2013年01月エロパロ30: 強化スーツ破壊 (133) TOP カテ一覧 スレ一覧 Pink元 削除依頼

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強化スーツ破壊


1 :2012/09/22 〜 最終レス :2013/01/04
ご自慢の強化スーツが破壊されてしまう。

2 :
エヴァのプラグスーツとか
ヤマトの森雪のスーツも強化スーツに入るの?

3 :
サムスとかガンツのキャラあたりか

4 :
スーツを支配して触手化したり軟体化して着用者を責め立てるのが最近の流行らしい

5 :
まどか、なのはみたいな魔法少女変身モノの変身服も強化スーツだと言えば言えるな
プリキュアとかセーラームーンも同じだが

6 :
正直マブラブの強化衛士服はエロの無駄遣いだと思う

7 :
スーツの内側の緩衝素材がヌルヌルな触手とか好き
稼働限界超えるとエネルギー切れ起こした触手が着用者をグチョグチョにし始めるとか

8 :
このスレは期待
>>7みたいなのが好きだけど>>1の嗜好は「破壊」の方にあるんだろうな

9 :
つまり>>1は強化スーツを破壊されて着てる人間が絶望するのを見たいというわけか
セイバーの鎧を力づくで剥ぎとって絶望させるみたいなもん?

10 :
ジンキ・エクステンドあたりのスーツだけを溶かす液体とかでしょうかね?
本編もこれがあれば大丈夫と信頼しているスーツが溶かされて貞操の危機って感じですし

11 :
>>10
あれは原作のも良かったがアニメのもやたら力入ってて良かったな
ウンコアニメで唯一褒められる部分だった

12 :
強化スーツを剥いでいくなら、正義のヒロインを嬲るスレに良いのあったきがするな。
あっちの作者たち来てくれないかなー

13 :
>>12
あそこも最近はほぼ作者いなくてんだ状態だがな

14 :
衛士強化装備の設定は凄い
ぴっちり系の中ではある意味偉大

15 :
羞恥心を捨てるためあえてあのデザインってやつ?
公式設定なのかな

16 :
>>15
うん。本編で言及がある
恥ずかしがらないように訓練するなんてもったいない話だけれども

17 :
衛士強化装備の設定って、ここはPINKだから知ってる奴も多いだろうけど
アニヲタ全体ではどのくらい知られてるんだろう

18 :
そういえばマブラヴスレはまだないのな

19 :
>>18
あるにはあるんだけどね
トータルイクリプスを略してTEでエロパロとかいうスレタイにしてるもんだから、
気づいてない人もいるのか凄い過疎ってるよ

20 :
衛士強化装備って強化スーツなの?
パワードスーツみたいに筋力を強化できるの?

21 :
>>20
身体能力の増幅はどうか知らんが、あのスーツを着ないまま戦術機に乗ると戦闘機動のGとかキツいらしい

22 :
>>21
それもあるが、娯楽が乏しい世界観のためにテレビ等の映像を映す技術が低く戦術機にモニターはない、
代わりに網膜に直接映像を映すのであのスーツを着ていないと戦術機の外が見えないはず。

23 :
パワードスーツでぶいぶい言わせてたヒロインがその性能を解析されてボコボコにされるのは良いな
耐熱性を超えたレーザー浴びて灼熱化した腹部を抱えて悶絶して転がり回ったり、
全方位からショットガン浴びせられてピンボールみたいなあっちこっち翻弄されたり、
パワーアシストが切れてオーバーヒート起こして蒸気を上げるヒロインのフルフェイスヘルメットを鷲掴みしてパキピキいわせながら内部モニターブラックアウトさせたり

24 :
>>23
実際にそういうシーンがあるアニメとかエロゲって無いの?

25 :
>>24
いやこんなんあったら良いなという妄想なんでw
でもその原動力になったのは
古本屋にぐらいしかないがナポレオン文庫のエンジェルセイバー
特撮の時空戦士スピルバンのダイアナがピンチの回
とか良いピンチシーンだった
ってなんか熱く語ってるけど俺>>1じゃないんだよねw

26 :
最近じゃそういうヒロインが出てくる特撮とか無いからイメージふくらませるのが難しいね
ちょっと検索して調べてみたけど、>>23さんの言うようないかにもパワードスーツと言えそうなのを
身につけるヒロインのアニメと言うのは見つかっても古いのしかない感じだな

27 :
スレタイが言うところの、強化スーツに該当するのはどこまでなんだろう?
つべでちょっと探してみたんだが、
ボーグマン アニス/変身シーン
http://www.youtube.com/watch?v=D8gkbdNUJok
昔のボーグマンというアニメのアニスとかいうキャラらしい。ここまでは強化スーツと言えるだろうけど、
次からのはどう?
ガンダムGに出てくるレインのスーツ
http://www.youtube.com/watch?feature=fvwp&NR=1&v=e2A6H5Jybnk
元ネタ不明だけどフェイトとかいうキャラのスーツ
http://www.youtube.com/watch?v=2luGk2M_b90&feature=related
エヴァの真希波・マリ・イラストリアスのプラグスーツ
http://www.youtube.com/watch?feature=endscreen&NR=1&v=DACRg5ct0uI

28 :
>>27
まあどれもそれなりの機能を持っているから強化スーツのカテゴリーじゃないかな?

29 :
>>9『ヒロイン討伐VOL42』というAVの最後の方には
バトルフェーバーJのミスアメリカのようなヒロインが
敵組織の首領である謎の巨大生物の前に引き出され、マスクを首領に食われてマスクオフ状態に
なりながらも首領と戦うも、首領に呑み込まれ残ったスーツも全て食われた全裸姿で吐き出され
圧倒的な力の差を見せ付けられて諦めるという展開があるゾヨ
ヒロインを痛め付けるのに特化して、通常のエロ展開は期待できないシリーズだが・・・

30 :
>>29
年齢の高そうなレス!

31 :
あんまり話が膨らまないね。
強化スーツというジャンルがマニアックなので、オッサンの語りでしかスレが続かない感じ。
どうする?
強化スーツ破壊の小説を書くスレとして使うのもいいが、マブラヴとか、
作品個別のスレがある作品だと、どっちで書くべきか、という話にもなるよね?

32 :
質問
プリキュアor魔法少女まどかの強制変身解除は
このスレのカテゴリーに入りますか?
あと、フルメタルパニックのボン太くんは
強化スーツになりますか?
オレ的にはプリキョアや、まどかは変身解除よりも、あのコスチュームを
ビリビリに破いて全裸に剥いてほしい
スーパーメトロイドのゲームオーバー後のサムスを想像して興奮していた頃が懐かしいぜ。 

33 :
プリキュアは知らないが、まどかのコスは
強制解除させられるのか?
ソウルジェムくだいてもコスは着たままだった気が

34 :
>>33
いや、まどか達のコスは亡(ソウルジェムの破壊)で解除されてる
マミが首がぷらーんした時も制服姿に戻っているし、ほむら周回途中でマミが杏子のソウルジェムを撃ち砕き、
マミをまどかがソウルジェムを射た時も両者とも変身解除してる

35 :
まどかのコスチュームをビリビリに破いて全裸に剥くという展開は良いんだけど、
誰にコスチュームを破かれてしまうのか?ってのが壁になるんだよね。
魔女は元々は女の子だから、エロ目的で魔法少女のコスチュームを剥くってのが
考えづらいし。

36 :
まどかの服をビリビリに破くのにほむほむ以外浮かばない

37 :
ほむらが魔法少女なのを学校の先輩に知られて、変身した格好でのセックスを要求されて、
あのタイツをナイフで切られて脱がされちゃうSSネタなら考えたことあるけどねw
同級生のまどかたちが体育の時間で校庭にいるときに、時間停止で時間を止めて
その真ん中でやらされるとか。
とうぜん集中力が切れて時間停止が解除されるとアウトw

38 :
まどっちは可愛すぎていじめたくはないな。
ほむほむはいじめたいけどw
変身したときのほむほむのタイツ、あれ絶対俺たちキモヲタを誘ってるだろw

39 :
スカイガールズのソニックダイバーも強化スーツとみなすべきか?
ワームに触手で捕獲され少しずつ破壊されてくソニックダイバー
機能が低下したソニックダイバーで必に脱出を試みるも
ナノスキンが限界時間で崩壊を始め、触手に直接なぶられて恐怖する音羽みたいな。
              >>22ならば戦術機のコクピットに侵入した触手が衛士を捕縛して
スーツを切り裂き、強化装備を破壊、外部が見えなくなり操縦もままならなくなったとこで
戦術機を破壊して、後は好き勝手という展開もありですか?
バブルガムクライシスのネネが戦闘中に仲間と分断され、ブーマーの攻撃を喰らって気絶
近くに隠れていたキモヲタたちが引っ張り込んだため、事なきを得たが
ネネの手当をしようとしたキモヲタたちが、ハードスーツを剥がすと
中から美少女が現れたため興奮したキモヲタたちに輪姦されるネネ・・・ここまでくるとスレの趣旨から逸脱してるか。  

40 :
>>39
22です。アリはありだけど、戦術機のカメラとリンクしているので、カメラ自体を壊したほうが早いかも。
ついでなのでエロパロに使えそうな衛士強化装備の知識的なものを適当に引っ張ってみる。
知っている人が多いと思うが、訓練兵は最前線の男女混成部隊の時などに備え、
羞恥心を克服するために胴体が半透明の装備となり、股間以外は丸見えに近い。
これは負傷個所を確認しやすくもしている。
分解剤を使用すると素手で装備を破れる。訓練兵のそれはより分解剤の効果を受けやすい。
マニアックかもだが、排泄物は高伸縮排泄物パックとかいうものがカバー。
股間を隠しているパーツがそれなのかな?(容量は最大500g)
高度な伸縮性を持ちながら、衝撃に対して瞬時に硬化する性質をもった特殊保護皮膜だが、
圧迫には弱く、岩などに挟まれた時は無事でも圧迫により負傷したりする。
このことから、胸などを揉むのは問題なさそうに思える。
ついでに、BETAはハイヴと呼ばれる前線基地で人類を研究したりしていたが、
最後は脳みそと脊髄だけで保存されたりするので、BETA相手のエロパロは…ガンバレ!

41 :
バブルガムクライシスとこのスレだと、ニューハードスーツみたいにスーツの下が裸。
衆人環視の中スーツが破壊されていって素肌が見え隠れする感じ?
>>39さんのは、デブやブサイクに犯される女のエロパロスレでしょうか?破壊じゃなくて剥がしてますし。
強化スーツ破壊といえば、競泳戦隊ミズギーズというガガガ文庫の10月新刊がそうでしょうか?
3巻目ですがスク水戦隊と戦って、ダメージをくらい過ぎると水着型バトルスーツがはじけ飛んで全裸になります。

42 :
バブルガムクライシスで検索したけどどんだけ昔のアニメなんだよw
オッサンくさすぎwww

43 :
うるせえ、過疎になりがちなスレに必に燃料投下したら
こうなったんだ。

44 :
ば、バブルガムクライシスいうてもTVシリーズの方やから…

45 :
衛士強化装備って、>>40読む限りでは防御性能がメインという感じだよな
スレタイの強化スーツという感じはしない
少なくとも、バブルガムクライシスのようなパワ−ドスーツの要素は全く無いといっていい
ちなみにマブラヴオルタなら俺も原作ゲームやったことあるけど、柏木晴子とか言うキャラが
BETAの溶解液で衛士強化装備ごと溶かされていたはず
分解剤が作動とかじゃなくて、BETAの溶解液が強力すぎて衛士強化装備ごと溶解した
たぶん即
BETAが溶解液をもっと薄くして、衛士強化装備をじわじわ溶かすとかならエロ展開的に
ありかも

46 :
マブラヴでは、涼宮茜の衛士強化装備姿がツボで何回も抜いたのはここでだけ言う秘密w
若いころはエヴァのレイとアスカのプラグスーツでも、狂ったように抜いたね

47 :
基本生存を主眼に置くとこうなりますよ。戦術機とリンクしてますし、戦術機と合わせて一つのパワードスーツと見るべき。
少しネタバレ的だけど、BETAは自分を生物と思っていないし、人類を害虫くらいにしか認識してない。
原作でも主人公の目の前に上半身だけのヒロインを串刺しにして、新しいサンプルを要求します。ってくらいやし。
人類の諍い系の方がエロい方に持って行けるんとちゃうかな?スーツ破壊とのコラボは難しいけど。
>>40バブルガムクライシス TOKYO 2040ですね。
1998年10月〜1999年3月なので普通ですよね。
というか、テレビでのリメイクなのOVAより見てる人多そう。

48 :
すいません47です。
>>40じゃなくて>>44でした。

49 :
バブルガムクライシスは最近、朝日ノベルズからラノベが出たが
ナイトセイバーズのメンバー全員が女子高生に変更され
リンナはシリアお嬢様のメイドで、ネネに至ってはレオン刑事の妹の
ツーテールのロリ娘でブラコン気味だが、ボーイッシュなプリス先輩にも
興味津々な百合属性もある。
そして、ハードスーツよりもゴスロリの描写の方が長かったりする。
・・・・・・マニア受け狙いすぎ
マニアックな話ゴメン

50 :
バブルガムクライシスを見てたころはモロに思春期だったから妄想が捗ったなぁ
マッキーがスーツに細工して動けなくなったナイトセイバーズを一人づつ好き放題するみたいな
おねショタ方面の性癖も同時に満たせて一石二鳥やね

51 :
鎧は強化スーツといえるのか?
例えば、ファンタジーRPGで女騎士が着る聖なる力に守護された鎧とか。
それを、妖怪の精液で溶かされてしまうとかは強化スーツ破壊に入るの?

52 :
聖闘士星矢の聖衣破壊は?

53 :
個人的には含まれると思うけど、女聖闘士は聖衣より仮面を気にしそう。
ところで星矢は聖衣装着→頭部パーツ紛失ばっかりだけど、パーツかけても大丈夫だっけ?
鎧なら、古すぎるけどサムライトルーパーの鎧擬亜とかも?
鎧自体に鎧パワー(弾動力)があって、それを引き出して戦ったし。
ラストで忠の貴力という鎧を迦遊羅が着けてた。

54 :
おまえらは、スーパーメトロイドのゲームオーバーシーンの
動画でも見てオナってろ。

55 :
http://ipad.fehot.net//LNU1komwa.html
http://ipad.fehot.net//x26IRsmwa.html
http://ipad.fehot.net//L7AMgsmwa.html
http://ipad.fehot.net//xuTlosmwa.html
http://ipad.fehot.net//pk4ctsmwa.html
http://ipad.fehot.net//nBTRysmwa.html

56 :
>>54
自分は真・女神転生 STRANGE JOURNEYの機動班の女性隊員が触手悪魔にデモニカスーツを締め上げられて、
デモニカが圧壊してしまいシュバルツバースの大気にもがき苦しむというシチュで抜いてるんで

57 :
>>54
俺は『魔界村』のアーサーの鎧が脱げるとこで抜いてます。

昔、PCエンジンで魔界村のシステムで、主人公が美少女な
フォーセットアムールというゲームがあったらしいが
入手に成功した奴、感想を聞かせてくれ。

58 :
メトロイドのHPが0になった時のサムスのスーツが
脱げる演出だが、ゼロミッション以降は
なんか違うんだよなと思うのはオレだけではないはず。
スーパーやフュージョンのようにサムスは
亡時にパワードスーツが砕け散って
なんぼのキャラや 

59 :
>>58
ゼロミッション以降はどうなるの?
>>57
まさに女魔界村だなwww
骨にはならないが

60 :
ヱヴァQでシンジが綾波クローンに会って早々に、プラグスーツ黒なんだね。似合うけど綾波に黒は云々喋り始めてコイツマニーだなと思ったな

61 :
それ、おれ

62 :
それ、俺も思ってたw
綾波

63 :
何度もミスってスマん
綾波がなに着ようと勝手なのにシンジくんこだわりすぎw
さては白プラグスーツ着た綾波がオカズだったのか?w

64 :
プラグスーツは強化スーツに含めていいんだろうか・・・
強化スーツと言うと、普通は筋力強化するパワードスーツのイメージがある
プラグスーツをネタにするなら、スレタイ的には綾波のプラグスーツを破壊するアイデアとかをエロい方向で話せばいいのかな?
綾波をレイプしたい男に力ずくで引きちぎられる展開がそそるとか、そういう話を?

65 :
新劇場版で零号機ごと使徒に食われたレイがプラグスーツを
溶かされてみたいな展開かな。
>>53
アンドロメダ瞬を女の子と妄想して、武器や聖衣を破壊されていく
アフロディーテ戦でハアハアしていました。

66 :
しかし、そのシーンでレイが生きてるのが不思議だよな
助けだされたときにプラグスーツ着てなかったということは
プラススーツは使徒の体内で消化されたんだろうけど、
そうなったら普通ぬだろ

67 :
このスレの住人は、女性ダイバーが海中で化け物に
襲われ、ダイビングギアやウェットスーツを
毟り取られて犯されるというシチュでも興奮しそうだな。  

68 :
メトロイドのスーツ破壊はエロいなぁ

69 :
スーパーメトロイドのゲームオーバーシーンをよく見てみると
パワードスーツが砕け散った後、レオタードもお腹の辺りから
破れていってるように見えるのだが、まさか任天堂がやるわけないよな。

70 :
「スーパーヒロイン総合スレ」でかつて作品を投下していた者だけど、落とすのはここでいいのかな、っと…

71 :
良いどころか大歓迎

72 :
http://www.city-net.com/~dmm/pics/bgc4.jpg

73 :
変幻戦忍アスカを知ってるジジイの俺が来たぜ。
オッパイポロリが多く、少年ジャンプに掲載するのは際どいマンガだったな。
妹にあのエロいデザインの強化スーツをプレゼントする兄貴、変態すぎwwww
しかも、妹のスリーサイズ全て把握済みって、どんだけ変態なんだよwww
ていうか、いつ測ったんだよ。

74 :
日本・浪速県。午後2時40分、市街地からやや離れた場所にある近畿学院大学のキャンパスの正門から、一台のバイクが走り去って行った。
駆動音を響かせながら、バイクは市街地とは方向違いの住宅街へと向かっていく。
爽やかに吹く風が、彼女の着ているジャケットを揺らす。
10分弱ほどバイクを走らせると、辺りは大きめの一軒家が並ぶ住宅街だ。
その中の一軒の前で、ライダーはバイクを降りた。引き戸式の門扉を左側に開け、バイクを押して歩く。
ガレージに愛車を止めると、ライダーはヘルメットを脱いだ。肩の辺りまであるセミロングの黒髪がふわりと広がった。
ヘルメットを脱いだライダーは、透き通った美しい目、小ぶりな鼻、ふっくらとした唇をした若い女だった。
女は、「鷹野」と書かれている表札のインターホンを押してから、ジーンズのポケットから取り出した鍵で扉を開けて家に入った。
「ただいまー」
「由衣、おかえり」
由衣が家に上がると、個室から声が聞こえてきた。母親の真由美はいつも家で研究をしているのだ。
「母さん、父さんは?」
「お父さんなら今買い出し中よ」
「あー、それだったら電話して荷物取りに行ってあげた方が良かった?」
「いいわよ、そんなに量は無いと思うから」
真由美は国から災害救助用の強化スーツの開発を委託されており、もっぱら火事は父親の篤彦が担当している。
その篤彦は普段はホームページデザインの仕事で結構稼いでいるらしく、家計はかなり余裕がある方である。

75 :
「今日、撮影会が夕方からあるから、ご飯要らない」
「家で食べて行かないの?お父さんに頼めばすぐなのに」
「お父さんに頼んでばっかりじゃ悪いから」
「あ、そう」
「で、スーツの開発はどうなの?そろそろ?」
「今日か明日に試作品が出来るから、もうちょっとで上にデータを送る」
「分かった。頑張ってね」
由衣の自室は2階にある。白を基調とした部屋には、クマをモチーフにした可愛いキャラのカレンダーやイラストが飾られている。
「えっと、今日の集合場所は、っと…」
由衣は机の前に座り、パソコンを起動させる。最新式のCPUを記載しているだけあって、立ち上がるのが早い。
「18:00から江板スタジオで少人数撮影会、か」
撮影会のホームページの登録モデルの一覧を見ると、「森川栞」の名が見える。
「え、この子も登録してたの?」
大学の同級生である栞は、心理学部のオリエンテーションで席が隣になり、昼食をおごってあげた事から知人の関係になった。今は自分の家の近くのアパートに下宿している。
自分のパソコンのメールボックス、スマートフォンのメールをチェックしたが、新着メールは何も無い。
しばらくの間インターネットで様々なサイトを見ていると、内臓時計が16時をやや過ぎている事に気付いた。
「そろそろかぁ」
由衣は脱いでいたジャケットを再び羽織り、1階に降りた。
「じゃあ、撮影会に行ってきます」
「由衣、晩メシはいらんのか?」
「食べてくるから要らない」
由衣はバイクに跨り、フルフェイスのヘルメットを被ると、再び街中へと飛び出して行った。
「今日はここにしよっと」
定食屋チェーン店・さつき軒の駐車場にバイクを留める。
店に入って由衣が頼んだのは親子丼とうどんのセットだ。一応モデルを職業としているので、食事には気を遣っている方だ、と自負はしている。
10分弱経過しただろうか、由衣の座っている席に親子丼とうどんのセットが運ばれてきた
「いただきます」
由衣はパチンと割り箸を綺麗に割って、手をつけ始めた。
食べている途中、周囲の人間からの視線をチラチラと感じる。
(自分で言うのも何だけど、顔にはちょっと自信があるしね)
由衣は繁華街を歩いている時、芸能スカウトから名刺を貰うことがしばしばある。今までに7、8枚程度は貰っただろうか。
腹ごしらえを済ませると、由衣は再びバイクに乗ってスタジオへと向かった。

76 :
江板スタジオに到着すると、既にカメラマンが数人と、スタッフが待っていた。
「鷹野さん、こんばんは」
「由衣ちゃん、今日もお願いします」
カメラマンに向けて由衣もペコリと頭を下げた。何度も由衣を撮影している常連もいる。
「じゃあ一着目、撮影始めまーす」
一着目の由衣の服装は純白のワンピースに薄いピンクのカーディガンを羽織った姿だ。
口を閉じて微笑して見せたり、軽く歯を出して笑って見せたり、ウィンクをして見せたり、モデルのポーズ、仕草は千差万別である。
撮影スペースに置いてあるのは白い椅子だけだが、その椅子一つ取っても様々なポージングができる。
「鷹野さん、肘掛けポーズお願いします」
由衣はカメラマンに指示されると、椅子の背もたれに肘をかける。
動きの少ない仕事のように思えるが、カメラのフラッシュが焚かれる中、同じポーズを数分間崩さずにキープしなければならない。モデルとは集中力、体力の要る仕事である。
休憩を挟んで、二着目の衣装は緑と黒のチェックのスカートに黒タイツを履き、赤いカーディガンを身につけた姿だ。
黒タイツが由衣の長い美脚をより美しく見せてくれる。
部屋の柱から半身を出して挨拶をするようなポーズ、寝転んで男を挑発するようなポーズ、投げキッスをするようなポーズ、由衣は自分の思いつくままに様々なポーズを出していく。
「はい、お疲れ様でしたー」
スタッフが撤収を指示すると、カメラマン達は機材を整理し、その場から立ち去っていく。
「鷹野さん、また次も頼みますね」
「いえいえ、こちらこそ」
由衣は長時間のポーズ固定で固まりそうになった身体を柔軟体操でほぐしていた。

77 :
時計の針は午後9時を回っていた。由衣は別に夜の街に出て何か遊ぼう、というタイプでもないので、一直線に家路に向かう。
と、遠くから救急車のサイレンや、消防車のカンカンカンというサイレンが響いてきた。
(火事?私も火の元には気をつけよう)
そう思いながらバイクをふかそうとした所、突然、爆発音と震動がこちらに伝わって来た。
「きゃっ!」
驚いた由衣はバイクから落ちそうになった。こういう時は現場をさっさと離れないとロクな事にならない。そう思い、あらためてバイクを走らせる。
再び、爆発が起き、前方に路上駐車してある車が炎上し、由衣の道を塞いだ。
「な、何これ…」
熱風がこちらにまで伝わってくる。呆然としている由衣に向かって、前方の炎をかきわけて蛙がピョコン、ピョコンと飛んできた。
いや、その蛙は蛙というにはあまりにも大きすぎるものだった。人間の子供ほどの大きさだろうか、その蛙のように見える生物は、由衣を見るとまるで蛇か何かのように長い舌を出して威嚇してきた。
「いっ、嫌ああぁぁーーー!」
由衣は必でバイクを反転され、その場から猛スピードで走り去る。蛙がバイクを追ってくるかどうか気にする暇は全く無い。
由衣は別に小動物を手で触る事に対する嫌悪感は無い。しかし、見た事も無いような大きな蛙がいきなり夜道で出てきては逃げ出したくなるのも無理はない。
20分以上は走っただろうか、由衣はようやく家に辿り着いた。震える手でインターホンを押す。

78 :
「た、ただいま…」
ヘルメットを脱いだ由衣の顔は冷や汗まみれだった。いや、顔だけではなく身体全体にびっしょりと冷や汗をかいている。
「父さん、母さん、無事なの?」
由衣が慌てて居間に駆け込むと、篤彦がいた。
「おお、由衣、無事だったか。お前にメールしても電話しても繋がらなかったから心配したんだぞ」
「ねぇ、母さんは?」
「地下でスーツの調整を…あっ、いや、何でもない」
篤彦は思わず口を滑らせてしまった。
「スーツ?地下?何の事なの?母さんはどこなの?ねぇ!」
動転している由衣は篤彦の胸ぐらにつかみかかりそうになる。
「落ち着け、分かったから落ち着け!父さんも一緒に行くぞ」
篤彦は由衣を連れて「地下」へと向かう。
「倉庫」とされている小部屋を開ける。そこはいつも空きダンボールや梅酒の瓶やら、何かの書類やらが置かれている。
「ここだ」
篤彦がキーを取り出し、壁面のパネルに差し込むと、床が大きくスライドし、階段が現れる。
階段を下りると、そこは広い空間になっており、真由美がデスクの前に座って何かを調整しているようだった。
「初めて見たよ、こんな所…」
「企業秘密だからな。母さん、由衣が帰って来たぞ」
篤彦の声に真由美ははっと振りかえる。
「母さん、無事だったのね」
「まぁ、今日は家から一歩も出てないからね。由衣こそ無事で良かったわ」
「もしかして、スーツって…」
由衣の視線が、縦向きに設置されているカプセルの中にある真紅のメタリックスーツに移る。
「え?なんだ、父さんがバラしちゃったのね。しょうがないわね」
真由美は事実の発覚を怒るような事もせずに、黙々とスーツの調整を続ける。
「ねぇ母さん、このままじゃあこの家もやられちゃうわよ!逃げようよ!」
「家の大事な機能は全部地下に移してあるわ。地上はガワのようなもんだし」
慌てる由衣を余所に、真由美はなおもスーツの調整を続ける。
「こりゃえらい事になってるな」
篤彦が真由美のPCのモニターを覗き込むと、画面の右下に小さくテレビのニュースが映し出されている。
由衣が先ほどまで撮影をしていた江板スタジオの周辺はかなり被害が広がっているようだ。

79 :
「ねぇ、由衣、あなた、このスーツ着てみようと思わない?」
「え?ちょ、ちょっと、そんな…」
いきなりとんでもない事を真由美は言って来た。
「実戦データが無いと上からも予算は降りないから研究が続けられないの。大丈夫、アンタに危険手当はたっぷりと出すから。誰もタダで働けなんて言ってないわ」
「それって、私にあの化け物と戦え、って事?」
「そう」
「真由美、いくら何でもそれは無理だ!大事な一人娘をどう思ってるんだ!」
普段はのんびりした性格の篤彦だが、流石にこれには顔色を変えて反論する。
「本当だったら明日ぐらいにテストしてくれる人を探そうと思ったんだけど、もうそんな事言ってられないわ。はっきり言ってあれは警察じゃ無理よ」
「私がやってみる!」
「おいおい、由衣、正気か?」
「だって、誰もやろうとしないんだったら私がやるしかないじゃない!」
「アンタならそう言うと思ったわ。そこの空いている方のカプセルに入りなさい」
由衣が決心すると、真由美はまるでその答えを待っていたかのように頷き、由衣をカプセルの方へと誘導する。
「しばらくその中に入ってなさい。戦闘用に転用するのに10分ちょっとぐらいかかるけど」
真由美はスーツと由衣のデータを合わせるために作業を急ぐ。
「由衣…」
押しの弱い性格の篤彦は真由美の勢いにもうこれ以上強くは反論できなかった。
「自分で言うのも何なんだけど、かなりの自信作よ。これさえあれば30人力、いや、50人力だから」
「なんだか…変な感じ」
カプセルの中でじっと立っている由衣のデータがスーツに転送されているようだ。まるで何かの力が身体から抜き取られていくような感覚だった。

80 :
「じゃ、スーツの装着を始めるわよ。準備はいい?」
「うん、始めて!」
カプセルの中にいる由衣に光が照射され、全身が防御フィールドの白い光で包まれる。あまりの眩さにたまらず目を閉じてしまう。
その中で、由衣の着ているジーンズ、ジャケット、ブラウス、靴下が分解され、光の粒子となって周囲に溶け込むようにして消えていく。
由衣は上下お揃いで、レースが入った純白の下着姿になった。だがその下着も光に溶けるように消え、由衣の一糸纏わぬ美しい裸身が露わになる。
形の良い胸、首筋から背中にかけての美しいライン、すらりと伸びた美脚が晒されている。
(身体が…なんだか…あったかい…)
優しく白い光に包まれ、由衣は身体の中から湧きあがるような温もりを感じていた。そっと目を開けると、目の前は真っ白で何も見えない。
まず、由衣の腰の前後に真紅のパーツが出現し、それぞれ尻と股間にぴったりと合わさる。女性として最も大切な部分をしっかりと保護するパーツである。
「うっ、あううっ・・・」
装着時の締め付け感に由衣は身をよじる。だが、その間にも次なるパーツが装着されていく。
つま先、脹脛、膝、太ももの順に彼女の美脚を守るパーツが装着されていく。腰にもパックルが装着され、由衣の腰回りを保護する。
両太股の装甲にはホルスターが付属しており、右側にはマルチマグナム、左側にはサイコブレードが内蔵されている。
下半身が全て装甲に覆われると、次は剥き出しの上半身も装甲で覆われる流れとなる。手がメタルグローブに包まれ、下腕部、肘、二の腕も真紅の装甲に覆われる。さらに、両肩にもショルダーアーマーが装着される。
次いで、背中の方から、胸の方から、腹の方から装甲が出現し、意思を持っているかのように由衣の上半身へと密着していく。
バックパック、姿勢制御機能を司る背部パーツが背中に装着され、次いで特に衝撃に対して強く作られた腹部・胸部パーツが背部パーツとぴったり合わさり、由衣の乳房を優しく包み込む。

81 :
「はうううっっ!」
確実に自分が違う存在に変容している、違う存在に生まれ変わる、その快感に由衣は声を上げてしまう。
首筋から下は全て装甲に包まれており、いよいよ頭部への装着が始まる。
由衣の黒髪がふわりとかきあげられたかと思うと、頭部の周辺にパーツが現れ、それが由衣の頭部を覆ってヘルメットとなり、黒髪も後頭部に収められた。
空気圧ロックが作動し、後頭部がロックされる。これで由衣の身体で露出しているのは顔面のみとなった。
口元にマスクが現れ、鼻と口が覆われる。マスクにはレスピレーターがあり、スーツ装着時の酸素吸入を補助すると共に、外部からの悪臭や有毒ガスを防ぐ働きも果たす。
目元に顔面保護及び、情報表示の役割を果たすゴーグルが降りると、外見から装着者の正体を窺い知る事は出来なくなった。
最後に半透明のバイザーが降りると、変身の終わりを告げるかのように防御フィールドがパッと弾け、全身に真紅の装甲を纏った由衣の姿が露わになった。
「終わったわね。出てきなさい」
真由美に促され、由衣は一歩一歩、慎重に部屋の床を歩く。
「私…」
由衣は大きな鏡の前に立ち、自分の全身を見渡す。
全身くまなく装甲で覆われており、素肌で露出している部分はどこにもない。
それなのに、装着した瞬間の締め付けられているという感触は今は無く、身体の奥底から暖かみと共に力が湧いてくる感触がした。
「コードネーム:レッドトルネード。由衣、あなたの新しい姿よ」
真由美はレッドトルネードを見て満足そうに笑みを浮かたる。傍にいる篤彦は何が何だか分からない、といった様子で呆然としている。

82 :
「レッドトルネード、そこのリフトに乗りなさい」
トルネードは真由美に言われるままにリフトへと歩を進める。リフトが上昇した場所は、由衣がいつもバイクを止めているガレージだった。
「私のバイクが、えっ?何、何これ?」
レッドトルネードー由衣の愛車は赤をベースとしたカラーリングになっており、何やら様々な機器も追加されている。
「レッドジェッターよ。そのバイクはトルネードとリンクしてるわ。つまりアンタが変身したらそのバイクもそうなる、ってわけ。さぁ、乗りなさい」
「母さん、いつそんな事したの?」
「話は後よ。ハンドルを握ってるだけで現場に着くから早く乗って」
「わ、分かったわ」
トルネードはレッドジェッターに乗る。すると、バイクが意思を持っているかのようにひとりでに動き出した。
「敵が暴れている現場は江板スタジオから南西500メートル…ジェッターでぶっ飛ばしたら5分とかからないわ」
「…で、由衣はちゃんと無事に帰ってくるんだろうな?」
「戻ってくるわよ。まぁ正座でもしてそこで見てなさいよ」
未だオロオロしている篤彦に対し、真由美は微笑を浮かべた。
「こ、これって緊急車両じゃないでしょ?道路交通法違反じゃないの?」
「後で私が申請しておくから、しっかりとハンドルを握ってなさい!ボーっとしてると振り落とされるわよ!」
トルネードの乗るレッドジェッターは、現場まで最短距離で到着するように自動操縦のプログラムが組まれている。
赤信号も無視して走るのだが、障害物があれば自動的に避ける仕様になっているので、事故を起こす心配は無い。
「なんだあのバイク!」
「危ねーぞコラー!」
そんなトラック運転手からの罵声が聞こえたような気がしないでもないが、今のトルネードにはそんな事を気にしている余裕は無い。

83 :
街のあちこちから黒煙が上がっていた。中にはまだ赤々と燃えている建物すらある。
辺りには人影は全くない。無人と化しつつ街並みを、巨大な二足歩行の蛙の化け物がのし歩いていた。
不気味な双眼が周囲を睨みまわした。次に獲物とする対象を探しているのだろう。
と、その時、辺りに凛とした声が響いた。
「そこまでよっ!」
ガマ怪人が声に気づいて振り返る。そこには人影があった。
しかし、その人影は既に人間の姿をしてはおらず、真紅の装甲に全身を包まれており、声を発した人間の表情を見る事は出来ない。レッドトルネードの登場だ。
「コイツがアンタの初めての相手。思う存分やっちゃいなさい。戦い方はスーツにインプットされているわ」
「分かった、って、どうしたら…あっ、そうか!」
真由美の指示に従うかのように、トルネードは右腰にあるマルチマグナムを抜き放つ。
ガマ怪人が、これでも喰らえ、とばかりに、周囲にでもいたのか、先ほど由衣が遭遇した巨大な蛙が次々と集まってくる。
トルネードのバイザーには、敵と認知された巨大な蛙にロックオン表示がされている。
「行くわよ!」
マルチマグナムから発射される光線が的確に蛙を捉え、そのたびに跡形も無く蒸発させていく。
ものの10秒ちょっとで蛙は全て融けて無くなった。
「次はアンタね!」
部下を全滅させられたガマ怪人は動揺したのか、少し後ずさりする。だが、顎を大きく上げて、何か粘液のようなものを飛ばす。
「きゃっ!」
トルネードのバイザーには、敵がこちらに危害を加えるような事を感知する機能がある。
スーツの性能も手伝って、トルネードの身体が素早く右へと飛び、その後を空しく粘液が通過する。
粘液が付いたアスファルトは煙を上げて凹んでいく。強酸性の溶液なのだ。
間髪入れず、ガマ怪人は眼を光らせて破壊光線を飛ばす。
「あっ、きゃあああっ!」
トルネードは反応しきれずに直撃を喰らってしまう。吹っ飛ばされこそしなかったものの、衝撃がスーツの上からでも伝わってくる。何かで殴られたような感覚がした。
さらにガマ怪人は長い舌を伸ばし、ムチのようにしならせて向かってくる。アスファルトが抉られかねないほどの強烈な叩きつけ方だ。

84 :
「奴は両生類よ、マルチマグナムで弱点を突けるわ!」
「蛙だったら…そうか、その手があった!」
トルネードのマルチマグナムから冷凍光線が発射され、ガマ怪人に直撃した。
あまりの寒さに動きが鈍り、それを見てトルネードが反撃に出る。
左手から繰り出されたパンチがガマ怪人の右目に直撃し、その右目が完全に潰れ、辺りに体液をまき散らした。
さらに、右脚で思いっきりキックをすると、ガマ怪人の身体は10数メートル以上後方に吹き飛んだ。
「トルネード、トドメよ。サイコブレードを使って」
「よおし、見てなさいよ!」
トルネードは左腰のホルスターからブレードを抜き放つ。ビーム状の刀身が伸びる。
「こんなもの!」
ガマ怪人は舌を伸ばしてくるが、ブレードがその舌を綺麗に断ち切った。
もはやトルネードに対する手段が無くなったと悟ったガマ怪人に対し、トルネードがブレードを振りかざす。
感情が高ぶり、全身の血が沸騰するかのような熱ささえ、由衣は感じていた。
眼の前の存在を、自分の全身全霊をもって消し去るような思いで技を繰り出す。
「トルネードスマッシュ!」
出力を高めたビームブレードを下から上に豪快に一閃すると、ガマ怪人の身体は縦に真っ二つに裂け、爆裂して辺りに汚れた液体をまき散らかした。
「ふぅ…」
どうやら初陣を勝利で飾れたようだ、と由衣はマスクの中で一息ついた。
「私がこんなに強くなるなんて…」
強化スーツのあまりの性能に驚いていると、再び真由美からの通信が入る。
「終わったみたいね。戻ってらっしゃい。スーツの解除方法を教えるから」
「そういう事は最初に教えてよ!」
「しょうがないでしょ、何もかも急だったんだし」
とにかく初めての任務を成功させたトルネードは、レッドジェッターに乗って家への路を急いだ。

85 :
「お帰り、トルネード、いや、由衣」
「よく帰ってきたな!よく帰ってきたな!」
無事帰還したトルネードを真由美と篤彦が迎え出る。
「で、変身を解くにはどうしたらいいの?」
トルネードはヘルメットをまさぐるうちに、左側にある小さなスイッチに手を触れた。
すると、中から水蒸気が勢いよく吹き出し、後頭部のロックが解除され、ヘルメットが手動で着脱出来る状態になる。
「ぷはああぁぁっ!」
中からレッドトルネードー由衣の素顔が露わになる。空気圧でロックされているヘルメットの中はいつの間にか湯気が溜まっているような状態で、由衣の顔は汗だくの状態だった。ひんやりとした空気が顔に当たり、心地良かった。
「あー、気づいちゃったのね。それ、ずーっと着っぱなしだと熱いから、時々そうやってガス抜き出来るようにしてあるの」
「で、どうやって変身を解除するの?」
「そうだったそうだった、また忘れる所だった。スーツ脱ぎたかったら『着装、解除!』って言ってみて」
「着装、解除」
由衣がそう言うと、再び白い防御フィールドが展開され、首から下が未だ真紅の装甲に包まれた由衣の全身を覆い隠す。
全身から装甲が剥がれ落ちるように離れていき、乳房を覆う胸部パーツも、女として最も大事な部分をしっかりと守る股間のパーツも、腕や肩を守る装甲も、美脚を守る装甲も、全てが光の粒子となって消えていく。
「はあぁぁ…」
中から現れたのはスタイル抜群の由衣の裸身だ。由衣は変身が解除されていく中、強張っていたものが緩んでいく感覚と、身体から力が抜けていくような奇妙な感覚を味わっていた。
変身時、光の粒子となって消えていた由衣の純白のショーツとブラジャーが再び着せられ、さらにジーンズ、ブラウス、ジャケットも再び元通りに着せられる。
防御フィールドが弾けると、由衣は閉じていた目をそっと開けた。変身する前の服装に戻っている。レッドトルネードは鷹野由衣という一人の女性に戻ったのだ。
強化スーツはというと、変身時に由衣が入っていた隣のカプセルに元通りに戻っていた。
「お疲れ様。後、アンタのスマホ、私に預けてくれない?今晩中にやっておきたい事があるから」
「メアドとか見ないでよ」
「そんなの見てどうするのよ。とにかく、これだけはすぐにやっておきたい事があるの。疲れたでしょ?お風呂湧いてるから入りなさい」
「由衣、父さんはもう寝るぞ。お前も早く寝なさい」
「分かったわよ」
変身を解いた由衣はドッと疲れたような気がした。気が付いたら肩ではぁはぁと荒い息をしていた。
「レッドトルネード、赤い竜巻、かぁ…」
由衣は浴槽に身を沈めながら、今日の疲れを癒そうとしていた。
湯の中で腹に「の」の字を描くようにしてマッサージをする。こうする事で全身の血の流れが良くなる。
今日は疲れたせいか、もう少し長く湯舟に浸かりたい気持ちだった。
「それにしても、あの化け物って何だったんだろう…今は考えても仕方ないか」
こうして由衣はしばしの至福の時に浸っていった。
レッドトルネードー鷹野由衣の戦いは、まだ始まったばかりだ。

86 :
以上です。スーツ破壊でも何でもないですが、ご好評であれば次回以降も執筆する予定です(一応プロットは考えてあるので)。

87 :
ついに、作品キタGJ

88 :
続きを期待してあげ

89 :
GJ
変身過程描くとは出来るヤツだな
やっぱボディスーツの下は全裸じゃなきゃな

90 :
い、いや、サムスみたく肌着にもう一枚着ているのもアリだ

91 :
>>86
GJ!
これいい、いいわ
続き是非頼む

92 :
http://www.youtube.com/watch?v=Brf-6kl0_6s
http://www.youtube.com/watch?v=4l1wgt340ec
http://www.youtube.com/watch?v=N9wigyMZBe8
どのサムスがいい?

93 :
優しい朝の光が由衣の自室に差し込んでいる。カーペットの上に敷かれた布団の中で、由衣は身体をもぞもぞと動かしていた。
「由衣ー、早くシーツ出せよー」
階の下から篤彦の声がする。
「もうちょっと寝かせてよ、まだ8時半なのに…」
由衣は掛け布団にくるまりながらしぶしぶと起き上がる。今日は土曜日で由衣が取っている講義は無いのだ。
布団の下は全裸である。気持ちがいいし、身体に締め付けるものが無い方が調子がいいので、高校生の時からずっとそうしている。
布団にくるまったままパソコンの電源を入れ、スポーツ紙・サンサンスポーツのサイトをチェックするのが由衣の朝の日課である。
自分が好きなプロ野球関連の記事や、芸能関連の記事が一通りまとめられており、ここと同じくスポーツ紙のスポーツジャパンのサイトを見れば政治・社会以外の世の中の話題はそれなりに分かってしまう。
身体が温まって来た所で、由衣は布団を脱ぎ、下着を身につけ始める。室内とは言えひんやりとした空気が由衣の裸に突き刺さる。
「おはよう、父さん」
着替えを終えた由衣がシーツを持って洗面所に行くと篤彦がいた。
「おはよう。遅いぞ由衣、洗濯し始めた所だからシーツを入れておけ」
「母さんは?」
「地下にいる」
洗面所では全自動の洗濯機が回っている。一時停止のスイッチを押し、シーツをその中に叩き込むと、由衣は顔を洗いだした。冷水が眠気を覚ましてくれる。
居間のテーブルに向かうと、篤彦が作った出汁巻きが置かれていた。由衣は炊飯器からご飯をよそい、椅子に座る。
「いただきます」
目の前の皿に置いてあるキュウリの漬物をかじりながら、由衣は飯を食べる。何気ない鷹野家の朝であり、何気ない鷹野家の簡素な朝食である。

94 :
(何気ない日常って大事だね)
昨日のガマ怪人の襲撃に巻き込まれた人はそんな何気ない日常を味わう事が出来なかった。
だからこそ、こうして今のところは平常な生活を送れている自分は感謝しなければならない。由衣はそう思った。
ご飯を食べ終えた由衣はちゃんと食器を洗い、洗い棚に置いた。
次いで、歯を磨くべく再び洗面所の前に立つ。歯を磨きながら、櫛で髪の乱れを直していく。
髪を整えると、再び自室へと戻り、メイクを始める。普段、由衣はそれほど化粧に時間はかけない。厚化粧は好きでないし、長くても10分程度で済ませる。
化粧を終え、由衣は地下に降りる。昨日真由美に預けていたスマートフォンを受け取るためだ。
「由衣、おはよう
「おはよう、お母さん」
「はい、これ昨日アンタから預かっていたやつよ」
真由美は由衣に端末を手渡す。外見は以前自分が使っていたスマートフォンにしか見えない。しかし、色は以前の黒ではなく赤だし、微妙に形状も違う。
「これ、機種が全然違うじゃないの」
「スーツがそれに入ってるのよ。どこにいても変身できるようにね」
「ふーん…で、私の前のスマホは?」
「心配しなくても、ここにあるわよ。何かの予備にでも置いておきなさい」
由衣が以前使っていたスマートフォンが真由美から手渡される。カプセルの方を見ると、以前あったスーツが無くなっている。端末に収納されたからである。
「操作は前のと一緒だから大丈夫よ。高い所から落としても水に浸けても壊れないようになってるから、これ」
「要するに、変身ブレスみたいなものなの?」
「そういう事。だから、いつも大事に持っておきなさい。充電の必要も無いから安心してね」
「本当に?」
「本当よ、もう。空気中の光を吸収して自動的にエネルギーが充填される仕組みになってるんだから。それと、変身する時は前と同じ『着装!』、変身を解くときには『着装解除!』って言ってね」
真由美の説明を聞いている間、由衣は端末を少しいじってみた。前に使っていた機種とさほど操作感覚や方法に違いは無い。

95 :
「後は私が説明するよりも実際に自分で使ってみた方が早いと思うわ。母さんは研究を続けているから、何かあったらまた連絡して」
「ありがとう、お母さん!」
新しい装備を手に入れた由衣はワクワクしながら自室に戻る。以前使っていた機種を予備として机にしまいこむと、新しい機種を使いだしてみる。
念のためにメールアドレスや電話帳、ブックマークも見たが、全て以前のものがそのまま移されている。
「お母さん、やるなぁ…」
由衣がとにかく凄いと感心しながら端末をいじっていると、メールが送られてきた。
「ん?何だろ。母さんからか」
メールの題名には「注意喚起」とある。中身を見てみると、由衣の顔色が曇った。
【昨晩、浪速県阿波路区にて、変体を相次いで発見。いずれも首には絞められたような跡があり、警察は人事件として捜査。
半径500メートル圏内で比較的短い時間内に発生している事から、警察は同一犯の犯行も視野に入れて捜査】
一見、ありがちな社会面の記事に見えるが、先日のガマ怪人による犯行も浪速県で起きていることから、関連性が疑われる、といった趣旨の事が真由美からのメールに書かれている。
となると、もしかしたらまた怪人が自分の近辺に現れるかも知れない。由衣は覚悟を固めた。
と、今度は電話がかかってきた。大学の知人・森川栞からの電話だ。
「はいもしもし、鷹野です…あ、森川さん?」
「由衣ちゃん、今日時間がある?」
「あ、まぁ、今から外に出ようと思っていたんだけど…」
「じゃあわたしと一緒に買い物に行かない?」
「いいよ。で、どこに行くの?」
「安部乃ミューズモール。新しく出来たんだけど、あそこ一日で回り切れないほど大きいらしいよ」
「じゃ、そこにしよっか。で、どこで待ち合わせるの?」
「由衣ちゃんの家でいいんじゃない?そこからニケツで行けば時間かからないでしょ?」「えー?私運転ヘタだし、まだ免許取って1年経ってないし、警察に見つかったらヤバいし」
「そうなの?残念だなあ」
「向こうで落ちあいましょう。着いたらまた連絡するわ」
「現地待ち合わせ?ま、いいっか。わたし、今から出発したら10時くらいには着くと思う」
「10時ね。分かったわ。じゃ、向こうで会いましょう」
外出した所で別に何をするというわけでも無かったが、モデルとしての活動のために、ブランド物の服の研究をするには丁度いい機会だ、と思い直した由衣は、外に着て行く服装を選び出した。
「お父さん、安部乃ミューズモールに買い物にいってくる」
「安部乃って、あそこか?新しく出来た所か?」
「せっかくだから、早い時間に見てくる。いくら遅くても夕方には戻るわ。行ってきます!」
台所で洗い物をしている篤彦に挨拶をすると、由衣はバイクに乗り、家から出発した。
「…ったく、ニケツで行こうなんて。私のバイクはタクシー代わりじゃない」
由衣は愚痴を漏らしながらも、愛車で颯爽と街中を走り抜けていった。

96 :
安部乃ミューズモールはいくつかの建物が合わさって出来た大型商業施設だ。
3階建ての広々とした建物が複数あり、出入口を把握するだけでも大変である。
「森川さんはどこかな、っと」
時計の針は9時55分を指している。由衣は先に1階の中央エントランスに先に着いたので、電話をかけようとした。すると、遠くから声が聞こえた。
「由衣ちゃーん!」
栞が端末で連絡しようとしている由衣の姿を見つけて駆け寄って来た。
水色の薄いワンピースに上着を羽織っており、黒髪は肩の上あたりまでしかなく、やや短めだ。
栞は由衣と同年齢ではあるが、160センチ前後と言う背丈、美人というよりは可愛い系、やや子供っぽい言動もあって実年齢より幼く見られがちである。
「おはよう、森川さん」
「待たせちゃってごめんね」
「別に待ってないわよ。時間にも間に合ってるし」
「20分くらい前に駅に着いたんだけど、そこから迷って迷って…ここの地下って巨大なダンジョンだね」
安部乃の街の地下通路は改修工事もあって回り道しなければならない所もあり、複雑に入り組んでいる。栞が迷うのも無理は無い。
「そんなに迷ったの?道案内の看板も一杯あるけど…」
「わたしの地元ってそんなに大きくないもん。というわけで、案内お願いね」
「無理よ、自分もここは初めてなんだし」
「じゃ、二人で行きましょ。迷いながらでも何とかなるでしょ」
「ちょ、ちょっと!」
先にショッピングモールの中に入った栞の後を由衣も追っていった。
「あー、スマホにオートマッピング機能って無いのかなー、自分が一度通った所を明るく表示してくれる機能とかさぁ。私のケータイって古いからそういうのって無いんだよね」「それに近いのだったらあるんだけど…」
「えっ、ホント?」
「私もこの機能使うの初めてなのよ、こないだ機種変更したばっかりだから」
二人は当てもなくブラブラとモール内を歩いていた。モール内は本当に広く、自分の現在位置を示してくれる目印が無いと迷いそうだった。
「あ、出たわ。ここよ」
「どれどれ、っと」
由衣の持つ端末には、周囲の建物の形状とともに、現在いる位置のマークが示されている。流石に周囲の店の名前までは表記はされなかった。

97 :
「このへんは全部レディスショップみたいね」
「そうなの?じゃ、片っ端から見て回るよ」
「片っ端?森川さん、全部の店を1日で見て回るつもりなの?」
「訓練されたモデルなら1店10分くらいで済むよ」
「訓練された、ねぇ…」
栞は手近なレディスショップを見つけると、由衣を置いてさっと中に入って行った。
まず目をつけたのは「奉仕品」と書いてある一角だった。ハンガーを動かし、自分にあったサイズを目定めする。
栞の手が「S」と書かれているタグがついているハンガーで止まった。栞の服のサイズ
はどうやら「S」のようだ。
「あ、これいいかも」
一方の由衣は、チェックのスカートと、赤のニットセーターを手に取っていた。会計を済ませ、店の外に出る。
栞はと言うと、ようやく靴下を一足持ってレジに立っていた。時計の針を見ると店に入った時から15分が経過していた。
(訓練されてるなら10分くらいで済むんじゃなかったの?)
この調子だと全部の店を回るにはどれぐらいかかる事やら。由衣はため息をついた。
「じゃ、次いくよ」
栞は由衣を連れて隣の店に入った。棚を一通り見渡す栞の目線はとてつもなく速く、由衣はそのスピードについていけない。
「ここはパス。次!」
「森川さん、もう終わり?」
「そう。素早く見て行かなきゃいくらあっても時間が足りない」
(早いんだか、遅いんだか…)
栞は買おうと決めた物は買うかどうかやたら時間をかける割に、興味のない物は本当に流し見程度でサッと済ませるのだった。
あちこちの店を回っているうちに、時間は11時30分を過ぎていた。

98 :
「森川さん、そろそろお昼にしない?」
「まだちょっと早いと思うけど」
「こういう所は昼時になるとどこも一杯よ。その前に食べちゃうのが基本だから」
「そうなんだ。じゃ、そうしましょ!丁度お腹も空いてきたしね」
二人はショッピングモール内のフードコートへと向かった。
フードコートには、長崎名物ちゃんぽんのリンボーハットや、うどんで有名な角亀製麺や、ラーメンの天下無双など、いろいろな店があった。
昼時が近くなり、客が大分増えてきたが、丁度いい所に二人分の空席があった。
「あー、買い物すると疲れるねー」
栞は手に下げていた大きな紙袋を床に置き、ドスンと椅子に座った。由衣の方はそれほど買ってはいない。小脇に抱えられる程度の量だ。
栞は小銭入れを取り出し、中身をまさぐった。そして、しまった、という顔をした。
「…由衣ちゃん。非常に申し訳ないんだけど、1000円貸してくれない?」
「もしかして、予算オーバー?」
「そう、その『もしかして』なの。電車代しか残ってない。バイトの給料が2日後に入るからその時返すわ。ねぇ、お願い」
「仕方ないなぁ」
頼まれると断り切れない由衣は、しぶしぶ1000円札を1枚取り出し、栞に手渡す。
酒も煙草もやらない由衣は普段それほどお金を使う生活はしていない。小遣いに加え、アルバイトでやっているモデルの収入もある。
しかも、先日ガマ怪人と戦った「危険手当」も入る見込みなので、懐具合にはかなり余裕がある。
席に戻って来た栞は長崎ちゃんぽん、由衣は天ぷらうどんをお盆に乗せていた。
「由衣ちゃんってあっさり物が多いね。身体に気を使ってるの?」
「うん。一応モデルの仕事やってるからね」
うどんを食べながら、由衣は足元にある大きな紙袋に目をやる。
「森川さん、いつも買い物にどれぐらい使うの?」
「その森川さんっていう言い方、堅苦しくてあんまり好きじゃないんだ。栞か、栞ちゃんでいいよ」
「じゃあ…栞ちゃん、いつも買い物でどれぐらい使うの?」
「最低でも4、5000円。もしかしたら1万円行くかも知れない。服だけじゃなくって、食べ物も買わなくちゃいけないし」
「そっか、栞ちゃんって下宿してるんだったね。自炊とかしてるの?」
「結構やってるよ。最初はずっと外食ばかりだったんだけど、スーパーで色々買うようになってからは逆に外に食べに行く方が面倒になっちゃったから」
「一人暮らしって何から何まで全部自分でやんないといけないから、本当に大変でしょ…あ、電話だ」
由衣が端末を手に取ると、真由美からの電話がかかってきていた。

99 :
『由衣、出動よ。敵が、怪人が出たみたいよ』
「母さん?母さんね。出た?どこに出たの?」
『都留橋って知ってる?』
「何年か前に行ったことはあるけど…」
『今、安部乃にいるんでしょ。そこからだと割と近いはずよ。急いで。何人かやられてるから』
「わかった。すぐ行く」
由衣は端末をポケットに入れると立ち上がった。まだ食べかけの天ぷらうどんが少し残っていた。
「由衣ちゃん、どこに行くの?」
「急な用事が出来たわ。また後でね!」
「ちょ、ちょっと由衣ちゃん!」
由衣は自分が買った荷物を引っつかむとフードコートを飛び出して行った。
階段を駆け下り、全速力でバイクが止めてある地下駐車場に向かう。
駐車料金は?と料金一覧表を見てみると、駐車から2時間は無料、と書いてあった。
今から後2分でちょうど2時間となる。つまりギリギリ無料で済んだと言う事である。
ツイてる、と感じながら、由衣は買った物をヘルメットの収納スペースに押し込み、懐から端末を取りだす。
身体を右に大きくひねり、端末を持った右手を前に出し、由衣は叫んだ。

100 :
「着装!」
誰に教えられたわけでもないのに自然と変身ポーズらしきものが出た。
言葉が響き終わった瞬間、端末が強く光り輝き、白い防御フィールドを生成して由衣の全身を包み込む。
身につけている靴が、靴下が、ズボンが、上着が、光の粒子となって身体から離れ、端末に吸い込まれていく。
由衣の身体に残されたのはショーツとブラジャーだけになったが、それもすぐさま白い光となって消えていく。
暖かい光に包まれ、一糸纏わぬ姿となった由衣は次なる変容に入る。
つま先から、手のひらから、何かが駆け上がっていくような感覚がする。
「くうううぅぅっっ!」
白い光の幕は膝から腰へと、肘から肩へと上がっていき、胸や首筋まで覆いつくすと強く発光し、白と赤のツートンのインナースーツへと変化する。
由衣はそっと目を開ける。ぴっちりとしたスーツが首から下をくまなく覆っている。
形のいい乳房、腰のくびれ、すらりとした脚など、由衣の身体のラインがくっきりと出ている。
(何だか恥ずかしい…)
だがその恥ずかしさを味わうまでもなく、装甲を受け入れる準備が整った由衣の変身は次なる段階に入る。
尻と股間を挟みこむようにして前後からパーツが出現すると、ぴったりと合わさり、由衣の大事な部分をカバーする。
次いで腰部にパックルが装着され、端末が内部に収納される。スーツの制御を補助するためである。
つま先、脹脛、膝、太ももに装甲が密着し、下半身の装着が完了する。さらに手、下腕部、肘、肩にも次々と装甲が装着されていった。
そして、背部パーツ、胸部パーツ、腹部パーツが出現し、由衣の身体を包み込むように密着し、上半身のスーツも完成した。
最後に頭部の装着である。ヘルメットの装着を受け入れるべく、由衣は目をそっと閉じる。
後頭部、左側頭部、右側頭部の三つのパーツが合わさってヘルメットの形になり、由衣の頭に装着される。
いよいよスーツの装着も完成段階に入る。口元にマスクが装着され、鼻と口が覆い隠される。最後に唯一露出した目の部分もゴーグルが装着されて覆い隠され、その上から半透明のバイザーが下りた。
防御フィールドが弾けると、そこには真紅の戦士・レッドトルネードの姿があった。
由衣の愛車も着装と同時に高性能バイク・レッドジェッターに変化している。
「都留橋…遠くはないと思うんだけどね」
レッドトルネードはレッドジェッターに跨り、地下駐車場を飛び出して行った。

101 :
「はいはい、危ないから近寄らない、近寄らない!見世物じゃないんだぞ!」
都留橋近辺はあちこちで警察官が警戒にあたっており、一般人の立ち入りは厳しく規制されていた。
多数の警察官があわよくば様子を見に行こうとする野次馬の排除に務めていた。
その都留橋に近づきつつあるレッドトルネードの視界にもその光景は見えている。
警戒区域内に奴が、怪人がいるに違いない。虎穴に入らずんば虎児を得ず。覚悟を決めたレッドトルネードはさらにジェッターの速度を上げる。
警察官の前で、トルネードを乗せたジェッターの車体が躍動した。
「そいやっ!」
レッドジェッターの車体は6メートル以上高く飛び、警察官の頭上を大きく飛びこして向こう側に着地した。
「ちょ、ちょっと君、どこに行くんだね?」
警察官の声はもちろんレッドトルネードには伝わらない。
「場所的にはこのあたりのはずなんだけど…」
レッドトルネードはジェッターを走らせるが、怪人は一向に出現しない。
『トルネード、上っ!』
「上?きゃあっ!」
いきなり真由美からの通信が入る。「バイクで走っている途中の真上」という、真由美もトルネードも全く想定外の場所からヤモリ怪人が出現し、ジェッターに乗っているトルネードに襲いかかった。
「くっ、うああっ、離れろっ!」
トルネードは蛇行運転をしてヤモリ怪人を引き剥がそうとするが、ヤモリ怪人の力は意外に強く、トルネードの背中にくっついて離れない。
そうこうしているうちに、目の前に建物が迫ってくる。このままでは衝突だ。
トルネードは本能的に急ブレーキをかけた。ジェッターの後輪が大きく横滑りし、その勢いでヤモリ怪人は振り落とされる。

102 :
「覚悟しなさい!」
トルネードはマルチマグナムをヤモリ怪人に向けて構える。ヤモリ怪人はそれを嘲笑うように、周囲の風景と自らを同化させて姿を消した。
姿を消しておけばほぼ不意打ち同然で攻撃出来る…そう思ってトルネードに飛びかかった。
が、次の瞬間、ヤモリ怪人の身体はマルチマグナムの弾丸を受けて大きく吹き飛んでいた。
「おあいにく様。こっちはアンタの動きなんか丸見えよ」
トルネードのバイザーにはヤモリ怪人の輪郭線がくっきりと映し出されている。熱源を、生体反応を感知しているのだ。
かなわない、と思ったヤモリ怪人は路地裏に逃げ込む。ジェッターでは追って来れない狭い所に逃げ込もうというのだ。
「もう逃げても無駄よ!」
マルチマグナムの弾丸がもう一発怪人に命中し、怪人は地面にもんどり打って倒れる。かなりのダメージを与えたようだ。
ヤモリ怪人はヤケになったのか、尻尾を大きく振り回してトルネードを打ちつけようとする。
しかしトルネードは尻尾をがっちり両手で掴むと、自分の身体を軸にして怪人の身体を大きく振り回し始めた。ジャイアントスイングである。
十分に回転した所で手を離すと、怪人の身体は100メートルほど先まで投げ飛ばされた。
よろめきながら起き上ったヤモリ怪人に、サイコブレードを抜き放ったトルネードが迫る。
「トドメよ!トルネードスマッシュ!」
サイコブレードの刀身が、怯えるヤモリ怪人の身体をまず左右に一閃し、さらに頭から真下へと切り下げられる。
ヤモリ怪人は何かを吐きだしそうな不気味な叫び声を上げたかと思うと、大きく爆散した。

103 :
「やった…のね」
トルネードはブレードを左腰のホルスターに収納し、腰部のパックルに収納されている端末を操作し、レッドジェッターを呼び寄せる。
それとほぼ同時に真由美から通信が入る。
「任務完了ね。とりあえず帰ってきなさい」
「分かったわ。すぐ帰る」
真由美からの通信を切ると、トルネードはヘルメットの左にあるボタンを押す。
プシュウウウウッ!
後頭部のロっクが外れ、水蒸気が勢いよく吹き出す。目元のバイザー、ゴーグルも、口元のマスクも解除され、由衣の素顔が現れた。
「ううーーっ!」
ヘルメットを脱ぐと、由衣は汗だくの頭を左右にブルンブルンと振り、汗を飛ばした。心地良い風が彼女の顔に当たった。
と、端末がメールを受信した事を知らせてくる。
「誰だろ」
由衣がメールの中身を見てみると、栞からのものだった。戻ってこないから先に帰る、という内容だった。
着信履歴を見てみると、不在着信が4件もあった。これも全て栞からのものだった。
由衣は人目に着かない場所にジェッターで移動すると、栞に連絡を入れた。
「あーゴメンゴメン、栞ちゃん?さっきはごめん」
「30分待っても戻ってないし、電話もつながらないし、本当にどうなってんのよ」
「本当に急な用事だったの。親にすぐに戻ってこいって言われたから」
「せっかくの休みが無駄になっちゃった気分なんだけど」
「またご飯おごってあげるからさぁ、怒らないで」
「まぁそれならいいけど…約束よ?」
「うん、約束する。じゃあね」
栞との電話を切った由衣はふぅと一息付くと、端末をパックルに戻し、ヘルメットを被り直す。後頭部がロックされ、マスク、ゴーグル、バイザーが装着され、再びフルフェイスの状態に戻った。
怪人との戦いはいつ何時あるか分からない。そのたびに由衣は何かと理由をつけて現場に向かわなければならない事はこれからも多々あるだろう。
(正義の味方って大変ね…ある意味24時間無休だから)
レッドトルネードを乗せたレッドジェッターは一陣の風のように街中を去って行った。

104 :
「ただいま」
「お帰り、レッドトルネード」
レッドトルネードとレッドジェッターが、リフトに乗って地下の研究室へと戻って来た。
「着装、解除」
トルネードがそう言うと、再び白い防御フィールドが全身を包む。その中で、由衣の身体が装甲から解放されていく。
ヘルメットのパーツがバラバラになり、由衣の素顔が露わになる。
上半身を包んでいた屈強な装甲も、しなやかな下半身を包んでいた装甲も、全てが光となって消えていく。
後には赤と白のツートンのインナースーツの由衣が残された。だが、そのスーツも輝きを発したかと思うと弾けるように消滅し、由衣のまばゆい裸身が現れた。
その裸の上からまずはショーツ、ブラジャーが身に付けられる。そして靴下、ズボン、上着と元の服装が身につけられた時、防御フィールドは消滅した。
レッドトルネードの変身が解除され、由衣の姿に戻ったのだ。
「お疲れ様。お風呂はまだ湧いてないけどね」
「いいよ。シャワーで済ませるから」
「あら、そう。篤彦にもただいま、を言いなさいよ」
由衣が台所に上がると、篤彦は出汁を取っている最中だった。
「おお、由衣か。おかえり」
「ただいま、父さん。今日の夕飯は何なの?」
「夕飯が出来るんじゃない。出来た物が夕飯なんだ」
「父さん、何言ってるのよ」
「まぁまぁ、見てのお楽しみだ」
こうして、今回も無事に任務を終えた由衣は再び何気ない日常生活を送る事が出来たのだった。

105 :
以上です。 今回もスーツ破壊でも何でもな(ry ご好評であれば次回も執筆いたします。

106 :
>>104
投下乙!
赤と白のインナースーツって鮮やかな色彩でエロいね

107 :
おぉ?
>>104にもっとふさわしいスレがあると思ったけど、
意外と女性主人公特撮的無双な話を守備範囲にしたスレってないんだね

108 :
こういうスーツが無双しているシーンとかの後で破壊シーン描かれたら凄い興奮するだろうな

109 :
OVA版バブルガムクライシスのスーツ破壊の話
http://www.youtube.com/watch?v=hFfw4okoJO8

110 :
とある場所の地下に設けられた研究所にて、白衣姿で眼鏡をかけた男が試験管を手に、何やら熱心に研究に励んでいた。
背後には培養液で満たされた大型カプセルがいくつも並べられ、中には甲虫のような甲殻を纏った人型、蠍のような甲殻を纏った人型のようなものもある。
また、並んでいるカプセルの中の一つには全裸の少女が入っていた。
少女は胎児のように身体を丸め、目を閉じて培養液の中に浮かんでいる。意識は無いようだ。
その様子を見ていた少年が、男に声をかける。外見は中学生か高校生のようだ。
「三影先生、どうも我々の計画を邪魔する者がいるようです」
「ああ、あの赤い戦士だな」
「レッドトルネードと言うみたいですが…」
「あの技術の解析も始めなければな」
三影と呼ばれた男は、少年を振りかえる事も無く黙々と作業を続ける。
少年は研究室を出ると、「窪島佑」と札が下げられている自室に入る。四畳半の狭い部屋で、テレビ、本棚、小さなタンス、小さな音楽プレーヤーがある程度で、ポスターや調度品の類は一切無く、酷く風景な部屋だ。
「何か面白い事って無いのかな」
佑は、ゴロンと床に寝ころぶと、本棚から大きな本を取りだした。「生物辞典」と書かれているハードカバーの大きな本だ。
佑はパラパラとページをめくっていたが、あるページで手を止めた。そのページには「コブラ」について書かれていた。
その生態、特徴についてじっとページを見ていた佑の右手に黒い斑点が浮かんだと思うと、徐々にコブラの表皮のように赤黒く変化していく。それを見て、佑は何かを確認したかのように一瞬小さく笑った。
「レッドトルネードか…僕の出番はまだかな、まだかな」
佑はすぐに無表情に戻った。と同時に、腕も人間のそれへと戻っていった。

111 :
この日の浪速県内は雨がシトシトと降っていた。久しぶりの雨が乾いた大地を潤す。
由衣は今日は珍しくスカートをはいていた。
「お父さん、今日は遅いのね」
研究で忙しい真由美はあまり台所に立つ事は無い。家事はもっぱら篤彦の担当だ。
その篤彦がまだ起きてこないので、由衣は自分で台所に立つ。まな板と包丁を並べ、冷蔵庫の中からキャベツと卵、ハムを取りだす。
ハムを1センチ角に切り、卵をとき卵にし、キャベツを細かく千切りにする。
フライパンを熱し、ハムを軽く焦げ目がつくまで炒めてから千切りにしたキャベツを入れる。
ハムとキャベツが混ざり合った所で、火を弱火にし、とき卵をゆっくりと上からかける。卵がある程度固まれば完成である。ご飯を茶碗に入れ、お茶をお湯のみに入れると朝食が完成した。
「いただきます」
朝食を食べながら、由衣はテーブルの脇に新聞を広げる。まず最初に見るのはページをめくらなくても済むテレビ欄である。
あまりテレビは見ないが、野球中継には興味がある。由衣が好きな板金タイガースの中継は今日はテレビ浪速でやるようだ。尾張ドームで尾張ドラゴンズとの試合なので雨天中止は無い。
「尾張ドームのドラゴンズってなんであんなに強いんだろ」
そうボヤきながら、次にスポーツ欄を広げる。タイガースの試合結果も載っていたが、
0-6でドラゴンズに完封負けしていた。
社会面、国際面に一通り目を通し、由衣は朝食を食べ終えて食器を流し台に持っていく。
フライパンともどもきちんと洗い終えると、由衣は自室へと向かった。
「雨の日って化粧の乗りが悪いなぁ」
由衣は雨の日があまり好きではない。バイクに乗れないからである。
由衣が化粧を終えて1階に降りると、篤彦がようやく起きてきた。
「おはよう。今日は早出か?」
「あ、父さんおはよう。雨だから早めに出る。行ってきます」
由衣はお気に入りの赤の大きな傘を指すと、家を出る前に地下の研究室に寄った。
もう真由美は起きているのだろうか、と思いながら部屋に入ると、真由美はスーツの研究を続けていた。
「母さん、おはよう」
「おはよう、由衣…って、もうこんな時間か…」
真由美は1日中部屋に籠って研究を続けている事が多いので、時間感覚が無くなるのだという。
「母さん、やっぱりぴっちりしててなんだか恥ずかしいよ、あのインナースーツ」
「あれはね、スーツの電気信号を効率良く伝えるために必要なの。それと、万が一スーツが壊された場合に備えての生命維持装置の役目もあるわ」
「大事なのかも知れないけれど、やっぱりちょっと恥ずかしい」
「変身する時と解除する時のちょっとの間だけでしょ、その格好って。あ、それと由衣、たまに通帳見てる?ちゃんと危険手当が振り込まれてるはずよ。1回10万円だから」
「10万かぁ…」
命がけで怪人と戦った報酬が10万円というのは安いか、高いか。どっちにしろ、今の由衣にとっては大金である。

112 :
近畿学院大学は最寄りの地下鉄駅から10分ほど歩いた所にある。
地下鉄を使って大学に行くルートは、由衣の自宅からの最短ルートを避けるようにあるため、大きく回り道する形になる。
「ま、たまには電車で行くのもいいか」
降りしきる雨の中、由衣は大きな傘を指して大学へと向かった。
大教室では1限目の授業が始まろうとしていた。由衣はルーズリーフと教科書を広げ、大教室の前の方の席に座って教授が来るのを待っている。
開始時間ギリギリになって、栞が教室に入って来た。
「ふぅー、間に合った間に合った」
「おはよう、栞ちゃん」
「由衣ちゃん、おはよう。雨の日って嫌だよねー、足元濡れちゃうから」
「栞ちゃん、こないだ私が貸した1000円、覚えてる?」
「忘れてるわけないでしょ、ほら」
栞は1000円札と10円玉を取り出して由衣に渡した。
「この10円玉は?」
「一応、利子のつもりよ」
「いいわ、気持ちだけ受け取っておく」
由衣は10円玉を栞に返し、札を自分の財布にしまった。
「また何かあったら貸してちょうだいね」
「財布の中身ぐらい自分で管理しなさい」
図々しいのか礼儀正しいのかよく分からない性格だなあ、と由衣は感じた。
講義が始まると、教授は話をしながら、時々言葉を黒板に書いていく。
高校までの授業と違って、大学の講義の内容は板書されない。故に、集中して話を聞き、自分なりにその場で要点をまとめてノートに書き留めておく必要がある。
由衣は鉛筆を動かし、教授の話を自分なりにまとめていく。
講義が終盤に差し掛かった頃、ふと隣に座っている栞を見る。栞はシャープペンシルを握りながら机に突っ伏してすやすやと寝息を立てていた。
(ったく、この子は…)
大学の講義は1コマ90分授業である。高校までの1コマ45分の授業と違って2倍の長さがあるので、集中力が持たなくなるのも仕方が無いと言えば仕方が無い。
「…ん?うう…」
講義の終わりを告げるチャイムが鳴って、ようやく栞は目を覚ました。
「栞、起きた?はい、出席カード」
むっくりと起き上がった栞に、由衣は小さなカードを渡す。名前を書いたカードを教授の所に渡す事によって、初めて講義に出席したと認められるのだ。
「だってさぁ、あの先生の声って本当に聞いてたらすごく眠たくなるんだもん」
栞は眼が半開きの状態で出席カードに学生番号と名前を書いていく。
おまけにこの教室は大教室で、教室の後ろのほうに座る学生にも聞こえるようにするため、やたらマイクにエコーがかかっているのだ。
「あっ、そうだそうだ、由衣ちゃん、来週の日曜日の屋外撮影会に着て行く服ってもう決めた?」
教科書とルーズリーフを鞄にしまって席を立った由衣を、栞が後ろから呼び止める。
「由衣ちゃん、今日時間ある?」
「別に忙しくは無いけど…どうしたの?」
「講義終わってからさ、由衣ちゃんの家に遊びに行きたいの」
「私の家って別に何も無いわよ」
「そんな事無いと思うんだけど。結構大きな家だし、場所も知ってるから」
「な、なんで分かったの?」
「散歩しててたまたま前を通って、『鷹野』っていう表札があって、あ、ここだって分かった」
「…まぁ、上がってもいいけど、靴とかはちゃんと揃えて上がってね。ウチの親は結構厳しいから」
「えっ、いいの?楽しみだなあ」
栞はパッと目を輝かせた。

113 :
「ただいま」
「おお、お帰り」
由衣が家に帰ると、篤彦はホームページ作成をしていた。
「今日さ、私の友達が家に遊びに来るんだけど、いい?」
「ああ、いいぞ。由衣もついに恋人が出来たのか?」
「やだなぁ、女友達よ、女友達」
「そうか…じゃあ父さんがお茶とお菓子を用意しておく」
由衣が恋人の存在を笑って否定すると、篤彦はやっぱりな、という表情で戸棚に向かった。
「栞ちゃんね」
「こんにちは。御邪魔します」
鷹野家のインターホンが鳴る。カメラで確認すると、やってきたのは栞だった。由衣がドアを開けると、栞はきちんと靴を揃えて玄関を上がる。
「初めまして、森川栞です」
台所で冷蔵庫の整理をしている篤彦に、栞が学生証を名刺のように差し出して挨拶をする。
「森川さんか、こちらこそ初めまして。お茶を持っていくのでちょって待ってなさい。あ、コーヒー、紅茶、どちらがいいかな?」
「え、え、別にどっちでもいいです」
「じゃあ、こっちの気分で紅茶にしておくからね。由衣なら2階にいるぞ」
篤彦が丁寧に栞に希望を聞くと、栞は戸惑った。礼儀正しいというか、気配りが細かい家である。
「由衣ちゃん、私よ」
栞が由衣の部屋をコンコンとノックする。
「どうぞ」
由衣が返事をすると、栞が部屋に入って来た。そして、栞は部屋の豪華さに目を見張った。
白を基調とした部屋は間取りにもかなり余裕があって、由衣専用と思われるパソコンやテレビも置いてあった。
この家はかなり裕福な家庭で、由衣もかなり育ちのいい人間だという事がすぐに伝わって来た。
「ここって広いなぁ…わたしのアパートとは大違いね。月5万だし」
「月5万のアパートって結構いい方だと思うんだけど…」
栞が部屋の広さに見とれている間、由衣はバイク雑誌やファッション雑誌「nono」を読んでいた。
「森川さん、初めまして。いつも由衣が世話になっていてすまないわね」
「いえいえ、こちらこそ」
「まぁ、何も無い家だけど、ゆっくりしていってね」
部屋に上がって来た真由美が、二人分の紅茶とクッキーを持ってきてくれた。
「今度の日曜日さぁ、撮影会に着て行く服ってもう決めてる?」
次の日曜日、二人は天宝山公園での団体撮影会に参加するのだ。
「んー、この間安部乃で買ったのを着てみようかな、って思ってる。栞ちゃんは?」
「秘密」
「じゃあなんで聞いたのよ」
「その時の気分で決めるから。でも今度初めて由衣ちゃんと一緒にやるんでしょ、すっごい楽しみ」
二人が時間を忘れて話をしてうちに、時計の針は午後5時を指していた。
「あ、もうこんな時間だから、そろそろ御暇するね」
「え、ああ、もうこんな時間なの?」
由衣は栞に言われて初めて時間に気付き、慌てて立ち上がった。長時間座っていたので足がもつれそうになった。
「すいません、今日は本当に御世話になりました。では、これで失礼します」
「せっかくだから、今日はウチで夕飯を食べて行かないか?」
「いや、そこまでして下さらなくて結構です」
篤彦の夕飯の誘いを断って栞は家を出た。
「なかなか礼儀正しい、いい子じゃないか、由衣」
「私の前ではそうでもないんだけどね」
篤彦は栞にひとまず好感を持ったようだった。

114 :
日曜日の天宝山公園は晴天に恵まれ、絶好の撮影日和だった。
午前10時、由衣と栞を入れて7人のモデルが、集まった10数人のカメラマンの前に並び、軽く自己紹介をする。
「鷹野由衣です。初めての人は初めまして、久しぶりの人はお久しぶり、常連の方はおはようございます」
「森川栞です。19歳らしく何も恐れずに頑張ります!」
栞はウケを取ったつもりなのだろうが、一瞬場が静まり返り、それからまばらに拍手が起きた。
「栞ちゃん、野球の新人選手じゃないんだから…」
由衣に突っ込まれ、思いっきりスベった栞は赤面していた。
自己紹介が終わると、モデルごとにそれぞれ分かれて撮影が始まる。公園には様々な「オブジェ」があり、それをどう使うかでカメラマン、モデルの技量が問われる。
由衣は赤のチェックのスカートに、白のブラウス、栞は白のキュロット、グレーのシャツブラウスに、黒のニーハイソックスという格好だ。
「イエーイ、みんな見てるー?」
栞の方はというと、変顔を披露したり、大きくジャンプしたりと、とにかく動きまくるので、カメラマンをあちこち振り回していた。
「おおー」
「可愛いね」
撮影を続ける中、由衣の周囲にカメラマンが集まる。
首と頭に花のレイをつけて、手を胸の前で合わせて祈るようなポーズを取り、目をそっと閉じると、
それはまるで妖精か天使のような美しさを醸し出していた。
昼休みに入り、モデル達も休憩に入る。それぞれ持ってきた昼食を持ってきて、気分はちょっとしたピクニック気分である。
栞の昼食はサンドウィッチだったが、由衣の弁当はかなり豪華だった。三段重ねで、炊き込みご飯に出汁巻き、筑前煮、ほうれんそうのおひたし、デザートでイチゴまでついていた。
「由衣ちゃん、それ豪華過ぎるよー、全部自分で作ったの?」
「いや、お父さんに作ってもらっただけだから」
「ちょっと分けてくんない?」
栞にせがまれて、由衣は出汁巻きを少し分けてあげた。
「これ作った人絶対プロで金取れる。天才的」
「そんなに美味しかったの?」
口の中に広がる出汁の旨みを味わった栞が、親指を立てて見せた。

115 :
公園では多くの子供達も遊びに来ていた。何人かがカブトムシを追い回している。
弁当を食べ終えた由衣は食後の運動がてら、その様子を見にぶらりと歩く。
子供達は懸命にカブトムシを捕まえようとするが、なかなか捕まらない。カブトムシは他にも沢山おり、花の蜜や木の樹液を吸っているものもいる。
由衣は最初、その様子を微笑ましく見ていたが、どうもおかしな事な事に気付いた。
(なんでこんなに枯れた花や木が多いんだろう…)
木々が青々とした季節なのに、枯れ葉が次々と地面に落ちている。花が鮮やかな季節のはずなのに、花は大半が萎れてしまっている。
見ると、大半の花や木にはカブトムシがとまっている。
(いくらなんでも多すぎると思うんだけど…)
由衣が不審を抱いていると、栞が声をかけてきた。
「由衣ちゃん、そろそろ昼休み終わっちゃうよ」
「うん、今行く」
由衣はどうしても異常発生してるカブトムシが気にはなったが、ひとまずは撮影に戻る事にした。
撮影は午後3時過ぎに無事終わった。カメラマン、スタッフが解散を指示すると、皆挨拶を交わして帰ろうとしたが、
モデルの中の一人が、由衣達に声をかけてきた。
「これからカラオケで二次回しない?」
「わたし、行くよ。由衣ちゃんもどう?」
由衣としても、モデルと親交を深める格好の機会だったので、別に断わる理由などない。やれやれ、無事に終わった。そう思いながらカラオケボックスにモデル達と向かっていると、真由美から電話がかかってきた。
『由衣、出動よ。出たのよ、奴が』
「出た?どこに」
『アンタの撮影現場よ、そう、天宝山公園』
「公園に?」
『そう、怪人らしい反応が集まっているの、今すぐ向かって』
「分かった。現場で待機しておくわ」
後ろの方にいた由衣は、栞達に気付かれないようにスッと群れを後にし、撮影現場だった公園まで走りだした。
ふと栞が後ろを振り向くと、そこには由衣の姿は既に無かった。
「あれ、由衣ちゃんがいない…また急な用事かな」
この前からどうも由衣の様子がおかしい、と栞は思う。急な用事と称してフッといなくなるのはこれで2度目だからだ。

116 :
公園に戻った由衣は、園内の木々や花々の変わり果てた様子に驚いた。いずれも枯れており、全く生気が感じられない。
由衣が林の辺りを歩いていると、枯れた木のうちの1本の根元が軋んだ音を立てる。
「はっ!」
背後から倒れこんでくる木を由衣は右に飛んでかわす。倒れた木は土煙と共に轟音を上げた。
「これは一体…」
由衣が辺りを見回していると、空には大量のカブトムシがいた。撮影中、花や木の樹液を吸っていたものだ。やはり数が異様に多い。
そのカブトムシが徐々に一か所に集まりだすと、人のような型となり、茶色の堅牢な装甲、巨大な角を持った怪人に変化した。カブトムシ怪人だ。
この怪人は公園の花や木の樹液を吸い、栄養を満たし、頃合になった頃、完成体である怪人となった。
由衣が頭の中で整理を終えるか終えないうちに、カブトムシ怪人が巨大な角を突きだして突進してくる。
図体は巨大なのにそれを全く感じさせない、まるで地面をホバー移動しているかのような滑らかな動きで、逃げる由衣を追い回す。
カブトムシ怪人の角が由衣の身体を捉えると、まるでゴミでも捨てるかのように放り投げた。
芝生の上に落とされる由衣。やはり生身ではかなわない。挑発するかのような仕草を見せるカブトムシ怪人に向けて、眦を決し、戦士に変わる決意をする。
懐から端末を取りだし、身体をひねって端末を持った右手を前に付きだす。
「着装!」
由衣の叫びと共に、全身が白く光る防御フィールドに包まれる。
その中で由衣が身に付けているパンプス、スカート、ブラウスが、次いで、ブラジャーとショーツが光の粒子となって消え、由衣は瑞々しい裸体を晒す。
つま先、手から、光が駆け上がり、由衣の身体は赤と白のツートンカラーのインナースーツに包まれる。
装甲を纏う準備が整うと、股間部、臀部を保護する強固なパーツが、端末を収めるパックルが装着される。
つま先から上に向かって次々と装甲が装着され、インナースーツに包まれただけの上半身も腕、肩、そして胴と装甲で覆い隠されていく。
首から下が全て装甲に包まれた由衣はそっと目を閉じる。頭部付近に現れた装甲がヘルメット状となって由衣の頭を包み込み、後頭部がロックされる。
口元にマスクが装着され、ゴーグル、バイザーも装着されると、由衣の姿は完全に覆い隠された。
防御フィールドが弾け飛ぶと、そこには変身を完了した真紅の戦士・レッドトルネードの姿があった。

117 :
「行くわよ!」
カブトムシは昆虫であり、寒さには耐えられないはずである。レッドトルネードはマルチマグナムの冷凍光線をカブトムシ怪人に発射した。
しかし、表面が一瞬白くなっただけで、怪人はたじろぐ様子も見せない。怪人という事で強化されているのだろうか。
次いで、装甲の隙間を狙って破壊光線を発射する。しかしこれも強固な装甲にあっけなく弾かれてしまう。
カブトムシ怪人はこれに怒ったのか、反撃とばかりレッドトルネードに猛然と突進してくる。
トルネードは両手でガッチリと受け止めるが、予想以上に力が強く、強化スーツの力をもってしても弾き飛ばされそうである。
(外から殴れば内部に損傷を与えられる!)
トルネードはカブトムシ怪人に向かってパンチ、チョップ、キックを繰り返すが、いずれも大して打撃を与えられない。
すると、カブトムシ怪人は肩口からトルネードに向かってタックルをぶちかます。
「ぐあああっ!」
トルネードはタックルを左肩にモロに受けてしまい、後ろに大きく吹き飛ばされる。今まで経験した事も無いような大きな衝撃だった。生身であれば確実に脱臼していたであろう。
さらにカブトムシ怪人は角をアンカーのように発射し、倒れているトルネードの身体をワイヤーで巻きつける。
身動きが取れない状態で自分の手元にまで引きこんで始末してやろうというのだ。
「ま、負けるもんですか!」
トルネードは左腰のホルスターからサイコブレードを取りだし、ワイヤーを斬りつける。ワイヤーが外れ、トルネードの身体が解放される。
角を再び頭に戻したカブトムシ怪人は、身体を大きくのけぞられ、腹部から多数のカブト虫を放出する。
トルネードはまとわりついてくるカブトムシをブレードで斬ろうとするが、動きが非常に素早く、とても斬れるような物ではない。
逆に体中にまとわり付かれてしまい、カブトムシ怪人が不気味な声を上げると、トルネードの装甲にまとわり付いたカブトムシが小型爆弾のように連鎖的に爆発した。
「きゃああぁぁぁっっ!」
肩に、胸に、背に、腹に、脚に、一斉に爆撃を受け、トルネードはその場に倒れこんでしまう。想像以上に大きなダメージで、すぐには立ち上がれない。
『仕方が無い、これを実戦投入するわ。ジェットストライカーよ』
トルネードの苦戦ぶりを見かけた真由美が、研究室から新兵器を転送してくる。
2枚2対のカッター状の翼が、まだ全身から煙を上げているトルネードの背中に装着される。

118 :
『このジェットストライカーで空から攻めるのよ!』
「分かった。有難う、母さん!」
ジェットストライカーを装着したトルネードは、先ほどのダメージも忘れて、大きくジャンプした。空中で一時停止し、眼下にいるカブトムシ怪人を見据える。
カブトムシ怪人も空中戦では負けじと翼を出し、トルネードへと向かってくる。
戦いでは頭上を取った方が有利だ。トルネードは急降下し、急上昇してくるカブトムシ怪人に対してマルチマグナムを放った。
片翼が吹き飛び、カブトムシ怪人は地面に墜落する。
怒ったカブトムシ怪人は再び腹部を開け、多数のカブトムシ怪人を放出しようとする。
「二度もその手は食わない!」
トルネードのマルチマグナムが腹部に命中し、カブトムシ怪人は大きくもんどり打って倒れる。
すかさず冷凍光線で追い打ちすると、先ほどの様子が嘘のようにカブトムシ怪人は苦しみ始める。どうやら腹部が弱点だったようだ。
「さっきのお返しよ!」
トルネードはジェットストライカーで素早く飛び込むと、上空から勢いをつけてカブトムシ怪人の角に向かってチョップを入れる。角が頭部から綺麗に切り離され飛んで行った。さらに、トルネードは右脚を軸にしてコマのように回転し、カブトムシ怪人に連続キックを喰らわせる。
大きく吹き飛んだカブトムシ怪人はもはや立ち上がるのがやっとのようだ。
「よし、行くわよ!」
トルネードはサイコブレードを抜き放ち、刀身にエネルギーを集中させる。
そして、低空飛行でカブトムシ怪人に突っ込んでいく。
「トルネードスマッシュ!」
居合斬りのように一度、二度と斬りつけ、カブトムシ怪人を背にするようにレッドトルネードが着地すると、カブトムシ怪人は大きく爆散した。

119 :
「ふぅ…」
振り向いて、勝利をおさめた事を確認すると、レッドトルネードはブレードをホルスターに戻した。すると、そこには一人の少年がいた。見た目は中学生か、高校生のようだ。
「ふーん。君ってそこそこ強いんだね」
「あなたは誰?こんな所で何をしているの?」
「あ、レッドトルネードって女の人だったんだ」
「男の人だからと言ってどうしたって言うのよ!」
窪島佑…見た目は普通の少年だが、ただならぬ物を感じる。コイツは明らかに普通の少年じゃない。レッドトルネードは警戒を緩めなかった。
「何で私の名前を知っているのよ!」
「あんまり僕らの事をナメない方がいいと思うよ。じゃ、またね」
「待ちなさい!」
レッドトルネードは佑に向かおうとしたが、佑は背景に溶け込むようにその場から姿を消した。
「一体何なのよ、あの子…」
疑念は残るが、とりあえず戦いは終わった。レッドトルネードは人目に付かない場所に移動し、普段の姿に戻る事にした。
「着装、解除」
白い防御フィールドが展開され、ヘルメットも、上半身の装甲も、下半身の装甲も全てがバラバラに外れ、光の粒子となって消えて行く。
装甲から解放され、白と赤のインナースーツ姿となった由衣は、全裸になったような気分だった。
そのインナースーツも光を発すると共に分解され、一瞬ではあるが由衣の裸が露わになる。
下着、スカート、ブラウス、パンプスが元通りに装着されると変身解除は完了し、防御フィールドも消滅した。
レッドトルネードから由衣に戻った彼女の顔は汗だくだった。と同時に身体に疲労がどっと押し寄せてくる。
しばらくその場に座り込み、立ち上がろうと言う気にすらなれなかった。
余裕があればこの場で栞に電話をし、二次回に飛び入り参加させてもらおう、とも考えたのだが、今はそれどころではない。
とにかく家に帰って休もう。由衣の頭の中にはもうそれしか浮かばなかった。
こんな事で、これから激化していくであろう怪人との戦いに勝てるのだろうか?
心も身体も重さを引きずるようにして、ゆっくりと由衣は家路に向かった。

120 :
今回は以上です。スーツ破損までは行かなかったかな?ご好評であれば次回も(ry

121 :
大晦日に執筆ご苦労様です。新年からいいものが見られました^^
格闘シーン[E]です!
カブトムシ人間と聞くと某ジャングルの王者を思い出すのがアレでしたが

122 :
「母さん、おはよう」
「おはよう、由衣。もう行くの?」
「うん。道が混んでると困るから」
大学の1限目の講義に出席するべく、由衣は家を出る前に、いつものように地下の研究室にいる真由美に挨拶をしに行っていた。
「あれ、このカプセルは?」
壁面にカプセルがもう1個あり、中には薄緑色の培養液がなみなみと満たされていた。
ホルマリン漬けに使われるような容器を非常に大きくした感じだ。
「ああ、これ?高速治癒カプセルっていうの。サッカー選手とかが使ってる高酸素カプセルってあるでしょ。それをもっと高級にしたものなの」
「これに入ってたら傷の治りが早くなるの?」
「人間の自然治癒力の20倍以上の効果があるはずよ。…でも、なるべくならこんなものの出番が無いのが一番よ」
「そうね、母さん」
自分の身を案じ、万全のサポート体勢を整えてくれる母に感謝し、由衣は家を出る。

123 :
大学に到着し、教室の椅子に座って教授が来るのを待っていると、後ろに座っている数人の男子学生が何やら話をしている。
「おいお前、これ見ろよ」
一人の学生が写真週刊誌と思われる薄い雑誌を広げる。
「『真紅の戦士、天宝山公園に現れる!』…だってよ」
「俺、マジで現場目撃したぞ。特撮のロケかなって一瞬思ったけど、マジだったのか」
学生たちは「真紅の戦士」の正体が何者なのか、他にもどこかで見た事は無いのか、について話し合っている。
勿論、学生たちは前に座っている女子学生・鷹野由衣がレッドトルネードである事など知る由も無い。
(仕方ないけど、あれだけ人目に付く場所で戦ってたらバレちゃうよね。でも、真紅の戦士かぁ。そういう二つ名も悪くないわね)
由衣は自分をレッドトルネードと名乗った事は一度も無い。
それに、自分の戦いに多くの人を巻き込むべきではない。正義の味方は殊更に自分の事績をアピールする必要は無いし、今は目の前の事を一つ一つ確実に解決していけばいい。
由衣がそんな事を思っているうちに、講義の始まりを告げるチャイムが鳴り響いた。
昼休みになって、いつものように由衣は学生食堂に向かった。座る席を探していると、既に栞が座っていて、こちらの姿を確認して手を振ってきた。
「あ、由衣ちゃん、一緒に食べよっ!」
「うん。でも今回は自腹よ」
「いくらわたしでもお昼代ぐらいちゃんと持ってるよ」
栞と由衣はレーンに並び、思い思いの物を取っていく。由衣はご飯に豚汁、鯖の味噌煮、揚げだし豆腐、栞はご飯に味噌汁、イカの天ぷらにほうれんそうのおひたし、肉じゃがを取っていた。
「栞ちゃん、かなり豪華ねぇ」
「モデルのバイトって割がいいしね。今日の夕方も仕事が入ってるし」
由衣も出来ればもう少し仕事を入れたいのだが、怪人と戦う「仕事」を優先しなければならないのでそうもいかない。
「由衣ちゃん、こないだの二次会なんで来なかったの?」
「あれね、家のカギを公園に落とした事に気づいて取りに戻ってたの」
「で、カギは見つかったの?
「見つかったわ。時間がかかっちゃったけどね。カギを探しているうちにしんどくなったから、二次会は止めておいたわ」
不審を抱く栞に対し、由衣は適当に理由をつけてはぐらかす。今ここで正体を明かすと面倒な事になるからだ。

124 :
由衣は3限目の講義を終え、バイクで家路に着こうとしていた。近所にあるやや大きめの公園を通りがかると、何やら喚くような声が聞こえてきた。
「オラー、タイマンしろよタイマン!」
「嫌です、やれません」
「ビビってんのか、コラ」
気になった由衣は道端にバイクを止め、様子を見る。
学生服を着た気弱そうな少年が、同じく学生服を着た2人の少年に絡まれている。外見からしておそらくは中高生だろう。
絡まれている少年は半泣きになっている。遊びやじゃれ合いといった類では無く、イジメであるのは明らかだ。
「やるのかやらないのかはっきりしろよ」
少年が尻に蹴りを入れられ、前によろめく。このままではエスカレートしていきかねない。
見るに見かねた由衣は、柵を乗り越え、掃除用具の倉庫の裏へと隠れる。少年たちはまだ気づいてはいない。
そして、戦士へと変わるキーワードを叫ぶ。
「着装!」
由衣の全身が防御フィールドの中で白い光に包まれ、着ている服が消滅していく。
入れ替わるように白と赤のツートンカラーのインナースーツに覆われ、下半身、次いで上半身とあっという間に装甲が装着されていく。
頭部の周辺にパーツが出現し、それがヘルメット状になって由衣の頭に被さる。
後頭部がロックされ、口元のマスクが装着され、目元のゴーグルが降り、半透明のバイザーが装着されると、防御フィールドがパッと弾ける。
「待ちなさい!」
凛とした声を響かせ、倉庫の裏側から姿を現したのは、全身を真紅の装甲で固めた戦士・レッドトルネードだ。
中学生たちは突然倉庫の裏から発せられた白い光に驚いていたが、目の前に突然現れた真紅の戦士にはもっと驚いた様子だった。
「な、何だお前!」
「通りすがりの正義の味方よ。アンタ達、こんな所で何をやっているの!」
「だ、だってコイツは俺らに金を貸そうとしないから…なぁ?」
「同意」を求められたイジメられている中学生は、それを否定するようにレッドトルネードの背後に隠れる。
「暴力で金を踏んだくろうっていうのは恐喝っていう犯罪よ!」
「お前、ちょっと生意気なんだよ!」
トルネードの正論に逆上した中学生が懐からナイフを取りだし、襲い掛かってくる。
だが、強化スーツに身を包んだトルネードにとって、そんな動きはまるで止まっているようにしか見えない。
右手首をがっちりと掴み、微動だにさせない。そのまま力を入れれば手首を折る事などわけもなかったが、一般人相手にそういう事をするわけにもいかない。手を振り払い、ナイフを遠くに飛ばす。
中学生はその勢いで地面に倒されてしまった。もう一人はそれに恐れをなしたか近づいてこない。
「こ、コイツヤバイぞ、逃げろ!」
「わ、わ、うわあっ!」
二人が逃げて行ったのを確認してから、トルネードはしゃがみ込み、泣きべそをかいていた中学生を見つめた。
「もう大丈夫よ、気をつけて帰ってね。今日の事はきちんと親に相談するのよ」
「わ、分かりました、有難うございます」
中学生はその場から走り去って行った。
事が終わり、レッドトルネードは再び倉庫の裏側に隠れると、普段の姿に戻る言葉を叫ぶ。
「着装、解除」
白い光の中で全身の装甲が溶けるように消えて行き、インナースーツ姿となる。
そのスーツも光ともに消え、一瞬裸身が露わになったが、すぐに由衣の服装に戻った。
初めて装着した時に比べると、装着までに必要な時間がかなり短縮されている。スーツも日々改良されているのだ。
「人助けをした後って、気分がいいね」
ごく短時間とは言え、レッドトルネードになった後は疲労感を感じる。だが、今はこの疲労感も心地いい。
そして、変身しておいて良かった、と感じた。最近の中学生の男子は発育が良く、腕力も強い。
二人がかりで来られたら、普段は普通の女子大生である由衣には分が悪すぎるし、余計な怪我を負いかねなかったからである。

125 :
その日の夜、窪島佑は、何をするわけでもなく、住宅街をうろうろしていた。
とそこに、暴走気味の運転の車が背後から突っ込んでくる。車は避けようとする素振りも見せない佑の脇をかすめ、急ブレーキをかけて立ち止まった。
「コラー、そこのガキ、気をつけろ!」
白い乗用車の運転席から、中年の男性と思しき怒声が佑に向かって浴びせられた。
佑は運転席の方を冷たい目でじっと見つめていると、車はそのまま走り去っていこうとした。
少しして、車の燃料タンクに穴が空き、ガソリンが流れ始める。
次いで、スピードを上げようとしていた車の左後輪が破裂し、大きな音が辺りに響き渡った。
車は制御が不可能になり、そのまま近くの住宅地の塀に激突した。
大爆発を起こした車から、ボンネットやタイヤが外れ、辺りに飛び散ったり転がったりした。
大破した車から黒煙が立ち上り、吹きあがる炎が、周囲の闇を赤々と染めていた。
「みんなねばいいのに」
佑は燃え上がる車の様子を無表情で見つめていた。車の主が生きているかどうか、佑はいちいち確認などしなかった。
佑の右腕は不気味に長く伸びており、先端には鋭い爪が生えていた。

126 :
午後7時30分過ぎ、夕食を終えた由衣は自室でくつろいでいた。横になりながら、テレビの野球中継の「板金ー横幅」戦を見ている。
「さぁ5回裏、1-2と1点ビハインドの板金、1アウト満塁で1打逆転のチャンス!打席は5番服留選手です!」
試合は中盤の山場を迎えていた。横になっていた由衣も起き上がり、応援に力を入れ始める。
「犠牲フライでもいいから、まずは同点に追いついて!」
ボールカウントは2-1、打者有利のカウントだ。とその時、電話がかかってきた。
「はいもしもし…って、母さんか」
『由衣、出動よ。怪人が出たわ。既に傷者が出ているみたい』
「場所は?」
『江板スタジオから西に2キロほど離れた別のスタジオ近辺よ』
「分かった、今行く」
由衣はすばやく立ち上がり、ハンガーにかけてあったジャケットを羽織る。
「せっかくいい所なのに…」
野球観戦に邪魔が入った事を愚痴りながら、由衣は愛車で現場に急行する。

127 :
栞は夕方からスタジオで個人撮影会をしていた。モデルである栞本人、カメラマン2人、撮影スタッフ3人という小規模なものだ。
本日の栞の衣装は女子高生風の制服だ。いわゆるコスプレだが、栞は高校を卒業してから1年も経っていないので、まだまだ制服姿がサマになる。
(懐かしいなぁ、もう1度高校生やり直したい気分)
カメラのフラッシュを何度も焚かれながら、栞は高校生活を思い出していた。
やがて、撮影時間が終了し、栞はカメラマンやスタッフに礼を言ってスタジオを出る。
スタジオ最寄りの駅に向かうべく、住宅街を抜けて大通りに出ようとすると、栞の目に異様な光景が入って来た。
炎上した乗用車やバイクが何台か転がり、そのどれもが黒煙を上げている。熱気が栞の方まで伝わって来た。
「大事故かしら…」
心配になってこの場を素早く走り去ろうとした栞の背後から声がかかる。
「君、見物料も払わずに逃げる気かい?」
ぎょっとした栞が後ろを振り返ると、そこには右腕がコブラのそれと化している佑がいた。
まるで虫やゴミを見るかのような目で栞を見つめている。
(この人はただの人じゃない、逃げなきゃ!)
本能的にその場を離れようとした栞の首に、コブラの腕が巻き付いた。
「僕のこういう格好を見てしまったんだね。見てしまったんだね」
振りほどこうともがく栞の目の前で、佑の姿がみるみるうちに変化し、コブラ怪人へと変化する。
窪島佑はかつて普通の少年だったが、三影の手によって怪人態であるコブラ怪人への変身能力を身につけたのだ。
「見物料?そうだね、君の命でゆっくりと払ってもらおうかな」
目の前に突然現れた得体の知れない化け物に、栞は恐慌に陥る。
「い、嫌やああああ!離して!離してー!」
涙を流しながら、腕を首から引き剥がそうと、身体を左右によじって拘束から抜けだそうとするが、腕は全くびくともしない。

128 :
由衣は愛車で現場に向かっていた。真由美によるとこの辺りのはずだ。そう思って向こうを見つめると、赤々と燃える炎が視界に入る。敵がいるのは間違いない。
ヘルメットを被った状態の由衣は、戦いに入るべくこう叫んだ。
「着装!」
ズボンに入った状態の端末が反応し、バイクごと由衣の全身を白い光で包み込む。
ヘルメットが、由衣の衣服が光の粒子となって分解され、端末に吸い込まれていく。
首から下が赤と白のインナースーツに覆われ、その上から尻と股間部を保護するパーツが、端末を収めたパックルが腰部に装着される。
つま先から、手先から装甲が駆け上がるように一気に下半身と上半身に装着される。
最後に頭部にヘルメットが装着され、由衣の姿を完全に覆い隠す。それと同時に愛車もレッドジェッターに変化していた。
白い光が弾けると、そこにはレッドジェッターに跨ったレッドトルネードがいた。
バイザーの向こうには、コブラ怪人と、首を絞められている一般人がいる。もう一刻の猶予も無い。
レッドトルネードはジェッターから大きく飛ぶと、両手を握りしめ、コブラ怪人へと突っ込んでいった。
コブラ怪人はレッドトルネードのジャンピングパンチをまともに喰らって大きく吹き飛ばされた。
その衝撃で栞を締め付けていた腕も緩む。
「早く逃げて!」
後ろに倒れ込んでいるような姿勢の栞に向かって、レッドトルネードは叫んだ。突然の乱入者に栞はとっさに身動きが出来なかった。
「何をしてるの!早く逃げなさい!」
もう1度レッドトルネードが言うと、栞は慌てて立ち上がり、この場から走り去って行った。
「どうして…どうしてこんな事をするの?」
レッドトルネードはコブラ怪人と対峙する。まだ赤々と燃えている車やバイクが、辺りの闇を、二人の姿を明るく照らしていた。
「君はこうでもしないと出てこないからね」
「その声…あなた、この間の!」
コブラ怪人の声にトルネードは聞き覚えがあった。公園でカブトムシ怪人を倒した後にこっちを挑発してきた少年だ。

129 :
「まさか、私をおびき寄せるためだけに…こんな事を!」
「僕は人間扱いされずに生きてきた。だから、人間の決まりを守る必要も無い。そう思わないかい?」
「思わないわよっ!あなたが何者か知らないけど、人間を虐げる権利なんか誰にも無い!」
レッドトルネードはマルチマグナムを抜き放つと、コブラ怪人に向かって放つ。
コブラ怪人はそれを軽く跳んでかわすと、レッドトルネードに向かって飛びかかって来た。
地面に転がってかわし、起き上ったトルネードに、コブラ怪人はキックを繰り出してきた。
両腕で受け止めたが、肩まで衝撃が伝わって来た。
(コイツ、強い…!)
今までの敵とは明らかにパワーが違う。今度は尻尾を素早く振って来た。身をかがめてかわすが、起き上った瞬間、左側頭部にコブラ怪人の蹴りが直撃した。
「あぐぐううっ!」
首の骨がずれそうなほどの衝撃だった。生身だったら確実に頭が吹き飛ばされて即していたのは間違いない。
ヘルメットにヒビが入っているかどうか、そんな事を確認している暇は無かった。
さらにコブラ怪人はレッドトルネードの首筋を掴み、家の壁に向かって力任せに叩きつけた。
顔面から叩きつけられたトルネードのバイザーが粉々に砕け散り、家の壁も大きく凹み、ヒビが入った。
「怒りは動きを鈍らせる、という事は学校で教えてくれなかったみたいだね」
よろよろと起き上がるレッドトルネードにコブラ怪人が迫ってくる。
トルネードが力を振り絞り、股間の下からコブラ怪人を蹴りあげる。ダメージがあったのかは分からないが、隙を作るだけの効果はあった。
トルネードの右ストレートがコブラ怪人の顔面に入り、間合いを詰めてさらに膝蹴りを2発入れる。
そして、コブラ怪人を力任せに大きく持ち上げ、背中から地面に叩き付けた。
追い打ちをかけようとするが、コブラ怪人もさるもの、トルネードの足を払い、転倒させる。
そして、サッカーボールを蹴るように、トルネードの右腰を思いっきり蹴りあげた。
「あ…がはあぁっ!」
骨盤が粉砕されそうな衝撃があった。5メートル以上吹き飛ばされたトルネードは咳き込み、胃液が逆流してくるのを感じた。
必に立ち上がろうとするが、下半身に力が入らない。右腰に目をやると、右太股の装甲にヒビが入っているのが分かった。

130 :
(このままじゃ…負けちゃう!)
敵を見据えるトルネードだが、すぐ目の前には飛びかかってくるコブラ怪人がいた。
トルネードは反射的にマルチマグナムを抜き放ち、必の思いで撃つ。
ほぼゼロ距離で破壊光線を受けたコブラ怪人の身体が思いっきり吹き飛ぶ。何とか間に合ったのだ。
とにかく相手に少しでも手傷を負わせるしかない。そう思い、トルネードはサイコブレードを抜き放つ。
まだ下半身がふらついているが、それでも気力で立ち上がる。
コブラ怪人が再び巨大な尻尾を振りまわしてくる。両手でしっかりとブレードを握り、裂帛の気合とともに振り落ろす。
「ぎゃああああっっ!」
コブラ怪人が、人間体の佑の時の姿からは想像もつかないような凄まじい叫び声を上げる。
ブレードによって綺麗に斬られた尻尾が体液を撒き散らしながら地面に落ちた。
「たぁっ!」
コブラ怪人が口を大きく開けて発射した毒液を、トルネードは地面を蹴り、高く跳んでかわす。上空から振りおろしたブレードがコブラ怪人の頭部を斬り裂く。
「目が、目があああああ!」
コブラ怪人は体液を頭部から流して苦しんでいる。この時を見逃すトルネードではない。
「行くわよ!トルネード・スマッシュ!」
トルネードが持つサイコブレードが普段よりも激しく光り輝く。
そして、その刀身をコブラ怪人に向かって下から上へと一気に斬りあげた。
しかし、斬ったのは胴体では無く左腕に過ぎなかった。コブラ怪人が最後の力を振り絞って回避したのだ。
「避けられた!?」
「勝負は…また…次にしてあげるよ…じゃあね」
コブラ怪人は斬られた左腕を抑えながら、どこかへとかき消えた。後にはまだ小刻みに動いているコブラ怪人の尻尾と左腕が残されていた。
とりあえず、何とか撃退には成功した。そう安堵したトルネードは、ヘルメットの左側のスイッチを押す。

131 :
プシュー…
ダメージでヒビが入り、空気圧が漏れていたからか、いつものように勢いよく空気が吹き出て来ない。
口元のマスクとバイザーは解除されたが、後頭部のロックも解除されないので、自分で強引に引き抜いた。
左側頭部に大きなダメージを受けたせいか、汗まみれの顔がグラグラし、視界が定まらない。
「はぁ…はぁ…」
ヘルメットを小脇に抱えた由衣は肩で激しい息をしている。いつまで経ってもその荒い息がおさまる気がしない。
カブトムシ怪人との戦い以上に凄まじい疲れ、そして味わった事も無いような痛みが肉体を襲う。
少しでも動くと首や腰に鈍く、しかし凄まじい痛みが襲いかかってくる。
強化スーツは装着中、筋力を成人男性の数十倍に増幅させるが、その分筋肉に溜まる疲労も大きい。
由衣は変身を解除してから家に帰ろうと思ったのだが、今ここで変身を解いてしまうと動く体力すら残っていないかも知れない。
考え直した由衣は、ガタガタになったヘルメットを強引に被り直し、レッドジェッターに乗って家へと帰った。
自動操縦でハンドルを握っているだけでジェッターが家へと向かってくれる。ハンドルを握っているのが精いっぱいで、もうまともに運転するだけの気力や体力は残っていなかった。

132 :
「レッドトルネード!大丈夫!?」
「はぁ…はぁ…母さん……あれを……」
レッドトルネードは息も絶え絶えになりつつ、地下研究室へと帰り着いた。
ヘルメット左のボタンを押し、中に溜まっていた空気を排出する。ヒビが入ったヘルメットを投げ捨てるように床に置くと、中から汗でドロドロになった由衣の顔が出てきた。顔の左半分辺りも腫れている。
「由衣、カプセルに入りなさい」
「は、はい…」
真由美に言われて、ふらふらしながら由衣はカプセルに入る。真由美は腰のパックルから端末を取りだした。
「スーツ姿だとしんどいでしよう、楽になりなさい」
真由美が端末を操作すると、まだ首から下に装甲をまとったままの由衣が光に包まれる。全身の装甲が一気に由衣の肉体から解き放たれ、赤と白のインナースーツ姿となる。
そして、そのインナースーツも光の粒子となって剥ぎ取られ、由衣は裸身を晒す事になった。
しかし今度は元の服装が復元されない。
「裸でいるのが一番効果が高いから」
真由美がカプセルのスイッチを入れると、下から薄緑色の培養液が上がってきて、全裸の由衣を少しづつ包み込んでいく。
真由美にしか分からないが、この端末は外部からも操作が可能で、装甲解除後はインナースーツ姿や、全裸状態にしておく事も可能なのだ。
右腰辺りに、赤黒くて見るからに痛々しい大きなアザがある。他にも、身体のあちこちにアザがあった。
液体が由衣の首筋まで上がって来たころに、口元にマスクが装着される。
(ううっ…何だか染みる…)
まだ冷たい培養液が傷口に染みてくる感覚に、由衣は身をよじる。
液体がカプセルの中を全て満たし、由衣の身体が完全に液体の中に浸かり、カプセルの中に浮かぶと治療準備は完了である。
「理論上では一日半で治るわ。由衣、おやすみ」
真由美がそう声をかけていた時には、由衣は既に目を閉じていた。

133 :2013/01/04
今回は以上です。だいぶスーツ破壊まで近づきましたね。
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