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2012年3月創作発表190: コードギアス反逆のルルーシュLOST COLORS SSスレ46 (257)
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コードギアス反逆のルルーシュLOST COLORS SSスレ46
- 1 :
- ここはPS2/PSPソフト「コードギアス反逆のルルーシュ LOST COLORS」SS投稿スレです。感想等もこちらで。
このゲームについて気になる人は、公式サイト(更新:2008/06/20)をチェックしてください。
基本sage進行で、煽り・荒し・sageなし等はスルーするか専ブラでNG登録して下さい。
(投稿前に読んでください >>2-6)
■SS保管庫
・コードギアス LOST COLORS 保管庫 Ver.1.35 /スレッド41中途まで作品収納
/管理人:保管者トーマス ◆HERMA.XREY
http://www1.ocn.ne.jp/~herma/CodeGeass_LostColors/2ch/0.html
・lcss保管庫 @wiki /スレッド40以降の作品収納 /管理人:◆1kC3aaXjik
http://www36.atwiki.jp/lcss/
■前スレ(45)
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1281466514/
(過去ログは保管庫スレッド一覧から閲覧できます)
■コードギアス 反逆のルルーシュ LOST COLORS SSスレ 32(新スレ誘導用)
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/gal/1226828782/l50
■関連スレ (外部板)
・コードギアス ロスカラのライ 彼の世界は十人10色 /主人公キャラスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/7666/1285861365/l50
コードギアス反逆のルルーシュ LOST COLORS SSスレ避難所(仮)
・代理投下依頼専用スレッド
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12122/1241695852/l50
・議論用スレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12122/1226990774/l50
lcss保管庫@wiki 連絡掲示板 (http://jbbs.livedoor.jp/otaku/12747/)
・連絡スレッド
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12747/1243581572/l50
・感想スレッド
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12747/1243673150/l50
・コードギアス【ロスカラエロパロSSスレ】 (18歳未満は立ち入り禁止です)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/11674/1264506850/l50
・801SS投稿スレ (18歳未満は立ち入り禁止です)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/7725/1239261602/l50
■公式サイト http://www.geass-game.jp/ps/
■アニメ公式サイト http://www.geass.jp/
■攻略wiki http://www9.atwiki.jp/codegeasslc/
■次スレについて。
950レスもしくは460kBオーバーしたら、スレを立てるか訊くこと。立てる人は宣言してから。
重複などを防ぐために、次スレ建設宣言から完了まで投稿(SS・レス共に)は控えてください。
※SS投稿中に差し掛かった場合は別です。例)940から投稿を始めて950になっても終わらない場合など。
- 2 :
- ■SSを投下される方へ (投稿に伴う規制は>>3参照)
1.充分な推敲はしましたか?誤字脱字のほか、1レス分の投稿分量にも注意してください。
1レスには投稿可能な容量の限界があります。容量確認には>>3に紹介されているSSチェッカーが便利です。
2.投下前後に開始・終了の旨を書いたレスを入れて下さい。(または「何レス目/総レス」を名前欄に)
3.前書き・後書き含めて10レス以上の連投になると投稿規制がかかります。(←「さる」状態)
間に他IDからの「支援」が入ることで規制は回避できますので、規制にかかりそうな長文投稿の際は
投下前に支援を要請して下さい。逆に、必要ない場合は支援の要らない旨を書いてください。
忍法帖のレベルにより異なりますが、最長120秒の間隔をあけることで次レスを投稿できます。
4.投下前は、他作品への割り込みを防ぐ為にリロードしてください。
直前の投下完了宣言から15分程度時間を置いてください。
5.投下許可を求めないこと。みんな読みたいに決まってます!
6.なるべくタイトル・カップリング・ジャンルの表記をして下さい。
・読む人を選ぶような内容(オリキャラ・残酷描写など)の場合、始めに注意を入れて下さい。
・前書きの中に、以下のテンプレを含むことが推奨されます。(強制ではありません)
【メインタイトル】
【サブタイトル】
【CP・または主な人物】
【ジャンル】
【警告】
7.作者名(固定ハンドルとトリップ)について
・投下時(予告・完了宣言含む)にだけ付けること。
その際、第三者の成りすましを防ぐためトリップも付けて下さい。
(トリップのつけ方:名前欄に「#(好きな文字列)」#は半角で)
8.規制により投下できない場合は>>1の 代理投下依頼専用スレッドに投下し、
代理で投下してもらう方法もあります。
- 3 :
- ■投稿規制について(暫定)
掲示板では、荒らし目的での投稿を防ぐため、様々な規制が設けられています。
○「忍法帖」について(http://info.2ch.net/wiki/index.php?%C7%A6%CB%A1%C4%A1%B4%AC%CA%AA)
回線の繋ぎ直しで変化するIPによる自演や別人のなりすましなどを規制する目的で導入されました。
cookieによってブラウザごとに作成され(Lv.1)、規制の適用されない範囲で日々投稿を続けていると
一定時間ごとにレベルが上がっていきます。このレベルが不十分だと、投稿容量や投稿間隔の制限、
スレ立てができないなどの規制がかかります。
○「支援」について
同一IDからの、短時間での一定回数以上の連続投稿は規制の対象となります(ばいばいさるさん)
長編SSを複数レスに渡って投稿する際、この連投規制を避けるために
他IDから何らかのレスを挟むことを「支援」と呼んでいます。
・1時間に投稿できる数は10レスまで。それを超えると規制対象に
・毎時00分ごとにリセット。00分をはさめば最長20レスの連投が可能
・規制されるのは2人まで。身代わりさるさん2人で、00分を待たずにリセット
支援が必要な際は、投稿予告をするなどして支援を要請してください。
○同一内容の投稿に対するマルチポスト規制(おしりくさい虫など。携帯のみ? )
「支援」などの同じ言葉を繰り返し投稿することでも受ける規制
違う内容を投稿すれば解除される。スペースを挟むだけでも効果あり
○1レスで投稿可能な最大容量(忍法帖のレベルによって、さらに制限がかかります)
・X:1行の最大 / 255byte
・Y:最大行数 / 60(改行×59)
・Byte :最大容量 / 4095Byte
但し、改行に6Byte使うので注意。例えば60行の文なら59回改行するので
6Byte×59=354Byte これだけの容量を改行のみで消費する。
※1レス分の容量の投稿の可否を判断できるツールがトーマス卿の保管庫からDLできます。
TOP→通常→保管嚮団→保管嚮団本部入室→SSチェッカー
<使用法>
1.ダウンロードしたものを解凍する。
2.SS.xls を開く。
3.SSをテキストエディタで開く → Ctrl A で全文コピー
4.貼り付けシートのH11セルを選択。
5.右クリック → 形式を選択して貼り付け → 値
6.レスを区切るところに
<<<<<レス区切り>>>>>
をコピペ(H6セルのものをコピペする)
限界値は自由に変えられます。いろいろお試しください。
- 4 :
- ■画像投稿報告ガイドライン
ロスカラ関連の自作画像を投稿できます。
・ロスカラSSスレ派生画像掲示板
PC用 http://bbs1.aimix-z.com/gbbs.cgi?room=lcsspic
携帯用(閲覧・コメントのみ) http://bbs1.aimix-z.com/mobile.cgi?room=lcsspic
1.画像掲示板に絵を投稿する。コテハン、トリップ使用推奨
ロスカラスレに投稿されたイメージイラストなどの場合はその旨明記してください。
2.こちらのスレに投稿報告。
微エロやゲテモノなど、その他人を選ぶ内容については注意書き必須
3.気になったら画像掲示板を見に行く。
感想は、原則として画像掲示板に書きこんでください。 画像に興味ない人はスルーしてください。
4.本人より投稿報告のあった作品については、保管庫に収納されるかもしれません。
保管を希望しない場合は、投稿報告時にその旨明記してください。
■SS保管庫収納作品の修正について
作品の修正は、本人からの修正依頼で行われます。
○保管庫(黒)収納分について(〜41スレ投稿分)
(http://www1.ocn.ne.jp/~herma/CodeGeass_LostColors/2ch/0.html)
・事前にメールアドレスの認証が必要です。
以下のリンク先での手順に従い、本人確認を行ってください。
メール認証関連専用スレッド
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12122/1249745955/l50
・要望、修正依頼等は認証済みのメールアドレスから[geass_lc_ss@yahoo.co.jp]へ送ってください。
各作品に付与されているマスターコード(その作品の投稿が始まる各4桁の「スレ番号-レス番号」)、
希望する修正内容を明記してください。
例)0003-0342 のタイトルを○○に カップリングを○○に など。
・保管される際の文字サイズやルビ振り、文字・背景色などhtmlタグによる編集を行うことができます。
使用可能タグ等は保管庫参照。(保管嚮団本部→資料室)
テキストエディタにより編集したものをメールに添付して送ってください。
○保管庫(白)収納分について(40スレ投稿分〜)
(http://www36.atwiki.jp/lcss/)
・以下のスレッドのガイドラインに従って修正を依頼してください。
連絡スレッド
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12747/1243581572/l50
----以上、テンプレ終了----
- 5 :
- 立て乙
- 6 :
- 乙です
- 7 :
- 乙です
- 8 :
- 乙〜。
- 9 :
- 乙です。
立てるのもそう気楽には出来なくなっちまってるからなあ。
ありがたい。
- 10 :
- >>1 乙
>>3の○「忍法帖」について 何だが……
創作発表板は、「忍法帖のスルー」でスレ立てにレベル制限が付くのみで
投稿容量や投稿間隔の制限は、解除されてるよ。
(>>3のURL 「忍法帖のスルー」参照)
- 11 :
- スレ立て、乙でした。
- 12 :
- 乙です
- 13 :
- 乙。
- 14 :
- スレ立て、乙です。
大変お久しぶりなのですが、SSが書きあがったので、添削の後、投下します。
よろしくお願いします。
- 15 :
- 【メインタイトル】夕暮れの教室
【CP・または主な人物】ライ×カレン
それでは、今から投下します。よければ、感想をくれると嬉しいです。
- 16 :
- 「あー、もう!」
授業時間をとっくに過ぎ、太陽が鮮やかな朱色を身にまとい、ゆっくりと沈んでいくある日の夕暮れ。
カレンは普段の学園での清楚でお嬢様然とした装いをまったく気にすることもなく、校舎を足早に進んでいた。
目指すのは自分の教室の自分の机。
学園終わりに黒の騎士団の会合があったため、生徒会の仕事も断り、最終時限の授業が終わると同時に学園を出てきたところまではよかったが、急いでいたために、思わず忘れ物をしてしまった。
「まさか、携帯を置き忘れるなんて」
自分の失態を叱責するかのようにため息がこぼれる。
カレンの携帯には、何か他人に見せられないほど恥ずかしい物が入っているわけではない。
恋人との互いの気持ちを確かめ合う愛のメールなんて当然入っていないし、個人情報といっても、生徒会長のミレイを筆頭に生徒会役員のアドレスとその他数人のアドレスが登録してあるだけだ。
黒の騎士団での連絡用には、私用で使う物とは別に、現在カバンにしまってあるもう一台の携帯を使っているため、そちらの心配はない。
しかし、見せられないわけでなくとも、見せてもいいわけではないのだ。
置き忘れた携帯にも、扇や井上ら親しい団員たちと個人的に連絡を取るために彼らのアドレスが登録されている。
ブリタニア人がイレブンと蔑む彼らの連絡先がだ。
それに、ミレイたちのアドレスだって、そう易々知られていいものではない。
携帯はロックを掛けているので、ただの学園の一教師や一生徒にそれを解除してまで中身を覗くなんて芸当が出来るとは、到底思えないが……。
「……はあ」
それでも、そんな万に一つの不安を抱えたままでは、会合に出席しても真剣に話し合いなんて出来そうもない。
カレンはカバンから取り出したもう一つの携帯で会合に遅れる旨を書き込み、ため息混じりにメールの送信ボタンを押す。
そうこうしている間に、気が付くと目当ての教室にたどり着いていた。
さっさと忘れ物を取ってきて会合に向かおうと、カレンは乱暴に扉に手をかけた。
「あっ……」
けれど、そのまま扉を開いて教室の中に入ることはしなかった。
教室にまだ一人、生徒が残っていたからだ。
その生徒は、カレンと同じ生徒会役員で記憶喪失の少年、ライだった。
ただライが教室に残っているというだけなら、カレンは何も気にせずに扉を開いていただろう。
でも、そうではなかった。窓際の席に座って窓の外を眺めるライは、泣いていたのだ。
声を上げることもなく、流れる涙を気にすることもなく泣いていた。
その事実がカレンの体から自由を奪い、カレンは廊下からそんなライの姿を呆然と見ているしかなかった。
- 17 :
- 支援
- 18 :
- 窓から外を眺める。
そこに映るのは、部活に精を出す男子生徒たち、まだ帰宅せずに、ベンチに座って友人とおしゃべりしている女子生徒たち、腕を組んで一緒に校門を出て行くカップルの姿。
もう日も暮れかかっている時間だというのに、まだ少なくない数の生徒たちの様々な様子を観察できる。
「……楽しそうだな」
薄く呟きが零れる。
みんなが、笑っているのだ。
ライの目に映る生徒たちは、みんなとても楽しそうに笑っている。
部活をしている男子生徒は記録を更新したと喜び、女子生徒たちは冗談を言い合って顔を綻ばせ、カップルの二人は見つめ合って微笑する。みんながとても楽しそうだ。
ただ一人、ライだけを取り残して。
「僕には……無理だな」
あんな風には笑えない。
無感情なままの表情で吐き出される言葉は、ナイフを自分に突き立てるようにひたすら冷たい事実という棘をライの胸に打ち込んでいく。
「僕は、……一人だ」
この学園に、みんなと同じ一生徒として通っている。
それなのに、どうしてもこの考えが抜けない。
何もかもが不安定なライの中で、これだけが唯一揺らがない。
その考えは、他の生徒の楽しそうな姿を見るたびに、そして、ミレイたちの、生徒会のみんなの笑顔を、ライに対して向けられる笑顔を見るたびに深く深く突き刺さる。
憧れはある。
自分もあんな風に笑い合いたいと。
けれど、彼らに近づこうとすると、心の深層部がそれ以上近づいてはならないと警告を鳴らす。
まるで、そうすることが許されないことのように。
「……」
どうしても思考は暗く沈んでいく。
こんなことを誰かに言われたわけでもないのに。
あるいは未だ思い出せない過去の自分は、そんな許されない人間だったのだろうか?
もしそうなら、あの日決めたように、記憶を取り戻したら、みんなとは別れなくてはいけなくなる。
「僕は……」
ライは何度目かの自分をなじる言葉を口にしようとする。
だが、言葉の続きが紡がれることはなかった。不意に、人の気配を感じた。
- 19 :
- 支援
- 20 :
- さっきまでライ一人しかいなかった教室に、今は別の者がいる。
それは、女生徒だった。
教室の扉の傍でたたずむ女生徒は、じっとライを見つめていた。
ライを見つめる目には悲しみと寂しさが宿っていて、そのまま見つめられていると、何もかも見透かされているような気持ちになる。
「カレン……」
ライが名前を呼ぶと、カレンは夕日に映える赤い髪を揺らして近づいてくる。
ライの席の目の前に来たところで、二人の視線が重なる。
「……」
「……」
交わす言葉もなく、互いに口を開かない二人の間には、沈黙も伴って、重苦しい空気が流れる。
「カレン、何か用か?」
そんな空気に耐えかね、ライはカレンの様子を窺いながら尋ねる。
だが、彼女からの返答はなく、カレンはただじっと、物憂げに瞳を揺らしてライを見つめる。
「カレン」
もう一度、呼びかける。すると、彼女に動きがあった。
腕をライの顔の真横へ持っていく。
伸ばした手のひらが後頭部に触れ、ライの癖のある毛を押さえる。
そして、頭が前に引っ張られ、ライの顔がカレンの胸に収まっていた。
「なっ……!」
唐突に、本当に唐突に起こした彼女の行動にライの理解が追いついていかない。
それでも、至近距離にある女生徒用の制服の上着部分と顔に伝わる女性特有のやわらかい感触が、嫌でも現状を知らせる。
「カレン! 何を……!」
挟まれている顔をカレンの腕から抜けようともがく。
だが、そうすると、カレンが腕に力を込めるので、あまり激しく動くと彼女の胸に顔を押し付けてしまう。
そんなことでライが逡巡していると、そこで、ようやくカレンが口を開く。
「大丈夫よ。ライ」
「何がっ……?」
「大丈夫」
同じ言葉を繰り返して、カレンは頭を抑えていた手でライの髪を撫でる。
その優しい感触に次第に照れが消えていく。
「大丈夫だから、泣かないで」
「えっ……」
言っている意味が分からなくて、思わずたじろぐ。
けど、目じりに溜まっている涙滴と彼女の上着に滲んだ涙の跡で気づく。
ライは無意識の内に泣いていたのだ。
「安心して。みんながいるから。私がいるから」
優しい温もりに包まれていく。
なぜだろう。彼女に触れられていると、とても心が安らぐ。
「あなたを、想っているから」
「ああ……」
知らぬ間に、ライは体から力を抜いて、カレンに身を委ねていた。
そんなライをカレンはぎゅっと抱き寄せる。
そっと目を閉じると、彼女の香りが鼻腔をくすぐる。
暗く雲がかかっていた心が晴れわたっていくように感じる。
「ありがとう、カレン」
「どういたしまして」
そう言って二人は、互いに身を寄せ合う。
- 21 :
- 支援
- 22 :
- あれからどれくらいの時間が経ったのだろうか。
まだ日が完全に沈みきっていないところを見ると、それほど長時間ではないだろう。
それでも、先ほどまで聞こえていた他の生徒たちの声が消えていることから、幾分かの時間は過ぎたのだろう。
「……」
「……」
教室の中が静寂で満たされる。
抱き合っていた二人は今はもう離れて、隣同士の席に座って、無言のまま向かい合っている。
ライは少し気まずそうにカレンを見つめて、カレンはライと目を合わさないように、顔を真っ赤にしながらうつむいている。
「あの……」
どうしたものかと、恐る恐るライが先に口を開く。
すると、言い終わる前に、カレンはガバッと顔を上げた。
「ち、違うの!」
「え……?」
「さっきのは、その……、そういうのじゃなくて。えっと……」
今まで以上に顔を赤くして話すカレンの言葉は、慌てているのか、要領を得ない。
「カレン、落ち着いて」
「で、でも!」
「わかってるよ」
そう言うと、カレンはきょとんとして、ライを見つめる。
そんなカレンの仕種に苦笑しながら、ライは話しかける。
「今したことも、言ったことも、勘違いして欲しくないってことだろう?」
「え、えっと……。う、うん……」
「心配しなくても、そのくらいわかってるさ」
他の誰かに話したりもしないと付け足すライに、カレンは複雑な気持ちを表情に表す。
本当に勘違いなのだろうか? 私はどうなんだろう。
「でも……」
カレンが定まらない想いに思考を廻らせている間に、ライはカレンに告げる。
「僕は嬉しかった」
「へっ……?」
嬉しかった、という思いもよらない言葉を聞いて、カレンは思わず素っ頓狂な声を上げた。
「君に抱きしめられた時、なぜだか心がとても安らいだんだ。まるで、君の中にある優しさが僕の中へと流れ込んでいくように」
その言葉を聞いている内に、カレンは羞恥心がふつふつと沸いてくるのを感じる。
だが、すらすら述べるライは、自分がどれだけ恥ずかしいことを言っているのかなんてまったく意識せずに続ける。
「カレン、君は、とても温かいな。……ありがとう」
「〜〜〜〜っっ!?」
感謝の言葉ともに、ライはカレンを見つめる。
すると、羞恥心が許容量を超えたカレンは、熱でもあるのではないかと思えるほど顔を赤くして、立ち上がった。
「あ、あの! わ、私、用事があるから!」
「そうなのか?」
明らかに挙動不審なカレンの言動だが、ライは意に介した様子もなく、平然と受け答えする。
「ま、またね」
言い終わる寸前ぐらいで、カレンは素早く自分の机の中から携帯を抜き取り、お嬢様の猫かぶりをする余裕もないのか、走って教室を飛び出した。
「ああ……って、慌ただしいな」
そう言って、走り去るカレンの後ろ姿の残滓を思い浮かべながら、笑った。
そう、笑ったのだ。
- 23 :
- 支援
- 24 :
- 「はあ……、はあ……」
今までいた教室から離れて、別の階層の廊下まで来たところで、カレンは走るのを止めて、壁に手をついた。
どうしようもなく胸が苦しい。
普段はこれぐらいの運動で乱れるはずのない息が乱れて、体は酸素を欲している。
「私……」
そっと胸に手を置くと、服の上からでもはっきりとわかるほどに、心音が高まっている。
やかましいほどの鼓動がカレンを締め付ける。
「私、どうしてあんなことを……」
考えるよりも先に体が動いて、気が付けばライを抱きしめていた。
さらにその上、まるで告白めいたことまでしてしまった。
「ああ〜〜、もう!」
思い出したために再び湧き上がってきた恥ずかしさを抑えようよと、カレンは唸る。
けれど、ありがとうと言ってカレンに微笑んだライの顔を、どうしても思い出してしまう。
「どうすればいいのよ……」
ライは少しも気にした風ではなかったけれど、明日、彼と会った時にどんな顔をすればいいのだろう。
ライはカレンの行為をどう思ったのだろう。……私のことをどう思っているのだろう?
「もしかして、私……」
その先の言葉は紡がれることなく、カレンが薄く零した呟きは廊下を流れて消えていく。
そして、窓から入り込んだ風が、火照ったカレンの頬を優しく撫でた。
- 25 :
- 支援
- 26 :
- 投下が遅れてすいません。久しぶりだったもので、手間取りました。
「一行が長すぎるために投稿できません」と何度もエラーが出たので、一文毎に改行しました。
なので、読みづらいかもしれませんが、どうかご容赦を。
やっぱりライカレはいいですね。
- 27 :
- 投下お疲れ様でした。
- 28 :
- 投下、乙です
カレンのさりげない告白と気遣いにニヤニヤさせられました
やっぱり、ライカレはいいですね
- 29 :
- 龍を食べてみたい人、です
明日にでもturn05を投下したいのですが、
前回のNGワードの失敗があるので、単語をチェックしているところです
引っかからないように、確かめることってどうやったらできるのでしょう?
かつて、さるで規制されたことがあるので、スレで直接確かめるのは怖いのですが…
- 30 :
- 投下しないの?
- 31 :
- いつも通りの構ってちゃんなんだろ
- 32 :
- 投下乙です。よても面白かったです
- 33 :
- >>29
とりあえず投下してみるのがいいと思うんだが
>>26
投下乙でした
ライカレ好きの自分にとってはたまらないものでした
- 34 :
- 遅れてすみません
パソコンのほうが規制されていて書き込めないので、携帯から書き込みます
書き込みが遅いかもしれませんが、ご容赦ください
- 35 :
- わかりましたー
- 36 :
- TURN05「二人のルルーシュ」
行政特区日本式典で起こった虐事件。
これを契機に勃発した黒の騎士団の反逆――《ブラックリベリオン》は、トウキョウ租界から遠く離れた神根島で、終止符は打たれることになる。
「スザクうゥッッ!!」
「ルルーシュゥゥツ!!」
親友だった二人は、互いに憎悪し、拳銃を向け合い、引き金に力を込めた。
ルルーシュが撃った弾丸は、スザクのインカムをかすめる。
だが、スザクの撃った弾丸は、ルルーシュの頬を抉り、後頭部を突き抜けた。被弾した体は上半身をのけ反らせ、そのまま、仰向けに崩れ落ちる。かたい音を立てて、ゼロの手からコイルガンが転がり落ち、マントを羽織った体は地面を無様に這った。
ルルーシュの手足は震えていた。立ち上がる気配はない。
スザクは知っている。
今の痙攣は、死に直面した動物の動きだ。
父親を刺した日から――
日本がブリタニアに敗戦した日から――
軍人になった日から――
人間の死は何度も見てきた。
だからこそ、解る。
ルルーシュはもう、助からない。
「…ユフィは、最後の、最後まで…ゼロの正体を、口に、しなかった」
ユーフェミアが起こした日本人虐は、インターネットを通じ、世界中に知れ渡っている。ブリタニア政府が情報統制しようとも、人の口に戸は立てられない。
「ユフィが、何をした?」
スザクは眉間に皺を寄せ、顔面の皮膚が引き攣り、心も体も、悲しみと憎しみに支配されていた。
「お前は今まで、何をしてきた?」
スザクの翠緑の瞳がぎょろりと動き、足元を映す。
ルルーシュの麗しい容姿には、黒ずんだ銃創が空いている。
「正義を驕り、皆を騙して、戦場に駆り立て、多くの人間を犠牲にしただけだろう!」
スザクはありったけの意を込めて、ルルーシュに銃口を向けた。
「ユフィは、お前を信じていたのにッ!」
彼女は、ブリタニアと日本の架け橋と成り得る存在だった。彼女は武器を持って互いに傷つけあうよりも、話し合うことで互いを理解し、武器を持たない戦場で、独立を勝ち取る方法を提示した。
そんな心優しいお姫様の名前は、未来永劫語り継がれることになる。
虐皇女ユーフェミア――、と。
「ギアスでユフィの意思を捻じ曲げて、日本人を虐させてッ!なぜ、なぜユフィをしたんだよおォォおお!!」
ドンドンドンッ――!
スザクは無我夢中で引き金を引き続けた。
コイルガンから排出された空薬莢が地面に飛び散り、ルルーシュの体は、銃弾を浴びるたび、何度も跳ねる。弾倉が空になっても、スザクは、カチカチ、とトリガーを引いた。
声にならない絶叫を喉から吐き、くぐもった息をこぼす。
したいほど、憎かった。
だから、した。
「……う、うううううぅッ…」
気づけば、温かいなにかが頬を濡らしている。
両目からは、ぼろぼろと涙が溢れていた。
物言わなくなった親友の傍で、スザクは両膝から力が抜け、地面に座り込む。
「ぐふっ、うぐっ、あ、あぐぅ…」 喉から込み上げてくる嗚咽が、暗闇が広がる洞窟に響いていた。
- 37 :
- 「気は済んだかい?枢木スザク」
光に目が眩んだスザクは、第三者の声を耳にして、はっと振り返る。
「……V.V.?」
神根島は断崖絶壁の孤島。
交通手段が存在しない場所に、どうやって辿りついたのか。
一瞬でそこに現れたかのように、V.V.を含む黒装束を纏った集団がスザクの眼前に佇んでいる。
「っ!?」
違う。
V.V.が現れたのではない。
スザク自身がいた場所が、転移していた。
見渡せば、未知の空間に自分がいる。
「意外に呆気なかったなぁ、ルルーシュは。マリアンヌの子供のくせに」
V.V.は、瞳から光彩を失ったルルーシュを、足のつま先で小突く。
男の肩に担がれていた青年が、大理石の床に置かれる。
銀髪が揺れ、見知った少年の顔があった。
「………………ラ、イ?」
上半身は裸であり、ユフィに撃たれた脇腹に包帯が巻かれていた。
「彼、暴れると危ないから、拘束服できつく縛っておいて。口を塞ぐのが先だよ」
V.V.は抑揚のない声で云い、黒服の男たちは命令に従う。
「何故、彼を…?」
「あれ?話していなかったっけ?」
とぼけたような顔で、V.V.はスザクを見た。
スザクは、V.V.が外見から判断できるような、年相応の貴族の少年とは思っていない。
小さな体躯から滲み出る異様な気配に、スザクの第六感はけたたましい警鐘を鳴らしている。
「ライはね、僕やシャルルの憧れなんだ」
シャルル――
ブリタニア皇帝の名前を呼び捨てにするV.V.にスザクは面食らった。
しかし、彼の何気なく云った言葉も、スザクの思考を揺さぶるには十分な威力を持っていた。
ライは、アッシュフォード家に保護された記憶喪失の人間である。
皇帝やV.V.に興味を持たれるどころか、認識すらされない人物のはず――
「リカルド・ヴァン・ブリタニアなんて、古い血筋を持つというだけ祭り上げられた人間さ。
でもね、彼は違う。
実名共に、ブリタニアの最高の王だった」
ライが、ブリタニアの王?
ライ………ブリタニア。
スザクは、ライとブリタニアの単語を脳内で発音し、イントネーションにひっかかりを覚える。
そして、ある名前が頭を過ぎり、絶句した。
- 38 :
- スザクは友をし、もう一人の友を皇帝に売り払った対価に、ナイトオブラウンズの地位を手に入れた。ぽっかりと空いた心の虚空がさらに広がるだけで、後悔は微塵も無かった。
その隙間を埋めるために、人に後ろゆびを指されれば、さされるほど、任務に没頭していく。ナイトオブセブンの肩書と、積み上げてきた成果が、反対派を封じ込め、仲間を呼び寄せ、ブリタニアの中で、確固たる地位を築き上げていった。
C.C.の登場と、ゼロの復活。
もし、ライのギアスが解け、ゼロを名乗っているのだとしたら――
スザクは、この場でライをすことになる。
(―――これは、最終テストだ)
『もしもし?聞こえているんだろう?ルルーシュ君』
ライは後ろを振り向いたまま、言葉を発せない。
『もしかしてスザクから聞いていなかったかい?それは驚かせてすまなかったね』
「…る、ルルーシュ殿下とお話しできるなんて、光栄です」
『そんなに畏まることは無いよ。ルルーシュ君。それと、私は殿下じゃないよ。とっくの昔に皇位継承権を失っているからね。ふふっ、それにしても、変な気分だな。自分の名前で相手を呼びかけるなんて』
携帯電話から聞こえてくる声は、間違いなくライの知るルルーシュ・ランペルージだった。棄てられた皇子であり、ブリタニアに挑んだ《ゼロ》でもあった男。
そんな彼が、呑気な口調でライに語りかけてくる。
『君、チェスがとてつもなく強いんだって?スザクから聞いたよ。私がエリア11の総督として赴任した際には、一局どうかな?本国でも相手になる人がシュナイゼル兄様ぐらいしかいなくてね』
「…私も、相手になる者がいなくて、少々寂しい思いをしていたので…」
『ははっ!それは楽しみだ。総督って言っても、私はただのお飾りだからね。暇な時間はあるのさ。じゃあ、エリア11で会おう。ルルーシュ君』
プツリ、と電話が切れた直後、
「…スザクッ!」
ライが狼狽した声を出した。
スザクは身構える。
ライのギアスは聴覚に訴えるギアスだと聞いている。ならば、ギアスを発動させる前に、体を押えつけて口を封じ、喉元を斬り裂いてしまえばいい。
「びっくりしたよ。心臓が止まるかと思った!ルルーシュ様って、あの閃光のマリアンヌ様の息子だろう?」
「…え?」
「俺の腕を買いかぶりすぎだよ、スザク。俺が惨敗して、ルルーシュ様の機嫌を損ねでもしたら、どうすればいいんだい?」
ライもルルーシュと同じほど、頭の回転が速い。
少々の罠ではひっかからないどころか、たちまち、それを逆手に取られ、不利な状況を作られるかもしれない。だからこそ下手なカマはかけず、タイミングを見計らい、最大級の罠をしかけた。
死んでいるルルーシュが生きている。
ライの動揺を誘うために、これ以上の仕掛けは無いだろう。
スザクは袖に忍ばせている軍用ナイフをいつでも取り出せるようにしていたが、ライの表情を観察していて、毒気が抜かれる。
どう見ても、記憶を取り戻したような素振りではない。
- 39 :
- すみません。投下ミスです
37と38の間にこのレスです
「ま、ま…まさか」
神聖ブリタニア帝国建国に際し、ブリタニア史の初期に語られる王。
実史が幾多の逸話や伝説で語り伝えられ、実在したことすら歴史家たちに疑われる幻の人物。
二〇に満たない年齢で王位についた彼は、先進的な改革を断行し、民を蛮族の侵入や飢餓から救ったと思いきや、一年後には国民を総動員させ、敵国に玉砕させた。
この大事件が、ブリタニア覇権の火ぶたを切ることとなり、帝国内では英雄と称えられるも、敵国からは稀代の暴君、《狂王》とも怖れられた若き王。
「うん、そうだよ。彼はライゼル・エス・ブリタニア。僕たちの遠いご先祖様なんだ」
「そ、そんな…だって、狂王は数百年前の人間で…!」
ギアス――
言葉だけで、どんな命令でも人を従わせることができる力。
そんな得体の知れないモノが存在するのならば…
「実はね、ライもギアスも持っているんだ。ルルーシュと同じ、絶対遵守の力を」
スザクの思考は停止した。
「…ライが、ギアス、を?」
ルルーシュだけではなく、ライも、ギアスを持っていた。
その事実が、スザクをどん底にたたき落とした。
ライの人物像が、音を立てて崩れていく。
彼の笑顔も、彼の優しさも、全てが――嘘。
「………そうか」
恋人の死。
一人の友の害。
もう一人の友の嘘。
大切なものをすべて失い、満身創痍になったスザクの心身に、妙な力が宿り始める。
気付けば、涙は、とっくに枯れ果てていた。
氷河のように冷えきっていた心に、凄まじい感情が突如出現し、その氷をじわじわと溶かしていく。
だが、それはかつてのように、己を律してきた正義感や情熱ではない。
全身を昂ぶらせている正体は、全身が煮えるような黒い炎。
「ライ、ルルーシュ…」
これが罰だというのなら、その罰を受け入れよう。
しかし、いくら強靭な精神を持つ人間でも、度重なる悲劇に打ちひしがれ、必ず立ち直れるとは限らない。
心は、曲がることも、折れることもあれば――壊れることもある。
「お前たちは、俺を…ずっと騙していたんだな」
無言で立ち上がったスザクは、床に倒れているライに近寄ると、乱暴な手つきで、彼の銀髪を掴んだ。
◇
- 40 :
- 「あ、ああ…その時は、僕がナイトオブセブンとして責任を取るよ。ルルーシュ様のチェスの腕を見ていたら、ライと互角なんじゃないかなって思ったんだ」
「ウソをつけ、スザクはチェス弱いじゃないか」
「まあ、得意ではないけど、棋士の力量はある程度はわかるつもりだよ」
ライは襟首のボタンを外し、右手で仰ぐ。
「…ふぅ、こんなに冷や汗かいたの、いつ以来だろう?」
「ごめん、ルルーシュ。驚かせるようなことしちゃって」
スザクはライに対し、頭を下げた。
「おいおい!簡単に頭を下げるなよ、スザク。今は立派な貴族様だろう?下手なことはするもんじゃないさ。ちゃんと貴族らしく、堂々と構えておけよ。ルルーシュ様との一局は、俺がちゃんと引き受けたからさ」
驚いた様子を見せるライに、スザクは柔和な笑顔で返す。
「僕は、友達としてルルーシュに謝っただけさ」
「…そっか、俺としてもスザクが友達であるのは、鼻が高いよ」
そういって、ライはスザクに手を差し伸べた。二人は手を握り、とりとめのないやりとりを交わすと、校舎の屋上を後にした。
スザクは、ライの拳から血がしたたり落ちていたことには気付かずに――
◇
太平洋に面した沿岸部のカリフォルニア大陸には森林、砂漠、山脈があり、環太平洋造山地帯、環太平洋火山帯の一部に含まれ、東西南北、起伏に富んだ環境を持っている。
カリフォルニアセントバレーと呼ばれる世界最大級の農業地帯が存在し、州都であるサクラメントはブリタニア一の人口数を誇る。
18世紀後半、先住民族が暮らすこの土地は、スペイン帝国の植民地となり、19世紀前半にはメキシコ統治による第一メキシコ帝国の発足し、後に共和国へと変わるが、ブリタニアとの戦争によって、領土を割譲され、現在では神聖ブリタニア帝国の属州となった。
年間を通して、温暖な気候に恵まれたサンディエゴにあるカリフォルニア基地では、ログレス級の大型浮遊航空艦を筆頭に、カールレオン級、中型級のアヴァロンが停泊し、基地全体が物々しい空気に包まれていた。
「侮ってはなりません。ゼロは、敵ながら、策謀に長けた人物です。何か仕掛けてくる可能性が非常に高い」
「弱気だな。それでも帝国の先槍と呼ばれた男か」
- 41 :
- 出発時刻が目前に迫るなか、この大艦隊を指揮するアプソン将軍に忠告する人物は、エリア11から訪れたギルフォードであった。
「ルルーシュ総督には私が付いている。貴公の出番など無い」
「しかしゼロは…」
先ほどから同じようなやりとりが続いていた。アプソン将軍はギルフォードの言葉を頑として受け入れない。
「まあ、あれほどの無様な敗北を喫すれば、ゼロが恐ろしくなるのも必然か…」
と、侮蔑を込めた視線を送る。
その途端、ギルフォードは表情を硬化させ、後ろに控えていたデヴィット・ダールトンが露骨に反応した。
中華連邦総領事館での一件は、誰もが知っている事件だ。
一対一の決闘で、帝国の先槍と呼ばれるギルフォードが、ゼロに打ち負かされた。
ギルフォードの実力を知る者は、ゼロの卑劣な策略にかかったと考え、名前だけを知る者は、彼の実力に大きな疑問を抱いた。
単なる軍の失態ではなく、ナイトメアのパイロットたちには大きな衝撃を与えていた。
「ゼロは既に死んでいる。奴はその名を騙っているだけだ。偽物におびえるなど、コーネリア皇女殿下に申し訳ないとは思わんのか!」
口を濁すギルフォードに追い打ちをかけるように、アプソン将軍はたたみかける。
名家の貴族に生まれ、軍人のエリートコースを歩んできたにも関わらず、功績らしい功績を上げず、軍務の晩年を迎えつつあった、最初で最後の任務である。
アプソン将軍の異様な意気込みは、ブリタニア皇族に対する過度の忠誠も相まってか、貴族としての品格を欠いていた。
「申し訳ない〜」
張りつめた空気を打ち破ったのは、貴族の中で最も異端と呼ばれる人物の登場によるものだった。
「ロイド伯爵…」
アプソン将軍の一族にひけをとらない名家の長でありながら、作業服で会合に出席するロイド・アスプルントは、奇妙な足取りで、ギルフォードに報告する。
「ランスロットのユニット調整に手間取ってね♪遅刻しちゃいましたぁ」
「お久しぶりです。ロイド博士」
「いやぁ、皇帝ちゃんの直属になったからぁ」
「不敬であろう!皇帝陛下に対して!」
アプソン将軍はロイドを一喝するが、彼もまた同様、人の話を聞く耳を持っていない。
「相変わらずですねぇ…」ギルフォードは苦笑するが、眼鏡の奥で鋭い眼光をかたどると、彼の問いを読み取ったロイドは、後ろに控えているセシル・クルーミーに視線を流す。
「ジュナイゼル殿下のラインから確保しました」
「…感謝します」
アプソン将軍は、事前にギルフォードが手を打っておいたことに勘付き、表情が歪んだ。
アプソンも彼なりに用心に用心を重ねたうえで、カールレオン級浮遊航空艦を四機も配備したのだ。これ以上軍備を増強し、黒の騎士団が現れなければ、アプソンは《臆病者》呼ばわりされることになる。
貴族にとって名誉を汚すことは、死よりも耐え難い屈辱。アプソンは不服の感情を取り繕いもせず、部下とともに顔をしかめていた。
◇
足が、ふらつく。
頭部を強打されたように、思考がうまく機能しない。
スザクからもたらされた情報に、ライは眩暈すら覚えた。
- 42 :
- ――生きていた?
――ルルーシュが?
咄嗟にスザクから顔を隠していなければ、確実にボロを出していた。不安定な足取りで、ライは学生寮の寝室に向かう。数分もかからずに到着する廊下の道のりが、やけに長いものに感じた。
扉を開けると、
「…ルル!」
恋人のシャーリー・フェネットの姿があった。部屋の電気はつけておらず、窓から差し込む月明かりが、シルクのカクテルドレスを煌びやかに照らしている。
「もー!ダンスパーティ、終わっちゃったじゃない!一緒に踊ろうって前からメールで何度も送ってたでしょ!」
確か、ポケットの中で、何度も携帯電話のレーションが鳴っていたことは覚えている。
「皆が躍っている間、ずぅーっと、一人ぼっちで…ドレスだって無理言って、ミレイさんから貸しもらったのに」
声色から分かる。
シャーリーはかなりご立腹だ。
パーティで待ちぼうけをくらうのは、自慢の彼氏のいる身としては、悪夢だろう。妙な噂が女子の間で立ってしまう恐れもある。
シャーリーは、少しヒステリック気味に辛辣な言葉を並べ立てるが、ルルーシュ――ライが、一言も云い返さないことに疑問を持つ。口を閉じると、大きな足股でライに近づいた。
「…ちょっと?聞いてるのっ!?ル―…」
俯いていたライは、突然、強引にシャーリーの体を抱き寄せると、そのまま唇を奪った。
カチッ、と二人の前歯が当たるが、ライは、シャーリーの口を無理矢理こじ開けると、温かい舌をねじ込んだ。右手で彼女の頭を固定し、左手を腰に回す。
「――ん、はぁっ…んっ!」
呼吸することも忘れ、ライはシャーリーの唇を貪った。蚕の繭で作られた質感が良く、シャーリーの体を服の上から執拗に愛撫する。シーツが整えられたベッドに二人は倒れこむと、体の絡み合いはさらに激しくなった。
シャーリーの耳元には、真珠のイヤリングがある。彼女の18歳の誕生日に、ライが送った装飾品だ。『天使の涙』と呼ばれるバロック型の真珠であり、希少性が高く、学生では到底、手の届かない代物であった。
彼女が身につけている衣服、靴、装飾品や髪型、アイメイク、マニキュア、ペディキュア、香水――など、全てをチェックし、変わったものがあれば、逐一コメントする。
だが、今のライにはそんな余裕はなかった。
凍てついた心を温めるために、生々しい人間の肌のぬくもりを欲していた。
ライは接吻を止めると、シャツのボタンを外し、制服のジャケットを乱暴に放り投げると、再びシャーリーの体に覆いかぶさった。彼女のドレスは次第に乱れ、指に引っかかったショーツを、一息に剥いだ。
「―――いやッ!」
両手でドン、と胸板を押され、シャーリーに拒絶される。
どんなに迫っても、ライの行為を拒むことの無かった恋人が、初めて拒否した。
「シャーリー…」
「…近づかないでっ!」
まくらを投げつけられた。
すると、シャーリーのすすり泣く声が聞こえはじめる。
両手で顔を拭い、美容院でセットされたはずの茜色の髪は散乱し、口紅は頬まで引き伸ばされている。
「…………僕は、誰だ?」
「……え?」
「君は、ライという男を…知っているかい?」
- 43 :
- 二人の間に沈黙が流れる。
ライは瞳孔が開き、暗闇に眼が徐々に慣れてくる。
「……ルルーシュ。携帯をかして」
無意識にのポケットをまさぐった。シャーリーを押し倒した時に飛んだものだと思い、ハイヒールが転がっている床に目を移動させる。シャーリーとお揃いのストラップをつけた携帯電話を発見し、手を伸ばそうとして――
本能が刺激される。
「ぅわッ!?」
ライが身を翻した途端、ガシャン!と耳の傍で、花瓶が割れた。
シャーリーがライの頭部を狙って、花瓶を叩きつけたのだ。水飛沫がライの二の腕を濡らし、活け花が散らばった。
今の攻撃は、すつもりでやったとしか思えない。
ライはシャーリーの顔を凝視して、言葉を失う。
瞳が赤く縁どられている。
「…シャーリー!?」
そういえば…「携帯をかして」と言ったシャーリーの声色に違和感があった。交際を始めて、ルルーシュのことを「ルル」としか呼ばなくなっていたのに。
ベッドに上に立ち上がったシャーリーは、
「ライゼルの記憶の帰化を確認、しかし、ライゼルの害には失敗。よって…」
無表情に言葉を吐いた。
そして、おもむろに花瓶の破片をとると、鋭利になった部分を首筋に当てた。
このままでは、シャーリーは死んでしまう。
まるで誰かに操られているような彼女の言動に、ライは、はたと気づいた。
(…まさかっ!)
「ライが命じるッ!」
左眼に不死鳥のような印が現れる。
「私が喋ったことを、全て忘れろ!」
聴覚を媒体とするライのギアスは、シャーリーの耳に流れ込み、記憶を改変する。意識が途切れた彼女は、両足から力が抜け、ライはベッドの上で受け止めた。
数秒もしないうちに、シャーリーはライの腕のなかで、正気を取り戻す。
「…あれ?わたし、何を…?」
シャーリーを見て、確信する。
先ほどの凶行は紛れも無く、ギアスの仕業だった。
凶行のトリガーは、『ライ』。
ライがライ自身のことを問いかけると、刷り込まれたギアスが発動し、ライに襲い掛かるようになっていた。携帯を使用するという行為から察するに、ブリタニア情報部にライの記憶が戻ったことを何らかのメッセージを用いて伝えるようになっているのだろう。
また、連絡ができない場合はライ害を実行し、それができないと判断した時は、自決するようにギアスがかけられており、ライの近辺で隣人が不審死すれば、それは動かぬ証拠となる。
あまりにも残酷な仕掛けに、ライは胸が引き裂かれるような思いがした。
「……ルル?どうしたの?」
身に起こったことが認識できず、辺りを見回すシャーリー。
「…なんでも、無いんだ」
ライは、シャーリーの体を強く抱きしめる。
「ちょっと…!左手、怪我してるじゃない」
スザクから驚愕の事実を知らされた時のものだ。
拳を握りしめすぎて、指が皮膚に食い込んで、血が滲んでいる。
ライは、ますます、両腕に力を込めた。
「…なんでも、ないんだ。シャーリー」
シャーリーの首元に頭を埋めたまま、ライは彼女を離さない。
「……もしかして…泣いてる、の?」
ライは、何も答えられなかった。
- 44 :
-
◇
けだるい睡魔を振り払いながら、初老の男は、正門の警備室の中で椅子に座り、新聞を広げた。
ブラックリベリオンによって鎮火したゼロの報道は、バベルタワー、中華連邦総領事館の事件をおいて息をふき返き、記事の一面はゼロと黒の騎士団に独占されていた。著名な人間の根も葉もないコラムは読み飛ばし、民間メディアがどこまで掴んでいるかを確認する。
機情が得る情報と民衆が得る情報では、正確さと鮮度に関して、天と地の差があるが、これも諜報部たる人間の仕事であった。
アッシュフォード学園の正門は七時に開けなければならないが、まだ時間はある。年嵩の男は、窓を開けると、肌寒い早暁の空気に触れ、ガウンを羽織った。
人の足跡が聞こえる。
校舎の方角に目を向けると、制服姿のルルーシュ・ランペルージが警備室に向って歩いてきた。美しい銀髪、端麗な顔立ちに、女のようにきめ細かい肌をしている少年。成績は優秀で、運動も出来、人当たりも良い。
同じ男として、ルルーシュ・ランペールという男は認めたくない存在だった。一年間、監視し続けた身であるからこそ、彼をよく知っている。ルルーシュの学園生活を眺めていると、可も無く不可も無かった己の学生時代が惨めなものに思えてくる。
部下の報告によると、歓迎会の後、自室に恋人を連れ込んだらしい。
誰もが羨むような人生を過ごしている彼に、子供じみた嫉妬心を燃やしていると、
「おはようございます」
と、柔和な笑顔で挨拶をされた。
「おはよう、ルルーシュ君。今日も早いね。どこか出かけるのかい?」
言葉を交わすのは初めてではない。
ルルーシュは早朝トレーニングを日課にしており、ランニングの途中でよく顔を合わせていた。その足で朝食作りにとりかかり、七時前後には妹を起床させ、身支度を整えた後、一緒に食事を取ることが彼の日課であった。
「ええ。だから、案内してくれると助かります、――――さん」
年嵩の男は、一瞬、何を言われたのか、解らなかった。
ルルーシュが吐いた言葉を頭が理解するなり、血の気が引き、全身が凍りつく。
年嵩の男は偽名を使ってアッシュフォード学園の警備員に潜り込んでいる。ルルーシュが、彼に云った名前は、紛れもない本名。
「ライが命じる」
ルルーシュ――ライの言葉を耳にした男は、この瞬間を持って、人生は終わりを告げる。
そして、ギアスによる傀儡の余生が幕を開けた。
◇
- 45 :
- アッシュフォード学園の地下機情特務室。
通常は、諜報員たちがルルーシュ・ランペルージの監視や本国の情報局と連絡を行う場所で、彼らは日夜交代制で職務を全うしていた。だが、今日に限って、機情の諜報員は皆無。室内に設置されているテーブルの中央の椅子には、一人の学生がふてぶてしく坐っている。
スクリーンに映る魔女と会話する少年は、銀髪の男、ライ。
「C.C.…あのルルーシュは、何者だ?」
エリア11の新総督として赴任するルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの存在は、すでにメディアに流れており、今朝のニュースで取り上げられていた。
『…わからない。だが、あのルルーシュに似たやつは、ギアスを…持っていない』
「なぜ、そんなことが解る?」
『解るんだよ。私には』
ライはスクリーン越しに彼女を凝視する。
表情から言葉の真偽は読み取りにくいが、声色には真剣味があった。
「ならば、あいつはルルーシュの偽物なのだな?」
『…そうとも、云い切れない』
ダンッ!
と、ライはテーブルに拳を叩きつけ、手元にあるチェスボードをひっくり返す。
「はっきりしろ!C.C.!お前の返答次第で、僕は黒の騎士団の在りようを変えなければならないんだ!」
『ルルーシュと戦うのか?』
「ルルーシュと戦う?何の冗談だ?それは。黒の騎士団は彼が作った組織だ!」
『ナナリーを守るために、な。それが黒の騎士団を発足した当初の目的だったのかもしれない―――だが、今は、お前がゼロだ』
「…何が言いたい?」
『黒の騎士団はお前の所有物だ。ルルーシュではなく、ライのものだ。だから、この組織をどうしようが、お前の勝手だよ』
すべての決定権は、ライにある――と、C.C.は言っている。
「彼が本物のルルーシュだという可能性は、どのくらいある?」
『半々…と、いったところだ。別人というには、あまりにも似すぎている』
「だろうな。僕も同じ意見だ」
『ライ、気付いているだろう?これは罠だ。お前をおびき寄せるための』
「ならば、その罠を完膚なきまでに破壊してやればいい!」
ライは椅子から立ち上がると、C.C.との通信を切る。懐から取り出した携帯電話を操作し、耳にあてた。
「卜部、私だ。ゼロだ――」
◇
アーカーシャの剣――と呼ばれる神殿。
現世から隔離された幻想的な建築物の壇上に、神聖ブリタニア帝国第98代皇帝、シャルル・ジ・ブリタニアとV.V.が互いに並び立つ。外見的には、あまりにもかけ離れた二人だが、彼らは、齢を同じくした兄弟であった。
「シャルルのお願いだからやったんだよ?コードを短時間だけ譲渡し、ルルーシュを生き返らせた」
「あれには、まだ利用価値があります。ナイトオブセブンも然り」
人間としての死を捨て、歴史上から葬られ、生き続けるV.V.は、年老いた弟を見上げる。
「…うん、そうだね。ゼロが狂王なら、何らかの行動は起こすはずだ。ふふっ、狂王はどんな答えを出すかな?」
「どこか楽しそうですね、兄さん」
V.V.に語りかけるシャルル・ジ・ブリタニアは、穏やかな笑みをこぼす。
「そうかな?そうかもしれない」
◇
- 46 :
- 「き、きたのか!?黒の騎士団が!」
アプソン将軍が指揮するログレス級大型浮遊航空艦に激震が走った。
奇襲を察知した艦隊は、ナイトメアを運搬する戦闘機部隊を迎撃するが、サーフェイスフレアで、視界と熱源感知を遮断された航空艦は、黒の騎士団のナイトメアの着地を許してしまう。
ゼロの命令はただひとつ――、ルルーシュ総督を捕獲せよ。
四聖剣を率いる藤堂や、紅月カレンの駆るナイトメアが猛威を振るった。
ゼロは航空艦に降り立つと、自機のサザーランドを早々に自爆させる。
銃弾はおろか、ハドロン砲にまで、確かな防御性能を持つ屈指の電磁防壁、ブレイズルミナスが展開される前に、ログレス級大型浮遊航空艦に穴を空けたのだ。仮面の男は、易々と艦内へと侵入する。
少数精鋭のナイトメア部隊の奇襲は功を制したかに思われた。
しかし、紅蓮弐式のレーダーが捉えた敵対戦力に、カレンは息を呑む。
(まさか…あれはフロートシステムを搭載した、〈ヴィンセント〉タイプの…っ!?)
空中戦に対応した、量産化された第七世代ナイトメアフレームの一個小隊。
第五世代ナイトメアフレーム〈サザーランド〉の重厚な体格とは異なり、機敏な瞬発性を思わせるスマートなシルエットが、枢木スザクの〈ランスロット〉を想起させた。
カレンは気を引き締める。
制空権を奪われた戦局は困難を極める。
そして、追い打ちをかけるように、さらなる戦力がブリタニアに加わった。
「なっ、ナイトオブラウンズ!?」
ナイトオブスリー、ジノ・ヴァインベルグが操縦する〈トリスタン〉が朝比奈の〈月下〉を撃破し、
「せ、仙波ッ!!」
藤堂の叫びも空しく、眼前で仙波の〈月下〉が、〈トリスタン〉のダブルハーケン型のMVSを受け、爆散した。
『陸戦兵器での奇襲とは、貴公にしては杜撰な作戦だな、藤堂鏡志朗』
藤堂のナイトメアを制した〈ヴィンセント〉から、オープンチャンネルで彼に語りかける声が発せられる。藤堂と幾度も刃を交えた騎士、ギルバード・G・P・ギルフォードであった。
ナイトオブシックス、アーニャ・アールストレイムが駆る〈モルドレッド〉はシュタルクハドロン砲でカールレオン級の航空艦を屠ると、
『隠れんぼは、おしまい』
出力の差で、千葉のナイトメアをいとも簡単に圧した。
部隊損耗率、三割で『全滅』、五割で『壊滅』、六割を超えると、『殲滅』。
黒の騎士団の戦力は、すでに『壊滅』の域に達していた。千葉、朝比奈のナイトメアは大破。仙波は戦死した。
「ぅわあっ!?」
刹那、
紅蓮弐式に、高出力のハドロン砲が襲いかかる。
雲を裂いて、姿を現したナイトメアは白き死神、枢木スザクが駆る〈ランスロット・コンクエスター〉。
「カレン。僕は今更、赦しは…請わないよ」
青海へと落ちゆく紅蓮弐式を目下に、スザクは抑揚のない声で呟いた。
◇
- 47 :
- ライは、早まる心が抑えなられない。足元に転がる死体を無視し、進んでいく。
そして、一際重厚な扉を開けた時、花吹雪がライの視界を遮った。
アーチの先にある庭園に、一人の少年が呆然と立っている。
(―――――っ!ルルーシュッ!!)
ゼロの仮面をつけていなければ、ライは声のかぎり、叫んでいただろう。
彼の顔を、一度たりとも忘れたことはない。
煌びやかな服を纏い、驚愕の表情を浮かべたルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが、ライの目先にいた。
◇
脱出システムが作動しない。
紅蓮弐式が重力に引かれて下降していく最中、カレンはコックピット内で混乱の極地に陥っていた。
時速60q以上の速度で海面に叩きつけられれば、機体はコンクリートに落下した同等の衝撃を受けることになる。コックピットに内蔵されたショックアブソーバーが、多少、効果を発揮するとはいえ、タンパク質とカルシウムの塊である人間の体が耐える道理は無い。
数秒後には、良くて即死。
悪ければ、見るに堪えない肉片へと成り果てる。
カレンの運命は、まさに、白き死神の鎌に斬りおとされようとしていた。
「ごめん、ママ、お兄ちゃん…皆、ライ」
ナイトメアのパイロットになったときから、死は、覚悟していた、
だが、頭で解っていても、迫りくる死の恐怖を受け入れられるとは限らない。
『ベストポジションじゃない』
通信が入る。
「…えっ?ラクシャータさん!?」
神はまだ、彼女を見捨てていなかった。
◇
空中換装という離れ業で、紅蓮弐式は、新たな姿へと生まれ変わる。
「これが、紅蓮可翔式…」
翼を得て、機体の出力も桁違いに上がっている。
「私は、ゼロをっ…ライを守る!」
『続いて、第2カタパルト、ハッチ、オープン』
潜水艦の鋼鉄のハッチが開き、新型ナイトメアが陽を浴びた。翼を備えた、もう一機のナイトメアが姿を現し、大空をはばたく。
「…やっと、でてきた」
「ははぁ、あれがうわさに聞く、黒の騎士団の双璧か」
紅蓮可翔式の後方には、蒼きナイトメアがX型フロートユニットを煌めかせ、ラウンズの機体に迫りつつある。
(まさか、ライなのかっ!?)
スザクは一年前、日本で、幾度となく戦場であのナイトメアと対峙してきた。
(機情からの報告は無い。ライはルルーシュ・ランペルージとして、トウキョウ租界にいるはずだ。しかし、あの機体は…!じゃあ、ゼロは一体誰が…!)
飛翔滑走翼を装備した月下、とスザクは認識したが、蒼いナイトメアは、月下ではなく〈暁〉。紅蓮弐式をベースとして、月下の流れを含む黒の騎士団の機体であり、輻射波動による防御機構・輻射障壁を持つナイトメアである。
「ジノ、アーニャ、気を付けろ。紅蓮の突破力も脅威だが、蒼いナイトメアは特に油断するな、頭のきれるヤツが乗っている!」
「スザクがそこまで言うなんてな。ブリーフィングで聞いているよ、
紅蓮ってやつはあのオレンジを倒したほどの奴なんだろ?蒼いのは、それ以上に危険なのか。指揮官と戦闘員を兼ね備えたパイロットねぇ、へぇ、面白そうだな。アーニャ、蒼い奴は私がやる」
「…じゃあ、紅いナイトメアは私。スザクはルルーシュ総督の救助」
答えるまでも無い。
スザクは操縦桿を握ると、フロートユニットの右翼が煌めき、〈ランスロット・コンクエスター〉はログレス級の航空艦へと旋回した。
トリスタンとモルドレッドは、ゼロの双璧と対峙する。
◇
- 48 :
- 支援
- 49 :
- 支援
- 50 :
- 「驚いた…どうやって、ここに?警護兵はどうした?」
ナイトメアフレーム同士の戦闘が繰り広げられている、壁一枚の向こう側で、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは、ゼロと対面していた。
ルルーシュとライは、一年ぶりの再会を果たす。
しかし、二人を取り巻く環境は、あまりにも変わりすぎていた。
『…お会いできて、光栄です。ルルーシュ総督。私を、ご存知でしょうか?』
「…超がつく有名人じゃないか…君は」
狼狽を隠せないルルーシュを見ながら、仮面の下で、ライは表情を歪める。
(…そんな答えを聞いているんじゃないっ!)
「貴方はエリア11の総督しと、皇族しで有名だ。クロヴィス兄さんや、ユーフェミアのように、私を、すのかい?」
『…貴方の返答次第では』
ルルーシュは震える手で、懐から拳銃を抜く。まるで、銃すら持ったことの無い子供のように。
平静を取り戻し、ライは、ゼロとして言葉を紡いだ。
航空艦が揺れる。
衝撃にルルーシュは体勢を崩した。ライは、その隙に、コイルガンを手に握ると、ルルーシュの腕にある凶器に狙い定め、引き金を絞った。
銃身が壊れたコイルガンが花壇に飛んでいき、ルルーシュは手元から消えたコイルガンに、目を白黒させる。カチャリ、とゼロは銃口をルルーシュに向けながら、云った。
『貴方は、なぜ、日本の総督になられた?』
「父上…いや、皇帝陛下に命じられたまでさ。ゼロ、君も知っているだろう?私が皇位継承権を喪失していることは。
私に、神聖ブリタニア帝国に居場所は無い。おまけに重傷で、記憶を失っていてね。私はかつて、エリア11…いや、日本、だったか?戦前はそこにいたらしい。ナナリー…という妹とともにね」
『…ナナリー!?』
(ナナリーの記憶が無い?まさか、皇帝のギアスを!?…ならば、C.C.の力でっ…!)
「私は、腐っても、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだ。皇族の血を引く人間なんだ。この血から逃れることは、決してできないよ」
アメジストのような輝きを放つ瞳に射抜かれ、ライは息を呑む。
ライも、ルルーシュ・ランペルージとして学園を過ごしてきたが、それでも、本物のルルーシュとは大きく異なる人物像を形成していた。
記憶を失おうとも、人の根幹は変わらない。
ライは、ライ。
ルルーシュは、ルルーシュ。
皇帝に命令されようとも、ルルーシュは、自分の意思で、総督という役職を引き受けたのだ。
(…僕のギアスで、ルルーシュの意思を曲げてしまっては意味が無い!そのうえ、ギアスを使うのは危険だ。シャーリーのように、何らかのギアス対策が施されているかもしれない。しかし、今は、C.C.と接触させる以外に、方法はっ…!)
『ルルーシュ!僕と一緒に…ッ!』
ライはルルーシュのもとに駆け出す。
突如、
庭園の天井が破壊され、突風がゼロの体に吹き付けた。
風穴が空いた外壁から、コアルミナスコーンを展開したランスロットが侵入し、空を仰いで、ゼロを通り過ぎる。
『ルルーシュ様!』
「ッ!!ス、スザクッ!」
ルルーシュは純白のナイトメアフレームに手を伸ばす。
ルルーシュは、迷いなく、スザクに助けを求めた。
その光景に、ライは雷に打たれたように硬直する。
風が強くなり、ゼロの体は航空艦から吹き飛び、宙を舞う。
(違う!そいつは、お前をした…)
「ル、ルルーシュゥウウウッ―――!!」
紅蓮可翔式の腕が、ゼロを包み込む。
ライの絶叫は、誰にも届くことなく、青い海と空に、霧散した。
- 51 :
- 以上です
携帯で15000字はきつい(;´д`)
もう寝ます
- 52 :
- 投下、乙です
携帯からの投稿とのことでしたが、文字数の制限の為か後半の描写が不足していたと思います。次投下して戴ける時も規制中なら代理投稿してもらうといいと思います
遂にルルーシュ登場。しかしコードの譲渡で復活ってことは今不老不死なのだろうか?記憶もないみたいだし、どうなっているのだろう?
次の投下も楽しみにしています
- 53 :
- 投下乙
色々なものをただ一人で背負って戦うスザクが原作よりもさらに不憫で泣ける
ルルーシュやシャーリーらも含め、ライは彼らを救えるのか
ここからの展開に期待しています
- 54 :
- ラウンズって12人限定ですか?
- 55 :
- 限定というかマックスで12
公式設定だとシャルル皇帝時のラウンズがスザクジノアーニャノネット
モニカルキアーノドロテアビスマルクの全8人
ルルーシュ皇帝時はスザクとジェレミアの2名のみ
皇帝というわけではないがナナリー代表の後見がゼロスザク、シュナイゼル他ってところか
- 56 :
- 横槍入れるみたいで申し訳ないけど
ジェレミアって公式設定でラウンズになったの?
時々、ジェレミアをナイトオブワン扱いしてるのは見たことあったけど
あくまで実質的にそういう役割だった、くらいの解釈だったんだけど?
まあ、SSスレでする質問じゃないけど出入りしてるのここくらいなんで。
スレチですいません。
- 57 :
- 横槍の横槍ですまんが
一応メディアのムックに書いてあって確定したよ>ジェレミアのナイトオブワン設定
まあアニメ雑誌系のムックだし他の記事がぶっ飛んでるからどこまで信じていいかわからんってのもあるが
アニメの本スレやジェレミアスレでは公式設定として扱ってる
ルルーシュの騎士はスザクとジェレミアのゼロ&ワンコンビ二人だな
- 58 :
- >>57
回答ありがとうございます。
- 59 :
- 回答していただきありがとうございます
もう一つ回答をお願いします
ナナリーの目が何故回復したのでしょうか?
- 60 :
- 投下おつかれさまです。
このシリーズは読み応えあって面白いんだけど
描写や展開がなんだかエグいのが結構つらいんだよな
NGワードってどんなのがあるのか知らないけど
グロ系だったんだろうか
- 61 :
- 保管所の更新が止まっているが、更新しないの?
- 62 :
- >>59
目が見えないのはギアスが原因だから
ユフィも最初抗ったろ
- 63 :
- そういや抗われるギアスとそうじゃないギアスの違いは何なんだろうな
ロスカラだとスザクがゼロに従えギアスに見ていて辛くなるレベルで抵抗していたが
本編のユフィといい自分の意志に反するものには必死で抗うのかとも考えたが
そもそもルルーシュのギアスも人間の生存本能を根本から否定してるしな
やっぱり当人の精神力次第なのかね
- 64 :
- >>62
皇帝のギアスなんかな
- 65 :
- >>63
違いはわからんがまあ精神力は関係してるだろうな
終盤のスザクは精神力でギアスを制御してたし
- 66 :
- >>64
該当スレへどうぞ
- 67 :
- 前スレ落ちないな。きっちり一週間後というわけじゃないのか……
- 68 :
- よし、落ちた
- 69 :
- 保守
- 70 :
- そろそろなんかこないかなぁ
- 71 :
- カグヤEND後の続きとか、『ゼロ・レクイエム』に参加するノネットさんとか、黎星刻END後とか
- 72 :
- ざわ・・・
- 73 :
- 保守
- 74 :
- 夏は、海だ!
山だ!
ロスカラだ!
ちょっと、強〜引だったですか〜♪
- 75 :
- この暑い中テンション高いのがいるな……
まあ最近投下が無いから寂しいのは分かるけど
- 76 :
- この頃熱いからスレが書けない
- 77 :
- ×熱い
○暑い
- 78 :
- タイトル: Re・コードギアス R2 ロスカラバージョン(仮)
設定:日本解放戦線EDをベースにしています。なお、藤堂、四聖剣は、九州戦役後は黒の騎士団に合流し、全体的な流れはTVの最後のような流れに繋がっています。
プロローグ
「久しぶりだな」
中華連邦の大使館に逃げ込んだゼロやカレンを初めとする黒の騎士団残党を待っていたのは白銀の髪を持つ少年だった。
「ライ……」
カレンの口が小刻みに揺れて声が漏れる。
「生きていたのか……」
それら釣られるかのようにゼロの口からも言葉が漏れる。
「ああ、何とかね……」
以前の様な優しい色が消え去った瞳が、声の発生源を冷たく見つめる。
まるで別人のような凍りついた目……。彼は本当にライなの?
以前、ライに好意を寄せていたカレンさえもたじろぐほど、それは冷たく切れ味のいい刃のように突き刺さってくる。
ゼロは沈黙していた。
いや、何も言う事が出来ないのだろう。
あまりにも予想外の人物が目の前にいるのだから。
その沈黙にくすっと笑った後、皮肉めいた微笑を浮かべてライは言葉を続けた。
「ああ、心配しなくても、今の君たちは大切なお客様だからね」
そう言うと、返事も反応も待たずに現れた方向に身体を向けて歩き出す。
「ふむ。どうやら付いて来いということらしいな」
ぼそりとC.Cが詰まらなさそうな表情で呟くと後に続き、それに引っ張られるようにカレンとゼロが歩き出す。
薄暗い廊下をただ足音だけが響く。
まるで言葉を忘れたかのように誰もが無言だった。
そして、足音が止まる。
「ここだ。入りたまえ……」
他人事のような棒読みの声でライが目の前のドアを指差す。
暫くの躊躇の後、決心したのだろう。
ゼロが一歩踏み出してドアノブに手をかける。
だが、そこで止まる動き。
今必死で今の状況を頭の中で計算しているのだろう。
そのゼロの耳傍でライはニタリと笑って囁く。
「ふふっ。ギアスを使う必要はないよ、ゼロ。話は僕ががつけておいたからね」
その囁きにゼロの身体がびくりと反応し、仮面がライの方向を向く。
想像でしかわからないが、多分睨みつけているのだろう。
皮肉めいた苦笑を浮かべ、ライはそれを受け止める。
それはほんの数秒の間の出来事だったが、後ろで見ていたカレンには、とても長い時間に感じられた。
「くっ……」
僅かにそんな音が漏れた後、ゼロは握っていたドアノブを回した。
本編に続く
- 79 :
- 今、こんなの準備中です。
完成しだい順次投下していきたいと思います。
その時は、よろしくお願いいたします。
- 80 :
- 楽しみにして待ってる
がんばってね
- 81 :
- wktk待機
- 82 :
- PCの前で不眠待機。楽しみに待ってます
- 83 :
- >>82
寝とけw
- 84 :
- 保守
- 85 :
- このスレ寂しくなってきたよな
- 86 :
- ギアス自体の続編は発表されても
ロスカラの続編は発表ないしね…
- 87 :
- きっと三周年には投下があるさ
多分……?
- 88 :
- えーっと、Re・コードギアスR2の方があまり進まないので、気分転換に書いたやつを投下します。
まぁ、気分転換にどうぞ。
タイトル アッシュフォード学園生徒会 ミレイ編 その壱
注意点 ライの性格がかなり改変されているので、その点は注意を。
- 89 :
- ●アッシュフォード学園生徒会 ミレイ編 その壱●
それは唐突な宣言から始まった。
もちろん言ったのはミレイさんである。
言い出し方こそ、実はね、提案があるんだけど……なんてしおらしかったからかもしれない。
ついつい、ルルーシュが渋い顔で
「何を提案するんですか、会長っ」
なんて言ってしまったのが後の祭り。
その台詞にニヤリと小悪魔的な微笑みを浮かべるミレイさん。
もちろん、その微笑に危険を感じ、しまったという表情のルルーシュ。
そして、多分、僕も同じ顔をしていたのだろう。
僕とルルーシュの顔をちらりと見て高々と言葉が続けられる。
「生徒会主催で劇をやります〜っ。すでに脚本を文芸部に、演出と舞台作成を演劇部に依頼していますっ。以上、報告終わりっ」
どう考えても決定事項である。
これを提案だと判断できる人は、多分、ミレイさんとはとても仲良くなれるが、僕とは決して仲良くなれないだろうなぁ、なんてそんな事を思わず思ってしまう。
「会長、それじゃほとんど決定事項じゃないですかっ」
ルルーシュがミレイさんの宣言に異をとなえる。
実に正論である。僕もそう思う。
だから、僕も同意の声をあげた。
しかし、そんな僕らの声にミレイさんはニタリと笑う。
彼女の悪女の素質を垣間見せる一瞬だ。(僕はそう思っている)
「あら、提案よ、提案っ。限りなく、決定事項に近い提案っ」
「なら、撤回も出来るんですね」
きつい口調でルルーシュが言う。
その言葉には、ここで引いたら負けてしまうという事がわかっている為か悲痛さがにじみ出ていた。
「ええ、出来るわよ。でもねぇ……」
「でも?」
「脚本ほぼ完成してるし、舞台の作り物や衣装の方もほとんど完成してるし、なにより劇の為の予算通しちゃったからね……。今から中止なんて……大変よぉ……」
- 90 :
- もう絶句するしかないと言った表情のルルーシュ。
もちろん、僕もである。
そして思い知らされる。
正論で勝てない相手もいると言う事を……。
そして、その代表的な相手が目の前にいる事も……。
「くっ……」
ルルーシュの口から口惜しそうな音が漏れる。
その態度から、生徒会に入ったばかりの僕でもとても覆すのは難しい事がわかった。
ならば、次に打てる手を先に打つまでだ。
局地にこだわるより、大局を見なければならない。
ましてや、覆せない部分に力を注ぐのは愚の骨頂でしかないのだから。
「えーっとミレイさん、質問いいですか?」
僕の言葉に、ミレイさんの目が細くなる。
まるで獲物をいたぶるかのように思えてしまうのは、気のせいではないのかもしれない。
無意識のうちに身体が後ろに動いていた。
そしてそれは僕だけではなかったようだ。
なぜなら、ルルーシュも思わずすーっと身体を引いていたからだ。
そんな僕らに気にも留めずにミレイさんが極上の微笑み(悪女の嘲笑)を浮かべた。
「いいわよ、ライ。何でも聞いて頂戴な」
「じ、じゃあ……。あのですね、題目は何なんでしょうか」
「ふふふっ。よくぞ聞いてくれましたっ。題目は『眠れる森の美女』よっ」
どう考えても学園(生徒だけではなく先生を含む)で一番の大きさを誇る胸を張って宣言するミレイさん。
ある意味、男らしさと色っぽさを同時に表現しているとしか僕にはいえない格好である。
リヴァルの見開いた目の視線がミレイさんの胸に注がれて、「おおおおおぉぉぉーーーっ」と声が漏れてしまうのは男としてよくわかるものの、実にみっともないしかっこ悪い。
ああはなるまいと言う事で、僕はささやかな感じに見ることで済ます事にした。
ちなみに、ルルーシュは貧スキーらしく、どうでもいいと言う感じだし、スザクは性欲なんてそんなものはないという感じで相変わらずニコニコしているだけだ。(でも、多分、スザクは巨派でむっつりスケベに違いないと僕は確信している)
いかん、いかん、思考が別の方向に流れてしまった。
今は、そんな事を考えている暇はない。
僕とルルーシュが、巨小悪魔系策略家の魔の手から、いかにして最小限の被害で脱出するかという事を最優先で考えなければならないときなのだから。
「なんで、『眠れる森の美女』なんですか?」
「うふふふ……。聞きたい?」
うっ……。なんかすごく聞きたくないんだけど、聞かない限り話は進まない。
えーいっ、虎穴にいらずんば虎子を得ずだっ。
「ええ。聞かせてください」
- 91 :
- その僕の言葉に、楽しそうに、そして、うっとりとしてミレイさんが両手の指と指を絡ませながら祈るようなポーズで答える。
「それはねぇ……」
「ええ、それは……」
「演劇部の部長からお勧めされたからよ」
あまりにも予想外の答えに僕は思わずがくりとコケそうになってしまった。
いかん。いかん……。
「会長にしては、意外ですね」
思わずぽつりと言うと、ルルーシュや生徒会のみんなも頷く。
絶対に何か思惑があると思っているのだろう。
もちろん、僕も思っていた。
「なんか隠し事があるんじゃないんですか、会長……」
ルルーシュがじとーっという視線でミレイさんを見る。
「あ、あはははは……。隠し事はないかなぁ」
慌ててそんな事を言っていたミレイさんだったが、どう考えてもおかしすぎる。
そんな時、どたばたと大きな足音を立てて生徒会室に飛び込んできた人物がいた。
その人物は、ミレイさんをいの一番に見つけると一冊の本を興奮して差し出した。
「出来ましたっ、会長ーっ。ご希望通りっ、新人くん主演の歓迎劇の台本っ」
その言葉と同時に、あちゃーっという表情を見せるミレイさんと、ああそういうことかと納得する僕以外の生徒会員。
えーっと、新人って……。
きょとんとした僕の肩をルルーシュが軽く叩く。
「お前を歓迎する為の劇だそうだぞ、ライ」
「………。へっ?!」
「あははは……。ばれちゃったのならしょうがないか……。
実はね、生徒会入りしたライの紹介を兼ねての歓迎劇をやろうと思ったのよ。
ほら、ライってまだ日が浅いから、知らない人も多いし、見た事もない人からは謎の銀髪の美少年って言われているのよね。だから、そういう人たちにも、しっかりライを紹介できたらいいかなと……思ってね」
そこで言葉を止めると上目遣いでじーっと僕を見ながら言葉を続けるミレイさん。
「だからね、ライ……出てくれるよね……」
- 92 :
- くっ……。卑怯ですよ。これじゃあ、断れないじゃないですか…。
凄くうれしいのに、認めたくない気持ちも少しあったりするのは、照れている為なのかもしれない。
「わかりました。やりますよっ」
「本当、ありがとうね、ライ」
しかし、釘は刺しておかなければいけない。
「もちろん、王子様役ですよね」
その言葉に、苦笑するミレイさん。
「もちろんよ。ライは王子様役よ、最初から……」
その言葉に少しほっとする。
まぁ、これで被害は最小限になったと思う。
そんな事を思っていたらミレイさんの口から、とんでもない言葉が続けて発せられた。
「で、相手のお姫様……誰にするかが問題なのよね」
その瞬間、場の空気が変わった。
気立ったといっていいほどの雰囲気が場を占める。
「あははは……。大変そうだね」
スザクが実に場の空気を読まない発言をする。
えーいっ、巨好きのむっつりスケベは黙ってろっ。
「ふむ……」
考え込むルルーシュ。
「いいなぁ……。ライはよぉ〜」
これはリヴァルだ。
そして、その空気を引き裂く第一声は、ミレイさんから発せられた。
「誰もしないなら、私がやってもいい?」
その瞬間、今まで我関せずを通していたはずの生徒会室にいた残りの女性が一気に発言した。
「わ、私……やっても……いい……」
「私がライの世話係主任だから、私が……」
「私、やってみたいなぁ……」
「わ、私もやってみたいです」
ちなみに、上から、ニーナ、カレン、シャーリー、ナナリーである。
- 93 :
- 「もてもてだね、ライ」
「くそーっ、なんでライばっかりさ……」
「ナナリー……」(泣
こっちは、女性陣の後に発せられた男性陣の声である。
ちなみに……、いや男性陣はどうでもいいか……。
だってその時思ったのは、えーいっ、うるさいっという事だけだったりする。
しかし、そうは思ってもどうすべきなのだろう……。
思わず考え込む。
下手するとこのままの流れなら、僕に選んでもらおうなんてなったら、とてもじゃないが僕は選べない。
えーい。優柔不断と言うなら言ってろーっ。
ともかく、どうかしなくてはならない。
どうすべきか……。
そう思っていたら、ルルーシュが溜息混じりに提案した。
「どうせなら、相手役は全校生徒の投票で決めたらいいんじゃないんですか?」
その提案に、まずは面白そうねということでミレイさんが賛成し、続いてそうですねと言いながらナナリーが賛成する。
後は、流れを読んだシャーリーが賛成して過半数。
一番渋っていたカレンも、ミレイさんの挑発的な売り言葉に買い言葉で賛成し、ニーナはそんな様子を仕方ないですねって感じで見ていただけで、反対しなかった。
「じゃあ、ライのお相手は、全校生徒の投票で決定とする事にします。いいわよね、ライ」
「ああ、それでいいよ」
僕はそう答えた。
つまり反対をしなかったのだ。
そして、それは後日、後悔となって何倍にも、いや、何十倍にも大きくなって跳ね返ってくることとなるなど、その時の僕は思いもしないのだった。
つづく
- 94 :
- 以上です。
楽しんでいただければ幸いです。
- 95 :
- 久ぶりに投下がありますなぁ、続きが有れば楽しみです。
では僕も便乗して詩みたいなものを一つ投下します。
- 96 :
- 科学の進歩は人の生活を豊かにし、新たな時代の到来を告げてくれる
それは時に人を盲目へと追いやる薬とも言えるだろう
それ故に、奪われるものが有るのをしるのは
何時も事が起こってしまった後である
悲しみにくれ、後悔の念にかられ、絶望のどん底に叩き落される時に
何故なのかと
希望に満ちた人生を送る筈だった
多くの夢を、希望を、名声を
そのたった一時で何もかも奪われてしまった
あの夜
1912年4月15日 02:20
凍てつく・・・・・海の上で
- 97 :
- 以上、序章みたいなものですがあしからず。
では失礼します。
- 98 :
- 久し振りの投下
お二方共、乙です
- 99 :
- >>94
乙です。続きも楽しみです
和気藹々としてる生徒会はやっぱ和むなぁ
引っかきまわす感じだけどちゃんと周りを見てるミレイさんはやっぱイイ女だ
>>97
こちらもおそらくゲームにはほとんど出てない過去の部分でどう展開させていくのか楽しみです
すでに冷えた空気というかピリピリ感がありますね
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