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2012年09月なりきりネタ174: 邪気眼-JackyGun- 第Y部〜楽園ノ扉編〜 (249) TOP カテ一覧 スレ一覧 2ch元 削除依頼
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邪気眼-JackyGun- 第Y部〜楽園ノ扉編〜


1 :2012/01/04 〜 最終レス :2012/10/22
かつて、大きな戦いがあった。
個人、組織、そして世界をも巻き込んだ戦い。
戦士達は屍の山を築き上げ戦い、
それでも結局、勝者を産まぬまま、
戦いは、全てが敗者となって決着を迎えた。
そして、『邪気眼』は世界から消え去った――――筈だった。


2 :
《過去への扉》─カコログ─
邪気眼―JackyGun― 第零部 〜黒ノ歴史編〜
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1225833858/
邪気眼─JackyGun─ 第T部 〜佰捌ノ年代記編〜
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1251530003/
邪気眼-JackyGun- 第U部 〜交錯世界の統率者編〜
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1260587691/
邪気眼-JackyGun- 第V部〜楽園ノ導キ手編〜
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1267327455/
邪気眼-JackyGun- 第W部〜目覚ノ領域編〜
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1275651803/
邪気眼-JackyGun- 第X部〜黎明ノ紡ギ手編〜(なりきり板)
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1287755863/
邪気眼-JackyGun- 第X部〜黎明ノ紡ギ手編〜(なりきり板避難所)
http://774san.sakura.ne.jp/test/read.cgi/hinanjo/1316984542/
《堕天使の集いし地》─ザツダンスレ─
http://yy702.60.kg/test/read.cgi/jakigan/1280151413/
《世界ノ真実》─マトメウィキ─
http://www31.atwiki.jp/jackygun/

3 :
Q.ここは何をする所だ?
A.邪気眼使いたちが戦ったり仲良くしたり謀略を巡らせたりする所です。
Q.邪気眼って何?
Aっふ・・・・邪気眼(自分で作った設定で俺の持ってる第三の目)を持たぬ物にはわからんだろう・・・
 邪気眼のガイドライン(http://society6.2ch.net/test/read.cgi/gline/1261834291/)を参考にしてください。
 このスレでの邪気眼とは、主に各人の持つ特殊能力を指します。
 スタンドとかの類似品のようなものだと思っておけばよいと思います。
Q.全員名無しでわかりにくい
A.昔(ガイドライン板時代)からの伝統です。慣れれば問題なく識別できます。
どうしても気になる場合は、上記の雑談スレでその旨を伝えてください。
Q.背景世界とかは?
A.今後の話次第。
Q.参加したい!
A.自由に参加してくださってかまいません。
Q.キャラの設定ってどんなのがいいんだろうか。
Q.キャラが出来たんだけど、痛いとか厨臭いとか言われそう……
A. 出来る限り痛い設定にしておいたほうが『邪気眼』という言葉の意味に合っているでしょう。
 数年後に思い出して身悶え出来るようなものが良いと思われます。

4 :
世界観まとめ
邪気眼…人知、自然の理、魔法すらも超えた、あらゆる現象と別格の異形の力
包帯…邪気を押さえ込み暴発を防ぐ拘束具
ヨコシマキメ遺跡…通称、『怪物の口腔』
            かつての戦禍により一度は焼失したが、アルカナを率いる男【世界】の邪気眼によって再生された。
            内部には往時の貴重な資料や強力な魔道具が残されており同時に侵入者達を討ってきたトラップも残存している。
            実は『108のクロニクル』のひとつ
            
カノッサ機関…あらゆる歴史の影で暗躍し続けてきた謎の組織。
アルカナ…ヨコシマキメの復活に立ち会い守護する集団。侵入者はもとより近づくものすら攻撃する。
       大アルカナと小アルカナがあり、タロットカードと同数の能力者で構成される。
プレート…力を秘めた古代の石版。適合者の手に渡るのを待ち続けている。
世界基督教大学…八王子にある真新しいミッション系の大学で、大聖堂の下には戦時から残る大空洞が存在する。
108のクロニクル…"絶対記録(アカシックレコード)"から零れ落ちたとされる遺物。"世界一優秀な遺伝子"や"黒の教科書"、"ヨコシマキメ遺跡"等がある。
邪気払い(アンチイビル)…無能力者が邪気眼使いに対抗するべく編み出された技術
遺眼…邪気眼遣いが死ぬとき残す眼の残骸。宝石としての価値も高いが封入された邪気によってはいろいろできるらしい

5 :
age

6 :
age

7 :
age

8 :

・・・
・・・
・・・
・・・

9 :

……第3世界における【正浄化】の発現を確認しました。
仮想人格:【KR O】及び【E RA】の消失を確認。
仮想人格の消去に伴いアンチ【浄化】システム【CODE:存在眼】を起動します
・・・
・・・
・・・
――【Error】

【正浄化】の中和に失敗しました。緊急プログラムに基づき、
最終防御隔壁:人造魔眼『白眼』によるレジストを実行します
・・・
・・・
・・・
――【Error】

最終防御隔壁消失。レジストに失敗しました。
これにより10.00.00秒後に自動人形 Serial No.IDO コード『ソ 』は消失が確定しました。
よって、これより最終プログラムを実行します


最終プログラム起動――――【プログラム名:『14』】


10 :

……
……    様。SerialNo. O コード『  』は、貴方の従者として、
つつがなく貴方の最後のご命令を成し遂げた事を報告致します
願わくば、貴方の願った世界に果てなど無く
あらゆる可能性と混沌、矛盾と幻想を内包する世界である事を

11 :





  『        光あれ        』






12 :
我はメシアなり
この汚れた世界を粛正する

13 :
俺魔王だから神とかワンパンだし

14 :
>>13
相手にしてもらえてないだけだ

15 :
>>14
やっちまった

16 :
ほう…旧世界の蛆共め
最期の力を振り絞って世界を再び『変生』させたか…
誕生と死滅を繰り返し、果たして今度は何時まで保つかな……?

17 :
静かだな――これが、『無』か

18 :
2ちゃんねるのキモヲタで無能な運営のことだよw

19 :
ほう、俺の地獄眼を見たいのか
構わんが、死ぬぞ?

20 :
粋がりおって造が
地獄ならとうに見飽きておるわい・・・

21 :
高くなりすぎた敷居を、元に戻す必要がありそうだな……?
混沌としたガイドライン時代の再来だ!

22 :
>>20
ほざけ老いぼれが
地獄の業火をその身に受けるがいい
地獄眼、解放……!

23 :
カオス、ふふ……混沌を望む者が此処には集うのだよ
ほう、あの地獄眼の使い手か
ならば見せてもらおうか、その力とやらを!!

24 :
――……遺眼を集めてネックレスを作りたいの
能力者の目を集めてきてくれないかしら
……報酬ですって?
そうね、私好みの眼なら貴方の願いなんだって叶えてあげる
どう、やる?やらない?

25 :
やれやれ、こんな時に暢気な物だね?
空を見てごらん
日を喰らう漆黒の闇……そう、”金環日蝕”ってヤツさ
173年ぶりに訪れた凶事の前触れだよ、もうすぐキミ達には死のワザワイが降り注ぐ……
さあ、誰が最後まで生き残っていられるかな……?
ククク、ハーッハッハッハ!

26 :
下らんな…
魔女も地獄も金環も、王たる我が足下に跪いておれば良い
屈服せよ、この王冠眼の輝きの前にな!

27 :
あら綺麗な光の眼……
その眼、私にちょうだいな
悪いようにはしないわ
私の“血塗られた蒐集(クリムゾン・コレクション)”に加えてあげる!!

28 :
フン、魔女が…
王たる我に向かってその高慢……不愉快極まるな
欲しいなら力で奪ってみせよ、そのか弱い女の細腕で出来るならな!

29 :
ル・ラーダ・フォルオル
邪気眼など過去の異物よ
我等、聖眼使いこそがこの世界を統べるに相応しい

30 :
愚カナ人間共メ
古ヨリ我等「異形ノ者」ニ受ケ継ガレシ鬼眼<m力、ソノ身デ味ワエ!

31 :
かつての戦場。かつての世界。
いまはその残滓のみが中空を煙のようにかすかに漂うのみとなり
ひときれの「残り粕」がはらりと闇に舞い落ちた。
「…空しいものだな」
闇の中佇む彼女は、その残骸とすら呼べなくなった代物を摘みあげ、指先でくしゃりと潰す。
それを指先ですり潰すたびに、闇は一層深まり、彼女の存在自体すらも消えてしまいかねないほどに静まり返っていく。
 ハジマ     オ ワ
「再開りのための終焉り、か」
「やはり…空しいな」
呟く言霊も、かつて共に戦った戦友の記憶も、すべてが闇に溶け消えていく。
おそらく自分しかいない闇の中、おそらく最後の一遍が虚空へと散りに消え
「…往くか、第四世界」
最後の言葉が、世界を紡ぐ

32 :

―――そうか、始まるのか。
(風にマントをはためかせながら空を見上げる俺)

33 :
細腕、細腕ねェ……
ま、間違っちゃいないわ
―――あら、なにかが動き出しそうよ
ねえ王冠眼の貴男、楽しそうじゃない 
イッテミマショウヨ、ラクエンノカナタニ

34 :
楽園?
ラクエン、だと?
ほう……このディストピアに未だ我の見ぬ地があったとはな
フン、興が乗った
良いだろう、付き合ってやろうぞ魔女よ……我が進軍に後れをとるなよ!

35 :
また戦いが始まる…
いったい戦火は、世界をいくつ焼き滅ぼせば気が済むと言うのだ…

36 :
蘇るさ!世界は何度だって
そこに立ち生きようとする人々がいる限り!!

37 :
クッ・・・腕が疼くな
あの金環日蝕を見た日から、ずっと・・・!

38 :

─────……   バチッ!   ……─────



「あァ……永い、永い永い、夢を見ていたのか。……え? 俺は、よ」
始まりに邂逅するのは、未だ覚めぬ夢のような、原初の暗闇。
曖昧なまま溶け込んでいた意識が引力に引き寄せられて形を作り、古ぼけた椅子に預けていた体の支配を取り戻す。
バキバキと何かが砕ける音を体中から響き渡らせ、神経の一本、筋肉の一筋、細胞の一片までを余さず確かめさせる。
「ふ、くははッ、本当に『久しぶり』だな……! 憎き愛しき、我らが世界……!
 それともまさか──『初めまして』、になるのかもしれん、か。……新しき世界に」
「彼」は双眸に──もしくは、右腕の『眼』に──様々な色の光を宿して、様々な色を滲ませた声を絞り出す。
その色は嬉しさでもあり、同時に悲しさでもあり、また寂しさでもあり、同時に喜びでもあった。
口元には獰猛な笑みを浮かべ、鼓動はドクドクと止められぬ笑いを打ち鳴らしている。
一歩、また一歩と獲物に忍び寄る肉食獣の如く緩慢な、しかし時が来れば弾かれたように飛び出せる。
慎重と俊敏と苛烈を秘めた鈍い動きで体を持ち上げて、そのしなやかな足で以て重力に抗った。
                                            ・ .・ .・ .・ .・ .・
「くくッ、懐かしの新世界に……どれ、挨拶でもしておこうか。なあ? 親愛なる諸君」
深淵の向こう側──計り知れぬ巨大で厚き壁の逆側へ、そう言葉を投げかけると、踏み締める様に足を見えぬ扉に向けた。
コツ、コツ、コツと足音を響かせて、光と闇を隔てる薄き壁を前にする。
そして、ドアノブを掴み捻り、一気に開け放つ──!
ア タ ラ シ イ
久しぶりの世界は、目も眩む太陽の光と、鼻孔を擽る潮の香りに満ちていた。

39 :
楽園は朽ち果てた
創造主の手によって、世界は三度滅ぼされてしまったのだ
これで四度目――嗚呼、また戦乱の幕が上がる……

40 :
ここは物語の最果て
夢も希望も壊された、忌避すべき世界の末路
救いは無く、贖いも許されず、ただ枯れた乾土の荒野を餓えた亡者の群れが流離う
  ディストピア
《 死 楽 園 》 へ よ う こ そ 、 能 力 者 諸 君 ・ ・ ・ 。

41 :
えーー、なにそれーー
結局死楽園なワケ?がっかりよー私がっかりー
王冠眼の人だってがっかりよねー、きっとこう言うのよ?
“興が殺がれた、魔女よどうしてくれるつもりだ”とかなんとか――
彼女は言葉を切った
不意に鼻腔を掠めたある香が、現実≪イマ≫のものだとは思えなかったからだ
その香はどこか懐かしく、しかし人の身で臨むにはあまりに荘厳な
何万年もの太古より生命の根源が育まれた場所の香であった

42 :
……ほう
この大気、地質、ここはもしや……
フッ、フハハハッ!
戯れに貴様の提言に乗り、遥か遠方の地までやって来た訳だが……
大義であるぞ、魔女よ!
この生命の息吹!
弱々しいが、かすかに惑星の脈打つ鼓動を感じる……
素晴らしい場所だ、気に入った!

43 :
邪悪な波動を感じる…… 上かッ!?

44 :
またも生まれ出たか、神のみ得ざる眼持ちし者たち
ああ、なんと愚かな…なんと憐れな子供たちであろうか…
自らの命を燃やすことしか知らず、ただ徒に美しく輝く
であるからこそ悲しく、また愛しい…
無邪気にも邪気を纏いし忌み子たちよ
妾の愛に包まれ、消し炭となるまで…ああ、消し炭となるまで煌めいておくれ…

45 :
ああ、確かに、煌めいて消し炭になるだろうさ……。
ただし貴様が、だ。
(男が右手を振り上げる。すると、手の動きに合わせて炎が波を作る。
 灼熱の熱波が先行し、その一瞬後に火炎が女の身を包みこむ)
藁だろうと妾だろうと、炎はその身を焼き尽くす。
さながら地獄の釜の底。焦熱に身を焦がし、灼熱に身を灼く。
先の世迷言にて、愛、などとほざいていたが──
この世に光や愛などいらず。満ちるは闇と怨み。
怨みが怨みを呼び込み螺旋を描く。止まる事の無い怨恨が蔓延ろう。
それは劫火の侵略の如く──それこそが火怨。
(手首にて爛々と赤く輝く眼──第三の眼、『邪気眼』
 その眼は禍々しく毒々しく美しい、深紅の虹彩を宿していた)
我が『火怨眼』、そのものよ。

46 :
粋がるなよ、邪眼の民
テメエらには『天敵』が存在するってコト、忘れちまったか?

プレートNo.]――解放
崩壊の章の断片、アルマゲドォォン!
喰らえよ、粒子分解の神光! グッズグズに崩壊(こわ)してやるぜェェ!

47 :
何だ・・・?
世界がやけに不安定じゃないか、今日は

48 :
仰(こう)、と風が鳴いた。
天を衝く摩天楼群、その頂点に佇む女性がその音(こえ)を聴き、ふ、と振り返る。
漆黒の闇を煌々と照らす摩天楼たちは、昇り始めた朝日を浴び、鈍い輝きをもって新たなる世界の誕生を祝う。
海に近しい巨大な中洲に、美しく乱立する大都会の隙間を潮風が吹き抜ける。

─────……   バチッ!   ……─────

朝日とともに街を彩る彩光は消え、目も眩むような太陽の光に、彼女は手の平をかざしてそれを遮る。
腰に提げた刀と"ホルスター"が、かちゃりと揺れた。
「…懐かしいな」
呟いて、ふと首を捻った。ここに来るのは初めてなはずだ。
何か、得体のしれない"力"もしくは"存在"に、『言わされた』ような、そんな感覚がした。
また再び、潮の香り強い風が鼻孔を擽るように吹き抜けていく。
久(あたら)しい世界、第四の次元。
戦場は、勢いよく開かれた摩天楼屋上の扉をもって始められた。

49 :
フン…
 パラダイスロスト
楽園を失いし者が続々とこの地に群がりおって…、まったく不愉快だ
「ウリエルの裁き」を下されたいらしいな?

50 :
宿命の刻は近い、な
やれやれ・・また面倒なことになりそうじゃないか?

51 :
フフフ、元気な子であるな
焼かれては熱いではないか…
欠けし者のみが手に入れる、全なる者をも滅する力…神のみ得ざる眼…
火怨眼の者、おまえの眼は、まだ醒めていないのだよ
妾の望みはこの火を吹き消すことではない
激しく煌々と燃える様を見たいのだ
そこな者たちも、己にしか見えぬもののその先を眼に捉えたならば、またこの地を訪れよ
その時にこそ、ああ、妾を包むこの火炎も、妾なる風を受け、美しく燃え盛るであろう…
ああ、美しき焔よ
怨み憎しみに燃ゆるその紅は、清く潔い情熱にも似る…
祝福されし者、崩壊の奇跡の代行者…彼と輝きあう姿を見せておくれ
(女は恍惚とした表情のまま、炎と同化しゆっくりと消えていった)

52 :
潮風吹き抜け香る街並み。
旭日眩く照らす水平線。
高空遠く響く汽笛。
何の変哲もない紛う事無き都市に風来坊有り。邪気眼使い有り。
潮風に錆びついた蝶番が、ぎぎいいいいいい、と嫌味な悲鳴を挙げた。
山吹色の暁光が「彼」の身を一挙に刺し染め、その姿形を顕にする。
光という光を飲みこみ食らいつくす漆黒のスラックス、三千世界の悪意に染まったが如き闇色のジャケット。
氷河を凝り固める冷気を宿す蒼色の瞳、色という色を排し一切合財を拒絶した白髪。
到底この国、否、この世の人間とは思えぬ「彼」が、周囲一帯の何処よりも高みに存在する場に踏み入る。
希望を内包する一色の光の中に、黒髪が風に踊った。
そこで佇んでいたのは長身痩躯、妙齢の女性。「彼」と同等、もしくは少々高い背丈を持っている。
パリッと糊の効いたワイシャツと、スマートな体躯に誂えたジーンズが、彼女の色気を余さず放っていた。
腰には刀と"ホルスター"────堅気の人間とは言い難いらしい。
「彼」は、彼女を気にも留めない様子でその傍を通り、屋上の淵にて眼下に街を置く。
                       ミ ラ イ
「想像していたよりも────ずっと新世界は現実的だな、え?」
独り言とも、彼女への語りかけとも取れる呟きを漏らし、一身に朝日を浴びる。
浮かんでいる笑みは狂人の笑みか。
「It's a new world。狂ってる? それは褒め言葉だな、くくッ」
常人には理解の範疇外の言葉は、彼女に如何聞こえるのか。
そして「彼」は振り向き女性を視界の中心に収めた。
「世界は新生したことだ、近々楽しい事が起きそうじゃないか。
 今、そこらでやってるような小競り合いなんかじゃあなく、もっと激しく、とてつもなく惨く、果てしないほど巨大な事が。
 楽しみだな……ん? そうは思わないか、なあ? マドモアゼル。いや、フロイライン?
 ……ところで、そういえば。君は誰で、こんな時間に、こんなところに、どうして居るんだ?」

53 :
そうかよ、変な女だ。
自分が焼かれてるってのに嬉しそうとは、こっちは気持ち悪い事この上ないね。
……俺の『眼』が、何だって? 目覚めてないだと? んなもん百も承知だ。
こいつは、この『眼』は……いや、死にゆく奴に教えた所で無意味だな。
(炎が一段と燃え盛り、女の体を燃やし尽くす。炎に消えた女を一瞥すると、男は目を背けた)
炎の煌めきが見たいなら、いつまでも地獄の底で楽しんでろよ。あばよ。

……で、貴様は何者だってんだ。
邪眼の民? 随分とまあ古めかしい言い方しやがって。
貴様も地獄の釜の底が見たいって口なら、俺が切符を切ってやるよッ!!
(右手首の邪気眼が妖しい光を放つ。
 一瞬遅れて炎が周囲に顕現し、目の前を焼き尽くす──と思いきや、眩い光が火炎を切り裂いた!
 慌てて男は横に飛んで光を避けると、直前までいた地面ごと全てがプレートの攻撃を被った)
んなっ……プレートだと!?
"神代の邪眼殺し"と名高い、クソッタレの板切れを! 貴様が持ってるとはな!
面白ぇ、ふざけやがって! 『火怨眼』ッ!!
(男が右手を前にかざすと、再び炎が顕現する。そして右手の前に収束し、渦を描いて解き放たれる!)
炎の渦に飲まれて、たらふく炎を飲み込んでくたばりやがれッ!!

54 :
あらあらまあまあ、“する筈の無い香”に次いで“神の光”を使う者ですって?
ちゃんちゃら可笑しいわ、嗚呼、可笑しいわ
ころころと、意外にも鈴を鳴らすような声で魔女が嗤う
思いつきで来たとはいえ、この新世界は随分と賑やかなようだ
目の前に現れた、恐らくこの地の先住人なのであろう不機嫌な人物
魔女伝統の術を使うまでもない、それよりも眼を使うまでもないかもしれない
朱唇を嫣然と歪ませて魔女は嗤う
耳に届くは誰かの呟き、王冠眼の彼の随従のものだろうか
――――まあ、そうであっても、そうでなくてもどちらでも良いことだ
面倒事はお断り、でもあなたの“光”に興味があるわ
ふふっ、罪人になった覚えはないけれど、そうね、裁けるものなら裁いてみなさいな
笑みの形の唇を開いて魔女がそう言った

55 :
フ――
フハ、フハハハッ、全くもって素晴らしい!
よもやこうまで我を退屈させぬとは正に望外、見上げた地ではないか!
失楽園の咎を負った先祖に感謝を捧げねばな!
さあて、神光の使い手とやら――王たる我を失望させるなよ?
その神秘、あまねく我が所有物としてくれるわ!

56 :
その目気色悪すぎこっち見んなど田舎富山男R。その目気色悪すぎこっち見んなど田舎富山男R。その目気色悪すぎこっち見んなど田舎富山男R。その目気色悪すぎこっち見んなど田舎富山男R。

57 :
覚醒めよ――
力は汝と共に在り
世界の全てを汝の欲しいまま、望むままにするのだ・・・
そう――――欲望こそが力なり

58 :
漆黒の騎士≪ナイト・オブ・ダークネス≫とは俺の事よ

59 :
錆びつき、軋みをあげた鉄扉の音に、遠方にかすかに煌めく海を見つめていた彼女は、わずかに顔を下げ後ろを振り向く。
鋭く強い陽光により、顔は妖しく陰に覆われその表情を隠す。長めの前髪もまた、彼女の顔を自然に、しかし確実にその特徴的な三白眼を見えづらくする。
全て暗殺の、闇の殺人者として生きる為に身につけたものだ。
扉を開け、出てきた男に、彼女はすぅとその目を大きく細める。
この世の闇をすべて固めたかのような服装に、凍てつく双眸、そして全ての色を失った白髪。

男は、まるで彼女が存在しないかのごとく横をすり抜けると、摩天楼の縁に立ち、鉄柵も段差もないそこからコンクリート・ジャングルの淵を眺める。
既に街には人が出回り始め、この街の生きざまを呈しはじめていた。
                       ミ ラ イ
「想像していたよりも────ずっと新世界は現実的だな、え?」
それは独り言なのか、彼女に語りかけたものなのか。
変わらず彼女は少し顔を下に向け、表情を薄く隠したまま男をじっとりと睨みつづけている。
「。ヨ、ッ、ニ・。」カク、テ、ニ、・ゥ。。、ス、・マヒォ、盧タヘユ、タ、ハ。「、ッ、ッ・テ。ラ 」
「…?」
男が何事かを口走るが、どこの言葉か、まったく聞き取れない。
わずかに彼女が首をかしげた瞬間。男はぐりんと振り返った。
半歩、彼女が身を引く

「世界は新生したことだ、近々楽しい事が起きそうじゃないか。
 今、そこらでやってるような小競り合いなんかじゃあなく、もっと激しく、とてつもなく惨く、果てしないほど巨大な事が。
 楽しみだな……ん? そうは思わないか、なあ? マドモアゼル。いや、フロイライン?」

60 :
「………」
陽光を背にした男、その表情を窺い知るのは難しいが、本能的に、もしくは勘によって
彼女は腰に下がる小刀へとかすかに手を伸ばす。
「……ところで、
 そういえば。君は誰で、こんな時間に、こんなところに、どうして居るんだ?」
ふっ、と男を包んでいた異形の気配が消える。いや、なりを潜めたという表現が正しいかもしれない。
「……」
伸ばしかけていた手から力を抜き、まるで安否を確かめるかのように手首を軽くこねる様に揉む。


「………」
かすかな沈黙。朝日が昇り切り、下界の街を照らし出す。
「…随分と」
彼女から紡ぎだされた声は、小さく、細く、しかししっかりとした強みを持った声。
「…随分と、饒舌だな
 故も知らない、初対面の人間に対して」
男のいる位置に対して、垂直になるようにゆっくりと歩き出す。時計の文字盤でいえば、12時と3時の関係にある位置、といえば分かりやすいだろう。
落ちてしまえば、まず無事では済まない狭い摩天楼の頂点、その縁に、彼女はなんの迷いもなくつま先がかかるほどにまで近寄る。
「――その雰囲気からすると、"能力者"か?
 …そうだとしても、突如現れ、所見の相手にいきなり名を訊ねるなど、無礼講にもほどがある」
彼の凍てつく眼光とはまた違う、冷徹で虚無的な視線を肩越しに一瞬投げかけ。彼女は続ける。
「…私はこれから"仕事"があるんでな。失礼する」
そして、足をかけた崖の縁から軽く跳ね、谷底へと落ちて行った。

61 :
ハッ、おいおい!
しっかりしろよ炎野郎! さっき言ったよなァ?
”邪気眼(てめえ)”と”プレート(おれら)”との相性はとびっきり最悪なんだっつの―――通るかよッ、オラァ!
……そら、ご覧の通りよ
威勢は良い、認めてやるぜ
が、相手が悪い
「邪眼の民」が覇を唱えていい時代はとっくの昔に終わってんだ、第一世界の時点でとっくに、な
ま、諦めて崩壊(こわ)れろや
これも運命だと割り切りゃ少しは気も楽に……、……あ?
…何だよ、オイ
わらわらうじゃうじゃ、うざってェったらねえ
魔女? 王冠? 知らねえな、知らねえが……てめえらがもし「邪眼の民」だっつーのなら、俺のプレートで纏めてブチ消しちまうけどそれでいいか?
――――嗚呼、面倒くせえな
いいや、殺そう。名乗りぐらいはくれてやるよ、冥府の駄賃にでもするんだな
聖絶執行機関『教会』所属
洗礼名(コードネーム)、『神の強き太陽(シャムシエル)』。忘れちまって結構だ、どうせすぐアバドンにぶち込んでやっからよォ!
プレートNo.]――崩壊の章の断片、アルマゲドォォン!
(眼前に翳した掌から粒子分解の太い白光線を放ち、薙ぐように振り回す)

62 :
片や荒涼とした大地
片やコンクリートジャングル
クッ・・分からない、どうなってやがるんだこの世界は!

63 :
畏れるな
何そう難しい話じゃない
お前のその『眼』で見た光景全てが、この『世界』なのさ

64 :
ちっ・・・混沌と秩序、二つの理念が喰らい合ってるような世界じゃねぇか

65 :
それがどうした――ッ
それこそがッ、我らが邪気にふさわしい
そう思わんかね?

66 :
          ・・
なっ―――、きょ、『教会』ですって?!
冗談じゃない、冗談じゃないわよ
こんなところで、『教会』の奴に会うなんて……ッ!
それまで楽しそうに嗤っていた魔女ではあったが
突如現れた男――シャムシエルの言葉に仮面の奥の双眸を見開いた
『教会』、鼓膜を震わせたその単語に自然と頬が強張る
彼自体は“魔女”についてどうとも思っていないようではあるが
用心して用心しすぎることはない
特に―――こと『教会』に関しては……
まあそもそも、素直にはいそうですかと殺されてやる義理もないが
ちょっとそこの貴男! 
少しだけ、少しだけ手を貸すわ
ここで教会関係者にやられる訳にはいかないの
鉄壁の守り人よ、我が聲に応えしものよ、汝の力今ここに示さん
阻め(ガード)――ッ!!
(ばさりと漆黒のマントをはためかせると呪力を構成、展開し
 火怨眼の青年と王冠眼の男を(こちらは念の為)守るように
 最小限の魔術防御壁を作り出す)

67 :
何だとッ!? 炎が紙キレのように切り裂かれっ、
(白光が煌めき、男の頬を掠める。
 そのことに気が付き、瞬きをする間に顔色が蒼然とした後、再びその場から飛び退く)
ッッぶねえええーーーーーッ!!
ああ、クソ! さっきよりも本気の一撃だってんのに……!
『教会』……あぁ、そうか。成る程、そこなら"板切れ"があってもおかしくはないな……。
邪気眼の敵対視も十分過ぎるほどの理由だ。
……上等じゃねぇか。こちとら『教会』とは敵対してんだよ。
恨みつらみは存分だ……我が『火怨眼』の餌食に丁度良い"獲物"だ!
此処で! 打ち倒して! 手柄挙げさせてもらおうじゃねえか! ああ!?
(男は威勢よく啖呵を切り、再三の火炎の顕現を行う。
 激しく燃え上がる火炎は、しかし、男の虚勢を表しているようだった)
(……とは言え、奴のプレートと『火怨眼』の相性は最悪その物。
 良くて相討ち、悪けりゃ──ってところか。ああ、本当ツイてねぇな……。だが、やるしかねえ!)
来いよ、『神の強き太陽(シャムシエル)』! 一思いにブチ殺してやらぁ!
南無さ──ん?
(いざ飛び掛かろうとした瞬間に、目の前に防御壁が築かれる。
 飛んできた白光がそれを突き破ろうとし──それをしのぎ切る)
何、だと……!? あのプレートの一撃を、防いだ!?
っと、仮面のアンタ! ありがとうよ!
アンタも『教会』とは良い関係じゃないってか。敵の敵は味方ってわけか、ありがたいこって!
(魔女を見遣り、口元をニヤリと歪めた。
 先程までの自棄を起こしていた表情ではない──その表情に伺えるのは、強い意志!)

68 :
して────勝機も見えた!
手を貸してくれるって言ったよな? なら、もう少しだけ手を貸してくれ、奴を倒せる!
さっきも見たように、下手な攻撃は迎撃されちまう。
だから、俺はこれからヤツに突っ込む。そして0距離で一撃ブチ当てる。
アンタにやってほしい事は一つ。「次の俺への『一撃』を防ぐ」、ただこれだけだ。
わかったな? わかったよな? それじゃあ勝利の女神を無理矢理笑わせに行くぞ!
俺の命運はアンタに託したぜ!
さあて待たせたな? そろそろこのお終いにしようじゃねえか!
『火怨眼』ッ! 全力行使……!!
(邪気眼が赤く光る。渦巻く邪気と共に顕現する火炎は膨れ上がり、紅蓮の光が辺りを照らす)
地獄まで一直線。案内してやるよ────フレイム、バーストォォォッ!!
(視界を覆い尽くすような巨大な火炎の波。しかしその勢い自体は先程までの火炎と大差はない。
 ともすれば、同様に白光に切り裂かれるだけだろう)
(当然である──大技に見せかけた目くらましであるのだから)
おおおおおおおおおおおおおォォォォォォォォォッッ!!
(放った火炎に追走し、雄叫びを挙げて疾駆する。疾走する。躊躇いを抑え込み、恐怖を捻じ伏せて。
 右手に残った絞りカスの邪気をかき集めて、敵前で叩き込まんがために。勝利せんがために)

69 :
足りぬ…
混沌が足りぬ…

70 :
朝日の中、張り詰めた糸がわずかに緩んだ沈黙。
時間にして数秒程度、数十秒程度の、一分にも満たぬ静寂。
凄惨ともいうべき笑みを湛えたままの「彼」と、鋭い刃を思い立たせる表情の麗人。

「…随分と」
ぽつり。
沈黙を破る言葉の声量は小さい。女らしく少々か細く聞こえるかもしれない。
「…随分と、饒舌だな
 故も知らない、初対面の人間に対して」
だが、その声は何処か彼女の強さの表れている声であった。
女性は今立っているバベルの塔の、断崖絶壁の淵へと歩き出す。
その所作は一切の迷いも感じさせず感じられない。
いよいよ縁に足が掛かった。恐怖は欠片も見えず、まるでそれが当然であるかのように。
「――その雰囲気からすると、"能力者"か?
 …そうだとしても、突如現れ、所見の相手にいきなり名を訊ねるなど、無礼講にもほどがある」
肩越しに彼女が振り返る。
一瞬だけ、「彼」と彼女の視線が交錯した。
狂気を嬉々として見据え映し出す蒼色と、現実を空虚に且つ鋭く見極める暗青色の視軸が重なり合った。
「…私はこれから"仕事"があるんでな。失礼する」
彼女が摩天楼から足を離す。
瞬き一度の間だけふわりと空中に留まり、――重力に身を任せた。

71 :
彼女の身投げを見送ると、「彼」は愉快この上無いといった様子で喉を鳴らす。
「くくッ、くははッ……フラれちまったようだ、なあ? くくッ」
小指の爪ほどの残念さも見せずに、可笑しい可笑しいと笑い声を挙げる。
まともな感性では得られぬ狂喜を顔と言わず素振りと言わず、体の前面、否、全面に出していた。
「はははッ! きっと最後で主導権を握らせちまったのが悪かったんだな? 全く、女というのは扱い難きものよ」
語り掛ける者も無く――正確には第四の壁の向こうに居るのだろうが――げらげらと笑いながらぶつぶつと呟きを吐き出していく。
まさしく狂人と言う他無い姿は、どのような人間が見ても同じ判断を下す事だろう。
          テスサ
「誘えたのなら、手遊びに一曲、"踊"ってもらおうと思っていたが……まあいい。時間なら在る。
 後は運命の導き……いいや、陳腐だな。世の理、大いなる流れ。いやいや、何でもいいな?
 俺とフロイラインの間に"よくわからない何か"が働けば、また何時か近い内に相見えるだろうよ」
狂笑を張り付けたまま、「彼」は元来た道を戻る。
暗黒色のブーツの音を地面で響かせて、陽光を遮る建物へと入っていった。
「もうすぐ面白いことが起きるだろうが、どれ。俺は何をしようか?
 プレート、邪気眼、異能……なんだ、娯楽はいくらでもあるじゃないか。
 あァ、楽しみだ。心待ちだ。待望だ。最高じゃないか、え?」
鉄扉が再び耳障りな声を挙げて、今度は外界との連絡を絶たんとする。
がちゃり。そのまま扉は壁と同一平面上へと並び、正しくその機能を果たした。

そして数秒の後――――都市一番の摩天楼は、轟音を立てて瓦解した。

72 :
ハッ、仕舞いにゃ虚勢かよ!
醜態晒してんじゃねえぞ「邪眼の民」ッ、ああもういいぜてめえにゃ飽いた!
もう一切合切面倒くせえからさっさとブチ消してやるよ! このアルマゲドンの”粒子分解の神光”で――――な、にィッ!?
(阻ま、れた!?
オイオイ一体何が起き、て――『魔術防御壁』!? ってェことは、こいつァ……)
ク、ククク
クハハ、ハーッハッハッハ!                                        ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
何だ何だよそういうことかよ魔女さんよォ! なるほどねえ。魔女ってのは通称でも何でもなく、てめェそのものって訳か
……なら今度こそ、遠慮なくブチ消されても文句はねェな?
俺ァ『異端審問』なんつー拷問趣味に興味はねえ。さくっとブッ殺してやるから、感謝しろや
――――んで?
さっきからギャーギャー五月蝿えが、それがてめェの切り札か
火炎の大海嘯ねえ……だぁから何度言ったら分かンだよ、ドン・キホーテ。いや違えな、蟷螂の斧、蜉蝣っつった方がPで似合いだぜ
何か勘違いしてるみてえだから教えてやる
さっきあのクソ魔女(あま)に神光を防がれたのは、あくまであの防御壁が魔術によって構成(つく)られたものだったからだ
邪気眼を行使した防御手段だったら、「あの程度」の出力でブチ抜いてやれたのによ
……気付いたか?
ヒッハハ! その通り、”出力上げりゃあ魔術防御壁だろうが分解(ばら)して崩壊(こわ)して貫通(つら)ぬくのは別に訳ねえってこと”よォッ!!
侵蝕率、20%から50%……ガァァァァ、出力上昇ォォ!
コレデ終ワリダ! 地獄ニ直滑降シロ、呪ワレシ邪竜ノ堕トシ仔共! 消エテ失クナレッ、邪眼ノ民ィィィッッ!

73 :

無限光――破邪聖絶する天使火砲(アイン・ソフ・オウル――アルマゲドン・ゴグマゴグ)ッッ!!

(プレートの侵蝕率を限界まで上昇させるシャムシエル)
(白き清浄なる光を湛えた神々しい天使の翼を背に生やし、その双翼から先程よりも強大な分解光線を照射する…………、が)

「おおおおおおおおおおおおおォォォォォォォォォッッ!! 」
(……ナ……ンダとォ!?
バカな、何故だ、何故消えてねえッ! あの大出力なら火炎の波濤だろうが防御壁だろうが問答無用でブチ消したはず!
だったら、他にどんな不確定要素、が……!?
魔女が手の内に何か隠し持ってやがったのか、それともこのクソ炎野郎の隠し球か、まさかさっきから傍観してやがる王冠の野郎が何か……!?
いや、こいつ――まさか、光線の僅かな隙間を抜け――ッ!?)
ク、ソ、ガ、キィィィィイイイイイイッッ!!!
(吼えるシャムシエル)
(炎の青年の拳が辿り着く前に、万象触れた存在を瞬時に粒子消滅させる天使の光翼を叩き付けようとして)
(――それより一瞬早く、拳は天使の顔面を打ち据えた)
ゴ、ガァァァアアア……ッッ!!
(瞬間、消滅の光翼が宙に掻き消え、力を失った男は荒野を滑りながら大きく吹き飛ばされる)

74 :
ま、そゆことよ
私もここで彼奴にぶち殺されたり、教会本部(ウエ)に報告上げられたりしたら困るの
って、何いきなり――えッ、ちょ、無茶苦茶言うわね貴方
魔術にはそれなりの準備ってものが必要でさっきのは……ってあぁッ! 聞いてないし!!
ッチ! 彼奴が出力上げたら持ち堪えられるか分かんないってのに……
このっ、猪突猛進野郎!! やってやるわよ!!
意識下での高速詠唱を開始しながら魔女はそう毒づく
詠唱補助儀式(事前の準備)無しに無理やりに呪力を構成、
展開しようとすることにより掛かる負荷は想像以上で、
万力で頭を締め付けられるような軋んだ痛みに顔を顰める
しかしそうまでして魔女が火怨眼の彼を支援したのは教会が憎く、
そして同時に恐ろしいが故
それから彼の熱さに乗せられてしまったが故だろうか
この魔女、場の空気に染まり易いのが美点でもあり欠点でもあるのだ
鉄壁の守り人よ、我が聲に応えしものよ、汝の力今ここに示さん
最終詠唱の途中、シャムシエルの高笑いが聞こえた
どうやら出力を上げるつもりらしい
魔女は歯噛みする
ムカつくのよ教会風情が! 絶対的弱者は邪気の影に脅えて暮らすがお似合いだってのに……
魔術の放出はもう止められない、シャムシエルの巨人か、魔女の魔力か……
一瞬で良い! 耐え……ろ――ッ!!
阻めッ(ガード)!! 
呪文の完成を告げる言葉と同時に火怨眼の青年の前に
複雑な文様が万華鏡のように交錯する薄い魔術防御壁が出現する
瞬間プラチナにも似たまばゆい光が当たりを照らし、世界を崩壊させる
荒涼とした大地はただ一点のみを残し正しく神が降臨したかのごとく美しく輝いている
その一点、魔女の防御壁に守られた一瞬の間、そこに悪魔の舌にも似た業火が雪崩れ込む
雄たけびを上げた青年が純白の羽持つ天使に向かって邪気を迸らせ――
――その顔面を右拳で殴りぬくッ!!
たら、と仮面の下から流れた血に気付き、魔女が乱暴にそれを拭う
何がどう作用してあの結果になったのかは分からない
己の作り出した防御壁などあの神光の中では一秒と持たなかったであろう
だが重要なのはそこではない、重要なのはシャムシエルが今地面に伏しているという事だ
やっ……た? いや、油断は―――
言いながらも訝しげに眉を顰める
魔女というものは疑り深いものなのだ

75 :
やれやれ、シャムシェル君は猪相変わらず突猛進過ぎていけませんねぇ。
(穏やかな微笑を浮かべた金髪の人物が遠くの岩山の上で戦闘を眺めていた)

76 :
「あの魔女(おんな)……見かけないと思ったらこんなところにいたのか。
 折角イイ眼(ブツ)が手に入ったから届けにと思って魔力を追って来たが……。
 よもや自らが闘っているとはな。珍しい事もあるものだ」
【頭からすっぽりと黒いローブを被った人物が金髪の人物の背後から音もなく現れる。敵意はないようだ】

77 :
フッ――
フハハハ、血湧き肉躍る愉しい見世であった!
『教会』の天使を相手に勝ってしまうとはな!見巧者たる我をも唸らせる素晴らしき戦い、まこと快なる哉!
(まあ、我の助力が無かったとは言わん)
(王冠眼の能力で二人に「武運の祝福」を与えてやった)
(それでも絶対の相性差を覆すには心許なかったが…どうやら我が出るまでも無かったな)

78 :
(シャムシエルの出力上昇――そして放たれる、より強大な白光)
……俺の炎が貴様の"プレート"には無力なのは理解したぜ。
けどよ――
(直撃の一瞬前に現れた魔術防御壁が、光線を受け止めた)
(もたらされた刹那の隙――男は構わず防御壁の傍を通り抜ける、恐らくはすぐさま崩壊しただろう)
(しかし攻撃は、男には当たっていない)
――当たらなければ意味がないよなあッ!?
(白光を潜り抜け、目の前に一歩、踏み込んだ)
(引き絞られた拳は既に射程圏内!)
(同時に輝く天使の翼、必滅の光は輝きを増す)
(果たして拳は放たれ――光が光線となるよりもほんの少し早く、顔面を捉えた)
『火怨眼』!ヒートッ、
(右腕に纏った邪気は火花を起こし、火炎となって拳の速度をブーストする)
(着弾時から更なる加速、威力を増して殴り抜ける!)
  ブ レ イ ク ッッ!!
(『神の強き太陽(シャムシエル)』は光翼を失って、荒野を吹き飛んで行った)

79 :

ぜぇ……ぜぇ……、名乗って、なかったな? 『神の強き太陽(シャムシエル)』。
俺はッ、"カノッサ機関"の末端(エージェント)! 『火怨眼』の赤穂了吾!
貴様の洗礼名(コードネーム)、確かに刻んだ! ……そして、俺の名を刻んでおけ。
(高らかに勝利の名乗りを上げて、数秒)
(半ば崩れ落ちる様にして膝をつく)
ッッはぁぁぁぁー……あ、危なかった……!?
一歩、どころか半歩間違えてりゃあ今頃小指の破片も残っていなかったな……!
(もしも。仮面のねーさんが協力してくれなかったら、一瞬すら壁が持たなかったら。
 シャムシエルの攻撃が早かったら、俺が一度でも躊躇っていたら、走力が足りなかったら。
 ……あの光の前に、塵となって消滅してただろうな……)
(取り留めのない思考が浮かんでは消えていく、ifへの恐怖が今更になって背筋を凍らせる)
(でも、まあ……倒せたわけだ、今頃震えててどうするんだって話だよな)
……ああ、仮面のねーさんご協力ありがとうサンキューなマジ大好き愛してる――世界で上から10番目くらいに。
というわけで後よろしく。俺ぁもう邪気が尽きちまったよ。次立ち上がってきたら俺は逃げるかナイフで特攻しかできねーぜ。
でもまあ、なあに、きっと気絶してることだろうよ。ただ思いっきり殴っただけだから骨は折れても死んではいないがな。
心配ならロープで手でも縛っておけばいい。"もしも"でも最後みたいな出力は出せやしない筈だから、それで十分。
さて、と。仮面のねーさんは魔術使いってのはさっきわかったし、見物客は邪気眼持ちだな?
邪気はしっかり感じられるしな。それと、お褒めの言葉アリガトサン。
それから――
(ちらっと遠くを見る。二人の人物が居る、岩山の方角だ)
――邪気の香りが漂ってるぜ。視認は出来ないが、また"客"らしいな。
こちとら行き成り転移(とば)されてきて何が何だかってのに、何でこうもまあ障害に事欠かなさすぎるんだか!

80 :
ん…?
風の向きが、変わった?

81 :
(が、ァ……クソが…!
あのクソ野郎、邪気を込めた拳で思い切り撃ち抜きやがった!
頬骨は折れてないみてえだが……脳が揺れてやがる。身動きも取れやしねえ、クソッタレ……!)
ふ、ぐ、クハハ……
いい気になるんじゃ、ねえぞ……邪気眼使い、共
このアルマゲドンのプレートは「模造品(レプリカ)」よ……本物のプレートは侵蝕力が強すぎて、『上級天使』連中しか操れねえからなあ……
ハッ、惨めったらしくて情けねえことに……今の俺じゃァ、聖遺物も扱えねえ雑魚さ
だがよ……
(ニィ、と口角を上げて)
俺ァ、必ずのし上がってみせる……!
『上級天使』に成り上がって、正真正銘本物のアルマゲドンで……邪眼の民共を、粉微塵にブッ崩壊(こわ)してやらあ……!
赤穂了吾……覚えておくぜ、次に遭った時がてめェの最期だ……!
ま……今日の所は、俺の敗北にしといてやらァ
どうやらお迎えも来たみてえだしな……懺悔は帰ってからたっぷりしてやるよ、金髪神父野郎
全く、今日は厄日だぜ――――じゃあな、クソッタr

(カラン、と地面に模造品のアルマゲドンのプレートが落ちる)
(言葉の途中で、シャムシエルの姿が光と共にザアっと掻き消えてしまった)
(空中には天使の翼を生やした、紅蓮の長髪を持つ幼い少女。その手には『No.]:崩壊の章』アルマゲドンの本物のプレートがある)
(『上級天使』の一人、『神の光(ウリエル)』だ)
「”始末”しちゃったけど。いいよね……?」
(無表情な少女は金髪の男に向かってそう事後確認した)

82 :
おお、スゴイスゴイお疲れ―。
あはー、ありがとーって、えー、貴方の中で10番目? 
貴方の交友範囲によって喜ぶべき気か否か決まるところよね、それ。
王冠眼の貴方も、アリガト。
手、貸してくれたんでしょ? 敵の敵は味方、ほんとにそうよねー。
あー、一応縛っとこうかなー、どうしよっかな――!?
(戻ってきた火怨眼の青年―――赤穂と名乗っていた、
が勝利したのを見止めて贈るは気のない拍手と言葉。)
(愛してる、の言葉を飄々と受け止め、へらりと一笑する。)
(しかし、念の為と言われると表情少々引き締めて暫し思案する様子を見せた刹那、
シャムシエルの笑い声が鼓膜を震わせる。)
(直ぐに身構えるもどうやら動けないらしい。)
                                              コワレ
(と、逃げ口上の最後の一音、それを口にしかけたシャムシエルが光と共に崩壊した。)

83 :
これだから教会ってのは――――
(吐き捨てるように言って魔女は唇を噛み締める。)
(光の源を辿り視線を遠く、赤穂が見つめる方向――岩山へ向ける。)
(風向きが変わったのだろう、吹き抜けた風が魔女の濃い金髪を揺らした。)
胸糞悪言ったらありゃアしない。
私の“大事な客人”には手を出さないでよ? 神父サマと天使チャン。
教会の奴らに敵意があるか無いかは分からないわ。もう一人も、ね。
まぁ、注意しとくに越したことはないと思うわ。
ねぇ、“邪気眼持ち”のエージェントさん。
(遺眼―千里眼―の能力を使って人影が何者かを垣間見ると一つ舌打ち、己の“客人”が傍にいると知ると剣呑そうに目を細める。)

84 :

「ええ。構いませんよ、ウリエルさん。
 月並に異端審問にかけられるよりは、貴女に裁かれた方が彼にとっても幸福でしょう。
 それに、どちらにせよ彼はそろそろ『壊れる』予定でしたからね」
法衣を着込み、浮かべる微笑を崩さぬ金髪の男は、
背後の人物などまるで“いない”かの様に……そう、つまらない背景の一部であるとでも言うかの様に、
上空の『神の光(ウリエル)』へと優しげに語りかける。
距離が離れているが、恐らく発した言葉はウリエルに伝わっている事だろう。
と、そこで先程まで鑑賞していた二人の異教徒がこちらへと意識を向けた事に気が付き、
そして彼らが攻撃しないよう此方に言葉を向けたのを確認すると……にこやかに手を振った。
「……さて。異教徒の方々をあまり怯えさせるのも本意ではありませんし、
 模造プレートの性能も確認できましたからね。僕はそろそろ帰還するとしましょう。
 ウリエルさんも、帰還するなら送りますよ?」
「おっと、そういえば自己紹介がまだでしたね。僕は『神の力(ガブリエル)』。
 改宗がしたくなったら、いつでも懺悔に来てください。では」
距離は離れているが、やはり異教徒達に言葉は届いた事だろう。
そして、微笑を浮かべながら指を鳴らすと、金髪の男の周囲に
一瞬だけ恐るべき衝撃波が発生し――――次の瞬間金髪の男の姿は掻き消えていた。

85 :
能力者が次々と殺し合う
まるで互いが互いを滅ぼし尽くすまで終わらないと言うかのように…
まさか、この第四世界の理は……!

86 :
金髪の男──ガブリエルと名乗っていた──がいなくなり、岩山の上にはローブの人物だけが残される。
男が去る時に発生した衝撃波によってローブが激しくはためき、被っていたフードが後ろへ落ちた。
「……」
──そう、"それだけ"である。
一瞬とは言え人間など紙切れのように吹き飛んでもおかしくない程の衝撃波。
その衝撃波の中、その人物は"何事もなかったかのように"佇んでいた。
「……終わった、か」
フードの下から現れたのは太陽光を跳ね返さんばかりの美しい白銀の髪。
ローブの中に納まっていることから、長髪であることが予想出来る。
歳は十代前半と言ったところ。人形のように整った容貌(かお)、大き目の瞳──。
凡そ場の雰囲気にそぐわない、触れたら壊れてしまいそうな少女。
「……」
少女は静かに瞳を閉じる。
次の瞬間──少女の姿は音もなくその場から消え、崖の下を歩いていた。
──────
「久しいな、魔女よ。……ああ、"この体になってから"会うのは初めてだったか」
自分を見る魔女の反応に気付いて補足を入れる。
「そんなことよりイイ眼(ブツ)が手に入った。今回は三つだ。
 『死鳥眼』、『蠱惑眼』……そしてお前の欲しがっていた『法王眼』だ。
 手に入れるのに少しばかり苦労したが……なに、報酬はいつものアレでいい。
 血のように赤いワイン、それと少しばかりの生贄(つまみ)……期待しているぞ」
ニヤリと口を小さく歪め、少女は嗤う。
「しかしお前が他人と一緒にいるとはな。お前と付き合う奇特な奴は私だけかと思っていたよ。
 ……別に心配しなくてもいい。私は魔女(こいつ)の知人だ」
【戦闘の終わりを見届け、三つの遺眼を持って魔女に接触する】

87 :
エターナル・フォース・・・

88 :
―――落ちていく。
たかが数百mの高さ、落ち切るまでには数秒も掛からず、そのわずかな時間に、人間は人生を幻視するという。
そして堅いアスファルトに叩きつけられ、その儚い人生を終えることだろう。普通であれば

ずどん、と鈍い音をあげて、彼女はコンクリートジャングルの深淵に降り立った。
片膝を立て、両の手のひらを大きく広げた姿勢で固まる。それはまるで、落下の衝撃を大地へと逃がしているかのような
しかしそれも一瞬。もしその場所に誰かがいたとしても、音に気付き振り返った時には、手に付いたアスファルトの破片をパッパと払うワイシャツにジーパン姿の女性がいるだけだ。
「………。。。」
と、その動きが止まる。
わずかに首をもたげるかのように下げ。目線を流す。振り返ることはしないが、その意識が注がれているのは今しがた自分が飛び降りてきた摩天楼。
途端、彼女が発した音よりもはるかに大きく、重く、不快な和音をたてて
無邪気な子供につつかれた、出来の悪い積み木のように摩天楼が崩れ始めた。
舞い上がる砂塵、遠雷のような轟き。
彼女の癖の強い黒髪が、砂塵まみれの風に攫われてその表情を隠す。
隠れる一瞬前に垣間見えたその顔には、どろりと濁りわずかな憤怒を滾らせた三白眼が、正面をじっとりと見据えていた。
「…手荒い」
そこまで言ってまた言葉が止まる。
右腰にあるホルスターから小さな拳銃を引き抜き、高く掲げて一発。
真っ黒な硝煙とともに打ち出された、たった一発の9mmペラバラム弾は、彼女めがけて落ちてきた乗用車大の瓦礫を打ち抜き、粉砕した。
打ち抜かれた瓦礫の破片がひとしきり落ちてくると、ひときわ強い風と共に、砂塵が収まり始める。
拳銃を高く掲げたままの彼女は、最後の瓦礫が背後で落ちる音と共に、乱暴気味に拳銃をホルスターに突っ込む。
「…手荒い、見送りをありがとう」
ぎろり、とかつて摩天楼が伸びていた空を睨み上げる。
朝焼けの澄み上がった青空だけがコンクリートの巨木に囲まれ、ぽっかりと空いた穴のように映し出されていた。
その後、この騒ぎで彼女が行うはずだった"仕事"を断られたのは言うまでもない

89 :
なんだ、意識飛んでなかったのか。シャムシエル、貴様案外タフだな。
……模造品(レプリカ)だぁ? オイオイ、何だそりゃ。それで俺は死にかけたっていうのかよ……?
ハッ、いいじゃねえか。苦虫噛みつぶした思いしてんのは貴様だけじゃないんだ。
次は、次こそは! 誰の手も借りず! 俺が、貴様を、焼き尽くす!
今日は見逃してやる、次の邂逅が決着の時――――
(カランという音と共に、プレートが地面に落ちた)
(シャムシエルが光の粒子と消えたのだ)
――――は? 何、が

(                 ぞ       わ       ッ       !    !                 )

(激しい嫌悪感が肌を駆け巡り、神経を駆け抜け、脳に心臓に『眼』に伝染する)
(全身の毛穴や血管が収縮し、瞳孔を開かせ、更には邪気が尽きて休眠にあった『眼』がこれでもかと開かれる)
(今の彼は、総毛立つという言葉を体現していた)
(シャムシエルが居た地面から視線を外し、空へと――天使の姿をした赤い髪の少女へと投げかける)
か、はッ……! 道理で……道理で"気持ち悪い"訳だよな?
こんな素晴らしい(きみのわるい)『天使』サマがこんなにも近くにいるんだからよお!!
邪気眼使いの体には、これほど嫌な物はないよなぁ……!! 俺が、特別合わないだけかもしれねえがな……。
そして、いけ好かない金髪野郎も俺には絶対的に合わないな。
『神の光(ウリエル)』、『神の力(ガブリエル)』。まだ、俺の中に刻まねえ。だが覚えたぞ、貴様らの名!
だがな、こちとら生涯無宗教だっての――うお!?
(ガブリエルの衝撃波に、思わず顔を腕で覆う)
(次見た時には、天使を名乗る人間は姿を消していた)

──────――――――

あー、仮面……いや、魔女のねーさん?
この子供と知り合いなんだな? あ、いや、別に詮索するつもりじゃないが。
俺は赤穂了吾。ねーさんとは共闘しただけの、まあ名前も知らない間柄だ。そっちの見物人とも同じようなもん。
しかし『遺眼』か。成る程な、ちょいちょい感じてた邪気はそれが原因か……。
それを持ってるってこたあ、当然"奪って"きたんだよな?
……俺の『眼』は結構ポピュラーな能力だから、大した珍しさは無いだろうし、襲わないで欲しいもんだね。
さて、と。ひと段落したんだが……
(荒涼とした平野、潮の香り、所々に見る低木)
(転移術式で飛ばされてきた赤穂には一切見覚えの無い光景)
……此処って、何処だよ?

90 :
フハハハ!
王たる我も転移されたのだ、よく知らぬ
我が『遠征』の力で世界を少しばかり回ってみた所、荒れ果てた野と廃墟ばかりよ
故、我はディストピアと名付けた
もっとも、異なる様相を呈している大陸もあるらしい
硝子張りの楼閣が天を摩し、鉄の馬が縦横無尽に行き交う、とな。実に良い、我好みの異文化である!

91 :
(『神の力(ガブリエル)』によって転移した『神の光(ウリエル)』)
(無表情な少女は柔和な彼に視線を向ける)
「あのまま全員……消しても、良かったわ。
《火怨眼》と《王冠眼》は元より……《遺眼の魔女》は、『教会』の禁書目録に名前があった。
プレートは邪気眼と相性が良い。……でも、今の調子で遺眼を集められれば、それも分からなくなる。量が質を凌駕するなんて……信じたくないけれど。
でも、貴方のことだから。……考え無しの行動では、ないのでしょうね。」
「まあ、いいわ。
それで……ガブリエル。今度は、何処に向かっているの? あたしの行動は……あなたに、一任している。」

92 :
岩山の上の“目標”を見止めた魔女は、金髪の人物が手を振ったのを見て顔を顰める。
『教会』の法衣を一部の隙も無く着込んだにこやかな彼を、見た目のまま信用することは当然出来る筈も無く。
距離があるにも拘らず、こちらに届く柔和な声の主に精一杯の嫌悪を向ける。
改宗なんて、こっちから願い下げだっての―――……
ガブリエルの残した衝撃波に髪とマントを吹き上げられながらも魔女が岩山から視線を外すことは無かった。
「『教会』の大天使が何で……こんなところに、来たんだか―――
あぁ、やっぱり貴方か……って貴方、こんな可愛いお人形みたいな外見になっちゃって、
 ・ ・ ・ ・ ・ ・
そういう趣味にでも目覚めたの?」
二つの“脅威”が去ったのを確認した後、ほっと一息吐く。
過ぎたものは放っておいて、次なるは自身の”客”との取引である。
岩山からこちらへと歩いてきた相手を近距離で再度確認したものの、気配と容貌の差に一瞬言葉に詰まる。
が、ぽかんと間抜けに開けた朱唇を直ぐに笑みの形に戻すと軽く揶揄する言葉を放つ。
そうして今回の成果を見ると、年頃の乙女のように顔の横で手を組ませ潤んだ瞳で黄色い声を上げた。

93 :
「っきゃー! 三つもなんて毎回イイ仕事してくれるわねホント。
しかも法王眼まで! もう好き好き大好き愛してる!
これ、この蕩ける様な蜂蜜色の瞳……ああんたまんないッ!
オーケーオーケー、報酬はいつものように、ね」
うっとりと舐め回さんばかりに三つの遺眼を見つめ、興奮する魔女。
途中客人に抱き着かんとするも恐らく避けられると予想してか未遂に終える。
上機嫌に鼻歌など歌いながら、報酬の件は二つ返事で了承したのだった。
ちなみに、魔女は基本的にボッチである。
「んん、何言ってるの? 遺眼の優劣は美しさ優先なのよね、私」
ちゃっかりと蒐集≪コレクション≫から外れようとする赤穂に釘を刺すことも忘れずに。
とはいっても冗談半分の戯れ言である。
「私と王冠眼の彼も連れ立って来ただけなのよ、“声”に導かれてね。
ユートピア   ディストピア
楽園って聞いてきたのに、外見はとんだ死楽園……
ああ、やっぱりここには海はなかったのね。
でも、ここには母なる海の匂いがあるの。
どうしてかしら……? ねぇ赤穂クン、あなたはどんなところから来たの?」
王冠眼の男の言葉を聞いて、その通りだと頷いて見せる。
残念そうに嘆息しながら言葉を紡ぎ、なんとも無しに赤穂の“元居た“世界を訊ねた。

94 :
………おいおい…
こんな所にお客さんたぁ珍しいな…
あんたら、ここで一体なにやってる?
なにしにきた
返答いかんじゃ歓迎してやってもいいが…
当然、その逆も覚悟してもらうぜ…?
『STAND BY』
(気だるげに歩み寄ってきたくわえ煙草の男は、腰に提げた二対のダーツケースに右手をかける)

95 :
ぎぃ、と掠れた音をたてて、古ぼけた木製の扉が開いた。
目も眩む摩天楼街の裏、太陽から文字通り隔離された"陰"の場所。
薄暗い部屋のまま、彼女はどさりと薄汚れたベッドに倒れこむ。
白いワイシャツは薄闇に、紺のジーパンは白いベッドシーツとの対比で、その姿が闇の中にほんのりと浮かび上がる。
「…状況は?」
ベッドに倒れるなり、突如切り出す。話しかける相手は、ベッドのわきに置いてあるトランシーバー
正確には、トランシーバー型の探知不能の通信系魔術端末。
『…白鴉(ヴァイス)か
 良くないな、というかむしろ最悪だ。』
その向こうから聞こえてくるのは、若々しい男の声。
少しばかり疲弊の色が見えるのは、先程の騒ぎのせいだろう
『悪いが、支援はできそうにない。騒ぎが大きすぎる
 お前も、動き難くなる前にそこから離れたらどうだ?』
「いや、もう遅い。騒ぎが大きすぎて、警察の動きが凄まじく速い
 あと眠い。
 注文の品は、あとで取りに行く」
『相変わらず昼夜逆転を続けてるのかよ…むしろお前にとっては夜が活動時間なのか?』
「…さぁな」
『そういや、別報なんだが
 "ディストピア"で能力者同士の激突が―――』
「………」
『――…寝たか』
世界は更けていく。
混沌という夜に向かって

96 :
「喜んでもらえて何よりだ。喰わずに持ってきた甲斐がある。
 あと、これは趣味ではない。勘違いするな」
魔女の喜びようを見て少女は微笑(わら)うが、直後に少しムッとした表情になる。
「赤穂とやら、さっきも言ったが心配はするな。
 貴様が魔女(こいつ)と共にいる間は私の獲物(たいしょう)には該当せん。
 ──が、子供はやめろ。貴様が瞬きしている間に心臓を潰す程度造作もないぞ。
 私にはエリザベスという名前がある。呼び方は好きにしろ」
赤穂に視線を向け、忠告する。
    ディストピア
「しかし死楽園、か。私もここに来てからは荒野と岩山ばかり──。
 そろそろこの景色にも飽きてきたぞ。久し振りに血(さけ)も飲みたいし、な」
赤穂から視線を外さずに、軽く唇を舐める。
「ともあれ移動しなければ景色も変わりはしない。
 おい貴様、何かいい案はないのか?あるなら乗ってやる」
王冠眼の男に視線を向け、小さな体で見上げながらニヤリと笑った。

97 :
は、アンタは随分と使い勝手の良い『眼』を持つんだな王サマ。
こっちは火を操るだけの何て事の無い『眼』だっつーのに。
死楽園(ディストピア)……地獄じゃないだけまだマシだろうよ。
それより……ガラス張りの楼閣、鉄の馬だぁ? ビルと車の事か?
(ビルや車を知らない? どっかの原住民か?
 いや、もしそうだったらこんなウィットに富んだ会話なんぞ出来ないか……?
 どうにも文化のズレがあるな。この妙な地とも関係してるのか、それとも……)
……まあいい、とりあえず周囲は荒野と廃墟なんだな。
周囲には都市っつか、町は無いんだろうかね。あれば大分楽なんだろうが……。
ん? 俺の居た所? さっき王サマが言った楼閣と鉄馬の乱立する所だ。
楽園(ユートピア)とも死楽園(ディストピア)とも言い難い、機会と規律の世界。
少々生きるにはつまらない、まあでも生きるには困らない世界さ。
この潮の香りか。適当な憶測だが、きっと近くに海があるんじゃないのか?
悪いが俺はアウトドアの知識は無いから、確証に乏しいがね。

さて、エリザベスだな? オーケイエリー、覚えたぜ。口は慎もう、だから友好関係を築こうぜ、な?
俺の血なんぞ大して美味くも無いし、そう怖い事を言うんじゃねーっての。
此処から移動ってのは賛成だけどな。
まだ日が昇ってからそれほど時間も経ってないが、此処にいた所で何があるって訳でもあるまい。
(王サマに何か案があるなら良いが、無いなら機関の術師に掛けて賭けるしかないか。
 ……こんな辺鄙なところに電波が届いてるんだったら、の話になるけど)

98 :

「ウリエルさん。聖務に忠実なのは貴女の美点ですが、焦りは禁物ですよ。
 魔女もその他の異教徒も確かに力を付けていますが――――今はまだ『その時』ではありません」
金髪の男は、相も変わらず無表情な『神の光(ウリエル)』に対し、
人差し指を上に立て、優しげな微笑を向けて見せた後、
転移の先にたどり着いた白い――不気味な程に白い空間を歩き始める。
「確かに、貴女が彼らの『数』を危惧する事も解ります。
 ですが、僕達の手元にはその『数』に対応する為の模造プレートも有るじゃないですか。
 そうでなくとも、僕達には『あの方』が付いていますしね。
 正しき者は、救われる。そうでしょう?」
ガブリエルが何時も通りの楽しげな声色で告げたのは、上級天使としては極めて正しい発言。
だが、その発言をするガブリエルが持つ雰囲気は、彼らの「主」を妄信しているにしては、どこか白々しい。
感情を読めないという意味では、ある意味ウリエルと同じレベルの『無表情』の笑みがそう感じさせるのか。
そして、白い部屋を延々と歩いたその先で、ガブリエルは立ち止まり。
「ああ、そういえば行き先を言っていませんでしたね。
 僕達が向かっているのは、敬虔なる下級の天使達が聖務を果たしている場です」
ガブリエルが不気味な白い空間の一点を手で押すと、扉が開く様に空間が割れ
――――紅蓮に燃え盛る大きな屋敷。
――――響き渡る破壊と崩壊の音色、小さな子供達が奏でる悲鳴と絶叫の交響曲。
「先日、邪眼の民が運営している汚れた孤児院が見つかった様でしてね。
 異端審問官を志す下級天使によるその孤児院の完全浄化を監督するのが、僕らの役目らしいですよ」

99 :
ワハハ…そう剣呑になるもんじゃない
儂らはお主のその力が欲しいのじゃ、お主自身に興味はさらさらありゃせんよ
我ら、楽園を目指して行進する《道化の旅団(サーカス)》
人呼んで――――【パレード】
儂は団長のサルバトーレ。お主の的当て(ダーツ)の力、さらわせていただこうかの

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