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2013年03月ニュー速VIP+337: 勇者「俺は……魔王を倒す!」 (547)
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勇者「俺は……魔王を倒す!」
- 1 :2013/03/01 〜 最終レス :2013/03/12
- 勇者「拒否権はないんだな」
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1359954466/
魔王「ああ……世界は美しい」
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1360896387/
の、続きです
- 2 :
- パー速いけ
- 3 :
- パー速いけ
- 4 :
- 「あれ……急に、空が……灰色に……」
「え、何、なにこれ……雲?やだ、雨降るのかしら……」
「……何か、聞こえないか?」
ブゥウウウン……
「やだ、何の音、これ……」
「おい、あれ……!!」
「きゃあ、空に……!?」
魔王「…… ん、よ。… 人間、よ」
魔王「我が声が聞こえるか?」
魔王「……我が名は、魔王」
「お、王様、王様……大変です、大変でございます!」バタン!
王「どうした、騒々しい!」
「空に……北の空に……!!」
王「………!!」バタバタ……バタン! ビョオオゥ…
王「く……ッ 風が……北の、空…… あ、 …れは!?」
魔王「繰り返す……我が名は、魔王」
魔王「私は、魔王……この腐った世界を支配し、滅ぼす存在」
王「魔王……だと!?」
- 5 :
- ojo?
- 6 :
- 魔王「私は、最強の盾となる。この、世界を滅ぼす為に」
魔王「この世界は、私の物だ!我ら、魔族の物だ!」
魔王「弱き人間共よ、我が足下に跪け!」
魔王「灰に染まった、絶望の空の下で」
魔王「己が不運を憂うが良い!」
魔王「私は、これを持って、宣戦布告とする」
魔王「この空が灰から闇へと変じる時」
魔王「全ては私の物となる!」
魔王「泣き叫べ、人間共よ!己が不運を呪え!」
王「………」
「お、王様……」
王「案ずるな、大丈夫だ」
王「世界が魔王に滅ぼされんとする時……必ず、勇者が現れる」
「勇者……様……」
王「そうだ。光に導かれし、運命の子……勇者が必ず……魔王を倒してくれる!」
……
………
…………
魔王「………ねぇ、ちょっとこれ、台詞臭すぎない」ポコポコ
魔王「ほら……勇者もそう思うって」オナカナデナデ
闇の手「これぐらいの方がインパクトあって良いんですって」
青年「そんな事良いながら、ノリノリだったじゃないか、魔王様」
魔王「……まぁ、それは」ヒテイデキナイ
闇の手「練習の時みたいに、噛まなくて良かったですね」
青年「………」プッ
- 7 :
- 魔王「笑うな、青年……最初もっと長かったんだよ」
闇の手「魔王様ってば、紙見ながら読むとか言うから……諦めたでしょ」
魔王「……覚えられないよ、それで無くても妊娠中って、ぼけーってしてるんだし」
青年「しかしまぁ、お腹大きくなったよねぇ」
魔王「ローブ着てたら解らないけどね」
闇の手「姿を見せた方が効果的なんですよ、こういうのは」
青年「不可能を可能に出来るのは恐怖の対象になるって事ね……ま、確かに?」
闇の手「あっと、魔王様。その仮面返してくださいね」
魔王「ああ、うん……はい。これ、殆ど前見えないよ?」
闇の手「そりゃそうです。魔王様の姿を見せて怖がらせようって時に」
闇の手「……貴方の金の瞳を見せつけて、どうするんですか」
青年「考えたね、闇の手……しかし、君本当に良く働くよねぇ」
闇の手「何を暢気な事言ってるんですか、青年さん。勇者様が産まれて来るまで」
闇の手「もう、後半年も無いんですよ!?」
青年「……まあ、そう……だけど」
魔王「はぁ、疲れた……ちょっと休んでて良い?」
闇の手「あ、すみません魔王様……横になります?」
魔王「ううん、ここに座ってる……」
闇の手「紅茶、用意しますね」スタスタ
青年「……見れば見るほど、けったいな光景だな」
- 8 :
- ちょっとでしたが、バイトに。
今日は夜起きれたら続きを。
ではー
- 9 :
- パー速池
- 10 :
- >>1
おつんこ!
見てるよ!
あとちょっとだ!
頑張れ!
- 11 :
- >>1おつ!
こっちもめっちゃ楽しみにしてる!バイト頑張れー!
- 12 :
- おつ!
下げるか?
- 13 :
- パー速行けってまじで
- 14 :
- あーと、バイト中ですけど。
お引越ししたほうが良いかな?
- 15 :
- 新参な俺に教えてくれ。
びっぷらってパート○、ってなるスレってあっちゃいけないのか?
そういうLRか何か?
続きの話ではあるけど違うスレなわけだし…ってのは屁理屈だろうけどさ。
- 16 :
- >>14-15
LRには無かったけどな。
姉・妹系スレなんかはシリーズスレ化してるのもあるし。
とりあえずsage進行にして様子見ようよ。
- 17 :
- いや何仕切ってんだ俺は…orz
ごめんm(_ _)m
- 18 :
- 書籍化決定っ!
- 19 :
- やべあげちゃった
- 20 :
- >>18
マジで?www
- 21 :
- タスにはパートってついてないパートスレはたくさんあるよ
気にすることないさ
- 22 :
- 前はローカルルールにパートスレは禁止なんじゃなかったっけ?
今は無いからいく必要はないな
パー速行けって言ってるやつはここがそんなに目障りなスレになってるか?
- 23 :
- 俺の気に入らないスレは違反スレ(キリッ
とでも思ってるんじゃね
無視すりゃいいよ
- 24 :
- それより続きマダー?
- 25 :
- 1乙
きにしなくていいよ
これはびっぷらでうまれた作品だ
もうすでにちょっとウルウルしてる俺が言うんだから間違いない
- 26 :
- ほす
- 27 :
- 紫煙します
- 28 :
- おはよう!
昨日はバイト終わって飲みに連行されてしまたorz
んー、取りあえず気にしないことにしておく。
あんまりもめたりは申し訳ないので、その時はまた考えるよ
迷惑かけちゃってごめんね。
色々書き込んでくれた人、ありがとう!
不快な気分にさせちゃった人はごめんなさい。
- 29 :
- 魔王「御免、青年……ローブ、かけといて欲しい……何がけったい、って?」モウタチタクナイ
青年「はいはい……いや、そりゃそうでしょ……人に宣戦布告だとか言ってさ」
青年「……これじゃ、まるで三文芝居だ」クスクス
魔王「悪かったね大根で……」ポコポコ。ホラ、オコッテルヨユウシャ
青年「そんな事言ってないでしょ」オナカウゴイテル。ゲンキダネ
闇の手「お待たせしました……青年さんもどうぞ」
青年「ああ、ありがとう……で、闇の手、今日の予定は?」
魔王「んー、良い匂い」イタダキマース
闇の手「はい、今日は……魔王様には引き続き、魔石の生成をして貰います」
闇の手「……無理は禁物ですよ、魔王様。出来る範囲でいいですから」
魔王「はーい」
闇の手「青年さんは……偵察の小鳥、お願いできますか?」
青年「ああ。今日は何処に飛ばすんだい?」
闇の手「取りあえず、始まりの街へ」
青年「様子を見るんだったら……僕が行こうか?」
闇の手「直接……ですか?」
青年「ああ。まだ勇者様が産まれるまで半年あるし……そこから」
青年「勇者様をあそこへ送り届け、旅立つまで16年だろ」
青年「……ちょっとした仕込みもしたいしね」
闇の手「……お言葉ですが、貴方の風貌は目立ちますよ?」
闇の手「それに仕込みって何です……」
青年「変装していくさ………まあ、任せなって」
闇の手「面倒な事しないでくださいよ?」
青年「大丈夫。僕を信じなよ?」
魔王「大丈夫だよ、闇の手……青年なら」
魔王「何を企んでるか知らないけど……プラスになることなんだよね?」
青年「当然でしょ……僕は魔王軍の参謀だよ?」
闇の手「はぁ……まあ、良いでしょう。任せます」
闇の手「魔王様のお力は魔石に分散させているとは言え……」
闇の手「エルフの敏感な血には……毒であることには変わりませんしね」
- 30 :
- 魔王「そうだね……勇者が育つにつれ、力が強くなってるのは、自分でもわかる」
魔王「闇の手に言われて魔石に魔力封じ込めてるけど……」
青年「前にも言ったけど、僕は特に何も感じないんだけどね……」
青年「母さん程エルフの血が濃い訳じゃ無いし……それより、身重の魔王様の」
青年「負担にならないかって方が心配だ」
闇の手「備えあれば憂い無し、ですよ……それに僕が無茶させるはずないでしょ」
闇の手「それこそ、信じてください」
魔王「うん。私も無理はしないって約束したし」
青年「……オーケィ。そうだよね」
闇の手「それに、色々役に立つんですよ。流石魔王様の魔力の魔石……です」フフ
青年「……君こそ何企んでるんだか」
魔王「ふふ……」
青年「何さ」
魔王「いや、仲良くなったなぁと思って」ニコニコ
闇の手「………」
青年「………」
魔王「で、青年は……何時行くの?」
青年「準備が出来たらすぐにでも。馬車を借りていく訳にいかないしな」
闇の手「あ、じゃあ……これ、使ってください」コロン
青年「これは?」
闇の手「あ、まだ触らないで……魔王様の魔石で作ってみた転移石です」
闇の手「握って願えば、行った事のある場所になら行けるはずです」
青年「そりゃ便利……だけど」
闇の手「使い捨てですよ。一個だけ、後で渡すので……帰りは自力でお願いします」
青年「……けち」
闇の手「試験段階なんです。まだ一個しか無いんですよ」
青年「………僕、実験台?」
闇の手「はい」ニコ
青年「………」ホントイイセイカクシテヤガル、コイツ
闇の手「成功したら多分、力に耐えれなくて割れちゃうと思うので」
闇の手「身体の負担にはならないと思います」
青年「……思う、って」
闇の手「試験段階なんで」ニコニコ
- 31 :
- 青年「……まあ、良い、もう良い……信じてるよ」ハァ
魔王「じゃあ、私もそろそろ始めるね。紅茶ごちそう様、闇の手」
闇の手「どういたしまして……じゃあ、僕も仕事に戻りますね」スタスタ
青年「じゃあ、僕も行く……魔王様、何かあったらすぐ僕か闇の手を呼ぶんだよ」
魔王「はーい」
パタン
青年「闇の手、手伝って貰っても良い?」
闇の手「元よりそのつもりですよ」
青年「……熱、無い?」
闇の手「貴方ねぇ……」
青年「染め粉を用意して欲しいんだけど」
闇の手「染め粉?」
青年「ああ。僕の金髪は目立つからね」
闇の手「変装ですか、解りました……服もご用意しましょう」
青年「ありがとう……手伝ってくれるつもりって、その事だろ?」
闇の手「まあ、なんと言いますか……後で言います」
青年「?」
- 32 :
- 闇の手「取りあえず、僕の部屋へ……染め粉をお渡しします」カチャ
青年「ああ」
闇の手「えーと……何色が良いです?」ゴソゴソ
青年「染まれば何でも良いよ」
闇の手「じゃあ……はい、これ。奥の浴室使ってください」
青年「サンキュ」ゴソゴソ
闇の手「服を取ってきますね」スタスタ
……
………
…………
青年「……どうだい?」
闇の手「まあ、ましでしょう」
青年「……マシ、って」
闇の手「どうやったって目立つんですよ、貴方は」
青年「……自覚無いんだけど」
闇の手「癒し手様もそうでしたけど……身が、とても軽やかなんですよ」
青年「それで……騎士っぽい装いか」
闇の手「魔法があるから、どうにかなるでしょう……はい、剣もお渡しします」
青年「剣、か……ん、重いなこれ」ズシ
闇の手「……側近様の残された剣ですよ」
青年「……父さんの?」
青年「はい……始まりの街の、王国の印が刻まれています」
闇の手「……良い身分証明になりますよ」
青年「成る程ね……」
闇の手「僕がなんの考えも無く……魔王様が妊娠される前に、貴方に剣の手ほどきなんて」
闇の手「お願いすると思いますか?」
青年「……ありがとう」
闇の手「……いいえ」
- 33 :
- 青年「じゃあ、行くよ」
闇の手「魔王様に、挨拶していかなくて良いんですか?」
青年「今生の別れじゃあるまいし」
闇の手「……やはり、辛いですか?」
青年「………」
闇の手「今……色々、研究してますから……待っててください」
闇の手「すみません……」
青年「君が謝る事じゃ無い」
闇の手「………」
青年「魔王様には言わないでくれ。それに……魔石の生成を思いついてくれたおかげで」
青年「それほど……苦痛には感じない」
闇の手「……わかりました」
青年「さて……じゃあ、転移石とやらを渡してくれるか」
闇の手「駄目です」
青年「は?」
闇の手「……いえ、魔王様の手前ああ言いましたけど」
闇の手「僕が、持って発動させた方が良さそうですから」
青年「……そうか」
闇の手「目を瞑って……行きたい場所をイメージしてください」
青年「……信じてるぜ」
闇の手「大丈夫です。僕が作ったんですから」
青年(イメージ……始まりの場所の、すぐ近くの……)
闇の手「……行きます」グッ
青年「………!」
パアアアア……ッ
シュゥン……
パリン……ッ
闇の手「成功、かな……」フゥ
闇の手「魔石の欠片……これだけでも、凄い魔力を感じますね」
闇の手(……ご無事で、青年さん)
- 34 :
- ……
………
…………
バッシャアアアアアアアアン!
青年「冷た……ッ ここは」
青年(始まりの街のすぐ近くの……川の中、か)
青年「……川のせせらぎなんか思い出すんじゃなかったな」バシャバシャ
青年(誰も居なくて助かった……か……)
ガサッ
青年「!」
「あ、あの……大丈夫ですか……?」
青年「……あ、ああ」
青年(しまった……見られたか?)
「水の魔物に引き込まれたのでしょう、お怪我は……無いですか?」
青年「……ああ、大丈夫だ。ありがとう……君は?」
「始まりの街に帰る途中で……あの、どこかの国の騎士様、でしょうか……?」
青年「……否、旅人…かな。でも……君は、一人で?危なくないの」
「……ええ、あの……魔王が復活した、んですよね」
青年「……らしい、ね」
「ここら辺の魔物は、まだそれほど力をつけていないので、大丈夫なんですけど」
青年「ああ……魔王の居城は北の果ての果て……らしいね」
「はい……北の空から徐々に灰色に染まって……るんですよね」
青年「……ここはまだ、青空が見える」
「ええ……でも、ここも、何れ……」
青年「……始まりの街に帰る、と行っていたね」
「あ、はい」
青年「案内してくれないかな?はっきりと場所が解らなくて」
青年「うろうろしてる所に、魔物に襲われてね」
青年「……いつのまにか水辺に近づきすぎたんだろうね」
青年「……護衛を兼ねて、さ……駄目かな?」
「いいえ、とんでもない……!助かります」
青年「ああ……じゃあ、日が暮れる前に。行こうか」
青年(助かった……道すがら、この娘の話を聞いておくか)
- 35 :
- ……
………
…………
青年「色々と教えてくれてありがとう」
「いいえ、お役に立てたなら何よりです。こちらこそ……ありがとうございました」
青年「じゃあ、ね」スタスタ
青年(さて……先に宿取らなきゃ)
青年(……謁見を申し込むのは明日だな。日が暮れたし)
青年(王城の入り口は……兵士が立ってる。流石に厳戒態勢か)
青年「もう少し……情報を集めるかな」キィ
イラッシャイマセー
青年(旅籠……変わって無いな)
「ご注文は?」
青年「ええと……スープと、ホットラム」
「……あら、貴方髪が濡れてるわ」
青年「ああ……ちょっと、水辺で魔物に引き込まれてね……川に落ちちゃったのさ」
「えぇ!? 大丈夫だったの……あ、タオル!タオル持ってくるわ!」パタパタ
青年「……あ、ああ」
「はい、風邪引いちゃうわ」フイテフイテ
青年「……ありがとう」フキフキ
「アンタ、旅人?」
青年「まあ、そんな所……取りあえず、身体暖めたいんだけど」
「あ、御免……!」オカミサーン、ゴチュウモーン!
青年(旅人風の人間がちらほら居るな……)
青年(話、聞いてみるか)
「御免ね、はい、どうぞ!」カチャカチャ
青年「ありがとう……ああ、暖まるよ」ニコ
「……アンタも、魔王の噂を聞きに来たんだよね?」
青年「噂?」
「あれ、違うのかい? …北の空に、魔王の恐ろしい姿が突如現れて」
「世界を滅ぼすとか、なんとか……」
青年「ああ……否、違わないよ」
「やっぱりね……今日はずっとそんな冒険者の連中ばかりだよ」
青年「……さっき、ここまで案内して貰った娘に」
青年「北の空から、灰色に染まって行ってるって聞いたけど……」
「さぁ、私は……そこまでは」
「それは確かだぜ」
- 36 :
- ちょっとお買い物とお昼ご飯に。
また、午後から〜
- 37 :
- 見てるよ〜
- 38 :
- 今更だけど1おつ〜
- 39 :
- おつー
- 40 :
- 青年「確か?」
「ああ、俺は港街の方から来たんだ。あそこはここよりも……北にある」
「そうだ。俺も確かめた」
青年「………」
青年(二人組の冒険者か……)
青年「君たちは……港街から?」
「魔王の姿は俺たちにも見えた……恐ろしい仮面の……姿だ」
青年(……確かにあの仮面、趣味悪かったな)
「……恥ずかしい話だが、逃げてきたんだよ」
青年「それほどに恐ろしかった……のか?」
「お前、見てないのか……まあ、ある意味ラッキーだったかもな」
「ああ……あんな、恐ろしい姿……」
青年(紅茶飲みながらお腹さすってるけどね……普段は)
「……こっちの空は、まだ明るかったからな」
青年「そうか……」
青年(勇者の旅立ちの街だから、って訳では無いのか)
青年(だが……魔王城より遠くて、大きな城下町って立地を考えると……)
青年「お前達は、勇者の伝説を知らないのか?」
「魔王が復活すれば、勇者が産まれるって奴か……」
「だが……今復活したって事は……まだまだ先だろう?」
青年(まだ6ヶ月だからなぁ……)
青年「それまでは……どうなるんだろうな」
「さあな……小さな街や村は滅ぼされるかもしれんな」
「そうなると……何処に逃げれば良いんだ?この辺の魔物はまだ……」
青年「………」
青年(やはり、この街が最適、かな)ガタン
青年「ごちそう様……色々話聞かせてくれてありがとう」
「あ、ああ……お前も、気をつけた方が良いぞ」
「そうだ、南だ。南へ行こう!」
青年(南……ね。何かあったか部屋で確認するか)
- 41 :
- しえん
- 42 :
- 宿屋
青年「さて、と……まずは……」
青年(街の人達の話を総合すると……)
青年(北から迫ってくる灰色の空)
青年(始まりの街周辺の魔物は、魔王城から遠いからまだそれほど強く無い)
青年(……まあ、徐々に力はつけていくだろうけど)
青年(娘が一人で歩けるぐらいだしな……暫くは。最低でも生まれる迄は)
青年(後は………明日か)プチ
青年「さて……頼んだよ、小鳥」テガミムスンデ、ト
パタパタパタ……
青年「王様は……どう出るかな」
青年(まあ、今日は……休もう)
青年(魔王様……無茶、してないと良いけど)
……
………
…………
魔王「………ふぅ、こんなもんかな」
闇の手「お疲れ様でした……結構大量ですね」
魔王「青年、何してるかな」
闇の手「始まりの街にいると思いますけど……」
魔王「場所がハッキリわかんないと、見えないしなぁ……」
闇の手「……遠見、聞くんですか?」
魔王「多分……」
闇の手「……まあ、そうですよね。魔王様の魔石使ったとは言え」
闇の手「姿、見せれた訳ですし……世界中に」
魔王「あれ凄いよね!どうやったの!?」
闇の手「……今更ですね。魔王様の魔石を媒介にして」
闇の手「風にビジョンを映したんです。幻視の術の応用版ですかね」
魔王「うん、さっぱりわかんない」
闇の手「……じゃあなんで聞くんですか」
魔王「や、何となく……」
闇の手「2.3日中には小鳥が戻りますよ、多分」
魔王「ああ、そうだね……可愛いよね、青年の小鳥」
魔王「黄色で、ヒヨコが飛んでるみたいでさ」
闇の手(無事にたどり着けると良いですけど……)
魔王「闇の手?」
闇の手「……あ、すみません、考え事を。さて……魔王様はそろそろ休んでください」
闇の手「僕も部屋に戻ります。何かあったらすぐ呼んでくださいね」
魔王「ん……ありがとうね」
闇の手「……世界を救う為、ですから」デハ……パタン
魔王「本当に……私は、喜ばないといけないんだなぁ……」
- 43 :
- ……
………
…………
謁見の間
王「その方が……謁見を申し出たと言う、旅人か……」
王「この様な時に何用じゃ……」
青年(王様……疲れてるな)
青年「……出来れば、お人払いを」
王「……それは出来ぬ。そなたを怪しいと見る訳では無いが……この様な時に」
王「一国の王として、不用心は出来ぬのじゃ」
青年(まあ……当然だな。しかし……)
王「先に一つ訪ねたい。この国の騎士長がそなたをここに通した理由を」
青年「……如何によっては、先の私の願い、叶えて戴けますか?」
王「………考えよう」
青年「では、これを」……ス
王「……これは? ……我が国の、騎士剣か……随分古い物の様だが」
青年「父の形見です……父は、先の魔王討伐の一員でありました」
王「! ……誠か?」
青年「はい」
王「………確かに、傷だらけだな。過酷な戦いを……くぐり抜けてきたのであろう」
王「しかし……勇者一行の帰還は聞いておらぬぞ」
青年「……父は、命からがら帰還した一人に御座います」
青年「私にそれを託して………」
王「……では、勇者殿は……」
青年「……前魔王の命と引き替えに」
王「そう……じゃったか……」
青年(嘘は言ってない。言ってないけど……こうもアッサリ信じるかな…)
青年(ちょっと……後ろめたいな)
青年「しかし、残念ながら魔王は復活を果たしてしまった様で」
王「うむ……お主も見たであろう。あの……恐ろしい姿を……」
青年「……はい」
青年(笑っちゃ駄目だ……)
王「不気味な仮面に、漆黒の外套……あれぞ、まさしく……闇の化身、死の使いぞ」
青年(堪えろ、堪えろ……僕……ッ)
王「……すまん、辛い話をさせたな……肩が震えて居る。まだ……涙はつきぬか」
青年「………は、い……」
青年(御免、王様……)
- 44 :
- しえーん
- 45 :
- 青年「……ここから先は、どうぞ。私の願いを叶えて戴いた後に」
王「……良いだろう。皆の者、下がれ!」パタパタ……パタン
青年「ありがとうございます」
王「うむ、面を上げるが良い」
青年「……はい」
王「続きを聞こう」
青年「……魔王の復活に際し、勇者様もまた、この世に復活されるでしょう」
王「うむ。光に導かれし運命の子……しかし、まだその様な話は聞いておらん」
王「必ず、救いは訪れるであろう……だが、何時になるのか……」
青年「……勇者様の命は今、とある……高貴な姫の身の内に」
王「………何?」
青年「後半年程の後、この世にお生まれになるでしょう」
王「何故……」
青年「信じて戴くしか、ない話で御座います」
青年「ですが……真実です。私は、血に誓って嘘はつけません」
青年(エルフは嘘をつけないからね……)
王「……父の、騎士の血に……か」
王「……その、姫は今どこに?」
青年「……ここからは遠い、城にて養生されております」
青年「結論から申します。お生まれになった際には……この国で、保護をして戴きたいのです」
王「………」
青年「姫は……勇者様を産み落とした後は……多分、身が……持たないと思われるので」
王「……ふむ」
王「それが、今ここに居らぬ理由と言う訳か」
青年(決して嘘、では無いんだが……さて、どうなるかな)
青年(駄目だったら……産まれてから、連れてくるしかない)
青年(まあ、どっちみちそうなったら信じる、しかないだろうけど。王様も…)
- 46 :
- 王「あいわかった!」
青年「!」
王「誠に勇者であるのならば、その身に印を戴いているのであろう」
青年「はい。右手の平に、輝く剣の印……勇者の印を抱いてお生まれになると聞いています」
王「見れば解るであろうものを、今嘘と申しても意味はあるまい」
王「……半年の間、儂は、国は……何を準備しておけば良い?」
青年(……旨くいった)
青年「はい。出来れば、勇者様に知と武を授けられる環境を」
王「そなたは……師とならんのか」
青年「……恥ずかしながら、この平和の最中にありましたので」
王「……そうか。訓練場や、勉学の場で良ければ心配することは無い」
王「勿論、生活に必要な金銭や住居もじゃ」
青年「ありがとうございます」
王「……儂は、嬉しい。世には絶望しか残されておらぬのでは無いかと……憂いておった所じゃ」
王「光の勇者が……必ず救ってくれようとの伝承も、誠か否かは判断のしようが無い」
青年「…………」
王「この国には、代々勇者が旅立っていったとの記述があっての」
青年「はい……」
王「住んでおったと言う家も、残ってはおる……が」
王「目で見るまでは、やはり……な」
青年(用心深そうな割には……あっさり信じたな)
青年(……闇の手の刻みつけた魔王様の恐怖はでかいな。流石……と言える、か)
王「儂は、国は……人は、喜ばねばならぬの……勇者の誕生と、その旅立ちを」
青年「………はい」
王「では……半年後、そなたが……勇者を連れて参るのだな」
青年「はい。そのつもりです」
王「うむ……何かあればすぐに言うが良い。力になれる限り、惜しまぬ」
青年「……ありがとうございます」
王「そなた、名は?」
青年「青年と申します」
王「青年か……覚えておく。大義であった!」
- 47 :
- ちょっと、用事すませてきますー
- 48 :
- >>47
乙!続きまってるよー
- 49 :
- ……
………
…………
青年(取りあえず、生活の基盤は確保……と。次は……)
青年「………」キョロキョロ
青年(登録所……懐かしいな。未だあったか)キィ
事務員「いらっしゃいませ……何か、仕事をお探しですか?」
青年「……ああ、何か、あるかい?」
青年(成る程ね……仕事斡旋所か……魔物の討伐、人捜し……フゥン)
事務員「はい……ええと、貴方は……旅のお方?」
青年「ああ……まあ、そんな感じ」
事務員「でしたら、一つ良い仕事があるのですが如何です?」
青年「内容は? ……見たところ、この街周辺でのものばかりみたいだけど」
事務員「ええ、壁に貼りだしてある分は……そうですね」
青年「極秘の仕事か何か?」
事務員「いえ、そんな物騒な物では……ありません」
事務員「ここから陸伝いに北へ行った所に小さな港があるのですが」
青年「……北」
事務員「……やはり、貴方も北の方から……南へ向かう方、ですか?」
青年(昨夜酒場でそんな奴が居たな……)
青年「いや……そう言う訳じゃない」
事務員「そうですか……」ホッ
事務員「北へ、と言うだけで……皆、怖じ気づいてしまいますので」
青年「まぁ……そりゃそうだろうね。で……それ、港街への船が出るところだよね」
事務員「よくご存じですね」
青年「……まあ、平和な世の中……だったしね」
事務員「そうですね。この大陸からから出る唯一の窓口ですから」
青年「で……あそこがどうしたの?確か……街と呼べる様な物でもなかったと思うけど」
事務員「ええ、簡単な話です。そこに、この……魔除けの石を」
青年「ああ……成る程。魔物に占領されちゃ困るって事ね」
事務員「はい……置いてさえ、来て戴ければ結構です」
青年「………確かめないの?」
- 50 :
- 事務員「向こうにも、この街の職員が居ますので」
事務員「書類はお渡しします……これと引き替えに、報酬を受け取ってください」
青年「ふぅん……まあ、良いか。どうせ港街に行くつもりだったし」
事務員「……あの街も、今混乱状態にあると聞きますよ?」
青年「引き受けなくて良いのかい?」
事務員「………お願い致します。ここにサイン戴けます?」
青年「はいはい……と、これで良いね……それから、さ」サラサラ
事務員「はい?」
青年「何か、情報無いの?」
事務員「そうですね……ここは、北の果ての果てと言われる場所よりは……随分遠いですから」
青年「……だよね」
事務員「では、魔除け石をお渡ししますね」
青年「……随分な数だね」
事務員「備えあれば……です」
青年「発つのはもう少し先だけど、良い?」
事務員「はい……旅の都合で結構です。無事を祈ります」
青年「ああ……ありがと」パタン
青年(この街じゃ大した収穫はないだろうな……明日にでも、出るか)
ピィイ……
青年「ん……?」
青年(小鳥……戻ったのか)
青年(ここじゃまずいな……宿に戻ろう)スタスタ
……
………
…………
宿屋
青年「……僕はここだ」マドアケテ、ト……オイデ
ピィイ……
青年「良し……あれ、何だお前……手紙は?」
シュウウン…ッ
青年(う……ッ)ズキン
闇の手「青年さん」シュウン
青年「……闇の手? ……転移、か」イタタ…
闇の手「……大丈夫ですか?」
青年「ああ、もう……平気だ……しかし」
闇の手「……遠見です」
青年「小鳥の気配を追ったか」
闇の手「はい……随分と、力をつけていらっしゃいます」
闇の手「魔王様も多分……青年さんの手前……」
青年「控えていたんだな……何かあったのか?お前直々に……」
- 51 :
- 闇の手「これを……中は、見ないでくださいね」
青年「……なんだこの汚い毛布」
闇の手「……貴方と魔王様が使ってたおくるみだそうですよ?」キタナイッテアンタ
青年「………」
青年(微かに、母さんの気配が……する)
青年「……で、それが何だよ」
闇の手「……中に、魔王様の魔石が入ってます」
青年「………で、見るな、か。しかし……」
闇の手「魔力が漏れ出さない様に防護の術はかけてあります……長くは持ちませんけど」
青年「……何するんだよこんな物」
闇の手「その魔除けの石の代わりに、これを……港に配置してください」
青年「……おい、そんな事したら」
闇の手「ええ、あの港は機能しなくなります」
青年「……道を発つのか?」
闇の手「そこをくぐり抜けないと、魔王様の居城まではたどり着けません」
闇の手「……勇者様は、必然的に強くならざるを得ない」
青年「強引だな」
闇の手「この大陸の魔物の強さは、元々しれてますから大丈夫ですよ」
青年「……すっかり魔王の手下らしくなったな、お前……」
闇の手「僕は魔族ですから」
青年「……そう、だったな」
闇の手「それに、手下じゃ無いです。仲間……でしょ」
青年「……ああ」
闇の手「それから、これを貴方に」
青年「……サークレット?」
闇の手「魔王様の魔気から、少しは……守ってくれる筈です」
青年「……防護の術とか、こいつとか……お前もすっかり規格外だな」
闇の手「できる限り延命して貰いますって言ったでしょ」
- 52 :
- 闇の手「僕も水の加護、受けてますから……」
闇の手「覚えていますか、癒し手様の、浄化の石が……割れたの」
青年「当たり前だろ」
闇の手「……その欠片から、魔力を抽出して、防護の術を完成させたんです」
青年「……できるのか、そんな事」
闇の手「願えば、叶うんでしょ……時間はかかりましたけど」
青年「……この、サークレットについてる石は……」
闇の手「はい。浄化の石の欠片ですよ……奇跡的に、残っていたので」
青年「………そう、か」
闇の手「以前、城にあった物はすべて……前魔王様に吸収されたか、魔力にあてられて……」
青年「散った、か……」
闇の手「はい。どこにも……残っていませんでしたから」
闇の手「それは、貴方と、魔王様が持っていた分の一部です」
闇の手「……同じ物は二度と生成できません。僕は……回復魔法は使えませんし」
青年「一部、とは?」
闇の手「魔王様のあの仮面に……使います」
闇の手「できる限り……自我を保って貰わないと」
青年「………そうか。解った。大事にするよ」
闇の手「お願いします」
青年「では、明日……発つよ」
闇の手「はい……小鳥は、もう使わなくても大丈夫です」
闇の手「負担も目立つ事も……控えた方が良いでしょう」
青年「……あの小鳥、目立つか?」
闇の手「魔王様が……ヒヨコが飛んでるみたいで可愛いって」
青年「………は?」
闇の手「ヒヨコ、飛びませんしね……」ハァ
青年「……解った」フゥ
闇の手「では、僕はこれで」スタスタ
青年「何だ、転移石使わないのか?」
闇の手「離れて使いますよ……浄化の石、壊れちゃ困りますし……」パタン
青年「……心配してるって、言えばいいのに」クス
青年「ありがとう……」
青年(母さん……守ってくれてる、と……思って良いよね)
- 53 :
- ……
………
…………
魔王「ご苦労様、闇の手」
シュゥゥン……
闇の手「……良く解りましたね」シュゥン
魔王「気配でね」
闇の手「……産まれたら、貴女の魔力はどうなるのやら」
魔王「言った筈だよ、最強の魔王になると」
闇の手「母は強し……ですか」
魔王「……青年、大丈夫かな」
闇の手「元気そうでしたけど……って、見てたんでしょ」
魔王「うん……いや、そうじゃ無くて」
魔王「ここに、戻ったら……」
闇の手「……防護の結界、それまでに完成させます」
闇の手「使用人さんから受け継いだ、知は……伊達じゃありません」
魔王「君の探求心とその努力もね」
闇の手「……出来る事は全てやりたいんです……やる、義務がある」
魔王「ああ……そうだね」
闇の手「お加減、如何です?」
魔王「ん、大丈夫だよ?」
闇の手「では、ご相談が……この、地図見てください……」
魔王「……うん?」
……
………
…………
「うむ、確かに……ご苦労だったな、旅人よ」
青年「いいえ……」
「しかしこれが魔除けの石か……黒く光って綺麗だな」コロン
青年(早くしまえよ、糞ッ ……鈍い人間ってのは、もう……)ズキズキ
青年「……船の時間もありますので、私はこれで」
「ああ、すまなかったな。これが報酬だ」チャラン
「しかし……汚い布だな、真っ黒じゃないか……辛い旅だったんだろう」
青年「はい……いいえ。では」スタスタ
青年(本物の魔除け石は……殆どがここに来るまでに砕け散った)
青年(残りは……気休めだが貰っておくか)
青年(置いていっても仕方ないな……どうせ、役にも立たないだろうしね)
「船がでるぞー!」
青年「ああ、御免僕も乗るよ……はい、券……って」
青年「……随分人が多いな」
「こんな時に好き好んで北へ向かう奴は、阿呆か強突く張りさ」ニヤニヤ
青年「強突く張り?」
「商人共さ。武器や防具の類が飛ぶように売れる」
青年「……人間ってのは逞しいね」
「アンタは阿呆の部類だろう?」
青年「……随分失礼だな」ムッ
「何言ってんだ、そんなでっかい剣ぶら下げて……腕試しも良いが」
「命は一つしかないんだぜ?」
青年「成る程……そういう風に見えるのか」
「違うってのかい?」
青年「さてね……船室はあっちかい?」
「ああ、そこの階段を下りな……明日には着くさ。精々力、蓄えておくんだな」
青年(こんなご時世にわざわざ船を出そうってのは、阿呆にならないのかね……)
青年(……ああ、強突く張り、の方か。そういえば……随分高かったな、船代)
- 54 :
- 船室
青年(……おくるみ、か。出来れば返して貰いたかった、が……)
青年(港に着くまで、二週間……蒼くて綺麗だったのに、真っ黒に染まってた)
青年(………気にしても、仕方ないな)
ザワザワザワ……
バタバタバタ……
青年「……? …随分騒がしいな」スタスタ
青年(甲板に出てみるか……ん?)
「燃えてる、なんで……!?」
「どうして……!?」
ザワザワ
青年「……港が、燃えてる……?」
青年(……魔物の咆哮、か、この……声は)
青年(魔気に寄せられた、か……随分早い)
青年「………」スタスタ、パタン
青年「……高い金払った割には、狭い部屋だ」
青年「強突く張りか阿呆だけ、か……さて、港街はどうなっているやら」
青年「魔王様、見てるかい? ……気分は、どうだい」
青年「僕は、港街から北の大陸に渡る。それから……帰るよ、君の傍に」
青年「………後、二ヶ月ってとこかな。帰ったらすぐ、だね……」
青年「……光に選ばれし、運命の子……汝の名は、勇者……か」
青年(………複雑、だな。今更……だけど)
- 55 :
- ……
………
…………
魔王「成る程ねぇ……でも……残りはどうする?」
闇の手「……怒りません?」
魔王「……何企んでるの……あ」
闇の手「どうしました?」
魔王「……青年、港街に着いたね」
闇の手「そうですか……では急がないと行けませんね」
魔王「で、企みの内容は?」
闇の手「……僕は、何です?」
魔王「へ?」
闇の手「僕は……魔王様の、何ですか?」
魔王「大切な……仲間、だよ?」
闇の手「はい。貴女の手足でもあります」
魔王「……言い方は気に入らないけど、まあ……そうだね」
闇の手「信じてください」
魔王「……教えてくれないの?」
闇の手「見ててください……青年さんの所に、行きます」
魔王「解った……」
……
………
…………
青年(宿もぼったくり、とはね……路銀はあるから良いけど)
青年(……生活の為には仕方ない、んだろうな)
青年「しかし……おもしろいな」
青年(この港街は活気に溢れてる……売ってる物は随分高価だけど)
青年(昔より、あの……始まりの街よりも、流石に物は良い)
青年(……港は、魔物の巣窟だろう。流通も止まる)
青年(……成る程な。確かに、強くならざるを得ない)
青年「………ッ」ズキンズキン
闇の手「……すみません。離れた所に、と思ったんですけど」
青年「……石、壊れたらお前の所為だぞ……」ウゥ…
闇の手「これほど人が多いと……」
青年「否……それは良い……が、行った事ある所にしか来れないんじゃ無かったのか?」
闇の手「魔王様が見てますから」
青年「……本当に何でもありになってきたな」
闇の手「あの人以上に規格外な人居ませんって」
青年「で……今回は何だ?」
闇の手「北の街……解りますか?」
青年「……? 否」
闇の手「ここから、船が出てます。北の小さな街のさらに北に、朽ちた塔があります」
青年「……ああ、入り口の無いあれか」
闇の手「ご存じなんですか?」
青年「存在だけな。母さん達が、魔導将軍と対峙した場所だと」
闇の手「そうですか……」
青年「で?今度は僕に何をやらすんだい」
- 56 :
- 闇の手「光の剣を封印します」
青年「………何?」
闇の手「魔王によって封印された、光の剣……勇者様の手に戻ったとき、魔王は倒される」
青年「……伝説を作るのか」
闇の手「はい。僕たちの手で」
青年「……その頃には、剣に相応しい勇者に成長して貰う、か」
闇の手「……そうです」
青年「で……それを、僕にやれと?」
闇の手「いえ……僕が行きます。扉も作らないといけませんし」
青年「………はぁ」
闇の手「できるのか、と言いたいのですか?」
青年「願えば叶う、ね」
闇の手「それもありますけど……魔王様の魔石の力を使って、塔の壁をねじ曲げて入り口にします」
闇の手「勿論、門番も設置しますし」
青年「……だんだん本当の悪役になってきた気分だ」
闇の手「悪役ですよ……魔王様の仲間なんですから……人間にとっては」
青年「勇者にとっても……だな」
闇の手「……勇者様は人間ですから」
闇の手「………」
闇の手「もう一つ、お願いがあるんです」
青年「何だい……もう、何聞いても驚く気がしない」
闇の手「青年さん、嘘をついてください」
青年「……は?」
闇の手「驚かないんじゃなかったんですか」
青年「………」
闇の手「今じゃ無いですよ?」
青年「……どういう意味、だい」
闇の手「勇者様が産まれたら……始まりの街に行きますよね」
青年「ああ」
闇の手「ここまで、導いてあげてくれませんか?」
青年「……手助けをしろと?」
闇の手「まあ、そうですけど……それだけじゃ無くて」
青年「………」
- 57 :
- 闇の手「……壁になってください」
青年「壁?」
闇の手「はい……勇者様が打ち倒す、壁に……そして、魔王様の盾に」
青年「………」
闇の手「……勿論、僕もそのつもりです」
青年「約束は出来ない」
闇の手「………」
青年「嫌なんじゃない……解ってくれ」
闇の手「……寿命、ですか」
青年「旅立ちまで見守れるかどうかも……正直、解らないんだ」
闇の手「……可能、ならば」
青年「………解った」
闇の手「ありがとうございます」
青年「……母さんの夢だ。魔王様の……願いでもあるからな」
闇の手「はい……」
青年「それだけ、か?」
闇の手「……今のところは」
青年「……ああ」
闇の手「僕は今から、船で塔へ向かいます」
青年「転移しないのか?」
闇の手「正確な場所は誰も解らないでしょう」
青年「ああ……そうか」
闇の手「では……長居は辛いでしょうから、これで」
青年「闇の手」
闇の手「……はい?」
青年「否、良い……」
闇の手「………」パタン
青年「………」
青年「嘘をつけ、か……」
青年(簡単に言ってくれる……)
- 58 :
- では、お風呂とご飯の支度に。
夜来れたらまた!
- 59 :
- 乙!
いいよいいよ〜
- 60 :
- おつはよ!
- 61 :
- おつんこ!
- 62 :
- 1乙!
勇者達が魔王になってからが面白い
- 63 :
- 念のため捕手
vip落ちたらしいし
あと、ビップラではパートはオーケーだ
気にすんなよ
- 64 :
- 乙ほ
- 65 :
- 青年(……言えば、良かったか?)
青年(否……次に確かめてからで……良い)
……
………
…………
魔王「嘘をつけ、か……」
魔王(闇の手……言いにくかったんだろうな、私には……否)
魔王「反論できない方法……取ったんだね」
魔王(それだけ……皆、必死なんだな)
魔王「……魔王を倒す為に。平和を……美しい世界を、守る為に」
魔王(私も、頑張らないと)
魔王(本当に……私達は、喜ばないと……行けない)
魔王「……闇の手の気配は……」キィン……
魔王(………居た)
……
………
…………
北の塔
闇の手(これ、か……)
闇の手(高い………天辺が見えない)
闇の手「まぁ……最強の武器を封印するには、うってつけ、ですけどね」
闇の手(まずは……入り口、か)キョロキョロ
闇の手(この辺で良いか……簡単に見つかってもおもしろくないな)
闇の手(魔王様の魔石を置いて………物質を変化させる……)グッ
闇の手(………良し。後は……もう少し魔石を置いて、と)
闇の手「……後は、集まった魔物に頑張って貰うとしますか……ん?」
グルルルル……
闇の手「流石……魔王様の居城に近いだけあるな………早い」
闇の手(数は……結構居るな。群れか……)
グルルルル……
闇の手(……様子を伺ってる。多少の知能が窺えるな……ふむ)
- 66 :
- 闇の手(リーダーは……あれか。一回り、身体の大きい……うん。間違いない)
闇の手(……人間の時であれば。腰抜かしてたな……僕)
闇の手「……氷よ」パキイイィン!
グルル……ルル……
闇の手「怖がらなくて良い……お前の、味方だ」
闇の手(良し。魔王様の魔石を……もってくれよ)グイッ
キャイン、キャイン……ッ
闇の手(流石に体内に埋め込まれると辛いか……今暴走されても困るな)
闇の手「氷よ……もう一度!」キィンッ
闇の手(……悪いね。リーダー……)
闇の手(良し……こうして、魔石を埋め込んだ魔物毎、門の所に氷漬けにしておけば)
グル……グルル……
闇の手(門番にもなるし……仲間は、命の炎を感じ取って、リーダーを守るべく)
闇の手(ここを動かないだろう)
闇の手「僕の氷の魔法はそう簡単に溶けないよ……精々、お前達のリーダーを守ってくれよ」
闇の手(……北の街への被害も、多少は防げるだろう)
闇の手(いくら魔王様の為だと言っても……街の人にまで危害を加える訳には……いかないしな)
闇の手「さて……と、魔王様、見てます?」
闇の手「力……貸してくださいな?」
闇の手「塔の中を透視してください。おあつらえ向きの部屋でもあれば、そのビジョンを送って欲しいんです」
闇の手「そしたら、転移しま………ッ」ウゥッ
- 67 :
- 四円
- 68 :
- 闇の手(……これは……最上階、部屋の中央に……小部屋……)
闇の手(仕事が早いなぁ……良し、転移石、は……と)シュゥウン
グルルル……
……
………
…………
青年「……ごちそう様、美味しかったよ」
アリガトウゴザイマシター
青年「腹も膨れたし……どうするかな」
青年(あれから一週間……ここから、北の街までは船で三日ほどだったか)
青年(闇の手の仕込みも終わって……もう城に帰ってるだろうが)
青年(北の街に寄って……戻るかな、僕も)
青年(塔には近づかない方が無難だよな……用事も無いし)
青年(徐々に空が灰色に染まって……)
青年(魔物が力をつけ始めてる、ぐらいしか……情報も無いしな)
青年「……船の券、手に入れとくか」スタスタ
青年「すみません、北の街行きの船って……」
「……アンタ、あんな場所になんの用事があるんだい?」ジロジロ
青年「……まあ、好奇心、かな」
「旅の剣士……か?やめときな、あそこは……灰色の空の下だ」
青年「……そんなにやばいの?」
「元々凶暴な魔物がうろついてるのさ」
青年「でも、街があったよね、確か……」
「大方、腕試しのつもりなんだろ?悪い事は言わん……やめとけ」
青年「金ならあるんだけど……駄目かい?」
「こっちだって、命は惜しいんだよ。一週間前最後の便を出して……やめたんだ」
青年(……闇の手は、ぎりぎり間に合った、のか)
「あの時だって随分な目にあった。帰ってくるまでに、何度海の魔物に襲われたか」
青年「………」
青年(あまり強くは言えないな……見え透いた嘘を……つくわけにも行かないし)
「……今、恐れずに船を出すのは海賊ぐらいのモンだよ」
青年「海賊?」
「そうさ……あいつらは金の亡者だからね」
青年「……どこに行けば、海賊に会える?」
「……アンタも、物好きだね」
青年「こんなご時世、物好きは阿呆と強突く張りぐらいの物なんだろ?」
「………酒場に、それらしいのが居たよ」
青年「ありがとう……感謝するよ」スタスタ
「死んでもしらないからね!」
青年「……大丈夫。二度はRないさ」
「………?」
- 69 :
- 青年「……僕は、嘘はつけないからね」
「何だ、あいつ……頭がイカレてるのか?」
……
………
…………
青年「酒場……ここ、かな」キィ
青年(昼間から酒をあおって大騒ぎ……成る程、阿呆に強突く張り、ね)
青年(……リーダーらしいのは……彼、かな?)スタスタ
青年「失礼……ちょっと聞きたいんだけど」
??「ん……なんだ、お前?」
青年「君たちは海賊?」
シィン……
??「……ハッハッハ!聞いたか?お前ら!こいつ、俺たちに海賊かと聞きやがった!」
ハハハハハ……!
青年「それらしいのに、そうかと聞いただけで笑いを提供できるとは驚きだね……で?違うなら他を当たるけど」
??「……フン、肝が座ってるのか阿呆なのか……」
青年「さてね……どっちでも良い。応えてくれる気にはならない?」
??「もし俺たちが海賊だったとしよう。で、お前はどうしたいんだ?」
青年「北の街へ行きたいんだが、船は出せないとさっき言われたのさ」
青年「こんな海へ好んで出て行くのは、海賊ぐらいの物だ、ともね」
??「……で、その話を鵜呑みにしてやってきた訳か」
青年「金ならある……このご時世、北へ向かう奴なんてのは阿呆か強突く張りのどちらかなんだろう」
??「お前はどっちだ?」
青年「君ならどちらかを選ぶかい……?」
??「………」
青年「僕なら、両方欲しいね……まぁ、金銀財宝、には興味無いけど」
??「……北の街に行って、何をする?」
青年「……難しい質問だな。僕は嘘がつけない」
- 70 :
- ??「だったら素直に言えば良いじゃネェか」
青年「……仲間でも無い奴に秘密はばらせない」
??「……」
青年「……」
??「本当に金はあるんだろうな?」
青年「ああ……ここに」ドン……ジャラ
??「うお……ッ」
青年(目の色が変わったな)
??「……全部寄越せ、と言ったら?」
青年「別に構わないよ……もう使う当ても無い」
青年(……魔王様に怒られない………と、思……いたい)
??「……その、額飾りもだ」
青年「サークレット?……これは駄目だ」
??「ならお断りだ」
青年「………」フゥ
??「……どうする?」ニヤニヤ
青年「どうする、と問われてもね……渡せないものは渡せない」
青年「……これは、大事な物だから」
??「………」
青年「邪魔したね……話を聞いてくれた事には感謝するよ」クル
青年(やれやれ……強突く張りもここまで来れば立派だな)
??「待ちな」
青年「……何だい?」
??「……良いぜ、連れて行ってやる」
センチョウ!?
ホンキッスカ!?
ザワザワ……
青年「……どういう風の吹き回しだい?」
船長「気が変わった。ただし……金は寄越せよ」
船長「俺たちだって、ただで命は捨てれネェ」
青年「……ああ、それは構わないけど」
- 71 :
- C
- 72 :
- 船長きたーーー!
- 73 :
- ここでの船長!
- 74 :
- 青年(金に目が眩んだか?否……)
船長「お前の所持金のきっちり半分だ」
青年「……そんなんで良いのか」
船長「仲間が……居るんだろう、お前にも」
青年「………」
船長「大事な物は譲れない……そのハッキリとした所は、気に入った」
青年「そりゃ……どうも。しかし……」
船長「何だ。海の男に二言はネェ……ちゃんと連れて行ってやるよ」
青年「……それはありがたい、が……それだけか?」
船長「なんだ、疑り深いな」
青年「そりゃそうだろう……平和な世の中では既に……無いからな」
船長「俺のばぁさんも良く、拾ったんだとさ、人をよ」
青年「……はぁ?」
船長「好戦的で勝ち気なばぁさんでな……結構な美人だったらしいが」
青年「ちょっと待て。そのばぁさんと何の関係がある?」
船長「まあ、最後まで聞けよ……で、そのばぁさんの情夫だった男の逸話が」
船長「……俺たちの間に残ってるのさ」
青年「……はぁ」
- 75 :
- 船長「闇色の瞳に、漆黒の髪を持つ男……そいつは、不思議な魔法を使ってたらしい」
船長「……しかも、加護に囚われず様々な魔法を、だ」
青年「………!」
船長「驚くだろ?多分……魔族の類だったんだろうな」
青年「それは……何時の話だ?」
船長「さっきから言ってるだろ、俺のばぁさんが若い頃の話だよ」
青年「何かの……間違いじゃないのか?」
船長「否……その時の船員全てが見てる。覚えてる……そうして、受け継がれてきた話だ」
青年「……まあ、良い。それと……僕となんの関係がある?」
船長「そいつは人とは思えないほど綺麗な顔をしていたんだとよ」
青年「………」
船長「お前の様に、だ……人とは思えない様な……な」
青年「……僕にそっちの趣味は無いぞ」
船長「阿呆か!俺だって無いわ! ……そう言う話じゃネェよ」
- 76 :
- 青年「……君の言いたい事が、今ひとつ解らないんだけど」
船長「……思い出したってだけさ。その話をな」
青年「………」
船長「さっき、お前が言っただろう。阿呆と強突く張り……どちらを取るのかと」
青年「あ、ああ……」
船長「俺も、両方だ……まあ、俺は金が欲しいがな」
船長「ちなみに、お前は金がいらないなら、何が欲しい?」
船長「阿呆ってのは……まあ、出で立ちを見りゃわかる。力、だろう」
船長「強突く張り、は何に比喩する? …女か」
青年「……あえて言うなら、世界の謎。世界の秘密」
船長「成る程……違いネェ。お前はとんだ強突く張りだな」
青年(……そうだ。僕は世界の謎を……知るために、旅をしたかった、のに)
青年(いつの間にか……忘れてた)
船長「ばぁさんは何時も言ってた」
船長「……平和になった、世界の海を渡ってみたいと」
青年「………」
船長「生きてる間には叶わネェ。それが残念でならんってな」
- 77 :
- 孫来たなw
- 78 :
- 青年「その……ばぁさんは?」
船長「とっくに死んださ」
船長「……船の上で、老衰。海の魔物に食われちまう奴も多いのに、運の良い女だ」
青年「で……その人の話を思い出して、僕を連れて行ってくれる気になった、て言うのか?」
船長「……まあ、そうだな」
青年「良く解らないね……」
船長「直感って奴だ」
青年「直感……?」
船長「……気があいそうだ、って事さ」
船長「言ったろ? …気に入ったんだよ。お前みたいな考え方の奴をな」
青年「………」
船長「最近は腑抜けばかりさ。南へ南へ、逃げて行きやがる」
船長「……おもしろそうな事にも、飢えてんのさ……俺らはな」
青年「まあ……連れて行ってくれると言うなら、断る理由も無い、けどさ」
船長「ただし」
青年「……まだ何かあるのか」ウンザリ
船長「船が出るのは一週間後だ」
青年「……そんなに?」
船長「急に海の魔物共が強くなったからな……船の補強と食料の積み込みが必要なんだよ」
青年「ああ……成る程ね」
船長「一週間後に、ここに来い」
青年「わかった……感謝する」
船長「前金置いて行けよ」
青年「……本当に強突く張りだな」
船長「約束の金額の半分だ」
青年「良いだろう……ほら」
- 79 :
- いつも見てます頑張って!
- 80 :
- 船長「……確かに。ああ、お前名前は?」
青年「青年……君は、船長、で良いのか?」
船長「ああ、構わネェ……一週間、やる事が無いなら娼館にでも行ってな」
青年「……間に合ってるよ」
船長「娼婦の情報網を甘く見るなよ? ……世界を股にかける男共に股を開いているんだぜ」
青年「………下品だな」
船長「事実だよ」
青年「……一応、覚えておくよ」スタスタ……パタン
青年(娼館……嫌な事思い出した)
青年(…………)スタスタ
青年「………ここか」
青年(………生きている、筈は無い)
……
………
…………
闇の手「どうやら、足は確保できた様ですね」フゥ
闇の手「駄目なら迎えに行こうかと思っ……… ……ま、魔王、さま……?」
魔王「……え?」ブルブルブル
闇の手「やめてください……カップ、割れますから」ニギリツブサナイデ
魔王「………」カチャ
闇の手「だ、大丈夫ですって!青年さん、娼館なんか行かないですよ!」
魔王「……情報、集めに行くかもしれないじゃん」
闇の手「で、でも、ほら……その……し、しませんって!魔王様、居るのに……」コワイヨウコワイヨウ
魔王「……闇の手」
闇の手「は、ハイ……?」ビクビク
魔王「私……青年が好きなのかな」
闇の手「……今更、何言ってんですか」
魔王「……さっきの船長の話、多分……剣士、だよね」
闇の手「確証は……無いですけど、多分……まあ、不思議では、ない、かも……しれ、ないかも……その」モゴモゴ
魔王「…………」
闇の手「…………」
魔王(……複雑。これ、多分……嫉妬)
魔王(でも……どっちに、だろう。ううん……どっち、にも……)
魔王(………駄目、だなぁ……私……)
- 81 :
- ……
………
…………
船長「来たな……好みの女は居たか?」ニヤニヤ
青年「間に合ってるって言っただろ……行かないよ」ハァ
船長「なんだよ、つまんねぇな」
青年「うるさいよ……今はそれほど、知りたい情報も無い」
青年(本当は聞いてみたかったけど……魔王様に見られてる事考えると、な…)ムリムリ
船長「……ここから南に、小さな大陸があるのは知ってるか?」
青年「始まりの街の……大陸の事か」
船長「ああ。あそこには……着港できんそうだ」
青年「……魔物に占拠されたか?」
船長「あの大陸の魔物はそれほど強く無いんだが……数が、な」
青年「そんなに?」
船長「ああ……だが、港に集まってて」
船長「街や王国にはそれほど被害は無いらしい」
青年(魔王様の魔石に……惹かれて離れないのか)
青年「詳しいな」
船長「お前の代わりに聞いて来てやったのさ」
青年「……女を抱きたかっただけだろ」サッソクカネツカイヤガッタカ
船長「黙秘だ……さて、行くぞ。そろそろ帆を上げる」
青年「……ああ」
船長「まだ……あれからそれほど経たんと言うのに」
船長「見ろよ……北の空は、真っ黒だ」
青年「……灰が闇に変じれば」
船長「その前に、勇者様とやらが現れるんだろ?」
- 82 :
- 青年「ああ……魔王を倒し、世界を救う為に」
船長「……言ってなかったが」
青年「?」
船長「………否、良いか」
青年「何だよ、言えよ」
船長「ちょっとだけ、な……俺は、お前が勇者なんじゃ無いかと思ったのさ」
青年「……僕が?」
船長「こんな時に、北に行くとか言うし、物怖じしネェし……」
船長「……立派な剣もぶら下げてるじゃネェか」
青年「………僕は、勇者じゃない」
船長「そうか……そうだな。だが……残念だ」
船長「勇者を乗せたとなれば、箔も付くのにな……俺ら」ハッハッハ……
青年「……もし」
船長「あン?」
青年「僕が、勇者を連れてきたら……その時は、乗せてくれるかい?」
船長「……ハッハッハ!本当にお前はおもしろい男だな!」
船長「良いだろう、約束だ!」
青年(……信じてないな。まあ、無理も無いけど)
船長「で、実は僕が勇者でした、とか言うんじゃないだろうな?」ニヤニヤ
青年「言わないよ……勇者の瞳は光の宿る金だ。僕は……違う」
船長「そうだな……髪や肌の色は変えられても、瞳の色は変えられない」
青年「………」ドキ
船長「ばぁさんの情夫とやらも……そうだったんだろう」
青年「昨日の話か」
青年(……吃驚した。ばれた訳じゃ……なさそうだな)
船長「色んな人間を見てきたが、闇色の……紫の瞳なんて聞いた事がネェよ」
青年「……そうだな。確かに珍しい」
青年(僕は……知ってる。前魔王……そして………剣士)
- 83 :
- 青年(剣士……か。まさか……思い出さされるとは、ね)
青年(魔王様………)
青年「……船室に戻ってて良いか?」
船長「あ? おう……魔物が出たら手伝ってくれよ?」
青年「回復が必要なら呼んでくれ」スタスタ
船長「……剣を振れて回復も出来るのか、あいつ」ビックリ
船長「良し、お前ら!気ぃ抜くなよ!」
アイアイサー!
……
………
…………
魔王(凄いね、青年は……ちょっとずつ、足がかりを増やしていってる)
魔王(闇の手も、色々やってくれてるし)
魔王(私は……)
魔王(青年………剣士)
魔王(剣士が ……あの夢に出てきて、宣戦布告を決めた)
魔王(でも……これで、良かったのかな)
魔王(お母さん、お父さん………私、断ち切れる、かな)
魔王(………否!)ブンブン
魔王(私は、決めたんだ……!)
魔王(迷っちゃ……駄目だ!)ポコン
魔王(そうだ………この子の、為にも……)ナデナデ
……
………
…………
- 84 :
- 北の街
青年「ありがとう……助かったよ」
船長「ああ……気にすんな。で……これからどうするんだ?」
船長「本当に……港街に戻るまで、待って無くて良いのか」
青年「ああ……当てはあるんだ。ここからはね」
船長「しかし……船が無いと何処にも行けネェぞ?」
青年「………」
船長「まあ、良いさ……詮索は、時に身を滅ぼすからな」フゥ
青年「……すまない」
船長「謝る事じゃネェ。ま……頑張んな」
青年「ああ……君たちはどうするんだい?」
船長「そうさなぁ、折角ここまで来たし、ちょいとこの辺探検して」
船長「港街の方に帰るかなァ」
青年「……北の塔には行くなよ」
船長「………お宝の匂いが!」
青年「聞けよ! ……凶暴な魔物が居るって話だ」
船長「マジ?」
青年「マジで。 ……確かな情報網からの、情報さ」
青年(これも……嘘、では無いな)
船長「そう聞くと………黙ってられネェなぁ」
青年「……おい」
船長「そんな怖い顔すんなよ………よっぽどやばいんだな?」
青年「……ああ」
青年(ついでに噂を広めてくれると助かるんだけどね)
- 85 :
- C
- 86 :
- 青年「じゃあ……僕は行くよ……くれぐれも無理するなよ!」
船長「あいよーぅ」
青年「……死ぬなよ」スタスタ
船長「……お優しいこって」フゥ
青年(街、とは名ばかり……何も無いな)
青年(宿、と……小さな武器屋か……ん?)
青年(意外と品揃え……数は少ないが……物は良いのを置いているな)
青年(……居城に近ければ、魔物の数も、力も……か)
青年(成る程な……さて)
青年(流石にもう……これ以上は船で進む訳には)
青年(……巻き込む訳にも、な)
青年(頼るしか……ないか)
……
………
…………
闇の手「迎えに行った方が……良さそうですね」
魔王「そうだね……流石に」
闇の手「お体は、大丈夫です……?」
魔王「うん……お腹重くて、動きたくは無いけど」
闇の手「……では、今の内、ですね」
魔王「……青年の身体は……大丈夫?」
闇の手「……どう、でしょうね……そろそろ、辛いかもしれません」
魔王「そっか……」フゥ
闇の手「……一応、彼の部屋には防護の結界を張っておきました」
魔王「うん………ありがと」
闇の手(何処まで役に立つか……青年さん、頑張ってくださいよ)
闇の手「では……行きます」シュゥウン
魔王「青年………」
魔王(やっと会えるのは、嬉しい。でも……彼を思うと、傍に……来させちゃ駄目、なんだよな)
魔王(私は魔王で……彼は、エルフの血を引いてる……から)
魔王(………ここからが……正念場……!)
- 87 :
- ……
………
…………
青年「………ッ」ウゥ……
青年(く……なん、だ……この、感覚……ッ !?)
シュゥウン
闇の手「……青年さん?」
青年「……闇の手、か……」ハァ
闇の手「やはり……察知してしまうんですね」
青年「今のは……魔王様の、魔気………か……?」
闇の手「……そんなに、辛くなってしまいました、か……?」
青年「否……」
青年(辛い……否、確かに……辛い、と言えばそう……だが)
青年(……まだ、言わない方が良いな)
青年「構わない……大丈夫、大丈夫だ」ハァ
闇の手「しかし、お顔の色が……」
青年「まぁ、多少は……ね。そういうのも見越して、こうして」
青年「……町外れの人目の着かない所に居たんだ」
青年「行こう……長居は無用だろ?」
闇の手「ええ……そうですね」
闇の手「ちょっと辛いと思いますが……我慢して下さいよ」
青年「……ああ」
青年(もう一度……確かめる、しかないな)
闇の手「貴方の部屋へ……防護の結界を、張っておきました」
闇の手「……気休め、かもしれませんけど」
青年「……ありがとう。だが……帰ったら魔王様を抱きしめたいんだけどな」
闇の手「……辞められた方が、身のためです」
青年「もう……そんなに?」
闇の手「何時産まれてもおかしく無いですよ」
青年「……そうなのか?」
闇の手「はい……ですから、話は、後に」シュゥウン
青年「ぐ………ウゥッ」
青年(やはり、これは………ッ !! 僕、は……ッ)
- 88 :
- 眠気が限界orz
明日は一日用事で居ないので、これるのが月曜になっちゃいます……
保守して貰えると嬉しいっす……
寝ます……おやすみなさいぃ……
- 89 :
- >>62
どの勇者だ?
- 90 :
- >>88
乙!
しっかり保守しとくから安心しててくれ!
- 91 :
- おつんこ!
- 92 :
- 保守
- 93 :
- ほ
- 94 :
- 船長剣士の孫じゃないのか……ショボン
- 95 :
- 干す
- 96 :
- ほしゅ
- 97 :
- >>94 孫だろ。保守
- 98 :
- ぽ酒
- 99 :
- >>97
生き物としての「人」だったのかなあ。
機能はともかく、生殖能力の有無的に。
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