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2012年4月女向ゲー一般141: 選択肢を選んで1000レス目でED 5 (235)
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選択肢を選んで1000レス目でED 5
- 1 :09/03/22 〜 最終レス :12/04/25
- ・リレー形式で話を作れ
・話の最後には選択肢をつけること
・選択肢は1つのみ選ぶこと(複数選択不可)
・次に進める人は選択肢を選んだ後それにあった話を作り、1000レス目でED
・途中にキャラ追加、話まとめなどO.K.
・話を続けるときは名前欄に通し番号を入れること
・今回はトゥルーEDを目指すこと。主要人物の死亡(モブはOK)、誰かとくっつけるのは無し
・450KBを超えたら気づいた人が注意を促すこと
・新規で書き込みする方はwikiを一読すること
▼前スレ
選択肢を選んで1000レス目でED 4
ttp://game14.2ch.net/test/read.cgi/ggirl/1217756044/
▼過去スレ
選択肢を選んで1000スレ目でエンディング
ttp://game14.2ch.net/test/read.cgi/ggirl/1140272497/
選択肢を選んで1000レス目でED 2
ttp://game14.2ch.net/test/read.cgi/ggirl/1179654105/
選択肢を選んで1000レス目でED 3
ttp://game14.2ch.net/test/read.cgi/ggirl/1197461386/
▼まとめwiki
ttp://www22.atwiki.jp/1000ed/
- 2 :
-
- 3 :
- A寝るように言う
顔の擦り傷にも消毒をして絆創膏を貼った。
そしてお母さんの運んでくれたミルクティーを、お互い黙ったまま飲み始める。
春樹くんの話が本当なら、記憶と現実が食い違っているなんてすごく不安に違いない。
だけど……具体的に春樹くんはどういう記憶を持っているのか。
いつから誤った記憶かもしれないと思ったのか。
色々聞きたいことはあるのに、何をどこから話していいのかも見当もつかない。
考えがまとまる事も無く、ふと、隣を見ると春樹くんが私を見つめていた。
「どうしたの? や、やだ。もしかして口の周り、牛で白くなってる?」
口を咄嗟に隠しながら、私は尋ねた。
「違うよ。姉さんが……こんな突拍子もない俺の話を信じてくれているのかな、と思ってさ」
「どういう事?」
「記憶がまるごと捏造だったなんて、どう考えても普通じゃないから」
今までの行動や言動は、春樹くんの言うとおり普通とはほど遠い。
普通じゃないけど、話せば話すほどオカシイ人だと決め付けてしまうのも違う気がしてくる。
春樹くんを支えるように寝かせると、私は素直な気持ちを言葉にしていく。
「正しい事はわからないけど、春樹くんが嘘を言っているようには見えないんだ」
「俺の言い分なんて、狂人のざれ言かもしれないよ?」
「……きっと今の春樹くんは少しだけ勘違いしているだけだと思う」
「勘違い?」
「そうだよ。私だって、物忘れや記憶違いなんて日頃から沢山してるし、深刻になることは無いと思うよ」
「確かに、姉さんは日頃から危なっかしいからね」
春樹くんはからかうように言うと、頬を緩めて微笑む。
布団の傍らで座っている私じゃなく、記憶の中の『姉さん』に向かって言ったのだろう。
軽口でからかい合うほど、春樹くんとその『姉さん』は良い関係だったのかもしれない。
「でも私には、春樹くんが一番危なっかしく見えるよ……」
「……まぁ、こんな状態じゃ否定はしないよ」
春樹くんは薄っすらと血の滲む絆創膏に触れながら、諦めたように呟いた。
「まだ顔色が悪いし、少し寝たほうがいいかも。とりあえず二、三時間したら起こしてあげるね」
「うん」
「それでもまだ体調が悪いようだったら、お家の人に連絡してもいい?」
「…うん」
「起きたらまた話を聞かせて。私も力になるから」
「姉さん……あり…が…とう」
春樹くんの瞼が、ゆっくりと落ちていく。
安心できる環境に近いのか、すぐに規則正しい寝息に変わっていった。
私は……
@考える
A春樹くんをみる
B客間から出て行く
- 4 :
- B客間から出て行く
そっと音を立てないように客間からでてリビングへ向かうと、
お母さんがまたどこかへ出かける準備をしていた。
「あれ? どっか行くの?」
「千春を迎えに行く時間だもの」
「あ、そっか」
「あの子の様子は?」
「今は寝てる」
「そう……、本当は愛菜を一人残して行きたくないんだけど……」
「大丈夫だよ、迎えだってそんなに時間かかるわけじゃないし」
「そりゃあそうだけど……」
心配するお母さんを促すと、しぶしぶと家を出て行った。
私はそのままリビングのソファに座りテレビでもつけようとリモコンを探す。
「あれ? ないなぁ……。千春ってばまたどっかに……」
リビング中を見回した時、窓の外に誰かが立っているのに気づいた。
「?」
うちの学校の制服をきた男の子がぼんやりと空を見て立っている。
けれど立っている場所は家の敷地内だ。
(うちの制服だけど、知らない人だよ、ね……? 別の学年の人かな?)
家の敷地で何をやっているのか気になり、リビングの戸を開ける。
「あの……、家になにか?」
空を見ていた男の子は私の声に顔を向けた。
(やっぱり始めて会う人だよ、うん)
「これが……あなたが望んだ世界なんですね」
「え?」
ぽつりとつぶやくと、男の子は右手を胸の高さまで持ち上げて手を見つめる。
「……あの?」
「剣の力はあなたの力の一部を断ち切ってしまった」
私には男の子の言っている意味がさっぱり解らない。
男の子はそれ以上何も言葉にせず、ただただ自分の手を見続けている。
私は…
@何のことか聞く
A無視してリビングに戻る
Bとりあえず名前を聞く
- 5 :
- >>1乙です
Bとりあえず名前を聞く
まるで私の事を知っているような口ぶりで話している男の子。
同じ学校なのだし、私が忘れているだけで知り合いなのかもしれない。
(名前を聞けば、思い出すかもしれないよね)
「あの、あなたの名前は?」
「この世界に……僕の名前はありません」
「名前が無い? そんなはずないよ」
日本には戸籍があるのだし、名前がない人なんて居るのだろうか。
男の子を見ると大真面目な顔をしているし、冗談を言っているとも思えない。
「この世界に……僕の名前は必要ないのです」
「そんな風に言っては駄目だよ。名前がなかったら、あなたをどう呼べばいいか困ってしまうじゃない」
「……近い将来、僕はこの体ごと消滅を迎えます。ですから、一個体と認識させる必要も無いのです」
「消滅って……消えるの? あなたが?」
「はい。ですが月が欠け再び満ちていくように、別の姿としてお会いする機会があるかもしれません」
「別の姿? 意味が分らないよ」
「もし全てを悟ったとしても悲しまないでください。あなたは世界をあるべき姿に正しただけの事です」
「あるべき姿? 何を言っているの?」
「秩序を失っていたすべての力を再び本来の器に戻したことで、すべての均衡は保たれたのです」
また何を言っているのか分らない人が出てきた。
今日はとんでもない厄日だ。
「よく分らないけど、それは正しい事なの?」
「それを決めるのは、あなた自身です」
「正しいのか、間違っているのか私が決めるって事?」
「はい。じきにこの世界には、力という名の争いの元は存在しなくなります。その結果、僕のように消えるもの、また新たに得るものが出てくるというだけです」
何かを説明してくれているのだろうけど、私にはさっぱり理解できない。
まずこの男の子が消滅してしまうなんて事、夢でもあるまいし現実に起こるはずが無いのだ。
(でも……)
この子の話で一つだけ理解できるのは、何かを得る代わりに、多くのものを知らない間に失っているらしいという事だ。
何かを犠牲にしなくちゃ成り立たない世界があるなら、それはとても寂しい気がする。
「もし間違っていると後悔した時は? 何か直す方法があるの?」
「不完全な今なら、まだ目覚める事も可能です」
「目覚める事?」
「…僕があなたの力の一部を断ち切ってまで干渉したのは、これらの事を伝えたかったからです。それでは、いつまでもお元気で」
「ま、待って!……きゃっ!」
目を開けていられないような突風が吹いたと思った瞬間、男の子の姿は忽然と消えていた。
私は……
@考える
Aもう一度出てくるように言う
B客間に戻る
- 6 :
- Aもう一度出てくるように言う
「ねぇ、まって! ねえってば……」
呼びかける名前が無いというのは、ものすごく不便だと言う事に気づく。
「愛菜……? なにしてるんだ、さっきから?」
「……え、た、隆?」
「おう」
誰もいない庭に向かって呼びかけている私を不思議そうな顔で隆が見ていた。
(そういえば退院してたんだっけ……)
「あー、えっと、なんでもないよ、うん、で……もう体はいいの?」
正直に理由を話してもきっとボケてるんだろうって言われるのがオチだ。
言葉を濁しながら、別の話題を振る。
「あぁ、大分いいよ。 こうやってなんとか歩けるようになったしな」
そう言いながら隆は、ゆっくりと庭に入ってくる。
事故の後遺症で足を引きずっているのが痛々しい。
私が足に気を取られているのに気づいたのか、隆は苦笑する。
「そんな顔するなよ」
「う、うん」
隆はそう言いながら、近づいてきた。
すぐ目の前までやってきて、開いている戸をさらに開けるとそのスペースに腰を下ろした。
「ふぅ……」
「……なんか、おじいさんみたいだよ、そのため息」
「いうなよ」
苦笑を含んだ声で答えた隆は、この距離を歩くのにも疲れるのか、それともどこかを歩いて来てつかれたのか足を投げ出すようにして座っている。
どうやらしばらく居座る気のようだ。
私も隆の隣に座って、二人でぼんやりと庭を眺める。
「これからは、病院へは通いになるんだ。今まで入退院繰り返してきたけど。大宮先生の許可がでたからな」
「大宮先生?」
「ほら、お前がお見舞いに来てくれたときにいただろ?女の人みたいに綺麗な先生」
「? あのひとミナミ先生じゃないの?」
「あー、そっか、看護士さんとかみんなミナミセンセって呼んでたからな。大宮美波っていう名前なんだよ」
「なるほど……」
以前隆のお見舞いに行った時にあった担当の先生を思い出して頷く。
(大宮先生っていうより、美波先生って感じだもんね)
その後もなんでもないような、とりとめの無い話をしていると、リビングの外の方からかすかな音がした。
隆と私がその音にリビングの戸を振り返る。
戸に人影がうつり誰かがリビングに入ってきた。
それは……
@千春
Aお母さん
B春樹くん
- 7 :
- >>1乙
@千春
「ただいまー……っと、あ、隆!」
スイミングスクールから戻ってきた千春が入ってくる。
「あ、隆、じゃないだろー?隆お兄様と呼べ!」
「嫌なこった!」
べーっと舌を出しながら持っていた荷物をリビングのソファに放り投げるようにして置くと、千春は一旦キッチンへと向かう。
しばらくして、ジュースを片手に千春が戻ってきた。
「隆、もう怪我良いのか?」
こちらには来ず、ソファにだらしなく座った千春に隆は頷いた。
「あぁ、もうずっと家に居る予定だ」
「ホント? じゃあまたあのゲーム一緒にやろうよ! 今度こそ僕が勝つんだからな!」
「おー、その挑戦受けてやろうじゃないか」
「千春、今度こそ勝ちなさいよ?」
笑いながら千春の挑戦を受けた隆に、私も笑いながら会話に加わる。
事故に遭った直後の隆の落込み様を知っている千春は、以前の隆に戻っていることがうれしくて仕方がないようだ。
「なんだ、愛菜は千春の味方かよ」
「あたりまえです」
「ねぇちゃんに応援されてもなー」
「ちー、はー、るー?」
「あー、うれしいなー」
「まったく……」
以前と変わらない会話をしていると、お母さんもリビングにやってきた。
その後を、ミケがついてくる。
「あらあら楽しそうねぇ。 隆くん、そんな所に座ってないで中へ入ったらどう?」
「あー……はい」
隆は少し迷うように視線をさまよわせ、けれどすぐに頷くと「よいしょ」と言いながら立ち上がった。
それを見てお母さんは飲み物の準備をするためだろう、キッチンへと入っていく。
ミケはソファの端に陣取ると、そこに丸くなった。
「玄関から入るよ」
足を引きずり玄関へ向かった隆の背を見ながら千春が顔をしかめている。
「千春、隆の前でそんな顔しないでよ?」
「わかってるよっ! ねぇちゃんだって人のこと言えないくせに」
「う……」
確かに私も考えていることが顔に出やすいと良く言われる。
二人でこそこそ言い合っていると、廊下から驚いたような声が聞こえてきた。
「隆さん!? その足……」
「? 誰だお前……」
隆と春樹くんの声だ。
いつの間にか春樹くんは起きていたらしい。
私は……
@慌てて廊下へ向かう
A二人がここに来るのを待つ
- 8 :
- @慌てて廊下へ向かう
「春樹くん、もう起きて大丈夫なの?」
隆と話をしている間に30分近く時間が過ぎていたが、起こすと言った時間にはまだ早い。
春樹くんは私の声に振り向くと、頷いた。
「春樹くん、隆の事知ってるの?」
「そりゃぁ、姉さんの幼馴染で家にも良く来てたし……」
「なんで、お前がそんなこと知ってるんだよ?」
「……」
隆の言葉に春樹くんは口を開こうとして、結局何も言わずに考え込む。
「とりあえず、ここで立ち話もなんだしリビング行こうよ」
「そうだな」
「……」
リビングへ戻ると、千春がジュースをのみながらミケと遊んでいた。
「チハルに……ミケ?」
春樹くんが千春を見て驚いたように呟くのが聞こえた。
その声が千春にも届いたのだろう、ミケと遊ぶ手を止めて千春がこちらを向く。
千春は春樹くんを見て小さく首を傾げ、私に視線を移した。
「ねぇちゃんの友達?」
「……う、うん」
違うけれど、違うと答えたらじゃあ誰だと聞かれるだろう。
他に答えようも無くて、とりあえず頷く。
「『ねぇちゃん?』」
驚いたように春樹くんが言う。
「千春は私の弟だよ」
「チハルが姉さんの弟……?」
そう言いながらまた考え込む。
「とりあえず、そんな所に突っ立ってないで座ったらどうだ?」
一人先にソファに座った隆が私たちを呼ぶ。
「うん、そうだね……」
「はい」
私と春樹くんも空いている場所に座る。
「………」
誰も何も言わないので、妙な空気だ。
どうしよう……
@隆に話しかける
A千春に話しかける
B春樹くんに話しかける
Cこのまま黙っている
- 9 :
- Cこのまま黙っている
「……少し聞いてもいいですか?」
何を話せば良いのか分からず、話題を探していると春樹くんが口を開いた。
「その前に、なんで俺の事知ってるんだ? 会うの初めてだよな?」
その言葉に春樹くんは少し考えて口を開く。
「俺は春樹です。昔……そう、ミケの世話をしていたんです」
「ミケ……?」
全員の視線が、ミケに注がれる。
「ミケを拾ったとき……」
「ミケを……あ!」
記憶を探り、それらしい人物が思い当る。
「あの時の男の子?」
「たぶんそれが俺だよ……姉さん」
あの日私たち家族は少しはなれた町へ買い物へ出て…そこで私は一人はぐれて、神社に迷い込んだ。
そこでミケと男の子に会ったんだ……。
男の子はミケを飼ってくれる人を探していると言った。
だから、私が飼うと言ってミケを引き取った。
その後、迷子の私と一緒に両親を探してくれた親切な男の子。
あれが春樹くんだったのだ。
「そっか、初めて会うんじゃなかったんだ……」
「そう、みたいだね。俺の記憶とは別だけれど……全く接点がなくなっているわけでもないらしい」
最後の方は、独り言のようではっきりとは聞こえなかった。
「俺の知らない愛菜の知り合いか? じゃあ俺の事は愛菜からきいたのか……?
まあいいや。で、お前の聞きたい事ってなんだ?」
一人で納得した隆は最初の春樹の言葉を思い出したのだろう、気さくに話しかけている。
「あ、はい。隆さんのその足は三年前の事故の後遺症ですか?」
「ああ、そうだ。愛菜から聞いたのか?」
「……えぇ」
春樹くんはあいまいに頷くと、さらに考え込む。
「チハル…くんは、姉さんの弟、なんですね?」
「そうだよ」
「っていうか、なんで愛菜のことを姉さんって呼んでるんだよ?」
「それは……俺の方が年下ですから」
「そうなのか?」
隆が私に問うように、こちらを向く。
「うん…」
「……にしても」
「私が良いっていったから良いの!」
春樹くんの記憶がどうなっているかは分からないけれど、今は何かを確認するように考え込んでいる。
私には春樹くんが自分の記憶を整理しているように見えた。
私は……
@このまま春樹くんの質問を待つ
Aミケを拾ったときの事を話す
B隆に明日の文化祭の話をする
- 10 :
- B隆に明日の文化祭の話をする
春樹くんは相変わらず考え込んでいて、何も言わない。
記憶の整理に時間が掛かるのだろうか。
ソファーに座っていた千春は、いつの間にか携帯ゲーム機で遊び始めている。
ミケはお母さんに食べ物をねだりに、キッチンへ行ってしまった。
なんとなく、また妙な沈黙になりそうな予感がする。
(そうだ。隆に文化祭の話をしなくちゃいけなかった)
「ねえ、隆」
「ん? どうしたんだ愛菜」
「明日、私達の学校が文化祭なんだ。おばさんには言ったんだけど、聞いてる?」
「まぁ、一応はな……」
「じゃあ、話は早いね。隆、うちの学校の文化祭見に来てよ。すっごく面白いと思うよ」
明日の為に、学校中のみんなが頑張ってきたのだ。
長期入院で高校に行けなかった隆だけど、学校の雰囲気だけでも感じて欲しい。
「文化祭……か。で、お前は何をするんだよ」
まだ決めかねているのか、隆は質問で返してくる。
私は文化祭の仕事について、指折りしながら説明していく。
「放送委員の仕事でしょ。それにクラスの出し物の……演劇でしょ」
「演劇?」
春樹くんの問いかけが聞こえてきて、私は指折りを止める。
口元に手を当てて考え込んで、春樹くんはようやく話し出した。
「姉さんのクラスは、お化け屋敷のはずだったけど……」
「全然違うよ。私の書いた台本がね、クラスのみんなに認められたんだ。すごいでしょ?」
「ふーん。お前が書いたのか。だったら、そんなに期待出来ないかもな」
隆は足を投げ出したまま、茶化すように言う。
私はそんな隆を軽くにらみつけた。
子供っぽい私と隆のやりとりを春樹くんは仕方なさそうに見ている。
「ところで、姉さん。一体どんな劇をするの?」
「昔話、だよ。そうだ。隆にも何度か夢の話をしたよね? あれを劇にするんだ」
「あぁ。あの気味悪い夢のことだな……」
隆が気味悪がっていたのは、私が子供の頃から同じような夢を連続で見続けていたからだ。
まだ日本が小国の集まりで成り立っていた頃の、とても遠い昔話だ。
「夢……?そうか。姉さんは記憶と同じように、不思議な夢を見ているんだね」
春樹くんは興味深そうに呟いて、また黙り込んでしまった。
私は……
@夢の説明をする
A隆に文化祭に行けるのか聞く
B春樹くんに夢に興味を持った理由を尋ねる
- 11 :
- A隆に文化祭に行けるのか聞く
「ね、隆、文化祭に……」
「しゃーねーな。 そこまで言うなら行ってもいいぞ」
私が最後まで言うのをさえぎるように、隆が頷いた。
「ほんとう!?」
喜ぶ私に「ただし」と付け加える。
「晴れてたらな」
「大丈夫、明日は晴れだもん」
せっかくの文化祭が雨なんて嫌だと思っていたから先週あたりから
毎日週間予報をチェックしている。
結果、明日の天気は晴れの予報だ。
二人で話をしていると、視線を感じそちらに顔を向ける。
こちらを見ていた春樹くんは、私と目が合うと少し笑った。
「変わらないね、二人とも」
「? あ、春樹くんも明日予定が無かったら文化祭来てよ!」
春樹くんの言葉の意味が掴めず、首を傾げながら思いついた事を口にする。
「俺が?」
「うん、せっかく再会できたんだし、私の書いた劇も見てほしいな」
「……そう、だね」
春樹くんは少し考えてから、頷いた。
「じゃあ、明日待ってるね。
あ、私のクラスの劇は午後の部の一番最初、13時から第一体育館でやるから!」
「おう、わかった」
「……」
頷いた二人に笑って見せると、春樹くんがふと時計を見上げた。
「……俺、そろそろ戻るよ」
「え?うん……もう大丈夫?」
「うん、たぶん……。大体わかってきたから、ここが姉さんの望んだ世界なんだって」
「……え?」
その言葉を私は少し前に聞いた。
名前も名乗らないで消えてしまった男の子。彼もそんな感じのことを言っていた。
「ここなら、俺は姉さんの弟じゃない……」
呆然としていると、春樹くんが呟いて立ち上がった。
「じゃあ明日、劇楽しみにしてるよ、愛菜」
そういって微笑むと、リビングを出て行った。
最後に私の名前を呼んだ事にびっくりする。
驚いて放心していると、玄関が開き、静かに閉じる音がした。
私は……
@慌てて追いかける
Aこのままリビングに居る
- 12 :
- Aこのままリビングに居る
「ねぇちゃんってメンクイだよな」
「は?何言ってるの、そんなことないよ?」
「いや、絶対そうだって」
「ないってば」
「じゃあ、気付いてないだけだよ」
「は?」
千春はゲームを中断すると、私に向き直る。
「じゃーさ、隆の顔はどうおもう?」
「え? 隆? 普通じゃない?」
「そっから間違ってるから…。じゃーさ、美由紀お姉ちゃんは?」
「美由紀姉さん? 美人だなーっておもう」
「……その美由紀お姉ちゃんと、隆って似てると思わないの?」
「え? 結構似てると思うよ、姉弟だし」
そう言うと千春は、はーっとわざとらしくため息をつく。
「だろ? なんで美由紀お姉ちゃんは美人で、似てる隆が普通なんだよ」
「……あー」
私は隆を見る。そう言われて見れば、確かに隆だって顔立ちは整っている。
あの美由紀姉さんの弟で、同じ血を引いてるんだから当たり前だけれど……。
「な、なんだよ……」
じっと見る私に居心地悪そうに隆が身じろぎする。
「さっきの……春樹さん?だってかなりの美形だよね」
「た、確かに……」
「それとねぇちゃんの友達の香織お姉さんも美人だし」
「うん、香織ちゃんは美人だよね」
「それに、前にねぇちゃんに打合せの書類持ってきた人……えっと名前忘れたけど放送部の委員長? あの人はすごくランク高い」
「い、一郎くん? なんでそこで一郎くんが出てくるのよ!」
「ま、とにかく、ねぇちゃんの周りは平均以上の顔が多いの。
普段見てる顔が平均以上なもんだから、自覚がなくても基準が高くなってメンクイになってるの!」
「えー……」
そこまではっきり言われてしまうと、そうなのかもしれないと思う。反論すら出来ない。
「まったく……なんで並のねぇちゃんがこんなにモテてるのか、謎だね」
「? 私モテないよ?」
「はいはいそーですね。そのまま無自覚で天然でずーっと家に居るといいよ。きっとお父さんは大喜びするから」
「なにそれ、私が行き遅れるとでも言いたいの!?」
「おっと、やぶへび。じゃーなー」
私の声に千春は素早く立ち上がると、リビングを出て行った。
そのまま階段を上がる音がしたので、自分の部屋へ行ったのだろう。
「まったく、千春ってばひどいと思わない!?」
「え? あー、まあ行き遅れることはないだろ……」
「なに、赤くなってるのよ?」
「気のせいだろ。さ、さて俺もそろそろ帰るよ」
「え、あ、うん。明日待ってるから」
「おう、じゃーな」
言いながら隆も帰って行った。
急に静かになって、なんとなく落ち着かない。
どうしよう…?
@部屋に行く
Aリビングに居る
Bキッチンへ行く
C出かける
- 13 :
- @部屋に行く
そういえば、ばたばたしていて着替えも済ませて居なかった。
私は部屋に戻る事にする。
私服に着替えてベッドに転がる。
枕元に置いてある小さな熊のぬいぐるみを抱き上げていつものように話しかけた。
「今日ねミケを拾ったときに助けてくれた男の子が家に来たんだよ、春樹くんっていってねちょっと変わってるけど……」
一つ年下だけれど隆や私よりも大人っぽい雰囲気を持っていた。
それと……
「庭にいた男の子は一体誰だったんだろう?」
制服を着ていたんだから、学校の先輩か後輩だとは思うけれど……。
「見た事はないよね……たぶん。でも、私のことは知ってるみたいだったなぁ」
春樹くんみたいに昔あった事があるのだろうか?
でも、消えるとか良くわからないことを言っていた。
「二人とも、私が望んだ世界とかなんとか……、なんのことだろうね?」
私が望んだ世界だと言うけれど、今日の昼の放送部での出来事だって私が望んでいたわけではない。
かなり不本意な出来事といえる。
「私が望んだ世界なら、もっと私にやさしくても良いじゃない、ねぇ?」
熊のぬいぐるみはただ私の言葉を聴いてくれる。
それにしても今日は精神的に疲れた。
ぬいぐるみを枕元に置いて目を閉じる。
(明日の文化祭、成功するといいなぁ……)
隆は気持ち悪い夢といったけれど、私はそうは思わない。
確かに連続で同じような夢を何度も見るのは不思議だけれど、夢の内容は恋物語といった感じだ。
地方の豪族から巫女としてやってきた少女と、まだ若い帝の物語。
ぼんやりと夢の事を思い出していると、下からお母さんの呼ぶ声が聞こえてきた。
「愛菜! 千春! お昼ご飯準備できたわよ」
「はーい」
隣の部屋から、千春が返事をするのが聞こえた。
私はまだあまりお腹は空いていないけれど……
どうしよう?
@ご飯を食べに行く
A後にすると言う
Bとりあえず下に移動する
- 14 :
- A後にすると言う
「お母さん! 私、まだお腹空いてないから後で食べるよー!」
部屋のドアを開けて、キッチンに向けて叫んだ。
すると階段を上る音がして、お母さんが私の部屋までやってきた。
「食欲がないの?」
「明日の事考えたら少し落ち着かなくて」
「あら、大丈夫?」
「平気だよ。それに文化祭のスケジュールで気になるところがあるし、確認してから食べようと思ってたんだ」
「そう? なら冷蔵庫に入れておくわね」
「うん。お願い」
お母さんが部屋から出て行ったのを確認して、私は鞄の中から放送委員のスケジュールを取り出す。
(午前中はほとんど放送室にカンヅメ状態だ……)
BGMの放送、プログラムや出店の案内、迷子などのお知らせ、先生の緊急呼び出し。
タイムスケジュールはびっしりと埋まっている。
きっと委員長の一郎くんなんて、一日中休む暇は無いだろう。
(午後一番はクラスの出し物の演劇。その後は隆と春樹くんを案内するんだよね)
鞄から出した小冊子、演劇の台本をパラパラとめくっていく。
私達のクラスに与えられた時間は準備も含めてたった45分間しかない。
通し稽古では、いつも10分ほどオーバーしていた。
(不安材料はいくつか残ったままだ。けど……)
巫女役の香織ちゃんは本当に綺麗で、舞台上でも華がある。
私の夢の中の巫女に変わらないくらいの、ハマリ役になった。
他の出演者、照明、大道具、小道具、衣装、私も参加している音響だって明日の為に頑張って準備してきたのだ。
(やれる事は、全部やったんだ。後は本番に賭けるしかないよ)
私は目を閉じて、成功を祈る。
演劇の後に隆と春樹くんと行動するにしても、どうせなら気分よく案内したい。
瞼の裏には、文化祭の賑わう様子が浮かんでくる。
ほどなくして少しずつ意識が沈み込み、体が重くなっていく。
これは不思議な夢を見る前ぶれに感覚が似ていた。
私の見た夢とは……
@帝と壱与の夢の続き
A守屋さんとの夢の続き
B望む前の世界の続き
- 15 :
- A守屋さんとの夢の続き
目を開けると目の前に呆然と座りこんでいる男の人が居た。
(守屋さん?)
なぜか自分はこの男の人を知っている。
夢なのだから、なぜ知っているのかなんて気にしても仕方ないのだけれど……。
「な、撫子の君……な、なにを……、何をしたんだ!」
守屋さんはどこか不安げに私を見て来る。
私は守屋さんの鬼の力を封じたのだ。
「これから先、鬼の力は必要のない世界になるんだよ」
「君も鬼ではないか!」
「……」
守屋さんの言葉に、私は何も言えずに黙り込む。
(そう、私は鬼だ)
夢の中の私は困ったように守屋さんを見つめ、守屋さんから逃げるように出口へ向かう。
「再生の舞を、舞って来ます(全てを再生させる。光輝の森も、壊してしまった鏡も……)」
守屋さんへは伝えられなかった言葉を胸の中で呟いた私は、陣の中心へ向かう。
割れた鏡がまだ存在しているこの世界なら、鏡を元に戻すことが出来る。
全ての神器と契約を交わし、神宝の力も内にある今なら労せずできるだろう。
(壱与の代わりに私が神器を再生させて、全てを元通りにする)
神器によって一族を殺された壱与には、神器を復活させる意思はない。
けれど、元通りになった神器を再度壊すような事はきっとしない。。
幸い私は神器との契約が済んでいるから鏡を元通りに戻し、力を元の器へ戻るように誘導させれば、神器は以前の姿に戻る。
神器が元に戻れば、対となる神宝も自然と元の姿に戻る。
そこまで考えて、私はハタと足をとめた。
(あ、守屋さんのもってる神宝……)
あれに力がもどったら、せっかく鬼の力を封印したのに刀の力で封印をとかれてしまう可能性がある。
神器を元に戻したからといって、即座に神宝にも力が戻るわけではない。
ある程度の時間はかかるだろうけれど……。
神器は壱与がいるから問題はない。
修復された神器に疑問を覚えるだろうが、神器が元通りになれば、壱与は以前と同じように神子として神器を守っていくだろう。
だが、神宝はどうなるのか?
そもそも八握剣以外の神宝がいまどうなっているのか分からない。
どうしよう……
@とりあえず再生の舞を舞いに行く
A守屋さんから八握剣を取り上げる
B神宝のある場所を探る
- 16 :
- @とりあえず再生の舞を舞いに行く
(私が……やらなくちゃ……)
すべての元凶は鏡を割ってしまった罪から始まっている。
でも今の私なら、手にした力で再生させることができる。
神器も神宝も大昔のこの世界なら、本来の器がまだどこかにあるはずだ。
陣の中心にあるかがり火の光に吸い寄せられるように、私はゆっくり歩みを進める。
「撫子の君! 待ってくれ!」
守屋さんが私に駆け寄ってきた。
その手には、薄桃色のキラキラと光る薄くて細長い布が握られている。
「それは?」
守屋さんが手に持っている布を見ながら、私は問いかける。
「これは比礼だ。身に着けた者の穢れを払い、難から逃れる呪力を持っている」
「これを私に……?」
「そうだ。兵の皆のために舞を披露する君にこそ相応しい」
手渡された比礼という布は透けるほど薄いけれど、魅入られるほど美しかった。
まるで昔話に出てくる天女が纏っていた、天の羽衣みたいだ。
「でも……これは守屋さんの大切なものなんじゃないですか?」
「ああ。本当は出雲の姫……壱与に贈るつもりだった物だ」
「壱与……」
守屋さんと壱与はどういった関係だったのだろう。
私の中にある壱与の記憶に、守屋さんは居ない。
私の頭に浮かんだ疑問を見透かしたように、守屋さんは薄く笑った。
「幼少の頃、私は壱与に振られていているんだよ。また再挑戦するつもりだったが、今となってはそれも叶いそうに無い」
「振られる? 壱与にですか?」
「残念ながらな。石見国の王族だった私は……出雲国王に招かれたのだよ。政略結婚の相手としてね」
「政略結婚?」
「ああ。だが壱与はその事を知らない。おそらく壱与にとって私など、ただの幼馴染でしかないはずだろうな」
「もしかして……あなたは『弓削(ゆげ)』?」
「!!……どうしてただの遊行女婦である君が……私の幼名を知っている!?」
目を見開いて驚いている守屋さんと記憶の中の弓削が、ようやくひとつに繋がる。
『弓削』という名の弱虫で泣き虫な男の子と遊んだ楽しい記憶。
いつも壱与が連れまわしていて、そんな壱与に必死で付いていくような男の子だった。
そんな楽しかった頃の記憶が、巫女の修行に明け暮れていた頃の壱与にとって唯一の慰めだったのだ。
私は……
@さらに続きを話す
A舞を披露する
B夢から覚める
- 17 :
- A舞を披露する
「その答えは少し前に言ったと思いますけど……壱与が転生して、私になったって」
「……」
私の言葉に、守屋さんは顔をしかめて私を見た。
私はそんな守屋さんから視線をはずして、受け取った比礼を身に付ける。
「じゃあ私、舞って来ますね」
以前ここに来た自分は、この夢で起きるタイムパラドックスを畏れていた。
今はもう畏れても、迷って居もない。
再生の舞を舞い、鏡を再生させることで起きるタイムパラドックスは予想が付かない。
けれど、神器と神宝の力は人が宿すには強すぎる。この力は人が宿してはいけないものなのだ。
(それに、約束したもの……私の望む世界を見せるって)
この舞いを舞い終わった瞬間に、自分は消えてしまうかもしれない。
それでも神宝の力に翻弄され心の闇にとらわれていく高村の人たちが、そしてそんな高村に利用されて傷つく人たちが居なくなれば良いと思う。
そしてこの力で誰も傷つかない世界になってほしい。
舞台の前に立った私に、陣にいる人たちの視線が集中する。
守屋さんが用意してくれた鈴を手に取り、舞台に立つ。
深呼吸して心を落ち着けて……鈴を鳴らし、大地を踏み鳴らす。
記憶にある舞を舞いながら、内に宿る力を少しずつ開放していく。
穢された大地を浄化させる力を乗せて、森の再生を願う
散らされた命の苦しみが和らぐよう祈りを乗せて、魂の再生を願う
あらゆる物の再生を願い舞っていると、ふわりと意識に何かが触れた。
(これは、神器)
契約者である私の舞いに惹かれて来たのだろう。
三種の神器の力が集まってくる。
(元の依り代をここへ……)
神器の力へ向けて願うと、それに答えて依り代であった剣と勾玉、そして割れた鏡が頭上に現れる。
周りが騒然としているけれど、気にしている余裕はない。
力を開放しながらの舞は思った以上に大変な事だった。徐々に体が重くなっていく。
気力を振り絞って割れた鏡へ手を伸ばし、神宝の力を借りて鏡の再生を願う。
神器の鏡はそれに応えてもとの姿に戻った。
(三種の神器……もとの依り代に戻って……そして壱与の所へ帰ってあげて)
契約者の願いに力が依り代にもどると、徐々にその輪郭が薄れて消えた。壱与の所へ戻ったのだろう。
(これでもう大丈夫だね……)
私はホッとしてタンと大地を踏み鳴らした。
舞が終わり、動きを止めても私は消えては居なかった。
けれど頭が重い。力の使いすぎだろうか。
座りこみそうになるのを何とかこらえる。
神器の再生は終わった。次は、守屋さんのもつ剣をなんとかしなくてはいけない。
守屋さんの姿を探して陣を見回し、ふと異様に陣内が静かな事に気付いた。
それが徐々にざわめきだす。
「……見たか、さっきの」
「なんだったんだアレは?」
「実はすごい舞手なんじゃないのか?」
ところどころ、聞こえてくる内容に目立ちすぎただろうかと不安になる。
私は……
@ここから逃げ出す
A守屋さんを探す
B立ち尽くす
- 18 :
- @ここから逃げ出す
(もしかして……私すごく目立ってる?)
ぐるりと見渡すと、ざわめきが更に大きくなっていく。
「ネェちゃん! すごい芸じゃないか!」
「綺麗だったぞ! 思わず見入っちまった!」
「やるねぇ、さすが大将が見込んだ女だ!」
「俺にも酒の酌してくれ!」
「女だ! 久しぶりの女が居る!」
「こっちへ来いや。かわいがってやるからよ!」
賛辞とも冷やかしともつかないざわめきは止むどころか、どんどん大きくなっていく。
舞を披露しているときは集中していて周りが見えていなかったけれど、こんなにも大勢の人たちに見られていた。
状況を把握した途端、手が震えて持った鈴を落としてしまった。
段々恥ずかしくなって、顔が熱くなる。
(無理。たくさんの視線に晒されるのはやっぱり無理無理無理無理無理)
私はダッシュで宴会場の中心から逃げだす。
何人かの兵士達は私を追いかけようと立ち上がった。
けれど立ち上がったのは酔っ払いばかりで、フラフラの千鳥足だった。
(よし、これなら私にも撒けるかも)
そう思って走っていたけれど、さすが百戦錬磨の屈強な兵士の人たち。
私との距離が少しずつ縮まっている気がする。
とにかく無我夢中で走り続ける。
(やだ、やだ!もう追ってこないでってば!)
(酔っ払いの相手なんて絶対嫌だよ!)
(近寄るな! ケダモノ! ヘンタイ!)
「ハァ、ハァ、ハァ……ッ」
ガバッとベッドから起き上がり、私は目を覚ました。
今まで全速力で走っていたように、すごい汗を掻いている。
肩で息をしているし、心臓が飛び出しそうほど高鳴っている。
「なんだ夢……。ていうか私、どんな夢をみていたんだっけ……?」
@覚えている
A覚えていない
- 19 :
- A覚えていない
(だめだ、思い出せない……怖い夢ではなかったと思うけど……)
「……ねぇちゃん? どうしたの?」
「え? 千春?」
かけられた声に顔を上げると、千春が心配そうな顔をのぞかせていた。
「すごい悲鳴が聞こえてきたんだけど?」
「悲鳴……?」
「そう、「いやーーーーーー」って、悪い夢でも見たのか?」
いまだ肩で息をしている私を見た千春が、部屋の中に入ってきてベッドに座りこんでいる私を覗き込んでくる。
「わからない、覚えてないから。でも、怖い夢ではなかったと思う。……疲れたけどね」
それは本当のことなので、千春に笑ってみせる。
千春はそんな私に手を伸ばして幼い子供にするようによしよしと少し不器用に撫でる。
ときどき千春はこうやって、私の頭を撫でてくる。理由を聞いても「なんとなく」と言うだけで、ちゃんと答えてくれない。
けれどそういうときは大概私が落ち込んだり、疲れたりしているときだから、千春なりに私を気遣ってくれているのだろう。
「ありがとう、もう、大丈夫だよ」
大分落ち着いた呼吸と心臓に、再度千春に笑って見せた。
そんな私をじっとみて、千春もちょっと笑うと私の頭から手を離す。
「ねぇちゃん、文化祭の準備で張り切りすぎて疲れてるんじゃない? 今日はもうご飯食べて寝たら? 明日の本番に倒れたら意味ないよ?」
「え?」
千春に言われて時計を見ると、すでに19時近くなっていた。
お昼から6時間以上も寝ていた事になる。
「わ、もうこんな時間?」
「そう、もうこんな時間。そろそろ晩御飯出来ると思うし、下に行こう?」
千春に促されて、立ち上がる。
リビングに入ると、丁度お母さんもキッチンから顔をのぞかせた。
「あら、やっと起きたの? 良く寝てたわね。 お昼抜いてお腹空いてるでしょ、丁度出来たから食べなさい」
「はーい……、あ、お父さんお帰りなさい」
「ただいま」
ゴルフから帰って来ていたお父さんも、すでにテーブルに着いていた。
「じゃあ、いただきましょう」
「いただきまーす」
いつものように、他愛無い会話をしながら皆でご飯を食べる。
千春が真っ先に食べ終わって、出て行った。
お昼を抜いたせいか、いつもより早く食べ終わって、私も席を立つ。
あの夢のせいだろうか、異様に疲れが残っている。
これからどうしよう
@もう寝る
Aテレビを見る
B香織ちゃんに今日の通し稽古の状況を聞いてみる
- 20 :
- B香織ちゃんに今日の通し稽古の状況を聞いてみる
(そうだ。今日の通し稽古の状況はどうだったんだろう)
私は自室に戻ると、携帯電話を手に取った。
急な用事でもないし、メールの文字を素早く打っていく。
『今日は最後の稽古に参加できなくてゴメンね。
ところで、通し稽古はきちんと時間内に終われたんだよね?』
「送信っと。そうだ……今のうちにお風呂はいってこよう」
ゆっくりめのお風呂に入って、パジャマに着替える。
自室の戻って携帯を確認すると、香織ちゃんから返信が来ていた。
『落ち込んでだみたいだけど復活したみたいだね。(よかったよかった)
最後の通し稽古だけど、無事に時間内に収めることができたみたい。
私って緊張しない性質だと思っていたけど、今更になって主役の重圧感じてきたかも。
明日私がポカやらかして落ち込んでたら、今度はアンタが慰めてよ?』
(そっか。さすがの香織ちゃんも緊張するんだね)
『もし香織ちゃんが失敗したら、私の胸を好きなだけ貸してあげるよ。
それじゃ明日、学校でね』
香織ちゃんに返事のメールをして携帯を閉じる。
壁の時計を確認すると、いつの間にか10時をまわっていた。
(少し早いけど寝ようかなって……アレ?)
部屋の電気を消そうと何気なく伸ばした右手に、いつもと違う異変を見つける。
伸ばした指先が薄っすらと透けているように見えたのだ。
(何…これ?)
目をこすってみたけど、やっぱり向こう側の様子が見えるくらい透けている。
第一関節の人差し指と中指、薬指が、まるで霞んだ様に消えかかっていた。
左手を見ても、同じように消えかかっている。
私は……
@きっと疲れているだけだし気にしない
A春樹くんに連絡してみる
B隆に連絡してみる
- 21 :
- @きっと疲れているだけだし気にしない
「疲れすぎてるのかな……早く寝よう」
電気を切って布団に入ると、昼間も寝たのにストンと落ちていくように眠りに落ちた。
「……っ、撫子の君!」
どこかで呼ばれているのを感じて、目を開けると何かの木の横に立っていた。
当りは真っ暗だが少しはなれた所では火が焚かれていて、たくさんの人の気配がする。
「撫子の君!」
その明かりを背にして人が近づいてくる。
逆光で顔は見えないが、こんなふうに呼ぶのは一人しか居ない。
「守屋さん?」
「撫子の君、急に走って行ったかとおもったら、目の前で消えてしまったから、また会えなくなるかと……」
守屋さんの言葉に、舞を舞って、舞台から逃げ出した直後なのだと分かった。
追いかけてきた武士の中に守屋さんも混じっていたのだろう。
「ごめんなさい……やっぱり人前は苦手で」
「いや、それはいいんだ。……それにしても、素晴らしい舞だった」
「そうですか……?」
私が舞うのは初めてだし、自分で舞を見られるわけでもないので自分で自分の舞を評価する事は出来ない。
「ああ、素晴らしかった。皆も見入っていた」
「ありがとうございます」
「ところで……」
「はい?」
「舞の最中に君の頭上に現れたあれは……もしかして」
私の反応をうかがうように、守屋さんは言葉を切った。
「たぶん、守屋さんの考えている通りのものだと思います」
「やはり……だが、なぜ君が?」
「何でって言われると……、私がそうしたかったから、です」
私の願いのために。と、心の中でつぶやいて、ちょっと笑う。
「でも、思った以上に大変でした……見てください」
「これは……!?」
私は手を守屋さんへ向ける。指先が透けて向こう側が見えている。
「きっと、鬼の私は消えるんだと思います。 鏡を元通りにしたから」
「どういうことだ?」
「鏡が壊れて力が消え、他の人と契約が出来なくなってしまって、神器の契約はずっと壱与の魂に刻まれていたんです。「鬼の姫であった壱与」との契約」
「それが……?」
「だから、私は転生しても鬼のままだった。他の鬼たちは人に転生しているのに」
全ての神器と再度契約を交わして、私は悟った。
「その神器が元に戻った。壱与は次の巫女を選び、その巫女は神器と契約を結ぶ。そうなれば、壱与に……私に刻まれていた契約は消えるんです」
「だから君も消えると言うのか!?」
「そうです。だって、私は未来に居るはずのない鬼ですから。だから鬼の私は、消えます」
うすうすは分かっていた事だ。
もしかしたら、という可能性も考えたが、こうやって消えていこうとしている指先を見ると、それは期待出来ないということなのだろう。
「君はそれで良いのか? 消えてしまっても良いと言うのか!?」
守屋さんが私の肩を掴んで揺さぶる。
それは……
@「良いんです」
A「……良くはないです」
B「まだ、少しは時間がありますから……」
- 22 :
- A「……良くはないです」
(本当は消えたくない。薄々わかっていたけど……やっぱり怖いよ)
喉がつっかえて、ほとんど声にならなかった。
守屋さんの真っ直ぐな視線から逃げるように目をそらす。
そんな私の姿を見て、守屋さんの掴む力がさらに強くなった。
「なぜ望まないことをするんだ! なぜそんな辛そうな顔をする!」
「私の望む未来を見せるって……ある人と約束したからです」
修二くんと契約の時に約束を交わした。
綺麗事にしか聞こえない、私の望む未来を見せて欲しいと言われたんだ。
「君が犠牲になることを、その人物が望んでいるとでも言うのか!」
「多分……約束した人は……私が消えることを望んでいないと思います」
「ではなぜ!?」
修二くんは私が消えることなんて望んでいないだろう。
修二くんは修二くんのやり方で、私をいつも心配してくれていた。
私の知っている修二くんならやっぱり止めるだろう。
(だけど……)
「私が望む未来がその先にあるから……です」
「君が望む未来?」
「はい。だから未来を私の手で変えなくちゃいけないんです。そのためには仕方の無い事なんです」
私の言葉を聞いて守屋さんは黙り込む。
そして何か感づいたのか、目を見開いて叫んだ。
「まさか!? 撫子の君が消えた先に、その望む未来があるのか!?
だから君自身が犠牲になると、そういうことなのか!」
顔を上げ、守屋さんの目を見ながら私は静かに頷く。
鏡を元通りにした先、力の無い世界こそが私の望む未来の姿だ。
守屋さんは決意の固い私の姿を見て、掴んでいた手を力なく落とした。
「じゃあ、逆に聞こう。君の元いた世は……変えなくてはならないほど酷いものだったのか?」
(酷い……)
私は自問自答する。
守屋さんの言うとおり、変えなくてはならないほど酷い世界だったのか。
力に翻弄される人、利用され苦しむ人が大勢いた。
お母さんが失踪して、香織ちゃんと友達になって、新しい家族が増えた。
春樹のご飯を食べ、隆と冗談を言い合い、一郎くんと委員会に取り組み、修二くんの軽口をあしらう……そんな日常があった。
騒動に巻き込まれて、周防さんや美波さん、チハルに出会った。
そんな私を取り巻いてきたすべてを否定しなくてはならないほど、元の世界は酷かったんだろうか。
私は……
@それでも変えなくちゃいけない
Aやっぱり消えたくない
B望む未来に修二くんと冬馬先輩が居ないことを思い出す
- 23 :
- B望む未来に修二くんと冬馬先輩が居ないことを思い出す
目覚めた私はこの夢を覚えていることは出来ないけれど、ここに居る私はどちらも覚えている。
組織の手によって作られた修二くんと冬馬先輩は、この先の未来では消えていた。
けれどそれは悪いことではないはずだ。
冬馬先輩だってちゃんと言っていた。違う形で会うことがあるかもしれないと。
それなら私だって大堂愛菜ではなく、ちゃんと人として転生して別の形に生まれ変わるのだ。
「酷いかと聞かれたら、そんなことはないって答えます」
「ならば……!」
「でも、約束した人はこうも言ったんです。ほしい物はほしいって言ったほうが良い、私は少しわがままなくらいが良いんだって。
これは私のわがままなんです」
修二くんや冬馬先輩が消えてしまったとしても、その魂は別の形で転生していると信じる。
消える事には恐怖を覚えるけれど、生まれ変わること自体はどちらかと言うと楽しみでもある。
それに生まれ変わった後の私は、この恐怖を覚えては居ないだろう。
恐怖を覚えるのは今だけ、だ。
転生論を否定している守屋さんには、納得出来ないことだろうけれど…。
「私は消えます。でも、別の私が生まれるんです。
鬼じゃない私、人の私です。私が一番ほしいのは、人である私です」
力のない世界で、鬼ではなく人として。
たとえ、今の大堂愛菜が消えてしまっても。別の名前になったとしても。
「そんなに鬼である事が嫌なのか?」
「嫌って言うわけではないですけど……でも、人の世界に立った一人だけの鬼なんて、寂しいですよ?」
「ならば、私が鬼の国を再建しよう。君が寂しがらないように」
「だめです!」
「何故だ!」
永きに渡る高村の悲願、国の再興を果たす、と言った秋人さんの言葉を思い出す。
(まさか……、まさか未来を変えようとしても結局は同じ結果になるの?
で、でも今回は神器はちゃんと元に戻ったし、私が転生しても鬼じゃない。
転生を繰り返す私を使って鬼の血を残すことは出来ないはず……。
それに、修二くんと冬馬先輩はあの世界にはいなかったんだから……)
考えて、きっと再建は出来ないだろうと予想する。
けれど、気になる事もある。私は守屋さんの腰にある剣を見る。
封印を剣で破られたら、もしかしたら……。
@なんとか口で説得する
A剣を奪う
B好きにさせる
- 24 :
- B好きにさせる
「……いえ、好きにしてください」
私は不安を黙殺して笑ってみせる。
自分の指先を見るとやはり消えかけている。
これはどんなに守屋さんが足掻いても鬼の国が再建できない証拠に他ならない。
「現に私はこうして消えようとしています。
この先守屋さんが鬼の国を再建しようとしても、私が消えることには変わりないです」
三種の神器が元通りになった今、壱与が次の巫女を選ぶ前に再度神器が壊されない限り、消える運命は変わらない。
「ただ、お願いです。これ以上血が流れるようなことはしないで下さい。
もし鬼の国を再建させるのだとしても、人との共存を目指してください。
精霊や人を食料とする私たちには辛いことかもしれないけれど……人の食事だけでも何とかなるものですし」
そう、鬼の力を乱用しない限り人の食事で事足りるのだ。
壱与がそうであるように。
(それにしても、頭が重いな……)
これも、消えていく前兆だろうか?
「撫子の君…?」
「……え、あ、はい?」
どうやらぼんやりしていたらしい、守屋さんが心配そうに顔をのぞき込んできた。
「大丈夫か?」
「はい、ちょっと頭が重い感じですけど、痛いとかそういうことはないです」
守屋さんは顔をしかめて、私の手を取った。
「休んだほうが良い」
手を引かれるままに歩き出す。
だんだん何かを考えることすら面倒になってきている。
連れてこられたのは、守屋さんの寝所だった。
「横になると良い。少しは楽になるかもしれない」
そう言って守屋さんは私を寝かせようとする。
私は……
@おとなしく寝る
A寝たくないと言う
Bもう帰る
- 25 :
- @おとなしく寝る
促されるまま横になる。
けれど目を閉じる気にはならなくて、ぼんやりと部屋の中に視線をさまよわせた。
「本当に何も出来ないのか……?」
守屋さんは私の側に腰を下ろして、見下ろしてきた。
その目の奥に、焦りのようなものが見える。
「……じゃあ、守屋さん。私が居たことを覚えていてください」
「?」
「私が消えれば、私自身鬼だったことを覚えている事が出来ません。だから、守屋さんが覚えていてください」
「それが何になる?」
「少なくとも守屋さんが覚えているかぎり、鬼の私は守屋さんの中で生きている事になります」
ドラマだったか、小説だったか忘れたが誰かがそんなことを言っていた。
「忘れられない限り、消滅ではないんです。誰か一人でも覚えていてくれれば」
「……わかった、それが撫子の君の願いなら。私は君を忘れない」
「ありがとうございます」
「君の言うとおり生まれ変わりがあり、私自身生まれ変わっても、生れ落ちたその時には忘れていても、絶対に君の事は思い出す」
「そこまでしなくても……」
苦笑して、ふと思い出す。
そう春樹は覚えていた。私のことを。
(まさか……?)
「春樹?」
「どうかしたか? 撫子の君?」
八握剣を持っているのは守屋さん、そしてその力を持っていた春樹。
一致するといえば一致する。
(あぁ、ダメだもう何も考えられない)
だんだん思考があいまいになってきて、目を開けているのも億劫になってきた。
目を閉じて、ため息を突く。
「撫子の君? 眠ったのか?」
守屋さんの声がどこか遠くで聞こえた。
誰かに呼ばれたような気がして目を開ける。
そこは……
@自分の部屋
A何もない空間
B学校の前
- 26 :
- 窓から差し込む陽光が眩しい。
ぼんやりしたままの頭で辺りを見回す。 見慣れた私の天井、枕、ベッドがあった。
(あれ……?何か夢見ていたような。それに誰かに呼ばれた気がしたんだけどな……)
「愛菜〜! はやく起きなさい」
ぼんやりしたままベッドから這い出でようとしていると、一階からお母さんの呼び声がした。
壁の時計を見ると、七時を少し過ぎている。
制服に着替えて、良いにおいに誘われるように階段を下りる。
テーブルには新聞を読みながらコーヒーを飲むお父さんと、ご飯を食べている千春が居た。
私も席に着き、出された朝ごはんを食べ始める。
「ねぇちゃん。今日はいよいよ文化祭だったよな?」
お味噌汁を飲んでいた千春が、突然顔を上げて話しかけてきた。
「そうよ、それがどうかした?」
「昨日、隆とミケの人を誘ってたみたいだけどさぁ……」
「ミケの人……あぁ、春樹くんの事ね」
「ぶっちゃけ、ねぇちゃんはどっちと過ごすのさ。隆? それともミケの人?」
「そんなの二人とも案内するに決まってるでしょ。私から誘ったんだし」
「隆は足動かないくて大変そうだし、幼馴染としては放っておけないだろ?」
「まぁね……」
「でもさ、ミケの人だって不良だろ? 放置してたらヤバイ感じじゃん」
「不良って? 春樹くんが?」
「だって『姐さん』とかみたいだしさ。拳に包帯巻いてたり顔に怪我してたり、おまけに猫の世話していたなんて絶対不良だよ」
戸惑って何も言えない私に向かって、千春は「とにかく!」と指を突き出す。
「メンクイのねぇちゃんに文句は言わない。けど『二兎追うものは一兎をも得ず』だからな」
「千春……あんた難しい言葉知ってるのね」
「天然無自覚の二股も、ほどほどにって事さ。わかった?」
(わかったって言われても……)
突っ込みどころが満載すぎて、なんとも困ってしまう。
するとコーヒーを飲んでいたお父さんが、咳払いをしながら新聞を畳んだ。
「愛菜。千春。 話し込んでいる時間なんてあるのか?」
「げぇ! ヤバイ小学校に遅れる!」
「やだ! もうこんな時間じゃない!」
私と千春は、同時に声を上げて飛び上がる。急いで歯を磨いて、一目散に家を飛び出した。
腕時計を確認しながら、大急ぎで学校へ走っていく。
華やかに作られた文化祭の入場門を潜り、なんとか放送室に滑り込んだ。
スケジュールの集合時間には、なんとか間に合ったみたいだ。
@一郎くんに話しかける
A朝の千春の話を思い出す
B放送委員の仕事に没頭する
- 27 :
- >>26
827 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね :2009/04/04(土) 21:32:50 発信元:218.131.41.39
【依頼に関してのコメントなど】1レス60行までOKな配達先です。またよろしくお願いします。
【板名】女向ゲー一般板
【スレ名】 選択肢を選んで1000レス目でED 5
【スレのURL】http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/ggirl/1237648147/
【名前欄】 937
【メール欄】sage
【本文】↓
窓から差し込む陽光が眩しい。
ぼんやりしたままの頭で辺りを見回す。 見慣れた私の天井、枕、ベッドがあった。
(あれ……?何か夢見ていたような。それに誰かに呼ばれた気がしたんだけどな……)
「愛菜〜! はやく起きなさい」
ぼんやりしたままベッドから這い出でようとしていると、一階からお母さんの呼び声がした。
壁の時計を見ると、七時を少し過ぎている。
制服に着替えて、良いにおいに誘われるように階段を下りる。
テーブルには新聞を読みながらコーヒーを飲むお父さんと、ご飯を食べている千春が居た。
私も席に着き、出された朝ごはんを食べ始める。
「ねぇちゃん。今日はいよいよ文化祭だったよな?」
お味噌汁を飲んでいた千春が、突然顔を上げて話しかけてきた。
828 :827の続きです :2009/04/04(土) 21:34:35 発信元:218.131.41.39
「隆は足動かないくて大変そうだし、幼馴染としては放っておけないだろ?」
「まぁね……」
「でもさ、ミケの人だって不良だろ? 放置してたらヤバイ感じじゃん」
「不良って? 春樹くんが?」
- 28 :
- @一郎くんに話しかける
放送室に顔を出すと、一郎君が今日のプログラムを見ていた。
「おはよう一郎くん。昨日はごめんね」
「大堂か、おはよう。もう気にし無くて良い。とにかく今日一日よろしく頼む」
「こちらこそよろしくね」
「一般客の入場時間まで後45分だ。最終ミーティングに皆が集まるまで少し待っていてくれ」
「うん、わかった」
私はいつもの場所に座って、もってきたプログラムと今日の放送部のスケジュールをながめる。
その内に、他の放送部員も集まってきた。水野先生もやってきて全員そろったところで、一郎君が最終確認をしていく。
「俺は一日放送室にいる。何か緊急事態があれば、ここに来るように」
「私は、見回りなんかもあるからずっとここにはいられないけど、呼び出してくれればすぐに来るから」
水野先生の言葉にみんなが頷く。
「では、今日一日がんばろう」
一郎君がそう言ってミーティングを終わらせ、それぞれ持ち場に移動して行く。
私の午前中の仕事は呼び出しセンターでの仕事だ。
呼び出しセンターは校門入り口近くのテントにあって、迷子の呼び出しなどはそこに設置した設備で行う事になっている。
一緒に行動する子とそのテントに到着すると、丁度一般客の入場時間になった。
といっても、当然迷子がすぐにやってくるわけではない。
呼び出しセンターが忙しくなるのは、お昼頃の事だろう。
特にする事も無く、ただ時間が流れていく。
「暇だね……ね、私ちょっとだけぬけてきて良い?」
「え?」
「どうせ、誰もこないよ。ちょっとだけ、ね? じゃ、よろしくね!」
「あ……」
こちらの返事も聞かず、走って行ってしまった。
(こんなだから、一郎君に要領が悪いっていわれるんだ……)
思わずため息をついて、テントの前を通る人を眺める。
別の学校の人らしき同年代の人、この学校の卒業生らしき人、保護者らしき人、いろいろな人が入ってくる。
(まぁ確かに始まったばっかりだし、呼び出しなんてそうそう無いんだけどさ……ハァ)
「君、ため息なんかついてどうしたの? せっかくの文化祭なのに、楽しくなさそうだね?」
「え?」
急に声をかけられて、顔を上げると別の学校の人らしき同年代の男の子が立っていた。
一瞬ポカンと見つめて、すぐに仕事のことを思い出し口を開く。
「あ、あの……お呼び出しですか?」
「んー?違うよ。ただ君が暇そうにしてたから、声かけてみただけ」
「は、はぁ……」
想定外のことでどうすれば良いのかわからない。
どうしよう……
@男の子が何か言うまで待つ
Aお勧めのイベント・展示を案内する
B誰かに助けを求める
- 29 :
- @男の子が何か言うまで待つ
どうすれば良いのか分からず、男の子の様子をうかがう。
目があうと男の子は人懐っこく、にこっと微笑んだ。
(あ、あれ? 誰かに似てる気がする……)
「どうしたの? じっと見つめられると照れちゃうなぁ」
思わずじっと見たら、少しびっくりした顔をして言った。
そうは言っているが照れている様子はみせない。
私は慌てて視線を逸らした。
「ご、ごめんなさい」
「いいよいいよ、ところで君、二年の宗像ってヤツどこで何してるかしってる?」
「宗像……って、一郎くんのこと?」
逸らした視線を男の子に戻すと、うんと頷く。
「そうそう宗像一郎。なるべくなら、会いたくないんだよねー」
言って少し顔をしかめた。その顔から笑顔が消えて、誰に似ているのかが分かった。
(あ、一郎くんに似てるんだ……)
そっくりと言うわけではない。どことなく、似ているという程度。
「で、知ってる? どこにいるか」
「し、知ってますけど……、あなたは?」
「あ、俺? 大丈夫不審者じゃないよー。 俺はアイツの従兄弟で、宗像修」
「従兄弟? しゅう……くん?」
「そうそう、修学旅行のシュウって字ね。で、君の名前は?」
「あ、大堂愛菜です」
「ふーん、アイナちゃんね。 どんな字なの?」
「あ、えっと、アイは愛情の愛、ナは野菜の菜という字で、愛菜です」
釣られて名乗ってしまった後にハッとしたが、すでに遅い。
ニヤニヤと笑う修くんに、思わず顔をしかめる。
「君、騙されやすいでしょ? 気を付けないとダメだよ」
「……余計なお世話です」
「ほらほら、そんな怒らないで。 で、宗像一郎がどこにいるか知ってる?」
「知ってますけど、関係者以外立入禁止の場所だから、会えませんよ?」
「そうなの? じゃあ好都合。 俺アイツに会いたくないんだよね。だから近寄りたくないの」
「そ、そうなんですか……なら、会う心配は無いと思いますよ。
一日放送室に居るって言ってましたし、あの近くは一般客は近づけない場所ですから」
「そうなんだ、じゃ、心置きなく見物できるかな?
ね、愛菜ちゃんここの仕事終わるの何時かな。終わったら俺を……」
「何をしている、修?」
と、急に話題の人物の声が聞こえて、私と修くんが驚いてそちらに顔を向ける。
「い、一郎くん? どうしたの?放送室にいるんじゃ?」
「そうだが、放送室からここは良く見えるんだ。そしたら……」
そう言いながら、一郎くんは修くんをジロリと見る。
そう言われて校舎をみる。確かに放送室からはここが良く見えるだろう。
「お、俺は何もして無いぞ?」
「お前の言う事は信用ならない。……大堂、コイツに何かされて無いか?」
「ちょっとちょっと、あんまりじゃない? 俺何もして無いよね?」
どうやら、この二人は仲が悪いらしい。
真面目な一郎くんと、軽そうな修くんじゃ当たり前かもしれないけれど……。
とりあえず、なんて答えよう。
@「何もされてませんよ」
A「名前を聞かれただけだよ」
B「……ナンパ?」
- 30 :
- A「名前を聞かれただけだよ」
男の子はニコニコしながら「そうそう」と頷く。
一郎くんは修くんをまだ疑いの目で見ていた。
「あっ、ちょうど隣の椅子空いてるね♪ 座らせてもらおっと」
言うが早いか、修くんはさっき抜け出していった子の席に手をかけた。
その姿を見て、一郎くんがすぐに止めに入る。
「この席は部外者禁止だ」
「どうして? 空いてるなら、座らせてくれてもいいじゃん?」
「部外者は座れない決まりだ。それにお前は他校の生徒だろう」
「じゃあ、今から関係者になるよ。俺も今日からここの生徒。それでいいでしょ?」
「ちょっと、待て……」
修くんは強引に椅子に腰掛けてしまった。
そして目の前にある卓上マイクを興味深げに触りだした。
「あのさ、愛菜ちゃん。このボタンがONなんだよね。これは?」
「あっ、触ったら駄目です。それはチャイムのボタンだから」
「チャイム? どんな風に鳴るの?」
「ピンポンパンポンって、迷子のお知らせや緊急呼び出しの前に鳴らすものです。絶対に触れちゃ駄目ですよ」
「分ってるって。君の迷惑になるような事はしないからさ」
(そこに座られているだけで、十分迷惑かも……)
そんなボヤキがのど元まで出かかったけれど、初対面の人には言えるはずもない。
さすがの一郎くんも修くんの奔放ぶりには敵わないようだ。
左手で音量のつまみをつついたり押したりしている修くんを止めるので精一杯みたいだった。
その様子を見ていて、ふと気になった。
「あの、修くんって左利きなんですか?」
「へー。よくわかったね」
「それに……何かスポーツをしてるみたい……」
服の上からでも体格がしっかりしているのが分かる。
「愛菜ちゃんって、俺のこと知らないんだ。ちぇっ、他校でも結構知られてるって思ってたんだけどなー」
「もしかして何かの有名な選手とか、ですか?」
「まぁね。俺って顔もいいからさ。自然とファンの子が増えちゃって困るんだよね」
残念そうに口を尖らせているかと思ったら、すぐに自慢げに笑っている。
コロコロ変わる表情を観察しながら、見てて飽きない人ってきっとこういう人を指すのだろうなと感心してしまった。
私は……
@一郎くんを見る
Aそろそろ出て行くように言う
B何のスポーツをしているか尋ねる
- 31 :
- @一郎くんを見る
少し呆れつつどうすようかと一郎くんを見ると、視線に気付いたのか一郎くんは私に顔を向けた。
「すまないな大堂。コレは俺の従兄弟なんだが……」
「あ、うん、さっき聞いたよ」
「そうか……」
「コレとか、ひどくない? ちょーっと先に生まれたからって、年上面してさっ。たった二週間よ、二週間!」
「二週間だろうが、一日だろうが、一時間だろうが先に生まれた事に変わりはない」
「うっわー、おとなげないっ」
「うるさい、早くそこから退くんだ」
一郎くんらしくない言い合いに、目が点になる。
仲が悪いと思ったけれど、どうやらそうでもないらしい。
心を許しあっている同士の気軽さがそこにはある。
「ねぇちゃん? なにしてんの?」
思わずにこにこして見ていると、聞きなれた声がした。
「千春? あんた学校は?」
「部活だったけど、引き上げてきた」
「サボリ?」
「自主休業」
「それをサボリって言うんでしょ?」
「そうともいう。 ……てか、また引っ掛けてるのかよ」
「は?」
「二股ならぬ、四股? いや、僕が知らない所でまだまだありそうだよなぁ」
「なにバカな事言ってるの、あ、ごめんね。 これ、弟の千春」
「どうも、こんにちはと、はじめまして。ねぇちゃんがいつもおせわになってます」
千春は一郎くんにこんにちは、修くんに始めまして、と挨拶してペコリと頭を下げる。
「こんにちは、大堂の弟さんか……そういえば一度、家で会ってるな。」
「へぇー、君の弟? 結構年が離れてるんだね」
一郎くんと修くんは千春を見る。
二人の視線にも動じず、千春は修くんをじっと見る。
それから私を見てわざとらしくため息を突いた。
「メンクイ……」
「ちーはーるー! そんなことないって言ってるでしょ!」
「くっ、ぷぷぷ。 俺の顔が良いってほめてくれるんだ」
楽しそうに、修くんは笑うが私は恥ずかしいだけだ。
私は慌てて別の話題を探す。
「ところで千春、なんでこんなに早く来たの? 予定の時間より1時間も早いじゃない」
「僕が隆かミケの人案内する予定だから、下見してどこに何があるか把握しとくの当然だろ?」
「え? 二人とも私が案内するって言ってるのに」
「予定が変わるかもしれないだろ? じゃ、そういうことで。時間になったら又ここに来るよ」
千春は言いたい事だけ言うと、一郎くんと修くんにペコリと頭を下げて校内へ行ってしまった。
「なんか、しっかりしてる弟さんだね」
まだ笑いながら、修くんが言う。
私は……
@「ただマセてるだけだよ」
A「……ところで、いつまでここに居るの?」
B「あれでもいろいろ心配してくれてるみたい」
- 32 :
- B「あれでもいろいろ心配してくれてるみたい」
一郎くんは「そうか」と頷いて、今度は修くんを見た。
「いい加減そこから離れるんだ。他の人に迷惑だろう」
「大丈夫だよ〜。そうそう呼び出しなんて来ない……」
「あ、あの……」
修くんが言いかけたそのとき、控えめな声がかけられた。
見ると、とてもきれいな女の人が申し訳なさそうに立っている。
「あ、お呼び出しですか?」
「はい、あの、おねがいします」
「修……」
「はいはい」
利用者が現れた途端、一郎くんの言葉に修くんはおとなしく従った。
「では、呼びだす方のお名前と、呼びし場所を教えていただけますか?」
「あ、はい。呼びだすのは高村周防。えっと、場所はここでも良いですか?」
「はい。かまいませんよ。いま呼び出します」
女の人はホッとしたように微笑んで、ペコリと頭を下げた。
どこか不安げに周囲を見回している。
私はチャイムのボタンを押して、マニュアルどおりに呼び出しをかける。
「お呼び出しを致します。高村周防さま、高村周防さま、お連れ様がお待ちです。
至急校門脇、呼び出しセンターまでお越し下さい」
呼び出しをかけて、マイクのスイッチを切る。
「ありがとうございます」
「いいえ、すぐに……」
来ると良いですね、と言いかけて、ものすごい勢いで走ってくる人影を見つけた。
女の人も気付いたのかパッと表情が明るくなる。きっと呼びだした高村さんなのだろう。
「綾!」
「周防」
「お前はまた、少し目を話すとすぐはぐれる」
「ごめんなさい」
しゅんと小さくなる綾さんを軽く小突いて、迎えに来た高村さんはこちらににっこり笑いかけてきた。
「手間をかけさせて悪かったな、ありがとう」
「いいえ、仕事ですから」
「ありがとうございました」
再度お礼を言った綾さんに、高村さんは手を差し出す。
「ほら、今度は迷子になるなよ」
「はい」
「じゃあな」
高村さんはしっかりと綾さんの手を握って、私たちに反対の手をヒョイと上げて挨拶すると校舎のほうへと歩いて行った。
「あんなにきれいな恋人じゃ、気苦労たえないだろうねー」
修くんが二人を見送りながら、独り言のように呟いた。
そんな呟きに一郎くんが小さくため息をつく。
「俺は放送室に戻る。修、お前もいい加減イベントを見に行くなり帰るなりしたらどうだ」
「はいはい」
「じゃあ大堂、ここはよろしく頼む」
「はい」
一郎くんはそう言って戻って行った。私と修くんがそこに残される。
@修くんは無視して仕事に専念
A修くんに話しかける
B修くんに面白そうなイベントを案内する
- 33 :
- A修くんに話しかける
一郎くんが去って、修くんはようやく開放されたとばかりに「うーん」と伸びをした。
そんな様子を見て、私は修くんに話しかける。
「修くん。一郎くんが苦手なんですか?」
「まぁね。それより、ためぐち」
「ためぐち?」
「愛菜ちゃん。同級生なのに堅苦しいよ」
修くんは私の言い方が気に入らなかったのだろうか。
敬語は使うなといいたげな言葉だ。
「敬語はやめた方がいいって事ですか?」
「もちろん。堅物は一郎だけで十分だよ」
「そっか……同級生だもんね。わかったよ、これでいいかな?」
「そうそう。そっちの方が可愛いもん」
(か、可愛いって……!)
社交辞令なのか、素で言っているのか。
慣れない言葉に戸惑う私を面白そうに見ながら、修くんは椅子から立ち上がった。
「ところで愛菜ちゃん。この学校の事務所ってどこかな?」
「えっと、事務室のことかな。だったら西校舎の一階だけど……どうしたの?」
「うん。編入手続きの願書もらいに行こうと思って」
「編入の願書……?」
「そうだよ。さっき俺が言ったじゃん。今日からここの生徒になるって」
学校の編入っていうのは、俗に言う転校の事だろう。
(そういえば……ここに座る時に言っていたような)
だけどあれは言葉のあやというか、その場の軽い冗談のはずだ。
「そんな、いきなり編入なんて! 冗談だよね!?」
「どうして冗談なんて言わなくちゃいけないのさ。俺は本気だよ」
「今通ってる学校だってあるんでしょ!?」
「どうにかなるって。この学校の方がなんだか面白そうだし、色々気に入っちゃったんだよね」
「そんなの駄目だよ! 絶対に考え直した方がいいと思う!!」
私の大声に、いつの間にか戻ってきていた放送委員の女子が驚いている。
「どうしたの、大堂さん」
「いきなり転校なんて……この学校には編入試験だってあるんだよ! ねぇ、あなたも止めてあげて」
「転校?」
状況が飲み込めないのか、放送委員の子は首をかしげている。
その隙に、修くんは校舎のほうへ走り出した。
10メートルほど先でくるっと私に向き直ると、ぶんぶんと手を振り出す。
「じゃあ、俺行ってくるから。愛菜ちゃん、またね♪」
「ちょっと、待って! ……あぁ行っちゃった……」
どうしよう……
@諦める
A一郎くんに連絡する
B修くんを追いかける
- 34 :
- @諦める
何かスポーツをやっているだけはある。その姿はすぐに見えなくなった。
編入っていったって、親の了承とか必要だしきっと無理だろう。きっと…。
思わずため息をついて、椅子によりかかる。
「あの人……どこかで見た事あるなって思ってたんだけど、北附属の宗像修じゃないの?」
「え? 知ってるの?」
戻ってきた子が修くんの後姿を見送って、思い出したように口を開いた。
「知ってるも何も、北附属の宗像修っていったらテニスで有名じゃない」
「テニス……」
修くんがやっているスポーツはテニスなのだと、思いがけない所で知った。
「大堂さん、宗像修と知り合いなの?」
「私の知り合いていうか……委員長の従兄弟なんだって」
「え? そうなの!?」
その子も驚き、けれどそう言えば少し似ているという話しをしていると、いつの間にか交代の時間になっていた。
(もうすぐ千春もどってくるかな?)
校舎のほうを気にしていると、反対側から声をかけられた。
「愛菜、こんにちは」
振り向くと、春樹くんが立っていた。
顔に貼り付けた絆創膏と、手の包帯がまだ痛々しい。
「春樹くんごめん、もうちょっとまってて。もう少しで交代の時間だから」
「ごめん、ちょっと早かったみたいだね」
「平気、交代の時間なんだけど、まだ次の担当の人が来てないだけだから」
「隆さんと千春くんは……あ」
春樹くんは当りを見回し、校門の方向で視線を止めた。
同じ方向を見ると、隆がこちらへ向かってくる所だった。
「隆! こっち」
手を振って合図をすると、気付いた隆がこっちに向かってくる。
「悪い遅れたか?」
「大丈夫、時間ぴったり。千春もそろそろ戻ってくると……」
「ねぇちゃん!」
「愛菜ちゃん♪」
校舎に視線を送ると、千春と修くんが並んでこちらへ向かってきていた。
「え? 修くん?」
「そこで弟くんに会ってね。いまから愛菜ちゃんが案内してくれるって言うからついてきちゃった」
「だれだ?」
「修……って、修二先輩のことか……?面影はあるけど……」
隆が素直に首を傾げる横で、春樹くんが昨日のように考え込んでいる。
「ねぇちゃんどうするんだよ。こんなイケメン連れて歩いてたら目立つぞ?」
「う……、でも、修くんはともかく隆と春樹くんは私が誘ったんだし……」
「ま、どうするかはねぇちゃんが決めれば良いけどさ」
千春こっそりと言われて周りを見ると、確かに視線、特に女子の視線が集まっている気がする。
どうしよう…
@皆で回る
A隆と回る
B春樹くんと回る
C修くんと回る
- 35 :
- @皆で回る
「せっかく集まったんだもん。みんな一緒に回ろうよ」
私の提案に、お互いが顔を見合している。
ほとんど面識の無い人たちが集まっているから、なんだか妙な感じだ。
「ねぇちゃん、こんな団体様ご一行じゃ目立つって」
「確かに目立つけど……せっかく集まったんだし、仲良くなれるチャンスでしょ?」
私の言葉が気に入らないのか、修くんは手をヒラヒラとさせる。
「ダメダメ。愛菜ちゃんと一緒に回るのは俺なんだから」
「ていうか……こいつ何なんだ」
隆は修くんを見ながら、眉をひそめる。
「さっき知り合った宗像修くんだよ」
「さっき? それにしては随分と馴れ馴れしいな……」
「へー。アンタ変わった松葉杖してんだね」
修くんは隆が腕に通しているロフトランド式の松葉杖を指差してジロジロと見ている。
普通ならあえて避ける話題だろうが、修くんはお構いなしのようだ。
「隆は少し足が悪いんだ。だけど、前よりずっと沢山歩けるようになったんだよ、ね?」
「………」
修くんの不躾な視線を、隆は居心地悪そうに受け止めている。
昔の隆なら相手に突っかかっていただろうけど、少し見ない間に大人になったみたいだ。
千春はこんなんで大丈夫なの? という顔で見てくるし、集団としてのまとまり最悪だ。
そんな中、さっきから黙って私達の様子を見ていた春樹くんがようやく重い口を開いた。
「俺、お腹が空きました。とりあえず皆で昼食にしませんか」
春樹くんの言葉で、そういえばお昼間近だった事を思い出す。
さっきから不穏な雰囲気だった二人も、そういえばという顔をしていた。
声には出さないけれど、ここに居るみんなの同意を得たようだ。
私は……
@校庭の出店をまわる
A校舎内の店を探す
B春樹くんが紙袋を持っているのに気づく
- 36 :
- A校舎内の店を探す
私も午後の演劇が始まるまでに、昼食を済ませておかなくてはいけない。
隆の足を考えると食べ歩きになる外よりも、ゆっくり座って食べられる中の方が良いだろう。
「じゃ、中入ろうか。飲食店は1階に集中してるから、一通り見てどこにするか決めようよ」
「そうだな」
「そうしましょう」
「愛菜ちゃんが言うならしかたないなぁ」
「おっけー」
私の言葉にとりあえず四人とも頷いてくれる。
1階を一回りして「出前食堂」とかかれた教室に入る。
他のクラスがやっている飲食店のメニューを買ってきてくれる、という食堂だ。
三年の有志が企画したもので、ここなら外のメニューも中のメニューも両方頼めるということで、皆の意見が一致する。
「なるほど〜、時間が余りとれない三年生だから許される企画だよね」
修くんが楽しそうに笑いながら、教室に入る。
「そうですね」
春樹くんも続いて中に入る。他の皆も次々と入り、空いている席を探してぐるりと教室を眺めると。
「「「「あ」」」」
偶然四人の声が重なった。
千春以外の視線が一ヶ所に集まる。
「さっきの呼び出しの人だ」
修くんが呟く。
「周防さんに兄さん?」
春樹くんが驚いたように動きを止める。
「大宮先生?」
隆が見慣れた姿に首を傾げている。
それぞれが、それぞれの呟きを聞いて顔を見合わせる。
入口で立ち止まっていると、気配に気付いたのか綾さんが顔を上げた。
「あら」
私を見つけて綾さんが会釈をしてくる。
それに同じテーブルについていた人たちもこちらを向いた。
「あ、さっきの放送の人、……と、春樹?」
高村さんが私を見つけてにこっと笑い、その横に居る春樹くんを見て首を傾げた。
私が唯一顔を知らない眼鏡をかけた男の人も、驚いたようにこちらを見ていた。
どうやらあのテーブルにはそれぞれ見知った顔が集まっているらしい。
「すみません、中入るか、外出るかしてください。通れませんよ」
立ち止まった私たちに、後から声がかけられる。
「あ!すみません」
私は慌てて…
@空いているテーブルに移動する
A綾さんたちのテーブルに移動する
B教室の外に出る
- 37 :
- A綾さんたちのテーブルに移動する
「すいません。同席してもいいですか?」
周りは昼時ということもあって込み合い始めていた。
ミナミセンセじゃなくて……大宮先生たちに私は同席を願い出る。
「オッケーオッケー。大人数の方が楽しいじゃないか」
同席していた放送の人はノリがいいのか、大げさなほど歓迎してくれた。
その言葉に促されるように、私たちはそれぞれの席に着く。
かなりの大人数になった席を、私は改めて見渡す。
すると私の左隣に座った隆が、担当医だった大宮先生と話し始めていた。
「隆くん。久しぶりのお家はいかがですか?」
「やっぱり病院よりメシはうまいよ。やっぱり病院食は味気ないからさ」
「こっちの男は高村周防先生。精神科の先生だけど……顔くらいは見たことあるんじゃないですか?」
「あぁ。話したことは無いけど、院内で見かけたことならあるよ」
「その隣は私の妹の綾です。この周防に騙されて、彼の婚約者になってしまいました」
その会話が耳に入ったのか、綾さんと話していた周防さんが大宮先生の方をジロッと見る。
「騙されたとは何だ! 俺達はちゃんと愛し合って婚約してるんだぞ!」
「綾も趣味が悪い。もう少しマシなのを選べばいいのに」
「お、お兄ちゃん!」
大宮先生とは隆のお見舞いの時に挨拶を交わす程度だったけど、実はかなりの毒舌のようだ。
千春に目を向けると、修くんと何やらコソコソと話をしている。
「弟くん。君のお姉さんって今フリーなのかな?」
「うーん。よくわからないけど、少なくとも三股はしてると思うよ」
「三股……? それは落としがいがありそうだ」
「修さん。もしかしてねぇちゃん狙ってるの?」
「まぁね。不思議なんだけど初めて会った気がしないんだよなー」
「その言葉、ナンパの常套手段じゃん」
「弟くん……君って難しい言葉知ってるんだね」
言っている事は聞き捨てなら無いが、この二人は意外と気が合うのかもしれない。
私は……
@メガネの人と春樹くんの会話を聞く
Aオーダーを取りに来た先輩に気づく
B話しかける
- 38 :
- @メガネの人と春樹くんの会話を聞く
「兄さんがこういう場所に来るなんて珍しいね」
「学校の脇を歩いてたら、周防が呼びだされてる放送を聞いてね。
ちょっと顔を見ようかと思ったら、先に周防に見つかって現在に至るって感じかな」
春樹くんが兄さんと呼んでいる人を見ると、顔はそれほどでもないが雰囲気が似ている。
(私を「姉さん」って呼んでたけど、そうなると春樹くんの記憶の中では私はあの人の妹だったのかな?)
そんなことを思っていると、そのお兄さんと目があった。
慌てる私ににこりと微笑んできた春樹くんのお兄さんはとても優しそうだ。
「あ、ねえさ……いや、愛菜。この人は俺の兄で……」
「高村秋人です」
「あ、大堂愛菜です……」
「俺と兄さんは周防さんの従兄弟なんだ」
言われて、周防さんと春樹くんが同じ苗字だったことに気付く。
「俺の従兄弟とは違って、みんな仲よさそうだね」
「なんだ、アンタは従兄弟と仲悪いのか?」
私たちの会話を聞いていた修くんの言葉に、隆が疑問をぶつける。
「悪いもなにも、出来る事なら一生会いたくない……」
「ほぅ? そう言うならさっさと帰ったらどうだ、修?」
「げ……」
「? コイツがお前の従兄弟?」
「い、一郎くん……。今度はどうしたの?」
「昼食の時間だから、少しだけ抜けてきたんだ。ここで注文して放送室に届けてもらおうとしたら、コレを見つけたからな」
冷たい視線で修くんを見下ろす一郎くんに、そ知らぬ顔でメニューを眺める修くん。
「……なんとなく顔は似てるけど、性格正反対って感じだな」
一郎くんと修くんを交互に見て、隆が苦笑する。
そこへ焼きそばとお好み焼きのいい匂いをさせて、一人の男子生徒がやってきた。
「おまたせしました。ご注文のお好み焼きと焼きそばです」
そう言って手際よくパックに入ったお好み焼きと焼きそばを置いていく。綾さんたちが頼んだ分が届いたらしい。
「あ、こっちも注文お願いします」
修くんの言葉に男子生徒は頷き、その場にとどまる。
「えっと、俺は焼きそばとおでん、それからカレーライスね。愛菜ちゃんは?」
「あ、私は……、たまごサンドと、紅茶、ホットで。ほら、千春も選んで」
「僕はホットケーキにイチゴパフェにコーラ。隆は?」
「うーん、俺も焼きそば……と、野菜サンドと、コーヒー」
「俺はお好み焼きとミックスサンドとコーヒー」
「ついでに頼んで良いだろうか、野菜サンドとコーヒーを放送室まで届けてほしいんだが」
一郎くんの言葉に男子生徒は頷き、一通り聞き終わると復唱する。
「ご注文は、焼きそばが2つ、おでん1つ、カレーライス1つ……
……内、野菜サンドとコーヒ1つずつは放送室へ配達ですね?」
メモを取っていた様子もないのに、すらすらと答えたその人は私たちに確認の視線を投げてくる。
「え、えっと……良いんだっけ?」
「うん、おっけー」
私の視線に、指折り数えていた修くんが頷く。
修くんが頷くと、男子生徒は小さく「おまちください」と言って教室を出て行った。
すごく記憶力の良い人らしい
@一郎くんにさっきの生徒の事を聞いてみる
A「すごいね……」と呟く
B午後の予定を打ち合わせる
- 39 :
- A「すごいね……」と呟く
「すごいけど、えらく無愛想だな」
私の呟きが聞こえたのか、男子生徒の後姿が見えなくなってから隆が言った。
そういえばオーダーの時も、運んできた時も笑顔一つみせなかった。
「確かに、ぜんぜん愛想はよくなかったよね」
「こういう接客って、笑顔が基本だろ」
「まぁね。三年生の有志でやってるお店だから、先輩なんだろうけど……」
「ここに座る時、サービス料として金も取られてるんだぜ」
「一人たった50円だけどね」
「50円だろうと金は払ったんだから、俺達は客だ。あのウエイターが戻ってきたら、言ってやろうかな」
「だけど先輩ってことは、年上だよ」
「俺はここの生徒って訳じゃないし、平気だって」
オーダーは的確だし、対応も早い。
それはいいんだけど、やっぱりもう少し愛想よくしてくれた方がお互い気持ち良いだろう。
「じゃあ、私が言ってみるよ」
「え!? お前がか?」
「うん。やってみる」
一郎くんは仕事があると言って放送室に戻り、私達はそれぞれの席で話し込んでいた。
しばらくすると、無愛想な男子生徒がすべてのメニューを持って教室に入ってきた。
そして手際よくそれぞれの席に注文どおりの品を置いていく。
たまごサンドと紅茶が目の前に置かれたとき、私は意を決して声を掛けた。
「す、すいません」
「……はい」
「追加注文……いいですか?」
「……お伺いします」
ボソッとした小声で無愛想な男子生徒は言った。
「メ、メニューには載っていないんですけど……え、笑顔を一つください」
「………………」
意味が通じなかったのか、男子生徒は黙って私を見下ろしている。
面白いことを言おうとしてスベった時のような、居心地の悪さがこの場を包む。
(ど、どうしよう〜〜)
私は……
@もう一度言う
A冗談と言ってごまかす
B様子をみる
- 40 :
- B様子をみる
私を見下ろしたまま動かないその人は、しばらくしてパチパチと瞬きをした。
それから、フッっと吹きだすように笑う。
(うわ、笑うとすごく軟らかい雰囲気になる人だなぁ)
びっくりして思わず見入っていると、くすくすと笑いながら口を開いた。
とりあえず、不快にさせなかったようでホッとする。
「面白い人ですね。……ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「え、あ、はい」
頷くと、今度ははっきりとにっこり笑って私の頭にポンと手を置いた。
「え?」
慌てる私の頭をまるで子供にするように撫でた後、お辞儀をすると「失礼します」といって離れて行った。
その男子生徒に別の生徒が「おーい、大和、こっちもよろしく」と声をかけている。
苗字か名前か分からないが、どうやら大和という名前らしい。
その大和先輩はさっきの事を思い出すのか、別の注文を受けながら笑いをこらえるように口に手を当てている。
「な、なんだ……ちゃんと笑えるんじゃない」
なんとなく言い訳するように呟くと、千春がため息を付くのが聞こえた。
「ねえちゃんがどうやって男を引っ掛けてるか、ちょっと分かった気がする……」
聞き捨てならないと、軽く千春をにらむとホットケーキに集中するふりをして私を無視する。
「確かに今は笑って接客してるけど、アレじゃちょっとちがうだろ……」
呆れたように隆が肩をすくめ、焼きそばを食べ始める。
「愛菜さんは面白い人ですね、今までの春樹の友達には居なかったタイプだ」
私たちのやり取りをみていた秋人さんが、からかうように春樹くんを見ながら言う。
「それを言うなら、兄さんの友達にも居ないタイプなんじゃないの?
そもそも、ねえ……愛菜みたいなタイプがめったに、居ないと思うよ」
「それは言えるな」
和やかに話して居るが、その内容に思わず顔をしかめる。
@「それってどういう意味ですか?」
A「私はいたって普通です!」
B「………」
- 41 :
- @「それってどういう意味ですか?」
変わり者だと言われているみたいで、私は頬を膨らませる。
そんな私の顔を見て、春樹くんが穏やかな顔をしながら微笑んだ。
「違うよ。俺も兄さんも愛菜のことを褒めているんだから」
そう言うと、春樹くんは席にいる全員の顔をぐるりと見渡した。
その視線につられる様に、私も偶然に居合わせた人達を見る。
みんな和気藹々と、楽しそうに食事をしていた。
「きっと愛菜には人を惹きつける不思議な力があるんだよ。ここに集まったみんなも姉さ……ううん、愛菜が居たから集まれたんだ」
「私が……居たから…?」
「そうだよ」
「そ、そんな……ただの偶然だよ」
今日は文化祭で一般の人達も集まっているから、偶然居合わせただけの事だ。
それぞれの人達が少しずつ繋がりあって、こうやって同席できたに過ぎない。
知り合いが増えたのは嬉しいけど、まるで私が引き起こした必然のように言う春樹くんが分らなかった。
「決して偶然なんかじゃないよ。こうやってみんなが集まって笑い合えるのは……愛菜が居たからなんだ」
春樹くんは自信を込めた言葉で断言する。
そんな春樹くんに対して、何も言えなくなってしまう。
真っ直ぐな瞳は逸らされることなく、私だけをしっかりと捕らえていた。
「俺は知っているんだ。愛菜がどれだけひたむきに頑張ってきたか。
たくさん苦しんでいたのも、悩みながら決断してきたことも……全部覚えているんだ」
昨日会ったばかりの春樹くんが、まるで私をずっと見守っていたように話している。
まだ記憶違いが治っていないのだろうか。
困惑している私に気づいたのか、お兄さんの秋人さんが春樹くんをたしなめた。
「春樹、愛菜さんが困っている」
その言葉で、春樹くんは我に返ったようだった。
そんな春樹くんを見て、秋人さんはため息を吐きながら私に頭を下げた。
「済みません、愛菜さん。最近の春樹は少し記憶が混乱しているようなんです。あまり気になさらないでください」
「いいえ……」
春樹くんに視線を向けると、顔を伏せながら小さな声で「ごめん」と謝っていた。
私は……
@「いいよ。気にしてないから」
A「春樹くんの言うとおりだったら、嬉しいな」
B「春樹くん。怖い……」
- 42 :
- @「いいよ。気にしてないから」
記憶の混乱の事は知っているから、笑って首を振る。
春樹くんの記憶の中にいる「姉さん」はそういう風に一生懸命がんばる人で、そしてそんな「姉さん」を春樹くんは好きなのだ。
(私とはぜんぜん違うとおもうんだけどな)
そんな事を思いながらたまごサンドを食べていると、大宮先生と隆の声が耳に入った。
「隆くんたちはこの後どうするんですか?」
「俺たちは……すこし時間潰して、午後一番に愛菜のクラスの出し物を見に行く予定です」
「彼女のクラスの出し物ですか、何をやるんですか?」
「演劇だそうです」
「へぇ、演劇?」
「演劇か、面白そうだな。何をやるんだ?シンデレラか?白雪姫か?」
二人の会話に周防さんが加わる。
「そういうのじゃないですよ。愛菜が書いた脚本なんです」
「え、愛菜ちゃんが?」
「愛菜が良く見る夢をそのまま脚本にしたんだよな」
「う、うん」
皆の視線が私に集まって、ちょっと居心地が悪い。
「愛菜ちゃんが書いた脚本か、それは是非見にいかないとね。で、愛菜ちゃんはなんの役なの?」
修くんがにっこり笑って聞いてくる。
「私は直接舞台には上がらないよ。音響担当だし」
「えー、なんだ、残念。でも見に行くよ」
「うん、楽しみにしてて。……よければ皆さんも見に来てください」
「そうだね……春樹も行くんだろう?」
「うん」
「じゃあ、一緒に行こうかな」
「私も行きたいわ」
「俺は綾についていくから」
「周防は来なくても良いですよ?」
わいわいとまたそれぞれの会話に戻っていく。
私はそれを見ながら、なぜかとても嬉しくなった。
そのまま和やかに食事を終え、教室を出る。
時計を見ると結構な時間が経っていて、もう演劇の準備のために体育館へ行かなければいけなかった。
「ごめん、私演劇の準備でもう行かなくちゃ」
「そうか、俺たちは後からゆっくり行くよ」
「うん、分かった、また後でね」
隆の言葉に皆が頷いたので、私は手を振って体育館へ向かう。
体育館ではまだ前のプログラムの最中だったが、舞台袖へ行くとクラスの皆も徐々に集まってきていた。
とりあえず……
@香織ちゃんの所へ行く
A音響設備のチェックに行く
B台本を再確認する
- 43 :
- @香織ちゃんの所へ行く
舞台袖の中で香織ちゃんの姿を探す。
私は香織ちゃんの姿を見つけると、思わず息を飲んだ。
「香織ちゃん……すごく綺麗……」
「あ、愛菜〜〜!!」
化粧をして、舞台用の古代巫女の衣装に身を包んだ香織ちゃんが胸に飛び込んできた。
頭には冠をして、白を基調とした着物に赤の帯を締めている。
下半身はヒラヒラのスカートに似た袴、首には勾玉を提げていた。
うしろの長い髪は下ろして、横の髪はフワッと結ってある。
(本当に夢の中の巫女みたいだ……)
「愛菜〜どうしようー! 緊張してきたー」
香織ちゃんにしては珍しく動揺している。
いつもは私が香織ちゃんには励まされてばかりだけど、さすがに今回は逆のようだ。
泣きつく香織ちゃんに、私は声を掛ける。
「練習どおりにしていればいいんだよ。いつもの香織ちゃんらしく、ね」
「うー。いつもの私って一体、どんな風なのよー!」
「えっと、面倒見が良くて自信満々でお調子者でたまにドジして……ノリがいい?」
「何よ。それじゃ駄目じゃない!」
「駄目じゃないよ」
「このままじゃ、頭に叩き込んだ台詞全部忘れそうだわ。そうだ、愛菜」
夢のように綺麗な香織ちゃんが、私の前に仁王立ちになる。
そして、くるっとうしろ向きになった。
「喝入れて!」
「カツ?」
「そうよ。こう、背中でもお尻でもなんでもいいから、平手でバシッといっちゃって」
しゃべるといつもの香織ちゃんなのが、らしいと言えばらしい。
練習では良い演技をしていたし、きっと香織ちゃんなら上手く出来るに違いない。
腕時計を確認すると時間が迫っている。
私もそろそろ音響の方に行かなくてはいけない。
私は……
@背中を叩く
Aお尻を叩く
B抱きつく
- 44 :
- B抱きつく
私はぎゅっと香織ちゃんに抱きついた。
緊張のためか、香織ちゃんは少し震えている。
「大丈夫だよ。香織ちゃんなら絶対失敗しないから」
「……どうして、そう思うのよ」
「だって、香織ちゃんだもん!」
「ふふ、なにそれ?」
こわばっていた背中から、ふっと力が抜ける。
「香織ちゃんがいっぱい練習してたの知ってるし」
香織ちゃんから離れて、言うと振り向いた香織ちゃんに笑ってみせる。
「そうよね、何回も練習したもんね。いざとなったらアドリブでもなんでもやればいいのよね!」
「そうそう」
力強く言った香織ちゃんに、頷いて私は再度時計を見た。
「あ、私ももう音響の方に行かなくちゃ。ちゃんと見守ってるから、がんばって!」
「うん、愛菜の書いたシナリオだもん、絶対成功させなくちゃね!」
ぐっとこぶしを握って自分に言い聞かせるようにした後、香織ちゃんが私に手を振った。
「お互いがんばりましょう!」
「うん!」
(香織ちゃんはもう大丈夫かな……)
音響設備の所に移動すると、丁度前のプログラムが終わる。
私たちの劇まで15分の休憩を挟むが、その間に舞台の準備を終わらせないといけない。
何とか幕が上がるまでにセットの準備が終わり、香織ちゃんが舞台の中央に立ち、幕が上がるのを待つ。
その間にこっそり客席を見ると、隆達はほぼ中央に座っていた。
(時間どおり来たみたいだね)
私が皆の姿を見つけるのと同時に、幕が上がり始める。
私は慌てて劇に集中する。
幕が上がると、まず香織ちゃんの姿に体育館中にほぅというため息が響いた。
(そうだよね、香織ちゃんきれいだもん)
私は台本を確認する。
最初は……。
@壱与と少年ののシーン
A神器で自分の国が滅びたのを知るシーン
B壱与が何も食べず部屋にこもっているシーン
C神器の力が無くなり勤めを果たせず嘆くシーン
- 45 :
- @壱与と少年ののシーン
私は深呼吸をして、ナレーションを読み始める。
「――ずっとずっと昔、人々がまだ八百万の神々だけを信じ、祈りを捧げていた時代。
日本がようやく一つの国として成り立ち始めたものの、 内乱は収まらず、その存在もまだ強固なものではありませんでした。
先代の巫女から選ばれ、帝の元で託宣の巫女として生きていくことになった壱与。
豪族の娘だった彼女は故郷を離れ、神殿に幽閉されるまま日々を泣いて過ごしていました。
まだまだ壱与は幼く、巫女としても未熟だったために、味方になってくれる者がだれも居ませんでした。
そんな時、一人の少年と出会ったのです」
私は音声をオフにして、虫の音のBGMを再生する。
舞台上は夜の設定のためにほの暗く、香織ちゃんのすすり泣く声が響く。
私の横に居る子がSEで物音を再生する。
場内には『ガタッ』という音が響き、香織ちゃんはビクッと肩を震わせた。
「こんな遅くに……だれ?」
香織ちゃんは脅えた目を凝らして、舞台横を見る。
するとスポットライトが照らされ、男の子が立っているのに気づく。
「君こそだれ? ここはだれも入っちゃいけないはずだよ」
古代の衣装を身に着けた、同じクラスの九条武志くんが現れた。
私と同じで少しあがり症なところのある、気の優しい男子だ。
女子に免疫が無いのか、香織ちゃんと演技していてもすぐに赤くなるから練習は大変だった。
今はそれも克服して、香織ちゃんに負けない存在感が出るようになっている。
私がぼんやりしている内に舞台上では、香織ちゃんが故郷の出雲の話をしている場面になっていた。
「その幼馴染の弓削ったら、泣き虫なくせにお嫁さんになって欲しいって言ってきたの。
だから私、言ってやったわ。大きくて、強くなったらお嫁さんになってあげてもいいわよって。
でもね、何をやっても鈍くさいのに手習いだけは私よりも良かったのよ。
弓削は楽しそうだったけど、私は一日の中で手習いの先生が就く時間が一番キライだったんだ」
故郷の話を聞いてもらうのが嬉しい壱与を、香織ちゃんはのびのびと演じている。
「僕も手習いは嫌いだな。やっぱり僕たちって、似てるね」
武志くんが香織ちゃんに向かって微笑み、香織ちゃんも笑い返していた。
この一幕は二人のから始まり、一年後また再会するまでで終わる。
その再会で、壱与は男の子から勾玉を贈られるのだ。
壱与が正式な巫女になってからが、二幕のスタートになっていた。
@一幕の続きから
A二幕目から
B客席を見る
- 46 :
- A二幕目から
一旦幕が下り、舞台に神器のセットが置かれるのを確認して、私はナレーションを読む。
「ある日、いつものように神託を受けるため儀式を行った壱与。
しかし八咫鏡に映し出されたのは、故郷の出雲に大和の兵が攻め込み、村々を焼き払っている姿でした。
鏡の中で人々は戦火に逃げ惑い、無残に殺されていきます。
壱与は悟りました。これはすでに起こってしまった過去の出来事だと」
ナレーションと同時に幕が上がり始め、終わると同時に香織ちゃんのセリフが始まる。
「な、なんで……こんな事に……出雲が」
泣く香織ちゃんの背後から、武志君が冷たい表情で近づく。
「壱与、とうとう視てしまったんだね」
その言葉に反応して香織ちゃんがパッと振り向くと、武志くんに掴みかかる。
「帝……あなたがやったの!」
少年は観念したように肩をすくめる。
香織ちゃんと武志くんの問答が続き、香織ちゃんを抱き締めようとした武志くんを突き飛ばして、香織ちゃんは鏡を割る。
その後草薙剣を手に取った香織ちゃんは結局帝を傷つける事が出来ず、放心して座りこむ。
「壱与、僕とおいで。君だけは僕が守るから」
武志くんが差し出した手を香織ちゃんはただぼんやりと見つめる。
そのまま動こうとしない香織ちゃんを覗きこむように、武志くんも屈んだ。
「壱与、さっきも言ったけれど僕には大和の民を守る義務がある。これは必要なことだったんだ」
答えない香織ちゃんに、武志くんが話し続ける。
「出来る事なら、僕だって君の一族を滅ぼしたくは無かったよ。でも、僕は帝なんだ。
民を守る為に非常な決断をしなければならない時だってある」
なんの反応も示さない香織ちゃんを、武志くんは軽く揺さぶる。
「……壱与? ……壱与!」
舞台が暗転するタイミングでマイクのスイッチを入れて、私は話しだす。
私のナレーションの内に、神器のセットは片付けられているはずだ。
「壱与が八咫鏡を割ってしまったため、バランスが崩れ神器に宿る力が開放されてしまいました。
けれど壱与と契約を交わした神器の力はまだ壱与の近くにとどまり続けて居ます。
心優しい壱与は帝を憎みきれず、神器の力を使って世界を壊してしまうことを恐れ、心を閉ざしてしまいました。
今の壱与には立ち直る時間かきっかけが必要だったのです」
二幕は壱与が自分の国が滅ぼされたのを知った所から始まる。
そして、心を閉ざした壱与に尽くそうとする帝と、語りかけてくる父のシーン。
帝を許した壱与と帝の穏やかな日々、そして弱まっていく力までが二幕で演じられる。
三幕目は反乱が起こった場面から始まる。
@二幕の続きから
A三幕目から
B客席を見る
- 47 :
- >>46
民を守る為に非常な決断を×
民を守る為に非情な決断を○
でした、すみません
- 48 :
- A三幕目から
三幕に入り、私はまたナレーションを読み上げる。
「国家統一をほぼ成し遂げた帝。しかしその強引ともいえるやり方に異を唱える者達が現れるのは世の常です。
それぞれの国の王だった豪族達の中に、帝の地位脅かすほどの権力を手に入れつつある男が居ました。
その名は守屋。若くして大連(おおむらじ)という臣下の中で最高の地位を手にした人物でした」
舞台は帝に謁見する守屋という設定から始まる。
守屋の役は教室で私の隣の席に座っている藻部くんだ。
藻部くんは文化祭の実行委員をしながらこの役に挑んでいる、頑張り屋の男子だ。
「守屋、私に話とは何だ」
帝役の武志くんは一段高い場所から、藻部くんを見下ろすように言った。
守屋役の藻部くんは深々と下げた頭をゆっくり上げて、口を開く。
「僭越ながら、寺院建立の件で申し上げたき事がございます」
「守屋、お主は国家統一に尽力した功労者だ。私に構わず申してみよ」
「はい。この国は八百万の神々によって、支え守られてきた土地にございます。
しかし、帝は大陸の神に心を奪われているように思えてなりません。
国神を蔑ろにするは、神の血統である自身を蔑ろにすると同義ではございませんか」
臣下に過ぎない守屋にとっては出過ぎた発言だっただろう。
帝役の武志くんは、守屋役の藻部くんを冷たく一瞥して言う。
「お主が苦言を呈しても私の意向に変わりは無い。大陸の知識を得ずして、この国に未来は無いのだ。
文化が花開いている大陸の人々にとってわが国など蛮族に過ぎぬのだぞ」
「お言葉を返すようですが帝、あまり大陸に執着なされますな。
わが国にも守らねば成らぬものがあります。すべてが大陸の教えに取って代わっては侵略されたのと同じ事です」
帝の考えと、守屋さんの考えは真っ二つに割れている。
どれだけ話し合っても堂々巡りだと言わんばかりのため息を帝は漏らした。
そして、居住まいを少し崩すと、守屋に対して口を開いた。
「この話は終わりだ守屋。ところで話は変わるが最近良くない噂を耳にしたのだが、お主は知っているか」
守屋役の藻部くんは、絡むような視線を投げかけてくる帝に深々と頭を下げる。
帝は態度を崩しても、臣下の守屋が態度を軟化させることは無かった。
「いえ、何も存じ上げておりませんが」
「ある男が復讐を企てていると……。私を亡き者にしようという噂だ」
「そ、それはどういう輩でしょう」
「名を弓削と言うらしい。幼少の頃は出雲に暮らし、その出雲国王に大変心酔をしていたとか。
私の元で巫女になった出雲の姫君にも執着を持っていると聞く。お主はその人物を知らぬか?」
「いいえ。私は何も存じ上げておりません」
「そうか。お主なら何か知っておると思ったんだかな。残念だ」
舞台が暗転して、次の場面に移っている。
二幕の終わりは反乱の終結で幕を閉じる。
勝者は帝で敗者は守屋だ。
@三幕の続きから
A四幕目から
B客席を見る
- 49 :
- @三幕の続きから
舞台が暗転したところで、ナレーションを続ける。
「帝が探りを入れた通り、守屋は幼名を弓削と言いました。守屋は出雲に居る頃からずっと壱与に恋をしていたのです。
守屋は壱与の父から、出雲の宝の一つを譲り受けていました。
三種の神器と対になる宝、十種の神宝がそれです。神宝の一つ八握剣を持ち、守屋はついに反乱を起こします。
壱与が帝に寄せる想いを知らない守屋は、壱与が不本意ながら帝の巫女として神託や儀式をしていると思っていたのです」
パッと舞台に電気が付き、神器を置いた台に向かう香織ちゃんと、その後に立つ武志くんの姿が見える。
「反乱の首謀者守屋が、弓削だと言うのですか?」
香織ちゃんが驚いて、帝を見る。
「そうだ。彼に大和の兵は大勢殺された。壱与の幼馴染ということだが、私に刃向かうのなら……」
「……」
言葉を途中で切って武志くんは静かに目を閉じた。香織ちゃんも何も言わずに俯く。
武志くんはそのまま何も言わずに舞台袖へと歩いて行き、客席の死角に隠れる。
香織ちゃんは舞台にある、三種の神器を置いている台の前に立ち、割れてしまった鏡に触れる。
「弓削、どうしてそんなことをするの? 私たちのように悲しい思いをする人を増やしてどうするというの?」
香織ちゃんは俯き、しばらく動かない。そして、不意に顔を上げると台の脇に置いてある鈴を手に取った。
「私に出来る事は無いに等しい……。でも願うことはできる。この地に平和を」
シャンと鈴がなる。
この先はこの舞台の目玉、香織ちゃんの舞だ。大和の平和を願って舞う壱与のシーン。。
客席のあちこちから感歎のため息が聞こえる。
(香織ちゃんさすがだよ)
香織ちゃんの舞と同時に、香織ちゃんの後に置かれている台から神器が中に浮かび上がる。
舞を舞っている香織ちゃんは気付かない。
神器は天に消え、香織ちゃんが一心に舞う姿だけが舞台にあった。
しばらくして何かに気付いたように舞が不自然に止まり、香織ちゃんが神器の置かれていた台を振り返る。
その途端天から三つの光が差し、上から神器が降りてくる。割れてしまったはずの鏡も元に戻った姿で。
「神器が……なぜ?」
台に落ち着いた神器に香織ちゃんはしばらく放心していたが、我に返ると鏡を手に取った。
「神々が私の願いに答えて機会を与えてくれるというのなら……」
鏡の力を使い、香織ちゃんは藻部くんに話しかける。
「弓削、聞こえますか?もうこんな事は止めてください。これ以上血を流してどうするというのです?」
「この声は……姫様? 一体これは……?」
壱与が立つ場所とは反対側にスポットライトがあたり、藻部くんがどこからともなく聞こえてくる声に驚き当りを見回す。
壱与は戦を止めるよう守屋を説得する。守屋は思いのほかあっさりと頷いた。
戦で傷を負った守屋を救った同郷の女性が、壱与と同じ事を望んだというのだ。
守屋は負けを認め、投降する。
壱与は帝に守屋を殺さないよう願い出て、帝は守屋を大和の地から追放すると言う条件でしぶしぶそれを了承した。
守屋の投降で反乱が終結し、三幕が終わった。
@四幕目へ
A客席を見る
- 50 :
- @四幕目へ
この四幕が最終幕になる。私は残り少なくなった台本をめくった。
「反乱が終結し再び穏やかな日々が訪れようとした矢先、帝が病に倒れてしまいます。
この国を強固なものにと、丈夫とは言い難い身体で無理を押し通してきた事が原因でした。
日に日に弱っていく帝。帝をなんとか救いたい壱与。
しかしどれだけ祈祷をしても、その天命を変える事など出来るはずもありませんでした」
舞台の中央では、床に伏す帝の姿がある。
壱与の香織ちゃんが、帝役の武志くんに薬湯を持ってくる場面から始まる。
「帝、薬湯をお持ちしました」
「壱与か……」
「はい。失礼したします」
お盆に薬湯を乗せて、香織ちゃんが舞台の中央に座った。
ただ座るという仕草一つとっても、姫らしい優雅な振舞いに見えた。
「お加減はいかがでしょうか」
「あぁ。今日は昨日より暖かいから、気分がいいんだ」
そう言って、帝役の武志くんがゆっくりと上半身を起こす。
それを支えるように、壱与の香織ちゃんが手を貸していた。
「秋も深くなって、寒い日も増えてまいりましたから。そういえば今年は例年無い豊作だそうですね」
「あぁ。これで少しは民が潤えばいいが……」
「本当に。ここ数年は不作続きでしたから、皆がお腹一杯食べられるといいですね」
「確かにな。腹が空いていては働く元気も出ないものだ」
二人は顔を見合わせて笑う。
壱与は持ってきた薬湯を、そっと帝に差し出す。
すると帝は少し嫌そうな顔をしながら、薬湯を覗き込んだ。
「この薬湯も苦そうだ」
「当たり前です。少しでもお加減が良くなって頂く様に壱与が作ったとっておきですから」
「壱与の特製か。それは苦くても飲まねばならんな」
「良薬なんですから、味わって飲んでくださいな」
「それは少しばかり手厳しい。せめて一気に飲ませてくれないか」
「どうぞご自由に。でも残してはいけませんからね」
「まるで母上……いや、母上よりも怖いな。壱与は」
壱与の薬湯を一気に飲み干して、帝は渋い顔をする。
薬湯の入っていた茶碗を受け取り、壱与はお盆の上に載せていた。
「なぁ、壱与」
その様子を見ながら、不意に帝が声を掛ける。
「はい。何でしょうか」
「前から考えていたことがあるんだが、聞いてくれないか」
「??……なんですか、改まって」
いつもと少し違う帝の様子に、壱与は首をかしげる。
この後、どんな物語の内容にしたんだっけ……
@監禁同然の壱与を自由にさせると言う内容
A壱与に求婚する内容
B今までのことを謝罪する内容
C体を差し出す昔の約束について話す内容
- 51 :
- A壱与に求婚する内容
「壱与」
「はい」
「その……君の父上を手にかけた僕が言うことではないかもしれないけれど……」
「そのことでしたら……」
「いや、そうではない……そうではなくて」
「?」
「壱与」
「はい?」
「僕の……后になってくれ」
「え?」
「壱与が必要なんだ」
「…あ、わ……私は巫女です」
「もちろん今すぐとは言わない。次の巫女と交代してからでかまわない」
「ですが、私の力はまだ衰えていませんし、次の巫女を選ぶのはずっと先に……」
「力が衰えないうちは巫女を降りてはいけないという決まりは無い。それとも、次の巫女の候補がいないのか?」
「いえ、それは……たしかにおりますけれど」
壱与が困ったように口ごもる。
「壱与は僕の后になるのは嫌なのか?」
「そんな事は!……ございません」
「これは壱与との約束を守るためでもある。約束しただろう? ずっと壱与のそばにいると」
「! あの約束を覚えておられたのですか?」
「もちろんだ」
「ありがとうございます。ですが、今はお身体を回復させるのが先です。お元気になられましたら、そのときにお返事をいたします」
「……そうか、そうだな。まずこの病を治すことが先だな」
「ええ、そうです。今日はもうお休みになってください」
「そうするよ」
眠る帝を見つめ続ける壱与。
けれどその晩、帝の容態が急変する。
「帝、帝、大丈夫ですか?」
「その声は……壱与か?」
「はい、そうです」
「そうか、変だな良く見えない。声も少し遠い気がする」
壱与を探してさまよう手を、壱与が握る。
「……すまない、壱与。どうやら約束は果たせそうに無い」
「そんなことおっしゃらないでください」
「壱与、泣いているのか?」
「いいえ、泣いてなど……っ」
「そうか……、壱与」
「はい」
「もし大陸の教えにあった、輪廻転生が本当にあるのなら……来世でもまた出会おう」
「……帝?」
「今度はただの人として、壱与を守り生きていくのだ」
「……ええ、私もただの人として」
「大和は争いの無い国になっているかな」
「はい、きっと」
「壱与」
「はい」
「……ありがとう」
「帝?……帝!……ああ……」
泣き崩れる壱与、この後は……
@壱与が弱っていく内容
A帝の死を知り守屋が神宝の力を使い語りかけてくる内容
B神器の力を使い、来世で必ず出会えるようにする内容
Cこのまま巫女として一生を終える内容
- 52 :
- Cこのまま巫女として一生を終える内容
壱与の悲痛な叫び声で、女官や近衛府たちが一斉に舞台上に出てくる。
死を迎えた帝を取り囲むようにして、臣下の皆がその死を悼んだ。
壱与は帝の亡骸にそっと触れると、自分の首にかけていた緋色の勾玉を枕元に置いて呟く。
「私は帝から多く喜びや苦しみを頂きました。この勾玉からも、たくさんの勇気や元気をもらいました。
黄泉路で迷われぬよう、壱与だと思ってこの勾玉をお持ちください」
壱与役の香織ちゃんの演技もあって、場内からすすり泣く声さえ聞こえてきた。
場内全体が静まり返る中、泣いていた壱与は涙を拭いてスッと立ち上がる。
その姿に、すでに亡骸になった帝を取り囲む臣下達が注目した。
「悲しい事ですが、帝が御隠れになられました」
その言葉で、臣下たちは下を向く。
「けれど、嘆いてばかりもいられません。
私が帝から今後の政に際して、伝言を仰せつかっています。
今こそ、この悲しみを糧に皆で前に進みましょう」
香織ちゃんは数歩み出ると、手にした竹簡を開いて読み上げる。
「次の帝は姪御であられる皇女を擁立するようにとご遺言を残されました。
また帝の陵墓への殉死者を一人も出さぬよう配慮せよとの事でした。
これは帝直々の勅命です。異議のあるものは神への謀反と心得なさい」
壱与の有無を言わせぬ言い方に、臣下たちは言葉を無くす。
その中で、一人の臣下が壱与に向かって来ると、ひれ伏しながら言った。
「皇女様が次期帝と申し上げられましたが、壱与様はどうなさるおつもりですか。
大連も居ない今、政を仕切る者は壱与様こそ相応しいと皆思っておるのです」
臣下の者達はみな、壱与の摂政を望んでいる。
しかし、壱与は首を横に振って口を開いた。
「私は巫女です。神の依り代としての役目があります。
次期巫女の娘子と共に伊勢に赴き、帝の御霊を弔って生きていきます。
亡き帝が選ばれた皇女様を皆で盛り上げ、助けてあげてください」
そう言って、香織ちゃんは舞台の裾へと消えていく。
そして舞台は暗転し、私は最後のナレーションを読み上げる。
「壱与が手にしていた帝の遺言であった竹簡、実は全くの白紙でした。
争いの無い国を望んでいた帝の願いを受け、壱与は臣下の皆にはったりを見せたのです。
壱与の一世一代の嘘は、醜い王位争いを避ける結果となります。
そして、のちの帝たちによって、中央政権は確立されていくのです。
壱与は伊勢に赴き、その一生を敵国であった大和の国の為に捧げました。
それは斎宮となって、のちの世にも引き継がれていくことになります。
――さて、これでこの物語は終わりです。
遠い遠い昔の真実は、今となっては誰も知ることは出来ません。
ですが彼女達の生き方は現代の私達にも通じる何かを教えてくれる、そう思えてならないのです」
私はすべてを読み終えて……
@舞台を見る
A客席を見る
B自分の手元を見る
- 53 :
- @舞台を見る
ナレーションの間暗転していた舞台に明かりが戻り、出演者が一列に並んでいっせいにお辞儀をする。
客席からは出演者たちに惜しみない拍手が送られている。
(よかった、大成功だよね)
時計を見ると予定時間より3分ほどオーバーしているが、この後の片付けで取り戻せる範囲内だ。
ほっと息をついていると、客席のざわめきがおおきくなった。
時計から舞台に視線を戻すと、香織ちゃんだけがこちらに向かって歩いてくる。
「あれ? みんなは?」
「なに言ってんの、一番大事な人が挨拶して無いじゃない」
「え? だれ?」
私は周りを見回すが、同じ音響の子が隣にいるだけだ。
香織ちゃんは私の様子に呆れたように肩をすくめると、びしっと私の顔の前に人差し指を突き出してくる。
「もちろん愛菜、あんたよ」
「え!? 私はただのナレーションだよ」
「ばっかねぇ、この舞台の脚本書いたのは誰なの?」
「……あ、で、でも……」
「デモもテロもない、さっさと来なさい」
「ええええ!?」
予定外のことにうろたえる私をの手を香織ちゃんは問答無用とばかりに取ると、舞台の上に引っ張って行こうとする。
「ちょ、ちょっと、香織ちゃん!」
なんとか足を踏ん張ってこらえようとする。
すると今度は武士くんもやってきた。
「大堂さん、早くこないと次ぎのプログラムの人に迷惑がかかるよ?」
ちょっと困った顔だけれど、内容は早く舞台に上がれと言っているようなものだ。
「ほらほら、観念して挨拶しなさい」
「そ、そんなぁ……」
どうしよう
@舞台に上がる
A断固拒否
Bいっそ裏方全員道連れ
- 54 :
- @舞台に上がる
香織ちゃんに引きずられるようにして舞台に上がっていく。
「わ、私……絶対に無理だから」
「駄目よ。ほら、しっかり歩いて」
「本当に無理なんだよ」
「つべこべ言わない。一度壇上に上がってしまえば、なんとかなるものなんだから!」
「止めて、止めてって」
「ほら、マイク。観客のみなさんにしっかり挨拶するのよ」
舞台の中央まで連れて行かれ、マイクを渡された。
足は震え、なかなか最初の言葉が出てこない。
私は生唾をゴクリと飲み込んで、恐る恐る顔を上げ大勢の観客席を見た。
(あ……)
客席からは暖かい拍手が送られていた。
私達にとっては大成功だったけど、限られた期間で作った学生の素人劇でもある。
それでも、その拍手から大勢の人が認めてくれたと感じることができた。
(どうしてだろう。体の震えが収まっていく)
マイクをしっかりと握り締めて、私は壇上の中央に立った。
「最後まで私達の劇を観ていただき、ありがとうございます。
私はこの脚本を書かせて頂いた、大堂愛菜といいます。
ここに居る出演者だけでなく、照明、大道具、小道具、衣装、音響とクラスのみんなで完成させてきました。
クラス全員が作り上げたこの劇が、皆さんの心に少しでも残れば嬉しいです。
本当に……本当にありがとうございました」
私は深々と客席に向かって頭を下げる。
香織ちゃん、武志くんや藻部くん、他の出演者全員が礼をする。
こうして私達で作り上げてきた演劇が幕を閉じた。
余韻に浸る間もなく、片付けを大急ぎで済ませる。
なんとか次の舞台には間に合い、私たちはホッとひと息ついた。
クラスのみんなも一段落ついたのか、思い思いの行動をとり始めている。
私は……
@後片付けに専念する
A香織ちゃんを探す
B千春たちに会いに行く
- 55 :
- A香織ちゃんを探す
舞台上を片付けている間に着替えを済ませた香織ちゃんが、こちらに歩いて来るのが見えた。
「香織ちゃん、お疲れ様!」
「愛菜もお疲れ様、あー、無事終わって良かったわ。セリフど忘れしたらどうしようかと思ったけど」
「香織ちゃんなら大丈夫だって言ったでしょ?」
「ふふ、そうね。うーん、あの衣装肩が凝るのよね」
そう言いながら伸びをして、降ろしかけた片腕を私の肩に回す。
そうして、内緒話するように私の耳元に口を寄せた。
「ね、このまま片付けサボっちゃお」
「え!? ダメだよ、皆に迷惑かかっちゃう」
「大丈夫よ、本格的な片付けは明日だからあとは隅っこに寄せて置くだけだし、人が多すぎても邪魔になるだけだって。ね、ほら行こう」
肩に腕を回されたまま、香織ちゃんが歩き出したので引きずられるようにして、客席へ出る。
すると、すぐ声をかけられた。
「ねぇちゃん」
「あ、千春」
「千春くん、来てたんだね。こんにちは」
「香織お姉さんこんにちは、主役の巫女さん役すごくきれいでした」
「ふふ、ありがとう」
千春の言葉に香織ちゃんは少しだけ照れたように笑う。
そしてふと千春の後に視線を投げて、驚いたように目を丸くした。
「隆、隆じゃないの。もう身体はいいの?」
「おー、この通りだ」
「よかったじゃない。文化祭見に来られて。この香織様の名演技を拝めたんだから」
「なにいってんだ、お前の演技なんかどうでもいいに決まってるだろ」
「ま、そうよね。アンタの目的は別だろうし」
「おい!」
なぜか慌てたような隆に、香織ちゃんは意味ありげに笑ってみせる。
「あの子、巫女の壱与の役やった子だよね。愛菜ちゃんと仲良いんだ?」
不意に後から話しかけられて、振り返ると修くんが立っていた。
その隣には春樹くんもいる。
「香織ちゃん? 香織ちゃんは私の親友だよ」
「へぇ、舞台だとおとなしそうな感じだったけど、実際は気が強そうだなあ」
その声が聞こえたのか、振り返った香織ちゃんが私の横に立つ修くんを見てひょいと眉を上げた。
「害虫発見、愛菜こっちにきなさい」
「え?」
手を引っ張られて香織ちゃんにぎゅっと抱き締められる。
「愛菜と付き合う人は、私のお眼鏡にかなうヤツじゃないとダメよ!十把一絡げの男になんて可愛い愛菜を渡せないわ!」
「もう香織ちゃんたら、修くんが私なんて……そんなわけ無いじゃない」
「ねぇちゃん…たぶん修さんも、香織お姉さんも本気だから……」
千春がなにか呟いているが、騒がしい体育館の中では良く聞き取れなかった。
「あの、立ち話もなんだし、移動しませんか?」
「そうだね、校内も案内するって約束だったし」
「そうなの?じゃあ私も付き合うわ」
このまま何時までも続きそうな会話に、春樹くんが提案してくる。
私が頷くと、香織ちゃんもは当然のように言った。
えっと……
@みんなに行きたい所を聞いてみる
A順番に回る
Bそういえば、周防さんたちは……?
- 56 :
- @みんなに行きたい所を聞いてみる
私は放送委員で配られた、模擬出店やイベントの書かれた用紙をポケットから取り出した。
各クラスや文化部の出し物に対してのPRまで書かれている。
出店案内の為に作成されたものだったけど、一覧表になって見やすいのは一郎くんが作ったからだろう。
とりあえず中庭のベンチに座ると、私はその紙をみんなに見せる。
「これ参考になるかなと思って。沢山あるけどみんなはどこを回りたい?」
「おっ! 結構いろんな展示もあるんだな」
「まぁね。うちの学校は盛大にやるんだよ」
「へぇ、自由な校風ってヤツか。俺もこの学校にお前の後輩として入っても面白そうだな」
「いいよ。私が先輩として厳しーく教えてあげるから」
隆と話している内に、みんな行きたい所が決まってきたようだ。
紙を覗き込みながら、各自があちこち指差し始める。
「手芸部がぬいぐるみ展示してるって。ねぇ、愛菜。これ見に行こうよ」
かわいい物に目が無い香織ちゃんは私の腕を掴みながら言った。
「ここ、バザーって書いてある。もしかしてゲームソフトも売ってるのかな……」
千春は携帯ゲーム機のソフト目当てに、バザーを回ってみたいらしい。
「俺はお化け屋敷ってのに行くよ。もちろん愛菜ちゃんとペア組んでだけどね」
修くんはお化け屋敷に行ってみたいようだ。
「このクッキング部の手作りクッキー体験って、すごく興味があります」
春樹くんはクッキーを焼いてみたいと言っている。
「よし。俺はこの科学部のオモシロ実験ってのがいいぜ」
最後に隆が科学部に行きたいと言った。
全部回るのは時間的に無理だ。
さて、どれにしようかな……
@ぬいぐるみ展示
Aバザー
Bお化け屋敷
C手作りクッキー体験
D科学オモシロ実験
- 57 :
- Aバザー
「うーん、じゃあ、まずバザーに行こうか」
「え、ねぇちゃんいいの?」
千春は私の言葉にちょっと驚いたように顔を上げた。
まさか自分の案が採用されるとは思ってなかったようだ。
「うん、だってバザーは早く行かないとほしいのが無くなっちゃうじゃない」
他の所は展示だから後から行っても無くなったりはしない。
手作りクッキー体験は焼く時間の関係か開始時間が決まっていて、次の回までにまだ余裕がある。
「それに目当てのものが無ければすぐに次に行けるでしょ?」
「そりゃそうだけど……」
千春は伺うように他の人たちを見ている。
その視線に気付いたのか、春樹くんが少し笑って言った。
「チハル…くん、そんなに俺たちの事を気にしなくても良いよ。少なくとも俺の行きたいクッキー体験はまだ次まで時間があるし」
「そうそう、そんなに気にしなくても良いのよ?バザーなら、可愛いアクセとかあるかも」
「ま、ここで話してる時間が惜しいな。さっさとバザーに行こうぜ」
春樹くんに続いて香織ちゃんが千春に言いながら目を輝かせ、隆は歩き出す。
修くんは何も言わないが、気を使う千春を見て笑っている所を見ると、異議はないらしい。
「ところで、こっちで良いんだよな?」
「あ、うん。そこの廊下曲がって……階段だけど、隆大丈夫?」
「余裕」
わいわい言いながらみんなでバザーをやっている教室までやってくると、それなりに人が居てにぎわっている。
「あ、ゲームコーナー発見!」
千春はいち早く目当てのコーナーを見つけてそちらへ向かった。
まわりのの商品を見ながらついて行こうとして、すれ違いざまに人にぶつかってしまう。
「あ、すみません」
慌てて謝って顔をあげた私は思わず青くなった。
私がぶつかったのは体つきの良い短髪の男の人で、やけに派手なシャツとだぼっとしたズボンをはいていた。
どう見ても普通の一般人には見えない。
ぶつかった男の人は内心慌てる私を見て、ニッと笑って見せた。
そうすると最初の怖いイメージが一転し、気さくなお兄さんに変わる。
「おう、気を付けろよ」
「熊谷、なにをしてる?」
男の人の声に重なるように、もう一つの声がかけられる。
それは……
@周防さん
A大和先輩
B近藤先生
- 58 :
- @周防さん
「あっ、周防さん」
声の方を見ると、周防さんと綾さんがバザーの教室に来ていた。
周防さんはさっきの派手なシャツを着た男の人をドンと突き飛ばしながら、私達に近づいてきた。
「愛菜ちゃんと……巫女役の子だね。演劇、すごく良かったよ。感動した」
「あ、ありがとうございます」
私と香織ちゃんは観てくれた周防さんに照れながらお礼を言った。
すると、周防さんの後ろからさっきの柄シャツの人が怒った顔でやってくる。
「おい、周防! 俺を突き飛ばすとはどういう事だ」
「相変わらず、お前はうるさい奴だな」
「うるさいとは何だ! テメーは何様のつもりだっての」
「えっと、俺様?」
「ふざけてんのか。シメるぞ、コラ」
周防さんと柄シャツの人の喧嘩を知りながら、隣でニコニコと笑っている綾さんに私は声を掛ける。
「綾さん。あの熊谷って人と周防さんって仲が悪いんですか?」
「違うわよ。二人はとっても仲良しなの」
「仲良し……私には喧嘩しているように聞こえますけど」
「喧嘩友達って感じかしら。あの二人は遠い親戚同士で、ああやっていつもふざけ合っているのよ」
隣の綾さんが笑っているし、きっと平気なんだろう。
安心した私とは対照的に、香織ちゃんはこの場を離れたがっているようだ。
私の腕をぐいぐいと引っ張りながら、耳打ちをしてくる。
「あのsラは愛菜の知り合い? 駄目よ、知り合いは選ばなくちゃ」
「私も初対面だけど……周防さんの親戚らしいし、大丈夫だよ」
「全く……。だからアンタは放っておけないの。さぁ、ここを離れるわよ」
私は香織ちゃんに引っ張られながら、綾さんに挨拶をする。
そして、またバザー会場の入り口まで戻ってきた。
香織ちゃんは気を取り直すように、かわいいアクセサリーを探し始めたようだ。
私は……
@千春を探す
A隆を探す
B春樹くんを探す
C修くんを探す
- 59 :
- @千春を探す
さっきゲームコーナーへ向かっていたけれど、欲しいゲームはあったのだろうか?
ゲームコーナーへ行くと千春が品物を物色していた。
「千春、欲しいゲームはあったの?」
「あ、ねぇちゃん。うん、あったんだけどどっちにするか悩んでるんだ」
千春の手元を覗いて見ると同じ金額の値札がついている。
悩む千春の後ろで所在無く教室内を眺めていると、ふと同じように教室を眺めていた男の子と目が合う。
お昼に食堂で会った大和先輩だ。
「あ」
向こうも私に気づいたようでこちらに近づいて来る。
「食堂はもう終わりですか?」
「いえ、丁度休憩時間なんです」
近づいてきた大和先輩に会釈をしながら聞くと、小さく首を振って答える。
そしてゲームを持って悩んでいる千春に気づき、私と同じように覗きこんだ。
そして千春が左手に持っているゲームを指差して言う。
「こっちのゲームを買ったほうが良いですよ」
「え?」
急に話しかけられた千春は驚いたように、大和先輩を振り仰ぐ。
「あ、食堂の兄ちゃん」
「はい」
「……どうしてこっち?」
「もう一つの方は、中古でもっと安く買えます。こっちはなかなか出回らないようなので、中古屋だともっと高いですよ」
「へぇ、そうなんだ。じゃこっちにしよう。兄ちゃんありがとう」
千春は大和先輩の言葉に一つを元に戻して、レジへ向かう。
「先輩、ゲーム好きなんですか?」
「いいえ」
「そうなんですか?でも、詳しいですね」
「ああ、たまたま家の近くに中古屋があるんです。毎日前を歩くので買取価格とか張り出してあるのを見ますから」
つまりゲームはやらないが、毎日見てるから覚えている、と言うことだろうか?
記憶力のいい先輩だから、何気なく見ているものも覚えてしまっているのかもしれない。
「愛菜ー、どう?いい物あった……って、三上先輩?」
香織ちゃんが私の所までやってきて、隣に立つ大和先輩に気づいたようだ。
「香織ちゃん、先輩の事知ってるの?」
「知ってるも何も、いつも学年トップの秀才じゃないの。愛菜、三上先輩と知り合いだったの?」
こそこそと香織ちゃんが聞いてくる。どうやら、先輩は三上大和という名前らしい。
「ううん、今日お昼にちょっと……」
「そうなの……こんにちは先輩」
「こんにちは……すみません、そろそろ戻る時間なので失礼します」
先輩は挨拶すると、そう言って私達に会釈して、教室から出て行ってしまった。
それと入れ違いになるように、他のみんなもこちらに集まってくる。
千春が戻ってくるのを待って香織ちゃんが口を開く。
「千春くんの買い物終わったみたいだし次に行こうか?」
時間的に回れるのは後二箇所位かな?
@ぬいぐるみ展示
Aお化け屋敷
B手作りクッキー体験
C科学オモシロ実験
- 60 :
- B手作りクッキー体験
甘い物が食べたくなって私は皆に手作りクッキー体験に行きたいと伝えた。
しかし、その中にクッキー体験に行きたいと言っていた春樹くんがいないことに気がついた。
少し気になって皆に少し待っていてと伝えて私は教室を出る。
すると廊下の壁に寄りかかりでぼんやりと一点を見つめる春樹くんが立っていた。
春樹くんが見つめる先には王子の扮装をした男の子とお姫様の扮装をした女の子が
看板を持って呼び込みをしている。
看板には『ロイヤル喫茶』と書かれている。
「俺の……ところは、変わってなかったんだ。
きっと……姉さんと隆さんが遊びに来て、からかわれて……。
あれだけ見て欲しくなかったのにちょっと寂しいな……。」
私がいるのに気づいていないのか、春樹くんは寂しそうに呟いた。
ロイヤルパーティ、そういえば一年のどこかのクラスのはずだ。
「からかわないよ。むしろ私がその姉さんだったらカッコよくて言葉失うと思うよ。」
「……っ!!」
ようやく私の存在に気がついたのか、春樹くんは真っ赤になり後ずさった。
「王子様な春樹くんはきっと喫茶店の目玉だっただろうね。」
「……そ、そんなことない。」
「春樹くんの記憶だと、この学校に通って王子様してたのか、ちょっと残念。
見たかったな、それ。そしてきっと嫉妬してた。
春樹、素敵だね。恋人できちゃうかなって姉心としては心配になったと思うよ。」
春樹くんは私の顔を覗き込み、息を呑む。
そしてゆっくり微笑むと一言
「そうかな。そうだと嬉しい。」
そう言った。
「春樹くん?」
「愛奈がそういうならきっとそうだから。」
照れたように春樹くんは笑う。私も釣られて笑ってしまった。
なんだかこう話していると本当に姉弟みたいな気持ちになってくる。
「ねぇ、春樹くんのこと春樹って呼んでいい?」
「えっ!?」
「なんだかそう呼びたくなったの、春樹って年下だしいいよね。」
春樹くんの口元がゆるむ。今までで一番の笑顔で彼は答えた。
「もちろんだよ、愛奈。」
「君、そんなに気になるなら私のクラスの出し物参加してみるかい。」
と声をかけられる。振り向くと近藤先生が立っていた。
厳格で有名な近藤先生のクラスの出し物だったのかと思うとそのギャップに私は唖然としてしまった。
しかし、時間も時間だし他を見たいって言ってる人がいる。
春樹くんの王子様姿もみてみたいかも?
どうしようかな?
@せっかくだから参加
Aやっぱりクッキー体験
Bやっぱりぬいぐるみ展示にしようかな
Cやっぱりお化け屋敷にしようかな
Dやっぱり科学オモシロ実験にしようかな
- 61 :
- @せっかくだから参加
甘い物が食べたかったので、ここの喫茶店でケーキを頼むのも良いかもしれない。
「せっかくだから、参加してきたら? あ、でもクッキー体験の時間すぎちゃうかな」
「愛菜は俺の王子さま姿みたいの?」
「そうだね、見てみたいかも」
「おーい、愛菜ちゃん何してるの?」
「あ、修くん」
私達の帰りが遅いので、みんなもこちらにやってきた。
「なんなら、皆で参加するかい?」
「ん?ロイヤル喫茶? へー、王子様とお姫様か」
近藤先生の言葉に、修くんは教室を覗きこんでいる。
「俺はパス。この足だから着替えとか大変だし」
「僕もパス。ってか僕のサイズの服なんてないよね」
隆と千春はそう言って首を振る。
「愛菜が見たいっていうから、俺は参加しようかな」
「え?愛菜ちゃん王子さま姿見たいの?なら俺も参加しようかな」
春樹と修くんがそう言うのを聞いて、近藤先生が口を開いた。
「それじゃあ二人はこっちへ。君達は中に座ってなさい」
「はい」
「じゃ、ちょっと着替えて来るね」
春樹と修くんは近藤先生に連れられて行ってしまった。
「修のヤツはともかく、春樹がこういうのに参加するとは思わなかったな」
「確かにそうね、宗像修はともかく」
隆と香織ちゃんが言いあっている。
「そうかな?ねぇちゃんが見たいって言ったからだろ?それなら不思議でもなんでもないと思うけど」
「あー、そう言われるとそうかも」
それに千春が口を挟んで、香織ちゃんが頷き隆が顔をしかめる。
「え?私が来たときにはずっとここ見てたし、最初から興味はあったと思うよ」
記憶ではこのクラスの催し物に参加していたはずの春樹。
すっかり蚊帳の外で寂しかったのだとおもう。でもそう言うのは恥ずかしいから、私の言葉をダシにしたのだろう。
「わかってないなぁ……て来たんじゃない?」
千春は呆れたようにため息をついたところで、急に今日室内のざわめきが大きくなる。
入口を振り返って、私は思わず固まった。
「これはこれは、二人とも予想以上に出来の良い王子様になってるわね」
「これだけ似合うと嫌味だよなー」
「俺は参加しなくて正解だな。あの二人と並びたくない」
皆が口々に感想を言う。
春樹と修くんはまっすぐにこちらに向かってきた。
「愛菜ちゃん愛菜ちゃん、どう?似合う?王子様っぽい?」
「着てみたけどやっぱり恥ずかしいね、顔の絆創膏もミスマッチだし」
修くんは楽しそうに、春樹は少し恥ずかしそうに言う。
私は…
@二人ともすごく似合うと言う
A修くんさすがだねと言う
B春樹は絆創膏付きでもかっこいいと言う
C驚きすぎて言葉が出ない
- 62 :
- @二人ともすごく似合うと言う
修くんは短い前裾から、膝裏下あたりの後裾まで斜めにカットされたモーニングコートを着ていた。
立て襟シャツにサテンのアスコットタイをして乗馬に興じる王子様のようだ。
春樹くんは金の縁取りが施された裾広がりの白いロングコートをサッシュベルトで締めている。
舞踏会に出席している童話の中の王子様がそのまま抜け出たみたいだ。
「二人ともすごく似合ってる。とってもカッコいいと思うよ」
王子様に扮した二人に対して、褒め言葉しか出てこなかった。
周りの女子の反応を見ても、いい意味で目立っているのは間違いない。
「やっぱり? 俺って何を着ても似合っちゃうんだよな〜」
「あ、ありがとう。うれしいよ……」
反応はまちまちだけど、みんなに褒められて二人ともまんざらでもない様だった。
(あっ、そういえばさっき……)
どうして私は、春樹くんがこのクラスの催し物に参加していたはずだと思ったんだろう。
春樹くんは違う学校だし、昨日会ったばかりの男の子なのに。
その事をより深く考えようとすると、頭がズシンと重くなっていく。
記憶の奥に霞が掛かったようで、ぼーっとしてくる。
「……ん……ねぇちゃんってば!」
「あっ、千春」
「また愛菜ったらボーっとして。アンタは隙が多すぎなんだからね」
席に座っている私達に、二人の王子様はメニュー表を差し出した。
「ご注文はお決まりでしょうか、マドモアゼル愛菜」
ノリノリの修くんは、私の手を取って微笑む。
「えっ、修くん……」
「ちょっと。いくら隙だらけでも、私の許可無しに愛菜に触れちゃ駄目よ!」
「そうだそうだ。いいぞ長谷川、もっとガツンと言ってやれ」
香織ちゃんと隆は、馴れ馴れしく触ってくる修くんにブーブー文句を言っている。
みんなの掛け合いが面白いのか、千春はニヤニヤと笑っていた。
そしてふと春樹くんを見ると、見守るような眼差しで私達を眺めていた。
私は……
@注文をする
A春樹くんに話しかける
B修くんに話しかける
- 63 :
- ↑の971は無しでお願いします><
- 64 :
- @二人ともすごく似合うと言う
修くんは短い前裾から、膝裏下あたりの後裾まで斜めにカットされたモーニングコートを着ていた。
立て襟シャツにサテンのアスコットタイをして乗馬に興じる王子様のようだ。
春樹は金の縁取りが施された裾広がりの白いロングコートをサッシュベルトで締めている。
舞踏会に出席している童話の中の王子様がそのまま抜け出たみたいだ。
「二人ともすごく似合ってる。とってもカッコいいと思うよ」
王子様に扮した二人に対して、褒め言葉しか出てこなかった。
周りの女子の反応を見ても、いい意味で目立っているのは間違いない。
「やっぱり? 俺って何を着ても似合っちゃうんだよな〜」
「あ、ありがとう。うれしいよ……」
反応はまちまちだけど、みんなに褒められて二人ともまんざらでもない様だった。
(あっ、そういえばさっき……)
記憶ではこのクラスの催し物に参加していたはずだと、春樹は言っていた。
妙に私の周りにも詳しいし、今回の事もただの記憶違いで済ませるには現実と噛み合い過ぎている。
もしかして、私が望んだ世界という話と深い関係があるのだろうか。
ちゃんと考えたいのに、頭がズシンズシンと重くなっていく。
真っ白な霞がかかってしまったように、頭がぼーっとする。
「……ん……ねぇちゃんってば!」
「あっ、千春」
「また愛菜ったらボーっとして。アンタは隙が多すぎなんだからね」
席に座っている私達に、二人の王子様はメニュー表を差し出した。
「ご注文はお決まりでしょうか、マドモアゼル愛菜」
ノリノリの修くんは、私の手を取って微笑む。
「えっ、修くん……」
「ちょっと待った。いくら隙だらけでも、私の許可無しに愛菜に触れちゃ駄目よ!」
「そうだそうだ。いいぞ長谷川、もっとガツンと言ってやれ」
香織ちゃんと隆は、馴れ馴れしく触ってくる修くんにブーブー文句を言っている。
みんなの掛け合いが面白いのか、千春はニヤニヤと笑っていた。
そしてふと春樹を見ると、見守るような眼差しで私達を眺めていた。
私は……
@注文をする
A春樹くんに話しかける
B修くんに話しかける
- 65 :
- @注文をする
私と目が合うと、春樹はにこっと微笑んで「お決まりですか?」と言う。
私は慌ててメニューを見て、ロールケーキセットを注文する。
他の皆もそれぞれ注文を済ませると、春樹は頷いて注文を伝えに行く。
その行動は飛び入りで参加したにしては全く迷いが無い。
修くんは修くんで別のテーブルに呼ばれて、そちらでもノリノリで注文を受けている。
「なんか変な感じ。二人とも前からウチの学校の生徒みたい」
香織ちゃんの言葉の言葉に、思わず頷く。
「そうだね、なんかあの二人が家の学校に居ないっていうのが想像できないな」
「すげー馴染んでるよな、二人とも」
「まぁ、宗像修については物怖じしないし、どこに行ってもあんな感じだと思うけどね」
「そういえば、修くん編入届をもらいに行くとか言ってたけど本気なのかな……」
着替えの前にそれらしいものを持っていただろうかと思い出そうとするが、持っていたような気もするし、持っていなかったような気もする。
「え?編入?」
「なんか、そう言ってたけど……たぶん冗談だよね」
「……冗談、ならいいけど……これは要注意人物としてチェックしとくべきだわ」
香織ちゃんはそう言いながら修くんを見る。
「おまたせしました……長谷川せんぱ……さんどうしたの?」
じっと修くんを見る香織ちゃんに、持ってきたケーキを並べながら春樹が首をかしげる。
「あー、ちょっとね。害虫が余計な行動しないように見張ってるのよ」
あっさりとそう言って、香織ちゃんはケーキを持ってきた春樹に「ありがとう」といって受け取る。
香織ちゃんの言葉に苦笑して、春樹は口を開く。
「俺、もう着替えてくるよ」
「え?もう?」
「うん、この後もどこか回るんだろ?どうせ長居できないんだし……」
そう言って春樹は修くんに声をかける。修くんも頷いてこちらにヒラヒラと手を振ると、二人で出て行った。
「二人とも楽しんでもらえたようだね」
「あ、近藤先生。誘ってもらって、ありがとうございます」
「いや、気にしなくて良い。文化祭は皆でたのしむものだ。あぁ、あとこれは二人に」
そういって近藤先生は二つの包みをテーブルに置く。
「これは?」
「今回のお礼だ。まあ、中身は菓子だが…。
ほんの少しの間だったが、二人のおかげで呼びこみの必要がなくなるくらい客が入ったからね」
言われて見れば、いつのまにか教室内は満席だ。
近藤先生は、それじゃあと、裏の方へと戻っていく。
そうこうしているうちに、春樹と修くんが戻ってきた。
「ただいまーっと。さて次に行こうか。時間的に最後かな?」
「そうだね……えっと……」
@ぬいぐるみ展示
Aお化け屋敷
B科学オモシロ実験
- 66 :
- Aお化け屋敷
「うーん、迷うな。お化け屋敷も楽しそうだし……」
「だよねー♪ さ、愛菜ちゃん、行こう行こう」
お化け屋敷と言った途端、修くんが私の手を引き歩き出す。
「えぇ〜!?」
「やっぱり愛菜ちゃんは、俺の案を選んでくれると思ってたんだよね」
「ちょっ、まだ決めて……」
「ほらほら、早く。急がないと終わっちゃうよ」
ゆっくり行っても、十分間に合う時間はある。
なのに修くんは気持ちを抑えきれないように、ズンズン歩いていく。
「おい、待てって! そんなに早く歩くなっ」
松葉杖の隆がついて行けず、叫んで修くんを呼び止める。
すると修くんはピタッと止まって、追いついた隆に文句を言い出した。
「アンタ、もうちょっと早く歩けないの?」
「無理に決まってるだろ」
「面倒な奴だね。無理なんて言わずに、もっと早く歩けるようになりなよ」
「うっせ。お前に言われなくてもやってやるよ」
「ふーん。……こういう人って卑屈だと思ってたけど、そうでもないんだね」
そう言うと修くんは私の手を離して、ふらふらと歩き出した。
あちこちの展示物を珍しそうに眺めたり、すれ違う女の子に手を振ったりしている。
私の横に香織ちゃんと千春と春樹がやってきた。
「あの害虫……。ほんと、ムカつくわ」
「そうかな? 僕は修さんの事、けっこう好きだよ」
「千春くん、ちゃんと人を見る目は養わなくちゃだめよ。ああいうのを、サイテーって言うんだから」
「俺も自分勝手な人だとは思いますけど、最低では無いと思います」
「春樹くんまでそんな事言うの? みんな見る目無さすぎよ」
怒る香織ちゃんに、春樹は「見てください」と言う。
その視線の先には、あっちこっち行く修くんの姿があった。
「さっきよりもゆっくり歩いてますよね。それに隆さんの負担にならない速度を保ってます。
本当に隆さんが煩わしいなら、とっくに先に行っているはずですよ」
香織ちゃんはまだ納得できないのか、「害虫は害虫よ」と呟いていた。
そうして歩いているうちに、お化け屋敷の教室に着いたようだ。
看板を見ると、二名ずつ順にお入りくださいと書いてある。
私は……
@じゃんけんで決めよう
A悩む
B指名する
- 67 :
- @じゃんけんで決めよう
「丁度6人だし、ここはじゃんけんよね」
「同じ手を出した奴同士でペアだな」
「うん、そう」
「えー、俺、愛菜ちゃんと一緒じゃなきゃいやだなあ」
「なら、入らなくても良いわよ」
「それもやだ」
「ならおとなしくじゃんけんしなさい」
「しかたないなぁ」
修くんはしぶしぶ頷いて、左手を構える。
「じゃ、いくわよ。じゃんけんぽん」
香織ちゃんの合図に合わせて、いっせいに手を出す。
私はパーを出した。
「あら……4人同じね」
「あ、僕、香織お姉さんとペアだ」
「私は千春くんとね」
チョキを出した香織ちゃんと千春がまずペアになる。
残りは全員パーを出していたため、再じゃんけんだ。
「うわ、これって下手したら、男同士で入らなきゃいけないのか」
「もしそうなったら、俺入るのパスな」
修くんの言葉に、隆が嫌そうに言う。
「まぁ、やってみないとね。いくよー。じゃんけん、ぽん」
今度はきれいに分かれた。
私はまたパーをだす。
私と同じ人は……
@春樹
A隆
B修くん
- 68 :
- A隆
一緒にパーを出したのは隆だった。
のこりの二人はチョキとグーを出している。
「隆と愛菜がペアね」
「お、おう……」
「うん」
香織ちゃんの言葉に、隆と私は頷いた。
「春樹くんは……悪いんだけど害虫で組んでね」
「えぇ!? 俺と愛菜ちゃんがペアじゃないの!?」
「公平なじゃんけんで決めたんだから、文句は無しよ! 」
香織ちゃんはビシッと言い切って、フンと鼻を鳴らした。
リーダーシップのある香織ちゃんに断言されてしまい、さすがの修くんの勢いが無くなった。
「どうして俺が男と一緒じゃなきゃいけないんだよ……」
「仕方がありませんよ。長谷川先輩に従いましょう」
うな垂れる修くんに春樹が声を掛けている。
一方、最初にペアになった香織ちゃんと千春は楽しそうに話している。
「さ、千春くん一緒に入りましょ」
「うん。僕、香織お姉さんみたいな綺麗な人と一緒でうれしいな」
「まぁ、千春くんたら」
「僕、ちょっと怖いよ。ずっと手をつないでて欲しいな……」
「いいわよ。手をつないで一緒に入りましょうね」
(千春……アンタって……)
テレビでやってるホラー映画を笑いながら観る千春が怖がるはずが無い。
そんな千春の将来を脅威を感じつつ、私は隣の隆を見た。
すると、隆が神妙な顔をしながら並んでいる事に気づく。
@「どうしたの?」
A「もしかして怖いとか?」
B「足痛くなった?」
- 69 :
- @「どうしたの?」
「ん? あぁ……」
隆は少し困ったように言葉を濁す。
「なになに、もしかして怖いとか?」
その様子をみた修くんがここぞとばかりに、ちゃかす。
「まさか、そうじゃない」
隆はあっさりとそれを否定して、仕方なさそうに口を開いた。
「愛菜、お前怖がりだろ……ものすごーく」
「え……そ、そんなことないよ」
「嘘言うな。覚えてるぞ、小学3年生の時に入ったお化け屋敷での事」
「う、あー……」
隆が言うその出来事に思い当り、私は言い返せなくなる。
当時出来たばかりのテーマパークに、私と隆の家族合同で出かけた時に入ったお化け屋敷での事だろう。
「お前あの時、ずっと俺の腰にしがみついてて、ほとんど自分で歩かなかったじゃないか」
「そ、そうだったかな……」
「そうだったんだよ。俺がほとんど引きずって行ったようなもんじゃないか」
「………だったかも?」
「ただな、今回同じ事されても、前みたいに連れていけないんだよ。この足だからな」
「だ、大丈夫だよ! もう、小さい子供じゃないし!」
「なら良いけどな」
「そんなに不安なら俺が変わろうか?俺は大歓迎だよ」
「それは却下な」
隆は即座に言うと、私を見た。
「ま、学校のお化け屋敷と、テーマパークのお化け屋敷じゃ規模も怖さも違うだろうから、大丈夫か?」
「う、うん。大丈夫だよ」
一瞬不安になったが、たぶん大丈夫だ。
「じゃあ入ろうぜ」
「うん」
入口の黒い布をめくって中に入ると、ひんやりとした空気に包まれた。
明るい場所から急に暗い場所に出たため、ほとんど何も見えない。
「た、隆……」
「なんだ?」
やっぱり怖いものは怖い……!
@「や、やっぱりなんでもない」
A「……服、掴んでても良い?」
B「……腕、組んでも良い?」
- 70 :
- @「や、やっぱりなんでもない」
(あの頃のままだと思われたら、悔しいもん)
隆の後ろに隠れるようにして、私は真っ暗な中を進む。
数歩進んだところで、ヌルッとした物が頬に当たった。
「きゃあ!!」
「な、何だ」
「い、今、ヌルッと冷たいものが……」
「それはこんにゃくだろう。さっき俺の顔にも当たってたからな」
「こ、こんにゃく……そうだよね」
中は迷路のようになっているらしく、左に曲がる矢印があった。
左に曲がった直後、生暖かい風が吹く。
「ぐぁあああ!!」
突然、青白い顔の落ち武者が出てきて、私に掴みかかろうとした。
「いやぁああああ!!!」
私はその落ち武者を突き飛ばして、隆にしがみ付く。
隆はバランスを崩しかけたけど、なんとか踏ん張ってくれた。
「危ないな。しがみ付くなら、前もって忠告してくれ」
「む、無理だよ。そんな都合よく……きゃーーーーー!!」
目が腫れた髪の長い女の人が、井戸から出てきて私に触れた。
「も、もう無理!家に帰して!!」
「く、苦しい……」
「た、隆!もうヤダよ!」
「ギブ、ギブ……」
呻く隆を見ると<力の限り腰を掴んで完全にホールドしていた。
絶妙に技が決まって、ダウン寸前だ。
「ご、ごめん。次は気を付け……ギャアアア!!」
「し、死ぬ。ここから出る前に俺が死ぬ……」
暗い中を進み、なんとか日の光を拝める頃にはお互いがクタクタになっていた。
隆はおじいさんのように体を引き擦り、なんとか歩いている。
私は……
@隆に謝る
A先に出ていた千春と香織ちゃんに泣き付く
B先に出ていた修くんと春樹を見つける
- 71 :
- @隆に謝る
外に出てぐったりと壁にもたれてしまった隆に平謝りする。
「た、隆ごめんね」
「あー、こうなる事は予測済みだ。気にするな」
疲れきった顔で、隆が手を振る。
「ねぇちゃんの悲鳴、外まで聞こえてたぞ」
「相変わらず怖がりよね」
「これだけ怖がってもらえたら、お化け役の人も本望だろうね」
「いまどき、珍しいくらいに脅かしがいがあるんだなぁ愛菜ちゃんって」
先に出ていた皆が口々に言った。
「ほんと、昔っから進歩無しだな」
そう言って隆が苦笑する。私は何も言い返せず「ごめん」と呟く。
「あー、それにしても疲れたな。そろそろ時間だし俺はもう帰るわ」
「じゃ、僕も一緒に行くよ。早く新しくかったゲームやりたいし」
隆は私の謝罪に肩を竦めて言った。その言葉に千春が便乗する。
ゲームを理由にしているが、疲れきっている隆を心配しての事だろう。
「俺は時間ギリギリまで見ていこうかな」
修くんは近場の教室を覗きこみながら言う。
「俺も……もう少し学校の中を見て行きたいから」
春樹は少し考えてそう言った。けれど修くんと一緒に行動する気は無いようだ。
「私、一旦体育館の様子見てくるわ」
途中でさぼった片付けの様子が気になるのか、香織ちゃんはそう言って走って行ってしまった。
私は……
@隆と千春を校門まで送る
A修くんについていく
B春樹についていく
C香織ちゃんを追いかける
D放送室へ行く
- 72 :
- @隆と千春を校門まで送る
「じゃあ、私千春たちを校門まで送って行くよ」
「ねぇちゃんじゃないんだから、迷子にならないよ?」
「そんな心配してません!」
千春がふざけて言うのに、私は軽く頭を小突いて二人を促す。
「そっか、じゃあ俺は俺で見て回るよ」
「愛菜ちゃん行っちゃうのかー、残念」
「うん、二人ともまたね」
軽く手を振って、私達は校門へ向かう。
修くんが以外とあっさり納得したのにはびっくりしたが、修くんも隆があまりにもぐったりしているので心配したのかもしれない。
「隆、ホントごめんね」
お化け屋敷に入る前に足の事を言われていたのに、結局前と同じような感じになってしまった。
少し落ち込んでいると、ちらりとこちらを見た隆が少しなにかをたくらむような顔をする。
「まったくだぜ。……あ、そうそう愛菜おまえもう少し食ったほうがいいぞ」
「え? 何?突然」
深くため息をついた隆が、思い出したように言い出す。
「しがみついた時の感触が、小学生の時と変わってないからな」
「……! ちょっと、それどういう意味よ!」
「ん? ちゃんと食って成長しろよって意味だ」
しれっとそう言う隆の隣で千春がニヤニヤ笑う。
「要するに幼児体系で、ゅぼーんな体型には程遠いってことだよな。
イマドキ小学生だってもっと発育いいのになー」
「悪かったわね!」
一気に落ち込んだ気分が浮上して、隆にはかなわないなと思う。
そうこうしているうちに、校門の前までやってきた。
「じゃあな、今日は楽しかったぜ。俺もここに入れるように真剣に考えようかな」
「そう? 私は大歓迎だよ」
「そうか、じゃ、受験勉強もがんばらないとなー」
「隆はもともとそんなに成績わるくないから、余裕じゃない?」
「そうだといいけどな」
「じゃあ、ねぇちゃん先に帰ってるよ」
「うん、気をつけてね」
手を振って帰っていく二人を見えなくなるまで見送る。
さて、残り時間もあとわずか。どうしようかな。
@一人でぶらぶらする
A放送室へいく
B体育館へ行ってみる
- 73 :
- @一人でぶらぶらする
(一人でぶらぶらしてみるかな…)
なんとなく、一人で行動してみたい気分になった。
気がつくと、陽は傾いて空は夕焼け色に染まっている。
上履きに履き替え、ぼちぼちと廊下を歩きながら校内の様子を観察する。
後片付けを始めている人、友達と談笑している人、恋人同士で歩く人。
みんな残りわずかな文化祭を惜しむように楽しんでいる。
私はその空気を吸いながら、祭りの後の感傷的な気分に浸る。
少し寂しいけれど、こういうのは嫌いじゃない。
また明日から、代わり映えのしない平凡な日々が始まる。
きっとここに居るほとんどの人は多少の不満を抱えながら、まぁまぁの学生生活を送りはじめるはずだ。
そして今日の出来事をたまに記憶の奥から引っ張り出しては、思い出し笑いをしたり、恥ずかしくなったりするのだろう。
階段を上り、私は重い鉄の扉をゆっくり開いた。
ビュッと一瞬すごい風が吹き、目を開けると広いコンクリートの地面があった。
その風化しかけているコンクリートを踏みしめて、ゆっくり前に進む。
上を見ると、少しだけ近い雲とオレンジ色の空が広がっている。
下を見ると、校庭の出店が次々とテントを畳み始めていた。
私は屋上のフェンスに背中を預ける。
ポケットの中を探って、近藤先生からもらった包みを取り出した。
かわいいリボンの結ばれた手の平ほどの包みを開けると、透明で金色の飴が入っていた。
(懐かしい。これべっこうあめだ)
手作りなのか、気泡が入っていて形も不恰好だった。
透明のセロファンを剥がして、口の中にポンと入れる。
口の中一杯に広がる甘さとほろ苦さを楽しみながら、ふと顔を上げると鉄の扉が開くところだった。
(誰だろう……)
目を凝らすと、男子が扉から出てきた。
向こうも私に気づいたのか、静かに顔を上げた。
その男子とは……
@春樹
A修くん
B一郎くん
C大和先輩
- 74 :
- C大和先輩
「良く会いますね」
先輩は私を見ると、こちらに歩いてきた。
「そうですね……。先輩はもう食堂終わったんですか?」
「はい」
「そうなんですか」
それで会話は途切れてしまったが、不思議と居心地は悪くない。
二人でぼんやりと夕焼けを見る。
と、唐突に強い風が吹きぬけていった。
「あっ」
慌てて、スカートを押える。
「大丈夫ですか?愛菜さん」
「は、はい……え?」
乱れてしまった髪をなでつけながら返事を返して、違和感に首をかしげる。
(私、名乗ってないよね?)
私の疑問に思い当たったのか、大和先輩は少しだけ微笑んで「テーブルでの会話が聞こえましたから」と答えた。
「そうなんですね。あ、でも、改めまして……私、二年の大堂愛菜です」
「僕は三年の三上大和です」
なんとなく今更な感じがしないでもないが、お互いに名乗り合って笑いあう。
「そういえば、先輩記憶力すごく良いですよね。メモも取らずに一回聞いただけで注文受けてたし、すごいなって思います」
「良く言われます。でも僕にはそれが当り前だったので、すごいと言われてもピンと来ないんです」
少し困ったように先輩が言う。
もしかしたら、いつも同じような話題になるのかもしれない。
「そうなんですね。でもそういうものですよね。
私の夢だってストーリー形式の上、連続で見るからすごいとか気持ち悪いとか言われるけど、私には当り前の事だし」
「そんな夢を見るんですか?」
「はい、今日の文化祭で演劇をやったんですけど、私の夢を脚本にしたんです」
「そうだったんですか。見られなくて残念です」
本当に残念そうに先輩が顔を曇らせる。
@ここでストーリーを説明する
A後で脚本を貸すと言う
B別の話題を探す
- 75 :
- B別の話題を探す
「あ、あの、先輩!」
残念そうな先輩の顔を見ていたら、これ以上この話をするのはなんだか申し訳ない気がして
私は話題を区切るように先輩に声をかけた。
「…はい…?」
私が突然大きな声を上げたせいなのか、
先輩は少しきょとんとして、こちらを見ている。
「あの…ええと、せ、先輩は、何か夢とか見ますか!?」
何か話題を…と考えているうちに、
気がつけばそんなことを口にしていた。
「…夢、ですか?」
先輩は私の質問を受けて、更にきょとんとしている。
「…………は、はい…………」
何でこんな質問をしてしまったんだろう…と、
恥ずかしさで下を向いてしまう。
ふたりの間に訪れる、僅かな沈黙。
(ああ、聞かなければよかったかな…。
変な子だって思われたかも…)
そんな風に後悔しつつも、ただ黙って大和先輩の答えを待つ。
「……なんと言ったらいいのか、よくわかりませんが……
不思議な夢を、よく見ます」
やがて返ってきた大和先輩の答えに、
私は顔を上げ、大和先輩を見つめる。
大和先輩は、どこか遠くを見つめながら
言葉をつむいでいった。
「夢の中の僕は…どうしても守りたいものがあって…
なのに、それを守りきれずに、失くしてしまう。
でも、僕の守りたかったものは…最終的には。別の形で守られていって…
そうして、僕は満足…いえ、違いますね。
『納得』して、目覚める。
…そんな夢です」
そう語る大和先輩の横顔は、なんだか儚げで。
私が何の反応も返せないまま、大和先輩をじっと見ていると―――
「…すみません、変な話をしました。
今の話は…忘れていただけませんか」
大和先輩は儚げな表情のまま、こちらを向いて微かに微笑んだ。
私はそれを見て…
@「変な話なんかじゃないですよ」と微笑み返す。
A「どうして私にそんな話を…?」と聞いてみる。
B「ごめんなさい」と謝って話題転換。
- 76 :
- @「変な話なんかじゃないですよ」と微笑み返す。
「自分で守りきれなかったのは残念ですけど、最終的に納得できたのならいい夢なんじゃないですか?」
「……いい夢ですか?そう、なのかもしれませんね」
大和先輩は思いもしなかったという顔をして、それから笑った。
「ええ、いい夢ですよ。私の夢だって、途中やりきれないことも多いけど……
最後は夢の中の自分が納得してる終わり方だから、いい夢だって思ってます」
「だから劇にしたんですね」
「そう考えたことは無かったけど、確かに納得出来ない終わりかたの夢なら劇にしなかったですね」
そう、夢の中の主人公である壱与は最終的に自分のしたことを悔いてはいなかった。
帝と結ばれる事が無くても、帝が願った平和な国を造る手伝いが最後まで出来たことがうれしかった。
「私も夢の中の壱与みたいに、悔いの無い人生にしたいな」
「それは大変ですよ、僕たちの先はまだまだ長いですからね」
「確かに……。でも、だからこそ、いろいろ悔いることもあるだろうけど、最終的には…ってね」
「あなたのそういう前向きな所は好きですね」
「……え!?」
さらりと言われた「好き」という言葉に驚いて、思わず大和先輩を見上げると、ひどく優しげな視線にぶつかった。
自分にお兄さんがいたらこんな感じで見守っていてくれるのではないだろうか?
(と、特別な「好き」じゃないよね、うん。びっくりしたー)
その視線にホッとして「ありがとうございます」と口を開きかけた所で、屋上の扉が開くのが目に入った。
やってきたのは春樹だった。
春樹は私と大和先輩に気が付くとこちらにやってくる。
「春樹どうしたの? ここは一般客は立ち入り禁止のはずだけど」
「そうなんだ、でも、なんか懐かしくて」
春樹はそう言うと、ぐるりと屋上を見渡す。
「記憶にあるんだこの場所」
「そうだね。めったに来たことは無かったけど……最近だと修二先輩を迎えにきたっけ」
「修二先輩?」
「あ、こっちの話」
春樹は苦笑して、私の横に立つ大和先輩に会釈する。
そしてふと大和先輩を見つめて、首をかしげた。
「もしかして御門、先輩……?」
「?」
表情に乏しいが、幾分不思議そうな顔で大和先輩が春樹を見る。
春樹の記憶の中には大和先輩も居るのだろうか?
でも大和先輩は「御門」という苗字ではない。
@詳しく聞いてみる
A聞き流す
B屋上から出て行くように言う
- 77 :
- @詳しく聞いてみる
「春樹の記憶の中には大和先輩は御門という名前なの?」
私の問いに一瞬だけ迷いを見せる。
そして「そうだね」と呟いた。
「あ、こちらは高村春樹くんです。大和先輩は食堂で見かけてるかな……?」
記憶力のいい先輩なら、春樹の顔を覚えているかもしれない。
「お好み焼きとミックスサンドとコーヒー……ですね」
顔も覚えているみたいだけど、注文の内容までしっかり覚えているようだ。
これだけ記憶力がいいと、みんなから相当珍しがられているだろう。
「本当に記憶力がいいんだ。さすがだな」
さすがと言う割りに、あまり驚いている感じでは無かった。
私なら何度目の当たりにしても驚くほどの記憶力でも、とても冷静に受け入れている。
そんな春樹を見ていると、大和先輩に向かって口を開く所だった。
「ところで大和先輩。愛菜が書いた脚本の劇、観られましたか?」
「いいえ。僕は食堂に居たので観ていません」
「そうですか。大和先輩ならきっと共感できる部分があったはずなのに、残念だな」
(春樹は私達の劇に共感してくれたんだね)
そう思ってくれるだけで、クラスで頑張った価値があるというものだ。
「ねぇ、春樹。私の劇のどこに共感したの?」
「……そうだな、共感というよりすべてが繋がったと思ったよ」
「すべてが繋がる……?」
「ルーツを見つけた。そんな感じだった」
「確かに、古代日本だから私達のルーツだよね」
「そうだね。だけど、個人的にも色々納得できる所があったんだ。それを共感と呼んでいいのかは分らないけどね」
春樹くんはあの劇で何かを見つけたようだ。
私も壱与の考え方に共感できる部分が多かったから、なんだか嬉しくなる。
私は……
@「一番誰に共感できた?」
A「あの劇のどの場面が気に入った?」
B「そういえば……大和先輩と帝ってちょっと似てる?」
- 78 :
- @「一番誰に共感できた?」
「共感、か……共感なら帝に一番したかな」
「?」
「大切な人を護りたい、ずっと一緒に居たいっていうのは誰でも共通だとおもう」
「確かにそうだね」
「でも……いや、だからこそかな、守屋にも共感できるよ」
「え?」
「だって、守屋も子供の頃から好きだった壱与を助けたかったんだろ?」
「そうだね」
「ずっと幽閉同然の壱与を助け出したい。不幸な境遇から救いたいっていう想いにも共感できる。
まぁ、それは守屋の思い違いだったみたいだけれど」
「そっか、確かに守屋の視点から見ても根底にある思いは同じなのかな。壱与は気付かなかったけれど」
春樹はそれに少し苦笑する。
「案外壱与はそういう感情に鈍感だったのかもしれないね」
「うーん、そうなのかも?巫女だったし、基本的にそう言う感情は切り離してた感じ。帝は別だけど」
「……もし守屋が壱与の気持ちに気付いていれば、全く違う話になっただろうね」
「そうだね……、ちょっとしたすれ違いだもん」
「それもあるけど…守屋は帝の気持ちには気付いてたんだよ」
「え……?」
不思議そうにする私に、春樹が少し笑う。
「春樹?」
「同じ人を好きな者同士というのは、案外お互いの気持ちに気付きやすいものだよ」
「そういうもの?」
「なにせ同じ人を目で追ってるからね」
「なるほど……」
春樹からそういう話が出るとは意外だった。
春樹にはそういう意味で好きな人が居るのだろうか?
「だからね壱与の気持ちに守屋が気付いていれば、二人は両想いってことになる。
自分の想いはかなわないものとして、きっと身を引いたよ」
「そうしたら、謀反は起きなくて、長引く戦で体調を崩した帝ももっと長生きできた?」
「もともとそれほど体が強くなかったって言ってから、それは分からないけれど……」
春樹は少し考えるように言葉を切る。
「きっと三人で力を合わせて大和を守って行く結末になったんじゃないかな」
「守屋も一緒に?」
「そう、守屋は壱与が幸せならそれで良かったんだ。
好きだけど自分じゃ幸せに出来ないと知ったら、その思いは壱与には悟らせないで見守っていたと思うよ。
まぁ、隠さなくても壱与は気付かなかっただろうけど」
「壱与には帝しか見えて無かったみたいだしね」
私が苦笑すると、春樹は少し複雑そうに私を見た。
どうしたんだろう……
@どうしたのか聞いてみる
A気にしない事にする
B会話に加わって居ない大和先輩を見る
- 79 :
- @どうしたのか聞いてみる
「どうしたの?」
複雑そうに私を見る春樹に、思わず首をかしげた。
「いや、なんでもないよ。壱与は芯の強い女の子だけど、ひどい鈍感体質だからね」
(うーん。鈍感なのは私も感じていたけど……)
春樹の言い方が面白くなくて、思わず頬を膨らませてしまう。
「壱与の事を言われているのに自分の事を言われてるみたいで……なんだかムカつく」
「それだけ壱与に共感しているって事だよ」
「まぁね……」
「もしかしたら、愛菜のルーツは壱与だったかもね」
春樹の目はとても優しい。少しだけ私のお父さんに似ている気がする。
(私のルーツが壱与……)
「もしそうだったら嬉しいな。私は壱与の事が大好きだもん。
大切な家族や国を滅ぼされても、それを乗り越えて平和の為に生きていく。
なかなか出来ることじゃないと思う。もし私が壱与だったら、きっと心を壊していたよ」
私なんて、ちょっとしたハプニングでもすぐ動揺するし、気も小さい。
良いと感じた事でも、反対されてしまうとすぐに萎縮してしまう。
事なかれ主義というか、主体性が無い自覚があった。
けれど春樹は私の言葉を聞いて、大きく首を横に振った。
「愛菜は心を壊したりなんかしないよ」
「どうしてそう思うの? 私なんて壱与にくらべたら全然弱いよ
「だって俺は……」
また何か言いかけて、春樹は口をつぐんでしまう。
言いたい事を押しように、春樹は黙り込んでしまう癖があるようだ。
なんだか見ているだけで、こちらまで苦しくなってしまうくらいだった。
私は……
@沈黙に耐え切れず大和先輩に話しかける
Aどうしていつも黙り込むのか春樹に尋ねる
B二人に飴をくばる
- 80 :
- Aどうしていつも黙り込むのか春樹に尋ねる
「どうして言いかけて止めちゃうの?」
顔をしかめて言うと、春樹は苦笑した。
「気付いたからだよ」
「え?」
「今俺が言おうとしたことは、記憶の中の『姉さん』のことだって」
「あ……混じっちゃったのね」
「そういうこと。気をつけてはいるんだけれどね」
そう言って春樹は記憶を確かめるように目を閉じた。
(今はそっとしておいたほうがいいかな?)
春樹から意識を逸らすと、ぼんやり空を見上げている大和先輩が目に入った。
つられるように空を見上げると、大分暗くなった空に星がまたたき始めていた。
「暗くなるのがだいぶ早くなりましたね」
「そうですね」
私達の会話が途切れたタイミングで、大和先輩が静かに言葉を発した。
私はそれに頷いて、視線を大和先輩に移す。
大和先輩は春樹を見ていた。そして目を閉じたままの春樹におもむろに口を開く。
「あなたの記憶は、僕の夢に通じるものがあるのかもしれません」
「え?」
突然のことに春樹は驚いたように目を開ける。
「夢って、さっき言っていた夢の事ですか?」
「そうです、出てくる人物の顔や名前はとてもおぼろげで覚えていませんが……。
でも、今日食堂であのテーブルに座っている人たちを見たとき、とても『懐かしい』と感じました。
そして『よかった』とも……。それは夢の中で感じた気持ちと同じものでした。
あなたはおそらく、僕とは違って鮮明にそれを覚えているのでしょう」
「だから記憶が混乱してしまう?」
大和先輩の言葉に私がたずねると、大和先輩は頷いた。
「現実と区別がつかないくらいに鮮明な夢なのかもしれません」
「夢……か、確かにそうかもしれない。……今となっては」
春樹は俯いて、少しだけ口の端に笑みを浮かべた。
それから気を取り直したように顔を上げる。
「大和先輩でもさすがに夢までは記憶に残っていないんですね」
「……夢ですから」
少し困ったように大和先輩が答えると、春樹はひょいと眉を上げた。
「『夢』の先輩と、今の先輩は似てると思ったけれど……ぜんぜん違いますね。でも、断然こっちの方がいい」
春樹は少しうれしそうだ。
@夢の大和先輩について聞いてみる
A他には誰が夢に出てくるのか聞いてみる
B夢の話はおしまいにする
- 81 :
- @夢の大和先輩について聞いてみる
「夢の大和先輩は一体どんな人だったの?」
うれしそうな春樹に向かって私は問いかける。
「俺の記憶の中にいた大和先輩は御門冬馬という名前だったんだ」
「それ、さっき言ってた事だね」
「うん。で、記憶の御門先輩は……とても無愛想な人だったよ」
(無愛想……)
今の大和先輩もどちらかと言うと表情が乏しい気がする。
私の考えていることが分ってしまったのか、春樹は小さく微笑む。
その後すぐに真剣な表情に戻って、言葉を続けた。
「だけど、無愛想だったのには理由があったんだ」
「理由……ですか?」
大和先輩も興味があるのか、春樹の言葉に耳を傾けている。
春樹は大和先輩に「はいそうです」とうなずいて、また私に向き直る。
「卑劣な大人達が幼い頃の御門先輩を道具のように利用していたんだ。多分、御門先輩はその出来事のせいで心を閉ざしてしまったんだと思う。本当の御門先輩は……大和先輩のようにちゃんと話せる人だったのかもしれないのにね」
「かもしれないって……。春樹はその御門先輩と親しくなかったの?」
「御門先輩は元々、ほとんど話さない人だったから」
「じゃあ、どうして春樹はその事を知っているの? その御門先輩に直接聞いたの?」
「違うよ。その卑劣な大人たちって言うのが……俺の親族だったからだよ」
春樹はそう言うと、辛そうに目を閉じる。
大和先輩を見ると、無表情な顔で春樹を見ていた。
そして少しだけ首を傾けながら、唇をかみ締めている春樹を覗き込んだ。
「顔を上げてください」
「……大和……先輩?」
顔を上げた春樹に、大和先輩は笑顔を向ける。
その笑顔はとても柔らかいものだった。
「たとえ記憶の中の僕が春樹さんの親族から利用されていたとしても、悪いのはその大人達です。春樹さんが罪を感じる必要は無いと思います」
「でも……」
「きっと記憶の中の僕は、春樹さんを恨んでいません。だから僕は『よかった』と感じる事が出来たんじゃないでしょうか」
「大和先輩……」
春樹は肩の荷を降ろしたように、顔を崩す。
そして「ありがとうございます」と言って頭を下げていた。
私は……
@記憶の中の春樹について聞いてみる
A他には誰が記憶に残っているのか聞いてみる
B記憶の話はおしまいにする
- 82 :
- @記憶の中の春樹について聞いてみる
「その記憶の中では春樹は私の弟なのよね?」
「うん」
私の言葉に、春樹は頷く。
「ってことは、その親族って私の親族でもあるのよね?」
「違うよ。愛菜は姉さんでも、義理の姉だからね」
「え?」
「俺の母さんと、愛菜の父さんが再婚したんだ」
「え……じゃあ、私のお母さんは……?」
「……子供をかばって交通事故で亡くなった」
「あ……」
そういえば、春樹に再会した時お母さんをみてものすごく驚いていた。こういう理由だったのだ。
「じゃあ、秋人さんは?」
「兄さんは兄さんさ。腹違いの兄だったから一緒ではなかったけれど……とても優しい人だった」
「その辺はかわってないのね」
「……そうだね。俺は、義父さんと母さんと愛菜の4人であの家に暮らしていた」
「あれ? 千春は?」
「……千春は……愛菜の持ってるテディベアの名前だったかな」
少し言いにくそうに春樹が言う。
(テ、テディベアが千春……)
「千春には申し訳ないけれど、俺は千春のポジションに居た事になるね」
少し苦笑して春樹が続ける。
「愛菜と俺は3ヵ月しか誕生日が違わなくて、愛菜が後2週間くらい遅く生まれていたら同じ学年だった……。いやそれは今も同じか。
俺は良く寝過ごす『姉さん』を起こしたり、食事の用意をしたり……」
ひどく懐かしげに春樹は遠くを見つめて言う。
けれどどこか寂しげなのは何故だろう。
そんな春樹をみてふっと言葉が口からすべり出る。
@「今、幸せじゃないの?」
A「お姉さんが好きだったの?」
B「夢が現実になればいいと思ってるの?」
- 83 :
- B「夢が現実になればいいと思ってるの?」
懐かしそうで少し寂しげな春樹を見て、そんな言葉がすべり出た。
「どうだろう……。自分でもよく分らないよ」
私と記憶の『姉さん』をいつも混ぜそうになって、いつも言葉を詰まらせる春樹。
きっとまだ記憶と現実の狭間で揺れているのだろう。
大和先輩は何も言わず、ただ静かに私達の様子を見つめている。
「正直、今でも寂しいし、孤独に感じる事はあるよ」
「孤独……」
「俺は何者なんだって。そんな風に考えてしまう事もあったしね」
「でも記憶の中で春樹は春樹なんでしょ?」
「そうだけど全然違うんだ。こうなって始めて気づいたけど、俺の存在そのものが酷く曖昧に感じてしまう事もあったんだ」
「存在が曖昧?」
春樹の言っている事が分らず、私はオウム返しで尋ねる。
「そうだよ。記憶ってこんなにも自分自身を形作っていたんだと驚かされたくらいさ」
「記憶って、やっぱり大切なのかな」
「多分ね。人は誰かと共有する記憶を持っているから、次に何をするべきか選択できる。
俺はみんなとは大きく違う記憶しか持っていないから、気が変になりそうだった」
「そう……そうだよね」
「なんてね。もし昔話の浦島太郎が居たら、親友になれそうかも、なんて思ったりもしてさ」
最後の言葉は冗談のように軽い口調で言ったけれど、事態は私が思っていたより深刻だった。
もしも自分だったらと思うだけで、段々胸が痛くなってくる。
そんな私の姿を見て、春樹はポツリと呟く。
「だけど、きっとこれで良かったんだ」
「良かった?」
「失くしてしまうよりはずっと良かった」
「どうして? そんな孤独に感じる記憶なんて無いほうが良いに決まってるよ」
「だって、大切だから。もしこの記憶を失っていたら、ここが姉さんの望んだ世界だとすら気づけなかったんだよ」
春樹は皆と違う記憶なのに持っていて良かったと言う。
私だったら、苦しくなるような記憶なら消してしまいたいと願うだろう。
私は……
@望んだ世界について聞く
Aどうして大切なのか聞く
B大和先輩を見る
- 84 :
- Aどうして大切なのか聞く
「どうして大切なの? お姉さんは春樹が苦しむ所は見たくないとおもうよ?」
「そうだね……でも、俺は『姉さん』を覚えていたいんだ。一生懸命俺を守ってくれようとした『姉さん』をさ」
「あなたは、お姉さんが好きなんですね」
いままで黙って聞いていた大和先輩が言う。
春樹は少しだけ迷うように視線をさまよわせて、けれどしっかり頷いた。
「一番大切な人だったよ。何に変えても護りたいと思った人。
結局は最後までちゃんと護れなくて……最後まで守ってもらってたけど」
「なんか、それって大和先輩の夢に似てますね」
「そうですね」
「大和先輩の夢ってどんな夢なんですか?」
そういえば大和先輩の夢に関しては詳しく話していなかった。
説明すると、春樹は納得したように頷く。
「やっぱり俺はこの記憶があったままのほうが良い。
『姉さん』を消してしまいたくないから…他の誰もが忘れてしまっても、俺が覚えている限り『姉さん』は俺の中で生きているんだ」
春樹はすっきりしたような顔で笑った。
「今は記憶が混乱してしまうこともあるけれど、これから先はそんなことも無くなると思うし、愛菜は愛菜で変わらないし」
そう言って春樹は微笑んで、大和先輩に視線を移す。
「どうやらあなたは完全ではないにしろ気付いているみたいですね。
さすがというかなんというか……でも、俺は負けませんから」
挑むように言う春樹に、大和先輩は少し驚いたような顔をして真面目な顔になる。
「宣戦布告ですか? 受けてたちますよ」
「どうやら俺とあなたは昔からの因縁もあるみたいですし」
「ちょ、ちょっと二人ともどうしたの?」
突然、微妙に険悪な雰囲気になった二人に慌てる。
「気にしないで下さい、愛菜さん」
「愛菜は気にしなくて良いよ」
「ライバルは他にもいるのでしょう?」
「やっぱり侮れないですね先輩」
「ライバル? 春樹の記憶では先輩とライバルだったの?」
「そうだね。まぁ、他にもたくさんいたけれど……」
頷く春樹に首をかしげる。
@なんのライバルだったか聞く
A勝負も程ほどにしてと言う
B仲良くしなくちゃ駄目だという
- 85 :
- B仲良くしなくちゃ駄目だという
「仲良くしなくちゃ駄目だよ。はい、飴でもなめて二人とも落ち着いて」
私はポケットの中から、べっこうあめを取り出す。
そして、春樹と大和先輩に渡した。
「これ、近藤先生からもらったものだね」
「そうよ」
二人は渡した飴をしばらく眺めてから、口の中にポンと入れる。
「とても甘いです」
「ちょっと焦げてるみたいだ。少し苦いね」
口の中で飴を転がしながら、それぞれ感想を呟いている。
「これで二人とも仲良しだね」
「こんな簡単に仲良しって……」
「簡単じゃないよ。甘いものって不思議な癒しの力があるんだから」
「……癒しの力?」
「そうよ。ちょっとへこむことがあっても、イラッとしていても、たちどころに治っちゃう。
これは絶対に癒しの力なんだから」
私は大いに力説する。
そんな私を春樹は苦笑いで見ていた。
「うー。その顔は信じてないでしょ」
「そんな事ないよ。まぁ、少しは癒されるよね」
「その顔は信じてないんだね。本当にすごい癒しの力があるのに……」
私と春樹の会話を大人しく聞いていた大和先輩が、突然、大真面目な顔をして口を開いた。
「僕も愛菜さんの考え方に賛同します」
「でしょ。ほら、大和先輩も言ってるじゃない」
「だけどさ……」
「大阪の年配の女性達は『あめちゃん袋』なるものをいつも鞄に忍ばしては周りの人々を懐柔していると聞きます。
そういう裏づけからも、愛菜さんの考え方は理にかなっている事になります」
大和先輩は自分の導き出した答えに満足したのか、また黙って飴を舐め始めた。
私は……
@さっき言っていたライバルはどんな人が居たのかきく
A先輩は天然だと思う
B帰ろうと言う
- 86 :
- @さっき言っていたライバルはどんな人が居たのかきく
「そういえばライバルっていっぱいいたって言うけど、他には誰が居たの?私の知ってる人?」
なんのライバルかはわからないけれど、男の子なのだし居て当然なのかもしれない。
競い合って磨かれていくものがある事は、私にだって分かる。
(日常は仲良くしてほしいけどね……)
ライバルで競い合っているからといって、いがみ合う必要はない。
「聞いてどうするのさ?まあいいけど……どうせ、なんのライバルかはわかってないんだろうし」
春樹は肩を竦めると答えてくれる。
「まず一郎先輩」
「え?一郎くん?」
頭の良い一郎くんもライバルに上がってくると言う事は、勉強関係のライバルだろうか?
「それから、修二……修さん」
「修くん!?」
テニスをやっていると言っていたから、テニスのライバルなのか?
でも、あっさり編入してくるとか言うあたり頭も良いのかもしれない。
「隆さん」
「隆……?」
隆だって頭は悪くはないけれど、名門学校の春樹とライバルになれるほど頭がいいとは言えない。
「脱落したけど周防さんとチハルもかな?」
「周防さんに千春???」
ますます分からなくなる。周防さんは医者だから頭がいいのは分かる。
けれど千春も?しかも脱落って??
「もしかしたら兄さんも」
「兄さんって……秋人さん?」
そういえば秋人さんは何をやっている人だろう?でも春樹のお兄さんだし頭が悪いという事はないだろう。
「今、一番強敵なのは長谷川先輩かも」
「か、香織ちゃん!?」
香織ちゃんの名前まででてくるなんて、いったいなんのライバルだったのか。
「一体なんのライバル何だかさっぱりだよ……」
「そこは愛菜ががんばって気付いてほしいかな」
「そうですね」
春樹と大和先輩は教えてくれる気はないようだ。
@意地でも教えてもらう
Aヒントをもらう
B考えるのを止める
Cもっと考える
- 87 :
- Aヒントをもらう
「私だけノケモノなんてズルイ」
二人だけ納得して、私だけ分らないのは理不尽だ。
抗議する私を見て、二人とも困ったように笑っている。
「どうしますか、大和先輩」
「愛菜さんに答えを教えてしまっては、僕達が頑張る意味がなくなってしまいます」
「ですね。俺もそう思います」
私を置いてきぼりにして、二人の意見は一致しているようだ。
仲が良いのか悪いのか、さっぱり分らない。
「じゃあ、せめてヒントだけでも教えてよ」
「ヒントか……。それくらいだったら、教えてもいいのかな?」
春樹は大和先輩に確認するように目配せをしていた。
大和先輩はその春樹の視線を受けて、うなずく。
「そうですね……。このままでは愛菜さんが可哀想ですから」
「やった! ねぇねぇ、ヒントは何?」
「ヒントは……これかな」
春樹は私が手に持っていた飴の袋を指差す。
「この……飴?」
「うん。愛菜の手の中にあるその飴だよ」
私の手の中には、のこり一つになったべっこうあめが残っている。
「俺も大和先輩も、愛菜から飴を貰っているから、その美味しさは知っているよね」
「うん。今も舐めてるしね」
「まぁ、さっきの愛菜の言葉を借りるなら、一度はその味に俺も大和先輩も癒されたんだ」
「そうだね。甘いの癒し力は半端無いもの」
「で、俺と大和先輩だけじゃなく、さっき言った全員がこの残り一つの飴を欲しがっていたとする。
この飴を巡って争奪戦が始まってしまったら……それはライバルって事だよね」
(なるほどね。あれ、ちょっと待って……)
「みんなはこの飴を巡って争っているの? え? えぇ??」
うなずく大和先輩を見ても、このヒントがまったく要点外れで無い事はわかる。
だけど私にとっては、余計分らなくなってしまっただけだ。
困っている私を見て、春樹は楽しそうに口を開く。
「じゃあ、ヒントを教えた俺達から逆に質問させてもらうけど。
もし、この飴を俺達全員欲しがっていたとして……もし愛菜ならこの一つだけ残った飴をどうすると思う?」
うーん。私ならどうするだろう……
@特定の誰かにあげる
A自分で食べる
Bずっと残しておく
C砕いてみんなで分ける
- 88 :
- @特定の誰かにあげる
「うーん、一番欲しがってる人にあげる、かな?」
「それって誰?」
「え? それは分からないよ、みんなに聞いてみないと」
「まあ、そうだけど……」
私の答えに春樹はなんともいえない微妙な顔をする。
見ると大和先輩もすこし苦笑しているようだ。
「でもまあ誰かにあげる気はある、ってことが分かっただけでもよしとしておこうか」
「そうですね。みんなで分けるなんて言われたらどうしようかと思いましたよ」
「あ、皆で分けてもいいなら……」
「却下。絶対その一つを誰かにあげる事」
大和先輩の言葉に光明を見出した気がして口に出すと、あっさりと春樹にダメだしをくらう。
「最終的に、誰にあげるかは愛菜が決める事だけど。もらえるようにがんばらないとね」
「ええ」
頷きあう春樹と大和先輩にふと気になって訪ねる。
「もし私がだれかにこれを誰かにあげたら、他の人は怒るのかな? みんな欲しいんでしょう?」
「怒りはしないよ。少なくとも俺は」
「僕も怒りませんよ。愛菜さんが決めた事ですから」
「そっか……」
それに少しだけホッとする。
「よかった、みんなと気まずくなるくらいならあげないほうがいいもん」
「……そうはならないように言っておくよ」
なぜか嫌そうに春樹が言う。
「っていうか修くんとか香織ちゃんあたりは強引に取って行きそうなきもするけどなぁ」
「……愛菜よく分かってるじゃないか、なんでコレで分からないかな?」
幾分疲れたように春樹がぼやいている。
「強引に奪われたのなら、僕たちが怒りますからね。ちゃんと自分の意思であげるように死守してくださいね」
大和先輩がやけに真面目な顔で言うので、慌てて頷く。
頷いてからふと思う。
@(これってたとえ話しだよね?)
A(みんなが欲しいものって私が関係してるの?)
B(一個しかないものを奪い合うライバルってことよね)
- 89 :
- B(一個しかないものを奪い合うライバルってことよね)
「そうだ、だったら皆で私から奪えばいいよ。。」
「えっ」
2人が私の答えに驚いたのか面をくらったような顔を見せる。
「私があげるのを皆が待つんじゃなくて、私が皆がこの一つの物を奪いに来るのを待つの。
一つの飴を皆に奪うチャンスをあげればそれが一番の平等になるし、きっと毎日が楽しいよ。」
この飴を巡って色んな人が私に会いに来る、それはきっと騒がしい毎日で飽きることの無い一日になる。
私はこの宝の飴をもって逃げる、それを追いかける皆を想像するだけで気持ちが浮き立つようだ。
「だれがこの飴を一番初めに奪いに来るか、楽しみだよ!。」
「姉さんって結構、小悪魔だったんだな。姉さんの知らない一面をみたよ。」
驚きを隠せないのか春樹は私のことを姉さんってまた呼んでる。
「元々が天然小悪魔です。」
ポツリと大和先輩がつぶやく。でも合ってるかもしれないと自分でも思った。
幸せの飴を持って逃げる私は、きっと皆からしたら悪魔なんだろう。
だから小悪魔って言われてさらに気分が高揚する。
「はやく、私を捕まえて、じゃないとこの飴なくなっちゃうぞ。」
イタズラ悪魔になったつもりで飴を掲げクルリとまわる。
「じゃあ、宣戦布告。俺が捕まえるよ。」
「えっ。」
右耳を通る小さなリップ音。いきなりのことでわからなかったけれど一瞬頬に何か感触があったような。
「だって俺はもう我慢しなくていいんだよ。
だって姉弟じゃないし、今まで我慢していた分を含めて本気で奪うから覚悟してて。」
「えぇっ。」
ま、まさかいまのは……頭が追いつかない。春樹の今の顔は私よりよっぽど悪魔かもしれない。
「じゃあ、僕も。」
大和先輩は跪くと左の手の甲に唇を寄せ囁く。
「貴方が望むならば、僕は剣となり盾となり……翼にさえなってみせる。」
とても恥ずかしいけれど懐かしい台詞。
「あなたと共にその飴を守ってみせます。」
暖かい唇を指先に感じる。大和先輩が私に……き、キス!
というか、は、春樹も。
「おまえら……校内で何をやっている。」
「2人ともまだまだ青いね〜、そういうときはやっぱり唇でしょ。」
一郎君と、修君!!見られてたの。
「俺も飴争奪参加するからね、奪うのは俺。待ってて、愛奈ちゃん。」
私は頭が全然回らなかったのか気がつかないうちに修君が凄く近い。
止めようとしているのか右から一郎君がすぐ傍まで駆け寄ってくる。
私はとっさに
@右の手のひらで唇をガード
A一郎君の方へ避ける
- 90 :
- A一郎君の方へ避ける
とっさに一郎くんの方へ避ける。
一郎くんを盾にするようにその背中に逃げると、私をかばうように一郎くんが立ちふさがり修くんを追い払っていた。
「修! ふざけるのも大概にしろ! ……大丈夫か大堂?」
「あ、う、うん」
火照る頬を覚ます為に両手で頬をおおう。
「一体なんなんだ? その飴はただの飴だろう?」
不思議そうに一郎くんが言う。
「もしかして一郎、気付いてないの? 飴争奪戦の裏の意味」
「裏……?」
一郎くんは私と飴を見比べて、急にすぅっと目を細めた。
「なるほど……、では俺も参加する事にしよう」
「え、え!?」
唐突に右手を取られて引っ張られる。
「うわ、抜け駆け禁止!……ちっ、余計な事言っちゃったか」
修くんが慌てたように私と一郎くんを引き離す。
「抜け駆けも何も、捕まえたもの勝ちなのだろう?」
「そりゃぁ……」
「あんたたち、なにやってるの?」
「香織ちゃん!」
何時の間にやってきたのか、騒いでいる私たちを呆れたように見ている香織ちゃんを見つけて私は走りよる。
「よしよし愛菜、どうしたの? 男共によってたかっていじめられたか?」
「そんな事するはずがないでしょう」
「そうそう、ただの飴争奪戦だよ」
春樹が言い修くんが私が持っている飴を指差す。
「飴?」
香織ちゃんは私が持っている飴を見る。
「一番最初に私を捕まえた人にあげるの」
「………愛菜」
きょとんとした後に、はぁーっと香織ちゃんは額に手を当てて、盛大なため息を突く。
「な、なに?」
「ううん、いいの、いいのよ愛菜は変わらなくて。
さて、と。 もちろんアンタたちはこの香織様とやりあう気があるってことよね?」
「必要ならね」
「ふん、私はそう簡単に越えられないわよ! 覚悟なさい」
「やっぱり、一番の強敵は長谷川先輩かな」
「今の所一番信頼をえているようですね」
(みんなそんなにこの飴がほしいのかな?)
不思議に思っていると、下校のチャイムがなる。
本格的な片付けは明日なので、今日はもうこれで帰って良い事になっている。
「さあ、帰りましょう」
香織ちゃんの言葉に……
@「うん、行こう」
A「せめて校門まで皆でいこう」
B「ごめん、先に帰ってて」
- 91 :
- A「せめて校門まで皆でいこう」
私の提案に、みんな快く賛成してくれた。
もしかしたら手の中の飴が目当てかもしれないけど、理由はどうあれ賛成してもらうのは嬉しい。
私は香織ちゃんと、集団の中の一番後ろを歩く。
すぐ前には一郎くんと修くんが歩いていた。
二人の会話が自然と耳に入ってくる。
「修、その紙袋はなんだ。うちの校章が印刷されているようだが」
「ん? これ? これは編入手続きの願書」
「編入手続き……?」
「ここの学校すごく面白そうだし、近いうちに転校しようと思ってね」
「お前!? 今通っている学校はどうするつもりだ!」
「もちろん転校に決まってるじゃん。ここの生徒になるんだからさー」
「……正気か? おじさんやおばさんには相談したのか!?」
「うちの両親、俺に甘いの知ってるでしょ」
「確かに甘いが……テニス部はどうするつもりだ。あの強豪校から出て行くつもりなのか!」
「当たり前でしょ。ここにテニス部があるのは確認済みだし、どこだって出来るじゃん」
「………………」
(やっぱり、本気だったんだ)
修くんの強引さには、一郎くんも言葉が出ないようだった。
さらに前には、さっきは妙に意気投合していた春樹と大和先輩が歩いている。
「劇の中に出てくる帝はすごく記憶力がいいんです」
「……確かにそれは僕と似ていますね」
「主役の壱与という女の子も聡明なんですが、その子でも小さい頃からコツコツと文字を覚えていたんです。
それを帝はたった一年ほどでマスターしてしまったんですよ」
「……なるほど、それはすごいです」
「幼馴染の守屋だって壱与と一緒に長い時間をかけて文字を覚えていったんです。さすがに理不尽だと思いませんか」
「……僕も理不尽だと思います」
「当時の日本にはちゃんとした文字が無かったんです。文字は正確にそしてより多くの人が見ることの出来る重要なツールですよね。
その重要性を一番最初に見抜いていたのは帝ではなく、出雲国王なんですよ」
「……それは立派です」
「本当に分ってくれていますか? 俺は真剣に話しているんですよ」
なんだか、春樹が大和先輩に絡んでいるように見えなくも無かった。
@香織ちゃんに話しかける
A今日の文化祭について考える
Bみんなを見る
- 92 :
- Bみんなを見る
(なんか不思議……)
よく考えてみれば一郎君と香織ちゃん以外は知り合って間もない人たちばかり。
それがたった一日でこうやって肩を並べて一緒に帰るほどに親しくなっている。
まるでこうして出会うことが決まっていたかのように。
「決して偶然なんかじゃないよ。こうやってみんなが集まって笑い合えるのは……愛菜が居たからなんだ」
ふいに春樹の言った言葉がよみがえる。
「偶然じゃないのかな?」
「愛菜?」
思った事が口から出ていたらしい、香織ちゃんが不思議そうに私を見る。
「必然っていうものがあるのかもって、なんとなく思ったの」
「俺と愛菜ちゃんのは間違いなく必然だとおもうよ」
私の言葉を聴きとめたのか、振り返って修君が笑う。
「修……お前はまた……」
頭がいたい、という感じで額を押さえた一郎君に、修君は幾分真面目な顔で答える。
「俺はいたって真面目だよ。愛菜ちゃんとは出会うべくして出会ったっておもう」
その言葉に春樹が振り返って言う。
「それをいうなら、愛菜にかかわるみんながそうですよ。俺達はみんな出会うべくして出合ったんです」
「俺は愛菜ちゃんだけでいいけどなぁ……」
嫌そうに修君が言う。
「無理でしょう。愛菜にかかわるなら絶対に俺達にも会う事になる」
確信を持って言う春樹に私は首をかしげる。
「なんで私なの? 香織ちゃんとか春樹かもしれないじゃない」
「違うよ、だって俺達は、ライバルなんだから」
「ライバルって……この飴の?」
「そう。誰が愛菜を捕まえられるか競うライバル。だから中心は愛菜なんだ」
春樹はそう言って、ふと思い出したように付け加える。
「まあ、一名ここにはいないけど、彼は小さい頃から一緒だったんだから少しはハンデもらわないとね」
「それって隆の事?」
そういえば、屋上での会話でも隆の名前が上がっていた。
私の疑問に、春樹は微笑むだけだ。
みんなを見ると、同じように微笑んでいる。
まるで私以外、すべてを解っている共犯者のようだ。
「なによ、もしかして……
@みんなで私をからかってるの?」
Aみんな私になにか隠していない?」
B私だけ気づいて無いって言うの?」
- 93 :
- B私だけ気づいて無いって言うの?」
「そうだよ」
「そうです」
「そうだな」
「そうよ」
さすがに同時に言われると、少しばかり悔しくなる。
(だけど、きっと誰も教えてくれないんだろうな……)
ふくれる私を覗き込み、修くんがにっこり笑いながら囁く。
「でもいいじゃん。今日は楽しかったんだしさ」
「……うん、まぁすごく楽しかったけどね」
修くんの言うとおり、今日は一日中楽しかった。
午前中は放送委員の仕事をしたり、みんなとご飯を食べた。
午後からのクラスの劇は大成功だったし、色々見て回れて本当に充実していた。
校舎を抜けて校庭まで出て行くと、空はすっかり暗くなっていた。
秋特有の乾いた風が吹き抜けて、少し肌寒いくらいだ。
晴れ渡った夜空は雲一つ無く、綺麗な星がたくさん瞬いている。
(あれ? ……一体何?)
今一瞬、ほんの一瞬だけ空に消えていく人影を見た気がする。
夜空に吸い込まれていく天女のように、キラキラ光る薄い羽衣を身にまとっている女の子のだった。
一番不思議だったのは、私達と同じ制服を着ているという事だ。
目をこすりながらもう一度見てみると、その人影は跡形も無く消えていた。
(きっと……気のせいだよね)
「愛菜ーー! 早く来ないと置いてっちゃうわよーー!!」
香織ちゃんの声で我に返ると、さっきまでいたみんなが居なくなっている。
前を向くと、手を振る集団があった。
私がぼんやりと空を見ている間に、みんな校門まで着いてしまっていたようだ。
待ってくれている人たちに向かって、私は迷わず駆け出す。
さっきまでふざけ合う様に奪い合っていた不恰好な飴は、まだ私のポケットの中に入っている。
その甘くて少しだけ苦い味はいつまでも私の中に残っていく、そんな気がした。
- 94 :
- トゥルールートお疲れさまです!
Wikiにあったように、とりあえずこっちで次の準備の打合せでいいのかな?
とりあえず、伏線の整理と個別ルートの開始場所をどこにするか決めるのかな?
- 95 :
- お疲れ様でした。1から3年かかりましたねえ。
次は個別ルートだから、もっと早くすすむかな?
wikiで最後にでてた、役目・力等のことですが私の解釈をまとめてみました。
壱与=愛菜
(『鬼』と『人』が共存しているが、無自覚。
過去や未来を見ているのは『鬼』の愛菜。
チューニングによる通信はどちらも出来る。
普通の記憶は共有している。
序盤は人の意識が強いが、後半は鬼が強い。
トゥルー最後に消えたのは鬼のみ。
精霊が気持ち良いという力については不明)
守屋(弓削)=春樹【八握剣】
(力が無いと思われていたのは過去、愛菜が封印したから?)
帝=冬馬【草薙の剣】=大和
(現存している剣の遺伝子から造られたと秋人が言っていたが、その遺伝子についてはどのような常態か不明)
光輝=隆
周防【辺津鏡】
一郎【八咫鏡】
修二【八咫鏡】=修
(小学1年〜3年まで両親の勧めで一時組織に預けられたのに、修二はクローン?)
香織【八尺瓊勾玉】
秋人【八握剣・辺津鏡以外の八種類の神宝】
(もともとどの神宝を持っていたか不明)
武=武士
高村博信(秋人に取られる前の神宝の力は不明)
まだ良く分からない所もありますが、こんな感じに思っていました。
- 96 :
- おつかれさまでした
さすがに1000まではすごーく長かったよね
しかし帝の正体が御門に落ち着いたとは意外だ
私は途中まで秋人だと思って書いていたから、なんとなくキャラが大和と被ってしまったような
もし秋人ルートまで作るなら、キャラを考え直したほうがいいかも
>>95
さすがに多くの矛盾が残ったみたいだね
まぁ修二に関しては一郎が嘘をついていたって事で済みそうだけど
- 97 :
- 秋人が帝とは全然おもってなかったなあ
帝なら鬼の国を再建させたがる理由がないし…
実は出雲国王の親族あたりじゃね?とかおもってた
- 98 :
- たしかに秋人が帝だったら鬼の国を再建させる理由は無いか
やりようによっては陰の気に心をゆがめられて国を作る目的が大和→出雲にすり替わってしまったとかならアリだったかも
途中で書き手の中で私だけが秋人だと思ってる? と気づいて慌てたんだ
空気読めなくて済まんかったです
当時は遥か4の発売前だったし古代日本を物語に加えたら楽しいかなと思って入れてみたけど
他の書き手のみなさんのおかげで面白い話になっていったからうれしかったなぁ
だけど壱与とか物部氏とか歴史を捏造してしまったから、ホント申し訳ない
宗教やらタブーっぽいネタまで使ってしまったし。萎えた人はゴメンなさい……
- 99 :
- 面白くなったしいいんじゃないかな?結果オーライってことで。
で、伏線のまとめは、全員分やるのかな?
それとも冬馬ルートに関係しそうなのだけ?
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