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2013年05月創作発表116: 他に行き場所の無い作品を投稿するスレ4 (283)
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他に行き場所の無い作品を投稿するスレ4
- 1 :2011/11/26 〜 最終レス :2013/04/25
- とりあえず書いてはみたものの、一体どのスレに投稿するべきか分からない自作の作品を投下するスレです。
仲間外れの方、空気読めない方で、想像力と妄想力をもてあまし気味の方は是非、こちらのスレへどうぞ。
批判、批評、ご意見はなるべく簡潔に。変に貶したり感情的にならずに優しく見守ってあげましょう。
【過去スレ】
他に行き場所の無い作品を投稿するスレ3
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1281009558/
他に行き場所の無い作品を投稿するスレ2
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1248339137/
他に行き場所の無い作品を投稿するスレ
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1223547316/
- 2 :
- >>1乙
- 3 :
- >>1乙
- 4 :
- ランプに照らされただけの薄暗い空間。
どれだけの高さがあるのかわからない木造の高架は目の前で行き止まりになっていて、
引き返さなければならないだろう事は明らかだった。
ため息をついて来た道を振り返ろうとすると、高架の下、底が見えない闇の中で何かが動く物音がした。
気になって目を凝らしてみると、闇の底から伸び上がるようにして、
濃いオレンジ色をした、ぐにゃぐにゃとした不定形の生物が現れた。
不定形の生物から伸びている触角の先端にある、人の体ほどの大きさがある瞳は、
ランプの光に照らされて緑色に光って熱心に窓付きを見てきている。
そんなぶしつけな視線から興味無さげに目を逸らし、
窓付きは茫洋と薄暗闇の彼方、これから進む道を眺めた。
- 5 :
- 【市況のクズ】◆pc1JVPuYSE【キチガイ朝鮮人】
- 6 :
- これほどのブーメランは見たことが無い
http://minshushiryo.up.seesaa.net/image/hatobaka1.jpg
- 7 :
- 1. 初恋ばれんたいん スペシャル
2. エーベルージュ
3. センチメンタルグラフティ2
4. ONE 〜輝く季節へ〜 茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司のSS
茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司を主人公にして、
中学生時代の里村茜、柚木詩子、南条先生を攻略する OR 城島司ルート、城島司 帰還END(茜以外の
他のヒロインEND後なら大丈夫なのに。)
5. Canvas 百合奈・瑠璃子先輩のSS
6. ファーランド サーガ1、ファーランド サーガ2
ファーランド シリーズ 歴代最高名作 RPG
7. MinDeaD BlooD 〜支配者の為の狂死曲〜
8. Phantom of Inferno
END.11 終わりなき悪夢(帰国end)後 玲二×美緒
9. 銀色-完全版-、朱
『銀色』『朱』に連なる 現代を 背景で 輪廻転生した久世がが通ってる学園に
ラッテが転校生,石切が先生である 石切×久世
10. Dies irae
SS予定は無いのでしょうか?
- 8 :
- 2レスほどお借りします。
---------------------------------------------------------------------------------
その日、『ひとりの男がノーベル賞を受賞した』というニュースが日本中を駆け巡った。
内容はノーベル医学賞。
かつて男が公表した『脳波信号の圧縮処理技術とそれを応用したコミュニケーション補助薬の開発』という論文が、
医学と社会の発展に寄与した・・・というのが受賞の理由であった。
このニュースを聞き、湧き上がる日本国民。
マスコミも『この興奮を報道しない訳にはいかない』とばかりに、さっそく男へのインタビューが彼の自宅にて行われた。
「先生!ノーベル医学賞、受賞おめでとうございます!!」
若いインタビュアーが、男にマイクを近付けながら嬉しそうに言う。
「いや・・・こちらこそ、ありがとうございます。」
一方の男も、ノーベル賞という大賞に多少の戸惑いを表情に表わしながらも、嬉しそうに返答した。
「先生が過去に開発された『脳波信号圧縮処理技術』って・・・つまりは、現在流通している『ツーカー錠』の基礎となった技術ですよね?」
「そうです。『ツーカー錠』・・・正しく言い直せば『脳波信号圧縮伝達補助剤』は人間の言葉や感情といったデータを極限まで圧縮、
そして暗号化することで、コミュニケーション時間の簡略化や微妙なニュアンスの完璧な伝達を可能とする薬です。言ってしまえば・・・。」
「『ツーカーの仲』・・・ってやつですね?」
「むっ・・・まぁ・・・そうだ。」
「我々マスコミも、この薬には度々お世話になっています。裁判における判決報道みたいな一刻を争う場面では、
少しでも早く編集部に情報を伝える必要がありますし・・・それに、事件現場での言葉にしにくい情景描写なんかも
この薬のおかげでパーフェクトになりましたよ。本当に感謝です!」
「いやいや・・・確かに、この薬の基礎技術を開発したのは私だが、それを製品化してくれたのは製薬会社ですしねぇ・・・。」
そう言って照れくさそうにする男。
一方のインタビュアーは次の質問へと移る。
「ところでですが・・・。」
「何だね?」
「この脳波信号・・・補助・・・えぇっと・・・『ツーカー錠』の開発のきっかけって何なんでしょうか?」
「きっかけ・・・か。」
『きっかけ』を聞かれて少し黙る男・・・であったが、数秒ほど考えた後、男は語り始めた。
「言うならば・・・『完璧な伝聞をしたかったから』かなぁ?」
「完璧な伝聞・・・ですか?」
「ああ、私は典型的なA型体質らしくてね・・・何事も言った通り、思った通りにうまくいかないと気分が悪くなるんだ。
そして、その流れで『どうして、ああ出来なかったんだろう』とか『どうして、こうしなかったんだろう』と
反省やら後悔やらを口に出して・・・しかも何度も繰り返すものだから、そのことである日、妻にものすごく怒られてね・・・。」
「・・・え?失礼ですが、奥様が居られるのですか?」
「・・・君、本当に失礼だよ・・・まあ、いいや。せっかくだから紹介してあげよう。オーイ!」
そう言って、家の中に向かって大声を出す男。
すると、その言葉に反応してひとりの和服美人が現われた。
- 9 :
- 「これが私の妻だよ。」
「こんにちは・・・本日は主人を取材していただき、誠にありがとうございます。」
物静かに言う女性。
その美しすぎる姿に、インタビュアーはおもわず顔を赤らめてしまった。
「ひ・・・あ・・・は・・・へ・・・よろしくお願ひしまふ。」
言葉がメチャクチャになるインタビュアー。
その様子を見て、男は少し笑ってしまった。
「君、どうしたんだい?」
「いや・・・その・・・あまりにもお美しい奥様だったので・・・えぇっと・・・あの・・・。」
「おいおい、人の妻に恋しないでくれよ。」
「まぁ・・・。」
笑う夫婦。
それにつられて、インタビュアーも頭をかきながら申し訳なさそうに笑うのであった。
その後、彼の妻を交えてインタビューは再開された。
彼女の美しさに目が行きつつも次々と質問していくインタビュアー、
対して時折考えながらも全ての質問に答えていく男とその妻。
インタビュアーは彼らの口から出る答えを全てメモしていくが、
それらの言葉からは『夫の苦悩』とそれを晴らそうとする『妻の愛情』が感じられた。
この取材はインタビュアーの手で再構成せれ、新聞の一面を飾った。
そこにはこう題されていた。
『ノーベル賞までの道のり 〜妻の愛に支えられた科学者の二人三脚人生〜』
「へぇ・・・『妻との愛』ねぇ・・・。」
そう言いながら新聞を読む者がいた。
それは、あの男の妻であった・・・が、その姿はインタビューを受けていた時の和服姿とは違い、
艶のある真っ黒なレザースーツに包まれていた。
「それにしても・・・考えてみたら、あなたは『奴隷』としてワガママだったものねぇ・・・。
『もう少し痛くして欲しい』だの『もう少し罵って欲しい』だのプレイの後にワーワー注文してきて・・・
純粋な乙女だった私をこんなふうに逆調教してくれたんだから・・・。」
そう言って新聞を床に投げ捨て、近くにあったベラ鞭を手に取る妻。
「まあ・・・でも、あなたが開発した技術であなたの望むプレイも
『ツー』と『カー』で分かるようになったしねぇ・・・あなたにお礼ぐらいはしてあげないと
『女王様』として失礼よね・・・あ・な・た!」
強めの声を上げ、正面を見る男。
その目線の先には、肉にロープが食い込むほどに体を縛られ、顔には目隠しと猿ぐつわをされた状態で座らされた男の姿があった。
『脳波信号圧縮伝達補助剤』・・・通称『ツーカー錠』。
その誕生のきっかけは『SMにおいて自分の求める調教を完璧にされたいが故のものだった』ということは
『女王様』と『奴隷』のふたりしか知らない・・・。
おわり
----------------------------------------------------------------------------
以上、藤子プロが見たら確実に怒られるような短編でした。
- 10 :
- むしろ俺は星新一を思い浮かべた
- 11 :
- 深々と降り続ける雪を、北風が巻き上げる。
現在、気温は例年でも珍しく氷点下を下回っており、お世辞にも過ごしやすいとは言えない。
しかし、そんな気候とは対称的に、街は輝きに満ち溢れていた。
そう。今日はクリスマス・イヴ。
まるで空に煌めく星のようにライトアップされた街並みに、楽しそうに談笑するいくつものカップル達。
誰もが、至福の時を過ごしていた。
そんな中。
──ねぇ、今日はなんで遊園地なんかに呼び出したの?
一人の女性が、同じベンチに座り縮こまっている男性に問いかけた。
──えーっと……それはね、それが、その………、
男は言葉を濁す。
──ねぇ、なんでー?
女性はいたずらっぽく笑って目の前で顔を赤くしている男性をこずいた。
──なぁ、分かってるんだろ?いい加減…。
ため息混じりに返す男性。
──分かんないよ。言ってよ。
しかし、女性は分からないの一点張り。
──言わないなら、帰るよ。
男性に痺れを切らしたのか、立ち上がって、その場を去ろうとする女性。
その瞬間。
大きな花火が、宙で開いた。
「わぁーすごーい」
「冬の花火ってのも良いなぁ」
周囲の人達は一斉に顔を上げ、花火に見とれた。
当然女性も歩みを止め、空の華を見上げている。
──綺麗…
女性がそう呟く。
チャンスは、今しかなかった。
しかし、なかなか言葉が出てこない。
声をかける勇気が、男性には足りなかったのだ。
更なる花火が空に次々と上がる。
女性が、一層目を見開いた、刹那。
一筋の赤い閃光が、彼女の頭部を貫いた。
- 12 :
- 雪の白い絨毯を、血が真っ赤に染め上げていく。
体のあちこちから血を吹き出して倒れる人々。
辺りからは悲鳴が上がり、一部パニックを起こしている人間もいた。
──今年も、《奴ら》がやって来たのだ。
血染めの赤装束に身を包んだ戦闘集団、SANTAが。
奴らに奪われた命は、二度と返ってこない。
俺はあの時、この手で奴らをで全滅させるとアイツに誓ったんだ。
あの日もまた、今日と同じ肌寒い夜だった──。
美しくライトアップされ、多くの人で賑わうショッピングモールの屋上に、俺は居た。
建物と隣接した、現在騒ぎの中心となっている、とある公園の広場を見下ろす。
敵は三人。
地面に達する程の巨大な腕を引きずる近接タイプが一人、細身で鋭角的なフォルムを持つスピードタイプが一人、そして──あんなタイプは俺も初めて見る、未知の形状の敵が一人。
基本、サンタはある程度人の形をとっているが、例えば腕が巨大だったり、それこそ全長が5メートル程あったりと、どこかしら異形の部位が存在するのが常だ。
しかし、今回の新型は違った。
赤の白の帽子を深く被っているので目元はあまり見えないが、完全な人形のフォルムをしている。
体調も170センチ程とサンタにしては控えめなので、通常なら成熟途中の未熟な個体と見なし真っ先に狙撃しただろう。
しかし、殺せばRほどより強力に成長するサンタは、葬った命の数だけその装束が紅く染まっていく。
だが、あの人間型が羽織った緋のマントはやけに朱かった。
つまり、あれで完成形ということである。
更に、あの人間型からは、他のサンタとは違う、オーラのような物が出ていた。
──これは何かあるな。
そう判断し、耳元の無線機のスイッチを入れる。
「俺だ。作戦を変更する。プランb-3からd-9へ。各自速やかに行動を開始せよ。それと──」
そこで言葉を区切り、
「──あの人間型は、俺がやる」
言いながら地面を蹴り、俺は夜の闇へと繰り出した。
- 13 :
- 冷たい風が頬をよぎる。
羽織ったコートの隙間から侵入した冷気が肌寒い。
しかし、戦闘を前にしてヒートアップした俺の思考には、それさえも心地良かった。
耳に装着した無線から仲間達からの『了解』の声が続く。
彼らには例の人間型を残し、残りの敵を引き付けるように命令してある。
──大丈夫。俺はそう心に言い聞かせた。
彼らもまた、サンタに大切なものを奪われた者達なのだ。故にその瞳に、一切の迷いは存在しない。
不意に銃声が耳に入った。戦闘が始まったのだ。
俺は公園の外れにそびえる樹木にアンカーショットを放ち、慣性を利用して地面に着地した。
戦闘の中心となっているはずの広場までは、まだ少し距離があるはず。
立ち上がりながら考え、辺りを見回すと、直ぐに様子がおかしいことに気付く。
霧が出ていたのだ。
確かに上から見ているときは視界は良好だった。
ならばこの霧は、俺の侵入を察知して発現したとでもいうのか…!?
- 14 :
- 靄がかかった世界を街頭がうっすらと照らし出す。
疎らに点在する木、整備された道の脇に設置された自動販売機、視界に映る全ての物体のシルエットが歪んで見える。
やられた。これではどの方向から攻撃が来るか分からない。
唇を噛み締めながら、89式小銃を構え、精神を集中させる。
敵は、恐らく俺の隙を突いて背後から狙ってくるだろう。
そう結論付けた。特に理由はない。ただの直感だ。
俺は適当に辺りの繁みへと銃弾を連射した。
その瞬間、背後でザザっという物音。
その音が耳に入るか入らないか、とにかく俺は脚部に渾身の力を込め空中に跳び上がった。
──直後、鋭い刃物状の物体が、鈍い残光を残しながら俺のコートの裾をかすった。
危ない。あと一秒でも遅れていたら俺は真っ二つだっただろう。
しかしこれで完全に敵の後ろをとった。
人間型は、刃渡り1.2メートル程の長物を空降っていた。
当然、先程の銃撃はフェイクである。
恐らく敵は俺の攻撃に反応し、死角である背後から襲うつもりであったのだろう。
だが、そんな事は予測の範疇。俺の直感は正しかった訳だ。
これは、長年奴らと戦ってきた者のみが会得できる一種の特殊技能のようなものかもしれない。
ともかく、敵の能力よりも俺の経験が勝っていたということだ。
俺は勝利を確信し、ガラ空きの人間型の背部へと弾丸を叩き込むべく引き金を引いた。
この近距離では外れるはずのない、的確に発射された三点バースト弾。
それは直線の軌道を描き、人間型の背中に吸い込まれていく──
──が、しかし。
3つの弾丸が、敵の身体を貫くことは無かった。
銃弾が命中する瞬間に、人間型の姿が《消えた》のだ。
「甘いな」
背後から声。
直後、今度は俺の背中に鈍器で殴られたような衝撃が加わった。
「かっ……はッ!」
肺の空気が一気に押し出される。
そのままの勢いで地面に激突しそうになったが、間一髪の所で受け身を取り、体勢を建て直した。
人間型が何事も無かったの様にストっと地面に着地する。
俺は自分の目を疑った。
奴はあの瞬間、確かにそこに《居た》ハズなのだ。それなのに……なぜ!?
考えを巡らす。が、一向に答えは出ない。
まさかこいつ瞬間移動能力を……!万事休す……か!?
諦めかけた、その時──
「大丈夫ですか!?」
「俺たちも加勢します!!」
「敵は一人だけ、やれます!」
突如、辺りの木陰から人影が飛び込んできた。
「お前ら……!」
思わず驚きの声が漏れる。
そう。彼らは既に二体のサンタを撃破し、ここまで応援にきてくれたのだ。
良く良く考えればそうだった。
過去、俺は幾度となく絶望的な窮地に立たされた。
しかし、毎回俺をそこから救ってくれたのは、彼らなのだ。
今の俺があるのも、彼らがあってこそ。
銃撃が通用しない相手でも、こいつらと一緒なら勝てるかもしれない。そう思った。
一筋の希望が、見えた。
- 15 :
- 「いくぞ!お前ら!!」
叫び、銃を構えて突撃しようとした、刹那──
「消えろ」
──敵の人間型が呟く。
その瞬間、俺の隣で銃を構えていた仲間達のの身体が───かき消えた。
文字通り消滅したのだ。
「──ッ!?」
バカな!一体何が起こったんだ!?
「おい!!?どうした!返事をしろ!!!!」
必死に呼び掛ける。が、返ってくるのは沈黙のみ。
俺はバックステップで僅かだが距離を取る。
浅はかだった。
やはりコイツは普通ではない……ッ!
汗で手が滑る。震えで照準が定まらない。
目前に迫るこの未曾有の脅威に対し、俺は焦っているのか……!?
5年前のあの記憶が脳裏をよぎる。
──ダメだ。コイツには勝てない。
そう思い、スタングレネードを敵に投げつけた。
──いや、投げつけようとした。
しかしどういう訳か身体が動かない。肢体の末端の末端まで筋肉が硬直し、指先1つ動かせない。
混乱する俺に構わず、人間型が問い掛けるように言った。
「 ま た 逃 げ る の か ? 」
その両目は俺の身体をしっかりと捉えている。
隙1つ見せればあっという間に殺されそうだ。いや、現に俺は隙だらけなのだけれど。
もしや俺の身体が動かせないのもコイツの力…?
しかし逃げるとは、一体どういう……
「そうやっていつもの様に逃げ続けるのか?オレからも、そして、このクリスマスからも」
「……ッ!?」
その言葉を聞いた瞬間頭部に激しい痛みを覚える。
何だ…ッ!!?頭が…割れそうだ……!!
「お前はいつもそうだ。目の前の事からは常に目をそらし、真実を見ようとしない」
「クソ…やめ……ろ…!」
「『今年も12月がやって来た、もうすぐクリスマスだ。嫌だ、嫌だ、嫌だ。』」
頭痛はさらに激しさを増す。視界がぐにゃりと捻れ、世界が色を失っていく。
「『クリスマスを謳歌しているカップル共はみんな死んでしまえば良いんだ!』」
「おい、やめろ!!やめて…くれ……!」
「『嫌だ、クリスマスは嫌いだ。そんなの見たくない。──そうだ、目を閉じてしまえば良いんだ。』」
「ゃ………め…」
「『世間はクリスマスで浮かれている。だけど俺は楽しめない。そんなのは嫌だ、おかしい。──そうだ、目を閉じてしまえば良いんだ。』」
「う…………うぅ……」
「『何もせず、ただ家族とぼーっと過ごすクリスマスなんて、もう沢山だ。俺だって楽しみたい。──そうだ、目を閉じてしまえば良いんだ。』」
「あぁぁ……」
「『この世界では俺は正義の見方!俺だってクリスマスを楽しむんだ!!』」
「…………………」
あれだけ騒がしかった喧騒は完全にフェードアウトし、辺りはすっかり暗闇に覆われる。
この真っ暗な世界で、俺はこの人間型と二人だけだった。
「どうだ?楽しいか?この偽りの世界でヒーローを演じて、お前はそれで満足なのか?」
「……………俺は…俺は…」
「──オレは全く楽しくないね。さぁ、こんな下らない遊びはもうやめだ。」
そう吐き捨て、人間型が目深に被った帽子を脱ぎ捨てた。
- 16 :
- そこに居たのは──紛れもなく、俺。
俺、自身だった。
今、強面な顔つきで、屈強な両手に銃をぶら下げている、この《俺》ではない。
しかし、あの、奴の姿。
あれは確かに──そう、確かに俺の姿であった。
毎日、自室の姿見鏡を通して嫌でも目に入る、貧弱な身体、痩せこけた両頬────、
………ん?
──《毎日》…?
──《自室の姿見鏡》…?
──《貧弱》……《痩せた》……?
……なんだそれは?
知らない、俺はそんなこと知らない!
そうだ、早くサンタを倒さなければ──
「逃げるな…前を向け…!」
余りの頭痛に遂に立っていられなくなり地面にドサッと崩れ落ちた。
そんな俺を尻目に人間型はどんどんこちらに歩み寄ってくる。
来るな。これ以上近寄るな!
しかし声にならないその叫びは僅かな嗚咽となり口から漏れるのみ。
「ホントは辛いんだろ?こんな事したくないんだろ?だから……だから、どうか目を開けてくれ。」
そう嘆いた人間型の目には、涙が浮かんでいる。
先程までの刺を含んだ口調はもうそこにはなく、あるのはただ、懇願だった。
「オレは………お前だ。」
全てが、白へと還っていった。
- 17 :
- 目を開けると、微かな光が飛び込んできた。
腕を上げようとする。が、上手く身体に力が入らない。
俺は…どうなったんだ?
その疑問が思考を支配していた。
確かサンタと交戦してて──そしたら見たこともない人間型が現れて──それから──。
考えていると視力が僅かだが回復したようだ。ぼんやりと、天井が見えてきた。
…あれ?俺は、野外で戦闘していたんじゃ─?
まだ力が入らない全身の筋肉を酷使して、上半身だけのっそりと起き上がる。
ダークブラウン調に統一された家具達、木目のフローリング、淡いブルーのカーテン。
見慣れた風景だ。
そう、ここは──
──ここは、俺の部屋だった。
その瞬間、俺の心の中の大事なものが弾けた。
不意に、全身の力が抜け、俺は糸の切れた操り人形のようにベッドに崩れ落ちる。
──そんな……!?あれは…!あの戦いは……!!!?
口々にかつての仲間の名前を叫ぶ。しかし、返答は無い。
一気に込み上げてくる胃液を抑えていると、頬を熱いものが伝っていくのに気づいた。
俺は泣いていたのだ。
「……………」
言葉が出なかった。
まさか──まさか。こんな事って。
結論を出すのが死ぬほど恐ろしかった。
あの体験を、あの経験を虚実だと認めてしまうのが、何よりも怖かった。
しかし、俺の思考は既に──いや、随分と前から結論を叩き出していた。
そう、あれは──夢。
『一人で過ごす何もしないクリスマスなんて嫌』という俺の深層心理が作り出した、逃げの妄想だったのだ。
あの男が言っていた言葉が脳裏に響く。
──逃げるな…前を向け…!──
そうか。
そうだったのか。
アイツは俺。
真実の、俺の心だったんだ───。
その事を考えると、いてもたってもいられなくなった。ベッドから飛び起き、部屋のドアを開け、階段を駈け降りる。
ちょっと、アンタ何処行くの──
母親の叫びが聞こえたような気がしたが、構わず振り切って、部屋着のまま靴も履かずにドアの取っ手に手をかけた。
取っ手を掴んだ右手に力を込め、ドアを押し開ける。
と、ドアの隙間から差し込む陽光に、思わず目を細めた──
──そこで一瞬、ほんの一瞬躊躇った。
この先は蕀の道かもしれない。それでも良いのか?そんな些細な迷いが心に生じる。
が、答えは決まっていた。
俺は外に飛び出し、そのまま裸足で走り出す。
1つだけ、あの夢と同じ事があった。そう、今日も、ホワイトクリスマスだったのだ。
降り積もった雪が地肌に直接触れ冷たい。
やはり夢とは同じようにはいかず、暫く走った所ですぐに息切れした俺は、膝に手をつきその場に屈み込む。
心臓の鼓動が聞こえる。もうダメだ、と全身の細胞が抗議している。
自分の吐く白い吐息が、生まれては消え、そしてまた生まれる。
そんな当たり前の事を実感しているうちに、すっかり息が戻ってきた俺は顔を上げた。
東からの光を反射し、一面白銀に輝く白い大地。頭上では鳥達がせわしなく目覚めの歌を謡っている。
驚いた。こうして幾年かぶりに外に出てみると気付かされることが多い。
どうやら、俺は忘れていたようだ。
──世界は、こんなにも美しいのだという事を………。
- 18 :
- 深々と降り続ける雪を、北風が巻き上げる。
現在、気温は例年でも珍しく氷点下を下回っており、お世辞にも過ごしやすいとは言えない。
しかし、そんな気候とは対称的に、街は輝きに満ち溢れていた。
そう。今日はクリスマス・イヴ。
まるで空に煌めく星のようにライトアップされた街並みに、楽しそうに談笑するいくつものカップル達。
誰もが、至福の時を過ごしていた。
そんな中。
──ねぇ、今日はなんで遊園地なんかに呼び出したの?
一人の女性が、同じベンチに座り縮こまっている男性に問いかけた。
──えーっと……それはね、それが、その………、
男は言葉を濁す。
──ねぇ、なんでー?
女性はいたずらっぽく笑って目の前で顔を赤くしている男性をこずいた。
──なぁ、分かってるんだろ?いい加減…。
ため息混じりに返す男性。
──分かんないよ。言ってよ。
しかし、女性は分からないの一点張り。
──言わないなら、帰るよ。
男性に痺れを切らしたのか、立ち上がって、その場を去ろうとする女性。
その瞬間。
大きな花火が、宙で開いた。
「わぁーすごーい」
「冬の花火ってのも良いなぁ」
周囲の人達は一斉に顔を上げ、花火に見とれた。
当然女性も歩みを止め、空の華を見上げている。
──綺麗…
女性がそう呟く。
チャンスは、今しかなかった。
男性は立ち上がると、女性をぎゅっと抱き締めると、
──ずっと好きだった。俺と付き合ってほしい。
そう言った。
女性は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに優しい表情になり、
──…うん。
頷いた。
男は優しい表情で女性を見つめる。
女性も全く同じように、少し高いところにある男性の顔を見つめている。
──素敵だね。
──そうだな。
短い会話の後、男──いや、俺は腕の中の女を強く抱き締めた。
この温もりからは、一生逃げない。そう心に誓い、言った。
「──きっとさ、サンタさんからのプレゼントなんだよ」
〜おわり〜
- 19 :
- 初めて妄想を形にしました
読みにくくて申し訳ありません
- 20 :
- 秋ドラマの次回の妄想劇場を書いても良いでしょうか?
ドラマ板から痛がられてやって来ました…。
- 21 :
- >>1
>仲間外れの方、空気読めない方で、想像力と妄想力をもてあまし気味の方は是非、こちらのスレへどうぞ
- 22 :
- >>19
乙でーす!
いやいや、ステキなお話でしたよん。バトルものかと思わせて、そう持ってくるとはw
また書いてくださいな。
さーて、今年はどのイルミスポット行こうかな? なにせ独りだから気楽だよ☆
カップルの楽しげな雰囲気の中、感じるわびしさと情けなさがたまらない☆
- 23 :
- ドラマ蜜の味来週の妄想劇場
直子の家から則杉退場
雅人「直子大丈夫だったか」震えながら頷く
雅人「これからは何があっても僕が直子を守るから一緒に付いて来て欲しい」頷く直子。雅人と見つめ合い固く抱擁、そのままエチーな流れになりかけるが、震えが止まらない直子に気付いて雅人がそっと直子を抱き締めて服を着せ掛ける
直子の事は心配だが、鍵を変えるように指示して雅人病院へ戻る
- 24 :
- そんな頃、週刊誌で事件を知った直子の両親が事の真相を知ろうと直子や雅人に連絡をするが、直子は則杉ショックから電話に出られず、雅人は急患の手術中であった。
牛窓の両親は彩に連絡をし、彩から話を聞く事になった。
待ち合わせの喫茶店で話をする3人
直子父「彩さん、ここに書いてある記事は本当なんですか?医療ミスを起こしたとか(暫し躊躇い真剣な眼差しで)あの…雅人と直子が付き合っているとか…」
身を乗り出す直子の両親、話出さない彩に直子母が
直子母「ねえ、彩さん雅人とは上手くいってないみたいだけど、それも直子が関係しているんですか?お願いします!もしそれが本当なら2人に…」
彩「…雅人さんと私は今は別居をしています。それが直子さんに関係しているかは私の口からは申し上げられません」
下を向き肩を震わせる彩は静かに泣いていた。直子両親顔を見合わせる。
直子父「分かりました彩さん、2人のせいで彩さんまで辛い思いをさせて…雅人を呼び出して私からきつく話しますから」
直子母「お忙しいのにお呼び立てして済みませんでした。私からも直子から事情を聞きますから…」
彩、涙を指で押さえつつ
彩「ありがとうございます。雅人さんとは別れるつもりはありません。これからも私達2人を宜しくお願いします。心配して遠いところから来て頂いて、私も心強いです。話が話なので両親にも相談出来なかったものですから」
無理に明るく微笑む彩を痛ましく感じる直子両親
直子父「私から雅人に良く言い聞かせますから、彩さんも気を落とさずに、なっ母さん」
直子母「そうですよ彩さん、私達がついていますからね」
彩の手を握る直子母
- 25 :
- 手術が終わった雅人は直子の部屋に向かった。直子は留守であったが代わりに直子の父が雅人を出迎えた。
雅人「兄さん、いつ来たんですか?直子はどこです?」
直子父「お前どうして直子の部屋に来たんだ。お前の帰る家は彩さんの所だ。お前、直子に何の用事がある?電話で言えない事なのか?直子はいない、こんな事もあろうかと直子を連れて出て行った。
雅人!週刊誌に書いてある事は本当か?彩さんは泣いていたよ。お前と別れたくないと言っていた。お前世間に背中を向ける事はないよな?どうなんだ雅人!」
雅人「落ち着いて下さい兄さん、僕は彩とはもうやっていけません。
それは直子とは何の関係もない事です。医療ミスについては本当でした」
直子父「それで、直子の事はどうなんだ?週刊誌に書いてあった事が本当なら許されないぞ。答えるんだ雅人!」
- 26 :
- 雅人「兄さん、済みません。僕は直子を1人の女性として愛しています。直子も同じ気持ちです。僕達はこれから何があっても2人で生きて行くと決めたんです。申し訳ありません!兄さん」
深々と頭を下げる雅人
直子父「やっぱり本当なんだな!お前それでも人間なのか!お前達2人の為に周りがどれだけ悲しい思いをしたのか考えた事があるのか!」
雅人に掴み掛かる直子父、襟首を掴まれ殴られながらも雅人は言う
雅人「兄さん、僕を好きなだけ殴って下さい!それで気が済むのなら僕も本望だ」
直子父「お〜ま〜えー!!誰が許しても俺は絶対に許さん!直子は牛窓に連れて帰る!お前も彩さんを連れてアメリカへ帰れ!」
吐き捨てるように言うと雅人を部屋から追い出し鍵を掛けた。直子父は怒りに震えながら号泣していた。
- 27 :
- 都内某所のホテルにて直子と直子母
直子母「直子、週刊誌の話は本当なの?」
直子母「……………ごめんなさいお母さん……ごめんなさい」嗚咽する直子
直子母「………そうなのね、直子は昔から雅人さんに良く懐いていたからね。私も雅人さんは素敵な人だと思っちょっる。魅力的な人だでな。
直子には話した事が無かったんだけど母さんも昔父さんと結婚する前に好きな人がいたんよ」
直子「……そうなの?」
直子母「でも母さんはお付き合いはしたけどその人とは結婚出来なかった」
直子「どうして?」
直子母「私は中学生で彼は担任の先生だったんよ。結婚して子供もおる人じゃった。
駆け落ちしようと約束して離れた駅で待っちょったんだけど、次の日になっても先生は来なかったんよ」
直子「来なかったんだ……」
直子母「あれは卒業式の次の日だった。先生は遠く離れた県へ転勤したのを後から知ったんよ。
約束したのにって、それでも先生を追い掛けようとして止めてくれたのが同級生だった父さんなんよ」
- 28 :
- 直子母「直子、みんな誰でも忘れられない人がおるよ。いくら好きでも結ばれない人もいる。
母さんも今になって思うんよ。あの時先生と一緒になってたら直子に逢えなかったって。
父さんには本当感謝しとるよ。母さんは幸せだし直子を授かる事が出来たし。
子供は本当に可愛いんよ、直子もいつか必ず雅人さんの事を思い出に出来る日が来るから、雅人さんだけは止めなさい」
直子「嫌!私は雅兄ちゃんと一緒に生きて行くって約束したから、父さんや母さんに反対されても雅兄ちゃんとの愛を貫く!
子供が持てなくてもいい、気持ちが繋がっているだけで私は充分なの。私には雅兄ちゃんしかいない!雅兄ちゃんにも私しかいないの!」
直子母「直子……話は分かったから、今日はもう休みましょう。母さんも牛窓から来て疲れてるし、直子も少し落ち着けば大丈夫だから、ね」
いなされた直子は家に戻ろうとしたが、ホテルマンが言い聞かされているらしくホテルから出られずにロビーで夜を明かした。
次の日、朝一で訪ねて来た父と共に牛窓に連れ帰られた。
- 29 :
- 「痴漢!」
女性の金切り声が電車の中へと響き渡った。青年は何事かと、携帯を弄っていた手を止めて辺りを見る。
すると、一人の女性が顔を真っ赤にしている。毒々しい赤服にまるまると太った中年女性。
歩くより転がった方が速いんじゃないのか? と青年は思った。
そして、こんな奴に誰が痴漢を? とも思った。
様子をうかがっていると、女性はずかずかと青年の方へ近づいてくる。
そして、口角泡を飛ばす勢いでまくしたてる。
「あなた! 私のこと撮ったでしょ! いやらしい!」
「へ!」
一瞬、言っている意味がわからなかったが、すぐに状況を理解した。
どうやらこの女性は自分の事を痴漢と誤解しているらしい。
青年は誤解を解こうと、液晶画面を相手にみせる。
「いや違いますよ、メール打ってただけですよ。何もないでしょう?」
「そんな事言って! すぐにわかるんだから!」
キーキーと女性は叫ぶ。まるで金切り声のドレイクだ。
青年は手札に戻りたくなった。
辺りを見ると関わり合いになりたくないのか、遠巻きに乗客たちが眺めている。
男性客は「ねーよwww」という表情が浮かんでいるが、だれも助けようとはしなかった。
ただ一人を除いて。
「待ちな」
女性と青年はその声の主を見た。
さほど離れていない座席から男性がゆっくりと立ち上がる。
背は高く、灰色のコートに茶系のズボンとシャツ。手には雑誌を持っていた。
青年と同じ年頃、二十代前半だろうか?精悍な顔つきは芯の強さをうかがわせる。
その雰囲気に女性はたじろいだが、すぐに口をひらいた。だが最初の威勢はもう口調には感じられない。
「な、なによ。アンタには関係ないでしょ」
「いや、あるね」
やれやれと、髪をかきあげて男性は呟いた。
「なぜならそいつは俺の友人だからだ」
「はぁ!?」
今度は青年がうろたえた。自分にはこんな友人はいない。
困惑する青年を尻目に、女性と男性は会話を続ける。
「何よ、あなたも痴漢の仲間ってわけ?」
「違うな……俺も痴漢ではない。勤労と納税の義務を果たしていれば嫁とR繰り合えるのに、何故リスクを冒す必要がある?
そもそも、自分にそんな魅力があると思うか? ……ボンレスハムのオバサンよ」
(い、言いやがったーーーーーーっ!?)
車内の空気が凍りつく。思ってても口に出せなかった一言。
そう、彼女は痴漢したくなるようなスタイルではない。顔のバランスも絶妙だ。
ありたいに言えば……醜女なのである。
図星をつかれたのかそれとも話をそらされたと思ったのか、女性は更に真っ赤に顔を染め上げる。
- 30 :
- 「何よ! そんなの関係ないでしょ!?」
「あるね」
ばっさりと言い切る男性に、くっ、と女性は息を飲んだ。
その滑稽な姿に周りから、くっくっと失笑も漏れ始める。
「なぜ女性の胸は膨らむかわかるか?」
「はぁ? なにそれ? セクハラよあんた?」
「女性の胸には……欲望がつまっている」
「はあぁぁ!?」
素っ頓狂な声をあげる女性。構わずに男性は持論を展開する。
「人間には欲望がある、それは金であったり名誉であったり、交友の広さであったりする。
子供にはないそれが大人になると肥大し、それに併せて胸も大きくなる……まさに外面菩薩内面夜叉。
だが、子供は違う!」
ばさり、と男性はいきなりコートと上着を脱ぎ、シャツ一枚となる。
その姿に青年と女性は息をのんだ。いきなり脱いだことにではない。
シャツにはアニメのキャラが印刷されていた。
どうみても小学生の女の子のプリント。体操服姿でバスケットボールを抱えている。
左わき腹部分には「まさに もっかん!」の文字が入っている。
無駄に引き締まった身体が、そのプリントの異様さを引き立たせている。
男性の背後の乗客たちもざわついている。おそらく背中にも似たような物が印刷されているのだろう。
「少女は穢れなく、そして美しい……大人と違ってな」
にんまりと笑う男性に、女性と青年はあんぐりとあいた口が塞がらなかった。
「あ、あう……あう……あ、あれ?」
日常に湧いた狂気に女性は呂律が回らない。
そんな女性に男性は畳み掛ける。
「だが、そんな俺を悩ます存在がある」
すっ、と男性は持っていた雑誌を突き出す。
そこには可愛らしい少女の姿があった。雑誌名は「ワァイ!」とある。
「男なのに女! いや、オンナなのに男!? こんな可愛い子が女のはずがない!
人は魔性の存在を畏怖をこめてこう呼ぶ……『男の娘』と! WRY!」
(変態だーーーーーーーーーっ!)
青年は内心叫んだ。女性は何が何やらわからずがくがくと膝を落としていた。
痴漢だと叫んだら痴漢じゃなかった。
何を言ってると思うが自分でも何なのかわからないのだろう。
ホモだとかお巡りさんこいつですとかそんなちゃちなモンじゃない、もっと恐ろしいモノの片鱗に遭遇してしまったのだ。
「そういう存在を三跪九叩頭の礼で崇めている俺達に、お前のような醜い存在は視界には映らない。
痴漢なんて気は発生すら起こらない、わかった肉塊」
一喝する男性。気押されへなへなと女性はその場へ崩れる
車内に車掌のアナウンスが聞こえ、やがて止まる。
ドアが開くと、青年は男性に掴まれ、プラットホームへと出された。
- 31 :
- 混乱する乗客を尻目にドアが閉まり、電車は次の目的地へと向かっていく。
それを見送ると、男性は青年へと声をかけた。
「悪かったな、いきなり友人呼ばわりして」
「あ……ええ」
「兄ちゃんが痴漢冤罪になるのを見ていわれなくてな」
にっ、と男性は笑う。それを見て青年はほっと息をついた。
「いや、助かりました。突然の事なんで混乱しましたけど」
「まあな、普通は混乱するわな。あんなオバサンに金払ってもごめんだよ」
はっはっはっと笑う男性につられて、青年も苦笑した。
「あの、助かりました。お礼を」
「いやいいよ、困った時はお互い様ってね」
いそいそと男性は上着とコートを着替え始める。
こうしてみると普通の格好だが、まさかあんなシャツを着ているとは想像も出来ないだろう。
またたくまに、どこにでもいる普通の成年となってしまった。
だが、この人こそ自分を助けくれたのだ。他人のセンスなどどうでもいいだろう。
「じゃあ、せめて名前でも」
「よせやい、正義のヒーローでもあるまいし」
にっ、と笑い男性は持っていた雑誌を青年へポンと渡す。
「友人からDって呼ばれてるさ、アンタも呼んでくれるかな」
「D……君?」
「ああ、趣味を同じくする奴はみんな親友さ、じゃあな」
青年を助けてくれた男性は颯爽と去っていく。
青年はその姿を、男の娘専門季刊雑誌ワァイ!」を手に見つめていた。
「D君……何者なんだ……」
- 32 :
- 書いたのかよwww
- 33 :
- なにこれおもろいw
三題噺の題の一つが「男の娘」だからそっちもよろしくな!
- 34 :
- 最後のヤマメで高難度なんですが……
- 35 :
- ドラマ蜜の味妄想劇場〜勝手に続編
病院内では週刊誌ネタで持ちきりで、本当に投薬ミスがあったのかなどよりも、今は雅人と直子のインモラルな関係が衆目を集める日々であった
雅人をかっていた滝の原教授も来年の選挙に不利な状況を招いた雅人や直子に怒りを隠す事もなくなり、院内は殺伐としたムード一色に包まれている
もう誰がマスコミに垂れ込んだなどという次元の話ではなくなっている
直子が両親に連れ戻されて牛窓に軟禁されている事や、雅人と彩の破綻している夫婦生活も露わになり、
益々2人の仲を疑う者達に囲まれ雅人は辞表を手に滝の原教授の元へ行く決意を固めた
雅人「今回の件では多大な御迷惑をお掛けしてしまい深く反省しております。
責任を取れる形かどうかは分かりませんが、僕が日本にいなくなれば話はやがて落ち着くはずです。ポークビッツ大に戻るつもりです」
教授「それが一番ベストな選択かも知れないな、個人的な話だが池澤くんとはどうするのかね?」
雅人「離婚します」
教授「それでは森本直子にはどう責任を取るのかね。これからの人材を君はこの大学から奪うつもりか?」
雅人「森本くんは私が一緒にアメリカに 連れて行きます!」
絶句する教授
教授「…勝手にしたまえ!君には失望した。もう日本には戻って来るな!
君の、いや、森本くんの将来も君が握りつぶしたのだよ!」
雅人「失礼します」
深く頭を下げて教授の部屋から雅人は出て行った
- 36 :
- 牛窓に軟禁されている直子は庭先に出る事もままならず、携帯も電話も両親の監視下に置かれ外界との接触は全く取れずにいた
考えるのは雅人の事だけだった。気持ちを確かめ合ったのも束の間、もしかしたらもう一生雅人に逢えないのではないかと涙に暮れる毎日だ
唯一の楽しみは柱に刻まれた雅人との思い出を振り返る事と、幼い日のアルバムをめくる事だけである
直子「…あの頃に戻れたら…あの雨の日に雅兄ちゃんを好きになりさえしなければ、周りを傷つける事なんて無かったかも知れない…」
こんな事態を招いて初めて直子は自分と雅人の事しか考えず、家族や則杉や彩を深く傷付けた自分に気付いたのである
直子「…私、医者を続けていて良いのかな?医者である限り雅兄ちゃんを追いかけてしまう。
いっそのこと医者なんて止めてオリーブ園を継いだ方が良いのかも知れないな…」
そんな日々のある日、なんと則杉が牛窓にやって来た
- 37 :
- 適当に書いているので日本語怪しくて済みません
いきなり牛窓にやって来た則杉に直子も両親も驚いた。しかし1度は将来を誓い合った仲だ、今度は冷静に話をしたいと則杉は直子の両親に頭を下げた
2人きりになりたいという則杉に直子は躊躇したが、直子母の取りなしで2人きりで外で話をする事になった
- 38 :
- 直子母「直子も少しは陽にあたらんといけんね、東京からわざわざ来て下さったけん直子、牛窓を案内してあげなさい」
則杉と直子はオリーブ園を歩きながら、いつの間にか合格の日に胸を躍らせた高台に来ていた
則杉「こんな所まで追い掛けて来てごめんな、俺大学を止めて実家の跡を継ごうと思うんだ。直子はこれからどうするつもり?」
直子「私、医者を辞めようと思う。今回の事で私、沢山の人を傷付けた…彩さんや則杉くんがおかしくなったのも、元を正せば私が原因だわ。あんな投薬ミスだって全部私のせい…」
則杉は思い詰めた直子の横顔をじっと見つめたまま話を聞いている
直子「則杉くん、牛窓まで来てくれてありがとう。ちゃんと話をしようと思ってたんだけど、父さんが許してくれなくて…」
則杉「直子…医者を辞めるなんて言うなよ。あんなに一生懸命頑張って俺たち医者になったんだぜ、
大学に居づらければ俺の実家で働いても良いんだし、もう俺は直子に結婚を迫ったりしない。ただ一緒に働くだけで構わないよ」
直子「則杉くん…ありがとう。気持ちはとても嬉しい。でも私は医者である資格が無いわ…雅兄ちゃんの傍にいたいだけで医者になったんだし、もうみんなに迷惑掛けたくないし」
則杉「直子、そんなに思い詰めるなよ。少し休養すれば気持ちも変わるよ。俺も心を入れ替えて精進する。同志として頑張ろうぜ」
その時、後ろ手に回していた則杉の手からナイフが落ちた
- 39 :
- 陽に反射して光ったナイフに驚く直子!
直子「則杉くん!」
則杉「…本当の事言うよ。俺、お前を殺して自分も死ぬつもりて牛窓に来た…。
でも、直子が本当に反省している姿を見ていたら…そんな気持ちは無くなったよ。
直子は本当に池澤先生が好きなんだな…池澤先生の傍にいたいだけで医者になるなんて俺には出来ない…」
直子に寂しく微笑み掛ける則杉は足元のナイフを拾うと、いきなり自分の腹を刺した
直子の悲鳴がオリーブ園に響き渡った
直子「則杉くん、なんで…今、人を呼んでくるからしっかりして!」
則杉「直子ごめんな、俺やっぱり直子のいない世界なんて考えられないよ。
でも、直子の人生に俺はいらないん…」
運ばれた病院で則杉は直子に見守られながら命を閉じた
- 40 :
- http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2396082.bmp
- 41 :
- みれない
- 42 :
- 赤ん坊を抱いて、椅子に座っている夢
特に夢の中では動作をしているというわけではなく、ときどきむずがる赤ん坊を抱き直したりしてあやす事をしているくらいだった。
赤ん坊は白地に水色の水玉模様のある服を着ていて、紙が薄く生えそろいつつあった、というのは憶えているのだが、その赤ん坊の顔が何故か思い出せない。
肌の色も、普通の黄色人種のそれっぽかった。
全体を通して印象に強く残っているのは、赤ん坊の体重と、体温。
抱いていた感じ、ちょっと体温は高めだったという印象、重さについては、赤ん坊ならあんなもんか、程度の重さ。
という夢をみた
- 43 :
-
「まじ?コドモじゃん!!」
付き合い始めて一つの季節しか過ごしていない彼との何気ない会話に、わたしは少しばかり距離を置きたくなった。
初詣帰りの軽い食事の途中、摘みかけのポテトを元の鞘に戻す。安物ブーツの脚を組み直しているわたしの顔を
彼はまじまじと見つめながら、チーズバーガーを口に咥えていた。彼には物事に対するためらいが一切ないように見えた。
正月早々のバイト帰り、彼と待ち合わせて今年初のお出かけデート。お互いお金がないから、豪華なランチとはいかないもの。
最近できたお店の話を彼はするものの、結局それは『酒まんじゅう』という渋いチョイスであったりする。ここは若者らしく
お洒落なバーガーショップに行こうと、彼の腕を引っ張りながら参道の帰り道を歩いて行き、列を成して手に入れた
いつもは頼まないワンランク上のセットを盆に載せ、一緒に席に着いたときのことの話。
「だってさ。叔母がどうしてもって言うから」
「だから貰うのかなあ?あんた、大学生じゃん。成人じゃん」
「大学生だろうが、成人だろうが、甥には変わりないし」
お年玉は甘え。
小さな頃は楽しみだった。毎年、だんだん膨れ上がり、頂く方も少し申し訳なくなってきた。
何も知らないときは親に騙されて、悪い貿易商に言いくるめられた若き旅商人のようになってきた。
でも、決別のとき。誰もがオトナと認めてくれる年まで育ったんだから、自分で自分を養う能力を手に入れたんだから
わたしは袖元からすっとポチ袋を取り出して、びりびりに破いて流れゆく時に乗せて今生の別れをお年玉に告げる。
年末の権威ある歌合戦に招かれても、自分が嫌ならわたしはきっぱりと『お断りします』という性分だから。
「断ったらいいじゃないの」
「折角一年ぶりに帰国してきた叔母に悪いし」
お年玉は甘え。
飴玉よりも人を甘味で骨抜きにしてしまい、鉄砲玉よりも人を打ち抜く能力を有する。
ましてや法的にも成人と看做され、社会的にもバカなことを許されなくなる『いいオトナ』にとっては、甘え以上の何者だ。
「わたしだったら『バイトで稼いでいるから……』って言っちゃうなあ」
「おれだったら……」
彼の言葉の先を気になる所で止める人物、それは中学生ぐらいの女の子だった。彼は軽く手を振ると、女の子は子犬のように
わたしたちのテーブルへと駆け寄ってきた。ぴかぴかのブーツが似合っているのか似合ってないのか。そんなお年頃。
女の子はぶんぶんと尻尾を振りながら、わたしよりも親しげに彼へと微笑みを送っていた。それを彼は微笑み返し。
- 44 :
-
「ちーっす!よしくん!昨日はごちそうさまでした!」
「桃子ちゃん。いいよ、いいよ。どうせ……」
「ってか?デート中でしたねー。ごめんなさーい。いとこの分際で人さまの彼氏さまと馴れ馴れしくしちゃって!」
桃子と呼ばれた女の子は、彼に何度も何度も『昨日』の礼を言っていた。小動物のように見ていてほほえましい。
なんだか同性ながら守ってやりたくなるような、お年玉を弾んであげちゃいそうな、彼のいとこ。
「……じゃ。叔母さんによろしく」
「うん。メールしとくよ!『よしくんのおかげで、ちょっとラッキーなお正月になりました』って。今頃、成田だ」
よしくんのおかげって?
それに『昨日はごちそうさま』って?
彼は軽く頷いて、食べかけのバーガーを再び口にした。わたしはポテトを摘んだままだった。
冷えたポテトはがさがさなわたしの気持ちとは相反して、持ちごたえのないぐらいにぐったりしていた。
「それと、ママも『まさか帰国して「酒まんじゅう」食べられるって思わなかった』って、言ってたよ」
「おれがたまたまお店を見つけただけだよ。それに、貰ってばかりじゃ悪いからね。だって、大学生じゃん、成人じゃん」
「じゃあ、来年もママが帰国したときに親子ともどもゴチになりまーす!」
「いい加減にしろよ」と笑いながら、彼は店から出る桃子に手を振った。
お互いお金のない学生だから、臨時収入はちょっといいことに使いたい。
安物でいいからブーツでも買う?バーガーもワンランク上のセットにしてみる?
彼が選んだ臨時収入の使い方はオトナの使い方だった。
コドモはどっちだ。
「来年も『酒まんじゅう』でいいかなあ」と、残りのバーガーを口にして、彼は本気に悩んでいた。
おしまい。
- 45 :
- おけおめ、ことよろ、はつとうか。
投下おしまいです。
- 46 :
- 俺はくれるなら躊躇なくもらうぜw
てか貰ったぜw 6000円w 投下乙
- 47 :
- 投下したいんですが、OK?NO?
- 48 :
- カサカサしゅー?
- 49 :
- >([[[[[)
・・・ま、とりあえず3レスほど投下します。
- 50 :
- その日、男は父親の待つ病室へと急いでいた。
『大事な話があるから、すぐに来て欲しい』
男のもとに届いた父親からのメール・・・それはたった18文字の短い物ではあったが、男には短いメールだからこその
緊張感や迫りくる何かを感じていた。
病院ではあるものの、廊下を全力で走る男。
そして、父親の待つ病室の前に着くと、ドアを勢い良く開けるのであった。
男の目に飛び込む光景・・・それは、今まさに息を引き取らんとする父親の姿と、それを少しでも抑えようと奮戦する
医師と看護師の姿があった。
「父さん!」
医師を突き飛ばし、父親の手を握る男。
すると、手を握っているのが自分の息子であることに気付いたのか、男の父親はゆっくりと目を開くのであった。
「・・・来て・・・くれたか・・・。」
口を開く父親。
しかし、その声は今にも消えそうなほどに弱っていた。
「父さん!」
「・・・これで・・・安心して・・・天国に・・・母さんのもとへ・・・行けるって・・・もんだ・・・。」
「父さん・・・父さん!!」
「・・・だが・・・旅立つ前に・・・お前に・・・言っておきたい・・・ことがある・・・。」
「・・・?」
「実は・・・お前は・・・俺たちの息子じゃ・・・ねぇ・・・。」
「・・・何だって・・・父さん!いくらなんでもこんな状況で冗談は・・・。」
「・・・聞いてくれ・・・これは俺からの・・・遺言だ・・・お前は・・・かつて俺と・・・母さんが・・・研究していた・・・
『ミュータント・コマンドー計画』の・・・プロト・タイプ・・・だったんだ・・・。」
「『ミュータント・コマンドー計画』!数年前に政府が秘密裏に行っていた生物兵器・・・ふたつの生物の特徴を組み合わせて
作りだされたキメラの軍事転用計画!!」
「・・・そうだ・・・そして・・・お前はその・・・試作2号として・・・『桃』の遺伝子と『人間』の・・・遺伝子を・・・
組み合わせて作られた・・・花の戦士・・・コードネーム・・・『MOMOTARO』・・・なのだ・・・。」
「『MOMOTARO』・・・でも、何故今、そんなことを?!」
「・・・俺は・・・夢を・・・見たんだ・・・。」
「夢?」
「・・・ああ・・・ミュータント・コマンドー・・・試作第1号・・・コードネーム『ONI』が・・・再び・・・
動き出そうと・・・している・・・。」
「『ONI』?それはいったい・・・?」
「・・・『ONI』・・・それは『牛』と・・・『虎』の・・・遺伝子を・・・組み合わせた・・・
ただの動物でしか・・・なかった・・・しかし・・・初めての実験だった・・・からか・・・『人間』の遺伝子も
・・・混入してしまい・・・知性を持った・・・怪獣と・・・化してしまった・・・。」
- 51 :
- 「そんな化け物が・・・。」
「・・・そこで・・・『ONI』を産み出した・・・科学チームは・・・この怪獣を細胞レベルで・・・分解することに・・・決めた
・・・だが・・・。」
「だが?」
「・・・ひとりの科学者は・・・『ONI』の持つ・・・神秘性・・・凶暴性に・・・魅かれ・・・細胞の一部を・・・
採取して・・・自分の物と・・・してしまった・・・。」
「そんなことが・・・それで、その科学者とは?!」
「・・・お前の・・・目の前に・・・いるだろう・・・?」
「・・・!そんな・・・。」
「・・・確かに・・・『ONI』は・・・居てはならない・・・存在だ・・・だが・・・同時に・・・お前同様に・・・
俺の息子・・・でもある・・・息子を簡単に・・・捨てる親なんて・・・いてたまるか・・・。」
「父さん・・・。」
「・・・だが・・・今になって・・・その過ちに・・・気付いたよ・・・あの夢を・・・見るまではな・・・。」
「父さん・・・でも、どうして『ONI』に関する夢を?」
「・・・お前・・・『件(くだん)』って・・・知っているか?」
「件?」
「・・・ああ・・・顔は人・・・体は牛っていう・・・妖怪でな・・・そいつは生まれてくると・・・
すぐ死ぬんだが・・・その直前に・・・予言を残すんだ・・・しかも確実な未来・・・のな・・・。」
「・・・!もしかして・・・父さん!!」
「・・・ああ・・・俺には・・・『牛』の遺伝子が・・・いや・・・正確には・・・『ONI』の遺伝子が
・・・組み込まれている・・・息子を・・・大事にしたくて・・・な・・・。」
「父さんに『ONI』の遺伝子が・・・。」
「・・・そうだ・・・あの時採取した・・・全ての細胞が・・・俺の体内に・・・取り込まれている・・・
だからか・・・俺は見たんだ・・・『ONI』が現われ・・・全てを・・・人間に対する恨みの力のみで・・・
焼き尽くす夢を・・・。」
「・・・うん?」
その時、男は何かに気付いた・・・が、男の父親は最後の力を振り絞りながら語り続けた。
「・・・いいか・・・ミュータント・コマンドーは・・・お前や『ONI』・・・だけではない・・・
『INU』・『SARU』・『KIJI』と呼ばれた・・・者たちが・・・いる・・・彼らは・・・『ONI』を討つ・・・
仲間として・・・お前に必要と・・・。」
「父さん、ひとつ聞いて良い?」
「・・・何だ?」
「『ONI』の細胞は、父さんが採取した分以外は完全に処分されてるんだよね?」
「・・・そうだ・・・あの日・・・『ONI』はマイクロウエーブ・・・処理機によって・・・
全て焼却処分・・・された・・・。」
「・・・で、残りの細胞は?」
「・・・俺の・・・体の・・・中だ・・・。」
「こういう言い方は良くないのかもしれないけど・・・父さんはもうすぐ死ぬんだよね?」
「・・・そうだ・・・だから・・・こうして遺言を・・・。」
「父さんが死んだら、父さんの体内にある『ONI』の細胞も死滅して・・・最終的に『ONI』の細胞は
この世から消えるんじゃないかな・・・?」
「・・・え?」
黙りこむ父親。
そして30秒後、父親はこう言い放った。
「・・・すまん・・・今までの会話は・・・全て忘れてくれ。」
それが、男の父親の最期の言葉だった。
- 52 :
- それから1ヶ月後・・・。
男を喪主とした父親の葬儀が営まれ、父親の体は火葬された。
火葬が完了するのを待つ間、雑談やら父親との思い出話にふける親戚ら。
そして、その声で多少ながらにぎわう葬儀場。
そんな環境の中で、男は空を見ながら考えていた。
父の体には『ONI』の遺伝子が組み込まれており、その中には『牛』の遺伝子も存在していた。
そして、死ぬ間際に夢を見たことから「自分は件になっていた可能性がある」と考え、さらにその夢は『予知夢』だと結論付けた。
だが、『ONI』の細胞は父の死によってこの世から全て消えた。
だから、父の見た『ONI』の復活は父の夢の世界だけで終わったのだ。
・・・だが、本当にそう断言出来るのだろうか?
父は、自分の持っている『ONI』の細胞以外は全て焼却したと思っていた。
しかし・・・仮に、父と同様に『ONI』の細胞を秘密裏に持ち出した存在がいたとしたら・・・。
そして、その者によって再び『ONI』に生が与えられていたとしたら・・・。
フト、男はポケットから何かを取り出した。
それは父親の残した手帳であり、『ONI』を倒す仲間の住所や特徴といった手掛かりを伝えるためか、
手帳の横には『INU』・『SARU』・『KIJI』と書かれた付箋が貼られていた。
「『INU』・『SARU』・『KIJI』を連れての『ONI』退治・・・か。」
つぶやく男。
そして、男はひとつの決意を抱いた。
「今は・・・全て忘れておくか。」
男は、父の最期の言葉を口にすると、手帳をしまい、収骨のために親戚一同を集めるのであった。
こうして、『MOMOTARO』の手により『ONI』の脅威はひとまず消えるのであった。
おわり
- 53 :
-
- 54 :
- http://loda.jp/mitemite/?id=2765.jpg
- 55 :
- いやこわいから。
普通に怖いから。
- 56 :
- 自画像で心底ビビった。
- 57 :
- VIPで書いてるうちにスレ落ちちゃった
係員「どうしました?」
ランナー「腹痛でもう走れません」
係員「お腹を炒めたんですね」
ランナー「そんなことしてません」
係員「えっ」
ランナー「えっ」
係員「危険しますか?」
ランナー「安全な方がいいです」
係員「危険した方が安全ですよ」
ランナー「えっ」
係員「毎年高齢のマラソン大会ですから来年頑張ればいいじゃないですか」
ランナー「ぼくは特別参加ってことですか?」
係員「いえ、一般ですが」
ランナー「なにそれひどい」
係員「えっ」
ランナー「えっ」
- 58 :
- t
- 59 :
- a
- 60 :
- ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2679864.jpg
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2679945.jpg
こららら
- 61 :
- http://dl6.getuploader.com/g/6%7Csousaku/530/HP.png
- 62 :
- なんぞこれwwwwwwwwww
- 63 :
- マジでなんですかこれは
- 64 :
- これはまさに「他に行き場所の無い作品」のいい例だと思いますまる
本当になんだよこれwwwww
- 65 :
-
___ / ̄ ̄ ̄\ ___ / ̄ ̄)
'´ ヽ ///// ̄\.. | .,イ==、ヽ // ̄ ̄ ̄\
|ミ.(((ル))リ〉 ( ( //// ̄\\. |〈ハルトti.` | /// ̄ ̄)\)
j .ii| ゚ヮ゚ノii ∞ (/(/// ̄( ┿|!゚- ゚ |l i ̄ /  ̄ ̄\
((⊂》 ::》つ 〇 (/(//.⊂f;春;fつ )  ̄\\\) ̄
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∞ 〇∞ !、⊃ /, / r' / ! !、⊃ /
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- 66 :
- まさかのAA化w
- 67 :
- はぁ〜どっこい!(CV.浪川大輔)
http://u6.getuploader.com/sousaku/download/537/WaverVelvet.jpg
- 68 :
- ウェイバーさん何してるんですかww
- 69 :
- ショートショート書きました
感想いただけたら嬉しいです
遠い街
「遠くて近い街ってなーんだ?」
鬼原勇太は、電車の中で、幼なじみからもらった一通の手紙を読み返していた。
最後に書かれた謎かけ。
彼の頭の中ではもう、その答えが出ていた。
電車は遠くへと向かう。
鬼原勇太は、今からちょうど一年前、
昨年春から東京で一人暮らしを始めた。
高校を卒業後、菓子作りの職人を目指して上京した。
都内にある、少し名の知れた洋菓子店で修行の日々を送っていた。
そして今日、少し長めの休みをもらった彼は、
ちょっとした旅行カバンに荷物を積めて持ち出して、
電車の切符を購入し、少し離れた目的地まで移動しているところだった。
休みがもらえるとわかったときは、まず、幼なじみに連絡を入れた。
幼なじみの名前は、鹿野 梨理子(かの りりこ)。
何度か電車を乗り継いで、目的の駅に到着した。
改札を出ると、そこに梨理子はいた。
勇太を見ると微笑んで、そして、
「おかえり」
と言った。
「ただいま」
勇太は動揺した。
久しぶりに会った梨理子はどこか大人っぽくなっていて、
今までかいだことのない、とても良い匂いがした。
「メールもいいけど、たまには手紙もいいもんでしょ」
「うん、風情があって良かったよ。何回も読み返したんだ」
「嬉しい。でも、そんなにいいこと書いてあった?」
「うん」
手紙には、勇太の身を気遣う内容の文章のあと、
最近、梨理子の身の回りに起きたことがとりとめもなく書いてあった。
何気ない日々についての報告が、今の勇太にとっては、
あたたかく、ありがたいものだった。
- 70 :
- 「最後の謎かけ、分かった?」
梨理子は聞いた。
「この街だろ。つまり、各務原市」
勇太は頭の中にあった答えをそのまま述べた。
そして、付け加えた。
「つまり、俺たちの地元だろ?」
「ピンポン、当たり。今の君にとっては、そんな街でしょ」
「そうだな。近いけど、遠いね」
ここへ来るまでには、時間がかかった。そういう意味では遠い。
来てみると、そこは見慣れていて、居心地のよい場所だった。
そういう意味では近い。
二人は街を歩いた。歩きながら話をした。
勇太の修行先のお店で起こったこと。
梨理子の通っている専門学校で起こったこと。
勇太の東京での一人暮らしのこと。
梨理子のアルバイト先で起こったこと。
梨理子は遠慮がなくて、時折大きな声で笑ってみせた。
結局、大して変わっていなかったのだ。
梨理子は少し大人びて、良い匂いがして驚いたけど
梨理子という幼なじみはこの街にいてくれていたんだ。
勇太はそう思った。
- 71 :
- 新境川沿いを歩いた。
桜はまだ咲いていなかった。川の水は穏やかに流れ、春の訪れを思わせた。
幼いころの話をして、二人で懐かしんで盛り上がり、
そして勇太はこう言った。
「俺、修行終わったら店を出したいんだ。自分の店」
「そうなんだ。素敵な夢だね」
梨理子はどこか遠くを見ながらつぶやくようにそう答えた。
視線ははっきりと定まっていなかった。
沈黙が訪れた。勇太には、川沿いを歩く二人の足音が
大きくなったように感じられた。
急に梨理子の目から光が失われたように思えた。
何があったのかと勇太は少し不安になった。
梨理子は突然立ち止まった。
「どうしたんだ?」
勇太が聞いても返事をしない。ねばり強く待っていると、やがて重い口を開けて語り出した。
「あたしね、記憶が失われていく病気なの」
「嘘だろ?…本当…なのか?」
「だからきっと、勇太のことも忘れると思う」
「そんな…」
「でもそれって普通のことだよね」
「普通じゃねえだろ!普通じゃ…ねえよ…」
「実はね、好きな人がいるんだ」
「え?」
「もう、その人しか愛せないと思う」
「ま、待ってよ」
「あたしは好きな人に告白するって決めたし、勇太はもうあたしにとっては普通の人なんだ。
普通の人を忘れてしまうのは、実は病気でも何でもないのかもね」
終わり
- 72 :
- >>69
ストーリー進行が駆け足なのが気になった
- 73 :
- 念抹と融合した時の巨大で禍々しい変化をとげた姿がこちらになります。
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2815836.jpg
- 74 :
- 行き当たりばったり企画「ロビン(16、中二病)が(予定通り)女の子だったら」
因みに構想10分作成20分というgdgd殴り書き
だが私はこういう女の子が書きたい
- 75 :
- ――朝?
「おはよう、ロビン」
「おはよう、ビル」
隣に寝ていたビルに声をかけられた。確かにいつもの朝だ。
――え?
「顔が青いけど、どうかしたか?」
「ちょっと、嫌な夢を見てね」
「へぇ?どんな?」
「銃で撃たれたんだ。血がどばどば流れていった。それを私は焦りながら見てるんだ。なぜか体を捨てようと必死になってた。意味分かんない」
「……ふーん。そっか」
「なんでそんな興味なさげなのさ」
ちょっと唇を尖らせてみる。
――何をしてるんだ?
「そんなことには僕が絶対させないから」
「……うん。ありがとう、ビル」
寄りかかる。最初はちょっと頼りなく思えたけど、今はその内に秘められた強さが何よりもいとおしい。
これからもビルを頼るんだ。
二人三脚で、みんなのためになる機械を創って過ごす。
なんて有意義なのだろうか。
ああ、世界から愛や幸せは失われたと言うけれど。
探せばこんな近くにあるのだ。
――どういうことだ?
「愛してるよ、ロビン」
「うん。私も」
そして、重なり合うくちび
「うぎゃぁああああ!」
目を覚ませば深夜。明らかに外は真っ暗。
まだ太陽が昇る気配もない。
「畜生……なんだったんだいったい……………………」
こんなホモみたいな夢、誰にも知られたくない。
- 76 :
- そういうことかw
ワロスw
- 77 :
- http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2847879.jpg
- 78 :
- まぁそりゃサイドテールよりはwww
- 79 :
- オートバイのイベントで参加者に配る檄文でっちあげた。
檄文
君は憶えているか? はじめて単車のエンジンをかけた日のことを。
君は憶えているか? 最初のキックペダルの感触を。最初のセルモーターのうなりを。
単車に乗るとき 人はあたりまえのことをはじめて知るのだ。
ひとは望めば世界のどこへでも行けるということ。 ひとは本来孤独であるということ。
「自分」こそは始原にして究極の乗り物である。 単車で何万キロ走ろうが、シートの上から少しも動いていないではないか。
君は「自分」の中から出たことがあるか?
それが分かるとき、君はシートの上で自分を越えているのだ。 振動と轟音と速度と平衡感覚が君を後押ししてくれる。
ちかごろ若者は単車に乗らないという。 単車に乗らずして大切なことが分かるはずがない。
走らねばならない。そこに道があるかぎり。 いや、道などなくても走らねばならない。 単車が走ればそこは道なのだ。
もともと地球には道はない。 地球そのものがひとつの球形の巨大な道なのだ。 すべての道は未知なのだ。
走るのだ。 世界のどこであれ単車のエンジンが始動するとき、もうひとつの見えないエンジンも始動するのだ。
それは「情熱」というガソリンで駆動する「挑戦」という精神のエンジンだ。
走らねばならない。 ゴーグルの中で シールドの中で 目を見張って
はじめてのあの日のようにキックペダルを踏みおろすのだ。 セルモーターをまわすのだ。
行け 諸君 あの日のように! いくぞ 諸君! さあ 走るぞ。 世界中できょうも続く あの日のように。
平成24年4月8日 (イベント主催者名)
- 80 :
- SPDのSS書いてくださった方、いつぞやはありがとうございました。
もしご覧になられていたら、俺の気持ちを受け取って下さい。
地下か迷いましたが、大丈夫かと。
http://imefix.info/20120412/581274/
http://imefix.info/20120412/581275/
- 81 :
- ヤバイよ
言論の自由がなくなる「人権救済機関設置法案」が20日可決される
ここで外人の悪口書いただけで逮捕されるかも
阻止の協力して
総理宛に請願書とか、地元の国会議員、特に法務委員に
この法案に反対ってFAX、電話、メールとか事務所に乗り込んで抗議する
地元の有権者であることがわかるように消印やFAX電話が重要
それから内閣とか法務省や自治体、政党にも抗議
↓詳しくは
【政治】人権救済機関設置法案、20日閣議決定で調整
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/news2/1333801646/
日本人には一度でいいから見てもらいたい動画
http://youtu.be/lmhL6S4zwXY
- 82 :
- http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2903526.jpg
- 83 :
- 開いた瞬間に吹いたwww
- 84 :
- ちろりんに目が行かないwwwwwwww
- 85 :
- 吹いたwww
- 86 :
- クソワロタw
- 87 :
- http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2904563.jpg
- 88 :
- ちょwww臨場感www
- 89 :
- ちょwwwww
- 90 :
-
公園でRが話し掛けてきた。
おじさんはなんで右手がないんですかと。
私は返答に困ったがなくても不便じゃないからいいんだよと返した。
- 91 :
- 「ぱぱのおしごとって、なあに?」
「パパの仕事はね、みんなを不幸にしないことなんだ」
「ふーん。そのおしごとって、楽しい?」
「ああ、楽しいよ。毎日辛いけどね」
「ふーん。ねえ、ぱぱ。なんでぱぱの手は、まっ赤になってるの?」
「きっと、悪い人をたくさんやっつけちゃったから、そういう風に視えるんだろうね」
「ぱぱ、スーパーヒーローだったの?」
「今も、なんだけどね」
「ふーん。今のぱぱって、わるい人やっつけないの?」
「うん。やっつけてはいない。教えているんだ。悪いことを良くする方法をね」
「よくわかんないや」
「ははは。そうだよなぁ、分かんないよなぁ。おっと、電話だ。ごめんよ」
遠くなるぱぱのこえ。だめ。そのでんわに出ちゃだめ。
――お願い。お願いだから。
「パパッ!」
目覚まし。ベッド。午前三時。
「またあの夢?もう飽き飽きなんだけど」
パパは六年前に死んでしまった。ママはあたしを産んで死んでしまったから、六年前からあたしは一人だ。
「はぁ〜」
起きてしまったからしばらく眠れない。しかたない。水でも飲もう。
「あれ?早紀、朝はまだよ?」
ドアを開けたところで小梢さんに見つかってしまう。このアパートの部屋の主で、今はこの人があたしの「ほごしゃ」ということになっている。あたしはこの人がなんとなく苦手だ。
「ええ、まあ……」
「辛かったらちゃんと言ってよ?ママと思ってもらって良いんだから」
「7歳しか離れてない人を親とは思えません。それに小梢さんの仕事がいいことだとも思いません」
「あっはっはっ。若いわねーお姉さん羨ましい」
「犯罪者予備軍のハッケンとコウセイなんて、本当に犯罪をしてしまうかは分からないじゃないですか」
「そうはいってもね早紀。人が死んでから対処しても、死んだ人は生き返らないのよ」
「ですけどっ」
「恨まれても憎まれても、命は重いの。人間にとっては特に。人間なんて自分の分だけで手いっぱいなんだから」
近づいてくる小梢さん。思わず身構える。
「だからね、早紀。あなたは生きなきゃいけない。お父さんが何を思っていたのかが分かるその日までは」
そういって頭をなでる小梢さん。
「生きるって、なんですか」
「早く寝て、美人になることよ」
「よくわかりません」
「あははは。そっか。ごめんね」
やっぱり、苦手だ。
けど、美人になることが生きることなら頑張ってもいいかもしれない。
美人になったら楽しいのかなあ?
オチもへったくれもないので墓場の方でも良いかなとおもったけど投下。
- 92 :
- http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2957941.jpg
- 93 :
- ぺったんこ同盟
- 94 :
- うしろーwww
- 95 :
- あらかわいいw
- 96 :
-
警察やFBI、そして家族や友人たちの支えもあり、江戸川コナンこと工藤新一は
苦闘の果て、ついに黒の組織を壊滅せしめた。
平和な日々が戻った。だが、彼の肉体は元に戻らなかった。
灰原哀こと宮野志保が作った試作解毒剤は、一時的に幼児化した身体を急成長させるもの。
しかし時間制限を超えれば身体は再び幼児化し、服用のたびに薬の成分に対しての免疫が強くなる。
つまり使えば使うほど後の完全回復を難しくする、諸刃の剣とも呼ぶべき切り札であった。
新一は組織との最後の戦いで、投与サイクルの限界を超えて試作薬を連続使用してしまっていた。
彼の免疫系は完全に再度の強制成長を受け付けなくなり、のちに灰原が完成させた薬も用を成さなかった。
もはや彼は時よりも速く歩む術を持たず、ただ自然に歳をとり直すほかなかったのである。
阿笠博士と両親の手引きのもと、新一は毛利探偵事務所を去る。もはや同じ時を歩み得なくなった
毛利蘭に対しては、「最後の事件で工藤新一は死んだ」と伝えてあった。彼女に余計な心労を
背負わせることを肯んじなかった新一は、別れの時までコナンとして彼女に接し続けた。
10年の歳月が過ぎ――
江戸川コナン、肉体年齢17歳。かつての工藤新一と同じ姿に、眼鏡だけが重ならない。
失われた10年への未練を振り切るように、あれからもずっと探偵活動に全力を挙げてきた。
時代の変遷とともに犯罪はより高度化、多様化し、彼の頭脳は必要とされ続けている。
二度目の帝丹小の同窓生らとは今も親交を持っているが、蘭には会っていなかった。
成長するにつれ新一へと近づいていくコナンの姿は、彼女の傷を抉るだけだ。
そうでなくとも、一体自分はどうしたいのか。「コナン君」が、「蘭ねえちゃん」を相手に。
如何もできはしない。すべての可能性は時の彼方、あの戦いの日々と共に去った。
実年齢27歳のコナンは、ある墓の前に立っていた。
墓石の下に遺骨はない。だが、確かに一人の男がここに埋葬されている。
「――初恋は、叶わないものなんだってね」
そう言ってコナンの隣に並び、ひとりの女性が墓前に立った。
「大人になってわかったよ。理由はいろいろだけど、わたしの場合は死に別れ」
女性はそっと手を合わせる。形だけでなく、ほんとうに祈りを捧げる沈黙があった。
「かれが初恋の人だった。小さい頃からずっと、ほかの人を好きになったことなんてなかった」
コナンは彼女の方を見なかった。彼女も、コナンを見ようとしなかった。
「好きな人と死別することの残酷さって、思い出が綺麗すぎて忘れられないところにあるのね」
「死んでしまった人だって、きっとそう思ってますよ」
この10年、忘れたことなどなかった。もう戻れない過去も、あり得たはずの未来も。
空っぽの墓穴に眠る男と同じ夢を、江戸川コナンは見続けてきたのだ。
「それじゃあ、僕はこれで」
女性に背を向けながら踵を返し、彼は肩越しに言った。
「……僕の初恋はあなただった。確かに、叶わなかったな」
歩き出すコナンの背中に、いたずらっぽい声が掛かる。
「今からでも、叶えてみたい?」
振り返れば。手を伸ばせば、そこに。
永遠に違えてしまったはずの道が開くのかもしれない。
――ああ、けれど。
この人の声に、こんな寂しげな揺らぎはなかった。
顧みぬままにかぶりを振って、コナンは答える。
「僕には、10年早い」
いつまで経っても、墓の下の男は10年先を歩み続ける。
その距離は彼女を、決して幸福にはしないだろう。
そして、高校生探偵・江戸川コナンは墓前を去った。
二度と振り向くことなく。
残された女性は、墓碑銘を見て寂しげに微笑む。
本当によく似ていた。この、懐かしい肩書きの男に。
そこには『高校生探偵・工藤新一 此処に眠る』とあった。
<了>
(ちなみに原作は60巻ぐらいから後は読んでないので、矛盾や食い違いがあっても知らぬ存ぜぬ)
- 97 :
- >>96
こんな終わりかたもいいけど……泣く!!コナン好きじゃないけど多分泣くw
- 98 :
- http://fsm.vip2ch.com/-/sukima/sukima019455.png
- 99 :
- コナンなつかしいな
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