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2013年01月SM103: 生体実験パート10 (597) TOP カテ一覧 スレ一覧 Pink元 削除依頼

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生体実験パート10


1 :2011/11/06 〜 最終レス :2013/01/02
前回のスレが書き込めなくなったので新しいスレを立てます・
(パート1〜パート9)
http://pink.bbspink.com/test/read.cgi/sm/1059752766/
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/sm/1075254905/
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http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/sm/1124327172/
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/sm/1149035728/
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/sm/1165242316/
http://set.bbspink.com/test/read.cgi/sm/1194423125/
http://set.bbspink.com/test/read.cgi/sm/1237980479/
http://set.bbspink.com/test/read.cgi/sm/1277134343/
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パソコン版まとめサイト
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携帯版まとめサイト
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アナザーストーリー掲示板への直リン
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/11681/

2 :
広宣は、会話に詰まった。おそらくそれは、白髪の老人とモモコが戦った日だ。それが原因で
ゲームの世界に異変が起こってしまったらしい。3Dのグラフィックスは現実の風景となり、ア
バターは、自分自身の肉体に置き換わった。この世界にいる自分以外の人間は、どうなのだろ
うと考えたが、これまで観察している限りでは、現実世界のプレーヤーではなさそうだった。
「それで、何かわかったのかい?」
ようやく、広宣は言葉を続けた。ジャム・ハーと名乗る少年は、目をキラキラと輝かせた。
「ああ、とんでもない事になっていると、わかったよ」
「???」
「見せてやるよ、付いて来な」
二人は、残っているドリンクを一気に飲み干し、ショートケーキを口に頬張ると、代金を支払って
酒場を出た。ジャム・ハーは、店の裏に回り込み、繋いであった大きな鳥の背中に跨った。
「怪鳥モアだ。乗りな」
金色の羽毛に、獰猛そうな顔付きをした鳥だ。馬よりでかく、嘴にはギザギザの歯が生えている。
広宣は、肝を潰しながら、恐る恐るジャム・ハーの後ろに跨った。ジャム・ハーが手綱を握ると怪
鳥モアは羽ばたき始め、ゆっくりと空へ舞い上がった。
「こいつ、元々1人乗りなんだ。2人だとそんなに長くは飛べない」
怪鳥モアは、どんどん高度を上げて行った。酒場の屋根が小さくなり、やがて城壁に囲まれたフ
ルーツシティの町自体も小さくなる。野原や麦畑、果樹園がミニチュアの様に見えるようになって
くると、薄い雲を突き抜けて、さらに上昇した。

3 :
「どこまで上がるんだい?」
「もう少しだ」
空は、晴天だった。薄い雲が少ししか流れていない。どんどん地表が遠くなる。そして
広宣は気付いた。
(地平線がない!しかも、地形がモザイク状になっている!)
山や川、海岸線がいきなり途切れ、直線状に切り取られたかのように、別の地形と隣り
合っていた。地図をハサミで切り、滅茶苦茶に繋ぎ合わせたパズルのように見える。地
平線はなく、どこまでも陸と海が平面上に広がっていた。
「よく判るだろう。この世界が、どうなっちまったか」
ジャム・ハーが、言った。
「あ・・ああ」
「いろんな場所が切り取られて、少しずつ飛ばされて来て、嵌めこまれたんだよ。それも、
かなり適当にね」
「この世界は、丸くないのか?大地は球じゃないのか」
「完全な平面みたいだな。果てが、有るのか無いのか。有ったとしたら、どこまで続いてい
るのかもわからない。ケーキランド王国に攻め込んでいる蛮族は、この世界を地盆と呼ん
でいると、逃げて来た避難民が言っていた」
「地盆・・・地球じゃなくて地盆か・・・」
どうやら、ここは、広宣が子供の頃から教え込まれてきた常識が通じない世界の様だった。

4 :
スレが落ちないように、しばらく御協力を、お願いします。
感想など、なんでも結構です。、

5 :
更新乙です

6 :
あげ

7 :
Age

8 :
2010年2月22日、月曜日、JNコーポレーションの代表取締役社長、根津順平(40歳)
は、早朝より出社し、クレーム対応に追われていた。当直の社員よりネットゲーム『アナ
ーキーライフ』のサーバーが昨日の夕方にダウンしたと言う報告を受け、最初、すぐに
復旧するだろうとタカをくくっていた。それが、日曜出勤のプログラマーだけでは対応出
来ず、プロミング課全員に非常呼集をかけ、日曜日の夜から朝まで徹夜で作業を続けたが、
一昼夜明けた現在もまだ復旧のめどが立つどころか、原因さえも判っていない。
「山川課長とは、まだ連絡が取れないのか!」
根津社長は、苛立って、社長室の床を、全裸で雑巾がけしていた桜井弥生(31歳)の脇腹
を、思い切り蹴飛ばした。
「ぎゃう!」
抜けるような白い肌の弥生は、悲し気に悲鳴を発しただけである。治外法権条約に基づき、
社畜に落とされた彼女に人権は無いのだ。最初、奴隷になった後も、憧憬の念をこめて丁
重に扱われていた弥生は、時が経つにつれて、容赦なく虐待をされるようになっている。
「はい、携帯電話の電源は入っているようなのですが、本人が出ません。留守電に至急、会
社に連絡を入れるようにとメッセージは残しましたが」
プログラミング課の課長代理が答えた。山川桃子は1人暮らしだ。会社から、それ程遠くない
場所にマンションを借りて住んでいる。

9 :
「ええい、クソ!もう待てん。山崎君、課長のマンションまで行って、直接、見て来てくれ
ないか」
根津は、手持無沙汰にしていた、営業の山崎聡史に声をかけた。サーバーがダウンして、
ゲームにログイン出来なくなったと言うユーザーからの苦情電話とメールが、ひっきりな
しに入ってくる。JNコーポレーションのコールセンターはパンクし、他の部署の人間も総出
で対処していた。
「わかりました」
聡史は、この喧騒から一時的に抜けられる事を喜んでいるようだった。上着をはおり、ブリ
ーフケースを持って飛び出していく。まるで飛び込み営業にでも行くような勢いで。
「ユーザーが増え過ぎて、負荷がかかったのか?いや、それは考えられない。先週サーバ
ーを増設したばかりだ。充分余裕はあった筈だ・・・」
根津はイライラしてタバコに火を付けた。弥生が、素早く近寄って来て、片膝を立てて跪く。
そして顔を上げて、口をアングリと開ける。人間灰皿になろうと言うのだ。根津が、火の粉の
混じった灰を、弥生の口内に落とすと、舌の上にチリチリと焼けるような痛みが走った。
「あ・・・」
弥生が震える。しかし、弥生の事など根津の眼中にはなく、頭の中はクレーム対応の事で
いっぱいのようだった。

10 :
 山崎聡史は、外出するのに桜井真司(34歳)を連れて行った。今でこそ彼は、妻の
弥生ともども社畜なのだが、7年前まで、JNコーポレーションの前身である桜井ソフト
開発の社長だったのだ。その頃、創業社長である真司と、プログラマーである山川桃子は、
恋人関係にあり、真司は彼女の自宅マンションの場所を良く知っていた。
「ここで、間違いないのか、バカ真司」
聡史は、全裸で付いて来ている真司に、小突きながら声をかけた。真冬なので寒さで身
を震わせている。白い息を吐き、唇が青い。真司は、ネオガイア星人の技術で作られた、
奴隷管理用の首輪を嵌めていた。
「間違いないです」
聡史は、インターホンのボタンを押した。ピンポーンと鳴ったが、いつまで経っても家の中
から反応は無い。
「課長!山川課長!」
聡史は、ドンドンとドアを叩いた。多少近所迷惑でも気にしている場合ではない。
「課長!課長!くそっ・・・管理人に事情を説明して、合鍵を借りるしか・・・」
会社の存亡の危機なのだ。ネットゲーム『アナーキーライフ』は、現時点でJNコーポレー
ションの利益の半分を稼ぎ出している。聡史が、管理人室を探すために、ドアの前から離
れようとした時、ガチャリと内側から鍵の開く音がした。そして、ドアが開き山川桃子が顔
を出した。

11 :
「課長!大変です、『アナーキーライフ』のサーバーがダウンしたんです。すぐに会社に
来て下さい!」
「ま・・・」
ネグリジェのままの桃子はポカンとしていた。確かに本人に間違いないのだが、表情が
全く別人の様である。目がんだ魚の様に濁って、焦点が定まらず、口の端から涎を垂
らしていた。
「あ・・・あ・・・神様がいた・・・世界を創造する神がいたのよ・・・お・・お・・お・・・」
桃子は、ブツブツと呟いていた。
「えっ?課長、何ですか・・・しっかりして下さい、課長!」
「お・・・お・・・世界が始まる・・・新しい・・・朝が来る・・・」
山川桃子は、その場に座り込み、這い回り始めた。完全に狂っている。体を震わせ、意味
の無い言葉を羅列し、呟き続けながら時折、目を見開いて唸っていた。


12 :
2010年2月21日、日曜日午後15時7分27秒。『アナーキーライフ』のサーバーが原
因不明のトラブルでダウンした時刻に、ログインしていたと思われる約1万人のユーザー
全てに、山川桃子と同じ症状がみられた。精神が崩壊し、魂を抜かれたような彼らは、
病院で検査を受けたが、過度なストレスによる人格障害と言う以上、何も判らなかった。
JNコーポレーションは、賠償問題に発展しそうな事態に怖れおののいた。
「ゲームと、発症した人格障害との間に、科学的関連性は、今のところ証明されていま
せん」
根津順平は、記者会見の席で、脂汗を流しながら説明した。
「しかしながら、状況としては、患者はサーバーが落ちた時点で、ネットゲーム『アナー
キーライフ』にログインしていたユーザーに限られており、今後、当社は、事実確認を行
うと共に、誠意を持って対応していきたいと考えております」
根津は深々と頭を下げた。記者達のカメラのフラッシュが矢継ぎ早に焚かれる。頭を下
げた瞬間を画像に収めるためだ。
(会社が、潰れるかもしれない・・・)
根津は、覚悟した。山川桃子は、現在病院に収容されて治療を受けている。しかし、彼女
はもう、以前の彼女では無くなっており、彼女に原因の究明と打開、プログラムの修正を
期待するのは不可能だった。

13 :
仮想空間編、終わりです。

14 :
乙です
鉤十字団が美女を怪人に改造する話を読みたい

15 :
JNコーポレーションの美人秘書はどうなるの?

16 :
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17 :
更新乙です

18 :
次のエピソードで、何をアップするか考え中です。書きかけや、着想はいろいろあるのですが。

19 :
作者さんのご自由に
あえて希望するなら、奴隷家族かヘレン犬の話に一票
もしくはキャビンアテンダント編かな

20 :
戦隊ヒーロー…は最近書いてもらったか
時間停止男の続きか、久々に屁こきお嬢さまのその後の話を希望

21 :
ルミナス編も気になる。
あえて言えば、由梨香やアルテミスが主役の話が読みたい

22 :
あげ

23 :
更新乙です。
新しいスレが立って早々にこんな事書くのもなんだけど、
>>1 にサイトの紹介文も書いてみては?
ついでに『残酷な拷問シーンもあり』と一文を加えておくのもいいかも。
あと>>2と>>3あたりに、前スレのハイライトシーンをコピペするとかも良いかも。
2ちゃんねるのSM板を経てココに辿り着いた時点で、来訪者はSMに興味があるわけだし
『拷問』の2文字を見て興味は持つ事はあっても、忌避感を持つ事はないでしょ。
――と、個人的にふと思いました。

24 :
前回のスレが書き込めなくなったので新しいスレを立てます・
(パート1〜パート9)
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パソコン版まとめサイト
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携帯版まとめサイト
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アナザーストーリー掲示板への直リン
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/11681/

2003年8月より書き続けているオリジナル小説です。地球にやって来た宇宙人が、超絶した科学力と軍事力を背景に、人間を捕獲し、暴虐の限りを尽くす、というのが最初の頃のストーリーです。残酷な拷問シーンがあります。

25 :
↑  こんな感じで、どうでしょうか。ハイライトシーンというのが、難しいです。SMシーンなのか、ストーリー的な、盛り上がりの部分なのか。いっそのこと、読者の方に、好きなシーンを選んで、コピペして貰った方がいいかもしれません。

26 :
更新乙です。
2003年8月かぁ。。。随分むかしに感じられるけどわ。
その頃は嫁さんのスリーサイズ、BとHは90台で、Wは50台だったのに
今では全て90台のような気がする。ていうか怖くてサイズを聞けない。

27 :
まとめサイトのアナザーストーリーの下書き3にあるセイリンカンの話、
口蹄疫のパロディだろうけど、今となっては放射能汚染された飼料を食べた家畜を思い浮かべてしまう
東〇電力勤務のエリート美女に恥辱を味あわせてほしいけど、震災ネタはまだ荒れそうだな

28 :
改造人間で、原発男と言うのを考えたのですが、まだ時期尚早でしょうか?

29 :
おk、次話はそれで

30 :
>>28
それはエロい話になるんですか?w
しかし作者さんの話に不謹慎というのはナンセンスな気もします
個人的にはいい女がゲテモノに改造されることに興奮しますが、
その原発男が道往くOLなどを襲ってくれれば嬉しいです

31 :
男の怪人なら仮面ライダーみたいに悪の組織から逃げ出す、という話を書いてほしい
例えば、媚薬や超音波を発して人を操る能力を身に付けた怪人がその力を駆使して脱走、
しかし正義のために戦うのではなく、人間だった頃のパワハラ上司に復讐したり、
好意を寄せていた女性を逆恨みして変態性癖を植え付ける…とか

32 :
実は、すでに書きかけていたのですが、批判が怖くてアップしていませんでした。

http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/11681/1303939948/7

33 :
どうしても心配なら、核融合男とかにすればいいかも。

34 :
>>25
ハイライトとか難しいもんね。

35 :
送信押してしもたw
ハイライトは難しいから、前スレはどのストーリーがあったか程度でいい
んじゃないかと思う。

36 :
アヤカや乳牛女の戦いぶりが見たいので、原発男の話を読みたい
原発男の容姿や、どんな武器を使うのかにも興味がある

37 :
引っ張って置いて、申し訳ないのですが、執筆時間が取れないため、しばらく休載します。

38 :
あげ

39 :
>>作者さん
復活を楽しみにしています。

40 :
キューサイの青汁

41 :
第145話の寝室奴隷のように、陰毛だけではなく髪や眉など
全身の体毛を強制的に剃り落とされる女を作品に出してほしい

42 :
鼻を豚鼻にするなど、容姿を醜くするだけの実益のない人体改造を希望

43 :
>>42
全く実益が無いのはカワイソすぎるぞ。
せめて豚鼻の左右の孔を、1つは第二の膣に、もう1つは第二の肛門に
するくらいの実益性を与えてやって欲しい!

44 :
2011年11月14日、早朝。さざなみ市にあるラブホテル『おのろけコアラの行進曲』の
一室で、女性の他体が発見された。さざなみ署捜査1課の青山優作(41歳)は、警察
犬のヘレン(35歳)を連れ、直ちに現場に向かった。
「ガイシャの身元は、判ったのか?」
優作は、先に着ていた後輩の松本刑事に尋ねた。現場検証をしている人間も、周囲を封
鎖している制服警官も、全て下半身丸出しのフルチンである。それが、さざなみ市での警
察関係者のスタイルなのだった。
「被害者は、綾瀬留美、22歳。市内のSMクラブ『変態見本市』に所属する出張SM嬢です。
昼は大学生、夜は風俗で働いていたようですね。亡推定時刻は今日の午前3時頃です」
優作は、白い線で縁取られて転がっている体を観察した。黒髪の清楚な感じの美女で、
亀甲縛りで縛られたままんでいる。首には赤い首輪を付けられ、全身に冷えて固まった
蝋滴がこびり付いており、鞭跡も数多く刻まれていた。顔と尻の皮膚が紫に変色して腫れ
上がっており余程、ハードな調教を受けた後の様だった。
「洗面器の中にガイシャの物と思われる糞尿が見つかりました」
「ふむ、浣腸プレイをしていたんだろうな。で、因は?」
「おそらく、首輪の締め過ぎによる窒息ではないかと。司法解剖の結果を待たないと正
確な結論は出せませんが」
「プレイ中の事故か・・・それじゃ、犯人は客の男か?」
「それが、ホテルの防犯カメラに客らしき男の姿は、映っておらず、部屋に入る際もガイ
シャが一人で入ったようです」

45 :
「SMクラブの顧客名簿は?」
「クラブのオーナーの話によると、依頼の電話をかけて来たのは、常連客では無かった
ようで、名前、年齢、人相、何もわかりません。性別が男だという以外は」
「それって、クラブじゃないじゃねえか。適当な営業をしやがって」
優作は、困り果てた。松本刑事に向かって言う。
「ホテルの支配人を呼んで、防犯カメラの映像を片っ端からチェックしてくれ。この部屋
に犯人がいたのなら、必ず映っている筈だろう?」
「それは、もうやりました。何回チェックしても同じだと思いますがね」
「いいから、やってくれ」
ここは、さざなみ市だ。あらゆる可能性が考えられる。
「こいつは、透明人間の仕業かもしれん。犯人は、転送機を使って出入りしたとも考えら
れる。この部屋自体の映像は無いのか?」
「ありません。部屋自体に監視カメラを仕掛けることは、プライバシーの侵害になるそうで
して、ホテル側に無いと言われました」
お手上げだった。優作は、ヘレンに匂いを嗅がせる。ヘレンは、豚鼻で、クンクンと体の
周りの匂いを嗅ぎ回った。

46 :
「被害者の匂いしか、しないワン」
「この役立たずがっ!」
イライラした優作は、思い切り革靴で、ヘレンの脇腹を蹴飛ばした。
「ギャウッ!本当に、しないから仕方ないブー!」
「俺様に口答えをする気なのか。この馬鹿犬!いつから、そんなに偉くなった?」
優作は、ヘレンの栗色の髪の毛を鷲掴みにし、洗面器の所まで引き摺って行った。そし
て、中のウンチに鼻を押し付けさせる。
「どうだ?何か判ったか?あーん?」
「ギャオンッ!」
ヘレンは、失神した。嗅覚センサーを鼻に埋め込まれたヘレンには、ウンチの匂いが数万
倍になって脳に伝わり、衝撃の余り意識が飛んでしまったのだ。
「けっ、思い知ったか、馬鹿犬が!」
優作は、イライラが一瞬スッキリしたが、それで事件が解決したわけではない。
「時間停止男の仕業だと言う線も考えられる。こいつは、一筋縄ではいかんぞ。迷宮入りだな」
「ちょっと待って下さい、青山刑事、早過ぎます。捜査は、まだ始まったばかりです。ガイシ
ャも後5時間と経っていません」
「んな事、言ってもなあ」
刑事達が、困り果てていた時、廊下へのドアが開いて1人の壮年の男が入って来た。銀色
のスペーススーツを着た白人なので、一目でネオガイア人だと判った。
「あ、あなたは!」
優作を始め、現場検証に当たっていた刑事達は、驚いて、その場に土下座した。それは、
恐れ多くも、さざなみ市の権力構造の頂点に立つ人物、ピタゴラス総督だった。
「ギャハハハ、美人SM嬢の人事件が起こったと聞いたので飛んで来たのだ。わしも、最
近出番がなくて、暇なんでのう」

47 :
「出番?何のですか?」
「いや・・・単に、このところ、さざなみ市は平和だと言うことじゃ。深い意味はない」
ピタゴラス博士は、美しい秘書を同行させていた。山瀬梨奈(31歳)である。紺のスーツ
に身を包んだ清楚な雰囲気の女性は、SM嬢の体に近寄ると、パチパチと瞬きをしな
がら、様々な角度から黒い瞳を凝らして凝視した。
「彼女は、人間カメラ兼プリンターなのじゃよ」
ピタゴラス博士が解説した。梨奈は、その場でスカートの下に手を入れて、ピンクのパン
ティを足首まで擦り下げると、その場にしゃがみ込みんだ。そして、ハンドバッグから、フ
ジフィルム製のL版サイズの写真用紙を取り出して床に置き、クリトリスを押し付けた。
「あん・・・ああん!」
梨奈は、腰を小刻みに動かして身悶え始めた。ピタゴラス博士の悪魔的な手術によって、
クリトリスが印字ヘッドに改造されているのだ。
「梨奈の印刷姿は、いつ見ても、色っぽいのう。ギャハハハハ!」
ピタゴラス博士は、高笑いをした。印刷が出来上がった写真を手に取って見てみる。亀
甲縛りのままんでいるSM嬢を映したその写真は、地球上のどのメーカーが作ったプ
リンターで印刷したよりも高精彩だった。
「ふむふむ・・・わかったぞ、この事件、わしが解決してやろう」
「えっ、総督自らが?」
自信満々に言い放ったピタゴラス博士に、刑事達は平伏したまま驚いた。
「何か、不満か?」
「い、いえ、滅相も無い。ただ、人事件ごときに、総督のお手を煩わせるのは、いかが
なものかと、思っただけでございます」
青山刑事は、慌てて弁解した。ネオガイア人の中でも、最もVIPであるピタゴラスの機嫌
を損ねれば、命にかかわる。いや、ぬより、もっと恐ろしい目に合わされるかもしれない。

48 :
「梨奈君。例の物を出したまえ」
「はい、総督」
身悶えしながら印刷し、何度もイッて汗ばんでいた梨奈は、ハンドバッグから無針注射器を出した。ピタゴラス総督は、それを手に取り、体の痣だらけの尻に押し当てる。プシュッと空気の圧縮される音がして、注射器の中の緑色の液体が皮膚から浸透していった。
「何ですかそれは?」
青山刑事が、怖れながら尋ねた。
「これは、わしが開発した体蘇生薬だ。後10時間くらいまでなら生き返る」
「体蘇生薬!」
んでいる人間に血液の流れは無い。注入された液体はナノマシンの密集体であり、
自ら血管を泳ぎ回り細胞を蘇生させていく。しばらく待っていると、被害者の皮膚に赤
みが差し始め、やがてビクンと痙攣して心臓が動き始めた。
「成功じゃ。これで被害者は生き返る。つまり人事件は無かったと言う事になり、捜
査の必要もなる訳じゃ。これにて一件落着、ギャハハハハハ!」
青山刑事は、反論しようとした。人事件では無くなったが、人未遂事件としては捜
査を続行しなくてはならない。しかし、自分が事件を解決したと思って、悦に入っている
ピタゴラス博士に意見をする勇気は、優作には無かった。悪徳刑事である彼は、弱い
者には滅法強いが、権力者に楯突くことなどあり得ないのだった。
「さ、さすがは、総督閣下。助かりました」
優作は、お世辞を述べた。真相は、後でゆっくりと、生き返ったSM嬢に聞けばわかるだ
ろう。
「では、わしは総督府に戻る。このSM嬢は気に入ったから、土産として持って帰るぞ。
新しい生体実験の材料に丁度いい」
「ちょ・・待っ・・・」
せめて、証言を聞いてからに、と言いかけて、優作は辞めた。事件の真相なんてどうで
もいい。優作は、元々、仕事熱心な刑事では無いのだ。
「い、いえ、何でもありません」
優作は、再び平伏し、額を床に擦りつけた。
(ちぇっ、飛んだ午前だったぜ。昼飯を食ったら、気分直しに浮浪少女でも、いびりに行
くか。全く、真面目に仕事なんて、やってらんねえぜ)
ピタゴラス博士は、生き返ったSM嬢と美人秘書を連れ、颯爽と引き上げて行った。

49 :
デタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!宇宙拷問研究所博士のピタゴラス総督!!
本当に何話ぶりの登場なんだ?

50 :
終わりです。超短編の推理小説を書いてみました。

51 :
短っ!w
しかしホテル名など、いろいろガジェットがあっておもしろかった

52 :
更新乙です。
体を蘇生させて証言を聴取……、じゃなくて人自体なかったことにして
被害者を生体実験に使うあたりが、流石ピタゴラス博士ですな。
きっとSMよりも悲惨な目に遭うのでしょう。。。

53 :
ピタゴラス総督は暇なのか
たしか本国からは拷問研究や人体改造の実績を買われて、地球人を活用した
生体兵器などの開発を任せられていた気がするけど、そっちは進んでいるのか?w

54 :
出番ワロタwww

55 :
間もなく師走
作者さんの話、もう1〜2話ほど読みたいものだ

56 :
更新乙です。
>>55
>作者さんの話、もう1〜2話ほど読みたいものだ
同意

57 :
2010年5月、伊豆半島の地下にある鉤十字団の秘密基地では、次なる作戦が練られていた。
「スカイレンジャーは潰した。次なる目標は、エコレンジャーとトレインレンジャーだ」
ゲッペルス4世は、居並ぶ幹部達に方針を示した。
「どちらに、先に仕掛けますか?」
ヨーデル・メンゲレ博士が尋ねた。
「いずれにしろ、大した相手ではない。両方、同時に仕掛けようと思う」
「では、あたしがエコレンジャーを叩きます」
美少女戦士アヤカが、名乗り出た。ゲッペルス4世は、首を横に振る。
「nicht、お前は、トレインレンジャーの担当だ。エコレンジャーは、原発男にやらせる」
「えっ」
全員が、驚いた。原発男は、体内に原子炉を持ち、普段は秘密基地の最下層で電力
供給を行っている。その彼を戦闘に投入しようと言うのだ。
「基地の電力は、太陽光パネルと風力発電で、賄えるだろう」
ゲッペルス4世は、楽観的に考えた。
「しばらくの間なら、補助バッテリーも使えます」
メンゲレ博士が言った。
「原発男は、単独行動。放射能漏れの恐れがあるからな。アヤカには、新入りの乳牛
女とフンコロガシ男を付ける。2人とも、改造人間としての戦闘は不慣れだ。厳しく鍛え
てやれ」
「ich verstehe!」
アヤカは、わざとドイツ語で返事をした。有色人種であることをコンプレックスに思ってい
るのだ。

58 :
エコレンジャーの5人は、多摩川の河原で空き缶拾いをしていた。男3人と女2人の
メンバー構成である。
「暑いわ、ヘルメットを脱ぎたいんだけど」
女性のエコ・イエローグリーンが文句を言った。手に持った45リットル容量の透明
のポリ袋は、半分くらいが空き缶で埋まっている。リーダーであるエコグリーンがたし
なめた。
「俺達は、環境戦隊なんだ。暑くても、だらしないところは、見せてはいかん。ヘルメッ
トを脱ぐなんて、絶対だめだ!」
「こんな仕事、もうヤダよう」
エコ・ダークグリーンも、音を上げた。
「明日は、都内の高級ホテルで環境サミットの警備だ。だから、今日のところは、ゴミ
拾いを頑張ってくれ」
サボるわけにはいかない。環境戦隊が、河川敷でゴミ拾いをしている姿は、空中浮遊の
自動追跡カメラで国民に、ライブ中継されているのだ。環境庁のPRが、目的の仕事だ
った。
「そろそろ、ランチにしようか。ライトグリーン、近くのコンビニで5人分の弁当を買ってき
てくれ。領収書を忘れるなよ、経費で落とすから」
「ういーす・・・」
エコ・ライトグリーンが、だるそうに堤防を上がりかけた時、下流から妙な人間が1人近
付いてくるのに気付いた。
「なんだあ?あいつは?」
そいつは、人間の男の様だったが衣服は着用しておらず、頭髪がない。背中に重そうな
何かの機械を背負っている。その機械から動力パイプの様なものが無数に伸びて、男
の胴体に連結している。目を凝らしてよく見ると、背中の機械は、男の肉体に埋め込ま
れ一体化しているようだった。

59 :
「みんな、気をつけろ。敵の改造人間だ!」
リーダーのエコグリーンが叫んだ。相変わらず的確な状況判断だった。彼がリー
ダーたる所以である。
「でも、あいつ、改造人間にしては、部下のザコ戦闘員を連れていないわ」
エコ・ブルーグリーンが言った。
「いいから、戦闘態勢を取れ!」
エコグリーンの命令で、5人は、横一列に並び戦闘前のポーズを決めた。弁当の買
い出しは、後回しだ。妙な男の移動速度は遅く、5人の目の前までたどり着くのに、
かなりの間が空いた。
「ぜえ、ぜえ・・・重いぜ、原子炉は」
男は、息を切らしていた。
「何なんだ、お前は?」
エコ・ダークグリーンが尋ねた。
「俺様は、鉤十字団最強の改造人間、原発男様だ!」
「部下のザコ戦闘員は、いないのか?」
「貴様らなど、俺様1人で、充分だ。実のところ、放射能漏れが怖くて、部下が付いて
こない。悪いか?」
環境戦隊の5人は後ずさった。こいつの特性に気付いたのだ。
「注意しろ、距離を取れ。こいつは危険な奴だぞ」
「イエローグリーン。ガイガーカウンターを持ってなかったか?」
放射能汚染の専門家イエローグリーンが、バトルスーツに装備されている計測器を
操作した。

60 :
「大変です。数値が1000ミリシーベルトを超えています!」
「うっ・・・長時間の戦闘はヤバイ。被曝するぞ」
5人は、恐慌状態になるのを、精神力で、かろうじて押さえた。仮にも正義のヒーローなのだ。
「ね、エコレンジャー!必、セシウム散布!」
原発男は、背中の原子炉から伸びているパイプの一つを5人に向けた。パイプの先からは、何も出ている様には見えない。
「なんだ、こいつ。コケ脅しか?」
エコ・ダークグリーンが言った。エコグリーンがたしなめる。
「馬鹿、放射能は、目には見えないし匂いもしない。だから危険なんだ」
「でも、それなら、なぜ、こいつ自身は健康なの?」
ブルーグリーンが、疑問を口にした。それには、原発男本人が直接答えた。
「ハッハッハッ、いい質問だ。教えてやろう。実は私は健康ではない。頭髪は抜け
てしまったし、歯茎から血が出ている。体が疲れやすく、走ることが出来ない。白
血病と診断されたが、ネオナチスの開発した薬品で何とか生き長らえている」
原発男は、誇らしげだった。
「う・・・リーダー、遠くからスーパーエコガンで、狙撃しよう」
ライトグリーンが提案した。
「ハッハッハッ、それは、止めた方がいい。私の背負っている原子炉が爆発すれば、
半径20キロは、蒸発し、2万年は人の住めない場所になるぞ!」
「2万年!」
ライトグリーンは絶句した。
「どうするんだ、リーダー」
「原子炉は、爆発させず、こいつの生身の部分だけを攻撃するんだ」
的確な判断だった。
「さすが、リーダー」
「ああ、機動戦士ガンダムの第1話で、ザクを倒す時の要領だな」

61 :
5人の環境戦士が、エコサーベルを抜いた。環境に配慮し、ジュースの空き缶を
再利用して鋳造した剣である。最先端のリサイクル技術を使っているため、切れ
味は抜群だ。
「ブルーグリーン、お前、先に切り込めよ」
ライトグリーンが囁いた。
「いやよ、あなたから先に行けば」
5人の戦士は、尻ごみし、互いに譲り合った。その状況を見て、エコグリーンは一
計を思い付いた。
「お前ら、知らないのか?俺達のバトルスーツは、放射能の防護服にもなっている
んだぜ。なんたって、環境戦隊だからな」
「なんだ、そうだったのか。なら原発男に近付いても、安全だな」
ダークグリーン、ライトグリーン、ブルーグリーン、イエローグリーンの4人は、安心
して原発男に接近し、4本の剣で、めった刺しにした。傷口からは、赤ではなく白い
血が流れた。
「うぐぐ・・・貴様ら、放射能が怖くないのか・・・」
「けっ、防護服を着ているんだよ!それより、お前の血はなんで白いんだ?」
「白血病の進行を遅らせる薬のせいだ・・・」
「ジ・エンドだ。もう薬に頼らなくていい。あの世に行きな」
ダークグリーンが、剣の先で原発男の左胸をズブリと刺し貫いた。

62 :
「うぎゃあああ!ぐ・・・か、かくなれば、最後の手段・・・必、臨界爆発!」
原発男の背中に背負っている原子炉が、湯気を噴き温度が急上昇を始めた。
「まずい!核爆発が起こるぞ。なんとしても、止めさせろ!」
エコグリーンが、4人の背後から叫んだ。
「させるかよっ!」
ライトグリーンが、エコサーベルを水平に薙ぎ、原発男の生身の喉元を切り裂いた。
「ゴホォォォ・・・お・・覚えてろ・・・あの世から、祟ってやる・・・ゴホォォォ・・・」
半分千切れかけた原発男の頭が、ガクリとうなだれた。切り裂かれた喉から空気が
スースー漏れる音がする。戦闘に参加せず、離れた所で見ていたエコグリーンは、
心の中で呟いた。
(バトルスーツが、放射能防護服になっているなんて嘘だよ。ま、短時間で済んだん
だ。それほど人体に影響は出ないだろう)
エコグリーンは、携帯電話を取り出し、環境庁の一角にあるエコレンジャー本部に電
話して、すぐに放射性物質の処理班を送ってくれるように依頼した。国内の都市部で
は、エコレンジャー専用の通信端末を使うより、普通の携帯電話を使う方が省エネだった。


63 :
伊豆半島の地下にある鉤十字団の秘密基地では、ステルス衛星から送られてくる、
戦闘の中継を、幹部達がコーヒーを飲みながら観戦していた。
「原発男は、破れたか」
ゲッペルス4世が呟いて、非難するような目で、製作者である財銭教授の方を見た。
財銭教授は、慌てて弁解した。
「い、いえ、負けではありません。相討ちです。エコレンジャーは、戦闘している間に、
すでに放射能に被曝しています。今は健康に見えますが、いずれ症状が現れてくる
でしょう」
「そうか。しかし、原発男が、いなくなったとなれば、今後、我が基地の長期的なエネ
ルギー供給が、問題になるな」
「それには、心配は及びません」
鉤十字団の、もう一人の科学者であるメンゲレ博士が説明した。
「こんな事もあろうかと、既に、代替エネルギーは用意してあります。これを御覧下さい」
メンゲレ博士は、リモコンを手に取って、モニターを切り替えた。画面には、地下の最下
層で、大勢の日本人の若い男女が、全裸で鎖に繋がれている様子が映し出された。
全員が頭や体に金属ベルトを巻き付けられ、皮膚には、無数の電極を刺し込まれている。
その状態で彼らは、互いにセックスをしたり、オナニーをしたりして快楽に貪っていた。

64 :
「人間の性的快楽を、電気信号に変換する装置を開発いたしました。オルガス
ムスに達した時に、最も発電量が高くなります。千人の男女を一日中セックス
させる事で、原発男1人分の発電量に匹敵します」
メンゲレ博士は、得意気だった。彼の家系は、高祖父の代より、鬼畜で外道な
研究に関しては、天才的な才能を発揮する。
「この人間発電を主電源にして、補助に風力と太陽光を使えば、基地の電力供
給は、何の問題もありません。もはや時代遅れの原子力発電に頼る必要はあり
ません」
「放射能漏れの心配も無いクリーンエネルギーか。我がネオナチスも脱原発を
勧めた方が、良いかもしれんな。よし、判った。この技術は、南極の総統閣下に
も具申しておこう」
ゲッペルス4世は、モニターに目を戻し、リモコンを操作して別のチャンネルに切
り換えた。
「トレインレンジャーとアヤカの戦闘はどうなっているかな?」
幹部達は、再び画面に見入った。財銭教授は、メンゲレ博士に、いい所を取られ
て悔しそうだった。

65 :
ちょっと通りますよ

66 :
更新乙です。

67 :
対トレインレンジャー戦にも期待!
アヤカの必技は鎖鎌、乳牛女は頭突きと乳から出される溶解液らしいけど、
フンコロガシ男がどう戦うか、それも楽しみです

68 :
国土交通省管轄の鉄道博物館に併設される形で、鉄道戦隊トレインレンジャー
の本部があった。ハコモノ行政の予算消化のため、巨額の建設費を投じて造ら
れた博物館は、訪れる客も少なく、平日は特に閑散としている。政権交代を果た
した政府の、事業仕分けの、やり玉に挙げられ、国会で非難の的になっている。
トレインレンジャーの5人は、出動命令がない時は、この鉄道博物館で、ヒーロ
ーショーをやったり、受付係や案内係をするのが仕事だった。
「今日も暇だな、おい。俺、茶飲んでくるわ」
煙突の付いた蒸気機関車の飾りのヘルメットを被ったトレインブラックが、トレイ
ンピンクに軽くタッチして、受付窓口を離れた。もう一時間以上も入場者はいない。
「あっ、待ってブラック。団体さんが来たわ。修学旅行かしら?」
ゲートの向こうの駐車場から、セーラー服を着た女達がぞろぞろと歩いてきた。
50人くらいはいる。
「おかしいな。団体なら、事前に連絡を受けている筈だけど」
トレインブラックが、事務所に確認しようとインターホンに手を伸ばした。その時、
遠目に、セーラー服の女達が罵声を上げ、駐車場の警備員を取り囲んで殴り倒
すのが見えた。
「何か、様子が変よ」
ピンクとブラックは、目を凝らした。高校生だと思っていた女達は、よく見ると、そ
れ程若くはない。20代から30代の年増の女のように見える。彼女達を引率する
ように、化け物の姿をした改造人間2体と、赤いプロテクトスーツを身に付けた少女
が1人混じっている。

69 :
『はい、こちら事務所だ』
ブラックが、手に持ったままのインターホンの受話器に、トレインホワイトが出た。
「あ・・・リ・・リーダー?大変だ。すぐにゲートに来てくれ。敵だ・・・鉤十字団が攻
めて来た」
ブラックは、そのまま報告すると、受話器を戻し、トレインピンクと二人で、入場ゲ
ートの前に立ち塞がって、戦闘ポーズを取った。
「急な坂道も何のその!蒸気機関車トレインブラック!」
「痴漢撃退!女性専用車両トレインピンク!」
襲撃者の指揮官、美少女戦士アヤカは、鎖鎌を振り回していた。
「やれ、セーラー服部隊!まずは、お前達の力を思い知らせてやれ!」
アヤカ直属のザコ戦闘員は、全員セーラー服のコスプレを着た選抜メンバーだっ
た。と言っても、中身は本物の女子校生ではなく、20代から30代までの成熟した
大人の女達である。通常の黒い全頭マスクのザコ戦闘員の中から、アヤカによっ
て選び出されて厳しい特訓を受けた彼女達は、年甲斐も無くセーラー服を着る事
に、かなりの抵抗を感じていたが、毒薬注射をされているため文句を言う事が出
来ない。襟元の校章はハーケンクロイッツだった。

70 :
「ヒー!ヒー!」
見かけは、セーラー服でも、戦闘の掛け声は、通常のザコ戦闘員と同じだった。
50対2の乱戦になる。双方とも素手での格闘戦のため、誰も致命傷は負わず、
乱闘のまま入場ゲートを突破して、博物館の敷地内にもつれ込んだ。昭和初期
の車両から、最新のリニアモーターカーのレプリカまで展示された広い敷地内は、
露天の公園のようである。トレインレンジャーの二人は、展示物をうまく使って影
に隠れたり、車両の中に入り込んで、狭い通路で、縦列になった敵を、前から順
に1人づつ倒したりして、時間を稼ぎ、善戦した。そして、やがて駈けつけた、ホワ
イト、ブルー、レッドも加わって5対50の戦いになると、セーラー服部隊が押され
始めた。
「いくぞ!トレイン・フォーメーション。必暴走特急!」
5人が、トレインホワイトを先頭に1列に並んだ。手で、車輪を回すジェスチャーを
しながら、セーラー服部隊の只中に突っ込んでいく。
「シュッポ、シュッポ、シュッポ・・・」
「ヒー!」
「うぎゃああ!」
セーラー服部隊の女戦闘員達が、次々に跳ね飛ばされていった。
「不甲斐ない奴らめ。こんな木端ヒーロー相手に手こずるなんて!フンコロガシ男、
乳牛女。次は、お前達の番だ!」
アヤカの指示で、控えていた2人の改造人間が前に進み出た。2人とも今回が初
陣である。
「モウ、モウ・・・正義の味方と戦うの?」
乳牛女が、半ベソをかいた。捕虜になって改造される前は、彼女も列記とした戦隊
ヒーローだったのだ。

71 :
「仕方がない。やらなきゃ、されるんだ。それに、改造された肉体は、もう元に
は戻らない。体のメンテナンスも、鉤十字団じゃないと出来ない。相手が、正義の
味方だろうが、なんだろうが、言われた通りにやるしかないんだ」
フンコロガシ男は、直径3メートルはある糞を転がしていた。秘密基地中のザコ戦
闘員の毎日の排泄物を塗り固めて作った巨大な球である。
「ドスコイ・アタック!」
元力士だったフンコロガシ男は、球に向かって突進し、張り手の要領で連打した。
巨球が押し出され、トレインレンジャーの隊列に向かって転がって行く。
「危ない!よけろホワイト!」
隊列の3番目にいたブラックが警告した。ホワイトが急ブレーキをかけるが、よけ
きれない。
「列車は、レールに沿って走っている。急には曲がれないんだよっ!」
糞球は、左にかわそうとした隊列の4番目にいたレッドに直撃した。戦隊ヒロインで
あるレッドの体が、糞球の中にめり込み、半分以上が埋まってしまう。そしてそのま
ま転がり、後ろにいたピンクも押し潰した。
「うぎゃあああ!臭い!臭いよう!」
「苦しい・・・息が出来ない・・・早く、早く出して・・・」
レッドが窒息寸前だった。
「いかん。ブラック、お前の蒸気で溶かせないか?」
「やってみるが、どうなっても知らんぞ」
トレインブラックが、頭の煙突を糞球に向けた。物凄い勢いで蒸気が噴き出し、糞球
が溶け始めた。

72 :
「臭せえ!臭せえ!こいつは、たまらんぞ、おい!」
溶けた糞から、悪臭が充満した。トレインレンジャーを始め、生き残っていたセ
ーラー服部隊の戦闘員達も口と鼻に手を当てて、むせ込んでいる。アヤカは、
プロテクトスーツのマスクをロックし、酸素ボンベからの呼吸に切り替えた。水
中戦用の装備が役に立った。糞まみれになった戦隊ヒロイン2人は、地面に横
たわり、もはや戦闘継続は不可能だった。
「あたしも、やるう!」
乳牛女が、いきなり自分の手で両乳房を揉み始めた。顔面や体は白と黒にカラ
ーリングされているが、乳房だけは、ピンク色に刺青されている。乳首から、母乳
がピューッとほとばしり、5メートルも飛んで、トレインブルーを直撃した。
「うわあああ!熱い!熱い!溶けるう・・・」
乳牛女の母乳は、強力な溶解液だった。特殊加工されている筈のトレインブル
ーのバトルスーツが、あっさり溶解し、その下の皮膚をただれさせた。

73 :
更新、乙です!更新を楽しみにしていました
注文をつけるなら、乳牛女の「モウ」は語尾にもつけてもらいたかったです
>>72で普通に叫んでいることも微妙に感じるので、まとめサイト掲載時にはどうかご検討を!

74 :
乙です。糞まみれになり戦闘不能に陥った戦隊ヒロインの2人は、
ぜひネオナチスによって回収してもらいたいです。
そしてその後は怪人化かセーラー服部隊に…

75 :
更新乙です。
>>24
結論がすでに出ているようなので、いまさら書くのもなんですが。。。
ハイライトシーンとかは、どんな作品かが分かるシーンの抜粋で良いのでは?
訪問者はSM板で生体実験というスレタイを見てアクセスしてるんだから、当然ドロドロの拷問SMに興味がある人たちなわけで。
エッチな期待を膨らませてアクセスして、最初に目に入ったのがSMじゃなくSFシーンだったら、その場で見るのをやめちゃうかも。
その対策に、残酷拷問シーンを数行でも抜粋しておけばOKかと。。。

76 :
「ブルー!くそっ、鉤十字団め。調子に乗りやがって!電車で轢きしてやる!」
仲間を、3人までやられ、逆上したトレインブラックが、近くに展示されていた
地下鉄の車両に乗り込んだ。運転席に飛び込んで、発車させようとするが、
全く動かない。
「落ち付け、ブラック。そいつはレプリカだし、電源も繋がっていない」
トレインホワイトが悲痛な叫びを上げた。残っている半分のセーラー服部隊
の戦闘員が、攻勢に出る。ホワイトとブラックだけでは勝ち目がないように思
えた。
「ブラック!俺の後ろに付け。こうなったら、二人だけで『暴走特急』をぶちか
ます!」
「おう!」
車両から降りて来たブラックが、ホワイトの後ろに連結した。
「トレインフォーメーション!必暴走特急!」
短い隊列が走り始めた。
「シュッポ、シュッポ・・・」
それを見て、それまで静観していたアヤカが跳躍し、トレインレンジャーの背
後に着地する。
「後ろが、ガラ空きなんだよ」
右手の鎖鎌が飛んだ。前しか見ていなかった2人のトレインレンジャーの首を、
真後ろから、直線状に鎌の刃が襲い、一撃で跳ね飛ばした。白と黒のヘルメット
を被った頭が二つ、胴体から離れ、血を噴きながら地面に転がった。
「きゃあああ!」
戦闘不能になり、地面に横たわっていたトレインピンクが、その光景を見て悲鳴
を上げた。
「ホワイト!ブラック!いやあああ!」
「トレインレンジャーに勝ったぞ。あとは、この博物館と本部を破壊するだけだ。
お前達に任せる」

77 :
アヤカが、鎖鎌をプロテクトスーツに収め、余裕の表情で言った。セーラー服部
隊と2人の改造人間が、勝利の雄叫びを上げる。その時、上空からプロペラ音が
聞こえてきた。見上げると、2機のヘリコプターが、降下してくる所だった。
「新手か」
アヤカが、再び戦闘モードに入った。ヘリの一機は、黒と白のカラーリングで胴体
に『警視庁』と書かれている。もう一機は、迷彩塗装で『陸上自衛隊』とペイントされ
ていた。ヘリが着地すると、それぞれ、5人の戦隊ヒーローが下りて来た。
「飲酒運転は許さない。目指せ、検挙率100パーセント、ポリスレンジャー!」
「訓練ばかりじゃ、物足りない。専守防衛、アーミーレンジャー!」
合計10人の戦隊ヒーローが、ポーズを決めた。ポリスレンジャーは、全員ヘルメッ
トの上に赤いパトランプが回っている。アーミーレンジャーは、カーキ色の迷彩コス
チュームで、手には自動小銃を構えていた。アーミーレンジャーが、5人揃って自動
小銃を撃ち始めると、女戦闘員達が、ハチの巣になって、バタバタと倒れた。
「オイッ!飛び道具は、最小限しか使わない、と言うのが、戦隊ヒーローのお約束じゃ、
なかったのか?」
フンコロガシ男が突っ込んだ。
「アーミーって、自衛隊は、軍隊じゃないのよ。モウ」
乳牛女も突っ込む。しかし、新手の戦隊ヒーロー達は、意に介した様子も無かった。
アヤカは、素早く状況を計算した。これまでの戦闘で、セーラー服部隊は、半数以上
が戦闘不能になっている。フンコロガシ男は、最大の武器である糞球を、喪失してい
る。乳牛女も、さっき母乳を噴射したばかりで、最充填に、彼女の体調が良くても、最
低一時間はかかるだろう。アヤカは、退却を決断した。

78 :
「ち・・・さすがに、歩が悪い。一旦引くぞ」
アヤカは、両腕のプロテクトスーツから、鎖鎌を打ち出した。
「必、ダブルカッター!地獄風車!」
鎖を、最大限の30メートルまで伸ばし、猛スピードで回転させる事によって、
一時的に周囲に安全圏を確保した。鎖鎌が、自動小銃の弾丸を跳ね返す、
傘の役目を果たしている。
「全員、今のうちに退却しろ。倒れている負傷者も忘れるな!」
「ヒー!」
セーラー服部隊は、生も判らず倒れている仲間の体を背負って、ゲートか
ら退却していった。フンコロガシ男と乳牛女も、あたふたと付いていく。もしこれ
が、ゴキブリ女が指揮官の場合ならば、負傷者は見捨て、戦闘力のある者も、
自分が先に脱出するために、盾として置いて行く場面だった。
「これで、勝ったと思うなよ、劣等人種!」
全員が、安全圏に逃れるのを見届け、アヤカは鎖鎌を収めた。アーミーレンジ
ャーの撃ち続けている銃弾は、プロテクトスーツが、弾き返す。アヤカは、捨て
台詞を残すと、大きく跳躍し、戦場を離脱した。

79 :
伊豆半島の地下基地で、戦闘の中継を観戦していた、鉤十字団の幹部達は、憤慨していた。
「おのれ、正義の味方め。次から次へと新手を、繰り出しやがって。これでは、
いくら倒しても、キリがないではないか!」
いつも冷静なゲッペルス4世が、珍しく感情を露わにしていた。
「敵の中枢を叩かねばなりますまい」
メンゲレ博士が言った。
「中枢?さざなみ市か」
「それも、中枢の一つです。が、これらの戦隊ヒーローは、日本政府の傘下の
組織です」
「日本政府の中枢?それは、一体どこだ。霞が関か?国会議事堂か?」
「さあ、問題はそこです。この国は、不思議な国です。責任の所在が、どこにあ
るか皆目わからない。政府の最高権力者である総理大臣は、些細な理由で、
コロコロと首をすげ変えられます。とても、彼が中心人物であるとは、思えない・・・」
メンゲレ博士も、日本と言う国の実態を掴み兼ねているようだった。
「おそらく、政府を陰で操る裏の組織があると、考える方が、自然ではないかと」
「委員会か?」
「それは、なんとも。しかし、委員会であれば、我々が、ある程度は、動向を把握し
ている筈です」
ネオナチスが、半世紀前から敵対して来た委員会は、今、宇宙人への対抗手段を
模索するために総力を結集している。仮に、影にいるのが委員会なら、日本政府が、
ネオガイア星人と技術交換をし、共闘するなどあり得ない。
「謎だな・・・ともあれ、今後は、物量作戦になりそうだ。戦力になる改造人間の数を
増やさなくてはならない。財銭教授、製作に力を注いでくれ。被験体は、好きなだけ
調達していい」
「わ、わかりました・・・全知全能をかけて、頑張ります・・・」
久しぶりに、声を掛けられた財銭教授は、しどろもどろに答えた。

80 :
鉤十字団編、終わりです。

81 :
更新乙です。
昼休みアクセスしたらちょうど77番目がアップされた直後で
リアルタイムで作品投稿を見る事ができました。

82 :
>戦力になる改造人間の数を増やさなくてはならない。
>財銭教授、製作に力を注いでくれ。被験体は、好きなだけ調達していい
これは次の戦隊物の話に期待!
だけど、乳牛女のように、改造手術のシーンをしっかりと描いてほしい

83 :
阿鼻叫喚の改造シーンが良いね

84 :
戦隊が増えすぎて、きりがないこのシリーズには飽きてきた。
若い女が拉致されて、否応なく人体改造された怪人が増えそうなのは嬉しいけど、
作者さんはゴキブリ女の頃と比べて、それを描くことに重点を置いていないようだし…。

85 :
サンタの作者さん、よい子の住民たちへクリスマスプレゼントを…
忙しいとは思いますが、ぜひ年内にもう1話届けてくださいな

86 :
「現時点は、地球歴2000年8月12日じゃ」
狭苦しい時間航行機のコクピットでクロノス博士が、カウンターの目盛を読み上げた。
「ただし、我々が元いた歴史の世界ではありません」
オデュッセウス隊長が横槍を入れた。
「岩波教授、今いる時間流が、どこから分岐したか判るかね?」
クロノス博士が、地球人オブザーバーである岩波遼太郎教授に尋ねた。さざなみ大学
の歴史学者である岩波教授は、この時代のインターネット回線にアクセスし、慎重に調
査した結果、分岐点を1999年9月11日と結論付けていた。
「ここ以外に、あり得ません。本来9.11事件は、2001年にネオナチスによってではなく、
アルカーイダによって行われた歴史的事実です」
「それより以前に、表面には現れなかった仔細な分岐があったとは、考えられないか?」
「可能性は、否定出来ません。しかし、それを言い出すと、何百年、何千年遡った所で、
完全な保証はありません」
「わかった、では、1999年9月1日に遡ろう」
クロノス博士の指示で、パイロット席のオデュッセウスが、コントロールパネルを操作した。
時間航行機全体が、白い光輝に包まれ超空間に突入する。今まで何度となく経験した時
間ジャンプだ。
「全ては、こいつの責任なのだ」
クロノス博士は、モニターの一つに映し出された船室を見た。そこでは、全裸に剥かれた
久石千鶴が、アンドロイド兵に銃口を向けられて監視されながら、卑弥呼に激しい拷問を
受けていた。

87 :
「本来、存在しない筈の異物が、歴史をここまで変えてしまうとはな」
約20分程度の航行で、時間航行機は、再び実体化した。そして、クロノス博士が時
空ナビゲーターの調整に入る。
「博士、念入りに頼みますよ。元の世界に戻る最後のチャンスかもしれないんです
から」
「言われんでも判っとる」
いつもいい加減で楽観的なクロノス博士には珍しく、真剣な顔でナビゲーターのチェ
ックを行っている。1時間後、クロノス博士が、顔を上げた。
「ノイズを、全て消し、最良の状態に持ってきた。これで、大丈夫な筈だ」
「行き先を、いつに設定しますか?」
「出発したのが、2004年の4月だった。それ以降なら、いつでもいいんじゃが、船内
時間で4年が過ぎているから2008年くらいに設定するか」
「わかりました」
時間航行機のエネルギーは、当初の予定を遥かにオーバーする期間の航行で、底
を尽きかけている。今回が、最後のチャンスになるだろう。
「スタートします」
再び、時間航行機が、未来に向けて、超空間に突入した。


88 :
「オーホッホッホッ!しっかり目を開けるのよ、生口女!」
アンドロイドに両肩を押さえられ、身動きできない千鶴の顔面を、卑弥呼がビンタ
し続けていた。200発を超えており、千鶴の頬と卑弥呼の掌が、赤くなっている。
「生口を痛めつけるのは、気持ちが良いぞえ」
殴られながらも、千鶴はしっかりと目を開け、拷問者を睨みつけた。2000年の人
生で、拷問には慣れている。目の前にいる卑弥呼よりも、自分を再び拉致したネオ
ガイア星人全体に対する怒りの方が強い。
「焼印が、薄くなっておるのう。もう一度、押し直さないとならぬぞよ」
卑弥呼は、千鶴の尻タブに押されている『親魏倭王』の焼印を見て言った。千鶴に
とって1700年前の出来事なのだが、卑弥呼にとっては4年前の記憶なのだ。
「わらわの尿を飲むのじゃ」
アンドロイドに命じて、這いつくばらせた千鶴の顔面に、卑弥呼が放尿した。千鶴は、
噛み付いてやろうかとも、考えたが、首が卑弥呼の割れ目まで届かなかった。塩辛
い尿が顔面を叩き、腫れ上がった頬に沁みる。
「こぼすとは、何事じゃ!そんな無様な生口に躾けた覚えはないぞえ!」
卑弥呼は、怒り狂った。3世紀の邪馬台国では、十数年もの間、千鶴は溢さずに卑
弥呼のオシッコを飲み干していた時期があった。
「啜れ!わらわの尿は、神水ぞ!一滴残さず、大事に味わうのじゃ」
アンドロイドに銃口を突き付けられ、千鶴は怒りに身を震わせながら命令に従った。

89 :
西暦2011年12月15日。さざなみ宇宙港の管制センターは、騒然としていた。
「上空に、未確認飛行物体が実体化しました!」
ネオガイア星人の管制官は叫んだ。この所、平和が続く、さざなみ市では、鉤十字
団の行う散発的なテロ事件以外、外部からの攻撃は全くない。
「異星人の攻撃か!」
通常の定期便なら、まず月軌道以遠でワープアウトし、反重力エンジンで、ゆっくり
と減速しながら大気圏に降下して来る筈である。
「いえ、データバンクに識別信号の登録があります。8年前に行方不明になったクロ
ノス博士の時間航行機です!」
「なんだと。今頃戻って来たと言うのか!損傷を受けていて不時着するかもしれん。
大至急、消化班と救護班を回せ。ピタゴラス総督と軍司令部にも報告を入れろ!」
「了解!」
高度1000メートルで実体化した時間航行機は、損傷を受けている様子も無く、ゆっ
くりと滑走路へ降りて来た。反重力エンジンで、ふわりと着地すると、ドアロックが解
除され、銀色のスペーススーツを着たネオガイア星人の乗組員達が、ぞろぞろ下り
て来た。皆、一様に疲れ切った顔をしている。
「やったぞ!ついに、元の世界に戻って来たぞ!」
彼らは、歓声を上げていた。

90 :
「しかし、クロノス博士。到着時点が3年もズレたのは、どういう訳です?」
タラップを降りながら、オデュッセウスが尋ねた。
「おそらく船内に異物が乗っているせいじゃろう。まあ、細かい事は良いではないか。
4年しか経ってないのに、7年分の給料が貰えるんじゃから」
クロノス博士は、性懲りも無く笑いながら言った。
「そういう問題ではありません」
「なら、もう一度、時間航行機に乗って3年だけ、過去へ飛ぶか?」
「結構です!もう、この機体には、金輪際、乗りたくありません!」
時間航行機の乗組員達は、空港施設へと案内された。過去の時代で捕獲されて来た
捕虜達も、アンドロイド兵によって連行される。卑弥呼、ホエルン、常磐御前、静御前、
テムジン、牛若丸、久石千鶴の7人だ。千鶴だけが衣服の着用を許されず、12月だと
言うのに全裸だった。寒さに震えながら、その眼には憎しみの炎を燃やしていた。
(こんな形で、現代に戻る事になるとは!これでは、あたしは全くの無力だ・・・長い年
月を掛けて築き上げた組織のバックアップも何もない。衣服すらない裸だ)
何十年、何百年もかけて、周到に準備して来た事が、全て白紙に戻った。その悔しさで、
気が狂いそうになる。金も組織も武器も無く、布一枚所有していない。自由すらない
状況で、全てを一からやり直さなくてはならない。

91 :
(バベルの塔が崩れ去った時って、こんな気持ちだったのかしら)
ふと、千鶴はそんな事を考えた。有史以前に人類が高度に築き上げたアトランティス
文明は、グレイの怒りに触れ、一撃のもとに石器時代へと戻された。
「ギャハハハハハ!クロノス博士、久しぶりじゃないか」
空港ロビーで、過去から帰還した一行をピタゴラス総督が出迎えた。報告を聞いて、
植民地総督府から転送機を使って駆け付けて来たのだ。
「ちょっとした、手違いがあってな」
照れながらクロノス博士は、ピタゴラス総督と熱烈な握手をして、再開を喜び合った。
行方不明になっていた乗組員と親交のあった人間達や家族が、続々と転送機で駆け
つけ、涙の抱擁を交わしている。
「君の帰りを、心から待っていたぞ。実は、どうしてもやりたい実験があるんじゃが、君
抜きでは、無理なんだ。代わりに君の娘のデメテール博士に、依頼しているんじゃが、
結局、まだ完成していない」
「何かね、それは?」
「詳しい事は、後で話すが、今、我々は時空戦艦を建造している。数万年・・・出来れば
数千万年の過去へ、強力な戦闘力を持ったタイムマシンで遡りたい」
「なんと!正気かね?ふーむ・・・出来なくはないが、そんな昔に遡っても、君の好きそ
うな、拷問に使える美女はいないと思うが」
「わしとて、それ以外にも、興味を持つこともある。目的は、こんな所では言えん。追々
に話すが、まずは大質量を運べる時間エンジンを完成させてほしい」
ピタゴラス総督の目は、真剣だった。クロノス博士は、肩をすくめた。
「やれやれ、戻ってきたばかりだと言うのに、人使いが荒い御仁だ。2、3日のんびりし
てからでいいかね?」
「ああ、それくらいなら構わんよ。何しろ君の帰りを7年間も待ったんだから!」
全裸で、ロビーを連行されながら千鶴は、そんな、ネオガイア星人達の会話に聞き耳
を立てていた。

92 :
更新乙です。
>>91 に今後の展開の核心に関わる記述がある!と感じたのは
俺の勘違いなのだろうか・・・。
この勘が当たってたら、作者さんの創造力はマジで凄いと思う。

93 :
おぉ!作者のおじさん、プレゼントをありがとう!

94 :
>84
改造シーンは、入れるとして、バトルシーンも書けるようにならなくては、マンネリ化してしまうと言う、考えです。
>92
ネタバレになりますが、ペリーローダン的な展開を考えています。92さんの勘と同じかどうかは、判りませんが。

95 :
更新乙です。
91の『数千万年の過去へ遡る』という所がポイントなのかな。
たしかグレイが銀河系を支配するのもその頃だし。
アナザーでエウドラ博士が危惧していた『グレイの宇宙支配への干渉』という禁忌をピタゴラス博士はおかすつもりなのだろうか?
なんかスゴイ大作になってきたな。

96 :
支配階級であるネオガイア星人の中学生であるクリトン(14歳)は、同じネオガイアス
クールに通うガールフレンドのペルセフォネ(14歳)と一緒に、テーマパークを訪れて
いた。父親が、親会社のオーナーであるため、タダ券を何枚も持っているのだ。
「昨日、新しい展示物が入ったんだって」
クリトンが、得意気になってペルセフォネに説明した。愛犬の森宮千夏(34歳)も連れ
ている。
「ふーん、何かしら」
ペルセフォネが、あどけない表情で尋ねた。妖精の様に可愛らしい仕草が、たまらな
い。
「過去の世界から連れて来た、地球史の美女と、その子供だって」
「地球の歴史、あたし、よくわかんないんだけど」
二人は、パンフレットに書かれた、その場所を目指した。鎖に繋がれた千夏も、四足
歩行で付いてくる。彼女は、最近では、財閥の息子であるクリトンを警護する番犬の
訓練も受けていた。肌に20代の頃の張りはなくなり、体型も崩れて、乳房や下腹部が
垂れ下がり始めている。人間犬の品評会にも幾度か出たが、若さが足りないため入賞
した事がなかった。それでも飼われ続けているのは、クリトンが気に入っているからである。
「この辺の筈だけど」
パンフレットが示す場所には、大きく囲われた柵があり、その内側には、モンゴルの遊牧
民風の天幕と、平安時代の貴族の邸宅をミニチュア化した建物が、同じ敷地内に再現さ
れていた。さらに、その隣には、弥生時代の藁ぶきの高床式神殿が建てられている。い
ずれも通路に向いた方の壁は、取り払われ、中の部屋が丸見えになっていた。
「あれが邪馬台国の女王、卑弥呼だよ」
地球の在住期間が長く、歴史にも詳しいクリトンが指差して、説明した。巫女姿の小柄な
中年女が、祭壇に向かって、なにやら祈りを唱えているようだった。

97 :
「そしてあれが、ホエルンとテムジン。テムジンは、後のジンギスカンなんだ」
クリトンは、事前に展示物について予習をして来ているようだった。
「ふーん、そうなの」
ペルセフォネは、興味無さそうだった。仕方なくボーイフレンドの趣味に付き合わされ
ている感じである。
「あっちが、常磐御前と、静御前。あの子供が牛若丸」
舞妓姿の日本人美女2人が、見物客に向かって愛想笑いを浮かべている。
「牛若丸と、テムジンが同一人物だっていう伝説もあるんだけど、全然似てねえな。
嘘だったんだな」
クリトンが、元気よく遊ぶ同い年くらいの少年2人を見比べて言った。
「餌を上げよう」
クリトンが、近くの売店に行った。物色したが、何を上げていいのか良く判らない。
「ええい、面倒臭い。ジンギスカン鍋でいいや。大人数で食べれそうだし」
クリトンは、金持ちの息子なので、財布にはいつも大金の小遣いが入っていた。千円
払って、餌用のジンギスカン鍋を手に取ると、柵の所まで持って行った。
「おーい、餌だよう」
クリトンが呼びかけると、3人の女と2人の子供が集まってきた。
「ちょっと、待って。せっかくだから味付けして上げるわ」
ペルセフォネが、小悪魔のような笑顔で、鍋の中に唾を垂らした。
「ほら、美味しくなったわよ。残さず食べなさい」
「有り難うございます」
常磐御前は、代表して深々とお辞儀をすると、鍋を柵の上から受け取った。そして、
仲間達に、中の料理を見せた。
「さあ、お食べ」
「わーい!わーい!」
余程、腹が空いていたのだろう。5人は、地面に直に座り、鍋を囲んで食べ始めた。

98 :
 久石千鶴は、他の捕虜達と引き離されて、1人で研究施設へと連行された。全裸の
ため、空港ロビーの利用客や、研究所の職員達の、好奇の眼差しに晒されるが、羞恥
心は感じない。古傷だらけの裸体は、それ程美しい見世物ではなかった。
「おお、奇跡的だ!被験体が、回収出来たのか!」
研究室で待っていたウラノス博士は、喜びの声を上げた。
「時間航行機の記録を信じるとすれば、君は、不老処置後、1995年間を生き延びた
事になる」
ウラノス博士は、研究データを見ながら言った。アンドロイド兵が、千鶴を診療カプセル
の中に寝かせて、四肢を固定する。千鶴は、あくまで脱出のチャンスを伺っていたが、
1995年前と同じく、全く隙がなかった。
「細胞の変化を調べるために測定データを取らせて貰うよ」
カプセルの透明の天蓋が閉まり、ブーンと機器が唸ると、千鶴の肉体が、頭の先から
足の爪先まで、細胞レベルで走査された。激しい苦痛が千鶴を襲う。
「うぎゃああああ!止めってえええ!」
1995年前に味わった苦痛よりは、短時間だったが、それでも人間が、平常心で耐え
られるレベルを超えていた。
「実は、後にも先にも、君の他に不老不実験に耐えられた人間は、誰もいない。か
なりの人数を試してみたのじゃが、全員が心臓麻痺でぬか、発狂して使い物になら
なくなったよ」
ウラノス博士は、モニターに表示されたデータを念入りに検証した。

99 :
「素晴らしい。DNAが、完璧に保持されている。テロメアの長さも変わっていない」
細胞スキャンが終わり、苦痛が消えた後も、千鶴の意識は朦朧としていた。
「だが、肉体的損傷は、かなりひどい。長い年月が経過しても再生しないようだな」
左手の小指とクリトリスは、欠損したままで、さらに無数の古傷が皮膚に刻まれている。
ウラノス博士は、自分が実験で作り出した、別の意味での不身の肉体を持つ女の事
を思い出した。
「アルテミスの細胞は、どんな傷でも、たちどころに再生させるが、老化は防げない。
もし、この二つの特性を兼ね備えた人間を誕生させることが出来れば、文字通り人間は、
神に近付くことが出来るのかもしれん」
ウラノス博士のブツブツと呟く言葉を、千鶴は途切れそうになる意識で聞いていた。
(アルテミス・・・ネオガイア星人っぽい名前だわ・・・覚えておこう、何か役に立つかもし
れない)
不老の肉体持つ千鶴にとって、肉体の欠損と傷は、常に悩みの種だった。もし事故や戦
いで、体の一部を失えば、その後の、いつ果てるともない永遠の人生を、不具者として生
きていかなくてはならないのだ。
「だが、現段階では、この二つの特性を、同じ細胞に与える事は、わしの能力を持ってし
ても不可能じゃ・・・もっと研究せねば」
ウラノス博士は、下等動物の被験体である千鶴の存在など忘れ、研究資料に目を通し、
検証する事に没頭していた。

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