2013年17難民91: もしも桃子が愛理にRーを教えたら@難民11 (647) TOP カテ一覧 スレ一覧 2ch元 削除依頼
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もしも桃子が愛理にRーを教えたら@難民11


1 :2013/03/09 〜 最終レス :2013/09/25
まとめサイト
http://wiki.livedoor.jp/eroka1/
前スレ
もしも桃子が愛理にRーを教えたら@難民10
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1358950072/

2 :
誰も立てないみたいだから立ててみた
のち気付くかな

3 :
仲良しな二人
http://www.youtube.com/watch?v=qPoUhApRF5I
↑をヒントに何かお話下さい

4 :
立てたのか


5 :
[ あなたと私にサクラサク ] (あいり)

3年前の春、私と舞美ちゃんが暮らし始めた春。
私が高校に進学し、舞美ちゃんは大学に進学するのを断念し『社会人』になった春。
「舞美ちゃんね、私……大学に行こうと思うんだ」
そう話したのは夏。舞美ちゃんは、「愛理だったら絶対に大丈夫だよ」と背中を押してくれた。そして、
「わたしには出来ないなぁ。不器用だもん」
と、ちょっと寂しそうに笑っていた。
そして2年前の春、意を決して舞美ちゃんに話してみた。
「一緒に大学いかない?」
って。舞美ちゃんとキャンパスライフを謳歌したい、という不純な動機も混ざっていたけれど、桃の存在も大きかった。
かなり難しいと思われていた大学と芸能活動を両立させていた。
みやもそれに続いた。
だったら舞美ちゃんも……と思ったから。
舞美ちゃんはすぐには返事をくれなかった。
答えが返ってくるまでに2カ月を要した。

6 :
「愛理、わたしも進学してみようと思う。
器用じゃないから両立は大変かもしれないけれど、その経験と出会いはこれからの人生にプラスになるんじゃないかな」
桃とみやに相談してそう決断してくれた。
そして、
「一人だとサボっちゃいそうだから愛理と一緒の大学、学部に行こうかな」
予備校に通う時間はなく、私と舞美ちゃんの二人三脚での大学受験が始まった。
舞美ちゃんはすっかり高校の勉強の内容が頭から抜けていて最初のうちは大変だったけど、
持ち前の努力と根気強さでカバー、すぐに成績は上向いた。
一緒に受験頑張ろうね、といつも励まし合った。
しかし去年の12月、ちょっと困ったことが起きた。
ダメ元だった推薦入試で私が一足はやく合格してしまったこと。
舞美ちゃんは喜んでくれたけれど、一緒に一般入試を受けられなくなってしまった。

(つづく)

7 :
スレ立てありがとうございます!
もう立たないかと思ってました

8 :
更新きたぁぁ!!

9 :
更新ありがとうございます!
卒業シーズンらしいやじすず!続き期待してます!

10 :
ジェジュンはカラムに似てる

11 :
ほす

12 :
くこか

13 :
5g

14 :
(・∀・)っc■~

15 :
>>9
いやらしいやじすずに見えたw

16 :
>>6

「愛理合格おめでとう!!」
舞美ちゃんはとびっきりの笑顔で喜んでくれ、思いっきり抱きしめてくれた。
だけど私は複雑。
「舞美ちゃん、ひとりで大丈夫?」
笑顔が凍りつく。
「が、がんばる!!」
心配だった。
私だけが受かって舞美ちゃんが落ちたら……。
その時でも私が大学に行くことは変わりないけれど、やっぱり舞美ちゃんと通いたい。
私ができることは勉強のお手伝いをすること、あとはできるだけ家事をやること。
「ありがとう、愛理! わたし頑張るよ」
それにしても……舞美ちゃんが机に向かってる姿が美しすぎる。
4年間、この光景を独り占めしたいな。

17 :

そして2月の半ば、大学の合格発表の日。
ふたりで掲示板の前に合格発表される朝9時より30分前に張り込む。
「愛理、やっぱりダメだよ。英語で時間切れになって最後の問題解けなかったよぉ……」
2週間前の試験当日からそればっかり。
私の袖を握って不安そうだった。
「大丈夫。この2年間頑張ってきたでしょ?」
「そうだけどぉ」
「私は信じてる。このキャンパスにふたりで通えることを。あ、職員さんが来たよ!!」
9時2分前、合格者の受験番号が書かれている大きな紙を二人がかりで運んできた。
そして脚立を使って紙を掲示していく。
「わたしダメ、見れない……愛理お願い」
私の腕にしがみつき俯く。
こんな弱気な舞美ちゃんは初めてかもしれない。
「わかった。えっと、2070412……」
偶然にも私と舞美ちゃんの誕生日が合わさった受験番号。
落ちるはずがない。
ほら。

18 :
「どうしたの、愛理? ちょっと苦しい」
舞美ちゃんに全力で抱きついたから。
「4月からもよろしくね、舞美ちゃん」
「え、え、え?」
舞美ちゃんは顔をあげて掲示板を覗き込む。
「むぎゃっ!!」
私の口から変な声が洩れた。
舞美ちゃんに全力で抱きしめられたから。
「愛理、愛理、わたし、わたし……」
「おめでとう」
舞美ちゃんは私の腕の中で全力でワンワン泣いた。
釣られて私もちょっとだけ泣いた。
目立っちゃったけど……まぁいっか。

19 :
合格発表のあとはふたりでショッピング。
それもただのショッピングではない。
だって、値札の額がとんでもないことに。
いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅうまん……。
舞美ちゃんの目が点になってる。
ただのペアリングよりもケタが一つ違っている。
デパートに入っているジュエリーショップで、ふたりでマリッジリング選び。
大学の入学式、校門の前で舞美ちゃんからプロポーズしてもらうんだ。
しかもしかも、入学式はちょうど私の誕生日!
だから舞美ちゃんがリング代は全部出してくれると言っているのだけれど。
「私も半分出そうか?」
「大丈夫!! ふたりにとって大切な日だもの。ここはわたしが――」
「そう? ありがと」
「え、あ……うん」
さすが舞美ちゃん、わたしの見込んだだけの人であった。
ふたりでいくつか候補を絞り、私は店外で待機。
最後は舞美ちゃんが選んでくれる。
そのほうが貰ったときの楽しみが増えるもの。
1時間ほど待って、やっとのことで舞美ちゃんが出てきた。
その顔にはやや疲れの色が出ていた。
「難しかった……」
「これであとは4月を待つだけだね♪」
舞美ちゃんの腕にしがみついた。
貰うリングを左手薬指つけて4年間通おうと決めている。舞美ちゃんもそうしてくれるよね?
もう私たちはずっとずっと一緒だから――。

20 :

――とはなかなかそううまくはいかないもの。
春のハロコンでの舞美ちゃんのハロプロメンバーや研修生からの人気が凄まじい。
ライバルは真野ちゃんだけではなかった。
そりゃあ舞美ちゃんは美人なのにかわいらしくて優しくてスタイル良くてダンスはキレキレでセクシーで……。
いいところをあげたらきりがない。
今日くらいは大目に見てあげる。
私も春から大学生、それくらいの余裕は見せないと。
……。
ひとりで誰もいない℃-uteの楽屋に戻るとなんだか落ち込む。
我慢をしてみたもののやっぱり寂しいし、沸々と湧いてくる嫉妬心。
そんな自分に自己嫌悪、化粧台に突っ伏してしまう。
「あーいり、なに落ち込んでるの」
「ま、まいみちゃん!? どうしたの?」
いつの間にか楽屋に入ってきてた。

21 :
「そろそろ愛理が寂しがってるころかなーって。違った?」
「……遅いくらいだよ」
「ごめんね。じゃあ、ギューっとしてあげる」
椅子から立ち、舞美ちゃんの胸に飛び込む。
「愛理、かわいい。大好きだよ」
髪を撫でてくれる。
もっと舞美ちゃんに甘えたくなる。
「……キスして」
「え、でも……」
「して」
「……愛理のわがままさん」
「舞美ちゃんだけにだよ」
そして二人の唇が重なり……。

22 :
「舞美お姉ちゃんいる!? いつか約束していた髪のセットをして欲しいんだけど……あ」
なんてタイミングでスマイレージの竹ちゃんがやってくる。
「し、失礼しました!!」
バタン!!
顔を真っ赤にして楽屋のドアを思いっきり閉めて去っていった。
「ど、どうしよう……」
慌てる舞美ちゃんを余所に、どうやってもう一回キスをねだろうか考えている私がいた。

(おわり)

23 :
待ってたぜ

24 :
おっと来てたな
素敵な春だね

25 :
http://www.youtube.com/watch?v=0h7owCwLB4M&feature=youtu.be
↑を参考にみやももを希望
のち頼むよw

26 :
>>25
非公開

27 :
http://www.dailymotion.com/video/xyc9wz_20130319tsugunaga-momoko_music?start=4
じゃあ↑でよろしく!!

28 :
age

29 :
rrrrrr

30 :
ここの愛理ちゃん的には今回のゲキハロの舞美の役はどうだったんだろうな

31 :
[  ももの一番イイところ ] (みやび)

あ、それはアイドルなんでNGで。
そういって指で×印をつくる。
もものテレビでの下ネタに対するスタンスはいつもそう。
最近はぶっちゃけるアイドルも多くなってきた中でそのスタンスを保ち続けている。
事務所の指示がそうなんだけど、
大学なんかでのプライベートでも数人でいるとガールズトークにすら乗ってこないで
適当に愛想笑いをしながら相槌を打っている。
国民的アイドル「ももち」を徹底している。
そう、ももと二人きりでいるとき以外は。

32 :

二人きりの時間は甘々。
「みやぁ、チューしてぇ」
目を潤ませて、腕を首の後ろに回してくる。
あのガードの固い「ももち」はどこへやら、おねだり上手。
「あたしからしないとダメ?」
「みやがしてくれないとやだぁ」
ももが大げさに首を横に振る。
「しょうがないなぁ」
そう口では言ってみたものの、正直我慢も限界。
こんなかわいいももを見たらもっとみんなメロメロに……だめだめ、このももはあたしだけのもの。
ヒトリジメ。
「ねぇ、ももってさ、どこが感じるの」
一通りキスを終えてから尋ねてみた。
「え、どこって……その、ええと」
口ごもる。
ああなるほど、そうだね。

33 :
「ここでしょ?」
パジャマのズボンに手を入れ、下着の上からももの大事なところを擦ってあげる。
「ひゃっ!」
「ここ意外で」
「ここ意外、って言われても」
桃が息を荒くしながら答えに詰まり、その間も下着は水気を増している。
「早く答えないともものエッチな体液で下着が伸びちゃうよ」
「体液言わないの。もう。えっとね……どうだろう。難しい」
「難しいって。いろいろあるじゃない。胸とか、首筋、鎖骨、腋、おへそとかなんか」
「そんなみやはどこなのよ」
「そりゃ胸に決まって……って何を言わせるの!」
「へへー、みやのお胸、感度抜群だもんね♪」

34 :
調子に乗ってる。
これは罰を与えないといけない。
手をズボンから引き抜き愛撫中断。
「えー、みやぁつづきしてよぉ」
「ももが舐めた態度を取るから。ほら、まずは指のキレいにしてよ」
桃の愛液で濡れた指を桃の口に押し当てる。
最初は口を尖らせて抗議の態度をとったものの、すぐに舐め始めた。
「どう、おいしい?」
「自分のなんておいしくないよぉ。みやのがいい」
「あとでね。さ、どこだか思いついた?」
「うーん、どうだろう。自分的には……全部かな」
「全身性器ってこと?」
「……どこでそんなひどい言葉を覚えてくるの」
「弟のエロ本」

35 :
「そんな言葉使っちゃだめだよ。全部ってのはね、みやにしてもらうことは全部気持ちいいってこと。
みやにエッチなことしてもらうと嬉しいし、ドキドキして、あとね、幸せな気分になるんだ。
すごく満たされる。それが気持ちいい。体の純粋な気持ちよさはその次かなぁ」
目を細めてとびきりの笑顔をくれた。
だめだ。やっぱりこの子は一生独り占めしないと。
「ありがと。天国に連れて行ってあげる」
「きゃー♪」
そうだよね。
エッチって何をどうするかよりも誰と愛を確認するか、それが大切だものね。
絶対ないけれど、他の人とエッチしたとしても、ももとエッチするよりも満足感を得られないことは確実。
桃だってそうだよね。
……。
「浮気すんじゃーねーぞ」
「ん?」
あたしだってももとするのが最高なんだから。

(おわり)

36 :
>>30
[ 王子様は力持ち ](あいり)

今回の舞台のプランを聞いたときはとても驚いた。
同時に3つの劇場で行われ、主となる劇場はあるもののメンバーそれぞれが
入れ替わり立ち替わりで3つの劇場を移動する、という仰天のモノだった。
でも舞台のプロデューサーさんが「Berryzは日替わり主役をやってのけたからね」と言われたらメンバーのハートに火がつかないわけがない。
冬コンと春コンの合間、舞美ちゃんは大学受験が控えていたけれど仕事にたいする弱音は一切吐くことなく試験をやり遂げた。
そしてメンバー全員で舞台に集中するわけだけど、ひとつ、ううんふたつ気がかりなことが。

37 :

「舞美ちゃん、台本見せてー」
もらった台本を見せてもらって問題点が浮かび上がった。
まずひとつ。
舞美ちゃんのメイン劇場が別。
私は舞ちゃんと岡井ちゃんと一緒で、舞美ちゃん、なっきぃはひとりずつ。
まあ寂しいけれど我慢しよう、お仕事だもの。
そしてもうひとつの気がかりなこと。
こっちが大切。
台本を見せてもらうと、舞美ちゃんはボーイッシュな王子様系女生徒会長に憧れる生真面目な美少女生徒会書記。
……は? なにこのミスキャストは。
私の王子様でもある舞美ちゃんが生徒会書記側を演じるのもさることながら、
なんで私を起用しないの、書記役で!?
最高に恋する乙女を演じてみせるのに。
「愛理、どうしたの。眉に皺寄せて」
「この書記役、絶対に私がいいのに。そして舞美ちゃんが生徒会長。完璧じゃない!?」
「わたしもちょっとだけそう思った。でも、台本全部読んでみて」
「ん?」

38 :
台本を読み進める。
「うわぁ……」
声が漏れた。
なんと生徒会長は他の人が好きだったのだ。
その相手がよりにもよって……おっと、口が滑りそうになった。
「悲恋かぁ。舞台といえどズシーンと来るなぁ」
「でしょ。でもさ、舞台のいいところって非現実なところじゃない?
舞台の役になって、舞台の世界に生きる。普段と違う自分になれるところが楽しいと思うんだけど違うかな?」
「ううん、いいと思う。さすが」
舞台経験を積んでいる舞美ちゃん、考えが私の一歩先に進んでいる。
「あーあ、でもさ、舞台といえど舞美ちゃんと一緒の生徒会、やってみたかったなぁ」
「そうだね。でも、春から4年間、一緒の学生生活が待ってるからそれで許して。……受かればだけど」
「受かるよ、きっと」

39 :
舞台ではちょっとだけ離れ離れ。
役の上では他の人に恋をする同士。
だけど、私にとっての王子様は舞美ちゃん以外ありえない。
だからおねだりしてみる。
「ねぇ、舞美ちゃんお願いがあるんだけど」
「なに?」
「久しぶりに……お姫様抱っこして欲しい」
「あ……」
わたしのおねだりに舞美ちゃんの頬がほんのり桜色に染まった。

(おわり)

40 :
>>30
ざっくりとw
ちょっと浅いかな?

41 :
甘々で良いですなw

42 :
ありがとのち♪

43 :
鈴木愛理のエロ小説
http://megabbs.info/test/read.cgi/celeb/1221867740/

44 :
全身性器wwwwwwww

45 :
愛理大学生話読みたいね

46 :


47 :
[ それは幸せすぎる夢のようで ] (まいみ)

「舞美ちゃん愛してる」
「わたしも」
「へへ♪」
いつものような朝の一コマ。
起きる間際、ふたりでベッドから出るのを惜しむように抱き合ったりキスしたり愛の言葉を交わしたり。
なんとも贅沢で幸せすぎる時間。
「愛理、でも早く起きないとみんな来ちゃうよ」
「そうだね、名残惜しいけど……」
みんな、というのはわたしの両親に愛理の両親。
そう、今日はいつもとは違う特別な朝。
大学の入学式の朝。
朝食を済ませ、入学式に着て行くスーツに身を包む。

48 :
「舞美ちゃんとお揃い♪」
「色違いだけどね」
愛理はグレー、わたしは黒。
ついこの間まで制服を着ていた愛理がスーツに身を包むとは何とも感慨深い。
「舞美ちゃん似合うなぁ。うん、うん」
なんだか納得している様子。
「21歳で3浪だからね」
「そこ威張らないの。さ、出かけよう」
愛理に手をひかれて部屋を後にした。
そのわたしのスーツの内ポケットには大事なものが忍ばせてあった。
わたしと愛理の永遠を誓うものが。

49 :

外に出ると昨日までが嘘のようないいお天気。
「本当、昨日が信じられない」
空を見上げてそう呟くと、
「そうだね。まさかのパリ、そして念願の武道館!!」
と愛理が鼻息荒く返答してくれた。
「へ?」
「……なに間の抜けた顔してるの。昨日あんなに喜んだじゃない」
「うん、ごめん。空模様を見てたんだ」
「なんだ、天気か。舞美ちゃんらしくなくいいお天気ですこと」
ちょっと嫌味っぽくいう愛理もまたかわいらしい。
「……それにしても、入学式が愛理の誕生日じゃなくて残念だったよ」
「ねー。遅いと思ったらまさかの誤表記だったなんて」
そう、4月12日に入学式かと思いきや4月4日なんて。

50 :
「さて舞美ちゃん、本日が大学の入学式なのですがー、例の、その、あれの件はいかがなさいますか?」
歯切れが悪い。
なんだろう、と考えること数秒。
答えはわかったけど、とぼけることにした。
「なんのこと」
「なんのこと、って、あれだよ、あれ、ほら!」
愛理が左手薬指をアピールしてくる。
わかってるよ。覚えてる。二人で交わした大切な約束だもの。
「さ、愛理の両親もうちの両親のきた! 行こう」
「ぶー」
愛理は不貞腐れながらついてきた。
楽しみはもうちょっとだけとっておきたいもの。

51 :

式も滞りなく終わり、会館の外に出る。
さすが大学、高校と違って会館の収容できる人数がすごい。
「愛理さぁ、校門に行こうって、どうしたの」
「どうしたもこうしたも! 舞美ちゃんガード甘すぎ! もっと危機感もたないと!」
「なんのこと?」
「すぐに連絡先教えないようにって事務所からも言われてるでしょ」
「そうだっけ」
式が始まる直前、愛理がお手洗いに行って待っていたとき、話しかけてきてくれた女の子二人組と少し会話が弾み、連絡先を交換しようとした。すると、
『すいません! もうすぐ式始まるんで失礼しますねー』
と愛理がすごい勢いでお手洗いから飛び出してきて、わたしの手を引いて会場の奥へと連れて行った。
「同じ学校の子だからって油断しちゃダメだよ。
どこに落とし穴があるかわからないんだから。
友達はさ、うちらのキャンパスに行って授業始れば自然とできるよ」

52 :
「そうだね」
ちょっと警戒し過ぎな気もするけれど、わたしの身を案じてくれてのこと。愛理に感謝しなければ。
インターネットやソーシャルネットワークはわたし達にとって全てが都合のいいものではないのだから。
「あった」
ここ二日間の雨でだいぶ散ってしまった桜並木を抜けると、有名大学にしては地味といってもいい正門にたどりついた。
だけど新入生やその家族が記念写真を撮り合っていてとても賑やかだった。
「ついたね、正門」
「うん」
そこで訪れる沈黙、気まずいったらありはしない。
「愛理、あの」
「うん」
愛理と向かい合う。こちらの目をじっと見つめてくる。
頭が真っ白になる。口の中が乾いて仕方ない。
どうやってプロポーズしようか、あんなに練習したのに。

53 :
「舞美ちゃん」
「ん?」
「さくらの花びらを見すぎるとさ、くらっとくる」
お得意の愛理のダジャレ。ちょっとつまんない。だけど。
「なにそれ、つまんない」
「そうだね、即興だもの」
お互いに笑いが漏れ、肩の力が抜けた。
そうだ、今の気持ちを素直に伝えればいいんだ。
「わたし、愛理に出会えて本当によかった。
 いま、全部のことが幸せすぎて信じられない」
愛理といっしょに大学に行けること。
愛理といっしょにアイドルができること。
愛理が大好きなこと。
愛理がわたしを大好きといってくれること。
悔しいこと、大変なこと、切ないこと、いろいろあった。
でも、いまだったら笑って振りかえられる。
愛理の存在が、愛理の歌が、「舞美ちゃん」とわたしの名前を呼んでくれるその声。
わたしの全てをかけて大切にしたい。

54 :
スーツの内ポケットにある指輪を手に取る。
「愛理、わたしと――」
ずっとずっと一緒にいてください。
夢にまで見た言葉を口にしようとしたまさにそのとき。

『そう、これは夢なんだよ。幸せすぎる悪い夢。だから起きなよ、舞美ちゃん』

え?
「ん、誰?」
愛理でも、うちの両親でも、愛理の両親でもない声。メンバーの声でもない。
でもすごく懐かしい、胸の奥がチクチク痛む声だった。
そうだ、この声は――。
舞美ちゃん、舞美ちゃん、どうしたの!?
愛理の声がだんだん遠くなっていき、意識が暗転した。

55 :

「……夢か」
目が覚めると見慣れた自室の天井に朝日が差し込んでいた。
時計を見ると、6時10分。
まだ寝ていたいけれど、どうせあと15分で学校に行く準備をしなければいけない。
はぁ。
ため息が出てしまう。
あまりにも幸せな夢は、見ているときはよくても起きると身をよじるほど切なくて辛い。
いっそのこと、こんな夢なんか見ない方が幸せかもしれないと思いつつも、また見れることを切望して眠りにつくわたしがいる。
もはや中毒。
「大学、いかなきゃ」
今日は新年度のオリエンテーション、いくら就職活動で忙しい大学4年生とはいえでないわけにはいかない。
ベッドから起きようとする前、枕を確認する。
1個だけ。シングルベッドなのだから当然なのだけど。
夢のように、大好きなあの子の枕はここにはない。
もう一度ため息をつき、わたしは「幸せすぎる」ことのない現実世界への一歩を踏み出した。
「舞美ちゃん、舞美ちゃん」とあの子がわたしの名前を優しく囁いてくれることのない現実世界へ。

56 :
今度はいつ会えるだろう。
CDのイベント抽選権、あたるといいな。
握手会、今度こそ話せるといいな。

わたしの大好きな、鈴木愛理ちゃんに。
わたしの大好きな、『Berryz工房』の鈴木愛理ちゃんに。

[『What's your name?』につづく ]

57 :
マンネリがひどかったんで新章に挑戦してみます
書き終えることができるかわからないけれどよかったら応援してくださいw

58 :
いったい何がどうなってるんだ?(´・ω・`)

59 :
ねぇ、ももってさ、どこが感じるの

60 :
これはwktkな展開?

61 :
超展開キタ――(゚∀゚)――!!

62 :
もうこの段階で面白いんだがwktk!

63 :
おお
これはみやももも期待していいんだろうかwktk

64 :
[ What's your name? ]
Episode.0

ソワソワ。
明日は誕生日なのに。
イライラ。
明日は誕生日なのに。
ローカルテレビ局の楽屋で彼女がする話題の中心に私がいない。
中心どころか、その欠片すら見えない。
そのことが梨沙子にとって大いに不満だった。
「でね、ももは大物芸能人Uさんに公園で台本とはいえ抱きつかれちゃったわけ。
 そんな話なんて聞いてなかったからテレビで見た途端に血の気が引いて、
でも次の瞬間には沸騰して、隣でうたた寝をしているももの胸倉を掴んで詰め寄ったんだけど――」
はいはい、ケンカしてそれで仲直りエピソードでしょ。
最後まで聞かなくてもわかる、耳タコもいいところだよ。
バージョン違いで何度聞かされたことか。
もも、桃、桃子、嗣永桃子。
彼女――雅の口からその言葉が紡がれる度に、その子のことを幸せそうに話をする度に梨沙子の胸はチクチクと痛んだ。

65 :
「あのね、みや。明日なんだけど……」
「明日?」
「うん、明日。時間空いてる?」
「明日かー。そうだね、明日は大事な用があるんだよなー」
「お仕事?」
「違う」
否定するも、口元は笑ってる。
またか。
またももなんだ。
心に鋭い痛みが走る。
せめて明日だけは、大切な十代最後の誕生日だけはちょっとだけでいいからみやを独占したかったのに。
唇をかみしめ、梨沙子は俯いてしまった。

66 :
「ま、楽しみにしてて。さて、もうそろそるスタジオに入らないと」
何を楽しみにしてればいいの?
またどうしようもないデートでの惚気話?
それとも楽しい楽しいキャンパスライフ?
そんなのもうたくさん――。
口の中に血の味が広がった。
「そうだ、これ外さないと。マネージャーさんがうるさくて仕方ないもんねー」
雅は残念そうに薬指からシルバーリングを外し、大切そうにケースにしまった。
それは桃子が雅の誕生日プレゼントに永遠の愛を誓ったものとして贈ったのだということを梨沙子は知っていた。
梨沙子にとって、それは目ざわり以外の何物でもなかった。

67 :

マリッジリングなんてくだらない。
ただのごっこ遊びじゃん。
あんなくだらないものなんてなければ。
スタジオに向かう廊下を歩きながら、梨沙子の頭の中は雅が外した指輪のことでいっぱいになっていた。
あんなくだらないものなんてなければ。
あんなくだらないものなんてなければ。
だったら。
なくなってしまえばいいじゃない。
「ご、ごめん、みや。ちょっとお腹痛いからトイレ行ってくる」
「大丈夫? あたしもついていこうか」
「ううん! すぐすむからみやはスタジオに行ってて」
「そう? 生放送だから遅れないでね」
雅と別れ、梨沙子はトイレに――向かわなかった。
向かった先は楽屋。

68 :
口が渇く。
先ほど切った唇はヒリヒリする。
すごく悪いことだってわかってるけれど、もっと悪いのはみやなんだから。
私をこんなに苦しめるみやが悪いんだからね。
ドアの脇では局のスタッフが見張っていたが、本人の楽屋ということですんなり入れた。
灯りをつけ、素早く雅のバックからジュエルケースを取り出し、そこから指輪を取りだした。
こんなものさえなくなれば。
汗ばむ手にそれを握り、足早にトイレに向かった。

それがある出来事のきっかけであった。

(つづく)

69 :
早速キタ━(゚∀゚)━!

70 :
キター!

71 :
>>68
「ない、うそ、ないよ!!」
収録が終わって楽屋に戻り、雅は真っ先に指輪をつけようとケースを開けたところなくなっているのに気がついた。
「あれ、確かにケースにしまったよね、おかしいよ、違ったっけバックの中だっけ」
そういって今度はバックの中をひっ繰り返して探し始める。
みやらしくないね、そんなに焦っちゃって。
梨沙子は溜飲が下がる思いだった。
「ない、ない、あーどうしよう」
今度は頭を抱えてその場に座り込み、鼻をすすり始めた。
さすがにやりすぎたかな。
梨沙子は罪悪感を覚え始めた。
もういいかな、この辺で。
隠した場所を教えようとしたその時、
「言えない、ももに指輪を無くしたことなんて……別れようって言われたらどうしよう……」
またもも?
いっそのこと別れようって言われればいいのに。

72 :
「あのね、みや……私、さっきトイレで見かけた気がする」
「え……」
雅は打ちひしがれてボロボロになった顔をあげた。
「ほら、収録直前にトイレにいったじゃない? そのときにキラッと光るなにかがあったような気がしたけれど」
「うそ……ちょっと行ってくる!!」
雅は一目散にトイレに駆けて行った。
その姿は梨沙子が知っているクールな雅のものではなかった。
いや、ちょっとマジ過ぎない?
梨沙子の背筋に寒いものが走り、膝が震え始めた。
本当のことを話したら、どれだけみや怒るだろう。
想像するのが嫌なくらいだった。

73 :

「ない、ないよ! ねぇ、梨沙子どこ!! どこにあるの!?」
遅れてトイレに行くと、みやが大声をあげながら指輪を探していた。
個室をあけ、ゴミ箱を探し、用具入れの中まで――。
「みや、やめて!!」
「どうして? みつからないじゃん!!」
「もういい!! やめてよ!! やめて……」
梨沙子は衣装にあるポケットから指輪を取り出した。
「ごめんね。これ隠したらみやがびっくりするかなーって思って……」
ももとの仲が妬ましくてやった、と本音を言うことができなかった。
ただのイタズラ、と誤魔化せば雅も笑って許してくれる。
そう梨沙子は期待したのだが。
無言で梨沙子の手のひらにある指輪を手に取ると、両手で抱きしめて雅は大きくため息をついた。
そして、

74 :
「……出てって」
「え?」
雅は冷たく梨沙子に言い放った。
「もうあんたの顔なんて見たくない。あたしがこれをどれだけ大事にしてるか知ってたでしょ。サイテーだよ」
「ごめん……」
「いいよ謝らなくて。だから、あたしの前からいますぐ消えて」
「みや……」
「いいから出てけよ!!」
梨沙子は視界が涙でかすみながらもトイレから駆けだしていった。
そのまま楽屋へ入り、自分のバックだけとって衣装から着替えることなくふたたび楽屋から飛び出した。
雅へのすまない気持ち。
このようなことをしでかした自分への怒り。
そして、桃子への妬ましい気持ち。
それらで梨沙子の頭の中はゴチャゴチャだった。

75 :
飛び乗った電車の中、派手な衣装はやはり目立ったが落ち込んでいる梨沙子にとっては気にならなかった。
それよりも、頭からどうしても離れない思いがあった。
ももがいなければ。
ももさえ、私たちBerryzにいなければ。
……そうだ、あの子に相談してみよう。

(つづく)

76 :
うおおお続き気になるううう

77 :
wktkが止まらん

78 :
>>75

梨沙子はスマホを取り出し、某SNSを通じて「あの子」に相談する。
『こんにちはbookmarkerさん。相談したいことがあるのですが』
相手のハンドルネームは『bookmarker』、日本語で「しおり」の意味で本を読むのが好きでそう名乗っているらしい。
プロフィールでわかっていることは、10代女性で関東在住で趣味は読書、くらい。
梨沙子は『彼女』と2年前に知り合った。
そのきっかけとなったカテゴリーは『オカルト・魔術』。
『惚れ薬の作り方』というもので意気投合し、それからふたりでやりとりをする仲となった。
実際に『彼女』が教えてくれた惚れ薬は効果があった。
……梨沙子自身ではなくて、友達だったが。
友達に作り方を教えて、それをバレンタインで本命チョコに混ぜたところ付き合うことできた、と。
この惚れ薬といっても基本的に大したものではない。
市販の風邪薬に栄養ドリンクに蜂蜜とスッポンエキスなど混ぜたもの。
それだけだったら何とも胡散臭い話。

79 :
だが、そこに自らの血液を混ぜて一晩中呪文を唱える、というのはいい線をいっていると梨沙子は評価した。
自らが賭けた「代償」、その大きさが魔力になるという点でだった。
とはいうものの、この惚れ薬は万能ではない。
まったく気のない相手に対して好意を一方的に押し付けることはできない。
梨沙子の友達がうまくいったのは相手もそれとなく意識をしていたからであって……。
そうでない相手だと副作用が起きてしまう。
梨沙子が雅に使ってみたところお腹を壊した。
『彼女』が想い人に使ってみたところ、鼻血を出されたとか。
魔術というものは成果がでなくてもなんらかの代償が生じてしまい、そこが難しいところだった。

80 :
梨沙子がメッセージを入れてから10分後、『彼女』がログインしてきた。
『こんにちはpear。どうしたの、改まって』
『彼女』はフランクに返してきた。
梨沙子のハンドルネームである『pear』は英語で果物の梨のこと、名前から取った。
『ごめんね。今日ね、すごく嫌なことがあったんだ。
MがTからもらった指輪を見せびらかしてきたんだ。明日は私の誕生日なのに、信じられない』
『M』というのは雅で『T』は桃子のことだった。
反省をしているはずなのに、自分に不利なことを書くのはためらわれた。
『彼女』からも責められたたそれこそ逃げ場がなくなってしまう。
梨沙子が『彼女』と深く語り合うようになったのは、
『彼女』が以前に好きだった同性の先輩に告白をして振られたという過去を語ってくれたこと。
私も同じようなことあった、とカミングアウトし色々と語り合った。
さすがにBerryz工房というアイドルグループの菅谷梨沙子であるとまでは言えなかったが。

81 :

そして二人の呟き合いは夜半まで続いた。
Tのブリっ子ぶり、Mの無神経ぶりを思う存分批判したところで、
これから先どうすればいいのかという話に移っていった。
『別れさせちゃえばいいんだよ。pearだったらそれくらいのクスリ作れるでしょ?』
『作れたとしても使うのは無理。「忘れ薬」なんてリスク高すぎ』
惚れ薬の対になるのは、「嫌いになる」薬ではなくて「忘れてしまう」薬。
好きだったことを忘れてしまう薬。
ただこれはあまりにもリスクが高く、好きだった相手のことだけでなく、
友達、家族、趣味に対しての「好意」も忘れさせてしまうという事例もあるらしい。
雅に対してはもちろん、桃子に対しても使うのをためらわれた。
『それならTの存在を消しちゃえばいいじゃん』
『死を与えるには自らの死を持って臨まなければいけない、でしょ。不可能』
相手をRには自らの命を賭けなければいけない。
そればさすがにバカバカしい。

82 :
『違うよ。タイムワープの魔法だよ』
『彼女』は突拍子もないことをコメントしてきた。
『そんなことできると思う?』
存在は聞いたことがあるし、
この世界にはその証拠となりえる「オーパーツ」と呼ばれるその時代では作るのことのできない、
未来人が持ち込んだと思われる技術、遺跡が存在している。
……だけどそれはあくまでも風説の域をでない。
そのオーパーツだって実は昔の人が作れたよ、とも聞くし。
『pearならきっとできるよ』
『できたとしても、どうやって存在を消すの』
『簡単。Tをオーディションで落としちゃえばいいんだよ。
そうすればpearとMの邪魔はいなくなるでしょ』
なるほど、確かにそうすれば……。
ん、なんだろう、このすごい違和感は。

83 :
梨沙子はその違和感の正体を見破るのにそれほど時間は要さなかった。
なんでTが、桃子がオーディションを受け、なおかつ受かったことを知っているのか。
そのような話題は一度も上げたことがなかった。
『なんでbookmarkerはTがオーディションを受けたこと知ってるの?』
すると、いままですぐ帰ってきた返信がパッタリと途切れてしまった。
なんど呼びかけても応答がなかった。
15分経ち、諦めてログアウトしようとしたら、
『隠していてごめん。あたし、pearが梨沙子だってこと知ってた』
『いつから?』
『知り合って割とすぐ』
ショックだった。
面識はないけれど友達、ううん、それ以上の存在だと思っていたのに。
『あなたは私のことを知ってるようだけど、私はあなたのことを知ってる?』
『知ってるよ』

84 :
誰だろう。
学校の友達?
事務所のスタッフさん?
ハロプロのメンバー?
わからない。
ただただ気味悪かった。
『それで梨沙子にお願いがあるんだ』
『それよりまずはあなたの正体を明かしてからでしょ。そうじゃないと金輪際話さないから』
すると、『彼女』はログアウトした。
なんだ、この程度なんだ。
ため息をついたとき、こんどは電話の着信があった。
表示された名前を見て驚いた。
確かに『彼女』のことを梨沙子は知っていた。

85 :
「……もしもし」
『いままで黙っていてごめんなさい』
「いいよ。確かに正体を明かし辛いのわかる気がする。
で、お願いって何。かなえるかどうかわからないけれど、聞くだけ聞くから」
そして、『彼女』は梨沙子に『お願い』の内容を告げた。
「うそ……なんであなたが」
梨沙子が驚いたその内容。
舞美もオーディションで落とすことだった。
まさか『彼女』の口から出てくるとは思わなかった。

(つづく)

86 :
「ひゃっ!」

87 :
おもしれーじゃねーか

88 :
すげええええええええええええええええええすげえよ

89 :
>>85

梨沙子は部屋の灯りを消し、お気に入りのアロマキャンドルに火をつけて悩み始めた。
タイムワープの魔法といってもいくつか種類がある。
1番難しいのからあげると、己自身が過去に直接行く方法で名づけるとしたら「ドラえもん方式」。
これにはそれこそ22世紀の卓越した科学技術が必要(とはいっても実際に出来るとは思えない)だったり、
もしくは胡散臭い天才科学者がつくった原子炉を搭載した車を猛スピードで飛ばして時空を超えたり。
……無理無理、それこそSFの世界だ。
他にも時間と時間の歪(ひずみ)を探し出す手もあるが、見つけるのに相当な労力がかかるうえにどこの時代に飛ばされるかわからない。
いやだよ私、縄文時代に飛ばされるのは。
それに帰ってこれるとは限らないし。
逆に1番簡単なのは、幽体を過去に飛ばして、過去の自分に囁きかける方法。
あの時にこうしておけばよかった、という時にピンポイントに使える。
本人は囁きを「神のお告げ」、ほかにも「天の声」「虫の知らせ」「閃いた!」などと様々な呼び名をつけて受け取る。
ただ問題点があって物理的に直接作用するわけではないので、その囁きを当人が実行する、実行できるかどうかの保証はない。

90 :
梨沙子はこの「神のお告げ方式」を考えたが、オーディション当時の梨沙子は小学2年生、
できることといったら自分でオーディションをやっぱり受けないって親に駄々をこねさせるくらい。
桃子や舞美をオーディションで落とさせることなど不可能。
「だったら……」
あまり乗り気ではないが今回では使えそうな方法があった。
「神のお告げ方式」が当人に対してならば、他人に対して囁きかける「悪魔のささやき方式」だった。
幽体を過去に飛ばし、耳元で吹き込むのだ。
俗にいう「幽霊」は霊感が強い人がこの姿が見えてしまうケースだとか。
ただこれも確実に相手が実行してくれる保証はなかった。
それに支払う代償も小さくはない。
……しょうがない、今回はこれしかないんだろうな。
せっかく伸ばした髪ともさよならか。
梨沙子はため息をつき、物置に今回使う薬、材料を取りにいった。
囁く相手はずばり、2002年のプロデューサー・つんPさん。
(つづく)

91 :
面白い楽しみ

92 :
愛理ちゃんおたおめー

93 :
>>90
マンドラゴラの根、ヤモリの干物、冬中夏草……などなど。
魔力を一時的に増幅させられるものを物置から引っ張り出し、ミキサーにかける。
「うわぁ……」
思わず声が漏れるほどの悪臭。色は灰色、とても人が飲めるものとは思えない。
このミキサーは捨てなきゃ……ごめんなさい、ママ。
せめてもと味を整えるために(本当はよくないのだが)、カルピスの原液、ハチミツ、ミロの粉を混ぜてみた。
心なしか色と匂いがマイルドになった気がした。
「よし、これで」
ミキサーからビーカーに移し、200ccほどのその薬を鼻をつまんで飲む……というか流し混んだ。
あまりのひどい味に舌も喉も胃も腸も悲鳴をあげ、思わずうずくまる。
「……こ、これでどうにかなるかな」
体が熱い。芯が疼く。魔力がみなぎっている証拠だ。
あとは……。

94 :
梨沙子は姿見の前でため息をついた。
髪を切ってそれをイケニエとして使用する。
本当はこんなことで髪を切りたくないけれど、
他の選択肢が指、鼻、耳、目玉だから仕方ない。
乙女の髪の毛は魔力に満ちている。
20cmほどバッサリ切るとボブカットぽくなっていた。
悲しい。
明日朝一で美容室に行かないと。
「さて、あとは」
東欧産の五芒星の描かれたカーペットを部屋に持ち込んだ。
そして部屋に飾ってある三角帽子にローブを身につける。
これは気分を高めるためだけど。
本場ヨーロッパには魔力を高める「本物」が売っていると聞くが
とてつもない値段がついていて手が出せるものでない。
本棚から魔導書を取り出し、部屋の明かりを消して特別な蝋燭に火を燈す。
カーペットを部屋の中心にしき、万遍なく髪を散らす。
最後は……いつもこれが一番嫌なんだけど。

95 :
机の引き出しから蛇のレリーフが柄に刻まれているナイフを取り出した。
このナイフはすごい逸品で翌日には傷が綺麗さっぱり消えているというアイドルにとってなんともありがたい。
ただ痛いこと、気分悪いことには変わりないし貧血状態になってしまう。。
左手首にナイフを当て、少し力を入れて引く。
白くついた筋からみるみるうちに赤い球があふれ、腕から垂れそうになる。
準備完了。
魔導書を右手に持ち、左手を五芒星にかざし、血液がちょうど中心に垂れるようにする。
呪文を唱え、意識を集中させて過去に行けるように願う。
あとは体力勝負、運勝負。
過去に飛ぶのが速いか失血死するのが速いか。
過去に行けますように。
過去に行けますように。
お願いだから……。
過去に行ってどうするかはまだ決めていないけれど。
そして意識が混濁した。

96 :

……ここはどこ?
目を覚まし梨沙子は床に倒れていた。
天井を見上げると、慣れ親しんだいつもの天井、つまり梨沙子の部屋だった。
そこに日差しが注ぎ込んでいる。
失敗した?
だるい体を起してみると違和感を覚えた。
本棚には昔好きだったけど捨ててしまったはずのマンガが並んでいて、
昔使っていたはずの勉強机があってそこには小学校の教科書、ノートがあった。
成功だ。
ガッツポーズを決め、さあここから事務所まで移動しないと。
ガチャ。
部屋の扉が開いた。
「……」
梨沙子がいた。ランドセルを背負った8歳の梨沙子が。
一緒ビクッとしたが大丈夫、幽体の私の姿なんてよほどのことがない限り見えないから。
「お姉ちゃん、誰?」
見えてるようだった。
忘れてた、私は昔から霊感が極めて強いんだった。

(つづく)

97 :
wktk

98 :
おもしれええ

99 :
ドキドキする展開
相談相手はあの子かな

100 :
>>96
『えっと、お姉ちゃんは……』
どう説明しよう。
未来から来ました、と正直に話そうか。
それともお茶を濁そうか。
悩む梨沙子の背筋に冷や汗が流れる。
「お姉ちゃん、もしかして魔法使い!?」
『え?』
「だってお姉ちゃんの恰好、魔法使いだもん!!」
トンガリ帽にローブ、確かに魔法使いの(日本的ではあるが)格好だ。
『そ、そうだよ。お姉ちゃんは魔法使いなのさ!!』
なぜだか語尾がミッキーマウスの吹き替えごとく変になってしまった。
「じゃあ魔法使いのお姉ちゃん、何しに来たの?」
少女は小首をかしげた。

101 :
『う……』
痛いことを聞く。
存在は誤魔化せたものの再び答えに窮する。
『こ、困った人を助けに来たのさ』
「ほんと!? すごーい!! お姉ちゃんはいい魔女なんだね。どれみちゃんみたい!!」
『どれみちゃん』は昔好きだったアニメの登場キャラクター。
魔女好きになるきっかけだった。
『だから急いでるんだ。ごめんね』
「ねぇ、お姉ちゃん。私もひとつお願いしていいかな?」
『なに?』
「えっとね、いまオーディション受けてるんだ。ハロープロジェクト・キッズオーディションっての!!
 いまの審査が通ったら次は最終オーディションなんだけど、合格する魔法かけて!!」
『よーし、わかった! ピリカピリララ ポポリナ……』
大丈夫、あなたはちゃんと合格するから。
……ちゃんと合格するけれど。
『やーめた』

102 :
「え、なんで」
『こういうことは魔法に頼らないで自分で頑張る、って毎週のようにテレビでやってるでしょ。
だから梨沙子ちゃん、頑張って。お姉ちゃんも応援してるから』
合格した後、魔法のおかげで合格したって信じてしまったらのちのち本人が傷つくことになるだろうし。
「うん、頑張る!!ありがとう、お姉ちゃん」
『バイバイ、梨沙子ちゃん』
その無垢な笑顔が眩しくて、胸がチクチク痛んだ。

103 :

幽体というのは移動はひどく不便。
基本的に透けているからバスとか電車は乗り放題だけど、透けているから集中しないと乗り物から落ちてしまう。
空を飛ぶという手段もあるけれどひどく魔力を消耗する=滞在時間が短くなるし、それに。
空を見上げると無数の物体、でなくて幽体。
それは成仏できなかった人たちの未練、怨念。
ぶつかったら憑依されて大変なことになるので地上からの移動が一番確実。
いつものようにバスに乗り電車を乗り継ぎ事務所にたどり着いた。
それだけでクタクタになったが、ここからが勝負。
梨沙子は事務所の入り口の扉を透過し、目指すはつんPの部屋へと急いだ。
つんPの部屋は社長室の隣に個人オフィスを構えていた。
『失礼しまーす』
いなかったらどうしよう、と思ったけれどタイミング良くサングラスをかけたつんPさんはデスクにいた。
わ、若い……。
何やってるのか覗いてみると、作詞作業だろうか、ブツブツつぶやきながら詩をノートに書いていた。
「『いつもいつまでもどんなにたっても』……うーむ、語呂わるいわぁ。
『どんなに』じゃなくて『何年』のほうがええんちゃう?」

104 :
これって娘。さんの曲だ。
って、感心してる場合じゃなくてオーディションの選考やってよ!!
「落ちサビどないしよ……普通じゃつまらんし誰かにラップしてもろうたらどやろ……」
だめだ、一向にオーディションの選考をやる気配がない。
囁かないと、悪魔の囁きを。
言葉に魔力を込め、一文字一文字しっかりと。
『つんPさん、つんPさん』
「ん?」
つんPは振り返り梨沙子と目があった。
あわてて梨沙子はその場からよけ、つんPの目線から避けた。
大丈夫、つんPさんには私は見えてないみたい、目線が追ってこないもの。
『あのぉ、そろそろキッズオーディションの選考をやらなくていいんですか?』
「おお、せやった! そろそろやらんと山ちゃんうるさいからなぁ」
山ちゃんというのは社長の上の会長さん、オーディションの全権を握っていると噂されている人だった。
つんPは引き出しからブリーフケースを取り出し、そこに入ってる履歴書を取り出す。
そして部屋にあるテレビをつけ、参加者のビデオを見始める。
一緒になって見始めると、ちらほらと見知った人が現れた。

105 :
めぐの目力すご!! 千奈美は相変わらず黒いなぁ。 千聖かわいい……。
そしてつんPは履歴書の端に○、×とつけていく。
しばらくして桃子がスクリーンに現れた。
今みたいな女芸人キャラでなく、どちらかといえばクールで目はギラギラ輝いていた。
「この子賢そうやなぁ。残してみるか」
『そ、そんなことないですよ! 根暗だし協調性皆無ですよ』
「協調性ないんか。そいつは困ったなぁ。でもそれも味とちゃうん?」
そう言って桃子の履歴書に○をつけた。
『ちょ、ちょっと!!』
「まぁええから。次いこ」
つんPは何事もなかったかのように選考を続けた。
みやモデルさんみたいでかわいい!! 茉麻そういえば茶髪だったね、懐かしい。
またしばらく立つと、今度は舞美が現れた。
『あの子』が落として欲しいと言っていたが――。

106 :
「この子は将来えらいべっぴんさんになりそうやね、うんうん」
『べ、べっぴんさんになっても中身は超天然ですよ』
「そうか、そのギャップたまらんな」
舞美の履歴書には花丸をつけた。
『そ、そんなぁ』
梨沙子の囁きはまったくつんPには届かなかった。
こうなったら最後の手段。
梨沙子の目線の先にはシュレッダーがあった。
それにかけてしまえば――。
梨沙子の耳に悪魔のささやきがあった気がした。
「みんな一生懸命やん、なぁ」
『え?』
まるで梨沙子に話しかけるような口調だった。
「この子たちの将来かかっとんねん。だから俺もしっかりと選んでやらんと思っとんのや」
目線があった。

107 :
『あの、こちら見えてるんですか?』
「ほんーのうっすらとな。べっぴんな魔女の姉ちゃんが見えるわ」
『……すいません』
うっすらとでも見えるということは非常に霊感が強い証拠。
でもあれだけ長年にわたって作詞作曲をこなすわけだし不思議でもない。
「姉ちゃんもなんだかの事情あるんかもしれんけど、これだけは譲れへん。
 それがプレデューサーのせめてもの責任や」
なんだか悔しいくらいカッコ良かった。
「それに見てみ、この子たち。みんなキラキラしてるやん」
そう言って画面を見ながらつんPは目を細めた。
――菅谷梨沙子です。ミニモニ。じゃんけんぴょん歌います――
梨沙子だった。
撮影時7歳の梨沙子がたどたどしいながらも必死で歌っていた。
桃も舞美もきっと同じ気持ちだったんだろう。

108 :
魔法は人のためになることに使う。
魔法は悪いことには使ってはならない。
自分で決めたことなのに、どうしてこうなったんだろう。
悔しくて情けなくて熱いものがこみあげてきた。
このまま大人しく帰ろう。
帰って、みんなに謝ろう。
ももにも、舞美にも、あの子にも。
『……ごめんなさい。私、帰ります』
「またな。姉ちゃんにはきっとどこかで会える気がするんや」
つんPは履歴書を置いて梨沙子に手を振った。
『当たりますよ、きっとそれ』
そう微笑み返したとき、ガガガガガガと耳触りな音が聞こえてきた。
「あ、あかん!!」

109 :
見るとつんPさんの履歴書を置いた場所はとんでもなく悪く、シュレッダの入り口。
何枚かの履歴書が巻き込まれて裁断される音がした。
『ちょ、ちょっと!!』
このままだと大変なことに――。
『っ!!』
梨沙子に目まいが襲った。
元の世界にもどされるサインだ。
だめ、このままじゃ……。
そこで意識が暗転した。

110 :

「梨沙子、梨沙子ってば」
「ふぇ?」
「ふぇ、じゃないよ、ボーっとして。もうすぐコンサート始るよ」
「ごめん」
佐紀に言われて梨沙子は我に返った。
あれ、今まで何してたっけ……そうだ、今日は渋谷でのコンサートだった。
メンバー、それにスタッフさんに囲まれていて、気合い入れをするところだった。
「ここからツアーも後半戦、自分を信じてメンバーを信じて頑張りましょう」
そこで舌うちが聞こえた。
「みや、こんなところでしなくても」
「あーごめんね、はいはい」
茉麻の注意にたいして雅は反省の色など微塵も見えなかった。
みや、いったいどうしたの、私の知ってるみやはこんな……ううん、こうだ。
最近何をするにもつまらなそうだった。

111 :
「みんな、頑張ろう!! 佐紀!!」
「千奈美!!」
あれ? この順番だったっけ?
「茉麻!!」
「……みやび」
そこで場が静まった。
「次は梨沙子の番でしょ」
千奈美に注意された。
そうだったけ……ううん、そうだ。
何をボケっとしてるんだろ。
年齢順じゃないか。
「もう、仕切り直すよ……佐紀!!」
また佐紀から始まった。

112 :
「千奈美!!」
「茉麻!!」
「……みやび」
「り、梨沙子!!」
「愛理!!」

え!?
おかしい、絶対おかしい。
いないはずの人がいる。
そしていたはずの人がいない。
浮かんでくる2つの顔。
だけど、どうしても名前が浮かんでこない。
あなたの名前は何?

「Berryz工房……」
『行くべっ!!』
(episode0.おわり)

113 :
…こんな感じのお話になります
どうでしょうか?

114 :
ヤバイ面白すぎる
のちさんやっぱ凄いわ
続きが楽しみすぎる

115 :
どうもこうもないっすよ
どんどん続けちゃって下さい

116 :
面白すぎてヤバイ
更新があるかもと思いながら
毎日夜中に何回もこのスレを見る日々がまた始まってしまうw

117 :
まとめの人こないかなー

118 :
>>112

episode.1

舞美が籍を置く教育学部4年のガイダンスが行われる6号館の大講堂、
601教室に来てみたところまだ来ている学生はまばらだった。
それもそのはず、まだ始まる時間まで30分ある。
お決まりのように最前中央に座る。
みんな敬遠するけれど、どうせ授業を受けるなら前の方がお得じゃない.
話は聞きやすいし、ノートも取りやすい。
気も引き締まるから居眠りすることも少ない。
ほら、Berryzのコンサートだって最前中央のほうが絶対に楽しいし。
それが舞美の考えるところだった。
さて、親友が来るまでしばらくかかることだろうし、何をして時間をつぶそうか。
スマホをいじる?
買ってから1ヶ月経つけれどいまだに慣れない。設定は後輩にやってもらったほど。
ガラケーに戻そうかと思ったけれど勿体ないのでできないでいる。
読書するにも本はない。
こういうときは……。
一応周りを確認、よし、人はいない。
トートバックから取り出したのはフォトアルバム。
そこに飾ってあるのはもちろん。
「はぁ、愛理ちゃんかわいい……」

119 :
愛理ちゃんの生写真にため息が出てしまう。
制服姿の愛理ちゃん、サンタコスチュームの愛理ちゃん、新曲の網タイツ姿の愛理ちゃん……。
どの愛理ちゃんもかわい過ぎて困ってしまう。
写真の愛理ちゃんもさることながら、実物のかわいさは奇跡的。
顔が小さくて、目が大きくて、華奢。
だけどステージでの愛理ちゃんは誰よりもキラキラ輝いて、その歌声は心に響きいつも泣きそうになる。
決して手が届く存在ではない。
でも、夢の中だったら。
『舞美ちゃん、舞美ちゃん』。
いつもわたしの名前を優しく呼んでくれ、誰よりも甘えてくれる。
作ったご飯をおいしいおいしいって食べてくれて、一緒に歌やダンスの練習もする。
夜は恋人らしく甘い甘い時間を過ごす。
本当に、出来過ぎた夢。
恥ずかしくて誰にも言え

120 :
なかった。

でも、彼女は違った。
『自分も似たような夢、よく見るや』
勇気を出して打ち明けてみたら、そう言ってケラケラ笑った。
同じ教育学部に所属する彼女もBerryz工房が好きで、特に夏焼雅ちゃんが大好きで。
そして最近その親友で困ったことがある。
フォトアルバムの最後のページを開くと、わたしと彼女が遊園地に行ったときに撮ったツーショット。
彼女が謝るときの口癖、「ゆるしてにゃん」と手を猫の肉球に見立てて丸めるポーズだった。
彼女のことが気になっているわたしがいる。
わたしが好きなのは愛理ちゃんだけのはずなのに。
彼女はわたしの親友なのに。
「やっほー舞美。久しぶり。今年度も相変わらず最前厨なんだね……って、また愛理ちゃんの写真を見て悦に入ってる」
「も、もも!?」
舞美の隣に親友の桃子が顔を出した。
慌てて舞美はフォトアルバムを閉じた。

121 :
「見せてよ、生写真でしょ?」
緩やかなSじカーブを描く特徴的なツインテール(「ももち結び」という名前らしい)をした桃子はフォトアルバムを見せるようにせがんできた。
「ちょ、今日はちょっと都合が悪くて……」
あの写真を見られたら誤解されちゃう。
舞美はかたくなに拒否した。
「ふぅん、まぁいいけど。でも、事務所の撮るロークォリティな公式よりもアンオフィシャルのほうがいい写真とれてない?
ほら、みやなんかとくに」
「ダメだよ、あれは盗撮なんでしょ。絶対に買わない」
「……まったく、相変わらず曲がったことが大嫌いなんだから。あ、教務課の職員さんが来た」
定刻通りに来た教務課の女性課長さんは配布されていたプリントの通りに履修届け、
卒業見込み証明書の発行、就職活動に伴う欠席に際しての注意などの項目を説明し、
最後にくれぐれも履修届けの期限を厳守するように、17時を過ぎたら受け取りませんと言い残して降壇した。
続いて教育学部長の教授から教員を目指す諸君へ、ということでの講話が始まった。
舞美は感心して時折うなずきながら話を聞くものの、隣の桃子は興味がないのか机の下に隠したスマホをいじり始めた。
講話は20分ほどで終了し、ガイダンスが終了した。

122 :
「これだけのことなら来なくて良かったかも〜」
大講堂から出て、欠伸をしながら桃子はそう言った。
「そんなこと言わずに。ねぇもも、久しぶりに学食行こうよ」
「えー、家帰って食べようかなって思ってたのに」
「わたしのおごりでいいから」
「今日はBランチにしようかなー♪」
上機嫌になった桃子のあとをついていく。
桜が舞散る慣れ親しんだちょっと小さいキャンパス。
そこをゆっくりと歩く桃子の小さい背中。
この光景もあと1年か、と思うと急に寂しくなる舞美であった。

123 :

「え、うそ!? 愛理ちゃん慶明大学!?」
学食のテーブルの上、桃子と同じBランチを頼んだ舞美は目をまん丸にして驚いた。
「ツィッターでその情報が溢れてるもん。間違いないよ」
桃子がスマホをいじりながら舞美に伝えた。
「大学生になるとは聞いていたけれど、うちの大学じゃないんだ……ショック」
「まぁ中堅私立で東京23区外で地味で文系しかないうちの大学と、
私立最難関で華やかなキャンパスライフと輝かしい未来が待っている慶明と比べちゃ、ね」
「愛理ちゃんがうちの大学だったらなぁ」
「ストーカーしちゃう?」
「し、しないよ! でもさ、同じ大学だったら夢があるじゃない?」
「まるで舞美の夢みたいだね。あ、そうだ。例の夢の続き、どこまでいったの?」
「え……あ、うん。それがね」
舞美はプロポーズ直前までいったことを伝えた。
「へー、あとちょっとだったんだ。残念だったね、舞美」

124 :
「それがね、急に夢が途切れたんだ。気を失うように」
「あ、こっちも同じ。梨沙子に怒りすぎた、
明日は誕生日なのにって凹んでたみやを慰めていたら急に意識が遠くなるような感じがして目が覚めた」
舞美が桃子に夢の話をするように桃子も舞美に、
雅と一緒にBerryz工房に所属していて付き合っている(桃子が言うには結婚までした)という夢を話していた。
「なんだろうね、いったい」
ふたりして箸を止めて悩んでいると、
「ももち先輩! お久しぶりっす」
「くまいちょー久しぶり。モデルの仕事うまくいってる?」
「へへ、おかげさまで」
桃子の言葉に飛びきりの笑顔で応える文学部2年の友理奈と。
「……桃子先輩、また舞美先輩といたんですか」
「いいじゃない、同じ学年で同じ学部で親友なんだから」
桃子を睨みつけるような眼差しの、文学部2年の栞菜だった。

(つづく)

125 :
>>114-116
ありがとうです!
応援してくれると頑張れるんでまたよろしくです
まとめの人きてくれるかなー

126 :
桃は一級フラグ建築士だな

127 :
続き来てた−−−−!!!
この話どうなるのか全然先が読めないよ
続きが楽しみすぎるぜ

128 :
うわ面白え こんなことになってたのかよ

129 :
今日は更新あるかな

130 :
ひゃっ!

131 :
>>124
4人ともBerryz工房のファンだった。
友理奈は千奈美、栞菜は梨沙子推しであった。
「ところでももち先輩、今日の池袋での新曲発売イベント行きますか?」
「もちろん! 『萩原軍団』からのお誘いもあったし舞美と一緒に行ってくるよ」
そこで「チッ」と栞菜の舌うちが響いた。
場の空気が悪くなった。
「そ、そうだ。熊井ちゃんは来るの?」
舞美は雰囲気を変えようと友理奈に質問した。
「はい! 栞菜と一緒に」
「……友理奈、今日はモデルのお仕事なかった?」
栞菜が友理奈の返答に口をはさんだ。
「え? 今日はないんだけど――」
「あったでしょ?」
「あ、あぁ……そういえば、あったんだっけ、うん。ごめんなさい」
きつめの栞菜の口調に、友理奈は委縮したように肩をすぼめた。

132 :
「あたしもバイトなんで、ごめんなさい」
「そっか。残念。また今度行こうね」
「はい!! あ、Berryz関連とは言わず、なんでもいいんで誘ってくださいね」
さきほどまで不機嫌さは何処へやら、舞美に対しては目を輝かせて応答した。
「もう、舞美も教員採用試験が6月から始まるんだからあまり遊びに誘わないでよ」
桃子は冗談めかして栞菜に言ったつもりだった。
「……あんたの意見なんて聞いてないし。いちいちうぜぇんだよ」
栞菜はかなり気分を害したのか、ボソッとではあるがキツい言葉が口から出た。
場が凍りつく。
「栞菜、ももに対してその言い方はないよ。謝って」
舞美はすぐに栞菜をたしなめた。
「いいよ、舞美。行こう。気分悪くしてごめんね、栞菜。またね、くまいちょー」
桃子はBランチが載ったトレーを持って席を立った。
舞美は少し煮え切らない感じであったが、まだ席に座っている二人に「また今度ね」と声をかけ、
友理奈はすまなそうに頭を下げて二人を見送った。

133 :

「ごめんね、もも」
「なにが?」
「栞菜のこと」
「ああ、気にしてないよ。もともと馬が合わないみたいだし」
ふたりでトレーに載っていた食器を返却しているときに、舞美は桃子に謝った。
「高校時代はもっと素直だったのに。どうしちゃったんだろう」
栞菜は舞美と同じ高校出身の後輩で、同じソフトボール部に所属していた仲だった。
ちなみに友理奈も桃子と同じ高校出身の後輩だった。
「いまでもきっと素直なままだよ」
「そうなの?じゃあなんであんなにももにつっかかるの?」
「そりゃまぁ」
あんたが原因だよ、舞美。
栞菜が舞美のことが好きだから、つっかかってくるんだよ。
自分が邪魔なんだろうね。だとしも。
「え、わかってるんだったら教えてよ」
「教えない」
ごめんね、栞菜。舞美は譲らないから。

134 :

「ほんと、友理奈って嘘つくの下手だよね」
「ごめん……」
学食の椅子に座ったまま、友理奈は俯きながら謝りっぱなしだった。
「あんたのそういうところ、本当にムカつく」
「……ごめん」
「まぁいいけど。さ、うちらも池袋いくよ」
「やめようよ……あんなこと」
「何を今さら。あんたも『共犯者』なんだから」
栞菜は自嘲気味にそう言い放った。

(episode.1 おわり)

135 :
来たーーーー!!!!!
面白い!面白すぎるぜ!!!!

136 :
ここのところ規制が多いので立てておきました
もしも桃子が愛理にRーを教えたら@新狼
http://yy21.kakiko.com/test/read.cgi/morning/1366722535/
難民に規制で書き込めなかったらどうぞ

137 :
「ひゃっ!」

138 :
今日はくるかな

139 :
こっちは規制大丈夫かな?

140 :
dtu,

141 :
>>134
episode.2
目を覚ますと、見慣れたあたしの部屋。
またくだらない、つまらない一日が始まる。
雅は大きなため息をついた。
まずアイドルという職業がくだらない。
笑顔を振り撒くのは疲れる。
歌って踊るのはダルい。
握手会、最悪。
プライベートもつまらない。
芸能人だから行動が制限されるし、おおっぴらに恋愛なんてもってのほか。
といっても恋人はいるけれど。
別に好きじゃないんだけど、向こうがあまりにもしつこかったから。
キスもセックスもしない、ただの恋人という肩書のみだが。
向こうはそれでいいといってくれる。
いうなれば現実世界が好きでなかった。
今のBerryz工房が嫌い。
メンバーも好きじゃない。
特に鈴木愛理が嫌い。
ぶりっ子で事務所のお偉いさんにとりいったのか歌パートが一人だけ多く、
写真集、雑誌のグラビア、テレビ出演等々他メンバーと差がある。
彼女もメンバーのこと好きじゃないからお互い様だけど。

142 :
あまりにも現実がつまらないから二度寝して夢を見ることにする。
「彼女」に逢うために。
笑顔が素敵な、小さくても精一杯輝く「彼女」に。
夢の中ではあたしは柄にもなく恋する乙女。
「彼女」のために車を運転して、家事をして、大嫌いな勉強をして同じ大学まで行っている。
このあたしが大学生? はっきりいってありえない。
でもうらやましい。
それだけ一生懸命頑張っていることが。
現実では大嫌いなはずの芸能活動にもやりがいを感じている。
それは「彼女」がBerryz工房にいてくれて、最強にして最高のライバル、そして相棒。
一緒に歌って踊って、舞台にあがれることがすごくすごく好き。
いまのあたしとは間逆もいいところ。
ただ問題点があるとしたら、「彼女」が握手会でうざいツインテールの女ファンに似てることくらいか。
だからかな、ライブでも握手会でもついその女ファンを探してしまっていた。
馬鹿だろ、あたし。
……ということでおやすみなさい、つまらないリアル。

143 :
1時間後、寝ていた雅に電話がかかってきた。
『みや、起きてる? 今日は池袋でイベント、覚えてる?』
恋人の佐紀だった。
「……忘れたかった」
『もーどうしたの、テンション低いよ』
「寝てたから。また寝ていい?」
『だーめ。今日は池袋で大切なイベントあるでしょ』
「また握手会? 飽きた」
『そう言わずに。ねぇ、明日ディズニーランド行かない? この前約束したでしょ』
「そうだっけ」
『そうだよ! ねぇ、いこうよみやぁ』
はぁ。
つまらない。
面倒くさい。
助けて。
雅は名前のわからない「彼女」に助けを求めた。

144 :

目を覚ますと、見慣れたわたしの部屋。
また現実の一日が始まる。
そのことは嫌だけど――。
愛理は小さくため息をつき俯いた。
目元をぬぐうと、涙の後。
そう、あの幸せな夢をみたときはいつも泣いているみたいだった。
私の愛する、名前の知らない「彼女」。
二人はBerryzではない、違うグループに所属している。
スラっと背が高く、いまどきでは珍しい美しく長い黒髪で、ありえないほどの美貌の持ち主。
そんな絶世の美少女なのにみんなに愛される人柄。
馬鹿正直で不器用、どこまでも真っ直ぐ。
歌はちょっと苦手と言いながらも温かい歌声を持っている。
笑顔も素敵。
私が無理だと思われた慶明大学を目指したのも、夢の中での彼女との約束だった。
彼女はもしかしたら慶明生かもしれないから、死ぬ気で勉強した。
根拠なんてなにもなかったけど。
私が唯一愛する人。
現実の世界ではなく、夢の世界での住人だけど――そう思っていた。
だけど2年前、中野でのコンサートのとき客席に目を移したら――「彼女」がいた。
私のカラーであるピンクのTシャツを着て、ピンクのサイリウムを持っていてくれた。
胸が熱くなった。

145 :
それからというもの、ライブで、イベントで、握手会で「彼女」を探した。
ごくたまに見つかる。
声をかけたい。
あなたは夢の彼女ですか、って。
でもライブやイベントでは声なんてかけられない。
だから握手会で言おうかと思った。
今度個人的に会って欲しい、って。
完全にアイドル失格なのはわかっているけれど。
だけど私達の握手はとても速く、ゆっくり話しなんてできない。
2回「彼女」と握手したけれどまともに話しなんてできなかった。
でも手の感触は覚えている。
暖かくて、ちょっと汗ばんでいた。
「起きないと」
もしかしたら、「彼女」は今日の池袋のイベントに来てくれるかもしれない。
だから、私はアイドルをする。
好きではない「Berryz工房の鈴木愛理」として。
『愛理、いつかみんなで武道館ライブしたいね』
武道館ライブが実現出来たら、「彼女」と私はこの現実世界でアイドルとファンという関係でなく、1対1の個人として巡り合える、そういう予感がする。

146 :
「あの子の名前、なんて言うんだろう」
せめて――知りたかった。
彼女の名前が。
そして出来ることなら。
私の名前を呼んで欲しい。
愛理、って。
好きなアイドルとしてでなく、好きな人の名前として。
私も好きな人としてあなたの名前を何度でも呼ぶから。
「さて、起きないと」
メンバーに煙たがられ、とくに雅からは嫌われているのはわかっている。
だけど私は輝かないといけない。
私がBerryz工房を輝かせるために。
すべては夢の中で「彼女」と約束した、武道館での単独ライブを目指して、私は一人で戦う。
そしていつか。
『わたし、愛理に出会えて本当によかった。 いま、全部のことが幸せすぎて信じられない。
 だから愛理、わたしと――』
慶明大学の正門の脇の桜の下で彼女が言いかけた言葉の続きが聞きたい。

147 :

正午にBerryzのメンバーは事務所に集合し、雑誌の取材をいくつか済ませたあと、イベント内容のミーティングを行った。
最後にマネージャーから今日はサプライズがあるかもね、とほのめかされた。
「サプライズってなんだろうね、みや」
池袋のイベント会場に移動するロケバスで、佐紀は隣に座っている雅に尋ねた。
「梨沙子の誕生日が明日だからケーキでもステージに出てくるんじゃない。ありきたりでつまらないけれど」
「そんなところだろうね。愛理はどう思う」
佐紀は前に座っていた愛理に尋ねたが、イヤホンをして音楽を聞いていたのか反応はなかった。
「センター様は集中なさってるから放っておきなよ」
雅はそう吐き捨て、佐紀は弱々しく「うん……」と返事を返した。
愛理を擁護するメンバーも、雅に注意をするメンバーもいなかった。
それが現在のBerryzの姿であった。

そして池袋で待っていたサプライズ。
メンバーの予想に反して、梨沙子の誕生日を祝うセレモニーではなかった。

(episode.2 おわり)

148 :
やべーおもしれえ

149 :
展開が読めない分wktkが半端ない

150 :
ももちはアイドルじゃないとあの髪型しなさそうな気もするけどw
続き楽しみ

151 :
episode.3
桃子と舞美は午後2時過ぎに池袋に着き、サンシャインに向けて雑踏を歩む。
「ねぇ、もも」
「ん?」
「あの、前から聞いてみたかったんだけど、このなんていうの、筋肉結びだっけ」
「違う! ももち結び!」
「あ、ごめん。でさ、なんで最近この髪型なのかなーって」
舞美は桃子のツインテールに触れながら尋ねた。
「うわっ、かたい!!」
それもそのはず、桃子が毎朝1時間かけてヘアアイロン、整髪料と格闘しできあがっているのだから。
「もう、勝手に触らない!!」
そう言いながら桃子は舞美に髪を触れられ、胸が跳ねるのを抑えられなかった。
「ま、舞美はいつもベタベタしすぎだよ。すぐにくっついたり体に触ってくる」
「ごめん、家だといつも愛犬とスキンシップしてるもので」
「……自分は犬か。そう、この髪型のきっかけなんだけどね――」

152 :

それは昨年11月の新曲発売記念個別握手会でのこと。
個別握手券はネット注文で、ランダムでメンバーの個別握手券がついてくるというシステムなのだが、
桃子は10枚注文してみたものの雅の握手券が1枚も出てこなかったため、
ネットオークションで自分の10枚を売りさばいて、代わりに雅の券を2枚手に入れることに成功した。
そして、1回目。
「みや! やっほー」
「……こんちは」
雅はやる気になさそうに見えた。
握手の握りも弱い。
雅の握手会での態度はあまり良くないことでネット上では有名だった。
「あの、この前のソロイベントすごくよかった! 特にみやの『付き合ってるのに片思い』がチョーかわいくて萌え死にそうになったよ!」
「……そりゃどうも」
素っ気なかった。
さすがに桃子も会話のチョイスをミスをしてしまったと後悔し、言葉につまり沈黙してしまった。
「……あのさ」
「え!?」
先に口を開いたのは雅の方だった。

153 :
「前にその――」
そこで、係員が桃子の肩を叩き、終了の合図をつげた。
「え、みや、なに!?」
桃子は粘ろうとしたが、小柄な桃子はなすすべもなく係員に流されてしまった。
そしてすぐに雅の前には次のファンが流れてきた。
また同じような作業が始まる。
まるで工場のライン作業みたい、やったこはないんだけど。
雅はそう思った。
工場のラインで製品がコンベアにのって流れてくるように、ファンが係員に掴まれながらやってきたり、流されたり。
ファンを繋ぎとめるためには必要なイベントらしいが、好きではない、というか嫌いだった。
ファンに対応するさなか、雅はふと思った。
あの子、覚えているかな。
前に電車で痴漢されていたのをあたしが助けたこと。
名前、なんていうんだろう。
ファンには興味ないはずなのに、なぜかあの子だけは気になる。
その理由を雅は思い出せず、モヤモヤしていた。

154 :
一方の桃子といえば。
「……失敗した」
雅との握手の失敗にひどく落ち込んでいた。
作戦ミス、貴重な5000円分を、家庭教師のバイトに換算すると4時間分を損してしまった。
褒めてダメなら、質問攻撃。
なにかいいコメントを引き出せないものか。
雅の列に並び直し、桃子は質問を思案し続けた。
15分後。
「また来ちゃった」
「……こんちは」
雅はまたしてもやる気なさそうだった。
「今度ね、髪型変えようと思うんだけど、どうんなのがいいかな?」
「え?」
雅は桃子の髪型を見た。
肩までかかる真っ直ぐでつややかな黒髪。
それが桃子の薄いけれど整った顔立ちとマッチしていると雅は思った。

155 :
「……そのままでいいよ」
そのままがいいよ、似合ってるから。
そこまで素直な言葉は雅の口からは出てこなかった。
「えー、そんなこと言わないで。ねぇ、ねぇ」
桃子はしつこく食い下がる。
それに雅はちょっとイラッと来て、
「……ツインテールなんていいんじゃない? S字カーブを描くような」
テキトーに答えた。
「え、ほんと!?」
「マジで」
「じゃあ今度してくるから! バイバイ!!」
その一言で桃子が毎朝髪型のために1時間格闘するようになるとは雅は思いもよらなかった。

156 :

「……ってね、みやが似合うよって言ってくれたからって」
隣に歩いているはずの舞美がいなかった。
さては。
桃子が振り返ると、舞美が茶髪でスーツを着たホストらしき男性に話しかけられていた。
さてはまたナンパかスカウトか――。
「いや、でも、これから親友とBerryz工房のイベント見に行くんで」
舞美は断っていたが、弱々しくて男性の方も引く気はなさそうだった。
桃子はその間に割って入って、
「ごめんなさい、急いでいるんで!!」
舞美の手を取って、その場を早足で去った。
「もも、ありがとー」
「あんなのさっさとあしらっちゃえばいいのに」
「でもすぐに断るのも悪いかなーって」
「断りなさい! ったく、面倒なんだから」
「ごめんね。で……さ」
「なによ」

157 :
「手。繋いだままでいいのかなーって」
「あ、ごめん。いま離すね」
「ううん、できたらこのままがいい。また声掛けられないように」
「……わかったよ。好きにして」
「うん♪」
「わっ! 腕に抱きつかない」
舞美は嬉しそうに桃子の腕に抱きついてきた。
その瞬間、桃子の背中に殺気を感じた。
振り返ってみたが特に異常はなかった。
「どうしたの、もも?」
「いや、殺気を感じたもので」
「気のせいだよ」

「うん。そうだ、舞美。会場についたら離れるんだよ」
「はーい♪」
舞美は嬉しそうに返事した。
そんなに嬉しそうだと、こっちは勘違いしそうだよ。
桃子の心中は複雑だった。

158 :
その桃子達の後方数十メートルに栞菜と友理奈はいた。
栞菜は桃子と舞美が手を繋いだことにひどく腹を立てて喚き散らしていた。
「なんだよ、嗣永!! マジむかつく!!」
「ちょ、ちょっと落ち着いてよ栞菜」
なんで、どうしてあたしと舞美ちゃんは結ばれないんだろう。
舞美ちゃんと同じ高校行って、同じ部活をやって、同じ大学まで行ってるのに。
まさか、桃子が邪魔をしてくるなんて想定外だった。

159 :
(つづく)
を忘れてたw
PC規制で不便…

160 :

会場であるサンシャインの噴水広場につくと、目に着くのは長蛇の列。
イベント優先エリア入場券付握手券のついているCDを買い求めるファンの列だった。
「すごいね、もも。ちゃんとうちらの分は買えるのかな」
舞美は不安げに桃子に尋ねた。
「大丈夫、いま連絡するね」
桃子はスマホを取り出し、電話をかけた。
「あ、いま着いた。どこいるの……うん、いつものカフェね、わかったいま行く……。
よし、舞美。この前もいったカフェ行くよ。3人とも来てるって」
「そうなんだ、3人とも来てるんだ」

161 :
ふたりはイベントが行われる階の奥にあるカフェに向かった。
すると、店の中に3人の姿があった。
「お疲れー」
桃子は店に入り、岡井千聖に声をかけた。
「あ、ももちゃんこんにちは」
この春に高校を卒業し専門学校に通い始めた岡井千聖と。
「ちーす」
ちょっと不真面目な制服姿の高校3年生、萩原舞と。
「舞美ちゃん! 久しぶり! 会いたかったよー」
「はは、どうも」
売れないソロアイドル、ナカジマサキこと中島早貴だった。
桃子と千聖がネットの雅ちゃん至上主義コミュニティで知り合ったのは2年前。
それ以前から千聖、舞、早貴の3人は個人的に繋がっていた。
桃子は「萩原軍団」と呼んでいる。
なんとなく一番年下の舞が仕切っているように見えるからだが。

162 :
「千聖、いい番号確保できた?」
舞美と桃子は席に着き、さっそく桃子が千聖に尋ねた。
「もちろん! ほら」
机の上に並べられた5枚の優先エリア入場券の整理番号はどれも100番以内。なかには1ケタ番号も2枚あった。
「さすが。これで女性限定エリアの最前は確保! やったね、舞美」
「え、わたしもいいの?」
「もちろん。愛理ちゃんの太ももガン見できるよ」
「いや、そんな、確かに愛理ちゃんの太ももは最高……って、なに言わせるの! 
 みんな、ありがとうね。こんなにいい席を譲ってくれて」
「優しい『ファン』の人がいるからね」
と舞が意地悪そうに笑った。
この「ファン」というのはBerryzのファンであると同時に萩原軍団の「ファン」。
萩原軍団に桃子と舞美を含めたグループは「可愛すぎるBerryzファン」としてネット上では有名だった。
むしろBerryzより可愛いんじゃないかという声さえ聞かれた。

163 :
「ありがたいけど、あんまり無茶するんじゃないよ」
「うっす。大丈夫、そこらへんの線引きはちゃんとできてるんで」
桃子の忠告に舞はVサインで応えた。
「ところで舞美ちゃん、教員試験勉強はかどってる?」
今度は早貴が舞美に話しかけてきた。
「勉強ができる優秀な親友がいるんでいろいろ助かってるよ。
なっきぃは芸能活動忙しい?」
「週末はね。売れてないから。握手会とかツーショットチェキとか、接触系がほとんどだけど。
Berryzみたいに大きい会場でコンサートやりたいな」
「でもなっきぃ歌うまくないじゃん」
「うるさいー」
千聖のつっこみに不機嫌そうに唇を尖らせた。
「声優の方が向いてるんじゃない? 声がアニメ声だし。桃ちゃんもそうだけど」
「声優方面は事務所が弱いんで難しいっす」
早貴はハロプロキッズオーディションに合格したが、Berryzメンバーから漏れ、2007年にメジャーデビューできないまま事務所との契約満了。
それ以来は別の芸能事務所で細々と活動を続けていた。
(つづく)

164 :
規制で書き込めないけど見てるぞ
wktkしながら続き待ってる♪

165 :
次が楽しみすぎる

166 :
始めちょっと相関図がわからなかったけど面白くなってきた!!

167 :

イベントの開始時刻である18:00に合わせて17:00から優先エリアへの入場が開始された。
サンシャインの噴水広場で吹き抜けになっており優先エリアでなくても観覧は可能だが、
より近く見ることができる。
整理番号が一桁の千聖と舞が先に入場し、女性限定エリアの最前列を確保しようということになった。
その結果、舞、千聖、早貴、桃子、舞美で女性限定エリアの最前を確保。
「すごい、最前列なんて初めてだよ!ステージ、近い!」
舞美は全力で喜んでいた。
「舞ちゃん、千聖、なっきぃ、ほんと…ほんとにありがとうね」
「ん、別にいいって」
「喜んで貰えてよかった」
「舞美ちゃんのためならコンサートの最前列だってプレゼントしちゃうよ」

168 :
それぞれなりに照れながら答えた。
舞美は三人からとても好かれていた。
「……ももを仲間外れにしないでくれる?」
「あ、そうだった。いつもありがとうね、もも」
「わっ、ちょっと!」
舞美が全力で桃子を抱きしめた。
「は、恥ずかしい、っていうより苦しい!」
「ごめんね」
「まったく、舞美は加減ていうものを知らないんだから」
そう言う桃子は嫌そうに見えなかった。

169 :
5分後、イベントの諸注意をスタッフさんがステージで説明したあと、Berryzが大歓声に迎えられて出てきた。
「もも、どうしよう、ヤバい!」
「わかったから裾引っ張らないで!」
興奮状態の舞美に桃子は振り回されていた。
そして曲が始まり、愛理が歌い出す。
感動のあまりに舞美は口元を抑えて泣き出した。
目の前に大好きな愛理いて、大好きな歌を歌ってくれることに。
程なくしてダンスのフォーメーションが変わりセンターで歌っていた愛理が舞美の目の前に来た。
客席に目線を落とした愛理と舞美は目があった。
舞美は息が止まりそうだった。
溢れだしそうな思いを口にしたい、でも出せない。
苦しかった。
次の瞬間、舞美の前で信じられないことが起きた。
愛理と舞美は目を合わせたまま、ダンスをしていた愛理が固まってしまった。

170 :

開演から遡ること30分、愛理はステージの袖から客席を眺めていた。
彼女は来ていないかな?
握手会に来てくれるかな?
「愛理、どうしたの」
梨沙子が愛理に声をかけた。Berryzのメンバーの中で一番愛理と友好的なのは同い年の梨沙子だった。
「んー、今日の客入りはどうかなって」
愛理は夢のことはメンバーには一言も話していなかった。
プライベートなことや大切なことを話すほど打ち解けていなかった。
「ねぇ、愛理」
「ん?」
「あのさ、ちょっと変なこと聞くけど」
「なに」
「Berryzってさ……このメンバーでいいんだっけ」

171 :
「へ? 何それ」
「ううん! 何でもないよ! さ、もうすぐ開演」
梨沙子はしまった、まずいことを喋ってしまったと後悔しながら控室に戻った。
しかし愛理も梨沙子の言っていることがわかる気がした。
そもそも自分がBerryzにいることに違和感があった。
(つづく)

172 :
今夜はもう一回きます

173 :

彼女は今日はいないのかな。残念。
愛理は半ば諦めながらイベントが始まった。
だが、客席に目線を落としたらちょうど彼女がいた。
うそ。
頭が真っ白になる。
歌も、ダンスも頭の中から消え、ただ彼女が目の前にいることが全てだった。
「愛理、何やってるの!?」
雅が詰め寄ってきて、マイクを通さずに声をかけた。
愛理の異変に気がついたスタッフが音楽を止めていた。
「ご、ごめん。緊張して頭が真っ白になった」
「は? 今日はYouTubeで配信されてるんだよ」
雅はすごい剣幕で食いかかってくる。
さすがにまずいと思った佐紀が仲裁し、仕切りなおすことに。

174 :
再開されても愛理は客席の舞美がどうしても気になってしまい、いつものようにダンスのキレはなく歌詞も度々間違った。
それはファンも気がついていて、舞美も今日の愛理ちゃんはちょっと変と感じていた。
それが自分が原因とは夢にも思わなかったが。
そしてイベントも後半、新曲の披露となった。
Berryzも歌に備えてフォーメーションをとる。
すると、聞き慣れない、キーが低い新曲のイントロが流れた。
そして聞こえてくる男性の歌声。
会場はどよめきに包まれ、メンバーは異変に顔を見合う。

175 :
『こんにちは、プロデューサーのつんPです、元気ですか!!』
会場はサプライズに歓声に包まれた。だがメンバーの顔はいずれも不安げだった。
『Berryz工房も9周年を迎え10年目に突入しました。おめでとう!! 
これもひとえに本人たちの努力とファンの応援のおかげです。ありがとうございます。
さて、もうすぐ10周年ということで刺激が欲しいところでして』
ファンが「おおおおおぁ!!」とどよめく。
メンバーは嫌な予感がしてか、一つに集まってプロデューサーの言葉を祈るような気持ちでいた。
『鈴木愛理!!』
「ふぇ?」
自身の名が呼ばれる。
まさに寝耳に水。

176 :
『鈴木はBerryzのセンターポジションとして歌にダンスと活躍し、また学業も優秀でこの春から大学に進学しました。
そのマルチな才能を活かしてソロデビューしてもらおうと思います!』
会場がひどくざわめいている。
まだ自身に何が起きるか愛理は理解できない。
『鈴木愛理は春ツアーの千秋楽、パシフィコ横浜公演をもってBerryz工房を卒業します!
卒業おめでとう、イェイ!!』
まだ何が起きたか愛理は理解できなかった。
したくなかった。
ただ、目の前にいる「彼女」が隣にいる友達らしき小柄な女の子に抱きついて泣いているのが辛かった。
(episode.3 おわり)

177 :
また久々にwktkしながら読んでます
新章も期待大
今夜も待ってみるw

178 :
episode.4

発表があったあとのイベントはひどいもの。
愛理はショックを受けたのか歌の途中で袖にはけてしまった。
なんとか残りのメンバーで場を繋いだものの、観客も動揺を隠せなかった。
Berryzで一番多くのファンを誇る愛理が突然の卒業を言い渡されたのだから。
舞美もそのひとりで、たいそうショックを受けたのかずっと桃子の胸で泣きじゃくっていた。
「イベント終わったよ、舞美」
桃子が話しかけても舞美は無言だった。
「握手会、参加する?」
舞美は首を横に振った。

179 :
「そうだね。自分もそんな気分じゃないや。帰ろう」
桃子は熱心な愛理ファンというわけではないが、
長年応援してきたBerryzのメンバーが突然卒業を言い渡されたとなれば、
嬉々として握手会で雅にがっつこうという気分にはなれなかった。
「千聖たちはどうする?」
「残ってくよ。これじゃあメンバーが可哀想だし」
千聖は複雑な表情で語った。
周りを見ると、半分以上のファンが落胆の表情を浮かべて帰路に就こうとしていた。
いつもだったらこの後の握手会に向けてファン各々のテンションが上がっているのだったが。
「これからも応援してるよ、って伝えてくる。もも、舞美ちゃんよろしくね」
そういう早貴の表情は渋かった。
「わかった。舞ちゃん、バイバイ」
舞は無言でうなずくだけだった。

180 :

舞美は一人で歩くのもおぼつかなさそうなので、手を握って駅まで歩いた。
手を引かないと舞美は進まない。
このままではまともに電車に乗ることも家まで送ることにした。
何回か遊びに行ったことがあるので場所は知っていた。
桃子の家は千葉県、舞美の家は埼玉県で1時間半かかるのだったが。
電車に乗り込んだものの、舞美はまだうつむいたままだった。
でも、桃子は励ましの言葉をかけられなかった。
もしも卒業するのが雅だったら――想像するだけで胸が痛い。

181 :
左手は舞美とつながっていて、空いている右手でスマホをいじって握手会の様子を確認した。
「え。うそでしょ。愛理ちゃん、握手会参加したんだって」
ファンが各々の言葉で、不参加だと思ったのに最後まで参加して驚いたツイッターでそう呟いていた。
舞美はその桃子のひとりごとに顔をあげた。
涙やら鼻水やらで美人が台無しになっていた。
「ぅぅぁぁああいりちゃああああんんんん」
舞美は桃子に抱きついて声を出してワンワン泣き始めた。
「ちょ、ちょっと舞美! 車内だよ!!」
そう言って聞く舞美ではない。
それは桃子がよく知っていることだった。
ありえないくらい美人なのに、どこか抜けていて天然。
お嬢様だけど信念を絶対に曲げない。
とにかく不器用。
だけど……放っておけない。
桃子と舞美が友達になったのは1年の秋。
大学生活に馴染めず孤立してしまった舞美に声をかけたのがきっかけだった。
(つづく)

182 :
>>177
今夜はお休みしようと思ったけどちょっとだけw
短編よりも長編のほうがいい感じですか?

183 :
>>182
言ってみるもんだなw
短編は一話で完結して読みやすかったりして好きだし
長編は続きはどうなるんだろう?とか考えて待ってるのが楽しみだったりするし
どっちがいいとかはないかな
何にしてものちが書く話は好きだぞー、とか言って←

184 :

舞美は入学当初、新入生にすごい美人がいると学内でも評判で、それは普通の学生生活を送っていた桃子の耳にも友人経由で入ってきていた。
モデル顔負けの容姿を持ち、さらに強豪の体育会ソフトボール部の期待の新人ピッチャーとの評判。
「へー、この学校でもそんなすごい子がいるんだ」
桃子は興味なさそうに言った。
自分にはどうせ関係のない人。
そんな恵まれた人は、きっとアイドルなんて興味ないだろうし、
それもBerryz工房なんてマイナーなアイドルを好きなはずないし。
友達にヲタバレしないように、普通の女子大生を装って桃子は過ごしていた。

5月のゴールデンウィーク明けに、桃子は学内で舞美を初めて見かけた。
多くの友達に囲まれ、楽しそうに話していた。
なんだか学内のアイドル。
さぞかし楽しいキャンパスライフを送っているのだろう。
やっぱり自分とは関係ないや。
……どこかで会ったことがある気もするけれど、気のせいか。
それ以来興味を持つこともなく、前期が過ぎていった。

185 :
長い夏休みが終わり、後期が始まって1週間。
桃子は一人で歩いている舞美をみかけた。
あんなに取り巻きのような大勢に囲まれていたのに、授業の移動でたまたま一人なのかな。
桃子はそう納得してその場は終わった。
だけど、その数日後も、何度見かけても舞美は一人だった。
取り巻きどころか、一人の友達もいない。
授業でも、キャンパスでも、学食でも、生協でも。
桃子は気になったので学内通の友人に尋ねてみた。
「ソフト部辞めたみたいよ。先輩と揉めたって噂だけれど」
異変が起きていたのは部活だけではなかった。
交友関係でも、友達に誘われて行った合コンで男の子の興味を一身に集めたと思ったら、
そのあとのカラオケでアイドルソングを熱唱、その歌声はひどく音痴だった。
男の子が連絡先を交換しようとしても、興味がない、わたしは女性アイドルが好きなんで、と断ったらしい。
変なコ。
それが舞美に貼られたレッテルだった。
いくら美人でも、運動神経がよくても、彼女は「異物」。
自分も「異物」として除外されるのを避けるために排除、当たり障りのないコミュニティを築く。
とても日本人らしい、嫌な話だと桃子は思った。

桃子自身もそれは経験があり、中学高校と一人でいることが多かった。
友達、というか仲間は高校時代の後輩の友理奈くらい。

186 :
大学はそうならないようにとBerryz工房の夏焼雅ファンであることをひた隠しにし、
当たり障りのない人間関係を築くことに成功した。
面倒くさいし、あまり楽しくもないけれど。
本当だったら。
一緒にBerryzのイベントやコンサートに行ったり、一緒に生写真を眺めたり、曲について一緒に語ったり……そんな友達が欲しかった。

そして10月初旬。
桃子がいつもより早めに大講堂につくと、最前列に舞美がひとり座っているのが見えた。
あれ、あの子こんなところにいたんだ。
いつもは後方に陣取る桃子は舞美に興味を持ち、近くに座ることに決めた。
すぐ後ろに座ってみると、彼女はなにかを読んでいた。
覗き込んで見ると、それはフォトアルバムだった。
そこに写っている人物は――。
「それってBerryz工房の鈴木愛理ちゃん?」
それが桃子が舞美にかけた最初の言葉だった。

(つづく)

187 :
>>183
ありがとう!
個人的には長編のほうが個性を出せるかなと思ってるけれど短編も褒めてくれて嬉しいです
…と調子に乗って今夜も書いてみたり
割とやじもも好きな自分がいますw

188 :
>>187
いいぞいいぞー
もっと調子に乗っちゃえw
でも負担にならない程度にな

189 :
舞美は驚き、後ろを振り返った。
びっくりするくらい美少女。
こんな美人は雅ちゃん以外では初めてだった。
「えっと……違う?」
桃子はふたたび尋ねた。
舞美はちいさく頷いた。
「見せてもらっていい?」
「い、いいですよ」
同い年なのになぜか敬語。
桃子は舞美のとなりに座り、フォトアルバムを見せてもらった。
写真は2007年から2009年3月のものまで。
ハロプロショップの生写真、ツアーの写真と全部公式のモノだった。
「アンオフィはないんだ」
「アンオフィ……ってなんですか?」
「アンオフィシャルの略だよ。コンサート会場の近くで売ってるやつ」
「それって違法じゃないですか、ダメですよ買っちゃ!」
急に真剣に否定してきたので桃子は面食らった。

190 :
「……ごめんなさい。でも、公式の写真を買うことでメンバーの活動を応援することができるんです。CDやDVDを買うのと同じ。
そんな盗撮なんて、どこにお金が流れるかわからないですよ、絶対にダメです」

びっくりするくらい頭が固かった。
噂の通り変なコだった。
「そう? でもアンオフィも捨てたもんじゃないよ」
実は桃子もバックの中に雅オンリーのフォトアルバムを忍ばせていた。
絶対に人には見せなかったが、帰りの電車でひとり眺めて自分だけの世界に浸るのが好きだった。

桃子は舞美にそのアルバムを渡した。
公式2割、アンオフィ8割だったが。
「ダメですよ、買っちゃ……」
最初はそう呟いていた舞美がすぐに黙り、静かにページをめくり始めた。
その間、桃子は舞美の横顔を眺めていた。
まっすぐで大学生にしてはめずらしい長い黒髪。
顔のパーツは完璧、それこそ高校生ながらモデルのお仕事もしている後輩の友理奈以上だった。
それにやたらにいい匂いがする。
シャンプーの匂いに混ざって舞美の甘い香りがした。
舞美は10分かけて全部に目を通した。

191 :
「なんか悔しい。雅ちゃん、すごくセクシーじゃないですか」
「でしょ? 雅ちゃんはオフィシャルだと写り悪いのばっかりで。
ライブで活き活きとしてるアンオフィのがはるかにいいよ。
欲しくなった?」
「絶対に買いません。……でも売ってるところはちょっとだけのぞいてみたいかも」
「え、現場にいったことないの?」
「現場ってコンサートですか? ないです。親がそんな不良の集まりに行っちゃだめって」
どんだけの時代錯誤だよ、と桃子はつっこみたくなった。
きっと箱入り娘なんだな。
「愛理ちゃんなんかは生で見てこそだけどな。生歌最高だし。ねぇ、今度のコンサート一緒にいかない?
オークションで安く落としてあげるよ」
「……だけど両親が心配します」
「テキトーにディズニーランド行ってきます言えばいいじゃん」
「遊園地でも心配されます」

面倒くさい。
よくこれで合コン行けたな。

192 :
「だったら友達とレポートやるってのはどう?」
「あ、それだったら大丈夫」
そうこう会話しているうちに教授が登壇し、講義が始まろうとしていた。
「席、戻らなくていいんですか。その、わたしの隣だと目立っちゃいますよ」
「んーいいや。そうだ、名前教えてよ」

「矢島舞美です」
「私は桃子、嗣永桃子。よろしくね、舞美」
差し出した手を痛いくらいの力で握り返された

(つづく)

193 :
期待して貰えたほうが頑張るタイプです
でも次回は週末にw

194 :
週末まで我慢
期待して待ってるぞw

195 :
今日は来るかな

196 :
いっぱい更新キテる!
やっぱ引き込まれるなのちの文は

197 :

「舞美、うちに着いたよ」
駅からタクシーに乗り、舞美の家に辿りついた。
外から見ても相変わらずの豪邸ぷり、7LDKあった。
「じゃあ帰るね。舞美、元気出しなよ……って言っても無理だろうけど、授業始まったらちゃんと来なよ、バイバイ」
帰ろうとしても舞美は袖を離そうとしない。
「帰るよ」
「……やだ」
「え?」
「ひとりにしないで欲しい」


「舞美の甘えん坊」
「ごめんね」
隣に寝ている舞美が握っている手の握力を強くしてきた。
桃子はそのまま舞美の家で夕食をご馳走になり、一緒に風呂に入って、今では一緒のベッドに入っている。
「ももが居てくれると落ち着く」
「はいはい、ありがとう」

198 :
舞美の言葉や笑顔に素っ気なく返してしまうのは、変な雰囲気を作らないため。
すぐに一線を超えてしまいそうな危なさがあった。
「ねぇ、もも。今……その、好きな人っている?」
「変なこと聞くね。みや一択だよ」
「みやびちゃん以外で」
「いないよ」
まさか舞美とは言えないし。
「舞美は」
「ももがいないって言うんだったら……わたしもいない」
「なにそれ。もし自分がいるって言ったら」
「いるんじゃないかな」
「わかんない。さ、ぐっすり寝て嫌なこと忘れちゃおう」

199 :

「嗣永、絶対に許さない!
なんなの、弱ってる舞美ちゃんに漬け込むなんてサイテー!!」
舞美宅の前で怒りをあらわにしている栞菜だった。
「か、栞菜落ち着いて」
友理奈がなだめるも効果はあげられなかった。
「きっと今頃は純粋な舞美ちゃんをたらしこんで、それで、わあああああああああ」」
悪い想像が栞菜の中を駆け巡る。
もう許せない。
こうなったら消えてもらおう。
(episode.4終)

200 :
あげ

201 :
gkbr展開wktk

202 :
わたし、ま〜つ〜わ いつまでも、ま〜つ〜わ
ってことで期待して待ってる

203 :
ここにきてやじももとか…超見たい

204 :
あげ

205 :
episode.5

Berryzの春ツアーまで1週間。
春ツアーの千秋楽にはパシフィコ横浜という大きな会場が待っていた。
コンサートのキャパシティが増え、もうすぐきっと念願の武道館でできると
梨沙子だけでなくメンバーは期待していたのだが。
「愛理、やる気あんの?」
「……ごめん」
コンサートのレッスンでダンスのフォーメーションでミスをした愛理を雅は責めた。
「エース様はあと3カ月もせずにこんなことやらなくて済むんだろうけどね。
念願のソロデビューだもんね。舞台女優? 高学歴タレント? 立派ですこと。
あんたの活舌でどれだけの人がわかるか知らないけどね」
辛辣な皮肉を愛理は歯を食いしばり黙って受け流そうとした。
その態度が雅にはさらに気に食わなかった。
「今度は無視? 何様のつもりだよ」
雅は愛理に詰め寄り、ジャージの襟に掴みかかった。

206 :
「私だって……」
「え?」
「辞めたくないよ」
「うそ。いつかの雑誌でソロライブしてみたいって言ってたくせに」
「それは……」
「まあ、あんたのことなんか端っから信用してないけどね。
ファンやスタッフ、プロデューサーさんに媚びてばかり。メンバーはステップアップのためのただの踏み台。
今回の卒業だってつんPさんや会長に色目を使っておねだりしたんでしょ」
そこで乾いた音がレッスンスタジオに響いた。
堪え切れなかった愛理が雅の頬を叩いた。
「テメーやるのかよ!!」
雅は声を荒げ、愛理の髪をひっぱり床に引きずり下ろした。
さすがにまずいと思い、メンバーとスタッフ総出でふたりをとめた。
雅は鼻血を、愛理は唇を切っていた。
この日はレッスンにならないと判断され、レッスンは打ち切られた。

207 :

なんだろう、この空しさは。
梨沙子はレッスン帰りの電車でボーっと天井を眺めていた。
もっとBerryzは結束力があるはずだったのに。
ううん、いつもはバラバラでもやるときはやるのが売りだったはず。
それがこの有様。
ツアーまで1週間なのにメンバーが全然まとまっていない。
こんなのではファンにいいコンサートを見せることができない。
ため息をつき、電車を降りた。
Berryzのバラバラさもさることながら、どうしてもメンバーに対する違和感が消えない。
雅の攻撃的な性格、愛理の存在。
どうしてもひっかかる。
この世界、なにかがおかしい。
「あの!」
改札を出たところで梨沙子は呼びとめられた。
「梨沙子だよね?」
声をする方をみると、180cmありそうな女性が立っていた。
(つづく)

208 :
誰もいない…

209 :
いるぞ

210 :
いるいる

211 :
おぱよ

212 :
いつの間にかまとめが更新されてた
まとめの人乙
ってことでのちもそろそろどう?←

213 :
のちのペースで書いてもらえばいいな
けど、俺はいつものちの小説を待ち望んで、楽しみにしているとゆいたいです

214 :
>>207
その女性はマスクをしていて明らかに怪しそう。
「いえ、違います」
いつもの癖で「Berrrzy工房の菅谷梨沙子」であることを否定した。
「ごめん、急いでるんだ。うち、友理奈だよ。熊井友理奈」
「熊井友理奈って……あの『Yurina』ですか!?」
『Yurina』は梨沙子も買っている某ファッション誌の専属モデルだった。
「えっと、そうなんだけど、ううん、ややこしいな。うちは本当はBerryz工房のはずなんです」
「どういうこと?」

「なるほど、そうするとあたしとあなたは本来ならBerryzのメンバーで、愛理は違うグループに属している、と」
友理奈のややこしい説明をかみ砕きそういう結論に達した。
「そう、そうなんだよ!!」
「じゃあなんであたしはアイドルやっていて、あなたはモデルをやっているの?」

215 :
「それは梨沙子が世界を変えてくれたからだよ」
「は?」
「梨沙子の魔法で」
「そんな力はないんだけれど。本当に簡単な魔術、というかおまじない程度しか」
「それができたんだよ。過去にタイムスリップしてオーディションの結果を変えたんだ」
「まさかそんな――」
ここのところの違和感。
友理奈の説明が本当なら合点がいく話だ。
だけど、そんなことしたら。
大きな魔法を使った分だけ代償が伴う。
オーディションの結果を変えたんだったら、その結果が災いをもたらすことに。
愛理と雅の不仲はその一端に過ぎない。
「本当だったら、大変なことになる」
「うん、結構ヤバいかも。栞菜を止めないと、ももが危ない」

216 :

唇がひりひりする。
そして、手がジンジンする。
雅に手を上げたから。
初めて人に手を上げた。
その自分への怒り。
「何やってるんだろう、私」
レッスンが終わって愛理はひとり、芝公園のベンチに座っていた。
憧れていたアイドル像とはかけ離れて行く自分が情けなく、悔しかった。
ソロデビューなんてしたくない。
かといって、いまのメンバーとこの先もやっていける自信がない。
でも、アイドルを辞めてしまったら「彼女」との接点がなくなってしまう。
ボーっとオレンジ色の光を放つ東京タワーを眺める。
夢の中なら、彼女と一緒に眺めていられたのに。
「え、うそ」
後ろから声がした。
「あの、鈴木……愛理ちゃんですか?」
ぬくもりのある優しい声。
夢で愛理の名前を呼ぶ声そのものだった。

217 :
「は、はい」
返事をし、振り返ると驚いているのか口元を押さえている「彼女」がいた。
舞美だった。
「えっと、やだ、どうしよう、本人だ」
ひどく慌てていて、なんだか微笑ましかった。
「よかったら、隣にどうぞ」
「は、はい!!」
すごいスピードで舞美はベンチに隅っこに座った。
「もっと隣に来ていいよ。それとも近くに寄るのは嫌?」
なぜだろう。向こうの方が年上だろうに、自然でため口で話してしまう。
「そ、そんな、めっそうもない!! 愛理ちゃんのことが好きて仕方ないんですから、ってわたし何を言ってるんだろう!?」
ひとりで盛り上がっていた。
「では、失礼して……」
今度は肩が触れ合うくらい近くに座ってきた。
愛理は鼓動が高鳴るのを実感した。

218 :
「愛理ちゃんはよくここに来るんですか?」
「うん、来るよ。嫌なことがあったとき、東京タワーを眺めてボーっとしたくなるんだ。
ここから見る東京タワーが大好きで。本当だったら、嬉しい時に来たいんだけど。あなたは?」
「わたしですか!? わたしは……どうしようもなく寂しくて、愛理ちゃんに会いたいときに、って言ったら変ですか?」
「ビミョー」
「ごめんなさい!」
「うそだよ。ううん、嬉しい」
「よかった。ここに来ると、なんだか愛理ちゃんに会える気がするんですよ、って今まさに夢が叶いましたけど。
わたしの夢の中に出てくる愛理ちゃんも東京タワーが大好きで、わたしとよく眺めてるんです。
その夢ではわたしと愛理ちゃんが同じハローのグループに所属していて、
一緒に武道館を目指して頑張ってるんですよ、って何言ってるんだろうわたし」
「それ、本当?」
「ごめんなさい、変な妄想を本人の前で垂れ流しちゃって」
「違う、わたしも全く同じ夢を見るんだ。あなたと一緒にアイドルをしてる夢を」
「え?」
舞美は目を丸くして驚いた。

219 :
「私はBerryzじゃなくて別のグループに所属していて、あなたはそのグループのリーダーですごく優しくしてくれる。
そんなあなたのことがたまらなく私は好きなんです」
喉の奥まで出かかっている大切なこと。
目の前にいる人の名前。
それが思い出せれば――。
「あなたの名前を教えてくれない?」
「わたしですか? わたしの名前はやじ――」
その時、舞美の携帯に着信があった。
「ごめんなさい、ちょっと電話に出ますね。あ、熊井ちゃんからだ」
いいところだったのに。
愛理は内心ため息をついた。
だが次の瞬間、舞美の表情が一変するのを目撃することになった。
「もしもし……どうしたの、そんなに慌てちゃって。……え、うそ、ももが駅で人身事故に!?」

(episode.5 おわり)

220 :
ももちぃぃぃぃぃ・゜・(つД`)・゜・

221 :
パジャマのズボンに手を入れ、下着の上からももの大事なところを擦ってあげる。

222 :
ももちの無事祈願、のちさんに感謝の気持ちで

223 :
うわあああああああああマジかぁ!!!

224 :
今夜あたりくるかな
待ってるぞのち

225 :
(episode.6)

桃子は駅のホームで盛大なため息をついた。
原因は舞美。
舞美のことはよくわからない。昨晩はあんなに甘えて一緒にいたい、
って一夜を共にした……といっても手を繋いで寝ただけ。
舞美? 爆睡してた。
まったく無防備なんだから。
そんでもって次の日には愛理ちゃんに会えるかもって東京タワーがよく見える芝公園に出かけた。
立直り早すぎ。
ほんと、舞美に翻弄されている自分がバカバカしい。
舞美が好きなのは愛理ちゃんなのに、そんなのわかりきっているのに。
桃子はまた盛大なため息をついたその時。
「嗣永せんぱーい」
聞き覚えがある声。

226 :
「あれ、栞菜。どうしたのこんなところで」
神奈川住まいの栞菜と千葉県北部住まいの桃子は大学の最寄り駅でしか会わないはずだったが。
「そんなことたいしたことじゃないですよ。それより嗣永先輩は昨晩どこにいました?」
キモチわるいくらいフレンドリーに栞菜は問い掛けてきた。
「え? えーと、イベントが終わって家庭教師のバイトをして、家に帰って勉強してたけど」
「イベントが終わったあと、嗣永先輩の地元に帰ったらバイトの時間過ぎちゃうと思うんですけど」
「いや、だからさずらして−−」
「そうやって平気な顔して嘘を重ねて舞美ちゃんを騙すんだ。サイアク、吐き気がする」
栞菜の態度が急変した。
舞美と桃子が一緒にいるような敵意を、いやいつも以上の敵意を向けてきた。
敵意というよりも殺意というほうが近いかもしれない。
「か、栞菜どうしちゃったの?」
「どうしちゃった? それはあんたの方でしょ。
昨日は愛理卒業発表でひどく落ち込んでいた舞美ちゃんにつけこんで……お泊りしたでしょ」

227 :
「……追跡アプリ。そんな最低なものいつ舞美のスマホに入れたの」
「知らない? 舞美ちゃんのスマホの設定やったのあたしなんだよ」
桃子の背筋に薄ら寒いものが走った。
完全に一線を超えている。
「ごめん栞菜。もう二度と舞美に近づかないで。あんたのしてることは犯罪行為だよ」
「近づかないで、か。簡単にいってくれるね。
あたしがどんな思いをしてこの世界を変えて、どれほど努力をして舞美ちゃんの側にいるか知らないくせに。
あたしには舞美ちゃんしかいないの」
「何を言ってるかよくわからないけど、いますぐ舞美に電話するから。
栞菜は悪質なストーカーで、追跡アプリを入れられてるから削除してって」
「余計なことすんなよ!」
電話をしようとした桃子のスマホを栞菜が取り上げようとする。
「離してよ!!」
ふたりはプラットホームの黄色い線上でもみ合いになった。
そうしている間にもアナウンスが流れ、列車が入線してこようとしていた。
「もも!!」
声のする方を見ると友理奈がいた。

228 :
「あれ、熊井ちょーなんで――」
力が抜けた桃子に栞菜がチャンスとばかりにスマホを思いっきりひったくった。
「わっ」
そのはずみで桃子はバランスを崩し、ホームから転落しそうになる。
タイミングが悪く列車がホームに入線し始めており、けたたましい警笛をならしてくる。
やばい。やばいよ。
助けて、舞美。
……ううん、違う。
助けて、――。
桃子がそう思った瞬間、体にドン、と大きな衝撃が走った。

229 :

「ねぇ、みや。もしも、だよ。ももが……死んだら、悲しい?」
「は? 何を突然」
なんだ、これは?
「だから、もしもの話」
助手席にいる桃子が運転している雅に話しかけていた。
そうだ、これは走馬灯ってやつだ。
普通は人生のハイライトが流れるらしいけど、自分の場合は夢だった。
「そんな、ももが死ぬなんてありえないでしょ」
「わかんないよ、人の生き死になんて。もしかしたら明日死んじゃうかもしれないじゃない」
雅があまり興味を持ってくれないので話を切り替えようとした。
すると、雅がハザードを焚いて路肩に駐車した。

230 :
「みや、どうしたの?」
聞いたところでハッとした。
雅が目じりに大きな滴を貯めていた。
「バカ、そんなこと聞くから悪いんじゃないよ。
ももが明日死んだら……あたしも明日死ぬ。ももがいない世界なんかに未練はない」
「ごめんね、変なことを聞いて。みやに死なれたら困る」
「大丈夫。そうならないためにあたしがももを守ってあげるよ。絶対に、何があっても」
「うん、期待してる」

そう、これは夢の話。走馬灯。
こんな風にみやと話せたらよかったのに。
(episodo6. おわり)

231 :
き、きてた〜〜〜〜!!!

232 :
来てた!
これこの先どうなるんだよ
続きがたのしみすぎる!!!

233 :
ずっと規制されてたんどけどようやく書き込めるようになった
のちさんの小説やっぱすげー面白い
これからも楽しみにしてるよ!

234 :
おつです!!

235 :
落ちた?

236 :
あげ

237 :
みやももおおおおおおおお

238 :
さすがに今日は更新こないかな

239 :
あげ

240 :
みやももいいね!

241 :
まるでストーカーみたいだが
毎日待ってるぜw

242 :
episode.7

1年、2年、3年……4年。
栞菜が℃-uteを辞めてからもうすぐ4年が経とうとしていた。
一旦芸能活動から距離を置いたものの、学校には相変わらず馴染めず、
また芸能界以外の世界を知らず、恋しくなって戻ってきてしまった。
元の事務所に戻るわけにもいかず事務所を変えて、
現在の仕事は舞台、映画にグラビア撮影……といえば順風満帆、聞こえはいいけれど、舞台は本当にたまで小劇場。
映画は誰が見ているのだかわからないVシネマ、グラビア撮影はセクシー系が増えてきた。
給料はコンビニで毎日バイトしてた方がマシという程度。
「なんだかなぁ」
カフェでエスプレッソを前にため息と同時にやるせなさがこみあげてきた。
一方の愛理といえば。
栞菜が辞めてから舞美と付き合いだし、同棲し、ツイッターやネットでの噂では同じ大学を目指しているらしい。
芸能活動の方はあの国民的アイドルグループには敵わないもののファン人気は根強く、
毎年コンサートツアーに舞台や映画の仕事が絶えることはない。
活躍しているのは愛理に舞美だけではない。
早貴も、千聖も、舞も5人になってから危機感や責任感が彼女たちを成長させ、
長所を生かして、それぞれにソロの仕事も増えてきていた。
「なーにため息ついてるの。疲れてる?」
栞菜の向かいの席で話をするのは、えりかだった。

(つづく)

243 :
おぉーっ!来てた!!!
のちさん有り難う!!!

244 :
えりかは℃-uteを卒業し、いまではモデル業に専念していた。
互いに℃-uteを辞めて4年目。
ただふたり違いはえりかの「卒業」に対して栞菜の「脱退」。
えりかの方はまだ℃-uteメンバーと連絡を取り合っているが栞菜は違った。
辞めた後すぐに電話番号・メールアドレスを変えて遮断した。

「あたしって芸能人に向いてないのかなぁって」
「なにをいまさら。それ言ったらうちもだよ」
えりかに笑われた。
「みんな……℃-uteのみんなと芸能人じゃなくてフツーの友達として知り合っていたら今も仲良かったと思う?」
そうすれば、いまも舞美ちゃんと一緒に居られたかな?
栞菜は思わずにはいられなかった。
「たぶんね。……℃-uteの話するの、久しぶりだね。何かあった?」
「別に」

245 :
今度撮影するイメージビデオの水着がひどかった。
ハロプロにいたら、絶対に着させられることはなかっただろう。
しょうがない、所属している芸能事務所がそういうところなのだから。
首を横に振ることはきっと許されないだろう。
愛理も、舞美も大切にされている。
それに対して自分は――。
情けなく、悔しかった。
「話したくなったらいつでも話して」
えりかは何かあることを察してくれた。
昔からずっとそう。
変わらず、ずっと優しかった。
学校からも℃-uteからも必要とされなかったあたしの傍にいてくれた。
(つづく)

246 :
もしかしたら今日も来てるかもと思ったら来てた!!!
有り難うのちさん

247 :
今日来てくれるかな

248 :
今日は来るかな
待ってるよ

249 :
>>245

そんな栞菜だが、ハロプロで唯一連絡をとっているメンバーがいた。
「熊井ちゃん、久しぶり。Berryzはどう?」
同い年の友理奈。
℃-uteに在籍していたころは特に親しい間柄ではなかったが、
メールアドレスを変えた後に寂しくなって連絡したのが友理奈だった。
なんとなくではあるが口が堅そうなイメージがあったのが大きな理由。
『んー、まぁまぁかな。ツアー中だし忙しいってのはあるけれど。栞菜は?』
「最悪。エロい水着を着させられそうなんだけど。断ると次のお仕事なくなっちゃいそうだし」
えりかに話せないことを、なぜだか友理奈には話せた。
深刻な相談をするには向いてない相手だとは思うが、誰かに話したい愚痴なんかを聞いてもらうにはちょうどよかった。
『ひどいねー。うちだったら芸能人辞めてるよ。あーあ』
「あれ、珍しい。後ろ向きだなんて」
『ダンスの先生が厳しくて。今日もレッスンで怒られちゃった。何年やってるんだ、って。
やっぱり芸能人なんて向いてなかったのかも』
「……なにをいまさら」

250 :
『えーひどいよ栞菜』
「あたしもだけどね。フツーに一般人として中学、高校を過ごしたかったなー」
『だよね、うちもよく思うよ。そうしたら土日いっぱい寝れたのにな、って』
「そういうレベル? 気持ちはわかるけど」
『栞菜は舞美と一緒の学生生活送りたかったなーって思ってるんでしょ』
「うるさいなー、わかってるんだったら言わないの。そういう熊井ちゃんはももかなー?」
友理奈をからかってみた。すぐに返事がくると思ったがしばらく無言が続いた。
「どうしたの?」
『ほんと、そうだよね。最近のももはみやにべったりで……ていうか、みやがももにべったりと言った方がいいかな。ちょっとしたことでも怒るんだよ』
「面倒くさいね」
『あーあ、なんかさ、昔にもどってやり直したいな。できないかな、栞菜?』
「無理無理。そんなドラえもんや魔法使いじゃあるまいし」
『梨沙子だったらできそうじゃない?』

251 :
「そんな、さすがに梨沙子だって――いや、梨沙子だったらできるかも」
『え? マジ!?』
「うん。実はあの子とも匿名でやりとりしているんだけれど、あの子の魔力は本物だよ。
とはいっても、タイムスリップなんて大それたことをしたら大変だけれど」
その代償はとてつもないことになりそうだから。
このときの栞菜は、現在をリセットすることをそこまで切望してはいなかったのだが。

(episode.7 おわり)

252 :
>>246
ありがとうね
近いうちにまた書きます

253 :
>>247-248
ありがとう
そうやって毎日書き込んでもらおうとサボる率が減りそうw

254 :
来てた〜〜〜!!!
先が全然読めなくて続きが楽しみすぎる!!!

255 :
ワクテカすぎる

256 :
来てた!!!
毎日書き込むとのちさんの重荷になるかなと思ってたんだが
毎日書き込んでもいいんだなw

257 :
繋がってきたな

258 :
次が楽しみ!
みやももみやももみやもも

259 :
今日はさすがに更新ないだろうから
今までの話しを読み返してみる

260 :
episode.8

体にかかる心地よい重さ。
ちょっと高そうな香水のいい匂い。
「ばか。死にたいの?」
愛しのみやの声。
のしかかっているのは紛れもなくみや。
仰向けになっている自分が押し倒される格好になっている。
これが噂の天国、ヘヴンってやつだろう。
最後は嫌な死にかただったけど、こういう天国が待っているんだったら悪くない。
「こっちは愛理にはぶたれるし、
レッスンはグダグダで疲れてるから人身事故なんて起こされると帰るの遅くなると迷惑なんだけど」
人前だとちょっと口が悪いのもご愛嬌。
こう見えてふたりっきりの時は甘々なツンデレ設定なんだから。
そう、ここが天国だったら。
「みやぁ、チューしてぇ」
甘えてみる。
「ば、ばか!! 人がいっぱい見てるでしょうが!!」

261 :
頬を赤らめて慌てるそぶりがかわいらしい。
完璧なまでな乙女チックシミュレーションのまんまのみやだった。
「もも!! もも!! 大丈夫!?」
「熊井ちょー? 邪魔しないでよ、いいところなんだから」
「よかった、無事で……」
「そんな泣きそうな顔しないでよ。それに無事じゃないし。
列車に轢かれて悲惨な死に方したからこんな夢みたいなことになってるんでしょ」
「違うよ、もも! みやが助けてくれたんだよ」
「え?」
桃子が首を横に向けると友理奈の奥にすごい数の野次馬に囲まれていた。
「ほんとに……ばかなんだから」
なぜだか泣きそうな雅が目の前にいた。

262 :

もうBerryzなんてホントに辞めようかな。
活動はダルいし、事務所の愛理優遇には虫唾が走るし。
雅は愛理に殴られた頬を押さえながら帰路についていた。
そしていつもの乗り換えの駅で電車を待とうとすると、女性同士が言い争いをしているのか大声が聞こえてきた。
どうせあたしには関係ないし、でも電車を止めるのはやめてね帰るのが遅くなるから。
他人事と無視を決め込もうとしたら、よく知ったような高い声が聞こえてきて顔を向けてた。
すると、あのウザいツインテールの女の子が同い年くらいの女の子と黄色い線上でもみ合っていた。
「ちょっと、よりによって」
脚がもみ合いの方へと向かっていた。
ここで列車が来たらまずいことに、と思った直後に列車が到着することを告げるアナウンスが。
まだ揉み合いは収まらなく、すぐに列車が入線してきた。
タイミングが悪く、あの変なツインテールの女の子が突き飛ばされてホームから転落しそうになった。
とっさに駆けだした。
絶対に死なせやしない。
あたしはあなたを守るんだから。
気がつくと、あの子が列車に接触しないように抱きかかえていた。

(つづく)

263 :
来てた〜〜〜!!!
のちさん有り難うのちさん
この話面白すぎるよ

264 :
続きが気になる〜
ほんとのちはすごいよ!!
よくこんな話思いつくな
ってことで今日も書くよな←

265 :
みや!かっこいい!のちの書くみやもも最高だよ、まじで!

266 :
俺のちさんの小説がスゲー好きだわ
改めて思ったよ

267 :
>>262

「こんなところでケンカなんて死にたい?」
目の前で雅が囁きながらたしなめてくる。夢見心地とはこのこと。
握手会だと速すぎて、ライブやイベントだと遠すぎてみやをこんな間近で独占できないので。
「ううん、死にたくない。みやがこうしてくれなくなるから」
「……ばか。さてと」
雅が体を起こし、服に着いた汚れを手で払うと、呆然と立ち尽くしていた栞菜の方を向いた。
「あんたさ、あたしのものに何すんの?」
冷たく言い放つ。
その迫力に栞菜が後ずさる。
「駅員に突き出されたい? 警察に通報されたい?」
「やだ……やめてよ」
栞菜は今にも泣き出しそうな表情だった。
「そう、じゃあ……あたしが病院送りにしてあげる」
雅が詰め寄り栞菜の襟をつかもうとした。
「やめてよ、みや。いいんだ」
先に桃子が雅の手首を掴んだ。

268 :
「は? だってあんた、こいつに殺されそうになったんだよ!?」
「あれはちょっとした事故だから」
「事故で済んだら警察なんていらない、って逃げるかよ!!」
栞菜は隙をみて階段に駆けだした。
追いかけようとした雅を桃子は再度制した。
「いいの?」
「いいよ。あの子はこれからもっと辛いことが待ってるから」
舞美に追跡アプリの件をどうしても言わなくてはいけない。
親友として。
「それはそうと。ありがとうね、みや! やっぱり一番のピンチに助けてくれるのはみやだね!!」

桃子の表情がパァっと明るくなり、深々と頭をさげた。
「え? あ、うん、えっと……ほら、電車止まっちゃうと帰るの遅くなっちゃし! 
ほんと、ほんとそれだけなんだから」
「へー、みやって体を張って人助けする一面あるんだ。意外だね」
そう言ったのは友理奈の隣にいた梨沙子。

269 :
「は、梨沙子!? なんであんたがこんなところに。家とは逆の方向でしょ」
「ちょっと用事があって。みやにも関係があることなんだけど」
その時、隣の番線に列車が入線してきた。
「ごめん、あたしマジで眠いから帰る!」
そう言って列車に駆け込み乗車をした。
「どうしよ梨沙子。みや行っちゃったけど」
「ま、今のところは大丈夫だけれど。それよりこの子どうするの? 完全にいっちゃってるんだけど?」
梨沙子はあきれ顔で友理奈に問いかけた。
「ふわぁ……みやぁ。あなたのももを置いていかないでぇ」
恍惚状態で宙に手を伸ばしている桃子だった。

270 :

「なんだよこれ。逆方向じゃん」
雅は駆け込み乗車をしてみて気がついた。
列車が北ではなく南に向かっていることに。
冷静になれば、逆の番線に乗れば逆方向に進むのは当然のこと。
そんな失態をおかしても、上機嫌な自身がおかしかった。
列車の窓に映る表情はにやけてしまうのを我慢しているみたい。
また会えるかな。
ドキドキするのに、不安になる。
こんなアンバランスな気持ちになるのは初めてだった。
「名前くらい聞いておけばよかった」
そうすれば、きっと何かが変わるはず。

(episode.8 おわり)

271 :
来てた〜〜〜!!!!
まさか今日も来てくれるとは思わなかったよ!有り難う!!!
この話素晴らしすぎる!!!

272 :
あーーー!のちのちありがとうううう
みやももやっぱいいわぁ…

273 :
流石のちやればできる子!!
さあどこまで記録が伸ばせるかー
みやももにやじすす、それぞれがどう絡み合って行くのかひじょーに気になる
って事で今日も期待して待ってみる←

274 :
まとめの人も乙です!!
見返すのに重宝してる

275 :
(episode.9)

桃子と栞菜の騒ぎの影響は収まり、いまでは桃子と梨沙子、友理奈で駅のベンチで座っていた。
「熊井ちょーの話をまとめると……ももと熊井ちょーは本当はBerryzのメンバーで、
それが梨沙子ちゃんの魔法で違う世界に来ちゃってるってこと? マジ?」
「マジだよ、もも」
友理奈は真面目な表情で答えた。
「SFチックで信じられないなぁ。それで……ももとみやは仲良しなの?」
「え?」
「その世界だと」
「……別にいいじゃん、そんなこと」
友理奈は不機嫌そうに答えた。
「えー、よくないよ! そこが一番大事なところなの!!」
「……ライバルだよ。いつの火花バチバチやってる」

276 :
「うそー! 絶対にみやにだったら優しくしてあげるのに。夢の中ではふたりラブラブなんだよ」
「夢? そんな夢を見るんですか」
突然梨沙子が間に入ってきた。
「うん。それも毎晩のように。そっちの方が変な話、現実よりもリアルな感じがするんだ」
「……私も見るんです、そういう夢。Berryzのメンバーがこっちの世界よりも若干異なってるんですけど。
愛理がいなくて、その、お二人さんがいるんです。ふたりともマイペースですけど」
そう言ってはにかむ。
「熊井ちょー」
「ん?」
桃子が友理奈に耳打ちした。
「やっぱりさー、アイドルってかわいいよね。
さっきのみやもそうだけど、梨沙子ちゃんでも十分かわいいよね」
「ちょっともも、失礼だよ」
「どうしたんですか?」
訝しがった梨沙子が桃子に尋ねてきた。

277 :
「ううん、なんでもない。梨沙子ちゃんはこっちの世界と夢の中の世界、どっちがいい?」
「どっち……かな。難しい。でも、向こうの世界のBerryzってこちらの世界以上に個性的でそれこそ動物園みたいな感じなんです。
バラバラなようで、いざとなったらまとまってすごい力を出すような。
こっちのBerryzはただ……バラバラ。みんなの気持ちが同じ方向に向いてないのが悔しいです」
「そっか。桃も、向こうの世界のほうがいいな。Berryzもそうだけど、みやとラブラブしたいもん。でも……こっちの世界に未練がないわけじゃないけれど」
桃子は歯切れが悪かった。
そして友理奈が続いた。
「こっちの世界は、こっちの世界でいいと思うんだけど。ほら、大学生活楽しいじゃん!!
向こうに戻ると、その……」
栞菜が。
「もも!!」
突然駅のホームに響き渡る大きな声。
「あれ、舞美だ。やっほー」
深刻な表情の舞美に対し、駅のベンチから桃子がのんきに手を振った。

278 :
「もも……」
そして舞美が猛ダッシュでホームを駆けてくる。
「もも!!」
人懐っこい大型犬のごとく、桃子に飛びついた。
肋骨が折れるかのような衝撃に肺から空気がもれた。
「心配したんだから、すごく、すごく心配したんだから!!」
「事情がよくわからないけれど……ごめんね、心配かけて」
痛むあばらを我慢し、舞美の頭を撫でてあげた。
人目をはばからず、自分のことを心配して全力で泣いてくれる親友がいる。
こちらの世界の大きな、大きすぎる未練だった。

(つづく)

279 :
ひゃっほ〜!!!今日も来てたよ!!!
こんなに毎日のちさんの小説が読めるとか嬉しすぎる!!!

280 :
のちさんて天才なんじゃないかと思う
俺の心をつかんで離さないなんてw

281 :
さすがに今日はないかな

282 :
この話読んでると意外とやじもももアリだなって
ってことで今夜はくると願って待つ

283 :
俺も基本はみやももなんだけど
この小説読んでたらやじもももありだと思ってしまったw

284 :
待ってるぜ

285 :
基本やじすず、みやももだけど
ときどきやじみや、ももあいりとかやじもも、みやあいりとかが読みたくなる

286 :
>>278

ここで話をするのは人目が気になるとの梨沙子の提案から、話しあいの場所を駅のホームから駅前の喫茶店に移した。
「そうすると、夢の中の世界が本当の世界ってことなの?」
「はい、私も信じられないですけれど」
舞美の問いかけに梨沙子が肯定した。
「するとわたしと愛理ちゃんが……ふわぁ」
舞美が浮かれていて、そのことに隣に座る桃子がイラッときていた。
そりゃ自分もみやとラブラブな世界がいいよ、でも舞美との友情や記憶だって大切なんだよ。
少しくらいは惜しそうにしてくれてもいいのに。
「舞美は元の世界に戻りたい?」
友理奈の問いに舞美は即座に肯定するものだと桃子は思った。
「えっと……難しいな。愛理ちゃんとアイドルをする世界も魅力的だけど、
この世界もすごく大切。桃との学生生活、一緒にBerryzを応援するのも楽しくて」
舞美が桃子の腕を掴んできた。
「ま、舞美は甘えん坊なんだから。あっちの世界だと愛理ちゃんとラブラブなんだよ!
……一緒のキャンパスライフが待ってるんだよ? ももとのキャンパスライフより楽しいよ、きっと」
「そんなことないよ。ももがいつも一緒に居てくれて嬉しいんだから」

287 :
舞美の強い眼差しに桃子はドギマギさせられた。
「あの友理奈さん、このふたりはこんなにラブラブでいいんですか?」
「よくない、全然よくない」
友理奈は不機嫌だった。
「それで友理奈さんは元の世界に戻りたいんですか?」
「どっちでもいい気がしてきた」
「そんな、投げやりな」
「でも、戻った方がいいと思う。このままだとよくないことが起きそうな気がする」
友理奈は言いしれぬ不安があった。
先ほどの桃子の件もそうだけど、このままだと誰かに大きな不幸がふりかかる気がする。
栞菜。
雅に問い詰められたときの、追いこまれた表情が脳裏から離れなかった。

(つづく)

288 :
おおーっ来てた!!!

289 :
どうでしょうか?

290 :
続きが気になるー

291 :
どういう展開になるのか先が読めない(>_<)
待ち遠しいよー

292 :
やじもも好きかも

293 :
どっちにしろ相手にされてない熊井ちゃんw

294 :
>>287

4人はまた近いうちに梨沙子の都合に合わせて集合しようという話になり、
神奈川方面に帰る友理奈と梨沙子を見送って、桃子と舞美ふたり駅のホームに残りベンチに座った。
「ところで桃、ひとつ聞いていい?」
「なに」
「なんで人身事故に遭いそうになったの」
「……そこまで話が戻るんだ」
舞美の天然ぷりに慣れているとはいえ桃子はため息をついた。
「だって話を聞いていないんだよ。
熊井ちゃんはももが人身事故にあったこととその駅名を教えてくれただけで急いでいたから……あっ」
「どうしたの」
「あああ!!!」
ベンチから血相を変えて立ち上がった。

295 :
「愛理ちゃん!!」
「愛理ちゃんが?」
「会えたんだよ、愛理ちゃんに!! 芝公園で!!」
「は?」
「お話をできたんだ、それでね、同じ夢を愛理ちゃんも見ているみたいで、でも、でも」
「落ち着いて、舞美。それで」
「置き去りにして来ちゃった!!」
「……舞美らしい。連絡先は聞けなかったの」
「聞けばよかった……」
肩を落としてガッカリしていた。
ひとつのことに夢中になると、他のことを考えられなくなる。
不器用な舞美らしい。
念願の愛理ちゃんと会えたことよりも、自分が人身事故にあったという知らせを優先してくれた。
原因が自分であることが申し訳なくあり、でもちょっとだけ、いやかなり嬉しかった。

296 :
「とにかく芝公園に戻るね!! どうしよう、走っていった方が早いかな!?」
「そんなわけないでしょ。電車使いなよ」
「そっか、そうだよね!!」
もう人身事故に遭いそうになった原因を聞いたこと忘れてる。
お人好しの、全力バカ。
舞美のことをみんなマンガのキャラみたいって評するけれど、絶対に少女漫画じゃなくて少年漫画の熱血キャラだよね。
そんな舞美の世界をどうしても大切にしてあげたかった。
栞菜、今回だけは舞美に免じて許してあげるよ。
次はないからね。
「もも、どうしたの?」
「いんや、別に。……そうだ、スマホ貸して」
「え、なんで」
「いいから!」
「は、はひぃ」
ちょっと脅えてる舞美からスマホを借りて、ちょちょいと追跡アプリを削除した。

297 :
「むやみに人にスマホを貸しちゃいけいないよ」
「ん? どうして?」
「悪用されるからでしょ」
「わかった! 困ったことがあったらこれからももに操作して貰うね。わたし、機械音痴だけど怒らないでね」
「努力する」
そうこうしているうちに東京方面への電車が来た。
「もも、バイバイ」
「愛理ちゃんに会えるといいね」
「うん!!」
ちょっとだけ胸がチクチクしながらも笑顔で舞美を見送った。
そして自分に問いかける。
元の世界に戻りたい?
答えはさっきの「戻りたい」から「わかんない」になっていた。
夢の中のみやはとても素敵だけれど、この世界の舞美が負けないくらいにいいヤツだから。
(episode.9 おわり)

298 :
今日も来てた!!!
俺はみやももが好きなのにやじもももいいかもと思ってしまっているw

299 :
どうしてこうも毎回続きが気になる終わり方ができるんだろうと思う

300 :
今週は週末まで更新なしかな

301 :
待ってるぜぃ

302 :
今日あたりは来るに違いない
まってるぞーーー

303 :
ちょっと待っててくださいな…

304 :
よっしゃ〜〜〜!!!!
待ってるよ!!!

305 :
episode.10

友理奈と別れたあと、梨沙子は列車の中でひとり思い耽った。
友理奈さんから、タイムワープの魔法を使っての「この世界はすり替えられた世界」という話。
にわかに信じ難かった。
そんな大それたこと、魔法オタクの域をでない自分ができるはずがないと思う。
なにか裏があるはず。
家に帰って調べてみなければ。
嫌な予感に脚が震える。
魔法の原則は等価交換、大きな魔法を使えば使うほどその代償も大きい。
「時間」というあまりにも大きな対象に対して歯向かうとなればなおさらのこと。


家に帰り、食事も風呂も後回しにして部屋にこもる。
以前に神保町で手に入れた「世界魔術史概論」なる古書を手に取る。
これは戦前にごくわずか発行されたかなりの希少本で、
魔力がない人が読むとただの古めかしい文章の読みにくいオカルト書。
だけど、魔力をいくらか持つ人間が意識を集中させると……別の文章が浮かび上がってくる。

306 :
かいつまんでに説明すると、
人類の歴史が始まってからどこの大陸のどの国でどのような魔術が見いだされ、
使われてきて今日の(といっても戦前までだが)世界を形作ってきたかが大まかに書いてあった。
魔術は主に政治や戦争の道具として使われてきた。
政治では、支配者がどのように国を治めたか、
反逆者はどのように国を乗っ取ったか、革命家はどのように国を転覆させたか。
戦争に関しては、戦争の天才と呼ばれた人物はどのように連戦連勝を築き上げたか、
天才軍師はどのくらい相手の動きを予知できたか、など書いてあった。
具体例としてあげられる人物はそれこそ小学校の歴史でも習うような有名な歴史上の人物であった。
さてそんな歴史は置いといて、タイムワープは実際に使われたのかを確認してみた。
項目は発見できたのだが、記載内容がごくわずかだった。
『筆者も時間逆流の魔術は実際に存在すると思われるが、
それが行われたという事実は確認できない。なぜなら確認する術がないからである』
なにやら難しい話だが、要はこの現在が何者かが時間を遡って変えても、
他人にはそれを確認する手段がないのでわからない、
この世界するすり替えられた世界だと自覚することも不可能だからということであろう。
当事者ですら友理奈さんに言われてようやく違和感の正体に気がついたのだから。
そして、項目は続く。

307 :
『成功者の確認が取れないということは、なんらかの影響が当人にあったと推測される。
記憶の削除、時空の隙間での遭難、術者の死亡や存在の抹消なども考えられる』
なんとも物騒な話だ。
桃子さんが人身事故に巻き込まれそうになったのはその序章に過ぎないのかもしれない。
私なんか当事者中の当事者なので何に巻き込まれるか不安であった。
ただで済むことはないであろう。
そして気になるのは、桃子さんともみ合いになっていた女性、栞菜さんというらしいが、
彼女がみやに一喝されたあとのすごく脅えた表情が気になって仕方がなかった

(episode.10 おわり)

308 :
来た〜〜〜!!!
今後の展開が全く読めない
毎回続きが楽しみすぎる

309 :
面白すぎるな

310 :
それにしてものちは罪作りなやつだ
次はどうなるんだろうと悶々と過ごす毎日となってしまったw
もうのちなしでは生きてゆけない←

311 :
今日は来るかな

312 :
どうでしょうか?

313 :
来てくれ!
続きが気になってしょーがない

314 :
episode11

愛理ちゃん、まだ公園にいるかな?
舞美は手のひらに滲む汗が気にならないくらいに強く拳を握りしめていた。
焦っていた。
さきほどまで恋焦がれていた愛理と一対一で話が出来ていたことが信じられない。
勿体ない事をした?
愛理ちゃんと知り合いになれるチャンスをふいにしてまでもものところにかけつけて?
己に問いかけてみる。
答えはNO。
ももの一大事に駆け付けないという選択肢など存在しなかった。

315 :

「え、うそ。ももが駅で人身事故に!? どこの駅!? ……うん、わかった、すぐ走って行くね!!
 ……電車のほうが絶対に速い? そうする、今すぐ行くから!!」
通話を終え、舞美は己の耳を疑った。
桃子は誰よりもたくましく、絶対に自分から命を投げ出すような人間ではないと思っていた。
「どうかされました? 友達が事故にあわれたとか」
愛理が不安そうに尋ねてきた。
「ごめんなさい。親友が事故にあったんで急ぎます! 失礼します!!」
立ちあがり愛理に一礼して舞美は駆けだした。
「あ、あの!!」
せめて連絡先だけでも。
そう言いかけた愛理の眼前にはすでに舞美の姿はなかった。
駅まで全速力で走り、心の中でごめんなさいとつぶやいてホームを駆け地下鉄に飛び乗り、
友理奈に教えてもらった駅まで急いだ。
列車の中でも走りたい衝動に駆られるくらい焦っていた。

316 :
ももに何かあったら、わたし、わたし……。
どうしていいかわからない。
嫌になった大学生活も、人間不信も、諦めかけた教員への道も、
そして愛理ちゃんBerryz卒業の知らせすらも、ももが全部わたしを助けてくれた。
面倒くさがりで飽きっぽいところがあるけれど、賢くて、かわいくて、誰よりも優しいももが本当に大好き。
「大好き」が「大好きだった」と過去形にならないことを切に願った。
だから。
駅のホームで無事なももを見たときはホッとして、安心して、また会えたことが嬉しくてバカみたいに泣けた。
「舞美はおおげさだなぁ」
抱きついて、腕の中にいるももに子供のように頭を撫でられた。
全然おおげさじゃないよ。
それこそ人生で一番心配したんだから。

317 :

「愛理ちゃんいないかぁ」
それもそのはず、時刻は夜の11時近く。
わたしも早く帰らないと電車がなくなってしまう。
愛理ちゃんと座っていたベンチのそばに行く。
ここで隣に座っていたことが今でも信じられない……ん?
ベンチになにやら手紙らしきものが置いてあった。
慌てて読んでみる。
『さきほどは突然ごめんなさい。でも、お話できて本当に嬉しかった。
 よかったら、またここで会えます? 
 あなたに聞いてもらいたい話がたくさんあります。
あと、名前教えてもらえますか? 
あなたの名前をどうしても知りたいです。あなたの全てが知りたいです。
そして一緒に東京タワーを手を繋いでここから眺めたいです』
最後にひらがなで「あいり」と結んであった。
嬉しい。すごく嬉しい。家宝にしてしまいたいくらい嬉しい。
だけど熊井ちゃんや梨沙子ちゃんの話を聞いて、ある不安があった。
もしわたしが再びここで大好きな愛理ちゃんに会ったら……二度と大好きなももに会えなくなる。
どうしてもそんな悪い予感がしてしまう。
(episode.11 おわり)

318 :
みんないつもありがとうです
人がいるとやっぱり書こうって気になれますw
>>310
おおげさなw
でもありがとうねうれしいです

319 :
来てたーーーー!!!
のちさん有り難う!!!
明日の休日出勤頑張れそうだw

320 :
やっぱりやじももいいな

321 :
おおーっ来てた!

322 :
今日もこーい
待つよ

323 :
俺も待ってるぜぃ

324 :
今日も待ってるよ〜

325 :
episode.12

スケジュール帳を開いてみる。
月曜火曜水曜金曜日曜……とテレビ収録が入っている。
平日は大学にも通い、日曜日なんか昼にはBerryzのイベントが入っていて、夕方から収録。
だから残念ながら夕方・夜のイベントには出られない。
テレビのお仕事は楽しいし、自分が知名度をあげることでBerryzの知名度も上がる。
それはいいことだけど、やっぱりBerryzのお仕事があるときは一緒に参加したい。
最近ではわりと難しいけれど。
そんな多忙な日々を送っていた自分は、
ついに体が悲鳴をあげて1月終わりに体調不良で1週間自宅で療養することになった。
「ももは働き過ぎ。たまにはしっかり休まないと」
そうベッドのわきで呆れているのはみやだった。
同棲しているみやが面倒を見てくれている。

326 :
「テレビのお仕事も自分で決められるわけじゃないよ」
「そうだけどさ。体を壊しちゃもともこもないよ。学校もいけないし」
「みやはいいの? 学校は」
「ももを放っておけるわけないでしょ。あたしがいないとダメなくせに。テスト期間までには治しなよ」
「そうだね、みやがいないとダメだね」
みやと同棲してからは公私ともにみやにベッタリ。
家事もこなすしお料理はおいしいしで言うことなし。
これでみやに捨てられて一人暮らしになった日には生きていけないだろう。
「よろしい。もうそろそろお粥くらい食べられる?」
「いけそう」
「はい、あーん」
「あーん……おいひぃ」
二日ぶりに食べるごはんはおいしくてたまらない。

327 :
「よく噛んで食べなよ」
お仕事を休んでおいてあれだけど……みやとこうやって過ごす時間ができたことはちょっとだけ嬉しい。
「どうしたの、ニヤニヤして」
「え……うん、みやとこうしていられるのは幸せだなって」
「そういうのは病気治してから言ってよ。こうみえても心配してるんだから」
「ごめん……」
「そう謝られることでもないんだけどね。食べ終わったらすぐに寝なよ」
「うん。あの、みや」
「なに?」
「添い寝して……欲しい」
「病人の隣で?」
「そうだよね……ごめん」

328 :
15分後。
「すぐに寝ちゃいなよ」
みやがしっかりと添い寝をしてくれている。
頭を撫でてくれる手が何とも気持ちいい。
自分はみやにうつさないようにしっかりとマスクをしている。
「寝てばかりだから眠くない。なにかみや、お話してよ」
「なに、その無茶振りは。……そうだね、前にももがBerryzに居ないって夢をみたんだ」
「卒業したの?」
「ううん、オーディションで落ちたみたいで」

(つづく)

329 :
来てた!!!
のちさん有り難う!!!

330 :
やじもももいいと思ったがみやもももやっぱいいよな
どっちも好きだw

331 :
久々にこっちの世界のみやもも!いいですねー

332 :
のちさんてマジで凄いと思う

333 :
今日も待ってる

334 :
>>328
「ひどい」
「しょうがないよ、夢の話だから。それで、もものいないBerryzはどうだと思う?」
「セクシー担当が抜けて色気が激減!」
「そうそう、ってそんなわけあるかい! 
……じゃなくて、はっきり言って退屈。
つまんないし、事務所は愛理激推しの1トップ体制で」
「ちょっと、なんで愛理が出てくるの?」
「あ、そうだ。Berryzに愛理がいるの。で、ももと熊井ちゃんがいないんだ」
「さぁ? でさ、愛理とあたしがメチャメチャ仲悪いわけ」
「へー、現実では姉妹のように仲良しなのに」
「ももが絡まなければね」
「え? どういうこと?」
ちょっとだけとぼけてみる。
すると、みやの両手が左右の頬に伸びてきて、
「イタタタタ!!」

335 :
「あんたが愛理と付き合ったからあたしと舞美が面倒なことになったんじゃないのー、
忘れたのー、忘れたんだったらもっと引っ張って思い出させてあげようかー」
満面の悪魔の笑みを浮かべてつねられた。
「ふいまへん、おもひだひまひた!!」
「よろしい。で、夢の続きだけど、ももがあたしの熱狂的なファンなわけ!!
いつも紫のサイリウムを振ったりしてアピールしてくれててあたしは気になってるんだ」
「いいね、それ。ふたりは恋に落ちるの!?」
「たまたまももが駅で列車にひかれそうになったのを助けてふたりは仲良くなるんだ」
「……なんで自分が列車に」
「さぁ? 忘れちゃった。スマホでもいじってたんじゃない?」
「駅のホームでは気をつけてます! で、続き? 仲良くなって付き合うの?」
「うーん、そうしたかったところなんだけどね……」
みやは言葉を濁して表情を曇らせた。
「なにかあったの? 悲恋?」

336 :
「悲恋というか悲惨。あたしが愛理とのいざこざの弾みで大けがをさせちゃうんだ。
それを知って激怒した舞美が握手会であたしをナイフで刺そうとして――」
「ストップ! なんでそこで舞美が出てくるの?」
「知らない。でもね、ももが身を呈して止めてくれるわけ。でも、その代わりにももが刺されて」
「舞美に」
「うん。でさ、その場にいたあたしがキレて舞美をそのナイフで返り打ちに!!」
「なんでそんなグロい夢みるの。舞美に恨みがあるわけ?」
「ないよ。ダチだし、世話になってる」
ケロッと答えたのでため息をついた。
「……まだ続きある?」
「そうしたら今度は舞美の友達らしき女の人が飛びかかって来て首を絞められて。
梨沙子と熊井ちゃんが助けてくれてあたしは幸い死ぬことはなかったんだけど、
その女の人が懐に隠していた爆弾でドッカーン」
「救いようがない話だね。もういいや、寝る」
悪夢を見そうだったので話すのをやめて貰うように促して寝がえりをうった。

337 :
「ももー、ごめんねー」
そうしたら機嫌をとろうとみやが背中に抱きついてきた。
「愛してる」
耳元でのみやの甘い囁き。
歌詞では散々歌いつくしているフレーズのはずなのにみやに言われるとキュンキュンしてしまう。
「もも、愛してる」
やばいっす。
病人なのに、病人がしてはいけないことをしてしまいそう。
「みやぁ」
我慢できずに振り返る。
「ずいぶんと雅ちゃんと仲良くしてるんだね、びっくりしちゃった」
あれれ!?
「いや、別にいいんだよ。ほら、わたし達は友達だし!!」
笑顔なのに、怒ったような口調の……舞美がいた。

338 :

「……さいあく」
そこで桃子は目が覚めた。
雅との甘い夢のはずなのに、最後はなぜか舞美がでてくるというひどい落ちだった。
「いや、そんなことよりも」
雅が言っていた夢の話が気になった。
桃子と友理奈がオーディションで落ちたこと、それでも桃子が雅のファンであること。
そして栞菜との駅での騒動のこと。
言い当てていた。
すると、そのあとのことも――。
桃子は気になって、前日に教えてもらった梨沙子の電話番号にかけた。
1分ほどコールの後、つながった。

「もしもし、梨沙子ちゃん! 夜遅くにごめんね」
『……夜遅くって午前3時なんですけど』
「どうしても聞いてもらいたい話があって」
『いいけど手短にお願いします』
不機嫌そうな梨沙子に夢のことを話す。
雅とラブラブな場面はさらに不機嫌そうに聞いていたけれど、
雅の夢の話を聞いて態度がうって変わって真剣になった。

339 :
『まずいですね、それ』
「そうなの?」

『みやって勘がいいって夢の中の世界でも言われてませんか?』
「動物的な勘を持ってるって疑われてる。天気予報よりも確実に天気を当てるし」
『こちらの世界でも同様です。みやは予知能力を持ってるようでして。
芸能人てなんだかの魔力を持ってるっケースが多いのですが、みやはずば抜けていて』
「大丈夫かな」
『でも、こうやって桃子さんから情報を得られたから対処ができると思います。
みやと愛理の動向を注視すればいいんですね』
「そうだね、お願い。……梨沙子ちゃんて頼りになるね」
夢の中の世界の甘えん坊な梨沙子とは違ってしっかりしているように思えた。
『そんなことないですよ、言ってもらえると嬉しいですけど。ではおやすみなさい』
「ありがとうね、ばいばい」
梨沙子ちゃんは頼りになりそうだし、大丈夫っぽいよね。
桃子は安心して眠りについた。

340 :
翌日。
『桃子さん、本当にすいません……』
梨沙子からの知らせは、雅が愛理を事故とはいえ怪我をさせた知らせだった。
今日は金曜日。
日曜日には水曜日の池袋に続きお台場で新曲発売記念の握手会が開催される。

(episode.12 おわり)

341 :
うおおお
のち!お前なんて素晴らしいんだ!くそ!はらはらされられっぱなしだぜ!

342 :
ひゃっほ〜〜〜〜!!!来てた〜〜〜!!!
てかのちさんてマジで凄いと思うわ
面白すぎてどうしようw

343 :
来てたのか!
ヤバイな面白すぎてわけわらん

344 :
読んでたらどっちが現実だろうって悩む
めっちゃ話に引き込まれる
のちはすごいな
ってことで今日も待つ←

345 :
俺も待ってるぜ

346 :
(episode.13)

桃子からの一報を受け、梨沙子は雅が愛理に手を出さないように警戒してレッスンに臨んだ。
ところが、あと一週間でコンサートツアー初日を迎えるとは思えないような様子に驚かされた。
明らかに異常をきたしている3人いた。
「ラ〜♪ 握手会が待ち遠しいな〜♪ 来るよね、きっと来るよね〜♪」
まずは雅。
握手会嫌いで有名な雅が柔軟体操をしながら上機嫌に鼻歌を歌い、握手会を待ち遠しいと言うとは。
「おはよー梨沙子!! 元気!?」
満面の笑みであいさつをされた。
正直言って気味が悪い。

347 :
そして愛理。
「今度はどうやったら会えるんだろう。
また芝公園で待ち伏せ、ううん、握手会に来るかも。
そうしたらどうしよう。どうやって連絡先を交換しよう。握手会でメモを渡すのはリスク高すぎかな。
そうするとやっぱり芝公園かな、それにしても綺麗だったな、あの人。ほんとに――」
ぶつぶつぶつぶつぶつぶつ……。
独り言を延々と呟き虚空を見つめながらときおりニヤニヤする愛理。
熱心なファンが見ても千年の恋も冷めそうな危ない状態。
さらに……佐紀。
レッスンスタジオの隅っこにうずくまっていた。
これは梨沙子には予想がついた。
きっと桃子と駅で「出会った」雅が別れようと切り出したんだろう。
(こちらの世界の)雅は人間的にかなりひどいので。
一言で表すと薄情者。
そんなことでもなければ佐紀がこんなに落ち込むこともないだろうし。
……だけど、このさいはどうでもよかった。
人命が優先。
ごめんなさい、キャプテン。

348 :
雅は昨日桃子に出会ったことは承知していたが、愛理にいったい何が起きたのだろうか。
気になった梨沙子は奥の手を使うことにした。
読心術。
表情や動きからではなく、相手に触れることによってより確実に情報を得られる魔法。
ただプライバシーの観点からあまり褒められたものではなく好きではないのだが。
「あーいり、どうしたの、なんかいいことあった」
「むふー♪ 別に〜♪」
ごめん、愛理。
心の中で謝って愛理の肩に触れた。

(つづく)

349 :
来てる〜〜〜!!!
のちさん今日も更新してくれて有り難う!!!
のちさんのおかげで毎日の楽しみができて俺は幸せだよ

350 :
毎日更新有り難う
毎回毎回続きが気になる終わり方だなw

351 :
さすがに今日はこないか

352 :
もうちょっと待ってて…

353 :
ひゃっほぅ!
待ってる!

354 :
俺も待ってる

355 :
>>348

「あ、あの!!」
芝公園で去っていく舞美に愛理は立ちあがって手を伸ばした。
その手は宙を空ぶる。
矢のようなすごい速さで眼前から去っていった。
みやに勝るとも劣らないものすごい美人。
声は暖かくて温もりがある。
ほわーっと包まれるようないい匂い。
でも……そそっかしくて、周りが見えてないところがある。
夢のままの「あなた」そのもの。
ライブやイベント会場で見かけることがあっても、
こうやって知り合うことが出来て本当に、言葉にならないくらい嬉しかった。
だけど。
「……どうしよう」
行き先も告げずに、親友が事故にあったと言い残して去っていった。
親友さんが無事なのか心配。
そして私はこのまま待っていればいいのだろうか。

356 :
答えはYES。
あの人だったら、きっと遅くなっても迎えに来てくれる。
バカ正直で真っ直ぐな人だろうから。
「へへ♪」
戻ってきてくれたら、何を話そう。
……あ、まずは名前を聞く。
連絡先を交換する。
メールや電話をやりとりして仲良くなる。
日にちを合わせてデートする。
手を繋ぐ。
お互いに意識し合う。
告白される(←されることが重要)。
恋人同士になる!!
いい雰囲気になる。
キスをする。
キスをした後は、盛り上がって、抑えきれなくなって……。

357 :
『愛理、かわいいよ。愛してる』
『うん、私もだよー。愛してる』
『そう、じゃあもっと愛して欲しい?』
『えっと、もっと愛して欲しいってのはその、具体的にどうするのでせうか?』
『気持ちいいこと』
『と、申しまふと?』
『セックス』
「にゃああああ!!!」
ベンチの上でのたうち回る。
乙女の想像がスパークした。
「はっ!」
気がつくと、周りから白い目で見られているような、敢えて視線を外されているような。
こんな彼女では「あの人」が悲しむので、咳払いをして何事もなかったかのように、背筋を伸ばしてベンチに座りなおした。

358 :
「はーやく来ないかなー♪」
東京タワーを眺めながら鼻歌が自然と流れ出す。
あの夢のように、東京タワーの真下で告られたいな。
なんだっけ、
『カンナのことでいろいろあったけれど、やっぱりわたしは愛理が好き。
愛理以外考えられない。愛理も、愛理の歌も全力で守りたい。
年上だしリーダーだから色々と迷惑をかけちゃうと思うけれど、わたしと付き合ってください』
あー、もう胸がキュンキュンする!!
……ん?
「カンナ」ってなに?
大工道具だっけ、それがどうしたんだろう――。
そのときスマホが着信を告げた。
母からだった。
いつまで道草を食っているの、早く返ってこいという旨だった。
私は断固として反対したが、父が珍しく東京のマンションにやってきている。
そうだ、今夜は久しぶりに父に会えるのだった。
プロゴルファーであるうちの父は千葉の実家に弟と住んでいて、
私の芸能活動のために東京に母とマンションに住まわせて貰っている。
なかなか会えないし、久しぶりに会えることを父はものすごく楽しみにしていた。
私だってもちろん楽しみ。

359 :
……うん。
「ごめんね、いまから帰る」
家族に心配をかけられなかった。
家族の支えがあって私はアイドルをやらせて貰えるのだから。
どうしよう、「あの人」が戻ってきたときに何か知らせるものがなければ。
そうだ、手紙を書こう。
ラブレターのような文章を書きあげ、最後に連絡先を……。
「まずいか」
もし他人に拾われたら。
それがストーカーだったら――。
連絡先を書くのを止めた。
きっとまた会える。
そのときに直接やり取りをすればいい。
「バイバイ」
最後に手紙にキスをしてその場を去った。

360 :
私の気持ちも、私の歌も、全てあの人に届いて欲しい。
そして、私の歌を好きだって言って欲しい。
私には歌しか取り柄がないから。
もうすぐアイドルを辞めてみんなの前で歌うことができなくなるけれど、
それでもたまには私の歌を聞きたいって言って欲しい。
私は歌うことが大好きで、一番にあなたに聞いて欲しいから。

361 :

「どうしたの、梨沙子。泣いてるよ」
「なんでもない」
プライドが高くてなかなか本心をメンバーの前で出さない愛理の心の声を聞いてしまった。
あまりにも切なすぎて涙が自然とでてきてしまった(途中途中でよこしまな部分はあったが)。
「愛理、いま恋してるでしょ」
「え、べ、べつに」
「うそ。顔に書いてあるよ。よし、その恋は私が叶えてあげる!」
「ほんと!?」
恋っていうのはこの世界に存在する魔法の中で最大にして最高の魔法。
恋があるから人は生きていける。
愛理と舞美の恋。
雅と桃子の恋。
そのふたつが元の世界のように叶えば、帰ることができるかもしれない。
乙女の恋の力ってホントにすごい魔力を秘めているんだから。
「まかせて。こう見えても恋愛のお呪いは得意なんだから」
しかしこの件が愛理の事故の元になるとは、梨沙子でさえ予想も予知もできなかった。
(つづく)

362 :
遅くなってごめんなさいね
狼が賑わってますがこちらは通常営業でw
狼といえば桃愛理の小説スレが立ってておどろきました
愛理は桃子の性奴隷
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1372238250/
続きが気になりますw
明日はおやすみしますー

363 :
更新してくれて有り難う!
のちさんの小説は話の持っていき方が上手いんだよな
次回の更新も楽しみに待ってるよ!

364 :
来てた〜!毎日更新有り難う!
いつも待ってるとかって無理言ってごめんね
次回の更新も楽しみにしてるよ

365 :
今日もくるかなー
wktk

366 :
またひといな…みんな規制されたのかな

367 :
>>361
「でも、なんで私のことわかったの?」
「うっ」
愛理はするどかった。
「か、顔に出てたよ。恋する乙女の表情になってた」
「そんなに?」
「にやけまくってた」
「もう、やだー」
バシバシバシ。
嬉しそうに梨沙子を叩く。
らしくないほどノロケていた。

368 :
「あの……それで、具体的にどうしてくれますのでしょうか」
「愛理、日本語変だよ。そうだなぁ」
やりとりした連絡先を教えちゃおうかな。
しかし梨沙子がそれを実行に移す前にダンスの先生からレッスン開始を告げられ、やむなく中止。
「またあとでね」
レッスンになると先程まではあれほど浮き沈みをしていた雅と佐紀は切り替えて集中していたが、
愛理はそうもいかなくミスばかり。
先生に怒られても凹む様子もなくヘラヘラしているように見えた。
それでもつい先日にいきなり卒業を事務所から一方的に発表された愛理に苛立ちを覚えるメンバーはいなかった。
ただひとりを除いて。

369 :

「りーさこ、一緒にかえろ♪」
レッスンが終わって、まだ浮かれていた愛理が梨沙子に声をかけてきた。
いつもは一人で帰っている愛理が梨沙子を誘ったことに周囲は驚きの表情を浮かべた。
着替えが終わり愛理と梨沙子は地下鉄の駅の入口までやってきた。
「梨沙子、そろそろおまじない教えてよ」
「おまじないっていうか、連絡先を」
知ってるから向こうにも連絡して会おうよ。
そう言おうとした瞬間、梨沙子に鋭い頭痛が走りうずくまった。
「ちょっと梨沙子、大丈夫」
「う……」
うずくまったまま動けない。
大切な話をしようとしたらひどい頭痛。
これは……。

370 :
梨沙子には思い当たる件があった。
キーワードを教えたりそれに準ずる行動をとろうしたときに発動する呪い。
高度な技術と高い魔力が必要とされるが、このシチュエーションではそれしか浮かばない。
一体誰が……あ。
栞菜さんだ。
元の世界を望まず、この世界を望んだ一人。
友理奈さんが危ないと言っていた。
だんだん息をするのが苦しくなってきた。
「梨沙子、梨沙子……! どうしよう」
愛理は梨沙子の急変にうろたえるだけだった。
そのとき、通りかかったのは同じ駅を使う雅だった。
「梨沙子……どうしたの」
「あ、みや! 梨沙子が急にうずくまって、どうしよう」
「どうしよう、じゃないよ! そこどいて!」
雅は梨沙子の様子を見ようと愛理の肩を軽く押した。
「あっ」
愛理はつまずいて、地下鉄の下り階段のほうへとよろめいていき、
「わっ!!」

371 :
雅が振り返ると、愛理はその場にいない。
慌てて階段のほうへと駆け寄る。
「ちょっと……嘘でしょ。やめてよ愛理」
雅は血の気が引いたまま階段のした方を見た。
何十段も下の踊り場に、喉を押さえて倒れていた。

(つづく)

372 :
やっぱり人が来ないとダメですね全然書かなくなるや

373 :
心配するな
みんな見てるぞ

374 :
ちゃんといるぞ
って事で今日も待つ

375 :
待つぞーーーーー

376 :
>>371

金曜の夜遅く、家庭教師のバイトを終えた舞美は翌日の握手会を楽しみにBerryzのブログをチェックしていた。
すると、トップの新着ニュースに『鈴木愛理に関する大事なお知らせ』という文字が並んでいた。
卒業の件とは別のようで、心臓が嫌な鼓動を刻み始める。
震える指でリンクを踏んでみると、
『いつもBerryz工房・鈴木愛理を応援いただきありがとうございます。
本日鈴木愛理は体調不良を訴えたため病院で受診したところ、喉に痛みを訴え数日の療養が必要と診断されました。
楽しみにしていたお客様には申し訳ありませんが、土曜日・日曜日のイベントの参加を見合わせることになりました。
誠に申し訳ありませんでしたがご了承いただくようお願いいたします』
胸が締め付けられる。
あんなに歌が好きで仕方なさそうな愛理が喉を痛めてイベントに参加できない。
愛理の無念さを思うと悲しくなって涙が溢れてきた。
ツイッターに愛理を心配する声ばかり。
そんな中、物騒な話が駆け巡ってきた。
『雅が愛理を階段につき落とした』。

(つづく)

377 :
まーつーよー

378 :
さみしい…

379 :
しょうがない
明日は催促するぞw

380 :
更新楽しみにしてます。やっぱりのちさんのお話最高です。

381 :
今日は来る!!

382 :
>>376

そんなはずはない、つい先日にももを助けてくれたのは雅ちゃんだった。
最初はそんなツイートは信じなかった。
ファンだって半信半疑。
だが、突き落としたとつぶやいた人が動画のリンクを貼ると懐疑的だったファンの状況が一変。
たちまちにツイッターでは動画の検証が行われ、服装から雅だと確定すると恨む声、非難する声に溢れかえった。
絶対にそんなことはありえない、そう言い切りたかったが自分の目で確認したい誘惑に勝てなかった。
ファンが撮ったらしき動画には遠目で音声はなかったが、
地下鉄の下り階段の入り口付近で、うずくまっている誰かの脇にいる愛理らしき女性に雅らしき女性が詰め寄って肩を押したら、
愛理がよろめいて誰かに引っ張られるように階段の方へと消えて行った、つまり落ちたと推測された。
事務所もメンバー同士のいざこざで怪我をさせたというと都合が悪いので病気ということにしたというのは誰でもわかることだった。
愛理ちゃんが怪我をさせられた。
愛理ちゃんが雅に怪我をさせられた。

383 :
いままでに味わったことのないどす黒い感情に舞美が支配されていく。
桃子を助けてくれたことで好意を持っていた雅のことが今では憎くてしょうがない。
愛理ちゃんは怪我をさせられて明日のイベントに参加できないのに、雅はのうのうと参加してくる。
許せない。
気がつくと舞美は机の上にあったカッターナイフを握りしめていた。

(episode13.おわり)

384 :
待っててくれるみんなありがとうね
次は土曜日夜に来る予定です…多分
催促しだいではもっと早く来るかもw

385 :
待ってるよ

386 :
あげ

387 :
さて日課になりつつある催促の時間だよ
今日は来るかな

388 :
催促を催促されたので催促しますw

389 :
なんか今狼で暴走してる人の文体が以前ここで見た人のに雰囲気似てる気がするんだけど…
いや
なんでもないw

390 :
>>389
どこのこと?

391 :
>>390
ここ
「あ、愛理…これは一体…」「ゴメンね舞美ちゃん…舞美ちゃん連れて来ないと別れるって彼が言うから…」
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1372649124/

392 :
催促しに来たぞー
のちサボってないでこーい!!

393 :
今日は来るよね!待ってるゾ!のちっw

394 :
べ、別にのちなんかに書いてもらいたいなんて思ってないんだからねっ!
続き読みたいとかこれっぽっちも思ってないんだからっ!

395 :
>>391
そこの職人さんがここに書いてたかも?ってのはどれ?

396 :
おーいのち約束の土曜はとうに過ぎたぞ
さぼってるんじゃないぞ

397 :
こらのち!サボりすぎだゾ!(#゚Д゚) プンスコ!

398 :
>>395
今日同じ職人が書いたという別の作品を読んで確信した
コレの人だ
http://wiki.livedoor.jp/eroka1/d/%a4%de%a4%a4%a4%c3%a4%c1%a4%f3%a4%b0%c5%ed%bb%d2%c0%e8%c0%b8

399 :
楽しみだけど忙しいなら無理しないでね

400 :
400

401 :
もしや土曜とは今週の事だったのか…
成程俺の勘違いだったか

402 :
ああ
じゃあしょうがないな

403 :
まつ…

404 :
約束の土曜になったぞ
皆を待たせた分きっと今日は大量に更新するんだろうな←
期待してるぞのち

405 :
のちどうした

406 :
>>383
episode.14

2011年5月、大学2年になって桃子はやっとのことで舞美をBerryzのコンサートに誘うことに成功した。
愛理のことが好き好きというわりにはコンサートに対してだいぶ偏見を持っている舞美を「現場にいかずして愛理ヲタは名乗れない!」と、強引に口説き落とした。
そしてコンサート当日午後1時50分時。
「サンプラザの場所がわからない」という舞美のために中野駅前で待ち合わせをすることにしていた。
「こんなに目の前にあるのに」
駅前で待っている桃子は駅前から徒歩1分の距離にあり眼前にそびえる巨大な建物、中野サンプラザを眺めがら独りごちた。
でも舞美のこと、下手をするとこれでも迷子になるんだろうな。
世間知らずのお嬢様なところがあるから。
そんなことを考えてちょっとにやけていたら、
「もも、お待たせー」
「よっす、舞美って……今日はばっちり決めちゃって」
「だって愛理ちゃんに会えるから……」

407 :
普段は化粧っけのない舞美が薄くではあるとはいえ化粧をしていた。
それにスカートもいつもより短い。
普段は膝より下の長めのものしか履かないのに、今日は太ももがバッチリ。
「ちょっともも、そんなジロジロ見ないでよー」
悔しいけれど舞美はやっぱり鬼のように美人だ。
芸能人でないのが不思議なくらい。
ちょっと見とれてしまう。
「で、もも。中野サンプラザはどこ?」
……やっぱり中野駅前で待ち合わせをして良かった。

408 :

「すぐ近くだったんだね!」
歩いて1分でサンプラザについて舞美は感心したようにそう言った。
「だから駅前って言ったのに」
「でも心配だったからももに一緒に来てもらってよかった」
舞美が腕を絡めてきた。
「ちょっと、こんな人前でくっつかない」
最近分かったことだけど舞美はすごく懐っこいというか、スキンシップが激しい。
すぐに抱きついたり、腕を絡めて来たりとドギマギさせられる。
しかもやたらといい匂いがするから性質が悪い。
「ごめんごめん。それにしても、このファン層、なんていうか……」
「ん、まぁね。こんなもんでしょ」
男性が圧倒的多数。そして若者が少ない気がする。女性が1割いるかどうか。
だから……舞美が目立って仕方ない。
「気をつけてね。女ヲタにナンパする困った男性もいるから」
「そうしたら助けてね、もも」
「……自分が舞美を助けられることなんてないよ」
舞美の方が運動神経が遥かによくて体力や筋力もまったく敵わないのに。

409 :

席は前から5列目の中央より。
今日はDVD撮影が入っているからちょっとだけ後ろに行かされているのは嫌だけど。
舞美はというと。
「すごい、近い! これだけ近いと愛理ちゃんバッチリだね!!」
「毛穴までバッチリだよ」
「そんなもの愛理ちゃんには存在しません!」
物販で買った愛理のピンクTシャツにピンクサイリウムで武装した舞美は日替わり写真も手に入れてテンションがやたらに高かった。
「これだけ近いと太もももバッチリだよ」
「……」

410 :
「舞美?」
「え、な、なに」
「あー、いまエッチなこと考えたでしょ」
「そんなことありません!」
「うそー、口元がにやけてるよ」
「そんなことないし」
そんなやりとりをしていたら、開演前の影アナウンスが始まった。
物販で30分以上並んだから開演まですぐだった。
間もなくして舞台が暗転し、客席から歓声があがった。

411 :

帰りの列車内、舞美は放心状態だった。
「舞美、大丈夫」
「だいひょうふ……」
肩にもたれかかってきている舞美の返事は怪しいものだった。
コンサート中の舞美はそんなに騒いで飛び跳ねているわけでなかった。
ただステージから目をそらさず、すごく集中して眺めて、
一緒に歌を口ずさんで、MCに笑って、愛理のソロ曲に涙していた。
「家まで帰れる?」
「うん、だいひょうふ……」
だめだ、これは。
「駅まで送ってく?」
「だいひょうふはよ……」
大丈夫、っていいはる酔っ払いみたいだった。

412 :
いつもはお淑やかなお嬢様に見える舞美。
でも愛理が絡むと盲目な一面を見せる舞美。
本当に不思議な女の子。
そうだ、あれを聞いてみよう。
いつか聞いてみたかった質問を。
「ねぇ、舞美」
「ん?」
「舞美って、なんで先生を目指そうと思ったの?」

(つづく)

413 :
サボりまくっててごめんなさいね
話の大筋を考えるのは得意なんだけれど実際に書くのは苦手でw
次こそは水曜日に!

414 :
次回の更新が楽しみだ

415 :
何事もないならよかった
楽しみにしてるよ

416 :
あれ?

417 :
さて水曜とはいつの水曜だろうか?

418 :
のちまち

419 :
のちさん!!

420 :
のちさんサボりは良くないよ!

421 :
のちはいつ来るの?
「今でしょ!!!!!!!!!!!!!!」

422 :
水曜日になったよ

423 :
書きたくても書けない状況にいるオレからしたら今ののちの怠惰は(ry

424 :
>>423
いやいやそれはお前の才能がないだけで妬みにしか聞こえない
だがサボり過ぎだろのち
首を長〜くして待ってる

425 :
のちさん催促ばっかじゃ情けないし、待つ間有効利用して萌えシチュでも書いて待つべきかと。
ちなみに、今はハワイで水着着披露したももを、やきもきした嫉妬愛理が押し倒すっていうシチュが
最近のお気に入り。のちさん、のちさんのペースでいいんで待ってます

426 :
>>424
そう言う意味の「書きたくても書けない」じゃない
まぁいいけど

427 :
溢れる想像にキーを打つ手が追いつかなくなったか。
脳内に浮かぶ場面や言葉を文章にするのに難儀しているのか。
いずれにしても正念場だ。頑張れのち。

428 :
のちまち

429 :
>>412

「え?」
夢見心地から一転、キョトンとしてこちらを見つめてくる。
「だから、舞美はなんで先生を目指そうと思ってるのかなって」
「えー……ひみつ」
照れているような、なんだか嬉しそうに拒否された。
「秘密じゃないよ、教えて」
「ももから先に教えてよ」
「いいの?」
「聞きたい! いつかは聞きたいと思ってたんだ」
桃子はひと呼吸おいて、
「公務員で安定してるから。給料が良さそうだから」
「……」
舞美はそっぽを向いてしまった。
「聞くんじゃなかった」
「うそうそ。そんなに真に受けないのー」

430 :
「だって、ももだったら言いそうだったし」
「ひどい。まぁ、そういう側面もなくはないけれど。えっと、年の離れている弟がいるって話したっけ?」
「うん」
「弟に勉強教えることが多くて、最初はわかってもらえなくても根気よく教えるとできるようになる、
あの達成感がたまらない、っていうのがきっかけかも。
あとね、高校時代の後輩にすごく出来が悪い子がいて」
舞美は熱心に桃子の話に耳を傾けた。
「熊井ちゃん、ていう2つ離れた子で、背が学年で一番たかくて180cmはあるんだけど、その子に勉強を教えてたんだ。
学年でもビリだったのが、なんとか真ん中まで持っていけて、これは教える才能があるなって思ったわけ。
で、ほら見て。美人でしょー。モデルもやってるんだよ!」
桃子はスマホを操作して友理奈とのツーショット画像を見せた。
桃子の卒業式のときのもので、頭ひとつ違う友理奈と卒業証書の入った筒を持ちながらふたりでピースサインをしていた。
「すごい美人さんだね。もしかして……桃ってその子と付き合ってたりしたの?」
「え、熊井ちゃんと!? 付き合ってないよー。部活の後輩。でも、うちの大学に入りたいって言ってたから来年は舞美とも顔を合わすかも」

431 :
「そっか……負けられないな」
「え、なにが」
「な、なんでもない!」
「へんなの。さて今度は舞美の番だよ」
「そうだね。えっと、どこから話そうかな。わたしが高校までソフトボールやってたの知ってるでしょ」
「知ってる」
舞美はゆっくりと理由を語り始めた。

(つづく)

432 :
夏休みの宿題のように、明日やろう、明日やろうってサボってたらこんなに経ってたw
悪い癖ですごめんなさいね

433 :
またさぼり癖が出ないうちに今日も来た方がいいぞのち
ってことで待ってるぞ

434 :
>>431
「お兄ちゃんが二人いて、二人とも野球やっていた影響でわたしも小学生までは地元のクラブチームで野球やってたんだ。
でも、女の子でしょ。中学からは野球できる環境がなくなっちゃって、ソフトボール部に入って。
最初は悔しかった。でも、そのうちにソフトボールが楽しくなって、いつの間にか日の丸をつけてオリンピック! そんな夢を見ていてね」
「あれ、でも今度のオリンピックには野球もソフトボールもないんじゃなかったっけ」
「そう。ももよく知ってるね。今度のオリンピックから競技が除外されちゃって。復活できるのは早くても2016年になるんだって」
「それまで頑張ればいいんじゃないの」
「そう思ってた。でも……肩壊しちゃったんだ、わたし」
「あ……」

435 :
「ピッチャーやってたんだけど、高3の夏のインターハイで決勝まで勝ち進んで。
連投につぐ連投。でもひとりでマウンドは守ってたんだよ。体力には自信があったから。
ううん、体は根性でなんとかなっても、肩はどうしようもなくなっていた。
決勝は0-0のまま延長に入ったんだけど、その直後に鋭い痛みが走って。
ボールを持つこともできなくなって結局交代、チームは負けちゃって……すごく悔しかった。それから半日は泣いていたもの。
でも、そこからが大変で。休めば治ると思ってたけど全然痛みが引かなくてキャッチボールもできないくらいで、
お医者さんにいったら肩の骨が変形していて……これ以上やると日常生活にも支障をきたすって宣告された。
その時の絶望感たらなかったよ。わたしからソフトボールを取ったら何が残るのって。
せっかく日本代表からも声が掛かって練習に参加する話まで来ていたのに」
自嘲気味に話す舞美に桃子はじっと聞くしかできなかった。
「それから考えたんだ。どうすればソフトボールに関わっていけるんだろうって。
答えは指導者になること。わたしを育ててくれた中学、高校の先生みたいになること。
それで白球を追いかける楽しみ、仲間と勝利に向かって努力する喜びを教えられたらなって思うんだ。
その中からわたしの叶えられなかった夢を叶えてくれる子がでてくれたら嬉しいなって」

436 :
「舞美」
「えっ」
桃子は舞美の手をギュッと握った。
「舞美のこの手は将来の金メダリストを育てる手なんだね。きっと叶うよ舞美の夢」
「うん、がんばる! もものこの手は勉強嫌いな子を助けられる手になるよ、きっと。
もも、わたしに比べてすごく要領がいいもの」
「……なんかずる賢いって言われてるような気がするんだけど」
「そんなことないよ」
「冗談。本気にしないで。それにしても、舞美がそこまで考えてるとは思わなかった。
舞美の頭の中って筋肉か、それとも愛理ちゃんとのエッチな妄想に溢れてるとしか思わなかったから」
「そんな、エッチな妄想なんて。ただ、一緒にカラオケしたり、ディズニーランドでデートしたり、
一緒にキャッチボールしたり、洋服買いに行ったり、温泉旅行にいったりするくらいしか考えてないよ」
「……温泉旅行?」

437 :
「あ」
「語るに落ちたね、矢島舞美」
「ひどい! ももだって同じようなこと考えてる癖に」
「まーね。恋する乙女の想像力は無限大ですもの」
「開き直ってる……最悪。でも、まぁ」
「ん?」
「もも、ありがとう」
「なに、いきなり」
舞美が突然礼をのべてきて桃子はうろたえた。
「今日コンサートに誘ってくれて。また一緒に行こうね」
「今度はサンプラザくらいは迷わないでね」

(episode.14 おわり)

438 :


439 :
誰もいない…

440 :
いるよ

441 :
今日はくるかな

442 :
書くよ
しばらくお待ちくださいな

443 :
正座して待機

444 :
(episode.15)

ツイッターやネット掲示板で流れる噂――雅が愛理を突き落とした――は桃子も知るところとなっていた。
震える手でリンク先をクリックし、動画を見た瞬間は頭が真っ白になった。
だが桃子は雅を信じていた。
自分を助けてくれた雅が、人を傷つけるわけないと。
もちろん真相はわからないのだが。
それより桃子にはもっと気が掛かりになることがあった。
舞美と連絡がとれないこと。
日曜日のお台場での新曲イベントに一緒に行くと約束していたのだが、前日なのに連絡が全く取れなかった。
いつもだったら前日にはメールのやりとりを頻繁に行うのに。
電話をしてみても繋がらない。

445 :
『あたしが愛理とのいざこざの弾みで大けがをさせちゃうんだ。
それを知って激怒した舞美が握手会であたしをナイフで刺そうとして』
この「あたし」というのは雅のこと。
桃子の夢の中での雅の予知夢が当たるとしたら、次は――。
携帯が繋がらないなら直接舞美の家に行かなければ。
万が一舞美が凶行に及ぼうとしているなら止めなければ。
『でもね、ももが身を呈して止めてくれるわけ。でも、その代わりにももが刺されて』
そんなことになる前に、早起きして朝イチで舞美の家に行こう。

446 :

翌朝。
「寝坊した!!」
セットしたと思った目覚まし時計はボタンの押し忘れで鳴らず、すでに朝の8時。
イベントでは整理券付きCD購入開始時刻が11時で舞美のことだからその30分前には来ていそう。
お台場まで舞美の家から約1時間だから……9時30分には家を出るだろうか。
そいで自分の家から舞美の家までバスと電車を乗り継いで1時間、いますぐ出ればギリギリ間に合うはず。
髪の毛をツインテールにはセットせずに、最低限の身だしなみをして家を飛び出す。
いまが8時20分。
よし、いける!!

「ごめんなさい、桃子ちゃん。折角迎えに来てくれたのに。
つい15分前くらいかしら、出て行ったのは」
舞美の家につくと、美人のママさんが残念そうに迎えてくれた。

447 :

お台場に着いたのは10時50分のこと。
「舞美、舞美どこ!」
祈るような気持ちですでに会場に集まっているファンの中から必死で舞美を探した。
いない。
隅から隅まで何度も探しても舞美の姿はなかった。
このまま舞美が中に入ってしまったら――。
「やだよ、舞美……」
舞美が雅を傷つけるのも、雅が舞美に傷つけられるのも絶対に嫌だ。
すごく大好きな、それこそ愛してやまない二人を同時に失うなんてことは絶対に――。
CD発売開始時間となり、ファンの列が少しずつ会場に入っていく。
その列を何度確認してもやっぱり舞美の姿はなかった。
「どうしよう……」
泣きそうになり、近くのベンチにへたり込む。
スマホで舞美に電話してみるけれど、やっぱり出ない。
携帯電話って便利だけれど不便。
それに慣れてしまうと、いざ繋がらないときにどうやって連絡を取ればいいのかわからない。

448 :
「もーも」
やばい、舞美の声が聞こえるくらい会いたくなってきた。
「どうしたの、来るの遅いよ」
それはこっちのセリフだよ。
舞美、どこにいるの?
「え、うそ。泣いてるの?」
「ふぇ?」
振り向き、ぼやける視界の向こうには舞美の姿があった。

(つづく)

449 :
誰も内容に触れてくれなくなったけれどちゃんと書けてますか?
ダラダラと書き過ぎでしょうか

450 :
ありきたりなやじすずみやももじゃなくて新しいから完結するまで控えてるって人が大半だと思うよ
固唾を飲んで見守っています

451 :
あーだこーだ言って作者に影響を与えたくない。
のちさんの自由に書いてほしいので何も言わないって感じです。

452 :
ところで、わたくし、やじちなで今、書いている途中なのですが、
ここに書いたらスレ違い?

453 :
桃も愛理もいないならさすがにスレチだと思う

454 :
オレは何も考えないでヤジマノを上げたぞw

455 :
続きが気になる・・・

456 :
>>449
やっと規制解除された
全然ダラダラじゃないよ!めちゃめちゃ面白い!

457 :
待ってるぜ

458 :
規制されてて書き込めなかった
ちゃんと読んでますよ
続きがすごく楽しみです

459 :
おーいまたさぼりーはいかんぞ
今日は来るだろ?

460 :
今日はくるかな
待ってるよ

461 :
待ってるぜぃ

462 :
今日こそ来てくれるかな
待ってるよ

463 :
続きが待ちきれない

464 :
のちさ〜ん

465 :
今日もだめだったかな

466 :
>>448
「舞美、舞美なの!?」
「そうだけど、ももこそどうしたの!?」
互いの様子に驚いた。
「連絡取れなくて心配したんだから……」
「ごめんね、スマホの調子悪くてうまく動かないんだ。だからこの前待ち合わせで使ったマックにいたんだけど」
「わかるわけないよ、そんなの。舞美は本当におバカさんなんだから……って、その手はどうしたの!?」
左手に巻かれた包帯を桃子は気がついた。
「あ、これ。これは……うん、昨日夕ご飯作るのを手伝ってたら切っちゃって!」
「舞美の嘘はわかりやすいって言われない?」
しどろもどろになっていた舞美の様子でわかった。
「う……」
「なにがあったの?」
「……引かない?」
「いいよ。話してごらん」
「……昨日の夜のことなんだけど」
舞美はゆっくりと口を開いた。

467 :

『これで刺しちゃえばいいんだよ。夏焼のこと、憎いでしょ?』
カッターナイフを握りしめた舞美にどこからともなく声が聞こえてきた気がした。
『だって、愛理を傷つけたんだよ。許せないよね』
許せない。
愛理ちゃんが大好きな歌を紡ぐための大切な喉を傷つけたのだから。
『そうだよ。だから握手会で夏焼に仕返しをすればいいんだよ』
この手で愛理ちゃんの敵をとればいいんだ……。
この手で……。
その時に浮かんできたのは友の顔。
――舞美のこの手は将来の金メダリストを育てる手なんだね。きっと叶うよ舞美の夢――
初めてコンサートに誘ってくれた日の帰り、手を握られてそう言ってくれた。
嬉しくてたまらなかった言葉。
わたしの手は、人を傷つけるためにあるんじゃない。

468 :
『ちょっと、舞美ちゃん?』
震える手で、握っていたカッターナイフを左手甲に刺した。
痛い。
血が傷口から球になって出てくる。
痛いから、人にこんなことしちゃいけないよね。
幸い刃はほとんど出ていなかったので傷は深くないはず。
大きくため息をついた。
頭の中がちょっとすっきりした。
さきほどまでの雅ちゃんを刺すと衝動はすっかり消えていた。
そのとたんに痛みが増してきたが、頭の中に響いてくる悪魔のささやきのような声もなくなった。
だけど……。

469 :

「だけど、やっぱり怒ってるから握手は雅ちゃんスルーすると思う」
「……舞美、バカでしょ」
話を聞いた桃子の感想はそれだった。
「でもすごくバカなことしなくてよかったと思う」
「そうだよ。人を傷つけるなんて舞美らしくない」
「もものおかげだよ。ももがわたしに勇気が出る言葉をくれたから。
ももはわたしがそのときにももになんて言ったか覚えてる?」
「忘れた」
「そんなひどい」
「要領がいいって面と向かって言われるとムッとしたからすぐに忘れた」
「あ、覚えていてくれたんだ」
「いいから早く列に並ぶよ! 売切れたら舞美のせいだから」
「うん!」

470 :
舞美は桃子の腕にしがみついた。
「すぐにくっつかない!!」
「へへー♪」
そうして並んだ二人だったが、周りから聞こえてくるのは雅と愛理の話ばかり。
思わず耳を塞ぎたくなる内容だった。
「桃、大丈夫?」
「あんまりよくない」
ネットでの評判でよくそこまで人の悪口を言えるものだ。
桃子は不機嫌で仕方なかった。

471 :

「あー、もうムカつく!! なんでどいつのこいつもみやの悪口ばかり! ふざけんなっていうの!」
イベント券もなんとか入手し、時間までマックで時間を潰している二人だったが、桃子はひどく荒れていた。
「もも、ちょっと、ね。落ち着いて、ね」
桃子の荒れっぷりをなんとか舞美はなだめようとしたが、なかなか上手くいかなかった。
「舞美もそう思うよね。不鮮明な動画ごときでみやを人殺し呼ばわりなんてサイテーにもほどがあるし」
「そうだよね……、あ、もうすぐ時間だから会場に行こうよ」
「隣がみやの悪口を言ってたらぶん殴るからよろしく」
「大学4年生でそれはまずいよー」
そう言いながらふたり片付けをし、会場に向かうと愛理が欠席する貼り紙に連なってもう1枚増えていた。
『菅谷梨沙子イベント欠席のお知らせ』というものだった。

(つづく)

472 :
やっとお盆になってひと段落なのでこまめに書けそうなw
>>452
自分は読んでみたいです!!
他にも書いてくれる人がいるとすごく励みになるので

473 :
今日も待ってるって書き込もうと思ったら来てた!
こまめに書いてくれるの楽しみに待ってる!

474 :
来てたのか!
のちさん更新有り難う!
続き楽しみにしてるよ

475 :
こまめに書けるってのちさんが言うから
今日も待ってみる

476 :
さすがに今日はこないかな

477 :
待ってるよ〜

478 :
のちはいつ来るの?
今日でしょ!!

479 :
待ってるよ

480 :
今日は来てくれるに違いない

481 :
お盆休み終わったぞーのちー

482 :
>>471

イベントの朝のこと、梨沙子は不安を抱きながら事務所に来た。
雅と愛理の件はまたたく間にネット中に広がっていた。
誰が撮ったかわからない雅が愛理を突き落としたように見える動画も話題になり、
雅がバッシングにあっていた。
こんな事態だから、事務所側がことが収まるまで雅を休ませることを期待した。
「……期待した私がバカだった」
事務所に着くとすでに雅がいた。
他のメンバーも着いていたが、明らかに雅と距離をとっていた。
雅は孤立していた。
いつもの愛理のように。
「みや、おはよ」
「おはよ」
イベントの台本に目線を落としたまま元気なく挨拶を返された。
梨沙子は何か話そうと考えたが、適切な話題が出てこない。
ネット上での炎上ともいうべき雅バッシングのこと、昨夜の愛理転落事故のこと。
雅に振っていい話題とは思えなかった。

483 :
「梨沙子」
「な、なに」
梨沙子が話しあぐねている間に雅から声をかけられた。
「頭痛、大丈夫?」
「あ、うん! もう全然」
「そう」
興味なさそうな言い方ではあったが、こうやってさり気なく気にかけてくれるのは嬉しかった。
メンバーとのわだかまりも、会場についてリハーサルが始まれば溶けると思った。

484 :

イベント会場についてリハーサルを始めるも、メンバーは雅を完全無視。
ダンスのフォーメーションの確認も行わない。
MCの進行にも雅を加わらせない。
さすがに雅が怒った。
「あのさ、いろいろ思うところはあるのはわかるよ。でもさ、仕事でしょ。
うちらプロじゃん。やることはやろうよ」
雅が一喝した。
普段だったら誰も雅に口答えしないのだが。
「……うるせーよ」
「はい?」
「いちいちうるせーんだよ、この――」
人殺し。
そう言い放ったのは千奈美だった。

(つづく)

485 :
時間があったのにさぼってたw
明日はまた来ますね

486 :
来てた〜〜〜!!!
のちさん有り難う!
明日も楽しみに待ってるよ

487 :
今日も待ってるよ

488 :
>>484

梨沙子は耳を疑った。
千奈美は言葉づかいが丁寧なタイプではないけれど、
こんな風に面と向かって人を傷つけるようなことは絶対に言わない。
「千奈美、なにバカなことを――」
梨沙子は千奈美に向かって反論しかけたとき、次に口を開いたのは茉麻だった。
「どうせだったらあんたも落ちちゃえばよかったのに。いつも偉そうに、何様のつもり?目障りなんだよ」
温厚な茉麻がこんなことを言うなんて。
あまりの異常な事態に梨沙子は言葉が出てこなかった。
「あ、あたしはやってないよ……ただ、梨沙子がうずくまっていたから愛理を少しよけようと軽く押しただけなのに」
雅は相当ショックを受けたらしく、弱々しくしか反論できなかった。
その雅に向かって佐紀がスマホを突きつけた。

489 :
「これ見ても反論できるの?」
ネット上に流れている例の動画を見せつけた。
「そ、それは……」
雅は言葉につまった。
「誰がどう見たってあんたが押したようにしか見えないんだけど。
ファンのみんなの意見を見てみる? 
SNSでもネット掲示板でもみんなあんたがセンターの愛理を妬んでやったって書き込んでるけれど。
誰ひとりとしてあんたのことを信じてないよ」
雅は耐えきれなくなったのか、目を真っ赤にして楽屋に向かって走っていった。
佐紀と千奈美と茉麻の3人はそれを興味なさそうに眺めてからレッスンを再開した。
「サイテーだよ、みんな」
梨沙子はそう言い残して雅の後を追った。

490 :

楽屋に戻ると、雅が机に突っ伏して大声で泣いていた。
「みや……」
梨沙子は寄りそい、背中を撫でてあげた。
「私はみやがやってないって信じてるから。あれはきっと事故……ううん、違うかも。
誰かが仕組んだのかも」
突然の頭痛。
誰かに背中を引っ張られるように不自然に転げ落ちた愛理。
それを撮影していた誰か。
自分や雅を陥れようとしている何者かが仕組んだ罠かもしれない。
そのとき、楽屋のドアがノックされた。
『夏焼さん、いますか?』
聴きなれない女性の声。
スタッフの誰かだろうか。
「すいません、いまちょっと具合が悪いんで。落ち着いたら行きます」
『あの、女性の方なんですけれど、身長150センチくらいで髪型がツインテール、
特徴としては声が高い子が夏焼さんにどうしても会いたいって関係者口から入って来ているんですが』

491 :
「……あの子だ」
それまで突っ伏していた雅が涙を手のひらで拭い、楽屋を飛び出していった。
「みや!!」
追いかけて部屋を出ようとしたところ、ドアがすごい勢いで閉まった。
ノブを手にして回してもドアが開くことはなかった。
外からは鍵がかけられないはずなのに。
叩いても、押してもビクともしない。
『無駄ですよ』
さっきの女性の声だった。
『そのドアには特殊な結界がはってありますから』
「 あんたが全部仕組んだんでしょ!! ちょっと、みやをどうするつもり!!」
『夏焼さん――雅には、これからきつーいステージが待っているだけ。
スタッフ敵、ファンも敵、メンバーすら敵。
みんなから罵倒され、嘲笑され、時に無視され。
果たしてどこまで精神が持つやら。案外すぐに壊れちゃうかもね。
まぁ精神的に持っても、最期には劇的な幕切れが待っているんだけどね』

492 :
舞美が雅をナイフで刺して、そのナイフで今度は桃子が舞美を刺して――。
桃子が語っていた雅の予知夢。
「出してよ!」
ドアノブをガタガタやったところ、梨沙子の手のひらに鋭い痛みが走った。
手のひらが切れていて、血がにじんでいた。
ドアノブを見ると、いつの間にかバラの蔓が巻かれていてびっしりと刺がついていた。
本で見たことのある東欧の呪術だった。
すると、この刺はただの刺ではない。
『しばらくおやすみなさい、梨沙子さん』
目まいがしてきて梨沙子は膝をついた。
「なにが目的なの――」
栞菜。

493 :
『目的かぁ。そうだね。ありきたりな言葉だけど、『復讐』かな。
せっかく楽しいはずの世界なのに、全然うまくいかなくなっちゃった。
嗣永、それに夏焼のせいで。だからちょっと痛い目にあって貰おうと。
観衆から罵倒され、嘲笑され、無視されるってどんな気持ちなのかって。
どれだけ辛いか味わってもらうよ』
「ちょっと、待って。これだけ大掛かりな呪術をやったらあんたは」
不特定多数の人間をコントロールする。
それこそ稀代の魔法使いでないとできないこと。
栞菜はそこまでの魔力は持っていない。
それなのに、ここまでの呪術を使ってるということは、その代償は――。
『もういいよ、全てすっからかんになっちゃえば。
一番大切なものがない世界なんて、もういらない』
暴走している栞菜を、誰か止めて。
そう願いながらも、梨沙子の意識は混濁していった。

(episode.15 おわり)

494 :
こえー栞菜こえー
どうなるのか続き気になりすぎる

495 :
来てた!
なんかもう続きが気になりすぎる

496 :
あげ

497 :
来るのってまた1週間後なんだろうなと
思いつつ毎日待ってしまう俺w
女々しくて自分でもびっくりだわww

498 :
episode.16

わたしね、愛理の歌が世界でいちばん大好き。
うまいだけじゃなくて、元気が出るし、勇気が湧くし、心の奥が震える。
そんな愛理の歌を、愛理を一生まもるよ。
でも……わたしも愛理に負けないように歌を頑張らなきゃ。
そう言って彼女は夢の中でいつも私に微笑んでくれた。
すごく、ものすごく嬉しかった。
彼女が守ってくれると言ってくれたから私は考えないようにしていた。
歌が歌えない私に存在価値があるのかって。

499 :

日の当たる病室の個室。
そのなかの白いベッドでひとり、愛理はベッドから上半身を起こしていた。
首には前日の事故のせいでギブスが巻かれていた。
医者は軽い打撲と言っていたけれど、なぜか声が出ない。
骨も筋も声帯も喉も異常はないのに。
精神的に大きなショックがあるとまれに声が出なくなると言っていたけれど、それかどうかもわからない。
ギブスを撫で、昨晩から何度目になるかわからない涙を流した。
イベントを欠席してしまったことが悔しい。
いままでどんなに辛くても、体調が悪くても参加していたのに。
それよりも、彼女が好きだと言ってくれた歌を守ることができなくて悲しい。
歌えない、これからも歌えないかもしれない私には一体どれだけの価値があるのだろうか。
彼女が好きといってくれた私には歌があったのだから。
いまの私にはそれがない。
怖かった。

500 :
いくら泣いたかわからなくなったころ、スマホがメールの着信を告げた。
着信音からして登録してないメアド、おそらくは迷惑メールだろうと思って確認した。
え、うそ。
声が出たなら確実にひとりごとを発していたであろう。
その見たことのないメアドから送られてきたメールの内容は、
『今晩9時に芝公園で会えませんか。大切なお話があります』
これって……絶対にあの人だ。
間違いない。
仕事を休んで入院しているのに病院を抜けだすなんて大変なこと。
それにこんな姿、声も出ない。
会うのは怖い。

501 :
でも会いたい。
もしこれからも声が出ないならその時点でアイドルは廃業、会う機会は永遠になくなってしまう。
もう価値のない私かもしれないけれど、紙に書いてでも気持ちは伝えたい。
『あなたのことがずっと好きでした、愛しています』
そして、尋ねたい。
『あなたの名前は何ですか』
って。
フラれるかもだけど、名前だけはどうしても知っておきたかった。

―― 絶対に行きます! あなたに会いたいです。声が出ないこんな私ですけれど――
そう返信したが、その後の再返信はなかった。

502 :
でもいいや。
それよりどうやって病院を抜け出そうか、フラれたらどうしよう、
でもでも……そんな私でも愛してると言ってくれたなら……。
声にならない声を上げ、ベッドの上をごろごろ転がった。
いつの間にか乙女チックシミュレーションまで繰り広げられ、
愛理の頭の中は夜9時の芝公園に占められていた。

だから愛理はまったく想定しなかった。
メールの送り主が舞美でないことなんて。

(episode.16 おわり)

503 :
予想を裏切って今晩もきてみるw

504 :
来てたーーー!!!のちさんマジで有り難う!!!
小説面白すぎるよ!
この先どうなるんだって続きが気になって仕方ない

505 :
女々しく待ってみてよかったw
のちさん更新してくれて有り難う!

506 :
いいぞいいぞ
調子が出てきたところで本日も待つ
期待してるぞー

507 :
女々しい俺も今日も待つぞw

508 :
episode.17

愛理、梨沙子の欠席。
雅を含めた歌割の多いメンバーのうち2人が欠席だったら
イベントが延期もしくは中止になってもおかしくない。
けれど予定通りイベントは開催されるようで、スタッフの誘導が行われていた。
梨沙子の突然の欠席でファンも動揺していそうなものだったが、
口にするのは雅に対する心ない悪口ばかりだった。
列に並ぶ桃子は唇を結び、俯いて我慢していた。
「……もも、帰る?」
あまりの雰囲気の悪さに舞美が尋ねてきた。
「やだ。絶対に、絶対に帰らない!」
「なんで。もも、辛いでしょ」

509 :
「きっとみやはもっと辛いはず。ファンにこんなひどいことを言われるなんて。
放っておけないよ」
「そっか。うん、そうだね。わたしも愛理ちゃんが同じような立場だったらももと同じ考えになるよ。
大丈夫、ももにはわたしがついているから」
舞美は桃子の手をギュッと握り、桃子もそれを握り返した。
「ずいぶんと自信満々なんだね」
「ももの親友ですから」
ひとりでは耐えられそうもなかったので舞美の存在は助けになった。
雅の存在がなかったら親友を飛び越えてしまいそうないい笑顔だった。

510 :

会場であるイベントスペースにくると、より一段と空気が濁っているように感じ、
桃子は思わずマフラータオルで口元を押さえた。
「すごい嫌な空気。なにこれ、気持ち悪い」
「そうだね。クラクラする」
舞美も顔をしかめた。
コンサート会場でよく出くわす酸っぱい臭いではなく、空気そのものが汚れている感じだった。
30分ふたりは堪え、やっとのことでBerryzのイベントが始まった。
佐紀、千奈美、茉麻の順で登場し、会場は拍手と歓声があがった。
ところが、雅が登場した瞬間に会場の雰囲気は一変。
聞いたことのない激しいブーイング、人殺しや恥知らずといった野次。
男性も女性もみんなになって雅を攻撃した。
いずれも今までに体験したことのない光景に桃子も舞美も呆然となった。
「みんなおかしいよ」

511 :
桃子は泣きそうになりながら呟いた。
そんななか、
「雅ちゃん、頑張れ!!」
隣から聞こえる大きな声、舞美のものだった。
手にはいつの間にか紫色のサイリウム。
普段は絶対に持つことはないのに。
「みや!! 負けるな!!」
桃子も紫色のサイリウムを全力で振り、喉が潰れるかと思ってしまうくらいに大きな声を出した。
会場が敵にまわっていても、二人でも雅に味方がいることを知って欲しくて応援しつづけた。

(つづく)

512 :
き、来てた〜〜〜!!!
のちさん有り難う!!!

513 :
更新有り難う!
のちさんが更新してくれたことにも
話の内容にも感動したよ

514 :
ありがとう!
これは今日も書かねばw

515 :
わっほーい
期待大

516 :
よっしゃー!!!
仕事頑張れそうだよ!!!
待ってるよ!!!

517 :
のち!ありがとうのち!

518 :
>>511

あの子が会いに来てくれている。
ツインテールのあの子が。
朝から最悪の一日だったけど、それだけでハッピーになれる。
雅は期待に胸を躍らせて楽屋をでて,
関係者入口の方に行ってみるもそれらしい影は見当たらない。
それどころかマネージャーさんに見つかってこっぴどく叱られた。
アイドル失格とかいつまでも甘えているんじゃない、とか。
正直、怒られたことよりも会えなかったことに落ちこんだ。
リハーサルに戻ってからも最悪だった。
ダンスの先生にはいつも以上に怒られ、そのあとは無視された。
メンバーはそんな雅を見てうすら笑いを浮かべた。
佐紀も千奈美も茉麻の誰も助けてくれなかった。
梨沙子がいなくなっていることを尋ねても、
「さぁ、いつものサボり癖じゃない」

519 :


520 :
と、佐紀から心ない返答がきた。
梨沙子は握手会は頭の回転がついていかずに苦手だと言っているけれど、
ステージに立つことは大好きだから見当違いなのだが。
そんな中でマネージャーさんから告げられたのは、
愛理と梨沙子のパートは全て雅が担当すること。
「ちょっと、待ってください。それはいくらなんでも無理ですよ」
というのも、歌のソロパートの多くは愛理、梨沙子、雅が担当していて、
歌の半分以上を任されることになる。
歌割の変更があると、歌詞を飛ばさないようにと気をすごく使う。
それにダンスもしなければいけないので、
いくら30分程度のリリースイベントといえど体力・気力が持たない。
結局、雅の抗議は聞き入られることなく、イベントが始まった。

521 :

雅がステージに出た途端、聞いたことのないほどの大ブーイング、それに汚い野次。
全ては雅に向けられているものだった。
いつもは見かける雅のメンバーカラ―である紫色のサイリウム、Tシャツは全く見かけなかった。
サッカーでみかけるような完全アウェイだった。
いままでの現場はほとんどホームみたいなものだったからダメージが大きい。
ファンの応援が力になるのとは逆に、アンチからの攻撃は思った以上にきつい。
頭の中は真っ白。
新曲のイントロが流れるも口が動きそうもない。
マイクを持つ手に力が入らない。
曲が始まって愛理のパートから入るも、フォローし損ねて音楽だけが会場に響く。
ミスした。
そのミスが焦りとなり、続く自身のパートも飛ばしてしまった。
客からの野次は一層過熱し、気持ち悪くなるくらい。
横にいる千奈美はすれ違いざまに、「足手まといなんだよ。消えちゃえばいいのに」とつぶやかれた。
まるで悪夢だ。
以前見た舞台の夢で、セリフが真っ白になってしまったことがあったけれど、それに匹敵するくらいのひどさ。
もう無理。
ステージからマイクを投げて逃げようとした。

522 :
そのとき、
「みやー!!」
罵声、ブーイングに交じってあの子の声が聞こえた気がした。
その方向を見やると、紫のサイリウムが光っているのが見えた。
「負けないで! 頑張れみや!!」
あの子がいる。
こんな会場の雰囲気でも変わらずに、罵声やブーイングに負けない声で応援してくれている。
胸がすごく熱くなった。
心が震えた。
これは逃げられない、逃げちゃいけないな。
あの子に最高のパフォーマンスを見せてあげようじゃないの。
アンチなんてどうでもいい、大好きなあの子のために全力で歌いたい。
マイクを持つ手にいつも以上に力が入った。

(つづく)

523 :
>>516
夜勤ですか? お仕事頑張って!!

524 :
>>523
更新有り難う!感動したよ!
納期前なのに仕事が終わらなくて徹夜です
小説読んだし気合い入れて頑張るよ!

525 :
今日も更新してくれて有り難う!
昨日に引き続き今日も感動したわ

526 :
のちさんの小説はマジ凄いと思う

527 :
今日はー?

528 :
今日はみやびちゃんの誕生日だぞ?
何か来ないかなー

529 :
おっと書かねばw

530 :
ひゃっほう〜!待ってるよ!

531 :
>>522

序盤にはつまずいた雅だったが、すぐに調子を取り戻す。
愛理も梨沙子も欠席で歌割は全て雅に回されていて、負担は大きいはずなのだが。
「すごい……」
そう漏らした桃子は鳥肌が立つのがわかった。
愛理パートも梨沙子パートもまるで自分のパートのように完璧に歌いこなす。
佐紀も千奈美も茉麻もいるはずなのだが、雅のソロステージかのような目立ちようだった。
毎回のように雅に魅了される桃子だったが、
この日はいつも以上、それどころか今までで最高のステージだと思った。
開始当初は雅に猛烈なブーイングや罵声を浴びせていたファンも、
雅の歌に圧倒されたのかいつの間にか黙り、立ちつくしていた。
桃子と一緒に声を上げて応援していた舞美も、ステージに見入っていて声をあげるのを忘れ、
手元で小さく紫色のサイリウムを振るにとどまっていた。
会場全体が雅の歌によって魔法にでもかけられたかのようだった。

532 :
「みやー!!」
それでも桃子は声をあげた。
大好きな雅の名前を呼び続けた。
雅は桃子の存在に気がついているのか、桃子の方にたびたび目線を配ってくれる。
目が合うたびに桃子は胸が苦しくなるのがわかった。
駅のホームで自分を助けてくれたみやはすごくカッコ良かった。
でも、やっぱり一番はステージで歌って踊る姿。
この彼女に恋をしているのだから。
イベントは途中MCを挟まずに5曲で終了した。
初めは悪意を向けられていた雅にも最後には拍手で送られていた。

533 :

「なにこれ。全然だめじゃない!!」
舞台袖から栞菜はそう吐き捨てた。
雅はトラウマになるくらいステージで傷つけられるはずだったのに。
呪術はうまくいっていた。
梨沙子を押さえこんだこと。
それに会場のファンをアンチに変え、熱心な雅ファンですら彼女に牙を向いたのに。
想定外だったのが、舞美と桃子の存在。
舞美は雅に刃を向けなかった。
桃子は変わらずに雅を信じ続けた。
だけど、まだ終わっていない。
「握手会」というものがまだ残っている。
より強力な呪術をかけて雅を追い詰めなければ。
そして、いちばん憎いあの子には最悪の結末を。
『絶対に行きます! あなたに会いたいです。声が出ないこんな私ですけれど』
栞菜のスマホには愛理からのメールが届いていた。
待っているのが舞美ではなく、欲望にまみれた男性達だったら?
大変だよね、助けを呼ぼうとしても声が出ないんだから。

(つづく)

534 :
もう来てた!のちさん更新有り難う!
更新がある度必ず思う
続きが楽しみすぎるって!

535 :
おお、来てた
今日も期待してもいいですか?

536 :
今日も待ってみる

537 :
ほんと誰か止めてあげて。この後どうなるの?
のちさんありがとう!引き込まれます。
続きが楽しみでしょうがない。

538 :
>>533

雅はバックステージに戻り、スタッフからハンドタオルを受け取ると顔にあてて大きくため息をついた。
歌いきった後の達成感はかなりのもの。
あの子もすごく応援してくれていたし、あたしもあの子のために頑張れた。
握手会では何て話そうか。
応援ありがとう?
ううん、ありきたりすぎ。
大好き、愛してる?
それは今でなくて後でふたりきりの時に。
あなたの名前は?
そう、それだ。アイドルとファンの一線を越える方法、友達に、恋人になる第一歩。
よし! 握手会頑張るか!!
ファンのみんなも最後の方は態度を軟化させてくれたし……大丈夫だよね。
いくらか安心して雅は握手会に臨んだのだったのだが。

539 :
「ありがとうございま――」
最初のファンにはスルーされた。
「ありがとうございま――」
―― Rよ ――
「ありがとうございま――」
―― 人殺し ――
「ありがとうございま――」
―― お前が怪我すればよかったのに ――
「ありがとうございま――」
今度は無言で強く爪を立てられた。
「ありがとうございま――」
手を叩かれた。
そんなことが何十人と続いた。

540 :
もう限界。
「すいません、気分悪いんで少し下がります」
隣にいるマネージャーさんに声をかけて下がろうとし瞬間、後ろにいるスタッフから肩をつかまれた。
「痛い! 何するんですか!!」
「人気アイドルなんでしょ。最後まで握手会から逃げんなよ」
そう後ろから女性の声がして前を向かされた。
抗おうとしても金縛りにあったように体が動かない。
そしてまた握手会に引き戻される。
音痴。
ブス。
足手まとい。
ケバい。
下手くそ。
ありとあらゆる悪口を言われ、心が悲鳴をあげる。
壊れそうだった。
ファンにかける言葉が「ありがとうございます」、から「ごめんなさい」へと変わっていた。

541 :
あまりの辛さに気を失いかけたとき、
「みや!」
手が暖かいものに包まれた。
白くて小さい女の子の手だった。
「大丈夫? 泣いてるよ」
「あ……」
声がうまく出なかった。
あの子が来てくれた。
「みや、あの、イベントスペースを出た入口にある噴水広場で待って――きゃっ!!」
そこまでいいかけて、ファンの後ろにいる流しスタッフに強引にはがされた。

542 :
「その子に乱暴しないで!!」
雅は大声を上げた。
あの子が転びそうになった時、隣にいた長身で黒髪の女性があの子を抱きとめた。
ホッとした半面、その女性があまりにも美人なので……なんだかイラッとした。
あの子をちゃんと立たせると、前を向いて握手してきた。
「雅ちゃん、ステージすごく良かったです! 愛理ちゃんの次に好きになりました!!」
「ありがとう、でもその子に対して馴れ馴れしすぎないですか?」
「親友ですから」
手を強く握られた。
でもいやな握られ方じゃなく不愉快ではなかった。

543 :
その後は不思議とファンもフレンドリーで、褒めてくれたり、心配してくれたり、いつもの握手会のように楽しく過ごせた。
最後のファンを見送ると、雅は後ろを振り向いた。
「なるほど、あんただったんだ。大変お世話になりまし……た!!」
肩を掴んできていた、同い年くらいの女性スタッフの頬を全力で叩いた。
「はー、スッキリした。さて、あの子のところに行かなきゃ」
雅はステージ衣装のまま雅は噴水広場に向かった。

(つづく)

544 :
>>534-537
ありがとう、調子に乗って書いてみましたw
もし難民、というか2ちゃんが落ちたら新狼で

545 :
来てたーーーーー!!!
のちさん今日も更新有り難う!!!
早く続きが読みたいよ!!!

546 :
続きが楽しみすぎるので
今日も待つ

547 :
2ちゃん落ちたらの話だけど
俺よくわかんないんだけど新狼は大丈夫なの?
このスレないと毎日の楽しみがなくなって辛いからマジで心配

548 :
今日も待ってみる

549 :
懲りずに今日も待つ

550 :
のち…

551 :
待ってるよ!

552 :
今日は書かねばw

553 :
待ってます

554 :
ひゃっほぅ〜!!!
待ってるよ!!!

555 :
>>543

噴水広場は、イベントが行われている商業施設内、つまり屋内にある。
毎時0分になると音楽が鳴りひびき、噴水とのコラボレーションで客を楽しませている。
そのわきに設置されていたベンチに桃子と舞美は座っていた。
「みや来てくれるかなぁ」
桃子はどっかりと腰をかけて舞美に尋ねた。
「難しいと思うよ。イベントの休憩時間に会場を抜け出してきていちファンに会いに来るなんて、御法度もいいところ」
「だよねぇ」
舞美らしからぬ正論に桃子はため息をついた。
「でもさ、舞美見てよ。あの子なんてみやとそっくりだよね。コスプレまでして」
「ほんとだ。最近本格的なファンいるよね。コスプレまでして本人そっくり。髪色まで同じだよ、すごいなー」
「女の子のファン増えたよねー。って、こっちを見てる」
雅そっくりな女性ファンが近寄ってきて、目の前で立ち止まった。
「来たよ」
彼女の開口一番はそれ。

556 :
「え……はい」
「来いって言われたから来たけれど」
目の前で腕を組み、上から物を言う。
網タイツの衣装も相まってドS女王様の貫録。
桃子は本物の雅に固まってしまい、雅も肝心の桃子の反応に困ってしまった。
その間にも本物の雅が降臨したのではないかと噴水広場にBerryzファンの野次馬が集まり始めた。
「も、もう! みや子ちゃん遅かったなぁ!! ささ、場所変えましょう!!」
危険な状況を察知した舞美が桃子と雅の手を引いて非常階段へと連れ込んだ。

557 :

「ちょっと! 急に場所変えてどうしての?」
雅が舞美に抗議した。
「どうしたの、って野次馬が集まって来て危なかったでしょ」
「そう? あたしは来いって言われたから来ただけ。ね?」
「ふにゃぁ……」
幸せそうに目をトロンとさせて、桃子は生気なく返事した。
いつの間にか桃子は雅に抱きつかれて腕の中。
雅の匂いと、柔らかさと、温かさと、何よりも雅が抱きしめてくれていることで桃子はトリップしていた。
「かわいい」
そんな桃子の頬を指先で撫でると嬉しそうに喉を鳴らした。

558 :
「そうだ、この前できなかったことしてあげようか?」
「にゃ?」
「キ、ス」
雅の人差し指が桃子の下唇にかかる。
桃子の目の潤みが最高潮に達した。
「だめええええ!!!」
舞美が思いっきりふたりを引き剥がした。
「ちょっと、いいところなのに」
「そ、そ、そんな、キスなんてだめだよ!!」
「だめ? なんで? あんたこの子の親友でしょ。だったら黙って見てなさいよ」
「それでもダメなの!!」

559 :
そんなふたりの押し問答をみて桃子は両手を胸元で握ってうっとりしていた。
絶世の美女ふたりが自分を取り合って争っている。
片方はキャンパスいちの清楚な美女。
片やアイドルグループのセンターをつとめるほどの艶やかな美女。
リアル乙女チックシミュレーション、ここに極まれり――。
確かに夢の中のみやとの甘甘な世界もいいけれど、こうやって少女マンガ顔負けのヒロインをするのも悪くない。
梨沙子ちゃんに伝えちゃおうかな……あれ。
そういえば。
「ねぇ、みや!」
「なに?」
舞美と火花を散らしていた雅が振り向いてきた。

560 :
「あの、梨沙子ちゃんはどうしたの? 急に欠席になったから驚いた」
「梨沙子? そういえばどうしたんだろう。朝までは一緒にいてレッスンもやってたはずなのに……急にいなくなっちゃった」
「なんで?」
「わからないけれど……今日はみんな変。スタッフさんも、メンバーも。
すごく攻撃的で、あたしに強くあたるんだ。
あ、そういえば変なこともうひとつあった。
ほら、あんたを地下鉄で突き落とそうとしたアイツ! 
なんでかスタッフとして紛れこんでるんだけど」
「……栞菜」
桃子が苦々しくその名を呼んだ。
「え、え? なんで栞菜がスタッフやってるの?
それに地下鉄で突き落とそうとしたって――」
「話は後だよ、舞美。やばいなぁ」
梨沙子の話だと、今回の黒幕は栞菜。
ファンが攻撃的だったのも、それに例の愛理が突き落とされた動画もきっと栞菜が裏で糸を引いているはず。
「あのさ、ふたりにお願いがあるんだけど」
雅が真剣な顔をして話を切り出してきた。
「正直ひとりで戻るの、怖いんだ。だから、ふたりに楽屋まで一緒に来てほしいんだけど」

(つづく)

561 :
やっと書き込める
毎晩毎晩ここをチェックしては寝る生活をおくってますw
次の更新も楽しみだなー

562 :
来てた!
マジ面白い!

563 :
今日も書くかな
この話もあとちょっとです

564 :
うー、のちはいっつも気になるとこで止める
今日も待つぞー

565 :
おっ、今日も来るって?
完結して欲しいけど終わってしまうのは寂しい…
矛盾してしまうw

566 :
ひゃっほぅ〜!今日も待ってるよ!
俺も早く先が読みたいけどあと少しで終わりなのは寂しいわ
この話が完結してものちさんの小説が読みたい

567 :
>>560

雅を先頭に通用路を通り、関係者入口に向かった。
その雅は桃子の手をギュッと握って離さない。
舞美はそれに対してモヤモヤしていた。
「あの、雅ちゃん。いつまで手を繋いでるの?」
「ずっと」
「ずっと、って! そんな馴れ馴れしい」
「いいでしょ。あたし達はラブラブなんだから」
「みやとラブラブ〜♪」
桃子が満面の笑みで舞美にVサインをみせた。
そこで舞美のチョップ一閃。
『いったーい!』
舞美の本気のチョップで雅と桃子の手が解けた。

568 :
「そういうことは問題が解決してからにしてください。梨沙子ちゃんを助けに行くんでしょ」
「はーい」
桃子は大人しく従った。
だけど雅は、桃子に耳打ちした。
―― 終わったら、ふたりでイイことしようね ――
桃子が盛大に咳き込んだ。
「雅ちゃん!! わたし本気で怒りますよ」
「あー、はいはい。終わってからねー。……さて、ついた」
関係者入口という看板が立っており、そこには警備のバイトがいる……ハズだったが。
「あれ、誰もいない。ラッキー、ふたりとも中に入って」
雅に続いて舞美と桃子がおそるおそる中に入り、楽屋を目指す。

569 :
「誰もいないね」
桃子が誰もいないのが気になって雅に話しかけた。
「変だね、いつもスタッフさんやメンバーがいるはずなのに」
結局ひとりもすれ違わないまま楽屋にたどり着いた。
「確かここに梨沙子がいたはずなんだけど」
楽屋のドアノブを回しても鍵がかかってるのか開かない。
「おかしいな、鍵なんて掛かってないはずなのに」
雅はそう言いながら何度もドアノブを回す。
「無駄だよ」
廊下から声がした。
その声には3人とも聞き覚えがあった。
「……栞菜」
桃子が苦々しくその名を呼ぶ。
頬を赤く腫らした栞菜だった。

570 :
「よかったね嗣永、舞美ちゃんに刺されなくて」
「え、どういうこと栞菜。わたしが桃子を刺すって」
「全部栞菜が仕組んだことなんだよ。
舞美がカッターナイフでみやを刺そうとしたことも、
みやが会場からバッシングの嵐を受けたことも……あと、
ネットにみやが突き飛ばした動画を流したのもあんたの仕業だよね」
「うそ……うそでしょ、栞菜」
舞美はすがるような目で栞菜を見た。
「ごめんね舞美ちゃん。全部本当なんだ」
「なんでそんなことを……」
「元はといえば舞美ちゃんが悪いんだよ。あたしを受け入れてくれなかったから。
付き合ってっていったのに、全然だめだったし」
「だってわたしは愛理のことが――」

571 :
「ほんと、あの子は目障りだよね。あっちでも、こっちでも舞美ちゃんを独占しようとする。
ずるいよ、卑怯だよ。何もしないで舞美ちゃんを手に入れるなんて。
でもさ、あの子の運命も今日までだよ。ほら」
栞菜が舞美にスマホを放り投げる。
そこにはメールのやり取りがなされていた。
「それね、メールの相手が舞美ちゃんと勘違いしてるんだよ。
あの子の頭の中はお花畑だね。
実際に来るのはあたしに操られた男達だけど。
声が出ない愛理が夜の公園に来ると、男たちに襲われて……大変だね。
可哀想、あの子処女なんだよ。キスもまだ。
初めては舞美ちゃんにあげるんだ、って心に決めてて。
大丈夫、様子はインターネットで全世界にリアルタイムで流れるようにしてあるから」
「ごめん、芝公園に行ってくる。愛理を守る」
舞美は怒りに震えながらもそう言った。
「無理だよ。スタッフが出れないように出入り口を固めてるから」

572 :
「栞菜!!」
ついに舞美がキレて、栞菜に詰め寄る。
「愛理を助けてよ!!」
「やだと言ったら?」
そこでパーンと乾いた音が廊下に響いた。
「ふざけてる場合じゃないよ!!」
「できないことはできないんだよ。でもね、方法はある。
その手でわたしの首を絞めて息の根を止めればね、どうにかなるよ」
舞美は無言で栞菜の首に手をかけた。
「だめだよ、舞美!!」
桃子の悲痛な叫びは舞美に届かなかった。
「それでいいんだよ、舞美ちゃん」
こんな世界、どうせ終わるんだったら。
せめてあなたの手にかかりたい。

573 :

楽屋で倒れている梨沙子は夢を見ていた。
自分ではない誰かの夢。
その夢は深い悲しみに包まれていた。
好きな人から必要とされない、自分が一番ではない悲しみ。
胸のチクチクは梨沙子もわかるものだった。
でもそれだけではない、もっと痛い悲しみだった。
誰の夢だろう。
梨沙子は夢で聞こえてくる声に耳を傾けた。
舞に会いたい。
千聖に会いたい。
なっきぃに会いたい。
愛理……も腹が立つけど、やっぱり会いたい。
舞美ちゃん。
会いたい。
℃-uteに戻りたい。
でもいまさらどんな顔をしてみんなに会えばいんだろう。
できないよね……えりかちゃん。
そうか。
この夢は栞菜のだ。

(episode.17 おわり)

574 :
この話凄いな
ほんと引き込まれる

575 :
続きが早く読みたい
でも終わるのはさみしい
だが今日も待ってみる

576 :
なるほど。
大学入った舞美が友達できなかったのも、
悪い虫がつくまいとするカンナの魔力であったと解釈できるわけか。

577 :
今日も待ってるよ

578 :
待っててもいいですか

579 :
書くよ!
しばらくお待ちを…

580 :
待ってる!

581 :
episode.18

舞に会いたい。
千聖に会いたい。
2人とふざけているときはすごく楽しい。
学校でもこんなふうに友達と遊べればもっとよかったんだけれど。
ごめん、学校マジで嫌いなんだ。
なっきぃに会いたい。
普段は頼りないのに、ダンスはしなやかですごく魅せ方がうまい努力家。
わからないときは根気よく教えてくれて嬉しかった。
愛理……腹が立つ。ムカつく。
でも会いたい。
悔しいけど愛理の歌が大好きなんだよ。
歌っている愛理カッコいいし。
舞美ちゃん。
舞美ちゃん……。
心配かけてごめんなさい。
会いたい。
抱きしめてもらいたい。

582 :
℃-uteに戻りたい。
でもいまさらどんな顔をしてみんなに会えばいんだろう。
できないよね……えりかちゃん。
あたしが℃-uteの活動を休んでいるときも、℃-uteを辞めてからも、
立ち直れない時も、立ち直ろうとするときも、えりかちゃんは傍にいてくれた。
えりかちゃんは℃-uteを卒業し、念願のモデルデビューを果たした。
あたしは一度学生に戻るも、やはり学校には馴染めずに芸能界に戻った。
えりかちゃんにはめっちゃ怒られたけど。
そしてときどき思う。
もしあたしと舞美ちゃんは芸能界に入っていなく、愛理というお邪魔虫がいなければ結ばれていたのかって。
舞美ちゃんと愛理はあたしが℃-uteを辞めてから付き合いだした。
それが悔しくて仕方なかった。
℃-uteを辞めて1年、2年、3年と経ったがどうしても舞美ちゃんへの想いは消えることがなかった。
だからブログで中睦まじくするふたりの姿に胸が痛んだ。

583 :

ことの始まりは2月の半ば、舞美ちゃんの大学合格の件だった。
『℃-uteの矢島舞美と鈴木愛理ってうちの大学に来るの?』
というツイートとともに画像があげられていた。
ふたりが合格掲示板の前で人目をはばからず抱き合っていた。
さらに続き、
『ショッピングなう』
と続きの画像があげられた。
そこにはジュエリーショップで楽しそうに買いものをしているふたりが写っていた。
きっとこの有名私立大学にふたりで通うのが容易にうかがい知れた。

584 :
家庭に恵まれ、人気アイドルグループではセンター、
才色兼備で恋人には舞美ちゃんという絶世の美女。
ズルいよ。
あたしなんか、今度気持ち悪いくらいエロい水着を着せられるのに。
我彼の差に絶望的な気分になった。
こんな不公平な世界、リセットされちゃえばいいのに。

だったら、リセットしてしまえばいい。

(つづく)

585 :
いつも待っててくれてありがとうです
>>576
ありがとう!
そこのところも書こうと思います

586 :
のちさん更新してくれて有り難う!
次の更新も楽しみに待ってるよ!

587 :
終わりに近づいてるのがわかるんだけどでも先が読めない
続き楽しみに待ってるよ

588 :
work

589 :
今日も待つぞ〜!

590 :
最近まとめの人どうしたのかな

591 :
今日は書きますんでしばらくお待ちを
まとめの人いないと寂しいですw

592 :
ひゃっほぅ〜!
のちさん待ってるよ!

593 :
明日の朝の楽しみができた
いつまでも待ってるぞー

594 :
>>584

梨沙子をうまいことそそのかして、あたし達ベリキューの運命を「リセット」した。
そしてリセットされた世界でのあたしは入学したての高校1年生。
元の世界の記憶は、このときは吹き飛んでしまっていた。
だから……神奈川在住のあたしがなんで埼玉の高校に通うか意味がわからなかった。


高校が遠い。
それがこの高校が好きでない理由だった。
まず家を出てバス停まで5分、バスで駅まで20分、乗り換え10分
、駅から学校のある駅までが1時間10分、そこから高校までバスで15分、また歩いて5分……ほぼ片道2時間。
だから朝は7時前に出なくては間に合わないし、帰りは部活をやっていないのに少し寄り道をすると夜7時近くなってしまう。
自分でもなんでこの高校に進学したか意味がわからない。
そこそこの進学校ではあるけれど、そんなの横浜市内にはごろごろあるレベル。
取り柄といったら全国に通用するソフトボール部があるくらいで……。
中学校までソフトボール部に所属していたが、通学だけで精一杯で入部する気力がない。

595 :
そう。ソフトボール部といえばものすごい美少女の部長がいるとの噂があり、
4月の下旬、授業が終わりに見に行った。
うちの学校は女子高で、その生徒を見当てに
バックネット裏に人だかりができ、黄色い声援を送っていた。
隙間から覗くと、部長さんはノックをしていた。
「いくよー!!」
よく通る声で内野にノックしていた。
このノックというのが難しく、強すぎても弱すぎてもダメ、実力と経験がものをいう。
それを部長さんがファースト、セカンド、ショート、サードとうまくノックをやっていた。
内野のノックの練習がおわり、
外野へのフライ練習のために一旦ボールを部員が集めていた。
そのとき、振り返った部長と目があった。

この人は――。
あたしが会いたかった人。
こんな遠くの高校に来ている理由はこれだったんだ。
(つづく)

596 :
のちさん更新有り難う!
続きも楽しみににしてるよ

597 :
今日も待つぞ〜!

598 :
今日は来ないかな

599 :
>>595
部活が終わる午後8時までずっと待っていた。
途中でソフトボール部の顧問から用がないなら帰るようにと言われても、粘った。
そして練習帰りの部長さんに突撃した。
「あ、あの!!」
「はい? なんですか」
「練習をずっと見てました。感動しました!!」
「ありがとう」
制服に着替えた部長さんは疲れているだろうに女神のような微笑みをあたしにくれた。
「うちの部長の追っかけ? 正直困るんだよね、練習の邪魔でさ」
と、隣にいた女子部員が威圧的な態度を取った。
ショートヘアーで、目がクリクリしていて目力が半端ない。
練習や紅白戦ではキャッチャーを務めていた。

600 :
……あれ、どこかであったことある?
気のせいかな。
「いいよ、メグ。あなた、ソフトボール好き?」
部長さんから「メグ」と呼ばれた女子部員はしぶしぶ引き下がった。
「大好きです!! 中学までソフトやってました」
「そうなんだ……だったらうちのソフトに入らない?」
「部長!!」
「いいの。これだけ遅くまで練習を見学してくれていたのだもの。きっと伸びるよ」
「いいんですか?」
「来るものは拒まず。でも練習が厳しいから覚悟してね」
「はい、ありがとうございます。ところで部長さん」
「なにか?」
「あの……名前を教えていただけますか?」
what's your name?

601 :
「わたし? わたしは矢島舞美。3年生で部長をやらせてもらっています。
ポジションはピッチャー」
「矢島舞美……舞美ちゃん」
名前がキーワードになって思い出した。
この子は矢島舞美、舞美ちゃん。
モヤモヤが晴れて頭がクリアーになっていく。
この人に会うためにこの世界、そして今のあたしがあるんだ。
「部長を「ちゃん」付けとはずいぶん慣れ慣れしいんじゃない?」
「ごめんなさいね、メグ」
この子は村上愛、あたしと同じ元℃-uteのメンバー……になるはずだった。
なぜメグがここにいるのだろう。

(つづく)

602 :
来てた〜〜〜!!!
のちさん有り難う!!!

603 :
続きが読みたい
今日も待ってるよ!

604 :
今日は書くよ!

605 :
ひゃっほう〜!
楽しみに待ってるよ!

606 :
>>601

それから忙しい部活生活が始まった。
朝4時に起きて5時の電車に乗り、7時の朝練に出る。
帰りは夜の10時近く。
土日祝日のほとんどは練習や試合で費やされた。
部活ではソフトボールの強豪校だけあって、
中学時代にかじった程度の実力のあたしは球拾いに筋トレ、素振りにキャッチボールの毎日。
それでも舞美ちゃんに会える幸せは何にも代えがたかった。
あたしの通学時間を気にかけてくれて、よく「大丈夫?」と心配してくれた。
「うん、大丈夫!! ありがとうね舞美ちゃん」
つい癖でため口で話してしまう。
その後、時期キャプテンの呼び声も高いメグに叱られるのだった。
それだけならよかった。
そんなあたしの舞美ちゃんに対する態度は同級生にも顰蹙をかった。
5月の末、部活が終わった後に同級生2人からちょっと話があると言われて部室棟の
裏に着いていったら、いきなり髪を掴まれて壁に押し付けられた。
―― なにあの部長に対する態度は? ムカつくんだよ。
お前なんかが気安く話しかけていい人じゃないんだよ。Rよ、下手くそ ――
そしてあたしのカバンの中身をぶちまけて2人は去っていった。

607 :
舞美ちゃんは学校一の美人で、そしてソフト部の大エース。
学内にはいくつもの舞美ちゃんのファンクラブが存在するほどで、
そしてあたしみたいに舞美ちゃん目当てでソフト部に入部する生徒もあとがたたない。
そういう子はひどい目に会う。
ちくしょう。
唇をつよくかみしめ血の味がした。
あいつら、ひどい目にあえばいいのに。
そう強く願った。
呪った。
すると、次の日朝練に出ると、そのふたりが帰宅中に自転車に乗っていたところ
トラックにはねられて大けがをしたという報が顧問からもたらされた。
背筋に寒いものが走った。
まさか。
……まさかね。

(つづく)

608 :
…はやくやじすずが書きたいw
それとは別に岡井ちゃんのカミングアウト(?)スレを見て、あれ、ちさまいもありじゃね?
と思ってしまったw

609 :
きてた!
のちさん更新有難う!

610 :
今日は待つぞ

611 :
待ってるよ

612 :
今日もこないのかな

613 :
>>607

7月になるとインターハイ県予選が始まった。
うちの学校は舞美ちゃんとメグの攻守にわたる活躍で圧倒的な強さで県予選を突破した。
あたしはベンチにも入れずにスタンドから応援の日々だったが。
そして舞美ちゃんに関して噂がながれた。
日本代表入り、さらに有名実業団チームから声が掛かっているというもの。
本人に確かめてみた。
「うーん、どうだろう?」
と、笑ってはぐらかされた。
「でも、元々は大学に行くって話じゃなかってですか?
ほら、国学館はソフトボール強いですし」
「そうだね。でも……やっぱり強いところでやってみたいし、実業団が近道だったらそっちに行きたい」
「そうだと実家から離れることになるんですか?」
「しょうがないよ。でも群馬だからすぐに会えるって」
「そうかもしれないですけれど」
夢に描いた舞美ちゃんとのキャンパスライフ。
それの実現は難しくなりそうだった。

614 :
「大学に行って、一緒にソフトをまたやりませんか?
実業団に入ったらソフト漬けで大変ですよ」
「うーん……」
舞美ちゃんはちょっと困った表情を浮かべた。
すると、
「こら、栞菜!! また部長にわがままを言って困らせてる!!」
「はーい、村上先輩すいません」
「さっさとグラウンド整備してこいっつーの。
まったく、ソフトの腕は上達しないのに、相変わらず部長には馴れ馴れしいんだから……」
メグは実業団志望。
大学なんて遠回りとしか思っていないようだった。
それで舞美ちゃんとまたバッテリーを組むことを望んでいた。
あたしは実力的に実業団は絶対に無理。
だから舞美ちゃんが実業団に行かないようにあたしは望んだ。
そして――。

(つづく)

615 :
来てた!有り難うのちさん

616 :
まさかそういうこと?
そりゃつらいなぁ。のちさん、更新ありがとうございます。
面白い!

617 :
今日も待ってみる

618 :
>>614

そして夏休み。
チームは順調に勝ち進み、インターハイ決勝。
あたしは相変わらずベンチにも入れずにスタンドから応援。
7回が終わって互いに譲らず0−0で延長に突入する。
こちらのピッチャーは当然舞美ちゃんで予選から決勝まで一人で投げ切ってきた。
延長からはタイブレーカー方式といってノーアウト2塁から始まる。
表の攻撃でうちらはメグのタイムリーで虎の子の1点を取った。
あとは裏の守備で舞美ちゃんが無失点で抑えればいいだけだった。
スタンドには多くのギャラリー。
というのも、スポーツ新聞やマスコミが「美しすぎる女子高生ピッチャー」と題して煽りたてていた。
そして実業団関係者、大学のスカウト、さらには日本代表の監督さんまで観戦にきていた。
あと3つのアウトで遠い存在になってしまう。
そんなのいやだ。
いっそのこと舞美ちゃんが打たれて負けてしまえばいいのに。
あたしは強く願ってしまった。

619 :
そして。
「舞美、舞美!!」
グラウンドで投球練習をしていた舞美ちゃんが突然肩を押さえてうずくまり、メグが大声をあげて駆け寄った。
すぐにチームメイトも駆け寄って輪が出来た。
そしてベンチに向かって×のサインが出た。
あたしは真夏の太陽のもとなのに、変な冷や汗が吹き出すのがわかった。
あたしの……あたしのせいじゃないよ。
そして舞美ちゃんはメグに肩を抱えられてベンチに退いた。
偉大すぎるエースがいるチームの弊害か、2番手ピッチャーは経験不足。
ストライクがまったく入らずにすぐに満塁、
押し出しを恐れてストライクを取りに行ったボールをサヨナラホームランを浴びたのだった。

試合が終わり、宿舎に向かうバスの中ではほとんどの部員が泣いていた。
そのなかでひときわ舞美ちゃんは大泣きをしていた。
自分を責め続けて泣いていた。
この試合で3年生は引退だった。

(つづく)

620 :
更新有り難う!
話の組み立てがすごいな
のちさん天才だわ

621 :
ネタバレになってしまうから感想が言えないのがつらいが
とにかく続きが読みたい

622 :
今日は書くよー

623 :
正座して待機

624 :
待ってるよ!

625 :
>>619

夏休みが終わり、2学期になった。
舞美ちゃんはというと……。
「はぁ……」
放課後の池袋の街中、あたしの横でため息をついてばかり。
「元気だしてよ」
あたしは肩をポンポンと叩いた。
「うん……」
やはり元気が出る様子がなかった。
それも仕方ない。
舞美ちゃんの将来の夢は暗礁に乗り上げてしまった。
日本代表の話も、実業団の話も肩の怪我のせいで白紙に戻った。
大学からの推薦もない、ただの美しすぎる女子高生。
あたし?
ソフトボールは辞めました。
舞美ちゃんがいないと用はないし、メグはうざいことこのうえない。
まぁ、メグは次期部長はおろか「暴力事件」を起こしたとかで退部させられたけれど。

626 :
「ほら、サンシャイン水族館に行って、いっぱい綺麗な魚を見れば少しは元気が出るって。
「……うん」
最近のあたしは舞美ちゃんをヒトリジメ。
舞美ちゃんの友達は「なぜだか」周りから離れてしまったから。
あの噂を信じちゃったのかな。
決勝戦で代わりに出てきたピッチャーの子が学校を辞めたのは、舞美ちゃんが「お前のせいで全てが台無しだ」と強く責めたからだと。
それともあれかな。
部員の子と取っかえひっかえ付き合って、別れたら退部させたというの。
そんなのデマなのに。
すぐにネットの噂を信じちゃうのが現代っ子の悪いところだよね。
まぁ、おかげであたしが舞美ちゃんを独占できるわけだけど。
サンシャインに着き、水族館に向かって建物内を移動した。
すると、途中ですごい人だかりができていた。
どうやらイベントスペースで何か催しがあるみたいだった。
「舞美ちゃん、見て行く?」
「べつに……」
興味がなさそうだった。
「いいから行こうよ」
舞美ちゃんの手を引っ張っていき、なんとか人だかりをかきわけて最前についた。
そして、その先のステージに立っているのは――。
忌わしい、絶対に会いたくもないあの子だった。

627 :
『こんばんは、Berryz工房の鈴木愛理です!!』
「ま、舞美ちゃん、やっぱり水族館に行こうよ!!」
「待って」
いままで虚ろな瞳をしていた舞美ちゃんに強い意志の光が灯った。
「聴きたい」
皮肉なことに、この世界では舞美ちゃんは愛理のファンだった。
生写真をコレクションしていることも知っていた。
だけど、一般人とアイドル。
手が届かない……もとい、手しか届かない。
名前なんて知ることもない。
「ダメだって!! はやく水族館に――」
舞美ちゃんは首を横に振った。
『今度放送されるアニメの主題歌です。聴いてください、ガラクタノユメ』
やめてよ。あんたの歌、舞美ちゃんに聞かせないでよ。
そのためにこの「世界」があるんだから。
舞美ちゃんは愛理の歌を一生懸命に聴いた。
一緒に口ずさみ、歌が終わると堰を切ったように涙した。
舞美ちゃんはイベントが終わるまでその場から動かなかった。
何を話しかけても、腕を引っ張ってもダメだった。
あたしの声は届かなかった。

628 :
イベントが終わり、あたしと舞美ちゃんは立ちつくしていた。
「栞菜」
「……なに」
「わたしね、ソフトボール続けようと思う。肩を治して、大学でイチから」
「また壊すかもしれないよ」
「そうかもしれないけれど、諦めたくないんだ。もうガラクタかもしれないけれど、自分の夢」
「馬鹿じゃないの」
「ごめんね」

その後、舞美ちゃんはあたしから離れ受験勉強に必死に取り組み出した。
そしてまたひとりになった。
学校の友達もいない。
いつも隣にいてくれた、舞美ちゃんと同じくらい大好きな「あの人」はこの世界にはいないらしい。
らしい、というのはその人の顔も、名前すら思い出せないから。
この記憶すらも本当か怪しいくらい。
きっとそれがあたしに対するこの世界の「代償」。

(つづく)

629 :
遅くなりましたw
>>620
自分の場合は後→前って話を考えます
でも実際に前から書いていくと後になって直したくなる…
理想は
@後から話を考える
A前から話を書く
B後から話を直す
だけど実際は@、Aのステップしかやってなくて書いてすぐにあげてるんで
後になってこうしとけばよかったと何度も思います
今日もそうですw
>>621
いえいえ感想書いてくださいよw
感想を楽しみ書いてるんですから

630 :
のちさん更新有り難う!
後→前って話を考えてるとかすごいな
やっぱのちさん天才だわ

631 :
このシリーズが始まるまでまさか栞菜がここまで関わってくる
というか繋がってるとは思わなかった
のちさんの話の組み立てはマジで凄いと思う

632 :
今日あたり更新こないかな
こっそり待ってみよう

633 :
わかりましたしばらくお待ちを…

634 :
>>628

舞美ちゃんは志望大学に入学し、あたしはひとり残される形になった。
再来年に大学に入ればいいのだけれど、その2年間に恋人ができたり、怪我が治られると困る。
ひとりぼっちになってしまう。
あたしの不安は的中し、舞美ちゃんはソフト部に入部し、
さらには合コンへと誘われるなど大学生活を謳歌し始めた。
合コンの話を聞いた時には気が狂いそうになった。
全てをぶち壊してやる。
舞美ちゃんの肩がまた悪くなるように願い、またSNSに悪い噂を流し続けた。
その結果。
舞美ちゃんはまた肩を壊し退部をよぎなくされ、
またSNS上での「変人という」噂は狙い通り拡散し、舞美ちゃんは大学で孤立した。
孤独になればあたしにすがるはず。
もう舞美ちゃんにはあたししかいないはずだから。
だが思惑は外れ、最大の障壁が立ちはだかる。
その相手は嗣永桃子――。

(つづく)

635 :
早くー早くー

636 :
>>634

『やっと大学で友達ができたよ』
と、舞美ちゃんからメールがきたのは秋になってから。
その子もBerryzのファンで雅が大好きだとすごく嬉しそうに書かれていた。
それまで大学ではうまくいかず、遊ぶ相手はあたしだけだったのに。
いつかはBerryzのコンサートに一緒に行きたいとも言っていた。
嫌な予感がして相手の名前を尋ねてみると、桃子だった。
この作られた世界も変なもので、元の世界にできるだけ戻ろうと復元力が働く。
そのせいか元の世界で縁のあった人間、つまりBerryzと℃-uteのメンバーが関わってくる。

数日後、学校を休んで大学へと舞美ちゃんの様子を見に行った。
するとキャンパスのベンチで舞美ちゃんが楽しそうに談笑する姿があった。
相手は一回り小さい女性、間違いなく桃子であった。
桃子も舞美ちゃん同様にキッズオーディションで落選したのだけれど、まさかこういう形で出会うとは。
あたしと会っているときよりも楽しそうな舞美ちゃんの姿は許せなかった。
どうすれば桃子を舞美ちゃんから遠ざけられるだろう。
今の桃子を詳しく知っている人物はいないだろうか。
……いた。

637 :
都内の某高校に向かった。
そして16時過ぎ、校門からでてくる一際大きい女性を見つけた。
「こんにちは」
あたしが挨拶をすると、瞼を大きく見開いて大変驚いたようだった。
「熊井友理奈さんですよね」
「ち、違います」
目線を下げて早足であたしの元を去ろうとした。
「桃子に話してもいいのかな。世界を変えて、雅との仲を無理やり引き裂いたことを」
友理奈は立ち止まった。
そして振り返り、恨めしそうな顔をしてこちらを睨んできた。
「そんな顔しないでよ。うちらは『共犯者』じゃない」

(つづく)

638 :
今日も来てた!
面白い!
続きが気になりすぎる!

639 :
空気だと思ってたけど、やっと熊井ちゃん出てきたか。
こんなこと書かないほうがいいんだけど、多分それはないだろうから
書いてみると、実は熊井ちゃんのほうが主犯でラスボスだったら笑うw
カンナの思考さえ操ってたのよ、ハワイで、キスプリクラを見せ付けられた
ウチの気持ちがわかる? 的な。

640 :
熊井ちゃんの心の中が知りたい

641 :
>>637
高校から歩いてすぐのスタバに入って近況を尋ねることにした。
「どう、そっちは?」
「……」
友理奈は俯いたまま話をしない。
「なにその態度は。熊井ちゃんだってこの世界を望んだんでしょ。
高校では、もう卒業しちゃったけれど桃子とよろしくやってたんじゃないの?」
「……」
「何とか言えよ!!」
あたしは癇癪を起し、友理奈はビクッとした。
さすがに店内なのであたしもバツが悪かったが。
「どう?」
「別に……」
「は?」
「元の世界と変わらないよ。桃は桃だし、うちはうち。距離感は変わらない」
「なんでよ。雅はいないんでしょ」
「近くにはね。でも、桃は変わらずみやのこと好きだよ。うちはマスコット扱い。
人の気持ちって、世界が変わっても変わらないんだなってびっくりしたよ」

642 :
「それを変えるためのこの世界でしょ。愛理は舞美ちゃんのことを知らない。
雅だって桃子のことを知らないよ。
アイドルと一般人。名前を知ることも、呼んでくれることもきっとない」
「そうかなぁ。なにかのきっかけで出会いそうな気がするよ」
友理奈はまるで少女マンガのハッピーエンドのような展開を望んでいるようだった。
「熊井ちゃんはどっちの味方? 桃子と雅がくっついて欲しいわけ?」
「そういうわけじゃないけれど……なんだろう。
こっちの桃、キラキラしていないのがちょっと寂しいっていうか。
舞美だってそうじゃない?」
友理奈に真っ直ぐ見つめられた。
言葉のひとつひとつが痛かった。
「そんなことない」
その意見を肯定するわけにはいかなかった。
「ねぇ、栞菜。こっちの世界に来て後悔していない? 元の世界に戻りたくない?」
「……ないよ。舞美ちゃんといっぱい遊べるからこっちのほうがいい」
「うちはね、正直後悔してる。
確かにレッスンが大変なこともあるし、先生に怒られてばっかり。
土日はコンサートやイベントで潰れるし、街を歩けば勝手に写メ取られることもある。
それでもね、やっぱり……ステージが恋しい。それにメンバーに会いたい」

643 :
まるで℃-uteを辞めたばかりのあたしのようだった。
それがさらにイラつかせた。
「うるさい! あんたのそういうところがムカつくんだよ!!」
友理奈は大きい身をビクッと震わせて縮こまった。
「……ごめん」
ため息をひとつして本題を切り出すことにした。
「大学で舞美ちゃんと桃子がどうやら友達になったようなんだ」
「え、うそ!! すごいなぁ。やっぱりうちらって縁があるんだ」
友理奈を睨みつけると軽く頭を下げてきた。
「まずいよ、これは。ふたりが付き合ったら熊井ちゃんだって困るでしょ」
「……確かに。でもさ、なんだろう、それはない気がする」
「は? 根拠は」
「ないけど」
あっけらかんと答えられた。
「……あきれた。とにかく二人を仲違いさせるよ。桃子の情報を教えて」
そしてあたしと友理奈で妨害工作が始まるのだが――。
(つづく)

644 :
まるで℃-uteを辞めたばかりのあたしのようだった。
それがさらにイラつかせた。
「うるさい! あんたのそういうところがムカつくんだよ!!」
友理奈は大きい身をビクッと震わせて縮こまった。
「……ごめん」
ため息をひとつして本題を切り出すことにした。
「大学で舞美ちゃんと桃子がどうやら友達になったようなんだ」
「え、うそ!! すごいなぁ。やっぱりうちらって縁があるんだ」
友理奈を睨みつけると軽く頭を下げてきた。
「まずいよ、これは。ふたりが付き合ったら熊井ちゃんだって困るでしょ」
「……確かに。でもさ、なんだろう、それはない気がする」
「は? 根拠は」
「ないけど」
あっけらかんと答えられた。
「……あきれた。とにかく二人を仲違いさせるよ。桃子の情報を教えて」
そしてあたしと友理奈で妨害工作が始まるのだが――。
(つづく)

645 :
ダブってしまったすいません
>>639
面白そう!!
だけどここの熊井ちゃんは良くも悪くも熊井ちゃんですw

646 :
熊井ちゃんが熊井ちゃんで安心した
のちさん連日の更新有り難う!

647 :2013/09/25
うまく言えんがスケールがでかい話だな
やっぱのちさんすげーわ
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