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新ジャンル「堂守」


1 :
落葉掃けばころころ木の実

2 :
壁の新聞の女はいつも泣いて居るんですね

3 :
放哉かよw

4 :
漏れら極悪非道のageブラザーズ!
今日もネタもないのにageてやるからな!
 ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  ∧_∧   ∧_∧    age
 (・∀・∩)(∩・∀・)    age
 (つ  丿 (   ⊂) age
  ( ヽノ   ヽ/  )   age
  し(_)   (_)J

5 :
なぜだろう
荒れ寺で柱にもたれかかって茶碗酒呑んでる用心棒の先生が思い浮かんだ

6 :
実家近くのお堂は確か野良鶏の巣になってたっけな……

7 :
放哉と先生と鶏か……
なにこの無茶苦茶な三題噺?

8 :


9 :
どう考えても喪暮らししか思い浮かばねえw

10 :
もちろん若い女の子じゃなくてジジィですよね?

11 :
「「 自由な人たち 」」 011+01  2010.22.9.6--001 
*** 知人たち ***
 公園に入りベンチに座った。じっと見つめられている。
 「なぜ、そんなに見るの」
 じっと見つめていたいのに理由を聞くのかと思った。
 「好きだから」
 見るだけじゃなくて、何か面白い事を言えばいいのにと思った。
 「何か言ってよ」
 何か言えって、何も言いたく無かった。言った所でしょうがないと思った。
髪を触り、指に絡ませてみた。
 「何よ、何も言う事ないの」
 髪が指に絡み、その感触がたまらない。
 「綺麗な髪だね、君は綺麗だよ」
 手を払い、髪を触るのを辞めさせた。
 「何か言ってよ。何か聞きたいのよ」

12 :
「「 自由な人たち 」」 011+02  2010.22.9.7--002 
*** 知人たち ***
 公園で何を話せと言うのだろう。
 「好きと言うだけじゃいけない訳」
 好きな事は分った。好きなだけじゃやなのよ。
 「好きになるなんて、簡単でしょう」
 どうして、好きになって、好きという気持を言葉で伝える事は大変なことでしょう。
 「好きに成る事を告白することは簡単じゃないよ。人を好きになり、それを相手に
伝え、そして、相手にも好きと言わせる。何処が、簡単なんだ」
 だから、私の何処が好きになり、二人はこれからどうなるのよ。それを言いなさいよ。
 「分った。私を好きなのね。私も、好きと言った。でも、それだけよ」
 考えたんだ。大分悩んだ。告白するかどうか。止めようと思った。でも、なぜか、
諦めることが出来なかった。会うと嬉しくなり、合わないと不安に成った。前に、
言ったじゃないか。
 「好きに成った理由なんて、分らない。全てが好きなのかもしれない」
 具体的に聞きたい。抽象的は嫌い。はっきりして欲しい。
 「これから、どうするの」
 焦るなよ。時間は幾らでもあると思うけど。

13 :
「「 自由な人たち 」」 011+03  2010.22.9.8--003 
*** 知人たち ***
 「好きで、一緒にいたくて、会っていると楽しい。それから」
 私が求めているものは何だろう。欲しいものは何だろう。
 「何が欲しい。一緒にいてどうするの」
 だから、焦るなって言うの、欲しいものを聞いてどうする訳、好きと言っているのに
それ以上、答えようがないと思うけど。
 「取り合えず、好きなんだ、何が欲しいって、言っていい分け」
 何か言わなければ分らない。何でも言って欲しい。
 「別に、貴方の欲望を聞いているわけじゃないのよ」
 欲望、それが全てと思うけど、男と女がいて、欲望が無かったら、好きなんて
言えない。
 「多分、欲望だけしかないと思うけど、好きと言ったわけだから」
 誘ったのは貴方よ。声を掛けたのは貴方、感じが良くて、話を聞きたくなった。
だから、誘いに乗ったのに、欲望だけなんて、何だかおかしい。
 「好きなことは分ったわ、趣味なんか在るの」
 趣味なんか聞いてどうする。まともに答えられない。多分、悪趣味と思われる。
 「趣味か、沢山あるよ。何でもしたいのが趣味かな、多趣味、趣味って欠点にも
なるよね。言っていい趣味と言わないほうがいい趣味」

14 :
「「 自由な人たち 」」 011+04  2010.22.9.9--004 
*** 知人たち ***
 公園のベンチに座り、詰まらない話ね。趣味もなさそう、これからどうする訳。
 「私は無趣味です。無趣味ってどうですか」
 趣味なんか、お互い違ってもいいじゃないか。趣味が在ったからって、その
趣味に付き合う必要も無いと思うけど。
 「無趣味ですか。それは珍しいですね。今日の服装は趣味がいいと思うけど、
おしゃれが趣味だったりして」
 好きな相手が趣味が在ろうが無かろうが関係ない。自分に取って大事な事は
その人といることで、満足できればいいし、より高い位置を望む意欲が増せば
それでいいと思っている。
 貴方に取って私は何なの女というだけ、それならば女なんて幾らでもいるで
しょう。
 「こんな感じが好きなの」
 「そうです。でも、何でも似合うと思うけど、好きだから、何でも」
 女なら何でもいいって言ってるよう。まあ、そんなものでしょうね。
 「どうして、そんなに好きって言うの、それは分った」
 好きと言えば、何でも済むと思っている。
 「尻痛くないですか。このベンチ少し堅いですね」
 公園のベンチなんてみんな堅い。貴方が誘ったのに。確かに、お尻が痛くなりだした。

15 :
「「 自由な人たち 」」 011+05  2010.22.9.11--005 
*** 知人たち ***
 「お尻、見て、痛そうと思った訳」
 「いえ、そんな、そんな事は考えてない、ですよ」
 何よ、考えているくせに、いつも何もしないで、訳の分らない話ばかり、
うんざりだわ。
 「ここでいつまでも話しているつもりですか」
 そんなつもりはないけど、今、考え中なんだ。食事か、映画、それとも、何処か、
二人になれる所。
 「食事出来ます。出来れば、一緒にしたいですね」
 当然でしょう。そのつもりで来ているのに、食事しないって言ったら、許さない。
でもまだ時間は早いけど。
 「食事にはまだ時間早くない」
 話し方が雑になりだした。多分、性格が雑なんだな。
 「どうするかな、ここで話します」
 尻が痛いでしょうと言っておきながら、ここで話すなんて結論はない。
 「私のお尻、気にならない」
 話すだけならばここでもいいと思うけど、尻が痛いのではしょうがないな。
 「何処かに入りますか」
 「ホテルですか」

16 :
「「 自由な人たち 」」 011+06  2010.22.9.13--006 
*** 知人たち ***
 好きな人とホテルに入る。それも良いか。でも、それは余りにも短絡的であり、
無謀な感じもする。
 「そんな事を言って、良いの。現状ではホテルは結び付かない」
 本気ならば、別にいいけど、でも、本気じゃなければ、まだ、許すことは出来ない。
大事な体を自由にされてはたまらないわ。ホテルでお茶って言っておこう。
 「ホテルで何するつもりと思っているの。ホテルでお茶はどう」
 お茶かそれはそうだ。好きと言っただけで、ホテルに行こうじゃ恋も冷めるよ。
 「ホテルって言ったので驚いたよ。お茶だね」
 私も、つい言ってしまったけど、本気なら、ホテル行ってもいいと思った。本気って
何処で判断するのか分らない。今はホテルで二人で泊るなんて、在りえない。
 二人は歩き出し、手を繋いだ。しかし、直に離した。何かを確かめたのか。多分、
何かを感じたかったのかも知れない。指先が触れ、その後から、軽く握り在って、
その感触を確認した。

17 :
「「 自由な人たち 」」 011+07  2010.22.9.14--007 
*** 知人たち ***
 歩きながら思ったことは一緒にいたいという事だ。
 「好きに成るって、どういうこと」
 難しい質問、姿形で好きに成ったり、話し合っている間に好きに成ったり、色々
だろう。
 「歩いているときに答えられない」
 それもそうね。好きに成った理由なんて、そんなに簡単に答えられない。
 「お茶でも飲みながら、聞こうかな」
 簡単に答えられなくもないか。体が貴方を求める。こんな答えならいつでも言える。
 「君も好きなんだろう」
 お茶を飲みながらって言ったばかりなのに同じ事を聞くなんて、馬鹿な人。
 「好きよ」
 好きに、理由なんて必要か。必要だろうな。どれくらい好きかとか、その好きさを
どんな形で表すことができるとか。

18 :
「「 自由な人たち 」」 011+08  2010.22.9.15--008
*** 知人たち ***
 好きになって、相手も好きと言ったときから、何だか、考えることが増えてきて、
息苦しくなる。自分だけが好きなとき、片思いのときは夢が無限に広がり、全てが
ばら色、それが相手に告白し、相手もその気になり、好きと言ったときから、何となく
重く感じる。
 「好きって、好きだけじゃないね」
 思わず、口に出してしまった。好きなだけじゃなかったら、他に何かがあると
言う事に成る。
 「何で、何があるの」
 何言っているのよ。好きじゃないって事、そんなに付き合っていないのに、答えを
聞かなくっちゃ。
 「何かおかしかった。好きだから、それは間違いない。でも、それだけじゃない。
どこかおかしいかな」
 答えようとしない。まあいいか、好きだけで解決する問題なんて、世の中には
少ないし、好きじゃないことは非常に多い。

19 :
「「 自由な人たち 」」 011+09  2010.22.9.15--009
*** 知人たち ***
 「好きに成ったことで実現することが沢山あるでしょう。それに好きだから、
それを守る為に、好きじゃないことも乗り越えることが出来る」
 性格は道徳的だね。世の中は道徳だけでは生きられないけど、道徳が無ければ
生きられない。好きな人が道徳的ってどういうことに成るわけ。
 「好きに成ると想像することが多くなるね。何でも想像する」
 例えば、君の体のこととか。想像すると止まらなくなるし、それを実行したくなる。
これって道徳的か。好きになって相手の体を想像しても、それを道徳が無いとは
言わないだろう。
 「想像する事はいいことでしょう。現実は想像通りには行かないけど」
 何を想像しているの。想像するのは勝手だけど、目の前にいることを忘れないで
欲しい。
 「別に、違っていても、そんなに気にはしないよ。今は想像するほかないし」
 二人の未来を想像しているの、それとも単に二人の交わりを想像しているの、
なんなのよ。

20 :
「「 自由な人たち 」」 011+10  2010.22.9.16--010
*** 知人たち ***
 コーヒーの香りがする店内に入り、多くの人たちの顔を見ながら、空いている
席を探し、二人は座った。
 「こんなに込んでいるだ。驚き」
 結局、何もないのかも知れない。やっぱり、少し冒険がしたいし、好きなときに
触れ合う感触は欲望を越えた愛欲の世界を味わう事ができるはずだ。
 「コーヒー。それに何か食べます。ケーキでも」
 薄笑いを浮かべながら、頷いた。何でもいいよ。たかがコーヒーなんだから。
ケーキは太るよ。太った体もいいけど。
 「何もないのかな、何か少し、在ってもいいと思うけど」
 何よ、それって、何か要求しているつもり、ホテルに誘ったのは私よ。それで
十分と思うけど。この先は任せる。
 「ここは初めて、いいわね。ガラスに貴方が映ってる。少し、横向いて」
 馬鹿ね。そんなにいい顔とは思わないのに、何となく興味を持ってしまった。
顔じゃないといいたいけど、顔も大事ね。でも、この辺で決めるかな。
 「貴女も映ってる。貴女を見ている誰かの顔はあまりいい男とは言えないね」

21 :
「「 自由な人たち 」」 011+11  2010.22.9.16--011
*** 知人たち ***
 お互いガラスに映った姿に話し掛け、自分の心と顔との違いを確かめようと
しているようだ。
 「貴方って、素敵よ」
 何だよ、突然、ガラスの中の自分を見た。にやけてる。馬鹿、にやけている場合か。
 「先に言わないでよ。美しい二人の貴女にこんな所で会えるなんて思ってもいな
かった」
 貴方でいいかな。幸せにしてくれそうだから。でも、まだ、愛してるって言葉聞いて
いない。
 「私、綺麗、そんな事を言われた事ない」
 みんな言うのよ。美しいとか綺麗とか、でも本心じゃない。その場限り。目的を
達成する為に適当に言うだけ、みんなその場限りなのよ。
 「これから、何回も会いたいと思っている。貴女はどうかな」
 目の前の3Dとガラスに映った顔を交互に見ながら、確かめた。でも、分らない、
本気のようでもある。でも、まだ、よく分らない。この人を好きと思う自分を信じる
ほかないのかな、結局、人生なんて運と賭けのようなもの。
 「それはかまわないけど、というより、それは当然でしょう。好きっていたでしょう」
 嘘っぽい顔、本気なのに、何で、顔と心が合わないの。もう一度言わせて欲しい。
 「声が大きいよ」

22 :
別板に行って下さい

23 :
「「 自由な人たち 」」 011+12  2010.22.9.17--012
*** 知人たち ***
 だって、今日が人生の大事な日になりそうだから、でも、冷静にならなくちゃね。
 「少し、興奮気味、なんでだろう。変な顔」
 一人で盛り上がっている。可愛いけど、余裕が無いね。もっと、優雅に振舞って
欲しい。
 「考えてみるとこんな気持になったの初めて、そんな感じかな、言葉に出来ない」
 何で、分る訳、そんな感じ、この胸の内を言葉にすると、私、これから生きていけ
ないような感じ。
 ガラスの中の自分が別人のようだ。貴女は誰なの、私は恋する乙女、貴女は。
私は嘘吐き女、恋する乙女なんかじゃない。
 「きっと、二人は合うと思うよ」
 暗示にかけようとしている。何が合うというのよ。好きだから、ただ、それだけで。
 「いつから、その、好きだったのは」
 これが定番ね。好きに成ったのはいつよ。どうして、なぜ、私なの。言えばいいのよ。
適当にどうぞ、聞いてやる。
 「ずっと前から」
 品定めをした。適当じゃ駄目と思った。その為に自分を変えようと思った。

24 :
「「 自由な人たち 」」 011+14  2010.22.9.18--014
*** 知人たち ***
 「合格した訳、貴方の女として、嬉しいと言えばいいの」
 馬鹿、馬鹿、何てこと言うのよ。恋する乙女なのに。最低。
 「君に会ったときから合格をしていた。でも、僕が不合格だった」
 一目ぼれなんだ。それって弱みね。いじめてもいいって事かな。面白そう。
貴方は私しだいってこと、合格、不合格を出すのは貴方じゃなくって、私ね。
 「勿論、君が決める事なんだ。僕が合格かどうかは」
 それはそうよ。でも、心を見透かされている感じ。何となく、侮れない。私は
貴方に合格点を付けたい。だから、合格して欲しい。
 「私の事を何も知らないのに合格した訳、それっておかしくない」
 人生には色々な関門があるって事。そして、その都度、合格しないとね。安心
出来ない。めがねにかなったと言うだけ。全てはこれから。まだ、幾らでも不合格を
出せるんだよ。
 「良く君を見ていた。君が分らなかっただけ、そして、合格点を付け、次の段階に
入った」
 そうなんだ。貴方はそういう人なのね。貴方に任せるわ。貴方が不合格になれば
私は貴方から去ればいいだけだから。

25 :
漏れら極悪非道のageブラザーズ!
今日もネタもないのにageてやるからな!
 ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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  し(_)   (_)J

26 :
「「 自由な人たち 」」 011+14  2010.22.9.19--014
*** 知人たち ***
 「人を好きに成ると自分を見つめ直し、自らの至らなさに気付き、嘆き苦しみ、
少しでもその苦しみを和らげようと努力する。君のハードルは高かった」
 勝手にハードル高くされても困るな。お互い好きならそれでいいと思うけど。
 「何事も私が貴方を好きに成らないと始まらない。だから、貴方に取って私は
知人でしか無かったと言うわけね」
 何も知らない同士がお互いを見て興味を抱き、言葉を交わし、自らが抱いた
感情を確かめる為に恐る恐るお互いを知ろうと距離を狭め、息遣いが分る
位置まで近付き、それと共に胸の高まりの異常に驚き、言葉を交わす前に
未だ経験しない恋する相手に対する胸の鼓動の速さと高鳴る鼓動の強さに
耐えがたい重圧と悲しみとも取れる喜びを感じ、初めての言葉を交わす瞬間、
新たな世界が目の前に広がるような気持とそこには別人になった自分が存在
している事に気付く。
 好きと告白された人に取って、大変なのはそのとき、何一つ感情がないことよ。
貴方は私を好きでも私は貴方を好きでも嫌いでもない。貴方はただの男なのよ。
興味もなければ尊敬もない、貴方に対して、好きという感情の欠片もない。全く
持って白紙なのよ。残念ながら。それなのに私は貴方の誘いに乗り、好きと
言ってしまった。その理由をこれから探さなければ成らない。もし、貴方にその理由
が見つからなければ、私は嘘吐きに成るし、貴方から去らなければならない。

27 :
「「 自由な人たち 」」 011+15  2010.22.9.20--015
*** 知人たち ***
 「僕が好きなったのは貴女の幻であって、貴女でないことがだんだん分って来た」
 当然でしょう。貴方が好きに成ったのは貴方が想像した私よ。それが間違いよ。
貴方に本当の私を想像できる筈が無いわ。これからみっちり私を知ってもらうわ。
 「貴方が想像した私はわたしではないの、それは貴方が作った虚像よ。幻よ。
貴方が私を知れば知るほどそれが破壊され。そして、本当の私が現れる。
貴方は地獄に落ちるのよ」
 その通り、でも、始まりはみんなそんなものでしょう。貴女の笑顔を見て、貴女の
話す姿を見て、貴女の声を聞いて、貴女に惹かれ、想像を含ませ、寝ても醒めても
貴女のことを考え出し、貴女に直接会って思いを告白しなければならない状況が
訪れた。それも相当悩み、その悩みを解消する為に学び、自分に足らないものを
揃えようと努力をした。僕の人生のパートナーの為に出来る事は全て準備した
かった。
 「地獄に落ちるんだ。何で、最初から、そんな事を聞かなければ成らないのか
分らない」
 好きに成るってことはそう言うことよ。地獄から這い上がってこそ本物ね。

28 :
「「 自由な人たち 」」 011+16  2010.22.9.21--016
*** 知人たち ***
 「好きだからこそ、地獄のような私に耐えられる筈よ」
 貴方は知らないのよ我侭な私を、好きだからできる事なんて、たかが知れている。
嫌いになって私に尽くす事こそが本当の愛、それが出来ないのなら私には意味が
ない人ね。私が欲しいのは私に取って必要な人なの。
 愛の代償なんのか、それとも、地獄のような天使と言う事か。始めから天国という
のも詰まらない。地獄からの出発、上等じゃないか。
 「君を判断するのは僕だ。君はありのままでいいよ。多分、地獄でも天国でも
一緒の筈だから、いつも一緒ならばそれも仕方ない」
 二人になれば、何もかもが変わる筈だ。君も僕も変わる。どのように変わるかは
お互いがどのように深く関わるかによって決まる。
 別々の人格がお互いの人格と接し、結ばれるものもあれば結ばれないものも
あり、その数やその強さによって、お互いの絆を確かめ合い、関係が続く場合も
あれば続かない場合もある。それは仕方ないこと。

29 :
「「 自由な人たち 」」 011+17  2010.22.9.22--017
*** 知人たち ***
 「退屈な生活は耐えられない。貴方に何を望めるの」
 人生なんて気の持ちようでどうにでもなると思うけど、でも、好きな人と退屈な
日々を考えてみると退屈な日々が好きな人といることで我慢できると思う。
 「人生は時間と共に変わると思うから、退屈はさせないと思うけど、ただ、
何を持って退屈というかかな」
 今は会うだけで満足するけど、会うだけでいつまでも満足は出来ない。貴方は
私に何を与えてくれるの。
 「欲しいものが一杯あるの」
 それは君しだいだね。君が欲しいものは何でも叶えて遣りたいけど、それには
条件がある。与えるだけの価値があるかという事と与える事で君が変化して行くか
という事。
 それに君に与える事で私自身も変化して行くかと言うこと。

30 :
「「 自由な人たち 」」 011+18  2010.22.9.24--018
*** 知人たち ***
 「人生は退屈でもないだろう。仕事も友達も恋人もいる。それに日々の生活には
身の回りのもろもろの雑用が沢山あるよ。顔を洗い、食事して、歯を磨き、トイレに
入って、風呂に入る。君は化粧もするだろう」
 生きるだけで、大変だ。好きな人の面倒も見なければ成らない。そう言えば
夜のお勤めもある。幾ら時間があっても足りない。それが現実だろう。
 「私、食事作るの」
 私は楽しく生きたいの食事作るのはどうも苦手なのよ。食事作るの大変よ。
買い物から始まり、野菜を洗い、食べ易い大きさに切ったり、擦ったりしなければ
成らない。そして、煮る、炒める、焼く、材料は野菜だけではなく、肉、魚、果物、
缶詰、瓶詰めなどね、これを料理して、盛り付ける。そして、食べてからは後
片付けをする。こんなの出来ない。貴方も手伝うの。
 「料理好き、好きじゃなの」
 料理は作ればいいってものではない。味だ、それに栄養、栄養もあればいいって
ものではない。それぞれの体調を考える必要がある。季節感もあるし、土地による
名品もあり、色々と工夫をすることで、人生を楽しく送る事ができる。

31 :
「「 自由な人たち 」」 011+19  2010.22.9.28--019
*** 知人たち ***
 「料理って、難しいでしょう。結婚したら、でも、作れるよ。多分」
 結婚したい訳、早いよ。料理が出来なければ、結婚しないってこと。まだ、
何もしてないのに、それとも料理作って食べさせてってこと。
 「僕は料理しますよ。まあ、適当ですが、中々上手いですよ」
 なんだ、自分が出来る訳か。ということは料理を食べさせてくれる。それって、
家に誘われ、遊びにこないか。そう言うことか。その手には乗らない。
 「どんなものが作れるって聞くと、食べたいと思うでしょうね」
 別に誘ったつもりは無いけど、食べたいのなら作ってもいいか。
 「食べに来ます。もし、食べたい物があれば言ってください。何でも作りますよ」
 もう、食べに行くかな、でも、食べるだけではすまないだろうな、行けば私の
肉体は食べられる。それは間違いない。
 「食べに行ったら、食べられそう。食べないって約束できます」
 何だよ、それって、もういいだろう。我慢の限界だ。
 「勿論、変な事はしません。食べるのは料理ですよ。僕が貴女を食べると
思ったわけですか。そうでしょうね。そう思うでしょうね。でも、心配しないでください」
 まだ、早いのに、何も知らないし、だからと言って、知るためには冒険も必要だし、
でも、食べられてしまったら、私の鮮度はまた落ちる。
 「料理の仕方で、食材は結構変わりますよ。少し鮮度の落ちたものも大丈夫
ですよ。でも、僕は鮮度のいいものしか食べませんが」

32 :
「「 自由な人たち 」」 011+20  2010.22.10.1--020
*** 知人たち ***
 料理なんてどうでもいい、私が知りたいのはそっちの料理ではなくって、私の
料理よ。私をどう料理するつもりなのよ。
 「私の鮮度はどう思います」
 何だよ、自分の鮮度が気になる訳、好きとか、嫌いに鮮度なんてないだろう。
どうかしてる。でも、気になるか。
 「突然ですね。僕は人には鮮度を感じたことはないですね。それって、どう
知ることが出来ます。それにそんな事を聞けるはずが無い」
 不味かったとか、良かったとか、そんな事も鮮度に入ると思うけど、私の事を
好きと言うのなら、何で好きかとか、どうしたいとか言って欲しいし、それに
よって、女は変わるのに。
 「聞いて欲しいけど、新鮮度も大事でしょう。表現の仕方には色々あると
思うけど」
 まあ、鮮度がよければ、それに越した事はないか。でも、鮮度が保たれている
方が大事かもしれない。荒波を乗り越えても常に鮮度を持ちつづける。まあ、
理想はこれだな。
 「人は気持だから、新鮮度はどうですかね。新鮮じゃなければ駄目って
ものでもないでしょう」

33 :
>>32
エロパロ板に移動して下さい!

34 :
「「 自由な人たち 」」 011+21  2010.22.10.4--021
*** 知人たち ***
 思い返せば人生って一度きりのことがほとんど、だから、何でも大事にしたい。
これからも、初めての経験があると思うけど、ただ、通り過ぎるのではなく、出来る
限り忘れないようにして、そして、振り返れるような経験をしたいなぁ。
 「こんど何処かに行かない。そこで、美味しい物を食べて、色々な所に行って
楽しみたいの」
 それもいいな、君を知る為にも、僕を知ってもらうためにも、見たり、食べたり、
そして、語り合う事で、新しい発見もあるだろうし、お互いの欠点も知ることが
出来る。
 「付き合ってくれるの。何処でも行くよ。山、それとも、海、好きな所に行こう」
 何だかいい感じ、私の言う事を聞いてくれるんだ、好きだから、好きじゃなかったら
見向きもしないのかしら。
 「早いかな、好きと言われて、直に何処かに行きたいっていうのは」
 何だか、簡単過ぎる感じがする。軽い感じ、これでいいのだろうか。でも、誘って
誘われたと言う事は君も好きに成ったということ。
 「早くないよ。早い方がいい。人の心は光の速さぐらい早く感じ取れるときがあると
聞くよ。僕もそうだった。君を見た瞬間、好きと思った。光の速さという根拠は
正しいと思う。君は多分、大分前に僕を好きに成ったと思う」

35 :
「「 自由な人たち 」」 011+22  2010.22.10.5--022
*** 知人たち ***
 好きという感情を大事にしたい。誰でも好きに成るわけではないし、次から次へと
変える事は出来ない。出来ないというより、してはいけない。
 「私のどこが好きって言ったけ。聞かせて、いいでしょう」
 何回も言ったのに、何て言ったか忘れたよ。何でも好きって訳でもないし、こうして
会えば色々な発見がある。
 「全てかな、何が好きか、最近、分らなくなった。会う事で、新しい発見があるし、
洋服や髪型、化粧、話す内容、しぐさや顔の表情、別れる時の寂しさ、上げると
きりが無い」
 私は何を求めているのだろう。退屈な生活から逃れる為、仕事の疲れか
解放されたいから、肉体が求める本能が持つ欲望の為、知りたいけど、分らない。
 「そんな事を知っても、しょうがないか。貴方が好きなのは私そのものということに
するかな、でも、それでは駄目ね、私が私のことを知らない感じがするから」
 難しいことを考えるな。何回も会う事で、それが絆になり、その絆が太くなると
考えれば、好きと感じたときのことは単なるスターと地点あり、それは細い絆で
しかない。
 「会って二人で何をするか。何をしたいか。それが会わない時より、どれほど、
会っている方がいいか。楽しいか。会いたいかということかな。だから、会いたいか
ということ」

36 :
※エロ・18禁等の作品はお絵描き・創作板、エロパロ板へお願いします。

37 :
「「 自由な人たち 」」 011+23  2010.22.10.10--023
*** 知人たち ***
 会えないとき、会う事が出来ないとき、会いたいとき、そのとき、何を考え
過ごしているか。会えなくても、満たされれば。隣にいなくても、その存在を感じて
満足できれば。そんな存在で在って欲しい。そんな存在で在りたいなんて。
 「会えないときもあると思うけど、そのとき会いたくなったら」
 会えないときの方が長いだろうな。一緒にいる時間は短い。だから、会いたく
なったら、会えばいいと思うけど。
 「会いに行くよ。呼んでくれれば、一生の中で一緒にいる時間は短いよ」
 会えないときも私のことを考えていてくれる。考えないだろうね。考えるときも
あると思うけど、私も貴方がいないときは、何を考えているだろう。仕事のことや
本のこと、ふと、思い出すときが幸せかな。
 「最初は好きだから、いつも一緒にいたいのかな。これから、どうなのか」
 
 好きなのは分ってくれたし、好きと言ってくれた。これから、会って何をするか。
何をしたいか。何をすればいいんだ。
 「何も考えなくてもいいと思う。自然に気持を感じて貰いたいし、在りのままを
感じるだけ」

38 :
「「 自由な人たち 」」 011+23  2010.22.10.11--024
*** 知人たち ***
 風がふっと吹き、髪を揺らし、顔にも当たり心地よい感触で風が通り過ぎた。
 「風よ。店の人が窓を開けたのよ。風もいいね。すごく気持ちよかった」
 風に吹かれてか、これから、風は何処に向って吹くのかな。風のような人生は
ご免だ。まあ、普通は風に向って行くものだろうな。風を吹かせるとか風を起こす。
風に乗る。色々な風がある。
 「今、見たよ。君の髪が風に揺れて、目を閉じた顔を、綺麗な顔なんだな。
驚いた」
 目を閉じただけで、驚くんだ。好きに成られると何と無く徳な感じ、目を閉じて
驚かれたら、何をしても驚くわね。
 「いつも目を閉じていようかな。いつも、こうしてる。こんな感じ」
 風に乗ってきたのかな、変な感じだ。そんな事無いか。好きに成ればそんな
ものだよ。風に乗るしかないな。でも、風はいつかは止むけど。止まない。
この風は止まない。
 「目を閉じた顔を見て、また、好きに成った。そんな顔は僕だけにして欲しい」
 目を閉じたまま、頷き、笑った。好きなんだなと思った。どうすればいいのかと
手のひらで顔を塞いだ。

39 :
「「 自由な人たち 」」 011+25  2010.22.10.13--025
*** 知人たち ***
 生きることの難しさは、まず、一人では生きることが出来ないこと。どのような
生き方を望んでも、一人では何も出来ない。
 「貴方は私のことが好きな訳でしょう。私は今、好きと言われた訳でしょう。だから、
直には好きとは言えないと思わない。好きと言ったら嘘になる」
 好きと言ってくれると楽なんだけどね。生きる為に必要な人と思っているから、
好きと打ち明けた訳で、好きなものは自分のものにしたい。
 「好きって言ってくれてもいいけど、嘘でもいいから、それは無理か」
 でも、印象はいい。感じるものはあるし、嫌いじゃない。どちらかと言えば、
好きなタイプ。
 「私がここにいるから、それは想像して欲しい。ても、好きとは今は言えない。
それはいいでしょう。貴方だって、私に声を掛ける為に何か葛藤があったでしょう」
 勿論、何回も確かめた。君は気付かなかったけど、君とは何回もすれ違ったし、
君を360度から見つめた。そうだ、上かも見たな、残念だけど、下からは見てない。
 「観察の対象だったな。観察する事で益々好きになった。そして、夢に見た。
夢の中では良く話したな」
 夢の中ね。それは私ではないわね。あくまでも夢であって、空想の中の私。
多分、夢の話したいだろうな。私は聞きたくないけど。
 「夢の中の私と何した。話だけ、何にを話した。夢の中の私と現実の私は
違うと思うけど、それを確かめる」

40 :
「「 自由な人たち 」」 011+26  2010.22.10.16--026
*** 知人たち ***
 夢の話は止めておこう。夢の話をしたら、多分、分らないだろうし、好きな人間と
好きになるかどうか分らない人間では感じるものも違うし、夢は所詮夢だから。
 「今の所、君は夢以上、夢では君を空を飛んで追いかけた。中々上手く飛べなくて、
君に追いつけない、君は振り返り僕を見て、笑っていた」
 やっぱり、話してしまった。話すと思ってた。結局、それしか話すことがないからな。
 「夢見ます」
 
 夢の中の私と何をしたのよ。きっと、話すわ。そんな顔をしている。きっと、変な
事をしたと思う。
 「夢ですか。私はあまり見ません。どんな夢でした。話したいような顔してる」
 困ったな。夢だから、それを話すのはどうかと思う。ほくろがあったけど、それを
夢の中で話したな。でも、何処にあったかを話す訳には行かない。
 「夢は想像以上に過激なもので、いつもの自分ではない自分がいる訳ですよ。
なんたって、空を飛ぶわけだから、そんな事、現実には出来ないでしょう」
 飛ぶだけじゃないでしょう。現実に出来ることを夢の中でしたでしょう。何だか、
困らせているようで、どうかしている。
 「夢の中と現実とは違うと思うけど、夢の中で現実に出来る事もあるでしょう。
例えば正夢とか、夢遊病者が夢と現実が同時進行するとか」
 夢の話は失敗だったな、これでは何となく、間違った方向に進みそうで、何とか
しないと嫌われそうだ。
 「夢ですよ。止めます。子供のようで恥ずかしい」

41 :
「「 自由な人たち 」」 011+26  2010.22.10.16--026
*** 知人たち ***
 夢の話は止めておこう。夢の話をしたら、多分、分らないだろうし、好きな人間と
好きになるかどうか分らない人間では感じるものも違うし、夢は所詮夢だから。
 「今の所、君は夢以上、夢では君を空を飛んで追いかけた。中々上手く飛べなくて、
君に追いつけない、君は振り返り僕を見て、笑っていた」
 やっぱり、話してしまった。話すと思ってた。結局、それしか話すことがないからな。
 「夢見ます」
 
 夢の中の私と何をしたのよ。きっと、話すわ。そんな顔をしている。きっと、変な
事をしたと思う。
 「夢ですか。私はあまり見ません。どんな夢でした。話したいような顔してる」
 困ったな。夢だから、それを話すのはどうかと思う。ほくろがあったけど、それを
夢の中で話したな。でも、何処にあったかを話す訳には行かない。
 「夢は想像以上に過激なもので、いつもの自分ではない自分がいる訳ですよ。
なんたって、空を飛ぶわけだから、そんな事、現実には出来ないでしょう」
 飛ぶだけじゃないでしょう。現実に出来ることを夢の中でしたでしょう。何だか、
困らせているようで、どうかしている。
 「夢の中と現実とは違うと思うけど、夢の中で現実に出来る事もあるでしょう。
例えば正夢とか、夢遊病者が夢と現実が同時進行するとか」
 夢の話は失敗だったな、これでは何となく、間違った方向に進みそうで、何とか
しないと嫌われそうだ。
 「夢ですよ。止めます。子供のようで恥ずかしい」

42 :
落葉掃けばころころ木の実ナナ

43 :
「「 自由な人たち 」」 011+27  2010.22.10.21--027
*** 知人たち ***
 もう、大人の付き合いをしたいのに、私たちはいつまでも知人と同じ、どうすれば
いいの、時間は過ぎるだけ、私も歳を取ってしまう。
 「歳は取りたくない。理由は簡単よ。化粧が必要になるし、化粧は嫌いなの」
 誰の為に化粧をするのか、美しくなって何をしたいのか、誰かに何かをされて
嬉しいのか、それも歳をとることで、分らなくなる。
 「結局、好きな人には素肌を見られるから化粧しても意味がないと思う」
 化粧している人たちは、まだ、誰かを探しているのかも知れない。化けの皮を
剥されるの期待して。
 「化粧は自分の為よ、誰の為でもない。自分を飾る事で幸せになれる。だから、
化粧は必要、化粧をすることで別な人格に成れる」
 変化するということは、ただ、外見が変わるだけではない、全てが変わるのよ。
特に気持が違う、素顔の自分と化粧した自分は別人と言ってもいい。
 「化粧して誰かに好きになって欲しいとは思わない。好きな人には隠し通すことは
出来ない。だから、化粧は好きな人の為にする訳ではない」
 化粧したからと言って、そんなに変わるかしら、もし、別人になってしまったら、
それは化粧ではなく、特殊メイクと言った方がいいでしょう。

44 :
「「 自由な人たち 」」 011+28  2010.22.10.23--028
*** 知人たち ***
 私は仕事を優先したい。女だから。そんな女は嫌い。それならそうと言っても
いいけど。
 「貴方は仕事と私、どっちを取る。私は仕事を取るけど」
 好きにすればいい。金が無ければ、君を幸せには出来ない。仕事を取って
くれれば、その方がいい。
 「仕事と何を比べる訳、仕事と君、僕は君を取るけど、ただ、仕事と結び付ける
理由が分らない。仕事と子供なら分るような感じはするけど」
 なるほど、その方が正しい意見ね。どう答えればいいの、仕事と言えば子供は
産まないと思われる。子供は欲しい。子供は産む。
 「そうね、男と女に取って、子供の存在は無視できない。女はそれが重大な
問題ね」
 仕事を取るにしてもその理由が何であるかだろう。闇雲に仕事を取ると言っても、
全てに仕事を優先する人って、何となくおかしい感じがするけど。
 「君は何か勘違いしているよ。それは僕を好きに成ってから考えればいいよ。
僕が君に取ってどんな存在になるかで全ては決まると思う。それからでも
遅くはない。でも、仕事は大事なことだから、無視するつもりはないけど」
 女と仕事即ち金はどちらも大事なのは分っているけど、どちらも自由にならない。
自由にしたい気持が強過ぎるのかもしれない。

45 :
「「 自由な人たち 」」 011+29  2010.22.10.26--029
*** 知人たち ***
 貴方を受け入れるのにお金も仕事も関係ないのよ。全ては、私の軟らかい皮膚が
この体にまつわりつく貴方を受け入れられるかどうか
 「結局、こうして二人でいることで全てを理解できると思う」
 何が言いたい訳、理解するってどういうこと。僕は合格ということなのか。
 「そうだよ。こうしていればいつか分るし、理解するはずだ。簡単なことだな」
 でも、受け入れただけではないと思う。私にも欲がある。私はどん欲よ。貴方に
求めるものはこの私の柔肌に纏わり付く貴方だけではないと言う事ね。
 「私は貴方に取って何者、それを考えて欲しい。私は貴方を受け入れでも、
直に、次のことを考えると思うわ」
 全てを欲しいということか、僕の全てを独占し、更に僕の可能性すらも自分の
ものにしたいということ。
 「好きとか愛とかは二人に取ってほんの一部でしかない。僕もそう思うよ」
 一部って何よ。それは永遠に続く事よ。その為の努力を私は貴方に求めると
言いたいわ。

46 :
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47 :
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48 :
「「 自由な人たち 」」 011+30  2010.22.10.28--030
*** 知人たち ***
 きっと始めは何も分らない。分ったころはもう取り返しが付かないで、諦める
しかない。多分、私の人生はそんなもの、だから、始めに拘るのよ。
 「考えすぎで、面倒臭いでしょう。考え直した。人間って、話して見ないと
分らないものでしょう」
 きっと始める前から分ってる。分ったとしても何も変られない、諦めろと言われても
それも出来ない。多分、私はそんな人生を歩むはず、だから、始めなければならない。
 「千江美さんには分らない、千江美さんの良さがある。それが分るのは僕だけ。
そう思いません」
 貴方が私の人生を探してくれると言うの、私が知らない私の人生なんて、何処に
あるというのよ。
 「なんで、そんな大変なことをするの、貴方の人生は貴方だけのもので、私の
人生は私だけのものでしょう」
 たった一人で生きるのは余りにも寂しい。その寂しさを癒してくれるのが人の
温もり、その温もりを僕も欲しい。その温もりを貴方にも知って欲しい。
 「千江美さんの人生に関わりたい、それって、必要ですよ。体も温まると思うし、
いつか、必ず、誰かとそうなる筈だから、その誰かが僕と思えばいい」
 嘘よね。嘘吐き、騙されると思う。貴方が私の人生に入り込んだら、それは
私の人生ではなくなるでしょう。

49 :
「「 自由な人たち 」」 011+31  2010.22.10.30--031
*** 知人たち ***
 君は単なる小娘じゃないか、人間として、女として、どれほどの人間なんだ。
人と人と交じ合うことで、人として成長し、更に自分自身も知ることができる。
それが人間というもだろう。
 「別に、結論を求めている訳じゃないよ。ただ、僕が千江美さんと一緒にいたい
だけなんだ」
 貴方じゃなければ成らない理由はあるの、貴方がいつも私の傍に居なければ
成らない訳は何なのよ。
 「私は貴方に取って、足手まといに成るわよ。貴方は自分の事ができなくなる
私は貴方に色々なことを求め、貴方の時間を奪ったりして」
 それもそれそうだな、女なんか幾らでもいる。別に君じゃなくても、満足は出来る。
でも、それは別な満足であって、君しかないものがある訳よ。
 「まあ、色々あると思うけど、男と女と考えると必要なもの、相手は必要と思うけど。
そうでしょう。人間として、すべきことがある訳だから、仕事は仕事と考えれば、
千江美さんと仕事は別で、人間として大事な人と言う事になる」
 私をただの女としてしか見てないくせに、人間として、そんな大それた考え方
する。貴方に取って、私は女なのよ。それだけでしょう。
 「貴方は私を女にしたいだけでしょう。私が女だから」
 何だよ。女だろう。男かよ。女を女として見て、とごが悪い。それが聞きたいね。
勿論、女として好きだから、好きと言っているのに。
 「そんな、千江美さんを女としてだけ、見ている訳じゃない。僕の人生そのもの
としてですよ」

50 :
「「 自由な人たち 」」 012+01  2010.22.11.9--032
*** 太陽に照らされた月 ***
 二人は楽しく話していた。月明かりに照らされ、二人の影もそれにつられ楽し
そうに揺らいだ。
 「貴方が話掛けたときを思い出した。あの時は少し驚いた」
 冨美はいつも行くパン屋で、何回か、幸雄を見かけていたので、顔は知っていた。
いつしか、幸雄は冨美を見ると笑って挨拶をするようになった。そのときから、
冨美はいつか、話でもしたいなと思っていた。
 「私と話したいっていたのよ。何だか、私の気持が通じたのかと思ったわ。
それに、貴方は何となく、思い出させるの、話さなくても、顔を見るだけで、
嬉しくなった」
 幸雄は冨美を見たとき、子供のころに見た憧れの人に似ていたので、少し胸に
感じるものがあり、いつしか、挨拶をするようになり、そのときから、身近な存在に
成った。
 「私ね、貴方が話していると嬉しくなって、少し、はしゃいでしまうの、それ、
見てて分る」

51 :
「「 自由な人たち 」」 012+02  2010.22.11.10--033
*** 太陽に照らされた月 ***
 夕食時になり、買い物帰りの早苗とときが冨美の噂をしていた。早苗が冨美を
夕方、公園で見かけ、誰かと歩いている所を見たというのだ。それを聞いたともも
何日か前に、近くの川べりで男の人と歩いている冨美を見たと言う。
 二人は冨美に友達でも出来たのかと何となく思った。そんなとき、冨美も
夕食の用意の為に買い物を終え、二人が話している所に居合わせた。
 「買い物ですか。先日は有難うございました。美味しいみかんだったわ。一人で
食べちゃった」
 冨美はよく、早苗やときから貰い物して、また、冨美もお返しをして、親しく付き合って
いた。冨美が挨拶をして、これから夕食の用意があるので、分かれようとすると、
早苗がこないだの男の人誰って聞いたので、冨美は、
 「え、いつ、どこで見たの最近は男の人と歩いた事も無いけど」
 と言って、聞き返した。
 早苗はそれ以上は聞かないで、適当に別れの言葉を言って、話を止めた。
冨美も何となく、会釈してその場を離れた。
 冨美は早苗とときが何を言っているのか分ってはいたが知らない振りをした自分が
何か後ろめたい気持がして成らなかった。

52 :
「「 自由な人たち 」」 012+03  2010.22.11.11--034
*** 太陽に照らされた月 ***
 早苗とときは冨美の後姿を見ながら、冨美が何となく嘘を言っていることに疑い
の眼差しで、冨美の美しい後姿を見送っていた。
 早苗は確かに公園で冨美を見かけ、声を掛けようと近付いたのだが木の陰で
見えなかった男が冨美に近付き声を掛けたので、直に木陰に隠れ二人に見えない
ように木陰から見ていたのだ。
 まだ、何日もたっていないので、冨美が忘れるはずがないのに冨美は知らない
振りをしたので、早苗は何となく、冨美に嫉妬心を抱いた。
 ときも冨美が川べりを男と二人で歩いているところを橋の上で見かけ、足を止めて
暫く見ていたので、冨美であるのは間違いなかった。
 早苗とときはお互い顔を見合わせ、笑みを浮かべた。早苗とときは人一倍
気が合い、いつも二人で言いたいことを言い合う中で、二人は冨美の秘密を
知りたくなり、冨美をいつか付ける約束をした。
 冨美は電気を決して月明かりの中で風呂につかるのが好きだった。暗い中で、
月明かりと廊下の淡い光で、時間を掛けて風呂につかり体の中の全ての
疲れを出し切る事が冨美にとって、一番の楽しみだった。
 「あの二人に見られたのね。用心していたけど、駄目だった」
 温めの湯は体を芯から暖め、体の穴という穴から体の中に入り込み、その湯の
流れに体の疲れが汗となって体の外に逆流するようで、素肌に吹き出る汗が疲れの
水滴となって体に浮かんでいるのを見ると体の疲れが取れるのを感じだ。

53 :
「「 自由な人たち 」」 012+04  2010.22.11.15--035
*** 太陽に照らされた月 ***
 早苗は男運が悪く、幸せそうな女を見ると誰にでも嫉妬した。早苗に取って
トイレはいつも嫉妬の場所だった。下着を下ろし便座に座るそのとき、なぜか、
開放感を感じ、気になる女の事を思い出すのだ。その女が男と何をしたのか、
昨日の夜も一緒にいたのか、色々なことを想像しながら、便座に尻を押し付け
たり、便座から尻を浮かしたりするのだ。
 今日は冨美のことが忘れられなくて、いつもより長いトイレになっている。なぜ、
冨美さんが男といたのだろう。もう、冨美さんは長い間、男の影は無かった筈
なのに、早苗の嫉妬心はじょじょに増し、便座に座った白い足の膝を手で握った。
 早苗は何回か男に騙されて来たが、根っからの男好きで、男のいない生活は
考えられなかった。ときにはトイレで男との事を考えながら、暫く楽しかった
ときのことを思い出し、一人でトイレのひと時を過ごした。
 冨美はそれほど綺麗な女ではなかったが体のバランスは女が見ても結構綺麗で
あの体で男に愛されている冨美を想像するとなぜか、嫉妬心が湧き上がり、
下着を下ろし、剥き出しになった下半身が熱く疼き、手を両足で挟み強く閉じた。
 早苗にとって、たった一人で過ごす、このトイレの時間が嫉妬心を和らげる
唯一の場所であり、女として実感できるささやかな秘密の場でもあった。

54 :
「「 自由な人たち 」」 012+05  2010.22.11.16--036
*** 太陽に照らされた月 ***
 冨美は仕事に追われ、忙しい日々を過ごしていた。幸雄は暫く、冨美に会えず
冨美のことを心配する毎日だったが連絡はしなかった。
 幸雄に冨美から久しぶりに連絡があった。
 「忙しかったの、今度の日曜日10時にあの店に行くけど、会えない」
 幸雄はいつも連絡したかったが自分からは連絡しないと冨美に言っていた。
 「貴方から何で連絡してくれないのいつでもいいのに」
 冨美も別に連絡をしないでと言っていた訳ではなかった。幸雄も深い意味は
無かったが、憧れの人に似ている冨美の自由を奪いたくなかった。
 「このパン、公園で食べない。やっぱり、連絡くれなかった。連絡待っていたのに。
でも、会うことは出来なかったけど。夜遅くなら会えた、今度、夜でもいい」
 幸雄は頷いて笑った。冨美は幸せそうだった。仕事だけが生きがいとは
思っていないが、自分の意見を通す為に多くの時間が必要で、女の人と
付き合う時間が取れない。
 「お互い仕事が忙しすぎるね。でも、こうしてると全てを忘れてしまう。
私が仕事を辞めると言ったら、何を想像する」

55 :
ID:hijbxxft ※エロ・18禁等の作品はお絵描き・創作板、エロパロ板へお願いします。

56 :
「「 自由な人たち 」」 012+06  2010.22.11.17--037
*** 太陽に照らされた月 ***
 公園を早苗は子供と遊びに来ていた。早苗には小さな娘が一人いて、水曜日は
休みで、公園に来るのが習慣だった。
 茂も公園には良く来ていた。良くと言うより毎日一度は来て、行き交う人に挨拶
することが楽しみのうちだった。今日も、早苗に挨拶をし、早苗に話し掛けた。
 「早苗さん、今日は、娘さんも今日は」
 早苗も挨拶を返し、娘にも挨拶させた。茂は誉めながら小さな子供の頭をなぜた。
 「茂さん、いつも、楽しそう、何でそんなに楽しそうなの」
 「ここにいると早苗さんのようなべっぴんさんを見る事が出来るからかな」
 茂は会うたびに誰でも誉めた。早苗のようなそれほど美しくない女も取り合えず
誉めるようにしていた。
 「茂さん、誰でもそんな事を言っているでしょう。いつか、高瀬さんの奥さん、
茂さんに誉められたって、喜んでいた」
 「早苗さんは綺麗ですよ。早苗さんに惚れたな」
 「ほんと、嘘でしょう。何か証明できる。惚れたならその証拠が必要よ」

57 :
「「 自由な人たち 」」 012+06  2010.22.11.17--037
*** 太陽に照らされた月 ***
 早苗は茂るが座っているベンチに並んで座り、笑いながら言った。前から、
茂を見ると何となく気になる雰囲気があり、嫌いではなかった。
 「これなんかどうかな、気に入ってくれるかな」
 脇のバックから小さな箱を早苗の娘に上げた。それは綺麗な箱に入った小さな
人形で小さい子供が気に入りそうな綺麗な人形だった。
 早苗はそれを見て、少し驚き、冗談のつもりで言ったのにと思ったが、意外な
茂の反応に少し躊躇した。
 「そんな、これは貰えません。誰かに遣るものでしょう」
 「高いものではないから、早苗さんと友達に慣れればといつも持っていたもの、
恥ずかしいけど友達に成るための小道具かな」
 「そんなことをしなくても友達ならいつでも成れますよ」
 「早苗さんにはこれはどうだろう」
 「なんですか、これ、商品券でしょう。こんなの困ります」
 「これも小道具なんだ。でも、本物だよ。僕の気持なんだ、色々考えたけど、家に
結構溜まっていて、品物よりいいかなって思った訳、でも、友達ならこれぐらいは
いいかなって思った」
 早苗は少し考えた。友達になるって事は何か下心があるってこと、商品券は
お金も同然、そんなの貰えるはずがない。
 「これは貰えない。こんなことしなくても友達には成れますよ」

58 :
「「 自由な人たち 」」 012+08  2010.22.11.17--039
*** 太陽に照らされた月 ***
 見せることが大事と茂は思っていた。早苗も見たものは忘れない性格で貰える
ものは貰いたいのだが。
 商品券が入った袋を茂に差出した。茂はそれを取らずに別な話を始めた。
 「早苗さんはいつも娘さんと二人でいるけど」
 「二人だけです」
 「旦那さんは」
 「いません、何処かに行ってしまい。分かれました。二人でも寂しくないよね」
 娘を抱き上げ、商品券の入った袋を握り締めた。茂を見て笑った。商品券の
入った袋を早苗は放そうとはしなかった。
 「こんど私の家に遊びに来てください。料理でもご馳走します」
 「茂さん、料理できるの。私、これでもプロですよ」
 「私も腕はプロ級ですよ。来週でもどうです」
 「いいんですか。でも」
 「友達と一緒にどうです。一人では心配でしょうから。歳をとっても男ですからね」
 早苗は行く事にした。茂は何人にでもいいと行ったので、ときに電話して、来週、
一緒に行けるか確かめた。
 「友達にときさんって人がいて、この人と私と娘と三人ではどうです」
 「勿論、かまいません。楽しみにしてます。お嬢ちゃん、待ってるからね」
 茂の家は早苗の知っている家の近くで、よく知っていた。時間を決め、早苗は
茂と別れた。

59 :
「「 自由な人たち 」」 012+09  2010.22.11.26--040
*** 太陽に照らされた月 ***
 幸雄と秋子は酔いを醒ましながら、街並みの中を歩いていた。秋子は仕事仲間
で、幸雄は秋子から沢山の仕事を教えて貰い、深く感謝していた。そんな秋子が
仕事を辞めて、故郷に帰るということで、友氏が集まり、簡単な送別会を開いたの
だった。
 「貴方の挨拶には驚いたわ。突然、秋子さんにはお世話になり、一生忘れません
なんて言うんだもの」
 秋子は幸雄の抜け目のない性格が好きで、いつも気付いた事を注意してくれる
頼りになる先輩で幸雄も信頼していた一人だった。先輩と言ってもそれほど歳は
離れては居ないが仕事の面では大変お世話になったので、故郷に帰ると聞いた
ときには驚くとともに寂しい気持で一杯になった。
 「秋子さんが居なくなると寂しくなるな、僕の仕事を叱っる人も居なくなる」
 「仕事は私より出来るでしょう。貴方にはもう勝てない。心配してないわ」
 秋子は幸雄の顔を見て、幸雄の手を握った。歩いているとき突然手を握られたが
幸雄を何も言わず、手を握り返した。
 「本当はこうして歩きたかった。貴方が好きな人が出来たと聞いたとき、何だか、
私の中の何かが崩れたと思ったの」

60 :
「「 自由な人たち 」」 012+10  2010.22.11.26--041
*** 太陽に照らされた月 ***
 ほろ酔い気分は二人にかつて味わったことの無い甘い雰囲気と手を繋ぐ事で、
流れるお互いの血液が行き交うかのように相手の熱い血液がお互いの体に
流れ込むこみ二人の気持と体が一つになったように秋子は感じた。
 「やっぱり貴方の手は暖かくて軟らかい、でも、もう遅いのね」
 秋子は笑った。そして、泣いた。泣きたくなかったけど、涙が止まらなくなった。
 「涙が止まらないわ、どうしょうも無いのにね」
 幸雄はハンカチをだし、秋子に渡した。
 「秋子さん、僕に出来る事はないですか。これまでの恩返しもしたいし」
 「本当、何でもいい」
 「何でもと言っても、出来ることですよ」
 「簡単にできる。私を抱いて欲しい。私に恩返しをしたいのなら、私を抱いて
欲しい。それが恩返し、そして、私を一生忘れて欲しくない」
 「それは出来ない。そのほかに無いですか」

61 :
「「 自由な人たち 」」 012+11  2010.22.11.26--042
*** 太陽に照らされた月 ***
 幸雄の言葉を聞いた秋子は突然、人が行き交う歩道で座り込んでしまった。
 「私が馬鹿だった。貴方が恩返しをしたというから、何て馬鹿なことを言って
しまったのかしら、ごめんなさい」
 「秋子さん、どうしたんです。困ったな」
 「でも、本気なの、本気なのよ。ごめんね。一度でいいから」
 涙ぐんだ秋子の目は幸雄を見詰め、淡い恋心を抱いていた女の気持が幸雄に
逃げ場を失わせてしまった。
 幸雄は秋子を抱きお越した。秋子の少し肉付きのいい体は強く女の体を
感じさせ、酒の臭いと共に女の体が放す男を虜にする香りが幸雄の体に
浸透してくるのを感じた。
 「秋子さん、どこかで休んで行きますか。それとも」
 「私の家に寄れない。明日、休みだし、明日は都合が悪い」
 「そうですね。秋子さんの家にはいけない。どこかに行きましょう」
 秋子は笑った。嬉しかった。一度でよかった。一度だけで満足できると思った。

62 :
「「 自由な人たち 」」 012+12  2010.22.11.28--043
*** 太陽に照らされた月 ***
 通りかかったタクシーに秋子を乗せ、幸雄はホテルに向った。幸雄は秋子の
話に納得した訳ではなく。秋子に説明し、出来ないというつもりだった。
 「とりあえず、秋子さん休める所に行きましょう」
 秋子はじっと黙ったままだった。幸雄にうなだれるように寄り添い。酔った振りを
続け、このまま、幸雄と一緒に一夜を過ごすにはどうすればいいか考えながら、
幸雄の腿の上に頭を載せ、寝たふりをした。腿の温かさが頬に感じ、なんとなく
幸雄の男を感じた。
 「秋子さん、大丈夫ですか」
 「大丈夫、少し、眠いの」

63 :
「「 自由な人たち 」」 012+13  2010.22.11.29--044
*** 太陽に照らされた月 ***
 膝の上に頭を載せて横たわる秋子を見て、自分を求める女をどうすればいいのか
幸雄は迷った。幸雄には心を寄せる冨美という存在があり、冨美を思うと秋子と
一夜を過ごすことに躊躇いもあり、しかし、自分を求める同僚としてのいとおしさ
もあり、どうすればいいのか悩んでいた。
 「今日だけ、今日だけは一緒にいたい」
 秋子は寝言のようにつぶやいた。そして、深い息を幸雄の腿に吹きかけ、その
熱い吐息がスボンの生地を通って幸雄の内股を暖めた。生暖かい秋子の息は
生き物のように幸雄の男性自身に届き、既に、秋子との戦いが始まっている
のを感じ取った。秋子はすかさずもう一度深い息を吹きかけ、その反応を頬で
感じ取った。明らかに幸雄の体はそれに反応し、秋子の頬はそれを捉えた。
 「秋子さん、息をそんな所に吹きかけたら」
 「ごめんなさい、まだ、少しおかしいの、このままにしておいて」
 タクシーは僅かに揺れながら、幸雄の一部は秋子の頭の重みと秋子の吹く息とで
既にその形状は原型を残さない形状へと変形させ、秋子の頬にその存在が明らかに
変身していることを感じさせた。

64 :
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65 :
創作発表@2ch掲示板
創作物全般を作って発表し感想を貰う板です。
オリジナル、二次創作、競作等幅広く受け入れています。
※エロ・18禁等の作品はお絵描き・創作板、エロパロ板へお願いします。
板に関することは自治スレッドまでどうぞ。

66 :
  ∧_∧   ∧_∧    age
 (・∀・∩)(∩・∀・)    age
 (つ  丿 (   ⊂) age
  ( ヽノ   ヽ/  )   age
  し(_)   (_)J

67 :
「「 自由な人たち 」」 012+14  2010.22.12.1--045
*** 太陽に照らされた月 ***
 タクシーの揺れと共に秋子は強く頭を幸雄に押し付けた、押し付けられた頭は
幸雄を我に変えさせ、冨美に抱く強い愛情が自分の今しようとしている事を誡め、
冨美の悲しむ顔が瞼に浮かんだ。
 「秋子さん、家に帰りましょう。家に送り、僕は返ります」
 暫く、幸雄の腿の上で、じっとしていた。時間とともに幸雄のものが元に戻るのを
秋子の頬が感じだ。熱がさめるように潮が引くように、積み上げた砂の山が一つの
大きな波に呑まれ、跡形も無い砂浜に戻ったように、幸雄の腿を感じだ。
 「思い出したの。愛している人がいて、別な女は抱けないというの。私も貴方を
愛してる。でも、今まで、告白が出来なかった。遅すぎたわけ、愛する女は愛する
男に抱いて貰えない訳、貴方の愛する人は貴方を愛しているの、抱かれたいと
思っているの、抱かれたいと思っている女を抱く事も出来ないの。貴方は私に
恩返しをしたいと言ったくせに、私は一生の思い出にしたのよ。貴方に愛が
無くても私には愛がある、それで十分なのよ。私が望む恩返しは私の愛を
満足させて欲しい」
 秋子は幸雄の股間を強く噛んだ。
 「秋子さん」
 秋子はすっと起き上がり、身なりを整え、タクシーの運転手に自分の家に向う
事を言ってから、幸雄に言った。
 「降りて、ここでいいでしょう。何もなかったのよ。先輩として忠告しておく。でも、
全て、本当のこと、私は田舎に帰る、幸せになってね」

68 :
「「 自由な人たち 」」 012+15  2010.22.12.3--046
*** 太陽に照らされた月 ***
 幸雄はふーとため息を吐いた。タクシーを見送り、手を振った。でも、何も感じ
なかった。何もなかった事は仕方なかった。愛は欲望より強し、とりあえず、
先輩には愛に勝つだけの欲望を持ってなかっただけかもしれない。もっといい
女なら危なかった。
 先輩も悪くはないが余りにも身近な人間なので、多分、不安が在ったのかも
しれない。自分も男だから、寄り道は嫌いではないが愛する人に寄り道をした
ことを知られたくはない。勿論、愛する女が寄り道をしたということが分れば、
素直に愛し続けることは出来ない。そのことを知っても、もし、愛し続けている
とすれば、それは多分、女の肉体に対する欲望だけになるのではないだろうか。
 そんな時、別な女が現れ、きょうのようなことにでもなれば、全ては終わって
しまうのか、それとも、寄り道をすることで、一度愛した女と居続けることが
出来るのか、そのときは未練があるかないかかもしれない。
 タクシーはもう見えなくなっていたが、暫く、そこにたたずみ、何となく、勿体無い事
をしたかなとも思った。これまで、受身になることはなく、自分を愛してる女と一夜を
過すことは一度も無かった。
 自分が愛することで女が自分を愛するという形で、一方的に自分を愛する女に
体を任せることは無かったので、そう考えると、少し、勿体無かったと思った。

69 :
「「 自由な人たち 」」 012+16  2010.22.12.13--047
*** 太陽に照らされた月 ***
 若い幸雄に取って、冨美への体と心を結ぶ切っ掛けをなんとか見つける手立てを
探さなければ、身も心もこのままでは耐えられない気持になり掛けていた。
 「好きと言ったの、そんな事は言ったわよね。私ならいつでもいいけど。そうは
行かないわよね」
 「取り合えず、言うべきことは言ったと思うけど、何か足りない感じはする」
 「誠意じゃない。女は誠意とか誠実な言葉に弱いかもよ。私もそうだから」
 飲むと辿り就く、いつもの店でそこのママと詰まらない話をしながら、飲む酒が
なぜか、気分を落ち着かせた。
 「どうする。もう、終わりよ。でも、いいか、少しはいいけど」
 「帰りますよ。帰ればいいんでしょう」
 「そうは言ってないけど、もう一杯頂く。もう、二杯にする。皆も飲みなさいよ」
 「なんで、みんななんだ。皆はおかしいよ」
 
 「冗談よ、これから帰るの大変ね。内に泊って行く」
 「そうします。泊めてください」

70 :
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「「 自由な人たち 」」 012+16  2010.22.12.13--047

71 :
「「 自由な人たち 」」 012+17  2010.22.12.20--048
*** 太陽に照らされた月 ***
 朝の日差しが部屋を照らし、空気がすがすがしかった。寝返りをうち、見かけない
部屋に目が覚めた。
 自分の部屋ではない、女の部屋だ、ドアを叩く音がした、声がでない。
 「もしもし、起きた。開けるわよ」
 忘れてはいない。全て、覚えている。でも、酒に酔った為に、弁解をするのか、
声が出た。
 「どうぞ、いいですよ」
 「朝よ、食事の用意が出来た。食べる、それともまだ寝てる」
 「食べます」
 「よく寝てた。食べましょう。その前にシャワーでもどう」
 「いえ、それはいいです」
 部屋を見回し、女の部屋が何て綺麗で清潔なのかと思った。なんとなく、暖かい
ような、掛け布団の肌触り、ベットのやわらかさ、少し驚いた。
 昨夜は脱ぎ捨てた服が綺麗にたたんだり、ハンガーに掛けてあった。下着も
たたまれ傍にあった。裸のままで寝たようだ。確か、寝るときは一緒だったはずだ。
 「食べて、一杯作っちゃた」
 無言で食べた。
 「どうしたの変なことをしたの、忘れられないと思うけど、忘れなさい」
 「忘れる」
 「いいじゃない。それで」

72 :
「「 自由な人たち 」」 012+18  2010.22.12.20--049
*** 太陽に照らされた月 ***
 笑ってしまった。タイミング悪い、非常に悪い、何が在ったのか、全てを思い出し、
忘れられない、それを忘れてと言われ、笑ってしまった。
 笑うといっても、声を出して笑った訳ではない。ただ、どちらかといえば歓喜の
笑い、なんというか体全体で感じる喜び、素直に成れた時間を与えてくれた
感謝の喜び、取り合えず、感じさせてもらった喜びの表現が笑いだった。
 「料理、美味いです。料理まで作ってもらって、申し訳なくて」
 「いつも、こんなものよ。少し、多く作ったけど、沢山食べて」
 「笑ってすみません。何だか夢のようだ。夢じゃあないのに」
 「何も気にしないで、夢でいいんじゃない。私もそう思っているから」
 二人は笑った。その空気はもう決して訪れないように感じた。多分、これからも
経験する事はない、素敵な夢の一つ、この夢は決して訪れはしないがいつまでも
記憶に残り、繰り返し思い出す夢になると思った。
 「食器を洗います。洗うのは得意です。とりあえず、出来ます」
 「大丈夫、それにこれ高いのよ」
 取り合えず、どうすればいいんだ。どうすれば、この夢から醒めるか、醒めたくは
無いが、現実に戻らないとこのまま夢の世界に連れて行かれそうだ。

73 :
「「 自由な人たち 」」 012+19  2010.22.12.20--050
*** 太陽に照らされた月 ***
 現実の中に存在する不思議な世界観というかその空間だけが別な感覚を覚える
感じ、頭の中で目に映る風景が別な色に見えるように流れている。
 「素敵な住まいですね。こんな感じ、いいですね。メルヘンのようなロマンチック
というか、驚いた」
 「始めてだからよ。でも、掃除が大変。普段は埃を立てないように何もしないの、
趣味がいつまで経っても女の子なのよ」
 「そんな感じ、でも、女の子じゃなくて、女の人かな」
 「女の子にはもう成れないわね。もう、女よね、女の人か」
 「絵が綺麗ですね。これ、何処か似ている感じ」
 「その絵ね、この絵のことを覚えている」
 「この絵なんだ、この絵を見たんだ」
 「この絵のようなポーズを取って欲しいって、頼まれた。この絵よ。モデルじゃ
ないって、断ったけど」
 「申し訳ありません。この絵ですね」
 夢が蘇りそうだった。二人が何をしたかを辿ることは夢の世界に戻ってしまい
兼ねない。夢を見た人が現実に目の前に居て、二人で見た夢を語り合うそれは
耐えられそうも無い。あの笑顔、あのしぐさ、あの肌触り、あの感触、あの温もり、
全てを体が覚えている。

74 :
「「 自由な人たち 」」 012+21  2010.22.12.28--052
*** 太陽に照らされた月 ***
 「このまま帰っていいんですか」
 「どうして、帰りたくないの。気にしなくていいって言ったでしょう。気にされる
と困るわ。これからもいつものように飲みに来て欲しい」
 「何だか、悪い事をしたような感じがしてきて」
 「そうね、確かに、二人で過ごした時間を考えると、少し虚しくなるけど、直ぐに
忘れるわよ。忘れないと」
 「駄目ですね、忘れる事は出来ない。忘れられない」
 「そう言ってくれると嬉しいけど、忘れるわよ。忘れて欲しい。もう、
こんな事ないでしょう」
 「不思議な事として、胸にしまっておきます」
 「不思議な事か、そうね、少しはしゃぎすぎたかな、不思議なくらい相性が
良かった」
 
 「そうですね。二人は相性が良かった」
 結局、全ては相性の問題で、同じ事をしても、相性が合うと別な世界に行った
ような感覚になり、その不思議な一体感を表現する言葉は喜びが最も適切な
言葉かもしれない。

75 :
「「 自由な人たち 」」 012+21  2010.22.12.29--052
*** 太陽に照らされた月 ***
 一夜の男と女の交わりが忘れられない記憶として残ると言う事は何を意味する
のかと考えた。行ったことは経験として、脳に記憶され、その記憶を分析し、
どのように今後処理し、活用していくか考慮し、それが知識として脳に存在して
行く。脳に残った知識はこれから起こる全ての現象を判断する基礎知識として
活用され、ものごとの良し悪しを決めていく。
 脳に記憶されたものは常に知識として記憶され、新たな知識を生み出して
行く。経験することで、新しい自分が生まれて行く訳か。
 「少し大人に成ったかな、知らなかった経験をしたから」
 「しちゃたことは忘れられないかな、それも仕方ないことよ。これからどうするかね」
 「どうすればいいんです」
 「それは貴方が考えて、私には何も言えない。ただ、したからと言って、それが
全てではないと思うけど。男と女の関係はそれぞれの人生を変えなければ
ならないわね。貴方が貴方で無くなり、私が私で無くなるわ」
 「そうですよね、何だか、一夜にして変わってしまったように感じる」
 「好きな人がいるんでしょう。その人を忘れられるの、忘れられないでしょう。
私がその女を忘れて欲しいと言ったどうするの」

76 :
「「 自由な人たち 」」 012+22  2010.22.12.30--053
*** 太陽に照らされた月 ***
 そういう問題なのか、そうではないのではないか、でも、そうなのかもしれない。
好きでなければ、一心同体には成れない。好きな人を目の前にして、別な人と
関係を持っても平常心が保たれるかと言えば、それは出来ない。だからといって、
離れていれば、出来るのかといってもそれも出来ないというのが本当なのか。
 それとも、出来ると言い切るべきなのか。多分、出来る人もいるというのが
本当ではないか。好きな人がいても、別な人を好きになれる。しかし、好きな人
には貴方だけを好きと言う訳だ。
 簡単な事だ、何事も出来るか出来ないかであり、出来れば可能であり、出来ない
という理由はない。身勝手なようだが人間の思考力はそんなものだろう。
 「好みと好きは違います。好きなタイプと好きな人の違い」
 「そうね、好きな人と好きな好みは違うわね。私は好みであり、好きではない。
その通りね。恋は一夜にしてならずね」
 「そんなことは言わないで下さい」
 「そうよ。何も言わない方がいい。結局、辛くなるのよね」
 「辛くなるんですよね」

77 :
「「 自由な人たち 」」 012+23  2010.22.12.31--054
*** 太陽に照らされた月 ***
 欲望のままに生きる訳には行かない。多分、そんな人生は詰まらないだろう。
好きだから、好き、それを通せば満足できるかというとそうではない。好きと
思うとともにもっと、好きに成れるものがあるかもしれないと考え、今好きなものも
結果として、捨ててしまうときがある。多分、人の持つ欲望は好きなものを守る
のではなく、好きなものを捨てることとも言える。
 「いい思い出よ。コーヒーでもどう。それとも紅茶にする」
 「コーヒーを」
 「私は幸せに成れない女かも知れないわ、自分の事が一番好きなのよ」
 「そうですか」
 「自分で自分を幸せにすることね。誰かに幸せにして欲しいとは思わない」
 「だから、好きな人が出来ないということですか」
 「そうなのかしら、よく分らないけど、私を満足させてくれる人がいない」
 「いなかった。相手は満足しても、満足出来ない。多分、そんな人はいない」
 「そうね。人はどこか違うし、違うと拒否してしまう。性格悪いのよ。裸で接して
いるときは言葉は要らないのね。それはまた別な世界なのよ」
 多分、そうなのだろう。恋は一夜にしてならずか、何だか、人間の身勝手な
部分を味わってしまった事を少し後悔をしてしまった。美味しい果実をただ食べる
人とその美味しい果実を種から育て、試行錯誤を繰り返し、誰もが美味しいと
言う果実を育て、それを味わい、その味に満足し、更に、美味しい実を付ける為に
努力する人との違い。

78 :
「「 自由な人たち 」」 012+24  2011.23.1.12--055
*** 太陽に照らされた月 ***
 太陽が眩しくて目を伏せた。休みの日の開放感と人には言えない満足感で、
久しぶりに味わう気分だ。
 身も心も汚れてしまったのか、それとも、身も心も磨きが掛かったのか、不思議な
気分の中で、朝日に照らされ、これから何をするか考えた。
 人肌に接し、その肌から肌へ伝わるなぬらかな感触を十分に味わい、筋肉と
筋肉がしなやかに反応し、絡み合う肉体が求める欲望の渦の中で放すチーズの
ような臭いは成熟した果実そのものだった。
 記憶を振り払う為にサウナに行く事にした。まだ午前中なので客は少ないと
思っていたが結構人はいた。それでも、風呂には人は居なかった。鏡の前に
座り、シャワー浴び石鹸で体を洗った。石鹸を流す為にシャワーを浴びると
ママとの事が思い出され体が反応してしまった。
 誰も居ない風呂につかり、反応した体を誰かに見られなかったか、周りを見たが
誰も居なかった。浅い風呂は体を伸ばし、風呂の底に手を付き、腰を挙げると
風呂の湯の中から僅かに反応した頭が水面に現れた。このままでは風呂から
出る事が出来ないなと思いながら、ゆっくり風呂の底に尻を付けた。
 熱いサウナに入り、汗が皮膚を伝わり床に落ちるの眺めながら、体に染み
付いた女の香りを絞りだそうと熱い空気の中で、幸雄は冨美のことを考えた。

79 :
「「 自由な人たち 」」 012+25  2011.23.1.14--056
*** 太陽に照らされた月 ***
 冨美を思いながら、別な女を抱いた自分が情けなく感じた。そして、冨美への
思いが更に増した。無防備の女の体から感じる体感は欲望そのものであり、
生身の肉体が無心で求め感じるものは快楽という言葉しか浮かばなかった。
 冨美を丸裸にして、その体を抱き締める。愛する女が生まれたままの姿で
自分の腕の中で蠢く、軟らかい生肌が蠢くことで同じ人間の皮膚と皮膚が擦れ
合い、密着した肌が更にお互いを刺激する。
 男と女、することは対して変わらないのに好きな人とそうでもない人では正に
月とすっぽん、冨美のことが好きなのに冨美を抱かなければ、本当のところの
欲望を知ることはできない。
 人間は好きなものを欲しがり、好きなものをどん欲に求め、それが何処かに在れば
何処までも追い求め、自分のものにする。それが生きている証明であり、人間と
しての本能だ。
 ただ、好きとか嫌いとかという感情は非常に曖昧であり、僅かな事で消えて
しまう。目で見る美しさと耳で感じる美しさがあるが、この二つはお互いに強く
連動しいて、その美しさがお互いを牽制しあい、この二つの美しさが反発し合う
と人は美しいと判断しない。絶世の美女でも男のような性格では耳から聞いた
判断は美女と判断出来ない。美しい女には言葉使いも美しく在って欲しい。

80 :
「「 自由な人たち 」」 2011.23.2.12--056
*** マダム肩をお揉みします *** 013+1
 久々に会社に来て見るといつもの変わらぬ風景が在ったので、少し安心した。
佐野は生活用品を扱う会社の営業兼企画を担当しているが主に営業が主で
仕事は外回りがほとんどで会社にはあまり来たことがない。
 今日は特に用事はないが自分の立場を確認したくて寄ってみた。
 「分かっているだろうな、内の会社の製品は売れるものばかりで、売れない
ものはないよ。売れるのは製品がいいから売れるのであって、売り方が
上手いから売れる訳ではないんだ」
 「だったら、私たちは必要ない訳ですか。そんなのおかしいですよ」
 「じゃもっと売れよ。もっと売ったら認めてやる。佐野、この子に教えてやってよ。
営業のいろはを」
 「君は誰だっけ」
 「私は山本加奈です。課長っていつもああなんですよ」
 「佐野健一、よろしく、気にするな、君なら遣れるよ。結構、成績いいじゃないか」
 「佐野さんには負けます。佐野さんはいつも成績は一番ですね」
 「そんなことは無いよ。最近はちょといいかな、でも、売れないときもあった」
 山本加奈にはじめてあった日だった。結構いい女で佐野はいい気分だった。

81 :
「「 自由な人たち 」」 2011.23.2.12--058
*** マダム肩をお揉みします *** 013+2
 佐野は久しぶりに女性に興味を抱いた。同僚ではあるが佐野はそんなことは
気にしなかった。
 「課長、山本と食事に行ってきす」
 「そうしろ、教えてやってくれ、人生の厳しさをな」
 「まだ、仕事があります。今はちょっと」
 「分かった待っている。終わったら、ここに電話を」
 携帯の番号と店の名前を書いたメモを渡した。近くのレストランでコヒーでも
飲みながら待つことにした。会社に居ても居場所がないような感じがして居心地は
良くなかった。
 「それでは課長、帰ります」
 「帰るのか、山本は」
 「話が済んだら、今日は帰します」
 「山本もか、大事に扱えよ。内のホープだから」
 「また来ます。新しい製品の情報はまた貰いに来ます」
 「また、メールで送っておく。何か意見が在ったら送ってくれ。山本、いい子だから、
分かったな」
 「心配ですか。心配でしょうね。いつものことだから」
 「心配なんかしていない。君を信用しているよ」

82 :
「「 自由な人たち 」」 2011.23.2.14--059
*** マダム肩をお揉みします *** 013+3
 落ち着いた内装で隣の客を気にしない作りで、開放感もあり、佐野は気に入って
いるレストランだ。
 
 「佐野さん、久しぶりね」
 「知恵さん、相変わらず、綺麗ですね」
 「今日はどうしたの、いつでも暇なら在るわよ。電話頂戴よ。まだ、番号は
変わってないから、待ってるよ」
 「知恵さんの顔を見に来たといいたいけど、会社の女の子とデートなんだ」
 「そうなの、私よりずっと若い人」
 「若いね」
 「そう、焼けるわね。ゆっくりしていってね」
 武山知恵はこのレストランの経営者で、佐野とは関係をもった女だった。あの時は
寒い日で、知恵がこんなことを言い始めた。
 「内の人って、ケチなのよ。寝室の暖房を付けないの寒くて、それでいて、私を
求めるのよ。何かいい方法ない」
 このとき佐野は寝室の暖房機器を販売していて、省エネの為に寝室を狭くして、
小型の空調機によって、寝室を快適に過ごせる製品を売っていた。

83 :
「「 自由な人たち 」」 2011.23.2.15--060
*** マダム肩をお揉みします *** 013+4
 「知恵さんはどんな寝室」
 「ベットよ」
 「ダブルで、大きなベットですか」
 「そうね。大きいわね」
 「蚊帳型の省エネ寝具が在りますよ。ベットを覆って、その中を温度調節可能な
空調機で埃や湿度、菌の管理が可能で、寝室全体の温度調節するより、ベット
の部分だけだから、電気代もそんなに掛からないし、冬も夏も快適な睡眠が可能
というものなんです」
 「本当、幾らぐらいなの」
 「値段は色々で、十万ぐらいから在りますよ」
 「裸でも大丈夫」
 「勿論、大丈夫ですよ。温度管理も出来ますよ」
 「それいいわね。どんなのか見たいわね」
 佐野はこの次にパンフレットを持ってくること言った。そして、自分も使っている
居ることを言うと知恵は一度、見たいといい始めた。
 「佐野さんの所に在るのならそれを見せてよ」
 「それはどうでしょう」
 「駄目、駄目なら止めようかしら」
 「駄目のはずがないでしょう。いつでもいいですよ。ただ、私も男ですから」
 「主人と行くわよ。それならいいでしょう」

84 :
< 2 >
 しかし、知恵は一人で来たのだ。何となくそんな感じはしたがこれも仕方ないと
思った。
 「主人はどうしても時間が取れなくて、ごめんなさい。タクシーが少し迷ったわ」
 「電話をしてくれれば、迎えに行ったのに」
 佐野は知恵のコートを預かり、部屋に入れた。香水のいい香りが漂った。
レストランでは香水を付けないと聞いていたので、少し、新鮮な感じがした。
 「香水ですか」
 「ちょと、店では付けないけど、それ以外は主人が好きなもので、付けるのよ」
 「ご主人が来ないのなら、連絡をもらえれば」
 「佐野さん、断るでしょう。だから、電話するの止めたのよ」
 佐野は覚悟を決めた。これも修行のうちと思った。経験は力なりと先輩が酔って
言っていたのを思い出した。女は何人も経験があるが本当に好きになった女は
いない。好きでもない女と同じベットに入るのは少し我慢と努力が必要だった。

85 :
「「 自由な人たち 」」 2011.23.2.15--061
*** マダム肩をお揉みします *** 013+5
 知恵は何となく嬉しくなった。若い男の家に入るのは初めてで、何だか変な
気持ちになった。これから何が起こるのか興味津々で久しぶりに心がときめく
ような感じだ。
 佐野は知恵を見て、微笑んだ。知恵は目を輝かせながら部屋を目回していた。
 「知恵さん、何か見付かりました。一人暮らしの男の部屋は何も無いですよ」
 「ごめんなさい。何だか、つい見てしまって、綺麗になってる」
 「掃除ぐらいしますよ。今日も、早くから掃除をしました」
 「落ち着いた部屋ね。すごく感じがいい」
 「そこに座ってください。飲み物を持ってきます。何がいいですか。アルコール
は駄目ですよ。まだ、早いですからね」
 「任せるわ。ビールぐらいなら、いいけど」
 「ビールにしますか。今日は帰りますよね」
 「泊まっていいんの。だったら、泊まろうかしら」
 「僕はかまいませんよ。ただ、ご主人が」
 「帰るわよ。泊まるのはよすわ。そんなの変でしょう」
 知恵はソファーに座り、佐野は台所からビールとつまみを持って来て、知美の
隣に座った。

86 :
< 2 >
 佐野はこれから何が起こるのか想像したが何も想像が出来なかった。知恵とは
二三年の付き合いで、レストランで話すだけで、個人的な付き合いは無かった。
 それが、知恵夫婦の夜の営みを快適にする為に佐野が扱う省エネ寝具を
進めた為に家にまで来てしまったのである。
 「乾杯しますか。知恵さんの若さに、乾杯」
 「乾杯、佐野さんの若さに」
 「知恵さんは若くて健康そうで、いいですね」
 「そうでもないわ、肩が最近凝るのよ。佐野さんはどう」
 「肩ですか。揉みましょうか。マッサージは得意ですよ」
 「本当、揉んで貰おうかしら、悪いわね。押しかけて来て、肩まで揉んでもらったら
何か、お返ししないと」
 知恵はどうすればいいのか迷ったが、佐野に何も言わずに背中を向けた。
 「それでは疲れるでしょう」と言って、クッションを持って来て、自分の座って
いる前に置き、クッションに知恵を座らせ、肩をもみ始めた。
 「何だか、悪いはビールを飲んで、肩を揉まれたら、何だか天国に来た感じ」
知恵はいい感じと思った。期待通りに進んでいるようで、嬉しかった。
 「いい感じ、凝っているでしょう。主人はこんなこと一度もしてくれないわ」
 「そうでしょうね。これも好き嫌いがあるから、僕は好きなんです。こうして
揉むのが、肩こりの人って結構多くて、これも仕事の内と思ってます」

87 :
「「 自由な人たち 」」 2011.23.2.16--062
*** マダム肩をお揉みします *** 013+6
 「天蓋ベットってあるでしょう」知恵は言った。天蓋ベットはベットに天蓋が付いた
物でベットをレースなどの布で覆ったベットで、広い寝室で使う寝具で、豪華な
ベットとして使われている。
 「キャノピーベットですね。天蓋ベットのようなものですよ。ただ、あのような
豪華なものではなく、寝室の中のテントのようなもので、蚊帳程度のものなんです」
 佐野は知恵の肩を揉みながら知恵が見たいという今日の目的の省エネ寝具の
説明を始めた。
 知恵はどうでも良かった。目を瞑り、何だか気持ちがいいし、佐野の足の間で
体が感じるぬくもりががたまらなかった。
 「いいわね。嘘みたい。来て良かった。それ買うわよ。適当なものを持って来て、
主人も何でもいいから買えって言ってたし、けちなあの人が欲しいって言うのよ。
多分、寒いのよ。冬は寒いわよ。寒くても暖房は付けないし、暖房はあるのよ。
寒い中で私の体のぬくもりがいいんだって、寒くてたまらないわ」
 佐野は黙々と肩を揉みながら聞いていた。このまま、寝室に行ってしまったら、
何となく、結果は見えているので少し心配には成った。でも、見せない訳には
いかないし、何となく気が重くなった。
 「ねえ、佐野さんもう肩はいいと思うの、見せて欲しいわ、その寝具を」
 「そうですね。見てください」

88 :
< 2 >
 佐野は知恵を寝室に連れて行った。既に、空調機がかすかな音を出して、
動いていた。音はそんなに気にならない。
 「空調機の音はそんなに気にならないでしょう。寝る前の30分ぐらい前に
スイッチを入れるといいですよ」
 「何だか、不思議な感じね。ベットが完全に覆われていて、結構、低いのね」
 「省エネが最大の目的ですから、見た目より、寝心地と省エネですね」
 「どうしたらいい、寝てみたいけど、中は暖かいの」
 佐野は頷いた。知恵は直ぐに服を脱ぎだし、下着になった。
 「じゃ寝るわね。佐野さんはどうするの、寝るでしょう」
 「そうですね。寝てもいいですか」
 佐野も服を脱ぎ、下着になって、ベットに入った。
 「確かに暖かいわ、布団も軽いし、空気が綺麗な感じがする」
 「いいでしょう。空気は綺麗ですよ。空気清浄装置が付いているので、埃は
無くなり、空気は綺麗です。温度もこれで自由に変えられるから、布団は軽い
もので十分です。真冬は零下に成っても、この中は何度でも可能です」
 「裸になってもいい」
 「裸ですか。そうですね。ご主人とのことを考えれば、裸ですよね。でも、今でも
裸同然ですよ」
 「照明もいいわね。狭いけど、寝るだけなら、こんな感じでもいいわね。主人は
空調は直ぐに止めると思うわ、遣るべきことをすれば、無駄な電気は使わないと
思うけど」

89 :
「「 自由な人たち 」」 2011.23.2.17--063
*** マダム肩をお揉みします *** 013+7
< 1 >
 「結構、寝具は埃を出しますよ。特に二人で寝るときはこの中は空気を循環させて
常に空気を清浄しているので、ご主人と何をしても快適ですよ」
 「何となく、そんな感じね。それと照明の色は変えられるの」
 佐野は照明の色を濃いピンクに変えた。知恵の肌が鮮やかなピンクに変わり、知恵は
掛けていた掛け布団を剥がした。
 「綺麗ね。恥ずかしいけど、何だか、変な気分になるわ。どうかしら、触るだけ
ならいい」
 佐野は何も言わないで頷いた。そして、知恵は握りながら、昔の話を始めた。
 「私ね、好きな人とドライブするとき、いつも、触ってた。彼は何も言わないで、
触らせていたの、最初は危ないから、止めて欲しいって言われたけど、黙って
触っていたら、何も言わなくなった。子供のころ父親を風呂や寝ていたときに、触って
いたの、何で触っていたのか分からないけど何となく落ち着く感じで、好きだった」
 「へえ、変わったお父さんですね。そんなこと在るんですかね」
 「子供のときよ。小学校までは覚えているけど、中学からはないけど、一度、
高校のとき、コタツで父の横で寝てしまい、起きた時、父のを握っていたの
驚いたわ。でも、父は気付かなかったのか、寝ていたわ」
 佐野は我慢強くされるままでいた。積極的に求めるより、相手に任せる
ことで、自分を表現する方が自然なときがあり、知恵には何も求めないで
すべてを任せることにした。

90 :
< 2 >
 「これって、売れているの、付けるのが大変ね。寝室にこんなテントのような
物を下げたら、邪魔と思うわ」
 そう言いながら知恵は佐野の手を足の狭間に乗せた。まあ、自然な成り行きで、
佐野はされるがままに手を知恵の狭間に忍ばせ優しく指を巧みに折り曲げて。
知恵の体のぬくもりを指先で感じながら、佐野の手はマジシャンのように手の
妙技が知恵を攻め始めた。何となく、佐野の体に火が付いたようだ。
 「遣るわね。さすが寝具を売っている人ね。期待通りだわ。メリハリが在って、
たまらないわ。触られている感じがしないのに体が感じるのよ。何だか、不思議」
 「この寝具は掛け布団を釣ることが出来るんですよ。一晩中、空調機を付けて
いると省エネとは言えないでしょう。だから、中が温まったら止めて掛け布団で
寝る訳です。ご主人と寝るときも、夫婦の営みが終われば、後は寝るだけで
しょう。その時は掛け布団の中で寝た方が省エネですからね。でも、冬の掛け
布団は軽くても時間が経つと湿気を持って、結構体に感じるほどの重みが
あり、寝ている間に体を圧迫する。その圧迫を無くす為に、あらかじめ、掛け布団を
釣って重みが体を圧迫しないようにする訳です」

91 :
「「 自由な人たち 」」 2011.23.2.18--057
*** 見知らぬ人々 *** 014+1
< 1 >
 「はい、キャンプトレジャーです」
 「そちらは、私設金庫のトレジャーでしょうか」
 「はいそうです。キュンプトレジャーの谷川です」
 「私設金庫を作りたいのですがどうすればいいのでしょう」
 「私どものホームページを見ていただきたいのですが、今、見れるでしょうか」
 「今、見ています」
 「ありがとうございます。それでは、私設金庫を見てください」
 「見てます」
 「直ぐに入会しますか」
 「あの、本当に1パーセントでいいのでしょうか。それ以外何も掛からないのですか」
 「何も掛かりません。入会して、アドレスを送ります。それで、終わりです。入金
されるお金の入金口座もそのとき送ります。必要資料を送ります。住所とお名前を
ホームページから送ってください。お願いします」
 「入会金もないのですか」
 「手続きだけです。お金は必要ないです。安心してください。ただ、入金されるか
どうかは分かりませんが、その入金された金額の1パーセントが私設金庫の使用料
ということに成ります」
 「分かりました」
 「それではよろしくお願いします」

92 :
< 2 >
 キャンプトレジャーはインターネットの私設金庫で、簡単に個人が私設金庫を
インターネット上に作れる仕事をしている。インターネット上で、簡単に読者から
料金を得られるシステムで、多くの人たちが利用している。
 「最近はどんなものにも私設金庫を利用しているね。ホームページを読んだ方は
購読料を払ってくださいだって。払う人がいると思うか」
 「結構、儲かっている人も居るようだよ。シークレットページを読みたい人が払う
らしいね」
 「入金したら、シークレットページが読める訳だ。購読料も1円とか10円だから
みんな読むらしいね」

93 :
「「 自由な人たち 」」 2011.23.3.25--065
*** 過去にさよならが言いたくて *** 015+1
< 1 >
 結婚をすると決めたのに、結婚前に留学をしたというので、驚いたが気持ちは
変わりそうも無いようで許すことにした。留学といっても半年足らずの短い出張の
ようなもので、それならいいかと思ったのだ。
 結婚を決めたときからふっと浮かんだのが、過去の自分にさよならを言うことだった。
別に過去に何か問題がある訳ではないが、これまで、過ごして来たところに行って
みて、そのときに出会った街や人にもう一度会って、心の中でさよならが言いたく
なったのだ。

94 :
「「 自由な人たち 」」 2011.23.4.1--066
*** 美しく、清潔 *** 016+1
< 1 >
 車をぶっとばして着いたのがこの海岸だった。どうでもいいけど、あの美しさには
驚いた。
 好きにならずに居られない。美しくそして清潔なんだ。美しいものは全て清潔と
思う。目の前に広がる海のように美しいし、海に泳ぐ魚のように新鮮で清潔な
存在、それしかないと思うし、好きに成って感じる事は全てが清潔ということ。
 何でもいい訳じゃない。誰でもいい訳じゃない。美しいから好きになったとも
言えない。美しいものなんかどこにでもあるし、美しいから認める訳じゃない、
何で好きに成るのかと言えば、美しく、清潔ということなんだ。清潔だから何でも
出来るし、清潔だから受け入れられる。清潔ならば食べる事もできる。清潔と
思うと全てを欲しくなる。

95 :
「「 自由な人たち 」」 2011.23.5.24--067
*** 過去にさよならが言いたくて *** 015+2
< 1 >
 しばらく振りに飲みたくなった。仕事帰りに飲む機会が大分最近は減ってしまった。
 「しばらく、元気だった」
 「高木さん、しばらくです。お元気でしたか」
 「中々来れなくて、申し訳ない。色々在ってね」
 「いつでもどうぞ、結婚するって、聞きましたが」
 「誰に聞いたの、時間が掛かったけど、何とかなった」
 「以前、一緒に来た人ですか」
 「そう、そのとき、結婚の事を言った」
 「言ってましたね。でも、相手の人はその気がないようなことを言っていたかな」
 「仕事と女はこれまではどうも上手く行かなかったけど、何とかなってよかったよ」
 「今日は一緒じゃないんですか」
 「結婚前に留学したいって、半年ばかり出かけた。変かな」
 「そうですか。それは寂しいですね。変じゃないでしょう」
 「良く分からないけど、行きたいものを止めるのもね。この機会に僕も色々な
所に行って見ようと思ってね」
 「いいですね。一人旅ですか」
 店を見渡して、ここにも自分の過去があることに気付いた。過去にさよなら
なんって、おかしいと思った。グラスの中の酒を揺らし、その酒を見て、少し、
微笑んだ。

96 :
「「 自由な人たち 」」 2011.23.5.25--068
*** 記憶の中の少女 *** 017+1
< 1 >
 階段を上ると神社があり、それを抜けると商店街があった。学校の帰り、そこは
通学路ではなかったが、妙子を誘い友彦は学校の帰りはそこを通って家に帰った。
 「妙ちゃん、先に行って」
 友彦は妙子の後から、階段を上がり、妙子が階段を上がる姿を後から見て、
子供ながら興奮らしきものを感じた。
 「明日も、一緒に帰ろう」
 「分かった。校門で待ってて」
 まだ、幼い妙子は友彦がなぜ階段を上がるとき、妙子を先にするのか分から
なかったが、何となく見られているような感じがしていた。
 友彦が妙子の体を見て感じるようになったのは最近だった。それは母親との
入浴からだった。
 その日は父親は出張に行き、姉は友達の所に泊まり、友彦と母親だけになり
母親が友彦と一緒に風呂に入ろうと言って来たのだ。
 「友彦、風呂に一緒に入ろう」

97 :
< 2 >
 父親とは風呂に入っていたが母親とは最近、入ったことはなかったので、
友彦は驚いた。
 「いいよ。一人で入るから」
 「なんでよ。入ろうよ。もう、誰もこないから」
 「姉さんから電話が来たら」
 「さっき、お父さんからは電話はあったし、お姉さんには電話を掛けて、様子を
聞いたから、電話はないよ」
 「そう、なら、入ってもいいけど」
 「先に入っていて」
 別に女を意識する歳でもなかったので、そのときは何とも思わなかった。ただ、
女の体には少し興味を持ち始めていたのでなんだか少し不安を感じたが、
それほどではなく、服を脱ぎ風呂に入った。
 「入った。入るわよ」
 「いいよ」
 風呂の扉が開き、母が入って来た。勿論、何も着ていない。
 「どうお」
 母はポーズを取った。

98 :
「「 自由な人たち 」」 2011.23.5.27--069
*** 老いたいい訳 *** 018+1
< 1 >
 年老いた男と中年に成りかけた女が布団の中で何やら語っていた。昼を過ぎ
女は男の家を訪ねて来た。この時間は夕方の買い物の時間で自由に過ごす
事が出来る。
 「奥さんに悪いは」 時枝は仰向けになり、天井を見ながら、声を漏らした。
 「今日は帰らないよ。ゆっくりは出来ないが心配は要らない」
 「心配はしていないけど、何となく」
 文夫は最近年老いたと思い始め、残りの人生を考るように成っていた。
 「時ちゃんとこんなことをしていると歳を忘れるよ。最近、考えるんだ自分に
残された時間を」
 「私は時間潰しなの」 時枝は体をよじって行った。
 「時ちゃん、いいとこだったのにそれはないよ」 時枝と文夫は笑った。
 文夫は時枝が買い物をしているとき、見かけた女で、よく顔を見ようと、何となく、
気付かれないように後を付けていたら、時枝が店の品物を万引きするところを見て
しまったのだった。

99 :
< 2 >
 「あのう、今のを見ました」 文夫は言うつもりは無かったのに、気付いた時には
時枝のそばに行って、見たことを言ってしまった。
 「いけませんよ。それは」 時枝は驚いたようで、黙って見つめていた。
 「私が買います。私の籠の中に入れてください。今なら、見えないし、見えても、
今なら、誰も何も言いませんよ」 
 時枝は黙って、文夫の籠に化粧品を入れた。なぜか、女の化粧品が男の買い物
籠の中に入れられ、時枝は何も言わず、文夫から去っていた。その後姿は文夫の
男心を燃え上がらせた。体がぞくっとしたのだ。おかしな感覚で、急に心臓が
どきどきしだした。気の弱い文夫に取っては自分でも訳が分からない。いつもなら
見て見ぬ振りをしていたところなのになんだが、大変な事をしたように感じた。
 店を出た時枝は店の外で文夫を待っていた。
 「おじさん、さっきはどうも、化粧品くれる」 
 「ああ、さっきの奥さん、万引きはどうも」
 「だからなんなの、おじさんに関係ないでしょう。いつも、あんな事をしている
訳じゃないの、さっきはつい魔が指しただけ」
 「そうですか、それなら、声を掛けてよかったですね。もし、そのまま、店を出て
誰かに見られていたら、大変でしたよ」

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