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2012年07月創作発表71: 非リレー型バトルロワイアルを発表するスレ Part31 (274) TOP カテ一覧 スレ一覧 2ch元 削除依頼
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非リレー型バトルロワイアルを発表するスレ Part31


1 :12/05 〜 最終レス :12/08
1999年刑行された小説「バトル・ロワイアル」
現在、様々な板で行われている通称「パロロワ」はリレー小説の形をとっておりますが
この企画では非リレーの形で進めていきます。
基本ルール
・書き手はトリップ必須です。
・作品投下前の登場キャラクター、登場人数、主催者、舞台などの発表は書き手におまかせです。
・作品投下前と投下後にはその意思表示をお願いします。
・非リレーなので全ての内容を決めるのは書き手。ロワに準ずるSSであればどのような形式、展開であろうと問いません。
・非リレーの良さを出すための、ルール改変は可能です。
・誰が、どんなロワでも書いてよし!を合言葉にしましょう。
・「〜ロワイアル」とつけるようになっています。
  〜氏のロワは面白いでは、少し話題が振りにくいのでAロワ、Bロワなんでもいいのでロワ名をつけてもらえると助かります。
・完結は3日後だろうが5年後だろうが私は一向に構わんッッッ!!
前スレ
非リレー型バトルロワイアルを発表するスレ part30
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1333891255/l50
非リレー型バトルロワイアルwiki
ttp://www26.atwiki.jp/anirowakojinn/pages/1.html

2 :
スレ立て乙です!
では早速ですが投下します。メンバーは衛宮切嗣、一望千里の二名です

3 :
男は、全てを知っていた。
七人もの人間が血眼になって追い求めた理想が、どれほど穢れきったものか、知っていた。
自らも例外なく『それ』を信じ、追い求めるが余り多くのものを失ってしまった。
外道と蔑まれ、怨嗟の声を聞いても尚、立ち止まることなく殺し、壊した。
自分の選ぶ道の最果てに待つ『それ』を頼って、自分を納得させてきた。
そんな愚かしい選択の末に待っていたのは、あの――――"崩落"。
煉獄と言ってもいい惨状の中見た真実を、そして自らが選び取った最悪の選択を、彼は覚えている。
罪深き正義の果てに、彼は理想に破れた。
宿敵と呼べる男は撃破した。
天秤の守り手たれという意志の下、彼は最後までそれを貫き通した。
そして、一人の少年を見つけて、最後の最後で、彼は報われた――――。
だがしかし、その彼は今、ここに存在している。
「………僕が、またあれに関わることになるとはな」
黒いコートの男は、忌々しげに吐き捨てた。
光の宿っていないくすんだ瞳は何を見据えるでもなく虚空に向けられている。
彼の名前は、衛宮切嗣。魔術の世界では名の知れたフリーランスの暗殺者、『魔術師殺し』の切嗣。
手段を選ばずに只目的の相手を抹る、冷酷非情の猟犬と謡われた。
だが、それも今や、大いなる『悪』の汚染によって蝕まれ、長くは生きられない身体になった筈。
言ってしまえば死に体だ。まだ寿命は残っているが、これから行おうとしていた『最後の魔術行使』を使ったなら、もう魔術を行使することさえ叶わなくなるだろう。
後は保護した少年―――士郎を見守ってゆく、それだけの人生になる。
――――筈だったのだが、今こうして衛宮切嗣はここに存在している。
それも、体調は万全で、あの煉獄を見る直前のそれに戻っているようだった。
不思議なこともあるものだ。だがそれ以上に、憎らしいと思う。
衛宮切嗣の宿敵だった男、言峰綺礼。
確かに心臓を撃ち抜き絶命させた筈だが、何せ彼も万能の願望器の『泥』を浴びているのだ。
その身にどんな奇跡が起きていたとしても、何ら不思議なことではない。
切嗣が生き抜いた後に事実上の隠居生活をしていたように、言峰綺礼もまた何かの変化を受けていてもおかしくはないが―――まさか、まだあれを追い求めているとは、思わなかった。
聖杯。
かつて七人のマスターが追い求め、何人もが命を散らし、この世全ての悪が内包されていることを知った。
―――だというのに、あの男はまだあれを追っているのか。
あんなものをもう一度この世に卸して、あの惨劇を繰り返すつもりなのか。
「………ふざけるな。あれをもう一度卸すことは、絶対に認めない」
横道に随分と反れてしまったが、本質的に衛宮切嗣は正義の味方なのだ。
天秤の守り手たれと務めたことも、全ては世界から争いを根絶するという、そんな馬鹿げた理想の為。
その彼が、みすみすあの『悪』を卸してしまうことを許す筈がなかった。
一度破壊して、破壊したというだけであの煉獄を引き起こしたあれを、見過ごせる筈がない。
あれが正しい形でこの世に舞い戻れば、どれだけの惨劇が勃発するのか、想像に難くないだろう。
今度こそ、世界は大変なことになる。
言峰綺礼のような人間の手にあれが渡れば、この世界は最悪の方向に、崩壊してしまうかもしれない。
自分や今は亡き妻の望んだ世界とは正反対の世界に、変革してしまうかもしれない。
それだけは、絶対に認められる話ではなかった。
愛娘のイリヤスフィールや、只一人助けられた少年、士郎の生きる世界がそんな世界だなんて、絶対に認められない。
『魔術師殺し』衛宮切嗣は、もう一度戦う覚悟を決めた。
―――冷酷非情の猟犬としてではなく、一人の正義の味方として、言峰綺礼の野望を打ち砕く。
冷たい空の瞳が、かつて戦場を馳せていた時期の、戦う意思を秘めたそれに変わる。相変わらず濁った瞳ではあったが、つい先刻までの疲弊しきったそれとはずいぶん変わっていた。
そうと決まれば、早速準備をする。ここはホームセンターだ、一工夫すれば爆弾を制作することも可能だろう。
切嗣は無言のまま、だがまずは自らの置かれている状況を反芻する。
参加者、自分含め90名。
制限時間は無制限。生殺与奪は奴らが握っている。
かなり厳しい状況には違いないが、決して活路が無い訳ではない。
このレベルの窮地、衛宮切嗣という暗殺者からすればまだまだ序の口であった。

4 :
「首輪――これをどうにかしなければな」
切嗣が如何に戦い慣れているとはいえ、流石に首輪が爆発したなら生存していることは不可能だ。
故に大前提として、このゲームを打倒して主催者を討つ為には、首輪の解除が必要となる。
道具とある程度の手掛かり、そして―――”サンプル”が手に入れば、十分可能な話だ。
切嗣は魔術師の世界では稀有な、現代機械に精通し、魔術よりもそちらに頼る魔術師であった。
そのせいで業界の人間の多くから反感を買っていたが、愚かな魔術師に媚びるつもりなど彼には毛頭ない。
が―――これだけの危険を冒すのだ。ぶっつけの本番でどうこうできるかと言えば、否、である。
(死体から、首輪を回収する)
声には出さずに、常軌を逸した非道な台詞を口にする。
何十、何百の卑劣を働いた彼にとってそれは苦ではない。むしろ、勝つためには必要な事なのだ。
「――――まぁいい。僕が殺した人間から回収すればそれでいい」
 
衛宮切嗣は殺し合いに乗らない。
ただしそれは、ご都合主義の正義の味方になるというものではない。
殺し合いに乗っているマーダーまで盲目的に助けていくような、そんな夢は見ないと決めていた。
その逆である。
マーダーは、積極的に処分していく。現役時代にそうしてきたように、天秤を量るように、。
毛ほどの迷いも、切嗣にはなかった。
「さて、次は名簿だな」
首輪の件に関しては納得したのか、次にディパックから参加者の名前、顔写真が記された参加者名簿を取り出し、確認していく。
しかし―――そこに記されている事実は、覚悟を決めた筈の彼でさえ驚愕に値するものだった。
驚愕―――そして、憤怒。
「アイリ……セイバー………? 間桐のマスターにバーサーカー……何だこれは?」
 
アイリスフィール。自らが愛した女。第四次聖杯戦争にて死亡。
間桐雁夜。敵対するマスターだった男。第四次聖杯戦争にて死亡。
セイバー。自らが使役したサーヴァント。令呪の刻印が二画残っていることからまさかとは思ったが、本当に存在しているとは。
バーサーカー。強大な力を持った破壊と暴虐の狂戦士。だが奴もまた、脱落した筈である。
どれもこれもショックが大きい名前ばかりだったが、衛宮切嗣が真に憤怒を懐いたのはまた、違う名前。
 
あの煉獄の中で、墜ちた正義の味方がたった一人助けられた少年。
―――衛宮士郎。
衛宮切嗣の養子にして、唯一の希望だった存在。
どうして彼がこんなゲームに参加させられているのか。まだ幼い、戦うなんてことは出来ないような少年が。
言峰綺礼という存在を恐れ、忌まわしく思ったことは数あれど、これほどまで憎悪したことは初めてだったかもしれない。


「…………言峰綺礼」

怒りを押し殺した声で、宿敵への憎悪を極力押し潰して、唸るように呟く。
そしてこの時、元から迷いなどなかった切嗣だったが、真の意味で彼の心は固まった。
主催者連中を絶対に赦さないという確かな覚悟を決めることが出来た。
『魔術師殺し』の顔ではなく、一人の『父親』としての表情で、切嗣は宣戦布告する。

5 :
「僕は今度こそ、貴様を」
心臓を撃ち抜いても尚殺しきれなかった亡霊を、存在ごと消してやる。
奴の裏に存在している最悪の存在も、誰一人逃がすつもりはない。
一人として残さず、皆殺しだ。
殺し合いは潰す。聖杯は破壊する。監督役は。
一度は破れた筈の理想をもう一度懐いて、衛宮切嗣は前を向く。
既にその表情は、『魔術師殺し』のそれに戻っていた。
「死人を蘇らせる力――か」
 
魔術師の世界でも禁忌とされる、というよりそれ以前に不可能なまでの難易度が伴う蘇生。
どうやってその手段を手に入れたのかは分からないが、一つだけ合点がいくことがあった。
アイリスフィールの役割は恐らく、聖杯の器。
第四次聖杯戦争と同じ役目――イリヤスフィール・フォン・アインツベルンはまだ幼い。彼女の身体では器にはなれないだろう。
「………セイバーか」

騎士王・アルトリア・ペンドラゴン。
ブリテンの騎士王にして、衛宮切嗣が道具として使用し、決定的に決裂した存在である。
彼女の力は確かに強大だし、彼女の持つとある宝具を用いれば、弱りゆくアイリスフィールを支えることも可能だろう。
『全て遠き理想郷(アヴァロン)』。如何なる傷も老化も停滞させる、伝説の宝剣エクスカリバーの鞘。
しかしあれは今、切嗣の養子・士郎の体内にあるのだ――アイリスフィールはその恩恵を受けることが出来ない筈である。
だとすれば、解せないことがあった。
『聖杯の器』として生まれたアイリスフィールは、『全て遠き理想郷』なくしては存在を保つことさえ危うい筈。
当然、バトルロワイアルなど出来る肉体ではない。
―――この戦場を生き残れる可能性なんて、万に一つもない。

(……駄目だな。これじゃあ、昔の僕には随分足りない)

アイリスフィール・フォン・アインツベルン。
今はもう『有り得ない』彼女の存在もまた、衛宮切嗣に大きな影響を与えていた。
しかし、それを無理やり払拭し、切嗣は今自分がすべきことを模索する。

「令呪が戻っているのは幸運だ。もしも危機になったらセイバーを呼べばいい」
 
衛宮切嗣という男は、セイバーという己のサーヴァントと決定的に決裂している。
最初からマスターである切嗣との相性など二の次に選ばれたサーヴァントなだけあって、彼の方針に彼女はいつも反発した。
その決裂が決定的なものになったのは、ケイネス・エルメロイ・アーチボルト達の一件だろう。あの一件にてセイバーは切嗣を外道として見限り、切嗣もまた己のサーヴァントを決定的に否定した。
そして最後の瞬間、彼女が願いを懸けんとしていた聖杯を令呪によって破壊させた――これで友好が築ける筈もない。
切嗣自身もまた和解する道など考えても居なかったし、する気もないのが現状だ。
サーヴァントはあくまで道具―――そんな思想は未だ、根深く衛宮切嗣を支配していたのだ。
だが、もしも必要とならば彼女の都合などすべて無視し、令呪による強制力でセイバーを使う。
合理的な道だった。
万一敵に回ろうが、令呪がある限り彼女が切嗣に謀反を起こすことは出来ない。

「出来れば舞弥――とまではいかなくとも、サポート役が欲しいところだな」

6 :
改めてその名前を口にして、少しだけ胸が締め付けられる。
久宇舞弥。切嗣が戦場で助け、長らく相棒として多くの場を踏んできたパートナーだ。
もっとも、彼女もあの戦争で命を落とし、最期まで切嗣の手足として行動してくれた――。
女性を相手にするとつい甘やかしてしまう癖のある切嗣だったが、パートナーとなる人物は欲しいところだった。

(だが一先ずは―――このホームセンターを見て回ろうか)
上手くいけば簡易的な爆弾くらいは作れるかもしれない。
自らの主義を少しだけ曲げたにしても、爆破や銃撃は彼の基本スタンスである。そこには違いなかった。
ニトログリセリンとちょっとした材料だけで簡単に製作できるダイナマイトを、制作しておこうと彼は考えていた。
ホームセンターの中を探索する。目についた『材料』を片っ端からディパックに詰めていく。
「―――――――ッ」

警戒を怠っていた訳ではないが、切嗣は全くの不意打ちで、『それ』を感じ取った。
常人ならば気付くどころか感じることさえ出来なかったろうが、長らくフリーランスの過酷な環境で戦い抜いてきた切嗣だからこそ、その微弱な『それ』を感じ取る事が出来たのだ。
―――衛宮切嗣を監視する、視線を。
とならば、切嗣のやることは決まっている。―――視線の主を叩くのみだ。

「――――」

支給品は既に確認済み。コートの内ポケットに収納していた一丁の狙撃銃を取り出して、切嗣は臨戦態勢となる。
MSR-001――人並以上に銃器に精通してきた切嗣から見ても、それは脱帽と言えるクオリティの代物だった。
弾丸は電磁石で、火薬を用いない為に反動は限りなくゼロ。弾速は音速に少し届かない程度。
未来銃、という言葉が実に相応しい一丁だ。故に、衛宮切嗣という暗殺者にとっては最高の当たり支給品だったと言える。出来れば自らの愛銃があれば良かったのだが。
愛銃ーーコンデンダー・カスタムと、衛宮切嗣が切り札の魔弾は追々捜索するとして、今は誰とも知れぬ監視者への対処が先決だ。害なき監視者ならばいいが、もしも殺し合いに乗っているならば、それは衛宮切嗣にとっての外敵となる。
「………」
切嗣は無言で、自分に与えられたもう一つの支給品を取り出す。
それが衛宮切嗣の手に回ってきたことは、相当に皮肉の効いた話だった。
第四次聖杯戦争にて、他ならぬ切嗣自身が策に嵌めて殺害した男、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトが所持していた霊装、『月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)』。
罪悪感は無い。自分が勝つために取った手段を悔いはしない。
むしろ今の切嗣がすべきことは、強力な霊装を得られた幸運に感謝し、やるべきことを実行することだ。
魔力を用いて、月霊髄液を起動させる。
見覚えのある水銀の球体が揺れ、切嗣の指示を待つ飼い犬のようにも見えた。
かつての持ち主との戦闘を思い返しつつ、切嗣は一つの指示を与える。
"自動策敵"の指示だ。
それとほぼ同時に、水銀の流滴が慌ただしく『標的』を捜すために走っていく。
月霊髄液の使い方は朧気な記憶しか残っていなかったが、成程、便利なそれであることに違いはない。
「――シャーレイ」
 
ひょっとしたら、このゲーム最初で最後の落ち着ける瞬間かもしれないのだ。
切嗣は遠い記憶、だが自分の中にずっと燻ってきた一人の年上の少女の名前を呼ぶ。
あの島を地獄に変貌させる要因となった、衛宮切嗣の初恋の相手。
いつか彼女に問われた問いに―――幾度も回答してきた問いに―――彼は答える。
「僕はね、正義の味方になりたいんだ」

7 :
その一言を皮切りに、まだ見ぬ参加者との邂逅に備えて、戦士の目に戻る。
迷いは、燻っている。
じくじくじくじくと、まるで偏頭痛のように、一度は理想に破れた男を苛む。
だがしかし、自らの選んだ道を進もうと、切嗣は戦う。
アイリスフィール。士郎。大切な人達も巻き込まれているのなら、みすみす諦めてやる道理はない。

「――見つけたか」
月霊髄液の流滴が、何処かに潜む監視者を発見したことを伝える。
磁力狙撃銃を両手で持ち、月霊髄液の力を使って監視者の位置までゆっくりと歩いていく。
自立防御が発動する以上、不意の攻撃に気を遣う必要はない。 銃弾の威力によっては貫通されてしまう可能性も無きにしも非ずだが、ケイネスのようなヘマを犯すほど、切嗣は戦いに疎くはなかった。
ホームセンターを歩いていく。その最中にも月霊髄液には探索を行わせているため、見失うことは有り得ない。どうも監視者は、二階の放送室にいるようだった。
わざわざそこまで出向いてやる必要もない。あの放送室から監視が出来る理由として、窓があること。一階の風景をある程度なら見渡せるような、少し小洒落た作りになっている。
(そんな場所を選ぶなんて―――愚策としか思えないな)
 
窓の見える位置に移動する。
視線はもう外れているようだが、月霊髄液にもう一度策敵に向かわせて見れば、まだ相手は移動することなく放送室に留まっているらしかった。
相手はどうやら相当未熟な、こういった状況に慣れていない人間。だとすれば―――相手は、こうして自分が接触しようと行動していることにさえ気付いていないだろう。
磁力狙撃銃を構える。
スコープから、高所にあたる放送室の窓を覗き込み、照準を合わせる。
(当たらなくていい。当たりでもしたら逆に困る)

 
ひどく使い心地のいい未来銃を構え、触り慣れた引き金に人差し指をかける。
まだ幼い頃から師であり、母親代わりでもあった女に付き添って修羅場を潜ってきた。
暗殺、爆破。姑息な手段に引け目なんて感じないし、手段を選ぼうともしなかった。
事実上の引退を強いられるかと思ったのに、またこうやって自分は銃を構えている。
全く、とことん因果な人生だ。
波打つ水銀の球体には目もくれず、切嗣は慣れた手付きで引き金を引く。
硝子に穴が空き、放送室内部にかけて銃弾が突き抜けていった。幸い内部の人間には当たらなかったようだ。そんなことには感慨も懐かず、切嗣は次のステップに移るために一階と二階とを結ぶ階段に向かう。もしかすると、最初の戦闘になるかもしれない。
切嗣の作戦は、単純にして明快なそれだった。
幾度もの戦場を越え、仕事を経て、聖杯を巡る戦争にも身を投じてきた暗殺者。常に奇を衒い、騙し討ちやトラップを使って標的を抹殺してきた彼にしては、随分と単純な作戦だ。
放送室の人間にあえて自分の攻撃に気付かせ、ここでは仕留めずに逃亡を誘発させる。
放送室は二階。二階は関係者以外の侵入が禁止となっている為、階段での移動を余儀なくされる――いわば、二階に潜伏してしまった時点で詰みがかかっていたのだ。
逃げるために階段を使う――そこで待ち構えれば、必ず遭遇出来る。
「さて、どう転ぶかな」
 
説得の余地なしならば容赦なく、水銀の刃で切り刻むまでだ。
だが、もしも相手の存在が何かしらの恩恵を衛宮切嗣にもたらすというならば―――手を組んでみる価値は十二分にあるだろう。そうするのも悪くはない話だ。
舞弥のように心を殺して淡々と仕事をこなす人間でなくとも、パートナーが居るに越したことはない。
それにもしも怯える弱者なら――助けてやるのは、正義の味方の仕事ではないか。
もう二度と、誰も救えない絶望を味わうのは御免だった。地上の煉獄を歩いて、『救えない』苦しみを経験した衛宮切嗣。あの時の絶望と、そして救えたたった一つの存在に出会えた時の喜びを、きっとその生命を終えるまで切嗣は忘れることはないだろう。

「………もう二度と、あんなのは御免だ」

『魔術師殺し』としての衛宮切嗣しか知らない人物が見たなら、きっと驚いたろう。

8 :
敵対した者には死神のそれにしか見えない沈んだ瞳を歪めて、悔しさを顔にありありと浮かべて歯噛みする、そんな人間らしい動作をしていることに、驚いたろう。
正義の味方として今度こそ多くを救う。
その為に、自分はこうしてもう一度チャンスを与えられているのだ。
生かさずしてどうする。今度こそ、最高の未来を掴めるかもしれないのに、そのチャンスを自ら殺してしまって、一体どうするというのだ。

「僕はもう、間違わない」
階段を駆け降りてくる音と、荒い息遣いが聞こえてくる。
切嗣は念のため銃をしまい、降りてくる相手に備える。
衛宮切嗣、決意を新たにした正義の味方が、最初に出会う存在。
月霊髄液を待機させつつ、遂に対面した『監視者』は――――
――――両の目にかかるくらい長い前髪が特徴的な、一人の少女だった。
◇ ◇
時は遡り、バトルロワイアル開幕後。
少女、一望千里が目を覚ましたのは、ホームセンター二階の放送室だった。
普通ならば盛況していても何らおかしくはなさそうなものだが、客の姿は一人として見えない。
その事実があまりにも簡潔に、このバトルロワイアルが夢でも何でもないことを示していた。
だが彼女にとって、この殺し合いが現実であることなど、既に分かりきっていることだ。
『四字熟語』を冠された一望千里は、ここに来るより前に『四字熟語達の殺し合い』に巻き込まれていた。
もっとも、何かを為せたかどうか問われれば言葉に詰まってしまう、というのが本音だった。
前回は開幕直後、自らのミスで顔面を《破かれた》。
軽妙酒脱という四字熟語に出会うことも出来たが、結果としては脱落、死亡。
一望千里の体感時間では自身が死亡したことさえつい数時間前のことくらいに感じられているのだが、だからこそだろうか。少女の身体にはまだ、《死の恐怖》が根付いていた。
消える灯火。
寒く凍えていく意識。
どれ一つ取っても、恐怖以外の要素が見当たらないまでの死の瞬間を、彼女は経験したのだ。

「でも………私はここにいるん、だよね」

顔を破かれ、身体を貫かれて、それでも一望千里はこうして存在している。
不可解と言えば不可解極まりないけれど、自分が存在していることに、少女は安堵した。
『死』によって消失してしまった自分は、どうやら完全に消えてしまったわけではないらしい。
……まぁ、結局これもバトルロワイアル、殺し合いには変わりないのだが。
これもまた、奇々怪々―――あの四字熟語の仕業なのだろうかとも考えたが、そうは考え難い。
四字熟語だけを集めて殺し合わせる『実験』を企画した彼女とは異なり、言峰綺礼という男はこの殺し合いを『ゲーム』と称した。娯楽の対象、見世物であるかのように語った。
この時点で両者の考えには明確な差異があり、同じ人物の企画とは思えない。
一望千里のような死者までも蘇らせて参加させる、如何なる手段を用いたのかは分からないが、この分だと言峰の言った『願望』の話も真実と受け取っていいだろう。
優勝すればどんな願いでも思うがまま、というのは確かに魅力的だと思う。
でも彼女は人を殺めてまで遂げたい願望など持ってはいないし、したいとも思えなかった。
………何しろ、記憶は奪われたままなのだから。
せめて記憶くらいは返してほしかったな、と一望千里は思う。
しかし、叶えたい願いがないのだ―――それは必然的に、殺し合いには賛同しない、ということになる。
血眼になって殺し合う必要もないし、本来一望千里は死んだ身なのだ。
死ぬことは怖いし、出来るなら生きていたいと思うけれど。とにかく、人殺しだけはしたくなかった。
とはいえ、この場でじっとしていても何か始まるわけではない。
何らかの行動を起こさなければ、前のような目に遭ってしまいかねないから。
とりあえず、一望千里が最初にしようと思ったことは『参加者名簿の確認』だった。

9 :
望んじゃいけないことだとは分かっていても、最期の時一緒に居た四字熟語、軽妙酒脱の名前が無いか気にしてしまう。後は、破顔一笑、《顔を破くルール能力》を持った彼の名前は出来ればあってほしくないと思った。
「直接会ったことのある人は、いないなぁ……」
直接会ったことのある人自体、軽妙酒脱しかいないのだが。
それでも、参加させられている中には四字熟語の名前を持った者も居るようだった。
紆余曲折、先手必勝、青息吐息、勇気凛々、優柔不断。
どういう選抜条件で選ばれたのかは全く分からないものの、仲間がいるということは少しだけ、一望千里の不安を和らげた。
「あ、そうだ……忘れてた」

四字熟語を見ている内に思い出した、大切なこと。
一望千里の名前が意味する能力―――ルール能力の存在。
彼女の能力は《会場全体を透視できる》もの。
前回は一度しか使用出来なかったが、今回もあの力が使えるのだろうか。

「試してみる価値はある、かも」

前みたいなことになったら嫌だけど、と付け加えて、恐る恐る、一望千里は力を使う。
いきなり会場全体とはいかずに、まずはこのホームセンターだけでも透視してみようと思った。
次の瞬間、本来見えるレベルの視界を遥かに超えた、《一望》が彼女の視界に広がる。
ホームセンターの中を隈無く見渡すことの出来る、やはり便利なルール能力だ。
しかし、幸か不幸か、ホームセンター内に人影が見当たらない。
自分しかここに居ないと分かった途端心細くなってきて、意地でも誰か見つけてやる、と透視の中で人が居ないかどうかを探索する。
―――程なく、一人の男性を見つけることが出来た。
黒いコートに身を包んでいて、その表情はどこか影を落としたようなそれ。
瞳の暗さが何よりも特徴的で、一望千里はこの人物に少しだけ興味を懐いてしまった。
視線を集中させ、コートの男性の様子をじっと窺う。
皮肉にもそれは、前回のバトルロワイアルで彼女が犯した失敗と同じパターンだった。
暫く見つめていると―――視線を察知したのだろうか。
コートの男性と、目が合った。
唐突に押し寄せる既視感に、ほぼ反射的なそれで一望千里は視界を閉じる。

「ばれ、た……? そんなわけ、ないよね」

だが目が合った瞬間の男性の瞳は、まるで狩人が見せるそれだった。
直前までの虚脱感の塊のような色は一瞬にして失せ、明確な殺気を向けてきたのだ。
彼の瞳にはどこか悲しそうな様子もあった―――悪いひとではないと、思う。
まだばれた訳じゃないなら、もう少しここに居ても大丈夫だよね――と彼女は、支給品の確認に移った。

「何、これ? メロンパン……?」

てっきり物騒な品が出てくるとばかり思っていた一望千里は、不意を突かれたようにきょとんとする。
それは、どこからどう見ても言い逃れ出来ない、確実なメロンパンだった。
コンビニで簡単に買えそうなもの。
これと殺し合いに何の関係があるんだろう。考えて、くすっ、と彼女は笑う。
見た目は普通だし、まさか実は爆弾でした、なんて落ちも今時ないだろう。
ぴりり、と包装を破き、甘い匂いを漂わせているそれを静かに口にする。
体感時間たった数時間の内にこれだけ目まぐるしく価値観を変革されたのだ、疲れて腹も減る。

10 :
甘味が口腔を満たし、何ともいえない幸せな気分になる。
はむっ、はむっ―――殺し合いの只中とは思えない暢気な行動だったが、一望千里はこうして支給されたメロンパンを完食した。
そして――――丁度その瞬間だった。
ぱぁん――――なんて軽い音と同時に、放送室の窓に穴が開き、天井を僅かに抉ったのだ。
それが下階からの攻撃であることに気付かない程、一望千里は馬鹿ではなかった。
そして先程の一望で、下階に存在している人間は全て把握した。そう、あの黒いコートの男だけだ。
(嘘……! あの一瞬だけで、私がいるって、分かったの……?)
だとすれば只者ではない。
どうやってこの場所にいることまで突き止めたのかは分からないが、逃げなければ不味いだろう。
先程までの幸福だった時間は何処へやら、焦って彼女は一階へ続く階段をかけ降りる。
そこで気付いた。
このホームセンターは、放送室の作りなどが遊び心のある、珍しいそれになっているのだ。
そして――二階と一階の移動手段は、この階段たった一つ。エレベーターすらない。
つまり、頭の良い、たった視線一つから潜伏場所まで割り出した人間なら、ここで待ち構えていることなんて容易である。
一望千里がやっとの思いで一階へと辿り着いたその時には、そこに男の姿があった。
黒いコートを羽織り、どういう原理なのかは知らないが球体に変化した水銀。
息を切らす一望千里の姿を見て驚いたように一瞬目を見開き、男は右手を彼女に差し出した。

「僕は殺し合いに乗っていない。怖がらせてしまったなら謝ろう」

そこで一望千里はやっと、彼は自分をつもりでなかったことに気付くのだった。
どうやら彼女は此度のバトルロワイアル、最初から幸運に愛されているようだ。

◇ ◇

「僕は衛宮切嗣という者だ。信じてもらえるかは分からないが、一介の魔術師でもある」

一望千里も十数年と、コートの男――衛宮切嗣に比べれば短いが人生を生きてきた中で、これほどまでに奇抜な自己紹介を聞いたのは初めての経験だった。
二十代後半と見える大人の口から『魔術師』なんて言葉を聞けただけでもしばらくは記憶に残りかねないほどだというのに、自らのことを魔術師と名乗るなんて。
だが只の冗談と断ずれば傍らで跳び跳ねるように波打つ水銀の球体の説明がつかず、つまるところ彼女は今困惑の極みにあった。
「ああ、これは月霊髄液といってね――自立防御と策敵、攻撃まで兼ねる優れものだ。
一望千里――千里ちゃんの居場所を特定した時に使ったのもこれだよ」
この水銀の滴が壁や床を伝い、生体を感知して知らせる、という説明だったが今一実感は湧かない。
しかし彼が一望千里を見つけ出したことも、この月霊髄液の恩恵で説明がつく。
大体、四字熟語のルール能力なんかよりは魔術師の方が信憑性があるのではないか、とも思った。
結論から言って、一望千里は衛宮切嗣を信用することに決めた。
相当な場数を踏んでいるようだったが嘘を吐いているようには見えなかったし、何より嘘を吐く意味がない。

「で、千里ちゃんに聞きたいことは一つ。君の知っている情報を、僕に開示してほしい」
「情報って、言っても。どういうことを話せばいいんですか?」
「君の名前――『一望千里』。名簿にもこう記載されている以上、偽名というわけではないだろう。
だが少しだけ不可解でもある。名簿にある他の――"四字熟語"の名前には、明らかに人名とは思えない名前もある訳だ―――何か知っていたら教えてくれ」

11 :
思えば衛宮切嗣は、最初に名簿を一瞥した時から妙だと思っていたのだ。
それこそ『一望千里』ならまだ珍しい名前くらいで片付くものの、『優柔不断』なんてどう考えても人間の名前ではない。何かの組織のコードネームだと納得することにしていたが、折角内の一人に出会うことが出来たのだ。四字熟語の名前を使う意味を知っておきたかった。
が、これには一望千里も少し困ってしまう。
自分がここに来る前に何をさせられていたかを話すこと自体には何の躊躇もないが、他の四字熟語について、彼女は殆ど情報を持ち合わせていないのだ。
まともに関与した参加者も二人だけで、内一人はルール能力しか把握しておらず、どんな人物かも分からない始末。しかもその二人は、このゲームに参加してすらいない。
だが頼られているという事実を見過ごすことは出来ず、分かる範囲のことだけでも話すことにした。
四字熟語を冠した十数名で行う殺し合いの実験のこと。
自分もその実験に参加させられ、そして死亡したこと。
参加者の四字熟語達は皆一様に、四字熟語に関連した《ルール能力》を与えられているということ。
そして自分《一望千里》のルール能力は、会場全体を透視できる、というものであること。
常人なら気が狂ったかと思ってもおかしくないような不可思議な現実を、なるだけ分かりやすいように噛み砕いて話してみる。上手く説明出来たかは分からないが、どうにか伝わったらしい。
「成程、な……これで合点がいったよ。君がどうやって僕を――『あの窓からは見えない位置にいた』僕に視線を送ることが出来たのか、ずっと不思議に思っていたんだ」
「あ、その……ごめんなさい」
「いやいや、謝ることはないさ―――しかし、良い力だ」
切嗣は素直に、一望千里のルール能力を良い力だ、と思った。
無論、彼の仕事柄喉から手が出るほど欲しい力だというのもある。
敵の位置を確認できる目があれば、仕事が大分楽になることは間違いないからだ。
しかし今はそれを抜きで考えて、だ。
バトルロワイアルというゲームの怖いところは、自分以外の参加者の動向が窺えないことにあると切嗣は考察していた。何も分からないことはいずれ恐怖に変わり、人を狂気に駆り立てる。
彼女の目があれば会場全体を把握し、探し人の位置、危険人物だってある程度は確認できるだろう。
一望千里のルール能力は、この殺し合いを打破するにあたりもってこいのそれだった。
これを利用しない手はないだろうな、と切嗣は冷静に分析する。
もっとも、使い潰す訳ではなく、彼女を守りつつ、その力を借りていく、という意味だ。
今、切嗣は一望千里から得た情報を元に、名簿の四字熟語達のルール能力について考察していた。
『紆余曲折』は、恐らくその名の通り何かを《曲げる》力だと推測出来る。
『優柔不断』は、その身が刃物を通さないとか、その辺りだろう。
『青息吐息』は、吐息を利用した能力である線が濃厚か。
『勇気凛々』は―――分からない。保留だ。
こうして当て嵌めていく内、一つの厄介な四字熟語に行き当たった。
「……千里ちゃん。君は、『先手必勝』という四字熟語には出会っているかい?」
「多分、見たことはあったと思います。でも、『見渡した』時だけ、ですけど」

12 :
切嗣が推測するに、この先手必勝―――恐らく、四字熟語の中で最も厄介なそれと見えた。
勿論憶測の域に過ぎない上、先手必勝が殺し合いに乗っているかどうかも分からない。
だがしかし、そうであっても様々な可能性を加味して行動するのが、衛宮切嗣だ。
先手必勝のルール能力は不明。ただし確実と思われるのは、《必ず勝利する》要素が含まれる能力であること。これは切嗣のような『狩人』からすると、最悪の部類と言っていい相手だった。
常に作戦を練って準備をし、確かな勝算を以て障害を突破するのが彼らのやり方だ。
しかし、その作戦を無視して《ルール能力》で覆されてしまうのだ――これ以上の最悪があるだろうか。
万一敵になりでもすれば、最悪クラスの難敵となることはもう間違いない。
「良し、大体のことは把握したよ。次は此方の番だが――僕には一つ、秘策がある」
「ひさく?」
首を傾げる一望千里。
わざわざ開示しなくともいい情報かもしれなかったが、一応これから行動するにあたり報せておくことにした。
令呪、サーヴァントで有る限り逃れることの出来ない呪縛。
だがマスターの側からすれば、強大な力を自由にコントロールすることが出来る便利なものである。
「詳しく話すと長くなるけどね。僕は今、最強クラスの実力者の手綱を握っているんだ。
僕が命令すれば、即座に僕の指示に従わざるを得なくなるだろう――これが、鍵だ」

バーサーカーやランサー、そしてかの英雄王までも参加している今回の殺し合い。
普通に立ち回っていては彼らを撃破することなどほぼ不可能だし、立ち向かう時点で無謀とも言える。
ランサーならば下らぬ騎士道などで同じ道を選ぶやもしれないが、バーサーカーに至っては論外だ。
―――その絶対的なまでの戦力差を覆し得る唯一の可能性が、この令呪である。
伝説の騎士王の在り方を切嗣は認めないし、彼女のやり方では何も救えないと断じることができた。
しかしその実力だけは本物―――聖剣エクスカリバーの解放を以てすれば、彼らにも届くだけの力を持っている。
二画の令呪は即ち、そんな可能性を切嗣の思い通りに動かせることを意味するのだ――それも二度も。

「えっと、その実力者さん、は。こう言っちゃ何ですけど、信頼できるんですか?」
「そこに関しては心配要らないよ。奴は名高き騎士王だからね、騎士道精神とやらに則って戦うだろう」

実際のところ、微妙でもあった。
悪戯に少女の不安を煽らないように口にはしなかったが、あの騎士王には『願い』がある。
祖国の救済という願いを掲げ、それに向かって戦い抜いたのだ。
しかも始末の悪いことに、あのセイバーは聖杯が呪いに侵されていることを知らない。
これは完全に衛宮切嗣の失敗だった。
自らのサーヴァントと交流を断絶して、ひたすら道具として扱ってきた彼は、聖杯を破壊する際に『何も知らない彼女を令呪で強制して』しまったのだ。
最悪、自分の願いを踏みにじった外道として敵視されていても不思議ではない。
しかし、今回の切嗣もまた、彼女の意思を尊重するつもりなどさらさらなかった。
もし殺し合いに乗っていたならば令呪でその意思をねじ曲げる。あくまでサーヴァントは駒でしかない。

(僕は何も変わらず、あれを利用していればいい。そこに余計な感情は必要ない)

あくまでも勝利を得るための道具。
衛宮切嗣のサーヴァントに対する認識は何一つ変わってなどいなかった。

「それで、だ。千里ちゃんには一つ、頼みたいことがある」
「何ですか」
「君の《ルール能力》はこの状況を打破するのに非常に有効だ。その力を、僕に貸してほしい」

13 :
一望千里という少女は殺し合いの経験者とはいえ、身体も精神も年相応だ。
血生臭い殺し合いにはまだまだ向かないだろう―――しかし、衛宮切嗣の目を引くほどに、その《目》は有能で、出来ることなら力を拝借したいところだった。
当然、断られる可能性だって十分に考慮している。
自分が言っているのは、一望千里という"四字熟語"ではなく"一人の少女"を利用するということだ。
断られても仕方のない話だし、万一断られても深追いはしないことにしよう、と彼は決めていた。
当然『正義の味方』として一望千里は守る。守りながらでも戦う。
慣れているやり方とは随分異なっているものの、これくらいの無茶は問題ではない。
「でも。私の力で、何か出来るんですか?」
「勿論だ。全てを透視する目があれば困っている人も、危険なヤツも、まとめて把握できる。
僕がそれに対処していく。仲間も徐々に増やしていって、最後にはこのバトルロワイアルを破壊する」
不安げに問う一望千里に、確かな言葉で切嗣は返す。
実際のところ、衛宮切嗣もまたこのバトルロワイアルを恐れている節があった。
あの日味わった、誰も救えない苦しみ。地上の煉獄で見た惨劇。
PTSDともまた違うものだが、とにかく今の彼は『誰も救えない』ことを極端に恐れているのだ。
だからこそ、一望千里が欲しい。その力で、正義の味方として多くを救い、このバトルロワイアルを正しい方向に導いて破壊すること。それが彼の願いだった。
「………僕はね。ひとつ、大きな失敗を犯したんだ」

答えを待たずに話始めるのはどう考えてもマナー違反だが、切嗣は口を開いた。
別に一望千里の同情を誘って、自らの主張を受け入れさせようとしているのではなく。ただ、自分がどうして殺し合いの破壊に、救済に執着するのかを誰かに知ってほしかった。
そうすることで自己を啓発しようと、していた。

「かつての僕は正義の味方を目指していた。………そして、破れた。
母親代わりの人を失った日から、僕は――多くを救い少数を切ることに執着してきた」

ナタリア・カミンスキーを撃ち落とした日。
空を飛ぶ死都と化した旅客機を撃墜することで大惨事を防いだ。ただし、母親に等しい存在を失った。
フリーランスの傭兵として、『魔術師殺し』の衛宮として、常に感情を殺してきた。
寂寥の涙には手を差し伸べずにはいられなかったし、歓喜の声には共に喜びを露にした。慟哭の声には心が震え、激情には同調してしまう。
つまるところ、衛宮切嗣はどこまでも人間らしすぎたのだ。

「結果として、僕はたくさんの人を殺したよ。妻と娘を見捨てて、それでも多数を選んだ。
―――最後に僕が助けられたのはたった一人さ。馬鹿みたいな話だろう? あれだけ全てを捨てて、全てを救うために臨んだ戦いで、救えたのはただ一人」

偶像とはいえ。自分の主義を曲げない為に、妻と娘を破壊した。
あの冬の城に閉じ込められたままの娘のことを、間接的にではあるが見捨てたことになるのだろう。
そんな切嗣に、もう一度与えられた願ってもいないチャンス。
今度こそ間違わず、あの宿敵を殺し―――二度と人々を惑わさぬよう、聖杯を破壊する。
それこそが、衛宮切嗣の願いだった。

「僕はこの世の全ての争いを終結させようとした。それが正しかったのかはもう分からないけどね。正義の味方っていうのは、大人になると名乗るのが難しくなるんだ」

誰もが正しいと認めてくれた願い。
たった一つのハッピーエンドを目指して必死で駆け抜けた。

「だから僕は――今度こそ。今度こそ、救ってみせる」

14 :
その言葉だけが、衛宮切嗣のすがることの出来る唯一のものだったのかもしれない。
黒いコートに身を包み、光のない瞳で、それでも正義であろうとする。
どれだけ外道と蔑まれても、正義の虚しさを知っても、心の中からその理想は結局、消えていない。
衛宮士郎に託すまでもなく、彼はまだ正義の味方だった。
「……ひとつ、だけ。衛宮さんは、どうして戦うんですか? あ、えと、こう言うのはあれですけど。一回失敗して、それなのに―――どうして、まだ?」
「ああ、そうだな。結局僕は、正義の味方になりたいんだ。ただ、それだけなんだよ」
苦笑して言う切嗣の姿を、かつての彼しか知らない者が見たなら、またもこう思うだろう。
『あの猟犬が、こんな表情をするわけがない』―――と。
彼の在り方は悲痛でさえあった。
だからこそ、だろうか。少女は一つの決断をする。
「……わかり、ました。私でよければ、衛宮さんに協力します」

それは、彼の理想に感銘を受けたからだったかもしれない。
かつての彼の妻のように。
彼と決別したサーヴァントのように、その理想を正しいと思ったからだったかもしれない。
しかしながら、一望千里にもまた、自らに思うところはあった。
『前回』――四字熟語達の殺し合い実験で、最後に出会った一つの四字熟語から聞いた言葉。
それを受けて、何かしらの実行に移す前に殺されてしまったけれど、まだやり直しは効く筈だ。
いわばこの殺し合いは、衛宮切嗣だけでなく一望千里にとっても、チャンスだった。

「でも、私は戦えませんから。そこには、期待しないでくださいね」
「有り難う。……正直、少し驚いているよ。断られるとばかり思っていたからね」

とはいえ、これで《一望千里》の力を手に入れたことになる。
この力が仇となって顔面を破かれた彼女にとってはトラウマを掘り返すようなものだとは思うが、しかしとりあえず付近の人間達の確認だけでもしておくべきだろう。
切嗣が一望千里にそう頼むと、既にトラウマを乗り越え、彼に協力すると決めた彼女は承諾した。
ルール能力の使用。
それと同時に開けていく視界。
見える。会場全体が手に取るように把握できる―――。

「見えるかい」
「はい。ルール能力は、やっぱり問題なく使えるみたい、です」
「そうか。じゃあ、とりあえずこのホームセンターの外を見てくれ」

勿論、見える。
遮蔽物など彼女の《目》の前には意味を為さず、ただ見透かされるのみだ。

「一番近くにいる人だと、……赤い髪の女のひと。なんか、格好いい感じの」
「殺し合いに乗っているような人間は居るか?」
「いや、いないみたい……です。あ、いや――ちょっと危なそうな人なら」
危なそうな人、というワードに切嗣の眉がぴくっ、と動いた。
人は見かけによらないと言うが、やはり危険そうな人物だとは分かる。
装備、表情、雰囲気。見かけだけで判別する手段など幾らでもあるのだ。

15 :
「手には、大きいナイフが2つ……あ、もう少ししたら、眼鏡の女の子とぶつかっちゃう、かも」
「………そうか。とりあえず接触してみよう。もしも話の通じそうな相手ならそのまま同行してもいいし、無理そうならここで叩いておいた方がいいかもしれない」
『魔術師殺し』としての装備は何一つない。
愛銃と魔弾は没収され、変わりに強力な霊装と未知の技術で製作された狙撃銃が与えられている。
切嗣自身が使用できる魔術『固有時制御』もあるにはあるが、あれは反動がなかなか痛い。
万全とは程遠い状態だが、まずは救えるものなら堅実に救っていくことにしよう。
衛宮切嗣は静かに狙撃銃を握り、一望千里の手を引いた。
『月霊髄液』を所持している以上、不意の奇襲には心配要らないだろうが、何しろ急がなければならない。
抱えて移動すれば一番手っ取り早いだろうが、一望千里は年頃の女の子である。
女性経験も皆無なわけではない(ただし少々甘やかしすぎてしまうきらいがあるのだが)彼はそこに最低限の配慮をして、妥協点として手を引くことにするのだった。
無理のない速度で、しかし急がなければ。
冷酷非情の猟犬と呼ばれた男は今、心の底からまだ見ぬ誰かの為に行動していた。
そのひた向きな姿に、黙って手を引かれる少女は静かに微笑むのだった。
【一日目/未明/E-4・ホームセンター】
【衛宮切嗣@Fate/Zero】
[状態]健康
[装備]MSR-001@とある魔術の禁書目録、月霊髄液@Fate/Zero
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品0〜1
[思考・行動]
基本:一人でも多くを救い、バトルロワイアルを終結させる
1:千里ちゃんと協力する。彼女を守る。
2:『両手にナイフの男』と接触する
3:説得の困難な殺人者はこともやむ無し。
※六巻『煉獄の炎』、聖杯破壊後からの参加です
※四字熟語バトルロワイアルに関しての大まかな情報を得て、ルール能力について考察しました
【一望千里@非リレーのオリキャラ】
[状態]健康
[装備]なし
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・行動]
基本:衛宮さんに協力して、元の世界に帰る
1:衛宮さんの理想を応援する。
※四字熟語バトルロワイアル、死亡後からの参加です

16 :
投下終了ですー。まさかの分割サイズ

17 :
投下乙です。
一望千里ちゃんの能力が強いな……。
ロワ内でも強キャラである切嗣と組めたのは幸運かな。
では自分も自分選投下します。
19話 初期化
登場人物:天野雪輝、椎名まゆり、新藤真紀

18 :
天野雪輝は呆然としていた。
自分が今置かれている、この異常事態に。
そして、自分が今右手に持っている『ソレ』に。
天野雪輝という少年は弱かった。
寂しがりやで、臆病で、騙されやすい。
そんな彼が手にしたのは『ソレ』こと未来日記だ。
『無差別日記』――――自分を中心とした周囲の未来を無差別に予知する能力をもった日記だ。
その能力はあまりにも強く、そして弱かった。
何にしろ、自分自身について死亡時以外書かれないため、その余地の時の自分がどのような状況なのかが分からないのだ。
そして、それを補ったのが我妻由乃という少女だった。
それについては後々に話すとしよう。
彼は今自分の右手に持たれていた日記を見て呆然としていた。
確約された【HAPPY END】が消えて、かつての日記の機能を取り戻していた。
「なんでだよ……なんでだよ、畜生ッ!!」
怒りの行き先は横に会った住宅の壁へと向かった。
左手が壁を殴り、鈍い音がするが結果は雪輝の左手を痛めるだけに終わる。
その痛みに耐えきれず雪輝はうずくまる。
「……掴んだ、はずなのに」
怒り、呆れ、そう言った物を通り越して雪輝は絶望していた。
幸せを消されて絶望しない人間がいるのだろうか。
そういう人間はまずいないと言っていい。
「――――とりあえず、由乃を探さないと」
この場には我妻由乃も来ているのだ。
そうなればまず優先するのは当然だろう。
彼自身の大事な人であり、最も頼れる仲間だ。
探さない手はないだろう。
まだ日記には引っかかってはいないが、いつか由乃の情報が入るに違いない。
「……行こう」
わずかな希望を胸に、雪輝は歩き始めた。
◆         ◆
「……今は6時13分、だから……」
あれから数分後、雪輝は日記を覗きながら歩いてた。
無差別日記の力が弱まっているのか、書かれている量が少ない気がしていた。
そう思いながらも次に書かれた事を見つめる。

19 :
------------------------------------
6:17[住宅街内部]
女の子と遭遇する。
6:19[住宅街内部]
もう一人女性と遭遇する。
6:23[住宅街内部]
女の子が女性に殺される。
------------------------------------
と、とても穏やかではない内容であった。
だが僕の方にはDEAD ENDは出ていない。
何故だろうか、女性は女の子だけをのか?
普通だったら一緒にいる僕もはずだ。
最初の女の子も会うだけですぐに別れるのか?
そうであれば僕と彼女は別の場所にいて殺されなかったことになる。
でも、そうなると僕はその女の子の死を認識できない。
「……あと、4分か」
僕はこの事象を回避する事も出来る。
この女の子を見殺しにすることもできる。
このままさっさと住宅街の外に出ればいい話だ。
「…………でも、死んでほしくない」
だが、人が死んでいくのは嫌だ。
死んだ人間は、生き返らない。
ここにいる3rdも12thも3周目の奴だろう。
一度亡くした命は取り返しがつかない。
それを僕は重く知っているつもりだ。
「――――助けよう」
もし死ぬのだとしても、僕にはこの日記がある。
僕自身ではなく他人についてなら書かれるこの日記なら、助ける事が出来るかもしれない。
向こうは日記所有者ではない(日記所有者なら書かれるはず)から、こちらの方に分がある。
そう思いながら市街地の裏道から歩道に出る。
ドンッ
「うおっ……と、ご、ごめん」

20 :
誰かにぶつかってしまい、その人を見る。
背丈は自分より少し低め。
どこか明るい印象を受ける服装。
その子がきっと、僕が会う『女の子』なのだろう。
「トゥットルー、はじめましてー!」
「え、あ……はじめまして、僕は天野雪輝と言います」
「まゆしぃは椎名まゆりと言うのです、よろしくねー」
どういう子かと思って少し考えていたが、思った以上だった。
外見は普通に可愛く、とても明るくていい子だった。
安心するとともに、この子が死んでしまうという事実が重くのしかかる。
絶対に助けなければ――――その思いがさらに強くなる。
「……ッ、そうだ! 椎名さん、だったっけ?」
「え? どうしたの雪君」
「ゆ、雪君……って、それは置いておいて……ついてきてください! ここは危険です!」
椎名さんと遭遇した2分後、僕たちは『女性』と遭遇することになる。
携帯電話を見ると時間は6:18となっている。
と、日記が書き変わっているのに気づいた。
------------------------------------
6:19[住宅街内部]
もう一人女性と遭遇する。
6:23[住宅街内部]
椎名さんが女性に殺される。
6:24[住宅街内部]
1stは女性に殺される。
DEAD END
------------------------------------
出てしまった、僕の額に冷や汗が吹き出す。
DEAD END――――逆転不可能の死刑宣告。
僕はかつて何度これが出たのか分からない。
だが、何度も何度もその不可能を可能にした。
今回だって、行けるはずだ。
向こうは日記所有者ではなく、一般人だ。
今まではすべて日記所有者が関わっていたから不可能だと言われたのだ。
しかし今回は先ほども言ったとおり一般人、未来は分からない。
その分のハンデはこちらにあるはずだ。
「早く! ここにはもうすぐ――――」
「もうすぐ、何?」
後ろから『女性』だと思われる人から声をかけられた。
どうしようかと思いながらも、ゆっくりと後ろを向く。
そこに立っていたのは、椎名さんと逆のタイプの女性。
どこか落ち着いていた雰囲気を見せる、緑髪の人だ。
「――――初めまして」
「初めまして、で? もうすぐ何だって言おうとしたの?」
「何であろうとも、あなたには関係のない事だ」

21 :
出来る限り焦りを見せないように喋る。
『日記』がバレる事はよほどないが、それでも用心は必要だ。
もし日記の存在を知られて、何かが起きれば最悪だ。
何かが何かはわからないが――――多分結論的には『死』だろう。
「――――そう、はぁー……面倒ね」
「面倒なのはこちらも同じです……申し訳ありませんが僕たちはここで」
「――――――――見逃すと思ってるの?」
そう思ったところに、何かが飛んできた。
それを間一髪で避けて体勢を立て直す。
投げてきた物を見る、それは形容するには簡単すぎる物体だった。
「……逃げるよ! 椎名さん!」
僕は有無も言わさず彼女を引っ張った。
投げてきた物、それはナイフだった。
あの場にいればいつか自分達はナイフによって貫かれていただろう。
だが、今逃げているこの場でも同じだ。
すでに『死刑宣告』は立っている。
このまま逃げても僕たちは死ぬだけだ。
まずは裏道に入り込む。
真っ直ぐ進むと丁度十字路みたいになっている。
左に進むか真っ直ぐ進むか右に進むか。
それだけでも未来は変わったりする。
(……僕は、左に曲がる)
日記を覗くが何も変わらない。
死亡宣告の時間はあと数分、ここで左に曲がるのは得策でないと判断する。
では、真っ直ぐ進むとどうなる。
頭の中で考えると日記が書き変わった。
だが、変わった結果は最悪だった。
行き止まりで追い込まれて死亡の宣告。
最後に右ならばどうだ、と思うと再び日記が書き変わる。
------------------------------------
6:22[住宅街内部]
女性がいなくなった。
6:27[住宅街内部]
椎名さんが倒れてきた電柱に潰されて死ぬ。
6:29[住宅街内部]
女性がこちらに気付き追いかけてくる。
------------------------------------

22 :
DEADENDは消えた、だが椎名さんは死ぬことになっている。
だが、十字路がすぐ目の前に迫り、日記の構造通り右に曲がる。
今は緑髪の女性から逃げる事を優先しないといけない。
そこからは真っ直ぐの一本道となっていて、ただ走り続ける。
先ほどから走り続けて疲れもたまり、かなり足取りがふらふらしているが、それでも走る。
「っ、はぁ……はぁ……!」
あれから何分経ったのか分からない。
だが、後ろを見るとあの緑髪の人はいなくなっていた。
「……ごめんね、椎名さん……いきなりこんな目に遭わせちゃって」
「ううん、雪君は悪くないよ〜、むしろまゆしぃも助けられちゃって……ありがとうなのです」
「い、いや……僕は当然の事をしたまでだよ」
壁にもたれながら息を吐く。
何とか逃げ切って一安心、と思いながらも日記を見る。
そこで、自分のミスに気がついた。
緑髪の女性に気を取られすぎて、忘れていた。
見えていたはずだった、気づいていたはずだった。
椎名まゆりの死刑宣告――――
ドンッ、と言う音が聞こえた気がした。
僕のすぐ左横で、『ソレ』を見る。
『椎名まゆり』だった『ソレ』を。
悪夢以外の何物でもなかった。
忘れていたんだ、いや、忘れたんだ。
見たら、忘れることなんてなかった。
それ以前に、逃げ切った時に日記を見れば変えれたんだ。
-----------------------------------------
6:27[住宅街内部]
椎名さんが倒れてきた電柱に潰されて死ぬ。
-----------------------------------------
この、変えれたかもしれない未来を。
僕は変える事が出来なかった。
何が、助けようだ。
僕は初めから助ける気なんてなかったじゃないのか。
そうだよ、ここから脱出するなんて不可能だ。
考えてみればそうだ、『未来日記』はすでに無くなったはずなんだ。
それが再び動いているという事は、あの主催はデウスと同じ、それ以上の力をもっているかもしれない。
あいつを倒すなんて、不可能じゃないのか。
いや、きっとできる……椎名さんも救う事が出来るかもしれないんだ。
日記の時間は、27分だけれど、今はまだ26分だ。
あと1分しかないが、何かができるかもしれない。
「ォ……」
「ひっ……?」
「オ、か……リン…………」
わずかに動いていた手が、地面に落ちた。
死んだ、救えなかった。
彼女を、僕は、助ける事が、出来なかった――――。

23 :

「ッ、うわああああああああああああああああ!!」
無我夢中になって走った。
椎名さんを放って、僕は逃げた。
【椎名まゆり@シュタインズゲート 脱落】
【残り 94名】
【朝/E-5住宅街】
【天野雪輝@未来日記】
[状態]肉体的疲労(大)、ショック(極大)
[所持品]基本支給品、無差別日記
[思考・状況]
基本:――――
1:――――
[備考]
※本編終了後からの参戦です。
「……何があったかと思えば、惨いわね、これ」
緑髪の女性――――新藤真紀は圧死している少女の前に立っていた。
先ほど自分から逃げた少女だった『ソレ』を見て、息を吐く。
運が悪かったのだろう、この子は。
可哀想だとは、思わない事もない。
「――――――――まぁ、参加者が減ると思えば悪くないわよね」
ライバルは一人でも少ない方がいい。
相手がどれだけ弱くても、人が減るという事はこの殺し合いにとって良い意味をあらわす。
「……しっかし、殺し合い生還させた後に殺し合いに呼ぶとか、何を考えているのか」
考えてみればそうだ。
腐れ縁であった須牙襲禅も死んだあの殺し合い。
それですべてが終わったものだと思っていた。
だが、終わりなどはなかったのだ。
闇の先にはまた別の闇。
「それでも、生き抜いてやる」
この前の殺し合いと同じように。
何としてでも生き抜く。
最後の一人になって、終わらせる。
この、最悪のループを。
「ここで死ぬわけには、いかないから」
【朝/E-5住宅街】
【新藤真紀@他の方のオリキャラ】
[状態]健康
[所持品]基本支給品、投げナイフ×9@現実
[思考・状況]
基本:殺し合いに乗り、生還する
1:出来るだけ多く参加者を殺していく、勝ち目がないと判断すれば退却する
[備考]
※俺オリロワ生還後からの参戦です。

24 :
投下終了です。

25 :
こちらで自分も非リレーロワを開始したいと思います。
タイトルは【オカルトホラーバトルロワイアル】です。
アニメやゲーム、2chなどいろいろ混じったことになります
では、OPを投下します

26 :
全ては終わった、と思っていた。
ぼく―――榊原恒一の周りで起きた死の連鎖は終わり、一時ながらも平穏が訪れた筈だった。
大勢のクラスメイトが死んで、僕の大切な人も死んだ。誰かに殺されて、ぼくがもう一度殺した。
吐き気のするような毎日が過ぎ去って、これからは少しだけ寂しい日常が送られるんだ―――見崎がいて、勅使河原が何か馬鹿をやらかして、望月がいて―――。
でも、ぼくは知らなかった。世の中は、そんなに甘くは出来ていないということを。
ぼくにそれを見せつけるかのように、目の前では不可解なことが起きている。
ふと目を覚ますと、そこは教室だった。
とはいえいつも授業を受けている校舎とは随分違う、木造の小さな校舎の中の一室のようだ。
そこで、ぼくはサイズの合っていない椅子にがっちりと縛り付けられている。
首にはまるで家畜のように、冷たい感触を放つ首輪が嵌められ、この状況のあまりの異常性をよく表していると言えた。
ぼく以外にも人はたくさん居るようで、誰一人として例外なく首輪が嵌められている。
すぐさま外してやりたかったが、見た目以上にきつい拘束の前に、腕を動かすことさえままならない。
それに、仮にもし両腕が使えたとしても、何故だか本能が、これを外してはいけないと警告している。
背筋を走る悪寒が、ぼくの不安をより一層強く煽った。
「さ、榊原っ!!」
焦燥の色がありありと見えている誰かの声が、ぼくを呼んだ。
首だけで声の方向を向くと、そこには例に漏れず縛られ、首輪を嵌められている少年の姿があった。
彼の名前は勅使河原直哉、あの一連の悲劇から生き延びた人間の一人。
お調子者の彼でもこの異常極まる状況を前にしておちゃらけることなど出来ず、すがるようにぼくの名前を呼び、ぼくと目が合うと安心したように苦笑いを浮かべて見せた。
冷静に分析しているようだけど、ぼくも内心では相当な焦りと恐怖を抱えている。
何せやっと勝ち取った平穏が、現在進行形で脅かされているのだ。
これで平静を保っていられる人間が果たしているだろうか。
と思って辺りを見れば、無表情だったり、怒りの形相だったり――意外にも、大きな混乱は起きていないようだった。かく言うぼくも、取り乱してはいない。
不安に潰されそうなほどで、肺の爆弾が再発しないか不安なくらいだが、大丈夫そうだった。
あの一件で、ぼくの心は随分と鍛えられた。大切な人が死ぬ瞬間を眼前で目撃した、あれ以上の衝撃ではなかった。
しかしこの時、ぼくはまだ知らなかった。
『現象』は終わってなどいなかったと。
或いはまだ―――始まってもいなかったと。
「目は覚めたかい?」
そう言って、丁度教壇の位置に出ていったのは一人の青年と、二人の少女。
その瞳は――およそ人間のものとは思えないほど深く、闇に満ちている。
怖い、と思う。まるでホラー小説のようなこの展開に、ぼくは心から恐怖していた。
そんなぼくのことなど目にもかけず、鼻を一つ鳴らして、青年は驚愕の事実を語り始める。
それは、ぼくがやっとのことで手に入れた平穏を叩き潰すような言葉。

「今宵、君たちには殺し合いをしてもらう。反則はなし、制限時間は48時間だ」
その言葉を皮切りとして、様々な言葉が飛び交う。
罵声が殆どで、中には泣き声のようなものさえ混じっていた。
普段なら質の悪いドッキリとでも片付けられそうなものだが、この状況はそれにしても異質すぎる。
大体、芸能人もいないのにドッキリを仕掛けて、どうしようというのか。
呆れたように、教壇に立つ二人の少女の内、目が墨でも塗ったように真っ黒な少女が言った。
「辰巳、静かにさせて」
「分かった」
にやり、と純朴な顔立ちをどす黒い笑顔に歪めて、辰巳と呼ばれた青年は右腕を静かに挙げた。
その刹那、教室内に明らかに『オカシイ』音が響き渡る。
くぐもった、爆竹を密閉された狭い場所で爆発させたような鈍い音が。
そして、しばしの静寂の後に響くは絶叫。

27 :

「ゆ、ゆかりぃぃぃぃいいいいいいッッ!!!」
「きゃ、きゃああああああああ!?」
聞き覚えのある声。しかしぼくは敢えて、その方向を見ようとはしなかった。
何が起きたのかはもう分かったからだ。
分かりきっているのに、わざわざ無惨な死体を見たいとは思えない。
誰かの首輪が、爆発した。
「その首輪は特別製の爆弾だ……化け物だからって例外はない。爆発したらそれでお終いだ。それが爆破される条件は一つ、六時間毎に行う死者の詳細を告げる放送、その中で発表される『禁止エリア』に侵入した場合。誰だろうと、容赦はしない」
その声は底冷えするほど冷たいのに、辰巳の表情はまさに――笑顔だった。
隣の瞳が真っ黒な少女も同じように微笑み、その更に隣の、ある意味では一番人間らしくない小学生くらいの少女は、何をするでもなく、ただそこにいた。
そして、既に言うべきことは言い尽くしたから、なのだろうか。
ぼくの後頭部に殴られたような鈍い痛みが走り、意識が遠退いていく。
いくら現象を乗りきったといえど所詮中学生のぼくには、逃れようもなく。
こうして、ぼくのバトルロワイアルは始まった。
【桜木ゆかり@Another 死亡】
【主催者:辰巳@屍鬼、桐敷沙子@屍鬼、篠崎サチコ@コープスパーティー】

28 :
40/40
5/5【Another@アニメ】
○榊原恒一/○見崎鳴/○赤沢泉美/○勅使河原直哉/○風見智彦
5/5【shuing〜手中に幽霊が出たわけなんだが〜@2ch】
○◆jBSgvF.E4Y/○ゆり/○姉/○兄/○婆ちゃん
5/5【ひぐらしのなく頃に@ゲーム】
○前原圭一/○竜宮レナ/○園崎詩音/○鷹野三四/○赤坂衛
5/5【都市伝説・怪談@現実】
○テケテケ/○メリーさん/○怪人赤マント/○ひきこさん/○ベッドの下の男

5/5【学校であった怖い話@ゲーム】
○日野貞夫/○坂上修一/○風間望/○岩下明美/○福沢玲子

4/4【コープスパーティー@ゲーム】
○持田哲志/○岸沼良樹/○篠崎あゆみ/○刻命裕也

4/4【青鬼@ゲーム】
○ひろし/○卓郎/○美香/○青鬼

4/4【師匠シリーズ@2ch】
○師匠/○うに/○京介/○真崎京子

3/3【屍鬼@漫画】
○尾崎敏夫/○室井静信/○村迫正雄

1/1【寺生まれのTさん@2ch】
○Tさん

【主催者】
辰巳@屍鬼
桐敷沙子@屍鬼
篠崎サチコ@コープスパーティー

29 :
ルール
・最後の一人になるまで殺し合いを行う。反則はなく、制限時間は48時間。
・12時間の間死者が出なかった場合、参加者全員の首輪が爆発し、優勝者は無しとなる。
・参加者たちにはランダムに支給品が与えられ、銃器から幽霊などといった意思を持つものまで様々な種類がある。デイパックに入れられているが、デイパックは四次元構造なので上限なく入れられる。
・どんな存在だろうと首輪を爆破されたら即死。
マップ
1 2 3 4 5 6 7
A 海 海 森 森 森 館 海
B 森 商 商 役 森 川 海
C 森 学 旧 森 薬 川 森
D 海 森 神 林 廃 廃 海
E 森 森 病 教 線 駅 森
F 海 住 住 住 線 住 森
G 海 海 森 公 森 森 海
海=海
森=森
館=洋館
商=商店街
役=役所
川=川
神=神社
林=林
廃=廃墟群
病=病院
教=教会
線=線路
駅=駅
住=住宅地
公=公園

30 :
投下終了です

31 :
オカルトロワ、投下します。

32 :
すいません、少しミスを発見したので投下を取りやめます

33 :
おお、新ロワがきている!
把握率も高いのでわくわくします。
それでは久々ながら「オリ俺得ロワ」投下します
タイトル:ウラオモテ
登場人物:日南馨、折原優樹、ヘンゼル、アシュリー・エルゼーン

34 :
「このふざけた殺し合いにのっているか」という問いに対する答えは「はい」か「いいえ」しかないと思っていた。
「それは今から決めることさ」
……なんだそれ?
くそ憎たらしいことに、空は綺麗に晴れていた。こういう日は友達とバカ騒ぎするに限るっつーのに……。
柚希のやつまだこりてなかったのかよ。
≪皆さんにはこれから殺し合いをしていただきます≫
あんなの、もう絶対忘れられない。
殺し合い、殺し合い、殺し合い――――。
繰り返すたび胸に響くその言葉に思わず吐き気を催した。だって、友達が、死ぬかも――――。
「う゛っ……!」
吐いてない。吐いてないけど。思わず口を押さえてしゃがみこむ。立てない。なんだよ。俺、こんなにヘタレだったか?
人の死体だって何度か見たことあるだろ。友人の死体を想像したくらいでこうまでダメなのか。だらしねぇ、立て。活路を見つけろ。
――とりあえず、こんな道の端にしゃがんでちゃいけねえ。地図によればこの近くに山がある。目で見える位置だ。まずはそこにいってみて、木の陰に隠れながら考えよう。ここにいるよりずっとマシだ。
さあ、立て、動け!
「……っ」
情け無いことにマジでふらつく身体を無理やりに動かして、地図と勘と目を頼りに山へ向かう。
木の葉は青々と茂っていて、森林にしては土が湿っていない。さっきも言ったけど、空は本気で憎たらしいほど快晴。雲は……あるけど。そして風は不気味に冷たいんだ。
……お?
待てよまてよ。
今の季節はいつなんだ?
確か、昨日までは友人と炬燵でぬくぬくやってたんだよ。
「男ばっかでむせぇよ」「じゃあ、彼女いる人挙手ー。今度つれてきてー」「いるわけねーだろバーカ」「俺にはいるよ」「嘘だ!」「嘘だよ」「炬燵蜜柑こそマジ至高」「炬燵彼女こそマジ至高」「お前開墾されろ」「なにそれこわい」
……思い出すとアホらしい会話。
だけどさ、やっぱ思い出してむるとあきらかにおかしい。
だって炬燵は冬だろ? ……でも目の前の木は葉を着込んでいて、まるで夏のようだ。
「あー……炬燵蜜柑してぇ……」
呟いてもどうしようもないから、どうしようもないけど、どうしようもないからこそどうしようもないことを呟いてみた。
そんで。
「炬燵彼女はいいのか?」
「ぅひゃうっ!」
後ろから知り合いの声(しかも思ってた内容ばっちり)を食らったせいで、思い切り変な声が出た。

35 :
――――。
「……おい」
「ごっ……ごめ、ちょ、待っ……あはははっ」
先ほどの「ぅひゃうっ!」から約三分。振り返ったら、炬燵彼女の友人が未だに爆笑している。
……ちなみにこいつのために言っておくと、炬燵に入ったまま「炬燵彼女こそマジ至高」って言ったのは別人な。「お前開墾されろ」がこいつ。
「なあ、笑いすぎじゃね?」
「だ、だって、十七歳男子が「うひゃう」、「うひゃう」……!」
「殴るぞ」
「やめろ痛い」
脇腹を押さえながら涙目でこちらを見上げる「彼」は、人間ではない。
半妖精、という種族のれっきとした妖怪なのだ。
「下手したら俺より年下に見える分際で妖怪なんてな……」
「よし馨君、言いたいことがあるなら言ってごらんなさい」
「おりはらゆうきさんじゅうななさい」
「よし」
「ごめんなさい」
それなりに適当なことを言いあっているが、俺は正直なところかなり安心していた。
後ろから突然声をかけられたせいでびびったけれども、こいつは俺ら四人組の一人で、「折原優樹」という。
先ほども言ったように「半妖精」という種族の妖怪で、基本的に、「外見年齢×二=実年齢」ということであるようで。大体俺の二倍は生きているらしい。
……他の二人に比べたら大分マシなんだけど、俺が四人の中で最年少なもんだから(人間だもの)、たまに、たまぁにむなしくなるんだ。
四人の中で最も情報を所有する彼に出会えたことは、もしかしたら安心感以外でもラッキーだったのかもしれない。
……まてよ。
俺は優樹を信用していいんだよな?
いや。疑いたいわけじゃない。疑いたくない。
だけど、優樹のことだから。俺らの中で一番頭のいい優樹のことだから、もしかしたら「俺と組まないほうが優樹のためになる」ルートを考えついちゃってるんじゃ……。
「ええい!」
「は?」
声を上げつつ自分の頬を叩いて喝を入れる。隣で優樹が若干引いた声を上げたけど、気にしない。
躊躇っててもいいこと無いぜ、俺。聞いてしまえばいいだろ、さっさと聞いちゃえ。
「優樹」
「あ?」
「このふざけた殺し合いにのっているか」
「それは今から決めることさ」

36 :
……どういうことなの。
優樹はさして表情も変えず、デイパックを地面に置き、学ランの左ポケットから十円玉を取り出した。
それをぴんっと空に向かって放り、両腕を勢い良く胸の前で交差させた。……どちらかの手で十円玉をキャッチしたらしいが(だって地面に無いし)、さっぱり見えなかった。
「馨が、コインを握ったほうを当ててくれたら、俺は「なるべく安全な道を選んで生存」することを誓おう。当てられなかったら、俺はこの場で今すぐ死ぬ」
そして、優樹の爆弾発言。
「は!? なんだよそれ!」
「人に自分から挑むほど強くないからね、俺。だけど殺されるなんて言うのは、たまらなく不快なのさ。思い浮かんだ二つのルートを馨に託すよ」
優樹はにこりと不気味に――けれども目を逸らせなくなるほど綺麗な――笑みを浮かべて、芝居がかった口調で続けた。
「さあ、人の子よ。賽は地上高く投げられました。どうか、どうか、あなたのお好きなように、素晴らしく、無様に、足掻いて見せてくださいませ」
――――それは、ほんの一年と少し前、柚希が俺に言い放った言葉だった。
悪趣味な優樹らしい。
「……右」
「へえ、なんで?」
「右か左だったら左だと思うんだ。だけど、性格の悪いお前に合わせて、あえての右」
「そう」
優樹が、両手を前に差し出し、ゆっくりと両手を開いて見せた。
右手には、十円玉が――――。
「悪かったね、性格悪くて」
あった。
「……あった」
情け無い。身体から力が抜けた。けれどよかった。優樹が、まだ生きてる……!
どさりと膝から崩れるようにしゃがみこんだ俺に、優樹が一瞬驚いたように瞬きし、それからまた腹を抱えて笑い出した。
「おい、あはは、なあ馨、大丈夫かよ、このチキン」
「だっ、大丈夫じゃねえよバカ!」
「ははは、ごめんて。でも俺、それなりに死と遠い存在だったからさ、なんか死ぬことに興味が無いというか」
……そうだった。
俺らが住まう、「黄昏」という国に存在する妖怪の多くは、人間に比べると大分「死ににくい」。人間より回復力が高いうえに、そもそも身体能力自体が人間とは比べ物にならない。
けれども多くの妖怪には(種族ごとに差はあるけれど)寿命というものは存在するし、急所を刺されればしっかり死ぬ。つまり、「死ににくい」だけで、妖怪といえど最後は死ぬのだ。
――しかし、妖精は違う。
そもそも、安定した肉体を持っていない妖精は、普段だと実体化と消失を繰り返してふわりふわりと生きているらしい。たいした目的もなく、ただただ存在するためだけに生きている。
故にそんな妖精の身体を殴ったところですぐに傷口はなくなるし、どこかが千切れてもまた修復されてしまう。優樹曰く「綿のようなもの」だそうだ。
そんな、永遠に死なない妖精と、当然ながら簡単に死ぬ人間のハーフ。それが半妖精だ。要するに、人間のように実体を持ちながら、永遠にいき続ける妖精。
半妖精が「人間側」「妖精側」のどちかに転がるかは五分であり、「人間側」に転がってしまえば「実体を有し、自由に活動できるものの、絶対ない」。
「妖精側」に転がってしまえば、「生へ執着できなくなる代わりに死ぬことが出来てしまう」。ちなみに優樹は「人間側」だそうだ。
優樹に何度か「逆じゃないのか」と問うたが、これであっているのだという。「根本が交わって入れ替わってこその半妖精だ」。
……故に、優樹はこのバトルロワイアルでも(恐らく)数少ない死の恐怖が無い参加者だと思っていたわけだが、先ほどからどうも「死にたい」と、そういっているように聞こえる。
つまり。

37 :

「優樹、今ならんの?」
「うん」
彼があまりにあっさりと頷くものだから、思わず流しかけてしまった。
「……マジかよ!?」
「まじまじ。実際さっき柚希に殺されかけたし」
「なんだそりゃ」
「いやあ、それがさ……」
――情報通、折原優樹は過去にも何度か情報のために「つっこまなくてもいい首」を突っ込んだことがある。そのたびに何度か死に掛けては、それでもその身体を利用して何度も無傷に笑顔を携えて帰還する、彼。
時間を置いて何度も「情報収集」し、結果的にしっかりと情報をつかんでくるのが優樹であった。
そんな彼が、唯一望む情報を手に入れられなかった相手。それが柚希だった。
いつものように興味で情報に首を突っ込み、それが柚希を怒らせた、と。
本人はもう思い出したくも無い記憶なようで、俺に詳細を教えてくれたことは無い。けれど、彼女の話をするときに優樹が見せるくらい表情は、どれほど柚希が恐ろしかったのかをしっかりと語っていた。
「教室出る直前にすっごい華麗な足払いをくらってさ。そのまま首筋にナイフ突きつけられて「このまま刺したら、今のあなたはますわ。チャンスですね」って」
柚木の口調を真似て嘯く優樹。なんだそりゃ。
「それでさ、さっき試してみたんだよ。傷口がどうなるかって」
優樹が差し出した左の中指には、綺麗な歯並びの噛み跡があった。どうやら流血したようだけれど、血は多分唾液と一緒に拭われた後だ。
「……噛んだのかよ」
「うん。持ってるのは銃でね。流石に自分の手を狙うわけにはいかなくてさ。だからこう……「がぶっ」とやってみたわけですよ。そしたら、こう。傷が残ったままでね。へえ、傷って残るんだあ、って思った感じ?」
「おまえなあ……」
相変わらずのテンポだった優樹に安心した。突然るようになるなんて、驚くどころか俺ならパニックになりそうなもだが、そこは流石の優樹。本人の脳みその中では「どうでもいいこと」に分類されたらしい。
「あ、でも別にどうでもよくないよ?」
俺の心を読んだかのように優樹が言う。
「どうでもよくない。だけど、きっとこのあといくらでもパニくることが起こるだろうから、無理に押さえ込んでるだけだ」
優樹は、先ほど地面に下ろしたデイパックをあけている。しゃがんでいる上に俯いてしまっている彼の顔は全く見えないが、口調から察するに自嘲的な表情を浮かべているに違いない。
「…………」
それでなんて返して良いかわからなくなった俺に、優樹が話題をがらりとかえるようにデイパックの中から見つけたらしい名簿を差し出してきた。まだ顔は上げてくれない。
「……さて、「なるべく安全な道を選んで生存」についてなんだけど。とりあえず、俺たち二人じゃ心許ないから、仲間から増やしていこうと思う。一人か二人だけど」
優樹が、知っている人の名前の横に爪で傷を作っていく。あまり目だって無いけれど、そこまで考えているのだろうか。
「知っている奴らは、「葵志貴」「麻生一」「雅礫」「鬼一樹月」「北上将士」「五条藍」「西行氷哉」「高屋敷司」「土御門伊織」「七瀬蛍」「方丈葉月」「円千代」だね」
「全部で十二人……。俺らを入れて十四人か」
「バトルロワイアルに参加している人数は、俺らを入れて、且つ船山あきを抜いて六十四人だから、このなかだけで考えること自体がかなり愚かなんだけど、考えないよりはマシってことで」
「おう」
「まず、なるべく接触したくない人を除外していくよ」
「葵志貴と雅礫か?」
葵志貴は柚希の忠実な部下だ。心酔しちまってる。雅礫のほうはそんなことも無いけど、志貴と仲が良いから除外したほうが良いだろう。
蛍は――――。
七瀬蛍は、過去に一度俺たちを裏切った。
……いや、そんなことは考えない。あの時は蛍が重大な問題を抱えていたのだから、あれはもう忘れよう。
蛍は、今でも俺たちの大事な友達だ。

38 :
「葵志貴と雅礫。うん、まずそいつらは最初に除外すべき」
うんうん、と優樹は頷いて、そして続ける。
「次に外すべきは、鬼一樹月と土御門伊織、あと方丈葉月だな」
「え?」
予想外だった。
「え、まてよ、なんでその人たちが? 確かに一回戦ったことあるけどさ……」
いや、「戦ったことがある」なんてものを優樹が除外理由に挙げるわけが無い。だって三人とは既に和解しているし、「戦ったことがある」なら将士さんを忘れてる。
何故か優樹が呆れたように笑い声を上げて(悪かったな)、解説を始めてくれた。
「――鬼一樹月は、善人だから。多分あの人は多くの人間を救いたがるから、俺らにとっては浪費することになる時間が出てくる。最悪、柚希に挑みそうだし。「俺らが」生き残りたいなら、善人は仲間に入れないこと」
まあ、馨も善人だけどね。
なんていう優樹は本当に悪趣味だと思った。
だって優樹は、「俺たちが生き残れば、他の奴らはどうでもいい」と言っているように聞こえたのだ。きっと、そういっているんだろう。
「土御門伊織は、絶対俺より頭イイでしょ? あの人はあの人で、何か考えているだろうね。俺は俺の意見を変える気はないから、この人と議論して時間を浪費したくない」
「ああ……」
頑固者だからなあ、二人とも。
「方丈葉月を見捨てる理由は一つだよ。あいつはただの不老不死人だ。俺と同じ状況だとすると、あいつも普通に死ぬ。だったら、そんな一般人を仲間に入れたら足手まといになるだけだから」
「お前……ッ」
「おっと、怒るなよ馨。俺たちに救える余裕があるなら救いたいよ? だけどどう考えても無理だろ? 俺たちは助け合える仲間を見つけなければならない」
「見捨てる」なんて言葉をあえて使ったらしい優樹は、すこしイラついた俺と一歩距離をとるようにそう言う。それでも彼は顔を上げなかった。
優樹は冷たいと思う。
こういうと彼は、「馨があったかすぎるんだよ」と返してくるが、俺が暖かいならば、他の人はなんなんだろう。
助け合いたいとこの優樹はいうけれど、助け合うのと頼るのと縋るのは――どれくらい罪なんだろう、
俺は暖かいんじゃなくてぬるいんだよ。俺は優しいんじゃなくて甘いんだよ。俺は助け合えるんじゃなくて――。
「馨?」
優樹が心配そうに俺の顔を覗くだから、慌てて笑顔を作る。
「あ、いやいやなんでもないから。続けて。なんで将士さんは除外しないんだ?」
話題を作ってやれば、優樹が納得できなそうに首をかしげて、また俯いて、それから返答してくれた。
「北上将士は基本的に「来るもの拒まず」だ。できれば俺たちより強い奴らとは接触したくないんだけど、彼の場合は重要な目的とか持ってなさそうだから、ついてきてもらえる可能性はあるね」
「へえ……」
「で、次に除外すべきは西行氷哉と円千代だ。理由はわかってもらえる?」
「志貴と同じか?」
「そう。あいつらは主人たる鬼一樹月と土御門伊織を追っているだろうから、俺たちに協力してくれるとは思えない」
「残るのは一と将士さんと五条さんと司くんと蛍?」
「そうそう、あー……でも高屋敷司はなあ……」
「ん?」
「だってあいつバカじゃん?」
「はっきりいうなあ」
バカとはあんまりな物言いであるが、まあ優樹からすればバカなんだろう。直感で走りまくってあげく暴走するのが司くんだ。でも語り口からするに、会えたなら行動を共に出来るんだろう。頑張れ司くん、負けるな司くん。
「五条藍は悪くない。寧ろ良い。……けど、彼女に対しては情報が少なすぎるんだよなあ……」
もっと調べておけばよかった、という優樹の口調が、今日の中で一番悔しそうだ。
「彼女はなあ……彼女の中で「協力するか否か」のボーダーラインがあるらしいんだけど、よくわかんないんだよねえ。今度ゆっくり考えようとか思ってたのによお……。多分俺じゃ無理だよなあ……」
おおう、優樹の声がどんどん低くなってる。おお、こわいこわい。

39 :
「じゃあ将士さんと司くんと五条さんは保留?」
「そうだね」
「あ、じゃあ残ったのは」
麻生一と七瀬蛍だ。
俺たちの、友達――――。
「一は全く問題ないね。あいつは人といると途端に頼りになるタイプだ」
「……蛍は?」
「戦闘力なら一番頼りになるな。あいつが僕らに協力してくれれば最高なんだけど……信じるしかないよ」
それは、優樹にしてはとんでもなく煮え切らない台詞だったけど。
「そうだね」
彼はもう、僕らを裏切らないから。信じればそれで良い。
「まあ、会わなくちゃ考えても無駄なんだけどなあ」
俺が呟けば、優樹が待ってましたといわんばかりの顔で。
「二人がいそうな場所は既に考察済みだ」
「おおー!」
皆さん、折原優樹に全力の拍手を。
なんなんだこいつは、物事考えすぎだろ。
……ん?
待てよまてよ。
こいつがものをよく考えてるのはわかったけど、おかしくね?
俺、こいつの考え、まだきいてねえぞ?
そうだよ、優樹が「考えてる」といっただけで、二人の居場所も、そもそも優樹の考えてる「なるべく安全な道を選んで生存」する方法も聞いてない。
聞かなくちゃ。
「なあ、優樹……」
俯いていた優樹の顔がやっとこちらをみたのと同時に、その端正な顔が思い切り引きつった。
「馨、動くな!」
そのまま優樹がデイパックから銃を引っ張り出して、ろくに狙いも定めず(定めて無いように見えた)、発砲した。
「!?」
動くなといわれたけれど、これはもう振り向かざるを得ない。振り返ると、そこには腹を押さえた少年がいた。
「「子供……!?」」
俺だけじゃなくて、優樹まで驚いたような声を上げる。
少年は思い切り辛そうで、だけど悲鳴なんて上げずに――。少年はデイパックを持たずに、転がるように逃げていった。
その手には、抜き身の刀――――。
そのまま少年の去った先を見ていた俺の耳に飛び込んできたのは優樹の声だった。
「子供……? 俺、馨の後ろに影が見えて……馨が危ないと思ったから、大して確認もせずに……?」
先ほどの余裕たっぷりな優樹の声じゃない。まるで子供みたいな、まるで志貴みたいな、ぐらぐらと不安定な声。
「優樹?」
「俺――なにやってんの? あんな成長途中の子供なんて、簡単に……」
「おい、優樹」
「そもそも俺――そんなにうまく撃てないのに……? バカじゃないの……?」
「優樹、おい! 大丈夫かよ?」
左利きの彼が、左手に銃を構えたまま、固まってしまっている。

40 :
優樹は、子供に弱い。
これは多分、優樹自身が幼少期に虐げられてたからだと思うんだが、自他共に「悪趣味」であると認める彼、は子供にだけは手を出せないのだ。
だけど。
彼は、少年の姿がよく見えなかったからとはいえ、俺を守ってくれるためとはいえ、「子供」を撃った。
妖怪たる彼は外見で少年か否かを見分けることは無いと思っていた。外見が優樹より年下でも、優樹より何十倍も生きている妖怪だっている。
だけど、今わかった。彼の「子供」の判断基準は、「虐げられていた当時の彼」と同い年くらいに見えるかどうか、なんだとおもう。
だって先ほどの少年は大体十二歳くらい。「死にたい」「殺してください」と呟いていた、抜け殻のようだった当時の優樹の外見年齢も、十二歳くらいだった。
「優樹、大丈夫だよ。ほら、お前だって知らなかったんだし。それに俺グズだからさ、優樹が撃ってくれなかったら多分死んでたんだよ」
フォローをいれてみる。だけど優樹には通じなかったようで、目を見開いてがたがたと震えてだしてしまっていた。
「優樹、優樹、大丈夫だよ、な?」
「……たぶん、きっと、大丈夫、じゃ、ない……から」
未だにしゃがんだままだった彼の手を引いて立ち上がらせる。
さっきの銃声が、だれかに聞こえてしまったかもしれない。こんな状態の優樹と、「危険な奴」には会わせられない。
ふらふらと立ち上がった彼から手を離し、彼のデイパックのを俺のデイパックに押し込むことにした。だってほら、優樹はデイパックなんてもてる状況じゃないから。
少年のデイパックについては一瞬悩んだけれど、持って行かないことにした。少年が帰ってくるかもしれないしな。
「優樹……とりあえずこっから離れよう? な、あの子についてはさ、ここまで接近に気づかなかった俺が悪いんだよ?」
「……俺も、気づかなかった……」
優樹に肩を貸して、もう片方の肩にデイパックをかける。
……とりあえず、ここから離れなければ。
【5-F/神塚山麓/一日目-昼】
 【日南 馨@革命】
 [状態]:健康、心配(中)
 [装備]:なし
 [持物]:基本支給品+優樹の基本支給品
 [方針/目的]
  基本方針: 優樹の考えている作戦に乗る
  1:優樹がやばい
  2:仲間みつけたいなあ……
  3:もっと頼れる人はいると思うけど。
 [備考]
  ※ 一、蛍、優樹のことは親友だと思っている
【5-F/神塚山麓/一日目-昼】
 【折原優樹@革命】
 [状態]:混乱(大)
 [装備]:なし
 [持物]:なし
 [方針/目的]
  基本方針: 少なくても俺と馨は生き残る
  1:どうしよう子供を撃ってしまった
  2:馨が心配してる。けどどうしよう子供を撃ってしまった
 [備考]
  ※ 偶然馨と出会ったので生存を選びましたが、そもそも山に来たのは自るためだったり
  ※ 馨のことは信頼しています。一も同様。ただし蛍とは若干溝がある。
  ※ しばらく行動不能

41 :
【side:???】
高貴な私が、こんな安物の服に身を包むだなんて、本当に不愉快だわ。
それにこんなに高貴なこの私が、土の上に座って、草木に隠れるなんて、不愉快極まりない。
この私にはこの後にも沢山の未来が待ち受けているのだから、こんなバトルロワイアルごときで死ぬわけにはいかないの。
けれど私には、強い人たちとやりあうような実力は無い。
名簿を見たら、お兄様の名前も、妹の名前もあった。
だったら彼らや他の知り合いを頼れって? 冗談はよして頂戴。
こんな状況で誰かを頼れるわけが無いじゃない。
私の武器は、運よく銃だった。銃――ライフル。使い方はよくわからなかったけれど、説明書を何度も読んで覚えた。
これで、あたりを通った人を射る。
ずっと粘っていれば、それだけで人数が減らせるはずだ。
がんばれ私。黙って、潜んでいなさい。
「……!」
ぱあん、と近くで聞こえた発砲音。思わず肩が跳ねる。
次いで、何かがごろごろと転がるように、というか殆ど転がって山の麓から逃げてきた少年の姿が見えた。
「はぁ……っ! ぐれーてる……!! 僕は――まだっ……!」
少年の苦しげな声。木の陰から様子を伺えば、お腹の辺りからかなりの血を流している少年が視界に飛び込んできた。
ふらふらと、けれども先ほどの発砲音の場所から逃げるように歩く少年。
……普通の人は、彼を救いに動くのだろうか。
だけど、私は違う。
私は迷わずライフルを構えた。
あんなに傷ついていれば、きっとすぐに死ぬだろうから。
私の潜む茂みを通り過ぎた彼の背中を、しっかりと狙って――撃つ。
たあん。
音と同時……だったかな。
彼の足に紅い花が咲いた。
臓器を狙ったのだけれど、やっぱりうまく当たるものじゃない。
「ぐれー、てる……!」
まだ生きているらしい彼は、はあはあと荒い息を吐いていた。
絞りあがった声から察するに、「グレーテル」という子を探していたのだろうか。その名前は名簿にもある。
「……落としたパンくずがあればよかったのかもしれないわね、坊や」
再び茂みに身を隠しながら、そう呟いた私の声は、少年に届いたのだろうか。
まあ、そんなことは高貴な私にはどうでもいいのだけれど。

42 :

【5-F/神塚山麓/一日目-昼】
 【アシュリー・エルゼーン@UNKNOWN】
 [状態]:健康
 [装備]:ライフル(名称不明)
 [持物]:基本支給品一覧
 [方針/目的]
  基本方針:優勝狙い
  1:この私がこんな場所にいるなんてありえない
  2:誰も信じない
【ヘンゼル@Rondo:死亡】
【残り56名】

43 :
◆F0XrL54NJs氏がさるった代わりに、投下終了です。

44 :
投下乙です。
新ロワOP、名簿、ルール投下します。
新ロワタイトル「自由奔放オリキャラバトルロワイアル」略:自由奔放オリロワ

45 :
バトルロワイアル。
たった一人「優勝者」と言う椅子を懸け人々を殺し合わせる狂気のゲーム。
今まで秘密裏に、しかし微妙にその存在は察知されつつ、何度も行われ、数え切れない犠牲者を出し、
幾多の人間の人生を滅茶苦茶にしたゲームが、また、開かれる。
犠牲者となるのは50人の男女。
若者が多く、子供もいる。人間だけでなく獣人、獣も多い。
運営するのは謎の組織に所属する、狼の男と助手の少女。
狼――吉橋寛和と少女――岩岡朋佳は以前、別の殺し合いを担当した事もあった。
殺し合いの宣言。
人々の抗議。
ゲーム遂行に不可欠な「首輪」の爆破の実演――今回はマネキンが犠牲となった。
静まる人々。
ルールの簡単な説明。
多少の違いこそあれど今まで何度も似たような流れが繰り返されてきた。
もはや様式美、と言っても過言では無いだろう。
そして人々はそれぞれ思いを巡らせる。
それは殺し合いに関するものか、はたまた自分の欲望か。
寛和の合図と共に、不幸な参加者達は一斉に意識を失った。
血みどろの宴が始まる。
結末は如何に。
「……手抜きとか言わないように」
「誰に言ってるんです? そして何の事です?」
「独り言だ、気にするな」
【ゲーム開始】
【吉橋寛和  運営責任者】
【岩岡朋佳  運営責任者助手】

46 :
【ルール】
全員で殺し合い最後の一人が優勝、帰宅出来る。反則無し。
参加者には爆弾付きの首輪をはめ、逃げられないようにする。
無理に外そうとしたり逃げようとしたりゲームの邪魔をすれば爆破、問答無用で死亡。
ゲーム開始時支給品入りのデイパックを渡す。
中身はルール冊子、地図、名簿(男女五十音順)、コンパス、懐中時計、懐中電灯、
メモ帳とボールペン、水と食糧と言った基本支給品及び武器や防具等のランダム支給品一つ。
0:00、4:00、8:00、12:00、16:00、20:00に運営から放送あり。
死者及び禁止エリアの発表。指定された禁止エリアに入っても首輪が作動する。
地図の外及び上空100メートル以上も同じ。
12時間新たな死者が出なかった場合、生存者全員の首輪を爆破、優勝者無し(ゲームオーバー)。
参加者が全員死亡しても同様。
【時間帯表記】 ※早朝開始
早朝:4〜6 朝:6〜8 午前:8〜10 昼:10〜12 日中:12〜14 午後:14〜16
夕方:16〜18 夜:18〜20 夜中:20〜22 真夜中:22〜24 深夜:0〜2 黎明:2〜4
【マップ】
後日

47 :
【男性参加者】
秋山重治
浅井清重
荒木敏博
有田聡明
稲垣里南
エーレンフリート
ウィリアム・スティーヴンソン
大谷迅馬
加藤淳五郎
カルステン
北川友敦
クリストハルト
坂忠光
佐藤拓海
ジョン・ブラナー
進藤能里緒
長岡虔
原田安教
フーベルトゥス
藤崎才介
松沢多佳志
宮古早太
森山秀偉
持田亜聖
レジナルド・バークリー
【女性参加者】
アリエル・ディラック
浅井セレナ
浅井萌奈
石田愛里亜
上杉麗乃
エドウィージュ
大沼朝水
佐藤美羽
塩崎夕海子
渋谷貴美香
志村伊緒
ジャスティーナ・オールドカースル
シャンタル
鈴木冴羅
武田有紀
チェルシー・フォースター=チャンドラー
津田南子
戸沢あすか
南原礼奈
西岡千春
林恵留
平井優帆
三浦真凛
森内織舞
山本真与
50/50

48 :
投下終了です。さあ、やろうか
過激なSSは避難所行きになるのでご了承下さい

49 :
投下乙です―。
ymさんの新ロワ来ましたか。
浅井やら稲垣とか気になる名字もちらほらと。
では自分もEDL投下させていただきます

50 :

――――ドクン。
波打つ鼓動。
頭での理解が、できない。
目の前の現実を受け入れきれず、脳内で現実と理想が火花を散らす。
――――ドクン。

やけに大きく聞こえる、鼓動の音。
大袈裟に思えるほど大きな振幅を以て、心臓は上下する。
あたしの感情の代弁者は、今も律義に仕事をしていた。

――――ドクン。

横たわるは、二つの遺体。
片方は背後をあたしに比べると豊満な胸の間と言える場所に、一丁の包丁を突き立てて。
片方は、胸にそんな包丁の刃と思われるぐらいの大きさを有した穴をあけて。

――――ドクン。

とどのつまり、死んでいた。
柳沼卯月と、榊田~菜は死んでいた。
あたしと別れた場所から大差ない場所で、息絶えて、臥せていた。

――――ドクン。

――――ドクン。

――――ドクン……。



51 :

 ○
どうしてこうなったか、あたしなりに推理してみようと思う。
血の乾き具合(とかいっても全然心得がある訳じゃないけど)を見ると、死んだのは割かし前の時間と推測はできる。
少なくても殺されたばっか、には到底見えなかった。
「……」
そんで、この包丁の移り変わりを考察すると。
まず、榊田が柳沼を刺す。その後柳沼はその刺された包丁を自ら抜き取り、榊田に刺し返した。ってあたりが無難よね。……色々違和感はあるけど。
ならそれならそうで、一応考えてみましょうか。
榊田が柳沼を刺す。――っていうのは正直想像できないんだけどさ。
誤認でも別にいいわけだし、考えてはみたところ、あれだ。一番納得のいける線は、柳沼の注意が逸れたことね。
簡単な結論っちゃ結論だ。しかし気を衒う必要もない訳で。あたしが思うがままの、主張。故に何の問題もない。
まあ、注意を逸らす理由として濃密なのは、『銃声』或いは『榊田が変なことを唆した』或いは『柳沼の慢心』……あたりかしら。
その後の考え得る可能性の一つ、柳沼が刺された包丁を刺し返すってのはあながちできないことじゃない。
なにせあいつは、一週目の最期の最期。死にかけの状態で、銃とはいえ楔音を殺したのだから。
背水の陣からの火事場の馬鹿力って言うか、気力だけは半端ないあいつにとっては容易くはそりゃないんだろうけど、不思議では……ないの……かな?
「……」
なんて冷静に解説を試みていても、絶命した彼らの顔に灯るものはなにもない。
生の『芽』は踏みつぶされて、雑草ではない気高き、尊く、それでいて大きな花は、ものの見事に根絶やされ、復活の兆しを見せずに枯れる。
返ってこない。
帰ってこない
孵ってこない。
死んだ。また死んだ。
またクラスメイトが死んでしまった。
「……っ」
苦渋の色は衰えなかった。
幾ら現実逃避をしようとも、その歴然たる事実はやはり揺るがない。
死。屍。
どうみたって幸福そうにてすらいない二人の亡骸。
たとえ幸福そうに死んだところで、それもきっとあたしは許さないんだろうけど。
「……」
悲しい。
静かに溢れ続ける涙がその証拠だろう。
その対象は、言うまでもなく柳沼と榊田の死亡についてには違いない。
ただ。
あたしが悲しいと思えるのは、それだけではなかった。
同時進行で、その死の弔いの裏側で蠢く思考。
『次のバトルロワイアルではこうならないようにどうやって動こうか』

52 :
と、いう彼らのことをある種見捨てるかのようなことを考えてしまう自分が、どうしようもなく悲しく。
次いで、彼らの死の傍らでそんな自分勝手な考えで頭を埋めようとしていく自分が、とっても虚しい。
自分の私情を優先させてしまう自分が、辛かった。
「……」
言葉も出ない。
呆れてものも言えない。
自分はこんな薄情な人間だったんでしょうか。
自分はここまで酷薄な人柄だったんでしょうか。
あたしは独り。
確かにそう言った。
ただ、それはなにも決別の言葉であったつもりはない。
むしろ、みんなで手を取り合いたい。非情な現実にも立ち向かっていく。
そんな決意のもとで言ったつもりだった。
独りはつらい。だからみんなと手を取り合うんだ。
いずれは、屹立し大きく立ちはだかる壁にも屈しず、団結し、果敢に挑む。
夢見た光景とはだいぶ異なる。
あたしそのものがまず、どうであれ変わってしまった。
或いは変わってないのかもしれないのだけれど。
団結とは、程遠い。
「……」
そりゃ、世界は繰り返される。
あたしの望む結果が出るまで、幾度となく。
だからといって、一つの世界の、一人の人間(クラスメイト)を蔑ろにしていい道理はどこにもない。
あたしは、既に。
二週目にして既に壊れてしまった、そういうことなのでしょう。
「……でも」
目の前に転がる死体は確実に『柳沼卯月』と『榊田~菜』だ。
二年以上みてきたのだ。間違えるはずがない。
確かにこの二人は『二年間一緒に過ごした柳沼卯月』と『二年間一緒に過ごした榊田~菜』とは違う。
そいつらは一人は事後報告としても、一人はあたしの眼前で死んでいったのだ。
――――それでも。それでもだよ?
やはり『柳沼卯月』と『榊田~菜』には違いないじゃない。
なのにあたしは彼らを捨てるの? 捨て駒のように死んだら用なし?
ううん。違うでしょ。
思い出せ。あたしが救いたい奴らを。
『柳沼卯月』『榊田~菜』『楓之風香』『樫山堅司』『楔音契也』――――『榎本夏美』
そう、彼らは彼らで違いない。彼らも、そして未だ会ったことのない異時空の彼らとて、救うべき対象なのだ。

53 :
そしてそれはあたしとて、例外でない。――――あたしは、あたしを救わなければならない。
「3年A組を救うんだ」
救う上には、尊重しなければならない。
あたしが救われるためには、こいつらの死を蔑ろにしてはいけない。
せめて。せめて大切に弔い、そのうえで、先のことを考えればいいじゃない。
優先順位を間違えるな、榎本夏美。
繰り返し世界を当然のように考えちゃいけない。
そのうえで――――すくう。
「希望を捨てちゃダメだ」
絶望はしてもいい。希望を捨てることだけはダメなんだと思う。
『柳沼卯月』『榊田~菜』の死亡を、しっかりと植え付ける。
そのことに、一々絶望して、悲哀して、嘆いて、苦しんで、悶えて、そのうえで先を見る。同時進行は、ダメ。
きっとそれは、あたしの崩壊を促進させる。助長させる。
故に今は――――。
「お疲れ様、あたしは頑張るよ」
――――せめてもの償いとして、合掌。
あたしは、まだ戦わなければいけない。
もう一回、戦わなければ。
……こりゃ、のうのうとはないわね。

濃硫酸の入った試験管を握り直し、前を向いた。
空は――――まだまだ青かった。

【To Be Continued!】


54 :
投下終了です。
……話を進めたいね

55 :
投下乙です。では自分も。投下します

56 :
1:夢を焼かれ生きる事
森の中で虎獣人の男、長岡虔は目を覚ます。
「どうしてこんな事に……」
長岡虔はごく普通の会社員。
女性物の黒ストッキングを穿き自慰をしたりする事以外はごく普通である。
そんな彼が突然殺し合いと言う狂気の場に放り込まれ、不安にならない筈が無かった。
「支給品があるって言っていたな」
傍に置かれていたデイパックを漁る。
名簿や地図と言った基本支給品の他、出てきた物は金属製の警棒。
「当たり、の部類に入る、か?」
「誰かあああ!!」
「ん? 何だ……」
突然女性の悲鳴が聞こえた。
虔は悲鳴の方向へと向かう。
◇◇◇
「やだあ、死にたくないよぉ……見逃してよぉ」
「私も死にたくないのよ、だからこの殺し合い、優勝するって決めたの……」
雌の竜が人間の少女の首をロープで絞め上げていた。
少女は何とかして逃げようとしていたが徒労に終わる。
「あぐ……う……苦しい……やだ……まだやりたい事一杯……」
少女が泡を吹き、もうすぐ意識が無くなる、その時。
「ぐあ!?」
「え……」
雌竜は後頭部に衝撃を感じ卒倒する。
絞め上げられていた首が解放され、咳き込む少女。
「げほっ、げほっ……」
「大丈夫か? こっちだ!」
「あ……はい」
右手に黒い棒らしき物を持った虎の男性に、少女は命を救われた。
少女と虎の男が立ち去った数分後、雌竜――シャンタルは意識を取り戻す。
「痛い……後ろから襲われるなんて油断してた……ちぇっ、もう誰もいないか……」
支給されたロープを拾い、ふらふらとしながらシャンタルは次の獲物を捜し始めた。

57 :
【早朝/C-7森】
【シャンタル】
[状態]:後頭部にダメージ
[所持品]:基本支給品一式、ロープ
[思考]:殺し合いに乗り優勝を目指す。
◇◇◇
「大丈夫かい……首にこんなに痕が」
「大丈夫です、助けてくれてありがとうございます……」
雌竜から離れた場所で長岡虔と少女は一息ついていた。
「俺、長岡虔。君は?」
「戸沢あすかです」
「そうか、あすかちゃんでいいかな」
「はい、長岡さん」
「あすかちゃんは殺し合いには乗ってない、よな?」
「乗ってないです。殺し合いなんて出来ないですよ……」
「俺もだ。一緒に行動しよう、それなら」
「はい……」
【早朝/C-7森】
【長岡虔】
[状態]:健康
[所持品]:基本支給品一式、警棒
[思考]:殺し合いはしない。あすかちゃんと行動する。
【戸沢あすか】
[状態]:首にロープの痕
[所持品]:基本支給品一式、???
[思考]:死にたくない。長岡さんと行動。馬ディルドを試したい。
----
【長岡虔】 ながおか・けん
25歳の会社員の虎獣人男性。細身。
黒タイツに全裸で自慰をしたり発展場に赴くのが趣味。
【戸沢あすか】 とざわ・あすか
16歳の高校一年の少女。黒髪ツインテール。
エロ小説サイトを運営するエロ娘。本人は未経験。
【シャンタル】
23歳の雌竜。紫っぽい身体。
酒好きで利き酒が出来ると豪語しているが腕は良く無い。最近男日照り。
----

58 :
続けて投下します。

59 :
2:こんな時だったのが残念でならない
チェルシー・フォースター=チャンドラーは黒狼獣人の女戦士である。
そして痴女でもある。
両腕両足のみ防具を装着し後は裸。
豊満な房とその部分は完全に露わになっているがチェルシーは全く気にしない。
「うへへ〜。良い男いないかな〜」
にやけた顔で商店街をうろつく黒狼痴女。
ダァン!!
「おっと!」
突然の銃撃。
慣れた様子で銃弾を避けるチェルシー。
視線の先にはライフルらしき物を構えるユキヒョウ獣人の少年。
「僕ぅ? お姉さんを気なのかなぁ?」
「そうだよ、みんな殺して生きて帰ってやるんだ!」
「ふぅん、可愛い子だけど、残念……」
チェルシーの目の色が変わる。
靡な雌から鋭い戦士の眼差しへ。
手にハルバードを持ち凄まじい速さで突進する。
「!? はや……!?」
あっと言う間に距離を詰められた事に驚く少年、そして次の瞬間頭頂部に衝撃を感じ意識が消えた。
ハルバードの刃が少年の頭を叩き割った。
「……こんな状況じゃなかったら是非ともヤりたかったのに。
このライフルは貰っていくよ」
少年が持っていたライフル――ルベルM1886と予備弾を回収するチェルシー。
少年の衣服でハルバードの刃の血を拭き取る、ついでにズボンを下ろしそれを確認した。
「……皮被ってて可愛いなぁ、本当に残念」
ライフルと予備弾をデイパックに突っ込みチェルシーはその場を後にした。
【秋山重治  死亡】

60 :
【早朝/D-5商店街】
【チェルシー・フォースター=チャンドラー】
[状態]:健康
[所持品]:基本支給品一式、ハルバード、ルベルM1886(7/8、予備弾8)
[思考]:殺し合う気は無いが襲われたら容赦しない。出来ればヤりたい。
----
【チェルシー・フォースター=チャンドラー】
黒狼獣人の冒険者。女戦士、23歳。戦闘能力は高いが、エロい上に露出狂。常にニヤケ顔。
巨でスタイルは良いので相手には困らない。主にモンスターや盗賊等。
【秋山重治】 あきやま・しげはる
ユキヒョウ獣人の高校生の少年。17歳。乱狐娘・伊賀榛名と同じクラス。
ゲーマーで良く榛名にゲームの攻略法を教授している。そして無理矢理(ry
----

61 :
投下終了です。

62 :
二話続けて投下します。

63 :
と思いましたが3話目は避難所に投下し4話目をここに投下します。
4:萎える日常なら、鍵を開けて…
親類に変人が多いと自身は普通でもそう言った人種に見られる事が多い。
黒牛獣人の青年、浅井清重もそう言った悩みを抱えていた。
父親も母親も祖父も祖母も、兄も従兄弟も乱。
清重自身は至って普通で性欲も決して強く無いのだが親類が揃って乱なら彼も否応無しにそう見られる。
もっとも最近では「自分はそう言った星の下に生まれてしまったのだ」と諦念を抱き始めていたが。
ダァン……ダァン……。
「銃声?」
森の中を歩いていた清重は銃声を聞き身構える。
危険だとは思ったが銃声のした方向へ行ってみる事にした。
「……!」
木陰に隠れ様子を伺う。
倒れている女性、その荷物を漁る外国人風の男。
先程の銃声からして、あの男が女性を撃ち殺したのだろうか。
しばらくして、男は何も取らずに去って行った。
「……」
男が完全に立ち去ったのを確認して、清重が倒れている女性に近付く。
女性は兎の獣人だった。
まだ息はあるようだがもはや虫の息。
胸元が真っ赤に染まっていた。
「おい、大丈夫、か?」
どう考えても大丈夫では無いがそう言わずにはいられなかった。
「……ぃ……にたく……い……よ……」
本当にか細い声で何か言った直後、女性は息絶えた。
恐らく「死にたくない」だと思われるが。
「……マジかよ……」
初めて人の死を目の当たりにしショックを隠せない清重。
開かれたままの目を閉じさせる。
気が引けたが、女性のデイパックを確認する。
基本支給品の他、入っていたのは消毒用エタノール。
先程の男はこのエタノールを役に立たないと判断したのだろうか。
「……すみません、これ貰っていきます」
しかし清重は何かに使えるかもしれないと思い、エタノールを持って行く事にした。
自分の支給品は肉切り包丁、少しでも役に立ちそうなら貰っておきたい。

64 :
「……行くか」
女性の死体を野晒しにしておくのも気が引けたが、どうにも出来ないので、清重は軽く手を合わせその場を去った。
【西岡千春  死亡】
【早朝/E-4森】
【浅井清重】
[状態]:健康
[所持品]:基本支給品一式、肉切り包丁
[思考]:脱出手段を探す。
◇◇◇
「今更人殺しなんか怖くねぇよ……」
支給されたモーゼルC96拳銃を手に持ち森の中を歩きながら、レジナルド・バークリーは呟く。
「やってやる……優勝すんのは俺だ……」
傍から見ても不安定な様子で、レジナルドは獲物を捜す。

【早朝/E-4森】
【レジナルド・バークリー】
[状態]:精神不安定
[所持品]:基本支給品一式、モーゼルC96(8/10、装弾クリップ2)
[思考]:優勝する。

----
【浅井清重】 あざい・きよしげ
19歳の大学生。黒牛の獣人。浅井きららの遠縁にあたる(本人もきららも知らない)。
親類ほぼ全員が乱だが彼は至って普通。
【レジナルド・バークリー】
27歳の冒険者。賞金稼ぎ。利己中心的な性格で群れる事を嫌う。
生き残る事を優先し余り危険な事には手を出さない。
----

65 :
投下終了です。3話目は避難所に。

66 :
4話の最後に西岡千春の説明入れるの忘れてました。
【西岡千春】 にしおか・ちはる
20歳の大学生。兎の獣人。高原正封、久保遼平と同じ大学(面識無し)。
RPGツクールで様々な作品を作っているツクーラー。
これで本当に投下終了です

67 :
投下乙ですー。
なにやら榛名の友達やらとか気になる設定がおおいですねー。
相変わらずの死亡ペースに投下スピード。見習っていきたいです。
それでは自分も投下させていただきます

68 :
空が夕暮れを刻み始める頃。
淡くも幻想的な橙色の光は窓から徐々に射していく。
次第に濃くなる影を見ていると、感慨に耽てみたくなる。
乙女心のなんちゃらかんちゃらってやつね。知らないけどきっとあるのよ。
体重を後ろに掛ける形で椅子に座り、手もち無沙汰を潰すように、ペン回しに興じながら、ぼーんやりと考えてみる。
場所は教室。3年A組の教室。昨日まで――――体感時間で言うと一昨日まで、普通の学校生活を送れていた教室。
右前には柳沼の席が。右後ろには楓之の席が。真ん中の前には榊田の席。真ん中後ろには樫山の席。左前には楔音の席。そんで、楔音の後ろ、左後ろにあたしの席。
まあ、前回柳沼と遺書を書いた時はつまり、あたしと柳沼は対角線上にいたのだ。(ついでに席も結構離した、一応ね)
そんなわけで、どういうわけで。色々とあたしにもあるのよ。今のあたしは自席でぼんやりしている。
それは諦めというより、現状取れる唯一の行為だから。
どうであれ、あたしのとった行動の範囲内で、あたしはきっと楓之は救えなかったんだと思う。
この時間にはとっくに樫山は、柳沼の手……っていうと残忍な言い分だけれど死んでしまった。つまりは楓乃も死んでもおかしくない。
あたしが今回の周回で出会った面子は柳沼と榊田だけだ。榊田も前回の様子からすると、楔音ともあたしらと出会った時間までにあった可能性も低い訳で。
今回あたしがとった行動で、変わった未来と言ったら、精々が柳沼の死ぬ時間を早めただけと言っても過言ではない。
空回りである。
と、いうことが推測されたため、今現在死んでいると思われる人間は、
柳沼卯月と榊田~菜と楓之風香。前者二人は確実で、楓之はどうともいえないけれど。
樫山なら、前回あいつを殺した柳沼は恐らくそれよりも早く死んだために生き残っている可能性も高い。
楔音も同様の理由で、きっとこの二人のいずれかが拳銃を持っている。
「しかもなあ」
しかもこの二人は殺し合いと言うものに乗っている。或いは乗っていた。
樫山は今どうなってるかわからないけれど、こいつは一度は少なからず乗ってるはずだ。妹の為に。
楔音は変わらずに……乗ってるのかな? ……うん、乗ってるんでしょう。理由は分からないけれど。
まあ、どうであれきっとこのまま外をうろちょろしていたところで、危険なのは自明の理。
ならば殻に閉じ篭ろう、そんだけの単純な行動。
そりゃ勿論、樫山と楔音が今頃殺し合ってるのかもしれない。
ならばそれを止める義務があたしにはある。――――ただ冷静に考えて、あたしにそれができるかといったら多分無理だ。
力量的なものを見て、あの細そうに見える腕にも、きっと瞬殺と言うこともないのだろうけど、勝ることもないでしょうね。
男子と女子の埋めようがない差というものがあるのは水泳を通してもよく理解している。
覚悟や勇気は、現実を覆すほどの力を有さない。
負けるものは、奇跡でも起きない限り負けてしまう。負けとは死。
今はまだ死ぬには時期を満たしていない。条件を満たしていない。――――贅沢を言えば死にたくなんてない。
まあこれはただのエゴ。今ここであの二人を見殺そうとしているあたしにいう権利なんてはなはなないんでしょうけれど。
考えた。
一生懸命考えた。
今生きているであろう二人を救う方法を。
けれど、あたしにはそんな機転のきく対処なんて、思いつかなかった。
そもそもの話、このタイムリープ自体発案したのは、というか実行しようとしてたのは、あいつ。
柳沼卯月であり、決してあたしでない。責任逃れとかそういう意味じゃなくてね。

69 :
そもそもこのタイムリープに対する覚悟だって、漫画や小説の主人公のように固くはないのであろうし、知識や機敏さはきっと薄い。
まあだからといって諦めるというほど性分のいい女であるつもりはないんだけどね。それはともかくとしてだ。
あたしは彼らを救う。
救ってあげたいんだと思う。
けれど、足掻いたところで勝機は薄い。
どうやらあたしは相当な詭弁師のようで、宣言通りには動けないみたいなんだ。
故にあたしは、弱いんでしょうけれど。弱く成り果ててしまったようだけれど。
残念無念また来周。
憎むならば、あたしを恨みなさい。
望みだけじゃ誰も救われないことを――気付いてしまったあたしを憎みなさい。
あたしは、まだない。――――まだ。
 ○

あたしがまだない理由の一つとして、あげるべき事情がある。

70 :
言うまでもなく、「痛い」だとか「苦しい」だとか私情を含めばもっともっと言いたいこともあるのだけれど。
重大な事情の一つとしてあげるのであればやはりこの事情は明記しておく必要がある。
まあそんなタメる必要もないほど分かりきったことだから思わせぶりなタメを取らず簡潔に言わせてもらうと、
あたしがロクな抵抗もせず死んでしまうと、この世界は終わらない。終えたくとも、終えることができなくなってしまう。
たとえあたしが死んだとしても、『あたしの願い』が消えるかと言ったらそうじゃない。
『あたしの願い』は引き継がれ、優勝者の記憶は、次週に引き継がれてまた始まるのだ。
きっとその絶望感は凄まじいことだろう。何も知らず、また殺し合いが始まったとするならば。隣にいるのが死んだはずのクラスメイトだったら。
そんな絶望は、人間をきっと容赦なく潰す。
どんな希望人間であろうと、多かれ少なかれ心にひびを負わすのでしょう。
特に樫山の様な優勝、願いを狙っていた人間にとっては、そのひびは甚大なものと予想付く。
それで追記しておくならば、その優勝者は、『あたしが決めたルールに則り』殺し合いを従事しなければいけない。
きっと辛いんでしょうね。だってゴール地点が見えないんですものね。
そりゃ解決法としては幾らかあげられる。
それが、『願い』だ。優勝者が、次週も優勝して柳沼のように『(俺のルールで)タイムリープするんだ』とか『タイムリープを止めてくれ!』とか言えばいい。
しかし、それに行くまでもう一回は殺し合いの吟味が必要だ。多分あたしなら耐えられない。心なんて簡単に砕き散る。
ただでさえ脆弱なあたしの心には、強靭すぎる刃で容易く斬れるに至るだろう。まあさて置いて。
するにしたって、これが『タイムリープする殺し合い』という自覚がなければ話は始まらない。
鋭い人なら、或いは漫画とかに多少なじみのある落ち着いた常識人(既に常識とかないけど)であれば、二度目の死業式の時点で気付けるのかもしれないけれど。
あたしなら、と言う例えもあたしの場合はあり得ない訳だから実に無駄な例えでこそあれど、まああたしならば、きっと混乱、パニック状態に陥りそんな考察に至らない。
だから、というのもやはり安直。短絡な決意なのか。
けれどあたしは彼ら、楔音、または樫山にこのことを伝えなければならない。
伝えなければ、多分それは彼らを何よりも多大に傷つけることになるから。
だからここで話は戻る。
その辺をうろうろしてたらあたしは、きっと濃硫酸を持ってようとも、何の効果もなしに、退場するでしょう。
相手が銃弾を持ってたら、あたしから気付かれない様な場所から射撃される可能性だってある。
それは困る。それだと話し合いすら叶わない。
故に、あたしは教室に閉じ篭る。
唐突な奇襲が来ない様に。さすがに教室の壁をぶち壊して突破するとか、そんな非常識なことはやらないでしょう。
してきて窓から狙撃って言うのもあったのかもしれないけれど残念。ここは三階。無理無理。
ならば来るなら、教室の扉しかないじゃない。
それに足音だって少しぐらいは響くもの、来るなら来るでタイミングぐらい掴める。
近づいてきたと思ったら、
ネームバリューで売ってる感漂う濃硫酸をかざし、脅しながら全てを話す。
あわよくば仲間に引き連れこむように話し合いをできたら、それは十全。
そして、あたしの頼む願い事を叶えてくれたら、それは十分。
相手があまり怯まず、攻撃してきたら、その時は――――足掻いて足掻いて、それで無理なら死ぬんでしょうね。
構わない――なんて全然思えないし。
できることなら逃げ出したいのだけれど、どうせ逃げ道なんてどこにもないんだから。
死ぬ、というのも或いはただの逃げ道なのだろうけれど。
未来に託すという意味では、しっかりとしたあたしの希望なのだ。……まあただの我がままに過ぎないのよね。
相手が絶対応じてくれるとなんて全然思わない訳だしさ。
まあ、それでもあたしは諦めたくはないの。
諦めでなく、次に活かすための最終手段として。
何が何でも、この六人を生きて還す。

71 :
それだけの信念は、変わらないし、揺るがないから。
せめて今は、「あいつらを信じる」という最大にして最高の使命を果たしていこうじゃない。
それの行く末に殉じれるのなら、よくはないけれど、悪くはないというものね。
――――なーんて、それっぽく黄昏て、格好つけて、内心ガクガクと震えつつ、あたしは椅子で静かに待っているのでした。

やはり、と言うべきか。
どういうべきなんでしょうね。
この絶望感は、どこか理想に縋っていたあたしがいるという証明でしょう。
まあそれを悪と裁くかどうかは別問題として。

「やあ、榎本さん。お久しぶりー」

なんてわけで。
3年A組の教室にて。
あたしと、鉄パイプを握り、拳銃を帯びる楔音契也は再会を果たすのであった――――。


【To Be Continued!】

72 :
投下終了です。
また9時ごろに続きを投下させていただきます

73 :
投下乙です。不穏な空気…そろそろ終わりか?
投下します

74 :
はてさて、一体この世の中はどうしてこう、落ち着きがないんでしょうか。
私も純度100%の小学生ですから落ち着きのないものは見慣れていますけど、バトルロワイアルに巻き込まれている参加者を横取りするなんて、何かこう、うーん。
私のポキャブラリーが限界みたいなので曖昧な表現になるんですが、せめて終わるまで待って下さいよ。
せっかく準備してバトルロワイアルを始めたのに、あの人達も可哀想じゃないですか。
………確かに貫禄ならコトミネさん、でしたっけ。の方があるとは思いますけど。
なーんかこう、『私はこのバトルロワイアルに愉悦を感じているぞ存分踊れふははは』みたいなオーラが滲み出てましたし、まためんどくさい人が主催になったものです。
……え?早く十八番の一人称パートをやれ?
何か作者の方がめんどくさいとかごねてるんですが、と少しメタネタを織り混ぜますね。
もう、じゃあそろそろお決まりのパートに移行しましょうか。
―――戯言、なのかもしれないですけど。
まず私のような善良極まりない可愛らしい小学生まで巻き込んでバトルロワイアルをやろうなんて魂胆の人が、どうして複数存在するんでしょう。
常識で考えたら実行一歩手前で思い止まると思うのですが―――それを実行するごく一部が、彼ら。
前回は『共同生活』という大義名分がありました。でも今回はそれがない。今回のは正真正銘の殺し合い、原作に忠実なバトルロワイアルそのものなわけですよ。
怖いですよね。だるいので優勝目指したりする気はないですけれど。
しかし不思議なのは、『願いを叶える』なんてものを賞品にしていたら、大変なことになると思うんですよね。
もし優勝者が『主催者』とか、そんな願いをかけちゃったらどうするつもりなんでしょう。
私も『非リレー型バトルロワイアル』を読んだことがあります。その時から不思議に思ってました。
普通なら主催者は断るか踏み倒すかするんでしょうが、コトミネさんに至っては笑って受け入れちゃいそうな雰囲気がありましたね。なんか似た者同士の匂いを感じます。
願いのくだりに戻りますよ。
人間は種族の性か、そういった不確かな希望にすがることが大好きな生き物です。
見えない何かに頼り、依存することがとても上手な生まれながらの他力本願な生物なんです。
まったく、情けない生き物だと笑われちゃいそうですよね。
地球上で火を使う生き物は人間だけとは言いますが、願い事をする生き物もきっと人間だけ。
まだ人生の二割も生きていないような若造もいいところの私が言うのも何ですけど、そんな人間が、こういうゲームに乗らない道理がないと思うんですよ、普通は。
ある意味人間として正しいのは、殺し合いに乗った人の方なのかもしれません。
願うことを止めて戦おうとするのが、少しひねくれた人間。
運命を受け入れて僅かな希望を求めて願うのが普通の人間。
なら私のような人間はやっぱり、異常に部類されるんでしょうか。
異常、と言っても色々あります。
ことに愉悦を感じて人が普通だなんて言われたら、さすがの私も失笑しちゃいますよ。
者に愉悦を感じて見守る、主催者さんだって無論普通じゃないと思います。
普通じゃない人がいるから、バトルロワイアルが生まれた。
普通じゃない人がいるから、戦争が始まったわけです。
某学園青春ドラマの喩えを軽く引用させてもらうと、腐った蜜柑が一つ普通のおいしい蜜柑の中に紛れていて、少しずつ腐っていく―――そんな光景に似ていますね。
当たり前の話ですが、全ての蜜柑が腐ったら、おいしい蜜柑こそが異常ということになります。
このバトルロワイアルというゲームを『クリアー』する条件として挙げられるのは、きっとそこでしょう。もっとも正攻法じゃない、いわば改造ツールを使った裏エンディングみたいなものですね。
本当のエンディングは、優勝すること。
裏エンディングは、異常を全て潰して、強引に異常と普通をチェンジしてしまうこと。
だるいのでなにもしたくないのが本音ですが、まぁ私も異常サイドに部類されるんでしょうね。
やることは一つ、正しいマーダーを殺して間違った対主催を残すことなわけです。
改心させるなんてのもありなのかもしれませんけれど、私、押し付けがましい正義は嫌いなんです。
ま、一小学生に過ぎない私の意見なんてきっと聞いてくれないでしょうから、私の好きな展開なんかには絶対にならないと思いますよ。
別にそこまで積極的になる気もないですから、いいんですけどね。なんでも。

75 :
私はもう、このゲームをどう生きていくかを決めました。
何度も言いますが、だるいです。ことも楽しいかと思いましたが、何となく気が乗らないので、これはパス………いえ、保留、としておきましょうか。
私は―――なにもしません。
適当にかずみんを探して、適当に成り行きを見守っていければそれでいいと思いますから。
と、まあ。見るからにやる気のない一人称パートをしてみたんですが、なんていうか、疲れました。
かずみんを捜すにもこの気だるさじゃ捗らないかも、ってぐらい。
でもここでじっとしているのもあれですし、一応建前上動いてみましょうかね。
………はぁ。
◇ ◇
長身痩躯の少年、ルルーシュ・ランペルージは怒りを隠しきれずにいた。
端正な顔立ちを歪めて、強く、握り拳を作って吹き零れそうな怒りを抑えつけている。
しかし勘違いしてはいけないのが、彼は別にこのバトルロワイアルそのものにこれほどの怒りを燃やしている訳ではないということ。
彼は全く別の理由で、ここまで激しい憤怒に震えているのだ。
完全に、計算外だった。
全ては順調に進み、親友と打ち合わせていた計画も少しずつではあるが、準備を整えていた。
あえて我が身を擲つことで世界を一旦話し合いのテーブルに着かせ、ルルーシュ自身の望んだ方向に世界を変える最後の作戦―――『ゼロレクイエム』。
世界を破壊し、そして新たに創造し直す一世一代の計画。
作戦の成功はルルーシュ・ランペルージが死亡することを意味するが、そんな覚悟は当の昔に完了している。後は手筈を整えるのみ―――だったのだが。
言峰綺礼の下らないゲームとやらに巻き込まれたことで、全てが狂ってしまった。
『第九十九代神聖ブリタニア帝国皇帝・ルルーシュ』不在の期間を生んでしまうことがまず非常に不味いのだが、何より絶対にあってはいけないのが、ルルーシュ自身が死亡することである。
ゼロレクイエムの完遂には、悪逆の皇帝ルルーシュが、『ゼロ』の手にかかり命を落とすことが大前提だからだ。でなければ、ゼロレクイエムはその意味を失う。
ふざけるな、とルルーシュは思う。
自分はこれまで、数えきれないだけのものを犠牲にして来た。
罪人と呼ばれるに相応しい悪行もやったし、自分のせいで命を落とした人達も大勢いた。
初恋の少女、自分を好いてくれたクラスメイト、偽りの弟、そして『枢木スザク』。
ゼロレクイエムの為だけに自らの存在を捨てたあの親友に申し訳が立たない。そんなことはあってはならない。
だからこそ、ルルーシュ・ランペルージは決意した。
どんな手段を使おうとも、どんな結果になろうとも、必ず生き抜いてやると。
殺し合いのゲームなど反土が出る思いだったが、それよりも彼にはやるべきことがあるのだ。
その為ならば、バトルロワイアルを勝ち抜いてやることさえ吝かではない。
大事なのは過程ではない―――結果だ。
あんな輩の口車に乗せられてしまうことを考えると反土が出そうだったが、致し方あるまい。
すぐに納得することはさしものルルーシュでも叶わなかった。
だがそこは思考を切り替え、どんな風にして勝ち残っていくか、の一点で考えを巡らせる。
ルルーシュ・ランペルージの身体は見ての通り華奢で、真っ向からの殺し合いでは分が悪いだろう。
絶対遵守の王の力を保有する彼だが、考えなしに使っていくのは身を滅ぼすことにも繋がりかねない。
最終的に生きて帰れればいいのだ、ならば形だけでも主催の打倒を装うのも悪くない。
もしも攻略出来そうならそのまま達成してしまえばいいだろうし、危険になってきたなら裏切ってしまえ。今回ばかりは、手段を選んでいる場合ではないのだ。
(待っていろ、スザク……俺は必ず帰る)

ゼロレクイエムの完遂の為に。
決意新たに、ルルーシュは一先ず自らのスタンスを決定した。
あくまで表面上の仮面だが、殺し合いへ当分の間反逆する。

76 :
そして殺し合いに乗った邪魔者、やがては優勝を競い合う敵になるだろう因子を確実に抹消していく。
無論いつでも裏切る準備はしておいて、保険は十分にかけておくが。
ブリタニア皇帝として表舞台に立ってしまったこともあり、信用されない可能性も非常に高い。
だがそこは何とでも言い逃れが効くだろう。最悪ギアスの力に頼ってしまえば万事解決である。
「最後に笑うのは、このルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだッ!!」
世界を壊し世界を創る魔王、ルルーシュ。
未だ消えぬ闘志を胸に、反逆の皇子はバトルロワイアルに君臨した。
「――分かっているよ、病理おばさん。『木原』ならこういう時は、本当に心苦しいけど、容赦なく刺すべきなんだよね……っ!!」
その瞬間、彼の耳が捉えたのは幼さの抜け切っていない少女の声だった。
ほぼ反射的に身を翻したことは幸運だった。ルルーシュの顔面があった位置を、鋭い刃が通過していったのだ。黒い刃――短刀だろうか。
ルルーシュが攻撃を避けるとは思わなかったのか、そこにいたお団子ヘアの少女は少し驚いたようだ。
首から提げている幾つものデバイス。スマートフォン、ワンセグ、エトセトラ。電波を用いるものは使用不能になってこそあれど、彼女にとっては十分な備えであった。
敵意を込めた視線でルルーシュは少女の目を直視する。
そして、その瞳が紅く輝いた。
鳥のような紋様が浮かび上がり、今までやってきたように彼は一言の命令を無慈悲に告げる。

「」

王の力――――ギアス。
魔女と呼ばれる少女から授かったルルーシュ・ランペルージのそれは、絶対遵守の力。
簡単に言うならば、この力を以て命じられればたとえどんな強者だろうと逃れられない。
この力を使って、成功もあれば失敗もあった。
しかしながら結局のところ、ルルーシュの剣となってくれるのはこの超常の力である。
人心の掌握、奇策謀術――彼が得意とすることは数あれど、ブリタニアに一矢報い、そして自らを皇帝の座まで上り詰めさせたのは、やはりこの力の恩恵あってこそだ。
意志も決意も、或いは失意さえもねじ曲げ、従わせる呪い。
だが―――ここに来て、少年に一つの大きな計算外が生じる。

「何ッ!?」
「うん、うん。分かっているよ、数多おじさん。こういう時は、はったりを疑うべきなんだよね」

確かにルルーシュは少女に『』と命じた。
間違いなくその瞳を見据えて、ギアスを施すことには成功した筈である。
だというのに、少女は自害するどころか、何ら異常はない様子で何かを呟いている始末。
予想もしていなかったイレギュラー事項が、彼の計算を狂わせた。

(くっ、どういう事だ? 何故、奴にはギアスが通じない!?)

ギアスが通じない相手の条件はたった一つ、『既にギアスをかけたことがある』ことだ。
他にも例外的なものはいくらかあるが、そのどれにも目の前の少女は当て嵌まらないだろう。
そして、ルルーシュが記憶している限りこの少女にギアスをかけた覚えなどない。
こんな風に躊躇なく他人を抹殺しにかかってくるような人物、忘れようもない筈だが、ルルーシュの記憶に彼女の姿はなく、それを嘲笑うかのようにギアスは通じていない。
これは不味い。窮地と言う他ない。

「……がっ!!」
「やっと、捕まえた」

77 :
半ば体当たりにも等しい攻撃を受け、ルルーシュは無様に押し倒される。
予期せぬ、殺し合いの定石から明らかに逸脱した攻撃。
この少女の行動が、読めない。まるで彼女の幼い肉体にいくつもの人間の思考回路がインプットされているかのように、ことごとく予測を裏切ってくるのだ。
見た目に反して、一対一で戦うには手に余る難敵。そんな判断を下すより他になかった。
しかもその手にはいつの間にやら拾ったと思われる先の黒い短刀。これまで幾度となく窮地を潜り抜けてきた彼とて、この状況は不味いと言わざるを得ない。
今ここで彼女の首輪を引き千切らん勢いで引っ張れば、彼女はあっさりと屍を晒すことだろう。だが、当然破片は殺意の嵐となってルルーシュの全身を撃ち抜く。
万事休すか――そこで、彼の頭に天啓が走った。
しかし、間に合わない。
少女はもう刃を振りかぶっている。あれを降り下ろされれば、ギアスの呪言を紡ぐことさえ難しい。
仮に思惑通りのギアスをかけられたとしても、背負う代償はあまりに大きすぎる。
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命ずる――――」
駄目元で紡ぐ精一杯の言葉。
ゼロレクイエムを完遂できないかもしれない、そんな恐怖が込み上げたが振り切る。
キングが何もしないで、事態が好転するわけがない。
そして、運命の女神は反逆の皇子に微笑んで見せた。
「うわ。逆×××(自主規制)じゃないですか。ひとみんこれにはドン引きを隠せません」
「………え?」

少女は、ルルーシュが睨んだ通り、決して生半可な一般人などではない。
科学が有る限りいつの時代も生まれ落ちる科学の魔性、『木原』の血を引く戦闘要員。
もしもここに居るのが『猟犬部隊』を率いていた今は亡き『木原』だったなら、ルルーシュが何かしらの能力を持っていると早々に断じて、まず彼の目を潰しにかかったろう。
もしも『諦め』に特化した病理の『木原』なら、優先順位をきちんと分析して、未知の力を有する可能性の高いルルーシュを仕留めた後で、乱入者の少女を仕留めたろう。
だが―――彼女は違う。
とある事情で外の世界から隔離されてきた彼女は、他の『木原』に比べて随分と落ちこぼれている。
故に、異常なる木原の冷酷さを、冷徹さを、冷静さを、ここで発揮することが出来なかった。
それが、木原円周の敗因だった。

「――――俺に従え!」

今度こそ、ルルーシュ・ランペルージの相牟から放たれた紅い光が、円周にギアスを施行する。
『木原』らしく、ナチュラルセレクターに戻るために、『木原』以外を抹殺しようとしていた彼女の目論みは呆気なく潰え、ルルーシュの意のままに思想は侵略された。
とはいえ、本人の考えや人間性までも支配する類いの命令ではない。
ルルーシュはこの少女を切り捨てるのではなく、自らの手駒として利用する作戦を考え出したのだ。
木原円周が果たして使える駒か否かは別として、とりあえず軍勢を拡大するところから始めなくては。
建前上の対主催を装うのだ、事態がどちらに転んでもいいように保険はかけておく必要があった。
ふぅ、と安堵の息をつくルルーシュ。しかし彼は完全に、彼の身を救った少女を視界から外していた。
「うわ、うわわわ。相手に『俺に従え(キリッ』とか、ちょっと痛すぎますよ。通報しますね」
「勘違いするな! どう考えても殺されかけてただろ!」
「ありゃ、そうでしたっけ。えっと、それはすいませんでしたロリーシュさん」
「……その訳の分からん呼称を今すぐ止めろ」
一見すると微笑ましいやり取りだったが、ルルーシュは一抹の違和感を感じ取った。
自分は、あの激戦の末にブリタニア皇帝の座を手にした筈だ。
衣服も皇帝ルルーシュのそれだし、幼い子供であったとしてもこの顔に覚えくらいあってもいい。
しかし――二人の少女は明らかに皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアのことを知らない様子だった。

78 :
「おい、貴様。貴様は神聖ブリタニア帝国を知っているか?」
「はい? そんな厨二チックな国名、一度聞いたら忘れないと思うんですけどね。知らないです。あと私の名前は榎本瞳です、通称ひとみんですね」
惚けているようには見えない。
どうも、この少女とは世界の共通認識自体が違うようだった。
「そこのお前もだ。答えろ」
「……私は木原円周だよ。神聖ブリタニア帝国なんて国は聞いたことない――というより、そんな国は存在しないよ」
これで疑念は確信に変わり、ルルーシュに新たな真実をもたらした。
間違いない。木原円周ともう一人の少女は、ルルーシュの知っている世界とは違う世界の人間だ。
普段ならば笑い飛ばすレベルの下らない話だが、思えば最初から不可解だった。
皇帝としてブリタニア帝国最大の地位を獲得している自分が、何故言峰綺礼などという何処の馬の骨とも知れぬ輩にまんまと拉致されたのか――それも今なら説明がつく。
ギアス。
それがルルーシュ・ランペルージにとって最も身近な異能であるが、もはや認めざるを得まい、ギアス以外の異能力の存在を。そしてそれを裏付ける根拠も揃っている。
それら全てを踏まえた上で結論を出すと――
(パラレル・ワールド)

トンデモ科学御用達の理論だが、そう考えるより他ない。
例えばルルーシュのいた『神聖ブリタニア帝国の存在する世界』。
ブリタニアに日本は敗戦してエリア11とされ、そして他ならぬルルーシュ自身の手で改革された。その終焉としてゼロレクイエムがあったわけだ。
しかし木原円周と榎本瞳の居た世界では、そもそもブリタニア帝国自体が存在していない。
人型機動兵器――ナイトメアフレームも、あの忌まわしき実父も、もしかするとギアスさえも存在しない、そんな世界。羨むことはなかったが、僅かな好奇心は確かにあった。
だが冷静に分析するまでもなく、事態は悪化の一途。
どんな手段を以て平行世界から人間を集めたのか、そんなことは分からない。それでも、そういった技術がある時点で、ルルーシュの常識の範疇を大きく超えてしまっている。
今ならば言える。間違いない、ルルーシュ・ランペルージのギアスを遮っていたものは―――

(言峰綺礼……何か細工をしたのか)

確かに「」なんてギアスを多用されては、バトルロワイアルなどすぐに破綻してしまう。
ならば何かしらの対策を講じておくのは当然だが――ギアスにさえ干渉し得る力というものに、末恐ろしさを感じずにはいられなかった。
井の中の蛙とは、こういうことを言うのかもしれない。
「……ところで、瞳ちゃんって子どっか行っちゃったよ」
「何ぃ!? くっ、全く気が付かなかった」
「どうするの? 追いかけて探してみる?」
「いや……いいだろう。わざわざ探すこともない」
ちょっと思案に耽っている間に逃走されたのは計算外ではあるが、榎本瞳は戦力にはならないだろう。
ルルーシュが今重視すべきは温い仲間意識などではなく、より確実な戦力と人員の確保である。
円周が実際どれくらい戦えるのかも未知数の部分が大きい現在、こう言っちゃ悪いが足手まといになりうる人間を好き好んで連れ回したいとはとても思えない。
故にルルーシュは、榎本瞳を追うことをしなかった。
「俺はルルーシュ・ランペルージだ。言峰達の計画を頓挫させようと考えている」
「私はどっちでもいいんだけどねー……ま、いいや。ルルーシュお兄ちゃんに付き合うよ」
お兄ちゃん、というその呼び方に、ルルーシュの眉がぴくりと動く。
正確には「兄」の部分で、どうしても最愛の妹の姿が脳裏をよぎってしまう。
運命に翻弄され続け、それでも折れることなく生きている彼女のことを思うと胸が痛い。
自分が彼女の意志を必要だったとはいえねじ曲げた、それは紛れもない事実なのだ。

79 :
ならば尚のこと、ゼロレクイエムを完遂しなければならない。
そんなルルーシュの心中など知るよしもない円周だが、ルルーシュもまた彼女のことなど何も知りはしなかった。木原の名が何を意味するかを、計り損ねていた。
策士ルルーシュのやり方を、『木原』の遺伝子は着々と吸収しつつあることにも、ルルーシュはこの時点では気付くことさえ出来てはいなかった。
パートナーのことを何も知らない前途多難の二人が、ここに誕生した。
【一日目/深夜/A-3/森】
【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]健康
[装備]なし
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品0〜3
[思考・行動]
基本:何としてでも生きて帰り、ゼロレクイエムを完遂する。
1:しばらくは対主催として行動する。
※ゼロレクイエム前日からの参加です
※ギアスは『』など、直接的に生命を奪うものは制限されています
※名簿を確認していません
【木原円周@とある魔術の禁書目録】
[状態]健康、ギアス『俺に従え』
[装備]ダーク@Fate/stay night、スマートフォンなど端末
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品0〜2(確認済)
[思考・行動]
基本:生き残る。
1:ルルーシュお兄ちゃんと行動。従う。
2:病理おばさん達と合流したいけど、殺されそうになったら容赦なく殺しておく
※雲川鞠亜に撃破された後からの参加です

80 :
◆ ◆
さて、首尾よく逃走に成功したわけなんですが。いえーい。
我ながらあそこまで見事に逃げられるとは思いませんでしたよ。何でもやってみるものですね、世の中。あんな変人二人から、私みたいな超★小学生でも逃げ切れるんですから。
しかし、何故私が逃げたのか、と疑問に思われる読者の皆様もいるでしょう。
そこでこのひとみんが種明かしというわけです。……ま、単にヤバそうだったからなんですが。
あのルルーシュさんという人と、お団子ヘアの方のやり取りを私は最初から見ていました。
だからこそ言わせてもらうと、あれ、どっちもどっちで異常ですよ。
お団子さんはまるで自分の意志がないかのようでしたし、最初は間違いなく気だったみたいですし。
ルルーシュさんは実を言うと最初、服装から見て厨二をこじらせた人かと思ってたんですけどね。
「俺に従え」でしたっけ、そんな風に命令した瞬間にお団子さんの攻撃が止んだ。どういうトリックなのか、催眠術みたいなものなのか、いたいけなひとみんには分かりませんけど、少なくともいつ利用されるか分からない危険な状況はごめんです。
べつに同行者がいて悪いってことじゃないですよ? でも人は選びたい、ってことですね。
「今頃どこかで誰か死んでるんでしょうか」
呟いてみた。
その小さな声は誰の耳にも入ることなく夜の闇に溶けて消える。
もちろん、私の耳には入りましたけど。
【榎本瞳@非リレーのオリキャラ】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品0〜3
[思考・行動]
基本:だるい。
1:ぶらぶらしてみますか
※数だけロワ参加前からの参加です

81 :
投下終了です。

82 :
投下終了です!
榎本ちゃんの再現率って言うかキャラ補完というかいろいろすげえww(ボキャブラリー貧困)
ロリーシュさんは本当タイトル通り、の災難が……。
木原円周ちゃんは原作は知らないのであれですが、前のロワでは癒し系だったのでなんともいえないギャップで。
改めて、榎本ちゃんみたいな扱いづらいキャラをありがとうございます! 気力になります
では自分も投下します

83 :
と、まあ。
ここに楔音が来ることはある意味予想通りだ。
正直樫山が来ることはあまり考えてなかった。というか来たところであまり苦はないだろうと、懲りずに甘い考えでいる。
だってまあ、樫山と楔音があった時点で樫山は何の抵抗もなく殺されてるんでしょうし。
ここに樫山が来るにしたってどうせ自殺志願を有してるんだろうし、あたしがそんなことしなきゃ要するに全ては解決するし。
あたしは別に天使でも悪魔でもない、あいつの願望を叶えてやる義理はないのよ。
あくまであたしは、反逆者なのであって、正義の味方であるつもりはないのだ。
「……久しぶりね、会いたかったわよ楔音」
あくまで。
あくまで対策を練るとしたなら、楔音しかないだろう。
だってまあ、あいつの場合は一回落ち着かせないと、話が通じないんだもんね。
うんうん、それは一週目の時に重々承知してるわよ、いやはや死ぬかと思った。冗談ではなく。
「なんか物騒なもの掲げてどうしたのさー。うーん、刺激臭」
今、楔音は扉に手を掛けたまま突っ立っていて、あたしはその真っ正面で、
栓を抜いた試験管を、楔音に向けている体勢をとっている。正直言って穴だらけの体勢だ。
まあ、動きが止まったようだから、それっぽくはなってるんでしょうけれど。
「濃硫酸よ、あんたが教えてくれたのよ」
「やだなー。僕とキミはこれ始まってから初めて遭ったんじゃないかな。
 ううん? ならなにかなー。以前に僕はキミにそんなことを教えたってことかい?」
「まあ近すぎず遠すぎずってね」
「おかしな事を言うねー」
と。
まあ、今のところ濃硫酸の名前圧しで対等には話していられているわけだが。
きっとこんな時間も長くはないのでしょう。
どうせ直ぐに、これはさして効果の薄い行為であることには気付かれる。
……そもそもあたしは楔音にこんな液体をぶっかける気はさらさらない。
「……ま、んなことはどうでもいいんだけどさ楔音」
だからこれは、時間との戦いだ(あたしの中では)。
急かすべき話なのでしょう。のんびりやってたら、こいつに主導権握られちゃうかもしれないし。
それは、危惧する事態でしょう。……右手に持った血の付いた鉄パイプが見てて痛々しい。――腰に下げた拳銃が、脅かしい。
「うーん?」
首を傾げ、そんな血濡れた姿など構いやしないで、いつも通りの態度で接してくるあたり、なんていうかどういうべきか。
……まあいいや。こんなこいつでも、あたしは大好きだしね。……多分。
さて、それでは本題に入りましょうか。
正直あたしには何がなんだかよく分からなかったけれど、適当にそれっぽく言えば、それっぽく通じるでしょう。

84 :
うん、後は勝手にこいつが自己補完してくれるって。……投げやりだけれどね。あたしにはこれ以外、手段がなかった訳だししょうがないしょうがない。
……では、かくしん持って、行きましょう。
「楔音ってさ、神創高校ってさ、知ってるかな」
「……」
楔音の、時が止まった。
ぴたりと。
ゆらゆらと身体を持て余す様に、身体を揺らしたり、足や首を回していたりしていた身体が、ぴたり、と。
心なしか、こいつの瞳の色が。瞳の奥の輝きが、変わった――あるいは戻った気がする。
そんな人間観察も程々にして、あたしの意識を楔音契也と言う一人の人間から、バトルロワイアルと言う舞台に醒ましていく。
楔音契也の返事が、今までのどこかふざけたものとは打って変わって、問いただすような、そして真摯な口調で返ってきた。
「……なんで、かな」
「さあ、あんたの心にでも訊いてみたら? ……で、どうなのよ」
どこか焦った様な。
焦燥感が駆られる表情で、悩むように一通り動作を繰り。
諦めたように首を振ると、嘆息をひとつ落とし、吐く。
「うん、知ってるよ。神創高校。どこにあったっけなあ……。うーん、確か福井県とかかな。
 宗教性の強い、偏差値もここよりは高いそこそこの神学校っつーか進学校だね。
 あそこが集うのはキリスト教だけじゃないからね。ユダヤ教も仏教もイスラム教もマイナーだけどゾロアスターも何でもござれだったからねえ。
 うん、そこ知ってるなら知ってると思うけど、神創高校の『宗教対抗合戦』とか如何にも神を侮蔑してるような行為に燃えあがってる姿とかお笑い種だよね」
「……え、ああうん」
驚いた。
これは驚いた。まさしく的確に華麗にここまでずばずばおなじことを言うなんて。
メモ帳に書かれていたことと同じことを吐くなんて、流石のあたしもびっくりだ。
普通に調べたところでは、こうはならない。
ここまで調べ上げるのは――難しい。だって
「ん? ああ、その微妙な顔はあれかな。ここまでは知らなかったのかな。
 まあしょうがないんじゃないかな、だって今その学校は廃校になってるわけだし」
その通り。
その学校はとうの昔に廃校になっている。
HP(ホームページ)には、神創高等学校と書かれたそのメニュー画面には『廃校となりました。』と、大きな字で書かれていた。
その廃校宣言が発表されてからの日数も一年二年の話ではなく、あたしが生まれる前の話である。
そんな高校を、何をトチ狂ったのか今更になってこいつが調べていたのかは知らないけれど。
あたしだって、メモ帳の方にその旨が書かれてなかったらきっと知ることもなかったんでしょうけれど。
「いや、あたしは知ってたわよ。……あんたがそこまで知ってることに驚いているだけで。

85 :
 というか、なんであんたはそんなこと知ってるのよ。『宗教対抗合戦』とか」
「いや、ちょっとね」
「ふーん」
まあそんな諸事情はどうだっていいんだけれど。
「で、そういう榎本さんこそどうして知ってるの? 普通知ってるわけないのに」
「それに応えるのも吝かではないんだけどね、楔音。その前にもう一つだけ答えてもらっていいかな」
「ぶー。濃硫酸が何だっていうんだよ。……んで、なにかな」
文句を垂れ流しながらも、若干の期待を含んだ色で、あたしを見つめる。
その様はさながら好奇心たっぷりの子供そのもので、あたしとしては作戦と言うか試みっぽいのも上々というあたりで、そこはかとなく嬉しくはある。
実際言うとただただおっかない子供に過ぎない訳だが。
「さあ、キミのお話を僕に聞かせてよ」
「……なんであんたが急かすのよ――はいはい」
さながら、子守唄代わりの童謡を待つ睡眠を嗜む寸前の子供のように。
子供のように、子供のように。何も知らない無垢で無邪気な子供そのもので。
愛に包まれているけれど、愛の意味を理解することのない、幸福な赤ん坊のようでもあり。
その顔は、何故だか、本当に何故だか不思議そうに笑顔が浮かんでいて。
「連ねて、四海(しかい)高校、縁結(えんむずび)高校、満影(みちかげ)高校、凍座(いてざ)高校、幸ノ鳥(こうのとり)高校。
 ……どれも、神創高含めて、唐突に、脈絡もなく『廃校』になった高等学校よ。……周期は不明。一番近く廃校になったのは、凍座高だったかしら」
満足げに、うんうん。と謎の頷きを見せると、
思わぬことを、楔音の口から聞かされた。
「いや、違うと思うよ。一番最近廃校になったのは、秀峰(ひでみね)高校だよ。……あの優等高で有名な」
「……は?」
一つの驚きポイントとして、楔音の口から、新たな情報が入ってきた、ってこと。
だがそれは、楔音がもしかしたらメモ帳にまとめてなかっただけなのかもしれないし。
納得は行くだろう。それも告げられた高校が高校だ。まとめるにしても今更なのかもしれない。
で、ここで二つ目の驚きポイント。
――廃校になった? 秀峰高校が? あの?
『秀峰高校と言えば知らない人はいない。
 倍率は毎年10倍を超える超難関高校である。
 偏差値も67は無いと入れないなんていわれている。』
なんて謳い文句があるぐらいに、有名なんて言うのすらおこがましいのではないか。と錯覚すら覚える、
エリート中のエリート高だ。……それが廃校?
いや、廃校であるだけなのならまだわかる。
だがその情報が、あたしの耳に届いてなかったことが、更に分からない。
幾らあたしが高校生だとはいえ、そこまでも有名校が潰れたとなると、噂どころの騒ぎじゃないと思うんだけど……。
「まあ一回はニュースになったんだけどね。文字通り一回だけ。まあそれはいいよ。
 しっかし、驚いたね。まさかそんなことまで知ってるなんて。……驚いた驚いた」

86 :
「そりゃあんたが教えてくれたからね」
「……まあいいけどさ。……なるほどねえ、面白い子だね、榎本さんは」
「あら、知らなかったの? 授業中のあたしとか最高に面白すぎて笑みが絶えないじゃない」
「……生憎僕には物理の先生に寝てるの起こされてるシーンしかまともに覚えてないなあ」
「気のせいでしょ」
「そうかもね」
まあ、知識源がこいつ何だからある意味当たり前なんだろうけど。
そういやここまでこいつと話が弾んだ、ってことは少ない……ていうか覚えがない。
前回が前回だったから、ギャップ萌えって奴? いや萌えないけど。おっかない。
しかし、お膳立てとしたらこれは普通に十全だ。
話を通じるように、心の扉――なんていうと安っぽいポエム臭漂うけれど。
まあ、話が通じるまでには、意志疎通ができたところで、本題の本題。
――――仲間にこいつを入れるとしましょうか。
「んで、そんでよ。楔音。そーんな平和な学級を取り戻すために、手伝ってくれないかしら」
「うん、別にいいよ」
……。
「え、ああ、うん。ありがと」
即答で平然と返ってきた返事に、思わず拍子抜け。
こいつの瞳を見ても(多分)真剣そのもので、冗談には見えないっちゃ見えないけどさ……。
なんていうか穏便に進み過ぎて、怖くもある……なんていうと失礼なんでしょうけれど。
あたしとしちゃあ
 「いやだ!」→「濃硫酸掛けるわよ!」→「願いで治してもらうからいい!」
 →「ふはははは! 残念ね、そしてらあんたは地獄を見るわァ!」なんてやり取りまで妄想したもんだけど。
最悪死ぬことを覚悟してたわけだし、この呆気なさは何て言うか、何て言うんだろう。……虚しい? いや、嬉しいのは確かではあるけどさ。
というか、話を始める前に承諾されちゃったもんだから、タイムリープのことを話すタイミング絶対逃したんだけど。
おかしいわよ、うん、こいつは本当毎回驚かされる。
こんな変な奴だったかな―? ……まあ、そういうもんか。
「んでもさ、救うったって榎本さんはなにか算段でもしたの? 一応言っとくけど生き残ってるのはもう僕ときみだけだよ」
やっぱ、樫山は死んじゃったか。……ごめんなさい。
頼りない、クラスメイトでごめんなさい。
……閑話休題。
さて、ともかくとして、それはともかくとして。
こいつが少なからず表面上は協力的になってくれた以上、タイムリープのことは話さなきゃいけないでしょう。

87 :
幾らか予定の段取りとずれまくってるけど、うん。話しましょう。
「……ええ、あるのよ楔音。あたしは今。……そうね、言うなら『タイムトラベラー』。時間遡行者。
 それ以上でも、それ以下でもないわ。あたしは、時間を跳んで、みんなを救うんだ。――――この嫌な運命から、さ」
「……へえ」
楔音は、愉快そうに、頬を歪めた。
それはそれは、たいそう希望あふれる目をしとったそうな……みたいな。

 ○

「なら、一つ提案何だけど、一回榎本さんと、僕。どっちかが死んだ方がいいかもね」
と。
あたしがこれまでの(一週目の)ことを話して、間もないことの言い分であった。
脈絡なく、そして、訳もなく言うもんだから、その言葉の意味を読み取るのに数秒要し、
仕舞い、どうやらパンクを起こしそうになった頭は強制的に考えるのを止めて、結果として憮然とした態度で楔音に言葉を返す結果になる。
「……は?」
「いや、二人のうちどっちかが死んでもいいんじゃないかな。ってさ」
「いやはやなんでよ、いよいよ本性現したのね、楔音ッ!」
「声色から冗談だとは悟れるけど、流石にその言い分はきついんじゃないかな」
「自業自得よ。……で、どうしてよ」
話が先に進まない。
こういう時柳沼はむしろ自分のことしか考えてないため相手が何をしてようが話を勝手に進めるんでしょうけど。
こいつはどちらかというと率先して意見を言わない聞き手タイプ。自らの主張を存分に言えないのはあるのかもしれない。
……しかしまあ、楔音が自分から意見を出すのもやはり珍しいわね。
ともあれとして。
楔音は変わらず、人差し指をつっつきながら、唇を尖らせ、ふてくされた声で旨を伝える。
(ちなみに鉄パイプと拳銃はいざという時の為に教室の隅に放置してある。そんであたしらは自席に座って話をしている)
「いや、まずそもそもの話。僕は僕とキミだけであの男、木幹葉枝って人に正面切って挑んだところで勝てるわけがないと思うよ。
 きっとそのタイムリープすらを可能とさせる異能で、ねじ伏せられるのがオチだろうね。どうであれ流石に僕は嫌だ」
「そりゃあたしも嫌だ。……けどさ、どう足掻いたって何時かあいつと戦わなきゃいけないのよ? 遅かれ早かれ」
そりゃあ、あたしだってたとえばあの拳銃にしたところで、あんなもの一つ装備したところできっと牙が刺さることはないだろう、ことぐらい察しれる。
とはいえ、そうする以外に方法もない訳で。
なんて思っていると話は進んでいく。
「その遅かれ早かれが大事なんじゃないかな。まだここは焦るべきところではないんだよ。じっくり基盤を作ったところで、まだ損にはならない」
「……基盤?」

88 :
「願いだよ。たった一人の生存者に与えられる、あれ」
「……?」
いまいちぱっとしない。
いや、そりゃ確かに既にあたしからすりゃあ、願い事を更に活用するって方法は考えついてなかったし、目から鱗と言っても差支えないが。
それでも、何を願うというのだろう。
「ちょっとぐらい自分で考えようよ……。まあいいや、時間もある訳じゃない。
 願う内容はただ一つだよ、『次週にも記憶を引き継ぎさせること』だね。一人スタートで、難しいのなら、二人スタートで始めれば、結果は違うかもしれないでしょ」
「なるほどねえ」
淡白な物言いだからあんま深くその言葉が突き刺さった訳ではないけれど、それは確かに一理ある。
というか、あたしの目的であった『仲間に入れる』っていうのも、基本概念はそれに通ずるわけだしね。
一人じゃ無理だから。一人が嫌だから。――クラスメイトと手を取り合う。
とはいえれども、その案件には二つほど問題がある。
簡単だ。
「で、仮にそうするとしても。どっちが死ぬの? っていうか
 あんたはあたしを信用するの? あたしはあんたを信用していいの?」
本来、前者はともかくとして、後者は訊くべき質問ではないことぐらいわかってるんだけれども。わかってるんだけれども。
それでも、あたしにはそれを止める意志は、訊きたいという衝動を止める術はなく。
有耶無耶のまま信じるよりは、明瞭にさせて、信じてあげたい。
仮にそれで裏切られる結果が待っているならば、それはきっとあたしがどうしようもなく力不足ってことなのだから。
こいつが肯定の意を今ここではっきりさせてくれたのならば、もうあたしは無条件でこいつを信用するべきなんだ、そう思う。
これは、反逆者としても、或いは救世主としても誤った想いだということぐらいは重々に感じ取ってはいるけれど。
それでも、ここまでロクな波風立たないで順調とはいえないにしろ、邪魔だてなく、事が運んでいくのが何て言うか不安で。
確かに、まあ。さっきの話で友好度を高めれたら、そして、あたしに気を許してくれたのならば、それはとっても嬉しいな、何てとは思ったけれど。
まさか本当に受け入れてもらえるとは前述したけど、正直思ってみなかったし。不安感の方が勝っちゃってる。
まあだからこそ。
ここではっきりときっちりと、気持ちに喝を入れろってことなのかもしれないわね。
どんなことがあっても、クラスメイトを信用しろって気持ちすら揺らいでいたあたしに。
「うーんと、ね。言い辛いんだけど、できれば今回は僕に優勝者の座を渡してほしいな。
 僕はまだあの木幹葉枝とロクに対面したことはないんだ、打倒するって言うんだったら、
 一回会ってみたいのが正直なところだし、僕は、彼にも興味があるから、さ」

確かに一週目は、あたしは襲われた。よくわからない理不尽さによって。
それに対し吹っ切れるほどあたしには度胸もなければ懐も決して広くはない。
けれど、それでもあたしは誓ったはずだったんだ。

「なんであれ、キミが僕を信用するかはキミの問題だよ。
 だけど、僕からも一つ言わせてほしいし、受け入れてほしいんだけど」

そしてあたしは知っていたはずだったんだ。
二年間、余すことなく享受してきたあたしは、それを知っている。
このクラス、3年A組の温もりを。――――絆を。――――友情を。
とんだ詭弁師。とんだ戯言遣い。

89 :
なにが裏切りだ、なにが信頼だ。――誰よりも疑っていたのは、あたしじゃないか。
故に弱く、薄い。意志薄弱。憂いの青。
「今の僕は、キミを信じてみたいし、知っていきたい。あれだね、信じてほしい、な。なんていうのも虫のいい話だけどさ」
こいつのことだって、悪い奴じゃないことぐらい、理解していたんだから。
そうね、榎本夏美。
あたしはまだまだ弱かった。
自らの理解よりも、遥かに下回って。
伸び代(のびしろ)を真白色のままの純潔を保っていた。
だからこそ、まだまだ、あたしは強くなれる。
どうせだったら、少年漫画の主人公のようなインフレでも起こして強くなることだって、全然可能ってことでしょ。
一人称小説は、自らに嘘をつける。
ようするに所感は、時に真意ではないということだ。
今まで、このバトルロワイアルにおいてあたしが感じてきたこと、思ってきたこと。
それらはきっと、それこそ虫のいい、小学生が将来の夢を語るような、出鱈目な、無関係なこともたくさんあったかもしれない。
矛盾した事柄も溢れかえっていたのかもしれない。
そんなあたしは、もう捨てなければいけない。

「そうね、ならあたしはあんたを信じる。虫のいい話でも構わないわ。――もとよりあたしは、そんな虫のいい話を目指しているもの」

でも、あたしは、あたしのエゴの為に進化を果たさなければならない、なんていうと如何にも義務的な述べ方になってしまうけど。
あたしは強くなりたい。

90 :
こいつを、柳沼を、樫山を、楓之を、榊田を支えて上げれるような、そんな芯の太き強さを。
はたはあたし自身を守れるような、温かな強さを。
「……ここではなんていう場面なのかな」
「さ? 礼でも言っとけば」
「……そうなのかな、じゃあ真心込めて」
「そう言ってる時点で真心が籠められてる気がしないんだけど……」
「気のせいだよ、……では改めまして」
あたしは正義の味方にも、なれないただのクラスメイトだ。
孤軍奮闘、そんな格好いいものにあたしがなれるわけない。あたしがなれるのは――ただのクラスメイト。
それでも、一つ言えることがあって。
「今から僕はキミを愛を以てとしますよ。――――僕を信じてくれてありがとう」
あたしは、せめてもの情けとしての愛がある。
クラスメイトを、愛せるだけの愛を――――。
「どういたしまして」
だからこそ、あたしは高らかに謳おう。

「3年A組――――全くもって最高よ」

微かに笑みを浮かべると、

91 :
銃をとってきた楔音から、返事が返ってくる。
「なら、あんな奴からはキミは取り戻さないとね」
「他人事みたいに言ってんじゃないわよ、あんたもよ」
「……?」
「あんたは3年A組の面子でしょうが」
「……そうだね、僕も取り戻せるよう善処してみるさ」
あたしがしっかりと頷くと、楔音の目の色が、昏く(くらく)なって。
拳銃をしっかりと握りしめたのが、視認出来た。
そうか、今からあたしは死ぬのか。
不思議と怖くはない。ゲームで言うと残機が残ってるからなのか。そうではないのか。
変な感覚である。
それでも刻々と時は進んでいく。
無論その変な感覚を解明できるほど、時間もなければ、あたしにはそんな無粋な真似は到底できそうにない。
拳銃をこちらにつきつけ、陰鬱とは程遠い、爽快な笑みをこちらに見せて。
なにかを考えるように数秒呆けた後、諦めたのかこちらを向き直し。
「いい言葉が見当たらないけどさ」
拳銃のトリガーに指を掛けて。
両手に握った拳銃に、一際力を入れて。
最後に一言。
「それじゃあ、『また後で』」

――――銃声。


92 :
さるったようなので投下します

93 :
5:切り捨て御免
「全く何でこんな事に……」
武闘家であり冒険者であるアリエル・ディラックは別荘地にある別荘の一つを探索していた。
とある個室の扉を開け中に入る。
「……」
クローゼットの中から気配を感じた。
その前に立つアリエル。
「誰かいますか?」
一応声を掛けてみるが、返事は無い。
「……」
アリエルは部屋の入口へ向かった。
ガチャ…………バタン。
「……」
クローゼットの扉が開き中から少女が現れた。
「やっぱりいたね」
「ひっ!?」
「扉の音で私が出て行ったと思った? 残念、フェイクでした」
部屋の入口の所で腕を組んで不敵な笑みを浮かべる黒髪ロングの女性を見て少女は驚く。
女性――アリエルの言う通り、少女――塩崎夕海子は扉の開閉音で、
あっさりアリエルが部屋から出て行ったものと勘違いし迂闊にも隠れていたクローゼットから出てしまった。
「でも安心して、私は殺し合いなんてする気は無いからさ」
「本当?」
「本当本当」
「……」
「私はアリエル・ディラック。あなたは?」
「塩崎、夕海子」
逃げられもしないので取り敢えず自己紹介はする夕海子。
「殺し合いなら私も乗っていない、けど、もう外動くのは怖いし襲われるの嫌だしだから隠れてたの」
「そう……」
「あなたは私を臆病者だと罵る? 『動かず、闘わず、ただ座って泣いてるだけか?
何もせずに助かれる程バトロワは甘くない』みたいな事を言う?」
「い、いやそこまでは言わないけど」
「言っておくけど私は誰とも組むつもりなんて無いから放っておいて」
そう言うと夕海子はアリエルにそっぽを向いてしまった。
アリエルはどうにか説得して連れて行こうとも考えたが、無理に連れて行き危険な目に遭わせるのも良くないし、
また、正直連れて行って役に立つかどうかと訊かれたらすぐさま疑問符がつく塩崎夕海子と言う少女に、
そこまでして時間を割く理由も無いと、アリエルは考える。

94 :
「分かった……私は行くわ」
「……」
「気を付けて……」
「ん……あなたも」
多少未練は残るがアリエルは部屋から今度こそ出て行った。
【早朝/C-2別荘地・12号別荘】
【アリエル・ディラック】
[状態]:健康
[所持品]:基本支給品一式、???
[思考]:殺し合いには乗らない。
【塩崎夕海子】
[状態]:健康
[所持品]:基本支給品一式、???
[思考]:誰とも遭いたくない。
----
【アリエル・ディラック】
20歳の武闘家。某ティファに容姿が酷似している女性。
素手だけでドラゴン10匹を倒せる。武器の扱いが酷く下手。
【塩崎夕海子】 しおざき・ゆみこ
17歳の少女。黒髪ポニテ。高校生。
無気力で将来に展望を抱けない病気に罹っている。
----

95 :
投下終了です。
文章の日本語がおかしいのは許して下さい

96 :
では自分も変哲×EDLとは名ばかりの変哲おまけを投下させていただきます。
短い話を五部編成。今回はその一話

97 :
曇天が広がる、とある日放課でのことである。
三日月中学校三年D組は喧騒に包まれて、如何にもな平和をあらん限りに体現していた。
……なんて、気だるく机に伏せていた俺には無縁の話なんだけど。
「ふわぁ……」
小さく欠伸を零す。
前の授業の英語が睡魔との闘いで、今の俺は相当な不機嫌。
あの戦いは熾烈であった。激闘と言っても過言じゃないな。
「何一人で疲れてるんだよ」
なんて思ってると、頭上から声が聞こえた。
顔をあげずともその正体は理解できる。
「浅倉か……」
浅倉翔。
我がクラスの一員。俺の友達。
宇田川といろいろ諸事情あるが割愛。それは是非違う機会に語ろうとでも思う。……覚えてたらな。
さておいて。
俺も話しかけられた以上返さないわけにもいかない。
ぶっきらぼうに返す。
「んだよ」
多少無愛想かもしれなかったが、知らねえ。
んなもん一々構ってられねえよ。この雨と英語のせいで俺のやる気がガツガツ減ってるぜ。
「テンション低いなー。せっかく俺がおまえに朗報をもってきたって言うのに」
「ああ、おまえの気持ちありがとう。しっかり受け取った。だからどっかいってくれ」
「ひっでーの、まあ聞けよ」
正直どうでもよさが半端ない。
加えこいつの話ってさ、そう大して……。
いや、ただの言い逃れだけどさ……はあ。
仕方ねえな。
「なんだよ、そこまで言うんだったら本当に面白いんだろうなあ」
俺はようやく伏せていた顔をあげて、浅倉の顔を見る。
ふと浅倉の頭越しに見えた時計の針は、放課が残り五分だということを告げている。
……えーと次は現代文か。まあなんとかなるか。そのあとは昼食タイムだ。

98 :
っと。
流石に聞くって決めたらしっかり聞いてやんねえと。
意識を浅倉に戻す。
「ああ、最高だぜ。いやな昨日ツ○ヤ借りてきたとあるアニメを見てたことだ」
「おお」
「そこにな、とあるギャグがあったんだよ」
「へえ、それが面白かったんか?」
俺はアニメには疎いわけでもないけど、通ずるわけでもない。
深夜アニメを進んでみるほどではない。そういや匠のやつはそういうの見るのかな。
ふと浮かんだ疑問を掻き消して、その面白かったというギャグを聞こうではないか。
まあ、そんなハードル上げまくったギャグに笑うほど俺は笑い上戸ではないけど。
さあ、言ってみろよ! 浅倉翔ッッ!! ……やべ、このテンション気持ち悪ぃ。
「いや、そういうわけじゃない。まあそれ自体も面白かったんだけどな」
なんて思ってたけど俺の予想は外れてたみたいだ。
なんだよ。思わせぶりな(俺が勝手に妄想してただけだが)。
「じゃあなんだよ」
「ああそれだが、昨日俺が見てたアニメは【ゆる○り】って言うんだが」

99 :
「ぁあ? それなら俺も知ってるよ。確か狭山さんから借りたんだけど」
なんか好きな女子からそういう方面のことは薄いとは言えれども百合モノを借りる羽目になったのは少々思うところはあったのを今でも覚えてる。
というかなんであんなもんを勧められたんだろう。俺がそう言うの好きだって思われてんのか? だとしたら普通に心外だしショックだ。
……あとで訊いてみるか。
「けど俺にはおまえが言うほどの面白い場面ってのが思い浮かばないんだが」
確かに面白い話ではあったけど、そんなわざわざ俺に報告に来るまでのギャグって何だろう。
もしかしてアニメオリジナルストーリーとか? 俺が借りたのは漫画な訳だしな。
「んーとな、じゃあ、おまえあの影のすんっげぇー薄い子知ってるだろ?」
「ああ、あの赤いお団子の子だろ?」
「そうそうそれそれ。でな、そいつの効果音も知ってるか?」
「ん? アッカリーンってやつか」
「それだよ」
いや、それがどうしたんだろう。
まあ弁明しとくと初めて見たときは吹いたけどな。
浅倉は恐ろしげな影のある表情で、話を続けた。
それはさながら、なにかに怯えるような、そんな態度であった。
思わず俺も息を飲んでしまう。
「俺は、俺は――――初めて聞いた時心にくるものがあったんだ!」
「お、おう……」
その堂々たる宣言に、俺も思わず同調して、畏まる。
な、なんだってんだよ……ッ!
そのアッカリーンに何があったって言うんだ!!
「聞いて驚け。ユッキリーンに改変して漢字変換すれば、雪凛。つまりは、狭山雪子×須藤凛のカップリングが出来るんだよッッ!!」

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