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スタービースト:失われたエイリアン原案


1 :11/11/30 〜 最終レス :12/02/04
ダン・オバノンによるエイリアン元ネタ

2 :
明日から訳出致します。お楽しみに。

3 :
ダダンダダンダンダン
ハッ ビバビバビバ
ダダンダダンダンダン
ハーッ オバ ノンノン

4 :
ALIEN
本プロジェクトの本来の名は「スタービースト」であった。
ストーリー:ダン・オバノン、ロナルド・シャセット
脚本:ダン・オバノン
1976
あらすじ
遥か遠くの銀河から地球へ帰還の途についていた宇宙船スナークのクルーはエイリアン言語の通信を傍受する。
発信地は近傍の、嵐に包まれた惑星であった。人類は、宇宙で他の知的生命体とコンタクトするのを何世紀も
待ち望んでいた。クルーは上陸調査の決意をする。調査を進めるうち、クルーは遭難したエイリアンの宇宙船
に出会うが、そのドアはぽっかり口を開けている…この船は死に、放棄されていた。内部でクルーは多くの
奇妙なものを発見するが、その中に不気味なスペース・トラベラーの骸骨があった。

5 :
遭難船で見つかった手がかりはクルーを惑星表面の障害を越え、太古の石でできたピラミッドへと導いていく。
このピラミッドは消滅した文明の唯一の遺物である。ピラミッドの深部で彼らは素晴らしい装飾品で一杯に
飾られた古代の墓を発見する。墓の中に睡眠状態で横たわっているのは何世紀をも経てきた胞子であり、人間
の存在を感知して生命を吹き返しす。寄生体はクルーの1人の顔に取り付き…除去できなかった。船の医療
コンピューターの分析により、クリーチャーは管を犠牲者の喉に挿入し、内部に何かを産み付けている事が判明
した。そしてまた寄生体の血液は強い腐食性を有しており、金属をも侵食する事が分かった…船の上です
こてゃできないのだ。

6 :
最終的に、寄生体は犠牲者から除去され船外へ射出され、船は地獄の惑星からブラスト・オフする。だが、
長い帰還の旅のための仮死状態に入る前に、恐ろしい、小さなモンスターが犠牲者の体から姿を現す…
モンスターは寄生体によって産み付けられ、体内で成長し…そして今、船内に放たれたのだ。恐ろしい
アドベンチャーが続いて起こる。彼らはモンスターをエア・シャフトに閉じ込め、クルーは火炎放射器を
持って這い下っていく…モンスターはクルーの頭をもぎ取ると、死体とともに逃げ去る…クルーは
エアロック・ドアで押しつぶされ、暴風の中、船はその空気の大部分を失う…ある者は焼け死に、クリー
チャーに喰われ、ある者はエイリアンの奇妙なライフサイクルの1部である繭へと織り込まれてしまう。
最後に生き残ったのはたった1人。船内には彼とクリーチャーが残される。空気は6時間分しか残されていない。
身の毛のよだつようなクライマックス。生きて地球へたどり着くのは…人間か、エイリアンか。

7 :
キャストとそのキャラクター
チャズ・スタンダード:船長。リーダーであり政治家的。何もしないよりは何かする方がマシと信じている
マーティン・ロビー:エクゼクティブ・オフィサー。注意深く聡明。生存者。
デル・ブロサード:ナビゲーター。冒険家。軽率なグローリーハウンド。
サンディ・メルコニス:通信士。メカに詳しく、ロマンチック。
クリーブ・ハンター:採掘エンジニア。神経質。ひと山当てようとやってきた。
ジェイ・ファウスト:エンジン技師。労働者。想像力に欠ける。
クルーはユニで、体のパーツは全て男性にも女性にも交換可能である。

8 :
フェイド・イン
ちらつくインストルメンタル・パネルのクローズアップ。遥か未来のテクノロジー。ディジタル・
ディスプレイとリードアウトが不気味に脈動している。どこもかしこも寒く、暗く、無味乾燥
である。電子機器がくすくす自身に笑いかけている。突然ビープ・シグナルが聞こえ、機器は目覚め
始め、サーキットは閉じ、照明が明滅する。カメラアングルが広がり、更に多くの機器、層をなす
パネル、震える計器の針などが明らかになる。
ハイパースリープ・ルーム。ステンレス・スチールでできや部屋に窓はなく、壁は機器で埋まっている。
明りは薄暗く、空気は冷たい。フロアスペースの殆んどを占めているのは、水平に置かれたフリーザー・
コンパートメントの列である。まるでミート・ロッカーのようである。フォーン!フォーン!フォーン!
ガスが噴出し、フリーザーの蓋が開く。ゆっくりと、ふらつきながら、裸の6人が起き上がる。

9 :
ロビー:オー…ゴッド…寒い…
ブロサード:お前か?ロビー。
ロビー:ひどい気分だ…
ブロサード:お前だな、オーライ。
彼らはあくびをし、体を伸ばし、そして震えている。
ファウスト:オー…生きてるようだな。死んだかとおもったぜ。
ブロサード:死んでるように見えるぞ。
メルコニス:吸血鬼が墓から起き上がったわけか。
笑い声が上がる。
ブロサード:(こぶしを握り)俺たち、やったんだな!
ハンター:(まだ完全には覚醒していない)終わったのか?
スタンダード:終わったのさ、ハンター。
ハンター:(あくびをして)ひどいもんだった。
スタンダード:(歯を見せて笑いながら周りを見渡し)金持ちになった気分はどうだい?
ファウスト:寒い!
笑いが起こる。

10 :
スタンダード:OK!全員、上甲板へ!を履いて、持ち場に付け!
男たちは勢いよくフリーザーを出ていく。
メルコニス:誰か、猫を。
ロビーはフリーザーの外で元気を失っている猫を拾い上げる。
コントロールルーム。円形の部屋で、機器で埋まっている。窓はなく、頭上にはビュースクリーンが
取り巻いている。画面は空白である。4人分の座席があり、コンソールはまぶしいテクノロジーの
配列である。スタンダード、ロビー、ブロサード、そしてメルコニスが入って来て座席に着く。
ブロサード:俺は牛の牧場を買おうと思ってるんだ。
ロビー:(猫を下ろしながら)牧場だって!
ブロサード:からかってる訳じゃないぜ。クレジットがあれば、お前だって買えるんだ。
スタンダード:オーライ、タイクーン。無駄遣いはやめて、仕事を大事にしよう。
ロビー:その通りさ。全システム、始動。
彼らはスイッチを入れ始め、コンソールをライトアップする。コントロールルームは生き返る。
部屋中、さまざまな色のライトがちらつき、機器のハム音や雑音で満たされる。

11 :
スタンダード:サンディ、何か見せたいか?
メルコニス:どうぞ。
メルコニスはコンソールに手を伸ばし、重なり合ったスイッチを押す。ビュースクリーンが
明滅して息を吹き返す。どのスクリーンにも、まばらな星と暗闇が映っている。
ブロサード:(1息おいて)地球はどこだ?
スタンダード:サンディ、全天スキャンを。
メルコニスはボタンをはじく。カメラは動いていき、星々の像も動く。
船の外側、宇宙空間。リモートコントロールのTVカメラがゆっくり動く。カメラは船の外殻に
設置されている。カメラは引き、宇宙船“スナーク”の全長が露わになる。船は星間空間の深みに
漂っている。背景では星がかすかに明滅している。
内部、ブリッジ。
ロビー:俺たちはどこにいるんだ?
スタンダード:サンディ、トラフィック・コントロールにコンタクト。
メルコニス:こちら深宇宙商業船スナーク。登録番号E180246。南極トラフィック・コントロール
を呼び出し中。応答せよ、どうぞ。
空電が唸るばかりである。

12 :
スタンダード:(スクリーンを見つめ)あの星座には見覚えがないな。
スタンダード:デル、我々の位置をプロット。
ブロサードはスイッチを叩く。
ブロサード:これだ。オー、ボーイ。
スタンダード:一体どこなんだ?
ブロサード:ゼータUレティクルのすぐ傍だ。俺たちはアウター・リムにも達していない。
ロビー:どういう事だ?
スタンダードがマイクを取り上げる。
スタンダード:こちらチャズ。すまない。ホームに帰ってはいない。現在位置は地球へやっと半分
来たぐらいだ。位置についてスタンバイ。以上。
ロビー:チャズ、セキュリティ・アラートに何か引っかかった。コンピューターは高い優先順位だと…
スタンダード:聞かせろ。
ロビー:(ボタンを叩く)コンピューター、第3優先順位のメッセージだってな。メッセージは何だ?
コンピューター:航海のコースを中断しました。
ロビー:何だって?何故?
コンピューター:一定の状況が発生した場合そうするようプログラムされています。
スタンダード:コンピューター、船長だ。その状況とは何だ?
コンピューター:発生源不明の通信を傍受しました。
スタンダード:通信?
コンピューター:音声による通信です。
メルコニス:こんな所で?
男たちは視線を交わしあう。

13 :
コンピューター:通信が記録してあります。
スタンダード:再生を頼む。
スピーカーから聞こえるのはハム音、パチパチという音、空電…そして奇妙な、この世のもの
とも思えない音声が部屋を満たす。エイリアンの言語だ。異様な音声が長いセンテンス続き、
そして止む。男たちは驚き、互いに見つめ合う。
スタンダード:コンピューター、この言語は?
コンピューター:未知のものです。
ロビー:未知!どういう意味だ?
コンピューター:進歩した人類の話す、678の言語には当てはまりません。
一拍あって、皆一斉に話し始める。
スタンダード:待て!ちょっと待つんだ!コンピューター、通信を分析してみたか?
コンピューター:イエス。非常に興味深いポイントが2つあります。1、高度に系統化された言語で、
発生源は知的なものだという事です。2、人間の口蓋では発声できない音が混じっています。
ロビー:オー、マイ・ゴッド。
スタンダード:ああ、とうとう来たか。
メルコニス:ファースト・コンタクト!…

14 :
スタンダード:サンディ、あの通信電波を追えるか?
メルコニス:周波数は?
スタンダード:コンピューター、周波数を。
コンピューター:65330−99です。
メルコニスがボタンを叩く。
メルコニス:分かったぞ。経度6分32秒、緯度マイナス39度。
スタンダード:デル…スクリーンに出してくれ。
ブロサード:第4スクリーンに出します。
ブロサードはボタンを叩く。スクリーンが明滅し、そして小さな光点がスクリーンの隅に見えてくる。
ブロサード:あれだ。正面に持って来よう。
ノブをひねり、光点がセンターに来るよう動かす。
スタンダード:もう少し寄れないか?
ブロサード:今やってます。
ボタンを叩く。スクリーンが光り、惑星が姿を現す。
ブロサード:小惑星だ。径120km。
メルコニス:小さいな!
スタンダード:自転は?
ブロサード:ああ、2時間。
スタンダード:重力は?
ブロサード:0.8だ。歩けるな。

15 :
スタンダードが立ち上がる。
スタンダード:マーティン、他の連中をラウンジに上げろ。
多目的室。クルー全員…スタンダード、ロビー、ブロサード、メルコニス、ハンター、それにファウスト。
皆、テーブルの周りに座っている。
メルコニス:これがSOSだとしたら、我々は道徳的に調査する義務がある。
ブロサード:そうだ。
ハンター:知るもんか。俺たちは金を稼ぎに来たんで、サイド・トリップに出かけるためじゃない。
ブロサード:(エキサイトして)金の事は忘れろ!人間以外の知性とコンタクトする初めての人間になれる
チャンスだぞ!
ロビー:この小惑星に知的な異星人がいたとしても、準備なしで行ってしくじったら大ミステイクだぞ。
ブロサード:ヘル、俺たちは準備が…
ロビー:ヘル、ノー!このちっぽけな岩に何がいるのか分からないんだぞ!探査当局に通信して、処理を
まかせるべきだ!
スタンダード:それでもいいさ、返信に75年掛からないのなら、な。コロニーから遥か遠くにいる事を
忘れるな、マーティン。
ブロサード:商業レーンはない。直視しろ。俺たちはレンジ外にいるんだぞ。
メルコニス:人類は何世紀も、宇宙で他の知的生命形態とのコンタクトを待っていたんだ。こんな機会は2度と
来ないだろう。

16 :
ロビー:おい!
スタンダード:却下する、マーティン。ジェントルマン…レッツ・ゴー!
ブリッジ。
スタンダード:デル、拡大像を。表面をもっと詳細に。どんな所か見たい。
ブロサード:やってみます。
彼は装置を叩く。スクリーンは惑星にズーム・ダウンするが、細部は灰色にかすんで見えない。
スタンダード:ピントが外れてるぞ。
ロビー:ノー。これは大気だ。雲の層だ。
メルコニス:マイ・ゴッド!小さな岩のかけらなのに大変な嵐だ。
ロビー:待ってくれ。(ボタンを叩く)水蒸気の雲じゃないな。水分は含まれてない。
スタンダード:船を大気中モードに。
スナーク、宇宙空間。巨大なディッシュ・アンテナが畳み込まれ、他のパーツもフラットになり、
船はエアロダイナミックなフォルムを呈する。
ブリッジ。
スタンダード:デル、コース設定、信号の方向へ。
宇宙空間。スナーク号のエンジンが咳き込んで目覚め、離れた光点、小惑星へと船を漂わせ始める。
スクリーン上で小惑星が大きく迫ってくる。風が荒れ狂い、焦げ茶色の雲にすっぽり覆われている。
スナークは惑星表面へと下降していく。

17 :
ブリッジ。
スタンダード:リフター4基、作動。
ブロサード:リフター作動。垂直降下チェック。コース修正。現在接線コースで軌道上。(機器を調べ)
限界線を横断、夜側へ。
スナーク、軌道上。軌道を描くスナークの下、惑星を夜のカーテンが覆っていく。角度をなして、スナークは
小惑星の厚い大気層を通って下降していく。
ブリッジ。
ロビー:大気の乱流、砂嵐だ。
スタンダード:ナビゲーション・ライトを。
スナーク。豆スープのような大気の中を滑走しながら、まばゆく輝くライトにスイッチが入り、砂埃を切り裂くが
視野は改善しない。
ブリッジ。
ブロサード:発生源地点に接近中。あと20km、15km、速度低下。10、5。ジェントルメン、発生源真上だ。
スタンダード:下の地形はどうなってる?
ブロサード:ああ、砂埃で視線は届かない。レーダーはノイズ。ソナーはノイズ。赤外線は…ノイズ。紫外線を
試してみる。これだ。フラットだ。全体的にフラット。平野だ。

18 :
スタンダード:硬いか?
ブロサード:これは…玄武岩。岩だ。
スタンダード:よし、降りるぞ。
ブロサード:降下開始!15km、降下中。12…10…8…速度低下。5。3。2。あと1km、速度低下。トラクター
・ビーム、ロック。
大きな電子ハム音。船は震える。
ロビー:ロックした。
ブロサード:ドライブ・エンジン停止。
エンジンは静まる。
ロビー:エンジン・オフ。
ブロサード:900m、降下中。800、700.みんな、掴まれ。
惑星表面−夜。夜に包まれた惑星表面は吹きすさぶ砂埃で地獄のようだ。スナークは照明を上げながら
ホバリングし、ゆっくりと降りていく。ランディング・ストラットが昆虫の足のように広がる。
ブリッジ。
ブロサード:着くぞ…
惑星表面−夜。船は激しくタッチダウンし、巨大なショック・アブソーバーの上で揺さぶられる。
ブリッジ。船全体が、一瞬、激しく揺れる…そして部屋のパネル全てが同時に閃光を発し、明かりが消える。
ブロサード:ジーザス!
明かりが再び灯る。
スタンダード:何が起こった?
ロビー:(スイッチを叩き)エンジンルーム、何事だ?
ファウスト:ちょっと待ってくれ。チェック中だ。
ロビー:外郭が裂けたのか?
ブロサード:ウム…(計器をスキャンし)いや、何ごともない。船内圧は保たれている。

19 :
訂正。>>17。13行目、あと20km、15km→時速20km、15km。

20 :
コミュニケーターからビープ音が発せられ、そして、
ファウスト:マーティン、ジェイだ。エンジンのインテークが埃で詰まったんだ。オーバーヒートが起きて
電池が全部燃えた。
スタンダード:(パネルを叩き)畜生!修理はどれだけ掛かる?
ロビー:(マイクに)修理期間は?
ファウスト:分からない。
ロビー:よし。始めてくれ。
ファウスト:分かった。
スタンダード:外を見てみよう。スクリーンを回してくれ。
メルコニスはボタンを叩く。スクリーンは明滅するが暗いままである。
ブロサード:何も見えんな。
船外−夜。わずかにきらめく照明が船と周囲の完全な暗闇を分けている。風が呻き、泣き叫んでいる。
小さな照明の前方では砂嵐が吹いている。
ブリッジ。
スタンダード:フラッドを。
船外−夜
フラッドライト(投光照明)の輪が目を覚まし、目も眩むような光を夜の闇へ投げかける。
照らし出されたのは灰色の地面と、吹きすさぶ砂埃の雲だけである。風が叫び声を上げている。
ブリッジ−夜。
ロビー:あまり助けにはならないな。
スタンダードは暗いスクリーンを見つめる。
スタンダード:この暗さではどこへも行けん。夜明けまでは?
メルコニス:(計器と相談し)ええと…この岩は2時間周期で回っている。20分で日が昇るはずだ。
ブロサード:グッド!そうなれば何か見えるな。

21 :
画面はディゾルブして、
船外−夜(メイン・タイトル・シークエンス)。
スナーク号のフラッドライトが闇と嵐を相手に戦い、負けつつある。不吉なメインテーマ・ミュージック
が始まり、タイトルが現われる。
          A  L  I  E  N
太陽が昇り、徐々にスクリーンが明るくなる。スナーク号のシルエットが見えてくる。まるで不毛の大地に
うずくまる、動かない奇妙な昆虫のようである。フラッドライトが消える。

22 :
見通すことの出来ない、濃密な砂埃の雲が泣き叫び、呻き、全てを覆い隠し、太陽の光は弱められて
鈍いオレンジ色にしか見えない。メインタイトル終了。
ブリッジ−昼。男たちは立ち、座り、コーヒーを飲み、渦巻く砂埃しか映っていないスクリーンを見つめて
いる。
ロビー:この辺に都市があるんだろうが、見えないな。
ブロサード:ここで座ってちゃな。サンディ、何か反応は?
メルコニス:(イヤフォンを抜き)すまん、例の通信が32秒毎に繰り返されているだけだ。全周波数でトライ
したんだが。
ブロサード:ここに座って招待されるのを待つつもりか?

23 :
ロビーはむっとしてブロサードを見ると、コンソールのpボタンを押してマイクに話す。
ロビー:おい、ファウスト!
ファウスト:イヤー!
ロビー:エンジンの具合はどうだ?
エンジンルーム。ファウストは明るい照明の下、作業台に座っている。壁のインターコムに向かい、
ファウスト:これほど細かい埃は初めてだ…電池には全部、顕微鏡レベルの穴が開いている。こいつを
全部磨いてスムーズにしなくちゃならない。だからしばらくかかりそうだ。OK?
ブリッジ−昼。
ロビー:ああ、OK。(マイクを置く)
スタンダード:サンディ…通信の発生源まで遠いのか?
メルコニス:発信源は、北東…300mだ。
ロビー:近いな…
ブロサード:歩いていける!
スタンダード:マーティン、大気組成は?
ロビー:(ボタンを叩き、計器と相談士)アルゴン10%、窒素85%、ネオン5%…ほか微量元素。
スタンダード:無毒だな…だが呼吸はできん。大気圧はどうだ?
ロビー:1平方センチあたり10と1/4ダイン。
スタンダード:グッド!湿度は?
ロビー:ゼロ。骨みたいに乾ききってる。
スタンダード:微生物は?
ロビー:皆無だ。ここは死んでるのさ。
スタンダード:他には何か?
ロビー:ああ、岩のかけら、埃。

24 :
スタンダード:よし、プレッシャー・スーツは要らない。だが呼吸マスクは要る。サンディ…発信源
を追跡できるポータブル・ユニットを作れるか?
メルコニス:ノー・プロブレム。
ブロサード:探検パーティに志願するぜ。
スタンダード:聞いたぞ。武器を出すか?
メイン・アームロック−昼
スタンダード、ブロサード、そしてメルコニスはロックへ入る。3人とも手袋、ブーツ、ジャケット、
そしてピストルを無に付けている。ブロサードはボタンをタッチし、インナー・ドアがスライドして
静かに閉じる。ゴム製のフルヘッド・酸素マスクを付けている。
スタンダード:(マスクの無線を調整しながら)聞こえるか?
ブロサード:聞こえる。
スタンダード:オーライ。忘れるな、俺が言うまでは武器に触れるなよ。マーティン、聞こえるか?
ブリッジ。
ロビー:聞こえるよ、チャズ。
メイン・アームロック−昼。
スタンダード:アウター・ドア、開けろ。
重々しく、アウター・ドアがスライドして開く。オレンジ色の日光と、埃の雲が渦を巻く。風が呻いて
いるのが聞こえる。可動階段がスライドして伸び、地面に触れて音を立てる。スタンダードが嵐の中へ
歩いていき、2人が後を続く。

25 :
小惑星−昼。3人はタラップを早足で惑星の表面へ降りていく。足は厚い埃の層と脆い岩石に沈む。
3人は群がって周りを見渡す。風が叫び、衣服を引っ張る。何も見えない。
スタンダード:どっちだ、サンディ?
メルコニスは携帯の方向感知器をいじくる。
メルコニス:(指を指し)あっちだ。
スタンダード:先を頼む。
メルコニスは砂埃の雲の中へ歩いていく。2人は後を追う。
スタンダード:OK、マーティン。向かっている。
ブリッジ−昼。ロビーが1人、ブリッジにいる。コンソールに身を屈め、タバコを吸いながらスクリーン上の
3つの輝点が動いていくのを見ている。
ロビー:OK、チャズ。聞こえるぞ。ボードに捕らえてる。
スタンダード:グッド。よく聞こえる。ラインをオープンにしておいてくれ。
小惑星−昼。3人は悲鳴をあげる風と黄色い砂埃に苦労しながら進んでいく。ゴム製マスクとゆっくりした動き
は、濁った海底の深海ダイバーのようである。
スタンダード:どっちを向いても3m以上見通せない。眼の見えない計器歩行だ。
彼らはメルコニスを追って歩く。メルコニスは突然立ち止まる。
スタンダード:どうかしたか?
メルコニス:シグナルが消えていく。
彼は方向感知器を調べる。

26 :
ブリッジ−昼。ロビーはヘルメット通信の対話に真剣に聞き入っている。
メルコニス:埃だ。砂埃が妨害してるんだ…
集中するあまり、ハンターが背後に近づいてくるのに気付かない。
メルコニス:待ってくれ、また捉えた。あっちだ。
ロビーのすぐ背後でハンターが話す。
ハンター:どうした?
ロビーは驚愕して振り向き、ハンターと向き合う。
ロビー:(驚いて)ヘル!
ハンターはロビーを見る。つかの間の恐怖は当惑した怒りへと変わる。
小惑星−昼。3人は嵐の中を進んでいく。メルコニスは再び立ち止まり、方向感知器を調べる。
メルコニス:近いぞ、すぐ傍だ。
スタンダード:どれくらい?
メルコニス:殆ど真上のはずだ…
突然ブロサードがスタンダードの腕を掴んで指を指す。渦巻く濃密な砂嵐を通して、なにかの巨大な
形がうっすらと見える。見る間にも砂埃が薄れ、巨大な毒キノコのように奇怪な船の姿が露わになる。
人間の手によるものでないのは明らかである。男たちはこれを見てショックを受け、口も利けない。
やっとスタンダードが口を開く。
スタンダード:マーティン、見つけたぞ。
ロビー:何を?
スタンダード:ある種の宇宙船のようだ。近付いてみる。

27 :
彼らは異星人の船に向かう。
ブリッジ−昼。
スタンダード:生命兆候はない。光もなく…動きもない…
ロビーとハンターは催眠術にかかったように聞き入る。
スタンダード:フー、基部に着いたぞ。
毒茸船基部−昼。奇怪な形のドアが基部で大きく口を開いている。埃と砂が吹き込み、入り口の床を
埋めている。男たちは身長に入り口に接近し、寄り集まる。
スタンダード:ドアは開いてるようだ。入り口はゴミで埋まっている。
ブロサード:乗り捨てられたらしいな。
スタンダード:マーティン、続いて進む。ここからは会話は最小限で。
異星人の船内−昼。戸口は光と暗闇に幾何学的にかすみ、埃を吹き出している。部屋の暗闇の中に、
巨大ではっきりしない形が見える。3人は戸口でシルエットとなって浮かぶ。彼らは懐中電灯に似た
“データスティック”にスイッチを入れ、中へ入る。

28 :
慎重に周りを見回しながら、はっきりしない機械類を越えて3人は進んでいく。
メルコニス:エアーロックか?
スタンダード:知るもんか。
ブロサード:コントロール・ルームを探そう。
明かりを動かすと壁、天井、そして機械類は大きく不規則な穴だらけである。
メルコニス:穴を見てみろ。スイスチーズみたいだ。
ブロサードは天井の大きな穴にライトを当てる。
ブロサード:この穴は何階層も続いてる…誰かがここで軍用の分解装置を発射したみたいだ。
彼らは闇に延びている穴を見上げる。
スタンダード:クライミング・ギアを。
スタンダードはずんぐりしたスピア・ガンを取り出し、グラプロンを装着する。彼は穴の上へ
狙いを付け、発射する。撃ち出されたグラプロンは細いワイヤーを引いて闇の中へ飛び、鈍い
音がしてワイヤーは垂れ下がる。
ブロサード:俺が先に行こう。
スタンダード:いや、お前は俺の後だ。
スタンダードはワイヤーを胸のパワード・ギアボックスに繋ぎ、ボタンを押す。機械音と共に
彼は穴の中へ、足をテコにしながら引っ張り上げられていく。ブロサードはワイヤーを自分の
胸のユニットに繋ぐ。

29 :
異星人の船、コントロール・ルーム。ブロサードが穴を抜ける。部屋は暗い。スタンダードは懐中電灯/カメラ
(データスティック)で垂れ下がるゴミを辿る。ブロサードはワイヤーを外し、ライトを上げる。メルコニスも
到着する。光が部屋をスキャンする。漂う埃の中、ビームは光の円柱となってくっきり見える。重い、奇妙な形
が見えてくる。ブロサードは何かに躓く。そしてライトでそれを照らし出す。それは大きな、光沢のある壷だった。
茶色で、奇妙な模様がついている。ブロサードは壷をまっすぐに立てる。頂点に丸い開口部があり、中身は空だ。
突然、メルコニスがショックを受けて呻き声を上げる。ライトに、言いようも無く奇怪なものが浮かび上がる。
巨大な、異星人の骸骨である。死骸はコントロール・チェアに座っている。3人は骸骨に近づき、ライトを向ける。
死骸はグロテスクで、人類に似たところは全く無い。
メルコニス:ホーリー・クライスト!
スタンダードは醜い骸骨の座っているコンソールを照らす。ライトを近づけ、パネルを見つめる。
スタンダード:見ろ。
3人は近づく。
スタンダード:何か、彫りつけられている…パネルの板に。見えるか?

30 :
パネルの表面に、道具の尖った先端で刻まれたギザギザの絵。それは、小さな三角形だった。何か物音が聞こえ、
ブロサードはライトを部屋の向うへ向ける。光は壁をスキャンし、何か動くものを捉える。メルコニスは発作的に
ピストルを抜く。
メルコニス:気を付けろ!動いてるぞ!
スタンダードがメルコニスの手を押さえる。
スタンダード:銃を放せ!
スタンダードが押しのけて前へ出る。3人は明かりを照らしながら壁のコンソールへ接近する。機械の上、小さな棒が
間断なく前後に動いている。溝の中を音も無くスライドしている。
スタンダード:ただの機械だよ。
ブロサード:だが機能している。
メルコニスは方向感知器を見下ろす。
メルコニス:通信はここからだ。
メルコニスは方向感知器のスイッチを叩く…ハム音、バチバチ言う雑音とともにぞっとするような声がイヤフォンを
満たす。
ブロサード:録音だ!畜生、自動録音だ!

31 :
小惑星−日没。太陽の光は血の色に変わる。日は沈み、跡に濃密な暗闇を残す。船のフラッドライトが再び
燃え上がり、暗闇と嵐を相手に弱弱しく戦っている。
多目的室。クルー全員が会議机の周囲に座り、スクリーンに映し出されたホログラフィーを見ている。
データスティックで撮られた写真である。スタンダードがコメントを加えていく。
スタンダード:これがコントロール・ルームで…
数枚のスライドが連続してスクリーン上に映し出される。
スタンダード:コントロール・ルームの詳細だが…
スクリーンに骸骨が現われる。反応してつぶやきが漏れる。
スタンダード:骸骨だ…これは別の角度から…これは通信デバイスで…
異星人のコンソールに刻まれた三角形が現われる。
スタンダード:これは、骸骨の前のコンソールに書かれた三角形のクローズアップだ…
スタンダードはスライドをチェンジする。スクリーンは真っ白になる。
スタンダード:以上だ。
彼はプロジェクターを切り、照明をつける。
ハンター:驚くべき事だ。たまげたぜ。
ブロサード:戻って、もっと多くの写真を撮ろう。あらゆる物のホログラフを。
メルコニス:物理的な証拠もできるだけ持ち帰るんだ。骸骨の残骸、機械、記録、何もかもだ。
ロビーは椅子に沈み込んで、何も言わない。

32 :
スタンダード:マーティン?
ロビー:賛成だ。歴史上唯一の、最も重要な発見だ。
スタンダード:しかし?
ロビー:誰があいつをったんだ?
ブロサード:大昔に、恐らく何百年も前に死んでるんだ。星全体が死んでるんだ。
ファウスト:俺が思うには、奴らは何か修理のために着陸したが、離陸できなかったんだ。きっと埃でエンジンが
駄目になったんだろう。奴らはSOSビーコンをセットしたが、誰も来なかった。だから奴らは死んだのさ。
ロビー:奴が死んだんだ。
ファウスト:何だって?
ロビー:奴らじゃない…奴だ…骸骨は1つしかない。
スタンダード:ジェイ…修理はどうだ?
ファウスト:ああ…エンジンをブローアウトしなくちゃ…
スタンダード:いつ、その用意ができるんだ?
ファウスト:オオ…まだまだだな。
スタンダード:じゃ、何故そんな所に座ってる?
ファウスト:分かったよ。
男たちは立ち上がり、散る。だがロビーだけは座ったままで、骸骨を見つめ、考えにふけっている。メルコニス
が彼と共に部屋に残る。
メルコニス:人類と宇宙の知的生命体とのファースト・コンタクトだな。

33 :
エンジンルーム。想像もできないエネルギーを放出できる巨大なエンジン。部屋は脈動している。
ファウストは1台のエンジンの基部にスポットライトを当てて、手の掛かる作業をしている。ゴーグルと
グローブを装着している。
ファウスト:用意はいいか?
ブリッジ−夜。ブロサードとメルコニスがコンソールに着いている。計器を見ながらファウストと会話
している。
ブロサード:ああ、用意できてる。
エンジンルーム。
ファウスト:OK。抽出工程に入る。
彼は手を止めて眉を拭う。
多目的室。部屋にはロビーが1人。椅子に沈み込んでスクリーンのスライド写真を見ている。クリックする
指が骸骨の写真で止まる。彼はじっと見つめる。彼の隣のテーブルに、醜い異星人の頭蓋骨が置かれている。
彼は頭蓋骨を取り上げ、スクリーンと比較し、調べる。スタンダードが入り口に現われる。
スタンダード:ああ、哀れなユーリック。
ロビーははっとして頭蓋骨を置く。スタンダードはテーブルに腰掛ける。
スタンダード:(スクリーンに向かってうなづき)何か見つかったか?
ロビー:(肩をすくめ)何を探してるのかさえ、分からんよ。

34 :
スタンダード:まだ心配してるのか・
ロビー:ああ…知ってるだろ、俺のことを。
スタンダード:あんたの意見はいつも尊重してるよ、マーティン。あんたが心配なら、俺も心配さ。
ロビーは手を伸ばしてスライドをチェンジする。異星人のコントロールパネルに乱暴に描かれた
三角形のスライドだ。
ロビー:こいつの意味するところは何だろうか?
スタンダード:ああ…明らかに意図的なものだな…ある種のコミュニケーションの試み…彼らにとっては
何かのシンボルなのかも…
ロビー:しかし、何故、壁に?
ロビーはプロジェクターを切り、起き上がり、疲れた様子で顔をこする。立つとコーヒー・マシンに向かう。
ロビー:(コーヒーポットから毛をつまみ上げ)船は猫の毛だらけだ。
スタンダード:マーティン、エンジンが直ったらすぐに…
ビープ!コミュニケーターがスタンダードをさえぎる。彼は体を伸ばし、ボタンを押す。
スタンダード:チャズだ。
ブロサード:デルだ。ちょっと来てくれないか。
スタンダード:何だ?
ブロサード:ああ、また日が昇って、風は止んだらしい。外の空気は澄み切っている。見ておくべき物があるぜ。
スタンダード:今向かってる。
彼はロビーとドアへ向かう。
ブリッジ−昼。2人が到着する。ブロサードは1人である。
スタンダード:何だ?
ブロサード:見ろよ。
船外−昼。砂嵐は吹いていない。空気は新鮮で澄み、音はしない。
ブリッジ−昼。
ブロサード:何か見えないか、水平線をスキャンしてたんだ。スクリーンの、あそこを見ろよ。
スタンダード:あれは何だ、俺には…
ブリップ!ブロサードが像を増幅する。
スクリーンに映っているのは、水平線上にそびえる石のピラミッドである。
彼らは長い間、これに見入る。ピラミッドのシルエットは、エイリアン・シップに殴り書きされた三角形を直ちに
思い起こさせるものだった。

35 :
スタンダードは近くのコミュニケーターを押し、話す。
スタンダード:チャズだ。全員上甲板へ。今すぐだ。
ビュースクリーン。水平線上のピラミッド。
スタンダード:疑う余地はないな。違うか?
メルコニス:あのクリーチャーは間違いなくピラミッドを重要だと考えていた…最後の力を振り絞って
絵を描いたんだ…
ブロサード:ピラミッドを建てたのは、おそらく奴らだ。
ファウスト:何のために?
ブロサード:埋めた機械類の目印?
ハンター:あるいは集団墓地とか。
ブロサード:たぶん、残りの奴らはあそこにいる。何らかの形の仮死状態で、救援を待っているはずだ。
メルコニス:奴らが建てたとは限らないぜ。
スクリーンの上、ピラミッドの前を砂埃がひと吹きする。
ロビー:また砂埃がやってくるぞ。
叫び声を立てながら砂嵐が戻って来る。スナーク号はすっぽり砂嵐に覆われる。
ブリッジ−昼。
スタンダード:マーティンの他に、探索は止めたほうがいいという者は?
皆は部屋を見回すが、同意する者はいない。
スタンダード:よし、それなら行動は早いほうがいい。
小惑星−昼。ストーン・ピラミッドのロングショット。砂嵐が吹いている。ピラミッドはぼろぼろに
なった太古の建造物で、浸食された灰色の石でできており、窓はなく、頂点へと先細りになっている。
スタンダード、ブロサード、そしてメルコニスは防護スーツを着てピラミッドに接近する。近づくと、
ピラミッドの高さは大凡50フィートと判明する。
スタンダード:細部や特徴はまだ分からないが…自然の構造物としては、明らかに規則正しすぎる…
ブリッジ−昼。ロビーとハンターがいる。無線でスタンダードの声を聞いている。

36 :
スタンダード:一つ、確かに言えるのは…
ブズズズズズ!スタンダードの声は空電で妨害される。
ロビー:何かまずい事が?
ハンター:シグナルを完全に見失った。
ロビー:引き返させられるか?
ハンター:試してみる。
ピラミッド基部−昼。3人は巨大な建築物の基部へやって来る。基部の灰色の石に埃と砂が厚く
堆積している。
メルコニス:古そうだな。
スタンダード:そうとも言えん…この気候では全てが急速に浸食される。
彼らは歩き回る。
ブロサード:入口が見当たらん。
メルコニス:たぶん埋まってるんだろう。俺たちの脚の下かもな。
スタンダード:おそらく入口はない。こいつはムクなんだろう。
ブリッジ−昼。
ロビー:ああ、どこか中へ入る道があるはずだ。
インターコムが鳴る。ファウストの声が聞こえる。
ファウスト:話をさえぎってすまん。ちょっとエンジンをチャージしたいが、いいか?
ロビー:ああ、OK。やってくれ。

37 :
騒々しい、パワフルな鼓動が始まり、他のあらゆる音をかき消す。ロビーのパネルが光る。コンピューター
の警報である。ロビーはいらついてスイッチを入れる。
ロビー:イエス!
コンピューター:モニターにテンポラリー・シークェンスを捉えました。
ロビー:待て、聞こえん!
ロビーはイヤフォンを装着し、コンピューター音声に切り替える。
ロビー:聞かせてくれ!
ロビーはコンピューターに聞き入る。彼の眼が見開かれる。
ロビー:メッセージを…翻訳したと言うのか?よし、早く!何と言ってるんだ!
ロビーの顔色が変わる。骨の髄まで冷え切ってしまったように見える。突然、エンジンが止まる。静寂
が広がる。
ハンター:何だって?
ロビー:コンピューターがメッセージを翻訳した。SOSじゃない。あれは警告だったんだ。
ピラミッド基部−昼。
ブロサード:たぶん、てっぺんから入れるだろう。
スタンダード:試すか?
ブロサード:ああ。
ブロサードはグラプロン・ガンを取り出し、ピラミッドの頂点を目がけてフックを発射する。うまく捉えた。
ワイヤーを装着する。
ブロサード:俺がOKと言うまでは、ここで待つんだ。
ブロサードはクライミング・デバイスにスイッチを入れ、ピラミッドの側面を登っていく。砂埃が吹き、
風が唸っている。

38 :
ピラミッド頂上−昼。ピラミッドの頂はひどく破損している。ブロサードが到着し、ギザギザに崩れた
石にしがみつく。
ブロサード:天辺に穴が開いてる。
ピラミッド基部−昼。
スタンダード:上がってもいいか?
ブロサード:ノー。狭すぎる。1人がやっとだ。
スタンダード:穴の中に何か見えるか?
ピラミッド頂点−昼。ブロサードは身を乗り出して穴を覗き込む。暗闇が見えるばかりだ。
ベルトからデータスティックを外すと懐中電灯機能のスイッチを入れ、穴の下方を照らす。
ブロサード:見えるのは…下りの途中までだ。ストーブの煙突みたいだ。壁は滑らかだ。底は見えん
…光が届かない。
ブリッジ−昼。ファウストが階段を駆け上って来る。顔には疑問の表情が浮かんでいる。
ファウスト:イエス?何だ?
ロビー:ジェイ、問題発生だ。修理をショートカットして、さっさと離陸する方法がないものかと
俺は考えてたんだが…
ファウスト:何かまずい事が?
ロビー:コンピューターが異星人のシグナルを翻訳したんだが、1種の警告らしい。
ファウスト:どういう意味だ?
ロビー:全部翻訳できたわけじゃない。3つのフレーズだけだ。読むぞ。(紙切れを読む)
「…敵意がある…サバイバル…着陸しないよう忠告…」翻訳できたのはこれだけだ。

39 :
ピラミッド頂上−昼。穴の縁から釣り下がり、ブロサードはベルトからギアを外す。
スタンダード:デル、降りてこい。
ブロサード:いや、俺は行きたい。
ピラミッド基部−昼。スタンダードとメルコニスは視線を交わす。
スタンダード:OK、デル、しかしちょっと見回すだけにしておけ。ケーブルを外すなよ。10分以内に出るんだ。
ピラミッド頂点−昼。
ブロサード:ああ。
ブロサードは穴の入り口に3脚を置く。デバイスから数フィートワイヤーを引き出し、胸のユニットに接続する。
彼は穴を乗り越え、穴の中へ降りていく。ワイヤーで吊られ、頭と肩は穴の外にある。
ブロサード:今、煙突の入り口だ。降下を始める。
スタンダード:気を付けて。
ブロサードはクライミング・ユニットを作動させ、穴の中へ降りていく。
ピラミッド−昼。垂直なトンネルの粗い石壁に足を踏ん張りながら、ブロサードはデータスティックのスイッチ
を入れ、深みへと向ける。ビームは30フィートほどまで達し、闇に消える。
ブロサード:凄く暖かい。暖かい空気が下から昇ってくる。
彼はラインを引き出し、小刻みにホップしながら降りていく。止まって呼吸する。荒い呼吸音がヘルメットの
中に響く。日光が上からわずかに差し込んでいる。見上げると、入り口は光る点となっている。スタンダードの
声がイヤフォンを通して聞こえる。
スタンダード:大丈夫か?
ブロサード:(あえぎ声で)イヤー、OKだ。まだ底には着かない。暖かい空気が円柱様に昇ってくる。それがここ
を砂埃から守っているんだ。
スタンダード:デル、何だって?見失ったぞ。聞こえるか?
ブロサード:イヤー、ハードワークさ。今は話ができん。
彼は壁を蹴って降り続ける。ホップを長く、自信を持って。少し休んで呼吸を整え、計器を照らして見る。
ブロサード:地面レベルより下に来た。

40 :
ピラミッド基部−昼。
スタンダード:何て言ってる?
メルコニス:分からん…干渉がひどいんだ。
ブリッジ−昼。
ハンター:駄目だ!ピラミッド周囲全体、通信が効かない。後を追うべきだ。
ロビー:ノー。
ハンター:ノー?どういう意味だ!
ロビー:俺たちはどこへも行かない。
ハンター:だが、あいつらは翻訳の内容を知らない!たった今、危機に陥ってるかも知れないんだ!
ロビー:人を割くことはできない!離陸に最低限の能力しか、今はないんだ。チャズが俺たちを船に
残したのも、そのためだ。
ハンター:何故だ、弱虫のクソッタレが!
ロビー:できない!チャズが戻るまでは俺が指揮を執る!だれも船を出てはならん!
ピラミッド−昼。ブロサードは再び降りはじめる。突然、足がかりが消える。トンネルの壁が消えた
ようである。トンネルは終わり、彼の下には底知れない洞窟の空間が広がっている。
ブロサード:(あえぎながら)トンネルは消えた…下は洞穴か何かだ…熱帯みたいだ。空気は熱くて
湿っぽい…(計器を見て)…酸素含有率が高い。埃もない。完全に呼吸可能だ…

41 :
苦労してひと息つくと、彼は石壁から足を離し、自力で降りていく。今や彼は暗闇の中で宙ぶらりんで、ワイヤー
の先でゆっくり回転している。やっと足が底に着く。彼は驚いて文句を言い、バランスを失いそうになる。
墓−昼。ブロサードは埃だらけの石の床に立っている。弱弱しい日光がトンネル上部から彼の周囲に差し込んでいる。
周囲は濃密な闇である。彼はデータスティックで周囲を照らす。石の部屋である。奇妙な象形文字が壁に刻まれている。
原始的で、宗教的なもののようである。象形文字は何列も何列も、床から天井へと延びている。未知の言語で描かれた
叙事詩のようだ。巨大な宗教的シンボルが壁を1つ占めている。一定の間隔を置いて並んでいるのは、様式化された彫像で、
彫られているのは奇怪な怪物たち…半ば類人猿で、半ば蛸のような。
ブロサード:信じられん!墓らしい…ある種の原始宗教!誰か、聞こえるか?スタンダード!
いらだったブロサードは呼吸ゴーグルをむしり取る。彼は湿った空気を深く吸い込む。
ピラミッド基部−遅い午後。スタンダードとメルコニスと神経質そうに立っている。
スタンダード:すぐ連絡がなければ、後を追おう。
メルコニス:日はすぐ沈むぞ。
墓−遅い午後。顔をむき出しにして、ブロサードは部屋の中心に近づく。そこは大きく広い台座で占められている。台座の
上には、皮製の壷、或いは甕が列をなしている。異星人の船でブロサードがつまづいたものとそっくりである…違う点は、
これらには全部、穴が開いていない。彼は壷の周りを歩き、調べる。全て、蓋は閉じている。彼はその1つを照らし、手を
かざす。
ブロサード:聞こえてるかどうか分からんが、この場所は大きな瓶、もしくは壷で一杯で〜あの船で見つけたのとそっくりだ。
こっちのは全部蓋が閉まっているのを別にすれば。それに、触ると柔らかい。

42 :
 /  /ヘ        ヽ
 ´ /  ll\       l
l  /   \ヽ/ヽ    l
l  l ⌒  \  ⌒ヽ   l
l  l _ ヽ \ _ \  l
l  l    l  lヽ   l  l
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ヽ ヽ  ‖__ ヽ  l l
 l  ヽ  l l l l  / /
 ヽ  lヽ 丶┴ノ ノl l
  l l  ヽ── ノ  l l

43 :
彼は皮の壷を更に近寄って見つめる。
ブロサード:他にも奇妙な事が…手を乗せると、指先の当たる部分が持ち上がってくるんだ。
ピラミッド基部−遅い午後。太陽が水平線に沈む。景色は闇に包まれる。スタンダードとメルコニスはライトを
点ける。
スタンダード:行こう。
彼は胸のユニットにワイヤーを繋ぎ、出発する。
墓−夜。ブロサードは壁の象形文字の列をライトで追う。奇怪な怪物たちを様式化して描写している。彼は一休みし、
データスティックのフィルムクリップを急いで交換する。そして調べている「壷」を振り返る…しかし、今ではてっぺんに
穴が開いている。彼は「壷」の根本の床を照らし出す。「蓋」が落ちている。彼は拾い上げて調べる。人工的と言うより、
生物的で、内部表面は海綿状で不規則である。彼は今では口を開いている「壷」にライトを向ける。
彼は明かりで照らしながら、「壷」の開口部に身をかがめていく…猛烈な勢いで、小さな、蛸のような物体が飛び出し、
彼の顔に張り付く。触手が頭部を包み込む。くぐもった叫び声と共に、手で顔をかきむしりながら、彼は後ろへ倒れる。

44 :
すげえええええええええええ

45 :
ピラミッド頂上−夜。
スタンダードとメルコニスが頂上に着く。砂埃が吹き、吼えている。光が暗闇に揺れている。
スタンダード:(あえぎながら)あいつのワイヤーだ。場合によっては引っ張り出せるぞ。
メルコニス:嫌だと言っても引きずり出せるだろう。何かと絡んでるかも知れんが。
スタンダード:だが、他にできることはない。通信はアウトだし。
メルコニス:もう数分待ってみるか。
スタンダードは穴の縁にしがみつき、躊躇している。
スタンダード:(決心して)いや、10分したら出てこいと俺は言った。短い時間だ。あいつを外へ出そう。
スタンダードはトンネルの縁に屈み、ブロサードのワイヤーが出ているウインチを操作する。
スタンダード:ラインはたるんでいる。クライスト!あの馬鹿め、ワイヤーを外したのか?
彼はウインチのモーターのスイッチを入れる。音を立て、ラインが巻き戻されていく。一瞬の後、ラインは
引かれて張り詰め、モーターはスローダウンする。何かの重みが加わったのだ。
スタンダード:捕まえたぞ!
メルコニス:上がってきてるか?何か他のものを引っ掛けたんじゃないのか?
スタンダード:上がってくる。
メルコニス:何か見えるか?
スタンダードは穴の中へライトを向ける。
スタンダード:いや、よく見えない。ラインは動いている。
2人は狭いピラミッドの頂上にしがみ付き、力を節約する。ラインは巻き戻され、風は吼えている。
スタンダードは再びライトを下に向ける。
スタンダード:見えた!上がってくる!捕まえる用意を!

46 :
ブロサードの姿が現われる。ワイヤーから力なくぶら下がっている。スタンダードが近づき…突然後ずさりする。
スタンダード:見ろ!顔に何かが!
メルコニスはブロサードを助けようとする。
メルコニス:これは何だ?
スタンダード:気を付けろ、触るんじゃない!
困惑しパニックに陥り、2人は動揺するが、やがてバランスを取り戻すし、ブロサードに
ライトを向ける。意識は完全に失われ…蛸のようなものが顔に張り付いたまま動かない。
メルコニス:オオ、ゴッド。オー、ゴッド、ノー。
スタンダード:手を貸してくれ。こいつを剥がしてみる。
手袋をはめた手で、スタンダードは触手の生えた物体を掴んで、ブロサードの頭部から引っ張る。
スタンダード:取れない…張り付いてやがる。
メルコニス:こいつは何なんだ?
スタンダード:知る訳ないだろ?さあ手を貸せ、彼を外へ出すんだ。
2人はぐったりしたブロサードの体を掴み、穴から持ち上げる。
ブリッジ−夜。ロビーとハンターは、不機嫌そうに黙って座っている。
ハンター:捕まえたぞ!スクリーンに戻ってきた。
ロビー:(跳び上がって立ち)何人だ?
ハンター:ブリップは3つ!そこを来るぞ!
ロビーはマイクを掴む。
ロビー:ヘイ!聞こえるか?
スタンダード:イヤー、聞こえる!戻るとこだ!
ロビー:サンクス、クライスト!見失ってたんだぜ!聞いてくれ、新しく進展があったんだ…
スタンダード:今はその話はいい。ブロサードが負傷した。船内へ入れるのに助けが必要だ。

47 :
ロビーは不安に、堪らず椅子に崩れ折れる。初めから、このような事態を恐れていたのだ。そして今、それが現実の
ものとなってしまった。
ロビー:オー、ノー。
ハンター:ジェイ、クリーブだ!メイン・エア・ロックへ!
ハンターは急いで出て行く。ロビーは残り、コンソールに座っている。彼は呆然とし、頭の中は空転している。
エアロック外の回廊−夜。ハンターが急いでやってきて、インナー・ロック・ドアへ急ぐ。彼は壁のインターコム
を押す。
ハンター:マーティン、インナー・ロック・ドアだ。ここで待つから入れてやってくれ。
ブリッジ−夜。
ロビー:(妙に静かに)ああ。
エアロック外の回廊−夜。
ファウストが駆け上がってくる。ほこりだらけである。
ファウスト:一体何事だ?
ハンター:分からん…ブロサードが何だか怪我をしたらしい。
ファウスト:怪我だと?どうした?
ハンター:分からん…首を骨折したとか。俺たちはラッキーかもな。ここから降りないほうがいい。
ブリッジ−夜。ロビーは1人で座って、スタンダードとメルコニスの通信を聞いている。
スタンダード:マーティン、そこにいるのか?
ロビーは上体を起こし、マイクに話す。
ロビー:ここだ、チャズ。
スタンダード:今上がる。アウターロック・ドアを開けてくれ。
ロビー:チャズ…ブロサードに何が起こったんだ?
スタンダード:こいつは何らかの生命体で、ブロサードに貼り付いてる。入れてくれ。
ロビーは返事をしない。
スタンダード:聞こえるか、マーティン。アウタードアを開けてくれ。
ロビー:チャズ、もしそいつが生物で、俺たちが入れたとしたら、船は感染する。
スタンダード:ブロサードを置き去りにはできん。ドアを開けろ。

48 :
ロビー:(切迫して)チャズ、聞くんだ…俺たちは検疫上のルールを全て破ってきた。もしその生物を船に
入れたら、防衛手段は残されていない。
スタンダード:マーティン!これは命令だ!ドアを開けろ!
ロビーは上体を傾け、嫌々スイッチを入れる。
エアロック外の回廊−夜。壁のコンソール赤いライトが点き、大きなサーボ音に次いで金属音が響く。
ハンター:アウタードア、オープン。
一瞬後、再びモーター音と金属音がしてアウタードアは再び閉じる。赤いライトも消える。インナー・ドア
がスライドして開き、スタンダードとメルコニスが、垂れ下がるブロサードの体を運びながら、よろめき
入ってくる。
スタンダード:(マスクを外しながら)みんな、離れてろ。寄生体がいる。
ハンターとファウストは後ずさりする。
ハンター:オー…ゴッド…オー…
ファウスト:生きてるのか?
スタンダード:分からんが、」触っちゃいかん。ちょっと手を貸せ、オート・ドックに乗せよう。

49 :
スレ主さん、本当にありがとう。
毎晩楽しみで仕方ないっす。

50 :
こちらこそ。張り合いがあります。

51 :
医務室。ブロサードを運んで彼らは医務室に入って来る。1人がライトを点ける。小さな寝室で、壁には機械類
が並んでいる。メカによるバンクベッドがクレイドルに収まって壁のスロットに収納されている。
スタンダード:手を貸してくれ。彼をここへ。
彼らはブロサードをバンクの上へ滑り込ませる。
ハンター:あの厄介な代物だが、剥がそうとしてみたのか?
スタンダード:駄目だった。
スタンダードは手袋を外す。
スタンダード:医療用手袋。
彼らは壁のディスペンサーから薄い伸縮性のある手袋を取り出して装着する。

52 :
彼らは注意深くブロサードに近づく。スタンダードはブロサードの顔の上で脈を打っている蛸に手を置く。
手で触手を掴むと引き剥がそうとする。
スタンダード:ぴったり張り付いてやがる。
ファウスト:俺がやってみよう。
ファウストは棚から1組のプライヤーを取り出すと触手の1本を慎重に挟み、全体重をかけて反り返る。
スタンダード:(ファウストの手を掴み)止めろ。顔が剥がれるぞ。
ブロサードの頬を血が滴り落ち始める。
メルコニス:顔全体を剥がし取らない限り…あれも剥がれない…
スタンダード:機械にやらせてみよう。

53 :
彼らはブロサードを裸にすると壁のスイッチを幾つか押す。機械がライトアップし、ブロサードは壁のスロットへ
吸い込まれる。機械は直ちに菌剤をスプレーし、まばゆいピンクの光で彼を消毒する。ビデオモニターが層をなして
立ち上がり、ブロサードの体の各パーツのX線イメージを映し出す。センサーがスキャンを開始し、リレーがさえずる。
ロビーが入口に姿を現す。スタンダードは振り向いて彼を見る。2人の男は長い間、じっと見つめ合う。そして
スタンダードが前にでると、ロビーの顔を平手で打つ。他の者はショックを受ける。
ハンター:ヘイ!何だ!
スタンダード:奴に訊け。
ロビー:(ゆっくり頬に手をやって)理由は分かってるさ。
スタンダード:グッド。
メルコニス:ロックを開けようとしなかった。俺たちを外へ置き去りにしようとしたんだ。
ハンター:イヤー…多分そうしただろうな。お前たちが厄介な代物をここへ持ち込んだんだ。ビンタを食らうべきは
お前たちじゃないのか?
ファウスト:(当惑して)すまん、仕事がある。
ファウストは出ていく。

54 :
ハンター:口外はしないでおくが、叩くのは好かないな。
ロビー:(スタンダードに)こんな事になるだろうと思ってた。れで終わりにしよう。
ロビーを強く見据えたあと、素っ気なくうなづくとスタンダードは注意を機械に向ける。
ロビー:(ゆっくり)誰か、説明してくれないか?
スタンダード:奴は1人でピラミッドに入って行った。俺たちはコンタクトを失った。奴を引っ張り
出したら、あれが顔に乗ってた。怪我なしでは、剥がせない。
ハンター:あれはどこから?
メルコニス:知ってるのはブロサードだけさ。

55 :
ハンター:呼吸はしてるのか?
彼らはモニターを調べる。
メルコニス:血液は完全に酸素化されている。
ハンター:イヤー。だがどうやって?鼻と口は塞がってる。
スタンダード:頭の中を見よう。
スタンダードはボタンを叩く。モニター上にX線イメージが活き活きした色で現れる。ブロサードの頭と
胴体である。寄生体がブロサードの顔の上にはっきり見える。ショッキングな事に、ブロサードの顎は
無理やり大きく開けられ、寄生体は長いチューブ状の物を延ばし、それは口から喉を下って胃の付近まで
挿入されている。
ロビー:あれを見ろ。
ハンター:何という…何も言えない…
ロビー:何らかの器官…チューブだかが…喉へ入り込んでいる。
ハンター:(吐きそうになり)オオ…ゴッド…

56 :
ハンターは上体を折り曲げて吐こうとする。
ロビー:これで酸素を送り込んでるんだと思うな。
ハンター:道理に合わん…ブロサードを麻痺させて…昏睡に陥らせ…そして生かしておく…
メルコニス:こんな生命体を理解できると期待しちゃいけない。家の裏庭から遠く離れてるんだ。
何もかも地球とは違うのさ。
ハンター:で、せるのか?このままにはしておけん。
メルコニス:そうとしたら何が起こるか分からん。少なくとも今のところ、こいつはブロサードを
生き永らえさせている。
ハンター:切断したらどうだ?顔に張り付いてる1番下の層以外なら、どこだって切れる。
スタンダード:言う通りだ…何もしないわけには行かん。

57 :
初期コンセプトイメージにて支援
ロンコブのデザインとか素晴らし過ぎるんだが
http://weyland-yutaniarchives.blogspot.com/2010/10/project-formerly-titled-starbeast-part.html

58 :
支援感謝

59 :
スタンダードは汚れた呼吸マスクを外し、元の手袋をはめる。スイッチを押すと、ブロサードの体はブースの
外へ滑り出てくる。
スタンダード:誰か、メスをくれ。
メルコニスは壁のスロットから光るサージカル・ブレードを取り、慎重にスタンダードに渡す。手袋のために
操作に手間取るが、やがてちゃんとグリップできるようになり、親指でボタンを軽くはじく。メスはハム音を
立て始める。スタンダードは奇生体に向かう。他の者は神経質そうに後退する。ロビーは手を伸ばして、ラック
からもっと長いブレードを引き抜き、目立たぬよう脇へ寄せる。スタンダードは奇生体へ体を屈める。彼は
慎重にメスを1本の触手の先端に当てる。エレクトロニック・ブレードは容易に異星人の組織に滑り込む。
即座に傷口から尿のような液体が流れ出し始める。
スタンダード:切開を加えた…反応はない…だが切開創から黄色い液体が漏れ出て…
有毒に見える液体はブロサードの頭の横の寝具に滴り落ちる。すぐに音を立てて、染みから細い煙が巻き上がる。
スタンダード:待て、煙が!

60 :
黄色い液体はバンクベッドに穴を穿ち、下の床に滴り落ちている。金属の床は泡立ち、シューシュー音を立て
始め、煙が上がる。
メルコニス:ゴッド、この煙は有毒だ!
ハンター:(指差し)床に穴が!
男たちは出し抜けに押しのけあいながら部屋を出て、外の廊下に群れ集まる。ひどく咳き込んでいる。
マスクをしたスタンダードは残っている。あわてて傷口に包帯を当てるが液体はすぐに包帯を溶かし、何滴
かがスタンダードの手袋に落ち、煙を上げ始める。スタンダードはあせって飛び退り、手袋を引き外す。廊下へ
走り出て、マスクをむしり取る。
医務室横の廊下。
スタンダード:あの液体は金属を突き抜ける!デッキを食い破って外殻まで達しようとしている!
スタンダードは階段めがけて走り出す。
船の回廊。皆を引き連れ、スタンダードは急いで1階下へと音を立てて駆け下りる。
スタンダード:あそこだ!見ろ!
天井で液体がシューシュー音を立てている。にじみ出た液体は床へ落ちる。床は泡立ち始める。
メルコニス:ジーザス!何を下へ置いたら?
スタンダードとハンターは下の階へ階段を駆け下りる。

61 :
スタンダードとハンターは注意しながら回廊を下り、天井を見上げる。
スタンダード:(指差し)あそこだ。あの辺に来るはずだ。
ハンター:気をつけろ。下に行くなよ!
上の階では、ロビーとメルコニスが、酸が音を立てている床の穴にしゃがみ込んでいる。
メルコニス:クライスト。嫌な匂いだ。
ロビーはポケットからペンを抜き、床の穴に探り入れる。
ロビー:止まったようだな。
ハンターが急いで上がってくる。
ハンター:上はどうだ?
ロビー:消えたと思う。
ハンターは近づいて見る。ロビーは体を伸ばし、ペンをポケットへ戻そうとするが止め、ペンの端っこを持って
立つ。
メルコニス:こんなものは見たことがない…モレキュラー・アシッド以外には。
ハンター:これがあいつの血なんだ。
メルコニス:大したディフェンス・メカニズムだ。せないわけだ。
スタンダードが階段を上がってくる。
スタンダード:止まったか?
メルコニス:イエス。ありがたいね。
スタンダード:全くラッキーだった。外殻まで行ってた可能性もある…塞ぐのに何週間もかかったろう。
メルコニス:ガキの頃、雨漏りがしたのを思い出したぜ。皆ポットやパンを探して走り回ったもんだ。
ロビー:マイ・ゴッド。ブロサードは?
彼らは向きを変え、上がっていく。
医務室。全員が部屋へ入ってくる。ロビーは半分溶けたペンを持っている。ブロサードはバンクベッドの上で、
依然として動かない。

62 :
ロビー:変わりないか?
スタンダードは近づき、ブロサードの頭を見る。
スタンダード:変わりない。サンクス、ゴッド…忘れてたよ。
メルコニス:まだ垂れてるのか?
スタンダード:(調べて)切開創はふさがってるようだ。
ハンター:見てると気分が悪いぜ。
メルコニス:何か方法はないのか?
スタンダード:分からん。だが何とかしてやろう。
スタンダードはボタンを押す。ブロサードは診断器具へ滑り込む。さらにボタンを押すと、ディスプレイが
明るくなり、ブロサードの体の別の部分が映し出される。
スタンダード:静脈栄養を始めた方がいいと思う。
スタンダードが操作すると機械はブロサードの体に針を滑り込ませる。
ロビー:(スクリーンを見ながら)あそこを見ろ。肺にあるあの染みは?
X線はブロサードの胸のあたりに暗い染みが広がっているのを示す。中心部は不明瞭である。
メルコニス:何か重い液体かな…X線が通らない…
ロビー:あのチューブが産み付けた物に違いない。
メルコニス:何かの毒物や毒液の可能性も…
ハンター:恐ろしい。
ロビー:ヘイ!フィルムはどうした?
スタンダード:何のフィルムだ?
ロビー:ブロサードのデータスティックのフィルムだよ!何が起こったのか分かるぞ!

63 :
多目的室。暗くなった部屋でスライドを見る。スタンダード、ロビー、メルコニス、そしてハンターが、自動的に
撮影されたブロサードのデータスティックの写真を順番に見ている。カメラは「壷」を映し出す。「壷」から
クリーチャーがカメラに向かって飛び出す場面でクライマックスが訪れ…その後カメラは落ち、ぼうっとした景色
だけが映し出される。リールは終了する。
ハンター:あの中にずっといたんだ。
ロビー:例のシップにいた生物にも同じ事が起こったんだ。
メルコニス:(スライドを「壷」の映像にクリックバックして)初め、おれは瓶か何か人工物だと思ってたんだ。
だが違った。卵か、或いは胞子のケーシングだったんだ。象形文字に戻ろう。
カチカチカチ…メルコニスはスライドを替えていき、望む場所で止める…墓の壁に象形文字が並んでいる。
スタンダード:個人的には、意味はないと思うが…
カチ、カチ。彼らが話す間もメルコニスはスライドを替え、違うアングルからの象形文字を映す。
メルコニス:未熟な記号言語…太古のものだ。

64 :
ハンター:そうとは言い切れんぞ…プリント回線を表現しているのかも…
スタンダード:少々非現実的だな…
メルコニス:原始的な絵文字は、自然環境にある、ありふれたものに基づくもので、これが翻訳の
出発点にもなりうるんだ。
ロビー:ありふれたもの?
ハンター:聞け、誰かブロサードをもっとチェックしなかったのか?
スタンダード:(立って)俺がやろう。皆は続けてくれ。
ハンター:(立って)俺も行こう。
医務室横の回廊。スタンダードとハンターが通路をやってくる。
スタンダード:ファンタスティック!人類は他の進化した生命体と長い間会わずにに来た。そして、
今、俺たちは本物の動物園にぶち当たったんだ。
ハンター:どういう意味だ?
スタンダード:いいか、あれは同じものじゃない…シップとピラミッドだ。2者は別の文明から
来た、別の種族だ。あのシップはここに着陸し…我々同様クラッシュした。そしてピラミッドと、
あの蛸は…ここの原産なんだ!
ハンター:この小惑星原産なんてあり得るか?この星は死んでるんだぞ!
2人は医務室へ着く。

65 :
医務室。ドアがスライドして開き、2人は中へ入る。ハンターはベッドを作動させ、ベッドは壁から滑り出る。
長く、恐ろしい間が空く。
ハンター:消えた。
2人はうつぶせになったブロサードに駆け寄る。奇生体は顔から消えている。ブロサードは依然意識はないが、
呼吸はしている。顔には吸盤の跡が残っている。
ハンター:嫌な予感がする。
スタンダード:ドアは閉まってる。まだ中にいるぞ。
緊張が走る。ハンターはドアへじりじりと進み始める。スタンダードが手を掴む。
スタンダード:ノー、ドアを開けるな。逃がすわけにはいかん。
ハンター:(神経質に)ああ、ここで何ができる?捕まえる事はできん…飛び掛ってくるぞ…
スタンダード:捕まえられるかも。
スタンダードはフタつきのステンレス・スチールのトレイを拾い上げる。
スタンダード:傷付けないよう注意しさえすれば…
容器を片手に、フタをもう1方に持ってスタンダードはゆっくり部屋を回る。隠れる場所は殆どない。
彼はしゃがみ込んでバンクの下を覗く。スタンダードのすぐ上の棚の上で、1本の触手が震えている。彼は立ち上がり、
肩が触手をかする。奇生体は床へ落ちる。
スタンダード:(飛び退って)クソ!
物体は動かない。床に動かず横たわり、触手は巻き上がっている。退色し、死んだような灰色になっている。スタンダードは
視線を外さずに、壁から長いプローブを取り出す。そして物体をつつく。反応はない。
スタンダード:死んでるようだな。
用心深く、彼はプローブで動かない奇生体を取り上げ、トレーに移す。そして素早くフタを閉じる。

66 :
おお、こんなスレが!
小説版のALIENより全然こっちの方が面白い!
翻訳してくれてる1さんに感謝。

67 :
実験室。ロビーとメルコニスはステンレス・スチールの机の上に奇生体の体を仰向けに広げ、照明を
当てる。手袋をはめて、スタンダードはプローブで物体を探査する。
スタンダード:この吸盤を見ろよ…剥がせないはずだ。
ロビー:これは口か?
メルコニス:それよりあの器官…チューブみたいな…がそうかもな。
スタンダードは1組の先の尖ったプライヤーで、肉付きのいい開口部を探り、慎重にチューブ器官の端を引き出す。
ロビー:ウウ…
突然、プライヤーはばらばらになり始める。
スタンダード:分解してる…早く、何か掴むものを…
プライヤーは煙を上げ、泡立ち始める。
ロビーはかべから長いトングを1組取り出しスタンダードへ差し出す…スタンダードはプライヤーを投げ落とし、
トングを取るとそれで物体を掴む。物体はくすぶり、酸を滴らせている。
スタンダード:クライスト!外へ出さなきゃ!
物体を持って彼はドアへ向かう。
船の廊下。男たちは通路を駆け下る。スタンダードは液体を滴らせる物体をトングで保持している。物体は床に
小さな、煙を上げる小滴を残していく。
エアロック外の回廊。彼らはエアロックへ駆け上ってくる。ロビーがボタンを叩き、インナードアがスライドする。
すぐにスタンダードがロックへ入る。
ロビー:(インターコムに向かって叫ぶ)メインロックを開けろ!
インナードアが閉まり、ロビーが転げ込む。重い音を立てて厚いサーフェイス・ドアが開く。オレンジ色の日光が
差し込み、砂埃が後に続く。スタンダードは死骸もトングも、全てを投げ捨てる。奇生体は地面に落ち、くすぶり、
煙を上げながら埃の中へ沈み始める。

68 :
アウタードアが回って閉まる。
ロビー:(壁に寄りかかり)マイ・ゴッド!死んだ後まで厄介を掛けやがる!
メルコニスはしゃがんで床の小さな穴を調べる。スタンダードがインナー・ドアを開け、回廊へ出る。壁の
インターコムを作動させ、数字を入力する。
ハンター:イエス?
スタンダード:ブロサードの容態は?
ハンター:熱を出している。
スタンダード:まだ意識はないのか?
ハンター:イエス。
スタンダード:何かやってやれる事は?
ハンター:機械が熱を下げてくれるだろう。彼のバイタル・ファンクションは強靭だ。
スタンダード:グッド。
彼はインターコムを着る。
スタンダード:(疲れきって)コーヒーを。
彼は背を向けて歩き去る。
多目的室。ロビーとメルコニスはシートに着く。猫はぶらついている。スタンダードはマシーンから
コーヒーカップを取り上げる。
メルコニス:ここの昼夜のサイクルは頭が変になるな。何日もいるような気がするが、どれだけ経つ?
ロビー:(猫に触りながら)約4時間だ。
スタンダード:(コーヒーカップを見つめ)初めから、お前が正しかったようだな。着陸すべきじゃなかったんだ。
ロビー:責める気はないよ。大事なのは、できるだけ早くここを離れる事だ。
スタンダード:これ以上ファウストを頼りにはできん…ノンストップでエンジンに掛かりきりだ。
ロビー:あの船の異星人に何が起こったのか、正確に分かれば…
メルコニス:分かってるさ。
ロビー:イヤー?
メルコニス:奴らは離陸できなかったんだ。奇生体が勝ったのさ。
冷え冷えちした沈黙。

69 :
ロビー:奇生体はどこから来たのかな?
スタンダード:この惑星原産のようだ。ここには大気もあるし、重力も強い。今は死んでいるが、かっては
豊かな惑星だったに違いない。
メルコニス:ノー。あの奇生体ほど大きな動物相を支えるには、この星は小さすぎる。仮にネイティブな
生物相があるとすれば顕微鏡的なもののはずだ。
ロビー:ピラミッドはスペース・トラベラーによって建てられたという可能性は?
スタンダード:原始的に過ぎる。テクノロジー以前の構造だ。あの石板はせいぜい鉄器時代のエンジニアリング
の産物だよ。
メルコニス:奴らは喪われた文明からやって来たんだ。墓の中の胞子だよ。いつからここにいるのか知っている
のは神だけさ。
ロビー:この象形文字を見直したほうがいいと思うが。
突然ドアが開き、ファウストが頭を突き出す。汚れ、埃だらけである。
ファウスト:ヘイ、何だと思う?
スタンダード:何だ?
ファウスト:エンジンが直ったんだ。
小惑星−昼。スナーク号のエンジンが咳き込み、轟音とともに熱された空気を噴出し、砂埃を切り裂く。
船は無限のパワーを持つ巨大な猛獣のように震え、咆哮する。
ブリッジ−昼。全員、位置に着いている。
スタンダード:トラクター・ビーム、オン。
ちりちりするようなハム音が船全体に浸透する。そしてスナーク号は水中のコルクのように浮かび始める。
スタンダード:トラクター・ビーム、ロック。
ハム音のピッチが変化し、船は水平飛行する。
スタンダード:着陸ストラットを収納。
船外−昼。船はちらちら光るビームの力場の上で、地上を離れてホバリングしている。着陸ストラットは
船の腹部へ畳み込まれる。
スタンダード:上へ。
ロビー:(インターコムへ)1km、ジェイ。
小惑星−昼。スナーク号は光るビームに乗って空を浮上していく。

70 :
設定というか考証がすごい。
生物相まで言及していたとは。
1さん引き続きよろ。

71 :
ブリッジ−昼。
スタンダード:リフター、スイッチ・オン。
パワフルで深い鼓動が始まり、船が振動する。
スナーク号−昼。ホバリングするスナーク号は、薄い大気を通して加速を始める。
ブリッジ−昼。
スタンダード:人口重力、エンゲージ。
ロビーがスイッチを押すと船はよろめく。
ロビー:エンゲージ。
スタンダード:船を離脱軌道へ。
ロビー:進路変更中。離脱速度は容易に得られ…
船を大きな振動が走り抜ける。 
ロビーとメルコニス:(声を合わせ)今のは何だ?
ファウスト:またインテークに埃が詰まったんだ!
スタンダード:離脱するまでばらばらにならないでくれ!それだけだ!
エンジンのピッチが変わる。事態は深刻である。
空。スナークは急角度で上昇し、沸騰する雲に突っ込んでいく。視界はゼロである。
エンジンルーム。エンジン。チェンバーは埃で充満し始め、ファウストはガスマスクを装着する。彼は埃を
吸い込み始めた巨大なエクゾースト・ユニットを作動させる。
ブリッジ−昼。スクリーンには雲しか映っていない。そして再び振動が船を走り抜ける。もはや男たちに言葉は
ない。彼らの表情はこわばり、覚悟を決め、汗が流れている。彼らは計器を見つめている。そしてお互いに
技術面の指図を小声で交し合っている。
突然、船は雲の層を突き抜け、星のきらめく宇宙空間へ飛び出す。後には誇りの航跡が残っている。
ブリッジ。男たちは喝采している。
ロビー:(パネルを叩き)やった!クソ、やったぜ!
スタンダード:やったな。マーティン、コースを地球へ。スタードライブまで加速。
ロビー:喜んで。
ロビーはボタンを叩き始める。
メルコニス:地獄から逃げ出した気分だぜ。

72 :
ディゾルブして…
光速の船。シップに接近する星は青く見え、遠ざかる星は赤く見えるために、奇妙なコロナ・エフェクトが生じて
いる。これは赤色偏位であり、シップの速度があまりにも速いためにこう見えるのである。
ブリッジ。彼らはストラップを外す。
ロビー:光速へ入る時は、いつも吐きそうになるんだ。
スタンダード:文句はよせ。宇宙にいるんだぜ。
彼らは起き上がり、部屋を出る。
廊下。皆が歩いてくる。
スタンダード:ブロサードは、あのまま冷凍するのがベストだと思うんだが。それで病気の進行も止まるだろうし
、コロニーに戻ったときには完全な医療を受けられるだろうしな。
ロビー:俺たちも隔離期間に入らなきゃならん…短期間だろうけどな。
スタンダード:OK。ブロサードはハイパースリープのままにしておこう。
彼らは医務室へ入る。
医務室。部屋へ入った彼らは驚愕する。ブロサードがベッドに座っている…覚醒して。
ブロサード:(かすれ声で)…口が渇いた…水が欲しい…
すぐに、ロビーが水の入ったプラスチック・カップを運んでくる。ブロサードは貪るように飲み下す。
ブロサード:もっと水を。
ロビーは大きなコンテナに水を満たしてブロサードに手渡す。彼は全て飲み干す。そしてうなだれ、あえぐ。
スタンダード:(そっと)気分はどうだ、デル?
ブロサード:(弱々しく)ひどい気分だ。俺はどうなったんだ?
スタンダード:覚えてないのか?
ブロサード:何も。名前さえ…。
ロビー:傷むのか?
ブロサード:そうじゃない。誰かがゴムホースで6年間も俺をぶちのめしてたような感じさ。
メルコニスが笑う。ブロサードはかすかに微笑む。
スタンダード:ヘル、元気そうだぜ。ユーモアのセンスが戻ったな!
ブロサード:ゴッド、腹が減った。
ロビー:デル、最後に覚えてるのは何だ?
ブロサード:…分からん…

73 :
ロビー:ピラミッドの事は?
ブロサード:ノー。何だか恐ろしい夢を…俺たちは今どこに?
スタンダード:家へ帰るところさ。ハイパースペースだ。
メルコニス:フリーザーへ入る所だったんだよ。
ブロサード:マジに腹ペコなんだ。フリーザーへ入る前に何か食わせてくれ。
スタンダード: (笑って)全く理にかなった要求だね。
多目的室。クルー全員がテーブルを取り囲んで座り、多くのポーションをがつがつ詰め込んでいる。猫はテーブルの
皿から食べている。
ハンター:気分がいいぜ。コロニーへまっしぐらだ。帰ったら鉱脈に入札できる。どんな高値でもな?
ファウスト:(噛みながら)少なくとも自分用の惑星は買えるだろうな。
皆、くすくす満足げに笑う。
メルコニス:俺はこの探検の本を書くつもりだ。題名は“スナーク・ログ”さ。
スタンダード:(ぎこちなく)一般的には、最初の出版権は指揮官にあるもんだぜ。
メルコニス:共同執筆できるじゃないか。
ロビー:帰って俺が最初にやりたいのはバイオロジカル・フードを食うことだ。
メルコニス:どうした、ここの食い物は嫌いか?
ロビー:ニワトリにもっと卵を産ませるためにくれてやった餌みたいな味だぜ。
スタンダード:OK。俺はこれより旨いものを喰った事もあるが、もっとひどいものを喰ったことだってある。
ファウスト:俺は嫌いじゃないな。
ロビー:このクソがか?
ファウスト:いずれ気に入るようになるさ。
ロビー:この食い物が何からできてるのか分かってるのか?
ファウスト:知ってるさ。それがどうした?今は食い物になってるし、お前も喰ってるじゃないか。
ロビー:旨いまずいじゃなく、もううんざりだと言ってるんだ!

74 :
ハンター:夕食でこんな話はよそうぜ。
突然ブロサードは顔を歪め、呻き苦しみだす。
スタンダード:どうした?
ブロサード:(緊張した声で)分からん…腹が痛い!
皆は不安そうに見つめる。呻き声が漏れる。彼はテーブルの縁を掴む。拳は蒼白である。
スタンダード:深く息をしろ。
ロビー:どうした、デル…何が?
ブロサードの顔は苦痛に歪み、頭から足まで激しく痙攣を始める。
ブロサード:(支離滅裂に叫ぶ)オー・マイ・ゴッ…アアアアアアア!!!
ブロサードの上着の胸に血の花が咲く。彼らの目はブロサードの胸に釘付けになる。上着の布が破れてはじけ、
人間のこぶし大の、小さく、恐ろしく醜悪な頭部が押し出てくる。全員が絶叫し、テーブルから飛び退る。猫は
唸り、逃げ出す。小さな、胸の悪くなるような頭部が押し出ると、ブロサードの胸から飛び出す。後に太い、
芋虫のような尾を従えて…血と液体を撒き散らし…テーブル上の皿や食物の真ん中に降り立ち…そして男たちが
安全地帯を求めて先を争う間に走り去る。

75 :
う〜ん、素晴らしい。
原案が優れているので、
ALIENという名作が出来上がったということが、よく分かるわ。
もちろんリドリースコットやHRギーガーの功績は大きいが。
ワクワクワクワク

76 :
彼らがやっとわれに戻った時には、それは消えていた。ブロサードは椅子に倒れ込んでいる。胸には大きな穴が開き、
血が噴出している。皿が散らばり、食物は血と粘液に覆われている。
ハンター:オー、ノー。オー、ノー。
ファウスト:あれは何だ?何なんだ?
メルコニス:奴の体の中で成長してたんだ。奴はそうとも知らず!
彼らはゆっくりと、はらわたの抜かれたブロサードの死体の周りに集まる。
ロビー:ブロサードの体を孵化器代わりにしやがったんだ!
船外。ハッチが開き、くるまれたブロサードの体が静かに放出される。エレクトロニック・バスドラムが葬送曲を
奏でる。ブロサードは永遠に向かって漂い始める。
回廊。残されたクルー全員がブリッジへ歩いていく。
メルコニス:あいつがうろついてるのでは、ハイパースリープには入れないな。
ハンター:フリーザーの中の、いいカモってわけだ。
ロビー:といって、奴をす事もできない。せば、体液の酸を全部ばら撒いて甲板から外まで穴を開けちまう。
ファウスト:シット!…
スタンダード:捕まえて、船から放り出す以外ないな。
メルコニス:(ため息をつき)ああ、こんな事は言いたくないんだが…備蓄は全て、仮死状態以外の極めて限られた時間
の分しかないんだ。そしてご存知のように、その大半を使い果たしてしまった。

77 :
スタンダード:あと残りは1週間。だな?
ハンター:その時には、食料と酸素は尽きてる。
ファウスト:水は既にリサイクルものだ。
スタンダード:オーライ。そういう事だ。1週間。時間は充分だ。
ロビー:だが、1週間以内に捕まえられなかったら?フリーザーへは、どの道、入らなくちゃならないんだぞ!
彼らはブリッジへ入る。
ブリッジ。
スタンダード:何か提案は?
ファウスト:プレッシャー・スーツを着て、船から空気を全部ブローアウトしたらどうかな。せるかも。
スタンダード:ノー。そんなに酸素の余裕はない。追い立てるんだ。
メルコニス:どうやって?
スタンダード:部屋から部屋へ、廊下から廊下へ。
メルコニス:で、見つけたらどうする?
スタンダード:何とか罠に掛けねば。強靭なネットがあれば捕まえられるかも知れん。
ファウスト:あのメタライトのネットをカットすればいい。あの酸には耐えられないだろうが、凄く強いぜ。
ロビー:傷つける事だけは避けないと。本当に必要なのは、動物用の電流棒だ。
ハンター:何とかでっちあげられると思う。長い金属棒で、バッテリー内蔵。こいつは効くぜ!
スタンダード:グッド。やってくれ。だがまず、命令を下す:今後、全員、防御装備を。ヘルメットも。さあ、
下のロッカーと更衣室へ。

78 :
船外。スナーク号はハイパースペースの不気味な渦の中を飛び続ける。
船内の廊下。スタンダードは1人で廊下を歩いている。見慣れない服装に身を包み、透明なプラスチックのヘルメット
を装着している。暴動を鎮圧する警官のように見える。彼は角を曲がる。この新しい通路は異なった重力方位を持ち、
スタンダードは垂直の壁を下っているように見える。また角を曲がると、今度は逆さまになって歩いている。階段に
近づくと、階段を上る…或いは下る。
船腹部の観測ドーム。メルコニスは逆さまになって椅子に座り、宇宙空間を見下ろしている。防護スーツを着ている。
スタンダードが逆さまになってドームに登ってくる。星間空間の星の下、静かで不気味である。幾つかのパネルだけが
光っている。
スタンダード:ここにいると思ったよ。
メルコニス:古い詩の事を考えてたんだ。“水はどこにでもあるけど、飲み水にはならない”ってね。外にはこんなに
スペースがあるのに、俺たちはこの船に閉じ込められている。
スタンダード:アルバトロスの詩。だな?
メルコニス:助けを求めて無線連絡することもできない。搬送波が到着するのは俺たちが死んで塵に還ったずっと後だ。
俺たちは、まったく、完全に、孤独なんだ。これほどの距離を誰が想像できる?全宇宙の中間…
スタンダード:俺たちはここまで来て、そして帰るんだ。時計じゃ長い時間でも、俺たちにとっては短いもんさ。
メルコニス:ここでは時間も空間も無意味だ。俺たちはアインシュタインの方程式の中に生きているんだ。
スタンダード:残りの時間を有意義に使ってるようだな。(上体を乗り出し、膝を叩く)言わせてくれ:「ハイパースペース
を長く見続けすぎると、気が狂う」そうなるのを、俺は見た事がある。
メルコニス:(微笑んで)俺たちは新しい開拓者だ、チャズ。開拓者特有の病気も持ってるのさ。
スタンダード:いい加減にしろよ…上へ行って道具の具合を見ようぜ。

79 :
ブリッジ。クルー全員が集まっている。ファウストは数ヤードの、きらめく金属製のネットを広げている。ハンターは
細い5本のロッドを配る。金属製の箒のハンドルの「ようである。
ハンター:こいつにはポータブル発電機が内蔵されている。ここから下は絶縁部分で…先端には触れないように。
彼は1本のロッドの先端で金属に触れ、デモンストレーションする。青いスパークが跳ね飛ぶ。
ファウスト:焼いちまえそうだな。
スタンダード:(鋭く)それは困る。
ハンター:心配するな。ダメージはない。ちょいと刺激を与えるだけだ。
スタンダード:居場所をどうやって突き止める?
ファウスト:これさ。
彼は小さなポータブル・ユニットを持ち上げる。
ファウスト:追跡装置だ。動くものを探す…レンジは狭いが、ある1定距離に入るとビープ音を出す。
スタンダード:こいつは役に立ちそうだな。少なくとも素手でクローゼットを探る必要はなくなったらしい。オーライ、
バトルプランはこうだ:2チームに分かれてシステマティックに船全体をカバーする。誰にせよ、最初に見つけた者が
ネットで捕らえて、1番近くのエアロックから追い出す。いいかな?
ロビー:全くシンプルだな。
スタンダードはロビーを憎憎しげに見て、続ける。
スタンダード:手始めに、ブリッジが安全か確かめよう。
ファウストは装置を取り、スイッチを入れ、部屋の周りをスキャンする。
ファウスト:クリア。

80 :
スタンダード:オーライ…ロビーとメルコニスはファウストと行け。ハンターと俺がセカンド・チームだ。
彼らは装備を着け始める。
スタンダード:全員、コミュニケーターを持て。常に連絡を。
船内の廊下。メルコニスとロビーはネットを持っている。ファウストはそのすぐ後につき、追跡装置を持ち、
絶え間なく端から端までスキャンを続けている。
ファウスト:まだ何も…何もない…装置に何も映らない限りはどんどん行ける。
他の廊下。スタンダードとハンターは静かに移動する。スタンダードはネットの一端を持ち、追跡装置も
持たざるを得ない。
廊下。ロビーのチームは勢いよく移動する。その時、
ファウスト:ちょっと待て。
ファウストの装置がビープ音を発し、小さなライトが光る。
ファウスト:何か捉えたぞ。
俄かに、彼らの緊張は高まり、周りを見渡し始める。
ロビー:どっちから?
ファウスト:(装置を間近でみて眉をしかめ)機械がいかれてる。言えない。針が文字盤で回ってやがる。
メルコニス:故障か?
ファウストは装置の側面を刺激する。と、針は安定する。
ファウスト:混乱したぜ。下から来てる。
彼らは全員、足元を見下ろす。
メインテナンス・レベル。ロビー、メルコニス、そしてファウストは慎重に金属製の階段を降りてくる。
船の機能セクションへ入っていく。この階の廊下は天井に並んだむき出しのバルブで照らされている。
照明は暗く、不快である。彼らは階段の根元で止まり、所定の位置につき、ネットを広げて廊下を横切る。
ロビー:OK。
ファウスト:(装置を見、うなづいて通路を示し)あっちだ。
彼らは通路を下り始める。金属むき出しの床にうるさく足音を立てて。真っ暗である。
ロビー:ライトはどうした?
ファウスト:バルブが焼けちまってるのさ。それで困る人間もここにはいないしな。
彼らはヘルメットのライトを点ける。
ファウスト:待て!
3人は素早く止まり、つまづきそうになる。
ファウスト:(ささやくように)4m以内にいる。

81 :
ロビーとメルコニスははネットを持ち上げる。2人ともロッドを持っている。ファウストは片手にロッド、もう
一方に追跡装置を持ち、シグナルの源泉に接近せねばならない。嬉しくない仕事だ。彼は最大の注意を払い、
半ば屈み、いつでも飛び退れるよう、ロッドを伸ばし、定期的に装置に目をやる。追跡装置は彼を壁の小さな
ハッチへと導いていく。彼は装置を下に置き、小さなドアへ近づいていく。プラスチック・マスクの裏では
ファウストの顔を汗が流れ落ちている。彼はロッドを掲げ、ドア・ハンドルを握り、引いて開けると、ロッドを
内側に押し込む。神経を損なうような鳴き声と共に、小さなクリーチャーがキャビネットから飛び出る。眼は
ギラギラ光り、かぎ爪が閃く。彼らは本能的にネットを投げかける。
ロビー:(いらついて)オー、ちょっと待て!
彼らはネットを開けてクリーチャーを放す。猫だった。猫はシューッという声を立て、唸りながら逃げ去る。
メルコニス:馬鹿な事をしたぜ!
ロビーのコミュニケーターがビープ音を立てる。
ロビー:イエス!
スタンダード:捕まえたぞ!早く上がってこい!
ロビー:どこだ?
スタンダード:食糧倉庫だ!
ロビー:今行くぞ!
彼らは階段にダッシュする。
船の廊下。ロビー、ファウスト、メルコニスは廊下を突進していく。
廊下外の食糧倉庫。スタンダードとハンターは異常に興奮して彼らを待っている。
ハンター:俺たちは中にいるのを見つけて閉じ込めたんだ。今、この中にいる!

82 :
1さんって、もしかして翻訳関係のお仕事をされてるんでしょうか?

83 :
ドアの1方では、ドシン、バタンといった騒音が聞こえる。
ロビー:何事だ、発作でも起こしてるのか?
スタンダード:俺たちが閉じ込めてから、そこら中ぶっ壊し始めたんだ。
ロビー:さて?
スタンダード:ドアを開けて、ネットを。
物体は内部で破壊を続けている。
スタンダード:あいつは最初の姿とは全く異なっている…足と…触手のある芋虫のようだ。
ファウスト:何とかしないと。
ハンター:何もしなくてもいい。閉じ込められてるんだ。道中このままにして地球へ帰れるだろ。
スタンダード:(指を鳴らし)馬鹿を言うな。
ファウスト:できる事がある。毒ガスを部屋に送り込んでやっつけるんだ。そこのベンチレーター・
スロットを使おう。
彼はドア底部のスロットを指差す。
ロビー:ヘイ、ちょっと待て!ここにあるのは全部俺たちの備蓄食糧だ!毒ガスは使えん!
スタンダード:あいつをせばもう食糧は必要ない…即、ハイパースリープへ入れる。それに
あの音からすると、あいつはもう食糧に何かやらかしてると思う。全部、汚染されてるさ。
ロビー:その通りだ。
ファウスト:誰か手を貸せ。ガスを。

84 :
食糧倉庫外の廊下。彼らはドアの底部のベンチレーター・グリルに大きな漏斗型のデバイスを取り付けている。
漏斗は厚いホースに繋がり、その上流にはプレッシャー・ゲージの付いた大きな金属製タンクがある。
スタンダード:マスクを。
彼らはガスマスクを装着する。
ロビー:こいつは致死的なガスだ…俺たちは自分が何をしてるのか分かってるんだろうか。
スタンダード:やれ、ジェイ。
ファウストはマシーンを作動させる。それは鼓動を始め、ホースを通してガスを部屋へ送り込む。すぐに
破壊する音が高まり、物体が苦痛に絶叫し、悲鳴を上げるのが聞こえる…そして完全な沈黙。
スタンダード:止めろ。
ファウストはポンプを止める。
ロビー:それで?
スタンダード:中へ入るのさ。
スタンダードが踏み出し、ドアを開ける。厚いガスの雲が渦を巻いて流れ出る。
食糧倉庫。部屋には毒ガスが立ち込めている。ガスマスクを着けた男たちは昆虫のように見える。食料の
パッケージはズタズタにされ、食料が床全体に散らばっている。
ファウスト:好きなだけ喰ったらしいな。
慎重に男たちは残飯を調べていく。ネットとロッドを掲げて。

85 :
ハンターが指を指す。
ハンター:ガッデム!
彼らは指差す方向を見る。壁の、ベンチレーター・グリルは引き裂かれて、口を開けている。
ハンター:逃げやがった。
彼らはズタズタにされたベンチレーターに近づき、中を照らす。
ロビー:どこへ逃げた?
ファウスト:船内どこへでも。チャートをチェックして確かめよう。
スタンダード:よし、やるぞ。
彼らはドアへ向かう。
ハンター:船内にもう食い物は何もないってわけか?
彼らはドアを叩きつけるように閉めて密閉する。
ブリッジ。スクリーンは船の換気シャフトシステムの図面が映し出されている。
ファウスト:あの換気シャフトの区画には2つの出口しかない…気が付いたか?1方が
食料倉庫で…
ハンター:…もう1方がクーリング・ユニットだな。
スタンダード:だからあいつは、その間に閉じ込められている…狩り立てなくては。
ファウスト:毒ガスを…
ハンター:クーリング・ユニットに毒ガスを送り込むわけにはいかん!船全体に広がっちまう!
スタンダード:唯一考えられるのは、誰かが這いこんで、あいつを追い出す事だな。
ロビー:お前は狂ってるのか!?

86 :
>>82 いいえ。英語のテクニカル・タームも使う職業ではありますが、翻訳業ではありません。
英語の文献を読む程度です。

87 :
スタンダード:前方にいるクリーチャーを狩り立てるには何か防御手段が必要だな。
ファウスト:火炎放射器はどうだ?あれなら空気も汚さずに済む。
メルコニス:それで、俺たちの1人がエアシャフトへ入ってあいつを追いたて…
スタンダード:残りがクーリング・ユニットで、ネットを用意して待つ。
ハンター:無茶だ。
スタンダード:もっといいアイデアが?
ハンターは肩をすくめる。
ロビー:1つだけ質問だ。誰がエアシャフトへ入る?
スタンダード:民主主義で行こうぜ。

88 :
彼はコンソールのパッドから5枚の紙片を破り取り、1枚に大きくXを書く。そしてそれぞれの紙片を丸めて
小さなボールにする。両手の間を転がし、テーブル上に、サイコロのように放り投げる。
スタンダード:マーティン、1つ取れ。
ロビーは1つを取り上げ、ほぐして広げる。白紙だった。メルコニスがもう1つを取り上げて開ける。再び
白紙。ファウストがボールを取り上げる。すぐにスタンダードも自分の分を取る。2つとも白紙だった。
スタンダード:開けるんだ、クリーブ。
食糧倉庫。ハンターは酸素マスクと火炎放射器を身に付ける。ファウストが手助けする。最後に、ファウストは
追跡装置を手渡す。
ファウスト:ああ、ウム…グッドラック。俺が必要とならないよう願うが、もしそうなったら…俺はここにいるよ。
ハンター:(不愉快そうに)ああ。
ハンターはターンして換気口へ上って入っていく。充分這い入る事ができる大きさだ。
エアシャフト。シャフト内は真っ暗である。ハンターはヘルメットのライトを点ける。そして無線のスイッチを入れる。
ハンター:ヘイ、みんな、聞こえるか?
温度調節室。スタンダード、メルコニス、そしてロビーはネットを広げる。巨大なクーリング・プラントがハム音を立て、
髪の毛はかき乱される。大きなエアシャフトがあちらこちらへ延びている。
スタンダード:イヤー、位置に着いた。
エアシャフト。
ハンター:OK。始める。
彼は細い金属製トンネルに這いこみ始める。角を曲がる。いくつか狭い角を曲がると、装置が突然ビープ音を立てる。
ハンターはびくっとする。彼は火炎放射器を掲げ、闇の中へ炎を放つ。炎は狭いチューブの中で轟音を上げ、気温が
即座に上昇する。煙が顔に当たる。彼は汗をかき始める。

89 :
温度調節室。ロビーは壁の、大きい長方形の開口部を指差す。
ロビー:(指差し)あそこだ。あそこから出てくるぞ。
彼はスイッチを叩く。大きな金属パネルが立ち上がり、開口部を塞ぐ。
ロビー:あれは空気の流れを替えるゲートだ。奴を罠に掛けるのに使えるぞ。
スタンダード:今は閉めておけ。
メルコニスは小さな・ポータブルユニットをセットアップする。スクリーンには船の区画図表が映っている。
メルコニス:ハンターを捉えている…その前に何かがいる。
スタンダード:近いのか?
メルコニス:次の階に上がった。
スタンダード:ネットを。
彼らはネットを持ち上げ、開口部の前へ向ける。
エアシャフト。ハンターは手と膝を使って這っている。前方に、シャフトが急角度で下へ曲がっているのが見える。
彼は火炎放射器をもう1度発射し、逆さまに這って下っていく。殆ど真っ逆さまになった時、シャフトはもう1度
ターンし、彼はありえない姿勢を強いられ、殆ど動けなくなる。そしてその時、追跡装置が狂ったように鳴り始める!
ハンターは半狂乱で火炎放射器をいじくり回すが、狭すぎ…操作は困難である。前方から怒りの叫び声が聞こえ、
鉤爪が金属を這う。彼は武器を正しい位置に構え、音のした方向へ必の火炎を浴びせかける。
温度調節室。メルコニスがスクリーンに見入る。
メルコニス:奴らは近づいてる。極めて。
スタンダード:オーライ、さあ…あいつがドアの別サイドに着いたら叫ぶんだ。そしたらドアを下ろす。OK?
メルコニス:OK。
スタンダード:それから俺とお前で捕まえて、船腹のエアロックまで持っていく。いいな?
ロビー:(緊張して)あ、ああ。
エアシャフト。ハンターはシャフトの中でちぢこまり、火炎放射器を掴んでいる。
ハンター:(ささやき声で)ヘイ、みんな。
温度調節室。
スタンダード:イエス!
エアシャフト。
ハンター:このシャフトはそんなに長く続いているとは思えん…とにかくここは熱い…
温度調節室。
スタンダード:OK、スクリーン上では、お前は開口部のそばだ。俺たちが開けたら合図するから、火炎を放射しろ。
それで追い出せるだろう。それ以上進む必要はない。
エアシャフト。ハンター:グッド。

90 :
彼は火炎放射器を構える。
温度調節室。
スタンダード:OK。用意を。
スタンダードとロビーはおのおのネットの端を持ち上げ、かがんで、飛び出てくる小さなクリーチャーを捕える
用意をする。メルコニスは電気ロッドを拾い上げる。
スタンダード:ベントを開けろ、サンディ。
メルコニスは手を伸ばしスイッチを叩く。金属ゲートが下がり、シャフトが現われる。
開口部には、6フィートの醜悪で奇怪なものが立っていた。想像を超えた、身の毛のよだつような、触手に
覆われたもの。それは巨大な鳥のように跳び下りると、カミソリのように鋭い触手にメルコニスを捕える。
メルコニスは恐ろしい叫び声を上げる。化け物はその首を鉤爪でとらえ、ニワトリのように首をねじり切る。
投げ出されたメルコニスの頭部は音を立てて床に落ちる。メルコニスの胴体を抱え、化け物は方向を変えて、
ホールを跳躍していく。頭を失ったメルコニスの胴体はまだもがき、足を蹴りだしている。怪物はもう1つの
エアシャフトへ真っ逆さまに飛び込む。
スタンダードとロビーはショックで立ち尽くす。ややあって、ファウストがシャフトを登って出てくる。

91 :
ハンター:何があったんだ?あいつはどこだ?
我に返った彼らは、クリーチャーが飛び込んだ開口部に走り寄る。もう1本のシャフト…それは暗闇へと
続いている。
スタンダード:(畏れ)どうやってあんなに大きく?
ロビー:備蓄食料を喰ったのさ。
ハンター:メルコニスは?
食糧倉庫。ファウストはまだ待っている。
ファウスト:ヘイ、みんなまだそこか?何が起きた?
スタンダード:ブリッジで会おう。気を付けろ…今では巨大だ。
ファウスト:ああ。
ファウストは食糧倉庫を出て背後のドアを注意深くロックする。
廊下。スタンダード、ロビー、ハンターが急いでブリッジへと上がっていく。
ハンター:メルコニスの体が、まだ足で蹴っていたって?
ロビー:恐ろしい…恐ろしい。ニワトリみたいだった。
ブリッジ。スタンダード、ロビー、ハンターが入り、椅子に座る。すぐ後にファウストが続く。
全員無表情で、呆然としている。
ファウスト:何が起きた?サンディはどこだ?
ロビー:死んだ。
ファウスト:死んだ!?
ロビー:化け物だ…成長して…恐ろしいサナダムシのようだった。全く予想もしていなかった…
ファウスト:まだ船内に?
スタンダード:下のメインテナンス・レベルを密閉しよう。そうすれば、少なくとも閉じ込めてはおける。
(スイッチを叩く。回路図に明かりが点く)
ハンター:これで、少なくとも今ここへ上がっては来られなくなった。
ロビー:2人死亡、後4人か。

92 :
スタンダード:(怒り)何が言いたいんだ?
ロビー:別に。
ハンター:聞いてくれ。あいつはこの火炎放射器が嫌いなのは確かだ。
スタンダード:間違いない…船内です事はできんが、少なくとも追い詰めることはできる…そしてエアロックに
追い込む事も。
ハンター:問題は、俺が燃料切れだって事だ。
ファウスト:ラウンジ横の保管ロッカーに、まだ何か燃料がある。(立ち上がり)俺が取りに行こう。
スタンダード:ノー、離れてはいかん。
ファウスト:今密閉したろ。あのセクションへは侵入できん。
ロビー:当てにならんな。
ハンター:火炎放射器は絶対に必要だ。
スタンダード:オーライ…だが、下のデッキには行くなよ・
ファウスト:ああ。(ドアへ向かう)
スタンダード:ちゃんと帰って来いよ。
ファウストは出て行く。
ロビー:俺たちは、あの象形文字を綿密に検討すべき時期だと思うんだが。
ロビーはボタンを叩き始める。象形文字の写真が幾つかのスクリーンに映し出される。
ロビー:あれ全てに、何かパターンは見出せるか?
スタンダード:(当惑し)ああ…イエス…パターンがあると…俺には分からん。
ロビー:ごちゃごちゃで無意味に見えるだろ?だが綿密に見れば、ある形が見えてくる。
スタンダード:見える?この中に?
ロビー:シンボリックな形で…極めて様式化され…しかしじっと見れば、俺たちが相手にしてきたのとは異なる
クリーチャーが見えてくる…
ハンター:ああ…あの星型のものがブロサードに貼りついた奴かも。そうなのか?
ロビー:そしてその右、模様の付いた楕円形のデザイン…こいつは胞子のケーシングそのものだ。
スタンダード:次のこれは…6本の足、触手…俺たちが食糧倉庫で見た奴だ。
ロビー:それなら、次のステップはきっと…
ハンター:あのでかい奴だ。ここだ。

93 :
壁に描かれた無意味な幾何学的なシンボル…そこから異星人のライフサイクルの各ステージが見えてくる。
ロビー:これは全て、同一のクリーチャーなんだ。俺たちは奴のライフサイクルの異なるステージを見ている
んだ。
スタンダード:そしてあの墓は…ある種の、繁殖の殿堂だったに違いない…そこに卵を備蓄し、多分交尾の
儀式が催され…
ハンター:…そしてブロサードは奴らの繁殖サイクルに捕まったんだ。
ロビー:気が付いたか?他のフェーズはない。ここには4つの形態だけが描かれている。後は繰り返しだ。
スタンダード:と言う事は…
ロビー:…もっと多くの胞子がやってくる…
エアロック外の回廊。ファウストは急いで幾つか角を曲がり、そして突然立ち止まる下部デッキへ通じるドアが
ヒンジ部分でもぎ取られている。彼はどうすべきか分からず躊躇する。その時エアロックの方向から音がし…
インナーロック・ドアが開く。ファウストはためらい、中を見入る。
エアロック。クリーチャーが床の真ん中にうずくまっている。血まみれの大腿骨を齧っている。ファウストを
見てはいない。
エアロック外の回廊。そうっと後退って影の中に入り、ファウストは壁のインターコムを押す。
ファウスト:(囁くように)奴はロックにいる…メインロックを吹っ飛ばせ。
ブリッジ。スタンダード、ハンター、ロビーが写真を見つめている。ファウストの呼びかけがスタンダードを
捉える。
スタンダード:(インターコムに)何だ?
エアロック外の回廊。(囁くように)奴はメイン・エアロックにいる。ロックを吹っ飛ばせ。

94 :
ストーリー・プロットは最高ですがモンスターは駄目ですな。50年代のB級SFですね。
ギーガーは偉大です。

95 :
それはオバノンの仕事じゃないんだから当たり前。

96 :
う〜ん、このまま映画化して欲しい・・・

97 :
ブリッジ。スタンダードはためらい、答えようとし…そしてコンソールへ走るとスイッチを叩く。
エアロック。音を立ててインナードアが閉じ始める。クリーチャーは音を聞きつけ、即座にロックから飛び出す。
エアロック外の回廊。クリーチャーははロックを飛び出てファウストに裏拳を食らわす。ファウストは倒れて
エアロックのドアに挟まれる。閉じ始めたドアに腰を挟まれたファウストは死の苦痛に絶叫を上げる。ドアは彼を
3インチの厚さに押しつぶす。壁にはグリーンのライトが点く。“インナードア閉鎖”
エアロック。ファウストの押しつぶされた体の為に、インナードアは数インチ開いている。アウタードアがスライド
して開き始める。すぐに、抜け出して行く空気が大きな音を立て始める。
船外。完全な静寂の中、開いたエアロック・ドアから蒸気が噴出する。真空に出た船内の空気が凍ったのである。
ブリッジ。船の空気がロックへと吸い出されるため、即座に暴風が始まる。サイレンが鳴り始め、赤いライトが灯る。
“気圧低下、危機的” パニックと混乱。ロビーはコントロール・ルームを飛び出す。
廊下。書類や備品が通路をすっ飛んでいく。ロビーはロックへ急ぐ。半ば走り、半ば気流に身を任せて。
船外。巨大な蒸気の上昇流が船の側面から延びている。色んな物品の小片が中で散乱している。

98 :
ハリケーンのような強風に打たれ、壁に叩きつけられてロビーは止まる。彼はためらい、バランスを取り直そうと
する。彼はクリーチャーが他の廊下を駆け下ってくるのを見る。モンスターを無視し、壁から離れて再び走り出す。
エアロック外の回廊。エアロックから続くホールの終点の出入り口につかまってロビーは止まる。恐ろしい勢いで
風が吹いている…衣服はばたつき、あらゆる物が宙を待っている…風は強烈に唸っている。ロビーは直ちに大きな
舵輪を回し始める。スライディング・ハッチのドアが閉じ始め、エアロックの廊下をふさぐ。ハッチが閉じて強風は
低下し、つには停止する。やり終えて、彼は床に崩れ折れる。と、彼はノドを掴み息苦しさにあえぎ出す。空気が
薄いために船内の音響レベルは低下し、殆ど聞こえなくなる。ロビーは大きなあえぎ声を上げるが、かろうじて
聞こえる程度である。足音は水中を歩くようにかぼそい。
廊下。ロビーはノドを押さえながら、他の男たちに出会う…スタンダードとハンター…彼らは窒息し、ノドを押さえて
水の外に出た魚のように喘いでいる。汗にまみれ、鼻血を出している。お互いに話しかけようとするが、くぐもって
遠いしわがれ声にしか聞こえない。スタンダードは何か言い、床へ倒れこむ。皆も後を追う。

99 :
訂正:床へ倒れこむ→ホールをよろめいて歩いていく
メイン・エアタンク・ルーム。ドアが押し開けられ、スタンダードがよろめいて入ってくる。金属製のフロアーだが
足音はか細い。大きな酸素タンクが並んでいる。ホースで繋がれたタンクには幾つかのコックが付いている。
スタンダードはよろけながら近づき、ハンドルをひねり始める。シューッという鋭い音と共に空気が流れ出し、音響
レベルが徐々に正常化する。床に倒れているスタンダードたちは感謝しながら酸素の中であえぐ。回復した彼らは
上体を起こす。
ロビー:どれだけ酸素を失った?
スタンダードはふらつきながら立ち上がり、計器を見つめる。
スタンダード:残りは6時間分だ。
ハンター:オー・マイ・ゴッド。
スタンダード:何が起きたんだ?
ロビー:見た。ファウストがエアロック・ドアに挟まれて、ドアが開いたままになったんだ。
スタンダード:ファウストの所まで行けるか?
ロビー:ノー。全セクションを密閉せざるを得なかった。もし連結するドアを開けたら、残った空気を失う
事になる。
エアロック。インナードアで破壊されたファウストの体が、真空の中、重量を失って浮いている。鼻と口は、大量の
乾いた血の塊で覆われている。
ブリッジ。3人の生存者…スタンダード、ロビー、そしてハンター…は椅子に沈み込んでいる。猫が恐怖で泣き声を
上げながら姿を見せる。

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