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ハケン【ドラマ】黄金の豚でエロパロ【とっくり】


1 :2010/11/09 〜 最終レス :2013/09/17
○再放送につられてスレたててみましたが…何か?○
・ドラマ『ハケンの品格』&『黄金の豚』に今更萌え滾るスレです。
・エロはもちろん小ネタ、ほのぼの、甘々も大歓迎。
・荒らしはハエにとまられただけだと思ってスルーで。
・801はグレーゾーン。好みは人それぞれ
・文章の初めにカップリングを示すやさしさ。


2 :
スレ立て乙!!
2GET!!

3 :
今日黄金の豚だ。そういや昔あったハケンのエロパロ版って保管庫ないんだな。

4 :
わっ!たってるw
>>3
まだあると思う

5 :
1乙
今日の黄金の二人めちゃくちゃ可愛かった

6 :
角松が母ちゃんに「ようこさんと同じ布団でいいわよね」って言われた時の顔がツボったw
婚約者ならHぐらいしてるだろうに

7 :
>>3

http://wasabimaru.h.fc2.com/haken/index1.htm

8 :
つ四円

9 :
>>7
つ30円
感謝!

10 :
わーい>>9さんに30円もらっちった!
ってことで作品投下
初文章書きなのでいろいろなとこに目をつむっていただきたいです…
一郎×芯子(洋子時代)
エロなしです
長くなっちゃいました
先に謝りますスンマセン

11 :
『堤洋子』になりきるのは思いの外、神経を費やす。
男言葉は使わない。
がに股にならない。
スカートを履いていつも清楚な服装。
振る舞いもそれはそれは女の子らしく。
気付けば部屋のクローゼットの中には、絶対に自分では買わないような洋服やバッグがずらりと並ぶようになった。
それを眺めながら芯子は腕を組む。

「…にしてもこんなぶりぶり、私の柄じゃねぇな」
ターゲットを落とす必要経費ではあっても、やはり自分の趣味ではないもので部屋が埋め尽くされるのは、いささか気が滅入る。
まぁその経費が相されるぐらい(むしろそれ以上に)踏んだくってやるつもりだけれど。
ふと部屋の時計に目をやる。
待ち合わせの時間はもうすぐだ。

「やっばい!こんなことしてる時間ない!遅刻すんじゃん!!」
慌てて髪を結って部屋を飛び出す。
階段をドタドタと降りていきながら、左手の薬指に例のものが無いことに気付いた。

「あッ…忘れた!」
階段で急ブレーキをかけて部屋に駆け戻る。
慌てていたからか部屋のドアに豪快に足の小指をぶつけて激痛が走る。
ガンッ!!
「あだ…っ!」

前のめりにベッドに倒れ込み、顔をうずくめる。
「っつう〜、痛ぁ……」
「ちょっと芯子!なにドタドタやってんの!店まで丸聞こえだよ!」
階段下から母の啄子が声を荒げる。

「うっさいなぁー、なんでもないっつーの!!」
くっそう、なんであのターゲットの為にこんな思いまでしなくちゃいけないんだ…。
痛む足の小指に堪えながら窓際に置いた指輪ケースに手を伸ばす。
婚約指輪として渡されたそれを薬指にはめる。
一瞬だけ窓から差し込む光にそれをかざしてから、再び慌てて部屋を飛び出した。

12 :
「え、なにこれ」
綺麗にラッピングされた小包を手渡され、芯子は意味がわからずターゲット
――角松一郎を見た。
一郎は芯子の座るソファの横に腰掛け、にっこり笑うと嬉しそうに口を開いた。

「記念日」
「記念…日?」
「そ。俺と洋子が婚約しようって決めてから今日でちょうど1ヶ月」
あ、さいですか。
芯子はあまりの一郎ののめり具合に改めて驚く反面、ちょっぴり胸が痛んだ。
恋愛じみたことを続ける度、この人は傷付いてしまうのに。

「あ、ありがとう…」
開けてみてよ、と一郎に催促されラッピングを丁寧にはがしていく。
可愛いネックレスだった。
「貸して、つけてあげる」
言われるがままにネックレスを手渡して向かい合ったまま距離を縮めた。
一郎の腕が芯子の首の後ろにまわり、少しだけ抱き合うような体勢が続く。

「あれ、なんだこれ。くそっ、うまくいかねぇな」
小さなフック穴を通すのが馴れていない一郎は、そう言いながらネックレスと格闘している。
芯子はそのままじっと一郎の胸の近くでネックレスが付けられるのを待っていた。
伸ばされた一郎の首筋から、少しだけ男の人の汗の匂いがした。
仕事、大変なのかな。
ふとそんな思いが芯子を占めた。
一郎が公務員だというのは聞いていたが詳しい仕事は知らない。
思えばいつもこうして優しくしてくれる。
私に騙されてるなんて思いもしないで。
優しい男。
優しい男なのに、なんで私なんかに引っかかっちゃうの。
貧乏だ、嘘つきだと子供の頃からイジメられ続けてきた芯子にこんなに尽くしてくれる男なんていなかった。
だから勘違いしてしまいそうで嫌なのに。
そんなことじゃ詐欺師としてプライドが許さないのに。

13 :
「ついた!」

パッと一郎の腕が離れて芯子は慌てて我に返った。
自分の首もとには可愛らしいペンダント。

なんでこんなに優しいの。
なんでこんな私なんかに優しくするの。
詐欺師として矛盾した思いが胸の中でモヤモヤと広がりはじめ、迂闊にも涙がこみ上げる。
「うん可愛い…って洋子?ちょ、どうした」

芯子が唇を噛みしめて涙目になっている姿に一郎は動揺を隠せない。
「ご、ごめん。ネックレスとか嫌だった?」
慌てて見当違いな謝罪を始める一郎が可笑しくて、少しだけ芯子の心が安らぐ。

「ううん、違うの。…違くて」
優しすぎだよ、と俯いて小声で呟く。
いつもは演技で可愛くぶりっ子するのに、今だけは本心だった。
一郎の手がそっとその芯子の頬に触れた。
つられて顔を上げた芯子の視界で一郎の顔が静かに近付いてきたのが見えたので、ゆっくりと目を瞑った。
次第に一郎の体重が少しだけかかり、ソファに優しく押し倒された。

今日だけはいいか…。

芯子は一郎のクルクルな髪の毛に手をまわす。
大型犬を撫で可愛がるかのように触りながら、一郎の口づけにそっと応えた。


********

次の日。
母、啄子は店先で野菜を品定めする芯子を見つけ不審な眼差しを送る。

「なんだい芯子、珍しく店手伝ってくれるのかと思ったら一丁前にウチの商品にケチつけるってかい」
「ちっげーよ、食材選んでんの!」
うるさいな放っておけよ、と付け足して芯子はニンジン、玉ねぎ、ジャガイモを手に取る。

14 :
「食材?なにアンタ、料理も出来ないくせに」
「出来ないんじゃないの、しないだけ!カレーぐらい楽勝だし」
思えば一郎に何かをしてあげたりプレゼントしたことがなかった芯子は、昨日の一件でちょっとだけ、ほんのちょっとだけ優しくして料理でも作ってあげようと改心していたのだ。

「…ふーん」
「…?なんだよ」
「男だね」
「バ…ッ!違うし!な、何言ってんのかーちゃん!!」
「なになに芯子姉ぇ、彼氏できたの?」

店先が騒がしかったからか、奥から妹のみぞれも顔を覗かす。
「そういえば最近芯子姉ぇの服装可愛くなってきてたしね」
「だから違うって言ってんじゃん!」

妙に納得し始める啄子とみぞれに何を言っても無駄だと悟った芯子は、袋に野菜をつめてその場を立ち去る。

「ちょっと芯子!商品なんだからお金置いてきな!」
「なんだよケチくせぇな、帰ってきたら払うよ!」

全く調子が狂う。
ちょっと良いことしようとするとすぐこれだ。
腹立つ。
彼氏?違う違う。
ただのカモ。昨日はほだされかけちゃったけど、私は詐欺師よ?
金をせしめるだけせしめたらハイさよならだ。
そう心の中で言い聞かせて一郎の部屋に向かう途中、一軒のブティックのネクタイディスプレイに目がとまる。
…ネクタイか。
父親のいない芯子にとって男性にネクタイをプレゼントをするなんて経験のない事だった。

15 :
わっふるわっふる

16 :
ふらっと店内に入り色とりどりのネクタイを見て回る。淡い紺地にうすくブルーのストライプが入ったネクタイに目がとまった。
一郎に似合いそうだな。
そう思った瞬間、女性店員が芯子に声を掛けてきた。

「恋人にプレゼントですか?」
「ち、違いますッ!」
思わず手にしていたそのネクタイを放り投げて、とっさに目に入った黄色地になんの動物だかわからない刺繍が施された、趣味の悪い派手なネクタイをつかみ、こっち下さい!と大声を上げていた。
そうよ私は詐欺師。
好きでもない男に嫌がらせでこんな悪趣味なプレゼントしちゃうんだから!
このネクタイ見てあの人はどんな顔をするかしら。
くくく、とわざとらしく悪い振りをして一郎の部屋へと急ぐ。

まさか一郎が嬉しさのあまり、その悪趣味なネクタイを気にもせずに喜んでくれるなんて思いもせずに。

(終わり)

お目汚し失礼しました
それ以来、派手で悪趣味なネクタイをこれでもかってくらい一郎にプレゼントするツンデレ芯子を想像しました
それを今でも大事に持ってる一郎、とか
長々と失礼しました…

17 :
素晴らしい想像力ですw
是非実写で見たい

18 :
おおおっ!!
やっと職人現る!ありがとうございます!!
エロなくても充分に萌えたw

19 :
>>7
乙!
楽しませてもらった!
やっぱり心子はダブルパーのどっちでもいいから
くっついて欲しい

20 :
おおおぉ!グッジョブ!b
ツンデレ芯子もえー
ドラマでももっと角松にツンデレしてほしい!

21 :
gj!クローゼットの中のネクタイを見るたびに苦い思いをするといい。

22 :
後ろ向いてみて・・・。
まるでいっしょ、区別つかねー。

23 :
職人さん新作期待してますよ!
くるくるパーマで萌えてしまう自分が心配だ

24 :
職人さあん!!!
早く読みたい
なんかすごく萌える

25 :
黄金の豚の為にぴったり定時退社してしまった。大前春子気分だ

26 :
久しぶりに1日中楽しみだなってわくわくしていられるドラマ
内容はたいしたことないし寒い時もあるけど無償に楽しみ
篠原涼子と大泉洋の絡みが微笑ましい
なにげに桐谷健太いいかんじ

27 :
来週の予告に全力で釣られるぞっとw
何の話をするんだ角松よ!

28 :
きゅうりプレイ想像してニヤけた

29 :
予告で芯子が角松に抱きついてたのは気のせいか?
自分も全力で釣られてみるw

30 :
まあ裏はあるんだろうけど抱きついてるよ
予告動画一時停止して楽しんでる

31 :
芯子がホテルの8階にいるってわかった瞬間すぐ駆け出していった門松に萌えた
来週の抱きつきと二人っきりでの話が楽しみだww

32 :
楽しみだけど・・・結局はオチだろw
高級クラブで金使いすぎたから芯子に詐欺に遭った金を返せと要求するが
抱きつかれて話逸らされる・・みたいな
大泉のブログとか篠原の連載コラムに2ショット写真有るよ
2人ともお似合いで可愛いから萌えたい人は是非どうぞ

33 :
>>32
連載コラムってなに?

34 :
>>33
In Redの12月号
2人が肩ならべてVサイン
大泉のは月額払ってみる携帯サイト
雨降ってて機嫌悪い大泉の横で能天気に笑う篠原w
「篠原涼子・・なんて無邪気なんだ・・可愛いから許す!!」ってコメントしてるよ

35 :
大泉ってブログやってんだ
知らなかった
角松が補佐に
「事務のハケン呼んで下さい」って頼んだから
大前春子が来るのかとドキドキしたw

36 :
>>35
自分もそう思った

37 :
むしろ大前春子登場してくれと思う
また春子のツンデレ見たい

38 :
 一郎が襖を開けると、一組の布団、枕が仲良く二つ並べられたそれに堤芯子が胡座をかいていた。
 結局温泉には入らずに家の風呂を使ったため、まだしっとり濡れたままの髪を乱暴に拭き続けていた芯子が、襖の紙擦れの音にこちらを見やる。
「おそかったな?」
 アンタの母ちゃんに、これ二人で使って下さいね、って言われたんだけど?
 指されたのは芯子が下に敷いている一組の布団で、これを二人で使え、は一郎も言われた。
 枕はあるのに布団はないってのも面白い、と呟く芯子に、一郎が深いため息を吐く。
 正直襖をあけた時に彼女が元婚約者ママ粛々と座って居たらどうしよう、とドキドキしていた。
 この一ヶ月で堤芯子というそれこそありのままの人間を知ったというのに。
 期待すればしただけ裏切られるというのに。
 例えば過去だとか、最近でいうならあの時とか、あの時とかッ! 否、期待なんか、していないけれど!
 一郎は思い出した諸々にムカムカとしながらも、それをぐっと耐え込んで、布団に座る芯子に手を差し出した。芯子は訝しげにその手を見る。
「何」
「枕一つ寄越せ」
 向こうでアイツ等と一緒に寝るから、と面倒くさそうに言う一郎に、芯子は僅かに口角を上げる。
「あっれーぇ?」
「なんだ、早く枕寄越せ」
 言われた言葉に従うように、芯子は枕を一つ取り上げると、けれどそれを手渡すでも投げるでもなく、前に抱えた。そして、可愛らしく小首を傾げると詰まらなそうに唇を尖らせる。
 こんな女、か、わ、い、く、な、ん、か、と思うのに、一郎の単純な心臓は早鐘を打つのだからなんだかもう、自分で自分が情けない。

39 :
「……なぁに、角松さん、せっかくお母様がお布団ご用意して下さったのに、あっちでお休みになるんですかぁ? ヨーコ寂しい……」
「バッ……!? 馬鹿言ってないで早く寄越せッ」
 この、男タラシが! とうとう叫ぶようにそう言うと、柔和に細められていた芯子の眦がキリリと上がった。強気の瞳がガッツリ一郎を睨む。ちょっとビビる。
「……寄越せ寄越せ言ってないで枕の一つくらい自分で持って、け、っつーの!」
 ひっつかまれた枕は、一郎の顔目掛けて綺麗に飛び、その顔面を強か叩いた。
「ブッ……おいこら投げるな!」
「あーもーっさいな、とっとと出、て……ると寒いから、早くお布団入りましょ、ね? シ……一朗さん」
 突然声色と喋り方が変わった。
「あ? お前何言って、」
 角松は、コイツ頭大丈夫か、と訝しむが、芯子が、自分の後ろの誰かに小さく会釈をしたのを見て、動きを止める。後ろの、誰に? そんなこと、決まっている。
「一朗、明日も早いんだから、早く寝なよ?」
 母であった。
 途端に、角松の挙動は不振になる。当然だ。普段のように罵倒し合うことは、即ち自分と婚約者の仲を隠し通せなくなること。避けねばならない第一優先事項なのだから。
「か、あちゃ、お、おお、寝るわ! 寝よ寝よ、な、洋子!」
 母親の前で『自分の女』とそそくさ一つの布団に入るのもどうかと思うが仕方ない。促すように二人で布団に潜り込む。自然に身を寄せ合う形になるその格好に、芯子があからさまに眉間に皺を刻む。が、構うものか。
「本当に仲いいわねえ」
「はぁい(もっとそっち行け!)」
「お、お休みぃ〜(これ以上行けるか馬鹿! ギリギリだわ! お前こそもっとそっち寄れ!)」
 小声の言い合いを『もっとこっちに来て』『これ以上行けるか馬鹿! 母親の前だぞ!』とでも取ったのか? それじゃ、私もアテられちゃう前に休みましょ。と、何を想像したのかわからない母は、お休みなさい、と襖を閉めた。
 遠ざかる足音、布団の中の二人は、仲良く溜め息を吐き出す。
「で?」
「あ?」
「一緒に寝るわけ?」
「寝るか馬鹿!」

*
*
*

「あっちで寝るんじゃないんですか?」
「出来るわけねえだろ」
※※※
すみません最初に初めましてのご挨拶しようと思ってたのに焦って書き込んでしまいました…。
一応4話の布団話です。
お目汚し失礼いたしました!

40 :
GJ!GJ!
目に浮かぶやりとりww
昼休みに覗きにきてよかったw

41 :
天才!
情景が目に浮かぶ

42 :
>>38
心からの乙を!
布団の中でのもぞもぞいいわあw
翌朝爆発天パでボーっと昨夜の事ちょっと惜しかったなとかって思い出すんだな。
それを同じく爆発天パの工藤が?てな顔で眺めた後に起きだしてって
芯子さんが居ない!となるとこまで浮かんだ。
てか、男部屋に角松が戻ってくるとこ見るとちょっと離れてる印象あるけど
襖挟んで隣の部屋だよね?
やりとり筒抜けだった可能性もある、かな?
ずいぶん仲良いんですね、て嫉妬するといいよ工藤w

43 :
gj
頻繁に覗きに来ててよかったあ

44 :
GJ!
見に来てよかった〜!

45 :
何でもいいので、萌えをください!

46 :
反応ありがとうございまつ!
調子にのってもう一本投下します。突貫なので荒いですが、5話の、錦に啖呵切った後の話です。
ほんのり角松×芯子(むしろ芯子×角松)です。

47 :
 教育管理委員会の無駄の一つを潰して、これで何が変わるとは思えないがそれでも、何かのきっかけにはなる。
 芯子は、スワロフスキーの散りばめられた電卓をポケットの中で握り締めると息を吐き出した。
 一人、検査庁へ足を速める芯子を後ろから見る男達は、確実に1ヶ月と変わる自分を、感じている。
 例えば、角松一郎も、だ。
 騙された筈なのに、今だって、その屈辱は忘れていない筈、なのに。だから、堤芯子が錦に襲われようが関係などなかったのに。
 工藤や金田、それから後ろを歩く年増園のキャバ嬢達より少しだけ足を速めれば、容易く芯子に近付ける。
 角松はこちらを見ようともしない詐欺師の旋毛に目を落とし、それから芯子と同じく真正面を向いた。
 芯子の手が、何度か自らの尻をぱんぱんと、まるで埃でも払うかのように叩いているのが、気になった。声をかけようとすれば、小さく、ったくあのエロ親父が、が聞こえる。エロ親父、で今頭に浮かぶのは、錦。思いつくのは昨日のお持ち帰り。
「なんかされたのか?」
「あ?」
 声を掛けられた芯子は、正面を見据えたままで不機嫌そうにそれだけ返した。
「錦にだ」
 そこまで言ってやれば、やはり芯子が触るのは己の臀部。実に忌々しげに、唇を尖らせる。
「あー、ケツ触られたね。あと、股関に手ェ突っ込まれかけたからキュウリつかませてやった」
 余程嫌だったのだろう。その声には嫌悪しかない。
 それにしても。
「あのキュウリ、やっぱり」
 股関の一物代わりだったのか、と、角松は再び自分のそこに目を伏せた。
「いやー、御守りがわりに持っててよかった。一瞬ひやっとしたけど、まさかホントにキュウリで騙されてくれるとは、な」
「触られて、嫌だったのか」
「あったり前だ、ろ! 誰があんな中年に尻触られて喜ぶかっちゅーの!」
 のびのび君越しじゃなかったら投げてたな、と荒まいて吐き出す芯子は普段男まさりな格好や口調をしているものだから、角松は少し、ほんの少しだけ意外に思ってしまった。
 そして、ほんの少しだけ、もやもやとした思いが胸に渦巻く。
「……悪かったな、その」
「ンぁ?」
「だから、すぐ、追いかけなくて」
「あー、……別に、逃げたし。つーか追い出されたし?」
 角松が素直に悪かったと言えば、芯子は居心地が悪いのか? つっけんどんに言い返す。

48 :
「どうせキュウリ入れるなら、俺か工藤が入れば、」
 そこまで言って、けれどその言葉は思い切り振り返った芯子によって遮られた。
「なーになーに、なんかあった? ンもぅなんかきもちわっるいんだけど!」
 あ゛ーむずむずする! と身体を掻くようなジェスチャーをしながら叫ばれる。
「……いや」
「あ、もしかしてアレか。錦にケツ触られんのは嫌だったけど、俺ならどうなんだろう、とか思ってんのか」
「ぅンなわけねーだろ!」
 殊勝な気持ちで身を案じるような言葉を掛けたのになんでそんなことを言われなければならないのか、と憤慨する角松は、自分が芯子のペースに引き込まれていることに気づかない。
 芯子は内心ほっと息をついた。先のように他人に主導権を握られるのは、性に合わない。
 特に、コイツには。
 いつだって私が、心を乱してやる側だ。
 こんな風に。
「……別に、やじゃないヨ?」
 つつつ、と少し角松の近くに寄って、斜めに上目遣いで見上げると、相変わらずの単純馬鹿が息を呑むのが喉仏の動きでわかる。
「え」
 極力小さな、小さな声で、アナタだけに聞こえるように言うね、とばかりに紡ぐ言の葉は、口八丁の詐欺師、最大にして唯一無二の武器。
「角松サンになら、さ、わ、ら、れ、て、も、やじゃナイ」
 きゃ、なんて頬に手を添える仕草など、妹のみぞれが見たら瞠目するだろう。しかし妹は工藤君と金田っちをもう二人と囲んで次の遠足の算段に勤しんでいる。それも、かなり後方で。
 公道ではあるが、芯子と角松は今完全に二人きりだ。
「……」
 芯子は突然、角松の腕をガバリと引くと、横路に逸れる。いつかのように壁にトン、と突き飛ばすと、コンクリートは角松をその硬い身で受け止めた。
 イッテェ、と漏らす角松に、笑う。
「のびのびとぉー……」
「なにすん、」
「ちゅー、のポーズ!」
「だっ……ぅええ……!?」
 目を閉じ唇をツンと突き出した芯子に、角松がうろたえる。
 据え膳かこれ据え膳か食わぬは男のなんとやらか!? いやしかし待て待て角松一郎思い出せ、この間だってそのまた前だって!
 馬鹿である。
 そのままの格好で、5、4、3、2、1、心で数えた芯子は、目を開け、離れた。ゼロ。
(ばーか)

49 :
「にゃーんちゃって、な」
「ああ……ま……た騙され……!」
 コンクリートに頭をこすりつける角松の後ろ姿に、芯子が、舌を出した。
 騙してないし。今回はただの、時間切れだっちゅーの。
 あんな格好で待つ女を、長く待たせるア、ン、タ、が、悪い! そう毒づく瞳が角松にわかるわけもなく、だから芯子もなんにもなかったことにして、角松を横路に残したままで踵を返して大きな通りに歩き出した。
 遅れていた後方組と合流すると「何してたの芯子姉ェ」とみぞれに言われて、けれどつい今し方なんにもなかったことにした芯子は、なーんにも、と答えてやる。
「芯子さん、今度は動物園とかどうですか?」
「どーぶつえん?」
「はい!」
 元気に返事をするは、工藤優。どうやらコイツにも好かれているようだ。
(モテ期到来だね)
 口角を上げた芯子は、どう控えめに見ても先ほど錦に啖呵を切った後よりも機嫌がいい。
 その機嫌の良さのまま呟く声も、いつもよりもどことなく、すがすがしく晴れやかだった。
「いーかーないっちゅーの!」

50 :
お粗末様ですた。
芯子独特の、言葉と言葉の間は文字で著しにくいす……ぁ。
お目汚し失礼いたしました。

51 :
>>47乙! 
寝る前に覗いてみて良かった

52 :
もうあなた脚本書いちゃいなよw
昨日は芯子が角松のネクタイ上目使いでクルクル絡ませるのが可愛かったなー

53 :
GJ
萌えた
職人さんまたお願いします!

54 :
数々の職人さんに触発されてスペースおかりします
そういえば工藤と芯子って一話でチューしてたよな
って思い出して投下してみます
エロパロスレなのにエロくないので
すんません…

55 :
「うげ、雨降ってら」
 秋の空模様は移り変わりやすい。就業時間終了とほぼ同時に退室した芯子は、入口で足留めを食らい空を睨みつけていた。
 勢いよく出てきたものの、この雨脚で傘なしで帰るなんてびしょ濡れ確実だ。さすがに風邪を引くだろう。あまりの寒さに襟元を締め、ジーンズのポケットに両手を突っ込んだ。
「うわぁ雨降ってたんですね、庁舎の中にいると気づきませんでした」
 背後から工藤優の声がした。芯子が振り返ると工藤は空を見上げ、結構強い雨ですねぇと言葉を続けた。手にはちゃっかり傘を持っている。
「あれ、芯子さん帰らないんですか」
「傘持ってきてないっつーの」
 ぷいっと芯子はポニーテールを振りそっぽを向く。その毛先が見事に命中し、ムズ痒そうに顔を払う工藤は思い出したかのように口を開いた。
「あ!そうだ僕、ロッカーに置き傘してるんですよ。折りたたみでよければ芯子さん使って下さい」
 ちょっと待ってて下さいね、今取りに行ってきますから。そう言って工藤は踵を返したが、ぐいっと腕を引っ張られて足が止まる。
「えっ…?」
 引っ張られた自分の腕を辿っていくとそこには芯子の手が続いていた。
「し、芯子さん!?」
「アンタのそっちの手に持ってるのは、なあぁに?」
「…傘、ですけど…?」
「じゃあその傘に入れてって?」
 にっこりと不敵に笑う芯子に工藤は慌てて制する。
「いやいや、こんな強い雨なのに二人で傘使ったら濡れちゃいますって、ね?」
「あ〜、私と相合い傘するのイヤなんだ〜」
 ひどーい傷ついたなぁと芯子は人差し指で工藤の胸をつつく。にやにや笑い続ける彼女に、あ、からかわれてるなと工藤は直感的に思った。顔を引き締めて芯子のその人差し指を優しく払いのける。
「もう!からかわないで下さいよ」
「いいじゃん別に。つうか早く帰りたいんだよ!ほらほら入れてってばシングルパー!」
 半ば強引に工藤の腕にしがみつき、ホラホラと催促をする。渋々工藤は傘下に芯子を招き入れ、雨脚が強まる中、身を寄せ合う。
 自分より一回り以上年上で、自分より一回り以上も細くて小さい芯子。それでもなるべく濡れないようにと、工藤は芯子寄りに傘をさしてやる。
 それに気付かないのか芯子は濡れまいと更に工藤の腕にしがみつき、はたから見るとそれは恋人同士のようだった。

56 :
「し、芯子さん…あの、そんな、あんまり」
「あ?」
「いやあの。当たって、ますんで…」
 赤面しながら視線があちらこちらに泳いでいる工藤の表情を確認した芯子は、あっ!と気付き、すぐさま自分の胸元に目をやる。なんだろうこのウブ過ぎる反応は。
 芯子は笑いを堪えながら構わず工藤の腕にすり寄った。
「なあに?アタシのこと意識しちゃったあ?」
「ち、違いますッ…!」
 何言ってるんですか!、と慌てふためく工藤に芯子は内心笑いが止まらない。
「思ったんだけどさぁ、シングルパーあんた」
「はい?」
「もしかして童貞?」
「なッ…、何を急に!!?」
 その裏返った言葉を合図に見る見る顔を赤くしていく工藤を見て、芯子は納得した。
「だと思ったんだよなぁ、カモフラージュでキスした時の慌て振り異常だったもんね。東大出身だから勉強ばっかしてたんじゃないの、もしかしてチューも初めてだった?」
「芯子さんっ!お、怒りますよ!」
「もう怒ってんじゃん」
 芯子は笑いを堪えながらごめんごめんと、工藤の肩を叩く。
「下手くそと童貞ね。そうめんカボチャはなんだかマニアックなの好きそうだし、ここにはマトモな男はいないのかねぇ」
「だから童貞童貞って言わないで下さい…って、あれ?」
「ん?」
「下手くそって、誰のことですか?」
「…………」
 工藤は指折りぶつぶつと小声で整理していく。童貞は不本意ながら僕の事だとして、そうめんカボチャは金田さん…で後は。
 その工藤の横で芯子は隠れれるようにやっべ、と顔をしかめて舌を出す。からかい過ぎて墓穴を掘ってしまった。
「え?も、もしかしてしゅに…」
「ストップ!」
 芯子の人差し指が工藤の唇に触れる。有無を言わせない威圧感にも似たオーラが漂っていた。
 工藤はそれに圧倒されて思わず目をぱちくりさせる。芯子はゆっくりと顔を近付けて微笑んで見せた。
「今のはぁ〜記憶からぁ〜消し去ること!」
「え、ええっ!?それってどういう…」
「童貞くんがそんなこと根掘り葉掘り聞くなんて、野暮だ、ぞ!」
 ちょんと工藤の唇をつついてからかう。
「だから童貞童貞って止めて下さい!ち、違いますから!」
「だ〜いじょうぶだって、お姉さんが手解きしてあげよっか?」
「ッ!?…けけけ、結構です!」
 顔を真っ赤にした工藤はそう叫ぶと、歩幅を気にせずにズンズンと足を進めていく。ちょっと!濡れちゃうでしょ!とおいて行かれた芯子は慌てて工藤の後を追いかけた。

おしまい

57 :
スペースありがとうございました
工藤は初回から童貞っぽいと思ってたんですが
最近は腹黒くなってきたので下剋上もかましてほしいっス

58 :
>>54
萌えた…!
同じく工藤はドーテーか、年上女に喰われたことがあるかだと睨みますww

59 :
主任は下手くそなんだw

60 :
金田はマニアックなのが好きなんだw

61 :
拙いながらお眼汚しします。
第4話の川に飛び込むシーンから芯子×角松を。
エロはほとんど無し。

62 :
「洋子!…や、芯子、芯子つ!」
 角松の切迫した声が響く。
 蒼白な顔で水面を見、左右を見、助けを求めても誰も居ないことを確かめると
慌しくスーツの上着を脱ぎ捨て、震える指先でネクタイを緩める。
────ああ、溺れたことあったんだっけ……子犬助けて。
 対岸の縁にびしょ濡れで腰掛け、芯子はわなわなと揺れる角松の両膝を眺めた。
 も、ちょっと顔上げて前を見れば、あたしがここに居るってわかるのにねえ
……詰めが甘いんだから。
────無理すんな
 そう声にする前に、
「芯子!ぬなよ!」
 角松が川へ身を躍らせる。
────……っ!
 思わず腰を浮かせた彼女の耳に、工藤と金田の心配気な呼び声が届き、
ぺたん、と芯子はまた座り込んでしまう。
「芯子っ!…た、助けてっ……!」
 ばしゃばしゃと水飛沫をあげてもがく角松を見つけて
工藤達が上着と靴を脱ぎ捨てる。
「何やってんの?!」
 やっと声が出せた気がする────
 芯子は水面の水飛沫と、対岸の二人に向かって叫んだ。
 何故かうろたえた自分にほんの少し腹を立てながら、
芯子は脱いだ靴を逆さにかざして中の水を投げ捨てる。

63 :
「……ヴあ?!」
 間の抜けた声と共に角松が芯子の方を見た。
「ああぁ?! 芯子、おまっ……ヴふわっっ!」
「そこ、背が立つから」
「……ほんとだっ!」
 水を滴らせながら、ばつが悪そうにぬぼぉと立ち上がった長身の男は、さながら…
────濡れそぼった大きな犬だね。羊とか追っかけてるやつ。
    なんて言ったかねぇ……なんとかイングリッシュ・シープドッグっての?
 あわてて川岸に駆け寄った工藤達は、
川の中で腰まで水に浸かって立ち尽くす角松に安堵の息をもらす。
 その直後、違和感を覚えた金田は眼鏡の奥の秀麗な眉を微かに寄せた。
 金田の表情を捉えた芯子が問う。
「ねぇ、ここの水の深さってさ、何メートルあるはずだっけ」
「6メートル」
 工藤の眼が見開かれる。
 芯子は角松に向かって手をひらめかせた。
「そのまま真っ直ぐ歩いて」
「無茶言うなッ」
 
「いいから、歩けって!
 ………あたしも今、そっち行くからさ」
「……へ?」

64 :
 巻き毛の先から水滴を飛ばしながら、
いいよ来んなよ危ねーよ、と叫ぶ男にはかまわずに
芯子は工藤に顔を向ける。
「シングルパー、写真撮って」
「はい!」
 そのまま角松を指差す。
「こっちのシングルパー入れて撮って。深さがどれくらいかわかるようにさ。
あれだ、釣った魚のスケール代りのマッチ箱だね」
 それって例えとしてどうよ、とでも言いたげな角松に向け、
カメラを持って戻ってきた工藤がシャッターを切るのを確かめて、
芯子は再び川に飛び込んだ。
 音も立てず滑らかな動きで角松の傍まで泳ぎ着き、
すっと立ち上がると黒目勝ちな瞳で彼の顔を覗き込む。
 たじろいだ角松が呟いた。
「河童か」
「古式泳法だよん」
「……おまえ、何者よ…」

65 :

────ふう。
 ようやく人心地がついて、芯子は湯の中で身じろいだ。
 昨夜、角松が言っていた公営の温泉だ。
 すっかり凍えた二人を、工藤達がここへ連れてきてくれた。

 
 結局、川の中をほぼ1km、歩いたことになる。
 水への恐怖心をなんとか押さえ込んだ角松は、つま先で川底を探りながら
芯子の半歩前を行く。
 機材を担いだ金田と工藤が、川岸に沿ってついて来る。
「あ……!」
 何かにつまずいた芯子の左腕をとらえ、背に腕をまわして支えた角松は
芯子の視線から逃れるように水流の先を見やった。
「ありがとな」
 濡れて張り付いたワイシャツの白さが眩しい。
「おふくろも、この里も、これで……」
 角松はいったん視線を落とすと、今度は芯子の眼を見つめる。
 
「ありがとな」


 ぱしゃん、と片手ですくった湯を肩口にかけながら
芯子は微笑んだ。
 その指を自分の首筋に添えてみる。
────この辺に、ほくろがあるんだよな……あいつ。
 覚えてる。
 忘れちゃいない。
 耳元でささやかれたあの声も。
────洋子、洋子……
 その名を呼んであたしを助けに来てくれた。
 ……溺れかけたけどな。
 芯子の唇からクスッと息が漏れる。

66 :

 なんだか頭がぼうっとする…のぼせかけてるのかな。
 うつらうつらと、彼女は角松が川に飛び込んだ場面を反芻する。


────洋子!…や、芯子、芯子つ!


 芯子の微笑みが消える。
  
 あの時とっさに出てきたのは“洋子”の名……
 あいつにとって、今だに忘れられないのは“洋子”なんだ。
 こんな、はすっぱな口ばっかし叩いてる、前科持ちの“芯子”なんかじゃない……
 あいつの隣に並んで一緒に歩いてくのは……芯子じゃあ、ない。
 冷たい川の中で、確かに伝わって来た角松の体温が
暖かな湯の中で、さらに温もりとなって左腕と背に蘇ってくる。
 両手で顔を覆って俯いている自分に気付くと
彼女はひとつ首を振って、立ち上がる。
 見事な肢体に上がり湯を掛け終ると、不敵な笑みが浮かんだ。

────まったく、見事に騙しおおせたもんさ……我ながら、ね。



67 :
突っ込みどころ多々あるでしょうが、ご容赦。
てか、投下してから誤字に気付いたり orz
失礼しました。

68 :
>>61
GJ!すごくいい!
芯子も慌てて助けようとしてくれた角松に
何気に嬉しかったに違いない
>>54の主任ヘタクソにクソワロタww

69 :
一本投下します
・エロなし
・二話後
・芯子と工藤ネタ
あ、ID変わってるぽいですがqy7FuWl3と同一の人が書いてますちなみに

70 :
「わっかんない」
 電卓をカタカタと弄んでいた芯子は、椅子に片足を乗せて膝を立てるとそこに顎をのせた。机上の書類は一枚も捲られずにあり、そんなにも難しかったか、と口を開いたのは、こちらも新人の工藤だった。
「どこがですか?」
 問いながら芯子の手元の書類を覗きこむと、違う。全ッ然違う。と、彼女の口癖で返される。
 こっちじゃなくて。
「堺。アイツ、アタシがココで働いてること、なんで知ってたんだろ」
 堺と会ってからの素朴な疑問は、芯子の中でぐるぐると渦を巻きっぱなしだった。
 少なくとも一度目に敵地に赴いた時には、絶対に顔を合わせてはいない筈なのだ。だから、堺は警務科で鉢合わせた時に二度見してきた。だとすれば、あの刑事は一体いつ、どこで、芯子が会計検査庁で働いていることを知ったのか。それが、わからない。
 芯子が首を傾げている目の前、焦ったのは、工藤だった。
 だって彼はもう二度、芯子から警告されている。
 余計な詮索は身を滅ぼす。
「あ、それは、」
「工藤が根こそぎお前のこと喋ったから、だろ」
 なんとか取り繕おうとした工藤の首を締め上げたのは、そうめんかぼちゃ、もとい金田だった。工藤の顔から少し血の気が引く。芯子の鋭い視線が、刺すように痛い。
 ガン、と芯子が、机を蹴った。
「……すーぐーるー君、ちょっと」
「はい……」
 ちょいちょいと指で呼ばれた工藤は、素直に芯子の元までいく。椅子に座る芯子が工藤を見上げる形になり、芯子はその位置からギロリと睨み上げた。そしてスッと手を伸ばすと、ネクタイを掴み立ち上がる。
 し、芯子さん……! うっさい、黙れ。
 ネクタイを引かれた工藤が放り込まれたのは、以前芯子が角松に「金返せ!」を言われた資料室。芯子はネクタイを離すと、今度は工藤の顎をガッと掴み資料棚に押し付けた。
「工藤優、アンタさァ、上のお口がユルすぎるんじゃない?」
 警告が足りないなら本気でお天道様拝めなくしてやろうかァ? このスットコドッコイ。
「すみません……」
 顎を掴まれたままできる限り頭を下げて謝罪する工藤の耳元まで顔を寄せ、芯子は小さく囁いた。
「……その口一度はアタシ直々に塞いであげたんだから、今度は自分でチャック出来るようにな・り・な・さい」
 言葉とともに、顎が解放される。
「は、い、あのでも、塞いだって……あ……!」

71 :
 放された顎をさすった工藤は、塞いだ、の意味が判らず芯子に問いかけようとした。瞬間フラッシュバックするのは、つい先日の警察をまくためだけにされた口づけ。
 工藤はあらん限り顔中の血管を拡張させた。耳まで紅くなる、とはまさにこのことだ。
「しししし芯子さ……」
 どもりにどもった工藤の声をかき消したのは、正午を指す時計の音だった。
「お、昼だね。よし、飯でも食いに行くかー。すぐる」
「……はい、」
「アンタの奢りで。この辺で旨い定食屋かなんかないのー?」
 ガン、と資料室のドアを開け外に出れば、ちょうどそこには元婚約者の角松の姿。突然出てきた芯子にビビった角松は、その後ろから出てきた工藤に目を見張る。
「お、お前ら、資料室で二人で何してたんだ」
 角松の言葉に、いかにも面倒くさいという表情を作った芯子は、先ほど工藤にしたように角松をちょいちょいと呼ぶ。その耳元で、囁いた。
「……密会」
「みっ……!?」
「すぐる!」
「はい!」
 呼ばれれば条件反射で返事をする工藤君に、首を傾げながら芯子が微笑む。
「ねー?」
「あ、え? は、はい、」
 空気読め、と空気で言われた工藤は何も考えずに首肯した。途端に角松が表情を変えたことには、気付かないまま。
「はいはいはい、行くよ!」
「密会……ってこら、どこ行くんだ!」
「昼飯」
「あ、待って下さい、芯子さん!」
 会計検察庁は今日も平和だ。

72 :
お粗末様でした
お目汚し失礼しました
>>62さんのお話に悶えてなんども読み返してたらケータイ電源落ちたorz

73 :
職人さん続々とありがとうございます
皆さま素晴らしい!
来週予告で角松が113万8250円の内訳を話してるところがあったけど
中に旅費とかホテル代があったらニヤニヤしちゃう

74 :
ニヤニヤしちゃう!

75 :
旅費ならともかくラブホの代金ぐらい男が払うだろ
そんな事まで細かく請求されたら最悪だ
角松ってキャラはお金に細かそうでコーヒー代まで割り勘にしそうだなw
自分は東海林の方が好きだわ

76 :
今鮪解体ショー見てて大前さん思い出した

77 :
>>70
gj! 工藤かわいいよ工藤!
角松の中の人なら“oh! チェリーーボオウイィィ…”と掛け声かけそうなw

78 :
自分もニヤニヤ
ラブホ代金入ってるか注目w
てか、豚はまだ今ひとつキャラの背後を掴みきれないんですよね。
62ですけど、なんとかエロ入れようとして、そこで挫折しちゃって。
それともし、ハケンの品格でエロパロスレの職人さんが居られたら
未完作品の続き、よろしければお願いします。お待ちしてます!

79 :
そうかハケンスレでもあるね!
ひとつぶで二度おいしいw

80 :
>>70です
また一本投下します
・4話後の帰路のでの話
・芯子×角松
・エロではないけどシモではある
・キャラクター崩壊はいつも
・毎度くどい文章ですみません

81 :
犯行は数分の間に。
 角松の実家のある清杉村を出て帰路につく会計検査庁の面々は、疲労しきった様子で新幹線のシートを向かい合わせたボックス席に沈んでいた。
 後から来てすぐに蜻蛉返りになる明珍だけはそんなメンバーを見て、場を盛り上げようと頑張る。
「温泉! 気持ち良かったねえ!」
 会計検査庁としての仕事を終え、取れなかった昼休みを取ろうと五人が向かったのは飯屋ではなく何故か、角松の実家近くの公営の温泉だった。
 それぞれに色々流したいものがあったのかも知れない。
 飯は電車で食えるよな、と言った誰も、腹に溜まるものは買わずに、ただ黙々と乗り込んだこの新幹線だった。
 最も、ここでも明珍は軽く握り飯を購入していたが。
 そんなわけで、目下五人に共通する話題といえば、温泉なのだ。
 明珍の言葉に、男三人も、苦笑いで頷く。
 確かに、温泉はもやもやと重たかった空気の何割かを洗い流してくれた、と。
 そんな男性陣を横目で見た芯子は、窓側の席でもって窓が白く濁る程に息を吐き出した。
 てゆーか、さ。
「芯子さん?」
「確かにアンタ等は三人で温泉入って楽しかったカモしんないけど、アタシは一人なんだよねえ」
 気持ちは良かったけど、つまんなかったぁー。
「当たり前だろう、温泉なんだから」
 呆れたようにそう返したのは、角松一郎だった。
 何を言っているんだ、と鼻で笑う角松に、芯子はその頭を指して、シングルパー、頭三割り増しで巻いてんぞ、とこちらも負けずに鼻で笑ってやる。
 一生懸命乾かして解かした髪の毛を巻いていると言われて、角松は両手でパーマを触る。
 三割り増し……!? しっかり伸ばしたのに……!
「……ねえ、そーめんか、ぼ、ちゃ」
「だからそうめんかぼちゃって、」
「あーもうじゃあ、か、ね、だ、くん」
「……なんだ」
 巻いてないよ角松くん、いや巻いてるけどいつも通りだよ、と宥められている元婚約者を視界からアウトさせて、芯子は隣に座る金田と正面の工藤をからかいにかかる。
「混浴だったら良かったのに、な?」
「な!」
「何を……」
「……え? 堤くん?」
「何言ってんですか芯子さん……!」
 三者三様の反応に、芯子はニッコリと口角を引き上げる。
「ジョーダンだよジョーダン。何マジになってんの」
「冗談でも言うな!」

82 :
 顔を紅潮させて叫ぶ角松に、芯子が、迷惑なやつだ、と眉間に皺を寄せた。
 幸いにも人は殆ど乗っていなかったが、それでも疎らに視線が集まる。
「アンタも何真っ赤になってんだか。あ、もしかして、想像したな?」
「何をだ!」
「アタシのハダカ」
 笑顔のままで言ってやれば、角松は一瞬詰まったように何か言い返そうとする。
 しかし、すんでのところでそれを飲み込み、そして息を長く吐き出す。
「……だーれーが、お前の貧相な裸なんか」
「……ほー? 貧、相、な?」
 言われた言葉に、芯子の目がすうっと据わった。
「お、おお、俺はな、もっとこう、豊満なバストにきゅっとくび……何を言わすんだ、何を……!」
「勝手に言ったんじゃん」
 べえ、と舌を出した芯子に角松は、言い返す言葉も見当たらず、苛立ちを抑えようとその場で落ち着きなく足を組み替えたり手を組み替えたりしてから諦めたように、席を立った。
「主任?」
「ちょっとトイレ行ってくるわ……」
 片手で頭を掻きながら、そう言ってトイレのある車両へと歩き出した。
「……便所ってさあ、だーれか一人行くと行きたくなんの、アレ、なんでだろうな?」
 ちょっとどいて、アタシもお花摘んでくる。
 男三人の足を除けるようにして、芯子も角松の後に続いた。
「あ、ちょっと、……あの二人ってなんであんなに相性悪いんだろうね?」
「悪いわけではないと思いますよ、俺は。ただ、似た者過ぎるんですよきっと……まあ、俺には関係ありませんが」
「芯子さん……」
***
(ったくなんなんだあの女は……!)
 向かっ腹を抱えた角松は、トイレのドアを乱暴に開ける。
 中に入り、背後で勝手に閉まるドアに鍵をかけようとしたその時、ガン、と、そこに足を挟んだのは、角松の後に続いてトイレに向かったはずの芯子だった。
 勿論、こちらは男性用トイレである。
 角松が、うわ、と声を上げる。
「おい、こっちは男せ、」
「満足、……してなかったんだあ?」

83 :
 男性用だと言おうとした角松の言葉を遮り細身をスルリと中へ入れた芯子は、唇を尖らせると決して綺麗とは言えない狭いトイレの中で角松の体にぴたりと自分の身を寄せた。
 持ち前の手癖の悪さを発揮して、ちゃっかり鍵まで閉めている。
 角松は芯子の突然の暴挙に、先ほどの苛立ちも忘れてホールドアップの姿勢でじりじり壁に後退りするが、如何せん広さがない。
 壁に背が着いても芯子はにじり寄ってくる。
「おま、やめ、ま、満足って、なんのことだ、」
「貧相なカラダって、思ってたんだあ?」
 そう言いながら寄せられる体は当然女らしく柔らかい、しなやかな、角松の知っている体。
「……っ」
「キ、ズ、ツ、イ、タ、な。……でーもぉ」
 芯子が背伸びをすれば、二人の身長差が少し埋まる。その位置で、太ももを意味ありげに押し付ければ角松が小さく呻いた。
 ま、確かに全裸で自慢出来るよーなカラダじゃないカモだけど、と前置きをして、角松の丁度胸板あたりに寄せた自分の胸を覆う服を、下着が見える程度まで手でもってグイッと下げてやる。
「こんな貧相なカラダにむしゃぶりついて離れなかったのは、どこのだあれ?」
「む……!?」
「ン、やめて、ァ、も、むり、って散々言っても止めてくれなかったのはぁ、だーれ?」
 喘ぎ声を再現するように、吐息を混ぜて角松の耳元にあたたかく掛けると、唾液を飲む音が芯子の耳を打つ。
 芯子は、自分の胸から離した手を太ももで刺激していた角松の股間にもって来ると、いつぞや、金玉を握った時よりも優しくスーツの上から揉み込むように全体を撫でた。
「! 何、してんだ……!」
 引きつった声を上げる角松に、挑戦的な目を向ける。
「別にぃ。……角松さんはぁ、こんな貧相なカラダじゃぁー、勃ちもしないんでしょう?」
 声音を変えて、既に勃ちかけている角松の股間の竿の先をぐりぐりと片手で嬲り、同時に体を更に密着させるように押し付ける。
「……!」
 とうとう思わず前かがみになった角松から、芯子はようやく体を離した。
「じゃ、ごゆっくり?」

84 :
 気が済んだのか鍵を開けてさっさとトイレから出て行く芯子とは対照的に、角松は腰に力が入らない。なんせこの角松一郎、結婚詐欺にあってから女がちょっと信頼出来なくなってしまい、結局『洋子』との経験が最後になっているのだ。
 久しぶりに感じた『女』の刺激はそんな俺の体を高ぶらせ……って、そうじゃなくて……!
「……ッ……ちょっと待てコラァアー……!」
 なんだかもう色々頭を巡りながら、閉まるドアに叫ぶとそのドアの隙間から芯子が、あ、そうだ、と呟く。
「こんな貧相なカラダで良ければ、オカズにしても、か、ま、わ、な、い、から、ネ?」
 じゃあまた後で、を残して、角松が何も言えないうちに、ドアは音も立てずに閉まったのだった。
***
「あ、芯子さんおかえりなさい」
「んー」
 用を足した芯子は、座席に戻るとシートに深く沈み込んだ。
 斜向かいでは明珍が腕時計をちらりと見、次いでトイレのある車両への通路を見る。
「随分時間経ってるけど、角松くんはまだ帰ってこないねえ」
「出すモン出すのに手間どってるんじゃナイ? なんか、気張ってたみたいだし」
 アタシ疲れたから寝る。着いたら起こして。
 欠伸をした芯子は、そのまま目を閉じた。
 その後、文字通り出すモノを出して帰ってきた角松の精神的苦痛は、想像に難くないだろう。

85 :
お読みいただきありがとうございました!
お粗末様でした
しかし実際角松がカモなら芯子は『ヤり逃げ』ならぬヤらせず逃げ出来るだろうなあと思ったりも……w

86 :
>>80 乙です!
ある意味個室でイチャイチャww
ご無沙汰主任、大変だったねw
いつも素敵な投下
感謝感謝です!

87 :
>>81乙!
やっぱキッカケは公営温泉ですよね!w
>しかし実際角松がカモなら芯子は『ヤり逃げ』ならぬヤらせず逃げ出来るだろうなあと思ったりも……w
うんうん、そしてヘタクソだったと(違

88 :
芯子が抱きついた後に角松が腰持って抱き寄せようとした所は良かったよ
いい加減じらさずにラブシーンしたらいいのに
不意打ちのキスだけでもいいからさー

89 :
角松芯子的にもイチャイチャしてる回だったけど
(冒頭の抱きつき、教授そっちのけでベタベタ、椅子グルグル)
それ以上にソーメンカボチャと新人シングルパーの押しが強かったな

90 :
ハケンの時から喧嘩=イチャイチャだからな
キスシーンが有っただけ奇跡かもしれん

91 :
角松の騙されメモの中に温泉旅行代があったんだね
本スレ見て、一時停止してみたら確かに

92 :
温泉旅行だと完全にHしてるな
もうその回想を次回のストーリーでお願いします

93 :
新人くんがいきなり告白しちゃったけど
ここの方々はやっぱり角松芯子派?

94 :
やっぱりツンデレ春子と東海林の方がエロ妄想掻き立てられる
この二人のその後が気になって仕方ない

95 :
大穴で切り込んでくる金田とか
関係ないぎ、金田は子供好きだけど子供に嫌われるタイプだな

96 :
誤字orz

97 :
メモを見返してみた。温泉旅行の他にも紅葉狩り行ってない?かわええ
でも4話みたいな感じでお似合いだったんだろうな
正直今の二人よりも角松と洋子の方が気になる

98 :
職人さん!
ぜひ萌えをください

99 :
紅葉狩り。
「おぉー! 絶景だなー! な、洋子」
「えぇ、ほんとうに、綺麗」(あ、ほ、く、さ……紅葉狩ってどうすんだっつーの。食えないじゃん)
「ほら、洋子は色が白いからこういう色が映えるんだよなぁー」
「やだ、そんな、恥ずかしい……」(本ッ当に恥ずかしい奴)

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