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2012年09月ゾイド110: 共和国軍がジェネシス世界に召還されました 2戦目 (519) TOP カテ一覧 スレ一覧 2ch元 削除依頼
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共和国軍がジェネシス世界に召還されました 2戦目


1 :2006/02/12 〜 最終レス :2012/07/24
前スレが512kを越え書きこめなくなったので
前スレ
http://hobby8.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1130414749/l50
今日の「離陸」を受けての共和国軍はどう動くのでしょうか

2 :
終了

3 :
しかしこんな形で次スレか…
ちょっとびっくりだな

4 :
>>1乙です

5 :
http://hobby8.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1130414749/803
突然の衝撃、俺達は光に包まれ、なにもできなくなった。
長い時間が経った。それは永遠のようにも感じられた。
光が消えると、森が変わっていた。
「ここはどこだ」
俺は思わず叫んだ。そこは見たこともない森だったのだ。
さらに異常が起きた。気づいたのはサリサだ。
「少尉殿!モルガが!モルガ!」
なんということだ、3両いた筈のモルガが1両に減っている!
「すぐに残りのモルガを探すんだ!歩兵達を出すんだ!」
「上を見ろ!」
突然叫んだのはバッツ少尉だ。なにかと思って上を見たら、そこには先ほどのダブルソーダに加え
プテラスが1機、現れた。
「おい!大丈夫か?ハレル、状況を報告しろ」
数分後、ようやく状況を把握したらしいウィンターズ大尉のゴジュラスが現れた。
「第17連隊第1中隊第1小隊長、オノダ少尉であります。モルガ2両が消滅。現在、歩兵を出して捜索を」
「第17工兵大隊、バッツ少尉であります。コンパスが突然、狂いまして気がついたら、こんなことに」
「ハレルです。ゾイドの方に異常はありません。しかし、無線が…そちらのゴルドスは?」
 ウィンターズのゴジュラスには、支援砲撃と通信・情報収集用の重砲型ゴルドスがついている筈だ。
「ダメだ。司令部に連絡を試みたが、全然つながらない。代わりに北1km地点に平原を確認した。
 ダブルソーダとプテラスもそこに向かったらしい。視界が確保できるから、そこで野営しよう」

6 :
 森を進んでいくと、確かにウィンターズ大尉の言ったとおり、森が開け平原が広がっていた。
プテラスとダブルソーダが着陸しており、パイロットが降りて、周りの様子を窺っているようだ。
「第21連隊強襲戦闘大隊、ウィンターズ大尉だ。状況は?」
応じたのはダブルソーダのパイロットだ。
「自分はシュルツ曹長。右は観測員のトムセン伍長です。上空から観測しましたが、
 付近に我々の知る施設や地形は確認できません」
「いったいどうなってるんだ…」
「大尉!あれを!」
 シュルツが突然叫んだ。シュルツが指さした方角には1機のシールドライガーと2機のコマンドウルフが。
「高速戦闘隊の連中だ」
 トムセンが言った。確かにライガーやウルフには、共和国軍のマークが。
 一方、偵察に向かった歩兵隊。僚機のモルガを発見することはできなかった。
「いったいどうなってんだ?」
 1番若い17歳の小銃手バッケイン上等兵だ。
「さぁね」そう答えるのは、フート曹長。俺の右腕的存在だ。いわゆる鬼軍曹という奴だ。
「なにか感じませんか?見張られているような…」
そう言うのは、小隊一の射撃の腕を誇る狙撃手のヴァシリ伍長だ。
「そうかね?」
「なんだ。あの連中は?」
木の陰に隠れ、共和国歩兵小隊を監視する一団がいた。ヴァシリの勘は正しかったようだ。
「正体を探る。包囲するんだ!」
「「ディガ!」」

7 :
この手のスレってこんなに早く次スレ建てるの?

8 :
>>7
>>1をよく読んでみよう

9 :
・・・ゲッ!恥ずかしい
失礼しました

10 :
アイアンロック攻略戦
討伐軍と共同で作戦を遂行する共和国軍
しかしその士気は何故か低かった。
「く、バイオゾイドの数があまりにも多すぎる。リーオ弾を提供して
貰ったとはいえ多勢に無勢か。それに・・・・」
「あのう・・・中佐・・・・今回の作戦の件ですが・・・」
「・・・ギルドラゴンを復活させる・・・か。君の迷いはわかる」
「はい・・・名称からおそらくギルドラゴンは・・・へリック共和国首都を
襲ったあの悪魔と関係があると私は思います。あの悪夢を再びこの時代に
呼び覚ましてもいいのでしょうか」
「・・・確かに君の不安は理解できる。ガイロスとの決戦に向かったはずの
共和国軍が結局ガイロス関係の遺産に頼らざるおえないとは・・・・
だが今は任された任務を果たす・・・それが軍人としての矜持だと考える」
「・・・・すいません。」
その時、地面が大きく揺れ彼方の山脈に白銀の巨龍が姿を現した。
その姿は一部の違いはあるもののギルベイダーそのものだったのだ
「・・・・・・中佐・・・・・あ、あれは!!」
「・・・・間違いないあれはギルベイダーだ、しかし何だ、あの巨大さは
・・・・神々しいまでの装甲の輝きは・・・・
多くの同朋の命を奪った憎むべき悪魔なのに・・・何故か美しいと思ってしまう」
「ウルトラザウルスを遥かに超える巨体・・・もしビームスマッシャーや
重力砲が使われたら・・・
・・・・討伐軍はあれを使うつもりでしょうか・・・我々は
もしかするととんでもない過ちを犯しつつあるのでは」
「・・・・ラカン殿の誠実さを信じたいが・・・・
討伐軍・・・・なんという危険な存在を目覚めさせてしまったのだ!!」


11 :
「ラプター9機撃破。次を回してくれ」
作戦開始から数分。相対する敵の数をコントロールしながら、順調に敵の数を減らしていく混成飛行ゾイド部隊の面々。
しかし基地周辺に集まった敵の数は100機を軽く越えていた。このままではいずれ押し負けてしまうだろう。
さっさと雑魚で撃破数を稼いで撤退したほうがいいな・・・そのような事を考えていると、次の相手が姿を現した。
「メガラプトルが1にラプターが3か。厄介な相手だな」
高い機動力と強力な火力を持つ上に、ラプターとは比較にならない耐久性を誇るメガラプトルは、飛行ゾイドにとっても難敵であった。
ヘルアーマーを貫通するほどの強力な武装は飛行ゾイドには搭載されてはいないし。避ける隙間もなく爆撃するにはコストが掛かり過ぎるのである。
しかしこの機体ならそのような問題はない。
「だが正面から突っ込むのは流石に危ういな。ここは一つ奥の手を使わせてもらおう」
そう言って、ホバリングで後方に下がりながらバルカンファランクスとハイパーレーザーガンで弾幕を張る。
しかし敵部隊はメガラプトルを盾にしながら一列になり、弾幕をものともせず接近してくる。
なるほど。このフォーメーションならば、メガラプトルの攻撃を避ければラプターの攻撃を受けることになり。耐えようにもメガラプトルの攻撃を受ければ
かなりの確立で大ダメージを受け、戦闘続行が難しくなる。
「いつまでも機体性能だけに頼ったゴリ押しだけじゃないということか。だがそのフォーメーションは、このガブリエーレにとっては好都合だ」
弾幕を弾きながら突進してくるメガラプトルに向かって、ガブリエーレの口から新たな弾幕が張られる。
いや、それは弾丸ではなく光線でもない。無色透明な液体であった。

12 :
メガラプトルのパイロットは勝利を確信していた。
確かにあのバケモノはリーオの大剣を持っているし、強固な盾を備えてはいるが。懐に潜り込めばどうという事は無い。
そして、この機体にはそれを実現できる瞬発力とブースターがある。
バルカンとレーザーでは、この機体を止められないと気づいたのか。何か液体を吐き出してきたが、そんなもので止められるはずも無い。
あと数メートルでこちらの間合いだ。ヘルファイアーを撃ちこみながら、ブースターで一気に跳躍。懐に潜り込み、奴の息の根を止めてやる――
しかし次の瞬間予想外の事態が起こった。
なんとメガラプトルが急停止したのだ。まるで機体が凍りついたかのように動かなくなり、無様に転倒する。
「馬鹿なっ!?こんなところで故障か!」
この時、メガラプトルのパイロットは先ほど浴びた液体が、対大型高速ゾイド用に開発されていた強化瞬間接着剤だとは知る由も無かった。
転倒したメガラプトルに反応できず。後続のラプター達が次々と追突してもつれ合う。
接着剤が間接に流れ込み機体が動かないメガラプトルと、何が起こったのかわからず、混乱してお互いが邪魔になって立ち上がれないラプター達。
そこへ容赦なくガブリエールの大剣が振り下ろされる。
反撃も出来ぬまま4機のバイオゾイドはその機能を停止した。

13 :
どうやら開発部からガブリエーレとセットで送られてきた対ゾイド捕縛用瞬間接着剤は功を制したようだ。
実はメガラプトルをほぼ無傷で手に入れれるチャンスなのだが、何かの拍子に動き出すかも分からないし。
飛行中にブースターでも使われたらたまったものではない。あきらめて倒すことにした。
「メガラプトル1ラプター3撃破。そっちの状況はどうだ?」
通信を入れ状況を確認する。そろそろ弾薬も尽きてくる頃合だろう。微かなノイズと共に副隊長から通信が入る。
「各機、高度を取っているので目立った損傷はありません。しかしエネルギーと弾薬が少なくなってきました」
予想通り弾薬が尽きてきたようだ。レイノスやナイトワイズならば格闘戦で戦う事も出来るだろうがリスクも高い。
それに、せっかく補充された機体を失っては元も子もない。引き時だろう。
「よし、それでは撤退を開始する。しかし、このままではせっかく集まってもらったディガルドの皆さんに申し訳ない。
好みに合うかどうか分からないが、爆弾やミサイルをプレゼントして差し上げなさい」
言い終えるや否や、急上昇するガブリエーレ。
その姿を確認し、混成飛行ゾイド部隊はミサイルや爆弾を基地に群がるバイオゾイドの群れに向かって一斉に発射した。
空対地ミサイルが、大型ボムが、煙幕弾が次々とバイオゾイドに降り注ぐ。
燃え盛る基地とディガルド軍を尻目に撤退していく混成飛行部隊の面々。
ディガルド軍が爆撃の混乱から立ち直る頃には、共和国の部隊の姿は既になかった。
――その頃、ガブリエールの戦いを観戦していたロイドは爆撃の煽りで飛んできた破片に頭を打ち、気絶していた。

14 :
「何だ、あれは…?」
レオンを追って海岸地帯までやってきたディガルドの兵士達は、
地に倒れ臥すセイバータイガーの前に立つ、見慣れない青いゾイドに驚きを隠さなかった。
セイバータイガーを狙って放ったヘルファイアが、
青いゾイドの張った光の盾のようなもので全弾防がれたのだ。
「反乱軍の、新兵器か…?」
「はぁっ、はぁっ、間に、合った…」
そのゾイドのコクピット。
荒い息をそのままに、レオンが座していた。
一か八かだったが、どうやら賭けには勝ったらしい。
「う、く…」
ぐらり、と視界が歪む。無理もない、彼はまだ少年である。
とうに限界を大きくオーバーしている彼に、まともに戦う力など残っているはずがなかった。
「…まだだ」
それでも、なんとか踏みとどまる。それはもう、意地と表せるレベルのものではない。
「僕は…死にたくないから、」
ランナーズハイ寸前の極限状態にある彼を支えていたのは、皮肉にも。
「こんな所で、死ぬのは嫌だから!」
死に対する恐怖であり、生きたいと言う強い願いだった。

15 :
「ああぁあぁぁああぁあぁあ!!!」
それが、彼を叫ばせる。
そしてその叫びのまま、レオンは機体をバイオラプターに突撃させた。
何の小細工も技術もないただの体当たりだったが、
バイオラプターを岩に叩きつけて戦闘不能にするには充分だった。
「く…ぅ―」
(もう、ダメか…)
…レオンの意識を、失わせるのにも。

そのまま動きを止めた青いゾイドに、バイオラプターが迫る。
パイロットが意識を失ってしまった今、回避も反撃も不可能になってしまっていた。
だが、この状況にもかかわらず、バイオラプターにこの機体を破壊することはできなかった。
なぜなら。
「上出来だ」
一言とともに放たれた光が、バイオラプターを撃ち抜いたからだ。
「本当によくやったよ。
 リーオもなしにたった一機でここまで戦い抜いたんだ、これは誇りに思ってしかるべきだ」

16 :
いやしばらく見てなかったら前スレが見当たんなくてちょっとばかりあせったわ。
>>1氏乙です。

17 :
「済みません、お手数おかけしまして…」
「いや、構わないよ、こっちのほうが本職みたいなものだからね」
アルフレートは、どうもコア関係に問題が起きたらしいというストームソーダーをチェックしていた。
「よし、わかった。まずは…」
アルフレートは、もともとゾイドコアの研究者であった。
その彼がこの世界にいるのは、西方大陸戦争後半以降から実戦投入されだしたゾイドに関係している。
つまり、オーガノイドシステム搭載機や完全野生体のような、
コアレベルでの新機軸が採用されているゾイドが実戦投入されるようになったために、
軍属のゾイドコア関係の技術者として共和国軍に従軍していたのだ。
そして、ニクスに渡る途中でこの世界に飛ばされた。
「それにしても…」
また疑念が湧いてきた。
上層部は何をあんなに焦っているんだ?
シヴァがそう簡単に完成させられるものではないことも、
完成を急いだことから来る不完全さが重大な問題を引き起こしかねないものであることも、
十二分に解っているはずだ。
それでこんなに急がせるというのは、何かの原因で焦っているとしか思えない。
今日ここに来たのもそれに対して苦言を述べるためだ。
急ぎすぎは危険だ。
それに参考にすべき資料も不足している。
データは持ってきているとはいえ、あのゾイドそのものは共和国にあるというのに―

18 :
「はっはっはっ、またお目にかかろう!」
爽やかな笑いとともに走り去るリンチ少佐
定員一名の操縦席に部下をスシ詰めにしているためなかなか笑える状況を呈している
「テメエ待ちやがれーっ!!」
後を追うデッドリーコングもゾイドを奪われた討伐軍兵士を相乗りさせているためコクピットの男臭さは致死量一歩手前だ
後に残されたのはアズサのバイオラプターただ一騎
「帰るか・・・」
その後の顛末について簡単に
フェルミはアイアンロックに用があると言って早々に飛び去った
「この貸しはそのうち返してもらうわ、アズサちゃんのカラダでね〜」
という不吉なセリフを残して
ヘレナは三日間静養したのち仕事に復帰した
捕われていた間の扱いについてアズサがそれとなく聞いたところただ一言
「・・・雑でした」
そしてチャンプ兄妹は
「やあアズサさんポゴタの町にいい店があるんですよ、どうですこれからご一緒に」
「上兄様、コレは私のだから駄目です!」
「お前らいい加減に帰れー!!」
実はまだ基地にいるのです

19 :
CDKBUzTs氏、「何でバルタンまで萌えキャラにしやがった」って台詞が気になるんですが、
何のことか見当がつかないために調べようがありません。
よろしかったら御教示下さい。

20 :
説明しよう
2月11日放送のウルトラマンマックスに登場したバルタン星人は
善玉のタイニーバルタンと悪玉のダークバルタンの二種類いて
タイニーは萌えっ娘で魔法少女でばるるんなのだうっきー!!

21 :
酔ってんのか?
なんかイっちまってるぞ

22 :
>>20
御説明どうもです。平成ウルトラマンはガイアの途中辺りから見てないので知りませんでした。
マックスに過去の怪獣・宇宙人が出てきてるってのはなんか知ってたんですが。そんなことになっていたとは…
ウルトラで魔法っつーとレオでなんか出てきたことがあるような(文字情報でだけ知ってる)…
しかしあんな宇宙人やら超人やら出てくるシリーズで魔法言われても。

23 :
レオだとウルトラマンキングがブニョによってバラバラにされたレオを復活させた奴か??
レオ以外にはジャックとかが好きだったな。ウルトラブレスレットとか。
まあウルトラマンは板違いなので、ゾイドの話題に戻そう。

24 :
ウルトラマンのネタなんて入れられてもわかんねーよ

25 :
「聖ベラマンチャ祭ですか?」
「先刻スペッテン氏が基地に来てね、是非協力してくれって言うのよ」
スペッテンというのはアラヨット山の麓にあるポポローネ村の村長さんだ
で、300年前に村を救ったベラマンチャという聖人を祝う祭りに基地から人を出してイベントを盛り上げて欲しいというコトらしい
その聖ベラマンチャというのが
「触れただけで病人を治したとか杖で地面を叩いたらレッゲルが湧いたとか色々伝説があるようだよ、素手で野良コングを倒したってのもあったな」
「どこの東方不敗ですかそれは」

26 :
>>25
だんだんスレと作品の内容が乖離し始めてるぞ
お節介かも知らんがどっかでちゃんとフォロー入れとかないと
ジェネシス二次創作にしか見えなくなってきてると言うか無駄なネタ織り込み過ぎ
もっと簡潔にした方がいいと思う
駄文失礼
華麗にスルーして以下ドゾー

27 :
「ちょ、ヴィーラさん速い!追いつけないから!」
こっちの事は完全にアウトオブ眼中らしく、ヴィーラさんはどんどん先へ行ってしまう。
カニのおかげで動きが捉らえられているのが救いだった。どうにか見失う事だけはない。
「ったく、全然聞いてねー」
ヴィーラさんに追い付くのを諦め、レーダーに目を戻す。
ヴィーラさんのジェノブレイカーの進行方向の延長線上に、確かにナニモノカが走っていた。
形と大きさからバイオゾイドだとは推測できるが、それがどんな機体かまでは分からない。
「速さからして、メガラプトルかな…」
ヴォルケーノで、しかも単独で動く人がいるとは考えにくい。
まあ何でもいい。…とりあえずヴィーラさん、後ろを一回くらいは見て下さい。
寝床貸してる人間にこの扱いはないと思います。
「―聞いてないだろうけどさ」
やっぱり、彼女の正体はお嬢様なのだろうか。
今度こそ聞いてやる。問い質してやる。尋問してやる。
住所年齢電話番号はどうでもいい、氏名は既に分かってる、肩書きと目的を。
徹底的に吐かせてやる。
…などと考えていたら、そのお嬢様から通信が入って来る。
「どうしたのそんなノロノロと」
ぷつっ。
こっちから切ってやった。

28 :
うう、鋭い指摘
ガチバトルはバトストに詳しい作者さんに任せてこっちは不良軍人と地元住民の
生暖かい交流を描きつつテキヤの親分の乗るハンマーロック(武器は三節棍)とか出そうと思ってたんですが
確かに共和国軍が出てこないのはスレタイ的にはマズイか
このままこの作風で突っ走るかシリーズ途中でプロデューサー交(ry


29 :
他に場所がないからここで今のうちに指摘しておく
ギャグがしつこい
既存のジェネキャラの扱いがぞんざい(>>554氏の言う踏み台的な扱い)
共和国軍がいなくても成立する話に見える
結論
お前調子乗りすぎ
自制しろ

30 :
「っ……」
ゆっくり目を開ける。
まず視界に入ってきたのは、青と白のツートンカラー。
「空…」
戦いが始まって以来、久しく空を見上げていなかったのを思い出す。
とても、キレイだった。
「おはようレオン君。そしてお疲れ様」
笑顔が視界に入り込んでくる。
「フェン、さん」
「ん」
「どうなりました…?」
「一応奪取には成功した。特異点についてはまだ分からないがね」
「そうですか……」
横を向くと、倒れ臥したままのセイバータイガーと、佇むシールドライガー。
その傍らに、フィアスとブレードライガー、そしてデススティンガーがいた。
否応なしに、さっきの戦いが思い出されてくる。
彼女もそれに気付いたのか、そちらに目をやった。
「しかし凄いなお前は。エレナから聞いたよ、あれだけのバイオゾイドをたった独りで抑えたんだってな」
「褒められたもんじゃ、ありませんよ」
どうしても、彼には自分のした事に対して後悔せずにはいられなかった。
「セイバータイガーには無理させちゃうし、フェンさん達が来てくれなかったらダメだったし、」
空に目線を戻し、
「結局、恐怖心も拭い去れませんでした」
噛み締めるように、ゆっくり言った。

31 :
>>26>>29雑談スレの次は此処を荒らす気ですか?気に入らないならスルーすればいいだけの話。いちいち人に絡まないように

32 :
すぐその手のと結び付けるのはやめとけ
どう見ても荒らす意志があるようには見えんぞ
ただ、言葉は悪いかもな
指摘はもうちょい紳士的にやろうや
誤解されやすい

33 :
しかし彼女は、ゆるゆると首を振った。
「それは違うよレオン君。言ったろう?力は強さに直結しないと。
 死ぬのは怖い。私だってそうだ。今までかつて、死ぬのを怖いと思わなかった事は一度もない。
 恐らく本当の、純粋な、無色の強さって言うのは、どんな状態に陥ろうとも、
 いかに自分に対して、恐怖に対して正直でいられるかにかかっていると、私は思うんだよ」
独断と偏見に満ちた見解かもしれない点は否めないけどな、といったん言葉を切る。
本当なら、こんな話を少年にするべきではないのだろう。素直に聞き入れられるとも思えないし、思う気もない。
だが、やっぱり言いたかった。
久しぶりに感情的になっているのを感じながら、彼女は言葉を継ぐ。
「軍人の私が言えた事ではないのは分かっているが、それを承知で言わせてくれ。
 …本当に、誰にも負けたくないなら、戦うな」
そう言う手段を用いずに恐怖と向き合い、折り合いを付けて立ち向かえるのが、強いと言う事。
信じていながら貫けなかった自分が言うのも傲慢だな、と他人事のように考えた。

34 :
なぁ>>28氏の書いたヤツてそんなにダメか?
結構このカルイノリが楽しみで見てたんだけど。
いやたまに行き過ぎてる気はそりゃしたが、個人の趣味じゃなかろうか。
・・・というかどうせ過疎な板なんだからそんな目くじら立てんでもよかろうに。
嫌いなら読まずにスルーすりゃいいだけだと思うが・・・。
少なくとも、世界がよくわからんバトストスレより楽しめてる。

35 :
本当に嫌いならコメントもしないだろ
むしろそう言う指摘をしてくれる人がいるのは幸せだとおも

36 :
 ニックは整備兵に指示を出すアルフレートを見ていた。
今日アルフレートが司令部に行くというので、警護の為ついてきた。
そこで会談の時間を待っていると、ウルトラザウルスの立っている近くの整備廠から、
コア関係に問題が起きたストームソーダーがいるので見てくれと呼びに来た。
そしてそれに応じて、指示まで出している。
やはり、自分の警護している人間はゾイドコア関連の技術者か何かのようだ。
だが、何の為にあの兵器の開発にコアの技術者が必要なんだ?
もちろん、あのシヴァとかいう仰々しい名前のついた兵器について詳細に知っているわけではない。
しかし、コアの技術者と直接結びつきそうな、
コア関連の新技術を採用した新型ゾイドの開発でも、そうした新技術を既存のゾイドに当てはめる計画でも
なさそうなことくらいは分かる。
シヴァはディガルドに強力な圧力をかけるための兵器だと聞かされている。
一般市民の居住区画に極めて接近、いや、隣接していることさえあるディガルドの軍事・生産拠点に対して使用すると、
一般市民の犠牲が大きくなり過ぎるため、実際に使用はできず、圧力をかける為だけにしか使えないほどの
破壊力のある兵器だとも。
何故そんな兵器の開発にコアの技術者が必要なのか。
尋ねても答えが帰ってくるわけはない。機密事項だからだ。そんなことはわかっている。
だが、答えが返ってくるかどうかということと、それを尋ねてみたいと思うかどうかということは、
あくまで別の問題のはずだ。自分は、尋ねてみたいと思っていなくてはおかしい。それも痛切に。
そのはずなのに、何故かそのことを尋ねてみたいという気がしない。
いや、そのことばかりではない。警護をするために不可欠な、
自分の担当の人間がいつどこへ行くかというスケジュール等の、最低限の情報しか与えられていないというのに、
それ以上のことを知りたいと思わないのだ。
自分でも、実に不可解だった。
もしかしたら、ウルトラを―ビッグ・ママを―危険に晒すかもしれない計画だというのに―

37 :
「何言っても応答なしかよ…くそっ」
それにしてもよく逃げる。かなりのやり手だ。普通のディガルド兵にあの動きはまずできない。
それこそ、先日戦ったコマンドウルフのパイロット達くらい熟練してないとダメだろう。
「まさか、な…」
そういう手合いの人員を討伐軍が養成し始めたのか、と一瞬思った。
しかし、彼等にそんな余裕があるはずはない。
「このままだと討伐軍の勢力圏内に到達してしまいますけど、どうします?」
リリが聞いてくる。確かに頃合いだ。
「じゃ、そろそろ行動に出るか。尻追ってるだけじゃ埒があかないしな」
レバー制御も慣れてきたし、大丈夫だろう。
速度を上げ、一気にメガラプトルを追い抜く。そして高度を下げ、目の前で機体を反転させた。
当然、相手は止まる。
「さっきから延々と無視してくれちゃってるけど。お前、何やってんだ?」
「……」
半ば諦め加減で言ってはみたが、やっぱり応答なし。
ここまで沈黙を守り通せるのはさすがだが、どうにもイライラする。
しかも攻撃体勢なんてとってくれちゃってるもんだから、なおさらだ。
いいだろう。こっちとしても、ゲームの恨みがある。
遠慮なくやれるってものだ。

38 :
「どーも最近の敵さんは、腕の立つ奴が多いみたいだな」
狙いが鋭い。
ここまで走り通しだったから疲れているのだろう、時々照準の修正が甘くなるが、
それを差し引いても相当だった。討伐軍のそれとは雲泥の差だ。
本当に。
何か、おかしい。
「…リリ。頼んでおいたもの、調べついてるか?」
「一応は。詳細は書類にまとめましたけど」
「概要が聞きたい。今は結論だけでいい」
ちょっと考えてから、リリはこんな答えを返してきた。
「ええと…一言で表すと、"現れてます"」
なるほど。要するに…
「…援軍反乱その他は特にないってことだな?」
「はい」
出所不明か。こりゃいよいよ分かんなくなってきたな。
「っと、お」
左右に振り回し続けていたのが功を奏したのか、メガラプトルの動きが少し鈍くなった。
チャンスは逃さずものにする。…一応、俺ことフィルの人生規範だ。
口を開いた瞬間を狙って機体を突っ込ませ、柄まで通れとばかりにバスタークローをねじこむ。
ウィリアムテルの射抜いたリンゴの如くあごから上を持っていかれたメガラプトルは、
二三歩よろめいてそのまま力無く倒れた。

39 :
気がつけば、知らない土地でした。
「てことで、やっぱりキャノリーユニットの制御系がダメになってたみたいです」
分かったのか分かっていないのか、村の老人はうんうんと頷く。
「よーわからんが、シンはすごいのう。なんでも直せるんじゃのう」
年の割にはごつい体をしたその老人は、結局分かっていなかったらしい。
それでも、ひょろっとした青年は、ほめられたのが照れくさかったのか、頬を掻いて表情を誤魔化した。
「いや、簡単に直ったのは、こいつが大事に乗られてるからですよ。
 ついでに駆動系も調整しておきました。左側のガタつきがマシになったと思います」
「その調子でテアとテラの心の傷も癒してやってくれればいいんじゃがのう」
「いやその・・・やめて下さいよ・・・」
顔を赤くしたシンに、老人は呵呵と笑った。
その後、村人はひとしきり茶飲み話をした後、土産の野菜を置いて帰っていった。
「モルガで畑を耕すのは、ちょっと微妙な気もするけど・・・。面白い使い方ではある・・・かな?」
どこかに鋤を引くレッドホーンとか、樵仕様のアイアンコングがいるかもしれないな。
土木工事用のジェノザウラーとか。
・・・。
僕は何をバカな想像をしているのか。
「シン、夕飯よー」
「シン、ご飯ー」
母屋から若い女性と幼い少女の声が聞こえた。
シンが今世話になっている家の主と、その娘である。
「あ、今行きます。ダ・カツさんがまた野菜もってきてくれましたよー」
納屋を改造して造った住居兼即席のゾイド整備場から、シンは野菜を担ぎ出した。

40 :
村の中心部にある湖で拾われてからしばらく経つと、さすがに慣れてきた。
最初は警戒されていたようだったが、故障で動かなくなった小型のゾイド(コネクテスというらしい)
を修理して見せたところ、どこからか流れて来たゾイド技師と認識されたらしい。
ひょろっとした、あまり強そうに見えない外見も、功を奏したのだろうか。
・・・あまり名誉なことでもないけれど。
家の主、ナ・テアの亡夫はゾイド技師だった。
4年ほど前に事故で亡くなったという、その遺品を受け継ぐ形で今は母屋から離れた所にある
その元仕事場を住処として借用している。
しかし、慣れてきたとはいえ、村の中心部にそびえる「ジェネレータ」を見ると
やはりここが自分の知る世界ではないことを意識させられる。
この、ゾイドの燃料とされる「レッゲル」という物質を生み出す装置は一体なんなのだろうか。
元研究者として、このレッゲルがゾイドに与えている影響も見逃せない。
どんなゾイドにも共通の燃料として機能し、さらにはゾイドになんらかの影響を与え
自己修復能力を高めているような節もある。
でなければ、ほとんどのゾイドがたいした整備もされずに放って置かれて
尚且つこれほどの稼働率を示している理由が思いつかない。
そもそも、「掘り出される」こと自体、シンには説明がつけられないことではあるのだが。

41 :
シンは元々、帝国技術院所属の研究者だった。
とある事件が起こり、降格から左遷のコースを辿って、
いつの間にか辺境の整備員になってしまうまでは。
さらには殺されかけた。いや、殺されたに等しいかもしれない。
トライアングルダラスに逃げ込んだ共和国艦隊を探し出せ。ほれシンカー。
いや無理ですよそれ。と言いますか僕パイロットじゃないんですが。
知らん。命令だ無理でも行け。
行きました。
遭難しました。
ウルトラザウルス見つけました。大きいなぁ。
・・・気がつけば知らない土地でした。
彼の知らないことではあるが、ゼネバス系の人間であった彼は、
ゼネバスの系譜に連なる者たちと、ガイロス帝国諜報部との暗闘に巻き込まれたのである。
影を感じながらも、組織の尻尾を杳としてつかめなかった帝国諜報部が仕掛けた
数多くの餌の一つだったわけだが・・・。
勿論のこと、シンは世に言う「鉄竜騎兵団」とは全くなんの関わりもない。
救いの手などどこにもなかった。
ここは、なんと平和なことだろうか。
高度な研究施設などは無論存在しないが、ゾイド達は戦争に使われることなく
人々の暮らしに溶け込んでいる。盗賊などの例外もないではないらしいが・・・。
それもこの村では、あるいは田舎だからか、めったに話題に上ることもない。
少なくことも、今この時は、概ね平和と言えた。
この場所で、ゾイドに触れていられるだけで満足している自分がそこにいた。
・・・ゾイドだけが原因、というわけでもなかったが。

42 :
ナ・テアはシンよりも4つほど年下の25前後の筈だが、夫を事故で亡くしてから、
女手一つで今年7歳になる娘を立派に育てている。
「お帰りなさい」
「シンおかえりー」
いやそこは『お帰り』じゃなくて『いらっしゃい』な気がしますよ?
と思わないでもなかったが、二人がそれでいいなら、余計な事は口にしない。
扉を開けると、さっそくナ・テラが飛び出して来た。
「おっと」
勢いに押されてよろけそうになり・・・そのままテラを抱き上げた。
「ほら、危ないよ」
勿論本気で怒っているわけではなく、テラも承知しているのか謝りながらも笑顔のまま、腕の中で暴れた。
その様子を見て、テアが腰に手を当てて怒って見せる。
「こーら。さぁ、ご飯にするから、二人とも早く座って」
「手伝うー」
テラが腕から飛び降りて母親の元に走っていった。
ぼそぼそと内緒話が聞こえる。
「・・・お母さん、シンがテラをかまうからヤキモチ?」
「オトナをからかわないの。それとも、お母さんがシンとっちゃってもいいのかなー?」
「それはダメー!」
思わず赤面する。
・・・共和国制のホームドラマのようだ。
そんな風に思ってしまわないでもなかったが・・・いいのだ。いいことにする。
台所に立つテアと、まとわりつくテラの様子を見ながら、
美人で優しい妻、かわいい娘。
少し頼りないが優しい夫(自分のことだ)。
なんとなく、そんな関係を妄想してシンはニヤけた。
いや自分では気がついていなかったかもしれないが。
帝国技術院時代の研究しか頭になく、人付き合いもいいとは言えなかった彼の姿を知るものが見れば、
思わず逃げ出したか、病気でも疑ったことだろう。
なんというかまぁ、この世界に来てからの彼はそんな調子なのである。

43 :
それは、ある意味シンが元の世界で生きた証だった。
「こっちこっち!」
ある日、子供たちが山で巨大なゾイドを見つけたと騒いだ。
子供の足でいける範囲には、そんなものがある可能性は無い筈なのだが。
ハズ、という言葉はやはりあまり当てにならないらしい。
「ちょうどお前さんが来たころに、大きな地震があってな」
ダ・カツの話によると、少し前の地震で地崩れが起こり、埋まっていたものが
表に出てきたのではないか。
そういう見解で村では落ち着いているそうである。
さんざん歩かされた。少なくとも、
途中でフィラソードあたりを借りてこなかった事を後悔する位には。
・・・なんでみんな、こんな元気なんだ?
疲れを知らないかのごとく、子供たちは歩いた。
息も絶え絶えに、シンは自らの運動不足を嘆いた。
そして案内された先で見つけたのは・・・。
数瞬、シンは疲れを完全に忘れた。
見たことのないゾイドである。
少なくとも、シンのいた時代にはこのゾイドは存在していなかった。
しかし、シンには覚えのある姿であることも、また事実だった。
「直せる?」
瞳を輝かせる、ナ・テラを始めとする子供たちに答える声も、震えていたかもしれない。
「うーん。どうかなぁ」
生返事をしながら、シンの目はある一点に注がれていた。
それは・・・
「ゼネバスの・・・紋章・・・?」
それからは、暇を見つけては調整と研究の日々が始まった。

44 :
なんかいいところで終わったな
続きが楽しみ

45 :
エナジーライガーか?はたまたセイスモか?

46 :
「……」
リリが佇む。いつもとは異なり、表情は険しい。
「…なるほどね。これじゃあ応答なしだわ」
その前に、片膝を立てている俺。この展開は予想していなかった。
いろいろ事情が聞けただろうと言う期待を裏切られた気持ちと、
死者に対する純粋な悼む気持ちと。正直言って心中複雑。
さらに、その前。
コクピットから這い出たその体勢のまま、兵士が事切れている。
例の土偶スーツを着ていたため、中の人の顔までは拝めない。
なので合掌してから脱がせた。
「……っ!」
リリが息をつまらせる。
背中を中心に、七発銃弾が撃ち込まれていた。うち三発貫通。かなりの至近距離から撃たれている。
「……」
予想通り、その人の顔には見覚えがなかった。
恐らくバイオゾイドを盗みに入ってディガルドの人間に見つかり、
撃たれながらもメガラプトルを奪取してここまで逃走し、そして…と言う次第だろう。
とりあえずは、そう仮定する。
「……と」
いかんいかん。感傷も推理も後回しだ。ここはまず、やらなければならないことがある。
「リリ」
「はい」
「エールさんに連絡頼む。捕まえられるならエルデさんも」

47 :
「あんまりがんばり過ぎたら、体に毒よ?」
テアが鍋をテーブルに運んで来る。手伝おうとしたが、断られた。
「シンは座ってるの」
幼いテラも皿を運んでくる。受け取って、テーブルに並べていく。
「やっぱり、動かないの?・・・残念ね」
「はい。でも、少しずつ元気になってきてますよ」
「へぇ・・・でもなんだか、あんまり楽しそうじゃないわね?」
シンは複雑な表情を浮かべた。
「うーん。なんていうか、動くのを見るのが怖いような楽しみなような・・・変な気分ですよ」
「ふーん・・・さぁ、食べましょ。昔から言うでしょ?腹が減っては・・・って。
 ほら、テラもスゴイ顔で睨んでるし」
いたずらっぽく、テアが笑った。
この世界では、ゾイドは発掘されるものだという。
そしてゾイドに乗ることが出来る人間の頭には、自然と頭にその名が浮かぶ。
シンが操縦席に座っても、そのゾイドの名は分からなかった。
テアが「残念」と評したのはそのことだろう。
シンは、ゾイドの精神波を感じやすい、俗に言うところの「ゾイドの声が聞こえる」人間、その一人である。
そういった者はゾイド乗りに向いているのだが、彼の興味はあくまでゾイド自体である。
また争いごとが好きなわけでもなかったし、喧嘩も弱い。英雄願望とも程遠い。
だから、ゾイド乗りではなく研究者の道を選んだのは、当然と言えば当然の成り行きだったかもしれない。
結局、今はこんな事になってしまってはいるのだが。
やはりレッゲルがよい方向に影響を与えたのだろうのか。
ここ数日を経て、停止しかけていたゾイドコアは徐々に力を取り戻しつつある。
その兆候が、徐々に観測されるようになっていた。
「なぁ、お前は・・・いや、なんでもない」
地面に伏せるような格好で土に埋もれた、巨大な肉食獣のフォルムを眺め、シンはその装甲に手を当てた。

48 :
「大規模な盗賊団・・・ですか?」
「うむ」
本日のお相手はビームトータスである。
もっとも、その砲塔は封印されて、昇降機として使われていた。
テアの出した茶を飲みながら、その乗り手、サ・ノヴは重々しく頷いた。
「遠く、東のほうから流れてきた連中らしい。
 恐らくはディガルドに追われた連中が食い詰めたんじゃろうな」
顎鬚を一房つまんで一つ弾くと、湯飲みを机に置いた
「ディガルド?」
「急激に力をつけて来た国じゃ。強引に周りの国を従えての」
面白くもなさそうに、サ・ノヴは白いものの混じる髭を弄ぶ。
・・・白いのを一本引き抜いて、涙を浮かべた。
「まぁ、ここからは遥か遠いがの。ともあれ、盗賊が近づいておるなら考えねばならん。
 念のため、な」
そう言って、また茶をすする。
「おぅい、ノヴよ、そんな所で何をサボっておるんじゃー?」
声と共に、モルガのキャタピラの音が近づた。
「バカモノ。修理じゃ修理。お主らのようにテアの茶を飲みにきただけではないわ。
 ・・・なんじゃ、兄弟そろってとは珍しいの」
ダ・カツとダ・ツグの兄弟が、モルガから降りる
「ワシらも茶を飲みに来たのではないわい・・・テア、茶をくれ、茶じゃ」
「なーに? またおじいちゃん三人組で悪戯の相談? すぐだから、ちょっと待っててね」
母屋の方から、苦笑交じりの返事が聞こえた。
と、ダ・カツとダ・ツグはサ・ノヴを挟んで一つ頷き合うと、声を低くした。
「・・・例の盗賊どもな、近づいてきておるようだぞ」
「・・・そうか。思った以上に早いな」
ボソボソと潜めた声が、ほんの少しだけ漏れてくる。
「念のためじゃが・・・準備はしておかんとの」

49 :
それから何日かが経ち。その日は、テラが一緒だった。
この世界の人間は健脚で、幼くとも下手をすればシンより体力がある。
勿論、遠いのでフィラソードを借り出してはいたが。
「今日はうごくかなぁ?」
「うーん。動くといいねぇ」
コアの動きは活発化している。すぐにでも目覚めそうな気配はあるのだが・・・。
やはり、乗り手として選ばれていない、そういうことなのだろうか。
いつの間にか、辺りを闇が包んでいた。昔から没頭すると時間が経つのを忘れてしまう。
機体の背中側にいるテラに休憩を呼びかけた。
テラは素晴らしく飲み込みが早い。少し教えただけで自分なりに考えて理解し、
今ではちょっとした手伝いなら十分こなせてしまう。
・・・だからと言って、少し連れて来過ぎかな?
「お茶飲んだら帰らないと、テアさん心配してるだろうなぁ」
すっかり冷め切った茶を、水筒から小鍋に移して火にかけた。
なんというか・・・楽しかった。この世界に来てからというもの。
毎日を新鮮に感じるようになった。これを、幸福というのだろうか?
温まった茶を湯飲みに分けて、一口含む。
「シンはお母さんのこと好き?」
噴いた。
「なぬななな・・・?」
テアの、こちらを振り返って悪戯っぽく微笑む姿が脳裏に浮かび、思わず赤面する。
「お母さん、シンが来てから楽しそうだし、テラもシンならお父さんになってもいいよ?」
澄んだ目が、携帯コンロの火を映して輝いている。
「シンはそれじゃ嫌?」
「い、い、嫌・・・じゃ全然ないけど、その、私はほらあれだし」
一瞬だが「しあわせなかぞく」の妄想を巡らせてしまう。しかし・・・。
・・・いつかまた、自分はどこかにとばされてしまうかもしれない。
そうならない保証は、残念ながらどこにもない。
「・・・テラ。僕はね」
言いかけたその時。遠くで、爆音が轟いた。

50 :
>>48は(´・ω・`)6ではなくて(´・ω・`)7です。
間違いました御免なさい。


51 :
「なんでぇ、抵抗は終わりかよ、張り合いのねぇ!」
セイバータイガーのTEZ20mmリニアレーザーガンが唸りを上げる。
盗賊に家が、田畑が焼かれていく。抵抗は・・・もうない。
元々、モルガやコネクテス、フィラソード数台では話にならない戦力をその盗賊団は備えていた。
ディガルドに追い散らされ、流れ流れて来た彼らにとって、この村は、見逃すには惜しい魅力的な獲物だった。
「てめぇら、あんまり壊し過ぎんじゃねぇぞ! 後で売れなくなるからな」
「お頭、この村のヤツら、食料からなにから全部置いて逃げ出したみたいですぜ」
散発的な抵抗を蹴散らした数機のコマンドウルフとブラックライモスが、
頭目のエレファンダーの周りに集まった。
その男、盗賊団頭目、バンデルは、エレファンダーの中でがっしりとした腕を組んだ。
・・・何もかも置いてさっさとトンズラしやがったってことは。
俺らに気づいてやがったってことか。しかし、見事な逃げ際だぜ。
お宝はさっさと隠して、俺らが諦めて出て行くの待ってやがると考えた方がいいか。
戻ってくるのを気長に待つのは・・・性に会わねぇ。
「昼には確かにこの村には人がいた。そう遠くにはいけやしねぇ。
近くに、村人全員が隠れられるだけの場所があるってこった」
意外に、頭が廻る。
「てめぇら、手分けして辺りを探せ。洞窟かなんかあるはずだ」
頭目に従い、手下たちは三々五々散っていく。
「・・・サービン」
不機嫌さを隠さない目付きで、バンデルは、村の入り口近くに突っ立ったまま
微動だにしないワイツウルフを見やる。
「てめぇも行け・・・何もしてやがらねぇな。報酬分は働けや」
「・・・フン」
ワイツウルフの中、サービンと呼ばれた男は一つ鼻で笑うと、
機体を山へ向け、走り出す。
「チッ」
舌打ち一つ、バンデルはエレファンダーの鼻を近くの民家に振り下ろした。

52 :
「なんだ!? 村のほう!」
「わ?」
咄嗟にテラを抱き上げると、岩肌をつたって機体の背中に上がる。
・・・煙。方角的に見ても間違いなく村のある辺りに、灰色の煙が上がっていた。
途切れ途切れに爆音も聞こえてくる。
今から急いでも・・・間に合わない。
理性の冷静な部分がそう判断を下すが
「ねぇシン、何があったの? 村は? お母さんが!」
テラの悲痛な叫びを聞くまでもなく
「テラ、そこにいるんだ、行って来る。・・・大丈夫だ。すぐに戻るから」
言い聞かせて、機体から滑り降りようとしたその時。
突然機体が振動を始めた。獅子の瞳に、光が点る。
コアが正常に動き始めたのだ。
「どこの誰の計らいかは知らないけど・・・ありがたい!」
途中焦ったためか滑り落ちそうになりながらも、なんとかコクピットに転げ込む。
「テラ!危ないから少し離れて!・・・すぐ戻る。待ってて!」
外部拡声器を通して声を送ると、テラは意外と素直に機体から離れて森に走った。
大きな岩の陰に隠れて、様子を窺っている。
その距離を確認して、シンはライガーの操縦席を見回した。
やはり機体の名前が浮かんできたりはしなかったが・・・
・・・いける。こいつは動く。動いてくれる。
ゾイドの声が、今日はこの上なく明確に聞こえた・・・気がした。
タタ・・・ウ。・・・ホコリ・・・カケ・・。
そんな声が。

53 :
シンの研究・開発対象は、野生体である。
実験機を奪われたために、大幅な遅れを余儀なくされた野生体「ゼロ」の開発。
その遅れの短縮、そして「イクス」・・・帝国のゼロの開発に彼の力が大きく貢献した、
そのことは誰もが認める事実だった。
それが、帝国諜報部をして彼を「餌」足り得ると判断させたのだが。
「野生体には、もっと力がある」
イクスの基礎開発が一応の完成を見た後も、シンはそう主張して研究を続けた。
有り余る野生体のキャパシティを満たすものは何か?
・・・そして辿り着いた一つの回答。
もっとも、その時のそれは、友人との会話と、落書き程度の考案図でしかなかったが。
シンが研究データに、ほとんど戯れに書き込んだ、その姿。
その答えが今目の前にあった。
その装甲は、代々受け継がれてきた、ゼネバスの誇りの赤。
己が体を押さえ込む岩盤を、こともなげに割り砕き、
「お前は、僕には扱いきれやしない。それは分かってる。けど・・・」
鈍い輝きを放つ、その長大な角と爪は銀。
ゆっくりと、卵から孵るようにその巨体が大地から這い出す。
その背に張り出した巨大な機関が息を吹き返し、その力を全身に巡らせ、コアに注ぎ込んでいく。
徐々に強くなる振動を感じながら、シンはパネルを撫でた。
「ちょっとだけ手伝ってくれないか?」
操縦桿を握りしめる。
咆哮が、夜を裂く。
赤い獅子が、走り始めた。

54 :
「…ふむ。災難だったね」
俺ことルディアスの報告を聞いた、エールさんの第一声だった。
簡単に言うと、追い掛けていたメガラプトルがフィルさんによって撃破された。
それだけならよかったのだけど、なんとパイロットがコクピットで死んでいたのだ。
それも、フィルさんが実行犯ではない。
「しかもメガラプトルを手に掛けたのがフィルである辺りなんかは特に。
何と言うか、世界は狭いモノだなとつくづく思い知らされた気分だよ」
「日々そう公言して憚らない人間が今更何を宣るつもりなんだ?」
「いやいや、ルディとフィルと言う取り合わせははっきり言って想定外だったもので」
「ふーん…」
確かにそれはそうだ。と言うかそれは俺のセリフだ。
エールさんは前々から様々な所にコネを持っていた。
だからディガルドと繋がっている事自体は驚くに値しない。
むしろ、よりによってフィルさんとも繋がっていた事が驚きだった。
うん。
確かに世界は狭い。
「…それにしても、色々と訳が分からなくなって来ているな…
ルディは本来ありえないはずのキラースパイナーを掘り出すわ、
出所不明の部隊が現れるわ…
何とも不可解で、面白いね」

55 :
>>53
エナジーライガー キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!

56 :
巨大な獅子が大地を蹴りつけるたび、振動が辺りを圧する。
「やっぱりまだ調整が十分じゃないか・・・」
シンはモニターの中で次々と移り変わる各部のステータスを確かめつつ、
村のある辺りが燃える様子を、モニタ越しに見た。
今はただ、村人たちに無事で居て欲しいと、願うしかない。
本来の性能が発揮できていないとは言え、その速度は、
訓練や実験で乗ったゲーターやヘルキャットとはわけが違う。
村までの時間は僅かなものだった。
しかしその時。
レーダーがゾイド反応を捉える。
「中型・・・いや大型のゾイド・・・か?」
村と山を繋ぐ森の中、少し開けた空間で、その二体が出会った。
「赤い・・・ライガータイプか?」
「コマンドウルフ・・・違う?」
相手の素性を探りあうように、双方距離を置いて機体の足を止める。
ほんの僅かな沈黙を破ったのは、ウルフに乗った男だった。
「よぉ、そこのライガー。わりぃけどここは通行止めだ。他あたれや」
少し面倒臭そうな雰囲気を与える声。
機体に興味を引かれないでもなかったが、そんな場合ではない。
「こっちも急ぐんです。すみませんが、退いて下さい」
「そうか、だったら仕方ねぇや・・・こっちも商売でな」
言うや否や、唐突な動きでワイツウルフが跳躍した。

57 :
朦朧としかけた意識を、頭を激しく振って強引に引き戻す。
実験の一環でコマンドウルフには何度か乗ったことがある。
量産の利く傑作機であり、数多くの機体が戦線に投入され、その分捕獲された数もまた多い。
中には、そのままカラーリングを変えられ帝国側に編入された機体もあった。
最初そのシルエットを見た時、頭部の形状、機体のフォルムからコマンドウルフの派生系と考えたが、
「・・・早くて強い!」
いささかボキャブラリーに欠ける感想ではあったが
また、その特徴を端的に表してもいた。
どちらかと言えば、機体としてはケーニッヒウルフに近いものがあるのだが
そのゾイドは彼の知識にはない。
その動きにシンは翻弄された。
己の機体が得意とする、と思われる接近戦で始まった。
跳躍を見た、そう思った瞬間、衝撃が縦に襲う。
頭を押さえつけられた、そう思い至った頃には既に相手は飛び退り
放たれた2連装ショックキャノンが直撃、激しく機体を揺さぶる。
並みのゾイドであれば、今の一撃で終わっていたかもしれない。
反撃を狙ってがむしゃらに飛び込む。
「ぐッ?」
その加速に身体を持っていかれ、次の操作が間に合わない。
何とか振り下ろした重レーザークローも、
僅かなイオンブースターの噴射で位置を変えられ、あっさりとかわされた。
同時に、激しい横からの衝撃が襲う。
すれ違いざま、アーマーテイルの真横からの一撃だった。
突撃の勢いを利用された形で、ライガーが轟音を立てて転倒した。
一瞬の攻防ではあったが、ソイド乗りとしての格の違いを思い知らされるには、しかし十分な時間だった。
もう少しやれると思ったが、話にならない。
研究者の仲間内では乗れる方、と評されたことがあったが、
自分は己の駆るゾイドのパワーすら、全く制御できていない。
本物のゾイド乗りとの違いを、今思い知らされた。

58 :
「のってるヤツは・・・素人だな。」
今の攻防だけでも、それを知るには十分だった。
「だが・・・あのゾイド自体はとんでもねぇシロモンだ」
その動きに、図体の割りには軽い、そう思わされかけたのだが、足跡の沈み具合や
苦し紛れの一撃から伝わってきた衝撃、砲撃を至近距離から受けても沈まない、分厚い装甲。
そんな所からかなりの重量級ゾイドであると知れる。
・・・よくまぁ、あれだけ動くモンだ。
パイロットがその出力に振り回されているのが見て取れた。
先ほどの反撃。もし、フェイントの一つでも入れられるほど、パイロットが機体を制御できていれば、
あのスピードは避け切れていなかったかもしれない。
格の違いというものを、思い知らせた。
そう思ったが、立ち上がってきた相手からは、まだ戦意は失われていない。
自分の村が危ないのだから当然か。しかし・・・
「ありゃあ・・・半分方ゾイドが自分で立ちあがったか?・・・まさかな」
パイロットの意思に応えた、とでも言うのだろうか。
苦笑して、鼻を一つ鳴らし、バカな考えを追いやる。
そもそも、こいつ一体が村に辿り着こうが着くまいが、大勢に影響は無い。
「行けよ」
最初、何を言われたか分からなかった。
「さっさと行かねぇと、村がなくなっちまうぞ」
「え・・・?でも、あなたは、うわッ」
言いかけた所、ショックカノンの砲弾が地面に突き刺さり、猛然と砂と土を舞い上げた。
「いいからさっさと行きやがれ。オレはもう飽きたんだよ」
だったら最初から、と頭にこないではなかったのだが、到底敵いそうにない相手ではある。
その気まぐれに感謝こそすれ、恨むことが出来る立場にはない。
機体を村に振り向けると、再びライガーを走らせた。
「さて、これで義理は果たしたことにするかね・・・結末くらいは見に行ってやるか」
走り去るライガーの後ろ姿を確認し、ワイツウルフは歩き出した。

59 :
そこは楽しむ所じゃないと思うんですが。
ユーフォリアかあんたは。
「まぁ、それは小さな事だ。問題は…」
微笑んで、窓の外に一旦目をやり、
「君が襲われたと言うコマンドウルフと、件のメガラプトルのパイロット。
それらに、関連があるかどうかだ」
目を戻して真面目な顔で言う。
…エールさん自身は、関連があると疑っているわけだな。
聞いてみると、予想通り「当たり前だ」なんて言われてしまった。
「…動きも同じだったって言ってた事もあるし、恐らくはそうだ。
となると、私の情報網に何も引っ掛かって来ないと言う点がまた別の問題としてでてくるが…」
そこでニヤリと笑う。
…イヤな予感。
「それは、君に任せよう」やっぱり、そう来たか。
「フィル達と合流してほしいが、あれの部隊の行方はこっちでもつかめない」
今度は眉をひそめながら。本当に、表情がころころ変わる人だ。
「手間をかけてしまってすまないけど、自分で探して欲しい。出来る限りバックアップはする」

60 :
エールさんほどの情報戦闘能力を持つ人につかめない動きを、俺がつかめると思うのだろうか。
言ってみると、ちょっと乾いた笑いを漏らしながら、
「私じゃ無理だよ。縁の持ち方が月並みだから。
ルディ君のようないきさつで縁を持ったのなら、再会しないわけにいかないからね」
そんな風に答えてきた。
「それが因果とか運命ってモノさ」
「…そうですか」
運命。
俺が、一番嫌いな言葉だ。

61 :
「…同じだ」
手には血糊の付いた軍服(らしきもの)。
目の前には中のデータをもとに見様見真似で分解したジェットファルコン。
どちらにも、同じマークが入っていた。
「…こりゃ、傑作だぜ」
ルディ君といい、これといい、タイミングよくイベントが発生しすぎだ。
変なルートのフラグを立てるような行動をとった覚えはないんだけどなぁ…
「フィルさん」
後ろから呼びかけられる。
「リリか。応答は?」
「本部はダメでしたが、エルデ女史とは連絡がとれました。
近いうちに合流したいとの事です」
どっちも予想通りだった。
「おし、でかした。そんなリリを見込んでもう一つ頼みがあるんだけど」
「なんです?」
「タバコ持って来てくれないか?吸わなきゃやってらんない」
頭の痛さを我慢しながら、タバコをくわえて火をつける。
「いてて…バインダーの角は反則だろ…」
そりゃ頼み方は悪かったけど、何も角で殴らなくても。

62 :
閑話休題。
痛みは無視出来ても、掘り出し物と同じマークを持つ服があった事は無視出来ない。
「まさか地中で生き延びてたなんて…んなこたないか」
それは、ジェットファルコンと彼が同年代であると推測するに充分だった。
マークが入っているのが軍服である事から隊章か軍のエンブレムである可能性もあるけど、
少なくとも同じ時代、同じ世代のものである事は確かだ。
しかも、今ではないいつかの、と言うおまけ付き。
「……こんな事が、本当に有り得るのかな」
さらに、背中の弾痕の形から、彼は直立不動か歩いている所を後ろから撃たれている事が分かった。
と言う事は、彼は少なくとも逃走中や戦闘中に撃たれたのではないと言う事だ。
正規の軍人は、そんな走り方も戦い方もしない。
とどめに、メガラプトルが奪われたと言う知らせを最後に今の今まで連絡がとれていないと言う事実と、
組織戦を展開する、突然現れたコマンドウルフの部隊。
因果関係は立証出来ないが、今のところ以上から弾き出せる結論は一つしかない。
信じたくないが、可能性がある以上考慮しておくべきだろう。
「…早く来てくれねーかな、タスカー女史」

63 :
おお、新風が興っている
>>(´・ω・`)氏
エナジーGJ
739氏
切り込む角度が面白い

職人出現を願ってage

64 :
「と言うわけで探しに出たはいいものの…」
見つかるあて、ゼロ。そんな探し物など、普通なら初めからしない。
余程の物好きならするかも知れないが、俺ことルディアスにそっち方面の趣味はない。
自称トレジャーハンターのこの身で言っても説得力なんてありゃしないが。
「俺、今年厄年だったかな…」
「大きく外してるでしょ。だからきっと、厄じゃなくて不幸よ」
ヴィーラさん、涼しい顔でぬけぬけと言ってくれやがる。
事情を話したら「面白そうだからついていく」と即答されてしまった。
…話さなきゃよかった。
だから、こうしてのっけから欝なノリで始まった探し物が、
とんでもない事件に関わるきっかけになる可能性なんて、考える余裕もなかった。
そしてそれが、致命的なまでに裏目に出ることも。

「あんたら、ゾイドの部隊を見なかったか?」
「はい?」
村に入って人に会って第一声が「はい?」とは、随分とマヌケな気がする。
レッゲル(と、あわよくば弾薬)の補充と宿の確保のために訪れた村での事だ。
道行く人が皆何かを待っているかのような雰囲気だったので聞いてみたら、そう答えてきた。

65 :
いわく、ゾイドの部隊が大挙して訪れたので、
「強そうだったからディガルドをやっつけてくれるように頼んだんだ。
で、快く引き受けて出撃してくれたはいいんだけど…一向に帰って来ないんだよ」
との事。
しかも、戦闘の形跡も見当たらないのだと言う。
「確か、ヘリがどうのとか言ってたっけか」
「……ヘリ?」
何だそれは。ヘリコプターでも頼むつもりだったのか?
そんな事を考えていたら。
「もしかして、ヘリックですか?」
いつもとはまるっきり違う口調でヴィーラさんが唐突に言ってきた。
「うーん…多分それで合ってると思うけど。
ごめんね、最近ボケがひどくて」
思い出せないのはボケじゃない。それとも若年性健忘症ですかあんたは。
「こーゆーカワイイ女性が目の前にいるとそういう辺りがダメで…」
「死になさい」
ガッ
「ぬるぽ!」
―いろんな意味でお大事に。

66 :
「…知ってるの?そのヘリックって言うの」
「ええ、かなりね。因縁浅からぬ関係だから」
追及は止しておいた。俺も金的は喰らいたくない。
レッゲルも、弾薬も、宿も、運よく確保できた。今は、それらが終わって一息ついた所である。
「あなたは知らないの?」
「まるっきり。聞いたのも今日が初めて」
「あそう…」
ヴィーラさんが物知りなのか、俺が無知なのか。
いずれにしても、「レッゲルと弾薬はいくらでもあげるから探してくれ」と依頼されて、
ヴィーラさんが請け負ってしまった以上、俺もそれを手伝わないと言うわけにもいかない。
「コマンドウルフはいっぱいいるのにヘリックは知らない、か。変な国もあったものね」
それはこっちのおいなりさ…じゃなくてこっちのせり―
「…あれ?」
コマンド、ウルフ?
まさか。とは思うが、一応聞いてみる。
あんなもの、こんな短期間で忘れられるわけがない。
ええと…
「ヴィーラさん」
「?」
「ヴィーラさんの知ってるコマンドウルフって、部隊組んだりしちゃってる?」
「当然じゃない。あれは確かに傑作機だけど、あんなの単機じゃ戦況ひっくり返せないし」
…ストライクゾーン、ど真ん中ですか。

67 :
「頭ぁ、見つけましたぜ! でかい洞窟がありやがる。人の足跡もあった!」
「おう、でかした。よし・・・ダンカ。野郎どもを集めてこい。見張りもだ、もういらねぇ」
「承知だお頭」
ダンカと呼ばれた盗賊は、コマンドウルフで伝令役に走り出る。
エレファンダーの周りに、徒党が集まり始めた。
・・・ほとんどは、元々は普通の民だった。最初から盗賊だった者など、いない。
皆、ある日突然、ディガルドに町を奪われ、家を焼かれた。
中には行商に出て、帰ってみると村自体がなくなっていた、などという者もいる。
バンデル自身、そういった人間の一人だった。
「・・・落ちたもんだぜ」
エレファンダーの中、一人ごちる。
最初は、ディガルドから町を取り戻さんと旗揚げした集団だった。
しかし、ディガルドの擁するバイオゾイドに敵うはずもなく、大した抵抗も出来ずに追い散らされた。
今の、この村がそうであったように。
圧倒的な戦力の差を思い知らされたのである。心が折れるには十分な衝撃だった。
東から西へ流れ流れる旅。
補給を求めて近隣の町や村を訪れるも断られ、
耐えかねた一人が無理やりに食料を奪うと、後はもう一直線だった。
・・・今更考えたところでなんになる?
オレには、少なくとも自分についてきたこいつらを食わせていく責任がある。
こんな時代だ。他がどうなろうと知ったことか。
「頭ぁ、半分は集まりやしたぜ。後は外に出てるやつらだ」
「オウ・・・十分か。行くぜ野郎ども。おい、案内しろ!」
配下の言葉に現実に引き戻され、バンデルは命を下した。
咆哮が、炎に照らされる村に轟いたのは、その時だった。

68 :
「・・・なんだぁ?」
村の出口近くに居たセイバータイガーが、文字通り吹き飛んだ。
宙を舞う機体を反射的に目で追った途端、
一機のブラックライモスが大重量に背中を踏みつけられ、顎から地面に沈む。
次の瞬間には、コマンドウルフを一体下敷きにして、それは降り立った。
踏み砕かれたコマンドウルフから盗賊の一人が泡を食って逃げ出す。
「落ち着けてめぇら!」
一瞬パニックを起こしかけた部下たちにバンデルの叱咤がとんだ。
「角の生えた・・・赤いライガーだと?」
村を焼く炎の照り返しを受け、その装甲が輝く。
バンデルをその正面に置き、ライガーを囲むように盗賊団が陣形を整えた。
「村の人たちを・・・どこへやった?」
赤いライガーから、震える声が聞こえた。
伝わるのは強い怒り。幾人かの盗賊たちは、その声に警戒心を強めるが、
・・・逆に、バンデルには落ち着きを与えた。
見たことの無いゾイドである。慎重に越したことは無いが、このパイロットは冷静ではない。
機体がどんな力を持っていようと、それは大きな隙になる。
「きまってんだろうが。皆殺しだ、皆殺し」
エレファンダーの鼻が、一体のモルガを抱えあげて投げつけた。
あからさまな挑発であったが、
「ダ・カツさんのモルガ・・・」
目の前の、記憶には無いサイズのエレファンダーから聞こえた言葉に、シンの頭が一瞬で沸騰した。
怒りのままに、勢いに任せて飛び掛る。
この日二度目の、同じ失策。
・・・早い!が・・・それだけだ。
エレファンダーの鼻に真下から跳ね上げられ、ライガーの巨体が宙を舞う。
大地に叩きつけられ、地面を大きく削り取りながら、機体が滑った。
村の湖まで達したところで漸く止まる。激しい波が巻き起こり、湖面を揺らす。
半分水没したライガーの目から、光が消える。
「へっ。見掛け倒しだったかよ・・・シロウトが」
嘲りの声。エレファンダーが、倒れ伏した獅子に近づいた。

69 :
「やっほー」
「今日は随分早いな。もしかして、フリーだった?」
どうしても、体つきの秘密が聞きたくなる。彼女は、そんな抜群のプロポーションの持ち主だ。
「いやいや。フィルさん達にはいろいろ恩があるから、フリーにさせてもらったのさ」
「そいつは光栄だな」
エルデ・タスカー。
グラマラスな体形になる家系であるなんて噂が流布している彼女だが、真偽は全くの不明だ。
「いやいや。きっと実力さ、実力。何に対する実力かは全然分かんないけど」
試しに聞いてみた時の返答である。かなりの自信の持ちようだ。
そんな自信家のエルデさんだが、現在は傭兵なんてものをやっている。
先祖代々受け継がれてきたライトニングサイクスに乗り、数々の修羅場をくぐり抜け、
「で、今日の頼みってのは?出来れば切った張ったは遠慮したいなぁ」
…今ではこんな感じである。はっきり言って、とっても軽い。
腕の確かさとか腹が割れていたりとかする点を考えると、そこからは想像もつかない。
「エルデさんさぁ、自分の職業自覚してるか?」
「傭兵部隊"ファントム"所属、れっきとした傭兵だよ。
そこは自覚できてる。今のはジョークさ」

70 :
「分かってんのかなぁ…」
まあいい。エルデさんはこういう人だ。
「とりあえず、本題に入るか。
…帰る基地が、無くなっちまったんだ」
「フィルさんにそんな基地あったっけ?」
「今のところの、だ」
隠密行動を得意とする傭兵部隊、通称"ファントム"。
草創期は"第0特殊部隊"なんて呼ばれた事もあったそうだ。
請け負う任務の関係上、その実態はあまり知られていないが、その実力には定評がある。
ディガルドが本格的に世界制服を開始してからはどちらかと言うと討伐軍に協力的な立場をとっているが、
折り合いさえつけばディガルドの依頼やこんな仕事でも引き受けてくれる。
一区切りつけて顔を別の方向へやると、黒塗りの小さいライオン型ゾイドが目に止まった。
金色のブレードが眩しい。
「あれ、"V"じゃないか。もしかしてブラックさん同伴?」
「フィルさんからの依頼だから、だとさ」
隊長は名前をブラック・シークと言い、ダンディ街道爆進中のおっさんだ。
乗機は改造してリーオ製レーザーブレードとステルスシステムを搭載したレオブレイズ(彼は"V"と呼称)。
腐れ縁が今まで続いており、時々こうして助けてもらっている。

71 :
基本的にはいい人なのだが、強い敵と会うと人が変わったように好戦的になる。
いわゆる熱血漢。そんでもって、戦闘バカ。そんな面も持ち合わせているのだ。
腕がそれに見合っているのにはさすがの一言。
「おいおい、しかもカインたんまで同伴かよ?今日は大所帯だなオイ」
その隣には、黒い大型のキツネ―シャドーフォックス。
乗っているのは、カイン・ノヴァーリス。部隊一対人設定が消極的な奴だ。
話し掛ければ話す。人柄にも問題はない。ただ、自分からは絶対に喋らない。
カインの静かにしている姿は、病的な印象すら与えてくる。
「もしかして、皆で待ってたとか、そういう話?」
「カインはともかく、隊長はそんな雰囲気だったね」
うんうん、と確認するように頷きながらエルデさん。
「伝えたい事があるとかなんとか。道すがら言ってたよ」
―イヤな予感がした。

72 :
意識が過去へと跳んでいた。
そこでは、数少ない友人の一人が笑みを浮かべている。
研究内容は全く違ったが、同じゼネバス系出身の技術者だったところから交流が生まれた相手だ。
「どうだ、シーン。中々のモンだろう」
「ああ・・・すごい。驚いた」
目の前で脈動する機関は、確かに膨大な量のエネルギーを発生させていた。
「まぁ、まだ試作段階だが・・・地球から伝わった技術。
 そいつを、ここまでオレ達がモノにしたっていう証明だ」
目の前の巨大な機械の塊を動かしているのは・・・タキオン、そう呼ばれる粒子だった。
超光速という、理論上にしかありえなかった筈の粒子を利用する技術。その結晶が目の前にある。
「コイツなら、ゾイドコアが無くても動くゾイドだって夢じゃあない。いやそうなるともうゾイドじゃないか?」
そう語る友人とは裏腹に、シンは全く逆のことを考えていた。
「なぁ・・・こいつからエネルギーをゾイドコアに送り込んだら・・・どうなる?」
突然の言葉に、しかし友人は首を捻りつつも予想を口にする。
「そうだな・・・普通のゾイドコアなら、負荷に耐えきれず暴走するか・・・壊れるだろな」
「それが・・・普通のコアではなくて、完全野生体の核だったとしたら・・・?」
「んー?」
友人は首をかしげながら、端末までシンを導いた。二人で理論値を重ね合わせる。
例えば・・・そう、イクスの素体となる、ゼロのコアなら?
「・・・こいつはすげぇ。野生体コアってなここまでのモンか」
計算上、また僅かな時間ではあるが、野生体コアは
タキオンの生み出す膨大なエネルギーの負荷に耐え切った。
シンは、思わずニヤリと笑みを浮かべる。
「さしずめ・・・そうだな、この高エネルギー・・・ライガーゼロ『E・N・G』ってとこかな?」
「いんや・・・ここまで来たらゼロとはもういえねぇだろ」
友人は、端末に表示される出力その他の値を再度確認し、
「E・N・Gライガー・・・エナジーライガーなんてどうだ?
 ・・・まぁ、ゾイドに乗せられるほど粒子加速器をちっこくするのは、まだ夢のまた夢だがな」
そう言って、豪快に笑った。と、突然真剣な表情になる。
「4年くれ。4年で目処をつけてみせる。こいつは・・・モノになるぜ」

73 :
「う・・・」
どこかにぶつけでもしたか、シンの額から一筋の血が流れ出る。
その感触に、意識が現在へと引き戻された。
まだはっきりしない視界で、近づいてくるエレファンダーを見上げる。
僕じゃ・・・だめなのか・・・。
諦めが心を支配しかけたその時。
それを跳ね除けようとするもう一つの意識もまた、そこに在ることに気づいた。
ワレハマケヌ・・・マケラレヌ。
ワガ・・・ホコリニカケテ。
あるいは、それは言葉の形ではなかったかもしれない。
エレファンダーの巨大な脚が、ライガーを押さえつけた。
「高く売れるかもしんねぇが・・・息の根止めとくか」
エレファンダーの体重に、装甲が大きく軋みをあげた。
シンは、自分が負けず嫌いであったことを、思い出していた。
ゼネバスの出身であったが故、幼いころから差別を受け続けた。
研究者の資格を手に出来たのも、見返してやりたいという意識が強かったからだ。
ゼネバス人で何が悪い。決して劣るものではないことを、証明して見せる。
技術院勤務となって、実際に研究を始めてからは次第に薄れて行ったその意識。
同じ境遇の仲間を得て、ずっと奥に引っ込んでいた、その何かに抗うという意思。
それを呼び起こしたのは・・・。
「そうか、お前かエナジー・・・」
何者にも屈することを良しとしない、究極の野生体の精神波が、シンの心に響いていく。
ダ・カツ、ダ・ツグたちや、受け入れてくれた村人たちの姿が心に浮かぶ。
そして、ナ・テアとナ・テラの二人の姿が。
「・・・負けられないよな」
操縦桿を握る手に、再び力がこもった。力を失いかけていたコクピットに、光が点っていく。
獅子の目が、再び輝く。

74 :
「なんだ? 立とうってのか?」
踏みつけたライガーが、エレファンダーの脚を跳ね除けようともがくのを感じ取り、
バンデルは操縦桿を強く押し込んだ。
何故か、心の何処かが、目の前でもがくライガーに対して警戒を強く促している。
圧倒的に有利な立場にいるハズが・・・何を恐れることがある?
その、目に見えない圧力のようなものに気づいた者は、あるいはバンデルだけだったかもしれない。
「諦めて・・・おとなしく、くたばりやがれ」
バンデルのエレファンダーが、ゆっくりとかける体重を増やして行く。
警報音と共にパネルに文字が躍る。
それは、再び立ち上がるための力が流れ込むことを告げる声だった。
押しつぶされようとしている機体が軋みの音を発する中、
最後の枷を外すための問いかけ。
「勿論」
パネルに応えて、作動シークエンスを開始する。
しつこい程のしぶとさを見せるその装甲に、苛立ちが増した。
「ちッ、かてぇな・・・。だったら・・・叩き壊すまでだ!」
その厚さに業を煮やし、エレファンダーが、大きく鼻を振り上げる。
操縦席の横に現れる、大きなレバー。
一瞬、大きくサムアップサインを送る友人の、自慢げな笑顔が心に浮かんだ。
思わず苦笑が漏れた。気持ちに余裕が生まれた、そのことが分かる。
「エナジー・・・頼む!」
一気にレバーを前に押しやる。
赤い獅子の心臓に、巨大な力が流れ込んだ。

75 :
いきなり強まった下からの持ち上げようとする力に、一瞬バンデルは平衡失った。
倒れそうになるエレファンダーを、振り上げた鼻をバランサーに落ち着かせる。
「なんだと?」
踏みつけられたライガーから感じる力は、先ほどとは比べ物にならない。
「この俺のエレファンダーが・・・力負けするとでも言いやがるのか!」
バンデルはさらに操縦桿を押し込み、強引に力で捻じ伏せようとする。
力に対する固執の表れ。
その咆哮は、果たしてライガーのモノであったのか、シン自身のものであったのか。
出し抜けに、ライガーの姿が消えたように、バンデルには思えた。
力の向ける先を突然失って、エレファンダーがたたらを踏む。
・・・なんだ・・・何が起こった!
一瞬だが、視界に止まる赤い機体の姿。
「・・・そこかよォっ!」
予測位置を中心に、エレファンダーの鼻を薙ぐように振り回す・・・が、
「ごめんよ・・・エレファンダー」
察知する間も有らばこそ。
エナジーウイングが展開。次の瞬間、その長い鼻と左側の脚を二本とも切り飛ばされ、
エレファンダーが地響きを立てて崩れ落ちた。
・・エナジーチャージャーが、激しく蒸気を振りまいて停止した。
「がっ、ハ・・・」
エナジーライガーのコクピットで、シンは激しく喘いだ。
エレファンダーの押してくる力を利用して、そのまま後ろに跳び退る目論見は成功した。
・・・元々が、生半のパイロットが扱える機体ではない。
先ほどのような機動を、シンのような素人に毛が生えた程度のパイロットが行えたのは奇跡に近い。
殆どライガーの本能に従ったようなものだったとはいえ、
シンが意識をとばさずに持ちこたえたのは賞賛に値するだろう。
・・・みんなの無事を・・・確かめないと。
山で待つテラの顔を思い浮かべ、シンは倒れ付したエレファンダーに通信をとばした。

76 :
 写真立てのふちを持つデイビットの爪が白くなっていた。
「…そろそろ時間か」
呟いて、幼年学校の制服を着た少年と軍服を着た青年の写っている写真の入った写真立てを元に戻す。
今日、重要な実験が行われる。手を尽くして、そこに臨席する機会を得た。
シヴァがどういうものかを把握しておきたい。使えるものか否かを。あの誓いのために―
「行ってくるよ、兄さん」

77 :
「ねぇ」
……。
「ねぇちょっと」
……。
「ルディ」
…なぬ?
「あ、起きた。ねえ、ディガルドって誰?」
起きぬけにそういう質問って、どうかしてないか?しかも人名じゃないし。
「いや、これは私の興味からくる質問じゃないのよ」
じゃあ、何さ。
「いや、今ディガルドが来るとかなんとか叫び声が」
「それを先に言ってくれよ!」
「?」
「結論から言うと、敵襲もしくはフィルさん!」
急いで着替えてキラースパイナーの所へ急ぐ。インナーが後ろ前な気がするが気にしない。
ヴィーラさんは初めから平服だった。いざという時のためにそういう癖をつけたらしい。
フィルさんと合流しなければいけない事を考えると、戦うにしても様子見してからになる。
「…どうだった?」
「呼びかけも予告もなしに、いきなり攻撃を開始したそうよ」
杞憂だった。どうやら、フィルさんたちじゃない。
「ちょっと気になる事があるから、先に行ってるわ」
こっちの返事も聞かず飛び出していくヴィーラさん。
…俺、置き去り。

78 :
「やっぱりか。共和国も路線転換したのかな?」
「…ジェノブレイカー?恐竜型は絶滅したと聞いてたんだが…まさか、ガイロスもこの時代に?」
対峙する、ジェノブレイカーとバイオラプター(名前はルディから聞いた)。
乗っているのがガイロスとヘリックというのが少しナンセンスの感ありだ。
「で。そのヒロイックさのかけらもないデザインのゾイドは何かしら?」
「最強の盾だ。撃たれても死なない装甲。
…俺達の計画には、うってつけなゾイドだよ」
「あそう…」
聞いた自分で言うのもが、ぶっちゃけた話、それはどうでもいい。
「…国際法、忘れたわけじゃないのよね?」
「は?そんなの通用する世界じゃねーぞここは」
「ふーん」
ため息。
全く、人間というのはここまで落ちるものなのか。
自分達の戦闘スタイルも誇りも放棄した揚句に何の罪もない人を襲う。
ヘリックの人が聞いたら、泣くだろうな。
「なんだぁ?お前、こんなとこで軍人やってんのかぁ?」
「世間知らず、正体不明のお嬢様。そんなところかな」
もともとがそうだったから、演じるのは簡単だった。
「でも演技ばかりじゃ肩凝るし、お前ら潰したいし、ここらで一つ、ガス抜きしておく事にするわ」

79 :
>>72-75
激しくGJ!!
偶然にもタイミングよく牙狼の主題歌聞きながら読んで鳥肌がたったよ。
内容と歌があまりにもピッタリ来てた。

80 :
「ふーん、本当に効かないんだ」
ルディが言ってた事を疑うつもりはないけど、それでもにわかには信じがたかった。
見た目から察するに流体金属で出来たその体は、ビームもミサイルも通さなかった。
「荷電粒子砲も…だめかな?」
こんな近距離から撃っても、もし相手にダメージがなかったらジェノブレイカーが焼かれるだけだ。
よってその選択肢はとらないことにする。
「おらおらおらおら!ふわふわ逃げ回りやがって、
んなんじゃ俺を地面にはいつくばらせる事もできねーぞ!」
耳障りだ。
お言葉だけど、そういうお前だって、こっちにかすり傷一つ与えられてないよ。
相手の口から発射される火の玉のようなもの(確かヘルファイアーだったか)が、
フリーラウンドシールドで防げたのは幸いだった。
まぁ当たる撃ち方してこないし、使う機会は少ないのだけど。
「…以上、敵性能把握終わり」
そろそろ、反撃の仕方を考えるか。時間かけてても村の皆さんに迷惑かかるだけだし、
耳障りだし目障りだしムカつくし。

81 :
―怖い。
それが、第一印象だった。
「…嘘だろ?」
何と言うか、柄にもなくこんなセリフが口を衝いて出てしまうような、そんな光景。
討伐軍が優勢なのは別に驚くことじゃない。それよりも、もっとやばいモノがいた。
ヴィーラさんのジェノブレイカーが、バイオラプター達を情け容赦なく蹂躙してまわっている。
両肩のハサミで捕らえて頭にある小さな剣を頭突きをするようにねじこんで首を叩き落とす。
ハサミで地に叩き落としてから足で力任せに頭を踏み潰す。
もうそれは、ゾイド同士の戦いというよりはジェノブレイカーによる一方的な殺戮だった。
あれに乗っているのがヴィーラさんだと思うと、どうしても驚きが隠せない。
もしかして、あの金的はこれの伏線ですか。…えげつないなぁ。
「巻き込まれたくねーつーか同類と見なされたくねー…くわばらくわばら」
ディガルドの方々に合掌しながら、俺は様子見に徹する事にした。
数分後、ヴィーラさんが帰ってきた。
「ふう…終わり終わり」
「……」
涼しい顔してとんでもねえことしてくれやがる。…本当に、何者だこいつは?
あくびしながら退場するヴィーラさんの背中をみながら、俺は呆然としていた。

82 :
 相変わらず不可解だ。ニックは実験場へとライガーゼロを進ませていた。
今日、ウルトラにマウントしたロケットにシヴァを搭載する実験が行われる。
その実験が行われる地点までシヴァを運んでいくわけだが、その運び方が奇妙なのだ。
グスタフを使わず、装輪式車両で運んでいる。
その関係に殆どの車両が回ってしまい、スタッフの多くはゾイドで移動することになった。
それで今時分はライガーゼロに乗っているし、ストーン博士はコマンドウルフを操縦している。
何故グスタフで運ばないんだ?
いや、今回のことばかりではない。
自分が見た範囲ではだが、思い返してみればシヴァに直接触れるような作業にゾイドを使っていたことは無かった。
明らかにゾイドを使ったほうが良さそうな場面でも。
何故そんなことを。
この兵器は一体なんだというんだ―

83 :
「応えてください。村のみんなは、どうしました?」
しばらくの沈黙の後、返答があった。
「・・・言ったろが。皆殺しだってよ」
バンデルは鼻でせせら笑う。
モニタに映ったその姿から、シンの疲労は一目で見て取れた。
・・・こんな弱そうなヤツにしてやられたってのか? なさけねぇ。
バンデルの顔に自嘲の笑みが浮かぶ。
「もう、騙されませんよ。・・・ここには人の姿がない」
「知るかよ」
吐き捨てたバンデルに、なぜかシンの心に浮かんだのは憐れみだった。
「どうして・・・こんなことを?」
「バカか? 盗賊が村襲うのは当然だろが」
モニタ越しに、シンとバンデルがしばし対峙する。
「・・・食うために決まってんだろが。ここにいるのはディガルドに町を奪われ
どこからも受け入れてもらえなかった連中だ。生きてくには奪うしかねぇんだよ。
・・・わかるか?その苦しみが。故郷を奪われた人間の思いがよ!」
「・・・」
それは、ガイロス帝国におけるゼネバス人の境遇に、ある意味似ているのだろうか。
そして虐げられ、抗う力がないものは、より弱いものを虐げる。
そんな連鎖は、戦争には付き物だとはいえ。
・・・僕はまだ幸せな方だったのかもしれない。だが・・・
「だからって・・・そのディガルドと同じことを繰り返してどうする?
 お前たちに村を奪われたら、この村の人たちはどうすればいいんだ?
 ・・・共存の道を探そうとは、思わないのか?」
それは、もしかすればバンデルにではなく・・・争いを繰り返す、
故郷の世界を思っての言葉だったのかもしれない。
結局のところ、シンは後方勤務の現場を知らない人間なのである。
そんな彼のよく言えば理想、悪く言えば世間知らずな言葉は、バンデルの怒りを掻き立てる。
「知ったことかっ! 奇麗事ぬかしてんじゃねぇよ・・・おい!」
先ほどの戦いの最中、密かに送りつけられていた合図を確認し、バンデルが叫んだ。
それを受けて、一体のコマンドウルフが進み出た。

84 :
「へへへ・・・グッドタイミングてヤツかお頭」
「おうよ、ダンカ。 貴様の土産、見せてやんな」
頭部のキャノピーが開いて、一人の男が立ち上がる。その手には・・・。
「テラ!」
「動くんじゃねぇ!このガキ殺っちまうぞ!」
ダンカがテラの首根っこをひっつかんで持ち上げる。
シンが少しでもおかしな動きを見せれば、即座に地面に叩きつけられる体勢だった。
「シン・・・」
吊り下げられたテラが、苦しげに喉に食い込む服をつかむ。
「テラ!今助けるから!」
「助けられるわけねぇだろうが」
バンデルが、倒れたエレファンダーの操縦席から這い出る。
「形成逆転ってヤツだな。・・・まぁ、見たトコてめぇもそのゾイドも、
もう動く力なんざ残ってなさそうだが・・・念のためってヤツだ。出てきやがれ」
その言葉に、シンはハッチを開けて外に出た。
少しよろめいて装甲に手をつき、身体を支える。
残った数台のゾイドの銃口が、一斉にシンに向けられた。
「・・・やってくれたじゃねぇか。オレのゾイドが使いものにならなくなった。
落とし前・・・つけてくれんだろうな?」
バンデルが口の端を歪ませる。
「・・・テラを、離してくれないか」
「黙れ若造!今てめぇに必要なのは、人の心配じゃなくててめぇ自身の心配だろが!
 けっ・・・短けぇ付き合いだったな・・・やれ」
「だめ!シン逃げて!」
テラがダンカの腕の中で暴れる。
「おっと、おめぇは後で売り飛ばすんだからよ、あんまり暴れて傷物になってくれるんじゃねぇ」
押さえつけられながらも、テラは真っ直ぐにシンの方を見た。
「シン!」
砲声が、響いた。

85 :
「やれやれ粋じゃねぇなっ、と!」
二条の閃光が、空を奔る。
撃ち抜かれたダンカのコマンドウルフが、体制を崩した。
「ってめぇ、サービ・・・」
傾いたコマンドウルフから、テラとダンカがこぼれ落ちた。
疾風のごとく、ワイツウルフが近づき、開いたキャノピーから腕が伸びる。
崩れ落ちたコマンドウルフの側に、落ちたダンカが倒れている様子が見えた。
・・・テラ、テラは!
「テラ!」
シンはライガーの頭上から身を乗り出して叫んだ。
「あわてんじゃねぇよ、ほれ」
走り抜けたワイツウルフのコクピット。
男の片腕がテラを抱えあげていた。
「シン!」
「テラ!無事だった・・・」
男は左目に着けたモノクルに触れ、ズレを直すと、テラをコクピットの足元に下ろした。
「サービン・・・てめぇ裏切りやがったな?」
「おいおい、やめてくれや・・・契約違反はそっちだろ?
 オレはディガルドとドンパチやるって話だったから居てやっただけさ。
 ・・・単なる盗賊の手下に成り下がった覚えはねぇよ」
やれやれとサービンは肩をすくめた。
対照的に、バンデルの顔に血が上る。
「まぁ、いい・・・前からおめぇのことは気に食わなかったんだ。
 まとめて始末ってのも、悪かねぇ」
己のゾイドと手下を失ったバンデルは、だが、余裕の笑みを浮かべている。
「時間も稼げたからな」
取り囲むように、ゾイドの群れが姿を現す。

86 :
ゆっくりとその頑健な機体を進めるブラックライモス。
肩を並べて牙を剥く、コマンドウルフとセイバータイガーが数台。
ガイサックなどの小型ゾイドも含めれば、盗賊団としては大した戦力である。
「ゾロゾロとお揃いで・・・」
サービンは天を仰いだ。
乗り手の体力も含め、ライガーは既にエネルギーが尽き、戦力には数えられないと言っていいだろう。
自分はとなれば、逃げ切るだけなら簡単である。
もし彼の相棒がこの場にいたなら、この程度なら蹴散らす事も容易だっただろうか。
しかし・・・。
まぁ、オレはなんとでもなるが・・・このお嬢ちゃん連れてとなると面倒か。
いや、逃げる必要もねぇんだが。
バンデルが、倒れたエレファンダーの頭上で叫んだ。
「おい・・・そこの赤いライガーを始末した後はてめぇの番だぜ?」
動けないライガーから先に始末しようと言うのは、自分に対する見せしめか脅しか。
サービンは、しかし余裕を失わない。
「あのな。お前さんたちはやりすぎちまったんだよ。で、そろそろご退場願いたかった所でもあってな。
 同情はしねぇぜ?・・・この村を襲ってくれたのは、オレにとっては渡りに船だったよ」
サービンは拡声器を通して声を張り上げた。
「頃合いだぜ、じいさま方よ!」
「うぅぅぅりひゃぁぁぁぁぁ!」
けたたましい雄たけびとともに、黒い暴風がゾイドの群れに飛び込んだ。

87 :
「久しぶりだな、フィル・ボルト」
「フルネームはやめてください。何か堅苦しいです」
ブラックさんと握手。三十路とは思えない力強さだ。はっきり言って少し痛い。
「挨拶がこんな夜分遅くになってしまったこと、初めに詫びさせてくれ」
「いえいえ」
やり残したことがある状態で俺の所に来た関係で、挨拶が遅れてしまった旨を伝えられる。
俺としては別に困らないし、来てくれただけでもありがたいので、
そのくらいどうと言うことはなかった。
「三ヶ月ぶりかな?」
「ですね」
言って、それだけのインターバルが生じている事を改めて思い出す。
「そっか、て事はもうかなり経ってるのか…」
「その軍服を着てから、だな?」
「ええ…」
着る度にガチガチだった軍服も、今では塩で軽く揉んだような感じになっている。
時の経つのは速いものだ。と胸ポケットに手をやったところで、夕方一箱空にしていた事を思い出した。
「あ、ロック!」
「はーい」
ちょうど当番勤務中の部下が通り掛かったので、タバコの補給を頼む。

88 :
「…で、今日はどんな依頼を?」
それを見届けてから、ブラックさんは切り出してきた。
「エルデさんから詳細は聞いてると思うんで、要点だけ」
メガラプトルが何者かに奪われたとの報を受けてそれを撃破に向かったら、
それ以後基地との連絡がとれなくなってしまったことを簡潔に話す。
「フィルは、どう見ているのかね?」
「あんまり考えたくないですけど、誰かに、あるいは集団に占拠されたのかなって」
それがトップ。ボトムは、単なる通信機の不具合。天と地くらいの差があるのが問題だ。
しかも、ボトムの可能性は致命的に低い。
「…エルデに聞いたので帰ってくるついでに基地を覗いてみたが…"静か"だったぞ」
「やっぱりですか。あーあ」
そしてこう言うときに限って、こう言うときほど、一番信じたくない答が正解なのだ。
「隊長、タバコです」
「ナイスタイミング」
受け取り、すぐに火をつける。
何度目だろうか。「吸わなきゃやってられない」と思ったのは。
今日はいつになく多い気がした。
「ほんと…傑作だよな…」
リリに殴られた頭の痛みは、まだ消えない。

89 :
バイオ装甲も荷電粒子砲の前では無力だとわかった。
ジェノブレやBFが召喚されたら、レッゲルさえあれば
ディガルド大苦戦の予感。

90 :
漆黒の刃がライモスの装甲を貫通し、そのまま空に持ち上げると、地面に激しく叩きつけた。
「死にたくなくば・・・そこを退けい!」
黒塗りのランスタッグ。巨大な角が、月光を浴びて輝いた。
一目で業物と分かる長大な漆黒の槍が、自らを誇示するかの如く天を衝く。
「やあやあ我こそはキダ藩にその人ありと謳われたダ・カツなり! 亡き大殿より賜りし、
ステルスカッター・スレイヤーの錆になりたいヤツは、アどこのどいつゥだァア」
黒塗りのランスタッグが首を振りたてて大見得を切る。
「・・・略してステスレじゃ」
ダ・ツグがボソリと呟き、同時にその乗機、ハウンドソルジャーのクロスソーダーが、ライモスを紙のように貫く。
「ダ・カツさん!無事だったんですね!」
「おお、シン、すまんかったのう。本当ならお主らが帰ってくる前に終わっておったのじゃが、
 何しろ久しぶりでこやつら駄々をこねおってのう」
話しながらも、黒いランスタッグが携える、豪槍の刃は止まらない。
当たるを幸い、装甲をものともせずに敵を切って落とす。縦横無尽。そんな言葉が相応しく思えた。
「しかし・・・よく無事で・・・」
「フフフ。わしの相棒は目と耳が良くての」
「だれが相棒じゃだれが」
笑うダ・カツに、不機嫌そうな声が答える。
光学迷彩を解除して、シャドーフォックスが姿を現す。その位置は、先ほどまでダンカのコマンドウルフがいた場所。
「サ・ノヴさん!」
「うむ。無事で何よりじゃ。こいつらの事は前から見張っておってな。
 ・・・すまんかったな、シン。ワシらはお前のことを疑っておった。・・・盗賊の斥候ではないかとな。
 もう少し早く、テアやテラの言葉を信じるべきじゃったわい」
多少ショックがないではなかったが・・・色々と納得はいった。
「いえ・・・それで、当たり前なんだと思います」
「うむ・・・そう言ってくれるなら、気が楽じゃ。後でゆっくりと話そう。しかし・・・、
 なんもかんもタイミングが悪くて肝が冷えたわ。美味しいところはそこの若造がもっていきよるし」
「策士策に溺れるというヤツか」
ボソリと、ダ・ツグが再び呟く。
「うるさいわ!」
シャドーフォックスが煙を吐く。突然視界を奪われ、恐慌に陥ったセイバータイガーから、
黒い狐はゆっくりと戦闘力を奪った。

91 :
・・・なんでだ?なんでこうなる?これじゃ・・・あの時と・・・
次々に撃破される手下の姿を見て、バンデルは呆然となる。
・・・ディガルドのヤツらとやった時と同じじゃねぇか!
「なんでだぁぁぁっ!」
我知らず、雄たけびを上げ、腕をエレファンダーの装甲に叩きつけた。
「・・・敵を知ろうとせんかったからだ」
答えたのは、ダ・ツグだった。ハウンドソルジャーのコクピットで腕を組み
「昔の、ワシらのようにな」
「なに・・・?」
バンデルが伏せていた顔を上げる。
ダ・カツのランスタッグが、槍を待機位置に戻した。
「わしらものう。国をディガルドに奪われたんじゃよ。殿のお姿も見失ってしもうた。
 今は何処にいらっしゃるのか、そもそもご無事であられるのか」
「ディガルドの国力を見誤ったのだ」
シャドーフォックスが歩み寄り、キャノピーを開けてサ・ノヴが立ち上がる。
久々の戦闘機動で疲れた腰をもみながら、
「ディガルドに一矢報いんと、玉砕も考えたがな・・・ほれ。わしらにはまだ守るものが残っておった」
その首が指す方向には、数機のランスタッグに守られ、帰ってくる村人たちの姿があった。
引きずられているのは、村に辿り着く前に撃破された盗賊の機体か。
「・・・」
「お前さんらの怒りも分かる。同情もする。だがな・・・向ける相手を間違ってはならん」
一瞬、サ・ノヴが垣間見せた凄みに、バンデルの肝が冷えた。
・・・こんな老いぼれに、オレが気圧されるってのか?
そこには確かに、格の違いというものが横たわっていた。
あるいは、それは人間としての歴史の積み重ねの差だったのかもしれない。

92 :
気がつけば、村人たちが倒れたゾイドから盗賊たちを助け出そうとしていた。
・・・戦闘はもう終わっていた。
「ありえねぇ・・・お人よしばかりの村だな」
「かも、しれませんね」
サービンのワイツウルフが近寄り、途中からへたり込んでいたシンに、テラを投げ渡した。
受け損ねて取り落としそうになり、その拍子にシンはライガーの装甲にしたたかに頭をぶつけた。
「いっ・・・てぇ・・・あぶないでしょうが!」
「お母さん!」
悶絶しかけたシンの声は、腕の中で暴れたテラに遮られた。
母の無事な姿に気が緩んだのか、テラは今頃になってやっと涙をこぼしていた。
ナ・テアが村人たちと共に、下で手を大きく振っている。
シンは安堵のため息をつくと、さりげなく立ち去ろうとするサービンの姿を見た。
「行くんですか?」
「ああ、もう用はねぇしな」
「ありがとう・・・サービンさん。テラを助けてくれて。あなたがいなかったら・・・」
サービンは頭をボリボリと掻くと、
「痒くなるからやめやがれ。オレがいなくても、ジジイが何とかしてただろうよ。
 ・・・それと一つ間違いだ」
「え?」
サービンは片腕を上げて背中を向けた。
「オレの名はサービンじゃねぇ。サーバインだ。かっこわりい縮め方しやがって」
シンは少し吹き出した。
「・・・僕はシン、シーン・サイモンです」
「しらねぇよ、てめぇの名なんざ。・・・あばよシンザエモン」
「いやそれ微妙・・・」
しかし、彼の名前は結局やがてそう定着してしまうのだが・・・。
それはまた別の話・・・なのだろうか?

93 :
手元で鳴り響いた携帯通信機をつまみ上げ、通話ボタンを押す。
「はいよ。こちらサーバイン、面白くねぇが感度は良好だ」
操縦桿に脚をのせ、だらしなく寝そべったまま、モノクルを着けたその男は応答した。
「・・・定期連絡?ああ、すっかり忘れてたぜ。そっちの様子は? おもしれーヤツを見つけたって話だろ?
 エヴォルトするライガーとかなんとか・・・なに?キョーワコク?」
しばし、目を閉じて通信機から流れる言葉に聞き入る。
「毎度あんたのところには面倒が転がり込むこったな。で?上からの指示は?
 ・・・相変わらずだな。事が判断しきれなくると静観か。慎重と言えば聞こえはいいが、
 ただの日和見主義じゃねぇか。・・・この通信は秘匿回線だろ?上の批判でもしなきゃやってらんねぇぜ。
 まぁ、せいぜい死なないように頑張んな・・・ああ?こっちか?」
目を開け、シートの上で胡坐を掻いた。
「そうだな、面白そうな連中の村は見つけた。一機、メタルZiの槍持ったランスタッグがいやがる。
 ・・・キダ藩の生き残りだってよ。そっちに居るんだろ?お殿様がよ。知らせてやるか?
 ・・・ああ、こっちはその方が助かるが。戦力集めてるんじゃねーのか?」
またしばらく、通信機から聞こえる説明に耳を傾ける
「・・・あんたらしいっちゃらしいな。分かった。こっち方面のディガルド牽制に使わせてもらう。
 ・・・気にすんな。こっちの役目はあくまであんたの支援だからな。指示に従うまでだ。
 ・・・だからオレを戦闘狂みたいにいうんじゃねぇよ」
通信機の向こうから、笑い声が聞こえた。・・・勝てねぇな、ヤツには。何故か唐突にそう思った。
「・・・定期連絡といえば、フェルミからのが途絶えがちって話だが・・・
 そっちになんか話いってるか?・・・ああ。そうか。あの女、何考えていやがるかね・・・。
 ・・・ああ、オレとしては面白くなる方が好みだがな」
向こうから、咎めるような声が聞こえた。
「わーかってるっつの・・・。ああ、じゃーな。通信終わりだぜ」
通信機をそのまま適当に放り捨てた。
ふと、赤い獅子とその操縦者を思い出した。
・・・シンザエモンとか言ったか。悪いが・・・お前の村、利用させてもらうぜ。

94 :
とりあえず終わりです。読んでくださった方ありがとうございました。
初めてSSなんてものを書いてみて、簡潔にまとめてる方はすごいと思いました。
・大きさ比較で(´・ω・`)
 エレファンダー:全長21.6m,全高10.8m
 エナジーライガー:全長28.0m,全高12.0m
 ・・・(´・ω・`)
・はたして、エナジーウィングはバイオゾイドが切れるのでしょうか?
以上です。

95 :
「…ひどいな、これは」
村の人から教えてもらったディガルドの基地に来てみたら。
…地獄絵図を見た。
全く、朝の清々しさが台なしじゃないか。
一度仮眠をとり、朝早くに出発し、朝日と共に拝んだのがゾイドの残骸の山ってなんだよと。
見回すと、基地の設備は一部を除いてめちゃめちゃに破壊されている。
窓には血糊。遠くてあまり分からないが、倒れている人影も確認できた。
どこかのゲリラがやったのかとも思ったが、村の人のゾイドに基地を一つ殲滅出来るほどの火力はない。
それに、かなり狙いが定まっている。これは素人の仕業じゃない。
「…っく」
胃の中が空でよかった。ジャメヴ効果で吐きそうだ。
「……」
ルディは、呆然としているみたいだ。さっきから立ちっぱなしになっている。
まあ人間の死体も壊滅した基地も見慣れている方がおかしい。
「……」
ゾイドの残骸(バリゲーターかな?)の傷口を見ると、かなり焼けついていた。
ナパームか何かを直で撃ち込まれたような感じだ。
何となく、昨夜戦ったバイオラプターを思い出しながら、
「…耐えられないなら、コクピットに戻ってれば?」
そうルディに声をかけた直後。
警報が、辺りにこだました。

96 :
サーバインはソラなわけか
含みを残すラストもいいな
なにはともあれGJ

97 :
(´・ω・`)さんGJ
なかなか読み応えがありました
ハウンドソルジャーが活躍してて涙が出ましたわ・・・

98 :
オトリ作戦から1週間が経っていた。
不運にも飛んできた破片に頭を打ち。気絶したままのロイド=ハウマンは、ディガルドの捕虜となり。とある町の牢屋にぶち込まれていた。
「ああ、今日も飯が不味い。なんだこのトリコロールカラーの極彩色クラッカーは」
まだ痛む頭を擦りがら、ロイドは朝食に悪態をつく。
今朝の献立は軍用レーション(?)と水である。
こんな飯では食事を楽しむことも出来やしない。だが、食べなければ後でどんなへまを起こすか分からない。
諦めて不味いレーションを口にしながら、いろいろと考えてみる。
とりあえず初日に尋問を受けた後は、こちら世界(?)のゾイド操縦技術や戦術を研究したいのか、様々なゾイドに乗せられ
闘技場(と、俺は呼んでいる)でバイオゾイドと戦う日々が続いていた。
モルモットとして扱われるのは気に食わないが「もし貴様が負ければ、そのまま乗ってるゾイドを棺桶にしてやろう」などと言われたのでは
迂闊に手を抜くわけにもいかない。
しかも乗り込むゾイドは火器をすべて外され、格闘戦がメインとなるためにバイオラプターが相手とはいえ苦戦続きだった。
このままでは、いずれろくな事にならないだろう。その前に何とかここから脱出しなければなるまい。
だが、牢屋には常時2人以上の兵士が24時間監視をしている。牢屋からの脱出は極めて難しいだろう。
牢屋と闘技場への往復の時は、目隠しと手錠をされた挙句8人以上の兵士が付くVIP待遇だ。
バイオゾイドとの模擬戦中に脱走できないものかと考えたのだが、常時2〜3体のメガラプトルが監視しているため、これもまた難しい。
まあ八方塞なのだが、いずれチャンスが訪れるだろう。その時まで生き延びねば・・・。
しかし脱出したとしても、俺も脱走者扱いになっているだろうから。共和国に戻れば良くて降格、最悪生身でゾイドと戦う羽目になるだろう。
そもそも元の世界に戻れる保証も無いのだから、今までの知識と経験を生かしてこの世界で生計を立てていくべきかも知れない。

99 :
朝食も食べ終わり、することも無いので横になってまったりしていると兵士達がゾロゾロと牢屋へやって来た。
どうやらお仕事の時間のようだ。いつものように手錠と目隠しを着け20分近く施設内をランダムに周った後、闘技場に到着する。
目隠しを外されると、目の前にはカイゼル髭が特徴的な初老の男が立っていた。
初めて見る顔だ。身なりや周りの兵の態度からすると、かなり階級が高いようだ。
「君が噂の共和国兵か。何でも火器の無いコマンドウルフで2機のバイオラプターを倒したとか。いやいや通常ゾイドも馬鹿には出来んなあ」
笑いながら楽しげに話しかけてくるカイゼル髭。何をしに来たのかは解らないが、今までの模擬戦(といっても、こちらは命が掛かっているが)
のデータを大層評価してくれているようだ。だが、それはディガルドが貴重な戦闘データを手に入れているということでもある。
別に、この世界からガイロスに攻め込める訳ではないだろうし。ディガルドと戦っている共和国が苦労するならば、結構なことだが。
リスクだけ払ってリターンの一つも無いとは面白くも無い。
「はっはっは。まあ、そう苦い顔をしないでくれ。こう見えても君には期待しているのだよ?」
意味が良く分からない事を言い出すカイゼル髭。俺に期待しているとは・・・賭けでもしているのだろうか?だとしたらますます不愉快なことだ。
俺にも取り分をよこせといいたくなる。
そんな事を思っていると、なにやら秘書のような格好をした女性がやって来た。
「ジルベル少将閣下そろそろお時間です」
どうやら目の前の男は少将らしい・・・また随分な階級の人が来るものだ。ディガルドの少将はそんなに遊び回れるほど暇なのだろうか?
「それでは、また会おうロイド君。あっはっはっは・・・」
笑いながら遠ざかっていくジルベル少将とその秘書らしき女性。結局何をしに来たのだろうか。ディガルドの考えている事はよくわからん。

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