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2012年4月新シャア専用208: スパロボキャラが種・種死・00世界に来たらW (359) TOP カテ一覧 スレ一覧 2ch元 削除依頼
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スパロボキャラが種・種死・00世界に来たらW


1 :10/09/21 〜 最終レス :12/04/07
【前スレ】
スパロボキャラが種・種死・00世界に来たらJ
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/shar/1266238282/
【避難所】
スパロボキャラが種・種死の世界に来たら避難所
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/10260/
【SS保管庫】
ガンダムクロスオーバーSS倉庫 Wiki
ttp://arte.wikiwiki.jp/

2 :
【過去スレ】
スパロボキャラが種・種死の世界に来たら
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1171646976/
スパロボキャラが種・種死の世界に来たら2
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1185894804/
スパロボキャラが種・種死の世界に来たら3
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1188148276/
スパロボキャラが種・種死の世界に来たら4
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1191681748/
スパロボキャラが種・種死の世界に来たら4の続き2
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1193820272/
スパロボキャラが種・種死の世界に来たら
ttp://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1199800477/
スパロボキャラが種・種死の世界に来たらα
ttp://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1208274940/
第二次スパロボキャラが種・00世界に来たら
ttp://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1211341851/
第3次スパロボキャラが種・種死・00世界に来たら
ttp://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1215555164/
第4次スパロボキャラが種・種死・00世界に来たら
ttp://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1223710735/
スパロボキャラが種・種死・00世界に来たらF
ttp://hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/shar/1227543145/
スパロボキャラが種・種死・00世界に来たらF 完結編
ttp://hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/shar/1237461611/
スパロボキャラが種・種死・00世界に来たらA
ttp://hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/shar/1243171517/
スパロボキャラが種・種死・00世界に来たらR
ttp://hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/shar/1248514184/
スパロボキャラが種・種死・00世界に来たらD
ttp://hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/shar/1258097826/

3 :
1乙

4 :
いちもつー

5 :
第43話「オペレーション・プランタジネット」
幸運な事故により、スレイ・プレスティの胸部に実る、未だ誰の手も及んだことのなかった2つの果実を鷲掴みにする結果を引き起こしたシンが、
スレイによる的確な急所攻撃を受けて男固有の苦しみに悶え苦しんでいた頃、
ダイゼンガーとアウセンザイターの2機による必技、竜巻斬艦刀の一太刀により斬り裂かれ、その衝撃によってテスラ研上空へと天高く巻き上げられた物体があった。
巨大なクローがついた金色の腕。グルンガスト参式やスレードゲルミルを苦しめ続けたガルガウのアイアンクローである。
ゼンガーのグルンガスト参式、ウォーダン・ユミルのスレードゲルミルをあと一歩というところまで追い詰めた凄まじい戦闘力を秘めたガルガウの腕。
この凶悪強大な力を秘めた腕はダイゼンガーと参式斬艦刀の最初の餌食となってやがて地面へと落下する運命を辿ろうとしていた。
だが、その運命は新西暦世界に迷い込んだイレギュラーの1つによって変えられることとなる。
ハガネやテスラ研のレーダーにも捕らえられることなく静かに上空に現れた赤い影。
その頭部には天を突く2本の角、赤色の全身の肩・胸・腰・脛の部分には黒の意匠が描かれ、さらに脚部には青、胸部には紫色の龍を連想される意匠の増加装甲がある。
「………」
それが音もなくガルガウの腕を掴むと、その金色の腕は、光り始めた赤鬼の左腕の中に飲み込まれていく。
そして、まもなく光の中から再び現れた赤鬼の左腕には、中央に鉞を思わせるような刃が備わった金色に輝く増加装甲が装備されていた。
そして、新たなる力を得た赤鬼は何らの音も、声も発することなくどこか別の空間へと姿を消した。
その数日後、北米ラングレー基地では、インスペクターとの決戦作戦オペレーションプランタジネットがそのファイナルフェイズを迎えようとしていた。
インスペクターの重点的な迎撃の矛先がヒリュウ改やハガネの方に向いていたために、先にラングレー基地周辺に到着したのはノイエDCの側であった。
その旗艦と護衛につくライノセラスには容赦のない砲撃が加えられているが、ノイエDCの側もひるむことなく反撃の砲撃を基地へと加えている。
ノイエDCの切り札的な部隊であるオーバーレイブンズは決戦に向けての補給を終え、搭載している夥しい数のミサイルをインスペクターの部隊に対して豪雨のように浴びせていく。
辛うじて難を逃れることができた機体も、2門のフォールデリング・ソリッド・カノンやヘビィ・リニアライフルの餌食となって鉄屑へと変わっていく。
点というよりも面で押していくオーバーレイブンズの大火力を活かした戦術によりインスペクターの防衛ラインは後退を続ける一方である。
もともと持っていた重装甲重火力と背部飛行ユニットという翼を得たことによる高い機動力、これらを兼ね備えた15機の蝶達を相手にすることは、幹部機体を欠くインスペクターの部隊にとっては重荷であった。
レイブンの名を持つ重戦車がこの戦場に2機しかいなかった本来の歴史であれば、ノイエDCの部隊は苦戦を強いられていたのだが、
シンやレイ、ラクシズの面々が転移してきたことにより新西暦の世界には徐々に大きな変化が生じ始めていたのである。
十数機のバレリオンが弾幕を張り巡らせてオーバーレイブンズの行く手を阻もうとするのだが、
先陣を切る黒いラーズアングリフは、一見すると鈍重そうな機体からは想像しがたい軽やかな回避行動を取りながら手にしたへビィ・リニアライフルの銃口を立ちはだかるバレリオンに向ける。
「貴様らに俺達を止めることなどできんっ!」
ユウキが力強くトリガーを引いて放たれた銃弾は、厚い装甲を持つバレリオンの数少ない弱点の1つ、レールガンの銃口に精確に打ち込まれると、
AM屈指の防御力を誇る機体は続々と爆発へと姿を変えていった。
そしてラーズアングリフ・レイブンに引き続いて14機のランドグリーズ・レイブンがラングレー基地中枢に向けて進撃を再開する。
とはいえ、ここまでは快進撃を続けていたオーバーレイブンズであったが、彼らが基地の敷地内へと到達しようとしたところで、状況が変わり始めた。
基地内からインスペクターの増援部隊とともにその幹部機体が地下格納庫からとうとう姿を現したのである。
汎用人型決戦兵器の如く地下からせりあがってくる青と金色の2機については、隊長のユウキには見覚えがあった。
金色の機体は、テスラ研防衛戦でダイゼンガーにより受けた傷の修理を終えて新しい腕を付けたガルガウ、青い機体はそのガルガウを連れて撤退していったグレイターキンに他ならない。

6 :
そして、それとほぼ時を同じくして戦場には2隻の戦艦が姿を現していた。その戦艦からは総計10機以上のPTや、AM、そして特機の数々が出撃していく。
ユウはその中でも青と黒のカラーリングに赤いマントを背負った西洋の騎士のような機体に目をやって静かに笑みを浮かべた。
言うまでもなく、彼が時に激しい命の奪い合いをし、時に肩を並べて戦ってきたシン・アスカ駆るヴァイサーガである。
「フッ…遅かったな、シン・アスカ」
「相変わらずアンタも素直じゃないな。大物はちゃんと残しといてくれるなんて」
「気を引き締めろ、ここからが正念場だ。何としても奴らをこの地球から叩き出すぞ!」
「ああ、テスラ研での借りはここで返してやるさ」
そう言ってシンはヴァイサーガのブースターを一気に踏み込んだ。
その視線の先にいるのは、先日の戦闘で決着を付けることが出来なかったインスペクター四天王の一角たるメキボスのグレイターキンである。
ヴァイサーガが鞘に納まっている五大剣の柄を握り、それを一気に引き抜くのと同時にシンは叫びを上げる。
「地斬疾空刀ッ!」
鞘から刀身が解き放たれたのと同時に、刀身が纏っていたエネルギーの斬撃が大地を切裂きながらグレイターキンへと襲いかかる。
それをグレイターキンは機体を飛び上がらせて回避するとともに、高周波ソードでヴァイサーガに斬りかかった。
対するヴァイサーガも手にした五大剣で迎え撃つべく上段から刃を振り下ろす。2つの刃が交錯して火花が散ると、続けて両機による力比べが始まった。
「今度は随分と大人数でご来場だな、シン・アスカ!」
「お前らインスペクターとの決着をつけてやる、今日…!ここで!!」
「俺の名前はメキボスだって前にも言ったろ、シン・アスカ?」
「人の名前をいちいちっ!馴れ馴れしいんだよっ!」
剣を交えた力比べが数秒続いた後、それを嫌がったのはシンの方であった。いったんヴァイサーガは後方に下がり体勢を整え直す。
続けてもう一撃を見舞うべくヴァイサーガは剣を振り下ろすが、正面からの攻撃は当然ながら高周波ソードによって阻まれてしまった。
しかし、攻撃を受け止められた次の瞬間にはヴァイサーガは、シールドのないグレイターキンの右へと回り込むと同時に次の攻撃の準備を整えていた。
「水流爪牙ッ!」
剣を離したヴァイサーガの左腕の先端から鋭い鉤爪が瞬時に飛び出して、ヴァイサーガはそれを一気に振り下ろす。 
鉤爪はグレイターキンの右肩から伸びる金色のウィング数枚の先端を斬り落とすことに成功したものの、
対するメキボスもインスペクター四天王の肩書きは伊達ではなく、ただで終わるような真似はしない。
グレイターキンは左腕のシールドでヴァイサーガの顔面を殴りつけると、ヴァイサーガは地面に叩きつけられてコックピットのシンにも大きな衝撃が伝わる。
現状として、両機の戦いは一進一退を繰り返す互角のものが続いていた。
他方で、シンとメキボスが一進一退の戦いを繰り広げているほかは、現状は概ね連邦・ノイエDC軍優位で戦闘は行われていた。
インスペクター側の増援がヒリュウ改・ハガネを押さえ込んではいたものの、ノイエDC側のオーバーレイブンズをガルガウ1機で十分に押さえ込むことができずにいたためである。
そんな中でタスクはジガンスクード・ドゥロで後方から支援砲撃を行ないながら、根拠のない不安感を覚え始めていた。
敵側の防衛戦力は不自然といえるほどに不十分ではないものの、ほとんどが自分達に有利に戦況は推移している。
しかし、勝ちすぎのときこそ気を付けろという、キョウスケと賭け事に興じているときの自身の教訓が何か警鐘を鳴らしているように感じられていた。
基本的にキョウスケをカモにしていることが多いタスクではあるが、キョウスケに土壇場でどんでん返しを起こされて結局はトントン程度になってしまうことが少なからずあったのである。
それを思い出したタスクは砲撃を継続しながらも、ジガンスクードをハガネ、ヒリュウ改のいる方へ下がらせ始める。

7 :
戦場に動きがあったのはそれから少ししてのことであった。転移反応を捉えたハガネの側面すぐ近くに、シャドウミラーによって奪取され、今は敵艦となったシロガネが姿を現したのである。
タスクの感が悪い方向にずばり的中してしまう結果となったのだが、ハガネの艦橋付近に狙いを定めていたシロガネの主砲からハガネを守ったのもタスクであった。
ジガンスクード・ドゥロはシロガネの前に立ちはだかると、両腕を広げて機体の周囲にG・テリトリーを展開させる。
そしてシロガネから放たれた連装衝撃砲は、ジガンスクードに真っ直ぐに向かっていったのだが、その手前でエネルギーの障壁に阻まれ、消え去ってしまう。
しかし、史実とかけ離れ始めた世界は戦士達をまた新たな運命へと誘おうとしていた。
一方、メキボスのグレイターキンとの一騎打ちを続けていたシン、そしてその周辺でオーバーレイブンズを率いてガルガウと交戦中であったユウキの目には、
予想外の出来事と彼らにとってはシロガネ以上に不吉な存在の登場が映っていた。
旗艦であるバンのライノセラスの後方から戦場に侵入してきていたアーチボルト・グリムズのライノセラスが、突如としてバンの艦に対して攻撃を開始し、
さらにアーチボルドの艦からシンも、ユウキもよく知るところである鶏冠を戴いた赤色の忌むべき機体
―CEの覇王の無限の正義を象徴するラクシズの主力機の一角たるインフィニットジャスティスが出撃してきたのである。
シロガネの出現とアーチボルドの反逆に浮き足立っていたノイエDCの軍勢を尻目に、インフィニットジャスティスを駆るアスランは
一直線にオーバーレイブンズのいる方向へ向かってジャスティスのブースターを全開にさせていた。
そして間もなくジャスティスの照準がオーバーレイブンズのランドグリーズを捉えると、その背部に連結されているファトゥムが切り離された。
ミネルバのボディをいとも容易く貫いた刃を先端に備えるファトゥムは、速度を上げるのと同時に、マシンセルの力によって巨大化を続けていく。
しかし、オーバーレイブンズの面々にとってジャスティスは味方機という登録がなされており、まさかファトゥムの照準が自分達に向いているとは思ってはいない。
付近にいた者の中でジャスティスとアスラン・ザラを信用できない相手だと認識していたのはシン、実際に命の奪い合いを繰り広げたことのあるユウキとカーラのみでありこのことがこの直後の惨劇を招く。
「いけっ!!」
アスランの指示に応えてファトゥムの大きさが通常のAMサイズにまで巨大化したところで、その巨大な刃が背後から一機目のランドグリーズを貫いた。
「!?」
シロガネ出現、アーチボルドの造反という連続した突然の出来事に、ノイエDCの精鋭部隊であるオーバーレイブンズのパイロット達もわずかに狼狽していたのだが、
CE世界では最強のパイロットの一角を担っていたアスラン・ザラがこのわずかなチャンスを見逃すはずはない。
大火力を以って隙間のない攻撃を実現するためにフォーメーションを組み、固まって行動をしていたランドグリーズ達はそんなアスランにとっては格好の的であった。
貫かれたランドグリーズが爆発へと姿を変えた直後に、2機のランドグリーズはファトゥムに新たに追加された、左右両端のビームの翼によって真っ二つにされてしまう。
反撃を試みようとした1機のランドグリーズが手にしたリニアライフルを向けるのだが、既にジャスティスが最も得意とする戦闘レンジである近接距離内にまでアスランの接近を許してしまっていた。
ジャスティスのビームサーベルがリニアライフルを中央から切裂き、続けてビームサーベル発生機が内蔵された左脚の先端がランドグリーズ頭部にあるコックピットを直撃する。
直撃を食らって主を失ったランドグリーズは、頭頂部から左右に両断され、力なく落下を始めた後に爆発へと姿を変えた。

8 :
その傍らで、散開を試みながら5機のランドグリーズが、少し遅れてインフィニットジャスティスを敵と判断し、
リニアライフル、ツイン・リニアカノン、マトリクス・ミサイルを巨大化して大きな的となったファトゥムに向けて放つ。
ほぼ全ての攻撃が格好のターゲットとなったファトゥムに命中すると、ファトゥムは爆煙に包まれて姿を消してしまう。
かつてのユウキとアスランの戦いやラクシズに関する情報が統制されず、広くノイエDC内に行き渡っていれば、これでカタがつくなどと思う者はいなかったであろう。
しかし、ファトゥムの攻撃能力、再生能力を知らされていなかったオーバーレイブンズのパイロット達はここで動きを鈍らせてしまっていた。
自己の修復を行いながらすぐに煙を突き抜けてきたファトゥムは、3機のランドグリーズを横一文字に切り裂き、それとほぼ同時に煙の中から飛び出してきたジャスティスは
2機のランドグリーズの懐に飛び込むと、左右の手に握ったビームサーベルでそれぞれのランドグリーズの頭部を貫いた。
わずかな短時間のうちに9機のランドグリーズ・レイブンがジャスティスによって撃破された一方で、シロガネの攻撃をなんとか凌いだ直後のハガネに新たな危機が迫ろうとしていた。
艦橋を狙った奇襲攻撃を阻まれてしまったシロガネはいったん距離を取るためにヴァイスセイバー、ソウルゲイン、スレードゲルミルなどの艦載機を出撃させながら後退を始めていた。
史実では奏功していたシャドウミラーの奇襲であったが、徐々に生じ始めていた変化によって失敗に終わってしまっている。
しかし、シンやラクシズらの転移により産声をあげ始めた変化は新たな出来事、異なる運命を生み出そうとしていた。
シロガネが後退を始めた直後、ハガネのブリッジではさらなる転移反応が捕捉されていた。だが、反応を捕捉しただけではどこに何が出てくるのかはわからない。
その直後、ハガネの直上に1隻の艦が姿を現した。それは、艦全体を戦艦とは到底思えないような桃色で塗りながらも、
その存在だけで戦場にいる者達に無言のプレッシャーを与えてきた、天空に聳えるCEの覇王の居城エターナル。
そして、その覇王の自由かつ最強の剣たるキラ・ヤマトの駆るラピエサージュが、エターナルとほぼ同時に、ジガンスクードがいるのとは逆側のハガネ側面に出現した。
さらにキラのラピエサージュは既にエターナルから射出されたG・ミーティアとのドッキングを済ませており、ハガネの各所へのロックオンを完了させている。
「エターナル!それにフリーダムッ…!聞こえるかハガネ、気を付けろ!そいつは…!」
「…」
届いたシンの声が最後まで伝わる前に、キラ・ヤマトが声もなく静かにトリガーを引いた。
それと同時にG・ミーティアの各部に搭載された夥しい数のビーム砲やミサイルが発射されてハガネに襲いかかる。
防御フィールドを展開させつつ、迎撃のための弾幕を張ったハガネではあったが、突然の出現と距離の近さ、攻撃の数の多さのせいで十分な防御をすることができなかった。
いくつものビームが船体を焼き、ミサイルが砕き、艦のいたるところで大小問わず多くの爆発が起こる。
「ハガネっ!大丈夫か!?応答しろ、ハガネっ!艦長っ!副長っ!!」
「シン!今日こそ俺達と来てもらうぞ!」
「いい加減に人の名前を気軽に呼ぶな、インスペクター!」
「錯乱しているのか!?俺だ、アスランだっ!」
アスランとメキボスの声を聞き間違えたシンのところにインフィニットジャスティスが迫ってきた。ヴァイサーガも強引にグレイターキンから距離を置き、五大剣を構えなおしてジャスティスに斬りかかる。

9 :
「どういうつもりだ、アスラン!なんでインスペクターなんかと!?」
「お前はそんなことを考える必要はない!とにかく俺達と来ればいい」
「アンタ達の頭がいくらおかしいからって…!ここまで…!」
インフィニットジャスティスはファトゥムを切り離して前面に押し出すと、その先端にある対艦用ブレードで五大剣を受け止め、ファトゥムの陰から回り込んできてビームサーベルを振るう。
しかしヴァイサーガは、ファトゥムの下側に潜り込んで攻撃を避けると同時に、無防備となったファトゥムの腹に五大剣を突き刺し、そのまま一気に剣を振り下ろした。
この斬撃はファトゥムを両断することはできなかったものの、そのボディを貫き大きな爆発を生む。
そして、ヴァイサーガは振り下ろしたついでに手元で剣を構えなおし、再び上方のインフィニットジャスティスに向けて剣を振り上げる。
「もう俺に前に姿を現すなぁぁぁっ!!!」
振り上げられた刃は、ジャスティスのサーベルがヴァイサーガに到達するより早く正義の両の手首を斬り捨てた。
ここまで容易にジャスティスに手傷を負わすことができたのは、シン自身の戦闘能力がCEにいた頃と比べて飛躍的に高まっているという理由もある。
しかし、ジャスティス自体がマシンセルによる飛躍的なパワーアップを遂げたということがあったとしても、元が全体的な技術としては新西暦世界に劣るCEの機体であり、
機体同士の相性がよくなければ、そのアドバンテージはあっという間に失われてしまう。
砲撃戦用の機体であるランドグリーズに接近戦を挑むのと、近接距離戦闘に特化されている特機であるヴァイサーガに戦いを挑むことは同義とは到底言い難い。
「ぐっ…またジャスティスが…!シンンンンンっ!!」
そう言ってアスランはジャスティスをひとまず下がらせてヴァイサーガとの距離を取る。すぐにマシンセルによる修理・再生が始まるが、両手の完全回復が即座にできるほどの力はさすがのマシンセルにもない。
そのため、アスランは自分の置かれた状況の速さを瞬時に把握すると、ジャスティスはエターナルのいる方向へ向かって後退を開始した。
ヴァイサーガは修復が終わる前に攻撃を仕掛けるべくジャスティスの後を追うが、そこに再びファトゥムが間に入ってくる。
「逃がすかあぁぁぁ!」
ヴァイサーガのツインアイが真紅に輝くと、鞘に収められた剣が高速で振り抜かれる。
これによって生まれた空気の流れは、まるで渦のような気流を生み出すと。正面からシンを遮ろうとしているファトゥムを捉えてその身動きを封じてしまった。
速度を増しつつインフィニットジャスティスを追うヴァイサーガは、自由を奪われたファトゥムめがけて一直線に向かっていくと、鞘の中で蓄えられたエネルギーを纏う五大剣を一気に振り抜いた。
「必…風・刃・閃ッ!」
横一文字に振り抜かれたヴァイサーガの斬撃がその名の如く風の刃となって煌く。
アルトアイゼンやヴァイスリッター、オーバーレイブンズのランドグリーズやかつてのラーズアングリフ、果てはレイのペルゼイン・リヒカイトすらも苦しめ続けた、
無限なる正義の絶対防御の象徴たるファトゥムは、この一撃によって上下に斬り裂かれてしまう。さらにヴァイサーガは剣を振り上げると、今度は縦一文字に刃を振り下ろしてファトゥムを4つに分断した。
断面付近で小さな爆発が連鎖的に発生し、力なく地上への落下を始めたファトゥムには目もくれずシンは、インフィニットジャスティスを睨みつけていた。
しかし、ヴァイサーガがジャスティスの追跡を再開するより先に、シンの耳に聞き覚えのある声が入ってくる。

10 :
「そこをどけっ!シン・アスカ!」
声の主をシンがきちんと認識するより早く、1つの影がヴァイサーガの脇を通り抜けていった。猛スピードでインフィニットジャスティスの後を追うのは、黒死の蝶ラーズアングリフ・レイブンに他ならない。
かつてアーチボルトやイーグレットの謀略によりマシンセルの力を検証するためにインフィニットジャスティスと戦って敗れただけでなく、その戦いにより多数の部下を失ったことをユウキは忘れてはいない。
そして、今回も対インスペクター用特殊部隊であるオーバーレイブンズの仲間がアスラン・ザラの手にかかったのである。
普段は常に冷静でいることを心がけるユウキではあったが、アスラン・ザラを許すことはできなかった。歯を喰いしばり、その瞳はじっとインフィニットジャスティスを捉えている。
しかし、ここで珍しく怒りによって冷静さを欠いてしまったことがユウキにも不幸をもたらしたのはすぐ後のことである。
どういう訳かメキボスのグレイターキンはいったん後方に下がって追撃をしかけてくる様子もないので、シンもユウキに続いてアスランの追撃を始めたのであるが、
いったんは地球軍側有利になりつつあった戦況は、シロガネとエターナルの登場によってだいぶ変わっていることに気付く。
マスタッシュマンことソウルゲインはアルトアイゼンと、スレードゲルミルはダイゼンガーと、ヴァイスリッターも見たことのない砲撃戦用の機体との交戦の真っ最中であった。
SRXも金色の大怪獣ことガルガウとの戦いをしている他、アウセンザイターやアンジュルグ等はシロガネやエターナルから出撃してきた別のラーズアングリフや大量の量産型アシュセイバーとの戦いを繰り広げている。
他方で、ハガネに大きな損傷を与えたキラ・ヤマトの、G・ミーティアと合体したラピエサージュはタスクのジガンスクード・ドゥロによってそれ以上の攻撃が阻まれ続けてしまっていた。
そのためキラ・ヤマトは攻め方の変更を考え始めていたのだが、そこにエターナルの方へと後退してきたアスランのインフィニットジャスティスから通信が入ってくる。
「キラ!すまない、ファトゥムがやられた。お前のG・ミーティアをこっちに回してくれ!」
「うん、わかった!ドッキングまではこっちでコントロールするけどいい!?」
「ああ、了解だ」
アスランの要請を受けG・ミーティアはハガネへの攻撃を中断し、G・テリトリーを展開しながら、後退してきたインフィニットジャスティスと合流すべく移動を開始する。
他方でシロガネやエターナルから現れた増援部隊からハガネやヒリュウ改の防衛するために、G・ミーティアを追撃する余裕は地球側にはなかった。
G・ミーティアのビームの弾幕を張り巡らせながらラピエサージュはアスランのインフィニットジャスティスと合流すると、G・ミーティアを切り離す。
ストライクフリーダムのドラグーンと同様に、空間認識能力を持たない者であっても扱うことができるG・ミーティアは、ドッキングしていなくても「それなりの」戦闘を行うことができる。
また、軽微な損傷であれば搭載しているマシンセルの働きによりすぐに回復することができる上に、試作型にも備わっていたG・テリトリーも健在なのである。
そしてインフィニットジャスティスはG・ミーティアとすぐにドッキングを完了すると、今度はアスランがG・ミーティアをハガネ、ヒリュウ改の方へ向けた。
ジャスティスを追ってユウキのラーズアングリフ・レイブンもハガネ、ヒリュウ改の方へと向かっていくのだが、このとき彼はドッキングを解除したラピエサージュをほとんど気に留めることはなかった。
ラピエサージュのパイロット、キラ・ヤマトについての情報をユウキはほとんど持っていなかったことを踏まえればそれは仕方なかったのかもしれないが、
アスラン・ザラへの怒りでいつもの冷静さを少なからず欠いていたために、ラピエサージュがどれだけの戦闘能力を秘めているかの考察を怠ったことは端的に言えば迂闊であった。
その頃、5機編隊でインスペクターの部隊と交戦を続けていてわずかに余裕のできたカーラは、いったんオーバーレイブンズの隊長を務めるユウキと合流すべく
その後を追っていたのであったが、その途中で運悪くキラ・ヤマトのラピエサージュと鉢合わせをしてしまった。

11 :
「何さ!たった1機であたし達全員と戦う気なの!?」
現在のラピエサージュは、SRXのブレードキックにより大破した機体を修復した際に、キラ・ヤマトの希望により接近戦用のカスタマイズを施されている。
具体的にはO・Oランチャーを排除すると同時に、特機との接近戦にも十分耐えうるようにパワー、装甲、各部間接部分を徹底的に強化し、接近戦用の武装を追加した。
現状のスペックとしては、スレードゲルミルやソウルゲインとの接近戦すら可能な程度にはなっており、全体的に一回り大きなものとなって、レモン曰くまるで別の機体、という状態である。
とはいえ、インスペクターの幹部機やスレードゲルミルのようなシャドウミラーの化け物じみた特機でもないのに、
単機でも高い戦闘能力を持つランドグリーズ・レイブンを5機も相手するというのは、いささか無謀なものとカーラは感じていた。
対するキラとしては、オーバーレイブンズの機体をここで相手にすべきかを考えていた。
カーラ達の機体は、ハガネやヒリュウ改の機体でこそないものの、敵軍の中でも大火力と高い機動力を兼ね備えた、覇王の軍勢にとって間違いなく厄介な存在である。
その評価が優先的に排除すべき存在であるという判断につながると、キラは静かに意識を集中させて種子が割れるようなイメージを浮かべながら、真っ直ぐにランドグリーズ・レイブンを見つめた。
覇王やそのしもべの1人であるマルキオがSEEDと呼ぶ、限られたコーディネーターしか使うことができない力。キラの他にアスラン、そしてシンもこの力を使うことはできる。
しかし、意識的に力を発動させて思うままに使いこなすことができるのはキラ・ヤマト(と覇王に作られてきた彼のクローン達)だけである。
そして、カーラはこのとき感じたことのない寒気を感じていた。
発動されたSEEDと言われるキラの力、そしてその背後にそびえ立つCEの覇王の尋常ならざる強靭な意志をカーラの念動力が感じ取ったのである。
少なくともここにいるオリジナルのスーパーコーディネーターキラ・ヤマトに念動力の類は備わっていない。しかし、彼の持つ戦闘能力と彼を背後から意のままに操る覇王のプレッシャーによってカーラが気圧されている一方で、そのために動きが鈍っていることをキラは察する。
ラピエサージュが腰部から脇差ほどの実体剣を取り出すと、その持ち手の部分が一気に延びる。手にした脇差はすぐに一本の槍へと姿を変えた。
この槍こそ、ラーズアングリフの強化改造計画のもう1つのプランで予定されていた主要武装たるゴッドランスである。
クエルボ・セロが提案した伸縮する槍というアイディアを、スレードゲルミルの斬艦刀からヒントを得て
レモン・ブロウニングとイーグレット・フェフが知恵を出し合ってマシンセルによる制御という形で実現したのである。
しかも、将来的にはもう1本の槍を製造して2本槍を装備させることでラピエサージュをさらに接近戦用に特化させることが計画されてすらいる。
「はああぁぁっ!」
キラがブーストペダルを一気に踏み込んで、ラピエサージュをランドグリーズ・レイブンの編隊へ切り込ませる。
これに対して迎撃のためにカーラ達はシールドを構えさせつつ機体を下げるのと同時に、ミサイルとリニアライフルをラピエサージュに向けて放った。
しかしキラは5機による火線のわずかな隙間を瞬時に見つけてラピエサージュを突っ込ませる。放たれる弾丸は1つたりとも命中することはなく、またラピエサージュの足を止めることも敵わない。
そしてラピエサージュはとうとうゴッドランスの間合いの内にランドグリーズの1機を捉えると、振り上げられた槍はリニアライフルを持つ腕を切り落とす。
これによって動きをランドグリーズが鈍らせると、すかさず両腕で携えた槍から片腕を離してその先端にあるマグナムビークでランドグリーズのコックピットを貫いた。
「まず1機…!」
さらにキラは続けて次のランドグリーズに狙いを定めると、再びラピエサージュを突っ込ませる。

12 :
「いっけぇぇぇっ!!」
しかし、今度はゴッドランスの間合いに相手を入れるより早く、ラピエサージュは背部からソリッド・ソードブレイカーを射出した。
砲台と直接攻撃が可能なブレードを備えた小型の飛行物体は、四方八方に拡散してランドグリーズに襲いかかる。カーラを始めとするオーバーレイブンズのパイロット達は、
ソードブレイカーをミサイルの類だと判断してランドグリーズに搭載されたジャマーを起動させるが、ソードブレイカーはパイロットの意を受けて動く。
そのため4機のランドグリーズは回避運動を取るのが遅れてしまい、機体の各部にソードブレイカーの直撃を受ける。
そこにゴッドランスを携えたラピエサージュが切り込んでくると、槍がその最も近くにいたランドグリーズのボディを貫いた。
「よくも…でもこの隙は見逃さないよっ!」
槍が突き刺さって瞬時に引き抜くことはできないと判断したカーラ達は、ゴッドランスを持ったラピエサージュに対して一斉にリニアライフルとミサイルを放つ。
だがピンチなはずのキラは慌てることはなかった。とっさにラピエサージュは突き刺さっているゴッドランスでランドグリーズを持ち上げ、そこに蹴りを打ち込んでゴッドランスを引き抜いた。
そして持ち上げられていたランドグリーズは、ようやくゴッドランスから逃れられたものの、そこは弾丸とラピエサージュの間であった。
直後にリニアライフルから放たれた弾丸が、ランドグリーズの機体を蜂の巣に変える。ラピエサージュの盾代わりにされた2機目の犠牲者が生まれる。
「そ、そんな…!」
信じがたい光景を目の当たりにしたカーラの口から驚きの言葉が漏れる。今現在、彼女は間違いなく生命の危機を感じていた。
それはかつてエアロゲイターの侵略によって弟を失ったときと同じような、相手との絶対的な力の差からくるものであった。
だがラピエサージュの攻撃はまだまだ終わってはいない。先ほど放たれたソリッド・ソードブレイカーは残された3機のランドグリーズを容赦なく襲い続けている。
カーラは、ランドグリーズの厚い装甲、そして飛行ユニットとともに新たに備わった大型シールドのおかげでなんとか致命傷を避けてはいたが、このままいけばジリ貧なのは確実であるとわかっていた。
ソードブレイカーによる攻撃のせいで大きな隙を作ったランドグリーズは新たなゴッドランスの餌食となってコックピットを貫かれ、
別のランドグリーズは、ソードブレイカーから放たれた光弾の直撃を肩部に受けると、その爆発は肩部に搭載されたミサイルの誘爆を招き、ランドグリーズ内部で始まった誘爆は間もなく機体全体を飲み込んだ。
そしてキラは、残り1機となったカーラにゴッドランスの切っ先を向ける。
いまだに続く、嬲るようなソードブレイカーの攻撃によってカーラのランドグリーズも大きな損傷を負っている上に、いつ搭載しているミサイルの誘爆に飲み込まれるかも知れない。
しかし、一人目の、オリジナルのキラ・ヤマトは覇王により生み出されてきた彼のクローンとは異なり、相手へのトドメを躊躇するようなことはしない。
向かってきたラピエサージュにシールドを向けるカーラであったが、それより早くソードブレイカーがランドグリーズに数発の光弾を見舞い、そのコックピットの近くでも爆発が起こった。

13 :
支援

14 :
「きゃああぁっ…!」
思わず上がる悲鳴が上がった。そして、この悲鳴とともに生じたカーラの念の乱れを、
G・ミーティアとドッキングしたジャスティスとの戦いを始めていたユウキがようやく察知して、残されていた仲間の現状を把握する。
「しまった!?急いで下がれ、カーラ!聞こえないのか、カーラ!?」
自称とはいえパートナーの危機を知り、慌てるユウキであったが、どれだけ問い掛けても返事はない。
コックピットは失われていないことから、意識を失っているという可能性もあるが、敵を目の前にしていればそれは死とイコールといっても過言ではない。
「カーラ!!」
強く問い掛けるユウキであったが、動きを止めたカーラのランドグリーズにトドメをさすべくゴッドランスを携えたラピエサージュが猛スピードで迫る。
そして、ラピエサージュはランドグリーズ頭部のコックピットに向けてゴッドランスが繰り出した。一方、ユウキの心は絶望と後悔によって支配されようとしていた。
仲間を失ったことで冷静さを欠き、その仇だとしてアスラン・ザラにこだわった結果が今、モニター越しにではあるが、ユウキの前で生まれようとしていたのである。
「くっそおぉぉぉぉっ!!!」
ユウキの叫び声を背景に繰り出された槍の先端がランドグリーズのコックピットに迫る。
しかし、槍の先端はコックピットに到達する寸前で、横から繰り出された斬撃によって大きく弾かれてしまった。
「やっぱり僕たちの邪魔をするんだね?」
「そう簡単に…思い通りにいくと思うなあぁぁっ!!」
ラピエサージュの前に立ちはだかってゴッドランスを弾いた機体。大剣を手に、真紅のツインアイとマントを持った蒼い特機の正体は言うまでもない。
キラ・ヤマトやアスラン・ザラとの間に、CE世界からの数々の因縁を持つシン・アスカの駆るヴァイサーガである。
「アスランといい、アンタといい…インスペクターを倒さなくちゃならないってのに…!アンタ達は一体何なんだあぁぁぁ!!!!?」
つづく
相変わらず間があいてしまってすいません…やっと魔装機神が…

15 :
11氏投下乙であります。
戦力配置が違えば展開も変わってくるのは当然のことながらタイテツ艦長の生死が気になりますな。

16 :
もつ
修学旅行スレとここのラクシズは絶対悪の権化そのものですな、原作通りなんだけどw

17 :
>>1
スレ立てお疲れ様でした。
また11さんも投下お疲れ様です。キラと同じ戦場に立っていると、アスランも気合が入るのかデッドヒートしてますね。
オーバーレイブンズとシン+ヴァイサーガのノイエDC・ヒリュウ・ハガネ隊の戦力増加と、ラクシズが加わったことによるインスペクター・シャドウミラー側ではどちらの方が上か。
ただ原作での展開を考えると続きはいささか鬱な内容になってしまいそうですね。これからも頑張ってください。一読者として応援しております。

18 :
GJでした
話は変わるが避難所の総帥の作品、転載しないの?

19 :
避難所に投下した前回分です。頭から投下しなおします。
ディバイン SEED DESTINY 
第四十七話 ディスの心臓
 広大な格納庫の中、特機用に合わせて作られた巨大な拘束具で四肢を束縛された四体の超機人達が、不意に一斉に伏せていた顔を上空へと向ける。厚い岩盤と幾十層もの防壁に覆われた天空の先に、恐るべき『ナニカ』の存在があると気付いたがために。
 青龍、白虎、朱雀、玄武と古の幻獣を模した超機人たちのみならず、その操者達もまた突如全身の細胞を捉えたおぞましい気配を感じて、顔面に驚愕の表情を張り付けていた。
 龍王機にはクスハ・ミズハ、虎王機にはブルックリン・ラックフィールド、雀王機にはリョウト・ヒカワ、武王機にはリオ・メイロン。
 はるか天空にて死者の怨念、憎悪、憤怒とありとあらゆる負の感情を力と変えるモノが、その存在を自ら知らしめた事によって、強制的に彼らは知覚させられていた。
 空を覆い尽くす暗雲に嵐の到来を予感するように、自分達にとって天災にも等しい何かがすぐ傍に現れた事を。
 東アジア共和国有数の指揮官セルゲイ・スミルノフの指揮下に組み込まれ、超機人のパイロットとして頂武に転属されていた四人は、全員がパイロットへの転向に納得していたわけではない。
 しかし背筋を貫く悪意の風に生存本能が危機を伝える警鐘を打ち鳴らし、戦わねば死ぬという現状を無理矢理にも魂が理解していた。
 脳波測定用の器具を内蔵した特別なパイロットスーツに身を包んでいたクスハは、龍王機と自分自身が感知した気配に、顔色を青く変えてひどく冷たい汗で頬を濡らしていた。
「やだ、なん……なの、この感じ。龍王機、貴方も感じているの?」
 数千年の眠りから目覚めた人界の守護者は自ら選んだ操者に答える余裕もないのか、主動力機関である五行器を猛々しく唸らせて、全身に力を漲らせていた。
 龍王機が炎の海の真ん中に放りだされ、一縷の望みを胸に抱いて脱出路を探しているかのような焦燥感に突き動かされている事を共感し、クスハは自分達に襲いかからんとしている脅威が、予想をはるかに超えたものである事を悟る。
 それはクスハだけではない。
 あの発掘現場で偶然にも生き残り、四体の超機人に選ばれた他の三名もそれぞれの超機人達が焦燥に急かされて、急速に鼓動を速めている事を理解していた。
 虎王機の操者ブルックリン――ブリットも、クスハにはやや劣るが優れた強念者として素養から、まるで青空が鉛と変わって自分達を押し潰そうとしているかのような重圧に歯を食いしばりながら、現状をどうすれば打破できるか、必死に頭を巡らして考えていた。
「中佐はこのまま待機しているようにと言ったが、このままここに居ても何もできない!」
 ブリットの意思に呼応するかのように、虎王機が自らの意思で伏せていた状態から立ち上がり、四肢を拘束していた拘束器具を引き剥がし、ひしゃげ、千切れた器具が辺り一帯に散らばり始める。
 四体の超機人の中ではその気性から先陣を切る事の多い虎王機に続けとばかりに、武王機が、次いでその対となる雀王機が、さらにやや遅れて龍王機も立ち上がろうと動き始める。
「勝手に動いたら命令違反になるよ!?」
 ブリットを制止したのはリョウトである。やや気弱で自己の意思を表現するのに気後れしている所のあるリョウトには、セルゲイの待機命令を破る形になるのが不安なようであった。
 軍規違反に抵触する行為であることは紛れもない事実だ。
 もともとは整備兵であったという事もあり、超機人のパイロットになる事にもっとも難色を示したのもリョウトであった。とはいえこの場でのリョウトの反応も致し方ないというよりも極正常なものである。
 一度も戦闘を経験しておらず戦闘能力は未知の上に、現行の技術から成る新型機どころか数千年も昔の遺失技術によって作られ、ほとんど解明も出来ていない機体で戦場に出た所で一体どれだけの事が出来るのか、保障するものは何もないのだ。
 理由も根拠も何も分からない不安感や焦燥感に駆られて命令違反を犯してまで、地表の戦闘に乱入しても戦力となるかは不明で逆に足手まといになるかもしれないとあっては、行動に移る事を躊躇するのは当然だろう。

20 :
「だからってこのままじゃ、まずいわ。なにが拙いのか分からないけど! とにかく」
「それは僕にもわかるけれど」
 躊躇するリョウトをリオが叱咤するも、言葉にできない焦燥感によって自分自身が冷静ではない事を自覚しているのか、リオの言葉は彼女にしては珍しく力がない。
 死線を幾度もくぐり戦士としての経験と覚悟、矜持を抱いていたならばともかく、この場に居る四人はまだ実戦の場をくぐっていない新兵も同然であり、沈着なる態度を望むのは難しい。
 そして、事態は四人の迷う間にも進展していく。
 頂武基地上空、セルゲイや四人の超兵達が襲い来るメギロートやエスリムを相手取り猛火の応酬を繰り広げるのを見下していたヴァルク・バアルの胸部から溢れる光は、よりその禍々しさを増していた。
 知的生命体の暗黒面に落ちた霊魂。天文的な数に及ぶそれらを多次元宇宙全体から吸収し、自らの力と変えるディス・レヴの力の極一端の開放に過ぎなかったが、総量からすれば匙の一掬い程度に過ぎない力でさえ、天地が鳴動し大気をどよもす絶大な脅威である。
「ディス・レヴの鼓動、確かに届いているはずだが、まだ眼を覚まさぬか。それとも怯え、足が竦み動く事さえできなくなったか? いずれにせよ、もうお前達を待つのは止めだ。四神の超機人よ、操者と共に滅するがいい」
 因果律の番人の保有するディス・レヴとはことなり、赤黒く輝く光を荒れ狂う龍のごとく四方八方に発していたヴァルク・バアルの中枢に設えられたディス・レヴはその光を、前方の空間一点に集中させる。
 ディスの心臓とも呼称されるディス・レヴを保有するディス・アストラナガンは並行世界より力を酌み取る機能を持つティプラー・シリンダーとの併用によって、対象を存在しなかった時間軸にまで逆行させる現象を可能としている。
 ディス・レヴ単体では時間軸に干渉して対象を消滅させる事は極めて難しいが、ティプラー・シリンダーに対応する動力機関として、量子波動エンジンを搭載した事によって、ヴァルク・バアルもまた時間逆行現象を引き起こす事が可能となっていた。
「人界の守護神を詐称する骨董品共よ。存在し得なかった時まで遡り、この宇宙の因果より抹消してやろう」
 ヴァルク・バアルの周囲を赤雷の世界と変えていたディス・レヴの鼓動が唐突に収縮し、前方の空間の一点に複数の光球を形成する。
ひと際大きな光球を中心に軌跡が円を描く回転運動を始めれば、それは因果律や時間軸への干渉能力を有さぬ限り、防ぎようのない必の一撃となる。
現行のザフトやDC、地球連合の戦力では前大戦時に姿を現したディス・ヴァルシオンやポゼッション状態のサイバスター、ネオ・グランゾン辺りでもなければ抵抗することさえできまい。
頂武の基地ごと超機人らを葬るだけの力を蓄え終え、キャリコはわずかに人差し指を動かしてトリガーを引こうとし、ヴァルク・バアルの周囲を囲むように発生する空間の歪曲に気付いて注意を逸らした。
「重力場の異常、か。この前といい、横槍の多い事だ」
 正体不明の何物かの出現という事態を前にしてもキャリコは慌てた様子を見せず、闖入者への苛立ちをかすかに冷笑の端に浮かべて、ヴァルク・バアルの前方に発生させた中性子の群れを、いままさに現出しようとしている何ものかへと放出する。
「ふ、まずはこいつらから消すか。さあ、因果の果てへと消え去るがいい!! アイン・ソフ・オウル、デッドンエンドシュート!!!」
 厳重に絡みついていた鎖から解き放たれた猛獣のように、負の思念を周囲へと伝播させながら、赤光の群れはようやく具現化しようとしはじめていた何か達へと容赦なく襲いかかり、着弾地点を中心として旋回をはじめる。
 赤い光の球体達は空間それ自体を食料とする異界の魔物であるかのように、転移してきた骨の様な異形達数十体を空間ごと抉り、次々とその姿をこの世から消し去ってゆく。
 眼で追うのも困難な速度で餓えた狼の群れのごとく白骨の異形達へと襲い掛かる球体達は遂には異形達の姿を完全に消し去り、最初から異形達などまるで存在していなかったよう。
 ほんのわずかにディス・レヴと量子波動エンジンの力を解放した程度に過ぎないが、数十体の異形を葬るのには十分以上の力であったと見える。
 新たに手にした力に暗い愉悦を噛み締めながら、キャリコは時間軸から抹消した異形ではなく、自身の背後に忍び寄っていた別の気配へと言葉の槍を向けた。

21 :

「なるほど、この世界のアインストどもが動き出したというわけか」
 いつ転移を終えて忍びよっていたのか、胸部装甲を閉ざしてディス・レヴを収納する最中であるヴァルク・バアルの背後に、赤い鎧をまとった骸骨の様な人型――ペルゼイン・リヒカイトが現出し、鬼蓮華と銘打たれた白刃を突きつけていたのである。
「……貴方は、一体何なんですの?」
 ペルゼイン・リヒカイトの胸部に存在する球形の物体の中で、唯一人型のアインストとして創造され、自由意思を獲得した特別な固体であるアインスト・アルフィミィが、あどけなさを残すかんばせに畏怖の色さえ浮かべてキャリコに問いかけた。
 アルフィミィが唐突にこの場に空間転移を行って姿を現したのは、アインストの首魁であるレジセイアの命によるものだ。
 もともとアルフィミィは地球圏で徐々に勢力を拡大しつつあるルイーナと、破滅の王を打倒するために、古き地球の守護者たるガンエデンと盟約を結び、かつ古代地球人の生み出した超機人をルイーナ打倒の剣と目して、陰から力となるために地球に派遣されている。
 そのため超機人に対しては常に監視の目を行き届かせていたのだが、キャリコが頂武基地に出現するのに前後して、キャリコの手に入れた力を超知覚によって感知したレジセイアが、早急に超機人援護の命令をアルフィミィに下したのである。
 そして、レジセイアの末端であり同時に分身でもある他のアインスト達を引き連れたアルフィミィが目にしたのは、億千万や兆、劾といった単位を超え、無量大数に迫ろうかという負の思念を力とするディス・レヴを有するヴァルク・バアルの姿であった。
 ある人間の女性を素体としたがゆえに、人間的な感情の素地を有するアルフィミィは、ディス・レヴの発する『死』という現象そのものの、あるいは死んだ後に陥る負の感情に塗れて落ちた亡者たちの思念に、元より白磁のごとく透き通った顔色を一層青いものに変えていた。
 いつでもヴァルク・バアルの胸を背中から貫ける位置に鬼蓮華の切っ先を突きつけられながら、キャリコの唇に浮かんでいるのはおのれの絶対的な優位を信じて疑わぬ勝者のソレである。
 たしかに精神的な立場に置いて、ディス・レヴの脅威に大きな戦慄を覚えたアルフィミィと、ディス・レヴの力を振るうキャリコとではさもあらん。しかし現実を見れば明らかにキャリコの命は、アルフィミィの手の中にある。
 それでなお余裕をたたえるキャリコは、慢心を越えたなにか背筋にうすら寒いものを走らせる不気味な雰囲気を纏っていた。
「おれが何か、か。くだらん事を聞く間があれば、ヴァルク・バアルに一撃を加えればよいものを」
「え!?」
「もっとも、貴様では一撃入れる事もできんがな」
 唐突に、何の前触れもなくアルフィミィは横殴りの衝撃に襲われて、思わず目をつぶり小さな体を揺らす衝撃と振動に耐えなければならなかった。ペルゼインの20m超の巨体が数百メートルも吹き飛ばされて、空中を弾丸のごとく飛翔する。
 何が起きた、という疑問をねじ伏せたアルフィミィはすぐさま半身であるペルゼインの体勢を立て直し、悠然と王者の風格を纏ってこちらを振り返るヴァルク・バアルに警戒の眼差しを向けた。
「ただ殴られただけ? そんな、まるで見えませんでしたの」
 キャリコの配下による不意打ちを受けたのか、と思案したアルフィミィであったが、ヴァルク・バアルが空の左手を突きだすかのように伸ばした姿勢であったことや周囲に、キャリコ配下のメギロートやエスリムの姿がない事から、その結論に行き着いた。
 ペルゼインの機動兵器としての性能、そしてアルフィミィのパイロットとしての資質は決して低くはない。むしろ異世界からの来訪者を含めて現行地球圏の中でも、上位に食い込むだけの能力がある。
 アルフィミィのアインストと呼ばれる異形の存在と同じ物質で構築された強靭な肉体に、超能力に類する超知覚能力による未来予知めいた直感力。
 そしてまた半身であるペルゼインの操作にはなんらタイム・ラグはなく、自身の肉体の延長上として扱う事が出来る特性はインターフェイスや操縦システムを突きつめた究極形だろう。
 さらに機動兵器としてはサイズこそPTやMSのやや大型機程度だが、ペルゼインは上位の特機とも真正面から戦う事の出来るパワーと装甲、高速の自己修復能力を兼ね備えている。
 そのペルゼインとアルフィミィを、まるで蠅をはらうかのごとく一撃したキャリコとヴァルク・バアルは、かつて彼を倒したαナンバーズの者たちが知れば、もはや別人、別の機体と評しただろう。

22 :
「呆ける暇はないぞ?」
 からかうように告げるキャリコの一言。ヴァルク・バアルのウィング・バインダーが展開し、そこからテスラ・ドライヴの吹き零す翡翠色の粒子が乱舞し、黒金の機神は黒き禍津風となってペルゼインへと襲い掛かる。
「速い――速すぎますの!」
 ぞり、と音を立てながら剃刀の刃で直接骨を削られる様な悪寒に突き動かされて、アルフィミィは反射的にペルゼインを動かしていた。
 振り上げられたショット・シザーの切っ先を、かろうじて振り上げた鬼蓮華が受け止めも、わずか一瞬の拮抗を作るのみで、両方の機体の圧倒的という他ない力の差によって、ペルゼインは大きく鬼蓮華を弾かれて無防備な姿を晒す。
 遊びのような軽いショット・シザーの一振り一撃で、ペルゼインとヴァルク・バアルの性能差をはっきりと認識させられて、アルフィミィは自分でも知らぬうちに細い喉を鳴らしていた。
 雷光の速度でアルフィミィの指示が伝達されたペルゼインは、弾かれ鬼蓮華の切っ先を翻してヴァルク・バアルの左頸部に鬼蓮華を叩き込む。
 おそらくはヴァルク・バアルとキャリコと比較した場合に操縦の手間を介する分、ペルゼイン・リヒカイトとアルフィミィの方が、パイロットの指示が機体に行き渡る速度に関しては勝るだろう。
 標準的な特機の装甲も斬り裂く鬼蓮華の刃は、しかしヴァルク・バアルの左手によって簡単に掴み取られ、呆気ないほど容易く刃の動きを封じられる。
 逆にアルフィミィのいるペルゼイン胸部の球体を狙って突きだされる刃の脅威に、冷や汗を一粒浮かばされる。
 アルフィミィはそれでもあくまで思考と操縦は冷静にペルゼインの上半身をねじり、ショット・シザーに空を突かせる。
「お返しですの。マブイタチ」
「ふん」
 鬼蓮華の自由を取り戻すため、あわよくばヴァルク・バアルの左手を破壊するために、鬼蓮華の刃から衝撃波が発生する。大地に長大な斬痕を刻む一撃を、刃を掴んだ掌の内側から受ければ、ヴァルク・バアルといえども左手首から先を失っていただろう。
 ディス・レヴの力を得たためか、あるいはそれ以外の何かゆえか圧倒的な自信と余裕を持って構えるキャリコにも、それは歓迎せざる事態の様で素直に鬼蓮華を掴み止めていたヴァルク・バアルの左手を解放する。
 流れを掴まれ勢いに乗られては一気に押し込まれる。
 アルフィミィは、かつて幾度も戦ったガンドール隊が勢いに乗り戦意を迸らせた時の怒涛の攻めを思い出す。それだけの脅威をキャリコに抱いているという事の証左であった。
「反撃の隙は与えませんの」
 淡々とした物静かな言葉の中にも、キャリコとヴァルク・バアル、そしてディス・レヴという巨大な脅威に対する大きな警戒心が、アルフィミィの攻撃を苛烈なものへと変える。
 ペルゼイン・リヒカイトの両肩を守るように浮いて追従していた真っ赤な鬼の面が、ふわりと左右に浮かびあがって、ヴァルク・バアルを囲い込む動きを見せる。
 オニボサツとアルフィミィが呼ぶその鬼面は、巨大な腕と骨だけの翼を持った異形のアインストと変わり、くり抜かれた面の口の様にがらんどうの口腔を開き、そこに膨大なエネルギーを集束させる。
「ヨミジ」
 敵機動兵器の配置次第では十数機、いや、数十機を一射で破壊し尽くす先制広域攻撃だ。強力な防御フィールドであるディフレクトフィールドに加え、自己修復機能を備えるヴァルク・バアルといえども、直撃を受ければ修復に数分を有するであろう。
 とはいえ、高性能のテスラ・ドライヴに加えてバルマー帝国と新西暦世界の地球の軍事技術の粋を結集して開発されたヴァルク・バアルである。
 その機動性、運動性は極めて高く、またキャリコが戦闘用人造人間であるバルシェムの指揮官モデルという事と、オリジナルである人物の高い能力も相まってパイロットとしての技量、素養は非常に優れている。
 その動きはあらゆる勢力のパイロット候補生たちの見本としたいほどに完成されている。

23 :
 迫りくるヨミジを前にしてもキャリコが何ら脅威を感じず、冷静なまま操作した事もあり、ひらりと風に踊る蝶の様な優雅さで回避して見せる。
 ヴァルク・バアルは至近を過ぎ去るヨミジの光に、漆黒と金で彩られる装甲を煌々と照らされるだけで、損傷と呼べるだけのダメージはいっさいない。
 ヨミジを回避したヴァルク・バアルの機動を読み取っていたアルフィミィは、居合の達人の動作を真似るが如く、左腰に見えない鞘があるように鬼蓮華を納刀する動作をし、そこから一息に刃を加速させて振り抜く。
「どんな装甲だろうと切裂くのみですの」
 一太刀のみではない。斬撃の軌跡を塗りつぶす様にさらに一太刀、更に二太刀、三太刀と重ねられて、鬼蓮華の刃から飛翔するマブイタチの衝撃は烈風の激しさでヴァルク・バアルを刻むべく襲い掛かる。
 マブイタチの刃が襲い来る軌道を正確に認識したヴァルク・バアルは、マブイタチの連続刃のほとんどを回避したが、そこに加えて上下左右前後から放たれるオニボサツのヨミジの射線に阻まれて、時にはディフレクトフィールドで受け止める場面も見受けられた。
 しかし、一分、二分と時間が経過しても、オニボサツ二体とペルゼイン・リヒカイトによる完璧な連携攻撃を重ねても、ヴァルク・バアルに有効打と言えるだけのダメージを与える事は出来ない。
 徐々にアルフィミィの神秘的な印象を受ける大粒の宝石の様な瞳には焦燥の色が濃くなっている。
「これは、なかなか上手くは行きませんのね」
 アルフィミィの呟きはその言葉面だけをとらえるのならばどこかのほほんとした感のあるものであったが、実際には自身の能力とペルゼインの性能を最大限に発揮してもなお、のこの現状に表には浮かばぬ驚きと焦りを覚えていた。
 アインストが最も警戒しているのは地球のみならず、この宇宙すべてを滅ぼす事の出来る破滅の王と、その手足たるルイーナの軍勢であった。
 しかし単宇宙のみならず次元の壁を越えて並行宇宙全域に及ぶ負の無限力を力と変える目の前の存在と、その背後に存在する勢力に対しても、警戒を要するとアルフィミィは強く認識させられた。
 仮にあのディス・レヴと呼ばれる動力機関が量産されでもしたら、この宇宙のみならず近隣の次元に存在する別宇宙に至るまでその脅威が及ぶのは、そう遠くないことだろう。
 なんとかここで討ち取りたい、とアルフィミィは考えていたが、共に連れてきたアインスト達が、出現と同時にヴァルク・バアルの一撃によって一掃されてしまった事による戦力低下の誤算が、徐々に大きく響き始めていた。

 頂武指揮官セルゲイ・スミルノフは上空で戦端の開かれた謎の機動兵器同士の戦闘に、背中あわせになりながら基地に降下したエスリムと銃火を交えていた。
 その最中、思わぬ所で最も厄介な敵指揮官機を足止めしてくれている、まるで、経済特区となり東アジア共和国の参加に収まっている日本国の昔話に出てくる鬼のような機体に、不信と不審と困惑の視線を向ける。
 行動の意図や戦略的な目的などは一切不明であるが、その行動がこちら側に取っては利となっているのだから、迂闊に手を出す愚挙を置かすわけにはゆくまい。
 次々と襲ってくる緑色の人型や、上空を高速で飛び交う白い甲虫――バグスにさんざか滑空砲の超高初速徹甲弾やビームを食らわせて、それなりの数を減らしているはずなのだが、一向に減った気配はない。
 いや、仔細に上空を観察すれば、空間に波紋が立ったと見えた次の瞬間には新たな人型とバグスが出現している。センサーも彼らが出現する直前に異常な反応を探知している。
「やはり空間転移技術! なんということだ。これでは現行の地球圏の軍に確たる対抗手段など……」
 セルゲイの背後に陣取り、桃色のティエレン・タオツーを駆り、頂武副官ミン中尉のティエレンと肩を並べ、恐ろしいほどの勢いで撃墜スコアを伸ばしていたソーマが、敬愛する上官に指示を仰いだ。
「中佐、基地の被害が大きすぎます! このままでは」
 セルゲイ達が出撃したことで統制を取り戻して積極的な反撃に打って出た頂武部隊であるが、撃墜しても撃墜された分を補って有り余る物量で攻めてくる敵を前に、基地の被害は増すばかりであった。

24 :
 撃墜されたMSこそまだ数は少ないが、基地建造物の被った損害はすでに尋常ではないレベルであり、このまま戦闘が継続されればもはや修復は困難、新たに基地を作りなおした方が安くつくのは目に見えていた。
 ましてやこの基地に集められた人員はあらゆる分野に置いて、東アジア共和国軍でも高い能力と、経歴に問題の無い貴重な人材達が選抜されている。物的な被害以上に、人的被害の方が共和国軍の被る被害は大きいだろう。
 頂武最精鋭であるハレルヤ、アレルヤ、ピーリスと合流できたとしてもこの現状を打破するのはほぼ不可能であろう。
 上空でセルゲイをしても唸らせる高機動大火力戦闘を繰り広げている敵指揮官機が、謎の赤い機体を降してこちらの戦闘に加われば、もはや頂武という部隊は壊滅という結末を迎えるしかないだろう。
「セルゲイ・スミルノフより、各員へ通達する。誠に遺憾ながら我々頂武は現時刻を持って基地を放棄。敦煌基地への脱出を試みる。データや設備の最低限の破棄後、人員の脱出を最優先にする。反論は認めん。また、責任はすべて私が負う。皆、命を惜しめ!」
 責任を負う、というセルゲイの言葉と有無を言わさぬ強い意志の込められた言葉に、反論を述べようとしていたパイロットや、基地の研究者たちや各人員達も、喉まで出かかっていた言葉を呑みこんだ。
 セルゲイが最後に口にした命を惜しめ、という言葉も功を奏したのだろう。
 ミンは従順なほどにセルゲイの言葉を首肯したが、背後のソーマは超兵としての自身の性能に矜持を抱いているために、いささか躊躇う様子を見せたが、それでもセルゲイには逆らわなかった。
 セルゲイとしてはハレルヤが素直に自分の言葉に従うかどうか、という事に一抹の危惧を覚えないではなかったが、今のところハレルヤの反論の言葉は届いてこない。あるいはそんな余裕がないほど忙しく戦闘に追われているのかもしれない。
 セルゲイの知る限り、MSパイロットとしては東アジア共和国で一、二を争う技量と身体能力を有するハレルヤをしてそのような状況に追い込まれているのだ。敵機の殲滅よりも、自軍の被害をどうやって最小限に抑えるかということこそ考えるべきであろう。
「中佐、地下の超機人は、いかがいたしますか?」
 斬りかかってきたエスリムの刃を右にかわし、懐に一歩踏み込んでカーボンブレイドを突きこみながら、ミンがセルゲイに問う。
 共和国軍上層部から念に念を重ねて扱うよう命じられた超機人を放棄してゆけば、セルゲイの軍人生命も危ういものとなるかもしれない。
 それに対し、セルゲイはほとんど迷うことなく答えた。
「遺憾ながら超機人は破棄する。可能であれば爆破、だが最優先はミズハ少尉やヒカワ少尉達の脱出だと、すぐに伝えろ!」
「はい」
 自身の保身を考えずにそう答えるセルゲイだらこそ、ミンは全幅の信頼を置いていた。ミンのみならず頂武に籍を置く者たちは皆そうだ。しかし幸か不幸かセルゲイの指示は果たされることはなかった。
 ミンが超機人達が格納されている地下ケージかへ連絡を繋ごうとした矢先に、メギロートやエスリムによって散々に破壊された基地の一角が、地下から出現しようとした巨大質量によって、大きく弾け飛ぶ。
「あれは、超機人! 少尉達が起動させたのか、それとも彼ら自身の意思で動いたとでも言うのか?」
 クスハ達が証言した、超機人には意思がある、というオカルトめいた証言が脳裏をかすめ、セルゲイはまさか、とは思いながらもそう口にせずにはいられなかった。
 一方で、四神の超機人のコックピットに収まる四人の少年少女達も、敵機襲来の警報が鳴りだしてから、わずかな時間で悲惨な様相を呈している基地の様子に言葉もない状態だった。

25 :
「ひどい」
 か細くリオ・メイロンの口からようやく、その一言が紡がれる。
 基地のあらゆる場所が紅蓮の炎の海に飲み込まれ、整然と並び立っていた多くの建造物は瓦礫とは変わり果てて崩れ落ち、戦闘の余波に巻き込まれて消し炭と変わった人間の残骸がそこそこに転がっている。
 いまも基地に降り立った一機のメギロートが辺りを構わず口腔らしき部位の顎を開いて、リング状のレーザーを乱射して破壊の版図を広げている。
 状況がかような窮地に陥っていれば、いかに弱気と取られるほど温和な性格のリョウトや、クスハといえども戦わない、という選択肢が存在しない事を即座に悟る。
 ましてや正義感が強く、知人や家族をはじめ自国の人々を戦火から守りたいという軍人としてプリミティブでもっとも普遍的な動機から、いまの職を選んだリオやブリットからすれば、戦意の焔は怒りという名の薪をくべられて猛々しさを増すのは必定であった。
 全身を瞬く間に貫いてゆく烈火のごとき感情に身を任せ、超機人達に戦いを命じようとした四人であったが、上空から放たれた暴力的な圧力に打たれた事で、指先が凍りついたように動きを止め、一斉に上空へと視線を動かした。
 主と共に上空を睨むように見つめる超機人達の瞳に映ったのは、一瞬の停滞もなく天空を飛び回り、雷と光の線を繋げあい、互いを消滅させん超常の魔戦を繰り広げるヴァルク・バアルとペルゼイン・リヒカイトの姿であった。
 クスハ達強念者達と超機人達を畏怖させた、まるで空そのものが落ちてくるような圧倒的な圧力を放つヴァルク・バアルと、まがりなりにも互角の戦いを見せる赤い鬼の様な機体の姿に、数瞬、ブリット達の意識は惹きつけられる。
「あの黒い機体、あれがさっきの感覚の正体か!」
 いまだ体の六十兆を超す細胞に巣食う鉛の様に重い悪寒に蝕まれながら、ブリットは己の精神を振い起し、絶対に相容れる事はないと直感的に理解できた相手を凝視する。
「さっきの感覚は収まっているけど、それでもまだ、すごく、嫌な感じが残っている」
 つっと形の良い顎のラインに氷のごとく冷たい汗を流しながら、クスハはペルゼイン・リヒカイトの猛攻を、余裕を持って凌ぐヴァルク・バアルを見ていた。
 ヴァルク・バアルの胸部装甲を閉じられ、ディス・レヴをフルに使用しているわけではないようだが、それでもなお負の無限力を全身に行き渡らせたヴァルク・バアルは、すでに存在それ自体が一個の超常現象に相当する超越存在であった。
 持てる力を最大限に――いやありとあらゆる並行宇宙に蓄積された血的生命体の負の想念を駆使する以上、最大という概念が意味を為さぬ無限の力故に、上限など存在しない以上、理論的には単一宇宙の破壊でさえ砂山を崩すのと大差のない些事であったろう。
 もっとも、現実を見れば力の根源こそ負の無限力という究極的な代物であっても、それを捻りだす蛇口が、無限の力を放出する事の叶わぬ極めて微細な物の為、ヴァルク・バアルでは惑星破壊でさえ望めるかどうか、という低次元の力しか振るえない。
 その程度の力しか持たぬヴァルク・バアルでさえ、現在の地球にとっては手に余る存在ではあったが。
 ヴァルク・バアルの秘めるこの宇宙の根幹に関わる力を知覚出来てしまうがゆえに、肉体のみならず精神を加速度的に摩耗させて行くクスハ達を現実に引き戻したのは、セルゲイから繋げられた通信の音声であった。
 一応、東アジア共和国及び地球連合で使われている通信機器やレーダー器具などが、超機人のコックピットにはすでに増設されている。
「ミズハ少尉、ラックフィールド少尉、メイロン少尉、ヒカワ少尉、聞こえるか?」
「スミルノフ中佐!?」
 
 四人それぞれが異口同音に答えた事に、セルゲイは小さく安堵の息を吐く。声の調子からして、全員体のどこかに怪我を負っているような事はないようだ。
「全員無事だな。あまり時間がない、要点だけを述べる。我々頂武は基地を放棄し、人員の脱出を最優先に敦煌基地を目指す。貴官らは速やかに超機人を基地から退避させろ。超機人は今後の地球圏の騒乱に対し大いなる力となる機体ということだからな」
「しかし、中佐、自分達だけおめおめと」
「これは命令だ。既にハプティズム少尉達が退路を確保すべく交戦中だ。迅速D16ルートから脱出しろ。反論は認めん!」
 食い下がるブリットを有無を言わさぬ強い語意で斬って捨て、セルゲイは通信を切る。輸送用のトラックや小型の陸船艇に乗って、生き残った基地の人員達――幸い頂武の秘匿性から民間人の出入りはなかった――が脱出を始めている。

26 :
 セルゲイは殿を務め、他のMSや人員の脱出を見届けてからこの場を引くつもりであった。もっとも苛烈で危険な立場に部下ではなく自分を置くセルゲイの覚悟と意思は固く、ブリットはそれ以上食らいつく言葉を持たなかった。
 了解、と四人の内の誰かが口にしようとした時、そこに割り込む声があった。
「悪いが、お前達を逃がすつもりは、おれにはないぞ?」
「!?」
 超機人達の行く手を阻むように、ヴァルク・バアルが半ば廃墟と化した頂武基地へ、ゆったりとウィンヴ・バインダーを折り畳みながら降下してくる。
その背後に、四肢を破砕されたペルゼイン・リヒカイトが、轟音を立てて落下し、小さなクレーターを作り上げた。
クスハ達がセルゲイの指示を聞いていた間に、かろうじてヴァルク・バアルとペルゼイン・リヒカイトの築かれていた均衡が破られ、ペルゼイン・リヒカイトは大きな損傷を負わされていたのだ。
ペルゼイン・リヒカイトの修復能力を考えれば、たとえ四肢を破壊されようとも直に傷一つない両腕と両足を再構築するだろうが、それでもその間、ペルゼイン・リヒカイトを守るアインストの同胞もなく、無防備な状態を晒すのは間違いない。
「不覚、ですの」
 まだ十代前半の幼い顔立ちに悔しさを浮かべながら、アルフィミィは至近でディス・レヴの波動を浴び続けた所為か、疲労の色が濃い。
 ショット・シザーを地面に垂直に突き立て、ヴァルク・バアルは不動の姿勢を取った。キャリコの言葉通り、今回ばかりは超機人達を見過ごすつもりは皆無なのだろう。
 超機人達が地下と地上を隔離する装甲板をぶち抜いた地区は、セルゲイ、ミン、ソーマが戦闘を繰り広げている地区とちょうど真反対に位置し、三人が超機人の援護に入るのには群がる敵機の排除を考慮すれば、数分を要するだろう。
 ヴァルク・バアルの漆黒の威圧感に気圧される自分達を理解しながら、リョウト達は臍を噛みつつも退く事の出来な状況に追い込まれた事を理解していた。
 龍王機、虎王機、雀王機、武王機それぞれが咽喉から低い威嚇の唸り声を零しながら、身を伏せ、あるいは翼を広げて、即座に攻撃と回避、防御に対応できるよう臨戦態勢を整える。
 幸いにして超機人達の昂る戦闘の意思はそれぞれの操者達にも伝播し、ヴァルク・バアルを前にしてもクスハ達が恐怖に飲まれる事はなかった。
 戦う姿勢を崩さぬ超機人を前にして、キャリコの浮かべる冷たい嘲笑は深さを増すきり。
「最悪、脳髄と超機人のコアさえあればいい。早々に諦めて降伏すれば、まだ五体くらいは残してやるがな」
 初陣を迎えるクスハ達にとって、戦力的にも、また精神的にもあまりにも凶悪かつ冷酷な相手であった事は、彼らにとって最大の不運であったかもしれない
つづく
アルフィミィはインパクト仕様なのでムゲフロほど愉快ではありません。

27 :
皆々様乙
>アルフィミィはインパクト仕様なのでムゲフロほど愉快ではありません。
くぅ・・・早くアクセルなりレイなりいっそラウとでも合体してしまえば・・・
ATXの新刊出ましたが
あっちの枷イングラムがキャリコ調になってますな、影というか、光の反射?が仮面風味

28 :
劇場版機動戦士ガンダム00公開記念短編
ディバイン SEED DESTINY風
機動戦士ガンダム00 ― A wakening of the Trailblazer ―
注意 
DSD本編及び劇場機動戦士ガンダム00の盛大なネタバレを含みます。
ご覧になられる場合はその点を考慮してお読み進めくださいますようお願いします。
 正直に申し上げてトンデモ系のネタ話です。私という人間の作風を考えればどうなるか御推察いただけるかと思います、では、どうぞ。
 C.E76。
 三年前のヤキン・ドゥーエ戦役、さらにその一年半後に勃発した地球全土に戦火の及んだ、人類の未来を占う戦役の終結より約二年の歳月が流れた。
 ユーラシア連邦、大西洋連邦、東アジア共和国から成る地球連合。
 プラントの有する自衛組織ザフト。
 そして大洋州連合、ウィルキア王国、日本帝国、赤道連合、南北アフリカ統一機構、南アメリカ共和国らを束ねるディバイン・クルセイダーズ(DC)。
 上記三大勢力を中核にし、地球外、いや、異世界から招来された異邦人達の思惑をも孕んだ、さながら黙示録に語られる終焉の来訪かのような破壊と鮮血の戦いは、多大な犠牲と訓戒を引き換えに終結を見る事となる。
 戦後、経済、物資、文明、人命と文明社会を構成するあらゆるものを多数消耗した地球圏は、プラントを含んだ一つの勢力として融和が図られることとなった。
 地球連邦政権の誕生である。
 ナチュラルとコーディネイターという二種の対立のみならず旧来の宗教観、経済、民族対立などを理由とする紛争の火種は、連邦発足後も世界中に無数に存在していたが、それでも世界は薄い硝子の様な平和を表面上は維持していた。
 かつての大戦の勃発の様な薄紙の様に危うい平和の続く生活に対し、ようやく人々が濃密な猜疑心を薄れさせ始めた頃、地球圏を騒乱の渦に叩き落とす事件が起きた。
 かつて木星探査計画の果てに破棄されたとある巨大探査船が、突如として地球圏へと進路を向けて動き始めたのである。
 原因こそ不明であるが、全長一キロに及ぶ巨大質量が地球に落下した際の影響を危惧した連邦軍は、即座に探査船の破壊を決定。
 当初、想定よりもはるかに頑強であった探査船の破壊には、多少手古摺ったものの探査船の破壊それ自体は成功した。
 しかし、ここで一部の連邦軍人や連邦オブザーバーから、根拠を伴わない破片の回収の意見が寄せられるという少々奇妙な事態が生ずる。
 一般的な組織であったならば、そのような少数の人間の確たる証拠の無い意見など一顧だにされぬのが通例である。
 だがその意見は結果として採用される事になる。
 なぜならば、探査船への危惧を告げたのは、地球連邦に所属する強力な念動力者、真なる進化した人類イノベイター、奇跡を起こす武道“念法”の剣士達だったからだ。
 現状の地球圏の技術では解明しきれていない不可思議な超感覚を有する彼らの進言通りに、破壊地点で回収された探査船の破片から未知の物質が発見されることとなる。

29 :
 それは一種の金属生命体である、と地球連邦の研究員たちは結論付けた。
 在る程度質量を分割され、細分化されると生命としての機能を停止するその銀色の鉱物状の姿をした金属生命体は、人間の発するある種の脳波――脳量子波を感知し求める特性が発見される。
 その鉱物の解明に血道が挙げられる中、さらに新たな緊急事態が起きた。
 コロニーを改造した巨大船や、ファースト・コーディネイター、ジョージ・グレンの設計した木星探査船が目指す木星に、重力場変動が突如として発生したのである。
 大赤斑と呼ばれる木星の大気の渦に発生した局所的重力場の突然の異常は、これまでの宇宙の物理法則に対する常識にそぐわず、民間、軍事を問わず多くの科学者たちに混乱を困惑とヒステリーをプレゼントした。
 大赤斑を中心に木星をぐるりと囲む小隕石群が瞬く間に吸引され、微細な分子や更に小さな原子にまで分解され、更には衛星であるイオとガニメデまでもが吸引されると、圧力に耐えかねて自壊してしまう。
 太陽系の星系図を書き換える一大事を前にして、未知への恐怖と警戒に震える人々が多数を占める中、それとは異なる者達もまた存在した。
 前述した念動力者をはじめとした異能の力を持つごく少数の人間達と、DC総帥ビアン・ゾルダークをはじめとする異邦人達である。
 彼らは、彼ら自身の多くが異なる世界からこの世界へと招かれたという事もあってか、局所重力変動場の先から、ナニモノかが来る事を予測し、そしてそれは確信の領域にあった。
 彼ら異邦人が唐突に前触れもなくこの世界にやってきたように、ナニモノかが来るのだと。その存在が、地球圏に新たな騒乱の風を巻き起こす事になるだろうと。
 そしてその予測を証明するかのようにして、大赤斑の彼方から銀色の光沢を持つ金属質の何かが無数に姿を現したのである。
 戦闘機ほどの大きさを誇る両刃のナイフを思わせるもの、それよりは血さな馬上槍の様な鋭い円錐形をしている小型のもの、さらに数百メートルクラスの前方に向けて四本の爪を伸ばす楕円形の大型のもの。
 大小の機動兵器に相当するナイフとランスタイプ、母艦に当たるであろうクラゲタイプ。総数数千、数万などという数ではなかった。
 地球連邦の総戦力を嘲笑うほどの圧倒的物量を露わにするそれら金属異星体――通称エルスは、人間の想像力の限界に挑むように更なる脅威を示したのである。
 木星の異なる宇宙空間へと繋がる出入り口となった大赤斑から、実に月の半分にも達する直径三千キロメートルの巨大な、金属製の木の根が絡み合い球形を為した様なエルスが、大群を伴って出現したのである。
 はるか古代より地球に寄り添っていた姉妹星月の半分にも達する巨大物体の出現と、明確に地球圏を目指して進路を進めるエルスの大群を前に、戦火再びと地球人類は悲嘆に暮れながらも迎え撃つべく行動し始めた。
 既に事前の大小の衝突から、エルスが接触した物体を無機物有機物を問わず同化する特性を持ち、それが同化によって他者を理解し、膨大な情報を一つの群体として共有している、という推測がなされていた。
 エルスが知性を持ち、なんらかの目的を持って地球圏を目指している事は明白であったが、地球人類が取りうるアクションの選択肢は決して多かったわけではない。
 数十万か数百万か数千万か。
小国の人口にも匹敵しよう大群が、数万単位の艦船と直径三千メートルの巨大衛星を伴って地球圏へと襲来する。
 この前代未聞の事態を前に、融和政策を推し進め対話による紛争解決を目指していた地球連邦は、ビアン・ゾルダークの地球人類に逃げ場なし、という意見もあり地球の全戦力で持って迎え撃った。
 地球圏の各コロニーや地球上の一般市民は地下に設けられたシェルターに避難し、掻き集められたありったけの戦力は、エルスの予測軌道コース上に布陣されることとなった。
 ウィンダムやザクシリーズ、エルアインスといった旧世代(といってもほんの二年前まで主力だった機体だが)も惜しみなく投入された機動兵器の数は、MAや特機を含めた総数は約二万弱。

30 :
 内訳は旧世代機が三千、バルキリーの最新鋭機VF−25メサイアが千機、メサイアの登場までVFシリーズ主力機の座を担っていたVF−21Aエクスカリバーが三千機。
 さらにアヘッドの後継機であるノーヘッドが三千機、ジンクスシリーズの最新型であるジンクスWが三千機、主力PTゲシュペンストMk−U改が二千機。
 エルスの特性上、特機からは肉弾戦を得意とするグルンガストタイプは艦艇の護衛に配備され、ジガンタイプも機動性の低さからグルンガストタイプ同様に艦艇の護衛に回されている。
 グルンガスト弐式とジガンスクード、ジガンスパーダ、またメガ・グラビトンウェーブと歪曲フィールドが標準装備されたヴァルシオン改Mk−Uが各々五百機ずつで合計二千機。
 またヨーロッパを中心に配備されていた魔装機であるが、宇宙が戦場となる以上精霊との契約を行っている機体は本領を発揮できない関係上、後方の最終防衛ライン近辺に配備されている。
 性能を精霊に左右されない超魔装機デュラクシール、エウリードが五十機ずつの百機に、主力魔装機であるガディフォールも四百機ほどが地球の最後の守りについている。
 作戦指揮は旧ユーラシア連邦のカティ・マネキン准将が執り、前線の機動兵器部隊の士気は旧東アジア共和国のセルゲイ・スミルノフ大佐が担う形になっていた。
 二万弱の機動兵器の指揮を執り、補給や整備の面で支え、その火力でもって支援を行う堅固な砦となるのはスペースノア、ミネルバ、アークエンジェル、マクロスクォーター、ゴンドワナ級からなる地球連邦宇宙軍の主力艦隊である。
 これに加えネピー・イーム級要塞三基と外宇宙航行艦ソレスタルビーイング級五隻、機動要塞メサイア、マクロス級二十隻、最後の審判者セプタギン八機が、その威容を青い地球を背後に知らしめながら、エルスと対峙している。
 二度の大戦当時と比較しても膨大な地球連邦軍の戦力であったが、それでもエルスとの戦力比は推定百対一と絶望的な戦力差が広がっていた。
 そして地球連邦軍の最先鋒の中核を担い、またこの決戦を勝利に導くための中核とされる部隊が存在していた。
 かつて地球と宇宙の広がる戦乱の中で、突出した戦果を残し、戦乱の終結に大きな役割を果たしたとされるDC総帥親衛隊ラスト・バタリオン所属特殊任務部隊『クライ・ウルブズ』である。
 旗艦スペースノア級壱番艦タマハガネのデッキからカタパルトで射出される巨大な人型が一つあった。
 作戦開始時刻を間近に控え、すでに布陣をほとんど終えた友軍機や艦隊、迎撃用の人工戦闘衛星などが、無数にひしめき合う中を悠々と飛んでゆく。
 現在地球圏最強のMSパイロットの一人に数えられ、また生身で特機を破壊する地球最強の生物と畏怖されるシン・アスカ中尉の愛機デスティニーガンダムセブンソード/Gである。
 アロンダイト、シシオウブレード、ガーディアンソード、零式斬艦刀、獅子王斬艦刀、参式斬艦刀、斬艦刀の七振りに、出力二百万TWを誇る掌のパルマ・フィオキーナ二門と頭部の60mm対空ビーム砲塔が全武装である。
 真紅の翼からツイン・テスラドライブの光の粒子を零しながら、全身に七つの刃を纏うデスティニーのコックピットの中で、シンは目的の相手を見つけ、その傍らに愛機を寄せるべく相対速度を瞬時に調節する。
 そしてシンは、自身同様に地球圏最強の一角を担う戦友に声を掛けた。
 人類初の進化種イノベイターとなった刹那・F・セイエイ。
 イノベイターの存在と定義に関しては、進化した人類を自称するプラントのコーディネイター達がひどく反発したが、それはこの際後に置いておく。
 エルス本隊の出現前に、先遣隊と思しいエルスとの接触に置いて、彼らの叫びを感知し敵対行動を最後まで取らなかったこの少年が、今回のエルスとの戦い――あるいは対話に置いてもっとも重要な鍵を握っているのだ。
 たった一人の人間が背負うにはあまりにも重すぎる負担を、刹那に背負わせてしまっている事への罪悪感を感じながら、シンはデスティニーを刹那の機体の横へと動かした。

31 :
 つい先日ロールアウトしたばかりの刹那専用のMS。
 刹那の求めた理想を体現したガンダム。
 GNN−0000+GNR−010/XNQ『オーナインクアンタザンライザー』。
 刹那の前機体であるダブルオーライザーによって蓄積されたツインドライヴシステムを発展させたナインドライヴシステムによって駆動する、現時点におけるGNドライヴ駆動機の究極系だ。
 通常のGN粒子生産量の二の九乗倍もの粒子生産量を誇り、また異世界とこの世界で蓄積された機動兵器開発技術の粋も凝らされている。
 機体の基本骨格となるフレームは全てフルサイコフレーム、パイロットを補佐するバイオコンピューターをはじめ、気力を力に変えるマルチトレースシステムやラプラス・デモン・コンピューターに至るまで搭載されている。
 両肩、両肘、両膝、腰後部に各二基ずつで八基、さらに背中に一基と全九基ものナインドライヴ前提の対消滅機関内蔵新型GNドライヴを搭載し、量子ジャンプによる恒星間転移や重力操作、空間干渉を可能としている。
 機動兵器としての性能は既にMSの領域を超えて、ネオ・グランゾンやアストラナガンのレベルに至った超絶の機動兵器である。
 また09クアンタの背中に接続されているザンライザーUも、元はダブルオーライザー用の支援ユニットであるが、09クアンタの開発に合わせて再設計と回収を施したものに変えられている。
 形式番号が示すQは09クアンタ用に再設計がなされたことを示し、またXNもXNディメンションを意味している。
 XNディメンションは基本的に通常空間や閉鎖空間を切り裂いて空間転移を行う技術であるが、09クアンタの量子ジャンプとザンライザーUに搭載されたフォールドブースターによって、用途が多様化している。
 パイロット達の間で俗に御肌の触れ合い通信と言われている接触通信で、シンは案の定浮かない顔をしている刹那に気付く。
「なんだよ、刹那。眉間に皺が寄っているぞ」
 デスティニーの接近にも気づいていなかったのか、刹那は声をかけられて初めて気づいた様子だった。
 進化種であるイノベイターもやはり完璧とはいかないようだ。
「シンか」
「刹那が戦う気になれないってのは前から聞いていたけど、なにか予感でもしているのか?」
「エルスが木星から現れてから、ずっと彼らの叫びが聞こえている。その叫びが何を訴えているのか、それが分からない。それさえ分かれば、彼らと戦わずに済むかもしれない」
「その鍵は自分が握っている、だからなんとしてでも対話しなければ、か?」
「……そうだ」
 幾分かの間を置いて、刹那は首肯する。今現在、地球ではイノベイター候補とされる人々が複数確認されているが、完全に覚醒するまでに至っているのは刹那を含めて二人きりだ。
 刹那がそれを自覚し、強い責任感に襲われていても不思議ではない。ただ、数年来の付き合いで、刹那の表情からその責任感だけがあるわけではないようだと、シンは推察する。
 それくらいはクライ・ウルブズの同僚たちなら誰でもわかるだろう。
 おそらくはエルス達の発する叫びを理解できない事への困惑が、刹那の胸中に深く根を張っているのだろう。
 世界を変える。自分が変える。未来を変える。その為に刹那は生きている。
 まさに宇宙の彼方よりやってきた異種との遭遇は、刹那が刹那自身に課した存在意義の問われる時であるだろう。
「この二年で少しは刹那も丸くなったかと思ったけど、また昔みたいに無愛想になってるぞ。刹那が戦うつもりはないってのは分かるけどな。おれはイノベイターじゃないけど少しだけエルスの叫びは聞こえたから」
「そうだったな。シンだけでもなかったか」
「ああ、他にも念動力のある人達にも、刹那ほどじゃないにしろ何かしら叫びが聞こえていたんだから、少しくらいは刹那の助けになれる」

32 :
 シンの言葉がまだ鼓膜を震わせているうちに、刹那は09クアンタXRのホロモニターを操作し、周囲の友軍機を見回す。
 地球連邦最強最精鋭部隊であるクライ・ウルブズを中核に、刹那を球状巨大エルスの中心部に届けるために、精鋭中の精鋭たちが集結している。
 アレルヤ・ハプティズムとマリー・パーファシーのガンダムハルートL、ハレルヤ・ハプティズムとソーマ・ピーリスの乗るガンダムハルートR。
 ロックオン・ストラトスのガンダムサバーニャL、ライル・ディランディのガンダムサバーニャR。
 ティエリア・アーデのハイパーキャプテンガンダム、リジェネ・レジェッタのラファエルガンダム。
 スティング・オークレーのスペリオルカイザー、アウル・ニーダのファイナルフォーミュラー。
 テンザン・ナカジマの大暗黒帝デラーズ、リュウセイ・ダテがメインパイロットを務めるSRXアルタード・バンプレイオス。
 この決戦に際し、DC総帥の席を辞したビアン・ゾルダークが乗るスーパーヴァルシオン、伴侶のごとくその傍らに立つミナシオーネR2。
 レントン・サーストンとエウレカの乗るニルヴァーシュType2、エペソ・ジュデッカ・ゴッツォのグレートズフィルードカイザー。
 マサキ・アンドーのサイバスター、テューディ・ラスム・アンドーのイスマイル・レイ。
 レオナ・ガーシュタインのズィーガーリオン、タスク・シングウジのジガンスクード・ドゥロ。
 クスハ・ミズハとブルックリン・ラックフィールドの龍虎王、リョウト・ヒカワとリオ・メイロンの雀武王などなど
 挙げればきりがないほど無数の機体がひしめき合い、未知の異星種との対峙を前にして緊張しているのが手に取るように分かる。
 たとえイノベイターとしての能力がなくとも、だれしもそれくらいは分かることだろう。逃げ場を失った人類の守護の剣たらんと、誰しもが不退転の覚悟を腹に据えている。
「みんなやる気マンマンだけど、ちゃんと刹那が話をしてからってのは分かっているからさ、肩から余計な力は抜いておけよ。刹那を送り届けるのがおれ達の役目、エルスに話しをするのが刹那の役目。どっちも助け合ってかないとな」
「そうだな。少し、肩に力を入れ過ぎていたかもしれない」
「こういう時はまた会いたいって思う人を思い浮かべるといいんじゃないか? ほら、アザディスタンの皇女様とか」
「マリナとはそういう関係じゃない」
 間を置かぬ刹那の返事に、シンは容赦ないな、と苦笑した。そういった男女の恋愛的な事に関して、イノベイターになった戦友はまるで進歩が見られない。
 単にそれが刹那の性格や育った環境のせいであるのならまだ改善の余地はあるが、刹那自身が、自分にそういった幸福や自由を許していないのであれば、根が深い問題だと一夫多妻の環境に在るシンは思う。
 ただ、それを言うと刹那ばかりでなくマリナ皇女の方も同じように思える。まあ、男女の関係が必ずしも恋愛的なものが全てというわけではない。
 刹那がマリナに見ているものは、一人の人間としての好意以上に、もっと大きく深い愛なのかもしれない。
 そんな事を大っぴらに言えるほど、シンは自分を大した人間だとは思っていないので、誰にも告げたことはなかったが。
「そろそろ時間だな」
 今日の天気を告げる様なごく自然な口調でシンが呟いた。
 数える事が馬鹿馬鹿しくなるほどの層をなして高速で地球に迫りくるエルスの大群が、メインモニターの向こうで巨大な壁の様になって蠢いている。
 刹那個人はエルスとの戦闘を望んではいなかったが、刹那と09クアンタXRを球状巨大エルス中枢に送り届けるためには、多数のナイフ、ランス、クラゲエルスを撃破して突き進むしかない。
 地球人類側の先制の第一砲は、ソレスタルビーイングや各マクロス級の主砲の一転集中砲撃により、球状巨大エルスまでのコース上に存在する小型エルスの一掃からだ。
 その後、熱核弾頭や反応弾、マイクロディメンションイーターを搭載した近接信管式長距離ミサイルによる一斉発射が行われる。
 人類の保有する強大過ぎると危惧された絶大な火力は、壮大で華麗な戦果を宇宙の闇に煌々と描きだして見せた。

33 :
 数々の砲撃はエルス達が展開した各種のフィールドの干渉を受けて威力を減衰しながら、それでも多くのエルス達を飲み込んで、一ミリほどの欠片も残さず完全に消滅させる。
 近接信管に切り替えた各ミサイル群もその処置が功を奏し、次々とエルスの群れにぽっかりと大きな穴を穿ってゆく。
 地球を丸ごと埋め尽くす事も出来る様なエルスの大群を前に、大なり小なり萎縮していた地球連邦のパイロット達も、友軍の圧倒的と見える戦果を前に士気を高揚させる。
 三千隻以上の戦闘参加艦艇の砲撃とミサイル攻撃の支援を受けながら、無数の光点が迫りくるエルス達へと向かい、彼我の間に光の雨を降らす。
 戦線の最先端を飛翔するのはVF−21AエクスカリバーとVF−25メサイアからなるバルキリー部隊三千機と、グラハム・エーカー少佐の率いる次期主力採用候補機ブレイヴ三百機である。
 戦端を開いた彼らの中でも特筆すべきは、現在地球連邦で使用されている太陽炉のほぼすべてが翡翠色の粒子を放出する純正太陽炉に換装されていることだろう。
 DCの重力操作技術によって、木星と同じ環境を再現する事が可能となったことで、この二年間で莫大な数の純正太陽炉が製造されている。
 エルスとの長期戦を考慮すれば、永久動力機関である純正太陽炉の搭載は有効な手立てであるだろう。
 特に、サバーニャ、ハルート、グラハム少佐の搭乗する指揮官用ブレイヴはツインドライヴシステムを採用しており、他の太陽炉搭載機と隔絶した性能を保持している。
 さらにグラハム・エーカー少佐の率いるソル・ブレイヴスのブレイヴは徹底的なカスタマイズが施されている。
 ツインドライヴシステムはもちろん、プロジェクトTDで培われたツイン・テスラドライヴ技術や、VFシリーズの熱核タービンやピンポイントバリアなどの技術が採用されているのだ。
 これは旧DC所属のとある科学者の、
「プロジェクトTDとVFシリーズとフラッグ系の技術をまとめればすごくね?」
 という発言の元、再設計強化されたブレイヴは、ソル・ブレイヴと命名されて、数機が先行量産されていた。
 MDE弾頭と反応弾をばら撒き、エルスの先陣数千体を舐めるように葬った高機動部隊は、味方同士でフォローしあえる位置を心掛けながら、刹那の為の道を切り開くべく縦横無尽の活躍を見せ始める。
 日本帝国の戦略航空機動要塞を宇宙仕様に改装した戦略航宙機動要塞XG−70ds凄乃皇・四型宇宙式一個大隊も、主砲である荷電粒子砲や2700mm/120mm電磁投射砲、VLSをフル稼働させている。
 旗艦タマハガネを中心に、クライ・ウルブズの全機動兵器部隊も先鋒の矛が穿った穴が塞がれる前にと、蓄えに蓄えた力を爆発させるべく吶喊を始める。
 前述した強力極まる機動兵器に加え、この二年の間に新たに加わった新人達も、このとてつもない戦場の中を、臆する様子も見せずに戦い始める。
 タマハガネの甲板上では、あろうことか宇宙服も何も纏っていないセクシャルな装いの、青い髪と白皙の美貌の少女と、全く同じ美貌に白い髪と褐色の肌の二点で異なる少女とが背中合わせになって、近づくエルスを次々と撃ち落としている。
 少女達は何もない空間からガトリング砲や拳銃を取り出すと、宇宙空間に生身を晒しながら、片方は無表情に片方は残酷な笑みを浮かべて次々とエルス達の活動を停止させてゆく。

34 :
 なにやら険悪な空気の漂う少女たちであったが、なにやら二言三言交わし合い、それぞれ豊かなラインを描く房を張ると、それぞれの胸部の前方に青と黒の球体が生じる。
 凄まじいエネルギー量を誇るそれらの球体が放たれてエルスに触れると、少女達はそれぞれナイフ状の物質を投げ、額当ての瞳を思わせるクリアパーツに手をやり、球体を炸裂させる。
 相転移現象を発生させて超絶の破壊をまき散らすそれは、本来なら恒星さえも破壊可能な相転移砲であったが、乱戦状況ゆえに威力と効果範囲を絞ったものだった。
「行くぞ、刹那!」
「ああ、行こう。エルス達のもとへ、対話の為に、戦いを止める為に!!」
 連邦軍の精鋭たちが切り開いた血路をデスティニー7S/Gと09クアンタXRが全推力を傾けて、一挙に飛翔する。
 その周囲を全長三百メートルを超す巨大なMA部隊が囲った。
 GNMA−Y0002V『ガデラーザ』。
 本体後部左右に直列型ツインドライヴ三組と、予備として中央部に一基のオリジナルGNドライヴを搭載し、機体に七基の純正太陽炉を持つ。
 武装は機首に超大型のGNキャノン一門、左右の足元に十機の小型ファングを内蔵し、太陽炉を一基ずつ搭載する大型ファングを十基収納している。
 計百五十四基のファングにミサイルポッド、普段は収納しているGNクローにはGNビームマシンガンを内蔵しており、遠近両方に対応している。
 刹那に続く人類二人目のイノベイター、デカルト・シャーマン大尉の搭乗する最新鋭のイノベイター専用MAである。
 エルスの放つ脳量子波が膨大な情報量でもって、脳量子波を扱う者達に苦痛を及ぼすことを考慮し、脳量子波遮断措置を重点的に行っている。
 銀色の髪に顎を覆う短い髭と下唇の下に刺したピアスが特徴的の、二十代後半ほどの男がデカルトである。
 先にイノベイターへと変革した刹那が好待遇を受けていた事もあって(クライ・ウルブズの独特な部隊性もあるが)、デカルトもイノベイターへの希少な変革例ということで彼もまた好待遇を受けている。
 今回はデカルトのガデラーザを筆頭に、約七十メートル前後の大型MAレグナント一個大隊が続いている。
 ややシニカルなものを含んだデカルトの顔が刹那とシンの前に映し出される。
「私も付いてゆきますよ。イノベイターの先輩がどうするのか、個人的な興味もありますのでね」
「好きにすればいい」
 デカルトに答える刹那の声は淡々としている。同じイノベイター同士ではあっても、普通の人間同様に必ずしも馬が合うとは行かないようで、人間というものはそうそう上手く出来てはいないようだ。
「一気に行くぞ。トランザムの使いどころは間違えるなよ」
 これはシンである。既に意識は戦闘モードに移行しており、永いこと愛用していた斬艦刀をすでに抜いている。
 エルス相手に接近戦を挑むのはほとんど自行為であるが、シン・アスカに限れば地球連邦の誰からも文句は出ない。
 下手な特機なら生身で破壊する正真正銘の化け物なのだ。旧人類どころかイノベイターに覚醒したデカルトでさえも、シン相手に文句をつけるつもりにはなれない。
「来るぞ!!」
 刹那の声が通信をつなぐ者達すべての気を引き締めた。イノベイター二人の発する脳量子波に引き寄せられた小型・大型のエルス達が、続々とこちらを目指して突撃してくる。
「久しぶりの正念場か」
 だが、いつだって戦い抜き、くぐり抜け、そして生き残ってきた。今回もそうするさ、とシンは身重の妻たちの待つ地球を守るべく、愛機と共にエルスの群れのまっただ中へと飛翔した。
おしまい

35 :
DSD本編終了後にしようかいま書くかで迷いましたが、旬が大切と思い、今回投下させていただきました。
本編終了後に書いていれば地球人類の戦力がもうちょっとマシだったんですけれども。
また本編には出てこない機体も多数含まれています。少女二人はムゲフロにでたゲストキャラです。EP3終了後拾って直したら、なんか二人に分裂したのでした。
00二期で三個艦隊の戦力がMS108機、映画では九個艦隊とのことなので324機。エルスとの戦力比が一万対一と考えると、324万機MSがないと互角には持ち込めないわけですね。
まあ、宇宙怪獣に比べれば赤ん坊みたいなものですし、悪意はないわけですからね。比べるだけ無粋でしょうか。
ゼントラーディ基幹艦隊を壊滅させた要塞型ズフィルード一機でも勝てる……んでしょうかね?
暇つぶしにでもなれば幸いです。では、お邪魔しました。
誤字訂正
> 09クアンタの開発に合わせて再設計と回収を施したものに
 →09クアンタの開発に合わせて再設計と改修を施したものに

36 :
> 気力を力に変えるマルチトレースシステム
Gガンダムのエネルギーマルチプライヤーシステム?
にしても
> 本編終了後に書いていれば地球人類の戦力がもうちょっとマシだったんですけれども
何dでもねえこと書いてるんですかあーたwwwwww

37 :
>>36さま
ご指摘どおりでした。どうもうろ覚えで書いたようです。トホホ。
本編の最終戦力はイデオン・ガンバスター・ディストラこみのαナンバーズと結構いい勝負できるくらいが目安ですので、とりあえずこれくらいでないと……。

38 :
あー、アレらがいると戦力大爆発ですしねぇ……つかゲームシステムに拘束されないと戦力バランスがその3機に偏っちゃいますね>αナンバーズ
真ゲッターはあれ以上強くなると火星へ飛んでっちゃうそうですし

39 :
ティエリアとハイパーキャプテンが凄く気になる
SDなのかリアル等身なのかSDのまま巨大なのか
でもってMS扱いのキャプテンにティエリアが乗るのか
それともデータ人間ティエリアの体がキャプテンなのか

40 :
総帥乙です。
ノーヘッドが三千機とか……きっとOO世界のテラオカノフが見たら涙を流して喜ぶに違いない。
後、ゲシュMk−II改はもうMk−IIIを名乗ってもいいんじゃないかな?(アルトから目を逸らしつつ)
後、一夫多妻とか重の妻たちの待つとか言われてるシンは7剣爆発しろ

41 :
>アロンダイト、シシオウブレード、ガーディアンソード、零式斬艦刀、獅子王斬艦刀、参式斬艦刀、斬艦刀の七振りに、
ええと、MSのサイズでこんだけ長物をどっちゃり持たせられるんだろうか、武器を磁石で砂鉄のようにくっつけたみたいな姿しか浮かばないw
ビアン総帥が例によって国民的機神妖怪蒼狸の装備品を参考に開発した四次元鞘を全身に仕込んであるとか?

42 :
>41
そういえばそうだ。なぜか全然気にならなかったw
デスティニーの羽に仕込んでるとか?
でも、この七振がデスティニーの周りをフヨフヨ追尾しるのを想像してしまった。

43 :
この運命にはベクタートラップが搭載してあるんだよ、きっと
実際この世界のDCなら十分実用化にこぎつけてそうだ

44 :
>>43
ベクタートラップが実用化されている=メタトロンがあるなら、当然独立型戦闘支援システムもある訳で……
そう考えると中の人繋がりでディステニーにはADAが搭載されている=プライベートだけでなく、戦闘中もキャッキャウフフ……
でも、江原→ジョージ→小杉なラスボスもオマケに付いて来そうだなw

45 :
アホセルが種死の世界に来たら〜ってのを無性に書いてみたい気がする俺ガイル

46 :
>>45
ならばその衝動に任せてしまえ。

47 :
>>46
おk
機体は前半がアシュセイヴァーで、自爆後がソウルゲインで。
で、ラクシズとシャドウミラーが手を組んだりしてな。

48 :
とりあえず第一話を書いてみた。
機動戦士ガンダムSEED DESTINY A
第一話 異邦人
「うう……レモ……ン……」
宇宙空間の中、男は失っていた意識を取り戻す。
「う……ここは……なんだ?残骸だらけ……戦場かよ!?
 俺は……うっ……俺は……誰だ!?どうしてこんな所に……?」
男はどうやら、自分が何処にいるのか、そして自分が何者なのかすら解らない様だ。
「ちっ……落ち着け。まずは情報を整理するんだ。
 俺が乗っているこいつはロボット……人型兵器か?」
男は自分が乗っているものが、所謂ロボットである事を理解する。
目の前のディスプレイには、「ASK-AD02 Ash Saviour」という文字が浮かび上がっていた。
「この『アシュセイヴァー』とやらが機体の名前か。燃料……弾薬……、結構消費してんな。機体自身にも若干の損傷、と」
そして男はモニターから周囲を見回す。
「ということは、周りの残骸は俺がやったものなのか?それとも、俺の仲間……仲間!?」
男は苦悶を顔に浮かべ、頭を抱える。
「くそ……思い出せない。記憶喪失という奴か!?ちっ……シャレにならんぜ。一時的に記憶が混乱しているだけだと思いたいが……」
「チャ−リィよりアルファへ! アンノウンを視認、6時方向!」
「各機、アンノウンを追尾。逃がすなよ」
「了解。しかし、あの機体は何だ?ザフトの新型か?」
「わからん。だが、俺達を見られた以上、撃墜するしかない」
「各機、仕掛けろ!」

49 :
アシュセイヴァーの周囲で爆発が起こる。
地球連合軍のダカー系と思しきMS隊が攻撃を仕掛けてきたのだ。
「なんだ、戦闘!?くそ、状況が把握できねえ!……こっちに来る!」
MSの1機が急接近してくるのが、モニターにはっきりと映し出される。
男は操縦桿を握り、落ち着いた表情となる。
(操作方法は……わかる。何から何まで忘れたわけじゃないらしい……やってみるか)
接近してきたMSが、ビームサーベルを抜刀し、アシュセイヴァーに斬りかかってくる。
「くらえ……うわぁぁーっ!!」
斬られたのはアシュセイヴァーではなく、襲い掛かってきたMSの胴体だった。
「……結構斬れるぜ、こいつは!」
アシュセイヴァーがレーザーブレードを抜き、敵MSの胴体を横薙ぎに一刀両断したのである。
「1機やられただと?ええい、取り囲め!」
「了解!」
敵MS隊の隊長が、アシュセイヴァーを包囲するフォーメーションを取れと命令を下す。
それを受け、各機がアシュセイヴァーを取り囲む動きを取る。
しかし、アシュセイヴァーはそれに合わせるかのように、右手にライフル型の武器を握り1機、また1機とMSを撃墜していく。
「狙いはバッチリなんだな、これが」
あっという間に包囲をしかけたMSは壊滅状態となった。
敵MS隊の隊長はアシュセイヴァーの戦闘力に恐怖を感じた。
だが、恐怖に怯える間もなく新たな脅威の出現という現実が訪れたのである。
「各機、警戒しろ!この宙域へ大型艦が侵入してくる!」
「艦影1、MS3機の出撃を確認!識別信号はザフト!」

50 :
突如この宙域に出現した大型艦、そしてそこから出撃したザフトのMS3機。
「レイ・ザ・バレルよりミネルバへ。全機、出撃完了」
「レイ、アンノウンへコンタクトを試しなさい」
「了解」
白い一つ目のMSのパイロット、レイ・ザ・バレルは母艦からの指令を受け、
アンノウン=未確認の機体へのコンタクトを試みる。
「何だ、あの機体?ザフトの機体には見えないな」
「連合系の機体でも無いみたいね。それどころか、モビルスーツなのかもわからないわね」
その後では、白い二つ目のMSと赤い一つ目のMSのパイロットが、アンノウンを見て呟いていた。
(あの白い二つ目の機体……見たことがある……!?)
白い二つ目のMSを見た男は、どうやらその機体に心当たりがあるようだが、記憶が失われていて
肝心なことは思い出せない。
「アンノウンに告ぐ。こちらはザフトのレイ・ザ・バレルだ。聞こえていたら、所属と姓名を名乗れ」
(どうする……こいつらは敵か味方か……?でも、敵だったら攻撃してきそうなもんだしな)
「おい、黙ってないでなんとか言えよ。アーでもウーでも」
応答の無いアシュセイヴァーのパイロットに対して、白い二つ目のパイロットが苛立ったように通信を出す。
「ああ?」
「ケンカ売ってんのかよ、あんた!」
男の返答に対して、二つ目のパイロットがいきり立つ。
「何でキレてんのよ、シン、落ち着きなさいよ。見た所、損傷しているようだし……無理は言えないでしょ」
そしてそれを赤い一つ目のパイロットの少女がなだめるのであった。
「返答は?」
「大丈夫だ、聞こえている」
「へぇ〜、結構いい男じゃない。さっきのはご愛嬌かしら?」
「繰り返す。所属と姓名を名乗れ」
「名前か……思い出せん。記憶喪失と言う奴らしい……」
「き、記憶喪失!?」
記憶喪失という言葉を聞いて驚くシン。
だがその直後、男は何かを思い出したような表情をした。
「ちょっと……待ってくれ。そうだ……アクセル……アクセル・アルマー」
「それが……あなたの名前?」
「そうらしい……良くわからん。それ以外はさっぱりだ」
男は自分の名前がアクセル・アルマーである事を思い出した。
しかし、それ以外の記憶は蘇ってはこない。

51 :
ザフト所属の宇宙艦・ミネルバのブリッジでは、アシュセイヴァーに関するデータの照会が行われていた。
「アーサー、照会は済みましたか?」
「はっ、機体コードはASK-AD02『アシュセイヴァー』。マイウス市で開発された機体とのことです」
「マイウス市?モビルスーツには見えないわよ」
「ですが、単独行動テストのプランがザフトに提出されています。それによりますと、テストパイロットはアクセル・アルマーとなっています」
「……辻褄は合っているというわけね。念のため、マイウス市に確認を取りなさい」
「了解」
照会が終わった後、ミネルバ艦長タリア・グラディスは出撃させた3機のMSに指令を出す。
「各機へ。その機体はプラントの試作機です。連合軍を掃討した後、保護しなさい」
「了解。シン、ルナマリア。あの機体を保護する。ぬかるなよ」
「ああ」
「まかせといて」
ザフトの3機のMSが、アシュセイヴァーを保護すべく残存している連合MSの掃討を開始する。
(このまま何も思い出せずに死んでたまるか……。実戦の中で、記憶が戻るかもしれないしな。さて……)

52 :
アシュセイヴァーとザフトMS隊が戦闘を終えた。
「索敵範囲内に敵影無し」
ミネルバのオペレーターが、敵機が完全に掃討されたことを確認する。
「警戒態勢に移行。試作機を回収し、危険物処理室で機体の調査を行いなさい」
「了解」
「それから、マイウス市とコンタクトは取れた?」
「はい、既に先方を待たせております」
「では、回線をこちらに回しなさい」
モニター越しに、タリアがマイウス市の開発者にアシュセイヴァーとアクセルについての説明を求める。
「ええ……確かにASKカスタムアシュセイヴァーはマイウス市で開発した機動兵器です」
「何故、機密扱いに?」
「アシュセイヴァーは次期主力量産機のトライアルに提出する予定でして……他に情報が漏れるのを防ぎたかったのです」
「では、テストパイロットのアクセル・アルマーについては?」
「彼の経歴は、お送りした採用時の信用調査資料の通りです。記憶喪失は想定外でしたが」
「了解しました。では、速やかに機体とパイロットのお引取りを」
しかし、ここで開発者は首を横に振る。
「それなのですが……マイウス市議会の意向で、各種データ取得のため、アシュセイヴァーとアクセルを貴艦に同行させて頂けませんか?」
「本艦は現在作戦行動中であり……」
「まあいいではないか、タリア」
タリアの背後から、長い黒髪の男が現れる。
「議長……」
そう、彼こそがプラントの最高評議会議長、ギルバート・デュランダルである。
「セカンドステージ奪回のためにも、今は少しでも戦力が欲しい所だしな」
「しかし、疑問が拭えないような機体とパイロットを本艦で引き取るのは……」
「万一の時には私が責任を取ろう。それで良いかな?」
「……わかりました。では、アシュセイヴァーとアクセル・アルマーは本艦でお預かりします。但し、機密保持と機体の安全保証は出来ませんのでご了承を」
「それは重々承知致しております。では、何卒よろしくお願い致します」
デュランダルのお墨付きが与えられたことにより、ミネルバはアシュセイヴァーとアクセルを同行させる事となったのである。

53 :

ミネルバのブリーフィングルームでは、MS隊のパイロットであるシン・アスカ、レイ・ザ・バレル、ルナマリア・ホークの三人が、
急遽試作機を同行させることが決定したことについて話していた。
「なるほど、私達で面倒を見ろってのね?」
「ああ」
「二人とも、アシュセイヴァーの調査結果聞いたか?」
「いや、まだだ」
「かなりの高性能機らしいんだけど、ジェネレーターや武装等、不明な点が多いんだってさ」
「あれって、トライアル提出用の機体なんでしょ?新技術や企業秘密が満載なのは当たり前じゃない?」
「そんな言葉だけで片付けられはしないよ。どう見たってあれ、MSとは似てるようで違うみたいだし、本当にプラントの機体なのかどうか……」
「どうも!」
ブリーフィングルームに、突然赤毛の20歳前後の男が入ってきた。
「……って、お邪魔だったかな?」
「!」
突然の来客に驚くシン。
それと対称的に、レイは冷静に問いかける。
「随分、気楽なものだな。自分が何者なのか解らなくて、不安は無いのか?」
「ん〜、まぁしょうがないっしょ。不安になったからって記憶が戻るわけじゃないし……名前がわかっただけでももうけもんさ」
「おたく、前向きねぇ」
ルナマリアが呆れたような顔をする。
「そういうこと。もちろん、戻るに越したことは無いけど」
「名前以外、何も思い出せないの?」
「う〜ん……君のような美人がキスしてくれたら思い出すかもな」
アクセルはまるでイケメンのような顔をしてこう呟いた。
「え?もしかして口説きのつもり!?」
目を丸くするルナマリア。
「なんてな、冗談だ。自分が何者なのか解らないのは本当だけどね」
「もう、笑えないわよ」
「ではシン、彼に艦を案内してやってくれ」
「な、何で俺が!?」
「一つの社会勉強だと思って、やれ」
「……反応があっただと!?」
「ええ、アーモリーワンの近くの宙域でね。工作員から報告があったわ」
「こちらへ来るタイミングと転送ポイントがかなりずれているが、大丈夫なのか?」
「どうかしら。転移時のエネルギー数値が、予想されていた限界値を遥かに超えている……」
「……失敗ならば、すぐに次の手を打たねばならん」
「そう慌てないで。機体の転移そのものは成功しているし、根回しも上手くいったみたい。ただ……」
「ただ?」
「パイロットの生命に異常はないかもしれないけど、精神に障害が出る可能性があるって所ね」
「奴ならば、生きていさえすれば問題あるまい……」
「あら、珍しい。あなたが人を信頼するなんてね」
「……人間を真似た人形などよりはマシ……ということだ」
「あの娘は……あれはあれで使えるんだけど。任務遂行の確実性は彼より上よ」
「……奴がしくじったら、考えればいい」
(……アクセル……無事でね)
第一話 完

54 :
投下おつおつ
この流れだとアホセルが「がんばってねえん」をレイとルナにやるわけだがどんなシチュだww

55 :
乙、GJはもっと様子見てからにするけど
で、何とお呼びすれば良いのかな、新人殿

56 :
>>55
とりあえず、「アホセルの人」とでも呼んでください。
今後の展開としては、ユニウスセブン落下シーンを『A』の宇宙ルートの
コロニー落としに見立てて描こうと思います。
その途中にアホセルとシンの絡みも描いておかないといけませんが。

57 :


58 :
誤送信スマソ
新作者ktkr続きが楽しみだ。
そういえばまとめに総帥と11氏の作品って全部フォローされてる?

59 :
アクセルの人乙
アニメ化でまた人が増えてくれれば嬉しい
そういう意味では11氏もいい時に帰ってきてくれた
後はスムーズにOG3が出てくれれば

60 :
アホセルかぁ・・・
向こう側は一体どんな世界なのか、向こうもCEなのか
ところで、三輪長官の傍にいたテーンとやらが
W10だったらと想像したらシュールで噴出したが
このお話に出てくるんですかね、ナンバーズ
続きを楽しみに待ってます

61 :
皆様どうもありがとうございます。
現在第二話執筆中です。
一応ゲシュペンストとかも出していく予定ではあります。
しかしよく考えると、ラクシズも戦うことでしか物事を解決できない連中だから
シャドウミラーとは共通しているんじゃないかと思ったり。

62 :
戦争を止める為の戦いを繰り返すラクシズと戦争を続けるための戦いを繰り返すシャドウミラーですからなぁ。
思想は真逆でもやってることは大差ないというw

63 :
00ACE参戦オメ

64 :
ほす

65 :
>>62
あの馬鹿代表の信望者の台詞を借りれば
「でもそれって根本的な解決になってないですよね」だな
正直、わざとやってるんじゃないかというか
戦いでしか解決できない、裏返すと戦うことで解決できると言う思い込みは問題だな
もう、アレだ
別スレに相応しい方向になりそうだが、伝説の巨神でも呼ぼう
綺麗サッパリにしてもらおう
もしくは宇宙の静寂と平和を守るコンピュータードール

66 :
あとはガリアン宇宙のイレーサーとか

67 :
ゲッターは欠かせないな。

68 :
宇宙正義の使者ことウルトラマンジャスティスに断罪してもらおうぜ
皮肉にも負債が「こっちは天下のガンダムだぞ」とバカにしたウルトラマンが
一番嫌いそうな世界だしなCE

69 :
保守

70 :
保守だぁね

71 :
age

72 :
ゲシュペンストキックってやっぱり音声入力システムだったのか
壁際の人のコールゲシュペンストに燃えて、「SHOUT NOW」に吹いた

73 :
Lはシンとキラが協力してデストロイとめるらしいね

74 :
今回は確かにクロスオーバーしっかりしてるし
随所で見かけた良作評価も信頼できそうだが
カガリ誘拐とかは相変わらずなのな
ゼロシステムでコレを予想した上で炊きつけたのかヒイロ・・・

75 :
一応あの世界の設定だとWのガンダムはちょっとした英雄みたいなもんだし
その英雄に守りたいものは守れ、お前の感情に従って行動しろ、それが一番正しい
って言われたら行動も起こすさ
その後しっかり虎とカガリに叱られてたけど

76 :
今回は珍しくTVの話にも触れてるな
カーンズなんて名前久しぶりに見た気がする

77 :
ビッチの裏切りは種死を再現する以上必要なものだと思ってたけど
実はそうじゃなかったんだな

78 :
むしろあのハゲさえ常識的に動けば
おのずと他もマトモに動くんじゃないかと最近思えてきて・・・
今回はキラがステラ救出に協力ということで
シンと決定的なわだかまりが出来るのを避けるどころか肯定的なほうにもっていったり
うまいこと運んでるね
アスカ家のアレは・・・オルガがジャンプしてたんだということにしておこう

79 :
それを抜きにしても結局はオーブっつかアスハの避難体制と防衛策がずさんだったから
アスカ家の悲劇が起ったわけだしなぁ…
盟主王からご丁寧に攻撃開始時間を伝えられてるくせにあんなギリギリでの避難になるとかありえんぞ

80 :
>>78
ハゲっつーより、今回の影の功労者はディアッカ・Lスマンだからな
奴がいなければシンとキラの和解は有り得なかった
つーか、その点については凸は一つも役に立たなくて空気だし

81 :
凸って何も考えてないからな、そんな気遣いと無縁だろう
悩んでそうな時は頭が動いてない時だし

82 :
スパロボLクリアしました! なのでディバ種で頑張ってラスボスを出すことにしました! あれは使える、とピンと来ましたので。あとアンドロイド勢が可愛かった。
Lやったりよそ様で獣カーンもの書いて浮気したりしていましたが、今週の土日に本編の続きを投下できるよう努力します。よろしくお願い致します。

83 :
総帥来た! これで勝つる!!
例え遅れても待ってますから、慌てずご自分のペースで作品を仕上げてください。

84 :
まったく総帥はとんでもねえスパロボ馬鹿だ(褒め言葉)
Lはやってないけど、総帥の手腕に期待させてもらいます

85 :
ディバイン SEED DESTINY 第四十八話 四神覚醒我ラニ敵ナシ
 鋼の翼を広げて舞い降りたヴァルク・バアルを前に、四体の超機人はわずかな怯えを含む猛烈な闘志を発していた。
 古代中国の歴史が存在を物語る神獣を模した超機人達は、その全身から降り注ぐ陽光さえも燃やす苛烈な炎を発しているかのよう。
 常人ならモニター越しの光景であっても、肌を打つ剛体の質量を持った気迫を受けて、全身を硬直させてしまうだろう。
 ならば、龍王機、虎王機、雀王機、武王機の敵意の集中を針の筵の上に座らされたように浴びせられてなお、余裕と自信が形作る嘲笑を浮かべるこの男は如何に形容するべきであろうか。
「ただ唸るだけなら誰にもできる。人界の守護者を自負するならばこのおれに敵と認められる位の気概と力を示すがいい」
 ヴァルク・バアルの右手に携えたショット・シザーを、武将が握る軍配のごとく掲げると、超機人の周囲をメギロート、ゼカリア、エスリムの三機種が取り囲む。
 十重二十重に円陣を組み、威容を誇る超機人達を前にしても無人機ゆえになんら恐れる様子もためらう動作も見せず、ずん、と重く響く足音を立てて歩を進める。
「人形どもを蹴散らし、気力を貯め込み、戦意を高め、血を滾らせろ。震える体を抑え込み精神を振るいたたせろ。萎縮しきった雑魚を踏み潰した所で、なんの感慨もない」
 一糸乱れる事もなく、ゼカリアとエスリムはそれぞれライフルとスピアの切っ先を突き出し、メギロートは甲虫のモノに酷似した翼を広げて重力の鎖を引きちぎり飛翔する。
 大地をゼカリアとエスリムが、空をメギロートが埋め尽くしたことで超機人達に逃げる場所はない。
 ヴァルク・バアルとそこに宿るディス・レヴ、さらにその両方を完璧に把握して使いこなすキャリコの放つ、無色不可視の絶望の重圧。
 物理的にも精神的にも超機人達とその主たちが諦めの境地に身を置いていてもなんらおかしくはなかった。
 そしてキャリコは、ひどく愉快なものを見たとばかりに、嘲笑の中に極僅かながら愉快気な成分を混入する。
「ほう?」
 ライフルを構えていたゼカリア数機が一斉に爆発し、またダカル・スピアを構えて突撃を仕掛けんとしていたエスリムが、鋭い爪牙によって無惨なまでに引き裂かれ、噛み砕かれ、踏み潰されたたからだ。
 人間の可聴領域をはるかに超えた超振動波と機動兵器の装甲も容易く融解させる超高熱の火炎によって、十機近いゼカリアとエスリムを破壊したのは雀王機と龍王機。
 猛々しい咆哮と山そのものが崩れたかのような迫力で襲い掛かり、装甲をものともしない爪と牙、そして超重量による体当たりで破砕せしめたのは武王機と虎王機。
 気性荒く誇り高き白虎を駆るブリットは、虎王機と共にキャリコへと吠えた。
「お前はいったい何様のつもりだ! これだけの事をして、なにが目的だ」
 ブリットに続いたのは彼同様に強い正義感と怒りを燃料にして、激しく感情を燃焼させているリオだ。
大山のごとく重厚な威圧と共にヴァルク・バアルを睨む武王機も、主と変わらぬ意志を抱いているのは明白であった。
「これ以上の非道は私達が許さない!」
 自身の機体を激しく旋回させて巨大なドリルのごとく突貫する虎王機に合わせ、リオの乗る武王機も手足を甲羅の中にしまいこみ、超機人達の中でも一際目立つ巨体に横回転を加えて突撃する。
 数世紀前の怪獣映画で主役を張っていた亀の大怪獣を彷彿とさせる武王機の巨体に対し、キャリコは焦る調子を一欠けらも見せることなく、下方から上方への縦一文字を描くショット・シザーの一振りで、呆気なく弾き飛ばす。
 陸上艦艇なら駆逐艦どころか戦艦級でも一撃で船体をくの字にへし折られるだろう、武王機の超重量を最大限に生かした攻撃を、これほど容易く弾くヴァルク・バアル。
 パーソナルトルーパーの系統に近い機体デザインと20m級のサイズを考慮すれば、これは同サイズのスーパーロボットクラスをも上回る馬力を誇っているのは間違いない。

86 :
「きゃあああっ!!」
「そんな悲鳴を挙げるとは、幾ら強がろうが所詮女だな」
 嘲笑というよりは淡々と事実を語る口調のキャリコに、武王機とわずかにタイミングをずらした虎王機が横合いから襲い掛かる。
 いかに機体性能を劇的に向上させたヴァルク・バアルといえども、振り上げたショット・シザーを振り下ろすのが間に合うはずもない絶妙のタイミングであった。
 ごく短期間の付き合いであるブリットとリオが行ったと考えれば、なかなか見事なタイミングでの連携といえよう。
 武王機よりも重量では劣るが激しい旋回運動と高速を活かしての一撃の攻撃力は、けして劣るものではない。
 タイミングとしては悪くないブリットと虎王機の不意を突いた一撃であったが、であるがゆえに、そのタイミングを計る事は今のキャリコにはそう難しい事ではなかった。
 ヴァルク・バアルの左側から渦を巻いて襲い来る虎王機を、あろうことかヴァルク・バアルはその左手で、牙をむき出しにして大顎を開く虎王機の顔面を掴み止め、わずかに機体を後退させるだけで、猛る白虎の突撃を押し止めて見せたのだ。
「な、なんてパワーなんだ、こいつ!?」
「チャージ(突撃)などさせん」
 どこか楽しげにつぶやくキャリコの唇が冷たい三日月の形に歪むのと、虎王機の頭が高速で大地に叩きつけられ、激突点を中心に巨大な蜘蛛の巣状の罅が大地に広がったのはほぼ同時であった。
 特機に分類されるであろう超機人達の重装甲なればこそ粉砕は免れたが、これがMSやPTの類であったら、原形を保てぬほど粉々に砕けていたのは間違いない。
「ぐああああっ」
「頑丈さだけか、取り柄は?」
 大地に叩きつけられたダメージがどれほどのものであったか、あるいは人間で言う脳しんとうを起こしたのか、虎王機の意識は稲穂の様に呆気なく刈り取られて。巨大な白虎は身じろぎ一つする様子もない。
 更に一撃を加えれば虎王機の機能に大打撃を与える事が出来ただろうが、キャリコはヴァルク・バアルにディフレクトフィールドを展開させた。
 ヴァルク・バアルをめがけて襲い掛かったのは、武王機と虎王機それぞれの対となる超機人、雀王機と龍王機の放った超音波の弾丸と超高熱の火炎だ。
 並みの機動兵器ならば十機くらいは簡単に破壊して見せる同時攻撃に、流石に万能の防御壁たるディフレクトフィールドも抗しえたのはものの数秒。
 ガラス片が砕かれるのとよく似た崩壊現象を起こして、ヴァルク・バアルを守護していたエネルギー障壁が砕け散り、紅蓮の焔と不可視の超音波が容赦なく黒と金で飾った魔人へと襲い掛かる。
 そのディフレクトフィールドの崩壊から着弾までのわずかもないと見える隙間を、金色を散らばせた漆黒の風――ヴァルク・バアルが駆け抜ける。
 防御壁の無い状況で受ければヴァルク・バアルも無視できないダメージを負う攻撃をまるで恐れる素振りもなく、ウィング・バインダー内部に搭載したテスラ・ドライヴのスロットルを一気に引き上げる。
 地を舐める様な軌道で飛翔していたヴァルク・バアルが、鋭く角度を変えて空に翼を広げていた雀王機と龍王機へと襲い掛かった。
 友人機としては有りえないといってよい鋭角的な動きは、テスラ・ドライブの恩恵があるとはいえ搭乗者の臓器や骨格をスープの様に変えてもおかしくないものだったが、キャリコにはまるで堪えた様子はない。
 第三者からすれば、天空の支配者たるに相応しい悠然たる威容を誇る二体の超機人へと挑む様は、太陽を目指して地に墜ちたイカロスのごとく、次の瞬間には叩き伏せられているものと思えたことだろう。
 超機人達に比して標準的な人型機動兵器に留まる大きさのヴァルク・バアルでは、あまりに無謀な行いとしか見えないものだからだ。
 しかし、この戦場に置いてもっとも残虐なる支配者足り得る力と、言い知れぬ迫力と重圧を纏っているのは、紛れもなくこのヴァルク・バアルとそのパイロットであるキャリコ・マクレディに他ならない。
 古より人類を守り続けてきた超機人こそ強力であるが、まだパイロットとしての経験がまるでないクスハとリョウトは、リオとブリットを一蹴したキャリコがこちらに迫りくる恐怖に飲まれて、数瞬もの間反応を遅らせた。
 装甲を透過してコックピットの中にまで放射されているかのような、ヴァルク・バアルの放つ目に見えない圧倒的な凶の気配。
 霊的な面を存在の根幹に備える超機人の操者となったことで、感覚を鋭敏化されたクスハ達にとっては、ディス・レヴを搭載したヴァルク・バアルは初陣で戦うにはパイロットとしての力量差と彼我の戦力差以上に不運な相手と言えた。

87 :
 クスハとリョウトが認識したのは、自分達の身体を横殴りに襲い掛かってきた強烈なGであった。
 わずかな虚を突かれ、ヴァルク・バアルが手にしたショット・シザーによって雀王機と龍王機、それぞれの翼の根元に深い斬痕が刻み込まれている。
――そんな、まるで
――見えなかった!?
 リョウトとクスハが異口同音・異心同考に陥らざるを得ない、視認不可能なヴァルク・バアルの圧倒的な速度に反応する事が出来るとするなら、まずはSEEDを開花させたキラ・ヤマトやアスラン・ザラ。
 同じくSEED保持者でパイロットとしても生身の人間としても人外の化け物になったシン・アスカ、将来的に潜在能力を開花させた刹那・F・セイエイ、サイコドライバーとしての覚醒を迎えたリュウセイ・ダテらといったごく一部だけだろう。
 咽喉の奥から零れる苦痛の声を堪えて超機人達が、全身に走る痛みに襲われながらそれでもなお瞳に戦意の炎を燃やして、翼を広げてやや上空で滞空しているヴァルク・バアルを睨みあげる。
 龍王機と雀王機は決して鈍重な機体ではない。天空の支配者たるに相応しい威厳溢れるその姿に相応しく、大型MA並みの巨体でありながらその運動性能は、生物的な外見に見合った多様性と優秀さを誇る。
 加速性能や最高速度では現行の戦闘機を上回り、運動性能では現実の鳥獣以上と、世界中の機動兵器に関係している技術者たちを発狂させかねないものだ。
 であるからこそこれほどの性能を誇る超機人達を、操者が機動兵器戦闘に置いて素人とはいえ、こうも簡単に一蹴してのけるヴァルク・バアルとキャリコこそが異常極まりない存在なのである。
 自分の足元で這い蹲る四体の超機人達を傲然と見下ろすキャリコの口からは、ひどく冷たい笑い声が零れ始める。
 もし地獄に落ちた事のある人間がこの場に居たなら、地獄で罪人を責め苛める獄卒が挙げる笑い声を想起したかもしれない。
 それほどにキャリコの心には他者に恐怖を抱かせる何かが満ちているのだと分かる笑い声であった。
「ふははははは、人界の守護者と大言を吐いてこれか。開花しなければどんな才能も無駄でしかない。五行器と貴様らの脳髄だけあれば十分。貴様らの無用な肉体から摘出したのち永久機関も人工魂魄も強念の力も“私”がその真価を引きだしてやろう」
 貴重な実験動物を目の前にした科学者の暗く残酷な愉悦。
 純粋な興味と探求心に突き動かされ、それを抑える理性が存在しないためにどこまでその手を血に染める事が出来る、この上なく罪深い人種の瞳をキャリコはしていた。
 そしてそれは決してキャリコ・マクレディの浮かべる笑みではなかった。
 単なる実験動物程度にしか見られず、敵とさえ認識されていない事を理解した超機人達は、それぞれの矜持を傷つけられた怒りに震え、動力炉たる五行器を激しく回転させ、損傷を厭わず打ちすえられた巨躯を起こす。
 超機人達の衰えぬ闘志に操者であるブリットやリョウト達も強大に過ぎ、凶悪に過ぎる敵を前にして怯え竦む心をなんとか鼓舞し、ある種の宗教的な祭壇を思わせるコックピットの中で、自分達を嘲笑するキャリコの悪意へ立ち向かおうとしていた。
 根性、気合い、闘志、不屈――諦めに屈せぬ彼らを支えるのはそういった脆くも儚く、しかし爆発的な力を生む精神的な力である。
だがそれもさんざん見飽きたと言わんばかりにキャリコはショット・シザーの切っ先を再び、超機人達へと向ける。
人間ならではの弱者を甚振る残虐な遊びにも飽きが来たのだろう。キャリコは戦いを、や、彼にとっては戦いというには及ばない遊びを終わらせる事に決めたようであった。
 処刑宣告を告げるキャリコの言葉は、しかし、彼の唇から零れる事はなかった。代わりに戦場に響き渡ったのは――
「てめえがえええ!!!!」
 自らを縛る鎖を引きちぎり、獲物の喉笛に食らいつく獰猛な獣を思わせる蛮声と、それと共にヴァルク・バアルめがけて降り注ぐ無数のミサイルと連射される超高初徹甲弾。
 一見乱雑に見えるそれらが、あらゆる方角に逃れても着弾を免れ得ぬ計算され尽くした包囲網を形成している事に咄嗟に気づけるのは、一流以上の実力を持つベテランかエースパイロットくらいのものだ。
 放たれた銃弾やミサイルの源を辿った先には、太陽を背にしたあらゆる箇所が奇妙に痩せ細った有翼の人影を見つける事が出来ただろう。
 先日、軍本部から頂武から回されてきた、東アジア共和国軍が誇る最新の機動兵器ミロンガが、その人影の正体であった。
頂武所属のMSパイロットである超兵ハレルヤ・ハプティズムがテストパイロットを務める、多少いわくつきの機体である。

88 :
 頂武人員の脱出路確保のために、空間転移による奇襲を図ってきたゼカリアやエスリム、メギロート部隊の掃討に奔走していたはずのハレルヤ・ハプティズムの駆るミロンガは、ちょうどヴァルク・バアルを足元に見下ろす位置にあった。
 敵機掃討を終え、基地の地下から出現した超機人達の苦戦を目にしたハレルヤが、以前決着を着けられなかったヴァルク・バアルと、再び相まみえる為に駆け付けたのである。
 そして、ハレルヤはミロンガの機動兵器としてほとんど最低限の頑強性だけを備えた華奢な右腕に構えたストレイトマシンガンと、両肘をはじめ機体各所に内蔵した小型ミサイルを超機人に意識を集中させていたヴァルク・バアルに雲霞のごとく見舞った。
 おそらくはハレルヤに超機人とそのパイロット達を助けるという意図があったとは思い難いが、結果的には少なくとも超機人達の寿命をわずかなりとも先延ばしにする事は出来たと言えるだろう。
 ひとつひとつの威力はごく小さいものとは言え数を伴って降り注ぐミロンガの火器を前にして、キャリコが抱いたのはわずかな苛立ちであった。
 夕暮れの路地で行く先に渦を巻く雲霞の群れを前にした人間の反応、と言えばよいか。
「稚拙な技術が生み出した欠陥品か」
 機動性を重視したがために装甲を犠牲にし、パイロットに多大な負荷を強いし、大した火器を運用する事も出来ないミロンガと、東アジア共和国が独自に生み出した強化人間であるハレルヤ双方への、淡々とした侮蔑の言葉である。
 超機人達に対して振り下ろすはずだったショット・シザーに下弦の月を描かせて、その刃先からエネルギーの刃を放出し、キャリコは自分に襲い掛かる銃弾とミサイルの事ごとくを原子レベルにまで分解させ、崩壊させる。
「手品師か、てめえ」
 Eフィールドや重力障壁での防御はともかく、かような方法での攻撃回避は想定していなかったのか、ハレルヤの寧猛な瞳には警戒の色がうっすらと滲んでいた。
「戦闘用AIの基幹データとするにも、貴様はムラが有り過ぎる。私には不要だ」
 超機人達がいまだダメージからの回復に手間取っている事を確認し、キャリコは第一に落とす対象をハレルヤとミロンガへと移す。
 超機人の有する再生能力を考慮すれば、二分か三分ほどで決着を着けなければまた面倒を見る事となるだろう。
 それを厭う程度の人間的な感性は、まだキャリコの中にも残っていた。
「上等!」
 ミロンガとヴァルク・バアルの間に通信回線が開かれているわけではなかったが、なんとなくヴァルク・バアルのパイロットが不快感を抱いている事を察し、ハレルヤは警戒の成分を残しつつも凶悪な形に唇を吊り上げて挑みかかる。
 最低限の装甲しか持たないため積載量が多いとは言えないミロンガであるが、火器の弾薬の小型高性能化に成功したことで、それなりの数を内蔵することに成功している。
 東アジア共和国が開発に成功した新型テスラ・ドライヴの性能を最大限に発揮し、ミロンガの放出する光の粒子が、空中に美しい軌跡を幾重にも織り重ねて描き、多量のミサイルを発射しながらヴァルク・バアルとの距離を見る間に近付けてゆく。
 NJやミノフスキー粒子、GN粒子の登場によって電波障害の度合いが悲惨を極めた昨今、旧来の誘導兵器の類は完全に絶息したも同然である。
 DCで採用されたプラーナ感知式の様な魔術的な側面を備えた特殊なタイプならまだしも、ミロンガに搭載されているミサイルは直線の軌道を描くものと予めプログラミングした軌道を描くものの二種である。
 キャリコは直線と曲線を描きながら迫るミサイル群に対し、曲線型のミサイルはハッキングによってプログラムを即座に書き換えて、ミロンガへと目標を変えさせる。
 直線の軌道を描くミサイルに関しては、回避機動を取って悠々と左右に動くだけで事足りる。わざわざ迎撃のために弾薬やエネルギーを無駄に消耗する事もないという判断であった。

89 :
 重量など欠片もないのかと錯覚しそうなヴァルク・バアルの動きを正確に追い続け、ハレルヤはストレイトマシンガンの銃口を、ぴたりとヴァルク・バアルに張り付けた様に追従させる。
 ミロンガの性能にさして目を魅かれる所もなかったキャリコであったが、超機人達に多少時間を掛け過ぎた様で、ヴァルク・バアルのセンサーがミロンガ以外の機体からの砲撃を感知して警告を発する。
 ハレルヤと同じく基地員の脱出のために奮闘を重ねていたはずのアレルヤのティエレンタオツー、ピーマ・ソーリスのタオツー、マリー・パーファシーのタオツー、セルゲイ・スミルノフのティエレン高機動型指揮官機の四機による砲撃だ。
 部隊員の脱出をセルゲイの副官であるミン中尉に任せて、クスハ達の救出に駆けつけたのである。
 各ティエレンが装備したビームライフルの照準は、それぞれのパイロットの高い技量と相まって、ヴァルク・バアルの至近へと着弾を重ねてゆく。
「ミズハ少尉、ヒカワ少尉、メイロン少尉、ラックフィールド少尉、全員無事か?」
 東アジア共和国有数の技量を誇る超兵であるアレルヤ達の集中砲火を浴びても、至近弾こそあれ被弾の無いヴァルク・バアルに、内心脅威の念を抱きながらセルゲイは素早く超機人のパイロット達の安否を問う。
「こ、こちらブリット、虎王機も自分もまだ戦えます」
「武王機もまだ動けます。この程度なら!」
 ブリットとリオがセルゲイに返答するのにわずかに遅れてクスハとリョウトも、機体共々無事であることを告げる。
 超機人達には外から見た限りでは大したダメージは見られなかったが、パイロットの方も問題はないようだ。
 セルゲイは自身もビームライフルの引き金を引き続けながら、ヴァルク・バアルの動向に要警戒の眼差しを向ける。
 超兵専用にチューンされている三機のタオツーが脳量子波を用いた、迅速な連携によって絶え間ない光の矢を放ち続け、その隙間を縫ったハレルヤがミロンガの機動性を活かしたヒットアンドアウェイを繰り返す。
 常に全方向に対して警戒の意識網を広げるキャリコは、常人どころか並大抵のエースではものの十数秒ほどで撃墜されてしかるべき超兵達の連携攻撃の中心に居ながら、焦る様子も見せずに機械的に捌き続けていた。
「脳量子波か。意識拡張を果たしたニュータイプや強化人間とはまた異なる方向へのアプローチ……。思ったよりも優秀だったかもしれんな」
 鞭の様にビームの刃をしならせて大上段からヴァルク・バアルの左頸部をめがけて振り下ろしてきたミロンガのビームサーベルを、ヴァルク・バアルはその発信基部を内蔵した柄を握るミロンガの右手を掴んで止めて見せる。
「多少の欠陥に目を瞑っても運用するだけの価値はあると、訂正しておこう。しかし、それでもまだ力が足りんよ。貴様らではな」
 紙をくしゃりと握り潰すのとそう変わらぬ要領で、ヴァルク・バアルに掴み取られたミロンガの右手は、ビームサーベルの柄ごと握り潰されて外装と内装をまとめて砕かれる。
 脳量子波の感知したキャリコの悪意に加えて生物的な直感に突き動かされて、ハレルヤはミロンガに残るミサイルをありったけ吐きだしてその場を離脱する。
 一刻でも一瞬でもはやくヴァルク・バアルから遠ざからなければならない。理屈を超越した予感が、ハレルヤの身体を支配していた。
「こいつ!?」
「ハレルヤ!」
 半身の危機に真っ先に反応したのはアレルヤであった。ミロンガの右手を握りつぶしたヴァルク・バアルのツイン・アイが凶暴に輝くのを見た瞬間に、その頭部めがけて電光石火の速さで照準を合わせてトリガーを引き絞る。

90 :
 いかに人知を超越した力を得たキャリコとはいえども、流石に光の速さには反応しきれず、放たれたビームは見事にヴァルク・バアルの頭部を貫く。
 だがアレルヤの瞳は強敵を倒した事への安どではなく、不理解による驚愕に開かれていた。
 頭部をビームによって貫かれたはずのヴァルク・バアルは水に溶いた絵の具の様にその姿を薄めるや、陽炎の様に消え去る。
「なに……ぐああ!?」
 驚愕の言葉は背後から襲ってきた衝撃によって遮られ、アレルヤは痛みに眉を顰め、自分が背後に現れたヴァルク・バアルによって一撃を与えられた事を理解する。
「センサーには実体としか映らなかったのに!」
 さしずめ質量をもった分身といった所だろうか。あるいはタオツーをハッキングしてセンサー類に欺瞞を施したのかもしれない。
 重厚なタオツーの背部装甲が深く抉られて、一瞬、アレルヤの制御の手を離れる。堅牢さに関しては随一を誇るティエレン系列のタオツーは、それでもまだ戦闘能力を維持していたが、一撃を受けた隙を逃すほどキャリコが温い相手であるはずもない。
「そう簡単に行くと思うなあ!」
「アレルヤはやらせない」
 止めの一撃を加えるべくショット・シザーを振り上げるヴァルク・バアルを左右に挟み、マリーの赤いタオツーとソーマのピンクのタオツーがビームサーベルを挟みの刃のように交差させて振るう。
 回避する間もないはずの挟撃であったが、今度もまたヴァルク・バアルの前には通じず防がれる結果に繋がる。
 マリーとソーマのタオツーそれぞれをヴァルク・バアルの左拳と右足が容赦なく叩き、大きく弾き飛ばしたのである。
 あまりに早すぎる挙動。既に斬撃のモーションに入っていたタオツーより後に動き出したにもかかわらず、先に一撃を見舞う異常な速さ。
 タオツーとヴァルク・バアルに用いられている機動兵器開発技術の差は、決して小さくはないが、それを考慮してもあまりに違いすぎる。
 挟撃こそ失敗に終わったが、アレルヤがその場から離脱するだけの時間を作る事には成功し、アレルヤ達のタオツーはヴァルク・バアルから距離を置きながらビームライフルを連射して、ヴァルク・バアルの足を止める。
 右拳を失ったミロンガもセルゲイのティエレンもただ傍観するだけには終わらず、絶妙なタイミングを狙って援護のビームやミサイルを放っている。
 地球人類全体を見回しても上から数えた方が速い面々の、息の合った連携攻撃はあらゆるものを洗い流す奔流の様に激しく絶え間なかったが、どれだけ攻撃を重ねてもヴァルク・バアルに有効打を与えるまでには至らない。
 救援に現れたセルゲイ達とキャリコの戦いを目に映しながら、なんとか体勢を整え直していた超機人とそのパイロット達は、いまのままの自分達ではあの漆黒の機体に勝てないという無力感と事実に臍を噛む思いであった。
 超機人達の秘める力を引き出す事が出来ず、むざむざと地を舐め去られて仲間達が紅蓮の炎に飲まれる様や、苦戦しているのをただ指を咥えて見ている自分達の不甲斐なさが、クスハやリオ達の心を苛む。
 自分の無力を呪うリョウト達の脳裏に、超機人達の声が響く。

91 :
――汝ら、力を欲するや? 力を欲するならば念じるべし。
――されど留意せよ。我らは人界の守護神。
――我らが守護せしは人界そのもの。道を誤りし時、汝らが我らの力を得る事叶わじ。
――心せよ。強き力にはそれゆえに重き枷と使命がある事を。
 そして四体の超機人達は唱和し、クスハに、ブリットに、リョウトに、リオに問いかける。
――人界を守る意思、強き力を手にし、世界を背負う覚悟あるならば唱えよ。
 強い意志を求める超機人達の声は、クスハ達に迷う事を許さぬ威圧感を伴っていた。一時の感情に流されて、安易に手にするには超機人達の力は強大に過ぎる。
 使い方によっては戦局をも左右するほどの強大な力。それを手にする機会を与えられてクスハ達は一瞬、キャリコの存在を忘れた。
 ごくり、と誰かが生唾を飲む音がひと際大きく響いた。
「私は、戦います」
 一番最初に答えたのは、リオでもリョウトでもブリットもなく龍王機のパイロットであるクスハだった。
 普段はおとなしく内気な所もある少女であったが、芯の強さは折り紙つきで一度決めた事は頑なに貫き通す面もある。
 意思を表すのは最後になるかと思われていたクスハが真っ先に覚悟を示した事に、他の三人達は大なり小なり驚きの味を噛み締めていた。その間にもクスハの言葉は続く。
「もう目の前で知っている人たちが死んでゆくのをただ見ているだけなんて嫌なの。もし私に誰かを助ける力を手に入れる事が出来るのなら、私はそれを望みます。どんなに強い力も誰かを守るために使って見せます!」
 凛と告げるクスハの言葉を受けて、超機人達の意識に暖かなものが灯った。
 恐怖はあろう。大きな力を手にする事への恐怖。それを振るい誰かを守るために別の誰かと戦い傷つける事への恐怖。傷つけられる事への恐怖。戦うこそそれ自体への恐怖。
 どれだけ正義と大義を掲げる言葉を並べ立てて、理性を納得させた所で本能的に根差す死と闘争への忌避感。
 それらを確かに胸の中に抱きながらもなお、力を手にし戦う事を宣言するクスハの強さを、超機人達は肯定しているのだ。
 クスハの言葉を受けてリョウトやブリット達も吹っ切れた様に笑みを浮かべて、同じく超機人という強すぎる力を手にする事を受け入れる言葉を口にした。
「クスハにばかり重荷を背負わせるわけにはゆかないな。虎王機、おれもお前達と共に戦う! おれもお前達も一人じゃない。道を誤まればそれを正してくれる仲間が居る。それはお前達も同じだろう。おれは、おれ達は力に振り回れたりはしない!」
「私もよ、武王機。私の信じる正義の為に、人々を苦しめる悪を断つための力を私に貸してちょうだい。貴方達が人界を守る守護神だというのなら、私は人々を苦しめる悪を断つ力となる」
「行こう、雀王機。世界を守ることを使命とする君がぼくを選んでくれたというのなら、ぼくはその期待に応えたい。戦いなんてない方がいいけれど、それでも戦う力が必要な時もある。いまがその時なんだ」
――是。汝らの覚悟しかと見届けたり。汝らに我らの力をいま与えん。我らと汝らはこれより共に在り、共に生き、共に戦い、共に死せん。汝らの志高く清くある限り我らは、汝らの友となり、刃となり、盾となる。唱えよ。

92 :
――必神炎帝。
「必神炎帝」
――天魔降伏。
「天魔降伏」
――龍虎合体。
「龍虎合体」
――雀武合体。
「雀武合体」
 それは誓いの聖句。
 人が生み出した魂を持つ造り物の機神と正しき心持つ人とが交わす契約。
 魂と魂とが交感し認め合い信じあう事によってのみ成立する盟約。
 四体の超機人の足元に巨大な光の陣形が浮かび上がり、続いて虚空に乱舞する無数の呪符と光といずこからともなく出現して、超機人の巨体を球形に包み込む。
 光と呪符とが作り上げた光の卵殻に包まれた超機人達の姿に、激化の一途を辿っていた戦いの手を休めて、キャリコとセルゲイ達が言い知れぬ力の波動を放つ超機人達の姿をモニターに映し、目を奪われる。
 セルゲイ達は未知の現象を起こす超機人とそのパイロット達の安否を案じ、キャリコはようやく本領を発揮せんとする超機人達に、三日月の様に鋭く冷たい笑みを浮かべる。
 超機人達を中心に清浄な気配とでも言うべきものが溢れだし、ディス・レヴとキャリコの悪意によって穢されていた世界が、瞬く間に本来の清廉さを取り戻してゆく。
 戦闘によって生じた黒煙や異臭は消えなかったが、それでも無数の死の集合体の発する名状しがたい負の気配は払われて、在るべき正の世界へと戻る。
 そして光の卵殻は無数の光輝く破片へと砕け散り、秘めていた人造の機神達の姿を露わにする。
 蒼き鱗を纏い刃のごとく鋭い羽を背から伸ばし、胸には猛る白き虎を抱く東方の守護龍神。
「龍虎王!!」
 天を舞う陽の色に染まった翼を広げ、この世で最も堅固な甲羅を纏う亀と蛇を胸に抱いた南方の守護鳥神。
「雀武王!!」
 それまでの幻想の霊獣を模した姿から、対となる四神の同胞と合体を果たして人型の武神へと姿を変えた超機人達は、ただそこに在るだけで世の邪悪を払うかの如き神聖な雰囲気を纏う。
 古の神話から突如現実の世界へと飛び出してきたような存在を前にして、セルゲイやアレルヤ達は言葉を忘れ、キャリコはこれから本番の開幕と少しばかり心地よい緊張感を纏った。
 強力な念動力を持つ操者を得た事で、五行器は激しくしかし完全に制御されて唸りを挙げて回転し、龍虎王と雀武王の四肢に行き渡り、コックピットに居る四人のパイロット達の心身に新たな活力を与えてゆく。
 細胞の一つ一つがまるで生まれ変わったかのように力に満ち溢れ、覚悟と決意を固めた心はより堅固な意思に支えられてゆく。

93 :
「これ以上貴様の好きにはさせない!!」
「スミルノフ中佐、私達がアンノウンを押さえます。後退してください」
 気炎を吐くブリットに触発されてか、セルゲイと通信を繋げたクスハは常になく言葉に力を込めていた。
「行くよ、リオ。一気にここで決着を着けるんだ!!」
「任せるわ、リョウト君。武王機も私も本当に怒っているんだから」
 武王機の尾であった蛇の変化した黒蛇刀を片手に、リョウトの駆る雀武王もまた40mを超す巨体より目に見えぬ闘神のごとき気迫を立ち昇らせている。
 遂に合体を果たし人界の守護神としての真の力を発揮した四神の超機人達。古より数多の災いから人類と地球を守り抜いてきた守護神を前に、ヴァルク・バアルは背の翼を広げて急速に上昇する。
「まだ操者こそ未熟だが、覚醒を果たした超機人相手ではさほど手は抜けんか。出でよ」
 低く告げられたキャリコの命に従い、ヴァルク・バアルは再び胸部の装甲を開き、その奥に隠し抱いていた白い闇を纏う忌まわしき心臓を露わにする。
「呪え、ディス・レヴ」
 オオオおおおおおおおおおをををWOWOWOWOWOOOOOおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお大丕おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお000000000000000000000――――――――――――――
 ディス・レヴは歌う。
 空間を越え、次元を越え、時を越え、因果地平の果てまでも届く呪いの歌を。生ある者すべてを憎み、呪い、忌み、妬み、嫌う死者の叫びを、亡者の怨嗟を、負の感情に塗れた悪霊の咆哮を。
 世界は再び暗く黒く汚れた。
続く
短くてごめんなさい。遅くなってすみません。
誤字脱字などありましたらご指摘いただけるとありがたいです。
ところで雀武王とかって○○超機人のような称号は公式に設定されていたましたでしょうか? 調べてもわからなかったので名乗る時に乗せなかったのですが、もし設定されているようでしたら無知な私めにお教え願えませんでしょうか。
すっかり冷え込んできましたが、皆様風邪などひかぬようお気をつけ下さい。それではあらいがとうございました。

94 :
乙!
雀武王は漫画版でも薬でラリったまま合体しちゃうから、○○超機人・××朱雀とかって名乗り上げないんだよねw

95 :
総帥乙!
キャリコ、お前は何処の煎餅屋だw

96 :
久々に見に着てみれば乙
大統領は悲しくも良いキャラでしたね
原作ラインバレルの天児との対話を思い出したのは俺だけではあるまい・・・
死人としてこっちに来るなら綺麗な大統領が見れるのを期待していいのかしら

97 :
一鷹がスパロボOGに出るとしたらトウマと絡みそうだな。
どっちも『特殊能力の無い民間人』だし。

98 :
まさかのヴァイサーガ乗換だったな

99 :
そしてまさかの
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ttp://tsushima.2ch.at/s/news2ch116571.jpg
ttp://tsushima.2ch.at/s/news2ch116572.jpg
ttp://tsushima.2ch.at/s/news2ch116573.jpg
コラならそれはそれで凄いがw

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