「個人の武技など所詮は匹夫の蛮技、将たる者としてむしろ恥たる心得…
>なんてゆーても、逃げの一手ゆーのは情けにゃーでいかんわ」
「敵と己を知れば百戦危うからずってね
猪武者相手は罠にかけるのが一番ってことなのよ!」
非難の色の無い言葉にそう返し、身を翻して窓の近くに戻ったときには勝負は決していた。
トモエの捨て身の突きが、ササミの身体に深々と突き刺さっていたのだ。
勢いを殺せずに外に吹き飛ばされたササミに、シャオロンは慌てて目を転じる。
相手の戦意の有無を確認しないことには、うかつに目も離せない…のだが。
すでにササミから闘気は失せていた。
>「まさか半病人二人にやられるとはおもっとらせんかったがね。
>シャオロン、将を気取るならトモエを助けてやりゃーせよ。
>ま、これは残念賞だぎゃ。うけとりぃ。」
煙と共に手品のようにササミの身体は消え、後にはトモエの刀と小さなケースが残された。
シャオロンは、警戒せずに残された刀とケースを拾い上げる。
ササミの性格から、後に罠を残していくような事はしないだろうとわかっていたから。
「……金の針…ねえ?」
10本の針の中の1本をつまみ上げ、シャオロンは光にかざして見た。
彼女の母国には、色々と冗談のような技術を持った人々が存在する。
針一本で万病を治す『ゴッドヴェイドー』の使い手や、スーパードクターKADAと言われる天才医師などなど。
残念ながらシャオロンにはそんな技術はなかったし、金の針を使った事もなかった。
果たしてこれで石化を治せるのだろうか?
「ま。 やってみればわかるわよね」
どーせ自分の身体じゃないんだし。と続けながら、シャオロンは気楽にトモエに金の針を使ってみることにした。
ササミに言われるまでもなく、トモエの治療はするつもりでいたのだ。
見捨てるほどに薄情でもなかったし、”念のために”手は多いほうがいいのだ。
- 52 :
- 「ふ〜ん…上手くいったみたいね。 気がついた?」
トモエが石化から戻れば、右手で”普通の”針をくるくる回す機嫌良さそうなシャオロンが見えるだろう。
肩にはトラコウが戻っており、外からドラゴンと巨人が争う音ももう聞こえない。
今は必要なかろうと、シャオロンが一度アクライを校舎から遠ざけてガーディアンから引き離したのだ。
「それにしても驚いたわ。 いくらなんでも石化を気にせず突撃するなんてやりすぎなんじゃないの?
あーいうの、神風アタックとか言うんだっけ?
それとも桜花? 回天? まあ何でもいいわ。
私が石化から治してあげたんだから、感謝しなさいよ。
普通なら石化して砕け散って、葬儀屋を呼ばなきゃならないところなんだから」
饒舌に語りながら、左手に持った刀をシャオロンはトモエに差し出すした。
「こっちに来てたササミは、偽者の方だったみたいね。
ま、職員室には私がいるってわかってるんだから、危険な方に偽者を回すのは当たり前よね。
あれでササミもなかなか頭が回るじゃないの。
肝心の血を置いていかなかったのは気が利かないってものだけど、鳥頭にそこまで求めるのもかわいそうよね。
こっちは頑張ってるんだから、さっきのテレパシー組の方が頑張ればすぐに血も手に入るでしょうよ。
……。 ところで。
トモエにちょっと相談があるんだけど?」
上機嫌に話を進めていたシャオロンは、そこで雰囲気を改める。
「ササミのウィルスの効果は、こっちで確かめさせてもらったわ。
間抜けでも無能じゃない教師陣が、本当に寝込んじゃってるのも。
…抗体が手に入ったら、色々と使い道がありそうだと思わない?
有能な保険医が見抜けなかったウイルスだもの。
あのウイルスをフィジル島の外にばら撒けたら、抗体で金儲けでもなんでもできちゃうわよね」
トモエの関心についてあまり詳しくないシャオロンは、出来る事をぼかして告げる。
興味ないから。という断り文句は、あまり好ましいものではない。
「あんたの噂は幾つか聞いてるわ。
噂の内容が事実かどうかに興味はないし、あんたがしてる事もどうでもいい。
重要なのは、あんたにも得になる話だって事なのよ。
どう? 私に協力する気は無い?
今なら特別に分け前を3割もあげちゃうから」
ウイルスを島の外にばら撒く事にトモエが同意しようがしまいが、シャオロンの次にする事は決まっている。
ササミの血の採取、である。
- 53 :
-
>44-45 >47-52
> 「あー、そやねえ。収穫はいろいろあったし、えー加減つかれてしもーたし。
> どこかで落としどころ見つけて芸武の記録見ながらパジャマパーティーもえーなもなし」
「ピ!(ホント?!芸武終わり?やったやったー!・・・・・・あ、でも、記録見ながらって何のこと?」
ササミは、記録係でも用意したのだろうか?それとも、どこかの取材でも引き受けたのだろうか?
リリィは、やり手と評判の「学園新聞のスタッフ」を思い浮かべていた。
彼らは、今回のウィルス騒ぎは大丈夫だったのだろうか?
ルナが、巨大な大タコを持ってきてリリィに突き出した。
>「リリィ…こっちへおいで。このタコはきっと美味しいよ。
「ピー(タコー!全部もらっていいの?わーいわーい、食べる食べるー!!」
リリィは大喜びで、両羽をばたばたさせた。
野生の本能(食欲)の前では、すべてが色あせて見える。
ルナの挑発するような台詞もまったく耳に入らない。
「ピッ♪(タコ♪ごちそうタコ♪煮ても焼いてもおいしいよー♪)」
頭上で飛び交う火花もなんのその、ペンギンリリィはうきうきしながら、ルナのほうへとよちよち歩いていく。
そこで新たな人物が、ドアを蹴破って現れた。
現れたのは炎を纏う羽を持つ男(真っ裸)
「・・・・・・・ピ?」
リリィは歩を止めた。
濡羽色の羽根っぽい髪。
黒目がちな釣り目。
長身の男性は、確かにリリィやフリード、グレンの知る男性だった。
だが、決してこの場に現れるはずのない男性だった。
『フリード君大変!死んだはずの人が生き返って炎を纏ってユーレイになっちゃった!!
えっ、でもユーレイって炎にも強かったっけ?!はっ!もしかしてこれもササミちゃんのウィルスの副作用?!
ユーレイにもウィルスって効果あるの?!魔界ウィルスすごーい!!』
あまりに驚きすぎて、裸は完全にスルーである。
>「ぎゃーーーー!!HENTAI!!!!!」
が、当のレイヴンは、ササミからドレッシング瓶でのカウンターを食らいそうだ。
ちなみにドレッシングの中身の何割かは油である。
まあ、瓶が割れるほどの衝撃を受けたなら、いくら炎が平気でもなかなか厳しいものがあるだろうが。
>「は!あかへんわ!リリィ!こんなもん見ちゃダメ!」
「ピ?(えっ?)」
>こちらに向かって低空で飛ぶササミに飛びつく勇気。
>ガブリと魔Rを噛まれてそのまま縺れて落ちた。
『キャー!!HENTAI!!エンドウ君それセクハラ!婚約者がいるくせに何してるのー!!』
すぐに起き上がり引き離そうとするがスッポンの様に噛みついた勇気は離れない。
ササミとエンドウは、床の上でどったんばったんしている。
もしもこのことが婚約者に知れたら、エンドウだけでなくササミの命も危ないだろう。
- 54 :
- しばらくササミとエンドウの格闘を見ていたが、ふとリリィは気づいた。
『ね、ね。フリード君にルナちゃんにレイヴンさん、これってもしかして、総代のエンドウ君がササミちゃん捕まえたってことだよね?』
リリィはつぶらな瞳で一同を見上げた。
『ということは、芸武はこれにて終了?皆、元に戻る?』
リリィは振り向き、まだ揉みあっているササミとエンドウを見てため息をついた。
『・・・・・・・・・・誰か、あれ、止めてきてくれないかなぁ?』
ゲームが終わったのだとしたら、あの姿のササミを拘束しているエンドウは役得・・・・否、大変外聞が悪いに違いない。
だが残念ながら、いくらリリィでも、あの間に割り込むだけの度胸がない。
せいぜい吹き飛ばされるのがオチだ。
「ピ。(ユーレイのわりに元気そうでよかった。お久しぶりです、レイヴンさん。
ところで・・・・・クーちゃ、クリスにはもう会われました?)」
リリィはテレパシーでなく、ペンギン語で挨拶をした。
果たしてレイヴンはペンギン語が理解できるだろうか?それ以前に、会話できる状態、だろうか?
「・・・・・・・・ピッ!ピーッ!!」
シリアスな話は長くは続かない。
ペンギンとなったリリィは、人としての理性より本能に忠実だからだ。
リリィはルナの足元に移動すると、羽をばたばたさせながらぴょんぴょん飛び跳ねている。
どうやら、ルナの持っているタコ足に食いつこうとしているようだ。
- 55 :
- >「ピー(タコー!全部もらっていいの?わーいわーい、食べる食べるー!!」
リリィは羽根をバタつかせて嬉しそうだった。
そんな姿にルナが破顔すると、ルナの目に映っている食堂は蕩けだし綺麗なお花畑に変わってゆく。
>「ピッ♪(タコ♪ごちそうタコ♪煮ても焼いてもおいしいよー♪)」
「リリィ〜〜〜〜♪」
リリィは一番のお友達。リリィは心のオアシス。リリィは納豆についている醤油。
>「ぎゃーーーー!!HENTAI!!!!!」
すると、空想を突き破るササミの悲鳴。ルナが現実に戻るとケダモノと化した炎道がササミの魔Rに齧り付いている。
さっき裸になったルナを笑った報い…と思いたかったけど流石にこれは可哀そうだった。
>『ね、ね。フリード君にルナちゃんにレイヴンさん、これってもしかして、総代のエンドウ君がササミちゃん捕まえたってことだよね?』
>リリィはつぶらな瞳で一同を見上げた。
>『ということは、芸武はこれにて終了?皆、元に戻る?』
「じゃねーの。ちっと尺に触るけど、さすが総代ってとこだな」
>『・・・・・・・・・・誰か、あれ、止めてきてくれないかなぁ?』
と続けてリリィのテレパシー。
「……やってみっか。止まんないかもしれねーけど」
ルナは合点承知と胸を軽く叩いて見せると、炎道にタクトで魔法をかける。
それはいつもの逆詰め魔法ではなく、その素となる反転魔法。
だからドレッシングで凄いことになっているであろう炎道の局部は氷の属性に反転され
そこから水龍によって水浸しにされた食堂がカチカチと凍り始める。
そして出来上がったのはペンギンリリィが喜びそうな氷の世界。
「半裸じゃ風邪ひくぜササミ。炎道も少しは頭を冷やしやがれ」
ふんと鼻から息を吐いて、二人を蔑むような目で見下ろすルナだった。
>「・・・・・・・・ピッ!ピーッ!!」
安堵のルナは、足元で啼くリリペンギンにタコを与える。
でもちょっと悲しくなる。こんどはリリィが、タコに夢中で自分を見てくれないから。
(こんなの…リリィじゃないよ……)
タコに抱きついているようなリリペンギンを抱きかかえているルナの胸に去来する思い。
それは虚無感だった。
「はやく元に戻してあげるからね」
ペンギンの頬にすりすりと頬を寄せるルナ。 涙がほろほろと流れ落ちる。
「おら!保健室にいくぞササミ!その血から抗体を作って、みんなを元にもどす!いいよなっ!?」
ルナの目からは黒い涙が流れていた。
- 56 :
- >48-51、>53-55
>「ぎゃーーーー!!HENTAI!!!!!」
>真っ直ぐ進んできた乱入者は金色の甲冑じみた右腕を振りかぶり、風を切るように繰り出した。(中略)
>テーブルにあったドレッシングの瓶を至近距離から目の前の局所を隠す炎に投げつけたのだ。
元より男に文字通りの鉄拳を直撃させる気など無かった。
当たられちゃ困るからこそ、小細工全部ぶん投げて真正面から向かっていったのだから。
……その代償がHENTAIの烙印と急所へのクリティカルと言うのは実に割に合わない。
「ーーーーーーーー!!!!!!!」
ササミのそれとはベクトルの異なる声にならない悲鳴を上げ、拳を突き出した格好のまま
若干内股になって痛みを堪える男だったが、その外見は唐突に変化を始めた。
男は一言で言えば不安定な状態であった。それを何とか安定化させようと無意識さんがログインした時
股間部に強い衝撃が加わり、男は『男』に生まれた事を悔やんでしまった、のかどうかは
知らないが……傷だらけで脂肪分の足りない野性的かつ角ばった肉体は若干丸みを帯び
ガチガチの胸板にはその体躯にしては大きめの脂肪の塊が二つ出来上がっていた。
腰みのの如く纏わりつく炎のせいで確認は出来ないが、
恐らく股間部の無駄に完成度の高いネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲は
消失しているのだろう。そんな自分の変化に、『元男』は激痛にかまけてて気づかない。
>『ね、ね。フリード君にルナちゃんにレイヴンさん、これってもしかして、総代のエンドウ君がササミちゃん捕まえたってことだよね?』
ようやく痛みが引き、周囲に気を配れる様になった『元男』……レイヴンは
ペンギンことリリィから発せられているテレパシーを受け取り考え込む。肘に
相当に柔らかい感触がある筈なのにまだ自分の肉体の変化に気付かないでいる。
「そうなんじゃないか? あの空飛ぶフライドチキンはヘロヘロで逃げられそうにないし、
真っ赤なスッポンは逃がすつもりもないだろうし。しかし……ひどいザマだ」
レイヴンの声は、声帯も変化してしまったのだろう、元の姿からは想像も出来ないレベルに
可愛らしくなってしまっていた。髪もショートからロングになっていて、どこからどう見ても『女』だった。
……それだけに、女の姿になっても消えない全身の傷と脂肪分の足りない筋肉質な体つきは
普通の少女と呼ぶには二の足を踏ませる。腹筋とか綺麗に八つに割れてるしね。
- 57 :
- >「ピ。(ユーレイのわりに元気そうでよかった。お久しぶりです、レイヴンさん。
> ところで・・・・・クーちゃ、クリスにはもう会われました?)」
最後、リリィは何故かペンギン語で話しかけてきた。普通に考えれば学のないレイヴンが
ペンギン語など聞き取れるわけないのが分かるだろうに……所詮は鳥畜生の脳みそか。
だがしかし、何とも信じられない事に
『ピィィ。(ああ……確かに久しぶりだ。
クリス、か。随分と他人行儀にあいつの事を呼ぶんだな?)』
レイヴンはペンギン語で返事をしたのだ! 今の姿のお陰でその可愛らしい鳴き声には
違和感が無かったが……内容は質問に答えないばかりか返答に困る様な代物だった。
リリィを見つめるその瞳はスッと細められ、複雑な表情を覗かせる。言いたい事が多そうだ。
>『・・・・・・・・・・誰か、あれ、止めてきてくれないかなぁ?』
>「……やってみっか。止まんないかもしれねーけど」
「どうせ誰も触りたくないんだろ? 痴女の確保は任せろ」
先程までバタバタとくんずほぐれつギシギシアンアンしてた破廉恥男女に音もなく忍び寄り
背後から思いっきり首根っこを掴んで両者を持ち上げる。いくらムキムキと形容できそうな
腕をしているとは言え人一人を支えるには心許ない細さに変わりは無い。
しかし、現実にはびくともしていないのだ。そんな力あったっけ?
「しかし、この寒さはいささか堪えるな……色々な意味で。
さて破廉恥女、観念して血清作成の為に血液を提供して頂こうか。
それとな……痴女にR呼ばわりさせる筋合いはねぇ!」
そういう自分も今では立派な痴女なのだが、まだ気付いてない。当然自覚も無い。
しかもルナの反転魔法のせいで炎は既に消えており局部もはっきり見えてしまっている。
……ネオアー(ryも含めて、『生えてなかった』。属性を反転されたのに凍らねーしな!
「それと炎道、お前には山ほど説教がある……Rに噛み付くとは何事だ。
Rとはなぁ、食い千切るもんじゃない甘噛みするもんだ。
ほれ見ろ、歯形が付いちまってるじゃないか。こんな事されて喜ぶのは
真性マゾヒストだけだ。確証も無いのにこんな事しちゃダメじゃないか!
……それになぁ、嫁入り前の少女だぞ。傷物にしちまったら責任取るのか? 取れるのか?」
唐突にR的な説教を始めるスッパの『女』一人。至って大真面目なのが救えなさバツ牛んである。
- 58 :
- 魔Rに噛みつかれて縺れる勇気とササミ。
怒りで正気をなくした勇気は獣の如き唸り声をあげて離さない。
ササミの罵声も耳に届いていないかのように。
消耗した魔力と体力では引きはがすことができず、たとえ体力が万全であってもこうなっては力が出ない。
無理矢理引きはがそうとすれば魔Rが伸びてしまい、今までの魔R維持の努力が水泡と化してしまうからだ。
羞恥と怒りの中、妙案もなくただもがくだけだったが、そこにリリィの核心をつく言葉が放たれた。
>『ね、ね。フリード君にルナちゃんにレイヴンさん、これってもしかして、総代のエンドウ君がササミちゃん捕まえたってことだよね?』
>『ということは、芸武はこれにて終了?皆、元に戻る?』
その言葉にはっと我に返るササミ。
そう、今の状態はまさに捕まった状態。
すなわち鬼ごっこという芸武はササミの敗北で決着がついたのだ。
もはや言い訳の仕様がない。
ルナは場を収めるべく属性反転魔法を使い、乱入者を纏う炎の属性が反転し氷ついて行く。
その余波は食堂全体に及び、勇気とササミが縺れている周囲も氷ついて行くのだ。
氷で勇気の怒りの炎も鎮まるだろうか?
>「おら!保健室にいくぞササミ!その血から抗体を作って、みんなを元にもどす!いいよなっ!?」
だが、ルナの放った終結の言葉は周囲の氷とは裏腹にササミの胸の内に黒い炎をともした。
元々勝ち負けは気にしていない。
抗体を作るために血が必要ならば分け与えるのは吝かではない。
ウイルスで弱体化した人間たちがどのような行動に出るかは十分に観察できた。
だが、だが…
「う〜〜〜〜〜〜〜〜…こ、こんな負け方……納得できやせーへんわーーーー!」
勇気にかじりつかれながら敗北を突きつけられたササミの声がこだまする。
そして怒りに燃えたササミが意を決し、その言葉を放つ!
「ホルスタウロスの迷宮の試練の果て、神Rの恩恵、今ここに返上すっ!!!!」
それはササミが苦労の末手に入れた魔Rとの決別の言葉。
言葉を言い切った直後、ササミはピンクの煙に包まれた。
その煙の中で勇気は今まで噛り付いていたモノが突如として消えたことを知るだろう。
口と手から今まであったものがすり抜けた事を。
煙はすぐ晴れ、床には噛り付いていたままの体勢の勇気が。
中には怒りに燃える瞳のササミがあった。
しかしササミは今までとは大きくその姿を変えていた。
変化はただ一点にして最大のもの。
そう、胸につけた魔Rが跡形もなく消え失せ、手袋の手ブラも一つで有り余るようになっていた。
ササミの生来の胸はまな板というに相応しいAAカップ。
膨らみを感知するのが至難の業なほどの。
コンプレックスに感じていたササミは魔界にあるホルスタウロスの迷宮の試練に打ち勝ち、その中心部にいた神Rのホルスタウロスの恩恵で魔Rを得ていたのだ。
敗北の在り方を受け入れられぬササミは恩恵を投げうち、魔Rを捨てて本来の姿となって宙へと帰還したのだ。
- 59 :
- 「こ、こんな負け方、認めへんだがね!絶対にいいいい!!!」
絶叫と共に消えるササミ。
とほぼ同時に食堂の床と言わず天井と言わず壁と言わずテーブルと言わず。
あらゆる場所が爆ぜるように砕け、直後に食堂内を吹き荒れる暴風!
乱れ飛ぶテーブル、椅子、その他もろもろ。
暴風の中、見ることができるだろう。
全身打ち身で血を流すササミの姿を。
その姿から何が起こったかを推測することができる。
この同時多発爆発と暴風はササミが移動した事で引き起こされたのだ。
魔Rを捨てた事で、本来のスピードを取り戻したのだ。
だがあまりの速さにササミ自身の感覚が追いついていない。
方向転換はどこかにぶつかることで可能となっているのだろう。
「もう小細工はなしだがね!捕まえられるのなら捕まえてみやーせ!!!」
ありえない敗北の仕方と魔Rを切り捨てた事によりもはやササミに正気は残っていない。
文字通り目にもとまらぬ速さで食堂を飛びぬけ、その勢いのまま食堂、購買部、談話室などいくつかの壁を突き破る。
壁に開いた穴は後を追うように発生した衝撃波と真空刃で砕け散りワンフロアーぶち抜きにする勢いで部屋を広げていく。
もちろん体当たりしての破壊活動なのでこのままじっと待てば自爆して終わるだろう。
だがそれまでに校舎がどこまで破壊されるか。
もちろん破壊されるのが校舎だけとは限らない。
身を守るためにも、それよりも何よりも、トチ狂った魔界の者に目にもの見せてやってくれ!
- 60 :
- >52
> 「ふ〜ん…上手くいったみたいね。 気がついた?」
石化から回復したトモエの目に最初にうつったのは、
右手で”普通の”針をくるくる回す機嫌良さそうなシャオロンだった。
トモエは石化する直前のことを思い出そうとした。
確かに自分の放った突きはササミを貫いたはずだが、刀もササミもどこへ行ったのやら。
> 「それにしても驚いたわ。 いくらなんでも石化を気にせず突撃するなんてやりすぎなんじゃないの?
> あーいうの、神風アタックとか言うんだっけ?
> それとも桜花? 回天? まあ何でもいいわ。
> 私が石化から治してあげたんだから、感謝しなさいよ。
> 普通なら石化して砕け散って、葬儀屋を呼ばなきゃならないところなんだから」
「…Rつもりの無い武器なんて、恐れるに足りない。そうじゃありません?」
トモエは切先の消滅している枝分刀を体から抜きながらそう言った。
カッコ悪いので「私冷静さを失ってましたのよー!」とは言えなかったからだ。
「ありがとう、シャオロンさん。なんだか私たちって、お友達…みたいね。」
シャオロンから刀を受け取ったトモエの顔が赤くなったのは病気のせいだけではなさそうだ。
だが、すぐに真顔に(いやずっと無表情だけれども)もどったトモエは刀を持ち替え何かを探し始めた。
ササミの死体だ。
> 「こっちに来てたササミは、偽者の方だったみたいね。(後略)」
「さっき斬ってしまった方が偽物でよかった。安心しました。」
トモエは心にもないことを言うと、死体探しをやめてシャオロンの“相談”に耳を傾けた。
曰く、ササミのウイルスと抗体で金儲けやらができるのではないかということだ。
> 「あんたの噂は幾つか聞いてるわ。
> 噂の内容が事実かどうかに興味はないし、あんたがしてる事もどうでもいい。
> 重要なのは、あんたにも得になる話だって事なのよ。
> どう? 私に協力する気は無い?
> 今なら特別に分け前を3割もあげちゃうから」
「…誘ってくれて、どうもありがとうございます。確かに、悪い話ではないのでしょうね。
ですが、申し訳ありません。お断りいたします。」
トモエのシャオロンに対する態度が急によそよそしくなったのは、シャオロンがトモエの噂を聞いたと言ったからだろう。
トモエには普段の品行からは考えられない暗い噂が絶えず学園中で囁かれていた。
曰く、人殺しである。
曰く、人間の内蔵を抜き取ってそれを材料にした薬を販売している。
曰く、正義と称して何の罪もない人間を殺している。
曰く、エトセトラ、etc,etc………
「シャオロンさん。あなたが私のどんな噂を聞いたのかは存じ上げませんが、私も一つ噂を聞いたことがあります。
世の中には、お金を払えば人を殺してくれる仕掛人という人達がいるそうです。」
トモエは、あくまでも噂であり、自分とは無関係とばかりに話を続けた。
「はらせぬ恨みをはらし、許せぬ人でなしを消す。いづれも人知れず、仕掛けて仕損じ無し。人呼んで仕掛人。
お互い、余計なトラブルとは無縁でいたいと思わない?…今回の話は聞かなかったことにしておきます。
仕掛人がどこにいるかわからないもの。そう、例えばあなたのすぐそばにもいるかもしれない。」
その時、遠くから壁でも突き破っているかのような破壊音が聞こえてきた。
その音は少しずつこちらに近づいてきているようだ。
トモエは音をたてずに刀を鞘に収めた。
「とにかく、今はゲームを終わらせましょう。………あ、待って」
すぐにでも職員室を出てササミを追うところであったが、なぜかトモエは引き返した。
見ると、トモエは女性教員の机の上に置いてあるヌイグルミに興味津々のようだ。
ネズミの着ぐるみをかぶったネコのようなそのヌイグルミをトモエは手に取った。
『ミャンちゅう☆だミャ〜ん!』(※トモエの腹話術です)
トモエの顔がちょっと赤くなった。…たぶん、あまり相手にしない方が良いだろう。
- 61 :
- 「げぇーレイブンさん!?」
『成仏したとばかり思っていたよ』(猫語)
はたして彼は本当にレイブンなのだろうか?
それともまた別の霊なのだろうか?
だがそのレイブンは何かが違っていた
・・・・そう本来男であるはずのレイブンは女の体になっていたのだ
「まあ元の体であるクリスさんが女の子だから本来はこれで正しいのかもしれませんね」
『裸の女を前に冷静だねフィー坊』(猫語)
「まあ女の人の裸は姉さんで慣れてますから」
つい最近まで一緒にお風呂に入っていたらしいフリードリッヒとフリージア
だが身内の裸と他人の裸を一緒にしてしまって良かったのだろうか
何を考えたのかササミの胸に噛み付く炎道
そして急に貧Rと化すササミ
どうやらそれが本来の姿のようである
そして本当は貧Rな事がばれたのがショックだったせいか
まるで暴風のように暴れだすササミ
「赤い蝶は周りに飛び散ってますけど生血じゃないと意味が無いんですよね」
血を赤い蝶と例えるフリードリッヒ
確かに例え血を流していても壁や床に飛び散ってしまえばもう生血とは言えないだろう
『そんなことはどうでもいいから追いかけるよフィー坊』(猫語)
「分かってますよ!」
と靴の下に氷の刃を生み出し目の前を凍らせてスケートの要領で追いかけるフリードリッヒ
果たしてこの方法で追いつけるのだろうか?
ちなみに魔力の低下のせいで生み出した氷の道は人一人分の幅しかなく
他のメンバーの邪魔にはならないだろう
- 62 :
- >55-61
>「げぇーレイブンさん!?」
>『成仏したとばかり思っていたよ』(猫語)
「ピー(私も、私も!』
>『ピィィ。(ああ……確かに久しぶりだ。
> クリス、か。随分と他人行儀にあいつの事を呼ぶんだな?)』
「ピ(・・・・・・クーちゃん、で通じなかったら、気まずいじゃないですか。
この間大怪我してから、クーちゃんにはちょっと・・・・避けられてる感じで」
まあ、外見がレイヴンでも中身が彼女なら、リリィ=ペンギンとわかった時点でこの場を立ち去っているだろうが。
「ピ(鳥の言葉が通じるのなら、やはりレイヴンさんで間違ってないみたいですね。:
ルナはエンドウとササミの頭を冷やさせるために、逆詰め魔法で食堂を氷の世界に変えた。
>「どうせ誰も触りたくないんだろ? 痴女の確保は任せろ」
そしてレイヴンは、エンドウに食いつかれていたササミを持ち上げて確保し、エンドウと彼女の両方を説教している。
『全裸の人に説教されたくないと思うよ、うん』
>「う〜〜〜〜〜〜〜〜…こ、こんな負け方……納得できやせーへんわーーーー!」
それはそうだろうな、とリリィも思った。
>「ホルスタウロスの迷宮の試練の果て、神Rの恩恵、今ここに返上すっ!!!!」
>言葉を言い切った直後、ササミはピンクの煙に包まれた。
そして、の煙が晴れると、ササミの胸は風船のようにしぼんでいた。
急に質量がへったせいで、レイヴンの拘束も解けてしまっている。
『えっ!!レイヴンさんその体どうしたんですか?!
はっ!もしかしてササミちゃんの魔Rって譲渡可能だったの?!
ずるいっ!なんでよりによってレイヴンさんにあげちゃうのよー!!いらないでしょ普通!!』
そういう問題ではない。
あと・・・・・・今頃レイヴンの性別変化に気づくとは、鈍すぎである。
>「こ、こんな負け方、認めへんだがね!絶対にいいいい!!!」
絶叫と共に消えるササミ。
とほぼ同時に食堂の床と言わず天井と言わず壁と言わずテーブルと言わず。
あらゆる場所が爆ぜるように砕け、直後に食堂内を吹き荒れる暴風!
乱れ飛ぶテーブル、椅子、その他もろもろ。
『風の魔法?!一瞬で食堂がめちゃくちゃになったよ!!あ、でもなんでササミちゃんあんな怪我しえるの?
暴風の魔法は、生傷とか青あざを対価に発動してるの?』
テレパシーで見たままを実況しているが、少し考えれば暴風の正体に気づくだろう。
それに食堂から移動したササミは、全ての壁をぶち破る勢いで移動している。
ササミの動向をテレパシーで伝えなくても、彼女の居場所は誰の目にも明らかになっていた。
- 63 :
- 「ピ!(あっ!血の跡が!)」
>赤い蝶は周りに飛び散ってますけど生血じゃないと意味が無いんですよね」
『そ、そうか・・・・・な?』
リリィはがっかりした。そして、回復系の授業を受けているのに、はっきりした結論が出せない自分にがっかりする。
『ああ、ここにセラがいてくれたら・・・・・・』
そういいかけて、やめた。
セラを頼るのはよくない。そもそもリリィがもっとしっかりしていれば。
『ごめん、今の忘れて・・・・・・』
セラはどこに行ってしまったのだろうか?この暴風に巻き込まれず、どこかで休んでくれているといいのだが。
>靴の下に氷の刃を生み出し目の前を凍らせてスケートの要領で追いかけるフリードリッヒ
「ピ!(来い!)』
リリィは片方の羽を高々と上げると、彼女の箒が戻ってきた。
箒には、ぼろぼろになったフリードのマントが引っかかっている。
(途中、箒にぶら下がっていた鞄が、エンドウの横っ面にぶつかった気がしたが、きっと気のせいだろう)
『私たちも後を追いましょう!
ササミちゃんを追うつもりなら、レイヴンさんは、そのぼろ布で大事な場所を隠してください!』
水着くらいの布地分しかないようだが、無いよりはマシだろう。
『それからルナちゃん、ルナちゃん、体は大丈夫?』
ちょうどルナの腰の位置に、リリィの箒がふよふよ浮いていた。
乗れ、ということなのだろう。
『ササミちゃんを追いかけよう!
この箒は一人乗りだけど、私と一緒なら飛べるよ。
ルナちゃん魔法たくさんつかったでしょ?少しでも体を休めてて』
去り際、リリィはエンドウを一瞥した。
『ササミちゃん、今回のことを記録してるみたいだよ?
婚約者のマコトちゃんが元気になって今回の記録みちゃったとしたら、どんな顔するかな?』
返事は期待しないまま、そのまま食堂を去る。
『ササミちゃん!どんな形であれ負けは負けだよ!
納得できないからって、自分で決めた約束事を破るなんていけないことだよ!』
破壊音を立てて移動しているササミに、必死で呼びかけてみる。
ササミは食堂、購買部、談話室をめちゃくちゃにしつつ、かなり早い速度で移動していた。
幸い、今のところ巻き込まれて大怪我を負ったものはいないようだ。
『えー、聞こえますか?リリィです。
ササミちゃんは、購買、談話室をぶち壊しつつ講堂方面へと向かっているようです。
体調の悪い人、戦闘できない人は、今すぐ直線上コースから退避してください!』
そういえばプリメは無事だろうか?
もし体調が悪化して保健室付近で休んでいるなら、直撃コースから外れている。安全だろう。
>トモエさん、シャオロンさん
リリィはテレパシーで警告しつつ飛んでいたが、職員室付近で見覚えのある人物と再会した。
『トモエさん!無事でよかった!・・・・・・あれ?』
彼女の持っていたぬいぐるみが無いことに気づく。
そしてちょっと考え、両羽をぽんとたたいた。
『もしかしてこの子、トモエさんのぬいぐるみが変身した姿ですか!すごい!かっこいい!』
いろいろ地雷を踏んでしまっているが、リリィは気づいていない。
『ササミちゃんは講堂方面に移動してます!早く追いついて捕まえないと、寮に突っ込んだら大惨事です。
それに、いくら回復能力が高いからって、血を流しすぎたら死んでしまいます。
早くとめないと!どうか協力してください!』
まさか目の前の人物が「討伐隊長」その人だと思いもしないリリィは、いいたいことだけ言うとそのまま箒を先に進めようとする。
- 64 :
- >60 >63
>「…誘ってくれて、どうもありがとうございます。確かに、悪い話ではないのでしょうね。
> ですが、申し訳ありません。お断りいたします。」
「あっそ。 ノリの悪い奴」
シャオロンが見るからに不機嫌そうになったのは、別によそよそしい態度をとられたからではない。
基本的に思い通りに行かないのが嫌いなだけである。
>「シャオロンさん。あなたが私のどんな噂を聞いたのかは存じ上げませんが、私も一つ噂を聞いたことがあります。
> 世の中には、お金を払えば人を殺してくれる仕掛人という人達がいるそうです。」
「ああん?」
急に何を言い出すのか…と、相変わらずの不機嫌な表情で答えるシャオロンは気にせず。
トモエは言葉を続ける。
>「はらせぬ恨みをはらし、許せぬ人でなしを消す。いづれも人知れず、仕掛けて仕損じ無し。人呼んで仕掛人。
> お互い、余計なトラブルとは無縁でいたいと思わない?…今回の話は聞かなかったことにしておきます。
> 仕掛人がどこにいるかわからないもの。そう、例えばあなたのすぐそばにもいるかもしれない。」
「ふうん…仕掛け人が側に……ねえ?」
先刻までの機嫌の悪さは消えうせ、今度は面白い話を聞いた。という表情で、シャオロンはトモエを見返した。
そういう奇特な連中がいることは、シャオロンも噂に聞いたことがある。
もちろんそれは噂であって、実際の所そんな都合の良い連中などいないだろうとシャオロンは思っていた。
社会的弱者のあこがれる正義の味方などそうそういるものではないし、いれば”噂”ではなくなるだろうから。と。
しかし、この状況で一見関係無いように見える噂を持ち出すトモエに、シャオロンは大変興味を引かれた。
平たく言えば、「私は仕掛け人です」と自己紹介されたと考えたのだ。
外から随分と豪快な破壊音が聞こえ、それはどんどん近づいてきているようだった。
ササミの本体の方が暴れていると考えてまず間違いないだろう。
>「とにかく、今はゲームを終わらせましょう。………あ、待って」
「何? 仕掛け人が聞き耳でも立ててたのに気づいたの?」
部屋を出る足を止めて軽口を叩くシャオロンに、トモエは微妙なぬいぐるみを見せた。
>『ミャンちゅう☆だミャ〜ん!』(※トモエの腹話術です)
顔を赤らめるトモエに、シャオロンは世にも複雑怪奇な表情を返した。
トモエの言動が、シャオロンの想像の範疇を(斜め上方向に)遥かに超えるものだったからだ。
「そ、そうね…わりと可愛い……んじゃないかしら…。
気に入ったなら、病気が広がるのを食い止めたお礼にもらって帰ってもいいかも……」
どう言っていいものかと迷ったシャオロンは、珍しく断定せずに、あさっての方向を見ながらもっともらしい事を口にする。
「ま、まま、まずはササミから生き血を絞り取ってきましょうか。 ね!」
反応に迷うまま、シャオロンは強引にそう締めくくって職員室を出た。
なぜか、あまり相手にしない方が良いように思えたのだ。
自身の考え出したトモエ=仕掛け人説に大きな疑問符をつけながら歩くシャオロンは、次に見たものにも驚かされた。
「なによこれ!? どうなってるのいったい!」
先刻と同じテレパシーが危険を知らせてくるが、目撃していないのでは詳しい事情などわかろうはずもない。
破壊された校舎に唖然としているうちに、テレパシーを発していた張本人(らしきペンギン)が箒に乗って近寄ってきた。
>『トモエさん!無事でよかった!・・・・・・あれ?』
>(中略) 早くとめないと!どうか協力してください!』
「ちょっと待ちなさいペンギン」
それまで黙って聞いていたシャオロンは、先に行きかけたリリィの頭を問答無用で捕まえる。
「討伐隊隊長のシャオロン様に状況説明もしないでどこに行く気?
そちらで何があったのか、手短に正確に説明しなさい!」
- 65 :
- >64
「ピー!(ひー!話します話します!お願いだから食べないでー!!)」
恐怖のあまりパニックになったリリィは、立て板に水とばかりに説明しはじめる。
ただし・・・・・・ペンギン語で。
シャオロンが鳥の言葉に明るくなければ、誰か別の人から説明してもらう必要があるだろう。
- 66 :
- >63>64>65
> 「そ、そうね…わりと可愛い……んじゃないかしら…。
> 気に入ったなら、病気が広がるのを食い止めたお礼にもらって帰ってもいいかも……」
とシャオロン。
「私と一緒に来る?」
トモエはぬいぐるみにそう語りかけた。
『もちろんだミャ〜ん!』
> 「ま、まま、まずはササミから生き血を絞り取ってきましょうか。 ね!」
> 反応に迷うまま、シャオロンは強引にそう締めくくって職員室を出た。
すぐにトモエもそれに続き、そして破壊された校舎内の様子をシャオロンと共に見た。
> 「なによこれ!? どうなってるのいったい!」
詳しい事情はわからないが、どうやらこれもササミの仕業らしいことが、
先刻から聞こえてくるテレパシーによって知ることができた。
ほどなく、そのテレパシーの発信源らしきペンギンが二人の前に現れた。
> 『トモエさん!無事でよかった!・・・・・・あれ?』
「あなた、たしか保健室で会いましたね?」
トモエは未だにそのペンギンが女子生徒のリリィだとは知らないのだ。
> 『もしかしてこの子、トモエさんのぬいぐるみが変身した姿ですか!すごい!かっこいい!』
『それは違うんだミャ〜ん!シャオロンちゃんはミー達の同級生なんだミャ〜ん!』
とミャンちゅう☆。
> 『ササミちゃんは講堂方面に移動してます!早く追いついて捕まえないと、寮に突っ込んだら大惨事です。
> それに、いくら回復能力が高いからって、血を流しすぎたら死んでしまいます。
> 早くとめないと!どうか協力してください!』
> 「ちょっと待ちなさいペンギン」
> それまで黙って聞いていたシャオロンは、先に行きかけたリリィの頭を問答無用で捕まえる。
> 「討伐隊隊長のシャオロン様に状況説明もしないでどこに行く気?
> そちらで何があったのか、手短に正確に説明しなさい!」
> 「ピー!」
シャオロンに捕まえられたペンギンはパニックを起こして、人間には理解できないペンギン語で事情を説明し始めた。
突如二人(一人と一匹?)のすぐそばで強烈な光が輝いた。
光が消えると、そこには白いセーラー服姿に変身したトモエ・ユミが現れる。
そう、彼女こそは学園の正義を守る使者、魔法少女トモエ・ユミなのだ!
「魔法少女トモエ・ユミ……!」
彼女が魔法少女に変身するタイムは、僅か0.05秒に過ぎない!
では変身プロセスをもう一度見てみよう!
「ロック先生がいない今、学園の正義は私が守る。変身…!」
トモエはババッ!とポーズを決めると、足元に浮かぶ魔方陣から生まれた光に包まれた。
光のベールに包まれたトモエはいつの間にか白いセーラー服姿に変わる。
そう、彼女こそは学園の正義を守る使者、魔法少女トモエ・ユミなのだ!
「魔法少女トモエ・ユミ……!」(※大事なことなので二回言ったわけではありません)
「ペンギンさん、事情はわかりました。あとは私にまかせてください。」
トモエはさっぱり事情がわからないが、リリィにそう言うとササミの手袋を取り出した。
トモエがあらかじめ東方の銀貨を中に詰めた手袋だ。
その手袋が未だにササミの方向を指さしていることを確認したトモエは、中の銀貨に魔法をかけた。
「プリメさん。あなたの魔法の力、使わせてもらうわね。…キロ・バレット!」
銀貨の詰められた手袋は弾丸の魔法によりササミめがけて放たれた。
射線上にある物を破壊しながら、銀貨は手袋が破れないかぎりササミを追いかけ続け、彼女を撃つだろう。
「あれだけでササミさんを止められるか、自信はないわ。すぐに後を追うわよ。」
テンションが上がってきたトモエは4次元ポケットからマジカル木刀(※特に魔法はかかってない)を取り出し、
少しふらつきながら銀貨の後を追った。
- 67 :
- >>57
>「それと炎道、お前には山ほど説教がある……Rに噛み付くとは何事だ。
「うん。説教してあげて」
化粧の剥げた顔を、くしゃりと崩して、寂しそうに微笑むルナ。
>>58-59
>「こ、こんな負け方、認めへんだがね!絶対にいいいい!!!」
「……ササミが感情を、トロしてる?」
障子のように破れてゆく校舎の壁を見上げながら、ルナは独語していた。
その顔は、涙で落ちたマスカラが、頬に黒い筋を残していた。
だからルナの気持ちはどんどん落ちてしまう。
ああダメだ…化粧をなおして、強気をとりもどさないと。
そう思ったルナは、化粧をハンカチで拭いて化粧セットを取り出してみた。
でもそれは全部水でどろどろになっていたし、ところどころ石化していた。
(ああ、だめだ……おわった………)
魔Rを自ら捨てたササミは、暴風の如き素早さを得て、校舎を破壊している。
なんということだろ。なりふりかまわないで…彼女は自分を守るために自分を傷つけている。
これが魔族なのだろうか。
>>61
>ちなみに魔力の低下のせいで生み出した氷の道は人一人分の幅しかなく
>他のメンバーの邪魔にはならないだろう
「死なないで、絶対死んじゃだめよフリード」
滑っていく小さなフリードの背中に不吉な言葉を投げかける。
>>62-63
>『ああ、ここにセラがいてくれたら・・・・・・』
「わたしがばばあって言ったから、ヘソまげちゃったのかな…」
決してそんなことはないって思いたい。ルナのこの言動は作られたキャラだから。
ほんとうは暴言を吐くたびに心が痛んでいる。
>『それからルナちゃん、ルナちゃん、体は大丈夫?』
>ちょうどルナの腰の位置に、リリィの箒がふよふよ浮いていた。
>乗れ、ということなのだろう。
>『ササミちゃんを追いかけよう!
この箒は一人乗りだけど、私と一緒なら飛べるよ。
ルナちゃん魔法たくさんつかったでしょ?少しでも体を休めてて』
「うん、ありがとう。でも、タコ食べるの早いね。タコの早食い大会があったら一等賞になれるね。
もうルナは身も心もボロボロだもん…。箒に乗っかって、ちょっと休ませてもらうね」
- 68 :
- >>64-66
>「討伐隊隊長のシャオロン様に状況説明もしないでどこに行く気?
そちらで何があったのか、手短に正確に説明しなさい!」
(隊っていっても二人じゃん…)
化粧の剥がれたルナの存在感はノミほどもないのかも知れない。
シャオロンは箒に乗っているルナには目をくれず、リリィの頭を掴み問う。
>「ピー!(ひー!話します話します!お願いだから食べないでー!!)」
恐怖のあまりパニックになったリリィは、立て板に水とばかりに説明しはじめる。ただしペンギン語で。
シャオロンはルナに気がついていないみたいで、驚かせてしまってもいけないと、
思慮深く慈愛に満ち満ちたルナは、貝のように押し黙っていた。
>突如二人(一人と一匹?)のすぐそばで強烈な光が輝いた。
>光が消えると、そこには白いセーラー服姿に変身したトモエ・ユミが現れる。
>「ペンギンさん、事情はわかりました。あとは私にまかせてください。」
>「あれだけでササミさんを止められるか、自信はないわ。すぐに後を追うわよ。」
>テンションが上がってきたトモエは4次元ポケットからマジカル木刀(※特に魔法はかかってない)を取り出し、
>少しふらつきながら銀貨の後を追った。
ルナもリリィたちと同行して銀貨を追う。
- 69 :
- 箒に乗っかりつつ、柔らかい髪とササミの羽飾りを揺らしながら、ルナはふとリリィの言葉を思い出していた。
>『ササミちゃんは講堂方面に移動してます!早く追いついて捕まえないと、寮に突っ込んだら大惨事です。
>それに、いくら回復能力が高いからって、血を流しすぎたら死んでしまいます。
>早くとめないと!どうか協力してください!』
そして、ひあっと思うとぞっとする。
「寮の壁なんかに突っ込んじゃったらササミも死んじゃうかも…!なかで寝てる人も死ぬかも…」
ササミの暴走は絶対に止めなくてはならないと誓うルナ。
しかし、あのササミのスピードに追いつく方法は?
ササミは己のスピードをコントロールしきれずに、
壁を破壊しつつ、どうにか方向転換をしているようだった。
壁に開いた穴は後を追うように発生した衝撃波と真空刃で砕け散り
ワンフロアーぶち抜きにする勢いで部屋を広げていく。
だったら、いちかばちか……。
ルナは自分の頭に突き刺されたササミの羽根を引っこ抜き、
しっかり手に握るとその羽根に逆転魔法をかける。
これで、魔法をかけられた羽根はササミの元へ戻るはず。
「ササミに近づく方法がない人はリリィの箒につかまって。みんなで箒に乗っていこう」
ササミの羽根は本人に戻ろうとして、ルナごと箒をひっぱってゆく。
ぐんぐんと近づいてくるササミの背中。終いには並列してあと少しで手が届くくらいに近づく。
でも目の前にはリリィの予想通りに寮の壁が近づいていた!
- 70 :
- 危機が迫っている状態で、ルナは不思議な気持ちになっていた。
ササミはホルスタウロスの迷宮の試練の果てで手に入れた神Rの恩恵を返上してまで
あんな負け方はいやと暴走している。
ササミの魔Rと自分の厚化粧が重なって見えたルナは、なんともいたたまれない気持ちでいた。
あのササミがコンプレックスを抱えて生きていると思うとにらにら感がはんぱない。
ササミがぐっと自分のもとへと降りて来た感じ。
だから今は、ササミが嫌いだった気持ちはとても和らいでいる。
ルナは最低な子だった。
「なんて気持ち悪いのかな。わたしって…。リリィは私のことをどう思う?」
問うてはみたものの、待っているのは、ただ自分を気持ちよくしてくれる言葉だけ。
一瞬、自責の念に囚われそうになって眉根を寄せてしまったルナだったが、かぶりをふって
「えーい、うるさい私!私は気持ち悪くない。ササミを助けることは哀れみとかじゃない!たぶん…」
タクトを振りかざして目の前の寮の壁に逆転魔法をかける。
すると堅い壁は、柔らかい壁に逆転された。
ササミがこのまま壁に激突しても、柔らかくてゴムみたいに伸びる壁に減り込んで怪我をしないかもしれない。
- 71 :
- >62-70
>「死なないで、絶対死んじゃだめよフリード」
『フラグが立った!フラグが立ったよフィー坊!!』(猫語)
「フラグはフラグでも死亡フラグの方じゃないですかやだぁ!」
「雪と氷の精霊よ我が命により神の敵対者(悪魔)の足を留め給え!フリージングスネア!!」
フリードは氷の腕を地面から生やしササミの動きを止めようとする
だがその腕は小さく赤ん坊の腕のようなサイズだ
やはり弱体化している状態ではこんなものなのだろうか?
「ちょっと小さいですね・・・・・小さければ数で攻めましょう!
フリージングスネア!フリージングスネア!おまけのフリージングスネア!!」
『ちょ!?フィー坊魔力使いすぎじゃね!?』(猫語)
「足らなかったらあなたの魔力を寄越しなさいなグレン」
いくら猫の姿じゃないからってそれは酷くないかフリード?
大量の赤ん坊サイズの腕がササミを襲う
まるで透明な水子の霊に襲われてるみたいでビジュアル的に怖いぞ
「よし今だ!炎道さんと合体攻撃で!」
『それ炎と氷で±0になるんじゃ?』(猫語)
「いえきっと多分メドローア的な効果が得られるはずです!!」
『それはそれでササミさんの命がマッハでヤヴァイから却下の方向で』(猫語)
>「えーい、うるさい私!私は気持ち悪くない。ササミを助けることは哀れみとかじゃない!たぶん…」
「これでもダメならレイブンさんに何とかしてもらいましょう
同じ鳥系なら猛禽類のほうが強いはずですから」
(ヒント:烏は雑食で猛禽類じゃありません)
『ペンギンだって肉食だよフィー坊?』(猫語)
「だって強いイメージ皆無じゃないですかペンギンも白鳥も」
何故ここで白鳥が出てくるのか?それはフリードのモチーフが白鳥の王子だからである
『フィー坊って完全に二番手主義だよね』(猫語)
「どうせ僕は永遠の二番手ですよ!」
- 72 :
- >58-59、>61-71
>「げぇーレイブンさん!?」
>『成仏したとばかり思っていたよ』(猫語)
「相変わらずのゆでクオリティで迎えてくれてありがとうよフリード。
そして……ああ、いつもフリードが喋りかけていたのはお前だったのかグレン。
俺はてっきり自分にしか見えていない妖精さんとお話しする可哀想な子だとばっかり。
成仏、ね。した筈だったんだがな?
何で袖に引っ込んだ役者がまた出てくる破目になったんだろうな、ああ?」
挨拶もそこそこに、まるでお前らのせいだと言わんばかりの事をのたまう♀鴉。
一応異性の裸体を前にしても普段と変わりないフリード、まさかつい最近まで
実の姉と普通に風呂に入ってたなど知れる筈も無く。まぁ♀鴉はまだ気付いてないのだが。
>「ピ(・・・・・・クーちゃん、で通じなかったら、気まずいじゃないですか。
> この間大怪我してから、クーちゃんにはちょっと・・・・避けられてる感じで」)
「ピ、ピ。(散々あいつの事をクーと呼んでおいて今更その心配はおかしいだろう。
……ふん、まぁそうだろうな。さて、大怪我なのは果たして体だけかねぇ?
あの時、お前達の間に何があったのか……俺が知らないと思うか?)」
♀鴉のペンギンを見る目はクリスのそれとは違うが、同じ様にも見える。
相変わらずの遠回しで本題に入らない言い回しは、周囲に本人であると思わせるには十分だろう。
「ピュイ(まぁ今分かるのはざっと鳥に猫に……そんな事はどうでもいい)」
よく分からないネタの乗り方をするのも相変わらずであった。
>言葉を言い切った直後、ササミはピンクの煙に包まれた。
>『えっ!!レイヴンさんその体どうしたんですか?!
> はっ!もしかしてササミちゃんの魔Rって譲渡可能だったの?!
> ずるいっ!なんでよりによってレイヴンさんにあげちゃうのよー!!いらないでしょ普通!!』
説教を聞いてない風なササミだったが、やはりと言うかなんと言うか。
敗北を受け入れられず、何事か喚きだした。それに気付いた時には既に煙に包まれ
手に感じていた首根っこの感触も消え失せていたのだ。
「ゲホッゲホ……煙幕とは卑怯なり! 尋常に勝負いたs……あん?
リリィお前何を言って……」
そこでようやく♀鴉は自らを顧みた。『考える振りをしている人』と言う
有名な彫像並みの体つきが、『トレーでリレーをしている婦人像』みたいになっていた。
その際の挙動と心境は、表現するならばこうである。
( ゚д゚) 「なん……だと……」
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
\/ /
 ̄ ̄ ̄
( ゚д゚ ) 「ま、いいか」
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
\/ /
 ̄ ̄ ̄
あまり気にしていないらしい。
男女の身体的特徴の差異による弊害云々を知らないが故の能天気。これはひどい
- 73 :
- >「こ、こんな負け方、認めへんだがね!絶対にいいいい!!!」
そうして重たそうな脂肪の塊を文字通り捨てたササミは♀鴉の目でも捉えられない。
凄まじい暴風と衝撃波を間近で受けた♀鴉だったが、羽ばたいて姿勢を正した。
「気持ちは分からんでもないがな……しかし、速い。
尖塔付近で吹っ飛ばされた時のそれとは比較にならん。
これは押さえ込むのに、ジガチで骨の一、二本は覚悟せにゃならなそうだ」
若干気だるげに呟いて、炎道を掴んでいた手を放した。
>『私たちも後を追いましょう!
> ササミちゃんを追うつもりなら、レイヴンさんは、そのぼろ布で大事な場所を隠してください!』
ペンギンに無茶振りされるなど人生で一度でもあったらそれは凄い事だと思う、うん。
「いや、これじゃあチラリズムをいたずらに刺激するだけだろ……
仕方ない、応急処置しときますかね」
右手を開いたかと思うと、一瞬で閉じた。瞬間的に圧縮された空気が弾け、
軽い衝撃波を生みだし♀鴉の羽根をいくらか散らす。その散った羽根が胸部と股間部に集まり……
最終的にレザーかラバーかと言いたくなる様な光沢を放つスポーツブラとブーメランショーツになった。
しかし諸君、よく考えてほしい。見た目こそ衣類だが、羽根である事はなんら変わっていない。
衣類として加工したわけではない、そして羽根は体毛の一種であり衣服ではないのだ。
何が言いたいかと言うと、結局スッパは改善されて無いと言うこと。ただそんだけ。
>「討伐隊隊長のシャオロン様に状況説明もしないでどこに行く気?
> そちらで何があったのか、手短に正確に説明しなさい!」
追いかけようとした所でペンギンが何かに捕まった。
名乗りを聞くに、さっき偉そうにしてた女だろう。まためんどくさいのが来たなぁと
内心思いつつ、食堂にあったペンとメモを手に取る。
……そして、シャオロンは自分が捕まえているペンギンの小さな額に
いつの間にか一枚のメモが、ご飯粒で貼り付けられているのを見るだろう。
そのメモの表にはデカデカと『いいか、俺は面倒が嫌いなんだ』とだけ書かれている。
……ここで逆上して破かずに裏を見れば、お望みの情報が手に入るだろう。
もっとも、内容は相当に分厚いオブラートに包まれているが。
(ササミの手ブラパンモロ、炎道のR噛み付き等々)
古今、面倒嫌いを公言する人物ほど細かい事に気がつきそれを解決するものである。
面倒嫌いは、やる面倒とやらない面倒のどちらが本当の面倒かを知っているからだ。
>『ササミちゃん!どんな形であれ負けは負けだよ!
> 納得できないからって、自分で決めた約束事を破るなんていけないことだよ!』
リリィはテレパシーでササミに説得を仕掛けている様だが、止まる気配は無い。
当たり前である、この程度で大人しくなるならこんな事する訳ないんだから。
「頭に血が上ってるんだ、呼びかけたって届かないさ。
こう言うのは、直に送り込んでやらないとな。中継してやる、
俺が何とか接触してな」
背中に立派な翼があるのに、何故か走って追いかけている♀鴉。
胸部の余分な脂肪があって走りにくそうに思えるが、本人は気にしていない様だ。
>「なんて気持ち悪いのかな。わたしって…。リリィは私のことをどう思う?」
その独白はリリィに向けたものであって自分には関係のない事である。
しかし、年長者の悪癖である説教にこの一言は燃料投下以外の何物でもない。
「そう思えるならお前は正常だ。人間って奴は、自分の事がこの世でもっとも好きで、
そしてもっとも嫌いな物だからな。だがそれを感じる事が出来て、その事に
向き合おうとする奴はいつか嫌いの分まで好きに変える事ができる。
……それすらも出来ない奴なんて、お前が知らないだけで五万といるし
それすらもしたくても出来ない奴はもっと多い……はっきり言おう、お前は幸せ者だ。
お前自身は否定するだろう、それは間違ってない。お前が自分を不幸と言うならそうなんだろう。
だがな、それでもお前は人間として生まれ人間として生きてこられたんだろ?
そんなのはお前にとっては当然でも……俺にとっては素晴らしい事だ。羨ましくすらある。
……乗り越えていけばいい。一人で出来ないなら二人、二人でダメなら三人。嫌か?」
お前そんなキャラじゃないだろとツッコまれかねないほどまくし立てる。
♀鴉なりに思う所があったのだろう。これでほぼ全裸でなければカッコも付いたのだろうが……
- 74 :
- >「これでもダメならレイブンさんに何とかしてもらいましょう
> 同じ鳥系なら猛禽類のほうが強いはずですから」
「同レベルだといいけどなぁ……つーか、もしかしたら俺の方が不利かもよ?」
丸投げされる事にすっかり慣れ切ってしまったのか、当たり前の様にツッコミしかしない。
そもそも魔界出身とは言えあちらの鳥としての種類が何なのかはっきりしていない。
まぁ弱肉強食当たり前の魔界出身者だ、人間からすれば化け物レベルだろう。
対する♀鴉は、言ってしまえばただの鴉である。神格化され、実際にとんでもない力を持っていても
結局『鴉』である事は否定の仕様がないのだ。この差は大きい。今のササミとついさっきまでのササミの差くらい。
>「雪と氷の精霊よ我が命により神の敵対者(悪魔)の足を留め給え!フリージングスネア!!」
>ササミがこのまま壁に激突しても、柔らかくてゴムみたいに伸びる壁に減り込んで怪我をしないかもしれない。
>『フィー坊って完全に二番手主義だよね』(猫語)
>「どうせ僕は永遠の二番手ですよ!」
「ようやく目が慣れてきた……あちらさんも暴れすぎてガス欠が近いんだろうが。
そして追撃のマドハ○ンドならぬフリージングスネア、これは速度落ちるね。
弱っててもいい仕事するフリードの、そう言う所が好きだよ俺は。だからそんなに腐るなぃ」
男が男に好きとか言っちゃうと腐っちゃったお姉さん方が黄色い悲鳴を上げるのは確定的に明らか。
しかしビジュアル的にはおね○ショタ、でもTS分入っててやっぱり腐ってるじゃないですかやだー!
「……ああ、なるほど。色んな物に作用して色々反転させる魔術なんだな。
使い手次第だが、いい術だ、感動的だな、そして有意義だ」
どこぞのニーサン的な言い回しだが、ストレートにルナを褒める♀鴉。
ルナは確かに存在感が薄いのかも知れない、が極めて特殊な環境で生きてきた♀鴉は
実は一般人とルナの存在感に差異を一切感じていない。薄い、程度では通用しないのだ。
だからこそ、『クリス』もまたルナの存在をきちんと感知していたのだから。
……指の粗相? あれは常識に囚われてたクリスが悪い、と♀鴉は言うだろう。
「そして……捕まえた、でいいのかこれ?」
フリードの妨害により、ただでさえ消耗が激しく速度を落としていたササミは
更に速度を落としてしまう。最初の頃の姿は見る影もなく、改めて見ると酷い重傷だった。
そんな速度で柔らかくなった壁に突っ込んでもそんなに強烈に減り込んだりはしないが、
この壁も抜けると思っていたササミは事態を把握するのに少々の時間を要してしまう。
脳に、思考に回せるエネルギーもそんなに残っていないだろうから仕方ないのだが、
殊隙に関しては容赦ない♀鴉を前にその時間は致命的である。
思いっきり腰を右腕でホールドして逃げられなくし、左手でササミの頭を掴んで……
何故か谷間で顔を挟む形になってしまっている。何でそうなったのか、誰にも分からなかった。
- 75 :
- 縦 横 無 尽 !
校舎内というのにこの言葉が適切なほどササミは猛り、壁を、天井を突き抜け破壊しながら飛び回る。
学園内の防御機構の発動が追い付かぬほどの速度で。
あとに残るのは瓦礫の山、山、山。
猛スピードで飛びながら、背後から迫るルナにササミは気づいていた。
その為に持たせた羽なのだから。
あと僅かで届くというところで体を捻らせる。
最も注意すべき存在ルナの魔法を避けるとともに、体を捻らせることで衝撃波が波打ち、背後のルナを弾き飛ばすのだ。
狙い通り背後のルナの気配は消えたが、その時ルナは目的を達していたことは知る由もない。
そんなササミの速度を僅かに遅らせたのはリリィの叫び。
超高速で移動するササミにもテレパシーなら届く。
そしてそれがリリィの声だからこそ、僅かとはいえ速度を遅らせることができたのだ。
>『ササミちゃん!どんな形であれ負けは負けだよ!
> 納得できないからって、自分で決めた約束事を破るなんていけないことだよ!』
言われることはまさに正論。
だがそれを突き抜ける闘争心が止めることを許さない。
が、僅かの遅れとはいえ背後に迫る銀貨入りの手袋が追い付くには十分だった。
弾き飛ばされたルナの後ろから突き進んできた銀貨入り手袋は、速度をそのままにササミの後頭部に直撃する。
全天視界を持つササミであったが、後方を担当する項と背中の顔が目を回していてはそれを察知することはできない。
後頭部を強打し体勢を崩すが、速度が遅くなったとはいえまだまだ高速域。
後頭部強打により一瞬意識を失ったことで加速が出来なかった。
一瞬のあと、意識を取り戻したササミの視界には自分に迫る無数の手。
赤ん坊サイズとはいえ、これだけ数が迫ってくるとかなり怖いものがある。
しかも全天とはいかないとはいえ、それでも広い視野を持つササミにとってはかなりクルものがあるのだ。
「どっっ、だっ!ぎゃああああ!!」
半ばパニックになりもがくササミ。
小さな手はササミに掴みかかるごとに砕けていくが、フリードは気づくだろう。
自分の魔力消耗が思ったほどでもない事に。
それはササミを追ってきた全員も感じる事だ。
ウィルスに侵されてからの倦怠感や魔力減少が僅かばかりではあるが和らいできている事に。
グレイは少年の姿から徐々に猫の割合が増えていく。
リリィも同様にペンギンからやがて鳥人くらいに割合が変わっていくだろう。
ササミが各所にぶつかり赤い蝶をちりばめてきた。
それはササミの血。
その中に含まれる抗体が空気中に散り、各人の病状を和らげているのだった。
ともあれ、無数の赤子の手にパニックになったササミは氷の腕を砕きそのまま直進を加速する。
もはや前に何があるかも見えていない。
目の前にあるのは女子寮の壁。
再加速したササミが突き破るかと思いきや、その壁はルナによって柔軟性を与えられており、包むようにへこんだ後、強力な反発力によって吹き飛ばした。
壁は大きく抉られた跡を残し、ササミはくるくると宙を舞い、元に戻った。
地面に叩きつけられなかったのは一応魔王候補の意地というものだったろう。
- 76 :
- 久しぶりに停止したササミの姿は停止しているにもかかわらず輪郭がぼやけて見える。
全身の各所から血を噴霧させ、まるで血の羽衣を纏っているかのようである。
ともあれ、超高速移動が止められたその隙を逃す女鴉ではなかった。
停止したところであっさりとササミを捕まえホールドする女鴉。
がっちりつかみ身動きとれぬようにし、顔は谷間で挟んでしまっている。
この体勢からもはやできる事はない、はずだった。
「こんのぉ…!ど、こ、むぅ、あ、でも…こんなあああぁ!!!!」
魔Rを誇ったササミではあったが、それは天然のものではなく試練を乗り越え恩恵を受けたもの。
貧Rのコンプレックスの裏返し。
合理性を重んじる性質を乗り越え、機動力や戦闘能力を犠牲にし、魔R維持の為日常生活に支障をきたしても是とするほど深いコンプレックス。
魔Rを捨てた今のササミに胸の谷間で挟むなどコンプレックスを大爆発させるに十分すぎる拘束方法だったのだ。
ササミとくっついている女鴉はその身をもって知るだろう。
突如として波打つ自分の胸と直後に来る波動によって。
そして女鴉を見た者たちも理解するだろう。
ササミの秘密を。
何故耐久力に劣るササミが壁を突き破ってもその勢いを止めることがなかったのか。
何故加速状態でもないにもかかわらず、フリードのフリージングスネアが砕けたのか。
そして何故柔らかくなった女子寮の壁が大きく抉れていたのか。
先ほど停止した際、なぜ輪郭がぼやけ血が噴霧していたのかを。
それは、ササミの怪音波。
水晶体である枝分刀を怪音波で共振振動させることによって切れ味を持たせる。
それを自分の体でやっていたのだ。
体内で怪音波を反響させ、体そのものを超振動体とさせ、触れるものをすべて打ち砕く。
もちろんそんなことをすれば体が無事に済むはずもなく、噴霧する血がそれを表している。
またぶつかったものを砕ききれぬ分はそのまま体のダメージとなる。
もしも女子寮が柔らかくされていなければ、振動で抉れなかった分の厚みはササミの体を打ちのめす壁としてダメージを与えていただろう。
つまり、自身の持つ血の再生酵素を利用した一種の超振動自爆技と超高速移動で学園を破壊していたのだった。
密着していた女鴉はダイレクトに振動波を当てられ、ササミを拘束し続ける事は叶わないだろう。
即座に離せば僅かに痺れる程度で済むが、無理矢理抑え込もうとすれば全身痺れてしまうはずだ。
女鴉の拘束から抜けたササミはそのままもう一度女子寮の壁へ突進し、怪音波を止めて壁に大きくめり込んだ。
故に今度は壁は抉れることなくササミを強く弾き飛ばした。
飛ばされた先は講堂の壁。
反転し行動の壁に着地すると、壁を蹴った反動を利用して自分を追ってきたメンバーたちへ向かい突進した。
だがこの行動は、もはや壁の反動を利用しなければいけないほど消耗している事を知らせてしまっている事にササミは気づいていない。
「これで最後だぎゃああああ!全員まとめてふっとびゃーせ!!!!」
壁の反動+高速飛行+怪音波による全身超振動体と化したササミが衝撃波と真空刃を引き連れる破滅の魔弾となって迫るのだ!
恐るべき攻撃ではあるが、今なら捉えられない程ではない。
ましてやササミがまき散らした血の為回復しつつある者たちならば対抗もできるはずだ!
- 77 :
- >66-73
>「ピー!(ひー!話します話します!お願いだから食べないでー!!)」
「は? なに言ってるのか全然わからないわよ。
さっきみたいにテレパシーで は な し な さ い よ!」
鳥語を理解できなかったシャオロンは、リリィペンギンを掴んだまた手を上下に振り出した。
振り回されるリリィはテレパシーどころではないかもしれないが、シャオロンのその動きはすぐに止まることになる。
(シャオロンにとっては)唐突に、トモエが閃光と共に変身したからだ。
>「魔法少女トモエ・ユミ……!」
「は……?」
変身プロセスを全く見ていなかったシャオロンは、毒気の抜けた表情でそう言った。
>「ペンギンさん、事情はわかりました。あとは私にまかせてください。」
「え? ちょっと。 うそでしょ? 今の説明で本当にわかったの?
……ちょっと! 何!? トモエには教えて私には教えないってわけ!?
あんたどーゆーつもりなのよ!!」
トモエの言葉をそのままの意味で解釈したシャオロンは、最初に倍するスピードでリリィペンギンをぶんまわした。
そしてぶんまわしているうちに、今度はリリィの額に張られたメモに気づいて動きを止める。
「なんだ。 ちゃんとメモも書けるんじゃない。 どれどれ……」
リリィを離したシャオロンは、メモに書かれた文字を声に出して読んだ。
>『いいか、俺は面倒が嫌いなんだ』
シャオロンの中で、“何か”がぶちっと音を立てて切れた。
メモを書いたのはリリィだと思ったシャオロンは、蛙を見つけた飢えた蛇みたいな目でリリィを見た。
怒りのままに半分ほどメモを引きちぎり、そこでシャオロンは裏に書かれた伝言の続きに気づく。
今度は無言のままに内容を読み、シャオロンは満面の笑みを浮かべた。
「事情はわかったわペンギン。あとは私にまかせ……って、わかるわけないでしょうがこの内容で!!」
湧き上がる怒りのままにシャオロンは、今度こそメモをびりびりに引き裂き、投げ捨て、何度も足で踏みつける。
あのカオスな状況を見ていない者が完全に理解するのは難しかったのだ。
「要するに! 人が死ぬ気でササミの分身と戦ってる間に、あんたたちはのほほんと遊んでたってわけ!?
ふっざけんじゃないわよ―――――っ!!!
いい!? この先は、あんたたちが責任もってササミの血を搾り取ってきなさい!
あたしは手を貸さないけど、失敗でもしようものなら一生許さないからね!」
ササミを追いかける者たちにそう言って、シャオロンは後からついていく事にした。
これなら自身消耗が激しくても戦わなくてすむからだ。
ササミを追う者たちを見送ってから、シャオロンは首を何度か傾げた。
思い返しているのは、リリィの箒に乗っていたルナの事だ。
「あいつ、いつの間に箒に乗ったのかしら……?」
案の定、ルナに気づいていなかったシャオロンであった。
- 78 :
- >66-77
話は少しさかのぼる。
シャオランに状況説明をせかされ、ペンギン語でしゃべっていたら、突如まばゆい光があたりを照らした。
「ピ(うおっまぶしっ!!)」
>「魔法少女トモエ・ユミ……!」
「ピ(トモエさん・・・・・!)」
いつの間にかトモエは、今までとは違う衣装に身を包んでいた。
>「ペンギンさん、事情はわかりました。あとは私にまかせてください。」
「ピ!(ありがとう、マ ホウショウ ジョ トモエユミ!)」
文節が間違っています、0点。
>「え? ちょっと。 うそでしょ? 今の説明で本当にわかったの?
> ……ちょっと! 何!? トモエには教えて私には教えないってわけ!?
> あんたどーゆーつもりなのよ!!」
リリィはぶんぶんとシャオロンによって空中遊泳する羽目になった。
「ピ-!(マ ホウショウ ジョ トモエユミ!お願いだからこっちも助けてー!!)」
だがトモエはササミを追って先に行ってしまった。残念!
リリィの口から魂が抜けかけたところで、シャオロンは揺さぶる手を止めた。
いつの間にかリリィの額にくっついていたメモに気づいたからだ。
>「事情はわかったわペンギン。あとは私にまかせ……って、わかるわけないでしょうがこの内容で!!」
・・・・・・・だが、状況説明は火に油を注ぐだけの結果になった。
リリィ達はがんばったのだが、説明だけ聞けば遊んでいるようにとられても仕方がないのかもしれない。
>「いい!? この先は、あんたたちが責任もってササミの血を搾り取ってきなさい!
あたしは手を貸さないけど、失敗でもしようものなら一生許さないからね!」
「ピー!!(そ、そんなぁ・・・・・・!!)」
言葉は通じなくても、ペンギンが大ショックを受けているのはわかるだろう。
そして現在。
『どーしよう。ササミちゃんに説得が無意味なのは、さっき試してみてわかったし・・・・・』
テレパシーだけでなく、レイヴンに中継もしてもらっても効果がなかった。
こうなると、言葉での説得は完全にお手上げである。
『ササミちゃんは、負けるなら完膚なきまでに負けたいんだよねきっと。
精一杯やったその先の結果じゃないと、受け入れたくないんだ』
エンドウは確かにササミを捕まえたが、いささかタナボタ的だったのは否めない。
しかもセクハラされたのでは、拳を下ろすタイミングを見出すのも難しいだろう。
>「ササミに近づく方法がない人はリリィの箒につかまって。みんなで箒に乗っていこう」
「ピ!」
ルナが魔法をかけたらしく、箒のスピードがぐんと上がった。
「・・・・・・すごいッス、何の指示もないのに、箒が勝手にササミちゃんを追いかけてるッス」
あれ?とリリィは首をかしげた。
「ルナちゃん、言葉、通じてるッスか?・・・・・・あれっ?なんか言葉が変?!」
リリィは人の言葉をしゃべれるようになった。
心なしか、リリィペンギンの体も徐々に大きくなっているようだ。
- 79 :
- >「なんて気持ち悪いのかな。わたしって…。リリィは私のことをどう思う?」
「・・・・・・・へっ?」
リリィは面食らった。
ルナが先ほどから何かを考えているのはわかったが、なぜ今、「気持ち悪い」という言葉が出てきたのか理解できなかったのだ。
リリィはペンギン顔の下で、ない知恵を絞って必死でルナの気持ちを考えていた。
(もしかして・・・・・・・・・・化粧が落ちちゃったことを気にしているのかな?)
確かに化粧は剥げ落ち、マスカラも溶け出してひどいことになっている。
そういえば、さっき化粧を直そうとしたが、コンパクトが使えなくて肩を落としていた姿を思い出した。
レイヴンがルナに対し、長い話を聞かせている。
だが、化粧が落ちたことを慰めるにしてはちょっと変な話だった。やはり『元・男性』だったせいだろうか?
>「えーい、うるさい私!私は気持ち悪くない。ササミを助けることは哀れみとかじゃない!たぶん…」
「そうッス!がんばるッス!ササミちゃんと病に苦しむみんな、一緒に助けるっス!」
リリィも気勢を上げた。
箒がさらにスピードを上げた。
フリードの「小さな氷の腕でササミの動きを止める」作戦は、残念ながら成功とは行かなかった。
リリィがぼそぼそとルナにささやきかける。
「ルナちゃん、私のカバンには言ってるポーチに、ハンカチとリップクリームがあるッス。
『化粧は女の戦装束だ』って、お世話になってた宿屋のおかみさんが言ってたッス。
コンパクトの代わりには程遠いけど、これを使って、もうちょっとがんばって欲しいッス」
ちょっと背が伸びて、皇帝ペンギンサイズまで育ったリリィが「お願い」と言うように頭を下げた。
「同情でも、何でも、いいじゃないッスか。
今こうやってぼろぼろになっちゃって、でも、それでも逃げずにササミちゃんの後を追う原動力がそれなら。
なんだかんだいって、ルナちゃんがいつでも一生懸命がんばってること、私、ちゃんと知ってるッス」
てへ、とリリィが恥ずかしそうに顔を伏せた。
「ルナちゃんのイメチェンしたファッション、本当はちょっと怖かったけど、今の姿はすごくかわいいと思うッス。
・・・・・・・・・・・・あ、これ、同情なんかじゃないッスよ!」
さて。
魔法少女トモエ・ユミのロケットパンチがササミの後頭部を強打するも、
「どっっ、だっ!ぎゃああああ!!」
フリードがササミを足止めに放った小さな手も、ササミの足を決定的に止めるまでには至らない。
最後にモノを言ったのは、羽毛ビキニを着用したレイヴンだった。(リリィ「パパパ、Rはいてくださーい」)
>「こんのぉ…!ど、こ、むぅ、あ、でも…こんなあああぁ!!!!」
>「そして……捕まえた、でいいのかこれ?」
しかしそれを見たリリィの顔色が変わる。
「レイヴンさん駄目ッス!・・・・・・・フリード君!ルナちゃんを受け止めて欲しいッス!」
リリィは箒を急旋回させ、ルナをフリードの方向へ弾き飛ばした。
フリードなら絶対受け止めてくれる、だからルナのことは心配していない。
まだ自覚していないようだが、この場にいる全員が、低下していた魔力を回復し始めている。
怪力を魔力で補正していたフリードだったが、つぶされるようなことはないだろう。
そしてリリィ自身は、弾丸よろしくササミを拘束しているレイヴン?とササミに突っ込んでいく。
「レイヴンさん、ササミちゃんから離れるッスー!!」
捨て身の攻撃にしか見えない特攻は、ササミへのダメージ目的ではなく、レイヴンを彼女から引き離すためのものだった。
なぜか。
リリィはこのとき、ササミの操る枝分刀がレイヴンを襲うと思っていたのだった。
そしてレイヴンの性格では、自分がどれだけ傷つこうと、目的を達するためならばまったく厭わないことも。
もっとも、実際のササミから受けた反撃方法は、リリィが考えていたものとは少し違ったようだが。
「だ、だめなのら・・・・・ッス」
特攻後、床に落ちたリリィの頭からは、ぷくっとたんこぶが生えてきた。
- 80 :
- 「レイヴンさんにルナちゃん、フリード君も・・・・・・大丈夫だったッスか?」
リリィペンギンが、なみだ目になりながらも起き上がった。
その姿は元のサイズまで戻ったものの、ペンギンの着ぐるみを着た姿に戻っていた。
「あ、ラッキー!これなら箒が握れるッス!」
リリィはちらっと背後のシャオロンを盗み見た。
「い、一緒に戦って欲しいなー・・・・・・ッス」
(こ、こわい・・・・・・)
ササミ討伐隊長の彼女は、どうやら本当に手を出さず高みの見物を決め込むつもりのようだ。
・・・・・・・少なくとも今のところは。
そして前方、ササミに対峙しているトモエ(とミャンちゅう☆)に視線を移す。
「トモエさん、もしかして体調少し回復したッスか?」
今はトモエではなく魔法少女トモエなのだが、リリィは気がきかなかった。
それはさておき、心なしか、魔法少女トモエは、先ほどまでのふらつきが改善されたように感じる。
(そういえば、さっきロック先生の代わりに正義を守る!って・・・・・もしかしてトモエさん、ホワイト・クイーン様の仲間?)
ホワイト・クイーンとは、学園の平和を守るために日夜活躍する、ドリルのような巻き毛がチャームポイントの覆面少女である。
(それとも、ロック先生の関係者かな?今使った魔法も、先生と同じ物体操作系だよね?)
落ちついたら、後で聞いてみるのもいいかもしれない。
ルナの反転魔法で、女子寮の壁にぎりぎりめり込んでいたササミが高速で跳ね返ってきた。
>「これで最後だぎゃああああ!全員まとめてふっとびゃーせ!!!!」
壁の反動+高速飛行+怪音波による全身超振動体と化したササミが、衝撃波と真空刃を引き連れてきた。
リリィはササミ以外のメンバーにテレパシーで言った。
『上空に回避するよ!』
リリィはぎゅっと目をつぶると、箒を握り締めた。
魔力を集中して急上昇し、ササミの捨て身広範囲攻撃を回避するつもりなのだ。
回避だけでなく、うまくいけば、上空からの反撃ができるだろう。
「約束どおり最後まで見せてもらうッス!ササミちゃんの芸武!アリーナで!」
- 81 :
- >72-80
『やった耳が一組だけになったから耳を防ぎきれる』(猫語)
と対超音波防御に耳を防ぐグレン
人間の耳が消え中途半端に猫の要素が戻ってきたため
守らなくてはいけない点が減ったのだ
>『上空に回避するよ!』
「僕は姉さんと違って飛行系の魔法使えないんですよね」
とフリードリッヒ
「仕方ありませんフリージングウォール!!」
分厚い氷の壁を目の前に作り出し防御態勢を取るフリード
ある程度は回復したようだがそれでも普段の3分の2ほどの厚さだ
ちなみにこの呪文相手の下や上に生み出せば凶悪なギロチンのような刃物と化すのだが
フリードリッヒはビジュアル的にグロいという理由でそのような使い方は一切しないだろう
「更に重ねフリージングウォール!!」
何枚もフリージングウォールを生み出し複合装甲のようにするフリードリッヒ
「防御は僕に任せてください!皆さんは反撃の準備を!!」
欲しいのは血なのだから魔法剣士系の斬撃が一番の攻撃方法だろう
フリードも同系列だが今は防御に徹している
『アトミックレーザークロー!!』(猫語)
猫の手に戻ったのをいい事に爪で斬りかかるグレン
せめて神の武器を召喚出来ればいいのだがここは室内であるため無理である
グレン・・・・・・・・無茶しやがって
- 82 :
- リリィたちが箒に乗って飛んでゆく前。
>「いい!? この先は、あんたたちが責任もってササミの血を搾り取ってきなさい!
あたしは手を貸さないけど、失敗でもしようものなら一生許さないからね!」
>「ピー!!(そ、そんなぁ・・・・・・!!)」
シャオロンの剣幕に、リリィはショックをうけているようだった。
でもシャオロンの態度ももっともだ。そして箒は飛んでゆく。
>「これでもダメならレイブンさんに何とかしてもらいましょう
同じ鳥系なら猛禽類のほうが強いはずですから」
とフリードがレイヴンに話をふれば…
>「同レベルだといいけどなぁ……つーか、もしかしたら俺の方が不利かもよ?」
と彼女は答えた。するとルナは、目をぱちくりさせて
「えっと…、時系列的にはここのシーンって色々と答えても無意味なのね?
なんか喋っても次のシーンにいっちゃってるから飛ばされちゃうし。まあ皆さん頑張って」
と、頬をぽりぽり。
>「どうせ僕は永遠の二番手ですよ!」
「そんなかなしいこと言わないの。つか言いたいこと言って、それが伝えたい人に伝えられたら
一番も二番も関係ないんじゃないの?しっかりしてよチ美少年」
>「そう思えるならお前は正常だ。人間って奴は、自分の事がこの世でもっとも好きで、
(略)
……乗り越えていけばいい。一人で出来ないなら二人、二人でダメなら三人。嫌か?」
「いやではないんだけど。一生かかっても出来ないかも…。
ほんと、自己嫌悪も魔法で反転できればいいのに」
- 83 :
- >フリードの「小さな氷の腕でササミの動きを止める」作戦は、残念ながら成功とは行かなかった。
>リリィがぼそぼそとルナにささやきかける。
>「ルナちゃん、私のカバンに入ってるポーチに、ハンカチとリップクリームがあるッス。
『化粧は女の戦装束だ』って、お世話になってた宿屋のおかみさんが言ってたッス。
コンパクトの代わりには程遠いけど、これを使って、もうちょっとがんばって欲しいッス」
>ちょっと背が伸びて、皇帝ペンギンサイズまで育ったリリィが「お願い」と言うように頭を下げた。
「……う、うん」
ぼろぼろの顔と同じ不器用な返事。
リリィのリップクリームには、ルナの化粧道具のように魔力はこもってない。
化粧をしてもメイクの影響で性格が変わることはないだろう。
でもルナは、汚れをハンカチで落として、リップクリームをキュッと唇に塗ってみる。
>「同情でも、何でも、いいじゃないッスか。
今こうやってぼろぼろになっちゃって、でも、それでも逃げずにササミちゃんの後を追う原動力がそれなら。
なんだかんだいって、ルナちゃんがいつでも一生懸命がんばってること、私、ちゃんと知ってるッス」
>てへ、とリリィが恥ずかしそうに顔を伏せた。
>「ルナちゃんのイメチェンしたファッション、本当はちょっと怖かったけど、今の姿はすごくかわいいと思うッス。
・・・・・・・・・・・・あ、これ、同情なんかじゃないッスよ!」
「え、っと…、ありがと…。ありがとうリリィ……」
ルナの心の中にはもっと大きな言葉や思いのようなものがあった気がした。
でもリリィの言葉が津波のように頭の奥に逆流し、ルナの言葉を詰まらせていた。
――気がつけば、ルナは宙に舞っていた。
ササミの衝撃波によって吹き飛ばされたのだ。
>「レイヴンさん駄目ッス!・・・・・・・フリード君!ルナちゃんを受け止めて欲しいッス!」
「だめ。そんなことしたらフリードが潰れちゃう!」
ゴン!骨がコンクリートに当たる鈍い音とともに、ルナは床に叩きつけられた。
「………」
――人間は様々な幻想を抱いて生きている。その幻想を抱く対象は綺麗な星々だったり国家だったりあるいは神様だったりする。
そして時に人は、その幻想を特定の誰かと同調させ合うこともある。
その時、人は自分でも他人でもない存在とめぐり合うことができるらしいけど
それはあくまで別々の幻想に過ぎず、同じ幻想を共有することはないのだという。
すべては自己幻想が見せる錯覚であり、幻想は永遠に孤独なのだ。
- 84 :
- >「これで最後だぎゃああああ!全員まとめてふっとびゃーせ!!!!」
「……」
>『上空に回避するよ!』
「……」
>『アトミックレーザークロー!!』(猫語)
「……」
床に張りいたルナが床を血で赤く染め上げる。
その頭上には赤い蝶が舞っている。蝶と共に舞うリリィの姿もある。
ササミは最後の攻撃を繰り出している。
「……わたし、勘違いしてたんだ」
小さな破片を持って、ルナはよれよれと立ち上がると、堅い床を柔らかくし、トランポリンの要領で跳躍。
「ササミ・テバサコーチン。私は貴女を目の上のタンコブとか、みんなに甚振られて可哀そうとか思っていたけど
それは私の勝手な想像だったのよ。貴女のことを真剣に考えてみてわかったわ。
貴女は誇り高き魔族。生き恥を晒すくらいなら死を選ぶ人。
水戸黄門って知ってる?その物語に例えたら貴女は印籠を見せてもひれ伏さない悪代官さま。
それならこんな私でも貴女の気持ちに答えてあげなきゃね」
ルナは握った石壁の破片に逆転魔法をかける。
すると石壁の破片は再生を始めて、空中のルナの足元に巨大な石壁を再構築させた。
「これが貴女の墓標よ!ササミ・テバサコーチン!!」
巨大な石壁がササミの頭上に迫る!ルナはその後ろからひょっこりと顔を覗かせている!
- 85 :
- >76>80
「ハァ…ハァ…」
魔法少女トモエは息をきらせながらササミの後をふらふらと追い掛けていた。
箒に乗ったリリィ達と、基礎体力に大きな差があるシャオロンにはあっさり追い抜かれ、ササミを追う者達の最後尾は彼女である。
「ハァ…ハァ………?」
魔法少女トモエがササミを撃ったであろう銀貨入り手袋を拾った時、彼女は自分の体に生じた変化に気づいた。
「体が軽い…」
周りを見渡し、その変化の理由を把握できる程度には明晰さを取り戻したトモエはそうつぶやいた。
『ところで、病気が回復してきて普段のペースに戻るわけだから、こんな気持ちは初めてというわけじゃないよミャ〜
だ か ら、死亡フラグは回避どぇ〜す!』
ミャンちゅう☆がそうフォローした。
「そこまでよ、ササミさん…!」
魔法少女トモエがササミ達に追い付いた時には、既にササミはレイブン(?)による拘束から逃れていた。
>「トモエさん、もしかして体調少し回復したッスか?」
ペンギンの着ぐるみを着た少女にそう聞かれたトモエは、自身の万全さをアピールするべく、
無駄に洗練された無駄なステップを決め、実にヒーローヒーローしたポーズと共に名乗りをあげた。
「魔法少女トモエ&ミャンちゅう☆の、この世に悪がある限り、生きたいと望む未来の光を守る方、
魔法少女 トモエ・ユミ…!」
『いつもニコニコでみんミャ(みんな)の側に、混沌とどけるミャンちゅう☆だミャ〜ン!』
さすがに戦闘の邪魔になると判断され、ミャンちゅう☆は物体操作の魔法でトモエの側に浮かんだまま固定された。
『オオゥ!?オオゥ!?ササミちゃんの姿が消えたミャ!』
実際には魔法少女トモエが名乗りをあげている間にササミが既に反転していただけである。
>「これで最後だぎゃああああ!全員まとめてふっとびゃーせ!!!!」
「私の背後をとるとはさすがね…でも、惜しかったわね。バレット!」
トモエはササミに背を向けて名乗りをあげていたマヌケさをごまかすようにそう言うと、
持っていた木刀をササミに放ちながら振り向いた。
無論こんな木刀程度では全身超振動体と化したササミを止められないだろう。
魔法少女トモエは両掌を前につきだし、次の魔法を準備した。
「ササミさん、これが最後の勝負よ。今度は魔法少女として、正面から行かせてもらうわ…!」
『目標をセンターに入れてオ゙オ゙オ゙ン!目標をセンターに入れてオ゙オ゙オ゙ン!』
「ヘクト・プレッシャー!!」
トモエの両掌から百倍圧力波がササミに向けて放たれた。
ササミの投影面積に比例して彼女を押す力が発生し、吹き飛ばせないまでも押し返す程度のことはできるだろう。
『ところで、上から来るルナちゃんはいいとして、真正面から飛込んでいったグレンが巻き込まれちゃいそうミャけど…
そんな魔法で大丈夫か?』
- 86 :
- 公式が如何に複雑であっても解答は初めから決まっている。
たとえば炎道勇気。
彼は赫灼たる炎と轟武な剣技を操る剛の者。
だがその力故に慢心し、慢心は油断に繋がり挑発によって怒りが発する。
怒りに猛る力はその威を高めるが容易く流れが狂う。
流れの狂った力は自分を傷つけ自滅する。
それと同様の公式がササミにも当てはまるのだ。
何時からだろうか?
勇気に魔Rに噛り付かれた時?
フリードのふざけた罠に調子を狂わされた時?
トモエの説明に芸武という返答をした時?
何時から公式が始まったかを断ずることはできないが、フリードの予言は現実のものとなる。
からかいまくられペースを崩し、敗北という解を持つ公式をササミは解いたのだ。
- 87 :
- 背後に衝撃波と真空刃を引き連れ突進するササミは猛スピードの中にあっても周囲の状況をスローモーションの様に見ていた。
驚異的な動体視力だけでなく、極限まで集中した精神が時間間隔を引き延ばしていたのだ。
攻撃範囲から外れ上昇するリリペンギン。
氷壁を張り巡らせるフリード。
そして爪を伸ばし迫るグレン。
木刀を投げつけてくるトモエ。
そのどれもがササミの行動を変えるに値するものではなかった。
木刀が当たるに合わせて体内超振動を一気に高めて粉砕。
その反動で一瞬体内振動が止まり、グレンに顔を引っかかれるが今さらこの程度で止まることもなし。
僅かに顔を上げることでグレンを吹き飛ばし、箒に乗るリリペンギンの方へと弾き飛ばした。
だがこの動きが直後に重大な結果を生み出すとは誰が気付こうか。
矢のように突き進んでいた体勢が、わずかながらに体勢を崩し、結果トモエの術の効果を上げる事になるのだから。
もはや遮るものなし、というところで唐突にササミの突進が止められたのだった。
不可視の壁にぶつかったかのようにゴンと音が響き、凄まじい圧力がササミにかかる。
ヘクト・プレッシャーの圧力障壁によって完全にササミの推進力が止められてしまったのだ。
が、それでもササミが吹き飛ばない訳は、背に引き連れてきた衝撃波にある。
つまり、全面からの百倍圧力波と背後からの衝撃波の板挟み状態になってしまっているのだ。
亀甲状態で押し合うが、それはあくまでササミの投影面積内での話。
ササミの体の輪郭から外れた衝撃波と真空刃は本体を追い越し吹き抜ける。
ペンギンリリィやグレイのように上に逃れていない者たちはその猛威をまともに受ける事になる。
ササミの二の手ともいえるべき効果だったのだが、それも多層式フリージングウォールに阻まれ、大きな脅威とはなりそうにはないようだ。
地上に衝撃波と真空刃が吹き抜ける中、ササミは宙に完全停止していた。
もはや体内振動も高速移動もない。
顔は宙を仰ぎ、リリペンギンとグレイ、そしてルナを見ている。
>「これが貴女の墓標よ!ササミ・テバサコーチン!!」
トドメの言葉に目が見開き、大きく口が開かれる。
そこから吐き出されるのは怪音波でも石化ガスでもなく、それはそれはよく通る声だった。
「水戸黄門はしらぁせんけど、返礼に魔界の口伝を一つ教えたるでよぉ!
『悪とは生存欲に基づく能動的意思の一面である。
生命の中のみ悪の因子は存在する。
魔とは悪に基づき悪を求める生命力の組織化である。
魔とは熱情の一つである。』や!」
巨大な石壁が頭上に迫る中、全ての顔の目が見開き、自分を追いつめた芸武参加者たちをそれぞれの目が見つめる。
「「「「「「「えー芸武やったわああ!!」」」」」」」
七つの口が満足気にそれぞれに向けて同じ言葉を発した後、ササミは姿を消した。
残ったのはルナの言葉通り、巨大の墓標の如き石壁。
その下からじわわわ〜と滲み出る血は確かにササミが『そこ』にいる事を表している。
石壁をどけてみると蛙のように潰れたササミが見つかるだろう。
スプラッターになっていないのは地面にめり込んでいるお蔭だ。
全ての顔が目を回しており、完全に気絶状態である。
伸びているササミを保健室に引きずっていけばミッションクリアーである。
- 88 :
- ササミの攻撃を回避するため、リリィは急上昇で回避した。
だが
「わっ・・・・・・ちょっ?!」
バキッと大きな音がした。
余裕があった人間が見上げたとしたら、リリィの首から下が、天井からぶらんとぶら下がっているのに気づいただろう。
見ようによっては、頭だけ食われたような天井に間抜けな姿である。
どうも高速飛行と怪音波で全身超振動体となったササミが気流を乱したらしい。
回避し反撃のはず、が天井に頭から突っ込むという自爆技を披露したのが事の顛末のようだ。
幸いにも、こちらはササミの技の影響で、天井じたいもろくなっていたようだが・・・・・。
リリィの手足が二度、三度と揺れた後、重力に引かれて頭が抜けた。
大きな穴からは、フィジルの空と白い月がぽっかりのぞいていた。
もう少し穴があくのが早ければ、グレンは彼の神に猫缶を・・・・・じゃなくて、祈りを捧げる余裕があったかもしれない。
なんともしまらない幕切れだが、人生というのは、常にままならないものである。
とにもかくにも、天井から落っこちてきたリリィは「ササミの墓標」の上に落下した。
長かった芸武も、これでようやく終了である。
「うう・・・・・・ひどい目にあったわ」
むくりと起き上がったリリィの頭には、大きなたんこぶができていた。
たんこぶだけですんだのは、ササミの血によるものが大きいだろう。
むき出しになった腕や足からはまだ打撲や切創が見て取れるが、それもぐんぐん回復しているようだ。
リリィは今、ペンギンを模したワンピースに、羽型手袋と足型靴を着ている格好になっていた。
グレンも元のかわいい猫の姿に戻るのは時間の問題だろう。
「いたた・・・・みんな、ありがとう。私はここぞという時に、ぜんぜん役に立てなかったよ・・・・・・。
ところで、ササミちゃんは?姿が見えない人もちらほらいるようだし、もしかしてもう誰かが保健室に連れていったの?
そうだね、ササミちゃん開催のゲームはおわったんだもんね。
一刻も早くササミちゃんの血を分けてもらって、学園の皆を元気にしないといけないもんね。
さっすが皆、仕事が早いなー」
リリィはニコニコしながら、うんうんと一人頷いていた。
「え?違うの?!」
リリィは足元に視線を落とし、足元の岩の下からじわじわと滲み出る血に気づき仰天した。
「ぎゃー!!あのササミちゃんが!!ぺちっとされた蚊みたいになってるー!!」
リリィは岩壁から飛び降りると、巨大なそれに手をかけうんうん持ち上げようとしている。
「は、早く岩を持ち上げるの手伝って!芸武に負けたって納得したんだから、岩を退けたって絶対逃げないよ!
いくら驚異的な回復能力があっても、このまま潰されてたんじゃササミちゃんが死んじゃうよ!
手を貸す元気がない人は、ここのササミちゃんの血溜まりを使って回復していいから!お願い急いでー!!」
まさかもろくなっていた地面にめり込んでいるなどと、神ならぬリリィが知る由もなく。
彼女はひたすら焦りまくっていた。
本当はいろいろ話したいこともあるが、それは、ササミを保健室につれて行った後でも間に合うだろう。
- 89 :
- >82-88
>「は、早く岩を持ち上げるの手伝って!」
「魔族なんですからこの程度じゃ死にはしないと思うんですが・・・・・・・
ふう・・・・やれやれ仕方がありませんね
このフリードリッヒ・ノクターンが力を貸しましょう」
と岩を持ち上げようと手を貸すフリードリッヒ
『がんばれ〜』(猫語)
とほぼ完全に猫に戻ったグレンは近くで応援する
応援している暇があるなら手伝えと思うだろうが
猫の前足では岩を持ち上げるなんていう芸当は難しいだろう
「フリージングパワー全開!!」
謎のエネルギー名を叫び力を入れるフリードリッヒ
果たして持ち上げるのか?いや持ち上がらないわけが無い
『フィー坊は見た目は小さいのに何でこんなに力があるの?』(猫語)
「これも魔動力の引用に過ぎません」
物理的に考えてこんな小さくて細っこい子供に岩を持ち上げる怪力が在るわけが無いだろう
だが魔法の力はそれを可能にするのだ
つまり常時バイキル○状態ということである
「さてあとは保健室に連れて行くだけですが・・・・・・・
果たしてガチレズでロリコンの保険医に引き渡して無事に帰ってこられるのでしょうか?」
『大丈夫保険医は見た目年齢12歳より上には安全だよ』(猫語)
はたしてササミの運命はどうなるのだろうか?
ちなみに保険医は小さいころ妹を亡くしたとか言うトラウマがあるわけでなく
ナチュラルに元からRである
匂いだけで女装少年と女の子を嗅ぎ分ける程度にはRである
ただ能力があったから保険医になった人物である
もしかしたら人格を度外視して能力で人を集めた弊害・・・・なのかも知れない
「あっという間に保健室の前ですね」
『学園内は広いようで狭いからね』(猫語)
- 90 :
- >87>88>89
> 『悪とは生存欲に基づく能動的意思の一面である。
> 生命の中のみ悪の因子は存在する。
> 魔とは悪に基づき悪を求める生命力の組織化である。
> 魔とは熱情の一つである。』
ササミが最後に言ったこの言葉をトモエは反芻していた。
正直、どういう意味かトモエにはわかりかねた。
生きたいという欲求が悪を生むのだとしたら、生命を守ろうとする魔法少女は永遠に悪と戦い続けるのだろうか?
「私はこれからも魔法少女として戦い続けるわ。私が死ぬか、より適した後継者が現れるまで…
安らかに眠りなさい。ササミ・テバサコーチン…」
魔法少女トモエはササミの墓標に向かって静かに手を合わせた。(※ササミは死んでいません)
『おぉっとぉ!以外なところでフラグ回収ぅ!マミったー!!』
> 「うう・・・・・・ひどい目にあったわ」
ミャンちゅう☆が騒いでいると、天井に頭をかじられていたリリィが落ちてきた。
> 「いたた・・・・みんな、ありがとう。私はここぞという時に、ぜんぜん役に立てなかったよ・・・・・・。
> ところで、ササミちゃんは?姿が見えない人もちらほらいるようだし、もしかしてもう誰かが保健室に連れていったの?
> そうだね、ササミちゃん開催のゲームはおわったんだもんね。
> 一刻も早くササミちゃんの血を分けてもらって、学園の皆を元気にしないといけないもんね。
> さっすが皆、仕事が早いなー」
「いいえ、ササミさんは保健室にはいないわ。まだ、ここにいるのよ。そう、みんなの心の中に・・・」
ニコニコしながらうんうんと一人頷いているリリィに、魔法少女トモエは少し的外れな訂正をいれた。
> 「え?違うの?!」
『ぶっちゃけ、今岩の下敷きになってるんだミャ〜ん!』
とミャンちゅう☆。
> リリィは足元に視線を落とし、足元の岩の下からじわじわと滲み出る血に気づき仰天した。
> 「ぎゃー!!あのササミちゃんが!!ぺちっとされた蚊みたいになってるー!!」
> リリィは岩壁から飛び降りると、巨大なそれに手をかけうんうん持ち上げようとしている。
リリィが一生懸命に叫び、その呼びかけにフリードが答えている。
しかし、その声がトモエにはすごく遠くのように聞こえた。
変化が起こったのは、トモエが岩の下からじわじわとにじみ出るササミの血を見た時からだった。
「血が…こんなにたくさん……」
トモエの体が暗い闇に包まれ、ほどなく白いセーラー服姿から同色の着物姿に変わったトモエが現れた。
額にたくさん汗をかき、息は荒く、頬は紅潮し、瞳孔が開いていた。
「ハァ……ハア………」
どう見ても血をみて興奮しているようにしか見えないトモエは、
地面に落ちたミャンちゅう☆にも、他のメンバーからの問いかけにもまともに応えず、
「ごめんなさい、ちょっと疲れました…失礼します…!」
やっとそれだけ言うと、急いでその場から去っていった。
まるでササミの血から自分の意識を遠ざけようとするかのごとく…
- 91 :
- >「「「「「「「えー芸武やったわああ!!」」」」」」」
耳朶を打つササミの絶叫。それを聞いたルナ・チップルは、墓石の上でにっこりと笑顔。
「へへ〜、えーことしちゃった」
薄化粧のルナは、頭を撫でられた猫のように目を細めていた。
でも、ササミの最期の言葉が心のどこかにひっかっかってもいた。
――悪とは生存欲に基づく……なんちゃらかんちゃら。。
気がつけばトモエが墓石に合掌をしている。ルナは彼女を見つめて…
「生きたいという欲求が悪を生むのだとしたら、生命を守ろうとする貴女は永遠に悪と戦い続けなきゃいけないのかも…」
悲しそうに呟いた。そしてササミの言葉に底知れぬ闇を感じ、それ以上考えることはしなかった。
「はぁ…」
小さく肩を落とし墓石の下から流れる血を綺麗と思いながら目を伏せる。
今、ここにいるのは理想の自分じゃないのかもとか考えてみたけど、答えは皆の病気が治るってことで万々歳。
そこへ落ちて来たのはリリィ。
>「いたた・・・・みんな、ありがとう。私はここぞという時に、ぜんぜん役に立てなかったよ・・・・・・。
>「え?違うの?!」
>「は、早く岩を持ち上げるの手伝って!
リリィはウンウンと墓石を持ち上げようと必死だった。
その様相を見ても、ルナは暢気にぽりぽりと頬を掻いていただけだったけど
あることに気がついて顔を蒼白に変える。ササミは、負けるくらいなら死を選ぶなんて一言も言ってない。
ぜんぶルナが勝手に妄想したこと。ただの自己幻想に過ぎなかったのだ。
「やば…」
ルナはカタカタと体を震わせた。喉が渇いて頭が真っ白になる。どうにかしないと!
でもこうなってしまってはあとの祭りで、今はササミの回復力と仲間たちの迅速な救命蘇生術に頼るしかない。
だから祈るような気持ちで目を閉じていた。すると
>「ごめんなさい、ちょっと疲れました…失礼します…!」
「え?」
小声が聞こえたので目を開けて見るとトモエがいなくなっている。
ほんのりとした線香臭さと不気味さを残して魔法少女は消えていた。
そんなトモエの態度に、ルナは塩を撒きたい気分になったけど塩がなかったので我慢する。
こんな石くらいスパッと斬っていけばいいのに!とも思ったけど次の瞬間には、そんなことを思う必要もなくなっていた。
>「フリージングパワー全開!!」
>「あっという間に保健室の前ですね」
>『学園内は広いようで狭いからね』(猫語)
「やったーフリードさま〜、えらーい♪すてきーかっこいー♪」
――フリードが石を持ち上げてササミを救出。 あっという間に保健室の前へ。
そしてルナは、ベッドにササミを寝かせてもらうと顔についた血と埃を蒸しタオルで丁寧に拭き
隣のベッドで横になっている保険医の半開きの口の上で絞って血を垂れ流す。
「うーん。なんか雑だけど大丈夫だよね?」
抗体のことも保険医のこともよくわからないルナだった。
- 92 :
- >78-91
>「ハァ…ハァ…」
「…無理して変身しなくて良かったんじゃないの……?」
ふらふらのトモエを追い抜きながら、シャオロンは素直な本音を漏らした。
華麗に?変身したくらいだから、トモエは回復しているのだろうと考えていたのだ。
が、やっぱり世の中はそんなに甘くはなかったらしい。
「あんな微妙な連中ばっかりでササミを抑えられるのかしらね……ん?」
ササミを(一応)追いかけているシャオロンは、先刻より体力が戻りつつある事に気づく。
顔色を見るに、他の者たちも回復しつつあるようだ。
それはペンギンと化していた、リリィも同じ事である。
今更ながら、人に戻りつつあるリリィを見てようやくペンギンの正体に気づくシャオロンだった。
知っていても、行動は何も変わりはなかっただろうが。
>「い、一緒に戦って欲しいなー・・・・・・ッス」
「否!断じて否!!」
シャオロンがリリィの協力要請を即答で拒否するには理由がある。
他の討伐隊メンバーに手柄を立てる機会を与えたかったのだ。
……というのは建て前で、本当は労少なく獲物は最上を狙っているのだ。
さすがに危なくなったら加勢するつもりではいたが、そんな心配はなさそうだった。
ササミの最後の攻撃は通じる事無く、逆に【芸武】参加者の能力がササミの動きを食い止める。
ササミの作り出した衝撃と真空刃を、シャオロンはトラコウを盾のように変化させて防いだ。
>「「「「「「「えー芸武やったわああ!!」」」」」」」
満足の声を上げながら、ササミは巨石の下敷きになって倒れた。
試合終了を確認してから、シャオロンもササミを押しつぶした石に近づいていく。
丁度、石に向かって合掌するトモエにルナが話しかけているところだった。
>「生きたいという欲求が悪を生むのだとしたら、生命を守ろうとする貴女は永遠に悪と戦い続けなきゃいけないのかも…」
「あんな与太話を真に受けてんじゃないわよ。
いーい? 悪ってのは支配者への反逆または敗者の事。
どんなに良い事してもどんなにがんばってもどんなにギリギリの戦いでも、負けたら全部御破算ってものよ。
要するに、勝ったあたしたちが正義で負けたササミが悪!
悪の集まる魔界は負け犬の巣窟って事よ! わかった?」
勝てば官軍負ければ賊軍的思考であるが、価値観の違いとはこんなものだ。
- 93 :
- >「ぎゃー!!あのササミちゃんが!!ぺちっとされた蚊みたいになってるー!!」
> 手を貸す元気がない人は、ここのササミちゃんの血溜まりを使って回復していいから!お願い急いでー!!」
「そんな慌てなくても死んでたら手遅れだし、生きてたら多少遅れても問題ないわよ」
わたわたと慌てるリリィに呆れながら、シャオロンは布を手にして血だまりに浸す。
いくら何でもこんなものを飲む気にはなれないし、浴びただけでも多少の回復効果はあったのだ。
なら、当面は血濡れの布を持っているだけで十分だろう。
急きも慌てもしなかったシャオロンは、トモエに生じた変化にもすぐに気がつく。
もちろん服装以外の変化にも。だ。
>「ごめんなさい、ちょっと疲れました…失礼します…!」
「あ! ちょっと!」
ミャンちゅう☆と名付けた奇妙なぬいぐるみも落としたまま、シャオロンの制止も聞かずにトモエは走り去ってしまった。
>「フリージングパワー全開!!」
フリージング関係無いじゃない。と謎のパワーで石を持ち上げるフリードに内心ツッコミをいれつつ。
シャオロンはトモエの落としたミャンちゅう☆を拾い上げ、もう片方の手に持つ布をもう一度血に浸す。
「ここは片付いたみたいだから、私はトモエにこいつを届けてくるわ!
あんたたちは責任持って保健室に行ってササミの血を絞って抗体作ってみんなを治して来なさい!」
面倒事をリリィたちに丸投げし、シャオロンはトモエを追いかける道を選んだ。
ミャンちゅう☆を届けるという目的もあったのだが、もう一つ確かめたいことがあったからだ。
「ちょっとトモエ! いきなり走り出す事無いじゃないの!
大事な友達が置いてきぼりじゃない!」
トモエに追いついたシャオロンは、ミャンちゅう☆をトモエに少々乱暴に押し付けた。
何となくこのぬいぐるみを持っていると、不幸な事故が起きそうな気がしたのだ。
……例えば、卵かけご飯を作る程度の事を失敗するとか。
「それから……」
最初の用事を済ませてから、シャオロンは世にも人の悪い笑顔を見せる。
「あんた、さっきササミの血で回復してなかったわよね……?
だめじゃない。 ちゃんと回復しなきゃあ」
言いながら取り出したのは、先ほど持っていたササミの血の滴る布切れだった。
「せっかくわざわざ持ってきてあげたんだから、早く回復しなさいよねぇ? ほらほら。 ほらほら〜」
シャオロンは赤い布を、トモエの鼻先にずずいっと近づける。
親切らしい事は言っているが、血を見たトモエの反応を確かめるためにわざとやっているのだ。
反応が無ければ、先刻の行動は血ではなく血の量が原因なのだとわかる2段構えのまさに外道な行動である。
- 94 :
- >81-92
>「そんな慌てなくても死んでたら手遅れだし、生きてたら多少遅れても問題ないわよ」
石壁の下敷きになったと聞き、慌てふためくリリィにシャオロンは一喝した。
それはそうだ、と思い、はっとする。
ササミの怪我をことさらに騒ぎ立てては、死力を尽くし戦った皆への配慮がかけるのではないか、と。
(さすがは隊長さん・・・・・私とは大違いだわ)
> ふう・・・・やれやれ仕方がありませんね
> このフリードリッヒ・ノクターンが力を貸しましょう」
「ありがとフリード君」
フリードが力を化してくれれば、百人力である。
>「血が…こんなにたくさん……」
いっぽう、魔法少女らしく、いつの間にか着替えを終えたトモエは、明らかに具合が悪そうだった。
「どうしたの魔法少女トモエさん、顔色が悪いけど・・・・・・もしかして、血が苦手とか?」
>「ごめんなさい、ちょっと疲れました…失礼します…!」
「えっ?!ちょ・・・・・トモエさん・・・・・・ああ、行っちゃった。
今から保健室に行くんだから、一緒に来れば良かったのに・・・・・・」
疲れて具合が悪いのだと考えたリリィは、心配そうにトモエの背中を見送った。
「あっ、ミャンちゅう☆ちゃん忘れてる!」
>「ここは片付いたみたいだから、私はトモエにこいつを届けてくるわ!
> あんたたちは責任持って保健室に行ってササミの血を絞って抗体作ってみんなを治して来なさい!」
「それはもちろんだけど、学園への報告はどうすれば・・・・・あああ、隊長さんも行っちゃったぁ」
隊長が自称だと知らないリリィは頭を抱えた。
このままでは、一連のササミ騒動での説明が大変そうだ。
>「フリージングパワー全開!!」
掛け声とともに、大きな墓石・・・じゃなかった、岩壁が持ち上げられる。
>「やったーフリードさま〜、えらーい♪すてきーかっこいー♪」
「あれ?ルナちゃん何で棒読み?」
>『フィー坊は見た目は小さいのに何でこんなに力があるの?』(猫語)
>「これも魔動力の引用に過ぎません」
「ジルベリア人が皆おっそろしく力持ちな理由は、それだったのね」
実際には違うが、リリィはすっかりフリードの説明を曲解してしまったようだ。
「というわけでルナちゃん、フリード君はササミちゃんの血で回復したから腕力も戻ってきたんだよ。
だから、戦ってる時に手を抜いてたわけじゃないんだよ」
岩壁の下から救出されたササミの状態を確認しながら、リリィはそう語った。
「どうやら、痛んでいた床がクッションの役割を果たしてくれたみたいだね。
見た目派手に出血したみたいに見えるけど・・・・・・」
リリィはほっと安堵の息をつき、ルナを振り返った。
「ササミちゃんって見た目以上に頑丈かも。
うん、大丈夫だよ。良かったね、ルナちゃん」
>「さてあとは保健室に連れて行くだけですが・・・・・・・
> 果たしてガチレズでロリコンの保険医に引き渡して無事に帰ってこられるのでしょうか?」
>『大丈夫保険医は見た目年齢12歳より上には安全だよ』(猫語)
「今日はフリード君が一緒にいるし、大丈夫じゃないの?」
リリィは素で失礼なことを言った。
- 95 :
- >「あっという間に保健室の前ですね」
>『学園内は広いようで狭いからね』(猫語)
>そしてルナは、ベッドにササミを寝かせてもらうと顔についた血と埃を蒸しタオルで丁寧に拭き
>隣のベッドで横になっている保険医の半開きの口の上で絞って血を垂れ流す。
>「うーん。なんか雑だけど大丈夫だよね?」
「ルナちゃんったら・・・・・・うわぁ?!」
カッと目を見開き、保険医が飛びおきた。驚きのあまり、リリィがぺしゃっと床にしりもちをついた。
>「OH!フリード!マイスイートハニー!!
> 君のほうから私に愛に来てくれるなんて、とうとうロリ少女になる決心がついたようね!
> 大丈夫心配しなくても優しく性転換するから!
> 安心して、全てを私の手にに委ねてくれればノープロブレム!
> さあさあ、いざ行かん目くるめく愛の世界に!!」
起き抜けのせいか、それともササミの血のなせる業か。
いきなりテンションMAXである。
「あ、あのぅ、ササミちゃんを連れてきたのですが・・・・・・血清は・・・・・・・」
残念ながら、まったく聞いていないようだ。
「・・・・・・まあ、大丈夫だよね。
一応保険医さん、名医だし、ササミちゃんの血しぶきは風に乗って学園中に飛んだみたいだし。
ルナちゃんやフリード君の体調も戻ってきてるみたいだし」
リリィはぽりぽりと頬を指先でかいた。
「あはは、グレンもすっかり猫に戻ってるね。かーわいい。
・・・・・・・ん?そういえば、なんか私、体がスースーするような・・・・・・」
リリィは視線を落とし、自分がペンギンから人間に戻ったことに気づいた。
それはつまり・・・・・・・・・・・・ペンギンの羽毛がすっかりなくなったわけで・・・・・・・・。
「キャーーーーー!キャーーーーー!!うそーーーー!!」
完全にお約束である。
〜このまましばらくお待ちください〜
「・・・・・・ご、ごめんね、すっかり取り乱しちゃって。で、これからどうしよう?」
ようやく落ち着きを取り戻したリリィは、その場に残っている人間に問いかけた。
「女子寮に戻ろうかとも思ったんだけど、隊長さんもまだ戻ってこないし、私はササミちゃんに付き添うよ。
多分、学園関係者の人が聞き取りに来るだろうし」
もしかしたら、関係者以外にも、芸武を始めたササミに悪感情を持つ人間も。
口には出さなかったが、リリィはそう考えていた。
だが留学生のササミは、人間界へ来て日が浅く、常識が少々ずれている。
下手をすれば、相手の怒りに油を注ぐような事態になりかねない。
そのあたりも含めて、とりなす人間が必要だろう。
(もっとも、ササミは多分、そんな事は気にもとめないだろうが)
「保健室のベッドはたくさんあいてるけど、皆はどうする?」
- 96 :
- >「あんな与太話を真に受けてんじゃないわよ。
「……」
シャオロンから、人それぞれの価値観で変化する悪の定義を聞いたルナは、
自分にとっての悪とは何かと考えてみた。
キリストさまみたいな心を持っている人でも、ルナの顔をみるたびに
棍棒を持って追いかけて来たらその人はルナにとっては悪。
ルナ自身は、わたしって悪い子だからキリストさまが怒ってるんだ。
と自分のことを悪と思ったりする。じゃあ悪も自己幻想の一種なのかも知れない。
そんなことを思っているとトモエを追いかけるようにシャオロンもどこかへ行ってしまった。
(あのふたり…なかよしなんだ…)
ルナがちょっとだけ羨ましくも思っていると
>「あれ?ルナちゃん何で棒読み?」
「んえ?べ、べつに…」
突然のリリィの問いにドキッとする。棒読みなんてどこにも書いてないのに、そんなことを指摘するリリィがちょっと怖い。
いつもとぼけているような感じなのに、メガネの奥の瞳がキラリと光って心根を見透かされた感じ。
(そっか、今は薄化粧だから表情が読まれやすいのかも)
>「というわけでルナちゃん、フリード君はササミちゃんの血で回復したから腕力も戻ってきたんだよ。
だから、戦ってる時に手を抜いてたわけじゃないんだよ」
「ふーん。そうなんだー」
個人的には氷炎コンビの超絶戦闘とかも見たかったけど、
総代はササミのRに頭がやられちゃってたしそれも今さらって話。
>「ササミちゃんって見た目以上に頑丈かも。
うん、大丈夫だよ。良かったね、ルナちゃん」
「うん、圧死しなくてよかった…。殺人罪で捕まっちゃったら洒落にならないもん」
- 97 :
- 飛び起きた保険医がフリードにR的な言葉を吐けば
いつのまにかグレンが元の猫の姿に戻っている。
そして、リリィは真っ裸になって大騒ぎ。
ルナはリリィの服を借りていたので、脱いで服を返すと自分は体操着に着替えてくる。
ほとんどノーメイクで体操着のこの姿は、リリィがよく知るルナの姿だった。
>ようやく落ち着きを取り戻したリリィは、その場に残っている人間に問いかけた。
>「女子寮に戻ろうかとも思ったんだけど、隊長さんもまだ戻ってこないし、私はササミちゃんに付き添うよ。
多分、学園関係者の人が聞き取りに来るだろうし」
「はい、わたしも付き添う」
ベッドに体育座りのルナは小さく片手を挙げた。
ササミを放っては置けないというか、喉に何かが引っかかっている感じというか
自分でもよくわからない感情が心のどこかにあった。
気に入らない存在のはずのササミが逆に自分に近づいてしまっている。
嫌悪感が反転してしまっている感じというか、出会ったころと比べたら
ルナの心の中では、ササミがわけのわからないものに変化してしまっている。
「学園の関係者が聞き取りに来たら、ササミは悪くないって言ったらいいかも。
なんかよくわかんないけど、問題を解決した私たちがそう言うんだからプラマイ0だと思うし、
ぜんぶチャラになるかも」
こんなルナでも居ればとりなす人間の一人になれるかも知れない。
>「保健室のベッドはたくさんあいてるけど、皆はどうする?」
「え??」
リリィの質問の意味がわからなかった。寝て待てということなのだろうか。
真意はよくわからなかったけど、ルナは大人しくベッドに入って横になり
隣に寝ているササミをじっと見てみた。
(ササミって敵なのか友達なのかはっきりしなくて気持ち悪い。
かと言って今日から貴女は私のお友達よ。とか言えそうにもないし…)
「化粧をしたら言えるかな…」
とても小さな声で呟くルナだった。
- 98 :
- 「こほ…やれやれ、意識を失っていました…。かなり大変ですね、この症状」
魔法薬を飲みながら、呟く青葉
「とは言え…なんとかしなくてはいけませんよね…。やれやれ、材料さえあれば魔女狩りの狂薬を製薬れるのだけど…やれやれ、魔法がまともに使えない今の状況だとね…」
重い足取りで歩く。白衣の中には大量の魔法薬を忍ばせている。『テレポート』が使えない今、持ち運ぶ術はそれしかないのだ
「だけど、もしかしたら他の人がササミさんを見つけてる可能性もあるよね…連絡してみようか」
そう呟き、携帯電話を取り出す青葉。しかし、しばらく携帯を操作した後固まり…
「そう言えば僕、皆の番号知らない…」
その場にへたりこむ青葉。青葉のアドレス帳には、家族の名前と蟲野しかなかったのだ…
- 99 :
- >90-98
>「さあさあ、いざ行かん目くるめく愛の世界に!!」
「僕が女の子になったらもう完全に姉さんの下位互換になっちゃうじゃないですか
やだぁ〜!!」
『唯でさえ低い男女比の男の比率がさらに下がるしね』(猫語)
「っていうか姉さん若返らしたほうが早いですよね」
『頭脳は大人体は子供のあれだね』(猫語)
この一言によって保険医が学園全体にエターナルチャイルド(見た目を子供にする薬)
をばら撒こうとする事件が起こるのだがそれはまた別の物語である
>「あはは、グレンもすっかり猫に戻ってるね。かーわいい。
・・・・・・・ん?そういえば、なんか私、体がスースーするような・・・・・・」
『ん?なんかおかしいの?』(猫語)
猫は普段から裸なので異常事態に気が付いていないようである
「あれ?そういえばグレンの着ていたはずの僕の服は?」
どうやら人間から猫戻った時に無くしてしまった様だ
「・・・・・ぺろ・・・これはフリードちゃんの服」
その頃風によって飛ばされた血液の効果により復活したフリージアさんは
グレンが脱ぎ落としたフリードの服を回収していた
だが何故に舐める必要があったのか?
「グレンちゃんの毛が付いてますし後でお洗濯でもして返せばいいですわね」
と懐にその服を仕舞いこむフリージアさん
いやその理屈はおかしい
>「保健室のベッドはたくさんあいてるけど、皆はどうする?」
>「え??」
「僕はちゃんと自分の部屋で眠りますけど?」
『いや別にそこまでぐっすり寝る必要はなくね?』(猫語)
「明日は友達と学園七不思議の探索をする予定なんですよ」
『誰もそんなこと聞いてないって』(猫語)
「じゃあ商店街探索のほうがいいんですか?」
そういう問題ではない
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