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2013年10エロパロ352: 【妖怪】人間以外の女の子とのお話30【幽霊】 (131) TOP カテ一覧 スレ一覧 Pink元 削除依頼

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【妖怪】人間以外の女の子とのお話30【幽霊】


1 :2012/09/22 〜 最終レス :2013/09/17
オカルト・SF・ファンタジー、あらゆる世界の人間以外の女の子にハァハァなお話のスレです。
これまではオリジナルが多いですが、二次創作物も大歓迎!
多少の脱線・雑談も気にしない。他人の苦情を勝手に代弁しない。
<前スレ>
【妖怪】人間以外の女の子とのお話29【幽霊】
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1308262517/
<保管庫>
2chエロパロ板SS保管庫
http://sslibrary.gozaru.jp/
 →「オリジナル・シチュエーションの部屋その5」へどうぞ。

2 :
<過去スレ>
【妖怪】人間以外の女の子とのお話28【幽霊】
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1295907957/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話27【幽霊】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1267983526/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話26【幽霊】
http://yomi.bbspink.com/eroparo/kako/1234/12340/1234097929.html
【妖怪】人間以外の女の子とのお話25【幽霊】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1212773145/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話24【幽霊】
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1212773145/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話23【幽霊】
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1199204809/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話22【幽霊】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1189137444/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話21【幽霊】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1175519231/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話20【幽霊】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1163776989/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話19【幽霊】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1153583027/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話18【幽霊】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1149415855/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話17【幽霊】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1138894106/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話16【幽霊】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1136184690/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話15【幽霊】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1129137625/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話14【幽霊】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1123248462/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話13【幽霊】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1118943787/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話12【幽霊】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1112711664/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話11【幽霊】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1105867944/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話10【幽霊】
ttp://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1102854728/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話9【幽霊】
ttp://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1099739349/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話8【幽霊】
ttp://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1093106312/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話7【幽霊】
ttp://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1088018923/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話6【幽霊】
ttp://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1084053620/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話5【幽霊】
ttp://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1077123189/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話4【幽霊】
ttp://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1072/10720/1072019032.html
【妖怪】人間以外の女の子とのお話3【幽霊】
ttp://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1065/10657/1065717338.html
【妖怪】人間以外の女の子とのお話U【幽霊】
ttp://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1047/10479/1047959652.html
人間じゃない娘のでてくる小説希望(即)
ttp://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1046/10469/1046994321.html

3 :
<関連スレ>
かーいい幽霊、妖怪、オカルト娘でハァハァ【その13】(DAT落ち)
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1210258452/
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http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1344329266/
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http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1331083148/
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http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1328324094/
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http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1302006983/
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http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1320767038/

4 :
Dat落ちしてたので立てました

5 :
>>1

6 :
これは>>1乙ではなくて、わっちの自慢のしっぽじゃから勘違いをするでないぞ!
              |\       |\
              l lヽ`-‐ '´ ̄ `ヾゝヽ  つ
                 シ~ /" `ヽ ヽ  `、l     つ
             //, '///|! !‖ ヽハ 、_ヽ  つ
             〃 {_{\」」 L|l|/リ l │ |ヽ   つ
  ____.      レ!小l●    ● 从 |、| )
 く  ノ::::::;;;;;;\.     ヽ|l⊃ r‐‐v ⊂⊃ |ノハ´
   ̄ ̄フ;;;;;/ /⌒ヽ__|ヘ  ヽ ノ    j /⌒i !ヽ
    /;;;;/  . \ /ヽ.| l>,、 __, イァ/  ///ハ
  /;;;;∠___ /ヽ./| | ヽヾ、 /,{ヘ、__∧/ハ !
 く:::::::::;'::::::;':::::::;'::::::7ヽ< } /   l丶× / ヾ l l''ハ∨

なぜ落ちたし

7 :
>>1乙!
>なぜ落ちた
スレ容量が480kbを超えて、スレ建てする人も新たな書き込みもしばらくなかったから

8 :
保管庫の現行スレが未だに前スレになっているな

9 :
まあそのうち変わるだろうよ

10 :
ほす

11 :
#随分間があきましたが、続きです。
『つくしんぼ通信〜彼女はキキーモラ〜』(後編2)
 東方では、「据え膳食わぬは男の恥」なんて格言があるらしい。
 ケイン隊長にそんな言葉を聞いたことがあるジェイムズだったが、まさか自分がその格言が適用されるべきシチュエーションに陥るとは、夢にも思っていなかった。
 (あぁ……なんか、気持ちいいな)
 身体の上に何か暖かくて柔らかいものが乗っているような、安らかな感触。まるで、ラルフ婆さんの家にいる猫達を大きくしたような……って、アレ?
 不審に思い目を開けたジェイムズの上には、ひとりの少女が覆いかぶさっていた。
 「!」
 窓から差し込む月明かりが照らす薄暗い部屋の中、それでも妖精眼持ちのジェイクには、彼女──ピュティアの顔の赤さまではっきりと確認できた。
 「うぉっ!? ぴゅ、ピュティア……な、なんで?」
 この状況下で何とも間抜けな質問をジェイムズが投げるが、彼女はジェイムズの上に覆いかぶさったまま答えない。
 よく見れば、ピュティアは日中の普段着にしているエプロンドレスでも、寝間着代わりの簡素な木綿のワンピースでもなく、白いシミーズ一枚しか身にまとっていないようだ。
 十六夜の月光の下でさえ、薄衣越しに少女のやや小ぶりだが形の良い乳房や、ツンと尖ったその先端部をハッキリ確認できる己れの常識外の視力を、ジェイムズは初めて恨んだ。
 掛け布団をはがされて密着するパジャマから、ピュティアの体温が伝わってくる。
 「ご主人さま……」
 うるんだ目で少女がジェイムズに何かを訴えかけている。
 いくらソチラ方面は奥手とは言え、ジェイムズも健全な若い男だ。彼女が何を言いたいのかは見当がつく。
 (えっと……まさかとは思うけど、もしかしてこの娘……俺のことを?)
 傍から見ていれば「まさか」も「もしかして」もない。少女が少年に好意を抱いている(そしてその逆も然り)ことなぞバレバレなのだが、いまひとつ自分に対する評価が低めのジェイムズは、ことココに及んでも、彼女の気持ちを確信できないようだ。
 無論、嫌われているとまでは思っていない。ふたりの関係は、表向きは、「家主と居候」「主と女中」といった言葉でくくれるのだろうが、半年以上一緒に暮らしてきた現在では、むしろ「家族」という言葉の方がしっくりくる。
 しかし、今、彼の顔を至近距離から覗き込むピュティアの顔には、初めて会った頃の遠慮勝ちな恥じらいとも、彼女が作った食事をジェイムズが食べているときのうれしそうな様子とも、まるで異なる表情が浮かんでいる。
 「お慕いしております、ご主人さま……」
 熱っぽくて力強く、脇目もふらない一途な思いが、ピュティアの瞳からは感じられた。
 * * * 

12 :
 辺境警備隊所属の少年隊員ジェイムズが、彼の家でメイドさんをやってる家付き妖精(キキーモラ)の少女に逆夜這いされるに至る経緯は、その日の午後、彼が隊長との"真剣勝負"に僅差で負け、それなのになぜか王都の戦士団へと推薦を受けた直後にまで遡る。
 部外者ながら、隊長の妻であるゲルダ(ちなみに彼女には警備隊の特別魔法顧問という肩書が付いている)の肝入りで、彼らの勝負をこっそり観戦していたピュティアは、ふたり(特に自らの主)が、たいしたケガもせずに決着がついたコトにホッとしていた。
 ジェイムズが負けたことは残念と言えば残念だが、それでもケイン隊長も彼のことを認めてくれたようで、めでたしめでたし……とピュティアは思っていたのだが。
 彼女を自宅に招いたゲルダが、告げたのだ。「このままでは、貴方達は離ればなれになる」と。
 驚いたピュティアだが、よく考えると、確かにジェイムズが王都に行き、そのまま戦士団の正隊員になれば、今の家から離れざるを得なくなる。
 では、彼女も彼について行けばいいのかと言えば……。
 「無理ね。貴女もわかっているでしょう?」
 そう。キキーモラである彼女は、(暖炉のある)家を離れて長くは暮らしていけない。そもそも、彼女がこの村に来た時行き倒れていたのは、空腹のせいもあるが、生活の拠点となる"家"を喪って衰弱していたことも原因なのだから。
 ここから王都までは、馬車に乗って極力急いだとしても優に半月はかかる。対して、家を離れたピュティアの体調は10日ともつまい。
 仮に無理して王都に辿り着いたからと言って、ジェイムズが即座に暖炉のある家を購入できるかは、はなはなだ疑問だ。
 「──しかた、ないです。私はこちらのお家で、ジェイムズ様のお帰りを待ちます」
 「けど、それも今のままでは無理よ」
 キキーモラはあくまで「人の住む家に付く妖精」なのだ。空き家では意味がない。
 「次善の策としては、ジェイムズくんが王都にいる間、お家を貸しに出して、誰かに住んでもらうことかしら。ちょうどスコットさん家の次男が独立したがってるし」
 「それは……」
 嫌だった。
 キキーモラは、人の家に住ませてもらう代わりに、その家の家事を手伝うことを存在意義とする妖精だ。言い換えれば、快適な住処さえ保証されれれば、その家の住人がよほど非道な存在でもない限り、働くことは厭わない。
 けれど、ピュティアは知ってしまった──家に住む返礼として働くのではなく、特定個人のため、その人の笑顔のために尽くすこと、頑張ることの喜びを。
 今の彼女は、ジェイムズ以外を主と仰ぐことなど考えられなかった。
 「ゲルダさん、なんとかならないでしょうか?」
 物知りな年長の女性に、ピュティアは助けを求める。
 「うーーん……そうなると、ここは、ちょっと裏技を使うしかないわね」
 腕を組んで思案するフリをした(内心では、しめしめとほくそ笑んでいる)ゲルダの言葉に、純真な家付き妖精の少女は、たちまち跳びつく。
 「教えてください! 私にできるコトなら、何でもします!!」
 「(なんでも、ね♪)そう。ならば教えてあげる。でも、あらかじめ言っておくけど、並ならぬ心構えが必要よ」
 「はい、覚悟はできています」
 神妙に頷くピュティアに、元雪妖精の女性は、「結魂」と呼ばれる、ある儀式に関する知識を伝授するのだった。
 * * *

13 :
 「駄目だよ、ピュティア。もっと自分を大切にしないと」
 頬が触れ合うほどの至近距離で顔を合わせつつ、ジェイムズは彼女を押しとどめる。
 おそらく、もっとも親しい「家族」とも言える自分が村からいなくなることに、彼女は不安になって情緒不安定になっているのだろう。
 「君には俺なんかより、もっといい男性(ひと)が……」
 そう口にしながらも、胸の奥がキリキリ痛むのを、ジェイムズは感じていた。
 種族が違うのだから、家族なのだから、と見ないフリをしてきた自分の感情と、今彼は初めてまともに向き合っているのだ。
 言うまでもなく、少女のことは憎からず──いや、誰よりも愛しく思っている。
 しかし、彼は田舎に住むただの人間の兵士だ。無学で、地位も財産もなく、身寄りもない。
 そんな男が、この先、人の何倍も生きるであろう美しい妖精の少女を、己のちっぽけな欲望のために縛り付けてよいはずがない。
 そう思ったからこそ、これまで男女の仲になることを避けてきたのだ。
 けれど……。
 「──どうして、そんなことを言うんですか? 私は、ご主人さまが、ジェイムズさんが好きなんですよ?」
 いつになく、彼女は強情だった。
 「だから、それは……」
 「勘違いでも気の迷いでも感傷でもありません!!」
 彼の胸にすがりついてジェイムズを離そうとしないピュティア。めったに見せない激情のせいか、彼女の顔も体も少なからず火照っているように見えた。
 やむをえないろ。こうなったら、心を鬼にして無理やり引き剥がすか──そう決意して少女の体を押しのけようとしたとき、一滴の雫がジェイムズの顔に落ちた。
 「? ……あ」
 それが涙だと理解するまでに数瞬を要した。その間にも、小さな水滴がぽとり、ぽとりとジェイムズの顔にしたたり落ちる。
 「いやです……もう私、独りは……うぅ……」
 「ピュティ、ア?」
 必に嗚咽をこらえて、彼女は言葉を続けてくる。
 「わ、私……ジェイムズさん……のこと、大好きです。離れたくない。あなたでないとダメなんです! だから、お願い、私のこと……受け入れて……」
 控えめな少女の悲痛な叫びは、まぎれもなくそれが彼女の真情であることを物語っていた。
 妖精少女に何と言ってやればいいのか思いつかず、ジェイムズはただ呆然とピュティアの泣き顔を見上げて沈黙してしまっていた。
 「うぅ……ひっく……うぇぇん……」
 薄い闇の中、ピュティアはひとりですすり泣いている。

14 :
 どれだけそうしていただろうか。ジェイムズは、そっと手を伸ばして、ようやく泣き続けるピュティアの頬に触れた。
 「悪かった、ピュティア。すまん……君の気持ちに気づいてやれなくて」
 そのまま少女のか細い体をギュッと抱きしめる。
 「──ふぇ?」
 「正直に言えば、俺だってお前と離れたくなんてないさ」
 「(グスンッ)ほんとう?」
 あどけない幼子のような問いかけに、苦笑しつつ言葉を返す。
 「ああ、本当だ。お前がそう思ってるなら……恋人にでも何でもなってやる。だから、ピュティア……お前はどうしたい?」
 ジェイムズが尋ねると、彼女はジェイムズの体を抱き返して涙声で答えた。
 「うぅうぅぅぅ……ご主人さま、ジェイムズさぁん……!」
 ふたりはかたく抱き合って、お互いの身体の温かみを確かめ合っていた。
 「じゃ、じゃあ、あの……不束者ですが、よろしくお願いしますです」
 しばしの抱擁ののち、気恥ずかしさを堪えつつ、ふたりは、「初めての夜」を切り直すことにした。
 すでに、妖精少女の口から、今夜の「契り」の意味は、少年兵に説明されている。
 「結婚」──結婚と似て非なるそれは、文字通り被術者ふたりの魂を繋ぎ、不可分のものとする儀式だ。
 この儀式を執り行ったふたりには、魂レベルでの深い繋がりが出来、結婚式の誓いの言葉よろしく「がふたりを分かつまで」、いや肉体的なさえ超えて、共にあり続けるのだ。
 「あ、ああ。こちらこそ、よろしく」
 互いに深々と頭を下げたのち、ベッドに、今度は少女が下になる形で横たわる。
 緊張による震えを隠したジェイムズの手が、シミーズに包まれたピュティアの身体に伸び、ゆっくりとその胸に触れる。
 「あン……!」
 あまり大きくはないが華奢な体つきとの対比でそれなりの大きさに見える乳房を触られ、ピュティアは可愛い声をあげた。
 興奮する気持ちを抑え、優しく丹念に揉み始める。
 「んんっ……あ、あぁ……」
 彼女がその刺激に慣れてきた頃合で夜着を脱がせ、一糸まとわぬ生まれたままの姿にする。
 「は、恥ずかしい、ので、あままりまじまじ見ないでくださいぃ」
 「あ……ごめん。つい」
 そう言いつつ、ジェイムズはピュティアの乳房にそっと舌を這わせた。
 「ひゃん……!」
 生暖かい彼の舌の感触に少女の体がびくりと震える。
 他人に愛撫され、のみならず舐められるなんて無論初めての体験だったが、ピュティアに嫌悪感はなかった。むしろ、身体の芯が熱くなってくる。
 言葉を飾らずにソレを呼ぶとすれば、それは「欲情」と名付けられるべき感情だった。
 どうやら彼女の体は自分が思っていた以上に敏感らしく、ジェイムズが白い肌を舐めたり乳首を吸ったりするたび、ピュティアは声を漏らして体をよじった。

15 :
 「ピュティア、気持ちいいか?」
 「はぅぅ、き、聞かないでください……」
 熱い吐息を漏らしながら、恥ずかしげに視線を逸らす彼女の様子を見れば、いちいち聞かずとも、ピュティアが感じているのは明白だった。
 その確信を得て、ジェイムズの両掌の動きが速くなる。
 「きゃっ……も、もう、ジェイムズさんのいぢわるぅ!」
 色っぽく喘ぐピュティアの様子に、ジェイムズの中の想いと欲望が一層加熱する。
 程なく、彼の手が、すでにしとどに濡れた彼女の下肢の間へと伸びた。
 ピュティアは真っ赤になって顔を伏せつつも抵抗はしなかった。彼の手によって、少女の両脚が開かれ、誰にも見せたことのない秘蜜の場所が露わになる。
 「ピュティアのここ、綺麗だよ」
 食い入るようにサーモンピンクの翳りを凝視しながら、ジェイムズは感嘆の声を漏らす。
 「…………っぁ」
 クチュリと指で濡れた秘所に触れ、ゆっくりそこを弄り始める。
 「あ……ああっ、あぁあっ……!」
 割れ目に沿うように指を走らせると、ピュティアは愛らしい悲鳴を漏らした。秘裂の上、ねっとりした幕に包まれた敏感な豆を、軽く突ついてやるだけで、少女の体が軽く跳ね、息を詰まらせて受けた刺激の強烈さを訴えてきた。
 「はぁっ……あ、あぁっ!!」
 できるだけ優しくしてやりたいのだが、なにぶんジェイムズ自身も初めての経験だけに、どうすれば彼女が気持ちよくなれるか試行錯誤するしかない。
 とは言え、眼前で乱れる愛しい少女の痴態を見ていると、少年の方もだんだん理性の歯止めがきかなくなっていく。。
 「ピュティア、可愛いよ……ピュティア!」
 「あぁっ! うれし、です、ジェイム……んんっ !?」
 嬌声をあげる少女の唇をジェイムズは、自らの口で塞ぎ、貪る。勢いに任せて舌をピュティアの口内に侵入させると、彼女はわずかに驚いた表情を浮かべたものの、顎の力を抜き、受け入れてくれた。
 「んんっ……」
 やがて、ジェイムズの舌に触発されたのか、ピュティアの方もおずおずと舌を伸ばして、彼のそれに絡めてくる。
 「んん……じゅる……はむっ……」
 ピュティアの唾液。それはあったかくて甘くて、ジェイムズには至上の美酒に思えた。
 左手では少女の乳房を、右手で秘所を愛撫しつつ、口を繋げてピュティアと唾液を交換し合う。
 言うまでもなく、既にジェイムズの股間の"きかん棒"は、かつてないほどギンギンに張りつめ、反り返っていた。
 ──この子の膣内(なか)に入りたい。ピュティアとひとつになりたい!!
 自らの中にこれほどあからさまな欲望が眠っていたとは驚きだが、これも相手が愛しい少女だからこそだろう。

16 :
 「ピュティア……その、入れて、いいか?」
 ジェイムズのあけすけな質問に、ピュティアは刹那怯えにも似た怯みをみせたが、一瞬目を閉じ、次に開いた瞬間には、確かな覚悟の色を浮かべていた。
 「はい、ジェイムズさん。私を抱いてください」
 「そうか……ありがとう」
 少女の上にのしかかり、極限まで膨張した分身をピュティアの陰部にあてがう。先端を軽く触れさせただけで、ピュティアの襞がヌチュリと吸いついてきてジェイムズを喘がせた。
 その感触が、ついに彼の最後の躊躇いを弾き飛ばし、思った以上の勢いで、ジェイムズり分身がピュティアの秘裂へと突き込まれる。
 「ひぐっ! 痛ッ……うう゛ぅ゙!」
 痛みを懸命に堪える少女の声が、僅かにジェイムズの理性を呼び戻す。
 「ごめんな、優しくしてやれなくて」
 「い、いぇ……いいんです。はじめて…は、痛いって……ゲルダさんにも、聞いてましたから」
 涙を堪えながら、苦痛の色を押しして微笑おうとするピュティアの様子に、後悔の念が湧いてくるが、ジェイムズはあえてそれを無視して、下半身をゆっくりゆっくりと動かすよう努力する。
 (痛いだけの初体験なんて、後味悪過ぎるだろ)
 "息子"にキツく絡みつく肉襞の感触に、気を抜けばピストン運動を加速させたくなるが、全身全霊の克己心をもって、ジェイムズはその衝動を抑えた。
 「あ、あ、あ…………ふぁ……ぅぅ……なんか、ヘンな感じです………」
 涙ぐましい程の努力が功を奏したのか、徐々にピュティアの痛みは和らぎ、別の感触が体内から湧いてきたようだ。
 苦痛一色だった喘ぎからも、痛み6に快感4といった具合に艶めいた色が混じり始める。
 そのことを確認した途端、ついにジェイムズの腰が、持ち主の欲望に忠実に、大きく動き始める。
 「あぁ、ピュティア……ピュティアぁ!」
 「ジェイムズさん……私、わたしィ……ひんッ!」
 互いの名前を呼び合いながら、るひたすら腰を振り立てる。血と愛液に濡れた結合部はジュブジュブと湿った音を立てて続ける。
 いつしか、少女の脚は少年の腰に絡み付き、膣は肉棒を締め上げる。
 突き込まれた少年の分身は、少女の胎内の奥深く、子宮の入り口にまで届き、彼女を狂わせる。
 「ピュ、ティ……俺、そろそろ……」
 限界を迎えつつある彼の逸物が、僅かに膨れ上がる。
 「いい、です、よ……その、まま……はああぁぁあんっ !!」
 本人から膣内出しの許可を得たことで、ジェイムズの中で何かが弾け、いまだかつてない程の濃さと量の精が噴き出してくる。
 「くぅぅっ……ぴゅてぃあっ」
 それは怒涛の奔流となってピュティアの胎内に注がれた。
 「んっ、あッ……ジェイムズさんっっっ!!
 ああ、出てるなぁ………と、他人事のように思いながら、ジェイムズは、初めての倦怠感に身を任せて、そのまま愛しい少女の上に崩れ落ち、意識をうしなった。
-つづく-
#と言うわけで、未熟ですが、ようやく濡れ場。次回はエピローグです。

17 :
#しまった……ジェイムズの一人称は「僕」だった……しばらく書かないと忘れてるなあ。脳内で修正よろしくです。

18 :
>17
今年の夏なずに済んだことを神に感謝します。
できれば生きてるうちに完結を(と、プレッシャーをかけてみるテスト)
#>16の肝心なところに変換ミスがあるよ〜な?

19 :
あるなw

20 :
>16
乙です(変換ミスから目を逸らしながら)

21 :
結魂すると半分人間になるから王都についていけるってことでおk?

22 :
>21
結魂すると夫婦で余命を共有するんだよね、確か。
ジェイムズの余命が1ヶ月以上あれば王都までは持つ計算になるのかと。

23 :
>16の誤字
うへぇ……ちょっと時間に追われた状態で投下したのでミスががが。以後気をつけます。
>>21・22
「結魂」については、おおよそそんな感じです。詳しくは次回のエピローグで。

24 :
ちょいと気になったこと。
人外の妖精とか雪女とかゴーレムとかが
愛の力(笑)とかで人間化する話は、このスレ的にアリなのか。
たとえば「うしとら」の氷女の話とか「ブルーブレイカー」のマヤendとか。
──つうか、「ブルーブレイカー」って、嫁候補の半数近くが人間じゃないよなぁ。
女神・天使・エルフ・ゴーレム・魔族・獣人(ライカンスロープ)だし。
システムはともかく、人外愛好家にはいいゲームだった……。

25 :
>>1乙です。新スレのお祝いに短編投下。

 子供と言うのはある意味恐ろしいものだ。好奇心旺盛で先入観がない、それはすなわち隠されたものを見つけてしまう才能だ。
 だが、隠されているものは大抵触れてはいけないものだ。だから子供は度々危険な目に遭ってしまう。
 これは、そんな『危険なもの』に触れてしまった、ありふれた子供の物語。

 その少年はよくある退屈を抱えていた。父は仕事で家に帰ってこないし、母も家事に忙しくてかまってくれない。
 こういう時は近所の友達と遊ぶのが子供らしい過ごし方なのだが、今日の少年はいつもよりも元気が有り余っていた。
「よし、探検だ!」
 他に誰もいないのだが、テンションの上がっていた少年は高らかにそう宣言すると歩き始めた。行き先は特に決まってない。
 あっちこっちをウロウロしつつ、それでも退屈を感じていると、ふと町外れの雑木林を思い出した。思いつけば、すでに少年の足はその林に向かっていた。子供の足でも歩いて10分、その間に彼の興味が静まることはなかった。
 林はフェンスで囲われていたが、身軽な少年にとってはなんでもない。むしろ、いけないことをしているというワクワク感が、彼の冒険心をブレーキが利かないほどに加速させていた。
 フェンスを乗り越えると、ゾクリと背筋が泡立った。まるで別世界に入り込んでしまったかのような、全く異質な空間。ひんやりとした空気は圧縮されたように張り詰められていて、木々の間をすり抜けてくる陽もどこか頼りない。
 少年は思わず唾を飲み込んでいた。普段の彼ならそのまま踵を返して逃げ出していただろう。周りに遊び仲間がいれば、彼らが逃げ出すのについていったかもしれない。しかし今日の少年は危険を顧みない冒険者だった。
 木の枝をぐっと握りしめて、少年は雑木林の中を見渡す。すると、ちょうど森の中心部あたりに木とは違う何かを見つけた。
 それは小さな祠だった。もちろん、まだ幼い少年にはそれが何なのか分からない。ただ何か面白そうなものがあると思っただけだ。
 中を見てみようと少年が祠の小さな扉に手をかける。
 その瞬間、少年の視界がぐるりとひっくり返った。


「うわあっ!?」
 一瞬の後、少年は急な斜面をゴロゴロと転がって、ドシンとしりもちをついた。
「いたた……」
 お尻をさすりながら辺りを見渡すと、さっきまでの雑木林はどこへやら、真っ暗な洞窟の中にいた。 頭上には光が差し込んでくる穴がある。そこから落ちてきたのだろうか。
 なんとか登ろうと斜面に足をかけてみる、が子供の足ではとても登れない。半分も行かないうちにまたゴロゴロと転がり落ちてしまった。
「誰か、誰か助けて!」
 天上の出口に向かって少年は叫ぶが、聞き届ける人間はいない。ただ暗闇の中に叫び声が吸い込まれていくだけだ。
「う……ふえぇ……」
 このまま出られないのか。そんな考えがぞくりと少年の心の隅を刺激する。不安はあっという間に少年の心を覆い尽くした。
「う、うわあああん! 出して! やだ、出してよー!」
 声を上げて少年が泣く。泣くことしかできない。しかしどれだけ大声を張り上げても、泣き喚いても、外から助けが来ことはない。
「なんじゃいな、喧しいのう」
 だが、少年に声をかける者がいた。突然呼びかけられた少年は、驚いて泣くのを止める。声の主を探してきょろきょろするが、ここは闇の中、簡単に見つかるはずもない。
「こっちじゃ、こっち」
 また声がした。言われた方によく目を凝らしてみると、闇の中に誰かがいる。穴から差す光から離れて、少年は恐る恐るその人影に近づいていく。
「むー、なんだか随分とかったるいのう。寝過ぎたか?」
 そこにいたのは、黒地に赤い彼岸花を染め抜いた着物を身にまとった、黒髪の少女だった。
 年は少年よりも二つ三つ上ぐらいだろうか。眠たげな赤い瞳をこすりながら、少年を見定めている。
「おねえちゃん、だれ?」
「むむ、わしを知らぬとは面妖な。外の村の迷い子か?」
「迷子じゃないもん! ただ、探検してたら落っこちてきただけだもん!」
「同じじゃろう」
 頭上の光を眩しそうに見つめながら少女が呟く。その眼差しはどこか光を懐かしがっているようであった。

26 :
「まあよい。ささ、近うよれ。いつもより腹が空いてかなわんのじゃ」
「それより、おねえちゃんだれなの」
「……ええい、じれったい!」
「ひゃっ!?」
 痺れを切らした少女がそう叫ぶと、突然少年の体にぬめった何かが絡みつき、彼の体をふわりと持ち上げた。
 少年の体はそのまま少女の腕の中に収まる。怯える少年の顔を見て、少女はにんまりと笑った。
「そんな顔をするな。優しく、ゆっくり、じっくり可愛がってやるからの」
 嫌がる少年の顎を抑えると、少女は彼の体を押し倒すように覆いかぶさり、そしてキスをした。
「――ッ!?」
 口を塞がれた少年は驚きで目を見開いた。その隙をぬって、少女の舌が少年の口内に入り込む。ぬめぬめとした舌が口の中をなぞるたびに、少年の体がビクリと震える。
「んっ、ちゅ、むぐ……ん、ぢゅぢゅっ」
「んーっ! んむーっ!」
 少年の小さな体をぎゅっと抱きしめて、少女は口内を蹂躙する。少年の口の中の唾液を一滴残らず舐め取ろうとするかのように。
 一方の少年はジタバタともがくが、のしかかる少女の重さと両腕に絡む何かのせいで逃げることができない。そうしているうちに、キスの快感が頭の中をジンジンと侵食し始めた。
「……ぷはぁっ」
 しばらくして、ようやく少女が口を話した。
「ハーッ、ハーッ……ふふ、ようやく大人しゅうなったか」
「あう……」
 散々口内を蹂躙された少年は、焦点の合わない目で呆然と少女を見上げていた。濁った視線にゾクリと暗い快感を感じ、少女は身震いしながら少年の体から降りる。
「くく、愛い奴よの。じゃが、こちらはどうかな?」
 ズボンに手をかけ、パンツごと一気にずり下ろす。むき出しになった少年の下半身には、小さいながらも立派に自己主張している肉棒があった。
「まあ、見た目通りと言ったところか」
「み、見ないでえ……恥ずかしいよう」
 ディープキスの衝撃から少し正気を取り戻した少年が、自分の股間を両手で覆い隠そうとするが、やはり柔らかい何かに押さえつけられる。そこでようやく、少年は自分を縛り付けているものを見た。
「……タコ?」
 それは大きなタコの足だった。ぬめぬめとした粘液を垂らしながらも、がっちりと少年の腕を掴んで放さないタコの足が少年の腕を掴んでいる。
 薄暗い中を目を凝らしてみれば、似たような太いタコの足が6本、少女の黒い着物の中から生えている。
「ああ、これか? くく、好奇心の強い子よのう……ほれ」
 ちらりと、少女が着物の裾をめくる。そこにあったのは、少女の白い肌と、二本の太ももと人間の足、艶めかしくくびれた腰、そしてそこに直接繋がるタコの足だった。
「ひぃっ……やだ、やだやだやだ!」
 異形の怪物に捉えられていることを理解してしまった少年が、喉の詰まった叫びを上げて暴れだす。
「ああ、もう。じっとせんか……このっ」
 しゅるしゅると6本のタコの足が伸び、少年の両手を、両足を、腰を、首をガッチリと捕らえる。全く動けなくなった少年の下半身に、異形の少女は改めて少年の下半身に擦り寄った。
「ちいと、灸を据えてやらねばのう……はむっ」
「ふあうっ!?」
 少女が何のためらいもなく、少年の怒張を咥え込んだ。少年が恐怖と快感の入り混じった奇妙な叫びを上げる。
「ん、もご、むぅ……」
「ひあっ、やめ……んうう」
 もごもごと口の中で肉棒を楽しんでいると、少年の声に快感の色が混ざり始める。それに伴って、肉棒も硬さを増してくる。怖がってはいるものの、体は快感に素直なようだった。

27 :
「む、んぐ、ぢゅぢゅぢゅっ!」
「ふわあっ!? す、吸っちゃダメぇ……」
 肉棒に刺激を与えられるたびに、少女のような声を上げて悶える少年。その様子がたまらなく可愛くて、ついつい少女は少年を苛めたくなってしまう。
「ぷはぁっ……どうじゃ? 気持ちいいじゃろ?」
「へ……よく、わかんな、あぐっ?」
 口から離れて唾液まみれの肉棒を、少女がぎゅっと握る。そしてゆっくりと上下にしごき始める。唾液が手に絡んで、ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立て始める。
「素直に答えよ。気持ちいい、じゃろ?」
「う、うん……気持ちいい」
「そうそう。もっと気持ちよくしてやるから、素直になれよ?」
 しごく手は止めずに亀頭を舐め上げると、少年はビクリと体を震わせた。亀頭の先をチロチロと舐めながら、絶頂に向けて肉棒を一気に扱き上げる。
「ああっ!? ひっ、あ、気持ちいい、気持ちいいよう!」
「ん、んじゅ、ぐぶ、んむっ!」
 手を使うのもまどろっこしいと言わんばかりに、少女が肉棒を喉まで咥え込んで激しく上下させる。ゴツゴツと喉の奥を叩く肉棒にえずきそうになるが、上回った性欲がそれを抑えて更に頭を動かす。
「ふあっ、やっ、なんか来ちゃう、出ちゃうよお!」
「んぐっ、おう、ぶ、かふっ!」
「あ、ひ、ああああああっ!?」
 少女の激しい責めに、少年の体はあっという間に絶頂に達し精液を吐き出した。喉の奥に粘っこい白濁液を受けてしまい、少女の瞳が大きく見開かれる。
「ぶむっ……!?」
 吐き出しそうになるのをこらえて、精液を胃の中に流しこむ。一滴足りともこぼしたりはしない。
 びくびくと精液を吐き出し続けていた肉棒が収まると、ようやく少女は肉棒から口を放した。小さな口の中から、ぶるんと反り立った怒張が現れる。
「はぁっ、はぁっ……どうじゃ、良かったじゃろう?」
「あー……うー……」
 一方、初めての射精を激しすぎるディープスロートで迎えた少年は、意味にならないうめき声を上げて気をやっていた。あまりの快感に頭がオーバヒートしてしまったらしい。
 口の端からよだれを垂らしてぼーっとしている少年の顔を見て、少女の胸がきゅんっと締め付けられる。もっとこの子を気持よくさせたい、めちゃくちゃにしてみたい、そんな加虐心がむくむくと鎌首をもたげてくる。
 はだけた着物の裾から自分の下半身に手を伸ばすと、にちゃと粘ついた音がした。
「のう、少年」
「……ん、え?」
 声をかけられ目を覚ました少年の上に、少女は再びのしかかる。しかし今度は、汚れた肉棒に自身の秘所を押し付けるように跨った。
「もっともっと気持ちよくさせられるぞ……どうじゃ?」
 細められた赤い瞳が少年を射抜く。催眠術に掛かったかのように、少年はただ頷くことしかできなかった。
「よろしい……んっ、くうっ!」
「ふあうっ!?」
 お互い濡れそぼっていた性器はあっさりと結合した。異形の少女は久方ぶりに体を貫かれる感覚に、少年は初めて肉棒が柔肉に包み込まれる感覚に、それぞれ叫び声を上げる。
「く、は……我慢できぬ、動くぞ」
「え、まっ、ああっ!?」
 体の火照りが収まらない少女は、少年の制止を聞かず体を上下に動かし始める。ぱちゅん、ぱちゅんと肉同士がぶつかる合う音が、暗い洞窟の中に響く。
 少女の膣内は無数のひだと強い締め付けで、少年の肉棒を擦り上げる。それはフェラチオの時とは比べ物にならない快感で、少年はあっという間に背筋にゾクゾクしたものを感じ始めてしまう。
「ふあっ、これ、イイ……っ!」
「ひあっ、うあうっ!? や、やめてぇ、おねえちゃん!」
「やめぬわ、お主も、腰を動かせっ」
「あうっ、うん……!」
 少女は恍惚とした表情で腰をますます激しく上下させる。初めは翻弄されるばかりだった少年だが、徐々に少女の動きに合わせて肉棒を突き入れるようになる。
「ひゃうっ!? ……く、ふふ、ようやっと、その気になったか?」
 ときおり襲い掛かる唐突な快感に体を震わせて、少女がニヤリと笑う。さっきまで嫌がっていた少年が、自ら快楽を求めて腰を振るようになる、そんな征服感に昏い悦びを覚える。
 そう思うと、少女の体はあっという間に高まった。それに合わせて少年の体に絡みつく足もいっそう強く少年を締め付ける。

28 :
「あ、いかん、くる、きちゃう……っ!」
「か、ふ、ひゅうっ!?」
 一瞬息もできないほど締め付けられて、少年はあっさりと限界を迎えた。
「は、ふあ――!?」
 びくびくと膣内で震えた肉棒から、子宮に精液が襲いかかり、少女もまたほとんど同時に果てた。体の中に熱い液体が流れ込んでくる感覚が、イッた直後で敏感な少女の神経を刺激する。
「……はあっ、はあ、はぁ……いっぱい出したなぁ、少年?」
「は、はひ……」
 そうはいうものの、少女の渇きはまだ治まっていないし、少年の肉棒も未だに硬いままだ。まだまだ愉しめる、そう思いながら少女は一度膣内から肉棒を引きぬく。ぬるりと怒張が抜けると同時に、秘所から精液と愛液が混じったものが垂れた。
「どうじゃ? 次はお主が動いてみよ」
 冷たい床に寝そべり、魅せつけるように両足を開く。とろとろと精液が漏れ出す秘所が少年の前に差し出される。その淫靡な光景に、少年は思わず唾を飲み込んだ。
 足による拘束はとっくに解かれている。少年は何も言わずに少女の足の間に割って入り、秘所に肉棒を突き入れた。
「きゃふうっ!?」
 イッたばかりで敏感な膣内にいきなり肉棒を押し込まれて、少女が身を反らせる。しかし経験のない少年に少女をいたわることなどできず、ただ快感に促されるままに腰を前後させ始める。
「すご、凄いよぉっ、気持よくて、腰、とまんないっ」
「ああっ、こら、そこばかりっ、やめ、んんっ!」
 少年の肉棒はちょうど少女のGスポットを刺激していた。一番弱いところを続けて刺激され少女が悲鳴を上げるが、今は少年が少女を組み伏せている。さっきまで少年を縛っていたタコの足も、今は快感に翻弄されて宙を掻くだけだ。
 しかし少年も少年で、どこまでいっても優しく彼を包み、それでいてきつく締め上げる柔肉の虜になっていた。ひだが肉棒をすりあげる感覚がたまらなく気持ちよくて、腰が止まらない。
「はあっ、ひ、また……イッちゃうっ!」
「あ、ああっ!? だ――ひ、あああああっ!?」
 めちゃくちゃに膣内をかき回されて、少女はあっさりと果ててしまった。この上なくキツく締め付けた肉棒が、精液を少女の中にぶちまける。
 少年は口の端からよだれを垂らしながら、射精の快感に酔いしれていた。
「はあ……あ、うう」
 ぴっちり肉棒を咥え込んだ秘裂は、精液を一滴残らず子宮に飲み込んでいく。その艶めかしい動きに、思わず少年は腰をひこうとする。

29 :
「え?」
 しかし、逃げられない。少女の白い足が、そしてタコの足が再び彼に絡みつく。膝立ちの状態で彼は全く身動きができないように拘束されていた。
「はぁ……好き勝手してくれたのう、少年」
 顔を起こした少女が、少年の首に腕を絡めてニヤリと笑う。再び合った視線はさっきよりも爛々と輝いて、そして色欲に濡れていた。
 少女の体を一本の触手が巻き上げ、上下させる。そして三度少年の肉棒が擦り上げられるが、今度は今までのような硬さがない。
「これ、もっとワシを愉しませんか」
「待って、もぉっ、ムリッ」
 少年は涙を流して懇願する。どうしたものかと少女が思案すると、自分の足の一本が目に入った。ニヤリと邪悪な笑みを浮かべて、その触手を少年の背中、その下、菊穴に這わせる。
 ひっ、と小さな悲鳴を上げて少年が手をやろうとするが、がっちり抱きしめた少女の腕を振り払うことはできず。
「あ、があっ!?」
 獣じみた声とともに、少年の中に触手が突き刺さった。前立腺を刺激されて、肉棒が強制的に勃起させられる。
「ははっ、こういうのもあるんじゃぞ?」
 目を見開く少年を覗きこんで、少女は高らかに笑う。その後、密着するように両手両足を少年の体に絡めてキスをする。二人の肌に触れ合っていない場所はほとんどなく、少年の全身がきめ細かい肌に、粘液にまみれた触手に撫で回される。
「ん、うぐっ、むちゅっ!?」
「ちゅ、ちゅ、ちゅ……んんっ、ぢゅうううっ!」
 捕食するようなディープキス。触手に操られる少女の動きは非人間的で、その刺激がまた少年を染め上げる。更に中からも快感を刺激されて、既に少年には物を考えることすらできなかった。
「んぐっ、ぷはっ……はむっ、んんっ!」
 時折息をついては、またキスを再会する。頭を抱え込むように腕を回して、触手に操られるだけの人形とかした少年を愛おしく、淫靡に刺激する。
「んっ、あ、あああっ!?」
 気がつけば少年は射精していた。しかし少女の腰の動きも、菊穴をねぶる触手の動きも止まることはない。ビクビクと痙攣する少年の体が蹂躙されていく。
 快感は全く止まず、更に強い快感が積み重ねられて少年の理性を奪い取っていく。イキっぱなしでまた精液を吐き出した辺りで、少年の意識はぶっつりと途絶えた。

「おーい、起きろー」
 それから何時間が経ったのだろうか。憔悴しきった少年は、少女の膝と触手で作られた即席のベッドの上で寝かされていた。
 ぺちぺちと頬を叩くが、起きる気配はない。むう、と唸って頭上を見上げれば、差し込む光は夕焼け色になっている。
 かつてこの地に少女を縛り付けた封印は、いつの間にやら解けていた。かといっていきなり飛び出して暴れる気はない。海からこの地に来て封じられた、かつての自分と同じ過ちを犯すほど彼女は愚かではなかった。
 だから少年に色々と外のことを聞きたいのだが、この有り様である。散々絞り尽くされた少年はくうくうと可愛らしい寝息を立てて、少女の腕の中で眠っている。
「……いかん」
 じわり、と体の芯が濡れる感覚を感じる。さっきまであれほど激しくまぐわったのに、まだ体は満足していないようだ。
 早く起きないか、期待と色欲にまみれた瞳で、少女は少年の寝顔を見守るのだった。

 以上です。ご視聴いただき、ありがとうございました。

30 :
GJ!
侵略タコ娘ってフレーズが何故か頭に…いや、何でもないです

31 :
新参だからなにか粗相があるかもしれんがよろしく頼む
>>29
素敵な一時をありがとう

32 :
>>29
>>31に同じく

33 :
>>29
GJ! 人外属性に加えて、ロリババア属性もありそうで、両方好物な我歓喜!

34 :
少年がこの後籠絡されていくのを期待してハァハァ

35 :
まとめ、同じ人のがいくつかに分散してしまっているように思う

36 :
山神狐巫女ってあれで完結なの?

37 :
大神の恩返しの続編を全裸待機して半年
全裸は限界なので服を着させていただきます

38 :
>37
すまぬ…すまぬ…
とりあえず次の投下は「つくしんぼ」のエピローグの予定。そこまで言っていただけたのなら、その次に「大神」考えます。

39 :
某「幻獣ハンター」で入手した擬人化ガーゴイル♀の絵が思いのほかツボだったせいか、『吉川さん家のガーゴイル(♀)』……というタイトルを思いついてしまった。
元は下級悪魔型石像タイプモンスター(1種のゴーレム?)だったのに、機能停止中に美大生に削られ(彫られ)て、美少女型になってしまったガーゴイルと同居する話とか(笑)。

40 :
CVは若本のままなのか?
何よりそこが重要だ

41 :
>40
とある魔法王女の使い魔の某パヤタンの如く、普段は可愛らしい女声だが、
戦闘モードのときだけは「ぶぅらぁぁぁぁ!」という雄々しい若本ボイスとか(笑)
……100年の恋もいっぺんに醒めるな

42 :
可愛い女の子で若本声だったら
それはそれで変な需要出てくるだろ

43 :
>>40
下手に栄養ドリンクなんか飲んだら
「アイテムなぞ!使ってんじゃ(ry」

44 :
お久しぶりです。少々間が開いてしまいましたが、以前の続きを投下させて頂きます。
ただし本番はありません。ご容赦を。

「久しぶりだね、暗者」
 荘厳なステンドグラスを背に、一人の少女が男を見下ろしていた。纏ったドレスは最上級の白。身につけた装飾品はどれも手の届かない煌めきを放つ。だが眼下の男が受ける光はただ一つ、不遜な紅い眼光のみ。
「一度ならず二度までも私を狙うなんて、どこまでされたいのかしら? まあ、無駄な努力だったけど」
 声を受けた薄汚れた黒いコートの男は何も答えない。手を背中の後ろで縛られつつも、緑の瞳で少女を見上げている。怯える訳でもなく、歯向かうわけでもない無感情な目だ。
 ドームでの対決から一週間後。傷も体力も喋れる程度に回復したアイルは、再びミナレッタの前に呼び出されていた。
「さて、あなたを呼び出した理由だけれど」
 玉座から立ち上がったミナレッタが、傍らに置いてあったレイピアを手に取った。
「あなたの雇い主の『白軍』の王妃、助けたいとは思わない?」
「……なに?」
 眉をひそめるアイルに、少女はレイピアを突き付ける。
「あなた、この剣に見覚えがあるみたいだけど……この剣が何なのか知ってる?」
「ただの剣だろう」
「いいえ。……これはね、一種の封印なの」
 何を言っているんだ、という表情のアイルの前で、ミナレッタは左手を掲げた。中指にはめられたルビーの指輪が光を受けて煌めく。
 ミナレッタが何かの呪文を囁いた。すると指輪が一際強く輝き、同時にミスリルの短剣が現れた。宙に浮くそれをミナレッタは手に取り、ひゅんと空気を切り裂く。
「まあ、こういうこと。あなたはこの剣がこういうものだって、聞かされてなかったのかしら?」
 確かに彼は知らなかった。彼には魔法の才能が全くないから、王妃もレイピアの秘密を語ろうとはしなかったのかもしれない。
 ふと、王妃の部屋を最初に訪れた時のことを思い出す。あの時彼女はレイピアの刃を撫でながら……何と言っていたか。思い出せない。
「ただこのレイピアには魔術的なとっかかりが見つからなくてね。残念だけど、どうやって開ければいいか持ち主以外は誰にも分からないのよ」
「それを知るために、俺に王妃を探せ、と?」
「そういうこと。もちろん、あなたへの協力は惜しまないわよ?」
 むう、とアイルが唸って黙する。かつての主が生きているのなら、探しに行くのは当然だ。魔王の娘の組織力がバックにつけば、仕事が捗るのは間違いない。
「その剣の中には何が入っているんだ?」
「それは分からないわ。でもあの城の宝物庫よりも厳重な鍵がかかっているのよ。開けてみたいと思わない?」
「……分からんな」
 本当に何も知らないか、それともある程度アタリがついているのか。わざわざ自分を使おうとするなら後者かと、アイルは予想する。
「仮に王妃を見つけて、そのレイピアの中身を手に入れて、それから俺と王妃はどうなる」
「そうねえ。中身次第ではあるけど、働きによってはあなたも王妃も放してあげるわ」
 欺瞞。見下すような目つきからアイルはそう判断した。だがそれも当然だろう。滅びたとはいえ敵国の重要人物、そしてその子飼いの暗者。野に放つほうがどうかしている。
 それでもミナレッタの慈悲にすがるしか無い、その苦悶の表情を魔王の娘は楽しんでいるのだろう。先程よりも一段輝きを増した微笑みがその証拠だ。
「……分かった、やってみよう」
 しばしの沈黙の末、アイルは答えた。ならばその笑顔を出し抜く。魔王の娘の裏をかき、王妃の下に馳せ参じる。そう決めたアイルの決意の言葉だった。
「こちらが厨房となっております」
 ミナレッタとの面会の後、アイルはメイド長のジャスミンにウェステンブルグ城を案内されていた。今、彼の前では10人ほどのメイドが夕食の準備を進めている。
 メイドたちの種族はバラバラで、ゴブリンやワーウルフなどよく見る種族から、アイルの記憶に無いような奇怪な魔族までいる。共通点は全員少女というところぐらいか。
「ここも全員、女か」
「お嬢様が男性を城に入れたがらないのです」
 そういう趣味か、とアイルは納得する。彼の主も他人には理解できない趣味を持っていた。

45 :
「しかし、若いのしかいないのはどうしてなんだ?」
 そういうアイルの視線の先には、危なっかしい手つきで作業をするサキュバスの少女がいる。料理に慣れているようには見えない。
「みんな長続きしないんです」
「なるほどな」
 魔族は人間より雑多ではるかに強力な力を持っているが、人間と比べて総じて意志が弱い。あるいは飽きっぽい。メイドなどという忍耐のいる仕事をやらせても、一年持つかどうかといったところだろう。
 そういう魔族たちを軍隊としてまとめあげるには、強力無比な力が必要だ。例えば、先日アイルを散々に蹂躙したマニャーナのように。
 厨房を出ると、とたんに中が騒がしくなる気配がした。やはりメイド長が目を放すと、すぐにサボり始めるようだ。
 アイルとジャスミンは廊下の突き当たりにある階段を降りていく。華やかな館内からは一転して、少し薄暗い空間がそこにあった。
「こちらが客人のエシェル様の部屋になります。アイル殿と挨拶がしたいとのことなので、お入り下さいませ」
 そう言って、ジャスミンはドアの一つを開ける。
「失礼いたします。アイル・ブリーデッド殿をお連れいたしました」
 部屋の中は恐ろしく広大な空間と、その空間を埋め尽くす本と実験機材の山であった。辺りにはよく分からないマジックアイテムや機械が所狭しと並べており、ここが何かの研究室だと想像させる。
「あら、ごくろうさま」
 部屋の中央に、安楽椅子に座った金髪のエルフがいる。森の自然を好むエルフが、白衣を着て人工物に囲まれているのは何とも不思議な光景だ。
「あなたが、例の?」
「アイル・ブリーデッドだ。今日からこの城の主、ミナレッタに雇われることになった」
「私は……えーと、人間には発音できないから、エシェルでいいわ。それと」
 安楽椅子にけだるげに座ったエシェルはそう言うと、手元にあったボタンを押した。すると、本棚と実験機材の山を飛び越えて何かがやってきた。
 警戒したアイルは懐に手を伸ばすが、そこに銃が無いことを思い出す。何をするか分からないということで、城の中では銃を没収されていた。
「呼びましたー? マスター?」
 降り立ったのは鋼のような灰色の髪の少女だった。いや、少女と呼ぶには外見がいささか人間離れしている。
 左手は黒光りする得体のしれない金属で作られているし、両膝より先もまた銀色の義足で置き換えられている。幸い顔は人間の少女のそれだが、しかし金と赤のオッドアイはどこか不吉なものを感じさせた。
「ティセ、この人があなたのお父さんよ」
 ティセと呼ばれた少女はエシェルがそう言うとぱあっと明るい笑顔を見せた。
「ほんと!?」
「いや待て」
 いきなり一児の父にされたアイルがツッコミを入れる。
「ごめんなさいね、こうしないとこの子、懐かないもんだから」
「なんだよ、それ……じゃあ、母親は誰になるんだ?」
「母親はこの子を生んだ直後に去。あなたが男手一つで育てていたけど、ある日突然戦火に巻き込まれて親子は離れ離れに。
 にかけたこの子は私に拾われて一命を取り留め、そしてあなたは13年ぶりにこの子と再会した。
 そういう設定が、この子にプログラミングされているのよ」
「なんだそれは」
 胸を張って自分で考えた設定を語るエシェルに、アイルは大いに戸惑っていた。このエルフ、どこかおかしい。エルフは魔族の中でも特に変わり者が集まると聞いていたが、現物はアイルの想像以上だった。
「だいたい、なんで俺が父親役にされなくちゃいけないんだ。13年前と言ったら俺は……」
「そりゃ、あなたの見張り役だもの。娘って設定にしておいたほうが、側にいるのは自然でしょう?」
 見張り、という言葉にアイルが眉をひそめる。
「何よ、あなた一人で王妃を探しに行かせると思ったの? だとしたら見通しが甘い甘い、予想力が足りないなんてものじゃないわ。
 いい? こっちはお嬢様のことを二度もそうとした暗者をわざわざ使って、そいつに敵の王妃の居場所を探らせようとしてるのよ。
 見張りの一人や二人つけて当然じゃない。自由に動かしたら、何をしでかすか分かったものじゃないからねえ」
 エシェルが偉そうに説教を垂れ、アイルは大人しくそれを聞いている。その間、ティセと呼ばれた少女は不思議そうに二人の顔を交互に見比べていた。
「あー、それとも」
「なんだ」
「恋人のほうが良かった?」

46 :
「……何故そうなる」
「いや、ひょっとしたらあなた、ロリコンなのかなって思って」
「もう黙れ。娘でいいから」
 うんざりした様子でアイルが首を振る。それを聞いて、エシェルが勝利の笑みを浮かべた。
「はい、それじゃあそういうことで。これからティセのこと、よろしくね?」
「……今すぐにでも首の骨をへし折ってやりたい気分だ」
「ああ、それ無理」
 アイルの毒づきをエシェルが打ち壊した。
「その子の骨、ミスリルで作ってあるから」
「ここがお父さんのお部屋?」
「らしいな」
 それから数時間後。城の案内が終わってアイルの部屋にたどり着いた頃には、すっかり夜になっていた。部屋に入るジャスミンに、アイルが、そしてティセが続く。
「こちらがベッドルーム、そちらはユニットバスになります」
「風呂付きの個室か。随分いい待遇だな」
「殿方を私たちの大浴場に入れるわけにはいけませんので」
「……そうか」
 考えてみれば、この城で唯一の男だ。隔離されるのも当然か。
「では、失礼致します」
 そんな彼に何の気遣いもかけずに、ジャスミンは部屋を出る。バタン、と無慈悲な音がして扉が閉まった。
 はあ、とアイルは疲れ果てたため息をつく。今日はこの広大な古城を案内されるだけで一日が終わってしまった。しかも鐘楼のてっぺんから誰もいない地下牢まで律儀に案内されたため、足が酷く疲れている。
「お父さん、お風呂入ろう! お風呂!」
 おまけに途中からティセがついてきて、疲れと共に煩さも倍増していた。
「何故俺の部屋にまでついてくる」
「だってお父さんだもん!」
「答えになっていない」
「親子は一緒にいるものだよ?」
「……そうなのか?」
 アイルには、親子がどういうものかわからない。物心ついた時から『白軍』で暮らしていた彼は、家族というものをほとんど知らなかった。
「いいから部屋に戻れ。あのエルフが心配するぞ」
「マスターからはお父さんの部屋に泊まってもいいって言われました」
 またしてもアイルはうんざりしたようなため息をついた。この様子では何を言っても聞かないだろう。本人に自覚はないだろうが、監視役としての任はしっかり果たしている。
 ティセ・ブリーデッド。昨日まではただティセと呼ばれていた少女。エシェルが引き取った瀕の少女に魔術的・科学的な処置を施した戦闘用サイボーグだ。
 内蔵武器は両手首から飛び出すヒートブレードに、両膝のドリル。両肩にはマイクロミサイルポッドを、腰には魔導ブラスターを装着可能。
 背中に魔法の翼を展開させアフターバーナーを使用すれば生身で音速を突破。人界、魔界で会話に不自由しない20ヶ国語を学習済み、そして給茶機能やドライヤーもついている。その強さは先日アイルが戦った親衛隊長、マニャーナにも比するらしい。
 一体どうして瀕の少女をそんな風に改造したのかとアイルが問うと、エシェルは趣味だと胸を張って答えた。理解できない。
 とにかくそんな物騒なものが監視についていては、魔王の娘を出し抜くことも難しい。
「……どーしたの、お父さん? そんなに難しい顔して」
 ティセが純粋な目を向けてくる。先ほどのメイドのように、敵意を持たれていないのがせめてもの救いか。ならば、そこにどうにかして付け込むしかない。
 やり方はわかっている。しかしそれが自分にできるかどうかわからない。だがとにかくやらねば主には出会えない。
「よし」
 しばし瞑目した後、アイルは腹をくくった。
「風呂に入るぞ」
 風呂はごく普通の、むしろこんな古城には似合わないユニットバスだった。この城をリフォームした人間は、あるいは魔族は何を考えていたのだろうか。今更ながら疑問に思う。
 外見は遥か昔に立てられた古城だが、その中身はやたらと近代的だ。電気も通っている。そんな無理をしてこの城に住む理由はあったのか。
「おとーさん、お風呂大丈夫?」
 風呂場の外から元気な声が聞こえてきて、アイルは我に返った。湯船に溜めたお湯はほんのりと湯気を上げている。入るには丁度いい温度だろう。
「ああ、いいぞ」
「わーい!」
 ドアが開いてティセが入ってきた。もちろん何も着ていない。アイルもだ。風呂に入るのだから当然である。
 お湯をかけて体を流し、それから二人で仲良く湯船に浸かる。縁からお湯がざぁっと溢れた。二人で入るには少し狭く、小さな肩がアイルの腕に触れる。
「ふう……」
「気持ちいいねー」

47 :
「ああ。……そういえば、その腕、水につけても大丈夫なのか?」
「うん。防水加工もしてあるって博士が言ってた!」
「そうか」
 他愛のない会話をしながら、二人は湯船の中でのんびりと寛ぐ。その様子はさながら親子のようだし、実際アイルは彼女の父親らしく振舞おうとしていた。
 もちろん、身寄りのない少女を哀れに思ったからだとか、庇護欲を刺激されたからとか、そんな理由からではない。
 監視役のこの少女を自分に懐かせれば、ミナレッタたちに隠れて王妃を探すのも楽になる。上手く行けばこちらの味方に引き入れて、魔王の娘の暗に役立てることができるかもしれない。そういう打算の上での、父親代わりだ。
 ただアイルは自分の父親がどんな人間だったかを思い出せない。手探りで仲良くしていくしかなかった。
 程よく体が温まったので湯船から出ると、ティセもそれについてくる。
「おとーさん、背中流してー」
「自分で洗え」
「むー。昔は背中流してくれたのにー」
「……わかった。洗おう」
 そう言われては仕方がない。ティセを椅子に座らせて、背中を石鹸をつけたタオルで擦ってやった。
 ティセの体はところどころ無機質な機械に置き換えられているものの、おおよそ見た目相応の体つきだ。成長途中のままサイボーグに改造された体は、ほんのり肉付きがよく柔らかい。
「流すぞ」
「ひゃんっ」
 小さな背中をシャワーで流すとティセは可愛らしい声を上げるが、アイルは努めて気にしないように黙々とティセの体の泡を流す。さあっと水が肌の上を流れると、白い泡が溶けて肌色が見えた。
「えへへ、ありがと」
 振り返ったティセがはにかむ。それを無視してアイルは自分の体を洗おうとする。
「あ、だめっ!」
 その腕をティセの小さな手が掴んだ。
「なんでだ」
「おとーさんの背中はティセが流すの!」
「む……わかった、わかったから手を離せ」
 ギリギリと腕の骨が嫌な音を立てるぐらいの力で握られて、アイルはタオルを手放す。それを受け取ったティセはアイルの後ろに立って背中をこすり始めた。
「えへへー。ごしごしー、ごしごしー、背中をごしごしー」
 背中を流すのがそんなに楽しいのか、ティセは子供じみた即興の歌を歌っている。
 自分が子供の時もこんな風に親の背中を流していたのだろうか。背中を洗われながらふとそんな事を考えた。記憶の底を攫っても、自分の親の顔は思い出せない。
 物心ついた時、アイルは既に『白軍』の下にいた。親はどうしたのか、そんな疑問を抱くこともなくただ淡々と命令通りにし続けた。
 彼の人生を語るには、その一文で事足りる。ただただ機械のように命令をこなして生きるよう、『白軍』の王妃に教育された。それから何年が経ったのか、それすら彼には把握できない。
 そんな彼が、自分を父親と慕う少女に胸をぴったり押し付けられて体を洗われるとは、奇妙なめぐり合わせという他なかった。
「……うん?」
 物思いに耽っていた彼が、ふと気づく。
「おい、ティセ」
「なあに?」
「そんなにくっつく必要、あるのか?」
「……うん!」
 やや間を置いてから答えるティセは、やたらとアイルの背中に体を押し付けている。膨らみかけの胸がふにふにと背中に押し付けられ、妙な気分だ。
「あー……もう十分だから、タオルを」
「だめ! 前もティセが洗うの!」
 ティセが腕を前に回してくる。丁度背後から抱きしめるような格好になって、アイルの体がぴくりと震える。ティセの小さな体は風呂に入ってることもあって熱く火照っていた。
 えへへ、と笑いながらティセがアイルの胸をタオルで撫で回す。その手つきがどことなくいやらしいものに思えるのは、気のせいに違いない。だが、どうにも変な気分になってしまう。
 しっかりしろ、相手は子供だと自分に言い聞かせる。魔族に二度も犯されておいていまさらといった所だが、父親代わりである以上まさかこんな小さな子供にまで手を出す訳にはいかない。そう論理的に考える。
「うーん……やっぱり前から洗うね」
 やはり洗いづらかったのか、ティセは体を離すとアイルの前に回り込んだ。
「……あ」
 その視線が、アイルの股間あたりで釘付けになる。アイルも釣られて視線を追うと、そこにはすっかりいきり立つ自分の肉棒があった。
 そういう趣味は無かったはずなのだが、体は正直だったらしい。
「わあ……」
「いや、違う違う。これはだな……」
「あはっ、おっきくなってるね」
 ぱあっと笑うと、ティセはいきなりアイルの肉棒を掴んだ。

48 :
「おい!?」
「だいじょーぶ。ティセが優しくヌイてあげるから」
 そう言って笑うティセの顔は、外見に不相応な怪しい笑みで満たされていた。石鹸の泡で包まれた手でアイルの肉棒がぬるぬると擦られる。
「うぐ……っ!?」
 いやに慣れた手つきだ。まだ年端もいかない子供の外見とのギャップが興奮をそそる。巧妙にティセの手から与えられる刺激は、肉棒をいきり立たせるには十分だった。
「ふふ、こーんなに大きくしちゃって……ティセの手で、悦んでくれてるんだ?」
「おい、バカな真似はやめ……うあっ!?」
 これ以上はまずい、と思ったアイルがティセを引き剥がそうとするが、それより先にティセは肉棒にしゃぶりついていた。
「んっ……んぷっ……!」
 最大限に膨れ上がった肉棒は、ティセの口に収まり切らない。ほんの少しでもティセが顎を閉めたら、歯が突き立ってしまいそうだ。それでもティセは懸命に肉棒を咥え込んで、もごもご奉仕している。
 少し首をひねってティセが顔を前後させると、柔らかい頬肉に先端が擦り付けられる。そこに舌がぬるぬると絡みつくと、言葉に出来ない快感が脊髄を駆け抜ける。
「ぢゅぶ……ぷはっ。おとーさん、きもちいい?」
 おとーさん、と呼ばれてアイルの心の奥で得体のしれない感情が蠢いた。
「あ、ああ……」
「よかった。はむっ」
 最初は引き剥がそうとしていたアイルだったが、そのフェラチオの気持ちよさに今ではすっかり大人しくなっていた。抵抗が無くなって動きやすくなったティセは、ますます丹念に肉棒に奉仕する。
「んぐ……ちゅ……ふっ……」
 口の中で舌を器用に這わせながら、唾液を絡めて口を前後させる。膣内に入れるのとも、前戯ともまた違うねっとりとした感触に、アイルはぶるりと体を震わせる。
 だが、絶頂に至るまでには足りない。精液を吐き出すには、もう少し激しさが欲しかった。
 熱心に奉仕を続けるティセが、上目遣いで彼を見つめる。情欲に濡れる金と赤のオッドアイと目があった瞬間、アイルの心の奥底で何かが切れた。
「はんっ――んぶっ!?」
 ティセの小さな頭を両手で掴んで、一気に肉棒を押し込む。喉奥まで肉棒を突きこまれ、ティセが目を見開いた。だが、もがくティセに頓着せず、アイルは顔を引き戻すと再び奥まで突き入れた。
「んあっ、おごっ、んぶっ、むぅっ!?」
 規則正しく、リズミカルに、苦痛を伴うイマラチオが繰り返される。だが、初めは戸惑っていたティセも、それが父親の望むことだとわかると、精一杯受け入れようとする。
 その健気さが更にアイルを暴走させる。ほとんどティセを気遣わず、オナホールにペニスを突き入れるかのようにティセを扱う。どろどろになった口内から暴力的な快感を与えられて、アイルは一気に絶頂まで上り詰める。
「ぐっ……出すぞ、ティセ……ッ!」
「んぐっ、む……ぐ、うんっ!」
 口中を撹拌されながらも、ティセが頷いた。アイルにはそう見えた。その瞬間、肉棒から大量の精液が喉奥に向かって直接吐き出された。
「ぎゅ、ん、うううううん!?」
 びゅくびゅくと、ティセの口の中から卑猥な音が響く。がっちりと頭をつかむアイルの腕は、少女に一滴足りとも精液を吐き出すことを許さない。
 やがて射精が収まると、ようやくアイルはティセの頭を放した。だらりと力を失った肉棒が口から溢れ、ティセは呆然とその場に座り込む。口の端から飲みきれなかった白濁液が、つう、と一筋糸を引いた。
「いーいおーゆーだー」
 それから数分後。汗と体液で汚れた体を洗い流した後、アイルとティセはまた湯船に浸かっていた。二人で入るには少し狭いが、アイルが隅によっているためティセにほんの少しだけ余裕がある。
 のんびりくつろいでいるティセに対して、アイルの表情は沈痛だ。何しろ初対面でイマラチオである。どれだけ嫌われたか、想像するだけであの機械の腕で胸板を貫かれそうだ。
「ねえ、お父さん?」
 一曲歌い終わったティセが、アイルに呼びかける。
「な、なんだ」
「……また、一緒にお風呂はいろうね」
 その言葉に、アイルは一瞬返事が遅れてしまった。
「……なに? いや、え……?」
「どうしたの?」
「どうしたって、お前……あんな事されて、平気なのか?」
「うん。平気だよ。お父さん、大好きだもん!」
「……そう、か」
 戸惑いながら、そう返事をするのが精一杯だった。

49 :
 その頃。
「男手一つで育てられた娘。大切に育てられた娘はしかし、父親に抱いてはいけない感情を抱いてしまう。
 それから月日は流れ、少女は憧れの父親と再会する。しかし自分はかつてとは違う機械の体。だがもう二度と父親と離れたくはない。
 決心した少女は、自分の拙い性技でもって、父親の心を繋ぎとめようとする……。
 とまあ、こんな設定なんだけど、どうよ?」
「誰も頼んでないわよ、そんな余計な設定。何なのよもう……」
「ああ、もちろんティセが見た映像は全部記録してあるから。今晩のおかずにでもどーぞ」
「いるかっ!」
 嬉々とした表情でティセに施した設定と仕様を話すエシェルを、本気で城から追いだそうかとミナレッタは悩んでいた。


以上です。ご視聴いただき、ありがとうございました。
途中で通し番号のミスがあったことを、ここでお詫びいたします。

50 :
朝からけっこうなモノを見せていただいた
GJ

51 :
乙!

52 :
保守

53 :
うふ〜ん

54 :
年末に良いスレを見つけられて嬉しい

55 :
年末、皆様いかがお過ごしでしょうか。未来古城譚の続きを投下いたします。どうか本日もお付き合いいただけますよう、よろしくお願いします。

 魔王の娘、ミナレッタが治めるウェステンブルグから南に進むと、『要塞の海』に辿り着く。かつてこの海は『白軍』の艦隊が集結していた要衝であったが、今は魔王の娘の支配下にある。
 その原因は、海の中央にある要塞島に配備された超長距離雷撃魔導砲である。もっぱら『ペルーン』と呼ばれるその戦略兵器は、『要塞の海』全域を射程に収める魔法の雷を放つことができた。
 これによって『白軍』は制海権を握り続け、なおかつウェステンブルグとの戦いにも優位を保っていたのだが、ウェステンブルグのワイバーン部隊が要塞島を占拠してから、状況は一変した。
 今の『ペルーン』は魔王の娘のものになっている。妙な動きをする船は、かつての『白軍』の艦隊のように海の藻屑となるだろう。
「……魔族どもめ……」
 その要塞を忌々しく見つめる老人が一人。『要塞の海』の沿岸部にある高級別荘地・リンドブルムのある館のバルコニーから、そびえ立つ『ペルーン』を見つめている。
 老人の名はエドワルド・ヴィッテ。『白軍』の王から伯爵と財務大臣の地位を与えられた男だ。かつては国内で大きな権勢を振るっていた彼だが、『白軍』の滅亡以後、こうして隠れ家を渡り歩く生活を続けていた。
 ジリリリリ、と古びたベルの音がなる。ヴィッテは部屋に戻り、電話の受話器をとった。
「私だ」
『失礼致します。ベルバ行きの船の手配が済みました』
「出発はいつになる?」
『明後日です』
「ご苦労」
 逃げ道が見つかったようだ。ベルバはこの地から離れているが、魔族の影響も少ない。人間が亡命するには丁度いい土地だ。
 ひとまず安心する老人の背中に、びゅうと風が吹きつける。そういえば、窓を開けたままだっか。バルコニーに向き直る。
 そこに、コートを風にたなびかせた男が立っていた。
「『白軍』財務大臣、エドワルド・ヴィッテ伯爵だな」
「……あ、ああ」
 音もなく現れた侵入者に驚き、ヴィッテは唖然として答えた。銃を向けたまま問いかけるのは、金髪の男。見覚えのある顔だ。老人は脳をフル回転させて、その男の記憶を思い出そうとする。
「一つ、聞きたいことがある」
「……なんだ」
 男が誰だか思い出そうとしながら、ヴィッテはゆっくり問い返す。
「王妃の行方を知っているか?」
 その一言で老人の記憶が蘇った。
「貴様、貴様は、王妃の……ッ!」
 ヴィッテを襲ったのは狼狽、そして恐慌。侵入者に驚き動けなかったはずの体がふらつく。一方の侵入者は、相変わらずその場に佇んでいるままだ。
「知っているかと聞いている」
「知らんっ! ワシは王妃の居場所など知らん! 知りたくもない!」
「……本当か?」
 緑の視線が老人に突き刺さる。射竦められながらも老人はかすれた震え声で答えた。
「本当だ……王妃は、首都が落ちる数日前から姿を消していたのだ……貴様が王妃の側から姿を消して、すぐ後の話だ」
 魔族たちの軍勢が『白軍』の首都に到達する数日前。戦支度を進めていた城の中から、王妃が不意に姿を消した。その居場所は、『白軍』滅亡の混乱の中で誰にもわからなくなってしまった。
 命からがら逃げ出してきたヴィッテにとって、王妃の失踪はいらぬ混乱を招いた出来事の一つでしかなかった。それに加えて、目の前の男を始めとする王妃の暗い噂。こちらから探しに行く理由など、ありはしない。
「ふむ」
 ヴィッテの言葉を値踏みするかのように、男が目を細める。ごくり、とシワだらけのヴィッテの喉が鳴った。その次に男が取った行動は、意外なものだった。
「お前でもわからないか」
 そう呟いた男は、興味を無くしたように振り返って歩き出した。
「ま、待て!」
「なんだ?」
 拍子抜けしたヴィッテは、思わず男を呼び止めてしまう。
「……ワシを、しに来たのではないのか?」
 それに対して男は言った。
「その命令は出ていない」
 それだけ言うと、男はバルコニーから飛び降りて、手すりの向こうに姿を消した。体が自由になったヴィッテはバルコニーに駆け寄って下を覗きこもうとする。
 しかしそれは、突然吹きつけた一際強い風によって阻まれた。ヴィッテは思わず腕で顔を覆う。ほんの一瞬だけ、空の向こうに飛び去る銀色の閃光が見えた。

56 :
 ウェステンブルグ城、厨房。毎日戦場となっているこの空間だが、今日はいつにも増して伐としていた。
「ミューズ、ローストビーフの仕込みは終わった?」
「まだですー」
「……ちょっと、それ焼きすぎよ!」
「うわーん! 手ェ切ったー!」
「ああもう、またなの!?」
 厨房に向かうと、メイドたちが夕食を作っているところだった。いつもより数が多い。どこからか客人でも招いてパーティーを開くのだろうか。
 そんな空間に忍び込む、一人の男あり。てんやわんやのメイドたちの間を、刺激しないように通り抜ける。
「何か御用ですか」
 声をかけられた男が振り返ると、そこにはメイド長のジャスミンがいた。両手を腰に当てて、この忙しいのに何しに来たと言った表情。いかにも不機嫌そうだ。
 そんな彼女に男は――アイルはそっと告げた。
「夕食はないか?」
「ありません」
「余り物でもいいんだが」
「今はお客人の料理を作るので精一杯なんです。自分で適当に作ってください」
 忙しさでイライラしているのか、ジャスミンは邪険に返事をするとさっさと元の位置に戻ってしまった。仕方ないので、厨房の隅を借りて適当に料理を作ることにする。
 今日のメインディッシュはローストビーフのようだ。その余った切れ端を拝借して、クロワッサンにレタス、チーズと共に挟みこむ。
 それだけでは物足りないので辺りを見渡すと、テーブルの上に放置された白身魚の切り身があった。
「この魚は?」
 近くのエルフメイドに聞いてみる。
「あ、それ間違えて出しちゃって。いらないんで食べちゃっていいですよ」
「そうか、ならいただこう」
 白身魚をバターを溶かしたフライパンの上に移し、軽くソテーする。更に盛りつけた後、いい香りのするホワイトソースを添えれば完成だ。
 もう一品、サラダでも作ろうかとアイルが考えていると、周りの視線が集まっていることに気付いた。メイドたちが料理の手を止め、アイルのことをじっと見つめている。
「……どうした」
 動揺を隠しながら、誰に言うわけでもなく呟くと、意外にも答えが返ってきた。
「なんでそんなにお上手なんですか?」
「うん?」
 ジャスミンにそう言われ、アイルは首を傾げる。
「何か変か?」
「ええ。殿方の客人が私たちの誰よりも上手く料理ができるというのは、少々納得がいきません」
「……昔覚えた技術だ。大したことはない」
 珍しくアイルが不機嫌そうな顔をする。しかし料理をする手は止めていない。野菜や果物を丁寧に切っていき、最後に冷やしたヨーグルトをかければ完成だ。
「おおー」
「すごーい」
 手際良く作られた一人分の夕食に、周りで見ていた人外メイドたちが感嘆の声を上げる。ただ適当に盛り合わせただけの料理でここまで盛り上がれるとは、この城の料理はどうなっているんだろうかと思うアイルだった。

「……うーむ」
 魔王の娘が治める城、ウェステンブルグ城。その一室でアイルは唸っていた。
 アイル・ブリーデッド。魔王の娘を暗しようとして失敗し、利害の一致から彼女らの協力を受ける事になった暗者であり、現在この城にいる唯一の男でもある。
 彼がこの城にいる理由は、彼の主である『白軍』の王妃を探すためだ。王妃の持つレイピアに隠された秘密が、魔王の娘にとって何かの助けになるらしい。
 もちろん、アイルは素直に剣の秘密を教える気は無い。監視の目を潜り抜け王妃の下に帰り着く。それが彼の目的だ。魔王の娘は利用出来るだけ利用するが、深入りはしない。
 そう決めたのはいいのだが。
「今のところ手がかりは無し、か」
 机の上に置かれたのは一枚の地図。その所々に赤い?印がついている。?印は特に地図の東側に集中していた。
 魔王の娘と『白軍』の最後の戦いは、白軍の首都で行われた。『白軍』の王は激戦の最中戦、首都は陥落。そうして魔王の娘はこの地域の最東端の領土を手に入れた。
 その混乱の中で身を隠した『白軍』の重臣は多い。彼らの所在をアイルは大体掴んでいたが、王妃とそのの関係者の所在だけは分からなかった。
 何しろ情報が錯綜している。北の半島に逃げたという噂もあれば、未だに『白軍』の領内に残っているという話もある。中には魔王の娘の軍勢によって討たれたという荒唐無稽な話まである。
 要するに、『白軍』のツテだけでは王妃の居場所は分からなかった。

57 :
 となれば、頼るべきは王妃自身のコネクションだ。『白軍』の王に頼らずに王妃が自力で密かに作り上げた諜報網。アイル自身もまた、その諜報網の一つだ。辿ることは不可能ではない。
 あまり訪れたくはないが、手段を選んではいられない。早速手紙を書こうと引き出しから便箋を取り出そうとする。
 首の後ろに、ちりちりと違和感を感じた。
 バッと振り向くと、誰もいない空間に突如として銀髪の少女が降り立った。身に纏っているのはぶかぶかのクリーム色のローブ。見覚えがあった。
「こんばんは」
「ナコトか」
 ナコト、と呼ばれた少女はにっこりと笑うとアイルに歩み寄る。一見何の変哲もない少女だが、彼女もまたこのウェステンブルグ城に住む魔族の一人だ。
 時渡りと呼ばれる種族の彼女は、その名の通り時間に関する魔法を使うことができる唯一の種族だ。彼女が時間を止めるせいで、アイルの銃弾は未だに一発も魔王の娘に届いていない。
 彼女が魔王の娘の側から離れれば魔王の娘をす算段もつくのだが、彼女たちは寝る時も一緒で隙が見当たらなかった。
「お仕事は……はかどってないみたいね」
 銀髪の少女はアイルの肩越しに机の上を覗きこむ。椅子の背もたれに寄りかかる格好になり、ギシ、と椅子の足が音を立てる。
「国が滅んだからな」
 地図に向き直ったアイルは、無感情に答える。魔王の娘の進軍のせいで、情報が集まりにくくなっているのは確かだ。だが、それに対して特に思うことはない。王妃さえ生きていればそれで十分だ。
「この前は随分遠出したみたいだけど、それはどう?」
「同じだ。王妃の行方はわかってない」
「ティセちゃん、少しは役に立った?」
 む、とアイルが一瞬言葉に詰まった。
「……まあ、役には立ったな。ヴィッテ伯爵の屋敷から離れる時だけだが」
 背中に展開した翼でアイルを運んだ、ティセのことを思い出す。監視役としてつけられたサイボーグの少女だったが、従順で何かと役に立つせいで、不覚にも頼ることが多くなっていた。
 あれで自分のことを親だと思ってなついてこなければ、もっと動きやすいのだが。
「今はどうしてるの?」
「エシェルのところだ。メンテナンスらしい」
「そう」
 ぼんやりとした沈黙が降りる。この城にきてからそれなりに時間が経つが、未だにアイルはナコトの心の中を計りかねている。一体彼女は何を考えて、アイルに構っているのか。
 そんなことを考えていると、またナコトが喋り出した。
「それで、ティセちゃんにどこまで手を出したの?」
 一瞬、アイルの頭の中が真っ白になる。
「……何の話だ」
「あの子に慣れない手でおちんちんしごかせたり、頭を掴んでイラマチオしたり、キツキツの膣内をそのおちんちんで掻き回して」
「していない」
「嘘でしょ?」
「本当だ」
 出会った当初こそ勢いで少し乱暴にしてしまったアイルだが、本来子供にそういう感情を抱く人間ではない。寝込みを襲われてフェラチオを許したことぐらいはあったが。
「じゃあ、この一週間二人っきりででかけて、何もなし?」
「何もなしだ。馬鹿な妄想はやめろ」
「そう。それじゃあ……」
 肩越しにアイルを覗き込んでいたナコトが、不意にその両手をアイルの首に絡めた。吐息が、首筋にかかる。
「今、こんなことされたら、我慢できなくなっちゃう?」
「……馬鹿を言うな」
 言いながら腕をどかそうとする。だが、体が動かない。
「おい」
「なあに?」
 くすくす、とかかる吐息が笑っている。
「……時間を、戻せ」
 体が動かない原因は分かっていた。ナコトがアイルの体の時を止めている。以前もこんなことがあったが、その時はかなりろくでもない目に遭った。
「私は何もしてないよ。あなたが期待してるだけ」
「嘘を言うな」
 そうは言ってみるものの、体はやはり動かない。何とか動かそうともがいているうちに、ナコトがするりとアイルの足の間に滑り込んだ。
 ズボンのジッパーを下ろして、中に隠れていたアイルの肉棒をつまみ出す。引きずり出された肉棒は、まだ勃ち上がってもいなかった。
「……なんだ、その顔は」
 不機嫌そうな顔のナコトに、アイルが憮然と声をかける。
「私がこんなに誘惑してるのに……」
 身も蓋もない事を言いながら、ナコトが肉棒を口に含む。時間を止められているのに、熱い口内に肉棒が含まれる感触は鮮明に感じ取れた。

58 :
「う……」
「ん、じゅぶ、んぐ……」
 肉棒の周りを、ぬめったナコトの舌が這いずりまわる。溜まっていたこともあって、肉棒はあっという間にガチガチになった。
「やっぱり期待してた?」
「うるさい」
 相変わらず憮然としているが、肉棒を固くしながらでは説得力がない。その上、僅かだが表情が快感で引きつっている。
「素直じゃない人には、おしおき」
 それでも言葉を聞きたいのか、ナコトは肉棒を擦っていた手を放し、肉棒を一息に咥え込んだ。じゅぶじゅぶと、さっきよりも卑猥な音を立ててアイルを責め立てる。
 時々鈴口の裏辺りを舌先が掠めると、その度にアイルの肉棒がビクンと跳ね上がる。時間を止めていなければ、彼の体全体が震えていただろう。
 弱点を見つけたナコトが、獲物を見つけた肉食獣のように蒼い眼を細める。顔を上下させるたびにわざと舌を掠めさせ、徹底的に快感を与える。
「おい……っ!」
「なあに?」
 ナコトが肉棒から口を放す。アイルの表情は、隠しようがないぐらいに切羽詰まっていた。
「時間を、戻せ……ぐうっ!?」
 細い指がアイルの肉棒を激しく擦りあげる。普通ならそれで絶頂を迎えてしまいそうな責めだが、しかし肉棒は射精しなかった。
 当然だ。時間を止められているのだから。
 それなのに快感だけが延々と上積みされているせいで、アイルの精神は先程から延々と寸止めを味わわされ続けていた。
「もうガマンできない?」
「……ッ!」
 そう告げるナコトの瞳は、ぞっとするほど蠱惑的で。アイルはその視線に屈してしまった。
「……ああ」
 その一言を聞いたナコトは、口の端をニィッと吊り上げると、アイルの体に触れた。途端にアイルの体の時が動き出し、自由に動けるようになる。
 しかし肉棒の射精感だけは未だに解放されなかった。
「ナコト……?」
「だめ。まだおしおきは始まったばかり」
 アイルの膝の上に乗ったナコトが、彼の首に両腕を回し、扇情的なキスをした。
「続きはベッドで、ね?」

 ベッドの上に横たわったナコトは、ローブを脱いで一糸まとわぬ裸体を晒していた。整った顔立ちと色白な彼女の肌は、よくできた人形のようでもある。
 しかし下半身に目を向ければ、その秘所はしどとに濡れている。いやらしい体液に塗れた白い柔肉は男の欲情を誘うためだけに作られた魔性の光景だ。
 ナコトの上に覆いかぶさったアイルは、十分に濡れそぼった秘所に肉棒を突き入れる。相手を気遣う余裕は無いし、その必要もない。貪るように腰を動かし始める。
「うあうっ!? やだっ、いきなり、はげしっ!」
 いきなり最奥を突かれたナコトが喘ぐ。
「なら、時間を、戻せば、いいだろうっ」
 腰を打ちつけながらアイルが唸る。とっくに数度は射精してもよさそうな快感を味わいながら、彼は未だに達せずにいた。じりじりと鉄板の上で焼かれる拷問のような快感が、立て続けにアイルを襲う。
「あ……うん。トンだら、きっと、解けるから」
「それまで愉しませろ、と……」
 柔肉の間に肉棒を突き入れると、無数の襞が肉棒に吸い付き、包み込み、えぐられていく。その度にアイルもナコトも脳髄を焼くような快感を与えられ、ますます互いを貪りあう。
「はあっ、ひっ、あ、あああっ!?」
「う、ぐぅ……っ! ハッ……」
 一度達したナコトの膣が、ぎゅうっと肉棒を締め付ける。眼の奥がフラッシュするような刺激に、しかしアイルは達せずに更に腰を突き動かす。
「ひぐうっ!?」
 絶頂の余韻に新たな快感を上書きされ、ナコトの眼が見開かれる。苦悶と快楽の入り混じった、獣じみた表情。
「ひいっ、あ、いっ、イッてるのにぃっ!」
「それが……どうしたっ!」
「やあっ! あ、だめ、またイッちゃう、ああっ!」
「そうなりたいから、こんなことをっ、ぐうっ!」
 また膣内が収縮し、アイルに気が狂いそうな快感を与えてくる。ナコトは何度も達しているが、このままではラチがあかない。そう考えたアイルは一度肉棒を引き抜いた。
「うぁ……え?」
 唐突に快感が収まったことにうろたえるナコトの体をうつ伏せにする。ちょうど、ナコトの臀部が高く突き上げられる格好になった。

59 :
「あ、待って。そんな――ッ!?」
 ナコトの言葉を待たず、アイルはバックから彼女を襲った。さっきまで最奥だと思っていたところよりも深く、肉棒が秘所をえぐり取り、ナコトは声にならない悲鳴を上げる。
「が、うっ……はぁっ、ハーッ」
 一方的にイカせているアイルのほうにも、いよいよ限界が近づいていた。ただ無我夢中で腰を振るその姿に、理性の鎖は見当たらない。
 ふと、組み伏せているナコトの背中を見ると、猛烈に噛み付きたくなる衝動に襲われた。その陶磁器のような背中の皮膚を食い破って、真っ赤な血で染め上げたい。一瞬そんなことを考えてしまう辺り、いよいよ狂気の淵が近づいてきたか。
「きゃうんっ!」
 狂気を振り払うようにナコトの背中に覆いかぶさり、ほとんど密着した状態で挿入を繰り返す。血の代わりに体温がアイルの体を温める。
「あ、ひっ……あっ、だめ、だめ、だめだめっ、あああッ!」
 容赦なく責め立てられたナコトの体が一際大きく痙攣し、そしてがくりと崩れ落ちた。
 それと同時に塞き止めていた何かが崩れ落ちて、アイルの肉棒から精液が流れだした。溜まりに溜まった精液が、びゅくびゅくと音を立ててナコトの膣内に注がれていく。
「う、ぐ……っ」
「ああ、うあ……」
 ようやく解放された射精感と、強烈すぎる快感にアイルは思わず呻き声を上げる。それほどの精液を流し込まれているナコトのほうは、完全に意識が飛んで、意味のない声を上げるしかできない。
 そんな強烈すぎる絶頂が一分ほど続いただろうか。ナコトの背にしがみつくようにしていたアイルが、ようやく体を起こした。はぁ、と息を吐くと、再びナコトの膣内を抉る。
「ひうっ!?」
 気絶していたナコトだったが、快感でむりやり叩き起こされた。
「ま、待って。もうイッたでしょ……?」
「まだ収まっていない」
 言葉通り、アイルの肉棒は未だに硬さを保っている。
「ちょっと待って、休ませ――ひゃうんっ!?」
「さっきもそう言いながら愉しんでいただろう。しばらく付き合ってもらうぞ」
「うあっ、いっ、も、もう……」
 精液と愛液が混じったものを肉棒でかき回しながら、アイルは容赦なくナコトを責め立てていった。

 気がつけば朝になっていた。体のあちこちが痛いし、酷く重い。体を起こそうとしても、右腕に抱きついたナコトのせいでできない。
 あの後、何度もナコトの中に精を吐き出した。ナコトのほうは途中から意識が半分飛びっぱなしで、アイルの動きに合わせて柔肉を収縮させるだけの肉塊に成り果てていた。
 何度目かの射精の後、アイルはそのまま倒れるように眠り込んだ。そして、今の時間に辿り着いたのだろう。窓の外には陽の光が差し込んでいて、随分時間が立ったことを認識させる。
 不意に身震いがした。朝の空気で体が冷えたか。いや、違う。頭の中でそれを否定する自分はひどく無感情だ。
 そう、本来のアイルは無感情な人間だ。与えられた命令を淡々とこなし、望む結果をはじき出す王妃の道具。それが彼の存在意義だ。
 それが昨晩はどうだ。欲望のままにナコトを組み伏せ、好き放題に蹂躙していた。今までの自分とは全く違う、ケダモノじみた性質。そんなものが自分の中に眠っていることに震えていた。
「んぐぅ……」
 寝ぼけているらしいナコトが腕に擦り寄ってくる。それを気遣うこともなく、アイルは真っ白い天井をただ見上げていた。

以上です。ご視聴いただき、ありがとうございました。

60 :
Gj
続きも待ってますぜ

61 :
乙!

62 :
先程、保管庫のまとめにて追いついたんですが
『キツネくんとタヌキさん』って完結直前にして更新、止まってますよね?
な、生しじゃないすか。
ひょっとしたら続行が難しい理由があるのかもしれませんし、
おこがましくもプレッシャーをかける気はないのですが、
どんなに時間が掛かったとしても私は
作者様の作品の完結をいつまでも楽しみにしております。
尚、個人的にはヒトミさん編のラストはリンクじゃなく板に載せて問題ないように感じるので、どうか板に投下し直していただけたらなーと思います。
(というか、後々保管庫に反映されない可能性があるんじゃないかと心配です。)
とりあえずここまで楽しませていただいた分だけでも、作者様GJ!

63 :
獣耳娘とキャッキャウフフしたい

64 :
>>62
キツネくんとタヌキさんの作者です。待ってくださってるなんて、ありがとうございます。
最終話、大体出来てるんです。もうちょっと待って頂けると嬉しいです。

65 :
>>64
やっほおおおぉッッッ!!
ありがとうございます!!
めちゃくちゃ楽しみです!!
生前の待ち合わせ場所から離れない自縛霊の如く、お待ちしております!!

66 :
随分マゾヒストな霊だな

67 :
まとめの、
 28-184様: 『はこいりッ!? -純情淫魔さん奮戦記-』 01/02
         『「にゃん?」〜恋猫曜日〜』 01/02
って26-708様のところに入るものじゃないの?

68 :
>67
まぁ、そうなんですけど、基本、私2ちゃんではコテやトリは付けてないんで
漏れが出てもしょうがないかな、と。
近況報告として、『夫婦神善哉』『九毒蝕む我が龍姫』と同じ世界観で
青月や歩たちが大学生の頃に出会った怪異の話を作成中です。
タイトルは『恋する石長姫』。>39のネタに基づいてます

69 :
イワナガヒメ?
美人な妹がいる不細工な姉?

70 :
>>64
ガンバレガンバレ
応援してる

71 :
 どーも。明けましておめでとうございますと言おうと思ったら、もう二月半ばでした。今日も淡々と更新して行きたいと思います。
 あ、名前欄の通り、今回は分量多めです。ご了承下さい。
◆◆◆◆◆◆◆◆
 ウェステンブルグ城の朝は早い。まず真っ先にメイドたちが起きて、朝食の支度や洗濯、花壇の水やりなどを行う。それから城に駐屯している親衛隊が起きだして、朝の走りこみを始める。
 その掛け声を聞いて起きだすのが、魔王の娘ミナレッタだ。支配者の朝は存外早い。
 だが、今日のミナレッタは普段よりも更に後、親衛隊の朝の訓練が終わって、ねぼすけのナコトが起きる時間になってようやくベッドから這い出てきた。
「陛下、本日の朝食は西方国風にしてみました」
「うん……」
 上座に座った少女が眠い目をこすりながら、メイド長ジャスミンの話を聞いている。その姿はベッドから引きずり出された子供そのものだ。
「全く、あの使者め。いつまでもべらべら喋って……全くもう」
 寝坊の理由は、数日前からこの城に滞在していたある国からの使者だった。膨大な量の贈り物を持ってきたのはいいのだが、夜行性の魔族で、しかもお喋りだったために連日夜遅くまで長話に付き合わされたのであった。
 寝ぼけ眼で紅茶を飲み、それからスコーンを齧る。と、ここでミナレッタの瞳が僅かに開かれた。
「ん……いつもより美味しいじゃない?」
 いつも出てくるメニューはよくてレシピ通り、悪ければ分量を間違えた食事が出てくる。ミナレッタは食事の味にはこだわらないのであまり気にしなかったが、今日のスコーンはそんな彼女でも目を見張るぐらいよくできていた。
「腕を上げたわね」
「え、ええ」
 だが、主人に褒められたというのにジャスミンの笑顔はぎこちない。何かを隠しているような様子でもあったが、寝不足のミナレッタはそれに気付かなかった。
「しかし兄上が何を企んでいるかは分からないけど、こうも色々送られちゃ返礼の使者を送るしか無いわねえ」
 礼には礼を持って返す。贈り物を受け取ったら、相応の量のお返しと使者を送らなければならない。それが国を統べる者達の間のしきたりである。例え、やってきた使者が不快かつ不穏な言動を残していったとしてもだ。
「何をされるか分からない以上、ナコトに任せるしかないか」
 時を止められるナコトなら、万が一向こうの国で窮地に陥っても抜け出すことは容易だ。使者として相応の地位もある。夜に人肌恋しくなるのは寂しいが、そこは王たるものの勤めとして我慢する。
 さて、何を送り返そうかと考えていると、ふとある人物のことを思い出した。働いているのかいないのかいまいち分からないあの男。こういう場で使うのもいいかもしれない。
 眠そうなミナレッタの顔に、ほんの少しだけ喜悦の笑みが浮かんだ。

 ウェステンブルグ城より西へおよそ600km、そこにブランデン城は存在する。北の海と南の海の両方に面し、大陸でも一二を争う広さを持つ大国、ブランデン大公国の中枢である。
 城下町は首都にふさわしいスケールを持っているものの、そこに人間の姿は殆ど無い。この国を治めるのは魔界からやってきた魔族たちだ。人間の入る余地は無い。
 だが今日は例外のようだ。ブランデン城の一室、他国からの使者を出迎える応接室に、一人の人間の姿がある。礼服に身を包んだアイルの緑色の瞳は、窓の外に広がる町並みを茫洋と眺めている。
「何を見てるの?」
 その背中に声が掛かる。振り返ると、ソファに横たわったナコトが彼を見上げていた。身を包んでいるのは、普段の簡素なローブではなく、金糸で刺繍の施された豪華なものだ。
「……そんな格好だと皺になるぞ」
「大丈夫。魔法で直す」
 ナコトは起き上がらない。いつものように起きているのか眠っているのか分からない目で、アイルを見つめるだけだ。彼女の銀髪がちらちらとロウソクの明かりに照らされて光る。
 ブランデン城はウェステンブルグ城とは違い、電気は通っていない。光源や冷暖房などは全て魔法で賄われている。応接室のシャンデリアも、全て火の消えないロウソクが使われている。
 かつて人類が使用していた電気は、過去の戦争によって発電所が破壊されたことにより、地上から消えつつあった。そもそも魔族のもたらした魔法のほうが便利なのだ。未だに電気を使っているのは、一部の人間の国と、物好きな魔族ぐらいである。
 そしてアイルはその両方をよく知っている。

72 :
「……ところで」
「なんだ」
 不意に、ナコトがアイルに声をかけた。
「どうしてあなたがついてきてるの?」
「今更聞くのか」
 本当に今更である。ミナレッタは彼女に何も言わなかったのだろうか。
「あの魔王の娘が、お前についていけと言ってきたんだ」
「ミナが?」
 アイルが頷く。彼としては余計な仕事でしか無いのだが、『白軍』の王妃の捜索に必要な資金はほとんど全て魔王の娘が出しているため、断ることはできなかった。
「他には、何か?」
「隙があったらしてこいと」
「そっちが本命じゃない……」
 確かに、ここ最近ブランデン大公国はウェステンブルグに対して挑発的な行動をとっている。国境付近で軍を動かしたり、関税を引き上げたり、ウェステンブルグに何かしようとしているのは明らかだ。
 だからといっていきなり国王の暗を狙うのは無謀極まりない。成功すれば国内は一時的に混乱するだろうが、すぐにウェステンブルグへの弔い合戦を旗印に団結するだろう。そうなれば、国力で圧倒的に劣るウェステンブルグが勝てる見込みは無い。
「使者の代表は私なんだから、余計なことはしちゃだめ」
 ナコトがアイルに釘を差す。が、それに続いて不穏な一言をつぶやいた。
「……尤も、何か出来たらの話だけど」

「ウェステンブルグより使者の任ご苦労。私がブランデン大公国を治める、ジェイヴィック・ブランデンだ」
「知ってます」
「そうだろうな。今年に入ってこれで5度目か。ミナは元気か?」
「おかげ様で寝不足です」
 会話をする片方は、ウェステンブルグからの使者、ナコト。そしてもう片方は豪奢な冠と金色の鎧に身を包み、口に葉巻を咥えた褐色肌の魔族、ブランデン大公国の国王、ジェイヴィック・ブランデンだ。
「ふむ、そうだな。奴はお喋りだから夜遅くまで付き合わされたろう」
「人肌恋しい夜が続きました」
 二人の会話の隣でアイルは黙り込んでいる。どこかズレた受け答えに呆れているわけではない。部屋に入って早々、国王ジェイヴィックの暗は不可能だと気付かされたからである。
 警備が厳重だというわけではない。周りには警護のミノタウロスが6体。その後方には魔族の書記官や、使用人たちが大勢控えているが、アイルの銃撃を止めるほど近いところにはいない。
「ははは……いやしかし、ミナもいい加減男を見つけて身を固めたほうがいいと思うのだがな。その、なんだ。疲れないのか、お主は?」
「いえ、大好きですから」
「そうか、うむ……」
 問題はジェイヴィックを囲むバリアだった。彼の玉座からは座る者を守る魔法の障壁が展開されている。アイルの持ち込んだ拳銃の弾ぐらいなら、容易く弾いてしまうだろう。
 相手が一歩でもその外に出てくれればいいのだが、残念ながらその気配はない。懐に鉛の重みを感じながら、アイルは何もできずにその場に立ち尽くしていた。
「まあ、ミナのことはそれでよいとしてだ。最近、ウェステンブルグからやってくる商人の数が少なくなっているのだが、これはどういうことだ?」
「この間まで戦争やってましたから。来月には元通りだと思います」
「ふむ。それと我が領国の一つ、ファンデンに出入りしているうぬらの軍隊のことだが」
「あそこは昔からウチの領土ですよ」
「あの地域の住民から我が国に相談を持ちかけてくることが度々あってな。そのことも含めていい加減話し合いの機会を設けたい、と思っているのだ」
 言葉遣いこそまだ穏やかなものの、ナコトとジェイヴィックの間には抜き差しならない緊張感が漂っている。一つ言葉を間違えれば、それだけで戦争が始まりそうな雰囲気だ。
「いくら妹とはいえ、あまりワガママは通せんぞ。我らは民の上に立つ支配者なのだからな」
「じゃあ今度、ミナに話してみますから。それまで待ってて下さい」
「……その言葉も、今年で5度目だな」
 ジェイヴィックのため息には、隠し切れない失望が滲み出ていた。
「お主の方はどう思っている?」
 ジェイヴィックが呼びかける。一拍遅れて、アイルは自分に話しかけられたことに気付いた。
「俺か」
「お主以外に誰がいる。お主はファンデンについてどう思っておるのだ?」
「俺はあの魔王の娘からは何も聞いていない」
「ミナの言葉では無い。お主の言葉だ。何、ほんの戯れよ。妹が雇う気になった男が何者なのか、少しは知りたくてな」
 そう告げるジェイヴィックの顔には、うっすらと笑いが浮かんでいた。アイルは視線を僅かに横に向ける。書記官がオーブに手をかざし、会話を記録しているのが見える。下手に答えれば、向こうに攻めこむ口実を与えることになるだろう。

73 :
 ウェステンブルグがどうなろうと知ったことではないが、『白軍』の王妃を探すのにウェステンブルグの力は必要だ。
「そうだな……」
 出発前にミナレッタから聞かされた話を思い出す。ファンデン。ウェステンブルグとブランデンの丁度国境の辺りにある小国。豊かな鉱山に囲まれたこの土地をめぐって二国は長い間争いを続けている。
 最初にこの地域を征服しようと攻撃したのはブランデンで、それを助ける名目で傘下にしたのがウェステンブルグだ。だが住民はウェステンブルグに従いつつも、時折強いブランデンに頼ることもある。
「あの国からそちらに相談があるのはいい」
「ほう」
「だが、何を相談しに来たんだ?」
「なに、ファンデンの領主が近くの野良魔族をなんとかして欲しいと頼みに来ただけだ。お主らウェステンブルグでは頼りにならんと思ったのだろうな」
「その会話の記録は残っているのか?」
「む……いや、それは……」
 ジェイヴィックの笑みが消える。
「公的な記録ゆえ、すぐには用意できん。今は諦めろ」
「そんなことは無いだろう。そこにいる魔族に命令すれば、すぐに聞けるはずだ」
 視線を横にいる書記官に向ける。その書記官は慌てて目を背ける。図星だ。魔族は心の中がすぐに態度に出る。
「あのオーブとは別のものに会話を記録してあるのだ。すぐには引き出せん」
「そうか、それなら情報不足だな。答えるのは止めておこう」
「固いことを言うな。想像で話せばよいのだ、うん?」
「想像か」
 ジェイヴィックは墓穴を掘った。一拍置いて、アイルがとどめを刺す。
「『ブランデンから次々と野良魔族が流入してくるのを何とか止めてくれ。金ならいくらでも払う』そんな風に泣きついてきたか?」
「何ッ!?」
 ジェイヴィックの顔色が怒りに、そして困惑に染まる。仮にも一国の王が感情をここまであらわにするのか。アイルは少し呆れていた。
「気にするな。言われた通り、戯言を話してみただけだ」
 そう弁解するが、ブランデンの顔は晴れない。広間の空気も張り詰めていた。
 ブランデンが野良魔族をわざとファンデンに送り出していることは、既にミナレッタが調べていた。王が採る策にしてはあまりに杜撰で下劣、そう言ったミナレッタの笑いを思い出す。
「……まだ、何か聞きたいか?」
「もういい」
 ジェイヴィックが咥えていた葉巻を握り潰す。今にも席を立って部屋を出て行こうとする勢いだ。それならそれでいい。アイルは懐の拳銃にそっと手を伸ばした。
「お父様」
 その時だった。張り詰めた緊張の糸の下を潜るように、鈴の二重奏のような声が響き渡った。ジェイヴィックの、ナコトの、護衛たちの、そしてアイルの視線が一斉に声のした方を向く。
 玉座の間に並ぶ大理石の柱の一本。その影から少女の顔がこちらを覗いていた。人間の少女ではないことは、そのすみれ色の肌とウェーブがかかった銀色の髪で分かる。
「おお、レクシィ! ライカはどうした?」
「私はライカよ」
「レクシィは私」
 同じ声がもう一つしたかと思うと、柱の影の反対側から瓜二つの顔がひょっこりと顔を出した。双子の魔族が柱の影から出てくると、上品な網目模様のドレスがさらっと揺れた。
「みなさん」
「ごきげんよう」
 そのドレスの端を持ち上げ、双子の魔族は同時に金色の目を伏せて優雅に一礼をする。
「……誰だ?」
 アイルは小声でこの闖入者の正体をナコトに問いかける。
「ジェイヴィックの娘よ。レクシィとライカ」
「どっちがどっちだ?」
「わかんない」
 その間に双子はとてとてとジェイヴィックの元に歩いて行き、玉座に座る彼の膝の上に腰掛ける。
「またウェステンブルグの人が来たの?」
「贈り物が一杯あったよ?」
「そうか、もう見てきたのか。欲しいものはあったか?」
 ジェイヴィックの問いに、双子は同時に首を傾げて困ったように笑った。
「面白そうなものはね」
「無かったの」
「むぅ……おい、使者共。次はウチの娘も気に入るものを持って来い。いいな?」
 そういうジェイヴィックに先程までの覇気はない。娘を甘やかすただの父親にしか見えなかった。アイルは銃からゆっくり手を離す。あの調子では娘たちが膝から降りない限り玉座を離れないだろう。
「でもね、お父様」
「欲しいものはあるよ」
「おお! なんだ、言ってみろ。なんでもくれてやるぞ」
 途端に機嫌を良くしたジェイヴィックの膝の上で、双子の魔族はウェステンブルグの使者たちに目を向ける。
「え、ちょっと。まさか……」
 ナコトが呻いたが、既に事態は決していた。

74 :
 夕暮れのブランデン。沈む夕日が地上のありとあらゆるものを赤く染める。そこに立つナコトの銀色の髪も、今は光を受けて黄金色に輝いていた。
「……どうしてこうなった」
「魔族の気まぐれはわからんものだ。諦めろ」
 その横にはアイルが立っている。彼が身に纏うコートは夕日を受けても黒色のままだった。
 二人は馬を待っていた。ブランデンとの対話は結局平行線のまま終わり、これからウェステンブルグに帰るところだ。たった一人をこの地に残して。
 何かを話せばいいのだが、お互い何を話せばいいか分からない。何か話したいのだが掛ける言葉が見つからずためらい、結局何も話さない。そんなもどかしい時間が続く。
 結局、一言も交わさないまま馬がやってきた。手綱を引く従者が乗るように促す。
「ねえ、アイル」
「なんだ」
「私のこと、忘れちゃ嫌よ?」
「……いきなりどうした」
「だって、ここでお別れだから」
 さあっ、とそよ風が二人の間を通り抜ける。
「すぐ戻れるだろう」
「……ムードを考えなさい」
「何故だ?」
 はあ、とクルルがため息をつく。それで二人の話は終わったようだ。クルルが鞍によじ登る。
「それじゃ、さよなら」
 それだけ言って、クルルは帰っていった。ミナレッタが待つウェステンブルグへ。
 後に残されたアイルはしばらくその後ろ姿を見送っていたが、使者の列の最後の一団が見えなくなると、どうしたものかと所在無さげに辺りを見回した。
「私たちを」
「探しているの?」
 その両手を後ろから掴まれる。振り返ると、彼の腕を掴む双子の魔族がいた。
「そんなに不安にならなくても」
「私たちはちゃんとあなたのこと、見てるよ?」
「さっさと離れろ」
 ぶっきらぼうにアイルが返事をするが、レクシィとライカはクスクスと笑うだけで怖がる素振りは全くない。
「だーめ。せっかくの贈り物なのよ?」
「すぐには捨てないわ」
 レクシィとライカが言った『欲しい物』。それはアイルのことだった。どこをどう気に入ったのか、この双子の魔族はアイルを側に置きたいと思ったらしい。
 隣にいたナコトは猛烈に反発したが、ジェイヴィックまでもがアイルにしばらく滞在するよう求めると、それを断ることはできなかった。バカバカしい話だが、彼は娘のためなら戦争を起こすことも辞さない。
 そういう訳で、アイルはジェイヴィックとその娘のご機嫌取りのために、三日間ほどこの城に滞在することとなった。ちなみにナコトも一緒に泊まろうとしたが、時渡りを城内に長い間置いておくのは危険だということで断られた。
「ねえ、アイル。私たちの側にいられて嬉しい?」
「それとも、お友達と離れ離れになって寂しい?」
 両腕を絡めとった双子がアイルに問う。
「いや……」
「いや、って?」
「どっちなの?」
 なおも双子に問い詰められ、アイルは答えた。
「……別に、何とも思わん」
 その答えにはほんの少しだけ戸惑いが混じっている。それを聞いて、双子の魔族は彼の体越しに目を合わせると、にんまりと目を細めた。遊びがいのあるゲームを見つけたかのように。 

 レクシィとライカが気に入ったのは、ウェステンブルグからやってきた人間の男、アイル・ブリーデッドだった。ミナレッタが半ば彼への嫌がらせ、半ば暗目的で送った彼を、彼女たちがどうして気に入ったのか。それは誰にもわからない。
 彼がブランデンに来てから三日経ったが、飽きる様子は見当たらない。今日も中庭で彼と一緒に花を見ながら散歩している。最も、彼の方は花など眼中になさそうだが。
「全く、何が楽しいのだ……」
 窓辺で葉巻を吸いながら、ジェイヴィックは娘たちを見守っている。その表情はなんとも苦い。魔族と言えども父親としての感情は当然持っている。はあ、と溜息を付くと口の端から紫煙が漏れた。
「よいではありませんか。開戦に丁度いい生贄が手に入ったのですから」
「うむ……」
 ジェイヴィックが声のした方に向き直る。ブランデン城戦略会議室。その長テーブルにつくのは、ケンタウロス、サキュバス、リッチ、リザードマン、ガルーダ、その他様々な魔族の首長たち。
 これらの錚々たる面々がこの部屋に集結している。そしてテーブルに広げられたのは、ブランデンとウェステンブルグの地図。その上には無数の駒と描き込まれた線。これらが意味するものは一つ。

75 :
「戦略は以上だ。我々はこれよりウェステンブルグと戦争状態に入る」
 紫煙を烟らせ、ジェイヴィックが堂々と宣言した。魔王の血と堂々たる支配者の風格が、居合わせた魔族の首長たちを一斉に引き締める。
「かの国は我らの同盟国ファンデンを不当にも占拠し、あまつさえ軍隊を駐留させ、我が国に攻め込もうと機会を伺っておる。
 余はこれまで何度もファンデンの嘆きの声を聞いてきた。あの国は、民が襲われようと守るつもりはないのだ。ただ次の国に攻め込む踏み台程度にしか思っておらぬ」
 欺瞞に満ちた言葉だ。魔族たちの中でも賢い連中はそれを薄々察している。だが反発の声を上げるものはいない。
 ウェステンブルグを征服し、富と領土と栄誉を手に入れる。そのチャンスを捨てる選択肢など、彼らにありはしない。
「つい先日、『白軍』がウェステンブルグの手に落ちた。ならば次にその矛先が向くのは我がブランデン大公国しかおらぬ。
 ならばこのジェイヴィック・ブランデンはむざむざ攻め込まれる前に、ウェステンブルグに宣戦布告する! 例えその相手が、我が妹であってもだ! 異論はないな!?」
『仰せのままに!』 
 部屋の中に一糸乱れぬ返答が響き渡る。それから誰ともなしに一体、二体と席を立ち部屋を出て行く。
 大勢いた魔族たちは徐々に減っていき、最後に残ったのはケンタウロスとサキュバスの二体だけとなった。
「で、どうするの?」
「どうとは、何がだ」
 その内の片方、サキュバスがジェイヴィックに話しかける。君臣の間柄にしては妙に馴れ馴れしい。
「決まってるでしょ。あの男よ」
 そう言って彼女は窓の外を見る。ジェイヴィックが語っている間に運ばれてきたのだろうか、アイルとレクシィとライカは噴水の側のベンチに腰掛け、ドーナツを食べていた。
「ああ、勿論首を切ってウェステンブルグに送り返す」
 カツン、とケンタウロスの蹄が鳴った。彼の鋭い眼光は窓の外に向けられている。アイルの強さを値踏みするかのように。
「あらあら、あの子たちがあんなに気に入っているのに?」
「これも乱世の習いよ。娘たちも分かってくれるだろう」
「もう。娘は泣かせるし、妹には宣戦布告するし、私はほっとくし、酷い人ねえ」
 まあそこが好きなんだけど、とくすくす笑った後、サキュバスは部屋を出て行った。ケンタウロスもそれに続こうとする。
「マイノルト。処刑は明日の朝だ。それまでは待て」
 声をかけられたケンタウロスは一瞬立ち止まり、ジェイヴィックの方を振り返る。
「承知」
 短く、はっきり答えると、蹄の音を響かせて部屋を出て行った。
 部屋を出た魔族たちは、階段を降り、中庭を通り抜けて正面の門へ向かっていく。それぞれ自分の領地に戻り、戦支度をするためだ。
 ドーナツの最後の一欠片を口に含んだアイルは、その集団から度々気立った視線を送られているのに気付いた。特に最後に建物から出てきたケンタウロス。彼の鋭い視線は尋常のものではない。
「どうしたの?」
「お兄さま?」
 両脇でまだドーナツを食べている双子の問いにも返事をしない。彼はただ、じっと通り過ぎる魔物の列を見送っていた。

 その日の晩。アイルは与えられた一室で持ち込んだ武器の手入れをしていた。衣服の下にオートマチックが一丁、手荷物の中にもう一丁。予備の弾倉は十分ある。それとナイフ、ワイヤー、針。持ち込めたのはこれだけだ。
 城に来た当初はボディチェックすら行わない杜撰な警備に呆れたものだが、あの玉座のバリアを見て納得した。する必要がないのだ。ただ、そのお陰で今こうして脱出のための武器を揃える事ができる。
 脱出。そう、この城からの脱出である。中庭で魔族の一団を見送った後、アイルはすぐに城内を忍び歩き、ブランデンがウェステンブルグに攻め込もうとしていること、そして自分をそうとしていることを知った。
 黙ってされるのを待つつもりはない。自分にはまだやるべきことがある。全ての武器の手入れを終えて、礼服の中に隠し、その上からいつものコートを羽織る。気持ちが少し落ち着いた。
 時計は午後9時を指していた。あと3時間で歩哨が交代する。その隙をついて城下町まで脱出する。そこで馬を盗めれば、あとは間道を通って国外へ逃げこめる。最悪、徒歩でも構わない。
 頭の中で逃走ルートを確認しているとドアがノックされた。不意の来訪者に眉をひそめる。こんな時間に誰かが部屋を訪ねてきたことは今までなかった。嫌な予感がするが、ここで返事をしないというわけにもいかない。

76 :
「誰だ?」
 ドアを開けると、そこには執事服を着た山羊頭の魔族が立っていた。
「何か用か?」
「お嬢様方から、貴方様をお連れするように言われました」
 むう、とアイルは渋面を作る。彼をこの城に留めた張本人、レクシィとライカ。ジェイヴィックの双子の娘に呼ばれては、出て行かざるを得ない。
「何かあったのか」
「わかりません。とにかくお連れするように、と。それしか言われておりません」
「……分かった。すぐに行こう」
「ありがとうございます。ところで、その上着は」
「部屋が寒かったんだ。しばらく着させてくれ」
 しかしこんな時間に何故。時折すれ違う歩哨たちも、外国の使者がこんな時間に出歩いていることに不信の目を向けてくる。
 確かにレクシィとライカはアイルのことを妙に気に入っている。正直アイルとしては鬱陶しいことこの上なかったが、敵国のど真ん中で王女を邪険に扱うわけにも行かず、黙って機嫌を取っていた。
 それで気を良くしたのか、二人はこの三日間ずっとアイル連れ回されて城の隅から隅まで案内していた。それに食事の時も一緒のテーブルについている。
 だが、こんな夜更けに呼ばれるのは初めてだ。本当に何かあったのか。脱出を気取られた、というわけではあるまい。決断したのはついさっきなのだから。
 呼ばれた理由を考えているうちに、二人は双子の部屋の前まで来た。山羊頭の執事は一礼すると、役目は終わったと言わんばかりにそそくさと退散する。取り残されたアイルは、そっとドアをノックした。
「待ってたよ」
「入って」
 息のあった二人の声が、部屋の中から帰ってきた。ノブを回して中に入る。部屋の中の蝋燭はついておらず、窓から入ってくる幽かな月光だけが頼りだった。
「レクシィ? ライカ?」
 声はしたのだが、薄闇の中に二人の姿は見当たらない。どうしたんだと辺りを見回すと、突然、とんっとアイルの腰の辺りに何かがぶつかった。
「だーれだ?」
 声の主はからかうようにアイルに問いかける。答えようとしたアイルは言葉に詰まった。レクシィかライカのどちらかなのかは、一目で分かる。だが、あまりにそっくりなこの双子を見分けることは彼にはできない。
「……ライカか?」
「はずれ」
「ライカは、私」
 当てずっぽうで答えると、ライカがカーテンの影から顔を出した。この二人の機嫌を取るのは本当に疲れる。アイルがげんなりしていると、ずずいと背中をレクシィに押された。
「ほら、ベッドに座って」
「夜のお話、しましょう?」
「すまんが、俺はこれからやることが……」
「嘘をついちゃダメ」
「こんな夜更けに、することなんてないでしょう?」
 双子の魔族は微笑みながらもアイルを逃がさない。結局、押されるがままにアイルはベッドに腰掛けた。その両脇にレクシィとライカが座る。
「それとも逃げるのかしら?」
「されるのは嫌だものね」
 見透かしたような言葉。驚いてレクシィ、いや、ライカの顔を見るが、微笑んだままだ。
「そんなに驚かなくてもいいの」
「怒ってるわけじゃないのよ?」
 耳元で囁く二人の声は酷く優しい。染み込むように、アイルの心の中に入り込もうとする。
「だけど私たちも」
「あなたを手放すのは嫌」
「だからね」
「いいこと、教えてあげる」
 すっと一声置いてから、双子の魔族は同時に言った。
「私たちのものになればいいの」
 窓の外で、さあっと木の葉が擦れる音がした。二人の笑いは収まって、ただ微かな微笑みを湛えたままアイルの顔を覗き込んでいる。
 サキュバスを母に持つ彼女たちは、人魔問わず理性を崩す術を生まれながらに持っていた。時にはあざといぐらいに媚び、時には相手の弱みに漬け込む。そうして玩具になった生物は少なくない。
 しかしアイルは、その術に抗う壁で心を覆っていた。
「断る。俺には既に主がいる。裏切るわけにはいかん」
 きっぱりと断る。甘美な三日間も、魅力的な双子の提案も、彼の心を崩すものではなかった。
「あらあら、素敵な忠誠心」
「立派なナイト様ね」
 しかし、あっさり断られても、レクシィとライカの態度は崩れない。むしろ瞳の奥底で、期待の光が輝きを増したかのようだった。
「でも、私たちのものになったらどんなに素敵か」
「知ってからでも遅くはないと思うわ」
「何?」
 不意に、レクシィがアイルの右手をぐいと引っ張った。同時にライカが身を寄せて、体勢を崩す。見事に息の合った二人の連携は、アイルをあっさりとベッドに転がした。
 そして、ライカはそれと同時にアイルの唇と自分の唇を重ねていた。

77 :
「なに……を……?」
 長いキスの後、最初にアイルが発した言葉は戸惑いだった。それを見てライカはやはりくすくすと笑っている。上から押さえつける彼女の力は、見た目によらず意外と強い。
「言ったでしょう?」
「私たちのこと、教えてあげるって」
 レクシィがズボンのジッパーを下ろそうとする。止めようと手を伸ばすが、ライカが巧みに防ぐ。更にもう一度アイルの唇を奪った。
 頭を抱え込んで、貪るようなディープキス。冷たそうな藤色の肌とは裏腹に、触れてみれば肌も舌も熱を帯びている。その感触に気を取られているうちにファスナーが降ろされ、肉棒を外に出されてしまった。
「んっ、ちゅ、むぅ……はぁっ」
「あら、こっちはもう出来上がってるのね」
 レクシィの細い指が、外に出された肉棒を弄ぶ。すべすべした指が剛直を撫でる仕草は妙に手馴れていて、それだけでアイルは身を震わせる。
 肉棒から意識を離そうとすれば、今度はライカの執拗なディープキスを気にしてしまう。昼間に見せた無邪気な笑みは一切無く、飢えた獣が一心不乱に肉を貪るようにアイルの口中を蹂躙する。
「我慢しなくていいのよ、お兄様?」
 レクシィが肉棒を口に含む。ぬめった熱い口中に敏感な部分を飲み込まれ、アイルは呻き声を上げるが、それすらライカのキスに飲み込まれる。
「うぐっ……むぅ……!」
「ぴちゃ、くちゅ、ちゅっ、んんっ!?」
 不意にライカが身を震わせた。レクシィがアイルの肉棒をフェラチオしながらライカの無防備な秘所に指を這わせている。
「あ、待って、レクシ、ひゃうん!」
「ふふ、いい声で鳴きなさい」
 唐突に弱点を責め立てられたライカはアイルへのキスを止めて、代わりにもっと強く抱きつく。キスだけで感じていたのか、ライカの秘所からは微かに水音が聞こえていた。
 少ししてレクシィが指の動きを止める頃には、ライカはもう息も絶え絶えになっていた。トロンとした瞳がアイルに向けられる。
「ねえ、ライカ。手伝って欲しいの」
「はぁ……ひ……ぇ? ん、うん……」
 レクシィに言われるままライカがアイルの上から降りる。
「ほら、お兄様も」
「ここに座って」
 双子に手を引かれ、言われるがままにアイルはベッドの縁に腰掛ける。二人は床に跪くと、胸元のリボンをしゅるりと解いた。形の良い四つの乳房があらわになる。
 二人は自分の胸を持ち上げると、そそり立つアイルの肉棒を両側から挟み込んだ。恐ろしく柔らかい柔肉に挟まれて、びくりとアイルが肉棒ごと震える。
「感じてる?」
「我慢しなくていいのよ?」
 息のピッタリあった動作で胸が上下して、肉棒を扱き上げる。時折二人の乳首が擦れると、その度に二人が体を震わせて刺激に変化がつく。
 それだけでは飽き足らず、乳房からはみ出た亀頭を二人が舐め上げる。その姿は双子がお互いの舌を舐め合っているようでもあり、あまりにも扇情的すぎた。
「ぐうっ……!?」
 唐突に射精感がせり上がってくる。目を瞑ってアイルは耐えるが、彼女たちはそれを察してラストスパートに向けて激しく胸を動かす。長く耐えられそうにない。
「ほらっ」
「出して……っ!」
 二人の声に導かれるように、アイルは射精感を解き放った。途端に全身を快感が駆け巡り、真っ白な精液が肉棒から弾き出される。吐き出された液は二人の顔を直撃した。
「いやんっ」
「あはっ、こんなにいっぱい……」
 人間とは違う魔族の蒼い肌は、精液の白さを一層際立たせる。まだ幼さの残る顔を汚されても、彼女たちは嬉しそうに笑っている。
「あ、レクシィ。勿体無いよ」
「ひゃう、ライカぁ……んっ」
 精液の匂いに充てられたのか、二人はお互いの顔にかかった精液を舐めとり合う。時折舌を絡めたキスを挟む淫靡な彼女たちを見て、流石のアイルも肉棒を固くせざるを得なかった。
「ふふ、まだ固いまま」
「気に入ってくれたみたいね」
「ね、お兄様。毎日、好きな時にこうしてあげる」
「だから、私たちのものになってちょうだい?」
 肉棒は未だに乳房に包まれている。あまりに甘美な提案。アイルの背筋をゾクゾクとした何かが這い登る。
 しかし彼は答えられなかった。欲望のままに声を出そうとすれば、その度に青い髪の彼女の影がチラつき、彼の首を締め上げる。
 彼の答えをしばらく待っていた双子だったが、何時まで経っても返事が帰ってこない。
「まだ足りない?」
「欲張りさんね」
 立ち上がった二人はアイルを優しくベッドの上に横たえると、一度目配せをして、それからライカがアイルの上に跨った。ドレスの裾をたくし上げると、濡れそぼった秘所が露わになる。下着はつけていなかった。

78 :
「ライカが我慢できないみたいだから、先にね?」
「うん……」
 レクシィが悪戯っぽく笑うと、ライカはアイルの肉棒を秘所にあてがい、それから一気に腰を下ろした。
「ひあうっ!?」
「うおっ……!」
 ライカの膣内は幼い見た目通りとても狭い。肉棒がちぎれるのではと錯覚するぐらいだ。そのキツい肉がうねうねと肉棒に絡みつき、極上の快感を彼に与える。
 一方、挿入したライカも一息で子宮口まで貫かれてしまい、体をふるふると震わせながら天井を見上げてトびそうな意識を押さえつけていた。
 どちらもいきなり達しそうになっていたが、先に自分を取り戻したのはライカだった。
「それじゃあ……動く、ね?」
「おい、待、うぐっ!」
 静止の声を聞かず、ライカが腰をゆっくりと動かし始める。うねる肉壁が肉棒を擦り上げ、咥え込み、精液を絞り出そうと貪欲に蠢く。
「にゃあ、んぅっ、いいっ、いいよぉ……っ!」
「はあっ……あぐっ」
「これ、いいっ! 凄いっ! 奥までぐりぐり当たってぇ!」
 徐々にライカが腰を上下させるペースを早める。口の端から涎を垂らしてすっかり蕩けきった顔の彼女は、当初の目的をもはや覚えていない。ただ、快楽を貪るだけの悪魔に成り下がっている。
 不意に、アイルの視界が真っ暗になった。同時に顔に柔らかいものが押し付けられる。
「お兄様、舐めて頂戴」
 上からレクシィの声がした。二人の痴態に彼女も我慢できなくなったのか、アイルの顔に跨って秘所を舐めることを強制させる。一瞬躊躇った後、思い切り舌を伸ばす。
「あ、うんっ、そこ……」
「あはっ、レクシィぃ……!」
 感極まったライカがレクシィに唇と掌を重ねる。三人がそれぞれ秘所と口を塞がれ淫靡な水音を鳴らす三角形は、最高潮に達そうとしていた。
「私、もうっ……ふあ、あああん!」
「いいよ……んっ、イって、ライカ、ライカぁ!」
「ん、ぐぅ……!」
 三人はほぼ同時に絶頂に達した。白濁液がライカの中に注がれ、アイルの顔にレクシィの潮が降りかかり、二人の膣内がきゅうっと収縮する。溶けるような絶頂は、まるで三人を一つの生き物に混ぜあわせたような錯覚を覚えさせた。
 アイルの上にまたがっていたレクシィとライカが、くたっとアイルの側に倒れる。少し気をやってしまったらしい。それでもしっかり握り締められた二人の両手を見ながら、アイルはぼんやりと天井を見つめていた。

 午前0時。ブランデン城の歩哨はこの時間を目安に交代する。その隙はおよそ五分。交代は4つの門の前で行われるが、その間使用人用の通用口は無防備だ。
 その通用口のすぐ側に、3つの人影と一頭の馬があった。すなわち馬にまたがるアイルと、レクシィとライカだった。
「行っちゃうのね」
「気をつけて」
 レクシィとライカは手を繋いで馬上のアイルを見守っている。先程までの熱い情事の余韻などどこにも見当たらない。いつも通りの双子の魔族だ。
 あの後しばらく三人は――と言っても、二人が一人をほとんど一方的に嫐るだけだったが――体を重ねていたのだが、結局アイルはレクシィとライカの誘いに頷けなかった。
 このままジェイヴィックのところに突き出されるのだろうと半ば諦めていたアイルだったが、レクシィとライカは意外にもアイルの手を引いてこの通用門まで連れて行き、馬まで与えたのだった。
「……いいのか?」
 この心変わりに、アイルは未だに戸惑っている。あれだけ執着していたのにあっさり手放すとは考えにくい。
「ひょっとして」
「やっぱり私たちの……」
「いや、それはいい」
 やはりまだ諦めていないようだ。下手に絡め取られる前に話をさっさと中断させる。
「そうだ、お兄様」
「これ、ウェステンブルグのおば様にプレゼントよ」
 そう言って二人が差し出してきたのは、赤い薔薇の花束だった。いつ用意したのか、持ち手には黒いリボンがチョウチョの形に結わえられている。
 受け取る理由もなかったのだが、ここで気分を害して人を呼ばれるのはまずい。アイルは黙って花束を受け取る。
「……分かった、渡しておく」
「ありがとう」
「それじゃあよろしく、ね?」
 手を振る双子に背を向けて、彼は手綱を振って馬を進ませた。通用門を抜けて、馬はやや駆け足で街道を進んでいく。その後ろ姿を見送りながらレクシィとライカはニコニコ笑っていた。

79 :
「ねえ、ライカ」
「なあに、レクシィ?」
 遠ざかる後ろ姿を見ながら、レクシィがライカに話しかける。
「お兄様、私たちのものになるかしら」
「今のままじゃならないわよ」
「そうね。素敵なナイトだものね」
「だから仕える国を滅ぼすの」
「そうしたら、私たちのところに来てくれるよね」
「ええ、きっとそうよ」
「楽しみだね」
「楽しみだね」
 見えなくなった玩具を見ながら、彼女たちはいつまでも、いつまでも笑っていた。

80 :
 一週間後、ウェステンブルグ城。
「報告! ブランデン第一軍団が進軍開始! 目的地はファンデンです!」
「第二、第三軍団も国境に集結しています!」
「マニャーナ将軍はファンデンに到着! 現地の部隊の指揮をとる模様です!」
 ミナレッタが座る玉座の間に次々と伝令が駆け込んできては報告し、そして去っていく。報告が一つ来る度にミナレッタの顔は不機嫌に、あるいは上機嫌になるが、全体としては不機嫌なままだ。
「兄上、とうとう痺れを切らしたようね」
 伝令の到着が一旦落ち着いて、ミナレッタは吐き捨てるように呟いた。
「ごめん、ミナ。私が上手く言い訳できなかったから」
「気にしなくていいわ。どうせ兄上とはいつか決着をつけなきゃいけなかったのよ」
 申し訳無さそうなナコトの言葉を、ミナレッタは意に介していない。
「それにしても宣戦布告無しで軍を動かすなんて……そんなに焦っているのかしら?」
「あの、陛下」
 そこに、メイド長のジャスミンが入ってくる。
「どうしたの? 昼食なら後回しでいいわよ」
「いえ、その……アイル殿がお戻りになられました」
「……何ぃ?」
 ミナレッタの顔が今日で一番不機嫌になった。ブランデンに使者として赴いた後、そのまま捕まった暗者が今更戻ってくるとは思ってもみなかった。ミナレッタとしては、向こうで魔族のエサにされていたほうが良かったのだが。
「……まあいいわ、通しなさい。話だけは聞いてあげるわ」
「畏まりました」
 一礼するとジャスミンは下がってアイルを呼びに行った。
「生きてたみたいね、あいつ」
「……そうみたい」
 横目でちらりとナコトの様子を伺うと、ほんのちょっとだけ嬉しそうだった。その笑顔を見て、ミナレッタの胸中に黒い炎が燃え上がる。
 ナコトのこんな笑顔は、ミナレッタでさえほとんど見たことがない。彼女が度々笑うようになったのは、あの男が来てからだ。ずっと付き合ってきた私のナコトの知らない一面を、あの男は軽々と引き出していく。
「陛下、参りました」
 ふと我に返ると、アイルを連れたジャスミンが戻ってきていた。すぐに気を取り直す。
「ああ、使者の任ご苦労さま。ブランデンはどうだった?」
「城の中にしかいなかったからな。よくわからん」
「そう。まあ下っ端の鉄砲玉に、国の様子を見てこいって言われてもわからないでしょうね」
 ついつい言葉が辛辣になってしまうが、ミナレッタに抑える気はない。
「その花束は?」
「ああ、お前あての花束だ。向こうの姫から預かったものでな」
「ふん、敵の姫様にまんまと懐柔されるなんて……ちょっと待ちなさい」
 ミナレッタがアイルの持つ花束をまじまじと見つめる。
「これがどうかしたのか?」
「……ははは、兄上め。いや、あの娘共……やってくれる……」
 突然、ミナレッタが乾いた、そして憎悪のこもった笑い声をあげた。魔王の娘の豹変に思わずアイルは棒立ちになる。それを意に介さずミナレッタは玉座から降りて歩み寄ると、彼の手から花束をひったくった。
「アイル・ブリーデッド。使者の任ご苦労。ブランデンからの宣戦布告の証、このミナレッタが確かに受け取った」
「な、なに?」
 事態を飲み込めないアイルが問いかけると、ミナレッタは真顔で答えた。
「そのバラの花束のリボン、黒いでしょう?」
「……それが?」
「私たち魔族の間では、それが宣戦布告の証なのよ。この花束を受け取ってから、何日経った?」
「丁度一週間だ」
「なるほど。兄上が動き出したのも一週間前。一応、建前はできているわけか」
 顎に手を当てミナレッタが思案する。先程までのいらつきはどこへやら、すっかり冷静な支配者の顔を取り戻していた。度重なる怒りで逆に冷静さを取り戻したか。
「ま、やることは大して変わらないか。ナコト、午後の会議の準備をするよ。ついてらっしゃい」
「らじゃ」
 ミナレッタがマントの裾を翻して玉座の間を出る。後に第一次ファンデン攻防戦と呼ばれるウェステンブルグとブランデン大公国の戦いは、こうして始まったのだった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
 以上です。お付き合いいただきありがとうございました。

81 :
よし、とりあえず乙!

82 :
乙!

83 :
GjGj

84 :
エロガッパVSマクドナルドの女!!
http://youtu.be/NmANcpmroPE

85 :
ほす

86 :
こんばんは。今日も需要とか考えずに投下いたします。
◆◆◆

 ブランデン大公国、動く。その知らせはウェステンブルグのみならず、大陸全土を駆け巡った。
 ブランデンの軍勢3万に攻め込まれている西方のロマエ王国は、攻め手が緩むと安堵した。しかし、奪われた6割もの領土を取り返す算段はついていない。
 同じくブランデン大公国に隣接する神聖ラマンチェ大帝国は、すぐさまウェステンブルグの支援を表明、挟撃する形を取った。隣のロマエの惨状を見て明日は我が身と思ったのだろう。
 ウェステンブルグの北を根城とする『赤い盾』の一派は沈黙を保っている。どちらが勝つかを見極めてから勝者について、甘い汁を吸おうという考えだろうか。
 挟み撃ちの形になったブランデンに対し、ウェステンブルグはブランデンとの戦いだけに集中できる。それでも、ブランデンからウェステンブルグに向かう軍は、総勢3万。対するウェステンブルグは総動員して2万。厳しい戦いだ。
 しかしウェステンブルグの領主、ミナレッタは諦めない。すぐさま領内の諸侯を呼び、対策会議を開き、それぞれ役割分担をさせると2万の兵士を国境沿いに展開させる手筈を整えた。
 ウェステンブルグの諸侯はすぐさま屋敷から出発した。これから彼らは領地に戻り、兵士を送り出し、あるいは自らも武器を身につけて戦場に赴くだろう。
 その翌朝のことであった。

 ウェステンブルグ城、西の一角。がらんとした部屋の中でアイルは目を覚ました。体が妙にだるい。頭を振って起き上がる。時計を見ると、いつも起きる時間よりも大分遅かった。
 寝坊か、と寝起きの頭で考える。昨日は多くの代官や領主が城に出入りしていた。そのストレスが知らないうちに溜まっていたのだろうか。
 寝間着からいつもの服とコートに着替える。今日は遠出をする予定だ。北の町にいる情報屋に『白軍』の王妃の行方について調べるように依頼した。その結果を聞きにいく。
 まずはメイド長のジャスミンから銃を受け取り、それからお目付け役のティセと合流しなければ。すっかり慣れたタスクをこなすためにアイルは部屋を出て、それから立ち止まった。
 城の中は静まり返っていた。物音一つない。百人を超えるメイドが仕事をする雑音も、見回りの兵士たちの足音も、時折外から聞こえてくる親衛隊の掛け声も聞こえない。
 慎重に辺りを見回す。見たところ静かなだけで、城の中におかしなところは何もない。花瓶に入ったバラの花から、水滴がポタリと零れ落ちた。
 少し考えた後、アイルはとりあえず玉座の間に向かって歩き出す。ミナレッタなら何か知っているはずだ。周囲の警戒は怠らない。ブーツがじゅうたんを踏む音が、今日はよく聞こえる。
 暫く歩いていると、微かに物音が聞こえた。音のした方には半開きのドアがある。ここは誰の部屋だったか。とりあえずノックする。返事はない。だが、中にいる誰かが息を呑んだ気配はある。
「入るぞ」
 意を決してドアを開ける。その直前、待って、と声が聞こえたがもう遅かった。
「あ……」
 ドアの向こうにいたのは、戸棚に寄りかかって床に座り込んだジャスミンだった。下から見上げてくる彼女の頬は少し朱色に染まっていて、どこか扇情的だ。
 その指は淫らな粘液に濡れており、彼女の足元には、恐らく彼女が履いていたであろう純白の――尤も、少し湿っているが――下着が落ちている。その時点でアイルは彼女が何をしていたのかを察した。
「違うんです、これは、あのっ」
「……ナニしてるんだ、お前は」
「だから、違いますっ、他の皆はもっとひどくて」
「他? 他のメイドも?」
 するとジャスミンは真っ赤になって俯いて、少し間を置いてから小さく言った。
「……はい」
「何だこれは、一体……」
 呆れたようにアイルが呟く。だが、何かの異常事態が起きているのは確かだ。
「魔王の娘は? ナコトはどうしている?」
「わかりません……陛下の部屋にはまだ……」
「……分かった、すぐに見てこよう」
 そう言うと彼は部屋を出た。辺りに気を配りながら、しかしさっきよりも少し早足で進む。ミナレッタの私室に近づくと、静かだった城内に嬌声が混じり始めた。
「んっ、ふぅ……んあっ」
「やぁ……ダメ、気持ちいいよぅ……」
「ふあああっ! いいっ、そこ、そこなのぉ!」
 部屋の前を通り過ぎる度に中から喘ぎ声が聞こえてくるが、全て無視する。

87 :
 目的の部屋にはすぐに辿り着いた。他のドアよりも豪華に飾り付けられたこの城の主の部屋。ノックをするがやはり返事はない。アイルはそっとドアを開け滑り込む。鼻をつくむわっとした空気に、思わずむせ返りそうになった。
 何が起こっているのか中の様子を確認した時、彼は驚きに目を見開いた。
 部屋の中は以前見た時とは様子が一変していた。豪華な絨毯や調度品の上には腕ほどある巨大なイバラが絡みついており、所々赤いバラの花が咲いている。緑一色に染まった部屋の中は庭園そのものだ。
 そしてその中央、奇跡的に――あるいは恣意的に――無事なベッドの上に、絡み合う二人の少女の姿があった。
「ナコトッ、ナコトぉ……んっ、ちゅ、ふうっ!」
「ひあっ、らめ、ミナ、やぁぁ……!」
 責め立てるのは金髪の少女。陶磁器のように白い肌は興奮と熱で桃色に染まり、玉のような汗がその上を滑っている。細く滑らかな指は、彼女が掻き抱くもう一人の少女の乳首と秘所を這っている。
 そして彼女に抱かれているのは、銀髪のくせっ毛の少女。普段は病人を思わせる青白い肌も、今は金髪の少女と同様に紅潮している。快楽で我を忘れているのか瞳の焦点は定まっておらず、口の端から涎を垂らしてよがる肉人形でしか無い。
 ミナレッタとナコト。彼女たちがこの城の主だ。しかし今は自分たちの置かれた状況の異常さにも気付けず、イバラに囲まれて延々と快楽を貪る二匹のけだものでしかなかった。
 手遅れか、とアイルは努めて冷静に判断する。二人の美少女が絡み合っている扇情的な光景を気にしないようにしつつ、周りのイバラに目をやる。そのイバラが、もぞり、と動いた。
「ッ!」
 一瞬の勘に任せ、アイルは床に伏せる。次の瞬間、頭上を棘の鞭が通過し、ドォンと低い音とともに彼の後ろにあったドアを吹き飛ばした。飛び散った木片がアイルの頭にパラパラ降り注ぐ。
 第六感が危険を告げる。アイルはそれに逆らわない。すぐに立ち上がると部屋を飛び出し、一目散に駆け出した。その後ろをイバラたちが蛇のように這って追う。
 あのイバラは何かの魔族だ。そして何らかの術を使ってこの城にいる生物全てを発情させたのだろう。走りながらアイルは推理を巡らせる。
 廊下の先にもイバラ。挟み撃ち。床を蹴って跳躍、窓を体当たりで破る。魔法を使ってこの状況を作り出したのなら、自分にも影響があるはずだ。となれば、毒か。起きた時からの気だるさの正体はそれか。
 着地しようとした地面を見れば、土が盛り上がりイバラが顔を覗かせようとしている。このままでは捕まる。アイルは左腕を城の屋根に向かって伸ばした。無論、届くはずがない。それは彼もわかっている。
 彼が手首を複雑に捻ると、袖口からフック付きのワイヤーが飛び出した。射出されたフックは屋根に食い込み、アイルの体は振り子のように空中で方向転換する。
 もう一度手首を捻ると、コートの袖の中の発射機構からワイヤーが切り離された。再び慣性に捕らえられたアイルの体が飛んでいくのは、玄関ホールの窓だ。腕を顔の前で交差させる。
 ガシャアン、とさっき窓を破った時よりも一際大きい破砕音が玄関ホールに響き渡った。続いて、無数の破片とともにアイルが絨毯の上に転がる。破片で切ったのか、その頬からは血が流れている。
 素早く辺りを見回す。イバラの姿はまだない。これなら城外まで逃げ切れるか。アイルは躊躇うことなく正面の大扉を開いた。
「つっかまえたー!」
 次の瞬間、彼の腹を強烈な衝撃が襲った。肺の空気を全て外に搾り取られるかのような打撃に、彼は一瞬意識を失う。気がついた時、彼は大広間の絨毯の上に転がっていた。
 すぐさま起き上がろうとしたが、両腕をイバラに押さえつけられた。バラの棘が両腕に食い込む。
「えへへ、鬼ごっこは私の勝ちだよ」
 頭上から無邪気な声が聞こえてくる。続いて器用に体に巻きついたイバラによって体を空中に持ち上げられた。それでようやくアイルは、この城全体を覆う異変の正体を知った。
 彼の前にいたのは巨大なバラの花だった。2mはあろうかという大きさのバラは、目が痛くなるほど鮮やかな赤色に輝いている。バラの下部からは無数のイバラが伸びており、幾つかは地面に刺さり、それ以外は足のようにバラを支えている。
 だが目を引くのは花の巨大さだけではない。バラの花の中央には本来あるはずのない、いや、いるはずのない者がいた。

88 :
「久しぶり、アイルおにーさん。元気だった?」
 バラの中央から『生えて』いるのは、薄緑色の肌の少女だった。瞳の色はバラの花びらと同じく赤色で、群青色の髪には黒いリボンが結び付けられている。
 若木のような瑞々しい体は余すとこなく外気に晒されており、見た目には不釣り合いな大きな胸も、奇妙な刺青の入った腰も、一筋の線にしか見えない秘裂も、全てさらけ出されている。
 巨大な花を操る魔族、アルラウネ。そんな魔族がいた事をアイルは思い出す。だが、久しぶり、と言われるほど親しい仲の魔族は記憶に無い。ましてや名前を教えたことなど。
「……誰だ」
「やだなー、もう忘れちゃったの? 私よ、私」
「知らん」
「……これに見覚えは無いかなー?」
 首を傾けて、アルラウネは髪に結ばれた黒いリボンを見せつけてくる。黒いリボン、バラの花。まさか、と脳裏にある可能性がよぎる。
「あの……バラの花束か?」
「はいっ、正解です!」
 満足のいく答えが得られたアルラウネはにっこり笑って頷いた。
「レクシィ様とライカ様からね、お城に忍び込んでこいって言われた時はどうしたのかと思ったけど、まさか戦争を始めるなんてねー。
 まあ、アイルおにーさんがここまで連れてきてくれたたおかげで、こうしてお城をえっちな花粉で一杯に出来たし、これでお仕事完了かなー?
 あ、でも王様がこの城に来るまではちゃんと足止めしておかないといけないし、もう少し残ってないといけないのかな? うーん、どうなんだろ」
 ペラペラとよく口が回る魔族である。その間にアイルはなんとかイバラから抜けだそうとしたが、ガッチリ巻き付いておりビクともしない。
「あれ、アイルおにーさんまだ動けるの? ってゆーかさっきちょっと本気で殴っちゃったけど、あれでんでないの?」
 アイルの体がグイとアルラウネに引き寄せられる。イバラではないアルラウネの人間部の手がアイルのコートとシャツに伸びて、そのボタンを外していく。
 露わになった彼の腹部は見たところ傷のついていない綺麗なものだった。
「ふーん。ドラゴン皮のコートかぁ」
 アルラウネがごわごわしたコートの生地を撫でる。魔界でも一線を画す強さを持ったドラゴンの皮膚はいかなる刃も通さず、熱や電撃、魔力にも強い。アルラウネのイバラの一撃では傷ひとつつかないのも当然だ。
 ただ、防げるのは傷だけで、殴られた衝撃はちゃんとアイルの体に伝わっていた。
 続いてイバラがグッとアイルを引き下げ、アルラウネの顔の高さに彼の顔を合わせた。宝石のように赤い瞳が彼の顔をまじまじと見つめる。
 アイルは朝から感じていた体の気だるさが熱に変わるのを感じた。耐えられないことはないが、幾分苦しい。
「……おにーさん、平気なの?」
「何がだ」
「私、頑張っておにーさんをえっちにする花粉出してるんだけど。普通の人間だったらとっくにおかしくなっちゃってるよ?」
「毒なのか、それは?」
「うーん? ……うん、そーだね。人間の言葉で言ったら、毒だよ」
「なら諦めろ。俺に毒は、効かん」
 『白軍』の暗者として育てられた彼は、毒に対してある程度の耐性がつくように訓練されている。
 しかし全く効かないというのは嘘だ。体が毒に慣れているとはいえ、彼は人間である。少し息が荒くなっているのがその証拠だ。そしてアルラウネが面白そうに細めた瞳は、彼の嘘を見抜いていた。
「へえ……本当に?」
 いたずらっぽく笑うと、アルラウネはアイルを抱き寄せる。顔を胸に埋められた彼はもがくが、イバラでガッチリ腕を固められて何もできない。そうしているうちに、更に花粉が肺の中に入り込む。
「やめっ……むぐっ……」
「ほらほら、大人しくしてー」
 子供をあやすようにアイルのくすんだ金髪を撫でつける。彼が暴れれば暴れるほど花粉は彼の精神を蝕むが、どうすることもできない。
 彼を捉えているアルナウネは、自分の胸の中で彼がもがく感触で頬を染めている。その余裕に満ちた表情が、一瞬ピクリと歪んだ。
「んっ……?」
 見れば、暴れていたアイルはすっかり大人しくなって、アルラウネの乳首に吸い付いていた。毒が許容量を超えたようだ。

89 :
「やっと堕ちてくれたんだ……ふふっ」
 くすくす笑ってアルラウネはイバラの拘束を解く。どんな人間だろうと魔族だろうと、彼女の毒が一度効いてしまえばただのケダモノと化す。そうして理性を失った相手から生命力を一滴残さず搾り取る。それが彼女たちの食事の仕方だ。
 瞳から光を失ったアイルは、ただ目の前にいる女に襲いかかることしか考えられない。アルラウネを赤いバラのベッドの上に押し倒す。
「ひゃんっ! もう、元気すぎるよ、おにーさん?」
 毒に耐性があった分、一度振り切れた反動は大きい。常人にはまず耐えられない花粉に狂ったアイルは、アルラウネの文句など聞かずにその乳房に乱暴にむしゃぶりつく。
「あ、ふ……そんなに乱暴にしちゃらめえ……」
 アルラウネの胸は、不思議と蜂蜜のような甘さがあった。いつまでも舐めていたくなるような衝動に駆られる。その甘さをもっと濃く堪能しようと、彼は乳房を吸い上げ揉みしだく。
「ふああっ! そ、そんなに揉んでも何も出ないよう」
 ちゅっちゅと乳房を吸う度に、アルラウネは甘い声を出して体をよがらせる。しばらくそうして彼女の体を堪能していた彼だったが、やがて思い出したように彼女の下半身に手を伸ばした。
「ひゃうっ!?」
 アイルの指がアルラウネの秘所に触れる。そこは既に濡れていて、いつでも肉棒を受け入れられる状態になっていた。
 一度手を離して、内腿全体を探るように撫で回す。すると彼女の膝の辺りで妙な感触にぶつかった。押したら跳ね返ってくる人間の肌ではなく、すべすべした樹木のような手触り。
 奇妙に思ったアイルが胸から口を放し、それを見る。縛られていた時はバラの花びらに隠れていて見えなかったが、彼女の膝から下は太い茎が寄り集まった物に置き換わっていた。足を模した茎の束は花びらの中心に伸び、その先は暗闇で見えない。
 魔物の本性を表したかのようなグロテスクなパーツを目にして、アイルの正気が一瞬戻る。逃げようと身を起こす。
「行っちゃだめだよう」
「がっ……!」
 甘い声と共に、体にイバラが再び巻き付いた。更にその上からアルラウネが覆い被さる。薄緑色の頬を紅潮させた彼女は、アイルに抱きついて胸元に頬ずりする。
「まだ抵抗できるなんて、おにーさん凄いね……これなら、もっと濃いのを使っても大丈夫かな? 花粉の原液なんだけど」
 アイルの顔から血の気が引く。さっき正気に戻ったのも奇跡のようなものだ。これ以上毒を盛られては二度と戻ってこれなくなる。
 必にもがくが、やはりイバラは外れない。それを楽しそうに眺めてから、アルラウネはアイルの胸に牙を突き立てた。
「うっ、ぐあ……ッ!?」
 一瞬の痛みの後、噛まれたところから灼熱にも似た快感が全身に広がっていく。彼の理性は今度こそ毒に飲み込まれた。
「どう、おにーさん……んっ」
 ガクガクと痙攣するアイルに、アルラウネは唇を重ねる。熱い舌同士が絡み合い、アイルの口に甘い唾液が流れ込む。彼がキスに抵抗しなくなったのを見て、アルラウネはイバラの拘束を解いた。
「グアァッ!」
「きゃあっ! ……んもうっ」
 案の定、毒に狂ったアイルがアルラウネを再び押し倒す。アルラウネは逃げようともしない。すぐにズボンのジッパーを降ろし、ガチガチにそそり立った肉棒をアルラウネの秘所に突き入れた。
「あぐっ……!」
「ふあっ!? い、挿れただけでイッちゃったの……?」
 いきなり最奥で精液を吐き出される感触に、アルラウネは戸惑いの声を上げる。散々花粉の毒で高められていたアイルの性欲は、うねうねした膣肉の壁をこじ開けるだけで一度果ててしまった。
 しかし人外の媚薬に染められた獣が、これだけで止まるはずがない。まだ射精が止まらないのに再び彼は腰を動かし始めた。
「ひゃっ……もう、あんっ、大丈夫なの?」
 返答はない。ただ黙々とピストンのペースが早くなる。アルラウネの柔肉は人間のそれとは違い、無数の肉の紐が絡まり合ったような形をしている。肉棒を突き入れ、引き抜く度にその紐が肉棒に絡みつく。
「んぐっ、ふああっ! おちんちん、お腹の奥叩いちゃ、あっ、ひ……だめぇ、感じ、感じすぎちゃうよお!」
 肉棒を撫で回す感覚に夢中になり、アイルのピストンはかなり乱暴なものになっている。執拗に子宮口を責められるアルラウネの目元には涙すら浮かんでいるが、気遣う理性など残っていない。
「あっ、だめっ、もう、ひあうっ! だめ、イッちゃう、イッちゃううう!」
 一際高く叫んだアルラウネの膣が、アイルの肉棒をきつく締めあげた。欲望のままにアイルは精液を膣内に解き放つ。びゅくびゅくと音がしそうな射精に、膣奥から湧き出てきた粘液が混ざる。

90 :
「あうう、ナカに……ひゃうっ!? あ、待って、まだイッて、いぎいっ!?」
 余韻に浸る間もなく、アイルはまた抽送を再会する。絶頂中で締まりきった膣内を掻き分けるのは、今まで彼が得たどんな快楽よりも気持ちいい。
 その上突けば突くほど、膣奥からローションのような粘り気の強い愛液が染み出してくる。それがお互いの性器に絡みついて快感を一層高めていく。
「あ、ぐ、うあ……ひぃぃ、またおちんちんから、せーえきでてるう……」
 三度目の射精の後、アイルは半ば意識を飛ばしかけているアルラウネの髪を掴んだ。
「い、痛っ! なに、ひゃんっ!」
 一度身を起こしたアルラウネを、今度はうつ伏せに押し倒す。丁度尻を突き上げるような形になったら彼女に、アイルは遠慮なく肉棒を突き挿れた。
「ひぐっ!? お、ああ……」
 内蔵全体を押し込まれるような衝撃。後背位に変わった分、より深く肉棒を奥まで押し込めるようになった。アルラウネの口から、呻き声に似た嬌声があがる。
「んぐっ、はっ、おにー……ひゃふ、おにーさん、ああっ!」
 花びらに顔を擦り付けてアルラウネが喘ぐ。彼女の膝下の茎の束がざわざわと動き、アイルの足に絡みつく。どうあってもこの快楽を逃がさないつもりだ。
 もちろん、溺れる彼がそれに気づくはずがない。アルラウネが絶頂すると同時に、一番深い所で子宮に向かって精液を放つ。
「すごぉい……お腹タプタプ言って、んあうっ!?」
 膣内に栓をしたまま、アイルはまだピストンを止めない。子宮全体を精液で埋め尽くそうとするような、貪欲な征服感に突き動かされて、彼は次の射精を目指して腰を振る。
「せーえき漬けだよぉ……人間にこんなにされるの初めてぇ……」
 子宮の中で精液がシェイクされる感触にうっとりしながら、アルラウネは呟く。その背中に覆い被さり、アイルは彼女の両胸を乱暴に揉みしだいた。
「んあっ! ふふ……いいよ、好きなだけ絞りとってあげる」
 すべすべした肌の感触と、妖艶な囁きに導かれて、アイルはまた精液を吐き出した。

 それからどれぐらいの時間が立ったのだろうか。
「んぅ……アイルおにーさぁん……」
 仰向けに倒れるアイルの体は、半ばイバラに飲み込まれていた。腕は無数のイバラが巻き付き、足はアルラウネの膝から伸びたイバラが覆い隠している。
 そして彼の肉棒は伸し掛かるアルラウネに咥え込まれ、彼女の言いなりになって精液を吐き出す器官と化していた。
 毒が回りすぎ、体力も尽きたアイルにできることは、騎乗位で腰を振るアルラウネの子宮に向かって射精することだけだ。虚ろな瞳は呆然と彼女を見つめ、口の端からはだらしなく涎が垂れている。
「ほら、またせーえき出して」
 アルラウネが呟くと、きゅっと膣肉が締まり肉棒から精液を搾り取る。初めの勢いは面影すらなく、肉棒からはほんの少し精液が漏れ出るだけだ。
「もう限界かな」
 その呟きはアイルに向けられたものではない。彼女の独り言だ。彼の四肢を飲み込んだイバラたちがゾワゾワと動き、彼の胴へと登っていく。
「凄かったね、アイルおにーさん。しちゃうのは勿体無いから、私のナカで飼ってあげる。おいしい蜜も食べさせてあげるし、元気になったらまたさっきにみたいに一杯セックスさせてあげるよ」
 愛おしく頬を撫でる彼女の瞳は、危険な輝きを放っている。しかし自我を失ったアイルはその瞳に見つめられることしかできない。
 最後に、アルラウネが彼の頬にキスをして、イバラの群れが彼全体を飲み込もうとした時だった。
「おとーさんを……」
 アルラウネの後ろから、声。
「いじめるなぁーっ!!」
 アルラウネが振り向いた瞬間、一瞬何かがフラッシュし、続いて煙を吹いて飛ぶ何かが彼女に向かって飛んできた。
「えっ!?」
 驚愕しながらも、アルラウネのイバラがそれを撃ち落とす。だが、イバラに触れると同時にその何かは爆発を起こし、イバラもろとも消滅した。
「なに、なんなのっ!?」
 慌てて新しいイバラを自分の周りに展開させるアルラウネ。爆発の煙が晴れた時、彼女は玄関ホール二階の渡り廊下に立つ人影を見た。
 腕を組んでアルラウネたちを見下ろすのは、仁王立ちした鋼色の髪の少女。左手と両足を機械に置き換え、背中にはエンジン音を立てる機械の翼を展開している。アルラウネを睨みつける赤と金のオッドアイには怒りの炎が宿っていた。
 偽物の記憶でアイルを父と慕うサイボーグの少女、ティセ。今日までバラの花束の姿で隠れていたアルラウネは、彼女のことを知らなかった。

91 :
「誰よあなた!」
「うるさい! お父さんをいじめるのは許さないんだから!」
 言うや否や、彼女の太腿が展開し中から小型ミサイルポッドが出現、アルラウネに向かって8発のミサイルを発射する。しかし備えていたアルラウネはそれをイバラの鞭で叩き落とす。さっきと同じく、イバラとミサイルがぶつかり合い、爆発して相される。
 だが、アルラウネが放ったイバラはそれよりも多かった。爆発をくぐり抜けたイバラが猛スピードでティセに襲いかかる。
「邪魔するな……なっ!?」
 捉えた。そう思った瞬間、ティセが何の予備動作も無しに跳躍、そして、飛んだ。銀色の閃光となって、瞬きする間もなくアルラウネの眼前に迫る。銀の光が一瞬視界を覆い尽くし、そして消えた。
 見失った敵を探して辺りを見渡せば、自分の丁度真後ろに、ティセは浮いていた。背中に取り付けられたエンジンが火を吹き、絶妙なバランスでティセを空中に留めている。その右腕には、抱えられたアイルがいた。
「あっ、あれっ? あ、このっ、盗んだな!」
 自分の足元を見れば、イバラの中に飲み込みかけていたアイルがいなくなっていて、代わりにバラバラに刻まれたイバラの残骸が残っている。
「……うう、返せぇぇぇ!」
 お気に入りの人間を奪われた怒りと、突然現れた謎のサイボーグへの戸惑い、それに一瞬怯えてしまった自分への恥ずかしさ。そういう感情がないまぜになって、アルラウネの中で爆発した。
 彼女の叫びと同時にありったけのイバラが宙を駆け、ティセに向かって到する。再びティセは背中のエンジンをふかし、急加速してそのイバラから距離をとる。大広間の天井から地面スレスレまで、空間すべてを使ってイバラから逃げ回る。
 もちろん逃げる場所は次第に少なくなり、遂には天井の隅に追い詰められる。だが、それだけの時間があればティセにとっては十分だった。
 左腕を、いや、左腕だったものを突き出す。内蔵パーツを繰り出して変形した機械の腕はいまや一つの砲になっていた。エネルギーのチャージも十分だ。
 光を放つ砲口を到するイバラに、その先のアルラウネに向ける。赤い右目の瞳孔が収縮し照準を補正する。ほんの僅かに砲口を左に向け、準備は整った。
「いっけぇぇぇっ!」
 ティセの気合とともに、エネルギーが解き放たれる。衝撃に銀色の髪が巻き上がり、閃光が膨れ上がる。今まさに飛びかからんとしていたイバラは残らず光の渦に飲み込まれ消えた。
「なっ――!?」
 そして、自分のイバラの壁を貫いて迫る閃光に驚愕したアルラウネもまた、光の中に消えていった。

92 :
 ウェステンブルグにも烏はいる。人界に魔族が現れて住み着くようになってから、人界の生態系は大きく崩れてしまったが、それでも烏のようにしぶとく生き残る動物たちはいる。
 そんな生き残りのカラスたちがかぁかぁと鳴く夕暮れ時。玉座の間はなんとも言えない空気に包まれていた。
「あー……」
「うーん……」
「その……」
 玉座にはいつも通りミナレッタが座っていて、その隣にはナコトが控える。そして部屋の入口にはメイド長のジャスミンが立っている。いつものウェステンブルグだ。
 彼女たちはどこか上の空だ。それもそのはず、さっきようやくアルラウネの花粉が抜けて正気に戻ったばかりである。ふとしたことで昼間の熱い情事を思い出し、顔を赤くしてしまうのだ。
 そんな中でいつも通りなのは、ニコニコ笑っているティセと、胸を張っている彼女の生みの親、エシェルだ。
「ふっふーん、どうよお嬢様。花粉の毒は効かないし、侵入者も一撃必。うちのティセは強くて可愛いでしょう?」
「ティセは強くて可愛い!」
 天真爛漫な笑みを浮かべてティセが繰り返す。「いや、それはいいから。というかエシェル、お前が威張ることじゃないでしょ。自分の研究室であんなに盛ってたくせに」
「う……いや、その話は無かったことに」
 アルラウネがアイルを襲っていた頃、ティセは調整カプセルの中で目を覚ました。健康診断と機械部分の修理を自動で行なってくれるカプセルから起きて彼女が最初に見たのは、自分のアダルトグッズで自慰にふけるエシェルの姿だった。
 空気中に興奮作用のある花粉が撒かれていることを体内のセンサーで知ったティセは、すぐに大元を立つために研究室を飛び出し、そしてあの場に至ったのだった。
 ちなみに散々アルラウネに吸われたアイルは、一命を取り留めたものの、毒と疲労で昏睡状態のために自室のベッドに寝かされている。今頃はメイドの誰かがタオルで体を拭いてやっているところだろうか。
「とにかく! ティセがこんだけ頑張ったんだからご褒美ちょーだい! まずは研究予算の拡大と待遇改善、地下の研究室はもっと広くして、バスルームは別にして……」
「あのねえ、これから戦争やるっていうのにそんなお金出せるわけないでしょう?」
「うええっ!? 頑張ったのに予算どころがボーナスも出ないなんて! 私は奴隷じゃないのよ!?」
「だ・か・ら! お前が頑張ったんじゃなくて、この機械娘が頑張ったんでしょう?
 だったら、その子が自分で決めるのが筋ってものじゃない?」
「え、私?」
 突然話を振られたティセはきょとんとして聞き返した。
「そう、お前よ。何でも好きなものを言いなさい。出来る範囲で叶えてあげる」
「ホントに!?」
 ティセが目を輝かせる。その様子を見てミナレッタはにんまりと笑った。いかに機械化されて並外れた戦闘力を持ったとしても、その頭脳は子供のままだ。
 好きな褒美と言われても、飴玉とかぬいぐるみとか、そんなちゃちなものしか欲しがらないだろう。そこまで計算済みで彼女はティセに聞いたのだ。
 だが、ティセの答えは彼女の想像を上回っていた。

93 :
「うーんと、それじゃあね。お父さんと一緒の部屋で暮らしたい!」
「へ?」
 ミナレッタの頬杖がずり落ちた。
「だってお父さんと一緒にいられるのは、お父さんが出かけるときだけなんだもん。
 せっかく一緒のお城にいるんだから、ティセだってお父さんと一緒にお風呂に入って、ご飯食べて……それで、い、一緒のベッドで寝たいもん」
 何故か最後の一言は真っ赤な顔になっているティセ。それを見てぽかんとしていたミナレッタだったが、やがて俯いて肩を震わせ始めた。
「くっ……ぷ……っははははは! なあに、そんなことでいいの!?」
 絵に描いたような大爆笑。ひとしきり笑った後、ミナレッタは笑顔で答えた。
「いいわ。明日から、いや、今からでも、あいつがうんざりするぐらい一緒にいてあげなさい。私が許すわ」
「ほんとに!? やった! じゃあ今からお父さんのところに行ってくるね!」
 満面の笑みに浮かべて駆け出していくティセ。その後ろ姿を見てミナレッタはニヤニヤ笑っている。これからアイルはティセに一日中付きまとわれてうんざりすることになるだろう。
「わ、私の夢が……予算がぁ……」
 一方、見事に手柄が空振りしたエシェルはその場にがっくりと崩れ落ちる。
「別に予算をやらないってわけじゃないわよ」
 半分呆れ気味に、ミナレッタが言う。
「えっ?」
「未然に防いだとはいえ、あのアルラウネ一匹にこの城が落とされそうになった、それは事実よ。
 だからあいつに負けないような強いボディーガードを作りなさい。あのティセみたいに。それだったら予算でもなんでもくれてやるわよ」
 そういうミナレッタの顔は真剣そのものだ。大事にはならなかったものの、敵に早速裏をかかれてプライドが傷ついたのだろう。
 既にウェステンブルグとブランデンの戦争は始まっている。何としても勝たなければいけない。そういう意気込みを感じ取ったエシェルは、立ち上がると服についた埃を払った。
「分かったわ。なーに、安心しなさい。この天才エシェル様にかかれば、最強のボディーガードぐらいニ週間、いや、一週間で作ってあげるわよ!」
「その言葉、期待してるわよ」
 ミナレッタの言葉に頷いて、エシェルは玉座の間を出ていった。その姿を見送りながら、ミナレッタは遠い地、ウェステンブルグとブランデンの国境に思いを馳せる。

◆◆◆
以上です。投稿ミスして1レス増えました。すみません。
ご視聴ありがとうございました。

94 :
続ききたー
Gj!

95 :
 今更ながらに「神撃のバハムート」の主人公が一級フラグ建築士過ぎる〜。
 妖精の森でエルフ女王の娘(外見年齢12、3歳)とともに行動して惚れられ(最後の「もしよかったら一緒にこの森を……」って台詞、どう見ても婿取り用プロポーズだよなぁ)、かつ悪魔にさらわれた彼女を取り戻すため旅に出て(現在奪還中)……。
 天空の城で眠っていた吸血姫の幼女(外見年齢10歳弱)に懐かれて、挙句、住まいを無くした彼女の旅につきあって、母親?(ヴァンパイアクイーン;穏健派吸血鬼のトップ)に逢わせてあげて……(人間なのに母に信頼され、ショタ兄も懐柔済み)。
 戦場では、ドジっ子天使や人形娘、果ては地獄から召喚されたケルベロスを自称する犬耳娘(外見17、8歳)とイチャイチャするし。
 人外充、爆発しろと言いたい気持ちを込めて、オートマータの人形遣い・オーキスとのその後を妄想してみました。
『必然と言う名の朱い糸』
 ひとりの魔術師がいた。
 才気にあふれ、若くして天才と呼ばれた彼は、とくにゴーレムやオートマータの製作に優れた技量を発揮した。青年期の終わりには、彼の才能を買ったとある国に宮廷魔術師として迎えられ、国を支える一端を担いさえしたのだ。
 やがて初老の域に達した頃、彼は職を辞して郊外に居を構え、森の奥の小さな館で隠遁生活を送ることを選んだ。
 もっとも、隠棲してからの彼は、「ゴーレムマスター」と呼ばれる程のその得意分野に暇な時間のすべてを注ぎ込み、ついに一世一代の傑作──いや、"愛娘"とも呼ぶべき存在を作り上げる。
 「オーキス(白百合)」と名付けられた"彼女"は、一見したところ12歳くらいの端麗な少女のようにも見えた。
 もっとも、注意深い人間であれば、すぐに彼女の肌が生物らしくない硬質な質感を持ち、また、目立たないが肩などの関節部にうっすらと継ぎ目のようなものがあることに気付くだろう。
 少女型自動人形(オートマータメイデン)──あえて分類すれば、そんな言葉で表現できるだろうか。
 しかし、高度に発達した知性と自立した思考を持ち、のみならず人の感情(こころ)さえ理解しうる"少女"は、すでにオートマータやゴーレムなどという範疇から半ば逸脱した存在と言ってよいだろう。
 ある意味、古代錬金術師たちが生命の創造に挑んで造り出したホムンクルスたちと同様、「人造人間」という呼称が、彼女にも当てはまるのかもしれない。
 魔術師は、彼女を時には「実験の対象」として扱うこともあったが、大半の時間は"ふたり"の間には、あたかも本物の父娘ないし師弟のような穏やかな関係が築かれていた。
 しかし──。
 魔術師がかつて仕えていた王の乱心が、このささやかな平和を壊すことになる。
 王は、魔術師が国防用にと作り上げた巨大ゴーレムたちの命令を書き換え、周辺諸国への侵略に乗り出したのだ。
 それを知った魔術師は自らの創造物が人々を不幸に陥れることをよしとせず──刺し違える覚悟で、最強とも言えるゴーレムを作り上げて王都に乗り込み、王とその配下のゴーレムたちに戦いを挑んだ。
 だが、多勢に無勢故か、あるいは王への憤怒故か、その戦いぶりには余裕がなく、王都の人々も巻き込むこととなり、人々は彼に恐怖を抱いた。
 幾人かが決の覚悟で他国に救援を求め……結果から言うと、彼は、大国から派遣された一団と、旅の途中、たまたまこの国に立ち寄ったひとりの騎士の手で討たれることとなる。
 もっとも、他国にとって脅威となるゴーレムもほぼすべてが破壊され、また暗愚な王もすでに王座から姿を消していたため、魔術師の一命を賭した試みは、結果的に叶えられてはいたのだが。

96 :
 ひとり館に残された"少女"──オーキスは、その身に宿った魔術師の血(製作時に"生"を呼び込む触媒とされたもの)の繋がりで、"父"のを悟り、静かに涙する。
 そして涙が止まり、悲しみと、そこから立ち直るすべを知った少女は、旅に出た。
 "父"であり"師"でもあった魔術師が、何を見て何を知り、何のために戦い、何を思いながらんだのか。
 それらすべてを自らの"心"で理解するために。
 そして、自らの"生きる"意味を見出すために。
 オーキスには、"父"から受け継いだゴーレム作成の知識とそれを操作する技術があり、旅の途中、魔物あるいは夜盗の類いから身を守るため、時にはその技で戦うこともあった。
 何事も経験かと、いわゆる冒険者や傭兵の真似ごとなども何度かしてみた。
 そうした中、とある戦場──グレイスポーンの軍勢から、国を守るための戦いで、彼女はひとりの自由騎士の青年と出会う。
 たまたまオーキスとコンビを組んで戦うことになったその騎士は、不思議な雰囲気の持ち主だった。
 若いのに何かひどく達観したような空気と、同時に少年のような純粋さを併せ持ち、しばらく接すれば明らかに人ではないとわかる彼女のことも、ただの人形ではなく、生命あるもの──それも守るべき淑女(レディ)であるかのように扱う。
 旅の途中で得た経験の蓄積で、人の感情の機微をそれなりに理解しつつあったとは言え、自らのソレについては未だ無自覚と言ってよいオーキスだったが、その騎士を見ていると、何とも言えない胸騒ぎのような感覚に襲われるのだ。
 そして、彼こそが、自らの"父"を討ち果たした名もなき騎士本人だと知った時、オーキスの心に湧き上がったのは、怒りでも悲しみでもなく……。
 * * * 
 「──騎士よ。私は運命を信じない。あれから長く旅をしてきたけれど……此処で貴方と出会ったことは、きっと必然でしょう」
 かの魔術師が葬られた小さな石造りの墓がある丘の上から、遠くを見つめながら、銀髪の少女は穏やかな声で囁くように言葉を紡ぐ。
 「彼の名誉にかけて感謝を。貴方が止めてくれなければ、もっと悲しい事になっていたかもしれない」
 少女はその手を騎士──俺に差し出し、私もしっかりとその手を握る。
 「私のマスターを……私の大切な人(ちち)を止めてくれてありがとう」
 主であり父とも呼べる人の名誉を守った騎士への感謝を少女は告げる。一般には悪人とされたかの魔術師だが、その真意を、少なくとも少女と俺だけは理解していた。
 「マスターが生きたこの"世界"は広い、そして美しい。それを誰よりも知っていたあの人は、決して悲しみに心折れたりしていなかった。精一杯、運命に立ち向かったのだから」
 「そう、だね」
 少女が打ち明け話を始めて以来、初めて俺は口を開いた。
 「直接顔を合わせたのはほんの僅かな時間だが、俺にもあの人の目からは、狂気も絶望も感じられなかった。そう、思うよ」
 その言葉を聞いて、少女の朱い瞳に僅かにうれしそうな光が浮かんだ。
 「そう。ありがとう。
 ──私は私の生を生きる。生きる意味は、生きることそれ自体にあると思うから」
 凛とした声音でそう述べる彼女の姿は、決して人の手で造り出された意思無き人形(もの)ではなく、紛れもなく一個の生命(いのち)と呼ぶにふさわしいだろう。

97 :
 「陽が落ちたわ。すぐに寒くなる」
 私は寒くないけれど……と、微笑んだ少女のその笑顔の温かさに、不覚にも俺の鼓動が半拍跳ねる。
 「──さぁ、行きましょう」
 先程の感謝の握手とは異なる意味で差し出された手を──俺は一瞬の躊躇いもなく取り、その繊細な機構を壊さない範囲で強く握る。
 「ああ、行こう。一緒に、世界をぐるっと回りに」
 それは、俺達の関係が、単なる戦友(ウォーフェロー)から相棒(パートナー)へと変化した瞬間だった。
 * * * 
 ……などと言う、"ちょっといい話"風の展開の、わずか1ヵ月後。
 「あ〜、色々聞きたいことはあるが、オーキス」
 「──はい」
 「なんで、俺、目が覚めたらベッドに縛りつけられてんの?」
 しかも下半身スッポンポンで。
 いかに気の置けない仲間相手とは言え、女の子(推定外見年齢12歳くらい?)の前でこういう姿をさらすのは、さすがに恥ずかしいんだけど。
 「解いてくれるとうれしいなぁ。そりゃ、オーキスの好奇心の強さについては一応理解してるつもりだけど……」
 「いえ、単なる男性器に対する知識欲から、私の操糸(いと)で貴方の四肢の自由を奪ったわけではありません」
 俺の推測を否定しつつも、オーキスの視線が俺のナニに釘付けのように感じられるのは、気のせいだろうか。
 共に肩を並べて戦ったあの戦場にいた頃から薄々気づいていたことだが、オーキス──この規格外の自動人形として生まれた少女は、パッと見はクールで事務的に見えるが、その実、非常に素直で優しい感性と旺盛な知識欲を持ち合わせていた。
 初対面の人には無愛想かつ無表情に見える顔だって、慣れてくれば、下手に隠そうとしない分、むしろ感情は読みとりやすいほうだろう。
 今だって、彼女の一見澄ました顔には、少女らしい恥じらいと、隠しきれない好奇心、そして何やら決意めいた色が見て取れた。
 「えーと……ならばせめて、どういうつもりでこんな事をしたのか、教えてくれないか?」
 「もちろんです。ハルト、貴方とともに旅するようになって28日、それ以前にあの戦場で出会った日から数えるとすでに45日が経過しますが……その間、貴方は一度も、していないはずです」
 「? 何を?」
 「自慰行為をです」
-つづく-

98 :


99 :
つづきはよ
いや、おねがいします

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