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2011年12月1期FF・ドラクエ38: クリフトとアリーナの想いは Part12 (544)
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クリフトとアリーナの想いは Part12
- 1 :11/01/10 〜 最終レス :11/12/08
- クリフトとアリーナの行く末を語らうスレです。
職人さんによるSS投稿、常時募集!
クリフトとアリーナへの想いは@wiki(携帯可)
ttp://www13.atwiki.jp/kuriari/
前スレ
クリフトとアリーナの想いは Part11
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/ff/1263220200/
性描写を含むもの、あるいはグロネタ801ネタ百合ネタ等は、相応の板でお願いします。
趣向の合わないスレはスルーしましょう。
また、ファンサイトやファンサイトの画像への直接リンクを無断で貼るのは控えましょう。
- 2 :
- 過去スレ↓
クリフトとアリーナの想いは Part11
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/ff/1263220200/
クリフトとアリーナへの想いはPart10
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/ff/1243146695
クリフトとアリーナへの想いはPart9
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/ff/1208778416/
クリフトとアリーナの想いはPart8
http://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1193991148/
クリフトとアリーナの想いはPart7
http://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1172068262/
クリフトのアリーナへの想いはPart6
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/ff/1154693017/
クリフトのアリーナへの想いはPart5
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1145158924/
クリフトとアリーナの想いは Part4.2
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1137763522/
【片想】クリフトとアリーナの想いは Part4【両想】
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1127912729/
【脳筋】クリフトとアリーナの想いは3【ヘタレ】
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1107964272/
クリフトとアリーナの想いは その2
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1054024302/
クリフトのアリーナへの想いは
http://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1027954353/
- 3 :
- __△__ アリーナ
ヽ___/
/ ,ノノハ))
(9ノノ(,゚.ヮ゚ノi
@〃とヾ二)つ
. ん'vく/___iゝ
. じ'i_ノ
,. -−、
| |田|| クリフト
|__,|_||
L..、_,i
. 。ぐ/|.゚.ー゚ノゝ
`K~キチス
∪i÷-|j
Li_,_/」
し'`J
- 4 :
- _,..-―-.、
/―‐-:、: : : \
/ \: : : :\
/ ヽ: : : : :\
/ / ̄ ̄\ .|: : : : : :ヽ
| /:/^l l^ヽ | .|: : : : :|
| | l:::::l l::::::l .| |: : : : :|
| |┌┐┌:┐.| |: : : : :|
|. | l::::l :|::::/./ |: : : : :.|
.| \┘└'/ |: : . : : |
|  ̄ ̄ |: : . : : |
,レ'´ ̄ ̄ ̄ ̄``''ー‐┴-、_ : : :|
|::: : : : : : : . `ー-、_」
_,.l::-‐―――‐--.、_.○ . : : : /
//>/._,r―-r-ri__i__ i | ト、_ : : : :/
└‐┬‐‐:くー-、 冫,r‐、L__.| | `ー-〈
└-、ヘ.`Tヽ! l,イ^ヽ. | l ,ノVvヘ
`lヘ.Ll゚| |゚l..ノ //,ヘ、⌒"゙´〉
`| < "~゙゙' //7ソ.,:r-‐''´
\  ̄ ,.ィ´「r='´ー-、._
_r'i ̄ ̄、`ーr ' _,..:┴7´ ノ :`i
__.」 | /-┴'''´ / / :| ̄`'ー‐:、
_/:: :| ヽ L.___/ /⌒ヽ,ノ:::: : : /::|
r‐''/:::::::| /\ 」::::: : /‐-〈
| :|:::::::::.\!  ̄ __,ノ:::: : / 〉
.〉 |::::::::: r‐ヽ、_________,ノ::::: : : :// \
/ |:::::::::/::○::.:\ \::::::::.::.: :○:: : : : : : :/. \
- 5 :
- すまん、なぜかアリーナのAAがうまく貼れないのでよろしく
- 6 :
- / ̄\
/ : : . `l、
/: : : : . :`l、
_,∠-'''´: ̄ ̄ ̄ ̄``ヽ、
/: : : . \
/: : : : . . : \
|: : : : : : : . : : : /
`l : : : : ._,: -‐―――-:、_ . : .:.:/
`l_,::-'''´ _,. -―┬―-:、_`''-、_/
|_,.::-'''::.i_i i: :|| | ,へ|: .i`''-、|
|::i_i:」:-,l-、!ー┘',:-、L;_i_l:-、!
r‐:-.、 .i^(∧ _| i'l^! i'l^i |_ l/'^リ ,r‐‐v‐、
/ (_i_ノ\ (ヘ ! |{(:| |:)}| ! /ノ'/ヽ.(_ァ ノ .)
/ヽ、_,..: .:.:,ノ`ーヘ.`"´ <! `゙゙´ /‐:く:.ヾ:. . ' ,ノ゙)
l:.: . '´. .:.:/.:|.:ト、 (.フ .イ::.:i:.: `:.: . `ー-く
>、.__,. '゙ : : .;ノ.: :__;r个; 、__,. イ) ̄:\::.: :`.ヽ.、__) )
.( _,.-i´|:.:.: :`ー---‐'´:.:.: :) ト、_:.: : . ヽ、,ノ
\ ,r‐‐'''´<:::::|: :L__:.:.:.:. : : .:_,-‐'´,ノ::::」-.、_ ,ノ゙
(_L_、:_ l::::|_: :: :`ー--‐'´:.:.:.:_,ノ |::/ `)
/ \ヽ !::|,`ー、:___ :_/ 、l/ , /\
/ \i/: .  ̄ ̄ . : :Y´ ./. \
/ _/^{: : : . . :}/`ー、__ `i
\ \_:.`:、: : . . : : : . .ノ: :__:/ /
\ /\:〉: : : : . '´|:/ \. /
/`┬'´: : ,`r―‐;ィ'i⌒iヽ―‐:「: . `'┬''i´
/ : :::\___,ノ、」ー‐:l:lニ: :ニl:l:―‐ト:、 . r:r-'´: :.|
./ : : ::::((/: ヽ、l__l.ノ : :.ノ `ヽソ:: : . |
/ /: : :i : : :\:.:. l、
- 7 :
- よし貼れた
そしてスレ立て乙
- 8 :
- 保守
- 9 :
- >>1
スレ立て乙でした!
wiki管なのですが、「従者の心主知らず さえずりの塔」は中編までで大丈夫ですよね?
リメイク沿いということで、続き楽しみにしています!
Part11ログ
ttp://logsoku.com/thread/yuzuru.2ch.net/ff/1263220200/
- 10 :
- 乙乙
- 11 :
- 保守
- 12 :
- 保守
- 13 :
- 最近クリアリに再燃したよ
やっぱりよいね…
- 14 :
- 過去スレ読んだけど網之助さんってどうして悪く言われてるの?
2年前から過去のクリアリ同人誌の入手できたのだけ幾つか読んでるけど
網之助はおもしろいと思った、特にブラックなやつが深いと思う。
- 15 :
- 前スレで従者の心〜を書いていた者です。お久しぶりです。
>>9
いつの間にクリアリwikiに載せてもらってたのか!
はい、中編までで大丈夫です。中途半端に切れてしまって申し訳ない。いろいろほんとに感謝です。
しかし、しかし!
またしても中編で差し替えたいとこが出てしまった。真に申し訳ない!
でもこれを入れることで今後のクリフトのセリフが生きてくるとか考え始めたらどうしても入れたくなったんだ!
読んでくれてる方もすみません、前459「さえずりの塔 中編 5/7」を以下に差し替えお願いします。
差し替えっていうか今回も追加です。一番最初に3行入るだけなのですが今からでも間に合いますか?
前459
「姫さま?」
クリフトが顔をのぞきこんできた。クリフトの目に私が映る。変な顔した私。あーもう!
↓
「アリーナ姫ならきっと武術大会も優勝するに決まってます!そしてエンドールにも姫さまの強さとすばらしさがひびきわたるのです……。
まるで、聞こえてくるようですよ。姫さまを讃える声が……」
「え?う、うん!そうね!そうよね!」
「姫さま?」
クリフトが顔をのぞきこんできた。クリフトの目に私が映る。変な顔した私。あーもう!
以上でしたすみません。やっぱりこれは入れときたい!このセリフは今回とその後に生きてくる予定です。
というか生きてるなーと思ってもらえたら嬉しいです。
長くなりましたがやっと本題へ、PS版のセリフをなぞったSSアリーナ視点、さえずりの塔 最終編いきます。
長い上にオリジナルが入りまくってしまいました。実際にセリフをなぞっているというかクリアリ要素が入っているのは
9/16以前と14/16以降かなーと。関係ないところで長くなって申し訳ない。今後もどうかよろしくお願いします。
- 16 :
- 「わしがいればカンタンにさえずりの蜜が手に入るでしょう。この頼もしいじいにおまかせくだされ!」
私たちは森を抜けてやっと塔までたどり着いた。あたりはまた真っ暗。月や星も見えない。今日もくもってるみたい。
さっきからじいがすっごくやる気になってて変な感じ。
でも夜出かけるのも許してくれたし、じいもお父さまのこと心配してくれてるのかなって思ったら私もやる気が出てきた。
あれからまた一日たってるんだ。急がなきゃ。夜でも進めるようなら突き進む勢いで塔の中へ!
「強そうな敵の気配がぷんぷんするわ。たっくさん戦えそうね!ぱーっと戦えば不安な気持ちもどこかにいっちゃうはずよ!」
「フム。さすがに人はおらんか、暗いのう。じゃが善は急げ、参りましょう。のんびりしている時間はありませんぞ!」
クリフトがたいまつをかざした。あたりが照らされる。中はけっこう広そう。
「表から見たところかなり高い塔のようですね。…………」
クリフトはやけに冷静っていうか声が低かった。そういえば塔に入る前ずっと上を見上げてたっけ。
「5、6階まではありそうじゃな。面倒な仕掛けなどないとよいがの」
「さあ、行くわよ!」
さっそく1階を探索!そしたら塔なのに下に行く階段があった。敵もいっぱい出てきた。思ったとおり強い敵ばっかり。
さすがの私もちょっと手こずっちゃって、クリフトにホイミしてもらった。そしたらじいが氷の魔法であっという間にやっつけちゃうの。
魔法ってずるい!次こそはぜったい必のキックをお見舞いしてやるんだから!
少し戦いに慣れたころ、まず下に行ってみようってことで階段を下りてみた。そしたら。そしたら……!
「こんな所に宿屋!?確かに便利だけど、不思議なカンジ」
そう、宿屋があったの!宿の人がいらっしゃいませって笑顔で迎えてくれた。ほんとに不思議な感じ……。
「商人というのはまこと金のためなら命も捨てる。フム。見上げたものですな」
「ですが、こんなところに宿を設けて運営していけるのでしょうか。少し話を聞いてまいります」
さっそくクリフトが宿の人とお話する。私はあたりを見渡してみた。
ベッドは4つ。壁に仕切りが立てかけてある。ベッドの頭にかんたんな棚がついてるだけでテーブルはない。
なんだか寂しい感じの宿屋ね。
「簡素な造りじゃのう。こんな辺鄙な地ではさすがに料理までは出せんじゃろう。雨風しのげればよいといった具合ですな」
「ふーん。そんな宿屋もあるのね」
じいも私とおんなじようなこと考えてたみたい。しばらくしてクリフトが戻ってきた。
「この宿に危険はありません。先ほどの戦闘もありますし、もしお疲れでしたらひと休みされてはいかがですか?」
「ちょっとまって、なんで危険がないってわかるのよ」
「なんでって、先ほど見極めましたから」
「見極めたって……」
「……ですが、違和感を覚えたとはいえ無闇に詮索するものではありませんね……」
クリフトが少し寂しい顔をしたような気がする。やけに声が低い……。
「なによどういうこと?ぜんぜん話がわからないわ。一から教えてちょうだい」
- 17 :
- ここは昔は人がいっぱい来てたんだって。今みたいに魔物もいなくって、子どもたちの遊び場だったんだって。
だからこの宿も前はもっとベッドがいっぱいあって、たくさんの人が利用してくれてたんだって。
確かに広さのわりにベッドがぽつんぽつんてある感じはするけど。最近じゃなくて昔からある宿だったのね。
今でも訪れる人はいるみたいなんだけど、さえずりの蜜かエルフ目的の人ばっかりなんだって。
う。私たちもそのうちのひとりだわ。でもでも、魔物が住みつくようになっちゃったら遊ぶどころじゃないじゃない?
私はそれだけたくさん戦えるから嬉しいけど、それって子どもの遊ぶっていうのとは違うような気がするし。
それよりも私はクリフトが遠慮がちにぽつぽつ話すほうが気になったわ。きっとまた難しいこと考えてるのね。
宿の人が言うには、外が明るくなればこの塔は光が透けて見えるから移動しやすいって。
昼でも夜でもたいまついらず、それが子どもたちの人気のひとつだったんだって。
「あのころはエルフもたくさんいてね。みんなでここに泊まってくれたもんだよ」
宿の人がとってもなつかしそうにお話するからほんとなんだなって思えてくる。とっても陽気で背のちっこい宿の人。
さっきたいまつの明かりにつられて寄ってくる魔物もいたみたいで、結局明るくなるまでここで休むことになった。
今夜はくもってて天候も不安定だから朝になるまで待つんだって。
私は別にかまわなかったのに、効率がなんたら無益な生がなんたらってじいとクリフトふたりに言われちゃって。
つまんないの。
じゃあクリフトもちゃんと休むのよって言ったら姫さまが手前奥のベッドでお休みになるなら休みますって言われた。
なんでそこなのよって聞いたらここは地下で出入り口もひとつだからそこがいちばん無難で警備もしやすいって。
っもう、また警備とか言ってる。そうやってすぐ姫あつかいするクリフトってキライ。私よりよわっちいくせに。
「ちゃんと寝なさいよ!」
「姫さま?」
私は仕切りを思いっきり閉めてベッドにごろんてなった。ほんとつまんないの。あ、そうだ。今日こそは!
本当はもう一つベッドがあったらしい空きスペースを使って日課の腕立てと腹筋!昨日もおとといもできなかったものね。
そう、夜は寝るまえに腕立てと腹筋をするのが私の日課なの。誰よりも強くなりたいもの。
あとお祈り。体もふいて。よし、まんぞく!あとのもやもやは明日みーんな魔物たちにぶつけることにするわ。
途中でクリフトが何回か呼んでたけど無視しちゃった。クリフトなんか知らない知らない。
しーん。まわりが静かになった。明かりも消えて真っ暗。じいもクリフトも宿の人もみんな寝たのね。ほんとに静か……。
クリフト……さっきはちょっとひどかったかな。何回無視したんだっけ。怒ってるかなあ。クリフトって怒るとこわいのよね……。
でもクリフトだって悪いわ。じいといっしょになって一方的に話すんだもん。いつもだったらまんなかに立ってくれるのに……。
なんだか眠れなくってベッドの中でごろごろ。ごろごろごろ。一度気にし始めたらもっと気になっちゃった。
こっそり起きて仕切りの外をのぞいてみる。真っ暗でなんにも見えない。
地下って明かりを消すとこんなに真っ暗になってしまうのね。黄金の腕輪を取りに洞窟に入ったときは気づかなかったわ。
クリフト、見張りしないでちゃんと寝てるかな。おやすみが聞こえたのはだいぶ前。もう寝ちゃってるかな……。
- 18 :
- 「クリフトー……」
「…………」
返事はなかった。うう……。
「……なんでしょうか」
あ。起きてた。よかった……。私はちょっともじもじしたけど正直に言うことにした。
「……さっきはごめんなさい……」
「?……なにが、でしょうか」
「えっと、あいさつとか無視しちゃって……」
「…………ああ、そのようなこと」
おふとんのこすれる音がした。あ、たぶんクリフトの音。今ベッドに横になってるのね。なんとなくほっとした。
「姫さま、お詫びを申し上げるのは私のほうです。私こそ、申し訳ありませんでした。姫さまのお気持ちも考えず」
「ん……」
「今は王の一大事、この塔にその治療薬であるさえずりの蜜があるわけですから、お気持ちがはやるのも当然のこと。
それを、何も察することができず、申し訳ありませんでした……」
「い、いいわよ。謝らないで」
「姫さま……」
「クリフト今ちゃんと寝てる?」
「は、はい、寝ております」
「そっか」
「…………」
「姫さま、食事はとられましたか?」
「んー?ううん食べてない。だっておなか空いてなかったし」
「そ、そんな……」
「大丈夫よ。そのぶん朝いっぱい食べるから」
「そういう問題では……。せめてお飲み物だけでも」
「だいじょーぶ!クリフトは心配性なのよ。一食抜いたからって死ぬわけじゃないんだし」
「ですが……」
「大丈夫だからね!」
「………………はい………………」
しーん。ちょっと間が空いちゃった。えーと。
「じゃあクリフト、私寝るから」
「姫さま……」
えーと。今呼ばれたのよね。
「なに?」
「いえ……その……」
「ん、なに?」
「…………」
「ん?」
「どこまでも、ついていきます……」
「え?」
「昨日申し上げたとおりです。ここに着いてからが、姫さまの出番ですから」
「ん……」
「私はいつでもおそばに控えております。どうぞ思うままにお進みください」
「うん……」
- 19 :
- 思わずうんて言っちゃったけど。なんだろ。なんか変なの。
「っもう、クリフトったら」
「姫さま?」
「なに言ってるのよ。明日はめいっぱい飛ばすからね。立ち向かってくる敵はコテンパンにしてやるんだからね」
「はい、姫さま」
「ん!」
「お主ら、しゃべっとらんではよう寝んか」
「あ、じい」
「も、申し訳ありませんっ」
じい、起きてたのね。聞いてたのね。なんかちょっと恥ずかしいのはなんでだろ。
「じゃあおやすみ、クリフト」
「はい。おやすみなさいませ、姫さま」
私はベッドに戻っておふとんにくるまった。よかった。今度はぐっすり眠れそう。よーし、明日がんばるぞ!
待っててお父さま!
「こうるさい魔物どもめ!先を急ぐというのにまったく腹立たしいっ」
「いいわよ!どんどんかかってらっしゃい!みーんなやっつけちゃうんだから!」
1階の探索が終わって2階へ!柱がいっぱいあって迷路みたい。うーん、子どもたちの遊び場かー。
宿の人が言ったとおり、塔の中は光が透けてて明るかった。遠くまで見渡せる。敵もよく見えるからキックしやすい。
不思議な壁……。ちょっと悔しいけど、やっぱり明るくなるまで待っててよかったかな。
2階も順調に探索できて3階へ!私とじいはとってもやる気まんまんだけど、クリフトはずっと黙ってた。
「クリフトー」
「…………」
「クリフトー?」
「はい?今私が呼ばれましたか?」
「呼んだわよ」
「も、申し訳ありません。なんでしょうか」
「どうかしたの?」
「……なにがでしょうか」
「うーん、なんか元気なくない?」
「そんなことはありませんよ。いつもこうです」
「そうだっけ」
「フム。魔法の気配がだんだん強くなっている……。頂上が近付いているのか?」
頂上。じいの言葉で私たちははっとした。そうだ、だんだん頂上が近づいてるんだ。私たちは急いで先へ進んだ。
- 20 :
- 「すっごーい!なにここ、いいながめー!!」
少し進んだらすっごく見晴らしのいいとこに来た。窓ってレベルじゃないわ、壁が上から下まで全部なくって外が見渡せるの。
手すりもなくってほんとに一面見渡せる。今日はとってもいい天気!
下を見たらけっこう高いことに気づいた。さすがにここから飛び降りたらちょっと足が痛いかもね。
「ねえクリフト見て見て!地平線が見えるわよ!海ひろーい!あ、なにあの大陸!行ってみたーい!!」
「ええそうですね。わたしもいってみたいとおもいます」
「何でそんなに棒読みなのよ。ぜんぜん感動がないわね」
「いえいえ感動しておりますとも。この塔の内部構造には。創設者の意図するところ、直に伝わってまいります。
光を吸収、反射するミラー素材の組み込み方もさることながら、ここは3階、塔の中間地点に当たります。
そろそろ疲れが見え始めてくるであろう来訪者への休憩地として、ずっと室内だったために目の保養や気分転換の意味も込め
このような展望の場を設けたのではないでしょうか。
自らの足で登ってきた実感を得るにはその高さを目の当たりにするのが一番効果的です。
そうして仰ぎ見た風景は、それはそれは思わずさえずりたくなるようなさぞかしすばらしい眺めなのでしょう」
「ってクリフト、どこ見てしゃべってるのよ」
クリフトは柱に向かってしゃべってる。
「例えばこの等間隔に据えられた柱一つ取ってみても、耐震のためだけではない意図的なセンスが感じられます。
さながら神殿のごとく厳粛な空気を醸し出していませんか?一つ一つ通り過ぎる度に神気が高まっていくような錯覚すら覚えます。
ところで」
クリフトはあっちを向いた。
「先を急ぎませんか。背後より魔物の気配がいたします」
「えっうそっ」
「ゆったりと休憩していられるのももう昔の話、今はあまり長居をするものではないのでしょう」
「3階でありながら柵も格子もないのでは、今や空を飛ぶ魔物たちのかっこうの出入口なのじゃろうな。
ささ、見晴らしがよかろうと早く参りますぞ」
「っもう、魔物なんてどーんと来ればいいのよ。さっきみたいにみーんなやっつけてやるわ」
少し進んだら行き止まりになっちゃった。おっきな穴が開いてて向こう側に行けないの。えー?ってよく見たら通路はあったわ。
壁ぎわにすっごく細いけど通路が向こうまで伸びてた。びっくりしたー。ここも手すりなし。確かにこのあたり、子どもが喜びそうね。
「ああ……」
「ん、クリフトどうしたの?ちょっと震えてない?寒いの?」
「い、いえ、さむくはありません。だいじょうぶです」
「そう……」
「……なければ…………なければ……くない……ない……」
「クリフトなにひとりでぶつぶつ言ってるのよ。何がないの?」
「姫さま!あ、あまり早足で歩かないでください!あとよそ見もしない!落ちたらどうするんです!」
「落ちるわけないでしょ。クリフトさっきから変よ」
「いーえ、高くなればなるほど落ちたときの衝撃は果てしないのです!特にこんな塔の中、こんな硬い地面に……ああああ」
「ちょっとクリフト落ちちゃう!」
「っ…」
- 21 :
- クリフトが穴のほうを見てふらついたからあわてて服を引っぱったら今度はそのままの勢いで壁に張りついた。目を閉じてる。
「も、もうだめです。もうおしまいです……」
「クリフト?」
「どうしたんじゃクリフト」
ちょっとちょっと、なんなのよー。
「高いところがいやなわけじゃないんです。ただ、あ、足がすくむんです。ふらふらするんです。私の周りだけ地震が起こるんですっ
地に足がつかなくて、宙に浮いているような気さえするのに、下を見た途端重力が2倍になるんですっ
吸い込まれて落ちそうになるんです!こっこんなこと物理的にありえません!理解不能です!だから高いところはイヤなんです!!」
「………………」
「……申し訳ありません。あ、あと5分、いえ、3分、時間をください……。すぐ歩けるようになりますので。歩けるようにしますので」
クリフトは壁に張りついたまましゃべってる。目も閉じたまま。体は震えて……
「お願いです……」
「…………」
「…………やれやれ」
そっか……。そうだった。そうだよ。今さら気づくなんて。クリフト、高いの苦手だったんだ……。
やけに高さ高さって口にしてたのも、ずっと無言だったのも、外を見ようとしなかったのも、さっきからずっと震えてたのもぜんぶ。
やっとわかった……。
っもう、ばかクリフト。ずっとやせがまんしてたなんて。私はクリフトの手をぎゅってつかんだ。クリフトがびくってなった。
「ひ、姫さま!?」
「クリフト、私が引っぱってあげるからついてきて。これならこわくないでしょ?」
「あ、あああ、ひ、ひめさま、て、てて、てが、てが…っ」
「手がなによ」
「つ、つ、つながってますっっ」
「当たり前じゃない、つないでるんだから」
「そ、そんな姫さま、だめです、いけませんっ」
「なにが」
「わ、わたしはだいじょうぶです!だいじょうぶですから!」
「そんなこと言って、足が震えてるじゃない」
「い、いえ、こ、これはその……ち、ちがうんです!これはもとから」
「お主らいったい何をやっとるんじゃ」
「「あっ」」
クリフトの手袋が脱げちゃった。むー。
「あ、あの……大丈夫ですから……」
クリフトは両手を重ねて胸にぎゅってしてる。震えてる足。青くて赤い顔。ぜんぜん大丈夫じゃないじゃない。
「んもう、クリフトはー!」
- 22 :
- 私は自分の手袋も外してもう一度クリフトの手をぎゅってした。今度は外れないように思いっきりぎゅっ
「ああっっ」
クリフトが変な声を出した。またびくってなって。クリフトの手ちょっと冷たい。でももっとぎゅってしたらまた変な声が出た。
「なんでそんなに声が出ちゃうのよ」
「そ、あ……なぜそんなに声が出るようなことをなさるのですかっ」
「なんにもしてないわよ。手をつないでるだけじゃない」
「そ、それがすべてですっ」
「手ぐらいなによ、クリフトだってこないだ私の手をつかんだじゃない」
「つ、つかっ……つかんでません!私は何もつかんでいませんよ!」
「つかんだわよ」
「い、いつ!どこで!私がそのような大それたまねをっ!」
「ホイミしてくれたとき」
ぴた。クリフトが止まった。下を向いて黙ってる。きっと思い出してるのね。
「昨日?ううん、おとといだわ。私がお城に行くってバザーを飛び出したときだから」
「…………」
そう、私がバザーを飛び出したとき何回も転んで手のひらやひざにすり傷ができちゃって、そしたらクリフトが治してくれたの。
からだがほわってあったかくなって。あのときは思わずありがとうって言っちゃったのよね。
「……あああ……」
「ああじゃないわよ。思い出した?」
やだクリフト、今度は顔が真っ赤だわ。なんで手をつかんだだけでそんなに赤くなるのよ。真っ青よりはいいと思うけど。
「あ、あれは……あれは無意識だったのです。あまりに姫さまの手が痛々しくて」
「でもつかんだでしょ?」
「そ、そ……そもそも姫さまが手袋もつけずにバザーを飛び出していかれたのが原因で」
「何よ私のせいだっていうの?」
「い、いえ、その……」
「やれやれ。お主ら、わしゃ先に行っておるぞ」
「「あっ」」
「いーいクリフト?私を見て、私のあとをついてくるのよ」
「ひ、ひめさま…っっ」
「他のとこはいっさい見ないで、私だけを見てるの。いーい?わかった?」
「は、あ……っ……は、はい……ひめさまをみています……」
「ん!」
私はクリフトを引いて歩いた。クリフトも引かれるまま歩く。きっと今、いっしょうけんめい下を見ないように私を見てるのね。
歩きながら少し笑っちゃった。やっぱりクリフトは私が守ってあげなくっちゃ。
「だんだん頂上が近付いてきたかしら?ふふっワクワクするわね!」
- 23 :
- 「わあ、きれい……。塔の上のお花畑なんてちょっとステキね」
頂上に着いたら目の前にはお花畑が広がってた。空が見える。太陽がまぶしい。どこからか水も湧き出てて……。
塔にいるってことを忘れてしまいそう。
お花畑の向こうに人がいた。女の人がふたり、こっちを見てる。色白で耳がとがってて。長身でやせ型で……
「あの人たちは?あれがエルフなの?」
「おお!見つけましたぞ!まさしくあれはエルフ」
「きゃ!あなたたち人間ね!人間だったのね……。リース!帰るわよ!」
「は、はいおねえさま!あっいけない!薬を落としちゃった!あわわわ」
「いいわよそんなの!さっ早く!」
「あ!待って!お願い待って!!ああっ」
私たちが近づく間もなくふたりのエルフはどこかに飛んでいってしまった。
「やだ、どうしよう……」
「むむ、近いですぞ!すぐ近くから甘い香りが。姫さま、その砂場を探してみなされ」
「え…?」
私は言われるままに砂場に入って足元を探してみた。そしたら……そしたらあったの。ふたが鳥のかたちになってる小びん。
「さえずりの……蜜……?」
とっても甘い香りがする。うん、きっとそう。これがさえずりの密なんだわ。やった……。やった!
「やったわ!さえずりの蜜を見つけたのね!さあ早くサントハイムへ戻りましょう!」
「やりましたな!このブライ信じておりましたぞ。さあ早く王さまの元へ!」
「姫さま……」
「さあさ、急いで塔を下りましょう!」
「うん!」
「いけません!!」
……え?力強く響いたのはクリフトの声。今、なんて……?
「いけません、姫さま、ブライ様……。それは先ほどエルフの方が落とされたものではありませんか?
それを私たちが許可も得ず持ち帰ってしまっては、窃盗になってしまいます」
「あ……」
窃盗……。
「クリフト……。先ほどあれらが唱えたのは移動補助魔法ルーラじゃ。ふたりはもうこの近くにはおらん。
落としたのであればすぐに拾えばよかった。落としたことに気づいておったんじゃからの。だがあえてそうしなかった。
つまりあやつらはこの蜜を放棄したんじゃ。もう誰のものでもあるまい」
「いえ、いえ、彼女たちは自らの意志で放棄したのではなく、私たち人間のせいで放棄せざるをえなかったのです。
これはまだ彼女たちの落とし物にすぎません!」
「クリフト……」
- 24 :
- クリフトは顔を上げた。空を見てる。たぶん見ているのはエルフたちの飛んでいったほう。そんな気がした。
「エルフたちよ!どうかお願いです!さえずりの蜜を私たちにお譲りください!」
「クリフト……?」
クリフトが叫んだ。空に向かって。飛んでいったエルフたちに向かって……。
「お願いです!!」
「アホタレが……」
「お願いです、エルフたちよ!!どうかさえずりの蜜をお譲りください!!」
「…………」
「お願いです!!」
クリフトはずっと叫んでる。こんなに大きな声で叫ぶクリフトを私は初めて見るかもしれない。
「どうかお願いです!私たちはそのためにここまでのぼってきたんです!!」
「クリフト……」
「エルフたちよ!!」
いつまで叫ぶつもりなんだろう……。クリフト……。
「どうか!!どうか私たちをお救いください!!」
「……クリフト……」
「どうかっ!!」
ばかクリフト……。じいがもうエルフたちは近くにいないって言ってるのに……。ばか……。ほんとにばか……。
私は……。私は!
「エルフさんお願い!お父さまが大変なの!お声が出なくて、どうしてもこの蜜が必要なの!お願い譲って!」
「姫さま……」
クリフトが私を見た。私もクリフトを見た。ちょっとだけ笑ってみせる。クリフトも……少しだけ笑ってくれた。
ふたりで同時に空を見る。
「お願いエルフさん!さえずりの蜜を私たちに譲って!!」
「お願いです!!エルフたちよ!!」
「お願い!!私たちを助けて!!」
「アホタレが……むっ」
「……ばかみたい」
「おねえさま……」
「あなたは私の後ろにいなさい」
「は、はい……」
「え…?」
女の人の声が聞こえた。でもどこに?そしたら目の前がゆらゆらってなって。
「エルフ、さん……?」
「ああ、エルフたちよ……」
「戻ってきてくれたのね!?」
- 25 :
- そこにはさっきのふたりがいた。色白で耳がとがってて……。うん、さっきのふたりだ!戻ってきてくれたんだ!!
「ほんとにばかみたい。私たちのことなんかほっといてさっさと持ってけばいいじゃない。
人間なんて、拾ったもの、見つけたもの、手に入れたものはぜんぶ自分のものなんでしょ?」
「っ……ごめんなさい……」
冷たく言い放たれた言葉が胸にぐさって刺さった。なんにも言えない……。私はさえずりの蜜を落ちてたところに置いた。
なんでか手が震えちゃった。なんにも言えない……。
「それは……それは違います。人間の本来はそのようなものではありません」
「じゃあなんなのよ」
「それは……」
クリフトも戸惑ってる。私が盗もうとしちゃったから……。苦しそう。つらい。つらい……。クリフト……っ
「確かに人間は、時に過ちを……その、犯します。ですが、それを悔い改めよき道へと進むことができるのもまた人間です。
少なくとも今、私たちは……」
「……でも、過ちは犯すのね。最初から犯さないっていう選択肢はないのね」
「………………」
「……ごめん、なさい……っ」
「姫さま…っ」
ごめんなさい。ごめんなさい……。どうすれば。私どうすれば……っ
「よもや本当に戻ってくるとはおもわなんだ、エルフたちよ……」
じい!じいが少しだけ前に進み出た。エルフのふたりが後ずさりしたのがわかった。
「そう身構えなくともよいじゃろう。わしに戦意がまったくないのはすでにわかっておるはずじゃ」
「……人間は騙す生き物だもの」
「……騙されたことがあるんじゃな……」
「………………」
「じい……」
いきなりじいが杖を放り投げた。いつも大事にしてる杖。地面にひざをついて、ひじをついて、手のひらを向ける。
じい、なにしてるの……?さっきまで身構えてたエルフたちが戸惑ったのがわかった。
「お主らエルフに比べて、わしら人間の寿命はあまりに短い。そのために生き急ぐ。時に判断を見失い、過ちも犯す。
じゃが、それでも生きること、生かすことに必死なのじゃ。わしなぞいつ死んでもおかしくない老いぼれじゃからの。
お主らとて、不老ではあっても不死ではないはず。死の悲しみは、幾ばくか共有できるのではないじゃろうか。
「…………」
「最初から過ちを犯そうとして犯す者はおらん。皆、死や喪失の悲しみが正常な判断を狂わせていくのじゃ」
「………………」
「わしらもまた、どうしても救いたい人がおった。時間が惜しかったのじゃ。もうあとが、なかったんじゃよ……」
- 26 :
- じい……。こんなに静かに話すじいも、私は初めて見るかもしれない。
「とはいえ、先ほどの行為の言い訳にもならんじゃろう。わしもまた、お主らのいうとおり愚かな人間の一人にすぎなかった。
すまなかったの……」
「!……」
「じい……!」
「ブライ様……」
やだ、じいが頭を下げてる。あのプライドの高いじいが!あんなに腰を低くして……!
「今さらじゃが、頼めるじゃろうか。わしらにはどうしてもさえずりの蜜が必要なんじゃ。どうか、譲ってはくださるまいか」
あ。私もあわてて頭を下げた。
「お願いエルフさん!」
クリフトも頭を下げる。
「どうか、お願いします。エルフたちよ……」
「…………」
「………………」
エルフたちは答えない。ずっと黙ってる。沈黙が続いて……
「どうして……どうして謝るのよ……」
「…………」
声が震えてる……?顔を上げたらエルフのひとりが手をぎゅってしてた。体も震えて……エルフさん、泣いてるの……?
「どうして頼むのよ!人間なんてみんな勝手っ」
「おねえさま……」
「エルフさん……」
「…………」
「………………」
じいは頭を下げたまま。クリフトも頭を下げたまま。私はなんにも言えなかった。エルフたちは……
エルフのひとりがしゃがんだ。叫んだほうのエルフさん。そっと花をなでる。風がふいて花がゆれた。甘くていい香りがする。
「あなたたちにとってはただのお花畑かもしれないけど、蜜をとるための道具にすぎないかもしれないけど、
花たちは毎年サインを出しているの。水もよ。風も……。今年もサインは悲しみで満ちているわ」
叫んだほうのエルフさんがゆっくり話し始めた。
- 27 :
- 「ここはさえずりの塔。言葉のとおり塔がさえずるの。ここで歌うとね、塔が共鳴してとてもきれいに響くのよ。
高音がよく響くから小鳥のさえずりのようで、まるで塔が歌ってるみたいに聞こえるからそんな名前がついたの。
名前をつけたのは人間よ。私たちにはない発想で、斬新だった。昔はみんなで歌ったわ」
さえずりの塔……。ほんとにさえずりの塔って名前だったんだ!
「さえずりの蜜はきれいな歌声を保つためのもの。人間にも効果があるから、昔はみんなで分け合って飲んだわ。
でも、いつからか蜜を営利目的で売りさばこうとする人が現れて、私たちを見せものにしようとする人も現れて。
人間たちの中で派閥が生まれて、争いが起こって、多くの人が傷ついて、死んでいったわ。この花畑にも多くの人が眠ってる。
私たちの仲間も、もう一度あのころに戻りたいと願って、人間と和解しようとして、二度と帰ってこなかった人もいる……」
「…………」
「もう、そんなのはたくさん。だから私たちはこのサントハイムから身を引いたの。また一つ、家をなくしてしまった……」
「………………」
「でも、どんなに時が流れても、私たちのことがただのおとぎばなしになっても、人間の本性は変わらないのね」
花をなでている手が止まった。うつむいて……
「一度だけ、蜜を取りに来たとき人間に見つかってしまったことがあったの。そう、今回みたいに。
私たちはすぐ逃げたわ。蜜はそのままにして。戻ってきたときには蜜はなかった。花は……踏み荒らされてたわ」
「そんな……」
「あとで花たちに聞いたら、他にも何か宝が落ちてないか探し回ってたんだって。花たちは泣いてたわ……」
「…………」
「それ以来、鍵をかけて入れないようにしたの。花たちはここでしか生きられないから、せめてものつもりで。
でも、人が通わなくなったら魔物が住み始めて……。でもますます人間は来なくなったから、せいせいしてるくらい。
でも、花たちは違うの。花たちはそれでも待っているの。ここを訪れてくれる誰かを、ずっと待っているのよ……」
しゃがんでたエルフさんが少しだけ顔を上げた。
「花たちが待っているのは、ただ踏み荒らすだけの魔物たちじゃないわ。蜜だけが目当ての人間でもない。
まして私たちだけが目当ての人間なんてもってのほか」
あ。私は入り口で会った男の人を思い出した。クリフトが言葉づかいの悪い方でしたねって言ってて。
「くそー!扉にカギがかかってて上には登れねーや。たしかエルフが舞い降りるのはこの塔だと聞いてきたのに……。
ん?エルフを見つけてどうする気か?だって?そいつぁ言えねえなぁ。へっへっへっ!」
エルフ目的の人……あの人もそうだったんだ。そう思ったらなんだか悔しくなってきた。
「私たちだって勝手に蜜を取っているわけじゃないのよ。花たちにお願いして分けてもらってるの。
人間は勝手よ。勝手すぎるわ……」
「エルフさん……っ」
エルフさんがまたうつむいた。後ろで立ってるエルフさんは泣きそうな顔してる。
- 28 :
- 「昔は楽しくやっていたの。エルフも、人間も、ホビットも、区別なんてなかった。みんなで楽しいひと時を過ごしたわ。
朝日を拝んで、歌って、踊って、おしゃべりして、みんなで夕日を眺めて、一日の終わりに感謝して。
花たちはそんなひと時が大好きなの。子どもたちに今年もきれいだねって褒めてもらえるのが楽しみなのよ。
素敵な蜜をありがとうって言ってもらえるのが生きがいなの。来年もまたよろしくねって……。
だからいっしょうけんめい咲くの。見てほしいから。また声をかけてほしいから。みんなで歌って、踊って、おしゃべりして……
そんな日がきっとまた来るって信じてて……年を重ねるたびにもっといっしょうけんめい咲こうとするの。
あれからもう、100年以上もたつのに……」
「え……?そんなに、たつの……?」
「だから、そこのあなた」
「え?わ、私?」
エルフさんに言われてドキッとした。思わず気をつけの姿勢になっちゃう。
「あなた最初、ここに来たとききれいって、すてきって言ってくれたでしょ?いやみでも冗談でもなく心の底から。
本当は少し、救われたわ……。
花畑を通るときも、花を踏まないように静かに歩いてくれたのね。今花たちはとっても喜んでるの、わかる……?
やっと、やっと褒めてもらえたって……」
「…………」
花たちが、喜んでる……?私にはわからない。ごめんなさい、わからない……。でも、とってもきれいだってのはわかる。
いっしょうけんめい咲いてるんだなっていうのはわかる。それはわかるから……
「うん、とってもきれい……」
「姫さま……」
エルフさんが少しだけ笑ったような気がした。
「さあ、早くお父さまのもとへ行ってあげて。大変なんでしょう?その蜜は持ってっていいから。
営利目的じゃないのならいいわ。人助けができるのなら私たちとしても本望よ。花たちも喜んでるから。
その蜜は病気や呪いに対しても効果があるわ、きっと治してあげられると思う」
「え……いいの?……ほんとにいいの?」
「二度も言わせないで」
「あ、ご、ごめんなさい」
「ありがとうございます、エルフたちよ」
「うん、ありがとうエルフさん……」
私はもう一度さえずりの蜜を手に取った。そのまま胸にぎゅってする。ほんとにこれでお父さまのご病気を治せるんだ……。
エルフさんも立ち上がった。ちょっと恥ずかしいみたいなはがゆいみたいな顔してる。もしかして照れてるのかな。
「一度だけ、人間に見つかったことがあったとゆうたな。それは、5年ほど前の話かの?」
「……どうしてそんなこと聞くのよ」
「5年ほど前のことであれば、少し経過を知っておっての」
「…………」
「じい…?」
「……そうだったかもね」
「そうか……」
「ブライ様……」
「今その蜜は、巡り巡って詩人の手にわたり、今やサントハイムを美しい歌声で満たしておる。
夜はぐっすり眠れると皆にひょうばんでの」
「そう……」
- 29 :
- じい……。マローニのことを言ってるのね。
「実にすばらしい蜜じゃ。こんなかたちでなかったら、重ねて礼を言いたいところじゃったが……」
「いいわよ、礼なんて……」
「フム。それでも、このサントハイムに潤いをもたらしてくれたのは事実じゃ。ありがとう。そして、すまなかったの……」
「…………」
…………。
「ねえねえ。私、アリーナっていうの。あなたたちの名前は?知りたいわ」
「アリーナ……。私、私リース」
「リース!」
「あ、ごめんなさいおねえさま……」
「あなたはリースね。よろしく」
私はリースに笑顔で返した。リースは戸惑ってもうひとりのエルフを見た。私ももうひとりのエルフさんに向き直る。
「あなたの名前は?」
「…………」
「名前は名乗らないわ。まだあなたたち人間のことを信用したわけじゃないから」
「……そっか……」
「……でも、あなたたちみたいな変な人間もいたってことは、覚えておくわ……」
「え……あ、ありがとう!」
「だから、礼なんて言わないでよ。……じゃあね。リース、帰るわよ」
「はい、おねえさま」
リースが少しだけこっちを見た。
思わずバイバイってしたらリースはまた戸惑ったみたいだけど、はにかむように笑って小さくバイバイってしてくれたの。
もうひとりのエルフさんも少しだけこっちを見た。私はバイバイをする。そしたら嬉しいような悲しいような複雑な顔をした。
ふたりは光に包まれてまた遠くへ飛んでった。私は大きく手を振って、ふたりが見えなくなるまでずっとバイバイしてた。
「こ、これでやっと塔から降りられるんですね。よかった……ッ」
クリフトがまた震えたような気がしたから私はもう一度クリフトの手をぎゅってした。相変わらずびくってなるクリフト。
「ひ、ひめさま…っ」
「ほんとにきれいな場所ね。また遊びに来たいわ。エルフにもまた会ってみたいし!」
「…………」
「ありがとうございます、姫さま……」
「なによクリフト、そんなに改まっちゃって」
「いえ、本当に……。ブライ様も、ありがとうございました」
「ふん。まったく、柄にもないことをしてしもうたわい」
じいが服についた砂を払って杖をひょいって拾った。私ももう一度さえずりの蜜を胸にぎゅってする。
今度こそ手に入った。さえずりの蜜……。
私はクリフトを見た。クリフトも私を見た。思わず同時に笑顔がこぼれた。今度は堂々と持って帰れるんだわ。
お花畑は相変わらずきれいだった。
- 30 :
- お父さま、もうすぐよ。もうすぐご病気を治してあげるからね。
「サントハイムまで行ったり来たりいそがしいわね。でもおかげでキック力がちょっとだけ上がったような気がするわ」
「ここに来てキック力を話題にあげるこの余裕。うむうむ。姫さまご立派でしたな。このブライ見直しましたぞ」
「な、なに言ってるのよ」
やだ。なんかじいに褒められると変な感じだわ。
「はーやれやれ。これでようやくひと安心。城でのんびりできますな」
「え?なに言ってるのよ。お父さまのご病気が治ったらまた旅を続けるんだから」
「姫さまこそ何をおっしゃるのか」
「……そうですね。これで王さまの病気も治るんですね。そして私たちの旅も……」
「そうよ!これで私たちの旅もやっと再開できるのよ!」
「っ……」
クリフトが立ち止まったような気がした。と思ったらじいも立ち止まってるじゃない。
「この期に及んでまだそんなことをおっしゃるのか。ここまで確信的なことが起こってなおこりておらんのじゃな。
仮にこのさえずりの蜜で王の病気が治ったとて、何の解決にもなっておらんのですぞ。
あのまがまがしき気配、恐らくは相当高度な複合魔術じゃ。出所も突き止めねばならんし、今後にも備えねばならん。
何より動機を突き止めんことにはな……。
あのニブい神父はもちろん、サランの神父殿にもご助成いただいたほうがよいじゃろう。
事実を隠したところで、ふたりともあの様子じゃと、皆まで言わんでも城内に異変があったことは察しておるじゃろうからな」
あ……。
東はあやしげな気配がするって、最近胸さわぎがして眠れないって言ってたお城の神父さま。
マローニに会うためにじいとごあいさつに行ったとき、いつになくずっと険しいお顔をしてたサランの神父さま。
難しい話はわかんない。わかんないから聞かない。
でも、大変なんだって雰囲気だけはなぜかすっごく伝わってくる。
「姫さま……。姫さまとて一度は狙われた身、それもまた魔術がらみの代物が関わっておる。
ここでまた単身旅に出たとあっては、次に狙われるのはまた……
姫さまかもしれんのじゃ。魔術というのは直接手で触れなくとも人をすことさえできる。力だけではどうにもならん。
姫さまが考えるほど物事は単純ではないのです」
じいがいじわるで言ってるんじゃないってことが、いやなくらい伝わってくる……。
「そんなの知らないわよ!お父さまのご病気が治ったら私またぜったい旅に出るんだから!ねえクリフト!クリフトだって」
「っ……っ…」
「クリフト?」
「申し訳、ありま……っ」
クリフト……?手で顔を隠して。口をきっと結んで……。震えてる……?
- 31 :
- 「クリフトお主、泣いておるのか?」
「泣いてません!泣いてなどいません…っ」
「クリフト…?」
「申し訳、ありません……」
「…………」
なに……。なんで……。
「よかったです……。さえずりの蜜が無事手に入って、本当によかったです……」
…………。
「なにいってるのよ!すぐ治るって言ったの、クリフトじゃない」
「…………」
「なにいってるのよ……」
「……そうでしたね」
――帰り道は気がゆるみ思わぬケガをしがちです。どうぞお気をつけて――
クリフトが笑ってる。笑ってるのに、こんなに胸が苦しいのはなんでなの……。
お父さまのご病気が治ったらまた旅を再開して、いつかはエンドールの武術大会に出るのよ。クリフトだって応援してくれてて。
――姫さまが考えるほど物事は単純ではないのです――
じいの言葉が頭にひびく。でも、でも……。でも、私はやっぱり旅に出たい。自由になりたい。だって。だって……。
私たちは黙ったままじいのルーラでお城に戻った。
- 32 :
- >>1
いきなり投下しといて今さらですがスレ立て乙でした!
- 33 :
- あいかわらず姫様が非常に姫様らしい思考回路で可愛い
ありがとうございました。GJ
- 34 :
- おお、一気に投下非常に乙であります
そしてGJ!
- 35 :
- 従者の心〜を書いている者です。今回レスだけで失礼。
まさかGJをもらえるとは思わなかった!こんな長いのにGJくれるあなた方がGJだよ。
前スレで二連発云々て書いてた人いたけど普通に書いてたら三連発だったな;
以上かなり反省気味なオリジナル設定
「さえずりの蜜を入手直後クリフトがすぐ喜ばなかったワケ」とそこから派生して
「西の塔がガイドブックではさえずりの塔になってるワケ」でした。
誰も突っ込まんかったから自分で突っ込んどく。厨設定乙。
前スレで反応くれた方もありがとうございました。
職人さんたちに来てほしいと願いつつ次が終わったらセリフをなぞらないSS投下予定です。
次よりそっちのほうが筆が進んでる悲劇。みんなも書こうぜ!
- 36 :
- 保守しとくよ
- 37 :
- 書き手さん頑張ってください!
最近投下が少ないから期待してますよ
- 38 :
- >>16-31
良かった
長さなんて感じないくらい面白かったよ
次期待してます
- 39 :
- 今日は節分ということで小ネタを置いておきますね。
「姫さま、今日は節分ですね」
「セツブン?なんだっけ」
「立春の前日のことです。季節を分けるという意味ですよ」
「ふーん。セツブンね」
「それが、ある地方では季節の変わり目には邪気や鬼が生じると考えられており」
「鬼!?なんだか強そうね!」
「姫さま、話を最後まで聞いてください……」
「あー聞くわよ聞く聞く」
「ともかく、その地方では邪気や鬼を追い払うための悪霊払い行事を執り行うそうですよ。
この機に私たちもしてみませんか?方法はまずこの豆をまきながら魔法を唱えます」
「私魔法なんて使えないわよ」
「大丈夫です。誰にでもできるおまじないのようですよ。かけ声は「鬼は外、福は内」」
「……なんで鬼だけ外なのよ。鬼も家、服も家でいいじゃない」
「鬼は悪霊です。それを追い払うための行事ですから」
「だからなんで追い払わないといけないのよ。外は寒いし家に来てくれたほうがいいわ。
だから鬼も家!服も家!」
「外は寒いって、姫さま……。なんと常識はずれな」
「なによ、いいじゃない。みーんな家に来るの!」
「……姫さま……。…………。
なんとお優しい、慈悲深いお心なのでしょうか……。
悪霊たる者をすら内に招き入れようとなさるなど、その寛大なお姿、このクリフト……」
「そうすればいつでも勝負ができるものね!
鬼なんて、どれだけ強いか知らないけど私の新しい必技をお見舞いしてやるわ」
「…そ、そういう意味でしたか」
- 40 :
- ほのぼのと萌えましたw
GJ!!
- 41 :
- おおかわいらしい!
GJです!
大物だよねwアリーナは
- 42 :
- かわいいw
- 43 :
- モバイルのいたストにDQキャラ参戦記念カキコ
いずれクリアリも参戦してくれることを信じてる
- 44 :
- モバイルいたストの体験版リンクの真ん中のキャラクターがどうみてもクリフトだ。
本気で期待している。
そして姫様今までからいくと可能性高いな…
二人で登場してクリアリしてくれい
- 45 :
- 今PCの公式サイト確認したら、ABOUTのページに普通にいた件
http://www.square-enix.co.jp/mobile/sem/itast-sp/about/images/characters_img01.png
- 46 :
- 相変わらずいたストのクリフトは髪がグレーっぽいね
でも服が原作服に戻ってるねー
- 47 :
- 姫様サイトにいたよ
モバイルかー。
- 48 :
- 姫様はさすが、トップにいらっしゃる!
隣はピサロかな?と思ったら、セフィロスだったwww
ドラクエモバイルは入っててるんだが、スクエニモバイルとはまた別物ぽいな…
- 49 :
- 今さらだがレディストーカー実況プレイ見てる。
なんでドラクエ外伝として出してくれなかったんかなあ。
- 50 :
- 今日はバレンタインデーということでまた小ネタを置いておきますね。
「クリフトー、今年もチョコいっぱいもらったの?」
「え?え、ええ、まあ……。ほどほどにいただいております…」
「ふーん。毎年すごいわねー」
「教会の子どもたちもきっと喜んでくれるでしょう。毎年楽しみにしていますからっ。
私も礼儀としてひとつずつはいただいておりますが、どれも心のこもった手作りです。
この日は神に、女性の皆さまに感謝してもしきれません」
「クリフトって律儀よね。またひとりひとり細かくお礼言って回るんでしょ?
どうせ渡すのならクリフトじゃなくって直接子どもたちに渡せばいいのにね」
「そ……それはどういう意味で……」
「実はね、私も今年はチョコ作ったんだ。クッキーチョコ」
「姫さまが?」
「今回はちゃんとできたわよ。おばさまのいうとおりに作ったもん。
作ったっていうか、私はただおばさまに言われたものをかきまぜてただけなんだけど」
「いえ、いえ、じゅうぶん姫さまの手作りです」
「そ、そうかな。私からのプレゼントって知ったら子どもたちもっと喜んでくれるかな」
「あ、ああ、子どもたちに……。そうですね。きっと何よりのプレゼントだと思いますよ」
「ねえクリフト、ひとつ味見してくれないかな」
「え…?よ、よろしいのですか!?」
「ちょっと、声が大きいわよ。私もおばさまも味見したからいいとは思うんだけど……
やっぱり不安なんだもん」
「姫さまがお作りになるものでしたらなんでもおいしいですよ」
「クリフトったらいっつもそれ。今までそれでおいしかった試しないじゃない。……はい」
「あ、ありがとうございます。……いただきます……。…………」
「ど、どう?」
「…………」
「え……」
「ほろ苦くて、おいしいです……。とても……とても……おいしいです……っ」
「ちょ、ちょっとクリフト、大げさよ。うーん、でも苦かったかしら。甘かったはずだけどな。
でもまずくないならよかったわ。じゃあクリフト、教会に行きましょ」
「はい、姫さま!」
- 51 :
- 続きに期待
- 52 :
- 公式設定でそれぞれ別の人間と結婚してるとはっきり名言してるのにwww
- 53 :
- お前らはエア豚の靴でもペロペロしてなさいwww
- 54 :
- ばかだなあ
二人が結果として誰と結婚したかは問題じゃないんだよ
大切なのはそれまでの想いだろ?
つかそれどこの公式?しらんかったわ
- 55 :
- いや、ないから
- 56 :
- なんだガセか
でもそれならよかったよ
>54ではああいったけどやっぱりクリアリにはくっついてほしいな
どんな困難も二人で乗り越えてってほしい
- 57 :
- >>51 すみません一発ネタのつもりだったので続きは考えてなかったです
ということでどなたか続きをお願いします
- 58 :
- ずっと昔に出たドラマCDだと最後ちょっと良い感じだったよな
アリーナが「これからも私を見守っててね」とか言ってるやつ
- 59 :
- >>58
うん。パテギアが完璧スルーだが、最後は萌えた
- 60 :
- CDドラマってパデキアスルーなの?
あれが一番の萌えどころなのに!
でもその最後はいいね。
>>50,57
GJでした!
きっと毎年毎年少しずつ上手くなってるんだね!
たぶんクリフトは黒こげクッキーでも美味しいと言うと思うwww
- 61 :
- 萌えどころといえば、PS版レイクナバでの仲間会話もいいと思う。意味深で
- 62 :
- >>61
あの会話良いよね。
アリーナの数少ない心境吐露っぽくて。
- 63 :
- クリフトは、神かアリーナどちらかを選べといわれたら、即アリーナを選ぶと思うw
- 64 :
- 神とアリーナの前で悶々としてるクリフトも好きだけどなw
- 65 :
- ドラクエ世界に血液型があったらアリーナはO型でクリフトはA型かな
- 66 :
- モバイルいたスト、3月の追加キャラはマーニャとミネアだそうです
クリアリマダー?
- 67 :
- その順番組み合わせだと、クリアリは一緒に来そうだね
- 68 :
- アリーナと姉妹が共演してたのはあったけど、
モンバーバラ姉妹両名とクリ&アリ全員いたストに共演て思ってみれば
始めてじゃあないか?間違ってたらスマソ
- 69 :
- >>55
各々の子孫が次作に出てくるだろ
FF5もOVAの設定で妹の王女とはくっ付かない事がほぼ明らか
- 70 :
- >>69
推測ってだけで確定じゃなかった気がするが?
決定的なソースきぼん
- 71 :
- DQ5プレイしたけど、記憶にない…
DQはあんまり公式設定がしっかりしてないのが売りだから、その後の事はご自由にご想像下さいでしょ
OVAとか公式から発売されている小説はあくまでも二次創作だからなぁ…
だってアリーナの一人称「僕」だしw
- 72 :
- うん。確か、砂漠の女王アイシスも勇者の仲間の子孫らしいってことで誰かは明言されてないし、一応勇者のお墓はあるけど偽物だしな…
妄想で充分楽しい
- 73 :
- 皆が無事でありますように
- 74 :
- 下半身的な意味で!
- 75 :
- 保守
- 76 :
- クリアリ保守
- 77 :
- ほしゅ
- 78 :
- 携帯から失礼いたします。
初投下します。
2日おくれのエイプリールフールネタ…。
- 79 :
- 旅の途中。
一行は森の中で、休憩していた。
そんな中、マーニャ、ミネア、アリーナの三人は、馬車の中で、お喋りに花を咲かせていた。
「今日は、エイプリールフールねぇ」
マーニャが楽しそうに喋り出す。
姉さん生き生きしている…ということは良くないことが起きると、ミネアは感じた。
「姉さん……ろくでもない嘘つかないでよ」
「あらやーね。そんなことしないわよぉ」
しないというなら、なぜにやけているのだろう。
姉の言葉は微塵も信用出来そうにない。
ミネアは、思わず溜め息をついた。
「ねぇねぇ、エイプリールフールってなあに?」
それまで黙っていたアリーナが、尋ねてきた。
「うっそー! 温室育ちのお姫様は、エイプリールフールもしらないのぉ?」
マーニャの大袈裟な態度に、アリーナがちょっとむっとする。
あぁもうどうしてこの人は……。
マーニャは大袈裟に驚く態度を見せることで、機嫌を損ねるアリーナが見たいのだ。
そうやって面白がっているということをミネアは知っている。
そういう性格に今まで、散々苦労させられてきたのだから。
「姉さん、やめて。ごめんね、アリーナさん。エイプリールフールっていうのは、嘘をついて良い日のことよ」
「え、嘘ついてもいいの?」
むっとしていたアリーナの顔が、ぱっと輝く。
「なんだが凄くおもしろそうね! どんな嘘つこうかなぁ」
無邪気に考え始めたアリーナをみて、ミネアは顔を綻ばせた。
すると、ミネアの剣幕にたじろいでいたはずの、マーニャがいきなりしゃべりだした。
「そうだ! いいこと思いついたわ!」
おまえの言う良いことは、大抵悪いことだ!とミネアは焦った。
「姉さん、ちょっと!」
「アリーナ、あんたクリフトに、『大好き!』って言ってきなさい。 アイツ泣いて喜ぶわよ」
思っていたよりは、まともな、嘘…?とミネアは思った。
が、はっとした。
この女は、お姫様の告白を嘘だと知り、落胆する不憫な神官様が見たいのだ。
なんという悪女…いや、もはや鬼か…。
- 80 :
- 「姉さん!」
「いいじゃない、これくらい〜 ちっとも進展しないんだもの。 いじりたくもなるわよぉ」
「ねーなんでクリフトに、大好きっていうの?」
「え…なんでって…エイプリールフールだからよ?」
「でも、私がクリフトに、好きって言っても、嘘にならないよ?」
「……」
呆然とするマーニャ。
姉の企みの失敗に、ミネアは思わず笑いがこみ上げてきた。
当のアリーナは、姉妹の態度が解せないようで、ぽかんとしている。
「あ、そうだ。私、ブライに良い育毛剤見つけたって、嘘ついてみるわ!」
急に、瞳を輝かせアリーナは、馬車の外へ駆けていった。
ミネアは、いくらなんでも惨すぎる嘘だと思ったが、笑いが止まらず引き留められなかった。
傍らで落胆している姉の姿が滑稽で、仕方がなかった。
「負けたわ…」
アリーナは戦っていた気などないのだろうが、マーニャの敗北は、明白だった。
「これにこりて、余計な事をするのはもうやめれば?」
「いいえ! まだ負けてないわ! 絶対に、あのヘタレ神官の落胆する瞬間をみてやる!」
マーニャは、馬車の隅にある袋から、時の砂を取り出した。
- 81 :
- take2
「そうだ、アリーナ。あんたクリフトに『大嫌い!』って言ってきなさいよ! アイツ泣く…いやもしかすると、自害するかも知れないわね……」
我ながら良い案だと思ったが、口に出すと流石に良心が痛んだ。
「姉さん、それは…さすがに…」
ミネアも、呆れることを通り越して、若干引いている。
「面白そうね! わかった、やってくる!」
しかし姉妹の態度とは、裏腹にアリーナは明らかに楽しんでいた。
まずい、と思ったが、次の瞬間には、マントを翻し、馬車の外へ駆けていってしまった。
「あ、ちょっとまって! アリーナさん!」
姉妹の顔が青ざめ始める。
二人の脳裏に浮かぶのは、不憫すぎる神官の姿だった。
「私、知らないからね。…姉さんのせいよ…」
「と、とりあえず追いかけましょう」
二人は青い顔のまま、アリーナの後を追った。
〜〜〜〜
「クリフトー!」
遠くから、姫様の声が聞こえます。
私は昼食を作る手を止めて、声がする方へ、振り向きました。
「姫様?どうかいたしましたか?」
「あのね、クリフト。大っ嫌い!」
姫様の予想外かつ残酷すぎる一言に、私は凍り付きました。
主君に、愛する人に笑顔で嫌いと言われた私はどうすればいいのでしょうか。
せめて、真顔で言って欲しかった。
愛する人の一番好きな、表情で『嫌い』と言われるのは、ある意味、死よりつらい…。
嫌われてはいないと、信じていましたが、どうやら自分に対する奢りだったようです。
とりあえず…死にたい…。
……
「なーんてね。嘘だよ、クリフト」
「へ…?」
『嘘』という言葉に、私は遠のいていた意識が、戻り始めるのを感じました。
「エイプリールフールだよ〜」
「で、では姫様は、私を嫌いではないと…」
「当たり前じゃない! 今までずっと一緒に来てくれたんだもん。 あまり口に出したことなかったけど…ありがとうね」
「ひ、姫様…」
「これからもずっと、一緒に来てくれる?」
「勿論です!」
一瞬、死にたくなるような思いはしましたが、今だけは四月バカに、感謝したいと思います。
私は、幸せ者です……。
〜〜〜〜
二人の様子を物陰から覗いていたミネアは、ほっと胸をなで下ろした。
しかし、傍らにいるマーニャは、何が悔しいのか…爪をギリギリと噛んでいる。
ちょっと…怖い。
「何よー! 結局いい雰囲気になるんじゃない! これじゃあ面白くないわー!」
マーニャの絶叫が、森の中に響いた。
- 82 :
- 以上です。
投下がこんなに、緊張すると思わなかった…
お目汚し失礼いたしました。
- 83 :
- 緊張するよねw
すごく微笑ましくて癒されました!GJ
ブライのその後が気になるw
- 84 :
- エイプリールフールネタ、面白かった、GJ!
クリアリは仲間が絡んで賑やかになる所もイイ!
ついでにトルネコにも痩せ薬(ry
- 85 :
- >>83
>>84
まさかGJして貰えるとは…!
ありがとうございます。
最近書き手さんが少ないようなので、書き上げられたら、また投下しますね
- 86 :
- 姫さまカワイイ
姉妹好きとしては良い感じのSSでした
GJです
次回も期待です
- 87 :
- ほしゅ
アリーナ「ねぇクリフト、ほしゅってどういう意味?」
クリフト「現状維持とかいった意味合いですよ。」
アリーナ「そっか…現状維持は大事だけどそれで満足しちゃダメよ!
やっぱり先に進まないとね!クリフトもそう思うでしょ?!」
クリフト「…そうですね…」
アリーナ「うん、もっと強くならないと!
早速ちょっと走ってくるわね」
クリフト「…現状維持で満足してはダメ…か……」
- 88 :
- エイプリールフール書いたの奴です。
投下します。
- 89 :
- 風邪をひいてしまった。
野宿、連戦続きだったからだって、仲間たちは言ってくれたけど、情けなくてたまらない。
私が熱を出したせいで、今日は街に戻って、きちんと宿をとった。
しかもゆっくり休めるようになんて、一人部屋。
相部屋にして、風邪をうつすよりはずっといいけれど、自分の情けなさが身にしみた。
「クリフト、部屋に戻って。大丈夫だから」
「でも…まだ熱が下がりませんし」
宿について、私はさっさと風邪を治そうと、早々に床に就いた。
でも…なんで隣に、クリフトがいるんだろう。
クリフトは、体温計とにらめっこしなから、渋い顔をしている。
看病のためなんだろうけど、私より体が弱いくせにうつったら大変じゃない。
「また倒れたらどうするのよ」
「大丈夫ですよ」
ほらでた。お得意の「大丈夫」。
クリフトの大丈夫ほど、信用出来ないものってないと思う。そうやって「大丈夫、大丈夫」って自分を追い詰めて、気づかないうちに病気になっちゃうんだから。
「大丈夫って言いながら、ミントスのときは駄目だったじゃない。
また倒れられても、迷惑なのよ!」
「迷惑」という言葉に、クリフトはちょっとしゅんとしてしまった。
そして小さな声で、「申し訳ありません」と言った。
少し後悔する。
どうして、私はこんな言い方しかできないのだろう。
そもそも今、体調を崩しているのは、私なのに。
あの時、クリフトが倒れたのは、私のために無理を重ねたからだ。
確かに体はあまり強くないけど、体調の自己管理が出来ないほど、駄目な奴じゃない。
旅が始まってからは、いつも私を真っ先に心配して、自分のことなんか、後回しで…。
なんてバカなクリフト。
でもそうやって無理をしてたクリフトに気づけなかった、私は、もっとバカだ。
私がクリフトに言わなきゃいけないのは「迷惑」とかそんな言葉じゃない。
本当は「ありがとう」って言わなきゃならないのに。
そういえば、クリフトだって、喜んでくれるに、違いないのに。
「もういい。私が他の部屋にいくわ」
- 90 :
- やっぱり、クリフトに無理をさせるわけには行かない。
きっとクリフトのことだから、夜通し看病したりしちゃうに決まってる。
私はクリフトの制止を振り切って、立ち上がった。
「あっ…」
「姫様!」
でも、いざ立ってみると、視界がグルグル回って、上手く立っていられなくなった。
体が重くて、倒れかけた瞬間、私はクリフトに抱きとめられた。
「……」
端から見れば、抱きしめられているような体勢。
こんな風になったのは、子供の頃ふざけて抱きついたとき以来だった。
クリフトの体は意外と、がっしりしてて、ちゃんと「男の人」の体だった。
子供の頃と違くて、「男の人」と意識した瞬間に、私は胸の鼓動が高鳴るのを感じた。
いったいどうして。
「す、すみません!」
なんで、クリフトが謝るのよ…
そう言いたいのに、うまく言葉が紡げない。
頭がぼーっとして、顔が熱かった。
熱が上がっちゃったのかな。
- 91 :
- クリフトは、真っ赤になって慌てながらも、もう一度私を寝台に寝かしてくれた。
「その…すみません」
顔色が平常通りに戻った頃、クリフトは、片手で顔を覆って、懺悔するような声で言った。
何回でも、謝りたくてたまらないらしい。
「いいの。私が悪いんだから」
私の胸の高鳴りはすでにおさまっていた。
いったい何だったのかな。
大丈夫、と言って立ち上がった手前、倒れかけたのが、情けなかった。
私の病状は、自分で思っていた以上に悪かったみたい。
もうクリフトの「大丈夫」が信用出来ない、なんて言えないね。
「姫様、ご心配してくださって、ありがとうございます。
ですが、大丈夫です。ミントスの時のような病にはなりません。
だから看病させてください」
「本当に?」
「本当です」
「根拠は?」
予想外の質問だったのかクリフトが、たじろぐ。
そして一呼吸おいたあと、苦し紛れといった感じで、つぶやいた。
「気合い…です」
私は思わず声を上げて笑ってしまった。
だってあまりにも、らしくない回答だったから。
クリフトは、恥ずかしそうに、少し顔を赤くしている。
気合いで風邪をひかないなら、私は気合い不足なの?
そう聞きたくなったが、可哀想だから言わないであげた。
「はいはい、わかりました。看病していいよ」
、きっとクリフトは、何があっても引き下がらないだろう。
しょうがないから、もう許してあげる。
クリフトは、私がどんなに怒ったって、他人を優先しちゃう、そういう奴だから。
でも私は、クリフトのそういう優しいところが、正直嫌いじゃない。
「うつっちゃったら、どうしよう?」
「ちゃんと、うがいしますから」
さて、それはどの程度の効果があるのかしら。
私には、それこそ根拠がわからないので、あまり安心材料にはならなかった。
- 92 :
-
「もし、うつったら、二度と看病させないからね」
「え!? そ…そんな」
ちょっとだけ意地悪言ってみる。
これから言う言葉の、ちょっとした照れ隠しだ。
「でも、もしうつっちゃったら…私が看病してあげても、いいよ」
ちょっと恥ずかしいから、クリフトの顔は見なかった。
お布団に顔をうずめて。
今のは、普段言えない「ありがとう」のかわり。
自分より他人を優先しちゃうお馬鹿さんへの、労いだ。
「ありがとうございます」
チラリと目だけで振り返ると、クリフトは微笑んでいた。
ちょっと困った感じで。
いつもならなんてこともない表情なのに、少しドキドキしちゃうのは、何でなんだろう。
「さぁそろそろ眠ってください。眠らないと治りませんから」
そう言って、クリフトは、私の額に冷たいタオルを乗せてくれた。
熱かった額が冷やされて、急激に睡魔が襲ってきた。
胸の高鳴りの原因を考える前に、私は眠りに落ちっていった。
いつもありがとう、クリフト。
いつかきっと、ちゃんと言うから――。
- 93 :
- 以上です。
エイプリールのときと、アリーナの性格が違ってしまった…
エイプリールは、デレ期にはいったものだと思ってくださいw
- 94 :
- GJです!!
アリーナ視点で丁寧にクリフトへの思いが綴られていてかわいかった!
ツンデレですね分かりますw
最近原作沿いの人も、エイプリルフールの人も、小ネタの人も職人さん多くて嬉しいです!
- 95 :
- アリーナもクリフトもらしさが出ていてとてもよかったです。
しかしこうなると同場面のクリフト視点も見たくなるw
遅ればせながらGJでした!!
>94
原作沿いの人とはもしや自分のことでしょうか。
以前従者の心〜を書いていた者です、もしそうなら恐縮です;
実は今後の投下にあたりスレの趣旨という点で少々悩んでおりました……
さしあたって今回は支障ないかと思われます、忘れかけたころの投下で申し訳ないですが前回の続き、
PS版のセリフをなぞったSSアリーナ視点、サントハイム王の失声症回復編行きます。
どうぞ。
- 96 :
- 最初はひとりで旅に出るつもりだった。だってみんなが旅に反対してたから。クリフトも……
そう、クリフトだって最初は反対してたのよ。
でも、いろいろお話していくうちにほんとはクリフトも旅に出たかったんだってことがわかって、
いっしょに強くなろうねって約束して、私がエンドールの武術大会に出たいって言ったら
姫さまならきっと優勝しますよって言ってくれたの。
最初はほんとにひとりで旅に出るつもりだった。それはうそじゃない。うそじゃない。
でも、今は……
今はクリフトといっしょに行くつもりになってる。クリフトがそばにいるのが当たり前になってる。
お父さまのご病気が治ったらまた旅を続けるって言ったときじいにすっごく反対されて、
クリフトのほうを見たらクリフトは泣きそうな顔してて。
どんなに反対されたって私はいつでも壁をけやぶってお城を抜け出すつもり。だからぜんぜんこわくない。
だって最初はひとりで旅に出るつもりだったんだから。
でも、クリフトの泣きそうな顔を見たとき、私は……
私はもうクリフトとはいっしょに旅を続けられないような気がした。私はほんとにひとりになる。
それを寂しいと思うなんて。これからもクリフトといっしょに旅がしたいと思うなんて。
いつからこんな気持ちになったんだろう。いつの間にこんな気持ちになってたんだろう。
お城についてからもクリフトはずっとうつむいてた。
どうしたのって聞いてもなんでもありませんよって、長旅で少し疲れたのかもしれませんって言ってて。
でも、うそをついてるような気がして。無理して笑ってるような気がして……。
クリフトだってきっと旅を続けたいはずよ。きっとそう思ってるはずだわ。
一度はお許しをもらえたんだもの、お父さまのご病気が治ったらお願いしてみよう。
もう一度旅に出たいって。エンドールの武術大会に出たいって。それから……
クリフトもいっしょに連れていきたいって。
でも、寂しいからクリフトを連れていきたいなんて、そんなの悔しいからぜったい言わない。
- 97 :
- 「さあさ、王さまの病気を早くそのさえずりの蜜で治してさしあげてはいかがか?」
「え?あ、うん!そうね!」
やだ私、少しぼーっとしちゃってたみたい。そうよ、とにかく今はお父さまのご病気を治すことが大事だわ。
お父さま、もうすぐこれまでのようにお声が出るようになります。だからもうすこし待っていてくださいね。
「大臣やゴンじい。マローニのおかげでお父さまの病気も治るわ!あ、もちろんブライやクリフトのおかげでもあるけどね」
「やれやれ。ついでのような言われ方ですな」
「もったいないお言葉です…」
「しかし、今回ばかりは姫さまのおてんばにも助けられましたな。めずらしいこともあるものです」
「おてんばで悪かったわねっ」
お城に入って出迎えた兵士たちにあいさつをする。みんな変わりないみたい。
「さあ、あとはお父さまにこのさえずりの蜜を飲ませるだけよ!でもお父さま甘いもの苦手なのよね。口をこじあけてでも飲ませなきゃ!」
「姫さま、だんだんと物言いが物騒になっておりますぞ」
「っもう、ほんとのことなんだからいいじゃない」
「…………」
「……クリフト?」
「……え?ああ、申し訳ありません、少し考えごとを……。ですがこれで王さまのご病気も治ります。ひとまずは落ち着けそうですね」
「うん…」
「ささ、早く参りますぞ」
私たちは再びお父さまのもとへ。お父さま、ちょっぴりやつれたみたいだわ。おかわいそうに……。
大臣に事情を説明してさえずりの蜜をお父さまのもとへ。甘いものが苦手なお父さまも今回ばかりは飲んでくれた。
お父さまがお声を出してみる。お声が……出た。出てる。ちゃんと出てる。あーあーって。
今までより澄んだお声。でもいつものお声。ちゃんとお父さまのお声が聞こえてくる。
お父さまのご病気が治った……治った!
さっきまで張りつめてた空気が一気にゆるんだ。大臣も兵士たちも肩の力が一気に抜けたみたい。
お父さまも今までしゃべれなかった分を取り戻すような勢いで私たちひとりひとりにお礼を言ってきた。お礼なんてどうでもいいわ。
治って本当によかった……。
- 98 :
- とてつもなくおそろしい夢を何回も見たこと。巨大な怪物が地獄からよみがえってすべてを破壊していたんですって。
でもそれを話そうとしたら急にお声が出なくなってしまったこと。お父さまはこれまでのことをお話していった。
さっきまでの明るい雰囲気はもうどこかにいってしまって、じいもクリフトも大臣も、兵士たちも、みんな黙って聞いてた。
でも、私は……
「…………。
アリーナよ。わしはもう止めはせぬ。その目で世界を見てまいれ。ブライにクリフト。アリーナを頼んだぞよ」
「…………え?」
お父さまのご病気も無事治って、今日か明日かあさってか、まだしばらくはお声やお体の調子を見たほうがいい、
それならいつもう一度旅に出たいってお願いしようか、そんなことをぼんやり考えてたらいつの間にかお話が終わってた。
お父さまから何か言われたのか兵士が階段を下りてく。お父さま今、なんて言ったの…?
「お父さま…?」
「くれぐれも気をつけて旅を続けるのじゃぞ。世界はこのサントハイムなど比べものにならんほど広いのじゃからな。
わしは夢のことを考えることにしよう。恐ろしい夢を見た時別の夢も見た気がするのだが、どうしても思い出せぬのじゃ……」
「お父さま……」
少しして階段を下りてった兵士が戻ってきた。私に近づいてきておじぎをする。
「王さまの命によりエンドールへのほこらの通行許可を出しておきました。どうかお気をつけていかれますように……」
「え…………」
話の展開が早すぎて頭がついていけない。つまり、どういうこと?通行許可って?その目で世界をって……。
「その目で世界をって、じゃあエンドールに行けるのね!武術大会にも出られるのね!」
「ふむ、武術大会か……。まあいたしかたあるまいな」
うそ……。お父さまからそんな言葉が聞けるなんて。エンドールに行ける。武術大会にも出られる。また旅を続けられるんだ……。
やった……。
「やった、やったわ!」
「なんということか!これでやっと城に戻れると思ったというのに!むむ……王じきじきの頼みを断るわけにもゆかぬし
姫さまはあぶなっかしいし……。ええい、もうヤケです。どこへなりとお供しましょう!さあエンドールへ!」
じいのすっとんきょうな声が聞こえた。
- 99 :
- 私は思わずクリフトを見る。クリフトはきっと……え、なんで?手で顔を隠して下を向いてる。口は笑ってなかった。
クリフト、嬉しくないの……?
「クリフト……?」
「……は、はい……申し訳ありません……今は、その……」
「泣いてるの……?」
「いえ、これはその……」
「うん……」
「その……また姫さまと旅ができるだなんて……」
「うん……」
クリフトは手を離して私を見た。やっぱりちょっと泣いてたみたい。どうして……。
でもその手を胸に当てて私の前に片ひざをついた。
「アリーナ姫さま、大変失礼いたしました。まずはエンドールへ。その後も姫さまのご希望通りどこへなりと参りましょう!
王さまの命により、このクリフト、世界中どこへなりとお供をさせていただきます!」
「……クリフト……」
クリフトが私を見上げてる。すっごく真剣な顔してる。苦手なはずだったクリフトの顔。
でも、今はなぜか…………ぷ。
「んもうー、クリフトったらかしこまっちゃってー」
「ひ、姫さま?」
「そんなかたっくるしいあいさつはいらないわよー」
「え、あの、ですが……」
「お父さまが命令したからって、今までとなんにも変わらないんだから」
「…………」
「これからもいっしょなんだからね。よろしくね、クリフト!」
「……はい!姫さま!」
クリフトが少しだけため息をついたような気がする。きっとほっとしたのね。やっぱりクリフトも旅を続けたかったのよね。
私もほっとした。だってこれからもずっといっしょに旅ができるんだから。
じいはすっごく難しい顔してぶつぶつ言ってるけど知らなーい。これからはもうおっきなこと言わせないんだから!
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