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2012年07月三国志・戦国341: 黄初の中原に鹿を追うスレ (282)
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黄初の中原に鹿を追うスレ
- 1 :2012/04/20 〜 最終レス :2012/07/10
- 献帝が曹丕に禅譲し後漢が滅んだ!
しかし、これをいいことに各地で諸侯が立ち上がり世が再び乱れた。
世はもはや三国ではなくなっていった。
今年は黄初三年(222年)である。
我は中牟県県令曹鶴。亡き武王曹操の従兄弟に当たる。だが我は曹騰の曹家の血を引いているので武王とは血縁関係が無い。
我も諸侯の一人として立ち上がることとなった。勿論目標は天下統一である。
─ 自己紹介テンプレ ─
※参加時に必ずご記入ください
【姓】
【諱】
【字】
【本籍】
【身分・立場】
【品階】
【官職】
【初期年齢】
【風貌】
【政治思想】
【それ以外の思想】
【好戦性の強弱】
【性格的特徴】
【法や規則を重視するか否か】
【組織の中でいかなる立場を望むか】
【得意分野】
【不得意分野】
【最終到達目標】
- 2 :
- 【姓】曹
【諱】鶴
【字】子翠
【本籍】ハイ県[三水に市]
【身分・立場】前漢の丞相曹参の子孫に当たる。
【品階】郷侯
【官職】中牟県令(六百石)
【初期年齢】22(数え年)
【風貌】威厳のある容姿。身長は七尺八寸(漢尺)。髭が五寸。
【政治思想】法家を基とするが主に儒家。乱世→法家。治世→儒家。
【それ以外の思想】老荘の道(道家)。曹鶴個人が埋もれている思想。
【好戦性の強弱】やや強。
【性格的特徴】上司に楯突きやすい。寛大な心の持ち主。怒りっぽい。
【法や規則を重視するか否か】しない
【組織の中でいかなる立場を望むか】主公
【得意分野】民政、人材登用、開発、軍の統制
【不得意分野】軍の指揮、上司への気遣い、管弦の遊び
【最終到達目標】中原一帯を領地に納める。
- 3 :
- 【姓】何
【諱】晏
【字】平叔
【本籍】南陽宛
【身分・立場】学人。また、曹操の養子にして曹操の娘・金郷公主の夫
【品階】六品
【官職】[馬付]馬都尉、関内侯(比二千石)
【初期年齢】34
【風貌】透き通るような白い肌に、美しい容貌
【衣服】今様(ゆったりした衣服に、高下駄)
【政治思想】老子のいう「静」然を体現したい
【それ以外の思想】魏晋朝の荘子学派の巨魁であり、生得の「個人の内面」を誰より重視する
【好戦性の強弱】強
【性格的特徴】自己愛が荘子の思想と結合し、傲岸を正当化して他者を塵芥ほどにしか見ていない
【法や規則を重視するか否か】そのようなものは青磁の器ひとつほどの価値もない
【組織の中でいかなる立場を望むか】神人であること
【得意分野】学芸
【不得意分野】実務
【最終到達目標】荘周のいう道枢、神人の境地に達すること
- 4 :
- 「好い夜ですねえ」
墨を流したような夜。闇を通して、躯にねっとりと絡みつくような男の声が漂う。
「好い夜じゃあないですか。まるで──」
「やめろ」
押し殺したような声が答える。こちらの声は、焦りと苛立ちに震え今にも破裂しそうだ。
「まるで、俗塵を全て目に見えぬよう覆い隠してくれているかのよう……。ねえ、おにいさま?」
お兄様、と呼ばれた男……皇帝曹丕は血走らせた目を鋭く尖らせて報いた。
その視線をまともに受けながら、男は口の端に冷笑を浮かべる。
「おや、怖い。弟をそのように睨まないで下さいな。せっかく、慰めに来てさしあげたのに」
「貴様は、わが弟などではない」
「では、あなたの弟とは誰なのです、おにいさま? ……ご自分で追いやられた、あの子建さまですか?」
「黙れ」
凄まれて、男の声はますます嬉々として危険な艶を帯びた。
「おにいさま、お疲れならば少しお休みになられたらどうですか。ゆっくりと、ゆっくりと。
その間に、この平叔めが、おにいさまにお喜び頂ける《劇》をご覧に入れますよ」
「ハッハッハッハッハッ……………」
- 5 :
- ここは中牟県。
元は地方の亭長だったが、曹操との関係で何も苦労せず県令になることができた。
しかし、これでも我は偉大な曹参の血を引いている!
(高祖劉邦も亭長だったな。彼のように成りたい!何時しか思うようになった。)
- 6 :
- 中牟といえばかつて太祖武帝が陳宮に救われた地じゃのう
- 7 :
- >>5
──中牟。県の治所に、洛陽からの使いが下った。
「来月、この地に吏部尚書・何晏さまが逗留される。万事つつがなきよう」
- 8 :
- 吏部尚書。尚書令に属する六曹尚書の一で、百官の人事を司った。
その職掌から、百官の手本と見なされ、その待遇は特別にして他に並ぶ者はいない。
何晏は、皇帝曹丕の憔悴に付け入りこの官を襲い、洛陽に「影の宰相」として君臨していた。
- 9 :
- >>6
我が県には陳公台という県令がいたそうだ。我がまだ生まれる前のことだ。
今は陳公台を武帝も認めた忠節な士として中牟県に祭ってある。
ところで、我が生まれたのは官渡で武帝と本初が戦をして間もない頃だった。
- 10 :
- >>7
都からの使者は初めてである。
手が絶えず振るえ緊張していた。
「中牟県令曹鶴、吏部尚書さまの...の。」
緊張が解けず、ガタガタの返事しか出来なかった。
何晏といえば大将軍何進の孫にあたるお方。
その母は武帝の妾となり武帝の子をも生んでいらっしゃる。
- 11 :
- >>10
「うむ……」
都の使いはさも大儀そうに頷き、勿体ぶって鬚をしごいた。
曹鶴も立派な容貌だが、この男も身長八尺を越し鬚は腰に達する偉丈夫である。
しかし、人の外見と内面は必ずしも一致するとは限らない。
この男も、外見に似合わず姑息な人物で、何晏に取り入って今の地位を手に入れたのである。
使者は、自分とほぼ同じ体格の男が、自分の前に卑屈に跪いているのが心地良いらしかった。
「そうだ、何晏さまがここにお訪ねになる。何晏さまは、お手前の統治についてご興味をお持ちだ。
真っ当な統治をしていれば、何晏さまの覚えもめでたかろう。さもなくば、好ましくはなるまいな。
さて、お手前の統治ぶりを何晏さまに伝えるのは私の役目だ。
わかるであろうな?」
男は、意味ありげに目配せをした。
- 12 :
- この者はもしや袖の下を...
この貧乏な県令に金があるはずがない。
「あの、わ」
「コラァァァー」後ろからものすごい地響きの如く響いた!
出てきたのは猛漢、彼をハンカイと我は呼んでいる。
- 13 :
- >>12
「何だ、貴様は!」
使いの男は、突然の闖入者を前に一応、威儀を保とうと試みた。
だが、偉丈夫とはいえ、所詮は礼教の官吏である。
野人のような“樊[口會]”の迫力には、及ぶべくもない。
「な、何をするつもりだ。わ、私は朝廷の使いなのだぞ?
私にもしもの事があれば、何晏さまが黙っておらぬぞ!」
内心怯える者が、ワラにすがる思いで脅しを口にする。
滑稽なものである。
しかし、使いの男は己の見苦しさを省みる余裕を持たなかった。
- 14 :
-
- 15 :
- 「何晏なんぞ黙っとらんでえぇぇー!!!
曹鶴さまをひざまずかせるそいつこそ何者だえ!」
ハンカイは使者の男の裾を握って外に引っ張っていくなり
「その何晏っちゅう奴に言っとけ、俺がいるかぎり大臣だの、皇帝だの曹鶴さまを悪く扱ったら首をねじとってやろう!ワハハハ!!」
その袖を放したかと思うと横にあった桃の木を一蹴り。
ド、ドーン...
折れた木を巨漢は嬉しそうに眺めていた。
我はわかった。なるほど都の者も大したことはない。さっきの振るえていた自分がものすごく情けない。
しかし、このようなことになった以上
免職か何か災いが来よう。
もし斬罪に処せられたらひとたまりも無い。
身の危険を感じた我はせっかくなった県令を捨てることを決心した!
- 16 :
- >>15
殿さま、わしらを捨ててかれるんですか、そいつはひでえ!
- 17 :
- >>16
「成大事者不拘小節。」
この曹鶴は行かねばならぬ。
我は皆を見捨てたと思うなら我を憎むがいい。
だが我についていきたい者は拒まんぞ。
- 18 :
- 県令さま、わしゃ歳だで、ついていけねえだ。ゴホッ、ゴホッ。
県令さま、わしゃ野良仕事以外に能はねえだ。
県令さま、県令さま、県令さま…。
見捨てないでくんろ。
- 19 :
- 二十年前。
曹操と尹氏の子、曹矩は、不思議でならなかった。
曹家の人間でもないくせに、曹家の中にいた二人の少年のことを。
一人は秦。秦郎という名前だった。
使用人のように質素な服を着て、他の者に対して、いつも遠慮がちにしていた。
そしてもう一人は。
もう一人は、まるで闇夜の夢の淵に舞う蝶のように、嫡子ででもあるように、
家中を悠然と歩いていた。
自分ですら畏れ多かった、子桓大哥にも勝る、きらびやかな服装をして。
子桓大哥が、陰で彼を何と言っていたか知っていた。
それは仕方の無いことだと思った。曹家の人間でもないくせに。
その男は、何…… 何晏という名前だった。
背筋が凍るほど、白く透き通った肌。顔貌に貼り付いた氷の表情。
口元にたえず湛えた冷笑。
子建哥々だけは、その男と仲良くしていたけど、どうしてあんな奴とまともに話せるのか、
わけがわからなかった。
曹矩は、何晏のことが薄気味悪くて仕方なかった。
何晏の姿を見かけたり、その名前が出ると、母が表情を曇らせるのも、うすうす感づいていた。
何晏は、母上を目にとめようともしなかった。
何故? 曹家の人間でもないくせに、父上の妻を前にして。
十九年前。
何晏の存在感は、薄まるどころか家の中でますます大きくなっていった。
父上は、姓の違う何晏を、本当の息子のように扱っていた。
何晏を褒めるときは、子桓兄上を褒めるときよりも、ずっとお優しい表情をされていた。
何故? 何晏とは、いったい何者なのか?
そう思って、曹矩は夜中、父の寝所に忍んでいって、理由を尋ねてみた。
それが、悲劇の始まりだった。
- 20 :
- >>15
……びくっ!
天雷のような、巨漢の大喝に、使者は身を震わせ口をわなわなと開閉している。
巨漢に裾を掴まれ庭に引きずられていく間も、何度も躓きそうになった。
「あ、あ……」
何を言われているかもわからない。
ド、ドーン……
巨漢の蹴りに、桃の大木が軋み、音を立ててゆっくりと倒れた、ように見えた。
「あ、あ、あ……うわぁぁぁぁぁっ!!」
使者は、脇目も振らず、恥も外聞も捨てて逃げ出した。
目は飛び出し、鬚の艶もなく、息を切らして。
そこに、さっきまでの偉丈夫の姿はなかった。
- 21 :
- そこの老人。
我の車を譲ろう。ついて来てくれるのならばの話だが。
野良仕事もちゃんとした立派な仕事ではないか。
今からハイ県にゆく、我はハイに我が曹家が代々受け継いでいる田畑がある。
それをあげよう。
若いものにもあげよう。
官を棄し、何晏の使者を追い返してしまった以上
起兵しかない。諸侯たちの立ち上がりの波に乗る!
若者は屯田兵として、我が軍団にまとめあげる。
- 22 :
- >>21
こ、これは恐れ多いだ。
ありがたや、ありがたや…。
わしの孫に腕力自慢がおんで、県令さまの兵としてお使いくだせえ。ゴホッ。
おおい、甘露や。
ろくに畑を耕さず、遊んでばっかのおめも、やっとこさ力を発揮でけっど。出てこー。
- 23 :
- 何だよじっちゃん。
げっ。(県令じゃねーかよ!)
何いってんだよ、都の使者を追い返した?
知らねーよ、俺が兵だあ?ふざけんじゃ…わかったわかったよ、じっちゃん。
泣かないでくれよ。わかったよ。どのみち戦うしかねーんだろ。
- 24 :
- >>22
そこまでおっしゃるとは。
いいでしょう。甘露はハンカイに鍛えさせよう!
よし、ハイ県に向けて出発だ!
- 25 :
- ハイ県。此処こそ漢の高祖の故郷。
同地、曹参が高祖に従い二国百二十二の県を下し名をあげた。
平陽侯に封ぜられ、丞相に至る。
我こそはその平陽侯の血を引く者、曹鶴 子翠。
この地で我が基礎を創ろうぞ!
曹氏のすべては洛陽に邸を移している。
この曹鶴は曹氏の一員だということを忘れ去られハイ県に旧宅が残っている。
幼い時にすんでいた家だ。
微かに覚えているが武王も一度いらしたことがある。
- 26 :
- 【姓】 甘
【諱】 露
【字】 (不明)
【本籍】 中牟
【身分・立場】 農民
【品階】 なし
【官職】 なし
【初期年齢】 16
【風貌】 何処にでもいそうな少年。
【政治思想】 これから育まれる
【それ以外の思想】これから育まれる
【好戦性の強弱】 これから育まれる
【性格的特徴】無邪気。
【法や規則を重視するか否か】 無知故に重視出来ない。
【組織の中でいかなる立場を望むか】特になし。
【得意分野】単純な力技。野生の勘。
【不得意分野】政治。学問。
【最終到達目標】自分の身の回りの平安。
- 27 :
- 我は我が家の田畑をすべてを人々に分け与えた。
彼らに義務づけること
それは普段田を耕し、非常時は我が戦士になること。
老人は長生きすること。
若者は孝行すること。
我は人心を集めるため晩は一緒に食べ、夜は彼らとともに寝、朝はともに田に入った。
「曹公!」
ん!誰だろう?すごく老けたお爺さんが立っていた。7、80才はあるだろう。
「老夫は陳宮 公台。」
ちん・こうだい!!(死んでいないのか?)
- 28 :
- サァーサササ〜
我らは草むらに座り込み雑談をはじめた。
彼は60だい後半だという。実年齢より老けて見えるが...
武王に殺されたはずが生きているのがどうしてか聞いてみたが教えてくれやしない。
「ふう〜。」
「はあ〜。」我に続き彼も吐息した。
- 29 :
- >>28
洛陽。
帰還した使者は、転がり落ちるように下馬し、宮城に向かった。
全てが物憂げな黄昏時。
「何晏さま。……何晏さま?」
小声で呼びかける。
答えたのは、音も無く側に寄った若い宦官だった。無表情である。
「どうぞこちらへ」
生気の感じられない声だ。
宦官に従い、回廊を進む。幾度曲がったか、判別できなくなったころ、
その奥まった所に、一つの寝殿が佇んでいる。
「こちらにおいでになります」
恐る恐る、巨体を縮めて寝殿に入る。
すると……
- 30 :
-
「待ちわびたよ」
- 31 :
- 声の主は、室の最奥の椅子にしなだれかかっていた。
およそ世に二つなき美質、しかしそれはどこか毒を孕んだ……
その声はじわりと室内を伝い、心の奥までも届き、体内から魂魄を蝕むよう。
何晏、平叔。
「どうでしたか、中牟は。」
そう言って、流れるように椅子から立ち上がり、使者に歩み寄る。
使者は額から汗を流しながら、跪いて訴えた。
「何晏さま、宜しいでしょうか、中牟は酷い有様です。
県令の曹鶴は私腹を肥やすことばかり考え、民を苦しめております。
本当でございます。
小生が県境に差し掛かった頃から、飢民を見かけました。それも一人や二人ではないのです。
話を聞いてみれば、呆れたこと!
曹鶴は、『雀や鼠に喰われる分を補うため』と称して、本来の額を遙かに越える税を取っておったのです!
……一寸歩けば子供が飢えて死んでいるのに、小生、胸が痛くて仕方ございませんでした。
それでですね、何晏さま、小生が到着しますと、彼奴は小生を邸宅に招き、過分な接待を致しました。
民衆の血を吸い取って肥大した蛭!!
贅沢な調度品に、食べきれぬ程の食物、それに池の如き美酒!!
恥を知らぬとは、このことです。
小生は彼奴を責めなじりました。
『貴様は自分が何をしておるか、分かっておるのか!
ここで見たことは逐一何晏さまに報告する!』
すると、何としたことか!
奴は雇いの巨漢をけしかけ、小生を脅迫したのです。
『何晏なんぞ黙っとらんでえぇぇー!!!
曹鶴さまをひざまずかせるそいつこそ何者だえ!』
何晏さま、小生は悔しゅうございます。
国家や、何晏さまの名が、悪徳県令に踏みにじられたことが。」
- 32 :
- 公台にこれからの事について相談した。
「実はある人を得罪(機嫌を損なう)させることをしてしまった。」
「そのある人とは?」
「吏部尚書 何晏。」
「なぜそのような事になったのだ?」
「彼の使者を我が弟のごとく可愛がっているハンカイ(愛称)が追い返してしまった。」
「その使者は小人ながら君子ぶってる輩。上に中傷するであろう。我は官を捨てここに戻ってきた。」
「曹公の仁徳の話は中牟の布衣にも聞いておる。ハイ県に者どもがついてくるぐらいだからのう。」
「曹公が中牟を離れると知って、不思議がって皆に混じってついてきた。なるほど、何晏を得罪したのか。うーん、厄介だ。」
サァーサァー
風がゆっくりと体にふれて離れて往く
サササァーサァー
草が風と共に踊る。
(風→公台 草→子翠)
- 33 :
- 何晏は我らの土地を踏み潰しにかかるだろう!
曹公
奴に対抗するため皇帝や王、少なくとも将軍を名乗り
我らの支柱になってくれ!
- 34 :
- うろ覚えですがこんな諺があるのを聞いたことないか。
槍打出頭鳥
一番早く頭を出した鳥は狩人によって槍で打たれる。
つまり今に皇帝、王、将軍を名乗れば各地の者が警戒を強め我に矛先を向けられることが避けられない。
表面より中身をとれ。
しかし、ここで自立するのにあたりハイ侯と名乗る。
- 35 :
- 使者の虚言は、滔滔と淀みない。
容姿に優れ、聞き良い声の持ち主だ。その言葉は、人につい信じようという気を起こさせる。
しかし何晏は、使者の言葉が高ぶれば高ぶるほど、その様子を変じさせていった。
茫然として、いっさいの相手の存在を忘れ去っているかのようだった。
「何晏さま。何晏さま……?
いったいどうなさいましたか。
どうすれば、このように身体を枯れ木のように、心を冷え切った灰のようにすることができるのでしょう?
今の何晏さまは、先程とまるで違っているように思われますが?」
使者が、不安にかられるのも当然だ。
「ん、ああ… 君か。もう、出て行ってもいいよ。」
使者は、すごすごと部屋を出た。
暫くして。
別の男が何晏の寝殿を訪れた。
この男も、中牟視察に伴っていた。背は低く、肌は浅黒く、鬚は薄く、歯は不揃いで、声も耳障りだ。
「どうでしたか、中牟は。」
何晏は同じ調子で聞くが、男はどもりながら、たどたどしく真実を口にした。
外見の優れた男と、醜い男が別々の報告を口にした。
さあ、どちらを信じたものか?
「おまえの言っていることが真実だ。先の男は、嘘を言っている。」
何晏は、そう断定した。
- 36 :
- 「歴とした訳があるんだよ。私がお前を信じ、あの男を信じないのにはね。
あの男は、抜け目のないやつで、いつも周囲の人間に自分をよく見せようとしている。
見た目も良いし、声も良い。言葉も、美辞麗句がとめどなく出てくる。
そういう小利口な奴は、自分の利益に頭が回るから、必要とあれば嘘を吐く。
一方、おまえは頭の回らない奴で、自身の身嗜みにも気が行き届かない。
見たことをそのまま口にすることはできても、計算して私利私欲のために嘘は吐くまい。
だから、私はお前を信じ、奴を疑うのさ。」
- 37 :
- ハイの父老たちからはお祝いの品々が届いた。
すべてを合わせると万金に値しそうだ!
我はそれらの品のほとんどを中牟からついてきた者どもに分け与えた。
「残りの絹数丁は吏部尚書に送ろう。これで尚書を着飾ればたいそう美しいであろうな!」
ハハハ。
- 38 :
- >>34
「そういうことであれば。曹鶴は無実なのだから、逗留は取りやめないでおこうか。
先の男は、ん、まあ不問に付してやろうか。
嘘を吐かれたのは腹立たしいが、小さな用事に使ってやれるだけの小利口さはある男だから。」
しかし、程なく急使が驚くべき情報をもたらした。
曹鶴が県令を辞し、沛侯を名乗って自立した、と。
「おやまあ。
非が無いのなら、堂々としていれば良かったのに。
後先考えない割には、この何晏が怖かったようだ。
……殺せ。」
──沛国に詰問の使者が到着する。
例の、「君子ぶった小人」だ。にやにや笑いを浮かべている。
「クックックッ…… 何晏さまはお前達の首をお望みだぞ。
今、神妙に都に上れば一族郎党の命だけは助けてやる。
あくまで背くなら、領民に至るまで殺し尽くせ、とのお達しだ。」
- 39 :
- 「ハイ侯様より何晏様への数々の品を持ってきました。」
使いの者は美しい白髪に白髭のかたち。目はキリっとしている。
大股で歩く様子は自信ありげである。
そう、彼こそ誰もが死んだとしか思っていないあの方。
カチッ
箱をあける音がした!
ッバン!!
使者は箱の蓋を横に投げた。周りにいた人たちが少しばかり動揺していたが、かまわず彼は箱の中の品を取り出した。
赤の生地に美しい鳥と花の刺繍が施されている!
その横には白粉も添えてあった。
- 40 :
- >>37
うふふ、絹数丁で丸く収めようとはねえ。
私はそこまで甘くはないよ。絹など、私は欲しければいくらでも、もっと良質なものを手に入れられるのだから。
それよりも、今は、お前をいかに殺してくれようか、それを考えるのが楽しくてねえ。
- 41 :
- >>39
大広間の、誰もが息を呑んだ。
名前を名乗らずとも、かっては、魏武を瀕死の際にまで追い込んだ軍師。
彼ほどの気を発する男は、当世には少ない。
「ほお。」
何晏とて、少々の興味をそそられたようだ。
「反徒の鶴の挨拶は、なかなかに粋だね。
この贈り物は、この何平叔を『女人の如し』と揶揄しているのだろう?
よろしい。」
……シュルッ、シュルルルッ!
何晏は身に纏った衣を脱ぎ捨て、陳宮の差し出した女装をためらいもなくしてみせた。
元来、あでやかな着物は美しい何晏が纏ったことで、ますます映え、この世のものとも思えない。
その姿は、何か新しい美とでもいうべきであって、女装の屈辱、などと呼べるものではなかった。
「どうかな。使者殿、どう見える。
この白粉は、返そう。私は元々肌が白いから、紅粉なら映えただろうがねえ。」
- 42 :
- このスレ
劉弁陛下の承認はあるの?
返答次第では・・・
- 43 :
- 「ほう、きよげなり。こんなにお似合いとは!ハイ侯は白粉を添えてきたが、何晏様は紅粉の方がお似合い思い、老朽が紅粉を持ってきた。」
公台は袖の中から紅粉を取り出し差し上げた。
- 44 :
- きよげも何もないだろ
劉弁陛下の承認はあるのか、と聞いておる
- 45 :
- (>>44
前朝廃帝劉弁なら天の人となっておろう。)
- 46 :
- では劉美陛下の承認は?
- 47 :
- 曹鶴は大漢スレと二股かけている卑怯者
- 48 :
-
- 49 :
- >>43
「紅の目利きは確かなようだな、老爺。
繊細な発色に、伸びが良い。これは燕支山の産だろう?」
(何晏は、白魚の中指に紅粉を取って、頬に伸ばしてみせた。そのまま、堂の真中に歩み、口を開く)
「……くだらない。
沛侯も。老爺よ、お前も。
古来より、人は自ら生み出した、無秩序で軽薄な幻想の中に生きてきた。
今、お前の目に映る私の姿も、お前の生み出した愚かな幻想だ。
人の目に映る表面的美質にのみ拘泥し、艶やかな女衣を身に纏い、白粉を塗って悦に浸る何晏。
肥大した自己愛に支配され、己の影を振り返らねば道も歩けぬ吏部尚書。
その幻想の中の『清げ』なる美質が、眼前に真のものとなって現れ、お前は何を思う?
幻想に幻想を重ね、更なる夢に溺れるつもりか?
良いだろう。
ならば、私はその幻想の世界でお前達のために舞い続けよう!
私はお前達の前に立ちはだかる、艶にして大いなる敵として、永劫に舞い続けよう!
…曹鶴に伝えろ。宋国公、開府儀同三司、使持節都督予州諸軍事、足りなくば車騎将軍にもしてやろう。
それで兵を揃え、私を討ちに来い。その気宇があるのならば。」
- 50 :
-
- 51 :
- 「ハハハ、いやいやたいしたものよ!」
「それに、あなたが言ってくれた宋国公〜車騎将軍すべていただこう。何晏さま自ら任じられたのであれば天子の詔同前。」
(孟徳め宮より先に死んだのみならず何晏にお前の天下を食われとるぞ。)
「では、」
一礼して出ていく。
- 52 :
- トカッ
一礼した公台先生の服から何かが落ちた。
公台は気づかず退出してしまった。
それは緑の布に何か四角い物が包んであるようだ。(何だろう?)
周りでおろおろ者ども。何晏さまの言葉を待っていた...
シーンとなった空気の中に外から風が! ビュウービゥ
突然訪れた音に驚きを隠せない
風に吹かれて軽く結んでるだけの結び目がだんだん緩み中の物が姿を現した。
漆塗りの美しい小さな箱だ
蓋には大きく 【五石散】 と書いてあった。
- 53 :
- イイね、洛陽はー
やっぱ都会でしょー
ねえねえ、洛陽の最新流行を知りたい?
困ったなーもう
じゃあ、ちょっと 教・え・て あげようかな〜
洛陽の流行は、「五石散」をキメての「清談」。コレだね
田舎者はそんなの知らないんだろ?
あ、服装は隠者風のにしないと、この街じゃ相手されないから気を付けろよ
カビ臭い儒者みたいなのじゃ、カノジョはできないよ?
- 54 :
- >>53
ワシも昔お前さんのように軽はずみに黄巾を結んだものじゃ…
黄巾さえ着ければ女の子には不自由しなかったがのう
流行りなど儚いものよ…
- 55 :
- 我はハイで道路整備、水路整備を行なわせていた。
袖が広めで銀の麒麟刺繍入りの黒色の衣服を好んでいる我は木の日陰でくつろいでいる。
その前を整備に当たっている人々が右往左往していた。
- 56 :
-
- 57 :あぼーん:あぼーん
- あぼーん
- 58 :
-
- 59 :
- 公台先生が帰ってきた。(満面の笑みで)
何晏は曹公の品々受け取ってくれたが殺気のある雰囲気が漂っておった。
フフン、あの者はただ者ではない、公の贈り物には全然激怒も恥ずかしさもなく
堂々としていたぞ、曹公も見習うよう!
・・分かった
- 60 :
- >>52
これは?
………………………………………。
“五石散”
これが、あの老翁が持って来た中で最上の手土産かもしれんな。
ここ数日、頭痛と身体の倦怠感が酷くてかなわん。
(シュルシュルッ……!)
(何晏は女装を解き、口元に寂しげな笑みを浮かべた)
酒を煮て、薬を飲み、朋友と清談ができる………。
それだけで、疲れなど吹き飛ぶ………。
ふ、ふふふふふ………。
曹鶴、せいぜいがんばってくれ?
せいぜい、重すぎる位の重責につぶれぬようにな。
- 61 :
- ──洛陽、夜、散歩
満月が皎々と輝き、微風が木々の梢を揺らす………。
………姿は見えねど、樹上には弧鳥が哀鳴しているのが聞こえる。
はた、何を悲しむのであろうか?
ん……。
このような夜には、詩めいた言葉が浮かぶな?
それとも、老翁のくれた五石散の効能であろうか………?
……天地の道は、窮まること無く一定しているのに、人の世の中は、何故このように煩雑なのであろう?
一度、人としての形を享けてこの世に到来しながら、
己れの存在についてすら覚束ないで、あくせくと、道を失った旅人のように彷徨い歩き、
徒に命をすり減らす、何と哀しいことではないか?
私は、生来優秀なる才に恵まれていれば、竹帛に名が残るとすれば、「伝」ではなく「紀」に残るべきだとも思うが………。
しょせん、皇帝になったとて、いずれ滅びる身の上。
あの、始皇帝でさえ、死に様はあのようであった。
とするならば、古今の知識を得て、精神を無窮の世界に遊ばせる、
これにまさる生涯の目標に勝るものではない……。
- 62 :
- 麒麟がうごめいた!!
風に叩き付かれて麒麟は黙ってはいない
我が最大の志は一人之下万人之上
いいや、万人之上耳
- 63 :
- >>62
“万人之上耳”
(曹鶴が高らかに掲げた声は洛陽にも届いた!)
ふむ……………。
最大の志が万「人」之上か。
曹鶴、お前はどうやら私の探し求めていた真人ではないようだな。
儚い地上の権力などを追い求める輩と、顔を合わせて議論をすることもあるまい。
俗人には、矛と戈を差し向ければ事足りる。
曹休将軍を呼べ。
二万の兵を与え、予州の賊を討つように、これは、勅命である、と。
【宋国公討伐のため、洛陽は軍備を整え始めました】
- 64 :
- (魏の将軍など、やってくれる人を募集します)
(曹休など、いてほしいですが、そうでなくてもかまいません)
- 65 :
- ──洛陽、何晏邸
「下のものは、上のものの如く 上のものは、下のものの如し」………………………。
この古書の言葉に、貧弱な解釈を加えれば、それは、天下麻の如く乱れた当代の様相を指すことになる………。
だが、より高邁な解釈を加えれば、それは、
“天上界の様相は地上に影響を与え、地上の様相もまたかくの如し”
という一つの真理になる………。
宇宙と人間を支配する法則に従い、神による天地創造を壺の中で再現する………。
(様々な材料は、壺中で一つに合わさり、やがて薬に成形する)
この神薬の出来はいかほどであろうか?
罪人の身体でもって試すとしよう………………………。
- 66 :
- ハイ県の整備が整い、すっかり一新した。
県の無老無弱無男無女之別で集まり酒宴を催した。
・・カタッ(曹鶴案上に立つ!)
諸衆に言ふ
我は宋国公曹鶴なる者、号は珀麒麟とす。
何晏陛下が我を宋国公に封ぜられた、名正言順の肩書きじゃ ハハハ
よってハイ県を宋都と名付け洛陽より立派な都にしようではないか アァ・・
聞くところによると何晏は仙人か真人か知らないが、とにかく人間(ひとま)にいる神を目指しているようだ。だが、我からみて彼はただの紙だ!!!
- 67 :
- 沛の民120万、宋国公の威に服するのみでございます
- 68 :
- >>67
民に向かって渾身の一礼をする。(涙を無理矢理絞り出し・・)
父老郷親の方々、このような不才な曹鶴ながら(涙)ウー
我は民の信頼ありて立つ者、このような、このような
ああ〜 もったいない(大泣き)
よしよし、宋民は一年免租いたす!!!
仕官のものも大切に扱う(何晏に対抗するため)
- 69 :
-
- 70 :
- 「勅命、だと……?」
大将軍曹休は不快感を隠そうともしない。
「正統の詔勅が絶えてからずいぶんになる。そのような事、三尺の童子でも知っておる。
何晏め、吏部尚書を襲っただけでは飽き足らず、朝命までも弄ぶか!」
- 71 :
- >>68
(曹鶴のもとに、魏の大将軍曹休からの密書が届く)
──密書に曰く
………何氏は天下の病巣。かつて何進と何后は権を専らにして漢朝を害したが、
此度はその末裔の何晏が魏宮を食い荒らしておる。また悲しからずや。
宋国公とわしとは共に魏の宗室たり、いかんぞ何賊の跋扈を座視できようか。
わしはこの度二万の兵を預かる身となった。ねがわくば貴君と共に君側の奸を除かん。
貴君が兵を率いて外より攻め来れば、わしは内より内応する心積もり。
良い返答を待つ。
- 72 :
- 文烈から密書か!(ちっと予想外だが)
- 73 :
- >>72
(洛陽の軍備は着々と進む。そのような状況の中、曹鶴のもとに第二の密書が届く)
──密書に曰く
子翠どのには、何故返信を下さらぬのであろうか。わしの言葉が信用に足らないからであろうか。
何晏は今にも非道を勅令として発し続け、正統の皇帝陛下の心痛は深まるばかり。
それを、宗室のわしが許し置けぬと言ったところで、何の不思議や疑わしきところがあろうか。
必ず、わが内応をお許し願いたい。
ただ、大事を前に、わが妻子を宋国に匿って頂きたいのだ。
わし一人ならばいかようにも何晏と戦うが、それでも妻子を危機に晒すのは、心苦しい。
事前に何賊の手の及ばぬところに逃がすことができれば、思うことなく戦うことができるというもの。
良い返答を待つ。
- 74 :
- ん〜 分かった
文烈どのの気持ちが痛いほど伝わってくるような
諸葛格を喚べ!
我ら宗室のことだ 国の主が曹(鶴)だったら分かるが、何とか何処の田舎ものだ!かの祖父何進なぞ屠畜の輩、曹文烈どのよ孤につくがよい!貴方は孤にとって兄弟に等しい、貴方の子は則ち孤の子だ。
出兵の件も承知した、近いうちに何晏を攻める
返書は万が一何晏に見られたら困る、よって直接人を寄越す。
孤の由、そなたが口頭で伝えよ
- 75 :
- 諸葛恪?
まさか呉の諸葛殿が宋国に手を貸しているのか!?
- 76 :
- >>75
(諸葛格じゃ、格)
- 77 :
- >>74
(大将軍曹休、太く凜々しい眉をほころばせ大きく頷いた)
子翠どのは、この文烈の心を明察してくれたか! 忝い!
今日までわしは四肢を鎖に閉ざされておったも同じであった。だがこれからは違う。
子翠どのにお伝えせよ。西上の際には御心を安んじられよとな。
曹文烈、名に恥じぬ戦いをしてみせよう。
ついては、わしの妻子が宋国に無事到着して後に兵を挙げて欲しい。
何晏はわしを警戒しておる故、わが邸から女子供の車が出るのを警戒していよう。
よって妻子は下女と丁稚奉公の小児にやつしてそちらに向かわせる所存。
懐に持たせたわしの割符が証拠の品じゃ。よろしく頼む。
──数十日の後。
卑しい身なりをして、旅に垢じみた夫人と二子(曹肇、曹纂)が宋都に到着した。
夫人は震える手で割符を取り出し、都城の門衛にそれを手渡した……………。
夫人「恐ろしいことでございました。わが良人は、囮を何組も先行させ、
洛陽の門衛を金で買収してまで、私どもをこちらに送ってくれたのです………。」
- 78 :
- ■宋都
夫人はさぞお疲れでしょう。先日落成した平安宮をお使いください。
文烈殿は我が兄弟、夫人は我が妹だ ハハハ。
二人の子は公台先生に教育をさせましょうか。
(陳宮は最近暇なので毎日釣りを楽しんでいる、しかし一度も釣れていない。よく釣竿を見るとふつうの釣竿と異なっていた 何でだろう??)
夫人は長旅のあと、あまり長い話は疲れるでしょう。
(十人の出来のよい宋女を夫人につかせ、夫人を平安宮に案内させる。)
- 79 :
-
- 80 :
- >>78
疲労が滲む曹休夫人の顔に、少しだけ光が差した。
夫人は何度も何度も礼を繰り返し、二子を励まして「平安宮」へ。
見知らぬ地で、やや萎縮していた子ども達も、母の後について歩くうちに笑顔を見せるようになった。
数十日の過酷な逃亡、神経を磨耗する旅の間、
幼子にとってこの母親がどれだけの心の支えとなったことだろう。
そもそも、曹休夫人というのはそれ程心の強い女性ではなかった。
家庭にあっては強く優しく、頼りがいのある夫を唯一の男と慕う、
どこか少女のような弱さを残す女性だった。
それが、自らの細い腕と脚で、二子を守り宋都までの逃避行を成功させたのは、
ひとえに良人への信頼と、二子への愛情があってこそのことだろう。
──平安宮。
落成したばかりの宗室のための宮殿は、どこか、ありし日の「建安」の風情を感じさせる。
「建安」の時代。かの太祖武帝曹操の時代は、その「慷慨」の気風が世の隅々まで行き届き、
人々の装いも建築物もみな質素にして剛健であった。
凛と涼やかで、竹を割ったように清清しい。
曹休夫人と二子にとっては、生まれ育った気風にかえったような懐かしさである。
宋都を作り上げた男、曹鶴、字は子翠………。
歳は若いが、「文烈殿は我が兄弟、夫人は我が妹」と豪快に笑う姿は、曹操にとてもよく似ている。
七尺八寸の背丈、五寸の髭、威厳をたたえた面持ち。
それは、ともすれば女性や子どもには威圧感を与えかねない強面だが、
どこか曹操に似た雰囲気が、彼らに安心を与えた。
この人の生きる都なら、第二の人生の場として申し分無いかもしれない………。
ときに、この宋都にあってとりわけ頼りになる男が、曹鶴のほかにもう一人いた。
陳宮、字は公台。この男が、老人とも思えぬ立ち居振る舞いで城中を闊歩すると、
自然と清風が吹き、周囲の人々にまで良い緊張感が伝染した。
二子は、陳宮が好きだった。
陳宮を師として、どんな学問でも吸収し、めきめきと実力を付けていった。
未だ花ひらかぬ幼子だが、長じて後は、ひとかどの人物として宋国を支えることだろう。
- 81 :
- >>78
■宋都
曹肇「陳老師、また釣りをしておいでですね。
老師の姿は、まるで大公望のようですね。
すみません、『史記』の「斉太公世家」を読んだばかりなのです。
文王は釣りをしていた大公望を軍師に迎え、周朝の礎を築いたとか。
なぜ文王は石(数多の釣り人)の中から珠玉(太公望)を一人見出すことができたのでしょう。
大公望はなぜ文王に志を託したのでしょう。
……………………………………。
老師、私もいつかは大公望のような人物になれるでしょうか。
日々の学びは、とても面白く。しかし、矢のごとく過ぎる刻の中で
焦る気持ちがないでもないのです。」
曹肇………
この曹休の長子は、早熟の男子であった。
武人肌の父親に似ず、文学人的な気質で、多感であるとともに、どこか危うげな繊細さも持っていた。
- 82 :
-
曹纂「…………………………………………………………………………。」
曹休の第二子、曹纂は陳軍師に話しかける兄の後ろで、上の空の面持ちだ。
ひらひらひら………
春の白い蝶が、暖かい日差しの中、花から花へと飛び遊ぶ。
曹纂はじっとそれを見ていた。
やがて嬉しくなって、自分の両手も蝶のようにぱたぱたと羽ばたいた。
この幼子は、兄に比べると学習ははかどらない。
学んだことはすぐに忘れてしまうし、学習中も上の空になることが多く、
よく兄に叱られている。
しかし、まっすぐな人格という点では、兄よりもよほど長じているだろう。
- 83 :
- ハハ!曹チョウは子健公子に負けない才をお持ちだ いいことだいいことだ
公台先生みたいに立派な方になるのだ
……そうだなあ よし
太祖の頃に建安の七子と呼ばれる立派な文人たちいたそうだなあ、我も此に倣い近い内に宋都で「詩歌会」を催しもっとも優秀な七人を選びだそう!その時はチョウも参加しな、楽しみにするぞ
……うーん、洛陽が気になるが………この平和な宋都になにもなければよいが
- 84 :
- 詩歌会ですと!
殿、何晏は恐ろしき男ですぞ
清談に身を置きながら一方では謀略に頭を働かす
平和に見えても、いや平和に見える今こそが油断ならぬ刻なのです
曹休将軍との約もあります
脇目もふらず軍備を整えるべきです
夫人も子らも長く曹休に会えぬでは寂しがりましょう
- 85 :
- ははは 武臣殿は何をおっしゃる
皇帝陛下はおっしゃった 「文章は経国の大業にして不朽の盛事なり」
ところが今天下から正しき文が滅びようとしている
今一度天下に正しき文事の有り様を教えるためにも詩歌会は必要なのです
さあ曹鶴の決断やいかに!
- 86 :
- 昨年のゴールデンウイーク
4/29金 ヒルナン 4.8 いいとも 9.3
5/2 月 ヒルナン 3.0 いいとも 9.4
5/3 火 ヒルナン 3.5 いいとも 9.9
5/4 水 ヒルナン 4.3 いいとも 8.5
5/5 木 ヒルナン 4.9 いいとも 10.8
- 87 :
- >>84 >>85
詩歌会はなにが何でもするぞ
纂もするか?
「・・・・。」
そうか、分かった。公台、纂は孤の側に置く、先生一人で二人を教えるのは大変でしょう
- 88 :
- ■宋都東市・西市張り紙
「詩歌会」の案内
・参加自由、ただし名無しは無効とす
・課題は漢詩一首(詩体は自由)。
・もっとも優秀な七人を孤が選ぶ
よーし、孤も久しぶりに詠んでみるとするか(三曹に負けないぞ!←ちょっと言い過ぎた)
- 89 :
- そうだ!何晏も招いで於こう。……いやいや、何晏様だ ハハハ
- 90 :
- 天下の文人を招くのは大切な事業だ、怠っては成らぬぞ!
………で、>>84 もそうだなあ。
んー………………。
- 91 :
- >>89
(何晏は側近に語らった)
ふむ…………………………………。
わしは、宋国の「詩歌会」の噂を聞き、まず会の趣意を知りたいと思った。
会の趣意は、
「建安七子の後継たる七人の詩人を選定する」
ことであった。
常々思っていることがある。
詩文というのは、必ず根本に作者の「思想」があり「目的」があり、作品はそれが発露した形である、ということだ。
たとえば建安の文壇の牽引者は誰であったか。…………太祖曹操。その子息。その参謀。
旧い漢に代わる、新たな価値を創造しようとした人々の、「悲憤」「慷慨」の爆発。
その発露の一つの形が魏の建国であり、別の形での発露が建安文学の興隆だ。
だからこそ、人々の胸に響いた。時代を牽引した。
- 92 :
- ところでわしも、この「思想」と「目的」を持っている。
ん………………? それは何か、だと?
…………人体は、天と地が発する陽の粒と陰の粒を無尽蔵に吸収する。
これら二つの均衡が崩れると病になる。
ゆえに、粒を変成させて均衡を保てば、どんな病も治るのだ。
わしはこれを、天下にも当て嵌めて考える。
天下もまた、陽の粒と陰の粒を無尽蔵に吸収し、その均衡が崩れたとき、乱世となる。
ゆえに、粒を変成させることによって……………。
つまり、あらゆる価値を相対化することによって……………。
死と生、苦と楽、賢と愚、貧と富、貴と賤、美と醜、健康と病弱………
あらゆる対立を同価値とする価値観を流布させることによって、より高次元の人間(ひとま)を創世する。
これがわしの思想と目的だ。
その格好の道具が老子であり、荘子であり………。
わしの思想は、われながら人々の胸に響き、当代を牽引している、と思っている。
それこそ、建安の時代に幕を下ろし、新たな世を牽引する、高邁にして真実なる価値観として。
- 93 :
- ひるがえって考えてみよう。
曹鶴の主催する「詩歌会」の正体とは?
建安の残滓の後を追い、思想も目的もなく、小手先の修辞で作られた「美文」の発表会なのか?
それとも、わしの「清談」の偉大なる好敵手、新たな文壇の萌芽なのか?
気になって仕方が無い。
わしは、それを見極めるため、自ら宋都に赴くことにしよう。
曹鶴に、わしが「詩歌会」に参加すると伝えろ。
それから、楽しみにしている、ともな。
- 94 :
- ハアハア、申し上げ、上げます。洛陽の何晏が自ら来る様子です。
ホー!何晏が。孤はこのような男が好きだ、敵地に一人で赴く…当に大丈夫だ。
曹休の家族がここにいるのを察知されたら困る。
参加させたかったが、チョウと纂は平安宮にいてくれ。
- 95 :
- ■宋公国まとめ
【公爵】曹鶴
【配下】陳宮、樊カイ、諸葛格
【亡命者】曹休夫人、曹肇、曹纂
【亡命予定者】曹休
【公都】宋都(旧名・沛)
【軍政】屯田制
【民政】孝行の奨励、道路整備、水路整備
【文化】詩作の奨励(詩歌会の開催)
- 96 :
- (何晏が洛陽から離れた隙に曹休が洛陽を占領出来れば……)
- 97 :
- ■宋公国まとめ(修正ver.)
【公爵】曹鶴(字・子翠、号・珀麒麟)
【配下】陳宮、樊カイ、諸葛格
【亡命者】曹休夫人、曹肇、曹纂
【亡命予定者】曹休
【公都】宋都(旧名・沛)
・平安宮⇒公宮。建安風の質実剛健な建築様式
・東市、西市⇒繁華街。布告はここで行われる
【軍政】屯田制
【民政】孝行の奨励、道路整備、水路整備
【文化】詩作の奨励(詩歌会の開催)
- 98 :
- 詩歌会の名を何といたそう?何晏が来るのも配慮に入れて考えなきゃな!
………zzz
曹纂が孤の懐中で寝息をたてている。ああ〜なんて可愛いんだろう
- 99 :
- >>94
夫人「何晏が、来るのですか?」
(最近は愁いも薄れ、血色も良くなっていた曹休夫人だが、この時ばかりは顔色を失った)
夫人「まさか、私どもの事が知れた訳ではないでしょうが………。
何晏は恐ろしい男です。宋公さま、どうか子どもたちだけは守ってくださいませ………。」
曹纂「ぅぅん…………………………………………………………………………。」
(曹纂だけは、小さな口をもぐもぐと動かして満足げに寝返りを打っている)
曹肇「………。
何晏は、よほど自信があるのですね。
敵地に乗り込んでも死なぬ自信。公然と自分の詩を世間に発表できる自信。
どこか、羨ましいと感じてしまいます。
敵だとは、わかっていても………。」
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