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2013年17ニュー速VIP+374: 童貞「ラスト・Rーだ」〜天下ワレメの聖戦〜 (351)
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童貞「ラスト・Rーだ」〜天下ワレメの聖戦〜
- 1 :2013/08/26 〜 最終レス :2013/09/26
- http://c.2ch.net/test/-/news4viptasu/1373773870/1-
続編です
なんか512KBをどうのこうので書き込めないんで立てました
童貞と共にあれ!
- 2 :
- >>1乙
やっと勃ったか、待ってたぜ!
- 3 :
- >>1乙!
勃つの待ってた!
- 4 :
- ラストオブ童貞
- 5 :
- や、やったー!
- 6 :
- 今でも即死ってあるの?
念のため保守
- 7 :
- 待ってたよ〜
- 8 :
- 前スレ容量オーバーとか頑張りすぎだwww
続き待ってる!
- 9 :
- 早くぅ
- 10 :
- 容量オーバーなんてあるんだな
支援
- 11 :
- 一乙!
- 12 :
- マダー?
- 13 :
- >>12
まあ気長にまてよ
書き貯めてるだろうから
- 14 :
- 支援
- 15 :
- 近年稀に見る良作
- 16 :
- ほ
- 17 :
- ほ
- 18 :
- はよこい!落ちてまう
- 19 :
- ま
- 20 :
- ほ
- 21 :
- あげほしゅ
- 22 :
- 落ちないでくれ
- 23 :
- このスレのおかげで童貞は一度捨てたら二度と戻れない唯一無二の存在なのだという真理に到達した
- 24 :
- ほ
- 25 :
- し
- 26 :
- ひ
- 27 :
- ら
- 28 :
- り
- 29 :
- ほ
- 30 :
- け
- 31 :
- ん
- 32 :
- 長らくおまんたせ致しました!
ちなみに自分はほぼ不登校にもかかわらず、保健の授業で50点中48点をとってしまったのがクラスに広まった苦い過去があります!
ご飯食べてから再開します
では、童貞と共にあれ!
- 33 :
- wktk
- 34 :
- ktkr
- 35 :
- 開戦まではいったよな…
とりあえず2部からスタート切ります
追ってた方は退屈かと思われます、すみません
ですが、今日中にヤリチン教団の教祖が活躍する辺りまでいこうと思います
- 36 :
- 待ってた〜!でもムリしないでね
- 37 :
- 沛然と降り頻る雨が、岬を喧しく打っていた。
少年の頬にこびりついた血と精液が、流れていく。
彼の目には脅えが浮かんでいた。
追い詰められていたのだ。
「よく頑張ったが……ここまでだな、童貞」
ジリジリとヤリチンが詰め寄ってくる。
油断なく、引き締まった表情だ。
ジッパーから抜き放たれた一物は、雨に濡れて一層黒光りしていた。
それは生殖の為に猛っているのではない。
人体を肉塊に変える為の、兵器目的の猛りだった。
「何故、童貞でいる」
ヤリチンが言った。
「童貞を何故に守る。
そこに何の意味がある」
後退していた少年の口から、小さな呪詛が漏れた。
もう後がない。
彼の後ろには、切り立った崖――その下には、荒れる海しかない。
- 38 :
- >>36
優しいお言葉をありがとうございます!
あなたに幸あれ、ザーメン!
- 39 :
- 少年はそれを認めると、ふと、俯いた。
やおらに上げられたその顔からは、先ほどの脅えは消えていた。
「俺が童貞を守ってるんじゃない。
俺が童貞に守られてるんだ」
少年はズボンを脱ぎ捨てた。
跳ねたのは、決意に固まった一振りの一物。
「――行くぞ、ラスト・Rーだッ!!」
少年は脱兎の如く駆けた。
腰を引き、ヤリチンに必殺の一撃を見舞う。
端から見れば、それは抱擁にしか見えなかった。
少年はしっかりと腕を巻き付け、ヤリチンはされるがままとなっている。
と、ヤリチンが目をカッと見開き、口から血泡を吹いた。
少年もただではすまない。
激しく咳き込み、血を吐いた。
「――おい、あそこだ!
童貞があんなとこに逃げてやがる!」
「尊師様がやられてるぞ!」
ヤリチンの仲間らしき声が雨音に混じって聞こえる。
少年は暗くなっていく視界の中で、必死に最後の力を振り絞り、
「これで終いだ……ヤリチン」
ヤリチンを抱えたまま、黒い海目掛けて飛び込んだ。
撃ち抜かれた鳥のように、声もなく落ちていく。
飛沫が上がった。
彼らは、抗う力もない。
暗い。
暗い底に沈んでいく。
彼らは、死に呑まれていった。
- 40 :
- イナバ族。
インシューの民の数ある部族の一つで、総数四千という少数部族である。
だが、彼らは部族間の力関係においては一二を争うほど、強かった。
理由は二つある。
一つ目は、だいたい一世代に一人、生まれながらに神通力を備える者が出てくるというものだ。
その者はシャーマンの力を持ち、霊媒能力に長ける。
幼少から髪が白くなり「それが神の意を代弁する者の証なのじゃ」とは元族長にして長老、オヅノの弁である。
その彼こそ、それに該当する人物で、特に呪術の才に優れているという。
この不思議な力を持つ者は神官として族長を影から支え、事実上、神託として族長に意見出来る存在である。
二つ目は、イナバ族がインシューの民に伝わる『神船伝説』と神船を代々守ってきた由緒正しい一族であるということだ。
四千という人口に不釣り合いな、広大なオアシスの所有権が認められていることからも、そのことの重要性が分かるだろう。
今日は、そんなイナバ族の暮らしを覗いてみよう。
砂丘の夜明けは早い。
彼らの朝は、鳥取鶏というやたら語感が良い家畜の鳴き声で始まるのだ。
塩漬け肉で朝食を摂り、武器の手入れを済ませたら、みんなウズウズしてくる頃合いである。
「一狩り行こうぜ!」
堪りかねたように声が上がった。
弾かれたように、男も女も老いも若いも立ち上がる。
それぞれの手には、得意の武器が握られていた。
- 41 :
- 「痺れ矢まだか!」
「ちょっと男子ー!女子の周りで大剣振り回さないでよ!」
おはようからおやすみまで、揺りカゴから墓場まで、狩って狩って狩りまくる。
彼らは狩猟を至上の喜びとするのだ。
LV99の勇者も真っ青なモンスターキラーなのである。
当然、その狩猟能力と戦闘力は凄まじい。
少し前、同じような民族性を持つ、グロい顔で巨体を誇り、肩から三点ドットのレーザー銃を装備し、優れた文明を持ちながら非常に好戦的な宇宙人が鳥取県にやってきたが、紆余曲折の果てに互いの力を認め合い、友情が芽生えたという逸話もある。マジかよ。
ちなみに、今でもその宇宙人とは年に一回、合同演習してるとかしてないとか。
そして、成果は日持ちが効くように塩漬けにし、その日の狩りを肴に、酒を酌み交わすのだ。
他には特筆することはない。
精々、岩塩を採ったり、昼寝したり、家畜の世話をするくらいなものだ。
彼らの生活は単純明快。
はじめ人間ギャートルズのエンディングみたいな感じである(別に例のゴリラはいない)。
- 42 :
- 今も鳥取の空の下、彼らは元気に砂丘を駈けている。
その手に握られたのは命を奪う、だが、命を繋ぐ為の武器だ。
彼らは、我々現代人が忘れてしまった何か大切なモノを知っているのかもしれない。
イナバ族は、オアシスにある小山の開けた場所に並ぶ、簡素な石造りの住居で、今日もナディアが発狂しそうな食卓を囲むのであった――。
「なぁ……二人共、ホントに何も覚えてねぇのか?」
その住居の中で、一際、立派な建物があった。
砂丘では貴重な木材でしつらえた机や椅子があり、位の高いものが住まう家だと見てとれる。
そこには、インシューの民ではない客人が三人いた。
- 43 :
- 「先生も、貞も。
なんも覚えてねぇってのか?」
赤毛の少女が訝しんだ。
貞はまったくわけが分からないといった様子で、首を振った。
「うぅん。気絶する少し前の記憶が曖昧なんだ。
小森さんに……ヘ、ヘンタイだとか言ったまでは覚えてるんだけど。
何か熱に浮かれてとんでもないことしてた気がする。
小森さん……もしかして僕、小森さんに失礼なことしちゃいました?」
「フッ、フヒィ!?
滅相もございません!」
小森が土下座した。
冷たい石畳に額を擦り付けながら、続ける。
「私は薄汚い雄豚です!
片栗粉で作った手作りオナホールで先っちょを火傷するどうしようもないクズでございます!」
- 44 :
- 「こ、小森さん……さっきからいったいどうしちゃったんですか!」
「私めの汚らわしい名をその高貴なお口で呼ばれるなんて……!
ましてや、敬語だなんてなんと!なんと畏れ多い!」
「操……小森さん、どうしちゃったの?」
「いや、その……」
操は言葉を濁した。
小森は身を震わせながら、言い募る。
「畏れながら!おやめになってください!貞様!
神がそのようなことをお許しになりません!
い、いや!貴方様こそが神でした!
貴方が神です!
コモリエルは貞様にお仕えします!」
「こ、小森さん……ちょっと何の冗談ですか!
意味分かんないですよ、もう!
ちゃんといつもみたいに喋ってくださいよ!」
「ハッ……!?」
小森は何かを察し、平服したまま、
「ブヒッブヒッ!ブゥブゥブゥ!」
鳴いた。
横で、操も内心泣いた。
「もう!小森さん!
ホントにどこか頭でも――」
貞が心配そうな顔で屈みこみ、小森の肩に手をかけた。
その瞬間、彼はバネ仕掛けのように飛び上がった。
「プギィィィイイイイイッ!?」
- 45 :
- 小森、もとい哀れな豚は、噎び泣きながら操に助けを乞うように縋る。
操はシャツが涙やら鼻水やらで濡れるのにげんなりしながら、背中を擦ってやった。
「生きててごめんなさい……毎日Rーで数億の我が子をR罪深き私めをお許しください……」
「あぁ、あぁ!分かったよ!
許すよ許してやんよオレが!
だから、さっさといつものどこからくるか分からない無駄な自信と意味不明な余裕を取り戻してくれ!」
「おお……聖母様や……!
私めの罪をお聞きください……行けたら行くよって結局いつも行きませんごめんなさい……。
図書室の辞書のちょっとエッチな単語に傾向ペンで線引いたの俺ですごめんなさい……」
「全部許してやるよ。
些細なことじゃねぇか」
- 46 :
- 「みんな歌ってる時歌ってません……午後の紅茶も午前に飲んじゃいました……」
「間違いは誰にでもあんだろ、先生」
「あと鳥取童貞基地の最初の日の晩、操のパンツ盗んだの俺ですごめんなさい」
「Rッ!!」
操の前蹴りに、小森が痛々しい鳴き声を上げた。
追撃を加える操を、必死で貞が止めた。
「ちょっと操!弱ってる小森さんに何してんだよ!」
「離せッ!!止めるなッ!!」
「で、でも、使ってないから!
売ったの!売ったんです!」
「テメェェェェェェェェェエエエエエエッッッ!!!!!」
弁解する小森の側頭に、腰の入った上段回し蹴りが極った。
ようやく、操が落ち着きを取り戻した時には、彼は使い古しの雑巾のようになっていた。
- 47 :
- 息を荒げながら、操が言う。
「フッー……フッー……とんでもねぇな、まったく!
最初は凄い人だと思ってたのに、日に日にダメな部分が目立っていってるぜ!」
「小森さん、しっかりしてください」
貞が小森を心配そうに覗き込む。
小森は微動だにせず、動かなかった。
「こんなのおかしいよ……!
いつもの小森さんなら殴られて喜ぶのに」
小森の異常な様子に、貞は本気で胸を痛めているらしい。
その時、ごめんください、と毛皮の暖簾が翻った。
「ブヒッ」
小森がむくりと起き上がった。
腐っても童貞。
回復力は流石である。
入ってきたのは、赤い帽子を被り、平たい箱を抱えたチャラいニイチャンだった。
- 48 :
- 「ピザのお届けに参りましたー!
ここはオヅノさんのお宅で宜しかったっしょうか?」
「ブヒッブヒッ!」
雑用は自分の仕事だと言わんばかりに、小森が応対する。
「……のハーフサイズ二枚と――ッスねぇ!
3980円にありあす!」
「ブ、ブヒィ」
「はぁ?家主じゃない?」
「ブヒュゥ……」
「お金も持ってないぃ?
ちょっとお客さん困りますよーウェーイ」
困り果てる小森に、助け船が出された。
「――あ、ごめん儂儂」
奥の部屋から現れたのは、オヅノ長老である。
- 49 :
- 茶髪の若いニイチャンは代金を貰い、帰っていった。
貞は一人、首をかしげた。
(今の人……どこかで……)
「大天使コモリエル、お付きのお二方もどうぞ。
これは宅配ピザといって、儂の大好物なんですじゃ。
遅いですが、今から昼食にしましょう」
一行は長テーブルに着き、インシューとピザの料理をふるまわれた。
その食事の席では、位が高いらしい主だった面々が並だ。
どうやら、ただの昼食会ではなく、神の使いの降臨についての話し合いの場でもあるらしい。
二十人近い屈強な男が並ぶその中で、大人しい小柄な少女が場違いに映っていた。
歳は十ばかりだろう、貞より下である。
日に焼けた健康的な肌も眩しいが、何より目立つのは、黒髪の一部に白い筋が混じっていることだ。
「この子はラビ。
見ての通り、異能の子じゃ。
予知を得意としておっての、儂も鼻が高いわい」
照れたように、ラビが頭を下げる。
操がオヅノに訊いた。
「アンタの孫なのか?」
「いや、娘じゃ。五十三番目の」
- 50 :
- 居並ぶ男達の中でも一際逞しい、現族長のザオウという男は、貞と操は見覚えがあった。
筋骨隆々の大柄な身体に、無骨な顔付きである。
「あ、あんた……あん時の!?」
捕まっていた時、貞と操の頭を鷲掴みにした大柄な男であった。
「その節は失礼した」
たどたどしい日本語で、ザオウが詫びた。
「喋れたんですか?」
貞が目をぱちくりさせる。
「少しはな」
「オレ達を食おうとしやがって!
一生恨むぜ!」
声を荒げる操に、族長はさも驚いたように目を見張った。
「とんでもない。
我がインシューの民はそのようなことはしない。
客人をもてなす際、鍋の味見を任すのがインシューの流儀だ」
「な、なんだそれ!
じゃあなんで拘束したんだよ!
それに矢も射ってきたしよ!」
「砂丘は広く、苛烈だ。
我々砂と生きる民でも、危険なのだ。
子供を行かせば、半時も保たぬ。
命を失うくらいなら、大怪我を負ってでも生かした方がいい……だが、お前達が神の使いの従者なら、それはいらぬ心配だったのだろう」
族長はすまなかった、と素直に頭を下げた。
釈然としないのか操はぶつぶつ言ったが、詫びを受け入れた。
その横で、ピザを頬張りながら、小森が言う。
「でも俺は食おうとしたよね」
「して、大天使コモリエル」
長老が口を挟んだ。
- 51 :
- 「此度の来訪、如何な意味があるのでしょうか」
小森は真面目な顔で、重々しく頷いた。
その目には悪戯な光が見え隠れし、いつもの調子を取り戻しているようだ。
「――世界に今、未曾有の危機が迫っております。
この俺、大天使コモリエルはそれを救いに参ったのです」
おお、と屈強な戦士達がどよめいた。
「なんて力強い御言葉だ……」
「さすが、神船を動かせる伝説に伝わる『ドウテイ』だ……」
彼らが交わす言葉は小森には解せなかったが、だいたいは察した。
気を良くし、体の良い言葉を続ける。
「皆様は選ばれし民……!
この世界にはびこる闇を焦がす、烈火の戦士!
そして俺は、天から差し込んだ、皆様を導く一条の光なのです」
- 52 :
- 「オオ……ドゥティ!」
「ドウテイコモリエルッ!」
小森は手に持っていたピザを丸呑みし、裾で手を拭いた。
「さぁ、神のご意志――絶対正義の名の下に、いざ行かん聖戦へッ!
まずは作戦会議なのです!
では、大天使はこれにて、ごちそうさまッ!
……――童貞と共にあれ!」
小森に続き、イナバ族の戦士達は出ていった。
残されたのは貞、操、長老に、ラビという少女だけである。
貞が操にこそっと言う。
「小森さん、元気になったみたいで良かったね」
「あぁ、それはそれで厄介なんだけどな」
操が小声で返した。
貞はこそと笑い、ご馳走になったと礼を言った。
- 53 :
- 「気にせんでええ、天使達よ」
「て、天使達って……」
貞は顔を曇らせた。
騙してるようで、決まりが悪い。
「あのぅ……僕達、実は天使とか神のお使いじゃなくて……」
口ごもる貞に、操は肝を冷やした。
本当のことを言っていいものか、気に病んだのだ。
だが、長老の口から出た言葉は意外なものだった。
「知っとるよ」
さも当然とばかりに答え、続けた。
「儂、その気になれば頭ん中覗けるし」
「!……そういや、そうだったな」
操がハッとした。
「儂は全てのものには意味があると思っておる。
雨の一粒にも、風の一吹きにも。
それぞれ目的の違う三人の出会いにも、そして、その三人とイナバ族との邂逅にもじゃ」
長老がふぅと嘆息し、ラビの頭を撫でた。
- 54 :
- 「儂はな、お若いの。
外界の進歩を見て、かねてからイナバ族の行く末を気掛かりに思っていたのじゃ。
ただ続く砂丘のような我ら。
目覚ましい発展を遂げる外界。
このままで本当にいいのか、と」
ラビが大きな丸い目を、更に丸くした。
「父様!そんな、ことない!
なんでそんなこという!
外界の人、自然汚す。
嘘をつくし、食べ物を粗末にする。
鳥取県民は、砂と共に生き、砂に死んでいく、でしょ?」
まぁ聞け、と長老が目で制す。
「確かに、このまま変わらないのもいいじゃろう。
誰からも忘れ去られ、それでも砂丘と生き、鳥取の風に散っていく。
イナバの在り方――それが本望という者も多い。
じゃが、まずは世界を見てからでもいい。
儂は、そろそろ若い世代に一族を託そうと思っていたところじゃった。
次世代が曇りなき眼で見定め、決める。一族の在り方をな。
それを見届けるのが、儂の最後の仕事じゃよ」
「アンタ……ジブリ好きなのか?」
「そんな時にやってきたのが、お主達じゃ。
例え、天から降りて来たわけでなくとも、イナバ族に新しい風が吹いたのは確かなんじゃよ。
これが何を意味し、どういう結末をもたらすかは分からぬ。
じゃが、古い言い伝えの通りに、イナバにきっかけをくれたあの男に、儂は残り少ない余生を懸けたいと思う」
- 55 :
- ラビが悲しそうに、俯いた。
突然の話に、貞も操も何と言えばいいか分からなかった。
「あぁ、すまぬすまぬ」
長老が朗らかに笑う。
「別に変な期待をお主らに押し付けたいわけじゃないのじゃ。
気に病むことはないぞい」
「一族の命運……たくさんの人達……僕達、嘘でそんなものを巻き込んでいいのかな」
と、貞。
長老が、白い眉の下に、不思議な光を宿らせた。
「儂はお主達は言い伝えの通り、知らず知らずの内にでも、インシューを導くものじゃと思っとるよ。
例えそこが地獄でも、文句はない。
それまでの一族ということだけじゃ。
…………それに、何より……あの小森という男が、先ほど皆に語り掛けた言葉――」
オヅノ長老は言葉を切り、席を立った。
伸びをして、立て掛けてある槍をとる。
外に出る前、彼は振り返らず、続けた。
「――あの男……恐ろしいことに、嘘を吐いてなかったんじゃ」
- 56 :
- 世界を大いに賑わせている童貞混成軍は、今、中国地方を破竹の勢いで北上していた。
その規模の大きさたるや、誰もが予想出来なかったほどだ。
彼らが、ヤリチン寺院や童貞保健所など、各地の拠点を制圧していく一方で、捕らえられた童貞の解放や燻っている童貞を仲間に引き入れることにも熱心だったからである。
そして、その活動は彼らの期待以上の効果を発揮していた。
「おお……『三十人斬り』の佐々木だ!」
「『性騎士』の片瀬もいるぞ!」
「『こっくりさん使い』の小林もいる!」
ヤリチンに拘束されていた童貞は存外多く、中には、全国でも名が通った童貞もいたのである。
彼らは檻から放たれた猛獣のように、はたまたボールから飛び出したモンスターのように、自ら進んで前線に出向き、戦果を上げた。
鍛えた技で勝ちまくり。
仲間を増やして次の町へ。
そんなRPGの王道を行っていたのである。
- 57 :
- 《童貞軍の狙いは依然として、明確に分かってません。
警察は、不用意に童貞の潜んでいそうな場所に近付かないで、万が一遭遇してしまった場合は、速やかな通報を呼び掛けてます。
専門家によると、童貞は大変危険とのこと。
爆発の恐れもあるので、火の元厳禁。混ぜるな危険。
また有害物質やヤバげなウイルスを持っているかもしれないので、マスクの着用を促してます。
政府は、童貞軍に徹底抗戦の構えをとる姿勢で――》
日本だけでなく、世界中のニュースを独占しつつある彼らだったが、旗の立ち上げからまだそう時間が経っていない為、情報は少なかった。
貞員は既に三万以上。
大小様々な童貞軍によって結成された一大混成軍であること。
そして、彼らを引っ張るのが、屈強な大男でも熟達した古強者でもなく、小柄な少女であるという意外な事実だけが、世に広まっていたのだ。
「死せる童貞に自由を――」
「進撃の童貞ッ!童貞ッ!童貞ッ!」
彼らは強かった。
その力で同胞を救い、更に勢いづく。
- 58 :
- だが、強さは時として刃を鈍らせることもある。
いい気になり、油断を生んではならないのだ。
派手に暴れたのだ、敵も本腰を入れてくるだろう。
ここからが本当の戦いなのだ――そう目を光らせたのは、頭のキレる、それぞれの反乱軍の代表者達だった。
先ほど制圧を終えたばかりの街のファミレスで、彼らは膝を交えていた。
「そろそろ、ヤリチン寺院の上層部が動くと見ていいでしょう」
「これまで通りにはいかんというわけだな」
凡そファミレスには似つかわしくない会話が、淡々と繰り広げられる。
席はほぼ埋まっていた。
思い思いに寛ぎ、勝手にソフトドリンクを飲みながら、意見を交わし合う。
「まぁ……鼻っから分かりきってたことだがな」
引き締まった長身に、顎髭を生やした男が言った。
この中では若い部類だが、発言力があり、軍議の中心にいた。
「……やはり、本気でぶつかりあったら不利かと思われますな」
「悔しいが、絶対的に物量が違う。
正攻法では攻められん」
痩せた童貞が、眼鏡をキラリと光らせた。
「兵法に秀でた童貞といえば、あの方がいますね」
「おお、奴か。
そういえば、見ておらんな」
「あの方……池上さんは性格はちょっとアレですが、軍師としては日本でも随一ですね」
- 59 :
- 「『包茎』の池上冠利か……その名は久々に聞いたな。
なんでもあの鳥取県に住む変わり者だとか」
鳥取県だと、とファミレスの一部が揺れた。
「阿呆か、気違いかそいつは!」
「変わり者で有名なのは知ってたが、まさか鳥取在住だと!?」
「とんでもない奴だ!
そんな頭のおかしい奴をこの軍に加えていいのか!?」
俄かに、ファミレスが騒がしくなった。
意見が飛び交い、激しくぶつかり合う。
更に飛躍し、話題が互いの部隊についての文句に切り替わってしまった者や、部隊の配置に不平を上げたりと、議題に関係のない意見を言う代表者さえ出てくる。
- 60 :
- 先ほどの長身の男が、『包茎』を擁護した。
「冠利さんか、俺はあいつを良く知ってる。
わけあって、共同戦線を引いたり、旅をしていたこともある。
会ったことある童貞は分かると思うが、情熱と童貞力は確かな男だぜ。
これから先戦い抜く為には、是非とも欲しい戦力にはちげぇねぇ」
その男、三擦り楽士団団長にして『早漏』の益垣が言った。
彼は横にいる小柄な少女に、目配せする。
「お前はどう思う?芳野の大将」
「どうもこうも」
芳野と呼ばれた少女が、嘆息混じりに言った。
「情けないったらないわね。
今は仲間割れしてる場合じゃないでしょ。
少しでも力を合わせないでどうすんの」
なんだと、と赤ら顔の男が立ち上がった。
「今のままの戦力でも一応対応出来てる。
池上とかいう奴が立案した作戦で、うちの軍団が割りを食うのはごめんだぞ!」
「んだと!そりゃ俺達もだ!」
「私もだ!身内が死ぬのは見たくはない!」
あちこちからそんな声が上がった。
分別のある童貞や、冷静な童貞は言い争いに顔をしかめる。
芳野が無言で立ち上がり、静かに言った。
「黙りなさい、カビ生えR共」
- 61 :
- 口論していた童貞達がサッと顔を赤くした。
芳野をねめつけるが、当の彼女は全く意に介した様子はない。
「あたしはね、正直、あんた達を駒にしか思ってないの」
この発言には、口論の外にいた童貞達も騒ついた。
芳野は淡々と続ける。
「あたしは全体を見てるつもりよ。
失礼、全体を見下ろしてるつもりよ。
あんた達の軍団一つ一つに構ってられないし、興味もないの。
ただ……勝つだけ。
だって、美少女は皆の為のものなんだもん。
あたしのやり方に不満があるなら、あたしをプレイヤーから引き摺り降ろせばいい。
……昔、知り合いに童貞がいてね。
聞いたことあるのよ、昔ながらの誇り高き戦士は『闘貞』とかいう方法で決着を着けるんでしょ?
いつでも受けてあげるよ」
芳野の言葉に、その場の童貞達は押し黙った。
- 62 :
- だが、益垣は一部の童貞がちらと嫌な表情を浮かべたのを見逃さなかった。
(嬢ちゃんはよくやってる。
童貞でもないのに、しっかりと柱になってやがる……だがなぁ……)
益垣は渋い顔をした。
確かに、芳野はリーダーとしての資質は十分にあった。
気の強そうな瞳は有無を言わさない迫力があり、真一文字に結ばれた口が開かれると正確な命令が飛ぶ。
場慣れしているのか、多少のアクシデントにも動じない。
だが、全童貞の心を掴んでいるわけではなかった。
芳野佳乃は元、三ツ星ハンター。
反感を買わないわけがない。
更に、彼女は酷く独裁的で、勝つ為に犠牲を出すことにも躊躇がなかった。
何より、大前提として彼女はビッチなのだ。
俺達のリーダーが何故ビッチなのだ――皆、心のどこかで、そう思っていた。
(こればっかりは綺麗事じゃねぇ。
これは長い闘争の歴史に根差した、深いモンだ。
それに、反芳野派の意見も分かる。
お嬢ちゃんは貞のことで自棄になってんのか、かなり血の気の多い戦いを皆に強いてるも確かだ。
成果の代わりに、犠牲も払ってるのを忘れちゃならねぇ。
俺が大将補佐として恨みを分散させてはいるが、これ以上は反乱軍から反乱が起きるというコントにもなりかねん。
たくっ、どうしたもんかねぇ……)
- 63 :
- 益垣が人知れず心を砕いている間、芳野は意に反す者を黙らせたのにすっかり気を良くしたらしい。
満足気な笑みを浮かべ、軍議そっちのけでメニューに視線を落とした。
やがて、顔を上げ、店員を呼ぶ例のアレを押した。
「おい!パフェよッ!!
ありったけのパフェを持ってくるの!!
乙女のお腹がピンチなの!」
厨房の方から、げんなりした顔の若い女性が顔を出した。
年の頃は二十歳くらいだろう。
何故か着ているメイド服は、品のある顔立ちに中々似合っていた。
彼女は横でまとめた長い黒髪を揺らして、パフェを運んでくる。
「お待たせしました……芳野将軍。
適当にあるモノ入れてみたよ風気まぐれ岡田の冬色パフェでございます」
彼女が――岡田が濁った瞳で、パフェを置いた。
戻ろうとする岡田の肩を、小さな手が捉える。
「ヒッ……!」
「待ってよ。ご主人様の隣に座りなさいよ」
岡田はされるがまま、芳野の隣に座らせられた。
芳野はにやつきながら、その肩に腕を回す。
ぶらんと下がったそれは、自然と大きな膨らみに当たった。
小さく、岡田の口から息が漏れた。
- 64 :
- 「お、およしになってください……」
「芳野よさない!」
芳野は笑みを浮かべ、大きく実ったそれを撫でるように弄る。
岡田は必死に助けを求めるも、童貞達は話し合いに夢中だった。
ふん、と芳野が鼻で笑う。
「あんたみたいなビッチが街をうろついてたら、そりゃ童貞軍に捕まるっての。
おとなしく抵抗しなければいいものを、二人で五十貞のしちゃうなんてね。
その腕と巨乳に惚れたのッ!
あたしの計らいがあってこそ、この芳野佳乃様のメイドとして仕えることが出来るんだから、感謝してよね!岡愛理!」
「は、はい……感謝します。芳野将軍。
あと、岡愛理じゃなくて岡田愛理です……」
岡田は惨めさに涙を浮かべた。
その間も少女の小さな手は、彼女の乳房を弄んでいた。
否応なしに、身体は跳ねてしまう。
きつく口を結んでも、そこから、パフェよりも甘い声が漏れてしまう。
- 65 :
- 芳野は手持ちぶさたになったもう片方の手で、再びブザーを鳴らした。
「奴隷二号機!!
下が大洪水で喉が渇いたわ。
なんか炭酸持ってきなさい。
刺激的に弾ける、思春期飲料を所望するわ」
「ウホ……」
厨房から、黒い毛をびっしりと生やした大男が姿を見せた。
額は変に突き出し、小さな目は落ち窪んでいる。
その男は、芳野の前にドリンクを差し出した。
芳野はそれを呷ろうと手を伸ばしかけ――
「おい、氷入ってるじゃねえのよ!」
吠えた。
なんだなんだ、と童貞達が注意を向ける。
「氷入ってると薄くなるの!
でも飲み終わった後の氷をガリガリ食べるの美味しいの。
ああ、二つの思いに板挟みになるあたし可愛い……!
でも今は濃いぃぃのがいいんだからぁ」
どうやら芳野は機嫌を損ねたらしい。
ゴリラが、低く唸りながら震える。
- 66 :
- ハッとして、岡田が芳野をあやした。
「よ、芳野将軍……怒っちゃです!
ゴリラは非常に繊細な生き物なんですよ。
交尾期間中以外は攻撃性のない穏やかな、そして神経質な動物なんです。
ちょっとしたストレスからも胃潰瘍になったり、心臓への負担で死に至ったりするという引きこもりばりのメンタルなんですよ!
ただ引きこもりとは違ってワシントン条約のサイテス1、つまり商業取引が原則禁止なほど希少動物なんです!
大量発生しつつあるヒキニートと違って、絶滅が危惧されている動物なんですから!」
「ゴチャゴチャうるせぇッ!」
芳野はグラスの氷をスプーンで掻き出すと、それを、あろうことか岡田の局部に押し込んだ!
「あ、あああ、ああぁぁああ!!!!!
おまたキンキンするのぉおおおおッ!!!」
「そ?よかった!
中でペンギンでも飼いなさい」
芳野は地面をのた打ち回る彼女にそう言い捨て、二メートルはあろうかというゴリラを見上げた。
ゴリラの目は、分かりやすく恐怖の色に染まっていた。
- 67 :
- 「ふん、そんなに怯えなくてもいいわよ。
芳野ちゃんは寛大よ。
あんまり痛くしないから。ね?」
何故かストローを持って迫る芳野に、ゴリラは弾かれたように胸を叩きだした。
岡田が顔を上げる。
「目覚めたのね!あまりの恐怖に野生に目覚めたのねウホゴリ君!」
「うるせぇッ!!」
芳野が小さな足で岡田を踏みつける。
「あう」
「芳野ちゃんのおみ足よ。
あははっ!人を踏むのは人を助けるのと同じくらい気持ちいいわね」
その時、入り口のベルが鳴った。
入ってきた男に、一人、また一人と視線が集まる。
芳野も踏みつけるのを止め、そちらへ顔を向けた。
がっしりとした体つきに、髭面の男。
ミリオタなのか、鉄帽と軍服を纏っている。
彼女は直感で、そこにいたのが、話題に上がった池上冠利であると理解した。
「皆さん、お揃いのようでありますな!
この池上冠利、義によって馳せ参じたであります!」
- 68 :
- 「い、池上団長さん……!」
床に這いつくばった岡田が、顔を上げた。
ゴリラも胸を叩くのを止め、助けを乞うように池上を見つめた。
「おお!二人共、こんなところでなんと奇遇な!」
「え、なに?あたしの奴隷と知り合いなの?
えっと、池上さん」
と、芳野。
「えぇ、彼らは童貞の味方であります!」
その言葉に、岡田とゴリラがしたり顔になる。
「ほら!私達は敵じゃないわ!
確かにスパッツマスク様以外の童貞は別にどうなったって気にしないけど、スパッツマスク様には忠誠を誓っているのよ」
「ウホ!」
だが、二人はすぐに縮こまった。
芳野がギロリと睨み据えてきたからだ。
「あんた達はあたしに召し仕えて天命を全うするの!」
「ひどい……あんまりよ……」
- 69 :
- 芳野は池上と向き直った。
「一応、リーダーの芳野佳乃。
来年受験だけど国家転覆狙ってる恋愛体質の愛されガールだよ。
よろしく、池上さん」
「貴方が噂に聞く芳野さんでありますか。
自分は鳥取童貞軍団長、『包茎』の池上冠利であります。
無職であります。
こちらこそよろしくであります」
池上は丁寧にも鉄帽を取り、一礼する。
顔を上げた彼の目は、抜け目ない光っていた。
「では、まずはこの場で皆さんに、報告したいことがあるであります」
「近畿にある大寺院のこと?
あんまり詳しいことは分かんないけど、そこにヤリチンが集まってるんだよね?」
芳野が小首を傾げた。
- 70 :
- 「えぇ、そのこともですが、もっと重大な秘密を知ってしまったのであります」
池上は意味ありげに、笑みを浮かべた。
それに、陰りが差していく。
「まずは、そのヤリチン達の動向についてからですが……。
皆さんも知っての通り、次の戦いは肝であります。
連中が本気で我らを叩きつぶしにくるでありますから。
信頼出来る情報筋からの話によると、ヤリチンは四万。ビッチが二万。
計六万はまず確実。
あと、近畿地方の自衛隊の無線周波がちょっといつもと違うっぽいでありますな。
更に、各地方のヤリチン教幹部も駆け付けてるみたいであります」
軽い語調とは裏腹に、その言葉は質量を持って代表者達にのしかかった。
うう、という呻きがあちこちから上がる。
「こちらの二倍以上だと……」
「それだけじゃねぇ。
自衛隊が来るなら、向こうからは銃弾が飛んでくるぞ……!」
「いや、そんな些細なことよりも、幹部だと!?
特にヤリチン四天王は聞いた話だと、一騎当千の化け物らしい!!」
「その中でも桁外れに強いというのが、ダース・ニーターだ……。
クソッ!スパッツマスクさんがいればッ!」
- 71 :
- いつの間にか再開してる…別スレでアンタと似てるなと思ってたらやっぱあれアンタかww
モギャー…じゃなかった、続き待ってる!
- 72 :
- 見兼ねて、芳野が立ち上がった。
「ちょっと、なに士気ガタ落ちしてんの。
今回の戦じゃ、働きに応じてこの芳野ちゃんから賞品が出るんだよ」
彼女はポッケから小瓶を取り出す。
茶色い紙のような物が入っていて、なんだなんだと童貞達の注意を集めた。
「優秀賞はなんとこれ!
『あたしのカサブタ』こんなこともあろうかと、一瓶分貯めておいたの!」
うわ、という声がいくつも漏れるが、こういう時の彼女の耳は何故か遠くなるのだ。
構わず、また何か取り出した。
「最優秀賞は超豪華!
このコンタクトレンズ『芳野ちゃん二十四時』これはカラーコンタクトの要領で、あたしをレンズにプリントした芳野ラボの自信作よ!
これさえ付けてれば、いつでも視界に美少女が!
網膜に常にあたしが張り付いて離れないの!スゴいよね!
優勝出来なくても悔しがらなくていいわ、この芳野ガジェットは十枚組で定価二万九千八百円!
芳野ラボから好評発売中よ!
ちなみに、使い捨てじゃないから……一晩付けたくらいでさよならはイヤだから……!」
頭を垂れ、童貞達は暗い意見を交わし合った。
- 73 :
- >>71
!?
なんのこたいってるのか分かりませんよ!!
お待たせしてすみません
サクサク続けます、童貞と共にあれ!
- 74 :
- だが、その男の戦意は挫けるどころか、寧ろ燃え上がっていた。
「いや、悪いことばかりじゃないね、こりゃ」
そう言い切ったのは『早漏』の益垣である。
「考えてもみてくれよ。
幹部だぜ、幹部。
もしそんな奴が戦場にいたなら……もし尊師の奴が本気なら、尊師自身も来てるかもしんねぇぜ!」
「た、たしかに……」
「おお!この戦争に終止符を打てるやもしれぬ!」
俄かに活気が広がった。
芳野はあっという間に士気を向上させた早漏の手腕に、少し驚いたような表情を浮かべた。
普段は飄々とした彼だが、伊達に全国一の早漏と言われるだけはある。
- 75 :
- >>73
あっwww ごめんごめんw
引き続きどうぞ!
- 76 :
- よーし追いついたぞ
ところで別所のすれたいはよ
- 77 :
- モギャー!ww
まさかバレるとは…
気合いいれて続けます!
- 78 :
- 池上は頷いた。
「彼の言う通り、今回の戦いは尊師直々に指揮する可能性が大いにあるであります。
この戦いの要は、銃を使う人間への対処法。
必ず来るであろう童貞ハンターの対処法。
幹部クラスなど、一流のヤリチン戦士への対処法。
以上の三点でありますな。
一個目と二個目は、自分に考えがあるであります」
「三番目は俺に任せてくれ!
ここらで名を上げたくてな!」
と、若い童貞が言った。
血気盛んな童貞が続く。
「俺もだ!仮にも『精液ダム』の安田だからな!
幹部程度、一捻りさ!」
「僕もだ……『Rーマスター』の力。
外でも発揮したくなったぜ」
「俺はダース・ニーターと裏切り者の諏八と後二人、四天王全てを討ち取るぞ!」
「俺もッ!」
「じゃあ俺もッ!!」
「どうぞどうぞどうぞ!!」
童貞軍に加わった新たな仲間は、更に続けた。
- 79 :
- >>76
妹がふざけて立ててました!
http://c.2ch.net/test/-/news4viptasu/1378213167/1-
- 80 :
- 「それから、これは最初に言った『重大な秘密』でありますが……」
彼は一度、お冷やを呷った。
酒でも飲むかのような仕草だ。
感の鋭い者は、その時、見ただろう。
彼の目に見え隠れする、暗鬱としたものを。
池上が、再び口を開いた。
「――ソーマ・プロジェクト。
今朝、大寺院の情報局から手に入れた暗号文書の名前であります。
全容は明らかになってませんが、文書から読み取れた単語から、恐らく……世界規模で奴らは何かをする気であります……ッ!」
たちどころに、騒めきが広がった。
芳野でさえ、顔色を変えた。
「大寺院の情報局!?
よくそんなところから……いや、それより世界規模のプロジェクトだって!」
「連中の狙いは何なんだ……?
日本をヤリチンの国にして支配する……それだけでは飽き足らずに……」
分かりませんが、と池上が苦笑した。
「童貞にとって……いや、ヤリチン以外の生きとし生けるもの全てにとって良くない何かが、起きてしまうであります」
益垣がボソリと溢した。
「神の酒、か」
それは思いの外、童貞たちの注意を引いた。
皆の視線に気付き、益垣は言葉を続けた。
「いや、確かどこかの神話で、『ソーマ』っていう飲料が出てくんのさ」
「あぁ、インド神話でありますか。
ソーマ……なるほど、自分も今、思い出したでありますよ。
そこからとったでありますか?……だとすると……」
と、池上が唸る。
- 81 :
- 何人か博識な者も、考え深そうに頷く。
芳野は益垣の袖を引っ張った。
「なんなの、それ……詳しくこっそりまるっと教えなさい」
「俺もうろ覚えだが、神様の飲む特別な力や活力が出る霊薬で、月の神様でもあるらしい。
月は、ソーマの入った酒盆なんだとよ。
満月はなみなみ注がれた状態ってとこか」
「……ふぅん」
ソーマ・プロジェクト――芳野は口の中で呟き、まだ見ぬ戦いに気を引き締めた。
と同時に、彼女の胸中では、弟や母の笑顔が胸を焦がしていた。
そのプロジェクトとやらで家族に危害が及ぶなら、いっそ刺し違えてでも尊師を、と密かに心に決める。
芳野は一人納得したようにウンウンと頷き、下僕を呼んだ。
「腹ごしらえ用のご飯作ってくんない?
全員の分も。五分ね。
オーバーしたら罰ゲームだから。
あたしこのメニューのこっからここまで」
- 82 :
- 小さな独裁者の召使によって運ばれてくる冷凍食品に舌鼓を打ちながら、軍議は続いた。
池上はこれまでの戦闘の様子を周りから聞き終えると、溜め息を吐いた。
「今までの戦略では当然、勝てないであります。
数に勝る相手に、ただの力押しでは、敗退しかあらず。
まず、芳野さんは用貞術のさえ分かってないであります。
あと童貞の心も。
賞品はパンツにしろであります」
池上は非難がましい視線を、少女に浴びせた。
その目は、大将の信任を疑っているかに見える。
芳野に反発を抱く童貞が、そうだそうだ、と持て囃した。
「あ、あによ!?なんで戦術なんか勉強しなきゃいけないの!
花の中学生よ、あたし!
この犯罪者共!パンツとか恥ずかしいし!」
芳野が膨れる。
その時、大柄な男が、立ち上がった。
「不信任決議を希望する!
なぜ、ビッチに従わにゃならんのだ!」
「そうだ、もっと軍の被害を小さくしろ!」
「パンツ!」
「パンツだよ、ほら早く!」
勢い付き、次々とそんな声が上がった。
- 83 :
- だが、反芳野派がいれば、芳野を支持する者ももちろんいる。
「おい、そりゃあんまりだろ!」
「確かにこの子は童貞使いが荒い。
けど、乱暴だが確かな力で俺達童貞を束ね、先導したのも彼女だ!あとパンツより一日お兄ちゃんって呼んでほしい!」
「そうだぞ蒸れたストッキング!
何の思惑があるにせよ膝枕+耳掻き、俺達童貞に力を貸してくれてるんだ幼なじみ設定でフライパンとオタマをガンガンして朝起こしてほしい」
頭を掻きながら、益垣も加勢した。
「まぁ、言いたいこたぁ分かるがよ。
お嬢ちゃん以外にいるか?
童貞軍全体を公平な、第三者な目で見れられる。
その上、まとまりのない俺達を、例え恐怖や暴力といった形でもまとめられる奴がよぉ。
俺ぁ普通にデートがいいかな」
その通り、と相槌を打った人物に、反芳野派は面食らった。
先ほど、芳野に不信の目を向けていた池上だったからだ。
- 84 :
- 「勘違いしないでほしいであります」
彼は反芳野派に言った。
「自分は芳野さんを大将に相応しいとは思ってないであります。
知識や経験のことじゃなく、心構えの問題で。
彼女の戦い方が粗いのは事実。
ですが、他に癖のある童貞軍をまとめられる人物がいないのもまた事実。
そもそも、今は芳野さんで揉めてる時ではないであります。
こうしている間にも、連中は攻めてくるかもしれない。
それとも、仲間や他の童貞を危険にしてまで、君たちは新しい大将を生むことに価値があるとお思いでありますか?」
その言葉に、彼らは恥じ入ったように顔を伏せた。
「統率力や指揮する力は間違いなくある。
だったら、細かい作戦や戦略は自分が考えればいいだけであります」
池上は芳野の方へ顔を向けた。
彼女は、挑戦的に笑った。
「上等!たった今から、貴方を芳野ちゃんの参謀に任命します!」
そして、彼ら代表者は、参謀――池上冠利の口から繰り出される作戦や用貞術に聞き入った。
- 85 :
- それは、今までの彼らのやり方を真っ向から否定するものだった。
「まずは、全軍の分解、再構築が急務であります。
この混成軍は一つの軍団ではなく、ただの小さな軍団の集まりであります」
「だけど、それぞれの反乱軍で戦った方が慣れてるし、命令系統も早いしな」
と、別の童貞。
「今まではそれでやっていけたでしょうが、ヤリチンが本気で動いてくるなら、それでは勝てないであります」
池上ははっきりと言った。
三本の指を立て、
「『三大貞科』ご存知の代表者もいるでしょう。
童貞にはそれぞれ様々な能力や適性があり、大まかには三つに分けられる。
それで区分けし、新たに隊を作り直すであります」
彼は薬指を折り畳んだ。
「童貞剣士。肉棒術を用いた近接戦闘を得意とする。
主な適性は、ムケチンと言われているであります」
次に、中指。
「童貞銃士。射精術を得意とし、援護や遠隔攻撃など活躍の幅は広い。
主な適性は特にないが、真性包茎は射精精度が他に劣る為、向かない」
最後に、人差し指。
「童貞騎士。包皮を用いた堅固な守りが自慢。
主な適性は真性包茎。
これら三つで隊列を組み――」
- 86 :
- 代表者達は、池上の提案や作戦に驚き、訝しみ、感心した。
初めは彼を胡散臭げに見ていた者や、参入早々、高い地位を得た彼にいい顔をしなかった者も、いつの間にか夢中になっている。
芳野が単純な力で他を従える百獣の王だとすれば、池上は知力と口八丁に優れた狸だろうか。
彼らの大将とはまた別の人を惹き付ける力を、確かに池上は持っていた。
- 87 :
- 「いける……!これならいけるぞ!」
「むむ……確かに、理にかなった戦法だ!」
「さっそく、個々の隊に触れを出してほしいであります」
慌ただしい様子で、軍議は終了した。
代表者は足早に去っていき、後には三人だけ残された。
「まぁ、三擦り楽士団は射精に長けたモンしかいねぇんだな、これが」
と、益垣。
「分けるまでものぇ。数も少ないし」
「そういえば、久々でありますなぁ、益垣殿。
春先の北九州での小競り合い以来ですな」
池上が、ゴリラの持ってきたコーヒーを啜って言った。
「あぁ、やっぱりあんたもくたばってなかったか。
……お久し振りです、団長」
芳野が割って入った。
「二人って知り合いなの?」
「知り合いっつうか、俺は一時期、鳥取童貞軍にいたんだ。
副団長兼砲撃部隊隊長兼軽音部部長の益垣たぁ俺のことさ」
- 88 :
- 「何それ?初耳よ」
「聞かれてないからな」
益垣はすまして答えた。
「なんで抜けたの?
団体行動とれないダメな子なの?」
「音楽性の違いかな」
益垣と池上は互いに苦笑した。
「益垣殿は実力やカリスマを持ち合わせながら、それはもう手に負えない暴れん棒でしてなぁ。
血気盛んで、自分とはしょっちゅう……というかいつも喧嘩してたであります」
「えっ?こいつが」
芳野は益垣を見上げた。
気さくなニイチャン、といった感じだ。
適当な男だが、少なくとも彼女が知る益垣は飄々としていて、冷静な童貞である。
間違っても夜の校舎窓ガラス壊して回ったりはしそうにない。
「最後には大喧嘩して、直属の部下を連れて脱退さ」
益垣は昔を思うように、遠い眼差しを外へ向けた。
「あの晩の喧嘩はなんでありましたかね?
いつものように軍律違反を注意したのがきっかけか、掃除の割り当てがきっかけか」
「いや、酒か女の好みの食い違いだった気がするぜ?
……覚えてねぇや」
親しげに話す童貞二人に、芳野は目を丸くした。
「喧嘩別れしても、時間が経てばまた仲良くなれるもんなの?」
「多分な」
例によって例の如く、適当な返事が返ってくる。
芳野は唸った。
なにやら深く考え込んでる様子だ。
- 89 :
- それを不思議に思ったのか、池上は怪訝な顔をしながら、
「そうそう、芳野さんに言っておかなければならないことがあるであります。
戦いの直前という時に言っていいものか悩みましたが……」
「え……年の差あるし困る……」
「君の弟は丁重に預か――」
《アンインストール♪アンインストール♪》
言いさしたところで、彼の携帯が鳴った。
「はい、もしもしであります。
……え!?何やってんのマジ困る!」
「ちょっと、なに言い掛けたのよ」
「なんでもないであります!」
彼は慌てたように通話を切り、誤魔化した。
「それより、二人共今作戦の要であります!
細かい打ち合わせをした方がいいであります!」
「それもそうね」
「だな」
- 90 :
- 彼らが、後々語り継がれるだろう、せいしをかけたせいきの決戦、天下ワレメの乱に苦心している間、大寺院からは軍用車が列を成して走っていた。
その行列は蛇のように伸び、くねり、国道を疾走していった。
その列の尻尾が遠く、山間に消えて行くのを見計らい、街からはちらほらと、塗られた顔料もおぞましい顔が姿を見せる――その先頭には、彼らとは対極に、死人のように青ざめた白い顔があった。
「出計らったのか?」
その白い顔の横で、大柄な男が言った。
「いえ、完全には。
留守を守る兵は残っているし、城の立地はいい。
見渡しも利くし、奇襲は無理そうだ。
とはいえ、万全の城を攻城するわけでもない――全隊に触れを、オペレーション『YUTORI』。
肩の力を抜いて行きましょう、童貞と共にあれ」
「こういう時こそ気を引き締めねば」
と言いたいところだが、と大柄な男は笑った。
「大天使が言うからには、その通りなのだろうな」
「えぇ、任せてください」
大天使は、小森新斗は、目の前に要塞のように聳え立つ大寺院を前に、口元を歪めた。
「こんな籠城、素人の仕事です。
プロが本当の出不精って奴を御覧にみせましょう」
- 91 :
- その戦は、さながら神々が最前列での観戦を取り計らったかのように、空に近い高原地帯で起こった。
そこは全国でも有名なススキの大群生地だった。
見渡す限り、背の高い草が生えていて、遠くは視界が効かない。
ヤリチン達がかなりの距離まで、接近に気付かなかったほどだ。
童貞軍は、彼らは敢えてそこでぶつかるよう、待機していたのだ。
「!?……童貞だア゙ァ゙ァア゙アア゙!?」
怒声が上がった。
今、彼らが慌て不為いているうちに攻め込めば有効な打撃を与えられる――一体、童貞側の何人の胸にそんなことが過っただろう。
だが、彼らは待った。
「今叩けば、ノーリスクであの軍勢の片足くらいはもっていけるよ」
ウズウズして今にも飛び出しそうな大将が言った。
- 92 :
- 「今は堪える時であります。
……ヤリチンめ、やはり人間を斥候に置いてきましたか」
参謀が諫めた。
髭面の奥で底光りする目を、細める。
「全包茎部隊、構えッ!
ムケチン共に我らの力を示せであります!」
その言葉を皮切りに、童貞軍が動いた。
それを見て、ヤリチン側も攻勢に出る。
「撃て、撃ちまくれ!」
「あの現行犯共め!容赦するな!」
アサルトライフルが火を吹く。
けたたましい発射音が、冷たい外気を揺らす。
無数の弾丸――だが、童貞軍に血は流れない。
前衛に勃つ包茎部隊の皮が、軍のダメージを許さなかったのだ。
「いってー……」
「思いっきし引っ張られたみたいに痛いわ……」
包茎と馬鹿にされたことは一度や二度ではない。
ドリルチンチンと呼ばれたことは数知れず。
だが、そんな彼らのアレは皮肉なことに、命を守る盾にもなるのだ。
というか皮肉という言葉自体、彼らにとっては皮肉である。
- 93 :
- ヤリチン軍にどよめきが広がった。
「あ、あいつら……!?」
「構わん!奴等は童貞!
このくらいは想定の範囲内じゃ!
火力で押し潰せェ!」
ヤリチン側が再度攻撃を加えようとしたその時である。
童貞軍は、気ぜわしい様子で、敗走していった。
「上官!奴ら逃げていきます!」
「追うぞ!上からは、何としても全滅せよとお達しが出とるけぇのう!
サーチ&デストロイじゃ!」
ヤリチン軍の斥候が生き生きと追い掛ける。
その数は三千近い。
半分以上はヤリチンではなかった。
銃で武装し、軍服を着ている人間である。
彼らは良く訓練の行き届いた精兵らしい。
隊伍を乱さず、童貞軍を追い詰めていく。
- 94 :
- 「奴らを逃すな!国家にあだなす逆賊じゃけぇのう!」
「しかし上官!奴ら、いやにあっさり過ぎません?」
「うるせぇ!ゴチャゴチャ言うな!
あいつらもゴチャゴチャ考えてないんじゃけぇ!」
だが、その言葉は間違っていた。
童貞軍が最初に待機していた場所にさしかかった時、左右から童貞部隊が忽然と現れた!
彼らは予め、姿勢を低くして、背の高い草の影に隠れていたのだ。
ヤリチン軍の斥候が半狂乱となった。
「童貞!?右からも左からもだ!?」
「落ち着け!隊列を整えろ!」
既に、一方的に人間が童貞を攻められるライフルの距離ではなかった。
「ソロモンよ、あたしは帰ってきた!」
更に、敗退を見せ掛けた本隊が土煙を上げて押し迫ってくる。
ヤリチン達は為す術もなく、CMくらいの時間で壊滅した。
- 95 :
- 「ほぅ……芳野め。
いつの間に小賢しい真似を。
最近の受験生は兵法も勉強するようだな。
受験戦争『ジハード』か……人間とは何と業が深い……!」
ヤリチン軍本隊より更に後ろ、小高い丘で遠巻きに観戦していた小柄な黒いローブの者が呟いた。
「如何致しましょう、尊師様」
隣にいた軍服を着た少女が、目に冷徹な光を湛える。
尊師は彼女の意を察したかのように、手で制した。
「いや、まだいい。
奴らに任せよう。童貞の手並み拝見といこうではないか。
シロよ、コーヒーを」
「いつものココアでございますね」
「余がコーヒーといえばコーヒーなのだ……!」
童貞軍がいつもとは違う――尊師だけでなく、ヤリチン軍の高官達も、早くに気付いた。
童貞軍はあっという間に、それもほぼ無傷で銃を使う人間を攻略したのだ。
「奴等はいつものアホの童貞ではない!
気を抜くな!抜け!」
ドピュ、という例の音が断続的に鳴り響いた。
それは山なりの軌道を描き、死をもたらす雨となって童貞軍に降り注ぐ。
着弾したそれは、湿った、だが耳をつんざく爆音を上げて、土と草と叫声を巻き上げた。
- 96 :
- 多くの童貞は包茎達の後ろに縮こまり、何とかやり過ごした。
だが、土煙が晴れてみると、運悪く怪我をしたものもちらほらと目に付く。
「こっからが童貞とヤリチンの戦いでありますな」
一際巨大に皮を広げ、旗本を一人で守った参謀が、その眼光をヤリチン軍に向けた。
距離は一キロもないだろう。
「全軍、進撃するであります!!」
「童貞ッ!童貞ッ!」
「童貞に栄光あれッ!!!」
――遂に、童貞軍が進撃を開始した。
横陣をとり、最前列には包茎部隊。
その兵力は六千を越える。
夥しい数の包茎である。
子供が見たら多分泣く。
その後ろに、守りより攻めに長ける、仮性、ズルムケで構成された歩貞部隊。
近接・中距離攻撃をメインとする彼らは、肉壁となった包茎の隙間から、射精しながら進軍していた。
- 97 :
- 人員は最大の二万。
中央には、旗本隊もあり、参謀が仕切りに指示を出し、その横で少女がポンポンを両手に足を振り上げていた。
更にその後ろ、童貞軍の後衛に控えるのは、約五千の、
「ヨッシャァ!景気付けに一発打ち上げるか!
俺達の濃くまろ花火をよぉッ!」
射精を得意とする、ぶっかけ部隊。
前列の中央で指揮を執っているのは長身に顎髭、テンガロンハットを粋に被りこなす童貞だった。
「発射だァァァアアア!!!
とべよォォオオオッッ!!!」
「安室、イキます!」
「最初っからクライマックスだぜ!」
「銃身が焼け落ちるまで撃ちまくってやんよ!」
童貞軍の後方から、火力支援のザーメン弾が射ち上がった。
通常、いくら射精術に秀でた者でも、遠距離火砲のような威力を出すには、溜め射ちをしなければならない。
勿論、敵と相対している時、寸オナを繰り返したり、限界まで我慢したりする暇はないのだが、池上は彼らを後ろに配置することにより、難しい運用を可能にさせたのだ。
青い空が、白く汚れた。
かと思えば、それらは隕石の如く、ヤリチン軍へ衝突したッ!
- 98 :
- 「ぎゃぁああアアア!?」
「包茎の者、もう馬鹿にしたりしないから軍を守れ!」
包茎手術を受けるものが多いヤリチン軍に、高火力の射精砲は大打撃を与えた。
あちこちでヤリチンが吹っ飛び、前列は壊滅状態となりつつある。
それを見るや、池上が声を張り上げた。
「攻め込むなら今であります!
進軍速度を上げるであります!!」
次いで、スマートフォンを高速で弄った。
童貞軍の公式ホームページに設置されたLINEが更新され、各々指示を理解する。
「ここからはあまり見えんが、敵はたじたじらしい!」
と、火力支援部隊隊長の益垣が童貞兵へと振り返った。
「たいしたモンだよ、池上参謀は!」
「も一発いっとくか!」
いや、と益垣がかぶりを振った。
「進軍速度を上げながら、消費がでか過ぎる一発の溜め射ちじゃなく、普通の射精、余裕がある奴は連射系の射精で支援してくれとのことらしい!
そうそう何発も放てる技じゃないしな!
野郎共!まだ先は長いぞ!
マムシドリンクを飲んでおけよ!」
- 99 :
- また、歩貞部隊では、
「攻め込むようだ!
こっから俺達の出番だぞ!」
「見えてきたぜよ!童貞の夜明け!」
大将、芳野佳乃が疑問を口にした。
「このまま全員で射精大砲すれば勝てるんじゃない?」
「そうも上手くいかないのであります」
と、池上。
「この戦いは長丁場になるであります。
消耗の激しい射精砲を序盤からポンポン放てないでありますし、回復期間を置いた方が賢い。
何より、遠距離でただひたすら射ち合えば、向こうの方が数は多いんだから当然射ち負けるであります」
「確かに、言われてみればそうね。
ま、考えるのは池上さんに任せて、あたしはあたしで頑張ろ。
命短し殺せよ乙女!
あたしは雛祭りより、血祭りが好きなの!」
「いや、芳野さんは出なくていいであります」
芳野が鼻白んだ。
「なんでよ。
あたし強いよ、無双出来るよ!
チャージラッシュは全方位よ!」
「別に芳野さんのお力を疑ってはいないであります。
ただ、これは戦争。所詮、一個人の力で、どうこう出来るものではないであります。
芳野さんは体力を温存し、来たるべき時に備えるのであります」
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