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2013年04月ラウンジクラシック114: 【ジャンプ銀魂】規制された人用バレスレ9 (356)
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【ジャンプ銀魂】規制された人用バレスレ9
- 1 :2013/02/22 〜 最終レス :2013/04/01
- ここは銀魂の規制用バレスレです
前スレ
http://uni.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1356745188/
- 2 :
- 服屋が立ち並ぶ通り
お妙「つきあわせちゃってごめんなさいね新ちゃん」
新八「いいえ でもこんなに一杯買っちゃって大丈夫なんですか姉上」
二人とも買った紙袋をたくさん手に提げてる
お妙「全部店で着る為の着物だから経費で落ちるわよ
毎日の様に来店するお客さんもいるし
同じ着物来て出るわけにはいかないじゃない」
新八「へぇー Rも色々大変なんですね
僕なんていつからか着物のバリエーションが少なくなって
今じゃこの3本ラインの着物ばっかですよ」
お妙「そういやそうよね 昔は地味なりに色々チャレンジしてたのに
どうしちゃったの 16歳と言えば一番オシャレに気を遣う年頃なのに
新八「オシャレと言うかやっぱり僕は印象薄いんで
顔だけじゃなくカッコも一点押しで覚え易くしようかなと思って」
お妙「そんな事言ってホントはおしゃれしたいけど
ウチの家計とか作者(ゴリラ)の作画とかに気を遣ってんじゃないの」
新八「いや作者関係ないんで」
- 3 :
- お妙「新ちゃんくらいの年頃はカエラばりにファッション冒険した方がいいのよ
そうやってみんな自分のスタイルや前髪の長さを見つけるものなんだから」
新八「前髪の話なんて誰もしてないですけど」
お妙「そうだ今日は買い物付き合わせちゃったし 新ちゃんに着物買ってあげる
私が見繕ってあげるから」
新八「でも 銀さんいつも同じ着物だし別に良くないすか
ぶっちゃけマンガってそういうもんでしょ」
お妙「みんなだって見えない所ではちゃんとオシャレに気をまわしてると思うわよ
ほら 噂をすればなんとやら」
新八「あっ・・・銀さんだ 珍しっ こんなハイカラな街ウロついてるなんて
もしかして着物買いに!?
オシャレになんか興味ない顔して意外と気ィまわしてたんだ」
お妙「ほら だからいったじゃない」
銀時に話しかける店主
「丁度いい所に来てくれたよ万事屋の旦那
実は今朝方春物入れた所でさ ちょっと見てってよ」
お妙「アラ いきつけみたいよ やっぱり大人の男は違うわね」
銀時「春物か ・・・そうだな新しい季節だし
俺もそろそろイメチェンでもしようかな」
銀時が入っていく店内の商品は
見覚えのある黒のインナー・ズボン 渦巻き模様の着物ばっかり
タイトル:オシャレとはオシャレと言葉にした時点でかき消えるものなり
- 4 :
- 電柱の陰から店内を伺う新八
新八「姉上・・・あの・・・アレ・・・何屋?」
お妙「何屋って・・・着物屋じゃないの」
店主「コレなんか今年ウチが流行らせようとしてる新作なんだけど
・・・試着してみる?」
銀時「ヘェー なかなか粋じゃねーか」
新八「あの・・・着物って言うか僕の目には何から何まで全部
同じものに見えるんですけど
どっかで見覚えのある着物しか見当たらないんですけど」
お妙「気のせいよ新ちゃん ホラ新ちゃんしばらくオシャレから離れてたから
そういうのに疎くなってるんじゃないかしら」
店主「どう? ウチの新作 絶対旦那に似合うと思うんだよね〜」 試着室に声をかける
銀時「うーん なんか・・・
ちょっと違うかな」 試着室の鏡に映る銀時
新八「何にも違わねーよ!!!
新作から春物まで全く変わってねーよ!!
何なんだよこの店!? 一体どういう店なんだよ!!」
銀時「イメチェンって言ってもここまで冒険する気ないから
もうちょっとこう・・・前のイメージを踏襲した奴ないの?」
新八「どんだけ冒険したくねーんだよ!!
実家から一歩たりとも出てねーよ!!
何しに来たんだよ あの人!!」
店主「こないだまで旦那が気に入りそうなのあったんだけど
全部売れちゃってね〜」
新八「そこら中転がってんだろーが つーか銀さん以外誰が来るんだよこんな店」
- 5 :
- 店主「ホラ今 入学シーズン前だからズンボラ星人の新入生が大量に買ってちゃって
一応これアイツらの学校指定ジャージだからさ」
新八「学校指定ジャージぃぃぃぃ!?
ちょっと待てェェェェェ アレどっかの学校の体操着だったのぉぉぉぉ!?
(コマ背景:店の看板「ズンボラ星人のジャージ屋」)
あの人 そんなもん9年間着こなしてたのォォォォォ!!」
銀時「あぁ そっか 何かしっくりこねェと思ったらここ(着流しの右胸)に
3年生って・・・
頼むよ 俺もう9年生だからこれじゃ後輩にナメられちまうよ」
新八「そーいう問題じゃねーだろ」
銀時「仕方ねーな じゃあ入学シーズンが終わったらまた来るわ」
店主「まいどー」
新八「試着したまんまァァァ!!
てめーら結局違いも何もわかってねーじゃねーかァァ!!
し・・・知らなかった 銀さんの一張羅がズンボラ星人のだったなんて・・・
あんな所で一式揃えてただなんて」
お妙「新ちゃん 本当にオシャレな人はどんな物でも工夫して
自分のスタイルに着こなしてしまうものなのよ 見習わなきゃ」
新八「学校のジャージなんて卒業生でも着こなさないよ!!」
お妙「お金なんてかけなくても銀さんみたいにひと工夫でできるのが
オシャレのいいところなのよ」
新八「ジャージに9年生いれてくれ言ってただけですけど」
お妙「ホラ 神楽ちゃんだって」
神楽が店のショーウィンドーに張り付いてる
- 6 :
- 銀時「ん どうした神楽 なんかいいもんでもあったか」
神楽「んー 髪飾りなんだけど どっちにするか迷ってて
でもどっちもサイズがでかいアル」
ショーウィンドウの中には全裸のマネキン2体
股間にだけ神楽の髪飾りを大きくしたものが装着されてる
新八「それ髪飾りじゃねーだろォォォォ!!
つーかあれ何屋!?」
店から出てきた店員はズンボラ星人
店員「ごめんね神楽ちゃん いつものサイズは売りきれてて
ホラこないだ卒業シーズンだったから
卒業式の正装用にズンボラ星人がペニ○ケース全部買ってっちゃってさ」
新八「それもズンボラぁぁぁ!?
おいぃぃぃぃぃ まさか神楽ちゃんの髪留めって・・・
(コマ背景:店の看板「ズンボラ星人 ふんどし屋」)
ズンボラ星人のふんどしだったのォォ!!
ウチのヒロインそんなもん頭に9年間つけて笑ってたのォ!?
コイツらどんだけズンボラ星人に依存してんだよ
つーかアレがジャージでコレが正装ってどんな星人なのよ」
神楽「そっか なんか違和感あると思ったらコレ大人用アルか」
新八「いや違和感そこじゃねーだろ!!」
銀時「仕方ねーな 入学シーズンなったらまた来よう」
神楽「そうアルな」 帰ろうとする二人
新八「普通に髪留め買いに行けェェ!!」
店員「あっ 小さいサイズだったら私の使ってるのがあるけ・・・」
と、股間に手を入れてる所に、新八のひざ蹴りが店員の顔面に決まる
- 7 :
- 街を歩く四人
新八「二人とも一体なにやってんですか
アンタらがまさか今まであんなとんでもないファッションに
身を包んでいたなんて
姉上 どうやらオシャレ考えなきゃいけないのはこの人達のほうだったみたいです」
銀時「うるせーな ファッションの出自なんてどうでもいいだろ
問題はそれをどう着こなすか 肝心なのは結局中身なんだよ」
神楽「そうアル ペ○スケースこんだけオシャレに着こなすヒロイン
ジャンプにいないアル」
新八「ペ○スケース頭に付けてる時点でヒロインじゃねーよ!!」
お妙「でも良かったじゃない 新ちゃん一人でイメチェンは恥ずかしかったでしょ
この際3人でイメチェンして万事屋をリニューアルすればいいのよ」
銀時「オイオイ 何勝手に決めてんだ 誰がんな面倒な事・・・」
お妙「銀さん 長寿作品って言うのは飽きられないようにそう言う工夫をしているものなのよ
ほらルパンだって青ジャケになったり赤ジャケになったり
不二子も不細工になったり綺麗になったりしてるでしょ」
「不二子関係なくね?」
銀時「それなら俺だって一年生の着物着たり 二年生の着物着たり
挙句の果てに三年生の着物着たりしてるけど」
新八「誰が気付くんだよ!!」
- 8 :
- お妙「もっとわかり易く皆の気分転換の為にもう1パターン位
衣装があってもいいんじゃないかなって
たとえば季節に合わせて 冬服用と夏服用があったっていいわけでしょ」
銀時「冬服?」
お妙「いや だって 前から思ってたんですけど
銀さん それ冬 寒くないんですか?」
銀時「・・・え?」 目の上に縦線
神楽「そういやそうアルな 一度聞いてみたかったアル
こんなクソ寒い季節なのに 何で銀ちゃん半袖来てるアルか
なんでかたくなに肩肌脱ぎアルか」
銀時「・・・え? いや・・・何でって別に」
「寒いならちゃんと着ればいいじゃん」
銀時「いや・・・別にそんな寒くねーし」
「寒い寒くない以前に それ何で肩肌脱がなきゃいけないの
めんどくさいから?
それって着る時どんなカンジなの?
一回ちゃんと着てから片方脱ぐの?
なんで? ちゃんと着たのにわざわざまた脱ぐの?」
(銀時、顔の影が濃くなる。青筋も立つ)
神楽「めんどくさいのにネェ なんで? 何でアルか
あっ ゴメン・・・ひょっとして
カッコいいとか思っ・・・」
- 9 :
- 銀時「長袖とか買ってみようかな!!!
別にこのカッコにこだわりとか全然ねーし!!
カッコイイとか全然思った事ねーし
ただこのほうが聞き腕動かし易いかなとか思ってただけだしィィ!!」
銀時、服屋の商品ラックに手をかける
神楽「ヤッター!! 冬服ゲットある!!」
銀時「誰がてめーらまで買っていいって言ったよ!?」
お妙「これとこれお願いします」と着物2着をレジに出す
銀時「オメーに至っては全く関係ねーだろ」
新八「冬服かァ 確かに僕ら季節感あんまりないですもんね
雪降っててもマフラー巻いてるだけだったりするし」
銀時「ただあんま突拍子もないカッコは出来ねーぞ
この画力だと誰が誰だか解らなくなるからな」
- 10 :
- 余談 宵闇の客
(桂と銀時の子供“金時”が生まれて間もないころ)
夕方。
ほんのりと街の明かりがともり、日はすっかり沈んでいるが、
薄暗い紫色に街が包まれている頃。
スナックお登勢に、ふらりと男が立ち寄った。
ガラガラガラ・・・
引き戸が開くと、
「まだ、開店前だよ」
と、店の奥からお登勢が言った。
- 11 :
- 買い物に出ていてキャサリンは居ない。
銀髪頭が来たのかもしれない。それにしては、何も声がかからない・・・
お登勢が不審に思って、カウンターにでてきて店を見ると、ふらふらと、こちらへ近づいてくる男の姿がある。
偉く、派手な着物を着て。
最初、酔っぱらっているのかと思った。
「ちょっとあんた・・・」
男は、よろよろと、カウンターの出入り口のところに座り込んだ。
印象が違いすぎて、分からなかったが、近くで見て、分かった。
高杉だ。
- 12 :
- 「ちょっと、なんだってんだい」
と、カウンターの出口をふさぐ男にお登勢が声を掛ける。
俯いたまま、顔を上げない。しかし、印象深い包帯がちらちらと、髪の間から見えている。
「酒を飲みに来た訳じゃないんだ・・・」
偉く弱々しい声で言う。
「ねえ、あんた」
何か嫌な予感がする。そっと近づく。
「ちょっと頼みがあってねぇ・・・あんたにしか・・・頼めなくてねぇ、綾乃サン」
言うと、ごそごそなにやら懐から取り出そうとしている。
- 13 :
- 言い回しこそ、この男独特のものであるが、どうも声にあの憎々しいほどの張りがない。
「これを、あいつに渡してくんねぇか・・・俺からじゃ、受け取らねぇんでね・・・」
高杉が、何かを差し出した。受け取ってみると、坂田 松之助名義の印鑑と通帳、キャッシュカードだ。・・・しかも、ところどころ、血が付いている。
「あんた!!!怪我しているのかい??!!」
確かめようと、肩に手を掛ける。と、力無く振り払われた。手負いの獣が、警戒するかのように、ギロリと睨んで、近寄らせない。
その、目だけは、爛々と光輝いている。
「してねぇよ・・・それより、頼むよ・・・」
「何言ってンだい!普通じゃないんだろ。こっちにあがんな。手当てしてやるから」
と言った時、ガラガラガラ・・と、引き戸が開いた。
「すいやせーーーん、ちょっとお聞きしまさぁ」
と言って、入ってこようとする人の気配。お登勢は、反射的に、高杉をまたいで、かばうように出て行く。
- 14 :
- 「なんだい」
「真撰組でさあ。ここに、片目包帯で隠した男、きやせんでしたか?」
真撰組の、沖田だ。
「さあ、見てないねえ」
とっさに嘘が出る。
「・・・怪我してると思うんですがね」
「知らないよ」
「そうですかぃ。なんか、引き戸に血が付いていたモンでしたから・・・念のため、中あらためさせてもらっても良いですか?」
「はあ?何言ってンだい!あたしゃ、歌舞伎町四天王のお登勢だよ!あたしを嘘つき呼ばわりする気かい?ただじゃすまないよ。」
「信じてねえ訳じゃねぇんでさ・・・探しているのが、やっかいな奴でしてねえ」
- 15 :
- 話している間も、中をうかがう沖田。
「とっちらかってるんだ。あとにしな」
と、ぴしゃりと言うと、
「わかりやした・・・まあ、ここよりよっぽど二階が怪しいんで。失礼しまさぁ。だが、気を付けて下せえ。あいつは何分危険な男なんで」
それだけ言って、去っていった。
お登勢がカウンターの入り口に戻ると、高杉がうなだれている。
そうか、どうしてここに座ったのか今分かった。万が一にも、ドアから死角になるところ。こんな状態で、状況判断だけはしっかりしている。
- 16 :
- 「あんた、しっかりしな」
と言えば、ハッとしたように、顔を上げて。
「・・・は、やっぱり思ったとおりだ・・・あんたは、やっぱり、いい女だ・・・俺が気に入っただけのことはある・・・」
と笑った。
「何言ってるんだい。自信だけは一人前だね。追われてるくせに・・・」
「は・・・俺は、人を見る目があるんでねぇ・・・あ、さっきの・・・あいつがいらねえって言ったら、あんたが使ってくれて、構わねえ・・と、番号は、・・今日の日付だ」
「なんだい、偉く気前が良いじゃないか」
「だいぶ、世話になったようだしな・・・俺にゃ、もう、必要ないんでねぇ・・・っっ!!」
ごほごほと、咳き込む。
「もうだめだよ、医者を呼ぶよ」
電話に立とうとすると、
「いらねえ!」
ぴしゃりと言った。あまりに強い言い方に、お登勢は振り返る。
- 17 :
- 「呼ぶなら、医者じゃねえ・・・あいつを・・・呼んでくれ」
「月子を?そんな場合じゃ・・・」あんた、立ち上がることも出来ないじゃないか。
「ハァ・・・頼むよ。綾乃サン・・・時間がねぇんだ。分かるだろ・・・」
息が荒い。
お登勢は直感した。・・・ああ、そうだね。あんたはもう長くない。
「まってな」
それだけ言うと、お登勢は二階に駆け上がった。
「月子!月子!ちょっと!」
気がはやる。なのに。
「うるせーーー!!R!!さっき帰ってきたばっかりなんだ、後にしろ!」
と、銀時が叫ぶ。ああもう、こんな時に。こいつは。
- 18 :
- 「こっちも急ぎなんだよ!月子!」
と言えば、なにやらもめる声がして、
「後で必ず見るから」
と言ったあと、白い割烹着姿の月子が出てきた。
こういう時、この子の義理堅い性格に感謝する。銀時には、すぎた嫁さんだよ、ホント。
説明する時間も惜しいので、連れだって下に行く。
遠くから、「すぐ戻せよ、Rーーー!!」などと、銀時の怒声が聞こえた。
「いいかい、言うとおりにさせておやり」と、スナックの戸の前でお登勢はそれだけ言った。
月子は、不思議そうな目をしたが、早く開けるよう促すと、引き戸を開けた。
と、そこに
- 19 :
- 「!!!」
お登勢は、うっかり声を上げそうになった。
入り口近くのカウンターに、片肘突いて高杉が立っている。
いつもの、憎々しいほどの笑みで。そして。
「よう」
と言った。
それが、あまりにも堂々としていたからか、店内が薄暗かったためか、いるはずのない人物に驚いて注意が散漫したからか、月子は
「高杉?!貴様、どうしてここに!!よく、のこのこと俺の前に来れたものだな!!」
と、高杉の異変にも気付かず、ぴしゃりと言った。
それを聞いて、嬉しそうに高杉は笑っている。
- 20 :
- 一瞬、お登勢は、はて、さっきまでのあの男の弱々しさはいったい何だったのだろう、もしかして、演技だったのではあるまいか?などと思ってしまった。
それくらい、以前会った時のような、高杉だった。だが、
平生の彼の雰囲気に合っていたから違和感を感じないだけで、カウンターに肘を突いているのは、間違いなく、支えて居なければ立てないからだ。
・ ・・あんたって男は、一体何処まで格好つけりゃ気が済むんだい。
「先程、真撰組がうちに来たぞ。おおかた、またお前がよからぬ計画を立ててるのだろう。怪我がどうのとか言っていたから、少しは心配していたというのに・・・
貴様は一体何をやっているのだ!!こんなところで、何をしている!!お登勢殿に迷惑は掛けさせん。何をしに、ここに来た!!目的を言え!!」と、息巻く。
「てめえに、会いに来たと言ったら、信じるか?」
「信じない!!用がないなら、出て行け!!」
- 21 :
- その言い草に、ついかっとなって、瞬間、お登勢が
「月子!」
と、声を荒げてしまった。
その声に、ビクッとなった月子が、お登勢を見た、その刹那
気を逃さず、男が、月子の両肩を掴んだ。
そのまま、数歩うしろの、テーブル席のソファーに倒れ込む。
「・・・・!!!」
押し倒されたように、きっと月子は感じただろうが、お登勢には、数歩歩いてよろけて、倒れ込んだようにしか見えなかった。
「高杉!!貴様っ!!!」バタバタと月子が暴れる。
月子のその手を握り、口づけた。
狂ったように、深い、口づけ。
いや、そんな甘いものではない。
血に飢えた獣が、獲物の血をすするように・・・
水に飢えて、その口の僅かな水分も生きるためにすすっているような。そんな口づけだ。
- 22 :
- 「は・・・!貴様・・・」
とまどう月子。
「一時間、今日は開店を送らせるから、ゆっくり話しな」
といって、カウンターの奥にお登勢が消える。
狂ったような口づけを永遠続けて居た高杉が、
ふと、口を離した。
「貴様、どけ!!」
燃えるような目で、月子が睨む。
その、両頬をがしっと掴んで、高杉が
「桂。桂、俺を見ろ」という。
「言われなくても、見ている!」
と言えば、嬉しそうに笑う。
- 23 :
- >>9
乙です
これ面白いw
鯱のギザギザ思い出したわ
- 24 :
- >>22
乙です
これ面白いw
銀さんと桂の愛思い出したわ
- 25 :
- >>9
乙です!!
面白いw
やっぱ万事屋の話は面白いわw
- 26 :
- 続きは〜?
- 27 :
- >>22
乙です!!
面白いw
やっぱよろづらの話は面白いわw
- 28 :
- 続きは〜?
- 29 :
- 月子は妙な違和感を感じた。
「桂。聞いてくれ。一度しか言わねえから」
息が荒い。
「はあ、その前に、どけ!」
月子の、息も荒い。
「桂、本当のことを言う。・・・俺は、お前が、お前のことが、・・・好」
ど・・・・・っと、突然、高杉の頭が倒れ込んできた。
同時に、高杉の全体重が月子の全身にかかってきた。
「・・・・!!!!」
重い!!と、思った時、
「ヅラ!!まだ??」
カンカンカン・・・と、けだるげな靴音がした。
- 30 :
- お妙「そうね ある程度イメージは保ったまま暖かくて且つオシャレな物がいいんじゃないかしら
たとえば銀さんなんかだとこんなのはどうかしら」
新八「あぁ!! コレ銀さんのインナーとそっくりじゃないですか!!
(黒の長袖インナー。袖口にも同じような模様)
これいいんじゃないですか コレだったら暖かいしイメージも変わりませんよ」
銀時「そうか・・・ あんな変わんねーけどな」
試着室の中の銀時。長袖インナーの右身頃を手で引き千切ってる
新八「何で長袖まで肩肌脱ぎだァァァァ!!」
銀時「やっぱ片方出てねーと何か気持ち悪い」
新八「アンタの片肌脱ぎへの執着の方が気持ちワリーよ」
銀時「侍はないつでも利き手で瞬時に得物抜けるような佇まいじゃねーとダメだ」
新八「ほぼ半裸の変態侍に言われたくねーよ 冬服の意味まるでなくなってんでしょ!!」
お妙「やっぱり肩袖は譲れないのね
じゃあ半袖はそのままにして上からマントはおるのはどうかしら」
銀時「やっぱ あんま変わんねーんだけど」
試着室の中の銀時。上半身はインナーの上にマント
下半身は星模様のトランクスで足元にスラックスが落ちてる
新八「どこ片肌脱ぎしてんだァァァ!!」
銀時「やっぱどっか一カ所脱げてないと 抜きが無いと気持ち悪い」
新八「オメーの今の格好のほうが気持ちワリーよ!!」
銀時「侍はないつでも瞬時に得物抜けるような佇まいじゃねーとダメだ」
新八「何を抜くつもりだ」
- 31 :
- お妙「仕方ないわね じゃあこの際半身は捨てて
防寒出来る所だけオシャレ出来る所だけ集中砲火に変えましょうか」
銀時トランクス一つで頭に目出し帽(口出しの穴もあり)
新八「ほぼ全身捨ててっけどォ!!
誰だコレェェェ!! 最早イメージも防寒作用もオシャレさも微塵もねーだろ」
お妙「大丈夫よ
ここに銀さん拘りのワンポイントオシャレ入ってるから」
(帽子の額部分に「9年生」)
新八「余計ややこしく見えるよ!! とにかく酷くややこしい人に見えるよ!!」
銀時「オイ いい加減にしろよお妙
これじゃ最初に来てた奴の方がよっぽど冬服だろーが!!
俺ァなカッコイイだのカッコ悪いだのは別にいいんだよ
とにかく得物が瞬時に抜きてーの
これじゃあ身体も縮こまって抜けるもんも抜けねーよ
せめてコレであたためさせてくれ」
(銀時、トランクスの股間部分に神楽の髪飾りを装着。ガポ)
新八「そこの話かいィィィィ!!」
- 32 :
- 神楽「ギャァァァ てめェェェェ何やってるアルかァァァァ!!
最悪アル コレじゃもう髪飾り使えないネ」 と銀時の頭を足蹴
お妙「落ちついて神楽ちゃん
貴女の髪飾りは帰るべき所に帰っただけよ
折角だから神楽ちゃんは髪飾り無しで印象変えましょうよ
お団子もいいけど子供っぽく見られがちでしょ
たまには髪をおろして大人っぽさを演出するのもいいじゃない
チャイナ風コートでも着て・・・ホラ」
新八「ウン 神楽ちゃん それはそれでアリだよ」
神楽「わはっ・・・」
お妙「でも若干頭に物寂しさを感じるわね」
新八「じゃあ帽子とかかぶったらどうかな この猫耳付きのなんか」
「オイぱっつぁん 気持ち悪い趣味を押し付けんのはやめろ」
新八「そっ・・・そんなんじゃねーよ コレはコレでカワイイと思うけどな」
神楽「こんなカンジアルか」
神楽が被ると猫耳が吹っ飛んで中から角状の物がズボォ
- 33 :
- 新八「とんでもねェペ○スケース(耳)生えてきたァ!!
どっからペ○ケース生えてきた!?」
神楽「やっぱり頭になんかついてないと気持ち悪いアル」
新八「頭からガチもんのペ○スケース生やした小娘の方が気持ち悪いわ!!」
神楽「大人っぽくしようって言ってたから」
新八「どこを大人にしてんだよ!!」
お妙「わかったわ神楽ちゃん 髪飾りはいいけど それはやめましょ
かわりにこのボンボンで髪を結ぶのはどうかしら」
神楽「こんなカンジアルか」
ボンボンをつけた神楽の後頭部、二つのボンボンの上にケースが生える
新八「余計下品になったァァァァァァァ!!」
神楽「やっぱりどうしても頭になにか足りないね」
新八「足りねーのは中身だろ!!」
銀時「だからさァ 俺の片肌脱ぎにせよ 神楽の髪かざりにせよ
人には絶対譲れねェアイデンティティみたいのがあるわけだよ」
新八「原型跡形も無くなってる奴に言われたくねーよ!!」
銀時「ここは髪飾りを生かしたコーディネートをすべきだろ
つまりちゃんとパンツははけって事だよ」
(神楽の頭がブリーフで変態仮面に)
新八「結局お前とほぼ同じになってんだろーが!!」
- 34 :
- お妙「流石銀さんと神楽ちゃん なんやかんやでもう新スタイルになじんでしまった
何この二人並んだ時の妙な安定感」
新八「どこが!? 不安しかないんですけど!!
完全に得体の知れない集団になってますよ!!」
銀時「だから言ったろ 肝心なのは中身だって
結局何着てもサマになる奴はサマになんの」
神楽「結局ファッションって言うのは着る者の内面が外側に出たものあるからな」
新八「だとしたらアンタらとんでもねェもん内側から出てきてるけど!!
おかしいでしょ!! こんなのおかしいよ!! 全然らしくない!!
元はちょっとみんなでオシャレしませんかって話だったんでしょ
何でこんな事になってるんですか
皆イメージとかゴリラの作画能力とか オシャレって言葉に縛られ過ぎなんですよ
アンタらの言う通り オシャレって一種の自己表現なワケでしょ
だったら人から言われたモノや人の目を気にして着飾ったモノが
新のオシャレって言えるんですか」
お妙「もう一度 着替えませんか
今度は誰でもない自分自身の心が選んだ
自分らしい 一張羅に」
- 35 :
- デパート?の柱の前に立つお妙
そこにやってくる銀時と神楽
神楽「アリ? 銀ちゃん 何で前と同じカッコしてるアルか」
銀時「お前こそ」
神楽「色々考えたけど・・・やっぱこれが一番楽かなと思って」
銀時「うん・・・ めんど臭ェし これでいいだろ」
お妙「ゴメンナサイ 私・・・余計なおせっかい焼いちゃったみたい
みんなはもうとっくに とっておきの一張羅を着てたのね
・・・ウン やっぱりみんなには・・・それが一番似合う
ねっ 新ちゃん」
新八「ウン やっぱり万事屋はコレが一番ですよね」
新八、テンガロンハット?に開襟シャツ、ベスト?、ジャケット、ロングマフラーで指二本を立ててる
銀時「何一人だけメッチャオシャレしてんだァァァ!!」 ドゴォ
神楽「空気読めコルァ それのどこがてめぇらしいファッションアルか
腹立つ顔しやがって」 ガゴォ
新八「うるせェェェェ もう三本ラインはウンザリなんだよ
僕だって 僕だって
オシャレになりたいィィィィィィ!!」
- 36 :
- >>35
バレ続き乙です
面白かった!神楽体張りすぎだろw
- 37 :
- バレ師さん、乙です
>>2-9>>30-35
- 38 :
- と、カウンターの奥からすごい勢いでお登勢が駆けだしてきて、ガラガラと、戸を開けて怒鳴る。
「今、使いに出してるから居ないよ!もうちょっと待ってな!」
「ハア??R、てめ、何してくれてんだ!今日あいつ誕生日だぞ!人の奥さん勝手にパシリに使ってんじゃねえよ!」
「ああ??そういうことは、家賃払ってから言いな!!」
「くそR!」
「何だって!じゃ、家捜しさせてもらおうかね!!」
「ハアアア??金なんかねーし!!」
といって、二人の足音が上へ消えていく。
- 39 :
- その騒ぎで、ハッと高杉が顔を起こす。
「なんだ、重い、どけ・・・というか、なんだと言うんだ、貴様、変だぞ」
と言えば、聞こえているのか居ないのか、
「桂、聞いてくれ」という。
「だから、何だ」
「松之助を、頼む」
「!!!」
そしてまた、狂ったような口づけを交わすと、
何かに気付いたかのように身体を離して、
「・・・安心しろ、こんなことは、もうしない」と言った。
「当然だ」
- 40 :
- 「・・・しばらく、連絡が取れない。だが、俺のことは心配するな」
と、なぜか不敵に笑うので、
「はあ?何で俺がお前の心配なんぞするんだ」
と言ってやった。
そのとき、高杉は、やけに寂しそうな顔をしたと思う。
それから、ぱっと、体を離して立ち上がり、
スタスタ出口に向かっていった。
そして、
ガラガラ、ピシャン。
出て行った。
- 41 :
- ????
何だったんだ?
それにしても、と月子は思う。
“松之助を頼む・・・”あいつ、初めて、息子を名前で呼んだのでは無かろうか。
真意が分からない。
気付いたら、追いかけていた。
出口の戸を開けると、・・・そこには誰もいない。
忽然と、消えていた。
え・・・・
- 42 :
- カンカンカン、と、お登勢が戻ってきた。
「月子、あんた・・・・・!!!」
お登勢が、月子を見て、息をのむ。
「え?」
視線の先が、身体であったので、つられて、下を見る。
「っ!!!!!!」
血だらけの、
割烹着だった。
それは、まるで、真っ赤な着物のよう。
一面が、赤く、染まっていた。
夕暮れは、夜に変わった。
- 43 :
- >>42
バレ続き乙です
面白かった!桂体張りすぎだろw
- 44 :
- バレ師さん、乙です
>>10-22>>29>>38-42
- 45 :
- >>30
続き乙です!!
ありがとございます
おもしろかった
最後元に戻った時の神楽のお団子カバーみたいなやつって
- 46 :
- >>42
続き乙です!!
ありがとございます
おもしろかった
最後高杉が戻った時の桂の割烹着の血みたいなやつって
- 47 :
- 余談 最後の誕生日 G
今日は、ヅラの誕生日!
前々から計画していた。
多分、女の姿ではこれが最期と分かっていたから。
申し訳ないけど、今日は、どうしても二人で(と子供達で)祝いたかったから。
早い時間から、新八と神楽にはお妙のところに行ってもらっている。
今日は、特別なんだ。
今日は、桂に伝えたいことがある。
渡したいものも。
- 48 :
- 担当とご飯を食べる約束をし
ても必ずOになる。というか
Oにしている。ゴメン<英秋>
O:オジャン
- 49 :
- タイトル:全ての答えは現場にある
警察庁。特別講習会
「えー今日は皆忙しい中良く集まってくれた
見ての通り今回集まって貰った者たちは
江戸の治安を守るあらゆる警察組織 それらを取り仕切る重役・幹部たちだ
(幹部たちの前で演説中の松平)
何故お前たちを集めたか・・・
今更話すまでもないが俺達の仕事は現場が第一だ
だが皮肉なもんで組織ってのは出来る奴から現場を離れていく
現場で事件を解決し功を得 出世した者から現場を離れ
人を取り仕切る側に回っていく
そうしてお前たち名捜査官はかつて現場で流した汗の味を忘れ
代わりに権力という甘い汁の味を覚えていくワケだ
なれの果てはてめーの保身しか頭にねェ 部下の尻も拭けない上官だ
だが俺はお前達を腐らせる為に上にあげたんじゃねェ
お前達が現場で培った知識・勘 それらを下の物に伝えていく事もまた組織には必要だ
つまりおじさんが言いたいのは どんなに上に立ってもお前達がいた原点
「現場」の事を忘れるなと言う事だ」
土方「・・・流石 俺達(ぶか)が現場を走り回ってる中
税金でR通ってる名上司の言う事は違うわ」
近藤「そういうなトシ 行いはさておき 言ってる事は確かな事だぜ」
土方「講習なんぞ受けなくても こちとら未だに毎日現場はいずり回ってるよ
デスクワークなんざ机で寝る事と勘違いしてるバカしかいねェからな
(沖田、いつものアイマスクをつけて机に伏して くーがー)
それにここにいる連中の誰が名捜査官だってんだ
どいつもこいつも碌に現場にも立たずに
家柄だのコネだので上におさまった使えねェボンボンばかりじゃねーか」
(前席に座る奴等が青筋立てて土方を振り返る)
近藤「オイ トシ!! 声がでけーよ」
- 50 :
- 土方 「なァ オイ こんなボンクラどもが部下になるんじゃ
未来の警察庁長官も大変そうだな
おっとすまねェ アンタも名門出のボンボンだったっけ
見廻り組局長 佐々木殿」
土方の少し離れた左の席に座ってる佐々木。携帯を見てる
佐々木「・・・心配いりませんよ真選組副長土方殿
私が長官になった暁には選ばれたエリート以外はすべて切り捨て
エリートによるエリートの為のエリートな改革を行うつもりですから
さしあたっては大事な講習中に居眠りするバラガキ
場所もわきまえず副流煙をまき散らすバカガキでもクビにしましょうか
おっとすみません アナタ達の事じゃありませんよ
使えぬボンボンの話です アナタ達は使えぬ貧乏人ですもんね
ねェ のぶめさ・・・」
佐々木の左の席の信女。国語の教科書を盾に机に伏してムガモゴ
土方 「何がエリートの改革だ!! てめーんとこのエセエリートも居眠りこいてんだろーが!!」
ムクッと起きる信女「居眠りじゃない・・・早弁」 手にはドーナッツ
土方 「どっちもろくなもんじゃねーだろ!!」
- 51 :
- それなのに、
あのR。帰ってくるなり、ヅラに買い物言いつけやがって。
最近のあいつの横暴さには頭くる。今度、がつんと言わなきゃな。
一度様子を見に行ったあと、金時(俺と桂の子供)がぐずったのでミルクをやった。
と、同時くらいに、とんとんと、階段を上がる音がする。
「すまん、銀時、遅くなって」
ヅラが戻ってきた!!
玄関にいる・・・が、なかなか上がってこない。
ん?何かあったのかな。
- 52 :
- 「どうした?」
見に行ってみると、靴を半分脱いだ状態で固まってる。なんだ?
「はっ?」
「あ、ああ、ちょっと転んで足が・・・靴を脱ぐのに戸惑ってしまって」
「え?大丈夫?見せてみろ」
でも、なんともなってない。
「なんもねーみたい。痛い?」
「いいや、大丈夫だ」
と、二人で居間に行く。
ミルクを飲んで、ご機嫌によく寝てる金時をみて、桂が微笑む。
さっき、ちょっと顔色悪かったけど、よかった。気のせいか。
「ミルク、ありがとう。上げてくれたんだな」
そうそう。だってよ。
「おう。お前戻ってこねえし。ちょっとぐずったからよ。それにしても、人使い粗いRだな!今日くらい気をつかえっての!なあ!」
めでたい誕生日だってのに!全く、気が利かないんだから。
- 53 :
- 佐々木「流石は信女さん 講習の為にエネルギー補給ですか やはりエリートは違・・・」
ムクっと起きる沖田
沖田 「悪いが俺も寝ちゃいねーぜ
残念だったな 休み時間友達いないのをばれないように寝たふりしてただけさ」
土方 「なんで勝った顔!? 何で学校あるある勝負みたいになってんの!?
大体講習中に携帯いじり倒してる奴にとやかく言われたかねーんだよ!!」
佐々木「勘違いしないでもらえますか コレは講習内容をメモしてるだけです」
土方 「俺だって講習聞く為に煙草ふかして頭さえさせてんだよ」
佐々木「ほう じゃあ聞かせて頂きたいですね 貴方のせいで大事な所を聞き逃してしまって
美しすぎるマキダイが何でしたっけ」
土方 「お前やっぱ携帯ゲームやってただけだろーが!!」
ドォンと机に銃痕
松平 「やかましいぞてめーら 3秒以内に廊下に立たねェとドタマブチ抜くぞ 1・・・」
ドォン ドォン ドォン
「2と3はァァァァ!?」
- 54 :
- 「そういえば、さっき見せたいものがあるっていってたが・・・」あっ、どうしよう。
「うん・・・そうね。そうなんだけどね。夕飯の後にするよ」
落ち着いて渡したいし。・・・一緒に祝いたいし。
「そうか、じゃ、何か作る」と、早速キッチンに向かった。
なんか、この姿ももうすぐ見納めか・・・
と思うと、本当に寂しい。
いや、戻らなきゃならないのは分かってる。それが一番良いことも。
うん。だから、大丈夫。
- 55 :
- でも、あれ?何か違和感を感じた。
桂が後ろを向いた時。きらりと青い玉が奇麗に光った。
桂の髪に、俺の上げた赤い簪以外の何かが付いていたことはない。なんだ?よく見ると、青い玉の付いた簪みたい。
でも、なんか、ものはともかく、お世辞にも奇麗に刺さっているとは言えない。枝が半分以上突き出た、それ。
「あれ、それ、どうした?」
一応聞いてみる。なんか、あの赤い簪以外があいつの髪に付いているのが嫌だ。違和感じゃなくて、不愉快だ。俺ってつくづく、嫉妬深いよなあ。
われながら。ああ、でもどうせ、これは、あれか、誕生日だから。
「ああ、下のRにもらったのか。あいつ・・・俺には何にもよこさねーくせに」
まったく、あのR・・・って、あれ、桂、どうした。
何か、せわしなく割烹着をわたわた見ている。
「はあ?なにしてんの?」
「あ・・・ああ」
「?」
- 56 :
- なんか、おかしくねえ?こいつ。
・ ・・さっき、玄関からなかなか上がろうとしなかったし。
何か、ふわふわしてるし。
動揺しすぎじゃねえ?
「頭のどうしたってきいてんの」と言えば、
「あ、頭・・・」
ぱっと、頭を抑える。
「風が強くてな・・・」と言って、キッチンの鏡を見に行く。
おいおい。話しかみ合ってねえよ。
「そんなに、乱れては居ないと思うが」だって。
何それ。髪の毛乱れてるなんて言ってねーだろーが。
俺が言ってるのは、その、
「青い玉。どうしたって言ってんの」
青い玉の簪だよ。・・・なんだ、まさか・・・
- 57 :
- 松平 「いいモルモットが見つかった事だし実演演習といこう
一捜査官として現場の空気を思いだす為にこれからこのモルモットどもに
ある現場を体感し捜査をして貰う
事件と言ってもただのシミュレーションだが
お前達もこいつ等と一緒に現場に立ったつもりで考えて欲しい
(佐々木、土方両者に向かって)
なァ オイ 講習そっちのけでケンカしてたんだ 自信あんだろ
てめーらも警察ならケンカのケリは捜査でつけろ」
土方 「上等だよ シミュレーションだか何だか知らねーが空っぽのエリートどもとの違いをみせてやらぁ」
佐々木「困りましたね シミュレーションも知らぬ人たちと比べられたくないのですが
ねェ のぶめさん」
(「三国志」のタイトルが映る大画面が二つ)
のぶめ「曹操とか早いうちに倒すとテンション下がって中華統一とかどうでもよくなる」
沖田 「じゃあ曹操がラスボス 先に魏を倒した方が勝ちな」
近藤 「嫌確かにシミュレーションだけれども!!」
松平 「要するに機械によって架空の事件の現場がバーチャル映像で再現される
その現場の状況から事件を分析し 犯人を突き止めろ」
近藤 「バーチャルっつったってとっつぁん 現場に存在するあらゆる物は物証に成り得るんだぜ
そんな細かいところまで再現できっ・・・」
突如、現前に現れるリアルな山と川の風景
近藤 「何だコレ スゲェ!! まるで本物の河原に来たみてーだ!!」
松平 「バーチャルと侮る事なかれ ここは警察庁だぞ
最新のシミュレーション機器が揃ってる
そして何よりここには過去のあらゆる事件のデータが記録されてる
その膨大なデータを元に作られた事件は本物となんら変わらねーよ」
- 58 :
- 「青い玉?」
!!!!こいつ、やっぱわかってねえ!!!!
なんで??なんでだ??
・・・あ、
あらためて、桂の顔をよくよく見ると、・・・・ああ、正面からじゃ見えねえんだ。
後ろ頭に、変な位置で刺さってる。計算か、そうじゃないかは分からないが。
・・・後ろから見ないと、分からない。
「ふーん。」
ってことは、なに?隠してることがあるよなあ。さっきから、こそこそと、その態度。
なあ、桂。
「風が強かったから、飛んできたの?」
「?」
「飛んできて、勝手に刺さったの?」
- 59 :
- 「??」
「それとも、転んで刺さったのかなぁ?」
「???」
ああ、やっぱり分かってない。
顔にハテナがいっぱいだぜ。
・・・だったらさあ、教えてやるよ。
そっと、その後ろ頭に手を伸ばし、頭からそれを抜き取る。
「!!」
それを、桂につきつけて、言ってやる。
「こ、れ、」
「!!!!!」
驚愕の表情。
やっぱりな。こいつ・・・
- 60 :
- 「何?今知ったの?」
青い玉を凝視する桂。
なんて顔で見てるんだ。・・・むかつく。
「ふーん。知らなかったんだ。てことは、さあ。
自分で買ったわけじゃねえよなあ。もらったものでもないよなあ。」
くるくると、その簪をもてあそぶ。・・・いえよ。自分の口で。
なのに、桂は真っ青な顔して、ぶるぶると震えだした。
何で言わねえの?
- 61 :
- 「じゃあ、なんで」 てめえ・・・
「頭についてんの?」 いい加減にしろよ。
「誰が刺したの?」 誰に会ったんだよ。
「何で、気付かないの?」 気付かないほど、夢中なことしてたんだよなあ?
「どうして答えないの?」 答えらんねーんだろ。
「言えないことなの?」 それとも、いいたくないのか?
桂は無言。見るのはこの青い玉。俺の顔は見もしない。
もういいよ。
- 62 :
- 「あっそ。知らないんだ。じゃあ、いらねーよな」
俺がそう言ったとたん、青い玉に飛びついていた。
はあ???!!!意味わかんねーーーーよ!!!
何でそんな必死にさあ!!
桂をひょいとかわす。簡単に桂はバランスを崩し、どさっと、床に倒れ込んだ。
何でそんなにこれが欲しいわけ。
大切なわけ??!!
その青い玉を、よく見てみると、・・・模様かと思ってたものが、違うものだったことに気付く。これ、この赤い染み。「あ」
・・・まさかなぁ。
答えられなかったのは、転んで頭打って、例のごとく記憶喪失・・・なんて事はないよね?でも、こいつならやりかねない。天然だし。
一応聞いとこう。
「お前、転んで・・・頭打ったりしなかった?」
と、素直に、首を横に振る。
- 63 :
- 松平 「事件のあらましはこうだ この河原で死体が発見された
第一発見者は近所に住む老婆
川に洗濯に来ていた所川上からコイツが流れてきたと証言している」
松平が覆いを取るとそこには二つに割れた巨大な桃と桃の紋の入った羽織を着た男性死体
「どんな事件だァァァァァァァァ!!?」
近藤 「オイぃぃぃぃ警察庁一体どんな事件データに入れてんだ
明らかににっぽん昔話がデータに混じってんだろーが!!」
松平 「過去 似たような事件があったらしくてな」
近藤 「あるワケねーだろ!! だってコレ桃太郎じゃん!!
桃太郎冒頭しょっぱなから真っ二つにされてんじゃん
そんな昔話聞いた事ないよ!!」
土方 「まだこいつが桃太郎と決まったワケじゃねーだろ」
近藤 「いやどうみても桃太郎だよね 桃に入ってるし」
土方 「現場に於いて余計な先入観は致命的なミスを招くぞ」
近藤 「いやだっておばあさん川へ洗濯に行ってたよね」
土方 「とっつぁん この桃はバーさんが発見した時から割れていたのか?」
松平 「この状態で川上から流れてきたのをバーさんが引きあげたとの証言だ」
近藤 「え? はじめんの このバカな事件捜査すんの?」
- 64 :
- 土方 「妙だな この状態で川を流れていたのだとすれば桃太郎の身体は濡れていてもいいはず」
近藤 「いや 今お前桃太郎つったっよね 桃太郎って認めたよね」
土方 「それに大の大人が入った桃をバーさんが一人でここまで引きずってこれるか
明らかに不自然だ」
近藤 「いや 大の大人が桃に入ってる時点で不自然だけど!!」
土方 「おそらく第一発見者はバーさんだけじゃねェ
そして発見した時桃はまだ割れてなかったはずだ
とっつぁん 時―さんのアリバイは」
松平 「山へ芝刈りだ」
近藤 「それアリバイなの!? そんな怖いカンジの物なの!?」
土方 「とっつぁん ジーさんの芝刈りの鎌と桃太郎の血・・・DNA鑑定頼む」
近藤 「何恐ろしげなこと考えてんだ!!」
土方 「この桃太郎の致命傷と桃の割れ方は一致している
おそらく同じ刃物によるものだ
つまり桃太郎は桃を割る際同時に斬られた
すなわち桃太郎を殺ったのは桃を割った ジーさんとバーさんだ」
近藤 「オイコレ何つー昔話ぃぃぃ!?」
- 65 :
- ・・・・
あっそ。
頭打ってないんだ。じゃ、お前はおかしくないって事ね。
ていうかさ、じゃあ、
「・・・血が付いてる。」
誰の血よ。これ。
「!!!!!」
もう、泣きそうな顔の桂。
ああ、そうなの。
お前は知ってるんだよね。この血の主も、この青い玉の送り主も。
知ってて、まだ言わないつもりなんだよな。
もうさあ、おまえさあ。むかつくんだけど。すごく。
- 66 :
- 「俺さあ、言ったよね。」
何度も、何度も言ったよね。
「こそこそされんの、嫌いだって」
でもさ、お前は直らないんでしょ。
直す気もないの?
だったらさあ、当然だよなあ。
「これ、捨てるから」
「!!!」
「いや・・・・っ」
瞬間、桂が初めて声を出した。“いや”って言った。
はあ???!!!ふざけんなよ、てめえ。
俺に、飛びついてきた。
その勢いに、俺は反射的に腕を高く上げた。絶対、今の桂には届かない位置に。
なのに、分かってるのに、必死になっちゃって。
そんな泣きそうな顔しちゃって。
- 67 :
- いかにも、大切なものですって感じで、しがみついてくる。
桂。お前さあ、
お前ってホント、
最っっ高
に、ムカツク!!!!
「なんなの?欲しいの?何で?」
だったら、いえよ、何で欲しいのか。
誰からもらったのか、そいつと何したのか。
何で何も答えないんだよ。だから、いけないんだろうが!!!
ああ、桂がついに泣いた。涙があふれ、止まらない。
こんなに、哀しそうに泣くのは、初めてかもしれない。
ああ、・・・・なんだよ。
誰のために、それって泣いてるの?
誰を思い出してるんだよ!!!!!てめえ!!!!
- 68 :
- 今日、俺が一体どれだけお前のことを・・・
それなのに、お前は、一体誰と、何してた?
そんで、そいつを思い出して、今、泣いてる。
俺のことなんて見ちゃいない。
もう、ホント、限界。
心が、折れた。
「てめえ、いい加減にしろよ」
本気で怒った。もう、止まらない。
「誰にもらったか、言え」
答えは分かってる。だけど、お前の口から言え。
- 69 :
- 「た、かす、ぎ・・・・っ・・・」
やっぱりな・・・・・・・・!!!!!
頭が怒りで真っ白だ。
とにかくここには居られない。冗談じゃない。たまらない。
玄関に歩いていく。
「まっ・・・」
か細い声で、俺の方にやってくる。
でも、もう俺、お前の顔見んのもいやだから。
つらいから。無理だから。
っていうか、殺しちゃいそう。
- 70 :
- 土方 「故意ではない おそらく桃に人が入っているとは思わずに起こった事故
それ故二人は芝刈りに洗濯と言うアリバイ工作を・・・」
佐々木「それは違いますね
どうやら桃太郎と言う呪縛に縛られているのはアナタの方のようだ
それ故貴方は重大な証拠を見落としたのです」
土方 「何!?」
佐々木「あなたは「桃に入った男」「おばあさんの洗濯」「おじいさんの芝刈り」
この3つの事象だけで あたかもこの事件が
桃太郎冒頭で起こった悲劇と思いこんでしまったようだ
だがそれは間違いだ
何故なら・・・桃から誕生したばかりの桃太郎が何故あんなにデカイんですか!!」
近藤 「いや今更そこツッコムの!?
桃から生まれたのは無視できるのにそこはツッコムの!?
(目を見開いた土方)
何で衝撃受けてんだ!! んなモン全員気付いてたよ!!」
- 71 :
- 佐々木「この桃太郎は完全に成人です
彼は既に別の老夫婦に拾われ育てられていた
この汚れた身なり 一つとして残っていないきび団子から
彼は既に鬼退治を終えていた事がわかる」
近藤 「つーかアンタもおもっきり桃太郎に縛られてるだろーが」
佐々木「そうです この事件は桃太郎冒頭に起こったものではなく
全てが終わった後に起こった事なのです」
土方 「ならば何故奴は再び桃の中に・・・」
佐々木「この傷(眉間から腹まで一直線)は
確かにあのおじいさんとおばあさんに付けられたものです
しかし見て下さい ほとんど出血の跡が見うけられない
これは彼がこの傷を受けた時既に死んでいたことを証明している
つまり何者かが彼を殺害し あたかも桃太郎冒頭のくだりのように
もう一度桃に入れ川に流した
全ての罪をあの老夫婦になすりつける為に」
近藤 「何ややこしい事になってんの!? いいんだけど別にもう犯人誰でもいいんだけど」
- 72 :
- 「これは、捨ててくる。今日は戻らねーから」
とだけ言って、さっさと玄関を出る。
あの分じゃ、追ってはこれねーだろう。
っつーか、マジ、ぶっ殺したいんだけど、高杉のヤローも。
あんな桂も。
・・・・くそ・・・
まず、向かったのは、共犯者のところだ。
あのRは、全部知ってるに違いない。
ガラガラガラ・・・
「おい、R」
我ながら、怖い声だと思う。カウンターを拭いていたRがこっちを向く。
- 73 :
- 「まだ開店じゃないよ」
とぼけやがって。
「飲みになんか来てねえよ。さっき、ここに、包帯した男来ただろ」
これ見よがしに、青い玉をちらつかせる。
「さて、知らないねえ」
「すっとぼけんなよ」
「なんだってんだい。あんた。あたしにくってかかろうなんて」
「月子とあいつ、会わせたろ」
「あんたねえ・・・」
ふと、俺の手に持っているものを見つけて
「なんだいそりゃ。あめ玉かい?」と言った。
- 74 :
- これは、この存在を初めて見た反応だ。演技じゃない。
「・・・ホントにしらねえの?」
「知らないって言ってるだろ」
「ふーん」
これは、本当かもしれない。でも、だとしたら。
一体何処で?
「あいつさあ、何処に使いにやったって行ってたっけ?」
「大江戸スーパーだよ」
「どうも」
そう言って、俺はスナックお登勢を後にした。
- 75 :
- 余談 最後の誕生日 K
「すまん、銀時、遅くなって」
玄関を開けて。
なるべく、普段通りに言う。そうしようと思えば思うほど、どういう風に普段の自分は振る舞っていたかと思ってしまう。
さっきから、思考がまとまらない。
高杉に会って、
去っていった後を追ったら居なくて。
お登勢に、血だらけの割烹着を指摘された。高杉のことは、言わない方が良いと、言われて、血に濡れた割烹着を着替えた。
下の着物にも血が付いていたが、着替えるわけにも行かず、赤い着物で余り気付かないだろうから、割烹着だけを借りることにした。
もともと、割烹着はお登勢にもらったもの。全く同じものがあるから、と、新しいそれをもらい、着ていたものは、お登勢に渡してきた。
- 76 :
- お登勢は、銀時には俺がスーパーに酒を二本買ってきたことにすると言われた。
銀時をだますようで、心苦しいが、・・今日の銀時には言ってはいけないと思う。
心強い、二人で口裏を会わせれば、ばれることはない。
そうだ・・・。大丈夫。
いや、大丈夫なものか。
俺だって、戦地にいた。
自分を含め、仲間の怪我、傷、死、色々なものを見てきた。今更、血を見たくらいで、あわてるような人間ではない。
自分だって随分血を流したし、傷も負った。それは、銀時も高杉も同じ事。
・・・高杉。
だからこそ、
だからこそ、
大丈夫じゃないんだ。
- 77 :
- あの、出血は、致死量だ。
すぐに意識がなくなってもおかしくない。
いや、
すぐに、死んでも、おかしくは・・・は・・・
ドクッ・・・
ああ、胸が、痛い・・・なんで・・・
あいつのことなど・・・
俺が斬ると言ったじゃないか。
何時死んだっておかしくないんだ。攘夷志士は。
もしも・・・のことがあったとしても、
俺には関係ないことだ。
そうだ。
そうなんだ。
- 78 :
- なのに、なぜ・・・
こんなにも不安なんだろう。
あいつが気になって仕方ない。
あの怪我で、一体何処へ・・・
無事なのか・・・
それより、なんで、そんな怪我でお前はあそこにいた・・・
なんで、
何をしに?
「どうした?」
「はっ?」
なかなか上がらない俺を不審に思ったのだろう、銀時が出てきた。
- 79 :
- 佐々木「全ては事件の時系列を誤認させ捜査を攪乱させる為の偽装工作
真犯人は相当狡猾な人間でしょう
しかし おかげで犯人を絞り込む事ができた
鬼退治を終えた桃太郎の置かれていた状況を考えると真犯人は・・・
彼のお供をしていた 犬 猿 キジ
この中の誰かしか考えられません」
近藤 「絞り込むもクソも登場人物それしかいねーけど!!」
佐々木「彼等桃太郎一味は鬼が島から財宝を持ち帰ったと聞きます
しかし平和のために戦ったとはいえ所詮は畜生と桃から生まれた化物です
財宝を前にしてそれを独占しようと争いを繰り広げていた事は想像に難くない」
近藤 「桃太郎 何処まで汚せば気が済むの!?」
佐々木「とりわけ これだけ狡猾なわなを貼れるのは さ・・・」
沖田 「猿じゃねーよ
確かに桃太郎一味の中では猿が一番利口で狡賢い
だがアンタは桃太郎の呪縛に縛られて肝心な事を見落としてるんじゃないか
猿は・・・金使えねェ」
近藤 「ドヤ顔で普通の事言ったァァァ!! だんだん推理がバカになってきたよ!!
(目を見開く佐々木)
そしてなんで衝撃の顔だぁ!! てめーらもう普通の事言い合ってるだけだよ!!」
- 80 :
- ドクドクドク・・・
妙に緊張する自分が居る。落ち着け。今は、とにかく。
「あ、ああ、ちょっと転んで足が・・・靴を脱ぐのに戸惑ってしまって」
「え?大丈夫?見せてみろ」
ああ、優しい銀時。
ごめん。俺は今、嘘を付いた。
「なんもねーみたい。痛い?」
「いいや、大丈夫だ」
と、二人で居間に行く。
どうやら、金時(銀時との子供)に、ミルクをあげていてくれたらしい。金時は、よく寝てる。その横に、松之助が居る。
寝てる金時をつつくのが好きらしく、ぷにぷにと頬を押している。ほっとする。なんだか、すこし、和む。
「ミルク、ありがとう。上げてくれたんだな」
- 81 :
- 「おう。お前戻ってこねえし。ちょっとぐずったからよ。それにしても、人使い粗いRだな!今日くらい気をつかえっての!なあ!」
ぷりぷり怒っている。
今日は、俺の誕生日。なにやら銀時が計画してくれているらしく、さっきもそれをしきりと見せたがっていた。その、途中で呼ばれたんだ。
「そういえば、さっき見せたいものがあるっていってたが・・・」と言うと、
心なしか、銀時の頬が赤く染まる。
「うん・・・そうね。そうなんだけどね。夕飯の後にするよ」という。
「そうか、じゃ、何か作る」と、キッチンに向かった。
正直、ほっとする。
今、何かすばらしいものをもらったとしても、とてもじゃないが、喜べない。不快な気にさせたら困る。
すこし、落ち着かないと・・・
ああ、自分の手が冷たい。
- 82 :
- 「あれ、それ、どうした?」
突然、銀時がきいてきた。居間から、キッチンの俺に声を掛ける。
一瞬、ヒャッと思った。な、何が??何かおかしいか??
「ああ、下のRにもらったのか。あいつ・・・俺には何にもよこさねーくせに」
などと言っている。何だ、何のことだ??
あ、もしかして、割烹着のことか?
ええ??全く同じものなのに、気付くのか??どこかに名前でもあるのだろうか・・・
などと、割烹着をわたわた見ていたら、
「はあ?なにしてんの?」と言われた。
「あ・・・ああ」
「?」
なんか、怪訝な顔をする銀時、こういう時、銀時は本当に鋭い。神掛かった勘を発揮することがある。
さっきより、若干近づいてきて、言った。
- 83 :
- 「頭のどうしたってきいてんの」
「あ、頭・・・」
ぱっと、頭を抑える。
乱れているのだろうか。あ、ソファーに倒されたから・・・。
「風が強くてな・・・」と言って、キッチンの鏡を見に行く。
だが、映っていたのは、いつもと変わらぬ、自分の髪型。やや乱れてはいるものの、ちゃんと結い上げて赤い簪で止まっている。
「そんなに、乱れては居ないと思うが」
そんな俺に、更に近づいて銀時は言った。
そんな目で見ないでくれ・・・
既に、俺を疑っている。
「青い玉。どうしたって言ってんの」
「青い玉?」
は・・???
青い玉?玉ってなんだ。分からない。
きょとんとした俺に、ものすごく嫌そうな顔をした。
- 84 :
- 沖田 「そう言う事さ つまり真犯人は猿以外 犬かキジかのどっちかって事だ」
近藤 「犬もキジも金使えねーけど」
のぶめ「それは違う その中に犯人はいない
あなた達は桃太郎に縛られるあまり何も見えなくなってる」
沖田 「んだと 何で犯人がいねーと言い切れる」
のぶめ「めんど臭いから」
近藤 「最終的にめんど臭ェで済ましたァァ!!
(土方、佐々木、沖田、目も口も開いて呆然)
今まで散々並べてたゴタクは何だったの!?
そりゃ衝撃も受けるわ!! そんな顔になるわ!!」
土方 「まぁ 犯人が誰にせよいずれも畜生 事情聴取も出来ねェ
別の線から犯人をたどるしかねェ
とっつぁん 桃太郎の検死結果がみたい
この切り傷が死んだあとに付けられたものとするならば
本当の致命傷がどこかにあるはずだ
傷の形状によってはそこから犬 猿 キジ 誰の犯行か導き出せるかもしれねェ」
松平 「トシ 残念ながらこの切り傷以外に目立った外傷はねェ
ただレントゲンで気管に妙な物が映った
団子状の何かだな」
近藤 「・・・いや団子状の何かって これ完全にきび団子詰まらせて死んでんじゃねーかァァァァァァ!!
こんだけ苦労させて結局食い意地で死んじゃったの!?」
- 85 :
- 「ふーん。」と、俺の顔をじろじろ見る。
で、
「風が強かったから、飛んできたの?」
「?」
「飛んできて、勝手に刺さったの?」
「??」
「それとも、転んで刺さったのかなぁ?」
「???」
銀時、わからないよ。
からかうのは止めてくれ。
言いたいことがあるなら、言ったらいいだろう。
そっと、俺の後ろ頭に手を伸ばす。
「!!」何か、頭から抜き取った。
いつもの簪かと思ったら、髪が堕ちてこないので違うんだろう。
- 86 :
- 銀時が、ものすごく怖い顔で、俺に、それをつきつけた。
「こ、れ、」
「!!!!!」
目の前には、見たこともない、
青い玉の付いた、簪
「何?今知ったの?」
は・・・・
息が出来ない。苦しい。
ドクドクドク・・・・・
心臓の音がうるさい。
- 87 :
- 「ふーん。知らなかったんだ。てことは、さあ。
自分で買ったわけじゃねえよなあ。もらったものでもないよなあ。」
くるくると、その簪をもてあそぶ。
ああ、もうだめだ。
こいつは、もう気付いてる。気付いていて・・・・
もう、正直に、言おう。
と思ったのに、言葉が出ない。
ああ。そうだ。
俺が買ったんじゃない。もらったわけでも。
勝手に、刺していったんだ。俺が、気付かないうちに。
高杉が
- 88 :
- どうして。
どうして・・・・・
思考がぐるぐる回って、追いつかない。
ああ、あいつが来た時を、思い出してみれば。
「じゃあ、なんで」
あいつは、いつもの通りの態度だったじゃないか。
何しに来た、と言えば、
“てめえに、会いに来たと言ったら、信じるか?”
それに対して、俺は、・・・
“信じない!!用がないなら、出て行け!!”
って言ったんだ・・・
「頭についてんの?」
俺に会いに来た?なぜ?一体何で?
- 89 :
- 「誰が刺したの?」
狂ったような、口づけをして・・・
“桂。桂、俺を見ろ”
“言われなくても、見ている!”
見ていたじゃないか。分からないのか。
「何で、気付かないの?」
“桂。聞いてくれ。一度しか言わねえから”
高杉、お前、なんでヅラって呼ばなかった?
お前が、桂なんて呼ぶ時は。
決まって、真剣な時だった・・・・。
- 90 :
- 「どうして答えないの?」
“桂、本当のことを言う。・・・俺は、お前が、お前のことが、・・・好”
・・・なんて言おうとしたんだ。
今更、何を言うつもりだったんだ。
「言えないことなの?」
・・・本当に、お前は・・・
俺に会いにきたのか?
馬鹿みたいに、死にそうな怪我をしながら。
俺に、それを、渡すために・・・そのためだけに?
・・・なんで?
今日が、俺の・・・誕生日だから・・・?
「あっそ。知らないんだ。じゃあ、いらねーよな」
- 91 :
- 「!!」
銀時のその言葉に、とっさに、飛びついていた。
その簪、返してくれ!!あいつが、命を駆けてくれたもの!!よく、見たいんだ!!
だが、力が入らない身体。
簡単に銀時に、振り払われる。どさっと、床に倒れ込んだ。
・・・・
「あ」
突然、銀時が声を上げた。
そして、
「お前、転んで・・・頭打ったりしなかった?」
さっきの、詰問調の冷たい、言葉ではなく、やや心配そうな声を出す。
その声に、少しほっとして、銀時を見る。ああ、なんでか、心配してくれている。
だから、ゆっくり首を横に振った。怪我何かしていない。だって、もともと転んでもいないのだから。
- 92 :
- 佐々木「これだから凡人は・・・
偽装工作から考えて彼の死に他者が関わっているのは明らかでしょう
それはきび団子ではない きび団子を食べた猿の糞ですよ
猿は糞を投げるでしょう やっぱり猿が犯人だった
私は正しかった エリートは正しかった エリート万歳」
近藤 「いやエリートの発想じゃねーし!!」
土方 「アホか きび団子を桃太郎に食わせるのは普通に考えてジーさんとバーさんだろ
奴等は桃太郎の持ちかえった財宝に目がくらみ
きび団子で奴を窒息死させたんだ
やっぱり犯人はジーさんバーさんだ 俺は正しかったんだ マヨネーズ万歳」
近藤 「お前がさっき言ってたの違うジーさんバーさんだよね!!
さり気にジーさんバーさん乗り換えたよね!!」
「猿です」
「ジーさんバーさんだ」
「猿です」
「ジーさんバーさんだ」
「猿のジーさんバーさんです」
「ジーさんバーさんの猿だ」
「今一回猿になりましたよね」
沖田 「わかりやしたよ じゃあ二人の間を取ってオカマの猿でいいでしょ」
近藤 「何処の間取ってんだ ジーさんバーさん何処行った!?」
のぶめ「じゃあ 猿アンド飛鳥のジーさんバーさんでいいわよ」
「いや チャゲどこいったんですか」
佐々木「こうなったら白黒ハッキリつけましょう
長官 畜生でも結構です 桃太郎一味に事情聴取させて下さい」
松平 「あぁ 奴らならここだ」
桃太郎の死体レントゲン写真の腹部に犬・猿・キジの姿が・・・
近藤 「容疑者全員食われてるじゃねーーか!!」
- 93 :
- と、とたん。
銀時の顔が険しくなる。
「?」
「・・・血が付いてる。」
「!!!!!」
た・・・・高杉・・・
やっぱりお前・・・・
「俺さあ、言ったよね。」
ああ、銀時、ごめん。
「こそこそされんの、嫌いだって」
知ってる。
知ってて、俺は、・・・・
- 94 :
- 「これ、捨てるから」
「!!!」
それだけは、
それだけは、
・・・だめだっ!!!
「いや・・・・っ」
その簪めがけて飛びつけば、銀時が高く高く腕を上げた。
ああ、今の俺には届かない。この位置がもどかしい。
「なんなの?欲しいの?何で?」
何でって・・・・
だってそれは、あいつが
高杉が・・・・
命をかけて、俺に・・・
- 95 :
- ・・・形見かも・・・しれない・・・
涙が出た。止まらない。
心が折れた。
「てめえ、いい加減にしろよ」
本気で怒った時の銀時の声。
「誰にもらったか、言え」
言ったら、返してくれるのか。何でも言う、なんでもするから。
お願い・・・返してくれ・・・・
- 96 :
- なのに、声が、出ない。は・・・言わなくては。出せ、声を・・・
「た、かす、ぎ・・・・っ・・・」
瞬間、
銀時の目がぎらっと光って、ものすごく怖い顔をして、玄関に歩いていった。
「まっ・・・」
おぼつかない足で追いかけると、さっさと靴を履いた銀時が、
「これは、捨ててくる。今日は戻らねーから」
と言って、さっさと出て行った。
あああ・・・・
止めてくれ・・・・
なのに、追いかけたいのに。身体が言うことを聞かない。
俺は、なんて馬鹿なんだ。なんて事をしてしまったんだ。
- 97 :
- あの、憎々しいほど、高飛車な、隻眼を思い出す。死の淵にあって、それを感じさせないあの光。
“よう”
いつものように、軽く言って。ああ、でも、今思えば、
お前によく似合うあの派手な着物。真っ赤だったな。
“桂、本当のことを言う。・・・俺は、お前が、お前のことが、・・・好”
言いかけたとたん、お前の体重を感じた。
意識のないお前の、全体重。
それは、紛れもなく、お前の命の重さ。死んだ仲間を、担いだ時も、まとまりのない、ああいう重さを感じたっけ。
粗い息の下、お前は、お前を見ている俺に“俺を見てくれ”と。
聞いているのに、“聞いてくれ”と。
もう見えていなかったんじゃないか。俺の声は、聞こえていたのか?
- 98 :
- あの激しい口づけは、のどの渇きを癒すため。もう、本能でしたに違いない。うまそうに、吸っていた。
体中の血が、流れ出ていたから。
・・・高杉・・・
“松之助を頼む”と、はっきり言った。
お前が、あの子の名を呼んだのは、初めてだ。認めてくれたのか、あの子を。
自分の子を。
あの人の名前を付けた、息子を。
最後、去り際に
“安心しろ、こんなことは、もうしない”
と言った。ああ、お前は知っていた。もう、二度と会えないことを。
だから、そう言ったんだ。
それなのに、俺はなんて言った。
- 99 :
- そんな覚悟をしたやつに。
“当然だ”
って言ったんだ。つめたく。そっけなく。
なんで・・・・何で気付かなかったんだろう。
“しばらく、連絡が取れない。だが、俺のことは心配するな”
そう言ったな。心配するなって。それは、後で俺が気付いてから、それでも、大丈夫だという意味か?
もう一度、会えるのか?それとも、ただの、気休めなのか・・・
どちらにしても、俺はそのとき、高杉に、
“はあ?何で俺がお前の心配なんぞするんだ”
といって、突き放した。
・ ・・ああ、俺はなんて馬鹿なんだ。自分のことしか考えていない。愚か者だ。
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