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2012年2月80119: モララーのビデオ棚in801板66 (547)
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モララーのビデオ棚in801板66
- 1 :11/09/15 〜 最終レス :12/02/10
- ___ ___ ___
(_ _)(___)(___) / ̄ ̄ヽ
(_ _)(__ l (__ | ( ̄ ̄ ̄) | lフ ハ }
|__) ノ_,ノ__ ノ_,ノ  ̄ ̄ ̄ ヽ_ノ,⊥∠、_
l⌒LOO ( ★★) _l⌒L ┌'^┐l ロ | ロ |
∧_∧| __)( ̄ ̄ ̄ )(_, _)フ 「 | ロ | ロ |
( ・∀・)、__)  ̄フ 厂 (_,ィ | </LトJ_几l_几! in 801板
 ̄  ̄
◎ Morara's Movie Shelf. ◎
モララーの秘蔵している映像を鑑賞する場です。
なにしろモララーのコレクションなので何でもありに決まっています。
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || |[]_|| | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ]_||
|__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ̄ ̄ ̄| すごいのが入ったんだけど‥‥みる?
|[][][]._\______ ____________
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || |[]_|| / |/ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.|| |[]_||
|[][][][][][][]//|| | ̄∧_∧ |[][][][][][][][].|| |  ̄
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ( ・∀・ ) _ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.|| |
|[][][][][][][][]_|| / ( つ|8l|.|[][][][]_[][][]_.|| /
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | |  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(__)_)
前スレ
モララーのビデオ棚in801板65
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/801/1308206162/
ローカルルールの説明、およびテンプレは>>2-9のあたり
保管サイト(携帯可/お絵描き掲示板・うpろだ有)
http://morara.kazeki.net/
- 2 :
- ★モララーのビデオ棚in801板ローカルルール★
1.ノンジャンルの自作ネタ発表の場です。
書き込むネタはノンジャンル。SS・小ネタ・AAネタ等801ネタであれば何でもあり。
(1)長時間(30分以上)に及ぶスレ占拠防止のためリアルタイムでの書き込みは控え、
あらかじめメモ帳等に書いた物をコピペで投下してください。
(2)第三者から見ての投下終了判断のため作品の前後に開始AAと終了AA(>>4-7辺り)を入れて下さい。
(3)作品のナンバリングは「タイトル1/9」〜「タイトル9/9」のように投下数の分数明記を推奨。
また、複数の書き手による同ジャンルの作品判別のためサブタイトルを付けて頂くと助かります。
(4)一度にテンプレAA含め10レス以上投下しないで下さい(連投規制に引っかかります)
長編の場合は10レス未満で一旦区切り、テンプレAAを置いて中断してください。
再開はある程度時間をおき、他の投稿者の迷惑にならないようにして下さい。
(5)シリーズ物の規制はありませんが、連投規制やスレ容量(500KB)を確認してスレを占拠しないようお願いします。
また、長期連載される書き手さんはトリップを付ける事を推奨します。
(参照:トリップの付け方→名前欄に「#好きな文字列」をいれる)
(6)感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬や、書き手個人への賞賛レスはほどほどに。
作品について語りたいときは保管庫の掲示板か、作品が収録されたページにコメントして下さい。
※シリーズ物の規制はありませんが、連投規制やスレ容量(500KB)を確認してスレを占拠しないようお願いします。
※感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬はほどほどに。
※「公共の場」である事を念頭にお互い譲り合いの精神を忘れずに。
相談・議論等は避難所の掲示板で
http://bbs.kazeki.net/morara/
■投稿に当たっての注意
1レスあたりの最大行数は32行、タイトルは全角24文字まで、最大byte数は2048byte、
レス投下可能最短間隔は30秒ですが、Samba規定値に引っかからないよう、一分くらいがベターかと。
ご利用はテンプレをよくお読みの上、計画的に。
- 3 :
- 2.ネタ以外の書き込みは厳禁!
つまりこのスレの書き込みは全てがネタ。
ストーリー物であろうが一発ネタであろうが
一見退屈な感想レスに見えようが
コピペの練習・煽り・議論レスに見えようが、
それらは全てネタ。
ネタにマジレスはカコワルイぞ。
そしてネタ提供者にはできるだけ感謝しよう。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ネタの体裁をとっていないラッシュフィルムは
| いずれ僕が編集して1本のネタにするかもね!
\ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| . |
| | [][] PAUSE | . |
∧_∧ | | | . |
┌┬―( ・∀・ )┐ ピッ | | | . |
| |,, ( つ◇ | | | . |
| ||―(_ ┐┐―|| |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
| || (__)_), || | °° ∞ ≡ ≡ |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
- 4 :
- 3.ネタはネタ用テンプレで囲うのがベター。
別に義務ではないけどね。
テンプレ1
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| モララーのビデオを見るモナ‥‥。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| きっと楽しんでもらえるよ。
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
- 5 :
- テンプレ2
_________
|┌───────┐|
|│l> play. │|
|│ |│
|│ |│
|│ |│
|└───────┘|
[::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
∧∧
( ,,゚) ピッ ∧_∧ ∧_∧
/ つ◇ ( ・∀・)ミ (` )
. (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
| ┌‐^──────────────
└──────│たまにはみんなと一緒に見るよ
└───────────────
_________
|┌───────┐|
|│ロ stop. │|
|│ |│
|│ |│
|│ |│
|└───────┘|
[::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
ピッ ∧_∧
◇,,(∀・ ) ヤッパリ ヒトリデコソーリミルヨ
. (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
| |
└────────────────┘
- 6 :
- テンプレ3
,-、
//||
// .|| ∧∧
. // 生 || ∧(゚Д゚,,) < みんなで
//_.再 ||__ (´∀`⊂| < ワイワイ
i | |/ ||/ | (⊃ ⊂ |ノ〜
| | / , | (・∀・; )、 < 見るからな
.ィ| | ./]. / | ◇と ∪ )!
//:| | /彳/ ,! ( ( _ノ..|
. / /_,,| |,/]:./ / し'´し'-'´
/ ゙ / / / ||
| ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./ / /,!\
| | / `ー-‐'´
| | ./
|_____レ"
,-、
//||
// .|| ∧∧
. // 止 || ∧(゚Д゚,,) < やっぱり
//, 停 ||__ (´∀`⊂| < この体勢は
i | |,! ||/ | (⊃ ⊂ |ノ〜
| | / , | (・∀・; )、 < 無理があるからな
.ィ| | ./]. / | ◇と ∪ )!
//:| | /彳/ ,! ( ( _ノ..|
. / /_,,| |,/]:./ / し'´し'-'´
/ ゙ / / / ||
| ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./ / /,!\
| | / `ー-‐'´
| | ./
|_____レ
- 7 :
- テンプレ4
携帯用区切りAA
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
中略
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
中略
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
- 8 :
- / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 僕のコレクションに含まれてるのは、ざっと挙げただけでも
|
| ・映画、Vシネマ、OVA、エロビデオとかの一般向けビデオ
| ・僕が録画した(またはリアルタイムな)TV放送
| ・裏モノ、盗撮などのおおっぴらに公開できない映像
| ・個人が撮影した退屈な記録映像、単なるメモ
| ・紙メディアからスキャニングによって電子化された画像
| ・煽りや荒らしコピペのサンプル映像
| ・意味不明、出所不明な映像の切れ端
\___ _____________________
|/
∧_∧
_ ( ・∀・ )
|l8|と つ◎
 ̄ | | |
(__)_)
|\
/ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 媒体も
| 8mmフィルム、VCR、LD、ビデオCD、DVD、‥‥などなど
| 古今東西のあらゆるメディアを網羅してるよ。
- 9 :
- |__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ̄ ̄ ̄| じゃ、そろそろ楽しもうか。
|[][][]__\______ _________
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | |/
|[][][][][][][]//|| | ∧_∧
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ( ・∀・ )
|[][][][][][][][]_||/ ( )
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | |
(__)_)
- 10 :
- 新スレありがとうございます。
前スレの508-516からの続きです。
516では二回コピペしてしまい読みにくくて済みませんでした。
昨年のタイガー・リョマ伝のお馬鹿弟子⇒堅物師匠です。
遥か前の本スレに投下されたネタを拝借しております。ありがとうございます。
訛りは適当なので間違いが有ったらすみませんです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
- 11 :
-
武知は顔を引き締めて伊蔵の肩を掴む手に力を入れる。
「伊蔵、これからわしがええと言うまで眼を瞑っちょき」
「眼ぇ、ですか?」
「それから、こうして両手で耳も塞いでおくがじゃ。……そんな顔をせんでもええき」
不安になってきた伊蔵の表情をどうとらえたのか、武知は苦笑する。
「おまんはわしに全て任せればええぜよ。何もせんで寝ておればええ。ただわしの言う通りにしちょき。
そんで、おまんが想う女子の事だけをひたすらに考えるがじゃ。その女子の名ぁだけを呟いちょるがじゃ。
眼と耳と口と……頭ん中も閉じてしまえば、どんなに辛ろうてもそれは現ではないき、夢と変わらないぜよ」
「……分かりましたき」
武知の言葉には若干の誤解が有った気もしたが、伊蔵は首肯することにした。
伊蔵にとって武知の言う事は絶対だ。
武知が間違う事など有り得ないのだから、今この場に置いては指示に従うことこそが一番の道なのだろう。
一心に見返していると、より一層悲しそうな顔をした武知はそれでも優しく笑って伊蔵の顔に手を触れた。
「さ、眼を閉じや―――そうじゃ、そのまま開けてはいけんちや。
えいか、ただ大切な女子のことだけを考えるぜよ伊蔵。……安心しいや、すぐに家に帰れるき。
分かったら早う耳も塞いでしばらく寝ちょり」
真っ暗で静かな世界で、伊蔵は独りになった。感じるのは己の身体と伊蔵を導く武知の手のみだ。
これから何が起きるのか、漸く伊蔵は理解した。
- 12 :
-
つまり武知と伊蔵は見せモノなのだ。
大殿様と上士を楽しませるために、伊蔵は此処に呼ばれたのだ。
(別に構わんき)
それでも良かった。土佐において衆道などさほど珍しい事ではない。
伊蔵にとっては初めての事ではあるけれど、とくに抵抗は感じなかった。
むしろそれよりも、その相手が武知半平太であるという事の方が伊蔵にとっては重大だった。
武知が触れる処全てが熱い。
武知のひやりとした優しい手が心地よい。
くらくらとする頭で、しかし伊蔵は大事な事を思い出した。
武知には『大切な女子』の事だけを考えその名を呟いているように命じられたのだ。
ならば伊蔵はそれに従わねばならない。
伊蔵にとって大切な女子。誰が居ただろう。
身内の女子達はとても大切だけれど、この場合に想い浮かべるには違うように思われた。
とすれば幼馴染であり坂本涼真の姉であるお留か。
同じく幼馴染で最近めっきり美しくなった佳緒だろうか。
それとも茶屋で馴染みのお近の方がいいのだろうか。
皆それぞれに大切だけれど、やはり違うような気がした。
今、頭の中を占めているのは只一人。
今、その名を呼びたいのは只一人。
それは伊蔵にとってとても大切ではあったけれど武知の言う『大切な女子』には当てはまらない人物で、
その人を想う事もその名を口にすることも今は武知の命に逆らうことだった。
「―――?」
必に考えを巡らせていた伊蔵は、ふと違和感を覚えた。
先ほどまで伊蔵を労っていたのは武知の優しい指で有ったはずだが、何か違うものへと代わっている。
それは丁寧に丹念に伊蔵を導こうとする、柔らかく濡れている何かだった。
- 13 :
-
これは。
……まさか。
「な、何をしゆうがですか先生ッ」
何が起きているのかに考え至り、伊蔵の声が思わず声が上ずる。
反射的に身を捩ろうとしたが、武知に只寝ているようにと言われた事を思い出し身体を留める。
伊蔵から動く事は出来なかった。だから武知から離れてくれるよう祈ったけれど、そんな気配は全く無かった。
「せんせ……だ、駄目ですき先生、そがな、」
そんな事をしては先生が穢れてしまう―――という言葉を伊蔵は呑み込んだ。
……武知の指が伊蔵の唇にそっと触れている。
口を閉じろと言うことか。そう、伊蔵が今口にして良いのは『大切な女子の名』だけなのだ。
けれどそんなことを今考えられるわけがなかった。
武知の命だから従わねばならないのに、伊蔵の思考はあらぬ方へずれてゆく。
段々と呼吸が荒くなる中で、伊蔵が考える事が出来たのはたった一つだけだった。
(せめて、してはならん)
それだけは。師を汚すような事だけは。
―――絶対に堪えようと固く心に決したのも束の間、しかし伊蔵はあっけなく高いところへ連れて行かれた。
ただ白く何もない世界に佇む伊蔵に、すぐに羞恥と後悔が押し寄せた。
- 14 :
-
(わしは先生になんちゅう事をしゆう)
伊蔵は己の情けなさに潰されそうになった。
腹を斬って師に詫びたいと心底願ったけれど、その武知が赦さない限り動く事は出来ない。
あんな事をしてしまったのだからすぐにその機会は訪れるに違いないと思ったのに、武知は伊蔵のそばを離れなかった。
その上あろうことか再び武知が伊蔵の身体に触れている。また手での労りに戻ったようだった。
やわやわとした優しさに身体があっさりと力を取り戻し、伊蔵は焦りを覚えた。
まさかまた同じ轍を踏まねばならないのだろうか。
「……せっ」
先生と言いかけて、今度はすぐに口を閉じねばならない事を思い出した。
だから必に口を噤んだけれど、一旦落ち着いたはずの呼吸が簡単に荒くなり漏れ出てしまう。
必に吐息を堪えているうち、やがて武知のひんやりとしたしなやかな手が身体から離れていることに気が付いた。
次に起こるであろう事を思い浮かべ、伊蔵は血の引く思いになる。
今度は同じことになるのは嫌だった。
師を守りたいとこれだけ思っているのに、その師の顔を文字通りの意味で汚すのはもう嫌だった。
今度こそ、師の導きに抗えるだろうか。先ほどはとても簡単に連れて行かれたと言うのに。
しかし、次に伊蔵が感じたのは先ほどの濡れた柔らかさではなくて『重み』だった。
重み。人の身体の重み。―――武知の、重み。
それはとても優しく温かく伊蔵を包み込んでくれた。
何か堪え切れない感情が突き上げてくる。
……何時だって、遥かな存在だった。
どれだけ渇望してもどれだけ己の修練に励んでも、その存在に近づくことは出来なかった。
なのにその武知半平太が、こんなにも。
(近い―――)
一粒、涙が溢れたことに気が付くのに少し時が掛かった。
それを自覚した刹那、またも真白な世界に導かれる。
かつてないほど美しく、身が震えそうになるほど甘美な場所だった。
- 15 :
- 支援
- 16 :
-
ぼんやりしていた伊蔵をよそに武知の始末は素早かった。
己のみならず伊蔵の分まで身なりを整え、大殿様と上士に慇懃な、しかし有無を云わせぬ挨拶をして速やかに下城した。
(流石は武知先生ぜよ)
前を歩く武知の背を見つめながら、伊蔵はまだ陶酔に浸っていた。
自分の身に起きたことが今だに信じられなかった。
勿論上士たちに強制されての屈辱的な状況ではあった。しかし武知と本当に契ることが出来るなどと、誰が思えただろうか。
心の奥底の密やかな望みをこんな形で叶えることになるとは。
あの一時を思い出し今更になって赤らんできた顔を伊蔵は押さえた。
武知は優しかった。信じられない心地よさだった。喝采を叫びたくなるほど幸せだった。
伊蔵が味わった悦びのほんの一部でも、武知も感じてくれたのだろうか。
―――否。
それまで夢見心地だったのにあることに思い至り、顔から血の気が引いた。
女と情を交わす時には大切に慈しみを与えなければいけないのではなかったか。
丁寧に労って、優しく慰めて、それでようやく受け入れる事が出来るようになるのだと、
そうでなければとても辛い思いを味あわせることになるのだと、誰ぞに聞いた事は無かったか。
であるならば、元々そう出来ていない男が相手を受け入れる為にはより丹念に身体を整える事が必要なはずではないのか。
腕が総毛立つのを感じた。
- 17 :
-
何もなかった。
伊蔵は武知に対してなにもしていない。ただ馬鹿みたいに横たわっていただけだ。
そして武知が己の身体を整えている気配も時間も無かった。
つまり武知が少しでも苦痛を和らげることが出来るような要因は、何も無かったのだ。
それでも武知は伊蔵を受け入れた。時間を取ってせめて己で整えれば少しは楽になろうものを、武知はそれをしなかった。
理由など簡単だ。
―――岡田以蔵を、一刻も早く城から帰す為。
ならば目を瞑らせたのは苦痛が浮かぶ顔を見せぬ為か。耳を塞がせたのは漏れ出るかもしれない苦鳴を聞かせぬ為か。
(先生はいつもそうじゃ)
幼いころから武知はそうなのだ。
好物の饅頭だって、自分の分を平らげた伊蔵が物欲しそうにしていれば半分くれたし、
動きの鈍い涼真が転んで饅頭を落としたのを見ては残りの半分を与えていた。
皆の事ばかり考えて。己の事は後回しにして。それが武知半平太という人物なのだ。
伊蔵は切なくなった。
ここは武知に礼を言うべきなのだろうか。それとも。
(今度は痛とうしませんき)
そう伝えるべきなのだろうか。今度を求めるのは望みすぎだろうか。
伊蔵が伝える言葉に悩んでいると、武知がぴたりと足を止めた。
「すまんかったのう、伊蔵」
振り向かぬままにそう呟いた武知の声には、深い自責の念が滲んでいた。
- 18 :
- もう1回支援いるかな?
- 19 :
- □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
次回で終わります。来週に来ます。
>>15
投下に苦労していたので助かりました。支援ありがとうございます!
- 20 :
- >>11
>眼
「目」を使いなさい。
>瞑っちょき
平仮名に直しなさい。
>頭ん中も閉じてしまえば
日本語でおk
>現ではないき
何て読むのー?
>若干の誤解が有った気もしたが、伊蔵は首肯することにした。
分かりづらいから他の文を考えて。首肯は一般的な熟語じゃないと理解して。
>伊蔵にとって武知の言う事は絶対だ。
「絶対だ。」と言われましても、意味が分かりません。読者を置いてけぼりにしないで。
>一番の道なのだろう。
他の言葉に置き換えて。
>一心
漢字間違いカコワルイ。
>より一層悲しそうな顔をした武知はそれでも優しく笑って伊蔵の顔に手を触れた。
日本語でおk。読点入れなさい。
>漸く
平仮名に直しなさい。
- 21 :
- タイガー・リョマ伝って、「龍馬伝」っていう大河ドラマのことか
相変わらず隠語きんもー☆
来週に来ます…って、来なくていいよ(w
サイト作ればいいのに^^;
- 22 :
- >>20
よめないことばは、じしょをつかってしらべよう!
なんでも、たにんのせいにするのは、かっこうわるいぞ!
- 23 :
- >>20
ググレカスさん呼べよ
- 24 :
- 本人としてはドヤ顔の指摘なんだろうかねえw
- 25 :
- >20はレス乞食だろうから、レスをつけるだけ.20を喜ばせるだけ。
反応しない方が吉。
- 26 :
- こういう輩って「私はバカですう〜!!ぐひぇひぇ」って裸踊りしてまで注目されたいもんなのかな
- 27 :
- >26
あくまで「バカ」なのは(本人としては)演技なので、本人のプライドが傷つく事は無いと思われ。
スルーが吉。
- 28 :
- >>10
萌えました。次回楽しみにしています。
- 29 :
- ついカッとなって
喜タタヨツオよりヘータ→←喜タタさんです
エロはなし
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「だいぶ薄くなってきたなー」
慎重な手つきでコリアンダーを秤にかける喜タタ善男にヘータが声を
かける。
「ええ、うっすらと跡にはなってしまいましたが……」と喜タタ
善男は手をぐーぱーとする。
「ちげーよ、喜タタさん。こっち!」
ヘータはヒッヒッと笑いながら喜タタ善男の頭をぽんぽんと叩く。
喜タタ善男は一瞬びっくりしたような表情になるが、
「ヘータさん、ひどいなー」とすぐにいつもの困ったような笑みになった。
ヘータは、すり鉢での作業にうつった喜タタ善男をなんとはなしに
見ていた。
以前の喜タタ善男は会話中に虚のなるというか、ふとスイッチが
変わったようになるときがあった。しかし、あの11日(南の
いう「ネガティブと向き合って」)以降、喜タタ善男は変わった。
初めて出会ったときの愚鈍で善良で他人の言葉を信じきって穏やかに
微笑むだけの男ではない。
上手く言葉にできないが喜タタさんは変わったとヘータは感じていた。
- 30 :
- 「ヘータさん……」
喜タタ善男は作業の手を止めふーと息を吐きヘータの方を見た。
ヘータは退屈だったのか椅子に座ったまま寝てしまっていた。
「風邪引きますよ、」
ふふっと笑い、ブランケットをかけてやる。
「……君は若いね」
喜タタ善男は黒くつやつやとしたヘータの髪を見る。
すーすーと寝息をたてる顔はあどけなく見えるほどだ。
「いつまでヘータさんにカレー作ってあげられるのかな」
「何。そんなにハゲ、気にしてんの?」
ヘータはむくりと起き上がった。
「うわあ!びっくりしたなあ
ヘータさん起きてたの?」
「寝てたよ、喜タタさんのひとりごと大きいから起きた」
びっくりしたなあ、もうと繰り返し胸を押さえる仕草にヘータは思
わず微笑んでしまう。
「うちの親父も薄かったし、年相応じゃねーの」
「親父……
……いえ、そうでなく……
ヘータさんにいつまでカレーを作ってあげられるのかなって
明日でないにしても、いつかきっと……
そしたらヘータさんは……」
一言ひとことを辛そうに考えながらそこまでいうと言い澱ん
でしまった。
- 31 :
- 「ヘータさんは……」
「ハッ、バッカじゃねーの
オレだってそれまでにはカレーの作り方くらいおぼえるよ」
「だからさ、ずっとカレー作ってくれよ……
オレが喜タタさんに作ってやれるまでさ」
ネガティブが出てこなくなったのはこの人のおかげかもしれ
ない。そう考えると固くなった心の芯が解れていく感じがした。
「ヘータさん……
……じゃあ玉ねぎをみじん切りにしてください」
「玉ねぎをみじん切りだな。わかった
……ところでみじん切りってなんだ?」
おれの明日はあと何回あるのかわからないけれど、出来るだ
け美味しいカレーを彼に食べさせてあげたい。そんなふうに思
えただけで明日に繋がる今日を生きられる。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
分割入れるのわすれた
- 32 :
- >>29
>「だいぶ薄くなってきたなー」
コリアンダーが薄くなるってどういうこと?
>「ええ、うっすらと跡にはなってしまいましたが……」
イミフ
>ヒッヒッ
気持ち悪い
>一瞬びっくりしたような表情になるが
随分と幼稚な表現ですこと
>困ったような笑みになった。
自分で変な文章だって思わない?
>なんとはなしに
どういう意味?
>虚のなるというか、ふとスイッチが変わったようになるときがあった。
日本語でおk
>(南のいう「ネガティブと向き合って」)
削って。
>愚鈍で善良で他人の言葉を信じきって穏やかに微笑むだけの男ではない。
「愚鈍」に違和感を覚える。
>上手く言葉にできないが喜タタさんは変わったとヘータは感じていた。
矛盾すぎ。言語化できてるじゃん。
- 33 :
- >>32
ホラよレス乞食
>コリアンダーが薄くなるってどういうこと?
アホですね。
>イミフ
バカですね。
>気持ち悪い
お前がな
>随分と幼稚な表現ですこと
はいはいママのおっぱいちゅってねまちょーね
。
>自分で変な文章だって思わない?
自分で池沼だって思わないんだね。自覚ないのが証拠だわ。
>どういう意味?
ググレカス
>日本語でおk
日本語がわからないんなら母国へ帰れば?
>削って。
だが断る
>「愚鈍」に違和感を覚える。
人それぞれの表現法に違和感もクソも無い
>矛盾すぎ。言語化できてるじゃん。
「どのように」の機微を理解しろ、出来ないなら来るな
- 34 :
- >>29
キタさんありがとうございますー!
またここで読めるとは思わなかったです。
ホンワカヘイキタに萌えました。機会がありましたら、またお願いします。
- 35 :
- >>29
萌えました
GJ!
- 36 :
- >>29
番組みたいな切なさを感じましたGJ!
ありがとう!
- 37 :
- このスレなんか寒い…
- 38 :
- >>37
あたためてやる
- 39 :
- 惚れてまうやろ
- 40 :
-
現代版シャ一口ック@ビビシ
シャ一口ック、森ア一〒ィ一、力一ノレが同じ学校にいたら、のもしも話。
時代・英国学校制度考証なし、森→力一ノレ→シャな矢印の向き、完結済み。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
* * *
「おおぅ…!学生水泳チャンピオン……力一ノレ…力一ノレ・パワ一ヌ゙…!」
その間隙に揺らめく薄いアイスブルーの瞳を、ジョソ・ワ卜ソンの知りえない制約は、もどかしさと共に羨望で待ちながら、ただ見つめるほかない。
「僕の出発点……!」
*
その日、力一ノレ・パワ一ヌ゙は少し落ち込んでいた。水泳部コーチ:ラングトンの言う『気晴らし』の意味が、その場にいた生徒たち全員にはわかったのに、自分には最後までわからなかったからだ。
いや、それも多少の異がある。タイムを上げるためには息抜きも必要だ、ラングトンの実体験から発せられているそうだが、学生時代にガールフレンドの妊娠を受け、クラブを辞めさせられた経緯までは、彼が部員たちに話すことはないだろう。
- 41 :
-
力一ノレには、水中でのキック回数の効率性やブレスの簡略化に、女の子とのデートがなぜ役に立つのか、どうしても理解できなかった。
「女の子たちは単純におれらより肺が小さい。でも肺の小さいのがつきあってうつる、って意味じゃなくて…。」
「おまえ何言ってんの?肺とか呼吸器とかじゃねえだろ、もっと下だよ!」
「ためとくなってことだろが。」下卑た哄笑。
水泳選手としては恵まれた体躯だと、自負せずとも太鼓腹の父が車のディーラー仲間とのポーカーの席で自慢するたび、気恥ずかしさとしかし誇らしさもないまぜに自覚してはいた。
だが彼は、同じように自覚していた、他の者たちが知りながら、いまだ知らずにいることがあるのを。
それが恋心だと、別の成熟したことばを持たないほどにも、力一ノレは幼かった。
*
誰も自分を『ジェームズ』とは呼ばないことに、もうジム・毛リ了一〒ィ一は慣れてしまっている。卑屈?違う、面倒はいやだが、彼に疎まれることになるなら、級友たちが『モリー(おばさん)』と囃し立てるのも気にならない。
「よぉモリー、おまえの愛しの力一ノレ・パワ一ヌ゙がランニングを始めたぜ。」
よせよ、そんなんじゃない、否定しながら上身が捩れ、目尻をさげる道化笑いをしてしまうのを本人にも止められないせいで、ジムはあえて嘲弄の位に甘んじ、クラスでの存在を許されている。
- 42 :
-
「力一ノレ、遅くなったけどこれ。」ジムは優しい力一ノレだけが、自分を拒絶しないこの至福を手放す気はない。
不思議そうな表情の少年の逞しい二の腕から、剃り残した産毛が散る顎のラインが、力一ノレは特に美しい。
「今季限定モデルだよ。マークス&スペンサーでも売り切れてたって、君話してたろう?ぼくの叔父に言って取り寄せてもらったよ。あ、叔父は仲買人なんだ。」
これは嘘だ。カムデンマーケットを方々歩きまわった末、ある闇業者の限定仕入れに午前3時から並び、5時間後ようやく手に入れることができた。
あからさまに厭わしい顔を向ける他の部員たち。その後ろでヘルメスのように鎮座する力一ノレ。これはあなたへの献上品です。
「人間だれにでも取り得はあるもんだ。」「金だけってのもどうかと思うぜ。」「やめろ、しゃべりたくもねえ。」「てめえのキモさを知らねえ罪ってのがあるなら懲役だ。」
「おれにくれるの?」箱からシューズを取り出しながら、クリスマスでもないのに?と間の抜けたことを呟く力一ノレの純真な笑顔さえ見られれば、ジムにはそれで満足だ。
「だって、ぼくらともだちだろう?」さあ、早く、この馬鹿どもの前で言うんだ、力一ノレ!
「ありがとう、ジム。大事にするよ。」
ああ…天使がいる。なおも揶揄を放つ部員たちを嗜めすらしてくれる力一ノレのためなら、全世界を敵にしたって構わない。
- 43 :
-
『なあ力一ノレ、あれおかしいだろ?』『は?ジム?』『は、じゃねえって。つまり…』『おまえのことが好き好き大好き!なんだっての。』『え?おれもおまえのこと好きだぞ、ルーク。昼にポークチョップくれるし。』『誰かこの空気頭に教えてやれよ、そうじゃねえってのを!』
股間が熱かった、痛いほど。今夜も寝入るのは深更になるだろう。その浅い眠りの中で、ぼくが存分に力一ノレを愛する甘い夢が見られますように。
*
細いうなじにかかるあの黒い巻毛を、なんどかこうして見送っているな。「どうした力一ノレ?」呼ばれて彼は戻ろうとするが、後ろ髪をひかれている。角を曲がれば確か中等部の図書室へ続く中廊下が続く。まず間違いなく、あの子はそこへゆくのだろう。
プールから近いんだから練習帰りにも会ってなくてはおかしいな、胡乱な力一ノレは、図書室に外部へでられる通路がもうひとつあることを知らない。中等部時代にほぼ活用したことがなかったせいなのだが。
あくる日、巻毛とまた擦れ違う。いつも何か本を読みながら、なのに決して他人とぶつかることもない。通り過ぎざま、力一ノレはそっと目尻でその表情を捉えようとする。
当然相手が気づくこともなかったし、正面を歩いていた力一ノレを彼はすんでで避けた。
ついていきたい衝動を堪え、力一ノレはプールの金網をくぐる。しかし校舎の角を曲がりきるまで、ロッカールームへ入るのは待った。
七分袖の紺色のシャツはよく糊がきいている。サスペンダーに吊られたブリーチズの腰はサイズ超えか尚余裕がある。アーガイル柄のソックスに編上げ靴。
一見古風な身なりで制服らしくも見えるがここの学校は私服だ。ある意味目立つだろうに、視線をとめるのは自分だけらしく、不思議と周囲に溶け込んでいる。
- 44 :
-
肌をあらわにしている手足がとても細くいたいたしいほどだが、自分もああだったろうか、と13、4歳と思しい少年の頃を思い出してみる。が、長年水泳をやってきたせいで、彼との共通点などあるわけもなかった。
そうした夢想の間に、今まで起こらなかったことが起きた。
あの少年が角を曲がって戻ってきたのだ。
「ルーク、悪いけど急用思い出した。今日は練習休む。」
返事を待たず、力一ノレは再び金網をこえる。少年は幸い、今回は本を広げていない。背負った鞄の金具が外れているせいで、かちんかちん、と歩みが音を奏でる。軽快な鈴のようだ。
「何か用?」にわかに振り向き、少年が剣呑に言い放った。当然自分に向かっている。
「何か用?」もう一度、難詰調に変わりはなく、力一ノレはまだ返答につまる。
「や、その、と、図書室、は今日は休みかな、って。」言ってから、店でもないのに何を馬鹿な、と我ながら呆れた。
今日は?との小声に混じる追想で、まだ丸みを残す少年の小鼻がわずかばかり膨らんだように見えた。「考査が明日からだもの、大盛況だよ。」
だが続く言葉に棘は消えた。むしろ吐き出さずにはいられない苛立ちが力一ノレに向かっていない証左にも思える。この見知らぬ上級生とはどうやら初対面ではないらしい。
「なら、きみの席がもうなかったんだな。」「うるさいんだ。」「うるさい?」
- 45 :
-
例え利用経験が乏しい力一ノレにも、そこが私語厳禁なことぐらいわかる。
「みんな勉強してるよな?そりゃあ静かなんじゃないか?」
わかってないな、と言いたげに少年は「理解に遠いだけでなく理解する必要のない問題との格闘で犇いているあそこが今どれだけ騒々しいか、行って見てくるといい。」
邪魔でしょうがないんだよ、気が散る。そう続ける少年の視線が当の建物を向き、正当な異議だと言わんばかりに、聴衆を得て尚淀みない。
ところが力一ノレの耳にはその半分は届けられず、相手がどうやら怒っているらしいうるさい静けさというものを想像しようとして、それこそ思考をパンクさせかけていた。
「…ねえ、平気?」傍らの目下で小顔が見上げている。まともに対峙したのはこれが初めてだ。「それはそうとぼくに何か用なのか、力一ノレ・パワ一ヌ゙?」
「えっ!なんでおれの名前知って…」
「プールの前を通ってすぐ誰かが『力一ノレさぼりか?』と言うのが聞こえた。友達は選んだほうがいい。直後に君が背後にいる。プールから出てきたということは水泳部員、
水泳部員で力一ノレといえば、去年学生チャンピオンになって学校表彰も受けている力一ノレ・パワ一ヌ゙以外にいなかったはず。どこか違った?」
力一ノレは返事ができなかった。「もう四度目だけど、君、ぼくに何か用事でもあるの?」
「あー、その、おれと…つまりその…」「君と?」「ともだちになってほしい!」
「……は?」
*
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
- 46 :
- >>40
>力一ノレ…力一ノレ・パワ一ヌ゙…!
気持ち悪い
>その間隙に揺らめく
日本語でおk
>薄いアイスブルーの瞳
長い。もっと省略して。
>ジョソ・ワ卜ソン
気持ち悪い
>知りえない制約
違和感を覚える
>もどかしさと共に羨望で待ちながら、
変な言い回し…。
>「僕の出発点……!」
厨2くさい
>その場にいた生徒たち全員にはわかったのに、自分には最後までわからなかったからだ。
長い。もっと省略して。
>タイムを上げるためには息抜きも必要だ、ラングトンの実体験から発せられているそうだが、
>学生時代にガールフレンドの妊娠を受け、クラブを辞めさせられた経緯までは、彼が部員たちに話すことはないだろう。
読点入れすぎ。読みづらいったらありゃしない。
一文が長ったらしくて読む気が失せるわ。
- 47 :
- 最近荒らしてる人はこないだ自演がバレた人かねえw
- 48 :
- >>46
絡みスレ行け
- 49 :
- 多分この前自演がバレてフルボッコされた人だろうねww
頭の中身が全てにおいてダメなんだね…
>>48とか、まっとうな教育受けてないレベルだもんww
インテリジェンスが低いとしかww
- 50 :
- >46はただのレス乞食だから反応するだけ奴を喜ばせるだけ。
スルー汁。
- 51 :
- >>40ー45
GJ!森→カル描写もカル→シャロ描写も萌えました
元ネタがいまいち分かってないけど
この先の三人がどうなっていくのか凄く気になりました
もっかいいっとく。GJ!!
- 52 :
-
>>40参照ください。 ※Wで終わりです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
納戸の中で、力一ノレは埃をかぶった本をみつける。まだ幼い頃、生きていた祖母がよく読んでくれた絵本。子供向けとはいえ装丁が凝っていて、平易な言葉になおされてはいたが、アーサー王の冒険譚がいきいきと描かれていた。
その挿絵がかのバーン=ジョーンズで、力一ノレはいまだ芸術には疎いが、これだけは何度も何度も繰り返し見ていたせいか、すっかり脳裏にやきついていた。
「……やっぱり。そっくりだ、あの子に。」シャ一口ック・ホームズに。
もう名前は忘れてしまったが、姫の絵姿に、少年の面影が重なる。だからずっと、どこかで会っていたような懐かしさを感じていたのだろう。
少し、頬が熱くなる。納戸はまだ蒸し暑かったが、そこから出れば火照りはすぐに夜気が冷やしてくれる。それでも力一ノレはわずかばかり動悸を意識した。
「力一ノレ、何をしているの?」母が仕事から帰ってきて、ガレージに車をいれていた。
「探し物。あったよ。」良かったわね、と買い物袋をさぐりながら、ミセス・パワ一ヌ゙は目当てのものを掴み、息子へ手渡した。
「手を見せて。」湿疹で皮膚が剥けかけた指に、母は目を曇らせる。「今度の薬がきちんと効いてくれるといいんだけれど。」
どうもプールの消毒薬が力一ノレの体質に合わないらしく、皮膚がところどころ赤く腫れている。
「まぁ、何よこの子ったら、にやにやしちゃって。ひとりで何を楽しんでいたの?」
「新しいともだちができたんだ。」そう言うと、力一ノレは知らず得意げな顔を浮かべる。
「今度うちへ連れていらっしゃい。あら、女の子じゃ気まずいかしら。」
その心配はいらないが、シャ一口ックが自分の部屋で寛ぐ様子はまだちょっと想像できない。そう思った直後にも力一ノレは、部屋の掃除をしなくては、との心地よい焦燥に急き立てられるのだった。
*
- 53 :
-
本を読みながら、やあ、と呟いたあと黙っているシャ一口ックに、あ、エスコートはおれか、と力一ノレは少しばかり動転する。「今日もサボるの?」
「いや、考査期間はおれらも休み。」じゃあそこが空いてるな、シャ一口ックが先を行く。
「プールの授業は好き?」「そんなものにぼくがでるとでも?」
プールサイドのタイル床に座っていいものかしばらく逡巡し、結局少年の視線は力一ノレへ戻る。「服が汚れるのは愉快じゃない。」「いまロッカーから椅子もってくるよ!」
急いで力一ノレはひとけのない室から、見るからに座り心地の悪そうなスチールパイプの椅子を運んだ。息せき切ってシャ一口ックの前へ広げてみる。表面の半分を覆う錆、得体の知れない黒ずみ。
「…立ってたほうがいいや。」「あ、や、待って!それじゃ、ほら!」
おもむろに力一ノレは着ていたジャージを脱ぎ、パイプ椅子の上を覆ってやる。
「ほら、これでいいだろう?あ、おれの服は洗濯したてだから気にしないで!」
躊躇なく行われた一連の流れに、年下の少年は少し驚いていた。そして良く発達した見事な胸筋をあらわにしている相手へ眉をひそめる。決して羨みなぞしないが、軽薄な異性たちには尊ばれ喜ばれるもの。
幾度も水にさらされ、なめらかになっている表面の肌は同じ人種と思えない褐色で、否応も今の季節を思い出させる、嫌いな夏を。
「…ブランメルのつもり?」「あ?…ブランなに?スパイスガールズのメンバーにそんなのがいたっけ?」「いい。忘れて。」
それにしてもこうした力一ノレから妙な圧迫を覚えるのはなぜだろう?この生命力溢れる逞しさに対し、枯れ枝のようにかぼそい自分を、同じ男性性で括っていいものか。
- 54 :
-
「仮にぼくがここに座ったとして、君はそのあとどうする?」「そのあと?そのあとって?」「着て帰るのか?」「ああ!もちろんそうするさ、街中とプールを同じにするわけにもいかない。」
「……しかたない、ギルの部屋にでも行くか。」「は?」「いいから早くそれ着て。」
脇目もふらず、シャ一口ックは歩いていく。訳がわからず、力一ノレは椅子を尻目についていこうとした。が、椅子の上のジャージを取りに一旦戻らなくてはならなかった。
*
「ギルはいなかった。なんにしろ計画性がなってない。ぼくは明日までにこの本を読んでしまわなくてはならない。あと20ページ。15分も要らないが、君はどうする?」
ギルって誰だ。いわゆるともだちとダベる時にいる計画ってなんだ。そしておれといっしょにいるのに本って。「きみがそれ読んでる間、おれここで待ってていいかな?」
別に構わないさ、校舎裏は整備された丘陵になっていて、なるほど、草の上のほうが確かに衛生的でないあの椅子よりも快適そうだ。シャ一口ックは声にだして許可こそしなかったが、疎んじる風もなく、ただ黙って背負い鞄を脇へと下ろす。
そして座り込んだ途端靴紐を緩め編上げ靴を脱ぐと、あのアーガイル柄のソックスも脱ぎ、草の上に整然と並べるのだ。
「どうしたんだ?石でも入ってたか?」「読書中はこうする。読んでると脳が動き回るから血流も活性化して、末端が熱くなっちゃうんだ。」
- 55 :
-
「ああ…わかる。おれもレース終わったあとはよくそうなるから。」
「単純運動といっしょにしないでほしい。」だんだん、こうしたシャ一口ックの物言いに、力一ノレも慣れてきたようだ。というより、時々彼が使う難しい言い回しがさほど気にならず、なぜか意味がわかっているような気さえする。
本当はわかっていないのに。
なにより、シャ一口ックに拒まれているわけではないこと、つきあいたいという要求を忌憚なく受け入れてもらえたことを、力一ノレはとても意外に思い、そして嬉しくもあった。
「…うるさくして悪いけど、その、手とか足、熱くなったかい?」まだ5分も経っていないが、力一ノレは微動もせず読書に没頭しているシャ一口ックを隣にして、黙ってはおれなかった。
「確かめてみれば?」「え?…どうやるんだ?」「触覚以外でこの場合できるなら教えてほしいよ。」同時に、彼はページを繰る。当然顔がこちらを向くこともない。
「…さわってみて、いいのかな?」返事はなかった。力一ノレはそっと、背表紙を支える左手へ、自身の指先を伸ばしてみる。しかし思いたって、その手を折り曲げられた膝へ転換した。剥き出しのふくらはぎには肉は薄く、骨の上をすぐ皮膚が覆っているようだ。
くるぶしに浮かぶ静脈の色を際立たせる日焼けと無縁の白肌が、熱に縁があるようにはとても見えない。そこも他の部位同様、色を失っているのだから。
力一ノレは震えそうになる指先をさらにゆっくり伸ばし、甲ではなく、小指の先へ一瞬触れてみる。しかしそれが呼び水となり、次には掌をシャ一口ックの骨ばる甲へ押し付けてしまう。
- 56 :
-
「あ、ごめん!」「なぜ?そうしろと言った。いいさ、君の手はひんやりしてきもちがいい。」
少年は身を捩り、もう片方も、と言う代わりに膝を交差させる。力一ノレは言われるまでもなく、他方の手でそちらを『冷やして』やった。
手の効果などすぐになくなるだろうに、シャ一口ックは読書が終わるまで力一ノレの奉仕を許していた。
*
ひとけも絶えたこんな場所で、力一ノレの隣にいるあれはいったいなんだ?
鉄の味がするまで唇をかみしめ、ジムは彼らの角で不穏を醸成させている。
*
授業を採っているわけでもないギルフォード・グロウサムの小部屋は、生物教師の職務にはたして必要か疑わしい書物に埋め尽くされていた。
力一ノレは半ば圧倒され、四囲の書棚に積まれた本群へきょろきょろと視線をさまよわせている。
「すまんね、呼びつけておいて待たせるなんて。シャ一口は何をしてるやら。」
その直後、ドアは開きシャ一口ックが入室。対面する2人の座る椅子で、この狭い部屋はもう立錐の余地を失くしている。
席を譲ろうと立ち上がる力一ノレへ片手を払い、彼は遠慮なく教師の膝の上へと腰掛けた。
「おおぅ!よさないか、シャ一口。階段を昇れなくなる。」
「もっと大腿筋を鍛えりゃいいことさ、ギル。あなたちょっと太り気味だろう?」
- 57 :
-
力一ノレは眼を白黒させた。先日『いなかった』と言ったのはグロウサム先生のことだったのか?
それ以上に、相手をまるで目上とも思っていないシャ一口ックの口のききようは、驚く以外に力一ノレへ妙な蟠りと隔たりを自覚させた。
問いたいのはやまやまだが力一ノレはそうせず、待ち人も揃ったことだし何がこれから起こるのかをまずは待とうと、沈黙を続ける。
「じゃあギル、始めようか。」「シャ一口がいると彼が困るぞ?」「ふふん、見当外れだ。審理は当事者立会いでなされるべきだもの。」
結局、そうすれば楽だからと、片腕をグロウサムの肩へ回し彼の膝の上でバランスをとるシャ一口ックは訳知り風に力一ノレを疎外する。
いや増す居心地悪さから立ち去りたいのを堪え、力一ノレは首の後ろから吹き出る汗を煩わしげに拭った。
「しかたないな。わたしは責任持たんぞ。…さてパワ一ヌ゙君、だったね。率直に訊こう。君はまだシャ一口に自分のその、コホン、自慰行為を見てほしいと思っているかね?」
なんだって?! 力一ノレはとんでもない発言の声主と、その横で飼い猫まがいに寛いでいる少年を交互に凝視した。と思っていたが、目がぐるぐると廻って世界がしばらく静止したように暗転。
とも思っただけで、実際力一ノレは椅子上で石化したにすぎなかった。
「と、とんでもな……だれがそんな…いや、おれかな…なんだっけ……あれ…ええと…」
*
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
- 58 :
- >>52
>生きていた
削りなさい
>子供向けとはいえ
「子供向け」だと言い切れる絵本はこの世に存在しない
>平易な言葉になおされてはいたが
削りなさい
>その挿絵がかのバーン=ジョーンズ
「挿絵画家」と読み間違える読者がいそう。バーン=ジョーンズの事を知らない人が多いのに「かの」を付けるなよ
>力一ノレはいまだ芸術には疎いが、これだけは
削りなさい
>「……やっぱり。そっくりだ、あの子に。」シャ一口ック・ホームズに。
もっと簡潔に分かりやすくしなさい
>もう名前は忘れてしまったが、姫の絵姿に、
「名前が分からない」という情報は不必要
>納戸はまだ蒸し暑かったが、そこから出れば火照りはすぐに夜気が冷やしてくれる。
変な文章
>動悸を意識した。
はい?「意識」の使い方間違ってるよ
>「探し物。あったよ。」良かったわね、と買い物袋をさぐりながら、
変な文章
>「新しいともだちができたんだ。」そう言うと、力一ノレは知らず得意げな顔を浮かべる。
もっと簡潔にしなさい
>女の子じゃ気まずいかしら。
「新しいともだち」としか言ってないのに、どうして性別を決め付けているのか分からない。
>そう思った直後にも力一ノレは、
日本語でおk
- 59 :
- >>40
おつかれさまでした。森の人動機が片恋こじらせてたとは…
そして魔性の探偵がエロすな!!
- 60 :
- 天使×天使 エロなし 台詞のみ
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「相変わらず……酷い世界だな。
虚構と現実と、怒りと、哀しみと憎しみと、全ての悪感情がないまぜになっている」
「それでも行くのか」
「選択の余地はないだろう。それでも、俺の望みが叶うというのなら。俺は、アイツを救いたい」
「一度、始めたら、終わるまで戻れないよ」
「解っている」
「万一、途中で止めたりでもしたら、手酷い罰が待っているし、君は此処には戻れない」
「でも、俺は、俺の望みを叶えたい」
「やはり、君を待つことしかできないのか」
「そんなことないよ。
俺がまた此処に戻ってこれるように、再び貴方に会えるように、祈っていてくれると嬉しい」
「ああ、そうする」
「ありがとう。きっとそれが、俺の唯一の希望になるよ。
何処で生きようとも、女になろうが、男になろうが、そのいずれでもなかろうが、俺は、俺だ。
必ず生ききって、望みを叶えて還ってくるさ。
まあ……こうやって、希望なんぞ持って行くから、あの世界は、案外美しいのかもしれないな」
「そうだね」
「じゃ、行ってくるよ」
「必ず、待っているから」
「うん、ありがとう、また、此処で会おう」
―それは、この地上で繰り返し行われる、転生という名の物語―
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
- 61 :
- >>60
>虚構と現実と、怒りと、哀しみと憎しみと、全ての悪感情
もっと簡潔にしなさい
>アイツ
誰?説明が足りない
>一度、始めたら、終わるまで戻れないよ
>万一、途中で止めたりでもしたら、手酷い罰が待っているし、君は此処には戻れない
読点多い
>でも、俺は、俺の望みを叶えたい
読点多い
もっと簡潔に分かりやすくしなさい
>貴方
違和感ありまくり。他の二人称に変更しなさい。
>うん、ありがとう、また、此処で会おう
読点多い
>それは、この地上で繰り返し行われる、転生という名の物語
厨2くさい
- 62 :
-
>>40参照ください。 ※Wで終わりです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
思い当たらないでない。一昨日のこと。くだんの校舎裏に、シャ一口ックは倦ねもせず力一ノレを伴ってくれた。だから彼は少年に宝を持参した。
ほら、きみがいる。祖母の絵本を、力一ノレがシャ一口ックをグィネビア姫と見違えたことを、指し示して見せた。
『…円卓の騎士じゃなくて?』『いやか?』『姫って、おんなじゃないか。』おんなだけど、同じようにきれいだぞきみは、シャ一口ック。と言えれば良かったが、さすがに気恥ずかしくて力一ノレは薄笑いでごまかした。
その際、力一ノレはシャ一口ックの背後から覗き込むようにして、身体を密着させた。本ならなんでも確かめずにいないシャ一口ックはしばらくページを繰るのに没頭したため、当然力一ノレの戯言にはそれ以上つきあう気もなかった。
『…力一ノレ。』捲ろうとしていた右手をページ角へ張り付けたまま、ふとシャ一口ックが呼ぶ。『ん?』『…力一ノレ・パワ一ヌ゙。』『聞こえたぜ?』なんだよ、と脇へ座り直した彼を見ず、シャ一口ックは強張った横顔のまま続ける。
『あたっていた。』『え?』『あたっていたんだ、君が。』『なんだ?』そこでようやくシャ一口ックは首を捻って横を向いた。
言いかけるのに開いた口はまた噤み、思い直すことがあったと座っていたポジションから腰を浮かせ、半身ほど後じさる。
『ぼくらの機能がそうなることは知っている、健康なら睡眠中にも。ただ力一ノレ、君の感覚神経は著しく間違っている。認識対象物や誘引契機といったものが何もないのに。医者じゃなくても早い時期の通院を勧めるね。』
幸い、シャ一口ックは咎めようとしているわけではないらしかった。そして何より力一ノレを安心させたのは、彼が決して羞恥の偽装としての沈着ないつもの口調で嗜めているのではなく、心から力一ノレの身を案じての疑念がその声音から読み取れることだった。
- 63 :
-
『……すまない。』『別に謝る必要はない。』『いや、謝らなくちゃ。』
アーサー王の冒険は今はふさわしくなかろうと、シャ一口ックは本を閉じて傍らにおき、力一ノレの次の告白を待ってやった。
『おれ、こうしてきみといると、しょっちゅうこうなってる。理由はちゃんとある。』
真顔のシャ一口ックはおそらくおのれの耳を疑っていたのだと思う。
『これが続くと水泳には良くないんだってさ。それを…もしきみがその、確かめてくれるんなら…おれ、嬉しいかもな。』
年少者はおもむろに立ち上がると、脱いでいた靴下と靴を小脇に抱え、裸足のまま丘を下りていった、力一ノレをその場へおきざりに。
*
「別にぼくは見るのは構わない。ただその場合、のちのち発覚していわゆる少年法やらああいった不愉快な事態にならないか、という危惧も排除しきれない。そこでギルに審問官になってもらったというわけ。」
「パワ一ヌ゙君、そんなに恐縮することはない。シャ一口も言うように、君を責めているのではないのだから。」
責められ、このひとでなし、そう直裁に詰られたほうがむしろ良かった気がする。
自分の迂闊さは知っていたがここまでとは、力一ノレは床に落としたままの視線を上げることができない。
「…思うに力一ノレは今が一番ホルモン分泌の活発な時期にあって、活性は思考力にも影響を及ぼしているんだろうし、いずれ成長がどうコントロールしていくのか、その経過を知るうえで面白い体験と思う、見ることはね。
別にぼくは性的兆候を軽蔑しない。それは衝動を悪用し金儲けに繋げずにいない商業主義に向けられるべきさ。」
- 64 :
-
「…シャ一口、外にでていなさい。」「さっきも言ったろ?ギル、ぼくは…」
「いいから外へ行くんだ、いい子だから。そうすれば欲しがっていたバレンボイム指揮するバイオリンコンチェルトの盤を進呈してもいい。」
グロウサムの声は静かだが、有無を言わさぬ響きがある。
しかしシャ一口ックは『いい子』呼ばわりされる子供扱いが一番業腹だ。
「…そんな扱いピョートルへの冒涜だ。…言ったはずだよ、あのレコードはいずれチェスに勝ってぼくが正式なオーナーになるんだもの。」
対等に話しているように見せかけ、やはり実質は一日の長がまさっている。
シャ一口ックはそれ以上反論せず少しばかり口を尖らせてみせたが、年長の友人に不承不承下る体で部屋から退出した。
「賢すぎるのが玉に瑕だ。パワ一ヌ゙君、落ち着いたかね?」
「力一ノレでいいです。誰のことだって思ってた。」
「では力一ノレ。あの子に顔向けできないなぞとは考えていまいな?」
「おれはそんなに馬鹿に見えますか?」
おや、運動部の、中でも優秀な生徒中に残念だが時折見られる軽薄とは、どうやらパワ一ヌ゙は異なるようだ、グロウサムはほどなくシャ一口ックの弁別能力に感心するだろう。
「気休めに言うわけではないが、断じて気にすることはないぞ、力一ノレ。シャ一口は変わった子だが、悪意はない。」
「わかってます。シャ一口ックは絶対嘘を言わない。ごまかしはないんだ。」
- 65 :
-
ほう、グロウサムは原始の知性はおそらくこうした純正からしか発達しないのではなかったか、とパワ一ヌ゙の意外でもある考察に真理を見る思いだった。
しかしそうした知性が大成するかといえばそうでもなく、時間が鈍化と共謀する過程で滅するのを余儀なくもされるのだが。
「彼は知っているからね、真実は常に醜いものであると。ひとはその場合摩擦を厭い、装うことを処世にする。
シャ一口ックにそれがないのは将来を生き難くさせるが、わたしには歓迎すべき個性として見守りたいものだ。」
実質、力一ノレはグロウサムの言っていることの半分も理解できていなかった。どうやら慰めてくれているらしい、それだけはわかった。だが、なぜおれが慰められなくてはならん?
おれがおちこんでるように、このひとには見えるってことか?
「やっぱりヘンですかね、おれがあの子とともだちだってのは。」
「まさか。わたしはむしろ喜んでいる。これまでわたしが彼に課した論題はすべて、他人へ排他意識を持たず社会性と寛容を身につけさせるためのものばかりだったから。」
「…よくわかりません。」
「いわゆる一般人を知るための訓練といっていい。ここに入学した当初から彼は…世界を疎外していた。」
イギリス人は、ドーバー海峡がいつもの霧に覆われることを、『欧州大陸が孤立している』と表現するという。シャ一口ックはそういった人種的規格にまったく合致したわけだが、それはあまりに時期と環境を誤っていた。
- 66 :
-
「今はやっと気に入った課題を与えてやれたようで、楽しそうだ。直近のはひどかった。『ポップミュージックに見る現代社会の病理性』とやらかしたら、シャ一口はこう結論づけていた、
曰く『オアシスvsブラーみたいな仮想対立構造に狂喜するやつらも捏造側も平等かつ病的に頭がおかしい、以上。さてお次は?』」
ようやく少しだけわかる単語がでてきたから、力一ノレは思わず微笑んだ。グロウサムが安堵したように相好を崩す。
「あの子の知識欲は旺盛で貪欲だ。あの若さでそれは本当に奇跡であり、喜ばしい。だが同じように、あの子には外部接触が必要だ。君の…好意はいい橋渡しになっているね。」
「え、っと、それは、シャ一口ックがもっとおれ以外のやつらともつきあえるようにしたほうがいい、ってこと?」
それはあんまり嬉しくないんだがな、おれが、とは言わず、力一ノレは教師の言葉を待つ。
「強制ではない。シャ一口には特に好ましくない。あの天才的な頭脳は残念ながら脆く、万能ではない。悪影響なら容易には生じないが、優れているものは悪を惹き付けるものだから。」
「じゃあやっぱり、おれは円卓の騎士になればいいんだ。」
「剣よりも希少な宝を任せてもいいかね?是非そうしたまえ。」
力一ノレは言おうか迷う。シャ一口ックをともだちみたいに好きなわけではない。もう不問にしているのがグロウサムの様子には見てとれるが、いまも存在する自身の欲望を、そのままあの少年に証明したい欲求が日々大きくなって、もはや制御が難しい。
だから本心を言ったのに、教師の親切な解釈と曖昧さが力一ノレを推定無罪にしている。
- 67 :
-
「ひとつ、いいですか?」ところで、この教師はなぜ中等部の生徒へ呼び捨てにされるのを許しているのか。教師は単に自分へ警告しているのではないのか。
つまり、最も理解を共有することの可能なポストを力一ノレによって脅かされているといった危機感が、グロウサムにまわりくどい釘の刺し方を行わせている?
馬鹿な。「おれなんかなんの盾にもなりゃしない。そんなんでそばにいられてもちっとも楽しくないし。おれは確かにまぬけなことを言ったけど、あなたの指図は受けません。」
グロウサムは眼を見張る。言ってから立ち去る生徒の後姿には、あからさまな拒絶がある。
シャ一口ックと対極にいないものたちだけが、彼の磁力に惹かれるのではない。
シャ一口ックの対極にいるように見えながら、そこへ疑念を持ち、しかし留まるしかない力一ノレのようなものたちもまた、シャ一口ックを見出してしまう。
それは歓迎すべき融合をしばしば生まないものだ。彼にはまだそれを見越せていない。あの年頃に特有の聡さが、寄り添う素振りで発した注進に含まれる矛盾を知覚したものだろうが、さてどうしたものか。
見た目どおりに、力一ノレがもっと単純な少年であったら。グロウサムは残る違和感を払拭できず、のちの悲劇も先知せずにはいないたそがれの部屋で、生まれたてのしこりを打ち消すのに努める。
*
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
- 68 :
- >>62-67
.┌、 r┐ r┐ヾ> (_ / ミ
!. | ヾ> || lニ コ 〈/`ヽ _ ミ
|. ! ノ| | レ! _| |. ,イ,.- 、 |  ̄_ ̄丁 '' ー┬‐- -ミ
ヽ二/ .ヽ/(___メ> /,|.l l ! ( ) ! (´ ) ! r‐
ry'〉 ,、 /イ,! `ー' _L =- --┴-ニ二ト、_'ー'
lニ', r三) (( |'J」-''_二 =-- ‐一 ー‐t‐-ト、 二__
|_| )) レ'/´ィ 、_________ ヾミ| l
_r┐ __ (( V ,、 F≡三r一tァー, | l:.:. .::
└l. レ',.-、ヽ )) |ノ^>、 '^ミ二´ | l:.:.:.::
ノ r' __,! | (( V/イソ .::ヽ、二_
└'!_| (_t_メ.> )) | / ,' _ .:.:.:.::i|,)ノ
r-、 (( |.〈、 、 _〉 `丶、 ;:ィil| ノ
,、二.._ )) | 笊yfミミミミヾ、 '!l|il|li!fj'
ーァ /. (( ヽ |i''r ''_二二ニミ;ヽ、 ,|l||il|l|,「゚|
ん、二フ )) |,l| V´ :::::::::;;/ トi|l|i|i|l|!Ll
,.-─-.、 (( |i! ゞ=-‐''" ,i||i|l|l|l|!|i{
/ /l .i^ヽヽ ` |il! ーォii|「、 ,,.,.ィi||l|i|l|l|i|l|シ'
. | .レ' / l.| ヽ二ニ,ヽ ,/i|l||livil|||l|i|l|l|lil|l|i|l|i|i|i|l|l|l|{'
. ヽ/ ノノ <ノ {l|!|l|i|l|i|l|i|||i|i|l|i|i|i|i|l|l|!|l|l!r'
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||し'^) ,! ┌‐' 'ー┐ト、 ``,ヘi|l|i|l|i|l|l|i|r''`''"´ i ,
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- 69 :
- >>62
何回も読み返してます!早く続きをオナシャス!(*゚∀゚)=3
- 70 :
-
皇帝×公爵
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「心優しい卿はこれを笑ったりはしないだろう」
雨後に虹が映じた昼下がり、宮殿の執務室で、精悍なるも老齢の皇帝は、
懐に忍ばせていた陰萎に効く薬を、麗しく老いた美しい友に見せ、片目をつぶりニヤリと笑った。
「挿入だけが和合の道ではないと思うていたが、やはり余は威厳を取り戻し、卿にめくるめく悦びを与えたい」
気品ある老齢の公爵は、白皙の頬を朱で染め、皇帝の手から薬の入った茶色い小瓶を取り上げると、皇帝の執務机に書類の山を積み上げた。
二人は昨夜、離宮でむつみあったばかりだ。
老いて花芯の硬度を保てなくなった皇帝は、その分、公爵を慈しむように愛撫する。
香り高い精油を纏った最も長い指をただ一本、後ろの蕾にあてがわれ、ゆっくり沈められたそれで、中を丹念に愛された公爵は深く感じいった。
(…陛下は、指の運びが…押す・擦る・突くの…使い分けが…実に…巧みになられた……)
青年の時分は、中指一本で涙が出るほど喘がされた覚えはない。くいくい動く皇帝の指に高められ、昨夜公爵は、絹の敷布を握りしめはらはら涙を流した。
老いて涙腺が緩んだ公爵は、涙を零し零し、年若き頃は激しさと熱さで攻めていた皇帝が、技巧派に転身したのを後孔でしみじみと感じた。
一夜明けてもまだ、皇帝の指の感触が、公爵の中に深く残っている。
今も、たまらなく気だるい。事に及んだ後、こんなにも疲れが取れないのは、決して年のせいだけではない。
なのに皇帝は実に元気だ。茶色の小瓶を手に公爵に微笑む笑顔が眩しい。公爵は大きく深くなまめかしい溜め息を吐いた。
- 71 :
-
「余は卿が欲しい」
皇帝は公爵のほっそりとした手を取り、皴深い甲に接吻をした。
「陛下、いけません」
日の高いうちから執務室で淫らな行いをし、快楽に耽るのは憚られる。常識ある公爵は、やんわりと皇帝を拒んだが、
真夜中、ローブを脱ぎ捨てた麗しの公爵は、仰向けに寝た皇帝の腹筋に手を突き、騎乗位で乱れた。
若い頃は恥ずかしがり、皇帝が上に乗れと命じても、皇帝に跨がるなど臣下として出来ないと頑なに拒んでいた公爵が、
老いて膝を病んでからは、上になったほうが椅子に腰掛けている様で楽なため、
素直に己に跨がるようになったのが皇帝は嬉しい。
「…ああっ、凄い! 陛下ッ、陛下ッ!!」
例の薬もいい具合に効いている。麗老の公爵の腰を両手で支え、下から激しく突きあげながら皇帝は笑った。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
- 72 :
- >>70
GJでした
これは素敵な古稀カポー
この御年までずっと愛し合ってるなんて素敵
しかも心まで美老人
- 73 :
- >>70
GJGJ!!美老年かポー美味しいです
新しい扉が開けた
- 74 :
- >>40参照ください。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
もう帰ってしまったろうな、そう思っていたが、プールの金網の前でいつものように読書をしているシャ一口ックを見、力一ノレは我知らずに微笑んでいた。
グロウサムとの対話で沈んだ気持ちが一気に上向いていく。
「力一ノレ、力一ノレ!」だが背後から呼び止められ、彼はその甲高い声の主をしかたなく振り返る。今なら誰だろうと、つまらない用事なら無視できるかもしれない。
「いよいよ明日だね、地区大会。ぼくにできることがあったら何でも言って!」
ジム・毛リ了一〒ィ一。この認識への落胆は大したものだ。「できること?できることって?」
ジムの顔が瞬時に青ざめた。もとより顔色は悪いのだが、力一ノレの声に滲む苛立ちが、ジムへいわれなき被告人の罪悪感を植え付ける。
「いや、その、ほら!マッサージとか、ぼくうまいからさ!」言う間にも、力一ノレの表情から生気が失われていくのがわかり、ジムは必で気の利いた言葉を探した。
だが結局それがみつかる前に裁断は下される。「シャ一口ック!待っててくれたのか?」
力一ノレは無雑作に向きを変え、ジムのもとを離れた。
「…いいのか?」「えっ?何が?」「彼だ。」シャ一口ックがしゃくる顎の先には、まだジムが所在なげにしている。
「彼の話はまだ終わってないんじゃ?」「でもおれには用がない。」「やめておけ。彼をぞんざいにはしないほうがいい。」
あまりいい顔つきとはいえない、決してそちらは見ず、声を潜めるシャ一口ックにつられるが、力一ノレは反射的にうしろを振り向いた。
- 75 :
-
「いつもあんなだぜ、あいつ。それよりこれからまた行くかい?」「よせって。見るだけで観察しないからだ。彼の顔色が悪いのは、力一ノレ、君のせいだ。」「おれ?なんでだ?」
開いていた本を閉じ、ようやくシャ一口ックは目上にある力一ノレの無邪気な顔を見上げた。
「なぜそれほど盲目なんだ。彼は明らかに君に関心がある。これは控えめに表現している。あえて言葉にするつもりはないけれど、今うちのめされているあの男が何か悪いものとして君を認識しようとする前に、力一ノレ、君はフォローしなければ。」
「どうしたんだ、急に。うちのめされてるって、ジムが?どうして?」
「…もっとシンプルに言おうか。彼は君に恋している。眼の下の隈の理由はできたら説明させないでほしいが、君もそういえばぼくに言ったばかりだったな。彼は君へ信頼を寄せていたようだが、今の君は決して信頼のおける相手のする態度ではない。彼は感じているはずさ。」
「なにを?」シャ一口ックのこの忠告に、きちんと従っていたら。
「今自分は不当な扱いを受けている、そう怒っている。」「なんだって?」
力一ノレはそれこそジムが分をわきまえない者としか思えなかった。おれが折角シャ一口ックと話しているというのに!「おい、ジム!なんでそうおれにまとわりつく?」
「えっ!…あの、どうしたのさ力一ノレ、急に…何かその…怒っているの?」少年との会話が聞き取れずじりじりしていたジムは、突然勇んできた相手の逆鱗にわけがわからずおろおろ口ごもった。
「かわいそうなヤツだと思ってたが、もうおれのまわりをうろちょろしないでくれ。ふっ…おれに恋だと?笑えない冗談だが、せめておれだけは笑ってやるよ。じゃあな。」
- 76 :
-
「…ぼくの言ったこと、聞いてなかったのか?なぜわざわざあんな風に…」「いいから行こう。時間がもったいない。」
確かに、ふたりに残されている時間はもう十分ではなかった。
ふたりの背後で、屈辱に苛まれるジムがたった今、ネメシスと契約を終えたばかりだ。
*
毛リ了一〒ィ一家のリビングで、ジムの母=マーサが友人と電話中。
『…そうねえ、試してみる価値はあると思うのよ。ただきこえは良くないわよね、毒なんですもの。でも高価なクリームに比べて値段も手ごろ、そのうえ効果は抜群と聞くし。やっぱりお願いしようかしらねえ、そのボトなんとかいうの…』
扉の影で、ジムがその会話を聞いている。「もう二度と笑えなくなるね、力一ノレ。かわいそうに。だってぼくを笑うんだもの、しかたないよ…」
*
少年たちはある日、太陽の下で野山を駆け回ることをみずから辞めてしまうものだ。無垢と言われる永続性を保持しない希少質に近しいなにかの喪失、とも同義である。
だがそれを故意に強制停止されてしまうことの不幸は、選んで行った者の比ではない。
力一ノレ・パワ一ヌ゙は毒を盛られ、シャ一口ック・ホームズは現実に繰り返される必要のない軽々しいに失望し、ジム・毛リ了一〒ィ一はいつもは姿を見せない愛の血縁として裏切りが最もなじみやすい類縁であるとの学習成果により。
*
- 77 :
-
《某月某日デイリーメール紙・四面ベタ記事》
昨日ロンドン市中屋内プール競技場にて開催された学生水泳選手権、200メートルメドレー個人戦決勝において、ファイナリストである力一ノレ・パワ一ヌ゙さん(18歳)が亡した。何らかの発作を起こし溺れたとみられる。検は聖バーソロミュー病院で行われる。
昨年の同大会同種目で優勝しているパワ一ヌ゙さんは、学校関係者によると今回も意欲的に練習し、大会には万全の体調で臨んだという。「本当に残念です。将来を期待されたアスリートだった。親御さんには大変申し訳ない(ラングトンコーチの弁)」尚、葬儀日程等は未定。
*
『ギルはなんと言っていた?』
『うん…よく運動しなさい、とかそんなこと。…知らなかった、グロウサム先生、中等部でも教えていたんだな。』
『いいや。彼は高校の生物教師。授業を受けていたらぼくは彼になんか近寄らないし、ギルなんて呼ばないだろう?』
『え?そうなのか…てっきり…』『てっきり、何?』『いや、いいんだ。』
『(少し眉を寄せ)ぼくは先生ってひとたちがあまり好きじゃない。でもギルはらしくないし、第一ぼくに必要なことだけを教えようとしてくれる珍しい大人だから、利用価値がある。』これは額面どおりに受け止めよう、力一ノレにとって歓迎すべき答えだから。
『それはそうと。』見えない影をなんとか置き去れないものかと、シャ一口ックは左肩越しをすがめ、睫を伏せる。『君は厄介ごとに無頓着すぎる。』
- 78 :
-
『ジムのことなら心配なんかないぞ。』
『恋がいかに暗くて奇妙な熱情か、君はわかっていない。ちょっと前ミルウォーキーの刑務所でされた男は、恋愛対象者への執着が高じ、彼らを自分の胃へコレクションした。』
『Wow! ……あいつもおれを食いたがっている?』
『さあね。クラフト・エビングによればそれも決して特異な感情から生まれはしないって。ただ一旦行動を起こしてしまえば、彼の常軌は逸したことにより、精神異常者と見做される。』
少年が教師から新たに与えられたというテーマへの入門書として、傍らにある書物の著者がそういえば同じ名前だ、力一ノレは無意識に表紙へ視線を落とす。
『それは君には退屈だよ。ただ恋に秘められた万象への波及に制限はない。これは覚えておいたほうがいい。』
『恋をしたら楽しいものなのに…少なくともおれは楽しい…と思う。』末尾にそって小さくなる声から、不思議とシャ一口ックに相手の意図を汲み取る作用がこういう場合に限り働かないのを、力一ノレは残念に思う。
『誰だって自分の感情を否定したくない。ましてそれをなにか悪いもの、淀んだ間違ったものとは思いたくないし、なによりも貴く、美しいと思いたいのが、不幸にもひとの〈人情〉さ。…どうした、力一ノレ。口を閉じるのを忘れてるぞ。』
『…あ、いやその、…いまさらだけど、きみと話していると、おれは自分でも知らないうちに冷凍カプセルで何十年も眠らされたか、それともきみが本当は50歳なんじゃないかって思う。』
- 79 :
-
『……ありがとう、と言うべきかな?』それは、少年が現実を厭うあまり、今の実年齢に課された不具合や束縛を一足飛びにし、彼にとっての精神の羽ばたきと自由を得たいという希求のあらわれでもある。
『…それでもやっぱりおれがばかだった。今頃恥ずかしくなってるし。』
『ギルも言ったように本当に気になんかしてない。』
『うん、でも二度としない。考えなしだって思われたくないしな。ふだんおれの近くにいるヤツらと、いっしょにしちゃいけないのに、きみを。』
『……どうしてぼくにはないって思うんだろう、みんな。』
『え?何だって?』
そりゃあイカやサンゴの体外受精みたいに、ひとも静かにできれば尚いい、とは思うけれど、続けるシャ一口ックの異議申し立てを、結局力一ノレが理解することはなかった。
『ところで、明日はレースだなんて。一言も聞いてなかった。』
『ああ!うん、きみはそう、多分退屈するだろうと…でも思いだしてくれて嬉しいよ。おれがんばる、シャ一口ックのためにも!』
『なら勝ってほしくないな。自分のために勝つんでなければ意味がないじゃないか。』
あ……また、調子にのってしまった、反省ばかりの力一ノレを察し、シャ一口ックは敢えて邪険にしている意識もある。
わかりやすい親愛を隠さないこうした表明に対し、実際少年にはまだ受け入れ態勢が整っていなかったからだ。
- 80 :
- 支援?
- 81 :
-
『力一ノレ、レースに勝つのは好きだね?』え?『うん、そりゃもちろんだ。』
『だったら明日は何も考えずそれだけのために泳げ。そうするのがぼくには一番嬉しい。』
力一ノレの紅潮する頬が、ものの12時間も経たず二度と赤みを浮かべなくなるとは、シャ一口ックとて予知できるはずもなかった。
『あれ、すっかり暗くなっちまった。ごめん、家まで送るよ。』
『大丈夫、君も早く帰ってやすまなくちゃ。』『そうする。じゃあ…』
『またあした。』ああ、応じた力一ノレは、先を行くシャ一口ックのほっそりした背中をしばし見つめる。街から消えつつある太陽の残り陽を受け、少年の輪郭がオレンジ色に浮き上がっている。
ふと、またあした、とは観にきてくれるから?と問いたい欲求をそれでも力一ノレは飲み込んで、伸ばしかけた右手を左手が握り制す。
たとえあしたでなくとも、あさってでも、そのあとでも、いつだって聞くことならできる、だってシャ一口ックはおれをともだちにしてくれたんだから、おれがシャ一口ックを特別だと思っているほどではないにせよ。
ちょうど日没が完了した薄暮に、ふたりが否応もまぎれてしまいそうな短い晩夏はいとも優雅に、しかし容赦なく過ぎてゆく。
Fin
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ここまで読んでいただき、どうもありがとうございました。
>>80 支援ありがとうございます〜
- 82 :
- 前スレであれだけ投稿間隔で揉めたのが嘘のようだ
- 83 :
- ま、いーんじゃないの
全てはネタだし
ネタにマジレス、カコワルイぞ
- 84 :
- 面目ないがスレの許容量に気付かず
前スレにて投下し始め
限界に達してしまった
こちらに続きを落とさせて貰う
申し訳ない!
- 85 :
- 「……んだよ、お前……ヤバ、あ、ん、ん……あっ」
うわ、テンション上がる。こっちが煽られるようなエロい声出してさ。
えづかないように注意しながら深くくわえて、口腔全体をすぼめて、わざと音を立てながら断続的に刺激する。
ホントはモーレツにハメたい。けど、今日はマジでNGな気配を感じるので、ガマン。
空いている左手で自分のデニムのジッパーを下ろし、自分のものを取り出して扱く。
仕方ない、こっちはセルフで。
「……くそっ、出る……っ、あ、あ、あ……ん……」
俺が仕掛けるリズムに合わせて、声のトーンが上がっていったかと思うと、
彼の両股がピンと突っ張った。ぴゅっ、と俺の口に有川君のが吐き出されるのを感じて、口を外す。俺もそろそろ限界。
「入れないから……かけさせて」
言うが早いか、イったばっかりでちょっとぐったりしている有川君のバスローブの開いた合わせ目に俺は放った。
白い飛沫が、彼の割れた腹筋の上を垂れていく。いい眺めだ。
「ふあー……」
満足した俺は深いため息とともにソファに倒れ込んだ。
「バ……!! お前、何すんだよっ!!」
「……まあまあ、いいじゃん」
「まあまあじゃねえだろっ! ……あっ、くそっ、垂れる」
ティッシュどこだよ、とイラッとした様子で有川くんが部屋をせかせかと横切る様子に思わず笑ってしまう。
「あーやっぱ有川君とのエロはいいなあ〜……」
ソファーで余韻に浸っていると有川君にバシッと頭をはたかれた。
「陸、お前、マジふざけんなよ」
「ごめん〜。今度埋め合わせにサービスするから」
お前のサービスなんてろくなもんじゃないだろ、とぶつぶつ言いながら
有川君は飲みかけのビール缶を手に取ってヤケのように残りを一気に飲み干した。
大丈夫。怒ってるけど、……怒ってない。長年の経験で判る。
- 86 :
- 俺たちはお互い決まった相手……って訳じゃないけど、割と昔からセックスしてる。
何だろう、コミュニケーションのひとつっていうか、気分とタイミングがあった時に
「しとく?」……みたいな。そんなとこも含めて、不思議と昔から気を使わずにいられる。
お前のせいでまた喉乾いちゃったじゃん……とぶつぶつ言いながら、
でも、自分のだけでなく俺の分まで缶ビールを冷蔵庫から出してきて渡してくれる有川君に、つい笑ってしまう。
「お前……何笑ってんだよ」
二人並んでソファに座ってぼんやりと夜景に目をやりながらビールを飲む。凄く安らかな時間。
「……やっぱさ」
「何?」
「有川君はいいな、と思ってさ」
「いい? いいって、何が」
セックスはセンスとテクニックだ。俺も、まあ、ソコソコ遊んでますが、有川君はマジでうまい。
若いころは男女問わず相当場数踏んだんだろうなあ。
うまい人とやるのはなんでも楽しい。音楽でも、セックスでも。どちらも、相手の出方を見ながらアドリブやフェイクを仕掛けて、相手の反応にまたこっちも返していく。
そういう意味では有川君は俺の中で相当プライオリティの高いセッション相手だ。
「有川君とだと何でもスムーズなんだよ。言葉とか、行動とか、お互いで遣り取りするものが引っかかんない感じ?」
「バッカ、それはお前、俺がちゃんとお前に合わせてやってるからだろ」
「もー、バカバカって、今日俺何回言われてんの。つか、俺だって合わせてるよお〜有川君に」
「お前が俺に合わせる? 良く言うよ、ホントに」
そう言ってまたグビッとビールを煽る。口では憎まれ口をたたきながらも、怒ってる訳じゃない。
こういうジャレ合いみたいな遣り取りを楽しんでくれてるのは判ってる。……そういうところもやっぱ好きだなあ。
「や、でも中にはさ、やっぱ何やっても引っかかるっていうか、
コイツ全然合わないって奴もいるじゃん。そういう奴って一回気になると、
ずっとずっと気になっちゃってさ」
うん、うん、という有川君の低くて柔らかい音色の相槌に、
これまで漫然と感じていたけど形になっていなかったことがスルリと口から出てきて驚く。
- 87 :
- 「忘れようとして、んで、忘れたなって頃に何故かまた思いだしちゃったりして。
アイツなんでああなんだろうな…とかって気がつくとそんなことばっか考えちゃって、段々苦しくなってくるんスよ」
「ああー、気になっちゃうわけね」
「そう! 何で俺が! って思いながら、ソイツが俺に向かって言ったことの言葉の意味とか、
ぐるぐる考えちゃったりして、そんで俺……」
「……あのさ、陸」
グビッとビールを飲んだ有川君が俺の言葉を遮る。
「なんかさっきからお前の話さ、段々コイバナみたいになって来てんだけど」
「は!?」
余りのご発言に、もたれてたソファから体を起して有川君の方に向き直る。
「コイバナ……ってちょっと!!! 違うっしょ! 全然、違いますよ!」
「だってお前さ、ソイツのことが気になって、ソイツのことばかり考えてるわけでしょ。ま、誰の事か判んないけど」
「誰の事でもないし!」
「へーそう。いや、俺はそれが誰でも別にいいよ。いいんだけど、ちょっとは素直になればいいのに、とは思うね」
「……す、素直とかっ、別にそういう話……してないでしょっ!」
「何、力んでんの?」
噛んじゃってさ、って、笑われるし。
「お前はさ、俺といるときはホント素直だけど、
多分、絶対ソイツの前では素直になれないんだろうな、っていうのは良く判った。
でも別にそれは悪い事じゃないよ。むしろそういう特別な相手って大事だと思うよ俺は」
有川君の声の調子は笑いを含んでいるけど、からかっている感じではなくてそれが俺をまた焦らせる。
柔らかい表情で諭されて、Weit,weit,weit……とつぶやきが口の中で消えていく。
「一緒にいて気持ちいい奴と過ごすのは悪い事じゃないよ。
でも一緒にいて刺激を受ける相手としか生み出せないものって、絶対あるんだって。……俺は、陸の共犯者にはなれるけどさ、まあ、そんな風に特別にはなれないだろうな、多分ね」
「……」
お前に判るか?とでも言いたげな目で眺められてしまうと、言い募るつもりだった何かも、
口にしようとした端から消えて行ってしまう。
- 88 :
- 自分の気持ちの何を、どんな風だと、俺は思っていたのか。
それでも何か言おうと言葉を探して、そして。
「有川君も……そういうのいるわけ? 特別な相手、がさ」
ピク、とかすかに缶を握る指が動く。
「……俺の話はいいの。今はお前がどうしても素直になれない相手の話だろ。ソイツが言った言葉の意味をお前がグルグル考えちゃうっていう……」
「あーもう、その話はいい! いいって! ヤメヤメ!」
「いや大事でしょ、つか、もうちょっと訊きたい俺」
ヤバイ。有川君のスイッチが入っちゃった。何か話題逸らさないと。
「え……と、そ、そう言えばさっき、有川君のケータイにメール来てた音がしてた……よ」
我ながら何と言う苦しい話題転換。無理でしょ、コレ。次の話題を探そう。
――ところが。
「バカバカバカ! お前それ早く言えよ!」
これが劇的に効いた。あっけにとられる俺を尻目に、シュタッと立ちあがった有川君は小走りで荷物に向かい、iPhoneを取り出して受信を確認する。
「……げっ」
急所を殴られたような声を出したかと思うと、届いていたメールに目を通して、
何だかいそいそと電話をかけ始めた。
「……あ、もしもし、徹? ゴメン! 俺! ……そう、今日楽日で、さっき部屋戻ってきたところ。
ホントメール気づかなくてマジゴメン! ……違うって! んなワケないだろ、ちょっと、信用してよー!(笑)
……え? うん、……うん、新曲デモね。聴いた聴いた。え、ああ、ライブの前に。
……や、悪くないけど、でも俺さ、ちょっと思ったんだけど……」
何このテンションの高さ。しかもデレッデレですよ。どゆこと?
……ていうか、そゆこと?
「……あーはいはい、大サビの前のトコね、うん、徹は多分そう言うと思ってた。え?(笑) 違う、違うって……」
すっかり置いてけぼりの俺は不貞腐れて、寝ることにした。
眠りに落ちる寸前、忘れた筈の「ソイツ」の顔が脳裏をよぎった――気がする。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!《完》
新スレが立ってることに気付かないなんてホント私バカ
バカバカバカ!
- 89 :
- 以前スレに投下した売る振るず/しゃっきんだいおうの歌詞に萌えて
インスパイアされた二次?BL妄想続き
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
喧嘩をした。
相手は人にたかることしか考えていない、顔だけはいいダメ男。
金にも女にもだらしないろくでなし。
俺にとっては忌ま忌ましいことに、幼なじみ兼悪友兼秘かに想う奴でもある。
事の発端はあいつが俺の部屋を訪れたとき、間の悪いことに俺が野郎との乳繰り合いの真っ最中だったことにある。
ああ、そう、あいつ以外とやってたわけよ、俺。
俺も男ですからね。持て余すこともそりゃあるというか。
特に昔はまだ健気だったもので、あいつを忘れるために他の男に身を投げ出してみたり、罪悪感で胸を痛めてみたり。
相手と揉めて殴られたこともあったっけな。
ああ阿呆らしい。
とても不毛な青春時代を過ごした気がする。
――話が逸れた。
とにかく、ひとりでマス掻くよりもできれば相手がいるほうがいい。
好きな人としかしたくないの、なんて言える清い身体でもない(言っても気持ち悪いだけだ)。
まして好きな奴とするなどとんでもない。
ならば答えはひとつ。
そういうわけで、セクシャリティの一致する気の合うお友達と事に及んでいた訳だ。
そこへまさかの奴登場。
「やあやあこんばんは今夜はいい夜だねぇ。ところで相談あんだけどさー……って何してんの」
ベッドを軋ませていた俺達は動きを止めた。当然奴も固まった。
やばい、何か言わねば。
が、俺がフォローを口にするより早く、奴は俺に覆いかぶさっていた男を引っつかむと、荷物共々外に叩き出した。
制止する間もない早業。
俺が通行人Aならブラボーと拍手していたね。
しかし当事者なものでそんなわけにもいかない。
鍵閉めてたのにどうやって入ったとか、人の客に何しやがるとか、そんな文句をぶちまけてやろうとして、止まった。
- 90 :
- じっと俺を見つめる視線。ヘラヘラ笑いが常の無精髭の生えた顔は全くの無表情だった。
「あれ誰?」
「友達だよ」
「お前友達とセックスすんの」
俺の性癖について話したことはない。
おまけにこっちは汗やら何やらくっついた裸に慌てて履いたジーンズ一丁。
最初こそたじろいだが、その段になると不思議と俺の腹は据わっていた。やけっぱちってやつだ。
「ああそうだよセフレってやつだよ」
言った途端、奴は眉を寄せた。
「くだらねー」
「はぁ?」
そこでまずムカッ腹が立った。奴の声に紛れもない非難の色を感じたからだ。
「どういう意味だよ」
「あんなことすんなよ。しかもあんな野郎と」
理解できない、と実に苛立たしげに吐き捨てやがった。
この野郎、頭にきてんのはこっちだぞ。
やってるとこに乱入するわ相手を追い出すわの挙げ句にわけのわからん説教かよ。
二十過ぎた男がなんで性欲処理もせずいられる。人恋しくなるときだってあるんだよ。
大体自分は女取っ替え引っ替えのくせにどの口が言うか。
俺がどんな気持ちでそれを見ていたかわかりもしないくせに。
考えるほどにムカムカしてきた俺は、気がつけば思いきり奴をぶん殴っていた。
「お前には言われたくねえんだよ!」
「何も殴るこたねーじゃねーか!」
「うるせえ! こんなことしてんのは誰のせいだと思ってる!」
- 91 :
- そこまで口走って、ハッとした。しまった。
案の定、奴は訝しげな顔を隠しもしなかった。
「誰のせいだっての」
聞かれても答えられなかった。
でもきっと、ただ奴の顔を見返す、それだけで誰のことかなんてバレバレだろう。
が、奴はふいっと目を逸らした。不機嫌そうなまま。
「何それ。意味わかんねー」
そう平然と口にしやがったのだ。
その後は無言で部屋から叩き出してやった。
ドアを叩かれても名前を呼ばれても、ドアに背を預け決して開けなかった。
長い付き合いでわかった。あの顔は嘘をついていない。本当に、心の底から意味がわからないと言った。
あのろくでなしはとんでもないタラシのすけこましのくせに、自分が俺に惚れられているとはこれっぽっちも考えていないんだ。
阿呆か。惚れてもいないのに、どうしてお前と十年以上付き合っていられると思ってるんだ。
金せびりに来るわ女との揉め事押し付けてくるわのダメ男だぞ。
普通はとっくに縁を切ってるっての。
だがそんなことを説明する勇気もなく、俺はその日、まんじりともせず夜を明かした。
- 92 :
- あれから早一ヶ月。奴からの音沙汰はとんとない。最長記録だ。
奴に叩き出された友人には後日改めて謝罪と説明をした。
前から俺の愚痴相談役でもある彼は、あれは大変だななんて苦笑しながら許してくれた。何といういい人。
奴もあの人の爪の垢を煎じて飲みゃいいんだ。
なんてことを考えていた休日の早朝、奴がひょっこり姿を現した。
「どもども。元気?」
ケンカ別れの名残なぞ微塵もないヘラヘラ笑いにラフな恰好は相変わらずだが、なぜか無精髭がなく髪もすっきりと切って整えられている。
これはあれだな、新しい女引っ掛けてたな。
元々見た目は悪くないので、ろくでなしオーラさえ出さなければこいつに引っ掛かる女は山のようにいる。
その中からダメ男を放っておけない女を選別するのが、この男、異常にうまい。
つらつらと考えながらつまみ出すべきか否か悩んでいると、奴はずかずか上がり込み、俺に向き直ると正座した。
「お納めください」
すっと差し出されたのは百貨店の包装紙に包まれた箱。開けると某有名和菓子店の饅頭だった。
こんなふうにこいつは時折俺に物を寄越す。
金は一向に返さないし、物を買う金の出所もどうせこいつじゃない。
それでも、他でもないこいつが俺に持ってくるのだと思うと嬉しくなってしまうのだ。
ああ阿呆らしい、なんてため息を吐きながら一個頬張る。
「うまい?」
頷いた。こいつは気に食わないが食い物に罪はない。
が、やはり一言言っておきたかった。
「お前女にたかるの程々にしとけよ。どうせあっちこっちに手ぇ出してんだろ」
いくら立ち回りがうまく相手を見る目があるとは言え、何事にも例外はある。
別れ話がこじれて一発ひっぱたかれるのはいいほうで、一度など相手が刃物を持ち出したこともあった。
こいつがんだら泣くだろうな、悔しいな。
俺がそんな気持ちでいるとも知らず、奴はアッサリ爆弾発言をかました。
「いやそれ俺が買った」
「……は?」
- 93 :
- しえん?
- 94 :
- 聞き間違いか。幻聴か。すわ白昼夢か。
大袈裟だと笑う向きもあろう。
だが相手はこいつだ。
煙草一本でも人の箱からちょろまかし、めずらしく缶ジュースを買っているかと思えば道で拾った小銭でという男だ。
それが、札が必要になる菓子折りを買った?
「金はどうしたんだよ」
「バイト決まった。で、初給料でこれ買った」
「はっ?」
「これ名札と制服と給与明細」
ぽんぽんと投げ寄越されたそれらは某有名コンビニエンスストアのもので、奴お得意のなんちゃって模造品でもない。
おまけ、と額を叩いたのは職業安定所の登録カード。
「しばらくバイトしながら就職活動する」
青天の霹靂とはこのことか。
「偉いだろ」
いや偉いも偉くないも世の中の人間は皆そうやって食ってんだけど。などとは言えない。
もはや声も出ない俺に、奴はふんぞり返ると指を突き付けてきた。
「だからお前あの男と会うのやめろ」
「あ?」
だから、がどこに繋がるのかと顔をしかめると、奴は苛立たしげに、あいつだよ、と繰り返した。
「この間ヤッてた男。っつーかもうああいうのヤるな」
唖然とした。
この男は自分の身の振り方が決まった、ただそれだけで俺の性生活にも干渉できると思っている。
何たる傲慢。
というか俺は不特定多数とはやってねえぞ。あいつはセフレ以前に趣味の合う友達でもあるし。
- 95 :
- 「あのさあ、俺、こう見えて昔からモテるのね」
ああよーく知っているとも、他の誰より知っているとも。
「なもんでさあ、誰かが俺にそーいう気持ち持ってたらピンとくるのね」
ああそう、そりゃあ都合のよろしいことで。
ところでお前、なんでそんなにじり寄って来るんだよ。
いや別にいまさらこんな接近で動揺しないけどさ。
って顔を覗き込むな赤くなる!
「お前さ、そろそろ認めちまえよ。あんなつまんないので紛らわすとか意味わかんないんだけど」
は? と本日何度目か知れない間抜けな声は、奴に腕を引っ張られてすぐに飲み込む羽目になった。
口が塞がれている。後頭部を掴まれている。見開いた目の先には奴の無駄に端正なドアップ。
息苦しくなって喘いだ口中にぬるりと侵入し、縦横無尽に動くこれは、もしや舌か。
離れようともがいてみても、頭と腰をがっちりホールドされて動けない。
むしろその手が不穏な動きで俺の身体をまさぐりはじめた。
何だこれ。何だこれ何だこれ。
やっとのことで解放されたとき、唇は痺れて感覚がなくなり、俺は息も絶え絶えにへたり込んでいた。不覚。
同じく呼吸を乱しながら、奴はにやりと口角を上げた。
「ざまあみろ」
なんだよそのガラの悪い笑みは。どのざまを見ろってんだ。
などとそのときの俺に言えるはずもなかった。
できたのは、悠々と部屋を出ていく奴の後ろ姿を見送るだけ。
混乱しきった頭を抱えて俺は床に突っ伏した。
その後、続きはまた今度、と書かれたメモを見つけ、部屋に入れたのは無断で合い鍵をちょろまかしていたからだと知った俺の怒りが爆発するまで、数十分の時を要したのだった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
>>93
支援ありがとうございました
- 96 :
- GJ!!おもしろかったです!
売る振るずのしゃっ金大王も好きだ!!
続きをお待ちしてます\(^o^)/
- 97 :
- >>89
萌えでどうにかなりそうになった
続き待ってます
- 98 :
- >>11-17の続きです。
昨年のタイガードラマ・リョマ伝のお馬鹿弟子⇒堅物師匠です。
以前本スレに投下されたネタを拝借しております。
相変わらず訛りは適当ですので間違いが有ったらすみませんです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
- 99 :
- 「先生は悪う無いですき」
伊蔵は唇を尖らせた。何故武知が謝らねばならないのか分からない。
「悪いのは上士の奴らと大殿様ですろう」
思った事を素直に言うと、武知は困ったような顔で振り返った。
「そういう事を言うてはいかん」
「けんど先生が謝る理由はないですき」
「おまんは優しいの」
武知は苦笑し、少し表情を和らげた。
「伊蔵、……愛しい女子の姿は浮かんだか」
それがとても大切なことであるかのように、しかと伊蔵を見据えて武知は言った。
伊蔵は身を縮めた。結局、武知の命には従えなかったのだ。『愛しい女子』の姿など誰ひとり浮かばなかった。
命令に逆らったのだから、叱られてもおかしくない。
伊蔵は身を小さくしたままそろそろと首を振る。
武知は身を抉られたような顔をして、叱責の言葉ではなく深い息を吐いた。
「……そうか、出来んかったか」
「申し訳ありませんき」
「おまんが謝る理由は無いろう。そうよな、それが当たり前じゃき。なのにわしは……なにを都合のええ事を言うちゅう」
蒼白な顔をして武知は言った。後半は伊蔵にではなく己に言っているようだった。
武知は一瞬瞠目してから息を吐き、伊蔵の肩を両手で掴んだ。
「伊蔵、これからとても大切なことを言うき、よう聞きや」
こくりと頷いた伊蔵の目を、武知はひたと見据えた。
「この一刻の間におまんの身ぃに起きた事は、全て夢ぜよ。おまんは辛い目ぇにも怖い目ぇにも合うていない。
何も、何一つ起きちょらん。おまんはお城でうたた寝をしてしもうただけじゃき」
そう優しく言う武知が何かひどい間違いを犯している気がして、伊蔵は恐怖を覚えた。
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