2013年17アニキャラ総合39: あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part321 (311) TOP カテ一覧 スレ一覧 2ch元 削除依頼
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あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part321


1 :2013/07/21 〜 最終レス :2013/09/21
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。

(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part320
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1368032834/

まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/


     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!


     _       
     〃  ^ヽ      ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
    J{  ハ从{_,    ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
    ノルノー゚ノjし     内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
   /く{ {丈} }つ    ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   l く/_jlム! |     ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
   レ-ヘじフ〜l      ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。


.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。

2 :
1>>乙
ルイズとサイトでオーバーレイ! ZEXALを召喚

3 :
ゼロの使い魔って平民でも突然魔法の力が発現したりしないの

4 :
>>3
原作ではそういった描写はない。
先祖にメイジを持つ平民がそれを知らずにいたら、素質を持った平民がいる可能性はあるかもしれないが突然魔法を使えるようになるというのはない。
理由は、魔法を使うのに絶対必要な杖は、持ち主の専用となるためにまず契約をおこなって、それから時間をかけてなじませていかないと魔法を使えないという設定があるため。

5 :
ゼロ魔の魔法って錬金だけ便利であとは弱いといわれることが多い

6 :
家族が優秀な魔法使いなのに、魔法が使えなくて人生が悲惨なルイズ
母親が優秀な超能力者だったために破滅に追い込まれるも、自分が更に優秀な超能力者だったため破滅する貞子
井戸の中に落とされた貞子をルイズが召喚して助け出すのもありだよな!

7 :
貞子召喚はまとめにあったよね。貞子は救われるがルイズは…
…まぁホラー物で全員ハッピーってのはありえないだろうからしょうがないんだろうけど。

8 :
まとめにあったのか……
見つけられなかった

9 :
こんばんは。テレビだったら1クールのシメになる13話が完成したので、投下します。
開始は22:55から。

10 :
支援します
伝説宇宙怪獣登場
ダッタライイナー

11 :
ウルトラマンゼロの使い魔
第十三話「ミラーナイト参上!」
分身宇宙人ガッツ星人
極悪宇宙人テンペラー星人
暗殺宇宙人ナックル星人 登場
 他世界宇宙、マルチバースというものをご存じだろうか。我々が暮らす星、地球が宇宙に存在するのは常識だが、
その宇宙も一つだけではない。宇宙に地球以外の星が数多にあるように、宇宙も無数に存在する。
この多数の宇宙を内包する超空間がマルチバースと呼ばれている。
 本来なら滅多なことがない限り干渉し合うことのない別宇宙だが、ある時、未だ謎の多い怪獣墓場から
違う宇宙へと迷い込んだ存在が現れた。その存在――邪悪なM78星雲人、ベリアルは別宇宙、アナザースペースを
たちまち蹂躙し、巨大帝国を築き上げて恐怖で支配した。ベリアルの力はアナザースペースに生きる者の力を
超越していたため、外来種が在来種を駆逐してしまうように、その侵略は歯止めが掛からなかったのだ。
 アナザースペース最盛の惑星、エスメラルダを乗っ取り、皇帝を自称するようになったベリアルは、
自分が宇宙間を漂流する羽目になった最大の原因、故郷M78星雲に復讐をするため、エスメラルダに存在する
莫大なエネルギーを秘めたエメラル鉱石を悪用して宇宙の壁を越える侵略兵器を造り出し、元いた宇宙へと送った。
そしてその侵略兵器の襲来により、別宇宙での事態を察したM78星雲の光の国は、一人の若き勇敢な戦士を
アナザースペースへ旅立たせた。これが、ウルトラマンゼロとアナザースペースに生きる者たちとの出逢いである。
 ゼロは恐ろしいほどに力を強めてしまったベリアルとその軍団に何度も苦戦しながらも、
結果的にはその悪しき野望を粉砕した。しかしベリアル軍団が全滅した訳ではなく、
アナザースペースには悪の種が残っていた。そのためゼロはアナザースペースの平和を護るため、
故郷の宇宙のものとは違う新たな宇宙警備隊を結成した。
 その新宇宙警備隊、ウルティメイトフォースゼロを構成する5人のメンバーの一人が、
元よりエスメラルダを守護していた巨人の戦士。鏡面世界に存在する鏡の星の二次元人と
エスメラルダ人のハーフであり、たった今ゼロを救うためにアルビオンに降り立った鏡の騎士、
ミラーナイトである!
 唐突にニューカッスル城前に出現してナックル星人、ガッツ星人、テンペラー星人の三大宇宙人を退けた
ミラーナイトの姿に、ルイズたちも侵略者たちも釘づけになっていた。
「な、何だあの巨人は!? 怪人どもを攻撃したが……僕たちの味方なのか!?」
「ルイズが嵌めてる指輪から出てきたように見えたんだけど……それにしても、ほれぼれするほど美しい姿ね……」
 ミラーナイトの素性を知る由もないギーシュが騒ぎ、キュルケはその麗しき容姿に見とれていた。
そんな中、宇宙人たちの会話の内容が聞こえていたルイズは、呆然としながらつぶやく。
「あれが、あの人が、ミラーナイト……ゼロの言ってた、仲間……!」
 一方、ナックル星人たち宇宙人連合は、ミラーナイトの存在におののいていた。
『ミラーナイト……ウルティメイトフォースゼロだとぉ!?』
『何ということだ。ウルトラマンゼロにこんな仲間がいたとは……! しかも、このタイミングで現れるとは……!』
 宇宙人連合がやってきたのは、ウルトラの星が存在するM78ワールド。彼らがアナザースペースの住人である
ミラーナイトやウルティメイトフォースゼロのことを知らないのは、当然であった。
 そして当のミラーナイトは、息も絶え絶えの状態で倒れ伏しているゼロに手を貸して、助け起こした。
『ミラーナイト……! 助かったぜ……!』
『随分探しましたよ。遅くなって申し訳ありません。今、エネルギーを分け与えます』
 ミラーナイトが右手をゼロのカラータイマーにかざすと、手の平からエネルギーが放出され、
カラータイマーに吸い込まれた。そのお陰で今にも消えそうだったカラータイマーが青色に戻り、
ダメージはまだ残りながらもゼロに活力が戻った。

12 :
『いよっしゃぁッ! こうなったからには、さっきまでのようには行かないぜ、汚ねぇ侵略者ども!』
『もちろん、私もともに戦います。さあ、どこからでも掛かってくるといい、卑怯者たちめ!』
 そうして、朝陽が完全に昇り切った時には、ゼロとミラーナイトの二大戦士が並び立って堂々と侵略者と対峙した。
 ゼロに加勢したミラーナイトに敵愾心を向けたのは、テンペラー星人だ。
『フハハハ! 面白い! 元々死にかけの奴をいたぶるのは趣味ではないのだ! ウルトラマンゼロの仲間とやら、
このテンペラー星人が仕留めてくれるわぁッ!』
 テンペラー星人が足音を踏み鳴らして突進してくると、ミラーナイトはゼロから離れて
一対一の勝負へ持ち込むことにした。
『奴はテンペラーに任せるとしよう。我々は予定通りウルトラマンゼロを討つ! エネルギーが回復したとはいえ、
さっきまで死にかけだったのだ。このまま押し切るぞ!』
『了解した! このガッツ星人の真の力を見せつけてくれよう!』
『へッ! 来やがれ!』
 ナックル星人とガッツ星人は依然とゼロを狙う。ゼロは下唇をぬぐうと、二人の敵を同時に迎え撃つことになった。
 ゼロとミラーナイトが宇宙人とぶつかり合う間に、キュルケが改めてルイズに『レビテーション』を掛けて引き寄せた。
「ほらルイズ、モタモタしてないで、下がるわよ。ここにいたんじゃ、流れ弾で吹っ飛ばされるわよ」
「で、でも、ゼロが戦ってるのに!」
 自分の言うことに従おうとしないルイズに、キュルケは呆れたように息を吐いた。
「何言ってるのよ。あんたや私たちがあの戦いに割り込んで、何が出来るっていうの? 文字通り、
足手纏いになるのがオチだわ」
 キュルケの言う通りだとルイズは分かったので、悔しく思いながらも、ぐっと言葉を呑み込んだ。
「ほら、分かったら避難するわよ。歩くくらいのことは、自分でしてよね」
「……」
 ルイズは無言で、キュルケに従って後退する。彼女の様子が気に掛かったキュルケだが、
ボヤボヤしていたら本当に危険なので、さっさと退避していった。
(ゼロ……どうか、頑張って……)
 そしてルイズは、ゼロが無事に逆転勝利することを祈ることしか出来ずに、キュルケの後についていった。
『せいッ! はッ!』
 ミラーナイトはテンペラー星人に肉薄し、その身体にチョップやキックを入れる。しかし、
対するテンペラー星人は丸でびくともしない。
『何だぁ!? それが攻撃のつもりか! 片腹痛いわぁッ!』
『ぐッ!?』
 テンペラー星人がミラーナイトの顎を殴り飛ばす。弓なりに宙を舞うミラーナイトだが、
空中で身体を反らすと両手の甲よりミラーナイフを放つ。
『ふんッ! こんなもの効かぬわッ!』
 だが連射した光刃も、テンペラー星人の肉体に軽々と受け止められる。
『シルバークロス!』
 着地したミラーナイトはクロスした両腕を振るい、十字の巨大な光刃を発射した。彼の十八番である
強力な必殺技、シルバークロスだ。
『ぬるいわぁぁッ!』
 だがこれも、テンペラー星人の肉体を突き破ることが出来ず、粉々に砕け散ってしまった。
『むッ……!』
『ぐはははははははは! 脆弱! これが貴様の全力か!? とんだ期待外れだなぁ!』
 テンペラー星人の身体に傷も負わすことが出来ないミラーナイトを、テンペラー星人が見下して嘲笑する。

13 :
しえん

14 :
 ミラーナイトは鏡に関わる、他の者には真似することの出来ないような特殊な能力を持っている。
しかしそのためか、本人の基礎的な攻撃力は優れているとは言えないのだ。その上テンペラー星人は
宇宙きっての武闘派種族。地球で最初に記録された個体は、スーパーパワーを誇るウルトラマンタロウの
必殺技が直撃しても何ともなかったほどの防御力を見せつけたのだ。
『わしに手傷を負わせられないのでは、貴様には到底勝ち目などないッ! とっとと引っ込んでもらおうかぁ!!』
『くッ!』
 吠えたテンペラー星人が両手よりビームウィップを伸ばし、それの乱打を見舞ってくる。
ミラーナイトは鏡のバリアー、ディフェンスミラーでその攻撃を防ぐしかなかった。
 また、ミラーナイトによってエネルギーが回復したウルトラマンゼロも、ガッツ星人とナックル星人に
二人掛かりで攻撃されてまた窮地に陥っていた。
『食らえッ!』
『ぐああッ! くッ!』
 ガッツ星人のアイビームを食らって、苦しむゼロ。素早くゼロスラッガーを飛ばして反撃するが、
ガッツ星人は分身してかわした上に背後へ回り込む。
『くそ……! ちょこまか動き回る上に増えやがって……! どれが本物だ……?』
 ゼロはガッツ星人の分身と高速移動を駆使した幻惑戦法に惑わされていた。そして逡巡していると、
ナックル星人が飛び掛かってくる。
『隙ありぃッ!』
『ぐお!?』
 背後からヤクザキックを食らって倒れかける。すぐに後ろ蹴りを打つが、その時にはナックル星人は下がっており、
代わりに正面からガッツ星人の分身からの破壊光線が飛んでくる。
『ぐああああ!』
 手が出せずに追い詰められるゼロを、ナックル星人とガッツ星人が嗤う。
『クハハハハハハ! 先ほどは焦らされたが、何のことはない。貴様の戦闘データは握っているのだ! 
エネルギーが回復した程度では、こちらの優位は崩れん!』
『貴様の父親、ウルトラセブンが結局は破れなかった、我がガッツ星人の分身戦法! これがある以上、
貴様に勝機など微塵もないのだぁ!』
 両者とも既に勝った気になって豪語する。だが、それに対してゼロは、
『ふッ……!』
 冷笑を見せた。
『ん!? 何がおかしい!?』
『こいつ、とうとうおかしくなったか!?』
 想定外の反応に硬直したガッツ星人とナックル星人に、ゼロは下唇をぬぐいながら言ってのける。
『戦闘データを握った……何を勘違いしてやがる。俺がいつ全ての力をお前らに見せたと言ったんだ?』
『何!? まさか……!』
『俺の底は、ブラックホールよりも深いんだぜ! はぁぁぁッ!』
 ゼロが掛け声を上げると、ウルティメイトブレスレットと全身が青く光り輝き、たちまち青い体色へと変身した!
『ルナミラクルゼロ!』
 変身を完了したゼロが、自身のことをそう宣言した。
「あの姿は!」
 離れた場所から戦いの行く末を見守っていたルイズは、ゼロの変身を目の当たりにして、
アルビオンに到着するまでの空路で目にしたストロングコロナゼロを思い出した。
しかし、今のゼロの姿はあの時のものとも違う。

15 :
「まだ能力を隠し持ってたのね……」
 ゼロの変身に勝機を見出しながらも、ルイズは同時に、いくつも力を持っているゼロのことを激しく羨んだ。
(わたしには、見てるだけしか出来ないのに……)
 それでも戦いから目を離さずに、ゼロたちの命運を見届けることに決めた。
『食らえぇぇぇぇぇぇぇ!』
 ミラーナイトとの戦いを続けているテンペラー星人は、最大の攻撃であるウルトラ兄弟必殺光線を発射した。
破壊光線にもなる強力な光線技だが、ミラーナイトは軽やかに跳躍し、テンペラー星人の頭上を跳び越えて
背後に回った。
『ちぃッ! すばしっこさだけは一人前だな!』
『はぁぁッ!』
 テンペラー星人が毒づいて振り返ったのと同時に、ミラーナイトが十字型の鏡を大量に作り出し、
それでテンペラー星人の周囲を取り囲んだ。
『何ぃ!? 鏡だとぉ!?』
『シルバー……クロスッ!』
 そしてミラーナイトは、開いている上部からシルバークロスを投げ込み、テンペラー星人にぶつけさせた。
『ぬぅんッ!? 馬鹿が! 効かないというのが分からんのか!』
 その一撃はテンペラー星人の身体に弾かれ、あらぬ方向へ飛んでいく。……と思いきや、
周りの鏡に反射されてテンペラー星人へと戻ってきた。
『何!?』
 戻ってきたシルバークロスはまた弾かれるが、360度を覆っている鏡に反射されて、再びテンペラー星人へ戻ってくる。
それを何度も繰り返し、様々な方向からテンペラー星人に激突する。
『ふんッ! 下らん小細工をしおって!』
 テンペラー星人は縦横無尽に飛び回るシルバークロスを捉えられないが、所詮ダメージは受けないと考えて、
身をかがめて受け続ける。ミラーナイトはその様子を上から覗き込んで、シルバークロスを目で追う。
『ククク……そろそろ反撃と行こうか……!』
 しばらく受け続けた後に、シルバークロスの速度が弱まってきたと判断して背を伸ばすテンペラー星人。
そしてウルトラ兄弟必殺光線の発射準備に入ったその時、
『ぐはぁッ!?』
 背後から飛んできたシルバークロスが、肩に突き刺さって前面へと貫通した。
『馬鹿な……何故ぇ……!?』
 ミラーナイトの攻撃は自分には全く通用しなかったはず。それなのにどうして……。
その理由を薄れゆく意識の中で考えたテンペラー星人は、一つだけ可能性に行き着いた。
『まさか、同じ場所に……正確にぃ……!』
 シルバークロスは縦横無尽に飛び回っていると見せかけて、その実テンペラー星人の肉体の一箇所にのみ
集中して当たり続けていたのだ。したたり続ける水滴がいつかは石に穴を開けるように、わずかな傷しか与えられない
小さな攻撃も連続すればどんな鎧も貫く。
 これは、かつてミラーナイトの出身地である宇宙で戦った、テンペラー星人と同じように
鋼の強度の肉体であらゆる攻撃をはね返した強敵アイアロンを破ったのと同じ戦法である。
ミラーナイトは鏡の能力だけでなく、敵の虚を突いてそのまま打ち崩すトリッキーな戦い方と
それをなし遂げる抜きん出た技巧と頭脳も持ち味としているのだ。
『脆弱なのはお前の方だ!』
 ミラーナイトが言い渡すと、バッタリと倒れたテンペラー星人は跡形もなく爆散した。
 ガッツ星人とナックル星人は、ハルケギニアでは今まで見せたことのなかった変身を遂に見せたゼロに、
驚愕を禁じえなかった。
『ル、ルナミラクルゼロだとぉ!?』
『おのれ……! まだ能力を秘めていたのか……!』
 普段とは異なり、どこか冷静で神秘的な雰囲気を醸し出しつつたたずむゼロを前に動揺していた
ガッツ星人だが、すぐに気を取り直す。
『ふんッ! こけおどしだ! たとえどんな姿になろうと、我が分身戦法は破れはしないわぁッ!』

16 :
 自らに言い聞かせるように叫ぶと、ゼロを取り囲む全ての分身から光線を発射する。
 しかしゼロは、ガッツ星人並みの滑るような高速移動を行い、光線を全て回避した。
『な、何だとぉ!?』
『速いッ! 速すぎる!』
 ガッツ星人もナックル星人もゼロの動きを目で追うことが出来ず、先ほどまでとは真逆に翻弄される。
『……はッ!?』
 ナックル星人が気づいた時には、自身のすぐ横にゼロがいて手の平を差し向けていた。
『レボリウムスマッシュ!』
『うがぁぁぁー!?』
 手の平から発せられた衝撃波によって、ナックル星人が弧を描いて吹き飛ばされた。
『ナックル! おのれぇッ!』
 ガッツ星人は更に分身を作り出し、ゼロに対抗しようとする。そうするとゼロは、ガッツ星人の動きを
集中して観察し、分身の一つに腕を向ける。
「セアッ!」
 その腕からパルス状の光線が発射され、ガッツ星人に当たるとその身体を麻痺させる。
同時に分身が全て消え去った。
『がぁッ!? な、何だとぅ!?』
 ガッツ星人は絶対の自信を持つ分身能力が破られたことに激しく狼狽する。しかし、分身が破られたのは
歴史上これが初めてではない。ウルトラマンメビウスもメビュームピンガーという光線技でガッツ星人の分身を攻略している。
今の攻撃はそれと同等の技なのだ。
 そしてゼロはふた振りのゼロスラッガーを飛ばすと、それがゼロの前で円を描くように動きつつ六枚に増えた!
『ミラクルゼロスラッガー!』
 増殖したゼロスラッガーは、身動きの取れないでいるガッツ星人を瞬く間に切り裂く!
『ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
 ガッツ星人は断末魔を上げ、完全に爆死した。
『ガッツ!! ち、ちくしょうがぁ……!』
 ガッツ星人が倒されたことでうろたえるナックル星人。ちょうどその時にテンペラー星人も倒され、
ミラーナイトがゼロの隣に着地する。
『なッ、くッ……! お、覚えてろッ! このままじゃすまさんぞぉ!』
 最早勝ち目はなくなったことを悟ったナックル星人は、背を向けるとなりふり構わずに
アルビオンの奥地へ向けて逃走していった。
『待て! ……ぐッ!』
 追いかけようとしたゼロだが、一歩踏み出すとカラータイマーが再び鳴り出して倒れかける。
そのためミラーナイトが咄嗟に支えた。
『ゼロ、今の状態での深追いは危険です。悔しいですが、今回のところはあなたが助かっただけよしとしましょう。
今のあなたの命は、あなただけのものではないようですし』
『そうだな……その通りだ。すまねぇ』
 ミラーナイトは、ゼロが才人と一体化していることを早くも見抜いていた。冷静さを取り戻したゼロは、
ミラーナイトの忠告に感謝する。
『私がいない間のことは、後ほど伺います。だから今は、あの可愛らしいお嬢さん方の下へと戻ってはどうでしょうか?』
『ああ、そうするぜ。……ありがとな、ミラーナイト』
『あなたのためでしたら、これくらい』
 最後にそう言葉を交わした二人は、空に飛び上がってニューカッスルを後にした。
 ゼロとミラーナイトが立ち去った後で、キュルケやギーシュがほっと息を吐いた。
「はぁ〜……一時はもうダメかと思ったけど、ゼロが助かってほんと良かったわぁ。あの急に出てきた
緑色の巨人って、やっぱりゼロの仲間なのかしら?」
「そうに違いないだろうね。ただ、敵が一人だけ逃げていったのが気に掛かるが……」
「いいじゃない、あんな図体だけデカい臆病者のことなんか。寄ってたかってゼロをいたぶってたくせに、
一人になった途端にすごい勢いで逃げていったわよ」

17 :
 キュルケがナックル星人の無様な姿を思い出して笑いつつ、ルイズとの三人で元いた礼拝堂の前まで戻っていく。
するとちょうどその時、才人がフラフラとおぼつかない足取りで姿を現した。
「! サイト!」
 ルイズたちは慌てて駆け寄り、ギーシュが才人を支える。
「ダーリン! もう、どこ行ってたの! どこにも姿がなくて心配だったのよ!」
「君、ひどく衰弱してるじゃないか! もしやさっきのウチュウ人にやれれたのかい!?」
「ま、まぁ、そんなとこかな……けど、ゼロに助けられたから、心配しなくても……」
「あぁもう、しゃべらなくていいよ。今は安静にしていたまえ」
 途切れ途切れに語る才人をギーシュが制止した時、遠くから軍隊の鬨の声が聞こえてきた。
「! いけない、貴族派の兵隊だわ! 宇宙人がいなくなったから、改めてニューカッスルを攻めるつもりね! 
早く脱出しないと!」
 ルイズの台詞に、キュルケが聞き返す。
「何が何だかよく分からないんだけど……ワルド子爵はどこ行っちゃったの?」
「ワルドは……詳しいことは後で説明するわ。任務は一応達成したから、早く逃げましょう。
サイトも休ませないと」
「分かったわ。早く戻らないと、待たせてるタバサに悪いしね」
 キュルケとギーシュ、才人がヴェルダンデの開けた穴に潜ろうとするが、ルイズだけは
彼らに少しの間待ってもらい、斃れたウェールズの下へ向かう。
 この時には、ウェールズは完全に事切れていた。
「皇太子……お守り出来なくて、申し訳ございません」
 ルイズはひと言謝り黙祷を捧げてから、せめてアンリエッタに形見を持っていこうと、
指に嵌まっている風のルビーを外して懐にしまった。
「ルイズ、早く!」
 キュルケの急かす声で、ルイズは最後に一礼した後、キュルケたちに続いて礼拝堂から脱出した。
 ヴェルダンデの掘った穴はアルビオン大陸の真下に通じており、ルイズたちは帰りを待っていた
シルフィードに受け止めると、すぐに魔法学院に向けて羽ばたいた。
「サイト……」
 ルイズはシルフィードの尻尾の付け根の辺りで、体力の限界が来て気を失った才人の頭を膝に乗せている。
他の三人は、シルフィードの背びれを背もたれにして前の方に腰掛けていた。
「娘っ子、妙に相棒に優しいじゃねえか。膝枕までしてよ」
「うるさいわね……わたしだって、労をねぎらうくらいのことはするわよ」
 才人に代わってルイズが背負っているデルフリンガーがからかうと、ルイズは小さく言い返した。
普段なら少しからかわれただけで大袈裟なほどに反応するのだが、今は彼女の心の中に様々な思いが駆け巡っていて、
そんな気分にならなかった。
 たった半日にも満たない時間の中で、たくさんのことがあった。まさかのワルドの裏切り。
かつて心から憧れた人の背信は、非常にショックだった。そして才人のお陰で一時は無事に
助けられたと思ったウェールズの死。アンリエッタに何と言えばいいのか……。極めつけは、
無敵の存在と信じていたウルトラマンゼロの窮地だ。あの時は、心が絶望で塗り尽くされかけた。
 何よりルイズにとってショックだったのは、自分が何の力にもなれなかったことだった。
ゼロは結局、ミラーナイトという彼の仲間が救った。自分は、今回も見ていただけ。
才人も必死になってワルドと戦ったのに、自分は護られてばかりだ。
(サイト……)
 ルイズは膝の上の才人の顔を、その中のゼロを見つめる。その顔を見ていると、妙な胸の高鳴りを覚えるのだが、
今はそれ以上に無力感が湧き上がってくる。悔しい思いは「ゼロのルイズ」と呼ばれる度に味わってきたが、
今この瞬間に感じる辛さはそれとは比べものにならないほど大きかった。
(わたしに出来ることは、何一つないっていうの? 本当に『ゼロ』のルイズでしかないの? 
……嫌。わたしにも何か出来ることが欲しい。……サイトとゼロのために……力が、欲しい……)
 ルイズは人生で一番、力の渇望を覚えていた。すると、彼女の指に嵌まる『水のルビー』が、
キラリと、ミラーナイトが出現した際の光とはまた違う輝き方をした。

18 :
以上で終了です。
>>10
申し訳ありませんが、某新羅の登場の予定は現在のところ、全くありません……。
期待に応えられずすみません。
次回は一旦本筋から外れた、幕間というか、小話のようなものの予定です。


>「俺の底は、ブラックホールよりも深いんだぜ!」

19 :

シラリーとコダラーのコンビは反則。グレートよく勝てたよ

20 :
最近また規制が強くなったなあ。PCから書けん

21 :
>>19
伝説深海怪獣、伝説宇宙怪獣
厨二的な肩書きだけどそこがいい

22 :
ウルゼロの人、投下お疲れ様でした
皆さん今晩は。無重力巫女の人です。
特に何もなければ、21時45分から投下を開始したいと思います。

23 :
 彼女は失ってしまった。心から良かったと叫べるほどの゛幸福゛を。
 あの狭い箱庭のような世界で限られた自由しか与えられず、常に血の匂いを漂わせていた彼女が唯一欲していたもの。
 それと触れ合う時だけ心の底から自由だと思い、血生臭い自分を一時の間だけ忘れさせてくれるような、そんな存在を求めていた。
 しかしそれは、彼女に戦う事を強いらせた者からなし崩し的に手渡された、胡散臭い゛幸福゛であった。
 一度はそれに抵抗を示してしまい距離を取ろうとしたが、結局のところ彼女自身がそれを快く受け入れてしまう。
 何故なら、憎い相手から受け取った゛幸福゛は戦う事しかできなかった彼女にとって、唯一の生きがいとなっていたのだから。
 常に自分の傍に居続け、喜怒哀楽を共にしてくれる゛幸福゛に、彼女は生き続けていて良かったとその時思った。
 日頃から無口であり、時に戦うことあれば生まれた時から持つ力で、獲物を食い散らす獣と化していた彼女。
 そのような者が人らしい幸せを享受できるほどに、その゛幸福゛には大きな力があったのである。
 しかし、その時の彼女には知る由も無かった。
 彼女に戦いを強いらせ゛幸福゛を授けた者が、二人を「教師」と「生徒」という関係で見ていた事。
 時が来れば彼女と共に笑う゛幸福゛を、第二の゛彼女゛へと仕立て上げる残酷な事実すらも知らずに、
 彼女は゛幸福゛をゆっくりと育て上げていった。すべてを知るその時まで。 
 そして、全てが手遅れとなってしまった時に真実を知った彼女は、その世界から消え去った。
 最初からその世界に存在せず、傍にいた゛幸福゛すら幼少時の幻覚だったのだと思ってしまうほどに…
 
 腰まで伸びた黒髪を持つ女が、川辺に佇んでいる。
 身じろぎ一つすることなくまるで時が止まったかのように、その場で静止していた。
 川のせせらぎと夜空を隠す木々の葉が擦れる音が、水で濡れた耳に入ってくる。
 自然が奏でる癒しの音を聞きながらも紅白の巫女服を身に纏う彼女は、ふと辺りを見回す。
 赤と青の月が照らす川岸には、今この場ではあまりにも不気味としか言いようがない光景が広がっていた。
 葉と葉が擦れる音を奏でる樹木には赤い血しぶきがこびりつき、艶めかしく赤色に輝いている。
 水の精霊が奏でるハープの音色を思わせる綺麗な川のせせらぎを聞く岸辺には、子供ほどの大きさしかない人影が横たわっている。
 しかし月明かりに照らされる頭は人のそれではなく、動物や人を群れで襲い食い殺してしまう山犬と酷似していた。
 体も良く見れば茶色の体毛に覆われ、犬のそれと同じような尻尾も生えている。
 握力を失った手にはそれぞれ剣や槍に斧といった獲物が握られ、少なくともある程度の知能があったのだとわかる。
 人々は奴らのような犬頭の亜人を、コボルドという名前で呼んでいた。
 本来なら旅人を襲って殺しては身ぐるみとその肉を剥ぎ、時に誘拐すら行う彼らは川岸で事切れている。
 その頭に相応しい犬歯が覗いている口からは血を流しているが、不思議な事に目立った外傷は見られない。
 目を見開き、驚愕に満ち溢れた顔で死んでいる様は、まるで唐突な発作で死んだかのようだ
 一匹だけではなく、何匹も同じ死にざまを見つめる女の眼差しは、氷の様に冷たい雰囲気を放っている。
 まるで亜人を単なる畜生としか見てないかのように、彼女はコボルドの死体を見つめていた。

24 :
 静寂さと自然の音が見事に調和した空間に、不釣り合いな肉片と返り血でもって台無しにした者は誰なのか?
 この場にいる女はそれを知っていた。知っていたからこそ、その場を動こうとはしなかい。
 何故ならば、この殺戮から逃れたコボルドがたった一匹、彼女の目の前にいたのだから。
 先程まで生きていた仲間たちと共に女を襲い、そしてボロ雑巾も同然となった犬頭の亜人が。
 そのコボルドは、目の前の人間に向かって地を這っていた。
 右の手足を失った亜人の這いずる姿は、まるで死に瀕した芋虫のようである。
 爆発で吹き飛んだかのような傷口からは今も血が流れ、水を吸って元気に育つ川辺の草を真っ赤に染めていく。
 人間ならば出血多量で死んでもおかしくはないが、コボルドの様な亜人たちに人の常識は通用しない。
 彼らは時として人を武器や牙でRことは勿論、一部の者たちはこの地に眠る精霊の力を借りる事もできる。
 最も彼の様な普通のコボルドとその仲間゛だった゛者たちは腕っぷしと人より少し上程度の体力があるだけで、トロル鬼やオーク鬼の様な怪力は持っていない。
 頭も翼竜人や吸血鬼の様に賢いとは言えず、ましてやエルフの持つ崇高さすらなかった。
 それでも彼らは、コボルドとしての生を誇りに思って生き続け、今日まで戦ってきたのである。
 しかしその誇りを抱いたまま、今まで屠ってきた人間の一人に倒されるという覚悟まで背負ってはいなかった。

「…聞きたいことがあるの。言葉が通じるかどうか知らないけど」
 戦う意思を失うことなく自分の方へ這ってくるコボルドへ向けて、女は喋った。
 二十代後半を思わせる低音と高音が程よく混じった声に、亜人はその場で這いずるのを止める。
 少なくとも人語が分かるのかしら?彼女は疑問に思いつつ、今聞きたいことをその場で勝手に喋り出す。
「どうして、私に襲い掛かってきたのかしら?アンタたちの事はおろか、自分が誰なのかすら知らないというのに」
 疲労の色が少しだけ見える表情を浮かべた女の言葉には。この場で起きた惨劇の犯人が誰なのかを物語っている。
 そう…この綺麗な場所を血に飢えた亜人たちの屍で汚したのは、彼女自身であった。
 ◆
 今から数分程前に目を覚ました彼女は何もせずに水辺で佇んでいた所を、コボルド達に襲われたのだ。
 死にかけているリーダー格を含めて五体、皆が皆それなりの経験と場数を踏んだ戦士たちであった。
 だが…その戦士たちが彼女と戦った結果は、綺麗な水場を自らの血肉で染め上げてしまうだけに終わった。
 これまでどおり人間を八つ裂きにしようとした亜人達も、まさかこうなるとは思っていなかっただろう。
 何せ一目見ただけでも、この地方では珍しい身なりをした長い黒髪が特徴の人間の女だ。しかも杖の様なものは持っていない。
 相手がメイジで無ければ恐れるに足らずという意思でもって、彼女に襲い掛かったのである。それが間違いだとも知らずに。
 その後の数分間で、犬頭の亜人たちは一匹、また一匹とただの肉塊へと変えられた。彼女が唯一持っていた゛武器゛によって。
 それは剣や鎚も槍でも無く、弓矢やここ最近見るようになった゛銃゛ではなく、ましてやあの魔法を打ち出す゛杖゛でもない。
 自分たちが見つけた獲物の武器は、その体から出るとは思えぬ強力な力を宿した゛拳と脚゛だったのだ。
 
 青い光を纏い、目にも止まらぬ速さで繰り出される拳は跳びかかった同胞の胸を貫いた。
 同じように発光する足には丈夫なブーツを履いており、それで蹴飛ばされた同胞は気づく間もなく一瞬で事切れる。
 突撃した同胞が一気に二体もやられた事に狼狽えた一体が、近づいてきた彼女のチョップで脳天を打たれて死んだ。
 四体目はすぐさま自分たちが押されているという事に気づいたが、その直後に頭を横から蹴られ、周囲に脳漿をまき散らす。

25 :
 そして最後に残ったリーダー格があまりの展開に驚愕しつつも、無意識に手に持った斧を前へと突き出した。
 せめて次の攻撃を防いでカウンターを繰り出そうとした彼の考えに対し、目の前にいた女が地面を蹴って距離を詰めてきた。
 来るなら来い!覚悟を決めたリーダー格のコボルドであったが、突如として右の手足から激痛を感じると共に、その体が後ろへと吹き飛んでいく。
  一体何が…そう思うのも仕方ないとしか言いようがないだろう。
 何せ黒髪の女は彼に接近した直後、青く光る左手のチョップでもって亜人の右手足を粉砕したのだから。
 まるで林檎を素手で砕いたかの様にコボルドの手足゛だったもの゛が空中へ四散し、塵芥と化して周囲に散らばっていく。
 
 そして自分がどうしようも無い状況に立たされたという事をコボルドが自覚した時、戦いは終わっていた。
 否、それを第三者が何も知らずに見ればこんな事を言うだろう―――ちがう、あれは単なる゛虐殺゛だったと。
 ◆
 戦いが終わってから、彼女はこんな疑問を抱いていた。
 何故自分が襲われたのか、そもそもこの犬頭の怪物たちは何なんのだという事。
 そもそも自分は誰なのか、どうしてこんな人気のない所にいたのかという謎を抱えて、コボルド達と戦っていたのである。
  もしかすれば、あの犬頭達は何かを知っているのかもしれない…。
 そんな考えでもって、致命傷を負い一匹だけ生き残ったコボルドに話しかけたのである。
 しかし…少し小突けば死ぬような体で受け答えできるのか、そもそも人間の言葉を解するかどうかも良くわからない。
 仮に意思疎通ができたとしても、自分の事を知っているのかもしれないという可能性は、もはや゛賭け゛以外の何物でもない。
 それでもやってみなければ分からないという意思での問いかけは、亜人の口を動かさせる事に成功した。
「ウグ…ル…ルル…――――知ラ、ナイ…俺タチモオ前ノ事、全ク知ラナイ…」
 片言ながらも喋る事ができたコボルドを女以外の人間が見ていれば、さぞ驚いていただろう。
 コボルドは基本人の言葉は分かるが喋る事ができず、意思の疎通がほぼ不可能と言われてきたからだ。
 もしもこのコボルドを人目の付かない場所に隔離し、亜人の研究家に見せてやれば泣いて喜ぶに違いない。
 だが黒髪の女にとって゛人語を喋れるコボルド゛ということ自体にさして関心はなかった。
 大事なのはただ一つ、それは目の前の亜人が゛こちらの質問に答えてくれる゛という事だけである。
 そして、先程コボルドが返した言葉で確信し、得ることができた。
 この怪物と意思疎通が可能なのだという事と、賭けに失敗したという落胆せざるを得ない事実を。
「あっ、そう…アンタが私の事を知らない、というのならそれはそれで良いわ」
 あまり期待はしていなかったし。少し残念そうな声でそう返すと、露出させた両肩を竦めて見せる。
 服と別離した白い袖はよく目にする人間の服とは印象が違い、コボルドの目が自然とそちらへ動く。
 それを気にもしない女は初夏の風は少し肌寒いと思っていた時、亜人が再びその口を開けた。
「デモ…俺タチガオ前ヲ襲ッタ事…何モオカシイコトジャナイ」
 コボルドの口から出たその言葉に、女の目が鋭い光を見せた。
 黒みがかった赤色の瞳でもって、瀕死の亜人をそのまま殺さんとばかりに睨みつけている。
 しかし体はボロボロでも亜人としてのプライドを残しているコボルドは、それに怖気づくことなく喋り続ける。
「オ前タチ人間、イツモ…平気デ生キ物殺ス…食ベル為ニ…毛皮ヤ角ヲ取ルタメニ…」
 ソシテ、単ナル娯楽ノ為ニ――――最後にそう付け加えてから、亜人は一度深呼吸をした。

26 :
 口を開けて息を吸い、吐き出すたびにヒュウゥ…ヒュウゥ…という背筋を震わせてしまうような不快な音が周囲に響き渡る。
 息苦しい事がすぐに分かる呼吸の様子を見つめながら、黒髪の女は喋り出す。
「それと私を襲った事に、何の関係があるっていうのよ?」
「ゥウ…――人間ハイツモ、一方的ニ殺シテイク…俺、ソレガ許セナイ…」 
「…だから、人間である私を襲ったって事よね?森を荒らす様な連中の仲間は、死んで当然だという一方的な考えで」
 ため息を混ぜてそんな言葉をくれてやった彼女であるが、不思議な事にコボルドは返事をよこさない。
 今まで地面を見ていた顔を彼女の方へ向けて、闇夜の中で茶色に光る両目で見つめている。
 一体どうしたのかと思った時だ。地面に這いつくばる亜人が一言だけ、こんな事を呟いた。
「ニンゲン…?オマエヤッパリ…ニンゲン…ナノカ?」
 質問するかのような言い方に、流石の彼女も目を丸くした。
 まるで単なる銅像が「俺は人間だ」と叫んだ瞬間を目撃したかのような、信じられないという思いに満ちた様な言い方。
 人間である筈の彼女はそんな風に言われて驚いたのだが、そこから落ち着く暇もなくコボルドは言葉を続けていく。
「最初ニオマエ見ツケタ時…俺タチオマエガ人間ナノカ不思議ニ思ッタ…」
「不思議に…それってどういう意味よ」
 目を丸くしたまま動揺を隠せぬ巫女の追及に、コボルドは怪我を忘れたように喋り始める。
「俺タチノ様ナ種族ハ…マズニオイト気配デ…相手ガ何、ナノカ…ワカル。人間ナラ…スグニワカル。
 ケド…オ前ノ体カラ滲ム、匂イト気配ハ…トテモ人間トハ思エナカッタ……」
 もう残された時間が僅かなのか、喋る合間の呼吸の回数が増えていく。
 だけど亜人は喋り続ける。まるで自分を見下ろす女に何かを伝えようとしているかのように。
 女は女で微動だにする事無くただ目を丸くして、自分が人間なのか疑問を覚えた奴の話を黙って聞いていた。
 そして…その命も風前の灯火同然となったコボルドは、本当に言いたかったことをようやっと口に出し始める。
「アレ、最初…ニ感ジ、タ時…俺、身震イ、シタ…。デモソ、ノ姿見タ時、スゴク…驚イタ。
 オマエ、人…間ナノニ何デ体ノ中ニ血生臭イ溜マッテル?何デ自分デ…気ヅカナイ?
 良ク、イル…人間、ハソンナ…匂イ出サ、ナイ………オシ、エロ…オマエ――――――ニンゲ…ンジャ」
 ――――――――ニンゲンジャ、ナインダロ?
 
 それを最期の一言にしたかったコボルドはしかし、その言葉を口に出せなかった。
 いや、正確にいえばそれを発言する前に止められた…と言えば正しいのだろうか? 
 体力はあとほんの少し残っていただろうし、喋ろうと思えば簡単に喋れた筈だ。
 けどそれでも言う事が出来なかったのかと言えば、たしかにそれを言う事はできなかったであろう。
 何故なら最期の一言を口から出す前に、コボルドの頭は踏み潰されたのだから。
 赤い目を真ん丸と見開き、その顔に動揺を隠し切れぬ巫女のブーツによって…

27 :
 街の靴屋でもそうそうお目に掛かれない様な実用性に優れる黒いソレの下には、見るも怖ろしい肉片が散乱していた。
 紅い肉片がこびりついた茶色の毛と辺りに散らばった汚れた犬歯に…川の方へと転がっていてく一個の眼球。
 まるで持ち主の魂が宿ったかのような黄色の球体はそのまま川へと入り、流れに乗って何処へと流れていく。
 もう片方の眼球は、頭を踏み抜いた女の足元でその動きを止めた。まるで持ち主を殺した相手を睨みつけるように。
 先程まで生きていた命を自らの手で紡いだ黒髪の巫女は横殴りに吹く夜風に当たりながらも、ゆっくりと思い出していた。
 それは急所を潰されて息絶えた亜人の口から放たれた、自分に関する言葉の数々である。
「人間…だったのか?…体の中から…血生臭い匂い…」
 まるで録音したテープを巻き戻し、再生するかのように生前のコボルドが口にした言葉を喋りなおす。
 相手の頭を踏み潰した足を動かせぬまま、彼女は一人呟きながら左手で自分の胸に触れた。
 白いサラシと黒のアンダーウェア、そして赤い上着越しに感じられるのは控えめに見えて少し大きな感触と僅かな温もりだけ。
 そこから上下左右に動かし力を入れようとも、亜人の言ったような゛血生臭い゛匂いなど漂ってこない。
「まぁ当たり前なんだろうけど…さぁ――――ん?アレ…っえっ?」
 我ながら阿呆な事をしていたと軽く恥じつつ手を下ろした時、彼女はある事に気が付いた。
 最初はその゛気づいたこと゛にキョトンとした表情を浮かべたが、次第にその顔色が悪くなっていく。
 先程と同じように目が見開いていき、胸に当てていた左手で口元を隠した彼女の額からは、ゆっくりと冷や汗が出てくる。
 取り返しのつかない事をしたのに後々気づいた人間が浮かべる様な表情を見せる女は、自分が何をしたのか今になって気が付いた。

 どうして、死ぬ寸前のヤツをわざわざ念入りに殺したの?
 
 しかしその事を問いただす言葉は、彼女自信の口ではなく―――彼女の頭上から聞こえてきた。
 少なくとも彼女の少ない記憶には覚えのない、低く太い女の声が、血肉に塗れた川辺に響き渡る。
「はっ――――…なっ…!?」
 突然の事に多少驚いた彼女はその場で振り向いて顔を上げ、そして驚愕した。
 こちらを見下ろす低い声の正体を見れば、きっと誰もが彼女と同じ反応を見せたであろう。
 彼女から一メイルほど離れた場所に、黒い服を纏った見知らぬ長身の女が佇んでいたのだ。
 いつの間にかいた相手に驚きを隠せなかった彼女であったが、それと同時に相手が゛長身゛という単語では表現できぬほど大きい事に気づく。
 幾ら世界広しと言えども、八尺もの背丈を持つ人間などいる筈もないのだから。
 八尺の女はその体に相応しい位に伸ばした黒髪の所為で、どんな顔をしているのかまでは分からない。
 だけどそれを見上げる彼女はあの低い声の主がコイツなのだと知っていた為、少なくとも美人ではないだろうと予想していた。
「何よ、コイツ…一体いつの間に」
 突如現れた八尺の女に狼狽える事を隠せぬ彼女は、問いかけるような独り言を口から漏らす。
 無理も無い。何せ自分よりも数倍ほどの身長を持つ人間を前にしているのだから。
 周囲が暗い事もあって全体像が不鮮明すぎる八尺の女は、何も言わずに佇んでいるというのもより一層不気味さを増している。
 理由もわからずにして起こった異常事態にどう対処すればいいのかと女が考えようとした時、再びあの低い声が聞こえてきた。
「――――の巫女だから?使命だから?鬱陶しいから?……それとも―――――」
 
 「それとも…」という所でふと喋るのをやめた相手の言葉の一つに、彼女はキョトンとした表情を浮かべる。
 巫女って言葉は…何かしら?他とは違い、明らかに何かの意味がありそうな単語に、彼女は疑問を感じた。

28 :
「――――…っ!」
 その『何か』が気になって質問しようとした直前、八尺の女が唐突な動きを見せた。
 文字通り八尺もの長さがある体の丁度真ん中部分が、音を立てずに折れ曲がったのである。
 まるで細い切り枝を片手で折った時のように、アッサリと行われた行為に驚かぬ人はいないであろう。
 その内の一人である彼女もまた例外でないようで、口を小さく開けて放心寸前にまで驚かされた。
 ましてや、折れ曲がった八尺の女の顔が丁度彼女のすぐ上にまで近づいてきたのだから余計に驚いたであろう。
 だがしかし、自分の体が折れた八尺の女はさも平気そうな様子で彼女のすぐ頭上で口を開き…囁いた。
「私たちをRのが―――とっても、楽しいから?」
 その言葉が聞こえた瞬間、彼女は見た。醜く傷ついた女の顔を。
 まるで金槌を何度も叩きつけられたかのように腫れあがって紫色の腫物となり、顔を大きく見せている。
 口の端から流れ落ちる一筋の血はどす黒く、体液ではなく瘴気を吸収した毒の水にも見えた。
 目を背けたくなるモノという言葉は、きっとこういうモノを目にしたときに使えばいいのだろうか?
 そんなどうでもいいことを考えている彼女の事など見ず知らず、醜悪な面を向ける女が口を開く。
 まるで決壊した水門から土砂交じりの水があふれ出すようにして、黒に近い血がこぼれてくる。
「私だッて生きてテいタい――デもおマえは殺しタ」
 そんな事を言ってきた時、彼女はある事に気が付く。
 口から大量の血を吐き出しながら喋る女の眼窩には、本来あるはずの目玉が無かったのである。
 ぽっかりと空いた二つの暗く小さな穴は不気味であり、まるで亡者を引きずり込む地獄へ直結しているかのようだ。
 取れた眼球はどこへ行ったのかという疑問など湧いてこず、彼女は何も言えずに八尺の女の前にいる。
 ただただ息を呑み赤い目を見開くその顔には戦慄に満ちた表情が浮かび、これからどうなるのかという不安を抱いていた。
「オまエはもう引キカエせナい。ズっとずットオまエは誰カを傷つケなガラ生きテいク」
 潰れた蛙の様な声で喋る度に痣だらけの顔が溶けていく中で、八尺の女は窪みしかない眼窩で目の前の相手を睨み続ける。
 コボルドと対面していたときの態度は何処へやら。今の彼女はまるで壁の隅で縮こまる軍用犬であった。
 彼女は恐かった。目の前にいる得体の知れない女が、自分が忘れてしまった事を知っているようで。
 同時にそれを口にし続けられ、自分が忘れていた事を思い出してしまう事の方が、何よりも怖かった。
 知ってしまえば、何をしてしまうのかわからない。きっと良くない事が起こる気がする。
 そうなる確証は無い。しかし本能が訴えているのだ。聞き続けるな、何としてもヤツの口を黙らせろ、…と。
「ソうシておマえハ血ノ道ヲ作リ続け、怨嗟ト憎悪に満チた私タちがそノ道を通っテいク…おマエを、ずっト呪イ続けルたメに」
 酷く崩れていく八尺の女を前に、首を横に振りながら彼女は後ろへ後退り始める。
 その顔を見れば逃げようとしているかのように見えるだろうが、実際はそうでない。
 だらんと下げていた左手の拳にゆっくりと力を込めて、攻撃に移ろうとしているのであった。
 後ろへ下がるのは距離を取るためであり、彼女自信ここから逃げようという気など微塵も無かった。
 コボルド達を倒したという事もある。顔を狙えば一発で黙らせることができる。
 そんな自身を抱きながら、彼女は心の中で拒絶の意思を述べる。自らが忘れてしまった゛何か゛へ…
 もう聞きたくないし、知りたくも無くなった…だから、私の目の前から消えてくれ――――
 そんな事を心の中で思い立ながらも、彼女は思う。
 先程まで知りたかった事実をアッサリと拒否する事は、いささか可笑しいものがある。
 それでも彼女は拳を振り上げた。嫌な事全てから目を背けるようにして、青く光る゛キョウキ゛で殴り掛かろとした。

「貴女は昔からその調子ね。口下手だからすぐに拳が出る。それが貴女の良くない癖よ?」

29 :
 その瞬間であった。自分の真後ろから、何処かで聞いたことのある別の女の声が聞こえてきたのは。
 硝子で作られたベルが奏でる音の様に透き通った声色に、彼女はある種の゛懐かしさ゛というものを感じてしまう。
 目の前いるおぞましい相手をすぐ殺そうとしたのにも関わらず、振り上げた拳が頭上でピタリと止まる。
 そして、拳を包む青い光が消えたと同時に彼女はソレを下ろしてから、後ろを振り向く。
「けれど貴女はハクレイの巫女。時にはその力でもって、聞き分けのない連中を捻るのも仕事なの」
 そこにいたのは…白い導師服を身に纏う、微笑を浮かべる金髪の女性だ。
 腰まで伸ばした髪に青い前掛け、そして夜中だというのに差している導師服とお似合いの真っ白な日傘。
 まるで絵画の中からと飛び出してきたかのような絶世の美女が、いつの間にか後ろに立っていた。
 振り返った彼女がその姿を目にして驚き、同時にどこか゛懐かしいモノ゛を感じ取った瞬間、目の前を暗闇が包んでいくのに気が付く。
 あぁ―――意識が落ちているのか。
 それに気が付いた瞬間、彼女は深い眠りについた。
 

 晴れた日の夜風は、どの季節でも体に良いものだ。ピンクのブロンドを持つ彼女はそんな事を思う。
 ちょっとした事故で馬車が止まった時はどうしようかと思ったが、思わぬ幸に巡り会えたのは奇跡と言って良い。
 もう半年したら少しだけ切ってみようかと考えている髪を撫でていると何を思ったのか、窓からひょっこりと顔を出してみる。
 馬車に取り付けられたカンテラの下で見る林道は何処となく不気味であるが、怖いとは思わない。
 彼女自身気の抜けた性格の持ち主という事もあるのだが、何よりも傍に数人の従者たちがいるのも理由としては大きい。
 遠出の護衛としてついてきた彼らは、王宮勤務の魔法衛士たちとよく似た姿をしている。
 その姿に負けぬくらいに凛々しく忠誠心溢れた彼らは、彼女の乗る馬車の周りに集まっていた。
 理由は一つ。それは道の真ん中で立ち往生している馬車を、なんとか動かそうとしている最中であった。
 今から数分前に、とある場所を目指していた彼女の乗った馬車が、突如大きな揺れと共に止まったのである。
 何事かと思い車輪を調べてみたところ、どうやら林道の真ん中にできた窪みに右後ろの車輪が嵌ってしまったらしい。
 馬車を動かしているのは人型のゴーレムだという事もあって、護衛達が窪みから車輪を出す事となった。
「良し、私の合図で二人が車輪を浮かして…私と残りの三人で馬車を前に押す。分かったか?」
 護衛部隊のリーダーである太い眉が目立つメイジがそう言うと、他の五人のメイジは無言で頷く。
 主人であるピンクブロンドの女性を守るために訓練を積んだ彼らは、王宮の魔法衛士隊と戦っても引けを取りはしないだろう。
 引き締まった表情と、不用意に近づいてきた相手を斬り殺さんばかりの緊張感を体から出している彼らには、それ程の自負があった。
 そんな時、窓から顔を出して様子を見ていたピンクブロンドの女性がその顔に微笑みを浮かべて言った。
「ごめんなさいね。本当なら私たちが馬車から降りた方がもっと軽くなるのに…」
 敬愛する主からそんな言葉を頂いた六人の内、太眉の隊長が慌てた感じですぐに返事をする。
 まるで神話に出てくる女神が浮かべるような優しげな笑みを見れば、誰もが口を開いてしまうだろう。
「えッ…!あっ、いえ、そんな、私は貴女様からのお気遣いだけで充分であります故!」
「そう?でも無理はしないでくださいね。貴方達の歳なら人生これからっていう時期なんだし」
 隊長格のお礼を聞いて女性はそう答えたが、その言葉には何か違和感の様なものがある。
 外見は隊長格やほかの護衛達よりも年若いだろうに、まるで自らの死期を悟った老人だ。

30 :
「それじゃあ、申し訳ないけどお願いね」
 彼女はそれだけ言うと頭を引っ込め、座り心地の良い馬車のシートに腰を下ろす。
 それを見て向かい側にいた眼鏡を掛けた侍女が、申し訳なさそうに口を開いて言う。
「主様…言いにくいのですが、あのような弱気の言葉を吐かれては、また体調が悪くなってしまいますよ?」
 主治医殿もそう言っていたではありませんか。最後にそう付け加えて、侍女は主と慕う女性に苦言を告げる。
 人付き合いが好きなピンクブロンドの主はその言葉に軽く微笑みと共に、言い返してきた。
「ふふふ…心配ご無用、私はそう簡単に死にはしないわ。逆にこういう事は軽いジョークで言うのが良いのよ」
 主治医殿がそう言っていたわ。先程侍女が口に出した事を真似た様な言葉を付け加え、主はカラカラと笑う。
 その雰囲気と元気に笑う姿と表情だけを見れば、彼女を知らぬ人間は思いもしないであろう。
 絵画の中から出てきた女神のような美貌の持ち主が、複雑な重病を患っていると…
 それから数分も経たぬうちに、馬車は再び走れるようになっていた。
 主と侍女の乗る御車台を引っ張る馬たちを離してから御車台そのものを魔法を浮かせる。
 後は窪みから離れた場所で下ろし、再び馬たちを御車台を引かせる…という作業は、思いのほか短い時間で済んだのだ。
「良し、これでもう大丈夫だな」
 窪みに嵌っていた車輪に異常が無い事を確認した隊長格は、覇気のある声で一人呟く。
 他の護衛達は後ろに待機させている馬に跨っており、窪み自体も土を被せて塞いである。
 自分たちだけではなく、後からここを通る人たちの事も考えての事であった。
 窪みがあった場所は何回か踏んで安全を確認した後、隊長格は手に持った地図を見る。
 場所のカンテラを頼りにこの土地の事を調べた後、彼は馬車の中にいる主へと声を掛けた。
 
「カトレア様。この先を行けば宿のある村に着くそうです。今夜はもう遅い故、そこで一旦足を止めましょう」
 狼の遠吠えが何処からか響く森の中、カトレアと呼ばれたピンクブロンドの主はゆっくりと頷く。
 地図を見れば自分が行きたい場所とはまだまだ離れている。しかし、それもまた長旅の醍醐味と言えよう。
「どんな事でも一歩…また一歩と、ゆっくり楽しみながら進む事が肝心なんだと…私は思うのよ」
 例え目的地が遠くともね。そんな一言を呟き、カトレアは微笑んだ。

 深夜の闇には、不気味な何かを感じてしまう。
 そんな事を最初に思ったのが五つの頃で、今からもう七十年近く経っても変わらない。
 気を抜けば窓越しにみる森の中から何か現れるのではないかという妄想を、抱き続けている。
 たかが妄想と若者や町から来る人々は言うかもしれないが、それを妄想と言い切る証明は無い。
 どんなに否定しようとも、世界は不思議に満ちているのだ。それが目に見えぬものだとしても。
「いや、目に見えるモノの方がいいのかも知れん。不可視のモノに怯え続けるよりかは…」
 老人は胸中で見らしていた言葉を呟いてから、コップの底に残っていた水を勢いよく飲み干す。
 木々に囲まれた家の中から見る森というのは木季節に関わらず不気味なもので、常に嫌な妄想を抱かせてくれる。
 ここから少し離れた所には他の人たちも住んでいて賑やかなのだが、今更あの土地に新居は作れはしないだろう。
 最も、ずっと昔の先祖から引き継いできたこの土地を手放す事など、彼はこれっぽっちも考えてはいない。

31 :
 不気味ではあるがそれなりに住みやすい場所だし、何より静かな土地だというのも気に入っている理由だ。
「こんな場所、俺が死んだあとは若い連中が入ってくるんだろうなぁ…」
 老人が孤独死した、魔の土地として…ため息交じりに呟き、テーブルにコップを置いてカンテラの灯りを消した。

 今年で七十五、六という年齢に入った彼は、とても老いた者とは思えぬ体躯の持ち主であった。
 無論、若かりし頃と比べれば大分劣ったと彼自身も自覚するが、山で仕事をするには十分の体力は残っている。
 街で見かけるような同年代の老人たちと比べれば驚くことに、彼の体は四十代後半くらいの若さと力を保っていた。 
 それだけあれば木を伐採するための斧や鉈を片手で持てるし、丸太を背負って家と山を一日に何回も往復できる。
 文明圏で暮らす人々が想像するよりも、山というのは過酷な場所だ。
 老人の体が年齢不相応な力を保持し続けているのは努力ではなく、ここで生きていく為の照明であった。
 
 家の灯りを消し、何回も補強したドアの鍵が閉まってるがどうか確認してから、彼は寝室へと足を運ぶ。
 何回も踏み続けた廊下の床が軋む音を上げ、暗闇に包まれた家の中に外の不気味さを持ち込んでくる。
 台所とリビングに玄関がある今からこの廊下はそれ程長くは無く、三十秒もあれば奥にある裏口へとたどり着ける。
 その間にあるのは彼の寝室と、ワケあって掃除したばかりの物置部屋へと続くドアがあるだけ。
 本当なら寝室に入ってベッドに潜り込みたいところだが、その前にある物置部屋に行く必要があった。
 別にその部屋に寝室のかぎが置いてあるワケではない。ただ、つい最近ここに回い込んできた゛少女゛の様子を見る為である。
「ん……明りが?」
 廊下を歩き始めて十秒もしない内に、彼は物置部屋へと続くドアの下から小さな光が漏れている事に気づく。
 ぼんやりとドアの下を照らすそれを見てしまえば安堵感よりも、更なる不安を感じてしまうだろう。
 少しだけ臆病な老人がその明りに気が付き、一瞬だけ足を止めてしまったのもそれが原因だ。
 しかし、彼は小さなため息をつくと再び足を動かし、ついでそのまま物置部屋のドアをゆっくりと開けた。
 その先には、古びたソファに腰かけて窓の外を見やる幼い少女がいた。
「ニナ…まだ起きてたのか?」
 寝てなきゃ駄目だろう。叱るとは言えぬ声色で呼びかけると、ニナと呼ばれた少女が老人の方へと顔を向ける。
 あどけなさが色濃く残るぬいぐるみの様に愛らしい顔に、キョトンとした表情が浮かぶ。
 ベッド代わりのソファに膝を乗せて夜空を見上げる体は年相応でまだまだ人として未発達だ。
 世の中にはそういうのを好む男性が数多く存在するが、幸いな事だが老人にそのような嗜好は無い。
 それよりも今の彼が気にしている事は、まだここに住み始めてから間もないこの子が未だ起きている事だった。
「子供はもうとっくの前に寝てないと体があんまり育たたんぞ、知らんかったのか?」
 今みたいに夜更かししてたら、全然大きななれんぞ。一人呟きながらも老人はソファの下にあるカンテラの灯りを消した。
 文明の光は呆気なく消えたが、それを待っていたかのようにニナと呼ばれた少女が言った。
「さっきね、二ナの事を窓から迎えに来てくれる黒い人の夢を見たの。不思議でしょう?」
 アタシ、何も覚えてないのにね。楽しそうに喋る彼女の頭を、老人はそうかそうかと返しながら撫でる。

 この世界には不思議な事などいくらでもあるが、それと同じか…あるいはそれ以上に色々な事柄で満ちている。
 幸せな事、優しい事、美しい事、悲しい事、血生臭い事、怖い事、忘れてしまいたい事、そして―――――残酷な事。
 七十年も生きてきた老人は思いつく限りの事柄を経験してきたし、どんな人間でもいずれは体験せねばならない事だと思っている。
 しかし始祖ブリミルよ、これは残酷ではないだろうか?こんな小さな子に、親も帰る場所も忘れさせるなんていう…残酷な事は。
 村の医者に記憶喪失だと告げられた少女の頭を撫でながら、彼は心の中で毒づいた。

32 :
以上で、66話の投下は終わりです。
今回はルイズや霊夢たちとは距離を置いた番外編的な話で、もう少しだけ続きます。
それでは皆さん、まだ来月末にお会いしましょう。

33 :
無重力巫女さんおつん

34 :
乙乙

シドニアの騎士アニメ化が決まったんだしBLAME!はまだか
それともBLAME!アニメ化再開まで再開しないのか
もう長手and継守召喚でもいいぞ

35 :
超ヒロインクロニクルにルイズ、ティファニアに続いてシエスタも参戦
どうやらティーポットをひっくり返して攻撃するようだが、シュールというか、どんな層を狙って作ってるのだろうか

36 :
>>34
継守がきたらハルケの重力下じゃ常時四つん這いになっちまう!
>>35
虚無に並んでメイドがポット投げつけるってそりゃいったい……

37 :
発表当初からマジンガーもガンダムもいないスパロボと言われていたがゲームバランスもめちゃくちゃだな
製作スタッフの投げやりというかやる気のなさが伝わってくるようだ
戦闘メンバーなら真っ先にキュルケやタバサがくるのが普通だろうに
ボスがワルドやヨルムンでシエスタの攻撃で倒したら原作Rなんてもんじゃないぞ

38 :
ボスボロット(ボス)でナイチンゲール(シャア)を倒すようなもんか
……いや、やったけどさw

39 :
一人用のポッドを投げつけるゲームならおもしろそうだ

40 :
こんばんは。今回は宣言通り、本編から外れた小話を投下します。
開始は23:50から。

41 :
ウルトラマンゼロの使い魔
幕間「ウルティメイトフォースゼロの旅立ち」
帝国機兵レギオノイド(β)
友好珍獣ピグモン 登場
 未だ正体の知れない邪悪な何者かの影響によって、怪獣と侵略者の脅威に見舞われるようになったハルケギニア。
それを護りに、遠くの別宇宙からはるばるやってきた光の戦士、ウルトラマンゼロ。そしてアルビオン大陸の戦いで、
彼の仲間である鏡の騎士、ミラーナイトがハルケギニアの地に降り立った。そう、ハルケギニアにやってきたのは
ゼロだけでない。彼が結成した、惑星エスメラルダの存在するアナザースペースを守護する宇宙警備隊、
ウルティメイトフォースゼロの面々も一緒であったのだ。
 それではここで余談として、ウルティメイトフォースゼロがハルケギニアに来訪する直前のことを語ろう。
『……へッ。久々に団体のお出ましだな』
 アナザースペースの一画の小惑星群。その小惑星の一つの上に仁王立ちしているのは、
我らがヒーロー、ウルトラマンゼロ。
 そして周囲の小惑星群の上に大勢で陣を張っているのは、両腕がガンポッドになっている
量産型の戦闘ロボット。かつてアナザースペースを震撼させた悪の帝国を築いたベリアルが、
侵略用の兵士として造らせていたレギオノイドの、宇宙戦用タイプだ。
 ベリアルの大帝国は、ゼロたちの活躍により既に滅んだ。しかし、その軍団が全滅した訳ではなかった。
今ゼロを取り囲んでいるような残党がしぶとく生き残っていて、ベリアルの怨念に突き動かされるかのように
各所で被害を出し続けているのだ。ウルティメイトフォースゼロは主に、その残党を片づけることで
アナザースペースの平和を取り戻す活動をしている。
『ハッ。毎度毎度数頼みの戦いしかしねぇな、こいつら。量産型だからって学習能力が全くない連中だぜ』
 さて、その残党に囲まれているゼロなのだが、孤立無援の状況とは裏腹に彼には肩をすくめる余裕すらあった。
 それに反応したかどうかは定かではないが、レギオノイドの群れはギギギと駆動音を鳴らしつつ、
ゼロに向けてガンポッドより光線の雨を降り注がせた!
『ハァッ!』
 だがゼロは命中の直前で、上へ向けて飛び上がって全弾を回避した。そしてすかさず
ゼロスラッガーを両方とも投げ飛ばす。
『ゼアッ!』
 超高速で、複雑な軌道を描くゼロスラッガーは、レギオノイドを次々と切り裂いて爆散させる。
『シャッ!』
 更に額のランプからエメリウムスラッシュを放ち、これもレギオノイドたちを纏めて吹き飛ばした。
『ゼアアァァァァァァッ!』
 とどめのワイドゼロショットを周囲に振り撒き、残った機体を全て爆破する。
 ウルトラマンゼロは、すさまじい力を持った強敵との激闘をくぐり抜けてきた歴戦の戦士。
たとえ束になって掛かってこようとも、今更量産型のロボット兵士などに後れを取ったりはしないのだ。
『こいつでフィニッシュだッ!』
 ワイドゼロショットが最後の一機を爆破すると、目に見える範囲でレギオノイドはいなくなる。
念のために辺りを探っても、伏兵の気配は感じられなかった。
『よし、この辺に潜んでる奴らは全員片づけたみたいだな。……最近はベリアル帝国の残党も
めっきり見かけなくなったな。ま、もう随分な数を倒したんだし、残り少ないんだろうな』
 周囲の状況と最近のアナザースペースの環境をそう判断したゼロは、今回のパトロールをこれで終了し、
ウルティメイトフォースゼロの基地へ帰投することにした。

42 :
 アナザースペースに浮かぶ、一見すると緑色の結晶の芸術品と見間違えるような、巨大な建築物。
それがウルティメイトフォースゼロの本拠地、マイティベースだ。惑星エスメラルダの技術協力により
築かれたもので、外観や内装はウルトラの星の宇宙警備隊本部を参考にしている。
『……よっと! 今帰ったぜ』
「キュイッ! キュイッ!」
 マイティベースに帰還したゼロは、40m級の巨体からすると豆粒のような大きさの赤い生命体に出迎えられた。
『おッ、ピグモン! 留守番ご苦労!』
「キュウッ!」
 その生き物は、友好珍獣ピグモン。地球では多々良島で初めて存在が観測された、攻撃性を持たない小型の怪獣だ。
元々は死んだ怪獣たちの魂が漂う怪獣墓場で、バット星人の誤算により蘇生された個体なのだが、紆余曲折あって
このマイティベースにやってきてゼロたちと同居している。ちなみに名前をつけようとしたことがあったが、
「ピーちゃん」だの「モロボシくん」だのいい名前が思い浮かばず、結局はみんなが好きに呼ぶようになっていた。
『ピグモン、みんなは帰ってるか?』
「キュウ」
 ゼロの質問にピグモンがうなずくと、そのすぐ後にゼロの側に、彼と同等の背丈の赤い巨人が飛び出てきた。
『おーうゼロぉ! 随分と遅かったじゃねぇか』
『グレンファイヤー!』
 しゃべりながら赤い巨人が髪をかき上げるような仕草をすると、彼の炎を象った頭部から
本物の炎が一瞬燃え上がった。
 この巨人は、炎の戦士グレンファイヤー。肩書きと今の行動から見て取れる通り、熱く燃える
炎の力を宿した男である。性格も誰よりも活発な熱血漢だが、お調子者な一面もある。
『今日は久しぶりに集団の相手をしててな』
『なーるほどねぇ。けどそれにしたって時間掛けすぎだぜ? 俺もベリアルの残したオモチャを
纏めてぶっ飛ばしてたが、帰ったのは誰よりも早かったぜ!』
 ゼロに対して豪語したグレンファイヤーだが、それに異を唱える者がこの場に現れた。
『グレンファイヤー、虚偽の報告は良くない』
『んなッ!?』
 グレンファイヤーを諌めたのは、腰部のバックル型の部品と赤と銀がコントラストをなす
配色が目を引く巨大ロボット。その名もジャンナインである。
 ウルティメイトフォースゼロの中では、ジャンナインだけは初期メンバーではない。
ビートスター事件の際に、最初は敵としてゼロたちと戦ったが、後に仲間となった。
そしてその機体の基礎部分には、エスメラルダのロボットであるジャンボットから解析された
技術が使われたため、ジャンボットの弟と見なされている。
『本日の活動で君は、敵との交戦記録が存在しない。よって今の発言は明らかな誤りだ。
訂正を行うべきだと判断する』
 淡々と語るジャンナインに、興を削がれたグレンファイヤーはため息を吐く。
『あのねぇナイン……今のは会話を盛り上げるためのジョークって奴だよ。分かる? 
それにマジになられても困るぜ』
 やれやれと首を振るグレンファイヤーだが、ジャンナインは立ちすくんでいる。
『理解不能。ジョークというものが、適切な報告よりも優先すべきものとは考えられない』
 その言葉に、グレンファイヤーは更に深いため息を吐いた。
『相変わらず堅苦しい奴だなぁお前……。頭固いとこまで兄貴に似るんじゃないよ全く……』
『無礼者! その言葉、私への侮辱と受け取るぞ!』
 グレンファイヤーのひと言で、声を荒げる者が現れた。ジャンナインと同じ巨大ロボットであり、
彼が上で触れたジャンボットだ。
『それに今回の件は貴様の方が悪いのだ! 任務の報告は正確に! 虚偽を挟むなど以ての外だ』

43 :
 ジャンボットに叱られるグレンファイヤーだが、まるで反省の色が見えなかった。
『は〜あ。また始まったよ。これだから焼き鳥は』
『無礼者! 私の名前はジャンボットだと、何度言えば覚えるのだ!』
 グレンファイヤーは宇宙船ジャンバードへの変形機能を持つジャンボットが、ジャンバードとなっている時に
初めて出会ったので、そのために「焼き鳥」というあだ名をつけている。しかしジャンボットはそれを気に入っておらず、
呼ばれる度に憤慨するというのが既に定番のやり取りになっている。
『全く、二人ともいつもいつも飽きませんね……』
 ギャアギャア騒ぐグレンファイヤーとジャンボットの様子に、最後に場にやってきた
緑色の巨人が呆れ返った。ミラーナイトだ。
 リーダーのウルトラマンゼロを始めとして、グレンファイヤー、ジャンナイン、ジャンボット、ミラーナイト。
以上の五人が、アナザースペースの平和を守るウルティメイトフォースゼロのメンバーである。
 さて、マイティベースに住まう者たちがそろったところで、グレンファイヤーがこんなことを話題に出す。
『しっかしホント、最近めっきりとベリアル軍の残党どもを見なくなったよなぁ。今日ゼロが倒したので、
もう全部倒したんじゃねぇか?』
『そう判断するのは早計だろう。……とはいえ、残党の頭数も有限。私たちがこれまで倒してきた数を合計すると、
もう推測されるベリアル軍の生き残りの総計に迫っている。全滅間際というのはあながち間違いではないだろう』
 その意見にはジャンボットも同意する。
『だろぉ? そんで俺たちは交戦の回数が減ってきてる訳だが……それが毎日のように続くと、
暇でしょうがねぇよな〜』
『いけませんよ、グレン。私たちが暇なのが、平和の証拠なのですから。喜びこそすれ、
残念がるものではありません』
 ミラーナイトが咎めると、ゼロがピグモンの相手をしつつ相槌を打った。
『その通りだ。俺たちが倒すべき奴がいるということは、一時のエメラナたちやピグモンのような
思いをする人が出てくるってことだ。そんなのはない方がいいに決まってる』
「キュウッキュウッ!」
『まぁそうなんだけどよ〜。けど、こうも実戦が少ないと、腕と勘がなまっちまうぜ』
『有機生命体は不便だな。能力の維持に、定期的な鍛錬と経験が必要なのだから』
 グレンファイヤーの意見に、ジャンナインがロボットならではの感想を述べた。
 そんな風にウルティメイトフォース内で話し合っていると、突然誰のものでもない声が外から響いてきた。
『ふむ。どうやら話を聞く限りでは、これから頼む任務を支障なく引き受けてくれそうだな』
『! その声は……!』
 ゼロが真っ先に反応し、マイティベースの出入り口へ振り返る。その彼の目に、赤いマントを羽織った、
ゼロの面影を持つ紅蓮の巨人の姿が映る。
『親父!!』
『ゼロ、元気でやっているようで何よりだ』
 その巨人は、地球人ならば知らない者のいないほど有名だ。そしてウルトラマンゼロの父親でもある。
名前は、ウルトラセブン!
『おぉ!? ゼロの親父さんじゃねぇか! ひっさしぶりだなぁ〜!』
『しかし、どうしてこちらの宇宙に?』
 セブンの登場にはグレンファイヤーたちも驚きを隠せない。そしてジャンボットの疑問は、
ゼロも感じていた。
『親父、一体何の用でこっちに? 任務って言ったが……』
 と尋ねると、セブンは早速その件について話し出した。
『そうだ。実はウルティメイトフォースゼロの諸君に、ぜひとも頼みたい用件があるのだ。
それというのは、別の宇宙の防衛』
『別の宇宙だって!?』
 ゼロたちが驚愕していると、セブンは詳しく説明する。

44 :
『実は先日、宇宙と宇宙の狭間で大規模な次元震が観測された。それだけなら何の問題もなかったのだが、
その震動に乗じて、大いなる邪悪の気配が我々の宇宙から別の次元の宇宙へと移動した痕跡が発見されたのだ』
『大いなる邪悪だって!? そいつの正体は!』
『残念ながら、そこまでは特定できなかった。しかし、このまま放っておいたら、そいつが
侵入した先の宇宙の生命が滅ぼされてしまう恐れがある』
『そうだな……見過ごせねぇぜ』
 セブンの言葉で、ゼロは因縁のベリアルやビートスター、バット星人のことを思い出した。
彼らは移動先の宇宙に抵抗するだけの力がなかったのをいいことに、多くの悲劇を起こした。
それを繰り返してはならない。
『それが明らかになった以上、すぐにでも我らウルトラ戦士が派遣されるところだが、一つ問題があった。
向かう先の宇宙の情報が得られないことだ。もしその宇宙にディファレーター光線がなければ、
我らウルトラ戦士はまともに活動できない。そうなっては派遣する意味がない。……しかしゼロ、
お前ならばその問題は解消できる』
『ああ、そうだな。俺にはこのウルティメイトイージスがあるからな』
 ゼロはうなずきながら、左腕のウルティメイトブレスレットを見つめた。
 実はアナザースペースが、そのウルトラ戦士のエネルギー源となるディファレーター光線の存在しない宇宙なのだ。
初めてやってきた際のゼロもそのために変身回数と活動時間が限られて苦しんだものだが、
神秘のアイテム・ウルティメイトブレスレットを入手してからは、それが光エネルギーを変換して
ゼロの力にしてくれるので、問題なく活動が出来るようになった。
『そして他のウルティメイトフォースゼロの面子は、ウルトラ一族じゃないから、エネルギーの心配はない。
つまり俺たちがその任務に打ってつけって訳だな?』
『呑み込みが早くて助かる。ウルティメイトフォースゼロには、別の宇宙の調査と悪の魔の手の排除を依頼したい。
やってくれるか?』
『当たり前だぜ! なぁお前ら!』
 ゼロが聞くと、ミラーナイトたちは当然の如くうなずいた。
『ええ。悪の手が及んでいることを聞かされて、黙っている訳にはいきません』
『ちょうど暇を持て余してたしな! そういうのを待ってたんだぜ!』
『別の宇宙のことでも、平和を守るのは姫様の願い。了解した!』
 しかし、ここでジャンボットが次のように言う。
『しかし、全員という訳にもいかないな。ベリアル軍の残党が全滅した訳ではないし、
我らの不在を狙って他の悪しき者どもも活動する恐れがある。誰か一人くらいは残らなければ……』
 それについては、ジャンナインが名乗り出た。
『ならばその役目は、僕が引き受けよう』
『何ぃ? ナインが? おいおい大丈夫なのかよ』
『僕は宇宙最強のロボットとして造られた。僕の戦闘力なら、留守を守る程度は造作もない』
 グレンファイヤーが異を唱えると、ジャンナインは自信過剰なほどに自負した。が、グレンファイヤーは肩をすくめる。
『そういうこと言ってるんじゃないんだよ。お前は常識に疎いだろ? だから一人だけで
何か問題を起こさないかって心配してるの!』
『常識についてグレンに心配されたらおしまいですね』
『え? ミラーちゃん、それどういう意味?』
 ミラーナイトがさりげなく毒を吐いていると、ゼロがジャンナインを支持した。
『俺は大丈夫だと思うぜ。ジャンナインも、もう立派に平和と命を愛する心を持ってる。
それがあれば、多少のことなら何の問題もないはずだ』
『そーかぁ? ……まぁお前がリーダーな訳だし、そう思うんだったら従うけどよ』
 そういう訳で、ジャンナインをアナザースペースの守護に残し、ゼロたちは別の宇宙へ旅立つこととなった。
それが決まった後で、ふとゼロが問いかける。
『ところで親父、わざわざそれを伝えるためだけにこっちに来たのか? それだけなら、
テレパシーを使うだけで十分だったんじゃないか?』
 光の国があるM78スペースとアナザースペースは、ウルトラマンゼロというつながりが出来たことで
距離が縮んだが、それでも別の宇宙間は両者の技術をもってしても移動に大変な労力が必要となる。
故によほどのことでなければ、人の行き来はない。それを気にしていると、セブンはこう答えた。

45 :
『ゼロ、私からお前に渡すものがあるのだ。だからこちらに来る許可をもらった』
『渡すものだって? 親父からはブレスレットとかもらったが、まだ何かあるのか』
 セブンが差し出したのは、指先に念力で固定されている小箱。その中身は、三色のカプセルだ。
『カプセル怪獣。もしウルトラマンに変身できないような事態に陥った時には、必ず力になってくれる。
私も地球に滞在した時には、何度も世話になった。今回の任務はどれだけの期間が必要になるか分からないから、
持っておいた方がいいと判断した』
『カプセル怪獣、か……。へへッ、親父は相変わらず心配性だな。けど、ありがたく借りておくぜ』
 ゼロははにかみながらカプセル怪獣を受け取る。すると、セブンがピグモンのことを見下ろす。
「キュウッ! キュウッ!」
『それがお前の守った命か……。ゼロ、立派なウルトラ戦士として成長したんだな。お前はもう一人じゃない。
たとえこれから何が待ち受けていようと、必ず乗り越えられると信じている!』
『ああ! 俺にはこんなに大切な仲間がいるんだ! 当たり前だぜ!』
 セブンの信頼に、ゼロは固くうなずいて応えた。
『では、任務を頼む。成功と幸運を祈っているぞ』
 セブンが挨拶を残してからM78スペースへの帰路に着いた後で、ゼロたちも別の宇宙へと
旅立つ準備に取り掛かっていた。
『向かう先の位置情報は、これだけか……。ちょっと不安だが、まぁ何とかなるだろ』
『頼むぜゼロぉ。お前が迷子になったら、俺たちも一緒に迷子になるんだからな』
『グレン、ゼロを信じるんです』
『ではナイン、私たちが不在の間、宇宙の平和とマイティベース、ピグモンのことと頼んだぞ』
『任せてくれ、兄さん。武運を祈る』
 マイティベースの外で話し合うと、いよいよゼロたち四人が出発をする。
『それじゃあ行くぜ! はぁッ!』
 ゼロが掛け声を上げると、ウルティメイトブレスレットが強く輝き、形を変えて銀色の鎧となり、
ゼロの身体に装着した。
 これがブレスレットの本来の姿、ウルティメイトイージス。そしてそれを装着したゼロは
ウルティメイトゼロと呼ばれるようになり、単体での次元宇宙の移動が可能となる。
ミラーナイトたちも同時に連れていくことが出来る。
『よぉし行くぜッ! 遅れるなよ! ミラーナイト、ジャンボット、グレンファイヤー!』
『ええ! ナイン、行ってきますよ!』
『私からも、お前の武運を祈ってる!』
『ひゃっほーい! ウルティメイトフォースゼロ、出動だぁー!』
 ゼロとミラーナイト、ジャンボット、グレンファイヤーがジャンナインに見送られて宇宙間の旅に出た。
四人はあっという間に光速を超え、アナザースペースの端へ到達すると、ウルティメイトイージスの力で
宇宙の壁を乗り越える。
『えーっと、目的地の方角は……こっちか……。いや、ちょっとズレてるな……』
『おいゼロ、ホントに大丈夫なのか? 何か不安になるようなことが聞こえてくるんだが』
『ちょっと黙っててくれ。今集中してるんだ』
 セブンから受け取った、わずかなデータだけから目的地の座標を計算しているゼロは、
最後尾から尋ねたグレンファイヤーに言い返した。
 それから大分の時間を、宇宙間移動に費やす。どれだけ行けども似たような景色が続くので、
グレンファイヤーはすっかり飽き飽きしていた。
『なぁ〜まだ到着しないのかよ? 随分遠いなぁオイ』
『ええい、お前という奴は、少しは我慢が出来ないのか!』
 ゼロに代わってジャンボットが咎めると、その後でゼロが答える。

46 :
『計算上だと、後少しのはずだ。もうちょっとの辛抱……うおッ!?』
 その瞬間に、突如として四人を激しい磁気嵐と次元震が襲った。ゼロたちは身体が大いに揺さぶられる。
『こ、これは……次元嵐! 何とも運の悪い……!』
 ミラーナイトが思わず吐き捨てる。宇宙と宇宙の境、次元の狭間は、平穏な時ばかりではない。
時々このような災害規模の現象が発生することもある。もっとも広大すぎる超空間で遭遇することは
稀なことなので、ミラーナイトの言う通り、運が悪いとしか言いようがなかった。
 次元嵐の勢いはゼロたちでも抗うのが困難なほどであり、ゼロは必死に力を振り絞って前に進む。
だが後ろに続く、ウルティメイトイージス並みのパワーを持たない三人は彼以上に苦しんでおり、
特に最後尾で加護が一番少ないグレンファイヤーは首がガクガク揺れていた。
『お……おわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――!!?』
 そして遂に、グレンファイヤーが嵐に吹き飛ばされ、ゼロの後尾から外れてしまう。
『グレンファイヤー! ぬッ……うおおおおおおッ!』
『ジャンボット!』
 振り返ったジャンボットも、気がそれたのが災いして嵐に流される。
『何てこった……ハッ! ミラーナイト!』
 ゼロが気づけば、ミラーナイトまでが腕一本だけでゼロのコースにしがみついているありさまになっていた。
咄嗟に助けようとするゼロだが、ミラーナイト本人から止められる。
『いけませんゼロ! ここで余計な労力を使えば、たどり着く前にエネルギー切れを起こしてしまうかもしれません!』
『け……けど……』
『大丈夫です……あなたが無事にたどり着ければ、私たちもそれに引っ張られて到着することは出来ます。
逆に、あなたがたどり着けなければ私たちにも道はありません。あなたが今すべきことは、全力で
私たちのたどる道を作ることです!』
 説得したミラーナイトは、もう数秒もこらえていられない状態になっていた。
『頼みましたよ、ゼロ。私たちの道を……!』
『ミラーナイトぉ!!』
 その言葉を最後にミラーナイトが吹き飛ばされ、すぐに嵐に呑まれて見えなくなった。
『くそぉ……! すまねぇみんな……! 絶対にお前らが続く道を完成させるからな……!』
 一気に一人になってしまったゼロだが、仲間たちの無事を信じて、前へと突き進み続けた。
その甲斐あり、ウルティメイトイージスのエネルギー残量がギリギリというところで光明が見えてくる。
『やった! あそこだ! これでもう大丈夫……うおぉ何だぁ!?』
 遂に目的地を発見したゼロだが、その瞬間にいきなり身体が前に引っ張られ出した。
嵐の影響によるものではないのは明白だが、だからと言って力の正体は皆目見当がつかない。
『な、何が起きてるんだ!? 幸いこのまま到着は出来そうだが……』
 ウルティメイトイージスのパワーがもうないので抵抗することは出来ないが、力の方向は目的地を向いているので、
特に問題はなさそうだ……と考えたのもつかの間、ゼロは信じられないものを目にすることになる。
『な、何ぃぃぃぃぃ!?』
 何と、宇宙と宇宙の間の超空間に、自分と同じように目的地へ向けて飛んでいる、というか
飛ばされている少年の姿がはっきりと見えたのだ。
『こんなところに人間が!? って、このままじゃぶつかる! 何とか回避を!』
 その少年との直撃コースにあることを察知したゼロが身をよじろうとしたが、
『うおおぉぉぉぉぉぉ間に合わねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』
 結局、ゼロの巨体は小さな少年と正面衝突してしまった。それと同時に、ゼロと少年は超空間を抜けた。
 こうして、ウルトラマンゼロと少年、平賀才人はハルケギニアのある宇宙で衝撃的な出会いを果たしたのだった。

47 :
以上で終了します。
次回は本編に戻りますが、先に予告すると、
三巻の内容ではなくアニオリ準拠のエピソードになる予定です。

48 :
>>39
そのシエスタの祖父はサイヤ人か

49 :
ギーシュ「君のせいで二人のレディが傷ついた。どう責任をとってくれるんだい」
シエスタ「ギーシュ・ド・グラモン、まずお前から血祭りにあげてやる」

50 :
>>49
こんな展開の作品昔みたな
まとめみてたら続き気になる作品がいっぱいあるわ
再開しないかなあ

51 :
金髪が逆立って白目むいたシエスタか

52 :
かなり前のだけどルイズが浦安鉄筋家族のねぎま姉ちゃんを召還し、目が合ったギーシュを追いかける話が面白かったな

53 :
ルイズがアクシズを召還して地球滅亡

54 :
ルイズがグモリー彗星を召喚してハルケギニアがデデーン

55 :
「サイボーグ0009(009=島村ジョーを召喚)」「ピノキオの大冒険(キカイダー=ジローを召喚)」「STEALTH&Aegis(無人ステルス戦闘機ExtremeDeepInvader=エディを召喚)」「KNIGHT-ZERO(KITTを召喚)」の続きが読みたいです

56 :
無限の住人読み終わったんで誰か万次さん召喚してくれたら嬉しいデス

57 :
ディーキンさんそろそろ来てほしいわぁ
最近投下も減った気がするしこのまま過疎って行きそうな気もするな

58 :
投下したいが不安で仕方ない

59 :
じゃあしないほうがいいよ

60 :
パパーダはまだか。DMC勢は大体いい所でエタる

61 :
ギャグ漫画のキャラも大丈夫かな?

62 :
他の誰かに書けって言いだすんならともかく、自分で書く分にはたいていおk

63 :
ウルゼロの人は次はアニオリか
定番だと品評会とモット伯だけど、品評会にゼロが出られるはずはないしモット伯も人間相手にウルトラマンが手を出せるわけもない
もっとも怪獣や宇宙人がらみなら話は別だが
二期終盤の雪山の話で、遭難して凍死しかかったところをウーに助けられる。話がつながらんな
もしかしてOVAの魅惑の砂浜か?ちょうどウルトラQに大ダコも出たし。うーんわからんな

64 :
るろうにとディーキンとアセルス待ってます

65 :
ルイズがキュアエースを召還

66 :
ルイズがシンフォギアから響さんを召喚!
いつもの流れで決闘へ!
「君のせいで二人の女性が泣いてしまった! どうしてくれるんだ!」
「ごめんねギーシュくん。良かれと思ってやったことなのに。私ってばほんと呪われてるね。ぐすん」
「え?あ?」
「なーかしたなーかした」
「ギーシュめ。女の子を三人も泣かしやがって。許 ざ ん !!」
「先生にいってやろー」
たまには違う流れになるのもありです!

67 :
>許 ざ ん !!
あー、これは藤原召喚ですわ

68 :
え? てつをじゃないのか?

69 :
>>49
ブロリー召喚は胸熱だな

VSフーケ戦
ブロリー「また一匹ムシケラが死にに来たか」
VSワルド戦
ブロリー「しょせん、クズはクズなのだぁ」
VS7万戦
ブロリー「お前たちが戦う意思を見せなければ、俺はこの星を破壊しつくすだけだぁ」

パラガス「よーく見ろ、地獄へ行ってもこんなおもしろい殺戮ショーは見られんぞ」
ルイズ「もうダメだわ。おしまいだわぁ」
パラガス「さあ、死の恐怖を味わいながら、ブロリーに八つ裂きにされるがいい。俺は、避難だぁ」
ブロリー「どこへ行くんだぁ?」
パラガス「お、お前といっしょに、ひ、避難する準備だぁ」
ブロリー「一人用のポッドでかぁ?」
パラガス「うぅっふはっはっはーはーはー、あーう」
\\デデーン//
タバサ「この始末☆はてさてこの先、どうなりますことやら」

70 :
進撃の巨人からサシャを召喚したら飯をやるだけで神様扱いだから時々食堂で飯を盗む点さえ目を瞑れば従順になってくれる筈。
ミカサはエレン無しじゃ腑抜けるだろうけどアルミンなら外の世界に行けてそれなりに満足して生きていけるだろうな。

71 :
>>69
ブロリーよりも遥かに強くて魅力的なキャラが召喚されたらブロリーの作者が発狂するオマケ付きですねわかります

72 :
>>70
進撃の世界の状況が状況だけに、例え誰が召喚されようと(紆余曲折はあるにせよ)最終的にはハルケギニアに留まる事を良しとせず
全員が全員向こうの世界に戻ろうとするのがオチだと思う
特にミカサなんかはむしろ腑抜けるどころか完全にルイズガン無視で何が何でも向こうの世界、と言うかエレンの元に戻る事以外何一つ
考えなくなるのは間違いない

73 :
あいつら立体機動無でも跳躍力だとか大概人外だからやりやすそうではあるな

74 :
>>72
ミカサはエレン命とはいえ、一般市民の避難を妨害してるのに激昂したこともある
元の世界に戻るのが第一とは思うが、状況次第では協力するだろう
アルミンやジャンなら戻るついでに巨人戦に役立ちそうな知識やアイテム探しもしそう
進撃キャラでハルゲニア世界に来てそのまま居着いてくれそうなのは
現状だとアニくらいかな
ルイズに従うかは展開次第だが戦闘力は申し分ないし

75 :
初めまして>>61です。もし予約がない様でしたら、22時40分に序章ですが投下させて頂きます。
召還されるのは、浦安鉄筋家族から垣ママこと花園勇花でタイトルは『人類種、最強の使い魔』です。

76 :
『人類種、最強の使い魔』
第1発目 人類種、最強の主婦

「わっははははははぁぁぁ!」
木々が生い茂る山の中を、一人の人間が笑い声をあげ空高く跳躍しながら移動する。
黒いシャツとズボン、腰に巻いたエプロンを身の纏い。そして―――――獅子の如く逆立つ髪と筋骨隆々の肉体、そして周囲を歪ませるオーラを漂わせ野獣も泣いて逃げ出すほどの恐ろしい笑みを浮かべた『女性』は、5メートルはあろう巨大な袋を背負いながら走り続けていた。
彼女の名前は花園勇花。浦安市在住の市民にして―――人類種、最強の【主婦】である。
彼女は己を高める為に普段、行なっている山籠もりから一人で帰る最中であった。
本来なら息子である花園垣(ガキ)も山籠もりに連れていくのだが、今回は垣が学校のテストに全力で挑んだ為に医者も驚愕するほどの高熱を起こし、病院に入院した為、仕方なく勇花一人で山籠もりに行く事になった。
無論、己が住んでいる家を
「山籠もりから逃げ帰っても我が家は無し」
という意味で徹底的に破壊し尽くした後で。
途中、山に住んでいた凶暴な熊を威圧して己の肩を揉ませたり、巨大な大木を背負いながら山を走ったりし、流れる滝を素手で登ったりして山籠りの数日間を過ごした勇花は。
愛する息子に飯をたらふく食わせるために、山で手に入れた食材を詰め込んだ袋を背負いながら走っていたのであった。
しかし学校のテスト如きで熱を起こすとは、あの青二才もまだまだだぜ
私が帰って来たら徹底的に鍛え直してやらないといけねぇな
まぁ――その前に腹一杯手料理を喰わせてやるか
全く手のかかるガキだ、だからこそ可愛いんだけどな
勇花は息子の垣の事を考えながらえふっ、えふっ、と妙な笑い声を出し再び空高く跳躍する。
そして地面へと着地する寸前。
「!?」
丁度、勇花の真下の辺りに白く輝く鏡が現われたのである。彼女が気が付いた時にはすでに足の爪先が鏡に触れてしまっていた。
「ピクルゥゥゥゥゥゥ!」
何が起こったのか分からぬままに、勇花は雄叫びをあげながら背中の袋と共に鏡の中へと吸い込まれたのであった…。

77 :
今回はここまでです。次回は垣ママがルイズ達と対峙する所を書きたいと思います。

78 :
塩漬けわろた

79 :
ちょっと書いてみたけど思ったより時間と体力使うな。凝ると資料集め始めてしまうし。

80 :
そういえば安価形式の作品は無いな

81 :
ここはちゃんと小説形式になってないSSには厳しいからね。
まおゆうとかとのクロスならしょうがないだろうけど。

82 :
皆さんお久しぶりです。
予約がなければ8:50から投下はじめます。

83 :
 第十二話
 最強の雷! 陸上自衛隊決戦兵器出撃 (後編)
 
 再生怪獣 サラマンドラ 登場!
 
 
「くふふ、こんなチャチな武器で、このヨルムンガントに挑もうなんて、とんだ物笑いだったわねぇ。あなたたち?」
「くっくそぉ、離せっ! ぼくはお前みたいな女は好みじゃないぞ」
「おのれっ、わたしとしたことが不覚をとった。やめろっ、わたしはいい、こいつらに手を出すんじゃない!」
 ガリア軍の攻撃によって戦場と化し、煙をたなびかせるロマリアの森に絶叫が響き渡った。
 木々がなぎ倒された森の中に傲然と立ち誇る十体のヨルムンガント。その手には、首だけが動くありさまでギーシュとミシェルが
人形のように握られ、周りには、うめき声をあげて倒れ伏す水精霊騎士隊と銃士隊が、死屍累々たる無残な惨状をさらしている。
「ち、ちくしょう……ギーシュ、すまない」
 倒れた木の下敷きにされたレイナールが、首だけをなんとか上に向け、曇ったレンズごしに捕らえられたギーシュを見上げた。
 仲間たちは皆倒され、誰も助けることはできない。かすむ視線の中には、なんのダメージを受けていないガリアの騎士人形が
十体ずらりとならび、その頭越しにはロマリアを目指すガリアの大艦隊が悠然と浮かんでいる。
「完敗だ……」
 なにもできなかったと、悔し涙が浮かんできた。水精霊騎士隊、銃士隊ともに、もう戦える人間はひとりも残っていない。
 怪獣にさえ手を出さなければ、その考えは甘かった。ガリアの新兵器、巨大騎士人形ヨルムンガント、ハルケギニアで
もっとも魔法技術の進んだガリア王国の技術に、エルフの技術を加えて作られたそれは、浅はかな予測を打ち砕く怪物だった。
二十五メイルもの体格を持ちながら、スピード、パワーともに人間のそれと遜色はなく、さらに秘められた特殊な機能は
エルフの学者であるルクシャナの予想をも大きく上回り、彼女にすら身を隠すことを余儀なくさせていた。
「ハァ、ハァ……蛮人が、まさかここまでのものを作り上げるなんてね。わたしとしたことが、いつのまにか自惚れていたようね。
相手を甘く見て目を曇らせたあげくにこの様なんて、反省しなきゃ、いけないわ、ね」
 ルクシャナもまた、ひどい手傷を負わされていた。彼女は戦士ではないが、それでも並の人間の術者以上の先住魔法を
駆使することができるのに勝負にならなかった。今、かろうじてできることは気配を消滅させて、残った力で自分と、どうにか
救った数人の仲間の治癒を試みることだけだった。
「こんなことなら、もう少し魔法の練習もしておくんだったわね……悪いわねアリィー、結婚式は来世にお預けになるかもしれないわ」
 口出しがうるさいからと、ルクシャナは無理矢理置いてきた婚約者の顔を思い浮かべた。後悔先に立たず、いや、あとひとり
ふたりエルフの戦士がいても結果は同じであったろう。生まれつき強い力を持つ自分たちエルフと違う、人間の武器への
執着が生み出す破壊力を、計算に入れていなかった。
 そして、勝ち誇る笑みを浮かべてヨルムンガントの肩に立つシェフィールド。彼女は、紫にルージュを塗った口元を歪めて、
さらし者も同然にヨルムンガントの手の中でもがくふたりを見下ろして言った。
「うふふ、元気がいいわね。ロマリア軍もあらかた蹴散らして、退屈していたところに手向かってきた馬鹿たちがいたから
どんなものかと思ったら、女子供の寄せ集めとはね。あまりに若いのばかりだから驚いてしまったわ」
「ぶ、侮辱は許さないぞ侮辱は! ぼくたちは、誇り高きトリステインの水せ、ぐわぁぁっ!」
「それはご立派なことね。けど、少しは今の身の程をわきまえることをおすすめするわよ。今のあなたたちは、私のきまぐれに
命を文字通りに握られているの。このヨルムンガントの力なら、人間ごとき握りつぶすのはたやすいこと。吠え立てるよりも
命乞いをするほうが懸命ではなくて?」
「ば、馬鹿にするな。貴族が、そんな簡単に誇りを捨てると……うぉあぁぁっ!」
 ギーシュの虚勢も、ヨルムンガントがほんの少し握る手に力を込めるだけで悲鳴に変わった。全身の関節が無茶な力を
加えられたがための不快な音を立て、口からは内臓を圧迫された空気が唾液と共に吹き出していく。その凄惨なありさまに、
地面に倒れてまだ意識を保っていた彼の仲間は必死に呼びかけた。

84 :
しえん

85 :
「よせギーシュ、相手を刺激するんじゃないっ!」
 あの女は人の命をなんとも思ってはいない、うかつに勘にさわることを言えば殺される。しかし、骨が折れる寸前のところで
加減をさせるシェフィールドは、苦しむさまを楽しむ笑い声をあげて、仲間たちに見せ付けるようにヨルムンガントの手を
左右に振ってみせた。
「やめろっ! そいつはまだ半人前なんだ。指揮官はわたしだ、やるならわたしをやれ!」
 見かねたミシェルが身代わりになろうと呼びかけた。だが、シェフィールドはせせら笑って言う。
「だめよ、私はこの国のすべての人とものを消し去るように命じられているの。それに、どうせRなら若い子から順のほうが
より全員を苦しめられるでしょう? うふふふ」
 この悪魔めという言葉が喉から出かけて、ミシェルは歯を食いしばって飲み込んだ。この女を相手にそれを言っても
逆効果だということがわかっているからだ。
 シェフィールドは、ギーシュを気絶するかしないかギリギリのところで握る力を緩めると、周辺で倒れている水精霊騎士隊や
銃士隊にも、「逃げようとしたらこのふたりの命はないよ。いえ、それ以前にぷちりと踏み潰してあげるわよ」と前置きして、
焼け焦げたヨルムンガントの周りの地面を見下ろして、さらにせせら笑った。
「くふふふ、しかしさっきは楽しませてもらったわ。このヨルムンガントに、少人数で地雷を仕掛けにくるとは正直意外だったわ。
さすがにヨルムンガントとはいえ足の裏に装甲は張っていないからね。馬鹿正直に正面から向かってくるばかりのロマリア軍よりは
気が利いていたとほめてあげるわ……けど、少々この私をなめていたようね。うふふふ」
 悔しさ、怒り、絶望感が少年たちと銃士たちのあいだを駆け巡った。
 
 どうして、こうなってしまったのか。決して油断したつもりはない。自分たちの力を過信したつもりもない。
 が、事態は敗北を通り越して最悪の状況となってしまった。
 発端は、そう……自分たちは、ロマリアの民衆を戦火から逃すための時間を稼ぐ目的で、地雷を用意して敵の巨大騎士人形へと
忍び寄った。直接戦えるような相手ではないし、森に姿を隠しながら近づいて、地雷を設置したらそのまま逃げれば比較的に
安全だと判断したからだ。
「来たな、ガリアの化け物どもめ。ちくしょう、人を虫けらみたいに踏み潰しやがって、今から目にものみせてやるからな」
 ギムリが意気込み、声が大きいぞとレイナールにたしなめられていたときは、まだ余裕があった。銃士隊の訓練で、
気配を消して敵に近づく鍛錬は積んでいたし、もしなにかあった場合は後ろで相手を観察しているルクシャナが助けに
入ってくれるという安心感もあった。
 だが、その目論見はまったく通用しなかった。
 可能な限り息を潜め、使える者は『サイレント』の魔法を使ってまで、敵に気づかれることがないように努めた。なのに、
地雷を設置して逃げようとしたとたん、それまで悠然と前進を続けていた騎士人形が突然機敏に動き出して襲ってきたのだ。
気づかれていないと思っていた水精霊騎士隊と銃士隊はとっさの対応が遅れた。
「散開しろ! バラバラになって逃げるんだ」
 眼前まで迫った巨大な敵に対して、なんとかできた対応はそれだけだった。もうあと数秒あればミシェルの経験ならば
効率のよい命令を出せたろうが、迫り来る騎士人形の動きはあまりに速過ぎて個々に逃れるのが精一杯であった。
が、それも一時の時間稼ぎにしかならず、騎士人形たちは手に持った巨大な剣を振るって森の木々ごと隠れようとしていた
皆をなぎはらったのだ。

86 :
 響き渡る絶叫、飛び散る木々の破片と木の葉、雨のように降ってくる舞い上げられた土。それは火薬を伴わない砲撃であり、
何百台もの重機が暴走したに等しい、人工の暴風雨であった。
 むろん、その渦中にある人間はひとたまりもない。人間の脆弱な肉体は鉄木の散弾には耐えられず、もろくも倒されていく。
そんな仲間たちの危機に、ひと呼吸遅れたがルクシャナが助けに入った。
「まったく、誰かヘマしたのかしら。仕方ないわね、木々の枝よ、敵を」
 自然そのものに訴えかけるルクシャナの精霊魔法により、森の木々の枝が伸びてヨルムンガントの前に立ちふさがろうとした。
しかし、トライアングルクラスのゴーレムでも数秒は足止めできるはずの強度を持たせてあるはずの枝のバリケードは、なんと
騎士人形に触れる直前で、見えない壁にぶつかったかのようにはじかれてしまったのだ。
「あれは、カウンター! しまった、鎧にそんなものを!」
 ルクシャナは眼前の光景から、すぐさま今の現象が、外敵の攻撃から身を守るエルフの魔法・カウンターだと見抜いた。
想定が浅かった、あの魔法は一見しただけでは存在がわからないが、相手がエルフの技術を使っているのなら当然考えに
入れておくべきだった。そして、あの騎士人形にかかっているカウンターが叔父ビダーシャルの置き土産だとすると、自分の
魔法のレベルでは打ち破ることは不可能だ。
「叔父さまのバカっ! ああっ!」
 動揺して、視界の外にいた別の騎士人形がこちらに手持ちの大砲を向けているのに気づくのが遅れた。至近弾となった
砲弾の炸裂に巻き込まれて、数十メートルを一気に吹き飛ばされて倒される。彼女自身もカウンターを張って守ったが、
受け流すには威力がありすぎて、投げ込まれた茂みの中で意識を失わないのがやっとだった。
 連携などもはとりようがなく、どこに誰がいて、誰がやられたのかもわからないままに逃げ惑い、ひとり、またひとりと
倒されていく。それでも、彼らは絶対的に追い詰められながらも、なんとか敵を仕掛けた地雷に誘い込もうと体をひきづった。
しかし、騎士人形は地雷のありかを完全に把握しているように地雷を避け、あまつさえ剣を使ってすべてを自爆させてしまったのだ。
「そ、そんなバカな……どうして」
 わけがわからなかった。埋設した地雷はざっと四十個ほど、もちろん事前にバレないように細心の注意を払ったのに、
どうしてひとつ残らずありかがわかるのだ? やつらは本物の悪魔なのか? 少年のひとりは、伏せていた地面ごと
吹っ飛ばされたあげくに木に叩きつけられて気を失う寸前にそう思った。
 
 こうして、時間を稼ごうとした銃士隊と水精霊騎士隊の作戦はあっけなく崩壊した。
 ヨルムンガントはすべて無傷で、シェフィールドもかすり傷も負っていない。そのシェフィールドは、目障りな伏兵どもを
全滅させたのを確認すると、先行していたサラマンドラを止めさせ、ヨルムンガントの足元を見回してほくそ笑んだ。
「他愛ない。このヨルムンガントに生身で挑む勇気だけは褒めてあげるけど、死に急いだだけだったわね。でもまあ、
予定を上回りすぎるくらいに退屈だった進撃のいい気分転換にはなったわ。そのお礼に、少しだけ長生きさせてあげるわ。
ロマリアももう目前だし、休憩がてら私の遊び道具としてね」
 そう言うと、シェフィールドは倒れた人間たちの中から正確に指揮をとっていたふたりを見極めて、ヨルムンガントに
拾い上げさせた。むろん、そのふたり、ギーシュとミシェルにはもう逃れるだけの力は残されてはいなかった。
 
 それが、彼らを襲った理不尽のすべてだった。 

87 :
 全滅し、戦闘能力を完全に喪失した銃士隊と水精霊騎士隊。無傷なものはひとりもおらず、それも数分後には
全員戦死に変わるかもしれない絶望的な状況。起死回生の策は、なかった……
”こんなところで、終わるのか……”
 魔法力も体力も尽きた。いやそれ以前に、傷ついた体は土に吸いつけられているかのように地面から起き上がれず、
かろうじて動かせる視線には公開処刑も同然に痛めつけられる彼らのリーダーの姿が映るばかりだ。
 まさに死を待つ敗残者のみじめさ。それをあざ笑い、シェフィールドは全員に聞こえるように自慢げな様子で語った。
「くふふふ、苦しいでしょう、悔しいでしょうね。けど、このままなにも知らずに死んでいくのは哀れすぎるから、ひとつだけ
教えておいてあげるわ。どうして、完璧に隠れ潜んでいたつもりのあなたたちの居場所が私に筒抜けだったのか? 
あなたたち、この騎士人形、ヨルムンガントを少々できのいいだけのゴーレムだと侮っていたでしょう? 残念ながら、
ヨルムンガントは戦いに負けないためにあらゆる技巧をこらしてあるわ。例えば、私のこのモノクル」
 シェフィールドの外してみせた片眼鏡、それは一見なんの変哲もないアクセサリーのように見えたが、よく見ると
レンズに複数の映像が同時に映りこんでいるのがかすかに見て取れた。
「このモノクルを通して、ヨルムンガントの視界はすべて私も共有することができるのよ。それも、ただ映し出すだけなんて
単純なものじゃなくて、一体ごとに通常の視界から、生き物の体温に反応するもの、動く物だけを映し出すもの、魔法力の
反応を投影するものと様々に分かれているわ。これらを駆使すれば、どんなにうまく隠れても無駄というわけ。わかった? 
あなたたちは最初からエピローグの決まったピエロのダンスを踊っていたというわけ」
「貴様ぁ、人を使って遊んでいたのか。これは戦争なんだぞ、人が死んでいるんだぞ」
 自分たちの命がたとえではなく本当にゲームの駒として弄ばれていたことにギーシュは憤った。
 ここに来るまでにも、重傷を負って運ばれていく兵隊や村人、白い布をかぶせられて動かない人たちを見てきた。
彼らにもひとりひとり人生があっただろうに、それを他人の身勝手で奪われて、しかも奪われたものはもう戻らない。
 通り過ぎるときの悲痛な泣き声と怨嗟の声、戦争だから仕方ないとそのときは割り切ったつもりでいたが、この女の
残忍さには怒りを抑えることができない。しかし、返ってきたのは嘲笑だった。
「くふふふ、そうよ戦争よ。戦争だから、敵はRの、当たり前のことでしょ? けど、それだけじゃつまらないから、
少しでも楽しく演出してみようと思ったの。その気なら、あの怪獣にまかせて全員一気に焼きRこともできたのよ。
わかった? この私の慈悲深さを」
 悔しげに視線を動かすと、距離にして数キロメートル。シェフィールドの視界から離れない範囲で、うなり声をあげて
待機しているサラマンドラが見えた。周辺からは黒煙と炎が見え、口に銜えた大砲を無造作に吐き出したところを見ると
待ち伏せしていた別のロマリアの部隊を壊滅させたらしい。
「それなりの精鋭だったらしいけど、相手が悪いことを理解もできない馬鹿だったわ。あんなのはもうつぶし飽きてたから、
少しは頭を使ってきたあなたたちは楽しませてもらったわ。それと、ヨルムンガントのテストになってお礼を言いたいくらいだけど、
あなたたちが悪いのよ。竜の尾を踏んだら食べられても焼かれてもそれは自業自得というものなの」

88 :
「え、偉そうに、汚い侵略者のくせに、ぐあぁぁっ!」
「口の減らない小僧ね。命乞いしたほうがまだ長生きできるチャンスがあるのがわからないのかしら? 頭の悪い子は
嫌いなのよっ!」
 ギーシュを握るヨルムンガントの力が上がった。人間の骨格が耐え切れる限界を超えた圧力が加えられて、
生命の危機へと迫るレベルへと近づいていき、悲鳴が断末魔と化すにいたって、ついに耐え切れずにミシェルが叫んだ。
「やめろっ! そんなバカを痛めつけてなにが楽しい。この悪趣味な撫女、人形だよりで弱い者にしか手を出せないのか!」
「フン、そうして私を怒らせてこいつを助けようという魂胆なんでしょう。あいにくその手は乗らないわよ。私の受けた命令は
この国の人間を、少しでも苦しめた上で残らず始末すること、それが至上であり大前提なのよ」
「どこまでもクズが。いや、本当のクズはお前の主人のガリア王だ。無能王なんて蔑称なんて生ぬるい、下水の犬畜生にも
劣る悪趣味の権化、豚小屋の中では飽き足らずに外の世界にまで意地汚く食い散らかしにきたか!」
 その瞬間、それまで愉快そうに哄笑していたシェフィールドの顔色が変わった。
「なんですって……?」
 蟻を踏み潰して遊ぶ子供のようだった瞳が鋭く尖り、声に重々しさが加わる。
 熱狂が冷め、別の狂気が空気に充満していくのを皆は感じた。シェフィールドの眼差しがギーシュから離れ、同時に
ヨルムンガントの手が緩んで、彼の体が零れ落ちていく。
「ギーシュ! くっ」
 たまたま近くにいた水精霊騎士隊員のひとりが『レビテーション』をかけ、彼は寸前で大地の女神とのキスを回避した。
そのまま、どうにか引き寄せて治癒の魔法をかける。モンモランシーのような専門の使い手と違って、よくて痛みを
和らげる程度しかないが、それでもショック死だけは免れることができる。
「大丈夫か?」
「ああ、レディの手にかかって死ぬならそれもと思ったが、どうやらそうもいかないらしい。ぼくはつくづくいいところで運がない」
「それだけ減らず口が叩ければじゅうぶんだ。骨をつぶされる前でよかったよ。今、痛み止めを」
「ま、待て、ぼくはどうでもいい。それより、副長どのが危ない。ぼくでもあの女のすさまじい殺気を感じた。こ、殺されるぞ!」
 ギーシュの引きつった声は、的中率九十九パーセントの予言だった。いまや、シェフィールドの意識の中に遊びは残っておらず、
強烈な怒りと憎悪が支配していた。
「よくも言ったわね。ゴミの分際で、よくもジョゼフ様を侮辱してくれたわね。このゴミがぁぁぁっ!」
 シェフィールドの怒号。同時に、彼女の額が不気味に輝き、ヨルムンガントの手がミシェルの体を激しく握り締めた。
「うがあぁぁぁぁっ!!」
「許さない。嬲り殺してやるつもりだったけど、もう容赦はしない! 望みどおり、まずお前から血祭りにあげてやる。
ただし簡単には死なさない。生きていることが嫌になるくらいの苦痛を与えて、身も心も壊してから地獄に落としてやる!」
「ぎゃあぁぁっ!」
 いきなり骨が数本一気に砕ける鈍い音が響いた。さらに吐血し、銃士隊の制服が紅く染まる。
 殺される。ギーシュのときのような遊びではない。今、この瞬間に命を奪おうとしている。ヨルムンガントの力で本気で
締め上げたら、人間など跡形もない。いやそれどころか、自分の体が壊れていくほどの痛みを直に注ぎ込まれたら、
シェフィールドの言うとおり、体より先に心が壊されてしまう。

89 :
「ふ、副長ぉぉっ!」
「よ、せ……く、来るな」
「へえ、もう全身の骨がガタガタでしょうに、まだ正気を保っていられるとはやるわね。でも、その精神力の強さが
かえってお前を苦しめることになるのよ。さあ、もっと強く締め上げてやるよ」
「が、があぁぁっ!」
 ミシェルを握り締めているヨルムンガントの手から鮮血が滴って地面に落ちる。その凄惨すぎる光景と悲鳴に、
少年たちの中には嘔吐を耐え切れない者も現れたが、数人の少年と銃士隊員は勇敢だった。かなわないと知りつつ、
肉弾も同然にヨルムンガントに挑んでいったのだ。
「でえぇぇぇぇやぁ!」
「クズどもが、慌てなくてもお前たちも生かしてはおかないわよ」
 足を降るだけで、ヨルムンガントに向かってきた人間たちは全滅した。ものの数秒で動ける者はいなくなり、虐殺は
屍山血河へと転落を早める。
 ヨルムンガントに倒されたうめき声、まだ生きてはいるものの、一思いに息の根を止められたほうがまだ幸せかもしれない。
生き残れたとしても、仲間たちが虐殺されるのを見ながら、最後は生きたまま踏み潰されるしかない。立ち上がれる者はなく、
わずかに力を残していたルクシャナも、身を潜めながら己の無力をかみ締めるしかできない。
「せめて私に、叔父さまのような力があれば。大いなる意志よ、もう人間の神でもなんでもいい。こんな終わり方なんてあんまりよ!」
 はじめて彼女は人間のために祈った。研究欲第一で仲間意識の希薄だった彼女に芽生え始めた、本人もまだ自覚していない
変化の発露がここで……だが、それも無意味に終わるかもしれない。屍に変わってしまえば、どんな人間も同じなのだから。
どんな可能性も、その人間がRば途絶える。それがどういう意味を持つかわからない者だけが、命を奪うことを楽しむ。
 シェフィールドは主人を侮辱された怒りのままに嗜虐の喜びに身をゆだね、ミシェルは自分の世界が急速に暗くなっていくのを感じた。
「さあて、ただの人間の割には持ったほうだけど、そろそろ楽にしてあげましょうか」
「サ、サイ……がはっ」
「んん? 恋人の名前かい? けど残念。もう喉が血であふれてしゃべることもできまい。さあ、ジョゼフ様を侮辱したむくいだ。
体中の穴という穴から内臓を吹き出して、R!」
 ヨルムンガントに憎悪を込めた魔力が送り込まれ、ミシェルの全身の骨が言葉の代わりに断末魔をあげる。シェフィールドは
高笑いをあげ、お前を殺した後は仲間たちも皆同じようにして、森の木に磔にしてさらしてやると叫ぶ。そしてそれを誰も
止めることはできない。
 狂気の祭り、そこに捧げられた生け贄は自らの血と肉を捧げなければならない。悲鳴を賛美歌とする邪神の宴、
最高潮を迎え、悲劇という名の顎がミシェルの魂をも飲み込もうと牙をむき、弱弱しくも鼓動する心臓をついに噛み潰そうとする。
 
 だがそのとき、一閃の雷が水平に大気を切り裂き、白い矢となってヨルムンガントの胸に突き刺さった。

90 :
「なっ、に!?」
 シェフィールドは、網膜を焼いた閃光に戸惑って思わず目を覆った。
 なんだ今の光は!? まだ伏兵が? 一瞬雷が見えたところからライトニング系の魔法攻撃か? しかしヨルムンガントの
魔法探知装置に反応はなかったぞ。
 混乱しかけながらもシェフィールドは事態を把握しようと自分の周りを確認した。大丈夫、自分の体に異常はない。
ヨルムンガントは? いや心配ないはずだ。エルフのカウンター魔法に加え、ガリアの冶金技術の粋を集めて作った
高硬度の鎧を身にまとったヨルムンガントには、たとえスクウェアクラスの魔法が直撃したとしても耐えられるように
作ってあるはずだ。
 が、シェフィールドの鼻に焦げ臭いがたなびいてきたかと思った瞬間、彼女の乗っているヨルムンガントがぐらりと揺らいだ。
 
「なに!?」
 
 とっさに飛び上がり、別のヨルムンガントの肩に着地するシェフィールド。と、同時にコントロールを失ったヨルムンガントの手から
血だるまのミシェルが零れ落ちる。
「危ない!」
 あの状態で地面に叩きつけられたら即死だ。そのとき、唯一わずかに余力を残していたルクシャナが、全力で浮遊の魔法をかけた。
「大気の精霊よ。お願い!」
 距離がある。残った力も少ない。だが、この魔法だけは絶対に成功させねばとルクシャナは力を込めた。
 ミシェルの体が地面との衝突寸前で浮き上がり、ヨルムンガントは大地に叩きつけられる。その胸の装甲は溶けて内部は
焼け焦げており、シェフィールドは息を呑む。そしてその隙を突き、ミシェルはそのまま宙をすべってルクシャナの隠れている
場所へと連れてこられた。
「う、お前……」
「しゃべらないで、私の治癒魔法はあんまり強くないの。うぐっ、よくこれであなた生きてるわね」
「はは、痛いのには慣れてるからな……しかし、今のは、いったい」
「ふふ、どうやらあなたのはっぱが効いたんじゃない? ほら、あの坊や、ずいぶん派手に登場のようよ」
「ああ……なにせ、わたしの見込んだ男だからな」
 喉を詰まらせていた血を吐き出してミシェルはつぶやいた。と同時に、安心感とともに体の痛みが消えていくのを感じた。
”もう大丈夫だ……あいつが来てくれたなら、きっと。どんな手を使ったかしれないが、あいつは、みんなをいつも守ってくれたから”
 だから最後まで希望は捨てない。どんな絶望があっても、それを打ち砕く希望は必ずある。世界は、自分なんかが思ってるより
ずっと広くて未知の可能性に溢れている。それを、あいつが教えてくれたんだから。
 
 ヨルムンガントを一撃で倒し、地に引き倒した稲妻。それはハルケギニアの常識を超え、尽きかけていた若者たちの命脈を保った。
 しかし、無から奇跡が生まれることはない。奇跡が起こる場所には、必ず人の姿がある。

91 :
 破壊されたヨルムンガントから視線を流し、シェフィールドは犯人の姿を探し求めた。
 そしてそれは見つかった。破壊されたヨルムンガントから続く焼け焦げた木々の先、小高い丘を通る街道に、そいつらは
こちらを見下ろすように布陣していたのだ。
「な、なんだ、あれは?」
 シェフィールドだけでない、ギーシュたちや銃士隊も目を丸くした。
 それは、あまりにも彼らの常識からかけ離れた車両であった。すべてが金属で作られ、その上部についた腕部の先には
巨大な皿のようなものがこちらを向いている。
 なんなんだあれは? 敵か? 味方か? だがその疑問は、先頭車の運転席に座ったふたりを見つけて、少年たちの
歓呼の声で証明された。
「サイト!」
「ルイズ!」
 間違いない。ロマリアに残っていたあのふたりだった。あのふたりが、なにがなんだかわからないが、とにかくすごそうなものを
持って駆けつけてきてくれたんだと彼らはその場で無条件で信じ、それはまったく間違っていなかった。
 一体減じ、九体になった巨大ゴーレムの群れに向かってパラポラを向ける四両のメーサー殺獣光線車。日本人が怪獣の
猛威に立ち向かうために生み出したかつての超兵器がついに到着し、その窓から自らの敵たちを見据えるルイズと才人のふたりは、
すでに戦うことを覚悟した目をむいていた。
「命中よサイト! すごい! すごいわこの武器。でも、みんなひどくやられてる。急がないと」
「わかってる……悪いみんな、おれがつまらねぇことで迷ったばっかりに……」
 才人は、あと一歩遅かったらと背中に冷たいものを感じた。ロマリアからここまで、可能な限りの強行軍を続けてやっとたどり着けた。
ハルケギニアの道は当然アスファルトなど敷かれていないが、昭和四十年代の日本の道路を想定して走破性能を決めている
六六式メーサー車は悪路にも強い。
 ディーゼル音を響かせ、街道を地響きと砂煙をあげて進撃するメーサー部隊には、ロマリア軍も道を開けて呆然として見送っていた。
 そして、たどり着いた戦場。そこでおこなわれていた惨劇を見て、才人のなにかが切れた。
「シェフィールド、ようやく面をおがめたな。よくも、よくもおれの仲間たちをやってくれたな。今日だけは、おれも正義の味方でいるつもりはねえぞ!」
 才人は本気で怒っていた。躊躇したがために皆を危険にさらしてしまった自分のふがいなさへ、これまでにも非道を繰り返し、
今また自分の大切な人たちを傷つけたシェフィールドへの怒りが混ざり合い、一気に溶岩に変わって噴き出した。
「メーサー砲、全車一斉攻撃用意! 一号車有人操作、二号車から四号車は自動照準射撃。ルイズ、あのガラクタ人形ども、
ひとつ残らずぶち壊すぞ!」
「ええ! 存分にやりなさい。あの女に、一方的にやられる怖さを思い知らせてやるのよ」
 機械音をあげて、四両のメーサー殺獣光線車が、そのパラボラをヨルムンガントへ向けて照準する。才人だけではなく、ルイズも
ここへ来るまでにメーサー車のマニュアルを才人に教えられながら読み込んでいた。
 今、この場に限れば四両のメーサー車はその力をフルに発揮することができる。その力を見せるときは今だ。
 
 一方、シェフィールドは眼前に現れた、見たこともない兵器の群れに困惑させられていた。
「私のヨルムンガントを、ただの一撃で、だと? あそこまで、たっぷり二リーグ以上は離れているはず。あれは、トリステインの
虚無? いったい、なにをしでかした!」
 得意の絶頂で、想定外の横槍を入れられたことでさしものシェフィールドも動揺を隠しえなかった。

92 :
 倒されたヨルムンガントは、先住魔法のカウンターと強固な鎧のおかげで最大の戦列艦の艦砲にも耐えられるように作ってあるはずだ。
ましてや魔法など、エルフの先住はおろか、計算上では虚無の魔法でも跳ね返すことができるはずなのに、どうしてだ? あれはなんだ? 
あんなものがロマリアにあるなんて聞いていないぞ。まさか、あの男……
 しかし、シェフィールドの困惑はメーサー車部隊の放つ機械音で中断を余儀なくさせられた。パラボナが動き、そのすべてがこちらに
向けられる。むろん、シェフィールドに科学的な知識などはないが、彼女は直感的に背筋に冷たいものを感じた。
「う、なんだ? なにをしようとしている? いや、あれがなんであれ、たかが四両しかない。それに引き換え、こちらはまだ
九体のヨルムンガントがいる。なんだかわからないが、大砲の一門も積んでいない、あんな車に負けるわけはない!」
 シェフィールドは意図して不安を無視することに決めた。見たことも聞いたこともない敵の正体など、考えてもわかるわけはない。
ヨルムンガントがやられてしまったのは事実だが、まだこちらの戦力はじゅうぶんだ。なにかする前に数で押しつぶしてやる!
 
 だが、焦ったシェフィールドは勝負を急ぎすぎていた。彼女の前に現れたのは、一時期地球最強と呼んでも過言ではなかった
対怪獣兵器なのだ。
 メーサー砲の照準モニターに映ったヨルムンガントに向けて、才人はついに喉から声を絞り出して叫んだ。
「全車、攻撃開始!」
 その瞬間、メーサー砲のパラポラが白熱光に包まれ、中央部から収束された稲妻状の光線がいっせいに放たれた。
四条の白色の雷のクインテット、それは空気を焦がす電子音を奏でながら先頭を走っていたヨルムンガントの胸や腹に
それぞれ直撃し、いずれも鎧もカウンターも関係なく爆砕してしまったのだ。
 白煙をあげて崩れ落ちるヨルムンガント。光線が命中した箇所は焼け焦げて、もうヨルムンガントは動けない。
 勝利の笑みを浮かべる才人とルイズ。そして破壊されたヨルムンガンドを見て、絶望の淵にいた水精霊騎士隊と
銃士隊の胸には希望の灯が赤々と燃え滾ってきた。
「すげえ! サイトの奴、稲妻を吐き出す箱なんて、とんでもねえもの持ってきやがったぜ」
「あいつには、いつもながら驚かされるな。よしみんな、今のうちに移動するぞ。軽傷の者は重体の者を助けて後退だ。
うかうかしてると巻き添えを食らうぞ」
 大急ぎではじまった撤退。しかし彼らの心に敗北感はなかった。反省すべき点は多いが、後悔していても始まらない。
自分たちはやれる限りのことをした。あとは才人を信じてまかせるのみだ。
 対してシェフィールドは、今度こそ信じられなかった。
「なんなのよ、あの雷は! こ、このヨルムンガントを」
 圧倒的な破壊力、これがメーサー殺獣光線車の放つ収束マイクロ波の威力であった。マイクロ波、一言で説明すれば
電子レンジでものを温めるのに使われているものと思ってもらえればいいが、それを格段に強力にしたものである。
照射された収束マイクロ波の光線は、対象に命中すると分子を超振動させて水分を一瞬で沸騰させ、焼き尽くす。
 ただし、分子運動に働きかける特性上、水分を含まない金属や無機物に対しては効果が軽減してしまうのだが、
ヨルムンガントはゴーレムであってロボットではなかったのが災いした。鎧の下の本体には、機動力を上げるために
擬似的な生体部品が使われており、それには当然大量の水分が含まれている。 

93 :
 つまり、ヨルムンガントに照射されたメーサーは、その高出力でカウンターと鎧を貫通し、本体を瞬間過熱して焼き殺したのだ。
 この殺傷力はすさまじく、普通の生物の何倍もの生命力を誇る怪獣の細胞すら焼き尽くすことができる。まさしく自衛隊の
切り札なのだ。
 シェフィールドは不幸にもそのことを知らなかった。メーサー車が、対怪獣用兵器だと知っていたら、ヨルムンガントでは
正面対決は無理だと判断しただろう。が、あいにく才人はそこまで懇切丁寧に事前説明してやるようなサービス精神はなかった。
 あっというまに四体を撃破され、手持ちの戦力が半減してしまったシェフィールドは、今度こそ危機感を強くした。
「くうっ……馬鹿なっ」
 残念だが、敵の兵器の威力はヨルムンガントの耐久力をはるかに上回っているようだ。やられたヨルムンガントは
完全に破壊され、二度と使用はできそうもない。次の攻撃を受けたらひとたまりもない。次の、次の指令はどうする!?
「そうだ、散れば。散開して、あの兵器の照準を混乱させればいいのよ!」
 とっさにシェフィールドは、砲兵を相手にする際の戦法をとることにした。ヨルムンガントの瞬発力はほぼ人間のそれに
相当する。普段はその防御力にものをいわせて回避はほとんどおこなわないが、やろうと思えば左右に素早く跳躍するとことが
可能なのだ。巨人の体躯に素早さを加えれば、大砲などでは照準が追いつかない。そして戸惑っているところに一体でも
接近できれば、あとはこちらのものだとシェフィールドは自分の策に自信を持った。
 ただし、シェフィールドの基準にしたハルケギニアの砲兵と、メーサー車の射撃性能には大きすぎる開きがあった。
 散開し、明らかに照準を外しにきたヨルムンガントたちを見て、才人は慌てるでもなくほくそ笑んでいた。
「ボケが、そんなトロさで逃げられるとでも思ったか。みんなの痛み、のしつけて返してやるぜ!」
 すでに各メーサー車には次のターゲットがセットされている。この状態になってしまうと、あとはロックされた目標へと
自動追尾による攻撃が継続されるのだ。コンピューターによるオート制御、ハルケギニアの人間では想像のしようもない。
 しかも、それだけではない。メーサー車の利点はもうひとつ。それは、放射を継続しながら敵を追えるという点だ。
 シェフィールドは、ヨルムンガントを散開させて、これで一気にやられることはないだろうとほっと息をついた。しかし、
次の瞬間には自分の甘さを思い知らされた。メーサー車はパラボラから光線を放ち続けたまま放射機を旋回させ、
逃げるヨルムンガントに追い撃ちをかけてきたのだ。
「稲妻が、追ってくる!?」
 森の木々を焼き切りながらメーサーが追尾してくる。ヨルムンガントは必死で走るが、あっというまに追いつかれて、
肩を撃たれ、足を撃たれ、倒れこんだところに集中攻撃を受けて破壊されていった。
 シェフィールドの誤算、それは狙いをつけてから撃ってくる”点”の攻撃なら回避のしようもあるが、撃ちながら狙ってくる”線”の
攻撃は容易には避けられないということを知らなかったことだ。メーサー車は素早く動き回れる怪獣を撃てるよう想定して
開発され、唯一の実戦投入となった怪獣との戦いでは、人間並みに素早く動き回るそいつを逃がさずに一方的に打ちのめす
だけの射撃性能を見せているのである。
 しかし、メーサーを放射したまま怪獣を追尾するには並大抵ではまかなえないほどの電力が必要となる。そのため、
メーサー車の心臓部には原子炉が搭載されており、小型発電所とさえ言っていい。その大電力にまかせて長時間
放たれるメーサーの威力は、通常の光線砲を大きく上回るのだ。

94 :
 森の中に倒れこんでのた打ち回るヨルムンガントを容赦なく焼き尽くしていくメーサー砲部隊。四両のメーサー車が
再びそれぞれ一機ずつのヨルムンガントをくず鉄と土くれに変え、ここに三分と経たずしてシェフィールドのヨルムンガント
部隊は壊滅した。
「お、おのれ。おのれおのれっ! バケモノたちめ」
 自分とジョゼフのために勝利の美酒を運ぶはずだった人造の巨人兵たちは、その靴底で蹂躙してきたロマリア軍と
同じように、圧倒的な力によって抵抗することもできずにねじ伏せられた。残ったのは、自分が乗っている一体のみで、
シェフィールドはその一体とともに森の中に伏せて隠れ、時間を稼ぐことしかできなかった。
「この私が、こんな屈辱を……おのれ、おのれえっ」
 全力を出したつもりでも、まだ相手を過少評価していたことをシェフィールドは思い知らされていた。
 悔しいが、敵の秘密兵器はヨルムンガントなど歯牙にもかけないくらい強力らしい。あんなものがあることが
わかっていたら……いや、勝負を焦って突貫してしまったのは自分だ。最初の一体を一撃で倒されたときに警戒して
後退していたら、追撃を受けたとしても数体は残ったかもしれない……いいや、それこそ後知恵だ。終わった後なら
なんとでも言える。問題は、どうやってあの化け物たちを倒すかだ。
 思えば最初にロマリアを攻めるよう進言したのは自分だ。なのにこの醜態では、自分がジョゼフさまの顔に泥を塗ってしまう。
敵にあんな兵器があるのでは、ロマリア占領など不可能だ。まだどれだけあるかわからないが、両用艦隊で空襲を試みても
上空にたどり着く前に全艦撃沈されてしまうのが関の山だろう。
「だがせめて、あの鉄の箱だけは破壊しなくては……ジョゼフさま、私にお力を」
 これだけはと、肌身離さず持っているジョゼフの肖像画を見つめてシェフィールドは決意した。
 自分に残った手札は、ヨルムンガントが一体に、近空にいる両用艦隊。これをそのままぶっつけても、全滅させられるのは
火を見るより明らかだ。特に両用艦隊はロマリア侵攻の要、絶対に消耗するわけにはいかない。
「ならば、理不尽なバケモノには理不尽な怪物を当ててやる。できれば、私だけの力でジョゼフさまに勝利を献上したかったが、
もはや是非もない」
 シェフィールドは最後の切り札を投入することに決めた。
 怪獣サラマンドラが雄たけびをあげて、ヨルムンガントの倍以上の巨体で森を圧しながら進んでくる。
 対し、才人も勝利ムードをぬぐい捨てて、緊張した面持ちで照準機の中の巨体を睨んでいた。
「来たなサラマンドラ。ようやく本命がご到着ってわけだ」
「サイト、この車の火力で、あいつを倒せるの?」
 ルイズが、引きつった声を出す才人に不安げに尋ねた。
「わからねえな。ただの怪獣ならともかく、あいつは特別だ。気を抜くと、死ぬぜ」
 サラマンドラがいかにやっかいな怪獣かは、頭に叩き込んであるつもりだ。初代はUGM、二代目はGUYSを相手に猛威を
振るい、一筋縄ではいかない相手だということは重々承知している。
 一番確実な方法は、ウルトラマンAに変身することだが、ウルトラリングは光らず、またキリエルとの夜以来、ルイズにも
才人にもエースの声は聞こえなくなっていた。
”きっと、今のおれじゃあウルトラマンになる資格がないってことなんだろうな。違いない……今のおれはとんでもない
ヘタレに成り下がっちまった。ごめん北斗さん、今のおれには正義がなんなのかわからなくなっちまった。だからおれは、
今日だけは利己的に戦ってやる。おれの仲間を傷つけたシェフィールド、全力でてめえは叩き潰してやる”
 自分の痛みなら我慢もできる。しかし大切な人を傷つけられる痛みは耐えられるものではない。
 死神にさらわれかけたミシェルを見たときに才人の胸を芽生えた、焼かれるような、熱すぎる思い。とても押さえつけられるものではない。
 また、ルイズも、激情にとらわれた才人の危うさを感じて彼に寄り添う。
「サイト、落ち着いて。あんたひとりだけの戦いじゃないのよ」
「わかってる、わかってるよ……くそっ、死なないでくれよミシェルさん。みんなの仇は、おれが討つ!」
 出口の見えない暗い迷宮をがむしゃらに走る才人。戦う意義を見失って、それでも戦うその先に真実の出口はあるのだろうか。
 
 メーサー殺獣光線車vs怪獣サラマンドラ。
 才人vsシェフィールド。
 ハルケギニアの明日を賭け、避けられない戦いの火蓋が、今切って落とされる。
 
 
 続く

95 :
以上です。メーサー車vsヨルムンガントのバトル編、お楽しみいただけたでしょうか。
この話のために×メカゴジラほかいろいろ見直してみましたが、やはり東宝映画の超兵器は最高のデザインと演出です。
語りだしたらきりがないですが、こうして得られたノウハウがウルトラシリーズも支えていたんですね。
 
本作のメーサー車は昭和シリーズの六六式をベースにしていますが、演出や展開の都合でvsシリーズをやや混ぜているところもあります。
そのため、やや似て非なるものと見てもいいでしょう。
才人が扱えることに関しては、GUYSの勉強の成果ということでお願いしますね。いやほんと。
 
では次回、決着です。トリコの映画も見てきてパワーももらったし、がんばって書くぞっ!

96 :
乙。
ウルトラマンらしくはないけれど、人としては当然の怒りだわな。
シェフィールドはここではどうなるんだろ。
外道には外道なりの死に方がお似合いだと思うが・・・。

97 :
ウルトラマンの人、乙ですー
最近、人が少なくて寂しいのう

98 :
原作者が亡くなって勢いが落ちた気がする

99 :
お前ら
精神を加速させろ

100 :
召還するのはイザベラかテファでも構わんのだろうか?

101 :
まったくかまわない。虚無じゃないタバサやアンリエッタが召喚したのだってごまんとある

102 :
ここを毎日覗いてる奴は何人くらいいるんかな

103 :
ルイズがワルドを召還する話か

104 :
書き手さんも何年も更新できてないと
続き書いたけど投下しにくいみたいなのあるのかな
別に間空いたからって投下しちゃだめとかないよな?

105 :
むしろ数年ぶりに投下とか小躍りして喜ぶレベルで嬉しい

106 :
ウルトラ乙
やっと規制が解けたここんとこの規制のひどさはたまらん
とけたと思ってカキコすりゃ次の日には規制喰らうし
おかげで満足に乙すらできん

107 :
>>102
いるさっ!ここに一人な

108 :
>>106
壺買えよ

109 :
投下以外であんまり書き込まない場合が困る

110 :
雑談してもええんやで。リレー投稿とか

111 :
神撃のバハムートもキャラが豊富になってきたし、いろいろ想像できるかな
 
ルシウスを召喚したら、傭兵になったりヴァンパイアハンターになったりとりとめがなくてルイズにあんたなにがしたいの?とツッコまれる
 
リテュエルを召喚したら、ギーシュほか言い寄ってきた男たちに原因不明の災害が降りかかる
 
パメラを召喚したら、ワルドがロリコンマザコンなど悪口雑言の雨で心をへし折られる
ミレーヌを召喚したら、学院が恐怖劇場に
 
ヴァンピィを召喚したら、釘宮?ナンノコトデスカ?

112 :
ルイズが釘宮キャラを召喚したら同じ声だろのネタはもう鉄板だな

113 :
ルイズ以外も皆同じ声というのもアリか
ルイズ:月詠
ジョゼフ:橙次
ヴィットーリオ:巴衛
ティファニア:アンゴル=モア

114 :
「申し上げます!ウェストウッド村にスーパーサイヤ人が現れました!」

115 :
ギーシュ:薬売りさん

116 :
ルイズ「・・・げる」

117 :
>>116
ベヘリット召喚したのもあったな、出だしだけだったが
『あれって大切な存在じゃないと捧げる対象にならないから、学園の連中じゃ駄目なんじゃね?』
と突っ込みが入ったんで、予定してた続きが書けなくなったようだが

118 :
普通に考えると姉ちゃんだよな

119 :
家族と一応憧れの対象だったワルドも、捧げる対象にはなるな
というか目の前で裏切るワルドが一番書きやすそうだw

120 :
ワルドはならんやろ
再会するまで忘れられてたようなもんやのに姉ちゃんに匹敵するわけがない

121 :
ワルドが捧げたところで止まってるアレの続きとか気になるよなぁ

122 :
メイド・イン・ヘヴンによってスレが過疎するか

123 :
>>118
どっちの?

124 :
カトレアはナメクジ領主の娘ポジ。
最初の捧げ物はその他の家族で十分じゃね。
ナメクジ領主が自分を裏切った妻で使徒化したから、ワルドでもいけるかもね。

125 :
ルイズはツンデレの鏡なのだから周りのあらゆるものを大事に思ってるだろう。
なんだかんだでキュルケとも仲いいしな
初期の性格が悪いのは劣等感の現われだし

126 :
>>124
あれは裏切られても一番愛してたからやろ
再会するまでほとんど忘れられてるようなワルドとは違うと思うわ

127 :
サイトを生け贄にルイズを召還

128 :
テスト

129 :
大変ご無沙汰をいたしております
随分間を開けてしまいましたが、よろしければ13:40ごろから以前の続きを投下させてください
その間続きを待っているといってくださった方々には大変感謝しております
大変うれしく、勇気づけられる思いがいたしました
まことにありがとうございました(御辞儀)

130 :
 
「お、おい? ……あれって、先住魔法じゃないか!?」
「一体何なんだ、どうして亜人がメイドの手伝いをしてるんだ……!」
「あの子は確か、二年のヴァリエールが召喚した亜人よ……朝もちょっと見かけたわ」
 
ディーキンの様子を遠目に伺いながら、生徒らがひそひそと密談を交わしている。
そうして食堂中の注目を集めながら、ディーキンはまるで誰かに話しかけるように空中に向かっててきぱきと命令を出していた。
 
「えーと……。
 我の契約したる見えざる従者たちよ、アー、……テーブルの空いた皿を回収せよ。
 ……アア、それとそっちの人はケーキの皿を持っといてね」
 
その命令に応じて、自然に皿が空中に浮かびあがり、ふわふわと運ばれていく。
まるで見えない誰かが皿を持ち上げたかのようだ。
いや、実際にそうなのだ。
 
ディーキンの傍には現在多数の《見えざる従者(アンシーン・サーヴァント)》―――の影術版、が従っている。
《影の召喚術(シャドウ・カンジュレーション)》を使い、《従者の群れ(サーヴァント・ホード)》という呪文を模倣して作ったものだ。
妙な命令の文句は、本から得た知識を元に先住魔法っぽい感じを演出しようとディーキンなりに工夫したものである。
 
ディーキンの冒険者仲間のナシーラ、ドロウの暗殺者にして練達のウィザードである彼女は、状況に応じて様々な呪文を巧みに活用する術を身に付けていた。
彼女からはディーキンも大いに学んだものであり、今回のような影術呪文の有効な使用法もそのひとつだ。
 
まあ冒険中こういう呪文を使うのは大抵当のナシーラの役だったし、ましてや冒険のためではなく雑用などをさせるために使ったのはこれが初めてだが。
 
シエスタともう一人のメイドは運ばれてきた皿からケーキを切り分けて配っていく。
普段はかさばって重たいたくさんの皿に苦労するものを、今日は代わりに運んでもらえて嬉しげである。
彼女らも、食堂の生徒らも、未知の魔法に対する戸惑いや恐怖は最初多少あったようだが皿を運ぶだけで別段無害だと分かるとすぐに慣れたようだ。
 
 
 
「へえ、あれが先住の魔法なのね。
 たくさんの皿を別々に運んで……、この学園の精霊と契約でもしたのかしら。
 あの子はまったく、授業中からこっちを飽きさせないわねえ」
「…………」
 
キュルケとタバサも、他の生徒に混じってディーキンの働く姿を見つめていた。
タバサはデザートをぱくぱくと平らげつつ、横目で興味深くディーキンの様子を見守り、キュルケの話には曖昧に頷きを返す。
 
タバサは午前中にディーキンと話をして、彼の呪文が先住のそれとは違う事を既に知っている。
だが許可もなく勝手に話していい事ではないので、キュルケにはなにも言わなかった。
まあ彼はキュルケのことも信頼しているようだし、もちろん自分も話しても問題はないと信じているが、それでも一応本人に確認はするのが筋だろう。
 

131 :
(あれも…風の力は使っていない)
 
手も触れずに物を宙に浮かべて移動させるとなるとハルケギニアの常識では風系統以外は考えにくい。
もしくはコモン・マジックの念力などだ。
 
しかし、彼は見たところ口語の命令を出しただけであとはそちらに注意を払ってもいないのに、複数の作業を同時にこなしている。
テーブルのあちこちから皿を取りあげて移動させたり、浮かべたまま保持したりといった具合だ。
系統魔法では風にせよコモンにせよ、そんな作業を集中した様子もなくしかも複数同時に行うことはほとんど不可能である。
精霊を使役して作業に当たらせる先住魔法ならばそれも可能だろうが、彼は自分の呪文は系統魔法に近いもので、先住ではないといっていたし………。
 
本当に興味深い亜人だ、とタバサは改めて思った。
 
 
 
「こんにちは、ディーキンは注目してもらって嬉しいよ。
 ディーキンはコボルドのバードで、冒険者、今はルイズの使い魔もしてるの。
 
 コボルドに見えない? ここではよくそういわれるよ。
 きっとここのコボルドとディーキンは違う種類なんだと思うけど……」
 
当のディーキンは、“従者”に時折指示を出すだけなので手持無沙汰…という事もなく、皿を運ぶ傍ら自分の噂をしている生徒や教師らに挨拶をしていた。
最初は自分も皿を運ぼうかと思ったが背が低すぎてかえって迷惑そうなので止めて、この機会に他人と交流を深めることにしたのだ。
注目を浴びたらそれに答えるのは、バードとしても当然の事である。
 
教師や生徒の中には戸惑いながらも挨拶を返したり、質問をするなど会話に応じてくれる者が大勢いた。
中には、ろくに返事をしない者や見下して鼻で笑う者も、もちろんいた。
 
ディーキンは言うまでもなくそのどちらであれ上機嫌で対応していた。
コボルドだと言うだけで蔑まれ、追い出されるか殺そうとされるのが当然のフェイルーンから見れば、嫌々でもとにかく存在を許容されるというだけで上々の扱い。
ましてや会話に応じてまっとうな相手として扱ってもらえるなど、望外の厚遇というほかない。
見下された程度で気分を害したりはしないし、特に好意的な対応をしてくれた相手の事は敬意を持ってしっかりと覚えておいた。
 
そうこうしているうちに、ルイズのいる二年生のテーブルのところまで給仕が進む。
午前中の授業での一件もあってか、この辺りの生徒らにはディーキンは特に好意的に受けいれられているようだった。
 
「ちょ、ちょっとディーキン……、さっきから一体何してるのよ?」
「見ての通り、ディーキンは食事を食べさせてもらったお礼にお手伝いをしてるの。
 はいルイズ、ケーキをどうぞ」
「食事をもらうくらい当然の権利じゃない、お礼なんて必要ない……、
 いえ、ま、まあ悪い事でもないから、別にあんたの好きにすればいいけど!」
 
無闇に目立つなといったのにまたこんなことを……と文句を言いかけたが、ディーキンが首を傾げたのを見ると慌てて口を噤む。
また今朝キュルケと揉めた時のように、逆に意見される気がしたのだ。
あの時は別に責められたというわけでもなかったのだが……、なんというか酷く居心地の悪い気分になった。
 

132 :
ルイズは頑固でプライドが高く、人に遠慮して自分の主張を引っ込めたりは滅多にしないタイプである。
少なくとも、クラスメートや平民の使用人などに対するときはそうだ。
だが、もちろん誰に対してもそうだというわけではない。
厳しい母親や父親、上の姉などに対するときには少なからず萎縮するし、優しい下の姉に対しては素直で甘えがちになる。
使い魔はメイジにとっては無二のパートナーなのだから、家族と同様特別な存在であって当然で、別段不思議はないといえばない。
正規の契約もしておらず召喚してまだ丸一日も経っていないというのにもうそんな気分になるというのは不思議だったが……、事実なのだから仕方がない。
契約を結ばずとも使い魔と自分との間にそれほどの絆があるとしたら、それは嬉しい事に違いないのだし。
…なんだか主従の立場が逆なような気もするが…、ディーキンの方は、自分のことを一体どう思っているのだろうか…。
ルイズはそんなとりとめのないことをぼんやりと考えつつ、ディーキンの仕事ぶりを眺めながらゆっくりとケーキを口に運んだ。
 
ディーキンがしばらく給仕の手伝いや挨拶をして回っているうちに、奇異の目で周囲から眺めていた教師や生徒らも次第に状況に慣れてきたらしい。
特に二年生のテーブルでの和やかな様子を目にしたあたりで彼らの大半はすっかり緊張を解き、この奇妙な亜人から視線を外すと自分たちの雑談に戻っていった。
 
 
 
やがてディーキンは何やら一風変わった装いのメイジのところへやってきた。
金色の巻き髪にフリル付きのシャツを着た整った面立ちの少年で、薔薇を胸元のポケットに挿している。
ルイズと同じ二年生のテーブルについているが、他の生徒達とやや服装が違うために少しばかり周囲から浮いていた。
 
この人は授業中にミスタ・グラモンと呼ばれていた…、確か土のメイジだとディーキンは思い出した。
胸元に挿してある薔薇は、演習の時に彼が手に持って振っていたことから察するに恐らく変則的な形状をしたメイジ用の杖だろう。
先程は彼も他の生徒と同様ディーキンの方に興味の目を向けていたようだったが、じきに慣れて興味を失ったらしい。
今ではディーキンには目もくれず、周囲の友人たちとの雑談に花を咲かせている。
 
「なあ、ギーシュ! お前、今は誰とつきあっているんだよ!」
「誰が恋人なんだ? ギーシュ!」
 
どうやらミスタ・グラモンにはギーシュという名前もあるらしい。
するとフルネームはギーシュ・グラモンだろうか?
いや、ルイズやキュルケの例から察するに、他にもごてごてした言葉がくっついたもっと長い名前かも知れない。
 
そんなことを考えつつ、ディーキンは彼らの席の空いた皿を従者に回収させてはケーキを置いていく。
午前の授業中にもう名前は覚えてもらっただろうし、会話の邪魔をするのも迷惑だろうと考えて声はかけず、軽く会釈するだけにしておいた。
ギーシュは気付きもせず、友人の質問にもったいぶって芝居がかった返答を返した。
 
「つきあう? 僕にそのような特定の女性はいないのだよ。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」
 
……何やらえらく自分に陶酔しているようだ。
ディーキンにはその姿がまるで安っぽい舞台で自分をアピールするのに夢中な駆け出しのバードのように見えて、内心で苦笑いした。
 

133 :
「………ン?」
 
その場を立ち去ろうとしたちょうどそのとき、ディーキンはギーシュのポケットから何か落ちたのに気付く。
中に紫色の液体が入った硝子の小瓶だ……ポーションかオイルの類だろうか?
あるいは、フェイルーンにでは見られない変わったマジックアイテムかも知れない。
 
一瞬正体を調べてみたい誘惑に駆られたが、今は仕事中でゆっくりそんなことをしている時間はない。
第一、他人のものを許可もなく調べ回すなど失礼だろう。
ディーキンはちょっと屈んで小瓶を拾うと、ギーシュの服の裾を引っ張った。
 
「ええと…、ギーシュさん?
 あんたのポケットからこれが落ちたよ?」
 
ギーシュはしかし、そちらを見ることなく無視して友人と話し続ける。
 
ディーキンはそれを見て、少し不思議そうに首を傾げた。
 
今、この少年は会話に夢中で気付かなかったのではない。
確かに一瞬だがこちらの方に視線を向け、僅かに困った様子で顔を顰めた。
その上で今、気付かぬふりをしているのだ。
 
そこまでは気付いたものの、それが何故なのかは流石に分からなかった。
何かこの瓶を持っていたことが知れるとまずい理由でもあるのだろうか……、もしや盗品の類とか?
判断がつかないが、この瓶をどう扱うのがいいだろうかとディーキンは少し考え込む。
 
だが、すぐにそんな思案は無用になった。
 
「あの、グラモン様……。ポケットから瓶が落ちましたよ?」
 
その様子を見ていたシエスタがギーシュは気付かなかったのだろうと判断し、ディーキンの傍に屈んでそっと瓶を取るとそう言って机に置いたからだ。
 
ギーシュは苦々しげにシエスタを見つめると、その小瓶を押しやる。
 
「これは僕のじゃない。君は何を言っているんだね?」
「え? ですが、私は確かに落ちるところを…」
 
そうこうしているうちに、ギーシュの友人たちが小瓶の出所に気付いた。
 
「……おっ? その香水はもしかして、モンモランシーの作った物じゃないのか?」
「そうだ! その鮮やかな紫色は間違いない。
 モンモランシーが自分のためだけに調合しているはずの、自慢の香水だ!」
「そいつがお前のポケットから落ちてきた、ってことは…、
 つまり…、お前は今、モンモランシーとつきあっているんだな!?」
 
(ふうん…… つまり、付き合ってる人の事を知られたくなかったのかな?)
 
ディーキンは納得したような困惑したような、微妙な気分で目をしばたたかせた。
彼が無視を決め込んだ理由はどうやら付き合っている女性との関係を知られたくなかったためらしいが…。
人間、特に若い人間がそう言ったことに気恥ずかしさを感じて隠したがる場合が多い、ということはいろいろな物語などを読んでちゃんと知っている。
とはいえ理屈はまあ分かっているが、感情的には今ひとつ理解できないのだ。
 

134 :
コボルドの雌雄は、そんな微妙な感情の機微を弄ぶような付き合い方は滅多にしないのである。
最初はそう言った物語を読んでも、一体何をやきもきしたり顔を赤くしたりしているのか理解できず、仲間たちにいろいろ尋ねたりしたものだ。
関係を誇って触れて回るのなら、慎みはないかもしれないがまだしも理解はできる。
だが隠す必要がどこにあるというのだろう?
深く愛せる、素晴らしいと思える相手なら、関係を知られることをどうして恥じる必要がある?
そんな態度を取ること自体、好きになった相手に失礼じゃないのか?…とディーキンには思えるのだ。
まあ、それとは別に、小瓶の中身の正体が判明したことはスッキリしたが。
 
それはさておき、ギーシュは友人たちに問い詰められてしどろもどろに反論している。
 
「ち、違う。いいかい、彼女の名誉のために言っておくが……」
 
そのとき、後ろの一年生たちのテーブルに座っていた茶色のマントの少女が立ち上がり、ギーシュの席に向かって歩いてきた。
栗色の髪をした可愛い少女だったが、今にも泣きそうな顔をしている。
 
―――いや、ギーシュの元まで来ると、本当にボロボロと涙をこぼしはじめた。
そして嗚咽交じりにギーシュを睨み、問い詰める。
 
「ギーシュさま……っ、や、やっぱり、ミス・モンモランシーと……」
「い、いや……、彼らは誤解しているんだよ!
 いいかい、ケティ、僕の心の中に住んでいるのは君だけ……」
 
さっきは薔薇はみんなのために咲くとかなんとか言ってたくせに、とディーキンは内心で肩を竦めた。
知らん顔を決め込んだのは、彼女との関係を隠したかっただけではなく二股がばれるのを怖れたためでもあったらしい。
 
それにしても、下手な<交渉>である。
あれじゃ説得は無理だね……とディーキンが思っていると、案の定話し合いはあっさりと決裂し、ギーシュはケティとかいう少女に思い切り頬を引っ叩かれた。
 
「その香水があなたのポケットから出てきたのが、何よりの証拠ですわ……!
 もう知りません、さようなら!」
 
だがギーシュの災難はそれだけに留まらなかった。
ケティが泣きながら去っていくと、今度は二年生のテーブルの遠くの席から一人の見事な巻き髪の女の子が立ち上がる。
ディーキンの記憶によれば、確か彼女は先程の話題に出てきたモンモランシーという名前の少女だったはずだ。
彼女はひどく険しい顔つきで、靴音も高くギーシュの席までやってきた。
 
「モ、モンモランシー、誤解だ!
 か、彼女とはただ、一緒にラ・ロシェールの森へ遠乗りをしただけ……」
 
ギーシュは首を振りながら必死に冷静な態度を装おうとしたが、その顔色と額を伝う汗がその努力を台無しにしていた。
 
「…やっぱり、あの一年生に手を出していたのね…?」
「お、お願いだよ、『香水』のモンモランシー。
 咲き誇る薔薇のような顔を、そのような怒りでゆがませないでくれよ。
 僕まで悲しくなるじゃないか!」
 

135 :
モンモランシーは無言でギーシュの台詞を聞き流すと、テーブルに置かれたワインの瓶を掴んで中身を全てギーシュの頭に注ぐ。
それが済むと空になった瓶をテーブルに放りだし、そのまま一言も言わずに肩を怒らせて去っていった。
 
気まずい沈黙が場を包む。
が、当のギーシュはハンカチを取り出して顔を拭くと、首を振りつつ芝居がかった仕草で言った。
 
「やれやれ、あのレディたちは、薔薇の存在の意味を理解していないようだ」
 
―――当然のように周囲から白い目線が向けられる。
ディーキンは肩を竦めると、呆気にとられているシエスタらを促して仕事を再開しようとした。
 
しかし、それにギーシュが目をつける。
 
「君たち、待ちたまえ」
「……ン? 何かディーキンたちに用があるの?」
 
ディーキンらが立ち止まると、ギーシュは椅子の上で体を回転させ、さっと足を組む。
 
……空回り気味ではあるが、ひとつひとつの仕草がいちいち気取って芝居がかった少年である。
もしかして才能を磨けば、将来はいい芸人かバードになれるかも?……と、ディーキンはぼんやりと考えた。
 
「そこのメイド君、君が軽率に香水の瓶などを拾い上げたおかげで、二人のレディの名誉が傷ついた。
 どうしてくれるんだね?」
 
ギーシュはシエスタの方を睨んでそう言った。
 
「……え……?」
 
シエスタは突然の言いがかりに困惑し、自分が思いがけない災難に巻き込まれたと悟ってさっと顔を青ざめさせる。
 
「いいかい? メイド君。
 僕は君があの香水の瓶をテーブルに置いたときに、彼女たちのためにちゃんと知らないフリをしたんだ。
 使用人なら状況を察して、間を合わせるぐらいの機転があってもいいだろう?」
「そ、それは………、」
 
今度はシエスタの青ざめた顔にさっと赤みが差す。
不条理な物言いに反論したい怒りの気持ちと、貴族に逆らうべきではない、謝って事態をやり過ごしたいという規律感や怯えとの板挟みになっているようだ。
 
もう一人のメイドは怯えて萎縮した様子で、シエスタに援護の口出しをするのは無理そうだ。
周囲の生徒らは、おおむねギーシュを非難の目で見る者、事態を面白そうに見ている者、そして全く関心がない者、に分けられる。
今のところは、直接口を出す気がある者はいなさそうだ。
 
ディーキンはそれらの状況を確認してまた少し首を傾げると、口を開いた。
 

136 :
「…アー、ええと…、ギーシュさん?」
「……む? なんだね、ルイズの使い魔君。
 僕は今このメイドと話をしているのだ、君は関係ない」
「いや、そうでもないと思うの。
 だってその瓶を最初に拾ってあんたに渡そうとしたのはディーキンだからね」
 
ギーシュはそれを聞いて一瞬怪訝そうに眉を顰めたが、すぐに事の顛末を思い出して鼻を鳴らした。
シエスタの方は、話に割って入ったディーキンを驚いた様子で見つめている。
 
「ふん……、ああ、そうだったね。
 それを拾って、不作法にも会話の途中に僕の服を引っ張ってまで渡そうとしてきたのは君の方だったか?
 そのメイドは君の意を汲んで僕に瓶を差し出したってわけだ」
 
ディーキンはウンウンと頷く。
ギーシュは少し考え込むと、足を組んだままくるりとディーキンの方に向きを変えた。
 
不実な面もあるとはいえ、ギーシュは一応、自分を女性を守る薔薇だと自負している。
平民とはいえ見目麗しい少女よりは、出しゃばって給仕の真似事をしていたこの使い魔に責任を負わせて体面を取り繕う方がいいと思ったのだ。
 
「そうだな、確かに!
 元はと言えば君が本来メイドのするはずの仕事にでしゃばって、不作法な渡し方をしたことに問題があったんだ。
 使い魔なら使い魔らしく、主人の傍にいればいいものを……どうしてくれる?」
 
ディーキンはその言葉に軽く首を傾げると、じっとギーシュの方を見つめた。
この少年は軽薄だが、授業中などのこれまでの様子を見た限りでは(まあ、そんなに注意してみてはいなかったが)根はそう悪くない人物に思える。
ならば無闇に刺激しないようゆっくりと理を説けば<交渉>をまとめる事は充分にできるだろう。
そう考えて、話の運び方を頭の中で手早くまとめながら口を開こうとする。
 
だが、そこでまたしてもシエスタが割って入った。
 
「お、お待ちください!」
 
(……どうもさっきから、悪いタイミングでシエスタが動くね)
 
ディーキンは開き掛けた口を閉じると、少し困ったように顔を顰めてシエスタの方を向き……、
 
「お…?」
 
……驚いて、軽く目を見開いた。
 
つい先程まで、シエスタは怯えて青ざめ、体を震わせていた。
自分の不実を棚に上げた言いがかりに対する怒りも見て取れたが、それを堂々と口に出す勇気はなく。
理不尽でも使用人としての立場から規律に従い、じっと耐えようとしていた臆病で従順な少女としか見えなかった。
 
それが今は、まるで違う。
 
いや、今でも怯えているのは変わらないし、体も少し震えている。
だがその恐怖を懸命に押さえつけ、毅然としてギーシュの顔を正面から見据えている。
恐怖に青ざめながらも、不正に立ち向かおうとする意志がその顔から見て取れた。
 

137 :
ディーキンはそんな顔をよく知っている。
パラディンである“ボス”や、旅の最中に知り合った幾人かの高貴な天上界の来訪者たちが邪悪と対峙した時に浮かべる顔。
彼らとは比べようもないほど無様な姿ではあるが、それでも彼女からは一度それを知った者ならば決して間違えようのない、あの高貴さが滲み出ていた。
 
この世のものではない―――天上の高貴さが。
 
(やっぱり、シエスタは……)
 
一方そんな気配など感じ取れるわけもないギーシュは、話を遮られて不機嫌そうに彼女の方を一瞥すると、追い払うように軽く手を振った。
 
「なんだね、メイド君。
 君の非はこの使い魔君に気を利かせたつもりだったということで大目に見よう。
 もういいから仕事に戻りたまえ」
「そ……、そ、そ、そんな訳には、いきません!
 ディーキンさんには何の非もない事です……、お、お渡ししたのは私ですから!」
 
シエスタは青ざめて体を震わせながらも、勇気を振り絞るようにしてそう言った。
ギーシュは一介の使用人が自分に反論したことに少したじろいだ様子を見せたが、すぐに落ち着きを取り戻すと蔑んだような目を向ける。
 
「はあ……? いまさら何を言っているんだね。
 僕の話を聞いていたのかい? 彼は本来する必要のない給仕の真似事などをして、僕とあの女性たちに対して不作法を働いたんだよ」
「……〜〜!」
 
ギーシュの返答を聞いたシエスタは一瞬、悔しそうに表情を歪めて俯いたが……、
すぐに顔を上げると、はっきりと怒りのこもった目でギーシュを睨んだ。
 
「それは、……違います!」
「……何だと?」
「ディーキンさんは、私たちに食事を食べさせてもらったお礼だといって仕事を手伝ってくださっているんです。
 料理長や他のみんなの許可だって取っています、何も悪い事なんかしていません。
 ……それに、あなたの落とし物を拾って渡そうとしたことだって、善意からです。
 自分の不実さから招いた災難の責任を押し付けるために、非のない他人を悪者に仕立て上げようとするなんて!
 あなたのほうこそ、先程のお二方に謝るべきです!」
「なっ……、」
 
ギーシュはひどく困惑した。
まさか一介の使用人風情が、こうも公然と貴族を非難してくるとは。
さっきまではただ怯えて自分の非を詫びるばかりだったというのに、何故だ?
 
そんなギーシュの困惑をよそに、周囲の生徒たちはどっと笑った。
 
「そのとおりだギーシュ! お前が悪い!」
「平民のメイドにまでいわれるなんて情けない奴だな!」
 
それを聞いて、戸惑った表情を浮かべていたギーシュの顔にさっと赤みが差した。
理由はわからないが、いくらレディーといえども平民にこんな態度を取られ、大勢の前で恥をかかされて黙っているわけにはいかない。
 
「……どうやら、君は貴族に対する礼を知らないようだな。
 ここまで侮辱されたからには、女性といえど容赦するわけにはいかない」
 
ギーシュはゆっくりと立ち上がると胸元の薔薇を手に取り、シエスタの方に向けた。
 
「君に礼儀を教えてやろう。
 そのケーキを配り終わったら、ヴェストリの広場まで来たまえ」
 

138 :
 
アンシーン・サーヴァント
Unseen Servant /見えざる従者
系統:召喚術(創造); 1レベル呪文
構成要素:音声、動作、物質(糸切れと木片)
距離:近距離(25フィート+2術者レベル毎に5フィート)
持続時間:術者レベル毎に1時間
 術者は目に見えず姿形も精神も持たぬ力場から成る従者を作り出す。
従者は術者の命令に従って荷物の運搬や掃除、繕い物などの単純な作業を行える。
この従者の筋力は2(平均的な人間の筋力は10〜11程度)で、最大20ポンドまでの重量を持ち上げたり、100ポンドまでの重量を押し引きできる。
移動速度は通常移動で毎ラウンド15フィート(平均的な人間は30フィート)であり、実体を持たないので空中を移動することも可能。
この従者は攻撃は行えず、また範囲攻撃から6ポイント以上ダメージを負ったり、術者の現在位置から見て呪文の距離外に送り出そうとすると消えてしまう。
 
サーヴァント・ホード
Servant Horde /従者の群れ
系統:召喚術(創造); 3レベル呪文
構成要素:音声、動作、物質(小さな交差した棒に紐を何本も結んだもの)
距離:近距離(25フィート+2術者レベル毎に5フィート)
持続時間:術者レベル毎に1時間
 術者はアンシーン・サーヴァントと同様の従者を、2d6+術者レベル毎に1(最大15)体まで同時に作り出す。
バードの呪文リストには含まれていないが、シャドウ・カンジュレーションで効果模倣はできる。
ディーキンは1度の使用で平均22体従者を作り出すことができ、朝起きた時に詠唱すれば夜寝る時にもまだ効果が続いているほど持続時間も長い。
 
シャドウ・カンジュレーション
Shadow Conjuration /影の召喚術
系統:幻術(操影); 4レベル呪文
構成要素:音声、動作
距離:本文参照
持続時間:本文参照
 術者は物質界に併存する複製めいた世界、影界から影の物質を引き出し、それを使って物体や力場、クリーチャーなどの半ば実在する幻影を生み出す。
シャドウ・カンジュレーションはウィザード/ソーサラーの3レベル以下の任意の召喚術(ただし招来または創造の呪文のみ)の効果を模倣することができる。
影が本物であると信じた者に対しては呪文は完全な効果を及ぼせるが、意志セーヴによる看破に成功した者や意思を持たない物体に対しては本物の2割の効果しかない。
ダメージは5分の1になり、ダメージを及ぼさない効果は20%の確率でしか働かない。
またこの呪文で作られたクリーチャーは、看破の成否にかかわらず本物の5分の1のhpしか持っていない。
看破に成功した者には、シャドウ・カンジュレーションはぼんやりとした形で希薄な影の上に透き通ったイメージが重ねあわせられた紛い物に見える。
 

139 :
今回は以上となります
一学期の仕事が終わるまで、しばらく間があいてしまったのでちゃんと書けているか心配ですが…
できるだけ早く続きを書いていきたいと思いますので、
また投下の際には、どうぞよろしくお願いいたします
では、失礼しました

140 :
ディーキン乙
次も期待している

141 :
ディーキン乙。面白いです

142 :
ずっとまってた
これからもまってる

143 :
待ってました!ディーキン乙!
遂にギーシュに辿り着いたか。

144 :
新鮮なディーキンだぁ!ヒャッハー!
で、ディーキンの反応を見ていると、シエスタのご先祖はフェールンの人間。
しかもパラディンか何かの子孫…”ボス”の反応に比べているところから、シエスタもPC的な何かなのでしょうか?

145 :
来年6が配信されることも決定したしブレスオブファイアからなんか呼べないものかな

146 :
ギーシュがシモンを召喚して性格変わったりしねえかな

147 :
シモンって悪魔城シリーズの?
ヌッキヌキマッチョの有名なヴァンパイアハンターってくらいしか分らないし性格も不明
先祖のラルフや子孫のリヒター、ユリウスとかなら後発作品だけあって背景も語られてるが

148 :
悪魔城のシモンは、ジャッジメントで顔が夜神月になってたのがびっくりしたなあ

149 :
どうせなら黒歴史化してしまったGB作品、漆黒たる前奏曲の主人公ソニア・ベルモンドを呼んでほしい
当時新品を購入して頑張ってクリアしたこの俺としてはな!

150 :
ギーシュのもぐらで穴掘りシモンじゃないの?

151 :
>>150
それ

152 :
ブレスはクロスさせるにはちょっと強すぎる気もするな

153 :
理想郷で1本なかったっけ、ブレス

154 :
歴代のニーナの中から誰かを選ぶとしたら迷わずUを推す

155 :
●流出に伴ってトリバレしてるね

156 :
書き込み履歴もダダ漏れらしいから、●使って投下してた書き手とか戦慄モノ

157 :
ルイズに召還された別世界のワルドがレコン・キスタと戦うのか

158 :
ギーシュ「はいっ!!!はいっ!!!はいっ!!!はいっ!!!はいっ!!!(ゴヅンッゴヅンッゴヅンッゴヅンッ!!)」
ケティ「えぉ゛!!えぉ゛!!えぉ゛!!えぉ゛!!えぉ゛!!(ビグッビグッビグッビグッ)」
ギーシュ「はぁあぁぁっ…!!!昴ってきたきたきたあぁあぁぁあぁっっっ!!!!!!!(バッッ)」
ギーシュは貴族という檻にとらわれて身動きが取れなくなっていた昨日までの自分とともに衣服を脱ぎ捨てた
ギーシュの下半身に秘めた巨大なパワー、そびえ立ったタワー、アスファルトに網目状に入るような地響き
その全長たるや7cmと8mm
ギーシュ「むきききききききき!!!!!!うびっ!!!うひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!!!!!!(ビュアッ)」
ツバを辺りに飛ばしながらただただ笑う
ギーシュは、完全に狂っていた

159 :
ts

160 :
シモンといったらシモン・ムーランしか思いつかなかった
遊戯王関連の作品も復活しないかな。オーバーレイとかいろいろおいしそうなネタ増えたんだし

161 :
>>153
あったけどあれはなんつーか…ねぇ?

162 :
ジョゼフがキュアミューズを召還してロリコンに目覚める話も悪くない

163 :
リュウはXを除いてしゃべらない主人公だからキャラ立てが難しいな
Vからモモを呼んだらコルベールが狂喜しそうだ

164 :
猿飛ヒルゼンにルイズの先生やってほしい

165 :
ロリコンになったジョゼフか
タバサを見る目が変わりそうだな

166 :


167 :
このスレの100スレ記念のサイトがだいぶ前からつながらなくなってるね
どうしちゃったのかな

168 :
ブレスオブファイアは召還されても元世界で問題なさそうな
3のエンディングで石化する人あたりがよさそう

169 :
今晩は、無重力巫女の人です。
特に予定が無ければ、22時50分に67話投下開始と致します。

170 :
 血生臭い匂いと肉片、そしてコボルドの死体が散乱する深夜の川辺に幾つもの小さな影―――生きているコボルド達がうろついていた。
 先程まで地上を照らしていた双月が黒雲に覆われた今は、人に原初の恐怖をもたらす闇が支川辺を支配している。
 その中で蠢く彼らは焦げたバターの様な色の目玉を光らせ、ギョロリと動かしながら゛何か゛を捜していた。
 地面に横たわる同族の死体を避けて動く足には配慮というものがあり、死者に対する敬意があるようにも見える。
 もっとも彼らにそれを理解できる程賢く無いかもしれないが、自分たちの仲間゛だった゛モノを踏んではいけないという事は理解しているらしい。
 水が流れる清らかな音風で揺れる木々の騒音が合わさり、自然が奏でる音楽にはあまりにも不釣り合いな血祭りが行われた川辺。
 その周辺をうろつき回るコボルド達の中でたった一゛匹゛だけ、幾つもある内の一つである゛仲間゛の死体を見つめ続けている者がいた。
 死体の損壊は周囲のと比べればかなり酷く、右の手足がないうえに過剰としか言いようがない程に頭まで潰されている。
 あまりの惨たらしさに普通なら目を背けるようなものだが、そのコボルドだけはじっと見据え続けていた。
 まるでこの死体の無残さを記憶に残そうとしているかのように凝視するその姿から、明確な知性を感じ取れる。
 右手には彼らコボルドだけではなく、人間と敵対する亜人たちにとって天敵である人間たちが持つ棒状の゛武器゛と酷似した長い棍棒を握りしめてる。
 だが何よりも怖ろしいのは、この場にいる生きているモノ達の中で最も怒っているのが彼だという事だ。
 武器を持つ手の力を一切緩める事無く死体を見つめる彼の瞳には、静かな怒りが蓄積されている。
 彼の事をよく知る仲間たちは知っていた。怒り狂う彼を怒らせれば、文字通り八つ裂きにされることを。
 だからこそ他のコボルド達は声を掛けようともせず、彼の好きなようにさせていた。
 何よりもその仲間の死体は彼自身にとって、゛仲間゛という関係では済まない間柄なのだから。
 彼が死体を凝視し始めてから何分か経った時、その手に槍を持ったコボルドが二匹ほど森から飛び出してきた。
 既に匂いで察知していた川辺のコボルド達は驚くことなく、やってきた二匹に落ち着いて目を向ける。
 そんな時であった、今まで死体を見続けていたあのコボルドが顔を上げたのは。
「……斥候たちよ、私がいま欲しい情報を見つけてきたのだろうか?」
 親切な喋り方とは裏腹な殺意を含ませた彼の口から出てきた言葉は、驚くことに人間たちの言葉であった。
 ややトリステイン訛りの強いガリアの公用語を喋っており、失聴していなければすぐに分かるだろう。
 発音もハッキリとしておりうまく姿を隠して喋れば、天敵の人間すら騙すこともできる程だ。
 他のコボルドたちは彼の事を知ってか人間の言葉を聞いても驚かず、ジッと彼の姿を凝視している。
 斥候である二匹の内一匹がその言葉に応えてか、犬と似たような構造を持つ口に相応しい声を上げた。
 ガフガフと肉に食らいつく野犬の様な節操というものが見えぬコボルドの声が、辺りに響き渡る。
 彼は彼で仲間の声に耳を傾けていて、時折頷く動作などを見せている。
 やがて報告し終えたのか、喋っていたコボルドは口を閉じて一歩前へと下がっる。
 彼と一緒に聞いていた他のコボルドたちが、やや騒がしいと思えるくらいにざわつき始めた。
 それは決して狼狽えたり動揺しているというポーズではない。むしろその雰囲気から喜ばしい何かさえ感じられる。
 まるでこれから食べ放題飲み放題のパーティーへ行けるかのような嬉しさを、コボルドたちは感じていたのだ。
 何匹化が嬉しそうに鼻を鳴らし、喜びに打ち震えて犬の鳴き声を口から出す者もいた。
 斥候たちも同様で、自分たちの行いが皆の役に立ったと確信して互いに顔を見合わせている。
 その中でただ一匹だけ、喜びの感情を見せることなく口を閉ざしている者がいた。

171 :
 それは斥候が来るまで、見るも無残な死体と化したあの一匹見つめ続けていた人の言葉を喋る彼であった。 
 仲間たちに知られず棒を持つ右手に更なる力を入れていく彼は、もう一度足元の死体を見やる。
 物言わぬ骸と化し、地面に散らばる肉片の一つなった仲間の死体から得られる情報は少ない。
 ここで起こったであろう事を知らなければ、ただここで『ひどい虐殺があった』としかわからないのだ。
 他の死体も同様に惨く、同族のコボルドでなくとも他の亜人や普通の人間でも絶対に見たくないとその目を硬く閉じてしまうだろう。
 そしてこんな危険な場所に長居はできないと、すぐにでもここを離れる準備に取り掛かるに違いない。
 自分たちの命を一方的に脅かす道の天敵から、姿をくらますために。
 
 だが、ここにいるコボルド達は違う。
 否、正確にいえば彼らを率いるリーダー格には勇気があった。
 無法者たちの群れを率いる身として体力と知性を備えており、仲間たちを惹き入れる一種の゛才能゛も持っている。
 彼はその゛才能゛を用いて幾つもの戦いを勝利してきた、時に敗北したことはあったがそれは戦い方を学ぶ機会にもなった。
 森での暮らしに適し、メイジで無い人間を圧倒する亜人としての凶暴性、そして人並みの知性と人間には真似できない゛才能゛という名の力。
 それを駆使して多くの仲間たちと生きてきた彼にとって、今回の惨劇は到底許せるものではなかった。
 例えれば必死に考えて練り上げ、長い試行錯誤と挫折を経験した末に描きあげた絵画を遠慮なく切り刻まれた事と同じだ。
 
 だからこそ彼は決意していた。今回の屈辱は、決して安い代償で済ませるつもりはないと。
 取り返しのつかない事を起こし、無念を晴らそうと考えている。あの世へと旅立った仲間と――――唯一無二の『家族』の為に。
「明日の昼にその村へ奇襲を掛ける。メイジといえども人間共はそんな時間に来ると警戒していない筈だ」 
 それまで全員休め、明日はお楽しみだぞ。パーティーの招待状にも近い言葉を人の言葉で呟き、彼は踵を返した。
 彼の言葉を聞いたコボルド達は更に喜ぶ様子とは裏腹に、森は静かである。
 まるで明日の事を知っ動物たち逃げ出したかのように、息苦しい静寂が周囲一帯を包み込んでいた。

――――人間共め。弟と仲間の仇として全員血祭りに上げてくれるわ
 背後から感じられる楽しげな気配をその身に受けて彼は…、
 この群れのリーダーである゛コボルド・シャーマン゛は心の中でそう呟き、二度目の決意を誓った。
 

 
 赤い服越しに触れる雑草の鬱陶しさと、斬り落とされた左手首から伝わる猛烈な激痛。
 痛い、痛いと心の中で叫びながらも必死になって足を動かし、猪の様に森を掻き分けて疾走する。
 何処とも知れぬ暗い森の中を走る彼女が感じているのはただそれだけ。
 それ故に他の事が一切理解できず、今自分がどこにいるのかさえ知ら ない有様である。
 月明かりの届かぬ暗い場所を駆けずり回るが、彼女自身どこへ行こうか、何をしようかという事まで考えていなかった。
 ただただ走っているだけで一向にゴールが見えぬランニングを、黒髪の彼女はたった一人で行っていたのだ。
 そんな彼女であったが、たった一つだけ頭の片隅に浮かび上がる゛自分の後ろ姿゛だけは、忘れていなかった。

172 :
 黒い髪に紅白の服。それと別離している白い袖と、生暖かい風に揺れる真っ赤なリボン。
 これまで幾度となく鏡の前で見てきた姿が、こんな状況とは関係ないのにも変わらず頭から離れようとしない。
 何故?どうして?と考える余裕なと無論無く、彼女は左手から伝わる激痛にただただ泣いていた。
 赤みがかった黒目から涙が流れ、こぼれ落ちる無数の滴は彼女が踏みしめ土や掻き分けた雑草に飛び散り誰にも見られぬ染みとなる。
 しかし、彼女のランニングは思わぬ形で―――否、いずれはそうなっていたかもしれない終わりを迎える事となった。
 一歩前へと踏み出した右足に感じたのは草と土を踏みしめる感触ではなく、不安を募らせる虚ろさ。
 まるで足場だと思っていたモノが単なる幻であったかのように、右足だけがその虚ろな何かを踏みつけて沈んでいく。
 痛い痛いと心の中で叫んでいた彼女だが、この時だけはあっ…という驚いた様な声が口から出てしまう。
 涙を流す両目がカッと見開き、自分が゛足を踏み外した゛という事に気づいた時には、全てが手遅れであった。
 
 暗い森の中を彷徨う左手の無い少女が、崖の下へと落ちていく。
 まるでその辺の石ころを拾って投げるように、結構な速度で下にある川の中へと、グルグル回って落ちている。
 視界に映る景色が目まぐるしく変わる中…その身が激流の中へと入る直前、彼女はある言葉を叫ぶ。
 何も考えられなかった頭の中に浮かんできたその一言を、彼女は思い出したかのように、彼女は叫んだのである。
 ただ一言――――――「レイム」と。
 その瞬間であった、今まで頭から離れなかった゛自分の後ろ姿゛が、スッと消え去ったのは。


 トリステイン、特にラ・ロシェール近辺の気温は朝限定だと言えば、初夏にも関わらず比較的涼しい地域だ。
 森林地帯は木々が木陰をうまく遮って涼風を運んでくるために、暑い地域から来る者はその快適さに驚くことは珍しくも無い。
 その為か避暑を目当てにここで休息を取る野生動物や野鳥は後を絶たず、周辺の村に住む人たちの糧となっている。
 時折熊や狼と言った猛獣や、オーク鬼にコボルド等の亜人たちも足を運ぶために、決して安全な場所とも言い切れない。
 人々が開拓する前から続いてきた食物連鎖の輪は、今もなお安定した形を保ち続けていた。
 そんな森の中にある一本の川。その近くに生えている大木の根元に腰を下ろす、一風変わった姿をした女性がいた。
 異国情緒漂う紅白の衣装に別離した白い袖、そしてその下には水着にも似た黒のアンダーウェアと白いサラシを巻いている。
 髪の色はハルケギニアでは珍しい艶のある黒で、腰まで届く長いソレを抱え込むようにして左腕に乗せている。
 顔はといえば明らかに美人と言われる形をしているが、この大陸ではお目にかからぬ顔立ちをしている。
 極少数だか知っている人間が近くにいたなら、間違いなく「東方の者」と言われていたに違いない。

173 :
しえん

174 :
 こんな西の国の端っこにいる謎の美女は、木陰にその身を休ませて一人静かに悩んでいた。
 おかしい。何度見たって…どう考えても、色々とおかしい。
 朝靄ただよう森の中で一人呟く彼女は改まった様子で、気難しそうに首を傾げる。
 もうすぐ昼食を食べたくなるような時間ではあるが、考えすぎでお腹が空いた事すら忘れてしまっている。
 一体そこまでして何を悩んでいるのか。それは他人から見れば極々単純であり、本人からしたら非常に重大な事であった。
 首をかしげていた女性が仕方ないと言いたげに「ふぅ…」という気の抜けるようなため息を突いた後、下ろしていた腰をゆっくりと上げる。
 シャランと揺れる黒髪が木漏れ日に照らされ、周囲で息をひそめる小動物たちにアピールしている。
 その髪を持つ本人はそんな事露知らず、近くにある川へ近づくと自分の姿を水面に映す。
 緩やかに流れる川が自分の姿を寸分違わずにはっきりと映したところで、彼女は改まったかのように呟いた。
「やっぱり…どう見てもあんなに幼くは無いわよね」
 水面に映る彼女の姿は前述した通り、腰まで伸びた黒髪に、紅白の衣装を身に纏う二十代後半の女性だ。
 男性を惑わす異性特有の魅力を十分に持ちながらも、狩人の様な相手を射殺してしまうかのような鋭い眼差しを持っている。
 スラリと伸びた体は素人目から見てもある程度鍛えられていると分かるが、それにも関わらず女性らしいスリムさも忘れてはいない。
 
 二十代後半は、結婚する時期が早いハルケギニアでは既に「行き遅れ」と判断される年齢だが、
それでも彼女の姿一目見れば、並大抵の男ならばせめて一声かけようと思ってしまうに違いない。
 
 それ程までに良い容姿を持つ彼女であったが、その顔には苦悩の色が滲み出ている。 
 このままでいいのか、何か違わないか?そう言いたげな様子は自分の姿を見た時から浮かべていた。
 別に自分が美しい事に罪を抱くナルシストでもなく、ましてやもっともっと綺麗に…というような強欲者じゃあない。
 では何に悩んでいるのか?それは他の人間には決して理解できず、彼女だけにしか分からぬ゛違和感゛が原因であった。
「でも…そう言っても…私ってこんなに大人っぽかったかしら?」
 先程呟いていた「あんなに幼くは無い…」という言葉に、その゛違和感゛を感じている。
 確かにこの姿は自分自身だ。しかしそれが本当かどうかと言われれば―――今なら迷ってしまう。
 波の人生を生きる常人ならばまず思わない事だろうが、彼女の場合は違った。
 それは、彼女が目を覚ます前にほんの少しだけ見ていた夢の中に原因がある。
 その内容はというと、自分が暗い森の中を闇雲に走り回る姿を見ているというモノ。
 体中傷だらけで左手は手首から下が無いという、凄惨な姿をしたもう一人の゛自分゛。
 そんな゛自分゛と背後から追いかけるようにしてそれを見つめていた彼女の姿は、あまりにも似ていなかった。
 体は一回りか二回りも少し小さく、着ている服は違うし履いているのはブーツではなくかなり高めのローファー。
 唯一服と別離した白い袖だけが共通部分であったが、それ以外――少なくとも背中から見れば―全く別人だと思ってしまう。
 それでも彼女は瞬時に理解したのだ。あぁ、この少女は自分なのだ…と。
 しかし目が覚めて一番に目の前の川で自分の姿を見てみれば、いい年をした女の姿が映っていた。
 どう見直しても、あんな大きめのリボンが似合う少女ではなかったのである。
「結局…あれは夢だったのかしら?」
 川辺から離れた彼女はそう言いつつも、昨日がアレだったからね…と一人呟く。

175 :
 それはこことは別の川辺。少し時間をかけて歩いた先にある場所での事だ。
 記憶を忘れた彼女がそこで目を覚ました時、予期せぬ襲撃者たちが襲い掛かり、見事返り討ちにしたのである。
 自分が人間だからという理由で襲い掛かってきた犬頭の妖怪を退治したのは良いものの、その後が大変だった。
 何せ自分よりも倍くらいの身長を持つ大女が突如現れたのだから。
 しかも情けない事に『あっという間』 に『気を失ってしまった』のか、気づいたら朝になっていて大女の姿は消えていた。
 せめて近くにいるならばと思い捜してみようとある気はしたが何処にもおらず、泣き寝入りするしかないという困った状況。
 そんな時にふとここで足を休める事にして、今に至っていた。

「あんなおっかないモノ見て気絶したせいで、そんな夢を見ちゃったのかしら?」
「そんな夢って…どんな夢かしら?」
 彼女がまたも呟いた瞬間、背後から柔らかい女性の声が聞こえてきた。
 まるで綿菓子の様に優しい甘さと、儚さと脆い弱さに包まれた声を聞いたことなどこれまでの彼女には無かった。
 一瞬何なのか分からず目を見開いた彼女であったが、ついで背後から土をしっかりと踏みしめる足音が耳に入ってくる。
 誰かは知らないが、とりあえずこちらへ近づいてくる。理解したと同時に彼女は立ち上がり、勢いよく振り返った。
 まず目に入ってきたのは、自然の要素が密集した土地に不相応過ぎる゛桃色の長髪゛であった。
 熟れた桃の様に綺麗で甘い匂いすら漂ってくるようなウェーブのピンクブロンドが、彼女の気を逸らさせようとする。
 それには負けず、次に体全体を見回してみると相手が自分と同じ女性なのだと知った。
 個人的な水準よりもやや上だと即時に判断できる大きさの胸と、髪以上に不相応で綺麗な…俗に言う貴族らしい身なり。
 身体的特徴は置いておくとして、服装からしてこの近辺に住み土地を把握している人間でないのは一目瞭然だ。
 あるいはこの近くに別荘を持っている大金持ちなのか?考えようとした彼女はすぐさま首を横に振って目の前の相手に集中しなおす。
 だが、貴族らしき女性はその行動に疑問を感じたのか首を傾げてこんな事を言ってきた。
「あら?何か気に障るような事でもしてまったのかしら?」
 そうならば謝りますけど…目の前の女性はそう言って、申し訳なさそうな笑みを浮かべる。
 まるで絵本の中のお姫様が浮かべている純粋な表情には、悪意や゛裏゛といった要素が何一つ入っていない。 
 どうやら心の底からそう思っているらしい。そう思った直後に、自然と身構えていた彼女の体から力が抜けてしまう。 
 無意識に上がっていた肩が下がり、その顔が自然と苦笑いになっていくのを自覚しながら、彼女は言った。
「いや…何かもう、別に良いわよ」
 疑ってた私が馬鹿だったわ。心の中でひとり呟きながら、彼女はため息を突いた。
 変になってた自分に呆れるかのようなため息を聞きながらも、ピンクブロンドの女性が唐突に名乗る。
「私、カトレアっていうの。本名はあるけど、長いから教えてあげない」
「あぁ、そうなの…よろしくね。私は、わたしは…私―――アレ?」
 茶目っ気のある微笑を浮かべるカトレアの自己紹介を聞いた彼女は、とりあえず返事をする。
 しかし最後の一言に、自分の名を名乗ろうとしたところで今になって思い出した事があった。
 それは一番最初に気にするべきだったことかもしれないが、何故か今の今まで忘れていた事に、遅くも気づいたのである。

176 :
「私の名前…何て言うんだっけ?」
 怪訝な表情を浮かべる彼女の呟きに、カトレアは言葉を返さない。
 しかしその顔に微笑を浮かべつつも首を傾げているので、気にはなっているようだ。
 ◆
 今カトレアたちがいる場所から三十分ほど歩いた先に、それなりの村があった。
 山間部の集落とは違いしっかりと整備された道と家を見れば、旅人たちはここを町だと思い込むだろう。
 しかし規模の大きさから言えばそこは村であり、ここで目立つ建物と言えば教会に村長の家、そして旅人を泊める大きな宿屋だ。
 元はここら一帯の土地を収める領主様の別荘だったのだが、近隣にあるタルブ村に新しいのを建てたのである。
 結果この館に足を運ばなくなったが、村人たちの相談を受けて宿泊用の施設として再利用する事となった。
 二階建ての部屋は客室合わせて二十程度、平民や行商人に旅の貴族までと客層もかなり幅広い。
 そんな建物の入り口で、それなりに逞しい体を持つ老人が一人の侍女たちと話をしていた。
「そうかぁ。つまり、貴族様は朝早くに散歩へ行かれたのかぁ」
「申し訳ありません。私たちがもっと一生懸命に止めていれば…」
 少し残念そうな口調の老人に、ややふくよかな侍女が頭を下げて謝っている。
 彼女の部下であろう後ろの侍女たちも皆不安そうな表情を浮かべてつつも、何故か周囲を忙しなく見回している。
 まるでしきりに動く゛何か゛を目だけではなく頭全体を動かしているの様は、何処か挙動不審とも言えた。
 彼女たちだけではない。周囲を見渡せば、今日は村全体が何処か落ち着かない雰囲気を醸し出している。
 いつもならゆったりとした一日を過ごす村の人々は忙しなく動き回り、侍女たちの様に゛何かを捜して゛いた。
 そんな人々をよそに、一人落ち着いている老人は頭を下げる侍女に対し申し訳ないなと思ってしまう。
「いやいや、別に今日中に出るわけじゃあ無いんだろう?それならまた後でもええよ」
 だから頭を上げなさい。慰めるような彼の言葉に、先頭の侍女は申し訳なさそうに従う。
「今は村の人たちだけではなく護衛の方々が捜しに行ってますので、もう少しすれば何か報せが入るかと」
「まぁワシもこれから捜しに出かける。何、体の悪い御方だと聞いているからそう遠くには…」
 そんな時であった、教会のある方からおじちゃん!と元気そうな女の子の声が二人の耳に入ってきたのは。
 侍女たちが何事かと思いそちらへ顔を向けると、声の主である女の子が老人目がけて走ってくるのが見えた。
 突然走ってきた女の子に老人は不快とも思わず、その顔に微笑さえ浮かべて少女の頭突きを快く受け入れる。
 その顔に満面の笑みを浮かべた女の子は、クッションを殴ったような音とともに老人の体に勢いよく抱き着く。
「おーニナか、もうお医者さんと神父様のお話は済んだかぁ?」
「うん!まだ何にも思い出せないけど、今日は優しい貴族様にニナの事゛こうほー゛してくれるんだよね?」
 ニナと呼ばれた少女の言葉に先頭の侍女が首を傾げる。思い出せない?どういうこと?
 少女の口から出た言葉に疑問に覚えた直後、ニナが走ってきた方角から初老の男と若い神父が歩いてきた。
「おはようございます。どうやら、朝からかなり大変な事になってるいようですね」
 まだここへ派遣されてから間もない新参者という雰囲気を纏わせている神父が、暢気そうに言った。
 その一方で何処か無愛想な気配を体から発している初老の男が、肩を竦めながら口を開く。
「持病をお持ちと連れの者から聞いてはいたが、それにしては随分とお騒がしい方だ」
「申し訳ありません。まさかこのような事になってしまうとは…本当に面目ないです!」
「ん?あぁイヤ、別にアンタらの事を馬鹿にしてるワケじゃあないんだよ」
 またもや頭を下げた侍女に、初老の男は少し慌てた様子で言葉をつづける。

177 :
「最近ここら辺は物騒だと、旅人たちから聞くようになったからなぁ。もし怪我でもして動けないのなら…事は一大事だ」
「あぁ、あの繊細な身体にお怪我など!あの御方にとっては猛毒の花を直接食べるようなものだわ!」
 どうしましょうどうしましょう!他の侍女達も慌てふためくのを見て、初老の男は不味い事を行ってしまったと自覚する。
 医者としてここへ来てくれた貴族様への心配を兼ねて言ったが、どうやら火に油を注いだようだ…。
 この村で唯一の医者である男はやってしまったと思いつつ、バツの悪そうな表情を浮かべた。
「全く、お前さんは若いころから余計な一言が多いんだと何回言えばわかるんだい」
 神父やニナと共に男のやり取りを見ていた老人は一人呟き、傍らのニナを連れて何処かへ行こうとする。
 ほれ、行くぞニナ。少女を呼ぶ声に神父が気づくと、首を傾げつつ歩き去ろうとする老人に声を掛けた。
「おや、もう家に帰るんですか?これから捜索なされるのならニナちゃんは教会の方に預けたら…」
「気遣いすまんな若い神父さん。ただ、俺としてはこういう場所に慣れてないんだよ。
 それに、家に帰る道中で道に迷った貴族様を見つけられるかも知れねぇしな?それなら一石二鳥ってもんだよ」
 老人はその言葉と共に再び歩き出し、その後を追うようにしてニナも足を動かして村の外へ向かっていく。
 自分たちの方へ快活な笑顔を浮かべ、手を振って去っていくニナの姿を見つめながら神父に、一人の侍女が質問してきた。
「あのぉ、聞きたいことがあるのですが…あの女の子はあのご老人のお孫さんか何かで…?」
 唐突な質問に、少し慌てた様子の神父に代わって医者である初老の男が答えた。
「いんや。…あの娘はちょいと特殊な病気に掛かっててな、今はアイツの家で暮らさせてるんだよ。
 なぜかは知らんがあの娘あの偏屈者の事を気に入っとるらしくてな。傍から見りゃあ、本当に親子みたいだろ?」
 お前さん達が勘違いするのも無理もない。最後に一言述べて、初老の医者は口を閉じた。
 最後まで聞いていた侍女たちの内右端にいた地味な印象の子が、恐る恐る次の質問を言う。
「あのぉ〜、さっき特殊な病気がどうとか言っていましたが、それは一体…」
「記憶喪失――――心に強いショックを受けて、覚えていた事を忘れてしまう大変な病気」
 質問に答えたのは医者ではなく、医学との距離が近いようで遠い若い神父であった。
 顔に暗い影を落とし、何とも言えぬ表情を浮かべた彼は、質問をした侍女が唖然とする間にも喋り続ける。 
「大分前に…あの老人が森の中で一人倒れている彼女を見つけた時、あの子は名前以外を忘れていました。
 自分が何処で生まれ、両親が誰なのか、何故人気のない森で倒れていたのか…それを全く知らぬまま、今も生きています。
 それでもあの子は笑顔を浮かべ続けているのです。まるで人に微笑む事が仕事であるかのように…」
 そこまで喋って口を閉じた神父は、始祖に祈りを捧げるかのように目を閉じる。
 身体から重たい雰囲気を放つその姿に、侍女たちは何も言う事が出来なかった。
 ただただため息が口から漏れ出し、周囲の雰囲気に重く冷たい空気を作り出していた。

178 :
 以上で67話の投下終了です。支援してくれた方に感謝を…
 次回辺りでこの番外編的な話も終わりにできるよう来月分の執筆も頑張って書いていきます。
 
 それでは、また来月お会いしましょう

179 :
無重力巫女さん乙です!

180 :
もうウル魔と無重力しかいないのか

181 :
ディーキンとあと避難所にエツィオも来てたで?

182 :
それと、555やってる人もいるみたいだな
俺はライダーは大昔にBlackとRX見たきりなのでなんとも言えんが

183 :
ウルトラマンゼロ書いてた人は一定のペースがあったのにどうしたんだろか

184 :
俺、この就活が終わったらマミさん召喚で中編書くんだ…

185 :
るろうやなのはの人まだかなぁ

186 :
繁忙期が終わったら年単位でエタってるの再開する…多分

187 :
武吉とか出ないの?
ワルド「ライトニング・クラウド!」ピシャーン!
武吉「うわああああああ!」ズギャーン
ルイズ「武吉!いやああああ!」
武吉「もう治りました!」シャキーン
ルイズワルド「「???」」
みたいな

188 :
いいアイディア思いついたなら自分で書くべき

189 :
もうラスボスや管理人の続きは読めないのだろうか

190 :
ルイズがデビルガンダムを召喚してハルケギニア滅亡
と思ったが環境汚染のないハルケギニアではデビルガンダムも暴走せんかな

191 :
あれが暴走した理由って大気圏突入でモロ地表にぶつかった衝撃のせいじゃなかったか?
暴走した状態で召喚したら、人間だけRのか亜人も一緒くたに巻き込むのか興味はあるなw

192 :
そこは人を支配する事を目的としたデビルガンダムJr.をだな

193 :
半沢直樹が召喚されたら面白い事になりそう

194 :
本気でお久しぶりです。
ゼロと魔砲使い、続きができたので1530よりUP開始します。
某ブログでは待っているという表明があったりして、ちょっとうれしかったりしました。
それではもう少しお待ちください。

195 :
ちょっと確認です。トリップ間違えたかな?
これで以前と違っていたら、ハード周りを新調したため以前の記録が全部とんだせいです。
とりあえず前の書き込みのトリップが以前と違っていましたけど、本人なのは確かです。

196 :
第36話 狂王

 武威に押さえつけられていた戦場に、それとは違った沈黙が訪れた。
 ――今、彼はなんといった?
 それは、困惑。
 唐突に理解しがたいことを言われたが故の、一時的な理性の麻痺。
 
 少し冷静になれば、その意味なぞ学のない兵士にでもわかる。
 四つの虚無がそろう。
 一つは我らが誇るアルビオンの虚無。
 二つは我らを救ったトリステインの虚無と、教皇たるロマリアの虚無。
 ならば残る一つは?

 ――始祖の血を受け継ぐ国は四つ。
 トリステイン、アルビオン、厳密には違うがロマリア。
 そして……ガリア。

 あらゆる情報が、事実が。
 ただ一つのことを指し示している。
 それはすなわち。



 今ここに姿を現したガリアの『無能王』。
 その人こそが――

 『ガリアの虚無』であると言うこと。



 その事実がその場の全員の意識に染み渡ったとき、そこに起きたのはさらなる沈黙であった。
 あまりの驚きに、もはや誰一人――教皇やルイズ、そしてなのはですらも、口を開くことができなかったのである。
 
 「ふむ……少々驚かせてしまったかな? だが、事実は変えられん。始祖に誓って宣誓しよう。余、ジョゼフこそが、ガリアの虚無であり、そして……」
 
 そこで一旦声を切るジョゼフ。言葉を途切れさせることで衆目の注意を引きつける、ごく初歩の弁論術だ。
 思わず教皇ですら注目したその一瞬に、ジョゼフは言い放った。
 
 
 
 「……この、壮大にしてくだらない人形劇の脚本家だ」

197 :
 その瞬間、その場にいた兵士たちはおろか、ルイズやヴィットーリオですら言葉を失ってしまった。
 人形劇?
 この動乱の背後にガリア王たる彼がいたことは誰にだってもはや判りきった事実であった。
 だが、当然というか、そこには何らかの――領土的か、政治的か、とにかく何らかの野心というか、目的があって行われていたと思われていた。
 先の無言の後に、その秘められた目的が語られるものだと、誰しもが思い込んでしまった。
 だが、噂に名高い狂王の狂気は、その遙か斜め上を行っていた。
 
 
 
 「……人形劇、ですって……!」
 
 
 
 再び訪れた沈黙を打ち破ったのは、ルイズ。
 そのよく通る声は、拡声の呪文も使われていないのに、なぜか戦場の隅々まで響き渡った。
 実際に末端の兵士にまでその声が届いたわけではない。それは確かな事。
 だが後にこの時の事を思い出す兵士たちは、確かにその言葉が聞こえたと一様に言ったという。
 少なくともこの、最初の一声だけは。
 
 
 
 「あなたは、これが……この、たくさんの人が死んだこの戦争が」
 
 
 
 低く抑えられていた少女の声が、だんだんと大きさと迫力を増していく。
 そしてそれは、激しい激情とともに爆発する。
 
 
 
 「ただの人形劇だって言うの! 何様のつもりよあんた!!」
 
 
 
 だが、返ってきたのは、それとは対照的な、落ち着き払った声。
 
 「言ったはずだ。私はこの壮大にしてくだらない人形劇の、脚本家だとな」
 「そっちから見たら人形劇かもしれないけどね、私たちは、生きて、生活して、戦っているのよ! それを今みたいに上から見下ろすように! 私たちは、人間なのよ! 生きてるのよ!」
 
 叫ぶルイズ。だが、ジョゼフはその叫びに対して、眉一つ動かす事はなかった。
 いや、それどころか。
 
 
 
 「ははは、生きて、いる……か。これが笑わずにいられようか。聞け、娘よ」
 
 
 
 返ってくるのは、狂気を秘めた笑い声。

198 :
 「知らぬと言うのは幸いな事だな。ならば教えてやる。今ここにいる人間は……」
 
 
 
 再び途切れる声。集まる注目。
 誰しもが、戦う事すら忘れて、この狂気の弁術に集中していた。
 そして狂王は言う。
 その、決定的な狂気の厳選たる一言を。
 
 
 
 
 
 
 
 「ただ、一人きりだ」
 
 
 
 
 
 
 
 一瞬の沈黙の後、場は爆発した。
 
 「あんた……そこまで思い上がっているの!」
 
 ルイズは貴族としてのたしなみすら忘れて絶叫する。
 同時に馬鹿にされたと感じた兵士たちも、怒りの声を上げる。
 すさまじい殺気と怒号が、ジョゼフただ一点に目掛けて湧き起こる。
 それはその思いと声だけで彼を討ち倒さんとする激しさ。
 
 だが、彼はやはり、全く動じていなかった。いや、それどころか、むしろうっすらと笑みを浮かべてさえいた。
 狂気の全くない、心からの笑みを。
 
 そして、そんな熱狂の中、それを引き裂くように、今度は拡声の呪文によって拡大された声が戦場に響き渡った。
 
 
 
 「静まりなさい、皆さん――」
 
 
 
 その荘厳さを秘めた声に、場は少しずつ落ち着きを取り戻す。
 声を発したのは、偉大なる虚無の聖下、ヴィットーリオであった。
 
 「ジョゼフ王、少し、質問してもよろしいかな?」
 
 彼の声は、暑くなった場を冷ます、静かな声。
 
 「ああ、何なりと。始祖の代理人たる教皇聖下よ」
 
 言葉遣いは丁寧に、しかし全く敬意のない声で返答するジョゼフ。
 再び湧き上がりそうになる民の怒りを、手のひら一つで抑え込むと、ヴィットーリオはジョゼフに問いかけた。
 
 「あなたは先ほど、自分を『人形劇の脚本家』だと言いましたね? その言葉に、偽りはないですか?」
 「ああ。始祖に誓おう。我が一連の言葉は、一片の嘘もない、余の真なる心からの言葉だ」
 「でしょうね。では改めて問います――ただ一人の人間とは、誰の事なのですか?」

199 :
 一瞬、再び場がすべて凍ってしまった。
 この場にいたほとんどの人は、ただ一人の人間というのは、当然ジョゼフ王その人だと思い込んでいた。だからこそ、その傲慢な物言いに憤ったのだ。
 だが少なくとも教皇は、ただ一人の人間というのは、彼の事ではないと思ったらしい。
 なぜ?
 どうして?
 ならば、それは誰?
 頭の中が怒りから疑問に書き換わり、ほとんどの人物が思考を硬直させてしまった。
 そして問われた王は、破顔一笑、上機嫌にその問いに答えた。
 
 「さすがですな。あなたは我が言葉の意味を少しは理解しているようだ」
 「あなたは自分を脚本家と言った」
 
 ヴィットーリオは、確かめるように、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
 
 「ですが、ただ一人の人間をあなただとするとそれは矛盾します。この戦いが人形劇であり、人間がただ一人なら、そのただ一人の人間は、『観客』であるべきです。
 もし観客のない芝居だとしても、あなたがただ一人の人間ならその立場は『監督』か『演出家』であるはず。もし脚本家がただ一人の人間なのだとしたら、そもそもこの場にあなたがいるはずがない。脚本家は劇においてはあくまでも裏方。
 ただ一人の人間の立場と云うのは、それを見るものか、すべてを仕切るものかのどちらかであるはずなのですから」
 
 それに対して、ジョゼフは一度大きく両腕を広げ、そして拍手を持って教皇を称えた。
 
 「その通り! ただ一人の人間、それは紛れもない観客。このハルケギニアという劇場に訪れた、現在ただ一人の観客の事。余がただ一人の人間? 馬鹿馬鹿しい。余など、少しばかりいらぬ事を知ってしまった人形の一つに過ぎん」
 「なるほど、そういうことですか」
 
 ヴィットーリオも、納得したように頷いた。
 
 「あなたにとっては、この戦いだけではない。このハルケギニアという地、そこで行われている人の営み。そのすべてが、人形劇でしかないのですね」
 「ああ、その通りだ。さすがは聖下。あれだけの事から、そこに気がつくか。それとも、あなたも同じだったのかな?」
 「いえ、残念ながら、私はあなたの思考を読んだだけに過ぎません。ですが、知りたいとは思います。
 あなたは、確かに狂っているが、狂ってはいない。あくまでも曲がっているだけです。
 あなたの感性、思索の方向性は、確かに常軌を逸しているのかもしれない。ですが、あなたはきわめて理性的に事を行っている。
 すなわち、あなたがこれだけの戦いを起こすのには、それに値する確かな『理』が存在している。
 そう、理、です。狂気に落ちた人が暴れるのは、そのほとんどか衝動、押さえきれない意思と感情に基づくものです。聖職にあるものとして、私は人の狂気というものをいくつも見ていました」
 
 この時彼の脳裏にあったのは、幼い頃の景色。
 世界は貧しくとも平和だと思っていた頃に起きた、一つの惨劇。
 咎なく、由なく、唐突に訪れた狂気の発露。
 突然炎を持って焼かれる、安住の地。
 今でこそそこに、確たる理と利があった事を彼は知っている。
 ダングデールの虐殺。
 疫病排除の名目で行われた、新教徒狩り。
 その中で、彼は見た。
 苦悩しつつも理性的に人をR人を。
 喜びを持って人を焼きR人を。
 耐えられなくなり、そして壊れるように人をR人を。
 まだ幼かった彼は、その意味する事を理解する前に、生の情報と情景として、人の秘める様々な『狂気』を、その心に刻みつけられてしまっていた。
 
 だからこそ彼には理解できた。
 ジョゼフの『狂気』の一端が。
 彼は曲がっていても、ずれていても、『狂って』はいない。
 彼の『狂気』は、ある意味文化の違いに近いものであると。
 風習は地方によって変わる。ある地方では当たり前の事が、別の地方では全く理解し得ない『狂気』に見える。
 彼の狂気は、おそらく我々の知り得ない、『異なる常識』によってもたらされているものであると。

200 :
 「ですから、私は知りたいのです。あなたが何を持って我々を人形と断定し、こんな人形劇の脚本を書いたのか。それは決して、生きる事に虚無を感じたあなたの無聊を慰めるものではないはずです。もしそうならば、あなたは自分を観客と称したはずですからね」
 
 ジョゼフは、少しの間教皇を見つめ、そして再び笑い出した。
 
 「これはこれは。どうやら俺は、少しあなたを見くびっていたようだ」
 
 ジョゼフの言葉から、少しだけ遠慮が抜け落ちていた。
 
 「いいだろう。だが、本当にいいのか? 俺の知り得た事は、教会においては禁忌とされている事のはずだ」
 「かまいません」
 
 ヴィットーリオは即断した。
 
 「あなたの語る事の内容は、たぶん私ですら知り得ない事です。教会の頂点であるが故に知る事も多いですが、おそらくあなたの語るそれは私が頂点であるが故に秘されてきた類いのものでしょうから。
 そしてそれが一国の王を、それも虚無の担い手たるものを狂わせるとするのならば、私は知らねばなりません。
 本来ならそれもまた秘匿されるものなのでしょうが、あなたはむしろそれを公開する事を望んでいる。違いますか?」
 「違わん。決してそれが目的だったというわけではないがな。俺の目的のためにはその事実の公開は別段必要ではないし、たとえ公開してもおそらくすぐに忘れられる。
 だが、別に隠しておかねばならない事もない、こと、こうなった今ではな」
 
 そう語るジョゼフの顔は、『狂人』とはほど遠いものだった。

201 :
 「さて……となると」
 
 ジョゼフが何か手元でごそごそとすると、彼の脇に一人の女性とおぼしき人物が空から降り立った。彼が女性に言葉をかけると、彼女は少し驚いた様子ながらも頷き、その場からルイズ達の元へと降り立った。
 
 「初めまして。私はジョゼフ王の使い魔、ミョニズトニルンと申します」
 
 ルイズとヴィットーリオに一礼すると、彼女はその手から指輪を抜き、それをルイズ達の方へと放り投げる。
 丁度真正面にいたなのはが反射的にそれを受け止めると、彼女はそれを見て言った。
 
 「とりあえず不要になったのでお返しいたします。それはアンドバリの指輪。確かあなた方は水の精霊よりそれの捜索依頼を受けていましたね」
 「え、ええ、そうですけど」
 
 戸惑いながらそんな間の抜けた返答をしてしまうなのは。
 
 「かなり力を使ってしまっていますので、そのまま速やかに水の精霊にお返しください。おそらくそれ以上それを使おうとすればそのまま壊れてしまうでしょうから」
 「は、はあ」
 
 まだ驚きさめやらぬなのは達の前から、そのまま飛び去ってしまうミョニズトニルンことシェフィールド。
 そして彼女が帰り着くと同時に、ジョゼフは、今度はこちらも拡声の魔法を使用した上でその言葉を告げた。
 
 「よく聞け。教皇の希望を受け、余がなぜこのような戦を仕掛けたかを皆に教えよう。
 話はそれなりに長くなるから、兵士達よ、皆座れ。話が終わるまでの間、余と余の軍は一切の攻撃をしない事を始祖に誓う。そして話が終わった後」
 
 そこでジョゼフはまた一旦言葉を切り、シャルル・オルレアンの甲板の端から、ルイズ達の方を見下ろした。
 
 「余は一つの賭をしよう。余の言葉を聞き、それでも余が許せぬと思うなら、あるいはたとえ許しても余を見過ごせないというのなら、遠慮なく余を撃て。余は何があろうとも、最初の一撃を受けるまで一切の攻撃はしない事を約束する。
 ただし、その一撃を受けた後は、容赦なく反撃する。ここにいる我が艦隊が、諸君ら全軍目掛けて、全力の攻撃を実行する。
 まあ、全滅はさせん。ある程度は生き残ってもらわねば余の目的は果たせぬのでな。だが大半の兵士は死ぬ事になろう」
 
 その言葉を聞いたほとんどの兵士は、その一撃でジョゼフを狙撃せよという意味にとった。王が倒れたら、普通戦争は続行される事はない。内乱のような、頂点が不確かな戦いならばともかく、こういった戦争ではそれが普通である。
 まだ今のようなフネや砲が存在しない時代、貴族の一騎打ちで時に戦の勝敗が決まった時代の名残だった。
 だが、それを別の意味に――正しい意味にとらえていた人物も、わずかだがいた。
 ルイズとなのはであった。
 二人は、少なくともルイズとなのはの二人は、『一撃』でジョゼフはおろか、眼前に浮かぶガリア両用艦隊を討ち滅ぼせる力を持っている。
 ましてや、間違いなくジョゼフは、先の言葉を、ルイズとなのは、二人の方を見ながら言ったのだ。
 そしてそれが間違いでない事は、彼の続きの言葉で明らかになった。
 
 「どう決断するかはさしもの余にも判らぬ。許すというならばそれもよし。許さんと言うのならば遠慮はするな。迷い、躊躇わば、余は遠慮会釈なしに汝らを討ち滅ぼす。よいな――」
 
 そこで改めてジョゼフは、その人物を見つめる。視線が眼下に向いたのを、それを捉えられる範囲の人々は気づき、その視線の先に注目する。
 そこにいるのは、こちらの代表ともいえる、虚無の担い手達とアルビオンの王太子。
 そして。
 
 
 
 
 
 
 
 「この場にいるただ一人の観客、唯一の人形では無き者――タカマチナノハよ」

202 :
 ここまでになります。
 だいぶお待たせしました、魔砲の人です。
 続きはこんな感じになりました。
 この先は、さすがにそうお待たせせずにある程度いけそうです。仕事に少し余裕ができましたので。
 次がジョゼフ側の語りとなのはの決断まで、その次で解決編(壮大なネタばらしシリーズ)が続いてエンディングの予定です。
 原作があのような形で意図せぬ終わりを迎えて、本当に残念です。
 せめてこっちくらいは、遅いと言われつつも終わらせたいです。

203 :
待ってました魔砲の人乙です!

204 :
乙乙

205 :
待ってました


206 :

待ち続けますとも!!

207 :
>>185だけど本当になのはの人が来てるとは思わなかった
乙でした。次回も楽しみに待ってます

208 :
長らく待ってた甲斐がありました。
次回も期待大で待ってます。

209 :
>>202
とんでもねえ待ってたんだよ!
解決編楽しみすぎるww

210 :
仮面ライダーウィザードから白い魔法使いを召喚
召喚した白い魔法使いにテレポートで何処かへ連れ去られるルイズ
数週間後、そこには立派なメイジとなったルイズの姿が!

211 :
4人の虚無でサバトを開くと考えると人数はピッタリだな

212 :
全身全霊を込めて乙

213 :
混沌帝龍-終焉の使者を召喚
ルイズのデッキはカオス。才人はガンダールヴの力で開闢の使者に顕現して戦う

214 :
ルイズは原作並みに交友関係を築き上げた状態で叩き落して「・・・げる」しないといけないよな、やっぱり

215 :
ルイズは考える
「……そう …今さら後悔して何になる 死者へ今さら何が言える
罪を今さら悔やんで何になる 詫びることなどできない
これは私が自分から進んで来た道
 欲しいものを手に入れるために…… 詫びることなどできないわ
いや…… 詫びはしない……!! 詫びてしまえば悔やんでしまえば すべて終わってしまうから
あそこにはもう とどかなくなってしまうから」
ふとキュルケが何か叫んでいるが見える
キュルケを見ながらルイズは心で思う。
「……そう 学園でのたくさんの仲間アルビオンでの何万の敵の中で
唯一人お前だけが 唯一人お前だけが 私に夢を忘れさせた」
そしてルイズはその言葉をもはや舌を抜かれ何も言えなくなった口で、他人には空気を吐き出すようしか聞こえない音を発する。
「・・・げる」

216 :
げる?
ゲル化する使い魔か

217 :
まっちょしぃ召喚か・・・

218 :
>>213
遊戯王のお約束で仲間の魂が封印されたカードでのデュエルとかいいかも
ルイズ「墓地の闇属性の姫様と光属性のシエスタを除外して、カオス・ソルジャー・サイトを特殊召喚するわ!」

219 :
>>218
仲間を除外すんなw

220 :
除外コストでその二人が消えてくれればルイズは万々歳じゃないか
ついでにタバサも瀑征竜−タイダルのコストにしてしまえば完璧

221 :
>>218
姫様闇属性にすんなw

222 :
>>218
そもそもRなw

223 :
では永続罠カード、リビングデッドの呼び声で蘇生をば

224 :
ルイズならむしろ巨乳キャラのおっぱいを生贄にささげるんじゃねw

225 :
ゼロ魔キャラでデュエルってのはニコニコの数ある架空デュエルを見ながら考えたことはあるな
使用デッキはキャラの特徴に合わせるとして
ルイズ。【ブラックマジシャン】
才人【戦士族】
ギーシュ【コアキメイル】
タバサ【ブリザードプリンセス】
キュルケ【ラヴァル】
ワルド【アロマロック】
イザベラ【魔道書】
エルザ【ヴァンパイア】
ティファニア【キュアバーン】
ジョゼフ【エクゾディア】
アンリエッタ【インヴェルズ】
リュリュ【マドルチェ】
ジュリオ【ギミックパペット】
シルフィード【バニラ軸ドラゴン族】
しかし考えるのは楽しいんだけど、魅せるデュエルとなれば構成が難しいんだよなあ

226 :
バトスピにしよう

227 :
遊戯王って公式が流行りのアニメモチーフのデッキを組むことが多かったよね
まどかマギカのときはマミを首なし騎士にしていたあたりかなりギャグだけど

228 :
タッグフォースの配信デッキ【僕と契約して決闘者になってよ】だな
あの頃は首がとれればなんでもかんでもマミさん扱いされてたっけか

229 :
最近では首が無事なのに「マミった」と言う奴もいますがね

230 :
前はニコニコでもまどマギがらみの書き込みが関係ないところでやたらあったからなあ
ウルトラマンの動画でも、バキシムの首が飛んでマミった、ドラゴリーの首が飛んでマミったとしつこいくらいに
まあ昭和ウルトラは切断の大バーゲンなんですけどね

231 :
全部エースじゃねえかwww

232 :
エースキラーRさんは首だけになっても平気ですよ?

233 :
そういや社長が召喚されてたな
ブルーアイズVSシンクロのわくわくが凄かった
なんだかんだでルイズとうまくやってたし

234 :
どうも約一ヶ月ぶりの投下をさせてもらいます。何だかんだでこんなに日にちが経ってしまった……。
投下は23:50から開始します。

235 :
支援
ウルゼロの人どうした?ゴーデス細胞にでも感染したか

236 :
ウルトラマンゼロの使い魔
第十四話「ひきょうもの!シエスタは泣いた(前編)」
冷凍怪人ブラック星人 登場
 トリステイン王女アンリエッタから、帝政ゲルマニアとの同盟に破局をもたらす手紙を
アルビオンのウェールズ皇太子より回収する任務を受けて旅立ったルイズと才人たち。
しかし護衛につけられたグリフォン隊隊長ワルドは、『レコン・キスタ』の回し者だった。
ウェールズの命を狙うワルドは才人が一度は阻止したのだったが、宇宙人連合の横槍により、
結局ウェールズの命はワルドに奪われてしまった。そのため、任務は達成したが、
ルイズと才人の心には重い雲がのしかかった……。
「……よっと。これでいいか?」
『ああ、ありがとな。これでミラーナイトといつでも話が出来る』
 旅を終えて魔法学院に帰ってきたルイズと才人が最初にしたことは、ゼロの頼みで姿見を
部屋に置くことだった。鏡ならルイズの部屋にももちろんあったが、全身が見えるものの方がいいと
ゼロが言うので、新しく購入したのだ。そして今、それを部屋の壁際に設置した。
『ルイズもありがとうな。わざわざ新しく買ってくれて』
「別に礼を言われるほどのことじゃないわ。これくらい……」
 ゼロの呼びかけに対するルイズの返事は、どこか暗かった。それを聞きとがめた才人が、
ルイズに尋ねかける。

237 :
おかしい……一ヶ月前は余裕でいけてた文字数が、全く書き込みできなくなった……。本文が長すぎると出る……。
一度にこれだけの文字数しか書き込みできないんじゃ、とても連投規制されるまでに投下終わらせられない……。
そういう訳ですので、勝手ながら、今回の投下は中止させてもらいます。原因が分かってどうにか解決するまでは、再開はしません。
ご迷惑かけて、本当に申し訳ございません……。

238 :
忍法帳が原因じゃない?

239 :
恐らく忍法帖だろうな
Lvが貯まるまでかかるなら避難所の代理依頼スレに依頼するもよし。ウル魔の人も頻繁に利用してる

240 :
>>225
ルイズは爆発テーマの方が解りやすい気がする
マジエク筆頭に残骸爆破、スフィアボム、ヴァルカノンなどなどバーンで揃う

241 :
ルイズは自分が虚無だと知るまでは爆発を嫌悪してるからそのテーマでデッキ組むのはちょっと考えにくいと思う
ルイズの負けず嫌いはかっとビングに通じるから【希望皇ホープ】がいいんじゃないか
虚無をデュエルで再現するとしたら、使い魔とオーバーレイしてゼアルになるのかな

242 :
ウルトラマンゼロの使い魔の人は忍法帳貯めてるのかな
ブラック星人かぁ、土星から来たのにブラック星人とはこれいかにの宇宙人
そしてベムスターに並ぶブレスレット最大の被害者

243 :
科学で男爵でマッドな男のアロハ男爵とムームー星人喚びてえ……
『科学の力を思いしれえ〜!!』

244 :
いっそハルケギニアで起こる騒乱の原因がナンバーズだったってのもどうかな
タバサとギャンブラーで支配人のイカサマのタネがエコーではなくNo,7ラッキー・ストライプのせいだったとか

245 :
本日休みだったのでごりごりと執筆していましたが、1/3〜1/2程度まで来たところで時間が尽きました。
後1〜2週お待ちください。
経過報告でした。

246 :
わーい。りょーかーい。

247 :
皆さんこんばんわ。ウルトラ5番目の使い魔、13話の投下開始いたします。
またけっこう開いてしまいましたが、今回で対シェフィールド戦のクライマックスです。
10分後、19:50にはじめますので、よろしくお願いいたします。

248 :
 第十三話
 シェフィールド侵攻兵団全滅! 怒りに焦げる正邪の攻防
 
 再生怪獣 サラマンドラ 登場!
 
 
 ロマリアを壊滅させようとするガリア軍は、すでに聖都のすぐそばまで迫ってきていた。
 破壊と殺戮を振りまきながら進軍する、悪魔のようなガリア軍と、それを先導し扇動するシェフィールド。
 銃士隊・水精霊騎士隊は、避難民が逃げ延びるまでの足止めをするため、地雷による作戦を図った。
 しかし、細心の注意をはらって待ち伏せたはずの作戦は、最新の魔法技術を組み込んで作られたヨルムンガントの前に敗れてしまう。
 捕らわれ、なぶり殺しにされようとしているギーシュとミシェル。だが彼らを、死の淵から異形の超兵器が救った。
 
 
 六六式メーサー殺獣光線車。陸上自衛隊が開発した対怪獣用決戦兵器。地球ではすでに伝説と化しているこの車両を
ロマリアの地下墓地より蘇らせ、急行してきた才人は圧倒的な力で九体のヨルムンガントを葬り去った。
 だが、執念に燃えるシェフィールドは最後の切り札として、怪獣サラマンドラを差し向けた。
 メーサー車とはいえ、容易に倒せない強敵を相手に気を引き締める才人。その一方で、ルイズは答えを見出せないまま
無理を続ける才人に、一抹の危うさを感じていた。
 地球人の生み出した英知と才人の怒りが勝つか、宇宙怪獣を操るシェフィールドの忠誠が勝つか。
 今、決戦がはじまる。
 
「サイト! 怪獣が来るわ。距離はええと、およそ千メイル!」
「千メートルな。メイルとメートルの単位がほとんどいっしょで助かったぜ。全車ターゲット・ロックオン! メーサー放射!」
 四両のメーサー車のパラボラから、いっせいに白色の収束マイクロ波が放たれてサラマンドラに突き刺さる。その威力は
すさまじく、猛然と前進していたサラマンドラの巨体が押し返され、全身に走るスパークが、注ぎ込まれたエネルギーの
膨大さを物語っていた。
「やったの?」
 ルイズが集中したメーサーの砲火を見て叫んだ。ヨルムンガントを一撃で破壊した、あのメーサーの照射を、しかも四両
同時に浴びたのでは、少なくともただではすまないだろうと期待を持ったのも無理はない。しかし、才人は少しも楽観を
持ってはいなかった。
「無理だろうな」
「えっ」
 そのとおりだった。メーサーによる照射が停止すると、サラマンドラはほとんどダメージを受けた様子もなく立っていたからだ。
「ええっ! なんて頑丈なやつなのよ」
「やっぱりダメか。くそっ、メーサー砲でも通用しねえかよ」
 予想はしていたが、やはり悔しかった。サラマンドラの外皮は極めて厚く頑丈で、スーパーハードネスボディーと呼ばれる、
地球上のあらゆる物質よりも強固な性質で成り立っているといわれている。
 その防御力は伊達ではなく、UGMの主力戦闘機シルバーガルやスカイハイヤーの攻撃になんらひるむことなく破壊活動を続けた。
驚くべきことにウルトラマン80のサクシウム光線の直撃にも耐えている。GUYSと戦った二代目にしても強力で、ウルトラマンヒカリの
ナイトビームブレードで体を両断されてはいるが、逆にいえばそこまでの力を使わねば倒せないということでもある。

249 :
 しかも、サラマンドラの恐るべき点はそれではない。
「サイト、奴が来るわよ! 撃つのをやめたらやられるわ」
「っくしょお!」
 接近してくるサラマンドラへ向け、メーサー攻撃を再開した。四条の光線が再びサラマンドラに集中し、火花とスパークが
乱れ飛ぶ。さらに、逸れたメーサーが森の木々を燃やして、炎に包まれたサラマンドラはその名の示すとおりの火竜のように
猛々しくも恐ろしい姿となって、才人とルイズを恐れさせた。
「サイト! もっとパワーは上げられないの?」
「これでいっぱいだ。ルイズ、ここはいったん……しまった!」
 森の火災による照準モニターの乱れが、才人の視覚を幻惑して反応を一瞬遅れさせた。サラマンドラの突き出した鼻先から、
摂氏千三百度の火炎放射が飛んできて才人たちの乗るメーサー車を狙う。メーサー車の防御はないに等しく、火炎を受けたら
ひとたまりもない。
 才人はとっさにルイズを押し倒して伏せさせようと思った。だが、ルイズは牽引車の窓から身を乗り出すと、早口で数節の
詠唱を唱えて杖を振りかざした。
「『エクスプロージョン!』」
 ルイズの唱えた虚無の『爆発』の魔法、その効果は任意の場所に自由な規模と威力の爆発を引き起こすことができる。
今回は詠唱が中途であったために威力も半減していたが、ルイズが必要とした効果には十分であった。念じた虚空が爆発し、
生じた乱気流と真空が壁となって火炎を食い止め、メーサー車に届く前に拡散させて無力化してしまったのである。
「炎には爆風が一番だって、誰が言った台詞だったかしらね」
「ル、ルイズ? すげぇ、魔法で火炎を止めちまったのかよ!」
「バカ、びっくりしてないで早くなんとかしなさい。私の精神力だって限りがあるのよ。こんな止めかた、あと何度も通用するわけないじゃない」
 ほっとしたのもつかの間だった。サラマンドラは火炎をほぼ無尽蔵に吐けるが、ルイズの使える魔法には限りがある。ただでさえ
虚無の魔法は強力な分、消耗が著しい代物なのだ。それにサラマンドラとて火炎が効かないとなれば当然別の攻撃を
仕掛けてくるだろう。
 メーサー車の移動速度はあまり速くない。移動砲台としては優秀であるが、戦車のような戦い方はできないのだ。もしも
八十年代や九十年代までメーサー車が現役でいたら、メーサータンクなどが開発されていたかもしれないが、それはあくまで
もしもの世界の話だ。
「負けるかよ。ドラゴンは人間の剣で倒されるって相場が決まってるんだ。ファンタジーの王道をなめるんじゃねえぞ」
 才人はやるっきゃないと腹をくくった。ルイズの作ってくれたチャンス、無駄にしたら男じゃない。
 メーサー砲の最大出力集中砲火。その猛攻の前にさしものサラマンドラも少しずつ皮膚の耐久力の限界を超え、
体の中に浸透してくるダメージに苦悶の声をあげはじめる。そして、一度防御を貫通すると、体内に分子振動で引き起こされる
異常高熱が襲い掛かった。
「効いてる? 効き始めてるわ!」
 外からの攻撃には鉄壁の怪獣でも、体内への攻撃には大概もろい。これに耐えられるとなると、よほどの大怪獣しかいないが
サラマンドラの耐久力はギリギリその壁を超えていなかったらしい。
 断末魔の咆哮をあげて、ゆっくりと倒れるサラマンドラ。水精霊騎士隊の大歓声があがり、ルイズも手を叩いて喜びの声をあげる。
 ガリア艦隊の将兵たちは、力の免罪符であったヨルムンガントと怪獣がいっぺんに倒されてしまったことで浮き足立ち、
シェフィールドもまた、最後の切り札の喪失に蒼白となった。
 だが、誰もが戦いの終焉を確信する中で、才人だけは厳しい顔のままでいた。
「再充電開始、メーサー砲及び原子炉急冷」
「どうしたのサイト、怪獣はあのとおり黒焦げになっちゃったじゃない。あんたらしくパーっと喜んだらどう?」
「できればな。サラマンドラが、こんなもんで……見ろ!」
「なによ、ええっ!?」
 ルイズは、そしてその光景を目の当たりにした才人以外の人間は皆一様に驚愕した。
 なんと、メーサーによって全身を焼き尽くされて倒れたはずのサラマンドラが起き上がり、まるでダメージなどなかったかのように
力強く咆哮したではないか。

250 :
「どど、どういうことよ。今、確かに死んでたのに」
「まだ言ってなかったな。サラマンドラの異名は『再生怪獣』だ。たとえ木っ端微塵にしたとしても、生き返ってくるような奴なんだよ」
 才人自身、このままくたばってほしいと思っていたが、どうやらそうはいってくれないようだ。怪獣にもいろいろな種類がいるが、
なかでも特に手のかかる奴が再生能力を持つ奴だ。ただ強いだけなら対抗のしようはいくらでもあるが、殺しても死なない奴ほど
始末に困るものはない。
「どど、どうするのよ。死なない怪獣なんて、それじゃいくら強力な武器を持ってても意味がないじゃないの!」
「いや、奴にも弱点はある。サラマンドラは、死ぬ直前に再生酵素を分泌して、それで体を再生させてるんだが、その再生酵素を
出す器官があるのが喉だ!」
 才人は断言した。そう、唯一喉こそ不死身の怪獣であるサラマンドラの急所なのである。喉の再生器官さえつぶしてしまえば
二度と再生はできなくなり、サラマンドラは平凡な怪獣でしかなくなる。
 けれども、サラマンドラの一番やっかいな点はまさにこの弱点にあった。
「なんだ、弱点がわかってるなら早く言いなさいよ。それならさっさと喉を撃てばいいじゃない」
「だから、それができればとっくにやってんだって。よく見てみろ、あいつはそんな簡単なやつじゃない」
 才人は叫び、ルイズは気づいてはっとした。サラマンドラは首を下げて頭部でメーサー部隊からちょうど喉が隠れるようにしている。
「あいつ、自分の弱点を知ってるのね」
 まさしくそういうことであった。サラマンドラのやっかいさ、それは才人も様々な怪獣の知識を頭に叩き込むときに、できれば
こいつとは戦いたくないと思ったくらいである。
 サラマンドラは、自分が喉を狙われたらまずいことを理解している。そのため、絶対に自分から敵に向かって喉を見せることはない。
けれども、サラマンドラは喉以外のどこを攻撃したとしても必ず再生してくる。特定の弱点を持つ怪獣というものは、たいていは
それ以外の部分は非常に強固にできていることが多く、総じてしぶとい。
 つまり、弱点さえ突かれなければ容易に負けることはないということであり、弱点を守るという動作をとる怪獣が危険視されるのも
理解していただけるだろう。サラマンドラ以外の実例としては、ウルトラマンレオと戦った暴れん坊怪獣ベキラは頑丈な体を
持っており、わずかに背中が急所ではあったが、戦いの中では絶対に敵に背中を向けようとはせずMACやレオを苦戦させた。
「いくらメーサーでも、急所に当たらなければ致命傷にはならない。野郎、やっぱあの手しかないのか」
 才人は、ここに来るまでに考えたサラマンドラ撃滅の方法を思い返した。不死身の怪獣にとどめを刺す方法、あまりまわらない
頭で考えるだけ考えたが、結局思いついたのは相当な危険をともなう奇策しかなかった。
「ルイズ、走ってるときにお前に頼んだよな。難しいと思うけど、アレできるか?」
「できないことはないと思うけど、相当に集中しないと難しいと思う。それに、タイミングを誤れば私もあなたもひとたまりもないわよ。
第一、相手は不死身の怪獣なんでしょう? それで倒せなかったら、今度こそ打つ手がないわよ」
 ルイズは慎重だった。やはり、いざというときの冷静さではルイズのほうが才人よりやや肝が据わっている。
 が、才人もそれくらいはわかっていた。わかっていて、打てる手がこれしかなかったのだ。何度シミュレートを頭の中で繰り返しても、
メーサー車四両でできることは限られている。ルイズの虚無でサポートしたとしても、そう細かいことができるわけではない。
「けっきょく、肉を切らせて骨を絶つしかないか。こんなとき……」
 才人は指のウルトラリングを見つめて首を振った。
 だめだ、今のおれではエースの力を引き出すことはできない。戦いにのぞむことができるようになったとはいっても、それは
前のように平和を守るためとかいうのではなく、仲間たちだけを救いたいという利己的な思いから無理矢理自分を奮い立たせて
いるだけだ。
 まだ才人のなかでは黒い気持ちがぐるぐると渦を巻いている。人間に対する不信感といってもいい。キリエルとの戦いで見た
人間たちの利己的で捨て鉢な様を見て以来の、彼の中での正義の基準が大きく揺らぎ、その反動で守ってきたはずの人間たちに
対して憎しみのようなものさえ感じ出していた。

251 :
 よくも悪くも才人は十八歳になったばかりで、大人になりはじめたばかりの純粋な少年だということだった。ただ、強い信念を
持っていた人間は、それが否定されたときに自傷行為をおこなったり極端な攻撃性を外に向けたりすることがあるが、才人には
それがなかった。才人は自分が感情のままに暴れたら、ルイズをはじめ周りの皆がどれだけ悲しむかをよく理解していたからだ。 
 自己の存在理由を否定され、悲しみと憎しみのあまりに自己破壊寸前まで自分を追い詰めてしまった人を才人は知っている。
ゆえに、同じ過ちを犯すわけにはいかない。なにより、そんな無様な姿をあの人にだけは見せられないと、心の中で戦っていた。
 その決着がつくまでは才人はウルトラマンにはなれない。それはルイズも同様で、才人とは別の意味で、ブリミル教徒の
総本山であるロマリアの腐敗への失望と、それにともなうハルケギニア全体の国々への不信で、世界を守るということへの
疑問の答えを探していたのである。
 そしてこれは、シェフィールドにとって非常な幸運であったと言える。このとき才人とルイズが万全ならば、メーサー車で
ヨルムンガントが全滅させられた後にサラマンドラを出したとしても、ウルトラマンAに撃破されて終わっていただろう。
才人たちは、あえて最強の切り札なしで挑まなければならない。
「仕方ないよな。昔の人は、ウルトラマンなしでも立派に戦ってたんだから」
 才人は覚悟を決めた。自分ひとりだけなら投げ出して逃げ出してもよかったが、隣にはルイズがいる。
 メーサー砲の照準を、才人はすべてサラマンドラに向けた。
「さあこい、全車刺し違えてもお前はここで倒してやる!」
 
 その一方で、一転して有利になった状況に歓喜する者もいる。
「うふふ、ははは、先ほどは肝を冷やしたけど、まさか不死身の怪物だったとはうれしい誤算だったわね。どうやら運は
まだ私にあるようね。だが、もう油断はしない。トリステインの虚無め、ロマリアはいつでもつぶせるが、お前たちだけは
なんとしてでもこの場で始末してやる!」
 チャンスを確信して、シェフィールドはヨルムンガントとの視界共有のために使っていたモノクルを握りつぶして独白した。
奴らは復活した怪獣に気をとられている。その隙に……もうひとつ、残されたこの駒で奴らを倒す。
 
 正念場、という言葉で状況を表すならば、今このときがそれであったろう。
 シェフィールドのコントロールか、それとも一度殺された恨みからかメーサー車に向かっていくサラマンドラ。近づいてくる
サラマンドラへ向けて、少しでも時間稼ぎをしようとメーサーを照射する才人とルイズ。そして、憎しみをあらわにして
動き出したシェフィールド。
 それぞれの思惑を胸に、いったい誰が勝つのだろうか。客観的に状況を判断すれば、追い詰められているのは
才人たちだといえるだろう。それほど、サラマンドラの”不死身”というアドバンテージは大きかった。
 死なない敵ほど恐ろしいものはない。どんな攻撃も、対象の死を目的としている以上、それが完全に無意味と化すのだから。
「フルパワーのエクスプロージョンなら、灰のカケラも残さずに消し去れるかもしれないけど。ごめん、今のわたしじゃ
そこまでのを撃てそうもないわ」
「いいさ、逆にそんなものを撃てたとしたらルイズのほうがまいっちまうだろ。やってやるさ、今のおれに価値があるとしたら
これくらいだ。だがシェフィールド、てめえだけはおれの目の前から叩き出してやる」
 ルイズと才人、ふたりが敗れればロマリアは壊滅する。対峙するメーサー車とサラマンドラ。

252 :
しぇん

253 :
 メーサー車へ向けて、サラマンドラがくしのように枝分かれした尾で木々を蹴散らしながら迫る。両者の距離はさらに
縮まっていき、サラマンドラの口から火花のようにミサイルが放たれてメーサー車部隊の回りに爆炎が吹き上がる。
「サ、サイトぉ!」
「大丈夫だ。こっちも食らえ!」
 反撃にメーサー砲の集中砲火が放たれる。しかし、四両のうち二両は数秒で照射が途切れてしまった。どうやら
エネルギーバイパスのどこかに異常が起きて、オーバーヒートする前に自動停止してしまったらしい。メーサー車は
エネルギー源を原子炉に頼っている以上、車体各所に過剰なくらいの冷却装置を備えているが、それでも安全装置は
働くようになっている。          
 メーサー車二両の火力ではサラマンドラを圧倒することはできず、逆襲のミサイル攻撃を受けてついに一両のメーサー車が
被弾擱座させられてしまった。車体中央に被弾し、爆発炎上することはなかったが、タイヤが外れてパラボラがあらぬ方向を
向いたまま動かなくなってしまったその車両はもう使えそうもない。 
 残るは三両。才人は、大破した車両からたなびいてくる煙を窓外に見、次はおれたちかと悲壮な決意を抱いた。 
 
 人間だけの力で怪獣に立ち向かう。口で言うのはたやすいが、実際にやってみるとなんと難しいことだろうか。
 
 だが、追い詰められていく才人たちを見て、黙っていられない無謀な連中がここにいた。
「サイト! まずいな。雷を吐く車が一台やられちまったぞ。あれでも倒しきれないなんて、なんて恐ろしいドラゴンなんだ」
「これじゃすぐにやられちまう。ギーシュ、なんとかしないと!」
「わかってるさ。今、動けるのは何人いる?」
「ぼくとギムリとでふたり……いや、あとひとりで三人か」
 才人の苦境を、彼の仲間たちは見過ごしてはいなかった。圧倒的な力を見せ付けられ、傷も癒えぬ苦境にありながらも、
なお彼を見捨てるわけにはいかないと立ち上がろうとしていたのだ。
 まだ身動きできないギーシュは、仲間たちの中から動ける者を名乗りださせると頼んだ。
「みんな、サイトとルイズが危ない。奴を攻撃して、サイトたちへの注意をそらすんだ」
「わかった。けどギーシュ、ちょっとやそっと引きつけるだけで、あの不死身の怪獣をどうするつもりなんだい?」
「ばっかだな、そんなことぼくの頭で思いつくわけないだろ。そんなことより、仲間がふたりピンチなんだってのが大事なんじゃないか。
その後のことは、その後で考えようさ」
 ギーシュはもちまえの気楽さで皆を鼓舞した。皆も、それほど簡単なことではないとわかってはいるが、なぜかギーシュの
軽口を聞くと勇気がわいてくるから不思議だ。それだけ彼がリーダーとして信頼されていることなのか、はたまた投げやりの
境地なのかはわからない。
 しかし、蛮勇に近い攻撃を、そのまま黙って見送るわけにはいかないと、大人たちは釘を刺す。いまにも『フライ』で
飛び立ちそうな彼らに、ミシェルは治療を受けながら苦しい息を吐いて告げた。
「待て、お前たちが考えなしに怪獣のまわりをうろついてもサイトの邪魔になるだけだ。やるなら、少しは頭を使え」
「ふ、副長どのっ! お体は? ああいや! 大丈夫です。あの車の雷に巻き込まれるなんてごめんですから、かく乱だけにつとめます」
 まだ血のりをぬぐえてもいない中でのミシェルの叱咤が、彼女の教え子たちの中に適度な緊張感を蘇らせた。そうだ、敵は
人の命なんかなんとも思っていない凶悪な連中なのだ。英雄気取りで出て行って殺されたら、それこそ愚者の鏡でしかない。

254 :
 やるなら確実に、才人たちの助けにならなくてはやらないほうがましだ。ミシェルは、まだ経験の浅い少年たちに、簡単だが
確実に効果が見込めそうな策を授けた。
「ならば、怪獣の目を狙え。どんな生き物でも、目だけは守りようもない急所だ」
 そう、卑怯なようだが、目を狙うことは相手が生物であるなら極めて有効な手段だ。格闘技の試合でわざわざ目潰しが
禁じ手にされているように、最大の情報源であり、かつ脆弱な目への攻撃は肉体への打撃の何倍も効く。地球で暴れた
バニラやドドンゴも目への攻撃が有効打になっている。
 むろんミシェルはそんなことを知るはずもないが、銃士隊の任務としておこなったオークなどの大型害獣退治の経験が活きていた。
 作戦を授け、飛んでいく少年たちを横目に、ミシェルは再び横になった。と、同時に咳き込んだ口のはしから血が流れて、
治癒の魔法を施しているルクシャナが慌てたように言った。
「無理しないでよ。わたしの魔法はそう強くないって何度言えばわかるの? あんたは普通ならとっくに棺桶に入っていて
おかしくない重体なのよ。せめてじっとしていて」
「すまん。しかし、まだ半人前のあいつらにまかせておけんものでな。やつらにとっては口やかましかろうが、あいにくわたしは
隊長譲りで不器用な育て方しかできんようだ」
 自嘲するミシェルに、ルクシャナも呆れたようにため息をつく。そしてハンカチでミシェルの口元の血をぬぐった。
「まったく、あなたたちといると心臓がいくつあっても足りないわね。私もずいぶん好き勝手やってきたつもりだったけど、
ここのところ常識人みたいな気になるわ。どうしてこう、蛮人って論理が欠落しているのばっかりなのかしら」
「お前が言うな。だがしかし、やつらはあれでいいのさ。あいつらには、頭の固い我々にない意外性と運のよさがある。
百年かかってじっくり考え抜いた作戦が、ぱっとひらめいた適当な思いつきに負けることもある。知識や常識なんて、
便利ではあるが万能ではないよ」
「道理を無理で切り開くというわけ? 一兵卒ならまだしも、とても、騎士団の副長の言う台詞とは思えないわね」
 まったくな。と、ミシェルは心の中で笑った。
 銃士隊も、結成当初はまじめでお堅い一団だったのに、いつのまにやらなにをやっているのか、ずいぶんと軽い
集団になってしまった。今のこんな始末を昔の自分が見たら、烈火のごとく怒るだろうが、昔の自分はそれだからダメだった。
目的のためには感情を捨てて戦う鉄の女といえば聞こえはいいが、そんな自分に超えられなかった壁を、能天気な
子供たちはやすやすと超えていってしまう。
 人が人であるということはなによりも大事だ。人は、何かである前にまず人であるべきだ。目的のために人であることを
やめたら、それはもう機械でしかない。そして機械では、決められた力は発揮できても限界を超えることはできない。
単純な力が及ばなくても、意志の強さによって不可能が可能になることはある。
 以前に才人は技量で圧倒的に負けているにも関わらずにアニエスと引き分けた。ギーシュたちも、功績を省みれば
普通の貴族の一生分以上の手柄を立てていると見ることも出来る。いずれも、どんな苦境の中でも決してあきらめない
強い意志があったからこそ力量以上の活躍をすることができたのだ。
「人間の可能性というものは、いくらでも広げることができる。あとはまかせたぞ。あいつに目にものを見せてやれ」
 怪獣に生身で向かっていく。危険このうえない仕事を年少の者に任せるのは心苦しいが、あいつらならやってくれるはずだ。
 
 激震を響かせ、メーサー車部隊に迫るサラマンドラ。迎え撃つメーサー砲の攻撃も次第に乏しくなり、才人たちが
苦悩している姿が目に浮かぶようである。
 かつて場所は違えど、サラマンドラは地球防衛軍の戦闘機をハエのように叩き落し、シルバーガルやスカイハイヤーを
持ってしても足止めにさえならず、戦いを見守る市民を絶望させたことがある。ウルトラマン80が戦った怪獣たちの中でも、
間違いなく上位に入るであろう強さで、科学も魔法もものの数ではないと暴れる。

255 :
 鼻から吹き出す火炎がメーサー車を才人たちごと焼き尽くそうと迫る。
「『エクスプロージョン!』」
 ルイズの爆発が火焔の軌道を逸らし、メーサー車はまた丸焼きを免れた。しかし、至近距離に迫っているだけに
威力を殺ぎきれずに熱量のかなりがメーサー車本体へも襲い掛かる。
「ルイズ、窓から離れろ!」
 熱線が車体を焼き、車内にいてもかなりの熱さを感じた。その証拠に、車体は熱く焼け、塗装の一部は変色して
剥げ落ちている。卵を落とせば一瞬で目玉焼きができるだろう。砲の機構そのものは冷却装置が働いて機能に
支障はないが、次は直撃が来るに違いない。
「くそっ、ここまでか。ルイズ! 脱出するぜ」
「待ってサイト! みんなが」
「なんだって!? ええっ!」
 やむを得ずメーサー車を捨てようとした才人はルイズの声に窓を見て驚いた。
 すぐそこまで迫ってきているサラマンドラを相手に、『フライ』の魔法で空を飛んでいる仲間たちが魔法を
撃って攻撃しているではないか。
「なにやってんだあいつら! 死にたいのかよ」
「いいえ、戦えてる。あの怪獣、かく乱されてるわよ。信じられない」
 ルイズは比較的冷静に見ていたが、やはり驚いていた。いつもギーシュとふざけているギムリと、あと数人が
たくみに空を飛んで魔法を飛ばし、巨大な怪獣を四方から絶え間なく攻撃して振り回しているではないか。
 それはまるで、顔の周りをうっとおしく飛び回るハエのように才人には見えた。ときおり飛び出していく火の玉や
氷の矢がサラマンドラの顔に当たり、傷つけることはできなくともサラマンドラはうっとおしげに頭を振る。むろん、
追い払おうとしているようだが、怪獣のサイズで人間を捕まえるのは難しい。怖いのは火焔やミサイルだが、
それもサラマンドラの正面に出なければ恐れることはない。彼らは、一見無秩序に飛んでいるように見えて、
その実は計算された軌道で見事に渡り合っていたのだった。
 あいつら、いつの間にあんな戦い方を。才人はルイズとともに感心し、心中で称えた。一見すると、たいした
戦い方をしてはいないように見えるけれど、二つ以上の魔法を併用して戦うにはかなりの熟練がいる。端的に
言えば『フライ』の魔法で飛びながら別の魔法で攻撃を仕掛けるには、宙空でいったん『フライ』を解除して、
墜落するまでのあいだに別の魔法を使って、再度『フライ』を唱えるという手順が必要になる。
 手順を口で言えば簡単だが、実戦で敵に狙われている状態で身動きできない浮遊状態になって攻撃し、
元の軌道に戻るためには詠唱の速さやタイミングを計る決断力、なにより度胸が必要となる。彼らの同年代で
こんな真似をできるのはタバサぐらいだったといえばすごさがわかるであろう。
 彼らはむろん、タバサのような飛行の速さやキレのよさはまだない。しかし、チームワークで互いの隙を補い合い、
サラマンドラに狙いをつけさせない。しかし持久力で人間が怪獣に歯が立つわけがない。リーダー格を担っている
ギムリが、運転席から身を乗り出している才人に向かって叫んだ。
「サイト! あと一分くらいならおれたちがなんとかするから倒すなり逃げるなり早くしろ! だけどできれば助けてくれ!」
「お前らはなにしに来たんだ! ったく、だがおかげで目が覚めたぜ。みんな! なんとかしてそいつの頭を上に
上げさせてくれ! そいつは、喉が弱点なんだ」
「わ、わかった!」
 声が届いただけ奇跡。いやそれだけメーサー車とサラマンドラの距離が近づいているという証拠だ。あと一回ミサイル攻撃を
受けたら間違いなく全滅する。猶予は一分もない。

256 :
 才人は全神経を研ぎ澄ませて照準機を覗く。一瞬でもサラマンドラが急所を見せたら狙い撃つ!
 ルイズも才人に寄り添い、最悪の事態が起きたときに備える。ここまできたら、もう互いに選択肢はほとんどない。
 
 だが、才人がメーサーを放とうとしたその瞬間だった。森の影から突如として巨大な人影が立ち上がり、泥と枝葉を
ふるい落としながらメーサー車部隊に襲い掛かってきたのだ。
「はははは! 虚無の小娘にガンダールヴ。まさか私のことを忘れたわけじゃないよねえ!」
「シェフィールド!? あなた、まだいたの」
「逃げたと思ったかい? あいにく私にもプライドというものがあってね。私にこれだけの恥をかかせてくれたお前たちを
生かしたままで、帰るわけにはいかないのよ」
 最後に一体だけ残ったヨルムンガントを使った、シェフィールドの決死の逆襲であった。サラマンドラが気をひきつけてる
うちに森の中を見つからないように這いずってきて、今この時とばかりに襲い掛かったのだ。
「ここまで来ればそのやっかいな砲も役に立たないでしょう。私をコケにした報い、死んでつぐなってもらいましょうか!」
 至近距離にいきなり出現したヨルムンガントにはメーサー車といえども対抗できなかった。体当たりを食らわされ、
最後尾にいた一両が横転転覆させられた。シェフィールドは高笑いし、次のメーサー車を狙ってヨルムンガントを
襲い掛からせる。
 前にはサラマンドラ、後ろにはヨルムンガント。まさしく絶体絶命の挟み撃ち。だがそれでも照準機から目を離さない
才人にルイズが言った。
「サイト、もうやられるわよ。脱出しましょう!」
「だめだ。今しか、今しかサラマンドラの急所を撃てるチャンスはねえ。一瞬だ、一瞬でいいんだ」
 このチャンスを逃せばサラマンドラを倒せる機会は永遠に巡ってこない。それに、元はといえば自分の責任なのだ。
みんなに散々迷惑をかけたあげくに助けられ、最後に逃げ出したとあっては、今度こそ自分で自分を許せなくなってしまう。
 二両目のメーサー車も転倒させられた。白煙を噴き、パラボラを曲げた車体を踏みつけてヨルムンガントが迫る。
さらにほんの数十メートル先にはサラマンドラが火炎とミサイルの同時攻撃を仕掛けようとしている。もうエクスプロージョンでも
ここまで近かったら相殺しきれない。
 これでも喉を見せないサラマンドラに、才人もこれまでかとあきらめかけた。喉以外を撃ってもサラマンドラは倒せない。
 だがそのときだった。サラマンドラのかく乱を続けていたギムリが、サラマンドラの目の前である呪文を使ったのだ。
『ライト』
 それは、杖の先にわずかな発光体を作るだけの初歩的な呪文だった。本来なら、夜や暗所で懐中電灯のように
使うためで、戦闘に用いられることはまずない。しかし、目の前に飛び出してきたギムリを直視し、さらに空を覆う暗雲によって
目が暗さに慣れていたサラマンドラにとっては、そのわずかな光も太陽のように明るく見えた。

257 :
「いまだ!」
 視界をつぶされてしまったサラマンドラが反射的に首をひねる。その隙を見て、ギムリはほくそ笑み、才人は歓喜して叫んだ。
「ひっかかりやがったな。目は、どんな奴でも鍛えようがない急所。そうですよね、副長どの」
「みんなぁーっ! 離れろ、撃つぞぉーっ!!」
 才人の絶叫にギムリたちは蜘蛛の子を散らすように飛び去る。そして、才人は照準機の中にピタリと収まった、サラマンドラの
赤い喉へと向けて、最後の一撃を解き放った。
「くたばれぇぇぇぇっ!」
 三両目のメーサー車が蹴りとばされた瞬間、才人たちの乗る最後のメーサー車のパラポラから最大出力のメーサーが
太く青白い光線となって放たれた。至近距離からのそれは、ロシアンルーレットの弾丸のごとく直撃し、サラマンドラ唯一の
急所の全細胞を瞬時に焼き尽くした。
「やった! これで奴はもう復活できないぜ!」
 喉の再生器官からの酵素がなければ復活能力は働かない。もうサラマンドラはただの怪獣にすぎないのだ。
 
 だが、急所を焼かれて怒り狂うサラマンドラと、復讐に燃えるシェフィールドのヨルムンガントが迫る。
 もう、車から降りて逃げている時間はない。窓外いっぱいに迫るふたつの巨大な敵が、メーサー車ごと押しつぶして
しまおうと眼前だ。ルイズは才人の手を取り、杖をかざして呪文を唱えた。
『テレポート』
 瞬間、才人とルイズの姿が車内から掻き消え、次いで操縦席が火花をあげて押しつぶされた。
 大破する最後のメーサー車。しかしふたりの姿は、そこから少し離れた空の上に転移して現れ、落ちかけたところを仲間にキャッチされた。
「うわぉっ!? ルイズ、サイト! どっから出て来るんだよ」
「ごめん! 急いでたもんだから飛ぶ座標のイメージがズレたみたいね。ともかく助かったわ。今回は貸しより借りが高くついちゃったわね」
 ギムリたちに支えられ、ルイズと才人はさっきまで自分たちがいた場所を見下ろした。
 メーサー車はサラマンドラとヨルムンガントに破壊されて炎上している。ルイズのテレポートが一瞬でも遅れたら二人とも
助からなかっただろう。
 そして、シェフィールドも破壊した車両の中にふたりの死体がないのを確認すると、周囲を見渡して宙に浮いているルイズたちを見つけた。
「いつのまにそんなところに。それも、虚無の力なのかしら?」
「あなたに教える必要はないわ」
「そう。まあさすがに伝説にうたわれる始祖の系統。私ごときの常識では推し量れるわけもないわね。お前のような小娘が、
この私と互角にやりあえるのだから」
「そうね。確かに、虚無のないわたしはただの無力な小娘だわ。けれど、あなたもたいしたものね。そのゴーレムといい、
それを自在に操ってロマリア軍やわたし達とひとりで渡り合う手腕と度胸といい、それを正しいことに使っていたらどれほど
有益なことだったか」
「あいにく私は、我が主の願い以外のなにものにも従うつもりはないわ」
 ルイズとシェフィールドは、空の上と下で舌戦を繰り広げた。
 互いに、知恵と力を絞りつくしての総力戦だったこの戦い。敵への敬意などというきれいなものではないが、互いにそれぞれの
力量には感服していたのだ。

258 :
 しかししょせんは相容れない存在である。ルイズと、シェフィールドは互いに相手が自分にとって決して容認することのできない
敵だということを確信した。
「フフフ、虚無の小娘とその仲間ども。よくも私の軍団をここまで痛めつけてくれたものね。素直にほめておくわ。けれども、
私にはまだヨルムンガント一体と、手傷を負ったとはいえ怪獣一匹が残っている。どうやらこの勝負、私の勝ちのようだね」
 勝ち誇るシェフィールド。だが、ルイズは悲しげに目を伏せると、ゆっくりと杖を頭上にかかげた。
「いいえ、あなたの負けよ。危険な武器は、あなたのそれも、わたしたちのものもハルケギニアには残させない。ここで、
二度と使えないように破壊する。そして、この戦争も止める」
 ルイズの流れるような呪文の後に、振り下ろされた杖の先が光る。
『エクスプロージョン』
 ルイズのもっとも得意とする爆発の魔法。しかし、それはヨルムンガントやサラマンドラを狙ったものではなかった。
魔法の力がメーサー車に吸い込まれた瞬間、目もくらむような閃光とともに大爆発が巻き起こった。しかも、その規模は
尋常ではなく、エクスプロージョンの威力をはるかに超えて、瞬く間に周辺のものを無差別に巻き込んで広がっていく。
 魔法の目標としたのは、四両のメーサー車に才人がそれぞれひとつずつ仕掛けていた小型爆弾。ただし、ただの爆弾ではなく、
才人がマグマライザーの残骸から回収したウルトラ警備隊の特殊兵器『MS爆弾』である。これは、ほんの二個の使用で
特殊合金製の扉を吹き飛ばし、十個程度入りのケースひとつぶんで地底ロボット・ユートムの警備していた地底都市を
跡形もなく粉砕してしまうほどの破壊力を持っている。
 才人は、万一の場合の自爆用として、このMS爆弾を各車に仕掛けていた。ただしMS爆弾は時限式なので、ルイズの
エクスプロージョンで誘爆させる。これが、才人の最後の切り札であり、シェフィールドへの引導だった。
 メーサー車四両の爆発のエネルギーが拡散するのにかかった時間はまさに刹那。至近距離でそれを食らったサラマンドラは
再生能力を失った全身の細胞を焼き尽くされ、ヨルムンガントは泥人形のように粉々に粉砕される。そして、ヨルムンガントの
肩に乗って操っていたシェフィールドもまた。
「ばかな……ジョ、ジョゼフさまぁぁーっ!」
 絶叫を残し、シェフィールドは爆発の炎の中に消えていった。
 爆発はメーサー車と、その周辺にあったものすべてを飲み込み。爆風は急激に周辺の大気を押し出し、近くの空にいた
ルイズたちを軽々と吹き飛ばす。
「うわぁーっ!」
 『フライ』の魔法の効果もなく、風に舞う木の葉のように才人やルイズたちは吹き飛ばされるままに森に落ち、木々の
枝で衝撃を弱められた後で、クッションのようになった腐葉土の上に落ちた。
 
 爆発の炎は天を焦がし、爆音は数十キロの距離を越えて響き渡る。そして、その光景は、戦いの顛末を見守っていた
ガリア両用艦隊の将兵の士気を砕くにはじゅうぶんであった。
「うわぁぁ、鎧ゴーレムとドラゴンがやられた。おれたちは、いったいこれからどうなるんだ?」
「ロマリアにあの怪物を倒せるメイジがいたなんて。おれたちなんかで、勝てるわけがないじゃないか」

259 :
 元々、騙されていたのに加えて、恐怖と集団心理で操られていた将兵たちである。彼らに恐怖と、戦争に勝てるという
幻想を見せていた源泉が失われれば、たやすく士気はくじかれる。もはやガリア艦隊は、図体だけはあっても、戦う意思を
喪失したでくのぼうに過ぎなかった。
 進む意思もなくし、かといってガリアに帰ることもならない両用艦隊はとほうに暮れたようにその場に浮かび続けた。
 しかし、やがてロマリア方面から優美な容姿の一隻の船が現れると、将兵たちの目はその船に釘付けになった。
「あれは、教皇陛下のお召し艦『聖マルコー号』だぞ」
 どよめく両用艦隊の将兵たち。教皇陛下の船が、たった一隻でなにを?
 固唾を呑んで見守る両用艦隊の眼前で、その船は舵をきって側舷をさらし、続いて魔法で拡大された美しい声が
すべての船の隅々にまで響き渡った。
 
「ガリア両用艦隊の将兵の皆さん。私はヴィットーリオ・セレヴァレ! 聖エイジス三十二世です。まことに不幸なことに、
あなたがたはガリア王ジョゼフ一世の謀略に落ち、邪悪な陰謀の道具として戦わされました。しかし、神はすべての
真実を見通しています。あなたがたには何の罪もなく、ロマリアは不幸な迷い子を決して見捨てません。始祖ブリミルの
名において、ロマリアはあなたがたすべてを客人として迎えましょう!」
 
 
 続く

260 :
以上です。>>252の方、支援ありがとうございました。
原作では虎街道の戦いに当たる場面で、メーサー車の激闘を描いた今作お楽しみいただけたでしょうか。
タイガー戦車のように無双とはいきませんでしたが緊迫感のある戦いはお送りできたかと思います。
前回もいろいろご感想をいただけて大変うれしく思っております。避難所も含めて目を通させていただき、次回への活力と
展開の参考にさせてもらっております。あらためてお礼を申させていただきますね。
忙しい日が続いていますが、書くのは楽しいので時間を見て続きを書いてます。
ウルトラマン列伝も新ヒーローギンガに負けじとゼロもまだまだ活躍してますし、ウルトラパワーの補給をさせてもらってます。
ベリアル陛下との次なる対決はあるんでしょうか。このssはウルトラの時系列ではメビウス本編の直後に当たるので彼らは
登場させられませんが、さらなる活躍を期待するところです。
では、また14話でお会いいたしましょう。

261 :
リアルタイムで遭遇、乙でした!
今までの鬱憤を晴らすかのように屈辱を与えられ、仮に生きていたとしても、もはや五体満足にはならんだろうなぁシェフィールドは。
いつエースが復活するのかにも正直やきもきしています。

262 :
あびぃ

263 :
剣心の人とアセルスの人と萌え萌えの人と、アニメ版いくっていってたウルゼロの人こないかな

264 :
このスレじゃ新参SSは歓迎されないからね

265 :
鷹の爪団を召喚して菩薩峠君と契約したらアルビオンの位置を変えまくったり
地上に落としたり出来そうな気がする

266 :
>>265
鷹の団に見えた
グリフィスが「…げる」と言う直前に、覇王の卵が召喚されたらどうなるだろw
蝕が強制的に中断されてグリフィスはショックで死ぬか壊れるかもしれんが
鷹の団は生贄にされず五人目も揃わないので、世界はそこそこ平和になりました(完)とか

267 :
いやいや新参の人もどんどんどうぞ
テイルズの人もいまでも待ってますから帰ってきてください

268 :
二週間ぶりです。
がんばって二話分のストック作りました。といっても以前なら一話半くらいですけど。
長すぎてもWikiで前後編になってしまうのでこのくらいが適量なのと、話がやたら重いので短く切らないと読んでいる方が疲れますから。
ほか投稿間隔や量の問題もありますので、とりあえず1話分投稿します。
続きは来週あたりに投稿します。その間さらに次を書きためる予定。

今回はジョゼフの告白になります。続きはジョゼフの宣告。どっちも会話が長くてやたら重いです。
自分で書いてて何ですが読みにくいので気合い入れてください。長丁場の会話が連続して、シーンの変更が二話に渡ってまるで無いので。
続きの最後で、クライマックスの選択が。
その次が最終決戦?&超ネタばらし。
その次がエンディングになります。
ネタばらしが長くなりすぎなければ、今回含めて4話で完結します。
来月末までには完結させたいですね。

269 :
 第37話 人形
 
 
 
 「え、それ、どういうこと?」
 
 いきなり『ただ一人の人間』扱いされて混乱するなのは。
 
 ただでさえいきなりそんな事を言われたのに加え、必然としてその場の全員の注目を集めてしまっているため、さしもの彼女とて落ち着いていろという方が無理な話である。
 そんな場を納めるかのように、ジョゼフが再び語り始めた。
 
 「なに、実際の所、その理由は大したものではない。彼女は今この場でただ一人、このハルケギニアに生まれついたものではない、ただそれだけの事に過ぎん」
 「という事は、逆に言えば、あなたの言う『人形』とは、このハルケギニアの大地に生まれた人すべてを指しているのですね」
 
 ヴィットーリオが確認するようにジョゼフへと問いかけた。
 それに対して頷くジョゼフ。
 
 「その通りだ。おまえ達はくだらない狂人の妄想と思うだろうが、そこのタカマチナノハのような『外』の存在から見れば、我々は人というのもおこがましい人形の群れにすぎんのだ。まあ、それでも六千年ほどかけて、少しはましになってはいるのだがな」
 「六千年……というと、それは始祖と何か関係が?」
 「さすがに完全には判らん。だが、少なくとも間接的にはあっただろうな。それに関してはおそらくこいつが知っているはずだが、禁忌に触れるとかで教えてはもらえなかったが」
 
 ジョゼフはそう言って、彼の背後に控えていた人物を前に出した。
 かぶっていたフードが外され、その顔が遠目ながら明らかになる。
 若い男らしい事がどうにか見える程度の大きさであったが、それでもはっきりと見て取れる一つの特徴があった。
 人にはあり得ない、長くとがった耳。
 
 「エルフ……」
 「エルフ、だと……」
 
 それに気がついた兵士達の間にざわめきが走る。そんな中、なのはの口から、小さなつぶやきが漏れた。
 
 「ビダーシャルさん」
 「知っているのですか?」
 
 それを聞いたヴィットーリオがなのはに聞く。
 
 「はい、一度戦った事があります。ご主人様と、その友達数名と。そのときは何とか勝ちましたけど……」
 
 その瞬間、ヴィットーリオだけでなく、ウェールズをはじめとするなのはの周りにいた人物全員が目をむいて驚いていた。
 
 「あ、貴方達は、それだけの人数でエルフに勝ったというのですか!?」
 「馬鹿な……いや、虚無故にか……」
 
 周りからの驚愕の声を受け、ルイズは今更ながらにエルフと自分たちの実力差を思い知ったが、ふと気がつくと我が使い魔がなぜか非常に憤っているのを感じた。

270 :
 「なのは?」
 
 思わずそう言ってしまったルイズを、珍しくなのはが無視した。そして、そもそもルイズに声をかけられた事に気がついていなかったかのように、彼女はヴィットーリオをはじめとする周りに異様なまでのプレッシャーをかけていた。
 教皇聖下と将軍クラスは何とか耐えているが、それ以下の人々が明らかにビビっている。
 そしてなのはは、その激しい怒りとは裏腹の、平静そのものの声で言った。
 
 「……ビダーシャルさん、です。エルフ、じゃありません」
 
 それを聞いてルイズにはすぐその意図する意味が理解できたが、周りには今ひとつ伝わっていないようであった。
 ルイズは必死に考え、何とかその思いを翻訳する。
 
 「あの、ですね、皆さんの言い方は、ビダーシャルさんを含むエルフの人々を、オークなんかと同じように『エルフ』という枠に押し込めてしまっている、と、なのはは言っているのです」
 「……? その、すまぬ、ミス・ヴァリエール。意味がよく分からないのだが」
 
 ウェールズ王子についていた副官の一人が、やや申し訳なさそうに質問してくる。
 ルイズはうまく説明できない自分に憤りつつも、何とかわかりやすい言葉にしようと努力した。
 
 「えと、その、エルフにだってあのビダーシャルみたいに私たちと敵対した人も、ティファニアのお母さんみたいにわかり合えた人もいるのですから、
女を見れば襲いかかってくるオークみたいなのとエルフを一緒くたにしたような物言いは、なのは的には間違っているんじゃないかと」
 「……何となくですが、理解できました」
 
 相手も今ひとつ納得はできていないようであったが、ぎりぎり何とか理性的な判断はできたようだった。
 
 「要は、相手を知性ある、たまたま敵対しているだけの人と同じ一族としてみるのか、言葉を交わす事もできない蛮族、いや、魔獣として見るのかと言うことですね」
 「あ、そんな感じだと思います」
 
 ウェールズがまとめた意見に乗るルイズ。
 そんなやりとりを見て、なのはの怒りも沈静化してきたようだった。
 
 「あ、すみません、少し熱くなってしまったみたいで」
 
 そう言って頭を下げたなのはに、むしろほっとした雰囲気が周りに流れる。
 
 「お気になさらずに。どうやら我々はあまりの長きにわたってエルフと敵対しすぎたようです」
 
 ヴィットーリオが取りなすように言う。
 
 「それより、話を本題に戻しましょう。あちらも動くようです。

271 :
sien

272 :
 なのは達が下で少しもめているのと同じくして、甲板上でもビダーシャルがジョゼフを責めるような目で見つめていた。
 
 「王よ、なぜ我々をここで止める。滅ぼすべき仇敵を前にして、なぜ制止をかけようとするのだ」
 「約束だぞ。舞台は作ると言った。だが、その決行は俺の命を待てとな」
 「しかし……」
 「なに。撃つか撃たぬかは判らぬが、本気で殺しにかかってきたなら、即座にお前達は退避しろ。俺が落ちた後、あのタカマチナノハをどうするかはもはや俺の知ることではない。せいぜい殺し合うがいいさ」
 「なにを考えている、お前は」
 
 怒りと不安の入り交じった顔でジョゼフを見るビダーシャル。
 
 「私と他の船に乗る同胞の戦士の力があれば、多勢に無勢であってもあのシャイターンは討ち取れるだろう。その後我々がこの軍勢につぶされようと、それはかまわぬ。
 ……だが、それ以上に気になるのは、お前の意図だ。
 確かに我々はお前に禁忌は語らなかった。だが、おそらくお前はもう推測しているのだろう? 我々が禁忌としたことの中身を」
 「ああ」
 
 小さく一言つぶやきつつ、ジョゼフは頷く。
 
 「書庫の記録をあさり、各地の異端審問官に金をつかませて押収した禁書を調べ、さらにはシェフィールドの力や我が虚無の魔法までも駆使して残されている限りの資料を集め、分析し、検討し、再構成した。そして何とか筋道の行く結論は出せたよ。
 まあ、所詮は資料からのもの。元が間違っていればすべては妄想に過ぎないわけだがな」
 「結論だけ言ってみよ。この際だ。禁忌を語ることは許されていないが、貴様の妄言が的を射ているかどうか教えるのは禁忌ではない」
 
 ジョゼフは、少し気を引かれたようであったが、それを押しとどめた。
 
 「いや、答え合わせは後にしよう。あちらもそろそろ良さそうだからな」
 
 ジョゼフが前方を見れば、少しもめているようだったなのは達の注目が、再び自分に集まっているのが見て取れた。
 
 
 
 「さて、何故余が我々を、このハルケギニアの大地に生きるものを人形と呼ぶのか……それはこの世界の創世そのものに関わることだ」
 
 いきなり飛び出した大言壮語に、思わず唖然となるアルビオン側。
 
 「い、いきなり大きく出たわね……」
 「でも、それなりに根拠はある様子ですね」
 
 ルイズとなのはは、思わず顔を見合わせながらそう語る。
 ジョゼフはそんなこちらの様子を気にはせず、言葉を続けた。
 
 「一つ問おう。そちらにいるものの中で、始祖の時代……約六千年前、始祖が降臨して我々に魔法をもたらす前の世界について知るものはいるか」
 
 それは一見たわいもない質問であった。だが……意外なことに、誰一人それに答えられるものはいなかった。
 そしてジョゼフもまた、それを予見していたようであった。
 
 「で、あろうな。おそらく教皇聖下ですら、それは知るまいて。いや、むしろ決して教皇には教えられまい。
 その情報は、すべて禁忌として闇に葬られるものであるからな」
 「先に言った、私が教皇だからこそ知ることのできない知識ですね」
 
 ヴィットーリオが確認するようにジョゼフに言う。
 ジョゼフはそれに対して肯定の意を返した。

273 :
 「そうだ。この件に関する知識の取り扱いには二通りある。教皇のみに伝えられるか、教皇には決して伝えられないか。そして我らの先人は後者を選んだ。守り抜かねばならない禁忌故に、表の顔たる教皇には決して知られてはならない、と。
 それ故この件に関わる情報は、ほとんど文字通り消され、闇に葬られてきた。
 だが、組織は腐敗する。この知識が、教皇に対しての武器になると思い違いをしたものが、ごくわずかに記録を残した。余は……いや、正確には余の先祖達は、それを入手したのだ。
 最も断片的であり、また、あまりにも現在の常識・知識とはかけ離れているが故に、ごく一部を除いてはまともに理解できるものではなかった。余ですら無能と誹られるほどにこちらに時間を費やしても、形にするまでに十年以上の時をかけたわ。
 まあ、幸い虚無に目覚めた後は、使い魔のミョニズトニルンととある虚無の魔法のおかげで、一気にはかどったがな。
 そうそう、念のため、もしそちらの担い手のうち誰かが生き延びられたときのために、その魔法を教えておこう。魔法の名は『記録(リコード)』。古き物品に宿った記憶・記録を読み取る魔法だ。
 覚えられれば、余が語ったことが妄言かどうかの検証はたやすいであろう」
 「そんな魔法もあったのですか」
 
 ヴィットーリオがジョゼフのことを見つめながら言う。確かに、そのような魔法があったのならば、古き文献や物品を介して、過去の歴史を紐解く事の難易度は格段に下がるであろう。
 この世界には、固定化の魔法のおかげで古いものもかなり残っているし、何より魔法で読み取られた知識には虚偽がない。文献資料は記載されたことが虚偽であることがままあるため、単純にそれを信用するとひどい目に遭うこともあるのだ。
 
 「まあそれはさておき、虚無の魔法まで駆使して余が掴んだ過去の真実。それは、この世界が、エルフ達の間で『大いなる者』と称される何かによって、とある目的の下に作られたというものであった。
 まあ、我々の目から見ても、その『大いなる者』は、始祖の上に属する『神』と称しても間違いではあるまい。
 ……もっとも、エルフが信仰するものであることからしても、我々からすればどちらかというと『邪神』という方がふさわしい神でもあるがな……ちょっと待てビダーシャル。今のは言葉の綾だ。お前達を貶めたわけではない」
 
 少し余計なことまで言い過ぎたのか、甲板の上でビダーシャルの手刀がジョゼフの首に突きつけられていた。
 
 「意図が判らないわけではないが、大いなる者を貶めるような発言は控えてもらいたい」
 「判ってはいるがお互いの立場ゆえやむを得んだろ! 悪意があるわけではないから何とか流せ!」
 「……確かにやむを得んな」
 
 手刀を引くビダーシャル。それを眺めていたアルビオン側は、しばし言葉も出なかった。
 
 「……少し話がそれたな。『大いなる者』の正邪については置くとして、彼の者が文字通りこのハルケギニアの大地をはじめとする、すべてを創造したことは間違いない。その点では我々にとって仮に邪神であったとしても、我々は彼の存在に感謝せねばならない。
 だが、問題なのは、彼の者が我々を生み出した理由なのだ」
 
 そこで『判るか』とでも言いたげに言葉を切るジョゼフ。
 その挑戦を受けたかのように、ルイズが、ウェールズが、ヴィットーリオが、そしてその他の人々も皆その答えを考え始めた。
 
 「……あなたの様子からすると、彼の存在は我々を何かに利用するために生み出したと言いたいのですね。だから我々は『人形』だと」
 
 そしてはじめに答えたのはやはり、この手の思索になれている教皇聖下であった。
 それに対して狂王はにやりという言葉の似合う笑みを浮かべる。
 
 「惜しいな。間違いではないが正解と言うには少し違う。何かに利用するために生み出される者など、別に神々の世界でなくともいくらでも存在している。
 我々のような、人の上に立つ者にとっては、ある意味臣民ですらそういう存在といえよう。その程度のことなら、余は狂ったりはせん。
 我が憤る理由、それは文字通り、『人形』という言葉の中にあるのだ」
 
 先ほどの笑みを憤怒に一転させるジョゼフ。その様子に、一同は思わず恐れおののいてしまった。
 なのはですら。
 
 「道具として生み出されるのはかまわない。それが道具でありながら意思ある人であるというのも、それが必要なら甘受しよう。だが……求められたのが」

274 :
 そこで一旦言葉を切り、大きく息を吸い込むジョゼフ。
 その様子に、この後にこそ狂王の怒りの源が来ると、身構える聞き手達。
 そして狂王を狂わせた、呪いの源泉が彼の口から放たれた。
 
 
 
 
 
 
 
 「生き、暮らし、人としての営みを完全にこなしながらも、その生きる者の意思を全く無視した、ただ特定の役割を果たすためにだけ存在する人形であれと定め」
 
 そこで大きくのけぞり、天を見るジョゼフ。
 
 「しかもそれが永遠にその様を保てと、恋する相手も、生まれてくる子供も、その未来の生き方さえ、すべてを『シナリオ』という名の呪縛の元に縛り付け、それから逸脱することを許さず、いや」
 
 一転して今度は地を睥睨する。
 
 「そもそも自分たちが、そんな『生まれてから死ぬまで、ただ特定の筋書きをこなすことだけに存在する』、ということさえ知らぬまま、毎日をただ同じように繰り返すことに生きることを定められ、しかもそれに対して疑問を持つことすら許されない」
 
 そして、その視線はなのはの元を向き、
 
 「そう、生まれる前、存在を定められた時より、息をする舞台装置として、人に見える駒として、数千年間にわたってひたすら同じ毎日を繰り返すことを定められて生まれるモノは、『人』といえるのかっ!
 答えられるか、タカマチナノハ。この地において異邦に生まれ、ただ一人、その一切の呪縛に縛られぬ、『真に自由に生きる者』よ!
 ……繰り返そう。始祖の存在するときより前、我々は数千年の長きにわたり、常に同じ毎日を過ごしていたのだ。それを全く異常だとも思わずにな。
 彼らにとっては、昨日と同じ今日が来て、明日もまた同じであることが当たり前だったのだ」
 
 
 
 
 
 
 
 さすがになのはといえども、すぐに答えを返せるわけがなかった。
 
 
 
 
 
 
 
 「それって、毎日の習慣とか、事件がないから同じになるとか、そういう『おんなじ』じゃないんですか?」
 
 しばしの沈黙の後、なのはから飛んだのはそんな疑問。
 ジョゼフは、それを予想していたかのように、あっさりとそれに答えた。
 
 「違う。一つ聞くが、おまえは『ロールプレイングゲーム』という物を知っているか?」
 「え? 一応、テレビゲームの物くらいなら……」
 
 なのは達にとっては常識レベルの知識である。なのは自身はコンピューターなどの電気・電子機器に関しては、カメラなどのギミック的な物の方に興味を持っていたので、仮想的なゲーム系の知識はほぼないと言ってよかった。
 特に齢九歳にして魔法を知ってからは、その手のゲームなどに向く中二的欲求が、すべて魔法というリアルファンタジーに取って代わられてしまったため、ゲームのような仮想現実的存在に対する興味をほぼ完全に失ってしまっていた。
 それでもゲームなど全くやらないお母さん達でも、四十代くらいまでなら某DQのような国民的タイトルの存在と、その概要くらいは知っている。
 なのはの「ロールプレイングゲーム」に対する知識はせいぜいその程度の物だった。
 むしろロールプレイと言われると、カウンセリングや教導などで使われる方の『役割を演じる』という本来の意味が先に立ってしまう。
 実際なのはの脳裏に先に浮かんだのはそちらの意味であったのだが、『ゲーム』と言うからには、先の方の意味なのだろうとなのはは考えたのだ。
 

275 :
 「それを知っているのなら話は早い。余にはよく理解できない物であったが、その手の遊戯においては、主役が訪ねる町の人間は原則特定の場所にいて、主役との受け答えをするためにのみ存在しているであろう?
 タカマチナノハ、我々はそなたから見たら、その『町の人間』でしかないのだ」
 
 なのはは昔見たテレビゲームの画面を思い出す。画面の中に作られた町の人間。確かに彼らは、ゲームの主人公キャラが接触しなければずっと特定の行動を繰り返す。
 店員などは主人公が話しかけるまでいつもずっと同じ場所に立っている。
 そんなゲームでは当たり前の光景が現実に適用されたところを想像し、その様子とジョゼフの言葉が脳内で結びついたとき、なのはは思わず叫んでしまった。
 
 
 
 「ちょ、ちょっとそれって、この地が生み出されたのって、ゲームを体感するため? でもゲームと現実は違うから、ゲームのために現実をゲームみたいにねじ曲げた?」
 
 
 
 あわあわと彼女にしては珍しく慌てふためき、まとまらない言葉を叫ぶようにがなる。
 やがてそれの意味することが整理できたのか、不意になのはは下を向き、黙り込む。
 そしてその顔が上げられたとき、浮かぶのは紛れもなき怒り。
 
 「それって、許されることじゃないと思う。人としてそんなこと、しちゃいけないと思う」
 
 なのはの言葉を聞き、大いに同感だというように首を縦に振るジョゼフ。
 だが。
 
 「まあそうであろうな。当たり前の良識を持っていればそう思うのは当然だ。だがそれがほしいと思ったとき、大いなる者は作ったのだよ。
 人と同じ形と体を持ち、人にしか見えない、思えないのに人ではないもの。
 そう、彼らはそんな下位の創造物として、一つの世界を丸ごと作り上げたのだ。
 それがこの地、我々の住む世界、我々が『ハルケギニア』と称する大地だ」
 
 なのはの怒りに対し、まるでその罪をRするかのように、ジョゼフは告げた。
 そしてそのまま顔を横に向け、ビダーシャルに対して言葉を発する。
 
 「さて、間違っていたかな? エルフ――いや、世界の管理者よ」
 「それをお前以外に告げることは禁忌に当たる」
 
 ビダーシャルは、一切表情を変えることなく、ただ、そう答えた。
 それが答えだと言わんばかりに。
 

276 :
 
 
 ――はい。我々は『大いなる者』から、世界の管理を司るよう定められた存在です――
 
 なのはは、かつてビダーシャルと戦ったとき、ルイズの言葉に対してそう答えた彼の姿を思い出していた。
 そう、確かには彼は言った。
 
 「ビダーシャルさん」
 
 なのはは問う。
 
 「以前、あなたと戦ったとき、あなたは確かに言ったわ。自分たちが世界を管理する存在だって。でもそれって、それを言うのって禁忌なの? ならなんであのときそれを教えてくれたの? ご主人様の質問に答えてくれたの?」
 
 ビダーシャルは答える。
 
 「それはあなたがいたからだ」
 
 そのままルイズとなのはを遠くからでありながら間違いなく見つめてくる。
 
 「この地に生きる者に対しては、それは禁忌である。だが、例外が二つある。『大いなる者』の存在を知るものと、外から来たる者、およびその人物と強い関わりのある者に対しては、この禁忌は適用されない。
 そして今、外から来たる者であるそなたの問いにより、この場にいるすべての人間に対して、今禁忌が解かれることとなった」
 「あ、それがつまり、なのはに強く関わるって言う意味なのね」
 
 ルイズは今のやりとりから、禁忌の制限を見て取った。
 そしてそれと同時に、なぜかジョゼフが突然大声を上げて笑い出した。
 
 「こ、これは予想以上だ。よくやった、タカマチナノハ」
 「は?」
 
 笑いながらの賞賛に、思わず呆けるなのは。
 だがそんな彼女の様子など気にもせずに、ジョゼフは言葉を続ける。
 
 「今、俺たちの言葉は拡声の魔法によって、末端の兵士達すべてにまで伝わるようにしている。そんな場で、まさかエルフの禁忌解放が伝えられるとはな。これだけでも俺がここまでの乱を起こした価値があるというものだ」
 「えっ? それが目的だったんですか?」
 
 思わず聞くなのはに、今度は首を横に振るジョゼフ。
 
 「いや、それは本来の目的ではない。だが、本来のそれに匹敵する成果だ。これで俺の目的は、間違いなく果たされそうだ」
 「……何なのですか、それは」
 
 今ひとつ理解不能だったジョゼフの目的らしきモノが見えたので、そこに切り込むなのは。
 
 「俺の目的か」
 
 ジョゼフの言葉は、いつの間にか崩れていた。『余』という自称が『俺』になるくらいに。
 そしてその目的は、至極あっさりと彼の口からこぼれ出た。
 
 
 
 
 
 
 
 「なに、たいしたことじゃない。俺はただ、歴史を進めたいだけだ」
 

277 :
 ここまでです。支援感謝。
 後タイトルの番号更新忘れてました。ごめんなさい。

 先にも書きましたけど、続きはできているので来週にはUPできます。
 すぐに上げないのは続きを書きためるため。また二週間かかると内容的に待たせすぎになるのが怖いので。
 では、また来週よろしくお願いします。ほんとに仕事楽になってよかった。

278 :
乙です。続きがとても気になりますね。
ところで、スレがPart330になったら、また多重クロスの特別編がやりたい。

279 :
魔砲の人、up乙です。
>>266
ベヘリットには「何をしても必ず持ち主の所に戻る」という設定があるので、
1)新しいのが出てくる
2)髑髏の騎士が余計なことをしてグリフィスの手に戻る
3)次元間移動が出来るゴッドハンドがコッソリ回収しに来る
の何れかになるかもしれない。

280 :
忍法帖教えてくれた人、ありがとうございました。
毎日コツコツレベルを上げて、帰ってきたウルトラマン!
レベルが二桁あれば、問題ないかな? 不具合か何か?で現在のレベルが確認できないので不安ですが……。
とにかく、改めて投下させてもらおうと思います。
開始は20:45からですが、前回中断したところまでは、投下テストも兼ねて改めて書き込みます。
ウルトラマンゼロの使い魔
第十四話「ひきょうもの!シエスタは泣いた(前編)」
冷凍怪人ブラック星人 登場
 トリステイン王女アンリエッタから、帝政ゲルマニアとの同盟に破局をもたらす手紙を
アルビオンのウェールズ皇太子より回収する任務を受けて旅立ったルイズと才人たち。
しかし護衛につけられたグリフォン隊隊長ワルドは、『レコン・キスタ』の回し者だった。
ウェールズの命を狙うワルドは才人が一度は阻止したのだったが、宇宙人連合の横槍により、
結局ウェールズの命はワルドに奪われてしまった。そのため、任務は達成したが、
ルイズと才人の心には重い雲がのしかかった……。
「……よっと。これでいいか?」
『ああ、ありがとな。これでミラーナイトといつでも話が出来る』
 旅を終えて魔法学院に帰ってきたルイズと才人が最初にしたことは、ゼロの頼みで姿見を
部屋に置くことだった。鏡ならルイズの部屋にももちろんあったが、全身が見えるものの方がいいと
ゼロが言うので、新しく購入したのだ。そして今、それを部屋の壁際に設置した。
『ルイズもありがとうな。わざわざ新しく買ってくれて』
「別に礼を言われるほどのことじゃないわ。これくらい……」
 ゼロの呼びかけに対するルイズの返事は、どこか暗かった。それを聞きとがめた才人が、
ルイズに尋ねかける。

281 :
「ルイズ、まだ皇太子のことを気にしてるのか? まぁ、俺も何とも思ってない訳じゃないけど……」
「……それもあるけど、それ以上に姫殿下のことが気に掛かってるのよ。姫殿下……あんなに
胸が張り裂けそうな顔をなさって……」
 ルイズは、アルビオンから帰還してすぐに王宮に向かい、顛末の報告をした際のアンリエッタの顔を
思い出していた。
 彼女は最愛のウェールズの死を聞かされて、静かに嘆き悲しんだ。だがそれ以上に、ワルドが
裏切り者だった事実にショックを受けていた。よりによって内通者を使者に選んだことで、
自分がウェールズを殺したようなものだと自らを責めていた。
 軍の立て直しが急がれるこの大事な時に、魔法衛士隊の一角の隊長が離反したという事実は、
余計にトリステインの負担になり、アンリエッタの負担につながる。愛する人の死でただでさえ
精神が傷ついている彼女が押し潰されやしないかとルイズは気を病んだが、そんな彼女に
アンリエッタは、努めて笑顔を作って言った。
『大丈夫ですよ、ルイズ。あの人は、最期まで勇敢に戦い、死んでいったと言いましたね。
ならばわたくしは……勇敢に戦って生きていこうと思います』
 アンリエッタはそう宣言したものの、それでもルイズの心の暗雲は晴れなかった。あの時ウェールズを
最後まで守り抜けていれば……そう考えてしまう。それは才人も同じだった。
 二人がいつまでも暗い顔をしていると、それを察したゼロが急に語る。
『ウルトラマンは神じゃない。救えない命もあれば、届かない思いもある』
「え?」
『前に親父たちが言ってたことさ。ウルトラマンは色んな超能力を持ってるが、それでも
何もかもが出来る訳じゃない。時にはどうしようも出来ないことに直面することもあるってな』
 父親たちからの言葉を語るゼロは、けど、とつけ加える。
『だからって諦めちゃいけねぇんだ。立ち止まってちゃ、救える命も救えねぇ。たとえその時は救えなくとも、
前に進み続ければ、別の命を救えられるようになるかもしれない。大切なのは、最後まで諦めずに立ち向かうこと。
心の強さが、不可能を可能にするんだってな』
「……いいことを教えてくれるお父さんね」
 ゼロの言葉で、ルイズも才人も少しばかり気持ちが軽くなっていた。そうだ、いつまでも
ウジウジしていたってしょうがないじゃないか。今は何も出来なくとも、いつか自分たちに
出来ることがやってくるかもしれない。その時のために、今よりも成長することに
力を注ぐ方が大事なのだ。もう悲劇を繰り返さないために……。
『それより今は、ミラーナイトと話をしようぜ。あいつきっと、超空間で離ればなれになってからのことを
知りたがってるだろうしな』
 ルイズたちが決心を固めていると、ゼロがそう言って、姿見に向かって呼びかけた。
『おーい、ミラーナイト! 聞こえてるかー!』
『はい。ちゃんと聞こえてますよ』
 姿見の鏡面が揺らぐと、その中に等身大のミラーナイトの姿が映し出された。鏡の中に
ミラーナイトがいる構図に、ルイズは驚いて小さく声を上げた。
『驚かせてしまいましたか? 改めて、自己紹介させてもらいます。私は鏡の騎士、ミラーナイト。
お二人にはゼロがお世話になっているようで、お礼を申し上げます』
 ミラーナイトはルイズと才人に対して深々と一礼した。しかし腰を折っても、身体が鏡面から
はみ出すことはない。完全に鏡の中に収まっている。
「これって幻術じゃなくて、本当にこの鏡の中にいるのよね……。鏡の中に入れるっていう
ゼロの話は本当なのね……」
『私のことは既にゼロから聞かれてるようですね。ではゼロ、あなたから私に、この星のことを
教えてもらえませんか? 何分やっと到着したばかりで、右も左も分からなくて……』
『おういいぜ! まずは、このハルケギニアっていうところだが……』

282 :
 ゼロはハルケギニアという星の特色や文化、文明、メイジのことや、この宇宙に到達してから
今日までのことをまとめてミラーナイトに伝えた。
『なるほど、分かりました。この星は、広い宇宙の中でも独特なようですね』
『あぁそうだな。それでここにいるのが、俺と同化してる平賀才人と、それを召喚したルイズ。
そっちの壁に立て掛けてる剣はデルフリンガーって言うんだ』
「あッ、どうも。ご紹介に預かりました、平賀才人です」
「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ。みんなルイズって呼んでるわ」
「この俺がデルフリンガーさまだぜ! 全くもう一人の相棒のお仲間は、相棒に負けず劣らず仰天人間だな!」
 才人たちが名乗ると、ミラーナイトはもう一度礼をした。口調から受けるイメージ通り、
相当礼儀を重んじるタイプのようだ。
『これから長いおつき合いになることかと思いますが、どうぞよろしくお願い致します。
それでゼロ、あなたには私が不在のせいで大分苦労をさせてしまったようですね。申し訳ありません』
 ミラーナイトは今までゼロが一人で怪獣、宇宙人と戦っていたことと、ゼロが移動に難儀していたことを
すまなく感じていた。
『いいんだよ。しょうがねぇことさ。それより、お前が無事にたどり着いてくれて嬉しいぜ。
危ないところを助けてもらったしな』
『そのことは、ルイズさんのお陰でもあります』
「え? わたし?」
 いきなり名前を出されたルイズがキョトンとする。
「でもわたし、あの時何もしてないわよ?」
『いいえ。この星の到着したばかりで、ゼロがどこにいるかも分からなかった時、あなたの声が聞こえたんです。
だから私はあの場に駆けつけることが出来た』
 ミラーナイトが説明されたルイズは、指に嵌まった『水のルビー』に目を落とした。一度は
アンリエッタに返却しようとしたが、彼女からせめてもの報酬にとそのままもらうことになった。
代わりに、ウェールズの形見である『風のルビー』を渡したのだった。
『あなたのゼロを助けたいと思う気持ちが、私を呼び寄せたに違いありません。感謝致します』
「そ、そんなお礼を言われるほどのことじゃないわ! 頭を上げて!」
 礼を述べられたルイズは、特別なことをしていないのにそこまで感謝されて、むしろ申し訳ない気持ちになった。
そうしていると、ゼロが話を切り替える。
『とにかく、これでウルティメイトフォースゼロが一人集結だ! これからはお前も、
ハルケギニアを守る任務についてくれるよな?』
『もちろんです。それに、鏡さえあれば、ゼロも私の能力で現場へと移動できるようにしますよ』
『おぉっし! これで大分楽になるぜ!』
 今までの問題が解消するより、ミラーナイトに会えたことの方が嬉しそうなゼロに、
才人とルイズが思わず苦笑した。
『私の力が必要な時は、鏡面に向かって呼んで下さい。いつでも馳せ参じます』
 話が済んで、ミラーナイトの姿が鏡の中から消えると、ルイズは才人に向き直り、その中のゼロに向けて言った。
「あの、ゼロ……昨日は、ごめんなさい」
『ん? 急にどうしたんだ』
「昨日はわたし、ひどいこと言っちゃったでしょう。わたしの方こそ、あなたの事情を無視して勝手なお願いして、
当たり散らして……今になって思えば、自分が恥ずかしいわ……」
 ルイズは王軍への助力を頼んで、断られたことで怒鳴り散らしたことを冷静になった頭で思い返し、
反省していた。申し訳なさそうな彼女を、ゼロはあっけらかんと許す。
『いいってことさ。俺も同じ立場だったら、無理言ってると分かっててもキレてただろうからな。
むしろお前が辛いのに、何の力にもなってやれず、すまないと思ってる』
「そ、そんな……こっちが悪いのに、そう思われたらほんとに申し訳ないわ」

283 :
 二人が謝り合う状態になったことで、才人も含めて笑いをこぼす。そしてその件は、自ずと
水に流すことになった。
 その後、才人はルイズの部屋を出てある場所へ向かっていた。
『才人、もうじき日が沈むっていうのに、どこに行くんだ?』
「厨房だよ。シエスタにお礼を言いに行くんだ」
 シエスタとは、才人が魔法学院に来てからよく世話になっているメイドのこと。才人がこちらの世界で
最初に仲良くなった相手でもある。しかしルイズは、何故か彼女のことをよく思わないらしい。
別に反りが合わないという訳でもないようなのに、不思議だと才人は考えている。
「俺たちが留守にしてる間に、ルイズの部屋の掃除をしててくれてたみたいだしな。それで
マルトー親方に、今どこにいるか聞くんだよ」
『そういえば帰ってきてから、シエスタを見てないな。まだ俺たちが帰ってきたのにも気づいてないかもしれねぇな』
 ゼロと話し合いながら、厨房に足を運ぶ才人。しかしそこで、料理長のマルトーからとんでもないことを聞かされた。
「ええッ!? シエスタが辞めた!?」
「ああ。我らの剣が不在の間にな……」
 ギーシュを倒した才人を、平民の希望の星だと呼ぶマルトーは、はっきりと告げた。
「そ、それってどういうことですか!? シエスタが何かしたんでしょうか……! それか家庭の事情とか」
「いや、そういうことじゃないんだ。胸糞の悪い話なんだがな……」
 マルトーは不快そうに顔を歪ませて、事情を話す。
「先日王宮の遣いのモット伯っていう貴族がやってきてな。学院長に用事を告げて、そのまま
帰ればよかったってのに、偶然鉢合わせたシエスタに目をつけると、自分のメイドにするって言って
引っこ抜いていっちまったんだ……」
「何だって!? そんな無茶苦茶な! シエスタの意思は!?」
「もちろんあいつも嫌がってたが、平民の気持ちなんて、貴族にはどうだっていいのさ。
そして平民は貴族に逆らえない。悔しいが、俺たちじゃどうしようも出来ないのさ……」
 残念そうにマルトーが語っている間に、才人は歯を食いしばって顔を歪めていた。
「モット伯? ああ、僕も噂には聞いたことがあるよ」
 シエスタを連れ去ったモット伯の情報を得るため、才人はギーシュを捕まえてモット伯のことを尋ねた。
「『波濤』の二つ名を持ち、王宮の勅使の役を任されるほどの貴族さ。ただ、相当な好色家で、
あちこちで若く美しい平民の娘を買い入れて、自分の屋敷に囲ってるそうだ。特に最近は
頻度がひどいって話を聞いてるね」
「そうか……ギーシュ、お前みたいな奴なんだな」
「一緒にしないでくれないか……? 僕は無理強いはしないよ。か弱き女の子は、優しく愛でるものさ」
 相変わらず歯の浮くような台詞を臆面もなく言うギーシュである。
「それでまさか、そのシエスタというメイドを取り返そうというつもりかい? やめた方がいいよ。
評判は良くないといえ、モット伯は王宮に直々に仕えるほどの貴族。平民の君にどうこう出来るものじゃないんだ」
「出来る出来ないじゃないんだよ! シエスタのためなんだからな!」
「……まぁ、警告はしたからね」
 熱く語る才人に閉口したギーシュは、ふと思い出してつけ加える。
「あッ、そういえば、モット伯がゲルマニアの貴族が家宝にしてる、この世に二つとない
珍しい書物も欲しがってるって話を聞いたことがあるな。もしかしたら、それがあれば話は別かも……」
「何だって!? その貴族ってのは一体誰だ!?」
「うわわ!? や、やめてくれたまえ君!」
 興奮した才人がギーシュを揺さぶったので、ギーシュは目を白黒させる。
「ぼ、僕も詳しいところは知らないんだ。それによく考えれば、ゲルマニア貴族の家宝を
手に入れるなんて土台無理な話だよ。今のは忘れてくれ」

284 :
「くそッ……まぁとにかく、色々と教えてくれて助かった。最後に一つ、モット伯の屋敷の道順を教えてくれ」
 ギーシュより屋敷までの道のりを聞き出すと、才人は彼から離れた。
「道筋は分かったけど、実際問題どうするか……見当がつかないな。ゼロ、何かいい方法はないか?」
『難しいな……。この星の住人が相手じゃ、ウルトラマンの超能力を使う訳にはいかない。
あくまでこの星のルールに則らないといけないんだが……』
「方法はないか……。けど、とにかく行動しないと始まらないよな!」
 手段は思いつかなかったが、才人はモット伯の屋敷に向かうことに決めた。だがちょうどその瞬間に、
角の陰から呼び止められる。
「ちょっと待ちなさい。ご主人様を放ってどこに行くつもり?」
「うわッ、ルイズ!? どうしてここに?」
 陰から顔を出したのは、他ならぬルイズだった。
「妙に戻るのが遅いから、捜しに来たのよ。全く手間を掛けさせて……。まぁそれより、
モット伯のところへ行くつもりなんでしょ?」
「ま、まさか今の話聞いてたのか?」
 無言で肯定したルイズは、ハァとため息を吐く。
「向こう見ずにも程があるわね。ギーシュも言ってたけど、モット伯は貴族よ? 今回ばかりは
力押しじゃどうにも出来ないでしょうし、平民のあんたじゃお目通り出来るかどうかも定かじゃないわ」
「けど、シエスタが! このまま黙ってることなんて!」
「ちょっと落ち着きなさい」
 焦る才人を制して、ルイズが告げる。
「しょうがないから、わたしが一緒に行ってあげるわ。公爵家のわたしが相手なら無視は出来ないはずよ。
そしたら、交渉の余地もあるわよ」
「えッ、ほんとか!? 本当に協力してくれるのか!?」
 申し出に大喜びする才人だが、直後に不思議がる。
「でも意外だな。お前ってシエスタのこと好きじゃなさそうなのに、力を貸してくれるなんて」
「確かに、あの子のことはあんまり気に入らないけど……不必要にサイトにベタベタするし……」
 途中のひと言は、聞こえないように小声で話すルイズだった。
「でも、だからって放っておくのは目覚めが悪いわ。それにあんたはアルビオンへの旅で
いっぱい頑張ったし、そのご褒美代わりよ」
「そうか! とにかく、ありがとうなルイズ!」
「お礼を言うのは早いわよ。メイドを取り返してからにしなさい」
 非常に嬉しそうな顔を見せる才人を一瞥したルイズが、次のように思う。
(そうよ。サイトとゼロには何度も助けてもらってるんだから、せめてこういうところじゃ
力になってあげないと……)
 才人とゼロにどんな力があろうと、貴族社会の中では無力に等しい。だから二人の代わりに力になろう。
今の自分では、そういうことでしか役に立てない……と、とにかく才人とゼロの役に立つことを望むルイズは考えた。
 それからモット伯の屋敷へ急行したルイズと才人は、門番に話をつけて、屋敷の中に立ち入ることに成功した。
「うわッさぶッ! 何だってこんなに寒いんだ? 夏でもないのに、冷房効きすぎじゃないのか?」
 門をくぐってエントランスホールに踏み込んだ才人は開口一番に、身体を震わせつつ言い放った。
屋敷の中は、明らかに外よりも冷え込んでいるのだ。
「レイボウが何かは知らないけど……確かに変ね。水系統の魔法でも暴発させたのかしら?」
 ルイズも身震いしながら疑問に感じていると、二人の面前に問題のモット伯が、執事風の格好の老人と
うら若き乙女を従えながら屋敷の奥よりやってきた。

285 :
 ルイズと才人は、その内の乙女、もっと言えば彼女の格好に目を引きつけられた。ハルケギニアでは
見たことのない純白の衣装を纏っており、ルイズはどこの民族衣装だろうと考えた。
 だが才人はその衣装の正体を知っていた。日本の伝統的な着物そのものなのだ。だが、
当然この世界に日本は存在しない。ならあの着物はどういうことか? その疑問を考える間もなく、
モット伯が口を開く。
「そなたがヴァリエール家の三女か。こんな夜更けに、どのような御用で」
 非常に抑揚のない、冷たさすら感じられる口調だった。この屋敷の中の気温より冷たいかもしれない。
(変ね……学院で遠巻きに見ただけだけど、こんな人だったかしら。顔色もやけに悪いし……
もっとも、それはここの衛兵たちも同じだけど)
 モット伯や周りにいる衛兵たちの様子を観察していぶかしむルイズ。そろいもそろって
青白い顔を並べており、比較的血色がいいのは老人と女性だけというありさまだった。
 しかし今はそんなことを考えていても仕方ない。気を取り直して口を開く。
「突然のご訪問をお許し下さい。実は、伯爵に折り入ってお願いがございます」
「それは一体何か」
「伯爵が学院よりお連れになった、シエスタという名のメイドをお帰しいただきたいのです。
彼女はわたしの使い魔がよく世話になっている娘ですので、急にいなくなられると困ると
使い魔が申しております。代わりに伯爵のご要望を、ヴァリエールの名の下に何でもお叶え致します。
どうぞ、お願い出来ませんでしょうか」
 へりくだった態度で頼み込むルイズ。しかし、
「断る。今の私が求めるのは若い娘のみ。それ以外には何も求めぬ。帰るがよい」
「なッ……!?」
 交渉する余地もなくはねつけられたことで、ルイズも才人も絶句した。上手く行かないかもしれないとは思ったが、
ここまで頑なな態度を取られるとは思わなかった。
「ち、ちょっと! 少しは考えてくれてもいいじゃないですか!」
 必死に食い下がる才人だが、彼が口を開くと、モット伯は汚らしいものでも見るような目つきを向けた。
「黙れ。平民風情が、貴族の私に盾突こうというのか。衛兵、その男を叩き出せ」
「うッ!?」
 モット伯の命令で、あっという間に衛兵が才人を掴んで、槍を向けた。想像以上の暴挙に
ルイズが慌てていると、モット伯の前に黒髪でそばかすが目立つが整った顔立ちの
若いメイドの少女が飛び出てきた。彼女こそ、問題の中心のシエスタだ。
「お待ち下さい! 伯爵、この者をお許し下さい! 私が代わりに罰をお受けしますので、どうか!」
 隠れて話を聞いていたシエスタは、すぐに才人への許しを乞うた。だがモット伯は態度を緩めない。
「邪魔だ。たかだかメイドが、お前も私に逆らうというのか!」
「あうッ!」
 あろうことか、モット伯はシエスタを足蹴にした。これにはルイズも怒りを爆発させた。
「伯爵! いくら平民でも、何の罪もない娘に何て振る舞いを! すぐに謝りなさい!」
 声を荒げて怒鳴ると、ルイズにも槍の穂先が突きつけられた。
「ちょッ!? ど、どういうつもり!? わたしに手を上げるなら、ヴァリエール家が黙ってないわよ! 
それでもいいの!?」
 普段は出さない家の名前で脅しを掛けることまでするが、そうしたらモット伯に代わって老人がルイズを嘲った。
「黙れ黙れ、所詮は小娘が! 伯爵は今や、そんなものなど全く怖くないほどの力を得られたのだ! 
痛い目を見たくないのだったら、このまま黙って帰るがいい!」
「何ですって……!?」
 ルイズはたかが使用人が自分に向かって無礼な物言いをしたことより、その内容に耳を疑った。
公爵家の権威が怖くない力とは、どういうことなのか。おかしい。入った時点で思っていたが、
この屋敷はおかしいことだらけだ。
「ちょーっと、お待ちなさいな!」
 危機的状況にルイズと才人が冷や汗を垂らしていると、急にこの場には似つかわしくないほど
明るい声が響き渡り、同時に門が外から勢いよく開かれた。そうして立ち入ってきた人物の顔を見て、
ルイズが唖然とする。

286 :
「キュルケ!? あんた、何でここに!?」
 燃えるような赤い髪は見紛うはずもない、キュルケである。相変わらずタバサが同行しているのは、
シルフィードに乗せてもらったからだろう。ルイズの問いかけに、キュルケはしれっと答える。
「今日旅から帰ったばかりなのに、サイトがギーシュからモット伯爵の話を根掘り葉掘り
聞いてるところを目にしてね。これは何かあると思って、つけさせてもらってた訳」
「ちょっと! また野次馬根性出したってことね!?」
「まぁまぁ、今はそんなこといいじゃない。それよりモット伯爵」
 ルイズを適当にあしらうと、キュルケはモット伯に向き直って、服の下から包みに覆われた何かを取り出す。
「聞けばあなた、我がツェルプストー家の家宝をご所望なんですって? ここにあるから、
それでお手打ちにして下さらないかしら?」
「え? 家宝って……まさかギーシュが言ってたゲルマニアの貴族って、キュルケのところだったのか!?」
 かなり身近にいたことに、才人は思い切り面食らった。
「これは昔、あたしのおじいさまが、あるメイジが偶然何処かから召喚したものを買い取ったものなの。
あたしも中身を見たけど、ほんとにこの世に二つとないような珍しい本で、特に伯爵のようなお人が
欲しがりそうなものだったわ。だからこれに違いないと思って、嫁入り道具として渡されたこれを持ってきたって訳」
「い、いいの? 家宝をそんな簡単に交渉材料にしちゃって」
 キュルケのことを毛嫌いしているルイズも、さすがに戸惑った。だがキュルケはあっさりとしている。
「字は読めなかったけど、載ってる挿絵だけならあたしには必要のない内容だったし、別に構わないわ」
「……断る。今の私に必要なものは、生身の娘だ。書物など、どうでもよい」
 求めていたはずの書物を引き合いに出しても、モット伯は断固として譲らなかった。
しかしキュルケは下がらない。
「まぁそう焦らないで。中を見てからご判断なさっても、遅くないんじゃないかしら?」
 と言いながら、包みを外して、中身を皆の目に披露した。その瞬間、才人が思わずつぶやく。
「えッ!? あれって、エロ本じゃ……」
 書物の正体は、女性のあられもない姿が表紙になっている、ひと昔前のエロ本に間違いなかった。
予想外すぎる正体に才人が言葉をなくしていると、それに反応した者がもう一人いた。
「何!? それは地球の書籍か! 何故この星に?」
「……え?」
 おかしなことを口走った老人に、ルイズや才人、キュルケらの視線が集中した。そうすると、
老人は途端にしまったという表情になる。
『才人、あいつもしかして……』
「ああ。俺も今そう思った」
 ハルケギニア社会では耳にしない単語が飛び出たことで、ゼロも才人も老人の正体を勘ぐった。
そのため才人は、確信を得るために、こっそりウルトラゼロアイをガンモードで取り出して
老人に突きつける。
「おいあんた。これが見えるか?」
「ぬッ!? 貴様まさか! おのれッ!」
 ウルトラゼロアイは、この星の住人では武器になるものとは想像できない形状なのにも関わらず、
老人は明らかに用途が分かっている反応を見せた。これで確定だ。
「お前人間じゃないな! 正体を見せろッ!」
「ぐわぁッ!」
 トリガーを引いて光線を浴びせると、それにより老人の姿が揺らぎ、黒い身体に白い顔面、
ギョロリと剥いた大きな眼球に赤鼻が目立つ怪人の姿に早変わりしていた。
「そ、その姿は! もしかして!」
 ルイズたちがこの変化に驚愕していると、正体を現した怪人は名乗りを上げた。
『バレてしまったならしょうがない! 私は宇宙人連合の一人、土星からやってきたブラック星人だ!』

287 :
十四話はここまでですが、前回のお詫びのつもりで、書き溜めた後編もこのまま投下します。
ウルトラマンゼロの使い魔
第十五話「ひきょうもの!シエスタは泣いた(後編)」
冷凍怪人ブラック星人
雪女怪獣スノーゴン
ねこ舌星人グロスト 登場
「ま、また宇宙人! しかも今度は、貴族の屋敷の中に潜り込んでるなんて!」
 執事風の老人から正体を現したブラック星人に、ルイズたちは驚愕を禁じえなかった。
まさかトリステインの貴族社会の中に、既に侵略者が潜り込んでいたとは。
『ちぃッ! よもや、こんなことで正体がバレてしまうとは!』
 毒づくブラック星人に、ウルトラゼロアイの銃口を突きつけたままの才人が、反対の手で
通信端末からブラック星人のデータを引き出してから詰問する。
「お前もザラブ星人の言ってた、宇宙人連合って奴の一員か!? 貴族のお屋敷に入り込んで、何が狙いだ!」
 その問いかけにブラック星人は、正体を暴かれて開き直っているのか、包み隠さず回答する。
『如何にも、私も宇宙人連合の一人だ。しかし私はわざわざウルトラマンゼロに挑んで散っていった
脳の足りん馬鹿どもと違って、独自に動いてるのさ。侵略の足掛かりとする前線基地用の奴隷を
確保することを目的にな!』
「奴隷ですって!?」
 ブラック星人の吐いた言葉にルイズなどが身を強張らせ、才人はやはりと胸中で舌打ちした。
 ブラック星人はかつて地球侵略を狙った敵性宇宙人の一つで、土星に前線基地を築くという
大掛かりな前準備を行っていた。しかし基地の労働力が足りなくなったために、観光地に遊びに来た
地球人の若いカップルを誘拐して、奴隷にする子供を産ませるという計画を立てたのだ。
今回も似た事情で、今度はハルケギニアの民を奴隷にしようとしていたのだろう。そのために
このモット家に使用人として潜り込んで、裏から操っていたに違いない。
『この家の主人は、実に役に立ったぞ。何せ、無理矢理に女どもを連れてきても誰も怪しまんし、
止められんかったからな。女を獲り放題だったわ! グワハハハハハハ!』
 何とも下卑た高笑いを上げるブラック星人に、ルイズを始めとした女性陣は強い不快感を表す。
「最低ね! 女の敵だわ!」
「全くね。これ以上女性を家畜みたいにされてたまるもんですか!」
 ルイズやキュルケの怒気をその身に受けても、ブラック星人は平然としている。
『ふんッ! 奴隷にしか使えんような下等種族がほざくな! よもやこんなことで我が正体が
露呈するとは想定外だったが、知られたからには貴様ら全員帰す訳にはいかん! 貴様らも捕獲して、
奴隷を産ませる母体にしてくれるわッ!』
 ブラック星人が腕を上げると、モット伯を始めとして、屋敷の兵士たちがルイズたちを
取り囲んで武器を向けてきた。モット伯に突き飛ばされたシエスタは慌てて才人の下へ駆け寄る。
「サ、サイトさんッ!」
「くッ……!」
 シエスタをかばう才人やルイズは、モット伯の軍団を前にしてひるんだ。彼らは操られているだけなので、
倒す訳にはいかない。しかし既に完全に取り囲まれ、逃げ場はどこにもない。一体どうすればいいのか……。
 と考えていたら、
「『ファイアー・ボール』!」
「『ウィンド・ブレイク』」
 キュルケとタバサが火炎と風で兵士たちをバッタバッタと薙ぎ倒し出した。それにルイズは
思わず肩を落として、すぐさま抗議する。
「ち、ちょっと何やってるのよ! その人たちは操られてるだけなのよ!?」
 するとキュルケはこう反論してきた。

288 :
「でも、自分の命には代えられないでしょ。それにモット伯は元から似たようなことして
女性を何人も悲しませてたそうだし、つき従ってた兵士たちも共犯みたいなものだわ。
ちょっとくらい痛めつけても、自業自得ってもんよ」
「いや、だからって……」
「うるさいこと言いっこなしよ。ちゃんと手加減はしてるからさ」
「結構派手に吹っ飛ばしてるように見えるんだけど……?」
 ルイズのツッコミはさておき、さすがは魔法学院でも指折りの実力者のコンビ。瞬く間に兵士を全滅させて、
甕の水を操って攻撃してこようとしていたモット伯も、キュルケの炎に軽くあぶられるだけで卒倒し、無力化した。
「なーんだ、丸で見かけ倒しだったわね」
『お、おのれ……よりによって、弱点の熱を操る奴がいようとは……』
「? 今何か重要なことを……」
 タバサが向き直ると、ブラック星人は己の失言に気づいて慌てて口をつぐんだ。
『ふ、ふんッ! 今のは軽いお遊びに過ぎんわ。こいつさえいれば、貴様らを纏めて氷漬けに
することなど容易いことだからな!』
 ブラック星人の言葉とともに、彼につき従っている和装の女性が前に出た。
『やれ、スノーゴン! 奴らをカチンカチンにしてしまえぃッ!』
 そして命令によって、口を開くとそこから吹雪と見紛うほどの冷凍ガスを噴出し始めた!
「きゃあああああ!? な、何! あの人、人間じゃないの!?」
「こ、これはたまらないわ! 外に逃げましょう!」
 冷凍ガスの勢いはすさまじく、キュルケの炎すら押し返し、あっという間にエントランスホールを極寒地獄に塗り替えた。
『馬鹿め! 易々と逃がすものか!』
 すぐに扉から外へ避難しようとするルイズたちだが、スノーゴンと呼ばれた女性が追ってくる。
しかしその足を才人が撃ち、文字通り足止めする。
「みんな! ここは俺が食い止める! 早く逃げるんだ!」
「そ、そんな!? サイトさんだけ残して逃げることなんて出来ません!」
 シエスタは才人の指示に応じられずに立ち止まるが、ルイズがその手を取って引っ張る。
「今はサイトを信じて! ここに残ってたら、確実に助からないわよ!」
「でもッ!」
「も、もう限界よ! ダーリンの心意気を無駄にしないためにも、早く逃げるのよ!」
 キュルケもシエスタの腕を掴み、二人掛かりで引きずっていった。そしてタバサが『レビテーション』で
気を失ったモット伯たちを連れて脱出すると、ブラック星人が一人残った才人に呼びかける。
『やはりお前が最後に残ったな、ウルトラマンゼロ! 我々を倒して奴らを救おうというつもりだろうが、
そうはいかんぞ! 返り討ちにしてくれるわ! こちらにはその準備がある!』
「へッ……どうかな? ゼロなら、お前らの用意なんて簡単に破ってくれるぜ」
 才人はウルトラゼロアイを開き、変身の構えを取った。
『それが出来るかどうか、試してやろうじゃないか! スノーゴン、真の姿となるのだぁッ!』
「望むところだ! デュワッ!」
 ブラック星人の命令で、女性の身体が巨大化、変身していくのと同時に、才人もゼロアイを装着した!
「だから! 戻っちゃダメだって! 危険すぎるわ!」
「放して下さい! サイトさんが死んじゃうッ!」
 屋敷の外では、無理矢理連れ出されたシエスタが抵抗するのを、ルイズとキュルケが必死に押しとどめていた。
「もう! 貴族の言うことが聞けないっていうの!?」
「今は貴族とか平民とか関係ありません! サイトさんを助けなくちゃ!」
 ルイズの言いつけにも、頭に血の上っている今のシエスタには通用しなかった。ほとほと手を焼いていると、
問題の屋敷が彼女たちの目の前で、内側から爆発したかのように砕け散った。

289 :
「な、何!?」
「パオオオオ! パオオオオ!」
 そして半壊した屋敷の中から、一本角を生やした狼の首にシロクマの胴体を合わせたような
巨大怪獣が出現した。ルイズはこの怪獣に見覚えがあった。以前にゼロにウルトラの星の歴史を
見せてもらった際に、ビジョンの怪獣軍団の混ざっていた一体……。
「デュワッ!」
「あッ! ウルトラマンゼロだわ!」
 ルイズたちの眼前に現れた怪獣の正面に、ウルトラマンゼロが降り立つ。すると、どこからか
ブラック星人の高笑いがする。
『グワッハッハッ! これがスノーゴンの本来の姿だ! 今から貴様らには、スノーゴンが
ウルトラマンゼロをバラバラに処刑するところを見せつけてやるわ!』
「あッ! あんなところに!」
 キュルケが指差した先、スノーゴンの背後で、ブラック星人はこちらに向けて叫んでいた。
ルイズは豪語するブラック星人に叫び返す。
「そんなことあるはずがないわ! そんな怪獣一体、ゼロの敵じゃないわよ!」
『そいつはどうかな!? 今に見せてくれるわ! スノーゴン、ウルトラマンゼロを仕留めるのだぁッ!』
「パオオオオ! パオオオオ!」
 ブラック星人の命令で、スノーゴンが攻撃を開始する。両手の平を合わせると、その間と口から
先ほどと同等の冷凍ガスを噴射し出した。
『うおッ!?』
 そのガスを浴びせられたゼロは、腕で顔面をかばいつつ苦しみ出す。相当ダメージを受けている様子に、
ルイズは衝撃を受けた。
「ど、どうしたのゼロ? あれくらいの攻撃で……」
 困惑していると、ブラック星人が理由を説明し出した。
『グハハハハハ! ウルトラ戦士の故郷、光の国には冬がない! だから寒さに耐性がない! 
つまり冷気がウルトラ戦士の弱点なのだぁッ!』
「そ、そんな弱点があったなんて……!」
 無敵の戦士に思われるウルトラマンゼロの意外な弱点を初めて知り、ルイズのみならず
キュルケやタバサも驚きを禁じ得なかった。
『そのまま氷漬けにしてやれ! スノーゴンッ!』
「パオオオオ!」
 スノーゴンが冷凍ガスの勢いをますます強める。だが、
『くッ……セアッ!』
「パオオオオ!?」
 気合いを発揮したゼロがエメリウムスラッシュを放ち、スノーゴンの口の中に命中させた。
それにより、冷凍ガスが途切れる。
『何!?』
『へッ……確かにウルトラ戦士の弱点は寒さだ。けどこの程度の寒さで、この俺に勝ったつもりに
なるんじゃねぇぜッ! だぁッ!』
 ゼロが掛け声とともに熱を放出し、身体に付着した霜を溶かした。これにルイズたちはほっと安堵の息を吐く。
『今度はこっちの番だ! 覚悟しな、ブラック星人!』
 スノーゴンがまだもがいている隙に、ゼロが攻勢に出ようと一歩踏み出す。
 だがその瞬間、背後から冷凍ガスを浴びせられた!
『ぐあッ!? 何ぃ!?』
「え!? どこから攻撃が……!」
 たった今の冷凍ガスは、正面のスノーゴンからのものでは当然ない。ゼロとルイズたちが振り向くと、そこには、
「ギイイイイイイイイ!」
 青い鳥人間に似た奇怪な形をした氷像のような、ゼロたちと同等の身長の怪物がいつの間にか現れ、
右腕から冷凍ガスを噴き出していた。
「て、敵はまだいたの!?」

290 :
 新手の出現に驚愕するルイズたち。それとは対照的に、ブラック星人が哄笑する。
『グワッハッハッハッハッハッ! 準備があると言っただろう! そいつはグロスト星系JA52番星の宇宙人、
通称グロスト! 計画を遂行する上で、侵略した領土を山分けする条件で手を組んでいたのだ!』
 怪物の正体は、かつてウルトラマンタロウと相まみえた侵略者グロスト。冷凍ガスが武器の他にも、
催眠光波で人間を操る能力を持つ。ルイズたちは知らないが、モット伯を洗脳して手駒にしていたのは、
このグロストだったのだ。屋敷と同化して身を隠していたのだが、本来の姿を現してスノーゴンに
加勢してきたのだった。
「ギイイイイイイイイ!」
『うおおぉぉッ! くッ、こいつはやべぇ……!』
 グロストの冷凍ガスもすさまじく、スノーゴンと同等か下手したらそれ以上だった。
更には背後から攻撃されていることもあり、さしものゼロも耐え難かった。
「パオオオオ! パオオオオ!」
 しかもまだ戦況は悪化する。スノーゴンが持ち直し、攻撃を再開し出したのだ。前後から
冷凍ガスの挟み撃ちにされ、ゼロは大幅に苦しめられる。
『うおああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』
「ゼロッ!!」
 身体を抱えるゼロのカラータイマーが赤く点滅し出す。彼の危機に焦ったルイズは、ブラック星人を罵る。
「卑怯者! 男なら正々堂々と、自分の力で勝負しなさいよ!」
 だが挑発をされても、ブラック星人は平然と厚顔でいる。
『何とでも言えぃ! たとえ自ら手を汚さずとも、何人で掛かろうとも、勝利こそが全てだッ! 
手段など選んで敗北する奴など、愚かでしかないのだぁッ!』
 そう豪語した瞬間に、ゼロを追い詰めているグロストに楔形の光弾が連続ヒットして、
冷凍ガスを途切れさせられた。
「ギイイイイイイイイ!」
『な、何事だ!?』
 ブラック星人やルイズたちが驚いていると、半壊した屋敷の陰から、銀と緑色の巨人がおもむろに登場した。
『では、こちらも二人になっても文句はありませんね?』
「ミラーナイト!!」
 ルイズが感激して名前を呼ぶ。緑色の巨人は、アルビオンで絶体絶命のゼロを救った
ウルティメイトフォースゼロの一員、ミラーナイトであった。ゼロのピンチを察知して、
屋敷のステンドグラスを通ってここにやってきたのだ。
『な、何ぃ!? ウルトラマンゼロに仲間がいたのか……!』
 一方、ブラック星人はハルケギニアに降り立ったばかりのミラーナイトのことはまだ知らなかったようで、
ショックを受けていた。スノーゴンとグロストも動揺して攻撃の手を止めている間に、ミラーナイトは
ゼロと背中合わせになる。
『ゼロ、あの宇宙人の方は引き受けました。あなたは怪獣の方をお願いします』
『ああ……また助けられたな、ミラーナイト』
『当然のことじゃないですか。それより、来ますよ!』
 ミラーナイトとゼロが言葉を交わしている間に、スノーゴンとグロストが再度襲い掛かり始める。
「パオオオオ! パオオオオ!」
「ギイイイイイイイイ!」
『ふ、ふんッ! まだ数が同じになっただけだ! スノーゴン! グロスト! お前たちの恐ろしさを
見せつけてやれぇッ!』
 スノーゴンは再び両手と口から冷凍ガスを噴射する。するとゼロは、下手に逃げようとせず、
前に飛び出して自分から冷凍ガスへ突っ込んでいった。
『だぁッ!』
 それによって無理矢理ガスを突破し、スノーゴンの懐に入ることに成功する。そして胸部に横拳を叩き込んで、
ガスの噴出を止めさせた。
「パオオオオ!」
『うらッ!』
 よろめいたスノーゴンに掴みかかるゼロだが、スノーゴンも手を伸ばし、両手と両手で掴み合いになる。

291 :
『ぐッ……ぐぅぅぅ……何つう馬鹿力だ……!』
「パオオオオ! パオオオオ!」
 だがゼロの腕の方が、スノーゴンにひねられていく。スノーゴンは冷凍ガス攻撃も強力だが、
腕力も氷漬けにしたウルトラマンジャックの身体を素手でバラバラにするほど優れている。
遠距離でも、近距離でも強い、顔つきに似合わないほどのかなりの強敵怪獣なのだ。
「パオオオオ! パオオオオ!」
『うおおぉぉッ!』
 やがてゼロはスノーゴンに突き飛ばされ、すぐに起き上がったものの三度冷凍ガスを浴びせられて
悶絶する羽目になった。
「ギイイイイイイイイ!」
『くぅッ!? ま、まるで嵐のような冷凍ガスを……!』
 ミラーナイトの方も、グロスト相手に大苦戦を強いられていた。グロストの猛烈な勢いの冷凍ガスを前に、
得意の俊敏な動きを基にした撹乱戦法が取れずにいる。ディフェンスミラーで防御しようにも、何と鏡まで
凍ってしまって砕ける始末だった。
『ここにグレンがいれば……楽に勝負を進められたのでしょうが……』
 極低温を武器にする敵に、仲間のグレンファイヤーに思いを馳せるミラーナイト。炎と熱の戦士である
彼ならば、今の敵たちに有利を取れたのだが、いないのだからどうしようもない。
 ゼロもミラーナイトも苦戦しているのを見せられたルイズたちの内、キュルケが我慢ならずに
杖を手に取った。
「このままじゃまずいわ! 援護するわよ! タバサ、手伝って!」
 タバサはうなずくが、ルイズが二人のことを案じて尋ねかける。
「で、出来るの?」
「敵は氷を武器にしてるわ。だったらあたしの炎が少しは役に立てるはずよ。タバサの協力があれば尚更だわ。
さぁタバサ、力を合わせるわよぉ!」
「分かった」
 キュルケがグロストへ杖を向けると、先端から激しい火炎が噴射する。その炎は、タバサの起こす
旋風によりもっと勢いを増して、炎の竜巻になって巨大なグロストへ飛んでいく。
「ギイイイイイイイイ!」
 するとどうだろうか。炎の竜巻を受けた途端、グロストの身体の突起が崩れ、溶けていくではないか。
「嘘!? すっごい効いてるわ!」
 これには、攻撃を仕掛けたキュルケが驚かされた。せめて足止めになればという程度にしか
考えていなかったので、あの巨大生物の身体を破損させるほどに通じるとは思ってもいなかった。
 というのも、理由がある。グロストは熱がほとんど存在しない超極寒の環境の星に生きる生命体であり、
体組織が氷に限りなく近い。そのため冷気攻撃は怪獣界の中でも強烈だが、熱と炎には丸っきり耐性を持たない。
何と焼き芋の熱でひるんだことがあるほどなのだ。それが、キュルケとタバサの作り出す炎の竜巻に
耐えられる訳がなかった。
「まッ、効くんだったらそれに越したことはないわ。このままガンガン攻めるわよ!」
 勢いに乗ったキュルケとタバサは、そのまま炎の竜巻を食らわせ続ける。それにより、
高熱に晒されたグロストの身体は瞬く間にドロドロに溶けていき、冷凍ガスの勢いも
見る影がないほどに衰えた。
「ギイイイイイイイイ……!」
『! 今です! シルバークロス!』
 それによって持ち直したミラーナイトは、すかさず必殺の十字の光刃を放った。シルバークロスは
グロストの身体を四つに分断し、地面の上に転がす。その破片も、ミラーナイフで粉々に砕かれた。
『ありがとう、ゼロの友人たちよ。あなたたちのお陰で助かりました』
 ミラーナイトは助けてくれたキュルケたちにガッツポーズを見せ、感謝の気持ちを表現した。
「きゃあ! あのミラーナイトっていう戦士、あたしたちにお礼を言ってるみたいよ!」

292 :
 その気持ちはちゃんと伝わり、キュルケははしゃいで喜んだ。
「パオオオオ! パオオオオ!」
『うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』
 だが喜んでばかりもいられなかった。スノーゴンと戦っていたゼロは、冷凍ガスに全身を覆われて
その姿が見えなくなった。
「!? ゼロぉッ!!」
『グハハハハハ! グロストがあんな役立たずとは思わなかった! だがウルトラマンゼロの方は、
我がスノーゴンがカチンカチンに凍らせてやったぞ!』
 ルイズが絶叫し、ブラック星人はもう勝ったものと思って豪語した。が、
『なーんてなッ!』
『何ッ!?』
 するはずのないゼロの声が響き、驚愕させられる。そして冷凍ガスが晴れると、そこにあったのは、
『た、盾だとぉ!?』
 青と赤、銀色のゼロのカラーで彩られた盾が宙に浮いていた。これはウルトラゼロランスと同じく、
ウルティメイトブレスレットの機能の一つ、あらゆる攻撃を遮るウルトラゼロディフェンダーである。
かつてのスノーゴンは、これの前身であるウルトラディフェンダーが決め手となって
ウルトラマンジャックに敗れ去ったものだ。
 しかし盾で身を守ったはずのゼロの姿がない。スノーゴンが左右を見回していると、頭上から呼び掛けられた。
『こっちだぜ!』
 ゼロはスノーゴンの頭上で、ウルトラゼロキックを仕掛けるところであった。
『フィニィッシュッ!!』
「パオオオオ!!」
 最早スノーゴンにかわす手立ても防ぐ手立てもなく、必殺の飛び蹴りをもろに食らった。
火達磨になったスノーゴンは弧を描いて飛んでいき、地面に激突したと同時に爆散した。
『な……あ……ひええぇぇぇぇぇ!』
 グロストとスノーゴン、双方を倒されたブラック星人は、傲然とした態度をかなぐり捨てて
一目散に逃走しようとした。しかしゼロがこんな極悪非道な侵略者を見逃すはずがなかった。
「シャッ!」
『あぎゃああああ―――――――――――――!!』
 緑色の光弾、ビームゼロスパイクの一撃を撃ち込まれ、ブラック星人はあえなく爆死した。
これでモット家に巣食っていた魔の手は一掃された。
「ジュワッ!」
「ハッ!」
 敵がいなくなった以上、ゼロとミラーナイトがこれ以上留まる必要はない。彼らは空中に飛び上がると、
二人並んで空の彼方へ去っていった。
 悪は去った。しかし、助かったというのにシエスタだけは、その場にしゃがみ込んでほろほろと涙を流していた。
「ああ、サイトさん……私のせいで、犠牲になって……ごめんなさい、ごめんなさい……」
 どうやらシエスタは、才人が自分たちを逃がす際に死亡したものと思っているようだった。
そこにルイズが、おずおずと声を掛ける。
「あ、あのね? 泣くのは早いんじゃない? 何も、サイトが死んだと決まった訳じゃないんだから……」
 というより、死んだはずがないのだ。だってたった今まで、そこで元気に戦っていたのだから。
 だがそれを知る由もないシエスタの説得は無理だった。
「いいえ! あの状況で助かるはずがないじゃないですか! それこそ、奇跡でも起こらない限り……」
「おーい、みんなー!」
 言葉の途中で、当の才人が屋敷の瓦礫を踏み越えて、ひょっこりと姿を現した。
「あッ、ダーリン! 無事だったのね! 信じてたわ!」

293 :
「不死身……」
「いやぁ、危ないところをゼロに助けられたんだ。今回ばかりは肝を冷やしたぜ。寒かっただけに。なーんて」
 つまらない冗談を言っている才人の姿をまじまじと見たシエスタは、ポカーンと口が開いていた。
「そうだシエスタ! そっちこそ無事だったのか? モット伯、っていうか宇宙人たちに
ひどいことされなかっただろうな?」
 才人が呼びかけると、固まっていたシエスタは、いきなり才人に抱きついた。
「わぁぁぁッ!? シ、シエスタ!?」
「サイトさーん!! ご無事でよかったですぅぅぅぅぅ! 奇跡が、奇跡が起こったんですねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
 シエスタが抱きついたことに、ルイズは目を白黒させて、そして真っ赤になって怒り出した。
「こ、こらメイドぉッ! あんた何しちゃってるのよぉ! さっさとサイトから離れなさいよッ!」
「嫌ですッ! もう離しません! サイトさんをどこにもやったりしませんから!」
「な、何言ってるのあんた!? サイトッ! あんたこそ離れなさい! 早くしないと百回鞭打ちの刑だからね!!」
「そ、そんな理不尽な!!」
 ルイズが怒鳴り散らし、才人が悲鳴を上げる構図を目にして、顔を見合わせたキュルケとタバサは
呆れて肩をすくめた。
 とまぁ最後はドタバタしたものの、モット伯の件はこれで丸く収まった。後日判明することだが、
モット伯は操られていた時の記憶がおぼろながら残っており、それがトラウマになって
女性恐怖症の後遺症が残ったのだとか。まぁそのお陰で、彼の悪癖がなりを潜めたそうだから、
雨降って地固まるといったところか。
「ルイズ、本当にありがとうな。お陰でシエスタを救うことが出来たよ」
 そして学院の寮に帰ると、才人はルイズに一連のことの礼を述べた。それにルイズは
そっけない風に返答する。
「別にいいわよ。ご褒美代わりって言ったでしょ? それに、結局あんまり役には立てなかったし……
ほとんどキュルケやゼロたちが解決したようなもんだったしね……」
「そんなことないさ。お前が最初に協力してくれなかったら、あの屋敷に入ることも出来なかったかもしれないんだから」
 悔しそうなルイズを励ますように告げる才人だが、それでもルイズの気持ちは軽くならなかった。
何故なら、自分のやったことは「他の者にも出来たこと」なのだから。
(たとえばキュルケでも、わたしのやった屋敷の中に通すことは出来たはずだわ。けど、
キュルケのやったことでわたしに出来たことはない。……キュルケとタバサ、あんなに
強力な魔法が使えていいな……どうしてわたしには、何の魔法も使えないんだろう……)
 魔法の使えない自分と比べて他のメイジを嫉妬したことが何度もあるルイズだが、今回ばかりは、
純粋にキュルケたちの才能を羨ましがった。
 その指に嵌められた『水のルビー』が、誰にも知られることなく、キラリと輝きを放った。

294 :
今回は無事に投下できてよかった……それでは終わりにします。
次回から三巻分の内容、タルブ村が舞台の予定です。

295 :
乙乙
忍法帖は今使えないって話だったような

296 :
乙!
このブラック星人も土星出身なのかw

297 :
私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!から黒木智子を召喚
存在さえ認識されないかもこっちのコミュ症振りに流石のルイズもいい人化するかになると思われ
勿論もこっち側は腹ん中で見下し放題

298 :
>>297
あれは可哀想になるというかむしろいらいらするタイプの人間だろ

299 :
ウルゼロの人乙
グロストへの援護攻撃がZATのレーザーのオマージュになっててよかった

300 :

スノーゴンもグロストもそういえばブレスレットがなければ勝てなかった強敵だな

301 :
はじめまして
誰が見てるかわかりませんが
書かせてもらいます
今回召喚されたのはパワプロクンポケットから
犬井灰根でお送りします
よろしくお願いします

302 :
『強い剣士と青い髪の少女』
第一話 召喚
「・・・・・・?」
犬井灰根は驚いていた
死んだと実感できた、事実死んだはずであろう自分が
怪我もなく、地面に立っているのである
しかし何かが違う、何が違うのかはわからない
というよりもただ混乱していて思考が回っていなかった
その時
ザワ・・・ザワ・・・
「おい・・・タバサが平民を召喚したぞ」
「平民二人目だぞ?」
「ルイズはまだしもあのタバサが?マジかよ・・・」
周りがざわつき始めた
「どうなっている・・・」
混乱はしているのは変わらないが
少なからず周りを見る余裕ができ見渡す、すると
1人の少女がこちらをじっと見ている

303 :
「・・・・」
青い髪の背の低い少女
年齢はハンナと同じくらいか
「・・・・・・・!」
しまったと犬井は思った
名も実力も知らぬ相手が目の前に立っているというのに
強くなるために教育された自分が構えもせずただ立っているだけなど
・・・だが構える必要はなかった
カラン・・・カラン・・・
目の前の少女が武器であろう杖を捨て
手を挙げて自ら無防備になったのだ
「警戒しないで、私たちは敵ではないわ」
「・・・それがお前の武器か?」
「ええそうよ、他に武器は持っていないわ、なんなら脱いでもいい」

二人はお互いにじっと見合っていた
それに合わせ周りのざわめきが大きくなっていく
長い沈黙
それを先に破ったのは犬井だった
「・・・子供にそこまでさせる趣味はない、しかしそういうことなら・・・」
スッ・・・ポイッ
カラン・・・カラン・・・
犬井は腰にさしてあった刀を
自分と相手の間に投げ捨てた

304 :
「? あなたまで武器を捨てる必要はないわよ?」
「警戒を解くためだ・・・構えをとけ、そこの男・・・と赤い髪の女」
(!!! 嘘!すぐ横に立っているミスタ・コルベールならまだしも
 生徒達に紛れている私にきずくなんて・・・)
目に見える同様
背丈は目の前の少女より高く、赤い髪が特徴的である
「気配や殺気というものは抑えることはできても消すことはできん、なに、少し俺が敏感なだけだ」
警戒を解くために発した言葉だったのだが
結果は裏目に出た
その言葉に警戒心はました、故に構えを解くことを二人はしなかった
「俺は構えを解けと言ったはずだが?・・・3度目はない」
だが二人は構えを解くことはなかった
お互いに守りたいものがあるから、表向きはそんな理由
だが実際には「所詮は平民」という先入観
同じく武器は捨てているからという油断
貴族である自分たちが負けるわけにはいかないというプライド
ろくに戦闘を行なった事のない安い考え
「・・・・・・忠告はしたぞ」

305 :
バッ! ガスッ!
犬井はコルベールに向けて飛び込み
その勢いのまま腹を飛び蹴り、またその反動を使い地面を這うように移動した
それを見たキュルケはすかさずファイアボールの呪文を唱える
だが時すでに遅し
刀を拾い体制を直した犬井はそれをかわし
一気に飛び込みキュルケを押し倒す
そのまますかさずキュルケのみぞおちに刀の鞘を叩き込む
「〜〜〜〜〜〜!!!!」
声にならない悲鳴が短く響いた
悲鳴がなくなったと思えば気絶
コルベールも頭を打ったのか気絶していた
急な出来事に周りは一言も言葉を発すことができなかった
ただ一人を除いて
「キュルケ!」
先ほどまで目の前で対峙しあっていた少女が駆け寄る
「あなた何を!」
「忠告はした」
「だからって!」
「お前がこいつとどんな関係かは知らないが
 安心しろ痣の一つもできていない」
「それとこれとは話がちg」
「何事かね?」 

306 :
話を遮るように声が聞こえた
タバサは驚いたように振り返った
声のする方向には白い口ひげの生えた老人
学園長のオスマンが立っていた
犬井は当然その老人の存在には気づいていたが、
先ほどの二人と違い敵意がほとんど感じられなかったため気に止めなかった
オスマンは倒れているコルベールとキュルケを見たあと
キュルケを囲んでいるふたりを見た
「・・・・・・・・」
フムと小さく呟いたあと
白いヒゲを撫でながら犬井に向かって言った
「君たちがこれを?」
「正確には俺ひとりだ・・・・それがどうした?」
悪気のない返答に驚きながら
ため息をつくオスマン、そのあとすぐに
「今日はここまでじゃ、皆部屋に戻るように!」
と、振り返って叫んだ
それを聞いた生徒たちはぞろぞろと建物に向け空を飛んでいった
犬井は少し驚いたが、特に気にはとめなかった
そしてオスマンが二人に近づき小さく「二人は後で学院長室に来るように」
と、言ったあと同じく飛んでいった
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
また長い沈黙
そのあとタバサは空に浮かび、犬井を睨みつけた
犬井はそれに動じず生徒たちが向かった建物に向け歩き出した
それを見たタバサは同じように犬井も浮かばせた
「どうした?」
「・・・・・・・・・・」
それ以上ふたりは何も喋らなかった

       第1話 END

〜おまけ〜
「お前は飛ばないのか?」
「へ?あっ、べ、別に?ただあんなの見たあとだから気分が悪くなったでしょ、だから歩くのよ!」
「はぁ? それとこれとは関係n」
「うるさい!!」

307 :
終わりです
誰か見てたかな?
これからは短い話を何回にも分けて投稿する形になると思います
それではありがとうございました

308 :
乙でした。
とりあえずsageてくれ。それが大前提

309 :
投下感謝。
コルベールとキュルケは放置か?
タバサが先に浮かんでから犬井を浮かせるというのは可能なのか・

310 :
ハルケギニア人はNPCだったってわけか
なんか仏教の教えみたいだな

311 :2013/09/21
凍結といえばバルタン星人も凍結光線を使えるんだよね。もっともあれは硬直化というか仮死状態にするというか厳密に凍結とはちょっと違うようだけど
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