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2012年07月創作発表73: 多ジャンルバトルロワイアル Part.12 (395) TOP カテ一覧 スレ一覧 2ch元 削除依頼
僕の魔界を救って!創作スレtake3 (824)
ロボット物SS総合スレ 70号機 (517)
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【革細工】◆◇◆レザークラフト 3 ◆◇◆ (612)

多ジャンルバトルロワイアル Part.12


1 :12/05 〜 最終レス :12/08
ここは様々な作品のキャラを使ってバトルロワイアルの企画をリレー小説で行おうというスレです。
みんなでワイワイSSをつないで楽しみましょう。一見さんも、SSを書いたことのない人も大歓迎。
初投下で空気が読めないかもしれない? SS自体あまり書いたことがなくて不安?
気にせずにどうぞ! 投下しなくちゃ始まりません。
キン肉マンのラーメンマン先生曰く「最後に勝負を決めるのは技(SSの質)ではない! 精神力だ! 心だ!」
リレー小説バトルロワイアル企画とは……
原作バトルロワイアル同様にルールなし、特定会場で最後の一人が生き残るまで続くという企画です。
キャラをみんなでリレーし、交わらせ、最後の一人になるまでリレーを行う、みんなで物語を作るスレです。
ここしか書けない、このキャラしか書けないという人も分かる範囲で書けるし、
次どうなるかを期待して次の人にバトンを渡すこともできます。
全ての作品を知りつくてしなければ参加できない企画ではないので、興味が沸いたらぜひ参加を!
詳細ルールに関してはこちらを
ttp://www44.atwiki.jp/tarowa/pages/13.html
〜予約、トリップについて〜
予約する際はトリップをつけてしたらばの予約スレに書き込んでおいてください。
トリップのつけかたは、名前欄に #の後に半角8文字以下、全角4文字以下の好きな言葉を打ち込んで書きこんで。
したらばに予約するのは、「他の人が書いてるから避けよう」という心理を利用し、予約だけして放置することで
企画を妨げる「予約荒らし」という行為を防ぐためです。予約期間は5日(120時間)ですが、
間に合わないからもうちょっと伸ばして!という報告があればさらに2日予約期間を追加(48時間)できます。
したらば(予約などいろいろな時にご利用を)
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/11918/
wiki(まとめサイトです)
http://www44.atwiki.jp/tarowa

2 :
★キャラクター能力制限★
・シャナ@灼眼のシャナ、C.C.@コードギアスは再生能力を落とす&急所(頭)をぶち抜かれたら即死。
・ルルーシュ・ランペルージ@コードギアスのギアス能力は、「」「殺せ」など、 直接相手や自分の生死に関わる命令は無効。(「死ぬ気で頑張れ」などはあり)
・らき☆すたキャラのオタ知識、ラノベ知識は制限。
・仮面ライダー龍騎キャラのミラーワールドへの侵入禁止。
・ローゼンメイデンキャラのnのフィールドへの侵入は禁止。
・泉新一@寄生獣はミギー付き。
・COMP@真女神転生は禁止。
・シャナ@灼眼のシャナの封絶は禁止。
・雛見沢症候群@ひぐらしのなく頃には、まあ、空気読む方向で。
★支給品としてのアイテム制限★
・KMF@コードギアスなどのロボ系は禁止。
・仮面ライダー龍騎キャラには、自分のカードデッキを支給品枠2つ分としてカウントして支給。それ以外のキャラに支給される場合は支給品1つの扱い。
・デスノート@DEATH NOTEは禁止。
・サタンサーベル@仮面ライダーBLACKはシャドームーンから没収&世紀王の呼び寄せ禁止。
・カードデッキの変身は10分で解除。
・カードデッキは変身すれば1時間、ファイナルベントを使えば更に1時間使用不可となる。

3 :
3/6【コードギアス 反逆のルルーシュ@アニメ】
● ルルーシュ・ランペルージ/○枢木スザク/○C.C./ ● ロロ・ランペルージ/ ● 篠崎咲世子/○ジェレミア・ゴットバルト
1/6【ひぐらしのなく頃に@ゲーム】
● 前原圭一/○竜宮レナ/ ● 園崎魅音/ ● 北条沙都子/ ● 園崎詩音/ ● 北条悟史
2/5【スクライド@アニメ】
○カズマ/ ● 劉鳳/ ● 由詑かなみ/○ストレイト・クーガー/ ● 橘あすか
2/5【らき☆すた@漫画】
● 泉こなた/○柊つかさ/ ● 柊かがみ/ ● 高良みゆき/○岩崎みなみ
2/5【るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-@漫画】
● 緋村剣心/ ● 斎藤一/○志々雄真実/ ● 瀬田宗次郎/○雪代縁
3/4【仮面ライダー龍騎@実写】
○城戸真司/○北岡秀一/○浅倉威/ ● 東條悟
0/4【ルパン三世@アニメ】
● ルパン三世/ ● 次元大介/ ● 石川五ェ門/ ● 銭形警部
2/4【ローゼンメイデン@アニメ】
● 真紅/○水銀燈/○翠星石/ ● 蒼星石
1/3【ガン×ソード@アニメ】
○ヴァン/ ● レイ・ラングレン/ ● ミハエル・ギャレット
2/3【寄生獣@漫画】
● 泉新一/○田村玲子/○後藤
0/3【ゼロの使い魔@小説】
● ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール/ ● 平賀才人/ ● タバサ(シャルロット・エレーヌ・オルレアン)
1/3【バトルロワイアル@小説】
● 稲田瑞穂/ ● 千草貴子/○三村信史
0/2【相棒@実写】
● 杉下右京/ ● 亀山薫
1/2【仮面ライダーBLACK@実写】
● 南光太郎/○シャドームーン
1/2【真・女神転生if...@ゲーム】
● 男主人公/○狭間偉出夫
2/2【DEATH NOTE@漫画】
○夜神月/○L
1/2【TRICK@実写】
● 山田奈緒子/○上田次郎
1/2【バトルロワイアル@漫画】
● 織田敏憲/○桐山和雄
0/1【ヴィオラートのアトリエ@ゲーム】
● アイゼル・ワイマール
1/1【灼眼のシャナ@小説】
○シャナ
 26/65

4 :
私は、どんな困難もたちどころに吹き飛ばしてしまう
秘密の呪文を知っている。
鏡の前に立ち、自分自身に向かって
こう唱えるんだ。
乙!!!

5 :
立て乙

6 :
スレ立て乙です
後藤、シャナ、田村玲子を投下します

7 :
支援

8 :
いいよ、来いよ!

9 :
支援

10 :

【side:炎髪灼眼の討ち手】
この世の『歩いて行けない隣』から現れた異形の者たち、『紅世の徒』。
はるか昔から人の側に居た、だが人ではない『紅世の徒』は世界そのものを歪めて生きる存在だった。
『紅世の徒』はこの世の根源的な力である『存在の力』を食らって生きる者たちだったのだ。
本来ならば世界そのものに還元されるはずの『存在の力』が消失することで、世界には大きな歪みが生じてしまう。
それを重大な問題として捉えた者と軽視した者に『紅世の徒』は別れ、やがてそれは対立することとなった。
同じ世界に生きる者が対立し、その間には深い溝が生まれ、やがて両者の関係は明確な敵対のそれへと変化してしまった。
『フレイムヘイズ』は、その敵対戦争のための道具であった。
傍若無人の限りを尽くした『紅世の徒』の被害に遭い、激しい憎悪を抱いた人間と契約する。
その結果、人は『紅世の徒』だけを殺し尽くす『フレイムヘイズ』へと変わってしまうのだ。
そして四百年ほど前、大きな戦争があった。
この世に在らざる存在である『紅世の徒』が、この世に在ろうとした戦争だった。
多くの紅世の徒が死に、同時に多くの『フレイムヘイズ』が討ち死にしていった。
新鮮な憎悪に溺れた新兵も、復讐を冷ました歴戦の勇士も、同じく死んでいった。
最強の勇者であった『炎髪灼眼の討ち手』もまた、その中の一人だった。
シャナという少女は、幼児の頃からその『炎髪灼眼の討ち手』を継ぐ者として育てられた。
『炎髪灼眼の討ち手』とは、その称号自体が力を持つ勇者の証だった。
この世の全てを圧倒し、ありとあらゆる事象を解へと導く天下無敵の存在。
その『炎髪灼眼の討ち手』であれと言われ、育てられた。
そんな『炎髪灼眼の討ち手』でありたいと思い、育ってきた。
「……」
その二代目・『炎髪灼眼の討ち手』は二匹の異常な生命が戦う姿を眺めていた。
歪な生命体であった、シャナの眼には存在そのものがぐにゃぐにゃな曖昧なように見えた。
その異常な外見から行われる動きもまた、この世の存在とは思えない奇抜な動きだった。
田村玲子は頭部を、後藤はその右腕と両の脚を変化させているのだ。
皮膚を変質させた刃で二合、三合と撃ちあう姿が見える。
物質的でひどく泥臭い、紅世の徒とは違う戦闘手段だ。
まさしく未知の存在だった。
紅世の徒とは違う、だがしかしシャナを殺し得る存在。
己の中にいる魔神とも呼ばれる強力な『紅世の王』、アラストールの力に振り回されるシャナでは万が一が起こるかもしれなかった。
「……行くに、決まってるじゃない」
この日初めて、シャナが理屈の外から動いた。
勝てると判断したわけではない、田村玲子を守ろうとしたわけでもない。
――――僅かにでも、一瞬だけだとしても、シャナは後藤に怖気づいてしまった。

11 :
支援

12 :
支援

13 :

その自分自身を否定するために、最強の存在としてあろうとするために動いたのだ。
『シャナ』という個人の本能が導き出した行動ではない。
『フレイムヘイズ』という存在の意義から導き出された行動だった。
怯えという感情は弱い心が生み出すものではなく、直感で気づいた力量の差を知らせるものだと知っていた。
それでも、シャナは『炎髪灼眼の討ち手』が引くことを許せなかったのだ。
「ハッ!」
裂帛の気合と共に人の常識を大きく超える跳躍みせると、シャナは自身の髪と瞳を炎で灼いていく。
紅に染まった炎髪灼眼。
それこそが彼女のトレードマークであり、同時に彼女の全てである。
「……誰だ」
「お前は……あの時の娘か」
一瞬の跳躍で二匹のパラサイトの中心へと現れたシャナへ、二匹のパラサイトから無機質な声と鋭い視線が浴びせられる。
それでいい、とシャナは心中で呟いた。
他者がシャナに浴びせられる感情など敵意だけでいい。
シャナが他者に向ける感情もまた敵意だけでいい。
シャナは短く息を吸い、自身の心を奮わせるとその名を口にした。
「私は、炎髪灼眼の討ち手。最強のフレイムヘイズ」
『贄殿遮那のフレイムヘイズ』も『シャナ』も、どちらも便宜上の名前だ。
彼女の本質は炎髪灼眼の討ち手であり、前の二つは先代との区別をつけるためだけの名に過ぎない。
彼女は炎髪灼眼の討ち手でなければならないのだ。
天下無敵の、存在に。
「お前たちを狩る者だ」

14 :


15 :
支援

16 :

【side:田村玲子】
「お前たちを狩る者だ」
防戦一方の中で全てを焼きつくす炎髪灼眼の少女が目の前に現れたことに対し、田村玲子は大きな動揺はなかった。
あのまま力押しされているよりはマシな状況だと判断したのだ。
それに、三つ巴なら三つ巴で、一対一の対決とはまた違う解答を導きだせばいい。
ケース・バイ・ケース。
むしろシャナという後藤の把握しきれていない存在が田村玲子にとってプラスに働くかもしれない。
さらに、シャナに関しても後藤という存在を知りえないだろう。
この場から『逃げる』ことに関しては、田村玲子はここで最も大きなアドバンテージを握っていた。
「炎髪、灼眼……」
火の粉を散らすシャナの姿を見つめた後藤の口が動いた。
炎を連想させるその姿に、僅かに全身の筋肉が波打っているように見える。
その姿はまさしく動揺した人間そのものであり、田村玲子にとっては意外の何者でもなかった。
「どうした、炎に思い入れでもあるのか?」
「なに?」
頭部を変換させた二股の刃を収めながら、田村玲子は後藤へと語りかける。
一部を除き、戦闘状態の頭部から普段の頭部へと姿を戻す。
シャナは口を閉ざし、田村玲子の言葉に耳を傾けた。
戦闘を有利に導く要素は、何気ないやりとりから導き出される。
後藤や田村玲子の在り方というものを、僅かな会話から嗅ぎ付けようとしていた。
本質というものは僅かな会話でも十分に察することができ、さらにその者の本質とは戦闘においても大きな影響を与えるものだった。
それは田村玲子も承知している。
後藤とシャナ、両者の単純な戦闘能力や交渉の容易さなどの様々な方面から思考をした上での選択だった。
田村玲子はシャナに後藤打倒のヒントを与えることが最善であると判断したのだ。
シャナと後藤の両者を視界に収めながら、田村玲子はさらに言葉を続けた。
「島田の事件を覚えているか、泉新一の通う高校で暴走した同胞の事件だ」
「……」
「我々は非常に繊細な生き物だ……予想外の刺激には過敏に反応してしまう。劇物を浴びた島田のように、な」
刺激物となる薬剤一つで、人の顔を維持することを難しくなる。
それどころか、自らの意思と行動を一致させることすら叶わないこともあるのだ。
パラサイトは皮膚そのものが思考の核となる、いわば全ての細胞がむき出しの脳細胞であるからこその弱点だった。
「劇薬ほどではないが……火傷でも我々には思考と運動の間に齟齬が生じてしまう」
ピクピクと後藤が持つ四つの目の周囲が青筋だつ。
その反応は心を持つ人間と同様に思え、田村玲子はどこか愉快な気持ちになった。
「火を使う相手に負けたか、後藤」
これはシャナに後藤を倒す手段を伝えると同時に、田村玲子の心に浮かんだ疑問を確かめるための問いかけであった。
それは田村玲子が常から抱いていた、パラサイトという種の根幹ともなる考えだった。
――――五体のパラサイトの意思が混ざり合う後藤でさえも、人間の感情に芽生え始めているのかもしれない。

17 :
支援

18 :

「……そうだ。俺は、火に炙られ、三木を切り取られ、為す術もなく敗走した」
田村玲子の言葉に全身を強ばらせた後藤は、ふと身体の力を抜きゆっくりと答えた。
シャナにとってはパラサイト特有の生気を感じない無機質な声ではある。
だが、同種である田村玲子は後藤の心に芽生え始めた『怒り』というものを感じとっていた。
そして、後藤はその怒りを抑えることすらも覚え始めている。
――――やはり、人に近づいているのだ。
「だからこそ、俺はもう一度手に入れる……勝利を、最強という座を。
 ……お前の領分である言葉のやり取りは終わりだ、これからは戦いで決めさせてもらう」
会話を打ち切り、後藤はその全身を波打たせる。
左腕、右脚、左脚。
その全てが脈動して弾けるような動きと共にシャナと田村玲子との距離を詰めた。
単純な体当たりだが、後藤のそれは十分に必殺に値する『技』であった。
体勢を低くしたその体当たりは、足元を掬うのではなく刃となった左腕で切り裂くためのもの。
後藤が最初に狙ったのは、小柄なシャナだった。
「ハッ!」
その後藤のタックルにシャナは前方へと駆け出すようにして膝蹴りを合わせた。
綺麗に入ったその膝蹴りは、しかし後藤を倒すには至らなかった。
脳を揺さぶることで十分にダメージを与えられる攻撃だが、脳を持たない後藤には通じない。
「……強いな」
シャナの膝蹴りに関し、後藤は誰に言うでもなくポツリと呟いた。
そして、シャナが視線を下ろし後藤の笑みを見た瞬間、背中へ悪寒が走った。
「ッ!?」
「気をつけろ」
シャナが回避行動を取るよりも早く、凄まじい強さで後ろへと吹き飛んだ。
後藤の攻撃による後退ではない。
頭部を腕のような形に変化させた田村玲子が、シャナの襟元を掴んでを強引に引っ張ったのだ。
「後藤に対して頭部と四肢へのダメージはあまり意味がない。
 首を切り落とすか、内臓器を潰すなければ一撃で仕留められんぞ」
後藤の左腕がシャナの元いた場所に襲いかかるのは、そのすぐ後だった。
一撃一撃が死に至らしめる攻撃だった。
「何も考えずに動いたわけじゃないッ!」
シャナが余計なお世話だと言わんばかりに声を荒げた。
現にシャナは回避行動への準備が出来ていたのだが、田村玲子はそれに気づかなかった。
それは余計なことをしてすまなかった、と田村玲子は抑揚のない声で言い放った。

19 :
支援

20 :


21 :
支援

22 :

「さて……どうする? やはり、私と後藤の二人を相手にするというか?」
「そうだ、お前たちは危険すぎる。
 私がここから脱出するためには、何も考えずに殺人を繰り返す奴は不穏分子以外の何者でもないわ」
本来ならば、シャナは田村玲子の排除は最優先ではなかった。
だが、それを伝えようとはしなかった。
そして、殺人を繰り返さなければ手は結べるということを仄めかす発言を続けた。
「そうか……なら、手を組もうじゃないか」
「……」
「これから私が人を殺さないのならば、私とお前が敵対する必要はないだろう?」
そのシャナの言葉の意味を汲み取った上での返答だった。
最優先とすべき事項は後藤の排除、それは初めから一致しているのだ。
そうわかった上で、シャナも田村玲子へと言葉を返した。
「私は別に人をなと言っているんじゃない……!」
「ほう?」
その言葉を口にした瞬間のシャナの脳裏に泉新一たちの顔がよぎる。
泉新一も、城戸真司も、杉下右京も、誰も彼もが人をなと言っていた。
彼らと同じ事を言うことに、妙な反発を覚えているからこその言葉だった。
「脱出したいから、人を『無作為に』なと言っているの……!
 そうよ、使える人間だけを生かしておけばいいのよッ!」
彼らを見下しながらも、泉新一の死に動揺した自分。
そんな感情を吹き飛ばすように、シャナは半ば叫ぶようにして言い放った。
だが、田村玲子は涼しい顔をしたまま、茜色に染まりつつある空を眺めた。
「まあいい……むっ、上から来るぞ、気をつけろ」
「ッ!?」
田村玲子がテレパシーで感じ取ったのは、木から木を飛び移る後藤の気配だった。
刃に変えた両脚を登山家がピッケルを埋め込むようにして、木と木の間を飛び移っているのだ。
ただのパラサイトではない、頭部だけでなく四肢すらもパラサイトである後藤だからこそ出来る移動方法だった。
「クッ!?」
上空から降り立ってくる後藤の攻撃をシャナは盾、ビルテクターを使って防いだ。
ただ受け止めるのではなく、僅かに角度をつけて受け流す。
刃と変化させていた後藤の脚部による攻撃は、ビルテクターによって防ぐことができた。
砕かれもせず、切り裂かれもしないビルテクターに驚愕の念を覚える。
自由落下に木々を蹴る加速をつけた後藤の攻撃を、砕かれることもなく切り裂かれることもなく耐えきったことに驚いたのだ。
「我々が会話している間に後藤は周囲の様子をうかがっていたようだ……三次元的な動きをしてくるぞ」
田村玲子とシャナが共闘相手というメリットを手に入れている間に、後藤は地の利というメリットを手に入れていた。
シャナはそのこと自体に驚きは抱いてないようだった。
そのぐらいのことは承知の上で長々と会話したいようだ。
メリットにデメリットはつきものであり、その都度の取捨選択こそが戦いなのだから。

23 :
支援

24 :

「私が前に出るわ、お前は援護をしなさい……アイツはお前を追ってるんだから、逃げようだなんて考えないでよ」
シャナはその言葉とともに弾けるような速さで後藤へと向かっていた。
了解した、とだけ答えると田村玲子は後藤へと向かって刃の触手を伸ばす。
二又のその刃は後藤へと襲いかかった。
だが、一瞬の隙を狙ったはずの攻撃はあっさりと防がれる。
続いてシャナがゲイボルグによる鋭い突きを放つが、それもまた後藤の左腕に防がられる。
しかし、防戦一方にしたことに意味があった。
シャナはゲイボルグから手を離すと、片手に持っていたビルテクターで思い切り殴りつけた。
左脚で田村玲子の攻撃を、左腕でシャナの突きを。
この二つを同時に防御せざるを得なかった後藤は、シャナのビルテクターを使った打撃によって地面へと引きずり降ろされる。
「中々やるな」
地へと引きずり下ろすことに成功したが、後藤は対して驚いていないように見える。
確かにこれで勝利したわけではない。
後藤と同じ目線に立ったとしても、隙を見せればすぐに元のように木々を移動していくだろう。
「援護を忘れないでよ!」
シャナはゲイボルグを拾い直すと、田村玲子にそう言い放つ。
そして、くるりくるりとゲイボルグの穂先が揺らしながら後藤と向きあった。
単調なゆったりとした動きを数秒繰り返されると、瞬時にゲイボルグの穂先が後藤の喉を襲う。
緩やかな円の動きから、急な線の動きを取る突き。
緩急の差によるこの不意打ちは回避不能の必殺の一突きだ。
それを後藤は、紙一重ではあるが、首を捻ることで回避した。
「……ほう」
硬化されているはずの後藤の皮膚が容易く切り裂かれた。
それはゲイボルグの武器としての性能もそうだが、シャナ個人のスペックもまた優れている証だった。
シャナは突きの早さもそうだが戻しもまた早い、そのため隙がない。
やはり、後藤もシャナも田村玲子よりも強い。
田村玲子は強さになど関心は持っていない。
田村玲子が感嘆の声を上げたのは、シャナが人の姿をしたまま後藤と渡り合っているからだ。
人間は十分にパラサイトと渡り合える。
そのことに大きな意味があったのだ。
人とパラサイト、田村玲子の中でこの二つが徐々に重なりつつ合った。
そう考えながらも、シャナへの援護を忘れない。
二対一であるが相手は油断ならない相手なのだから。
「……ふむ」
シャナも後藤の両者は一瞬の隙を逃さない強者だった。
田村玲子は二パターンの刃をひとつは攻撃、ひとつは防御と使い分けながら考えを深める。
彼女の一合目を撃ちあった瞬間から、ある考えがよぎっていた。
後藤は棒立ちのまま、左腕と左脚を巧みに操ってシャナと田村玲子の攻撃をしのいでいる。
それも、ある程度の余裕を持ったまま、だ。
ギリギリまで攻撃を引き付けることで僅かな動きだけで回避を可能としているのだ。
「……やはり、あの動き」
――――後藤もまた、変化している。

25 :
支援

26 :


27 :

人に近づくだけでなく、人のように成長しているのだ。
最適な四肢の使い方を学習し、かつ、その四肢の動きですら流れるような見事なものへと変わっていた。
脚の有効な使い方を覚えたように見える。
「フンッ!」
そう田村玲子が見抜いた瞬間、後藤は急激な伸縮運動でジャンプした。
そのような動きを感じ取られなかった。
あらゆる行動にはその前の準備行動が存在する。
後藤の先ほどの動きには、それが感じ取れなかった。
「皮膚の動きを偽って表面上の身体の動きを誤魔化したか……工夫を覚えたようだな」
人間に近づいているじゃないか、と嘲りに似た笑いとともに吐き捨てた。
どれもが極端に後藤の戦闘能力を飛躍させたわけではない。
現に先ほどの跳躍は、後藤の身体能力を考えると小さな跳躍だった。
言い捨ててしまえば、相手を翻弄するだけのただの小細工だ。
後藤本人も有効に活用していると言うよりも、それがどれほどの効果を持つか試しているように見えた。
しかし、そんな風に言ってみても、撃退に成功したわけではあるまい。
もう一度地面に引きずり降ろすことも出来ないわけではない。
だからこそ、こちらの精神的な疲労、プラス後の先を取るための潜伏行動だ。
決定打に欠ける戦いだった。
そのことを重々承知していた田村玲子はシャナに近づくなり声をかけた。
「火を持っていないか」
「何を、いきなりっ……」
火という言葉にシャナは動揺する。
田村玲子は揺れたシャナの語調に違和感を覚えながらも、言葉を続けた。
「火傷の経験はあるか」
「……あるわよ」
「先ほども言ったが我々は皮膚ひとつひとつが非常に繊細なのだ。
 個々の細胞それぞれが独立して生きていると言っても過言ではない。
 だからこそ、表面を炙り幾つかの細胞を死滅させるだけで後藤の動きを一時的に静止させることができる」
ライターでも何でもいい、火を起こすことが出来るものを持っていればそれだけで戦力になる。
田村玲子のように同時に複数の変化を起こせるパラサイトならば、一定量の分身を切り分ける事ができる。
顔半分ほどの大きさのそれは、田村玲子の分身であり自由自在に動かせるのだ。
だが、決め手が足りない。
そこに炎、もしくは刺激物があれば後藤の隙を作れると考えたのだ。
「私は、炎を扱えない……」
シャナの食いしばった歯から漏れた言葉は苦渋の色に塗れていた。
『紅世の徒』や『フレイムヘイズ』にとっての炎とは、『存在の力』の具現化である。
この世の根幹である『存在の力』は炎として現れる。
『自在法』と呼ばれる紅世に関係する人間が扱う、一種の魔法はその炎を利用して行われるのだ。
その中にはもちろん『存在の力』である炎を物質世界の炎として扱うものもある。

28 :
支援

29 :

――――だが、シャナは『フレイムヘイズ』ならば扱えるはずのその『自在法』が類を見ないほど下手くそだった。
契約を交わした魔神の強大さ故の扱いづらさ、フレイムヘイズとしての経歴の短さ、そもそもとしての自在師としての適性の低さ。
シャナが自在法と呼ばれる魔法のごとき技を扱えない理由は多く挙げられる。
仕方ない、と言ってしまえばそれまでだが、シャナはそのことは大きなコンプレックスともなっていた。
シャナが戦闘に用いる事ができるのは五体による肉弾戦のみ、異端の『フレイムヘイズ』とも言えた。
「そうか」
そんなシャナの、恥部とも呼べるコンプレックスの告白を聞きながらも、田村玲子は冷静に言葉を返した。
もとより、シャナが炎や薬物を持っていることに期待していたわけでもない。
シャナが協力的になっているだけでも十分すぎるほど状況が変わっているのだから。
「ならば、不確かではあるが私が後藤の脚を止めてみせる。その槍で後藤を殺せ」
「……簡単に言うわね」
「出来なければ逃げても構わん……後藤の狙いは一にも二にも私を取り込むことだからな。
 とにかく、ひとまずは後藤を引きつけてくれ」
「……簡単に、言うわね」
シャナは田村玲子への不満と自らへの鬱憤を吐き捨てるように同じ言葉を繰り返した。
『炎髪灼眼の討ち手』が逃げることなど出来るはずがない。
力量差に怖気づいて逃げた瞬間、それは『炎髪灼眼の討ち手』でなくなってしまう。
だが、それでもシャナの中には不安があった。
ゲイボルグとビルテクターは十分に強力な武器といえる。
だが、この二つはシャナが普段から使い慣れた武器ではない。
そここそが、シャナの不安の根源だった。
「これを使え」
「……?」
そんなシャナに田村玲子が差し出したものは窓ガラスの切れ端と一つのカードデッキだった。
窓ガラスの破片は展望台に水銀燈が現れた際に破壊した窓ガラスの残骸。
カードデッキを扱う際に必要になるだろうと思い、拝借してきたものだった。
「カードを鏡に移せばモンスターが現れる。
 本来ならば変身をして身体能力を向上させるのが一番だが、その僅かな隙も後藤は見逃さないだろう」
「……なぜ今まで使わなかったの?」
「後藤がその隙を見せなかったし、勝ちきる自信もなければ逃げ切れる保証もない……
 それに、変身して仮面をつけては私の最大のメリットが無くなる」
田村玲子は説明書とカードデッキを押し付けた。
その強引な行動にムッと顔をしかめるシャナは、しかし顔を暗くさせた。
今まで堂々としていたシャナとは思えない、沈んだ言葉が漏れだした。
「お前たちには、私をどう見える?」
炎髪灼眼の討ち手とは、それ自体が力のある称号『だった』。
ありとあらゆる敵と華麗に、壮絶に打ち砕く勇者の名前。
シャナはそうあれと育てられた。
なるのだと、育ってきたのだ。
だが、その自信が泉新一の死や後藤との苦戦を前にして揺るぎつつあった。
「……か弱いな」
「なっ……!」

30 :


31 :

田村玲子の言葉に、シャナは瞬時に頬を紅く染める。
だが、そんなシャナの様子を気にかけることもなく、田村玲子は言葉を続けた。
「腕をもがれただけで獣へと落ちる後藤も。
 たったひとつの意義に揺れるお前も。
 答えの出ない問いに固執し続ける私も」
――――なにもかもが、か弱い。
その言葉は自らに対する自嘲のようにも、『どこかの誰か』に対する羨望のようにも聞こえた。
「さて、強引に行くしかあるまい……私と後藤がパラサイトである限り、逃げられんからな」
そう言いながら、田村玲子は黙りこくったシャナを無視してかけ出した。
パラサイトはお互いが常にテレパシーのような物で引き合っている。
睡眠などの意識が沈んでいる例外でなければ、彼らは無意識的に呼び合っているのだ。
後藤が田村玲子をピンポイントで発見したのも、そのテレパシーに惹かれて訪れたからに過ぎない。
「そこだッ!」
田村玲子が動いた瞬間、後藤は左腕を伸ばして攻撃を仕掛けてきた。
単純な攻撃だが、速い。
田村玲子は苦心しながらも、自らの頭部を刃に変化させてなんとか防御をする。
「早くしろ!」
その悲鳴に似た言葉と同時に、シャナと同時に巨大な白鳥が現れた。
沈みつつある太陽を覆う、巨大な白鳥だった。
「ムッ……!?」
その白鳥の名は閃光の翼・ブランウイング。
怪鳥と呼ぶにはあまりにも美しく、美鳥と呼ぶにはあまりにも雄々しい鳥だった。
ブランウイングの姿を確認したと同時に、田村玲子は自らの後頭部を大幅に変化させる。
ボーリングの球ほどの大きさのそれは、意思を持った生き物として後藤へとゆっくりと近づいていく。
気付かれないように、ゆっくりと。
ブランウイングが大きく翼をはためかす。
木々が生い茂ったこの地では巨大なブランウイングに出来ることはそれぐらいだった。
だが、それだけで十分すぎるほどの突風が起きる。
後藤の素早い動きを封じることができる、効果的な攻撃だ。
「ハァッ!」
「ちィ!」
後藤はブランウイングの突風に踏ん張りながらシャナと刃を合わせる。
後藤の左腕とシャナのゲイボルグが何合も撃ちあうが、結果は出ない。
一進一退の攻防、どちらが倒れても不思議ではない。

32 :
支援

33 :

――――まだだ……隙が出来るまで……
ただ闇雲に突っ込めば、後藤は反応する。
自由自在に四肢を操り、獣の如く鋭敏になった後藤に生半可な不意打ちは危険だ。
「ぐっ……」
後藤はブランウイングの突風を耐えながら、瞬時にシャナとの距離を詰める。
そして、左脚の膝を刃に変えて膝蹴りを行う。
鋭さを持ったその膝蹴りは、ビルテクター越しにも関わらずシャナの小柄な身体を吹き飛ばした。
そして、シャナとの距離を詰めて追撃を行う。
シャナは後ずさるが、大きな回避行動を見せない。
出来ない、のであろうか?
「粘ったが、ここまでだ」
違う、田村玲子にはこのシャナの行動が演技のように見えた。
シャナは田村玲子の策のために、自身が死なない程度に後藤の隙を作ろうとしているのだ。
後藤に隙が生まれる瞬間は田村玲子は理解しているのだ。
そして、シャナもまたそれを感じ取っていたようだ。
生き物の本能と後藤の性格を考えると、大きく分けて二つだ。
後藤が槍の直撃を受けた瞬間、もしくは――――
「」
――――シャナを瞬間。
「今だ!」
田村玲子の言葉と共に、ブランウイングの突風が止む。
シャナが田村玲子の行動を嗅ぎ取り、その行動を束縛をせまいと判断したのだ。
弾けるような動きで田村玲子の分身である肉片が後藤の背中へと飛び乗った。
「これで……ッ!?」
己以外の三体のパラサイトを支配する後藤の頭部は非常に繊細な働きをしている。
そこに隙がある。
田村玲子としての意思を持った肉片が飛び込めば、後藤の動きを邪魔することができる。
その隙を、シャナに突かせるという作戦だった。

34 :
支援

35 :

「……!?」
だが、それは瞬時に間違いであったと気づいた。
後藤の体内へと侵入した瞬間に、あまりにも強大な意思に田村玲子は飲み込まれた。
それは、あまりにも大きな強さへの渇望。
「はっ!」
その瞬間、後藤は田村玲子の右脚へと向かって刃が飛ぶ。
虚を疲れた田村玲子は防御できずに、綺麗に切り取られた。
血が勢い良く溢れ出る中で、田村玲子はようやく理解した。
――――田村玲子であった肉片は、後藤という生き物の肉と変化してしまった。
そう、後藤自身が選んで『取り込んだ』のではなく田村玲子に『取り込まされた』ものを支配しきった。
それは予想だにしないことであった。
体内に忍び込み内側から破壊しようとした田村玲子の分身を、逆に支配してしまったのだ。
あるいは、全身に火傷を負うなどして共生するパラサイト支配が困難であったならば結果は違ったかもしれない。
「……やはり決め手は搦め手か。『お前らしい』な、田村玲子」
田村玲子の刃は後藤に取り込まれ、右腕が再生された。
二の腕ほどしかない右腕であるが、確かに後藤の身体となっていた。
田村玲子の肉体ではなく、後藤の肉体となったのだ。
田村玲子だけでなくシャナもまた策を潰されたことを知り、一瞬ではあるが動揺が走る。
その僅かな動揺を後藤は見逃さなかった。
後藤の左腕が鞭のようにしなり、シャナへと襲いかかる。
ハッとした様子でシャナはゲイボルグを捨てて両手で構える。
重いその攻撃をなんとか耐えたシャナは、同時にその鞭が盾の内側へと回りこんでくることに気づいた。
打撃ではなく斬撃、それも巻きつくようにしてビルテクターを持つ手を狙った攻撃だった。
固く握りしめた両手から瞬時に力を抜き、ゲイボルグと同じようにビルテクターが地面に転がる。
皮一枚を切り捨てたその攻撃は、不発に終わった。
「終わりだ」
だが、それはあくまで『繋ぎ』の攻撃だ。
シャナから頑強な盾を外させるための攻撃にすぎない。
――――本命はその後に来る膝蹴り。
水月に向かって、鋭い打撃が突き刺さる。
トラックに衝突した子猫のように、空中でを二転三転して吹き飛ばされる。
そのシャナの肉体を受け止めたのは木々の群れだった。
「ガアアッ!」
一際大きな大木に打ち付けられたシャナは肺の中の空気を吐き出し、地面に這いつくばる。
生まれたての子鹿のごとく、手足をプルプルと震わせていた。

36 :


37 :

「ッ……クゥ……!」
「逃げろッ!」
うずくまるシャナに向かって出た言葉は、とてもパラサイトとは思えない言葉だった。
相手をかばう、思いやりの言葉だ。
「逃げ、る……?」
「いいぞ」
シャナが田村玲子から投げかけられたその言葉を反芻すると、後藤はなんでもないように言い放った。
「見逃してやる、お前に固執する理由は今はない。
 ……田村玲子が出血過多で死んでしまう前に、全てを取り込む必要があるからな」
格付けの言葉だった。
後藤が見逃しシャナが見逃される、すなわち後藤が上でシャナが下であった。
シャナは、地面に転がったゲイボルグとビルテクターを拾うと背中を向けていった。
敗走する『炎髪灼眼の討ち手』の背中を眺めながら、後藤は右脚を切り落とされた田村玲子へと視線を落とした。
「俺の想像通りお前は強かった……だが、お前も終わりだな」
この生物の頭の中には戦闘だけしかないようだった。
同種である田村玲子を殺したことも、戦いに勝ったという感想しか抱いてないようだ。
「……お前が探し続けていた、我々の存在意義とやらはわからん。
 だが、それでも俺にはやはり戦いこそがその意義なのだろう。
 戦いを求めるからこそ、俺はお前の言うとおり強くなったのだ」
「だろうな」
淡々とした言葉のやり取りだったが、そこには確かに会話があった。
田村玲子にはそれが妙におかしかった。
「……だがな、後藤。やはり、私もお前も……何もかも全てがか弱いよ。
 吹けば飛ぶような、呆気ない存在だ……」
「ほう」
後藤が声を上げたのは田村玲子の言葉に動揺したからではなく、田村玲子が自然な笑みを浮かべたからであった。
その表情はまさしく、人間そのものだった。
「後藤……排他的なお前ですら、弱者という他者を必要としている……強さを渇望し変化している。
 ……我々と、人間……どこが違う」
人が何かを求めるように、田村玲子は答えを求めて後藤は強さを求めた。
そして、この場で田村玲子はその鍵となるものを見つけたような気がした。
――――お前さん達の頭が良いのは、人間とこうして話をする為……って思いてぇじゃねぇか。
人に寄生することで、人に死を教えるために生まれてきた。
パラサイトは死を理解するために、存在の意味を理解するために生きている。
人もパラサイトも、誰もがか弱く他者を必要としていた。
シャナを逃げろと言い放ったのもまた、依存の形の一つなのかもしれない。

38 :
支援

39 :

「これが、死か……なぜ、気づかなかったのだろうな……」
四肢が切り取られ、寄生先である篠崎咲世子の身体からの血液が失われていく。
死とともに襲い掛かる圧倒的な孤独に、田村玲子は一つのことがわかった。
田村玲子の側には常に生命があったことを。
この世の全てが生きていることを、細胞のひとつひとつが鼓動していたことを。
この世に、一つのものなどなにもないことを。
言葉だけの理論ではなく、その意味を理解できた。
「だが、それでも……わからないことはある……」
田村玲子の疑問が晴れることはなかった。
会話をするために、人と生きるために生まれてきた。
それはあまりにもおおまかな答えだ。
細部には、多くの疑問が残っているし、同時に多くの疑問も新たに生まれてしまった。
命の脈動を感じたからこそ、その命の必然性を知りたかった。
――――命はどこから現れ、どこへ消えて行くのか。
彼女の頭に響く命令と、それは関係があるのか。
「俺にはお前の考えることが分からん……だが、分かる必要もない。
 それは戦いには必要のないものだ」
左腕が硬質化されていき、日本刀を思わせる薄く鋭い刃へと姿を変えていく。
その刀で彼女の首を切り取ると同時に右腕に接合を行う。
難しい工程ではあるが、それを可能と出来る力が後藤にはあった。
その姿を見て、田村玲子は自然と頬を緩んでいた。
「……夕焼けか」
後藤の背中の奥に、夕焼けが見えた。
田村玲子にはついぞ理解できなかった、咲世子の脳裏に過ぎった滅びた日本の夕焼けを思い出した。
今ならば、少しはわかるかもしれない。
夕焼けは夕焼けにすぎない。
だが、この瞬間の夕焼けはこの瞬間にしかないものなのだ。
咲世子にとってあの夕焼けこそが、重大な意味を持つものだった。
彼女が生まれた国が死んだ瞬間に見た、最後の夕焼けだった。
彼女を支えていた、彼女が支えていたものが壊れた瞬間だったのだ。
「やはり、我々は……寄り添い、生きる獣……」
後藤の刃が田村玲子の首を跳ね飛ばした。
【田村玲子@寄生獣 死亡】

40 :


41 :
支援

42 :

【side:五頭】
強烈な自我を持って、田村玲子の意思を握りつぶす。
後藤の身体は後藤の支配力を持って、成り立ってている
田村玲子と言えども、死の淵を体験した後に取り込まれては為す術もなかった。
「……」
後藤はゆっくりとした挙動で右腕を振り回す。
一本一本指を動かしながら、命令と動作の間に齟齬がないかを確認しているのだ。
動くことを確認すると、次は変化の確認を行う。
まずは日本刀のような薄く鋭い刃へと変化させ、次はハンマーのように厚く硬い腕へと変化させる。
――――全て、問題ない。
そのことを気づくと、後藤の顔には自然と笑みが張り付いていた。
「これで俺は戻れる……最強に……」
後藤は志々雄真実に勝つその瞬間まで、永遠に敗者のままだ。
どれだけ戦闘を行なっても、どれだけ強いと認めたものを負かしても同じだった。
後藤は敗者のままなのだ。
「俺は力を取り戻した……もう、誰にも負けはしない!」
獣の咆哮が夜を呼ぼうとしていた。
人の言葉によく似た、獣の咆哮だった。
【一日目夕方/D−6 森林部】
【後藤@寄生獣】
[装備]無し
[支給品]支給品一式×3(食料以外)、前原圭一のメモ@ひぐらしのなく頃に、不明支給品0〜1、カツラ@TRICK、カードキー、知り合い順名簿
    三村信史特性爆弾セット(滑車、タコ糸、ガムテープ、ゴミ袋、ボイスコンバーター、ロープ三百メートル)@バトルロワイアル
[状態]疲労(中)、左腕(三木)欠損、ダメージ(小)
[思考・行動]
1:会場内を徘徊し、志々雄真実を。
2:強い奴とは戦いたい。
[備考]
※後藤は腕を振るう速度が若干、足を硬質化させて走った際の速度が大幅に制限されています。

43 :
支援

44 :

【side:?】
合理的な判断の末の撤退ではなかった。
確かに、田村玲子が死に右腕を取り戻した後藤と戦っても勝ちの目は薄かった。
致死ではないとはいえ、ダメージを負ったこの身で戦うのは愚策だ。
だからこその仕切り直し、そう言えば聞こえがいいかもしれない。
だが、そうではなかった。
「逃げ……逃げちゃ……!」
その言葉を口にすることは、シャナにとって血を流すようなものだった。
後藤への、死への恐怖を前にして、田村玲子の逃げろという言葉にすがってしまった。
自らの意思ではない言葉に寄りすがってしまった。
田村玲子の荷物を持っていることもまた、シャナを一層に惨めな想いにさせた。
「逃げ……ゥッ!」
生命を燃やして生きていた。
なににでもなれる可能性を捨ててでも、その存在に成りたかった。
何もなかった己に意味を持たせてくれた人たち。
彼らが求めていたものに彼女はなりたかった。
――――大好きな人たちが求めていた、炎髪灼眼の討ち手に。
「私は……『炎髪灼眼の討ち手』じゃない……」
初めての敗走の中で突きつけられたものは、むき出しとなった自分だった。
【一日目夕方/D−6 森林部】
【シャナ@灼眼のシャナ】
[装備]:ゲイボルグ@真・女神転生if...、ビルテクター@仮面ライダーBLACK
[支給品]:基本支給品(水を一本消費)、首輪(剣心)、カードキー、ファムのデッキ
[状態]:ダメージ(大)、力と運が上昇、激しい苛立ち、敗北への惨めな想い
[思考・行動]
0:とにかくこの場から離れる。
1:首輪を解除できる人間とコキュートスを探す。首輪解除が無理なら殺し合いに乗る。
2:首輪解除の邪魔になるような危険人物には容赦しない。
3:市街部に行く。
4:真司に対する苛立ち。彼が戦いを望まなくなった時に。
5:主催者について知っている参加者がいれば情報を集める。
※ファムのデッキを除く田村玲子の所持していた支給品が放置されています。

45 :


46 :
投下終了です
タイトルは 寄り添い生きる獣たち です
矛盾、誤字脱字等があればご指摘お願いします。

47 :
 

48 :
 

49 :
投下乙です。やべえよ……後藤が五頭にもどっちまったよ……
そして玲子さんに合掌……シャナとのやり取りが何かお姉さんみたいで和ませてもらった
シャナはここにきて一気に人間臭くなったな、これは今後に期待できるかも

50 :
とりあえず投下乙!
もう一回しっかりと読んでから書きたいので、感想は明日に書きます

51 :
>殴り合い
ok
オツムいい方々
,,タタかっ,,
て頂き得ませんかィhttp://twtr.jp/user/gtjwmdgquxaaajt/status?guid=ON漱捧ャ

52 :
投下乙!!
玲子おおおおおおおおおおおお!!!!
うわあ、喪失感が半端なくて言葉にならない…ルパンを追うかたちになっちゃったな…
咲世子の夕焼けの話、まさか夕方パートのここでくるとは…!!
夕焼けにしろルパンとの会話にしろ、今までの積み重ねの集大成になったなー
玲子さんって実はロワ開始から死亡までで一番成長した参加者なんじゃないだろうか
最後はどこに行き着くんだろう、ってずっと気になってたけど、凄く綺麗な最後でよかった
対するシャナはこれからだなー
後藤はクーガーとのフラグがあるけど、これもどうなるか楽しみだ
しかし対主催に傾いてた玲子が死亡、シャナは精神フルボッコ、後藤は完全体って…対主催ェ…wwww
戦闘も読み応えがあって凄く面白かったです、改めて乙!!!
それからミスかな、と思う点をいくつか
>>10
>田村玲子は頭部を、後藤はその右腕と両の脚を変化させているのだ。
この時点では左腕では
>>24
>シャナも後藤の両者は一瞬の隙を逃さない強者だった。
シャナ「と」?
>>31
>その悲鳴に似た言葉と同時に、シャナと同時に巨大な白鳥が現れた。
同時にの重複
>>35
>その瞬間、後藤は田村玲子の右脚へと向かって刃が飛ぶ。
刃を飛ばす、でしょうか
>>42
後藤の身体は後藤の支配力を持って、成り立ってている
「て」が二つに

53 :
>>52
ご指摘ありがとうございます
すでにwiki収録されていただいているようなので、編集で修正させて頂きます
収録して下さった方もありがとうございます

54 :
おう、AAでも狭間いじめるのやめたれ
明日の10時からファミリー劇場で龍騎の49話〜最終話やるから、映る人は見て、どうぞ

55 :
ここまで真司が生きてるのが少し意外

56 :
狭間といいシャナといい精神ボッコだね
ボスクラスのマーダーが元気なのが厳しいね
対主催w

57 :
投下乙!
読みなおしてきた、明日と言ったのに明後日になってしまって申し訳ない!
ルパンに続いて、田村さんも死んじゃったか……
後藤相手にかなり善戦してたけど、最後の最後で策に溺れたっていうのかな
最後の「これが、死か」って原作もミギーが死ぬ時の台詞だけど、今度は田村さんが言う形になったか
>>52の人も言ってるけど、参加者の中で一番成長した気がする
やっぱり◆EboujAWlRA氏の書く後藤は恐ろしい、投下乙でした

58 :
四月と五月に起きたこと
・ルパン・月チーム解散
・警察署崩壊、蒼星石・こなた・右京・かなみ死亡
・ラプラスの魔登場、主催陣営の目的の一端が見えた?
・ロワ公式HPの発見、首輪の解除方法が判明
・光太郎死亡
・ルパン死亡
・五ェ門・詩音・蒼嶋死亡、北岡がデッキを取り戻す
・参加者の拉致方法判明、狭間の対主催化フラグ
・玲子死亡、後藤完全体復活
濃い二ヶ月だった…

59 :
光太郎をはじめとした
有力対主催が次々に死亡して後藤復活ってw

60 :
っていうかひょっとしてもうすぐ放送行けたりする?
第二回放送があってから半年も経ってないよね?

61 :
ageてしまった、ごめんなさいorz

62 :
全員を夕方まで進めるならあと5〜7話ぐらいで放送に行けるな

63 :
★多ジャンルバトルロワイアルの書き手氏に御連絡
したらば議論スレに、御連絡事項を書き込ませて戴きました。
今後書き手として参加される御予定をお持ちの方は御返事をお願い致します。

64 :
>>58
一年分くらいの密度あったよな、二ヶ月で10人死亡とかぱねぇ

65 :
銀様は外僕を探してるけど
マーダーだらけで利用できそうな参加者いないw

66 :
それでも頭脳、戦闘共にそれなりの奴が配下にいるし、割りと順風満帆な気もするけどねぇ

67 :
影月や縁や後籐だと問答無用で
襲い掛かってくるだろうな

68 :
予約キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!

69 :
狭間の対主催って
そんなに影響でかいか

70 :
マーダーになってたかもしれない奴が対主催になったってのは大きいんじゃね?

71 :
狭間と織田様は死亡者スレで仲良くなりそうな気がする

72 :
全然本気シーンがないからわからないけど、
シャドームーンにはボコボコにされたとはいえそれなりの強マーダーと渡り合う蒼嶋よりかなり強いはずだからなあ
自由の女神スタイルになれればかなりの戦力にはなるはず

73 :
この狭間はレイコルートだから一番強い
狭間なのか

74 :
数時間前にアニロワ2の死者スレを途中まで読んだんだけど、つかさとジェレミアが会話してるシーン見てたらここのロワ思い出して変な気分になった

75 :
>>74
バルサミコスー
ここのロワでこうなったのは主にルルーシュのせい

76 :
浅倉「これも全部ルルーシュ・ランペルージって奴のせいなんだ」
北岡「なんだって、それは本当かい!?」

77 :
レナとつかさが会話してるシーンはニコロワをおもいだしたなw
この2人、ニコじゃ最終決戦まで一緒に生存してたから
…あのロワは2人とも途中でぶっ壊れてたけど

78 :
ふと思ったけど、もう今回の予約が投下されたら放送かな?
もう無理に夕方までもっていかなきゃならないほど状況逼迫したキャラいないし

79 :
夕方まで行ってないのは銀と月、ヴァンとC.C.、桐山、シャドームーン、縁かな
動きがないまま放送に入ると話の流れがどうしてもおかしくなるってメンツじゃないね
あ、もちろん予約入れるなって言ってるわけじゃなく、むしろ新規さん既存の書き手氏でも予約を入れてもいいんですよ……?(チラッ

80 :
>>75
つかさの学習能力の無さにもうんざりしたがな…しかもコイツこんなKYなのかよ…
まあまだ盾になるヤツが残ってるみたいだけど

81 :
狭間ってツンデレキャラになりそう

82 :
らきすたの高校って割りといい人ばっかりだね
狭間も善人が多い高校に入学すれば良かったのに

83 :
つかさが鬱陶しいって意見が出るとは思わなかったな……
>>82
狭間の問題は高校以前からじゃないかな
軽子坂高校に隠れファン多かったし、純粋に凄いって言ってる奴もいたから、狭間の付き合い方次第では普通に友達できたと思う
中学以前からもいじめられてたっぽいし、とっくに狭間が人付き合いを諦めてたから無理だとは思うけど……

84 :
CCО様と遭遇した場合の狭間のメンタルが心配w
CCО様は狭間を部下に欲しがるだろうけど

85 :
能力的には欲しいだろうけど狭間は組織を乱す孤高の存在だろうし部下にはいらないんじゃね?

86 :
悟史って気軽に頭撫でる癖があるけど
おっとり王子様タイプのイケメンだから許されるよね
織田様が同じことやったらスタンガンで気絶させられそう

87 :
どうせなら天才でイケメンでいろんな器が大きい上田先生に頭を撫でられたい

88 :
公式でイケメン設定のある悟史と公式でブサメン設定のある織田様を比べるのはやめてやれよ
>>87
邪魔です、上田さん

89 :
◆KKid85tGwY氏が規制中とのことなので、代理投下します

90 :
支援

91 :
森の中を脇目も振らずに走り抜けていく。
周囲への警戒は怠らないが、最も優先すべきは速度を落とさないこと。
足が泥で汚れるのも、服が小枝で傷つくのも厭わない。
何しろ今のシャナは逃走しているのだから。
如何なる困難をも克服する『フレイムヘイズ』だったはずだ。
何者をも恐れぬ『炎髪灼眼の討ち手』だったはずだ。
それが今やたった一体の敵、後藤に為す術も無く敗走している。
そのことがシャナを苛んでいた。
扱い慣れた得物である贄殿遮那が在れば事情も違っていた。
しかし今のシャナが有する武器は、未だに慣れぬ長槍。
ダメージを負った状態で後藤を相手にするには、余りに不相応だった。
田村玲子から渡された、変身することがカードデッキも在るには在る。
シャナは森の中を逃げながら、共に渡された説明書を読んでいた。
強固な装甲。身体能力の向上。多彩な特殊能力。変身をすればそれだけの物を得られるそうだ。
あるいはそれを使えば、今からでも後藤を倒すことが可能かもしれない。
しかしあくまでそれは説明書に拠る知識。
実際にどれほどの効果を発揮するかは判断できない。
そんな不確かな物に頼って、後藤と戦うのはリスクが大き過ぎた。
(……そう言えば、あいつも同じようなカードデッキで変身していた)
思い出されるのは先刻に戦った城戸真司の姿。
確か真司も色違いだったが同じようなカードデッキを使って変身していた。
おそらく真司は只の人間に過ぎない。
それが変身に拠ってフレイムヘイズに匹敵するほどの力を得ていた。
しかし問題になるのは、それがライダーの力が“付加”されるのか、それともライダーの力へ“更新”されるのかだ。
シャナにライダーの力が“付加”されて上乗せされるのなら、これほど心強いことは無い。
しかしライダーの力へ“更新”されて上書きされるだけなら、シャナにとって利はほとんど存在しないと考えられる。
いずれにしろリスクが大きいことに変わりは無かった。
シャナはそこまで思考して、自分の計算の矮小さに嫌気が差す。
この世の全てを圧倒し、ありとあらゆる事象を解へと導く天下無敵の存在。
自分はそんな『炎髪灼眼の討ち手』ではなかったのか?
しかしそんな『炎髪灼眼の討ち手』は、実はどこにも居なかった。
居たのは存在の力すら使用できない只の生物にも敵わなかった『シャナ』。
『炎髪灼眼の討ち手』と比べて、なんと矮小な存在だろう。
(……………………参加者の減り方から見ても、後藤並に強い敵が他にも存在する可能性がある。
実戦でカードデッキの性能を試して、必要ならもっと強力な武器を調達する必要があるわね……)
しかしそれでシャナの何が変わる訳でもない。
使命を果たすため合理的に知恵を尽くし、その身体が動く限り力を尽くすように教育された『フレイムヘイズ』。
『炎髪灼眼の討ち手』としての自信を失った、
否、『炎髪灼眼の討ち手』としての自信など実は砂上の楼閣に過ぎなかったと思い知ったところで、
そうあるために教育されて、そうあるために生きてきた過去が無くなる訳でもない。
一刻も早く討滅の使命を果たすために力を尽くす。
それが変わらないシャナの在り方だ。
シャナは相変わらず力強く走り抜けていく。
その瞳に冷たい闇が宿る。
最早シャナの中に『炎髪灼眼の討ち手』の自負は無い。
それでも幼い頃から身に付けた使命だけで突き動く。
そんなシャナの赤々と灼に輝くはずの瞳には、機械のような冷たさが宿っていた。
(……市街部に出たわね)
フレイムヘイズの脚力で走っていたシャナは、いつの間にか建造物とコンクリートで囲まれた市街地にたどり着いていた。

92 :
ここまで来れば、後藤を撒けたと見て良いだろう。
速度を落として市街地を進むシャナ。
歩きながら自分の身体の調子を窺う。
フレイムヘイズは生物の常識を超えた回復力を持っている。
それは全力疾走中でも発揮され、後藤から受けたダメージは既に大方を回復していた。
元々衝撃が内臓まで届いていたため、ダメージとしては大きかったが、
回復が困難な負傷をしていた訳ではない。
これならば戦闘になっても、対応は可能だ。
それを確認すると同時にエンジン音が聞こえて来た。
無人の街にエンジン音が鳴っているのだから、音の主は当然殺し合いの参加者である。
しかし聞こえてくるのは、フレイムヘイズの聴覚にもやっと届くほどの遠距離から。
そう考えていたらエンジン音が急激に大きくなって来た。
接近して来る。
シャナがそう認識した時には、スクーターに跨った男が姿を現した。
シャナの意表をすら衝く、凄まじい速さで急接近して来たスクーターは、
目前でターンして急停止を行った。
ゲイボルグを握る手に僅かだが力を込める。
しかしスクーターの男は、シャナの威圧感や緊張感などお構いなしに、
にこやかな――しかしどこかぎこちない――笑顔を浮かべ話しかけて来た。
「オー! ジャマジャマー!」
シャナの重厚な沈黙と凍るような冷たい視線。
震え上がりそうなシャナの険を前に対して、それでもスクーターの男はにこやかな表情を崩さない。
「これ今、市街で流行ってるんですよ! つまらないですか? 寒いですか? 引きましたか? 痛かったですか?
おっと、申し遅れましたお嬢さん! 私の名前はストレイト・クーガー!! 最速の……」
「首輪の解除方法に心当たりは無い?」
畳み掛けるようなクーガーの言葉を、鋭い語気で早急に遮る。
クーガーの目的をシャナは掴みかねていた。
ただ、油断を誘っている可能性も在る。
警戒の念を緩めないまま、クーガーの調子に付き合わず、
自分の用件を端的に伝える。

93 :
支援

94 :

「いやいや、つれないお嬢さんだなぁ。私は名乗ったんですから、まずお嬢さんの名前から教えていただきませんか?」
「シャナ」
「これは可愛らしいお嬢さんにぴったりな可愛らしい名前だ! いや、シャアさんがつれなくするのも仕方ないことかも知れません。
何しろ私とシャアさんでは些か年齢が離れている。お付き合いをするには勇気が出ないのも無理は無い。
しかし私は年齢・人種・国籍その他あらゆる個人情報の如何に関わらずあらゆる女性に対して紳士的に……」
「名前はシャナよ。早く質問に答えて」
「本当につれないなぁ……。残念ながら私の速さでも、首輪を外す方法にはまだ辿り着けていません。
しかーし!! それは俺の速さが足りないのか!? 俺がスロウリィなのか!!?
いいや、違うね! 私がそれを目的地と定めれば、地球上の誰より速くそこへ辿り着く!!
何故なら俺は最速の男…………おーっと、一人歩きは危ないですよシャアさん」
「うるさい!!」
独りで喋り続けるクーガーを放置して、シャナは立ち去ろうとする。
クーガーは尋常ではない俊足で、即座にシャナの隣まで追い縋った。
口うるさく、名前も間違えるクーガーのお陰で、シャナは後藤との敗戦のために忘れていた苛立ちがぶり返して来ていた。
それでも後藤との戦いの影響で精神的に消耗していたことと、
無闇に敵を作りたくないと言う思考から、クーガーになるべく構わないように心掛けていた。
そうでなければ、とっくに手を出していただろう。
しかしその忍耐は早くも限界を迎えた。
クーガーの顔面に裏拳を打ち出す。
しかし拳はあえなく空を切った。
「!?」
「ハッハッハ!! シャアさんは鋭いツッコミをするなぁ。でも私には構いませんが、他の方にする時は加減をした方が良い」
目標を外した。と、シャナが錯覚しそうな程の速さでクーガーが回避していた。
クーガーの異常な速度に驚きながらも、それを押し隠し、
冷たい視線とゲイボルグの切っ先をクーガーに向ける。
「……次に名前を間違えたら、から」
「それは失礼。ところで今度はこちらから質問しますが、後藤とか言う化け物に心当たりはありませんか?」
「…………さっき会った所よ」
今度はクーガーの目が鋭く光る。

95 :
後藤と何か因縁が有ったのだろう。
あの後藤のことだから、誰から恨まれてもおかしくは無い。
「そいつは何処に居るんですか!?」と、ごちゃごちゃと口うるさく聞いて来るクーガーに目もくれず、
シャナは自分が来た方向、背後の北西を指した。
後藤に敗北した経緯にはなるべく触れたくは無かったので、無言で教えたのだ。
「それでは、名残惜しいですがここで失礼します! なぁに、寂しがることはありません!
俺の速さなら後藤を倒した後に幾らでもデートをする時間を作れます! それではまた、お会いしましょ……」
「後藤と戦うつもりなの?」
「話を最後まで聞かない人だ……」
「お前が余計な話が多いのよ。質問に答えて」
「…………あいつとは、付けなきゃならない決着があるんでね」
クーガーは柄にも無く神妙に語る。
そこからは、並ならぬ意思で後藤に立ち向かおうとしているのが伺えた。
クーガーはかなりの強さを持っているのも伺える。
それでも、後藤相手にどれだけ戦えるかというと些か心許ない。
何故ならクーガーは明らかに不調であった。
「お前は手負いみたいだけど」
「なるほど。確かにシャアさんの仰るとおり、俺は怪我をしている! それも一つや二つでは無い! 文字通り満身創痍といっていいでしょう!!
しかし、But、その代わり! それを補って余りある速さが有る!! 速さは万能!! 速さはいかなる不利も補って……」
「だからうるさい!!」
クーガーの言動や様子から察して、おそらく後藤の強さを知っている。
その上で後藤を語る時は余裕が見られなかったことからも、勝算が薄いと考えているのだろう。
このままクーガー一人に後藤と戦わせれば、返り討ちに遭う公算のほうが大きい。
シャナにとってはクーガーが死のうが構わない。
しかしシャナも共に戦えば、あるいは危険な存在である後藤を排除できるかも知れない。
(駄目だ。まだリスクが大きすぎる)
一瞬脳裏に浮かんだ戦術を、やはり否定する。
クーガーの戦力は未知数の部分が多い上に、そもそもそこまで信用に置けるかどうかも不明。
カードデッキの性能も試していない状態で後藤に挑むのは、やはりリスクが大き過ぎた。
しかし問題はクーガーが一人後藤に殺されれば、その首輪も支給品も回収できなくなる。
更に今の状況は考えように拠っては、今の状況はカードデッキの性能試験には最適と言えた。
ついでに言えば、クーガーは警告を無視して――
「名前を間違えたら――そういった筈」
――故意にシャナの名前を間違えていた。
シャナの髪が炎のごとく紅く染まる。
瞳にも紅き炎が――そしてその奥には更に冷たい闇が――が宿る。
フレイムヘイズたるシャナが、クーガーを殺し首輪と支給品を回収するための戦闘態勢。
さすがのクーガーも、シャナの変化を前にして驚きを隠せない。
戦闘巧者であろうクーガーが僅かに見せた隙。
その間にシャナはデイパックからカードデッキを取り出そうとする。
しかしその手は聞き覚えの有る声に拠って止められた。
この地において、因縁の糸はシャナをも絡め取る。
「おめーはチビ人間!! こんな所に居やがったですか!」
シャナとクーガーはお互いを警戒しながら、声の方を見る。

96 :
そこには独りでに動く人形と、青年が居た。
「シャナ……」
「翠星石と……ライダー」
人形はかつてシャナが殺そうとした翠星石。
青年はシャナにとって因縁の相手――城戸真司。
「シャナ、お前何をやっていたんだ!?」
睨み付ける翠星石と、威嚇するように詰問してくる真司。
新一は死んだと言うのに、どうやら二人とも相変わらずらしい。
ならばシャナの出方も当然変わらない。
シャナはあくまで合理的に行動している。
理屈が通じないのは真司や翠星石の方なのだ。
「首輪のサンプル」
いつか新一にしたのと同じ返答。
必要以上に険の有る語気になったのは、真司を見て苛立ちが更に増していたため。
「シャナ……お前はまだそんなことを言ってるのか」
怒り心頭かと思ったが、真司は意外なほど落ち着いた様子だ。
そして赤いカードデッキを取り出した。
どうやら、これまでの経緯から真司にも変化があったらしい。
だから下手に血気に逸ることも無いのだろう。
最も、それでシャナとの戦いを望まなくなった訳では無い。
むしろシャナに敵意を向けカードデッキを取り出した今の真司からは、
先ほどのクーガーのごとく強い決意を感じる。
シャナとしては真司が戦いを望むのなら、戦いを避ける手筈だった。
しかし今となっては、何故か真司を避ける気分にはなれなかった。
あるいは後藤から逃げ出したことが引っ掛かっていて、もうこれ以上敵前逃亡はしたくないのかも知れない。
真司を避けることは、恐怖から逃げ出すこととは事情が違う。
それでも、これ以上他者に影響を受けて自分の行動を左右されるのは厭だった。
特に真司を避けるのは。

97 :
支援

98 :
シャナと真司の敵意がぶつかり合う。
人の命を路傍の石のごとく無碍にするフレイムヘイズと、
人の命を何よりも貴きとする仮面ライダーは、
互いに相容れぬ存在であると、最早何よりも互いが理解していた。
「おいおーい、人を無視するんじゃねぇー」
「お前は空気を呼んで黙ってやがれです!!」
そこへ忘れられた二人の声が割って入る。
特にクーガーにしてみれば、自分の方が先にシャナと接触したと言うのに、
後から現れた者に話を持っていかれた格好だ。
元々自己顕示欲の強いこの男が、気に入る筈もなかった。
「……あんた、もしかして劉鳳の知り合いか?」
真司はそんなクーガーを見て、酷く動揺しているようだった。
翠星石は真司のそんな様子と、劉鳳の名前が出てきたことを怪訝に思う。
しかしすぐに気付く。
クーガーの服装が、劉鳳のそれと同じだということを。
「……ああ、俺と劉鳳は同僚だ。で、お前は劉鳳を知ってるのか?」
真司の只ならぬ様子を察してか、クーガーも落ち着いた調子で対応する。
何かを逡巡しているように沈黙していた真司だが、やがて意を決するように口を開いた。
「…………俺が、殺したんだ」
場の空気が、先ほどまでとは違う意味で凍り付く。

99 :
真司もクーガーもその言葉で押し黙ってしまう。
「ななな、何を急に言いやがるですか!!?」
翠星石だけが驚きを素直に表す。
真司が殺人を告白すること自体を問題にするつもりは無い。
それは既に杉下右京に対して行っている。
しかし今は状況が不味い。
シャナが居るも関わらず、クーガーまで敵に回すかも知れなくなるからだ。
「……翠星石、ちょっと黙っててくれよ」
しかし真司としては、後回しにはしたくなかった。
絶影と共に、再び劉鳳の意志を継いだ。
その死を通じて、右京の意志も継いだ。
だからこそ、これ以上は自分の罪から逃れたくはなかった。
何しろシャナと戦えば、死ぬ可能性は充分ある。
だから先に自分の罪を告白したのだ。
クーガーは厳しい顔つきで真司を見つめていた。
周囲の道路に穴が開き、粒子がクーガーの足下に集まっていく。
物質を原子レベルで分解し再構成する能力『アルター』の発動を示すサイン。
やがて徐にクーガーが口を開く。
「……そうか、お前が劉鳳を殺したんだな」
突如、クーガーの足下が爆発を起こす。
それは凄まじい勢いの踏み込みによるものだった。
弾け飛ぶようにクーガーは真司に向けて走る。
余りの速さに、真司も翠星石も何の反応もできない。
そしてその勢いを利用したクーガーの蹴りが炸裂。
蹴りに拠って、市街地に甲高い金属音が鳴り響く。
「……なぜ、邪魔をする?」
真司へ向けて伸ばしていたゲイボルグをクーガーに蹴り飛ばされ、シャナは不審げに真意を問う。
クーガーに気を取られていた真司を、シャナはゲイボルグで攻撃しようとしていた。
それをクーガーが止めたのだ
取り落としたゲイボルグを拾い、シャナはクーガーと距離を取る。
「いやあ、これは失礼しましたシャアさん。でも、まだ話を聞き終わっていないんでねぇ……。
おい、俺はロストグラウンド治安維持武装警察組織『Hold』の対アルター能力者用特殊部隊『Holy』で劉鳳の同僚をしていたストレイト・クーガーだ。
お前、名前は?」
「真司……城戸真司」
「じゃあ、聞かせて貰おうか。何で劉鳳をことになったかを。そしてシャアさんと何があったかもな。
シャアさんもそこで一緒に聞いていて貰いましょうか?」
「お前に命令をされる筋合いは無いわ。それとも、人の名前も覚えられない頭にはそんなことも分からない?」
「ご謙遜を。貴女はどうやら普通の“人”では無いでしょう?」

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