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2012年2月エロパロ484: 古代・中世ファンタジー・オリジナルエロパロスレ5 (432)
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古代・中世ファンタジー・オリジナルエロパロスレ5
1 :10/09/13 〜 最終レス :12/01/24 古代〜中世っぽい雰囲気のある架空の世界を舞台にしたエロSS投稿スレです 魔法・竜・妖精・天使・悪魔・獣人OK 洋風、和風、中華風、アラビア風等々、ベースとなる地方は問いません オリジナル専用になっておりますので、版権モノで書きたい方は他を あたってください 前スレ 古代・中世ファンタジー・オリジナルエロパロスレ4 http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1246868732/ 前々スレ 古代・中世ファンタジー・オリジナルエロパロスレ3 http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1218039118/ 前々々スレ 古代・中世ファンタジー・オリジナルエロパロスレ2 http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1205504913/ 前々々々スレ ●中世ファンタジー世界総合エロパロスレ● http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1145096995/
2 : 「神か悪魔の贈り物」第一章第九話です。 百合、今回は(も?)エロ控え目です。 クロエやシーリオを気に入ってくれた方がいらっしゃるようで、大変嬉しく思います。 擬音に関してのご忠告、ありがとうございます。気をつけます。 文章下手に関しては、書きながら練習ということでご容赦ください。 どうしても耐えられないようでしたら、タイトルがトリップでNG指定してください。
3 : 第九話 「イーシャ。イーシャ……イーシャ?」 先程と同じようにドュリエス様は彼女の頬を優しく叩きましたが、今度は完全に意識を失い 正真正銘「気をやってしまった」イーシャさんは、その呼びかけに反応せず、 すぅすぅと可愛らしい寝息をたてるばかりです。 「イーシャってば……なんて満足そうな寝顔なのかしら。うふふ……」 「ですがドュリエス様、三度失神した後も『お願ぁい、もっとぉ』とおねだりするクロエのような子もおりますし、 イーシャ様もまだまだ満足していらっしゃらないかもしれませんわ」 「ナオミっ! もうボクのことは良いでしょっ! そっそれよりっ、イーシャ様の拘束、もう解いて差し上げたらっ!?」 ごまかし気味に言うクロエさんですが、確かにそろそろ解放してあげないと いかに丁寧に縛ってあるとはいえ、体の節々が痛くなってしまいます。 「はいはい、クロエちゃんの言う通りだねー」 「……アキ、馬鹿にしてる?」 「やだなあ、そんなわけないじゃない。馬鹿になんかしてないよ。愛してはいるけどねっ!」 「きっキミはすぐにそういう調子の良いことを……っ! ま、まあ、ボクもアキのこと、愛してるけど、さ……」 「ああん、もう、クロエちゃん好き好きぃっ!」 叫びながらアキさんがクロエさんを正面から抱きしめると、 お下げ侍女さんの大きなお胸にクロエさんの頭が埋まりました。 長い黒髪だけが外にあふれています。 「わぶ……っ! ちょ、ちょっと……っ!」 と、最初は驚いていたクロエさんでしたが、すぐに自分もアキさんの背中に腕を廻します。 体をぴったり合わせることで、二人の大きなお胸が二段重ねになり、なかなかの迫力です。 ナオミさんはそちらを見ないようにして、黙々とイーシャさんの拘束を外しています。 この人には目の毒ですものね。
4 : それにしてもクロエさん、アキさんにぎゅっと抱き着いたまま、全然動きませんね。 ……いえ、良く見ると腰がわずかに動いています。 小さく小さく、円を描いているようです。 それに、息がだんだんと荒くなってきています。 すぐにそれに気付いたアキさんは、クロエさんだけに聞こえるくらいの小声でささやきました。 「なあに? イキそうなの? あはは、本当に手を使わずにイケるんだね」 クロエさんは、熱を帯びた瞳でアキさんを見上げると、弱々しくうなずきます。 「うおっかわいっ……へへへ、あたしに抱きしめられただけでこんなに感じちゃうんだ。 いやらしい体で素敵だよ。それに、なんだかうれしい。 良いよクロエちゃん、このままイッちゃっても。しっかり見ててあげるからね」 クロエさんの体は、その言葉を待っていたかのようにきゅっとこわばり、動きを止めました。 背中に廻した指に力が入り、アキさんの肌に食い込みます。 大きなお胸の間からは、幼くも甘い溜息が漏れ出しました。 「ふぅー、はぁー…………」 そしてゆっくりと力が抜けていき、アキさんにもたれ掛かります。 豊満な谷間に沈み込んだクロエさんの頭をそっと抱きしめながら、 アキさんは彼女の艶やかな黒髪を愛おしそうにそっと指で梳かします。 クロエさんは、しばらくされるがままに髪をいじらせていましたが、 やがてアキさんのお胸に顔を埋めたまま、ぼそっとつぶやきました。 「……違うからね」 「ん? なあにクロエちゃん?」 「い、今のは、別にボクの体がやらしいからじゃ、ないんだからね……。 アキに、愛してるとか、好きとか言われて、抱きしめられたりしたから…… 嬉しくて、胸の奥とかお腹の下の方がなんだかきゅうってなって、 それですごく気持ち良くなっちゃって……。そっ、それだけなんだからね……っ!」 アキさんは無言でクロエさんを押し倒しました。 「痛っ! ちょっ、アキっ!? なっ何を……っ!?」 「くくくクロエちゃんが悪いんだからねっ! このこのっ! この天然たらしっ娘がぁ! そんなこと言われたらっ! あたしはもう……あたしはもう……っ!!」 「はいそこまで」 「よいしょっ」 暴走しかけたアキさんでしたが、ナオミさんとシーリオさんによってクロエさんから引きはがされてしまいました。
5 : 「ダメでしょうアキ。クロエの天然誘い受けが抗い難いのは分かるけど、今はイーシャ様の歓迎会なのよ」 右腕を抱えたナオミさんにたしなめられたアキさんは、侍女頭さんの肩にもたれ掛かって言いました。 「あはは、やだなあナオミさん、あたしはイーシャ様にもめろめろだよー」 そして、仕方ないなーという顔で、 「もちろんナオミさんにもめろめろだから、安心してね」 「わ、分かってますわよ……私だって、あなたの事……。ん、もう、本当に調子の良い子ね」 「えへへ」 「アキさんアキさん、私は?」 甘い雰囲気を醸し出し始めた二人に混ざろうと、アキさんの左腕を抱えたシーリオさんが尋ねましたが。 「……シーリオは、あたしを引っ張る時『よいしょ』って言ったから嫌い」 「そっ、そんな……っ! あ、あれは、別に、普通に掛け声と言うか……」 「ふうん、掛け声が必要な程、あたし重いんだ」 「ちっ違います! そうじゃなくって……。あ、そっ、そう! アキさん、お胸の分があるじゃないですか! それですよ! それを嫌がったりしたら、アキさんよりむちっとしていて背も高いのに、 お胸の分でアキさんより体重の軽いナオミさんに失礼でふごっ」 別にシーリオさんが語尾に特徴を付けようとしたわけではありません。 ナオミさんが彼女の鼻をつまんだのです。 「だっ、だおびはん!?」 「あらシーリオ。私達の体重なんて、いつ計ったのかしら?」 「はのっ、ほっ、ほえは、ほのっ、ぼっ、ぼくはんえ……っ!」 「目算? そう。あなたにそんな特技があったなんて、初めて知ったわ。 ではあなたの体重は、私やアキと比べてどうなのかしら。教えて下さらない?」 「あたしも知りたいなー。あ、それじゃあたしが計ってあげるよ! でも目算は出来ないから……」 アキさんはシーリオさんの両脇に腕を差し込んで、 「よっ、こら……しょーっ!」 気合い一発、鼻息も荒く持ち上げました。
6 : 「むむむ、これはかなりの大物……ずっしりと腕が痛い」 そりゃ、いくら小柄な少女とは言え、人一人持ち上げたら重いに決まってます。 「んなっ!? ちょっ、ちょっと! 何ですか今の掛け声は!? 私そんなに重くないですよーーっ!!」 顔(特に鼻)を真っ赤にしたシーリオさんは、持ち上げられたまま 足をばたつかせて抗議しましたが、二人とも聞く耳持ちません。 「いけないわシーリオ、そんなに暴れたら」 ナオミさんはシーリオさんを押さえるふりをして、おへその斜め下辺りに手を這わせてくすぐり始めました。 アキさんも、腋の下の指をわきわきとうごめかせています。 「にゃひゃひゃひゃひゃっ!! やっやめっやめれっ! やめれーっ!」 「ほらシーリオ、暴れてはいけないと言っているでしょう?」 「そうだよー。これじゃ、正確な重さがわからないよー」 「むっ無理ーっ! 無理ーっ! んひょひょひやぁーっ! ほあーーっ!」 「こら、いいかげんにしなさい!」 救いの声は、クロエさんでした。 アキさんの後で腕を組み、全裸で仁王立ちしています。 アキさんは、シーリオさんを下ろして振り返りました。 「あらクロエちゃん、淫乱ちゃんから真面目ちゃんに戻っちゃってる。おまた丸出しだけど」 クロエさんは即座に足を閉じました。 ……ま、いまさらという感じもします。 「うっ、うるさいよアキ! まったく、キミやシーリオはともかく、ナオミまで何やってるのさ」 「おほほ」 「え、わ、私、被害者なんだけど……」 シーリオさんのつぶやきは無視されました。 「ドュリエス様をお待たせしちゃダメじゃないか。早くイーシャ様を寝台までお運びしよう」 見ると、拘束を外されたイーシャさんは、気絶したまま手足をだらしなく伸ばし、 半開きの口からよだれを垂らしながら椅子にもたれ掛かっています。 一方ドュリエス様は、例の大きな寝台にしどけなく横たわって、皆を眺めて微笑んでいました。 もちろん、寝台の敷布その他は全て綺麗なものと交換済みです。
7 : 「あら、いそがなくて良いのよ。あなた達を見ているだけで笑えるもの。まるで道化ね。 令名高きドゥカーノの娘に仕える侍女とはとても思えないわ。おほほほほ!」 ドュリエス様、結構きつい事をおっしゃってますが、別に本当に怒ってらっしゃるわけではありません。 嗜虐趣味あふれる公女殿下は、こういう言葉を使うとぞくぞくするのです。 しかし侍女さん達は慣れたもので、 「まあドュリエス様、あんまりですわ」 「いやあ、申し訳ありません」 「ごめんなさい、ドュリエス様」 等と言いながら、イーシャさんの体を四人でそっと持ち上げ、寝台に運ぶのでした。 ちなみにクロエさんの反応は、ため息一つです。 ドュリエス様はちょっと物足りません。 あまり真に受けられても困りますが、少しは悔しそうな、あるいは悲しそうな顔をしてほしいのです。 そこに優しく手を差し延べて、 「ごめんなさい、あなた達があまりに可愛いので、つい意地悪なことを言ってしまったわ。 安心して。あなた達は、わたくしの……大事な子達よ」 とかなんとか言って、自分で傷付けた相手に優しくして喜ばせ、悦に入りたいのです。 この人もなかなかにダメな人ですね。 ドュリエス様は、わざとらしくうなだれてみせます。 「ふう……。わたくし、なんだかさみしいわ」 そして、ちょうど寝台に横たえられたイーシャさんに正面から抱きつくと、 「でもいいの、今のわたくしにはこの子がいるもの! 新鮮な反応を想像するだけで、この胸が高鳴るわ! ふふふ……イーシャ、これからたくさんたくさんいじめてあげるからね」 「いやあ、さっきまでも散々いじめてると思いますけどねー」 アキさんが突っ込みますが、ドュリエス様は反論します。 「あら、アキったら分かってないのね。体をいじめてあげるのと、心をいじめてあげるのとでは、 全然違うのよ。どちらもいじめて、救って、そしてイーシャは身も心もわたくしのものになるのっ!」 「はあ……まあ、何となく分かりますけどねー」 「ドュリエス様、本当に嫌がることはなさいませんし、イーシャ様も幸せです」 と、アキさん、シーリオさん。 クロエさんは、もう一度ため息を吐きました。
8 : 「それにしても」 話をそらしたのは、寝台に上がったナオミさんです。 イーシャさんの背中にお胸をぺたっと(そこ! 擬音を気にしてはいけませんよ!)くっつけ、 「イーシャ様、ここまで中イキ無しとは驚きですわ」 「あら、そういえばそうね。初めての子を相手にするのは久しぶりだから、慎重になりすぎたかしら」 「処女を破らないように気をつけて、お大事の奥も責めて差し上げるべきだったかもしれませんわね」 「まあいいわ。今日はもう疲れてしまったし。そのうち、もっと素敵な雰囲気を演出して、 わたくしがこの子を優しく貫いてあげるわ。ふふふふふふ……」 ドュリエス様は、イーシャさんの頭を撫でながら妖しく微笑みます。 すると、イーシャさんは小さく身じろぎして、寝言をつぶやきました。 「ああん……おじ様ぁ……やめてぇ……これ以上……たら……んじゃうぅ……もうらめぇ……」 瞬間、全員に衝撃が走りました。 「おっ、おっ、おじ様!? 何!? 誰!? 男!? イーシャに、男!?」 ばっと身を起こし、信じられないという表情で叫ぶドュリエス様。 その手を、同じく身を起こしたナオミさんが握りしめます。 「おおお落ち着いて下さいドュリエス様!! 『おじ様』だからといって男とは限りませんわっ!」 「いやー普通は男だと思うなー」 「落ち着くのはナオミの方」 アキさんとクロエさんが突っ込みました。 ドュリエス様とナオミさんが先に錯乱してしまったので、他の三人は割と冷静でいられたのです。 三人は、イーシャさんの寝顔を眺めながら寝台に上がります。 「イーシャ様、その、男性経験があるのかな……?」 「いやあ、あの反応はどう見ても初めてだったけどねぇ」 「だよねぇ」 「それにイーシャ様、男を知った女の匂いじゃなかったですよ」 「わかるんかい」 クロエさん、アキさん、シーリオさんが話していると、イーシャさんが寝言の続きを口に出しました。 「ダメぇ……おじ様ぁ……生かして捕えよとの命ですぅ……してはだめですぅ……」 ――全くもって艶っぽい話ではありませんでした。 今度は別の意味で全員固まります。
9 : 「イーシャ様……なかなか厳しい世界に生きてらっしゃいますのね……」 「あ、そうか。『おじ様』って、モーリオン卿の事だ」 アキさんがぽんと手を叩きました。 「モーリオン卿……ですか?」 「あ、シーリオは知らない? クエインス・エイン・モーリオン卿。 イーシャ様の遠縁にあたる方で、イーシャ様のお師匠様だよ。 それはそれは、めちゃくちゃお強かったらしいよ」 「へー。そんな方がいらっしゃったんですね。私、知りませんでした」 「いやあ、実を言うとあたしもそんなに詳しくは知らないんだけどね。 『シトリン様を愛でる会』にいた時に小耳にはさんだくらいでさ。事件は覚えているんだけど」 「……事件、ですか?」 「うん、それがねぇ……」 「失踪なされたんだよ」 答えたのはクロエさんでした。 「あれはもう四年も前になるかな。王都で天覧武術大会が開催されたんだ。 モーリオン卿もご出場されて、騎士団長アモティ様との注目の一戦を予定してたんだけど、 当日になって姿が見えなくなってね。結局会場に姿を現すどころか、 今に至るまでその行方は杳として知れないんだ。 捜索隊も組まれたらしいけど、未だ手掛かりも見つけられないとか」 「……そんな事があったんだ。四年前かあ。その頃、私王都にいなかったから……。 じゃあ、当時王都にいた方達には有名な話なんですね」 「うん、まあそうなんだけどさー。クロエちゃん、当時七歳でしょ? 覚えてるにしてもなんでそんな詳しいの」 「ボク、年齢詐称してるから」 「ほぉう」 「……ごめん、嘘だよ、悪かったよ……アキにそんな目で見られるとすごく傷付くからやめて」 「どういう意味よ」 「言葉どおりの意味だよ。本当は、ほら、ボク、父についていつも図書館にいたでしょう? そこの女性司書の一人がモーリオン卿にお熱でさ、毎日仕事の合間に事件に関する話を聞かされたんだ」 実は父子家庭のクロエさん。 幼い頃は毎日、お父さんの仕事場である王立図書館で本を読んで過ごしていたのです。 ちなみに当時、 「図書館にやたら可愛い幼女がいる!」 と一部ダメな人達の間で話題になったのですが、その話はいずれまた。
10 : 「そんな訳で、噂話の範囲でならかなり覚えてるよ。 モーリオン卿が臆したとか、闇討ちにされたとか、他国の陰謀に巻き込まれたとか」 「……『臆した』と『闇討ち』は有り得ません、クロエ。あの人は、理不尽なほど圧倒的に強かったのですから」 その反論は、ドュリエス様の胸元から聞こえました。 「あら、イーシャ。目が覚めたのね」 「はい……ドュリエス様……」 目を覚ましたイーシャさんは、ドュリエス様にぎゅっと抱き着きました。 ドュリエス様も、再び抱きしめ返します。 「ああ……ドュリエス様……こうして抱き合えて、私は幸せです……」 「うふふ。もちろんわたくしもよ、イーシャ」 「……本当……ですか?」 「あら、わたくしを疑うの?」 「いえ……その……でしたら、もうさっきみたいなのはお止め下さい」 「さっき?」 「体の自由を奪って、一方的に、その……愛していただく事です。 愛されて、幸せを感じている時、その相手を抱きしめられないのは、もどかしくて、つらかったです……。 私も、ドュリエス様を腕の中に感じたかったです……」 イーシャさんはドュリエス様を抱く腕に、さらに力を加えます。 「……イーシャ、少し苦しいわ」 「あっ、もっ申し訳ありません……」 「いいのよ。イーシャに痛くされるの、わたくし、嫌いじゃないみたい。んっ……癖になりそう……」 「ドュリエス様……」 「ねえ、もっと強く抱きしめて頂戴。わたくしを、もっと強く感じて頂戴」 「はい……」 イーシャさんは言われるまま、ドュリエス様を締め上げます。 「あぐぅ……っ! ああっ、痛いわっ! もっとっ! もっとよっ!」 「はっはいっ!」 イーシャさんの腕の中で、ドュリエス様の体がみしみしと軋みをあげます。 「ひぐあぁっ!! いっ、痛いっ! 痛いっ! ぎゃうぅっ! すごいぃっ! もっとぉっ! もっと痛くしてぇっ!」 「だっ、ダメですっ! これ以上強くしたら、骨が折れてしまいますっ!」 「良いのっ! 折ってっ! してっ! イーシャぁっ!」 「良い訳ないわーーっ!!」
11 : 突っ込んだのは、やはりというか何と言うか、クロエさんでした。 彼女が手にした枕でばふんばふんと叩くと、抱き合う二人は我に返ったようにそっと離れました。 「おっ、おほほっ、あ、安心してクロエ。わたくし、本気でされたい訳じゃないわ」 「私だって、ドュリエス様を傷付けたりするものですか。 職業柄、傷を負わす事なく痛みを与える方法は知っているんです」 クロエさんは大きくため息を吐きました。 今日何度目でしょうね? 「はーー…………まあ、ほどほどに。あまり飛ばされるとボク達、ついて行けなくなるから……。 そんなことより、お風呂に入ってしまおう、ドュリエス様。そろそろちょうど良い温度まで下がっているはず」 「そうね。皆いやらしい体液まみれで、体中から淫らな匂いを発しているものね。 特に、イーシャはこちらが恥ずかしくなる程匂うわ」 「素晴らしいです」 シーリオさんがうっとりした顔でくんくんと鼻を鳴らします。 「やっ……そ、そんな……っ! それは、皆が……」 「では、侍女たる私達が、イーシャ様のお体を隅々までお清めいたしますわ」 「へっへっへー、イーシャ様、あたし達に任せてくださいねー」 「私達、毎日ドュリエス様のお体を洗ってますから、慣れてるんです」 ナオミさん、アキさん、シーリオさんの言葉に、しかしイーシャさんは少し怯えた表情を見せました。 先程のような激しい快楽責めを、お風呂場でまた施されるのではないかと恐れたのです。 ま、そりゃ恐れますよね。 そんなイーシャさんに、クロエさんが言います。 「大丈夫、イーシャ様。ちゃんと優しく、丁寧に洗うから」 「クロエ……あなたがそう言うのなら……。わかりました。お願いしますね」 彼女の言葉で少し安心したようです。 イーシャさん、短い間に侍女さん達それぞれの人となりを把握したようですね。 「むー……何か釈然としないけど、まあいいや。 じゃ、あたし達は先にお風呂場に行って準備してますんで、ドュリエス様とイーシャ様はゆっくり来てくださいね!」 と言うアキさんを先頭に、侍女さん達は寝室から続きの間のその向こうのお風呂場へと向かって行きました。 残された二人は、寝台の上でどちらからともなく見つめ合うと、そっと抱き合いました。 「んっ……ふふ、それではしばらくこうしていちゃいちゃしてから行きましょうね」 「はい、ドュリエス様……」 続く
12 : GJ! クロエかわいすぎる
13 : 乙。続きマダー?
14 : 続きが楽しみだな
15 : 『見ィつけた』 広い宮廷の中の、小さな箱庭。 小さいと言えどその端は見えず、見渡す限りの草木や、僅かに聞こえる水音は自然の美しさを物語る。 そこに、数人の男と首輪をつけられた、裸の少女がやって来る。 楽しそうに談笑する男達とは対照的に、表情すら感じられない少女の整った顔。 肋の浮き出るほど痩せ細った体の至るところに男の白い欲がこびりつき、美しかった金髪は乱れ、所々固まっている。 そして、夜明けと共にその『遊び』は始まる。 少女には普通スープに浸して食べる、石のようなパンが一つ渡され、その小さな箱庭に離される。 今は男達に滅ぼされた国の王女である少女に言い渡されたのは、一つのルール。 『日が昇り、また沈むまで見つかることがなければ、お前を釈放してやる』
16 : 嘘か真かも解らない。ただ、その『かくれんぼ』に負ければ、酷いことをされる。 少しでも凌辱の時間を短くするために、少女は棒のようなその足を必で動かし、逃げるように隠れる。 その時、走り続ける足の間から、どろりと昨夜の痕が溢れ落ち、少しだけ足を止めて、声を出さずに泣く。 一瞬でも気を抜けば、精神が折れてしまいそうなこの数日を振り返り、本しか友達の居なかった王女としての数年を思い出す。 もともと戦争が嫌いだった彼女は、父が敗けたことにも大して悲しみは無く、普通の身分として暮らせるのではないかと、喜びさえ感じていた。 もし普通に暮らせたならば、人里離れた所に家と畑を構え、友達を作り、晴耕雨読の日々を送りたい。 しかし、次の暮らしに思いを馳せていた無垢な少女に下されたのは、相手の将として戦った、貴族の慰み物としての扱い。 暗い牢の中で本を読んでいた彼女を突然押し倒し、強姦に次ぐ強姦。 本のように、いつか白馬の王子が自分を迎えに来て楽しく過ごせるのだろうか、と思える年頃の彼女には酷すぎる結末だった。 粗末な布の服すら取り上げられ、畜生の様に裸でいる。 話す人と言えば、あの男達で。 話す事と言えば、命令と服従。 する事と言えば、情事と睡眠。
17 : それでもいつか――そこまで来て、自分が眠っていた事に気付く。 いけない、隠れなきゃ――そう思って体を起こすと、周りはあの下卑た笑いを浮かべた男達に囲まれている。 「見ィつけた」 それはゲームの終了と、凌辱の開始を告げる合図。 絶望を浮かべる間もなく首輪についた鎖を掴まれ、引き摺られるようにベッドだけがある部屋へ連れていかれる。 年の割に小さい体に、ろくな食事も与えられない彼女は簡単にベッドの上に投げられ、身を起こせば目の前には屹立した『拷問』用の道具。 逆らえば、殴られる。昨日も、一昨日も、その前も自分の体に入っていたそれにそっと舌を這わせ、くわえ込む。 巧くなったじゃないか、と嬉しくもない皮肉混じりの誉め言葉を聞きながらも、黙って舐め続ける。 直に限界が訪れ、その小さな口を犯す物から迸る白い液体。 吐き出すことは許されない。そういえば、最近一番口にしている『飲み物』はこれかもしれない。 そんなことを思いながら、いつまでも慣れないそれを数回に分けて、涙と、嗚咽と、哀しみとともに呑み込む。
18 : 傍で見ていた男達も動き出し、小さな胸にしゃぶりつき、震えるその手に余る男根を握らせ、愛など無い快楽を求めて足の間の薄い茂みの奥へ突き刺す。 少女の意向は関係ない。 いつしか感じなくなった体の痛み、どんどん強くなる心の痛み。 やがて日が沈み、再び石のようなパンを二つと、干からびた様な林檎を一つ投げるように渡され、凌辱は終わりを告げる。 余すところ無く白濁した液を体に浴び、容量を超えるまで放たれた分が秘所から溢れ落ちる。 それでも、漸く終わったという束の間の喜びが疲労の底にある彼女を動かし、箱庭にある川で、水浴びを始める。 少しでも早く、外側だけでも身を清めるために、身を切るように冷たい水に身体を投じる。 箱庭に、先程の部屋。随分広く、狭い世界。 凍える身体を唯一の毛布でくるみ、少女は眠る。 毛布は夜露に濡れて、立ち上がろうとする若草の頭を押さえつける。 静かな寝息だけが響く。
19 : 翌日、少女は隠れなかった。 両手をつき、頭を下げて男達に懇願する。 おねがいします。 今までみたいなことをされつづけても構いません。 ただ、外面だけでも友達になってください。 ただ、一瞬だけでも違う会話をしてください。 ただ、一枚だけでも服をください。 人並みに扱ってください―――― 涙を流して訴える彼女に、一際立派な服を着た男が歩み寄り、肩に手を置く。 顔を上げた少女を抱き寄せ、優しく抱擁する。 少女は久々に感じる暖かさにさっきとは違う涙を流し、すがりつく。 男は耳元に口を寄せ、囁いた。 『見ィつけた』 表情が、凍る。 その言葉が意味するのは――――
20 : どんなことがあっても日は昇り、そして沈む。 その、人の生から見れば一瞬に過ぎない時間に、あらゆる想いがある。 喜び。 悲しみ。 感動。 絶望。 安心。 不安。 重なりあった色が、また世界を彩っていく。
21 : GJ! おにゃのこ&お姫様陵辱は萌えるな
22 : 遅れたけどGJ!これは盛り上がる
23 : ほ
24 : アヴァロン内戦 yomitai
25 : 神か悪魔の続きはまだなんだろうか
26 : 保守
27 : エロはファンタジ〜♪
28 : お久しぶりです。中華風の者です。とりあえずは前置きが長くてもなんなんで、前半を投下します
29 : 夢を見ていた。 自分の帰還を待つ女の夢。生身がすぐそこにあるかのような全身を包む人肌の 温みと、自分が男なのだと自覚するような、そそられる甘い香り。夢の中で愛 で、心の動くままに交わった。 (いや…違う……) 男−梢楓は、その夢が単なる欲求不満から来たものでないことを悟ると、はっ と目を醒ました。細い指が梢楓のモノをさすって快感を促している。 「起こしちゃったかしら?」 「お前か…」 真っ暗闇の中で聞こえた声はよく知っているものだ。名を瑤耶と言い、今回の 遠征に従軍している医者である。梢楓が何故声だけで判断出来たのかというと、 梢楓は前線で負傷をしたために、ここ数日は幕舎で常に行動を共にしていた。 くせっ毛と緩やかな物言いが特徴的な垂れ目の美人であった。ただ梢楓にはえ らく気安く、どこにいてもはばかる梢楓のことも阿梢(シャオちゃん)とから かった。無礼だとやきもきする者もあったが、梢楓本人は何故だか怒る気にな れなかかった。しかし、無断で臥床に入り込むとなるとさすがにこちらの沽券 に関わるし、梢楓は家で待つ女を悲しませることはしたくなかった。 「で…何をしている」 「阿梢は初めて?」 腕にしがみついて身体を密着させながら、瑤耶はわざとらしい甘い声で囁く。 「そういうことを聞いてると思うか?」 「そう怒らないの…私はつまらない男とは寝ないのよ?」 言うなり瑤耶は梢楓の胸元に頭を乗せる。目を暝り、その脈を聞いた。 「安定してる…運び込まれた時はあんなに乱れていたけどもう心配はなさそう」 「それは良かった。じゃあ医者の仕事はもうすんだろ」 「こんな腫れ物を勃てておいて無粋じゃない?診て差し上げないと。医者です から」 瑤耶は楽しそうに竿を扱く。少しして、布団の中でもぞもぞと動いたかと思う と、いつの間にか梢楓の股間に移動していた。今度は口を大きく開けて先端を 舐めはじめた。
30 : ぬかるみから脚を引き抜いたときのような粘着音が幕舎に響く。 梢楓が怪我をしたのは右膝。敵将と斬り結び、首を取る代償に石突で叩かれ動 くこともままならなくなった。 だから今、瑤耶に口淫をされていても逃げる術がない。 「ず…ちゅっ…んぅ…ぽっは!どう?シェリーちゃんはこういうのやってくれな いの?」 「馬鹿が…」 「時にはこういうのもないとつまらないんじゃない?」 夜闇の中で瑤耶は笑っている。子供扱いするかのような笑みは何度も見た。 再開した口淫と共に、陰茎を乳房で挟み込む。ゆっくりと柔らかな実の中にし まい込むように動いた。 「どう?これ結構大きくないと出来ないのよ。気持ちいいでしょ?」 自慢げに語る瑤耶ほど余裕のない梢楓は、答えることなく耐える声を返事とし た。 「もう、我慢しちゃってかわいいんだから」 鳥が啄むように瑤耶が亀頭に何度も口づけをする。乳房による柔らかな快感。 それとは対照的に唇による刺激的な快感に、梢楓は声を必で抑えた。 「っくぁ…っ!」 「かわいい声出るじゃない。素直が一番」 弾けるように亀頭から唇を離され、梢楓は堪えきれずに射精した。瑤耶はこぼ すことなくそれを口に含み、甘露のように飲み下した。 「よく出来るな」 「これって肌にも良いの。私は好きよ、男そのものって感じがして」 「一生理解出来そうにないな…」 事を終え、眠りにつこうとした梢楓を見て、瑤耶はふぐりを指で弾く。思わず 声を出してしまいそうになるほどの痛みに、梢楓は歯を食いしばる。 「っ……!!」 「そっちだけ良くなって寝るなんて、あんまりじゃない?」
31 : 「あっは!良い…!!素敵……っ!」 瑤耶は梢楓の上で楽しそうに腰を振った。時折、身体を曲げて口づけをした。 梢楓はと言うと、ただなされるがまま寝台に仰向けになって寝たままでいた。 「シェリーちゃんに悪いと思ってるの?」 「そんなに無粋じゃない」 よく言えたものだ。梢楓は我ながら平気で嘘をついた口を褒めたかった。 今この瞬間も、考えているのは雪李妹の事ではないか。 「お固いのね…やっぱり」 「やっぱりって何だよ?」 「ふふふ、医者は他の患者のことを簡単には喋らないの」 ぎゅっと胸を押し付け、耳元で囁く。 「忘れられないなら、思い出す暇もなくしてあげる」 再び体を起こした瑤耶はにんまりと妖しく笑い梢楓を見つめた。 「こういうのどう?」 搖耶は体を上下に動かしながら、左右に腰を切った。先程以上に強く締め付け られる。 「あっは。楽しみましょ?勿体ないわよ?」 勿体ない。確かにそうかもしれない。顔立ちも悪くない。梢楓は薄いほうが好 みだが、胸も豊かだ。房中の術も心得ていて申し分ない。 「私なりの診療だもの。後ろめたいことじゃないわ」 (診療…これは診療…?) 瑤耶の言葉が梢楓を麻痺させる。理性が溶けていく。固い掌が乳房を掴む。 「そう、それでいいのよ」 「ふん…」 溺れる。この女に。赤子のように乳にしゃぶりつき、下から手を延ばして瑤耶 の背に回して抱き寄せた。 「んんっ!!あっ、阿梢ったら…っあぁ!ふふ…良い…!」 馬鹿にしやがって。梢楓の中で芽生えた征服欲は、そのまま目の前の女を犯す 衝動へと変化し、情事をより苛烈にしていった。
32 : 「昨夜はお楽しみで?」 馬車と並走する副官が、意味深に笑った。梢楓は疲労を浮かべて窓の外を見る。 「…寝ていない」 「噂通りの姦狐でしたかな?」 「有名なのか?」 「『銀果通りの妖狐』…兵士達の間では殿が端から側女として連れて来たので はと噂されておりました。いやなに、あやつが腕利きなのは我々も承知してお りますが」 「…まぁ今度からもっと風評を信じるとするよ」 とにかく今は疲れでどうしようもない。窓から入るそよ風がさらに眠たくさせ る。 「しばし寝るぞ…」 今度夢で雪李妹が出てきても、淫夢にはなるまい。体を横たえると、梢楓は静 かに寝息を立てた。 「起こしちゃいました?」 (まさか…いや…) 夢だ、と思いたい。願うほかない。目を暝ったまま動かずに祈った。 「凄い汗…そそられちゃう」 「っづはぁ!!」 耐え切れず寝たふりを辞めると視界に入って来たのは馬車の天井のみ。 「傷が痛む?」 揺耶は枕元で医者然として座っていた。今は妙なことをしでかすつもりはない らしい。 「…今どこだ?都には着いたのか?」 「もう二刻ぐらい前に」 「何だと?」 ならばもうとっくに凱旋を終え、屋敷に着いていてもおかしくない。 「怪我がひどいって名目で、副官さんが部隊を解散させてたわ」 「…それで良い。で、何故まだ居る?」 「私は兵士じゃないもの」 「あぁ。今度の従軍感謝する。今この時を以って任を解く」 どうしたことか瑤耶はまだ動かない。馬車も止まっているのだから、降りられ ないわけではない。 「違うわよ。貴方はまだ怪我人でしょ?」 「そうだが?」 「だから、まだ一緒に居させてもらいますよ。住み込みでね」 「!?」 家には雪李妹がいる。最も会わせてはならない人間だ。昨夜の交わりを、瑤耶 との関係を最も知られたくない女。 目眩がした。裏切ったのも、罰を受けるのも、自分だ。梢楓は深くため息をつ いて瑤耶の言を了承した。
33 : 保管庫にあります拙作『梢家の次男坊』の続きです。ですので人の紹介は大分 省いてしまってます。合わせて読んでいただけると幸いです。 あと変更一カ所 雪李妹の略称ないし愛称がシェイリーってのはどうもしまらないので、今回から『シェリー』にしました ではでは
34 : GJ! 後半は修羅場!? 期待してます。
35 : ほしゅ
36 : ロリっ子待ちほしゅ
37 : 保守ついでに中世ヨーロッパが舞台のエロつながりで 床子屋の『Saint Foire Festival』がとてもよかった。これは同人誌だけどね ファンタジーじゃないけど、中世ヨーロッパ好きなら読んで損はしないんじゃ?
38 : スゲー良かった。ありがとう
39 : >>37 2に出てくる修道士の兄ちゃんの髪、ちゃんと剃ってあるのに感動した! 漫画でちゃんとした坊さん描いてるのって、歴史漫画でもないとほとんど見ないよね。 いろんなスレで欝に定評があったから、今日1のほうも買ってくるわwww
40 : >>39 スレ違いだけど、修道士ファルコって少女漫画が剃ってたよ(ただし主人公を除く)
41 : 甲冑とか、剣とかで戦争が続いていた時期の、 ヨーロッパのお話です。 エロあり。 ファンタジー系です。 ――空は、綺麗だったんだ。 寝転んだ体勢になってやっと気づいた。秋に近づく空は澄んで 夏のせわしい日差しは緩まっている。 草の上。旺盛に天を突こうとする草の勢いも鳴りを潜め、地面に 近いところには、かぐわしく豊かな枯れ草の香りもする。 風の音。時折厚みをもってぶつかってくる熱をはらんだ南風は忘 れ去られて、草を使って悪戯に渦を描く、中庸な大気のせせらぎに 変わっていた。 視覚から入る感覚はのどかそのものだった。 嗅覚のそれは、凄惨を極めた。 温度を伴った吐瀉物と血から立ち上る臭気、あるいは割かれた 内臓とその中身。すべてここに累々と横たわる人のものだ。すこし 青臭いものは馬のものであるが、多くはその上の騎士だけが大地に 臥せっている。鼻腔の粘膜に突き刺さるなら、まだ可愛い。何日も 放置された、誰だか判別できなくなった体は眼をつんざき、涙の 止め方も分からないほどだ。 それにしても、空の青さときたら! 今感じること全てが、鮮やかに真新しく見える。きらびやかすぎ て、目の端からひとしずく、落ちた。 ふた呼吸あって、私の腹を貫いて地面に刺さった槍が、こらえ きれないかのように倒れ、その柄が、屍がつけている鎧に当たり、 カンッという小気味いい音を立てた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
42 : ここ最近は季節の移ろいなど、気づきも考えもしなかった。 幼い頃から課せられた軍事訓練、作戦講義、防衛、進出、侵略、 遠征…… この国も自分も、髪の先からつま先まで戦にまみれた。戦する ことで、生きてきた。いや、そうでなければ生きていけなかった。戦 をするまわりを見て安心し、その中に没入する自分が人の務めを 全うしているという意識に誇りさえ感じた。 しがない歩兵であったが手柄を立てれば、少しずつ栄誉も階級も得 られた。手を血に染めれば、それが収穫であり勲章だった。 『戦を終わらすために戦をする』などとほざいた部下を殴りつけた ことがある。『何を軟弱な!』と罵り、他の部下への、あたかも“見 せしめ”であるかのように、責めを続けた。『勝つために戦うのだ、 馬鹿者め!!』 が、今となっては、あの時、戦が終わるということが怖かっただけ だったのだ。戦=自分の足元、という図式を失いたくなかったのだ。 自分がぬことなど考えなかった。まわりがどんなに戦地に倒れ ても戦あるところに私があった。
43 : わが軍は連戦連勝で周囲の国に攻め入った。最後まで抵抗を続ける 大国の横に広がる広大な草原まで兵を進めたところで、敵軍とのにら み合いになった。敵は総力をつぎ込んでいる。 この草原が決戦の地になる。 全ての人々が覚悟していた。 私は当然生きて帰ることを疑わなかった。敗れたことがないわが軍 が敗れるはずが無い。いつものように敵を叩きのめし、無様なに面 を晒した兵を踏みにじり、敵国の女子供の怒りや口惜しさの眼の色に 半ば快感を感じながら意気揚々と市中を行進するものと考えていた。 戦況は一進一退。斥候から入る情報は変わることなく、2日経ち、 3日経った。 4日目に司令官から総攻撃の命令が入った。いつでも出撃できる体 勢にあった私の部隊は最前列に配備された。初めての最前列。敵陣に 飛び込み、風穴を開け、後列の騎馬隊の道を開ける。絶対の自信を持 って槍を握った。 戦いの火蓋が切られた。待たされた私の部隊の勢いは止まらない。 鎧もない、急作りの寄せ集めの歩兵どもは、簡単に後ずさりを始める。 「かかれぇーーーー!!」 それが、罠だった。敵兵を引き寄せておいて、鉄片入りの爆弾を投 下するという術中にはまった。相次ぐ悲鳴、吹き飛ぶ手足……血が混 じった黒煙がいたる所から噴きあがる。 今思えば引けばよかった。だが、前に歩を進めた。長たる自分が突 っ込むしかなかった。 そのときに、んでいると思っていた敵の歩兵の槍が、下から突か れた。 私はその者の喉に剣を突きたてると、その場に倒れこんだ。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
44 : ぬ。 むごい傷を負ったのに、流血は思いのほか緩慢らしい。息は肺の 奥まで入っていくし、大の字の体勢から、ゆっくりと膝を立てること ができた。もしかしたら、戦地に落ちた武具をあさる敵国の地元の 民に救いを求め、生き延びることができるかも知れない。 でも、もういい。 生き永らえたら、根っからの戦士である私は戦を求めるだろう。 必要とあれば、私の命を救った民の首をかき切ることもあるだろ う。そのために、剣を研ぎ、槍の鋭さを高める稽古は怠らないだろ う。 疲れた。 愛する人などいないのに、守るものもあやふやなまま闘う空しさ。 頬に肉片が張り付くのも意に介さず、短剣を振り下ろして血を払う 莫迦らしさ。昨日一緒の飯を食べた者の骸(むくろ)をまたいで攻め 入るやるせなささ。 もう、いいじゃないか。 達観。 穏やかな気分で目をつむった。
45 : タタッタタッ タタッタタッ…… 草を渡る風の音の中から、かすかに聞こえていたリズムの良い音。 今はっきり聞こえてくる。生まれて初めて聞くその連続した軽やかな 音は、直線的に近づいて遠ざかる……いや、どうやら迂回している? ……いや、周りを巡るように変わらぬ調子と音を響かせていた。 音は違うが、これは馬の歩みの音だ。土や石畳を歩いていないが リズムは同じだ。 空を飛んでいる。それが、だんだん高度を落としてきている。 今度はこの戦場の外周を回っている。2周目、3周目…… 意図していることが分からない。何者なのか。 戦場の体から武器や金目の物を漁る者共は、我先に目当てにまっ すぐ駆け寄る。 教会の牧師なら、きまじめに端の体から祈りを捧げるだろう。 こう、考える間にも数周回った。 と、おもむろに止まった。 タッ、タッ、タッ…… 歩みは軽やかなものから、確実なものに変わっている。 さらに、それは私に近づいてくる。
46 : 馬は私の上に浮いていた。 赤鹿毛の惚れ惚れする体躯の馬。私はその馬の前肢の蹄鉄が、私の腹の上、 手に届く高さで見えていた。 「ほう、まだ息のある者がいようとは」 女の声が降ってきた。馬の主であるその声は、しっかり太くそれでいて艶やか だ。私は、空を背にしているその姿に目を凝らした。 「あ……だ……ゲホ、ゲホ!!」 声が出せない。喉が渇ききっている。いや、声を出す力が出ない。思うように ならない。誰なのだ。何をしているのだ。 不意に馬が前肢を掻いて、2,3歩足踏みした。 んでしまう! 落ちてきて、押しつぶされると思った。 きつく目を瞑る。 ーーだが、いつまでもそれは空に浮いて、大人しくしている。 「……ぬのは怖いか?」 少し不思議そうな声。私は声を出せずにいる。 「驚かしてすまぬ。まだ、思ったほど生気があるのだな」 高貴な身分なのか、語気は毅然としている。見えるシルエットは、乗馬をする 人のそれだ。まっすぐに私を見下ろしている。 久しぶりに聞く女性の声、いや女性に、私の体は敏感に反応した。 俺も生物ではあるようだ。種を残す最後のチャンスかもしれないことを、 悟り、勝手に準備する。血が下腹部に集まる。 滑稽も滑稽だ。 「ふふ……」 「何が可笑しい?……ーーお前?」
47 : 女が馬から、音もなく草原に降りた。鳥が着地の時にいくぶん衝撃を やわらげるが、それすらもなく私の体の横に立った。 空から降りて、やっとその姿がわかった。 栗色の髪、透き通る陶磁器のような肌、上品な輪郭。 肩からむき出しの腕は細く、それでも華奢ではない。 乳房の部分はやわらかな曲線があてがわれた、1枚の鉄板が守っている。 青銅の細い鎖を布のように織り込み、ウエストのしなやかなくびれの ラインが直にわかる。 腰には10数枚の青銅でできた、横に深いスリットが入ったスカート。 そこから伸びる長く肉感的に露わになった白い脚。 その脚を高く上げると、無遠慮に私の腰に跨った。 その瞬間、髪の毛と同じ色の体毛が、白い肌をバックに見えた。女は 下に何も履いていない。 こんな美しい女性がいるのか。 その鼻梁、奇跡のカーブ。人はその気品に屈服し、かしずくことになる だろう。 その唇、ピンクのマシュマロ。愛に満ちた柔らかさに、誰もがそのキス を乞うだろう。 その瞳、スカイブルー。空のように万人を引き込み、包み込んでしまう だろう。 現に、その奥の奥まで、私の意識が染み込んでいくようだった……
48 : その手が、私の股間にあてがわれた。指が長さを、掌が太さを味わうよう に、しかも何度も、それも優しくさする。 少年の頃、淫売に施された愛撫を軽く凌駕する、しびれるような快感が体 を走る。 前留めを探っている。それが容易に外せることが分かると、上からひとつ ずつ外していく。 今までに見たことがないような勢いで、はね出す肉棒。その長さも太さも 自分の想像と経験を超えていた。 俺とまぐわう気なのか? ぬ男と情を交わしてどうするつもりだ? 「……何を……す……んだ」 振り絞った言葉で消耗したのがわかる。けれど訊きたかった。 私はぬだろう。だが、最後に私の体に触れる者と語りたかった。 私の顔を見つめていた女性は、私の陰茎に目を向けて、その笠張りを冷たい 掌で撫でた。それから、その広がった赤黒い部分を白く冷たい指でなぞった。 「……ふっ!……んっ……」 それだけで腰に甘い衝撃が走る。腹筋が痙攣し、脚が硬直する。 女性は再び私の顔を見た。それから静かに、諭すように、こう言った。 「私は、戦に倒れた者共の魂を拾い集めているのだ」
49 : 天から降りてきたのはーーワルキューレ。 この乱れきった戦の世界で、語り継がれてきた神の名を知らない者はいな いだろう。 “戦に敗れて、ワルキューレに魂を抜かれることほど恥はないわ!” 酒をあおって、威勢のいいことを言ったこともある。 その神がここにいて、目の前で姿を現して。 私に淫らがましい行為をしている。 「者の魂は、大体が冷え切っておる」 根元を手で支えると、そこに汚れのない唇が近づいていく。 先端を舐め、少し開けた口に当てて、舌でくすぐる。 「うあっ……」 膨らんだ部分に丁寧に唾液を擦りこむと、一気に頬張って、吸い込む。 ジュボッ、ズゾッ……とその美貌に似つかわしくない音があたりに響いて いく。 この世の幸せを詰め込んだワインを、口移しで味わっているかのようだ。 意識がくらんでいく。 ワルキューレは、節くれだったペニスを口から出すと、上体を起こした。 「お前の魂は、面白い」 面白い、とは言いながら、ブルーの瞳は冷めている。 「お前の魂は、戦いの炎がちろちろしておる」 「……」 「おおかたの者は、皆、戦から逃れようとしている。一見勇敢でも、戦を 終わらすために剣を振っておるのだ。−−お前は、まだ、熱い」
50 : 熱い、のか? 私はまだ戦いたいのか? ワルキューレは魂を集めて、再び戦いの地に運ぶという。 まだ息があるというだけでなく、私には尽きぬ闘争心があるというのか。 彼女の言葉にうろたえている私を冷たく見つめて、空に突き出ているもの を手で支えて、自らの体内に迎えようとする女神。 「お前の魂は、私の中に収めることにする」 濡れて温かな部分。そこを先端で何度かなじませると、すぼまったところ に当ててから、ゆっくりと呑みこんでいく。 「……うっ……あん……」 彼女は、威厳の声から一変、高い声を漏らす。 きつい入り口を過ぎると、体重が載せられていく。傘の部分は、肉襞に 絡まれながら、最奥を突いて全体が絞られる。 「……はああ……あん……うん……」 蠢く。中へと、また精を吐きださせようと。体を動かさないのに、その 胎内の淫らさに、私の精神がからめとられていく。 「……め……がみ、さま……」 私は、生涯で初めて、神に“様”とつけて呼んだ。 大きな幸せの中で、体中に慈悲を感じて、生きてきたことに感謝した。 涙が目尻から、大地に落ちた。 その様子を見て、私の上で腰を前後に揺する。 「あっ……ふっ……ふっ……うん……」 控えめな声を忍ばせている。なめらかな体の動きは、振幅を徐々に大きくし ていった。防具がシャリンシャリン……と音を立て始める。 冷静だった瞳は、今や熱を帯びて、官能の色に染まっている。 右手が動かせた。私は、動いている彼女の腰を撫でてから、無我夢中で彼女 の濡れそぼっている部分に手を差し入れた。そこで固くしこったものを触った。 「あん!……ああ!……おお!……」
51 : ついに欲望に素直な声が出始めた。 私の肉を蕩けさす刺激はすさまじく、粘液と締まりに翻弄されっぱなしだ。 「ふう……ううん……お前……いいぞ……あっ……」 私はもう動けない。女神が自分で良くなっている。 とろんとした瞳。先ほどの高貴な雰囲気はすっかりなくなり、私の精を貪っ ている、男漁りの女の眼。 「うわあ……あんっ!……ああっ!……」 身をよじって、髪を振り乱す。動きは上下に変わり、彼女は自ら、胸を留め ていた紐をほどいた。 色の薄い乳首。隆起した膨らみに乗って、腰の動きに合わせて魅力的に揺れ る。私が見とれていると、その甘そうな実を私の顔に差し出した。 「しゃぶるといい……」 渇いた口で、それでも唾をためてから、私は口に含んだ。 「ああ!……それは……」 指でつまんで、蕾を蹂躙する。歯で蕾を甘噛みする。 「あんっ……あんっ……すごいの!……」 それは、女神の欲情を高めた。腰の上下から、娼婦のようなねちっこい回転 は私の肉茎全体を甘く砕けさせる。 再び腰を上下させて精を吸い上げる。 「はあっ!……ああっ!……ああんっ!!……」 きゅっと、ぎゅっと締まって離さない肉の動きとぬめりに。 何よりも切なく喘ぐ声と、快感にこらえきれない美しく淫らな表情に。 私の体を歓喜の刃が切り裂いた。 「ああああああっ!」 経験したことのない噴出感。精の塊がペニスの先を飛び出し、女神に撃ち 込まる感覚さえした。それでなくても豊富な粘液の中に、大量の白濁が注入 された。 「ああああっ!……あっ……あっ……あん……ん……」 女神は私の上に崩れ落ちた。強烈な余韻に、胎内が痙攣していた。
52 : その瞬間。 女神と、私がつながっている部分が徐々に光を帯びて、それがだんだんに 大きくなってきた。 「……!」 女神との境、それが消えている。腰の部分は完全に一体となり、その部分 は頭の先へ、足の先へ、手の先へ広がる。 「あっ! うわあっ! あああああっ!」 先ほどの絶頂の数百倍の快楽が、私を包む。いや、私が快楽になっている。 私と女神は、一つの光になった。 カッ!! ひときわ強い閃光。 その後、光は弱まり、そこには息絶えた戦士のかたわらにワルキューレが 立っていた。 彼女は慈悲に満ちた微笑をたたえて、そっとお腹を撫でた。 指笛で馬を呼んだ。 彼女は颯爽と跨ると、戦地を1周して、私と共に上空高く舞い上がった。 私は戦い続ける運命にある。 私は選ばれた戦士なのだ。 んでもんでも。 戦い続けるのだ……
53 : お目汚しでした。 なおワーグナーの「ワルキューレの騎行」から着想を得ました。
54 : これはエロい…!!
55 : GJ
56 : どなたか保管庫のURL教えて下さい
57 : 次スレから保管庫もテンプレに入れるとよいかも。 保管庫TOPのミラーサイトその1。 ttp://database.f-adult.com/
58 : >>57 愛してる
59 : 保守
60 : 神か悪魔の続きはまだなのか…!
61 : なんか一月ほど投下なしなんで、2011年だし、どうせだから長編を投下します。 ごめん、またなんかスレたっぷり使うと思う……。 いちおう50字改行です。注意です。 以下、この物語に関する注意書きです ↓ @ ドクソ重い文体です。前に書いた奴よりも遥かに重く、くどいったらありゃしない。 A エロシーンが一応あれども、もう飾りレベルです。しかもオールレイプでグロ表現ありき。 B 長い、この話、文体のせいでマジで長いよ! 暇な時に目ぇ通さないと危いよ! C 世界観設定とかキャラクター設定とか、色々と適当です。ファンタジーファンにされそうなほど適当。 D ギャグ激少。反面、グロテスクな表現、邪気眼表現、説教台詞が多々含まれています。苦手な人は注意。 E 作中での主義主張、その内容が結構乱暴かもしれない。下手すりゃ突飛な暴論に見えるかも。 あいっかわらずスーパーの惣菜ハムカツみたいに油ギトギト重い文なので、色々と注意です。 それでも「まあ仕方ねぇ、暇だから読んでやるか」と思った人はどうぞ。 ちなみにグロ祭り警報。前回の長編よりもグロ成分が遥かに多いです。マジで好みが分かれると思います。
62 : それは、黒くて。 それは、白くて。 それは、灰色で。 それは、彼女の。 それは。 ――それは。
63 : * * * そこにあるのは、薄水色の空。 淡い淡い、透き通るような、しかし透明ではない、わずかばかりの青を残す空。雲ひとつないその空は、ただ たゆたうようにしてそこにある。 流れる穏やかな風は空気を切り裂くようなことはせず、流れ流れ行くままに、ゆったりと。陽光が時折そここ この熱をはやしたてはするものの、荒いさまを見せるのはほんの一瞬のことで、すぐさま熱も流れも沈静化する。 全ての流れが、ゆるやかな方へと、ただただ。 頂に上った太陽は、下降するための準備を始めている。ゆったりと、ただゆったりと流れる時間に合わせるよ うにして、空も空気も熱さえも、穏やかな姿のままに、そこにある。 ――黒い髪が流れていた。 レンガ造りの家屋と、木造建築物と、鉄扉が設置された豪奢なつくりの屋敷とのなか、薄水色の空の下にて流 れる、黒い黒い髪。宵闇の一部分を切り取ったかのようなそれは、陽光を反射し、妖艶なるきらめきを残し、風 のいたずらにその身を任せている。 昼の中に映える夜。宵闇の一部。穏やかな空気の中に流れる、静寂たる黒がそこにある。 黒い夜の正体は、少女だった。 小柄な少女である。色あせた灰色のブラウスをまとい、雪もかくやと言わんばかりの肌を見せ、その下に見え るは夜の色を劣化させたかのような色彩の、黒いロングスカート。 さらさらと、流れるような宵闇の色彩のなかに存在する人工色の黒は、その髪の持つ真なる黒たる美を引き出 すための引き立て役にしかならず。その黒を補うようにして見える肌の白は、ただただ、白く白く、そこに在る。 黒と白とを見せる少女、そのかんばせは整いに整っている。 藍色の両瞳に静かな光をたたえ、鉄のように表情を崩さず、その中で映える桃色の唇。目鼻の配置は絶妙であ り、さらりと流れる長いまつ毛がはかなさを演出する。小柄も小柄といったその体躯も、硝子のような脆き繊細 さ加減に一役買っていると言って良いだろう。 触れれば壊れてしまうような、かような雰囲気があるも、そこで映えるは夜の黒。全てを吸い込まんとするか のような重さがそのはかない肌に乗せられ、えもいわれぬ美を演出する。 細い細い四肢はぴっちりと黒の服にて守られ、雪景色は覆い隠されている。されど宵闇の髪が流れれば、そこ で映えるは背に値する部位。そこは大きく布地が切り取られ、風が夜をもてあそぶ時に限定し、少女の雪を見せ るかたちとなっている。 その開いた背の部分には、濃紫色の紐がいくつも交叉するように組み込まれており、しかしそれで肌を覆い隠 すことは出来ず、少女の肌理たる、雪のごとき白とのコントラストが生まれる。 かわるがわるに色を見せる、深紫と白。それを覆い隠すように、宵闇色の髪が、さらり、と。 華奢な体躯のせいだろうか、弱々しげな妖精めいた雰囲気が、その少女にはあった。
64 : そんな少女のそばには、灰色と肌色の目立つ、レンガ造りの小さな建造物。 入口の横には、木製のテーブルと椅子がいくつか並び、カフェのオープンテラスを思わせるつくりをしている。 建造物内部には、色とりどりのパンが並んでおり、小さな小さなランプが淡い光を放ち、それらをおぼろなる色 彩にて演出、柔らかな雰囲気を醸し出す。 オープンテラスの一角にて、その妖精めいた美貌を持つ黒髪の少女は、いた。白塗りの椅子に腰かけ、木製の テーブルに目をやっている。その視線の先には、皿。さらにその上にはパンの耳が盛られており、時折少女がそ れつまみ、鉄面皮のままに咀嚼、嚥下している。 油で揚げられ、砂糖をまぶされたそれは、少女が小さな口を動かすたびに、さりさり、さくさく、軽やかな音 を発し、少女の腹へと消えていく。 少女は時折遠くの空を見つめ、しばしの間を置いて、テーブルの上にあるパンの耳へと目をやり、手を伸ばし、 咀嚼、嚥下。ただ機械的に、くり返しくり返し、それを行う。 どこか珍妙な反復運動を続ける少女。そんな彼女のもとに、やにわに近付く影ひとつ。 猫じみた雰囲気のある女性だった。柔らかな金髪を腰の辺りまで流し、白いブラウスに赤いスカートといった 簡素ないでたちのままに、黒髪少女のもとへと歩み、口を開く。 「またパンの耳?」 「うん。やっぱり好きだから」 申し訳程度に砂糖をまぶしたパンの耳と、それを咀嚼する黒髪少女を交互に見ながら、金髪の女性は薄く笑い つつ、近くの椅子に腰かける。 同時、小さな風がふわりと流れる。どこか甘い匂いを孕むのは、その柔らかな雰囲気ゆえだろうか。 金髪の女性――メアリは、己の栗色の髪を中指と薬指でいじりながら、小悪魔めいた、いたずらっぽい視線を パンの耳へとやり、薄い唇をゆっくりと動かす。 「私も好きよ」 「それは嬉しい」 ちょっとしたからかいの意を含めたいたずらの言に、黒髪の少女――レウは、鉄面皮のままに応じる。 どこかずれた問答。それでもふたりの態度には一点の曇りもない。 メアリという女性はにやにやと小悪魔めいた笑みを浮かべ、金髪を流すままに、気分を害した風もなく。 対するレウという少女は、鉄のおもてを揺るがしもせず、黒髪を流すままに、自然体で。
65 : みずみずしさを前面に押し出したような美麗なる容姿のふたりだが、交わされる会話の内容は灰色といおうか、 極彩色のそれである。その珍妙な差異めいたもののせいだろうか、流れる空気がどこか胡散臭い気色を孕むも、 かようなことは知ったことか、とばかりに、女ふたりの動きは止まらず。 「というわけで、分けてくれないかしら?」 「やっぱり言うと思った」 話は通じている。 実際問題として、数年間友人関係を続けているこのふたりには、そういった類の言葉で事は足りた。 「また実験体になるつもりなら、いいよ」 「また新作パン?」 「うん。ローズパン。薔薇ジャム使っただけのパン。パン自体は米粉使用」 「無駄に技術力高いわね……、とはいえ興味あり、実験体、なるわよ」 やれやれ、とばかりにかぶりを振りつつ、楽しげに眉を上げるメアリ。対するレウは小首をこてんとかしげつ つ、またひとつ、パンの耳に手を伸ばす。 「昼、食べなかったの?」 「仕事にちょっと手こずって遅くなったの。どうせだから、あなたのところで、と考えて今現在この状況」
66 : 黒髪の少女、レウはパン屋で仕事をしている。 首都からやや外れた場所にある、都会と田舎を足して二で割ったような場所、シュムシュと呼ばれる町に存在 するパン屋、『ヌダイン』にて、毎日ひとりパンを焼いて売っている。 シュムシュの町にある公園からやや外れた場所にあるせいか、日はあまり当たらないそのパン屋は、ひっそり と経営しているわけではないものの、目立つかといえばそういうわけでもなく。 人とは思えぬほどに、それこそ絵画の世界から飛び出たかのように、幼いながらも妙な艶を感じさせる絶世の 美をまとうレウが、かような場所にいるその妙な外れ具合が、滑稽かといえば滑稽ではあった。 が、対するメアリは、金髪を揺らしつつ、そんな事情は関係ないとばかりに、楽しげに。 女性らしい膨らみの目立つ乳房と、するりと細身ながらも柔らかな曲線を描く四肢、やや鋭利なおとがいに、 切れ長の瞳が特徴的な、猫を思わせる美を惜しげもなくさらしつつ、からからと太陽のような笑みを浮かべて、 メアリはレウを見やる。 「ほれ、じゃあ食べてくれ」 「あら、意外と大きい。これならパンの耳は要らないかもね」 そんな視線に反応するように、どこかから取り出した白色のパンをメアリに投げるレウ。 危なげなく、金髪をさらさらと風に預けつつそれを受け取ったメアリは、パンを一瞥するだけで逡巡もせず、 ぱくりとかぶりついた。 しばし、咀嚼の時間。 次いで、浮かぶはメアリの渋面。 「甘ッ……。けどまあ薔薇ね。薔薇薔薇してるわ。パンもふんわり甘いし、味自体はいいんじゃない?」 「そっか。でも、目を見張るほど特徴的なわけじゃないから、もうちょっと改良の余地ありかな」 パンを片手にメアリは、呆れとも賞賛とも取れぬ溜息をひとつつき、またもパンにかぶりつく。 パンの断面からは、どろりと赤い色の粘着物が見え、真っ白いパンの断面を奇妙に彩っている。 「ま、そっちはそっちでがんばって」 「うん、がんばる」 ちろり、と行儀悪く、それでいて挑発するようにメアリが舌先でローズジャムを舐めとれば、対するレウは、 何やら妙に恰好の良い体勢を鉄面皮のままに作りつつ、それに応じるように鼻息ひとつ。 小生意気にも見えるが、どこか達観したきらいのある少女のその姿は、猫じみた容姿と気質を持つメアリに、 いたずらな心をもたらすには充分だった。 ちょっとだけからかってやろうか、そこから話を広げてみるのもいいだろう、という考えを、その金髪の奥の 奥の奥にある脳味噌にもたらす程度には。
67 : 「今日はお客さん来ないわね」 やや跳ね調子で放たれた言葉。されど、それをぶつけられた黒髪の少女は微塵も動じず。 「外来の行商隊が、むこうの町に来ているから。珍しい食べ物を買出しに、みんな行ってるよ」 「ふーん。で、常連客に浮気されたって寸法ね」 「そういうこと。まあ、一日二日、客が少ないだけで傾くような店でもあるまい。気楽にいくよ」 何を気にするでもなくそう言い、レウは遠くの空に目をやる。 薄水色の空は、透き通るように淡い美を見せており、流れる風の柔らかみがそれを彩る。されど、どことなく 気だるい雰囲気が漂うのは、パン屋の周囲に人らしき人はおらず、昼下がりの空気が、その活気のなさを助長し ているせいであろうか。 が、気だるい雰囲気は、なにもこの天候のせいだけではなく。 原因はパンの耳を食べ続けるレウの姿にあった。 可憐な、それこそ妖精はだしの美を誇るレウではあるが、覇気という覇気は全く感じられない。ただそこに座 し、黙々と食事を続け、メアリの言葉に抑揚なき声で応じるだけだ。 対するメアリもメアリで、髪をいじったのちに垂れるようにテーブルに力を預け、もそもそと起き、また預け、 のくり返し。レウに話しかける際にはいたずらめいた瞳の光を放つも、それ以外はからきしである。 みずみずしい容姿のふたりが放つ、みずみずしさとは無縁の空気。アンニュイというのにはややもすればずれ た感が否めない、なんとも不思議な気だるい雰囲気が、そこにあった。 「眠くなるね、この天気」 「こらこら、一応は商売中でしょうに。……まあ、分からなくはないけど」 ふわ、と小さなあくびをしつつ、指先でくるくるとその金髪をいじるメアリ。その手にパンは残っておらず、 ただ薔薇の匂いを余韻として残すのみだ。 対するレウもレウで、パンの耳を全て食べ尽くし、ただぼうっと遠くの空へ、視線を。 「レウ。おやじさんは帰ってこないの?」 「この前、手紙が来て、しばらく帰れないと書いてあってそれっきり」 「もうアンタが店主でいいんじゃない?」 「気が向いたらいつでもこの店、乗っ取っていいってさ」 軽い調子でとんでもないことを言いつつ、レウは首を振ってみせた。身じろぎするたびに流れ揺れる黒髪が、 彼女の背を刺激する。背が大きく開くように出来ていたブラウスの、その不足分を補うようにして、黒がそこに。 「店主も店主よね。どうしてレウはこの店に身を預ける気になったのかしら」 「自由人というか、そういう境界線がないその店主だからこそ、今この状態があるわけだよ」 そんなものかしら、とレウの言葉に反応しつつ、髪を再度くるくるともてあそぶメアリ。 対するレウは椅子をがたりと動かして、ぼうっとした表情のままに口を開く。 「まあ、私がここのチョコチップメロンパンに魅せられた、というのもあるんだけど」 「うげぇ、どうしてそんな甘ったるいの……」 「メアリは甘すぎなのは苦手だもんね」 「ちょっと甘い程度ならいいけどね。私はアンタの作ったコロッケパンの方が好きよ」 さらりと放たれたメアリの言を受け止め、レウは、ひと呼吸時間を置いて諸手を頬のそばへとかざし、そっと 言う。
68 : 「そんな、好きだなんて……。ゃ、恥ずかしい……」 言葉を放つと同時、頬を薄紅色に染め、流すように流すように目を細め、瞳に柔らかながらもきらめく輝きを 残しつつ、頬を緊張させると同時に唇を弛緩させ、見事も見事といったはにかみの表情を形づくるレウ。 絵画の世界から現れ出た妖精を想起させる美貌が、どこか胡散臭いながらも羞恥心という風の流れに乗り、そ れは昇華され、超絶の美へと変化する。 その少女性特有の青さを残しつつも見せる頬の紅の凄艶なる雰囲気といえば比類がなく、レウと対面したメア リは、思わず頬を赤く染め、一瞬だけではあるが狼狽してしまった。 が、対するレウは、そのメアリの態度が予想外だったようで、眉をひそめつつ演技をとりやめ、肩をすくめた。 「おい、頼む、ツッコミを入れてくれ。可愛い子ぶった自分がとてつもないアホに思えてしょうがない」 「……え、ええ、ごめんなさい」 「いや、そこで謝られると、なおさらこっちがアホに思えて情けなくなるんだが」 「え、ええ、まあ、うん、そうね」 紅色に染まった頬を隠し隠し、メアリはたどたどしい言葉づかいでレウに応じる。 対するレウは己のしでかした行動に今更自己嫌悪感が湧いたのか、口をブーメランよろしく曲げに曲げ、その 美貌に陰りを付けに付けて、三白眼で空を睥睨するだけだ。 わずかな変化ではあるものの、ころりと表情を変えるレウ。 そんな彼女に対し、メアリは地の底を揺らすかのような溜息をつき、ずるずるとナメクジもよろしくの動作で、 突っ伏した顔をテーブルから上げ、小さなおとがいをそこに押し付け、口を開く。 「ねえ、レウ。この質問も何度目か分からない、でも言うわ」 「なに?」 「鏡、見たことある?」 「毎日、顔を洗う時に洗面台で見るよ。なにを当たり前のことを」 まるで、鳥が空を飛ぶことに疑問を抱いた子供を見るかのような目で、レウはメアリに問う。 対するメアリは、強張らせに強張らせた表情を隠しもせず、再度、溜息。今度は大地の果てまでも響くような 盛大さ加減を見せると同時、ぐてんとテーブルに突っ伏した。出戻りである。 「……無知は罪という言葉の意味、私はあと何回認識すればいいのかしら」 「にぶちんの私には、きみの言葉の真意がわからん」 こてん、と首をかしげながら、メアリの瞳の光を見つつ、レウは言う。 無論、そんな黒髪少女の態度に対し、返すものは溜息しかないとばかりに、メアリはただひたすらに肺を動か し音を出すばかり。
69 : 「分からなくていいのよ。そっちの方がいいと私は思うわ。……どこかで被害者が出るかもしれないけど」 「もしかして私は加害者か?」 「男を落涙させるであろう、という限定的な意味合いにおいてはね」 「こんなペチャパイガキンチョ女に泣かせられる貧弱男がいるのなら、見てみたいものだ」 どこか論点がずれた物言いをするレウに対し、もう溜息とあきれの在庫が切れたのか、メアリはレウの瞳の光 を見つめ返しつつ、頬の筋肉を緊張させて今度は鼻息。 薄水色の、どこか珍妙な空気が漂う昼下がり。 それは、少女ふたりの対話の灰色でもあり桃色でもあるような、そんな雰囲気にあてられたせいであろうか。 道行く人並みの、小規模ながらも流れ流れるうねりを見つつ、そっとメアリは目を細める。 もう少し経てば、夕焼けがそこを支配し、次第に黒が侵食し、また白によって切り裂かれるだろう。ころころ と表情を変えるその空は、どこか楽しげな姿に見え、レウは思わず、 「いい日だな」 「まぁね」 あくびをするようにぼやき、メアリに軽く流されていた。 穏やかな昼下がり、柔らかな陽光。 シュムシュの町は、パン屋ヌダインは、今日も平和であった。
70 : 投下終了、チャプター1終了。 ちょっと容姿自覚方面で邪気眼小説主人公っぽいけど、まあ我慢してやってください。 長いので、息切れしないようにちまちま分けて落とす予定でいきます。 次回投下は、近いうちにやっちゃいます。分量と分割量が結構アホみたいになったので。
71 : わりと期待してます。
72 : チャプター2を投下します。というより、2+2.5? 区切り的にちょっと色々あったんで、こんなかたちに。 エロまでまだまだまだまだ。暇ならどうぞお突き合いください。
73 : メアリという女性と、レウという女性の出会いは、それなりに唐突なものだった。 当時、13ほどであったろうか、青い青い気質を持つメアリが、シュムシュという名の町に引っ越してきたのは。 親の反対を押し切り、ほぼ勘当同然に家を出て、魔法に関する色々な道具を作る仕事で食べていこうと決意し、 とりあえず安定した場所に住まうことを目的として、適当に見付けた町がそこだった。 特にえり好みする気は彼女にはなかったし、えり好みする余裕もなかった。道具開発の許可証申請と旅費で、 金はもはや枯渇寸前だったし、胃袋の中身など言わずもがな。 とりあえず安い宿泊施設に泊まるか、とメアリが決めたところで、町をぶらぶら歩いてみれば、その中心たる 場所からやや離れた、薄暗い場所にそのパン屋はあった。 ヌダイン、という、わけの分からない不思議な名前のパン屋だった。人名なのか地名なのか、どこかずれたよ うなセンスのない名前のそこに、気付けばメアリは近付いてしまっていた。 だが、疑問顔でいたのもしばしの間のことで、パン屋の入口付近にある小さな札を見れば、そのひそめられた 眉は新たな感情によって形を変えられることとなる。 仕方のない話なのかもしれない。 『実験体という名の生贄募集中』などという札が書いてあれば、気にしてしまうのも無理からぬことであろう。
74 : 「なんなのよ、これって?」 当時のメアリは、その気の強さと同時に、一種の横暴さをもっていた。今でこそ、その横暴さはなりをひそめ、 気の強さは健在なれど、温厚な気質を持ちながら芯を強いがままに保てている女性、というかたちに落ち着いて はいるが、その時は狂犬じみた気質を自覚せずにいる子供だった。 そう、幼かったのだ。無理を無理のままに通し、他人の顔色をうかがわないその姿は、気丈というよりかは、 わがままなそれであった。子供も子供といった当時の性格を批判されても仕方ない、今のメアリはそう考えてい る。過去の出来事に話を飛ばせた際、自分のことを言われると、知らず知らず頬を薄紅色に染めてしまうのが良 い証拠であろう。 強気な女の子、と称して良いのかもしれない。少なくとも、周囲から受けるメアリの評価は基本的にそういう 類のものだったし、初対面の相手であっても大抵がそういう領域の話に落ち着いた。 子供だからこそ見せる無謀さといおうか微笑ましさが、その時の彼女にはあった。だからこそ、あまり憎まれ ずにいる。瑞々しい少女へと踏み出す直前の、つぼみもつぼみといった幼い気質における愛嬌が、彼女にはある のだった。 そんな彼女が目を細めつつ、わずかばかりいらついた声を出した原因は、シュムシュの町にある、ちょっとし たはずれに位置するパン屋のそんな宣伝文句。 レンガと木とで構成された、灰色と肌色の妙な建造物のそばに、くたびれたイーゼルの上に乗せられた、薄汚 れたキャンバス。その上にでかでかと描かれた文字。妙にカラフルな色彩の文句に、実験体やら生贄やら書かれ たそれは、成程、確かに眉をひそめるに値するものだろう。 「ん? どうかしましたか?」 そんなものについつい目を留め、ついつい言葉を発してみれば、メアリの前ににゅっと現れる黒い影。 幼いながらも美しい少女の出現に、少なからず驚く暇もあらばこそ、生来の気の強さでメアリは問うた。 「あなた、店員? これはなに?」 「うん、店員。これは、新作パンが作られたので、お代の代わりに食べて感想が欲しいなあ、という次第で」 しれっと語る幼顔の店員に、メアリの心臓は苛々をうったえるかのように鼓動を早めていく。それは、店員で ある少女の美しさに心惹かれたという要素があるのも、一応は否定しないが。 「分かったけれど、これじゃあ変なものが混入されているみたいじゃないの」 「それも含めての、だじゃれー。悪趣味かもしれないけど、変えるつもりはないなあ」 ぶええ、と変な吐息を口の端から出しながら、いかにも『私はだるいです』といった仕草所作態度で語る少女。 可憐な妖精めいた容姿の彼女には全くそぐわぬその言動と雰囲気に、メアリの心はますます苛立つ。 「なんでよ? もっとマシな言い方あるでしょうに」 「あまり美辞麗句でものを良いものとして飾るのは好きじゃないから」 ぎろり、とんだ魚のような目を一瞬だけ狼はだしのそれに変えて、少女は言った。 が、それも一瞬のこと。次の瞬間には美しい黒髪を流しつつ、醜い吐息を垂れ流し、気だるげな姿を見せに見 せ、少女はただ自分の空気を主張するがままに、そこにいた。
75 : 美しい姿と、気品のきの字も感じられない態度と、ふざけにふざけきった宣伝文句。されどその小さなパン屋 の外装も内装も、地味ではありながらもきっちりと掃除はされているし整理整頓はされている。賞賛すべき姿で はないが、咎めるべき姿でもない。微妙な微妙な中間線を行くその姿は、どうにももやもやとした気持ちを見る 者の心に与えるのには充分に過ぎたろう。 無論、かようなことが理解できぬほどにメアリは愚鈍ではない。美しい黒髪少女の醜い溜息を聞いた際に、思 わず何を言って良いのかも分からず、言わぬが最良と気付き、溜息ひとつで返してはいたのだから。 だが。 後になって思えば、メアリはその時から少女に興味を覚えていたのかもしれない。 気だるげな仕草を見せながら、時折見せる、猛禽類めいた所作と雰囲気が、どうにもこうにも不可思議だった からだ。同時に、そんな姿に全く嫌悪感を抱いていない自分自身を訝ることになったから、というのもあろう。 気付けば、メアリは苦笑しつつ口を開いていた。 「……変な女」 「まあ、自覚はあるよ。それより食べてみる? 味の保障はしないけど」 きゃらきゃら笑いながら言う少女に対し、メアリは眉をひそめるのみならず、唇の端を引きつらせた。 それは少女の態度に対するものであったし、自身の退くに退けない状況に対するものでもあった。 いくら横暴さはあっても、責任感というものの片鱗ぐらいはメアリにもあった。ものごとに関わろうと噛み付 いたのに、自分からそれを遠ざける間抜けさ、そんな海に浸かっていたくなかったのだ。変に矜持を先行させる 若さも相まって、メアリは気付けば言ってしまっていた。 「いいじゃない。食べさせなさいよ、試作品」 「あいよ」 メアリが言葉を発するや否や、やにわに少女は飛び上がり、空中で体を回転させながら危なげなく着地、その まま跳ねるようにパン屋に入っていき、しばらくして黄色と緑の目立つ色彩のパンを持ってきた。 「枝豆とチーズのしっとりパン。豆とチーズのハーモニーが、股を濡らすよ」 「……あなたの下品な言は受け流して、まあ、食べさせてもらうわ」 美しい容姿に似ず、下劣な言葉を吐いた少女の手からパンをひったくるように取り、メアリは逡巡もせず、そ れどころかパンの全容を確かめもせず、ぱくりとかぶりついた。 果たして、その感想は。 「やば……、美味しいじゃない」 「どこの辺りが?」 ややもすればパサついたきらいのある豆を、油多めのチーズをかけることによって潤いを良くし、水分多めの パンにてぼそぼそ感を和らげたそのパンは、刺激的ではないが落ち着いた塩味に包まれており、悪くないと思え る代物であった。 そのことをやや粗めに説明すれば、少女は目を輝かせつつきゃらきゃらと笑い、じゃあこれは追加商品として、 などとあっさり今後の方針を決めてしまっていた。 その少女の思い切りの良さといおうか、さばさばとした態度にメアリは小さな好感を抱き、気付けば開く、己 の口。
76 : 「やるじゃない。この若さで店をやるだけはあるわね」 「ううん、違うよ。私はただの雇われ店員」 「え? どういうこと?」 自分の趣味以外にあまり興味を持たないメアリが疑問の声を上げれば、少女は薄く笑いながら店の看板を指で さしつつ、返しの言葉を入れる。 「店主がね。結構、放蕩癖があるんだ。だからよくよく現場をまかされているの」 「それって、実質的な副店主と言わない?」 「かもね。でもまあ、私は誰かを起用するとか、そういう上に立つための気質を持っていないから、ただの店番 さんでいいんだよ。まあ、そういう中間的といおうか、したっぱといおうか、そんな立場が一番好きだというの も、あるといえばあるんだけどさ」 あっけらかんと放たれた言葉を理解、しばしの間を置いて、メアリは気付けば苦笑していた。 それは、妙に思い切りの良い少女の言葉に影響されたせいか、それとも珍しく自分が趣味以外のものに興味を 覚えているせいか。どちらにせよ、おかしかった。だからこそ唇を曲げて笑ってしまっていた。 「変な奴」 「自覚はあるよ」 「でも……面白い奴」 「ありがとう」 鉄面皮のままに礼を言う少女に対し、とうとうメアリは声を上げてきゃらきゃらと笑い声を上げる。 物言いも、態度も、容姿も、どこかちぐはぐでありながら、その雰囲気は春の陽気じみた柔らかみのあるそれ。 そんな珍妙なギャップが変にいとおしくて、メアリは少女に対し、警戒心をとっぱらってしまっていた。 「ねえ、お知り合いになろうか?」 「な、なにいきなりわけの分からないこと言ってんのよ!?」 そんな彼女の心境を察したかどうかは知らないが、やにわに少女からの提案を聞き、警戒心を取り除いたメア リは狼狽する。心の防壁をなくした後での直接攻撃的な言は、青い青い年齢のメアリにはやたらと響いた。 「んー、友達になろう、だとなれなれしい気もするし。初対面なので、お知り合い、が妥当だと」 「……アンタ、やっぱり変な女ね」 「うん、私もそう思う」 「けど、悪い女、ではない」 「……おおう、なんか嬉しいぞ」 「……やば、なんかすごい恥ずかしいこと言ってるわね、私」 しかしながら、口は動く、話は進む。 気付けば。本当に気付けば、いつの間にやらメアリと少女は、お知り合い、になっていた。 「んー、でも嬉しいよ、ありがとう」 「礼なんて言う問題じゃないでしょ。私が馬鹿正直にものを言っただけ、それだけ、それだけよ、うん」 照れ隠し、という言葉を体現したかのような発言をしたメアリは、自分の発言を脳味噌の中でくり返し、頬を 朱色に染めた。 恥ずかしさはあったが、妙な達成感があったのも事実だ。ちょっとしたパン屋の宣伝文句に目をつけた結果が こうなるとは、成程、運命の神様とやらもずいぶんと酔狂なものだ、とメアリは思う。同時に、それに感謝した くなる気持ちをも、少しだけ抱く。
77 : 「私はレウ。レウ・アディア。ただのパン屋だ。それより上でもそれ未満でもないよ」 「私はメアリよ。メアリ・ミーティス。今のところ無職だけど、まあなんとかするだろうからよろしく」 そうして、互いに自己紹介を。その際に浮かべられた、少女の――レウの、美しい微笑みを、メアリは忘れる ことはないだろう。 あまりに綺麗でいて、あまりに妖艶でいて、あまりに黒くて白くて、どこか悲しい笑みだったから。 この時、メアリは思ったのだ。 負けちゃったかな、と。 恰好なんてつけなくても、この少女はとてもとても美しいから。ちょっとした気の強さで心を覆うような自分 とは、根底から美そのもののありようが違うと感じてしまっていたから。 敗北の気持ち、それを誇らしくも悔しくも思う気持ち。様々な思惑を乗せて、メアリも小さく微笑んだ。 「よろしくね、メアリ」 「ええ、よろしく……レウ」
78 : それからメアリは、暇があれば、時折パン屋に寄るようになった。 その時折が、しばしば、に変わり、頻繁に、に変わるのには、さして時間もなく。原因がレウであるのも言う までもなく。 仕事に就き、生活が安定するにつれて、日々が忙しくなり、料理の時間を奪われ、結果としてパン屋に通い続 ける日々が続いた。気付けばレウの店にとってのお得意様、となっている程度には、メアリはそのパン屋に足を 運び続けた。 それから、レウは親なし子であったということを知り、パン屋の店主から文字や政のうんぬんを教えてもらっ ているということを知り、彼女が変人であるということを知り、彼女は変人そのものであるということを知り、 彼女はやっぱり変な奴であるということを知り。 単なる知り合いから、友人、という段階に知らず上がっていたことを心の奥底で感じた時には、もうメアリに は、レウを抜いた日常を想像することは出来なかった。 美しい黒髪を流す、妖精めいた美貌を持つ彼女の姿を、ありようを、思い出すたびに足はパン屋へと向いてし まう。 だからメアリは、腹が減れば、無意識内に、 「レウ。今日はピザパンの気分なんだけど、ある?」 「ん、あるよ」 ヌダイン、という名の珍妙なるパン屋に、足を運んでしまうのだろう。
79 : * * * 「……どうしたのよ」 「きみとの出会いを思い出していた」 「ちょ、あれは黒歴史だからやめなさい……!」 「それは嫌だ。あれも大事な思い出だ」 「この野郎、恥ずかしい台詞をさらりと……!」 「私は女郎だけど。それに、今の、そんなに恥ずかしい台詞かな?」 顔を真っ赤にして、店の外に設置されているテーブルに額を打ちつけるメアリに対し、レウはただ鉄面皮のま まに小首をかしげて小さく吐息。 そんな姿も絵になるのだからずるい、などと考えつつメアリはねめつけるようにレウの身を見、言う。 「この天然美形」 「何を言ってんの、美しさならメアリの方が七億倍も上だろ。おっぱい的にもそうだし」 攻撃は瞬時に返しの一撃を乗せられ、メアリのもとへと。その際に受けたあまりの気恥ずかしさといおうか、 そういった類のままならぬもやもやとした気持ちに撃沈させられたメアリは、金髪が乱れるのも構わず、テーブ ルに突っ伏しつつ、一ダースぶんほどの溜息をひとつに込めて、盛大に、空へと溶け込ませた。 「アホか、アホなのか私……。こっち方面でこの話題をレウに振るなんて、学習能力ないの……?」 「勝手に落ち込むのは構わないけど、目の前で暗い顔されると友人としては困る」 くにくにと指で指をもてあそびつつ、追い打ち攻撃を加えるレウに多少のわずらわしさを感じ、メアリは先程 購入したパンをやけ気味に取り出し、レウの目の前でこれ見よがしにかじってみせた。 「あー、コロッケパン最高」 「ありがとう」 どこかすねたようなメアリの物言いにも、小さな微笑みで返すレウ。 同時につのるは敗北感。 メアリ・ミーティスが実に複雑といおうか忸怩たるといおうか、かように微妙な気分を味わう、そんな昼時。 女ふたりの思惑も知らず、空は青いままだった。
80 : レウはいつものようにパン屋の外でだらだらと客を待ち、そのそばでだらだらとだらけるメアリ。 過去の出来事に紅と含羞の色を乗せ、妙な沈黙が続く。風はひゅうひゅうとひっきりなしに吹き、空から注ぐ 陽光は柔らかではあるが、風にいくぶんか切り裂かれ、そこに在る。 レウが遠くにゆるゆると目をやる。メアリもつられるようにゆるゆると。 そんなふたりの先に、ゆっくりとやってくる、小さな影がひとつ。 小柄な女性だった。 柔らかな陽光を浴びてきらめく黒髪を雅結いのかたちにし、ふわりとした雰囲気を内包するままに、ゆったり と、ただゆったりと歩を進める女性。小柄でいてどこか気品のようなものが感じられるその女性は、ゆっくりと 周囲を見渡しつつ、レウが経営するパン屋、ヌダインへと足を向け、しばしの間を置いて、レウの前へと降り立 つ。 美しい、というよりかは、綺麗な女性、という方がしっくり来るだろうか。柔らかな丸みをおびた肌はしっと りと黄色がかっており、浮かべる微笑もその陽光のように柔らかく、ただ柔らかく。まとう衣装がゆるりとして いることも相まってか、堅苦しさや刺々しさを微塵も感じさせないたたずまい。 上は、白いゆったりとした厚手の布。下には朱色のスカートめいた布を身に着けており、長い長いその黒髪は、 レウほどの宵闇色ではないけれども、光を反射して妖艶な輝きを見せ、そこに在る。 「相変わらずの、のんべんだらり具合ですね、レウ、メアリ」 高い声。女性のなかでもとりわけ高いと思わせるほどの声音。されど小うるささのようなものを微塵も感じさ せないその音色は、耳にとって有害なものではない。流れる風にも似た、自然と、空気の中に溶け込んでしまい そうな、そんな声。 それを受け、オープンテラスに設置されてあるテーブルにべちゃりと体を預けていたレウとメアリは、うっそ りと身を上げ、顔を上げ、頬をゆるませ、その声を出した女性を見やる。 「おひさ、レンカさん」 「こんにちは、レンカ」 柔らかな雰囲気を持つ女性――レンカは、黒髪の少女と金髪の女性の言を受けて、ふわりと微笑を浮かべつつ、 どこかふざけた所作を四肢であらわしつつ、返す。 「はい、レンカです。巫女巫女しています、相変わらず巫女巫女です」
81 : いたずらめいたその仕草を見、レウは微笑を、メアリは苦笑を、それぞれ返す。 風が流れる。簡易的なブラックドレスめいた衣服に身を包んだレウ、その黒髪が、風にもてあそばれ。どこか 幻想的な雰囲気を示すその暇もあらばこそ、少女は言う。 「ご注文は?」 「ピーマンたっぷりピザパン。それと、イチゴジャムとマーガリンのコッペパンをください」 「はい、少々お待ちを。こちらで食べていく?」 「ええ、ここで腹に入れていきます」 妙な会話を交わしつつ、レウは店の奥に行き、しばしの間を置いてプラスティック製のトレイに乗せたパンを レンカの元へ、ぐいとやる。 それに対し、レンカはふところから小銭を数枚取り出すと、ぽんと放り出すようにレウの服の胸元へと投げ入 れた。するり、と衣擦れの音と同時、苦笑の声が漏れる。 「ガキの身だからひっかからないよ」 「一回、おっぱいに金を投げてみたいと思ったんですが……人選ミスでしたね」 瞬間、柔らかな雰囲気を自ら破棄し、レンカは皮肉げな笑みを浮かべると、パンを片手に、もう片手は自分の 胸に手を当て、諦念の入り混じった溜息をひとつ。 次いで、その暗い思いを吹っ切るかのように、がぶり、と擬音がつきそうな勢いで、巫女たる女性は山なりの 噛み跡をコッペパンにつける。 その断面からは、粘着性のある赤と白がのぞき、とろりとろとろとパンの断面に染み込み、芳醇な香りを空気 に、風に乗せて、そこにたたずむ。 「おおう、相変わらず美味ですね」 「チョコチップメロンパンも食べてほしいなあ。看板なのに」 ぺろり、とどこか挑発的な仕草でジャムを舐めとりつつ言うメアリに対し、レウは鉄面皮のそれに表情を戻し、 残念だ、といった仕草で肩をすくめる。 「何度も言いますが、チョコレート自体、苦手なんですよ。あの風味がちょっと駄目で」 「まあ、無理強いはしないけど」 小さく息を吐いて、レウは髪をかきあげつつ、遠くの空を見やる。 外来の行商たちの仕事具合はどうやらいいらしい。いつもよりパン屋の席が寂しいという事実が、それを裏打 ちしている。今、こうして商売中であるのにもかかわらず、雑談が出来ている程度には。 そんなレウの思いを察知したのだろうか、レンカは独特の衣装をいじりいじりつつ、トレイをテーブルの上に 置き、今度は赤と緑と黄の目立つパンをかじりつつ、くすくすと笑う。
82 : 「閑古鳥の愛人状態ですね」 「大丈夫。一晩たったらヤり捨てられて、明日にでも繁盛だろうし」 「ならいいのですが。……ん、いつもより香辛料多めですか?」 「うん、ちょっと変えてみた。評判悪かったら変えるから大丈夫」 「いや、私はこっちの方が好きですよ。ピーマンの風味が立ちながらも、気になる臭みが弱まりましたし」 ピザパンを食べ、唇の横にケチャップの赤をまとわせつつ言う雅結いのレンカ。 風は鋭利でいて柔らかで、人の波は今現在、シュムシュの町だけひっそりと。昼時であるのにどこか暗い雰囲 気はそのせいだろうか、それを誤魔化すようにメアリがふたりの間に割って入る。 「東方の祈祷師、だったっけ?」 白と紅が目立つ独特の衣装を見つつ、あからさまな話題転換の言を放ったメアリに対し、レンカはくすくすと 笑いつつケチャップを舐めとり、その袖をひらりと。 「ええ。前にも言いましたが、まあ、擬似的な巫女っぽいもの、シャーマンさん、ですね」 「巫女さんか。お祈りとか儀礼的なものってやるんだっけ?」 「はい。いもしない神様を崇め奉り、神職という特別な職に就く者がする特別な行為だから、という理由で、く だらんママゴトめいた儀式に対し、すげぇ割高な料金を客に要求するという、ヤクザであこぎな商売です」 聞く人が聞けば激怒しかねない罰当たりな言葉を吐くレンカであるが、その双眸に宿る光は真剣味を帯びに帯 びており、言葉尻に稚気は垣間見えども、真意そのものは揺らぎようもないことは見てとれる。 メアリは苦笑、レウは鉄面皮。明るい時間帯、客足なしのヌダインに、女性三人の呼吸が合わさる。 レンカは、東方の大陸に居を構える巫女である。ときおりシュムシュの町に観光と休暇がてらに来て、しばし ばレウの店でパンを買い、食べていく。ただただ綺麗と思わせるような容姿と雰囲気、それに加えて、東方独特 の衣装の物珍しさも相まって、レウは気付けば彼女と深く関わるようになっていた。 毎日会う間柄ではないが、互い互いの存在を気付けば忘れるほどに薄い間柄でもない。今こうして、店が暇な 時に、雑談めいた言葉を交わす程度には。
83 : 「まあ、ほとんど外聞的要素で商売していますからね。清純なイメージが求められるわけです。神に仕えるんだ から清純であれ、清廉であれ、処女であれ、という。姦淫済みの女は巫女になれないんです」 「それもそれでおかしな話ではあるかもね。文化とか風習といえばそれまでだけどさ」 指先で器用にくるくるとトングを回しながら言うレウ。 瞬間、レンカは何かしらのスイッチが入ったのだろうか、やにわに目を血走らせて天をねめつけ、口を開く。 「ぬぁーにが清純派だコンチクショー! 処女以外認めないってどういうことだゴルァ! 男の願望欲望丸出し じゃねぇか、恥ずかしくねェのか!? ああ私は処女だ、処女だよ! 25にもなって未だ処女だよ! 行き遅れ とか言わないでよ、頼むからさぁ! 近所のおばちゃんたちも、憐憫のこもった視線で見てくるし……。やっぱ り胸か、胸がいいのか!? あの無駄な脂肪がいいのかコノヤロー!!」 怒号のように言葉を矢継ぎ早に発し、諸手を上げて怒髪を天へと向かせるは、25歳処女巫女、レンカ。 その様相は恐ろしいだの醜いだの美しいだもの云々言う前に、それこそ憐憫のともなう領域のそれであった。 発する内容の情けなさが、その姿をよりいっそう憐れなるものにさせている。 「巫女で食ってるけど、処女じゃなくなると食い扶持なくなる、ふしぎ! コノヤロォォォッ! 社会的に私を お局様計画ですか!? 胸小さい行き遅れ巫女には、永遠のヒーメンがお似合いってかチクショーッ!!」 天に向かって咆哮するレンカを見ながら、酒も飲んでいないのに、よくもまあそこまで口と舌が回るものだ、 とレウは思う。わずかな思考の時間も見せず、矢継ぎ早に言葉をくり出せるレンカは、恐らく頭の回転が非常に 速いのだろう。だからといって、発する言葉の内容が内容であるので、技能の無駄づかいにも程があろうという ものではあるが。 「……また始まったわね。レンカさんの愚痴」 「黙っていれば普通に美人さんなのにね」 そんな彼女の『いつもの姿』を見つつ、あきれ顔のままに平手で額を覆うメアリを尻目に、レウは微笑する。 一応は日常光景、であるのだ。この巫女の狂乱痴態は。 同時、メアリの豊かな胸の膨らみに向けて、人でもしそうな目をレンカが向けることも、また日常であり。
84 : 「モウヤダー! 巫女やめる! やめて充実したセクロスライフするゥゥゥッ! 私だって男の子と手ぇつない で、一緒に散歩してアイス食べてイチャイチャした後で獣のように性器をこすり合わせたいィィィィッ!!」 そろそろ内容が苛烈を通り越して下劣になってきたレンカの愚痴。さすがにこのような内容を思い切り口に出 されては、レウの頬の筋肉も引きつる。 いくら町のなかを行く人間が少なかろうと、皆無というわけではない。しかしそれにも目をくれず、下品でい て下劣な内容を大声で垂れ流すレンカの姿は、滑稽というよりかは憐憫しかもよおさぬほどに哀れなるそれであ り、見れば聞けば思わず溜息のひとつふたつは出ようというものだった。 「……うん、男ができない理由がなんとなく分かるわ」 「恥じらいってのも大事だよね」 右手に巻かれた深紅の腕輪を確かめるかのようにいじるメアリを見つつ、レウは苦笑した。 そろそろ殴ってでも止めないと、という金髪の女性の意志表示である。 「まあ、私らも男っ気ゼロだけど」 「言わないでよレウ。……アンタはすぐ解消できそうだからいいけどさ」 「こんなガキペチャの氷結顔面の生意気パン屋に相方が簡単に出来たら、出会いを求める人に失礼だよ」 「そうかしら? まあ、貴女がそう言うなら何も言わないけど」 わめき続ける巫女をかたすみに、女ふたりで桃色ながらも灰色の会話。やや強めの風が流れる昼、パン屋の周 りだけは混沌の旋風が渦巻く。 しばしの間を置いて、耳が我慢の限界を迎えたと悟ったレウは、わめき続けるレンカへと身体を向けた。 「そろそろ黙ろう、わんぱくさん」 ゴロリ、と音を立てて、暴れる巫女の両こめかみにこぶしの骨を柔らかくぶつけるレウ。なだらかな、子供も 子供といったその特有の丸みと柔らかさを持つ骨と肌をそれなりの力であてられたレンカは、そこでようやっと 我にかえり、周囲の状況を見、次いで、頬をうっすらと赤く染めた。 「あ、すみません……。ついつい熱くなってしまって……」 どうやら平静を取り戻したようである。が、彼女の視線は相変わらずメアリの豊満な胸部装甲に向かっており、 まるで獲物を見つけた鷹のごとく、微動だにしない。 レンカという巫女は基本的に温厚であるが、いくつかの言葉や立場や話題にひっかかりを覚えた際、柔らかな おもてはすぐに瓦解し、獰猛で短気な部分が見えてしまう。それはそれでひとつの魅力なのかもしれない。現に、 彼女のこの気質を欠点としてみておらず、こういう面もあるから楽しい人だ、とレウが感じているように。 とはいえども、店先で性器がどうとか言われれば、それなりに困りはするわけで。『ヌダイン』に集まる人間 が、いくら変人ばかりといえども、昼前の気持ち良い天気のなか、そんな会話が混ざるのは、さすがに色々な意 味で止めるべきことである。
85 : とりあえずレウは店の奥から、温めた牛乳の入った瓶をレンカに渡し、鼻息ひとつ、言う。 「ほら、牛乳あげるから沈静化を希求。あったかいよ」 「わお、ありがとうございます。これだからこの店はやめられないんです」 先程までの狂乱痴態はどこへやら、ころりと表情を変えてレウから牛乳瓶を受け取り、レンカはにこにこと笑 いながら小さく吐息。 もしかしてわざと騒いでそれをダシにしたか? などとレウは思うが、まあそれはそれで構わない。見返りを 求めるようなサービスをやるほどに商売に走ってはいないのだから。 大事そうに瓶を両手で握りつつ、白い液体を流し込むレンカの姿の微笑ましさを見れば、多少の節介も、まあ 許容できようかというものだ。 「グフフゥ……、これで乳が少しでも成長すれば御の字ですね……」 「お胸、そんなに必要かなぁ? ガキな体の私にゃ分からん領域の話だな」 肩をすくめてレンカを見つつ言うレウ。当の巫女様は、なんともまあはしたない表情で、生来の綺麗な顔を台 無しにしているのに気付いていない。 「うーわ、なんというか、名画に墨汁ぶっかけてるみたいね」 「はなから飛ばしているぜ、この巫女様は」 レンカという女性は元来、柔らかな雰囲気を持つ、春の陽気にも似た存在ではあるのだが、発言が発言、態度 が態度、ありようがありよう、である。 「グフフゥ……」 「まあ、確かにもったいなくはあるな」 レウはレンカを見つつ思う。綺麗な人なのになあ、と。 胸がないだのどうだの言うが、体の起伏がさほど分からない服の上でも分かる、細身でいてしなやかな体躯は、 豹を想起させる。たれ気味の目が、鋭利な雰囲気を持つおとがいと合わされども、それでちぐはぐだという印象 はしない。危うい位置に立ちながらも真正面を向いているような、違和と規律に満ちたという珍奇な矛盾たるア ンバランスな雰囲気が、なんとも奇妙な艶を醸し出す。 顔立ちは整っているし、柔らかでいて細いその身は、美術品を預かるかのごとく、おずおずと触れてみたくも あるような魅力に満ち満ちていた。ややもすれば幼顔のきらいがあるかんばせが、その細き体躯によく似合う。 はかないけれども芯がある。そういった印象を持つレンカの容姿は、雰囲気美人、という方が正しいだろうか。 容姿的な美しさもかなりのものであるのに、見る者の心を揺れさせるような気品のあるその姿は、美人という言 を用いてもおつりが来るであろうほど。 が、雰囲気美人であるからこそ、言動に気を付けねばならぬのは言わずもがな。であるのに、その言動が下品 とか下劣とかを全く気にしない直球加減だから、色々と当惑して男の人が寄ってこないのではないか、レウはそ う思うのである。 なにせ、子供から「赤ちゃんはどこから来るの?」という質問を受けた際に、真顔で「きみのお母さんのお股 からですよ」と言うような、非常に残念素直な気質を持つ女である。 多少の官能的発言など、いまさら茶飯事にもなりはしない。それがまた残念美人度を加速させる。 とはいえど、レンカに男が出来れば出来たでまた色々と面倒なことになるのは想像に難くない。だからこそ、 レウが抱く思いはそれなりに複雑であった。男の人を作って欲しいけど欲しくないなあ、という。
86 : そんなことをつらつらと考えれば、いつの間にやら、パンも牛乳も全て胃の中におさめたレンカが、どこかす ねたような表情でレウとメアリを見ていた。 「メアリはいいですよね。レウっていう旦那様がいますものね」 「ちょっと待てそこの巫女。私は女、レウも女。わかる?」 まるで聞き分けのない子供に説教をするかのように、頭を手のひらでおさえつつ言うメアリ。言葉を放った側 も放った側で冗談だと分かっているために、苦笑のみがそこに満ちる。 「私はメアリが奥さんだと嬉しいかな」 「え、ちょ、な、なに言ってるのよ?」 「ぬおう、百合ん百合んですか?」 だが、空気を読まぬレウの発言で、急遽、場は桃色の雰囲気に。 されどそれもわずかな間のことで。 「性別とか気にしないな。好きな人は好きなだけだし。我ながら実にガキっぽい台詞だけど」 「……あー、アンタってそういう奴だったわよね」 やれやれ、と言わんばかりにかぶりを振りつつ、手のひらで額を抑えるメアリの姿を見て、レウは首をかしげ る。そんなふたりの様子を見て、レンカはレンカでからからと笑うだけだ。 「まあ、忘れてくれ。そっちにも選ぶ権利はあるだろうし」 「ええ、でもちょっと驚きなのよ」 「私に変なこと言われたから?」 「それほど嫌じゃないと考えている私自身が、よ」 微妙な空気が流れる。 メアリは、自分で自分の放った言葉の意味に気付き、頬を薄紅色に染めて、恥じらいの意を見せつつ後悔の吐 息をひとつふたつ、同時に体を縮めて含羞の色をそのかんばせに乗せる。対するレウは疑問顔、そばにたたずむ レンカはとうとうおかしくてたまらぬといった風に、腹を抱えて笑い転げる。 どこかずれた空気と流れ。今、この場にいる女性三人が、尋常のそれとは違う珍妙な思考回路をしているせい だろうか。妙な、とかく妙な空気がそこにはあった。
87 : 「そ、そんなことより、これからレンカさんはどうするのよ?」 「あと三日ぐらいここに滞在した後に、各地を適当に回りながら物資を整えて、故郷にまた戻ります」 あからさまな話題転換の言に対し、当の巫女はこともなげに答える。それは、空気を読んだ上での態度だった のだろう。それに一も二もなく、メアリは飛びついた。 「不良巫女ね、外国に遊びに来てばかりじゃないの」 「こっちは儀礼道具を取り揃えなきゃいけないのに、出不精ばっかりで私が出ざるを得ないんですよ! だから こういった場所で息抜きのひとつぐらいもしないと、鬱憤で巫女長を殴り倒してしまいそうで……!!」 牛乳が入っていたコップを握り、だずん、と鈍い音を立ててレンカはテーブルにこぶしを打ち付ける。力自体 はあまり入っていないが、華奢な彼女が出すそれは、その身にはそぐわない大きさをもってして周囲の空気を切 り裂いていった。 はるか東方の地は、独特の文化や技術が発展している。言語もそのひとつであり、レウたちが用いるそれとは 根本的に体系が異なるらしい。だからして、レンカのように外へと出回る職の者は、外来語習得が必須項目であ るのだ。 しかしながら、外来語を上手に使えるのはレンカぐらいらしい。他の巫女も使えなくはないのだが、色々と勉 強経験が長いレンカと比べればつたないもの。儀礼用道具を購入する際、変なぼったくりに会わないようにする ためには、細かな言葉の理解は必要不可欠。必然、レンカにお鉢が回るというかたちに落ち着くのである。 適材適所、と言うのかもしれないが、当人にとってみれば使い走りをやらされている気分なのだろう。彼女の その琥珀色の瞳に浮かぶ、抑えられた憤怒の念は、視認可能なほどに明確でいてあからさまである。 「中間管理職は大変だなあ」 「パン屋もそれなりに大変そうでしょうけどね。まあ、隣の芝ならぬ職はドス黒く見える話ということで」 「まあ、パン食べろ。とりあえず新作でも食ってくか? 生贄になってみる?」 「いいんですか!? ぜひお願いします!!」 髪を乱し乱し、目を輝かせてぴょこぴょこと上半身を揺さぶるレンカ。 その姿を見て、レウは苦笑する。こういう可愛いところを見せれば婚期なんて逃しはしないのに、と。 「……なんですかこれ」 「納豆カレーパンだけど?」 「なんですかそのゲテモノは……って、うめえ! 地味にうめぇ!」 「あれれ? ネタで作ったのに、もしかして成功?」 妙な空気はあれども、今日も今日とて、シュムシュの町は平和な一時であった。 平和でいて、平和でいて、あまりに平和でいて、まるで、何かしらの嵐が起こる前の静けさのように。 ただ、ただ平和であった。
88 : あぎゃー!? 規制喰らったッ!? やっぱ15は多かったのかなあ……。 変な時間に落として正解だったな……。今回の投下はこれで終了です。 次もなるたけとっとと落としますます。それではまた。
89 : うむ 良いぞ良いぞ
90 : ここって未完?というかまだ途中の作品多いよね 楽しみに待つ。あともう少し人がいればなぁ。少し寂しい
91 : お初です。 自分でファンタジー小説を趣味(?)で書いてるんですが、ちょっとえちぃ場面が必要になりまして。 何でか、書きたいからです(苦笑) まぁその辺りは冗談半分ですけど、ここってシチュは限定なしですか? 一言で言うと「ロリ姉妹に逆レイプされる純情くん主人公(←18歳)」ですが。 まだまだ初心者で、投稿しても平気かなとかあるので、少し反応待ちです。
92 : 予め触れておけば問題なかろう
93 : 不安なら練習スレみたいなのなかったっけか? あそこ使ってみても良いんじゃないかな?
94 : なるほど。 とはいえ、一度は別スレに投下したこともあるので、苦情覚悟で投下します。 明日……もとい今日ですが、序章を投下しますのでよければどぞ。
95 : >>94 です。 冒頭だけ投下しますね。
96 : ある森の奥深く、冷たい空気が漂う地下牢の最奥の中、二人の人影が向かい合っていた。 その部屋は地下、窓もなければあるのは小さなろうそくの頼りない光、ほぼ無明の闇の中に張り詰めた空気が広がる。 一人は少年、名はシン。 華奢な体つきに胸元に赤い十字架が刻まれた漆黒の衣を身にまとい、銀色の髪をして首には長い巻き布。 腰には一本の刀が携えられており、やや膝を曲げて上体を捻るその構えは、刀を扱う技の中でも一際有名な技の構え。 その名も“抜刀術”、普通に刀を振るうよりも鞘の中で刀身を走らせることで、通常よりも速い速度で刀を振るう必奥義。 しかし外せば隙だらけのために乱用は出来ない、必ず決めなければ勝機はないが、シン自身は抜刀術には絶対の自信があった。 外したことがなかったのだ。 しかしそれに相対し、微妙な間合いを置いてシンの正面に立つのは、紫色の長い髪をした漆黒のローブを着た少女。 かなり背丈は小さく、シンの胸元まであるくらいの背丈ではあるが、抜刀術の構えを取るシンの前にいるのに余裕があった。 わずかにつり上がる口許には余裕さえ感じられ、シンの抜刀術の構えに対する構えは何一つない。 その姿勢からはただならぬ威圧感、シンよりも背丈は小さいのにその威圧感はシンを遥かに上回る。 その時、少女は参ったと言わんばかりに両手を左右に広げて口を開いた。 「やめなよ、旦那。わたしらがアンタを拉致して監禁したんだ、敵わないことは分かってるだろう?」 「知らないね。ボクはこんなところで監禁されるいわれはないし、されている気もない。悪いけど行くよ!」 シンが言い放った刹那、シンは一瞬で少女の間合いに飛び込んで、少女の右脇腹に抜刀術を放った。
97 : 同時に少女の右脇腹を中心に少女の体が“く”の字に曲がり、力なく地面に横たわる。 出血はない、シンの愛刀の逆刃刀は峰と刃が逆に作られているため、本気で斬りつけたところで斬れることはない。 しかし痛いことは痛いらしく、紫色の髪をした少女は脇腹を抑えながら、横たわりつつ痙攣していた。 シンは逆刃刀を鞘に納めると、少女が背にしていた出口に向かいながら口を開く。 「……脇腹は人体急所の一つだ、にはしないけど痛いことは痛いはずだよ。敵でも女の子に手は上げたくない、もう関わらないでね」 そしてシンは無事部屋を脱出した……はずだった。 シンが部屋から一歩出ると、突如としてシンは浮遊感を感じるのと同時に、足元に深淵の闇を見る。 左右には今まで床だと思っていた場所があり、足元が開いたのを察してからシンは吐き捨てた。 「しまった、罠か!?」 言うが早いか、シンはすぐに深淵の闇へ落下し始め、深い闇の中へ呑み込まれ始めた。 しかし不思議なことに、落下していくシンの視界には一定の感覚を置いて、壁にランプが付けられているのを捉えていた。 侵入者などをハメる落とし穴にするなら、すぐに剣山でも何でも立てておけばいいはず。 だがランプが付けられているのを見ると、まるで誰かが何かの移動にこの穴を使っているようだった。 それに深淵の闇に見えた闇に落ち始めてすぐにも関わらず、シンは目下にランプに照らされた巨大な水溜まりを見る。 水溜まりがあると分かれば生き延びる術も考える時間が出来る、そう考えたシンの中に答えは出た。 同時にシンは水溜まりの中に突っ込み、大きな水しぶきを上げながら水底まで沈んだ。 水溜まりがあることを分かっていたシンは落ち着いて対処し、そのまま水面へ上がる。
98 : シンは髪や服、逆刃刀の刀身や鞘から出来るだけ水気を切りながら、今の水溜まりを振り返った。 水底に仕掛けもなければ水に毒が入っているわけでもない、ましてや水にも仕掛けはない。 シンの結論が出た。 「この落とし穴、侵入者をすための穴じゃなかったみたいだね。しかしいったい何のためだ? こんな穴、作るのも一苦労だろうに……」 「お姉様は侵入者をすぐにすような方ではありませんわ、この部屋は我々姉妹の部屋。あなたがここにいるのはお姉様がやられたということ、お相手します」 水溜まりを見ていたシンの背後から静かな声が響くと、シンは一も二もなく逆刃刀を鞘に納める。 先ほどの少女を姉と呼ぶならこの声の主も敵、ましてや相手をすると言ったなら確定的だった。 時間を食えば先ほどの少女が追ってきかねない、シンは時間を取らずに抜刀術で決めなければと思い立った。 そして振り向き様にシンの視界に入ったのは、長く艶やかでシンと同様の銀色の髪をした少女。 服装は先ほどの少女と同じように漆黒のローブを着ており、非常に大人しそうに伏せがちな細い目をしている。 気持ち額が広いが、シンの狙いは人間共通の人体急所の一つである、少女の右脇腹。 一瞬その大人しそうな雰囲気に刀を止めそうになったシンだったが、相手をすると言った以上は少女でも敵は敵だ。 半回転しながらのシンの抜刀術は先ほどよりも速く、ためらいも振り切るようにシンは抜刀術を放つ。 その瞬間、少女は咄嗟に膝を曲げて地面に身を伏せてシンの抜刀術を避けた。 一撃必の抜刀術、外せば隙だらけの諸刃の剣を外したシンは絶望を覚える。 今まで外したことがなかった抜刀術を外したこと、それも相手は大人しそうな少女。
99 : しかしシンが体勢を立て直すよりも早く、少女は地面から弾かれるように跳び上がって、シンの腹に強烈な飛び膝を見舞った。 「がっ! く、ぁ……!」 「無作法で申し訳ありません。しかし先に刀を振るったのはあなたです、さて。オクヴィアス」 「はぁい♪お姉ちゃん」 オクヴィアスと言う名と可愛らしい返事が響くが、シンは自分の意識を保つので精一杯だった。 チカチカと視界に火花が散り、視界が揺れ、今にもシンは手放しそうだったが、倒れるわけにはいかない。 また監禁されては逃げられる可能性も薄くなる、シンは逆刃刀を杖に何とか意識を掴んでいた。 その時、シンの視界が漆黒の闇と何か酸い匂いに包まれるのと同時に、何かしらの生暖かいものがシンの首に巻かれる。 視界がないことが拍車を掛け、細々しいがふにふにとした柔らかさが心地よい、シンがそう思った瞬間。 再び何か柔らかいものがシンの首の後ろにのしかかると同時に、突然シンの首を絞め上げ始めた。 それは細々しさや生暖かさからは想像も出来ないほど生易しい力ではなく、すぐに絞め落とされると直感できるほど。 「かはっ……! なん、だって、いうんだよっ……!」 シンは慌てて首に巻き付いたそれに手を掛けようと刀を放し、腕を持ち上げようとした。 しかし刀が地面に転がる音が響くことはなく、同時にシンの腕も首に巻き付いた何かを掴むことは敵わない。 何かに固定されたように腕がまるで動かない、ところがそれもしっかりと固定されているわけではないが、わずかに上下するばかり。 首に巻き付いているものは、逆刃刀は、両腕は……シンは何が起こっているのかまるで分からずに数分後、闇の中で意識を手放した。
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