2013年01月エロパロ287: シュタインズゲートのエロパロ5 (145) TOP カテ一覧 スレ一覧 Pink元 削除依頼

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シュタインズゲートのエロパロ5


1 :2012/12/11 〜 最終レス :2013/01/06
・シュタインズゲートの妄想を叩きつける場所です。
・カップリングについては問いません。 ただし、注意書きは忘れずに。
・べ、別にエロが無くたってかまわないんだからねっ
シュタインズゲートのエロパロ 4
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1347184330/
シュタインズゲートのエロパロ 3
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1325789848/
シュタインズゲートのエロパロ2
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1304341945/
シュタインズゲートのエロパロ
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1257776865/
まとめ
STEINS;GATE 2ch二次創作まとめwiki
http://www1.atwiki.com/reading_steiner/

2 :
前スレ容量オーバーのため新スレ作成しました。
立てられてよかった…。
>前スレ630
投下&萌郁編完結乙。
残り2人は確かに攻略完了済でどちらかというとオカリンの覚悟・決断次第だからな。
全ての原点でもあるといえるw

3 :
スレ立&前スレ630乙です^^
朝から抜かせてもらいました…

4 :
たて乙。
あと前スレのもえいくさんの人乙

5 :
まさかの容量オーバーw

6 :
前スレが512kオーバー・・・だと・・・?
脳内の中での神格化が止まらない件
もうね、一冊のノベルとして重宝したい作品だお
勿論、観賞用・保存用・予備・の3点買いでFA!絶対にだ!

7 :
>>6でも言ってるけど、
もう今年の冬は間に合わないにしても夏コミで出してもいいレベルだと思う。
布教用含めて5冊は買う自信がある。

8 :
こんばんは……
スレ半分で容量オーバーとか初めて見ましたww
いや私のせいですね申し訳ない orz
ええっと昨日は仕事疲れで爆睡
今日は残業でつい今しがた帰宅という状況なので遅れて大変申し訳ない
軽く更新して今日は寝まーす……

9 :
7−1:2011/02/12 01:00 未来ガジェット研究所
がくん、と岡部倫太郎の体が揺れて、携帯電話を持つ手がだらりと下がる。
「あれ、岡部倫太郎、もしかしてタイムリープしてきた?」
床に胡坐を掻いて座り込み、ヒーターに手をかざしていた阿万音鈴羽が問いかける。
「……ああ」
「相手は?」
「……まゆりだ」
どこか疲れた口ぶりで答えた岡部倫太郎は、小さな溜息をついて肩を鳴らした。
「で、上手く行ったの?」
「ああ。抱く事に成功はした」
「へぇー、すごいじゃん! で、あとは誰が残ってるの?」
嬉しそうにはしゃぐ阿万音鈴羽。だがなぜか岡部倫太郎の顔色は優れない。
「……ダメだ」
「へ?」
「ダメなのだ、このままでは」
岡部倫太郎の言葉には失意がある。
つまり前回のタイムリープは彼の望む結果に終わらなかったと言うことだ。
一体どういう事だろう。椎名まゆりを抱く、という目的は達成されたはずではないか。
「岡部……倫太郎?」
「ダメだ……ダメだダメだ、ともかくこのままではダメなのだ!」
徐々に言葉が激しさを増してゆく。
それは正確には失意と言うよりは失望、それもどこか憤怒の入り交じった感情のようだった。
ただそれが椎名まゆりに対するものなのか、彼自身に対するものなのか、それともまるで別の何かに対するものなのかは判然としないけれど。
阿万音鈴羽は息を飲み、彼の迫力に気圧されて一歩下がった。

10 :
「もう一度……もう一度まゆりを攻略する」
「え? だってまゆりおばさまはもう終わったんじゃ……」
「違う! 終わってなどいない! このままではダメなのだ。まだ足りない……まだ……!」
額に手を当てた彼が浮かべているのは苦悶の表情だ。
阿万音鈴羽はその理由を問い質そうと手を伸ばしかけるが、なぜか躊躇してそのまま手を下ろしてしまう。
話を聞きたい。
聞いて力になりたい。
大好きな岡部倫太郎のためだったらどんな事だってしてあげるのに。

けれど、こんな表情の時の彼が抱え込んだ重荷を他人が背負えないことを……彼女は誰よりも知っていた。

悔しい。辛い。
こういう時の彼を助けるために、助けたいからこそ自分は未来からやって来たというのに。
歯がみする阿万音鈴羽に気づいているのかいないのか、
岡部倫太郎は冷蔵庫からドクペを取り出し、ソファにどっかと腰を下ろして一気飲みする。
「朝まで寝る。鈴羽、7時になっても俺が起きなかったら起こしてくれ」
「うん、わかったよ。わかったけど……」
脚を組み、ソファに深くもたれ、そのまま目を閉じる岡部倫太郎。
「それとお前は今回手伝わなくていいぞ。俺だけで十分だ。次のタイムリープまで秋葉原を観光でもしてくるがいい」
それだけ告げると、彼は瞬く間に寝息を立て始める。
特技か何かなのだろうか。それとも余程疲れているのだろうか。
「岡部倫太郎……なにかヘンだよ……」
阿万音鈴羽は知っている。
岡部倫太郎の意志の強さも、諦めも悪さも、その執念とも呼ぶべき不屈の精神も。
けれど今の彼のありようは、どこかそこから外れている気がして。

彼女は、幾度、いや幾十となく彼を迎えてきたこの部屋で……


初めてどこか不安そうな顔で岡部倫太郎の寝顔を見つめていた。


 

11 :
というわけで今宵はここまでー
これまでも順風満帆とはいかなかった攻略ですが、果たして今回は……?
まあそんな感じで次回に続きますー ノシ

12 :
おつー

13 :
>>1スレ立て乙
新スレ立ってたの気づかなかったぜ、
なんで誰も感想書かないのかな〜と思ったらw
萌郁編も含めて感想ー
やっぱり萌郁さんはエロかった。素晴らしい。
無口な彼女だからどう表現するかと思ったけど、饒舌にならずとも必要なことは肉体言語で全て表現できるな!
おっぱいの力は偉大だ。
どこぞの貧乳とは違うのだよ!ェ
そしてやっとまゆしぃの番が来たか。彼女は近し過ぎる分距離感の描き方が難しそうで。
でも彼女もバツグンの身体の持ち主でして、非常に期待しております!

14 :

だーりんのまゆしぃの水着姿は凄かったな

15 :
こんばんは……
少し寝過ごしました

16 :
7−2:2011/02/12 10:42 未来ガジェット研究所
「う〜ん、う〜ん」
鉛筆を顎に当て、目の前のノートとにらめっこしている椎名まゆり。
部屋の奥では牧瀬紅莉栖と橋田至がタイムリープマシンの開発に勤しんでいる。
「おはよう諸君! 開発は順調に進んでいるか!」
ばたん、と大きな音を立てて扉を開けた岡部倫太郎がラボに入ってくる。
「あ、オカリン! トゥットゥル〜♪」
「うむ、まゆり、今日もいい天気だな!」
なぜか上機嫌に見える岡部倫太郎。
「なに、岡部。随分とハイテンションだな。遂に危ない薬にでも手を出した?」
「何が遂にだクリスッティ〜ナよ。俺は以前からもそしてこれからも未来永劫そんなものに頼るほど落ちぶれてなどいないわ! フゥーハハハハハハ!」
「どうだか。あとクリスティーナ言うな」
「まあそれは置いておいてだ」
「置いておくなぁ! 聞けぇ!」
「ところで我が助手よ、マシンの開発の方はどんな具合だ」
「だぁ、かぁ、らぁ、私は助手じゃない! クリスティーナでもないっ! 私には牧瀬紅莉栖というちゃんとした名前があるの! 何度言ったらわかる!」
「ええい! マシンの進捗具合を尋ねているのだ我が助手よ!」
「あー! もー! ……もダメ。なんか疲れた。あーでもここで折れたらなんか負けな気がするぅ〜!」

17 :
頭を押さえながら溜息をつく牧瀬紅莉栖。高笑いしながら調子に乗る岡部倫太郎。
そして……そんな彼らの様子を実に楽しげに見つめている椎名まゆり。
「牧瀬氏牧瀬氏。オカリンのことだからここで折れたらたぶんずっと助手呼ばわりだと思われ。なんかこれ前にも言った気がするけど」
「私もそう思う……ええい、いっそもっと素直な応答ができるように脳漿掻き出して弄り倒してやろうかしら」
「こっ、怖いことを言うなっ! 大体そんな事本当にできるのかっ?!」
大仰に驚いて後ずさる岡部倫太郎。
一方でサディスティックな笑みを浮かべて不気味に肩を揺らす牧瀬紅莉栖。
「ふっふっふ……さあてどうかしらねえ。とりあえずあんたの脳を覗いてみればはっきりするんでしょうけど。どう岡部? 科学の偉大な発展のために検体として協力する気はない?」
「ごっ、ご免こうむるっ!」
「なによ、科学者なのにそれくらいの探究心持ち合わせてないの?」
「俺は科学者ではない、ムァッドサイエンティストだっ! その手の実験はされる側ではなくする側なのだ!」
「ハイハイ、厨二病乙」
「う、嘘ではないぞ! この俺の手にかかれば人の脳を覗き見ることくらいいとも容易い事なのだからなっ!」
虚勢を張って人差し指で牧瀬紅莉栖を差し、必に牽制する岡部倫太郎。

18 :
「おおー、すごいぜオカリン。是非今度メイクイーンでフェイリスたんの考えてることを実況生中継してほしいお。エ、エロトークしながら!」
「ま、まあ機会があったらな」
「ふーん。じゃあせっかくだしその機会こっちで用意させてもらおうかしら」
「な、なにっ!」
「それくらい簡単なんでしょ。確認させてもらえないかしら……『助手として』」
「うぐっ!」
腕を組んでジト目で岡部倫太郎を見つめる牧瀬紅莉栖。
逃げ場を失い一瞬うろたえる岡部倫太郎。
「よ、よかろう。えー、あー、まゆりよっ! 我が実験台となってもらうぞ!」
「ふぇええ?! まゆしぃが?」
傍観者を決め込んで楽しそうに見物していた椎名まゆりが、突然槍玉に挙げられてすっとんきょうな声を上げる
「うう、でもまゆしぃはオカリンの人質なので逆らえないのです」
「その通り! ふふふまゆりよ覚悟するがいい!」
「ふええ、オカリンに考えてること全部知られちゃうよう」
上から見下ろされ、挙動不審げにわたわたとする椎名まゆり。
岡部倫太郎のまっすぐな視線を浴びた彼女は、下からじぃ、と覗き込むように見つめ返し、やがて両頬に手を当ててぽ、と頬を染めた。
そしてそれをじっくりと見学していた橋田至の一言。
「まゆ氏まゆ氏、『全部知られちゃうよう』のところだけもう一度!」
「ぜ、全部知られちゃうよう……」
「そこ、もっと恥ずかしそうに、くぐもった声で!」
「ふええ……ぜ、ぜんぶ知られちゃうよう……っ」
「「やめんかこのHENTAIがーっ!」」
「おごーっ!?」


岡部倫太郎と牧瀬紅莉栖の同時ツッコミが物理的に飛び……橋田至はラボの床に崩れ落ちた。


 

19 :
というわけで今宵はここまでー
また次回お会いしましょう ノノシ

20 :
>>19
いつも乙です^^
まゆりの「ふええ」だけでおなかいっぱい…
中の人で脳内再生されてもうヤヴァい

21 :
乙・プサイ・コングルゥ!
まゆしぃマジ天使。

22 :
こんばんはー
だいぶ遅くなりましたが更新に来ました……
最近マジ忙しい……

23 :
7−3:2011/02/12 11:37 
「えーっと、うーんと、ここはこうじゃなくって……えーっと?」
椎名まゆりは目下頭を悩ませている模擬テスト用のプリントをじっと見つめて……その後ぺらりとめくってみる。
「落ち着けまゆり。問題用紙の中から算出されない答えなどない」
「うう、それはそうだけど、いくら考えてもさっぱりなのです」
「上に書いてあるだろう。よく見てみろ」
「ふえ? どこどこ?」
「そんな上じゃないっ! というか別の問題を見てどうする。同じ問題の一行目だ」
「えーっと、えっと……??」
頭上に?マークを浮かべて首を傾げる椎名まゆりに、業を煮やした岡部倫太郎が指で差し示す。
「公式で習っただろう。この値をここに代入すればだな……」
「あ、そっかぁ。じゃあここをこうすれぱ……できたー!」
瞳を輝かせて問題用紙を掴み、正面に掲げる椎名まゆり。よほど嬉しかったのだろう。
「大袈裟だな」
「そんなことないよー。まゆしぃこんな問題解けたの初めてなのです!」
「普段のテストの成績が本気で心配になってきたぞまゆりよー……」
頭を抱える岡部倫太郎。その背後ではしゃぐ椎名まゆり。
そして……それをどこか感心した風情で眺めている牧瀬紅莉栖。
「……ふうん、ちょっと見直した。岡部、アンタ人に教えることもできるのね」
「んがっ、失礼な! 高校の数学だぞ!?」
「自力で解けるかどうかと他人に教えられるかどうかは別のスキルよ岡部。後者の方がずっと難度は高い。相手がどこが間違ってるかがわからないと相手を導けないからね」
「うん、すっごくわかりやすかったよー。えっへへー、オカリンありがとう。まゆしぃは大感謝なのです!」
憮然とした表情で、だが満更でもなさそうに岡部倫太郎が頭を掻く。

24 :
本来なら……こんな流れではなかった。

思ったより難しい設問に岡部倫太郎がどう解いたものだろうかと腕組みをしている間に、牧瀬紅莉栖がやってきてスラスラと解を示し、その日の彼は随分と面目を失ったものだった。
だからタイムリープしてやり直した際に、事前に椎名まゆりが悩んでいる試験範囲を簡単に予習し、万全の対策を施していたのである。
「終わったー! 長かったよー」
ずべ、とテーブルに上半身を投げ出す椎名まゆり。
「まだ終わってなどいない。本番の試験は休み明けだろう」
「えっへへー、そうだったねえ。忘れてたよー」
困ったような笑顔で自分の頭を撫でる椎名まゆり。
「そこを忘れては本末転倒ではないかっ」
「でも、オカリンが教えてくれたからきっと大丈夫大丈夫。だいじょうぶいぶい、なのです」
にこやかに笑いながら立ち上がり、小さく伸びをすると奥の部屋を覗き込む椎名まゆり。
「ねえねえ、下の電子レンジ使ってもいいかなあ?」
今回開発しているタイムリープマシンはかつて作成し、廃棄した電話レンジ(仮)の同型機をわざわざ探し出して作成している。元々が偶然の産物であり、不安要素は少しでも減らす必要があったのだ。
だが夏に電話レンジ(仮)を廃棄してから冬に至るまで、ラボに電子レンジがないのはいかにも不便であった。特に椎名まゆりがそれを強く主張したのだが。
そこで電話レンジ(仮)がラボから姿を消してほどなく、橋田至が廃品置き場から適当な電子レンジを回収してきて修理、ラボに備え付けたのだ。
これが椎名まゆりの言っている『下の電子レンジ』である。
ちなみにこちらは修理以外には一切手が加わっていない素の電子レンジであり、特殊な機能は何もない。
「う〜ん、別にこっちで使ってるわけじゃないけどアンペア的に不安があると思われ」
「でも数分でしょ? その間こっちを起動しなければ問題ないんじゃない?」
「けど停電はマズイっしょ。まあオカリンが全部責任取ってくれるって言うならモーマンタイだけど」
「それは困るっ」
階下から恐ろしい形相の天王寺裕吾が階段を登ってくる様を想像して背筋を寒くする岡部倫太郎。

25 :
「えー、でもー、ジューシーからあげナンバーワンが〜」
「世界が震撼する程の偉大なる発明のためだ。ジューシーからあげナンバーワンはまたの機会にするのだなまゆりよ」
「ええ〜。まゆしぃそれだけが楽しみで勉強してたのにぃ〜」
「小さいなっ?!」
思わず突っ込みを入れた岡部倫太郎ではあったが、悲しそうな椎名まゆりの顔を眺め、やがてやれやれといった表情で彼女の頭に手を乗せた。
「ともかく開発を遅らせるわけにはいかん。電子レンジの使用は禁止だ、まゆり」
「うう〜、まゆしぃはとってもと〜っても残念なのです……」
しょんぼりと肩を落とす椎名まゆりと、それを見て不機嫌そうに目を細める牧瀬紅莉栖。
「ちょっと岡部! 電子レンジなんて使ってもたかが数分でしょ! それくらいなら……!」
「だからまゆりよ、いっそ外に食べに行こうではないか」
「へ?」「ふえっ?」
意外そうな声が二つ同時に響いた。
ひとつは牧瀬紅莉栖のもの、もうひとつは椎名まゆり当人のものである。
「我が未来ガジェット研究所の偉大なる発明のためだ。ダルと我が助手が開発に専念できる環境を整えるのもラボの代表たるこの鳳凰院凶真の務めである! フゥーハハハハハ!」
「ふえー、オカリンがお昼をごちそうしてくれるなんてまゆしぃびっくりなのです」
椎名まゆりが両手を合わせて目を丸くする。
「助手よ、これで構わんな」
「い、いいけど……」
「なんだ、まだ何か文句があるのか」
「違う。ただその、なんかあんたらしくないな……って」
「そ、そうか? き、気のせいではないか?」
ギクリとして思わず言いよどんでしまう岡部倫太郎。
だが意外にも牧瀬紅莉栖の追求はいつもの精彩を欠いていた。
「そうかも。なんかずっと籠もりっきりでちょっとナーバスになってる気がする。ちょうど今開発も大詰めだし、岡部が……その、私の開発環境に配慮してくれるのは、正直嬉しい、かもしれない」

26 :
頬を赤らめて、わざとらしく腰に手を当てそっぽを向く。
その様がなんともいじらしき愛らしく、岡部倫太郎は現在進行中のミッションの事を一瞬忘れかけた。
「べ、別に感心したとかそういうんじゃなくて、いやラボの代表としては当然というか、むしろ気を使うのが遅すぎというか、ただあんたがそんな事言い出すなんて珍しいなとか、そんだけ! そんだけだかんな!」
「牧瀬氏からツンデレ分補充いただきました本当にありがとうございます。ただちょっと糖分過剰だお。オカリンオカリン、だから外に行くならついでにペプシのNEXよろ」
「うっさい黙れHENTAI!」
話が横に逸れてくれた事で岡部倫太郎はとりあえずホッと息をつく。
「確かにずっとラボに籠もったままでは空気も悪かろう。換気でもするか?」
「待ってオカリン、この寒さで窓全開にされたら僕寒さで凍えぬ自信があるのだぜ。光の早さでな! キリッ」
「冗談だ。後でNEXではなく何か暖かいものでも差し入れしよう」
「マジでー? さっすがオカリン僕達にできない事を平然とやってのける! そこにシビれるあこがれるゥ!」
「……なんか岡部今日はホントに変ね。どうかしたの?」
再び牧瀬紅莉栖が眉をひそめ、岡部倫太郎はギクリとその肩を一瞬竦ませた。
「まゆり、これはきっと罠よ。こいつの事だからきっと何かロクでもないことを考えてるに決まってるわ」
「きっと食事に睡眠薬をまぜまぜして眠りについたまゆ氏に色々イケナイ研究をするつもりなんだお。オカリン、その時は是非ボクも呼んでくれ」
「HENTAIは黙ってろ!」
当たり前のように牧瀬紅莉栖のツッコミが飛ぶ。
「えー、オカリンはそんなことしないよう。ねえオカリン?」
「あー、うむ。当然だろう。なぜこの俺がまゆりにそんな事をせねばならん」
岡部倫太郎は僅かに言い淀んだ後それを否定した。
なにせ今回に限り完全に嘘とも言いきれないからだ。

27 :
「ほらー」
「それはそれでまゆりに失礼じゃない?」
「クリスッティーナよ、俺にどうしろというのだそれは」
「だからクリスティーナじゃないと言うとろーが!」
「勘違いするなよ。まゆりは俺の人質だ。人質をどうこうするなど俺の勝手、俺の自由! わざわざ睡眠薬など使うまでもないわ! フゥーハハハハハ!」
高笑いする岡部倫太郎を尻目に、椎名まゆりに優しげな視線を向ける牧瀬紅莉栖。
「まゆり、こんな危険人物と縁を切るなら今のうちよ? 大人になってからこんな人と付き合ってたら絶対貴女のためにならないわ」
「そこっ! 失礼な事を言うなっ!」
ツッコミを入れつつも内心で肝を冷やす岡部倫太郎。
なにせ以前動画で見た未来の自分は未だに厨二病のままだった。
確かに自分だって大人になってまでそんな相手と付き合いたいとは思わない。
「わかった、そこまで言うなら差し入れの件はナシだ。行くぞまゆり、二人で美味いものでも喰ってこようではないか」
「あーオカリンゴメン! マジ謝るから! だから肉まん! あったかホカホカの肉まんプリーズ!」
橋田至の叫びを無視して、まゆりを連れて外に出る岡部倫太郎。寒風が肌を刺して思わず身震いをする。
「いいのオカリン、ダルくんのこと放っておいて。クリスちゃんのことも」
「構わん。いい薬だ。人の好意を踏みにじりおって」
ふん、と不機嫌そうに腕を組み階段を降りる。
「えー、ダルくんもクリスちゃんもそんなこと考えてないと思うけどなあ」
とててて、と岡部倫太郎の後を追いかける椎名まゆり。そして隣に辿り着いた事で満足そうに歩調を緩める。
そんな彼女の頭に軽く手を乗せる岡部倫太郎。
「わかっている。後で差し入れでもしてやろう」
「うんっ!」
「見た目が同じ激辛中華まんをな! フゥーハハハハハハ!」
「もー、オカリンってばー」
たしなめるような口調の椎名まゆり。
だがその表情は、口調とは裏腹にどこか嬉しそうだった。

28 :
というわけで今宵はここまでー
ちょっとだけ長めですが日常の風景ということで
それではまた次回ー ノノ

29 :
壁!壁は!どこだ!

30 :
クソぉ壁はどこだ!!壁は…っと、あぶねーなおっさん!!
…あ…て、天王寺さん…ご、ごめんなさ(

31 :
乙。
やっぱりオカリンとまゆしぃは相性が良いな。なんだかんだいってまゆりにはダダ甘なオカリンらしい

32 :
こんばんはー
今宵も更新しに参りましたー

33 :
7−4:2011/02/12 12:11 キッチンジロー
岡部倫太郎と椎名まゆりはキッチンジローで軽い昼食を取った。
「座れてよかったねー」
「ああ、なにせ昼時は込むからな」
ざわめく店内で一息つく。
幾つもの世界線を越えて様々な秋葉原を見てきたが、やはり秋葉原はこの雑然とした空気あってこそのものだろう、そんな感慨が湧いてきて、岡部倫太郎は自嘲するように唇を歪めた。
「ねえねえオカリン、ところで今ラボで作ってるえーっと、たいむ……」
「まゆり、外でその話題は無しだと言っておいたはずだ」
「あ、そうだった。えっへへー♪」
こつん、と己のこめかみを軽く小突く椎名まゆり。
悪気は一切ないのだろうが、どうにも口に蓋をしにくいというか、他人に秘密を作るのが苦手な娘である。

だが今回はいらぬトラブルはなるべく避けねばならぬ。
タイムマシンの開発進捗こそ芳しくないもののこの世界線でもSERNは未だ健在だし、元の世界線との類似性の高さからこの街にラウンダーが潜伏している怖れも十分にある。
街中でうかつな発言をして目を付けられたら元も子もない。
特にタイムリープマシンが完成する前に襲われることだけはなんとしても避けねばならなかった。
岡部倫太郎は半年前、己の迂闊さと危機意識の低さゆえに多くの仲間を傷つけ、彼女達の想いを無に帰して来た苦い経験がある。
それは既に上書きされて消え失せた過去だけれど、それでも彼の記憶には深く刻まれていて、
だから既に危険がわかっており、取るべき対策がはっきりしている以上、彼はラボの所長として大切な仲間達を前に同じ轍を踏むことは決して許されないのである。
「十分に気をつけてくれまゆり。ラボの存亡に、そしてラボメン達の命に関わる事なのだ」
「えー、でもでも、きっとみんなだってすごいなーって思ってくれるよー」

34 :
一方の椎名まゆりにはどうにもそうした危機感が欠如しているようだ。
当たり前だろう。彼女はこの世界線ではあの半年前の永遠の夏休み……その当時だとて命の危機などには一度たりとも瀕してなどいないのだから。
だが岡部倫太郎は知っている。この世界中で彼だけが知っている。α世界線での彼女の運命を。永劫とも思えるほどに繰り返された忌まわしき収束を。どんなに足掻いても止める事はできなかった……彼女の終末を。

己の目の前でんでゆく彼女を……幾度も、いや幾十となく見せつけられたのだ。

だからあんな世界線にはもう行かない。決して行かせやしない。
そのためにはたとえ彼女がどう思おうと、自分達が行っているタイムリープマシンの開発を外部に知られるわけにはいかないのだ。
「俺は狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真だ。世間の評価など別にどうでもいい。世界に混沌をもたらすことこそが俺の望みなのだからな」
「えー、みんなにもっとオカリンのこと知ってもらいたかったのになあ」
どこか不服げにテーブルの上に上体を投げ出す椎名まゆり。
きっとそれが彼女なりの真摯な想いなのだろう。
そんな彼女の頭に軽く手を乗せて、できる限り優しく撫でる。
「俺のことはラボメンであるお前達だけがわかっていればいい。少なくとも今はまだ……な」
「……うん」
目を閉じて心地良さそうに彼の手指の感触に身を任せる椎名まゆり。
この当たり前の、どこにでもあるような日常がなんとも得難いものだと、かけがえのないものだと岡部倫太郎は知っている。
彼女が……椎名まゆりがなんの危機感もなくこうして笑っていられるのは、とても素晴らしいことなのだと。

だからこそ大事にしたい。もう二度と失くしたりはしない。
そのために……彼は、たとえ泥を啜ってでも進む覚悟があった。

「さ、そろそろ料理が来る頃だ。いつまでもテーブルに突っ伏していたら皿を置く場所がなくなるぞ」
「えー、それは困るよー」
眉根を寄せながら椎名まゆりが上体を起こす様を……当たり前の、けれどかけがえのないそんな光景を、
岡部倫太郎は眼を細め、頬杖を付きながら見守っていた。

 

35 :
ということでちょっと短めだけど今宵はここまでー
また次回にお会いしましょうなのだ ノノシ

36 :
トゥットゥルー♪(あいさつ

37 :
前スレ630でロストしたけど、ちょうど良かったのかな?

38 :
容量オーバーでDat落ちしたよ
感想書き込もうとしたらちょうど書けなかった

39 :
わくわくですな

40 :
こん、ばん、は……
ついさっき帰ってきました
出かけたの朝なのになあ……
ともかく更新だけして寝ますー

41 :
7−5:2011/02/12 13:07 秋葉原・中央通り
「ラボに戻る前に少し店を回って行く。まゆりも付き合え」
「えー、オカリン、何か買い物?」
「うむ。次なる未来ガジェットの着想を得るためにな! フゥーハハハハハ!」
そんな事を豪語しながら表通りの店を巡る。
とはいっても特に何かを購入する予定などないのだが。
まずは椎名まゆりの反応を見るための軽いジャブと言ったところだろうか。
「あー、ストーブがあるよ電気ストーブ!」
電化製品の店を物色していると、椎名まゆりが歓声を上げて暖房器具のコーナーへと駆けて行った。
「まゆり、店内を走るな。迷惑だろう」
「えっへへー、ごめーん」
口ではそうは言いながらも、椎名まゆりは展示されている電気ストーブの前にしゃがみこみ、手をかざしながら「わー、あったかーい」だの「ぽかぽかなのです!」だの暖まり具合をチェックし始める。
……まあ、実際に点灯しているわけではないのだが。
「ねえねえオカリン、まゆしぃね、これラボにあったらとってもあったかーってなると思うのです」
「却下だ却下。電気代がいくらかかると思っている。それに電気ストーブはラボの広さではあまり効率的とは言えんぞ」
「じゃあこっちはこっち! ガスストーブならきっとあったまるよー!」
「ガスヒーターならもう一台あるだろう。年末にダルが拾ってきた」
「あー、そういえばそうだった。えっへへー」
こつん、と己の頭を小突く椎名まゆり。
確かに彼女の言いたいこともわかる。あのガスヒーターは確かに便利だが、旧式のせいか部屋全体が温まるのに結構時間がかかるのだ。
ゆえに現状真冬に誰もいないラボに最初にやって来た人間は、部屋が暖まるまで少々肌寒い思いをする必要があった。

42 :
「じゃあこれは……」
「灯油は誰が運んでくるんだ。それに換気はどうする。暖まるたびに部屋の窓を開けることになるぞ」
「う〜ん、難しいねえ」
「ともかく暖房は諦めろ。少なくともここにあるものは我がラボの予算的に無理だ」
「えー、じゃあオカリンはなんでこんなところに寄ったの?」
「う……いやそれは……というか違う! このコーナーにはお前が寄り道したんだろう、まゆりよ」
「あれれ、そうだっけ?」
「そ・う・だ。では先に行くぞ」
「あー、オカリン待ってよ〜」
岡部倫太郎の歩みに遅れるまいと、とたたた、と小走りで追いかけてゆく椎名まゆり。
けれど彼女の歩調には置いてゆかれた、といった焦燥や不安は感じられない。
「遅いぞ、まゆり」
「えっへへ〜。ごめ〜ん」
とん、と小さく飛び跳ねて、両脚で岡部倫太郎の隣に着地する。
なんとも嬉しそうな、柔らかな笑みで。
椎名まゆりは知っている。岡部倫太郎の優しさを。
椎名まゆりは知っている。彼が決して自分を置いていったりしない事を。
自分が小走りで追いかけているなら歩調をゆるめてくれる。
角を曲がったら少しの間佇んで追いつくのを待ってくれる。

自分が迷わないように。いつだって。

自然口元をほころばせた椎名まゆりは、岡部倫太郎の左手を掴んで半ば強引に腕を組んだ。
いや、むしろどちらかと言えばそれは、腕を引きながら彼に寄りかかるような格好に近いかもしれない。

43 :
「おい、まゆり、どうした」
「ん〜、なんでもないので〜す」
「なんでもないという事はなかろう。こら、歩きにくいぞ。手を離さんか」
「えっへへ〜。イ〜ヤな〜のですっ♪」
なんとも上機嫌にそう告げた椎名まゆりはさらに腕を引き、上半身を傾けて岡部倫太郎に身体を預けた。
「あー、いや、その、なんだ……」
頭を抱えながら周囲を見渡す岡部倫太郎。
土曜日ゆえに歩道には歩行者が蔓延しており、その雑踏どもは当然と言うべきかリア充氏ね! 的な空気を蔓延させている。
少し離れた場所では年嵩な女性達が何やらひそひそと小さな声で囁き合っては岡部倫太郎のよれよれの白衣に胡散臭げな瞳を向けていた。
その視線は羨望や嫉妬というより……むしろ無垢な少女に不埒を働こうとする不審者に対するそれだろうか。
「と、ところでまゆりよ。どこか行きたいところはないか」
「ふぇ? どうしたのオカリン?」
どこか上ずった声の岡部倫太郎の言葉に、腕をぎゅ〜っと引っ張ったまま、下から見上げるようにして椎名まゆりが問いかける。
「ど、どこへなりとも連れて行ってやろう。どこでもいいぞ!」
「どこって……どこ?」
「どこでもいいと言っただろう! ともかくここではないどこかにだ!」
どこかコミカルな口調ながら、岡部倫太郎は割と切羽詰っていた。
けれど端から見ればこれもいちゃついている様に見えるのだろうか。
周囲の好奇に満ちた視線を浴びて、真冬だというのに岡部倫太郎の肌にはじんわりと汗が浮いてきた。
「えっとね〜、じゃあオカリン、ちょっと付き合ってもらってもいい?」
「ああ構わんぞ! さあ行こうすぐに行こう!」
「ふぁ……」
岡部倫太郎は椎名まゆりの手を取ってスタスタと歩き出す。
ととと、と少し体勢を崩しながら、だがすぐに持ち直した椎名まゆりがそれに続いた。
一刻も早くその場を立ち去りたい岡部倫太郎の歩みは結構な速さで、いつもよりやや急いた感じでそれに合わせる椎名まゆり。
けれど彼女には不満などなかった。むしろ逆であった。
己の右手を掴んでいる岡部倫太郎の手。いつだって自分を引っ張ってくれる素敵な手。真冬なのにやけに暖かい大好きな手。
「えっへへ〜♪」
やけに嬉しそうに笑った椎名まゆりは……
やがてとてて、と早足で岡部倫太郎の隣に並び、再びその歩調を合わせた。
これまでもずっとそうしてきたように。


……きっとそれが必要なら、これからも何度だって。


 

44 :
そんな感じで今宵はここまでー
ね、眠い…… ノノ

45 :
乙です
なんか美しいですよね
何かはわからないけど

46 :
こんばんは……
今宵もなんとか更新できそうです
このペースを維持できるといいですね

47 :
7−6:2011/02/12 14:12 ドンキ・ホーテ店内
「で……行きたいというのが、ここか」
「だってだって、オカリンと一緒に来てみたかったの!」
彼らがやって来たのは最近すっかり秋葉原に定着したドンキ・ホーテであった。
様々な品が結構良心的な値段で、所狭しと並べられている。
決して見やすい店内ではないけれど、そこをむしろ宝探しでもするような感覚で物色するのがこの店の特徴であり、楽しみ方でもある。
無論ただ賞品を物色しに来たわけではない。
椎名まゆりが望んで来た場所である。ここに何かの攻略の手がかりがあるのではないか……
岡部倫太郎はそう目論んでいたのだ。
だが……
「わぁ〜、すごいすごい! オカリンオカリン、このお猿さんシンバルで目覚まししてくれるよ!」
妙にはしゃぎながら椎名まゆりが雑多に詰まれた目覚ましコーナーの一角を指差す。
そこには昔ありふれていたシンバルを打ち鳴らす猿のおもちゃに目覚まし時計の機能が付与された商品が特価で売られていた。
「ただ喧しいだけではないか? そもそもまゆり、お前目覚まし時計は既に持っているだろう」
「え〜、でもでも、いっぱいあった方がしっかり目覚めるかもなのです!」
必に抗弁する椎名まゆりだが、それは売り言葉に買い言葉のたぐいであってあまり説得力は感じられぬ。
「そこまでして目覚めたい状況とは一体なんなのだ」
「え〜っと、例えばコミマの始発に遅れないようにするとか〜」
「早寝早起きを心がけろっ!」
岡部倫太郎のやや甲高い声のツッコミに、だが椎名まゆりは唇を尖らせる。
「え〜、だってだって、コスプレ用の衣装の製作でちゃんと眠れない時もあるし〜」
「しっかり計画しろ。前日にまで仕事を残すな」
「ええ〜」
「大体まゆりよ、お前はなんでも引き受けすぎなのだ。確かにお前のコスプレ衣装製作技術が優れているのは認めるが……」
「でもでもでもオカリン、まゆしぃの作った服を着てくれるレイヤーさんが1人でも増えたなら、まゆしぃはすっごくすっごく幸せなのです」

48 :
にぱー、と邪気のない笑みで笑う。本気でそう思っているのだろう。
この笑顔は……かつて岡部倫太郎が命を賭けて守ったものだ。
幾度も幾度も幾十度も挑み、敗れた。その都度彼女のを目の当たりにしてきた。
心を、魂をすり減らすようにして必に挑み、ようやくたどり着いたのがこの世界線である。
だから……今彼女のこの笑顔を見る事ができるのは、彼のささやかな、だが何よりの褒賞であり、そして誇りでもあった。
「オカリン……?」
岡部倫太郎が僅かな間耽っていた感慨から我に返ると、椎名まゆりがじいと上目遣いで彼を見つめていた。
「? どうしたまゆりよ」
事情を話していない椎名まゆりに気取られるような事は何もなかったはずだが……
岡部倫太郎は首を傾げて椎名まゆりを見つめ返す。
すると彼女は何故か頬を紅に染めて、ばつが悪そうに顔を背けてしまう。
「オカリン……ずるいのです」
「なにがずるいのだまゆり。この俺、鳳凰院凶真はラボメンに対して卑劣を働くような真似はしない! フゥーハハハハハ!」
そう言いながら彼の胸はちくりと痛んだ。
今まで自分がやってきた事が、そしてこれから彼女に対して働こうとしている行為が、卑劣でなくてなんなのだろうか、と。
脳裏に浮かぶラボメン達の姿……
策を弄するようにして、罠に嵌めるようにして抱いたフェイリス・ニャンニャン。
いかにも己には罪のないフリをして、偶然を装うようにして心を弄んだ漆原るか。
大人のデートを重ねて、盛り上げた雰囲気の中で押し倒した桐生萌郁。

そしてまた今回も、そんな風にして彼女を……椎名まゆりを、自分は……!

 

49 :
「ちがうの〜。そういう意味じゃなくって……」
「どうしたまゆりよ。言いたい事があるならはっきりと言わんんか」
慌てて我に返った岡部倫太郎はとりあえず話題を自分から相手へと切り替える。
気取られた様子はない……ような気がする。
確かに今日の椎名まゆりはいつもと違って少々歯切れが悪かった。
時折総てを見透かしたかのような鋭い洞察力を発揮する彼女が、今日はなんとも挙動不審である。
「な、なんかオカリンのまゆしぃを見る目つきが……」
ゴニョゴニョ、と消え入るような声で椎名まゆりは抗弁し、顔を背けたままチラリと視線だけ岡部倫太郎に送ると再び逸らす。
気のせいか耳朶の赤味が増したようにも見えた。
「な、あ、いや違うぞまゆり! 俺は決してお前をいやらしい目付きで見ていたわけでは……!」
慌てて大声を出したせいで周囲からの視線を集め、ますますうろたえる岡部倫太郎。
彼女が言いかけていた事は全然別の事だったのだが、まあ発言内容から類推すれば彼がそう誤解してもおかしくはない。
商品がうず高く積まれたこの手狭な通路で、少女と見紛う娘に必に言い訳をしている白衣の男は怪しいことこの上なく、
岡部倫太郎は店員が召喚される前に急いで撤退した。

……椎名まゆりの手を、強く引きながら。

「オ、オカリ〜ン!」
引かれるがままに岡部倫太郎の後を追う椎名まゆり。
その頬には、うっすらと朱が走っていた。

50 :
というわけで今宵はここまでー
まゆしぃ可愛いよまゆしぃ
それではまた次回お会いしましょう ノシ

51 :

やべぇ、紅くなるまゆしぃ超可愛い

52 :
こんばんはー
今宵は珍しく余裕をもって更新できそうです

53 :
7−7:2011/02/12 16:22 秋葉原・中央通り
その後岡部倫太郎と椎名まゆりは二人で秋葉原をぶらぶらと歩いた。
いずれラボに戻るという確たる終着はあったけれど、彼らには取り立てて目的地があったわけではない。
にも関わらず、寒風吹き荒ぶ2月の秋葉原を、その身を寄せ合ってゆっくりと散策する。
不思議と寒さはあまり感じなかった。
椎名まゆりは岡部倫太郎の横で何か楽しそうに語りかけ、どこか嬉しそうについてゆく。
電気屋、メイド喫茶、玩具店、フィギュアの店……秋葉原独特の雑多で混沌とした街並み。
彼女は岡部倫太郎と共に歩きながら、それらの店を覗き込み、まるで宝石箱を見つけたかのように瞳を輝かせていた。
「見て見てオカリン、あれ凄いよ〜♪」
「……まったく、まゆりよ、お前は相変わらず楽しいことを見つけ出す天才だな」
「ええ〜? そうかなあ?」
「ああ、そうだとも。自信を持っていいぞ。この鳳凰院凶真が保障してやろう。フゥーハハハハハ!」
「ん〜、よくわかんないけど、オカリンに褒められるとまゆしぃは嬉しいのです。えっへへ〜」
嬉しそうに微笑んで帽子を直す椎名まゆり。
彼女の笑顔が眩しくて、岡部倫太郎は僅かにたじろいだ。
これほど自分に全幅の信頼を寄せてくれている相手を、自分は今から練習台にしようとしている。
これは彼女に対する裏切りではないだろうか。
……いや、違う。断じて裏切りなどではない。
牧瀬紅莉栖を、そして彼女自身を救うためだ。それはわかっている。わかっているのだが。
「? オカリン?」
「ああいやなんでもない。次はここなどはどうだ?」
抜けているようでいて意外に鋭い椎名まゆりの追及を逃れるため、岡部倫太郎は適当に中央通りから一本脇道へと入る。
そこには店内総てがカプセルトイで埋め尽くされたなんとも秋葉原らしい店があった。

54 :
「わあ、うーぱだ! ねえねえオカリン! これやりたい! やっていい?」
「ふむ……まあよかろう」
岡部倫太郎が財布の中身を確認して大仰に肯くと、椎名まゆりは喝采を上げてコインを入れ、レバーを回す。
出てきたのは何の変哲もないうーぱだったが、椎名まゆりは嬉しそうにそれを抱き締めた。
「えっへへ〜、オカリンにもらったうーぱはこれが2つめなのです」
「む、あの時はメタルうーぱでは……ああいや、なんでもない」
途中まで言いかけて岡部倫太郎は慌てて口をつぐんだ。
彼がメタルうーぱを引き当て椎名まゆりに手渡したのはこの世界線ではない。
だからあれは岡部倫太郎の記憶にはあるが椎名まゆりの記憶にはない出来事なのだ。
椎名まゆりを救い、牧瀬紅莉栖を助け出せた唯一の世界線。
たどり着いたこの世界線を二度と変えたいとは思わないけれど、それでも時折ラボメンたちとの乖離に気付き胸が苦しくなる事がある。
過去の記憶の僅かなズレや齟齬、そしてそこから感じる疎外感。
自分だけが……岡部倫太郎だけがこの世界に溶け込んでいないという不気味な遊離。
けれどそれは飲み込まなければ。総て飲み込んで先に進まなければ。だってそれは所詮岡部倫太郎個人の苦しみに過ぎないのだから。
そうでなくばラボメンのみんなの想いを犠牲にしてまでこの世界線に到達した意味がないではないか。
己がしでかしてきた愚かな過ちに比べれば、その程度の苦しみなど……!
「……オカリン、大丈夫?」
「あ……ああいや、大丈夫だ、問題ない」
気付けば椎名まゆりが心配そうな表情で彼を見上げている。
岡部倫太郎は慌てて取り繕うと僅かに顔を逸らした。

55 :
「だめだよオカリン、悩んでることがあるならちゃんと相談しないとー」
「だから問題ないと言っているだろう。お前が心配しなくても大丈夫だ、まゆり」
「うう〜。確かにまゆしぃはクリスちゃんとかダルくんに比べたらなんの役にも立たないかもだけど……」
「そんな事はないさ。まゆりはちゃんと役に立ってるとも」
椎名まゆりの台詞につい反射的にそう答えてしまう岡部倫太郎。
けれどここで引き下がるわけにはいかない。言うべき事はしっかり言わねば。
「ホント?」
見上げる彼女の瞳は彼女にしては珍しくどこか不安そうで、岡部倫太郎の胸が不思議とざわついた。
「ああ、本当だ。まゆりがいなかったら俺は大事な道をきっと幾度も間違えてしまっていたろう。まゆりがいてくれたから俺はここまでたどり着けた。本当に感謝している」
その言葉に嘘はない。
半年前……彼女のを回避する為だからこそ岡部倫太郎はあそこまで必になれたのだ。途中の彼女の励ましや告白、激励があったからこそ幾度も立ち上がって来られたのだ。
あの時阿万音鈴羽のタイムマシンを前にして、心が折れかけていた己を叱咤してくれた一言。
あれがなければ岡部倫太郎はきっと惨めな敗残者のままだったに違いない。
椎名まゆりを救う、牧瀬紅莉栖を救う……そのために必に足掻いてきた。
けれどその実、岡部倫太郎は幾度も彼女達に救われてきたのだ。
二人にはいくら感謝してもし足りないくらいなのである。

……今の自分の顔を彼女に見せないほうがいい。
岡部倫太郎は椎名まゆりの帽子を取り、頭に手を乗せて、己の顔を見せないようにしながら多少強引に撫でつける。

56 :
 
……今の自分の顔を彼女に見せないほうがいい。
岡部倫太郎は椎名まゆりの帽子を取り、頭に手を乗せて、己の顔を見せないようにしながら多少強引に撫でつける。
「えへへ〜、オカリンが褒めるなんて珍しいのです。なにかいい事でもあったのかなあ?」
素直に喜んでいる椎名まゆりの笑顔に胸を掻き毟られる。
それを誤魔化すように、彼は椎名まゆりの髪を一層に強く、ぐしゃぐしゃと掻き回した。
「ちょっと〜、オカリンつよい〜。や〜めぇ〜てぇぇ〜〜」
「ああ、すまん、つい、な」
目をぐるんぐるんと回す椎名まゆりに慌てて手を離す。知らぬ間に力を入れすぎてしまったらしい。
「んも〜、オカリンってばひどいのです。ぷんぷんなのです!」
「いやだからスマンと言っているだろう。悪かった、まゆりよ」
腰に手を当て大仰にヘソを曲げる椎名まゆりの横で、両手を合わせて拝み倒す岡部倫太郎。
「反省してる?」
「ああ」
「ホントにホント?」
「ああ、しているとも」
「えへへ、じゃあ今回は許してあげます♪」
大仰に頭を下げる岡部倫太郎を、どこか慈しむような瞳で見つめていた椎名まゆりがにこ、と微笑む。
岡部倫太郎が幾ら怒らせるようなことをしても、彼女は大概すぐに許してしまう。
それは椎名まゆりが単純な性格だから……とも言い切れぬ。どちらかと言えば年下の割に時折見せる母親のような包容力の為せる技、とでも言うべきだろうか。
彼女のそうした笑顔に、岡部倫太郎は幾度も助けられてきた。


……本当に、助けられてきたのだ。

 

57 :
というわけで今宵はここまでー
なかなか攻略のとっかかりが掴めないオカリン
いや普通に見てるとただのデートですけど
それではまた次回ー ノノ

58 :

どう見てもカップルのデートですありがとうごさいました
リア充爆発しろ!
きっと可哀想なオタク達が数人憤したに違いない

59 :

リア充爆発しろ

60 :

憤犠牲者がここに

61 :
コレはスレが建つ勢いで壁殴

62 :

アパートの壁が消えた

63 :
こんばんはー
文章途中かぶっちゃっててごめんなさい
自分ばっかり申し訳ないですが今夜も更新していきます……

64 :
7−8:2011/02/12 17:10 秋葉原・昭和通り
夕方、すっかり暗くなった通りを2人で歩く。
無論この時期は昼間でも寒いが、それでもやはり昼は太陽の恩恵があるのだという事を岡部倫太郎は改めて実感した。
「いっそ太陽嵐でも……いやいやいや、流石にそれはまずいか」
ぶつぶつと呟きながらビルの向こうに隠れた太陽に少しだけ毒づく。あと10分もすれば日の入りだろう。
「だいぶ寒くなってきたね……」
「ああ……」
なんとなく口数の少なくなった2人は、互いに身を寄せ合うようにして雑踏の中を歩いていた。
(ええい、くそ、本当にこれでいいのか……?)
岡部倫太郎の焦燥は濃い。
実際今日一日椎名まゆりと一緒にいたというのにまるで進展がなかった。
他の女性……例えばフェイリスなり桐生萌郁あたりならばより仲が進んだ、或いは距離が縮まったと感じることもないではなかったのだが、こと椎名まゆりに対してはそれがまるで感じられない。
別にけんもほろろ……というわけではない。
むしろ逆である。いつもの距離が近すぎるのだ。
普段から一緒にいるから仲が深まる実感もない。言い方は悪いが空気のようなものだ。
相手の事は互いに大体わかっているし、何をして欲しいのかも肌で感じる。
けれどいざそこから踏み出そうとした時……どうしたらいいのかがまるでわからない。
(むう……またタイムリープしてやり直すにしてもせめてとっかかりの一つも掴めなければな……)
岡部倫太郎が今回のタイムリープは半ば失敗と諦め、次回以降の為に必要な情報を入手するべきだと頭を切り替えようとした、その時……
「……まゆり?」
つい先刻まで少し遅れてはとててて、と己の隣まで小走りに駆けてきたというのに、今はその気配がない。
ハッと気づいて振り返る岡部倫太郎。
 

65 :
……椎名まゆりの様子が、おかしい。
ぼんやりと、虚ろな表情で、虚空を見上げて無言で手を伸ばしている。

「“星屑の握手(スターダスト・シェイクハンド)”……!?」
最近あまり見かけなかっただけに虚を突かれた岡部倫太郎は思わず棒立ちとなってそれを見つめてしまう。
けれどここは往来のど真ん中だ。
虚空に手を伸ばし身動き一つしない彼女をどこか怪訝そうに眺めながら人波が左右に分かれてゆく。
このままではいかんと岡部倫太郎は彼女が伸ばしていない方の手を掴み、道路の端まで連れて行ってそっと抱き締めた。
こんな時間に一体何に向かって手を伸ばしていたのだろうか。
本当に星屑を掴もうというのなら、いっそ昼間よりはお似合いの時間だけれど。
「まゆり……」
優しくて、愛しくて、大切な娘。
自分の愚かしさで幾度もを迎えた、いくら贖罪を重ねても足りぬ相手。
今のように放っておくには危なっかしくて、けれどいつだって自分の背中を支えてくれた、かけがえのない女性。
そんな彼女を……自分は抱かなければならぬ。
身勝手な理由をつけて、騙すようにして。
それが牧瀬紅莉栖を救うためだというのはわかっている。
椎名まゆりの、彼女自身の未来における悲惨な運命を変えるために必要なことだということも理解している。
そう、迷うようなことなど何もないのだ。

何もないというのに……!

 

66 :
ぎり、と歯ぎしりをする岡部倫太郎の腕の中で……椎名まゆりが僅かに身じろぎをする。
「む……気づいたか、まゆり」
「……オカリン、いいよ?」
「なに?」
不意に、椎名まゆりがそんな事を呟いた。
「いい……とは?」
一瞬意味が理解できず、鸚鵡返しに尋ねてしまう岡部倫太郎。
彼の腕の内で目を閉じて、彼の胸の感触を確かめるようにして頬を押し当てていた椎名まゆりが、もぞもぞと動きながら顔を上に向けた。
「オカリン、まゆしぃに何かお願いしたい事があるんだよね? きっとすっごく言いにくいお話」
「…………!!」
真下から岡部倫太郎を見つめるようにしてずば、と確信を突いてくる。
あまりに単刀直入すぎて、岡部倫太郎は思わず言葉を失った。
「でも……いいの。オカリンがこれ以上悩むことなんてないんだよ?」
緩んだ腕の内から抜け出した椎名まゆりはとてて、と僅かに距離を開け、上体を傾けると彼を下から覗き込むようにして言葉を続けた。
「言って欲しいな、オカリン。まゆしぃにできることならなんでもするから」
「いや、しかし……っ」
椎名まゆりの瞳にあるのは絶対の信頼。
それは岡部倫太郎が決して彼女に酷いことをしないでであろうと信じて疑わない目だ。
だが心に後ろめたいところのある岡部倫太郎は、彼女の無垢な瞳に思わずたじろいでしまう。
「ね、お願い。まゆしぃね、オカリンの役に立ちたいの。ラボメンの中でね、まゆしぃだけぜんぜんオカリンの役に立ってないから」
「そっ、そのようなことはないぞっ! さっきも言っただろう!」
「うん、わかってる。オカリンならそう言ってくれるって。でもでも、それだとまゆしぃの気が済まないのです」

67 :
両手を胸の前で組んで、上目遣いで懇願してくる。
頼みごとをする側ではなくされる側がこんなに必だというのも考えてみれば奇妙な話だ。
「その……なんだ、まゆりよ」
途中までやや心許ない口調で語り始めながら……岡部倫太郎は覚悟を決めた。
「何を隠そうこの鳳凰院凶真は狂気のムァッドサイエンティストである!」
口調を岡部倫太郎から鳳凰院凶真へと変え、大仰なポーズを取る。
「うん、知ってる」
「その狂気の科学者が口にも出すことを憚られるような内容なのだ。今から貴様の身体には見るもおぞましく聞くも戦慄するような数々の人体実験が襲い掛かることになるだろう! フゥーハハハハハ!」
「うん、わかった」
あまりにあっさりとした受諾の言葉に、ポーズを決めた岡部倫太郎がずるりと肩を崩す。
「ほ、本当にいいのかっ! 後悔したりはしないなっ!?」
「え〜っと、困ったりはするかもだけどー、きっと後悔はしないのです」
「ほ、ほう、なかなかに強靭な精神力だな。素晴らしい、それでこそ我が被検体に相応しいというものだ!」
「ヒケンタイ? ん〜、そういうのはよくわからないけど……」
人差し指を己の顎に当て、椎名まゆりは満面の笑顔で応えた。
「まゆしぃはオカリンの人質だし、ジンタイジッケンのイケニエなので、オカリンの言う事には逆らえないのです♪」
「まゆり……!」
思わず往来を背に彼女を抱き締めたい衝動に駆られた岡部倫太郎は、だがなんとか己の心にブレーキをかける。
焦ってはいけない。どんなに順調に事が進んでいようと、決して油断してはならない。


そう……それは始まりだった。
岡部倫太郎と椎名まゆりの……長い、長い道程の始まりに過ぎなかったのだから。


(『第7章 懸想千秋のハープスター(中)』へ つづく)

68 :
というわけで今宵はここまでー
まゆり健気だよまゆり
ではまた次回ー ノノ

69 :

まゆしぃは既にオカリンがしようとしてるコトを知ってるような気さえしてくる。

70 :
末永く爆乙

71 :


72 :
>>69
RSで夢に見ていたりして

73 :
>>72
お、おぉ…。

74 :
>>72
だろうな…

75 :
続きmdky

76 :
年末で忙しいんだろ。ゆっくり待てよ。

77 :
元々ここの主は週休2日だ

78 :
焦りは禁物だぜ?

79 :
もしかしたらリア充爆発してるころかもだしな

80 :
いやいやまさか…まさか…

81 :
なん‥だと‥

82 :
おまいら動揺しすぎwewwee

83 :
と鏡

84 :
こんばんは
今宵も遅くなってしまいましたがなんとか更新できそうです
リア充?
爆発すればいいと思うの

85 :
7−9:2011/02/12 17:43 秋葉原第一ホテル
「ほぇ?」
強い決意を秘めた岡部倫太郎に手を引かれ、普段通らぬ道を通り、
「ほぇぇ?」
前だけは幾度も通りがかった事のあるホテルに引きずり込まれ、実に手馴れた様子でチェックインされて、
「ほぇぇぇ?」
ホテルの一室に案内され、ダブルベッドの部屋に通されて、
「ほぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
そのベッドの上に正座して、椎名まゆりはようやく我に返った。
「オ、オカリン?!」
「どうした、まゆり」
あらかじめ買っておいたドクペを冷蔵庫の中に放り込む。
冷蔵庫の利用は自由だがルームサービスを利用すると高くつくからだ。
岡部倫太郎は桐生萌郁を攻略する際幾度もこのホテルを利用しており、既に大体の構造を把握していた。
「あのね、あのあの、これってどういう……?」
「まゆり、お前が言ったのではないか、どんなことでもすると」
「う、うん、言ったよ? 言ったけど、その、これから何をするのかサッパリなのです」
この手のホテルに入り慣れていないのだろう。椎名まゆりはやや挙動不審げに部屋の中を見回している。
普段の彼女ならば外の景色を見てはしゃいだり部屋のテレビを弄ったりと色々無邪気に遊びまわるはずなのだが、今日に限ってはなぜか妙に大人しい。
うろうろと動かす視線がベッドの上の枕で止まり、思わず硬直してしまう。
だってベッドはひとつ、枕はふたつなのだ。
これはどうしたって頬に朱を注ぐのが止まらない。止められない。

86 :
確かに椎名まゆりは岡部倫太郎が言い出すどんな実験でもその身に受ける覚悟であった。
彼の苦しむ顔は見たくなかった。そのために自分ができる事ならどんな事だってするつもりだった。
けれどまさかこのような事になるとは予想していなかったのだ。
それは確かに夢想しないではなかったけれど。
時折夢に見ないでもなかったけれど。
顔中まっ赤にしてベッドから飛び起き、慌てて部屋を見回して、彼の姿が見当たらぬ事に軽く落胆したりもしたけれど。
それでも……あれはただの夢。
寝ぼけ眼をこすって、徐々に目が覚めるにつれ薄れてゆく陽炎のような記憶。
ついさっきまではっきりと覚えていたはずなのに、今では夢の中の彼の横顔すらぼんやりとしか思い出せない。

そして……記憶と共に急速に薄れゆく彼のぬくもりに、まるで凍えるようにその身を抱き締めるのだ。

けれど、それにしても今日は一体どういうつもりなのだろう。
椎名まゆりは彼の考えていることがよく理解できなかった。
こんなところに連れて来ておきながら岡部倫太郎は何も言い出さぬ。だが彼をひたすらに想い続けてきた少女にとってはある想像が……なんとも己に都合のよい妄想が胸にもたげてきてどうしたって離れてくれない。
サッパリだなんて大嘘である。けれど自分の口からは流石に言い出す事はできない。
だってまさか、そんな。己がずっと望んでいた、切望していた、夢にまで見ていた事が、今日この日にこんな機会で訪れようだなどと……

87 :
「その……なんだ、まゆりよ、今からお前に人体実験を行う」
暫らく何かを思案していた岡部倫太郎は、やがて言葉を選ぶように話し始めた。
「人体……実験?」
「うむ、まあ新しい未来ガジェットを開発するためにだな、人体の構造について体感的理解を得る必要があるというかなんというか……」
ぐしゃぐしゃと髪を掻きながら、岡部倫太郎は言いにくそうに続ける。
「まあわかりやすく言えばまゆりよ、お前の身体を調査させてくれ」
「なあんだ、研究のためなんだ」
「何がなあんだだ、最初にそう言ったではないか」
思っていたこととちょっと路線が違う事に半ば安心し、だが少しだけ気落ちする。
けれどそれもまた実に岡部倫太郎らしい理由ではないか。
考えてみればそもそも前提がおかしいのだ。準備も何もなく唐突に彼の方から告白するなどと。
そんな事は決してあり得ない……椎名まゆりはそれを誰よりも知っている。

だって彼には……岡部倫太郎には牧瀬紅莉栖がいるのだから。

「うん、わかったよオカリン。まゆしぃはラボの研究のために頑張るのです!」
「よく言ったまゆり……済まないな。助手は今新しいマシンの開発で手一杯でお前しか頼れないのだ」
「えっへへ〜。気にすることないのです。だってまゆしぃは……」
「俺の人質だから、か?」
「うん♪」
己が目の前の男の人質である事を……
その少女は、実に嬉しそうに肯定した。


 

88 :
というわけで今宵はこれまでー
他のヒロインがベッドに連れ込むまでが攻略だというなら
まゆりの場合ベッドに連れ込んでからが本格的な攻略開始でございます
それではまた次回ー ノノ

89 :

ラスボスが待ち遠しくなってきた

90 :
乙ぱい
まゆりはなんのかんのでコミマ行きなれてるし、知識だけは豊富そうな気ガス
逆に、クリスのこと想ってるのがバレてる以上そのことで拒絶が来たりしないだろうか…

91 :

だーりんでのまゆりとオカリンを見る限り、付き合ったらバカップル確定の2人だよな

92 :
こんばんはー
今日は多少余裕を持って更新できそうですー

93 :
7−10:2011/02/12 18:02 
「では……ゆくぞ、まゆり。辛くなったらちゃんと言うのだぞ」
「はいは〜い!」
片手を挙げ、明るく返事をする椎名まゆり。
それを聞いてギシ、とベッドの上に膝立ちで上がり込む岡部倫太郎。
望んでいたものと違うけれど同衾している事に変わりはなく、表面上は朗らかながらやや緊張気味の椎名まゆり。
二人は……ベッドの上で、互いに座り込みながら間近で見詰め合った。
じいー……
じいい〜〜……
じいいい〜〜〜……
「は、恥ずかしいのです……」
ぽぽ、と頬を染め、上目遣いで岡部倫太郎を羞恥混じりの視線で見つめ返す椎名まゆり。
その破壊力はいつもの彼女に慣れ親しんだ岡部倫太郎すら思わず取り乱しかねないほどであった。
「馬鹿者! いちいち言うな! こ、こっちまで恥ずかしくなってくるではないか!」
「えっへへ〜……ごめんねオカリン」
ちろ、と舌を出して困ったように笑いながら己の側頭部をこつんと軽く小突く椎名まゆり。
彼女のそんな様子をどこか困ったような、だが決然とした表情で見つめている岡部倫太郎。
普段の彼女なら……岡部倫太郎の様子がおかしい事に気付けたかもしれない。
けれど椎名まゆりは現在極度の緊張状態にあった。
知らず汗をかき、鼓動を早め、頬が紅くなるのを必に抑えようとして失敗し、のぼせた流し目で岡部倫太郎をチラチラと見つめる。
まあこんな状況で平静であれと言われても到底無理な話だろうが。
岡部倫太郎はそんな彼女の様子をじっと見つめ、その後そっと彼女の帽子をつまみ、ベッドの脇に置く。
そして小さく息を吸い込むと、覚悟を決めたのか、ごくりと唾を飲み込んで……
椎名まゆりの小柄な割りに豊かな胸を、服の上からそっと包み込むように触れた。

94 :
「ん……っ」
ぴくん、と椎名まゆりが反応する。
「……オカ、リン?」
「どうだ、まゆり、どんな感じだ?」
「んー、よくわからないのです」
「ではこれではどうだ?」
今度は両手で双丘を掴み、軽く、優しく揉み解す。
「はひゃ?! オ、オカリン、く、くすぐったいよう! あは、あははははは!」
唐突に笑い出す椎名まゆりにびっくりする岡部倫太郎。
胸を揉んでこのような反応が出ようとは完全に彼の予想の範囲外であった。
「そ、そうか……くすぐったいのか」
「あは、やん、もぉ、オカリンやめて、やめてぇ……あは、あははははは!」
なおも手を止めず愛撫を続けるも、笑い転げる椎名まゆりに攻めあぐねる岡部倫太郎。
これはどういう事だろう。性感帯がまるで未発達という事だろうか。
「なるほど……こういうケースも想定しておかないとならないのだな……」
「あは、あははは……ほえ、オカリンどうしたの?」
「いや、なんでもない。ちょっと待っててくれ」
岡部倫太郎は立ち上がってベッド脇で鳴っている己の携帯電話を手に取った。
「俺だ。どうした、機関の手が廻ったか?」
がくん。
電話に出た岡部倫太郎の両手が突然だらりと下がり、まるで正体を失ったようにその身体がぐらついた。
「オカリン!? どうしたの! 大丈夫?!」
目の前でふらつく岡部倫太郎に何か本能的な危機を感じ思わず膝立ちでにじり寄る椎名まゆり。
「ああ……大丈夫だ、まゆり、問題ない。ちょっと待てくれ。用件はすぐに済む」
「でも……っ」
心配そうな椎名まゆりを片手で制し、岡部倫太郎は携帯電話を耳に当て低い声で呟いた。
「大丈夫だ。今度はヘマしない。俺が誰だかわかっているだろう? ああ、任せておいてくれ。全ては“運命石の扉(シュタインズ・ゲート)”の選択のままに。エル・プサイ・コングルゥ」

95 :
椎名まゆりに返事をした岡部倫太郎の言葉はどこか疲れた風だったが、携帯電話を切った時にはすっかり元の調子を取り戻していた。
「本当に大丈夫オカリン? 嘘ついたらメ、だからね?」
「ああ、大丈夫だとも」
僅かの間虚ろだった表情が急速に元に戻り、ラジオ体操第二を始める岡部倫太郎。
その様子は確かにいつもの彼のもので、椎名まゆりはほっと胸を撫で下ろした。
「もぉ〜、びっくりしたよ〜オカリン〜」
「ああいやすまん。心配をかけたな」
軽く微笑んで椎名まゆりの頭に手を乗せる。
彼女は岡部倫太郎のそんな優しい笑顔が大好きだった。
「さ、続きをするぞ、まゆり。覚悟はいいな?」
「ほえ? あ、うん。わかった」
すっかり気を許した椎名まゆりはベッドの上で緊張を解き、その身を岡部倫太郎に預けた。
岡部倫太郎は真剣な面持ちで彼女を見下ろし、やがてそ、と服の上から再びその胸に触れる。
「ん……っ」
「くすぐったいか、まゆり」
「ううん、大丈夫……」
先刻までの岡部倫太郎の手つきとはまるで違う、優しく、柔らかなタッチ。
椎名まゆりは不思議と心地よくなって、ぴくん、とその身を僅かに震わせる。
「ん……っ」
ぴくん。
びくん、ぴくっ、ひく、ひくん……っ。
再びその身が震えた。この感覚は一体なんだろう。
だるいような、掻痒とするような、それでいて熱に浮かされているような。
それらは全て微かな感覚でしかなかったが、なぜか椎名まゆりの全身をじわじわと侵食し、静かに支配してゆく。

96 :
「ふぁ、ん……っ」
僅かに声が上ずった。小さい息を二度、三度と吐く。
「どうしたまゆり、何か変わった事があったら言ってくれ」
「ん……大丈夫。ただちょっとポカポカする……」
どことなくぼうっとした気分で、まるで寝起きのような半眼で岡部倫太郎を見つめる椎名まゆり。
だが明らかに寝起きとは異なる小さな情動が、その瞳の内に見え隠れしている。
椎名まゆり自身はまた気付いていない。
けれどそれは確かに彼女の中に僅かながら芽生え始めた劣情……そう、いわゆる性の衝動の発露であった。
ほう、と漏らす吐息が熱い。
目の前で己の身体に触れている男にもやもやとした衝き上げるような気持ちを感じる。
(実験なんかじゃなくって、本当に、ホントにオカリンと……)
不意にそんな考えが頭にのぼせて、慌てて首を振った。
椎名まゆりは知っている。いやわかっている。
彼の、大好きな岡部倫太郎の心は、同じラボメンである牧瀬紅莉栖へと向いている事を。
そして彼女もまた岡部倫太郎を憎からず思っている事を。

だから……自分はこの想いを口に出してはダメだ、ダメなんだ。絶対に。

「……大丈夫か、まゆり。熱でもあるのか」
「な、なんでもないよオカリン。大丈夫だいじょーぶ、だいじょーぶいぶい!」
「そうか……それならいいのだが」
「もー、オカリンはちょっと心配屋さんなのです。ええと、マット運動の……」
「マッドサイエンティストだっ」
「そうそう、それなんだから、もっとびしびしやるべきだと思うのです」
「むう、まさかこの鳳凰院凶真が人質に説教されるとは……」
「へへ〜、まゆしぃはオカリンの人質だから、オカリンのことならなんでもわかるんだよ〜♪」
岡部倫太郎の追及に慌てて取り繕い、笑顔を浮かべる椎名まゆり。
けれどその身に宿った熱は、徐々に彼女の心に欲熱の炎を灯しつつあった。


 

97 :
というわけで今宵はここまでー
少しずつ少しずつ熱に侵されてゆく無垢な少女
いいですよね……
そんな感じでまた次回〜 ノノノ

98 :
乙ー
オカリン、もしかして飛んできた?

99 :

まゆりはかわいい。かわいいは正義。

100 :
こんばんは
今宵もなんとか更新できそうです

101 :
7−11:2011/02/12 18:45 
「ん、はあ……っ」
耐え切れずつい喘ぎ声が洩れてしまう。
知らぬ間に己の口が半開きになっている事に椎名まゆりは驚いた。
岡部倫太郎の手つきは優しく、丁寧で、それでいて丹念で、椎名まゆりはいつの間にかに己がくすぐったがっていない事に気付く。
「オカ、リン……っ」
自分の頬が真っ赤に充血しているであろう事がありありとわかる。
自分の表情がうっとりと、陶然となっているだろう事がはっきりと理解できる。
「オカリン、ダメ、もう、ダメだよう……っ」
ぎゅ、と岡部倫太郎の胸を突き押すが、一向に離れてくれぬ。
「何がダメなのだ、まゆり」
「だって、だって、これ以上しちゃったら……っ」
そこまで言い差してハッとなる。
今自分は何を言おうとしたのだろう。
これ以上してしまったら……なんなのだろうか。
牧瀬紅莉栖に悪い? 無論それもある。
けれど、違う。椎名まゆりははっきりと自覚した。
これ以上岡部倫太郎とこんな触れ合いを続けていたら、きっと我慢できなくなる。
きっともっと強い結びつきを求めてしまう。
自分の抑えが効かなくなってしまう。
岡部倫太郎と牧瀬紅莉栖の仲を応援すると、二人を見ていて決めたはずなのに。

「……そんなこと、どうでもいいや」

そんな風に、思えてしまう。
それは嫌だ。
そんな自分は嫌だ。
岡部倫太郎は好きだけど。大好きだけれど。
昔からずっとずっと、ずうっと大好きだけれど。
でも、だからって、いや、だからこそ、こんな流されるような形で牧瀬紅莉栖を悲しませたくは、ないから。
「ね、オカリン。やめよ? ほら、これ以上しちゃったら、その、悪いよ……っ」
岡部倫太郎を見上げ、なんとかそこまで口にする。
胸の奥がズキリと痛い。自分で自分の胸にナイフを突き刺しているような気持ち。
でもこの痛みは自分だけだ。自分だけが痛いなら、きっとそれが一番……

102 :
……椎名まゆりは、己が目を大きく見開いた。

最初は何が起きたか理解できなかった。
目の前にあるのはなんだろう? 岡部倫太郎の顔だ。それもこんなに間近に。
なんでこんな近くにあるんだろう? それも頬と頬がくっつきそうなくらいに。
それに……熱い。
唇が、熱い。
今、自分の唇に押し当てられているのは、一体……
「〜〜〜〜〜〜〜っ!?」
遅まきながらようやく気付く。
椎名まゆりは……岡部倫太郎とキスしていた。
それも親愛のそれではなく、明らかに情愛のそれである。
「ん、ちゅ、ん、あ、んっ、ちゅ、ぷぁ……っ」
言わなければ。こんな事はよくないって。
「ん、ちゅ、ちゅっ、オ、オカ、ん、んん〜っ!!」
言わなければ。牧瀬紅莉栖に悪いって。
「ん、オカリ、んっ、ちゅ、ふぁ!? ん、ちゅ、れろ、ん、れろ、ちゅ、ちゅ……っ!」
けれど何かを言いかけるたびに岡部倫太郎の唇が執拗に彼女の唇を啄ばんで、舌が蹂躙して、椎名まゆりは気付けば我知らずそれに応えてしまっていた。
自ら岡部倫太郎の唇を貪り、舌を絡め、その首筋に腕を回し、しがみついて。
まるで飢えた獣のように彼の唇を求め、甘い鼻声を上げてしまう。
「ぷう……」
「ふぁ……オカリン、おかりん……ん、あ、ああ……っ」
やがて岡部倫太郎の抱擁が緩み、その唇が離れると……
椎名まゆりはまるで名残を惜しむかのように半開きの口から舌を突き出して……二人の舌を渡す淫らな糸橋がとろりと垂れた。
「オカリン、ふぁ、オカリン、おかりぃ、ん……」
涙と涎と僅かに鼻水を垂れ流しつつ、だらしなく開いた口から熱く湿った吐息を漏らした椎名まゆりが、とろっとろの表情でベッドの上に崩れ落ちる。
視界が歪んでいるのは涙で滲んでいるせいだろうか。椎名まゆりには岡部倫太郎の表情がよくわからなかった。

103 :
「なん、で……んっ、なんで……?」
なんでこんな事をするのか聞きたいのに、上手く言葉が出てくれない。
ただその疑問を求める言葉がうわ言のように口から漏れるだけだ。
「『実験』だ。必要なことだからだ」
「でも、でもでも、オカリン、オカリンには紅莉栖ちゃんが……っ」
なんとか言葉を紡ごうとした椎名まゆりの唇は、岡部倫太郎によって再び強引に塞がれて。
上顎を、舌を蹂躙され、あまりの心地よさに脳を蕩かされてしまう。
「ん、んん……ぷぁっ! オカリ、んっ! んぁっ、ん、ちゅ、ちゅるる……んくっ」
強引に舌で口をこじあけられ、口腔内をねぶられる。
岡部倫太郎の舌先から送り込まれてきたのは、彼の口の中で生成された唾液であった。
涙目を見開いて驚いた椎名まゆりであったが、やがて命じられたわけでもないのに自ら彼の舌に己の舌を絡みつけ、その唾液をこくん、こくんと嚥下する。
岡部倫太郎の唾液を取り込んでいる……
その事に気付いたのは、めくるめく恍惚の後だった。
椎名まゆり肉体が誰よりも何よりもそれを欲していて、信じがたいほどの悦楽を、多幸感を彼女にまず与えてしまう。
そして視界が真っ白に明滅しまともに思考もできなくなった脳髄が、数秒の遅延の後ようやくにその事実を認識したのだ。
抗おうにも抗えない。こんな感覚は初めてだった。

椎名まゆりは、自分自身をもう少ししっかり者だと思っていた。

無論ドジは踏む、ミスもする、みんなから能天気だ、抜けているなどとよく言われる。
けれどそういう事ではない。
そういう表層的なところよりもっと深いところで、自分はラボのみんなの事を落ち着いて見守っていられる……そんな風に思っていたのだ。信じていたのだ。
険悪になったみんなの仲を取り持ったり、疎遠な者同士を繋げてみたり、岡部倫太郎が考えているだろう事をそれとなくみんなに伝えてみたり。
自分には牧瀬紅莉栖のような頭脳も、橋田至のようなパソコンの腕もないけれど、せめてそんな風にラボのみんなの潤滑油になれたらなあ……それが彼女の望みであり、目標であった。

104 :
……なんという思い上がりだろうか。
今この場でしなければならない事は、岡部倫太郎を止めること。
たとえどんな実験だろうと、こんな事をしては牧瀬紅莉栖が悲しむに決まっている。
だからこんな『実験』なんてもので自分が身体を許すわけにはいかないのだ。

許すわけにはいかないのに……それがわかっているのに、それができない。

岡部倫太郎から与えられる身体的充足が強すぎる。
唇を奪われただけで全身に電流が走った。舌を突き込まれただけで腰が砕けそうになった。
唾液を嚥下した時に感じたあの満たされた感じはもはや形容のしようがない。
昔テレビでやっていた麻薬中毒というのはこんな感じなのだろうか。
キスだけでこれである。
これ以上の事をされてしまったら、求められたら一体自分はどうなってしまうのだろう?
「紅莉栖の事は言うな」
「れも、はもっ、ん……へも、はっへ、ぇ……っ」
唇を舌先で突かれ、半開きの口からとろりと涎が漏れてしまう。
口を閉じようとしてもまるで麻痺してしまったみたいに上手くゆかぬ。
椎名まゆりはこれ程に己が御し切れなかった事などついぞ記憶になかった。
いや……あった。
かつて祖母を失ったとき、自分では自分をどうしようもできなかった、あの時。
自分を御することも律することもできずに、ひたすら祖母の墓の前に立ち竦むことしかできなかった日々。
己の意思ではどうにもできないような感覚が……当時の自分と被る。
あの時は心が、今は身体が、言うことを聞いてくれない。

105 :
かつては岡部倫太郎が彼女を救ってくれた。
けれど……今はその岡部倫太郎こそが彼女の箍を外した張本人である。
一体自分はなぜこれ程に流されてしまうのだろう。岡部倫太郎の指は、舌は、彼女の身体が望んでいる事をまるで魔法のようにしてのけてしまう。
わからない。わけがわからない。
岡部倫太郎はいつだってラボメンの事を第一に考える男だった。そのはずだった。
その事について椎名まゆりが疑った事は一度もない。今この時だって信じている。
ならば……今回の事だってきっと意味がある。
だから彼がこんな風に必になっているのは、きっとラボのみんなのためなのだ。
けれど……どうしてこういう手段を取るのかがわからない。
わからない上にそれがあまりに己の欲情と一致しすぎていて、考えも悩みもせずに押し流されてしまいそうになってしまう。
尋ねなければ、岡部倫太郎に。
牧瀬紅莉栖を、ラボのみんなを悲しませてまでこんな事をする真意を……。
「まゆり……今は、お前だけを見ている」

ばくん、と心臓が跳ね上がった。

その台詞は、ダメだ。
そんな事言われたら、岡部倫太郎の唇から呟かれたら。
戻れなくなる。身体だけでなく心まで戻れなくなってしまう。どうにかなってしまう。
体中が欲しているこの情欲の濁流に必で抗おうともがいている自分の心が必に掴んでいる、最後の藁の一本さえも立ち切れてしまう。
「ふぁ……オカリン、オカリン……っ!」
悩み、迷い、懊悩、
恋慕と自制、友情と愛情
充足と飢餓、肉欲と性欲
混沌の大海の中、椎名まゆりを己を必に抑え、御そうとして……
けれど岡部倫太郎に強く抱擁された瞬間……その総てが無惨にも砕けて散った。


少女のように幼い顔立ちの椎名まゆりの瞳に浮かんでいるのは……明らかに情欲の色だった。

106 :
というわけで今宵はこーこーまーでー
なんとなく淫靡なかほり
そういうのもたまにはいいよね!
ではまた次回ー ノノ

107 :
>>106
ついにここまで来たか…というかまゆしぃがエロく見えてきた俺を殴りたい><

108 :


109 :
おおすげえ、まゆしぃをここまでエロく書けるとはっ!
エロさだけではなく、彼女の葛藤がホント巧く伝わってくる。
やべえ、まじでおもしろい

110 :

ま、まゆ氏エロ過ぎるお…

111 :
こんばんは
今年の更新もそろそろ終わりです
とりあえず今日は更新できそうですがー

112 :
7−12:2011/02/12 19:37 
己の下で組み伏せている椎名まゆりの脱力した様子を、岡部倫太郎は冷徹な瞳で見つめていた。
こんな事が許されるはずはない。許されるはずはないが……ここで苦虫を噛み潰したような顔をしてはダメだ。
四回前のタイムリープではそこを彼女に気取られたのだから。
そう、今ここにいる彼は既に幾度もタイムリープを繰り返していた。
椎名まゆりを、その身体を攻略するために、だ。
初めての椎名まゆりがあれほどに正体を失うのも当然といえた。
なにせ岡部倫太郎は彼女が強く反応する行為だけを突き詰めて修得してきているのだから。
……本当は実験だなんだと偽りたくはなかった。
けれど岡部倫太郎にはどうしても他に方法が思いつけなかった。
最初は他のラボメン達と同じように椎名まゆりと普通にデートして歓心を買い、恋人として関係を築こうと思っていた……が、ダメだった。
彼女には空々しい愛の台詞などまるで届かなかったのだ。
椎名まゆりは彼が牧瀬紅莉栖に惚れている事などとっくに気付いており、彼女を放って己に手を出そうとする岡部倫太郎を手厳しくたしなめた。
そう、どんなに優しくしようが、どんなに強引に迫ろうが、椎名まゆりはある一線以上には絶対に靡かなかったのだ。
彼女のそうした時の頑固さは岡部倫太郎が一番よく知っている。
だからと言って力ずくで犯すような行為はもっての他だ。
そも身体的には体力に自信のない岡部倫太郎より彼女の方がずっと勝っているのだし、逃げられてしまう危険も十分に高い。
阿万音鈴羽に助力を求めればなんとかなるかもしれないが、そんなやり方では椎名まゆりを悲しませるだけだろう。
いくら牧瀬紅莉栖を、世界を救うためとは言え、椎名まゆりを傷つけてしまうのでは本末転倒だ。
かつてその二人の命を天秤に賭けて懊悩した事のある岡部倫太郎は、もはや二度とそうした決断をしまいと心に誓っていた。

113 :
そこで最後に残った手段が……『実験』という名目だった。
椎名まゆりは岡部倫太郎……いや鳳凰院凶真の人質であり、人体実験の生贄である。
かつて彼女が祖母ののショックで自閉症気味となった折、彼はそうした『設定』で彼女を呼び戻した。
それ以降、椎名まゆりはその設定を遵守して岡部倫太郎の傍らにいる。
だから……実験を名目にすれば彼女の方から協力させる事ができるのだ。
あとはホテルに連れ込んで、様々な名目で『実験』してしまえばいい。
この案は途中まで上手く行った。
くすぐったがってばかりいる椎名まゆりの性感帯を丹念に調べ上げ、雰囲気を盛り上げて、徐々にその身体を蕩かせてゆく。
これまで一体彼女の唇を幾度吸ったろう。
今では椎名まゆりの唇を岡部倫太郎のサイズに合わせてすぼめさせるのに数分とかからなくなってしまった。
けれどその先がいけない。何度挑んでも拒まれてしまう。
今の椎名まゆりにとって、岡部倫太郎はどうやら牧瀬紅莉栖のものらしい。
それに関しては自覚がないわけではない。久々に彼女に会えて少々浮かれていたのもある。
椎名まゆりはこう見えてかなり鋭い部分もあるのだ。己の心中などとっくに察していたとしてもおかしくはない。
そして……彼女はそれを自分が邪魔するのは、どうしたって嫌らしいのだ。
幾度も幾度も拒絶され、ようやくその強固な壁を崩す事ができたのが……やっとのこと前回である。
「今は……お前だけを見ている」
歯の浮くような台詞だが、どうやら効果があったらしい。
阿万音鈴羽、秋葉留未穂、桐生萌郁……彼女達に女性は言葉に弱いと散々学んだものだが、それを改めて実感する
まあここに漆原るかも加えておくべきだろう。確かに台詞の練習として一番助けになったのは彼女……もとい彼の攻略の時だったのだから。

114 :
考えてみれば牧瀬紅莉栖とのデートの時はそんな事を考える知識も余裕もなかった。岡部倫太郎はまた貴重なデータが得られた事に深く感謝しつつ、強い自己嫌悪に陥る。
(今は……か)

“今はお前だけを見ている”
……なんとも手前勝手で都合のいい台詞ではないか!

相手を最も優先しているようでいて、所詮一時の関係でしかないと言い放っているのだ。
岡部倫太郎は己の腕の下で正体を失っている椎名まゆりに気取られぬよう、心の内で毒づいた。
けれど……岡部倫太郎は気づいていない。
だからこそ、そんな身勝手な台詞だからこそ、今の椎名まゆりの心を蕩けさせるのに都合が良かったのだと。
それは……言い替えればつまりこういう事だ。

“今この時、この行為はただ一度だけの過ちだけれど”
“この瞬間だけは、岡部倫太郎は牧瀬紅莉栖よりま椎名まゆりを選ぶのだ……!”と。

つまり彼の台詞は椎名まゆりの背徳と贖罪と、小さな自尊心と些細な優越感を内包したなんとも複雑な女心をくすぐる最高の誘惑だったわけだが、流石に岡部倫太郎がそこまで意識していたわけではない。
おそらく椎名まゆり自身とて無自覚だろう。もし指摘すればきっと彼女は激しく否定してその後強い自己嫌悪に陥るに違いない。
いずれにせよ彼女は今その身を許してくれた。
後は文字通り『実験』を完遂させるだけである。

115 :
「オカリン、オカリン……っ」
ひっく、ひっくとしゃくりを上げながら、くしゃくしゃの顔で岡部倫太郎を見上げる椎名まゆり。
彼女は今岡部倫太郎にのしかかられて、その両腕の下で完全に脱力してしまっている。
「まゆり……脱がすぞ」
「あ……っ」
彼女のトレードマークであるそのゆったりとした衣服を自らの手ではだけさせてゆく背徳感。
真っ赤になって顔を逸らし、けれどどこか期待しているような瞳で己をチラリと盗み見る椎名まゆりの欲情した瞳。
それは彼女をまるで家族のように認識していた岡部倫太郎にとって、凄まじいまでのエロチシズムを伴って脳髄を焼いた。
「あ……オカリン、見ないで……」
「さっきまであんなに乱れておいて今更だぞ、まゆり」
「ふぇ……っ!」
岡部倫太郎の言葉に耳先まで真っ赤になって、椎名まゆりは右腕で己の顔を覆い、その身を横に向けもじもじと悶える。
「まゆしぃ……まゆしぃすっごく恥ずかしいのです……オカリン、そんなことゆっちゃ、やぁ……っ」
椎名まゆりの口から漏れた拒絶の言葉は、だが彼女が内包している淫らな熱に当てられていて、なんとも甘ったるい響きを伴っている。
恋人というよりむしろ妹に性の衝動を感じてしまったような罪悪感と少女と見紛うばかりの小柄な体躯、そしてその体型の割にふくよかで張りのある胸部は、岡部倫太郎に強く禁忌を想起させ、同時にその淫靡さに彼は不覚にも強い興奮を覚る。
「まゆり……」
「ん……ふぁ、いや……っ!」
上から強く抱き締められると、椎名まゆりは実に甘い甘い声で鳴き、岡部倫太郎の情欲を必要以上に煽った。
肩口をはだけ、肌を晒し、けれど脱がされ切っていない椎名まゆりは、日常の象徴たるその衣服を中途半端に纏っているがゆえに却って羞恥の色を濃くし、岡部倫太郎の腕の中でじたばたともがく。
けれどその挙動が男の獣欲を、征服欲をより刺激し、岡部倫太郎はその行為を一層激しいものにしていった。
「や、ん……いた……っ!」
「む、どこか痛いのか、まゆり」
「ん、大丈夫なのです、ただオカリンの手がちょっと強いかなって……」
知らず興奮してしまった岡部倫太郎は、どうやら彼女の肩を強く掴み過ぎてしまったらしい。
「平気だから、ね、オカリン。だから……」
「……ダメだ」
「ほえ?」
「まゆり、お前に痛みなど……感じさせるものか!」

116 :
途中ちょっと寝オチしてしまいました申し訳ない。
それではまた次回ー ノノ

117 :
>>116
無理はなさらず。乙乙。

118 :
いつも乙です
他のカップリングならどれでも美味しくいただける自分でもおかまゆだけは受け付けなかったんだが
この岡まゆはいける、不思議

119 :
まゆり攻略の冒頭のオカリンは何回目のオカリンなんだろう
まだこの後も色々ありそうだ

120 :
こんばんわー
今年最後の更新になります
明日からコミケだから早めに寝なくちゃ……
ああサークル参加とかはしてないです念のため

121 :
7−13:2011/02/12 19:52 
「ん……ふぁ、いや……っ!」
上から強く抱きすくめられると、椎名まゆりは甘い声で鳴いて岡部倫太郎の興奮を層倍に煽った。
肩口をはだけ、肌を晒し、けれど脱がされ切っていない椎名まゆりは、日常の象徴たるその衣服を中途半端に纏っているがゆえに却って羞恥の色を濃くし、岡部倫太郎の腕の中でじたばたともがく。
けれどその挙動が男の獣欲を、征服欲をより刺激し、岡部倫太郎はその行為を一層激しいものに……
しそうなところで、ギリギリ自制する。
「や、ん……オカリン……どうしたの……?」
まるで高価な白磁に触れるように、丁寧に、そっと彼女の肩に触れる。
ぴくん、と反応し、熱病のように火照った顔を向けてくる椎名まゆりに優しく微笑みかけると、その肩口に軽くキスをした。
「あ、オカ、リ……っ、あ、あ、ああっ、ふゃんっ、ぁ、ぁんっ!」
これほど優しく愛撫されるとは思っていなかったのか、椎名まゆりの声に動揺の色が走る。
けれど岡部倫太郎が剥いた肩口から肘に向かってキスの雨を降らせると、彼女は断続的に甘い悲鳴を上げ、舌ったらずな嬌声と共にその小さな体を跳ね悶えさせた。
岡部倫太郎がゆっくりと唇を離すと、まるで蛞蝓が這った跡のように腕に粘つく唾液の道が残される。
椎名まゆりは内から湧き出る情動に流されるまま、彼が刻んだ唾液の跡に陶然とした瞳を向け、舌を伸ばしてちろちろと舐め始めた。
「ん、ちゅ、ちろ、ん、ちゅ、れろ、ろ……んく……っ」
岡部倫太郎は、彼女がそんな倒錯した行為に夢中になっている間に静かに彼女の下半身へと移動する。
タイムリープによって彼女の些細な痛みは快楽で塗り潰した。そろそろ本番への準備を始めなければ。
「まゆり……」
「ん、ほえ? オカリン……? あ、や、だめぇ!」
岡部倫太郎の言葉を先刻までより若干遠くで聞いて、本能的に彼から離れたくないとその姿を必に探す。
けれど彼が己の下半身へと移動している事に気付いた椎名まゆりは……牡丹のように真っ赤になって岡部倫太郎の頭を押しやった。

122 :
「何がダメなのだまゆり。はっきりと言ってくれなければわからん」
「そ、それは、あの、あのねオカリン……っ」
わたわたと説明しようとするが上手く言葉にできぬ。
いや正確には言葉にはできるが口にはしたくない。
彼女がそんな風に己自身で手一杯なことを幸いに、岡部倫太郎は彼女のスカートを捲り、その内のショーツをじっくりと確認した。
「……なんと、すっかり濡れているではないか。漏らしたのか、まゆりよ」
「やぁ……っ」
無論岡部倫太郎にはわかっている。それは紛う事なき愛液だと。
スカートの内側からむわっとした熱気と湿気を放っているそのショーツは彼女が十分に感じている証拠であり、そこに漂っているものは少女然とした椎名まゆりの肢体から濃密に匂う芳醇な“女”の香りなのだと。
椎名まゆりは思わず手近にあった枕を両手で掴むと、岡部倫太郎の頭をぽふぽふ、と幾度もはたく。
見られた。知られてしまった。自分が初めてだというのにこんなに濡らしているところを。感じているところを。
恥ずかしいどころの騒ぎではない。顔から火が吹き出てきて火傷しそうだ。もしホテルの窓が開閉自由なら飛び降りてしまいたいくらいである。
「冗、あた! 談、あた! だ。ええいやめんか!」
真顔でフォローしようとした岡部倫太郎は、だが一言放つたびに降って来る枕を遂に鬱陶しそうに横に払った。
「まったく、何を恥ずかしがることがある。男を受け入れる準備ができているという事ではないか。むしろ健全な証だろう」
「ほえええええ……っ?!」
岡部倫太郎の言葉にただでさえ赤い頬がさらに赤熱し、掴んでいた枕を胸元にぎゅっと抱えて口元を覆い隠す。
そしてそのまますす、とベッドの上で岡部倫太郎から少しだけ距離を取った椎名まゆりは。「うぅ〜」と抗議するような上目遣いを岡部倫太郎へ送った。

123 :
(準備って、じゅ、準備ってつまりそうゆうことだよね? ま、まゆしぃがオ、オカリンを、オカリンのを……っ)
そこまで心の内で呟いた後、「きゃー!」と声にならぬ叫び声を上げ、抱えた枕に顔を埋める。
だってどんな形だろうと夢だったのだ。岡部倫太郎と結ばれる事が。
ずっと秘めていた想いはとても強かったけれど、だがあまりにも距離が近すぎたがゆえに伝える機会を失って、それは彼女の心の内で燻り続けていた。
そうして足踏みしている間に……岡部倫太郎の周りにはいつの間にか魅力的な女性達が集まってしまった。
バイト仲間のフェイリス・ニャンニャン、巫女服のよく似合う漆原るか、ライターのお仕事をしている桐生萌郁、
そして……天才研究者の牧瀬紅莉栖。
特に一番最後に現われた牧瀬紅莉栖は、岡部倫太郎と同じ分野の人物であり、椎名まゆりにはまるで理解できぬ会話を平気で彼と交わす、いわば岡部倫太郎と“同じ言葉”を持つ側の人間だった。
それは勉強の苦手な椎名まゆりには決して届き得ぬ世界であって、その事で彼女が多少なりとも忸怩や悔悟にまつわる感情を持たなかったのかと言えば嘘になる。
彼女……牧瀬紅莉栖は、ラボに来てすぐに彼女達と打ち解けた。
椎名まゆりとも、橋田至とも、他のラボメンたちとも。
まあ漆原るかの事は未だに女性だと信じているようだが。
別に牧瀬紅莉栖が社交的なわけではない。むしろどちらかと言えばその手のことが苦手な部類だと本人も言っていた。
それなのに彼女達は、不思議なことにまるで旧知の間柄のようにすぐに仲良くなったのだ。
けれど……同時に、彼女は知りたくなかったことを知ってしまった。
あの日、去年の秋に牧瀬紅莉栖の歓迎会を開いた日、
心労のせいか、気候のせいか、体調を崩した彼女に駆け寄った岡部倫太郎を見た、あの時に。

牧瀬紅莉栖は岡部倫太郎の事が好きなのだ。
そして岡部倫太郎は……牧瀬紅莉栖の事が好きなのだ、と。
 

124 :
みんなが岡部倫太郎に好意を抱くのは別におかしくはない、と彼女は考えていた。
それは女性に限らず、たとえ男であろうと、彼の近くにいるなら誰だって、だ。
確かに普通の人には少々奇異に映るかもしれないけれど、彼が仲間想いの優しい人物である事を、椎名まゆりは誰よりも知っている。
そして普段はちょっと情けないところもあるけれど、ラボメンのためなら誰より強く頼もしくなれる男だということも。
だから彼に近づける人なら、そばにいても平気でいられる人なら、彼の良さに自然気付くはずなのだ。
でも……岡部倫太郎の方が女性にそこまであからさまな態度を取るのは初めてだった。
心配そうな表情、動揺した様子、そして牧瀬紅莉栖が無事だとわかった時の……あの安堵の表情。
それを見た瞬間、彼女は、椎名まゆりは悟ってしまった。
もはや自分には勝ち目など残っていない事に。
椎名まゆりが妹のような、家族のような立ち位置に甘んじている間に、安穏としている間に、牧瀬紅莉栖は岡部倫太郎の“隣”へとたどり着いてしまったのだ。
椎名まゆりは一見するとどこか暢気な、天然な娘であり、恋愛関係には疎いと誤解されがちだが、それは違う。
彼女は色恋を知らぬ幼女でもなければ全てを受け入れられる聖女でもない。
壊れかけた自分の心を救ってくれた岡部倫太郎に友情や信頼以上の感情を抱かなかったわけもない。
だから彼と牧瀬紅莉栖の間に流れる空気に彼女が木石でいられたはずも……またなかったのである。
しかし……不思議と椎名まゆりは牧瀬紅莉栖に嫉妬や憎悪の念を抱くことはなかった。
彼女が素敵な女性だった、というのもある。会ってすぐに仲良くなれるほど気心が通じ合えた相手だから、というのもある。
だがそれ以上に……椎名まゆりは思ってしまったのだ。

牧瀬紅莉栖、岡部倫太郎は、お似合いだ、と。
 

125 :
その日から、椎名まゆりは己の心をずっと封印してきた。
岡部倫太郎は自分のことを好いていてくれる。それは間違いない。
たとえそれが妹相手のそれであっても、家族に対するものであっても、岡部倫太郎は椎名まゆりを大切にしてくれている。それで十分ではないか。
自分はもう必要以上にもらっている。あの日、あの時に救われてからもずっと、たくさんのものを岡部倫太郎にもらっている。
だからもう彼はこれ以上自分なんかのために我慢なんかしなくていいし、してほしくない。
好きな人ができたならその人と幸せになってほしい。
それが自分も大好きな牧瀬紅莉栖ならそれこそ何も言う事なんてなにもないではないか!

そう思っていた……そう思っていた、のに。

(なんで、なんでまゆしぃは、こんな……)
目尻に涙を浮かべながら、荒い吐息を吐いて、熱に浮かされたようにぼうっとして、
岡部倫太郎の……最愛の人の前で、彼に言われるがままに股を開いているのだろうか。
わからない。わからない。
気持ちよすぎてわけがわからない。
椎名まゆりはその身に襲う快楽にすっかり押し流されてしまっていた。
「では……ゆくぞ、まゆり」
「ふぁ……オカリン……ん……んん〜っ!」
びくんっ、とその背を反らし、岡部倫太郎の陰茎を迎え入れる椎名まゆり。
眉をしかめ、歯を食いしばり、何かに耐えるようにぶるりとその身を震わせた彼女は、荒い息を吐きながら涙を零し、ゆっくりと、ゆっくりと呼吸を落ち着けて、
岡部倫太郎の逸物を迎え入れたまま……彼の背中にそっと腕を回した。

126 :
「ん、ふぇ、えへへ、オカリンと、ひとつになっちゃった、ね……」
ぽろりと涙を零しながら、万感を込めて呟く。
だが岡部倫太郎はmなんとも真剣な面持ちで、己に貫かれその肢体を小刻みに震わせている椎名まゆりを見つめていた。
「……痛かったのか?」
「う、うん。オカリンの、ちょっと大きかったかな〜って。でもいいのです。まゆしぃは幸せすぎてそんなもの全然へーきなのです。えっへへ〜……」
精一杯の笑顔で応える椎名まゆり。だがその眉根は僅かに曇っている。
随分と濡れていて受け入れる準備は十分だったし、多幸感に包まれて破瓜の痛みが緩和されている、というのも嘘ではないだろう。
けれどやはり体格差から来る互いのサイズ差は如何ともし難かったらしい。
「それでは……駄目だ」
「ほえ? オカリン?」
「それでは……駄目なんだ、まゆり」
「オカリン、それってどういう……ふぁっ!? あ、あっ、あっ、あ……っ!」
椎名まゆりが問いかけようとした言葉を、岡部倫太郎の激しい律動が塗り潰してゆく。
初めのうち痛みに耐えていた椎名まゆりは……だがやがて断続的な甘い喘ぎ声を上げながら岡部倫太郎の動きに応えていった。


(第7章 懸想千秋のハープスター(下)へ つづく)

127 :
というわけで今年はこーこーまーでー
いやー夏に始めてからまさかここまで続くとは……
もし最初から読んでいただいている方がいらっしゃるなら本当にお疲れさまです
今年の更新はこれで最後となりまして、年末年始はお休みしたいと思います
次回の更新は早くて来年年明けの1/4(金)、もしくはその翌週の月曜からになるかと

128 :
一応今年の(!)総括をば
無駄に長い話でそれこそ内心忸怩たるものがあるのですが、一応各章ごとに自分の書きたいテーマみたいのがありまして……
第三章:鈴羽をオカリンと思いっきりイチャイチャさせてみたい、甘えさせてみたい。照れ&デレさせてみたい(させた)
第四章:健気な留未穂と受けフェイリスをWエロ調教してみたい(した)
第五章:ノン気のオカリンが男の娘をどうやって攻略するのか書いてみたい(書いた)
第六章:本編ルート上でのもえいくさん攻略が書きたい。読者に壁ドンさせてみたい(努力はした)
第七章:エロとは縁通そうなまゆしぃで読者に欲情or劣情を催させたい(試行錯誤中)
第八章:ラスボス
みたいな感じです
誰か一人でも読者諸氏にそう思っていただいたなら嬉しい限りです
それでは世界のため、ラボメンのために無酸素で全力失踪している拙作の岡部倫太郎が皆様の心の中のオカリンと地続きであらんことを願って……
良いお年を〜 m(_ _)m

129 :
乙!!
また来年な!

130 :
お疲れ様乙
良いお年を

131 :
乙!
いつの間にかこれみて寝るのが習慣になりましたw
よいお年を〜

132 :

気がつけばすごい大作になってて、今年は連日お疲れ様でした。毎晩これを読むのが楽しみになってた(笑
次回が待ち遠しいな!よいお年を。

133 :
乙!!良いお年を!!
ラスボス「実は私はひと言口説かれただけでデレるぞぉーー!!」
みたいになりそうだなww

134 :
あけましておめでとー
今年もよろしく

135 :
あけおめー

136 :
>>118
年跨ぎの亀レスだけど
大概のエロパロだと恋人同士(エロ含む)になった後からとか突然セックスから開始とかが多いんだけど
まゆりは普段がエロから縁遠いキャラだから唐突にそういう設定から始められても感情移入しにくいんじゃないかな
こうその間を上手く脳内補完できないと言うか

137 :
あけましておめでとうございます
本年もよろしくお願いします
ということで新年最初の更新に入りたいと思います
金曜なので早速週末突入ですが……

138 :
7−14:2011/02/12 20:22 秋葉原第一ホテル
タイムリープ15回目。
「では……ゆくぞ、まゆり」
「ふぁ……オカリン……ん……っ!」
びくんっ、とその背を反らし、岡部倫太郎の陰茎を迎え入れる椎名まゆり。
一瞬眉をしかめ、何かに耐えるようにぶるりとその身を震わせた彼女は、だがやがて岡部倫太郎の逸物を迎え入れたまま彼の背中にそっと腕を回した。
「ん、ふぇ、オカリン、オカリンと、ひとつになっちゃった……」
ぽろりと涙を零しながら、万感を込めて呟く。
だが岡部倫太郎は、なんとも真剣な面持ちで己に貫かれ呆然としている椎名まゆりを見つめていた。
「……まだ、痛かったか?」
「う、うん。オカリンの、ちょっとだけ大きかったかな〜って。でもいいのです。まゆしぃは幸せすぎてそんなもの全然へーきなのです。えへへ……♪」
満面の笑顔で応える椎名まゆり。確かにその眉根は少々雲ってはいるが、ほんの僅かなものだ。
破瓜の痛みはあったのだろう。だがそれ以上に強い多幸感で麻痺してしまっているらしい。
体格差から来る互いのサイズ差は如何ともし難いとしても、岡部倫太郎の前戯はそれを覆すに十分に足るものだったようだ。
だが……
「それでは……駄目だ」
「ほえ? オカリン?」
「それでは……駄目なんだ、まゆり」
「オカリン、それってどういう……ふぁっ!? あ、あっ、あっ、あ、ああ……っ!」
椎名まゆりが問いかけようとした言葉を、岡部倫太郎の激しい律動が押し流してゆく。
一瞬だけ痛みに眉根をひそめた椎名まゆりは……だがすぐに断続的な甘い喘ぎ声を上げながら岡部倫太郎の動きに応えていった。

139 :
7−15:2011/02/12 20:37 
タイムリープ28回目。
「では……ゆくぞ、まゆり」
「ふぁ……オカリン……ん、はぁ……っ!」
びくんっ、とその背を反らし、岡部倫太郎の陰茎を迎え入れる椎名まゆり。
「ん、ふぇ……っ!?」
困惑したように上げた椎名まゆりの叫びには、既に仄かな甘い響きが含まれていた。
ぶるりとその身を震わせた彼女は、だがやがて岡部倫太郎の逸物を迎え入れたまま、彼の背中にそっと腕を回す。
「ん、ふぁ、オカリン、オカリンと、ひとつになっちゃったよぅ……っ」
ぽろりと涙を零しながら、万感を込めて呟く。
岡部倫太郎は、真剣極まりない面持ちで己に貫かれ陶然としている椎名まゆりを見つめていた。
「……大丈夫かまゆり、痛かったか?」
「ううん。大丈夫。でもでもオカリン、さっきのすっごくすっごく恥ずかしかったんだよ?」
岡部倫太郎の腕の下で、頬を染め、その厚いとは言えぬが頼もしい胸板に頬を寄せる。
「ああ、すまん。では……どうだ、その、気持ちよかったか?」
「ん〜っと、えへへ、よくわからないです……」
困ったような満面の笑顔で応える椎名まゆり。
破瓜の痛みは殆どなかった。溢れんばかりの多幸感で全て塗り潰されてしまったのだ。
むしろ初めてだというのに覚悟していた痛みがまるでなくて、彼女自身困惑してしまったほどである。
岡部倫太郎の前戯は優しく、激しく、そして執拗で、彼女はその中途で幾度も軽く達した。
体格差から来る互いのサイズ差など、岡部倫太郎の執念と技術の前では如何程のものでもなかったのである。
けれど……
「それでは……駄目だな」
「ほえ? オカリン?」
「それでは……まだ足りないのだ、まゆり」
「オカリン、それってどういう……ふぁっ!? あ、あっ、あっ、あ、ああっ、ひぁんっ! オカ、リぃ、ん……っ!」
椎名まゆりが問いかけようとした言葉を、彼の激しい律動が押し流してゆく。
彼女はすぐに断続的な甘い喘ぎ声を上げ、岡部倫太郎にしがみつき快楽の波に飲まれていった。

140 :
7−16:2011/02/12 20:58 
タイムリープ42回目。
「では……ゆくぞ、まゆり」
「ふぁ……オカリン……ん、んん〜……っ!」
びくんっ、とその背を反らし、岡部倫太郎の陰茎を迎え入れる椎名まゆり。
「ふわ、わわ、ひぁ……っ!?」
途端、口から漏れたのは驚愕と動揺の叫びだった。
岡部倫太郎の逸物が女陰に入り込み、陰核が擦れる際にあまりの快美がその身を襲い、まるで雷にでも打たれたかのように椎名まゆりの全身が跳ねる。
「ひぁ、あ、あ、あっ、ああああああああっ!」
びくん、びくんとその背を反らし、身を震わせた彼女は、やがて全身の力が抜けたように岡部倫太郎の腕の下で崩れ落ち、涙と涎を流しながらその肢体を小刻みに震わせた。
「ん、ふぁ、オカリン、オカリン、オカりぃ、ん……っ」
うわ言のように幾度も、幾度も呟く。彼女の万感を込めて。
「……イッたのか、まゆり」
「ふぇぇぇ、ばかぁ、おかりんのばかぁ……っ!」
泣きながら岡部倫太郎の胸をぽかぽか叩く。だがその腕にはまるで力が入っていない。
岡部倫太郎に言われた通り、椎名まゆりは彼に貫かれた悦びで達してしまっていたのだ。
彼の前戯は優しく、激しく、そして執拗で、丹念に丹念に彼女のヴァギナをほぐし、椎名まゆりはその途中で幾度も幾度も気をやった。
「オカリン、おかりん、まゆしぃ、まゆしぃもう……んっ、ふぁ……っ」
「もう……なんだ、まゆり」
「い、意地悪、しないでぇ……っ!」
最後の方などあまりにじらされて、岡部倫太郎に切なげな声でおねだりをしてしまったほどである。
これが初めてなのに。一生に一度の破瓜だというのに。
思い出すだけで椎名まゆりはベッドの上を羞恥で転がりそうになるほどだった。
そう……体格差から来る互いのサイズ差など、岡部倫太郎の圧倒的な執念の前ではなんの障壁にもなり得なかったのだ。
「よし……これでいい」
「ふぁ、ん、ひぁ、あ……おかりん?」
「いいんだ、まゆり。お前は何も考えないで。ただ身を任せていれば……それでいい」
「オカリン、それってどういう……ふぁっ!? あ、あっ、あっ、あ、ああっ、ひゃんっ! オカリン、オカリンっ!? あ、きゃうん……っ!」
椎名まゆりが問いかけようとした言葉を、岡部倫太郎の激しい律動が押し流してゆく。
彼女はすぐに甘い悲鳴を上げて、岡部倫太郎にしがみつつ快楽と悦楽の濁流へと溺れていった。


……まるで、自ら望むように。


 

141 :
というわけで今宵はここまでー
はてさて新年早々激しい姫初めですがこれからどうなることやら……
というわけでまた来週以降にでも〜 ノノシ

142 :
乙ぱい!!
今年もいい年になりそうだ!

143 :
痛みもなく、しかも入れた途端にイくだと……!?

144 :


145 :
>>143
丹念に愛撫すれば不可能ではない
あとはまあ、中オナヌーしたことあるかどうかも関係する

146 :2013/01/06
ラスボスが一回だけだから最後の練習なんですね
もうプロのレベルに達してるけどww
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