2012年09月創作発表78: ジョジョの奇妙なバトルロワイアル3rd第五部 (356) TOP カテ一覧 スレ一覧 2ch元 削除依頼
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ジョジョの奇妙なバトルロワイアル3rd第五部


1 :2012/07/14 〜 最終レス :2012/10/12
         (_   /
     マ     / / 気 .ジ い
     ジ    〈   | に  ャ い
     す    ヽ  | 入. イ よ
     か    l´  | っ  ロ
      ッ   _|  | た !
 _   !?  /   \!
   `゙´ ̄`´__  /\     /
.    r' ̄ ̄  _ヽ/☆  7/ ̄
   /'´二 ヽ / ニ/ }  ☆  ☆
  _/l、二ニ ノニヽこ{_ノ、☆  ☆
   _二ニ´--一 ' |,ィ=.\ ☆  ☆
   /  / (・)   (・ソ ゙´  |ヽ、☆
.  | ,.く    '-_ヽ._   ヘ `ヽ、_
.   | ハ.ヘ ヽ ̄ ,フ !r'   __j | ト、 /
  ハヘ  |ヽ、`¨´/ >< ルヘ | /
   /ヽミヽ,>、 __¨    トー つyァ Y
    _Y 、_ノ_、ヽ  `仁´ノハヽ|
  |'´ /l、  _)¨´   (ヽニノ,.ヘ
  | /  7 ´ _.)     l ̄  ヘ
  | |  `ヽ´_ノ      ヘ    ヘ
  ヽ ヽ__,/        | _,.-ヘ

このスレでは「ジョジョの奇妙な冒険」を主とした荒木飛呂彦漫画のキャラクターを使ったバトロワをしようという企画を進行しています
二次創作、版権キャラの死亡、グロ描写が苦手な方はジョセフのようにお逃げください
この企画は誰でも書き手として参加することができます
詳細はまとめサイトよりどうぞ

まとめサイト
http://www38.atwiki.jp/jojobr3rd/
したらば
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/15087/
前スレ
ジョジョの奇妙なバトルロワイアル3rd第四部
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1334678828/

2 :
名簿
以下の100人に加え、第一回放送までは1話で死亡する(ズガン枠)キャラクターを無限に登場させることが出来ます
Part1 ファントムブラッド
○ジョナサン・ジョースター/○ウィル・A・ツェペリ/○エリナ・ジョースター/○ジョージ・ジョースター1世/○ダイアー/○ストレイツォ/○ブラフォード/○タルカス
Part2 戦闘潮流
○ジョセフ・ジョースター/○シーザー・アントニオ・ツェペリ/○ルドル・フォン・シュトロハイム/○リサリサ/○サンタナ/○ワムウ/○エシディシ/○カーズ/○ロバート・E・O・スピードワゴン
Part3 スターダストクルセイダース
○モハメド・アヴドゥル/○花京院典明/○イギー/○ラバーソール/○ホル・ホース/○J・ガイル/○スティーリー・ダン/
○ンドゥール/○ペット・ショップ/○ヴァニラ・アイス/○ヌケサク/○ウィルソン・フィリップス/○DIO
Part4 ダイヤモンドは砕けない
○東方仗助/○虹村億泰/○広瀬康一/○岸辺露伴/○小林玉美/○間田敏和/○山岸由花子/○トニオ・トラサルディー/○ヌ・ミキタカゾ・ンシ/○噴上裕也/
○片桐安十郎/○虹村形兆/○音石明/○虫喰い/○宮本輝之輔/○川尻しのぶ/○川尻早人/○吉良吉影
Parte5 黄金の風
○ジョルノ・ジョバァーナ/○ブローノ・ブチャラティ/○レオーネ・アバッキオ/○グイード・ミスタ/○ナランチャ・ギルガ/○パンナコッタ・フーゴ/
○トリッシュ・ウナ/○J・P・ポルナレフ/○マリオ・ズッケェロ/○サーレー/○プロシュート/○ギアッチョ/○リゾット・ネエロ/
○ティッツァーノ/○スクアーロ/○チョコラータ/○セッコ/○ディアボロ
Part6 ストーンオーシャン
○空条徐倫/○エルメェス・コステロ/○F・F/○ウェザー・リポート/○ナルシソ・アナスイ/○空条承太郎/
○ジョンガリ・A/○サンダー・マックイイーン/○ミラション/○スポーツ・マックス/○リキエル/○エンリコ・プッチ
Part7 STEEL BALL RUN 11/11
○ジャイロ・ツェペリ/○ジョニィ・ジョースター/○マウンテン・ティム/○ディエゴ・ブランドー/○ホット・R/
○ウェカピポ/○ルーシー・スティール/○リンゴォ・ロードアゲイン/○サンドマン/○マジェント・マジェント/○ディ・ス・コ
JOJO's Another Stories ジョジョの奇妙な外伝 6/6
The Book
○蓮見琢馬/○双葉千帆
恥知らずのパープルヘイズ
○シーラE/○カンノーロ・ムーロロ/○マッシモ・ヴォルペ/○ビットリオ・カタルディ
ARAKI's Another Stories 荒木飛呂彦他作品 5/5
魔少年ビーティー
○ビーティー
バオー来訪者
○橋沢育朗/○スミレ/○ドルド
ゴージャス☆アイリン
○アイリン・ラポーナ

3 :
スレ立てありがとうございました。
私の投下は前スレ>>486 〜 スレの最後 までです。
よろしくお願いします。

4 :
前スレ書き込めないのでこっちに感想。
乙でした!
セッコ登場の時点で嫌な予感はしていましたが、DIOが混じることでここまでえぐい状況になるとは…
少年たちよ安らかに眠れ。ちびっこは生き残れない運命なのだろうかw
あと本能で怖がるFFが何気にかわいいw
H&F逃げてー!

5 :
拙作「羊たちの沈黙」のwiki収録完了しました。
指摘のあった誤字、自分で気がついたミスなどは修正しました。
収録後さらに気がついた点などがありましたらご報告ください。

6 :
遅くなりましたが投下乙です。
いやぁ、自分はホラーな面をゾクゾクしながら読んでたんで楽しかったです。
ジョジョってやっぱりホラーな漫画なんだなとつくづく思いました。次回も期待してます!

7 :
自分で読み返した際、DIOがまるでチョコラータがゲームに参加しているのを知っているかのような考察をしていたので、以下の一文を本文中に追加しました。
チョコラータもこのゲームに招かれているといいが。
放送を目前に迎え、DIOは以前にも増して名簿の配布が楽しみになっていた。

ついでに以下の文をDIOの状態表に追加しました。
セッコから、組織の事、チョコラータの事、セッコの事などの情報を得ました。
それがどの程度のものか(チョコラータのスタンドについてなど)は、先の書き手さんにお任せします。

それでは、今晩あたりc.g氏の投下でしょうか?
予定時間を告知して頂ければ、支援に参りますのでよろしく。

8 :
したらばに投下告知来てたんですね
今夜24時了解です。

9 :
いやぁ、吸血鬼が人を食う・柱の男が吸血鬼/人を食うってのはあったがまさかカニバリズムとは……ッ!
思いつきそうで思いつかない、コロンブスの卵的斬新なアイデアッ!
DIOのカリスマがヤバいぜ!

10 :
ウィル・A・ツェペリ、ワムウ、J・ガイル、スティーリー・ダン、モハメド・アヴドゥル
トニオ・トラサルディー、宮本輝之輔、マリオ・ズッケェロ、ジャイロ・ツェペリ
ビットリオ・カダルディ、ビーティー、橋沢育朗、ドルド
投下します。

11 :
 ◇ ◇ ◇

 ぱちぱちぱち……―――

 ◇ ◇ ◇

12 :


直後、順を追って三つの影が動いた。
ワムウが隙をついてツェペリに襲いかかる。ノーモーションから足の筋肉だけで跳躍、水平方向に跳ぶように彼は獲物に向かっていく。
次に動いたのはウィル・A・ツェペリ。襲撃に気づいた彼は距離をとるように後ろに飛び下がり、同時に波紋を込めた水滴を解き放つ。
練りに練った波紋を円盤状に。波紋カッターがワムウを迎撃せんと宙を飛ぶ。
そして三つ目の影は―――
「なッ!?」
「…………ほゥ」
ツェペリが驚きのあまり帽子を落としかけた。ワムウは興味深そうにそう唸った。
ワムウの行く手を遮り、ツェペリが放った円盤は地にたたき落とされた。ジャイロ・ツェペリと名乗る、謎の男によって放たれた鉄球によって。
ホールが沈黙に包まれる。その沈黙は場違いなほど明るい男の声によって破られた。
「おっと、お取り込み中、4・2・0〜! 横やりしてしまってすまんが、少しだけ俺の話を聞いてくれない?
 いやいや、そぉんな時間はかからな……―――」
男が全てを言い切る前に、またも三つの影が動きだした。
飛びかかるワムウ、とっさに防御姿勢をとったジャイロ、そして二人に割ってはいるように飛来した波紋カッター。
「こいつは手荒い歓迎なことでッ」
憎まれ口を言い切る暇もなく、彼は身を翻す。凶悪な笑顔を浮かべ、ワムウが来訪者に襲いかかっていた。
ワムウは一目見てジャイロを気に入ったのだ。
飄々とした態度の後ろに隠れる確かな実力と自信。それはワムウにあの男、ジョセフ・ジョースターのことを思い出させたのだ。
誇り高き『ツェペリ』の姓。それはワムウにとって、もう一人の認めるべき男、シーザー・アントニオ・ツェペリを思い出させたのだ。
魂を震わせた二人を思い出させる男の登場はワムウの心を揺さぶった。咄嗟に身体が戦いを求めるほどに。
ワムウの頭から垂れ下がる髪が、飛びかかるカッターの軌道をほんの少しだけずらしていった。ツェペリの攻撃はかわされた。
ワムウはジャイロに向かって一目散に向かっていく。ジャイロは柱の男の蹴りを避け、続く拳をしゃがんでかわす。
悪態ぐらいつかせてくれてもいいじゃねーか! そんなジャイロの悲鳴を無視し、柱の男はなおも攻勢をかける。
素早い連撃、呼吸すらする暇もなく攻め立てていく。柱の男が大きく構えをとった。体勢を崩したジャイロが膝をつく。大技で勝負を決めんとするワムウ……ッ!
「―――!」
だが、直後、男は持ち上げた両腕を交差させ、防御態勢をとった。
一筋の風が吹き、ウィル・A・ツェペリが豹のように柱の男に飛びかかっていた。
同時にその脇をすり抜け、ワムウを狙って投じられた鉄球。どちらも食らえば手痛いダメージは確実だ。

13 :
ツェペリに対しては牽制の意味も込め、カウンターの拳。鉄球に対しては、直感的に避けたほうがいいとみて、関節外し。
鉄球が凶暴な声をあげ、ワムウの皮膚を掠めていった。人間離れした回避方法に、ジャイロはあっと声をあげ、驚いた。
ワムウの拳はツェペリを捕えられず、空振りに終わる。そして同じく、ツェペリの拳もワムウを捕えることはなかった。
直前で身体を捻り柱の男が反撃、シルクハットが拳圧で吹き飛んだ。
戦いは再び振り出しに戻る。ワムウが後ろに跳び下がると、一旦距離をとり、場を落ち着かせる。
唸りをあげた鉄球が、ホルスターへと納め直された。風に煽られ浮かんだシルクハットを、宙で掴むと、かぶりなおす。
誰一人傷つかず。誰一人息を乱さず。全てが一瞬のうちに起きた出来事であった。
当事者を覗いて、その場にいたものは呆気にとられ、ただ目の前の戦闘に釘付けとなるほかなかった。

 ◇ ◇ ◇

14 :


「J・ガイル、宮本を連れて地下から脱出しろ。今すぐにだッ!」
「それをわしがさせるとでも?」
「おいおい、戦いはいけないよ、戦いは。お二人さんよォ、落ち着いて。ね?
 まずは話し合いから……―――ッと!」
暴風のような風が吹き抜け、思わずジャイロは身をすくませた。
そしてそれが二人の男が激突した時に生まれたものだと気づき、彼の口から呆れた様な言葉が漏れ出した。
同時に背中にじんわりと嫌な汗をかく。直接戦いに巻き込まれたらひとたまりもない。さっきは幸運だっただけで、また巻き込まれたら命がいくつあっても物足りない。
戦線離脱、ジャイロは二人の戦いから隙を見て抜け出す。俺は戦いたくてここにきたわけでもないんだ。情報だ、情報。
そう一人ブツブツつぶやきながら、男は頭を下げ、瓦礫や家具に隠れホールを横切っていく。
その隣をワムウとツェペリが、ほとんど影のようになりながら駆け抜けていった。
まるで鉄をぶつけ合っているような鋭い打撃音がホール中に響く。
老人と巨人は踊るように部屋を横切り、飛び跳ね、くるりと回り、戦い続ける。
これだから戦闘狂は困る。拳を持って語らい合えば、なーんていうがナンセンスだぜ。
せっかく口があるんだ。言葉で話し合えば、もっと簡単に、穏便に済むって言うのによォ。
ジャイロの独り言はなおも続く。誰に聞かせるわけでもなく、若干私情が混じっているのは否めなかった。
さてさて、それでは他の参加者さんたちにお聞きしましょうか、と。身を伏せ、地面を這い、なんとか安全地帯まで切り抜けたジャイロ・ツェペリ。
ほっと一息つくと、彼は顔をあげた。しかし案の定と言うべきか、さっきまでそこに見えた四つの人影は誰一人、もう残ってなどいなかった。
戦いを離れた場所で見ていたのは四人の男たち。彼らはとうに、身の危険を感じ、この戦場を離れていた。
指示を出されたJ・ガイルが引きずるように宮本を地下へと引っ張っていき、それを止めるためにトニオが後を追っていった。
スティーリー・ダンはこんな部屋にいてたまるか! と言わんばかりに、トニオにくっつきこの場を離れていった。
そうして最後、ポツン……とホールに取り残されたのはジャイロ・ツェペリ、ただ一人だったのだ。
せっかく意気揚々とこのホテルにやって来たというのに。
わざわざ危険を冒してまで、あの二人が戦い狂う舞台を潜り抜けてきたというのに。

15 :
なんてこったい、そう嘆いたジャイロの脇をツェペリの放った波紋カッターが再度かすめていく。
慌ててその場にしゃがみ込み、彼は深い深いため息をついた。
殺人者を求め、『納得』を求め、はるばるやってきた彼だったが、燃え盛っていた使命感や義務感が、少しだけなびいた。
楽天家で気分屋の面もあるが、ジャイロは元来真面目な性分だ。
少年の死に関わる情報を期待していただけに、この肩すかしはおおいに彼を落胆させた。人が多くいて期待値も高かっただけに、その落差も大きかった。
微かな疲労と上手くいかない苛立ち。だがこれぐらいではへこたれていられない。それでも前向きに行こうと、彼は自身を奮い立たせる。
ジャイロはそっと息を吐き ――― 刹那、後ろ髪が逆立つような気配に、反射的に、振りかえった。

「―――ッ」

戦いはいよいよ勢いを増し、二人はまるで暴風のようにホールを縦横無尽に駆け巡っていた。腕と腕が絡み合い、脚と脚が錯綜する。
第六感が命じるままにジャイロは飛びあがった。そして考えるより先に、彼は鉄球を投げた。
鉄球はワムウに向けて投じられる。ワムウは振り上げかけた拳を引き、咄嗟に回避行動をとるしかなかった。
「く……、ぬぅん!」
押されていたツェペリが足元の瓦礫につまづき、致命的な隙を生んでいた。ジャイロは瞬間的に、彼を助けるために鉄球を放っていたのだ。
ジャイロの加勢がなければ、ワムウの拳は胸を貫き、戦いは柱の男の勝利で終わっていたに違いない。
鉄球を右腕に受け、ワムウの表情が痛みと、そして驚きに強張る。ツェペリはすかさず危機から脱出し、ワムウより大きく距離をとった。
なぜ自分はこの紳士を助けてしまったのかはわからなかった。だが考えるでもなく、魂が反応したとでもいうのだろうか。
ジャイロはひとまず湧き出た疑問を横に置き、舞い戻ってきた鉄球を受け止める。
冷たくツルツルとした鉄球の感触が、ジャイロの思考をクリアに、そしてクールにさせてくれた。
まぁ、理由が何であれ、誰か人を助けられたのはいいことだろう。楽観的な彼は深く考えずにそう結論付ける。
だが鉄球を投げ、戦いに足を踏み入れたという行為。ジャイロは覚悟した。それが意味することは、ひとつだ。
この戦いは避けられない。ここは引いていい場面ではない、と。

16 :
ツェペリは乱れた呼吸を整える。言葉も言えぬほどに疲弊していた彼は目線と表情で感謝の気持ちを示した
ジャイロは手を挙げ返事を返す。視線を逸らすことができなかったのだ。
少しでも警戒心を緩めれば、筋骨隆々のあの男が襲いかかって来るに違いない。ジャイロにはそれがわかっていた。
ワムウがニヤリと口角を釣り上げる。冷たいナイフのような殺気と部屋が縮むかと錯覚させる圧迫感。
ジャイロが低く腰をさげ、戦いの構えをとった。それを見てワムウは益々笑顔を色濃くした。
レース前、スタートの瞬間を待つような、異様な雰囲気が辺りを漂い始めていた。
「ったく、なんでこんな面倒な事に巻き込まれちまったんてんだ」
唐突にジャイロはそう言い、不満げに顔をしかめた。
俺はただ情報が欲しかっただけなのによォー、そうぼやいたジャイロ。ツェペリは自然と隣に並び立つと、彼を庇うように一歩前に踏み出した。
申し訳なさそうな、困った笑顔を浮かべた英国紳士。軽い気持ちで言っただけにジャイロは慌てて、まぁ、仕方ねェよな、そう付け加えた。
隣でツェペリが、お詫びと言ってはなんだが、そう切り出し、戦いの後に一緒に朝食でもどうかね、と持ちかけてきた。
ジャイロは何も言わなかったが、ニカッ、と金歯を輝かせ笑顔を返した。
つられてツェペリも柔らかな笑みを返す。ジャイロのほうをちらりと見据え、彼はこう付け加えた。
「ジャイロ君、実を言うとわしも『ツェペリ』なんじゃよ。
 改めて自己紹介といこうか。ウィル、ウィル・A・ツェペリだ。よろしく」
「ジャイロだ。ジャイロ・ツェペリ。よろしくな、ウィル。ニョホホホ……!」
ツェペリの姓を聞き、ジャイロは驚き、目を見開いた。
しかし彼は、何事もなかったように差し出された手を握り、男たちは肩を並べ柱の男と向き合った。
今語るにはあまりに時間がない。それが二人が抱いた共通の思いだった。
時代を超えても血縁は結びつく。言葉に出さずとも、それが男たちには理解できたのだ。
大切なのは共に戦える事。詳しい御託は朝食の時にでもとっておこう。

17 :
「わしが前、君は後ろでいこう」
「任せた。それから、ぎっくり腰になっても任せておけ。こう見えても俺は医者なんだぜ?」
「それはそれは頼もしいことで!」
ツェペリがクスクスと笑いを漏らす。帽子をかぶり直しながら、ジャイロも面白そうに肩を揺らしている。
戦いを前にして、程よい緊張感が二人の間を漂っていた。強張りすぎるでもなく、緩みきるでもない。
ワムウが獣のように、歯をむき出しにした。凶暴な笑みが戦いの合図だった。
床を滑るように浮いた巨体。ツェペリが雄叫びをあげ、柱の男と激突する。ジャイロが後ろで叫び、鉄球が空を裂く。
時代を超えた戦いが、今、始まった。

 ◇ ◇ ◇

18 :


「トニオさん……、トニオさん! 待って、待って下さい……ッ」
後ろから悲鳴のような懇願する声が聞こえてきた。だがトニオは脚を止めなかった。
普段運動し慣れていない身体を目一杯動かし、なんとかJ・ガイルに食らいつく。
見た目に反し、J・ガイルは身軽な様子で軽快に先を進んでいく。だが諦めてなるものか。自分を励まし、トニオは駆けていく。
歯を食いしばり、身体に鞭打ち、男を追った。床を蹴り、階段を駆け下り、いつしか辺りの様子はすっかり変わっていた。
ホテルを抜け、地下に潜り、更に進んだころになってようやくトニオはJ・ガイルに追い付いた。
突然止まった影に、トニオは少し離れた位置で同じく脚を止めた。心臓がドクドクト脈打ち、今にも破裂しそうだと思った。
苦しそうに胸に手をやるトニオを、J・ガイルは面白そうに眺めている。トニオは何も言わなかったし、何も言えなかった。
滴る汗をぬぐい、息をつく。二人に後れをとっていたスティーリー・ダンが、ようやく追いついた。
ニヤニヤ笑って余裕を見せるJ・ガイルに対し、二人の男は息も絶え絶え。呼吸を落ち着けるまでに、少し時間を要した。
脇腹に鋭い痛みを感じる。ほんの少し走っただけだというのに脚がつりそうだ。
トニオ以上にダンは疲れている様子だった。ぜぇぜぇ、と息を弾ませ、膝に手をつき、苦しそうに喘ぐ。
トニオは横目で心配そうにその様子を伺っていたが、今はそれより急がなければいけないことがある。
彼は顔をあげると、J・ガイルに話しかけた。
「戻りまショウ、J・ガイルサン。戻ってワムウサンを説得して……もう一度話し合うンデス。
 全部誤解なんデス。冷静になって、素直に話し合エバ……きっとうまくイキマス」
J・ガイルは笑いながら、ポケットへと手を伸ばす。これ見ようがしに膨らんだポケットを叩くJ・ガイルを見て、トニオは宮本のことを思った。
走っている途中から宮本の姿が見えなくなっていたことには気がついていた。きっとスタンド能力で紙になったのだろう。
人質のつもりなのだろうか。トニオが唇を噛みしめるのを見て、J・ガイルの笑いが大きくなった。
男が返事を返してきた。何が面白いのか、彼は終始笑いっぱなしだった。

19 :

「ククク……なァに言ってんだい、トニオさん。もう状況はどうにもならねェぐらい悪化してるんだぜ?
 ワムウの奴が暴れ出したら、気が済むまでアイツは戦い続けるだろう。突然の横やりには驚いたが、まぁ、終わりには変わりないさ。
 ホテル大連立はこれにてお終い。最初から、手をとりあって、なんてのは夢物語だったのさ」
「ちがいマス! まだ間に合いマス! きっと話し合えば私タチはわかりあえますヨ!」
「ククク……音石を殺した奴がいるってのにか? 人が死んでんだぜ! 馬鹿言っちゃいけねェよ、トニオさん!
 少なくとも俺は御免だ。この先殺人狂と一緒なんて命がいくつあっても足りやしねェ。
 ましてや手を組むだなんて、そんなことするのは馬鹿がすることだ。
 そんなことするぐらいなら強いものの味方について、醜くても、汚くても、俺は生き延びようって思うぜ。
 死にたくないから俺はそうするんだ。それが俺の選択なら、アンタに一体何の権利があって口をはさむんだい? エエ?」
「それハ……ッ!」
「トニオさん……」
割り込むように、トニオの後ろから声が聞こえてきた。その声は冷たく、突き放すような口調だった。
ようやく落ち着いたダンが口を挟んできたのだ。トニオの肩にそっと手を置き、彼はコックの耳元に語りかける。
「もう無理ですよ、トニオさん。諦めましょう。
 J・ガイルさんの言う通りとは言いませんが、私も皆が仲良く、なんて出来るとは思っていませんでしたよ」
「ダンさんまで……ッ!」
「さぁ、早く戻りましょう。ここは暗くて、足場も悪い。スタンド使いじゃない僕らにとってはあまり危険です。
 トニオさんはもっと自分のことを大切にしてください。ここは殺し合いの舞台で、いつどこで、襲われるかわからないんですよ?」
「ダンさん、でも……!」
もし、その時トニオが冷静であったなら、何か違和感を感じられたかもしれない。
ダンの呼吸が、やけに乱れていること。J・ガイルの笑みがニヤリと更に深まったこと。
だけどトニオはあまりに人がよすぎた。人を疑わないということは美徳であるが、殺し合いの場ではあまりにそれは美しすぎるものだった。

20 :
支援

21 :

 ―――ズンッ……

ナイフが肋骨の隙間から滑らかに侵入し、心臓の真中を突き破っていった。
トニオ・トラザルディーの心臓を。スティーリー・ダンの持つナイフが。

「……エ?」
「……だから危険だと言ったでしょ」
「ククク……、ヒヒヒヒヒヒッ! これは傑作だッ! なんてこったい、まさかこうなるとはよォ!」

胸を貫く銀色の刃を、トニオは馬鹿みたいに見つめていた。せりあがってきた液体が口から噴き出る。
真っ白なエプロンに飛び散る赤を見て、自分が吐血したのだと、トニオはようやく気がついた。
それでもわからなかった。考えられなかった。考える間もなく、トニオの体は横に傾いていき、そしてそのままの表情で、彼はその場に倒れ伏した。
後に残されたのは青い表情で、深呼吸を繰り返すスティーリー・ダン。洞窟内に笑い声を響かせるJ・ガイル。
ジメジメとした空気に混ざって、血の臭いが込み上げてきた。
凶器を振るった男は後ずさり、壁に背を突き自分の手を見つめる。肉を抉った生々しい感触が、そこには残っていた。

 ◇ ◇ ◇

22 :


その闘いはあまりに熾烈で、大規模だった。
ホテルの壁をぶちぬき、柱をへし折り、三人は場所を変えても、戦い続けていた。
「ぐっ……ヌゥン!」
「それそれそれッ」
「おいおい、あまり無理なさんな、おじいちゃんよッ」
即席コンビの息はぴったりだった。
まるで長年共に戦ってきたかのように阿吽の呼吸で、二人のツェペリはワムウを攻め立てる。
前衛のツェペリはある程度距離を保ちながらも、時折懐に飛びこみ、危険な一撃を浴びせてくる。
床を蹴り、ツェペリが左右にフットワークを刻みながらワムウに迫る。
ジャイロの鉄球を避けることに意識をさいていた柱の男は、いとも簡単に接近をゆるしてしまう。
「波紋疾走ッ!」
関節を外した痛みをッ 波紋で和らげッ ズームパンチッ!
太陽のエネルギーを込めた一撃をガードするわけにもいかなく、柱の男は避けるしかない。
腰から上を水平にするほどに傾け、そのままの体勢で蹴りを放つ。
当たるとは思っていないが、絶えず牽制をしなければツェペリは畳みかけるように襲いかかって来るのだ。
山猫のような身のかわしと俊敏さはシーザーを彷彿させる。しかし彼以上に、ツェペリには長年の戦士としての経験があった。
体力や拳の重さは及ばないが、流れを読む老獪さ。ワムウは敵ながら感心する。
ジャイロも一流の戦士であるが、ツェペリがうまく前後にバランスを整えていることで、このコンビはより凶悪なものとなっていた。
面白い! 強敵との戦いはいつだってワムウの心を震わせてくれる!
拳を完全に避けきることはできず、波紋はワムウの右わき腹を抉った。
煙を上げて溶けた自らの傷口に手をやりながら、それでもワムウは楽しそうにニヤッと笑った。彼は自分が負けるとはこれっぽッちも思っていない。
男はなにもただ考えなしに、防戦に回っていたわけではないのだ。ワムウにも策はあった。
そろそろ攻めるとしようか、ワムウは一呼吸つく人間ども尻目に、自分の中でギアをあげる。
人間と違って飛びぬけたタフネスと体力があるからこそ、ワムウは当初『見』に回っていた。
ジャイロとツェペリの距離感やチームワークを見極め、綻びを探す。
そしてあちらの戦法がある程度定まってきた今、ワムウもまた攻めるべき場所を見つけたのだ。
「フフフ……次は、此方から行かせてもらうぞッ」

23 :
支援

24 :

二人のツェペリが構えをとった。ジャイロが下がり、ツェペリが前に出る。
当然だろうな、そう風の戦士は思う。見た限りジャイロは波紋使いではない。
高速回転する鉄球は波紋と似た効力を発揮していた。ワムウとて直撃すれば皮膚が爛れ、身体を貫かれる。
だが鉄球と波紋の最大の違いは防御への応用性。
ジャイロは波紋を身に纏わしているわけではない。それはつまり、ワムウがジャイロに触れることができたなら、肉を抉り、『食する』ことは容易なのだ。
それをさせないために、ツェペリが絶えずバランスを取り、ジャイロのガードに回っているのだが。
風の戦士が動いた。今まで退いては押し、絶えず距離をとっていたツェペリに対し、猛然と突っ込んでいく。
肉を切らせて骨を立つ気か。ツェペリはワムウの拳を受け流し、刈り取らんばかりに振るわれた脚を飛び跳ね、よける。
まるで暴風雨を相手しているかのようだ。ツェペリは身を沈め、首元目掛けて蹴りを放った。その攻撃は右腕によって阻まれた。
腕が融ける痛みにも怯まず、ワムウは更に一歩踏み込んだ。
ひたすらに前に、それがワムウの戦法だった。シンプルな力技だが、それだけに対処法も限られてくる。
単純な力技で上回るか、ワムウに撤退を選ばせるほどの攻撃を喰らわせるか。
そしてワムウほどの強者にそうさせるのは、非常に困難であった。
「ウィル!」
「……大丈夫だ! ジャイロ君、君は後ろで堪えておれッ」
ワムウが仕掛けた超近距離戦、それは同時にジャイロの鉄球をも封じる策であった。
ツェペリと密着するように戦われては、ジャイロも鉄球を今までのように投じられない。
攻防一体、ではなく、攻攻一極による戦法。巧みさもあれど、そのシンプルな力比べをワムウは好んだ。
波紋を流され、肌のあちこちが爛れていく。だがその痛みこそが、戦いを実感させてくれる。生きていることを、ワムウに教えてくれる。
脳天目掛け、腕を振るう。間一髪、紙一重でツェペリはこれを逃れる。
だが、避けたはずだというのに次の瞬間、ツェペリの頬を、額を、いくつもの刃が撫でて行った。
ワムウは一枚上手であった。風の流方、拳に纏わせた風が、かまいたちのようにツェペリに襲いかかったのだ。

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26 :
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27 :
ジャイロが吠える。血に視界が塞がれたツェペリは勘と聴覚で、危機を察知し、その場を逃れるために跳躍する。
ワムウが踵を振り下ろしたさきには誰もいなく、かわりに飛来した鉄球をさけるために、柱の男はやむなく距離を取る。
血を拭うツェペリ、鉄球でその間をやり過ごすジャイロ。状況はあまり変わってないように思えた。
いや、近距離戦線を逃れられただけに、人間たち有利なのだろうか。
そうではない。ワムウはさらに笑みを深めた。こうなることも、男は計算済み。高速で飛ぶ鉄球を何度もかわし、隙を伺い続けるワムウ。
そして、ジャイロが一瞬だけ攻撃の手を緩めたその時を、彼は見逃さなかった。
ツェペリの目が大きく見開かれる。ジャイロは男の鋭すぎる戦闘センスに、ゾクリと肌を震わせた。
ワムウの両の手、その内側で極小の台風が生まれた。それは風の弾丸、嵐の球体といっていい。
ジャイロの繰り返し投じられた鉄球、黄金の回転を、ワムウはセンスだけで見よう見まねした。そしてそれを一つの技として、確立してしまった。

戦いの天才! 二人のツェペリは恐れおののいた。今二人が対峙する相手は、間違いなく規格外の化け物だった!

ワムウの手に出現した風の球体。禍々しいまでに圧縮された空気の塊。
幸運にも、その一撃は空振りに終わった。前に立つツェペリ目掛けて突きだされた右腕は、途中で軌道を変え、地面に叩きつけられてしまった。ワムウ自身も、暴れる風をコントロールしきれていなかったのだ。
だが転がるようにワムウの脇をすり抜け、振り返ったツェペリは、その威力を見て戦慄した。
もうもうと立ち込める砂埃の中、ワムウの技の跡は『完璧な球体』として地面を抉りとっていたのだ。
一ミリの誤差もなく、精密な機械で抉り取ったかのように。あまりの美しさに寒気がするほどだ。
その一撃が直撃したならば、一体どんなこととなるだろう。
嵐にねじ切られ、吹き飛ばされて壁に叩きつけられるか。肉を抉り飛ばされ、身体の半分がミキサーのようにかきまぜられるか。
ジャイロの額をツゥ……と一筋の汗が伝っていった。末恐ろしい、ワムウの戦闘能力。もしも、奴が完璧に黄金の回転を身につけたとしたならば。

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30 :

「ジャイロ君、前衛と後衛、後退しなァい?」
「アンタが俺みたいにガンガン鉄球投げれるってなら考えてやってもいいけど?」
「やれやれ……最近の若者は手厳しい。直接相手してるのはワシなんだぞ?」
軽口をたたいてはいるが、二人に余裕は一切ない。退いても駄目、押しても駄目。打つ手なし、と言う言葉がジワリと滲み出てきそうになる。
距離を取って引いたならば、ワムウは一気に押しつぶしに来るだろう。
柱の男の大技、『神砂嵐』。あまりに離れすぎてしまっては、二人にこの技を封じる手段がない。
そして二人には、あれを受けきれるほどの体力もタフネスもないのだ。発動されてはその時点で詰みだ。
かといって前に詰めれば今ワムウが見せた圧縮された風の球体がツェペリを襲うだろう。
神砂嵐と違って、ワムウはあれを動きながら繰り出すことができるのだ。
そうなれば前衛を務めるツェペリへの負担が大きすぎる。しかも先にわかった通り、ジャイロも援護射撃がしづらくなる。
余裕を見せるワムウに対し、突破口が見えない二人は動けない。
自分を上回る策と戦法を期待し、静かに待っていたワムウが腕組を解いた。
遊びは終わりだと言わんばかりに、ワムウの身体が膨らんだ。筋肉の膨張、本気の構えで男は二人を『殺り』にくる。
どうする……? どうすればいいんだ……? 二人のツェペリを焦燥感が包んでいた。

その時だった。

“ウォオオオオオム―――ッ!”

「!?」
「なんだ?!」

31 :
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32 :
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33 :
答えはすぐに眼の前に現れた。
謎の鳴き声が響いた直後、音を立てて天井が崩れ落ちる。
舞い散る木片に紛れる一つの影。人でない何者かが地面に降り立った。
三人の間に割って入ったように現れた影。
爬虫類を想わせる鱗のような肌。獣のように鋭い視線。全身から発せられる人間離れした怪しい妖気。
そう、我々は知っているッ! この少年だったモノの姿をッ 異形の姿に変身した、その本当の姿をッ
これはッ これはッ 『橋沢育朗』だったモノ! 『来訪者バオ―』だッ!
死と戦いの臭いをかぎつけ、超生物バオ―が、今、このサンモリッシ廃ホテルにやってきたッ!
新たに役者が加わり戦いは次の局面へ。
闘争は終わらない。否、更にスピードを上げ、四人はブレーキをなくしたトロッコに乗せられ、加速していく……!

 ◇ ◇ ◇

34 :
支援

35 :


育朗は走っていた。走って、走って、走って……。
とにかく走ることだけが目的だった。どこへ向かっているなんぞ、考えていなかった。
少年は一刻も早く、その場を離れたかったのだから。
走りながら少年の体が大きく変わっていった。鱗のような肌が全身を覆い、光沢ある髪が空へと向かって伸びていく。
寄生虫バオ―もまた、その場を離れることを望んでいた。橋沢育朗『たち』は、東に向かい、猛スピードで駆けていく。
脇目も振らず走り続け、擦り傷、切り傷ができても止まらない。彼らは止まらなかった。一心不乱に、ただ少年は走り続けていた。
固く閉じた目の裏、真っ暗闇の脳裏に浮ぶ億泰の首。記憶に焼きついたその光景は、どれだけ振り払おうとしても忘れられなかった。
バオ―が、育朗が、どれだけ素早く宙を駆けて行っても。鳥のように、林の間を潜り抜けて行っても。
死んだ億泰の姿は、決して離れることなくついてくる。息を引き取る直前の、あの穏やかな笑顔を浮かべたままで。
せめて億泰が怨んでくれていたならば。よくも殺してくれたなと、憎々しげに呪ってくれたならば。
だが彼は笑ったのだ。全てを成し遂げ笑顔で死んだ。その事が何よりも育朗を苦しめていた。
彼は自分を人間だと言ってくれた。嬉しかった。そうでないのかもしれないが、そう思っていいんだと許された気がしたのだ。
なのにそんな彼を殺したのは“怪物”である自分だ。恐ろしかった。内臓を撒き散らし、血肉を貫き、止めを刺したのは自分なのだ。
自分が殺したのだ。自分のことを人間だ、そう言って笑って励ましてくれた少年を、育朗は殺したのだ……!
育朗は恐ろしい。自分と言うものが何なのかわからなくなり、考えれば考えるほど、自分が自分じゃなくなりそうだった。
“怪物”であるもう一人の自分にいつか全てを奪われるのでは。そんな有りもしない冗談すら、今の育朗には笑い飛ばせなかった。
だから逃げた。だから走った。逃げて走って、そうしていれば考えないで済むと思った。だが心優しい育朗は、忘れることなんぞできなかった。
血肉を貫く感触、真っ赤に染まった自らの手が記憶の中でよみがえった。
目を固く閉じ、育朗は吠える。悶え苦しみの叫び声をあげ、バオ―は空を飛び、地を駆けていく。
場所も知らず、周りを見ず、少年はひたすら走った。何も考えたくない、逃げだしたい。そう一途に思い、彼は走り続けていく。

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38 :

 ―――誰か助けてくれ “割れるように、頭が痛いんだ”
 ―――考えたくないんだ。自分が人間なのか、怪物なのか。 “張り裂けんばかりに、胸が苦しいんだ”
 ―――僕は自分が、恐ろしい……ッ “一体、何が起きているんだ……”

 “この想いを……”『このにおいを……』  ――― “消してくれ”『消してやる』

その苦しみはッ その悲しみはッ 育朗が人だからこそ 感じ取っているものだというのにッ!
悲しいから泣くのではないッ 恐ろしいから逃げだしたのではないッ
人だッ! 橋沢育朗が、誰よりも人だからこそッ 育朗は今、苦しみ、怒り、涙しているというのにッ!

少年はあまりに若く、あまりに純粋すぎた。無垢な心は罪悪感に蝕まれ、答えを探し、もがき苦しんでいる。
何かにあたり散らさねばならないほどに。やけっぱちな覚悟で、無謀な事をしでかすほどに。
バオ―は木々の先をしならせ、幹を蹴り、林の中をすり抜けていく。一段と大きな木で飛びあがると、彼は遂に目的地へとたどり着いた。
沈みかけた月が、異形の影を屋根へと落とす。バオ―は高く、高く舞い上がる。夜空を背後に、来訪者が空を駆けていった。
バオ―はその臭いを知っていた。風に紛れ、嗅ぎつけたのは自分と同じ、怪物の臭い。
両手首から鋭い刃が飛び出した。空中で回転すると頭から落ちていく。そして刀を振るい、彼は館の屋根を破壊し、中に侵入した。
そうだ、怪物を倒してやる。怪物を倒せば、この悲鳴はやむだろう。
怪物は人間の敵なのだ。怪物がいなければ、億泰は死ぬことなんかなかったのにッ
そうだ……怪物が、怪物がッ! 億泰を殺したのは、怪物だッ!
“ウォオオオオオム―――ッ!”
バオ―が鳴き、叫ぶ。あるいはそれは彼の心があげた悲鳴だったのかもしれない。

 ◇ ◇ ◇

39 :
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40 :
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41 :


突然の来訪者、誰よりも早く反応したのはツェペリだった。
「ジャイロ君ッ」
初動を見せず、一跳び、二跳び。ジャイロの元へと辿りつく。そのまま彼の手を取ると、同じく俊敏な動きでロビーへと脱出を試みる。
そうはさせまいとワムウは足元にグッと力を込め……そこで、動きを止めた。
今動けば殺られるのは自分だ、そう彼は理解したのだ。充満する色濃い殺気は、異形の者からワムウへと直接放たれていた。
“怪物”のターゲットはワムウ。二人のツェペリが動き出してもバオ―はピクリとも反応せず、むしろワムウが見せた僅かな隙を利用して、距離を詰めていた。
柱の男は不愉快そうに眉をひそめる。
無論、問うまでもなく、目の前の謎の生命体はかなりの強者であろう。
それはわかっている。わかっているが、それでも戦いに横やりを入れられるというのは不愉快だ。
それが因縁の血縁者と、しかもここからが本番だ、というところで邪魔をされたならば尚更である。
ホールを一瞥するワムウ。姿が見えなくなった二人のツェペリ、微動だにせず、此方の隙を伺い続ける来訪者。
いささか不満はあるものの、こうなってしまった以上は仕方あるまい。
ワムウは部屋中の風を操り、屋内に小さな台風を生みだした。瓦礫が舞い、木片が飛びかう。これは一種のパフォーマンス。
相手の反応を伺う。バオ―は動かなかった。動揺一つ見せず、むしろ呼応するように、吠え猛る。ワムウがニヤッと笑みを見せた。
そうか、お前も闘争を望むか。戦いを求めて、はるばるここまでやってきたというのか。
「その殺気、甘んじて受けとめよう。だがな、怪物よ、いささかいきり立ちすぎだ。
 躾のいき届かない駄犬には、お痛いを味わってもらおうか」
そっと諭すように、そう話しかけた。バオ―は言葉を理解しているのか、していないのか、雄叫びで返した。
次の瞬間、怪物が動いた。
床板を踏み抜くような勢いで、猛烈な勢いでワムウに迫っていくッ 両手首から飛び出した鋭い刃がワムウの首筋を狙い、振るわれたッ!
「ふん、どこの馬の骨とも分からん奴だが……いいだろう、そんなにも死にたいのと言うのであれば、このワムウが葬ってくれるわッ!」
第二ラウンド開始だ。怪物同士の戦いが、今、幕を開ける。

 ◇ ◇ ◇

42 :
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44 :


「いいのか?」
「いいのかって、何がじゃ?」
「ワムウの奴のことに決まってんだろ」
「なら今から戻るかい?」
「勘弁願いたいね」
ジャイロの即答にツェペリは声をあげて笑った。だがすぐに笑いを止めると、真顔に戻った。
そしてジャイロにこう問いかけた。
「それで……一体ここで何が起きたと思う?」
「さーっぱりだ。俺は機械整備士でもないし、発明家でも何でもない。
 ただわかってるのは、『コレ』が自動車って呼ばれる乗り物らしいってことぐらいかな」
ツェペリは顔をしかめ、胡散臭そうにジャイロを見つめる。
彼が何も言わないので改めて視線を戻すと、目の間の光景を見つめボソリと呟いた。
「わしにはどう見てもタダの鉄屑にしか見えんが……」
実際そうであった。ロビーは二人が戦ってきた場所以上に荒れ果て、ボロボロになっていた。
壁をぶちぬき、一台の車が玄関で煙を上げ、止まっていたのだ。暴走した車のタイヤ跡が、ありありとホールの床にしるされていた。
相当スピードが出ていたのは間違いないだろう。フロントガラスは粉々、ボンネットは巨人に握りつぶされたように無茶苦茶だった。
にしても、車の操作方法を誤ってホテルに突っ込むとは。
自動車と言うものはよくわからない。だが機械に振り回され、こんな滅茶苦茶なことしでかした運転手はさぞかし間抜けなんだろう。
沈黙のままに、二人はそう思った。
「……ゥ、クソッ! なんだってんだ、このクソッ!」
二人の耳が唸り声を捕えた。見れば運転席に人影がある。
捻じれた運転席から身を捻りだした少年は幸いにも、怪我を負ってないようだった。
とは少年といえども油断はできない。二人はいつでも戦えるように身構えながら、ゆっくりと近づいた。
二人が少年に声をかけられる距離までゆっくりと近づいていく。一方少年は、何を思ったのか、車を蹴り飛ばし、ナイフでところ構わず無茶苦茶に傷つけ始めていた。
チクショウ、だの、クソッたれ、だの悪態をつきながら刃物を振り回す。

ジャイロがツェペリを見る。ツェペリもジャイロを見た。それはどう見てもフツーの少年とはいえそうにない様子で、二人は顔を見合わせると、きまり悪そうに表情を変えた。
どうやらこの少年、相当危ないやつのようだ。少なくとも二人が知っている健全な少年は、自動車を乗り回し、あげくのはてにやつあたりでナイフを振ったりはしない。
そういう少年のことは、危険人物と言うのだ。
なるべく刺激しないように、優しい口調でツェペリが声をかけた。距離は充分すぎるぐらい取っていたが、腫れものに触れるような感じで彼は言った。
「あー、少年よ。えーと、君がこの車に乗ってきたのかね?」
「ああ?」
振り向いた少年を見て、ジャイロはぎょっとした。そして今までの態度を改める。
ただの不良少年では到底持ちえないほどに、その眼光は落ち窪んで空っぽだった。
ジャイロはこの目を知っている。この目に心当たりがある。
父に連れられ、医師として病院を回っていた時に何度か目にしたことがあった。鈍く腐ったような瞳は、R中毒者特有の症状だ。
少年は辺りを見渡した。自分がどこにいるか今になって確認しているかのようだった。
奇妙な空白を置き、ツェペリの問いかけに彼が答える。少年の声は一切の潤いを持たない、枯れきった樹木のような声だった。

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「そうだけど?」
「怪我は大丈夫かね。見たところ出血はないようだが、捻挫だったり、打撲だったり……」
「いいや、大丈夫さ」
傷だらけの少年はそこで突然、笑いだした。
前後の会話と脈絡のない笑い。それはツェペリに少年を危険人物と判断させるに十分だった。
ジャイロもいつの間にか、彼の元へと近づいており、二人は先と同じよう戦闘態勢を取っていた。
場に流れた緊張感もしらず、少年は馬鹿笑いを続け、そしてピタリとその笑いがやんだ。
興味深そうに並んだ二人の男を眺め、ぼそりぼそりと誰にともなく話しだす。
感情の起伏と表情の入れ替わりに、常人ではついていけない。少年は狂人と呼ぶにふさわしかった。
「うーん、あんた達二人ともいい人っぽいよなァー。見るからに善人っていうのか?
 困った人を放っておけないタイプだろ? おせっかい焼きっていうんだろうけどさ、あれって一種の自己投影らしいぜ。
 つまりさァ、他人を助けるふりをして、結局は自分が助かってるってやつ。
 優しい優しい僕にも同じぐらい優しくしてくれよォ―。俺がやるからお前もやれよォー。そう言うやつらしいぜ。
 そうすることで、過去の自分だったり可哀想な自分を慰めるんだってさ。そう考えると、すっげーダイナミックな自慰行為だよなァ?
 キャハハハハ! 自慰行為! 自慰行為だってさ! うははははは! きッたねェー! ぎゃははははははは!」
そしてまた笑いがやんだ。二人の男はどうすればいいのかわからず、何も動けなかった。
敵でない以上攻撃するわけにはいかない。かといって放っておいていいかといったら断じてNOの危険人物だ。
ツェペリが横目でジャイロを見ると、彼は何も言わず肩をすくめた。お手上げということだろうか。
確かにお手上げだ。そして更に悩ましいのがあまり考える時間がないということだ。
ツェペリは悩んだ。そして、まるでその時をねらっていたかのように、極めて自然な感じで少年がデイパックへ手を伸ばした。
響く銃撃音、飛び散る弾丸。狂ったような笑い声をまたもあげながら、少年はあたりかまわず銃を乱射した。
ツェペリが間一髪でかわすことができたのは、ジャイロが直前で気がつき彼を突き飛ばしたからだ。
二人は瓦礫を壁に、大声で話す。銃声音に紛れ、ジャイロの怒りに満ちた声が聞こえてきた。
「おい、なんだってんだ、アイツ?! 頭おかしーんじゃねーの?! なんなの!?」
言葉が終わるか終らないかのうちに、ジャイロが投げた鉄球が少年に襲いかかる。
彼は攻撃を予想していただのろうか。俊敏な動きで車の背後に回ると、鉄くずを盾に彼もまたその場にしゃがみこむ。
鉄を打つ音とともに鉄球がジャイロの元へと返ってきた。その間も、少年の笑い声が途切れることはなかった。
ジャイロは悪態を打つと、少し離れた位置にいるツェペリに手で合図する。
少しの時間をおき、同時に二人で挟み撃ち。少年をハッキリとして敵と認識し排除する。
だがその策に対し、ツェペリは浮かない顔で頷くでもなく、首を振るでもなく。
ジャイロは男をじっと見つめ、隙を見て彼に近づくと脅すようにこう言った。
二人の男の頭上を、何発かの銃弾が飛びぬけて行った。首をすくめて、ジャイロがまたも悪態。そして言う。
「ウィル、まさかアンタ子供だからって手緩めようとしてるんじゃねーだろうな?
 言っとくがアイツ、確実に薬ヅケだ。見ただろう、腕にあった注射跡。
 あれはこの殺し合いが始まってからできたような傷跡じゃねー。ジャブジャブのヅケヅケ。完全なまっ黒さ」

50 :
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51 :
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52 :

畳みかけるように、こう付け加える。
「それにワムウの野郎がいつまで足止めされるかもわからねェ。下手すりゃさっきの怪物くんも交えて大乱闘になっちまうぜ?
 そんなんは俺は御免さ。アンタがやらないってなら、俺がやる。今度は逆だ、俺が前、アンタが後ろ」
俯いていたツェペリだが、少しの沈黙の後、彼は顔をあげた。口を開いた時には、もう彼の顔にも声にも迷いはなかった。
「いや……大丈夫じゃよ」
戦わなければ生き残れない。
出来ることなら、殺したくはない。そう考えるのは甘いのだろうか。その理想を夢見る偽善者だと馬鹿に出来ようか。
弾丸がまた数発、二人の頭上を抜けて行った。ジャイロはホルスターから鉄球を取りだすと手の中で回転させる。
指を立てて突撃の合図。挙げられた指の数が減っていく。3本、2本……1、……そして0。
黄金の回転が地面に叩きつけられ、爆発が起きた様にあちこちで瓦礫が吹き飛んだ。
少年が突然のことに驚いた声をあげた。同時にツェペリは瓦礫から身を躍らせると、そんな彼に向かって飛びかかっていった。

 ◇ ◇ ◇

53 :
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54 :
支援

55 :
ものすごいスピードで振るわれた二本の刃。だがワムウはいとも簡単にそれを避けた。
そして避けるだけでなく、拳を一閃。カウンターぎみに腕を振るうと、面白いぐらい綺麗に拳がバオ―の顔面を捕えた。
きりもみをあげて来訪者が宙をきり、壁へと叩きつけられる。
いや! 壁をぶちぬき、そのまた隣の部屋まで吹き飛び、怪物の身体はそこでようやく止まった。
ワムウは追撃に走るわけでもなく、ゆっくりと隣の部屋と足を踏み入れた。
男の顔は強張っていて、いつもの戦いを楽しむような笑顔は浮かんでいなかった。
ひどくうかない表情で彼はバオ―の姿を探し、そし死角からの奇襲に対しても冷静に対処した。
淡々と、感情を見せることなく、まるで作業のように。
バオ―の攻撃をいなし、かわし、今度は脚を振るった。
首筋へ打つと見せかけて、軽いフェイントを一つ入れた後、逆の足で思いきり胸目掛けて蹴りあげる、
肋骨が折れた様な鈍い音が響き、バオ―が悲鳴をあげた。ワムウはやはり面白くなさそうで、淡々と攻撃を続けていた。
戦いは一方的であった。ワムウとバオ―、両者の間には大人と子供ほどの実力差があり、どちらが優勢かは一目見てもわかった。
だがワムウは不満げだった。さきほどまで上機嫌であった男は、嫌悪を込めた目線で目の前の化け物と戦い続けていた。
もう何度目になるかわからない、バオ―のダウン。
防御のために折り重ねた両腕の隙間から、ワムウの掌底がねじ込まれ、バオ―はまたも吹き飛ばされ、叩きつけられる。
今度の一撃は効いたようだ。バオ―は立ち上がれない。後頭部を強く打ったせいか、唸り声をもらし、彼は地面で苦悶の表情を浮かべていた。
聞こえる足音、覆いかぶさる影。次の攻撃が襲ってくる。そうわかっていても、それでもバオ―は動けなかった。
ワムウが腕を突き出し怪物の喉元を掴む。力の入らない全身、宙づりにされ弱弱しくもがくバオ―。
ワムウは真正面からバオ―の目を覗きこんだ。しばらくの間、ワムウはまるでそうすることで化け物の心の内を覗きこもうとしているかのようだった。
やがて、無造作に放り捨てられる。背中から地面に叩きつけられ、バオ―の息が一瞬とまった。
柱の男が、ゆっくりと口を開いた。抑揚のない声だった。
「何をそんなに脅えているのだ、怪物よ」
バオ―は何も答えない。答えられるほど、身体は回復していない。
ワムウは話を続ける。彼がバオ―を見つめる視線は変わらず、興味のない映画を見ているかのように、乾ききッていた。
「貴様との闘争はまったく面白くもなんともない。お前からは一切の誇りも、自信も、闘気も感じられんのだ。
 なんのために貴様は戦っているのだ。誇りをかけてか? 納得をかけてか? 一族を背負ってか?
 どれでもない。貴様が戦う理由はただ、貴様が脅えているからなのだ。
 名もなき怪物よ。貴様は闘争の場で、俺ではなく、自分自身の恐怖と戦っているのだッ
 ……ふん、確かに貴様は強いのだろうな。脚力、拳力、ありとあらゆる武器となる身体……。人間とは比べ物にならないほど、貴様は強い。
 だが貴様はあまりに弱いッ あまりに腑抜けているッ 」
怒気を含めた言葉とともに、バオ―の胸に脚を振り下ろす。
足裏でバオ―が、唸り声をあげ、苦しそうにのたうつ。ワムウは黙らせるように、もう一度足を振り下ろした。
大人しくなった化け物に、柱の男は話を続ける。
「恐怖をわがものとせよッ 怪物よッ!
 今のお前は何物にも成れん、哀れな生き物でしかない。
 何のために戦うのだ? 誰のために戦うのだ? 誇りを持たぬ戦いなんぞ、犬のクソに劣っておるわッ」

56 :
支援

57 :

ワムウはまた蹴りをお見舞いしようと脚をあげ、反射的に飛びのいた。
バオーの刃は空振りに終わった。会話の最中にそこまで回復したというのだろうか。だとしたらたいした回復力だ。
だがワムウは動じることない。ゆっくりと風を巻き起こすと、その風を纏うように展開していった。
そう、ワムウがバオーに対し圧倒的優位となれるのはこれがあるからだ。
来訪者バオーは発達した触覚で感情やにおいをかぎ取り、それを元に相手の距離を詰めたり位置を捕えたりしている。
だがワムウは風の流法を司る男。気流を乱し、闘気と殺気を抑えることでワムウはバオ―から身を隠すことに成功した。
ましてや、今バオーは恐怖におびえ、遮二無二闘っている。そうなっては相手の恐怖を嗅ぎつけることも難しくなる。
ワムウの言うとおりだ。恐怖を克服しない限り、バオーは決してワムウに勝てはしない……!
「去れ。貴様が恐怖を克服せん限り、俺に勝つことはできん」
来訪者も本能的にそれを悟った。
じりじりと背を見せることなく慎重に距離を取り、ある程度離れた位置まで来ると一目散に逃げていく。
悔しみを込めて、怪物が咆哮をあげた。敗北者の声が遠くなり、やがて聞こえなくなるまでワムウはその場に立ちつくしていた。
「……ふん」
勝利に浸ることもなく、後味の悪さだけが残る戦いであった。ワムウはそう思った。
踵を返すと、男は脚をロビーのほうへと向けた。研ぎ澄まされた聴覚はさきほどから絶えず響き続ける銃声と、男たちの怒号を捕えていたのだ。
ツェペリたちはまだいるようだった。ならば、闘わない手はない。そう男は思う。
この燃え盛る闘志を沈めるには、やはり、あの二人しかいない。
グッと握り拳を作ると、彼は目を輝かせる。あの二人との戦いを思い出すと疲労なんか吹き飛んでしまう。
策を弄し、ギリギリの死地を切り抜け、全力を振り絞って自分に向かってくる二人のツェペリ。
そう、それこそが戦いだッ! ワムウが愛してやまない戦いと言うのは、そういうもののことをいうのだ!
焦る気持ちを抑え、ロビーへ足を踏み入れた柱の男。どうやらこちらも戦いは終盤を迎えているようだ。
ツェペリが攻め立て、ジャイロが逃げ手を封じる。受けに回った少年は苛立ち気にナイフを振るうが、空振りに終わる。
―――勝負ありだ
ナイフを振るった際にできた大きな隙を見て、男は一人呟いた。
ツェペリもその隙を見逃さなかった。床を蹴り、大きく跳躍すると練りに練った波紋を纏わせ彼は突撃する。
ナイフを持ち上げなおすが、少年は間に合わない。ツェペリの拳のほうが早い。

そのはずだった。
「―――ガ、ハッ……?」

だが次の瞬間、ツェペリの口元から大量の血が噴き出した。
何が起きたかまったくわからない。ワムウもそうだ。ジャイロもそうだ。
拳がぶれ、男の攻撃は少年を捕えることなく空振りに終わった。その最中ヴィットリオ・カダルディだけが、らんらんと瞳を輝かせていた。
少年の顔が禍々しい笑顔に染まった。
ワムウとジャイロの絶叫がこだまする中、銀色の閃光がツェペリの体を貫いた。


58 :
支援

59 :

 ◇ ◇ ◇

「つまりは、スティーリー・ダン。お前も“こちら側”だったってことか?」
「ああ、そうだ」
「ククク……まったく嫌なやつだな、お前も。いや、最初は善人面してるだけに、俺よりよっぽどタチが悪いぜ。
 見てみろってんだ、この俺を。両手が右手で、見るからに悪人面。
 ああー、俺もお前みたいによォ、綺麗な面して他人信頼されるような、そんな人間になりたかったぜ。ヒヒヒ……!」
歯の浮く様な台詞だと、J・ガイル本人もわかっていた。
自分が言った冗談が面白かったのか、彼は大きな笑い声をあげると腹を抱えて、一度作業を中断した。
ダンは笑えなかった。ほほが痙攣して、かろうじて笑顔らしき中途半端な顔を作っただけだった。
J・ガイルは肩を揺らしながら、休めていた手を動かし始めた。手の動きに合わせてゴリゴリ、と何かを削るような音が響いていく。
ダンは耳を塞ぎたかったが、J・ガイルが話しかけてくるものだから、そうもできなかった。代わりに目を瞑り、ぐっと下っ腹に力を込めた。
まっとうな道を歩んできたわけではなく、人の死には普通の人よりも慣れているつもりだった。だがそれでも、血の臭いだけには慣れなかった。
「お前もどうだ? 一緒にやってみねーか?」
「いいや、遠慮しとく。私にはそっちの趣味がないんでね。それより、J・ガイル、先にはっきりさせたいことがある」
J・ガイルはお楽しみを続けながら、続きを促した。
ダンの口調が気に入らなかったのか、上機嫌で絶えなかった笑いを彼はひっこめた。
黙々とナイフを振るうその背中は、まるで不器用な木彫り職人のようだった。ダンは雰囲気の変わったJ・ガイルを見て、少し怯んだ。
「……私を殺さないほうが、いい。いや、訂正しよう。
 J・ガイル、君にとって私を殺さないほうが必ずや得になるだろう。だからこれはお願いになるのだろうな。
 私を殺さないでくれ。そして、次に会ったとき、ワムウと話をさせてくれないか」
「何か考えがあるのか?」
ダンは黙りこんだ。トニオ達を裏切ッた事に関しては後悔していない。
ワムウが突然暴れ出し、J・ガイルを追い始めた時から、こうしようと決めていたことだ。
ツェペリとトニオ、J・ガイルとワムウ。どちらに与すれば得を得られるか、リスクはあるが後者であるとダンは判断したのだ。
なにより、洞窟の中でJ・ガイルと会った時点でもう引き返せない位置にいた。
ワムウという抑止力を失ったJ・ガイルは正真正銘の狂人だ。大人しく撤退を選ぼうにも、そうしていたら、間違いなくトニオもろともダンは殺されていただろう。
あの時J・ガイルが漏らした殺気。その鋭さに、ダンは震えた。
唇を一舐めし、もう一度口を開く。ダンは慎重に言葉を選んだ。
「ウィル・A・ツェペリを、始末した」
「ハァ?!」
「私は『スタンド使い』だ。
 もちろん、能力を明かすことはできないが、今確かに、私にはツェペリを始末した手ごたえがあった。
 その内ワムウがここにやってくるだろう。その時、このことは黙っていてほしい。
 そして私に話をさせてほしい」
「てめェ、今、自分が何をしたかわかっているのか……?」

60 :
支援

61 :

J・ガイルの声には怒気が含まれていた。脅え、一歩後ずさりたくなるのを必死で堪え、ダンは虚勢を張る。
sラのようにガンを飛ばしてくるJ・ガイルを、彼は涼しい目で見下す。
内心は恐怖でいっぱいだった。ナイフの先からポタリと垂れた血に目が奪われた。
だがここで脅えていると思われたら、この先ダンはずっと舐められっぱなしだ。それだけは避けなければならない。
数センチまで近づいたむさくるしい男の顔に、ゆっくりと話しかけた。
物わかりの悪い馬鹿に、丁寧に説明する皮肉気な調子でダンは喋った。
「わかっていますとも。貴方は今、こう考えたのではないでしょうか。
 なんだってウィル・A・ツェペリを処分したんだ。奴の能力を見てなかったのか、このスカタン!
 波紋ってのが何だかよくはわからないが、どうも太陽のエネルギーのことらしい。
 ならばこのツェペリって男、使えるぞ! うまく扱えば吸血鬼も敵じゃねェ! と」
「!」
「そう、私は知っています。絶対無敵の吸血鬼、その上、最強のスタンドを従える、ある人物を……」
「まさか、てめェ……!」
うまくJ・ガイルが釣れたことに、ダンは自信をつける。
今までずっとイイ気で、自分のことをなめ腐った態度でみていた男を欺いた優越感。
血の気のなかった頬に赤みがさした。僅かな興奮を感じ、ダンは話を続ける。
「フフフ……J・ガイルさん、私はね、ワムウを失いたくないのですよ。
 だからツェペリを始末した。不安の芽は徹底的に摘むのが私の性質なんでね。
 優秀な当て馬は万全な状態で手元に置いておきたい。ここまで言えばわかるのではないでしょうか?」
「一つだけ聞かせろ。てめのースタンドは……?」
ぐっと胸を張ると、男はこう答えた。
ゲームが始まって以来、初めて彼は自分のことを誇らしく、そしていつも通りの余裕のある態度で答えることができた。
「スティーリー・ダン、スタンドは『恋人』のカードの暗示……ッ!
 ミスター・J・ガイルッ! ここはひとつ、協力しようではありませんかッ
ワムウを操り、そして最強のスタンド使いの、あのお方を倒すためにッ
 ここは手を結ぼうではありませんか…………!」

 ◇ ◇ ◇

62 :
支援

63 :


「ウィル――――ッ!」
ジャイロの絶叫とともに、鉄球が投じられた。
少年はかろうじてナイフでそれを受けきると、なんとか弾き飛ばすことに成功した。
よろめいた少年に、再び鉄球を叩きこもうと振りかぶるジャイロ。しかしそんな彼よりも素早く動くものがいた。
風が駆け抜けていった。少年の体は木の葉のように軽々と吹き飛ばされ、玄関脇へと叩きつけられる。
グェ、と蛙を踏みつぶしたような声を少年があげた。
その速さ、力強さ。柱の男が醸し出す強者の雰囲気は圧倒的だった。
少年の判断も素早かった。今壁に叩きつけられたとは思えないほど素早く起き上がる。
ドリー・タガーによりダメージは軽減されている。ビットリオは超スピードで迫りくる男を前にしても冷静だった。
そう、自分が敵わないということがわかっており、ここは逃走するしかないとわかっているほどに、彼は冷静だった。

「なッ―――!」
「く……、卑怯なまねを…………ッ!」

爆発、閃光、轟音、黒煙。
ビットリオは惜しげもなく支給品を使用した。使わなければ逃げられない、そう判断して、実際そうした。
結果的に彼の目的は果たされた。突然目の前全てが光に覆われ、平衡感覚が狂うほどの音の嵐、おまけに催涙ガスが辺りを立ち込めていた。
涙が止まらず、咳を繰り返すジャイロ。ワムウが風を巻き起こし、辺りがようやくおさまったころにはビットリオの姿はなかった。
代わりに、ホテルから遠ざかっていくような一台のバイク音が聞こえただけだった。
ワムウは苦々しげに扉から外を見つめた。太陽が昇りかけている。時間が時間でなければ、地の果てまで追ってやろうと思ったのに。
無念に満たされた思考は、ジャイロの叫び声で引き戻される。
ツェペリの脇で膝を落とし、ジャイロが意識を確かめている。いつも見せていた飄々とした余裕が、今ばかりは見られなかった。
それほどに、ツェペリの傷は深いようだった。血がまるで泉のように噴き出ていて、ジャイロの服が真っ赤に染まっていった。
「どうだ?」
「…………今見てる」
ワムウが問いかける。ジャイロは喋る暇すら惜しいと言わんばかりに鉄球を操り、デイパックから包帯や薬品を取りだした。
ツェペリが激しくせき込んだ。口元から血が噴き出し、そしてタラァ……と鼻筋から血が流れていく。
それを見て、ジャイロの顔色が変わった。
「……クソッ!」
「なんだ?」
ジャイロは無言で鉄球を地面に叩きつける。
床に現れたのはツェペリの頭蓋骨を横から切った断面図。医学に詳しくないワムウはジャイロの狙いがわからない。
ただ少なくとも、貫かれたはずの心臓よりも、脳のほうに何かしらの問題があることだけはわかった。
余裕があって話せる範囲でいい、そう前置きして柱の男が説明を求めた。
手を休めることなく治療を続け、ジャイロは歯の隙間から唸るように言った。

64 :
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67 :

「心臓のほうは大丈夫だ。超ラッキー、スーパーついてるぜ、ウィルの野郎。
 まるで狙ったように骨の隙間をすり抜けて、内臓にはほとんど傷がついてねェ。
 それどころか、血管も無事だ。出血が多いように見えたが、俺の鉄球とこれだけの治療器具があれば対処できる範囲内だ」
「……ならば問題は」
「そうなんだ、心臓は問題ないはずなんだよ。だがな、ならなんでウィルに意識がない?
 脳を覗いてみれば明らかに変な個所があるッ 異物だッ だけどいつ、何が侵入したってんだ?
 脳ん中に何かを埋め込まれた? んなわけあるかよ。というより、そんなことは現代の医学じゃ不可能だッ
 スタンド攻撃? このタイミングで? くそ、手術の出来る場所が欲しい……
 だが、あまりに時間がなさすぎる……ッ!」
ジャイロは不甲斐ない自分を呪い、地面を叩いた。救える患者がいるのに、救う施設と時間がない。
ワムウのほうを振り返った彼の目は悔しさと悲壮感の色に染まっていた。自分の無力さに震える一人の男がそこにいた。
ワムウは何も言わなかった。ジャイロと同じように、ツェペリの傍らにひざまずくとそっと腕を伸ばした。
何か言いたげな表情を取ったジャイロだったが、目で黙らせる。
俺を信用しろ、悪いことはしない。柱の男はゆっくりと慎重に、ウィル・A・ツェペリの頭に手を伸ばす。
そして波紋を纏わない彼の頭に、自らの手を侵入させていった。
「……ッ!」
「指示しろ。流石の俺も全く傷つけないように人間の体内に侵入するには神経を裂く。
 貴様が道を示せ、ジャイロ・ツェペリ。異物はどこにある? どれぐらいの大きさだ?」
戦いの中で常に涼しい顔でいたワムウの額に、大粒の汗が浮かび上がる。
ジャイロはもう一度鉄球を投じ、ツェペリの脳電図を示す。
即席の執刀医と介助師。患者を救うために、二人は必死で生を繋ぎとめていく。
遠くどこかでもう一度バイクの音がした。だがそんなことに構っていられるほど、二人には余裕がなかった。

 ◇ ◇ ◇

68 :
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69 :
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70 :
時刻は、もう間もなく六時なろうとしていた。
「それでは、ビィーティー……君の意見を聞かせてもらおうか」
アヴドゥルが尋ねてきた。ビーティーは返事もせずに、ただ崩れかけのホテルの様子をじっと見つめていた。
吹き抜けの玄関ホール、崩れかけの天井に穴だらけの床板。あちこちで瓦礫が山になり、床のいたるところに血痕が飛んでいた。
何かが起きたことは明白であった。だがそのなにかが、まったくもってわからない。そしてそれを認めることが、ビーティーにとっては何より屈辱的だった。
怒りに拳が震える。情けなくて、悔しくて、噛みしめた唇からツゥ……、と一滴の血が流れて行った。
アヴドゥルは辛抱強く返事を待った。数十秒経っても何も言わない少年を見て、彼は静かに視線を逸らした。
慰めることも非難することもしなかった。こんな達観したような態度ですら、きっとビーティーは嫌がるのだろう。そうアヴドゥルは思ったから。
彼は少年でありながら悪魔のような知性を持ち、だからこそ人一倍誇り高い。
今のアヴドゥルの態度は彼を子ども扱いするものであった。それが彼の気に障ると彼にはわかっていたが、どうしようもないのだから仕方ない。
アヴドゥルは傍らにスタンドを呼び出した。
「『魔術師の赤』……ッ!」
ボッ、という音とともに空間に火がともる。つり下がった六つの炎がアヴドルの横顔を照らした。
ビーティーが見ると、男は鋭い視線であたりを見回していた。その横顔は、まるで今にも戦いが起こるかのような緊張感が漂っている。
アヴドゥルが囁くように口を開く。彼はじっと炎を睨み、少年に問いかけた。
「君に私のスタンド能力を説明した時のことを覚えているかね?」
「ああ」
「実を言うと私は一つだけ嘘をついていたんだ」
「何……?」
「私の能力は確かに炎を操ること。だが実を言うとそれだけではないんだ。
 炎は全ての始まり、即ち生命の始まり。私は炎を制することで生命を制することもできるのだ。
 そう、私は生命の流れを読み取ることができるのだよ、この『生物探知機』を利用してね」
言葉を言い切るか、言い切らないかの内に、上下の炎が大きく動いた。
アヴドゥルはビーティーを庇うように、さらに身を寄せる。
同時に彼のスタンドが動くと二つの炎が龍のように身をくねらせ、片方は遥か頭上の天井を、他方は床に転がる瓦礫を包みこんだ。
一瞬のうちに辺り一面が炎に包まれ、崩れかけのホテルはたちまち即席サウナ室へと姿を変えた。
玉のような汗がビーティーの額から噴き出した。その隣でまるで舞台の上に立つ俳優のように、アヴドゥルが胸を張り、叫んだ。
「つまり私は君たちの存在にもとっくに気がついていたのだよッ
 屋根の上のお前、そして、姿を隠している君ッ そろそろ正体を現したらどうなんだね……ッ!」
アヴドゥルは気づいていたのだ。ホテルに一歩足を踏み入れたその時から、自分たち以外の何者かがここに存在していることに。
皮膚がひりつく様な鋭い気配、見透かすように向けられた何者かの視線。相当の手だれだな、アヴドゥルはそう思っていたのだ。
「出てこないというのであれば……やれッ、『魔術師の赤』!」
アヴドゥルのスタンドが再び動き出したのと、二つの影が動いたのは同時だった。
『魔術師の赤』は振りかぶった動作を止め、上空からの攻撃を両腕で防ぐ。
本体のアヴドゥルはビーティーを引っ張るようにその場から跳躍、床下からの攻撃を紙一重で避けた。
咄嗟の危険を回避し終えると、ビーティーは掴まれていた腕を振り払う。お節介かくんじゃない、そう隣に並び立つブ男に毒づいた。
少年の態度にカチンときたのか、男も負けじと皮肉でやり返す。私がいなかったらな、ビーティー、君は間違いなく死んでいたんだぞ?
喧嘩腰ではあったが今はそんな時ではない、そう判断できるぐらいに二人は大人であり冷静だった。
男と少年は並び立ち、目の前の危険に眼を細める。姿を露わにした二人の男、炎を背後に影が踊る。
機械仕掛けの身体を持つ、如何にも胡散臭そうな軍人崩れの男。
一見ただのsラにしか見えず、そのくせ視線だけはやたら鋭い伊達男。

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73 :

魔術師の赤がそっと腕を動かした。その動きに合わせるかのように炎は益々燃え盛り、四人は炎の渦に囚われた。
戦いは避けられないとアヴドゥルは思った。
二人の男はどちらも交渉のテーブルについてくれそうにない。情報を聞き出そうと手を緩めれば、間違いなく手痛い反撃を喰らうことになるだろう。
殺るか、殺られるかの勝負になる。アヴドゥルの勘がそう囁いた。男はぐっと全身に力を込めると、仕掛けるタイミングを見計らう。
「数分だけ時間を稼いでくれ。その間に僕が策を考える」
ビーティーがアヴドゥルの耳元でそう言った。男は頷き、戦いの構えをとる。
気の抜けない、嫌な沈黙が四人の動きをからめ捕る。轟々と音を立てて燃え盛る炎が、容赦なく室温をあげていく。
滴る汗を拭うことすら隙を生みかねない。アヴドゥルは辛抱強く隙を伺っていた。来るべきタイミングを逃さんと、全神経を集中させていく……―――

そして時が来た。
壁にくくられた古時計がカチリと音を立て六時を示した、まさにその時。
三つの影が、動きだした。

【B-8 サンモリッツ廃ホテル1階大階段前ロビー / 1日目早朝(放送直前)】
【モハメド・アヴドゥル】
[スタンド]:『魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)』
[時間軸]:JC26巻 ヴァニラ・アイスの落書きを見て振り返った直後
[状態]:健康、後悔
[装備]:六助じいさんの猟銃(5/5)
[道具]:無し
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームの破壊、脱出。DIOを倒す。
1.この場を切り抜ける。
2.ポルナレフを殺した人物を突き止め、報いを受けさせなければならない。
3.ディアボロとは誰だ?レクイエムとはなんだ? DIOの仕業ではないのか?
4.ブチャラティという男に会う。ポルナレフのことを何か知っているかもしれない。
【ビーティー】
[能力]:なし
[時間軸]: そばかすの不気味少年事件、そばかすの少年が救急車にひかれた直後
[状態]: 健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、薬物庫の鍵、鉄球、薬品数種類
[思考・状況]
基本行動方針:主催たちが気に食わないからしかるべき罰を与えてやる
1.この場を切り抜けるため、策を考える。
22公一をさがす
[備考]
アヴドゥルとビーティーの移動経路は次の通りです。 ぶどうが丘高校 → 杜王町立図書館 → サンモリッシ廃ホテル

74 :
支援

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【マリオ・ズッケェロ】
[能力]:『ソフト・マシーン』
[時間軸]:ラグーン号でブチャラティと一対一になった直後。
[状態]:健康
[装備]:紫外線照射装置
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:優勝して金と地位を得る。
1.この場を切り抜ける。
【ドルド】
[能力]:身体の半分以上を占めている機械&兵器の数々
[時間軸]:ケインとブラッディに拘束されて霞の目博士のもとに連れて行かれる直前
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ジョルノの双眼鏡、ポルポのライター、ランダム支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:生き残り、且つ成績を残して霞の目博士からの処刑をまぬがれたい
0.この場を切り抜ける
1.コレ(ライター)を誰かに拾わせる。
2.仲間が欲しい。できれば利用できるお人好しがいい。
[備考]
ドルドがどのタイミングから屋根上に潜んでいたかは次以降の書き手さんにお任せします。

 ◇ ◇ ◇

78 :
支援

79 :
支援

80 :
「―――……ここは?」
「気がついたか、ウィル」
はっきりしない頭で考える。ウィル・A・ツェペリが最後に見た光景は飛びかかってきた少年と銀色に輝くナイフの切っ先。
そこで記憶が途絶えていた。襲われたかどうかすらあやふやで、そもそも今自分がどこにいるかすら、ツェペリにはわからなかった。
身体を起こすと、胸に置かれていたシルクハットが転がり落ちる。どうやら彼はベットに寝かされていたようだった。
起き上がったついでに自分の身体を点検してみる。
身体は包帯でぐるぐる巻きにされ、一番深い刺し傷には何度も軟膏を塗りなおしたような跡が残っていた。
手慣れた、そして丁寧な治療が彼の体には施されていた。
上半身を起こしたところで、ツェペリは枕元の椅子に座っているジャイロの存在にようやく気づく。
服の乱れはあるものの、どうやらジャイロは大きな怪我を追ってないようだ。苦虫をつぶしたような顔で、黙って彼にコーヒーカップを突き出したジャイロ・ツェペリ。
自分のことはともかく、彼が無事であることがとりあえずツェペリを安心させた。ほっと息を吐くと彼は笑顔でカップを受け取り、ジャイロに話しかける。
「どうやら一杯食わされたようじゃの。やれやれ、年はとりたくないものだ」
「まだあまり動かないほうがいい、あくまで応急処置なんだ。出来ることなら病院にぶち込んでベッドごとぐるぐる巻きにしてやりたいぐらいだぜ」
「そいつは勘弁願いたいもんだ。年をとったと言ったが、まだまだ若い者には負けていられんぞ」
カップの奥から、ジャイロに笑いかけてやる。ジャイロはぎこちなく笑顔を返したが、やがて目線を逸らし窓の外の風景へと目を向けた。
ツェペリもつられるようにその視線を追う。東に面した窓からは登りかけの太陽がよく見えた。
ついさっきまで辺りは夜だったというのに、もう太陽が出ようとしているのか。時間の進む速さに驚きを隠せないツェペリ。枕元に置かれた時計を見てみる。
時刻は6時前だった。放送が始まるまでもう数分もかからないだろう。
皆は無事なのか、戦いはどう終わったのか。ワムウは、トニオは、宮本は……。皆はいったいどこにいるのだろうか。
ツェペリには聞きたいことが山のようにあった。その一方で憂えたジャイロの横顔を見て、ああ、やはり全員無事とはいかなかった、とも思った。
熱いコーヒーをもう一口含むと、彼は時間をかけてその風味を味わった。口の中にじわりと広がる苦味が、彼の思考をはっきりさせていく。
誰一人悲しい想いをさせたくなかった。誰一人失いたくなかった。ツェペリは別れの辛さを人生通して嫌というほど味わってきた。
もう二度とそんな想いをしたくないし、誰にもそんな想いをしてほしくない。彼は常にそのために行動してきたはずだったが、現実は非情である。
無力感と虚無感に大きなため息が漏れ出た。誤魔化すようにもう一度カップを口元へ運び、ツェペリは目を伏せる。
小さく丸まった老いぼれの背中を、ジャイロは複雑な視線で見つめていた。
熱々のコーヒーが冷め始めたころ、サイドテーブルにカップを置くとツェペリが姿勢をただした。
気持ちが落ち着いたのを見てとったのだろう、ジャイロも窓際から離れると、もう一度枕もとの椅子に腰かける。
しばらくの間、沈黙が流れた。先に口を開いたのはジャイロだった。
「残念な知らせがある」
「言ってみてくれ。覚悟はできてるよ」
ジャイロはツェペリの真っすぐな視線を受け止めきれず、堪らず視線を床へと落とす。
帽子から垂れ下がった前髪をかきあげると、深い溜息を吐く。またしばらくの間沈黙が流れ、そしてジャイロが言った。

81 :
支援

82 :

「ウィル、アンタの容体についてだ」
「……容体?」
てっきり仲間の死を告げられるものだと思っていた老人は、びっくりしたかのように目をしばたかせる。
ああ、やっぱりな。そう言わんばかりに、ジャイロの表情に影がさす。彼は奥歯を噛みしめると、なんとか声を絞り出した。
「アンタが戦いの途中倒れたのは敵スタンドの攻撃だ。脳内に極小のスタンドが隠れ潜んでいた。
 その攻撃が元で大きな隙が生まれ、アンタはあのナイフ少年の一撃をくらっちまったってわけだ。
 だが本当にラッキーな事で、刺し傷はそれほど痛手じゃない。狙ったみたいに心臓の横をすり抜け、大きな血管も全くの無傷だ」
「……そりゃ、よかった。日ごろの行いのおかげだのう」
ジャイロは返事も返さず、話を続ける。
「むしろ重症だったのは今言った、脳内に潜んだスタンドの攻撃のほうだ。
 ワムウの野郎がいなかったらどうなってた事やら。アイツのおかげで今のあんたは生きてるようなもんだぜ。
 俺がやったこと言えば止血と簡単な治療、被害の拡大を防ぐことだけだった」
「……そうだったのか。あやつには今度会った時、たっぷり礼を返すこととしよう」
ツェペリは次第に不安に襲われ始めた。ジャイロの歯切れの悪さが、不穏な空気を醸し出していた。
焦燥に突き動かされるまま、ジャイロに問いかけた。何を躊躇っているかはわからないが、ハッキリ言ってくれ。
さっきも言ったが私は覚悟している、何が起きても平気だから。そう言おうと口を開きかけた時だった。
「ハッキリ言おう。アンタは大きな後遺症を負った」
ジャイロはツェペリと視線を合わせようとしなかった。ジャイロは医師としての罪悪感から、それができなかった。
助けられなかった自分の非力さ、医術と技術の限界。情けない気持ちでいっぱいだった。こんなにも惨めな気持ちになったのはいつ以来だっただろうか。
信じられないという想いで自分を見つめるツェペリの視線が、なによりもジャイロには辛かった。
ツェペリの唇が震える。言うべき言葉を探しているようだった。
逃げては駄目だ。最後に残った医師としての矜持がジャイロを患者と向き合わせた。顔をあげ、視線を合わせると、彼はきっぱりとした口調でこう言い切った。

「アンタの足はもう動かない。もう二度と動くことはない。
 神経がズタズタに切り裂かれ、その上複雑な脳回路に絡み付いてる。
 アンタの足はもう、奇跡か魔法でもない限り治らないんだ…………ッ」

音が死んだかのように、その瞬間、二人のツェペリの中で何かが崩れていった。
脇に置かれた時計の秒針が、やけに大きく音を立てて進んでいく。階下で何か音が聞こえたが、二人が動くことはなかった。
互いに信じられないような、信じたくないような気持ちのまま、見つめ合う。今度こそ、はっきりとホテル全体に響く様な物音が聞こえた。
ジャイロはきまりが悪そうに視線を逸らすと、席から立ち上がる。腰のホルスターにぶら下がった鉄球に手をやりながら、すぐに戻るとツェペリに言った。
後に残された老人は、今まで以上に、年老いて、弱弱しく見えた。
呆然とした表情が痛々しい。つい今しがた浮かべられていた笑顔が、遥か前のものに思えるほどだった。
静まり返った部屋、物音は動き続ける秒針のみ。虚ろな視線で彼は時計を見る。分針が上を向く。短針が六を指す。

放送の時間だった。

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【B-8 サンモリッツ廃ホテル3階 一室 / 1日目早朝(放送直前)】
【ウィル・A・ツェペリ】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:ジョナサンと出会う前
[状態]:下半身不随、貧血気味、体力消費(中)、全身ダメージ(中)、???
[装備]:ウェッジウッドのティーカップ
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:主催者の打倒
1.???
【ジャイロ・ツェペリ】
[能力]:『鉄球』『黄金の回転』
[時間軸]: JC19巻、ジョニィと互いの秘密を共有した直後
[状態]:疲労(大)、精神疲労(大)、全身ダメージ(小)
[装備]:鉄球、公一を殴り殺したであろうレンガブロック
[道具]:基本支給品、クマちゃんのぬいぐるみ、ドレス研究所にあった医薬品類と医療道具
[思考・状況]
基本行動方針:背後にいるであろう大統領を倒し、SBRレースに復帰する
0.階下の様子をチェックしに行く。ツェペリにどう応じればいいかわからない。
1.麦刈公一を殺害した犯人を見つけ出し、罪を償わせる
2.ジョニィを探す。
[備考]
ジャイロの参戦時期はJC19巻、ジョニィと互いの秘密を共有した直後でした。

 ◇ ◇ ◇

88 :
支援

89 :
支援

90 :
必死で動かしていた脚を次第に緩めていく。それに合わせて徐々に、バオ―の姿が橋沢育朗のものへと戻っていく。
やがて脚が止まったころには、すっかり元の姿に戻っていた。
育朗は膝に手を置くとぜぇぜぇ、と呼吸を繰り返す。疲れてはいなかった。
けれども心落ち着かせるために、彼はそのままの姿勢で数分の間動かなかった。
やがて林の隙間をぬい陽光が東から差し込んできたころ、育朗はようやく体を起こし、口元を伝う血と汗をぬぐった。
そして、振り絞るように大きく、息を吐いた。
悔しいな、そう彼は思った。そして強くなりたい、そうも思った。
億泰の死に涙するには、あまりに過ごした時間が短すぎた。億泰の死を笑い飛ばすには、あまりに育朗は真面目で、優しすぎた。
少年の死を見つめることは育朗にとってとても辛いことだ。けれども誤魔化すことはもうできなかった。
自分にもっと力があれば、自分がもっと強ければ、虹村億泰は死なずに済んだのだ。その事実はどんな刃物よりも鋭く、育朗の心を貫いた。
噛みしめた唇からツゥ……と一滴の血が流れる。握りしめた爪の先が、鋭く掌に食い込んだ。
『恐怖をわがものとせよ』 ――― ついさっきまで戦っていた大男の言葉をもう一度思い出す。その通りだ、育朗はいつも脅えていた、恐怖していた。
億泰を殺した男と戦った時も、億泰の元から逃げ出してしまった時も、そしてたった今、風の戦士と戦っていた時も。
育朗の心にはいつも恐怖が纏わりついていた。どれだけ忘れようと思っていても、その気持ちを消し去ることができなかった。
誰かと戦うことを心地よいと思ったことはない。人知を超える力があっても、育朗はその事を幸運だと思ったこともないし感謝したこともない。
自分はバオ―の力を制御しきれていない。下手をうてば彼は殺人者になるのだ。バオ―が引き起こす戦いゆえに、バオ―がもたらす脅威の力ゆえに。
少年は脅えていた。人に殺されることも、殺人者と戦うことも確かに怖いことだ。
けれども彼にとっては何よりも、自分の中にどす黒い殺意があることが、制御しきれない力があることが、この上なく怖いことだった。
「……だけど」
育朗は顔をあげる。東の空、わずかに顔を出した太陽が育朗の目をくらませる。
眩しさに目を細め、けれども視線を逸らすようなことを彼はしなかった。
逃げちゃ駄目だ、恐怖から。誤魔化してはいけない、自分の罪を。
あの男の言うとおりだ。今できないのであれば、できるようになればいい。立ち止まってしまえばそこでお終いだ。
成長しなければ、強くならなければ、誰もこの手で守れない。誰かと手を繋ぐことも、握りしめることも、出来やしないのだ。
育朗は太陽に向かって吠えた。別に意味はなかったが、そうしたかったからしたのだ。
喉が痛くなるぐらい、息が切れるまで、少年は叫んで、叫んで、叫んだ。気が済むまで叫んで、そして育朗は叫ぶのをやめた。
そして何をするでもなく、少年はその場に立ち尽くす。ふと彼の脳裏を一人の『友達』の顔が横切った。
血まみれのくせに笑顔で手を差し出し、弱弱しく彼がつぶやいた言葉。

 ―――『俺とお前は、もうダチだろ。離してなんかやんねーよ』

91 :
支援

92 :
支援

93 :

視界がぼんやり滲んでいく。登ったはずの太陽はキラキラと輝く光の帯のようだった。
ぐっと込み上げる感情を抑え、育朗はギュッと奥歯を噛みしめた。
今はまだ『その時』じゃない。まだ何かを成し遂げたわけでもない。なら今はまだ泣く時じゃない。
今はまだ、すべきことが山ほどあるのだ。まだ感情のなすがままに身を委ねることに、自分は相応しくなんかない。
代わりに育朗は誰にともなく、こう呟いた。それは自然と漏れ出た少年の本音だった。
本当ならもっと早く伝えるべきだった。もっともっと早く、それこそ彼と出会った直後なら間にあったはずだったのに。
まだ彼が生きているうちに、面と向かって伝えたかった。育朗を人間と言ってくれた彼に、育朗をダチと呼んでくれた少年に。
感謝の言葉を込め、この言葉を送りたかった。

「億泰君、ありがとう……」

なんでもっと早く気付けなかったのだろう。なんで彼とここで出会ってしまったのだろう。
こんなにも簡単で、こんなにも大切な事を億泰は育朗に教えてくれた。育朗は繰り返し、繰り返し、ありがとうと言い続けた。
彼の目が涙で潤んだ。遅すぎた感謝の言葉は誰に届くでもなく、虚空に消えていった。
穏やかな風が吹き抜けていくと、温かな空気が頬を撫でて行った。その柔らかさが育朗にもう一度億泰のことを思い出させた。
蓋をしたはずの感情が溢れだす。育朗の頬を涙が伝う。一滴だけ溢れ出た水滴を感じながら、少年は声を押し殺し涙した。
強くなること、誰かを守ることを育朗は少年に誓った。悲しいのでもなく、嬉しいのでもなく、それでも涙が止まることはなかった。
橋沢育朗が少年から青年になった瞬間だった。その涙は一人の『男』が流す、決別の涙だった。

【C-6 中央 / 1日目早朝(放送直前)】
【橋沢育朗】
[能力]:寄生虫『バオー』適正者
[時間軸]:JC2巻 六助じいさんの家を旅立った直後
[状態]:全身ダメージ(大)、疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本行動方針:バトルロワイアルを破壊し、スミレを助けだす。
1:億泰君、ありがとう……
[備考]
※『更に』変身せずに、バオーの力を引き出せるようになりました。

 ◇ ◇ ◇

94 :
支援

95 :
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97 :
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98 :
「さァて、どうしたもんかなァ」
ヴィットリオ・カダルディは興味なさげにそう呟いた。次に、思い立ったようにイスから立ち上がると、彼はキッチンへと向かっていった。
少年は今、民家で体を休めていた。ついさっきまで殺し合いをしていたとは思えないほど、ゆったりとした平和な時間を彼は過ごしていた。
リビングに戻るとソファーにドッカリと腰を下ろす。
何の気なしにテレビの電源をつけてみたが、チャンネルを回せど回せど、画面はなにも映してはくれなかった。
ツマンネーの、少年はそう悪態をつき電源を消す。そうして静かになったリビングで、彼はなにをするでもなく、ただぼんやりと天井を眺めていた。
しばらくの間そうしていたが、ふと我に返ると、彼は朝食の時間にしようと思った。
キッチンで見つけた林檎を取り出すと、ドリー・タガーを器用に操り、皮をはいでいく。
大きすぎる刀を使っている割には、とても手際がよかった。数分もしない内に林檎を丸裸にしたビットリオは子供のように、一人はしゃいだ。
得意げな表情のまま、水と食料を取り出し、少しばかり早い朝食をとりはじめる。
少年が食事にかぶりつく音が部屋内に響く。どこまでも平和で穏やかな、朝食のワンシーンだった。
朝食をとりながら少年は考える。さて、どうしようか。この後一体どこに行こうか。
さっきはシルクハットのじいさんを殺し損ねてしまった。車も壊してしまった上に、一人も殺せず逃げる羽目になった。
少し悔しい。もっとうまく立ち回ったならば、きっと成果を上げれたはずだろうに。
後悔がビットリオの中でこみ上げる。同時にそんな自分に腹が立ち、彼は八つ当たり気味にナイフを机に降りおろした。
ガンッ、という音を立て垂直にナイフが突き刺さる。ビィィイン……と薄ら寒い音を立て刃が震え、鳴いた。
「ッたくよォー……」
とはいえ終わったことをクヨクヨするのは自分らしくない。前向きに、建設的に考えよう。大切なのは今後どうするかだ。
林檎にかぶりつきながら彼は立ち上がると、窓際へと足を運ぶ。
ひょいと外を覗けば、さっきまでいた屋敷の方角が少し明るくなっているのが見えた。一体なにが起きているのだろうか。
あの明るさ具合は火事でも起きてるのではないだろうか。ビットリオは林檎をもうひとかじりした。
ならもう一回あそこに戻るもいいかもしれない。
きっと誰かが戦っていて、それが元で出火したのだろう。
それに火につられて他の人が来る可能性もある。行けば何かが起こることは十分あり得るわけだ。
「でもなァー」
一度行った場所にもう一度、というのは何というか味気ないしつまらない。
それに他に選択肢がないかと言われればそうでもない。数分前に聞こえた二つの音、南から聞こえた少年の叫び声と西から聞こえた救急車の音。
こちらを目的地にするのもいいかもしれない。道中誰かに会えば、そいつにちょっかい出せばいいし、中央に近づけばそれだけ人も増えるだろう。
「でもなァ、うーん……」
ソファーに座るとビットリオは頭を悩ませる。どれも、これだ! と思えるような決定打がない。
悩ましい。どうしたものか。うーん、うーん、と唸ると少年は腕組みをし、頭を悩ませる。
そうして考えて、考えていると、そのうちなんだかどうでもいいように思えてきて、とりあえずは朝食を楽しもうと彼は思った。
ソファーから立ち上がるともう一度キッチンへと向かっていく。冷蔵庫の中にチーズがあったはずなんだよなァ、そんな風に暢気に朝を過ごすビットリオ。
廊下を進む彼の頭上で壁掛け時計がカチリと音を立てた。長針が一つだけ、時を進めた。
時刻は六時前、もう間もなく放送の時間であった。

99 :
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支援

102 :


【B-6とC-6の境目 とある民家 / 1日目早朝(放送直前)】
【ビットリオ・カタルディ】
[スタンド]:『ドリー・ダガー』
[時間軸]:追手の存在に気付いた直後(恥知らず 第二章『塔を立てよう』の終わりから)
[状態]:体力消耗(中)、全身ダメージ(小)
[装備]:ドリー・ダガー、ワルサーP99(04/20)、予備弾薬40発、メローネのバイク
[道具]: 基本支給品、ゾンビ馬(消費:小)、打ち上げ花火、手榴弾セット(閃光弾・催涙弾・黒煙弾×2)
[思考・状況]
基本行動方針:とにかく殺し合いゲームを楽しむ。
1.どうしよっかなー。とりあえず飯食おう。
[参考]
基本支給品をまとめました。いらないと判断されたものは C-6中央、アイリン達の死体の脇に放置されています。
不明支給品の内訳は以下の通りでした。ちなみに全て一つだけ支給でした。
ジョージの不明支給品→打ち上げ花火、ポルナレフの不明支給品→ゾンビ馬、手榴弾セット、ヴィットリオの不明支給品→ジョルノのタクシー車、アイリンの不明支給品→メローネのバイク
【支給品紹介】
【打ち上げ花火@STEEL BALL RUN】
ジョージ・ジョースター一世に支給された。
SBR開幕を告げる際に使用された打ち上げ花火である。音と光を出すので使用したら結構遠くからでも見える、かも。
【ゾンビ馬@STEEL BALL RUN】
ジャン・P・ポルナレフに支給された。
ジャイロが旅の途中で手に入れた謎の糸。縫えば勝手に治療もしれくれる万能治療製品。
連載当初はジャイロの父親のスタンドなのでは、とか、後半にこれに関連したスタンド使いが出てくるのではと憶測を呼んだ。
案の定というべきか、投げっぱなしにされた。だがジョニィが大統領戦で負傷した際には使われていたので、忘れらたわけではなかったようだ。
【ジョルノのタクシー車@黄金の風】
ヴィットリオ・カダルディに支給された。現在サンモリッシ廃ホテルのロビーに放置されている。
ヴィットリオが相当派手に壊したのできっと修復不可。
ちなみに各国によってタクシーの色は違う。タイのバンコクでは赤地に青というド派手なものが見れるとか。
【メローネのバイク@黄金の風】
アイリン・ラポーネに支給された。焦げ焦げしてない。


103 :
支援

104 :
支援

105 :
 ◇ ◇ ◇

むせかえるような血の臭いがワムウの鼻を突く。男は顔をしかめながらも、より臭いの強い方へと足を進めていった。
やがて血の臭いがこれ以上ないほどはっきりしたころ、闇に紛れて三つの影が浮かび上がってきた。
嬉々とした様子で刃物をふるうJ・ガイル。青い顔で吐き気をこらえるスティーリー・ダン。
そしてかつてはトニオ・トラザルディーと呼ばれていたものが、彼らの足下で無惨な姿となって転がっていた。
ワムウは不愉快そうに表情を歪めた。戦いは好きだが、血や死体が好きかといったらそうでもない。
死者を侮辱する行為はたとえ見知らぬ人間相手であろうと、見ていて気持ちのいいものではないのだ。
ワムウの接近に気づいたJ・ガイルが顔を上げる。血しぶきがとんだ顔をニヤッと歪ませると、殺人鬼は柱の男に声をかけた。
「ようやく来なすったか」
「何をしている。宮本はどこだ」
「ククク……、そう焦なさんな。宮本は無事ですよ、すっきり縮みぎっちまいまして自分から紙になっちまいましたがね。
 俺のポケットん中で、きっと青ざめながらガタガタ震えてるんじゃないですかね?」
えらくくだけた口調で話しかけてくるJ・ガイルの態度が不愉快だった。同族意識でも持たれているとしたらそれはまったくの誤解だ。
ワムウの体から湧き出た威圧感は彼の怒りだった。誇りを持たないゲス野郎と、誇り高き戦いの士を同格としているなら、これ以上の侮辱はない。
洞窟を充満する怒りを嗅ぎとり、J・ガイルがケラケラと笑った。
そしてなだめるように両手をあげると、落ち着け落ち着けといったようなジェスチャーを繰り返す。
その人を食ったような態度がますますワムウの怒りを煽ったが、男はぐっと堪え、J・ガイルに近づいた。
感情を露わにすれば更につけあがる。相手のペースに巻き込まれてはいけない。こんな外道にいちいちつきあってはこちらが損だ。
冷静になるため一呼吸を置き、ワムウは口を開いた。
「宮本を渡せ」
意外なほど素直に、J・ガイルは従った。ポケットから紙切れを出し、ワムウに差し出す。
受け取ったワムウが少し離れたところに腰を下ろし、J・ガイルは死体いじりを再開した。
なんでもない一連の行為だったが、その時湧き出た殺気と威圧感はあまりに圧倒的で、スティーリー・ダンは一歩も動けなかった。
汗が顎先からポタリ……と流れ落ち、そこでようやくダンは遠慮がち気に自分も腰を下ろす。
そうする必要もないのに、膝を抱え、窮屈そうに彼はその場にしゃがみこんだ。居心地が悪そうに何度かもぞもぞと姿勢を変えたが、気分は晴れなかった。
彼の頭上を、二人の男の声が飛び交う。目をつむったままワムウが唸る。手を休めることなくJ・ガイルが返す。
「……俺は貴様を殺さん」
「ヒヒヒ……そうだなァ、…………そうでしょうねェ。
 俺もアンタに殺される気はねェ、俺は自分の身の程を知ってますから。
 敵わない相手に喧嘩を吹っかけるほどアホでもねェし、そんな馬鹿げたことなんてやろうとも思わねェ。
 だからワムウさんよォ、ククク……アンタの要求を聞こうじゃねェか。俺を生かすってことはそれなりに目的があるんだろ?
 何か狙いがあるからこそ、俺を殺さないでおいてやる、なんてェ言うんだろ?」
「そこまでわかってるなら言うまでもないだろう」
「日中アンタが動けないときは俺がアンタの目となり足となりましょう。汗かき、骨折り、駆けまわりますよ。
 探してほしいのは……お仲間と好敵手でしょうかね? 人探しは自信があるんで、任せてもらったらそれなりに成果はあげますよ。
 ただし、ククク……途中でつまみ食いをしても構わないだろ?」
「…………そこまで頭が回るならば」
「ええ、集合時間と場所も考えてますとも。
 日が沈む時、12時間後にC−3、『DIOの館』でどうでしょうか?」
「構わん」

106 :
支援

107 :

会話が終わると同時に、J・ガイルがナイフをサッ、と振るった。
肉が裂けるような音が洞窟に響き、J・ガイルの顔に新たに一つ、血痕が飛んだ。
ニヤァ……と顔をねじらせ男は高笑いを繰り返す。そのたびに哀れなコックだったモノに切り口が生まれていった。
狂ったように洞窟に反響する笑い声。ワムウは何も言わず、座禅を組んでいた。その瞳は閉じられ、呼吸は緩やかに繰り返される。
スティーリー・ダン、一人だけが笑うことも、静まることもできず、途方に暮れ、恐怖に震えていた。
ここは怪物どもの巣窟。自分なんかがいるべき場所でない。こんなところに一分だっていられない。
覚悟がなかったわけではなかった。だがやはりというべきか、スティーリー・ダンの本質は小物であったのだ。
命のやり取りを彼は好まない。安全地帯で、人質を逆手に、弱者を踏みにじるのがお似合いの男。それがスティーリー・ダンなのだ。
どうしてこうなってしまったのだろう。一体どこで間違えたのだろう。
逃げだすことも怖い、ここにいるのも怖い。ここにいるべきかもわからない、逃げだしていいかもわからない。
どうしていればいいのか、なにをしていればいいのか。
自分に許されていることと言えば、脅え、戸惑い、身を縮ませることだけなのだろうか。だとしたならなんと惨めな事か。
ふとワムウのポケットの中にいるだろう、宮本のことを思い出した。
例えポケットの中だろうと、ここよりは安全なはずだろう。ポケットの中ならば、こんな最悪で泣き出しそうな気分にはならないはずだ。
そう思えてしまうほど男は追いこまれていた。彼は何かから逃げるように身を縮め、そして目を瞑った。
ああ、悪夢なら早く覚めてくれ。どこでもいい、だれでもいい、誰か助けてくれ。
それは宮本輝之輔がゲーム当初に抱いた感情と、全く一緒であった。

時刻は間もなく六時。放送が近づいていた。

【B-7 地下 カーズのアジト/ 1日目早朝(放送直前)】
【ワムウ】
[能力]:『風の流法』
[時間軸]:第二部、ジョセフが解毒薬を呑んだのを確認し風になる直前
[状態]:疲労(小)、身体ダメージ(小)、身体あちこちに小さな波紋の傷
[装備]:なし
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:JOJOの誇りを取り戻すために、メガネの老人(スティーブン・スティール)をR。
0.放送を待つ。その後は宮本から情報を聞きだす。
1.強者との戦い、与する相手を探し地下道を探索。
2.カーズ様には出来るだけ会いたくない。
3.カーズ様に仇なす相手には容赦しない。
4.12時間後、『DIOの館』でJ・ガイルと合流。
【スティーリー・ダン】
[能力]:『ラバーズ』
[時間軸]:承太郎にボコされる直前。
[状態]:精神疲労(大)、身体疲労(小)
[装備]:家出少女のジャックナイフ、おもちゃの鉄砲
[道具]:基本支給品、ブーメラン、おもちゃのダーツセット
[思考・状況]
基本行動方針:死にたくない。
0.もう殺人とか犯人とかどうでもいい。とにかく死にたくない。というか逃げだしたい。
1.放送後、情報収集の後、可能なら地上に出たい。
2.J・ガイルを利用して、上手く立ち回る。けど実際信用ならない。
3.ワムウをDIOにぶつけ、つぶし合わせたい。

108 :
支援

109 :
 

110 :
支援

111 :

【J・ガイル】
[能力]:『吊られた男(ハングドマン)』
[時間軸]: ホル・ホースがアヴドゥルの額をぶちぬいたと思った瞬間。
[状態]:絶好調、上機嫌
[装備]:コンビニ強盗のアーミーナイフ
[道具]:基本支給品、地下地図
[思考・状況]
基本行動方針:生き残る。
0.放送待ち。その間はお楽しみ。
1.地上にてワムウの味方や、気に入りそうな強者てを探す。
2.スティーリー・ダンを上手く利用したい。
3.12時間後、『DIOの館』でワムウと合流。
4.ワムウをDIOにぶつけ、つぶし合わせたい。
【宮本輝之輔】
[能力]:『エニグマ』
[時間軸]:仗助に本にされる直前
[状態]:恐怖、ワムウのポケットの中
[装備]:コルト・パイソン
[道具]:重ちーのウイスキー
[思考・状況]
基本行動方針:死にたくない
1.???


 ◇ ◇ ◇

112 :
支援

113 :


パチパチパチ…………
――― 鳴り止まない拍手。
パチパチパチ…………
――― 乾いた、重みのない拍手。
いかがでしたでしょうか。13人の群像劇、お気に召していただけたでしょうか。

――― 帽子をかぶった男は無言で拍手を続ける。
    肯定するでもなく否定するでもない。ただ淡々と手を叩くのを止めなかった。
色々と言いたいことがあるのも承知の上です。
ですがここで評価を下すのは時期早尚。舞台はまだまこれからなのです。
お楽しみはここからです。
――― ムーロロは何も言わず、散らばらせていたスタンドを呼び戻した。
    考えごとに沈む中、持て余まされた手が悪戯にシャッフルを繰り返していた。
そう、全ては序章にすぎないのです。
お席を立ち上がれるのは今しばらく辛抱を。
涙し、歓喜し、拍手喝采されるのも些か先走りすぎでございます。
 
――― 男はむすっとしたまま動かなかった。
    別に怒っているわけではない。脅えているわけでもなければ、喜んでもいない。
    男は何も感じてなかった。ただありのまま、集まった情報を処理し、分析し、次の手を考える。
    スタンドを呼び戻したのは放送に備え、次の一手を振るうための準備にすぎなかった。
ここまでは大いなる序曲に過ぎないのです。物語は一体ここからどう転がるのか、それはプレーヤー自身も知らぬところです。
我々に許されるのは傍観のみ。笑いあり、涙ありの大長編になることは確実でございます。ただそれをどうとらえるかはお客様次第でございます。
――― ムーロロは無言のままだ。機械的にカードを操る手を休めない。
    何か独り言をつぶやくこともなければ、メモを取るようなこともない。
    全てのカードが掌の上をスムーズに、思い通りに動いていった。
さて、では一旦幕を引くといたしましょう。
しばらくの間ですが、幕間劇を楽しむもよし、休息を取られるもよし。
ご友人と劇の出来についてあれこれ論じるのも素敵でございましょう。
――― ムーロロの目がチラリと時間を確認した。
    秒針が音を立て、動いて行く。一秒、一秒。確実に時は進んでいく。
それでは、紳士、ご淑女、しばしお別れを…………。
――― 放送の時間がやってきた。


114 :
支援

115 :
支援

116 :
支援

117 :


【D-5 トレビの泉 / 1日目早朝(放送直前)】

【カンノーロ・ムーロロ】
[スタンド]:『オール・アロング・ウォッチタワー』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』開始以前、第5部終了以降。
[状態]:健康
[装備]: トランプセット
[道具]:基本支給品、ココ・ジャンボ
[思考・状況]
基本行動方針:状況を見極め、自分が有利になるよう動く。
0.放送待ち。情報整理。
1.ココ・ジャンボに潜んで、情報収集を続ける。
2.今のところ直接の危険は無いようだが、この場は化け物だらけで油断出来ない。
[備考]
なんかもう、情報を色々持ってる。

118 :
以上です。誤字脱字、矛盾点修正点あればご連絡ください。
投下に時間かかりすぎて疲労困憊です。支援して下さった方、本当にありがとうございました。
感謝いたします。
ムーロロの最後の状態表はwikiではちゃんとまともに書きます。

119 :
投下乙でした!
まさかのジャイロ&ワムウの協力手術
しかしツェペリさんの足が動かなくなるとは…奇しくもジョニィと同じ状態に
回復系スタンド持ちはまだまだいるが、はたして生きて会えるのだろうか?
育朗の基本行動方針に思わず涙目に。もうスミレはいないんだよ育朗…彼も今後が心配だ
あとムーロロに情報が集まりすぎてヤバいw
誤字脱字報告、とりあえず見つけたやつだけ。
・「ジャイロ君、前衛と後衛、後退しなァい?」
後退→交代
・ゾンビ馬の説明
忘れらたわけではなかったようだ。
忘れら「れ」たわけではなかったようだ。

120 :
大作投下超乙!リアルタイムで支援できずすみませんでした。
いやー、面白かったです。
新スレを早くも1/5埋めてしまう超大作が投下されるとは……予約の時点で薄々感じてはいましたがやはりすごい。
なによりもやばいのがワムウの成長っぷり。黄金回転での神砂嵐って、冗談じゃなさすぎるw
マスターしたらDIO様でも裸足で逃げるしかなくなるんじゃあ……((((;゚Д゚))))
トニオさんには生きて欲しかったが……う〜ん残念。やはりお人好しが足を引っ張ってしまいますね。
どのパートもリレーしたくなる面白い終わり方でした。書き手として、放送後の予約合戦が待ち遠しいです。
以下、指摘を幾つか見つけたので
>>19
ダンのセリフ「さぁ、早く戻りましょう。ここは暗くて、足場も悪い。スタンド使いじゃない僕らにとってはあまり危険です。」
トニオは戦闘向きではないにしてもスタンド使いなので、このセリフはちょっとおかしいかと
ダンと違って自分のスタンドを隠していませんし
>>57,>>98.>>102
×ヴィットリオ ⇒ ○ビットリオ
>>70
ビィーティー
これはアヴドゥルのセリフ内なのでわざとか?
>>73
ビーティの思考2の数字が荒ぶっています。
状態表の移動経路
×サンモリッシ ⇒ ○サンモリッツ
>>77
ドルドが潜んでいたのは屋根上?
ホテルの1階ロビーですよね?天井裏か2階なのでは?
>>102
ビットリオの所持品
手榴弾セットはホテルから逃げる際に使用したのでは?
>不明支給品の内訳は以下の通りでした。ちなみに全て一つだけ支給でした。
とありますが、ポルナレフの支給品は2種類あったみたいです。
×アイリン・ラポーネ ⇒ ○アイリン・ラポーナ
>>105
ツェペリ脳内の『ラバーズ』をワムウが除去した際、ダンへのダメージはあったのか?
そもそもワムウにスタンドである『ラバーズ』が接触できたのか?

以上です。>>105のは揚げ足取りみたいな感じなのでどーでもいいかもしれませんが一応気になったので。
次回作も期待しています。

121 :
あ、そういえばタイトルは?
とりあえずwikiには未定で載っけときます

122 :
ちょくちょくすみません
×カダルディ ⇒ ○カタルディ
ビットリオ・カ『タ』ルディですね。
あと、【トニオ・トラサルディー 死亡】が無いようです。

123 :
http://www20.atpages.jp/r0109/uploader/src/up0149.jpg
他のシーンもすっごい面白かったんですけど!
これは外せまいと思いまして…

124 :
>>123
支援絵乙です!
まさかこのシーンとはwww
相変わらずのクオリティに感激です。
シーラEの二の腕ペロペロしたいwwwwww
今後もよろしくお願いします。

さて、いよいよ放送が近いですね。
まだ早朝に突入してないキャラを纏めてみました。
予約中
玉美、トリッシュ、ウェカピポ、アナスイ
まだ深夜
ディスコ
ジョンガリA
サーレー、チョコラータ
あと4人!
黎明帯
サンドマン
シーザー、形兆、ヴァニラ
スト様、吉良、リキエル
ジョニィ、ラバソ
あとこの4パート。
早朝に突入してないのは、以上の13人7パート。
第1回放送ももう近いぜよ!

125 :
投下します。

126 :
支援

127 :
まるで泥の中を進んでいるかのようだ。ナルシソ・アナスイはそう思った。
進めど進めど先は見えず、足は不安に取られ、混乱が頭をかすめていく。
激しく動いたわけでもないのに動悸が止まらず、何度かこみ上げた吐き気をアナスイは気合でこらえた。
こんなところで時間を無駄にするわけにはいかない、そんな気持ちで耐えていた。
もし、ジョニィ・ジョースターと遭遇していなければ。
もし、ジョニィ・ジョースターとの情報交換の中で、“その可能性”が沸き起こっていなければ。
何を馬鹿な。アナスイはそう呟くが、心の靄は一層濃くなり、脳をよぎるノイズは収まるどころか、増すばかり。
結果論でしかない、そう言い聞かせ、男は彼女を見つけるために止まっていた足を動かし始める。
湧き上がる不安を、押し隠すように。
アナスイの知らない空条徐倫、その可能性が彼の眼を曇らせた。
彼の知る徐倫は強い人だ。いつだって彼女は自ら決着ゥつけるため戦い、そして勝利してきた。
運命を前にしてもひるむことなく拳を握り締め、どんな障害だってなぎ倒し、ねじ伏せ、切り開いていく。
アナスイの知る徐倫はそんな女性だった。聖母のように慈愛にあふれ、優しさゆえに誰かを傷つける人を決して許さない。
空条徐倫はそんな女性だった。そしてそんな彼女を、アナスイはたまらないほどに、愛していた。
いつだって未来を見据える、力強い瞳。アナスイは、その目に恋していた。

アナスイは沈んでいく。くるりくるりと底なしの不安の海の中に、彼はどこまでも落ちていく。
胃の中が空っぽで、奇妙な動きを繰り返す。えづくように喉が震え、げぇげぇと犬のように吠え声をあげた。
だがそうじゃない徐倫だったら? 戦う術もことも知らない徐倫が、今、ここにいたとしたら?
空条徐倫は強い人だ。自分の知る徐倫はそうだった。だがそれは、彼の知る徐倫 “は”、 だ。
守る必要もないくらいに彼女は強く、守ることを拒むほどに孤高で誇り高い人だった。
だが、そうじゃない徐倫もいるはずだ。彼の知らない、弱気で泣き虫で、立ち上がることすらできない、空条徐倫もいるのである。
もしも今、この瞬間にでも『そんな徐倫』が膝を抱え、震えていたならば。
仮に数十年先、幸せな未来で老い、満足に動くことすらできなくなった『彼女』がこの場にいたとしたならば。
子供よりも幼く、無垢で無知な赤子の『空条徐倫』が呼び出されていたとしたならば。
寒くもないのに鳥肌が背を伝い、カタカタと腕が振るえた。
恐ろしかった。それはナルシソ・アナスイが生涯で一度も経験したことのない、まったくの混じり気なしの純粋な恐怖だった。
ナルシソ・アナスイの知らない空条徐倫がいるという事実に、彼は恐怖した。
間違いなく空条徐倫であるはずなのに、そうと呼んでいいかもわからない女性が存在することに、彼は恐怖した。
大丈夫、大丈夫だ。根拠も理由も、何もない言葉を必死で言い聞かせる。彼は強がらざるを得なかった。
自分に必死に言い聞かせなければ、心が折れ、迷いが生まれ、足は止まってしまう。
それだけはダメだ。例えそうなることが当然だとしても、それでも駄目だ。どんなことになろうとも、そうなってはならないと、誓ったはずではないか。
彼女を愛せるのは俺だけだ。彼女を愛せないなんて、そんなのは、もう俺じゃない。
アナスイはひたすらに叫んだ。効率だとか、合理性だとか、そんなことはどうでもよかった。
何度か轟音が聞こえてきた。幾度となく、背後で眩い閃光が過ぎ去っていった気がした。
だがそれでもアナスイは声を張り上げ、住宅街を疾走し、愛しの彼女を助けるために走り続けた。
そうだ、アナスイの知る徐倫は強い人だ。そんな強い彼女ならば、必ず生き残る。
なら俺にできることは、そんな彼女を信じ、ただひたすらに“そうじゃない”彼女を守ることだ。
無力な彼女を守り、守り、そして守り抜く。今の俺にできることは、すべきことは、もうこれだけだ。
「信じているよ、徐倫……」
彼のつぶやきは風に紛れ、かき消される。ふと足を止めていたことに気付くと、男は再び走り、叫び始めた。
いるかもわからない、愛しの彼女を探すため。不安や絶望に、押しつぶされぬように。
囚われ人は脇目も振らず、纏わりつく不安を振り払い、そしてまた走り出す。



128 :
支援

129 :


まるで淀んだ霧の中を歩いているかのようだ。ジョンガリ・Aはそう思った。
建物に手をつき、男は息が整うまでその場に立ち尽くす。熱を持たない、冷えたレンガの壁が次第に心を落ち着かせる。
顔をあげ、男は息を吐く。身体は落ち着いた。だが動悸は激しく、心は定まらない。
渦巻く不安は霞み消えることなく、留まり続ける。燻った不安の火は、消えはしなかった。
もしもンドゥ―ルと出会っていなければ。
もしもンドゥ―ルとの会話で、“その可能性”に辿りついていなければ。
落ち着け、落ち着け。繰り返しそう言い聞かせた。だが呼吸は乱れ、火照った身体は収まらない。
クソ、そう悪態をつく。現状が変わるわけでもないが、そう言いでもしなければ気持ちがおさまらない。
手を離すことなく、壁伝いに脚を進めていく。ジョンガリ・Aは街をどこへともなく進んでいく。
歩みは次第に早まり、そして走りへ変わった。男は声を張り上げ、夜の街に声を張り上げる。
沈んだ空気が、男の叫びに切り裂かれていった。
その不安はまるで陽が沈み、夜がやって来るようにひっそりと、当たり前のように彼の心に忍び込んできた。
熱気も活気も気がつけば消え、沈んだ冷気が這いいるように、ジョンガリ・Aは不安にさいなまれていた。
仕えるべき唯一の人物。光無き目に光をもたらす希望そのもの。“DIO”が、彼の知らない“DIO”である不安に。
光を宿さず、もはや用をなさない目をギュッと瞑った。より深く、より完全な闇が男を見返していた。
いつもはそれを切り裂く、一筋の光が、なぜだか今、、“観”ることができなかった。
男はたちまち込み上げた焦燥に、頭をかきむしる。情けなく、頼り気なく、弱弱しい盲目者の悲鳴を、彼はあげた。
ンドゥ―ルが死んだ。それはとりたて男の心を震わせるような事実ではなかった。だがその男が死んだ、その事実。
死という救いのない終わりが、氷のように冷静な彼の心に、大きなヒビを入れていった。そう、死以上の恐怖が、彼を蝕んでいた。
もしもDIO様が、自分のことを知らなかったならば。
あの絶対的で、圧倒的で、当方もないはずの方が、そうなられる前の時から呼び出されたとしたら。
もはや自分のことなど必要とすることのない、かの方が望んだ世界から連れ出されていたとしたら。
風が吹いたわけでもないのに、彼の分身は大きく傾き、危うく地面に激突するところだった。
寸前で立て直し、なんとか宙に舞い戻る。気がつけばびっしょりと汗をかいていた。男はもつれるように動かし続けた脚を止め、もう一度壁を背に息を整える。
嫌だ。それだけは、嫌だ。誰にともなくジョンガリ・Aは言う。
死ぬことは怖くない。人をRことも、犯罪も、何をしたって平気だった。
だがこの人だけには、そのお方だけには殺されたくない。そう心から、初めて思えたのだ。
ならばもしも自分が不要だと言われたならば。もしも自分の知らぬ、あのお方が、冷徹で無機質にそう声をかけてきたならば。

―― もう君に頼む仕事はないんだ、ジョンガリ・A。ああ、そうだよ……、君はもういらなくなってしまったんだ。

また駆けだす。スタンドの射程範囲を最大にまでに伸ばし、蟻一匹見逃すことのないように気流を読み取っていく。
ただひたすらに恐ろしかった。見捨てられることが怖かった。彼にとってそのお方から興味を失われ、必要とされなくなることは紛れもなく、純粋な恐怖だった。
ジョンガリ・Aは気流を読む。自分にできること、そしてそれを褒めてくれた主を探し、彼は街をさまよい歩き続ける。
「DIO様……」
拾い上げたデイパックが手の中で軋んだ。あまりに強く握り締めた革の握り手が、男の掌に食い込んだ。
バラバラになりそうな心を必死で繋ぎとめ、彼はもう一度呼吸を繰り返す。
崩れ落ちそうな身体と魂を抱え、盲目者は夜の街へ、どこへともなく消えていった。



130 :

【D-8 杜王駅前路地 / 1日目 早朝】
【ナルシソ・アナスイ】
[スタンド]:『ダイバー・ダウン』
[時間軸]:SO17巻 空条承太郎に徐倫との結婚の許しを乞う直前
[状態]:体力消耗(小)精神消耗(中)、不安、混乱、狼狽
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:空条徐倫を守る。
0.徐倫……。
1.徐倫を探す。
2.味方になりそうな人間とは行動を共にする。ただしケースバイケース。今は協力者を増やす。
[備考]
参戦時期は SO17巻 空条承太郎に徐倫との結婚の許しを乞う直前 でした。
移動経路は 岸辺露伴の家→広瀬家→靴のムカデ屋→カメユーマーケット です。
移動中、近くの騒音を耳にしましたが、無視しました。
【D-5 南部 / 1日目 早朝】
【ジョンガリ・A】
[スタンド]:『マンハッタン・トランスファー』
[時間軸]:SO2巻 1発目の狙撃直後
[状態]:体力消耗(小)精神消耗(中)、不安、混乱、狼狽
[装備]:ジョンガリ・Aのライフル(35/40)
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品1〜2(確認済み/タルカスのもの)
[思考・状況]
基本的思考:DIO様のためになる行動をとる。
0.DIO様……。
1.ジョースターの一族を根絶やしに。
2.DIO様に似たあの青年は一体?
3.この殺し合いはDIO様を慕う者が仕組んだ?
[備考]
D−5にあったタルカスのデイパックを回収しました。
ジョンガリ・Aへのランダム支給品は ジョンガリ・Aのライフル だけでした。

131 :
以上です。誤字脱字、矛盾等ありましたら指摘ください。
短い繋ぎに長い時間かけてすみません。放送まで頑張ります。

132 :
投下乙です
これはいいアナスイとジョンガリ…
ジョンガリのほうはまだいいがアナスイが本気で心配だわー

133 :
投下乙です
原作的にもロワ的にも、徐倫の死を経験するアナスイは今回が初ですね
放送後が不安でたまりません
指摘です
No33にて
>背中にある邪魔な布包みを引き裂く。
>食料やら水やら時計やらが辺りに散らばるが気にしない。
>これで十分。おのれの力のみですべて事が足る。
タルカスの状態表にて
>タルカスの支給品(デイパック以外)はタルカスのスタート位置であるD-5エリアのどこかにバラまかれています。
とあります。
デイパックは引き裂かれて中身のみが散乱しているようなので、回収するのは支給品のみの方がいいですね。

134 :
保守

135 :
投下まだかなー

136 :
◆ ◆ ◆


 ――― 君は『引力』を信じるか?人と人の間には『引力』があるということを……

137 :
◆ ◆ ◆

イギーは笑った。そしてその場を去る。
愚者はこの場に相応しくない。いや、言い換えるならば一体誰が愚者であろうか。
どうだっていいことだ。イギーにとって大切なのは自分のみ。
犬の影はゆっくりと朝焼けの街並みに消えていった。
愚者は愚者らしく。だが誰もが愚者でありえるのだ。人はそれに気づいていない。

【C−4 ティベレ川河岸/1日目 早朝】
【イギー】
[時間軸]:JC23巻 ダービー戦前
[スタンド]:『ザ・フール』
[状態]:首周りを僅かに噛み千切られた、前足に裂傷
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:ここから脱出するため、ポルナレフのように単純で扱いやすそうなやつを仲間にする。
1:優雅に逃走。あばよー!
2:花京院に違和感。

※代理投下者注:(勝手にですが)誤字訂正
街並み消えていった→街並みに消えていった
人それに気づいていない。→人はそれに気づいていない。

138 :

 ◆ ◆ ◆

ペット・ショップのイライラは頂点に達していた。
醜く地を這い、所構わず汚物をまきちらす、憎き犬畜生。そんな犬に見事いっぱい喰らわされたと思うと喚き散らしたくなるぐらい、腹立だしかった。
自分の不甲斐無さを笑い、今もこの街のどこかを我がもの顔であの犬が歩いているかと思うと、怒りで気が狂いそうだった。
―――許せないッ 絶対許してはならないッ!
確かに自分のミスでもあった。戦線を組んだスクアーロがダメージを喰らったことに、一瞬だが気を取られた。
直後、辺りを覆い尽くさんばかりに舞いあがった砂嵐。ペット・ショップは目をやられた。
幸い目に傷を追うようなことはなかったが、その隙は致命的だった。あの犬が身を隠し勝ち逃げるには充分すぎるぐらいの隙であった。
犬はスクアーロにダメージを追わせ、そしてペット・ショップの視力を奪い、逃走した。
それはもう笑えるほど優雅に、余裕綽々で。
一杯喰らわされたのはどちらだろうか。どちらが勝者に相応しいと言えようか。
考えるまでもなく、圧勝したのはイギ―だった。その事実、否定しようのない敗北感にペット・ショップは震えた。
―――何たる恥ッ なんたる屈辱ッ
思えばペット・ショップは屈辱続きの数時間を過ごしている。
無傷で切りぬけた戦いは一つとしてなく、空の狩人の名が廃れるような散々たる結果だ。
怒りに燃えるペット・ショップが叫んだ。彼の苛立ちは、もう限界だった。
それだからペット・ショップは上空浮かぶ謎の物体を見つけた時、迷うことなく一直線に向かっていった。
背後でスタンドを展開、氷のミサイルは発射準備ばっちりだ。
―――次こそはッ 次こそは必ずッ
空の捕食者、鳥類王者のプライド。ペット・ショップが飛ぶ。ペット・ショップが翔んでいく。
怪鳥ホルス神、空をゆく。夜明け前の空、勝ちどきを知らせる甲高い声が響いていった。

139 :
◆ ◆ ◆

「ッたく、なんだっていうんだよォ」
サーレ―の口から漏れた言葉は苦々しかった。
その拍子にふっと漏れ出たアルコールの臭いがチョコラ―タの鼻をくすぐり、彼は不愉快そうに顔をしかめた。
そして視線を僅かにだけ外すと、なおも不満をだらだらと言い続ける傍らの男を見た。
まったく呑気なものだ。そうチョコラ―タは思った。
足元に転がるいくつもの酒瓶とチョコレートの包み紙を見て、チョコラ―タはため息を吐く。
そして直後苦笑すると、彼はそれを隠すように顔を覆い、サーレ―に表情を見られないようにした。
酒にうつつを抜かしたサーレ―を笑える身ではない。自分だって、この数時間したことといえばドングリの背比べ、大して変わらないのだ。
手に持った自身の支給品を見つめ、チョコラ―タは更に笑顔を深くした。
彼がしたことと言えば、ナチス研究所が残した残虐非道の人体実験レポートを夢中で読みふけったのみ。
まったくもって笑えない。酒に溺れるサーレ―。読書にふけるチョコラ―タ。なんて間抜けな連中だったのだろう。
自分の事でありながら、チョコラ―タははっきりと、そう思った。
自分自身、呆れるほどに平和ボケしていたことを、彼は認めざるを得なかった。
「胡散臭ェ、鳥公が。まったく、このサーレ―様も舐められたもんだ」
男二人は背中合わせでピアノ中心に立ち、辺りを漂う怪しげな影を睨みつけていた。
突如現れた怪鳥は今にも二人を八つ裂きにせんばかりに、殺気に満ち溢れていた。
薬品の臭いもアルコールの臭いも吹き飛ばすほどの戦いの臭いを、その鳥は運び込んできた。
サーレ―は舌打ちをし、チョコラ―タは再度ため息。
チョコラ―タは落胆していた。まったく、もう少し待ってくれればレポートも読み終わることができたというのに。
男は恨めしそうに空舞う鳥を見つめ、残念そうにうつむいた。嘆かわしそうに、彼は頭を左右に振った。
だがしばらくし、再び彼が顔をあげたときには、その顔には笑顔が浮かんでいた。
そうだ、なにを嘆くことがある。レポートよりももっと刺激的で、もっと素晴らしいものがあるじゃないか。
眺めているだけじゃつまらない。実践しなければこの高鳴りは収まらない。
ああ、一体自分は何をしていたんだろう。殺し合いという最高の舞台を用意されながら、まったくなんて無駄な時間を過ごしていたんだろう。
ならば、動きだせ、チョコラ―タ。遠慮なんていらない、さっそくとりかかっていこうじゃないか。
男は両手を震わせ、空を掴むように指を動かした。滾る興奮が、彼を突き動かしていた。
躊躇いなんぞは一切ない。慈悲も情けも、この男には存在しない。
あるのは掛け値なしの狂気のみ。チョコラ―タは舌を震わせる蛇のように、獲物へと手を伸ばそうとしていた。

―――そう、彼の傍に立つサーレ―という男。彼こそがチョコラ―タの獲物だった。


代理投下者注:(勝手にですが)誤字訂正
対して変わらないのだ。→大して変わらないのだ。(さほど、という意味ならこちらだそうです)

140 :
◆ ◆ ◆

―――ッたく、なんだっていうんだ

今度は口にださず、サーレ―は一人心の中で呟いた。
アルコールのせいか、身体は火照り熱を帯びていたが、それでも頭脳はクールに、そして正確に働いていた。
暗闇に漂う殺気を一つと混同するほどに、酔いは回っていなかった。
夜空に舞う鳥の影、背後から滲み出る狂気の香り。二つの気配は確かに自分に向けられていた。
上空数十メートルで、どうやらサーレ―は挟み撃ちの形に陥ったようだった。
だが男はうろたえない。逃げ場もなく、戦力差もハッキリしているというのにそれがどうしたと言わんばかりの態度だ。
サーレ―は首の骨を豪快にならし、腕をぐるぐるとまわし、肩の疲れをほぐしていた。
そしてさも手軽な感じで、さて、どうしたもんか、そう呟き、傍らにスタンドを呼び出した。
『クラフトワーク』、彼が信頼する自身のスタンド。一対一ならば決して負けることのない、強力なスタンド。
彼は絶対の自信を持っていた。例え多勢に無勢であろうと、俺のクラフトワークが負けるわけがない。
そう思っていた。
「よっ、と」
宙を裂く氷柱が雨嵐と襲いかかる。サーレ―は片手をあげ、冷静に一つ一つを固定し、防いでいく。
怪鳥が叫ぶ。宙に固定された氷柱を砕き、まきちらしながら、更に襲いかかる追撃の氷。
変わらずサーレ―はこれも冷静に対処。サーレ―の周りにはいまや無数の氷が浮かんでいる。
お見事、クラフトワーク。流石、サーレ―。
ペット・ショップはなおも手を休めず攻撃し続けているというのに、彼にはまったくもって関係なかった。
背後に立つチョココラータが驚き、感心するように唸った。サーレ―は淡々と、氷を固定し続けた。
高いところにいるものが有利になるスタンド能力。
さきほどチョコラ―タが言ったその言葉を思い出したサーレ―。攻撃を防ぎつつ、彼は僅かにだけ自分より高い位置にある氷に飛び移る。
後ろにいるチョコラ―タにも首だけでついてくるよう合図する。不気味なほど、男は素直に従ってきた。
今自分に必要なのは隙だ。サーレ―は再度襲いかかってきた氷の攻撃に対処しながら、そう思った。
鳥を出し抜くにしろ、後ろのチョコラ―タを始末するにしろ、どちらかの気を引く何かが欲しい。
さすがにいつまでもこうしておくわけにはいかない。ジリ貧だ。集中力が切れることもあり得る。
ならば第三者の介入が必要だ。ならばなるべく派手に、目立つように動き、誰か介入してくれるものを待とう。
そして隙ができ次第、チョコラ―タか鳥、どちらか順に始末していこう。
サーレ―がそこまで考えていた時、ペット・ショップがの叫び声が彼の思考を切り裂いた。チョコラ―タが後ろで何事か呟くのも聞こえた。
サーレ―は自らの顔に降りかかった影に、さっと顔をあげる。そして、おいおい、冗談じゃねーぞ、そう言った。
自身のスタンドに絶対の信頼を置く彼も、目の前の光景には呆れてものが言えなかった。
ペット・ショップがスタンド・パワーを集中させ、大きな大きな氷を作りだした。
それは北極から氷を丸々切りぬいてきたかのように、巨大で雄大。
圧倒的な大きさの氷が二人を押しつぶさんと、宙より迫る。そして……

―――ドゴオオォォォー…………ン

轟音を立て、三つの影が氷に包まれる。霧靄が晴れた時、しかし変わらずそこには一匹と二人がいた。
怪鳥の叫びが一段と大きくなった。イライラが募っているのだろう。
最後に氷柱を撒き散らすと、一旦、距離を取るペット・ショップ。
サーレ―は変わらず向かっていく。ただ漠然と、なんとなく、気の向くまま、彼は進んでいく。
後ろに殺しを求める狂人を従え、苛立ちに吐く怪鳥を伴って。
二人と一匹が目指す先、そこにはGDS刑務所が、あった。そして二人と一匹はまるで引力に引きつけられるように、そこに向かっていった。

141 :
【D−3 南西 上空 / 1日目 早朝】
【サーレー】
[スタンド]:『クラフト・ワーク』
[時間軸]:恥知らずのパープルヘイズ・ビットリオの胸に拳を叩きこんだ瞬間
[状態]:ホロ酔い、冷静
[装備]:なし
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:とりあえず生き残る
1.派手に動きまわって、誰かの注意を引きたい。そしてチョコラータとペット・ショップの隙を作りたい。
2.ボス(ジョルノ)の事はとりあえず保留
【チョコラータ】
[スタンド]:『グリーン・デイ』
[時間軸]:コミックス60巻 ジョルノの無駄無駄ラッシュの直後
[状態]:興奮
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×二人分、ランダム支給品1〜2(間田のもの/確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:生き残りつつも、精一杯殺し合いを楽しむ。
1.サーレーを殺したい。
[備考]
サーレーの支給品はナチス人体実験レポート、チョコラータの支給品はナランチャのチョコレートとワイン瓶でした。
二人はそれぞれ支給品を交換しました。
【ペット・ショップ】
[スタンド]:『ホルス神』
[時間軸]:本編で登場する前
[状態]:全身ダメージ(中)、苛立ち
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:サーチ&デストロイ
1:八つ当たりだけど、この二人に完勝していらだちを解消したい。
2:自分を痛めつけた女(空条徐倫)に復讐
3:DIOとその側近以外の参加者を襲う
[備考]
二人と一匹はGDS刑務所に向かっています。

142 :
◆ ◆ ◆

―――ドゴオオォォォー…………ン

――おい、おい! 大丈夫か、スクアーロ!
うっとおしい、そう言葉を返そうとしたが、代わりに彼の口から出たのは血と呻き声だった。
どうやら少しの間気を失っていたようだ。口元から垂れる血をぬぐい、頭を振り、意識をはっきりさせる。
スクアーロはたった今、何が起きたかわからなかった。確かな事は一杯喰らわすはずが、一杯喰らわされていたということだけだ。
「チクショウ……!」
前歯を何本かを失った彼は、もごもごとはっきりしない悪態をつく。
老人のようにその言葉には力がなく、男は自らの情けなさを恥じた。
心配してるのか、興奮しているのか、とにかく喚き続けるアヌビス神を無視し、彼は辺りを見渡す。
戦いは既に場所を移っているようだった。遠く聞こえた戦闘音に耳を澄ませ、もう一度空を見上げる。
微かに見えた影は共に戦った鳥のものに見えた。誰と戦っているかはわからない。さっきの犬だとしたら、上空で戦っているのもおかしく思える。
とにかく、一度手を組んだやつが戦っているのを放っておくわけにはいかない。
スクアーロはアヌビス神を握り締め、戦場に向かって駆けだした。
途中足がもつれ、倒れかけた。アヌビス神が心配そうに声をかけたが男はその声も無視する。
何も怒りに燃えているのはペット・ショップだけではない。借りた借りはきっちり返す。スクアーロとて、ギャングだ。
なめらっぱなしでは堪らない。
「クソッたれ…………!」
スクアーロは進む。鳥が行くままに後を追い、誰と戦っているかも知らずに進んでいく。
行く先にあるのはGDS刑務所。まるでなにものかに引かれるように、彼はふらふらと足を進めていった。

【D−3 中央 / 1日目 早朝】
【スクアーロ】
[スタンド]:『クラッシュ』
[時間軸]:ブチャラティチーム襲撃前
[状態]:脇腹打撲(中)、疲労(中)、前歯数本消失
[装備]:アヌビス神
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:ティッツァーノと合流、いなければゲームに乗ってもいい
0;なめらっぱなしは我慢ならないので、ペット・ショップを追って、きっちり借りは返すッ
1:まずはティッツァーノと合流。
2:そのついでに、邪魔になる奴は消しておく。


代理投下者注:(勝手にですが)誤字訂正
戦場向かって駆けだした。→戦場に向かって駆けだした。(ここは修正不要かとも思いましたがおせっかいで一応)

143 :
◆ ◆ ◆

―――ドゴオオォォォー…………ン

「あれは……!?」
「…………」
轟音に慌てて外に出てみれば、そこにあったのはとんでもない光景だった。
ストレイツォは普段はピクリともさせない顔を微かに歪ませ、吉良は柄にもなく眼を見開き、驚く。
ビルの間に突如出現した巨大な氷の塊。一瞬で砕け散ったそれは、キラキラとダイヤのように美しかった。
太陽の光と、それで生まれた影。更に遠目で見たため、そこにだれがいるのか何がいるのかはわからなかった。
二人の男はただ顔を見合わせ、何も言うことができなかった。
先の戦闘の傷をいやすため、二人は今までずっとサン・ジョルジョ・マジョーレ教会に身をひそめていた。
というのは建前で、実を言えば傷はとっくに癒えていた。ただ吉良がわざわざ平穏を捨ててまで外に行く気がしなかったので、仮病を装っていたのだ。
その一時の平穏も、今、崩れ去った。
ストレイツォが吉良を見つめる。何を言わずとも、吉良は目の前の男が何を言わんとしているかはわかっていた。
その眼は彼がよく知る目だ。偽善者で、情熱に燃える、やる気に満ち溢れる者の眼。自分とは真逆の人間が持つ眼だ。
やれやれと首を振り、息を吐く。こうなると言ってどうにかなるものでもない。そしてストレイツォほどの戦闘力をここで捨てるのも実際惜しい。
ストレイツォが何か言いかけるのを手で遮ると、吉良は黙って荷物を取りに建物の中に引っ込んだ。
その嫌々ながらも正義に燃える(ように見える)態度に、波紋の戦士は何も言わず感謝を示した。
吉良は準備を終え、戻ってくると、あいつはどうするのだ、そう訪ねてきた。あいつとはついさっき戦った男、リキエルのことである。
ストレイツォはロープで縛り上げられ、気を失っている男を見下ろした。
結局男から情報を聞き出そうという当初の予定はうまくいかなかった。ストレイツォの波紋がよっぽど効いたのか、あるいは疲労もあったのだろう。
リキエルは気絶したきり、目を覚まさず、今ものんきに白目をむいて倒れている。
無様なものだとストレイツォは思ったが、どうしようもないその男の存在に、頭を抱えた。
急に襲いかかってきた危険人物をここに置いていくのは責任感のない行為だ。
だが連れて行くのも大変だし、かと言ってRのも後味の悪い話だ。悩む波紋戦士を吉良は黙って見つめていた。
結局彼はもう一度波紋を流し、男をその場においていくことにした。
ついでに持っていたロープで縛り上げ、誰かに殺されることないよう、協会の奥底に寝かしておいてやった。
あまり褒められた行為ではないが、致し方ないこと。何よりあの氷の元に、保護すべき誰かがいる可能性だってあるのだ。
遠目でもわかるほどのあれに惹きつけられる弱者だっているだろう。ならば、急がなければいけない。
一人でも多くを助けるため。波紋戦士の誇りにかけて、あれは見逃せるものではない。

――― 本当にそうだろうか?

一瞬だけ浮かんだそんな疑問をストレイツォは何を言っているんだ、一蹴した。
それ以外の理由なんぞ何もない。戦士として、一人の人間として彼はあの場に向かうのだ。
助けるために、救うために、ストレイツォはGDS刑務所へと向かっていく。
引力に引きつけられるように、その足は軽快で、迷いないものだった。
後ろにいる吉良を急かし、ストレイツォは先を急いだ。


代理投下者注:(勝手にですが)誤字訂正
サン・ジョルジョ・マジョーレ教会教会に→サン・ジョルジョ・マジョーレ教会に(教会が2度あったので削り)
あまり褒めれた行為ではないが、→あまり褒められた行為ではないが、(ら抜きだったので)

144 :
【D-2 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会前 / 1日目 早朝】
【ストレイツォ】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:JC4巻、ダイアー、トンペティ師等と共に、ディオの館へと向かいジョナサン達と合流する前
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×3、ランダム支給品×1(ホル・ホースの物)、サバイバー入りペットボトル(中身残り1/3)ワンチェンの首輪
[思考・状況]
基本行動方針:吸血鬼ディオの打破
1.GDS刑務所に向かい、一般人を助ける。
2.周辺を捜索し吉良吉影等、無力な一般人達を守る。
3.ダイアー、ツェペリ、ジョナサン、トンペティ師等と合流した後、DIOの館に向かう。
【吉良吉影】
[スタンド]:『キラークイーン』
[時間軸]:JC37巻、『吉良吉影は静かに暮らしたい』 その@、サンジェルマンでサンドイッチを買った直後
[状態]:健康
[装備]:波紋入りの薔薇
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:静かに暮らしたい
1.平穏に過ごしたいが、仕方ないのでストレイツォについていく。
2.些か警戒をしつつ、無力な一般人としてストレイツォについて行く。
3.サンジェルマンの袋に入れたままの『彼女の手首』の行方を確認し、或いは存在を知る者ごと始末する。
4.機会があれば吉良邸へ赴き、弓矢を回収したい。
[備考]
ハーブティーは飲み干しました。
二人はGDS刑務所に向かっています。
ストレイツォの支給品はマウンテン・ティムの投げ縄のみでした。
リキエルが持っていた支給品を取り上げました。一応基本支給品だけは置いていってあげました。
【リキエル】
[スタンド]:『スカイ・ハイ』
[時間軸]:徐倫達との直接戦闘直前
[状態]:両肩脱臼、顔面打撲、痛みとストレスによるパニック、気絶、縄で縛られてる
[装備]:マウンテン・ティムの投げ縄(?)
[道具]:基本支給品×2
[思考・状況]
基本行動方針: ???
0.気絶中

145 :
◆ ◆ ◆

―――ドゴオオォォォー…………ン

マッシモ・ヴォルペは機械的に、顔をあげ、音が聞こえたほうを見やった。
しばらくの間、彼は何事かと耳を澄ませていたが、続けて音が聞こえることはなかったので、再び視線を落とし、考えにふけ始めた。
河はゆっくりと流れ続けていた。穏やかで、何の変哲もない河を、ヴォルペはじっと見つめていた。
ヴォルペはそっと目を閉じ、長々と息を吐いた。まるで乙女が恋煩いしているような、そんなため息だ。
記憶を掘り返せば脳裏に映る一人の男がこちらを見返している。
まるで蛇のように細く、切れた真っ赤な眼光が男を見返していた。ヴォルペはもう一度ため息をつき、そして歩き始めた。
どれだけ考えても、結局はなにもわからなかった。
男は歩きながら、自らの左胸にそっと手をやった。激しい運動をしたわけでもないのに心臓が早鐘を打っている。
それは未だかつて彼が経験したことのない事象だった。認めたくなくても、彼はそれを認めざるを得なかった。
俺は今、魅かれ始めている。幸せを求める自分自身が、何を求めているのか、気になり始めている。
そして何より……、更に呼吸を荒くし、男は歩調を速めた。脚の先は約束の地、GDS刑務所に向いていた。
DIO……俺はあの男に魅かれている。
約束の時間まではだいぶあったが、待ってなどいられなかった。
一刻でも早くDIOに会いたい。あの轟音、DIOに何かあったらそれは良くない。
気持ちは固まらず、未だ現実感はない。ただその二つだけは確かな感情だった。
マッシモ・ヴォルペはまるで引力に導かれるように、GDS刑務所へ続く道へと消えていった。

【E-2 GDS刑務所・特別懲罰房外 川岸 / 一日目 早朝】
【マッシモ・ヴォルペ】
[時間軸]:殺人ウイルスに蝕まれている最中。
[スタンド]:『マニック・デプレッション』
[状態]:健康、DIOに夢中
[装備]:携帯電話
[道具]:基本支給品、大量の塩、注射器、紙コップ
[思考・状況]
基本行動方針:特になかったが、DIOに興味。
1.GDS刑務所い急いで戻る。
2.DIOと行動。
3.天国を見るというDIOの情熱を理解。しかし天国そのものについては理解不能。

146 :
◆ ◆ ◆

自分は誤解されやすい人間のようだ。ディ・ス・コはそう思った。
無口無表情、無駄な事は極力しない性格ではあると自覚している。だが自分は冷徹ではないし、どんな状況にあろうと冷静沈着でいられるとは思っていない。
襲われれば緊張もするし、きっと命がかかるような窮地に陥れば悲鳴をあげてしまうかもしれない、そうディ・ス・コは思っている。
けどそれを言う必要がなければ言わないし、顔に出したところで無駄ならば顔に出すこともしない。
ディ・ス・コと言う男は、そんな男だった。
そもそも、とディ・ス・コは、歩きながら胸中で思う。
ジャイロ・ツェペリがこの場にいなかったならば当初の目的は全て無駄になってしまう。
それに気づいた彼は、ある程度まで北上したところで進路を西にとった。
彼は地図に記されていない空白の場所を確認しに行こうと決めたのだ。
ジャイロ・ツェペリがいるかいないか、どちらにせよ、スティーブン・スティールが真実を語っているかどうかを確認することは、決して無駄になるまい。
ディ・ス・コはそう思ったから。
実際西の最果ての地は、そこらの風景となんら変わらず、境界らしきものも見えなかった。
だがある地点を越えて一歩踏み出すと、首輪は鳴り響びき、確かにそこに地図上の境界線があることを男に知らしめた。
首輪は確かに作動している。地図の外は地雷地帯。これは有益の情報だ。使える、確固たる情報だ。
ディ・ス・コはそう思った。
だから、この行動も無駄ではなかった。彼は自身に言い聞かせる。
臆病風に吹かれた故の行動であっても、結果的にそれが無駄足でなかったのならば、それはきっといいことだ。
いや、決して臆病風に吹かれたわけではない。心の内でそう訂正する。
ただ確認する必要があったから確認した。それだけのことだ。
東に向かって一歩一歩足を進め始めていた。
呼吸が乱れるようなこともなく、冷や汗や脂汗をかくようなこともしない。
そんな彼が今向かっているのはGDS刑務所。
ディスコの現在地から最も無駄なく、最短距離に位置する施設である。
ただ淡々と、機械のごとく脚を進め続けている。目的地に向けて、ディスコは歩き続けている。

―――ドゴオオォォォー…………ン

ふと鼓膜を震わす音に気づき、彼は空を見上げた。
東の空に顔を覗かす太陽を背に、宙に浮かんだ三つの影。なんだろうと、目を凝らす暇もなくその三つの影がもつれるように落下していった。
さっと走った緊張感を緩め、ディスコは顎をなぞり、今見た光景が何であったのか、考える。
しかし幾秒か考えても何も思い浮かばず、彼は再び歩き出した。
情報も何もなく考えるのは不安を呼び、捻じれた憶測を生む。ならばそれは無駄な行為だ。
無駄な行為は無駄なくするのが一番だ。
だがもしもGDS刑務所に行くこの行為、これすら無駄であったら。
ふと頭に思い浮かんだアイディアをディスコはやはり打ち消し、歩き出した。
それも無駄。考えても無駄だ。誰に言うでもなく、心の中、自分自身にそう言い聞かせ続ける。
それに、ディスコは柄にもなく、こう思った。
GDS刑務所に行けば何かわかる気がする。それは根拠のない、何かしらの確信であった。
強いて言うならば、ディスコは微かにだけ苦笑いを浮かべ、自分の馬鹿げた考えを嘲笑う。
彼は今、GDS刑務所に魅かれている。まるで引力を感じるかのように。運命にときめく少女のように。

代理投下者注:(勝手にですが)誤字訂正
もしもGDSに行くこの行為→もしもGDS刑務所に行くこの行為
彼は今、GDSに魅かれている。→彼は今、GDS刑務所に魅かれている。

147 :
【E−1 東部 / 1日目 早朝】
【ディ・ス・コ】
[スタンド]:『チョコレート・ディスコ』
[時間軸]:SBR17巻 ジャイロに再起不能にされた直後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、シュガー・マウンテンのランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:大統領の命令に従い、ジャイロを始末する
1.サン・ピエトロ大聖堂に向かうのは保留。一旦GDS刑務所へ向かう。
2.信用できそうな奴を見つけたら、シュガー・マウンテンのことを伝える。

148 :
以上です。誤字脱字、矛盾点等ありましたら指摘ください。
予約期限勘違いしてました。すみません。
把握で読み返したんですけど、ディ・ス・コって結構人間臭かったです。

***
以上で代理投下終了です。
改めまして、投下乙でした。
多少無茶にフラグ立てか?なんて予約の段階では思っていましたが、よくよく考えれば現在位置が皆近いんですよね。
それを時間軸等々考えつつうまく刑務所に集めたあたりはさすがの一言です。
第一回放送をまたぐか否かのあたりですが今後の展開に期待がかかる場所になりそうですね。
いい作品をありがとうございました!

149 :
投下乙です
サーレー、ディスコの行く末が気になるな

150 :
      _| ̄|_| ̄|  | ̄|_| ̄|__| ̄|_| ̄|   | ̄|_| ̄|_| ̄|
      |_  _||  | ̄    |  |     |  | ̄   |  |     ̄|
       r┘└へ|  |二コ ┌'|  |二コ ┌|  |二コ ┌'|  |二コ ┌┘
      〈 〈]  ゚,、〈|  | o  ヽ| | o  ヽ|  | o  ヽ|  | o └「 ̄\
      ヽ-ヘ_>ノ_ノ|_|、_ハ/|_|、_八ノ|_|、_ハ/|_|、_ハ/`⊇.ノ
        ____                ____                ____
      /⌒  ⌒\          ./⌒  ⌒\          ./⌒  ⌒\
    o゚((●)) ((●))゚o        o゚((●)) ((●))゚o       o゚((●)) ((●))゚o
   /::::::⌒(__人__)⌒::::: \   /::::::⌒(__人__)⌒:::: \   /::::::⌒(__人__)⌒::::: \
, -‐ (_)    |r┬-|     |, -‐ (_)    |r┬-|     |, -‐ (_).    |r┬-|     |
l_j_j_j と)   | |  |     / l_j_j_j と)    | |  |     / l_j_j_j と)   | |  |     /
売上げNO1のワンピースこそ史上最高!!他作品はゴミ。
初版405万部!!てめーらゴミ屑のネガキャンなんて関係ねーんだよwww
これでわかっただろ?バ〜カw

151 :
         _人人人人人人人人人人人人人人人_
        >   そうなんだ、すごいね!      <
       ´ ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
            __、、=--、、         __
           /    ・ ゙!       /・   `ヽ
           | ・   __,ノ       (_    ・ |
           ヽ、 (三,、,         _)    /
            /ー-=-i'’       (____,,,.ノ
            |__,,/          |__ゝ
             〉  )          (  )

152 :
「どうだ?」
虹村形兆のその言葉にシーザー・アントニオ・ツェペリは首を振った。ヴァニラ・アイスは何も言わず、それどころか視線すらこちらに向けなかった。
形兆は最初から期待していなかったのか、苦笑を浮かべ首をすくめると、スタンドを撤収させた。
ジョースター邸中に広まっていた緑の兵隊たちが一人、また一人彼の元へと戻ってくる。
案の定、参加者も、参加者がいたと思われる痕跡も見つけることは出来なかった。
形兆はスタンドたちに、御苦労、そう呟くと彼らをひっこめ、目線をあげた。
目の前に立つ伊達男、壁にもたれる眼光鋭い狂信者。形兆は二人の男に向け、問いかける。
「ってわけでジョースター邸は空振りだ。人一人、猫一匹おりゃしねェ。
 情報交換の時に打ちたてた通り、当分は情報収集兼協力者探しのためにもなるべく多くの参加者に接触したい。
 となると次の目的地は市街地、刑務所、公園のどれかにしようと思うわけなんだが……何か意見はあるか?」
「俺が今あがった候補から選ぶとしたら……まぁ、実際刑務所じゃなけりゃどっちでもいいぜ。あんなカビ臭くて辛気臭い所に行くのは気が進まねェのさ。
 それに、刑務所なんてところには確実に! レディがいない!
 太陽のように美しく、野花のように朗らかな女性たちってのは刑務所なんかにはいやしねェさ。
 これだけは間違いないからな。それならわざわざなら行く意味なんてねェ。
 東に進路をとって市街地か、北上して公園か。これっきゃないだろ、そうだろ?」
「ヴァニラ・アイスは市街地からこっち、地図で言えば西側に進んできたわけだろ?
 なら効率的に考えれば北上したほうが俺としてはいいと思う。
 それに地図の端から埋めていくのは気持ちがいい。だれだって几帳面に色塗りしていくのは気分がいいものだ。
 そうだろ?」
「…………」
シーザーが言い、形兆が賛成するように意見を付け加える。ヴァニラ・アイスはなおも黙ったままで、興味なさそうに頷くだけだった。
二人の男は互いに見つめ合い、そして頷いた。
ヴァニラ・アイスは選択を放棄、北上という点で二人の意見は一致。ならば行き先は決まったも当然だ。
二人の指がこれからの行く先を同時に指さした。三人がこれより目指すは、ドーリアパンフィーリ公園。




153 :



一陣の風が吹き、公園中の木が優しく揺れた。気持ちの良い葉擦れの音が男たちを包み、そしてやむ。
形兆は足元でうずくまるシーザーを何の感情の籠らない眼で見つめていた。
シーザーは今は固く動かなくなった少女を抱え、泣いていた。決して大きく叫ぶことはせず、涙も見せはしなかった。
だが肩を震わさせ、歯を食いしばり、彼は一人泣いていた。
何の罪もない少女が殺されという事実に。その少女を助けることができなかった自らの愚かさに。
シーザーは怒っていた、嘆いていた。自分自身が許せなかった。間にあわなかった自分を、彼は呪っていた。
悔しさに震える男を、形兆はただ見つめ続ける。
目線はシーザーに向けられていて、あたかも傍目からみればシーザーの感情が落ち着くのを待っているように見える。
しかしそうではなかった。形兆はこれ以上ないほど神経をすり減らし、辺りの気配を探っていたのだ。
眼だけではなく耳を最大限まで活用し、木の葉一枚舞い落ちる音さえ見逃すまいと集中力を高めていた。
スタンドを展開、『バッド・カンパニー』たちが気配を消しゆっくりと進んでいく。足音を殺し、兵士たちは偵察のために陣形を広げていった。
形兆が探しているのは少女を殺した何者か……ではなく、いつの間にか姿を消したヴァニラ・アイス。
ジョ―スター邸を出発した三人は予定通りドーリアパンフィーリ公園にやってきた。
二人はそこで見つけた少女の遺体に気を取られ、そして気がつけばヴァニラ・アイスの姿は見えなくなっていた。
形兆が真っ先に思ったのは、いつの間に、そしてなにゆえにという疑問。
彼が忠誠を誓うのはDIO一人にして、唯一無二。彼が行動するのはDIOのためであり、DIO以外に理由はない。
最悪の可能性を形兆は考える。もしもヴァニラ・アイスが気づかぬところでDIOと接触していたら?
そしてもう既に形兆たちを始末するよう、命令されていたら?
自分の注意力のなさに彼は舌打ちをした。“たかが”少女の遺体一つで動揺しすぎた。
スタンドたちから発見情報はいまだ届かない。自身の目や耳でも、ヴァニラ・アイスの痕跡は捕えられなかった。
形兆はヴァニラ・アイスの落ち窪んだ眼光を思い出し、首筋の産毛が反り返るのを感じた。
協力関係を組んだとはいえ、手をかまれる危険はいつだってある。
そう、何か不都合があれば。ヴァニラ・アイスの琴線に触れるようなことがあれば。
形兆が父親を処分するよりも前に、自分が消される危険性だってある。自分の置かれてる状況を改めて実感し、彼は身震いした。
柔らかな風がもう一度吹き、森がまたゆっくりと囁いた。静まり返る森の中、形兆は神経を研ぎ澄ます。
シーザーの嘆きを聞き、なだめる様に傍らに寄り添いながら、彼はひたすらに待つ。
気配を探り続け、どこからでも、何が起きてもいいように…………。臨戦態勢で、彼は待ち続けた。

 ……―――うわァァァアアッッッ!


154 :

叫び声が静寂を切り裂く。
形兆は弾かれたように走りだした。少し遅れてシーザーが動き出し、男たちは声の元へと向かっていく。
森を裂き、大地を蹴り、辿りついた場所は森の中で開けた広場のような場所。
男たちはそこではたと足を止め、目の前の光景に言葉を失う。
ヴァニラ・アイスと一人の男がそこにはいた。正確に言えば、『半分』の男がそこにいた。
「くッ……う、ううゥ…………!」
「もう一度、もう一度だけ聞いてやろう。DIO様、あのお方について僅かで情報があるならば洗いざらい吐け。
 どんな些細な事であろうといい。今すぐにだ。知っているならば……言え、言うのだ…………ッ!」
「か、は……、はァ……………ッ!」
鮮やかな赤が目に眩しい。まるで地面に広がる真っ赤な絨毯のようだ。
男の右半身はスプーンで刳りぬいたかのような、なめらかな切断面を見せていた。
脇に転がるメキシカン・ハットを踏みつけ、再度ヴァニラ・アイスが迫る。
虫の息の男が荒い呼吸を繰り返し、その音だけが沈黙を破っていた。
「知らない……! ほんとに、俺は、何も知らねェんだッ!
 チクショウ、チクショウ……! なんだってんだ! なんだって、俺がこんな目に……!
 ディオ? なんだそりゃ! クソッたれ、知るかよ、そんな野郎の事!
 ディエゴ・ブランドーのことじゃねーのかよ! クソ…………クソ、痛ェ……痛ェ!
 俺の身体が、身体がァ…………ッ!」
「……そうか」
髭面の男が最後まで言い切らないうちに、ヴァニラ・アイスは囁いた。
その声の冷たさに、思わず後ずさりかける。隣で何かを察したシーザーは、まさか、と眼を見開き一歩足を踏み出した。
ヴァニラ・アイスがその場にしゃがみこむ。傍らに出現したのは彼のスタンド。
シーザーが走る。叫び声をあげ、彼は男を止めようと、飛ぶようにかけた。しかし彼はまた間にあわなかった。
血も凍るような、無慈悲な音が森に響く。

 ―――ガオン…………ッ!

右半身しか残っていなかった男は右腕を残し、消えた。ヴァニラ・アイスは何事もなかったように立ち上がる。
男の支給品であろうライフルをもぎ取り、残った腕をその場で放り捨てる。
ゴミ掃除を終えたささやかな満足感がその眼を満たしていた。今しがた男がいた場所を怒りの表情で見つめ、彼はこう言った。
「DIO『様』だ……。何者であろうと私の前であの方を侮辱するのは許さん……ッ!
 ただ、一つだけ感謝してやろう。ディエゴ・ブランドー……DIO『様』の名を借りる不届きもの名を知れたのは収穫だ」
「てめェ…………ッ!」


155 :
怒りに震えるシーザーが叫んだ。だが彼が拳を振り抜くよりも早く、そしてヴァニラ・アイスが動く隙も与えず、形兆は冷静にこの場を収めるために動いていた。
シーザーがハッと気がつけば、肩に緑の兵士たちが飛び乗っている。
銃口は彼の首輪に向けられていて、見ればヴァニラ・アイスの肩にも同じものが乗っている。
二人の間に立つように、ゆっくりと形兆が歩いていく。両手をあげ、二人をなだめるような落ち着いた口調で言い放つ。
「やめろ、シーザー。お前もだ、ヴァニラ・アイス。二人とも、やめるんだ」
さもなければ首輪を吹き飛ばす。形兆がそう言わんとしていることは明らかであった。
だがそれでも、二人の怒りは収まりそうもなかった。熟練の波紋戦士、狂気の殺人者。
二人の刃物のような視線を受け止めながら、形兆は苛立ち気に声を荒げた。
冷静さが身の上の彼にしては珍しく、感情的な叫びだった。もう一度二人に矛を収める様に叫び、ようやくその場の緊張が薄れる。
ヴァニラ・アイスはスタンドをひっこめ、シーザーは拳を下ろす。形兆は大きく息を吐いた。
「…………」
「おい、どこ行くんだ」
「…………貴様には関係のないことだ。遠くまでは離れない。心配なら貴様のスタンドで見張っていろ、虹村形兆」
森の闇へと溶けていく狂信者を形兆は鋭く睨みつけた。
男は一度として振り返ることなく、仕方なしに何人かの『バッド・カンパニー』を尾行させることにした。
ヴァニラ・アイスの後ろ姿が消えたころ、シーザーが、少しの間一人にしてくれ、そう言った。
断るわけにもいかず、形兆は頷く。シーザーは来た道を引き返し、少女の元へと戻っていった。
きっと彼女を埋葬してやるのだろう。形兆はそう思った。
「…………」
どうやら自分がやろうとしていることは思った以上に大変なようだ。
形兆は大きくため息を吐き、こめかみのあたりを優しく撫でる。頭痛の種は増えていくばかりだ。
シーザーはまだいい。感情的で熱い男で、その本質は優しい善人のものだ。形兆が羨ましくなるほどに気持ちのいい男だ。
ヴァニラ・アイスもそれほど問題ではない。さっきの言葉から自分のことを一応は買ってくれていることがわかる。
心配していたような、すぐに殺される事態はよっぽどのことがない限り、ないだろう。DIOのことを下手に口にしない限りは、だが。
問題なのはこの二人がまっったくもって真逆の人間だということだ。
一人一人ならばいい。一対一ならばそれほど手綱を取ることに苦労はしない。だが三人一緒に行動となると、これはもう無理だ。
必ずどこかで爆発する。どちらかが越えてはいけないラインを破った時……きっと二人は衝突する。
そしてそれを止める自信も、止めるリスクを考えてまで得られるリターンも、形兆にはないように思えた。


156 :
ならば……、と形兆は『バッド・カンパニー』に神経を集中させ、二人の男を観察する。
放送まで時間があるのは幸いした。考える時間と情報を元に、彼は決断するだろう。
遅かれ早かれ、『この時』が来るのはわかっていた。だがそれがこんなにも早くとは思っていなかっただけのことだ。
覚悟はとうの昔に済んでいた。慈悲や後悔は、もうどこにもない。
形兆を支えるのは憎しみと意地。それだけあれば、銃口を向けることに躊躇いなんぞ、ない。
シーザー・アントニオ・ツェペリか。ヴァニラ・アイスか。
決断の時は放送の時。その時、この三人は二人になり、そしていつか一人になる時もくるだろう。
開幕を告げるのは形兆のピストル。男は森の中、一人、来るべき時と向けるべき相手を考え、佇んでいた。






                                    to be continue......

157 :

 【ガウチョ 死亡】

【E-1 ドーリア・パンフィーリ公園 泉と大木 / 1日目 早朝 放送前】
【シーザー・アントニオ・ツェペリ】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:サン・モリッシ廃ホテル突入前、ジョセフと喧嘩別れした直後
[状態]:怒り、悲しみ、不甲斐なさ、二人に対する不信感
[装備]:トニオさんの石鹸、メリケンサック
[道具]:基本支給品一式×2、ジョセフの女装セット
[思考・状況]
基本行動方針:主催者、柱の男、吸血鬼の打倒
0.少女(シュガー・マウンテン)を埋葬してやる。しばらく二人には会いたくない。
1.形兆達についていき、ディオと会ったら倒す
2.形兆とヴァニラには、自分の一族やディオとの関係についてはひとまず黙っておく
3.知り合いの捜索
【ヴァニラ・アイス】
[スタンド]:『クリーム』
[時間軸]:自分の首をはねる直前
[状態]:怒り
[装備]:リー・エンフィールド(10/10)、予備弾薬30発
[道具]:基本支給品一式、点滴、ランダム支給品1(確認済み)
[思考・状況]
基本的思考:DIO様……
0.DIO様……
1.DIO様を捜し、彼の意に従う
2.DIO様の存在を脅かす主催者や、ジョースター一行を抹Rるため、形兆達と『協力』する
3.DIO様がいない場合は一刻も早く脱出し、DIO様の元へと戻る
4.DIO様の名を名乗る『ディエゴ・ブランドー』は必ず始末する。
【虹村形兆】
[スタンド]:『バッド・カンパニー』
[時間軸]:レッド・ホット・チリ・ペッパーに引きずり込まれた直後
[状態]:悩み、憂鬱、覚悟
[装備]:ダイナマイト6本
[道具]:基本支給品一式×2、モデルガン、コーヒーガム
[思考・状況]
基本行動方針:親父を『R』か『治す』方法を探し、脱出する
0.放送後、『どちらか』を始末する? まだ考え中。方法と人物も考え中。
1.情報収集兼協力者探しのため、施設を回っていく。
2.ヴァニラと共に脱出、あるいは主催者を打倒し、親父を『殺して』もらう
3.オレは多分、億泰を殺せない……
4.音石明には『礼』をする

[備考]
・情報交換をしました。どの程度までかは次以降の書き手さんにお任せします。
・ガウチョの参戦時期はリンゴォに撃ち殺される直前でした。ガウチョの基本支給品と腕以外の部分はガオンと消されました。
・それぞれ支給品を確認しました。内容は以下の通りです。
 ベックの支給品……メリケンサックのみ、ヴァニラ・アイスの支給品……点滴と???(次以降の書き手さんにお任せします)
 ガウチョの支給品……リー・エンフィールドと予備弾薬30発、人面犬の支給品……ダイナマイト6本のみ

158 :
【支給品紹介】
【メリケンサック@Part2 戦闘潮流】
ワイヤードのベックに支給された。原作ではニューヨークのRが使っていたもの。
実際効果はあるのだろうか。殴ったとき拳が痛くないってジョジョの世界ではなんかそこまで意味なさげに思える、不思議。
【点滴@Part4 ダイヤモンドは砕けない】
原作では仗助が使って噴上戦で勝利をおさめた。
あんな風に即効性があるとはとてもじゃないが思えない。
あと食べても満腹にはならないと思う。多分。
【リー・エンフィールドと予備弾薬30発@現実世界】
全長640mm、重量3900g、装弾数10発、ボトルアクション方式の光景7.7mm。
戦争映画や漫画で出てくる典型的、古典的ライフルといえばイメージしやすいと思う。
設計、製造されたのが1900年代初めだったにもかかわらずその有効射程は約918m、およそ1km。
凄い。
【ダイナマイト6本@Part2 戦闘潮流】
エシディシが腹の中でドムン!と爆発させた、あのダイナマイト。
胃に入れる前なので綺麗です。安心して使ってください。


159 :
216 名前: ◆c.g94qO9.A [sage] 投稿日: 2012/08/11(土) 20:49:13 BiQ1F2r6
以上です。誤字脱字、矛盾点等ありましたら指摘ください。
ガウチョ、ごめんね。お前の事けっこーすきだよ。



ーーーーーーーーーー
投下乙です。改行多すぎが出たので、レス分割しました
この奇妙な3人組はやっぱり崩壊しちゃったか

160 :
投下&代理乙です
近くにDIOもいるしドキドキですね

161 :
投下乙です
ヴァニラがどうなるかにかかってそうだなこのチーム

162 :
さて――君たちに『俺の話はつまらないか?』と聞いて以来の話か。
自分で言っておいてなんだが、こういう悩みは何とも厄介なものだと思う。
本人にとっては深刻でも周りから見たら些細な事なのかも知れないしね。
で……そういう場合は多くの人がこう言うだろう。
――ん?『そんなに気になるんなら精神科にでも依頼すればいいのに』?そんなこという奴がいるのか?
もっとシンプルなセリフだよ。そう、『もう少し単純に考えたら?』と。
もっともな意見だ。というよりこれが全てかもしれない。
だがこの『単純』というのもなかなか難しい。
例えば――漫画作品を発行部数だけで見て、中身を見もせずに、
『売り上げナンバーワンの……ウン!ウゥン!……こそ史上最高!!他作品はゴミ。
 てめーらゴミ屑のネガキャンなんて関係ねーんだよ』
と爆笑するのも単純ゆえの発想だろう?そして、それに対していろいろ思うことがあってもそれを表面に出さず、
『そうなんだ、すごいね!』
の一言であしらうのも単純だが破壊力抜群の迎撃法だ。
で――単純ということの何が難しいって、
さっきまでの俺のように『単純に物事を考えられないこと』と、
例に挙げたような『単純にしか物事を考えられないこと』と、『そういう単純な相手を相手に回したときの対処法』だ。
君らは物事を単純に考えられるかな?単純な相手を上手くあしらえるかな?今回はそんな話をしよう。

●●●

163 :
「絶対に相容れないって意味の、『水と油』って言葉があるがよォ〜……」
誰に言うでもなく一人で演説を始める男の名はギアッチョ。
彼がいる場所はエリアでいうとF−4地下、地獄昇柱(ヘルクライム・ピラー)の底だ。
相棒のディエゴ・ブランドーはその様子をフロア――柱の頂上から見下ろしている。お互いのスタンドの性質上、手を貸すわけにはいかない。貸す気もないが。
だがギアッチョは一向に上ってこようとはしない。様子を見ているディエゴを知ってか知らずかギアッチョはなおもひとりごちる。
「その言葉の意味はわかる、スッゲー良くわかる。
 油ァ入ったコップに水入れても混ざりはしねーからな……」
この言葉、恐竜の身体能力を肉体に宿したディエゴには十分に届いていた。
しかし、彼はこの後“ギアッチョのセリフに耳を澄ましていた”事を後悔する。
「しかしよォ〜〜この『油』って字はどういうことだアァ〜〜!?
 “サンズイ”ってのは水のことじゃあねェのかよッ!
 油が“水”ならとっくの昔に混ざりきってるじゃあねぇかッ!!
 どういう事だよ!エェ!?このイラツキ、どうしてくれるんだァ!!!」
突如張り上げられた怒声に鼓膜を破られんばかりの衝撃を受けたまらずたじろぐディエゴ。
怒りのたけを目の前の柱にぶつけるギアッチョは、殴って開けた穴を凍らせ、また柱を殴り穴をあけ――を繰り返し、あっという間に柱を登り切ってきた。
「オイッ追うぞ!まだ遠くに行っちゃあいねぇハズだ!ボサッとしてんな!
 っつーかお前も追ってたろ!どこ行ったか検討つかねぇのか!?」
「デカい声を出すな。俺は建物の上から奴らを追っていたからおおよその見当は付く――逃げる瞬間こそ見逃したが奴らは地下を通って」
喚き散らすギアッチョに落ち着くよう促すも、ディエゴの言葉はなかなか彼の耳に入らない。
「地下なのは知ってんだよ!だから俺が下水道もぐって追っかけて壁ブチ壊しまくって――この柱にたどり着いたんだからな!」
「その先だ、ギアッチョ。俺が地上から確認していた限りでは奴らはまだ地下から出てきていない。
 というよりおそらくこの柱は無視しただろう。この建物の下水道それ自体をうまく伝って別のエリアに逃げたとみるべきだ」
わかりきっていた事実を淡々と告げられたことにギアッチョの中の怒りが爆発した。ディエゴの胸ぐらを掴む。
「ンな解りきったこと聞いてるんじゃあネェんだよ!とにかく追うぞッ!」
大量の唾を吐きかけんとするほどの勢いでまくしたてるギアッチョをディエゴは再度制す。
「落ち着け……まだ慌てるような時間じゃあない。そして、闇雲に追うべきでもない。
 こう――発想を変えてみろ、逆に考えるんだ、俺たちはあえて取り逃がし、それを先回りして待ち伏せる体制を作ったんだと。
 直接追っていくのは些か骨が折れる。奴らが『この場にいた』ことが分かっただけでも十分じゃあないか?」
言われたギアッチョはゆるゆると襟首から手を放す。その鋭い視線はディエゴから1ミリも逸らさぬまま。
一方のディエゴの本心は先の台詞とは半々、といったところだ。彼とて自分の知りえぬ自分を知る人間に会場を闊歩されるのは気に食わない。
だがその感情が最後の最後で詰めを誤らせる。この場に放り込まれる直前に受けた屈辱を思い起こすかのごとく腹をさする。
「……チッ!まあそういう事にしてやる。ブチャラティの野郎がいたってことは奴のチームも、俺らのチームもいるってことだろうしな」
「わかってくれて何よりだ。そうと決まれば、こんなエリアの端で燻っている訳にはいかない。とりあえずエリア中央に向かって北上するぞ」
端的に会話をすませ、2人の化け物が館を飛び出していった。

164 :
【F-4 エア・サプレーナ島→? 1日目 早朝】
【ギアッチョ】
[スタンド]:『ホワイト・アルバム』
[時間軸]:ヴェネツィアに向かっている途中
[状態]:健康、疲労(小)、怒り(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品1〜2(未確認)、ディエゴの恐竜(元カエル)
[思考・状況]
基本的思考:打倒主催者。
1.ブチャラティ達を先回りして迎え撃つ……?とにかくタダではおけない。
2.1のためにとりあえず北上してエリア中央に向かう予定。
3.暗殺チームの『誇り』のため、主催者をR。
4.邪魔をするやつはR。
【ディエゴ・ブランドー】
[スタンド]:『スケアリー・モンスター』
[時間軸]:大統領を追って線路に落ち真っ二つになった後
[状態]:健康、人間状態、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品2〜4(内1〜2は確認済み)
[思考・状況]
基本的思考:『基本世界』に帰る
1.ギアッチョのいうブチャラティを先回りして討つ、ということにしておこう。
2.ルーシーから情報を聞き出さねばならないが『いる』とわかればどうとでもなる。
3.1・2の目的のため北上しつつ仲間を増やす。
4.あの見えない敵には会いたくないな。
5.ギアッチョ……せいぜい利用させてもらおう。少しうっとおしいが。
6.別の世界の「DIO」……?
[備考]
・ギアッチョとディエゴの移動経路は以下の通りです。
ギ:F−4を南下→G−4で路地を利用されブチャラティに逃げられる→地下の存在に気付きマンホールから下水道へ
  →G−4地下→F−4地下→突如現れた壁をぶち壊したら地獄昇柱の内壁だった→柱を登る←ここ
デ:建物の屋上を伝いF−4→G−4→ディエゴと同様ブチャラティを見失う→ギアッチョが地下に潜るのを確認し地上から追うことに
  →G−4→F−4→エア・サプレーナ島到着→柱に向かって喚くギアッチョ発見←ここ
・ギアッチョとディエゴ・ブランドーは『護衛チーム』、『暗殺チーム』、『ボス』、ジョニィ・ジョースター、ジャイロ・ツェペリ、ホット・Rについて、知っている情報を共有しました。
・フィラデルフィア市街地および地獄昇柱(本体・内壁)が所々氷結・破壊されています。

165 :
●●●

「……なんとか撒いたようだな。
 ゆっくり話をする暇も与えてくれなかったとは。流石というか、奴も一流だな。
 ルーシー、すまないが地図を出してくれ。今俺たちがどこを走っているかわかるか?」
バックミラーの片隅から白い男が消えたことを確認しながらブチャラティが促す。
声をかけられたルーシーは、緊張こそしていたものの襲撃にあった疲労を表情に出さず地図を広げる。
「ええ、えーと――さっきG−4を南下してきて、この曲がり角で……その先はこの地図だけじゃあわからないわ」
「そうか――だが地下にこんな洞窟があるということはその地図もあるはずだ。俺が持っている支給品、全部開けて構わないから探してみてくれないか?」
ブチャラティの作戦はこうだった。
襲撃された地点から地図端に向かってひたすら南下、路地を曲がった瞬間にS・フィンガーズを発現し地面に穴をあける。
そのまま下水道を通って――仮に下水道などなくとも地面そのものにジッパーを取り付けて掘り進むつもりだったが――逃走を完了する。これが見事なまでに成功。
背後から追跡していたギアッチョは『建物の中に潜りこんだ』と、建物の屋上を飛び移りながら追跡していたディエゴは『エリア端は別の場所に繋がっている』と、一瞬だけ推測したのだろう。
それが正しいことかどうかは別として、その一瞬こそ殺し合いの場では命取りになる。結局のところ推測は『違った』が、それを確信した時にはすでに逃走者の姿はなく、と言ったところだ。
「ごめんなさい……それっぽいものは見つからないわ」
「君が謝ることじゃあない――とりあえず車を止めよう」
言いながら自動車を停止させ、エンジンを切ったところでブチャラティが車を降りる。それに倣うようにルーシーも。
静寂の中に放り出された二人。本来なら日が昇り鳥が囀るような時間であるが、それすらもない。
その静けさはルーシーのついた小さな溜息さえ大きく聞こえるほどで。
自分の溜息にビクリと体を震わせたルーシーの肩を抱きブチャラティがゆっくりと口を開く。
「……ルーシー」
「え、あっあの――」
ついにこの時が来てしまったか。彼にすべてを話さねばならない時が。
そう覚悟した瞬間だった。
「シッ――誰かくる……っ!」
彼の口から発せられた言葉は彼女の思っていたものとは違った。
しかし、それが彼女たちに安堵をもたらすかどうかと言われれば、単純に肯定はできないだろう。
彼らが真実を語りあうには、まだ遠い。

166 :
【E-6 地下 洞窟内部 1日目 早朝】
【ブローノ・ブチャラティ】
[スタンド]:『スティッキィ・フィンガーズ』
[時間軸]:サルディニア島でボスのデスマスクを確認した後
[状態]:健康 (?)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×3、不明支給品2〜4(自分、ジャック・ザ・リパーのもの、ルーシーが確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:主催者を倒し、ゲームから脱出する
1.誰かがくる……!あれは……!?
2.1の対処後、ウソ偽りなく、ルーシーと互いの情報を話したい。
3.何とか撒けたが、なぜ死んだはずの暗殺チームの男が?
4.ジョルノが、なぜ、どうやって……?
5.出来れば自分の知り合いと、そうでなければ信用できる人物と知り合いたい。
【ルーシー・スティール】
[時間軸]:SBRレースゴール地点のトリニティ教会でディエゴを待っていたところ
[状態]:健康、精神疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、鉈
[思考・状況]
基本行動方針:スティーブンに会う、会いたい
1.また襲撃……?
2.ブチャラティに全てを話すべきなの?(でも襲撃の最中はそれを忘れられるから正直ホッとしている)
[備考]
・ブチャラティが運転した車の移動経路は以下の通りです。
F−4を南下→G−4で路地を利用しギアッチョを一度引き離す→G−4地下→F−4地下
→そのまま下水道を伝うことで柱を回避→E−5地下→E−6地下←ここ
・二人の支給品の中に地下の地図は無いようです。

167 :
●●●

「……まだあまり無理をするな。薬の効果がほとんど切れたとはいっても」
「大丈夫よ、問題ない。それにあたしが勝手にやってることなんだから」
ギャングたちの抗争から時間を少々さかのぼる。
場所はF−5南部、ローマの観光地を一部屋だけくりぬいたような土地。そこに一組の男女が姿を現した。
ちなみに女――トリッシュが疲弊しているのは何も薬のせいだけではない。背中に大きな荷物を背負っているからだ。
小林玉美。トリッシュをゲームさながらのシチュエーションで襲っておきながら、最後の最後で無様に気絶したドR。
なぜ彼女がそんなRを背負って歩くことになったのか、それはレストランでトリッシュの体力回復が終わるころに話し合った結果である。
当初ウェカピポは彼を連れて歩くことに反対した。
自分たちを――殺人という意味ではないにせよ――襲ってきた相手である。Rとは言わずとも縛り上げてこの場に放置していくべきだと主張した。
この当然の意見にトリッシュは異を唱える。曰く、
「ここに放っておいて死なれたら自分たちのせいだ。己の正義にも反するし、玉美を知る人物にでも引き渡してしまうべきだ」
と。たとえ反対されても私が背負って歩く、とまで付け加えて。
そのまっすぐな意見にウェカピポが折れ、ならばと地図の地点を少しずつ移動しながら参加者と接触する案を出し――結果として一番手ごろなこの地点にたどり着いたのだ。
ちなみに――トリッシュは今、ウェカピポがよこしたジャケットの下に、レストランの中で調達した服を着ている。
ブランド物の服はいつかコイツに弁償させてやるなどと言いながらも、初めて着るウェイトレスの服には少女らしいはしゃぎようを見せていた。
閑話休題。
さて、到着したその地点は『真実の口』、表向きは有名な観光名所だがその実、ナチス研究所への入り口である。
この事実、二人はとうに知っていた。涎をたらし気絶している玉美の支給品を物色、没収した際に発見した地下施設の地図。
地下に何があるのかは二人の知るところではない。しかし、通常の支給品とは別に地図が支給されるという事実。
二人は地下に何かあるに違いないという理由、次の施設へ移動する際の直通経路になるという理由から地下に潜ろうと意見を一致させていた。
「いいか――開けるぞ」
「お願い。チャッチャと潜りましょう。綺麗なところだといいんだけどね」
短い会話を交わしウェカピポが真実の口に手をかける。
重々しい音を上げながら大きく口をあけたその真実に二人は――正確には三人だが――静かに身体を滑り込ませる。
ゴゥン……という音を上げ、真実は再びその口を閉ざした。

168 :
●●●

さ〜て……玉美サン、実はもうとっくに目ぇ覚ましてましたァン!そら背負われてりゃ振動で起きますわな。
でももう少し気絶したフリしてるのが賢いですねェ〜、トリッシュちゃんの背中あったかいナリィ、ってかァ。
両手縛られてるからパイタッチできないのが難点だが……下手に触ってまた殴られるのもちょっとなぁ。
しかし地図も何も取られちまったのは痛いぜぇ。ウェカピポとかいう男は完全に俺のこと警戒……ってかケイベツしてるだろうしな〜。
この先どうすっか――もういっぺん康一どのあたりと合流できればラッキーちゃんなんだが、仗助あたりじゃあ厄介だしな……
つーか地下に潜ってこの先二人は行くアテあるのか?いつまでも寝っぱなしもさすがに怪しまれそうだしなァ〜。
「あれは――ブ、ブチャラティ!?」
「……ルーシー・スティール?なぜここに!?」
って、ん?誰か知り合いか?そ〜っと目をあけて……
……オォッ!?
ルーシーちゃん(でイイだろ、ブチャラティちゃんって名前があるか)カワイイおじょーちゃんじゃねぇかッ!
見た感じトリッシュちゃんより年下っぽそうだけど、ってことはもしかしてバババ、バージン!?うっひょォッ!
こりゃ〜玉美サン盛り上がっちゃうぜェ〜?あんまり盛り上がりすぎて“見た目”でバレちまわない様にしねぇとなぁ〜!
日ごろの行いが良かったっていうのか?やっぱ、俺ってば、ホント、ラッキー!!
【F-6 地下 コロッセオ地下遺跡 1日目 早朝】
【トリッシュ・ウナ】
[スタンド]:『スパイス・ガール』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』ラジオ番組に出演する直前
[状態]:肉体的疲労(小)
[装備]:吉良吉影のスカしたジャケット、ウェイトレスの服
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜2(確認済)、破られた服
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを止め、ここから脱出する。
1.あれは……ブチャラティ?なぜ……?
2.このR野郎にあと100発くらいぶち込んでやりたいが、見殺しにするのは私の正義に反する。
3.ミスタ、ジャイロ、ジョニィを筆頭に協力できそうな人物を探す。
4.あのジョルノが、殺された……。
5.父が生きていた? 消えた気配は父か父の親族のものかもしれない。
6.二人の認識が違いすぎる。敵の能力が計り知れない。
[参考]
トリッシュの着ていた服は破り捨てられました。現在はレストランで調達したウェイトレスの服を着て、その上に吉良のジャケットを羽織っています。
『冬のナマズみたいにおとなしくさせる注射器』を打たれましたが、体力はずいぶん回復したようです。

169 :
【ウェカピポ】
[能力]:『レッキング・ボール』
[時間軸]: SBR16巻 スティール氏の乗った馬車を見つけた瞬間
[状態]:健康
[装備]:ジャイロ・ツェペリの鉄球、H&K MARK23(12/12、予備弾12×2)
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品0〜1(確認済)、地下地図
[思考・状況]
基本行動方針:トリッシュと協力し殺し合いを止める。その中で自分が心から正しいと信じられることを見極めたい。
1.ルーシー・スティール……?なぜこの場にッ!?
2.このR野郎が目を覚ましたら尋問して情報を聞き出す。
3.ミスタ、ジャイロ、ジョニィを筆頭に協力できそうな人物を探す。
4.スティール氏が、なぜ?(思考1のことも踏まえ)
4.ネアポリス王国はすでに存在しない? どういうことだ?
【小林玉美】
[スタンド]:『錠前(ザ・ロック)』
[時間軸]:広瀬康一を慕うようになった以降
[状態]:全身打撲(ダメージ小)。興奮(大)。拘束(両手両足を縛り、猿ぐつわ)されている。服はウェカピポが着せたようです。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:どんな手を使ってでも生き残る。
1.トリッシュちゃんの背中あったかいナリィ……
2.ル!ルーシーちゃん!?カワイイ!ヨダレズビッ!
3.賢く立ち回るために気絶したフリ。タイミングを見計らって逃げるなり起きる(フリをする)なりしよう。
[備考]
どうしようもなくRです。

●●●

さて――多くの人間が話に出てきたからちょっとここらで整理しようか。
最初に出てきたのは、いかにも単純に見えるがれっきとした暗殺者のギアッチョ。
そして、そんな荒馬を、大変そうではあるが見事に乗りこなしているディエゴ・ブランドー。
それから、そんな狂気の二人組から逃げた冷静沈着、われらがブローノ・ブチャラティ。
彼に対して、また自分の存在があまりにも複雑すぎてちょっとしたことで壊れてしまいそうなルーシー・スティール。
ブチャラティの死を知っているから、単純に彼との再会を喜べないであろうトリッシュ・ウナ。
トリッシュと同様、ルーシーの存在に少なからず複雑な心境を抱くウェカピポ。
最後に……本能に忠実というか、単純極まりない小林玉美。
誰がどう行動し、それが何を生み、何を失うのか。
それを単純に言葉で表すのは不可能だろう。
だがしかし、それらが複雑に絡み合って生み出され、失うものもまた小さなものにはならない。
……なんて、ちょっとカッコつけて言ってみたりして。
『シンプルがいいッ!』なんて格言があるくらいだ。案外単純明快な玉美だけが生き残ったりしてね。ハハハ。
――ん?フラグ?あんまりそうメタな発言をするもんじゃないよ。
そういう言葉が単純なものをまた複雑にかき回すんだから――

170 :
以上で投下終了です。仮投下からの変更点は以下の通り
・したらばで指摘された誤字の訂正
・パート区切りの記号の変更(wiki対策)
・描写・文末、状態表の整理
エリア端で燻っている連中を少々強引にではありますが引き合わせてみました。
せっかくなら地下も活用しようとギアッチョ達を地上に、ブチャラティ達を地下に据えて話は終了。
それから、『俺パート』について少々。
仮投下スレ447氏には申し訳ないですが、『やめません』とここで明言しておきます。
例えば他ロワの作品では、本文中にAAが貼られることもあるそうです。そのことに否定はしません。
私の『俺パート』も、そういう『一種の表現方法』としてみてくださればと思います。
また、『あくまで2chの企画、クオリティばかりを求めないでいい』と書き手志望の方々に感じてもらえればとも思いながら書いてたりします。
あと『自分の作品がつまらないか気になるなら批評スレ行けよ』という意見に関してですが、
確かに『俺』は『作者の代弁』をしてくれます。どんなにSS数を投下しても不安にはなります(むしろならない人がいるのか?)
ですが、『俺』は、あくまで俺という『キャラクター』です。自分の悩み『だけ』をSSに乗せる公私混同のようなまねはしてないと自負しています。
前作『病照』ではあくまでも『俺の愛を受け取れない奴はどうしちゃおっかな〜』と、あくまでもテーマは『愛』に、
そして今作では、そんな質疑応答を乗り越えて、こういう悩みを例に挙げて『単純に考えること』をテーマに据えています。
(それが読み取れないと言われたら単純に自分の文章力不足だと考えます)
パロディが多いこと、メタな視点からの語り、雰囲気ぶち壊し、本文中にテーマ組み込めよ、エトセトラエトセトラ。
言いたいことは多々あると思います。ですが……ジョジョロワ3rd、岸部露伴の
『そんなものは、ノンフィクション作家に任せておけばいいのさ。』
という言葉をパロディで借りるなら、
『クオリティの高いものは、有名小説家に任せておけばいいのさ。』と。
先にも書きましたがあくまで素人集団の集まり。多少ぶっ飛んでても楽しくSSを読めればいいのではと思います。
もしこれでよっぽど叩かれるようなら……引退はしませんが別トリ用意して新人からやり直すくらいの覚悟ではあります。
長くなりましたが、そんな俺パートも含め、感想(もちろん誤字脱字や矛盾の指摘も)いただければと思います。それでは。
***
規制につき、ここまでをどなたか本スレへの転載をお願いいたします

171 :
幼い頃からひとりだった。

☆ ☆ ☆

「見失った……ですって?」
金属を切断するようなキンキンと響く悲鳴が耳障りだ、と花京院は思った。
自分の無能さを棚に上げて、文句ばかりを並べ立てる。
この女に惚れ込まれた康一という男に心底同情した。
やかましく喚く由花子の声を無視し、花京院は辺りを見渡す。
周りに転がっているのは、3人の大人の男たち、いずれも既に死体だ。襲撃者は彼らの方だった。
スタンド使いでない彼らは花京院の敵ではなかったが、3人がかりで同時に襲われたのでは、タンクローリーの姿を見失うには十分すぎる要素になる。
花京院は数分前の出来事を思い返す。
タンクローリーを追って杜王町エリアを後にした花京院典明、山岸由花子の両名は、道中であるタイガーバームガーデンにて待ち伏せによる襲撃を受けたのだ。

『俺の名はケイン!』
『俺の名はブラッディ!』
『そして俺の名はドノヴァンだァァ――ッ!』
突如、軍人風の男達に囲まれた花京院たち。
先行していた『法皇(ハイエロファント)』の能力でも察知できなかったのは、ナチス親衛隊コマンドーであるドノヴァンによる功績が大きい。
3人の襲撃者は花京院を取り囲むように姿を見せ、襲いかかった。
素早い身のこなし、手にはそれぞれナイフが握られていた。
殺意を持って襲いかかってきたのかはわからない。
真っ先に花京院を狙ってきたことからして、由花子を下衆い動機で襲うのが目的だったのかもしれない。
なんにしても、生身の花京院がどうにかできる相手ではないことは明確だ。
『エメラルド・スプラッシュ!!!』
タンクローリーを逃さぬよう300メートル先行させていた『法皇の緑(ハイエロファント・グリーン)』を高速で呼び戻す。
そして射程距離ギリギリからの、その両掌から放たれる必殺の散弾『エメラルド・スプラッシュ』―――有無を言わさぬ最強の攻撃により、3人の軍人たちは悲鳴を上げる暇すら与えられず、沈黙する肉片へと姿を変えた。
文字通り、他愛のない襲撃者たちだ。しかしスタンドを呼び戻す必要があったため、追跡していたタンクローリーを見失うという結果に陥ってしまった。

「ほんっとスットロいわね、あんたは!? これじゃあ何のために組んだのか分かりやしないわ!?」
「うるさい人だな。自分の無能さを棚に上げて私を侮辱するとは呆れたものだ。この者たちを『貴女のスタンド』で始末してくれれば、私も『法皇』を呼び戻すこともなかったのですが―――
もっとも冷静さの欠ける貴女では、彼らの襲撃に気づくことも対応することもできなかったでしょうがね?」
「ふざけんじゃあないわよ? 襲われたのはアンタじゃないの! どうしてあたしが助けなきゃいけないわけ? あたしが用があるのは康一くんだけなのよッ!!」
花京院は頭を抱える。やはりこの女はダメだ。
スタンド能力は強力だが、花京院のために使用するつもりは微塵もないらしい。
いざとなれば、彼女はいつでも花京院を犠牲―――身代わりに差し出すだろう。(もっともこれはお互い様だが)
由花子から得られた情報に大したものは無かったように思える。
自分の握るDIO様の情報やアレッシーの話と比較しても、割に合わない。
口を開けば「康一くん」、「康一くん」と、やかましい。自分から持ちかけた同盟関係だったが、花京院は既に見切りをつけていた。
そして、由花子も同様の結論にたどり着いていた。

172 :
『花京院くん、恐れることはないんだよ。友達になろう』
DIO様はあの時、私にそう言った。
初めは恐怖していたと思う。次に感じたのは安心だ。そして最終的に自分の中に生まれたのは、この上ない『憧れ』の感情だ。

『嫌いだって言ってるんだよ。きみに既にさあ……』
康一くんはあの時、あたしにそう言った。
あたしはこんなにも「好きだ」と言っていたのに――― 私の中に生まれたのは、この上ない『怒り』の感情だ。

幼い頃からひとりだった。
子供の時から、友達はいなかった。
私の『法皇(ハイエロファント)』の見える人間など、誰一人いなかったからだ。
そんな者たちと友人になることなどできるわけがなかった。
幼い頃からひとりだった。
人を好きになったのは、初めての経験だった。
どいつもこいつも下心丸出しの、下卑た男ばかりだったからだ。
そんな者たちに興味を持つことなんてあり得なかった。
DIO様は神のように思えた。
私の全てを理解してくれた。私のすべてを捧げたいと感じた。
彼と真の友人になりたい。彼の役に立つことならばなんでもやりたい。
彼のためならば命だって捨てられる。
康一くんはヒーローだった。
勇気と信念を持った男の顔。笑った時のカワイイ笑顔。すべてがあたしの理想だった。
彼と真の恋仲になりたい。彼のために自分の一生の全てを捧げても構わない。
そう思っていたのに。

山岸由花子は違う。『法皇(ハイエロファント)』が見えるかどうかは問題ではなかったようだ。
友人とまではいかなくとも、目的を共有する同盟くらいならば何とかなると思っていたが……
彼女は役に立たない。百害あって一利なし。いつか近いうちに、彼女に脚を引っ張られる時がきっと来るだろう。
花京院典明は違う。彼の能力で康一くんを見つけることはできたが、それだけだ。
康一くんの代わりになる事などありえないが、使える味方くらいにはなるかと思っていたが……
もう無理だ、こんな男と行動することなど耐えられない。同盟関係を近いうちに仲間割れを起こし、どちらかがどちらかを裏切ることになるだろう。

やはり私にはDIO様だけだ。
やはりあたしには康一くんだけ……。

幼い頃から独りだった。
仲間なんか、はじめから必要なかった。



173 :
「………………………………」
「………………………………」
2人の間に不穏な空気が流れる。
お互いが相手に抱いている負の感情が、なんとなく理解できた。
同盟関係はここまでだ。
向かい合って、臨戦態勢に入る2人。いつでもスタンド攻撃可能。
そのとき、遠方で巨大な爆発音が響いた。


「……康一くんの居場所がわかったわ」
「…………その様だな」
爆発の規模から考えて、今の大爆音はタンクローリーの物だ。
すなわち、そこが広瀬康一の居場所だ。そして、足を失った。追いつくには今しかない。
無事でいればいいが――――――。
2人は同時に戦闘態勢を解く。余計な人間を相手にしている時間はお互いにない。
だがこれ以上同盟を続けていくことは決して無いと、両人が理解していた。
「悪いけど、あんたに構っている暇はないわ。あたしの目的は康一くんただ一人なの。もう行かせてもらうからね」
「好きにするがいい。私も貴女の『お守り』をするのにはほとほと疲れていたところなのでね」
「フン!」
両者が刃を収めたのは、戦っても無傷で済む相手ではないと判断したからだ。
お互いに自分の本来の目的ではない相手だ。不要な戦闘はできる限り避けたほうがいい。
長い髪を翻し、山岸由花子は一人、走り出した。
高く立ち上る煙と炎の明かりが何よりの目印だ。距離にして1キロメートルあるかないか――大した距離じゃあない。
もし康一が無事ならば、すぐにでも移動してしまうだろう。そして、もし康一が無事でないならば、なおのこと急がねばならない。
康一の息の根を止めるのは、自分でないといけないのだ。

174 :
朝日の昇りだしたローマの街へ消えていく由花子の姿を、花京院は見送る。
彼女の行く末がどんな結末になるか、なんて彼にとってはどうでもいいことだ。
あえて質問がなかったので花京院は話さなかったが、タンクローリーに乗っていたのは広瀬康一だけじゃあない。
時代遅れのジョン・ウェインに、剃り込みを入れたヤンキー風の日本人。それに、ハンドルを握っていたのは某格闘ゲームの衝撃音波を用いる空軍少佐に似た大柄の男。
少なくとも4人組以上、うち何人かは当然スタンド使いだろう。
由花子が目的を遂げるも良し、相打ちになるのがベストだが――― まあ由花子の能力程度じゃあ返り討ちが関の山だろう。
タンクローリーを追撃していた正体不明の敵の存在もあるが、まあ、知ったことじゃあない。
そんなことを考えながら、花京院は辺りの死体を見渡す。
恐らくスタンド使いではない男たちだったが、統率の取れた彼らの動きは生身の人間ならたとえヘビー級のプロレスラーでも敵いはしないだろう。
『法皇(ハイエロファント)』を持つ花京院の敵ではなかったにしろ、彼らの連携は美しかった。
彼らのような関係が、真の『仲間』というものなのだろう。
花京院にとってはわからないことであるが――― ケインとブラッディは元の世界よりの仲間同士であるが、ドノヴァンに関してはこのローマに連れてこられた後に出会った者なのだ。
彼らがこの6時間の間にどのようにR、どのような時間を過ごしてきたのか。今となっては知る由もない。
だが彼らは、花京院が17年間かけて作れなかった『友』を、ほんの数時間で築き上げていたのだ。
『エメラルド・スプラッシュ』による攻撃はとっさだったものとは言え、容赦のない全力の攻撃だった。
そのため、返り討ちにあった3人の男たちは、みな悉く即死してしまった。
『情報収集』が第一目的の花京院にとって『見敵即殺』はナンセンスだ。
アレッシーにしても由花子にしても、ゲーム開始以降、花京院は会話もなく相手を殺しにかかったことなどなかった。
無意識の即殺行為の裏側には、花京院の、仲間への『羨望』、『嫉妬』という感情があったのではないだろうか。

「…………フン、まさか」
馬鹿げた考えだ、と花京院はかぶりを振る。
恐れ多い考えだが、自分の友達はDIO様一人で充分だ。
DIO様のために生き、DIO様のために働き、DIO様のために死ぬ。
他の仲間など…… 『友達』などは、必要ない。
なぜならば――――――

花京院典明は、幼い頃から独りだったのだから。

【E-5 タイガーバームガーデン / 1日目 早朝】
【花京院典明】
[時間軸]:JC13巻 学校で承太郎を襲撃する前
[スタンド]:『ハイエロファント・グリーン』
[状態]:健康、肉の芽状態
[装備]:刺青のナイフ、スリのナイフ、第22の男のナイフ
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:DIO様の敵をR
0.DIO様の敵を殺し、彼の利となる行動をとる。
1.山岸由花子との同盟を破棄した。放送後、今後の身の振りを考える。
2.ジョースター一行、ンドゥール、他人に化ける能力のスタンド使いを警戒。
3.空条承太郎を殺した男は敵か味方か……敵かもしれない。
4.山岸由花子の話の内容で、アレッシーの話を信じつつある。(考えるのは保留している)

175 :
【備考】スタンドの視覚を使ってサーレー、チョコラータ、玉美の姿を確認しています。もっと多くの参加者を見ているかもしれません。
【アレッシーが語った話まとめ】
花京院の経歴。承太郎襲撃後、ジョースター一行に同行し、ンドゥールの『ゲブ神』に入院させられた。
ジョースター一行の情報。ジョセフ、アヴドゥル、承太郎、ポルナレフの名前とスタンド。
アレッシーもジョースター一行の仲間。
アレッシーが仲間になったのは1月。
花京院に化けてジョースター一行を襲ったスタンド使いの存在。
【山岸由花子が語った話まとめ】
数か月前に『弓と矢』で射られて超能力が目覚めた。(能力、射程等も大まかに説明させられた)
広瀬康一は自分とは違う超能力を持っている。(詳細は不明だが、音を使うとは認識・説明済み)
東方仗助、虹村億泰の外見、素行など(康一の悪い友人程度、スタンド能力は知らないしあるとも思っていない)
※ケインとブラッディはバオー来訪者に登場したドレスの戦闘兵二人組です。
※ケイン、ブラッディ、ドノヴァンの参戦時期は不明です。
※彼らの行動目的やこれまでの行動経緯は不明ですが、花京院、由花子以外の参加者との遭遇は無かったようです。
※ただしムーロロの『オール・アロング・ウォッチタワー』に目撃されている可能性はあります。
※ケインの支給品は、刺青(スピードワゴンの仲間@Part1)のナイフでした。
※ブラッディの支給品は、スリ(に扮したナチス兵@Part2)のナイフでした。
※ドノヴァンの支給品は、第22の男(バオー来訪者に登場する刺客の一人)のナイフでした。
※彼らに他の支給品があったかどうかは不明です。

☆ ☆ ☆

「見つけたわ………康一くん!」
見間違うはずもない、凛々しい笑顔。
あんな大爆発があったにもかかわらず、やはり無事だった。
花京院は「逃げながら敵と戦っている」と言っていたが、この様子だと敵を見事に撃破したようだ。
さすが自分が惚れた男性、と物陰から様子を伺っている由花子は笑みを漏らす。
厄介なことに康一は他の仲間たちに囲まれている(その中にはあの「東方仗助」の姿もあった)が、由花子にとっては些細なことだ。
花京院が考えているほど、由花子は愚かではない。
多勢に無勢。考え無しに飛び出して殺害を企てるような馬鹿な真似はしない。
しかし、康一たちが少しでも油断し隙を見せたならば、その時は………
(待っていてね、康一くん。すぐにでもあなたを殺してあげるから――――――)
いや、Rのではない。由花子は自分に言い聞かせる。
康一は自分の中で生き続けるのだ。由花子のことを「嫌いだ」と言った康一だけがいなくなり、由花子の理想である『広瀬康一』が、彼女の中で永遠に生き続けるのだ。
これからは何処へ行くのも、何をするのも、彼女の中の『康一』いつも一緒になる。
自分と広瀬康一以外の人間など誰ひとり必要ない。
なぜならば――――――


山岸由花子は、幼い頃から独りだったのだから。

176 :
【C-5 北西 コルソ通り/一日目 早朝】
【山岸由花子】
[スタンド]:『ラブ・デラックス』
[時間軸]:JC32巻 康一を殺そうとしてドッグオンの音に吹き飛ばされる直前
[状態]:健康・虚無の感情(小)・興奮(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品合計2〜4(自分、アクセル・ROのもの。全て確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:広瀬康一をR。
0.見つけたわ、康一くん。
1.康一くんをブッR。他の奴がどうなろうと知ったことじゃあない。
2.花京院をぶっ殺してやりたいが、まずは康一が優先。乙女を汚した罪は軽くない。
※チーム『HEROES』を発見しました。現在、物陰より彼らを観察しています。
※向こうはまだ由花子の存在に気がついていません。

【コンビ・花*花 同盟決裂】
【ケイン 死亡】
【ブラッディ 死亡】
【ドノヴァン 死亡】
237 :僕は友達が少ない ◆vvatO30wn.:2012/08/19(日) 03:46:46 ID:TwxXUmKo
はい、投下依頼完了です。どなたか本スレへ転載をお願いします。
タイトルはエア友達(スタンド)しか友達がいないおふたりだったので。正直これは予想されてた気がする。
元々は仲違いするだけのつもりだった話なんですが、yx氏さんの予約を見て、玉美、トリッシュたちと戦わせる予定だったメローネをここへ組み込もうかとしていました。
結局、なかなか上手くいかず断念。メローネはFate/stey night執筆時にも挑戦したのですが、前回も今回も失敗。
ボツOPにまで出演していたメローネでしたが、3rd出場の夢は残念ながら潰えてしまったようです。
4thに期待して出直してこい、メローネ(と、仗助に弟を産む予定だった東方朋子さん)。
それで、本編がどうなったかというと、なぜかドノヴァンとオマケ二人が参戦。
ズガン制度がなくなると思ったら、なんとなく書きたくなってしまいました。
たしか彼は◆yx氏のお気に入りキャラでしたね。喜んでくれると嬉しいです。
それではまた。
---------------------------------------------------------------------------------------
代理投下完了。行数の関係で改行を減らしていますがご了承のほどを。
そして今回の◆vvatO30wn.氏のSS「僕は友達が少ない」で、ジョジョロワ3rdはちょうど100話を迎えました! ワーパチパチ

177 :
投下&代理投下乙です
yxYaCUyrzc氏
ブチャラティ達の死を乗り越え大きく成長したトリッシュが出会うのは、残酷なことにすでにゾンビなブチャラティ…
しかもそこにはまだ闇の深い女ルーシーとゲスさが悲劇を起こしかねない玉美がいる
期待するしかないな!
vvatO30wn.氏
1st2ndと全く違う立ち位置になってもキャラが立つ花京院てすごいな
そしてついに捕捉されちゃった康一君
HEROESをものともせずに目的を達しそうな由花子がマジコワ
メローネ……どんだけラッキーなん……
そして100話おめでとう!
1st2ndそれぞれの100話を調べてみたぞ!
ヒトとハトのコンビネーション シュトロハイム 2回放送〜3回放送のちょうど中間
グェスは大変な物を盗んでゆきました 花京院典明・グェス 1回放送直後
2ndとあまり変わりないことに驚き

178 :
皆様、遅ればせながら投下乙です。
まずは各話について。
三人の怒れる男たち
ダイナマイト……を通り越してニトロ並みに危うい状態の3人組。
刑務所の騒動も合わせると近いうちに死人が大量に出てもおかしくない。
果たしてこの3人、誰が生き残ることになるのか全くわからず楽しみです。
単純
時には逃走、時には共闘、また時には火付け役と開始からずっと騒動に巻き込まれてきたディエゴとギアッチョ。
一息つくかと思いきやまだまだ動くつもりの二人に次はどんな事件が起こるのか?
そして地下の5人、問題といえそうなのは玉美の存在とブチャラティがゾンビな点か……?
あと玉美よ、わからなくても無理はないがブチャラティは名字だ。
僕は友達が少ない
これまた仲が悪いコンビ、遂に解散。
友達なんていらないとかいってるけど、原作の二人は実際に友達が出来ると彼らのために一生懸命になっているのが悲しい……
ついでにズガンの3人は人数多いんだから血管針カルテットとか見習ってもうちょっと粘ってほしかった。
以上、感想でした。
それでは、ラバーソール、ジョニィ・ジョースター、サンドマン
投下開始します。

179 :

「い、言いたいことがあるのはわかる! だがまずはそれを下ろしてくれ!」
E-8 杜王町の中心部、道の真ん中で二人の男が睨み合っている。
この二人、お互い心の底から相手を信用するつもりは全く無し。
数秒が数時間に感じられるといったような緊張感までは感じていない、いわば茶番に近い睨み合い。
(いきなり撃たれないってことはこのガキにも分別があるってことだ。第一関門はクリアってとこかねぇ)
叫ぶ男は空条承太郎のふりをするラバーソール。
『表面上』は焦りと緊張に包まれた顔を見せていたが、その下にある『素顔』はいかに相手を利用してやろうかと思案する下品な笑みを浮かべていた。
「それはこっちの質問に答えてからだ………あんたの名前は?」
「く、空条承太郎だ」
一方、質問するのはジョニィ・ジョースター。
彼のほうも相手を信頼する気はゼロであり、『タスク』の狙いをつけた指を相手から外さぬままラバーソールに問いかける。
「クージョージョータロー………あんたは本当に、自分が殺されたあの男と同一人物だと、そう言うつもりなのか?」
「あ、ああ………それは間違いない。身動きは取れなかったが意識はずっとあったんだ。
 俺は確かに他の二人と一緒に座らされていて、首輪が爆発して死んだはずの男だ」
(ヒヒヒ、お手本どおりの質問ってか。んなモンどう答えるかとっくのトンマに考えてあるっての)
自分を空条承太郎と言い張り、都合が悪いことは『最初に殺されたからよくわからない』で押し通す。
相手が質問を切り上げたら先程死んだ男のネタでじっくり脅してやればいい―――ラバーソールがそう思っていた矢先だった。
「そうか、それじゃあ―――」
ドン!
言葉の途中で、いきなりジョニィは『タスク』を撃った。
至近距離での不意打ち―――ラバーソールが回避できるはずもなく、爪弾は正確にその額に着弾した。
「………は?」
ようやく自分が撃たれたことに気がついたラバーソールの口から間抜けな声が漏れる。
続いて彼の体はぐらりと後ろに傾き、地面に倒れ伏した。

180 :

#

ジョニィ・ジョースターはいざというとき『相手を殺せる』男だが、同時に『迷ったら撃つな』という考え方をする男でもある。
ラバーソールを最初に見たときも彼は撃つべきかどうか『迷った』ため『タスク』を撃たなかった。
だが、今ラバーソールを撃ったジョニィに迷いはない。
ジョニィの心境を変えた理由、それはジョニィが目の前に立つ男を『敵』だとはっきり理解したからだ。
では、その根拠は何か?

体に黄金長方形が見つからなかった?
違う。人間には様々な体格の者がいる、体のどこかに黄金長方形が必ず現れるとは限らない。
服装や顔つきが最初とどことなく違っている?
これも違う。服装は(替えの服さえあれば)着替える機会はいくらでもあった。
顔つきが違うのも、最初のホールにいた男が薄暗い中で鍔のある帽子をかぶり、うつむいて目を閉じていた以上、知り合いでもない者がその顔を正確に判断するのは至難の技である。
これも決め手にはならない。
ジョニィにとって目の前の男とホールの男の違い………驚くべきことにそれは彼にしてみれば『なんとなく』だったのである。
そんな乱暴な、と言う前に思い出してほしい――――――彼の姓を。

―――そう、ジョースターの一族、その証であるアザ。
不思議な肉体の波長のようなもので、『なんとなく』お互いの存在を感じ取れるというもの。
ジョニィは最初のホールで彼らを見たとき、その感覚に気付いた。
何故、始めてみるはずの人間がこうも身近な存在に感じられるのか。
何故、名も知らぬはずの人間に他人とは思えない何かを感じるのか。
奇妙なことに彼らが首輪の爆発によって殺害され、その命が尽きた後でもその感覚は続いていた。
ジョナサン・ジョースターの肉体を奪ったDIOのように、魂ではなく肉体そのものに備わる感覚が………
本来、ジョニィと『彼ら』は異なる世界の住人であり、ジョニィの体にも同じようにアザがあるかどうかはわからない。
だが、世界は違えどそこには『繋がり』が確かに存在している。
例えば、ジョニィの本名がジョナサンであるように。
例えば、彼らが使う能力の名称が『スタンド』であるように。
例えば、別世界のディエゴ・ブランドーが吸血鬼DIOと同じ能力『THE WORLD』を使えたように。
そうして考えれば、ジョニィが彼らの存在を感じ取ることが出来ても不思議ではない。
彼もまた、間違いなく『ジョースター』なのだから―――

だが、今ジョニィの目の前にいる男からはそのような感覚が一切感じられなかった。
そう、欠片も。
勿論、よく似た別人が勘違いしている可能性もあったが、この男は自分のことを間違いなく最初に死んだはずの男と言った。
ならば導き出される結論は一つ………目の前にいるのは嘘吐きな偽物で、自分を騙そうとしている『敵』ということだ。
だからジョニィは迷いなく、撃ったのだった。

181 :

ジョニィは辺りを見回す。
すぐ近くには今倒した『空条承太郎』の死体、少し離れたところには先程『自殺』した男の死体―――それ以外には何の気配も無かった。
(急いでここを離れないと、また誰かが来たら誤解されるな………いや、ある意味誤解じゃないけれど)
とりあえず荷物を回収したら移動しよう―――そう考えるとジョニィは倒れた相手に近づき、デイパックに手を伸ばす。
だが次の瞬間、頭を撃たれたはずの『空条承太郎』が突然目を見開き、ジョニィに覆いかぶさろうとしてきた!!
「なにッ!?」
「ヒヒヒ、大当たりってやつだぜ。なんでわかったんだ? それともハナっからおれも殺る気マンマンでしたってか?
 まあどっちだってかまわねーがな、てめーはここで食ってやるんだからよぉぉぉッ!」
先程のお返しといわんばかりに至近距離からの不意打ちが立場を逆転して再び行われた。
黄色いスライムのようなスタンド『黄の節制』がジョニィに襲い掛かる。
ドン! ドン! ドン!
突然のことに驚きながらも再び相手に対して指を向け爪弾を発射するが、壁となったスタンドに全て防がれてしまう。
「効かねーなぁー!!」
「くそっ、ならこっちの銃はどうだ!?」
ジョニィは続けて逆の手に持っていた拳銃を発射するも、結果は同じであった。
「まずい、攻撃が効かない………うわっ!?」
いつの間にか下からも迫っていたスタンドに足を取られてしまい、尻餅をつく。
当然それを見逃すラバーソールではなく、ジョニィの体を次々と『黄の節制』で飲み込んでいく。
「てめーはここでオシマイさぁーーーブジュルブジュルつぶしてジャムにしてくれるぜェーーーッ」
「うおおおああああーーーーーっ」
地面を這って逃げようとする、だが逃れられない。
もがいても相手のスタンドは全く外れず、脚が、手が、胴体が飲み込まれ、自分の体が溶かされていくような感触を覚える。
「くそっ、離れろッ! はな―――!?」
最後に残った顔が飲み込まれようとする正にその瞬間、ジョニィは見た。
どこからか『文字』が飛んできて敵に命中したのを―――直後に『黄の節制』の動きが止まった。
状況は把握し切れなかったが、スタンドの付着がなくなったことを理解したジョニィは必死に地面を這い、ようやく捕食から逃れて相手から離れる。
幸いなことに、五体はどこも溶かされておらず無事なままだった。
「あん? なんだ、何が起こっ………」
なおも距離をとろうとしていたジョニィは相手の不思議そうな声が途中で止まったのを聞き、そちらを見て目を疑う。
今度は『空条承太郎』の顔に『文字』が当たり、顔面がまっぷたつに切り裂かれていた。
(こ、これはッ………この攻撃はまさかッ!!)
ジョニィは先程『文字』が飛んできた方向へと顔を向ける。
やはりそこに立っていたのは………
「お前は―――!!」

182 :

―――予感はしていた。
主催者の背後にヴァレンタイン大統領が関わっているとすれば、自分を野放しにしておくはずがない。
そして死んだはずの『この男』が生きて目の前にいる―――Dioと同じように。
ここに至って、ジョニィは確信を得た。
(やはり、スティール氏の背後には大統領がいる………間違いないッ!)

立っていたのは――――――サンドマン。
かつてジョニィが、自らの手で命を奪ったはずの男。

(死んだはずの人間を見るというのは、もう何度目だろう………なのにどうして、会うのは『敵』ばかりなんだッ!)
位置的にはやや離れているとはいえ十分狙える距離だったが、それはすなわち相手の射程内でもあるということ。
ジョニィは後ずさりしながら上半身だけを起こし、サンドマンに向けて『タスク』を構える。
一方、ジョニィの方へと向き直ったサンドマンはその様子を見てわずかに眉をひそめながら口を開く。
「………恩を売るつもりはないが、おまえは自分を助けた相手に礼のひとつも言わず、構えるのか?」
「だまれッ! ぼくは『遺体』を持っていない、これから手に入れるのも不可能だし欲しいとも思わないッ!
 もう全ては終わったんだ!! それでも、金のためにぼくの命を奪うつもりか!?」
「………………」
以前と全く変わらぬ声で喋るサンドマンに対し、大声で一気にまくし立てる。
相手は無表情のままだったが、その言葉を受けて纏う雰囲気が変化するのがよくわかった。
傍らに彼のスタンド『イン・ア・サイレント・ウェイ』が姿を現す。
「………おまえが何を言っているのか、それになぜオレの目的を知っているのかはわからないが、終わってなどいない………
 祖先からの土地を買う………そのために『金』を集めるというオレのやるべきことはな………」
(くそっ! やっぱりこうなるのか………マズイな)
このサンドマンが大統領と無関係だったら、あるいは空条承太郎のように『偽物』であってくれたらと微かに期待を抱いていた。
だが見た限り相手は確かに『本物』であり、自分に用があるのも間違いなさそうである。
以前サンドマンを倒したときに使ったAct2も、鉄球も無い今の状態で勝てるかどうか、既に答えは見えている。
相手は狩人、自分は獲物………状況はかつての戦いのときよりも悪い。
しかし、ジョニィのほうも簡単に諦めるつもりはさらさらなかった。
(ジャイロに会う………そう決めたんだ。それまで死ぬわけには行かない………
 だけどどうする? 少なくとも「隙」をつかなければどうしようも………
 いや、待てよ? 確かサンドマンはさっき………)
自分が知る限り、サンドマンは何も無いのに目に見える隙をつくるような間抜けではない。
ならばどうするか、答えは一つ。
(隙がなければ、つくるまでだ………ッ!)
先程までのやりとりの最中に、ジョニィは気付いたことがあった。
サンドマンは先程『なぜオレの目的を知っているのか』と言った―――それはすなわち、『おそらくこのサンドマンは自分との戦いを経験してはいない』ということ。
ジョニィはそこから一つの策を思いついていた。
「それに悪いが、おまえが『遺体』を持っていないという言葉は信用できない………おまえのスタンドがその証だ」
「サンドマン……………………」
ここから先はしくじったら死ぬ、またしてもそういう世界だ。
果たして、自分の企みは上手くいくだろうかと考えながらジョニィは呟いた。

183 :

#

(あれはジョニィ・ジョースター……? ヤツもここにいたのか………)
ミラションのいた家を離れてからしばらくして、街を駆けていたサンドマンは妙な男に襲われているジョニィを発見していた。
情報を集めるにしても厄介事に巻き込まれるのは避けたかったため、遠くから聞こえた轟音も地面を走るタンクローリーも無視してきた彼だったが、今回ばかりは事情が違った。
殺し合いの前に受けた取り引きの条件―――『遺体』を3つも持っているらしい対象のうち一人を発見するという好機。
しかも発見した二人はお互いのことで手一杯で、まだ自分の存在には気付いていないようだった。
(ジョニィ・ジョースターを始末してくれるのはかまわないが、手段がマズイな………)
どちらか一方が倒されるまで待っていることも考えたが、スタンドによる捕食……それによりジョニィの持つ『遺体』まで喰われてしまってはどうなるかわからない。
やむを得ず『固める音』と『切る音』の二つを使って襲っている男を倒し、ジョニィを助けた。
『遺体』を素直に差し出せば命まで奪う必要はないと思っていたが、交渉の前に相手はいろいろとわけのわからないことを喋ってきた。
理解不能な部分は無視して要約すると、相手は『遺体』を渡すつもりが無いどころか、どういうわけかこちらの目的まで全て知っているようだ。

――――――すなわち、殺して奪い取るしかない。

このとき二人の認識には多少のズレがあったのだが、どちらもそのことには気付かなかった。
「それに悪いが、おまえが『遺体』を持っていないという言葉は信用できない………おまえのスタンドがその証だ」
取り引きをするにあたって、相手の情報は聞いている。
ジョニィ・ジョースターとジャイロ・ツェペリは遺体の所有者となることで『スタンド能力』を手に入れた、と。
能力が存在するということは、ジョニィは遺体を所持しているとみて間違いない。
「サンドマン……………………」
「『サンドマン』…………?」
(最初に目を合わせたのはいつだったか覚えていないが………以前とは明らかに目つきが違うな)
ただ怯えるだけの獲物の目つきではない。
この男なら命を奪う前に間違いを正すのも良いかもしれないと考え、サンドマンが口を開く―――直前にジョニィが言葉を割り込ませた。

「お前は次に『それは白人が勝手に聞き間違えて呼んだ名前 直訳は『サウンドマン』……』という」
「それは白人が勝手に聞き間違えて呼んだ名前 直訳は『サウンドマン』……!?」

自分の言葉を正確に言い当てられる―――サンドマンの一瞬の動揺、だがその刹那にいち早く動いたのはジョニィでも、サンドマンでもなかった。
今まで死んだ振りをしていたラバーソールが好機と思ったのか、こっそりデイパックから取り出した『ある物』に指を突っ込み、投げつけたのだ。
投げつけられた先にいたサンドマンは反射的にスタンドでそれを叩き落す―――この間わずか3秒。
サンドマンは自分が叩き落した物の正体を確認しようと視線だけをそちらに向ける。
(………果物?)
そこに落ちていたのは穴が開いたオレンジがひとつ。
サンドマンがその穴の中に妙な金属を確認するのと、オレンジが閃光を放ったのはほぼ同時であった。

184 :

ド ゴ ォ オ ォ ン ! !

(―――ッ!!)
小規模ながら人間一人に重傷を負わせるには十分なほどの爆発が起こる。
サンドマンはスタンドと音で襲い掛かってきた爆風から身を守り、同時に煙に包まれて視界が遮られる中での攻撃を警戒した。
予想通り、煙の向こうからジョニィの放ったと思われる爪弾が飛んできたが、これを難なくはじく。
続いて数秒後、後方にいる何者かの殺気を感じ取り、振り向きざまに『切る音』を飛ばす。
「どわっ!?」
そこにいたのはジョニィではなく別の男だった。
その体に黄色いスライムのようなスタンドが蠢いているところを見ると、どうやら先程ジョニィを襲っていた男であり、先程の頭もスタンドで作った『偽物』だったようだ。
飛ばした音は命中したようだがスタンドで防いだらしくダメージは無し、男は不利と判断したのか一目散に逃げていった。
(追う必要はない、爆弾を投げつけたのはおそらくあの男だろうが、今優先すべきはジョニィ・ジョースターのほうだ)
そうこうしているうちに爆風が収まり、視界がはっきりしてくる。
だが煙が晴れたとき、そこにジョニィの姿は影も形もなかった。
(ヤツの脚は動かないはず………馬も無しに遠くへ逃げられるはずがない)
ここでサンドマンはミスを犯してしまう。
彼がジョニィたちを発見した時点で、ジョニィは尻餅をついた後這って逃げようとしていた。
そしてその後も相手の前で立ち上がることをしなかったため、サンドマンはジョニィが『立つ』姿を見ていなかった。
加えて、なまじジョニィのことを元から知っていたために彼が歩けるという考えに至らず、『近くに潜んでいる』と思い込んでしまったのだ。
周囲に音で罠を張りつつ見える範囲の物陰や建物内を警戒しながら確認していくが、見つかったのは知らない男の死体一人分のみ。
しばらくして、サンドマンは首をひねることになる。
(………おかしい。ヤツは、ジョニィ・ジョースターはどこに消えた?)
付近の建物を再度調べてみても誰かが進入したような形跡や、自分の作った音の罠にかかった痕跡すらない。
試しにスタンドを消して「無防備」な状態を演出して見せても、ジョニィが攻撃してくる様子はなかった。
(考えたくはないが………これは「逃げられた」かもしれないな)
ジョニィは何らかの移動する手段を持っており、あの爆発のときに迷わず逃走を選択し、わき目も振らずに一直線に逃げていったのではないか?
この考えが正しければ周囲を警戒していた自分が時間を無駄にしている間にだいぶ距離が離れてしまった可能性がある。
(ここは一本道………爆発の直後、視界は悪かったがジョニィ・ジョースターがオレの側を通り過ぎたような様子は無かった………
 となると、ヤツが逃げたのはおそらく北の方向………逃がしはしない、この脚で必ず見つけ出し『遺体』を手に入れる………)
現在は自分も相手も一人きり。だがジョニィがジャイロ・ツェペリをはじめとする誰かと合流でもされると厄介なことになる。
一刻も早く『遺体』を回収するべきだ、と考えたサンドマンは薄明るくなり始めた街の中を全速力で駆け始めた―――

185 :

【E-8 路上 / 1日目 早朝】
【サンドマン(サウンドマン)】
[スタンド]:『イン・ア・サイレント・ウェイ』
[時間軸]:SBR10巻 ジョニィ達襲撃前
[状態]:爆風によるかすり傷(行動に支障無し)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2(ただしパンは一人分)、ランダム支給品1(元ミラションの物・確認済み)、サンドマンの両親の形見のエメラルド、フライパン、ホッチキス
[思考・状況]
基本行動方針:金を集めて故郷に帰る
1.ジョニィを見つけ出し、『遺体』を手に入れる
2.故郷に帰るための情報収集をする
3.必要なのはあくまで『情報』であり、次に『カネ』。積極的に仲間を集めたりする気はない
※ジョニィが北へ逃げたと考えていますが、正確な方向まではわかっていません。

#

先程の路上から南へと逃げてきたラバーソールは振り返り、誰も追ってきていないことを確認すると立ち止まる。
「チキショー……上手くいくと思ったんだがなあ」
脅迫という当初の作戦は失敗したものの、不意打ちでガキを喰えると思っていたら妙な格好をしたサンドマンとかいう男が突然邪魔をしてきた。
『顔』は撃たれたり切り裂かれたりしたものの、自分より身長の高い承太郎に化けるにあたって顔は全て本体の頭の上につくった『偽物』なので問題はない。
ガキとサンドマンは知り合いらしかったがどうも雲行きが怪しかったため、死んだ振りをしながら漁夫の利を狙うつもりだったが行動のタイミングが早すぎた。
隙を見て厄介だと判断したサンドマンに投げつけた爆弾は大してダメージを与えられず直後の奇襲も失敗、どさくさまぎれにガキのほうには逃げられるというおまけつき。
結局、実利といえるものは何一つ手に入らない結果に終わってしまった。
「しっかし『黄の節制』をスパッといっちまうとはねぇ………あのヤローのスタンドはちっとばかし厄介だな」
『黄の節制』の防壁は爆弾一個の爆風で吹っ飛ぶほどヤワではなく、サンドマンの攻撃もどうにか防いだため怪我は無い。
だが飛んできた『何か』を防いだときに『黄の節制』がたやすく切断されたために危険を感じ、逃走を選んだのだった。
ラバーソールはサンドマンの攻撃の正体までは気付いていないが、いかに『黄の節制』といえど『音』を食うことは出来なかったようだ。
「ったく………承太郎といい、あのガキといい、サンドマンのヤローといい『疑わしきは罰せず』って言葉を知らねーのかね、ホント」
承太郎との遭遇、ガキからの奇襲、サンドマンへの攻撃失敗………
思い返してみれば先程からどうもツキに見放されているように感じる。
「ま、サンドマンっつー場違いヤローの名前もわかったし、あんまり欲張りすぎるのも考えモンか。
 いい加減疲れたし、おれは『節制』らしく放送までどっかでおとなしくしとこうかね、ヒヒヒ」
スタンドの名前とは裏腹に『節制』という言葉から程遠い男は勝手なことを言いながらも歩き始めるのだった―――

186 :

【F-8 川尻家前 / 1日目 早朝】
【ラバーソール】
[スタンド]:『イエローテンパランス』
[時間軸]:JC15巻、DIOの依頼で承太郎一行を襲うため、花京院に化けて承太郎に接近する前
[状態]:疲労(大)、変装解除中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式×3、不明支給品2〜4(確認済)、首輪×2(アンジェロ、川尻浩作)
[思考・状況]
基本行動方針:勝ち残って報酬ガッポリいただくぜ!
1.疲れたし、放送までどっかでひと休みするか
2.空条承太郎…恐ろしい男…! しかし二人とは…どういうこった?
3.川尻しのぶ…せっかく会えたってのに残念だぜ
4.承太郎一行の誰かに出会ったら、なるべく優先的に殺してやろうかな…?
※サンドマンの名前と外見を知りましたが、スタンド能力の詳細はわかっていません。
※ジョニィの外見とスタンドを知りましたが、名前は結局わかっていません。

#

「ハァーッ………ハァーッ………………」
こんなふうに自分の足で全力疾走をするのはいつ以来だろうか。
こんなふうにたったひとりぼっちで走るのはいつ以来だろうか。
『スティール・ボール・ラン』レースでも似たようなことはあったが、あの時の自分は馬に乗り、そして傍らにはジャイロがいた。
今は本当に誰もいない、ひとりきりで走り続けたジョニィはようやく一息つくことができた。
「Dioとは違ってスタンドも『同じ』だったけど、あれは間違いなくサンドマンだった………」
心情的には逃げたくなかったが、あの場は一旦退くしかなかった。
サンドマンの手の内はわかっており、当時感じていた『恐怖』もすでに克服した。
とはいえ、Act1しか使えない今の自分が正面から戦って勝てる相手ではないということは身に染みてわかっている。
だからこそサンドマンが叩き落したオレンジが危険なものだと判断した瞬間、牽制のために数発の爪弾を撃ち、全速力で駆け出したのだった。
その判断が良かったのに加えて距離があったため、爆発による目立った怪我はなかったが、自分を取り巻く問題は何も解決していない。
「たぶん、あの爆弾はさっきの『偽物』の仕業だろうし、サンドマンもあんな爆発程度でどうにかなるとは思えない………
 『偽物』のほうはともかくとして、サンドマンの脚力ならぼくが追いつかれるなんてあっという間だろうな………」
距離をとることには成功したようだが、相手の走る速度は自分のそれよりも遥かに速い。
おそらく、そう遠くない未来に彼は再びジョニィの前に現れるだろう。
「悔しいけど、今のぼくがサンドマンに勝つなんて『できるわけがない』………だけどそれは『このまま』だったらの話だ」
レースにおいても他のことにおいても『逃げ』は『恥』ではない、『放棄』することが『恥』なのだ。
そういう意味で、まだ闘う意思をなくしていないジョニィは『途中で逃げ出すただのクズ』では断じてなかった。
「あのサンドマンもDioと同じように大統領が『異次元』から連れてきたんだろうか?
 ………いや、今は考えるのはよそう、サンドマンは必ず追ってくる………何かが、ヤツを倒すことができる『何か』が必要だ」
再び遭遇する前に相手を倒す手段を見つけなければならない―――かつて自分が戦いの中で『成長』したように。
それは黄金長方形の『本物』か、それとも協力してくれる『仲間』か、はたまたまったく別の『何か』か。
それを探すために、彼は歩を進め続ける。

ジョニィ・ジョースター―――一時撤退。

187 :

【D-7、D-8境目の路上 / 1日目 早朝】
【ジョニィ・ジョースター】
[スタンド]:『牙-タスク-』Act1
[時間軸]:SBR24巻 ネアポリス行きの船に乗船後
[状態]:疲労(中)、打撲(数か所、行動に問題はない)、爆風によるかすり傷(行動に支障無し)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品1〜3(確認済)、拳銃(もとは召使いの支給品。残弾数不明)
[思考・状況]
基本行動方針:ジャイロに会いたい。
0. 追ってくるであろうサンドマンから逃げつつ、倒す手段を探さなくては!
1.ジャイロを探す。
2.スタンドが“退化”してしまった。どうしよう……
3.謎の震源(コンテナが落ちたところ)に向かってみるか?
4.今は考えないことにするけど、大統領がスティール氏の背後にいる?
※サンドマンをディエゴと同じく『D4C』によって異次元から連れてこられた存在だと考えています。

[備考]
・ラバーソールが使用したオレンジ爆弾(3部)はアンジェロの支給品であり、彼の支給品はこれひとつだけでした。
・E-8中央の路上に音の罠がいくつか仕掛けられました。
・E-8中央で爆発音が響き渡りました。小規模なものなので、離れていれば爆発の音とは思わないかもしれません。

188 :
以上で投下終了です。
疾走感あるバトル描写を書きたかったのに出来たのは不意打ちのオンパレード……どうしてこうなった。
西側を初めとして大人数のパートが多くなりそうだし、単独の人がもうちょっと多くても……というつもりで分散させてみました。
仮投下からの変更点は
・アザに関する文章の追加
・その他、説明不足と思った部分の加筆
です。
ご意見や問題点などございましたら遠慮なくお願いいたします。

189 :
第1回放送を前にして必要と思われるキャラクターの作品投下が完了しましたので、第1回放送の予約を解禁したいと思います。
@予約解禁は8/28(火)の0:00〜 (=8/27(月)の24:00〜)
A場所はしたらば>予約専用スレ 通常の予約と同様、どなたでも予約可能です(トリップ必須)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/15087/1319907981/
B初回の予約時のように時空が歪んでしまった場合は、日付変更以降でレス番の最も若い方を優先します。
以上のルールで予約解禁を行います。
放送の内容について、形式は基本的に自由ですが、以下の点のみ注意してください。
放送方法、名簿の配布方法がわかるようにしてください。
また、参加者側に「過去6時間での死者の名前」「次の6時間での禁止エリア」が伝わるようにしてください。(形式は問いません)
禁止エリアの数は7時、9時、11時に1箇所ずつの計3箇所です。(どこを禁止エリアに指定するかはお任せします)

それでは、誰が放送執筆権を勝ち取るのか、当日をお楽しみに。

190 :
放送予約解禁の30分前にゲリラ投下
ルール上問題無いはずだぜぇ

191 :


う〜〜〜ん……… 頭が痛え。
ここは―――――― ここは、どこだ?
真っ暗で――― 何も見えねえ………。

え〜〜っと、昨日の夜はどうしてたんだっけ?
朦朧とした記憶を思い返す。
だが脳漿が酒で染まっているらしいオレの頭は、何一つ思い出してくれやしねえ。
「うぅぅ〜〜〜〜 誰かいんのかぁ―――? 真っ暗で何も見えん……」
おっと、オレの他にも誰かいたようだぜ。
だがオレと同じように何が何だかわかっていない様子だ。
はて、どっかで聞いたような声だが――――――
あ!


「おいジョン・B! そこにいるのはスループ・ジョン・Bか?」
「その声は…… ポコロコか?」
あ゛あ゛―――― な〜んとなく思い出してきたぞ。
そうそう、昨日はジョン・Bの野郎と女を囲って飲み明かしてたんだ。
スティール・ボール・ラン・レースが終わって以来、オレは世界中のメディアに引っ張りだこ。
女どもも引く手あまたで選び放題、ヤリ放題のたまんねー毎日を過ごしていた。
祖父の代まで奴隷出身だった黒人のオレがだぜ? 信じられねよなァ!
初めのうちは『Dio失踪はポコロコの仕業』なんて噂が流れもしたが、新聞社に金を握らせた途端にそんな記事は全くと言っていいほど見なくなった。
この世は金と権力だと実感したね。
もっとも、それ以上に重要なのは『ラッキー』なわけだが。


192 :

「おいポコロコよぉ、昨日の晩どうなったか覚えてねえか? 暗くて何も見えねえよ」
「オレだってわかんねえよ。ひどく酔っ払ってたが――― お、ちょいと待ってくれ。窓みたいなモン見つけた」
フラフラっと立ち上がったオレは、壁伝いに窓枠を発見する。
ム……… なかなか固い、が………
「うおっ! まぶしっ!」
開け放たれた窓から眩しい朝日が差し込む。
起き抜けの暗闇からいきなりこの光度はキッついぜ。酔った頭だからなおさらだ。
ところで、ここはどこだ?
「なんだこれは? まるでヨーロッパみてえな町だな。どういうことだ?」
「オイオイ、ジョン・Bよ。まだ寝ぼけてんのか? 昨日はオレの奢りでハーレム(黒人街)で飲み明かしたんじゃねえか」
「じゃあここはどこなんだ? こんな景色ニューヨークにあるのか!?」
「大声出すな、頭痛えんだよ…… オレだって知らねえよ。東海岸は初めてなんだ」
お互いにまだ寝ぼけているな、こりゃ。
ジョン・Bのやつも窓から外の景色を眺めている
部屋の中も軽く見渡してみる。なんだか洒落た部屋だ。
壁には絵画、でかい暖炉、ムズカシそーな本がズラリと並んだ本棚に、豪華なローソクの燭台と来ている。
ははーん、ホテルか何かか? 部屋の真ん中で存在感を放っている棺桶は趣味の悪いベッドの変わりだろうか。
ん?
「何持ってんだ、ジョン・B?」
「ん、ああ。ただの時計だよ。それの中にあった」
ジョン・Bが指差した先には、見覚えのないデイパックが2つあった。
なんだあれ? 真剣に昨晩の記憶がわからなくなってきた。
「で、今何時だ? ジョン・B」
「5時50分だ」
なんだよ、まだ早えじゃねえか。
――――ってオイ。
「何だそれ? おいジョン・B!」
ジョン・Bがデイパックの1つを拾い上げたかと思ったら、中から朝飯が出てきやがった。
「何だって、知らねえけどこれも入ってたんだよ。腹減ったから食おうかと思って」
パンにスープに魚のフライ。まるで刑務所の中の飯みたいにしみったれた朝食だが、腹減ってる時ってのはなんでもうまそうに見えるもんだ。
いいなあ、オレも腹減ってきたぜ。
もう片方のデイパックを拾い上げ、中をさらっと見てみる。
食い物、食い物……… なんだよ、パンと水しかねえじゃねえか。
「オイ、ジョン・B。パンと水しかねえ。おめえのちょっと分けてくれよ」
「あ? しょーがねえなあ、スープをやるよ。魚はダメだぞ」
渋りながらも、スープを差し出すジョン・B。やっぱりこいつはいい奴だなあ。
ジョン・BはSBRレースで総合3位、ファイナルステージ特別賞を受賞し、オレほどとまではいかないもののメディアを騒がせた英雄のひとりだ。
レース序盤はサンドマンなんかともよく話をしたが、いつの間にかリタイアしちまったみてーだし(聞いた話じゃ死体が上がったって話だ。気の毒に)、一番仲が良くなったのはこのジョン・Bだったな。
ジョースターのやつもヒガシカタのじーさんも、早々に帰国しちまいやがって……。
オレたちは英雄だぜ、え・い・ゆ・う! もっとアメリカを楽しめってんだ。


193 :

思い返せば、この4ヶ月は最高にラッキーな時間だった。
1stステージのジャイロ・ツェペリへのペナルティに始まり、マウンテン・ティムをはじめとする優勝候補たちの次々の脱落(リタイア)。5thステージではついに1位通過を果たし、最終ステージではDioの不正による失格。
全体的に見て、風はオレに向いていた。
あのバーサンは『人生最高のラッキーは2ヶ月間』と言っていたが、どっこい、4ヶ月たった今でも、まだラッキーは続いているぜ?
何より最高のラッキーは、1stステージのスタート時にオレがルール違反を犯していたことに誰も気がついていねーことだ。
あの日、9月25日の午前10時にスタートに並んでなかった選手はペナルティが課せられるルールだったらしい(後で知った)。
オレの成績にペナルティが加算されたら、優勝は無くなる。このルール違反がバレていないことこそ、オレにとっての最高の『ラッキー』なのさ!
ジョン・Bから受け取ったスープに口を付ける。
ま、食えない味じゃあないな。パンに付けて食ってみる。まあまあうまい。
ジョン・Bの食ってる魚の方は――――――
「ウガァアああアアァァァァァ!!!」
なっ なんだぁ―――!?

魚のフライにかぶりついていたジョン・Bが絶叫の悲鳴を上げた。
魚の骨がジョン・Bの頭を突き破っていた。
「なぁッ なァンだこりゃァアアアア!! オイ! ジョン・B! 何が起こったんだァ!!」
魚の骨に逆に食いつかれてる! どういうことだ!
何が起こったんだァ!!
「オゴ…… オゴ………」
オレはジョン・Bに駆け寄るが、ジョン・Bはピクピク痙攣したように蠢き、苦しんでいる。
何がどうなれば、魚の骨でこんなことに!
と、とにかく治療しないと――――――

ジョン・Bの持っていたデイパックの中身を漁る。
磁石、地図、懐中電灯――――― ろくなもんがねえ!!
オレの持っていた方はどうだ?
デイパックを漁る。
くそ、こっちも大して変わらねえ!
磁石に、地図に、懐中電灯に……… ん、これは――――――?

バァァァ――――――ン………



194 :


頭に風穴をあけたポコロコは、フラフラと夢遊病患者のように歩き、とある吸血鬼が寝台替わりに使っていた棺桶の中に倒れ込み、永遠の眠りについた。
発射直前の状態で紙に仕舞われた拳銃に、頭を撃ち抜かれたのだ。
スループ・ジョン・Bも、もう助からない。
囚人への死刑執行用に細工された魚のフライの骨が、運悪く彼の脳味噌を突き破ったのだ。


(そんな…… オレは……… オレはぁ……… ラッキーガイなんだァァァ)


スティール・ボール・ラン・レース、最高成績獲得者。
彼の名はポコロコ。
50億人に1人の幸運を手に入れた、今世紀最大のラッキーガイ。
彼がこのような形で最期を迎えることになったのも、ある意味では幸運だったのかもしれない。
なぜなら彼は、自分が身の毛もよだつデス・ゲームに参加させられていることすら気がついていなかったのだから。

【C-3 DIOの館/一日目 早朝】
【スループ・ジョン・B 死亡】
【ポコロコ 死亡】
※スループ・ジョン・Bの支給品は囚人27号の朝食でした。
※ポコロコの支給品は紙化された拳銃でした。
※他に支給品があったかどうかは不明です。
【囚人27号の朝食】
短編・死刑執行中脱獄進行中に登場した朝食。魚のフライに危険な仕掛けが施されている。
某ボスが大冒険するフリーゲームの作者非公認では、魚のフライがアイテムとして登場している。
満腹度回復と引き換えにダメージを受けるという諸刃の刃であり、数多くのボスが初見殺しに会い天に召されていることだろう。
【紙化された拳銃】
Part4にて宮本輝之輔が仗助を殺害する目的で紙にされた拳銃。
発射直前の状態で紙にされたため、開くと即座に弾丸が発射される。
ロワでは珍しく、原作の時点で紙化されていた支給品。


【残り 74 / 150 人】

195 :
ちょw 支援

196 :
投下完了
したらばでズガンのまとめ作ってくれてた人、ごめんね。作り直してくれwwwwww
あと2人で150人だったからやってしまった。
今では爽快している。

197 :
本当にラッキーなのは参戦しなくてすんだキャラだろ
というツッコミ待ちですねわかります
しかもポコロコのアレについては触れちゃいけないとこw
予約は20分後解禁でOK?
楽しみすぎるんで…

198 :
あ、最後の一文は敬愛する◆yxYaCUyrzc氏の没オープニングから戴きました。
感謝感謝。

199 :
投下宣言キター
wkwk

200 :
投下します。

201 :
おはよう、諸君。時刻は午前六時ちょうど、第一回放送の時間だ。
そうだな……まずはおめでとう、と言うべきだろか。君たちは知らぬことだが、この六時間、なかなかどうして楽しかったよ。
フフフ……色々あったと言ってしまえばそれまでなのだが、それではあまりに素っ気ないな…………。
そう、僅か六時間! “たった”の六時間の出来事だったというのに!
日常であればそれはあっという間の時間、日々の出来事で流されていくにすぎない時間だ。
ところがどうだ、このバトル・ロワイアルにおける六時間の長い事ッ!
とても興味深かったよ……。
強さを欲し戦いに明け暮れたもの。命惜しさにひたすら逃げ回ったもの。探し人求め翻弄したもの。恐怖におびえ隠れ続けたもの。
様々な参加者がいた。だが誰一人とて、どの参加者とて、無駄に過ごしたものはいなかった……。
ああ、なんということだろうかッ! なんという命の輝きッ なんという生命力ッ!
どうして命が燃え尽きる間際、君たちはそうも輝くのかッ! 何故死に際に君たちはそうも美しいのかッ! なにゆえにこうも私を夢中にさせてくれるのだッ!
様々なものたちがいた。様々な生きざまがあった。
だが生き残ったのは君たちだけだ! 運命の綱渡りを渡り切り、そして君たちは生き残ったのだ……ッ!
おめでとう、生存者たちよ! おめでとう、選ばれし運命のものたちッ!
君たちは運命に打ち勝ったのだッ 胸を張り、誇りに思ってくれたまえッ
おめでとう、生存者たちよ……ッ! おめでとうッ!

―――すまない、私としたことがつい興奮してしまった……話しがそれてしまったな。
そう、放送だ。死亡者と禁止エリアを伝える、それがこの放送の目的だというのに。申し訳ない。
ではそろそろ本題に……と、いきたいところだが、その前に……君たちの内、何人かは疑問に思わなかっただろうか?
……そう、他でもない名簿だ! 私は確かに後々名簿のほうを配布すると言っていたが……不思議に思わなかったかね?
名簿を配布する? 一体どうやって? まさか私が一人一人君たちのもとを訪ねて直接手渡すとでも?
……私はロマンチストでね、ゲーム開始直後のように直接君たちの元へ送り込んでもいいのだが、それはいささか味気ないと思ったのだよ。
そこで私はこう考えたッ! 伝書鳩だ、と! どこに行こうとも必ずや手紙を運ぶあの賢い鳥たちの手を借りたならば、それはさぞかし素敵に違いない! とね。
平和の象徴鳩が運んだ名簿に、殺し合いで亡くなった死亡者をかきこむ。なんともまぁ皮肉が効いていいとは思わないか……!
……おっと、またもや話がそれてしまった。これ以上長引くのもなんだ、さっさと本題にうつろう。
それではお待ちかね……死亡者と禁止エリアの発表だ。聞き逃さないよう、注意して聞いておきたまえ。
あらかじめ言っておくが、私は二度繰り返すようなことはしない。一度逃せばそれっきりだ。
それだけこの情報とやらは貴重で、皆のこれからのカギを握るのだ。そのつもりで今一度肝に銘じ、そして心して聞いてほしい。
それでは始めよう。只今より死亡者を発表する!
この六時間で死亡した者たちは……

202 :
ダイアー
ディアボロ
ジャック・ザ・リパー
アクセル・RO
東方良平
オエコモバ        
アダムス
空条徐倫
ホルマジオ
ペッシ
ワンチェン
間田敏和
川尻浩作
片桐安十郎
プラント
ジョーンズ
ボーンナム
ペイジ
J・P・ポルナレフ
ブラックモア
アレッシー
スチュ略
双葉照彦
飛来明里
空条ホリィ
鋼線のベック
人面犬
ドゥービー
イルーゾォ
エンヤ・ガイル
ジョージ・ジョースターU世
大女ローパー
おじさんX
涙目のルカ
マーチン
アンジェリカ・アッタナシオ
ンドゥール
リゾット・ネエロ
ヌケサク
エシディシ
シュガー・マウンテン
ミラション

203 :

ケンゾー
岸辺露伴
スミレ
スポーツ・マックス
ジョージ・ジョースターT世
サンダ―・マックイイーン
アイリン・ラポーナ
犬好きの子供
ブルート
織笠花恵
虫喰いでない
ドルチ
虹村億泰
音石明
麦刈公一
サンタナ
マジェント・マジェント
ウィルソン・フィリップス
母ゾンビ
ヴラディミール・コカキ
虫喰い
川尻早人
ティッツァーノ
召使い
エンポリオ・アルニーニョ
矢安宮重清
ポコ
トニオ・トラサルディー
ガウチョ
ケイン
ブラッディ
ドノヴァン
スループ・ジョン・B
ポコロコ

204 :
支援!

205 :
以上、総勢76名! この六時間に死亡したものは今読み上げた76名の者たちだ!
この数を君たちがどう受け取るかは君たちしだいだ。多くは語るまい! だが、しっかり考え、そして必要があるならば方針を変えるのも大いに結構ではないだろうか。
もう一度、確認を込めて言うが優勝者には『全てを渡す』覚悟が私にはある。もう一度繰り返そう、“私に叶えられない願いはない”!
そのことを肝に銘じ、そして今まで以上に殺し合いに励んでくれたまえ……!
では続いて、禁止エリアの発表といこう。こちらも一度しか読み上げない。気をつけたまえ。
それでは発表しよう、今回の禁止エリアは……

   7時から D-1が
       9時から  F-2が
       11時から C-8が

以上三か所が今回の禁止エリアだ。戦闘の際は充分注意してくれたまえ。

……さて、放送は以上だ。第二回放送は同じく六時間後、太陽が真上に上る12時きっかりに行う。
この放送は私、スティーブン・スティール、“スティーブン・スティール” がお送りした。
諸君、また六時間後に会おう! 君たちの今まで以上の健闘を、私は影ながら応援しいるッ
それでは良い朝を!





206 :
支援!
支援ついでにwikiの配布用名簿も更新!

207 :
「ノックして、ドジャァァ――――ン……! 失礼するよ、スティール君」
「…………」
「放送、聞かせてもらったよ。気がすすまなそうな割にはノリノリだったじゃないかァ……。
 内容も悪くない。我々に反旗を翻しそうな奴らを煽るだけ煽り、失意に沈む参加者には改めて優勝商品を突きつけ、炊きたてる。
 極めて優秀だよ、スティール君。プロモーターの名に恥じない出来だ。素晴らしい、称賛させてもらおう……!」
「…………」
「フフフ、悪人を演じることには慣れている、ってことかな? スティール・ボール・ラン・レースがよい予行練習になっているのかもしれないな。
 ただ一つ文句をつけるとしたならば、アドリブの部分はいただけないところがあった。それも大きな致命傷になりかねない、ね。
 君もわかっていて言ったんじゃないか? そうじゃなければわざわざ“二回も”繰り返すことはなかったはずだ。
 君は敢えて強調したんだ。参加者たちに読みとって欲しくて、“敢えて”その部分を繰り返したんだ。違うかい?」
「…………」
「名簿の中身は君も確認済みのはずだ。だとしたならば尚更、君は確信犯だ。知っていてそうしたんだ。
 ふむ、一緒に行動しているのは、あの“ブローノ・ブチャラティ”か。なるほど、彼なら“信用できる”。
 君がそう思うのも仕方ないことだ。確かにこの六時間の行動を追えば、彼ならば信頼してもいい、そう判断にたりえる人物だな」
「…………」
「スティール君……いや、スティーブン・スティール。諦めたほうが身のためだ。
 どれほど君が想えど、願えど、もう歯車は止まらないのさ。
 確かに延命は可能だ。“主催者”の妻となれば即座にR、という判断はなされないはずだ。
 少なくとも今、ブローノ・ブチャラティがその決断を下すことはあり得ない。それには私も同意するよ」
「…………」
「だが、それも無駄なあがきだ。何度でも言おう、このバトル・ロワイアルはもはや私たちの手を離れ、既に動きだしてしまっている!
 覚悟を決めるんだ、スティール君ッ 六時間後、君が妻の名を読み上げないで済む保証はどこにだってないッ
 全ては“運命”のとおり……フフフ、そう! 運命のみぞ知っているッ この行く先は、我々すら知りえない、“神のみぞ知る領域”なのだよ!
「…………」


「フフフ…………、フハハハハハ――――――ッ!!」

扉が閉じられる音が聞こえた。電気もつけていない仄暗い部屋で、老い枯れた男がポツリと呟きをこぼした。
これ以上ないほどの絶望、縋りつく様な懇願。
老人は椅子から崩れ落ちると、膝をつき、手を組む。罪人のように項垂れながら、彼は妻の名を呼んだ。



「―――ルーシー…………ッ!」



返事は返ってこなかった。


[備考]
放送は謎のマジックパワーで会場中に響いてます。
名簿は サヴェッジガーデン@Part6 ストーンオーシャン が運びます。地下とかでも謎のマジックパワーで辿りつくので大丈夫です。

208 :
以上です。何かありましたら教えて下さい。
次の放送後の予約解禁はいつになるのでしょうか。
明日ってのは早すぎますし、あんまり開けすぎるのもよくないとは思うんですけど。
三日ぐらいでしょうか。一日とかですかね?

209 :
放送投下乙!!
スティールの立ち場がおぼろげに見え始めた感じがすごくいいですね。
禁止エリアも、今のところは施設とも地下ともほとんどぶつからないいい位置だと思います。
ひとつ気になったんですが、鳩は死者の名前が読み上げられる前に参加者にたどり着くんでしょうか?
名簿が無い状態で76人の名前を聞き取るのはさすがに困難かと。
人によって解釈が違っても困りますし、死者を読み上げる前に「そろそろ届いた頃だろう」みたいな感じなのがあったほうがいいと思いました。

210 :
>ひとつ気になったんですが、鳩は死者の名前が読み上げられる前に参加者にたどり着くんでしょうか?
鳩は放送開始直後に辿りつくようなイメージでお願いします。
鳩来たー → あ、放送だ みたいな感じで。

211 :
>>210
なるほど。
ならば、そのような描写を本文中に入れたほうがいいかと。

212 :
了解です。
>>209で提案してもらったような感じで、スティールのセリフを付け加えてます。
>>201に一文たしましたがどうでしょうか。
そう、放送だ。死亡者と禁止エリアを伝える、それがこの放送の目的だというのに。申し訳ない。
ではそろそろ本題に……と、いきたいところだが、その前に……君たちの内、何人かは疑問に思わなかっただろうか?
……そう、他でもない名簿だ! 私は確かに後々名簿のほうを配布すると言っていたが……不思議に思わなかったかね?
名簿を配布する? 一体どうやって? まさか私が一人一人君たちのもとを訪ねて直接手渡すとでも?
勘がいい諸君ならば思い当たるんじゃないかな……? あるいはもう既に『到着』していて、突然の来訪に驚いているころかな……?
……私はロマンチストでね、ゲーム開始直後のように直接君たちの元へ送り込んでもいいのだが、それはいささか味気ないと思ったのだよ。
そこで私はこう考えたッ! 伝書鳩だ、と! どこに行こうとも必ずや手紙を運ぶあの賢い鳥たちの手を借りたならば、それはさぞかし素敵に違いない! とね。
平和の象徴鳩が運んだ名簿に、殺し合いで亡くなった死亡者をかきこむ。なんともまぁ皮肉が効いていいとは思わないか……!

213 :
投下乙です
やはり放送時の高揚感は素晴らしい…
「鳩が近く飛んできたから、周囲に別の参加者がいると気付く」
という展開はあり?なし?康一から見た由花子とか
放送後予約解禁はしたらばの意見に賛成で2日後希望です

214 :
>>213
確かに、ミスタやホルホースも隠れているから鳩で見つかるのはかわいそう
でも見つからないように鳩が来たって本文で言えばいいし、別にいいんじゃない?
したらばでの提案に特に意見もないので、予約解禁は8/31の0時(=30日の24時)で決定したいと思います。
たくさんの予約を期待しています。

215 :
今気付いたけどwikiのトップとしたらばの予約解禁日、一緒じゃないよね?
どっちが正しいん?

216 :
>>215
告知にミスがありました。申し訳ないです。
8/31の0時(=30日の24時)が正しいです。
このレスより約7時間後です。
たくさんの予約を楽しみにしています。

217 :
第一回人気投票を開催します、ということで本スレにも告知。
ルールおさらい
形式:2ndで行われていたポイント振り分け式。各人6Pを好きなように振り分けて下さい。
   (投票例及びテンプレはしたらばの投票専用スレ>>41)。
範囲:000話『オープニング』から103話『第一回放送』まで
部門:総合部門(純粋に凄い・好きな・お気に入りな話)
   登場話部門(正規100キャラクターの登場話から投票)
   死者部門(第1回放送までの間で最も輝いた死者(notズガン枠))
   ズガン枠部門(第1回放送までの間で最も輝いたズガン枠)
   台詞部門(第1回放送までの間で最も魂が震えた台詞)
   第一回MVP(生きてる、死んでる関係なく最も輝いた人)
期間:9/1 0:00 〜 9/8 24:00
皆さんの投票をお待ちしております。

218 :
投下します。

219 :
まるで身体を引き裂かれているかのような叫びだった。その叫びは二度と途切れることがないかのように、街中に響き続けた。
口から血を吐き、喉をかきむしった爪先が赤く染まる。涙が止まることはなく、川尻しのぶはただひたすらに泣き叫んだ。
そう、川尻しのぶはただひたすらに泣いていた。
息子の、そして夫の名を呼び続け、顔中ぐちゃぐちゃにして、彼女はこの世の終わりが訪れた様にただひたすらに泣いた。
泣いて、泣いて、泣き尽くして……それでも涙が涸れるようなことはなく、彼女はまだ泣き続けた。

「さぁ、川尻さん……もう大丈夫です。大丈夫ですから……しっかりつかまってください」

しのぶは言葉を返さなかった。代わりに狂った獣の様な叫びがかえってきた。空条承太郎は黙って彼女の体を支えてやった。
ほとんど引きずるような形で、強引にしのぶを民家まで連れてきた承太郎。近くの民家、その玄関の敷居を跨ぐとふと彼は立ち止る。
男は耳を澄ませ、辺りに視線を配る。その鋭さはまるで獣のようであった。
悲しみにくれる女性とそれを支えるため隙丸出しの男。
しばらく待てども、絶好の獲物である二人を襲うような殺人鬼は現れなかった。どうやらこの家には誰も潜んではいなさそうだ、そう承太郎は判断した。
それでも最大限の警戒をはらい、男は女性を連れながら、とりあえずは寝室を目指した。
通りがかった際に見つけた、大きな窓が印象的な一室だ。その性質上、逃げるにも警戒するにもうってつけの場所であることを、歴戦の戦士は見透かしていた。
承太郎は寝室の扉を開き、しのぶを中へと引きずりこむ。家族を失った悲しみに、依然母の涙は止まる気配を見せなかった。
承太郎は口を閉ざしたまま、彼女をそっとベッドへ寝かしつけてやった。
辺りの変化に気づいているのか、しのぶの慟哭が一段と大きくなったような気がした。
女性の肩にそっと毛布をかけると、彼はブラインダーを下ろし、電気を消し、そしてそっと部屋から抜け出した。
後ろ手に扉を閉め、ようやく一息つく。男は通ってきた途中にあった台所を目指し、そちらに足を向ける。固い革靴がフローリングの床に、よく響いた。

220 :


「――――――……あ」

突如、承太郎の口から呟きがついて出た。
自分でも言葉が飛び出たのが一瞬分からなかったほど、それは自然に口から零れ落ちた。
もう限界だった。もうそれ以上は、空条承太郎にとって耐えられなかった。
空条承太郎の心が限界を迎える。

廊下の途中、突然男はバランスを失い、その場に崩れ落ちる。
反射的に伸ばした手が廊下脇のドアノブを掴み、彼はなんとか倒れずに済んだ。
けれども、もう進むことは不可能だった。僅か数メートルの距離を歩くことすら、今の彼にはままならなかった。
這うような恰好で、つい今出たばかりの寝室の扉までたどり着く。扉を背にして床に座り込むと、男は目を瞑った。
男の頬を一筋の涙が伝っていく。
承太郎は泣かなかった。すくなくとも川尻しのぶのように、泣き叫びはしなかった。
噛みしめた奥歯、固く閉じた口。漏れ出そうな絶叫を必死で押しRため、男は拳を固く握った。
それでも悲鳴は止まらなかった。空条承太郎の心は悲鳴を上げ、絶叫し、暴れまわる感情は収まらなかった。
扉一枚挟んで漏れ出たしのぶのすすり泣きが鼓膜を揺さぶる。
幾度となく聞いた女性のすすり泣き。記憶の洪水が承太郎を一気に襲う。

数十年前の記憶がよみがえる。脳裏に浮かぶ、空条ホリィが見える。
母は悲しそうに涙していた。若く美しい母はやんちゃすぎる息子の行いに涙しているようだった。
どうしてそんなことするの。そう尋ねる彼女の優しさが嬉しく、またそのお節介具合がたまらなく嫌だった。
少年空条承太郎は母親に背を向けると、何も言わずに立ち去った。
母がじっと自分の背中に視線を送っていることはわかっていた。だがその視線から逃げるかのように、足早に少年は家を飛び出した。
数年前の記憶がよみがえる。記憶に新しい、空条徐倫の姿が見える。
娘は泣いていなかった。だが真っ赤に充血した目、腫れた目元を見れば、つい今しがたまで泣いていたのは明らかだった。
彼女は何も言わずに、ただそこに立ちつくしていた。琥珀色の澄んだ眼が、まるで心の内を見透かすように、自分に向かって投げかけられていた。
父親空条承太郎はそのあまりに真っすぐな視線から目を逸らすと、足元の荷物に手を伸ばす。
娘がじっと自分の背中に視線を送っていることはわかっていた。だがその視線から逃げるかのように、足早に父親は家を飛び出した。

221 :


「――――――ッ」

男は声をあげることも物にあたることも許されず、ただひたすらに耐え忍ぶことしか許さなかった。
頭が割れそうだ。身体が二つに引き裂かれそうだ。
バラバラに砕け散り、踏みつぶされ、滅茶苦茶にされ……その上固まることすら許されず、また砕け散る。
千切っては捨てられ、引き裂かれては押しつぶされる。

空条承太郎の心が砕け散る。破片一つすら残さず、すりつぶされていく。

ポタリ、ポタリと音を立て、男の頬から雫が流れ落ちた。
フローリングの床に大きな染みが出来上がっていくのを、男は口を一問字に結んだまま、ただ見つめ続けた。
喉元を再び込み上げた感情が、少しの拍子に漏れ出てきた。
肩を震わせ、男は小さく嗚咽を漏らした。そして一度漏れ出すと、あとはもう止まらなかった。
空条承太郎はむせび泣く。扉に身体を預け、天井仰ぎ涙流す。
罰するように勢いをつけて、頭を扉に打ち付ける。何度も何度も、打ちつける。
男の口から情けない、子供のような泣き声が漏れ出した。恥も外聞も捨て、悲しみの感情をありのままに露わにした嘆きを、彼は叫んだ。
廊下に男の泣きじゃくる声が響く。いつのまにか扉を挟んだすすり泣きは止んでいた。
空条承太郎は気づかない。男はただひたすらに泣き続ける。
泣いて、泣いて、泣き尽くして……それでも涙が涸れるようなことはなく、深緑色の澄んだ眼からは涙がとめどなく溢れ続けた。

廊下の窓からゆっくりと朝日が差し込んでくる。穏やかな朝を告げる、温かな光だった。




222 :

「ありがとう、ございます…………」
「…………」
差し出されたマグカップは温かかった。
しのぶは掠れた声で感謝の言葉を述べる。承太郎は何も言わず、黙って頷いた。
スプーンを回す音、陶器同士がぶつかり合う音。
静かな朝だった。まるで世界に二人だけ取り残されたような、そんな静けさだった。
承太郎はガスコンロに寄りかかりながら、窓の外を見つめていた。しのぶはぼんやりとした様子で悪戯にコーヒーをかき混ぜ続けている。
二人がコーヒーを口にするまで、随分と時間がかかった。
二人はともに口を開かなかった。長い間沈黙が流れ、どちらとともなく口を開きかけるが、それも消える。
かわりにそれを誤魔化すかのように、コーヒーをすする音だけがキッチンに響いた。
いつの間にか時間だけが過ぎ、ほんの少しだけ飲み残されたコーヒーが冷たくなったころになって、ようやく男が口を開いた。
空条承太郎は腰を上げ、川尻しのぶの眼の前の席に座る。
数時間前とまったく同じ状況だというのに、二人はともにひどい有様だった。あまりにひどいので、随分と派手に泣いたことは一目見れば明らかであった。
共に目は真っ赤で腫れぼったく、しのぶは化粧がボロボロ、承太郎の目元にはハッキリとした涙の跡が残っていた。
ちょっとした気まずい沈黙がまた流れた。
しのぶはそっと頬に手をやると、ボロボロになったファンデーションを指先でぬぐった。
体面に座った男はわざとらしい咳払いを二度繰り返し、ゆっくりと口を開く。承太郎の声は掠れてはいなかった。
乾ききった機械のような、そんな無機質な声が部屋に響いた。
「大切な話があります」
「……ここに来てから、大切じゃない話をした覚えがないです」
ぼそりとしのぶが漏らした言葉にも、男は反応しなかった。まるで聞こえなかったように男は振る舞うと、淡々と話を続けた。
「私はもう貴女を守れないかもしれません」
「……それはまた急な話ですね」
「それよりも大切な事が出来たのです」

―――それは家族よりも大切なものなのですか。

223 :
喉元まで出かかったその言葉を、なんとかして押しとどめると、川尻しのぶは顔をあげ、改めて男の顔をまじまじと見つめる。
共に家族を失った衝撃が、二人の心をささくれたものに変えていた。
しのぶは承太郎の顔を睨みつける。承太郎は冷徹な目で見返す。辺りの空気が重量を持ったような、そんな雰囲気が両者の間には流れていく。
先に視線を逸らしたのはしのぶのほうだった。女性はゆっくりとテーブルに視線を下ろし、そして唐突に顔を手で覆うと泣きだした。
どうしてなの、と疲れきった問いを彼女は呟く。枯れ果てたと思っていた涙がまたも彼女の眼から溢れ出た。
そのどうしてなの、は全てに向けられた嘆きだった。別に承太郎の宣言に対する嫌味ではない。
今の彼女にその深刻さを判断するほどの理性は残されていなかった。
ただ男との会話を通して、改めて家族を失ったことが思い起こされ、そして彼女は泣いたのだ。
夫を失った悲しみ。息子に先立たれた衝撃。とんでもないことに巻き込まれた理不尽な怒り。
川尻しのぶは泣いた。悔しさと怒りと、そしてやはり悲しみが彼女の感情を揺さぶり、もはやしのぶには泣く以外の感情の制御法を失っていた。
すすり泣きをする女性を承太郎は無表情で見つめる。些か無表情すぎるほどに、彼は何の感情も込めずにしのぶが泣きやむのを待っていた。

「“俺”は貴女の夫だった男を、正確に言えば一時夫の振りをしていた“吉良吉影”をRつもりだ」

その一言はしのぶが泣きやむか泣きやまないかのころに言い放たれた。
まるでしのぶの虚を突く一番のタイミングを見計らっていたように。彼女が傷つくであろう、その時を的確につくかのように。
あまりに残酷で、あまりに衝撃的な宣言だった。だからだろう、しのぶは一瞬何を言っているのかわからなかった。
涙がゆっくりと止まるのと同時に彼女の頭脳が目覚め始めた。承太郎の言葉が砂漠にしみ込む水のように、じわりじわりと広がっていく。
ようやく男の言葉と意味が頭の中でつながり、女性は顔をあげ、男の顔を見た。
今言葉を言い放ったのが目の前の男だと、確かに確認するかのように、しのぶは大袈裟に瞬きを繰り返した。
承太郎はそんなしのぶをただじっとみつめていた。しのぶがゆっくりと口を開く。
彼女は時間をかけて言葉を選び、息を殺して囁いた。自分の口にする言葉がまるで襲いかかって来るかのように。ひっそりと。息をひそめて。
「R」
「そうだ、R。殺人だ」
承太郎はぶっきらぼうにそう返した。彼の言葉は迷いなく、淡々としていたが力強かった。
目の前に座る女性がいまいち事態を把握できていないことに何の感情も抱いていないかのように、男は次々と言葉を口にした。
事務的で、儀礼的で。空条承太郎は台詞を読み上げる様に、言った。
「正確に言えば吉良吉影だけじゃ済まない。さっきざっと名簿をみてみたが、10数人に収まればいいほうだろう。
 勿論これは増えるかもしれないし、減るかもしれない。ソイツが俺が手を下すまでもなく死んでしまえば、それはそれで問題ない。
 ただ疑わしきは罰せとはよく言ったもので、その理論にのっとれば俺はこの名簿の過半数をRことになる」
もっとも、幸か不幸か、もう既に死んだ者もいるようだが。承太郎は最後にそうつけ加える。
締めくくるように言い放たれた言葉を、口の中でしのぶは繰り返した。そしてようやく事態が自分の思わぬ方向に進んでいることを理解する。
所在なさげにもてあそんでいたスプーンがやかましく音を立て、テーブルに落下する。
しのぶは唇をわなわなとふるわせ、なんとか次の言葉を紡いだ。承太郎は彼女が言葉を言い切る前に、それを遮った。
「空条さん、貴方は……」
「別に貴女に理解されようとは思っていない。だから最初に言ったんだ。
 俺はもう貴女を守れないかもしれない、と。
 ……いや、正確に言うならば、俺には貴女を守りながら危険人物を排除していくことが不可能だ。
 だからここで貴女とは―――」

―――ダンッ!

224 :

男は気だるそうに首をほんの少しだけ傾け、突然立ち上がった女性の顔を見た。
その仕草はまるで実験動物を観察するように冷静で、しのぶは身体を震わせながら男を見返した。
その時初めて、しのぶは承太郎の目をまともに見た。
彼の眼はくすみ、ぼやけ、霧がかったようにはっきりしていなかった。見つめていると、そのほの暗さに引き込まれそうなほどに、底無しの暗さがしのぶを見返していた。
しのぶは思わず顔をそむけ、脇を見ながら口を開いた。口をつぐまなかったのは彼女に残された最後のプライドだった。
承太郎はそんなしのぶをただ見つめていた。何の感情も見せず、無機質に、義務的に。
「貴方は……罪滅ぼしでもするつもりですか。復讐ですか。仇打ちですか」
しのぶの声は震えていた。それはどうしてだろうか。怒りだろうか。恐怖だろうか。
どちらでもいい。そうしのぶは思った。何かを言わずにはいられなかった。
承太郎が間違っているだとか、正しいだとか、批判したいとか傷つけたいとかやつあたりだとか……そんなことはわからなかった。
ただ口をついて出る言葉そのままを、彼女は口にした。ただこのまま黙ってここに座り込んでいるのだけは我慢ならなかった。
迷いはなかった。しのぶの口から次々と言葉がうって出た。
「娘さんを、そしてお母様を殺した誰かをRために、貴方はしらみつぶしに殺人を犯すつもりだと言うつもりなのですか」
「……訂正させてもらえるなら、仮に娘を、そしてお袋を殺した奴を始末し終えても、俺は最後の一人まで殺しつくすつもりだ。
 ああ、誤解がないように言うが何も無抵抗な人間を手当たり次第に殺していこうってつもりじゃない。
 ちゃんとした情報に基づいて、俺が危険人物と判断した奴だけRつもりだ」
家中に響く勢いで、しのぶが机に拳を叩きつけた。
コーヒーカップとスプーンが飛び、やかましい音を立てながら、今度は机の下まで跳ね跳んだ。
しのぶも承太郎も一切そちらに視線を送らなかった。彼ら二人は互いに見つめ合い、どちらもともに視線を切らなかった。
しのぶの目に浮かんだ荒々しい感情が、男の瞳に反射する。男は冷ややかな目で彼女を見返す。
彼女はめげなかった。グッと身を押し出し男の顔に近づき、更にその瞳の奥を見透かそうとする。
見返してきた男の眼光の鋭さに彼女は怯みかけた。だがそれでも彼女は諦めなかった。
押し返された体勢をただすように更に身を乗り出し、承太郎との距離を近づける。男はやれやれと呟いた。
話しにならないな。男がそう言いたげだったのは明らかだった。だがそれでもしのぶはもう一度口を開こうとした。
平行線をたどるだけの話し合いだとわかっていても、彼女は自分から折れる気は一切なかった。
川尻しのぶが言葉を投げかける。同時に男が放った小さな囁き声は、彼女の耳に届かなかった。
 「……空条さ―――」
 「……『スター・プラチナ・ザ・ワールド』」



   ―――――……


225 :

そして、彼女は戦慄する。
川尻しのぶの身体は元の椅子にすっぽりと収まっていた。まるで数十秒前に、時を戻されたかのように。
いや、決して時を巻き戻されたのではない。違いはある。
いつの間にか床に散らばっていたはずのスプーンや皿が拾い上げられ、そしてそれが流し台に置かれていた。
更に言うならば承太郎はいつの間にか窓辺に立ち、タバコをくわえていた。しのぶの脇をすり抜けるしかその窓には近づけないはずだというのに。
彼女は身を震わせた。川尻しのぶは今になって空条承太郎の『本気』を理解した。
この男は必ずやり遂げる。Rと言ったら、本当にRだろう。
最後まで殺しきると言った。ならば本当に殺しきるだろう。
―――もしも今彼が『私』を殺そうと思っていたならば……?
背中の産毛が一斉に逆立った。スタンド能力、時を止めるという能力の恐ろしさを今、彼女は全身で噛みしめる様に感じていた。

凍りつくように動かぬしのぶを尻目に、承太郎はゆっくりと煙を吐き出す。彼はぼんやりと空を見つめた。
窓の外の風景を眺めながら、彼は呑気に一服を楽しんでいる。二、三度煙を吸い込み、そしてもう一度吐く。
そうしてタバコが半分ほどになったのを確認し、承太郎は機械的にそれを押しつぶした。
窓を半分ほど開くとタバコを地面に落とし、その上から踏みつける。炎がしっかりと消えたのを確認し、承太郎は部屋から出ようと身を翻した。
しのぶの存在などそこにいないかのように、彼は扉へと足を向ける。
途中ソファーに放り捨てられたデイパックを肩にかけ、男は女に背を向けると、家を出ようとした。
しのぶがじっと自分の背中に視線を送っていることはわかっていた。
だがわざわざ振り向いて確認するまでのことではない。少なくとも承太郎にはそう思えた。
承太郎の足が扉の敷居を跨がんとした時、しのぶの声が彼の耳に届いた。
「私もついて行きます」
「……」
「私もついて行きますッ!」

226 :
支援

227 :
二度目はほとんど叫びに近かった。飛び跳ねる様にしのぶもデイパックを拾い上げ、承太郎の隣に並び立った。
承太郎はしのぶを見下ろした。かなり身長差があるので、普通にしていても見下ろすような形になってしまうのだ。
「嫌だと言っても承知しません。仮に貴方が嫌だと言っても、拒否しようとも、無理矢理にでもついて行きますから!
 今決めました! ええ、そうしますとも! 例え地の果てまでだろうと、私はあなたについて行きますからッ!」
男はじっと女を見つめた。女は口を真一文字に結び、挑戦するかのように男を睨みつけた。
そのまま永遠に続く様な沈黙が流れ、空条承太郎は視線を逸らした。
ボソリと言葉をつぶやくと、彼は玄関に向かって一歩踏み出す。その足取りは決してせわしないものではなかった。
何かにおいたてられたわけでもなく、何かから逃げるようなわけでもない。空条承太郎は呆れた様に溜息を吐いた。
「―――……勝手にすればいい」
「ええ、しますともッ」
しのぶは怒ったように、そう言い返す。玄関の扉を開くと、承太郎は彼女を先に扉の外へと出してやった。
不意に何かを感じ取った男は、改めて家の中を見渡した。
何でもない一軒家だ。とりわけ大きいわけでもなく、それほど小さいわけでもない。
金持ちでもなく、貧乏人でもなく、フツーのサラリーマンがフツーに生きて、そして精一杯の努力の末、なんとか建てることができた家。
そんな家だった。

――― 俺もこんな……

承太郎は首を振り、思考を打ち切った。自分が何を考えていたかははっきりとわかっていた。
だが最後にそれを本心として捕えるようなことはしたくなかった。それをしてしまうと何か大切なものを失いそうだった。
しのぶが不安げな顔でこちらを見ていた。承太郎は最後にもう一度だけ家を見回し、そしてそっと扉を閉じた。

バタン、と控え目な音が静かに家に響き……そして家はいつもの朝を、いつも通り迎えていた。

228 :
【E-7 北部 民家/一日目 朝】
【空条承太郎】
[時間軸]:六部。面会室にて徐倫と対面する直前。
[スタンド]:『星の白金(スタープラチナ)』
[状態]:???
[装備]:煙草、ライター
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:バトルロワイアルの破壊。危険人物の一掃排除。
0.???
【川尻しのぶ】
[時間軸]:The Book開始前、四部ラストから半年程度。
[スタンド]:なし
[状態]:疲労(大)、精神疲労(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:空条承太郎についていく
1.空条承太郎についていく
【備考】
・承太郎は参加者の時間のズレに気づきました。ただしのぶに説明するのも面倒だし、説明する気もありません。

229 :
以上です。誤字脱字矛盾等あれば指摘ください。
あと相談が一つ。
自分の描いた作品読みかえしてどうもしっくり来なかったんですけど、書き直してもいいでしょうか。
具体的にいうと 093『全て遠き理想郷』の最後のタルカスの部分です。
影響はもちろんあるとはわかっていますが、どうも『納得』がいかないので。
ご意見下されば助かります。

230 :
投下乙です!!
投下時に読んで、1日おいて読み返したのですがなんだかこの話については冷静な感想が言えそうにありません
投下時はもう部屋中転げ回る勢いでした
大泣きする承太郎というのが衝撃で…!
しのぶと承太郎につられて泣きそうでした
すばらしい作品ありがとうございました!!!

231 :
いわゆる正義の味方っぽい3部4部の承太郎とは一線を画した、ダークヒーローに成り下がってしまった6部太郎……
やはり母と娘を失ったことが大きいのだろうか?
やろうとしている事は正しいんだろうけど、このまま行ったら泥沼にハマるのも確実だと思う
彼を正気に戻してくれる人物と出会うことができるのか?
とても今後が楽しみです。
タルカスは続きが予約されていませんし、断りを入れての修正ならば大丈夫だと思います。
ただ、したらばで言われているような「エース書き手だから問題ない」という許可の出し方は企画全体にとって良くないと思うので反対します。

232 :
  【F・F】、【ホル・ホース】、【マッシモ・ヴォルペ】、【ストレイツォ】、【吉良吉影】、【リキエル】
 投下いたしやす。

233 :
 結論から言ってしまうと、それは『恐怖』では無かった。
 いや、言い変えよう。『本当の意味での恐怖』では無かった。
 それを説明するためには、まず『恐怖』とは何か? という話になるが、簡単に言えば脳内R物質による生理反応である。
 ストレスなどによってノルド・アドレナリンやアドレナリンという物質が脳内で分泌され、交感神経に作用し、心拍数の増加や脂肪の燃焼などを促す。
 闘争、あるいは逃避行動に対する身体の準備のための機能であるとされるこれらの反応は、言い換えれば生理的であり身体的な反応に過ぎない。
 
 『彼』はどうか? 横にいる、カウボーイハットの男は? まさにそのとおりの反応だ。
 彼は瞬時にして、自らの生命の危機を悟り、脳が「闘争あるいは逃走への準備」を行った。
 では、『彼女』は?
 彼女には脳がある。しかしそれは「死んだ脳」だ。
 いや、「死んだ人間の脳」だ。
 脳の形をしているし、血管の中に血液とは異なる液体が流れてはいるが、それは本来の脳としての機能を既に損なっている。
 『彼女』の中にある脳以外のあらゆる臓器もまた同様に、機能しているふりをしているだけで、実際には機能していない。
 人間の姿をし、人間の肉体を持って居るが、人間ではない。
 単にその身体を器として機能させるために、生きているふりをさせているだけだ。
 あくまで、人間モドキ。
 結論から言おう。
 『彼女』の脳は機能していない。
 従って、彼女の脳から脳内R物質が分泌されることはなく、彼女が恐怖を感じることは、『有り得ない』。
 人間の感情、思考は、すべて『脳』によって生み出される。
 脳が脳でない以上、彼女には、脳が生み出すべき感情は存在しない。
 しかし、それでも彼女には知性がある。
 それは一体何か?
 
 これは、ただの推論であると断っておくが、「DISCにより知性を与えられたプランクトンの集合体」という奇妙な生命である彼女は、言い換えれば存在そのものが一種の「生体コンピューター」なのだ。
 人間の脳の中では、ニューロンから発せられるシナプスの電気信号の集積こそが、思考であり知性だ。
 彼女の場合、そのニューロンの役割を、個々のプランクトンが果たしていると考えられる。
 すなわち、個々の微細なプランクトンが発する僅かな電気信号が、擬似的な生体コンピューターとして機能しているのではないだろうか?
 そしてその擬似的な生体コンピューターである『彼女』は、死んだ直後の『空条徐倫』の肉体を得る際に、そこに残っていた僅かな電気信号から、『空条徐倫の記憶』を、『得た』。
 『得た』――― あるいは、『引き継いだ』。
 そしてその記憶こそが、彼女に『人間の感情』を与えた。
 「知性あるプランクトンの集合体」は、「生体コンピューター」であった。
 その頃にあったのは、『感情』というよりは、『感情のようなもの』であったと言える。
 しかし、『記憶』を『引き継いだ』ことにより、『彼女』は ――― 『感情を持った、ひとりの人間』、あるいは、『個』に、なった。
 それは、あくまで『記憶によって作られた、擬似的な感情』に過ぎないのだが。
 
 

234 :
 ☆ ☆ ☆
 
 
「――― ダメだ」
 その小さくか細い、だがしかしきっぱりとした声に、カウボーイハットの男はつと足を止める。
 止めはするが、完全に停止する程の余裕がなく、せわしなく体を動かしては、あたりを見回している。
「おい、何だってんだよ」
 焦り。そして困惑。
 既に空は白白と明け、壁際で影になってはいるが、それでも姿は丸見えだろう。
「日が昇っている今、ここで外に出なけりゃ、逃げるチャンスはねぇ。
 言っただろ? DIOのやつの唯一の弱点は、太陽の光だ。
 今この状況で遠くに行けなきゃ、どーしようもねぇんだぜ?」
 建物の陰から空を見上げる。
 二人は既に、先程までいた『GDS刑務所』の門からは外へ出ていた。
 門の外の草原、所々の湿地帯。そこを道なりに進み、こちらに来たときの逆で北上しようとしているところだった。
 やや東の空できらきらと光が反射しているのは、あれはおそらく『ホルス神のペットショップ』による氷の爆撃だ。
 既に、あの地獄の門番まで来ていたとは!
 カウボーイハットの男、ホル・ホースは文字通り、背中に氷柱を差し込まれたかに震える。
 幸い、奴はほかの誰かと交戦中らしい。
 DIOにも、奴にも気づかれず逃げ出すのは、不可能では無いはずだ。
 
 しかし―――。
 背後にいる少女、『空条徐倫』は、そんなホル・ホースの言葉など耳に入らないかのようにじっと虚空を見つめている。
 唇はかすかに震えている。
 顔面は蒼白で、息も荒い。
 そう、明らかに「恐怖している」。
「おれ」と同じく、放送前のDIOの所業を見て、「恐怖している」はず―――。
「―――ダメだ…」
 小さく、そして先ほどよりはいささかに強く、彼女は繰り返した。
「だから、一体何が―――…」
「ダメなんだ。あいつを…『DIO』を許しちゃあ、ダメなんだ―――…!!」
「何ィッ!?」
 ホル・ホースは声を荒げる。
「ちょっと待て、何言ってんだ徐倫!?
 おいおいおい、まさか、まさかな。
 『今から戻ってやつを倒そう』なんて、言い出すンじゃあないよな!?」
 絶対に。絶対に、そんな真似はしない。
 ホル・ホースは固く心に誓っていた。
 スタンドパワー? 吸血鬼故の不死身の体?
 いや、そんなものは関係ない。
 格。
 言ってしまえばただそれだけ。悪の格。その点において、ホル・ホースは到底、DIOに及ばない。
 無敵のスタンド『皇帝(エンペラー)』? 世界を股にかける殺し屋?
 そんなのは、あのDIOの前では、『安酒場にたむろして、R、ぶっRと喚くだけのただのsラ』程度でしかない。
 その自分が、DIOをなんとかする ――― 不可能だ。

235 :
 
 既に結論は出ていた。
 とにかく、何があろうと二度とここには近寄らない。
 DIOにも、ほかのDIOの部下にも、一切接触しない。
 それが、短い時間でホル・ホースの考えた行動指針、いや、決意だ。
 そしてその指針に、徐倫も賛同してくれた―――はずだった。
 
「わかってる」
 同意の言葉。
「わかっている。そして、これは―――『恐怖している』…。
 これは、『恐怖の反応』。
 まるで『ドライブ中車の前に突然ヒッチハイカーが投げ込まれたとき』の様な―――。
 『司法取引による減刑のハズが、いつの間にか全面的な有罪へとすり替えられていたとき』の様な―――『恐怖の反応』…。
 あたしの記憶が、どうしようもなく、恐怖している」
 恐怖、というその言葉その感情が、きちんと共有されていたことに、ホル・ホースはかすかに安堵した。
「けど…ダメだ…。ダメなんだ」
 再びのかすれた叫び。
「あたしの記憶が、離れない。
 あの少年…。
 食われていた方、じゃない。けど、別の、もうひとりの少年…。
 野球帽に、小さなユニフォーム…。金髪のくせっ毛…。
 骨…。音楽室…。部屋の幽霊………。
 彼は、エンポリオだ………っ!!
 エンポリオ・アルニーニョ………っ!
 あたしを………ッ! 救ってくれた………っ!!
 友達だったッ! なのにっ……!!」
 慟哭、である。
 口を塞がねば、という意識が微かに脳裏をよぎる。
 よぎるが、それすらもはねのけてしまうほどの、『魂の叫び』であった。
 
「あたしは ――― DIOを ――― 許しては ――― ダメなんだっ………!!!」 
 そして、時は動き出す。 
 ☆ ☆ ☆
 八つ当たり、だと言っていい。
 どうしようもない感情の渦を、ただぶつけてやった。
 耳障りな叫び。
 けたたましい悲鳴。
 何があったか。何を見たのか。
 そんなのは想像がつくし、どうでも良いことだった。
 何を知ったのか。何が訪れたのか。
 知りたくない事実。訪れて欲しくない時。
 そう。
『俺と同じことがあった』
 ただそれだけのことでしかない。

236 :
 
 だから、あの女の気持ちはよくわかる。
 いや、違うのかもしれない。
 なにせ、彼にとって、「すでに死んだ仲間の死を、再び知らされた」のだから。
 アンジェリカ・アッタナシオ。
 その乾いた白い肌が、赤黒く染まる様。
 ヴラディミール・コカキ。
 〈パープルヘイズ〉によって、潰され蒸発し無と化した末路。
 言葉。情報。感情。想い。
 あらゆるものがない交ぜとなり、混濁したようなどろりとした意識の膜を、女の叫びが引き裂いた。
「あたしは ――― DIOを ――― 許しては ――― ダメなんだっ………!!!」  
 
 ああ、そうだ。許してはならない。
 きっとお前の言うとおりなんだろう。
 親しき者を殺されたのなら、決してその相手を許してはならない。
 決してその運命に甘んじてはならない。
 だから―――。
 
 ☆ ☆ ☆
 貫いているそれが何なのか、理解するより先に体が動く。
「う…うぉおぉォォォ―――ッ!?
 何だァ〜〜てめ―――はァ〜〜〜!!!???」
 右手に現れるは光り輝く滑らかな銃身。
 鋼鉄ではない。ホル・ホースの精神の具現化したスタンドの拳銃、『皇帝(エンペラー)』から放たれる弾丸は、瞬時に三発がその「怪物」の体を貫いている。
 しかし、狙いは甘い。
 目の前で崩れる体に、意識が持っていかれる。
 徐倫。ドス黒い血。口からあふれる。いや。口だけではない。
 
 怪物の腕。腕? そう、確かに腕だ。
 無数の針が体中から生えている。体、なのか、或いは体を覆う何かなのか。
 その姿は異形であり、異常であった。
 その力もまた異常であり驚異であった。
 見開かれた両目がらんらんと狂気に彩られている。
 口の端からよだれを垂らし、まるでR中毒者のようだ。
 長い髪がさんざに乱れ、或いは顔や腕に張り付き、容貌をさらに怪異なものとしている。
 その怪物が、徐倫の体をさし貫いていた。
 手刀で人の腹を貫くなど、それは常人のなせる業ではない。
 いかなクンフーの達人とて、生身で出来ることでもない。
 パワーのあるスタンドなら可能だろう。
 よくよく見れば、この「怪物」が身にまとっている奇怪な針まみれの薄皮が、スタンドヴィジョンであることがホル・ホースにも察することはできたはずだ。
 しかし今のホル・ホースにそれだけの観察力を発揮する余裕はない。
 怪物はホル・ホースの存在など気にも止めず、刺し貫いている右腕をさらに回して、徐倫の内蔵を抉り出す。
 再びの銃撃。今度は頭に狙いを定め、三発 ――― が、左腕で弾かれる。
(―――早いッ!!??)
 凶暴な怪物。そう見える外見とは裏腹に、きちんとこちらのことも意識に入れて、反応していた。
 『皇帝』のスタンド弾丸は、針の生えた左腕に阻まれ、致命傷は与えられていない。
 当たってはいる。発射した六発の弾丸は、全て当たっている。
 しかし、それらは全て、かすり傷すら与えてていない。
(…き…、効かねェ!? 俺の『皇帝』は、あくまで拳銃―――。
 弾丸を操ったり、精神力の続く限り無限に撃ち続けることもできるが、破壊力も弾丸の速度も、やはり「拳銃並み」…ッ!!
 ライフルやマシンガンじゃあねーと、あいつの体は貫けねーってのか!?
 殺したかったら核ミサイルでも持って来いッてーのか!!??
 それとも…)
 冷や汗がポトリと地面に落ちる。
(吸血鬼…屍生人…? まさかDIOの奴、唯一の弱点である『太陽の光』を克服することのできる化物を、すでに創り出していたというのかッ―――!!!???)
 ヌケサクみたいな吸血ゾンビの手下を、太陽の下に出られるよう作り変えることに成功していたのであれば、既にか、あるいはいずれにか、DIOもまたその弱点を克服し、太陽の下にその猛威を振るうだろう。
 ホル・ホースの精神は、その考えに至った瞬間、崩折れた。
 いや―――崩折れかけた。

237 :
 
「ホル・ホース…」
 暗転しかけた意識の中、声が耳に届く。
「F・F・F(フリーダム・フー・ファイターズ)…。なんてね…」
 怪物の動きが、鈍くなっている。
 キラキラと光に輝いて見えるのは錯覚だろうか?
 いや、錯覚では無い。
 光り輝く細い糸が、怪物の体の要所要所をがんじがらめに縛り、その動きを阻害しているのだ。
 その糸の源は、『彼女』―――空条徐倫。
 彼女は自らの体を極細の糸、いや、糸の束に変えて、怪物の体を縛り上げているのだ。
「い…糸の…スタンド…?」
 ホル・ホースが呆然とつぶやく。
「ボケッとしてねーでよォオォ〜〜〜!
 あたしの『糸』じゃ、完全に拘束できるだけの『パワー』が足りないんだよなァ〜〜〜!!」
 見ると、徐倫の体は既に半分以上が『糸』化していて、これ以上拘束しようとしたら、体が全てなくなってしまいかねない。
「…OK、ベイビー。俺たちの『愛の弾丸』だぜ」
 
 もがく。
 怪物が糸を引きちぎろうとする。しかし、一本一本はもろく細い糸が、細かに編み上げ束ねられることで強靭さを増し、この怪物の異常な怪力でも、即座に切断することは出来ないようだ。
 ブチッ。
 腕が緩む。
 ブチチィッ。
 足が緩む。
 ブチ、ブチチィッ。
 頭が ――― 爆ぜる。
 
 糸の拘束から逃れたのが先か。
 ホル・ホースの放った弾丸六発が、側頭部の同じ場所を寸分の違いなく撃ち貫いたのが先か。
 怪物はそのまま数メートルの距離を弾き飛ばされ、GDS刑務所の正門から敷地内へと叩き込まれていた。
 
 バド! バド! バド!
 
 ダメ押しとばかりにホル・ホースが弾を撃ち込む。その全ては怪物の肉体を貫く。
 数発、数十発は撃ち込んだだろうか。
 どれほど撃ったかは意識していないが、彼の「精神」が、休息を求めるまでそれは続いた。
 
「…水」
 ようやく落ち着いたホル・ホースの背後から、徐倫の声がした。
「…記憶にあったより…あの『糸』はヤバイね。
 糸になると、表面積が増えるから、すぐに水分が無くなっちまう…。
 かなり……『ヘヴィ』だわ……」
 既に手にしているボトルの水を飲みつくし空にしている徐倫は、体の大部分を糸から元の姿に戻しているが、まだ自力で立ち上がれないほど消耗しているようであった。
 その徐倫の体を引き起こし、傍らのバッグから出したボトルの水を抱えながら飲ませつつ、
「しかし驚いたぜ。
 『糸』になれるスタンド能力とはね。
 一瞬、あの針骸骨野郎に腹をブチ抜かれているのかと錯覚しちまった」
「貫かれていたけどね。
 でも、そのくらいじゃあたしは死なない」
 表情も変えずに言う徐倫に、ニヤリと笑みを返す。これでようやく、『冗談を言い合える仲』ってことか?
 それから、水を飲み終えた徐倫を、そのまま両手でぐっと抱え上げて立ち上がる。
「徐倫。なんにせよアイツは、DIOの手下に違いねぇ。やつに気づかれているのか、たまたまなのかは分からねぇが、どっちにせよ今は戦える状況じゃねぇからな。
 お姫様はこの俺に抱っこされて、ひとまず退散だ。
 先のことは、そこで決めようや」
 先程までの絶望感などどこへやら。余裕ぶってそう笑いかけるホル・ホース。
 その余裕が、油断になる。
 

238 :
 ☆ ☆ ☆
 
「ディオの部下―――という事か」
 ストレイツォは腕を組んだままそう返す。
「確証はねぇが、そうだろうな。
 何にせよ、あのGDS刑務所の奥にDIOのヤローが潜んでいるのは間違いねぇ」
 カウボーイハットの優男が吐き捨てるようにそう言った。
 
 
 ストレイツォと吉良が、轟音と上空での光に気づいたのは十数分は前。
 直後に教会を出て現場へと向かっていたが、途中で例の『放送』があり、足を止めその内容を聞く。
 死者の数。浮かれ騒ぎの様なアナウンスの声。地図を持ってきた鳩。
 そして何より、同門であり朋輩である、ダイアーのシを告げる声。
 それら全てを、ストレイツォは飲み込んで、足を進めた。 
 
 上空の光は、一箇所にとどまっていない。正確な位置を目視で確認するのは至難の業だ。
 自覚している以上に、ストレイツォの内心に焦りがある。そのことがさらに迷いを生んでいた。
「…ツォ…ストレイツォ…!」
 背後から、吉良の鋭い呼びかけ。
 意識を引き戻し、視線を巡らせると、既にGDS刑務所らしき建物のすぐ前に居る。
 ストレイツォの目には、一種魔法めいた異国の建物。吉良からすれば、今までいたイタリア風の街並みとは異なる、近代的建築物。
 その前にいるのは、時代がかったカウボーイと、その男に抱きかかえられた、怪我人と思しき少女。
「徐倫。なんにせよアイツは、DIOの手下に違いねぇ」
 男が少女にそう告げる。
「やつに気づかれているのか、たまたまなのかは分からねぇが、どっちにせよ今は戦える状況じゃねぇからな」
 見れば、そのさらに奥には、たった今戦闘したであろう相手が倒れているのが微かに見える。
 ふわり、とでも言うかの足取りで、ストレイツォは音もなく歩を詰める。
「その話、詳しく聞かせてもらおう」
 
 
 そして四人は、再びサン・ジョルジョ・マジョーレ教会にいる。
 厳密にはさらに一人。未だ目を覚ましていない牛柄服の青年(リキエル)もだが、今ここでの会話には関わっていない。
 状況は複雑だ。
 ストレイツォが理解できたのは、このカウボーイハットの男と、連れの少女は、「ディオから隠れ逃れてきた」こと。
 そして逃げる直前、「ディオの部下らしき男に襲われ、危うくもそれを撃退した」こと。
 付け加えて、「上空で戦っているであろう轟音と光の反射は、ディオの部下である隼、『ホルス神のペットショップ』によるものだろう」こと。
 自分が、「吸血鬼ディオ」と戦うために出向いてきた波紋戦士である、ということを納得してもらうのには少し手間取った。
 男は明らかに不信感を持っていたし、同行の少女を守ろうと警戒もした。
 ストレツイォの言を背後から吉良が補足してくれたことと、その少女がとりなしたことが功を奏したのかもしれない。
 結局男はストレイツォと同行し、そして「まずはここを離れるべき」と主張。ストレイツォの先導で、先程までいた教会に戻ってきている。

239 :
 
 少女は激しく疲労していたが、ストレイツォが渡したボトルの水を飲むことで回復しつつあるようだった。
 その少女を気遣いながら、カウボーイハットの男、ホル・ホースは言葉を続ける。
「さっきアンタは、『吸血鬼ディオを倒すため、師匠や仲間と、ジョースターたちの手助けに向かっていた』って言ったよなぁ?」
 情報、状況を整理しきれずにいるストレイツォに確認を取る。
「―――そうだ。トンペティ師は居ないようだが、さっき響き渡った声や名簿とやらによれば、ウィル・A・ツェッペリとダイアーはこの会場に集められているようだ。そして…奴の言が真実なら、ダイアーは既に死んだ」
 冷静に、感情を表さぬよう端的に告げる。
「そりゃご愁傷様。だがアンタ、何て言われてやってきたか知らねぇが、ディオをただの吸血鬼だと思って戦おうってンなら、負けるぜ」
「何?」
 僅かに怒気を孕んでしまう。
 誇り高き波紋戦士。何より、朋輩ダイアーの死を含めて、「負ける」の一言で済ませられるのは心外だ。
「おっと、波紋がどーの、って事じゃねぇ。ジョースターの爺も波紋使いだってのは知ってる。けど、それだけで勝てる相手じゃねぇから、奴は手助けを必要としてんだろ?」
 ジョースターの爺、というのが引っかかったが(ツェペリが新たに弟子にしたジョナサン・ジョースターという人物は20歳そこそこの青年と聞いている)、名簿にはジョースター姓の人間が何人かいた。
 どこかで混同しているのかもしれないが、ひとまずはホル・ホースに続きを促す。
「『世界』…。奴は文字通り、『世界を支配するスタンド』をもっている。
 スタンド、ってのは、精神のエネルギー。人によって能力は様々だが、ディオのそれは近距離パワー型。単純に、その吸血鬼のパワーを二人分持ってると言って言いだろう。
 そして、能力は『不明』…。
 超スピードだとかトリックだとか、そんなチャチなもんじゃあねぇ。
 少なくとも、その謎を解かない限り、『俺たちに勝ち目は無ェ』」 
 ストレイツォの知らない、特殊な能力を持っている。しかもそれが何なのかは不明だが、『世界を支配する』とまで言えるものだという。
 付け加えれば、二人を襲撃した針の革を着た怪物に、氷の塊を放つ隼。
 既に、ディオの部下たちが集結しつつあると考えられる状況……。
 しばし、ストレイツォが押し黙る。
 
 話から察するに、このホル・ホースも、ディオと戦ってきた正義の戦士のようだ。
 確かに態度には軽薄さが伺えるが、敵の事情にも詳しく、状況判断能力も低くない。それに何より、少女を助けるために自らの命を賭けられる男。ひとまず信頼しても良いだろう。
 
「…何にせよ、ディオの居場所ははっきりした。
 そして、ディオもまた部下を集結させつつあるというなら、我々も仲間を募って立ち向かうしかあるまい。
 特に、ツェッペリとジョースター…。それと君の言う、『ジョースター一行』の仲間達か…」
 眉根を寄せつつ、ストレイツォがそう宣言する。
 不退転。波紋戦士の誇りに賭けて、吸血鬼ディオに対して、「逃げる」「諦める」という選択肢は無い。
 その顔に、ホル・ホースがついと顔を寄せ、
「…その件についてなんだが」
 小声で話しかけてきた。
「ジョースター一行については全部教える。ほかのディオの部下についても、だ。ただ、もし奴らと出会っても、俺のことはひとまず伏せておいて欲しい」
「何? 何故だ?」
「あいつらとは、ちょっとばかし誤解があってな。
 俺は敵だと思われているんだよ。
 いいか、こいつは結構複雑な問題だ。よく聞いて、納得してくれ。
 俺は一時期、DIOの内情を探るため、奴らの手下に接近していた事がある。
 例えば、鏡のスタンドを使うJ・ガイルとかだ。
 こいつは殺人鬼のクソ野郎だったが、奴から他のディオの手下やら、奴らの動向やら、いろいろ仕入れられた。
 ただ、そのJ・ガイルって奴は、ジョースター一行にいたポルナレフってやつの妹を殺した真犯人だったんだよ。
 そこで、J・ガイルと一緒にいた俺は、『ディオの仲間だ』と思われちまった…。
 ああ、ポルナレフのやつが悪いわけじゃあねぇ。確かにちとばかし直情的で困ったもんだが、あいつは正義に燃えて、ディオを追っている。アンタなら信頼してもらえるだろう。
 けど、その誤解から、俺はジョースター一行とは共同戦線を組めないんだよ。
 完全に、仇の仲間だと『誤解』されちまっているからな…」
 ホル・ホースの話は、なるほど確かに複雑な状況のようだ。

240 :
ぎゃあ!投下だ!支援!

241 :
しえん!

242 :
吉良!しえん!

243 :
「ならば、私が間に立って事情を説明すれば…」
「いやいや、無理だ。状況が落ち着けば可能かもしれないが、そこはまず待ってくれ。
 もしアンタが俺の名を出せば、その時点で警戒される。
 ただでさえこんな状況なんだ。誤解の種をわざわざ振りまく必要も無いだろう?」
 確かに、そうかもしれない。
 しかし何も話さずに同行して、後で知られた場合も厄介なことにはなりそうだが…いずれにせよ、込み入った話ではある。
「とりあえず、了承した。実際にどうなるかは保証できないが…」
 結局ストレイツォとしてはそう答えるしかない。
 
 簡単な情報交換と休息。
 しかしその間にも状況は変化している。
 外の様子を伺っていた吉良が戻ってきて、「やはり見失った」と告げる。
 これは、最初にストレイツォたちが目標としていた、上空での轟音と光の反射の主、ホル・ホース曰く『ホルス神のペット・ショップ』の事だ。
 吉良も、狭い入口から外を探っていただけだった以上、上空すべてを監視できていたわけではない。
 もとより、双方移動しながらの事だった上、間に放送などがあった以上、見失ったとしても致し方ない。
 いったい誰が、ディオの部下と戦っていたのか。
 気になるといえば気になるが、もはやどうもできない。
「それで、ストレイツォ」
 ぐ、っと、今度は吉良が顔を寄せ話しかけてくる。
「あいつらとはどういう話になった?」
「とりあえず同行はしない。あの少女の休息時間をもっと取りたいようだし、ホル・ホースは戦士だ。自分たちの身は自分たちで面倒見れる、と。
 名簿にメモをしたが、彼の知っているディオの手下と、ジョースターの仲間たちの名は聞き出せた。
 できれば、彼らを探し出し、戦力を増やしてディオに挑みたいのだが…」
 視線が絡み合う。
 吉良はしばし思案した様子で、しかし続けてこう言った。
「徐倫…」
 不意に出たその単語に、ストレイツォは少し戸惑う。
「ストレイツォ。放送を聞いたとき、それをメモしたのは私だ。そして自慢じゃあないが、私は結構記憶力は良い方だ。
 最初、あの男は、同行している少女を、『徐倫』と呼んだ。
 名簿にある名前でそれと似た名前は、『空条徐倫』ただ一つだ。
 少し似た響きでアイリンという名もあるが、まあそっちでは無いだろう」
 ゆっくりと、確認するように、言葉をつなぐ。
「そして、『空条徐倫』…あと、『アイリン・ラポーナ』は、ともに死亡したと告げられていた…」
「!?」
 ストレイツォの顔がこわばる。
「彼らは…放送を確認していない、と言っていた……。
 ディオから逃げるのに必死で、その時間が取れなかった………とも」
 そのため、吉良がメモしていた名簿と地図の印を、ホル・ホースに渡して写させている最中だ。
 50人という膨大な人数の死者数だけに、写しを取るだけでも一苦労である。
   
 ストレイツォが呼吸を整え、両足から床に微弱な波紋を流す。
 波紋は、生命のエネルギー。屍生人や吸血鬼にとっては破壊をもたらすもの。
 しかし、床を伝って届いた微かな波紋が、壁際に座り込んでいる少女に、ダメージを与えた気配はない。
 もとより、彼女は刑務所の前からここまで、朝日を全身に浴びてやってきているのだ。屍生人であるハズは…無いのだ。
「名前を騙っているのか…、そもそも名簿や放送が誤り、嘘なのか…、或いは………」
 吉良の言葉がストレイツォの中に浸透していく。
「死から蘇る…又は、死んでいないのにかかわらず、主催者側に死んだと思わせる何らかの手段があるのか………」
「何者だ…」
 ストレイツォは吉良以上に混乱する。
「彼女の中は『生命のエネルギー』に満ちている…。
 しかし、その肉体は『死んでいる』………」
 波紋の伝わり方、その流れからストレイツォが感じ取った結論は、彼女が屍生人であるというものよりも、奇っ怪で悩ましい、理解を超えたものであった。

244 :
 ☆ ☆ ☆
 ポルナレフ、アレッシー、エンヤ婆……。
 ジョースター一行も、ディオの手下も、この膨大な50人もの死者の中に名が上がっている。
 アレッシーはたしか再起不能になったはず、とか、エンヤ婆はあの後ジョースター達に捕らえられたため、別の刺客に粛清されたと聞いているが…等など、気がかりになる事はいくつもある。
 いくつもあるが、問題はそれじゃあない。
 空条承太郎が最初に殺され、そしてポルナレフまで死んだとなれば、花京院、アヴドゥル、そして老いぼれのジョセフ…と、残りのジョースター一行は、DIOに対抗できるとはとても思えない面子だ。
 もとより、ホル・ホースは、ストレイツォと『仲間』になって、『ともにDIOに立ち向かおう』などとは、さらさら考えていない。
 むしろ、DIOの対処を奴らに押し付けて、できるだけ離れていようと、そう考えている。
(もちろん、彼らが『運良く』DIOを倒してくれれば、『儲けもの』ではある、が)
 そのためにも、情報が必要だ。
 DIOの手下がどれだけいて、DIOに立ち向かおうという人間がどれだけいるのか。
 それを把握するためにも、聞き逃した放送の情報をストレイツォから引き出したのだが…。
 
「放送で読み上げられた死者」としてチェックの入っている名。
『空条徐倫』。
 どういう事だ…?
 ホル・ホースは、傍らで座り、壁にもたれ掛かって、何事かを思案しているのか、或いはただ休んでいるのか分からぬ少女を見る。
 先ほどの感情の爆発から一転、それまで以上に空虚な表情である。
 空条徐倫。曰く、空条承太郎の娘。曰く、GDS刑務所の収監者。
『糸』のスタンドを使い、先ほど殺された野球帽の少年の友人。
 どろどろに意識と肉体を『溶かす』スタンドによって死に瀕している父、承太郎を助けること。
 エルメェス・コステロ。ナルシソ・アナスイ。ウェザー・リポート。F・F…。
 F・F…?
 再び、名簿を開いて名前を探す。
 ある。『F・F』の名は、名簿にある。
 エルメェス、アナスイ、ウェザー、エンポリオ等もある。
 話半分、ハナから与太話と思っていたのは確か。
 彼女は空条承太郎の縁者か何かかもしれないが、娘などということは有り得ない。
 彼女の語っていた承太郎は、明らかに自分より年上だ。
 人となり風貌などは似ているが、実在したとしても別人だといえる。
 別人?
 再び名簿に目を向ける。
 参加者の中に、やはり『空条承太郎』の名がある。
 しかし、そこには「放送で読み上げられた死者」として、チェックが入れられていない。
 ストレイツォが記入し漏らしたのか? いや、最初の段階の死者はそもそも放送では読み上げていなかったのか?
 しかし、読み上げなかったのであれば、なぜ名簿に名前があるのか?
 ホル・ホースの頭がフル回転で状況を整理する。
 
 ホル・ホースの知っている18歳の空条承太郎は、最初の会場で殺されている。
 しかし名簿によれば、空条承太郎はまだ生きてこの奇妙な街のどこかにいる。
 それがもし正しいとすれば―――この会場にいる空条承太郎こそ、ホル・ホースの知っている18歳の空条承太郎とは別人で同姓同名の、空条徐倫の父親なのではないか―――?
 
 待て。待った。違う、そこじゃない。そこが問題なんじゃあ無い。
 
 再びホル・ホースがかぶりを振る。
 
 問題は、放送で『空条徐倫』が『死んだ』とされたのは本当なのか。
 本当だとしたらなぜ、今生きているはずの徐倫が死者として名を告げられたのか。
 そして―――。
『F・F・F(フリーダム・フー・ファイターズ)…』
 あの針の化物が襲いかかってきた時に徐倫が呟いた、この言葉―――。
 
(徐倫―――…、一体お前は…?)
 
 視界の中、『糸』が、ホル・ホースに向かって放たれた。

245 :
「うおぉああぁあっ!!??」
 
 背後を見やる。
 そこには、『糸』でがんじがらめにされた青年の姿。
 そう、この会場で最初にホル・ホースがR、完膚無きまでに叩きのめされた「牛柄の服を着た青年」が居たのだ!
 
「とりあえず…ハナっから『撃つ』のも何だし、『糸』で縛り上げたけどさ……」
 徐倫の気のないセリフに、ストレイツォ達の声がかぶさる。
「しまった、目覚めていたかッ!?」
「待て、攻撃するなっ…! そいつにはまだ…」
 瞬時に駆け寄る二人に、ホル・ホースは『皇帝(エンペラー)』を出して牽制。
「おい、仲間か!? 見知らぬ仲ッて訳じゃなさそうだがよぉ〜!?」
 二人が足を止める。
「いや、我々はその男に襲われたが、撃退して縛り上げていたんだ」
 なるほど、確かによく見ると、糸の前に両腕と胴体がロープで縛られているのがわかる。
 ただ、縛りが甘かったのかどうなのか、ところどころ緩んで、這うように移動することはできる状態のようだ。
「や…やめてくれ、息が……息ができない……ッ! まぶたが下がるッ……!」
「ニャにィ〜〜!? てめー、俺を忘れたとは言わせねぇぞ!?
 さっきはよくもやってくれたなぁ!!!???」
「ヒィイィィィ〜〜〜!! 覚えて無いッ!!! アンタ誰だッ!!?? 俺は何で縛られてんだッ!!??
 やめろっ……息がッ……!!」
 あまりの狼狽ぶりに、逆にホル・ホースが面食らう。
 徐倫は糸を戻し、ストレイツォ達もゆっくりと歩み寄る。
「…何だか、随分と態度が違うな……」
「無理もないだろう、ストレイツォ。あれだけ君に容赦なくしてやられたんだからな」
 会話の内容に、青年の腫れた顔から、どうやら自分が手も足も出なかったこの青年を、ストレイツォは余程の目に合わせたと思え、複雑な気分になる。
 その悔しさからか、ホル・ホースはいささか乱暴な動作で青年に『皇帝』を突きつけ、
「てめー、一体何者だ? なぜ俺…この二人を襲った?」
 相手がしらばっくれていることもあり、自分がストレイツォ達より前に青年に完膚無きまでに負けたことをごまかしつつ、そう問いただす。
「わ、分からねェ……。自分でも分からねェんだよ〜〜〜!!
 神父に……神父に言われたんだ……。
 そしたら、急に変なところに連れて行かれて……殺し合いしろとか……。
 そんで、息が苦しくなって、また、まぶたが落ちてきて、水を……水を飲んだら……」
 縛られたまま、這うようにのたうつように体を揺らすが、ぐいと『皇帝』を突きつけられどうにもできない。
「まぶた、だの、水、だの、どーでも良いンだよッ!!
 てめーは何者で、なぜ襲ってきた!!??」
 ひいっ、と再びの悲鳴。
「リキエルっ! 俺の名前はリキエルっ…! DIOの息子だっ!!」
「「「「!!!???」」」」
 叫びを聞く4人それぞれに衝撃が走る。
「神父が、俺たちのことを『DIOの息子』だって、そう言って……それで、『空条徐倫』の足止めをしてこいって言われて………! そしたらいつの間にか変なところに………」
 ―――神父。DIOの息子。空条徐倫。死んだ肉体に生命をみなぎらせる少女。波紋戦士。殺し屋。殺人鬼。死んだものとして名を告げられた少女。空条承太郎の娘―――。

246 :
----
【D-2 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会内部 / 1日目 朝】
【H&F】
【ホル・ホース】
[スタンド]:『皇帝-エンペラー-』
[時間軸]:二度目のジョースター一行暗殺失敗後
[状態]:困惑
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:死なないよう上手く立ち回る
1.とにかく、DIOにもDIOの手下にも関わりたくない。
2.徐倫に興味。ただ、話の真偽は不可解すぎるぜ。
3.DIOの息子? 空条承太郎は二人? なぜ徐倫の名が死者として呼ばれた?
[備考]
※第一回放送をきちんと聞いていません。
 内容はストレイツォ、吉良のメモから書き写しました。
【F・F】
[スタンド]:『フー・ファイターズ』
[時間軸]:農場で徐倫たちと対峙する以前
[状態]:軽い疲労、髪の毛を下ろしている
[装備]:空条徐倫の身体、体内にF・Fの首輪
[道具]:基本支給品×2(水ボトル2本消費)、ランダム支給品1〜4
[思考・状況]
基本行動方針:存在していたい(?)
1.『あたし』は、DIOを許してはならない…?
2.ホル・ホースに興味。人間に興味。
3.もっと『空条徐倫』を知りたい。
4.敵対する者はR。それ以外は保留。
[備考]
※第一回放送をきちんと聞いてません。

247 :
【ストレイツォ】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:JC4巻、ダイアー、トンペティ師等と共に、ディオの館へと向かいジョナサン達と合流する前
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×3(水ボトル1本消費)、ランダム支給品×1(ホル・ホースの物)、サバイバー入りペットボトル(中身残り1/3)ワンチェンの首輪
[思考・状況]
基本行動方針:仲間を集い、吸血鬼ディオを打破する
1.ホル・ホースは信頼できると思うが、この徐倫という娘は一体何者なのか?
2.青年(リキエル)から話を聞き出すべきか?
3.吉良などの無力な一般人を守りつつ、ツェペリ、ジョナサン・ジョースターの仲間等と合流した後、DIOと対決するためGDS刑務所へ向かう。
[備考]
※ホル・ホースから、第三部に登場する『DIOの手下』、『ジョースター一行』について、ある程度情報を得ました。
【吉良吉影】
[スタンド]:『キラークイーン』
[時間軸]:JC37巻、『吉良吉影は静かに暮らしたい』 その@、サンジェルマンでサンドイッチを買った直後
[状態]:健康
[装備]:波紋入りの薔薇
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:静かに暮らしたい
1.平穏に過ごしたいが、仕方なく無力な一般人としてストレイツォと同行している。
2.死んだと放送された『空条徐倫』に、「スタンド使い」のホル・ホース…ディオ? ディオの息子…ねぇ…。
3.サンジェルマンの袋に入れたままの『彼女の手首』の行方を確認し、或いは存在を知る者ごと始末する。
4.機会があれば吉良邸へ赴き、弓矢を回収したい。
[備考]
【リキエル】
[スタンド]:『スカイ・ハイ』
[時間軸]:徐倫達との直接戦闘直前
[状態]:両肩脱臼、顔面打撲、痛みとストレスによるパニック、縄で縛られてる
[装備]:マウンテン・ティムの投げ縄(縛られている)
[道具]:基本支給品×2、
[思考・状況]
基本行動方針: ???
1.ヒィイィィィィ〜〜〜!! 何が何だか分からねェ〜〜〜!! 息が、息が出来ねぇっ…!!
 
【E-2 GDS刑務所・正門の内側 / 一日目 朝】
【マッシモ・ヴォルペ】
[時間軸]:殺人ウイルスに蝕まれている最中。
[スタンド]:『マニック・デプレッション』
[状態]:痛みと疲労、数箇所の弾痕(表面のみ、致命傷にいたらず。能力を使えばすぐにでも治せる程度)、『何も分からない』
[装備]:携帯電話
[道具]:基本支給品、大量の塩、注射器、紙コップ
[思考・状況]
基本行動方針:特になかったが、DIOに興味。
1.友を思い、怨敵を思う。
2.天国を見るというDIOの情熱を理解。しかし天国そのものについては理解不能。
247 : ◆SBR/4PqNrM:2012/09/02(日) 20:49:55 ID:futNY7Os
 イジョウデース。
 ヨーロシーク オーネガーイ イータシマース。(オウム)

248 :
投下、代理投下乙です。
ストーン・『フリー』から『フリーダム』、徐倫に近づいていくような、そうでないような彼女がとても気になる……
そしてDIOから逃げ出すのに成功したかと思ったら、いろんな情報の交差で大混乱状態……
果たしてどう収集するのか次回が非常に楽しみになる作品でした。

249 :
 しまった。
 何か足りないと思ったら、最後のパートを貼り忘れてました。

250 :
 ☆ ☆ ☆
 体中が痛む。
 糸で縛られた。
 弾丸も受けた。
 何より、自分のスタンド能力、〈マニック・デプレッション〉で筋肉を過剰に膨張させたことが、疲労と痛みを齎している。
 スタンドの弾丸も、糸の攻撃も、すべて致命傷には至っていない。
 最後に受けた側頭部の攻撃は、その衝撃は激しく、脳震盪を起こしてしばし意識を失わせるものだったが、その直前に能力を使って「側頭部の筋肉をさらに過剰に膨張させる」ことで、やはり脳への損傷は防いでいた。
 そのあとの数発、追い打ちに関しても同様だ。意識を失いつつも残っていた効果が、多くを防いでくれた。
 結論から言えば、今マッシモ・ヴォルペが負っているダメージは、ほぼそのすべてが、自らの能力によってもたらされた一時期な副作用なのだ。
 普段以上に筋肉を過剰に膨張させた結果の、疲労であり痛みなのだ。
 
 八つ当たりだった、と言って良い。
 自分の寄る辺なき人生を導いてくれた老人、コカキ。
 依存であると言われても、それでも自分を必要としてくれていた少女、アンジェリカ。
 二人の死は、既に「知っている」事だった。
 新たなパッショーネのボス、ジョルノ・ジョバァーナ。彼の放った刺客、パンナコッタ・フーゴ。
 彼らの手により、二人はすでに死んでいる。
 その名が、なぜ改めて告げられたのか。
 その理由、真実は、今のマッシモには分からない。
 わからないが、それでも―――。
 あたしは ――― DIOを ――― 許しては ――― ダメなんだっ………!!!
 そうだ。
 逆恨みだと言われようと、親しき者を殺されたのなら、決してその相手を許してはならない。
 八つ当たりだったといっても良い。
 悲痛な叫びを放った少女を攻撃したのは、単なる八つ当たりだ。
 もちろん、彼女がDIOを許さないというのであれば、「DIOの友」である自分は、彼女の敵である、というのもある。
 だが。
 やはりそれは、ただの八つ当たりだ。

251 :
 
 彼女が憎いわけでもない。傍らにいた男のことなど気にもしていない。
 ジョルノ・ジョバァーナ。バンナコッタ・フーゴ。カンノーロ・ムーロロ。シーラ・E……。
 自分がRべき相手は、彼らだ。
 しかし―――。
 
 最初に殺されたジョルノ。
 彼は本物だったのか?
 死んだはずの仲間が、再び殺されたと告げられる。
 死の様を目の当たりにした怨敵が、未だこの会場のどこかで生きていると教えられる。
 名簿も、放送も、確証のない戯言かもしれない。
 そうだ。マッシモは考える。
 彼はその誰のことも、ここで見てはいないのだ。
 敵も、友も、誰ひとりとして、ここで会ってなどいない。
 そして、放送や名簿が真実ではないと言い切れぬのと同様に、自分の記憶も真実だと言い切れないとすら思えてくる。
 何が真実、誰が本物で、何がそうでないのか。
 結局―――『何も分からない』ではないか。
 ゆっくりと、彼は上体を起こす。
 感覚が、気配を告げている。
 逃走の気配。
 戦っている気配。
 歩み寄り探っている気配。
 いくつかの気配が、このGDS刑務所の周りで蠢いている。
 
 友のことを思う。
 それは、新たな友であろうか。それとも、名簿に書かれている旧き友のことであろうか。
 この気配について、或いは逃げ去った二人について、新しき友に告げるべきだろうか。
 名簿に書かれた怨敵を探し、まだ生きているとされている旧き友を訪ねるべきだろうか。
 マッシモ・ヴォルペは友のことを思い、それから何故か不意に、兄のことを思い出した。
 痛みは、風の中に去ってゆく。
 訪れるものは何か。赴くべきは何処か。
 マッシモ・ヴォルペには―――『何も分からない』。
 
 

252 :

 というわけで、 >>250-251 を、>>245 と >>246 の間に入れて読んでくださいませ。
 いやまいった。申し訳ナイト!

253 :
投下します。

254 :
 

255 :
できたばかりの十字架の表面を撫でる。ざらりとした感触が印象的だった。
そのあまりに無機質な感触に少年の手が思わず止まった。しばらくの間、東方仗助はその感触を噛みしめるかのように、繰り返し十字架を撫で続けた。
飾り気のない木でできた十字架。それを支えるように盛られた土。あまりに質素な墓だった。
仗助はしばらくの間、墓の前に立ち続けていた。
涙にくれるようなこともなく、怒りに顔をゆがめるでもなかった。死者を弔う優しさと憂いに満ちた表情を、少年は浮かべていた。
「仗助くん」
突然背後から名前を呼ばれ、彼は振り返る。
見れば保安官マウンテン・ティムが険しい顔でこちらに向かっていた。彼の手には放送時に配られた名簿が握られていた。
少年は返事もせず、あげていた再び視線を墓へと向ける。彼がその場から動く気配は見えなかった。
保安官はきびきびとした様子で隣に並び立ち、そして同じように墓へと視線を向ける。
眉間に寄せられていた皺は薄れ、硬かった表情がゆっくりと柔和なものへと変わっていく。
マウンテン・ティムが仗助の肩にそっと手を置いた。少年は振り払うこともせず、しばらくの沈黙の後、ゆっくりとした口調で話し始めた。
「虹村億泰って奴は……頭は悪いわ、見た目は凶暴だわ、喧嘩っ早いわで色々面倒な奴だったんスよ……。
 ほんとはイイヤツなんスけど、学校のやつらには色々誤解されてたみたいで……アイツも彼女ができない、彼女ができないってよくぼやいてました。
 アイツ、ほんとにピュアなヤツなんスよ。休み時間とか昼飯の時間とかにだべってると、そんなことばかり話しやがって……。
 そのくせいざ女子から話しかけられると、緊張してんのか、照れ隠しなのか、ぶっきらぼうになって……。
 なんていうか、不器用、って言葉がスゲー似合うヤツでした」
ティムは黙って話の続きを促した。仗助はうっすらと頬笑みを浮かべ、それは楽しそうに億泰のことを語った。
その様子があまりに楽しそうだったので、いつのまにかティムの口元にも笑顔が浮かんでいた。
仗助は話を続ける。
「でも俺はそんなアイツの不器用さって言うんスか? 男気あるところにスゲー憧れてたんスよ、ここだけの話。
 ガッツだったら誰にも負けやしねェ、目標定まれば、それはもう猪みたいにガンガン進んでいく。
 アイツのそういう部分には、敵わねェな、って俺、思ってたんです」
不意にティムは仗助の体が震えていることに気がついた。
目を落とせば右手に握られた紙が元の形をとどめていないほどに、くしゃくしゃになっているのが見えた。ティムは何も言わなかった。
仗助は顔をあげると、真正面から太陽を見据える。突き刺すような光線に眼を細めながらも、彼は視線を逸らさなかった。
「ちょっと前に俺のじいさんが死んじまって……。警察官だったんすよ、じいさん。俺。助けようとしたんスけど、間にあわなくて…………。
 俺はそん時誓ったんです。もう街の人を誰一人傷つけさせやしない、この人の分まで俺がこの街を守っていこうって。
 さっきの放送でそのじいさんの名前が呼ばれました。億泰の野郎の名前も呼ばれました。ほかにも沢山の人が、この六時間で亡くなった」
「…………」

256 :

仗助は大きく息を吐き、そして息を吸った。
一呼吸置くと、再び口を開く。
「馬鹿らしいとはわかってる。無理難題だってことも知ってる。
 でもティムさん、俺はもう誰一人死んでほしくないんです。目の前で“また”間にあわなかった、そんなのはもう嫌なんです。
 “治す”ことしかできない俺のスタンドです。だからこそ、もう二度と……俺は救えるはずだった命を失いたくないんだ…………」
涙はなかった。だがその横顔を見たティムは、少年の抱えるあまりに大きな覚悟に心を痛めた。
守れるものより守れないものの方が圧倒的に多い。全てを守ろうなんていうのは夢物語で、必ずや誰かを見切り、見捨てなければいけないのが現実だ。
だがその現実を突きつける気にはならない。その現実を知って尚、仗助は届かぬ夢に手を伸ばそうとしているのだから。
「ああ、そうだな……」
ティムは何も言わず、仗助の肩をポンと叩いた。
誰よりも優しい心を持つからこそ東方仗助は悩み、苦しんでいる。そしてこれからも、彼は悩み続けるに違いない。
ならば可能な限り彼を支え続けてやりたい、そうティムは思った。
できないかもしれない、苦しい思いをするかもしれない。
それでもどんなスタンドよりも優しいスタンドを持つこの少年を、見捨ててはいけないとティムは自身に誓った。
「戻ろう、皆が待ってる」
最後に一度だけ十字架を撫でると仗助は小さい声で、いってくるぜ、と呟いた。
マウンテン・ティムは黙って聞こえないふりをし、男たちが待つ家へと向かっていった。

257 :
  

258 :



「よォォォォォォオオオオオく聞け、諸君―――――――――ッ!」
机を叩き割らん勢いでシュトロハイムが地図を叩きつけ、吠えた。
本人はきっと普通の声の大きさで話しているつもりなのかもしれないが、周りの四人は堪ったものではない。
顔をしかめたり、耳を塞いだりする男たちであったが本人はどこ吹く風、そのままの声量で話し続けた。
「スタンド使いである諸君の強さは充ー分に理解しているッ そして同時に波紋使いの強さも、吸血鬼の恐ろしさも俺はもよーく知っているッ
 ならばこの人数は何だッ! 一体誰が、どうやって、こんなにも多くの犠牲者を生みだしたのだッ!?」
律義に答えを返そうとする広瀬康一。
しかしまたも盛大に叩きつけられたシュトロハイムの拳に驚き、彼は身を縮めた。喉元まで込み上げた言葉を反射的に飲み込む。
男は最初から答えなんぞ期待していなかったのだろう、返事も待たずに自らの問いにこう答えた。
「『柱の男たち』! それしかあるまいッ
 サンタナ、そしてエシディシはどうやらくたばったようだが未だ二人の柱の男たちが存在しているッ
 いや! あるいは、あってはならないことだが二人以上柱の男たちがいる可能性だってあるのだッ!
 過去、未来の可能性を考えればその絶対数は計り知れないッ そしてその脅威もわれわれの想像をはるかに超える可能性があるのだッ」
「……それが地図とどんな関係にあるんスか?」
「良い質問だ、仗助ッ!」
仗助の顔にビシリと指を突きつけ、男はニヤリと笑う。
されたほうは気分がいいわけもなく、仗助はやれやれと言った感じで仲間に目くばせする。
気が付いているのか、いないのか。シュトロハイムの話は続いた。
「放送前に聞こえた救急車の音、覚えているな?
 貴様らにはどう聞こえたかはわからんが……わがゲルマン魂が作り出したこの最高にして至高、人間を超越しサイボーグ化した身体は僅かな違和感すら聞き逃さなかったッ
 あの救急車の音、どうも俺には奇妙に聞こえたのだ。遠く離れていたとはいえ、更に遠くから聞こえた様な……そんな気がしてならなかったのだ。
 そこで音のスタンドを操る康一とッ 臭いを元に居場所を突き止める噴上の出番と言うわけだッ」
二人の少年を交互に指し示しながら、男は鼻高々といった感じで言った。
「二人のスタンド使いに調査を依頼した結果、どうやらこの殺し合いの舞台とやらにはかくされた地下通路があるらしい。
 それも極めて巨大で、しかも迷路のように張り巡らされたものがな!
 つまり! 先ほど感じた音の違和感、膨大な数の死亡者、そして地下通路……! ここから導き出される結論は、即ち一つ……ッ!」
「おい、このサイボーグ、ボリュームコントローラ壊れてんぞ」
耳元でがなりたてる男の声があまりにうるさかったのだろう。噴上裕也は座ったまま身体を捻り、隣に座った保安官に囁いた。
マウンテン・ティムは笑いながら結論を促した。
「君の意見を聞こうか、シュトロハイム」
「柱の男たちが自由に動けないこの時間ッ そう、時はまさに絶好の機会なのだッ!
 これより我々は地下に潜入するッ! 殲滅対照は柱の男たちッ! 奴らを叩くことでこれ以上の犠牲者拡大を防ぐのだ…………ッ!
 そしてそのためにも……!」
三度、轟音を響かせシュトロハイムの拳が机に叩き下ろされた。
しかし今回、その拳はある地点を指さすように振り下ろされていた。
周りの四人は顔をぶつけ合わせるように男がさした地図を覗きこむ。指先が示すのはこれより北、古代環状列石。
「向かうは古代環状列石……! いざ柱の男退治へッ!行くぞ、将兵諸君!」


259 :
   

260 :



「76人……」
読み上げられた多くの人々の名前、そしてその数の多さに男は言葉を失った。
いや、数だけではない。自分を庇い死んでしまったジョージ・ジョースターU世、恩人の父親であるジョージ・ジョースターT世。
他にも数多くの見知った名前を名簿に、そして死亡者の中に見つけ、スピードワゴンは雷に打たれたような衝撃に襲われていた。
一体何が起きているというのだ。
二人のジョージ・ジョースター? 誇り高き紳士、ジョナサン・ジョースター?
ジョセフは首輪を吹き飛ばされ死んだはずじゃなかったのか? エリナさんまでこの殺し合いに巻き込まれているのか?
浮かんだ疑問に名簿が答えを返してくれるわけもない。一枚の紙は黙って男を見返していた。
スピードワゴンは動けない。老人はあまりに多くのものを失い、それは年老いた彼に何よりも堪えた。
石油王でもなく、おせっかい焼きのアウトローでもない。バトル・ロワイアルにおいて、ロバート・E・O・スピードワゴンはただの老人にすぎなかった。
「―――……おい! おい! スピードワゴンッ!」
少女の鋭い叫びを耳にして、ようやく彼の意識は浮上する。
エルメェス・コステロの上にまたがり、鬼のような形相で手を動かし続けるシ―ラE。鬼気迫る様子で、彼女はなんとかエルメェス・コステロの命を繋ぎとめていた。
慌ててスピードワゴンは少女の額から滴る汗をぬぐい、指示されたとおりの器具を渡していく。
だが少女に助けの手を貸しながらも、男の心は晴れなかった。スピードワゴンの心は嘆き、苦しんでいた。
――― 一体私は何をしているのだろうか。
ロバート・E・O・スピードワゴンは誇り高き人間だ。
自分の非力さ、無力さはわかっていた。老いとともに更に自分の力が衰えていったのも知っていたつもりだった。
だがここ、バトル・ロワイアルの場はあまりに残酷だった。老いも無力も言い訳にできないほどに、この場は無惨にも彼に現実を突きつけた。

この老いぼれは、未だこうして生き永らえているッ! ほかでもない、生き残るべきものの命を犠牲にしてッ!
にもかかわらず、私は何もできていないッ! 自分一人守ることも、女性一人助けることもできやしないッ!
何人もの若者がッ 自分よりも生き残るべきものがッ 死んでしまったというのにッ!

老人は思わず呻き声を漏らしかけた。
ジョージが自分を庇い、死んだ瞬間がよみがえる。エルメェスが張り飛ばした頬が痛んだ。
だが何よりも、何もできない自分が。何も救うことのできない心が、誇りが。
彼の心を苦しめる。スピードワゴンはそっと目を閉じた。声にならない嘆きが漏れ出ることのないよう、彼は喉奥でその嘆きを噛み殺した。

261 :
 

262 :

「目瞑ったところで何か変わるわけじゃねーぜ……」

男の鼓膜を震わせたのは少女の言葉だった。
思わぬ言葉にスピードワゴンは顔をあげ、目の前の少女を見つめる。
シ―ラEは手を休めず、エルメェスの傷口から目を離すことなく、言葉を続けた。
「アンタが無力感に襲われてるってのはわかってる。
 なんで俺が生き残って、なんであいつが死んだんだ……そう思ってたんだろーな?
 私だってそう思ってるさ。なんでジョルノ様が死んで私が生き残ってるか、なんで私じゃなくてあのお方が死ななくちゃならなかったのか。
 わかんねーままさ。納得なんかできてねーし、きっといつまでたっても答えは出てきそうにねェ。
 だけどな、だからこそ私は自分のなすべき事をやってやるんだって思ってる。
 言っただろ、あたしの“E”は復讐の“E”。こうしてあたしが生き残ったことに意味があるとしたなら、それはきっと“復讐”のために違いないッ
 ジョルノ様を殺した、あのスティーブン・スティールとかいうクソ野郎をぶちRために! 私は今、ここにいるんだ!」
その時初めて、男はシ―ラEの眼を見た。
彼女の目に灯った光は運命に苦しめられながらも尚輝く、一人の人間の輝きだった。
かつて砂漠で死にそうになりながらも石油を掘り当てた自身と同じ目が、萎びれた男を見返していた。
「だからスピードワゴン、しみったれたションベンづらしてんじゃねーッ!
 悲しい? 悔しい? 無力感? だったら出来る範囲でいいから、とにかく動きやがれッてんだ!
 アンタに私みたいなことができるわけねェだろ。ギャング渦巻くフィレンツェで私は縄張りはってんだ、スタンド使いをなめんじゃねェーよ!
 あんたには石油王だっていう立派な実績があんだろ? 残してきた物が違う、積み上げてきた実績がある。
 ならあんたにはあんたにしかできないことをやればいいんじゃねーか! ちげーか、ああ?!」
それはシ―ラEなりの励ましの言葉だったのだろう。叱咤激励の言葉は自身にも向けられた、彼女なりの鼓舞だったに違いない。
意味を探すなど愚の骨頂。男なら体一つで運命切り開き、自分で意味を作り出すぐらいの気概を見せやがれッ
随分と荒々しく、容赦ない言葉だった。だがそれは不抜けた男を立ち直らすにはちょうどいいぐらいの衝撃であった。
しばしの沈黙の後、ロバート・E・スピードワゴンの眼がゆっくりと光を取り戻す。
青ざめた表情にさっと血の気が戻り、冬眠から目覚める様に全身の血流がフル回転し始める。
男はギュッと握り拳を作った。震える体を叱責し、彼はゆっくりと立ち上がった。
「―――……そうだな。そうに違いないな、シ―ラE君」
シ―ラEは止められなかった。
男があまりに唐突に、そして素早い身のこなしで動いたので、彼女は思わず言葉もなく男の動きを目で追うしかなかった。
スピードワゴンの意図の読めない行動を、黙って見守るシ―ラE。
しかし男が何も言わずに車外に出たことで、彼女は言葉を口にせずにはいられなかった。
「何してやがるんだ、テメー! そんなことしてる暇があるなら少しでもいいから手を貸しやがれ!」

263 :

男は何も言わなかった。固い表情のまま彼は黙って、何かを待っていた。
延々と広がる暗闇を前に仁王立ちする男。一体コイツは何をしているのだ。痴呆が回って、ついにボケ老人になってしまったのではないだろうか。
シ―ラEはそう思わずにはいられなかった。車の外に飛び出してよっぽどぶん殴って連れ戻そうかとも思った。
だが次の瞬間、身体を震わせるような悪寒が少女を襲った。
指一つ動かすことのできないような、金縛り似た圧迫感。シ―ラEは動かない。いや、シ―ラEは動けなかった。
「シ―ラEくん、車を出しなさい。今すぐにだ」
スピードワゴンがゆっくりと口を開いた。彼は震えていなかった。男は少女に言われた通り、自分の為すべき事を為すために、今ここに立ちつくしていた。
彼の敏感な嗅覚が嗅ぎ取ったのは絶対的な『危険』。避けることのできない『死の臭い』。
闇からゆっくりと現れた一人の男。その男から車を庇うように、スピードワゴンは堂々とその場に直立する。
数多くの修羅場を乗り越えたプライドが男を支えていた。柱の男、カーズが闇より姿を現し、それでも老人は震えず、動かず。
氷よりも冷たく、何の感情も持たない一対の眼を見据え、スピードワゴンは動かない。

――― 静寂が響いた。

死んだような沈黙が訪れ、それを切り裂くように金属音が響いた。
柱の男、カーズの腕より鋭い刃が飛び出し、彼は黙ってそれを二人に向けた。
誰もが動けずにいた。そしてまた静寂が訪れ……スピードワゴンが口を開いた。



264 :
猛スピードで救急車が駆けていく。
最後のトンネルを曲がり切ろうと華麗なドリフトを決め、まるで空に飛び立つかのように白の車は勢いよく地上へと飛び出した。
叩きつけらたかのように車は二、三度地面で跳ねまわる。激しい揺れが少女を襲った。
彼女はハンドルに齧りつくようにして、その揺れに耐えた。
タイヤから煙を撒き散らしながら、車はようやく止まる。シ―ラE、そしてエルメェス・コステロだけを乗せながら。

「―――……くそったれ」

舞いあがった土埃がおさまり、唸りを上げていたエンジン音が消えた。
運転席に座っていた少女は荒い呼吸を繰り返しながら、ハンドルに額を押し当て、一人そう呟いた。
静寂が訪れたのを合図としたかのように、彼女は顔をあげるとミラーに映る自分自身を見る。
その顔は怒りに染まっていた。誰でもなく、彼女は自分自身が許せなかった。

『スピードワゴン、てめェ……!』
『シ―ラEくん、繰り返しになるが、車を出しなさい。今すぐに。
 三度目は言わせないでくれ。向こうもそうのんびりしてくれそうには思えないからね』

シ―ラEは悔しかった。シ―ラEは情けなかった。
例え逃げるしか道がなかったとしても。逃げるのが最善策だとわかっていても。それでも彼女は自分自身が許せなかった。
その選択肢しか選べなかった自分の非力さが。全てを諦めきったような老人の笑顔が。
「くそったれ……! くそったれ、くそれったれ、くそったれッッッ!
 ふざけんじゃねー!ふざけんじゃねーよ、このクソ野郎がァァアッ!」
最後の言葉とともに拳を振り下ろす。ガンッ、と決して小さくはない音が車内に響くのと同時に、背後で甲高い電子音が鳴った。
はっとした表情で少女は運転席を離れ、急いで後ろの女性の様子を伺った。
エルメェス・コステロの意識は未だ戻っていなかった。シ―ラEはチラリと電子音をたてた機器を見る。
緑色のディスプレイに目をやった瞬間、呼吸が止まった。エルメェス・コステロの心臓は止まっていた。
胃が奇妙なつっかえを起こし、彼女の口から情けない悲鳴が漏れ出た。シ―ラEはエルメェスの身体の上にまたがると、思いきり心臓を押した。
繰り返し、繰り返し、押した。彼女の心臓が再び動き出すまで、シ―ラEは心臓を押し続けた。
手を離して、しばらく様子を見る。一秒、二秒、三秒……。緑のディスプレイは何も写さなかった。
エルメェス・コステロはまるで死んだかのように、眠り続けた。シ―ラEは叫んだ。繰り返し、繰り返し叫んだ。
まるで眠っているエルメェスを起こそうとしているかのように。彼女は狂ったように叫んだ、心臓を押し続けた。
「戻れ、戻れ……ッ! 戻ってこい、エルメェス! 戻ってこいッッッ!」
掌に伝わる感触から必死で目を逸らす。魂が抜け出て、死ぬ瞬間にふっと軽くなる。そんな手ごたえを彼女は無視した。
だが現実は残酷だ。計器は動かない。エルメェス・コステロも動かない。
それでもシ―ラEは押し続けた。諦め切れるわけもなく、彼女は壊れた機械仕掛けのように動き続ける。

265 :
 

266 :

もういやなんだ。もう誰も失いたくないんだ。
姉を失った。姉を殺した仇を失った。復讐を教えてくれ、生きる意味を教えてくれた少年も失った。
また失うのか。まだ自分は誰かを失わなければならないのか。
エルメェス・コステロを。ロバート・E・O・スピードワゴンを。また自分は失うはめになるのか。
「クソッ クソッ クソッたれッ! 殺してたまるか……、殺してたまるかってんだよッ!」
今ここで動かなければスピードワゴンは死ぬだろう。
あの頬笑みは死を覚悟した男のものだった。長くは持つまい。どれだけ百戦錬磨の男だろうと、言葉一つで時間を稼ぐには限界がある。
戻ったところで何とかできるわけでもないことはわかっている。しかし何もしなければ、確実に、石油王ロバート・E・O・スピードワゴンは殺される。
今ここで動けばエルメェスは死ぬだろう。
心臓はとっくに止まっている。手術はいまだ終わり切ったわけではなく、辛うじて命を繋ぎとめているにすぎないのだ。
シ―ラEが手を止めればいとも簡単に、エルメェスは死ぬ。それはもうひっそりと、あっさり、簡単に。
「―――……頼むから、死なないでくれ」
それは誰にも届かぬはずの懇願だった。少女の手はほとんど止まりかけていた。
運命を絶えず切り開いてきた少女の口からか細い祈りがこぼれ落ちる。
それはギャングシ―ラEとしてでもなく、復讐者シ―ラEとしてでもない。
一体私は何をしているのだろうか。そんな無力感に苛まれる、一人の少女の悲鳴だった。
甲高い電子音がもう一度鳴り、動いていた緑の波形が沈黙する。シ―ラEの手が、徐々に勢いをなくしていく…………。
同時にエルメェス・コステロの魂が抜け出ていく。ゆっくりと、だが確実にエルメェスが死んでいく……。一人の女性が、死に瀕している……。
シ―ラEはそっと目を瞑った。目の前の現実は、今の彼女が受け入れるにはあまりに残酷すぎた。

267 :
  

268 :

その時だった。


「―――俺たちに任せろ」


どこか遠い場所からそんな声が聞こえた気がした。
あまりに唐突で、少女は背後からかけられたその言葉が本物のものには思えなかった。
振り向く間もなく、温かな腕が彼女の肩を抱く。見上げればカウボーイハットをかぶった伊達男が、笑顔を浮かべそこにいた。
救急車の後ろの扉が気がつかぬうちに開け放たれていた。乗りこんできた三人の男たちを、シ―ラEはただ呆然と見つめている。
東方仗助が力強い宣言通りに、エルメェス・コステロの治療を始める。
クレイジー・ダイヤモンド、そう呼ばれたスタンドが傷跡を撫でると、見る見る合間に傷が塞がっていく。
少女はその様子を呆気にとられ、ただ見つめることしかできなかった。
しばらくすると、再び電信音が鳴り響く。エルメェス・コステロに呼吸が戻る。
彼女の死は免れた。東方仗助は間に合い、シ―ラEは失わなかった。
「仗助くんが来たからにはもう安心だよ」
小柄な少年がそう言いながら、いつの間にかシ―ラEの隣に座っていた。
心優しい、人のよさそうな少年だった。彼の笑顔は不思議と見ている少女を安心させた。
間にあったのか。シ―ラEの震える声がそう問いかけた。
間にあったよ、そう少年は頷き、少女を労うようにギュッと手を握った。
血染めの手だったが広瀬康一は微塵も気にすることなく、何度も何度も手を握った。
少年の掌は温かかった。それを感じた時シ―ラEは、生きてるんだ、そう思った。
生きてるんだ。自分もエルメェスも無事生き延びることができたんだ。

「仲間がいるんだ……。
 一人洞窟に残って、追手を止めてるやつが………」

それは思わず零れ落ちた呟きだった。あまりに安心しきってしまったのだろう、少女の口から勝手に言葉がついて出た。
そして直後、彼女の身体をどっとした疲労が襲い、少女はまるで糸を切った人形のようにその場に倒れ込む。
遠くで何かを叫ぶ声が聞こえた。だが、瞼は重く、視界が暗い。
シ―ラEはそっと意識を手放した。
気持ちだけで支えてきた身体はゆっくりと暗闇へと沈んでいく……。そしてシ―ラEは、気を失った。



269 :
 

270 :
  

271 :
C

272 :

「畜生……、この畜生が…………ッ!」
込み上げた酸っぱい胃液を飲み込みながら、噴上裕也は毒づいた。
威勢のいい言葉とは裏腹にその口調は弱弱しく、彼は壁にもたれかかかりながら荒い呼吸を整えていた。
吐き気の波がもう一度彼を襲う。口を手で覆いながら彼は言葉にならない悪態をつく。
「鼻が人一倍効くお前には辛いだろう。無理しなくてもいいぞ、フンカミ」
「黙れ、このサイボーグ野郎! 畜生……、この畜生が…………ッ!」
屈んでいたシュトロハイムがゆっくりと立ち上がった。男は少年のほうを振り向かず、ただ黙って目の前の光景を見つめていた。
洞窟は真っ赤に染まっていた。それはもうどうやったらこれほど鮮やかに彩れるのだろうと思うぐらい、赤一色に。
壁、地面、天井までに飛んだ血痕。鼻を覆いたくなるような鉄臭い臭いが充満していた。シュトロハイムは拾い上げた身体の『一部』をじっと見つめていた。
「……無茶しよって」
それは『ロバート・E・O・スピードワゴン』だったモノ。
ロバート・E・O・スピードワゴンだったモノが、辺り一面撒き散らされていたのだ。
鮮やかな切り口で細切れにされた身体の断片。一番大きなものでもそれは容易く男の掌に収まってしまうぐらいで、生前の面影はほとんどない。
シュトロハイムは黙々と動き続けた。まるで感情を見せないロボットかのように彼は機械的に動き、数分のうちに身体の大部分を集め終える。
噴上裕也は青い顔で動けずにいた。シュトロハイムが今度は穴を掘り始めても、少年はその場から動くことができなかった。
「それでいい。それでいいんだ、フンカミ」
いつもは叫ぶように話すシュトロハイムがボソリとそう唸った。
噴上がごくりと唾を飲み込む。シュトロハイムは言葉を続けた。
「本当はお前をここに連れてくるのもよくはないとわかっていた。こんな光景をできることなら見せたくなかった」
「舐めるなよ……ガキじゃねーンだぞ、俺は」
「ガキも子供も、大人も成人も関係あるまい。こんな光景は戦場だけで十分だ」
その時唐突に、噴上裕也は目の前の男が軍人であることを思い出した。
そんなことは知っていたはずだった。口開けばゲルマン、ナチス。そんな男が軍人以外の何物でもあるわけがなかった。
だが言葉の背後に広がるほの暗さを嗅ぎ取り、噴上は改めて、心で、そして魂で認識したのだ。
ルドル・フォン・シュトロハイムという男のことを。彼の背中から漂う、血なまぐさい臭いを。
そんな男の背中に、噴上裕也はかける言葉が見当たらなかった。

273 :

出来上がったスピードワゴンの墓はあまりに素っ気ないものだった。
きっと言われなければ誰もが見落としてしまうに違いない。言われたところで盛られた土があるだけで、きっと誰もがそれを墓だとは思わないだろう。
一時代を築いた石油王にしてはあまりに寂しく、物悲しい、墓だった。
シュトロハイムはしばらくの間、そんな墓の前に立ち続けていた。右腕をピンと伸ばした敬礼のポーズのまま、男はしばらくの間その場に立ちつくしていた。

「戻ろう、皆が待っている」

十数秒の沈黙の後、シュトロハイムはくるりとその場で振り返り、洞窟の入り口にいる噴上に声をかける。
男はそれっきり背後を振り向かなかった。少年を引き連れ、辺りを警戒しながら、シュトロハイムは仲間が待つ場所へと帰っていく。
誇り高き軍人はリベンジを誓った。亡き石油王のためにも、因縁の相手との決着は必ずやつけなければならない!

「カーズ……!」

男の憎々しげなその呟きに、少年はなんと返せばいいかわからなかった。
噴上裕也は黙って聞こえないふりをし、何も言わずに先を行く男に追い付こうと、ほんの少しだけ足を速めた。



【B-4 古代環状列石(地上)/一日目 朝】

【チーム名:HEROES+】
【ルドル・フォン・シュトロハイム】
[スタンド]:なし
[時間軸]:JOJOとカーズの戦いの助太刀に向かっている最中
[状態]:健康
[装備]:ゲルマン民族の最高知能の結晶にして誇りである肉体
[道具]:基本支給品、ドルドのライフル(5/5、予備弾薬20発)
[思考・状況]
基本行動方針:バトル・ロワイアルの破壊。
0.仲間の元へと戻り、改めて作戦を練る。今後の行動方針を決定する。
1.各施設を回り、協力者を集める?
【東方仗助】
[スタンド]: 『クレイジー・ダイヤモンド』
[時間軸]:JC47巻、第4部終了後
[状態]:左前腕貫通傷、深い悲しみ
[装備]:ナイフ一本
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに乗る気はない。このゲームをぶっ潰す!
0.二人の女性が目が覚ますまで救急車で待機。仲間が帰ってきたら今後の行動方針を決定する。
1.各施設を回り、協力者を集める?
2.リンゴォの今後に期待。
3.承太郎さんと……身内(?)の二人が死んだのか?
[備考]
クレイジー・ダイヤモンドには制限がかかっています。
接触、即治療完了と言う形でなく、触れれば傷は塞がるけど完全に治すには仗助が触れ続けないといけません。
足や腕はすぐつながるけど、すぐに動かせるわけでもなく最初は痛みとつっかえを感じます。時間をおけば違和感はなくなります。
骨折等も治りますが、痛みますし、違和感を感じます。ですが“凄み”でどうともなります。
また疲労と痛みは回復しません。治療スピードは仗助の気合次第で変わります。

274 :

【広瀬康一】
[スタンド]:『エコーズ act1』 → 『エコーズ act2』
[時間軸]:コミックス31巻終了時
[状態]:左腕ダメージ(小)、右足に痛みとつっかえ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない。
0.二人の女性が目が覚ますまで救急車で待機。仲間が帰ってきたら今後の行動方針を決定する。
1.各施設を回り、協力者を集める?
【噴上裕也】
[スタンド]:『ハイウェイ・スター』
[時間軸]:四部終了後
[状態]:全身ダメージ(小)、疲労(小)
[装備]:トンプソン機関銃(残弾数 90%)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:生きて杜王町に帰るため、打倒主催を目指す。
0.仲間の元へと戻り、改めて作戦を練る。今後の行動方針を決定する。
1.各施設を回り、協力者を集める?
【エルメェス・コステロ】
[スタンド]:『キッス』
[時間軸]:スポーツ・マックス戦直前。
[状態]:フルボッコ、気絶中、治療中
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況] 基本行動方針:殺し合いには乗らない。
0.気絶中
1.徐倫、F・F、姉ちゃん……ごめん。
【マウンテン・ティム】
[スタンド]:『オー! ロンサム・ミ―』
[時間軸]:ブラックモアに『上』に立たれた直後
[状態]:全身ダメージ(中)、体力消耗(大)
[装備]:ポコロコの投げ縄、琢馬の投げナイフ×2本、ローパーのチェーンソー
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに乗る気、一切なし。打倒主催者。
0.二人の女性が目が覚ますまで救急車で待機。仲間が帰ってきたら今後の行動方針を決定する。
1.各施設を回り、協力者を集める。

275 :

【シーラE】
[スタンド]:『ヴードゥー・チャイルド』
[時間軸]:開始前、ボスとしてのジョルノと対面後
[状態]:全身打撲、左肩に重度の火傷傷、肉体的疲労(大)、精神的疲労(大)
[装備]:ナランチャの飛び出しナイフ
[道具]:基本支給品一式×3、ランダム支給品1〜2(確認済み/武器ではない/シ―ラEのもの)
[思考・状況]
基本行動方針:ジョルノ様の仇を討つ
0.気絶中
[備考]
参加者の中で直接の面識があるのは、暗殺チーム、ミスタ、ムーロロです。
元親衛隊所属なので、フーゴ含む護衛チームや他の5部メンバーの知識はあるかもしれません。
ジョージU世とSPWの基本支給品を回収しました。SPWのランダム支給品はドノヴァンのマントのみでした。
放送を片手間に聞いたので、把握があいまいです。



276 :
放り投げた首輪を投げ、そして落ちてきたところをまた掴む。
考え事をしながら無意識のうちに、カーズは繰り返し、繰り返し、首輪を投げては掴み、投げては掴んでいた。
ふとその首輪を見つめていると、その持ち主との会話を思いだした。
未だ血が残る銀の輪を見つめ、しばしカーズは記憶の中の会話に浸る。

『もう一度だけチャンスをやろう、人間……貴様が持っている情報を洗いざらい吐け。
 そうすればせめて痛みを感じぬように、このカーズが丁重にあの世へと葬ってやる……』
『…………何度聞かれようと私の答えは変わらない。その問いに対する答えは、NOだ。』
『ほゥ……』
―― ザクッ……!
『―――ッ!』
『意地を張らずに素直に従えばいいものを……。さて、貴様がどこまで耐えることができるか、これは見ものだなァ』
『……何度でも言ってやろう、私の答えは変わらない。私から情報を聞き出そうというのなら、それは無駄なことだ。もっとその時間を有意義なことに使うがいいさ』
『……人間風情が舐めた口をきくようだな。だがそう言われると、このカーズ、ますます口を割らせたくなるものよ!
どれ、お手並み拝見と行こうではないか……!』

結果的には情報は手に入らなかった。人間一人に気を取られたあまりに、カーズはその仲間をみすみす見逃したことになる。
自分らしくもない失態だった、彼は一人そう反省する。
男があまりに堂々としていたので何か策でもあるのではないかと無駄に勘ぐってしまったのだ。安い挑発にまんまと引っ掛かり、思惑通りに事を運ばれてしまった。
加えて先の異形の怪物、自分を尾行していた謎の生命。ここにはカーズの知らぬ“何か”がいたるところにいる。
その事実がただでさえ慎重なカーズを、より慎重にさせてしまったのだ。男がただのはったりかましていると気付いた時には、時既に遅かった。
「……ふん」
結果だけ見れば、これはカーズにとっての『敗北』になるだろう。
この男の目的は仲間を逃がすことであり、そしてその目的は達成されてしまったわけだ。
目論見通り二人の人間は無事逃げのび、このカーズは無様にも足止めを喰らった。
「だが…………」
カーズは別段気にすることなく、彼の関心はすでに首輪へと移っていた。
手元のサンプルが二つに増えたことでまがいなりにも実験らしきものをする環境は整っている。
支給品とやらでカーズに配られたものが大工具用品一式であったことも幸いした。今いる場所も洞窟の奥で邪魔が入ることもなさそうだ。
その一方で、別段焦ることでもないとも思っている。
サンプルだって人の数だけいるのだ。それこそ5個、10個の首輪を集めてから本腰入れて取りかかるのも一つの手だ。
一度始めたらそれなりに時間を取られるのは確かなのだ。ならばもっと万全の態勢を整えてから取りかかっても決してそれは遅くないだろう。
ふわり、ふわり。首輪が舞う。
器用なもので、カーズは二つの首輪を同時に放りながら、歩みを止めず、考えることもやめなかった。
柱の男は思考を続ける。実験に取り掛かるか。この地下洞窟の探索を続けるか。
カーズにとっては当たり前のことだったが、ついに彼は今殺した男の名を知らぬことに気がつかなかった。
当然だ。カーズにとって人間は食料の食料にすぎず、虫けらよりも価値のないものなのだから。
柱の男がすすんでいく。ひたひたと足音をたてながら、男は洞窟の暗闇へと姿を消していった……。

277 :


                                 to be continue......

【B-5 中央(地下)/ 1日目 早朝】
【カーズ】
[能力]:『光の流法』
[時間軸]:二千年の眠りから目覚めた直後
[状態]:健康
[装備]:服一式、工具用品一式
[道具]:基本支給品×2、サヴェージガーデン一匹、首輪(億泰、SPW)
ランダム支給品0〜3(億泰のもの 1〜2/カーズのもの 0〜1)
[思考・状況]
基本行動方針:柱の男と合流し、殺し合いの舞台から帰還。究極の生命となる。
0.首輪解析に取り掛かるべきか、洞窟探索を続けるか。
1.柱の男と合流。
2.エイジャの赤石の行方について調べる。



以上です。誤字脱字、矛盾点ありましたら指摘ください。
今回はけっこう苦戦したので荒があるかもしれません。
丁寧に見てもらえたら嬉しいです。とくに仗助とシ―ラEのキャラとか。
あと、仗助の制限に関しても、なんかあったら意見ください。

278 :
投下乙です。
シュトロハイムはやっぱりうるせえですな!
「ボリュームコントローラ壊れてんぞ」また噴上の名言が増えてしまった。投票に使えないのが残念ですw
スピードワゴンがかっこよかった。そしてエルメェス、助かってよかった……
仗助、エルメェス、シュトロハイムってのは1stでもあった組み合わせですね。3rdでまた見られるようになるとは……
ここからは指摘
スピードワゴンの死亡表記がありません。
タイトルがありません。

279 :
投下乙!
ボリュームコントローラww
軍人設定が活きているシュトロハイムが格好いいぜ!

280 :
遅ればせながら乙です
スピードワゴンさんが格好良すぎるぜ…
シュトロハイムの「軍人」っぷりが渋い
そういや救急車に来たのがティム、仗助、康一の3人ってことは
シュトロハイム達はまっすぐ洞窟へ向かった(シーラEの言う「残っている仲間」の存在を知らない)ことになるのかな
簡素ながら丁重に埋葬して敬礼までしたってことは「哀れな犠牲者」ではなく「仲間を逃がそうと残った」と聞いていたか
欠片からでもそれがスピードだと察したか
(この手口はカーズだってのも現場状況から推測したのか)

281 :
なんだろーなー
なかなかピーンと来ない
新作書きたいのに、どーも書けない
まいったね・・・

282 :
投下します

283 :
「……よかった」
静寂が訪れた後、エリナ・ジョースターはほっと息を吐き、そう言った。
そしてそう言い終わった後に自分でも何にホッとしたのかわからず、首をかしげた。
洞窟内に反響した数々の名前。その中で夫の名前が呼ばれなかった事は彼女にもわかった。
けれども夫の名前が呼ばれなかったからと言って、一体何を安心することがあるのだろうか……?
「―――……あ、頭が」
「エリナッ!」
答えはわからなかった。だがその事を考えていると突然鋭い痛みを頭に感じ、彼女は思わずよろめいた。
青い顔で立ちつくしていた男は慌てて彼女の体を受け止める。
うろたえた様子で彼は妻の名前を呼び、頬を撫でる。彼女は弱弱しく微笑むと、そんな男に向かって笑いかけた。
大丈夫、何でもないの。ただ少しめまいがしただけ。
少しでも心配かけまいと彼女はそう強がった。
しかしその強がりは容易に見透かされたようだ。地上まではもう少しのとこだったが、大事を取って休みを取ろうと男は提案した。
手ごろなサイズの石を見つけると、彼はエリナを優しく導き、その上に座らせてやった。
背負っていたデイパックから透明な水筒を取りだすと彼女に向かって恭しく差し出す。
少しばかりに自分が情けなく、また男の優しさが大袈裟な気がして、エリナは困ったように笑った。
だが決して嫌ではなかった。『ジョナサン・ジョースター』のそんな優しさを、彼女は何よりも愛していた。
「ありがとう、『ジョナサン』」
彼女がそう言うと、男はぎこちなく笑う。
そのことに少しだけ違和感を覚えたが、そのことを考えるとまた頭痛がひどくなりそうな気がしてエリナは考えるのをやめた。
喉を潤し、呼吸を整える。夫にも休憩を取るように薦め、彼女は席を譲るように立ちあがった。
全然疲れてないよ。僕は平気さ。
そう言う夫を半ば強引に座らせ、それでも強情を張ろうとするので、終いには拗ねた振りを使ってまでエリナはなんとかして夫に休息を取らせようとした。
困ったような表情を浮かべる『ジョナサン』。それでも夫にニッコリ笑いかけてやると、彼も観念したように笑い、そして隣に座った。
エリナは笑った。夫に身体を預け、その体温を感じながら彼女は和らかな笑みを浮かべた。
自分は何故こんな暗い洞窟を歩いているのだろうか。
未だ記憶はあやふやだし、どこに向かい、そして今ここがどこなのかすらわからない。
だが隣にはこの世で一番愛する夫がいる。この世で一番頼りになる男がいる。
それだけわかっていれば他に何が必要だろうか。『ジョナサン』がいるならばどこにだって行ける気がした。
なぜなら彼女は『ジョナサン・ジョースター』の妻なのだ。夫に寄り添い、夫を支える。それが妻としての役目だろう。
ならばここが例え真っ暗闇の洞窟であろうと。大船眠る海の中であろうと。私は歩いて行ける。どこにだって行ける。
それこそ、この行く先が地獄の釜の中だとしても。
「私は幸せです。夫とともに生き、そして死ぬ。私はそれだけで幸せなのです……」
エリナはそっと目を瞑り、囁くようにそう言った。
男の体に緊張が走る。目を開いて見上げれば、彼の顔は強張っていた。
エリナは不思議そうに首をかしげた。何か間違ったことでも言っただろうか。夫婦の愛を言葉にしただけなのに、彼は石のように固まっていた。
今さら照れ隠してでもするような関係ではあるまい。一体どうしたのだろう。不審に思ったエリナが声をかけようとした、次の瞬間。
猛獣の唸り声のような響き、そして風を切る物音。
男がエリナを突き飛ばすのと同時に、一人の影が…… ――― 突如として、二人に襲いかかってきた!


284 :


「『ジョナサン』ッ!」
狭い洞窟内、幾つにも増幅されたエリナの声が男の鼓膜を揺さぶった。
途端、脳裏に走る鋭い痛み。だがそんなことに気を取られてはいられなかった。
気をとられて戦えるほど、やわな相手でなかった。
右から横薙ぎで迫る鉄槌を海老反りのような形で間一髪、かわす。
反撃に出ようとするも闇に目が慣れてないのもあり、ジョセフの初動が遅れる。
再び迫る鉄鎚。カウンターは間に合わない。青年は無理せず撤退を選択した。とりあえずは相手を見極めなければうまく戦うことすらできやしない。
狭い洞窟、壁を上手く利用していく波紋戦士。ジョセフは大きく跳ね、壁を蹴り、器用に相手を飛び越えた。
固い地面を転がりながら、勢いを殺し、ようやく一息つくジョセフ・ジョースター。遠く離れたところでエリナがほっと安堵の声を漏らすのが聞こえた。

互いに間合いを伺う微かな時間。相手は動かず、ジョセフも動かず。その時間を利用して彼は闇に浮かんだ男の顔に目を凝らす。
見知らぬ相手であった。顔をあげてみれば目の前に立つ男は憎悪のこもった眼差しで自分を睨みつけている。
だというのに彼が誰であるのか、ジョセフには全く心当たりがなかった。

(……いや、違う)

ジョセフは唇を噛み、危うく口から飛び出るところだった言葉を押しとどめる。
アンタ、まさかお爺ちゃんの知り合いなのか。まさかアンタ“も”俺のことを『ジョナサン・ジョースター』と勘違いしてるのか。
そう問いかけてやりたい衝動をジョセフは堪えた。そう問い質してやりたかったが、彼は口をつぐんだ。
そうするわけにはいかない。少し離れたところで立ちすくむ祖母の前で、そんな言葉は口が裂けても言うわけにはいかない。
ジョセフの身体をどっとした疲れが襲う。盛大にため息を吐きたい衝動をなんとか我慢した。
本日何度目になるかわからない、言葉にならない怒りのような悲しみのような感情。
或いはそれは苛立ちだったのかもしれない。虚しさだったのかもしれない。
ジョセフにとって騙すという行為は得意技だ。嘘をつくなんてことも日常茶飯事だ。
だが決して! 決して祖母の前だけでは! 彼は嘘をつかず、自分を偽らず、いつだって素直な孫であり続けてきた。
それを許さなかったのは他でもない、エリナ・ジョースターだったのだから。

285 :


もう考えるのはよそう。頭をよぎるいくつもの雑音。身体をがんじがらめに捕える数々の言葉。
ジョセフの苦悩は色濃かった。迷いに膝をつきそうになるほどに、青年は抱えきれないほど多くの物を背負わされていた。
波紋の呼吸を思い出せ。ジョセフはゆっくり、大きく息を吐く。心に平静を取り戻せ。
独特の呼吸音を聞いて対面の男の顔が大きく歪んだ。
構えなおした鉄鎚が妖しく光る。勘違いしているならばそのままでいい。どちらにしろ、戦いは避けられない。

(おばあちゃんを傷つけさせるわけには……いかねーぜッ)

波紋疾走! 鋭い一撃、拳にのせて打ち放つッ!
敵を捕えることはできなかったが、ジョセフはそのまま立て続けに拳を、そして蹴りを繰り出していった!
対峙する戦士は器用にかわしつつも、隙のない攻撃に、まずは防戦一方だ。
何重にも張り巡らされた拳の嵐、なんとかすり抜け、黒騎士ブラフォードは吐き捨てるように彼の名を呼んだ。

「『ジョナサン』……ジョースターッ!」
「……ッ」

ジョセフの心が、鋭いナイフで抉られたように痛んだ。
それを誤魔化すかのように、彼はもう一度拳を振るった。

286 :


拳がとび、鉄鎚が地面を窪ませ、戦いは激しさを増していく。
数度の交戦。ジョセフの蹴りをブラフォードは辛うじて受け止め、そして彼は反撃に打って出る。
振り下ろされた鉄槌、ジョセフがそれをさけたところで横からブラフォードの髪が束になって襲いかかった。
青年は驚愕に一瞬足が止まり、危うくのところで拘束から逃れる。
なんとかして避けることができた。しかし一度つかまってしまったらそこでおしまいだろう。
暗闇に妖しく光る鉄鎚。人間を超える怪力を持つ吸血鬼、屍生人。
その馬鹿力で一撃でも叩きこまれたならば? 生身の身体では生きていられないだろう。
更なる追撃を抑え込むように、ジョセフは拳を打ち放つ。ブラフォードは巨体に見合わない華麗なステップでその攻撃をかわした。
そう、ジョセフは気がついていた。
戦いの最中にでもわかるほどにブラフォードの身体は傷だらけのボロボロ。そのくせ血が一切流れ出ていなかった。
彼が人間ならざるもので憎しみの果てに彼が再び生き返ったことは、なによりも醜く歪んだ顔がそれを物語っていた。
吸血鬼。それがわかった時、ジョセフの脳裏に先の女性が思い浮かんだ。
彼は無理矢理戦いに集中した。手に焼きついた感触を打ち消そうと、何度も何度も拳を振るう。
だが、ジョセフの拳がブラフォードを捕えることはできなかった。

「『ジョナサン』……!」

後ろで心配そうに見守る女性がそう言った。
もうその名前で呼ぶのはやめてくれ。エリナの叫びは甲高くヒステリックで、洞窟内では尚よく響いた。
『ジョナサン』……そうだ、祖父の名は『ジョナサン』だ。おばあちゃんによく話を聞いた。
彼女は祖父の話をするのが好きだったからよく覚えている。自慢の夫です、決まって彼女はそう話を締めくくっていた。
父は? あまり覚えていない。自分が物心つく前に空軍事故で亡くなったと聞いている。
ただ話を聞く限りでは心優しく、とても明るい人だったようだ。
息子のことを多くは語らないが、彼女は彼の名を呼ぶ時、必ず優しそうな顔をしていたので覚えている。
そう、『ジョージ』とその名を呼ぶ時には。

287 :
 

288 :
「KAAAAAAAAAA!」
「……ッ! 波紋、疾走!」

ブラフォードが攻める時間が増えていく。苦しい状況が続いた。
その度にエリナは心配そうに夫の名を呼び、ジョセフは身を切り裂かれるような思いで、大丈夫だと叫び返した。
内心では戦士の鉄鎚よりも深く、彼女の言葉が心を切り裂いていた。心配してくれているからこそ、尚更辛かった。
ジョセフは苦し紛れに波紋を流し込む。身体を捕えていた髪は焼き切ったものの、本体までには届かない。
ブラフォードは一向に手を休めない。鉄鎚が何度目になるかわからない跡を大地に残し、また振り上げられる。そして、また。
危ない場面を何度か迎えながら、次第にジョセフの意識が薄れていく。吸血鬼も女性の叫びも、どこか遠くの世界のように現実感がなくなっていた。

“ジョージ・ジョースターT世”“ジョージ・ジョースターU世”

聞き逃さなかった。仮に聞き逃したとしても、名簿にはちゃんとその名前が刻まれていた。
それが本当のものであることを確かめるために、ジョセフはその部分を何度もなぞったのだ。
間違いない、その名前は確かに記されていた。
エリナ・ジョースターに配られた名簿にも載っていた。二人は実在する人物だ。いや、少なくとも『6時間前』までは実在『していた』。

(ジョージ……?)

定かではない。だが曾祖父の名もジョージだった気がする。いや、別人だとしたらできすぎだろう。
ならば『それ』は『そう』なのだろう。二人のジョージはジョセフのご先祖だ。自分に生を託し、死んだはずの人間だ。

(……じゃあ、放送で呼ばれたのは誰なんだ?)

死んだはずの人間が生き返るわけがない。実は死んでいなかったのだろうか。まさかそんなことがあるはずがない。
それに生きていたとしたならば、曾祖父は100数歳になっているはずだ。馬鹿馬鹿しい、そんなことがあってなるものか。
曾祖父は化け物かなんだろうか。死なない身体、年老いない人間なんぞいるはずがなかろう。

(まさか、波紋戦士?)

そうであったならばどれだけいいだろう。ジョセフはそう思った。
それならばまだあり得る話だ。リサリサを見ろ、あれで50なのだ。ならば波紋戦士が100を超えて生きていてもおかしくはないかもしれない。
だが同時に、ジワリと暗闇が迫るように、ジョセフは一つの可能性を思いついていた。
目をそむけたくなるような現実が何故だか不思議とジョセフを捕えて離さなかった。
……そう、吸血鬼。闇に生きる生物もまた、年老いることなく生き永らえるのだ。それこそ、数十年も。もしかしたら数百年も。

289 :


「…………ッ!」

戦いは続いていた。だがジョセフはいまやそれどころではなかった。
間一髪の時が何度立て続けに彼を襲おうと、祖母の悲鳴がどれだけこだましようと。
ジョセフ・ジョースターの心がゆっくりと揺れ動きだした。ゆらり、ゆらりと。
それはまるで死に誘うように。

(……吸血鬼?)

いや、待て。問題はそこじゃない。正直どうでもいい。今は、それは考えなくていい問題だ。
いや、考えなければならない問題だがもっと大切な事を見落としている気がする。
それはきっと考えなくていいことなのだろう。ジョセフは本能的にそう悟る。だが彼は考えずにはいられなかった。
そんな重大な欠陥が、この理論、状況から見落とされている気がする。そう彼は思った。
考えろ、ジョセフ・ジョースター。思いだすんだ、一族のことを。記憶を掘り起こせ。お婆ちゃんとの会話を思いだせ。

(……エリナ、おばあちゃん?)

そうだ、“エリナ・ジョースター”の存在だ。
そもそも彼がこんな目にあっているのは他でもない、おばあちゃんの存在だ。
おばあちゃんのはずのエリナ・ジョースターが若くなって彼の眼の前に存在している。
波紋戦士が逆立ちしても思いつかない、そんな性質の悪い冗談みたいな現実が、ことの発端で間違いないはずだ。
嘘をついてる? 実は別人? いいや、ジョセフはそれを否定する。
彼は騙されない。いつも騙す側にいる彼は人一倍嘘や偽りに敏感だ。
あれは嘘をついてる顔じゃない。そして彼をはめようとしてるわけでもない。
彼女は白だ。少なくとも嘘はついてない。
心の底から自分のことをエリナ・ジョースターと信じ、誰よりも夫、『ジョナサン・ジョースター』の身を案じている。
誠実で慈愛に満ち、優しく偉大な女性。
それは彼女がエリナ・ジョースターである以外にない。それはもう、確実だ。

――― 「『ジョナサン』!」

けど……ならば、だとしたならば。
エリナ・ジョースターのおなかの中にいる“彼”は、一体誰なんだ。
おばちゃんの子はジョセフの父親だ。だけどおばあちゃんはおばあちゃんじゃない。
そして彼女は波紋使いじゃなければ、吸血鬼でもない。
例えお婆ちゃんが若返ったとしても、何かのはずみでこんな姿になっていたとしても……。
説明がつかない。祖母の後に父が生まれ、父の後に自分が生まれる。順番が入れ替わることなんてあり得るはずがない。

290 :
――――――「『ジョナサン』ッ!」

ジョナサン? 『ジョナサン』?
俺は……ジョセフ・ジョースターだ。イギリス生まれ、ニューヨーク育ち。
彼女は、今はいない。昔は沢山いたが、今はいない。代わりにと言っちゃ変だが、とにかく妻がいる。
スージQ、イタリア人の妻。抜けてるところもあるが、まぁ悪くないヤツだ。
肉親はいない。一緒に暮らしている家族は一人だけ、祖母のエリナ・ジョースター。
優しくて強くて頼りがいのあるおばあちゃんだ。俺の唯一の家族、とても大切に思ってる。
そうだ、間違いない。俺は『ジョセフ・ジョースター』。俺は誰でもない、正真正銘の……

――――――――― 「『ジョナサン』ッッッ!!!」
(……『ジョナサン』?)

放送で読み上げられた名前が唐突に、彼の頭を横切っていった。
鼓膜に焼きついていたかのように、名簿に見つけた二人の名前が目の前に浮かんだ。
『ジョージ・ジョースターT世』
『ジョージ・ジョースターU世』
『ジョナサン・ジョースター』
『ジョセフ・ジョースター』

知らず知らずのうちに、言葉が口より零れ落ちる。

 「『ジョナサン……ジョー、スター』?」

そして混乱の果てに、『彼』は思った。
 
 (俺は、いったい、誰なんだ……―――?)

直後、青年がぬかるんだ地面に足を取られた。あ、と叫ぶと同時に視界の端で鉄槌が振り上げられる。
そこからはまるでコマ割り映画のようだった。
迫る凶器。どうしようもできない身体。立て直しの効かない状況。鈍く光った鉄鎚。

そして数瞬。
『ジョセフ・ジョースター』は背中に強い衝撃を感じた。そして地面に強く叩きつけられる。
目の前の光景が信じられなかった。自分の身に起きたことが信じられなかった。
全てがまるで夢の中の出来事だったかのようで、痛みすら感じなかった。

291 :






エリナ・ジョースターが彼を突き飛ばした。容赦ない鉄槌が彼女の体を捕えた。


狭い洞窟内に、グシャリ、と耳を覆いたくなるような、鈍い打撃音がこだました。
ジョセフ・ジョースターの絶叫が、地獄まで轟くように、暗闇を切り裂いた。




292 :
湿った砂を踏みしめる音が聞こえてきた。エリナの血をたっぷり吸いこんだ、真っ赤な砂。
ジョセフは振り返らなかった。
そんなことを気にかけていられる余裕が今の彼にはなかった。ジョセフ・ジョースターは祖母を抱きしめ、繰り返し、繰り返し彼女の名を呼んだ。
祖母の頬を撫で、名前を呼ぶ。逆の腕で傷口に波紋を宛がい、必死の治療を続ける。ジョセフもまた血みどろだった。
じわり……と広がる血の池。出血が止まらない。このままではマズイことになる。このままいけば、エリナ・ジョースターは死んでしまう。
はらはらと流れ落ちた涙が女性の頬を濡らす。ジョセフは泣いていた。ジョセフの涙が降りかかっても、エリナ・ジョースターの瞳は固く閉じられたままだった。
ジョセフは、祖母の名前を呼び続けた。それでも彼は名前を呼んだ。

黒騎士ブラフォードは既に撤退済みだ。鉄槌をエリナに叩きこんだ時にできた隙、そこにジョセフは渾身の波紋を込めた一撃をぶちかました。
身体を焼く炎のような感触に男は怒り吠えた。屍生人である彼にとってその一撃は確かな痛手となったのだ。
最後に憎々しげにジョセフを睨みつけると、彼は闇へと姿を消した。それ以上戦えばタダじゃ済まないことを黒騎士は悟ったのだろう。
結局彼は最初から最後までジョセフのことをジョナサンと誤解したままだった。

足音が確かなものとなって、ジョセフの鼓膜を震わせた。
次第に大きくなっていく音、無視できないほどに近づいてくる。
それでもジョセフは無視した。無視せざるを得なかった。
それほどまでに近づいているとわかっていても、今の彼には他に為すべき事があったのだから。
狭い洞窟、うるさいと思えるほどにジョセフの声がこだまする。
その声にこたえるかのように、エリナ・ジョースターが意識を取り戻した。たっぷり一分と時間をかけて、彼女はゆっくりと眼を見開いた。
まるでそうすることにすらエネルギーを振り絞らなければいけないと言わんばかりに。
男の腕に抱かれてまま、女性がそっと腕をあげる。涙が滴る夫の顔を、彼女は優しく撫でてやった。

「エリナ……! エリナ……!」
「……泣か、ないで。泣いちゃ、だめ……。わた、しは ――― 貴方が無事で、本当に良かった……。貴方が助かって、本当に―――」
「エリナ、僕は ――― 僕は…………!」
「大丈、夫、きっと ――― 大丈夫だから……わた、しは……大、丈夫だから……」
「……駄目だ、エリナッ! エリナ、駄目だ、駄目だ、駄目だ! 死ぬな……死んじゃ、駄目だ、エリナッッッ!」

腕の中で女性が少しずつ軽くなっていくような気がした。ジョセフは必死で波紋を流し込む。少しでも彼女を助けようと、虚しい努力を繰り返す。
信じたくなかった。考えたくなかった。死が、恐怖が、ジョセフを蝕んでいた。
こんなはずじゃなかったはずなのに。こんなこと、思ってもみなかったのに。
自分のせいで祖母が死んでしまうだなんて、そんなこと、絶対に嫌だ。そんなことがあってたまるか。そんなことがあっていいものか。
どんなことがあっても絶対に守ってやるって、誓ったはずだった。
唯一の肉親だ。たった一人の家族なのだ。
今までどれだけ迷惑かけたと思っているんだ。どれほど心配させ、どれほど祖母の気持ちを揉ませたと思ってるんだ。
今度は自分が守ってやらなければ。今度は自分が守られてきた分、守ってやらねばと思ってたはずなのに。
必死で耐えてきた。偽るのは辛かった。騙すのは心痛んだ。
だけどそれもこれも、全ては祖母のためだった。祖母のためだったというはずなのに!

293 :


「なんで……」

ジョセフの声が震えた。波紋を流し続ける両手が真っ赤に染まり、手のひらに伝わる感触が生々しい。途端、まざまざと蘇った記憶に今の光景が重なった。
そう、数時間前に彼が波紋を流し、一人の女性を殺した時のような。
命がその手を滑り落ち、二度と返ってこないような。ゾンビの最後の生命力が塵となっていく光景に、今のエリナが重なった。
呼吸が乱れる。心臓が高鳴る。ジョセフはエリナ・ジョースターの顔を見た。女性の顔は死人のように真っ青で、生気が全く感じられなかった。
青年の息が止まり、彼は何も考えられなくなる。目の前の光景が急速に薄れていった。女性の呼吸が止まっていた。
エリナ・ジョースターの心臓が、止まっていた。

「 ――― ジョセフ・ジョースターだな?」

―― その時だった。突如、声が聞こえてきた。
青年の大きな肩に手が置かれる。乾いた、がらんどうのような声が、止まりかけたジョセフの思考を揺さぶった。
黒い山高帽子をかぶり、薄いナイフのような目つきをする男がそこいた。身体はそこまで大きくない。
警戒心の高い、成長しすぎたトカゲのような、そんな気配を感じさせる男がジョセフの傍らに立っていた。
カンノーロ・ムーロロは女性の意識がないことをもう一度確かめると、ジョセフの腕から半ば奪い取るようにして、エリナの身を地面に下ろした。
優しくはないが、かといって乱雑に扱うわけでもない。引っ越し業者が高級品の家具を取り扱っているかのような態度だった。
頬を何度か叩き意識を確かめる。瞼をこじ開け、じっくりと眼球の様子を伺う。心臓の鼓動を、手首の脈を。手慣れた感じで男は淡々と調べを進めた。
ジョセフは何もできずに、呆然としたままその様子を見つめていた。目の前の光景に、現実感が湧かなかった。
時間にして1分もかからなかった。
全ての点検を終え、ムーロロはエリナを地面にそっと置きなおした。そうして服についた砂を払い落す。
山高帽子の位置を直し、軽く咳払い。ジョセフは何も言わない。彼が何も言わないのでムーロロはもう一度咳払いした。
青年の眼が焦点を取り戻すまで、男はじっと辛抱強く待っていた。そして話が聞ける状態になったのを待って男は口を開いた。
ジョセフ・ジョースターだな。
もう一度、そう念を押すように言った。ジョセフは頷く。
ムーロロは何も言わなかった。彼は確認に納得がいったのか、小さくうなずき、そうかと独りつぶやいた。
懐をごそごそとまさぐり、男はトランプのカードを取りだす。
状況がいまいち飲み込めていないジョセフに気をはらうことなく、彼はカードを操る手をすすめた。
説明する気がないのか。今はその時ではないのか。カンノーロ・ムーロロは無言のままにシャッフルを続けた。

294 :

「アンタはその女を助けたいのか?」
ジョセフ以外にこの場にいない以上、それは確実に彼に向けられた言葉だろう。
だがムーロロの視線は虚空に向けられ、まるでジョセフ何ぞいないかのような態度だった。青年はそんな様子に、曖昧に頷くしかなかった。
助けたいにきまってる。助けられるならどれほどいいだろう。ジョセフはそう思った。だが願いとは裏腹に、彼はわかっていた。わかってしまっていた。

だけど、もう駄目だ。もう……間にあわないんだ。
おばあちゃんの身体はもうゆっくりと死んでいくだけだ。波紋は万能の力じゃない。波紋は生命力。
なら死にかけのおばあちゃんは……もう、間にあわないんだッ!

「―――選べ」

俯いた彼に突きつけられる、三枚のトランプカード。
クローバーのジャック、スペードのエース、そしてハートのキング。
陽気で奇妙な絵柄が彼を見返していた。見間違いでないならば、その絵柄は彼に向って一様に笑いかけ、手を振り、そして自分を選ぶように声をあげた。
ジョセフはなにがなんだかわからぬまま、ムーロロを見上げる。ムーロロは何も言わずにジョセフを見下ろす。
膝突く青年に黙って待つ男。沈黙の後に説明が必要だとわかると、ムーロロは乾いた声でこう付け加えた。

「選べ。カードは三枚、全部がJOKER、その上アンタは俺に大きな借りを作ることになる。
 だけどアンタは選んだんだ。なら選ぶしかない。選ぶ覚悟がないなら、その女がこのまま死ぬだけだ」

そして男は説明を続けた。エリナ・ジョースターを助けるための手段を。
サッと手が動くと魔法のように三枚のカードが一枚になった。クローバーのジャックがジョセフの前で陽気に踊る。

「一つ。アンタから見たら息子にあたる男に助けを借りる。
 スタンドと言う特殊な能力をソイツは持っていて、助けを借りれば確実とは言わないが高確率で死なずに済む。
 ただ今言った通り、ソイツはアンタの息子だ。“今”のアンタと見かけは同じぐらいの年。
 つまり祖母に抱いた通りの感情を、アンタの息子は抱く羽目になるかもしれない。抱かないかもしれない。俺にはわからない。
 その上二人の怪我人を抱えていて、今にでも移動する可能性もある。リスクは高く、後の面倒も多い」

最後の言葉を言い終わらないうちに、男の手がまたも素早く動く。
カードが風を切り、そして気がつけばそれは次の一枚に早変わり。スペードのエースがくるりと一回転、そして深々と礼をした。

295 :
「二つ。アンタから見た血縁上、叔父にあたる男に助けを求める。
 少年と言ってもいいぐらい若いが、確かな能力を持っている。頭も回る、度胸もある。冷静な判断力も魅力だ。
 ただその少年も前者と同じように怪我人を抱えている。そいつは他でもない、アンタの母親だ。
 面倒な事に変わりはない。だが話がこじれれば、もしかすれば治療を断られるかもしれない、断られないかもしれない。俺にはわからない。
 ちなみに彼は待ち人と約束を交わしている。つまり移動制限あり、おまけにタイムリミットつきだ」

言葉の意味がようやく飲み込めてきた。ジョセフの光宿さない眼が、徐々に輝きを取り戻す。
俯いていた彼が顔上げ、信じられないような表情でムーロロを見つめる。男は何も変わらず、代わりに手の中のカードが入れ替わった。

「そして、三つめ」

ハートのキングが狭い掌の上で踏ん反り返り、ジョセフの顔を面白そうに眺めていた。

「スタンドと言う能力、アンタは信じられないかもしれない。突然超能力で治療するなんて言われればそう思うのもわかる。
 誰だって信用ならないと思うだろう。当然のことだ。
 ならばこのカードが一番アンタにとって本当に信頼たるものなのかもれしれない。
 なんせアンタは実際にそれを見て、触れて、体験してきたんだ。なら信用せざるを得ないだろう。
 少なくとも俺はアンタが一番にしようするのはこれだと思う」
一瞬の沈黙の後、ムーロロが続ける。彼の言葉は一ミリも変わらない。
まるで彼には感情と言うものがないかのようだった。熱もなく波もなく、男は何も思っていないかのように話しを続けた。
「DIO、という男に手を借りる。彼はアンタから見たら血縁上、祖父に当たる男だ。
 そう、『ジョナサン・ジョースター』まさにその人だ。波紋使いであって、今は吸血鬼である男。
 彼ならば間違いなく、それこそ一度その女が“死んだ”としても、必ずや生き返らせてくれるだろう。
 治療どころじゃない。死すら克服する力。それをDIOはもっている」

どちらも何も言わないまま、数秒の間沈黙が続いた。
だが両者ともに、何かを感じ取った。その数秒で様々な感情、理解、知性が飛び交ったことを理解した。
ジョセフ・ジョースターはゆっくりと立ち上がり、そして今度は逆に男を見下ろした。
大柄である彼は、眼の前の男を見下ろしているはずなのに、何故だかそんなふうには思えなかった。小柄なはずの眼の前の男が小さく見えなかった。
堕ちていくだけなのに、その闇がどこまでも続いて行く。そんな無限の可能性を、ジョセフは男の中に見た。
本能が告げている。同時に戦士の勘も囁いていた。
コイツはやばいヤツだ。掛け値なしの、関わっちゃならねェ“裏側”の人間だ、と。

「さぁ、選びな、ジョセフ・ジョースター。時間はない。俺もそう我慢強いほうじゃない。
 十数えるうちに一枚抜け。それでも選べなかったら、この話はナシだ」

どうする……? 無理矢理波紋でふんじばるか?
ぶん殴ってビビらせて、力づくで従わせるか? そんな街角のsラみたいな理論が、こいつに通じることなんてあり得るのか?
震える腕を持ち上げると、ジョセフは手を伸ばした。眼前に広げられた三枚のカードが踊る。ムーロロは踊らない。青年はごくりと唾を飲み込んだ。

空虚で脆い監視塔、嘘と偽りのトランプタワー。
ジョセフが、そっと、息を吐いた。いつの間にか彼の呼吸は、波紋の呼吸に戻っていた。

296 :
【D-4 北(地下)/1日目 朝】
【ジョセフ・ジョースター】
[能力]:波紋
[時間軸]:ニューヨークでスージーQとの結婚を報告しようとした直前。
[状態]:精神疲労(大)、体力消耗(中)
[装備]:なし
[道具]:首輪、基本支給品×3、不明支給品3〜6(全未確認/アダムス、ジョセフ、母ゾンビ)
[思考・状況]
基本行動方針:エリナと共にゲームから脱出する
0.???
1.『ジョナサン』をよそおいながら、エリナおばあちゃんを守る
2.いったいこりゃどういうことだ?
3.殺し合いに乗る気はサラサラない。
【エリナ・ジョースター】
[時間軸]:ジョナサンとの新婚旅行の船に乗った瞬間
[状態]:瀕死
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜2 (未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:ジョナサン(ジョセフ)について行く
1.???
【カンノーロ・ムーロロ】
[スタンド]:『オール・アロング・ウォッチタワー』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』開始以前、第5部終了以降。
[状態]:健康
[装備]:トランプセット
[道具]:基本支給品、ココ・ジャンボ
[思考・状況]
基本行動方針:状況を見極め、自分が有利になるよう動く。
0.???
1.情報収集を続ける。
2.今のところ直接の危険は無いようだが、この場は化け物だらけで油断出来ない。
[備考]
※依然として『オール・アロング・ウォッチタワー』 によって各地の情報を随時収集しています。
 制限とか範囲とか精度とかはもうノリでいいんじゃないか。

【ブラフォード】
[能力]:屍生人(ゾンビ)
[時間軸]:ジョナサンとの戦闘中、青緑波紋疾走を喰らう直前
[状態]:腹部に貫通痕、身体中傷だらけ、波紋ダメージ(中)
[装備]:大型スレッジ・ハンマー
[道具]:地図、名簿
[思考・状況]
基本行動方針:失われた女王(メアリー)を取り戻す
0:一旦撤退。戦況をたてなおす。
1:強者との戦いを楽しむ。
2:次こそは『ジョナサン・ジョースター』と決着を着ける。
3:女子供といえど願いの為にはR。

297 :
以上です。指摘ありましたらください。
人気投票の集計、乙でした。そして投票してくれた方、ありがとうございました。
これからもがんばりたいです。

298 :
投下乙です
ジョセフがどれを選択するのか興味津々です
仗助かジョルノかDIOか
誰を頼ることになっても一波乱ありそうでワクワクします

299 :
これは、以前読んだ医学書からの知識だ。
 医学上の健忘には、逆向性健忘と前向性健忘の二つの症状がある。
 簡単に言えば、「ある時点から以前の記憶がなくなる」か「ある時点から以降の記憶を保持できなくなる」か、だ。
 前者は、俗に言う「記憶喪失」というものだ。つまり、ドラマや漫画で、「ここはどこ? 私は誰?」となってしまうアレだ。
 症例以外の分類を言えば、心因性か、外傷性か、或いはアルツハイマーなどの疾患の症状か、薬剤などによるものか等などの違いもある。
 心因性というのはストレスやトラウマを引き金とするものだし、外傷性というのは怪我などがきっかけ。
 統計を取ったわけではないし、そういうデータを見た記憶もないが、おそらくフィクションで一番多用されるのは、「心因性のショックで一時的な逆行性健忘に陥る」というパターンだろう。
 このあたりは、千帆に聞いたほうがいろいろと例を挙げてくれるかもしれない。
「忘れる」ということができない僕は、それらの逸話や話を聞くときに、何とも言いようのない気分になる。
 例えばそれらに恐怖を感じるとしたら、それを聞いた人間にも「忘れてしまう経験」があり、だからこそ「すべてを忘れてしまう」というようなことに共感や感情移入がなされるのだろう。
 僕は、おそらく、その点において彼らと同じようには感じられない。
 自分が記憶を失うということが、怖くないのか? と問われたらそれは「怖い」と言える。言えるだろうと思う。
 しかし、現実に僕は、どうしようもなく「忘れる」ということが、できないのだ。
 出来ない以上、どうしてもそこに、溝が生まれる。
 或いは憎くも思っていたし、苦痛でもあり災厄でもあるこの「能力」。
 それが失われることを願ったこともあるが、とはいえ既に自分の一部、いや、自分そのものとも言える「すべてを記憶する能力」。
 もし、過去のページを捲っても何も思い出せず、再現されなくなったら?
 もし、新たなページに何も書き込まれず、何も覚えられなくなったら?
 想像は、できる。しかし、実感をしようがない。
「忘れることのできない僕」が、「忘れてしまうということ」に対して、どういう立ち位置でいるのか。
 僕自身、それをはっきりと明言することはできない。
 
 ☆ ☆ ☆ 
 簡単に食事と水を摂った後、放送が始まったカフェの一角で、僕がメモを取る、と自分から申し出たのは、一つにはカモフラージュでもある。
 どういう方法でかわからないが、どこからともなく聞こえてくるこのアナウンスを、たいていの人であれば耳そばだて必死になりメモをとることだろう。
 何より、50人という人間が殺されたというが、あの読み上げの速度では、ゆっくり落ち着いて書き取る、なんてのはそうそうできるものではない。
 けれども僕に関して言えば、違う。
 はっきり言えば、改めてメモを取る必要などないのだ。
 全ては、自動的に僕のこの、〈本〉に書き込まれるのだから。
 しかし、そのことを彼らに悟られるのも困るので、ことさら「必死になってメモを取っている」風を装う必要があるのだ。
 
 どこからともなく現れた鳩が、その足にぶら下げた名簿を落として去っていったのには驚いたが、それをとやかく考える暇など与えずに、アナウンスは続いている。
 ウェザー・リポートはメモを僕に任せて、周囲への警戒を続けていた。放送を聞き入っている時に襲われる危険性もある。
 もちろんそこには、周囲のみならず、ジョルノへの警戒も含まれている。
 ジョルノ・ジョバァーナ。彼は明らかに、最初のホールで殺された少年と寸分違わぬ同一人物だ。
 それは僕の記憶力をもってしなくても、明白すぎるほどに明白だろう。
 そのジョルノ・ジョバァーナも、僕同様にメモを取っている。
 華奢、とまでは言わないが、決して偉丈夫というほどではない体格。
 てんとう虫をあしらったブローチやボタンが随所に施された、学生服と似たシルエットの上下に、特徴的なカールした前髪。
 年の頃は僕とさほど変わらないだろう。まだ幼さすら残る顔立ちは、日本人っぽいところもあるが、基本的にはイギリス系白人の特徴を多く持っている。
 似ている、というだけなら、先ほどの救急車から落ちたであろう白人男性とも似てはいる。
 最初のホールで殺された、ほかの二人ともどことなく似てはいる。
 しかし、「同一人物」と言えるのは、やはり同じ上下を着ていた、最初のホールの壇上にて、最後に紹介された少年。
 寸分違わぬと言えるその横顔を、見続けながらメモをとる。


300 :
 一通りの情報は、それぞれに異なる衝撃と驚き、或いは困惑をもたらしたようだ。
 勿論、僕にもある。
 ひとつは当然、双葉千帆の事だ。
 名簿には彼女の名が有り、そして死亡者として告げられた名の中には無い。
 勿論、名簿も放送も、すべてが掛け値なしの真実という保証などどこにもない。どこにもないが、僕には加えてさらなる情報がある。
 つまり、最初に目撃した二人の死者 ――― 父、大神照彦と、母、飛来明里の存在。
 彼らの『死体』を目撃しているウェザー・リポートも知らない事実。
 なぜか昔に死んでいたはずの母を含め、この会場で二人が死に、その名は名簿にあり、死者として放送された。
 少なくとも、この二人に関しての放送は、「事実」だ。
 ならば他の名に関しても、「事実」かもしれない。
 たとえば、ホールでちらりと見かけた、「母同様とっくの昔に死んでいるはずのウィルソン・フィリップ上院議員」や、「同じ杜王町の住人である、岸部露伴や虹村億康。あの東方仗助の年老いた祖父、東方良平」などに関しても「事実」かもしれない。
 それを確かめる為には、ともあれ、彼らの「死」を、確認しないとならないだろう。
 
 もう一つ。千帆が集められた中にいるのであれば、最初に考えた推論、「特殊な能力を持っている人間を集めたのか?」というのが、やはり違うものではないかとも考えられる。
 母の存在もその推論を否定してはいたが、僕自身が母と接していた期間は殆どない。僕が「記憶していない」だけで、何らかの「特殊な能力」を持っていた可能性はゼロではない。(あったとしても、大神に対抗できるものでは無かったということかもしれない)
 だが、実際に知り合い付き合っていた限りにおいて、千帆にはやはり、「特殊な能力」は無い。大神の言葉もそれを証明している。
 本人含め誰もまだ気づいていない、というのもあるかもしれないが、やはり「ない」と考えるのが自然だ。
 となると、あのスティールという男が、一体どう言う基準で「集めた」のか…。
 
 僕も含め、ウェザー・リポートに、ジョルノ・ジョバァーナ。ここにいる3人の男は皆、「特殊な能力」を持っている。
 途中で襲いかかってきた老人もまた同様。催眠術というか何というか、僕らの意識に働きかける何らかの力を持っていたようだ。
 
『頼む――――ッ! 琢馬――――ッ!! 千帆を――――ッ!! 頼む――――ッ!!』
 
 悲痛な叫びが、僕の脳裏にこだまする。
 〈本〉を読むまでもない。読むまでもなく、絶叫のこだまは、僕の脳裏から離れてなどいない。
 僕は、応えなかった。何も応えることなどなかったし、応えるべき言葉などもなかった。
 彼に対して、応えるべき言葉など、何もない。
 だが、しかし ―――。
 ☆ ☆ ☆

301 :

「――― 僕の名前は、ジョルノ・ジョバァーナ。イタリアのネアポリスに住んでいる学生で ――― ギャングです」
 改めての「自己紹介」は、言葉面だけで言えば異様だし、意外とも言えるが、耳にしての感想としては「しっくりくる」ものだった。
 ギャング、という言葉にある一般的なイメージ…つまり、粗野で粗暴で無教養、というようなものとはかけ離れているが、けれども何故かそれを納得させられるものもある。
 そして付け加えれば、学生であり僕と同世代であるという事からはとても結びつかないが、おそらくきっと彼は、ギャングの中でも地位の高い存在なのだろうとも思えた。
 放送が終わり、再び静寂の戻ったカフェの中、朝のさわやかな光が彼の顔を鮮やかに浮かび上がらせる。
 同様に、今までは月明かりにしか観て取れなかったウェザー・リポートの顔をちらりと眺め、改めてその表情を見て取ると、僅かな苦悩とも困惑とも取れぬ、かといって無表情とも言えぬ複雑なもの。
「お前のその、『スタンド能力』―――『ゴールド・エクスペリエンス』か…」
 切り出したのはそのウェザー。
 『治療する』彼の能力は、既に実証されていた。
 その点は実際目にした僕らには明白で、ジョルノの申し出に最初は些か気乗りしないながらも、ウェザー自身も『治療』を受けている。彼は僕以上にそれを実感しているのだろう。
「『部品を作る』…と言ったが、それは、『自分の治療』にも使えるのか?」
 スタンド―――。
 先ほど、死に瀕していた女性を「救う」と言ったジョルノ・ジョバァーナも、自分の「能力」を、そう呼称していた。
 どうやら彼らの間では、この「特殊な能力」を示す名称として、共通のものとして知られているようだ。
「ええ、使えます。自分自身の部品を作り、それを自分の傷や欠損にはめ込むことで、治療することもできます」
 簡潔かつ無駄のない答え。
「…では、『死者』には―――?」
「無理です」
 再びの問いに、やはり簡潔な答え。
「僕の能力は、厳密には『治療をする能力』ではなく、『生命を与える能力』です。
 石や弾丸、無生物に生命を与え、それを体の部品として作り出すことはできますが、それでできるのはいわば『移植』のようなもので、『回復そのもの』は、治癒力に任せるしかありません。
 死んだ肉体には治癒力がありません。『無生物』になりますから、そこから『新たな生命、部品』を作ることはできても、『死んだ当人自体』を蘇らせることにはなりません」 
 そう都合良くはいかない、と同時に、最初のホールで一度死んだ彼が、能力で蘇ったわけではない……という事でもあるのだろう。
 再び、会話が止まる。
 ちらりと横目に見たウェザーの顔に、かすかな陰りと苦痛が見えた。
 それはすぐに引っ込んだが、きっとおそらく、さっきの放送で読み上げられた名と関係あるのだろう。
 

302 :

 ウェザーが黙ってしまったので、仕方なく僕が話を続ける。
 つまり、彼に関する一番の『謎』である、「なぜ、最初のホールで殺されていたジョルノが、いま生きてここに居るのか」だ。
 しかし回答は、「自分にもわからない」という、拍子抜けしたもの。
「自分にもわからないが、あそこに居た自分も自分だったし、ここにいる自分も間違いなく自分自身だ」
 普通に聞けば、とてつもなく馬鹿げた嘘をついているとしか言えないが、そうも思えない。
 ホールで自分自身と対面したとき、自分がちぎれ飛ぶような感覚とともに体が分解しかけたこと。そしてそのあと自分の能力でなんとか治療したこと。
 いずれも何の証拠もない。
 それでも、僕は既に知っている。「すでに死んでいる人間」がこの会場にいた、という事を。
 そして彼らの言う『スタンド能力』のことを合わせれば―――死、あるいは時間を超越する何らかの力が、この件に関して働いている…。
 成り立たなくはない推論だ。勿論、確証など何もないが。
 
 そして付け加えれば、それらの推論よりも雄弁なのは、彼、ジョルノ・ジョバァーナ本人そのものだった。
 彼は、おそらくは「正直な人間」だ。
 いや、勿論それにも確証はない。ただの印象でしかないと言われれば、そうとも言える。
 ただそれでも、例えば今いるここ、地図上はB-2の『ダービーズ・カフェ』であろう場所へと来る際も、「ここでさっきまで仲間といて、待ち合わせもすることになっている」と、そう言ったのだ。
 それら正直さも、もちろん計算のうちではあるだろう。
 正直=善人、などと安易に考えるほどに僕は単純でもない。
 仲間といる、と言っておいて、待ち伏せをしているかもしれない。少なくとも、そう疑われる可能性はある。
 かと言って、仲間がいることを言わずに連れて行って、悪いタイミングでバッティングする方にもリスクはある。
 それらを考えて、「正直に話すことの利」を取った。
 能力についても、それ以外についても、彼はかなり「正直」だ。
 そしてそれは、「バカ正直」なのではなく、きちんと思慮熟考した上での「正直」なのだろう。
 であるならばむしろ、そのことに関して言えば、「信頼できる」。
 
 
「『納得』はできないようですが、『了承』はしてもらえたようですね…」
 口調に、かすかな安堵のこもった声。信用してもらえる自信も保証もない話だ。無理もない。
「……そうだな。お前が嘘をついているようには思えない。結局本当のところはあの男に問いただすしか無い」
 結局のところ、「何故、死んだはずの彼がここにいるか?」 を、彼に問うことは、やはり無意味なようだ、というのが、僕の(そしてウェザーの)結論になる。 
 それからは、ウェザーと僕の方が彼に情報を出す番だ。
 ある程度かいつまんでの自己紹介。自分がここに来る前の状況など。話せる範囲で話す。
 しかし僕はというと、当然「話せることが少ない」。
 日本の学生。地図上には自分が住んでいた町がある。他に、何が話せる?
「あらゆるものを記憶する能力がある」、「その記憶の中の出来事を再現することができる」、「実の父親を復讐のためRことだけを考えて生きてきた」…。
 駄目だ。
 人のことを言えた義理じゃない。ジョルノとは真反対なほどに、僕は秘密を後生大事に抱え込んで手放せないでいる。
 ギャングという背景。スタンド能力。仲間の存在。
 ジョルノが詳らかにしたこと全て、僕はまるで明らかにできない。
 「話せるわけがない」事ばかりの僕。
 これはまったく、不公平な情報交換だろう。

303 :
 
「この、名簿と、さっきの放送なんだが…」
 その気まずさもあって、僕は話を切り替えた。
「何か気づいたことは?」
 この話題が、より気まずいものだろうことは分かっている。
 特に、先ほどの僅かな表情からすると、ウェザーには何かがある。
 それでも、自分から話せることのない僕にとっては、そのほうがまだましである。
 何より、おそらくそれらは、「知っておいたほうが良い」事だ。
 二人の顔を交互に見る。
 やはり、そうそう気軽に話せる話題ではないようだ。
「実は、妙なことを言うようだけど、この中に……」
 なので、僕が口火を着ることにした。
「死んだはずの人間の名前があるんだ」
 顔色が変わった。
「それは……」
 口に出しつつも、その次を出せない二人。
「ここに、『吉良吉影』という名前がある。彼は僕と同じ街の人間で、ちょっと前に交通事故で死んでいる。
 ガス爆発か何かがあったという現場で、被害に遭っていた一人なんだけど、やってきた救急車の前に飛び出して轢かれてしまったらしい。
 ニュースにもなったし、救命士の責任問題にもなっていたから、ちょっと覚えているんだ。
 もちろん、ただの同姓同名かもしれないが…日本人でもこの名前は、かなり珍しい。データは無いが、実際日本に片手で数えるほどにいるかすら怪しい、特徴的な名前だ」
 東方良平やウィルソン・フィリップ上院議員よりは、出しやすい名前を出しておく。
 二人はそれぞれに、気まずそうな、あるいは悩ましげな表情を浮かべ、顔を見合わせた。
「F・F……は、少し前に死んでいる。俺の知っているF・Fなら、な…」
 僕に続いて、ウェザーがそう切り出す。
「ほかにもいるが……スポーツマックスという男も、少し前に死んでいたはずだ」
 二人の、「死んだはずの人間」……。
 そしておそらく、「F・F」というのは、彼の「仲間」で、「スポーツマックス」は、「敵、あるいはそれ以外」だろう。無意識の言い回しに、それが表れていた。
 もとより彼は、最初に出会った時から、「友達」ではなく、「仲間」という言い方をしていた。「仲間を探している」と。
 「仲間」という言い方は、「友達」よりも、重い。結びつきの強固さ、あるいは同類、同士、同じ組織、同じ目的……。
 また、「仲間以外」、つまりこの場合、共通の「競争相手」、「敵」がいる、という関係性で使われることが多いだろう。
 いずれにせよウェザーにとっての「仲間」は、漠然とした「バカ話をして笑いあうだけのお友達」などではないはずだ。
 人を殺してでも、再会したい、「仲間」……。
 
 視線をそらすように、僕はジョルノを見る。
 発言を促されたと感じたのだろう。ジョルノもまた少し思案してから、
「僕も同じです。呼ばれた死者にも、名簿の中にも、「すでに死んだ者たち」が含まれています」
 ギャングだ、と言った彼の口から出る、「すでに死んだ者」というのは、さらに「重い」。
 もしかしたら、抗争の果てに殺し合った相手、などもいるのかもしれない。
 いや、間違いなく居るだろう。ここまで、慎重ながらも、正直に語っていたジョルノが、わずかながらも躊躇いを見せた発言だ。
 「すでに死んだ者たち」のみならず、おそらくは間違いなく、「既に殺した敵」も、この名簿には含まれているのだ。
 
 ジョルノやウェザーの言う、「すでに死んだ者たち」が、彼ら同様(また、僕同様)に、特殊な能力……つまり、彼らの言う『スタンド能力』を持っているのかどうか。またそれらがどんな驚異なのか。
 それももちろん気にはなる。気にはなるし、何れは聞き出したい情報ではあるのだが、今はそれを脇に置いておくべきだろう。


304 :
☆ ☆ ☆
 
「僕は、この『バトルロワイアル』を、壊すつもりです」
 それぞれに微妙な距離感で続けられていた会話、空気の中、ふいにジョルノがそう宣言した。
「あなたたちは、『殺し合い』をしたいとは思っていない。当然僕もそうです。
 このジョルノ・ジョバァーナには『正しいと思う夢』がある……。そのために、『襲ってくる敵』と戦い、傷つけ、殺したこともある。
 けれども、誰がどうやったのかまだわからないが、『殺し合い』を強制されるなんてことは、『正しい道』じゃあない。
 だから…」
「待った」
 彼の言葉を、僕は片手で制して止める。
「『協力して欲しい』っていうなら、悪いけど断る。
 それは、既にウェザーにも言ってある事だ。
 僕は、『殺し合い』をする気もないし、『殺される』気もない。けれども、『仲間を募って共に戦おう』なんてのもゴメンだ」
 おそらく言うであろうと思っていた言葉。
 どことも知れぬこんな場所で、見ず知らずの人間にR、『治療』し、『話し合う』。
 なら、次はこうくるだろう。
 彼がどんな人間か。わずかな時間ながら、分かってきている。
 ウェザーも僕も、『殺し合い』をする気はない、という点で『同行者』にはなっていたが、かと言って『仲間』になったわけではない。
 『仲間』…。
 そしてこの場合は、『共通の目的、意志で結ばれた仲間』……。
 ウェザーには、『仲間と合流する』という『目的』がある。そしておそらく名簿にその、『仲間』の名前があった。あるいは、『敵』の名前もあったのだろう。
 ジョルノには、『バトルロワイアルを壊す』という『目的』がある。そしてその『目的』の為の、『仲間』を求めている。
 僕は……?
 違う。
 改めてウェザーの目を見、ジョルノの目を見る。いや、見ようとして、直視できずに目線を逸らしている。
 
 違う。
 彼は、僕とは違う。
 根本的、根源的に、彼は僕とは違う。
 おそらくそうだろうという気はしていた。そしてそれは、彼が『治療』をしているあいだに、話をしているあいだに、確信へと変わりつつあった。
 
 ウェザーには、『仲間』がいる。
 ジョルノには、『正しいと思う夢』がある。
 
 僕には、何も、無い。
 ただうずたかく積み重ねられた書物の山。その山の中にあるあらゆる……『記憶』……。
 『それだけ』だ。
 ただ、『復讐』だけを生きる理由として来た。
 友達や仲間を持ったことはない。
 正直さとは無縁の人生。ただひたすら秘密を抱えて生きてきた。
 ウェザーは……まだ良い。
 彼もまた、僕とは別の意味で、『空虚』だ。明確な理由は無いが、うっすらとそれが感じられる。
 けれどもジョルノは……その、『まぶしさ』は……。
 
 僕には、耐えられない。
 
 それが、今、はっきりと分かった。


305 :
「あなたはどうですか、ウェザー?」
 僕の内なる懊悩を感じ取ったのだろうか。ジョルノはしつこく追求することはせずに、ウェザーへと話を向ける。
「俺は、『仲間』を探している。そしてその『仲間』は、今この会場のどこかにいるらしい……。
 琢馬と行動しているのも、ただ互いに邪魔をしないという約束でのことだ。
 だが……」
 そこで一旦言葉を区切り、それから目を閉じ…しばらくしてゆっくりと見開いた。
「仲間と合流できたあとになら……協力できるかもしれない。
 ジョルノ……。きっとお前は、『信頼』できる人間だ。
 俺もよく知っている……ある人物とよく似た『匂い』がある……。
 たとえ『無実の罪で牢獄の中に閉じ込められても、泥を見て嘆くより、星を見上げて希望を心に灯すことができる』……。
 そんな人間の持つ、『気高い匂い』だ……」
 会って以来、さほど会話を交わしてはいないウェザーだが、それでもここまで饒舌に語るのは少し意外だった。
 そしてその彼の語るジョルノへの印象は、驚く程に率直で、好意的だ。
 僕が目をそらすしかないでいるジョルノのまぶしさを、彼は目を細めながらにも直視している。
「琢馬」
 そのウェザーが、不意に僕へと向き直る。
「お互い余計な詮索はしない、という前提で行動を共にしてきた。
 お前が自分について語らないのも、『生き残る』ことを最優先にして行動するのも、それはそれで良い。
 だが、ひとつだけ話してもらうぞ……」
 ジョルノの、暗闇の中でも光をもたらす目とは、真逆。
 すがるべき光を見失い、それでも闇の奥から見つめ続ける目。
 常人であらば身震いをするであろう目で、僕を見ている。
「お前のスタンド能力は、何だ?」
 ☆ ☆ ☆
「俺の名は『ウェザー・リポート』。
 スタンド名も同じ……。能力は『天候を操ること』。
 だがこれは本名じゃない。
 俺には過去の記憶がない。だからこの名前も、能力からとった仮の名だ……」
 囁くような、ぼそぼそとした声の調子。
 だがしかし、決して弱々しくはない。
「気がついたときには、俺は刑務所の中にいた。
 地図にある、GDS刑務所の男子房……。今の俺にある記憶は、その時点からだ。
 本名も、生まれも……俺が何をやって刑務所に入ったのか。本当に犯罪者なのか…何もかも分からない」
 ウェザーがかすかに見せる、空虚さ。その理由。
「俺は、そこで出会った『仲間』を探している。そして、名簿によれば、仲間はこの会場のどこかに居るらしい。
 名簿……そして放送が事実ならば、な……」
 じわりと、絡みつくような視線を、逸らすことはできない。
「あのスティール…あるいはその仲間のスタンド使いは、俺たち…そして、100人を優に超える人間を一堂に集め、こんな街を創り出してしまう『能力』を持っている……。
 『スタンド使い』も、『死んだはずの人間』も、お構いなしだ。
 どんなトリックだ? ただのハッタリか?
 そうかもしれない。まだ何も確認できていないからな」
 その響きに、心当たりがあった。
「それでも、それらが『事実』だとするなら……。
 俺には『やるべきこと』が増えた。
 『仲間を探す』、『仲間を殺したやつを探し、R』、『プッチを探し出し、R』……そして、『スティールとその仲間を、R』」
 殺意。復讐心。
「俺はジョルノとは違う。
 琢馬、お前がそれでも、自分には何の能力もないというなら、俺にはお前を助けながら歩き回る積もりも余裕もない。
 お前が自分の能力を絶対に明かさないというなら、お前に背中を見せる気もない。
 だから、改めて聞く。
 お前の『スタンド能力』は何だ?」

306 :
 プッチ。エンリコ・プッチ。その名前は名簿にあった。きっとウェザーの『敵』なのだろう。
 あるいはさっき出た名前……『死んだはずなのにここにいる』F・Fという『仲間』を殺したのが、プッチなのかもしれない。
 殺意と、復讐心。
 あるいは、僕の唯一にして長年連れ添った友人の別名。
 常に僕の傍らに佇み、寄り添い、支え、そして縛り付け続けるもの。
 そして……最も憎むべきもの。
 ウェザーは言った。「俺はジョルノとは違う」。
 確かにそうだ。
 『僕ら』は、ジョルノとは違う。
 『夢』よりも、『殺意』。『希望』よりも、『復讐心』を、糧として生き、進み続ける。
 だがそれでも尚……。
 僕とウェザーもまた、違うのだ。
「僕は……」

 ☆ ☆ ☆
「ジョージ……?」
 か細く、それでいて透き通った声。
 陽のあたるダービーズ・カフェ店内のカウンター奥から聞こえるその声は、僕とウェザーのやりとりを見守っていたジョルノに向けられたもの。
 放送前。大きな破壊音を聞いて調べに行った場所で、おそらくは「激しい戦闘の後、走っている救急車から突き落とされて」瀕死の重傷を負っていた女性。
 そこで、あとからやってきたジョルノが、自らのスタンド能力、『ゴールド・エクスペリエンス』を使い、治療をした。
 彼が作り出した『部品』は、たしかに女性の体にはめ込まれ、今現在外見上何ら怪我を負っていないように見える。
 特に左腕は完全に接合され、頭部も又、頭蓋が割れ、脳の一部が露出するほどのものだったのだが、今では傷口の痕跡も見えない。
「……いえ、違います。僕の名前はジョルノ・ジョバァーナ。
 一緒にいたであろう男性……ジョージさんですか? 彼は、残念ながら既に亡くなっていました。
 簡単にですが埋葬をしてあります。
 あなただけは、発見時にまだ生きていたので、なんとか肉体の損傷を治すことはできましたが……」
 もうひとりの男性、彼女が「ジョージ」と呼んだのであろう、古めかしい軍服姿の男性は、ジョルノとウェザーでピエトロ・ネンニ橋脇の土手に穴を掘り、埋めてきてある。
 その上にジョルノの能力で蔓薔薇を生やして、墓標替わりとしていた。
 彼女はなんとなく焦点の合わないような目で、どこに視線を定めるでもなくこちらを見ている。
 ウェザーは僅かに身構えていた。僕の方をやや気にしつつも、彼女へと向き直っている。
 彼女が何者なのか。敵ではない、危険ではないという保障がない事から、まだ警戒を解いてはいないのだろう。
「……一緒にいた? なにを言っているの? ジョージは……彼は……」 
 戸惑い。混乱。眉根を顰め、立ち上がろうとするが、弱った体でそれもかなわず、崩折れる。
「気をつけてください! 確かに表面上の傷は治しました。
 しかしあなたは、死んでいてもおかしくないほどの重体だった……!
 すぐに歩ける程に回復することもないですし、後遺症もあるかもしれない」
 手を貸そうとするジョルノ。その差し伸べられた手を払い除け、女性が跳ね上がるように起立して、叫んだ。
「ジョージは……殺された! そう……『思い出した』わっ……!
 あの人は殺されたの……。空軍司令…ディオの部下だった、生き残りの屍生人によって……!!」
 驚異的身体能力だ。あるいは回復力も異常なほどなのか? どこに、あんな力が残っていたというのか。
 ジョルノが目を見張り、ウェザーがさらに緊張を現す。
「ジョルノ、と言ったわね。状況はわからないけれども、手助けしてくれたであろう事には礼を言うわ。
 けど、私は『復讐』をしなければならないッ……!
 夫の、ジョージの仇をとる……必ずよッ………!!」
 ジョージ・ジョースターT世、あるいはジョージ・ジョースターU世。
 そのどちらなのかはわからないが、名簿に名前が有り、そして共に「死んだ」と放送された2人。
 そのどちらかが彼女の夫であり、また、彼女はその夫を殺した相手を知っている。
 あの救急車に乗っていたのが、おそらくはその仇、という事なのだろうか。彼女の言葉、そして状況からはそう受け取れる。
 あれだけの大怪我を負って、それでも尚、夫の復讐のために立ち上がろうとする。
 驚くべき執念であり、驚くべき行動力だ。
 そのまま歩き去ろうとする彼女を、ジョルノが呼び止める。

307 :
「待ってください。まずは状況を確認したほうが良い。
 さっき、放送がありました。それに、名簿も。
 この『バトルロワイアル』の中に、ほかにも知り合いや、敵…問題のある誰かがいるかもしれない。
 情報を交換し、お互いに手助けも……」
 鋭い刃…そうとしか見えぬものが突きつけられ、ジョルノを押しとどめる。
「エリザベス…。名前だけは教えておくわ。けれどもそれ以上は馴れ合う気はない……」
 彼女の、破れた黒衣の袖。その袖に何らかのエネルギーが流れ込んでいるのか、ただの布が文字通りに鋼のように鋭く、固く尖っていた。
 断固とした拒絶。
 自らの目的のために、復讐のために、あらゆるものをかなぐり捨ててしまおうという、漆黒の殺意。
 その殺意が形になったが如き黒い刃が、彼女とジョルノ、そして僕らとを隔たっている。
 有無を言わせぬその態度に、押し黙るしかない僕らを置いて、彼女は踵を返してカフェを出ようとし……、再び、足元から崩折れる。
 ジョルノが再び駆け寄って、その体を支えた。
 跳ね除けられるかと思ったが、やはり見た目とは裏腹に体の回復が追いついていないのだろうか。力なくうずくまり、かぶりを振る。
 陽が差し込む開いたカフェの中、朝の空気と緊張が、場を支配していた。
 
「……ジョージ……?」
 その沈黙を破ったのは、再びの彼女の声。
 か細く、それでいて透き通った声は、困惑と不安を微かに表していた。
 ジョルノの顔を見て、それから周囲を見る。
 その視線は当て所なくさ迷い、さらなる困惑をもたらしてくる。
 彼女と、僕ら全員に、だ。
「…違う……。あなたは誰? ここは……?」
「……どうしたんですか、エリザベス……?」
 彼女の顔が苦痛に歪む。それは体の苦痛ではない。心の、魂のもたらした苦痛だ。
「ジョージは……殺された! そう……『思い出した』わっ……!
 あの人は殺されたの……。空軍司令…ディオの部下だった、生き残りの屍生人によって……!!
 私は復讐しなければならないっ………! 夫の仇を……ッ!!」
 
 
 ☆ ☆ ☆ 
 『忘れる』ということは、幸せなのだろうか?
 あらゆる過去を全て記憶し、捨てることのできない僕。
 ある時点からの過去を一切持たないウェザー。
 未来への確たる、『正しいと信じる夢』を掲げているジョルノ。
 そして……『未来をなくし、今しか持たなくなってしまった』彼女……エリザベス。
 
 逆向性健忘とは、「ある時点から以前の記憶がなくなる」症状を指し、前向性健忘とは、「ある時点から以降の記憶を保持できなくなる」症状を指す。
 
 『忘れる』ということは、幸せなのだろうか?

308 :
【B-2 ダービーズカフェ店内 / 1日目 朝】 
 
【ジョルノ・ジョバァーナ】
[スタンド]:『ゴールド・エクスペリエンス』
[時間軸]:JC63巻ラスト、第五部終了直後
[状態]:健康
[装備]:閃光弾×1
[道具]:基本支給品一式 (食料1、水ボトル半分消費)
[思考・状況]
基本的思考:主催者を打倒し『夢』を叶える 。
1.エリザベス(リサリサ)の様子を確かめる。
2.ウェザー、琢馬と情報交換。できれば『仲間』にしたいが…。
3.ミスタたちとの合流。午前8時までダービーズ・カフェで待つ。
4.放送、及び名簿などからの情報を整理したい。
[参考]
時間軸の違いに気付きましたが、まだ誰にも話していません。
ミキタカの知り合いについて名前、容姿、スタンド能力を聞きました。
ウェザーについてはある程度信頼、琢馬はまだ灰色、エリザベス(リサリサ)の状態に困惑しています。
 
 
【ウェザー・リポート】
[スタンド]:『ウェザー・リポート』
[時間軸]:ヴェルサスに記憶DISCを挿入される直前。
[状態]:右肩にダメージ(中)ジョルノの治療により外面的損傷は治っている。
[装備]:スージQの傘、エイジャの赤石
[道具]: 基本支給品×2(食料1、水ボトル半分消費)、不明支給品1〜2(確認済み/ブラックモア)
[思考・状況]
基本行動方針:『仲間を探す』、『仲間を殺したやつを探し、R』、『プッチを探し出し、R』、『スティールとその仲間を、R』
1.エリザベス(リサリサ)の様子を確かめる。
2.琢馬について、『スタンド能力』を確認したい。
 敵対する理由がないため現状は同行者だが、それ以上でもそれ以下でもない。
3.ジョルノは、『信頼』できる。

309 :
 
 
【蓮見琢馬】
[スタンド]:『記憶を本に記録するスタンド能力』
[時間軸]:千帆の書いた小説を図書館で読んでいた途中。
[状態]:健康
[装備]:双葉家の包丁
[道具]: 基本支給品(食料1、水ボトル半分消費)、不明支給品2〜4(琢磨/照彦:確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:他人に頼ることなく生き残る。
1.エリザベス(リサリサ)の様子を確かめる。
2.千帆に対する感情は複雑だが、誰かに殺されることは望まない。 どのように決着付けるかは、千帆に会ってから考える。
3.ウェザーたちに『スタンド能力』を話すべきか?
[参考]
参戦時期の関係上、琢馬のスタンドには未だ名前がありません。
琢馬はホール内で岸辺露伴、トニオ・トラサルディー、虹村形兆、ウィルソン・フィリップスの顔を確認しました。
また、その他の名前を知らない周囲の人物の顔も全て記憶しているため、出会ったら思い出すと思われます。
また杜王町に滞在したことがある者や著名人ならば、直接接触したことが無くとも琢馬が知っている可能性はあります。
琢馬は救急車を運転していたスピードワゴン、救急車の状態、杜王町で吉良吉影をひき殺したものと同一の車両であることを確認しましたが、まだ誰にも話していません。
スピードワゴンの顔は過去に本を読んで知っていたようです。
 
 
【リサリサ】
[時間軸]:ジョセフの葬儀直前。
[状態]:頭部裂傷、左腕切断等を含めた全身にダメージ(ジョルノの治療により外面的損傷は治っている)、脳の損傷による記憶障害。破れた喪服。
[装備]:承太郎のタバコ(17/20)&ライター
[道具]:基本支給品、不明支給品1
[思考・状況]基本行動方針:『夫の仇を取る』。
1:ジョージ…?
 
[参考]
※リサリサの記憶障害は、『ジョージU世の復讐に向かった時点』にまで逆行し、また、『記憶をある程度の間しか保持することができない』状態です。(具体的にどの程度かは未確定)
※琢磨たちは、「記憶を保持できない」ことには気づきましたが、「過去の記憶が抜けている」ことには気づいていません。
※ストーンオーシャンにて、ミューミューの『ジェイル・ハウス・ロック』にかけられた時と似た状態ですが、『記憶の個数』ではなく、『記憶できる時間』が短いという状態です。
※リサリサの体のダメージは回復していません。波紋呼吸である程度動かすことはできますが、万全には程遠いいようです。
※リサリサが初めから所持していたサングラスは破壊されました。

310 :
 

311 :
投下乙です。
ウェザーと琢磨、琢磨とジョルノ、ジョルノとウェザー。
三人の距離感がなんとももどかしい。
この辺りのじっくり、ねっとり感が読んでて凄くジョジョっぽいなァってぞくぞくしました。
リサリサの今後も気になるところです。続きが書きたくなりました!
指摘としては(たしか)琢磨の一人称は『俺』だったと思います。
それ以外は気になる点はなかったです。
したらばのほうで自作の問題点について指摘がありました。
>「ムーロロがどうやって人間関係(特に血縁関係)に関する情報を手に入れたか」 は、流石にフォローしとかないとまずいかも。
>ウォッチタワーの情報収集では、3人の能力を確認するタイミングは一応あるけど、人間関係に関する発言(特にジョルノ)はほとんど無いし。
ノリノリで書きすぎて、全然考えてませんでした。
僕自身一応フォローのアイディアも思いつきましたし、SBRさんもあるみたいなんですけど、結局どうしましょうか。
通しちゃいましょうか、修正入れましょうか。

312 :
男子19番/瑞浪悌(みずな・やすし)
部活動 無所属
身長/血液型 170cm/B型
愛称/杜若 ヤス/みずみん
支給武器 ピアノ線
被害者 -
加害者 新藤誠
出身小学校 千代田区立大江戸小学校
交友関係 新留燈
真野煉
(消極派グループ)
折上志鶴
備考
中性的な美少年。白い肌で華奢な体型。
美しい容姿のせいで小学生の頃から山崎大河にいじめを受けており、そのせいか卑屈で大人しい。いじめを苦に自殺を図った事もある。
人が傷つく痛みを知っているため、人一倍優しい。一方、自己犠牲的な思考を持つ。
基本的には穏やかで優しい草食系だが、やる時はやる男らしい面も持つ。
両親が町医者であり、本人も医学的知識が豊富。
現在でも大河や正岡丈らに目をつけられていじめられる事がある。
行動記録
本校舎
2階図書室。真野煉に襲われた所に雪村笑留が駆けつけ、その後現れた三田島梓に救われる。
梓と別れ、笑留と行動中。グロック26を入手。
1階保健室で笑留と会話。彼女に過去を明かす。そこへ中川竜蔵が現れる。
最初は竜蔵を疑うが、無事に和解する。竜蔵の怪我の手当てをしている最中に、新藤誠に襲われる。最初に襲われかけた笑留を庇って重傷を負うが、何とか竜蔵と笑留を逃がす。
その後新藤にいたぶられ、とどめを刺されそうになった所に井ノ原命と久我英治が現れ、新藤を追い払う。しかし一命を取り留めることはなく、二人に看取られて息を引き取る。
最期に「笑留を助けて欲しい」と遺言を遺した。

313 :
女子21番/吉川裕子(よしかわ・ゆうこ)
部活動 吹奏楽部
身長/血液型 143cm/A型
愛称/杜若 裕子/ロリっ子
支給武器 -
被害者 -
加害者 四ツ葉竜太郎
出身小学校 千代田区立第一小学校
交友関係 上島藍那
北内冬子
佐野鳴海
三吉冴子
(文化系グループ)
備考
クラスで一番小柄
大人しくて地味なタイプ。クラスでも目立たないポジションに居る。
心優しい性格だが、普段は聴き専な為たまにクラスメイトに存在を忘れられることがあるが、本人は特に気にしていない。
体が弱い。喘息を患っているため常に薬を持ち歩いていて、体育も見学していることが多い。
山崎大河、正岡丈らに目をつけられていじめられている為、彼らのことを怖がっている。
行動記録
本校舎2階。
1−D教室。プログラムルール説明中、咳がうるさいとの理由で四ツ葉竜太郎にダガーナイフを投げられ、額に命中。死亡する。

314 :
なにこれ誤爆?wwwww
それはさておき、投下乙
琢馬の考察は読んでいて面白いですね。リサリサの記憶障害がどう活きてくるのか楽しみです。
指摘としましては、琢馬の字がすべて琢磨になっていますね。
◆c.g氏の件ですが、やはり修正orフォローしたほうがいいかと?
ウォッチタワーをもってしても、細かな血縁関係などを把握し切るのは普通なら不可能かと。
SBR氏がフォローできるという意見もありますが、氏がリレーすると決まったわけでもないので、それでは解決策になっていないと思います。

315 :
投下します。

316 :
一文字一文字読み進めるたびに、固く握った拳を叩きこまれているようだった。
鈍く、頭の奥底まで響くような痛み。掌に感触を焼き付かせるように憎しみを込め、拳を振るっているかのような。
そんな鈍痛に思わず頭を抱えた。しばらくの間じっと、痛みが引くまで、私は深呼吸を繰り返した。
いつの間にか息を殺していた。そうする必要もないのにひっそりと息を吐き、そして誰にも見つからないよう、息を吸う。
何をしているのだろうか。誰かから身を隠しているわけでもない。誰かに見られて困るようなことは何一つしていない。
そうわかっていても、しばらくの間私はそうやって息を殺していた。じっとその場から動けなかった。
「―――……日の出、か」
どのくらいその場にうずくまっていたのだろう。気がつけば太陽が昇っていた。
天気は晴れ、雲も少なく、強烈な太陽光が容赦なく私を照らしていく。
まるで突き刺すように日差しは射し込んで来た。例え手でそれを遮ろうとしても、細めた瞳で見つめようとも。
容赦なく襲いかかる日光、眩しすぎて顔をしかめた。気だるい身体を引きずるように、私はそのまま近くの民家に逃げ込んだ。

――― 日光が苦手だ。
自分は元々身体が強いほうではないし、子供の時から外で遊ぶというよりは家の中で過ごすほうがずっと好きだった。
落ち着いた空間で読書を楽しんだり、テレビゲームやボードゲームに熱中したり。私はそうやって幼年期をすごしてきた。
誰かと一緒に過ごすのが苦手だとか、誰かと話すことが嫌いかと言われれば、別にそうではない。
好きでも嫌いでもない。そつなくこなしてきたし、人並みに話し相手もいた。自分から進んで孤立した覚えもなければ、誰かに嫌われるようなことをした覚えもない。
たまたま私にはそれが合っていただけの話だ。サボテンが好んで砂漠に咲くように、白クマが一人北極に住むように。
一人で過ごす時間が自分にとっては大切な時間だった。そしてそんな時間がなによりも自分にはよく馴染んだ。
ただそれだけの話だ。

「―――……ただそれだけの話」

そうだ、それだけの話。
ただそれだけのことなはずだというのに……何故今になってその時のことを思い出しているのだろう。
何故こうも苦々しい表情を浮かべているのだろう。何故胸が苦しく、壁に身を預けるほどに、私は疲弊しきっているのだろう。

―― それはきっと私が『脅えている』からに違いない。

『また』一人になってしまうのか。また私は、自分だけにしかわからない孤独に悩まなければいけないのか。
孤独という感情が恐ろしい。それは目に見えず、音もなく、人の心に忍び込んでくる。
時間も場所も選ばず、一度抱いてしまえば、振り払っても、振り払っても付きまとう。
恐ろしい。孤独という感情は、私にとってなによりも、もしかしたら死よりも、恐ろしい。

「……DIO、さま」

317 :
か細い、掠れた声。誰かに聞かれたらと思うと恥ずかしさすら込み上げそうな、そんな情けない声だった。
それがわかってしまっているから、そうだと知っているから、胸が苦しくなった。
よろめきかけた身体を支える様、壁に手をつき、しばらくの間じっとする。
呼吸が整うまでの僅かな時間、熱くもないのに額に汗が浮かんだ。誤魔化すように、学生服の袖で乱暴にぬぐった。

軍人風情の男たちが所持していた支給品の一つ。まさに今、私の右手にぶら下がっている一枚の紙切れ。
それは驚くべきものだった。私は目を疑い、鼻で笑い、破り捨てようとして……そして出来なかった。
第一回放送と銘打たれた男の言葉。同時刻、自分の元へと届けられた一枚の名簿。
それを加味すれば、その一枚の紙切れは紛れもない事実だとしか思えなかったから。
どれだけ必死で否定しようとしても、それは残酷に私に現実を突きつけていたから。

『ジョースター家とそのルーツ』

古くは1800年代まで遡り、そして一番下まで目をやれば、それは今よりおよそ20年後の2011年。
7世代にわたってのジョースター一族の家系図が、そこには記されていた。
そしてそれはどうしようもなく事実で、紛れもなく正しくて、実際に存在している家系図だった。
少なくとも、自分にはそう思えた。
納得のいく話だ。
何故最初に会った見知らぬ男は私のことを知っていたのか。何故自分との間に認識差があったのか。
何故首輪を吹き飛ばされ、死んだはずの空条承太郎が私の知る彼よりもふけて見えたのか。何故死んだはずの彼の名前が名簿に示されているのか。
わかったのはそこまでだ。でも、そこまでわかれば残りは必要ない。考えなくていいことは考えなければいい。
だが自分は厄介な性格で、その余計な事まで考え、理解し、推測してしまう人間だった。

おそらく ――― DIOさまは負ける。他でもない、空条承太郎の手によって、彼は殺される。
そうして空条承太郎は娘をもうけ、家庭を築き、暮らしていく。その証拠がこの家系図に記されている『空条徐倫』の存在だ。
私が始末するはずだった空条承太郎は始末されなかった。すくなくともこの家系図が存在する未来では、私はどうやらしくじった。
空条承太郎が生きていて、なおかつDIOさまも生きておられる。その可能性は低い。
あのお方は一度やると言ったら最後までやりきるだろう。彼には凄味がある。やると言ったらとことんやり尽くす人だ。
そしてそれは空条承太郎も一緒だ。やつも売られたケンカを途中で放り投げるような人間ではない。決着をつけるまで、ヤツは戦うことをやめないだろう。

「そしてDIOさまは……――― 負ける」

口にした直後、そうしたことを後悔した。手にした紙に皺が走るほど強く握り締め、唇を噛みしめた。

318 :
あるいはこれはとんでもない幸運なのかもしれない。本来そうなるはずだった運命を変えることが、今の私にはできるのだから。
敗北しかない未来だったはずだ。DIOさまの死は、空条承太郎の勝利は避けられない運命だったはずなのだ。
このバトル・ロワイアルというものが、おこなわれていなかったならば。
「ならば私は、DIOさまのお役に立つために―――」
やることは変わらない。私の務めは変わらず、空条承太郎の抹殺を速やかに実行するのみ。
そうだ、なんら変わらない。未来だとか、運命だとか、そんなことはどうでもいいはずだ。私にとって信じるべきはDIOさまのみ。
為すべき事は唯一、たったひとつ変わらずそこにある。私の役目は空条承太郎の抹殺。それだけだ。
そこまで考えて、私は勢いよく立ちあがった。民家よりゆっくり出ると、抹殺対象を探し、街へと足を踏み入れた。
行く宛はない。何の成果もあげずにDIOさまの元、“DIOの館”を訪れようとは思わない。
そこを訪れる時があるとすれば、それは私が任務を終えた時だ。空条承太郎をこの手で始末し終えた後のことだ。

「そう、それだけのことだ。今はそれだけのことを考えればいい。それ以外は全て終わった後で ―――……」

家系図は置いてきた。
それはもう必要のないものだったから。私にとって大切なのは空条承太郎の殺害、それだけだったのだから。
不要なものは捨て、荷物は少なく。身軽になれればそれに越したことはない。

……いや、正直に言おう。私は、それでも振り払えなかったのだ。
じりじりと温度を上げていく街を練り歩き、アスファルトから立ち上る熱気を見据えながら、私はいつの間にか深い思考の海に沈んでいた。
紙に記されたDIOさまの死を見るのが怖かった。
DIOさまがいないこの世界を、想像することが恐ろしかった。
DIOさまがいなくなった世界で、私は一体どうなったのだろう。
死んでいるのだろうか。生きているのだろうか。どちらにしても、それは同じような事ではなかろうか。
DIOさまのいない世界なんぞ、私にとって死んだも同然だ。
あのお方は唯一私の孤独を理解してくれたのだから。私に、この私に『友達になろう』と言ってくださった、たった一人のお方なのだから。

「DIOさま……」

どんな時代だろうと、どんな世界でいようとも、これだけは確実に断言できる。
私は、もう一人になりたくない。私はもう、友達を失いたくない。
その気持ちだけは、偽りない本当の私の気持ちだ。
そのためならば、私は……、私は……――――――




光眩い太陽に目を細め、花京院典明はゆっくりと街の影へと姿を消していった。

319 :
【E-5 中央 民家/1日目 朝】
【花京院典明】
[時間軸]:JC13巻 学校で承太郎を襲撃する前
[スタンド]:『ハイエロファント・グリーン』
[状態]:健康、肉の芽状態
[装備]:ナイフ×3
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:DIO様の敵をR。
1.空条承太郎の抹殺。とりあえず街を探索する。
2.ジョースター一行、他人に化ける能力のスタンド使いを警戒。
3.山岸由花子の話の内容、アレッシーの話は信頼に足ると判断。時間軸の違いに気づいた。
【備考】
※スタンドの視覚を使ってサーレー、チョコラータ、玉美の姿を確認しています。もっと多くの参加者を見ているかもしれません。
※ケイン、ブラッディの支給品はナイフのみでした。ドノヴァンのもうひとつの支給品が『ジョースター家とそのルーツ』リストでした。
※ケイン、ブラッディ、ドノヴァンの基本支給品、そして元々持っていた余分な基本支給品1セットは荷物になると判断しタイガーバームガーデンにおいてきました。
※ムーロロに見られました。ついでに民家に放置したジョースター家ルーツが速攻でぱくられました。

【アレッシーが語った話まとめ】
花京院の経歴。承太郎襲撃後、ジョースター一行に同行し、ンドゥールの『ゲブ神』に入院させられた。
ジョースター一行の情報。ジョセフ、アヴドゥル、承太郎、ポルナレフの名前とスタンド。
アレッシーもジョースター一行の仲間。
アレッシーが仲間になったのは1月。
花京院に化けてジョースター一行を襲ったスタンド使いの存在。
【山岸由花子が語った話まとめ】
数か月前に『弓と矢』で射られて超能力が目覚めた。ラヴ・デラックスの能力、射程等も説明済み。
広瀬康一は自分とは違う超能力を持っている。詳細は不明だが、音を使うとは認識、説明済み。
東方仗助、虹村億泰の外見、素行なども情報提供済み。尤も康一の悪い友人程度とのみ。スタンド能力は由花子の時間軸上知らない。



【支給品紹介】
【『ジョースター家とそのルーツ』リスト@オリジナル】
原作の6部コミックスに掲載されているもの。 ジョジョロワ2ndでも登場したが……またまたやらせていただきましたァン!
以下コピペ。
名前や血縁関係だけでなく、年代、人物相関図(「殺害」など)までも書かれている。
顔(イラスト)までは書かれていない。

320 :
以上です。誤字脱字、矛盾等ありましたら知らせて下さい。
したらばで指摘してくれた皆さん、こうしたほうがいいんじゃないいってアドバイスしてくれてみなさん。
ありがとうございました。
まだなんか突っ込む所あったらどんどんください。
荒が多いんで、まだまだ見過ごしてるところがあるかもしれないんで。

321 :
投下します。

322 :
その名前が呼ばれた瞬間、俺の中で全てが崩れ落ちた。
嘘だ嘘だと心の中で叫ぶ声が聞こえる。そうであるはずの事実を必死で否定する俺がいる。
それが無意味だと、心のどこかで理解していながらも。自分の行為が愚かな、そして虚しい現実逃避であると知っていながらも。
俺は呆然としたままに、何も考えられず、その場に倒れ込んだ。
立ちあがる気力、起き上がる意志さえ湧きあがらなかった。
灰色のアスファルトを呆然と見つめながら俺は動けなかった。動こうとしなかった。
無様に這いつくばったままの恰好で、その場に凍りつく。何も考えられなかった。
何も、考えたくなかった。

俺は彼女の死が現実のものとは思えなかった。俺は彼女の死が受け入れられなかった。
ひょっとしたら何かの手違いなんじゃないかと思えた。読み上げられた名前の意味を、俺は勘違いしているんじゃないかって思った。
自分の作り上げた幻想だとはわかってる。そんな考えは突拍子もない、頭のおかしなやつのおとぎ話でしかないんだって、知ってるさ。
けど、おかしいだろう。こんなことが正しくあっていいはずがないだろ。

 だって 徐倫が死んでいいはずなんて ないんだから。

なんで、彼女なんだ。なぜ、彼女じゃなければいけなかったんだ。
おかしいはずだ。他の誰だって良かったはずだ。
彼女である理由が見当たらない。彼女が死んでいいわけがない。
徐倫は強い人だ。ひょっとしたら俺よりも強いかもしれない、誰よりも強いかもしれない。
だって彼女はいつだって前を向いて歩く人だったんだ。牢屋に閉じ込められても、泥の中に突き落とされても、彼女のあの眼はいつも希望に満ちていた。
そんな、そんな彼女が死ぬだなんて…………きっと何かの間違いにきまってる、そうにきまってる。
希望に満ちている彼女だったなら、どんな困難であろうと切り抜けれたはずだ。
あのタフで強靭な彼女が折れるはずがない。どんな難敵であろうとあの強力な拳は、蹴りは、誰にだって防げやしないはずなんだ。
だから……徐倫が死んでいいはずがないんだ。あの徐倫が、あの徐倫が死んでしまったなんて、そんなことが……ッ!
「……嘘だ」
嘘だ……嘘だ、嘘だッ!
そんなはずがない……。そんなことが、あって、たまるかッ!
あり得ない。あってはならないッ!
嘘だ嘘だ嘘だ。嫌だ。信じられない。信じたくない!
あの徐倫が、あの徐倫が! 死んだなんて、そんなことが!

「違う……、違うッ!」

喉が張り裂けんばかりに、俺は叫んだ。高まる感情そのままに、力一杯拳を叩きつけた。
アスファルトが歪み、ひび割れた。狂ったような俺の叫びが壁に反響し、あちこちに響き渡った。

323 :
 

324 :

嫌だ、信じたくない! こんなことって……ッ! こんなことが……あって、たまるもんかッ!
なんで彼女なんだ! 彼女には、まだまだやらなきゃいけないことがたくさんあったじゃないかッ
父親を救いだしたばかりなんだ。ようやく自由になれたんだ。あの鉄格子から解き放たれ、あと一息で全てが終わるはずだったじゃないかッ
なんでだ……。なんで、徐倫なんだ……ッ! 彼女が死んでいいはずがないじゃないかッ……!
彼女が何をしたって言うんだ……? 彼女がいったいどんな理由で……死ななければいけなかったていうんだッ

徐倫はただの少女だったんだ。心優しい、素敵な素敵な、少女だったんだ。
彼女は誰よりも家族を、そして父を、愛していた。
友人を愛し、生命を愛し、生きることを愛していた彼女は……ただの少女だったはずだというのにッ!


「死ぬべきはこの俺だッ! 死ぬべきは俺だったはずなんだ……ッ!」

なのに、なんで。

「彼女が死ぬぐらいだったら、この俺が……、この俺を……ッ!」

――― 殺してくれ…………ッ!

空虚な叫びがこだまする。返事をするものは誰もいなかった。

握り拳が血を噴いた。犬歯が破った唇から、血の雫が垂れ落ちる。
身体の震えが止まらなかった。自分が抱く感情が、怒りかなのか、悲しみかなのか、虚しさなのか。
俺はいったい何のか、もう、わからなかった。
なにもかもわからない。なにもかもわかりたくない。
崩れ落ちた時に打った膝が時間が経つにつれ、じんわりとマヒしていく。
その感覚だけがやけに生々しく、俺の記憶に鮮やかに焼きついた。

「……徐倫」

彼女の名前を初めて呼んだ。
涙は流れなかった。不思議と涙は湧きあがらなかった。
俺は、動けなかった。

325 :
  

326 :



空条承太郎と川尻しのぶが歩いていた。二人の間に会話はなく、一組の男女は黙々と足をすすめていく。
まずは駅に向かう、と承太郎は言った。しのぶには反対する理由も見当たらなかったので、彼女はとりあえず彼の判断に従うことにした。
承太郎の狙いはとにかく人に会うことだった。
杜王駅はここらあたりで一番大きな建物で、人目も引くし、まずは寄ってみようと思う参加者も多いはずだ。
加えて禁止エリアが近くに設定されたのも好都合だった。
禁止エリアが近くに設定されたことで、そのことに興味を持つものがいても不思議ではない。
或いは逆に、禁止エリナが設置されたことで、その場から離れようとする参加者もいるかもしれない。
あてもなく彷徨うよりはよっぽど確率よく、誰かしらに遭遇できるはずだ。承太郎はそう思い、まずは駅を訪れようと思ったのだ。
二人は歩いた。朝日輝く杜王町を、何の話をすることもなくただ進んでいく。
何の変哲もない一日が始まろうとしているかのように、街は穏やかな様子だった。
だが、とても静かだった。街に誰一人いないかのように、静かだった。
いつもなら通勤通学で賑わい出す道路も。朝の通勤ラッシュで混む中央線も。活気に溢れる街市場も。
何の騒音もなく、がらんとしていた。あまりにもの寂しいので、その様子はゾッとさせるような異様さがあった。
駅に近づくにつれてしのぶは承太郎との距離を少しだけ縮めた。男はなんの反応も見せず、ただ淡々と歩き続けた。

駅が見えてきたころだった。一度として止まることのなかった二人の足が次第にゆるんでいくと、ついには完全に止まった。
女性は思わず男の背中に身を寄せ、そのジャケットの裾を握った。
承太郎は何も言わなかった。ただ黙ったまま彼女を振り払うようなことを彼はしなかった。
かわりに男は警戒心を高め、眼の前の光景に目を鋭くさせる。
スタンドは出さなかった。だがいつ襲われてもいいように、彼は戦闘態勢を整えていた。
一人の男が道路を歩いていた。
まだそれほど年はとっていない。若者と呼ぶにふさわしぐらいの年頃だ。身長は高く、少し華奢ではあるがその体は鍛え抜かれている。
引き締まった腕にはほどよく筋肉がついていて、しなやかな足はガゼルのようにたくましい。
顔は中性的で、一目見た時には女性と勘違いしてしまいそうになる。
だがよく見ればその凛々しい眉、高くとがった鼻が印象的で、彼は美男子と呼ぶにふさわしい顔立ちをしていた。
しかし、そのいかつい肉体も。整った容貌も。眼に入らないほどに、彼の様子は異常だった。
まるで幽霊のように顔は真っ青。左右に揺れながら今にも倒れそうなほど、頼りなく歩いている。
亡者のように虚ろな表情。生気を感じさせない空虚な瞳。
男は生きていながら死んでいるも同然な様子で、自分がどこにいるかもわかっていないかのようだった。
しのぶが押しRように、そっと息を吐いた。誤魔化しきれない不安が、その吐息には込められていた。
男が二人のいるところまであと十メートルというところまで近づいたとき、承太郎は初めて口を開いた。
「そこで止まれ」

327 :
  

328 :

大きく叫んだわけではない。だが、無人の街並みにその声はよく通った。男はその場に立ち止まると、ゆっくりと時間をかけ顔をあげた。
承太郎の反響した声が消えるまでの、その長い時間を使って、ようやく男は眼の前に二人の男女が立っていることに気がついた。
くすんでいた瞳に僅かながらも光がさす。男の表情に生気らしきものが初めて浮かぶ。
彼は唾を飲み込むと、言葉を紡ごうとした。二度三度とどもりながら、ようやく言葉を捻りだす。
「―――承太郎さん」
その声は掠れくぐもっていて、とても聞き取りづらかった。
ナルシソ・アナスイは男の名前を呼ぶ。膝つきそうな身体をなんとか奮い立たせ、彼は目の前に立つ男の名を呼んだ。
承太郎さん、彼はもう一度言った。しゃがれた声、潰れた喉。だがアナスイは喋るのをやめなかった。
警告を受けたことも忘れ、更にもう一歩、前に踏み出す。身体を固くしたしのぶが後ずさる。警戒心剥き出しに承太郎が拳を握る。
アナスイは目の前で起きているそんなことにすら気がつかなかった。彼は何も知らず、そのまま進み続ける。
彼はふらりふらりと揺れながら、なんとか崩れ落ちずに立ち続けた。何かに縋りつく様な口調で、彼は言葉を紡いだ。

「徐倫が……、徐倫が――――――」
「……!」
彼女の名前が聞こえた瞬間、空条承太郎の顔が強張った。しのぶは掴んだ上着越しに、男の体に走った緊張感を感じ取る。
アナスイは気づかない。彼の声は今にも泣き出しそうだった。

「徐倫が…………死んだ」
「―――ッ!」

男の呼吸が止まった。女の上着を握った拳が震える。そしてナルシソ・アナスイは、その場に崩れ落ちた。
アナスイの精神力が限界を迎えたのだ。地に伏せた彼の瞳は虚空を見つめ、何も写してはいなかった。
自らが口にした言葉が彼の心をズタズタに切り裂いていった。言葉にしてしまったことで、彼はその事実を自身が認めたかのように思えたのだ。
必死で否定してきたその事実を。死にもの狂いで眼を逸らしてきたその現実を。
アナスイは自らが口にした言葉に呆然としながら、次々と口をつく言葉を止められなかった。

「承太郎さん、徐倫なんです。徐倫が…………、徐倫が…………―――」
「それ以上口を開くな」

凍りつくような承太郎の声。有無を言わせぬ言葉が続きを遮った。
殺される。死んだも同然のアナスイの本能をそう目覚めさせるほどに、承太郎の迫力は圧倒的だった。
ピシャリとアナスイを黙らせ、男は大股で彼に近づいていく。アナスイはごくりと唾を飲み込む。地に這いつくばったままの体勢で、彼を見上げた。
三メートル弱、スター・プラチナの拳が叩き込める位置まで近づくと承太郎は道路に倒れ伏す男を見下ろした。
何の感情も宿さない無機質な目。彼は品定めするような眼でアナスイを見つめる。
「勝手に盛り上がってるところに水を差すようだが、俺がアンタと会ったのはこれが初めてだ」
「…………え?」

329 :
 

330 :
アナスイの眼が大きく見開かれる。承太郎は自らの言葉に男が大きく衝撃を受けていることに気がつきながらも、言葉を止めるようなことはしなかった。
自分の言葉が目の前の青年を傷つけるかもしれない。そうわかっていても、それを気にかけるほどの余裕を今の彼は持ち合わせていなかった。
畳みかける様に言葉を繋げた。承太郎の話は続く。
「俺はアンタの顔も知らなければ、名前も知らない。記憶力には自信があるほうなんだが、悪いな。
 もし、俺が一方的にアンタの名前を忘れて―――」
「何を……、何を言ってるんですか、承太郎さんッ!」
初めてアナスイの顔に表情らしきものが宿った。
気の毒になるほどの狼狽。額に汗すら滲ませ、アナスイは跳ねあがるように、その場で立ちあがる。
「俺です! ナルシソ・アナスイです!
 徐倫と一緒に、あのエンリコ・プッチと戦っていたスタンド使い! たった今の今まで一緒にいた……―――!」
「知らねーな。残念ながら」
「そんな…………、まさか、もしかして……あなたは―――」
「……娘のことを知っていて、スタンド使いであることを考えると―――どうやらアンタは俺の『未来』からやってきたようだな」

アナスイは話した。隠す必要もない相手だったのでありのままに、彼は全てを打ち明けた。
互いに時を越えて参加者が集められていたことを知っていたのが幸いした。アナスイの情報公開はすんなり進んでいく。
承太郎は必要最低限だけ口をはさみ、可能な限りアナスイを話させ続けた。その内、口をはさむことすらしなくなった。
アナスイの話は続く。徐倫とのRに始まり、緑色の赤ちゃん、ヘビー・ウェザー、新しいスタンド『C-MOON』、そして『空条承太郎』。
彼は必死だったのだ。承太郎に自分の存在を認められようと必死だった。アナスイにとってもはや承太郎が……、承太郎だけが頼りだったのだ。

もはや否定しようもなく、徐倫は死んだ。彼は、そのことを半ば諦めていた。
ショックだった。悲しかった。ショックだとか悲しいとか虚しいだとか……そんな言葉では表せないほどに、彼の心は傷だらけだった。
この気持ちを理解できるのは承太郎だけだとアナスイは思っていた。
承太郎だけが……、娘をなくした父親だけが、今の自分の気持ちを理解してくれると思っていた。
だが現れた空条承太郎は自分のことを知らなかったのだ。自分を知る、はるか昔から、彼は呼び出されていたのだ。
その事に気がついた時、アナスイは愕然とした。そして、再び途方もない絶望に叩き落とされた気分がした。

徐倫を失った喪失感を、俺は独り抱えていかなければいけないのか。
彼女の死を、彼女の弔いを、俺は独りで行い、そして残されたこの世界を生きていかなければいけないのか。
徐倫がいなくなるということは世界を失うのも同じだ。そんな重荷を、俺独りで抱えていけるだろうか。

アナスイは承太郎に理解して欲しかったのだ。自分たちがどれほど大きなものを失って、どれほど取り返しのつかない人を弔わなければいけないのか。
誰かと徐倫の死を共に嘆き、悲しみ、涙したかった。励まし、励ましてもらい、共に涙すれば、その時初めて徐倫の死を受け入れられる気がしたのだ。
そうした時、ようやく彼女の死に始めて向き合える気が、アナスイにはしたのだった。

そして! 承太郎こそが! 承太郎ならば、自分のこの想いを!
自分と同じぐらいの喪失感を! 悲しみを! 虚無感を! 抱いていると思ったのに!

331 :
アナスイの話が終わった。口の中はカラカラに乾ききっている。額の汗をぬぐう暇もないくらい喋り通しであった。
承太郎は奇妙なほどに無表情だった。徐倫が必死で彼を救いだそうとした時のことを話しても。徐倫がどれだけ傷つき、苦労して彼を救ったのかを伝えても。
空条承太郎は不気味なほどに平然としていた。まるで何も感じていないような、そんなふうに思えるほど。

「……エンリコ・プッチ」
「そうです。ヤツが……ヤツこそが、全ての黒幕でDIOの遺志を継ぐものだったんです」
懐より取りだした名簿を睨め付け、男は確かなんだろうな、とアナスイに念を押す。
青年が頷いたのをじっと見つめ、信用に足ると判断したのだろう。男は名簿のプッチという名前を記憶に刻み込んだ。
今、彼の中で抹殺対象が一つ増えた。エンリコ・プッチと言う顔も知らぬ邪悪を必ずや仕留めて見せると、空条承太郎は決意を固めた。
「情報提供感謝する」
「な……! ま、待って下さい、承太郎さん……ッ!」
上着を翻し、川尻しのぶの元へ戻る男の背中にアナスイはそう叫んだ。
数歩進んだところでようやく立ち止まった承太郎。無言のままに振りかえる。
あなたはこの後、どうするつもりなんですか。そう喉元まで込み上げていた言葉を、アナスイは飲み込んだ。
今まで男の眼を見る余裕すらなかったアナスイ。今初めて承太郎の眼を見つめ、彼はその薄暗く広がる闇に気がついた。
徐倫にどこか似た瞳を持ちながら彼女が決して持ち得なかった、腐臭を放つ、どこまでも底なしのほの暗い瞳。
背筋を伝っていく汗が凍りつきそうだ。無言のままに男が放つ殺気に足が竦んだ。
言葉以上にそれが物語っていた。ナルシソ・アナスイは理解する。
空条承太郎の悲壮な覚悟を。自らの正義と納得のために戦い続けようとする、男の意地を。

それでも彼は口を開いた。何故だか彼自身もわからないが、口を開かずにはいられなかった。
「あなたは、プッチをRつもりなんですね……」
承太郎は何も返さない。徐倫によく似た目でアナスイを見返す。
沈黙が何よりも多くを物語っていた。彼はそれをYESと解釈し、そのまま言葉を重ねる。
「あなたは、徐倫の仇を討とうとしている……」
無言のままだ。一秒だって視線を逸らさない承太郎。アナスイが目をそむけたくなるほどに、真っすぐな視線で見つめてくる。
我慢比べのような沈黙がそのまま流れ……先に視線を切ったのは承太郎だった。
ふと遠くを見つめるような眼になると、男は虚空に目を向けた。そうして彼はアナスイに背中を向け、無言のままに立ち去ろうとする。
アナスイはその背中に叫んだ。
「承太郎さんッ!」
「てめーには関係のない話だ」
「どうしてッ」
「…………」
その背中から怒気が滲み出た。彼はここが境界線だと無言で主張している。それを超えるようであれば無傷の保証はできやしない、と。
だがアナスイは我慢できなかった。何故だか理由はわからなかったが、アナスイは承太郎を止めずにはいられなかった。
考える間もなく、言葉が口をついて出る。彼はなんとしてでも、承太郎をその場に引き留めたかったのだ。
口をついて出たのは、ナルシソ・アナスイという一人の男の慟哭だった。
心の悲鳴が口から零れ出た。次から次へと、想いが言葉になっていった。
そして一度こぼれ出せば、後は止まらなかった。アナスイは、叫んだ。

332 :
「あんたなら……、あんたならわかってくれると思った!
 あんたならわかるはずだと思ったのにッ! あんただけが、この俺と同じだと思ったはずなのにッ!」

承太郎は何も言わない。振り返った彼の表情は、深くかぶった帽子のひさしに隠れ、何も伺えない。
アナスイは止まらない。彼はそのまま、言葉を続けて、叫んだ。

「徐倫は……死んだんだぞ! 徐倫はもう二度と、笑うことも、泣くことも、動くことも……できないんだぞッ!」
「…………」
「もう二度とッ! もう二度とだッ! あんたは、それがわかってるのに……なんで復讐なんかができるんだッ!」
「………………」
「なんであんたは涙一つ見せないんだ! なんであんたはそうやって……無表情のままなんだッ!」
誰かが息をのむ音が聞こえた。見れば視界の端で川尻しのぶの顔が青ざめていくのが目に映る。
だがアナスイはもう止まらない。ナルシソ・アナスイの感情は、今、爆発していた。
徐倫を失った悲しみが。徐倫を救えなかった不甲斐なさが。理不尽さへの怒りが。一人の女性を失った喪失感が。
アナスイは止まらない。空条承太郎へのやつあたりという形で、今、彼の気持ちは解き放たれていく。
大声で叫んだアナスイは肩で息をする。承太郎は何も言わない。彼は今どんな表情を浮かべ、どんなことを考えているのだろうか。
だがそんなことはどうでもよかった。今この瞬間、アナスイは心底、空条承太郎が憎かった。
会話中顔色一つ変えなかった冷徹さが。微動だにしなかった表情が。スカしたようにポケットに突っ込まれた両腕が。
今の彼には男の全てが憎かった。八つ裂きにしてやりたいほどに、なんとかして傷つけたいと思えるほどに、アナスイは空条承太郎が憎かった。

アナスイが叫んだ。


「徐倫は…… ――― あんたの娘なんだぞッ!」


瞬間 ――― 空条承太郎が僅かに首をあげ、そしてアナスイと視線が交わった。

333 :
 

334 :
胃を抉るような衝撃が走った。ヘビー級のボクサーが力任せに叩き込んだような拳。そんな拳が何度も何度も、それこそ百を超えるほどに、アナスイを襲った。
気がつけば視界が反転。青空が上に、アスファルトが目の前に。身体全体を固い地面に叩きつけられて、息がとまる。
その後地獄のような時間が彼を襲った。身体をくの字に折り曲げると、青年は全身を喰らう痛みに呻き、もがいた。
痛みのあまり滲んだ視界。彼はそんな世界で、自分の身に何が起きたか理解した。
空条承太郎のスタンド、『スター・プラチナ・ザ・ワールド』。
男が時を止めている間に自分を叩きのめしたということを、アナスイは理解した。
地べたに這いつくばるアナスイに影が落ちる。苦悶の表情を浮かべながらも、なんとか見上げればそこには承太郎がいた。
男の表情はわからない。そうなることを狙ってか、逆光が男の顔に影を落としている。彼の顔色はうかがえない。
承太郎は落ち着いた口調で語りかけた。その冷静さが、何の感情も込められていない言葉が、なによりも恐ろしかった。
「テメーにとって娘がどんな存在だったかはしらねーが……俺は娘を失った。
 娘を失った父親の気持ちをてめーに押し付けようなんて思ってはいねーし、押しつけて理解してもらおうとも俺は思わねェ」
「がァ ――― ハ……ッ!」
「誰も俺のことを理解できるはずがないんだ。俺がテメーのことを理解できねェように、な。
 テメーが俺に感情を押し付けるのは勝手だ。だが、それが気に食わなかったんでちょいとお痛を味わってもらったぜ。
 事後報告になって申し訳ねェな。その点だけは謝るぜ」
目の前をゆっくりと通っていく一組の靴。地に這いつくばり、未だダメージの残るアナスイにそれを止める術はない。
承太郎が遠ざかっていく。一歩、また一歩。また遠くなる。その間、アナスイは必死で立ちあがろうとしていた。
立ちあがらなくてもいいのに。立ちあがったところで何ができるかもわからないというのに。
それでも彼は、今必死でもがいていた。必死で震える、手に、足に鞭打ち、男は這い上がろうと足掻いていた。

 ――― ナルシソ・アナスイの目に光が宿る。
その目に宿ったのは希望ではない。悲しみでもない。
怒りだった。まごうことなき、純粋な怒り。しかしそれは彼のやつあたり的な怒りではない。
男はなんとか立ち上がる。
胸が痛む。吐き気がこみ上げる。拳を叩き込まれた胃がひっくり返そうだ。
だがそれでもアナスイは立ち上がったのだ。どんな困難にも決して怯まず、決着ゥつける“彼女”の姿を思い出し……男は立ちあがったのだ。

「承太郎さん……、いや――― 空条承太郎ッ!」

その場を去ろうとする男に指を突きつけ、彼は叫んだ。
「あんたは、自分の納得のためだけに動いてる……!
 娘を失った無力感、娘に何もしてやれなかったという罪悪感に突き動かされ……! 無茶で無謀な破壊衝動に犯されているッ!
 悪党退治だなんて崇高な義務感に……あんたは酔っているだけなんだッ」
空条承太郎は振り向かない。
一度だけ、ぴたりとその場で立ち止まったが、やがて気を取りなおしたように足を動かしだした。
アナスイはやめなかった。彼は肺一杯に空気を吸い込むと、力の限りに、怒鳴った。

「徐倫はこんなことを望んでいやしないッ」


335 :
男は足をすすめようとして……その足を浮かしたままの状態でしばらく固まった。
そして次の瞬間、目にも止まらぬ速度で振り向くと同時に、アナスイ目掛けて一目散に向かっていった!
男の反応を予期していたように、アナスイも既に行動を終えていた。
スター・プラチナの拳が迫る。真っ向勝負でダイバー・ダウンが迎え撃つ。凄まじい轟音が響き、二つのスタンドは拮抗した。
空条承太郎が初めて感情をあらわにした。怒りに燃えた瞳が、スタンド越しにアナスイへと突き刺さる。

「てめェに、なにが、わかるってんだ……ッ!」
「ああ、わかるさ……! すくなくとも徐倫がそんなことは望んでいないってことぐらいは、わかってるつもりだ……!」

凄まじいスピード、とんでもないパワーで押してくる。
迫りくる拳の嵐。ダイバー・ダウンはおされていく。アナスイは無理することなく一度後ろに飛び下がり、距離を取る。
逃がさんとばかりに、承太郎は猛追。再び拳を振り上げ、彼は言う。アナスイも負けじと答える。

「てめェが! 娘の名を呼ぶんじゃねェッ!」
「徐倫はアンタをみすみすRために! 命をかけて、傷だらけになって! 救い出したんじゃないんだぞッッッ!」

ダイバー・ダウンが押し返した。承太郎は怒っている。だがそれ以上に、アナスイも怒っていた。
流れは再び中立に。パワーA同士のスタンド、突きの速さ比べは際限なく加速していく。
両者の顔が、怒りに、そして痛みに歪んだ。歯をくいしばって耐える二人の男。アナスイは、その食いしばった歯の隙間から、振り絞るように言葉を吐いた。

「何度でも言ってやる……!」

次の瞬間、ダイバー・ダウンの一撃が、スター・プラチナのガードをこじ開けた。
驚愕に染まる承太郎の瞳。ガラ空きのボディに迫るダイバー・ダウン。
アナスイが吠える。ナルシソ・アナスイの渾身の一撃が、魂の叫びが承太郎を穿たんと迫る……!

「徐倫は……そんなことを望んでいやしないッ!」

そして次の瞬間! ダイバー・ダウンの拳が数ミリまで迫ったその瞬間!   ……――― 時が止まった。

   ……――――――

そして時が動き出す。


336 :
途端、アナスイの身体は木の葉のように吹き飛び、きりもみ回転しながら近くのゴミ山に突っ込んだ。
青年の口から血が噴き出す。すぐには立ちあがれないほどのダメージを前に、彼はどうすることもできなかった。
空条承太郎の手加減抜きの攻撃を喰らったのだ。むしろそれだけで済むほどにアナスイはタフで、承太郎を追い込んでいた。
帽子をかぶりなおした男はその場を立ち去ろうと一歩踏み出し、途中で止まる。しばらくの間、彼は自らの拳を見つめていた。
生々しく残った感触がやけに鮮やかで、気味が悪いなと承太郎は思った。
そういえばスタンドで人を吹っ飛ばしたのは久しぶりだなと思い出し、彼はやれやれ、といつもの口癖を口にした。
頭を振り、その場を後にする。だが直後、背後から聞こえた物音に気がつき、振り返った彼は驚愕に動きを止めた。
ナルシソ・アナスイはダウンしていなかった。
彼はなんとしてでもこれだけは言ってやりたいと。それだけを口にせずには意識を手放せないと言わんばかりで。
フラフラになりながらもゴミ捨て場を抜け出し、半分座り込んだまま……男に指を突きつけ、彼は声を張り上げた。
無様な姿だとはアナスイもわかっている。
情けなくて、カッコ悪い。徐倫が生きていたなら、絶対に見せたくない姿だ。

「止めてやる……ッ!」

だけど……もう、徐倫は死んだんだ。
もう徐倫は……いないんだ。

その瞬間、アナスイはようやくその事実を受け入れた。そしてその事実を受け入れ、だからこそ、そう宣言した。

「俺は、絶対に、あんたを……止めてみせる!」

それが徐倫の望んだことだと、心の底から思ったから。
徐倫が生きていたならば、必ずやそうしただろうと確信できたから。

徐倫は死んだ。もういない。


337 :
それはあまりに悲しいことだった。絶望して、膝をつきそうになりそうだった。
地団太ふんで一日中、いや、一年中一人部屋にこもって泣きつくしたい。
徐倫を想って涙で海が作れるほどに泣いていたい。もうこの身体が枯れ果てるほどに悲しみに浸りたい。
だけどそんなことをしている暇はない。そんなことに暇をさいて止められるほど、徐倫のお父さんは弱くないんだ。
アナスイは涙していた。放送で徐倫の死を聞き、徐倫の死を受け入れてから初めて、彼は泣いた。
アナスイは泣いた。自分の弱さに泣いた。何もできなかった自分の非力さに泣いた。
何もできなくてごめんと徐倫を想って泣いた。惨めでダサくて、自分が情けなくて泣いた。
涙と鼻水で顔はぐちょぐちょだ。疲労とダメージで視界が暗くなる。
それでもアナスイは繰り返し喚いた。もはや承太郎がそこにいるのか、立ち去ったのかもわからなかったが、何度も、何度も、叫んだ。
止めてやる。俺があんたを止めてやる。腕を振り回し、あらぬところを指さし、そう叫ぶ。
そうやって繰り返して、繰り返して、疲れ果てた彼は地面に倒れ込み……やがて静かになった。

それでも彼の涙は止まらなかった。彼は夢見心地のまま涙し、最後に徐倫……と彼女の名を呼ぶと、そうして気を失った。


空条承太郎は、そんな彼を見つめ……しばらくの間動かなかった。
気がつけばしのぶがそばに寄り添っている。数十秒がたち、安全だと判断した川尻しのぶは、男の傍をすり抜ける。
彼女は気を失った青年の隣にしゃがみ込み、容体を見守った。
気を失ったわ。そう彼女は確認し、男を見た。空条承太郎は何も言わずにその場に立ちつくしている。しのぶは何も言えなかった。
本当は一言二言、小言を言い、盛大にため息を吐きたい気分だったがグッとこらえた。
代わりに彼女はアナスイの脇に腕を射し込み、なんとか彼の体を持ち上げようと奮闘する。小柄な彼女にアナスイの大きさと重さはたいそうな負担だった。
承太郎は手伝わなかった。かわりに彼女の腕からデイパックを半ば強引に奪い取ると、それを代わりに持ってあげた。


338 :
十数分の奮闘を経て、しのぶはなんとか青年を安全な場所へと無事寝かしつける。
駅の脇の飲食店、ソファの上に彼を放り投げると、彼女は一息ついた。
引きずっているうちに足を何度か家具にぶつけたりしたが、この際贅沢は言わないだろう。
胸を見れば呼吸に合わせてしっかり上下している。死んではいない。素人判断だが、触った感じだと骨折もしてなさそうだ。
しのぶは、ふぅ……と大きく息を吐き、少しだけ休憩を取る。
さり気なさを装って店を見渡せば、厨房のほうから立ち上るタバコの煙が見えた。
しのぶは今度は我慢せずに、やれやれの言葉とともに大きくため息を吐いた。やれやれ。ほんとうに、やれやれだわ。

「行きましょう。時間がもったいないわ」
数分の後、充分休息がとれたと判断したしのぶ。付添いの男にそう声をかけた。
承太郎は黙って頷く。火をつけかけていた二本目のタバコをもみ消すと、脇に置いていたデイパックを手に取った。
しのぶは気がつく。承太郎は彼女の分のデイパックも持ってくれていた。

 “てめェに、なにが、わかるってんだ……ッ!” 『徐倫は…… ――― あんたの娘なんだぞッ!』
 “てめェが! 娘の名を呼ぶんじゃねェッ!” 『徐倫はこんなことを望んでいやしないッ』
店の扉を潜り抜け足早に男の横に並んだ時、唐突に彼とナルシソ・アナスイとの会話を思い出した。しのぶの胸が痛んだ。
そっと見上げれば承太郎はいつも通りのむっつりとした顔で、何を考えているのかまったくわからない。
ナルシソ・アナスイ。空条承太郎。どちらも一人の少女を失い、ひどく傷ついている。
しのぶは悲しかった。これは二人の男の問題で、話し合えばわかりあえるものでないともわかっていた。
どちらの言い分も痛いほどわかるので、だからこそ、余計に胸が苦しかった。
それでも、としのぶは思う。それでも、自分は空条承太郎から目を離すわけにはいかない。
青く若いナルシソ・アナスイは一見、若さゆえに無謀で無茶をしでかしそうに思える。
でもしのぶは彼なら大丈夫だ、という奇妙な安心感があった。アナスイならば立ちあがれると何故だか信じられた。
あの青年は少女の死にひどく傷つき、取りみだし、喪失感に苦しんでいた。
だけど……泣いていた。少なくとも泣けたのだ。彼は。
アナスイは徐倫のことを思って泣いていた。
しのぶと承太郎のまえで、それはもう惨めになるほど、ボロボロ、ボロボロと。
涙を流して、泣くことができたのだ。


339 :
もう一度隣の男の顔を見上げる。民家を出発後、たまたま化粧室による機会があり、二人はそこで身なりを整えていた。
彼の頬に涙の跡はもう残っていなかった。そのことが何故だか、しのぶの心を寂しくさせた。
どうかしたか。目線を辺りに配り、血に飢えた殺人鬼に警戒しつつ、承太郎がそう言った。
なんでもないわ。しのぶはそう返し、そっと目を伏せた。
何故だか気を抜いたら、泣きだしそうだった。だがそれはあまりにかっこ悪いと思い、彼女はグッとこらえた。
隣の女性の様子に気が付いているのか、いないのか。
承太郎はぶっきらぼうに、駅内を捜索するぞと彼女に告げる。しのぶは黙って頷いた。
そのまま近づきすぎず、離れすぎずの距離を保ったまま……一組の男女は駅の中へと姿を消していった。



湿った風が通り抜けると、ゴミ捨て場のアルミ缶が転がり……寂し気な音をたて、転がっていく。
アナスイの残した涙の跡は、もう残っていなかった。


340 :
【D-8 杜王駅入り口 / 1日目 朝】
【空条承太郎】
[時間軸]:六部。面会室にて徐倫と対面する直前。
[スタンド]:『星の白金(スタープラチナ)』
[状態]:体力消耗(中)、???
[装備]:煙草、ライター
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:バトルロワイアルの破壊。危険人物の一掃排除。
0.???
1.杜王駅内を捜索する。
【川尻しのぶ】
[時間軸]:The Book開始前、四部ラストから半年程度。
[スタンド]:なし
[状態]:疲労(中)、精神疲労(中) すっぴん
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:空条承太郎についていく
1.空条承太郎についていく
【備考】
※アナスイと承太郎の話を聞いて、しのぶもなんとなく時間軸の違いに気がつきました。ですがまだ確信はありません。
※アナスイと一方的な情報交換をしました。
 その結果、承太郎はジョンガリ・A、リキエル、エンリコ・プッチを危険人物と判断しました。発見したら殺りにいきます。
 ウェザー・リポートは灰色です。ヘビー・ウェザーになったら容赦はしないと思っています。
※承太郎はアナスイをR気は『今のところ』ありません。危険人物ではないと判断しました。
※化粧室に寄った際、しのぶは化粧を落としました。すっぴんです。

【D-8 杜王駅脇の飲食店 / 1日目 朝】
【ナルシソ・アナスイ】
[スタンド]:『ダイバー・ダウン』
[時間軸]:SO17巻 空条承太郎に徐倫との結婚の許しを乞う直前
[状態]:全身ダメージ(極大)、 体力消耗(中)、精神消耗(中)、気絶中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:空条徐倫の意志を継ぎ、空条承太郎を止める。
0.徐倫……
【備考】
※骨折はしていません。承太郎はちゃんと優しく、全力で手を抜かずに、オラオラしました。
※放送で徐倫以降の名と禁止エリアを聞き逃しました。つまり放送の大部分を聞き逃しました。


341 :

300 名前: 石作りの海を越えて行け    ◆c.g94qO9.A [sage] 投稿日: 2012/09/23(日) 08:38:26 w6ygC5nA
以上です。誤字脱字矛盾点などありましたら指摘ください。
代理投下、お願いします。


ーーーーーーーーーー
代理投下完了
徐倫を愛しているが故に、悲しい二人ですね……


342 :
投下乙です。
悲しいが、アナスイが熱かった。今までは、マーダー落ちのパターンばっかだったけど、「俺があんたを止めるっ!」とかかっこよかった。
スタンスはまだわからんが、今後に楽しみ
承太郎はこのままマーダーキラー路線の修羅で突き進むのか・・・お互い本当に悲しい
二人の結末はどうなるのか・・・・
そしてしのぶさんのすっぴんに吹いたwww



343 :
禁止エリアが近くに設定されたことで、そのことに興味を持つものがいても不思議ではない。
或いは逆に、禁止エリナが設置されたことで、その場から離れようとする参加者もいるかもしれない。
あてもなく彷徨うよりはよっぽど確率よく、誰かしらに遭遇できるはずだ。承太郎はそう思い、まずは駅を訪れようと思ったのだ。
禁止エリナか…(モグモグ)なんて可愛らしい間違いなんだろう!

344 :
妊娠したRをモグモグなんてとんでもないっ!

345 :
そういえばエリナ(と千帆)は本人まだ気付いてないけど妊娠してんだよな時間軸的に考えて

346 :
本投下開始します。時間的に支援はないと思いますがそれを逆手にのんびり投下しようと思います

347 :
さて……無事に、というか、君たちに第一回放送が終わったところまで話してきたわけだ。
この六時間分の物語、皆が随分と興味深そうに聞いてくれたことが俺にとってもうれしいよ。話してきた甲斐がある。
話ついでにここらで一つ、質問というか考えというか、とにかく聞いてほしい。
――え?今までもずっとそうだった?まぁそういうなよ、俺としては結構重要な話なんだから。
この物語、いや――バトル・ロワイヤルではなくてその原点、いわば“彼らの奇妙な冒険譚”について大きな意味を持つ言葉。
『誇り』
……これについてだ。
血統、技、信念、夢……彼らはその多くが心の奥底にそういった誇りを持っている。
それが悪いことだとは言わない。でも俺に言わせれば少々『頑固』だと思うんだよ。
『誇り』という単語を英語にすると『プライド』だそうだ。格闘技のタイトルにもなったあれだな。
だが、プライドと言い換えると“誇り”高いは、“プライドが”高い……少々『意地っ張り』に受け取られやしないか?
意地っ張りな女の子は嫌いじゃあないが、俺を含む一部のそういう……性癖?を持つ連中以外には敬遠されそうだと思わないかい?
辞書だとかエキs――ウン!ウウン!……翻訳サイトだとかで調べれば厳密には意味は違うそうで、頑固という単語は『Stubborn』で再翻訳すると『頑強』だそうだが……
とにかく、そういう意味にとられてしまっても仕方ないと思わないか?
和製英語って言うのかね?ほら最近じゃ“にやにや”が“なよなよ”という本来の意味を知らないで〜なんてニュースになってるくらいだし、それと同じ感じかな?
まぁ、だからといって誇りを持つことを否定はしないけどね、ちょっと頭の片隅に入れて今度の話を聞いてほしい。

●●●

348 :
「億泰君……」
日の出とともに行われた放送によって改めて告げられた友の死に心が動かない訳がない。
橋沢育郎は嗚咽さえあげず、静かに涙を流す。
この涙の意味は彼自身にもよくわかっていた。“決別”のための涙。
だが“それだけ”ではないのもまた彼自身がよく理解している。
「スミレ……」
自分の数少ない理解者の一人。自分と同様に数奇な運命に巻き込まれたちっぽけな少女。
共に過ごした時間は少ない。しかし、過ごした時間の長さが友情の深さと比例しないことはつい先ほど『ダチ』に教わったばかりだ。
とはいえ、彼女を守ると自分に立てた誓いはもろくも崩れ去ってしまった。
育郎の手の届かない――どころか、知りもしないところで彼女は死んだのだ。
だからこそ、そんな彼女に対して涙を流す。それは“贖罪”の涙。君を守れなかった僕を許してくれと、天で見ていてくれと誓う涙。
「……行こう」
ここで崩れ落ちることは簡単だろう。三日間行われるというこの殺し合いの中ずっと喪に服していることは何よりも容易いだろう。
だが、“彼ら”はきっとそんなことは望んでいない。むしろ悪態をつきながら背中を叩くくらいのことをするだろう。
見れば足元には一枚の紙が、顔を上げればその紙を――名簿だろう――落とし飛び去る鳩が見えた。
その鳩を追うように、とは言わないが育郎は涙をぬぐい歩き出す。
目指す場所がある訳ではない。だがしかし下を向き、立ち止まることだけはしてはいけない。
走る必要もない。自分の力で一歩ずつ進んでいけばいいのだ。
この六時間で多くのことが起こった。これからも多くのことが起こるだろうし、巻き込まれもするだろう。
だが、それらの事実を全て受け止められるほどに、橋沢育郎の瞳は光を取り戻し始めていた。

●●●

349 :
「コカキィィィィッッ……!」
日の出とともに行われた放送によって初めて知ったメンバーの死に心が大きく揺さぶられる。
ビットリオ・カタルディは周囲に響き渡る声を気にもとめず涙を流す。
この涙の意味は彼自身にもよくわかっている。“悲しみ”による涙。
だが“それだけ”ではないのもまた彼自身がよく理解している。
「アンジェリカアァァッッ……!」
自分の数少ない友の一人。自分と同様に未来を見ることの出来なかったちっぽけな少女。
共に過ごした思い出と言える出来事にロクなものはない。しかし、記憶の内容が仲間の格付けになりえないことはよくよく知っている、つもりだ。
『仲間を守る』などと大それたセリフを吐く気はないが、自分たちは無敵だという自負はもろくも崩れ去ってしまった。
ビットリオの手の届かない――どころか、知りもしないところで彼らは死んだのだ。
だからこそ、そんなチームに対して涙を流す。それは“怒り”の涙。俺らのチームに喧嘩を売った連中をブチR。それを見ていてくれと叫ぶ涙。
「……行くか」
ここで泣き崩れていることは簡単だろう。三日間行われるというこの殺し合いの中ずっとグズグズ下を向いていることは何よりも容易いだろう。
だが、“彼ら”はきっとそんなことは望んでいない。むしろお前なら大丈夫だと背中を押してくれるくらいのことをするだろう。
足元で小さな悲鳴が上がったと思い視線を落とす。紙を――名簿?――落としたであろう鳩が血まみれで死んでいた、無意識に刺し殺していたのだろう。
その場を立ち去るように、というほどコソコソはしていないがビットリオは涙を拭いもせずバイクに跨る。
目指す場所がある訳ではない。だがしかし目を逸らし、立ち止まることだけはしてはいけない。
のんびりする理由はない。自分の力で確実に進んでいけばいいのだ。
この六時間で多くのことが起こった。これからも多くのことが起こるだろうし、巻き込まれもするだろう。
だが、それらのすべてを怒りの矛先と考えてしまうほどに、ビットリオ・カタルディの瞳は黒く濁り始めていた。

●●●

350 :
「てめぇが……てめぇがやったんだなッ!?」
道路に二本の線を描きながら急停止したバイクからほとんど振り落されるように降りた少年はまっすぐに僕のことを睨み付けてそう言った。
言った、というよりは『叫んだ』に近い。十数メートルもあろう距離からでも耳を塞ぎたくなるような雄叫びとともにナイフを振りかざし突っ込んでくる彼に対して――対処法が浮かばなかった訳ではない。
だんだんと自分のものにしてきた力をもってすれば逃走することも撃退することも難しくはないと思う。
でも、僕がそれをしなかったのは少年の叫び声が気になったからだ。
“てめぇがやった”とは、つまり、何かしらの事件の――十中八九殺害に関することだろう――犯人を探し求めているということだ。
そして僕を見るなりそう疑いをもって襲いかかってきている!ならば僕は僕自身の無実を証明しなければならないッ!
「待てッ!早まるなッ! 僕は僕自身が生きるための目的を見つけたいだけだ!」
少年に向かって叫ぶ。しかし聞こえていないのか、聞いていないのか、少年の足が止まることはない。むしろ加速しているくらいだ。
「ハッタリ抜かしてんじゃあねェッ 甘ったれのド|野郎ッ!」
――ドスッ!

●●●

オレのドリー・ダガーを思い切り胴にくらったクソガキは動かない。
が……それはよく見たら間違いで、コイツは胴にくらった訳じゃあなかった。
「こ……こいつバカかあーっ!!ナイフを素手でつかんで止めやがったァーッ!」
このクソが思いっきり刃をつかんでるせいで俺のドリー・ダガーはそれ以上前には進まない。
進まない――がッ!
「ヒョロヒョロとしたタマナシよォ!オレがこのナイフをちょいとでも引っ張ったらどうなると思う?
 そのヘナチンみてぇな四本の指が落っこちるぜ!」
「試してみろ!
 引っ張った瞬間、僕の風のような張り手が君の頬を弾き飛ばす それでもいいのなら!」
……は?コイツ、ことごとく俺に喧嘩を売ってきやがる!
よっしゃあ、やってやろうじゃあねェかッッ!
――ザクッ!

●●●

351 :
えーっと――ここからなんだけど、悪い、ちょっと話すのは難しい。
なぜかって?まあ待てよ。端的に話さなきゃ彼らの行動はかえって解りにくいんだよ。
……とりあえずこの結末に関して順を追って話すから。

まずはビットリオ、宣言通りにドリー・ダガーを引っこ抜く。
当然育郎の指はボトボトと落っこちた。人差し指、中指、薬指、小指。親指にも付け根に深い切り傷がつく。
見てるこっちが痛くなってくるね。育郎はそんな表情は一切しなかったけど。
で、育郎もビットリオに告げたとおりだ。バオーの力を出したかどうか……本人も無意識だろうけど、とにかく空いてた右手で思い切りビンタ。
これもなかなかに痛い。ビットリオはたまらず吹っ飛んだ。
――ん?『ドリー・ダガーがダメージを反射しなかった』?
そりゃそうだ、育郎の血に濡れて刀身には何も映ってなかったし、張り倒された瞬間にビットリオはたまらず手を放してたし。
さて、もちろん育郎はR気でビットリオを叩いた訳じゃあない。すぐにビットリオのもとに駆け寄ったさ。
で、「大丈夫か?僕は君を殺そうとは思ってない!」「君が探しているのは誰の仇なんだ?」「心当たりはないのか?」とかいう質問を2、3する。
けれども……流石ギャングというか、そんなことで口を割るビットリオじゃあない。お前が仇だの一点張り……ただ頭がイカれてるだけか?
ここで育郎はどうしたか?……自分のことを話したのさ。
「分かったよ。君に質問するのはやめよう。でも聞いてくれ!僕も君と同じなんだッ!
 ――そう、僕もそうだ。前から知っていた友も、この殺し合いの中で出会った人も、失ってしまった。
 僕は自分がどうなってしまうかわからない。自分に絡みついてくる怪物の力を、運命をどう受け入れていけばいいか確信が持てないんだ。
 今の僕にはいないけど……君にはまだ友達は、仲間はいないのかい?」
――とね。
ビットリオは放送に対する怒りでせっかくの伝書鳩をぶっ殺したから血まみれの名簿なんて見てない。っていうか放送のショックでそれどころじゃあなかったし。
数秒の間はポカンとしてたビットリオ。育郎の説得にどういう心境を持ったかは彼自身にしかわからない。いやビットリオ自身も大してわかってないのかも知れないけど。
とにかく名簿という単語を聞いて育郎から差し出されたそれをふんだくる。

あった、マッシモ・ヴォルペの名が。

そして、それを確認した瞬間、というべきか……彼は痙攣しだしたんだよ。
ウケケケとも、コココとも聞こえるような奇声を上げながら。顔には脂汗が浮き出ていて目の焦点もあっていない。
ついには咳込んだと思った瞬間に盛大にゲロ吐いた。流石に育郎も驚いたみたいだよ。自分のビンタが原因かも!?って。まあ違うんだけど。

要するに――ヤクが切れたんだな。
そりゃそうだ。何時間も摂取?してなくて、しかも飛んだり跳ねたり動き回ってたんだから。余計にヤバいわな。

あとはもう、ビットリオはうわ言のようにヴォルペの名を呟きながらフラフラ歩き出すしかない。
そんな意識もはっきりしないような状況でも路面に転がる短剣を拾い上げただけ流石というかコダワリというか。もう関心するくらいだ。
で、そうなれば育郎だって慌てて追いかける。ビットリオがひっくり返したバイクを起こして。
落っこちた指は、そりゃあ痛いが――バオーの能力をもってすればくっつけることはできる。
動くかどうかはわからない。それでも切断面を押し当ててとりあえず『もう一度ポロリ』だけは免れた状態さ。
二人は――と表現していいものか、とにかくふらふらと歩き出した。ってところで話は終わりさ。……な。話すの難しいだろ?
こんなのいちいち細かく描写して話してたら日が暮れちゃうぜ?容量もいっぱいいっぱいになるだろうね。
え?何の容量かって――つまんねー事聞くなよ!

352 :
……オホン。
少々話が脱線したが二人の経緯について、『誇り』というテーマを君たちに考えてもらいながら話をしたわけだ。
さて話を聞いてもらった皆にクイズを一つ。
今回の登場人物、橋沢育郎とビットリオ・カタルディには“誇り”はあるか?
答え――ないだろうな、常識的に考えて。
育郎はバオーの能力を自分の意志で手に入れたわけじゃあない。能力に怯えてさえいた。そんな力を誇れるものか。
虹村億泰に感謝の意を込めて涙を流し決別したが、その涙を自分の誇りとして語れる程には彼も成長しきっていない。
ビットリオは自分の未来を悲観し――ていたかどうかは知らないが、Rにドップリ浸かり今を見ることすらままならない。
短絡的な性格とそんな現状。彼が誇りを持って話すことが出来る事柄は果たしてあるか?
コカキやアンジェリカの死に涙を流したがさっきまでは思考停止スタンド能力ぶっぱの“プッツン野郎”さ。そんな復讐心を誇れるか?

……『恥も外聞もかなぐり捨てて』という言葉がある。
これ、誇り高い人たちがその誇りを捨ててでも……って意味だろ?プライドが高いやつがそのプライドを折ってまで、とも言える。
だけど、だけどだ。“最初から誇りを持っていない”人間に『それ』は出来る?
誇りを持つこと、それ自体を否定するとは俺は言っていない。
でも、『誇ることすらできない人間』もこの奇妙な冒険譚の中には多く存在することも、また事実だ。
今現在誇りを持たないこの二人が、何らかのきっかけで奮起すると良いんだけどね。自分の力や生き様を誇れるように。
あァ――でも育郎はともかくビットリオはなぁ……どう思う?そりゃあアイツだって結構いろいろ背負ってるけどさ――

353 :
【C-6 南部 / 1日目 朝】

【橋沢育朗】
[能力]:寄生虫『バオー』適正者
[時間軸]:JC2巻 六助じいさんの家を旅立った直後
[状態]:全身ダメージ(小程度に回復)、肉体疲労(小〜中)、精神疲労(小)、左手の親指以外4本機能不全(?)
[装備]:メローネのバイク(押して歩いている)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:バトルロワイアルを破壊
0:億泰君、ありがとう。スミレ、ごめん。僕は僕の生きる意味を知りたい
1:目の前の少年を追う。放置するわけにはいかなそうだ(この少年と僕は……なんか……似てる)
2:恐怖を克服……か……
[備考]
1:『更に』変身せずに、バオーの力を引き出せるようになりました
2:名簿を確認しましたが、育郎が知っている名前は殆どありません(※バオーが戦っていた敵=意識のない育郎は名前を記憶できない)
3:左手の指は接着し、とりあえず落っこちる事はなさそうです。ただしすぐには動かせなさそうです(握る開く程度の動きはできるようです)
  回復速度が遅い理由がバオーの能力を使いこなせていないからなのかロワ制限なのかは以降の書き手さんにお任せします
4:行動の目的地は特に決めていません。今はとにかくビットリオの後を追い、必要なら保護しようと考えています

【ビットリオ・カタルディ】
[スタンド]:『ドリー・ダガー』
[時間軸]:追手の存在に気付いた直後(恥知らず 第二章『塔を立てよう』の終わりから)
[状態]:全身ダメージ(ほぼ回復)、肉体疲労(中〜大)、精神疲労(中)、R切れ
[装備]:ドリー・ダガー、ワルサーP99(04/20)、予備弾薬40発
[道具]: 基本支給品、ゾンビ馬(消費:小)、打ち上げ花火、手榴弾セット(閃光弾・催涙弾・黒煙弾×2)
[思考・状況]
基本行動方針:とにかく殺し合いゲームを楽しむ
0:ヤクが切れているのでまともな思考が出来ない。目的地も不明瞭
1:兎にも角にもヴォルペに会いたい。=Rがほしい
2:チームのメンバーの仇を討つ、真犯人が誰だかなんて関係ない、全員犯人だ!
[参考]
1:基本支給品をまとめました
  →いらないと判断されたものは C-6中央、アイリン達の死体の脇に放置されています
  →ドリー・ダガー以外の道具や装備品はメローネのバイクの荷台(後部座席)に乗せてあります
2:名簿を確認しましたが、自分に支給されたものは持ってきていません
3:行動の目的地は特に決めていません。というよりも考えられません

354 :
***
以上で投下終了です。
仮投下からの変更点
・誤字脱字修正&文章追加修正
・内容の変更は無し
誇りってなんだろね、な話を書いてみたかったので“被害者”の二人にスポットを当ててみました。
本当は「妹同様の存在を失った二人」をテーマにもう少しネチネチ書くつもりでした。
だが億泰はともかくコカキの存在を忘れていた……もとい、かえって話の本筋が見えなくなりそうだったので思い切ってカット。
後半の俺パートも端的に状況説明しないと。あれを一人称三人称で長々書いてたらもうね、どうしようもないですよw
(どうしようもない書き方をしている人の言えたことではないですがorz)
それから、このSSに限らずですが自分の「かぎかっこ」の使い方について少々。
『 』は漫画で言うならフキダシの中に書かれる、文字通りこの『 』で、
“ ”はジョジョ原作でもよく見るフキダシの中の傍点(文字の隣に・がうってあるアレ)をイメージしています。
今回の本投下時には修正はしていません(むしろ追加したくらい)
読みにくい・パロロワ暗黙のルール等の理由で統一すべきなどの意見がありましたらお聞かせください。
設定の矛盾や誤字脱字、その他のご指摘も受け付けております。それでは次回作でまたお会いしましょう。

355 :
投下乙
ヤク切れは考えてなかったな
しかし育朗、こいつを保護して大丈夫なのか……?
どうなるやらだ

356 :2012/10/12
保守
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