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2013年07月電波・お花畑112: 東方の風見幽香さんを愛し続けてみたよ (102) TOP カテ一覧 スレ一覧 2ch元 削除依頼
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東方の風見幽香さんを愛し続けてみたよ


1 :2012/12/25 〜 最終レス :2013/06/11
ゆうかりんに抱かれたい
ゆうかりんに抱き付かれたい
久しぶりに買ってみたするめなんか齧りながら「食べすぎると顎痛くなるなぁ」なんて考えてたよ あぐらをかいて猫背になるとテレビの位置はちょっと高くて
見上げるようなポーズになってますます猫背が加速しちゃうの この体勢は身体に良くないと思ってはいるんだけどなかなか直せない癖になっちゃってて
自分としてはもう半ば諦めているようなものなんだよ 俺はそんなふうに考えてる、いや考えてない事を言い訳にしただけなんだけどね 一方のゆうかりんは
どういうふうに考えるだろうね だらしないからダメだって言うか、それとも無理に直す必要はないって言うのかな まあ、ゆうかりんの事だからここはあえて
見て見ぬフリをして何も言わないという展開も考えられるね それどころかこんなつまらない事を気にしないでそのまんまスルーする可能性もあるよ
というよりこんなにつまらない事を考えるのって俺くらいなんじゃないかな、とすら思うよ むふーって変な溜め息がさ、鼻から俺の外に出ていくんだ
そういえばゆうかりんはどこに行ったのかな さっきは横に居たのにふと横を見ても天使のような横顔も安心を感じさせる緑の髪も目に入らない
それどころか「ゆうかりんがいる」という香りが無いんだ あるのは「ゆうかりんがそこにいた」という香り、つまりは残り香だよ これもゆうかりんの香りだけどね
と思ったらね、「うりゃー」って言ってゆうかりんが後ろからやってくるの いきなりね、俺の背中側からガバッと抱き付いてくるんだよ 横に居ないと思ったら
真後ろにいたとはなかなか思わなかったよね ゆうかりんはそのまま顔だの胸だのを押し付けるように抱き付いてきてね、そのまま腕をぐるりと回して
俺の身動きを奪っちゃうんだよ 勝手にびっくりしてバランスを崩しそうになる俺、「ゆうかりんいたの?」なんて情けないようなつまらないような発言しちゃう
ゆうかりんは笑顔のままむっとしたような声で「居ちゃ悪いのかしら」なんて言うんだよ いじわるさ、わざと拗ねたような事を言って俺に反撃させないつもりさ
そのままぐぐっと俺の方に体重をかけてきて、俺の背中がますます丸まるんだよ おんぶしてるバッタみたいな体勢さ、あれ跳ねるのキモいけどねうん
自動的に俯き加減にさせられてしまって視線がテレビから離れる俺 ゆうかりんはそんなの知らんと言いたげに俺の背中や胸元、頭なんかをぺたぺたと
手のひらで好きに触るんだ 俺の肌なんて触っても楽しいモンじゃないのにね、ぺたぺたというか、ぺちぺちというか、あのパン生地に触れる感じでね
好き放題やっちゃってね、何とも言えず楽しそうなんだ 時々ふんふんと何だか頼もしい鼻息の音なんか聞こえたり、ゆうかりんのサラサラした髪が
俺のうなじに触れたりしてゾクッとしちゃったりするんだよ 全然止める気が無さそうだったから「ゆうかりん何してるの」ってね、たまらず俺は尋ねてみたよ
「私のだんなさまは私の所有物だから、私がどうしようと勝手でしょう」 後ろから返ってきた答えはこんなものだったよ、しれっとこんな事を言いやがるんだ
なんだ俺はゆうかりんの所有物だったのか、所有物ならしょうがないよね ゆうかりんの所有物なら全権がゆうかりんにあるようなものだよね
でも俺はそんな事聞いたこと無いの、今初めて聞いたよ 俺は俺のものだと思っていたらゆうかりんの所有物になっていたよ 衝撃、驚愕の事実だよ
むしろ逆にゆうかりんが俺の所有物だと思っていた部分も無くはないから戸惑いを隠しきれないL.A.Style よっこいせっと無理やり背筋を伸ばしてやって
くるりと振り返ってね、俺もゆうかりんの事を抱きしめてやろうとするのさ そっちが抱き付いてくるなら俺も正面から受け止めてやろうと思ってね
さあどこからでもかかって来いと、ゲージMAXのエドモンド本田みたいな心境だったんだけどもね、俺を見たゆうかりんは急に顔をプイと横にやって
さっきまで俺を好きに弄っていた手を引っ込めちゃうんだ 「なんか気分が乗らないわね」だなんていってね ずるいよね、俺がその気になったからって
わざとそんな事言って俺を困らせるんだ 「黙って抱きしめられてなさいよ」なんて言ってね、ハイハイと言って聞くしかないのかな、難儀だよ!ね!ゆうかりん!

2 :
ゆうかりんに着せたい
ゆうかりんに際どい衣装を着せたい
際どくなくてもいいよ、レギンス穿いてくれればそれでいいよ レギンスを纏った脚というものは何故あんなにも魅力的なんだろうね、涎が湧き出てくる
お出かけの時に拝んで拝んで拝み倒してやっとのことで「しょうがないわね」とか言いながらゆうかりんが黒のレギンスと短いスカートを合わせてくれるんだよ
あれがたまらなく好きだね、どのくらい好きかっていうと肉のハナマサぐらい好きだよ 願わくばずーっとその姿で居てくれても構わないよ、って感じだよ
さてさて今日はすごく天気が良くってさ、もうすっかり春だからぽかぽか暖かくて、ゆうかりんったら張り切って家中の窓を全開にしちゃったりするんだよ
風が吹き込むとあっやっぱりまだ肌寒いかなって感じる時もあってさ、俺は身体をそわそわモジモジするんだよね やっぱり窓閉めよう?って言うんだけど
「そんなんだからすぐ風邪ひくのよ」ってスパッと言われてそれきりなんだ 普段から寒いのに慣れろって事なのかもしれないけどさ、正直慣れようが無いし
どっちかっていうとこの風に吹かれて三度笠ポン太状態を続けていた方が風邪をひきやすいんじゃないかなって思うのさ 思っても結局言わないんだけどね
このタイミングで玄関のチャイムがいい音を鳴らすんだよ 続いて威勢のいい「宅配便でーす」の声、ゆうかりんがそれに気付いて「はーい!」って言って
はんこを持って玄関までぱたぱたかけていくんだよ 猫車マークの帽子を被ったおさげ赤髪の宅配業者のお嬢さんと一言二言適当なやり取りをしてさ、
ゆうかりんが何か大きな箱を持って戻ってきたんだ 何それ?って聞いてみたんだけどゆうかりんにも何だかわかってないらしく、ラベルを読んで
「私宛の、懸賞、だって。何かしら?」なんて言うんだよ 懸賞なんて見た目によらずちっぽけな趣味してるねゆうかりん、だなんて皮肉めいたことを思うけど
これも言わないでおくよ 最近俺は現実世界での立ち回りというものを覚えたからね ゆうかりんはどうやら身に覚えが無いらしくてね、不思議そうな顔と
頭の上の?マークを俺に見せつけたまま箱を持って寝室の方に行っちゃうんだ 俺はあんまり気にしないで、今日もまた適当な空想と妄想をくり広げながら
お昼の情報番組でも見ようかと、寝転がって手を伸ばしてリモコンを探してみたりするんだよ しばらくたってから戸が開いてゆうかりんが入ってくるの
子供みたいに「あなたーこれ見てー」なんて言うモンだからさ、さっきの箱に何か面白いモンでも入ってたのかな?と思いながらそっちを見てやるんだよ
そしたらビックリだよ、ゆうかりんどうしたのその服?何その露出、何その耳、蝶ネクタイに網タイツ、それ世間一般にはバニー服って呼ばれる奴だよね?
普段の服装から一転して媚びっ媚びの雰囲気になったゆうかりん 谷間ができてるであろう部分を片手で押さえながらさ、恥ずかしそうに突っ立ってるんだよ
驚くってモンじゃないよ、開いた口が戻らないというか顎が定位置に戻ってくれなかったよ ゆうかりんもゆうかりんで座ればいいのにずっと立ったまま
もじもじして足をすり合わせてるんだよね それどうしたの、ってようやく俺の口から言葉が出てね、ゆうかりんがぽつぽつと喋り始めてくれるんだよ
「懸賞で当たったみたいなんだけど、私こんなの頼んでないんだけど……」ってね そこでようやくわかったよ、記憶がフラッシュバックというかなんというか
それ俺がゆうかりんの名前を勝手に使って応募したやつだった コスプレSNSの企画でさ、複垢ワンチャンあるで!と思ったからゆうかりん名義で作って
一緒に応募したんだった ゆうかりんに良くお似合いの赤基調のバニー服、これは当たるべくして我が家にやってきたんだろうね、これは運命さ
どこを見ていいのかわからずに視線をグリグリ動かす俺に、ただ顔を赤らめて「この馬鹿ぁ」って言うだけのゆうかりん にしても一つ疑問が残るよ
なんでそれ着たの?って事さ 怪しい服にわざわざ着替えた意図を尋ねてみるとさ、人差し指と人差し指をちょんちょんやって口をちょっと尖らせて
「喜んでくれると思ったから。……あなたこういうの好きでしょ」なんて言うんだよ その通りだよ!大好きだよ!今夜は俺もウサギになるからね!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふふ

3 :
ゆうかりんと感じたい
ゆうかりんと寒さを感じたい
暦の上では新年度、もう四月だっていうのにどうして外は雪が降ってるんだろうね 俺はこういうのは認めないよ、断固として認めない姿勢を崩さない
四月っていうのはもっとこう、暖かくて、太陽が俺とゆうかりんに優しくて、庭の桜の木と梅の木は「フフ・・・この時を待っていたのだ」と言わんばかりに
可愛らしい色の花を咲かせて俺とゆうかりんに見せつけてくるはずなんだよ それなのにこれは何だ、冬じゃないか 四月は春なんだぞ、本当はね
ゆうかりんったらいつもの赤のチェック柄の入ったどてらを引っ張ってきて袖を通してさ、「今私は寒さに耐えています」みたいな顔をして
炬燵と仲良しさんしてるんだよ 寒いのは俺も嫌いだよ、早く暖かくなって欲しいと思う でも寒いのも悪い事ばっかりじゃないんだよね、
こうやってゆうかりんを後ろからギュッと抱きしめる時にね、ゆうかりんの細っこい身体の奥にある「ぬくもり」みたいなものを一層感じられるような気がするんだ
一方で、俺の内側にあるゆうかりんに対するこの想いもね、こうスッとゆうかりんの身体に移ってくれるような気がするんだよ 気分の問題だけど
そういう意味では寒いのも悪くないと思わないかい でもさ、今回はちょっと違ってさ、何しろ「春だと思ってたのにこの寒さ」って展開だったから
それがゆうかりんの機嫌をだいぶオーバーな損ね方させちゃってたみたいなんだよ 「変なトコ触らないで」なんて言って俺の手から逃げちゃうんだ
俺は悲しいよ、そりゃあゆうかりんに拒否されるってなると悲しいよね 単純な本格エゴイスティック指向でさ、ゆうかりんに受け入れられたら嬉しいし、
受け入れられなかったら悲しい、もうホントそれだけなんだよ ゆうかりんに俺を受け入れる事を強制することはできないよね、それはわかってるけど
その上で受け入れて欲しいと思うんだよ まあでも思い返してみれば今まで何度も何度でも様々なことを受け入れてもらえたから俺があるんだけどね
結局機嫌悪いままのゆうかりん、炬燵の上にあるモノで簡易ピタゴラ装置のようなものを作って遊んだりしつつもその顔はいかにも不満って感じで
俺としてはどう接するやらだよ とりあえず炬燵のゆうかりんの横のスペースに足を入れて、肩と肩で寄り添うぐらいのことはさせてもらうんだ
でね、ここで珍しいお客様が登場だよ 「あ、寒そうな顔してるわね」なんて言いながらさ、窓の外にレティさんの姿が映るんだよ 窓を勝手に開けて
入ってこようとするんだけども鍵がかかってたから開けられなくて入れなくて、窓をガタガタ言わせた挙句ちょっと困ったような顔でこっちを見るんだよ
ゆうかりんが窓の方をチラッと見て、そしてから視線を元に戻すんだよ 見たくないものを見る感じ、放置しまくって溜まりに溜まった洗濯物の山を
無かったことにしようと視界の外に追いやるような、そんな目線さ あわてて俺は窓に近寄って鍵を開ける、と思わせておいてちゃんと玄関まで誘導するよ
そしてようやく我が家にレティさんが入ってくるわけさ 「四月だから暖かくなると思った?残念レティちゃんでした」とかなんとか下らない事言いながらね
今のレティさんにはまさに「冬の忘れ物」っていう表現が似合うね 忘れ物も落し物も保有期間を過ぎちゃったらホテル側に処分されるというのにね
急な来客に対応する術はちょっとだけ長けてきた気がする ちゃちゃっとお茶とお茶菓子を用意してゆうかりんのお向かいに座らせてあげるんだよ
ゆうかりんにも同じようにティーセットを用意してね 敵意というか、明らかな不快感をただただ正面に突き刺すだけのゆうかりんに代わって
俺が聞いてあげるんだよ、「この寒さはレティさんの仕業なの?」ってね レティさんったらくすくすと笑いながらゆうかりんのほっぺをつんつんして
「そうだと思う?」なんてどっちつかずな事を言うもんだからね、ゆうかりんも怒っちゃってもう 完全にレティさんに遊ばれてる展開だよね
ゆうかりんから逃げ回って部屋の中をぐるぐるしながら「今年は遊び足りなくて」なんていうレティさん もうね、その辺にしといて欲しいよ!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふ

4 :
ゆうかりんと付けたい
ゆうかりんと飾りを付けたい
何も飾らなくてもゆうかりんはそのままで美しいよ、っていうのは胡散臭い言葉に聞こえるかもしれないけどこれは当然の真理であってそれでいて事実
何事も事実には敵わないモンだよね ゆうかりんが美しい、この事実は誰が何をしようと引っくり返らないよ ゆうかりんが「やだもう」って言い続けてもね
今日もゆうかりんとのびのびお散歩してたんだよ 家の後ろの方の道から出て、のんびり木々の間の小道を歩いたんだよ 最近はもう暑くてさ、
俺もゆうかりんもちゃっかりした薄着で出歩くんだよ まあもう梅雨の前の時期になったら半袖でもいいよね、というより俺別に何も着なくていいけどね
首元が大きく開いたゆうかりんの服がさ、俺に妙な自己主張をしてくるんだよ 俺はそれを見ないようにする事だけでタスクがいっぱいになってしまって
んでもって結局見ちゃうんだよね それに気付いたゆうかりんが笑顔で「次見たらドラゴンタッチするから」って言うの 膝崩れでコンボ伸ばすのは勘弁
でね、ゆうかりんが途中でさ、しゃがみ込んでお花を一つ取るんだよ 小っちゃくて黄色くて可愛い奴をさ 普段はお花を摘むような事はしないで
そのままの姿で楽しむタイプのゆうかりんだから珍しくてね、どうしたのかなーって思ったらそのまま立ち上がってさ、ちょっとだけ背伸びをして
俺の髪にその花を乗せちゃうんだよ 「髪飾りー」とかいいながらね あらかわいい、髪飾りなんて付けたのは生まれてこのかた初めての経験だね
どっちかっていうとゆうかりんに付けてあげたい気もするんだけどさ、ゆうかりんが「よしよし」って顔をして俺にそのままでいるように勧めてくるものだから
俺もいい気になって乗せたまんま ゆうかりんのセンスの飾りを付けてお散歩を続けるんだよ ゆうかりんがにこっと笑って「可愛いわよ」って言うの
俺はどっちかっていうとカッコいいって言って欲しいなーと思ってさ、「可愛くないよ」って返したりするんだよ ゆうかりんは俺の望みを聞いてくれずに
「いいから可愛いって事にしておきなさい」なんて言いながら、繋いだ手を引っ張るようにするの でね、なんとなく二人とも上機嫌になってさ、そのまま
お散歩を続けてたんだけど、こういう時に限って色々な人に会うんだよね 会うだけならいいんだけどもみんな何故だか失礼な事を言っていくのさ
会うなり俺の頭についてる可愛い飾りを見ながらね 顔見知りの人形遣いさんなんか「ついに○○も変な趣味に目覚めたのね」なんて言ってくれちゃうし
新聞記者さんなんか「あ、罰ゲームか何かですか?」とか言うの 妖精だの小妖怪だのの一向は俺とゆうかりんを囲んできゃっきゃ言いながらさ、
当たり前のように「こいつ男なのに花飾りなんてつけてるー!」って言うんだよね ゆうかりんが傘をぶんぶんってやって追い払うまでそういう事言うの
せっかくゆうかりんにもらった飾りなのに馬鹿にされるのが許せなくてさ、もう俺まで頭からもうおこったぞうのマークが飛び出してきそうだよね
なんて話しかけようかと思ってさ、結局言葉は浮かばなくてさ、ただゆうかりんの方を向いたんだよ そしたらゆうかりん、目にいっぱい涙を浮かべてるの
今にも零れ落ちそうなそれを寸でのところで溜めて止めてさ、ちょっと俯くようになりながら「ごめんなさい。私、本当に似合うと思ってやったのに」って
伸びきった六弦みたいに震えた声で言うんだよ そんなね、迷子の子供みたいに泣かないで、「私のセンスがわからないなんて!」とか適当に怒って
口を尖らせるくらいでいいのに、ゆうかりんったら俺が絡むと途端にこんなテンションになっちゃうんだ 可愛いんだけどもそれ以上に俺も申し訳が無くて
軽く引っ張って肩を抱きしめてやってさ、意味も込めずに「俺の方こそごめん」なんて言っちゃうんだよ 来た道を引き返して、そのままお家まで戻ってさ
まだ朝なんだけどお昼寝なんかしてみるんだよ ゆうかりんと手を握ったまま、もう片方の空いた手で背中とか頭とかを撫でてよしよしってしながら
言い訳をするように夢の中に落ちていくんだ 俺はゆうかりんの所有物だから、俺を馬鹿にするのはゆうかりんに喧嘩を売る事と同類さ!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふ

5 :
ゆうかりんに飲まされたい
ゆうかりんに酔わされたい
飲ませて酔わせてお持ち帰りでもしたいものだよね、テイクアウトゆうかりんというやつさ ただ引き摺って運ぶのはなかなかに骨が折れると思うけどね
ゆうかりん、ちょっとでもお酒飲んだらすぐ寝ちゃうんだよ すぐ顔を赤くしてうわ言ばっかり言い始めてさ、崩れるように寝ちゃうの 困ったもんだよね
さてさて、目が覚めてカレンダーを見たら既に日曜日になっていたみたいだよ おかしいよね、直前の記憶が土曜日の昼で止まってるんだけどもね
記憶がスッと抜けているとそれはもう不安になるものさ 自分の知らない自分が表に出てきたのか、っていう厨二病的なワクワクも含めてそんな感じ
それに何だから頭がガンガンするのもよろしくない 頭が痛む様子はガンガンかズキズキって相場が決まっているから俺もガンガンって言ったけども
実際これがガイーンガイーンっていう激しい痛みが襲ってきてるよ 寝ても覚めても萃夢想に打ち込んでいた時代の事を思い出してほろ苦くなっちゃうね
で、何だかお腹の中も気持ち悪い これらの症状のパーツを合わせて組み立ててみるとさ、これが「二日酔い」だってのは明確だよね、シャッキリポンさ
ゆうかりんと同じく俺自身もアルコールに弱いっていうのは知ってるから潰れるまで飲む事なんてないんだけどさ、今日のコレは、どういうことなんだろうね
ここでゆうかりんが現れるんだよ 寝室の扉からちょっと頭だけ出してこっちの様子を伺ってるみたい まだ脳内でパチェのJKがCHする音が鳴りやまないけど
とりあえず身を起こしておはようの挨拶でもしてみるよ 「あ、うん、おはよ……」って、ゆうかりんは何だか妙によそよそしくて、ゆうかりんじゃないみたい
そのままベッドの端までトレーを持って寄ってくるの 寝たままご飯食べていいのかな、行儀の悪さを伴った地味な贅沢だよね 風邪引いている時とか
そういう事態じゃないと許して貰えないんだけど、今日は大盤振る舞いって事らしい お言葉に甘えてゆうかりんの手料理をご馳走になろうと思うよ
お皿の上に目をやると、何かの切り身がちょっとコゲ付くくらいまで焼かれてるの なかなか香ばしい臭いがするんだよね ゆうかりんにこれは何?って
聞いてみたら「すずめ」って答えるんだ すずめって、雀?あの鳥の? 我が家では滅多にお目に書かれないメニューにちょっと驚かされちゃうんだ
普段はまがいものの「ナイトバード胸肉冷凍1kg」とかを買ってきたりするんだけど、純正の雀だとしたら食べるのは初めてだよ 何だか心躍るね
なんでこんな究極vs至高みたいないい食材使ってるの、って聞いたら「いや、よく効くって聞いたの。すずめ」って言うんだ 何だか申し訳なさそうにね
まあね、とぼけたフリをやめてマジレス返しちゃうとね、それはすずめじゃなくてしじみだと思うよ 二日酔いに効くって言われてるのはしじみのエキスさ
記憶もハッキリしてきたんだよ、昼に何故だかゆうかりんが貰い物の日本酒を勧めてきた事とかね おだてられてグイグイ飲んでそのままお陀仏で
今こうやってベッドに寝かせられてるっていう状況も完全に把握できたよ とりあえず雀の肉をバリバリと食べつつ、ゆうかりんの奇行を咎めてみる
太陽が高いうちから俺に酒を飲ませて何をしようとしてたんだ、ってね まさか酔いつぶれた俺が寝てる間に他の男と密会、とかそういう展開だったら
怒るのを忘れてそのまま滝壷に身を投げると思うよ もじもじしながら俺の顔と床のシミを交互に見るゆうかりんが、ちょっとずつ語ってくれたんだよ
まず「酔うと素直になる、ってよく言うじゃない?」ってね 俺が首を縦に振ると、次は「素直っていうのは混じり気のない心、本心じゃない?」って言うの
また俺が首を縦に振ると、ゆうかりんはちょっと言葉をタメてから放つんだ 「あなたが私をどう思ってるか、本心のままに答えて欲しかったの」ってね
それってあれだよね、「俺がゆうかりんを好きかどうか」だよね いやシラフの時でもいつも言ってるんだけどね というより土曜の朝には言ってるしね
何だろう、俺がゆうかりんの事を好きだって言ってるのに案外伝わってないのかな ガインガインする頭でちょっと悩んじゃったりするのさ!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふふふふ

6 :
ゆうかりんとくっ付きたい
ゆうかりんと引っ付きたい
俺がS極でゆうかりんがN極で、距離が離れていてもお互いに引き寄せ合っちゃうぐらいがちょうどいいのかな そして最後には勢い良くくっ付いて
そのまま引っ張っても離れないような感じ でも公園のお砂場に落として砂鉄まみれになっちゃうゆうかりんは嫌だね、磁石も万能じゃないからね
梅雨の間の晴れの日ってやたら蒸し暑く感じないかい、感じる云々というより実際に暑いと思うんだけどね これから半袖を着ても汗が流れるような
卑猥なくらいに暑い夏が来るのかと思うと流石に嫌になってくるよ 左手にコスプレグッズの鉄線を持ってぱたぱたと自分に向けて扇いでるんだけども
こんなにクソ暑いっていうのに何故かゆうかりんは俺にくっ付いてるんだよね こう、後ろからまるで俺の身動きを封じるかのような密着っぷりを見せて
ぎゅーっと擬音が空中に飛び出しそうなくらいくっ付いてるの そんなね、俺の背中なんて抱き付いても何の得もないと思うんだけどもね、ゆうかりんは
優しくなりたいのか蛹のつもりなのか「寄らば大樹の陰」って感じでぴったりと顔までくっ付けてるんだよ ゆうかりんのほのかな体温が俺に伝わって
ハートフルな気持ちになる、んならいいんだけどただただ単純に暑くてね それに目が覚めてから随分時間が経ったんだから、いい加減に着替えて
朝ご飯でも作っていいようなモノなんだけど、ゆうかりんは起きた時からずっとくっ付いてるの 「ゆうかりん、あの、暑い」って言ったら背中の側から
いかにも不満ですっていうような声で「私は暑くない」とか返ってくるんだ そうして俺の腰に回されているゆうかりんの細い手に少し力が加わってね、
ちょっとばかりシートベルトがきつくなったような感覚さ 身体をもぞもぞとわざとらしく動かしてやると今度はぐいっと俺の身体を引っ張って、
「はいはい暴れないの」なんて偉そうに言うんだよ 暴れるも糞もないんだけどね、まあでも本気で暴れようとしない俺も俺だというかなんというかだよね
ふと時計に目をやるともうちょっとで11時になろうとしているところでさ、もう朝ご飯を作るよりお昼ご飯を作った方が褒められるような気さえするんだ
蒸し暑い寝室のベッドの上で俺をずっと抱き寄せたままのゆうかりん まあね、今日が初めてじゃないんだよね たまにあるんだよね、こういう展開がさ
多分一般的に言うところの「人肌恋しい状態」っていうのなんだと思う、ゆうかりん自身がよくわかってないだけでね だからこうやって直接的かつ物理的に
人肌恋しさを徹底解消させようとしてるんだと思う 素直なんだか素直じゃないんだか、そういうとこだけ微妙に子供っぽいとも言えてしまうよね
まあ気持ちはわからないでもないからさ、俺も別に嫌じゃないし、だからこうやって結局ゆうかりんに為すがままにされているんだよ 俺が振り返って
ゆうかりんを抱きしめてやることもできるんだけどさ、そしたら何故だか急に嫌がるんだよ それこそ「暑い」とかなんとか言って俺を遠ざけるのさ
この体勢は顔が見えないからいいんだろうね 俺の顔もゆうかりんの顔もお互いに目線を絡み合わせる事がない 俺が見ている方向には
寝室の戸があって、壁掛け時計があって、写真立てに入った結婚式の時のゆうかりんと俺の写真があるくらい ゆうかりんが、俺の背に顔をつけたまま
ぽつりと小声で何か言うんだよ 「どこにも行かないでね」って聞こえた気がするけど、その声が本当に消え入りそうな響きを持っていたからさ、
俺は平和な顔して「ゆうかりん何か言った?」とか返しちゃうわけよ そしたらゆうかりん、おでこで俺の背中をぐりぐりってやりながら「なんでもないわよ」って
つまんなそうに返すんだよ そしてその後は何も言わない 俺も何も言わない かきたくもない汗をかいて暑さに耐えるだけだけど、ゆうかりんがいいなら
俺もそれで構わない、そんな不思議な時間の過ごし方なんだよね まあでもそのうち流石にお昼を過ぎちゃうと動き出さないといけない気がしてさ、
ゆうかりんの制止を振り切って歩き出そうとするとズルッとゆうかりんがくっついて下手な格好の電車ごっこみたいになるの、これ馬鹿みたい!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふ

7 :
やるじゃん

8 :
ゆうかりんに栓をしたい
ゆうかりんの耳に栓をしたい
旅行の時に必要なモノといったら一番最初にアイマスクが思い浮かぶんだけどさ、耳栓だって絶対に必要なはずだよ 最近ダイソーで耳栓買ったのよ
オレンジ色で触るとぷにゅぷにゅしてる奴 潰して耳の穴にブチ込むんだ 外の音をイイカンジで遮断してくれるから眠りたい時なんかには大助かりさ
これをつけてれば横でゆうかりんが何騒いだって安眠できるね ゆうかりんったら時々寝言うるさいんだもの、俺だって安眠を取りたい時もあるのさ
でね、その耳栓をゆうかりんがどこからか見つけてくるんだよね 今は自宅だし、旅行中じゃないし、ゆうかりんはそこまでうるさくないっていうのにね
「これなに?」なんて言いながらオレンジ色を二つつまんで見せるんだよ 俺に見せつけながらもグニグニこねてみたり、引っ張って伸ばしたりするの
俺は今パソコンで麻雀ゲームの皮を被った神ゲーを配信する作業で忙しいんだよね だからゆうかりんに適当に答えてやったりとかするんだ
「何だと思う?」なんてね、正直自分が言われたらイラッとくると思うよ そんなに大したモンじゃないっていうのは誰が見ても明白なんだけども
こういう風にウザったく気取ってみたりするんだ それでもゆうかりんの素直なことと言ったらもうね、俺は夫としての立場から言うと文句はないんだよ
例えばこれがアリスさんとかだったら目を細めてふぅと細い溜め息を聞かせてさ、「下らないモノばっかり集めてるのね」とか言ってくるだろうけどさ、
ゆうかりんは「えー何かなー?」なんて言いながらわざとらしく笑ってくれたりするんだよ 俺はこのわざとらしい笑顔が好きで好きでしょうがないの
俺はもう一つ言葉を足してやる 「身体のどこかに入れる道具だよ」ってね、こりゃあもう大幅なヒントさ、深夜のクイズ番組だったら成り立たないレベル
目の細かいスポンジみたいになっていて、指で潰すとちっちゃくなって、ちょっと経つと膨らむ それでいて微妙に細い筒状の形をしている、ときたら
もう気付かないわけがないと思うんだよ ゆうかりんだって阿呆の子じゃないからね、むしろ俺よりずっと学があるから絶対に気付けると思うんだ
案の定「あー、はいはいわかった!」なんて言いながらそれを持って俺の顔に近付けるんだ そのまま俺の恥ずかしいアナにぶち込んでくれるのか、って
当然の予想を立てたんだけどちょっと違ってね どういうわけか耳栓を押し潰したゆうかりんの指が俺の鼻に向かってくるんだよ ここで考えてみれば
確かにその発想もアリなのかもしれない、耳の穴も左右二つだし、鼻の穴も二つだからね 「動くと痛いわよ」なんてよくわからない事を言いながら
ゆうかりんが耳栓を俺の鼻の穴にぶち込もうとしてくるんだよ ちょっとおかしいよそれは、普通鼻の穴にモノは突っ込まないよ 俺は変人だと思うけども
鼻に関してはそういう趣味は持ってないからね 何の役も成立させられずグダグダになった麻雀配信を一旦ストップしてゆうかりんを阻止するよ
俺の鼻に入れるつもりで伸ばしてきた手を直前でガッチリ掴んでやる ぐぐぐっと力が加わって、ゆうかりんの手と俺の手がプルプルってなるんだ
これは一体どういうマネだい、って聞いたらゆうかりんはすぐに力を抜いて「冗談よ」って言うの 「耳栓でしょ?最近のは便利にできてるのね」って言って
俺にぽいぽいと投げて寄越してくるのさ 俺には全力で俺の鼻を塞ごうとするその動きがとてもジョークには見えなくてね、色々びびっちゃったのよね
なんだかんだでゆうかりんらしい茶目っ気ということで、俺のゆうかりんはお茶目さんだなぁっていういつも通りの話で今日も纏まりそうなんだよ
少しの間ウダウダして、そしてからゆうかりんに耳栓を元の場所にしまってらっしゃいって言うんだけど、ゆうかりんは「元の場所忘れた」とか言い出すのよ
その上俺に文句なんか垂れちゃうの 「耳栓なんて使わなくてもいいのに」とかね いや俺は安眠が・・・って言い訳しようとすると直前で口に人差し指、
言葉を止められてこう言われるんだ 「あなたは私の言葉だけ聞いていて欲しいの」ってね そういうことか!そういうことならもっと早く!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふ

9 :
ゆうかりんに着せたい
ゆうかりんに紐下着を着せたい
別にいやらしい意味じゃないよ、あれ可愛いじゃないか 紐なんてむず痒くて結ぶのが面倒で着辛いに決まってるのにそれでも着るっていう姿勢がね
こう乙女心とは正反対の益荒男ちっくなハートをギュンギュンと刺激するんだよね これをわかりやすく言い直すと「男のロマン」って事になるよね
今日は久しぶりに朝から晩までお休みだったからゆうかりんと郊外のデパートに行ったんだよ 遊びに行くというよりはお買い物をしにね
なんていうか田舎モンっぽいよね、遊びに行く先がデパートってのがね かと言っても幻想郷には24時間やってるゲーセンとか無いからしょうがないね
こうさ、よくアニメとかドラマとかであるじゃないか、カップルというかアベックというかツートップというか、それの片割れの女の子の方がはしゃぎまわって
好きなようにお買い物してさ、荷物を男の子の方に全部持たせるっていう展開さ 「荷物持ちが居てくれると助かるわ」とか言っちゃう感じの展開だよ
様式美と言ってしまえばそれまでだよね でさ、ゆうかりんもそんな事をさせちゃうタイプの女の子だと思われがちなんだけど、そうじゃないんだよね
荷物は一緒に持つんだよ 俺とゆうかりんでね 繋いだ手の逆側の空いた手で一個ずつ、半分ずつ持つの ゆうかりんは優しい女の子だなぁとか
そう思うかもしれないけどちょっと違うんだよ 「あなた軟弱だから荷物いっぱい持てないでしょ?」って事らしいの、理由は俺が人間だからって事かしら
逆に男としてのプライドがキズモノにされてしまう感じがするよ そんな事ないよ持たせろよ!って気になるよね でも持たせて貰えないんだよね
気を使われてるのか単純に力不足だと思われてるのかはわからないけど、うーんなんとも腑に落ちないよね 歯痒いっていうのはこういう感覚なのか
さてさて、買い物といってもゆうかりんにプレゼントーとかそういう展開じゃなくてね、そろそろお米が切れそうだから買っておく、みたいな展開なんだけどさ
次はデルモンテのトマトジュース買うって言ってゆうかりんの手を引っ張って飲み物コーナーに行くんだよね ゆうかりんは「じゃあ私アレがいい」って
言いながらニコニコするの ゆうかりんがアレって呼ぶのはきっと最近出たちょっとお高めのオレンジジュース 果肉が妙にゴロゴロしてるやつだよ
俺はオレンジジュースが飲めなくてゆうかりんはトマトジュースが飲めないからこういう話になるのよね お互い好き同士でも趣味まで似るわけじゃないね
そんな事を言い合いながら歩くんだ 他の買い物客の間を縫って、あそこの角を曲がる、と思ったその時にね、ゆうかりんが「きゃっ」って声を上げるんだ
そのまましゃがみ込むの ゆうかりんが顔を曇らせて、足の付け根のあたりを押さえながら動かなくなるんだよ えっこれ何がどうしたの?ってなって
流石に俺も焦るよね よからぬ事が起きてしまったんじゃなかろうか、額に嫌な汗がつたうよ 子供のころ盲腸で緊急入院した時の事を思い出して
俺の慌てっぷりが有頂天に達するんだよ、あれは酷く苦しかったからね 最愛のゆうかりんの身に何が起こったのか 荷物をばたばた倒しながら
ゆうかりんに顔を寄せて大丈夫?おなか痛いの?って聞いてやるの ゆうかりんはゆっくり俺の方を向いてね、赤らんだ顔を横に振るんだよ
なんだか思ったよりも余裕がありそうで少しだけ緊張が解ける で、どうしたのかなーと思ったらゆうかりんは妙にちっちゃい声でこう言うんだ
「ひ、紐、解けちゃった……」ってね は?紐? 他のお客さんに囲まれてヒソヒソと話をされる中でゆうかりんが俺にこっそり耳打ちしてくれることには
久しぶりの俺とのお出かけが嬉しくって、何かを期待したからちょっと気取った下着なんて穿いてきたんだってさ あの、ずっと箪笥の奥にしまってた
黒くて紐のやつだって、微妙に透けるやつね 服の下で結んだ紐が解けちゃって焦ってるんだって 俺、なんかちょっとだけ呆れてしまったよ
「あ、そうなの」って感じだよね 善戦できない勝負下着ってもうダメだね とりあえずゆうかりん、トイレで結び直してきなよ!恥ずかしいし!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふふふふふ

10 :
ゆうかりんと聞きたい
ゆうかりんと愚痴を聞きたい
愚痴なんてチラシの裏にでも吐き溜めてればいいんだよ どんなものでも溜まればある程度の価値を持つかもしれないじゃないか、淡い期待を持とうね
そうは言うけども「愚痴を聞いてくれる相手」っていうのは大事だよ 大事というか、居てくれると嬉しいし、本当に有り難い 単純に心の支えになるよね
でもゆうかりんが酔った時に言う愚痴は大抵俺絡みの話でさ、それが何故か俺に直接言われるっていうのが良くわからない所さ ストレートすぎるよ
「歯ブラシは定期的に取り換えないとヤだって言ってるのにー」って俺に言うんだよ まあ言われないよりはマシかな、これからは気を付けるとするよ
今日の仕事はやけに忙しかった気がするんだよ みんないつもは買わないのにニヤニヤしながら花買いに来てさ、何かイベントでもあるんですかって感じ
そのせいで帰るのがちょっぴり遅くなったよ それはゆうかりんと顔を合わせる時間が減るってことだから俺にとっては致命的というより絶命的な何かさ
だから帰りは急ぎ足だよ、背中に羽が生えてたら間違いなく飛んで帰ってたね そんな感じで忍者みたいにシュシュッと我が家に参上してやったのさ
玄関を開けてただいまーって言ってから気付く、玄関にゴッツいブーツが置かれてるんだよ 随分と固そうで、何かを踏みつけたらさぞ絵になるだろうっての
思いっきり鼻を近づけてニオイを嗅ぎたい衝動に駆られるけど一応幻想郷では「普通の人」という地位に置かれているんだ、そのはずだから
ここはグッと堪えて自分に言い聞かせて我慢するよ 俺だって今の立場が惜しいと思うことだってあるよ、ゆうかりんのために保身を考える時だよね
ガラッとリビングに続く戸を引くとね、困った顔をしてるゆうかりんと目が合うんだ 「あ、おかえり」って言ってくれたんだけども横からの大声で
すぐに掻き消されてしまったんだよね 「ちょっと!人の話聞いてるの!」ってね 人の家のテーブルに握り拳をドン!って叩きつけながらラウドネスだよ
人の話っていうかね、人でもなければ妖怪でもなくて、もっとなんていうかランクの高いところにいるはずの方なんだけどね この方は鍵山雛さんと言って
「厄神」って呼ばれるすごい偉い神様なんだよ 妖怪の山で暮らしてて、人妖問わず慕われてたり疎まれてたりする、そんな神様らしい神様なんだよ
そんな素敵な神様が何故我が家に来てるのかっていうとね、ゆうかりんと厄神様は貴重な「妻友」らしいんだよ ツマトモ、響きだけなんだか卑猥だよね
厄神様は世帯持ち しっかり者の旦那さんと二人の子供がいるんだよね そういう話っていうのは神様同士ではなかなかし辛いものがあるらしくて
で、色々あってそういう話ができるゆうかりんと仲良くなった、と 「そういう話」とは言うけどさ、配偶者の愚痴とか子育ての愚痴とかそういうのばっかりで
やっぱり理解のある人じゃないと話し辛いんだって そんな事を前にゆうかりんから聞いたよ で、今我が家に襲来した厄神様による一方的な愚痴大会が
絶賛進行中なわけで 厄神様も俺の帰還に気付いてくれるんだよ、お上品に笑ってくれるんだけどまた怖い顔になってゆうかりんに向かって捲し立てるの
結婚生活も随分経ってるみたいなんだけど、やれ「旦那とマンネリ」だとか「刺激が足りない」だとか「下の子がグリンピース嫌いで困ってる」だとか
愚痴みたいなものは次々出てくるみたいなんだよね ゆうかりんは作った笑顔で「そう、大変なのね」とか言ってるんだけど明らかにオーバーキャパシティで
俺に目で「助けて」みたいなサインを送ってくるんだよね 助けたいのはやまやまなんだけども女性同士の言わばガールズトーク(笑)には介入できないから
どうすることもできないんだよね ゆうかりんが相手だから言える、ってのはあるだろうし だから俺は「お茶のおかわりでも持ってきましょう」とか言って
即急にゆうかりんの視界から消えるんだ 「あなた後で覚えてなさいよ」って顔をするゆうかりんは怖いけども、世の中にはしょうがない事もあるんだよ、うん
やっぱりどこの夫婦も苦労してるモンなんだね、俺とゆうかりんだけが苦労してるわけじゃないんだよ っていうそれっぽい理由を持とうよ!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふ

11 :
ゆうかりんに口付けたい
ゆうかりんに優しく口付けしたい
唇で触れ合うだけなのに愛情を表現できるっていうのも不思議だよね つまらない事を言うと、唇だって所詮ただの肉であり脂肪でしかないのにね
でもゆうかりんの唇に並々ならぬ興味を惹かれるのも事実だよ どうしてなんだろうね、ついつい気になってしまうんだ 手のかかる子供みたいだよ
さて今日はね、特に何も目的を持たないまま手を繋いで買い物バッグを持ってゆうかりんと人里の商店街という名のメインストリートををぶらぶらするよ
こう言ってしまうと途端に胡散臭くなるんだけどさ、ゆうかりんも俺も無駄遣いが好きなんだよ 冷静に考えてみたら全然必要じゃないものでも
目に入り次第「面白そうだから」とかそんな理由を付けて買ったりしてみるんだよ 対象年齢から大きく外れたオモチャだったり、不味そうな珍味だったり
それが男モノなのか女モノなのかもわからない変てこなアクセサリーだったりするんだよ でも俺は、正直無駄遣いだとは思ってないんだよね
どんなものを買ってもゆうかりんとの話のネタになるからね 軽い溜め息を吐かれながら「また馬鹿なモノ買っちゃって」とか言われるのもアリだし
明らかに違うだろってツッコミを入れたくなるようなワケのわからないモノを押し付けられて「あなたへのプレゼント買ってみたの」って言われるのもアリだよ
結局ね、俺とゆうかりんに無駄なんて無いんだよね そんな言葉を好んで使う奴なんてひねくれ者か吸血鬼のどちらか、あるいはその両方だね
今日もよくわからないモノを購入だよ ゆうかりんも俺もアルコールに強くないってのに赤い缶のさつまいもビールとか買ってみたりしちゃってね、
飲みきれなかったらどうしようかなーなんて思いながらまたぶらぶらする作業に戻るのさ 人里の商店街ともなれば知り合いだって一杯いるんだよね
後ろから声をかけられたと思ったら寺子屋の慧音先生だよ 「二人の時間の邪魔をして悪かったな」とか言いながらね 笑顔で応対する俺とは正反対に
一気にむすっとした顔になるゆうかりんだよ そしてしばらくお話するの 単なる世間話なんだけども客商売の時のテンションでニコニコしながら話すのが
ゆうかりんには気に食わなかったみたい ゆうかりん以外の存在と話す時はこうなっちゃうんだよね、逆にゆうかりんの前でしか素が出ないって事なんだけども
ゆうかりんから見てみれば「他の女と嬉しそうに話してる」って事になるのかな そりゃあいい気はしないよね、逆の立場になったら俺だって嫌だよ
そんな事も知らずに俺は慧音先生と当たり障りのない話を延々とするの 特に面白くない話でも笑ってみたりしてね、身振り手振りを大げさにするうちに
ゆうかりんと握り合っていた手をぱっと離しちゃうんだよ それが何かの合図になっちゃったのかな、ゆうかりんが大きな声で咳払いをするんだよ
そして「あなた、ちょっと」なんて言って俺の身体を引っ張る きょとんとした顔の慧音先生を尻目にね、ここでゆうかりんが何を言うかと思えば
「私にキスしなさい」だってさ いきなりだよ、ホントいきなりだね 人里のド真ん中でだよ、慧音先生だけじゃなくて行きかう他の人の目もあるし
ぶっちゃけ羞恥プレイの類でしかないと思うんだよ それでもゆうかりんは目を細めて「早く」なんて言ってくるんだ 王様が自分の権力を誇示するように
ゆうかりんも何かを見せつけたいんだろうか 急かしながら目を閉じられると俺もどうしようも無くなる気がするよね 唇をちょっと突き出すようにして
身を寄せてくるゆうかりん ここで俺は状況を打開する秘策を思い付くんだよ すぐさまゆうかりんの前に片膝ついて跪いてね、ゆうかりんの右手を取って
手の甲に軽く口付けるんだ これなら恥ずかしくもないし、条件も満たしてるからゆうかりんも満足してくれるはずさ これでどうだと思って顔を上げると
「馬鹿にしてんのか」みたいな目で俺を見るゆうかりん そのまま自分の唇に指でちょんと触れてね、俺はもう絶体絶命の窮地に追いやられてしまうのさ
果たして俺は人前でゆうかりんにキスしないといけないのだろうか 俺の運命や如何に? あと慧音先生はまじまじと見ないでくださいホントね!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふふふふふ

12 :
ゆうかりんと感じたい
ゆうかりんと運命を感じたい
感じられるはずのないものを感じたいっていうのもおかしい話だよね でも見えるものなら見てみたいし、触れるものなら触って「思ったより熱い」とか言いたい
そういうものだよ、知らないものを知りたがってるだけなんだよ 俺にもその「運命」っていうやたらカッコイイ単語が付き纏っているのだとしたら
それは間違いなく「俺とゆうかりんに関する事」だからね、ただの好奇心でそのフタを開けてみたいんだよ 運命と目を合わせた後、どうなろうと知ったことじゃないね
こんなことを思ったきっかけとかさ、それなりにありそうなモノなんだけど、ただその日をのんびりゆるりと生きている俺にはそんな大層なモノがあるわけじゃなく
ふと目を閉じている時に頭に浮かんだだけなのさ ただの日常を輪切りにした一コマ、朝ゆうかりんの横で目が覚めた時に夢のカケラでも残ってたんじゃないかな
気にしてみると結構気になるもので、そのままゆうかりんの髪を撫でて遊んでた朝からゆうかりんの腰を撫でて遊んでいる昼下がりの今までずっとずっと
同じことを考え続けていたんだよ さて、そろそろ腰を触るのを止めないと取り返しがつかない事になりそうだぞ ゆうかりん「あと3分」とか言ってたしね
ずっとカウントダウンしてるんだよね、このカウントがゼロになったらどうなるんだろう、もしかしてその握りしめた右のグーがこっちに飛んで来たりするのかい
さあ残りテンカウントを切ったぞーというところで止める俺を策士と呼んでくれても構わないよ 露骨に嫌そうな顔をするゆうかりんは今回は負け犬さ
さて、ずっと思っていた事を話題に出してみる 運命というものについてね ゆうかりんは俺より頭がいいし、色々な事を知っているし、長い時を生きているから
もしかしたら俺よりしっかりした考えを持っているのかもしれないね さんざんセクハラしておいてご機嫌斜めになっちゃったゆうかりんをまた呼ぶと
少しばかり怒ったような顔をするんだけどさ、それでもやっぱり俺の横まで来てくれるんだよ そしてそこで話してみる 口から「うんめい」って言葉を出すのは
何となくいけないことをしているような気持ちになったよ それでも何故だか俺はゆうかりんに言わざるを得ないような気持ちになったんだよね、不思議なものさ
稚拙な言葉を横一列に並べる俺を目と耳でふんふんとちゃんと受け止めてくれたゆうかりんは、一通り俺が喋り終わると手を口元に当ててクスッと笑って
「何?偉そうな話でもしたくなっちゃったのかしら?」なんて茶化すんだ そうじゃないよ、そうじゃないんだけどそうかもしれないけど、そうじゃないつもりさ
そしたら次は「そういうのは吸血鬼にでも聞いてくればいいんじゃないの」って言うんだ 無邪気な笑顔を浮かべながら、俺に手の甲を向けて「しっしっ」てやるの
何だか思ったよりゆうかりんに伝わらないみたいだ そういう事じゃなくてだね、もっと俺はこう…… と思ったんだけど、そもそも何が言いたいんだろう
俺は何を言おうと思っていたんだろう どうやっても見えなくて感じられないものをゆうかりんと話してロマンチックな気分に身体を浸したかったのかな
何とも下らないよね、空に向かってツバを吐くようなものさ 雲は掴めないから雲なんだろう、そういうことならそうと早いうちに理解すればよかったよ
全くもって無駄な時間を過ごしたよ、そしてそれにゆうかりんを巻き込んでしまった事に対する若干の罪悪感 恥ずかしさを必死に誤魔化すために
わざとらしくほっぺを掻いてみたりしてね 「いや、何でもないです」なんて何故か敬語を使っちゃったりするんだよ そんな俺を見たゆうかりんは
何かをわかってくれたのかどうか、それはわからないんだけどね、座る位置をもっと横にずらして俺とぴったりくっつくような体勢になってから
「どうでもいいことばっかり考えないの。あなたってば単純なくせに、一丁前に悩むフリするんだから」なんて言うの 人の事を思いっきり子供扱いしてさ、
優しく頭なんて撫でてくれちゃってね 「どうでもいいでしょ、一緒にいられるのが運命通りならそれでいいし、一緒に居られないのなら背くでしょ?」
そんな事を言って俺の顔を覗き込むようにするの ゆうかりんの中で答えは出てたみたいだね、やっぱり敵わないなって思わされるんだ!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふふふ

13 :
ゆうかりんと過ごしたい
ゆうかりんと一日を過ごしたい
朝起きると俺より先に歯を磨き終わったゆうかりんがやけにニコニコしてるのに気が付くんだ ニコニコというかニヨニヨみたいなそんな感じの顔さ
その顔のまま「今日は何の日ーふっふー」とかわざと聞こえるように鼻歌を歌うもんだからね、勘のいい俺がピンと来て勘のいい俺の息子もビンときてさ、
冷蔵庫の横に貼ってあるカレンダーに顔を近づけるわけよ 雪国の動物の写真が可愛いカレンダー、色々仕事の用事が書いてあったはずなんだけど
今日の日付は黒のマジックでぐちゃぐちゃに塗り潰されていてね、空いた横には赤のハートマークが書かれているの そしてわざと目立つように縁取りされて
「幽香DAY☆」って書かれてるんだよ 何だろうね幽香デーって? 今日はゆうかりんの日なのかな、もしかして新しい国民の休日か何かだったりするかな
「ふむ」とか「ほう」とか適当な声を出す俺に後ろからゆうかりんが近付いてきたよ 俺がこの新しい記念日の詳細を尋ねるより早く、得意満面といった感じで
堂々と説明してくれるのさ 「えー、今日は私の日です」だなんてね、胡散臭い上に信憑性もない言い出し方で、尚且つやけに偉そうに言い始めるの
聞くところによるとこのゆうかりんの名前を冠した日はその名の通りゆうかりんの日で、ゆうかりんはやりたい事を何でもやってもいいし、逆に周りの人は
ゆうかりんに言われた事は何でも従わないといけないんだってさ 胸を張ったゆうかりんが説明し終わって、俺を見たまま鼻をフンっと鳴らすの
それに俺は「へー」って返しちゃったからちょっと怒られてしまった スリッパ履いたままの足で脛を蹴られて朝から悶絶してフローリングを転がっちゃったよ
もう知らない間にゆうかりんデーに突入してるみたいで、ゆうかりんはすっかりやる気なんだよね いつもは向かい合って座って食べる朝ご飯も
ガタガタと椅子を鳴らしながら横まで持って来て座ってさ、あーんってさせようとしてくるんだ 前からやるより横からやられる方がいいんだって言うの
俺が右でゆうかりんが左なら箸を持つ手の関係上やりやすいんだけど、右手の箸の側にゆうかりんが来ると非常にやりづらいよ だけどやれって言うから
わざわざ身体を捻ってゆうかりんに向き合うようにして口元に運んでやるの ケチャップがベタ塗りされたオムレツを俺の箸から愛おしそうに口で受け取って
もくもく食べるゆうかりん 「今日はずっと二人で過ごすわよ。行きたいところも行くし、やりたい事も全部やるの」って言って勝手に気を引き締めてるみたい
そうは言ってもやる気だけじゃ財布の中身は膨れないなーなんて思ってちょっと俺は不安だよ 最近は急な出費が多くて頭を抱え放題展開だからね
できればあまり高くない遊びで済ませたいなーと思ってるところさ 一通り食事を終えて片付けてさ、さてゆうかりんが何を言い出すのかと思ったら
「10時までお花畑でピクニック」なんて言い出すんだよ ゆうかりんが言うところのピクニックってあれでしょ、シート引いて寝て食べるだけでしょ
まあそれなら悪くないなとは思うから俺もゆるやかな許可を出すよ そもそもゆうかりんは俺の許可なんて得ずとも動くつもりだったみたいだけどね
「準備するー」って言ってね、早速庭の真ん中にシートを敷いたりしてるんだよ 俺は勝手にのんびりと構えてまっていようかなとも思ったけど、でも
こういう時って絶対何かあるのさ 次に外に出たゆうかりんは目を見開いて戻ってきて「敷いたはずのシートがない」とか言い出すんだ 勝手に焦って
そこらへんのモノひっくり返したりしてるの レジャーシート、風にでも飛ばされたのかな 可愛い失敗に思わず軽く笑うよ と、ここで来訪者がバオーとやって来るよ
魔法の森に住む、お知り合いの人形遣いのお嬢さん さっきゆうかりんが敷いてきたはずのシートを手に持って 「これが空飛んでたんだけども、
これ貴方達のよね?どういう遊びよ」とか言いながら見せつけてくるんだ 「ずっと二人きりで過ごす」という目標もここで打ち砕かれるハメになってしまって
涙目なゆうかりんだよ 「どうして上手くいかないのよ」なんて言いながら服を引っ張るの 記念日ってのもなかなか難しいものなのかな?ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふふふ

14 :
ゆうかりんに奢りたい
ゆうかりんにご飯を奢りたい
他人の奢りで食う飯ってなんであんなにおいしいんだろうね 何かRのような魅力があるよ、人をダメにするタイプの怪しい魅力に惹きつけられる
ただの食事には変わりがないのにどうしてあんなに快楽を感じるんだろう 一生誰かの奢りでタダ飯を食って生きていきたいよ、純粋な欲求というヤツさ
俺は今まで野生のSUSHIというのは回転攻撃を仕掛けてくるものだと思ったけども、今回の戦闘で回転せずにダイレクトアタックを仕掛けてくるタイプのSUSHIも
存在するという衝撃の事実を知ったよ あんなに値段という名のEXPが高いモンスターなのに今回俺の財布の中身のHPは小指の先ほども変動してない
口元も歪みっ放しなのはしょうがないね ニヘニヘしながら帰ってきたら何故かゆうかりんに詰め寄られるんだ 「遅い。お腹空いたんだけど」ってね
事前に今日は接待でお食事があるからおゆはん用意できないよごめんねって言っておいたはずなんだけどゆうかりんはどうやらすっかり忘れていたご様子
理想の「テレビの前の良い子のみんな」みたいにじっとして俺の帰りを待っててくれたみたいなんだよ 断罪だ贖罪だと物騒な単語を並べ立てながら
俺の胴をポコポコと叩いてくるゆうかりん もしゆうかりんが「自分でご飯も作れない箱入り娘さん」だったら飯を作らず家を空けてた俺が悪いんだけど
そんなことないというかやる気になれば天界の娘っ子でさえも唸らせられるくらいの料理が作れるんだよね なのにやってないのは単純に待っていたのか
それとも敢えて料理をせず俺の帰りを待っていたか、だよね 引っ付いてくるゆうかりんを引き剥がしながら「今日お外でご飯だから遅くなるって言ったじゃん」って
言うんだけどさ、ゆうかりんったらここぞとばかりに衝撃の事実を告げられた悲劇のヒロインみたいな顔するんだよね いや表情だけじゃなくてさ、
「何それ……どういうこと……?」ってわざとらしいセリフなんて吐いてみたりしてるの いやね、俺ちゃんとゆうかりんに伝えたつもりだったんだけども
ゆうかりんが知らないって言ってるから伝えきれてなかった俺が悪いって事になるのかな うわあなんだかやっぱり申し訳無さが高まってきちゃったぞ
他の家では「俺はちゃんと伝えたはずだ、忘れたのを人のせいにするな」ってキッパリ言う事もあるんだろうけど向日葵畑の真ん中にある風見家は違うよ
妻の側は「夫がちゃんと言ってくれなかった、夫が悪い」って主張するだろうし、夫の側は「自分がちゃんと伝えられなかった、夫が悪い」って考える
なんだかんだでこういう思考も似た者同士だってところは評価に値すると思うよ、認められたいものだよね お腹が空いたとぐずるゆうかりんをそっと抱き寄せて
ごめんねひもじい思いさせちゃったね俺を許してねって言ってみるんだ まあね、言った所で許されるわけじゃないんだけどね そのまま「今日は寿司食ってきた」って
さっきまでの展開を告げると抱きしめられたままの体勢からゆうかりんに腹パンされて一気に胃の中からさっき食べたカンパチを特殊召喚するハメになりそう
「はー!私を家で待たせて一人でお寿司食べたんだー!いいなー!」なんて言いながらね いや一人じゃないんだけどもね、寿司は実際美味しかったから
特に波風立てる事も無く自分から冬の砂浜に埋まりにいくよ その後もつま先だの肘だのを好き放題俺に打ち込みながら口で責めてくるゆうかりん
「そこまで白状者だとは思わなかった」「私の純情を弄ぶなんて」とかね、適当な発言も含みながらね 途中で「……おいしかった?」って聞いてきたから
ここは満面の笑みで「うん!」って返してやったんだけども、そしたら叩く勢いが5割増しになったんだよね 酷いよねおいしいものはおいしいってのにね
最終的にゆうかりんには赤いきつね(最近の俺の好物)を食べさせてあげることにした 熱いカップ麺を必死にふーふーしながらゆうかりんが
「罰としてお寿司奢ってもらうんだから」って言ってきかないんだ ゆうかりんあんまり生魚食べないくせにこういう時だけ寿司食べたがるの、食い意地って奴だね
回転寿司でいいかな?あの山の、「あや寿司」で……って言ったら吠えられた やっぱり回らない方がいいのね あー財布の中身が心配だな!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふ

15 :
ゆうかりんにかけたい
ゆうかりんの顔にかけたい
「男のロマン」ってのはズルい言い方なんだけどさ、これ以外に言い表せる言葉も見つからないんだよね 「不思議な不思議な赤ちゃんの素」を
きゅっとなったゆうかりんの中に注がずに顔にかける、これだけなんだけどもどうして男心というものがくすぐられてしまうんだろう 男心はビンカンだね
今日のゆうかりんはご機嫌だよ 自分で「今日は機嫌いいからね」って言っちゃうくらいご機嫌みたい ゆうかりんの機嫌なんて変動制相場みたいなもので
庭の花が昨日よりイキイキしてるからご機嫌だとか、逆に今日は天気が良くないから不機嫌とか、その程度のモノなんだよね 流されやすいのかな
まあ今回は単純に生理終わっただけなんだろうけどね 今回のは重かったみたいでね、主に俺の部屋の棚のフィギュアに八つ当たりしてたんだよ
「ご機嫌ー」なんて言いながら俺の身体にぺたぺた触ってくるゆうかりん どうやら本当にご機嫌みたいでね、必要以上にスキンシップを求めてくるの
俺としても悪い気はしないよね、これで悪い気がするってんならそれはホモかホモ寄りのバイってなものさ ゆうかりんが俺の服の中に手を滑り込ませて
胸元とか背中とかまで触ってくるものだからやたらとその気になってしまったよ というよりぶっちゃけR首弄られるだけで3秒で臨戦態勢に入れるの
これも日々のゆうかりんによる訓練という名の調教の賜物だよね ゆうかりんが顔を寄せてくるものだから俺も吸い寄せられるようにして唇を近付けてね、
迷惑な場所に巣を作るツバメみたいに唇の先で啄ばむようなキスをするの 目を細めたゆうかりんがいやらしく俺の頬を撫でるんだよ、そしてゆっくり
「今日は何でも好きな事やってあげる」って言うんだよね ゆうかりんの口からそんな素晴らしい言葉が出てくるとは思わなかった、ああ生きててよかった!
すかさず俺はこう言うんだ 「じゃあ顔にかけたい!顔にかける!」ってね 何でもしていいなら最初から最後までそんな事したいよ、三発は顔に出したい
でもゆうかりんは急に変な顔をするんだ まさか「それは嫌」みたいな事を言い出しそうな顔だよ、さっき何でもしてくれるって言ったばかりなのにね
ダメ押しで「いいよね?」って言う俺に、ある意味予想通りに「それ以外で何かないの?」って言ってくるゆうかりん 口をちょっぴり尖らせて見せるのさ
いやね、実は毎回こうなんだけどね AVという文化のおかげで顔射に憧れを抱いているオトコノコである俺と、それを徹底的に拒否しちゃうゆうかりん
今回は機嫌もいいし何でもするって言ったし、だからお願いしてみたんだけどやっぱりダメだった どうして顔にかけるのだけはダメなの、って
この際聞いてみる事にする そしたらゆうかりんはぷりぷり怒ってさ、「だってそれ顔にかけるものじゃないでしょ!」って言うんだよ ちょっと納得さ
加えてゆうかりんは本当は口の中に出されるのも嫌だって言うの 口の中に出す時は毎回飲ませるまでやってるんだけど、ああ嫌だったのかなこれ
飲むのは案外ノリノリでやってくれてるなーと思ったんだけどさ、まあ本当のところは……という事らしい 俺が必死に「汚くないよ」ってアピールするけど
ゆうかりんは「そういう事じゃないの」って言って取り合ってくれない しかし俺の頭の中はもうゆうかりんの顔面にホワイトバイソンする類の妄想で
いっぱいR僕元気状態になっちゃってるからね、こんな簡単な事では折れないよ みすぼらしい営業マンみたいな口調でゆうかりんを押していくの
ゆうかりんの心が折れるまで押していくよ 土俵際まで押していこうと思ったんだけどさ、ゆうかりんたら急に顔を赤らめながらこんな事を言うんだよ
「だってそれ、本当は出すトコロ決まってるでしょ? ……私の一番奥に欲しいの」ってね 俯き加減でこんな事をね、うわあっゆうかりんの中田氏おねだりだっ
裏庭に落ちてきた隕石よりもずっとずっと破壊力が高いよ、自分の認識の甘さを悟ったね やっぱりこの熱いのは直接ゆうかりんに注ぎ込む必要があるね
とりあえず宣言しておくと、今日は寝かさないよ 明日も平日だけど二人そろって朝日が登るまで抱き合っていよう 生産性バツグンだね!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふふふふふ

16 :
ゆうかりんと泳ぎたい
ゆうかりんとプールに行きたい
梅雨が明けたら待った無しで夏がやってくるんだから、そうなったら海に行くかプールに行くかの完全二択だよ 投げと表裏を加えて五択という考えも
どっちかっていうとゆうかりんはプール派なんだよ 大きいドーナツの柄の浮き輪にお尻を落としてさ、ずっと流れるプールをふよふよするのが好きみたい
そしてそんなゆうかりんを見るのが好きだからやっぱり俺もプール派だよ また無理言って新しい水着を買わせたりしたいものだよね、やっぱ夏だからね
そんな話をするけども今は梅雨の真っ只中でさ、窓の外では水に打たれる系の修行ができそうなくらい強い雨が降ってるんだよ まだプールは無理さ
でもゆうかりんはそんな中でもプールに行きたいって言うの 子供みたいに「プール行きたいなー泳ぎたいなー」って言ってソファの上に腹ばいになって
足とか手とかをばたばたさせて見せるんだよ クロールにしては下手糞な動かし方でさ、一通りバタバタした後はチラッと俺の方を見るんだよね
そんな必死にアピールされても俺は天候を操るミュータント能力とか持ってないからこの降り注ぐ雨を止める事なんてできやしないからどうしようもないの
結局つまらない男になるしかなくてね、「晴れたら一緒に行こうね」なんて言うぐらいだよ ゆうかりんの顔にますます不満が溜まっていくみたいでさ、
ほっぺがどんどん膨らむんだよね フラストレーションが爆発しそうなのはわかるけども本当に俺にはどうすることもできないんだよ、許してねゆうかりん
ゆうかりんはしばらくソファに寝転がって俺の事を睨んでいたんだけど、今度は急にスッと立ち上がってさ、どこかへ行っちゃうんだよね 何かと思ったけど
特に追求しないでさ、代わりに俺がソファに沈んでみたりするの ゆうかりんみたいに足をばたばたさせると何だか俺もそんな気分になってきちゃってね、
炎天下の下にも関わらず元気な子供でごった返す市民プールが心なしか愛おしくなるんだよね 俺もゆうかりんもまだまだ子供だなぁなんて思って
一人でうんうんと唸ってみたりするよ もうちょっと経って、ゆうかりんが戻ってきたの 微妙に肩が濡れててさ、「どこ行ってたの?」って聞いたら
「物置き」って答えるんだ この雨の中、外にある物置きに行くなんてゆうかりんは変わり者だね まじまじと見つめる俺の目線を避けるようにしながら
ゆうかりんは何かを設置し始めるんだよ しわしわになった何かを広げて、触手みたいなチューブを付けて、黄色い何かを足元に置くんだよ
そしてその上に白い靴下に包んだ右足を乗せてね、えいえいっと何度か踏みつけるんだよ 空気が勢い良く噴出される音がしてね、それはチューブを通って
ビニールの中に溜まっていくの しわしわだったビニールは次第に膨らんでいって、元の形を取り戻そうとする それと同時にドーナツを模した柄が
はっきりとわかるようになってくるんだよね 浮き輪と空気入れだよね、ゆうかりんってば何だかめっちゃやる気なんだけど一体どうしちゃったって言うの
当然のように梅雨だし今は夜だしプールも海も行けないんだけどね 当然のように空気入れをシュコシュコ言わせて一心不乱に空気を入れるものだから
俺が逆に「えっ行く気なの」って聞いちゃったよ ゆうかりん、少しだけニヤリと笑いながら「行かざるを得ない状況にしてやろうと思ってね」なんて言うんだ
いやね、挑発する方向をだいぶ間違えてると思うんだけどね まず天気をだね、うん だいぶドーナツに近づいてきた浮き輪まで俺を挑発するようで腹立つよ
ポンプをいい感じでサディスティックに踏み付ける右足の動きを強めながら「浮き輪にのって、流れるプールをずっとぐるぐるするの。あなたと一緒にね」なんて
楽しそうに言うゆうかりんを見てると突っ込もうにも突っ込めなくなるのは色々とずるいよね だって俺も行きたいもん、ゆうかりんとぐるぐるしたいからね
こりゃあ明日にでも晴れてくれないと大変な事になるぞ、と思いながら妙に重い溜め息が俺の口から出たよ 途中ゆうかりんは急に怒った顔をしてさ、
膨らみかけの浮き輪を投げつけながら「あなたも手伝いなさいよ!」なんて言うんだよね それは横暴で無茶苦茶だよ、やってあげるけどさ!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ

17 :
ゆうかりんと泊まりたい
ゆうかりんとホテルに泊まりたい
たまにはお外でデートしてそのまま泊まってみるのもいいよね、いつもする時は自宅だし、いつもの部屋のいつものベッドの上って決まっているから
気分を変える意味ではいいかもしれないよ でも正直俺さ、慣れない場所でしようとすると妙に緊張してイケなくなるからホテルってのは苦手なんだよね
俺にとってはそういう場所なんだろうね、ゆうかりんにガッカリされちゃうから個人的にはお断りしたいスポットではあるわけよ 自宅至上主義者なのさ
デートの帰り道にさ、後ろからガバッとゆうかりんが抱き付いてくるんだよ 勝手にバランスを崩してフラフラとしちゃう俺 妙にニコニコしたゆうかりんが
「ねえ、たまにはお城にでも行きましょうよ」なんて言うんだよ お城、って言うのはゆうかりんがカップル向けホテルを指す時に使う言葉なんだよね
ゆうかりんと俺が初めて行った所がやけに内装に凝ってるお城みたいなホテルだったからさ、それがいつの間にかこうやって呼び方になったみたいなの
後ろから手を回して首元をぎゅーっとしてくるものだから俺はたまらずゆうかりんをおんぶしてやったよ そうすると身体が持ち上がって、苦しくなくなる
俺におんぶされたのをいいことに、ゆうかりんは俺の背中でくすくす笑うんだよね 「このままお城に連れ込まれちゃうのかしら」なんて言っちゃってね
全くゆうかりんってばロクな事を言わないんだから、もう真っ直ぐ帰るところだって言うのにね そもそも魔法の森にホテルなんて無いですからねホントね
適当に宥めて普通に我が家に帰ろうとするよ だけど今日のゆうかりんは何故だか妙な拘りを持ってるみたいでさ、なかなかに粘ってみせるんだよ
やれ「最近のホテルのお風呂は広い」だとか「映画が見れる」だとかさ、「二人で大切な夜を過ごしたい」だとか歯の浮くような事まで言うんだよね
頭の上からそんな言葉が降ってきてね、そしてそれを押し込むように俺の背中でゆうかりんが身体を揺するんだよね ぐらぐらと動かされるから
そろそろ下ろしてやろうかとするんだけどそれは嫌みたいで、シャツを引っ張るようにして背中から離れようとしない 「なんでそんなにホテル行きたいの」って
ストレートに聞いてみる事にするよ 自宅でいいじゃないか自宅で、どこより落ち着けるし、出来ない事は無いしね ゆうかりんはしれっと言うんだ、
「そういう時もあるのよ。女心よ、女心」だなんて言うんだ 分かりやすい時だけ女心をアピールしてくるゆうかりんに若干の可愛さを感じてしまうよ
ここで「で、本当のところは?」と聞いてみるよ どうせゆうかりんの事だから、突飛な事を言い出す時っていうのは何かに影響されたに決まってるよ
少しばかり間を開けてからさ、「そういう話したんだもの。楽しそうに自慢されたら私だって行きたくなるでしょ」って言うんだよ ふてくされたような声さ
そういう話とな ちょっと思い返してみると原因が思い当たるよ 昨日我が家に遊びに来たレティさんじゃないかな、変な入れ知恵した文字通り黒幕がね
あの人自分ではそういう所全然行かないくせに知ったかぶりしてゆうかりんを焚き付けるんだから 最終的に俺を困らせて楽しんでる気がするよ
全く困った人だよね まあ、あっちもこっちも人じゃないんだけどね ゆうかりんも単純だからそういうのにすぐ影響されちゃうんだよね、チョロいよね
俺はここで約束してやる事にするよ 「じゃあゆうかりんが良い子にしてたら次のデートはお泊りしよっか」なんてね ゆうかりんは取り乱し気味に
「何よその子供扱いは!クリスマスじゃないのよ!」なんて言って暴れるんだ 全く人におんぶさせておきながら好き放題やっちゃってさ
腕をぶんぶんして人の上で暴れるんだよ 流石にガキ扱いし過ぎたかなと思うんだけど、そのすぐ後にゆうかりんは俺の背中からもぞもぞして降りるの
さっきまで甘えに甘えておんぶさせてたのに今になって素直にストンと降りるんだよ どういう心境の変化なのかなと思ったらちょっと口を尖らせながら
「何って、だって良い子にすれば連れてってくれるんでしょ?」って言うんだよね ああそういうことね、そうかもね、ちょっと違うかもしれないけど!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふふ

18 :
ゆうかりんと過ごしたい
ゆうかりんと夏を過ごしたい
暑いよね、わかるわかる でもわかったところでどうしようもないのが夏の暑さだよ この暑さは幻想郷の生態系に甚大な影響を及ぼしかねないよ
具体的に言うと、買ってきたスイカバーが袋の中で溶けてグチャグチャになってたから楽しみにしていたゆうかりんの機嫌を大幅に損ねてしまってね、
最終的に八つ当たりをされるのも俺、床に溶け落ちたアイスを片付けるのも俺という展開になったね ゆうかりんったらアイスぐらいでそんな泣かないの
さて今日もそんな暑い日が続いてるんだよ 薄着のゆうかりんが向こうの日陰のところでダラダラとしているのを麦茶なんか飲みながら眺めるの
我が家自慢の広い庭ではここぞとばかりに花を咲かせた向日葵達で満開でね、視界の全てが黄色と緑に塗られたかのようななかなか豪華な風景なの
一応私有地なんだけども小妖怪だの向日葵妖精が飛び回ってね、この炎天下でさも楽しそうに遊び回ったりしてるんだよ 我が家の大妖怪はというと
緑色のもしゃもしゃの髪の毛を額に張りつかせながら「あー」とか「うー」とか母音だけでのコミュニケーションに活路を見出そうとしてるみたいなんだよ
うちわを取って、俺に投げてよこして、そしてうーうー言いながら自分の顔を扇ぐようなしぐさをしてみせるの 暑いから扇いでくれって事なのかな、
まあそのアレだね俺も面倒だからそこは扇風機を使ってねって言ってあげるよ 一家に一台河童印の扇風機が置かれる時代だから有効活用しないとね
ゆうかりんがわざと「暑い」って口に出して言うんだよ 言えば言う程暑くなるような気がしてならないよ 俺だって暑いのに自分だけが暑いような言い方するの
扇風機のスイッチをつけてゆうかりんに向けてやって、そして俺は適当な伸びをするんだ そろそろ支度をして家を出ないと間に合わない時間だからね
ガバッとゆうかりんが起き上がって「もう行っちゃうの?」って聞いてくるんだ 今日は遅番とはいえ俺も一応幻想郷に生きる社会の歯車だからね、
人里の花屋でニコニコしながら接客するバイトにいかないといけないよ お互い家の中でぐだぐだして寝転がってただけなんだけどもゆうかりんにとっては
ある程度は貴重な時間だったらしく、今日も俺に行って欲しくないと言ってぐずるんだよ そうは言っても小学生みたいな長い夏休みはないから困るの
ゆうかりんの生活を支えるためにも俺は文字通り汗水垂らして働くんだよって言って、勢いを付けて立ち上がるよ 「夏休みないの?」ってゆうかりんが
これまたわざとらしく聞いてくるんだよ まあね、欲しいけど手に入らないものの類だよね 個人的には夜空の星よりも捕獲レベル高いと思ってるよ
今お店の方も忙しそうだから店長さんに「ゆうかりんと一緒に過ごすのでサマーバケィション下さい」なんて言い出せるはずもなく、やむを得ない状況だよね
「この夏はやらせたい事がいっぱいあったのに」とほっぺを膨らませて言うゆうかりん 「やりたいこと」じゃないんだね、なんとなく現実的なんだね
俺だってゆうかりんとやりたい事はいっぱいあるけどしょうがない 悲しいけどこれ現実なのよね、という心の響きを押し殺そうと思ったらここでゆうかりんが
何を思ったか「手に入らないなら勝ち取ればいいのよね?」って言っていきなり勢いをつけて窓の外から飛び立っていってしまったんだよ いきなりのことで
置いてけぼりを食らう俺 何だいその旧エウレカみたいな心意気の込め方は そしてゆうかりんはすぐ戻ってきてね、満面の笑顔を俺に見せるんだよ
「喜びなさい。夏休み貰ってきてあげたわよ。一週間だけど」って言うんだよ どうやら俺の職場である人里の花屋に飛んで行って話を付けてきたらしいの
当然のように勝ち取ってきたみたいで頭の上に!?が浮かぶけども、よくよく考えたらあの店の一番のお得意様はゆうかりんだから俺より発言力があるからね、
陶然と言っては当然なのかもしれない というわけでいきなりここから夏休み突入らしいよ、さっきまでグッタリしてたのに一気に元気を取り戻したゆうかりんは
「どこに連れて行ってもらおうかしら」なんて言って旅行の案内のチラシなんて見てるんだよ なんだ、やっと夏らしい夏が来ちゃうのかな!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふ

19 :
ゆうかりんと磨きたい
ゆうかりんと歯を磨きたい
ふかふかのベッドの上でゆっくりとお互いの顔を寄せ合ってさ、月明かりだけが頼りみたいな真っ暗な中でゆうかりんと唇と唇を寄り添わせるんだよ
ちゅっちゅって吸いついたり吸い付かれたりね ゆうかりんをぐぐっと押し倒すようにしてやるとね、こういう時ばっかり倒される収穫後のトマトみたいに
簡単にベッドに背を預けちゃうんだよね だから俺は覆い被さってやって、こうなんか舌とか伸ばしてみちゃったりする ゆうかりんのおくちを好きなだけ
好きなように楽しんだ後はこれまたわざとらしくゆっくりと口を放してやるんだよ 潤んだ目をしたゆうかりんが名残惜しそうにゆっくりとこう言うんだ
「……あなた、口臭い」ってね ちょっと待って、いや本当に待ってね、そこはもっとこうなんていうか「いいよ」的なセリフを言うべきなんじゃないのかな
良くわからない攻撃がカウンターヒットしてベッドの上でよろけ状態の俺 ゆうかりんは身体を起こして手を伸ばして、電気のヒモを一回引っ張るんだよ
一気に明るくなった部屋、ベッドの上で、俺の向かいでゆうかりんは目を細めるんだよ 「ちょっとあなた、不潔過ぎない?気持ち悪いんだけど」だなんて
容赦無くダウン追い討ちをかましてくるんだよね 久しぶりにまったりと夜を愉しもうと思ったのにこの仕打ちはちょっとばかり残酷過ぎはしないかな
俺は必死にアピールするよ 「そんなことないよ、さっきも磨いたし」ってね でもゆうかりんはニビシティのジムリーダーばりにますます目を細めて
「本当かしら?」なんて言って俺の顔を覗くんだよね 嘘を吐いてるはずはないよ、だって毎日毎回ゆうかりんと洗面所で肩を並べて磨いてるじゃないか
歯を磨くタイミングなんて二人とも一緒だし同じくらいの時間をかけてるから俺だけがそんなにシュールストレミングのような異臭を放つ訳がないのに
何故だかゆうかりんは不満そうで俺一人を罪人にしようとしているの、何なのこの状況は とりあえず冷静を取り戻そう、大きく深呼吸なんかしてみるよ
俺の口は臭くない、臭いとしてもそれはきっとフェロモンだかホルモンだかそういう類のモノのはずだよ よし自己暗示は完璧だね、俺は臭くない
ここでまたゆうかりんに聞いてみると、やっぱり「臭い」って言うんだ 「あなたは臭い人ね」って謎の定義付けをされてしまってますます俺は凹んでいくよ
また電気を消して無理やりラウンドワンをファイッしてやろうとするんだけどそれすら阻止されてしまってもう俺はどの方向に進めばいいのかすらわからない
ここでゆうかりんが提案するんだ 「仕方ないわね、私が磨いてあげようかしら」ってね いや何度も言うけどさっき、お風呂上がった時に磨いたのにね
ゆうかりんったらいかにも「これは名案です」みたいな顔して俺の腕を掴んで引っ張っていくのさ でも途中で何かに気付いてまた戻って俺を残して
自分だけ洗面所に行って、そして水の入ったコップと俺の歯ブラシ、メロン味の歯磨き粉のチューブを持ってくるのさ ニコニコしながらベッドの上に戻ると
俺においでおいでって手で示してね、こう、膝枕というよりはマッサージチェアに寄り掛かる時のような中途半端な体勢にさせるのさ どうやらゆうかりんは
この恥ずかしい格好で、一方的に俺の歯をクリーニングしてくれるつもりみたいだよ 「大丈夫よー恥ずかしくないからねー」なんて何を思ってるのか
子供をあやすような発言までしちゃってね、右手を俺の顎に添えてガッチリと掴んで、左手で歯磨き粉をたっぷり乗せた青の歯ブラシを構えるの
俺は何とも言えない状況だよ 恥ずかしい体勢のまま「ゆうかりん、これ屈辱的なんだけど」って言ってみるよ 精一杯の抵抗がコレとは情けないね
ゆうかりんは当然と言わんばかりにニッコリ笑って「知ってるわよ。屈辱的でしょ?私が屈辱を与えてるんですもの、それは当然じゃない」って言うの
全くゆうかりんの考えることはわからないよ 夜のアソビの代わりにこういうプレイをするんだと思えば納得できないこともないあたりが心憎いとも思えるね
しかし、俺の口は臭いんだろうか、色々不安になる あっゆうかりんの口はいつでも清潔だからね、むしろさわやかで甘い香りがするからね!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふふふ

20 :
ゆうかりんを回したい
ゆうかりんの目を回したい
別にゆうかりんを「回す」って言ったって勝手にモザイク加工されちゃうほどにベトベトでいやらしい事をするわけではないよ そういうのは夜にやろうね夜に
単純な回転の方だよあのくるくるする方だよ 適切なたとえを思い付いたから言ってみるよ、「厄神様の動き」のことだよ あんな感じのくるくるだよ
機嫌がいい時なんかはゆうかりんも我が家の庭のお花畑で嬉しそうにくるくるするんだけども神と名の付くものには敵わないみたい、やっぱりレベルが高いね
まああれだよ、言うとするならばジャイアントスイングじゃなくてよかったねって事さ あれ怖いよね、ゆうかりんを怒らせなければ食らうことは無い、はず
さてさて今日はね、と言っても別に何をしてるわけでもないんだよね ただ一日をゆうかりんと過ごすんだよ 今までもこれからもずっとそんな生活さ
今日のゆうかりんは昨日より綺麗だ、とかなんとなくいい香りがする、とかそういう事を考えたりしながらカレンダーのマスを一つずつ埋める日々だよ
ゆうかりん、ソファに座って裸足の足をフローリングにぴたんぴたんってやりながら俺を呼ぶんだよ 何かあったのかな、って俺は考えるよね
はいはいって返事をしながらアイロン台を放置してすぐにゆうかりんの傍に寄るんだけども、ゆうかりんったら「今日もいい天気よね」だとかなんとか
本当に適当な事を言うんだよ わざわざ人を呼んでおいてそれかよ、って思うかもしれないけども俺はちゃんと理解している ゆうかりんが何をしたいのか、
何をして欲しいのか、っていうことをね 単純にもっと近くに来て欲しかったんだと思うんだよ たとえ同じ屋根の下だろうと部屋の中だろうと二人の距離が
「求めきれない」距離まで離れてしまう事が多々あるんだ だからゆうかりんは時々こういうふうに適当な事を言って俺を呼び付けたりするんだ、可愛いよね
ちょっとだけ目を細めて不機嫌そうな顔を作るゆうかりん それを横から見つめてみる俺 俺の視線には気付いているはずなのに頑なにそっぽむいて
まるでいじらしい野花の姿みたいなんだよ 本当は構って欲しいのにそう言えないのって何となく苦しいものだよね 俺はゆうかりんが暑いかなと思って
ちょっと離れた窓の方でセコセコとアイロン掛けしてたんだけど、それが逆に気に障っちゃったのかもしれない 洗濯ものとアイロン台をズズッと引っ張って
ゆうかりんの目の前に持ってくる そしてわざとらしく「ここでやるけど、いい?」って聞いてやるんだ ゆうかりんがふうと軽い溜め息を吐くのが聞こえて
「別に」なんて言っちゃってね そんな中、俺はまたアイロン掛けにとりかかる ゆうかりんのシャツがべろんべろんだとあんまりカッコ良くないから
そこをシュッと、そうスネオの髪型ぐらいシュッとさせるのもまた、この家の俺の役割なんだよね 同じ白いシャツをいくつか持ってるゆうかりん、
ゆうかりんの表情を少しでも引き立てるように頑張ってアイロンを掛けるよ、正直この作業苦手なんだけどね ふとここで俺は背中に強い視線を感じるの
当然だけど後ろにいるゆうかりんが俺の事をガン見してるんだろうね ゆっくり振り返ってみるんだけどゆうかりんはまだ俺から目を離さないんだよ
じっと俺を見てるんだよ 「そんなに見てて面白い?」って聞くんだけども特に答えは返ってこなくてね 二人もいるのに部屋の中はしんとしているんだ
ふと悪戯っぽいことをしたくなってね、ゆうかりんの前に突きつけるように人差し指を伸ばしてみる ゆうかりんが気付いて人差し指の先をじっと見つめるんだ
それを確認してから俺は指先をくるくると回すんだ あれだよ、赤とんぼの目を回して捕まえる時みたいにね ゆっくりくるくると回してやるんだよ
こうやれば我が家の赤とんぼも目を回してさ、簡単に俺に捕まってくれるんじゃないかと思ったんだよ でもゆうかりんの反応は予想の斜め上でね、
なんと人差し指にかぷっと噛みついちゃったんだよ 痛くてすぐに指を引っ込めるよ 「邪魔よ。あなたのこと見てるんだから」ってゆうかりんが呟くの
そう言われてしまっては俺も何と返したらよいやらだよ 後はゆうかりんに見詰められたまままたアイロン作業 赤とんぼの季節じゃないからか!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふ

21 :
ゆうかりんと食べたい
ゆうかりんと運命の果実を食べたい
愛による死を自ら選んだご褒美として与えられるものらしいよ 甘いのかな、ちょっとすっぱいのかな、ゆうかりんのほっぺの方が甘いと思うけどね
今はまだ11時ちょいだけど、早めにお昼ご飯にしてもいいかなーって思ってゆうかりんに声をかけるとね、ゆうかりんは機嫌がいいのか知らないけど
珍しく「私が作ってあげる」って言うんだよ いやね、我が家の炊事当番というのは基本的に毎日俺、半永久的に俺の担当ということになっているから
レアモノどころかこれはロト6が的中するようなモンだよ 何となく俺まで嬉しくなってしまって「じゃあお願いしちゃおうかな」なんていやらしい言い方しちゃうの
程なくしてゆうかりんから呼ばれたから聞き分けのいい子供みたいにテーブルにつけたんだよ どんな料理が並ぶのかと思ったら俺の目の前には
ちょこんとりんごが置いてあるの りんご、手のひらでちょうど良く持てそうなサイズのりんご えっちょっと待って、まさかこれだけじゃないよね
りんご以外には卓上の調味料入れと箸立てしか置かれて無い これは何かの間違いなのだろうか、一応成人男性のはずの俺の昼食はりんごだけかな
俺はちょっとばかり考えてみるよ 実は、俺が無意識のうちに行った行動でゆうかりんを怒らせてしまっていて、その罰として昼飯抜き、みたいな意味で
りんごだけ置かれているのかもしれない そうなると俺はゆうかりんに謝らないといけない気がするよ、これは夫婦関係的に考えても悪い展開だよね
俺がジャンピング土下座しようかフライング土下座しようか悩んでいるところにゆうかりんが台所からやってくる いつものように俺の向かいに座るんだ
「これは"運命の果実"よ」 ゆうかりんが言うんだ、いやにもったいぶってね いやこれはどこからどう見てもりんごなんだけどね、ああわかった品種名かな
反射的にそう言ったら噛みつくように「違う」って言われてしまった 余計な事は言わないことにしよう ゆうかりんは他には何の用意もしてないみたいで
どうやら本当にこれがお昼ご飯なのかな、震災直撃後一週間ぐらいひもじい思いをすることになりそうだね と思ったらね、ゆうかりんが軽く息をついて
りんごをグッと持って、齧り始めるんだ 俺の目の前で、やたらワイルドに、そして爽快なアップルサウンズを鳴らしながらわしわしと食べていくんだ
あっこれ本当にゆうかりんを怒らせてるのか、と思ったんだけど目線で静止させられたから俺は動けず、まだ黙って見てるの だいたい食べ進めて
残り半分くらいになった時に、無言でゆうかりんが渡してくるんだ 半月になったりんご、それをテーブル越しに俺に渡してくるんだよ 反応に困って
ゆうかりんの目を真っ直ぐ捉えるしかなかったんだけど、ゆうかりんはもう片方の手で口元を拭いながら「運命の果実を一緒に食べるの、わかる?」って
言うんだよ わかんない、わかんないよゆうかりん だからそれは運命の果実じゃなくてただのりんごだってば あっここで俺は真実っぽい事に気付いたよ
ここにゆうかりんダイエット説が持ち上がるよ 昔流行ったりんごダイエットをしようとしてるんじゃないかな 体重を気にしちゃう乙女体質のゆうかりんは
一人でやるのは嫌だからこうやって無理やり俺も巻き込む形での実行なんじゃないかな 「痩せなくてもゆうかりんは十分可愛いよ」って言ったんだけど
ほっぺをスパンッと叩かれて「いいから私と分け合うの!食べろ!」って強く言われてしまうよ 全く、今日のゆうかりんはちょっとおっかない気がするよ
しかたなくりんごを一口齧ったらゆうかりんはやけに嬉しそうな顔をして「よしよし」なんて言うんだよ ニコニコし過ぎて気持ち悪いくらいだったけどね
その後は「じゃあ今からお昼ご飯ね」って言って、いつもより豪華なランチを楽しんだんだよね 一応りんごの残りも全部食べた、不思議なお昼だったよ
いやでもね、本当の事を言うと俺りんごってあんまり好きじゃないんだよね ていうか果物が好きじゃない、ゆうかりんもそのことは知ってくれてるはずだけど
それが大切な意味を持っているとするならば、そりゃあ食べるよね ゆうかりんのためだし、ゆうかりんと食べるとおいしいからいいしね!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふふ

22 :
ゆうかりんと遊びたい
ゆうかりんと遊びに行きたい
毎日が行楽日和みたいなモンだけどそれでもゆうかりんと遊びたいっていう思いは尽きないよ というより良く考えてみるとゆうかりんで遊びたいよね
言い方が悪いけど、ゆうかりんという存在は俺にとって最高のオモチャのような気がするよ 俺もできればゆうかりんにとってのオモチャでありたいね
さてね、最近はゆうかりん、よくお出かけするんだ 朝にだらだらと人里の花屋にお勤めに行く俺よりちょっと早くね、サマードレスなんかさらりと着て
ハンドバッグに俺が焼いたお菓子だのレジャーシートだのお花の種だの何やら色々詰めて、颯爽と玄関から出ていくんだよね 場合によっては
「お弁当作って」なんて子供みたいにねだってきたりしてね 仕方がないからちゃちゃっと梅ジャムのサンドイッチなんか作って詰めて渡してやるのさ
毎日そんなに張り切ってどこに出かけるのかなーって考えるとさ、やっぱり浮かんじゃうのが悪い方の考えだよね もしかしたら他の男のトコなんかに
わざわざ通い妻状態しているのかもしれない そう考えると俺はいてもたってもいられないんだけどさ、ゆうかりんはそれらも全部お見通しなのか
くすっと優しく笑って「あなたは私の旦那様なんだから、どっしり構えてるくらいでいいの」なんて言っておでこをちょんっと触ってきたりするんだよね 
まあそんな事が多々あるわけだけどさ、まあ日中は働いてるからゆうかりんを一人にさせちゃう俺が悪いし、それでもちゃんと夜には帰ってくるから
新しい遊びを見つけたのかなーって思って良しとしてね、ほっといたんだよ でもね、今日のお仕事中に人里に買い物に来ていたお上品系のメイドさんから
ゆうかりんの話をされるんだよ 「そういえば、今日も来てるわね、あなたの奥様が」ってね、仏花を包みながら変な声出しちゃったよ 「ほん?」ってね
この里からちょっと離れた、悪魔が住むと言われている洋館でメイド長を務めるこのお嬢さんが言うことには、ゆうかりんが毎日遊びに行っているのは
彼女の働くその館、人々が紅魔館って呼ぶ所らしいんだよね なんだか自分ではすごく意外な気がしてね、思わずメイドさんに深く尋ねてみるんだよね
いやあの館に遊ぶところなんてあったかな、って思ってね あそこの主さんはおっかないから基本的には近付きたくないんだけど、ゆうかりんにとっては
そのくらいの相手の方が都合が良かったりするのかな、なんて思ったり 向かいから軽い溜め息が聞こえてね、「嫁ぐらいちゃんと繋いでおきなさいよ」って
皮肉めいたことを言われてしまうんだ 話を聞いてみると、ゆうかりんは最近洋館の門番さんとよく遊んでるらしい そういえばあそこの門番さんも
ガーデニングが趣味で仕事だって言ってたから話が合うのかもしれないね 毎日朝早くにやってきて長話をしたり、その辺散らかしたまま湖で遊んだり、
何度も紅茶を淹れさせたり、かき氷まで作らされたりする……って、途中から半分愚痴っぽくなってきたメイドさんの話を聞く なんだか楽しそうだよね
ゆうかりんが楽しいなら何よりだよ、でも思った以上に遊ばせてもらってるみたいだから今度お菓子でも持ってお礼に行かせてもらいたいところだね
にしてもかき氷なんていいね、そういえば今年はまだ食べてないよ 俺も食べたいなーって言ったらキッと睨まれてしまったので無かったことにするよ
で、長話をしていたら少し日が陰ってきたからね、勝手に仕事を切り上げてメイドさんと一緒にお屋敷に向かってみる事にしたんだ 話が本当だったら
まだゆうかりんが遊んでてもおかしくはないと思ってね 世間話を続けながらぽくぽく歩いて湖の傍の大きなお屋敷に辿り着くとね、その門の前のところに
本当にゆうかりんがいたの 門番さんと一緒になって虫取り網なんか構えてね、きゃっきゃ言いながらひらひら漂うちょうちょを追い掛け回してるんだよ
蝶に逃げられたあたりで俺の姿に気付いて一気に動きを止めて顔を真っ赤にして「み、見るな!?」なんて言っちゃうゆうかりんと、仕事をほっぽって
遊ぶのも程々にしろとメイド長さんに怒られる門番さん 仲良しさんはいいものだよ、俺も一緒になって遊びたいけど嫌がられるかな?ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふふふ

23 :
ゆうかりんに扱われたい
ゆうかりんに年寄りみたいに扱われたい
こうね、俺が寝たきりの老人みたいに横たわってるからね、ゆうかりんには濃厚なサービスを提供してもらいたいね 上の世話とか下の世話とか中の世話とか
それをニヤニヤしながら眺めてたいね まあでもどっちかっていうとゆうかりんの方が年上だからゆうかりんが寝てる側の方が似合ってるかなとも思う
でもゆうかりんに「年齢の透ける話」をするとめっちゃ怒られるから事実的に無理だね 三日間くらいクチ利いてくれなくて悲しい思いをしてしまうよ
自分でも仲睦まじい夫婦であるとは自覚しているけども、触れてはいけない部分というのにはノータッチイエスロリータの精神で向かう、これが円満のコツさ
さて、俺は普通に魔法の森を歩いてたんだけどさ いや人里から自宅までの最短距離は魔法の森を突っ切ることなんだよ 最初は怖かったけれども
今となってはもう慣れっこでさ、ちーちゃんの花の唄なんか口ずさみながらぽこぽこ歩いてたんだよ 恐ろしく凶暴で食欲旺盛な妖怪なんかが出てきたら
必死で命乞いする気マンマンだけども目の前に表れない限りは気楽なモンさ 途中で妖精が楽しそうに遊んでる場面に遭遇なんてした場合には
ちょっくら遊んでやったり声を出して脅かしてやったりするくらいの余裕もあるよ でも今日はちょっと毛並が違う感じでさ、楽しげに会話に花を咲かせる
妖精の集団にエンカウントしたなーと思ったらさ、その中の一人に指をさされて「あー!ホラホラみんなあれ!はなさかじいさん!」なんて言われるの
俺の後ろにヨボヨボのお花っぽい気を持ったご老人が居る訳じゃなくてね、当然のようにその指は俺に向けられてるんだよ ちょっとビックリしてしまった
そんな呼び方されるのは初めてだもんね 「ちょっとチルノちゃんやめなよ……」なんて他の子にたしなめられてるのがまた可愛らしいというか健気でいいね
俺はその時はハハッて夢の王国の鼠みたいに軽く笑い飛ばして過ぎ去ったんだけどさ、なんではなさかじいさんなんだろうね それは昔話の人物で
実在するわけじゃないのにね 自宅までもう少しある道を歩きながらちょっとばかり考えてみたよ この謎は迷宮入りしてしまって俺を苦しめるかと思いきや
簡単に答えらしきものにブチ当たるんだけどね ああそうか、ゆうかりん、ゆうかりんがお花っぽい子だからその夫である俺にまでそういうイメージがついてきて、
それで、はなさかじいさん、と これは合ってるかな、なるほどこうやって考えてみれば何となく理に適ってるような、やっぱり何だかお門違いなような気がするよ
だけどなかなか面白いよね 俺もゆうかりんみたいな不思議な力があったらはなさかじいさんのモノマネはすると思うよ 我が家の裏庭に堂々と立っている
サクラとウメの木に向けてババッと手のひらを向けてさ、それで夏でも冬でも満開にさせてみたり でもゆうかりんは怒るだろうね、勝手な事するなって
「無理やり花を咲かせることは、寝ている途中で起こされるようなものなのよ。あなただってお昼寝の途中で叩き起こされたら怒るでしょう?」だとかなんとか
そういう事を言いだすのは目に見えてるよ だから結局やんないよ、俺ははなさかじいさんじゃないよ 普通のじいさんだよ、内側だけ普通のじいさんさ
そんなこんなで帰宅 いつものように玄関を開けたらいつものように飛びついてくるゆうかりん 受け止めてやって軽く抱きしめてやって色々と満喫する
家に帰ればあとはこっちの時間だよ 好きなだけゆうかりんを堪能して明日への活力を補充する、自分にとってこれが「人生」と呼べるような時間さ
ソファに二人で腰かけてくっつき合ってる時に、さっき言われたはなさかじいさんの話をしてみるよ ゆうかりんは何故だかカンカンに怒っちゃって
「失礼な事を言う奴がいるのね」なんて言うんだよ でも俺はね、本当はね、全然嫌じゃなかったんだよ しかもその逆でね、何となく嬉しかったんだよ
その変な呼び方を通して「ゆうかりん」と「ゆうかりんの番いとしての俺」が認知されているような気がして、変な話だけど誇らしく感じたんだよね
やっぱりゆうかりんと俺は二人で一つなんだ、二人で一つになれたんだ、って思うと心が温かいじゃん、だって俺ゆうかりんの事大好きだし!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふふ

24 :
ゆうかりんに叱られたい
ゆうかりんにこっぴどく叱られたい
明らかにイライラが顔に出てるゆうかりんの目の前で正座させられてね、自分がやった事を隅から隅まで咎められたい 自分だけ木陰にいるゆうかりんさえ
あんなに暑そうなんだから、炎天下の下で土に正座させられてる俺はもっと暑いのは当たり前だよね でもゆうかりんはそんな俺に慈悲をくれる様子もなく
なかなか良く通る音で舌打ちなんかしちゃったりしてね、俺に反省を促すんだよ いや俺は既に反省しきっているというか、そもそも反省する部分が
見当たらないというか、どうにも腑に落ちない感情を抱えたままでね、涙目でゆうかりんを見るしかできないんだよね 自宅の庭とかならまだわかるけども
ここは魔法の森のど真ん中でさ、そんなところで俺とゆうかりんがこんな状態なの 妖精だの、野良魔法使いだの、新聞記者だのが何かを嗅ぎつけて
野次馬根性を丸出しにして周りに集まってくるんだよ そのうち一人がぱしゃぱしゃとカメラのシャッター音をさせたあたりでゆうかりんがガーッて怒って
「見世物じゃないのよ!散れっ!」なんて言って日傘をぶんぶん振り回したりするんだよ どうしてこんな状況に陥ってしまったのか、これから詳細を
のべのべしていきたいところだけどもさ、先に言っておくけど別に俺は悪くないと思うんだよね、良かれと思ってやったことだし、間違ったことはしてないしね
いや、洗濯物をしてたんだよ 今日もゆうかりんは朝からお出かけしちゃってさ、当然のように家事は俺に押し付けられるんだよ で、いい天気だったから
今日はお洗濯日和だーって事で思いっきり洗濯しようとしたんだよね といっても洗濯物を河童印の洗濯機に突っ込んでゴウンゴウン言わせるだけで
幻想郷の文明も日々進歩しているなあって感じさせられたりられなかったり せっかくゆうかりんもいないことだし、家中の衣類を洗濯してしまおうと思って
ゆうかりんの服もたっぷり洗濯機に突っ込むよ その中にはゆうかりんの勝負パンツとかもあるのよ、まあ昨日履いてたからそりゃあ洗濯するべきだよね
一緒に洗って濯ぎまで自動でやって、そして俺が一個一個物干し竿にかけてくの 一人だからのんびりまったりやったんだよ でもその途中で
ちょっとしたアクシデントが発生するんだよ 突風がね、こうね、ビューって言うよりウォンッ!って感じで吹いてきたんだよ 横殴りの強い風が物干し竿を
思いっきり撫でてさ、で、そうすると軽い洗濯物が飛んじゃってね さっきも言ったけどゆうかりんの勝負パンツなんかね、巣を飛び立った小鳥みたいに
森の方に飛んで行っちゃったんだよ 考えてもみてごらんよ、「勝負パンツ無くしましたごめんなさい」ってゆうかりんに言えるかい? 絶対怒られるでしょう
だから俺は必死に探しに行ったんだよ、森の奥までね 最終的に、木の枝に引っかかってたから不慣れな木登りなんかにトライするハメになっちゃってさ
やっとのことで全部洗濯物を集め終えてふうと一息だよ 森の中でゆうかりんの下着やら何やらを抱えてる状態で何やら達成感に満ちた表情をしてる俺、
ここにゆうかりんが登場したわけだよね、遊び終えて帰路についたゆうかりんとバッティング 理解が難しいこの状況が変な誤解を生んでしまって
俺はリールインパンチを横っ面に一発食らって、で、今こうやって説教されてるの 説明終わりだよ ね、俺悪くないでしょ? 何が悪いかって、風だよね
「全くもう、あなたみたいな人が旦那だなんて、本当に恥ずかしい」 ゆうかりんはそう言って俯いた俺の顎をつま先でつんってやるの 涙目の俺が
いくら見上げてもゆうかりんは許してくれないみたい、ずっと冷たい目でこっちを見てるんだよ 「反省した?」って、時々こう聞かれるんだけども
そもそも誤解だし事故だから反省のし様が無くて、俺はどう反応していいやら ゆうかりんはそんな俺の様子に更に怒りを募らせる、っていう悪循環さ
今日はお洗濯日和じゃなくてしかられ日和だったみたいだね こんなことなら亭主関白のフリしてたまにはゆうかりんに家事でもさせればよかった
ゆうかりんが洗濯物を飛ばしちゃったとしても俺は笑って許すのにね 心!心が狭いよゆうかりん!もうちょっと寛大でハートフルな感じに、ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふ

25 :
ゆうかりんに絡まれたい
ゆうかりんに変に絡まれたい
どちらかっていうと俺もゆうかりんも絡まれる側だよ ゆうかりんと一緒に暮らしてると、何故だか変な人だの人じゃないのだのに絡まれる事が多いよ
やれ宗教の勧誘だの、売れない新聞のインタビューだの、魔法の研究がどうとか最強だとか異変だとかね ゆうかりんと二人で顔を見合わせて
「やれやれ。春は変な奴が多いわねー」「そうだねー」なんて言い合ってるよ 春だけじゃなくて夏も秋も冬も、年中同じことを言ってるんだけどね
今日は早めに仕事が終わったから人里で適当におゆはんの買い物を済ませてから帰ろうと思って色々な店を物色するんだ 自分では食べないけども
ゆうかりんは食べたがるだろうから、食後のデザートにいちごなんていいかな、とか思いながら八百屋さんに攻め入ったりね 我が風見家の食事当番は
一年中俺ってことになってるけど別に嫌ではないんだよね ゆうかりんがおいしそうに食べてくれるから俺も作り甲斐があるし、単純に楽しいから有益さ
俺はやっぱり幸せ者なんだなって思うよ、「食べてくれる人がいる」なんてね 自分の日々の生活を振り返って、店先で勝手にニマニマしてしまうものさ
「もし、もし、そこの方」ってね、突然後ろから声がかけられるよ 何も考えず振り向くとそこに居たのは麗しいという言葉がピッタリなくらいの美人さんが
俺の顔をまっすぐに見てるんだよね 髪は長めで、ゆうかりんみたいな緑色、身長が高めで足がスラッとしてるんだ そして何より重要そうなポイント、
推定だけど、ゆうかりんよりバストサイズが大きいっていうね 見栄張って結構詰め物するタイプのBカップゆうかりんよりは大きいだろうっていう双丘が
地味目な服のなかでやけに自己主張してくるような気がするの いきなり容姿について語り出したのは何故かって言うとね、単純な事を言うんだけども
この人、知らない人なの 初対面だよ初対面、初めて見る人って容姿確認しちゃわない? でさ、そんな初対面なのに何故かいきなり腕を抱かれるんだよ
ゆうかりんがいつもやるみたいにね そして俺の事をやたらとホメるの、カッコイイだの何だのって今まで聞いたことも無いような嬉しい言葉のオンパレード
まだこの展開に戸惑ってはいるけども、もしかしてこれは俺に春が来たのかもしれないよ、勝手に舞い上がって心の中のゲージが溜まっていくのがわかる
ダメだよ俺にはゆうかりんが、と思いつつも勝手に伸びていく鼻の下 今日はいい日だな、と思った時に「はいそこまで」って声が向こうからするんだよ
八百屋さんの向かいの骨董屋さんの影から出てきたのは、身体からうっすら「怒」のオーラの出たゆうかりんと、手から光る糸を伸ばしたアリスさん
「ほら、やっぱり引っかかる。美人局じゃなくて良かったわね」なんて言いながらアリスさんが右手をクッと動かすとさ、目の前の女性が生気を失ったように
その場にガクンとうなだれるんだよ え、これ人形なの? あそこでドラゴンボールみたいなオーラの吹き出し方をしながら指をパキパキ言わせてる
スーパーゆうか人は置いといて、アリスさんが一連の出来事の説明をしてくれる この人形は俺の好みに合わせて作られた人形で、これを使って
「妻というものがありながら他の女になびくなんてテスト」を行ってたらしいんだよ、この長ったらしいタイトルを付けたのはゆうかりんだってさ
物陰からずっと二人で俺の様子を見てて、最終的な判定は「デレデレし過ぎ」ということらしく、ギルティ・オワ・ノットギルティかと言われたら前者だってさ
いや別に俺も下心があったわけじゃないよ、可愛い子に話しかけられて悪い気はしないし、そりゃ笑顔になったりするかもしれないけど心の中には
ずっとゆうかりんがいるし、ゆうかりんがいるから間違いは起こさないよ って言い訳するんだけども魔人ブウと戦っても苦労しなさそうなくらいに
髪の毛を逆立てたゆうかりんが「言い訳無用よ。再教育してあげる」って言いながらゆっくり寄ってくるんだよね ああもう一気に俺が騒然となって
平和な人里はバトルフィールドとなってしまうのだろうか 俺、ゆうかりんに信用されて無いのかな、こんな試し方するなんて酷いよ!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふ

26 :
ゆうかりんに甘えたい
ゆうかりんに甘えられたい
甘えが過ぎるのも問題だけども適度な甘えは夫婦間に必要だと思うんだよ 俺はゆうかりんに甘えるしゆうかりんは俺に甘える、そんな関係さ
でも実際は、「時には甘えたくなる」どころか毎日どころか毎秒思ってるよ 結局お互いに甘ちゃんって事なのかな、ゆうかりんは舐めると甘いしね
今日のゆうかりんは何かが違う、そう思わされたよ いやね、俺がただいまーって帰ってきてゆうかりんがお帰りーって言って玄関で抱き付いてくるのは
ここ数十年欠かせたことのない、まぎれもない日常の風景なんだけども今日のゆうかりんは何だか「濃さ」が違うの いつもとは違って、首に腕を回して
俺の身体が痛いくらいにぎゅーっと締めるんだよ、そして自分のほっぺと俺の頬をすりすりってやるの 何だか積極的な気がする今日のゆうかりんに
ぶっちゃけ悪い気もしないんだけどね でもゆうかりんの口から出た言葉というか台詞のようなものが微妙に俺を不安スパイラルに陥れたりするんだよ
「もー!遅いぞー!すっごく待ったんだぞ!」って言いながらね、タムロール中に聞いたら明後日の方向にジェットスティックしそうな高くて甘い声で
イビツな形の俺の耳元に直接囁くんだよ 何だいゆうかりんその言い方、こう言っちゃ悪いけど物凄く年齢不相応だと思うんだよ 思い返してみなくとも
当然ゆうかりんは普段こんな喋り方はしないんだよね 妙な喋り方と積極性、最初はゆうかりんご機嫌なのかなって思ったけど何か違う気がする
何となく怪しいよね 一番信頼を置ける相手への微妙な警戒は自分に対する屈辱であったりなかったりするけども、まずはちょっとだけ距離を離すよ
と思ってもまたゆうかりんが触ってきてさ、俺の頭だの顔だのにぺたぺた触るんだよ 「えへへー」みたいにアホの子系キャラの発する笑い方をしながらね
このままじゃ俺玄関から先に進めない、と思うんだけどゆうかりんは容赦しないの 仕方がないからゆうかりんの腕を持って引き摺って家に入ったよ
着替えようと思ったんだけどもゆうかりんが俺の身体を思いっきり引っ張るから哀れな俺は地面に倒されるハメに ゆうかりんが身体を摺り寄せてきて
俺の身体を、というより頭を自分に押し付けるみたいにぎゅっとするんだよ もうたまらなくなって「ゆうかりんどうしたの」って聞いてみる事にするんだけど
頭を抱いた状態でニコニコしながら俺を見て「んー?んふふふ」とか言うだけなんだよね だんだん気持ち悪くなってきたぞ、糖分過多状態の訪れだよ
ここでさ、いきなりゆうかりんが静かになるんだよ さっきまでの黄色い声がぱたりと止むんだよね 今度は何だと思って腕の中でもがいてゆうかりんを見ると
俺を抱きしめた状態で寝ちゃってるの この状態でいきなりお昼寝とはびっくりだね 寝息なんか立てちゃってさ、もうなんていうかベッドで寝なさいっていうね
そして同時に原因も判明するんだよ ふと見た向こうの床にちっちゃい箱が落ちてるの 目を凝らしてみるとどうやらそれは先日紅魔館から貰ったお菓子で
俗にいうウイスキーボンボンって奴なんだよね なるほど色々理解できたよ、ゆうかりんこんなのでも酔っちゃうんだ、本当にアルコールに弱いんだね
その後ゆうかりんはおゆはんの前ぐらいでガバッと起きてね 「ん、今何時……え?」とか定番もイイトコな台詞をお見舞いしてくれるんだよね 俺は苦笑いしながら
「もう少しでご飯できるからおやつ食べずないで待っててね」なんて言うんだよ どうやらご都合主義のゆうかりんブレインは先ほどの事を全然覚えていないらしくて
いつものテンション・いつもの喋り方で「眠かったから昼寝してただけで怠けてたわけじゃない」的なよくわからない言い訳を片っ端から並べていくんだよ
十分寝たせいか、夜にはなかなか寝付けないらしくてね、わざとらしく俺のパジャマの裾を引っ張って「眠れない」とか言っちゃったりするんだよ 俺は眠いから
「もー眠いぞーすっごく疲れたんだぞー」みたいに適当な言い方返してやってゴロンと横を向くの、ゆうかりんに背中を向けてそのまま夢の世界に突入さ
ゆうかりんがほっぺをぷっぷく膨らましてるのはわかったけどもそれでも無視さ 今日判明したのは、ゆうかりんにぶりっこは似合わないって事!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふふふ

27 :
ゆうかりんと漬けたい
ゆうかりんと漬け込みたい
こういう言い方をすると真っ先に「媚薬漬け」っていう素敵ワードが浮かんじゃう人種が幻想郷には大体半数以上いるらしいんだけど正直ホント卑猥だよね
でも個人的には嫌いじゃないどころか好きだよ、むしろ欲しいね 媚薬があったらゆうかりんと一緒にグイっといきたいね、二人でもっと深い愛に堕ちていくのさ
庭で採れた大量のキュウリ、なんだか使い道に困るよね ゆうかりんがもぐだけもいで遊んだ後は「どうせあなたが食べるでしょ」みたいに言うんだけども
俺は河童じゃなくて人間だからそんなにキュウリばっかりポリポリポリポリ食わないって教えてあげたいよ というより去年もおととしもキュウリは豊作だったはず
次は少し減らそうかなぁなんて思うんだよ ゆうかりんと二人でこの有り余るHCゲージのようなキュウリをどうやって消費するかちょっと悩んだんだけども
「風邪引いた時とかに、あなたのお尻に……突っ込む!」「やらないよ。しかもそれは葱だよ」みたいな他愛のない下らない話がぽんぽん浮かぶだけさ
まあ食材を無駄にしないタチなので結局は食う事になるんだろうけどね そこで適当に思い付いたのがピクルス、いや最近観た映画にすぐ影響されるのよ
酢漬けにしちゃえばこう適当な料理の付け合わせとして使えるだろうと思って早速作る事にするよ と言ってもやることはお酢を沸騰させてキュウリを漬ける、
ただそれだけの初月的な難易度なんだけどね 棚にあったりんご酢を小鍋にドバッと入れて火をかけるとゆうかりんが鼻をつまんで俺を見てくるんだよ
「あなた、臭いわよ」なんてね、そこにお酢の瓶もあるしここに小鍋もあるし換気扇も回ってるっていうのにこの状況を見ても俺を指差して言うんだよね
左手で鼻をつまんで、右手の人差し指を俺に向けて、そして妙に顔をニヤつかせてね 俺は「臭い男は嫌いかな」みたいに適当に言葉を返してやると
ゆうかりんは「あんまり好きじゃないわね」みたいに言ってくるんだよ まあそりゃあね、俺だって臭い女の子は好きじゃないからお互い様ってところかな
で、ちょっとだけ砂糖を足して甘めの酢にして、適当に切ったキュウリを消毒した瓶に入れて、そこに少し熱を落ち着かせた酢を注ぐ 俺が作業してる間
ゆうかりんはずっと横でξだのΞだのって言いながら見てるんだよね 土いじりした後そのまま抱き付いてくるゆうかりんの方が臭いよ、とは言えないよね
言わないのが大人の優しさって奴だよ、ゆうかりんが臭さに困らせられてる間に俺は生暖かい目付きを習得する事に成功さ ゆうかりんはコドモだよね
でね、冷蔵庫に入れる前に瓶の蓋を開け放って粗熱を取ってるんだけどもね、ゆうかりんが中の酢とかキュウリとかをちょんちょんって指で触っちゃうの
好きな子にちょっかいを出すみたいにつんつん、つんってやるの 酢に雑菌が入ったら得体の知れない黒いのとか白いのが浮いてくるっていうのに
ゆうかりんったらお構いなしだよ 急いで止めてやるとゆうかりんは指の先をとぷっと酢につけてさ、わざとらしく「うわー臭いのついたー」とか言い出すんだよ
ああもうハイハイわかったわかったって言って指を拭いてやろうとするんだけどさ、ゆうかりんは布巾をぽいっとテーブルの向こう側に放り投げちゃうの
そして言うんだ 「臭い女は嫌いかしら?」ってね まーた顔をニヤニヤさせて、俺の心をハーピーの羽箒で優しく擦るような発言をしてくるんだよ
俺はちょっと悩んでこう返すよ 「嫌いだよ、でもゆうかりんならいいよ」ってね こう言うのも何だか恥ずかしくて俯きがちになっちゃったけど言ってやったよ
そしたらゆうかりん、いかにもって感じで嬉しそうに微笑むんだよ 「それはよかったわね」なんて口から出す言葉はやけに他人行儀でさ、それなのに何故だか
俺にとっては心地良い感じなんだよね こういう下らないやり取りなんだけど、こういう下らないやり取りこそが俺にとって必要なのかと考えさせられちゃうね
ここでさ、ゆうかりんが「目、瞑って?」って言うのさ ワンモアラブリーを期待した俺は言われたとおりに瞼を下ろしてついでに唇もちょっと前に突き出すんだ
唇に唇がゆっくり触れて…… っていう展開かと思ったんだけどさ、結局ゆうかりんが人差し指舐めさせてきただけだった これ酸っぱいよ!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふ

28 :
ゆうかりんと聴きたい
ゆうかりんとラジオを聴きたい
俺はあんまりラジオとか聴かない人なんだけどさ、今日は窓の外で一網打尽紫Gみたいな尋常じゃない雨が降ってたからやむなく家出でじっとしててね、
物凄く暇を持て余してたからたまには変わったことを、と思ってラジオに手を出したりしてるの 意外にもゆうかりんはラジオに詳しいらしくてさ、ニコニコしながら
俺の横にラジオを持って来て、好きなチャンネルがどうこうって色々と一方的に説明した後、「後は静かに聴いてればいいの」みたいな事言って俺を枕にするの
なんでも俺が仕事でいない日中なんかは結構聴いているらしい 「雨を憂いながらラジオを聴くのもまた風流よ」なんて、気持ち良さそうな顔しながら言うゆうかりん
俺にはゆうかりんの言う風流っていうのがよくわからないよ だって俺に酷い仕打ちをした時も風流がうんたらとか風情がかんたらとか言って誤魔化すじゃん
適当な言葉で俺を煙に巻こうとしてるんだよね、全く困ったものだよ ま、そういう適当なゆうかりんも嫌いじゃないから俺の感情に何の影響も無いんだけどね
さてラジオの方ではね、高い声の女の子が何やら寄せられたお便りを読んでいくコーナーらしいの 一応程度に幻想郷にもラジオ局みたいなのはあるんだけども
「思ったよりちゃんとやってるんだな」なんて思ったのは内緒だよ そういう技術を提供するのは毎回河童だけど、例えばほらラジオ塔とかをドーンと立てるだけで
後は飽きて終わっちゃったりとか良くあるらしいからね、ちゃんと電波に乗って何かが聞こえる事に微妙な感動を覚えてしまったりするんだよね さて肝心の放送では
前の人のお便りが適当な言葉と共に切り捨てられていったの パーソナリティも河童の子らしいんだけど、可愛い声してるのに辛口なコメントを飛ばすんだよね
電波に乗ってるってのにあまり機嫌良くはなさそうな感じで、次のお便りに手を付けるんだよ そこで何となく過敏反応しちゃうワードが聞こえてくるんだよね
「えー、それでは次のお便り。P.N「ひまわり」さんからです……」 あら可愛らしいお名前だこと、と思ったら俺の背中に頭を預けてゆっくりしてたゆうかりんが
小声で「来たっ」とか言って身体をぴくりとさせるんだよ 来たって何だいゆうかりん、何やら引っかかる反応だよね 不思議が俺を包む傍らでゆうかりんは
何やら期待に包まれてるみたい そうこうしてる間にもラジオはペースを落とさず進行していくよ 「……何、またコイツ?一応読みますね、えーと、なになに?
『寝ている旦那の鼻をつまんだらフガって言って面白かった』ですって。はいはいわかりました毎回ご苦労様。10ポイント差し上げます。アンタも飽きないね」
とりあえず突っ込みどころが満載だったんだけど、ゆうかりんが「やったっ」って言って小さくガッツポーズしたんだよ ホントにゆうかりんのお便りなのかなこれ
寝てる間に鼻なんて摘ままれるなんて情けないね、この「旦那」 それにしてもこのコーナーは日常の不満やお悩みなんかを相談するコーナーのはずなんだけど
ゆうかりんは問題提起どころかマイナス要素を全く含めた事言ってないよね、それどころか「またお前か」みたいな反応されてたんだけどね、色々変だね
ペンネームひまわりさんに尋ねてみたところ、最近の暇潰しの一種らしくて、こうやって時々お便りを送ってるらしいんだよ 「なんだか楽しい」とは本人の弁
毎回毎回こんな事ばっかり言ってるのかと思うと微妙に頭が重くなる気がするけどね 俺をネタにしないでちゃんと日々の困り事を言いなさいって感じだよもう
それに、色々な要素が相まって、このラジオ聴いてる人には「誰が誰の事を書いたお便り」かがモロバレル状態だと思うんだよね 無性に赤面させられて
昨日と同じ顔でオモテを歩けないような気がする小心者っぷりだよ 世間ではいい意味でも悪い意味でもゆうかりん有名人だからなあ そんな有名人様は
俺の背中に引っ付きながら「また次の送らないと」なんて言うんだ そういえば最後に言ってた10ポイントって何?って聞いてみたんだよ ゆうかりんは微笑んで
「100ポイント溜めるとトイレットペーパーとか貰えるのよ」って教えてくれるの あ、だから最近我が家にシングルのトイレットペーパーが増えているんだね
てっきりゆうかりんが朝鮮玉入れ的なギャンブルでもしてるのかと思ってたよごめんね まあ俺にも得はあるわけだけども、その、やっぱり程々にしといてね!ね!ゆう
かりん!
うふふふふふふふふふふふふふふ

29 :
ゆうかりんと踊りたい
ゆうかりんとラジオ体操を踊りたい
七時に起きて近所の公園にラジオ体操しに行ってた時期が懐かしいね と言っても随分と前で、数えてみると200年以上も前の話なんだけどもね
当時は何がそんなに楽しくて熱心にラジオ体操してたのかはわからないけど、当時は当時で楽しかった気がするモンだよね 思い出補正って奴かな
ふと、ね、自分では何も考えてなかったんだけどもさ、椅子に座る時にはあっと溜め息を吐いちゃったんだよね 溜め息なんていつでも誰でも吐くものだけど
今回何がいけなかったかって、向かいに座ってるゆうかりんがそれをしっかり聞いちゃったってのがね 結果から言うと良くないというかついてないというか
むっとした顔をこっちに向けてさ、「……何よその『いかにも俺は疲れてますよ』みたいなアピールは」って突っ込まれちゃうんだ そんなつもりはないんだけど
ゆうかりんにそう受け取られてしまったっていうのがショックだよ 必死で弁明をしてみるんだけどさ、ゆうかりんは固くした顔を解いてはくれないんだ
一度火が付くとねずみ花火みたいに走り回るゆうかりんの口 やれ「背筋が伸びてない」だとか「顔付きが情けない」だとか色々と俺に攻撃を浴びせるの
「あなたがしっかりしてないと、私までだらしないように思われるんだから。しゃんとしなさい」って言ってビシッと人差し指を俺の眉間に突き立てるんだよ
別に俺自身は疲れてるつもりはないんだけどなあ それに、疲れがたまってるように見えるんだったら少しくらい夜の回数を減らしてくれてもいいと思うんだ
最近はようやく涼しくなり始めたからってゆうかりんもノリノリになっちゃってね 指を折って数えてみると三日か四日は連続してモゴモゴしてる気がする
夫婦とはいえたまにはゆっくり寝る日も必要だよ、と教えてあげたいね この空気の中でゆうかりんに反論する気はないしできる気はないけどもね
いつも通りの朝食を済ませた後、少しの間ゆうかりんは考える人のポーズで何やら唸ってたんだ 俺がお皿を洗い終えたあたりでパッと顔を上げて
「わかった。運動して体力を鍛えましょう」なんて言うんだよ いやその運動っていうのが足り過ぎてるんだよ、ナイトグラインドだって疲れるんだよわかってよ
でもゆうかりんは一度思い立ったら信念を曲げる気はないらしくて、早速俺の手を引いて庭に出るんだよ 夏が終わってすっかり寂しくなった向日葵畑の
真ん中に俺を立たせて、自分はイスを持って来て脚を組んで座るの 何やらされるんだろうなーと思ったらゆうかりんの口から聞き覚えのあるメロディが
ぽろりぽろりと零れてくるんだよ あっこれラジオ体操の曲だ、とは思うんだけどもやっぱり反応に困って、ただ茫然と立ったままゆうかりんを真っ直ぐ見るの
ゆうかりんはちょっと説明してくれる たぶんきっかけは簡単で知り合いの厄神夫妻が健康のために毎朝ラジオ体操でぐるんぐるんしてるっていうアレだよ
それで俺にもやらせるつもりなんじゃないかな 「ほら、早く踊りなさい。いち、に、さん、し」ってゆうかりんはパンパンと手を叩くんだよね 仕方ないから俺は
腕をブンブンしてみたり、飛び跳ねてみたりするのさ 流石にラジオ体操できない程衰えてるワケじゃないと思うんだけどなぁ、と心の中でボヤきつつも
ゆうかりんにいいように踊らされてしまうのさ、もつれた糸を断ち切れない鏡の中のマリオネット状態だよ 途中で「もっと動作を大きく!」だとかなんとか
愛のムチ的な始動を受けつつも記憶を頼りにラジオ体操第一を踊りきるよ 少し息を吐いて、ゆうかりんに「第二もやるの?」って聞いたら当然のように
「やるの」って答えられて俺の顔がアングリーあんぐりだよ、だって第二はあんまり覚えてないんだもん せっかくだからゆうかりんも一緒に踊ろうって言うんだけど
ゆうかりんは「恥ずかしいから」って言って拒否するの 俺だって恥ずかしいんだよね、どうして俺が恥ずかしくない前提なのかがわかんないところだよね
最終的には、軽快なゆうかりんの手拍子のリズムにつられた騒霊だの妖精だのが集まってくる中、なんだかんだで第二まで踊り終えたところなんだけども
ようやく解放かと思いきや「これを朝晩3セットずつ」とか言われてまたあんぐり 俺、そんなにラジオ体操好きじゃないよ!もう疲れたよ!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふ

30 :
ゆうかりんを覗きたい
ゆうかりんの着替えを覗きたい
何でもこう言ってしまえば許されると思ってるのは俺の悪い癖だと思うしゆうかりんにもそういう指摘を何度も何度もされているけどさ、やっぱり覗くってのは
男のロマンに満ち溢れた行為だと思うんだよね 本当は見てはいけないものだとか、バレたら社会的信用を墓地に捨ててターンエンドしないといけないのが
また背中にゾクゾクとした何かを駆け上らせるんだよね 覗き、とても文化的で優れた行為だよね、覗ける身体があるっていうのは素晴らしい事だね
さてゆうかりんとお外にお出かけすることになったから俺はぱっぱと着替えを済ませてしまってさ、のんびり着替えるゆうかりんを待ってたんだよね
ゆうかりん、いつも着替えるの遅いから退屈だったんだよ なんで女の子って着替えるの遅いんだろうね、まあそこらへんも可愛らしいとは思うけどもさ
閉じられた戸に向かって「ゆうかりんまーだー?」って何度も聞くんだけども「まーだー」って返ってくるばっかりで肝心のゆうかりんが出てこないんだよ
痺れを切らした俺は戸を開けて中に入ってゆうかりんにプレッシャーをかけることにした よくあるじゃん、音ゲーの順番待ちみたいな感じのアレをね
戸を開けたら当然のようにゆうかりんがいる 動きを止めて俺の顔をまじまじと見るんだよ あんなに時間かけたのにゆうかりんってばまだ半脱ぎぐらいで
逆に俺はびっくりしちゃうんだよね、まだ泳ぎ始めて第一のターンじゃないかっていうレベル ゆうかりんが俺の顔をまじまじと見てくるものだから
俺はついつい顔を逸らしてしまってだね、その間ゆうかりんの身体を見る事にしたんだよね まあなんというか白い肌と適度な肉付きと下着のセンスと
後はゆうかりん的なフラワースメルが漂ってきたりして俺は「あーやっぱりいつ見てもゆうかりんは可愛いなぁ」なんて思っちゃうのさ 足元にはパジャマの
ズボンがぐしゃってなっててさ、それを片足で蹴り飛ばすようにして除ける時のあの太ももの素晴らしさよ 子供みたいな下着がそれを更に際立たせて
これは俺のマイサンが黙っちゃいないぞってな感じだよね で、ここらへんでゆうかりんがハンガーをひゅいひゅいっと投げてきて、それがものの見事に
俺の両目に突き刺さるんだよね 小さな声で「見るなって」って聞こえて、哀れな俺は花京院みたいに途中での戦線離脱を余儀なくされてしまったよ
わざとらしく目の部分に包帯をグルグル巻きにしてさ、ベッドに腰掛けてゆうかりんが着替え終わるのを待つ 目が痛いし視界は真っ暗だけども
それでもゆうかりんの着替えが遅いってのは雰囲気と第六感でわかるよ、ホントに遅いのもう嫌になるね それにしてもゆうかりんそんなに怒らなくても
いいじゃないか、別にゆうかりんの身体なんて見飽きる程見てるしいつもお風呂入る時なんて子供みたいに俺に「脱がせてー」なんて言ってくるのに
どうして着替え見ただけでそんなに怒るのかっていう疑問が生まれてきたから素直にゆうかりんにぶつけてみるよ ゆうかりん、怒ったような声をつくって
「着替えてるの見られていい気分になる奴なんていると思うの?」なんて言うんだよ まあそんな人いたら多分コスプレAVとかに向いてると思っちゃうね
でも少なくとも嫌な気分にはならないと思うんだけど、そこんとこどうなんだろう 着替えながらもゆうかりんは軽い溜め息を俺に聞かせてくるんだよ
そして言うんだ 「その発言は『俺はデリカシーの無い人間です』って意味でいいの?それとも『風見幽香さんの夫はデリカシーの無い人間です』?」って
妙に尖った言い方をするんだ 何だかとても言い返せないよ、そういう言い方は反則だと思うよ、ズルいよね 俺は男だから乙女心とかそういう類のものは
てんで理解できなくて困るね ゆうかりんの事なら何でも知ってるつもりだけどまだまだわかんない事ばっかりさ、まあ次からは着替えてる時ぐらいは
大人しく待ってようと思う で、結局着替え終わって出かけたのはお昼を大幅に過ぎてから 一緒にお昼食べに行こうっていう約束だったのに三時だよもう
「じゃあ一緒にお茶でもすればいいじゃない」なんて言って笑うゆうかりん、腕に抱き付く感触が心地よくて暖かくてやっぱりいいもんだね!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふふふふ

31 :
ゆうかりんと食べたい
ゆうかりんとバウムクーヘンを食べたい
俺の好きな食べ物、それはバウムクーヘン 丸い形をしたドイツのお菓子で、ゆうかりんのほっぺより甘くてふわふわしてて凄くおいしいんだよね
他にも色々好きなものはあるけどもやっぱり最終的にはバウムクーヘンには敵わない あ、でも総合的にはゆうかりんの方が好きだから安心してね
まあとにかく好きなんだよね、好きだからよく仕事帰りに買っていっておやつの時間に出したりするんだけども、ゆうかりんは「おいしいとは思うけども、
別にそこまでというものでもないわ」なんてカッコ付けた事言ってくるからそこだけ嫌いだよ きっとバウムクーヘンを「バームクーヘン」て呼ぶタイプだね
ゆうかりんはプリンとかババロアとか、あとはクリームブリュレとか、そういうまったりした感じのお菓子の方が好きみたい 後は飴ちゃんとかだね
ゆうかりんが食べないんだったら俺は一人でもバウムクーヘンを食べるよ 俺とゆうかりんは夫婦だし愛し合ってるとは言っても、バウムクーヘンは別さ
だから今日も仕事の帰りに人里の洋菓子屋さんで一番ちっちゃいバウムクーヘンを買うんだよ 最近は毎日買っていってるような気さえするくらいだよよ
もはやこの店の常連で、店員さんに「いつもの」って言っても通じちゃうんじゃないかなーなんて思ってるんだよ そんな妙な誇らしさに顔を綻ばせていると
赤毛に猫耳が可愛らしいアルバイトの店員さんに「お兄さん、いつもコレ買ってってるね。本当に好きなんだねぇ」って言われるんだ いきなり話しかけられて
ちょっとびっくりしちゃう俺だよ それにさ、ぶっちゃけゆうかりん以外の女性に耐性が無いもんだから勝手にヒヨってしまってさ 何だか恥ずかしくて
「い、いやこれ妻の好物でして……」なんて言っちゃうんだよ 俺のキョドった態度がバウムクーヘンを勝手にゆうかりんへのお土産にしてしまったよ
言い訳のために使われたゆうかりんもある意味可哀想ではあるよね で、店員さんと一言二言会話をして、バウムクーヘンを受け取って、少し財布が軽くなる
「甘い物好きなんだねー」って店員さんが言ってた、ゆうかりんの事を知ってたみたいだよ というより幻想郷という枠で見るとゆうかりんは良くも悪くも
結構な有名人だからみんな知ってるモンなんだね 有名人も大変だな、なんて思いながら俺は焼き立てバウムクーヘンを片手に持ってえっちらおっちら
足取り軽くして自宅に向かうのさ リビングでウキウキしながらバウムクーヘンの包装を解いてる時にさっきの定員さんとの会話をゆうかりんに聞かせたよ
一通り話して、好きなようにバウムクーヘンに噛り付く俺の向かい側でゆうかりんは肘をついて溜め息を吐くんだ 「全く、勝手に人のせいにしないの」なんて
ごもっともな意見までくれちゃったよ でさ、その出来事から何日か経った後にさ、さっきお出かけしたはずのゆうかりんが顔を真っ赤にして帰ってくるわけよ
ソファでだらけている俺の前までズンズンと寄ってきて、どうしたのかなと思ったらいきなり俺の右ほっぺをパチーンって平手打ちしちゃうんだよね
いきなりの打撃、それも片手で妖怪の山に穴を空けるゆうかりんの平手打ち、一瞬意識だけが銀河のかなたの吹っ飛んでいくかと思ったよ ホント死にそう
涙目で肩で息をするゆうかりんは理由はわからずとも相当なご立腹のご様子なのさ 部屋の隅に吹っ飛んだまま、ほっぺを擦りながら「一体どうしたの」って
声にならない声で尋ねてみたのさ ゆうかりんが言うにはね、たまには人里の商店でも冷かそうと思ったら周りからヒソヒソ声が聞こえてきたんだって
「あっバウムクーヘンの子だ」「バウムクーヘン大好き風見幽香だ」四季のバウムクーヘンマスター」とかね ちょっと前に俺が咄嗟に放った嘘のせいで
噂が噂を呼んでいつの間にかゆうかりんはそういう扱いになってたらしい いてもたってもいられなくて飛んで帰ってきたんだとか 俺の首根っこを掴んで
ぐわんぐわん揺らしながら「あなたが適当な事言うからよー!」なんて怒るゆうかりん でもいいじゃん、可愛いじゃん、って言ったらますます怒られたよ
だって本当に可愛いじゃないか、俺だったら嬉しいよ それにさ、俺の好きなものが二つくっ付いてるなんてこりゃホント俺得ってヤツだよね!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふ

32 :
ゆうかりんに燃えたい
ゆうかりんに興奮したい
いやまあ本当の事を言うとゆうかりん本人だけじゃなくて緑の頭髪とか赤のチェック柄を見てもムラムラしてくる体質になっちゃったんだけどこれ内緒ね
これを言ってしまうとゆうかりんがいつものお洋服着てくれなくなるし、思い切って髪染めてみたりする危険性があるから言わないよ あの子天邪鬼だから
さて今日が日曜日だとは言っても別段とやる事があるわけじゃなくってさ、いつもみたいにソファに座った俺の上に更にゆうかりんが座って、
特に面白くもないテレビなんかぼーっと眺めたりするんだよ ブラウン管の向こうでは天狗のリポーターが地底で大流行の最新B級グルメを頬張って
目を白黒させたりコメントを詰まらせたりしてるんだ ゆうかりんの身体を自分の方にぎゅーっと寄せたりしながら「楽そうな仕事だね」「そうね」なんていう
普通オブ普通みたいな会話をするわけだよ のどかな日曜日の朝っていいよね、願わくば毎日ずーっとこうやってゆうかりんを抱っこして過ごしてたいよ
ムドオンカレーのようなものを食べさせられてリポーターの子が泡を吹いて倒れた頃 一方俺はふとあることに気付くんだ ゆうかりん可愛いなあって
改めて気付かされたんだよね、いや毎時間毎分毎秒そう思って過ごしてるけどね、このタイミングで特にそれが強調されて俺の脳に飛び込んでくるんだよ
俺の膝の上に座って足をぱたぱたさせるゆうかりん お肌はぷにぷにしてて柔らかくて、髪からはふわっと植物由来のシャンプーの香りがするのね
これは間違いなく可愛いね、宇宙には行ったことないけどゆうかりんは宇宙一可愛い存在だって断言できるよ ゆうかりんに比べたらそこらの奴なんて
大根に足が生えて歩いてるようなもんだよ 日常の中で改めてゆうかりんの可愛さを再確認するこういう瞬間が地味に俺の喜びだったりするものさ
でね、ふと気を抜いたらさ、なんというかマイサンというかいや別に子供はいないんだけどさ、そうじゃなくてキノコというか、いやたけのこ派なんだけども
つまりアレだよ なんだか元気になってきちゃったんだよね 「ホラ俺今めっちゃやる気だよ」みたいな感じで俺の脚の付け根の間で自己主張始めるの
そうなったら当然ゆうかりんにバレるよね、ちょうどゆうかりんがその上に座ってるんだもの 服の下からぐいぐいってゆうかりんにアピールしてきて
流石にゆうかりんも一発で気付くよ 「ん?え?」って怪訝な顔して俺の方を向くのさ 俺が咄嗟に目を逸らしたのもマズかったね、目線はあっちなのに
服の下では真上を目指してるんだもんね ゆうかりんは跳ねるようにして俺の上から降りて、明らかに侮蔑だの憎悪だのそういう黒く濁ったものを向けてくる
今にも中指をおっ立てて唾を吐きそうな顔して「あなた、何してるの?」なんて聞いてくるのさ ゆうかりん、夜にならないとこういうの許してくれないのよ
「いや、あの、興奮しちゃって」って俺は答えて頬でも掻いてみる 「そうじゃなくて、なんでいきなり欲情してそんなになってるの?って事なんだけど」って
ソファに座った俺のちょっと下の方を見ながら言ってくるんだよ 冷静に考えて、ゆうかりんみたいな女の子と肌密着なんかさせたらどんな奴でも
股間からウイスピーウッズが生えてくると思うんだよね、俺が今まで大丈夫だったのはアレだよ200年間の日々の鍛錬のおかげみたいなそんな感じだよ
「いやらしい事でも考えてたのかしら」なんて言ってため息を聞かせてくるゆうかりん 俺は素直に「ゆうかりんが可愛くて、つい」って返しておいたよ
それを聞いて、ゆうかりんが目を真ん丸にするんだ 「え、意味わかんない」なんて言っちゃってね この子もしかして鏡とか見たことない系女子なのかな
説明が足りないのかと思って「ゆうかりんは可愛い」ということを片っ端から説明してあげたよ 言い終わったらいつの間にかテレビが野球中継に突入してた
目を細めたゆうかりんに「意味わかんない上に気持ち悪い」なんて言われてしまって俺はソファから引きずりおろされるんだ 思った通りに言っただけなのにね
仕方がないからソファの下の、ゆうかりんの足先のところにあぐらをかくよ ゆうかりんの足触ろうとしたら怒られちゃった!風当たりが冷たい!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふふふ

33 :
ゆうかりんを読みたい
ゆうかりんの心を読みたい
唐突だけど俺はゆうかりんの心を読めるようになったよ いや別にアメコミみたいにガンマ線がどうこうとかミュータントでどうこうとかじゃないけど
普通に朝起きてゆうかりんの顔を見たらゆうかりんの心の中が透けて見えるようになったんだよ これはびっくりだね、これなら俺も地霊殿4面イケるよ
眠そうにまなこを擦るゆうかりんを真っ直ぐ見るとさ、俺の頭の中にホワワンと「まだ眠い」っていうフレーズが浮かんでくるんだよ ゆうかりんに「眠いの?」って
聞いてみたら不機嫌そうに「眠いに決まってるでしょ」って返されてしまった そして当然のように布団に包まるゆうかりん 掛布団をぐいっと引っ張って
もっこりした物体になってしまうのさ いやね、別にゆうかりんが朝起きる時に渋るのはいつもの癖だし、眠いのなんて見てわかるに決まってるけど
今ゆうかりんが包まってる布団の方からまたホワワンとフレーズが飛んでくるの 「気の利かない旦那だ」とか「一日が48時間になればいいのに」とかね
ああもうホントだめだこれ、心が読めちゃうようになってしまった 妙な高揚感が俺を包むよ、ようやく能力らしい能力を得る事ができた喜びと言ったらもう
これで俺もしっかり幻想郷縁起に「〜〜する程度の能力」っていう書かれ方するんだなと思うと何だか誇らしい まあ地霊殿のあの子と被っちゃってるけどね
とりあえずはゆうかりんを叩き起こしてやって、いつも通りの一日を過ごす その間もゆうかりんの心の声はぴょんぴょんと新芽が萌え出ずるように
俺の方に飛んでくるんだよ 朝ご飯のオムレツは「おいしい」だの「やっぱり朝はこれよね」だの思ってるらしいし、食事しながらもこっちをチラチラ見るのは
「○○(←俺)の寝ぐせが大変な事になってるけど面白そうだから放っておきましょう」って事みたい 急いで洗面所にいって頭を直してくると、心なしか
ゆうかりんがガッカリしたような顔をするんだよ それにしても心が読めるっていうのは不思議な感じがするもんだね ゆうかりんが何を思っているのか
手に取るようにわかるっていうのは新鮮だし、そのおかげでゆうかりんが思った以上に表裏のない人物だっていうこともわかるんだよ 素直な性格というのは
女の子をより美しく魅せるからね、俺は心が勝手に満たされるのさ その一方で「もしかして自分の心もゆうかりんに読まれてるのではないか」と思って
頭の中で必死にゆうかりんの嫌いな外国人タレントの顔を思い浮かべたり心の中で連呼してみたりするんだけど、ゆうかりんはいつも通りののほほんとした顔で
過ごしてるみたいだから安心 一方的にゆうかりんの心の中を覗ける、これは素晴らしくズルい状況だね きっと俺の普段の行いが良かったからに他ならない
居るのかどうかわからないけどこういうオカルティックな神様に感謝したくなるね でね、心の中を覗けるなら、どうしても見てみたい感情というものがあるの
当然といっては当然なんだけど、ゆうかりんが俺の事をどう思ってるのかってヤツだよ 本心を無理やり覗き見る事ができるのならば、これを知るのは今しかない
さっそくゆうかりんに牽制をかけてみるよ まず正面に座ってじっと顔を見つめてみる 「何見てるの?気持ち悪い」ってぽつりとつぶやくゆうかりん 心の中では
本当に「気持ち悪い」って思ってるみたいだねちょっと泣けてきたよ 案外こういうタイプの反動ってのも大きいよね、心が折れないうちにやめておきたいよね
だからもうさっさと行動に移しちゃうんだよ 目を真っ直ぐ見て、「ゆうかりん、俺の事どう思ってる?」って聞いてみるよ ゆうかりんがどんな答え方をしようと
俺には心の中が、ゆうかりんの本音が見えるんだよ さあどう来る、と思ったら、ゆうかりんがここぞとばかりにニコッと笑って「ん?大好き」って言うんだよ
いやびっくりしたね 何がって心の中も本当に「好き」って思ってくれてるんだよ嬉しいよ 妙に感動してテーブルに突っ伏したり やっぱり俺もゆうかりん好きさ
でさ、次の朝ね、目が覚めたらこの能力は消えてたんだ ゆうかりんの寝顔を見ても、心地良さそうだということぐらいしかわからない なくなってしまったのかな
それともなかなか楽しげな夢だったのか まあどっちにしろ無くてもいいかなって思うんだ ゆうかりんの心の中なんて見えてるようなモンだし!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふ

34 :
ゆうかりんと過ごしたい
ゆうかりんといつもの休日を過ごしたい
二人きりで過ごそうと思ってたんだけども今日は早くからお客様だよ 妙にサラサラした金髪に赤いヘアバンド、青の長いスカートが特徴的な
魔法の森に住んでる人形遣いのアリスさんさ ゆうかりんのお友達でもあり、俺の友達でもあるんだよね 今日連れている人形は白亜の露西亜人形ちゃん
俺こういう地味目に見える子も嫌いじゃないよ、乱れたらトコトン乱れてくれそうだっていう意味でね 怒られるから本人やアリスさんの前では言わないよ
来客によってゆうかりんと二人で過ごすいつもの休日ってのはポーンと頭の中から飛んで行ってしまったよ、でも別に嫌って訳じゃないんだけどね
別の日に過ごせばいいのさ、来週にでもね ゆうかりんと二人でお昼寝しながら肌をつっつき合うのなんていつでもできるからさ、また今度だね
「何よ、また来たの?」なんてふてくされたような言い方をするゆうかりん 素直じゃないだけで今のは「いらっしゃい、よく来たわね」っていう意味だよ
妙なプライドっていうのは常に人のコミュニケーションを阻害するよね、まあそういう言い方も既に理解できてる関係だから別にいいのかもしれないね
「また来たわよ」なんて返すアリスさんもアリスさんだし、それを苦笑いする俺も俺だよね 早速家の中にお招きして、俺はお茶の準備でもしてみるよ
せっかく遊びに来てくれたんだから、ということでちょっと凝ったお菓子でも用意してみようかな 久々にクリームブリュレでも焼いてみたいところだよね
紅茶の準備は自分でも手慣れたモンだと思うよ、もうゆうかりんに文句も言われ飽きたくらいだから技術もけっこう上達したんじゃないかと勝手に思ってる
ゆうかりんと、アリスさんと、今は二つだけカップを置くよ 俺のはお菓子の準備が終わってからだね アリスさんは簡単なお礼を言ってくれるのに
ふんぞり返って当然だと言わんばかりの顔を見せるのはゆうかりん 全くもう、たまにはこう夫を立てるというかなんというか、そういうのあるじゃん、ね
アリスさんが露西亜人形を指でくすぐって「ほら、遊んでもらったら?」なんて言うんだよ そしたらぴゅーっと飛んで俺の肩なんかに乗っちゃうのさ
人形っていうのは素直でいいね、ゆうかりんも人形だったらいいのになんて思うよ 思っても口には出さないけどね、またぶーぶー言われそうだからね
「何しに来たのよぅ」なんてわざと不機嫌そうな声を出すゆうかりん 行儀悪くテーブルに肘なんかついちゃってね、そのまま窓の外を眺めるんだよ
それに対して「別に……」なんて返すアリスさんさ いつものやり取りだよ、見ていて飽きるどころか目の角膜に焼き付いちゃいそうなくらい、いつもの
別に機嫌が良くない限りはあまり多くは語らないんだよね、俺は二人の事を勝手に知ってるつもりだよ お菓子の方はというとぶっちゃけ下準備をしたら
あとは頼れるオーブン兄貴に丸投げするだけなのであんまりやる事ない エプロンだけ脱いで台所で待機するのさ 二人とも静かにお茶を啜って、
何だか一緒に窓の外を見てるのがおかしいんだ ぽつりとアリスさんが「……あ、秋だから」なんて言うんだ 理由になってない理由だよ、季節のせいなんてね
でもゆうかりんも「そっか、秋だからかぁ」なんて言うんだ なんだ、俺の方がおかしいように思えてきたよ、秋のせいにしてよかったんじゃないかな
それに、どっちかっていうと秋を通り越してもう冬がやってきてる気がするんだけどそこに突っ込むのは流石にナンセンスだと思ったからこれも言わないよ
そのうち勝手にお菓子が焼けてね、二人の前にちっちゃいスプーンと共に持って行くんだ 俺と露西亜人形もテーブルについて、少しお茶を飲んだりする
さっきのやり取りを思い出して、俺が「秋だからなのかな」って言ったらゆうかりんは「季節のせいにしないの」ってピシャリと言いつけるし、アリスさんは
「変な言い方するのね、○○って」なんて笑うんだよ で、アリスさんにつられて露西亜人形も笑うの なんか頭がこんがらがるね、やっぱり俺が悪いのかな
俺でも一応威厳だとか尊厳だとかそういう事を考えたりもするんだよ もうね、全く無いね!一応夫だからそういうの持ちたいんだけど!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふ

35 :
ゆうかりんを起こしたい
ゆうかりんを眠りから起こしたい
お寝坊さんのゆうかりんを起こすのは俺の役目さ 一緒に寝てるけども、朝が来たらまず俺だけそーっと起きてゆうかりんのために朝ご飯を作るの
そしてからカーテンを勢い良く開いて、ぐずるゆうかりんを起こしてあげるんだ 一緒に暮らし始めてからずっとやってる一日の始まりの流れさ
今日だって一緒だよ わざと足音を殺してベッドに近づくと、ちょうど良くゴロンと寝返りを打つゆうかりん エンジェルライクな寝顔がこっちを向くのさ
こんな寝顔を見せられたらたとえ天使だって「自分は穢れているのではないか」って疑っちゃうよね 一点の曇りのない宝石のような素晴らしい寝顔
この寝顔を見るたびに俺は自分の生まれてきた意味を問うハメになるんだ そうして最後は「ああ生まれてきて良かった」と喜びに打ち震えるんだよ
でもずっと寝かせておくのも良くないので、ゆうかりんを起こしにかかるよ 今日はちょっとした事情から優しめに、いきなり布団を引っ剥がしたりしないで
軽く身体を揺すってやるの ゆうかりんの肩に相当する部分に、掛布団の上から手を置いてぐいぐいって揺すってあげようと思ったんだけども伝わる感触が
思いのほか柔らかくてニヤッとしてしまう俺を止められはしないし咎められもしないよね むしろ毎日起こしてやってるんだからこういう系のご褒美は必要さ
まあ気を取り直して、ゆうかりんの身体を揺すってやる ついでに声掛けだよ、応援団とお寝坊さんへの対応、そして意識不明の重体には声掛けが大事だって
この前慧音先生に教えて貰ったよ 豆知識が役に立つ時というのは必ず来るものさ 「ゆうかりーん、朝だよー、起きるよー」って言って身体を揺すると
ちょっとだけ身体がピクッとしてさ、あっこれは起きたなーっていうのがわかるんだけど、でもゆうかりんは頑なに寝たフリを続けるんだよ 目をぎゅっとして
俺を無視するんだよ、酷いゆうかりんだよね 起きてくれないと話にならないから俺は無理やりにでも起こしにかかるよ 手の動きを強くしていって
ゆうかりんに恐怖の震度5.5を与えてやるよ こうすれば口元の堤防は決壊して、ゆうかりんのよだれが津波になって枕に襲い掛かったりするかもね
でもゆうかりんは起きてくれないの 布団をガバッと被るようにして俺を退けるんだよ 小声で「うーんあと50年……」とか言いながらね ホントゆうかりんって
お寝坊さんというか寝るのが好きというかね、一日の半分以上は寝てるからね、もうどうしようもないのかもしれない でもね、今日の俺にはどうしても
ゆうかりんに起きて貰わないといけない理由があるんだよ 次第にこっちも弱気になっちゃうよね、なんでもするからゆうかりん起きてよーって
自分でも情けないとは思うけどもそういう事しか言えないんだよ でもさ、この言葉が功を奏したのか、ゆうかりんが俺に救いの手を差し伸べてくれるんだよ
掛布団の向こうからぽつりと「……おはようのちゅー、してくれたら起きる、かも?」なんて聞こえるの 朝っぱらから何を言ってるんだこの子は全くもう
そういうのぶっちゃけ困るんだよ、いやいつもなら別に問題はないし俺も進んでやるというかなんというか でも状況が状況でね、というかゆうかりんってば
今日は何の日だから覚えてないのかもしれない 「ゆうかりん、少しでいいからこっち向いて」って言ってやるよ ようやくゆうかりんが布団から顔を出して
こっちを見てくれるんだけどね、ニヘニヘした顔が瞬時に凍りついた顔に変わるんだよ だって俺の後ろにエリーさんとくるみちゃんがいるんだもんね
二人とも「あらあらまあまあ」っていう顔でゆうかりんを見てるの 今日は二人が遊びに来る日だって言ってたのに、ゆうかりん忘れちゃったんだね
だから早く起きろって言ったのにね エリーさんがグッと親指を立てながら「私一人じゃ見る事のできない表情に感動した」みたいな事を言ってくるよ
くるみちゃんは新型のiPhoneでゆうかりんを撮っちゃうし、全くやれやれだぜ ようやくゆうかりん起きてくれるかなと思ったけど顔真っ赤にして怒っちゃってさ
「最低!」みたいな事言いながら布団越しに俺を蹴飛ばすんだよ メチャクチャ痛いよ生殖機能が失われそう、だってしょうがないじゃない!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふ

36 :
ゆうかりんと過ごしたい
ゆうかりんとハロウィンを過ごしたい
記念日だとかイベントだとかそういうのをとにかく祝いたがるのはニッポンの原住民のイイトコロでありワルいトコロでもあると俺は思うよ 嫌いじゃないけどね
幻想郷の人々だってそうさ、みんなお祭り好きなんだと思うよ 御多分に洩れず俺もお祭りは好きだし、ゆうかりんだって縁日のりんごアメが好きだってさ
で、今日はハロウィンなんだよ 去年とか一昨年とかの事を思い出してみようか ハロウィンという日があった事を過ぎ去ってしまってから思い出してたのをね
そのたびにゆうかりんに怒られてた苦い思い出だよね でも今日はちゃんと思い出せたから俺は褒められる権利があると思うからそこらへんヨロシクね
だってゆうかりんがM.O.D.O.Kの頭蓋骨ほどもありそうな大きなカボチャを抱えてたからね、これで思い出せない奴はきっと新手のスタンドに記憶操作されてるよ
にっこにこしながらテーブルにカボチャを置くゆうかりん、いかにも重いですよって感じの音がするんだ わざと「それ何?」とか聞いてみたりするよ
ゆうかりんったらさらに顔を綻ばせながら「今日は何の日だか知らないとは言わせないわよ」って言うの どうやらハロウィンを一緒に過ごせる事だけじゃなく
このやけに大きなカボチャの存在もゆうかりんのご機嫌アップに一役買っているらしい カボチャは我が家の家庭菜園では育てていないはずから
きっと誰かから貰ったんだろうね こんな化けて出そうなくらい大きなカボチャを誰かにあげる物好きもいれば持って帰ってくる物好きもいたものさ
カボチャの頭をぺしんと叩いて「ハロウィンぐらいわかるよ」なんて言ってみる ゆうかりんはわざとらしく驚いたような顔で俺にぐいっと寄ってくるんだよ
「あら、あなたにも記憶力というものがあったなんて、今年は厄年かしら」なんてね 今までのハロウィンをすっぽかした事は地味に根に持ってるらしいね
本当は物事を根に持つタイプじゃないゆうかりんだけど、過去の出来事の存在を引き合いに出すことで俺に何らかの変化を与えられる場合は
これでもかってくらいに牽制として放ってくるんだよね 今回みたいにね、ここで俺が「ごめんねゆうかりん」的な事を言いながら優しくていやらしいハグでも
してあげることを望んでるんじゃないだろうか 俺にも言い分ってのはあってね、いや、ゆうかりん自身もハロウィンの事なんて忘れてたんじゃないのっていう
単純な反論はできるんだけども、あえて言わないのも優しさというか愛しさというか長寿と夫婦円満の秘訣と言うかそういういい関係のコツって奴だね
そんなやり取りもそこそこに、ゆうかりんがこのカボチャを切れというんだ なんだっけ、あのカボチャを顔の形に切り取る感じの、ハロウィンの定番だよ
名前はジャック……ジャックなんとか 思い出せないけどジャックというカボチャを切るからからきっとこれはジャック・ザ・リパーさ 殺人鬼って恐ろしいね
俺はそんな切り裂きジャックをゆうかりんの指導のもと作らされるんだよ 大胆にも黒のマジックペンで切り取り予定部分に線を引いていくゆうかりん
何故だか俺の表情を伺いながら線を引くんだよね、不思議な感じがするよ いや別に俺そんなことで怒ったりしないんだけどな、なんて思いながら見てる
ふむふむと変な声を上げながらペンを動かして、何度か手直しの後に線を引き終えたみたい カボチャをぺしぺし叩きながら「あんまり似ないわねー」って
何の事を言ってるのかと思えば、どうやら俺の顔をイメージして描いたらしい 可愛らしい一面もあるものさ、だけどもなんていうかホントに似てない
俺も絵には詳しいわけじゃないけど一つ言うとしたらアレさ、せめてメガネは含めないで素の顔をイメージして描いてほしかったね 今となっては遅いけどさ
そんなこんなでゆうかりんに急かされながら慣れないカボチャの解体作業なんてやってみたりね ここ数年で初めてな気がするハロウィンらしいハロウィンさ
特別な日をゆうかりんと一緒に過ごせるっていうのはいいよね、これだけでカレンダーが意味を持ってくるよ ハロウィンもなかなか捨てたもんじゃないね
切り終わったら「次はイタズラとお菓子ね」って言いながら手をワキワキと動かすゆうかりん 目付きが怖いよ!くすぐっても飴ちゃんは出ないからね!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふ

37 :
ゆうかりんと遊びたい
ゆうかりんと王様ゲームで遊びたい
王様というかゆうかりんは俺にとってのお姫様みたいな存在であることは疑いようがないよ さしずめ俺はお姫様を守る騎士ってところさ、読みはナイトね
でもこの騎士が貧弱な奴でさ、妖怪だの弾幕だのっていう日常の脅威に太刀打ちする術がなくて逆にお姫様に守られてばっかりなんだよね 困ったものさ
窓の外はもうすっかりちゃっかり白銀の景色なんだよね 別に俺もゆうかりんも雪に「降れ」って頼んだことは一度もないのにこの時期は勝手に積もりやがる
寒いのはあんまり好きじゃないんだよ だからゆうかりんと二人して炬燵に足を突っ込んでのんびりのんびりしてるんだ みかんの皮を剥いてやって
向かいに座ってるゆうかりんの、阿呆の子みたいに開けた口にオレンジ色の房を一つ食べさせてあげようとするんだけどさ、ついついうっかり間違って
剥き終わった皮の方をゆうかりんの口に放り込んじゃうんだよね いや、わざとじゃないんだよ、ホットペッパー幻想郷版を読み漁るのに必死だったんだ
だからそんなにムキになって俺を座椅子で叩かなくてもいいのにね、ゆうかりんったらね 「私はゴミ箱と同等の存在ってことかしら」なんて言いながらね
座椅子を伸ばした状態でそんな使い方しないで欲しいものさ、きっとメトロシティの住人でさえそんなはしたない事はしないよ 座るためのものだもんね
そんなこんなでいつもと同じような日常を過ごしてたんだ ようやく機嫌を直してくれたゆうかりんに「そんなにみかんっておいしい?」って聞いてみる
いや、俺柑橘類って苦手なんだよね そしたらゆうかりんはケロッとした顔で「あなたが剥いてくれるからおいしい」って言うんだよ 全く幸せな奴だよホントね
このまま待ってても窓の外いっぱいに積もった雪は解けないし、どうしたものかなと思って適当に仰け反って、寝転がって天井をワケもなく眺めてみるよ
そしたらゆうかりんも炬燵の向こう側で俺と同じような恰好するんだ 寝転がって、靴下に包まれた爪先をうんと伸ばして俺の爪先に戦いを挑んでくるの
適当に受けて、足先だけで激しい攻防を繰り返してみたりするんだよね まさか炬燵の中で大戦争が行われてるなんてお外の子は夢にも思わないだろうさ
だけどその遊びもすぐに飽きて、戦争は冷戦状態に突入してしまったりしてね なんだかんだで暇を持て余してる俺とゆうかりん 良さそうに言うとスローライフ、
適当に言うと暇人さ そんな時、向こう側でゆうかりんが何やら言い出すんだよ 「そうだ、あなた、王様ゲームしましょう」なんてね そんな単語久々に聞いたよ
何百年ぶりに聞いただろうというレベルさ、そもそも酒が入ってない状態でその言葉を聞くとは思わなかったよね いきなりな提案にドギマギまどマギする俺に
勝手にゆうかりんが話を進めていく 「じゃあ今から王様ゲーム開始ね。当然私が王様ね。あなたはさしずめ、農業にいそしむ平民といったところかしら」
だってさ なんか知らないけど勝手に王様が決まっちゃったどころか俺に不名誉な設定がついちゃったみたいなんだけど いや農業は嫌いじゃないんだけど
俺の知ってる王様ゲームとはちょっと畑が違うかなーって思っちゃったよ 突っ込む間もなくゆうかりんが炬燵から這い出てさ、俺の傍まで来るんだよ
そして低い声をつくって「我は王じゃ」なんて言って俺を見下すようにしてくるの 何でか知らないけどここは俺の「旦那力」が試されていると感じてしまったよ
俺も声をつくって「王様ー!わたくしめに施しを下さるなど何たる光栄ー!」とか言ってみたりするの 目の前の王様は目を細めてヒゲをさするフリするの
そして「そうではない。年貢を納めよと申しておるのだ」だとかなんとか暴政的方向に持って行ったりするんだ この変な王様ゲームを数分続けてみたりして
後でわかったんだけど、ゆうかりんにこういう変な事を中途半端に教えるのはいつもレティさん 文字通り彼女が黒幕だったわけで 本当の王様ゲームが
どういう遊びだかイチから説明してやるとゆうかりんは目を細めて「いやらしいわね」なんて言うんだ なんか俺が言われてるみたいで微妙に気が気じゃない
「でもあなたに命令するってのも悪くないわね。お願いでも聞いてもらおうかしら?」って嬉しそうに言うんだけど、だからクジで王様を決めるの!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふ

38 :
ゆうかりんと悩みたい
ゆうかりんを悩ませたい
考えてみれば、ゆうかりんが何かに悩んでる姿ってあんまり見たことないなーって思うんだ 物事はスパッスパッと決めちゃうタイプの子だからね
俺と結婚する時だって悩んだのは衣装だの結婚式会場だのそういう部分だけだったからね 優柔不断でウジウジするよりはずっといいよね
まあどっちかっていうと俺が優柔不断な方だから二人でつり合いが取れてるような感じなのかも 今度からネクタイの色もゆうかりんに決めてもらおう
でもね、今俺の目の前にいるゆうかりんは悩んでるの 物凄い悩み方だよ、考える人の像が「自分の悩みって大したことなかったんだ」って思うくらい
ウンウン唸って腕をガッチリ組んで悩んでるんだよ、ゆうかりんがね 助け船を出すように俺は「どっちも買ってあげるから」って言ったんだけど、途端に
顔をぱあっと綻ばせて「そう、それならいいわ」とか言ってくれんだよ いやね、お出かけの帰りにドーナツを買いに来たんだけどもゆうかりんったら
ポンデリングにしようかエンゼルクリームにしようかで悩んじゃってだね、後ろに人の列が出来ちゃってるのにレジの前で延々悩んでたんだよね
赤毛に猫耳の店員さんから「お兄さん、早めにどいてくれないと商売にならないよ」なんて耳打ちされてしまったから俺はこう言わざるを得なかったのさ
まあ結果としてはデキる男っぷりを見せつける事になったしゆうかりんも喜んでくれたしで完全なる結果オーライだね なんだか勝ち組な気がしてきたよ
その後はあからさまにご機嫌な様子のゆうかりんと手を繋いで帰ったよ 階段にいる亀を踏んだら無限に1upしそうなくらいの嬉しそうなスキップでね
俺まで楽しい気分になってきちゃうから困るよね お菓子の一つや二つで喜んでくれるなんて存外に安い女だよゆうかりんは でもそういうところも好きさ
会話の途中で気になったのは、ゆうかりんの口から出る「ドーナツのワンちゃん」っていう存在 あれはライオンなんだけどもね、なんだか指摘し辛いね
まあゆうかりんがいいならいいんだけど、でもやっぱりあれはライオンだよ、ポンデライオンだからね そのうち自分で気付いてくれることを願おう
さてさて家に帰ってきて、お皿にポンデリングとエンゼルクリームを一つずつ乗っける 目をキラキラと輝かせるゆうかりんを見てたらさ、俺の内側で
どうしようもないイタズラ心が芽生えてきてさ、ちょっとイイ事思い付いちゃったんだよね ゆうかりんとちょっとしたゲームをしてみようと思う ルールはこうさ
「今から俺とジャンケンをする」「ジャンケンで勝てば両方食べられる」「ジャンケンに負けたら両方とも食べられない」「このゲームの参加は強請ではなくて、
ゲームに参加しない場合は"俺が選ばなかった残りの片方"を食べられる」というものさ ルールを一気に並べ立てて説明してやったらさ、ゆうかりんたら
目を丸くして「え?……え?」って言うんだよおかしいね 生まれたての子燕みたいな顔してるの、こういう表情を見たかったんだよ俺はねウフフフフフ
俺も調子に乗って「で、ヤるの?ヤらないの?」って悪魔兄弟みたいなやけにスタイリッシュな台詞を吐いてみたりするの 「謀ったわね……この私を!」
ってゆうかりんが肩を震わせてるの、これもまたおかしくて指先からミルクティーが出そうだよ 幻想郷のパワーバランスの最上層を担う大妖怪さんが
ドーナツの一つや二つで悩んでるんだもん、この状況を楽しめる事に感謝しないとね さっき店先でそうしていたみたいに、また腕をガッチリと組んで
うんうん唸って悩み始めるゆうかりん たまーに出てくる俺のイタズラ心という奴もこういう時にいい仕事をしてくれるものさ、褒美でもあげたいものだね
チラッとポンデリングを見ては目を伏せて今度はエンゼルクリームを見る きっと脳内では論争が巻き起こってるんだろう、この可愛らしいゆうかりんを
俺はいつまで楽しんでられるのかな、とっても気分がいいんだよね でもここでゆうかりんが何かに気付いたような顔をするんだよ そして言うことには
「そうだ、あなたをはっ倒して両方貰えばいいんだ!」なんて言い出して一気に身の危険を感じるハメになるのさ 暴力反対!平和主義だよ!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふふふふ

39 :
ゆうかりんと取りたい
ゆうかりんと電話を取りたい
初冬の午後をのんびりゆうかりんと過ごしてたんだよ ゆうかりんの腰のやわらかいところと固いところを交互につんつんしたりしながらまったりしてたの
そしたら滅多に鳴らない我が家の電話が鳴るんだよね 本当に滅多に鳴らないモンだから俺もゆうかりんも最初は何が起こったのかと思ってびっくりさ
災害避難用のバッグを取りに行こうかと思ったくらいにね 結構な大音量で鳴り響くソレはよくよく聞いたらブーメルクワンガーステージのテーマで
プリセットの中から選んだ着信音だったわけだよ 勝手にビビって勝手にホッとしたよね、いくら俺がチキンだからと言って電話なら怖がる必要はないよ
それよりも背後で仁王立ちして俺を睨むゆうかりんにビビりたいところだね 最初に音にびっくりしてゆうかりんを突き飛ばしちゃったんだよね、うっかりだよ
突き刺すような熱い視線、文字通り俺を串刺しにして火にでもかけようかっていうゆうかりんの視線を何とかガマンしながら電話機の表示を見ると
「ムゲンカン ***-****-***」との表示 あ、ゆうかりんのご実家からの電話って事だよね ナンバーディスプレイの唯一の登録先なんだよねコレね
くるっと振り返って「ゆうかりんに電話だよ」って言ってやる 「あ、わたし?」って言って同じように画面を覗き込むの 怒った顔は解いてくれたんだけども
何故だか電話には出ようとしないでね、もう音楽がサビの部分まで到達したっていうのになかなか受話器に手を伸ばさないの 挙句の果てに俺の顔を見て
「めんどくさいからあなたが出て」なんて言うんだよ 自分は何だかニヨニヨしながらソファに音立てて座っちゃうしね まあ別に嫌ではないんだけども
何となく俺もめんどくさいような気がするんだよね、でも出るモンは出るよ 「はい風見ですよ」みたいな事言いながら受話器を取ると、その向こう側からは
「あ、これはこれは○○さん。いつもお世話になっております」なんて丁寧な物腰が届くんだよ こういう完璧な喋り方をする方がエリーさんだよね
逆にかなりフレンドリーな喋り方で尚且つ俺の事を「○○くん」とか呼ぶのはくるみちゃん リスト化して覚えようね、まあ声を聞いたらわかるけどもね
こちらも釣られて無理やりうやうやしく返してみたりしてね 受話器を片手に腰から降り曲がる俺を見て後ろでゆうかりんがぷっと笑うのが聞こえるよ
どうやらエリーさんはあまりに暇でゆうかりんとお話でもしようかと思ったらしくて電話をくれたらしい 相当久々の電話だという事を告げると
「こっちもお電話なんて久しぶりです」なんて返ってきて、どこもあんまり変わらないモンなんだなぁって思ったりする 「あの、幽香様は?」ってエリーさんが
当然のようにゆうかりんの所在を聞いてくるよ、まあここ俺の家というよりは世間一般的に「ゆうかりんの家」って事になってるからこっちの方がベターよね
後ろをチラッと見ると、会話の内容を察知したのかゆうかりんがこっちを見てるんだよ 「待て」をされてる飼い犬みたいにじーっと俺の方を見てるんだよ
ソファの背のところから顔だけぴょこっと出てね、何となく可愛らしい気もする 俺はそれを見てピンとひらめいたんだ 何やらおかしそうな声を作って
電話の向こう側のエリーさんに言ってやるよ 「いやね、ゆうかりんまだ起きてこないんだよね。疲れてるのかな?」なんてね 後ろでゆうかりんが「えっ」って
分かりやすい声を上げたよ 「あらあら。幽香様は昔からよく眠る方でして……」「昨日7時間もお昼寝したのにまだ寝足りないなんてビックリだよね」とか
こういう方向で話を進めていく ゆうかりん、本当はそこにいるのにこうやって俺達の間でどんどん不名誉なキャラ付けをされていくんだ、悔しかろうね
「ちょっと!寝てない!寝てないってば!」ってゆうかりんが後ろで喚くんだよ それがちょっとだけ受話器の口の部分に入るんだけど、俺はすかさず
「今のはゆうかりんの寝言ね」なんて言って更に不利益を重ねてってやる 後ろで騒ぐゆうかりんを徹底的に無視してエリーさんと楽しくお話しちゃってさ、
一度もゆうかりんに変わることなく電話を切ってやるの 妙に悔しそうなゆうかりんと何となく楽しかった俺がいるよ!次からは自分で出てね!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふ

40 :
ゆうかりんと狩りたい
ゆうかりんとキノコを狩りたい
別に卑猥な意味じゃないよ、卑猥だと思うのは君の頭が穢れているからさ ゆうかりんをご覧よ、一片の曇りもない笑顔のままマツタケを持って
「おっきいの見つけた」とか言ってくるんだよお前らも見習いなさい まあでもこの場合は無知ゆえのいやらしさっていうのがにじみ出るパターンだけどね
暑くてうざったい夏が過ぎてちょっと経って、寒さがある意味落ち着いた今の時期が絶好のキノコ狩りシーズンという奴さ ゆうかりんと俺の知り合いに、
森のキノコにやたら詳しい魔法使いの女の子がいるんだよね 彼女によると「私の感だと今がベストタイミングだぜ」とかなんとかそんな感じらしいので
早速ゆうかりんと二人でキノコ狩りに出かける事にしたんだよ いつもみたいなスカートじゃなくて、同じ柄のもんぺみたいなズボンをひっぱり出してきて
ぴったり着てみせるゆうかりん 動きやすさを重視して昔の服を出してきたと語るんだけども、ゆうかりんどんな服を着ても完璧に似合っちゃうから
逆につまんないというかデザイナー泣かせみたいな印象さ 俺、生まれ変わったら女性用のお洋服になりたいよ、ゆうかりんに着こなしてもらうんだ
一方の俺は大きいリュックなんて背負ってみたりしてね、ゆうかりんに合わせてやる気マンマンの服装さ やるからには食費をガッツリ浮かすつもりだよ
わざわざ魔法使いの女の子に地図まで書いてもらったキノコ狩りのベストスポットを目指して家を出るんだ 少し距離があるから魔法の森をぽくぽく歩く
ゆうかりんの横で軍手をぎゅっぎゅっと手にはめながら、今日の算段を確認する ゆうかりんが身振り手振りを使って俺にイチから指令を出すんだよ
「まずあなたが、こう、キノコ採るでしょ?」って言って下に手を伸ばすフリをするゆうかりん、うんうんと頷く俺 お次は背中に手を回すモーションをして
「食べられそうだったら、リュックに入れるの」「わかってます」 とてもとても当たり前な話だから適当に流したよ 「食べられなさそうだったら?」と聞くと
ゆうかりんはちょっと腕を組んで考えるフリをするの うーんって唸って、そのあと「食べられなさそうなのはそもそも採らないようにする」っていう
これまた当然でそして自然にも優しい方針を打ち出すんだ まあでも俺さ、食べて大丈夫なキノコと大丈夫じゃないキノコを見分ける自信はないから
そこらへんはゆうかりんにお願いしちゃおうかなって思うんだよ 幻想郷の自然に対してはゆうかりんの方が圧倒的に詳しかったりするからね
そう告げたらさ、ゆうかりんってばわざとらしく目を丸くしちゃってね 「え?私はやらないわよ?」なんて言って俺を突っ撥ねるの いやいやちょっと待とうか、
今からキノコ狩りに行くんだよね、ゆうかりんキノコ狩りしないのかな あまり角が立たないようにゆうかりんにそのことを聞いてみると、当然といった顔で
「キノコ狩りをするあなたを応援してあげるためについてきたのよ」なんて言われてしまって何とやら 動きやすい服とか何だったのって感じだよ
ゆうかりんにとっては「ちょっぴりアウトドアな雰囲気のデート」ぐらいの存在なんじゃないかな、やっぱり世界はゆうかりんを中心に回ってるんだね
でさ、そんな感じの不安を抱えつつも教えられた場所に到着したんだけどさ、びっくりするほどキノコが無いのよ もうハゲ山というかパイパン状態さ
二人で辺りを呆然と見回して「何もないね」「そうね」みたいなつまらないやり取りしちゃってさ、本当にやる事が無かったからそのまま引き返して帰って
我が家に着いてからゆうかりんに耳を引っぱり上げられるハメになったんだ 後日、情報源の魔法使いの子を尋ねたらさ、なんだか妙にニヤニヤしながら
「お前に教えた場所?あれは『キノコ狩りのベストスポットだったから既に私が狩り尽くしておいた場所』だぜ」なんてね、しれっとしたり顔で答えられて
もう俺もゆうかりんもカンカンでビッタンビッタンだよ せっかく3分クッキングでキノコのバーニャカウダのレシピ覚えた苦労も台無し水泡雲散霧消だよ
何となく騙された感覚がして、それがゆうかりんの機嫌を悪くしちゃうんだよ ああもうキノコの代わりに魔女狩りとかどうかな!許可するから!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふ

41 :
ゆうかりんと戦いたい
ゆうかりんを倒したい
俺にもやらなきゃいけない時が来るんだ この手でゆうかりんを倒すことをね、願ってやまない心の中の本当の自分が50年に一度くらい語りかけてくるのさ
窓から差し込む優しい日差しを浴びてほのぼのとしているゆうかりん 和やかさの塊みたいな彼女にこんな事を切り出すのはとても荷が重いよね
「ゆうかりん。いや、風見幽香、俺と戦ってもらおう」ってね できるだけマジメな顔付きをつくって面と向かって言ってやったよ ゆうかりんはぽかんとして
「え、オセロ?いいけど」とか言ってくる オセロでもゆうかりんに全然勝てないんだよね、これもリベンジしたいところだけど今日はそれじゃないのよ
どうやら俺が何を考えてるのかゆうかりんに伝わってないみたい 人はこれを平和ボケと言います 俺は右手でグッとゆうかりんのシャツの襟元を掴んで
ぐっとこっちに引っ張ってやる 夜でもないのにお互いの顔が近いよ この行為と、俺の雰囲気で分かってくれたのか、ゆうかりんは目をキッとキツくして
「自分が何を言ってるのかわかってるの?」ってね、俺を睨み付けるんだよ 久々に見る顔、目の前にいるのがどういう存在なのかを思い出させてくれるよ
幻想郷のパワーバランスを担う、神社付近最強とまで評された大妖怪・風見幽香 もちろんの事だけど、生身の人間が勝てる相手じゃないのはわかるよ
だからと言って臆する場面じゃないよ ゆうかりんをその気にさせることには成功したみたいだから、俺は先に庭の方に出て待ってるの 遅れてゆうかりんが
何やら準備を終えて戻ってくる 「本気でいくわよ」「それでいいよ」なんていかにもって感じのやり取りをして、どちらからというわけでもなく動き出す
秘策があるのかないのかといえば、あるんだよね この日のために博麗神社に賄賂を積んで御札を手に入れたんだよ ゆうかりんに触れさせることができれば
十分なダメージになると思ったんだけどね でもどうやら俺にはそんな暇さえないらしい ゆうかりんが何かモーションを取ったと思ったら小さい黄色の花びらが
俺の視界を隠すんだ 闇雲に御札を投げてみたけどもちろんゆうかりんには当たらない 右後ろで物音がしたと思ったらいつの間にかゆうかりんが近くにいて
思い切りハイキックをかますんだ 空気ごと裂かれてるみたい、避けるだけで精いっぱいさ 反撃を、と思ったんだけどもここでバランスを崩しちゃうんだ
これほど日々の運動不足を呪ったことはないね 視界の端で、ゆうかりんの持ってる日傘の先に光が萃まってる事に気が付いたんだ 地面が唸りを立てて
ゆうかりんを中心に大気が渦を巻いているようだよ ようやく明確な危機感を感じた俺の脳が一滴の汗を額に走らせるんだ 次の一瞬、来る、と思ったんだけど
何故か目の前に白いタオルが投げられたんだよ 同時に「はい、おしまい」なんていう気の抜けたゆうかりんの声 なんとまあずいぶんと古典的な演出だよね
タオルがぱさっ足元に落ちて、俺はあっけにとられてしまうんだ さっき言ってた準備ってコレを取ってくる事だったのかな その一瞬の隙にゆうかりんが
音もなく俺に手を伸ばして そしてぴしっとデコピンをかましてくるんだ その気になれば俺の姿かたちをこの世から取り除く事ぐらいできたはずなのに
こんなギャグみたいな攻撃さ 「もう私疲れたから、終わりにしましょ。それにあんまり面白くもないもの」って、いつもの調子で笑いかけてくるんだよね
その瞬間、敗北の二文字を感じたよ 敵うどころか最初からゆうかりんの手のひらの上で遊ばれてたんだね、やっぱり今回もダメだったみたいさ
その後はね、庭先に二人で座り込んでぼーっとしてたんだ ゆうかりんが俺のおでこだのほっぺだのを突っつきながら「どうしてこんな事したのよ」なんて
不思議そうに聞いてくる 本当は、俺はね、ゆうかりんより強くなりたかったんだ 俺の知る限りこの世界で最も強いゆうかりん、どうしても勝ちたかったんだよ
ゆうかりんより強くなったら、俺がゆうかりんを守ってあげるんだ 守られる生活も、もうおしまいにしたかったんだよ それに俺だって一応男の子だしね
そう言ったらゆうかりんは軽く笑ってくれて、呟き捨てるように「馬鹿ね……」って言ってくれた それでいいよ!君のためならね馬鹿になるから!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふ

42 :
ゆうかりんと飲みたい
ゆうかりんとお茶を飲みたい
我が家は完全なる紅茶派の家だよ、コーヒーなんてドス黒くて苦いモノを好んで飲むのはどこぞの自称都会派魔法使いぐらいのモンだって思ってるよ
午後の三時には素敵に優雅な紅茶ブレイクタイムが日課さ でもおしゃれなティーカップなんて来客があった時くらいしか出さないのもこれまた事実でね、
いつもはマグカップで紅茶飲んでるんだよ 俺もゆうかりんもマグカップが好き 何となく可愛いし持ちやすいから使いやすい、ほら嫌わない理由はないよ
今日も時計が三時になった瞬間にさ、優雅にうつぶせに寝っ転がってクーポンマガジンを読んでた俺の腕をゆうかりんがぐいぐいって引っ張るんだよ
「あなた、ほら、三時」って言いながらね 何かを期待した目でゆうかりんが腕をぐいぐいするの、俺も流石に「茶の一つくらい自分で淹れんか」なんて
言えないよね まあ別に断る必要もないから早速お茶を淹れに取りかかるよ 俺がわざとらしく気怠さをアピールしながら身体を起こすと、ゆうかりんは
そのまま俺の腕を引っぱって台所の食器棚の前まで行くんだ 毎度のことさ、食器棚の上から三番目にある俺とゆうかりんのマグカップコレクションから
今日使うものを選ぶんだ こうすることで毎日ウインドウショッピングみたいな楽しみが得られたり得られなかったりするの、日常のひと工夫という奴だよ
「昨日はこれだったから……今日はこれかな」って、ゆうかりんがちょいと手を伸ばして奥から取り出したマグカップは一回りほど小さめのもので、
真っ白なカップに歩く黒猫とその足跡が可愛らしいポップな奴さ ゆうかりんが「にゃんこマグカップ」って呼んでるの、案外猫とか好きなのよねこの子
一方の俺はというと、あまり悩まず適当に手前から取ってみるよ 青い空の色がべたっと塗られてて、真ん中にどこの何だかわからないロゴマークが
偉そうに鎮座してる感じのだよ いつ手に入れたものだっけ、買ったんだっけ、貰ったんだっけ 思い出そうとしてもなかなか覚えていないものだけども
これはこれで結構使い心地がいいんだよ マグカップにおける使い心地っていうのは大半が「舐め心地」の事だと思うね これ舌触りがいいんだよ
ゆうかりんの肌を舐められない夜はこのマグカップに情熱を沈めてもらおうと思うくらいなかなかキメ細やかな舌触りで優しさを持っている、これ好きだよ
「またそれ?それ好きねー」なんて言われてゆうかりんに小突かれちゃったりするんだ 好きなモンは好きなんだからしょうがないでしょ、って返すと
ゆうかりんは軽く笑って「そうね」なんてわかったような言い方をして、俺の腕を軽く抱き寄せてくれるんだ ああうん、好きなモンは好きなんだよねうん
そんなやり取りをしつつお湯を沸かしてお茶を淹れるよ テーブルに座って足をパタパタさせて待ってるゆうかりんの目の前でゆっくり注いでやる
特に銘柄に拘ったわけでもないし味が優れてるわけでもないといういたって普通の紅茶を二人で楽しむんだ 午後三時っていいね、俺は好きだよ
「あなた、お砂糖取って」「……甘いの三つ欲しいのか?イヤしんぼめ!」「だからその言い方何なのよー」って毎日のようにしているやり取りを今日もして
寒い時期にはなかなか有難い、熱いお茶を啜るんだ 一通りお茶を楽しんで蕩けきった卑猥な顔をしたゆうかりんが「ふはー」だとか「はふー」みたいな
気の抜けた声を俺に聞かせてくるモンだから、俺もお茶をグッといって「むふー」とか「ぬふー」みたいな息を吐いてやる 二人でお茶を飲んでいると
昔あったおそろいのマグカップの事を思い出すんだ ゆうかりんが俺の誕生日に、まだ俺とゆうかりんがそこまで仲良くなかった時に、半ば押し付けるように
贈ってくれた緑と黄色で対になってるマグカップさ 一生大切にするつもりだったんだけどもね、何年か前の三月に起きた地震で割れちゃってさあ
悲しかったのさ だから今こんなふうにペアでカップは揃えたりしないで毎日違うのを使うのかもね そこはかとなくゆうかりんにそのマグカップの話をすると
「忘れてしまいなさい。また気が向いたら買ってあげるから」なんて笑われるんだ なんか俺がすごいモノ欲しがってるみたい!卑しいよ!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふ

43 :
ゆうかりんと食べたい
ゆうかりんに食べさせられたい
どうやら風邪をひいちゃったみたいだよ、それもお腹に来るタイプの風邪ね 寝ている途中に変な汗が流れてきてね、お腹が気持ち悪くなってくるの
そしてどこかに逃げ込む間も無くヨガインフェルノさ 昨日食べたものが無残な姿でリバースだよ ゆうかりんの寝顔にブチ撒けるわけにはいかないと思って
ベッドの下に吐いた俺を褒めてやって欲しいよ まあ後からゆうかりんに「掃除する手間をかけさせないで」って言われるハメになっちゃうんだけどね
パジャマ姿のままゆうかりんに首根っこを掴まれて、竹林のお薬屋さんまで相談に行ったんだ 自称「幻想郷の流行病に詳しい」っていう銀髪の先生曰く
「サポウイルス」というものらしい 病名を聞いてもよくわからんのだけども結局は「最近幻想郷で流行している、お腹が痛くなる風邪」って事らしいよ
ゆうかりんはそれを聞いて笑うんだよ 「全く災難だったわね。夜遅くまで裸でいるからいけないのよ?」なんて言ってくるんだよ 何が面白いんだか
くるみ割り人形みたいにケタケタと笑いながらさ そう言いながらもテーブルの下では自分の手でしっかり俺の手を握ってくれているんだけどね、きっとこれは
ゆうかりんなりの優しさというものだろうね その優しさが手のひらのぷにぷにを通して伝わってくるのが俺にはとても嬉しくて、アホみたいに目を細めちゃうんだ
まあそれに「俺が裸の時はゆうかりんも裸でしょうに」っていう無粋なツッコミも用意してるけどね 結局突っ込むタイミングというのも特には見つけられずに
そのまま真っ直ぐ帰宅となりまして 銀髪の先生に貰った薬がどう見ても新ビオフェルミンSにしか見えないんだけど、とりあえず三錠を水で飲んだら
症状はある程度良くなったよ、流石だねビオフェルミン 俺がベッドに横になってる間もゆうかりんがずっと手を握ってくれてるんだけども、逆に申し訳無くて
そっけない態度を取っちゃうんだ 「ゆうかりんの手あっつい」とか適当な事を言ってわざと振り払ってみたり そんな俺の行動も全てお見通しのようで
「はいはい。じゃあ私はおかゆでも作って来ましょうかね」なんて言ってね、すっと立ち上がってドアの向こうに消えていくんだ こういう時にゆうかりんが
毎回作ってくれるのは「たまごのおかゆ」っていう奴でね、塩と卵だけのそっけないお粥 だけども妙に身体が欲するんだよ 今日みたいに、病気の日って
傍に誰かいてくれると本当に助かるよね ゆうかりんと一緒に暮らす事の喜びをこういう所で感じちゃうのはちょっと現金かな、とは思うんだけども
それでもやっぱり嬉しいんだよ 面と向かってゆうかりんには言わない言えない言いたくないけど本当によかったと思う、「困ったときはお互い様だ」って
ゆうかりんが言ってくれる、それが一番嬉しいんだ なんだかんだで吐き気と腹痛は俺の内側をちくちくと苛めるけども、ゆうかりんが居る事の温かさを
心の内側に感じながらいつしか俺は深い眠りに落ちてしまうんだ 病気は寝て治すモンだからね、たぶん身体もそれを求めてたんだと思うんだよね
で、何分か何時間か経ったかわかんない頃にぐだぐだな感じで目を覚ますんだ ゆうかりんがお粥を作ってくれるっていうのに眠りこけるなんて
俺もなかなかふてぶてしい奴だよね、とよくわからない自画自賛をするよ 少し体調も回復して、余裕をもって周りを見てみたんだけどもゆうかりんはいない
作ってくれるはずのお粥もない うーん実はまだ時間もあまり経ってなくて、ゆうかりんはまだ台所にいるのだろうか、そう考えてベッドから降りてね、
スリッパを履いて寝室から出てみたんだ のそのそとリビングに入って一番最初に目に入ったのは、テーブルについて一人でにっこにこしながら
お粥を口に運んではもぐもぐするゆうかりん 俺は寝ているはずだとタカをくくっていたのか、目が合ってから300F近くお互いに硬直してしまったよ
硬直が解けてすぐにゆうかりんが最速行動を見せてくるんだ 「な、何よ!たまごのおかゆ作ってあげたのにグーグー寝てるんだもん!仕方ないでしょ!」
なんてね この時真っ先に「ゆうかりんらしいなぁ」とか思っちゃった俺も俺だと思うよ その支えてくれる心遣いってのかな、それが嬉しいよ!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふ

44 :
ゆうかりんと寝たい
ゆうかりんと夢を見たい
いやゆうかりんと二人で過ごせる事どころかゆうかりんという存在がこの世にある事自体がまさに夢のような出来事だというのはここでは置いといてね
ゆうかりんがね、寝る前に俺の顔をじーっと見てくるんだよ 電気消すよーって言ってるのに「まだダメ」って言ってね、俺を視線で突き刺すんだよ
いつも以上にゆうかりんの顔が接近して俺は何となく恥ずかしくなったり困ったりするの 顔を見るだけじゃ飽き足らず、俺の顔だの肩だのそういうところを
ぺちぺちと触るゆうかりん もしかしてまだ足りないのだろうか、休憩挟んで二発もかましたとはいえ俺は確実に限界だよ 人一倍体力が無いんだよね
もう時計の太い方の針も12のナンバーを置き去りにしている頃だから早めに寝ないと朝が辛くなるんだよ ゆうかりんを適当に促してやって布団に入れて
有無を言わさず電気を消して就寝体制に入るよ いつも通り俺は枕に頭を乗せて、俺が横に伸ばした右腕にゆうかりんが頭をちょこんと乗せるの
そのままゆうかりんが俺の方にぎゅっぎゅっと寄ってくるから俺は左手を重ねるようにして身体を密着させてやるの 200年間崩したことはない寝方だよ
寝る前にしていた行為が何となく気になったからゆうかりんに聞いてみる あれは何だったの、ってね そしたらゆうかりんは俺の腕の中で軽く笑って
「夢の中でもあなたに会いたくて。忘れないように脳に焼き付けておいたのよ」なんて言うんだ まあ、ゆうかりんったらいけない子ッ 可愛いんだからもう
そんな事しなくても今までずっと一緒に過ごしてきたんだから忘れっこないじゃん、なんて返してくすぐるように髪を触ってやったりしてその日は寝たんだよ
次の日起きてきたゆうかりんに夢の事を聞くと、微妙に朝露をこぼしちゃってる口元をパジャマの袖でぬぐいながら「え?あ、覚えてない……」なんてね
悲しそうにしゅんとするんだよ でもこうやって起きてから会えるからいいじゃん、って言うとゆうかりんは気を取り戻したみたい ゆうかりんも大変だね
ここで思うんだけどさ、「夢の中で○○する」っていうのはそんなに難しい事なのかな、って事ね ゆうかりんが昨日の晩あんなに熱心に俺を見てても
夢に見れたかどうかわからないレベルなんだけども、一方の俺は毎日何も考えなくても夢の中でゆうかりんと会ってるんだよね 瞼がZUNと重くなると
夢の中の世界が開けて、「遅かったわね」なんてそれっぽい台詞をゆうかりんが言ってくるんだ こうやって考えると、もしかして自分は恵まれてるのかなあ
それとももしかして俺は異常なんじゃないか、とも思うよ いやいや待てよ今俺の目の前でストーブにあたってるのは現実のゆうかりんなのか、それとも
夢のゆうかりんなのか、その境界があいまいになってるんじゃないかな そう考えると思考のアリジゴクに飛び込んでしまったみたいで次第に不安になる
俺も実はおかしいと思ったんだよ、こんな可愛い子が俺と結婚してるなんてね さあいよいよ統合失調症の疑いが濃厚になって来たので仕事に行くフリして
人里を華麗にスルーして竹林の薬師さんに相談に行ったんだよ 薄暗い竹林の中を突っ切っていっていきなりの来訪に不意打ちくらったような顔している
銀髪のお薬のセンセーに相談するのさ 現実のこと、夢のこと、そして今俺がこうやって話しているのがどっちの世界なのかわからないこと ここまで話して
新たな可能性の登場さ、実はこの目の前のセンセーは悪い人で、危険なお薬を使って俺にゆうかりんの夢を見させているのだと つまり敵の親玉だね
もう何が何だかわからなくなってきたよ 前から聞こえてくるため息と「貴方本当にウザいから早く嫁の所に帰りなさいな」っていう言葉の意味もわからない
俺をこの闇から引っ張り上げてくれる存在があるとしたらやっぱりゆうかりんだよ ゆうかりんに会いたい、と思ったところで本当にゆうかりんが登場するの
俺が病院で暴れているという連絡(通報)を受けて迎えにきてくれたんだって そのままゆうかりんに手を引かれて今日は家に帰って寝ることにしたよ
呆れ顔のゆうかりんが俺を叱るの 「夢じゃないから、私も、全部」って言うんだ こうして今日俺は一つ賢くなったんだ!ゆうかりんは現実!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふふ

45 :
ゆうかりんを寝かせたい
ゆうかりんを介抱したい
せっかくの三連休だっていうのにゆうかりんと過ごせたのはそのうち前二日だけさ 後の一日、つまり今日はどうなのかというと「遊んでくる!」なんて言って
元気いっぱいにお外に飛び出して行っちゃったの、ゆうかりん ゆうかりんが楽しそうなのはもちろんイイコトだけど置いてけぼりを食らった俺は寂しいよ
まあずっと部屋の隅で爪齧って体育座りしているのもシャクなのでこの際ゆうかりんが居ない時にしかできない事を、という事で色々やってみたんだよ 
ベッドの下に隠してある薄い本を全裸で読み返してみたり、ケーキラーメンをイチから作って食べたり、女の子とSkypeで話してみたりしてやったもんね
でもそんな行動にもすぐ飽きが来るんだよ やっぱりゆうかりんがいない生活っていうのはハリがないね、赤い色だけが無いクレヨンセットみたいなものさ
夜になったら寂しくって、変にソワソワしながらゆうかりんの帰りを待ってたんだよね あとやっぱり爪齧って体育座りはやりました 落ち着くからしょうがない
でね、だいたいテレビでガキの使いが始まるぐらいの時に玄関を乱暴に叩く音が聞こえたんだよ ようやくゆうかりんが帰ってきたんだと思って
俺はすっ飛んでいって鍵を開けるのさ 「おかえり!」って言いながらドアを引っ張ったんだけど、そこにいたのは俺の嫁でもなければ恋人でもなくて
「ただいま帰りましたわ」なんて明らかにお酒の入った顔で返す妖怪の賢者さん 紫さんには悪いけど一気にガッカリだよね、家を間違えてますよって言うと
手を出せと命令されるんだ 素直に言われたとおりに両手を前に出す俺、閉じた扇子をくいくいってやって「ほらっ」っていう変な合図を出したと思ったら
目の前の空間がぱっくり割れて、その間からゆうかりんが落っこちてくるんだ あっゆうかりんだ、と思って受け止めたのはいいけど思いのほか重くて
派手に玄関先で転倒してしまったりするんだよ 何やら顔を青くしてぐったりとしてるゆうかりん、不安になりつつも紫さんから話を聞くと、なんでも
「調子に乗って飲み過ぎたのよ。まあ飲ませた私達も悪いんだけど」だとかなんとか せっかくのお休みだからということで幻想郷大妖怪(自称)連合で
宴会みたいなのをしたんだってさ で、ゆうかりんがハメを外し過ぎていまこんな感じですよ、ということらしい いつにも増して静かなんだけども
どうやら意識はあるようで、小声で「水ぅ……」だの「死ぬぅ……」だの言ってるゆうかりん すぐに楽にして寝かせてあげないと、と思って形ばかりのお礼を
紫さんにしてみるんだけども目の前で扇子をバッて開かれて言葉を止められる 「反射で喋ると男を下げますわよ」だなんてね 何を言いたいのかと思うと
実は我が家を訪れたのはゆうかりんを届けるという事だけでなく「二次会は宅飲みにしよう」という企みから来るものだったらしくてね そりゃあ考えてみれば
スキマを使えばどこにいようとゆうかりんをココに帰らせる事だって出来るわけでね で、玄関の向こうには紫さんだけじゃなくてもっといっぱい人がいてね、
見たことある人から全く知らない人やら、吸血鬼だの神だのそういういかにも強そうな人が一杯いてさ、いつの間にか俺を見てるんだよ その目線は俺に
「拒否権なんて無いですよ」って言ってるみたいで始まる前から困り疲れちゃう感じだったよ で、ゆうかりんを寝かせてお客さんはお持て成しして、という
俺のひと仕事が始まっちゃったのさ 勝手知ったる人の家という言葉を地で行くように好き放題やる御一行様と、台所と寝室を行ったり来たりする俺さ
なんでこんな目に、って思うよね でも途中途中でゆうかりんの話を聞けたからそこだけ楽しかったよ ゆうかりんってばお酒でいい気分になったと思ったら
俺の話ばっかりしたんだって、聞いてもいないのに どうやら俺の自慢をある事無い事言いふらしたみたいで、そのせいで「そんなにいいのなら会いに行こう」
っていう流れになったみたいで、こういう展開らしい 「昔は『結婚なんて雑魚のすることよ』なんて言ってた幽香がねぇ」「今じゃ女の顔だもんねぇ」なんて
そんな話を聞かされながらいつの間にか俺も酒を飲まされたりなんかしちゃって ゆうかりん、お酒は程々にっていつも言ってるでしょ!約束!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふ

46 :
ゆうかりんと拾いたい
ゆうかりんと栗を拾いたい
秋の味覚と言ったら栗だと思うよ しかしこれは表向きの発言であって本当の秋の味覚は「素足」だと思ってる ゆうかりんもあの豊穣の神様を見習って
裸足で過ごしてみたらいいんじゃないかなと思うよ 完全に俺得だから、別に秋だからとかじゃなくて年がら年じゅう裸足でいいよ 俺裸足大好きだもん
まあでもゆうかりんに面と向かって言えるわけがなくて かといって豊穣神の穣子様にも言えるわけがなくて 卑猥な趣味は胸の内にしまっておくことにして
今日はゆうかりんと栗拾いに来たよ やはり秋を司る二神とツテがあるっていうのはいいもんだよね、この前少しばかり良質な栗を分けてもらったのよ
普段お世話になってるお礼だってさ、俺もゆうかりんもお世話してるつもりは全くないけどね でさ、その栗はそのまま食べたらすぐに無くなっちゃってさ、
無くなった後にゆうかりんが「栗ごはん食べたい」って言い出すんだからしょうがないよ というわけでマロンをハンティングすべく魔法の森を徘徊だよ
もんぺ風のズボン姿に軍手をきっちりとはめた、東北の片田舎じゃあよく見られるスタイルで歩き出すゆうかりん いつぞやのキノコ狩りと同じように、
基本的には俺が拾って俺が集めて俺が持ち帰るハメになるんだろうけどね それでもどこかの白黒に不毛な情報で踊らされるよりはずっとマシだよ
「栗はこうやって、カカトで踏んで、えいってやるの」ってゆうかりんがイガの剥き方教えてくれるんだ それくらいは知ってるよって返そうと思ったけども
このゆうかりんの健気で可愛らしい様子を俺如きがぶち壊すのはそれこそ反道徳的だと思ったからわざと何も知らない都会育ちのアホのフリをしてね、
ゆうかりんにご教授願ったのさ そしたらゆうかりんさ、実演すると言わんばかりに俺の足の甲をブーツでグリッと踏むんだよ ぐりんぐりんってやるんだよ
ちょっと待ってよ何だいこの仕打ち、俺の足が裂けるチーズみたいになっちゃったらどうするつもりなんだい 当然目からプロトンキャノンが出るくらい痛くて
理不尽な理由で廊下に立たされるハメになった子供みたいな顔になっちゃった ちくしょう、これで俺が怪我でもしたら一生傍で責任とってもらうからな
さてさて栗を探して歩き回る俺とゆうかりん ちょこちょこ落ちてはいるものの誰かに取り尽くされた後だったりして、イガだけとか虫食いのだけとか
そういうのしか落ちてない ゆうかりんの顔に、主にほっぺに不満が現れてくるんだけどもそれでも俺は諦めずに森の奥に進んでいくことにしたんだよ
こういう妙な探究心は見習ってほしいよね で、とうとう見つけたのさ、沢の近くの方の、あまり人の目につかないような所さ 前人未到ではないと思うけど
山のようにクリが落ちてて大歓喜さ 手付かず状態の穴場を見つけて内心ガッツポーズだよ もう足元はそんじょそこらにチクチクした野郎が落ちてて
これだけあったら栗ごはんなんて来年のお盆まで食えちゃうよって感じさ ゆうかりんも喜んでるかな、「やったねゆうかりん」って言ってみるんだけど
その時ゆうかりんの口からね、「ほんとビックリよね」って言葉が漏れるんだよ ん?今のは何かと何かが引っかかってて実は面白い発言だったりするのかな
ちょっと固まってしまったよ ゆうかりんがまさかそんな幼稚園児が満面の笑みで言うような下らない洒落を言うワケないもんね 顔をまじまじと見ていたら
実は意図していなかった発言なのか、ゆうかりんが何かに気付いた顔になってね、「い、今のは違うから!そうじゃなくて!単純に驚いちゃって!ね!」とか
喚き始めるのが可愛かったよ 心の中で何かが争ってるんだろうね 俺が「はいはいそうだね面白いね」みたいな反応をする間にも表情をコロコロ変えて
「あー」とか「うー」とか唸り始めたり一瞬開き直ったフリを見せたりして面白いんだ その様子をずっとニヤニヤして見てたんだけども、だんだん落ち着いちゃって
真っ赤にした顔を地面に向けながら「いいから拾いなさいよぉ……」なんて命令するんだ ゆうかりん、こういう所だけ何だか年齢不相応なのが可愛いよ
その後、山盛りの栗を拾ってゆうかりんと手を繋いで帰ったよ 今日のおゆはんは栗ごはん!明日もその次もそのまた次も栗ごはんだよ!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふ

47 :
ゆうかりんと凍えたい
ゆうかりんと寒がりたい
「あなた、寒い」ってね、ゆうかりんが俺のほっぺを爪先でつっつきながら言うんだよ 室内用の毛糸の靴下でね、スカートの中が見えちゃう体勢のまま
俺のほっぺをグニグニつつつくんだよ ゆうかりんが寒いって言うのも無理はないよ、だってもう12月だもんね 12月なんて言ったら当然冬だから寒いよ
一年の終わりなんだから寒くなるのは当然さ、だから俺は「知ってる」って返したんだよ 正直なところを言うとアルカプのコンボ練習で忙しかったのさ
そしたらゆうかりん、何だか物凄い不満そうな顔を見せつけてくるのよ 目を細めてほっぺをプクーっとしてさ、凄いぶちゃいくな顔でこっちをガン見するの
それが気になってダウンした相手に上手くストーンスマイトが当たらない それどころかつつくだけだった足の動きが激化して、俺を蹴ってくるようになったの
スカートの裾をひらひらさせながら俺に容赦無い足技を浴びせるのさ げしげし、げしげし、ってね 人を足蹴にするなんてゆうかりんは失礼な奴だよね
一度ゲームを止めて向き合って「どうしたの」って言ってやるんだけどさ、今度はゆうかりん、俺から顔を背けちゃうんだ いつの間に不機嫌になったのやら
それでも話を聞いてやるとね、何でも「そういう時は『可哀想に。ようしここは僕が人肌で温めてあげるよ』とか言うべきなんじゃないの」なんて言ってくるの
何だいその歯の浮くような台詞は それにゆうかりん、暖めて欲しいならそう言えばいいのにね 「言わなくてもわかって欲しかったの」とはゆうかりんの弁
時々ゆうかりんってばこうやって甘えたような事を言ってくるんだよね でもさ、俺がそんな台詞言っても気持ち悪いだけじゃない?って思うんだけども
ゆうかりん曰く「そういうのもたまには必要」らしくてさ ゆうかりんの今の気持ちがなかなか理解できない俺、きっとこういうのは「乙女心」とか言うんだろう
乙女心とか女子力とかそういうのよくわかんないんだよね とりあえずゆうかりんの中の俺の評価が下がるのはよろしくないので、少しばかり気合を入れて
汚名を返上して明後日の方向にポイ捨てすることにするよ 腕をうんっと伸ばして、赤く染まったその丸いトコロに軽く触れて、ちょっぴりの力を加えるのさ
ゆうかりんのちょい後ろの壁際にある電気ストーブの電源のスイッチさ 「可哀想なゆうかりん、ようしこの僕が温めてあげちゃうからね」だとかなんとか
改変しようと思ったけど結局上手く改変できなかったウザったらしい台詞を口から適当に垂れ流して、手ごたえがあるまでストーブのスイッチを押し込む
そうすると、すぐに中の方がゆうかりんのスカートの色みたいに赤くなって、すぐに暖かいモヤモヤが漂ってくる 手を伸ばしたままストーブをくいくいやって
ゆうかりんの方に向けてやればこれで俺は完璧さ ゆうかりんのためにひと仕事を終えた俺、この誠実さ健気さその他もろもろを評価してくれてもいいと思うよ
ダメ押しでゆうかりんに「暖かい?」って聞いてみる 部屋全体が暖まってるからゆうかりんも暖かいはずなんだけどね、まだゆうかりんは口をへの字にして
「落第。0点。はぁ、残念な人ね」なんて言うんだよ いやまあね、知っててこんな意地悪したんだけどね だってゆうかりんってばホントの本当に可愛いから
ついつい意地悪したくなっちゃうんだよ 世の中には、人肌恋しい時に「人肌恋しいです」って言える子と言えない子がいるよね 俺は前者なんだけども
ゆうかりんは「人前では前者のフリをしてる後者」なんだよ 普段は「何でも言える仲ですよ」みたいなしれっとした顔してるんだけども、こういう時だけは
ハッキリと言えなくてもごもごしちゃうの、ゆうかりんもやっぱり女の子なんだなーって思うよ それに意地悪しちゃう俺もやっぱり男の子なんだって事ね
わざと大きな声を出して、部屋に響き渡るようにしてやる あーなんか寒いなー、誰かくっついて暖めてくれないかなー、なんてね ゆうかりんの方向を
チラチラと見ながらね 何かを期待した目で俺の視線をキャッチするゆうかりん、そこで俺はニコッと笑って「ゆうかりん、俺の事暖めて?」なんて言うのさ
軽い溜息と「仕方ない人ねぇ」なんて声、そしてゆうかりんがちょこちょこ這って寄ってきて、俺にぴったりくっつくの 暖かいっていい事だね!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふふ

48 :
ゆうかりんと生まれたい
ゆうかりんと生まれ変わりたい
死ぬつもりはないけども、たとえ生まれ変わったとしても俺はゆうかりんと一緒だよ 俺の心はゆうかりんと共にあるからね、何があってもずっとそばにいるよ
どんな姿になったとしても変わらずゆうかりんを愛し続けたいというのが俺の一番の願い このことをゆうかりんに話すと何がおかしいのかくすくす笑われて
「滅多な事言うもんじゃないの」って言われて鼻の頭をちょんと触られたりするんだよ 嘘なもんか、俺は自分が琵琶湖の水の底から出る泡になったとしても
ゆうかりんの事を思い続けるし、そうであるとゆうかりんに知ってもらいたいんだよ 時々ゆうかりんは何か寂しそうな眼をして窓の外なんかを見ながら
「そう、それは嬉しいわね」なんて言ったりするんだ で、今の事なんだけどさ、なんだか身体が凄く寒いの どうやら風邪ってわけじゃなさそうなんだよね
何故だかいきなり立っていられなくなったんだ 地面が上にあるのか下にあるのかわからなくなって、俺がどっちに立ってるのかもわからなくなってしまったの
俺がいきなり倒れたらしいっていうのは全身を地面に打つ痛みで理解したよ そしてこの寒さ、身体の奥の方から何か言葉に言い表すことのできないものが
ガタガタと俺の身体を震えさせているらしい いきなりの展開にビビリの俺はいつも以上にビビリっ放しさ、だって何が起きたかわからないんだもん、怖いよね
声だけでゆうかりんを探すんだよ 探すまでもなくゆうかりんは傍にいたはずなんだ、でも屈んで俺に近付くこともしてくれない、引っ張り起こしてもくれない
それもひっくるめて怖かった ゆうかりんこわいよたすけてよって言うんだけどさ、やたら遠くから聞こえるゆうかりんの声はやけに冷たく響いてくるんだよね
「そう、時が来たのね。待ち侘びたわ」 ゆうかりんが何を言ってるのかわからないよ 時が来たっていうのはどういうことだろう、それに、何を待っていたのか
こんがらがった頭はますますワケのわからないことに そのまま俺は変な体制のまま見えない敵と戦い続けるんだ でもね、寒さがなりを潜めたと思ったら
次は熱さに代わるんだ 今度は身体の中が溶かされるようで怖かったんだよ 自分が無理やり別のものに変えられているんじゃないかと思って、とてもとても
気が気じゃなかったんだ 身体全体が痛むんだけど、中でも顕著なのが指先だったよ 自分の両手に目を移してやると、爪が縦に真っ二つに割れていたの
いやそれは見間違いで、指そのものが縦に割れていたんだよ こんなのおかしいよ、俺の肉の下から何か気持ち悪い色をしたものがの出てきているんだ 
芋虫が蛹を破って蝶になるシーンを想像して、俺はもう泣きそうだったんだ 怖くてゆうかりんの事をずっと呼び続けてるのに、返ってくる言葉と言ったら
「かくれんぼは終わり。出てきて私に姿を見せてくれるかしら」なんてもの 俺はただその腕で抱きしめて欲しかっただけなのに 今ではゆうかりんすら怖い
頭のてっぺんから何かが垂れてきて目に入った、ドロリとしていてすごく沁みたんだ 今度は背中に無理やり引き裂かれるような痛みが走って、音を立てて
大きな何かが生えてきた ボトボトと何かが落ちていって、身体が軽くなった 大きな耳鳴りがだんだん聞こえなくなっていって、嫌な静寂に包まれるの
もう何時間経ったのだろうか、自分に何が起こっているのか、もはや考えられなくなっていたんだ そんな時、ようやくゆうかりんが手を差し伸べてくれるんだよ
「そう、誰よりもずっと優しくされたいのでしょう?」 そう言って、ゆうかりんがようやく俺に顔を見せてくれたんだ 眩しく光る、俺の大好きな笑顔だったよ
ゆうかりんが軽く口付けをしてくれる 唇と唇が触れ合った瞬間、俺の中で決定的な何かが切れるのがわかったんだ 次に見た日の光は前よりずっと暗くて
あまり気持ちのいいものじゃなかったね 3本目と4本目の手をまるで足みたいに動かしてゆうかりんに寄り添うんだ あるものを失ってあるものを手に入れた俺を
ゆうかりんは綺麗だと言ってくれた それが俺にはなんだか嬉しくて、思わず身体を伸ばして緑色の液を床に滴らせてしまうんだよね ゆうかりんが新しい俺を
他の人にも見せたいというから、ゆうかりんと一緒に窓から飛んだんだ 最初は人里、次は妖怪の山、神社は最後に行くんだって 楽しみだね!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ

49 :
ゆうかりんに躾けられたい
ゆうかりんにお仕置きされたい
俺が大声でいくら泣いても止めてくれないんだ、だってこれはお仕置きだから お仕置きっていうのはゆうかりんが一方的に俺を苦しめる行為の事で、
ゆうかりんが満足するまで終わる事はないの 多分俺が泣こうが失神しようが最悪死のうがどうなってもお仕置きは続けられるんだと思うよ、怖いよね
右手を抑えてうずくまる俺の背中にゆうかりんが子安声の悪役みたいにカカトをドカッと乗せてくる 「ほら、三本目行くわよ。顔を上げなさい」って
1mmも暖かみの含まれてない声で言うんだ 長年連れ添ってきたわけだけども、やっぱりゆうかりんが怒る時っていうのは怖い ゆうかりんは元々
誰に対しても「怖い子」っていう認識だったからきっと間違ってないんだろうなと思うよ だから時々こうやって怒ってお仕置きなんかする時は本当に怖い
でもね、俺はもうお仕置き嫌なんだよ だって痛いの、すごく痛いの、見てよ俺の右手を 親指と人差し指の爪の下が真っ赤になっちゃってるじゃないか
あえて針じゃないんだよね、爪楊枝を爪の下に入れてゆっくり、ゆっくりと押し込んでいくの あのね、嘘じゃないの、これ本当に痛い、おかしくなりそう
ワケのわからない絶叫しちゃうんだよねこれ 自分でも「俺ってこんなに高い声出るんだなー」って思うくらい、ヘンな声出ちゃうの そのくらい痛いんだよ
「痛い?当然でしょう?痛くしてるんだもの」ってね、ゆうかりんがあっけらかんとして答えるんだ そのまま足で俺の背中をぐいっと押し出すように蹴飛ばして
俺の顔が見れるような体勢にしちゃうんだ 涙やら涙じゃないものやらでグッチャグチャの顔をゆうかりんに見られるのも嫌だし、今のゆうかりんの顔を
見るのも嫌だからこの恰好はちょっと嫌かな 案の定ゆうかりんはいつにも増して笑顔、ただいつもよりちょっと柔らかそうな、外の人に向ける作り笑顔さ
「あなたも馬鹿よね。他の女に色目なんか使わなければ、こんなことにはならなかったのに」 ゆうかりんが俺の右手を無理やり引っ張りながら言うんだよ
人間の俺と妖怪のゆうかりん、力の差は歴然さ つまり最初から俺は抗えないってわかってるんだよね そのままゆうかりんは俺の右手の中指を握って
その先に、爪の下、肉の上に爪楊枝を押し当てるんだ 「いい?これはお仕置きなのよ。あなたが反省しないと終わらないんだから」だとかなんとか言って
わざとらしく俺に微笑んでみせる 「わかったらごめんなさいの一言でも言ってみてはどうかしら?」なんてね、嫌にべったりした上品さを乗っけたままにして
爪楊枝を少しずつ、少しずつ押し込むの ごめんなさいって百回くらい言ったはずだよ、それなのに通じてないってことは俺の言い方が悪いのかもしれないね
ゆうかりんに伝わらなければ意味がない、これは愛の言葉でも同じだよね 随分と長い時間をかけて、俺の右手も左手も全部の指が痛めつけられた
爪の下がドス黒くなってて、この世のものとは思えない痛みが延々と続くんだ そもそも俺何か悪い事したのかな、ゆうかりんはそういうところを教えてくれない
もう涙も流しつかれたよ 最後にもう一言ゆうかりんに謝ろうと思ったんだけども、ゆうかりんはそれを静止するの それは許しじゃなくて、次の場面でさ、
「これ、見える?」って、ゆうかりんが手のひらを俺に見せてくるんだ よくよく見るとゆうかりんの手のひらにはちっちゃい粒みたいなのが乗っているの
「ここまではただの準備よ。この種をあなたの爪の下に仕込んだの。私の合図があれば、一斉に芽を出して上へ上へと伸びようとするのだけど」
あれだけ血の気が引いたってのにまだ引く血の気が残っていたとは驚いたよ ゆうかりんが言ってる事を信じたくはなかったよ そんな恐ろしい事をするなんて
「それじゃ、生まれてきた事を悔いなさい」って言って、ゆうかりんが指パッチンしたんだよ そしたら俺の指が一気に熱くなって、全部の指が同じタイミングで
落花生の殻を割った時のような音を立てるんだよね 爪が全部砕け散って、俺の指から若々とした新芽が一気に伸びてくるんだ 痛いとかそんなんじゃなくて
もう本当に死なせてくれって感じだったよ 精神が先に折れるのを感じてね、俺はそのまま気を失ったりして やっぱり怒らせちゃダメだね!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふふふ

50 :
ゆうかりんと鍋を食べたい
ゆうかりんとお鍋を囲みたい
冬だからね、やっぱりお鍋の季節という奴さ 白菜を美味しく上手に消費できるから鍋は好きだよ、ほっとくと全部腐らせちゃうんだよね、白菜ね
そんなわけで今夜は鍋です 理由はゆうかりんの希望 「あなた、今夜はお鍋にしましょう」ってさ、ゆうかりんが俺の服の裾をくいくいしながら言うの
ちょうど労働を終えて帰ってきたところの俺、おゆはんのメニューを決めかねていたところだから丁度よかったよ それにしてもそんなにお鍋が食べたいなんて
ゆうかりんがはらぺこあおむしになっちゃったかな、それはそれで可愛い気がするけども蝶々になったらもっと可愛いのかも、なんて考えてしまって
勝手に頬が緩んでくるんだ そんな俺の表情を読み取ってか、ゆうかりんは鍋を希望する簡単な説明をしてくれるんだ 「いや、その、あれ」って
リビングの方を指さしてね テーブルの方を指差すと、「ハーイ」なんて言いながらこちらに手を振る人物が 俺のマグカップで優雅に紅茶を飲んでいるのは
冬の忘れ物との異名も持つレティさん 「お邪魔してまーす」なんて嬉しそうに言いながらニコニコしてるんだ 「レティが色々持ってきてくれたの」って
ゆうかりんが冷蔵庫の戸を開いて見せてくれる まあなんだ、こっちに飛び出してきそうな蟹の足だとか生食もイケるという表記もある大ぶりの牡蠣とか
妙に高そうな食材がいっぱい並んでたんだよね 「たまにはお鍋もいいでしょ?だって冬だし」なんてまさに冬を体現するような事を言い出すレティさんに
とりあえず言いたいのは「遊びに来るのは構わないけども窓からじゃなくて玄関から入って下さい」ってことだよね この黒幕は自由人過ぎやしませんかね
ということで、改めまして、今夜は鍋です 一応程度にお客様にもう一度お茶なんかお出しして、簡単なお茶菓子なんか出してみたりするんだけどさ、
ゆうかりんもレティさんも、クッキーをもぐもぐしながら「こんなに食べるとお鍋が入らなくなっちゃう」「そうねー」なんて平和な会話に花を咲かせたりしてさ、
案外似た者同士なんじゃないかな、なんて思ったりするんだよ ゆうかりんがちょっと間を置いて口を開くんだ、「ちょっと待って、貴女も食べていくの?」って
レティさんに向かってちょっと大きい声を上げる 「そうよ?」って当然のように返すレティさん、いや俺も当然食っていくモンだと思ってたんだけどね
むしろアレだよゆうかりん、食材だけ貰ってお前は帰れーなんて展開は認められないよ 流石にそれは心が狭いというか可愛くないというかそんな感じ
なんでそんな心無い事を言い出すのかと思えばちょっと顔を赤らめて「人前でお鍋食べるのって恥ずかしくない?」なんて言い出すんだ 一瞬迷ったけど
ゆうかりんが言いたいのはきっとこういうことさ、レティさんが見てる前で「よそってー」とか「あーんしてー」って言うのがこっ恥ずかしいとかそういうことだよ
まあそりゃあ俺だって恥ずかしいよね、でも逆に「お鍋とはそういうものだ」って思ってるからさしたるダメージはないというかリカバリアブルというかね
さて ちょっと早いけどもうお鍋準備して始めちゃおうってことでね 海の幸だの山の幸だのゆうかりんが選んだ厳選素材だの全部鍋に突っ込んで
「火が通れば食える」という心情の下であったかお鍋を囲んだおゆはんが始まりだよ レティさんも人の家だということを思わせない自然な立ち回りで
好きなように過ごしてるのがこちらとしても心地いい 途中ゆうかりんと鶏団子の取り合いなんかしてるのを見ると何とも言えない和やかな気分になるよ
たまには俺とゆうかりん以外の人がいる夕食ってのもまた乙なものだよ 賑やかさが違うね、たまにはこういうのもいいよ、毎回はちょっとアレかもね
シメのうどんごはんまでしっかり食べ終えてホクホク顔になった三人さ 満足そうに「やっぱり冬はいいわねー」なんて言うレティさんに俺とゆうかりんで
二人揃って「それはどうかな」的なツッコミを入れてしまって笑うよ 冬というか、やっぱり鍋はいいものだね 心まで勝手に温かくなる魔法がかかってるよ
もっと大人数呼んで鍋パーティでもしよう、って言ったらゆうかりんが「だから恥ずかしいって!」って言って抓ってきたよ 痛い!いいじゃん鍋!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふ

51 :
ゆうかりんと建てたい
ゆうかりんとおうちを建てたい
朝っぱらから庭で日曜大工をさせられているのはやっぱり日曜日だからなんだろうね 全くこんな寒空の下だっていうのに俺は微妙な運動をさせられて
屈んだまま延々と釘を打ちつけたりするもんだから額に汗なんかかいちゃってさ 俺の脱いだパーカーはちゃっかりゆうかりんが着ちゃってるんだよ
俺の横に庭用の椅子を持ってきてちょこんと座ってね、今か今かと完成を待ってるみたいなんだ ちなみに何を作らせられているのかというと、
ゆうかりん曰く「犬小屋にも猫小屋にもなるようなもの」だってさ ゆうかりんが言いたいことはきっとこうだよ、この小さな木の小屋が完成したら
次はやれ「ペットが欲しい」だの「犬飼いたい」だのって言い出すつもりなんだ ペットなんてそんなにいいものじゃないよ、と俺がいっくら言ってやっても
聞く耳を持ってはくれないだろうね、今だってパーカーのフード部分をすっぽり被っていかにも「余計な事は耳に入りません」みたいな顔してる ズルいよね
寒い寒い冬の日曜日にしてはなかなかいい天気でね、はたから見たら結構な日曜大工日和なのかもしれないよ でも俺はそこまでモノ作るの得意じゃないし
それに、やってみて益々感じるんだけどもモノ作るのって好きでもないんだよね 「うーん、やっぱりもう少しちっちゃい方がよかったかしら?」だなんて
ゆうかりんが横から口を挟むの もう完成が見えてきた、って時にわざとこんなこと言い出すんだよね 身体の力が一気に抜けちゃう気分になるのを
バッチリした魔法のリングもとい気力で抑えつつ、まあしょうがないよね的なニュアンスで返してやるよ 俺の手先の不器用さはゆうかりんも知ってるんだから
次からは自分で作ればいいんだよ、犬小屋でも猫小屋でも俺一人用のプレハブ小屋でもいいよ 「ま、次もあなたに作ってもらえばいいし、いいかな」って
ゆうかりんが何やら不幸なワードを言ってくる まだ俺に働かせるつもりなのか、もう俺は懲り懲りだよ 畜生今夜はベッドの上でペット扱いしてやる、なんて
頭の中で野望を巡らせながらやっとのことで屋根を付け終わって、なんとか小屋の完成だよ ぱちぱちと可愛い拍手を送ってくれて完成を祝ってくれると
やっぱりなんだかんだで嬉しくなっちゃうんだよ、俺も単純だよね とりあえず庭の隅に設置してみて、犬の鎖を留めておくという想定で杭なんか差してみて、
なんだかそれらしい風体になりました これにてようやく日曜大工も終了さ、日曜日なんだからプリキュア見つつゆうかりんとのんびり過ごしたいものだよ
「やっぱりおうちっていいわね」なんて、ゆうかりんが言うんだ その目線の先は今俺が作った小さな小屋と、その後ろにある築200年の我が家を見ている
何かを思い出させられるようにして、俺も同じ方を見るんだ こうやって自分たちの家をまじまじと見たのは久しぶり、何年振りだろうなあなんて考えるの
ゆうかりんに想いを伝えて、ゆうかりんと二人で暮らすことにして、俺もゆうかりんも身分を捨ててここに家を建てたんだよ ゆうかりんが大好きな、この
夏に向日葵がいっぱい咲く丘にね 少ない知り合いからいっぱいお金を借りて、見栄を張って河童の皆さんに近未来的な技術をいっぱい使ってもらった
過ごし易いおうちにしたんだっけね 俺もゆうかりんも連れ添ってだいたい200年、この家は俺とゆうかりんと一緒に過ごしてきた家族みたいなものなんだね
そう思うと何だか妙な感慨深さが俺を包むんだよ 「うん、おうちっていいね」って、ゆうかりんの言葉に遅れて言葉を返したんだ やっぱり家ってのはいいよ
帰る家があるっていうのは幸せの一つの形のはずさ 仕事から帰るとゆうかりんが暖かい家で待ってるんだよ 俺は今幸せの真っただ中にいるんだなあって
しみじみ思うよ 思わずゆうかりんの腰に手を回してぎゅっと抱き寄せたんだけど、ゆうかりんも俺に身体をあずけるように、寄り添うようにしてくれたの
「これでワンちゃんか何かが居ればいいんだけどなー」って、ゆうかりんが俺の事を見上げるようにしながら言ってくる あ、ホラやっぱりこんな事言うんだ
バレバレなゆうかりんも可愛いなあと思うんだけどもやっぱりゆうかりんにお願いされると断り辛い俺がいるんだよ 犬猫より俺は熱帯魚派さ!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふ

52 :
ゆうかりんと行きたい
ゆうかりんと神社に行きたい
神だの何だのを信じてるワケじゃないけど、我が家は一応博麗信仰ということになるのかな 結局信じてるのはお互い夫婦ぐらいなもんで、その他なんて
空飛ぶバウムクーヘンぐらい適当なモノだと思ってるんだけどね 信じるモノは一つでいいのさ、俺にとってはゆうかりん、ゆうかりんにとっては俺ってことね
少し早い年越しの準備も兼ねて博麗神社に遊びに行くよ 俺もゆうかりんももこもこになるくらい厚着してね、二人の間に長い長いマフラーを巻くの
二人で一つのマフラーを使うと心まで暖かくなるよ、これを生活の知恵として伊藤家の食卓に送ってみたら採用されるかしらね 手袋の上からゆうかりんの手を
ぎゅっと握ると、俺の身体が宙にふわっと浮かぶんだ 俺が空を飛ぶ機会なんて、ゆうかりんがいない限りあり得ないんだよね 「落ちたらRわよ」なんて
B級映画みたいな変な台詞を言って、ゆうかりんとちょっとの間の空中散歩さ 歩いても行ける距離だから歩いて行きたいんだけども、ゆうかりん曰く
「こっちの方が早い」らしくてね、まあ実際飛んで行った方が早いし、俺に拒否権は無いんだけどね 中々におっかない空の旅を終えて、博麗神社の
石畳にストンと着地すると微妙に足が震えるのがカッコ悪いね いつも形だけは掃除っぽいことをしてる巫女さんが俺とゆうかりんを見て目を細めるんだ
「そんな顔しないで。今日はちゃんとした参拝客なんだから」なんて返すゆうかりんももう慣れたものさ ゆうかりんにとっては居心地のいい場所らしく、
日中俺が仕事で家を空けている時にはたまたまこうやって神社に来ては勝手にお茶を飲んだり遊んだりしているらしい 公共施設扱いっていうことかな
巫女さんとお会いするのは微妙に久しぶり、何かとお世話になってる人だから深く頭を下げてみたりするよ 愛想はあまり良くない方だと思われる巫女さん、
「どうせなら今年一年分のお賽銭を請求してやろうかしら」なんてジョークも飛び出すんだ ゆうかりんと二人で入れるお賽銭はいつもご縁がある硬貨、
ガラガラと鐘を鳴らすのは気分がいいもんだけども巫女さんにはちょっと物足りないらしくてまた一つため息が博麗神社に溶けて行ってしまうのさ
ゆうかりんと俺が出会ったのも縁ならば、その縁をますます深めていくのも大事だ、っていう立派な理由があるのにね 二人で顔を見合わせて
ねーって言い合うよ さてそんなことばかりもしていられなくて、図々しくもお茶なんかを頂きながらも巫女さんに相談に乗ってもらう 何かというと
正月という名の魔王討伐に向けて色々と装備を整えておきたいところなんだよね 名称がわからないんだけど、あの、矢みたいな奴とか紙だとか
変なモシャモシャした奴とか飾らないといけないじゃん、あとはお餅とか そういうのを買いたいんだよ 巫女さんは当然本職だから俺の話を理解してくれて
「これとこれと、これだけあれば十分ね」なんて、見事なアイテムを目の前に並べてくれたんだ 「今更御神矢を買うなんて、去年や一昨年はどうしてたのよ」
って言われてしまって俺もゆうかりんも口籠ってしまう いや、去年も買ったはずなんだけど一年も経つと色々忘れちゃってね、長生きすると物忘れが、ね
適当に誤魔化して、とりあえずそれらのものを買いたいという旨を伝えるんだけど、巫女さんの口から出た金額は思った以上にいいお値段がしてね、
俺が、というより俺の財布がちょっと臆しちゃうのさ 「ここで買わなくても、山の神社で買うっていう手もあるのよ」とゆうかりんが助け船を出してくれる
あっちもあっちで妖怪だらけだけどある程度は親切だし巫女さんも確か若くて可愛かったはず、それでいてお値段もお手頃ならそれもアリかなと思うけども
「あのね、今年一年そいつの世話してやったのよ。ウチで買わなかったら来年は大凶ですら可愛く見える年になるわよ」だなんてヤクザも裸足で逃げ出すような
酷い営業のされ方をして俺もゆうかりんもお手上げさ 失望した、わけじゃないけどもこの巫女さんのオラオラ営業っぷりには敵わないよ、幻想郷最強だね
仕方なくお買い上げして、その後はまたお茶を貰ったり、炬燵に入ったりいろいろして遊んだよ 今年も無事に終えられるといいなあ、ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふふ

53 :
ゆうかりんと準備したい
ゆうかりんとクリスマスの準備がしたい
12月に入ったばっかりの時は案外「クリスマスはまだまだ先だな」と思ってるんだけどもこの時期になるともう目前まで迫ってきているみたいで
謎のプレッシャーを感じてしまうのもまた事実さ ところどころ、ゆうかりんの鼻歌から「恋人はサンタクロース」だの「背の高いサンタクロース」だのって
聞こえてくるからクリスマスの呼吸音を感じるとともに何やら背中を焼かれている気分になるのさ それにしても背の高さは関係ないだろう、いやホントに
さて、クリスマスには準備がつきものさ ゆうかりんはゆうかりんで準備するものがあるし、俺も俺で準備することがある ゆうかりんがお庭の一角を
簡単な柵で囲って、その真ん中で木を育ててるの クリスマスといったらこれ、モミの木って奴さ ゆうかりんの「花を操る程度の能力」の応用で
モミの種の状態から急成長させてるんだとか 「この調子で行けば間に合うわ。今年のクリスマスも楽しい事になりそうね」なんて言っちゃって、
こういう時だけ子供っぽく顔をくちゃっとさせて笑うの 木が大きく育ったら我が家の周辺に住んでいる妖精さん達と一緒にいっぱい飾り付けをして、
万全の態勢でクリスマスを迎え撃つ、という形になるのが常さ 俺自身もクリスマスは好きさ、というより行事だのお祭り事っていうのが好きなんだよね
いくつになってもこうやってゆうかりんと二人でさ、楽しい事を「楽しい」と言って過ごしていきたいものだね ゆうかりんの方の準備は問題無さそうだから
俺の方の準備に本腰を入れる必要があるよ 花屋の仕事を早めに切り上げて、ゆうかりんの待つ家に帰る前にちょっとばかり遠回りして寄り道するんだ
目指す方向は夢幻世界 もうちょっと正確に言うとなると「現実世界と夢幻世界の境界」というものらしいんだけど、正直なところ全然わかんないから
昔ゆうかりんに教えられたとおりに進むよ 白と黒が反転する世界の、ついた先にあるちょっぴり古惚けた洋館の門を勝手に開けて、中に入って
「こんばんわー○○ですー」と大声で叫ぶんだよ そうすると奥からぱたぱたと巻き髪の女の子がかけてくる、「ようこそお待ちしておりました」だなんて
それっぽい事言ってくれちゃってね この人の名前はエリーさんといって、昔ゆうかりんに仕えていたことのある子なんだ 今は俺とゆうかりんが結婚したから
ゆうかりんの元々の住居であるここ、この夢幻館というお屋敷で暮らしてるんだよ もう一人住人がいるはずなんだけども、今日の所はいないみたいだね
「ささ、どうぞこちらへ」なんて言われて屋敷の奥へと連れられるんだ これは密会、誰にも知られちゃいけない秘密さ 別にイヤラシイ意味ではなくて
ちょっとした話があるんだ、作戦会議がね 長い机と固そうな椅子、向かい合うように二人で座ってこそこそ喋るよ 「それで、クリスマスの話なんだけど」
「言われた通りに衣装は用意しました、他ならぬ幽香様のためですから」ってね エリーさんが微妙に寒そうなサンタ服を見せてくれる 今年のクリスマスは
ゆうかりんに「本当にサンタさんが来た!」と思わせるサプライズのために、古い付き合いのある方々に協力してもらうことにしたんだ 当日の夜は
いつものように俺と抱き合って寝るゆうかりんだけど、ふと目を覚ますと部屋の中に赤い服を着た誰かがいるのを見つけるのさ そのまま立ち去る人物と
ちょこんと置かれているプレゼントの箱、こりゃあ完璧な作戦だね 「ゆうかりんを喜ばせてやること」をお互い信念として掲げて綿密に打ち合わせを繰り返して
当日は絶対に有意義に、ゆうかりんにとって意味のある日にしてやるんだよ そんなわけでしばらくゴニョゴニョと話をして、しばらくしたらそそくさ帰るよ
「あなた!今までどこ行ってたの、随分遅かったじゃない!」 もうすっかり夜も遅くなっちゃってね、帰ったら真っ先にゆうかりんに怒られてしまったよ
やはり秘密を持つというのは苦労するモンだね 「あなたと一緒にお茶したかったのに、くるみが遊びに来たのよ」なんて語るんだ、そうかもう一人の住人である
くるみちゃんはこっちに遊びに来てたんだ でもゆうかりん、そうは言うけども俺にお茶淹れさせてお菓子作らせたかっただけじゃないの?なんて!ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふ

54 :
ゆうかりんに止められたい
ゆうかりんに俺を止められたい
この丘に登れば幻想郷という世界を一望できるから、と思ってここまで来たんだけどもそもそも俺は悠長に景色を眺めるつもりはなかったんだけどね
だんだん下がってくる太陽が何だか名残惜しそうに辺りを染めるんだ もしかしたらこの夕日は俺の心の内を照らし出しているのかもしれないな、なんて
俺はいかにも若者って感じの感想を抱くんだ 右手にグッと力が入る、そんな時に後ろから声がするんだ 随分と聞きなれた高い声が聞こえてくるの
「こんなところで何してるの」って言ってから振り返ったよ 「それはこっちのセリフよ」なんてね、顔の半分をオレンジ色に染めたゆうかりんが返すんだ
後ろで手を組んだゆうかりんが俺に笑いかける 後をついてきたのか、それとも先回りしていたのかはわからなかったけども、全然気付かなかったね
どっちだかわからない時は適当な話し方をするに限るね カッコつけて何か適当に下の方に視線を落としながら「よくここがわかったね」なんて言ってみるよ
「当たり前じゃない。あなたの考えてる事なんて寝ててもわかるわよ」って胸を張って言うゆうかりん 問答無用で可愛らしいその様子が俺を癒してくれる
でもね、ゆうかりんがここに来たって何も変わらないんだ 俺はこの日この時を決行の瞬間だと思ってずっと過ごしてきたんだ 多少のイレギュラーは
目的のためなら無視して通り過ぎてもいいはずさ 愛していただとか、愛し合っていただとか、そういう話は今は関係ないんだ そういうのは置いてきたよ
また、右手に力が入るんだよ 自然に左手も右手を支えるようにゆっくりと動くの それを見てゆうかりんはわざとらしくニコニコと顔を綻ばさせるんだ
「まだ持ってたのね。そんなもの」 そりゃあ勿論だとも、元はといえばゆうかりんが俺に与えてくれたものだからね、捨てるなんてとんでもない事だよ
でも、だからといってサマになってるワケではないらしく「やっぱり似合ってないわね」なんて言われちゃうんだ 少しばかりショックだけど、この感情も
心の箪笥の上から三番目の引き出しに無理やり押し込んで見なかったフリをしてやる 俺は前を向いて、可能な限り怖い顔というものをつくってみるよ
こんな顔はゆうかりんに向けた事ないね、初めてだと思うよ まあでも俺がいくら怖い顔をしたところで怒った時のゆうかりんの方が怖いとは思うけどね
「あら、怖い顔」 ゆうかりんが、俺の精いっぱいの威嚇をひらりとかわすように笑ってみせるんだ 「そんな怖い顔して、今から何をするつもりなのかしら」
そう聞かれてもね、答えるわけにはいかないよね ゆうかりんに言うくらいなら、開いておいた絵本の表紙を寝ている間に閉じられる方がマシってもんだよ
俺はゆうかりんに吠え掛かってみるよ もう止まる気はないんだ、邪魔をするならたとえゆうかりんだって容赦をするつもりは無いということを伝えるよ
もしかしたら自分は泣いていたのかもしれない、目の前がどうにも霞んじゃってね 俺の言葉を目を閉じて聞いたゆうかりんは、ばっと両手を広げるの
「ここを通りたいのなら私を倒してから行きなさい」ってね ゆうかりんのシルエットが十字に見えるよ 俺を真っ直ぐに見据えて、自分の身体を投げ出すように
構えるゆうかりん 俺は今になって、自分の立ってる丘に風が吹いていないことに気が付いたんだ そこにあるのは俺とゆうかりんの二つだけみたいさ
なんで今更こんな事を言うんだろう 俺はもうゆうかりんに会わないつもりだったのに 動けないでいる俺を、ゆうかりんはじっと見ていた 想定内だったのかな
「ここを通りたいのなら、私を倒してから行きなさい」って、ゆうかりんはまた同じことを言うんだ 今度はね、正面から俺の胸に飛び込んで、その広げた手で
いっぱいいっぱい俺の事を抱きしめながらだよ 最後に触れるものがゆうかりんだなんて、自分が唯一愛した女性だなんて素敵だよね、俺は目を閉じたよ
本当はね、ゆうかりん、君のためなんだ 世界を終わらせて君を永遠のものにできるなら、自分一人の命なんてどうでもいいような気持ちになったんだ
それでもやっぱり俺は下手だね、最後の最後まで自分の力でやり遂げられなかったよ こんな俺を笑ってくれるなら、それは嬉しい事だよね、ね!ゆうかりん!
うふふふふふふふふふふふふ

55 :
たのしいゆうかりんかるた「あ」
……一日に二回くらい口に出して「愛してる」って言ってあげないとヘソ曲げちゃう。夜一緒に寝てくれない。
たのしいゆうかりんかるた「い」
……犬飼いたいって言い出した時はただ単純に人肌恋しいような状態になってるだけなのでもうちょっとスキンシップを取ってあげた方がいい。
たのしいゆうかりんかるた「う」
……「ウチの人ったら凄いのよ!」から始まる惚気話がついに人形一体の制作時間を越えたとアリスさんから苦情が来る。
たのしいゆうかりんかるた「え」
……えっちな同人誌は自室の本棚の最下段(福祉関連書)のウラ側に隠してるんだけども実はバレてるみたいで大掃除の時とかに「捨てなさいよ」とか言ってくる。
たのしいゆうかりんかるた「お」
……男はオオカミだという形容詞を真に受けてニヨニヨ笑ったり人をからかったりしてくる時も多いが、オオカミ側から言わせてもらうとオオカミよりも発情期のゆうかりんの方が恐ろしいと思う。
たのしいゆうかりんかるた「か」
……家事全般を旦那に任せているという旨の話を女子会(正しくは女子宴会in博麗神社)でしたら「お前ほんと使えない嫁だな」「昼寝以外やる事ないの?」みたいな集中口撃を食らってしまって泣いて帰ってくるハメに。
たのしいゆうかりんかるた「き」
……金魚すくいが好きで縁日では必ず二匹取るようにしてる。水槽の中でに引き寄り添う姿が可愛らしいんだとか。でも世話は自分ではやらない。
たのしいゆうかりんかるた「く」
……口元によく触れる時は明確なお誘いのサイン。自分の唇だけじゃなくて人の唇に触れてきたりもするからまさに明確。
たのしいゆうかりんかるた「け」
……ケチなんじゃなくて節約家。理由は「これから生まれてくるであろう第一子、第二子、……第二十子のための積立貯金」ということらしい。
たのしいゆうかりんかるた「こ」
……子供の相手をするのはとても好きなんだけども肝心の子供に好かれないからなかなか欲求を満たせない。そういう時はベッドの上で甘えるようにしている。

56 :
たのしいゆうかりんかるた「さ」
……散歩を日課にしていて、夫婦で一時間ほど森を歩くこの行為こそが健康の秘訣だと思っているけども、他人に話すと「だから幽香さん長生きしてるんですねぇ」って年齢の話に持って行かれそうだからしない。
たのしいゆうかりんかるた「し」
……「実は」から始まるいかにも申し訳なさそうな告白は、大抵何か大切な物を壊してしまった時のもの。最近は我が家唯一のテレビを板チョコのようにへし折った。
たのしいゆうかりんかるた「す」
……「好きなものは好きと言う」を心情としているらしい。それが毎日の会話の中で聞いたことのない花の名前が飛び出してくる理由なんだと思うと、微笑ましい。
たのしいゆうかりんかるた「せ」
……背は170cmにちょっと届かないくらい。幻想郷の女の子の中では高めな方。俺と比べるとちょっと小さくて、キスする時の位置関係が程良い。
たのしいゆうかりんかるた「そ」
……掃除をするわけじゃないけど綺麗好き。特に寝室回りは綺麗じゃないと気が済まないタイプ。で、どうするのかというと、当然人にやらせる。
たのしいゆうかりんかるた「た」
……他人の前で笑う時は「うふふ」。二人きりで笑う時は「えへへ」。
たのしいゆうかりんかるた「ち」
……「ちゅー」と「キス」は別物らしい。お出かけの前にするのが「ちゅー」でベッドの上でするのが「キス」らしい。妙なこだわり。
たのしいゆうかりんかるた「つ」
……つまらない事は基本的にしない主義なので、ヨソのみんなが思ってるよりもご機嫌な子で、ぶっちゃけた話かなり扱い易い存在だと思う。
たのしいゆうかりんかるた「て」
……手を繋いでいても嫌じゃない関係というのが彼女の求めるところのパートナーなのだという。寝るときは指を絡めて優しく握ってあげないと上手く寝つけないらしい。
たのしいゆうかりんかるた「と」
……「となりのトトロを観た次の日はメイみたいに森を駆け回ったものよ」みたいな話をされて、ますますゆうかりんの年齢がわからなくなってきて夜も眠れない。

57 :
たのしいゆうかりんかるた「な」
……涙を流すのは嬉しい時だけと決めている。最後にゆうかりんの涙を見たのは結婚式だった。その時は、俺も泣いていた。
たのしいゆうかりんかるた「に」
……日記を欠かすことなく書き続けるという旦那の超インドア派な趣味を「人には絶対言えない」と感じている。
たのしいゆうかりんかるた「ぬ」
……濡れた時だけ一時的に髪がストレートになって何だかいつもとは違った可愛さが見え隠れする。
たのしいゆうかりんかるた「ね」
……寝てるんじゃなくて力を溜めているだけで、イザとなった時のために備えを持っておくのは大切なことだ、と真っ昼間から縁側で横になって枕に頭を乗せた状態で力説。
たのしいゆうかりんかるた「の」
……「海苔巻き」という一発芸を披露したところ、ベッドの上から転落して膝を強打した苦い思い出がある。芸の内容は、縦になって布団に包まるだけ。
たのしいゆうかりんかるた「は」
……花と呼ばれる全てのものが好き。可憐で美麗な花に勝るものなどこの幻想郷には存在しないと思っているが、「でもゆうかりんの方が可愛いし綺麗だよ」と言われるとまんざらでもなさそうな顔をして俯く。
たのしいゆうかりんかるた「ひ」
……日傘で防げるものは直射日光や雨粒だけでなく、弾幕から爆風から、レーザービームも防ぐ上、喧嘩中の相手の喚き声や泣き事までしっかり遮断できるスグレモノらしい。
たのしいゆうかりんかるた「ふ」
……普通で地味で質素な新婚生活を送れる事を何より喜んでくれるのは、彼女と俺がお付き合いする前まではとてもヤンチャな子だったからだと思う。
たのしいゆうかりんかるた「へ」
……平気な顔をして大分無理をしている時がままある。人々は彼女を「強い」というけども、俺は彼女をそうは思っていない。
たのしいゆうかりんかるた「ほ」
……「他の女と浮気なんてしようものなら、どうなるか、わかってるわよね?」というものの、実際に浮気なんかした日には寝室に籠ってメソメソ泣くというのは目に見えている。

58 :
たのしいゆうかりんかるた「ま」
……真夜中に寝返りを打つ時にわざとらしく布団を蹴っ飛ばすので、その時間にそっと布団をかけ直してあげるのも夫としての俺の仕事のうちである。
たのしいゆうかりんかるた「み」
……「みんなで」「みんなと」って言う時に含まれるメンツは大抵秋姉妹だのレティさんだの。春夏秋冬で移り変わる植物の表情が好きらしいから、自然とそういう人たちとの付き合いが多いらしい。
たのしいゆうかりんかるた「む」
……昔話に咲かせる花も好きらしいが、「前の前の博麗の巫女が」とか「この人里に何もなかった時」とか明らかに俺が生まれていないであろう時代の話をするもんだから、正直こっちは面白くない。
たのしいゆうかりんかるた「め」
……面倒な子であることは間違いない。寂しい時にうまく構ってあげられないと、今度はヘソを曲げて俺に攻撃してくるから。
たのしいゆうかりんかるた「も」
……「もっともっと」とせがむけども男には賢者タイムというものが存在すると誰か教えてあげてやって欲しい。
たのしいゆうかりんかるた「や」
……矢車兄貴みたいな人がタイプ。
たのしいゆうかりんかるた「ゆ」
……「ゆうかりん」という呼び方は、実は自分が相手に強請させている。特別な呼び方をされることで「自分はこの人にとって大切な存在なんだ」と思い返す事ができる、最大限の甘えだとかなんとか。
たのしいゆうかりんかるた「よ」
……良く行くスポットに「紅魔館の前庭」というものがある。庭師を兼ねた門板の手入れが非常によく行き届いた花壇が見ものなんだとか。一人の時はフラフラと遊びに行ってお茶なんかご馳走になるらしい。

59 :
たのしいゆうかりんかるた「ら」
……「楽な仕事だわ」と言って日傘をピッと振り、軽やかに倒れた相手に背を向けるのが彼女の決めポーズなのであるが、それは収入の全てを旦那に頼っている事に対する自分なりの弁明か何かだろうか。
たのしいゆうかりんかるた「り」
……凛々しい表情と言われる事が多い(主に天狗の新聞なんかで)が、主にそれはただ眠いか不機嫌なだけで、二人きりの時はめったにそんな表情なんか見せない。
たのしいゆうかりんかるた「る」
……ルービックキューブは二日で飽きた系の人なのでなかなか新しいオモチャを飼って貰えない。
たのしいゆうかりんかるた「れ」
……恋愛というものを経験したことが無いのにそういう相談を持ちかけられる事が多くて参っている。恋愛の過程をすっ飛ばして、何となく同棲→二百年越しの結婚をしたという異例の経歴。
たのしいゆうかりんかるた「ろ」
……呂律が回らないくらい酔っぱらった状況でも変にカッコつけた言葉を言おうとするから大抵周りの人々に馬鹿にされる。
たのしいゆうかりんかるた「わ」
……「わたくし」という一人称を使う時は大抵「こいつだけには弱みを握られたくない」と思ってる相手と対峙している時。例えば竹林の薬屋さんとか、妖怪の賢者とか。
たのしいゆうかりんかるた「を」
……女の子である。誰よりも女の子である。夢見がちで、甘えん坊で、自分の思い通りにならないと機嫌が悪くなる、そんな絵に描いたような女の子である。だからこそ可愛い。
たのしいゆうかりんかるた「ん」
……「んー、そうね、西側にもうちょっと花壇を広げたいわ。あと追加で肥料買ってきて。そうだ、最近あれ作ってくれないじゃない、クリームブリュレ。あとはね、そうね、そろそろ湯たんぽ出しましょうか。あとは一緒に居てくれれば、それでいいかな」

60 :
東方のアリス・マーガトロイドさんを愛し続けてみた 〜あいゆえにアリスさん〜

むかしむかし、あるところに。
魔法使いの女の子と、人形の男の子が住んでいました。
森の奥でひっそりと暮らす二人は互いに支え合い、仲睦まじく暮らしておりました。

61 :
(1)
彼女はぼくより早く起きていました。外は晴天だろうが曇天だろうが、この家には一日中明かりがついています。
また徹夜で針と糸の仕事をしていたのでしょう。ぼくが顔を洗うフリを済ませて彼女の背後に近付くと、
せなかに目があるわけでもないのに気付かれて、先に声をかけられてしまいます。
「あら、おはよう」
いかにも朝らしい挨拶です。ぼくにとってはそれが気持ち良くて、とても好きです。
「おはよう」
せなか越しに、機械のように正確に動く彼女の指を見ながら、同じように返してやりました。
彼女の机にはきれいな布が積まれています。よくわからない色の、よくわからない形の、よくわからない模様の。
見ているだけでホームシックにかかりそうな、排気ガスの溜まった空のようなそれが、彼女の作品でした。
ぼくにはよくわかりませんが、西洋のデザインキルトは需要が高くて、最近は人里でもひっぱりだこなのだそう。
何日か前に、彼女が言ってました。
今のいままで針を突き刺していたそれを、彼女は引っ張ってぴんとさせます。
そうするとより一層重く暗く光るようで、早朝の気分とは食い合わせが悪いようにおもいます。
彼女は布を置いて、ぼくの方に振り返りました。金色の髪が揺れて、青色の瞳がぼくを突き刺します。
昨日と比べて、ヘアバンドが少し下がっている。視線を無視してぼくはそんなことを考えました。
「もうこんな時間なのね。朝ご飯にでもしましょうか?」
「いや、いいよ。何ならぼくに作らせてよ。あまり無理をすると身体に悪いよ」
「そうね、お願いしちゃおうかしら」

62 :
ぼくと話している間、そしてその後に大きく伸びをした時も、彼女はずっと笑っていました。
疲れているはずなのに、彼女はぼくの前ではそんな様子を見せようとしないのです。
ぼくはそんな彼女が頼もしくて、それがまた増々心惹かれるところです。
でもたまにはベッドで寝ないと疲れがとれないはずなので、生活リズムを規則正しく保ってほしいものです。
朝ご飯を用意するといっても、大抵は薄切りのパンを焼いて、すこしの野菜や卵を炒めたものを用意する程度です。
冷蔵庫の扉を開いたところで、ぼくは振り返りました。さっき彼女がしたように、軽やかに振り向いたつもりです。
彼女があくびをしているのを丁度見てしまいました。手をあてて、まぬけな顔であくびをしていた彼女は
少し固まって、顔を赤くして、そっぽを向いてしまいました。
可愛らしいと思います。
昨日はたしか、彼女が目玉焼きを作ってくれたと思います。
その前は、わかりません。覚えていません。だけど、きっと、そんなかんじで、同じような日だったはずです。
いつでもぼくに用意されているのは、変わらない日常だけだということみたいです。
何がいいたいのかというと、ぼくは卵を溶いて焼くべきか、そのまま焼くべきか、そういうことです。
悩んでもらちが明かないので、フライパンに落としてみてから決めようと思います。
「参ったわね、今日も雨か。洗濯物が溜まっちゃうじゃない」
彼女がカーテンをひっぱった音が聞こえました。それを追うように、彼女のぼやきが耳に届きました。
そうだ、最近は雨が多かったのでした。そのせいで、空気が何となくじめじめして、過ごしにくいような気がします。
こういう時はあまり動きたくありません。家の中でじっと本でも読んでいたいものです。

63 :
そのままゆっくり歩いて、彼女はまた机に向かいました。
針を持って、少し背中を丸めて、その体勢からわかるのは、彼女は作業を進めるみたいだということです。
雨のあいだに少しでも多く布を作っておくつもりなのかもしれません。彼女のやる気がぼくじゃない方向に向かっています。
せっかく人が朝ご飯を作っているのに、と思いました。フライパンを見ないで揺すりながら。
でもそれが彼女の選択ならば、それもいいのかと思います。それは結局大きく外を回って、ぼくにもやってくるのです。
安心してみていられる、と思います。彼女が自分のために、そしてぼくのためにやっていることだからです。
それでもやっぱり身体には気を付けて欲しいものですが。
今、ぼくがやるべきことは、彼女に……
――アリス・マーガトロイドに朝食を持って行ってやることだと思い出しました。
お皿に卵を盛ったところで、パンを焼いてない事に気付いて、あわててトースターを押し込みました。

次に里に行くのは二日後らしいです。それまでは、指を折って数えなくてもわかるくらい、やる事がありません。
ということは、彼女とずっといっしょにいられるみたいです。
昨日も彼女とずっといっしょにいました。今日もまた、そうなるみたいです。

64 :
(2)
「はいおしまい。お疲れ様」
そう言って、裸のぼくの背中がぽんと叩かれました。この軽い音は終了を意味しています。
二日に一回、こうやって彼女に身体の調子を見てもらうのです。数少ないぼくの「やる事」の一つでした。
こうしないと、もしもの時に対応できないらしいので、ぼくは言われたとおりに彼女に身体を任せます。
ぼくの事を一番良く知っているのは彼女です。このことは本当なので、何も言い返せません。
もぞもぞと服を着ました。やはり年頃の女性の前で裸になるというのは、少し恥ずかしいのです。
素肌の上にそのままフリースのシャツを着ると、何故だかちくちくする感覚が新鮮に覚えられました。
肌がびんかんになっている感じがしました。"行為"のあとはいつもこうで、不思議なものです。
でも、心がちくりとするのはシャツの前と後ろを逆に着ていたからなのかもしれません。彼女に指摘されるまで気が付きませんでした。
気分が落ち着いています。ぼくを外側から眺めてみました。
さっきと比べて身体の動きが軽い気がします。ミニ四駆に新しいアルカリ電池を刺した時のような、力強さまで感じます。
頭も冴えきっているようでした。さっき彼女がぼくに触れた時の温度まで、ずっとこの先まで覚えていられそうです。
今が何時だかわからなかったけど、彼女が余所行きの服を着ていたから、まだ午前中の、そんなに遅くない時間だとわかりました。
今日は出掛ける日だったか、それともまだだったか、考えてみたけどもちょっと思い出せそうにありません。
まあ、それでもいいやと思って、掃除でもしようと外を見たら、雨が降っていることを思い出しました。

65 :
ぼくが何の気なしに顔を上げたのと同時だったと思います。外から何やら音がしました。
音というほど立派なものではなくて、ただ何かが落ちたとか、その程度のものでした。
しかしぼくの目はなかなか抜かりのない奴で、玄関のところの窓から誰かが飛び去って行くのをとらえていたのです。
擦りガラスでくすんだ中で、赤い色が見えました。どうせ間に合わないとわかっているぼくは形だけあわてて玄関を開けます。
外へ足を一歩踏み出す、足が落ちるはずの場所には花束が落ちていました。
これは、花です。花が小さくまとめられているから、これは花束というやつでしょう。
もう少し別の言い方はないものかと考えてみると、ブーケという言葉がそれにしっくりくるようでした。
拾い上げてみますと、色とりどりの表情を持ったそれは思ったよりしっかりとした重さを持っていて、
まるでぼくに何かを語りかけてくるようでした。特にこの、小さい紫の花は、かっこいいと思います。
あたりを見回してみました。人影らしいものは、どこにもいないようでした。
ぼくは声だけで彼女を呼びます。すぐに彼女がかけてきました。呼ぶとすぐに来てくれる、そんな関係です。
彼女の目にはぼくと、開いた玄関と、その先の景色、そしてぼくに抱えられている花束が映ったはずです。
そんな彼女の目が、すぐに細められたのをぼくは見ました。彼女は駆けた足をとめて、ぼくの前に立ちます。
おっとりしている彼女ですが、なかなかどうして手を出すのは早くて、今回もそうでした、
ぼくの腕からぶっきらぼうに花束をむしり取ると、まるでぼくから遠ざけるかのように、わざとらしく持つのです。
「……誰が来たの?会ったの?」
ときどき彼女はよくわからないことを言います。
目を細くしたまま、顔をしかめてぼくの方を見ます。どちらかというと、ぼくの後ろの玄関から先の景色を見ているようでした。
その姿は普段の彼女から想像できないような、単純な緊迫をぼくに与えます。怖いです。
まるで後ろから弓やら槍やらカミソリが飛んできそうな、そんな雰囲気でした。

66 :
「既に誰もいなかったよ。誰かが来て、これを落としていったみたい」
「そう。だったらいいのだけど。……心配して損した」
何だか彼女がおっかなくて、ぼくは素直に答えます。誰かは居たんだけども、誰かはわからなかった。
彼女はその言葉を聞いて、肩に乗った重い何かを落としたみたいでした。
またいつもの顔付きにもどって、小さく溜め息を吐きました。前に垂れた髪が少しだけ揺れました。
ぼくは後ろ手で玄関をしめます。ガチャンと音がして、外の景色は見れなくなりました。
「全く、誰のイタズラかしらね。これは私が預かっておくわ」
「ああ、ありがとう」
花束の根元を持って、軽く揺り動かして見せました。彼女の笑顔ときれいな花束はとても絵になるようです。
ぼくも釣られて笑いました。植物由来のいいかおりが鼻に入ります。和やかな気分でした。
そのまま彼女は奥の部屋に入っていきます。奥の部屋に飾るのでしょうか。
そこはあまり日が当たらないから、どうせならトイレにでも飾ればいいのに、と言おうとしました。
でも、瞬きをする間に、するりと水が隙間に垂れるように彼女は扉の向こうに消えていたのです。
部屋の中は見れませんでした。ぼくはこの部屋の中が気になって、とても気になってしょうがないのです。
彼女はぼくに「秘密」だといいます。乙女が秘密を着飾って、うんたらかんたら、とかそういう感じの話なのでしょうか。
見られたくないものでもあるのかと思うと、やはり気になってしまうものです。いつか見てやろうと思います。
彼女が家を空けることがあればいいのですが、あいにく出掛けの際には必ずぼくをお供として連れて行くので
そんな機会はなかなか回って来ないのが現状でした。
その扉の先の空間から、彼女がなかなか戻ってこないので、ぼくだけがここに置いていかれた気分になりました。
何だか意味もなく、面白くないような気がしてきました。
そのまま、自分の家の中をぶらつく、という変な暇の潰し方をしてみることにして、少しだけ気が晴れたような気がします。

67 :
カレンダーに目をやって気付きました。まだ今月はめくってないはずです。
上を押さえて引っ張ると、紙がびりびりとそれらしい断末魔をあげて事切れます。
その下では新しい月がぼくを待ちかまえていました。念のため、彼女に聞いてみることにしました。今日は何月で、何日なのか。
扉の向こうから聞こえてくる声は、勝手にカレンダーをめくった行為を正当化してくれる、ありがたいものでした。
そうだ、思い出しました。毎月の初めに、玄関に花束が届くんだ。ということは、今日は一日。
また新しい月が始まるようでした。この出来事が一度や二度で終わるものではないことも、ちょうど今思い出しました。
記憶が数珠繋ぎになって出てくるようで、先月も、その前の月も、同じように玄関先に届いた花束を、
ぼくが拾い上げていたような気がします。イタズラにしては随分根気があるな、というのが感想です。
ひとつカレンダーをめくって、次の月のはじめの日に、印をつけておきました。
最初は赤のペンで丸をつけたのですが、少し考えて、花束の日だから花丸でいいじゃないかと思って、
そのままぐるぐると渦を巻かせて、まわりには花びらをつけてやりました。
何となく誇らしい気持ちになります。いい気分で、そのままペンを適当なところに置いて、ぼくはソファに座りました。
雨の日だから読書をします。彼女の本棚から、背表紙を見ずに一冊だけ選びました。
羊皮紙の表紙は固くてあまり好きじゃありませんが、内容とは関係ないはずです。
飽きるまで読もう、そう自分に制限をかけて、わざと序章の終わり目から読み始めました。

68 :
(3)
最近の趣味は読書です。といっても、彼女の本を勝手に読んでいるだけですが。
稚拙な文章でかかれた男女のはなし、この本をぼくは好きになり、いつでも読むようになりました。
いくら天気が良かったとしても、ぼくのこの気持ちを止めることはできないようでした。
放っておかれたらいくらでもページを進めることができそうです。
でも今日は大事な用事があるので、本ばかり読んではいられません。
しおりを挟んだ本を、また本棚に戻してやります。本の間にぐいっと押し込むようにしてやりました。
本がぼくの手元からなくなると、急に自分の目が開けたような気分になります。ぼくの横には編み籠が佇んでいました。
その中から、いやらしい模様をした布がぼくをみていました。慌ててぼくはその籠をひっつかみ、外に出ました。
「もう、何やってるの。日が傾いてからじゃ遅いんだからね」
家の前で彼女がまっていました。申し訳なさそうな顔を作ると、彼女は笑って許してくれました。
その後は、少しぬかるんだ道を二人で並んで歩きました。もう少し行った所に、普通の人々が住む里があります。
ぼくと彼女は、そこに珍しい布を売りにゆく行商人といったところです。
せっかく彼女が作ったものが、全然知らないだれかの手に渡るというのも何だかもったいない気もしますが、
これでぼくと彼女の二人が食べていけるのだから、必要な行為に決まっています。
道端で人に売りつけるだけじゃなく、呉服屋とか、そういうところに卸したりもします。
彼女の顔はもう人里では売れたもので、一定の信頼を得ているところが羨ましかったりします。
ぼくにはあんな面妖な生地が売れるのかと、未だに疑っているくらいなのですが、
彼女が店の中で楽しそうに談笑するのを見ていると、ぼくの感性は時代に追いつけていないなあと感じるのです。

69 :
後ろから彼女を眺めているのも飽きました。だから店に並ぶいろいろな着物を見ていたのですが、
結局それにも飽きてしまい、ぼくは彼女を放置して店の外に出ることにしました。
人里というのはとてものどかです。活気があって、なのに落ち着いていて、それでいて先がある感じがします。
「先がある」、というのはあれです、これから繁栄するのか、それとも衰退していくのか、わからないけども、
それでも訪れる未来があるということです。何だかそれが羨ましくなったのでした。
いつの間にか人里をふらふらと歩いていたぼくは、花屋の前にやってきていました。
無意識のうちにあの花束のことを考えていたのかもしれません。
だけども花屋の店先に並ぶその顔は、ぼくと彼女の家に届いたそれとはどこか違う気がしました。
まあ、もとよりこの場所で秘密が紐解かれるとは思いませんでしたし、ぼくもそれを望んでいなかったので
次はあそこの鯛焼き屋を視線で冷かそうと思い、そのまま歩いて去ろうとしたのです。
「あら、ごきげんよう」
不意に後ろから声をかけられました。本当に、いきなりのことでした。
それを聞いて、ぼくは気の抜けた顔をしながら振り向いてしまったと思います。
でも、いま思えば、もうちょっとまともな表情をして振り向けばよかったんじゃないかと思います。
振り返った先にいたのは、大きな日傘を差した美しい女性でした。
ぼくは少したじろいでしまいます。何故ならこのひとは全く知らない人だったからです。
思えば一緒に暮らしているひと以外の女性と話す機会なんて全くないので、怖気づいてしまいました。
やわらかそうな緑の髪の毛が軽く揺れました。彼女は優しい表情のままこちらを見ています。
本当にこのひとがぼくに声を掛けたのでしょうか、高揚ともとれる妙な気分です。
何と話しかけようか、そんな単純なことで迷っている間に彼女の容姿を上から下まで舐めるように眺めてしまったのは
はっきりいって失策だったと思います。これをこころよく思う人がいたとするなら、それはきっと"変な人"でしょう。
言葉を詰まらせたまま、彼女のスカートのチェックの模様をあみだくじみたいにして目で追ってみたりしましたが、
あみだくじではないので結局どこにもぶつかりませんでした。

70 :
「ああ、はい。その、今日もいい天気ですよね」
「そうね。久しぶりのお日様にこの子達も喜んでいるわ」
頭のなかのテンプレート置き場から無難そうなものを引っ張って前に出してみました。
目の前の女性は気持ちよさそうに笑い、花屋のほうへ目をやりました。釣られて僕も向きます。
言われてみれば確かにそんな気もします。植物にとって太陽というのは絶対必要な存在だからです。
ぼくがこの黄色い花だったとしたら、それはやはり嬉しいと思います。恵みが空からふってくるわけですから。
でもやっぱり、植物のことはわかりません。ぼくは木でもなければ花でもないので。
だから、世間話とはいえども、適当に心無いことを言うしかないのです。
「そうですね。最近雨続きでしたから……」
別にその後にダラダラ言葉を続けるつもりはなかったのですが、言葉が途中で途切れてしまうのを感じました。
目の前の女性がくるりと向こうをむいて、歩き出してしまったのです。失礼な人だとおもいました。
彼女のうしろあたまは日傘ですっぽりと隠れてしまいました。そうしてそのまま、ゆっくりゆっくりと歩いて行こうとするのです。
こんな言い方をするのもあれですが、まるでぼくが追い駆けてくるのを待っているような、そんなペースで足が動いています。
追い駆ける義理はもちろんありませんでしたが、途中でその人はまた振り返り、ぼくの方を見たのです。
今度は見ただけで、何もしませんでした。そうして顔を前に戻して、また歩き始めるのです。
ぼくははじめ、変な人だと思いました。天気がいいと変な人も増えるものです。この女性だって、そうに違いない。
でも何故だかぼくは小走りになって、その人に追い付いてしまったのです。
挑発されているように感じたのかもしれません、何か心を鷲掴みにされたような気がしたのかもしれません、
単純に美しい女性に興味を惹かれて、下心を丸出しでついて行ったのかもしれません。
結局そのどれなのか、またはそのどれでもないのか、それはわかりませんが、結果としてぼくはその人を追い駆けてしまったのです。
何やら不思議な気がしました。はじめからそうなるようになっていたような気までします。

71 :
追い付いて、横に並んでみました。そうするとその女性は、少しだけ足を速くするのです。
気を抜いたぼくもそのペースに合わせるように、しっかりと歩き出しました。
でもすぐもとのゆったりとした歩幅に戻して、日傘をちょっと持ち上げるようにして、ぼくの顔を見てきました。
その時、ぼくは恥ずかしくて顔をそらして気が付きました。いつの間にか人里から離れて、森の方へ続く道へ来ていたことを。
そうしてその人は言うのでした。
「ご一緒してくれるかしら?この後、お散歩でもするつもりだったの」
断る理由が見つからないというよりは、断るタイミングをうっかり逃して、ついつい一緒に歩いてしまいました。
きっとまだぼくには時間があるはずです。少しぐらいふらふらしても問題はないと思いました。
最初からふらふらしていたようなものでしたから。

72 :
(4)
これを奇妙だと言うとこのひとはむっとするかもしれませんが、ぼくから言わせてみれば世にも奇妙なものでした。
歩幅がぴったりなのです。無意識のうちに息を合わせているのかもしれません。ぼくと、この見知らぬ女性は歩く速度が一緒で、
二人の足音が完全に重なって、かんたんなリズムを奏でているようでした。
不気味な気もしましたが、こんなこともあるものだとも思いました。
いつの間にか、完全にこのひとのペースに巻き込まれているのかもしれません。
言葉をいくつかやり取りする間に、けっこう打ち解けたような気もしたのです。
他愛ない話を聞いてくれて、そして毎回同じ顔で笑ってくれました。だれかと似ていると思いました。
もしかしたらこの女性は話すのがお上手なのではないかと思いました。ぼくの気分がとても上向きになったからです。
最初に自己紹介のようなものをしたときに、ぼくの名前を「素敵な名前ね」と言ってくれました。
単純ですが、嬉しかったのです。
「あなたは何をしている人なんですか」
並んで歩くとぼくより少し背が低いことがわかりました。ぼくはそんな女性に、恥ずかしげもなく質問を浴びせます。
なんだかこのひととはいい友達になれそうです。あまり家から出ないので、ぼくには友達という人があまりいないものでしたから。
期待が心の中でひょこっと顔を出しました。ぼくはそのままにしています。
「うーん、そうね。特に何もしてないわ。どこにでも居るような人ね」
質問を、このひとは上手くかわします。
上手くかわすというよりは、見ずにティッシュでくるんでゴミ箱に投げてしまうような言い方でした。
それでもぼくは納得します。あまり人は疑うべきではないと思いました。

73 :
「あなたは何をしている人なのかしら?」
同じ質問が、ぼくにも飛んできました。物事を隠したがる方ではないぼくは、きちんと返します。
そもそも、ぼくは隠し事がへたくそですし、そんなことをしてもあまり意味があるとは思っていませんでした。
「ぼくは、実は人形で、魔法で作り出された生き物なんです。とある女性に生み出されて、その女性を支えるために生きています」
「あら素敵。女の子を守るために生まれたなんてカッコイイじゃない。おとぎ話みたいね」
守るため、ではないのですけども。
それにしても、この事実はあまり人に信じてもらえるものではないと思っていましたが、このひとはやっぱり変なもので、
まるで最初から疑っていないかのような反応をぼくにくれました。そのうえ、かっこいいとまで。
何だか不思議な感覚です。妙なもやが頭のなかにかかっているようでした。
ぼくは人形として、人形師アリス・マーガトロイドの手によって生み出されました。
血も涙も持ち合わせていなくて、身体の中を流れているのは彼女の魔力というものだけです。
身体は木で、髪は糸で、目はガラス玉でできています。見た目はふつうのひとと全然変わらりはありません。
物心ついた時から変わらない体格で、目を開けたとき以来アリスと一緒に森の奥で暮らしています。
生み出された理由は、まだ、教えて貰っていません。
「……アリス、元気にしてる?別に心配してるわけじゃないけど、ずっと会ってないから」
「あ、ご存じだったんですか」
「まあね。ちょっとした知り合いみたいなものよ」
さっきのもやはすぐに晴れました。簡単なことで、このひとはアリスと知り合いだった、それゆえ彼女の素性や
ぼくの情報を知っていただけだったのです。妙に気を張った自分が、急にまぬけに思えてしまいました。
アリスの知り合いだということは、きっと悪い人ではないと思います。随分気が楽だったのですが、さらに楽になりました。

74 :
ぼくはこのひとに興味が出てきました。同時に、他の事にも。
いろいろな事を聞いてみたい、聞いてもいいのではないかと、そんな気分になってきました。
勝手知ったる人の家というか、人の良心に穴を掘るような行為をしてもいいのではないかと思いました。
この女性は散歩中の話し相手を探していたみたいなので、ぼくのこの思いはちょうどいいのではないかと
自分の中で、もっともらしい理由をつけてみました。
「昔はアリスともよく遊んだのよ。お茶とお菓子を挟んで、下らない話に花を咲かせたわ」
ふふっ、と声が聞こえました。日傘に微妙にかくれて見えないその向こうで、顔をほころばせているのでしょう。
知り合いというよりは、友達というかんじなのかもしれません。思ったよりも親しい間柄なのでしょうか。
妙な偶然もあったものです。この状況はぼくにとって追い風でした。聞きたい事がアリスに関係していたからです。
さっきも言いましたが、ぼくは自分が何故生まれたのかを知りません。
大きな理由があったはずだと思います。アリスが、大切なものを手放してまでぼくを作った、そういうことだけ知っていたからです。
やっぱり隠されていると気になるものです。ぼくは単純な自分の意味というものを知りたかったのです。
狡猾に、そして慎重にタイミングをはかりました。うわべだけで彼女に話を合わせました。
「アリスったら不機嫌な時は頬杖ついてお茶を啜るのよ。下品だって言ってもやめないの」
楽しそうに話してくれるのはいいのですが、そろそろぼくにターンを与えてくれてもいいと思いました。
振り絞るものをふりしぼって聞いてみます。
「あの、失礼を承知でききたいことが……」
「ん?レディに年齢を尋ねるのは失礼だってママに教わらなかったのかしら?」
「いやそうではなくて」

75 :
やっぱりつかみどころのない人でした。息を吐いて、もう一度吸って、ことばを並べてみます。
「ぼく自身のことを聞きたいんです。あなたなら、何か知っているんじゃないかと思って。
 ぼくが生まれる時のこと、何かアリスから聞いたりしていたら、教えて欲しいんです」
言い切ったのはいいのですが、隣の女性がぴたっと足を止めてしまったのは僕の心をぎくりとさせました。
何かいけないことでも言ってしまったのかと思いました。でも年齢を聞いたわけでもなければスリーサイズも聞いてないので
別に怒られるようなことはない、と思いました。
はあ、と、短い溜め息がでした。森の木の葉がかすれる音に消え入りそうな小ささでしたが、僕の耳はしっかりととらえました。
ぼくの心が締め付けられるようです。臆病者だということは自覚しています。怒られたくはないものです。
でも何を言うわけでもなく、そのひとは歩き始めました。さっきと変わらない、ぼくと同じペースです。
散歩をはじめた時みたいに、ぼくは追い付いて歩幅を合わせました。やっぱり歩幅が合ってしまうのが不思議です。

みょうに落ち着いた声で、何かが聞こえました。
「少し、昔話をしましょうか。そんなに昔でもないけどね」

76 :
(5)
「むかーしむかし、あるところに、男の子と女の子が住んでいました。男の子は人間で、女の子は妖怪で、
 それでも二人はとても仲良しで、お互いに寄り添いながら、幸せに暮らしていました」
何やら始まった話は、ぼくやアリスの話ではなさそうでした。むかしむかしとあるから、きっと昔話、童話か何かだと思いました。
自分に関する話が聞けるのかと身構えていたぼくはすっかり拍子抜けしてしまいました。
何か言い返そうともおもったのですが、このひとが話を続けるので、なかなか口を挟めません。
「二人の間に子供はいなかったけれども、それでも凄く幸せだったの。もうこれ以上の幸せはないんじゃないか、っていうくらい。
 男の子が一生懸命お仕事をしてウチに帰ってくるのを、女の子はおゆはんを作って待っているの。どう、絵にかいたような結婚生活よね?」
「あ、はい」
いきなり話をふられても、どう答えたらいいのかわからなくて困ってしまいます。
棒付きキャンディが口の中ですぐに割れてしまった時のように、何とも声にはならないものです。
何の話なのでしょうか。そう聞きたいのですけど、やはり口は挟めませんでした。
彼女は楽しそうに話を続けます。ぼくの都合など、はじめから気にしていないようでした。
「男の子は人当たりが良くってねえ、いろいろな妖怪や人間やら、妖精だの、そういうのが集まってくるの。
 結構人気があったらしいわよ?まあ、女の子がそれを独り占めしていたみたいだから、あんまり関係ないんだけどね。
 とにかく賑やかで平和な生活をしていたの。だいたい200年ぐらいかしら、そんな生活が、続きましたとさ」
途中でわざとらしく語りのような口調に変わるのが耳につきます。
「二人とも、こんな生活がずっと続くものだと思っていました」
歩きながらゆれる日傘の影から、このひとの笑った顔がちらりと見えました。
ぼくはその顔を盗み見るようにしてしまって、何だか少しだけ恥ずかしくなりました。

77 :
童話なのでしょうか。このひとの語り口は、まさしく幼子に聞かせるそれでした。
ベッドに仰向けに寝かせられてこんな話し方をされてしまったら、待ったをかけずに夢の中でしょう。
赤ん坊だけじゃなくて、ぼくだってきっとそうです。

少しだけ声のトーンが下がりました。
「でもね、当然なんだけど、世の中に永遠なんてものはないの。
 ある日、急に男の子が死んでしまいました。愛の力も病には敵わなかったのね。
 女の子はとても悲しくて、声をあげて泣きました。愛する人を失って、自分だけが残されたことが信じられなくて……」
話し方はやっぱり上手でした。変わらない語り口の中に、マイナスの方面へ動くなにかがプラスされています。
ですが、これも童話にはよくある展開です。最終的に、物語に触れた人が教訓を得るために、こういう結末は用意されているものです。
いつしかぼくは、その話に聞き入ってしまっていました。
話の流れとしては単純なのに、どうしてか、非日常的な状況もあいまって、物語に引き込まれているみたいでした。
「女の子は一日中泣きました。朝も夜も。誰が慰めてくれても、悲しみが和らぐことはありませんでした。
 動かなくなった男の子の胸に顔をうずめて、涙を流し続けました。
 でも、泣いても泣いても男の子は戻って来ません。時間が女の子を少しずつ優しく癒してくれて、
 女の子も悲しい現実を受け入れる覚悟ができたのです」

78 :
「なんだか、かわいそうですね」
「そうよね、本当にね」
思わずそんな言葉が出ましたが、自分の口から出たこの言葉はなんてありきたりなのだろう、と思います。
あいするひとが死んで、悲しくないわけがないというのに、この言葉です。自分の不器用さに苦笑いしました。
そんなぼくにも優しく言葉を返してくれるこのひとに少しだけ優しいこころを感じました。
「男の子とは、一つだけ約束がありました。
 ――『僕が死んだら、君の自慢のお花畑に埋めてくれないか。そうすればきっと寂しくないし、君といつでも逢えるから』
 女の子は、お花畑の真ん中にお墓を立てました」
「……」
なんとも言葉に詰まる話です。後を追うことは、ぼくには美徳とは思えませんでした。
何を生むわけでもないからです。命は投げ捨てるものではない、子供でもしっている事だとおもいました。

いちいち何かを言い返すのも野暮かと思って、少しの間黙ってあるいていました。
そうしたら、隣のそのひとも黙るのです。ぼくは少しだけ心配になりました。
このお話はここで終わりなのか、何も生まない悲しみによって締め括られるのかと思うと、収まりがつかない感じがしました。
二人の足音がいっしょになって森の中に響きます。もうだいぶ歩いたようでした。
少しの間、自然が奏でる音を味わった後で、やはり何かを言おうと思って口を開いた時に、
隣のそのひとに先を越されてしまうのです。間が悪いのは、もういつものことです。
「でね、ここからが面白いのよ。聞く?」
「あ、そうなんだ。聞きます」
少しいたずらっぽい言い方でした。この先の話がそんなにおかしいのか、息遣いが少しおどっていました。
ぼくも少しだけ身構えるような気持ちになりました。

79 :
ようやく再開された物語には、程良くいい香りがきいていました。
よくある話です。幅を持たせるために、物語に新しい登場人物が出てくるのは。

「男の子と女の子には一番の友達がいました。
 それは魔法使いの女の子。森の奥に住んでいる、美しくて気品のある娘でした」
ほらやっぱり、とぼくは思いました。
何となくそんな感じがしたのです。ほんとうに、何となく、でした。

80 :
(6)
「魔法使いの女の子は、紅茶とお人形が好きな、どこにでもいる女の子でした。
 人間の男の子と妖怪の女の子とは、古くからの付き合いで、気兼ねなく話せる関係です。三人はとても仲良しでした」
「彼女もまた、男の子の死を悲しみました。
 家に閉じこもって、声を出さずに泣きました。やはり友達が死ぬというのは悲しいものなのです」
「目を真っ赤に腫らせて、朝も夜も眠らずに死んだ男の子のことを考えていました。
 どうして彼は亡くなってしまったのだろう。彼との最後の会話は何だっただろう。
 彼は自分の事をどう思っていたのだろう。考える事はいっぱいいっぱいありました」
「きっと、本当は、死んだ男の子を好きだったのです。
 魔法使いの女の子は、男の子が死んでからそれに気付いたのでした。
 本当は彼のことを愛していた。でも女の子は臆病で、心から求められなかったのでした。
 男の子には妻がいるし、二人とは仲のいい友達で、それが逆に魔法使いの女の子を苦しめていたのかもしれません」
「男の子の妻の、妖怪の女の子は立ち直りました。
 まだ泣き足りない。泣き足りることなんてない。でもこんな自分を見ても彼は喜ばないだろうと知ったからです。
 男の子との最後の約束を守って、お花畑の真ん中に、素敵なお墓を作りました。
 寝ているように見える男の子の遺体を、そっと寝かせるようにして、蓋をかぶせました。
 男の子の横は空けてありました。すぐ自分もそこで寝るつもりだったのです」
「魔法使いの女の子は、男の子を求めました。
 死ぬ前の男の子を。自分の愛を伝えられる男の子を。
 願わくば、向こうも自分の事を好きだと言って、笑ってくれるような。
 もう涙も枯れてしまった頃に、枕に顔をうずめながら、そんな他愛ない妄想を巡らせていました」

81 :
「……」
「どうなると思う?」
「このまま終わる話じゃない、っていうのはわかってるでしょ?」
「続き、話すわね」
「ある日、魔法使いの女の子は起き上がります。
 彼女に不似合いな大きなスコップを持って、黒い布を頭から被りました。
 決めたのです。男の子が欲しいなら、奪ってしまえばいい。遅すぎる事はない」
「丑三つ時を待って、魔法使いの女の子は出掛けました。
 黄色い花に囲まれた丘の上を真っ直ぐに目指して、石碑の前までやってきました」
「躊躇う事なく土を掘り返しました。
 深夜の暗闇に土を掘る音と、荒い息遣いだけが響いていました」
「魔法使いの女の子は、必死で掘りました。
 自分の気持ちを初めて理解した彼女は、強い気持ちのまま、墓を汚し始めました」
「夫を亡くした妖怪の女の子は、そのことに気付きませんでした。
 気持ちの整理ができて、ようやく一人で眠れるようになった頃でした。
 魔法使いの女の子はその時を狙っていたのかもしれません」
「固い何かにスコップが当たって、魔法使いの女の子は感嘆の声を上げました。
 土を退かすと、大きな蓋が。それをずらすと、中から横たわる男の子が出てきました。
 冷たい手を持って、そのまま引っ張り上げた男の子の身体を強く抱きしめながら、何かを呟いて、
 そしてそのまま、魔法使いの女の子は森の奥へと消えてしまいました」
「めちゃくちゃにされた墓と、使い捨てられた道具だけがそこに残っていましたとさ」

82 :
「……」
「さて」
「魔法使いとは言えども、魔法というのは万能ではありません。
 死んだ人を生き返らせる事なんて不可能でした。
 魔法使いの女の子にも、それはわかっていました
 でも彼女にはある考えがあったのです」
「魔法使いの女の子は、人形が好きでした。
 自分で作った人形を簡単な魔力で操る。人形劇から日常の世話、戦闘まで。
 魔法にも向き不向きがあります。彼女の場合は、人形を操るのが、すごく、得意だったのです」
「魔法使いの女の子は考えました。それは人形と同じでした。
 ――『動かないのなら、動かしてあげればいいだけだ』
 と。
 彼女にとって、それは何よりも簡単なことでした」
「"魔力"にも色々な形があります。
 結晶化した魔力の事を『賢者の石』と呼びます。
 同じように、液体化した魔力は『生命の水』と呼ばれます」
「暗い部屋の中で、魔法使いの女の子は立っていました。
 目の前には、命を失って土に還りかけている男の子。
 自分の中の全ての魔力を振り絞り、大量に用意した『生命の水』。
 そして、彼女が人形の研究の中で作り上げた、魂の入れ物としての人形・ゴーレムが。
 その三つが、無造作に置かれていました。魔法使いの女の子の頭の中には、ある計画がありました」

83 :
「月の光が彼女の横顔を照らす中で、計画は実行されました」
「まず、死んだ男の子の身体を、バラバラに切り刻んで『生命の水』に放り込み、火を点けてかき混ぜます」
「全てを溶かす『生命の水』は男の子の身体を飲み込み、完全に混ざって黒い水になりました」
「これをゴーレムの身体に少しずつ注入していきます」
「男の子を溶かした『生命の水』を人間の血液のように使って、魔導人形を完全に自立駆動させる実験……」
「恐ろしい実験でした。魔法使いの女の子は、男の子のことを思うがあまり、男の子を使って
 疑似生命を新たに作り出すという禁断の道を歩み始めたのです」
「ゆっくり、ゆっくりとゴーレムの身体にドロドロしたものを流し込みました。
 恐ろしい実験をしながら、魔法使いの女の子は笑っていました。
 誰にも止められることなく、女の子は着々と作業を進めていきます」
「そして、魔法使いの女の子の実験は晴れて成功しました。
 ゴーレムは自分の足で立ち上がり、魔法使いの女の子に視線を向け、挨拶をしたのです。
 魔法使いの女の子は両手を挙げて大喜び。涙を流してゴーレムに抱き付きました」
「男の子の脳だけは、『生命の水』に溶かさずにゴーレムの頭の中に置かれていました。
 人形の中に作られた、人間の器官にそっくりなからくりが働いて、脳に『生命の水』を流し込みます。
 実は、魔法使いの女の子はとある細工をしていました。
 男の子の腐りかけの脳の、長期記憶を司る部分をあらかじめ引き千切っておいたのです」

84 :
「ゴーレムの中の、男の子の脳は大事なことを忘れさせられていました。
 人間としての自分、最愛の妻、そして自分は死に、一度は光を失ったことを」
「透き通る作り物の目を向けて、ゴーレムがぎこちなく口を開きます。
 ――『ここはどこ?ぼくは一体誰?』」
「女の子は笑顔で答えました」
「――『おはよう。ここは貴方と私の家よ。貴方の名前は○○。可愛い可愛い私のお人形さん。そして、私の名前は……』」

85 :
(7)
ぼくがどれだけ勘の鈍い存在だとしても、流石に限度があります。
額に汗が垂れる感じがしましたが、ぼくの手はそれを拭おうとはしませんでした。
流れてくるものが汗じゃないかもしれない、と疑ってしまったからです。
衝撃のあまり、つい聞き過ぎてしまいました。いまの話は、作り話なのでしょうか。
本当にそんなことがあるものでしょうか。いやまさか。そんなはずはないと思います。
どうやらぼくは物語に深く感情をのめり込ませすぎたみたいです。
おかしな話を聞いて、ぼくがおかしくなっているのはしょうがないことです。
「お話はここで終わり。めでたしめでたし。どう?面白かった?」
不安なぼくが不安な視線を送っていたのを、そのひとは真っ直ぐに受け止めてくれました。
日傘のしたから顔を出して、ぼくににこりと笑いかけてくれました。
ぼくは何も返せませんでした。言葉を返していいものか、とすら思いました。
この話は、最初だけきれいで、後は薄汚くて、暗くて、グチャグチャしていました。
それに、この話の登場人物は、何故でしょう、心当たりがあるのでした。
ぼくは一緒に住んでいる女の子を思い浮かべました。
あたまの何かが、それをすぐに打ち払いました。
信じられません。世の中には信じられることも、信じられないこともありますが、
この話は馬鹿げているように思えました。ぼくの頭のなかがぐるぐるしています。
ふと、話を遡って考えて、「ぼくの頭」というものを考えました。
これを考えているぼくの頭、それはぼくの何なのでしょうか。人形というものに、魔力を与えただけで
自律思考ができるものでしょうか。少し、気持ち悪くなってきました。
ぼくも最低でした。ぼくはとんでもない推測をしているのでした。
その推測をさせたのは、この話であり、このとなりにいる女性です。
この話は何のためにぼくの耳に入り、ぼくの頭で考えさせられたのか。
深く考えれば考える程、わけがわからなくなりました。
吐き気をおさえるので精一杯でした。耐性がないものですから。

86 :
「あら、もう着いちゃった。楽しいお散歩もこれでお終いかしらね」
隣の女性が前に日傘を伸ばして、細くまとめました。
そのあと軽く伸びをして、足を止めたぼくの前に立ちます。
「見える?この景色が。素敵だと思わない?」
嬉しそうに両腕を広げるそのひとにそそのかされるような感じで、ぼくは白い中で目を凝らしてみるのでした。
よく見ると、ぼくの前、そのひとの後ろの方にはお花畑が広がっているようでした。
背の高い花で、緑の葉っぱと黄色い花びらが揃ったように咲いています。
満面の黄色の中で、少し盛り上がったところには、何やら石碑のようなものも置かれています。
そして、遠くの方に、小さな家があるのもわかりました。可愛らしい、ひっそりとした家です。
「送ってくださって本当にありがとう。身勝手だけど、とても楽しい時間が過ごせたわ」
「いえ、その、はい……」
つまらない答えを出したぼくに、わらった顔が見えました。
後ろに見えるあの家は、どうやらこのひとの住まいのようでした。
言いようのない感覚を味わいながらも、ぼくは小さい子供がするように手を振ってみようとしたら、
急にその手を掴まれてしまいました。そのひとの左手が、僕をぐっと引き寄せます。
いきなりの行為にぼくは驚きました。目が白黒していただろうけど、目に見える景色の色は変わりませんでした。
前を見ると、さっきより近い位置で、このひとは目を細めてぼくを見ていました。
「駄目ね、やっぱり全然似てない。所詮あなたは人形なのね」
もう片方の手、このひとの右の手のひらが、ぼくの頬を撫ぜました。
ゆったりとした動きで、木目をなぞる様な動きをしていました。

87 :
このひとに初めて触れられたことで、ぼくは息が詰まってしまいました。
ほんとうは呼吸もしていないぼくが「息が詰まる」と思ったのは、たぶん、これが初めてでした。
何をされるのだろう。このひとの手のひらはずっとぼくの頬に置かれています。
ぼくの身体は、固まったように動きません。
このとき、あることに気が付きました。
そのひとの身体にあらわれていたのです。それが流れているのを、ぼくが見ました。
ゆっくりと頬から手が離れていきました。名残りおしそうに、です。
そして次の瞬間、ぼくは強い衝撃を受けました。一気に景色がぐらついて、ぼくは尻に痛みを感じました。
肩を押された感じもわかりました。目の前の女性がぼくを突き飛ばしたようでした。
びっくりして、壊れた電子時計みたいな声をあげてしまったのが恥ずかしいです。
「それじゃあね。また会いましょう。人形の○○さん……」
ごきげんよう、と聞こえたのが最後でした。
気が付いたら、ぼくは森の中で尻もちをついていました。
目の前にあったはずの花畑は消えています。それどころか、さっきの女性もいません。
ぼくの目の前には木々が生い茂っているだけで、そんなひと、いなかったみたいでした。
ぼくは何を見ていたのでしょうか。夢でしょうか。人形のぼくが、起きたまま夢をみるものでしょうか。
急に背筋が凍るような気がしました。温室育ちのぼくには少しばかりきつかったみたいです。
こんなことばかり起こると、どうしていいのかわからなくなります。ぼくは、前とは反対の方向に走りだしました。
逃げるように走ったのではなく、実際、逃げていたのです。

88 :
走りながら、こんなことを考えていました。
もし夢じゃないのなら、幻じゃないのなら、あの女性に、最後にこんなことを聞いておけばよかったと思いました。
「どうして泣いているのですか」
頬に垂れて光る一本のすじをぼくが受け取って、そうしてその意味を知れたなら、
ぼくもきっと何か思うところがあったのだと思います。

89 :
(8)
来た道をもどっているつもりでしたが、本当にその道であっているのかは誰にもわからないと思いました。
途中、何度も木の根や土のぬかるみに足をとられました。それでも何とかして走り続けました。
頭の中がぐちゃぐちゃになって、わけがわからなくなっていました。それを考えるのが嫌だったから、足を動かしました。
考える、誰の脳で考えているのでしょうか。ぼくの脳でしょうか。人形の。
がむしゃらに走って、気が付いたら、よくなじみのある建物の前までやってきていた事に気付きました。
ぼくとアリスの住む家でした。マーガトロイドの人形屋敷、なんて人に呼ばれる、その建物でした。
無意識に支配されている中で、まっすぐこの家を目指して帰ってきたぼくのからだを褒めてやりたかったのですが、
今だけはとてもそんな気持ちになれませんでした。
玄関の鍵はあいていました。おそるおそる戸を開けると、いつもと変わらない家の中がぼくを待っていました。
靴をちらかすように脱いで、足を一歩踏み入れても、やはり何も変わらないぼくとアリスの家でした。
リビングまで進んでみても、わざと大きなため息を吐いてソファに腰掛けてみても、何の変わりもありませんでした。
どこを探してみてもアリスはいないみたいでした。そういえば、アリスを里においたまま、勝手に放れてしまったことを思い出しました。
ぼくはとても反省しました。彼女に会えば、きっと満足がいくような安心が得られると思っていたからです。
勝手にそう思っていただけです。
そういえば、ひとつだけ探していない場所がありました。
アリスが入ってはいけないと言っていた、奥の部屋です。いるとしたらここだろう、とぼくは考えました。
扉の前まで来てみました。黒く塗られた扉はとても重苦しい雰囲気を放っていました。
扉に手をかけてみようか、それだけでも怒られそうな気がしました。でもぼくの心は選択を迫ってきているので、
赤の答えを出すか青の答えを出すか、いそいで決めなくてはいけないところでした。

90 :
「○○っ!○○、居るの?居たら返事して、○○!」
心を決めかねている時に、向こうの玄関から大きな声がしました。この部屋は玄関から遠いです。
アリスが帰ってきたのに違いないと思いました。なおもなにか大きな声を出す彼女に答えるように、
ぼくもわざと足音をどたどたと鳴らして駆け寄っていきました。
出掛ける時は上品なかっこうだったはずのアリスは、なぜかとてもやんちゃな格好で戻ってきました。
髪は乱れ、服はところどころ擦り切れ、なかには赤い血がにじんでいるところもありました。
いつも大切そうに抱えている本のブックバンドも、なくしてしまったのか、ついていない状態でした。
ようやくアリスに会えました。湧き上がってくる感情は、間違いなくあたたかいものでした。
アリスも思うところがあったのかもしれません。目を潤ませて、ぼくにつばを飛ばしました。
「馬鹿っ!勝手に居なくなるなって言ってるでしょ!私がどれだけ心配したと思ってるのよ!
 色んなところ探したんだから!私は貴方が消えちゃったのかと思って、すごく不安だったのよ……!」
「あ、その、はい。ごめんなさい……」
覚えのない事まで言われてしまうということは、やはりぼくに非があるのでしょうか。ぼくは頭を下げました。
こんなに声を荒げるアリスを見るのは、きっと、はじめての事だろうと思いました。アリスは真っ直ぐぼくの目を見ながら
頬を膨らませていました。まねするようにぼくも頬を膨らませてみたら、きつい目付きに変わったのでやめました。
しょげてしまいました。それに、今日は災難な日なのではないかと思いました。
ぼくはぼくでアリスに言いたい事があったものの、アリスの感情の振れ幅の大きさにまたしても少し臆してしまいました。
でもやはり、アリスの顔を見ると、ぼくの心は落ち着くのでした。アリスは頼れる、アリスだけは頼れると信じているからです。
他の何かに惑わされようとも、アリスだけはぼくのそばにいてくれる事を知っていたからです。

91 :
アリスの小指とぼくの小指があたらしい約束を結びました。
「貴方は人形なの。術者の私がいないと何もできない。わかるでしょ?もう私の傍から離れないと誓ってちょうだい」
「はい。ぼくはもう勝手に散歩に行ったりなんてしません。約束は守ります」
「散歩?どうしてまたそんな……あいつみたいな……」
アリスとぼくが小指と小指で繋がれているときに、アリスは何かを知ったような顔をしていました。
目を見開いて、ぼくの顔を見るのです。ぼくはここで話そうと思いました。
アリスの友人を名乗る人と散歩に行った事と、そこで聞いたおはなしのことを。
テーブルについてから話しました。立ちっぱなしで言うには少し長い話になると思ったからです。
えらそうに着席をうながすと、アリスは黙ってぼくの向かいに座ってくれました。
ぼくは椅子の座り心地を確認した後、二人の間にあるランプに火を灯しました。少しうす暗かったからです。
向かいにすわるアリスは落ち着きがありませんでした。何だかそわそわして、まるで何かをこわがっているようでした。
同時に、ぼくも同じだとわかりました。ぼくの手が震えています。こわがっているようではなくて、
実際に今から話すことが怖いからです。
もしかしたら、触れてはいけないことに触れようとしているんじゃないか。
この話をしてはいけないのではないか。
何かを知ることはお互いにとって良くないことなのではないだろうか。
短い間にいっぱい考えました。
勝ったのは好奇心だと思います。ぼくは知りたいのです。ぼくの生まれた本当の意味を。
アリスほどの存在が、何の意味もなくぼくを生み出すとは思えません。
そうして、それがさっき聞いた話と関係してくるか。あのひとの不思議な話は本当なのか。
知りたいのです。それはぼくの話なのか。

92 :
信じられない話ですが、真実の前でそれがほんとうのはなしになるのなら、ぼくはどうやって受け止めようか考えました。
目の前に座る金髪の少女は、他の人を愛した男の墓を発き、その死体を、脳を、血を、肉を、骨を、すべてを使って
そうしてぼくという一つの人形を作り上げたのか。
言えなかった自分の気持ちと、得られなかった本当の愛を、全て混ぜ込んで溶かしてしまって、ぐちゃぐちゃのまま、
新しく作り上げるために、そんな、とても正気じゃない行動を起こしたのか。
アリスは、ついた肘の上で手を重ねて、その上に額を乗せて、顔を伏せていました。
ぼくがなにを言おうとしているのか、わかっていたのかもしれません。
そんな姿にどう声をかけていいものか、ぼくも非常に悩みました。
正直なところ、ぼくは怖かったです。
でも言わなくちゃいけないと思いました。それに、だいたいもうわかってきた気がします。
あれは幻じゃない。あの女性も、妄想なんかじゃない。そしてあの物語も。
口を開けるのが随分重かったです。

「今日、緑髪の女性に会った。そして歩きながら話をしたんだ。だいぶ前の話だけど……」

アリスはぼくの声を聞いて、根元から崩れるように泣きました。

93 :
(9)
今日は定期健診の日です。といってもどこかへ出かけるわけではありませんでした。
ぼくと、彼女の住んでいる家の一室で行われる、いつもの行為でした。
「はいおしまい。お疲れ様でした」
朝日が差し込む部屋で、その行為が終わったことを教えられました。
言いながら、彼女はぼくの背中をぽんと叩きます。肌で、乾いた音がしました。
ぼくは何となく恥ずかしいです。それに、肌寒いかんじもしました。
ぼくは日光があまり好きではありませんでした。だから顔をしかめました。
それにしても、寝ている間に終わってしまうので、ぼくとしては実感もなにもあったものではありませんでした。
首をコキコキと鳴らすと、何故だか彼女が面白がって笑います。ゆびを指して、ぼくを笑いました。
最初はぼくはむっとしましたが、次第につられて笑いました。
足元でへたっているシャツを見つけて、左手でひょいとそれを持ち上げました。
さっさとこれを着て、肌寒さや恥ずかしさとおさらばしてやろうと考えました。慣れ親しんだ人だとしても、
やっぱり裸の姿を見られるのはいいものではないからです。
でも、目の前の彼女はぼくの手を制しました。
おかあさんがそうしてくれるように、ぼくにシャツを着せてくれるのかとはじめは思いましたが、そうではないようでした。
シャツをまたくしゃくしゃにして、ベッドのへりに置きました。置かれたシャツは、またへたりました。

94 :
何をするのかな、まだ続きがあるのかな。
そう思ったら、彼女は目を瞑って、はだかのぼくに抱き付いてきたのでした。
びっくりしして、バランスを崩しそうにするぼくをそのままに、彼女は腕を回してぼくをしめつけるのです。
「な、な、何!アリス何してるの!ちょっちょっちょっと待って!」
「いいの。少しの間、こうしていたい……」
木になる林檎よりも、ぼくの顔の方が赤かったと思います。
こんなに恥ずかしいことはなかなかないと思いました。ぼくの心臓は跳ね上がってどこかへ飛んでいきそうでした。
そんなぼくを徹底的に無視して、彼女は顔をうずめました。
そうしてそのままいくつかの時間がぼくと彼女の元から去っていきました。
彼女の身体から、じんわりとしたあたたかさが、ぼくの身体にうつってくるようでした。
目のやり場に困って壁を見て知ったのですが、今は、月の初めだということでした。
カレンダーがぼくに教えてくれました。

95 :
(10)
知らなかった。知らなかったの。こんなに愛おしいなんて。
ごめんなさい。私、知らなかった。○○の事が、こんなに好きだったなんて。
どうして死んじゃったの?どうして私を置いて死んでしまったの?
今なら自分に素直になれるから。また会いたい。貴方にまた会いたい。
また貴方の顔を見たい。私、貴方に言いたい事があるの。
だから、絶対貴方に会いたい。会うの。嫌だとは言わせないわ。
逃げも隠れもしないで。そこで待っていてくれるんでしょう?
大丈夫。私と貴方なら、きっと上手く行く。貴方だって、もうこんな悲しい思いをすることもない。
私がずっと隣にいてあげるから。私だったら隣にいてあげられるから。
もう一度、やり直そう?一回、全部リセット。その後、私と貴方の二人で描きましょう。
私に任せて。私ならできるから。だから、もう少しだけ、待ってて。
もうすぐ届くから……。

会いたかった……!

96 :
むかしむかし、あるところに。
理を超えてもう戻れない場所へ行ってしまった魔法使いの女の子と、魂までも絡め取られた操り人形の男の子が住んでいました。
暗く湿ったところで隠れるように暮らす二人は心のどこか互いを憎み合いながら、誰かの幸せを踏み潰して暮らしておりました。

めでたしめでたし。

97 :
              .  ´      ̄ `  .
              /   .  .         ヽ
              .   // /     ヽ     .
          /  . i l l!        i  i l i
           〃 l l i┼十   i┼-l.リ  l l }
          { l li l Vム八 ヽ.iリムイli  .' li |
          从N从 {以リ `ヽノ似ツノ /} リ !
          ノ l il i ""  .   "" ノ /.ノ / ∧     http://www.youtube.com/watch?v=BnTcuEcwrf0
          / //リ.∧  r‐‐v   / /イ ∧ / iト.
        / ///// / i\ _ .  イ .イ j li l ! l リ
          レハ从j∧j .人r‐ァ┤ ∧ リ // ハノノレ'
            /`r‐‐レ1ノ=r''  〉->‐<
             / ノ-∠人_.ノ|_イ-/ij  /`ヽ
          /´-/く / ノ {l-/-/-i /    .i
.          /-/-/-.∧__.〉'-/-/| /    |
         {- l- l -.|} {| - l- l-i -l-|/     |
            V i- l -|} {| - l- l-l- l-k       j
            }リl- l-|} {| - l- l-.l- l-∧    ∧
         / l|l- l-|} {| - l- l- l- l/  \  '   \
          / リi- l-|} {| - l- l- l-/     \    \
.        / //-/-リ {j - l- l- l 〈      \    \
    r-=' フフ-ノ-/ ノノ -ノ-ノ-ノ ハ         \    \
    レ'``V/X `Xi ijノ -/-/-/ く. ヘ        \    \
   /ヽ. 乂ノ Vl-lレ'/./-/-/-- ヘ-'\        \    メ、
. /   `ーK>十==-←<.___/‐ ヘ-- 〉         `r< }

98 :
_!/      ', _,,.--─- 、,_   \-、
 \    _,.‐''"        `'ー、  \' ,
   \ ,.'"   ,.         `ヽ、 /!
    ノ   ,.'"  / , /   ハ )  ',.  |
    / ノγ / ハ‐!-イ   i 〉 ノ ', ,.ヘ
    i / ノ ノ ハ.!イてfヽ!   ハ-!、ハ ノノ ハ
   イ   i  ヽ.ソ'ハ、_り´ ヽ/.ィf'ト,.!ソイハ  | |
   〈i   ハ  ,.イ""´      !_ソ'!/ヽン` | |
__,,..ノ  ノ/  ハ.    ,.‐- 、` "! イノ..,,__|/    メリークリスマス!
  〈  ハ   i /ヽ、 l   ノ  ノ ,.ヘ、   i
  ノ ´ !ノ  ハ,.'-‐、ト,>r-.r=',´(て、    / 〉
/ノヘ ハ、ルV    `:、ンレヘノヽ\\ /ノ
  てY`7ヘ イ       ヽ、ヘムヘ:',ヽ\_>-‐-、
    /  !      __,.iヘ__〉:ハ _,.-'r、_ /⌒ヽ、
ヽ、__ ,.ヘ   \ ,.  ´/ヽ、!_,./   `〈_/ ,  ト,
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99 :
メリークリスマス!

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