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2012年2月エロパロ76: ポケモン その21 (350)
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ポケモン その21
- 1 :11/10/25 〜 最終レス :12/02/11
- ◆ポケモン系のエロパロSSスレです 皆で楽しくマターリ行きましょう◆
※次スレは480KBor950レスオーバを見かけたら、早めに立ててください
【諸注意】
・人×人もしくは人×ポケモン専用スレです
・ポケモン同士及び801は、各専用スレ/他板がありますのでそちらへどうぞ
・題材は基本的に職人さんの自由です(陵辱/強姦/獣姦おk)
・荒らし&アンチへの反応は無用&スルー
・ポケモン板の話題を持ち込まない
・ここの話題を他板に持ち込むことも厳禁
※職人さんへのお願い
・台本形式(フグリ「おはよう」アレッド「よぉ、フグリ」など)は
嫌われるので止めたほうがいいです
・投稿する際には、名前欄に扱うカプ名を記入し、
冒頭にどのようなシチュのエロなのかをお書き下さい
・女体化/スカトロ/特定カップリング等が苦手な住人もいます
SSの特徴を示す言葉を入れ、苦手の人に対してそれらのNG化を促しましょう
※読者さんへのお願い
・SSを読んだ場合、感想を書くと喜ばれるかも
・作品叩きは荒れるので止めましょう
*苦手なカプ&シチュであってもSSに文句を言わず、
名前欄の語句をNGワードに設定してスルーしましょう*
・本人の許可なく投稿SSの続編及び改造は行わないでください
*SSは書いた職人さんの汗の結晶です…大切に扱ってください*
他スレへのご案内は>>2を
過去スレ一覧は>>3をそれぞれご覧ください
- 2 :
- 【ご案内】
■保管庫
http://sslibrary.gozaru.jp/
※その他のジャンル、ノンジャンルの部屋→ポケモンの部屋その1
(その2はポケモン同士スレの保管庫になります)
■絵板
http://oekaki1.basso.to/user71/pkemn/index.html
■エロパロ板内ポケモン系他スレ
【ポケダンも】ポケモン同士総合スレ14【本家も】
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1304080059/
ポケモンいとなみちゃっと〜第43夜〜
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1291780986/
■その他のスレ
ポケモンで801@その13
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1293347287/
PINK削除依頼(仮)@bbspink掲示板
http://babiru.bbspink.com/housekeeping/
- 3 :
- ■過去スレ
ポケモン その20
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1296735999/
ポケモン その19
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1290606361/
ポケモン その18
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1287031142/
ポケモン その17
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1285484092/
ポケモン その16
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1260979645/
ポケモン その15
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1243152196/
ポケモン その14
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1223218534/
ポケモン その13
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1214052359/
ポケモン その12ノコ
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1200838351/
ポケモン その11ブイ
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1194609742/
ポケモン その10カインのい10をはく
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ポケモン その9レセリア
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ポケモン その6
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ポケモン その5
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ポケモン その4
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ポケモン その3
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1104769969/
ポケモン その2
ttp://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1073303380/
ポケモン
ttp://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1009071438/
- 4 :
- >>1
乙!
- 5 :
- _人人人人人人人人人人人人人人人人人_
> ボクの全身から溢れる>>1へのラブ! <
 ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^^Y^Y^Y ̄
_
_,.. '''" ̄  ̄"'''- ..
! .r '''" ̄ ""' ` , `,
.! ,!_. .._ノ /
/ ___ _ , ノ`"'''- <
_`,'´ノ ヽ ! /\ 、 ` ._
ヽイ(ヒ_]´ヽ1 (ヒ_] 丶 ゝ ,ノ
| !'" ,___, ""! , フ
! ヽ _ン ! ,' '"´
V丶 __________, ヽ/ "ゝ
- 6 :
- >>1
ありがとう
- 7 :
- 主人公にやられるミニスカートか
- 8 :
- さっさと投下しろ
- 9 :
- 別の板でアカネとイブキに逆レイプされるSSが
- 10 :
- 誰かに呼ばれた気がする。投下再開。
コテは以上の様にお願い。エロパロで長年思い入れのある名前なので。
- 11 :
- 陸:愛を注ぐ責任
「・・・」
目を閉じて黙祷するレッドを横目に見ながら、リーフもまた思い出していた。
こんなに真剣に祈りを捧げられるなんて、余程相棒を愛していた証だろう。
リーフはそう信じて疑わない。
そして、想いの深さなら自分も決して負ける気はしないとも。
相棒を貰った当初は散々文句を言った気がする。
「やだやだあ! こんなのよりプリンが良い!」
まあ、子供……それも女の子にありそうな駄々だった。だが、それもリーフの気持ちになればそうだろう。世界で一番醜いと言われたポケモンを半ば押し付けられたのだ。
あれが無ければリーフが確実に投げ出していたのは確かだった。
「これなあに?」
「図鑑だよ。パパが各地で仕入れたポケモンの情報を纏めた物なんだ」
あれとは父親が纏めたポケモンのデータの資料を見せて貰った事だ。
図鑑と言うにはおこがましいポケモンの詳細な図解が載っただけの紙束だったが、その一部は現在のポケモン図鑑の礎になっていると知った時は大層驚いた。
「ほら、リーフ。これを見てごらん」
「んー? ――わあ」
そんな事よりも衝撃的だったのはとあるページに記されたポケモンだった。
「凄い綺麗! ねえねえお父さん! これ何て言うの!?」
「これはミロカロスって言ってね。世界一美人なポケモンさんだ」
慈しみを司り、見る者全ての荒んだ心を癒すと言われる逸話があるポケモン。その存在を知った時のリーフの衝撃は凄かった。
だが、それ以上に衝撃的だったのはそのヒンバスとミロカロスの関係だった。
「世界一ぃ? ねえねえ、リーフも逢えるかなあ? そのミロ……何とかさんに」
「逢える可能性は高いね。だって、リーフはもう持ってるだろう?」
「??」
「ミロカロスはね。ヒンバスが大きくなった姿なんだよ」
進化条件……美しさを重点に慈しみを以って育てましょう。
「ええ〜〜!? うっそだあ!」
「本当だよ。多くの事例を見てきたから間違いない。……リーフもこの子に会いたいなら、しっかり可愛がって育てるんだよ? 美容院行ったり、渋いお菓子を上げたりね」
「む、むうう……」
どうにもリーフは信じられなかった。あの格好悪い魚がこんな綺麗に化けるなんて、まるで醜いアヒルの子の様だったからだ。
しかし、父が嘘を言っているとも思えなかった。何て言ってもポケモンの研究を仕事にしている人だ。その知識は誰よりも深いに違いない。
「……分かった。頑張って、可愛がる」
「良い子だなリーフは。お兄ちゃんも龍鯉伝説を夢見て……かは知らないけど、コイキングを育ててるんだ。頑張りなよ」
何やら上手く誘導された気がしないでも無かったが、あの美しいポケモンが自分と居るのだと考えると幼いリーフのテンションは不思議と上がって来た。
- 12 :
- その日から一転してリーフは木の実栽培に夢中になった。父の言うヒンバスの美しさを磨く為にカントーでは普及していないポロックやポフィン作りにも手を出し始めた。
その実験台になったのは主に自分と兄貴。毛艶をなるべく消費しない為に、幼少の兄妹はポロックやポフィンの失敗作を食べて腹を壊す事が日常的だった。
美容院にだって通った。それだけでは足りず、自分でグルーミングの技術を学んだり、お隣のナナミお姉さんから教わったりもした。
そんな涙ぐましい努力の甲斐あり、リーフが小学校に入る頃にはヒンバスは見事ミロカロスへ進化を遂げていた。
全ては進化の為に。その副産物として、料理作り(ポケモン用)の腕はその年齢からは郡を抜いて上手かった。
小学中学年に入り、兄が図鑑編纂を断った事を切欠にリーフもまたそれを断る。
レッド程バトルが得手だった訳ではないし、グリーン以上のポケモンの知識は持ち得ない。自分にあるのは料理の腕だけなので、内心ほっとしている部分もあった。
それから少しずつだが、リーフもバトルのいろはを学び始める。やはり、血は争えないモノで、一年も経過する頃にはレッドと比べても遜色無いトレーナーへと成長していた。
――マサラに双神威(ふたつかむい)ありき
……そんな変な二つ名で呼ばれたりした事もあった。
……只管に愛情を以って接して来た。本当はバトルにだって出したくなかった。相棒が傷付くのが耐えられなかった。
それでも、少しでも兄の側にあって自分の実力を周りに認めて欲しかった。
『嗚呼、あたしってば相棒を道具として使ってる』
そう思った事も一、二度ではない。それでも、相棒は自分を信じて戦ってくれた。
……それならば。
「道具を道具として上手く使ってやるのが、トレーナーの宿命」
リーフはそう思い込んで自分を欺く事にした。……道具だ何て欠片も思っていない癖にだ。
そして、時は移ろいあの事件がやってきた。
――兄が、無二の相棒を失った
その時のレッドの憔悴振りと言えば見ているこちらが泣きたくなる程に酷かった。やせ細り、満足な受け答えすら出来ない。意味不明なうわ言を繰り返し、夜中に大声を上げて飛び起きて、トイレに駆け込み嘔吐する。半分病人の域だった。
とてもじゃあないが、数日前にあった目出度い事とその証を表に出せる状況ではなかった。
兄のギャラドスがぬ丁度二日前だ。相棒のミロカロスが何かを大事そうに抱えていたのだ。 見た瞬間にリーフはあ、これはと思った。
それはポケモンの卵だったのだ。実物を見るのは無論初めてで、途方に暮れている所に丁度通り掛ったオーキド博士が
『良し。そう言う事なら儂が預かろう! 儂も卵に触れた事は余り無いのでな。これは良いデータが……いや、ちゃんと預かるぞ? うむ』
……そんな事を言いながら卵を持って行ってしまったのだ。
レッドのギャラドスとリーフのミロカロスは非常に仲が良かった。育て屋に預ければ即行で卵が出来そうな程に。今迄見つからなかったのが逆におかしい位だった。
今思えば、これは自分の期を悟ったギャラドスが自分の血を残そうとした結果なのでは無いか、と勘繰ってみるも、それは本人達にしか分からない事だった。
……何れにせよ、こんな状況のレッドにギャラドスには残し形見が居ると言う事を伝えればどうなるか分かったモノではない。
リーフは結局、この事をレッドが落ち着く迄、黙っている事にした。
番を失って夜に泣いている相棒の姿を見てしまったと言うのも理由だった。人間もそうである様にポケモンも同じく悲しいのだ。
それから少し経ってレッドは大分落ち着く様になった。しかし、以前の様な感情は消えうせて、何処かが壊れてしまった事をリーフは妹として理解した。
その原因を作り上げたロケット団を大層、恨んだりもした。ギャラドスをした事もそうだが、兄の笑顔を奪った……否、した事は絶対に許せない。
リーフはレッドが自分に向ける笑顔が何よりも好きだったのだ。だが、所詮は小娘である彼女が出来る事は何も無かったのだ。
そして、リーフは引き続き博士に卵を預かって貰う様に頼んだ。新しい命を育てる精神的余裕は彼女にだって無かったのだ。
- 13 :
- ……そうして、とうとうリーフにも別れがやって来た。そして、それは今の兄妹の原型が出来上がった瞬間でもあったのだ。
どうもミロカロスの様子が芳しくない。最初は只の風邪だと思った。だが、違った。日を追う毎に弱り、とうとう自力では動けなくなる。
美しかった鱗は艶を失い、ボロボロと剥がれ落ちてくる始末だった。
ポケセンへ連れて行き、診断を受け、返って来たジョーイさんの答えは意外なモノだった。
――ポケルス感染
そんな馬鹿なとリーフは思った。
ポケルスはポケモンに寄生する微生物郡の総称で、発症確率は凡そ1/22000。そして、例え感染したとしても害を成さず、寧ろ得られる努力値が倍になる益を及ぼす存在だと習って知っていたのだ。
だが、ミロカロスが感染したものはそれらとは一線を画す危険なモノだった。
形態はポケルス様だが、他個体への感染力が無く、感染個体の細胞の複製機能を用いて自身の複製を作り出し、最後には細胞を破壊する。
……完全にウイルス感染だった。しかも、この複製の際に生成される毒素の強さと爆発的な増殖力は病と言っても差し支えない程のモノであった。
前述の通り、本来のポケルスは毒性が無く、感染個体は勝手に免疫を作り出して自力で治ってしまう。だからこそ、ワクチンや抗生物質と言った物が存在しない。
それはつまり、治療不可能と専門家から亡告知をされたも同義だった。
……更に恐ろしい事に、だ。
今迄、毒性を持つポケルスは発見された事が無い。今回のこれにはポケルスに似た特徴はあるものの全くの別物である事。致性が高く、感染力が無い事からこの致性ポケルスが何者かに創り出された可能性が高い事が示唆された。
つまり、ミロカロスは何者かが起こしたバイオテロの犠牲者である可能性があると言う事だった。
一体自分に何が出来るのか。リーフは力無く項垂れた。直る見込みの無い相棒をの瞬間迄看ていてやれと言うのか。今直ぐ姿も分からない犯人を捜して治療法を聞き出せば良いのか。
……考えが纏まらない。リーフは相棒が苦しんでいる家に帰るのが精一杯だった。その足取りは明らかにふら付いていた。
それからリーフは手を尽くした。最新の薬、民間療法、効き目のありそうなあらゆる方法を試した。そして、挫折した。
寝ずの看病を続け、倒れそうなりながらも、レッドや母に支援されながらそれでも頑張り続けた。グリーンやオーキド博士の手を借りたりもした。
『愛情以って、しっかり可愛がって育てるんだよ』
子供の時、父が言った言葉を実践する様に踏ん張り続けた。
だが、それでも神は応えなかった。
数日に渡り続いた地獄の様な臨終の苦しみがとうとう終わった。それは奇しくも一年前にレッドのギャラドスがんだ日だった。
医者が見守る中でミロカロスは息を引き取った。
体の大部分の肉が壊し、腐り落ちた凄まじい状況だった。慈しみの化身とも言われるミロカロスがそんな醜い姿を晒してぬ。
……こんな残酷な事があるだろうか。
臨終を告げられた瞬間、張り詰めていた糸が切れた様にリーフは意識を失った。限界はとうに超えていたのだ。
数日眠り続けたリーフが目覚めた時に、最初に目に入って来たのはテーブルに置かれた相棒の遺灰が入った骨壷と、剥がれ落ちた虹色の鱗だった。
「――――ッッっ!!!!!!」
リーフは泣いた。慟哭した。今ならば兄の気持ちを理解出来る。声にならない声で只管に泣き続けた。
後の顛末は大体がレッドと同じだ。塞ぎ込み、笑顔を無くした彼女は兄と同じ道を辿る。
『あはは……もうポケモンはいいや。可愛がる程に、別れは辛いって判ったから、さ』
こうして、リーフは兄と同じくポケモンから足を洗ったのだった。
リーフはその騒ぎの後、オーキド博士に卵の処遇についてこう言った。
……無期限に預かって下さい、と
一心に愛され、またそれに応えた彼女の相棒。遺された鱗は、今も彼女と共にある。
- 14 :
- 本来はこれで終りだけど、日にちが空いたのでもう一発。
良いよね?答えは聞いて(ry
- 15 :
- 漆:打ち込まれた楔
話はそれで終わらない。
二人にとっての運命が決する日が唐突に訪れた。ミロカロスの件が終わって数ヵ月後。
その日、母は不在だった。久し振りに帰って来た父と旅行に行ったのだ。
レッドもリーフも宅配ピザを喰いながら居間でテレビを見ていた。
「……おい、こいつは」
「ん? 何々?」
唐突にレッドが声を荒げた。大分元気を取り戻していたリーフが面白い物でもやっているのかと寄って来る。
「え――」
画面を見て絶句するリーフ。それはある事件を報じるニュースだった。
『バイオテロの首謀者逮捕! ポケモン研究所職員、ロケット団と内通か』
……こんなテロップが付いていた。
概要はこうだ。数ヶ月前にミロカロスが罹患した致ウイルスはロケット団と関係していたとある研究員が提供された資材とサンプルから創り上げたと言う事が判明したのだ。
創られたウイルスはデータ収集の為に飲み水に混入され、その水を使ったマサラからトキワ間の数多くの野良、飼いポケモンが被害に遭い、命を落とした。その数は報告されるだけで百件を超えていた。
これだけでも大問題だが、更に悪いのはその研究者が現役のグレン島ポケモン研究所職員であり、ウイルス開発の一部はその研究所の設備が使われたと言う点だった。
始めは別件捜査だったらしいが、その痕跡が日向に出て来た為に今回の大々的報道に至ったのだ。
……研究所の保安体制はどうなっているのかと各所からクレームが飛んで来そうなスキャンダルだった。
そして最高に傑作なのが、検挙された研究員のコメントだ。
『研究の為にポケモンがどんな目に遭おうが関係無い。科学を追及して何が悪い』
……もう、笑うしか無かった。それでいて、胸糞が悪くなる話だった。耐え切れなくなってリーフはテレビの電源を切った。
- 16 :
- 「――何よ、それ」
世界の全てが色を失ってしまった様だった。黙っていても湧き上がる感情の波。諸々の負の想念がリーフも肉体と言う殻を破って飛び出そうになる。ワナワナと震える握り拳からは血が滴っていた。
「・・・」
レッドは若干、顔を俯け、目を閉じてソファーに座っていた。何を考えているかも知れない彼の佇まいには或る種の不気味さが在った。
「何なのよ、その理屈。関係無いですって? ……こんな、こんな無責任な奴等に、ミロちゃんは……!」
あの時、味わった苦悩や絶望は何だったのか。研究と言う名目で命すら奪われた相棒の生にはどんな意味があったのか。
自分を取り巻く全てが理不尽で、ずれている。そんな風に鬱憤を撒かなければとてもじゃないがリーフは正気を保てそうも無い。
「落ち着けよ、妹」
レッドは尚も冷静だった。今にも外に飛び出しそうなリーフを宥める様な言葉を掛ける。
「はあ!? 何言ってんのよ! アンタだって相棒されたでしょうに! それとももう忘れちゃったのかしらね!? あの痛みを!」
だが、それは妹の逆鱗に触れた様だった。状況は違うが、喪ったと言う痛みを共有していた筈なのに。
『兄貴も同じだと思っていたのに』
初めてレッドに裏切られた気がして、リーフは激しく敵意を剥き出しにして、レッドの胸倉に掴み掛かる。
しかし。
「んなわきゃあねえだろうが!!」
「ひっ!?」
……吼えた。窓硝子がビリビリと振動する程の大声だった。リーフは一瞬にしてクールダウンし、手を放して尻餅を付く。レッドの目を見てしまったのだ。
自分と同じ、空色の、偽りの瞳。在り得ない筈なのに、その中に赤い光を見た気がした。
「今も燻ってる。いや、煮え滾ってるぜ。忘れられる訳が無ぇ」
レッドは決して冷静な訳では無かった。静かに、それでも確実に怒りの炎を燃やしていたのだ。その証拠にレッドの口の端から血の筋が伝っている。噛締め過ぎて、歯茎から出血していた。
「そ、それならどうして!」
怯んでしまったが、リーフは引き下がらない。どうして自重する必要があるのか。もう掴み掛かる様な勢いは無いが、それでもキッとレッドを睨み付けた。
「ここで喚いても何にもならんて事だ」
「――ぐっ」
正論だ。此処で泣き叫んでも犯人が都合良くんでくれる訳じゃない。
逆鱗だって、使用すれば最長三分の高火力指向の後に疲れ果てて混乱する運命が待っている。怒りの爆発は短時間しか効果を現さない。
それならば、静かに気付かれない様に、その時が来る迄剣の舞でも積んでいた方がよっぽど建設的だとレッドは知っていたのだ。
リーフは悔しげに歯噛みして、不機嫌そうにソファーに腰を落とした。
「……どうして、どうしてこんな奴等が居るのよ。ミロちゃんがななくちゃいけなかったのよ……! …………神様、酷いよ」
恨み節がみっともないと言う奴が居るかも知れない。だが、今はそれに縋る事しか出来ない。悔しくて、許せなくて。
神を呪う言葉を吐くリーフは目から溢れる涙を止められなかった。
「居ないんだろうさ、神なんて」
「え」
レッドの言葉がリーフに刺さる。涙の玉を散らして、レッドを見る。
「神に慈悲があるなら、こんな事にはなっていない。だから、俺は神を信じない。縋ったりもしねえ。俺は、自分を当てにする」
神もまた人の創造物であり、それらは信仰を糧にしなければ生きられない。
つまり、祈りの一つすら捧げない人間に神が奇跡を見せる事は無いのだ。
信じないのならば、それは存在しないも同義だ。そう言う意味では確かに、レッドは神を信じていない。信じる者しか救わない、そんな不確かな存在の力を借りたくも無かった。
「……そっか。居ないんだね、神様ってさ」
神の存在を何処かで信じていた節がリーフにはあった。だが、それは存在しないとレッドに突き付けられた。そして、それに反論する気は無い。
信じる事が信仰心だと言うのなら、今確かにリーフの信仰心はに絶えた。
- 17 :
- 「あたしさあ。こんなに、こんなに何かを憎んだの始めてかも。……憎いよ。奴等が」
「憎いのか」
世界は理不尽で、歪で、狂っている。そんな中を生きる自分は何を信じれば良いのか?
唯一、確かなのは自分には憎しみが存在する事。リーフはそれを信じたくなった。
「憎い。百辺しても足りない。皆しにしてやりたいよ」
「復讐、したいのか」
底無しの深遠に引きずり込む様な空恐ろしい低い声。リーフもまた色濃い闇を抱えて生きている。今はそれに蓋をしようとは思わない。寧ろ、思う儘にブチ撒けたかった。
「だって、そうじゃないとミロちゃんもギャラ君も何でんだのか判らない。……成仏出来ないよ」
理不尽に命を奪われた二匹の無念はどれ程深いのだろうか。の瞬間、相棒が何を考えていたのかは知らないが、若し二匹が今のニュースを見ていたのならば、人間でなくても絶対に首謀者を許さない筈だ。
少なくとも、リーフはそうだ。首謀者も、何も出来なかった自分自身も。
そして、そんな感情を抱えていては、向けられれば、綺麗に成仏なんて出来る訳が無い。
「そう、だな。俺も同じだ」
「兄貴……」
レッドが始めてリーフに同意した。根っ子の部分で二人は同じだ。兄妹だからじゃあない。生き方や思考形態、その他諸々が生まれながらに重なっているのだ。
だから、リーフの悲しみや憤りを我が事の様に正しく理解出来た。
「失態を誰かの所為にするのは厭だった。だから、相棒がんだのも俺の天狗が原因って思ってた」
失敗に対する責任転嫁は人間ならば誰でもやる事だ。だが、そうやって己を省みる事の無い人間は決して進歩しない。
ギャラドスの一件が骨身に沁みたレッドはそれだけは徹底する事を心に誓っていた。己への戒めと罰として。
「でも違った! ……こいつ等は屑だ。生かしちゃ、おけねえ」
確かにギャラドス亡の大きな要因はレッドの判断ミスだ。だが、そもそもレッドがあの場に居なければ……否、ロケット団が事件を起こさなければこんな悲劇は起こり得なかったのだ。
と、なるとその責任を負わねばならないのは誰なのだろうか?
憎悪を向ける対象は何なのか。一番ななければならないのは何処の誰なのか。
……二人の答えは決まっている。
「は――」「く――」
互いの顔を見合わせて、瞬間魂で理解する。ああ、こいつは俺(あたし)だ、と。
コインの裏表、実像と虚像。似ている様で正反対。だが、それでも二つは同じ。
自分と似通った……否、同じ存在がこんな近くに居た。少なくとも自分は世界で一人きりで無いと言う事に安堵する。嬉しくて堪らない。
「ふ、ふふ、は、あは、あはははははは……」
「く、く、きき……くひひひひ……!」
何故だか、今度は笑いが込み上げて来た。それを止めようとは思わなかった。
――決定的な何かが壊れた
レッドとリーフはそれが自分で判ってしまった。
『きゃあっはっははははははははあ――――っっ!!!!』
『ひぃひゃひゃひゃははははははは――――っっ!!!!』
笑った。嗤った。哂った。壊れる程に。ゲラゲラと。腹を抱えて。バンバン床を叩いて。
一度、された心が墓場から蘇る。
……見つけた。捕らえた。心に楔を打ち込んだ者達を。復讐と言う新たな生きる目標を与えてくれた者達を。
これ程愉快な気分にさせてくれたのは相棒が居なくなってから初めてだ。だから、今迄溜め込んでいた全てをぶちまける様に二人は笑う。
知らずに涙が溢れて来ていた。レッドにとってはもう枯れたと思っていた程久し振りの涙だった。
- 18 :
- 少し間を置いて、落ち着いた二人。その眼光は誰から見ても狂っていた。
「ロケット団を皆す。……新たな目標が出来た訳だが」
「実際どうしよう。どうすれば復讐って出来るの?」
復讐に正当性を求める事は間違いである。だが、心に湧く憤りは少なくとも自分達にとっては正しい怒りである事を二人は信じて疑わない。
だが、その実現には多くの壁が立ち塞がる。
「黙示録を始めるにゃ武器がいる。後は武術の修練。当面はそれだな」
占拠事件の時に連中は銃で武装していた。そして、恐らくだが戦闘訓練も受けていた。
為らば、こちらにも相応の武器が要る。加えて、自分自身の鍛錬。生身の殴り合いで負けない様にする為に。最後の最後で頼りにするのは結局自分自身だからだ。
「ポケモンは、必要かな」
「・・・」
思考が一端停止した。直ぐに再起動。
……ポケモンマフィアと呼ばれている位だ。ポケモンを武器として使用する可能性はかなり高い。為らば、こちらも手駒としてのポケが必要になってくる。
だが、今の自分達はポケモンに触れられるのだろうか?
復讐の駒として使役する覚悟はあるのだろうか?
「それについては保留だ。お互いに心は癒えていない……そうだろ?」
答えは直ぐに出た。Noだ。付けられた心の傷は未だに血を流している。瘡蓋すら出来上がっていない。そんな状態でポケモンに触れるのは酷だった。
「ん……確かに、今は未だ辛いよ」
「だな。お互い、時が来る迄待つ事が寛容、か」
果たして、完全に癒える時は来るのだろうか。……今は未だ判らない。
何れ来る黙示録の日に備え、己を鍛え、最後には復讐を遂げる。
そうしなければいけない。そんな気だけはしていた。
「これで、俺もお前も未来の共犯者、だな」
あくまで仮決定だ。未来は未定なので覆る可能性はあるが、レッドはきっとリーフと共に復讐を始めると言う確信めいた予感があった。
……人をめる事。その罪を妹にも負わせる事をレッドは済まないと思っていた。
「ん。でも、あたしはそれでも良いよ」
反面、リーフの表情は穏やかだった。動揺すらしていない実に漢前な姿だった。
「それは?」
思わず聞き返してしまった。自分には未だに迷妄が渦巻いていると言うのに。
自分には無い強さの秘密を知りたかったのだ。
「だって、一人じゃそんな大それた事無理だし。でも、お兄ちゃんとなら出来る気がする。寂しくもないから」
眩む様な笑顔だった。その秘密とは……覚悟を決めた女としての強さだろうか?
何れにせよ、自分では到達出来ない領域である事は確かだった。
「大したもんだな、お前は」
そんな妹の姿が眩しく映った。素直に褒め称える兄貴の顔もまた、妹を自慢に思っている様に誇らしげだった。
「そうでもない。内心、恐怖で一杯。でもね」
だが、リーフはレッドの言葉に首を振った。自分の抱える弱さを晒す彼女は良く見れば、憎悪と狂気に押し潰されない様に必に自分を繋ぎ止めている様だった。
「うわ」
どっ、とリーフが倒れ込む様にレッドの胸に収まった。肉付きの良い、それでいて驚く程華奢な身体は何かに耐える様に小刻みに震えていた。
「こうすれば、怖くない」
まるで自分にそう言い聞かせるみたいな痛々しい姿。
レッドは自分の目が曇っていた事を知った。リーフは自分と同じく涌いた負の感情に迷い、それを持て余して押し潰されそうになっていた。覚悟なんて全く決まっていない、只の空元気だったのだ。それ程迄に打ちひしがれている。
「お兄ちゃんに、縋らせて……」
その言葉が決定的だった。
――縋りたいのはこちらも同じ
もうレッドはお互いそれ位しか救いは無いと本気で絶望した
激しい程に脆く、壊れ易いのが人の心だ。持て余してそれ故に苦しむなら、壊れてしまった方が時に生き易い事がある。
そんな思いがレッドに最後の決断をさせた。正気じゃ復讐なんてやってられない。それならば……
「……いっそぶっ壊れるか。修復不能な迄に」
復讐を望む二人に正気は要らない。それを捨て去り、悪魔と契約する為の儀式。自らの意志でモラルの一線を踏み越えて、狂気と憎悪を喰らって力とする。
生贄は……妹と自分自身。
無性に、レッドはリーフが欲しくなった。
- 19 :
- 「リーフ」
「へ」
決意に満ちた瞳で、しっかりとリーフの空色のそれを見遣るレッド。
きょとんとはしているが、怯えた様子は無かった。
それが好機と思った訳では無いが、レッドは自分の胸の内を一気に伝える事にした。
気取った言葉は思い付かない。それでもそれは妹への……否、リーフへの思いを綴った言葉であるのは確かだった。
「俺と一緒に地獄に落ちてくれ。代わりに、俺の全部をくれてやる。だから……」
だから……だから、えーと……言葉が途切れてしまった。
滑稽過ぎて自分で泣けて来た。やっぱり気取った真似何てするもんじゃないとレッドは少し後悔する。だが、少なくともリーフにはそれは伝わっていた様だ。
「…………ふふ」
その言葉を反芻して告白された事を理解する。つまり、ぬ迄一緒に居てくれと言う事だろうか? ……きっとそうに違いない。リーフは微笑み、そう自己完結した。
――ちゅっ
首に手を回して、これ以上無い程密着。大きいだけで役に立たなかった乳を相手の胸板に押し付けながらキスしてやった。
「あたしは構わない。落ちる地獄が一緒なら、あたしもお兄ちゃんが欲しい……」
自分が些かブラコン気味だった事は周知の事実だし、否定したくても出来ない。
だが、許されるのなら、ずっとこうしたかったのも事実。やはり、自分の素直な思いと言うのは裏切れなかった。その証拠に、胸も顔も燃える程に熱いのだ。
「……済まん。兄貴として最低だな、俺は」
「それでも良いの。あたしも妹としてはもっと最低だから。だってね?」
吐息が掛かる程、お互いの距離が近い。今迄、こんなに接近した事は無かった。やはり、兄妹と言っても他人同士だった。だが、今からは違うのだ。
それを示す様にリーフは極上の笑みを浮かべ、こう言った。
「お兄ちゃんの事、男の子として好きだから、あたし」
――兄貴が、好き
「うぐっ!?」
リーフのハートブレイク! 急所当り! 効果は抜群だ! レッドの理性は倒れた!
そんな事言われて喜ばない兄貴が居るものか! シスコンで何が悪いっ!
「お、お前……ぐはっ! あ、侮れんな……!」
な、なんて顔しやがる! これが妹の女の顔、なのか!?
血反吐吐きそうになりつつ、何とか踏み止まった。股間のギャラドスに血が巡って行くのがレッドには知れた。顔面も火を噴きそうな程に赤いのは間違いないだろう。動悸だって豪い事になっていた。
「だから、ね」
「あ、ああ」
気が付けば圧し掛かられていた。良く見れば、リーフの目は尋常成らざる光を帯びていて、赤い残光が宙に軌跡を描く。空色である筈の瞳が爛と赤く光っている。
流石のレッドも怯む威圧感だった。
「狂っちゃお? 人さないといけないんだよ? その通過点って思えば、ね?」
怖い事なぞ本当に何も無い。リーフなりの決意、そして兄への愛の示し方だった。
「修羅の巷は歩めないってか? ……はっ! 上等だぜ」
キュウ、と口元を歪めて逆に押し倒した。
此処で情けない姿を見せれば男が立たない。少なくとも、リーフにそれは晒したくない。
これから共に地獄を歩むだろう相棒に、レッドは覚悟の証を刻み込む。
……復讐が善だなんて絶対に言わない。だが、それでも復讐に臨む限りこの関係は傷の舐め合い以上に尊いモノだと信じたい。そうでなければ、全く救いが無い。そんな現実は認めたくもなった。
『一緒にんでね お兄ちゃん』
リーフの声が予言の様にレッドの頭に鳴り響く。これ以上無い程二人は呪われていた。
この夜を境に、兄妹は自ら一線を超え、完全に壊れた。
その全ては復讐の為に。だからこそ黄泉戸喫すら是とした。
来る日に備え、着実に憎悪を募らせ、の牙を研いでいった。
……互いの肉体を貪りながら。
- 20 :
- 何かスレを占有してるような罪悪感に駆られる。他の職人さんも是非投下して欲しい。
一人きりは寂しい。。。
- 21 :
- GJ
一応執筆中だが終わんないんだ頑張っててくれ
- 22 :
- >>20
無理をしないで頑張って
- 23 :
- それは仕方ないと思う。
個人的な意見だが、改行が少し気になるけどこの文量とクオリティだろ?その合間を縫って投下するのは結構なプレッシャ―だろうさ。自信と度胸のある奴を気長に待ちなよ。
ところでリーフたんがエロエロするのはまだですか?そろそろ全裸待機が辛い・・・
- 24 :
- 服着ろよww風邪ひくぞww
- 25 :
- >>20
乙!
ここまできたらリーフのエロエロは別話でもいい気がしてきた
- 26 :
- 捌:詭弁と正論
墓参りを終え、魂の家を出る時に見知った人物と出会った。
「おお……これは久しい」
「「ご無沙汰しています」」
兄妹が同じタイミングで頭を下げた。人当たりの良さそうな老人だった。この慰霊施設の管理者であるフジ老人だった。
実は兄妹に取っては馴染み深い人物でもある。父がこの人に師事していた事もあり、子供の頃から何度も会っているのだ。二年前もロケット団が塔を占拠した時に助けた縁もある。
「ギャラドス達の様子見かね。関心々々」
「ええ。墓の掃除と……決意表明とでも言いますか」
「命日には早いですけどね。来ちゃいました」
「ほっほっ。こう言うのは気持ちと行動が大事なんだよ」
本当に話していて、心が解れる様な不思議な雰囲気の老人だった。あのレッドが家族以外でも感情をあまり硬化させない数少ない人物でもある。
……この御仁がアレを作り出したと言うのは凡そ信じがたい事だ。
「それにしても決意表明、かね」
「「!」」
しっかり聞かれて居た事を理解し目を丸くする二人。意外と耳聡い。どうやら古狐としての一面もこの老人は持つらしい。
「ロケット団かね?」
「ご存知、でしたか」
やはり、彼は知っていた。それは当然だろう。二回の葬儀の時、その何れもフジ老人は参加していたのだから。
「噂程度にはね。ジョウトが何やらホットな事態になっていると」
この人の耳に入る程事態は逼迫していると言う事か。ナツメの情報はその信憑性を大きく増した。
「ふむ……」
……まるで値踏みする様にこちらを見てくる。底知れない何かを感じ、自然と唾を飲み込む。
「未だ、血を流し足りないのかな?」
「量の問題ではありませんよ。復活したから、滅ぼす。それだけの事です」
自分達の事情を知っているフジに詳しい説明は不要だ。レッドは敵と相対する様に身構えて、考えを言う。
「生を重ねて、君達は何を望んでいるのかね」
「知れた事です。された相棒達の魂の安息。奴等がのさばる限り、成仏なんて出来ませんから」
それを叶える為に自分達は憎しみを募らせて来た。そして、二年前にそれは確かに叶えたのだ。だが、今尚ロケット団が跋扈する事実。
リーフにはそれが捨て置けない事態だった。
- 27 :
- 「んだ者の為か。その心意気は立派だが、それは本当に?」
「それはっ」
図星を突かれた。リーフは言葉に詰まる。
それは何度と無く考えた事だった。その度に忘却した。考えてはいけない事だからだ。
「お見通しですか」
だが、レッドは少し違うらしい。リーフをフォローする見事な切り返しだ。
「伊達に歳は取っておらんさ」
フジは尚も余裕を崩さない。不気味な怖さを保っていた。
「相棒が成仏してるかどうか何て、確認しようが無い。その解釈は生きてる俺達にしか出来ない。だって、人は意思疎通が基本、出来ませんからね」
「つまり、君達のポケモンは復讐を望んでいると?」
確かに、イタコでも介さない限り、それは無理な話だ。だからこそ、その遺志を都合良く曲解するも、拡大解釈するも生者のみに許された特権だった。そして、相棒をされたレッドはそう出来る権利があった。
「それを決めるのも元飼い主の俺達ですよ。少なくとも、俺のギャラは訴えてる。仇を討ってくれって」
「あいつ等にされたポケは多い。だからこそ、あいつ等は知らなきゃいけない。者の怨念は沈黙しないって。あたし達は相棒に代わって怨念返しするだけです」
何かを成すには大儀名分が必要になってくる。世の為人の為じゃない。された者の恨みを晴らす為に。それだけでも理由としては十分だ。
ポケモンと人間。どちらかの命が一方的に重い訳ではない。命と言う括りでは両者の重さは均等な筈だ。為らば、それを奪った者には相応の報いが与えられなければ嘘になる。
それが間違いと言いたいのだろうか。それを決めて良いのは当事者である二人だけだ。
「ポケモンの魂を縛り付けているのは他ならぬ君達自身ではないのかね」
「だから、何です? 解放されたいなら、切り上げろと? 相手を許せと、そう仰いますか」
「出来ない相談です。それをしたら今迄の自分を否定してしまう。だから、出来ません」
自分等が恨みを捨てられないから、相棒達は逝き場に迷っている……この老人はそう言いたいのだろうか?
だとしたら反吐が出る話だった。何処迄行っても他人事な無責任な発言だった。
復讐に踏み切る迄に幾度も苦悩し、考えた。その全てを捨て去れとでも言うのか?
そんな事をすれば今の自分が崩壊する。だから出来なかった。
- 28 :
- 「その先に何が待っているか、判るかね?」
「さあ? 取りあえず、僅かな安息はありましたがね。それも、容易く破られましたが」
「もう一度滅ぼせば、少なくとも相棒は成仏出来る。そう信じてますよ」
……一体、この人が何を言いたいのか判らなくなってきた。
更正させたいのか、それとも背中を押したいのか。それとも、復讐を本当に遂げた後の生き方についてだろうか。……確かに、それについては迷っていた部分はあった。
「つまり、何も無かった訳だね。そんな生き方に何の価値があるね」
「無益と仰りたい? それはあなたにとってだ。少なくとも、俺達にとっては意味のある事だ」
「無価値かも知れません。でも、最悪自己満足位は生んでくれますよ。そして、あたし達はそれで良い」
この世に無意味な物は存在しない。全てが世界を回す歯車だ。だから、過去に決着を付けると言う意味で、二人は復讐を遂げねばならない。
それに価値があるか否かは別の問題だ。リーフの言う様に、最後には自己満足しか得られないかも知れない。だが、二人はそれで良いのだ。
その生き方を貫く事にはきっと価値があるからだ。
「何とも頑なだ。それ程、憎いか」
「憎い。憎む事が、俺達の生きる糧だから。そう二人で誓ったんだ」
「自身の正当化はしない。でも、あたしは憎いんです。だから、すんです」
復讐に縋らねば生きられなかった。そして、人しとして一生を地獄で生きて行く。
兄妹はそう誓い合った。それだけは曲げられない。……否、決して曲げてはならない誓いだ。何故なら、もうとっくに二人の全身は血塗れだからだ。
- 29 :
- 「そう言うあなたはどうなんです?」
「私かね?」
今迄受けに回っていたレッドが反撃に出た。手数は平等に……と言う訳では決して無い。
「あなたのやっている事も自己満足と言いたいんですよ」
「む」
無遠慮に古傷を抉ってくれたこの老人に一言言って置かなければどうにもリーフの腹は収まらなかったのだ。
「俺達は自分の罪を認識してる。何れ、裁きを受け、地獄に落ちる。だが、それは今じゃない。さなくちゃいけない奴等が山と残ってる」
「しかし、あなたは自分の罪から目を背け、その贖罪から慈善事業をやっている。ポケモンを助ける為ではなく、自分が救われる為に」
自分達は人しで、悪人で……冗談抜きで最悪の人間だって理解している。
それでも自分を曲げないのは遣り残しがあるからだ。
だが、目の前の老人はどうだろう?
慈善家としては有名だが、それ以前の彼の顔を知っていればそんな事は決して言えなくなる。その過去はどうやっても消えない。
「「これが自己満足じゃなくて何だって言うんです」」
二人の声が重なる。フジは何も言わなかった。
「ミュウツーを造り、その力に恐怖し、持て余してハナダの洞窟に捨てたな」
「罪の意識から、ミュウを人里から隔離する為に最果ての孤島に捨てたわね」
フジの持つ後ろ暗い過去だ。ミュウツーに関しては自力で研究所から逃げたとの情報もあるが、持て余していたのなら遅かれ早かれ彼はミュウツーを捨てていただろう。その真偽は大した問題ではなかった。
兎に角、彼は自分の果たすべき責任を放棄したのだ。
……そんなのは大人のやる事じゃあない。
「元気にしてるよ。二匹とも」「あたし達のボックスでね」
その二匹は幸運な事に二人にピックアップされていた。ミュウツーは二年前にハナダの洞窟最深部で。ミュウはホウエンの友人から送られた古びた海図を頼りに辿り着いた孤島にて。
そう懐いている訳では無いが、二匹共一匹で居た時よりは幸せそうだった。
「無責任」「偽善者」
持て余して捨てる様なアンタと俺達は違うと侮蔑たっぷり言葉を浴びせ続ける。
「ポケモンを実験材料として、道具として使い、容易く切り捨てる」
「そんなあなたはあたし達の生き方に口出し出来る程」
「「優秀な人間なんですか?」」
敵愾心剥き出しにして吐かれたフィニッシュブローだ。
過去の自分を否定し、救われたいだけのアンタには何も言う資格は無い。
二人が本当に言いたいのはそう言う事だった。
「……さあどうだったか、なあ」
フジは狼狽の一つもせずに、只目を閉じてそうとだけ呟いた。
- 30 :
- 「最早何も言うまい。君達の好きにやりなさい」
「「言われずとも」」
最早、互いに掛ける言葉は無い。去り際に背中に掛かる言葉に二人は振り返らずにそう答えた。
「きっと、今の俺達では、表面上は重なっても、深い部分で絶対交わらない」
「だから、全部の決着が付いた後に、もう一度会いたいものね」
シオンを去る間際にレッドが零した。別にレッドはフジ老人が嫌いな訳じゃない。寧ろ、人間的に尊敬出来る部分が多々あった。リーフもそうだ。
だが、お互いに譲れない部分はある。だからこその衝突だった。
終わった後に何があるのかは判らない。だが、それが見えた時に、二人はもう一度此処に来ようと決めた様だった。
「……偽善、か。確かに、そうかも知れん」
天井を見ながら、そう呟くフジ老人の顔は只管に疲れきっていた。普段は誰にも見せないであろうその表情こそが、この老人の真の姿なのかも知れなかった。
- 31 :
- やっとこさ全部書き終えた。前みたいに半日一回ペースで投下しようと思うけどどうっすかね?
エロエロは後三回くらい後。だから服を着てくれw
- 32 :
- 全然okGJ
なんかこのシリアスな良作が終わるまで
俺の煩悩丸出しの作品なんて投下できるわけないwwwwwwwwwwwww
ネタは小出しに長持ちさせつ後続に繋げるのが戦場の上策、チマチマ行こうぜ紳士諸君
- 33 :
- >>32
レスありがとう!読む方も都合があるから、どうやったら読んでくれるかも考えないと長続きしないっすよね。
できるなら投下して欲しいが…
- 34 :
- 独りじゃないと思えばモチベもあがるな、楽しくやろうず
- 35 :
- 捌:怨念返し
二ヶ月が経過した。季節は初夏。命が芽吹き、木々は青々とした葉を広げていた。
あれから、ジョウトのロケット団の噂を聞く機会は日を追う毎に増していくが、カントーで姿を見せたと言う話だけは何時迄経っても耳にする事が無かった。
だが、遂に奴等は姿を現した。
――ニビシティ
博物館に論文の作成資料を取りに来たレッドは街中で旧友に会った。
「……未だ化石堀り続けてるんだな」
「まあね。昔からお月見山には通ってたからさ。今は専らディグダの穴だけど」
――ジムリーダーのタケシ
レッドの小学、中学の同級生。高校は違ってしまったが、地理的には距離は離れていないので頻繁に会う事が多かった。レッドにとってはグリーンに並ぶ数少ない親友の一人だった。
そんな彼は今やニビの専任ジムリーダーであり、副業として様々な場所で化石の採掘を行っている。
大家族を養う彼だが、アニメ版の様に父親や母親が夜逃げしたりはしていないので家族仲は滅茶苦茶良かったりする。リメイクが進む度にイケメン化が進む糸目男爵様だ。
「でも、何であそこは新しい道になったんだ? 前は地下に広かったろ。広場への道何て無かったし」
「旧坑道は落盤の危険があったんだよな。だから其処を封鎖して、頂上に通じる新しい道が急遽ね。……未だ掘り尽くして無かったんだけどさ、あそこ」
コンビニ前で屯しながら駄弁る。レッドは煙草を吸い、タケシは明るいのにビール何て飲んでいた。
- 36 :
- 「何か変わった事あったか?」
「変わった事ぉ? うーん……」
近況報告を兼ねた世間話。しかし、誰もが面白がる変わった話と言うのは案外無かったりする。タケシが首を捻る。
「そう言えば、お前カスミとどうなってるんだ? 情報が入って来ない」
「あ? あー……ぼちぼちかな」
無いのならば無理矢理話を振ってやれば良い。お題は恋バナ。ニビとハナダのジムリーダーは随分昔から懇ろな仲だったりする。
「要領得ないな」
「この前喧嘩した」
「ふむふむ」
可も無く不可も無くと言われても状況が判然としない。そうすると、喧嘩をしたと言う言葉が出て来た。……まあ、喧嘩位は付き合ってるならするだろう。
レッドだって見せないだけでリーフと何度も殴り合っている。
「当て付けか、別れるって電話来て、新しい彼氏紹介された」
「ふむふむ……何っ!?」
おっと!? これは破局のサインか!? レッドも興味津々と言った感じだった。
「ハナダジムのトモキさんだった」
「あ、ジムトレーナーね。……完全、当て付けじゃねえか」
その人ならレッドも見た事がある。船乗りの波野智紀さん(32)。あの人は確か奥さんが居た筈だ。それを彼氏と紹介するのは……不倫でなければ、タケシの気を引く罠だ。
付き合わされたトモキさんも可愛そうに。奥さんと喧嘩していない事をレッドは祈った。
「で、土下座した」
「……したのかよ! で、どうなった」
まあ、男の土下座は決して安くは無いが、それは時と場合による。寧ろ、それで女の機嫌が直るなら安いモノだ。だが実際にやるかどうかは……その辺りは個々のプライドの大小で違うだろうが。
「仲直りした。それで謝罪として飲みに連れて行けって」
「……アイツ未成年だよな? まあ、誤魔化せるだろうけど。で?」
タケシはレッドと同じく22だが、カスミは確か未だ18でぎりぎり女子高生だ。バレれば些か面倒臭いが、何とかなったのだろう。
「しこたま飲んで、あいつが酔い潰れて、家迄負ぶってった」
「……泣かせるな、そりゃあ」
何て健気だ。大家族の長男として弟や妹の面倒を見てきた故の懐の広さだ。カスミは姉妹の末っ子故か、かなり我侭で気が強いから、付き合うとするならタケシの様な広い心が必要になってくるのだとレッドはしみじみ思った。
「泣いたのはその後だよ。その状態でイジェクトされた。……濁流を背中に」
「・・・」
ろっぱー、とリバースしてしまった訳だ。……うん、別の意味で確かに泣ける話だ。
余り想像したくない光景でもあった。
「流石にムカついたからそのままホテルに行って朝迄泣かせてやった」
「酔い潰れた女をレイプ、か。中々に鬼畜だなそりゃ」
それは確かにキレても許される状況だ。だが、問題なのは酔ったJKをホテル連れ込んで強姦したと言う事である。一歩間違えれば警察沙汰だ。
……いや、結局は合意の上になるんだろうから良いのか?
「アイツが悪いんだってばさあ!」
「お前、また三行半突き付けられっぞ」
まあ、タケシも災難だがキレたタケシの相手をさせられたカスミにも同情する。
開眼し、糸目状態を解除したタケシは竜舞を限界迄積んだギャラドス並みに危険な存在になる事を長い付き合いからレッドは知っていた。
「いや、それが何か最近甘えてくるんだな。……変なスイッチ入ったのかも」
「……ご馳走さん」
カスミ……無理矢理強引が好きなタイプだったんだな。まあ、何だ。もげちまえ。んで、末永く爆発しとけ。……と、レッドは思った。
- 37 :
-
「で、そっちはどうさ? リーフちゃんと」
「あー? Sex&drugでROCK`N ROLLだ」
あ、やっぱり追及の手はこっちにも来るのね。レッドは実に判りやすい妹との近況を語った。因みに、タケシはリーフとレッドの仲を応援している。
「お、お前! く、薬やってたのかよ」
「やってねえよ。近親相姦と人だけだ」
お前には洒落も通じんのか、とレッドさんは自分の負っている罪をサラッと告白した。
因みに、ニッポン国で近親相姦は双方合意ならば犯罪ではありません。
「……それも洒落にならないよな。いや、マジで」
「そうだな。……何で捕まらないんだろうな」
「この国の警察機構が優秀なんだろ」
すべき相手はロケット団だけと決めている。それが破られる事は無い。だからこそ、レッド達の裏の顔を知っても反応を変える者は少ない。
嘗てはお月見山、タマムシのアジト、ポケモンタワー、シルフカンパニー、ナナシマ倉庫で大勢始末して来たが一度も検挙された事が無い。
案外、国はそれを知っていてレッド達を放置しているのかも知れない。
「あー、そう言えば」
「あ?」
何か他に笑える話でもあるのか、気だるげにレッドは新しい煙草を咥える。
「いや、マジな話だけどさ」
「……おう」
ふと見たタケシの顔は何時もの糸目じゃなかった。こう言う時のタケシは真剣だ。レッドは姿勢を正して、改めてタケシと向き合った。
「最近、お月見山で怪しい奴等が出入りしているらしいんだわ」
「っ! 聞かせろ」
目を見開いてレッドがタケシの胸倉を掴んだ。初めて掛かった大物の予感にレッドは興奮気味だった。
「落ち着けって。今言うから」
バシッ、と服を掴むレッドの手を叩き落とし、タケシは語る。
「俺が直接見た訳じゃないよ。ただ、広場の山荘の爺様が言うには店仕舞と同じ位の時間に黒尽くめの帽子を被った変な奴等を見かけるってさ」
「お月見山、か」
場所は判る。頂上付近にある開けた広場。山小屋とピッピが月曜にやって来る泉があるだけの場所だ。
- 38 :
- 「あそこって前もロケット団が侵入したじゃん」
「ああ。化石目当てでな」
二年前だ。旅に出て、初めてレッドとリーフがロケット団と遭遇した場所。そして、初めて人をし、童貞を捨てた場所だ。
「でも、今の新坑道じゃ化石は殆ど取れないんだ。何の目的があってか気になる処ではあるよな」
「ふうむ。……その広場には人が集まれそうな建物って山小屋以外にあるか?」
姿を見せる以上は何らかの目的があっての事だろう。だが、特産品である化石が取れない今、あの場所にロケット団が目を付ける何かがあるとは思えない。
考えられるとするなら、それはカントー再侵攻の為の中継基地。若しくは新たな拠点。
レッドはその手の建物の有無を尋ねた。
「あるよ。使われてない林道が広場脇に伸びてて、その先に廃屋がある」
「そっか……」
BINGOだ。呪いの解放先をレッドは確かに捉えた。自然と頬が緩む。
「あー、当然行くんだよ、な?」
「行かない理由が何処に?」
その顔がどうにも一抹の不安を煽る。タケシは心配した様に尋ねるが、レッドがそれ以外の答えを言う筈も無い。そして、止める気だってタケシには無かった。
「だよな。いや、俺が協力出来るのは此処迄だ。精々怪我しないようにな」
「ああ。ありがとうよ」
親友のエールを受けてレッドが若干微笑んだ……気がした。
荒事が出来ない訳じゃないが、本来温厚な性格のタケシがそれを得意にしていないのは確かだ。タケシはレッド達の無事を祈る事しか出来なかった。
- 39 :
- ――マサラタウン 二階 兄妹の部屋
「その情報、確かなの?」
「火の無い処に煙は……だ。現地で確かめるしかない」
家に帰ったレッドは早速その情報をリーフに伝えた。だが、どうも胡散臭く感じている様だ。今迄姿すら掴めなかった仇の情報だ。慎重になるのも頷ける。
だが、レッドの言う様にするしかないのも事実だった。
「……決行は?」
「明日。1900。午前中は下見だ」
こちらはたった二人しか居ない。敵の情報も不明瞭。こう言う時に必要なのは入念な下準備だ。地形を把握し、こちらが有利な作戦を立てる。ポケモン勝負にも言えた事だ。
「急ね。随分と」
「怖気付いたか?」
「冗談」
妹の覚悟を試す様にやや挑発的に言ってやった。だが、リーフは嘗めるなとでも言いたそうな顔できっぱりと言った。
「あー、もしもし、エリカ? あたし。悪いんだけど明日の……」
リーフがギアで電話を掛けている。相手はエリカの様だ。約束があったのだろう。それを断る電話の様だ。
「・・・」
レッドはそれを尻目に、引っ掻き棒を取り出して天井裏への蓋を開けた。梯子を下ろして、天井裏へ上半身を潜り込ませると手探りで何かを探し、それの取っ手を見つけるとしっかり掴んで階下に運ぶ。
「心配し過ぎだって。大丈夫よ。兄貴も居るし。……うん、うん」
それをもう一度繰り返し、レッドは梯子を戻し、蓋を閉めた。
運び出されたのは二つのジェラルミンケースだった。
レッドは馴れた手付きでその一つの鍵を開けた。
……中に収められていたのは銃と弾薬だった。
M1911A1ガバメント……信頼性高い45口径。嘗ての米軍正式拳銃。
M1878短銃身水平二連散弾銃……バレルを切り詰めたショットガン。近距離威力は絶大。
レッドはそれらを手に取ると、工具箱を何処かから引っ張り出し部品をバラしてチェックを始めた。
「じゃあ、埋め合わせは後日にね。……それじゃ」
――ピッ
電話を終えて、リーフもまた自分の銃をケースから取り出す。
MAC11イングラム×2……短機関銃。連射力は絶大だが精密照準は難しい。
日が暮れる迄、兄妹は自分の得物の調整を続けた。
- 40 :
- ――翌日 お月見山 夜
藪の中に身を潜めてそろそろ一時間が経過する。
「来ないわね」
「ああ。まあ、待ってろよ」
山小屋の従業員が店を閉め、出て行った事は先程確認した。
今日は月曜日ではないのでピッピを見に来る人間は居ない。だとすれば、この後に現れる人間がロケット団である可能性が強まる。後は、その人物が廃屋への林道へ向かうかどうかだ。
「・・・」
「……っ、薮蚊が」
ぶんぶん纏わり付く薮蚊がうざったいリーフは仕切りにバシバシ叩いていた。レッドは我慢してるのか微動だにしない。虫除けスプレーは使っているが、効果は余り無い様だった。
……更に数十分経過。空はどんよりと曇り、月は泉にその姿を晒さない。
光源が殆ど無い状態だ。目が慣れていない人間は何処に何があるか判らないだろう。
「来ない、わねえ」
「あ、ああ。……今日は外れか?」
明るい裡の下見は完璧。道幅や距離、廃屋内の構造もちゃんと頭の中に入れている。
そして、その廃屋には確かに人が出入りしている痕跡があった。最近の日付のコンビニ弁当の空を見つけた。だからこそ、その人物はやって来ると確信を持ってこの場に張り付いている。……だが、来ない。
レッドの言葉の通り、今日は休みなのかも知れない。もう少し粘ってそれでも来ないなら今日はもう帰ろうかと諦め掛けた、その時。
――じゃり
遠くから砂利を踏み締める音が聞こえた。
「(あれは……)」
「(来たわね……)」
少し待っていると目の前の砂利道に懐中電灯の光が当たり、黒い服の男が通過した。
あの服装は間違い無い。ロケット団だ!
ロケット団が向かうのは泉ではなく、その反対。人が寄り付かないであろう寂れた林道の方角。廃屋に向かう腹積もりらしい。
「(兄貴?)」
「(未だ後続が居るかも。もう少し待つ)」
こう言う時に慌てて後を追ってはいけない。行き場所は知れているのだ。怖いのは襲撃中に後続が異変に気付き、増援を要請する場合。まあ大半は逃げてしまうのだろうが、痛手である事は変わらない。レッドは待機の指示を出し、リーフはそれに頷いた。
その後、待つ事三十分程。後続のロケット団が次々と林道へ向かって行く。丁度四人目の男を見送った後に、幾ら待っても後続は来なかった。
「今ので最後だな。……往くぜ」
「承知」
レッドが藪から出て周囲を確認する。敵影が無い事を確認し、手で合図を出すとリーフも藪から飛び出して来る。そして、二人は極力音を立てずに林道へと向かう。
- 41 :
- 爆撃終了。自分で思うけどやっぱり長いな…
- 42 :
- 乙
エロスとシリアスのバランスが難しいな
- 43 :
- 玖:ダンボールは持っていない
――お月見山 廃屋
辿り着いた廃屋からは確かに人の気配がしていた。
「この空気……随分久し振りだな。……ほんと、厭だねえ」
「もう二度とって思ってたけど……慣れないわ。何時迄も」
湿気の混じる生暖かい風が吹き付けて、全身から汗が滲み出る。
二年前もこうやってロケット団相手に喧嘩をしていた二人だが、決して道楽や愉しみで生をしている訳ではない。人しではあっても、人鬼では無い。正気は捨て去ったとは言っても、気が滅入る事だけは避けられない。
二人が木石では無い以上、そう言った感情の揺らぎと言うのは何時までも付き纏うのだろう。衒いと言う名の錆付いた釣り針が頭蓋を破って、喉元迄降りて来た様な気分だった。
兄妹はその感情を何とか処理して、廃屋を見やった。
元は営林署の建物だったのだろうが、確認した時に中がそれ程荒れていない事が判った。放置されてから余り時間が経っていないらしい。
出入り口は二箇所。正面玄関と裏口。二階建てで、一階に鍵の掛かった小部屋が二つ。二階は長い廊下一本道を左に曲がって直ぐに大部屋が一つだけ。
コンビニのゴミを見つけたのは二階なので、恐らく溜まり場は二階。その証拠に二階部分だけ電気が付いている。電気が通っている事は先刻も確認した。だが、一階部分は真っ暗だった。
敵の総数は確認出来ただけで四人。装備、戦闘錬度は不明。別ルートで合流している人間も居るかも知れないので四人以上と考えて良いだろう。内部は遮蔽物こそ少ないが壁が狭く、曲がり角も多い。
……現時点の情報は以上だ。
「で、作戦に変更は無いのよね?」
「ああ。俺が正面。お前が裏口だ」
「おっけ。……中で会いましょう」
リーフは裏口目指して駆けて行った。
二人の作戦はシンプルに二点同時侵入だ。正面がレッド。裏口をリーフが担当し、同時に潜入する。接敵した場合は極力気付かれない裡に倒す事。
気付かれた場合は、その人物が陽動を果たし、もう一人がサポートすると言うものだ。
「……良し」
レッドの準備も完了した。ホルスターに手を掛けて、銃を構える。そして、硝子越しに内部状況を確認。誰も居ない事を確認し中に入った。
- 44 :
- 昼間と変わらず、中は誇りっぽい空気だった。暗い床に目を凝らせば、積もった埃に多数の足跡が残されていた。放置されたこの場所にそれだけの人間が居ると言う事だ。
「全員、二階に集まってるのか?」
慎重に歩を進めるレッド。目の前に階段。右には廊下。その左右には開かない部屋。コの字廊下の先に裏口。リーフの姿が見えない事を考えると、敵が居るのかも知れない。
「どうするか」
選択を迫られるレッド。一階部分をクリーンにし、リーフと合流するか。それとも、此処はリーフに任せて二階に移るか。
だが、残念。時間切れだった。
――ガチャ
「ほ?」
間抜けな声が出た。施錠されている筈の二つの部屋。その片方の扉が開いた。
ロケット団がハンカチで手を拭きながら出て来た。そして、バッチリ目が合ってしまった。
「だ、誰だ!?」
「見ての通り、侵入者だよ」
どうやらその部屋はトイレだったらしい。そして、開かないと思っていたのは単に立て付けが悪かっただけの様だ。……何と言うか、間抜けだった。
「誰だか知らないが、この場所を知られて只で返す訳にはいかねえな!
行け! ズバット!」
問答無用でポケモンを繰り出すと言う事は、トレーナー崩れだろうか? ……それなら。
「リザードン、頼むぜ」
片手でボールを手にしてスイッチを押す。
――ぐるるおおんっ!
火竜降臨。尻尾の炎で周りが仄かに照らされた。
「な、何ぃ!? 何だその強そうなポケモン! 俺に寄越せ!」
……何とも平和的な会話で涙が出そうなレッド。しかも仲間を呼ばないとはお優しい事この上無い。
『ああ、くれてやるともさ。別の贈り物だけどな』
レッドが灼熱の憎悪を解き放つ。
- 45 :
- 「んー?」
正面玄関が何やら騒がしい。恐らく、兄貴が戦闘中なのだろう。
壁に張り付きながら、息をして目の前のロケット団の動きを観察するリーフ。コの字廊下の、玄関から角になる位置に見張りが佇んでいる。見つかれば厄介だ。
廊下は狭く、左右へすり抜ける事は不可能。だが、相手は音がしている方向に顔を向けている。
「おーい。何かあったのかあ?」
注意がそちらに向いているならば、こちらが取る冪行動は一つ。
「(もっと注意を向けさせる!)」
リーフは潜入前に外で拾った石ころを男が向いている方向に投げ付けた。
――ガンッ! カラカラカラ……
「あー? 何の音だよ」
流石に異常事態だと気付いたのだろう。男は音のした方向へと歩いて行く。後方警戒が完全に笊だ。
……上手くいった。こう言った暗闇で相手を誘導するコツは音を武器にする事。スニーキングの基本だ。リーフはこっそりと後を付ける。
「……? 何も無いよな」
音がした場所を調べ、何も無い事に?マークを浮かべるロケット団。その視線が兄貴が居るだろう廊下の先へ向く前に……
「(仕留める!)」
リーフが動いた。左腿に装着したナイフフォルダーから大型のフォールディングナイフを抜き放ち左手に逆手で持った。
「うぐ!?」
背後から右手で相手の口を塞ぎ、暴れられない様に眼前にナイフを突き付けた。断じてCQCではない。
そして、リーフの深緑の憎悪が解き放たれた。
「ゴメンね」
――ズブシュ
「げごぶう」
掌に伝わる鈍い感触と共に声帯と頚動脈を諸共切り裂く。血飛沫を上げ男は絶命した。
- 46 :
- 「ドラゴンクローだ」
屋内で火炎攻撃は火事の恐れがあるし、狭いので飛行技はそもそも使えない。それならば、一番適任な技はドラゴンクローだ。どう見ても相手の手持ちは弱そうだし、恐らく確定一発だろう。
――ぎゃるおお!
ずしゃ……べしゃ。肉を咲く音が聞こえて、相手のズバット壁に吹っ飛ばされて壁画となった。
「ちいっ、強いじゃねえか! 次は……」
……好機!
次の手持ちを出す為に男が警戒を一瞬解いた。レッドは素早く詰め寄り、左手で相手の首を引っ掴んで突進の勢いのまま壁に叩き付ける。
「ぐ、え」
苦しげな男の声。レッドは左手に握っていたガバメントの銃口を男のこめかみに押し付け……
「くれてやるよ。……鉛玉だ」
――タァン
そのまま引鉄を引いた。乾いた発砲音が響き、男は絶命する。レッドが手を放すと床に崩れ落ちた。
「悪いな。こいつはポケモン勝負じゃないんだ」
……し合いだ。
人間、落ちて来た植木鉢の直撃でも容易く命を落とす。相手をめるのにポケモンの力にはもう頼らない。それを自分の手で成す事がレッド達の矜持だった。
さて。引鉄を引いてしまったので、今の音で確実に自分達の存在はバレた。このままでは相手が反撃に出るか、逃走する可能性があった。
レッドは倒れている男の体をチェックした。……武器は携帯していない。先程の掴みを回避出来なかった事から、戦闘訓練も恐らく受けていない。ポケモンバトル以外は恐らくは素人さんだ。
「……ロケット団も人材不足か」
嘗ての解散に際して多くの構成員をロケット団は失っている筈だ。そして復活出来るだけの人数を確保する為、メンバー募集に躍起に成り過ぎた結果がこれだろう。
もう少し、戦闘訓練を積ませる冪だし、マフィアなのだから昔みたいに武器も携帯しておけとレッドは思った。二年前のロケット団はその辺りでは未だマシだった。
最初に出会った占拠事件の時のロケット団が異常だっただけなのかも知れないが。
「兄貴」
廊下の向こうからリーフが来た。
「リーフ……音でバレたな」
「判ってる。こっちも一人始末したわ。残り二人よ」
順当に行けばそうなるだろう。此処の連中は大した強さではない。為らば、此処は押しの一手で出る冪だろう。
「上に行く。付いて来い」
「了解!」
ダッシュで階段を駆け上がる。長い廊下を駆け抜け、大部屋前で一時ストップ。
呼吸を整えて一気に踏み込んだ。
「毎度〜」「宅配便で〜す」
――地獄への切符をお持ちしました
- 47 :
- 踏み込んだ部屋には黒服が二人。それ以外には居ない。どうやら彼等が最後の様だ。
「騒ぎを起こしているのは貴様等か!」
どうやら、此処のリーダー格らしい。纏う雰囲気が始末した団員より若干異なる。
「我等ロケット団に楯突くとは中々に怖い物知らずだな。……どうだ? 我々の下へ来んか?」
この状況下で勧誘とは、どうやらそれ程迄に人材不足は深刻らしい。少しだけ二人は同情したが、答えは当然Noだ。
「断る」「厭よ」
「ふん。当然の反応か。では、問おう。何故此処に来た? 目的は何だ?」
――目的? 目的、ねえ
レッドがホルスターに手を掛ける。遮蔽物の粗無い大部屋。大火力のショットガンを抜く。
リーフも両腰に下げていた二丁のイングラムを両手に握る。
そして、構えた。
「ロケット団!」「滅ぶべし!」
三つの銃口が男二人に向けられた。
「じゅ、銃!? リーダー、ヤバイっスよコイツ等!」
「うろたえるな!」
瞬間、パニックを起こした下っ端を大声で落ち着かせた。流石はリーダーと呼ばれるだけはある。中々に肝が据わっている。
だが、そのリーダーの頬に汗が張り付いているのを二人は見逃さなかった。
「まあ、落ち着け」
両手を挙げて敵意が無い事をアピールするリーダー格。二人は銃口を向けたまま、無言だ。
「その目を見れば判る。余程、我々を憎んでいるな」
憎んでいる? 当然だ。そうでなければこうも生を重ねない。
「確かに、我々は悪の組織だ。方々から恨みを買っている。だがな……」
どうやら、その自覚はあった様だ。面白いから続けさせてみる。
「今迄、私は人をめた事は無いよ。解るだろう。人は重罪だ。
……だから銃を置こう! 我々はし合う冪ではない! きっと話せば分かり合える!」
此処迄聞いて急速に萎えた。政治家の演説か? だったら、こんな場所ではなく、選挙カーの上でやるが良いさ。レッドは引鉄に力を込めた。
「さあ!その銃を置いて握手を」
――ダァン
言葉は最後まで紡がれない。それを遮った銃弾はフローリングの剥げた床に穴を開けていた。こんなものが直撃したら人間なら無事では済まないだろう。
「「……ポケモンは?」」
「何?」
感情の一切合財が凍て付いた声。だが、レッドとリーフの胸中では憎悪が渦巻いている。
「ポケモンはどうなんだ?」「した事、あるでしょう」
「そ、それの何処が悪い! ポケモンなぞ人間が使ってやらねば価値が無い存在だ! 寧ろ我々の金儲けの役に立ってねるなら本望だろうっ!」
男は火が点いた様に早口で捲くし立てる。パニックに陥った時こそ、その人間の本質が表に出るものだ。そして、化けの皮が剥がれた男を見て二人は十分に理解した。
――ああ、こりゃ駄目だ
「お前等、もうんで良いよ」
「ううん? って言うか、んで今直ぐ。お願い」
- 48 :
- 言葉は出尽くした。やはり、こいつ等とは相容れない。否、それ以前に言葉が通じない。
予想はしていたが、それが当たった事に絶望する二人。もう意や狂気を隠そうともしなかった。
「り、リーダー!」
「こ、このままされてたまるか! お前も戦うんだよっ!」
2対2。ダブルチーム同士の対決だ。とっくにポケモン勝負からは逸脱しているが、それが彼らの最後の抵抗と言うのなら、それに則るのがトレーナーとしての慈悲だ。
二人は銃を仕舞い、腰のボールに手を伸ばした。
「灰にしろ、リザードン」「フシギバナ。粉砕しなさい」
カントー御三家の裡二匹がこの場に降臨した。
相手はゴルバットとラッタ。……残念だが、レベルも種族値も一切が違い過ぎた。
「エアスラッシュ」「ヘドロ爆弾」
室内と言う事も忘れての大立ち回り。次々と落とされるロケット団の手持ち。一撃すら耐えられない。
「い、行けえ! ほら、あいつを直接狙うんだよ!」
「無理ですって近づけない!」
どうやらダイレクトアタックを考えている様だが、それは甘い。下っ端が飛び掛るより早く狙いを付けて、撃つ自信がある。それ以前にこの二匹の間をすり抜ける事など訓練を受けた人間すら至難だろう。相手に打つ手は無かった。
「ブラスト…」「ハード……」
兄妹が大技を指示。リザードンとフシギバナが発動体勢に入った。
「バーンッ!」「プラントッ!」
部屋の包み込む爆発の衝撃波と、階下から襲う巨大な樹木。この瞬間、部屋の床の大部分は崩れ、屋根と窓ガラスは吹っ飛んだ。……当然、発動前に二人は安全な物影に避難していたので無事だ。
あのまま消滅していてもおかしくないエネルギーの本流だったが、その出力はちゃんと抑えていたのだろう。ロケット団二人はその手持ちと共に階下に落下していた。
瓦礫がクッションになった様で大した怪我は見られない。二人は下に飛び降りた。
- 49 :
- 「リーフ」
「うん?」
気絶していたロケット団の意識を無理矢理覚醒させて、銃口の支配下に置く。
リーダーと呼ばれた男は壁際に追い込まれ、逃げ出せない。下っ端もその様子をビクビクビクしながら見ている。
「そいつ逃げない様に見張っててくれ」
「アイアイサー.。……動いちゃ駄目よ?」
下っ端の監視をリーフに任せるレッド。これにはちゃんと意味がある。
リーフはイングラムの銃口を突き付けて、下っ端に念を押す。コクコクと何度も下っ端は頭を振った。
「さて、人しは重罪って言ってたな」
「あ、ああ」
レッドがショットガンを片手に問う。これは尋問ではない。どちらかと言えば鬱憤晴らしだった。
「じゃあ、ポケをす事は罪じゃないのか?」
「・・・」
リーダー格の男は答えない。レッドを刺激しない様に黙っているのは見え見えだった。
レッドはその無言を肯定と解釈した。この男は確かに、先程ポケモンの命を軽視する旨を述べたのだ。
「ま、お前等にとっては、そうなんだろうな」
ポケモンは道具で、その道具を使う人間はポケモンより偉い。
人間優位の価値観を捨てられない馬鹿が考えそうな理屈だ。生身ではズバット一匹にすら苦戦すると言うのに、それでポケモンより偉いと気取る。
「そんなお前等が人権を主張するとはお笑いだな」
そんな阿呆は最早人間の範疇に当て嵌まらないとレッドは断定する。人間じゃない只の毛無し猿が人権擁護を声高に叫ぶ。或る意味シュールな光景だ。
「そして」
レッドを取り巻く空気が変わった。そして、伸ばされた右手の指が男の首に食い込んだ。
「お前等のその勝手な理屈で俺達の相棒はされた!」
「うぐぐ!」
憎悪の発露だ。ゴリッと額に銃口を押し付けてレッドが叫んだ。慈悲は無く、意しか読み取れない瞳。彼はその引鉄を躊躇い無く引くだろう。
「だから、その命で贖え」
「!! 待っ「ね」
――ダァン
そして、やはり引鉄は引かれた。
ビシャビシャと弾けた脳味噌が降り注ぐ。爆発した男の頭はまるで石榴の様だった。べた付く脳漿が天井や壁、レッドの装いを赤く汚した。
――ボトリ
下っ端の足元に何かが転がった。それは今迄生きていたリーダーの眼球だった。
- 50 :
- 「ひっ」
この時、下っ端の恐怖心は限界に達した。……このままではされる。
「ひいああああああああああああ!!!!」
助かりたい一心で叫びながらその場を駆け出す。
……銃口が自分を狙っている事も忘れて。
――パララララララッ
「ぎゃっ、がっ」
全身を針が貫いた様な激痛に襲われ、下っ端はもんどり打って仰向けに転がった。
軽快な連射音。チリチリと床に空薬莢が転がる。硝煙を昇らせるリーフのイングラム。彼女が撃ったのだ。
「あーあ。だから、動くなって言ったのにねえ」
「う、あ、があああ……」
苦痛に呻く下っ端の肩を片足で踏み付けた。その顔が更に歪む。
「未ださないわ。急所は外してるし。……聞きたい事があるの」
「見せしめとしては良い効果だったろう? 喋ってくれるな?」
これがリーフに監視させた理由だ。目の前で上司を凄惨にせば、下っ端はパニックになる。その状態で多少痛め付けて尋問すれば相手は素直に喋る。それを狙ってのものだった。
情報を持っていない事が唯一の懸念事項だったが、リーダーの近くに居た下っ端だ。きっと何かを知っている二人は踏んでいた。
「う、た、助け……ぐえ」
リーフがわき腹に爪先を軽く捻じ込んでやった。蛙の泣く様な声で呻く下っ端。
「それはあなたの態度次第かしら」
リーフの瞳が闇の中で鈍く光る。赤い光だった。
「一つ目。此処って結局何? もうこの山って化石出ないんでしょ? 何でこんな場所で集まってたのよ」
「こ、こは集会所だっ。報告とっ、本隊の指示を受ける、場所だ。新しっ、団員……連れて来たりす、る」
「……やっぱり活動拠点の一つ、か」
最初の疑問だ。何でこんな場所を溜り場にしているのか。
めぼしい資源がある訳でもないこの場所を選んだ理由を知りたかった。
そして、答えはレッドが考えた通りだった。意外性の無い答えだとがっかりする事はしない。重要なのは次以降の質問だった。
- 51 :
- 「二つ目。あなた達、一度解散したわよね? でも、サカキのおじ様は行方不明なんでしょう? 誰が仕切っている訳?」
今のロケット団の内情はどうなっているか、だ。
二年前にサカキをせなかった瑕疵がこうやって回って来ている。
一度解散した組織を再び興すとなると、サカキに変わる新たなカリスマの存在が必要になる。二人にはその辺りが不明瞭だった。
「はー、はー……ごふ」
苦しげに息を吐き、下っ端は吐血した。
「早く答えないと出血が拙い事になるわよ?」
吐血したと言う事は、内臓にも傷があると言う事だ。やはり、近距離であっても銃身のブレはどうにもならない。だから、弾が逸れたのかも知れない。
だが、撃った本人であるリーフはそれがどうでも良い事の様に冷たく言った。
「さ、い高幹部、アポロ様を中心……ラ、ンス様、アテナ様、ラムダ、様がほ、補佐して組織は、回っている……っ」
「……聞いた事ある名前、ある?」
「いや。……だが」
どうやら幹部連中が今のロケット団を纏めている様だ。出て来た名前にリーフは心当たりが無い。二年前には名有りの幹部と闘った事が無かったのだ。
しかし、何か気になっている事がレッドにはあったらしい。
「その中に前にナナシマの倉庫を受け持っていた奴は居るか?」
レッドの引っ掛かりはそれだ。以前、ナナシマの点の穴で強奪されたサファイヤを追って突入した倉庫で確かに幹部を名乗る男と戦ったのだ。
「アポロ様、だと思……以前は、ナナ、シマ支部長だった」
「あ! あのヘルガー使いの幹部! ……始末しておく冪だったわね」
リーフも思い出した。格好は下っ端のままで、名前も表示されなかったが、確かに戦った。サカキの解散宣言を信じず、負けて尚復活に執念を燃やす発言をした幹部。恐らくは間違い無くあの男だった。
しっかり止めを刺して置けば今になって復活する事も無かったのかも知れない。そう考えるとリーフは自分の甘さが腹立たしかった。
- 52 :
- 「これで最後だ。カントーに渡ったのはお前達以外にも居るな。そいつ等は何処に居る」
「・・・」
一番重要な質問だった。他の仲間の居場所について。復活した以上、送り込んだ人員がこれだけとは考え難い。復讐を続けていく為にその情報はどうしても欲しい。
だが、下っ端は顔を背け答えない。仲間を売る事への引け目か、それとも知らないのか。……何れにせよ、レッドは追及の手を緩めない。
「ぐあっ」
レッドが下っ端の髪の毛を引っ掴んでぐいぐい引張る。リーフも踏み付ける足に体重を掛けた。苦痛の悲鳴が下っ端から漏れる。
「貴様等屑が何人のうが、感謝こそされても泣いて悲しむ人間は居ない」
「貴様はそう言う組織に組している。にたくなければ……」
子供が泣き出して余りあるそれはそれは恐ろしい顔と声だった。まるで人ならざる何かが二人の背中に憑いている様でもあった。
「質問に、答えろ」「質問、答えてくれるわね?」
そして、一転。二人は微笑を浮かべる。それが殊更な恐怖を煽る様で、下っ端は一寸だけちびった。そして、恐怖に負けた様に叫ぶ。
「はー、はー……ッ! ぐ、グレン島だ! 一週間後! ポケモン屋敷に到着する!」
「……確かに聞いた」
レッドは満足げに頷いた。とっくに部隊配置を終えていると思っていたがそうではなかった。それならば、準備に時間を掛けられる。
「うん。ありがとう。御協力感謝。……そして」
もうこうなった以上、下っ端に利用価値は無い。リーフは銃を下っ端の脳天に向けた。
その下っ端の視線が向くのは、自分の顔でも銃口無かった。
「く、黒だ」
リーフのスカートの中身。暗いにも拘らず、僅かだが黒い布地がしっかりと下っ端の脳裏に刻まれる。そして……
――タン
「さようなら」
下っ端はリーフの下着の色を冥土の土産に旅立った。
「今更、見られて減るもんじゃないってのよ」
硝煙の臭いが僅かながら鼻を突く。羞恥心が無い訳じゃないが、今更見られた程度で動揺する程リーフは若くも無ければ純でもない。その姿はやたら漢前だった。
- 53 :
- それから、極力自分達の痕跡を拾い集めて、広場に戻って来た。撃った回数はそれ程ではないので薬莢やら弾やらは粗方回収出来た。だが、破壊してしまった二階部分だけはどうにもならなかったが。
――お月見山 広場 山荘前
「ふゆううう」「ふはあああ」
久し振りの荒事で少しだけ精神を消費した。やっぱりシリアスモードは判っていても疲れるものだ。ベンチに腰掛け、大きく息を吐いて安堵する。レッドは煙草を取り出して一本咥えた。
「兄貴」
「どうした」
リーフが見てきた。レッドは何か忘れ物でもあったのかとリーフの方を見る。
「煙草、貰える?」
「……あいよ」
違った。煙草の催促だ。リーフも自分の煙草を持っている筈だが、態々集る辺り、家に置いて来てしまったらしい。
レッドはリーフにそれを咥えさせてやった。そして、安物ライターに点火。顔を寄せ合い、先に火を渡らせてフィルターを吸う。
「「はああああああ」」
盛大に溜息を織り交ぜ、煙を吐き出した。溜息の度に幸せが逃げると言うが、煙草を吸っていればそれが溜息なのかどうかは判らない。
そう言う意味では、彼等の喫煙も大人ならではの験担ぎなのかも知れなかった。
「……このままで、さ」
「このまま?」
呟く様なリーフの声。視線だけを妹に向けて、兄貴は煙を肺から吐き出す。
このまま生を重ねて、それともこのままの温いやり方で、と言う意味だろうか。レッドには判らなかった。
「ミロちゃん、ちゃんと成仏出来るかな」
「少しは天国に近付いたさ。俺のギャラドスも」
それこそ判らない事だった。んだ相棒がきちんと成仏出来るかなぞ、自分がんでみなければ確認しようも無い。
唯、そう考えねばやっていらない状況なのは確かだった。
――そして ……そして、自分達は地獄にまた一歩近付いた。
それを口に出す必要は無かった。
- 54 :
- 何かもう別のゲームの話になってしまっているなこれは。
まあ、生暖かい目で見逃してくれ。
……さて、お待たせしました。次で漸くエロパート突入です。
おまいら準備はいいですか?
- 55 :
- てか本編の裏でもこういう血みどろの戦いを続けてる誰かがいたんだろうな
特に初期のロケット弾のやり方だとされるほどの恨みを買っていないことのほうが不自然だとすら思った
さあ、物語に隠された闇をみせてくれ!
- 56 :
- 生存エンドだといいな
- 57 :
- 幕間:黄泉戸喫
※黄泉戸喫(よもつへぐい)……彼岸で煮炊きした食べ物を食し、此岸に帰って来れない事を言う。伊邪那美命(イザナミノミコト)がこれをやり、現世へ帰って来れなかった。
――マサラタウン レッド宅
「ただいm……ありゃ?」
「? え、留守?」
帰宅したとき、家の扉は施錠されていた。明かりも消えていた。何時もは日付が変わる時間を過ぎて漸く消灯となる自分の家が、こんな日付が変わる前の時間に沈黙しているのはおかしいと思った。
取りあえず、鍵を開けて家の中に入った。中は真っ暗で誰も居ない。手探りで明かりを付けて荷物を床に置いた。
「……ああ」
カレンダーの日付を確認し、リーフが母親不在の理由を思い出した。
「婦人会の遠征だわ。明日の夜迄帰って来ないわね」
「……そうだった。今回はヨシノだったか」
「うん。愛知」
結婚前は敏腕トレーナーとして有名だったレッド達の母親。出産を境に本格的なトレーナー業からは足を洗ったが、腕を鈍らせない為に近所のポケモン婦人会に参加して小遣い稼ぎをしている。今日はその遠征日だったのだ。
二人にとっては好都合だ。こんな血の臭いをぷんぷんさせて帰って来た自分達を母親には見せたくなった。
「一杯、引っ掛けるかよ」
レッドは冷蔵庫の扉を空け、ビールの三合缶を取り出した。色々動き回ったので喉はカラカラ。体が水分を求めていた。
……先程、人を撃った感触を薄めたいと言う目的もあった。
――プシュ
プルタブを引いて缶を開けた。そして、一気に口を付けるとレッドはゴクゴクとそれを飲み干した。
「げふっ」
ゲップをして缶を置くと、今度は五合缶を中から取り出す。それを片手に持つと、レッドは自分の荷物を抱えて二階へと引っ込んだ。
「……一寸飲まなきゃやってられんわね」
残されたリーフも台所の下の棚を漁ると、度数高そうな洋酒のボトルを取り出し、グラスにやや大目に注いだ。そして、冷凍庫から適当な氷を掴み出してグラスにぶち込んだ。
――ゴクリ
一息で半分近くの酒を飲んだ。食道を伝って熱い液体が胃に溜まって行くのが判った。
「ふううう」
その熱さに身悶えしつつ、更にグラスへ酒を注いだ。
……荒事の後には無性に飲みたくなって堪らない。まるで、疲れた心と体が癒しと慰めを求めている様に。
身体が、熱い。胸の動機も激しい。決してそれは、今飲んだ酒の所為では無かった。
「……よっしゃ」
注いだ酒をぐっと飲み干し、リーフも二階へと昇って行く。
この疼痛を鎮める手段は一つしかリーフは知らなかった。
- 58 :
- ――レッド宅 二階
レッドは床に胡坐を掻いて銃と格闘中だった。脇には封の開いたビール缶が立っている。
かちゃかちゃ忙しなく指を動かしてバラした銃のトリガー部やバネを確認する。日頃からマメな整備を怠らなければ、得物はそれに応えてくれる。戦闘中に誤作動が起きれば命取りなのだ。だから、入念に手入れをする。
――ガチャ ガシャッ
何の音かと振り向く。其処には妹が立っていた。床には取り落とした彼女の二丁のイングラムが転がっていた。
興味無さそうにレッドが視線を外し、再び銃に意識を集中する。
……すると、背後に気配。
「――っ」
振り向こうとして、動きが止まる。それよりも一瞬早く、後ろから抱き付かれていた。
背中越しに押し当てられる豊満な乳肉の感触。密着するその身体が自分以上の熱を孕んでいた。
「お兄ちゃん……」
リーフの声には何故か艶が乗っている。耳元に吹きかけられる吐息はハアハアと悩ましく、酒臭かった。
レッドはリーフが何を求めているか当然判っている。昔は頻繁にあった事だからだ。
「……後にしてくれんか?」
見ての通り、整備中だ。漸く、気が乗ってきたのに此処で邪魔されては堪らない。それ以前にレッドは乗り気じゃないので相手が面倒臭かった。
「駄目」
だが、それで妹様は納得したりはしない。
「なっ!? ちょ――っ! ……っ」
――グキッ
凄い力で首を横に向けさせられた。一瞬、鈍い音がした気がする。
……そんな事を考える暇も無く、リーフの唇が覆い被さって来た。
ぶちゅ、と言う擬音が聞こえそうな熱烈なキスだった、開始直後から舌を打ち込んでレッドのそれに絡み付く。酒臭く、また煙草の苦味がする唾液を送られ、また送り返した。
ぐちゃぐちゃくちゃくちゃと口腔を蹂躙するリーフの舌。レッドは魂を吸われない様に必に抵抗した。
――ちゅぽ
二人の間で唾液の糸が伝う程の大人のキスだった。リーフは妖艶な顔と声で言う。
「どう? 興奮、した?」
「――この女郎(めろう)」
長い付き合いだけあって妹は兄を煽るのが上手い。だが、それに敢て乗ってやるのも漢の道だ。少なくとも、この痛む首の礼だけはしなくてはいけない。レッドは銃の整備を中断する事にした。
――その腰、撃沈してくれる!
妹のリーフに勝負を挑まれた!
- 59 :
- 「ちゅっ、ちゅ、ちゅう……っ、はあ……お兄ちゃん、おにいひゃん……」
「っ、つ……くっ、リーフ……っ」
ベッドの上で影が二つ踊っている。
半分上体を起こしたレッドの上にリーフが覆い被さっていた。
狂った様にキスをせがむ妹に応える兄貴。二人の口は唾液でベトベターだが、そんな事を全く気にしている素振りは無かった
「ったく……相変わらず、っ……病気だな、お前は」
「おにいひゃんらって……ちゅぷ。くちゅ、……大変な変態さんでいらっしゃる癖に」
キスの合間の軽口。この場合、どっちもどっちの気がしないでもない。
しの後に発情して兄を求めて已まないスケベ妹。そんな妹を跳ね除けず、寧ろ餌食にしてしまう鬼(おに)いちゃん。どちらも大差は無い。
「へ、へへ。違いねえ」
「んふふ……あたし達、変態さん……♪」
二人は寧ろ、それを誇っている様な素振りすらあった。禁忌に胸躍らせ、心も股間も熱くし、お互いの肉を貪る。そんな背徳感が何にも勝って心地良い。
「うぬ……っくう……」
レッドが呻く。股間から甘い痺れにも似た感覚が襲う。リーフがレッドのジーパンのジッパーを下げて、片手の掌で勃起した一物を捏ねていた。
先走りの涎を零して啜り泣くレッドのギャラドスをリーフは細い指先を巧みに使って厭らしく扱き上げた。
「あ、ひあん!」
されっ放しで居るのも格好悪いので、レッドも利き手をリーフのスカートの中に潜り込ませる。太腿に触れるとぬるっとした感触が指先に伝わった。噴出した愛液が其処迄垂れて来ていたのだ。
案の定、下着はお釈迦になる程ぐっしょり濡れていて、クロッチをずらして指を滑り込ませると、リーフの膣肉が待っていた様に指に吸い付いてくる。レッドはそれを認めると直ぐに指三本でピストンを開始した。リーフが気持ち良さそうに喘ぐ。
「お、お兄ちゃんのえっち……あんっ」
「いや、この場合スケベなのはお前だよ」
誘って来たのはそっち。股間に先制攻撃したのもそっち。どう考えても物欲しそうにしているのはリーフだろう。証拠に、浅い部分の天井に在るザラ付いた部分を擦ってやるとリーフが痙攣した。
「スケベじゃ、ないもん」
――どんっ
「ううっ!? な、ちょっ」
突き飛ばされたレッドが背中からベッドに着地する。何だと思って顔を上げると、肉欲そのものを顔に貼り付けたみたいにリーフが舌舐めずりしながら、レッドのギンギンに滾った竿を握っていた。
一瞬、レッドですら我を忘れそうになる威圧感をリーフは放っている気がした。まるでそれが始めて繋がった時のリーフを髣髴とさせる様だった。
リーフは腰を持ち上げてパンツずらして、兄のギャラドスを自分のパルシェンに宛がう。
そして……
「い、いきなりかよ?! ぁ……っ」
――ずぶぶっ
「――はああああぁんんん……♪♪」
体重を掛けて、一気に腰を落とす。妹は兄の分身を容易く飲み込んだ。
再奥迄やって来た兄に喚起する様にリーフは全身をぶるぶる震わせて、蕩けた顔と声で兄に微笑んだ。
「ドスケベだもん……☆」
- 60 :
- ノースリーブを脱ぎ、黒いブラを外して投げ捨てる。ぶるん、とリーフの豊乳が外気に晒された。身体の所々に切創や銃創の痕が見られるが、それでもリーフの女としての美しさは損なわれない。
『リーフ(の乳)は俺が育てた』(`・ω・´)キリッ……と言う発言をレッドはしたりしない。
しかし、リーフがレッドに育てられたと言うのは本当だ。(性的な意味で)
高校入学前から凡そ六年以上に渡り兄の手によって耕されてきた肉体は乳のみならず、その全ては瑞々しくも、また熟れていた。
兄もまた肌着である黒いTシャツを脱いで床に投げ捨てた。全身に垣間見られる火傷や銃創は妹を守り、また護られて共に歩んで来たレッドの生き様を象徴する勲章だった。
肉付きの薄い、それで居て搾られた傷だらけの男の肉体は今だけは妹専用だった。
「うふふ♪ 兄ち○ぽおいしいよぉ……♪」
兄と合体出来て嬉しいのか、淫語を憚り無く垂れ流し、兄の怒張を下の口で頬張る妹は淫乱と言う言葉がぴったり当て嵌まる。
快楽を引き出す為に上下に腰を振り、左右にグラインドさせ、器用に襞を怒張に絡めるリーフの技は熟練した娼婦の様だった。
「お兄ちゃんも妹ま○こに一杯どぴゅどぴゅしてね……♪」
「ああ。勿論だ」
きっちり種を撒いて耕す。それがリーフと言う花園を開拓してきたレッドが負う責任だった。だから、妹の腰にシンクロする様に兄もリズム良く腰を叩き込む。
長年連れ添っている兄妹はお互いの気持ちが良い場所をしっかりと知っていた。
ずぼずぼじゅぽじゅぽ卑猥な水音が室内に響く。互いの汗やその他諸々の汁の匂いが混じって何とも生臭く、それでいて饐えた臭いがしている。だが、少なくともリーフはこの臭いが好きだった。
「すーはぁ……んくっ、スーハー……お兄ちゃん……♪」
レッドの肩口に顔を埋めてくんかくんかと兄の体臭を肺一杯に吸い込んでトリップする。この汗と埃と血の臭いの混じった兄貴のワイルドな香りは容易く妹の脳味噌を甘く冒すのだ。ご飯三杯は軽くイける。
「……好きだねえ、お前も。……いや、構わんのだが」
リーフの痴態にレッドは若干引き気味だ。ほんの少しだが、匂いフェチ気味なリーフだが、レッドには別にそう言った性癖は無い。
思えば、妹が自分のトランクスをくんかくんかしながら股間を弄っていたのを見てしまったのは果たして何時だったろうか。だが、頭に霞が掛かった様に思い出が明瞭としない。
……ま、良いか。思い出せないのはきっと思い出さなくて良い思い出なのだろう。レッドは頭からそれらを追い出して行為に没頭する。
- 61 :
- 「もっと……! もっとリーフのおま○こ激しくハメハメしてぇん……!」
匂いを嗅いで覚醒したのか、腰をぐりぐりと捻ってピストンの催促をするリーフ。その瞳にはハートマークが浮かんでいて、一片の正気すら見出せそうに無い。
「激しく? じゃあ、こんなモンでどうよ?」
ソフラン発動。BPMが100から200になった。腰骨を掴んで上下に小刻みに、且つ激しくシェイクする。泡立つ愛液がぶちゅぶちゅ、と弾けて結合部にこびり付く。
「きゃああああんんんんんっ!!!」」
因みにレッドのMAXは調子の良い時で888が最高だ。今迄の倍のテンポで奥を小突かれるリーフは歓喜の悲鳴をあげた。
先程、酒を入れたので何時もより多少は反応が鈍い事はレッドに+に働いている。決して早漏である訳ではないが、お世辞にも我慢強いとは言えないレッドのギャラドス。
千に届く回数、何度と無く兄の竿を咀嚼した妹の蜜壷は兄専用のオナホールといって良い程にエグイ動きをする。その弾幕を掻い潜り、妹を満足させる事は兄にとっては常に重労働なのだ。
「いっ! イイっ! おま○こイィッ!」
オクターブ高い声で泣き喚くリーフは桃源郷を彷徨いつつ、それでも尚深い快楽を求める為に腰を振り続ける。パツパツとした結合音が引っ切り無しに鳴り止まない。
「もっと強く出来るぜ。やってみようか」
「――ひっ」
――ずぢゅっ!
レッドの無遠慮なストロークがリーフの入り口から奥迄を一気に串刺しにして、子宮口と亀頭がキスをした。恥骨と腰骨が衝突して少し痛かった。
「ひィううううんんんんん!!!」
子宮を押し潰し、内臓全部を振るわせる衝撃にリーフは涙の玉を零して悶絶した。
ズコズコと注文通りに奥を重点的に叩くレッドのギャラドス。リーフの媚肉は蕩ける程柔らかく、それでいて隙間無くみっちり締めて来る。全方位から攻め立てる襞々の攻撃も驚異的だ。だが、レッドは未だ余力があった。
「い、クぅ……! 逝っ! お、おま……逝く……!」
「んん〜? 聞こえんなあ。はい、もっと大きな声で!」
先に天辺を拝むのはリーフだった。証拠に、リーフの膣内は不規則に痙攣収縮を繰り返す。
レッドは凶悪な面で口の端を釣り上げて、高速ピストンを続けながらリーフの勃起したクリトリスを捻り上げた。
逝くなら逝くとはっきりと宣言しろ。レッドがリーフに施した唯一の調教だった。
「ぎっ! お、おま○こ逝く! 逝ぐっ! いんぐぅ!! おま○ごぉ……!!」
「おらっ! 更に糞フランだ!」
良く言えました。そのご褒美に、レッドが更にスピードを上げた。
BPMが400突入。此処迄来れば半分体力譜面だ。だが、突破出来ればウイニングランだ。ゲージは余裕なので、更に乱暴に妹の最奥の円蓋部を擦り上げる。
「おぉ……おおぉんんん! おま○ご逝っちゃいまっずっ!!!」
下品な言葉と涎を垂れ流してアヘ顔を晒すリーフは理性の螺子が跳んでしまっている様だった。
だが、その普段とのギャップもまた可愛い。レッドもフィニッシュに向けてヒートアップする。
「逝けよ……逝っちまえ。逝っちゃえよ! お、俺も……!」
良し、発狂地帯を乗り切った。これで勝てる!
「いっ、く……ぁ、あはああああああんんんん――――っッ!!!!」
「んっく……! つうううぅぅ……!」
仰け反り、ギュッと目を瞑り、涎と涙を伝わせてリーフが絶頂の快楽に身を焼かれる。
臍の裏から伝幡する享楽の波が全身の細胞全てを振るわせる。
同時に、レッドもまた熱い欲望をリーフの最奥に注ぎ込んでいた。ぎゅうぎゅう搾り取るリーフのマン肉が痛い程に息子に食い込む。
だが、それが心地良くて尿道に残る精液すらも痙攣しながら吐き出してしまう。
「はっ、あっ、あはああああ……♪ き、来たあ……♪」
ぱくぱくと金魚の様に呼吸し、胎にブチ撒けられる生臭い愛の重さがずっしりと伝わって来る。まるで止血した部分に血液が戻って来る様なじんわりと暖かい感覚がリーフは大好きだった。
「おち○ぽみゆくぅ……☆」
「……うむ。お前も大変な変態でいらっしゃる」
兄貴のモーモーミルクを子宮でごっくんしてリーフは多少胎が膨れた。
反面、リーフにぎゅっと抱かれて顔がおっぱい塗れのレッドは少しだけ苦しかった。
- 62 :
- 「やっぱり、こうやってる時が一番幸せだなあ」
下半身で繋がったまま、レッドの胸板にのの字を書くリーフ。その顔は満足気であり、また何か物足りなそうだった。
「この生臭い、泥臭い交わりがか」
少しやつれた様な顔でレッドが言う。確かに、幸せと言われればそうかも知れないし、犯ってて安心すると言う精神的な癒しみたいなものも感じる。
だが、その代償として激しく疲れる。今、この時がそうだった。
「あたしは少なくともそう。……お兄ちゃんは?」
穏やかな、それでいて屈託の無い顔。そんなリーフに視線を向けられたレッド。
「あ? 俺は」
……別にお前程じゃない。ちょっと気取ってそんな事を言ってみようとする。だが、それが判ったのか、リーフは途端に悲しそうな顔をした。
「……嫌い?」
「う」
だから、そんな本気の涙目を向けないでくれ。……駄目だ、とても敵わない。
レッドは顔を背け、早々に白旗を揚げた。惚れた弱み、と言う奴かも知れなかった。
「嫌い、じゃない。……お前とのこれは、寧ろ大好きな方だけどさ//////」
「だよね♪」
レッドの顔は珍しく真っ赤だった。満足の行く答えが聞けてリーフはご機嫌だ。
恐らく、やっているリーフには自覚は無いのだろう。若し、自覚ありでやっているのだとしたら彼女は大した役者だ。レッド以上のやり手であるのは間違い無い。だが、その真実は不明だ。
「若し、さ」
「ああ」
一寸だけ、元気が無いリーフ。何となく言いずらそうに、もじもじとしている。レッドはそんなリーフの長い栗色の髪を梳きながらリーフの言葉を聴く。
「ギャラ君もミロちゃんもんでなかったら、お兄ちゃんとこうはなって無かったのよね」
「多分な」
リーフの問い掛けにレッドは答えた。
兄妹間も絆が爛れたのは相棒達のが全ての原因だ。それが無かったら恐らく、お互いが垣根を越えて交わる事は無かったとレッドは確信している。
「……侭ならないなあ」
「全くだ」
あいつ等ロケット団が自分達に齎したモノ。復讐心と兄妹での禁断の関係。アレが無ければ、今のこの心地良さは手に入らなかった。だからと言って、あいつ等を許容するか否かは全く別の問題で、寧ろ消し去りたい過去だったのだ。……二人にとっては、だ
だが、例え過去をやり直す事が出来たとしても、二人は決してそうはしないだろう。この蕩ける感覚を知った今、二人がお互いを手放す事は在り得なかった。例え、相棒達に恨まれたとしても。
腐って糸を引いた縁。肉欲塗れの赤い糸と言う名の呪いで二人は縛られていた。
「ねえ」
「今度は」
リーフがレッドの瞳を覗き込む。空色の瞳。その奥には自分と同じ別の色が見え隠れしている。自分と同じ存在から熱を分けて貰う為に、リーフはレッドの一物を絞り上げた。
「ん……もっと、飲みたい」
「……おっけ」
リーフがアンコールを使って来た。蠢動する肉壷がまるで自分の一物を消化する様にうねって来る。
……もう少し、可愛い妹と戯れていたい。レッドはもう一発位は頑張ろうと決めた。
- 63 :
- 悪いがリアルで用事だ。一端切るぜ。直ぐ帰れるかは判らん。
コンビニ寄って来るけど、何か要るか?
- 64 :
- ageてしまった不覚…!フォロー宜しく ノシ
- 65 :
- ,イ ,イ ト、ト_
/ i.`l.i l (. ゚wwr゙ <<<<<<<<<<<
/ i ヾl,/ / ̄´
/'⌒'Y'⌒ア ⊃⊃
∠二( ).ノ)
(ノ (ノ
- 66 :
- 乙 GJ、待ってるぜ
- 67 :
- 「お、お兄ちゃん……」
「リーフ」
皺になったスカートと汁塗れの黒い下着を脱がし、ニーハイソのみになったリーフ。
先程、痴態を見せていた妹は形を潜め、反面弱々しくいじらしい瞳を兄に向けていた。
M字開脚されたリーフの其処はヒク付いていて、彼女本来の色である黒色のヘアが申し訳程度に生えている。放たれた精はリーフの奥深くに着弾していて、ちっとも漏れては来ていない。
レッドは腹太鼓使ってパワー全開になったみたいにチャックから青筋立てて反り返る一物を隠そうともせずにリーフに覆い被さろうとしていた。
「ちゅー、して……」
怖い事を無くす様にキスをせがむリーフに胸の動悸を隠せないレッド。
偶にだが、リーフはこう言った付き合い始めを思い出させる様な初々しい態度を見せる事がある。そんな時は往々にして自分もまるで恋人とそうする様にどっぷりと妹の身体に嵌ってしまう。
そして、きっと今回もそうだとレッドは薄く笑う。……この先の激闘の苦しさを匂わせる乾いた笑いだった。
「いいよ」
――ちゅっ
レッドは優しく、リーフの唇にキスを落とす。最初の様な激しさは無く、只管に軽い啄ばむキス。それでも、リーフの目はぎゅっと閉じられていた。
――ずぶっ
「んっ! んんっ……っはあ! 挿入って、きたあ」
レッドはキスしながら、怒張をリーフの中に埋めて行く。瞬間、リーフの目が開かれ、レッドの最奥到達と同時に唇を離し、大きく息を吐いた。
容易く侵入出来たは良いが先程とは何か様子が違うリーフの膣内。
何だろう。気迫と言うか、篭っている情念が違うと言うか……
例えるなら、黄Bが赤GOPに変化した。そんな感じだろうか。
「……動く、か」
阿呆な事を考えてしまった自分を忘れる様にゆっくりとレッドは腰を動かし始める。
- 68 :
- 「はっ、ぁ、あはっ……んっ、んうう」
「ふっ、ふ、っ」
悶える様に喘ぐリーフ。決して苦しそうな訳ではない。とても心地良さそうにシーツを握り締めている。だが、レッドは余裕が無かった。やはり、先程とは様子が全く違ったのだ。
額に汗が滴り、リーフのお腹に雫が落ちた。
……おい、何だこのノーツの配置は。リーフの膣内は最初から発狂状態だ。
ぐちゃぐちゃのドロドロ。自他の境界が曖昧になりそうな泥濘具合だった。
「あっ! あっ! ああっ! あんんぅ!!」
「ふう……っ、っ」
遊んでいる余裕など微塵も無い。下手をすれば、最悪先にこちらが閉店して潮を吹く結果となる。男の矜持とエゴからか、それだけは絶対に避けたいレッド。
唇を噛み締めながら、妹を果てさせる為に頑張るレッドは兄貴としては最低で、それでもやっぱり優しい兄貴の鑑だ。
弾幕の如き、襞の猛攻。膣圧の洗礼。奥へと誘うリーフの女。レッドにとってはそのリーフの愛が逆に苦しかった。
「お兄ちゃん! おに、っひゃんん!!」
「はあ、はああ、はっ……っ、よっこい、せっと!」
涙の粒をポロポロ零し、上下に乳を揺らしながら四肢の爪でシーツを掻き毟るリーフ。
全体難を超えて全体至難と言った感じだろうか。だが、決して訳の解らない物でもどうにもならない物でも無い。少なくとも、完走は出来そうと踏んだレッドは尻に力を籠めて泣き喘ぐリーフに渾身の突き上げをブチ込んでやった。
「か、は-――ぁ」
リーフの身体から息が抜けて、瞬間浮き上がる。奥に到達した瞬間にリーフのお腹はレッドの一物の形にぽっこりと膨らんだ。
それがどうやら止めになったらしい。
「おにぃちゃ……っ!!」
身体はトロトロ、心もメロメロ。もうこのまま壊されてしまってもリーフは構わなかった。
――ぎゅう
リーフが脚をレッドの腰に絡ませて来た。両腕も背中に回され、物理的に引き抜く事が不可能な状況。俗に言うだいしゅきホールドと言う奴だ。
そんな男の桃源郷的シチュにあり、レッドの顔は苦い。
容赦無く搾り取る……否、握り潰すリーフの万力じみた肉壷。ゲージは輝きを無くして空っぽで、もう閉店直前だった。
そして、そんな状況でもレッドは勝った。
「お、おにいちゃんらいしゅきいいぃいぃ――――っっッ!!!!」
「リー、フ……くうっ!! ぅああっ……!!」
妹の絶叫告白を耳元に聞きつつ、レッドは堪えていた妹への愛を解き放つ。
その中で感じる背中の鈍い痛み。爪を立てられるのは何時もの事なのでレッドは抗う事はせず、只力の限りぎゅっとリーフを抱きしめた。
レッドのマグマストーム! 急所当り! 効果抜群だ!
「しゅきぃ……おにぃちゃん大好きぃ……♪」
リーフはマグマの塊を子宮に放り込まれた! マグマの熱がリーフを内部から焼く!
リーフは潮を吹いて倒れた!
「――ああ。兄ちゃんも大好きだよ、リーフ」
リアルでだいしゅきホールドを喰らいながら、レッドは白い欲望の全てをリーフの子宮に塗り込んで行く。噴かれた潮によって腹が汚れているが、そんな事は気にしない。
首や背中の鈍い痛みだって今は瑣末事だった。涙を零して極上の笑みをくれるリーフが可愛くて、レッドは自然と優しい手付きでリーフの頭を撫でていた。
リーフは最高に懐いている! リーフの肌の艶が上がった!
レッドはPPが無くなった! レッドの体力が残り少なくなった!
――Just Barely Bonus得点+1146000
- 69 :
- 「あたしは……お兄ちゃんの妹だけどさ」
「突然どうした」
気だるい身体を投げ出して、兄の抱擁を一身に受けながら、リーフが突然呟く。
レッドは怪訝な表情をした。
「あたしは同時にお兄ちゃんそのものでもあるのよね」
「おい? 何だ。脳味噌に精液でも回ったか?」
突然、要領を得ない話を振られる。ややメタ臭い話題だが、レッドにはさっぱり訳が解らない。軽口で応対してみるも、リーフには全く効果が無い。
「そうかもね。でも、薄々気付いてはいたわ」
「リーフ?」
屑の様な酷い台詞。イカれ女郎の戯言だ。
自分が精液好きだと否定しない辺り、本気で重症だとレッドが心配を始めた。
「本来、あたしは存在してはならない人間だってね」
……何だろう。一瞬、世界の綻びと言う奴が見えた気がした。
「でも、あたしはこうして存在してる。誰かが望んだんでしょうね」
光の無い、空ろな瞳だった。まるで終焉に際し、全てを語って逝くかの様な妹の様子にレッドは不安を隠せない。心に一抹の闇が滑り込む。
「今は未だ良いわ。新たな物語が始まる前だから。でも、一度それが始まってしまえば……」
「始まれば、どうなる?」
新たな始まりと言う奴がどうにも気になるが、それよりもそうなった場合に妹がどうなるのかが気になって仕方ない。少し語尾を荒くしてレッドが問う。
「さあね。それは世界次第でしょうね。だって、そう言うルールなんだもの」
全ては茶番。箱庭の中の群像劇に過ぎない。そして、役目を終えた役者は舞台を去らねばならない。例外は無い。それが、掟。
無表情なリーフの頬には涙が伝っていた。
「……冗談じゃねえぜ」
「――っ!」
だが、此処でレッドが漢を見せた。リーフを包み込む様に、それでいて強く熱く抱きしめた。
「言ってる意味は不明だが、まるで自分が消えるとでも言いたそうだな」
今にも消えてしまいそうな儚さが妹を包んでいる。そんな空気を追い払う様に、リーフの肉付きの良い、それでいて華奢な身体を抱き続けた。
「お前は俺の人生の相棒だ。勝手にリタイヤされちゃ困る」
そうして、レッドはリーフの瞳を射抜きながら力強く言った。
リーフの瞳に輝きが戻る。
……一緒に地獄に落ちると誓った。その約束を反故されては堪らなかった。
「うん。うん……!」
心の不安を全て打ち払う様な希望に溢れた言葉だった。
それに縋ってしまいたくて、リーフは顔をくしゃくしゃにしてレッドの胸に顔を埋めた。
「無性に、怖いよ。時が過ぎるのが。だから……ね」
心に湧き上がる不安は消せないし、恐怖心は日増しに強くなる。それを振り払ってくれるのは目の前の男しか存在しない。
「あたしを放さないでね……レッド」
リーフはレッドを兄としてでは無く、好いた一人の男として頼りたかった。
――ちゅっ
泣き顔のままリーフがレッドにキスをする。だが、レッドは凍り付いた様に何も出来なかった。
「……くっ」
……兄として、男としてリーフを支えなければならないのにこの体たらく。レッドは情けなくて堪らなかった。
- 70 :
- いや、遅くなって悪かった。濡れ場は後もう一発終盤に挟んでるので期待せずに待っとって。
それじゃまた昼にでも。
- 71 :
- マジで楽しくてこう、自分の作品書くの忘れてしまうというか手に付かないぜGJ
- 72 :
- やばい、リーフちゃんのか弱さに萌えてしまった
- 73 :
- 拾:憎悪の終焉
……一週間後
――グレンタウン ポケモン屋敷
グレンタウンの名所とも言える巨大な廃屋。嘗てのフジ老人達の研究拠点であり、恐らくはミュウツーが生み出された場所。
今は訪れる者は少なく、肝試しの子供やはぐれ研究員が立ち寄る位だ。昔は火事場泥棒の隠れ家としても機能していたが、治安維持の名目でガサ入れが行われ、めっきり姿を見なくなった。
時と共に朽ちて行くこの廃屋にジョウトからロケット団の増員がやってくるとの情報を得たレッドとリーフは綿密な作戦を立てて今日に望んだ。
――ドンッ!
「ぎゃああああああああ!!!!」
爆発音と共にロケット団員の断末魔が響く。屋敷全体に張り巡らされたトラップに面白い様に掛かっていく。最早、ポケモンでどうにか出来る状況を超えていた。
「糞ッ! またやられた! こっちに来てくれ!」
「一体全体どうなってる!? 敵は何処だ!」
パニックになり右往左往する男達。最初は七人近く居た団員も今やたった二人だけだ。
この屋敷にはスイッチによって開閉するシャッターが彼方此方に仕掛けられている。その切り替えとC4やクレイモアによるトラップは絶大な効果を上げていた。
『こいつ等はもう瀕だ。一気に畳み掛ける』
『WILCO(了解遂行)。じゃあ、シャッター開けるわね』
無線で連絡を取りつつ、絶妙なコンビネーションを発揮する兄妹。
――ガラガラガラ……
シャッターが上に開いていく。
「あ、開いた! に、逃げるぞ!」
「あ、おい待て! 危ない!」
団員の一人が焦りながらシャッターに飛び込もうとする。それに罠の臭いを感じたもう一人が必にそれを止めようとする。だが、遅かった。
「おおおおおおおおお――っ!!」
シャッターが開き切ると同時にレッドが突っ込んだ。
「がっ!」
半ば焼け糞気味にショットガンを突き出して、銃口を男にぶち当てた。それに一瞬よろける男に向かいレッドは引き金を引く。
――ダァン!
ガンスティンガーだ。近距離からの散弾銃をモロに喰らい、男は吹っ飛びながら絶命した。
- 74 :
- 「ひっ」
その様子を間近に見てしまった最後の一人がビクリと身を硬くし、次の瞬間にはレッドに背を向けて逃げ出した。通路に逃げ込もうして……
――パララララッ!
「ぐわあ!」
脚へ弾が当り、男はそのまま転んで倒れる。銃口を向けるリーフが佇んでいた。
……逃げる方向にこそ罠や追っ手を配置するモノだ。時には真っ向から勝負した方が結果的に生き残れると言うのは良くある事だ。そう言う意味では、確かにこのロケット団は策を誤ったのだ。
「さて……」
最後に残った団員に近付いていくレッド。前回と同じ様に尋問を行う腹積もりだった。リーフも構えを崩さないで、ゆっくり男に歩み寄る。その男はどう見ても自分達より年下だった。
「喋って貰おうかな」
「ぐうう……貴様等か! お月見山の仲間をったのは!」
脚を抑えながら何とか身体を起こしたロケット団が憎々しげに二人を睨む。
「・・・」
――どすっ
「ぐげっ」
その顔が気に入らなかったリーフ。その爪先が男の腹に突き刺さった。
自分達はされる覚悟を以って復讐に望んでいる。だが、そんなロケット団はされる覚悟を以って悪事に望んでいるのかが、どうにも伝わらない。
只、上の指示を受けて、責任の所在を曖昧にしロボットの様に命令を遂行しているだけでは無いのだろうか。
悪の組織を名乗る位ならば、の覚悟程度は済ませて置いて欲しいと常々兄妹は思っていた。
「質問はこちらがする。貴様は聞かれた事以外喋るな」
普段のリーフとは違う、低い男前な声で警告を発する。
「わ、分かった……言う通りに、する」
腹を抱えて苦しそうにしながら男は頭を振った。
……こうやって、銃で脅せば容易くこいつ等は命を惜しむ。全く、この世の必要悪足り得ない情け無さだと、思わず呆れてしまった。
- 75 :
- 「お月見山もそうだったが、ここも拠点として使うつもりだったのか?」
「そうだ。今や我々はジョウトの組織。カントー再進出の橋頭堡は欲しい」
前と同じ状況だ。どうやら、完全に拠点を西に移してしまった様だ。以前はカントーで幅を利かせていたのに、解散の煽りで動き難くなった故の苦渋の決断の名残だろう。
しかし、ロケット団への逆風が未だに根強いカントーで今更彼らに何が出来るのかと言う疑問が二人の頭には当然の様にある。復活したと言っても以前の様な力は取り戻しても居ないのにだ。
それはロケット団では無い二人が考えても仕方無い事だった。
「お前達の他に来ている奴等は? 今後の予定でも良いが」
一番聞きたい、今の二人の生命線とも言える情報。是が非でも聞き出さねばならない事柄だが、吐かれた言葉は二人の期待を裏切った。
「残念だが、俺は知らん。何も聞いていない」
「嘘を吐くと苦痛が増すわよ?」
人上等、撃つ気満々と言った具合でリーフが団員の鼻先に銃口を突き付ける。焦った様に団員が叫んだ。
「本当だ! 俺は知らない!」
その顔と声は嘘を吐いている様には見えなかった。男は尚も叫ぶ。
「俺達もお月見山を襲撃した奴等を捜せと直前に命令を受けていたんだ! 上層部はカントーが危険だと認識していた!」
どうやら幹部達は送る直前になって、お月見山での一件を知ったのだろう。今回の増員には追跡部隊としての任も付加していた辺り、ロケット団上層部はカントーへの派兵の危険性を肝に刻んだのかも知れない。今後の決定に慎重にならざるを得ない程に、だ。
「……やり過ぎちまったか。やれやれ」
「と言う事は、暫く団員の到着は無い……?」
「判らないが、そうなんじゃないのか? 送った仲間が皆される場所にしつこく部下を送り続ける程、幹部様だって鬼じゃねえさ」
だとすれば、そうなる可能性が高まる。追跡部隊の筈なのに、武器は無く、錬度も相変わらず低いのは人材難以前に財政難である可能性が高い。人材育成も武器調達も金が必要になるからだ。
そして、人員を容易く使い捨てる組織にはどんな悪党だって付いて来ない事位、幹部達は判っているだろう。カントーを押さえるメリットがあるなら、多少は強引に派兵する筈だが、そうでない場合は此処でそれが途絶える事も在り得た。
- 76 :
- 「そうね。じゃあ、あなたの辿る道も当然判ってるわね?」
「なっ、や、止め「ストップだ」
苛立った様にリーフが男の眉間に照準を合わせた。だが、レッドの声がそれを止めた。
「……さないの?」
「そのつもりだったが止めた。こいつには働いて貰おう」
てっきり始末してしまうと思ったのに、それを止めた兄が妹には意外に見えた。だが、レッドにはしっかり考えがあった。生かす事でこの下っ端に仕事をさせようとしていた。
「お前、にたくないんだよな?」
銃口をチラ付かせて、威嚇する。男が今は自分達の支配化にある事を念入りにアピールする様に、バレルで男の頬を叩くレッド。
「あ、当たり前だろ! この人鬼が!」
「――」
侮蔑の言葉と共に、べっ、と頬に唾を吐き掛けられた。
……良い度胸をしている。
――バキッ
「ぎゃ!」
頬の汚れを腕のリストバンドで拭い、レッドは男の鼻っ面にパンチを叩き込んだ。
鼻が折れる様な事は無かったが、それでも、男の鼻頭は赤く染まり、鼻血も滴っていた。
「良いか、良く聞け糞餓鬼。一回だけだ」
勇ましいのは結構だが、自分の立場を弁えないのは滑稽以前に憐れだ。
グイっと胸倉掴んで、レッドが男の耳元で呟く。最後通牒だ。
コクコク。男は何度も頷いた。そうしなければされると思ったのだ。
「送り込む度に鏖するってアポロに伝えろ。アジトを見つけたら真っ先にしに行くともな」
レッドはこの下っ端をメッセンジャーとして使う事にしたのだ。命を奪わない代わりに言葉を届けさせる。レッドは男に言葉を託した。
「それが厭なら組織の全力を以ってあたし達を潰してみなさい」
リーフもそれに続いた。それは事実上の宣戦布告だった。
「俺はレッド」「あたしはリーフ」
――嘗て貴様等を滅ぼした者だ
そして最後に自分達の名前を記憶させる。古株の団員にこの名前は効果があるからだ。
「お、お前達がサカキ様を倒した伝説の……!」
どうやら、この下っ端は少なくとも二人の名前を知っている様だった。
「頼んだぜ」
「わ、判った。確かに、伝える」
男の肩を掌で軽く叩き、銃を仕舞って背を向ける。背中に聞こえる男の声に頷いてレッドはリーフに撤収を促した。
「帰るぞ、リーフ」
「はーいはい」
「ま、待てよ! おい!」
人間用の救急キットを男に放り投げる。被弾した脚では帰還は困難だろうと判断したレッドの慈悲だ。背中越しの下っ端の声を無視して二人は屋敷を後にした。
その数日後。グレン島の火山が噴火。島の大部分は溶岩に飲み込まれ、彼等が闘った痕跡は完全に消去される。……実に危ないタイミングだったのだ。
……其処からぱったりとロケット団のカントー侵攻は止まってしまう。
数ヶ月毎に小規模な部隊が送られて来る事はあったが、年が明ける頃にはそれすらも無くなってしまった。二人が本気で組織に喧嘩を売った事に、幹部達が恐れを生したかの様な反応だった。
それに業を煮やした二人はジョウトのアジトを何とか突き止めようと方々手を尽くし、現地に飛んでみたりもしたが、ロケット団に遭遇する事すら出来なかった。まるで意図的に避けられている様に。
……今迄、踏み付けにしていた者達から、意を向けられ、逆襲を受ける。様々な悪行を行って来た彼等がその覚悟をしていないとは思えない。だが、実際にロケット団はたった二人だけの処刑人を恐れ、何も出来ないで居る。
悪を名乗るならば、最後迄卑劣、且つ極悪非道。掲げる悪の理想を貫き、歩む悪の道に殉じて欲しいモノだが、どうやら今の彼等にはそれだけの度胸すら無いらしい。
そんな半端で脆弱な覚悟の組織が長い命の筈が無かった。
- 77 :
- ……そうして、また月日は巡り、夏。
彼等が最初に旅立ってから三年が経過していた。
レッドとグリーンは大学を卒業。レッドはフリーランスで何かの仕事を始め、グリーンはオーキド研究所の見習い研究員をしながらトキワジムのリーダーも兼任していた。
――八月の終わり
彼等の復讐が唐突に終わりを告げた。
――レッド宅 二階
その日、レッドは家で仕事の書類を纏めていた。リーフは大学の研究室だった。
西日が目に沁みる夕刻。自分のデスクでコーヒーを啜り、キーボードを操って書類を作成するレッド。もう昼間からずっとこうしている。
地味だが意外と重要な仕事だった。目が疲れる作業を長時間休まず続けるレッドの集中力はかなりのものだった。
すると……
YOU ARE NOW ENTERING COMPLETELY DARKNESS ……
レッドのギアから着信音。一時手を止めて、ギアを取る。発信者はグリーンだった。
「あいあい。こちらレッド。ボンジュールってな」
昔の幼馴染の傷を抉る挨拶だった。
『嘗めた口利いてんじゃねえぞシスコン。って言うか、お前その様子じゃテレビ見てねえな』
「テレビ? サカキの旦那が逮捕でもされたか?」
やや憤慨しながらグリーンが語尾を荒くする。テレビがどうとか言っているが、こちらは一日缶詰状態だ。そんな暇は無い。
凡そ在りもしない事を口走ってみるも、一転してグリーンの口調はシリアスだった。
『……そっちの方が良かったかも知れねえ』
「え?」
何だろう? シリアスな抑揚の中に若干の焦りが見える様だった。
『良いか? 兎に角、テレビを付けろ。ちゃんと伝えたぜ』
――ピッ! ツー、ツー……
「……なんだありゃ」
こちらが何かを言う前にグリーンは電話を切ってしまった。どうにも幼馴染の動向が不明瞭なレッドだった。
「……この辺にするか」
まあ折角教えてくれたのだからそれに肖らなければ不義理と言うものだ。レッドは首をゴキゴキ鳴らすと、今日の作業を切り上げて下に降りて行った。
――レッド宅 居間
「あ、レッド!」
「何?」
降りると同時に母親が血相を変えた様な表情を向けてくる。母がこの様な顔を晒すなど、レッドにも馴染みが無い事だった。
「テレビ、見てみなさい」
「?」
また、テレビだ。グリーンも母もテレビを見ろと言う。其処に何が映っているのか?
レッドは画面を網膜に映し、幼馴染の電話と母の表情の意味をやっと理解した。
「……何、だと?」
『ロケット団が復活宣言!? 多数の団員がコガネラジオ塔を占拠』
そんな感じのテロップが画面に踊っていた。
――バタン!
レッドが状況把握に努めていると、チャイムもノックも無しに凄い勢いで扉が開かれた。
「はーっ、はーっ」
其処には荒い息を吐くリーフが立っていた。
「リーフ!?」
「あなた、大学は?」
「ナツメが電話くれたのよ。こんな時に篭ってられない!」
毎度の如く良いタイミングで登場する妹様には些か吃驚な兄貴。母は研究室に居る筈の娘を問い詰めるが、こんな時に研究室に缶詰になっていられないと無理矢理帰って来たみたいだった。
「兄貴、どうなってる?」
「判らん。俺も今見たばかりだ」
荷物を床に放り投げてソファーに座るレッドの隣に腰を下ろす。リーフも詳しい情報を求めていたが、レッドもそれは知らなかった。
- 78 :
- 報道ヘリによる空からの中継が続く。発端になったのはラジオからおかしな放送が聞こえると言う警察への苦情だった。だが、警察がコガネのラジオ塔に連絡をするも音信は不通。これは妙だと警官数名をラジオ塔に派遣して見た所、もう既に手遅れだったのだ。
今は膠着状態。武装した警官隊が塔を取り囲んでいるが動き出す気配は無い。内部に大勢の人質を抱えているのだからそれも当然だった。
そして、二人はそれを見た。ヘリによる映像がフレームアウトする間際、ラジオ塔の入り口から出て来た人影を確認した。
「……子供?」
「人質が自分で逃げたのかな」
どうもそれとは違う様だ。誰かに助ける素振りも、慌てた様子も無い。
帽子を被った二人の子供。男の子と女の子。小学生……否、背格好から言って恐らく中学生だ。中継が途切れてしまったのでそれ以上は判らなかった。
陽が落ちて、ヘリは撤収。少し離れた場所からのレポーターによる中継に切り替わった。それを眺めていると、先程映った子供達が大人の制止を振り切って走り去っていく。目指す先は、ラジオ塔の方角だった。
「あ、さっきの子達、戻って来たよ!?」
「おいおい、まさか……」
どう考えても力がある子供には見えない。しかし、一瞬だけ見えた彼等の顔には或る種の風格が滲んでいた事を兄妹は見逃さない。
三年前のシルフカンパニーでの激戦が脳裏を過ぎる。彼等はあの時の自分達と同じ事をしているのだろうか。それは映像だけでは判らなかった。
――そして
テレビを見始めて数時間後。唐突に動きがあった。
内部からロケット団がぞろぞろと出て来て、周囲に配備された警官隊と衝突を始める。その騒ぎに乗じて殆どの団員がバラバラに散って行く。その中には他と明らかに違う服を着た幹部と判る人間達も含まれていた。
「アポロ……やっぱり、アイツだったか」
「あの白い奴だね……」
ナナシマで闘った幹部と背丈や顔や髪色が一致している男が一人居た。だが、その男もポケモンに乗り、何処かへ去っていった。
「あいつ等がやったのか」
「みたい、ね」
騒ぎが去った後にこっそりと塔から出てくるさっきの二人。報道陣や警察に囲まれる前にポケモンで何処かに飛んで行った。
その少し後に、検挙された団員の証言により今度こそロケット団が解散した事が報じられる。
「「――――」」
レッドとリーフはその映像を呆然とした佇まいで見ていた。
――レッド宅 二階
「兄貴……」
「・・・」
自室に引っ込んで、ベッド脇に腰掛けて只管に俯く。隣に座るリーフも言葉に困っているみたいだった。
「解散、しちゃったね」
「ああ」
それ以上に上手い言葉が出ない。リーフのそれにレッドは目を閉じたまま頷いた。
「どう、しよう。これからさ」
「これから、か」
復讐の為に生きてきた。その為に多くの生を重ねた。一度は遂げたと思ったが、またそれに引き摺られて、振り回されて。
終わった後の事を考えた事はある。だが、生を重ねた自分達がのうのうと平穏を享受する事は許されない。復讐に狂い、身内を犯し、大勢をした。それらの咎は決して消えない。
だから、決まって何時も何かしらの理由を付けて考える事を放棄していた。だが、今度はそうはいかない。
「まあ、何にせよ」
今だって、どうして良いのか判らない。唯一確かなのは……
「俺達の戦いは終わったぜ」
全て終わった。たったそれだけだ。
- 79 :
- 「終わった? ……終わった、のかな」
「ああ。……終止符打ちは、俺達でやりたかったがな」
リーフは未だに信じられない様に複雑な顔をしていたが、レッドはもう全てを受け入れていた。
今回もまた自分達が終わらせると思っていた復讐を終焉に導いたのは名前も知らない何処かの誰かだったのだ。それを恨む真似はしない。
唯、欲を言えば、決着は自分達で付けたかった。しかし、それはもう言っても仕方が無い、過ぎ去った願いだった。
「……うん。そっか。此処で御仕舞いか。ミロちゃん達も納得してくれるよね」
「手は尽くしたさ。もう、十分血は流された。これ以上啜る事は無い」
リーフもとうとう納得した。自分達に出来る事はやった。望む結果とは違ったが、仇が滅んだ事に変わりは無い。その瞬間は確かに目の当たりにしたのだ。
それなら今度こそ、相棒達も笑って逝ってくれるだろうと二人は信じたい。この瞬間を掴む為に兄妹は魂を磨り減らして来たのだから。
もう存在しない仇の影を追う事も必要無い。銃を握る事も、める事も。
解放された二人はもう誰もさないだろう。
「若し、又復活したら?」
「その時は一緒だ。だが、次は復讐の為じゃない。自分の為にだ」
終わったからと言って生き方を変える必要は無い。その時は、残念だが再び銃を取れば良い。それが復讐に取り憑かれた負け犬として生きて来た二人に課せられた栄光ある生き様だ。
「そうならない事を祈りたいわね」
「全くだ」
出来ればそうなって欲しくは無いと二人は切に願いたかった。
だが、今はそんな事を祈るより、勝利を噛み締める為の僅かな平穏が欲しい。
巨悪の壊滅に一役買った事は何時かきっと報われる。裁きの刻が来る迄、自分達はその罪を背負って生きれば良い。
今はそうしたい。それで良いと思った。
「そう、か。主役はもう、変わっていたのか」
呟かれるレッドの科白は全てを見据えたかの様だった。
リーフがそうである様に、彼にも世界の理が確かに見えた。
「新しい物語はとっくに始まってたんだな」
主役では無くなった自分。だが、役目を終えた者が舞台を去ると言うのなら、未だに存在している自分には遣るべき事が残されているという事だ。それが何であるか、何となくだがレッドは判っていた。
「・・・」
「?」
だが、リーフは?
自分の写し身。自分の半身。自分のもう一つの可能性。
消えずに隣に存在している彼女が背負った役目は何なのだろうか。
レッドには未だそれが見えなかった。
- 80 :
- 復讐劇強制終了。もう流血描写は無いからご安心。次辺りから後半戦こうご期待。
え、期待なんてしてないって?
- 81 :
- 乙
二人の行方が気になる
- 82 :
- >>80
このシリーズ 超期待!してる
- 83 :
- 拾壱:月に吼える
――レッド宅二階 レッドの部屋
「ふああああ……」
目覚まし時計のアラームと共に意識を眠りから浮上させ、ベッドから起き上がる。
上半身裸、形見のネックレスとジーパンのみを装着した姿で大欠伸をしながら、ぼりぼりと頭を掻いた。
「あ?」
ふと、ベッドに目をやると其処に何時も居る筈のもう一人の姿が無かった。
……気の所為か、何時もよりベッドの空白が広い気がした。
「珍しい。アイツ、もう出たのか」
日付はテレビでロケット団解散が報じられた次の日。八月三十一日だった。
頭の隅に引っ掛かりを感じるが、それを気の所為だと処理して、レッドは黒いTシャツに袖を通し、下に降りた。
――レッド宅 居間
「おはようさん」
「あら、おはよう。自分で起きてくる何て珍しい」
居間に下りた時、母親は朝食準備の真っ最中だった。何気無く言われた母の台詞にまたもや引っ掛かりを覚えるレッド。ずっと自分は母に呼ばれる前に自力で起きていた筈で、寧ろ起きて来ないのはリーフだった。
「?」
……きっと間違っただけだろう。テーブルから椅子を引っ張り出して、それに腰掛ける。
沸々と湧き上がる厭な予感。レッドは何とかそれを無視する事に勤めた。
だが、それは出来なかった。
「そう言えば、リーフは? 今日も研究室?」
厭な予感の根幹。リーフの事について。胸中を悟られない様に何気無い会話を装って、普通の声色で尋ねた。
「・・・」
母親は手を止め、凍結した表情でレッドを見詰める。
「母さん?」
何故、其処で黙るのだろう。予感が急速に確信に変わって行く様を脳内で見せ付けられる。
……否、そんな筈は無い。レッドは自分の希望的観測を崩さなかった。
「それは、誰の事?」
だが、それは彼の母親自身の言葉であっさり裏切られた。
「はあ?」
最初、それを冗談だと思った。否。そう思い込みたかった。嫌な汗が全身に噴出して、衣服に張り付いて来る。レッドはそれが不快で堪らない。
「リーフだよ。俺の一ヶ下の妹でアンタの娘だ。俺に全部任せるって言ったの母さんだろ?」
念を押す様に言ってやる。頼むから、冗談だと言ってくれ。しっかり思い出してくれ。アンタの娘の事を。俺の妹の事を。
……お願いだから。
「いや、任せるも何もねえ」
――おい おいおい。まさか まさかまさか。
……言うな。それ以上言うな!
「あなた一人っ子じゃないの」
「――っ!!」
レッドは二階に駆け上がった。リーフの、妹の痕跡を探す為に。だが。
「――無い」
無い、ナイ、ない、無いっ!
彼方此方ひっくり返して探すもその存在の欠片すら見つからない。
箪笥、ベッドの下、本棚、机の中。見当たらない。収納箱の中身を全部ブチ撒けた。
妹の服も、バッグも、化粧品も、書籍も、研究資料も。寝る前にあった筈のその一切が消えていた。
「駄目だ。……糞がぁ!」
レッドは家を飛び出した。ドンカラスをボールから解き放つと、空へ飛び立った。
- 84 :
- 知り合いに聞いてみる事にした。それに賭けたかった。
「はあ? お前、頭でも打ったの?」
グリーン。馬鹿にした様な顔をされた。今度殴って置こう。……次だ。
「えっと、俺はレッドに妹が居るって始めて聞いたけど?」
タケシ。露骨に戸惑われた。御協力有難う御座いました。……次。
「どちら様ですかそれ? そもそも先輩は一人っ子では」
ナツメ。変な顔をされた。本職エスパーでもお手上げとは。……次。
「私は存じ上げませんわ。何かの勘違いではありませんの?」
エリカ。知らないと言われた。後は誰が居ただろう? 次は……
思い付く限りの知り合いを尋ねて撃沈を繰り返す。ジムリーダーは愚か、四天王にだって尋ねたがそれでも駄目。知っている名前を辿って、それが無くなる迄同じ事を繰り返した。
――居ない
リーフを知っている者が誰も居ない。自分の頭の中にしか存在しない。
何だこれは。何なんだ?
周りの全てからリーフの情報だけが失われてしまっている。
これが世界のルールと言う奴なのか。こんな。こんな……!
――お月見山 広場
方々を彷徨った末に、辿り着いた山の広場。空に映える月がレッドを嘲笑っている。
「何処行っちまったんだよお……!」
疲れ切っていた。足は棒の様で、思考力は昆虫並みに低下している。
肉体的と言うより、精神的疲労の方が強い。一日で一生分の徒労を味わった気がする。
辺りはすっかり闇に包まれていて、今が何時かも判らなかった。
一体、自分は何時の間にこのおかしな世界に迷い込んだのだろうか。これが夢ならさっさと覚めて欲しかったが、頭を壁に打ち付けても目が覚める事は無かった。
「リーフぅ……っ!」
頭を抱えて苦悩する。泣きたい気分なのに、天邪鬼な涙腺は反応すらしてくれなかった。
自分の半身が居なくなる事がこれ程の痛みを齎すとは。本当に心が引き裂かれそうだった。失って始めて判る大切な人の価値。リーフの存在かどれだけ大きかったのか、レッドは初めてそれに触れた気がした。
乗りが良くて、やや癖っ毛で、抱くと柔らかくて、酒飲みで、締りが最高で、笑顔が可愛くて、おっぱいデカくて、ポケモンの菓子作りが得意で、喧嘩も強くて、寝起きが悪くて、何時も助けてくれて、癒してくれて、俺の相棒で……
リーフに対して思う事は沢山在り過ぎて一言では言い表せない。脳裏に浮かぶ妹の特徴は多い。それなのに今は妹の顔が思い出せなくなっていた。
……消える。妹の温もりや、想い。重ね合った絆と、愛情が失われて逝く。忘却の彼方に消えて往く。
「――厭だ」
自分の大切な者がどんどん居なくなる。嘗てはギャラドス。自分の慢心と社会の歪みによって。
そして、今回は妹。血を分けた大切な、世界で一番大切な女が理不尽な力により存在そのものが抹消されて往く。
そんな糞っ垂れな世界はこっちから出て行ってやりたかった。
- 85 :
- 果たして、これが、生を重ねた罰なのか。だとしたら、何故自分も消し去らないのか。
それは役目とやらがあるのからか。ファイアレッド……前作主人公としての役目が。
「役目……」
忘我と言った表情だったが、それでもレッドは顔を上げた。
リーフにも嘗ては存在した役目。リーフグリーンの主人公。
だが、今はそうでないから彼女は退場させられた。平等に被る筈だった今作のロールを自分が全て奪ってしまったからだ。
それなら、リーフにもそれ以外の確たる役割が存在すれば、与えてやれれば或いは。
「……ある」
レッドには確かにリーフにしか出来ない役目がある事を見出していた。
本来それは、舞台役者が勝手に振って良いモノでは無かった。
だが、この世界に……否、世界を創り出した神たる存在に彼女に対する一片の慈悲でもあるのなら、それは是非とも叶えて欲しかった。
リーフが存在するに足る役割。それは……
「戻って来いよ……! お前が居なけりゃ俺は……俺はなあ……!」
神には縋らない。以前そんな事を言った自分が阿呆らしくて笑えてくる。
では、都合良くそれに頼ろうとしている今の自分は何なのだと。
……決まっている。それこそが神ならざる人の姿だ。
人間の手ではどうしようも無い超常的な何かを前に人は頭を垂れて祈るしかない。
だが、こんな屈辱で大切な女が帰ってくるなら安いモノだと、レッドは只管祈った。
――俺の相棒を返してくれ、と
「!」
不意に、何かの気配を感じた。自分以外誰も居なかった筈の広場に膨れ上がるその存在感。レッドは自分の勘を頼りにその元凶を探し始めた。足取りは覚束無いが、それでも思考だけはクリアだった。
「リーフっ!!」
月を背にして、彼女は泉の畔に立っていた。レッドが捜し求めていた女は穏やかな微笑を湛えていた。
……でもその姿は幻の様に透けていて。レッドは恐れずに駆け寄った。
「――!」
そして、その姿はその手に抱いた瞬間に掻き消えた。
「あ」
自分の両手を見詰める。抱いた筈のリーフの身体。だが、掌には何も無い。
――何も無い筈なのに
レッドの両腕から先は血でべっとり汚れていた。
「あ、ああ……!」
――バシャ
力無く、泉に膝を付く。水の冷たさは不思議と感じない。その水面に映し出される自分の姿。余す所無く血塗れだった。の臭いが激しく鼻を突く。
「うおわああああああああああああああああああ――――っっッ!!!!!!」
月に向かってレッドは吼えた。
- 86 :
- 「……貴! 兄貴ってば!」
「――っ!?」
肩が揺す振られている。瞑っていた目を開くと其処には見慣れた天井。自分の部屋だった。
――レッド宅二階 兄妹の部屋
「あ、起きた。んもう、吃驚させないでよお。何時も以上に魘されてるし、揺すっても起きないしさあ」
「……ゆ、め?」
顔を傾かせるとほっとした様な妹の顔があった。夢、だったのだろうか。
……だとしたら何て夢だ。相棒の以上に見たくない光景だった。
「もう日付変わっちゃったよ。夜更かしはお肌に悪いのよねえ」
「日付……」
むっくりと身体を起こす。全身に疲労が圧し掛かっていた。今迄寝ていたとはとても思えない身体の重さだった。
リーフの言葉にはっと気付きレッドが尋ねた。
「今日、何日だ?」
「え、八月三十一日。あ、日付変わったから九月一日だわ」
「――」
それを聞いて絶句した。今朝、確かに日付を確認した。八月三十一日だった筈だ。
「俺、今日何してた?」
「そんなの……あれ」
何で俺は他所行きの服のまま寝ていて、その膝下が水で濡れている? 昼間、一体何をしていた? それは勿論……
リーフに聞いてみたが、何故か彼女は怪訝な顔をした。
「どうしたんだろ。記憶に無い。……そう言えばあたしも何してたんだっけな?」
途端、背筋が寒くなった。どうして、自分の一日の行動を覚えていない?
思い出そうとして首を捻るリーフだが、どうしても思い出せない様だった。
『夢じゃなかった?』
それとも、目の前のこれがそもそも現実じゃあない?
「お前、本当にリーフだよな?」
「はい? ちょっとちょっとこんなエロ可愛い妹が他にいるっての?」
信じられるモノが何も無い不確かな状態だった。自分自身の存在すらあやふやだが、それ以上に目の前のリーフの存在が疑わしかった。
勘繰ってみるも、その反応を見る限り、彼女の受け答えはレッドが知るリーフのそれに間違い無かった。
……だが、未だ確証が無い。
「本当に、ほんとのほんとにリーフなんだな!?」
レッドはその存在を確かめる様に手を伸ばす。触れたのはリーフのたわわに実るおっぱいだった。
「きゃぁっ! い、一体どうしたのよ。……んっ、やばい薬でもやったの?」
一瞬、身体をビクッとさせたリーフだが、レッドを張り飛ばす様な真似はしなかった。
少し、眉を顰めただけで結局レッドの気の済む様にさせた。
「リーフ……」
むにむにむに。掌一杯に捏ねて、揉んで、触って確かめた。
服の上からでも判るこの柔らかさ、90以上あるに違いない質感と肉感。正に一級品。それはレッドだけが知っているリーフの乳の感触に間違いは無かった。
最早、本人として疑う余地が無い事を確認して、途端、レッドの顔が崩れた。
「リー、フ……っ!」
「っ!」
涙を滲ませて、自分に縋り付く兄の様子を見て只事ではないと妹は理解した。
兄の涙など、復讐を決意したあの日以来終ぞ見る事が無かったのに。
「……大丈夫。あたしは此処に居る。居るから」
啜り泣くレッドをあやす様に自愛に満ちた表情で背中を摩り続けるリーフの姿は、まるで若き日の二人の母親の様で、また神々しくもあった。
「何があったの?」
一言だけそう言って、レッドを宥め続けるリーフ。母性溢れる彼女の抱擁に徐々に落ち着きを取り戻したレッドはぽつりぽつりと語り始めた。
- 87 :
- 「あたしが、消えた、か」
「ああ。誰も覚えてなくて。痕跡すら無くて。捜して、捜して。見つけたと思ったら消えて、俺は蝕まれて……そして、お前に起こされた」
何時もの夢に輪を掛けて最悪な、文字通りの地獄みたいな光景だった。ダークライだってもう少し慈悲のある悪夢を見せるだろうと思わず考えてしまう程の。
「ルールに乗っ取って排除されたのね」
「そう言う事だろう、な。……焦ったぜ。本当にな」
どうやら、退場した本人にもその自覚は無い様だった。
……何て恐ろしい事だ。不要と判断された役者は自分が消えた事に気付く事も無く、その痕跡すら残さず消滅させられるのだ。それがこの箱庭の掟だと言うのなら、無慈悲にも程がある。
そして、リーフはそれに一度飲まれた。レッドにとってはまるで心の大半が砕けて消えた様な喪失感だった。
「もうあたしが果たさなきゃならない役目なんて無いって思ってた。だから、消え去るのが無性に怖かった」
以前のリーフの言葉。彼女がそれを察知したのは、消される前の危機意識か、それとも前借主人公を張った経験からか。恐らく、そのどちらか若しくは両方だろう。
「そして文字通りに一度消えたんでしょ? でも、あたしはこうして存在してる。一体、どうして」
それがどうにもならないと判ってしまったから、彼女はレッドに縋った。しかし、一度消えて尚、こうして存在している事がリーフには腑に落ちない様だった。
あの時から、自分には存在に足る役割が無かったのを知っていたからだ。
「思ったんだよ。お前に新しい役割が出来れば、また俺の前に現れるって」
レッドにはそれが納得出来なかった。だからこそ、彼は世界に対しリーフの役割を提示したのだ。彼の願いが叶えられたのではなく、世界がそれを背負ったリーフを気に入ったので彼女は再び存在を赦されたのだろう。
「あたしに課す役目って、兄貴が?」
「ああ。ゲームの駒である俺にそんな権限は無いけど、それでもそうしなきゃって」
あらゆる事象は観測者が認識しなければそもそも存在し得ない。世界の掟に気付いてしまった以上、それは確かに存在する明確な力だ。脚本と言っても良い。
レッドがそれにアクセス出来たのも、単に彼が背負っている役目の重さか、或いはリーフに対する想いの強さか。
……兎に角、彼は脚本を書き換えたのだ。それに伴って舞台に再登場したリーフが再び消える事は無いとレッドは確信している。其処に精査は必要無かった。
- 88 :
- 「それって一体……」
「……秘密だ」
問題なのはリーフが背負わされと言う新たなロールの詳細だ。本人の意思を無視して兄によって勝手に背負わされたそれを聞く義務が妹には生じていた。
リーフは神妙な面持ちをしていたが、レッドは顔を背け、断固として語ろうとしなかった。そんなレッドの態度が気に入らないのか、リーフが弾けた。
「何それ気になる! 肉奴隷? 性処理肉便器? オナホール!? ペット!? 愛奴!? ……今も十分それに近い事をやってる気がするわね」
「おい。色んな意味でおい」
何でそんなエロ方面に偏ってるんだ。他にもっと相応しい言葉があった筈だ。しかも今の自分はそれに近いって俺はどんだけ筋が入った変態さんだよ。
……レッドには言いたい事が山程あった
「じゃあ、とっとと吐いちまえよお。うん?(怒)」
「ひ、秘密。いや、何れは言うから今は勘弁して」
自分の乳をぐいぐいとレッドの顔を押し付けて、柄が悪い態度で尋問するリーフ。その彼女のこめかみに青筋の十字路を見てしまったレッドは何時かは言うからと許しを請うた。
「むう。しゃあないか」
「ぶっ」
――べしゃ
あっさり承認したリーフは手を放すと、レッドが顔からベッドに着地した。
何れ話すと言うのなら、無理に聞き出す必要は無いと思ったのだ。それ以上に、兄を尋問の名目で苛めるのは妹としては嫌だったのだ。
「はあ。せめてお嫁さん位なら妥協しても良いけどさ」
だけど、やっぱりそれ位は言って置いても良いだろうと、リーフはレッドを見ずにぶつぶつと呟いた。
「//////」
……何故か、レッドは顔の半分を掌で覆ってそっぽを向いていた。
「って、そりゃ無理か。……どしたの?」
「ナンデモナイデスヨ? ハイ」
どれだけ鋭いんだこの女。やっぱり侮れない。
振り返ったリーフが不審そうに見てくるが、レッドは怪しいイントネーションで自分の胸中を最後迄ひた隠した。
この一件を最後に、レッドが相棒の悪夢に魘される事は無くなった。
- 89 :
- リーフの存在をHGSSで抹消したゲーフリを俺は許さねえ。雑巾臭いマリル数十匹放り込んでバイオテロを起こしてやりたい位だぜ。
〜チラシ裏〜
FRもLGも両方やったが、LGの主人公は女だった。だから、HGSSで当然出てくるものと信じていたらあの仕打ちだよ。ソフト二つ使って交換して凄い楽しかったの覚えてる。その思い出を無かった事にされちゃ堪らねえってのが筆者の物語の核です。
〜以上チラシ裏〜
キリも良いし、ほんとシブに爆撃しようと思う。皆少しは楽しんでくれてる様だし、同士が釣れるかも知れないな。
- 90 :
- >>89
乙!そして激しく同意
アニメ出演→叶わず
スマブラX参戦→叶わず
HGSS出演→叶わず
というリーフの不遇さが心苦しいよ。
しかし、相思相愛で惹かれう二人の悲劇があるから赤葉SSはロマンティックで素敵だ。
- 91 :
- >>89
同意を誘うならSSでやれ馬鹿者!!
ともあれ乙
- 92 :
- 音ゲーマーであるならばリーフにふしぎなくすりを使うべきだったな(媚薬的な意味で)
- 93 :
- >>92
スーパーガールに、変身だ〜♪ですね
- 94 :
- 拾弐:ジョウトからの客人
――九月中旬 ヤマブキシティ リニア前
リーフはその日は休日で、ヤマブキ近辺をぶら付いていた。其処でとある人物に出会った。
「? ……あの子は」
それは女の子で何処かで見た事がある姿だった。一体、何時だったろうか。
どうやら、道に迷っている様だった。
「そこの君! 何か困り事?」
リーフは思い切って声を掛けてみた。
「あ――」
女の子が振り返る。ニーハイソ、オーバーオールの様な青いショートパンツに赤いトレーナー。リボンを括り付けたキャスケットを被っていた。
「ふふ。そんな警戒しないでよ。別に取って喰ったりしないからさ」
硬い表情のその子を安心させる様に笑い掛ける。
リーフにはその少女の正体が判った。ラジオ塔事件の時に画面に映りこんだ女の子だった。
「あたしはリーフ。大学生。あなたは?」
「え、と。あたしはコトネって言います」
リーフが自己紹介をすると、女の子が答えてくれた。
話を聞くと、彼女は友達との待ち合わせ場所であるシルフカンパニー迄の道が判らなかったらしい。確かに、遠くからは目立つあのビルだが、辿り着くには狭い路地を通らねばならず、この辺りは似た様な路地が多い。リーフは案内してやる事にした。
「じゃあ、リーフさんもトレーナーなんですか?」
「まあね。今は研究で忙しいから昔みたいに頻繁に勝負はしないけど」
道すがら、お互いについて少し話した。
コトネはジョウトはワカバタウン出身のトレーナーで、お隣さんのヒビキと言う少年と相棒のマリルと一緒に半分は修行、半分は観光目的でカントーの土を踏んだらしい。
リーフも自分がマサラ出身でトレーナーである事を告げる。
研究優先で勝負をしないとリーフは言うが、それは間違いだ。その強さ故にもう半年程挑戦者は絶えていて、それ故に卒論研究一本に搾るしかなかったのだ。
だが、そんな事を初対面のコトネに語ったりはしない。
「凄いなあリーフさん。あたしなんか何やっても中途半端で」
「今はそうでも未来は判らないものよ? 悲観しなさんな」
コトネの顔は自信無さそうに俯いている。そうやって決め付けてしまえばそれだけの話だともっと前向きになる様にリーフは窘めてやる。
「いいえ。あたしなんて駄目ダメですよ。リーフさんみたいに美人じゃないし、おっぱいだって……」
「いや、女郎の価値はそれだけじゃないでしょ。あたしの彼氏だって、乳には興味無いってさ……」
肉体的なコンプレックスを言われてリーフが苦笑する。容姿の美醜やセクシャリティの有無。それにしか女の価値を見出さない男は居るだろうが、そうではない奴だって確かに居るのだ。
……主に、あたしの兄貴。
自分みたいな阿婆擦れに興味を持つ中々の変わり者だと妹自身がそう思っていた。
- 95 :
- 「彼氏さんがいらっしゃるんですか!?」
「あ」
途端、コトネが喰い付いて来た。一寸、口が滑っただけなのだが、それに反応する辺りが中々に耳聡い。
「えー!? リーフさん程の美人の彼氏ってどんな人ですか!? 格好良いですか!?」
コトネの瞳がキラキラと輝いている気がする。
意外とミーハーだ。興味がある年頃なのかも知れないが……
「まあ、あたしにとっては良い男、だよ?」
リーフは髪を掻き揚げて、少し格好付けて言ってみた。
「うわあ。リアルな惚気。爆発して下さい」
「アンタ、何気に毒を吐くわね」
若干、リーフの顔が引き攣った。怒った訳ではなく、そんな言葉を躊躇無く吐いたコトネに少し吃驚したのだ。
「あ、すいません。ついダークサイドが滲み出て」
「・・・」
悪気は無い様だ。でもだからって、其処迄僻まなくても良いんでないかい?
それが嫌ならとっとと男を作れとリーフは言いたかったが、結局言わなかった。
「その人の写真とかって無いんですか?」
「見たいの?」
恐らく、純粋な興味本位でコトネが尋ねて来る。リーフは確かにレッドの写真を携帯していたが、それを晒すのは抵抗があった。それ程彼氏自慢をしたい訳では無かったのだ。
「えと、単純な好奇心からですけど」
でも……まあ、良いか。
どうせ今日限りの付き合いだし、兄の写真位は見せても問題無いだろう。
「……これ」
リーフは遂に折れ、自分の手帳の見開きに挟んである兄の写真を見せてやった。
リーフがレッドに頼んで撮らせてもらった物で、一番写りが良かった物を選んで携帯していた。
「か」
それを食い入る様に見詰めてコトネが一言。
「蚊?」
「かっこいい〜! 何、この人! 凄いイケメンじゃないっスか! うわあ……うわぁ! リーフさんはこんな人とあんな事、こんな事を?!」
どうやら、テンションゲージがMAXでフィーバーに突入してしまった様だ。
「あははは。まあ、餓鬼じゃないからね。そう言う事も頻繁にあるわよ」
自分では良く判らなかったが、コトネが言うには兄貴はイケメンらしい。自分の彼氏を褒められて悪い気がしないリーフは鼻先を掻きながらそう漏らした。
大人同士の恋愛ではお互いどうしてもプラトニックなままでは居られないのだ。
「そ、そのお話を是非!」
だが、それ以上下世話な話を展開する気はリーフには無い。
「あー、残念。時間切れね。着いたわよ」
「く……無念なり」
目の前にはシルフカンパニー本社ビルが聳えている。コトネが口惜しそうに歯噛みした。
- 96 :
- ――シルフカンパニー本社ビル エントランス
目当ての人物は直ぐに見つかった。屋内に作られた噴水の縁に腰掛ける帽子を逆に被った一人の少年。
「あ、いたいた」
「っ! ……兄貴?」
そして、その隣に居る野球帽の青年。
本当に何処にでも現れると我が愛しのお兄ちゃん様ながらリーフは呆れていた。
「ああ。グレイシア、リーフィアはシンオウ迄直接出向く必要があるな。向こうに知り合いが居るなら別だがね」
「何か面倒臭いっスね」
「ジバコイルやダイノーズもそうだぞ。うん? グライオンやマニューラが埋まってないな。進化させんのか?」
「何すか、それ」
「ニューラ、グライガーの進化系。爪と牙持たせて夜にレベルアップさせてみろ。使いこなせばかなりの強ポケだ」
「え! 貴重な情報じゃないっスか。メモメモ」
少年と兄は図鑑を開きながらそんな事を喋っていた。
「あれ、あの人は」
「あちゃー」
ヒビキの隣の青年の顔をコトネが見間違える筈が無い。気付かれた事が面倒臭い事に繋がらなければ良いが、多分そうはならないとリーフは自分の軽率な行動を少しだけ後悔した。
「おーい! ヒビキくーん!」
「? おお、コトネ! やっと来たな」
コトネが手を振りながらヒビキに近付く。妹と兄貴はその時に目が合った。
「……何やってんだリーフ。俺は仕事帰りだが」
「え、と道案内を」
レッドが明け方近くに出て行った事は知っていた。その言葉に嘘が含まれていない事は容易に判る。説明が面倒臭いのでリーフはそれしか言わなかった。
「紹介するわね。リーフさん。迷子のあたしを送ってくれたの!」
「そうなんですか。どうも有り難う御座いました。あ、俺はヒビキって言います」
「宜しくね」
コトネの紹介でヒビキと握手をする。黒のハーフパンツと赤いジャケットの少年。ラジオ塔の放送の時に映っていたもう一人の子供だった。
「えと、お綺麗ですね」
「え。……あ、ああ……っと、あ、ありがとう?」
それが誰に向けての言葉かリーフは直ぐに判らなかった。周りを見渡して初めてそれが自分への言葉と知った時、それは只の社交辞令だとも思った。
だが、ヒビキの真面目な顔を見る限りそうではない様だった。面と向かって誰かに綺麗だ等と言われた事が無かったリーフは何故か疑問系で答えていた。
……ベッドで兄にそう言われた事は何度かあったが、それはノーカウントだった。
「こちら、レッドさん。俺もこの人に連れて来て貰ったんだ」
「……どうも」
「は、はい! よろしく! コトネです!」
同じくコトネを紹介されたレッドは帽子を脱いで、控えめにそう答える。だがコトネはテンションが上がりっ放しなのか、レッドの片手を取ると、両手でブンブン上下させた。
- 97 :
- 「いや、この人、マジパネェわ。ポケの知識が豊富過ぎ。色々埋まらない図鑑のページについてご教授して貰っていた所さ」
些か興奮気味にコトネに語るヒビキ。歯抜けであった彼の図鑑はもうその大部分が埋まる事が決定していた。レッドの齎した情報がそれを可能にしたのだ。
「いや、それ程でも。凝り性の人間ならば誰だって到達出来るさ」
「そうね。493種全部埋めたってだけだもんね。時間と根気があれば誰だって、ね」
やや謙遜気味に兄弟が謂う。二人はとっくに全国図鑑を完成させていた。
「「はあ!?」」
それに驚きを隠せないヒビキとコトネ。先を越されていた事を知ったショック以上に、図鑑を全て埋めたと言う大偉業を全く鼻に掛けない二人の奥ゆかしさと言うか風格に驚いている様だった。
「そんな驚く様な事かな。……昔、オーキド博士の研究に付き合ってね。カントーからホウエン迄386種全て埋めた」
「その後は二人とも個人的な趣味で、シンオウのポケも埋めたのよ。創造神にも会ったわ」
始めはカントー図鑑だった。ナナシマでジョウトのポケを発見してからは、それを使ってホウエンの友人であるユウキとハルカの手も借り、全国図鑑を完成させた。
後は惰性でシンオウ図鑑も埋めた。それだけだった。
「ほんと何者ですか、あなた達は」
だが、ヒビキにとってはそれだけで済まない衝撃があったらしい。其処に至る迄の経緯や味わった苦労は筆舌に尽くし難い事が判ってしまう。今、それをやっている自分達がそうだからだ。
何度も挫けそうになって、止めたいと思って、それでも諦められなくて。そうしてヒビキは今も彷徨っているのだ。
その苦労を超えて自分達の前に立つ二人は自分達の先輩の様に映った。
だから、ヒビキは二人の正体を知り、少しでもその位置に近付きたかった。
「しがないトレーナー。そして今はケチなスローター(屠人)だ」
「あたしは普通の大学生。卒業したら彼の所に行く予定よ」
二人が語ったのはヒビキが知りたいモノとは遠いモノだった。だが、それが殊更秘密の匂いを煽る様で興味深かった。
「彼、ですか?」
リーフの言う『彼』と言う言葉が最初に引っ掛かった。
「え!? それってレッドさんに永久就職ですか!?」
と、其処でコトネが横から突っ込んで来た。嫌な予感、的中。リーフの顔色が少し悪くなった。どう誤魔化すか考えあぐねいているみたいだった。
「は? (……おい、話が見えんぞ。何でこの子が俺達の仲を知ってる)」
「その……(彼氏って言って写真見せたのよね)」
小声と共に睨んで来る兄の目が直視出来ず、視線を泳がせて小さく答えた。
「成る程」
やれやれと言った感じにレッドが溜飲を下げる。事情が飲み込めたのだ。
「失礼ですけど、お二人の関係って」
「ああ。妹だけど」「えっと、実の兄貴」
ヒビキの質問に正直に答えるレッドとリーフ。変に誤魔化す場面ではなかった。
「……そう言えば似てらっしゃいますね」
言われてみれば、髪色や瞳。顔形、着ている服も似通っている印象を受けた。兄妹だと納得するには十分な理由だった。
「ええ!? 恋人じゃなかったんですか!? ……はあ、からかわれたのかあ」
コトネはそれにがっかりした様子だ。リーフに担がれたと思っているのだろう。
だが、しかし。
「いや、間違いじゃない」
有ろう事か、レッドがそれを否定した。
「「「え」」」
ヒビキとコトネ。渦中の人間であるリーフもポカンとしていた。
「リーフは俺の女だ。な?」
「ぁ……う、うん! この人あたしの男//////」
そうして、レッドがリーフを抱き寄せた。そうして口を飛び出す問題発言。もうなる様になれとリーフも顔を真っ赤にして交際を宣言した。
「あー……兄妹、ですよ、ね?」
「軽蔑するか? ……別に構わないがな」
「え、と、あれよ。世の中そう言う兄妹も居るって事よ。あ、納得はしなくて良いわよ?世間の評価については判ってるからさ」
真っ当であるヒビキの価値観を塗りつぶす様にレッドがぶっきらぼうに言う。それにフォローする様に続いたリーフ。別に、社会に喧嘩を売りたい訳ではなかった。
「いや、別に俺は! か、構わないんじゃ、無いっスか? ……理解は出来ないけど」
「ああ。お前はそれで良いよ。正しい判断だ」
仏頂面のレッド。そのプレッシャーに負けた様にヒビキは言う。
そう言う連中が居てもいい。でもそれは自分には判らない世界だから、否定も肯定も出来ない……こう、言いたいのだろう。レッドはそれに満足した様だった。
- 98 :
- 「それで、あなたは?」
リーフの担当はコトネだ。正直、この子は要注意だとリーフの心が警鐘を鳴らしていた。戦々恐々としながら、それを悟られない様に尋ねた。
「す」
コトネの喉を通過したのはやはり一言だった。
「巣?」「酢?」
「すげええええ!! エロ漫画の世界みてえ!!」
「「ぶっ」」
思わず噴出すレッドとリーフ。後ろにひっくり返って、噴水の水に落ちそうだった。
「是非、お二人を師匠と呼ばせて下さい!」
「何の師匠だ何の。……こんな反応にも些か困るな。どうすりゃ良いんだ?」
「し、知らない」
コトネが二人に接近し、仰々しく頭を垂れる。
正直、コトネの反応は予想外だった。関係を明かした時に待っていたのは、拒絶か無言の肯定が大半で、残りは遠回しに応援する発言。賛同する者は本当に稀だった。
そして、この様な大手を振った肯定は初めてだった。
下の世代の考えについて行けないのは歳を取った証拠だと言うが、レッドもリーフも未だ若い自覚があった。それを突き破るコトネの反応。
……どうやら、彼女の特性は型破りで間違い無い。
「背徳と禁忌の子午線……それを越えた先に待つ真実の兄妹愛と肉欲の祀! それを貫くには障害は余りにも大き過ぎて! それに立ち向かう度に深くなっていく二人の絆! これこそ禁断の萌えっ!」
意味不明の発言がつらつら漏れる。魔界から毒電波でも受信しているのだろう。コトネの瞳は渦巻状にぐるぐるしていた。
「ひ、ヒビキ君? 君、コトネと知り合いなのよね? 止めてくれないかしら」
駄目だ。自分達では手出し出来ない。リーフがヒビキに救援を要請した。
「は、はい! 放置すると危険な気がして来ました。……コトネ?」
「え?」
ヒビキも放置が危険と判断した様だ。慌てて駆け寄って、その肩をとんとんと叩く。そして……
「当身」
「ごふ」
振り向いたコトネの脇腹を拳骨で打ち抜いた。堪らずコトネは反吐を撒いて床に転がった。
いや、それ当身じゃねえから。レバーブローだよ。
……兄妹は苦い表情でやり取りを見ていた。
「じゃ、じゃああの……俺達この辺で」
斃れたコトネを肩に背負ってヒビキが御暇を宣言した。意外にパワフルな側面を持っていたらしい。二人がそれを止める真似はしない。
「ああ。達者でな」「編纂、頑張ってね」
二人は、そう言って後輩達を送り出してやろうと思った。どうせこれで最後だからだ。
「また、会えますかね?」
「さあな」「どうかしら」
再会を匂わせるヒビキの言葉。二人は答えを持ち得ない。縁があればとしか言えない事だった。
「それでは!」「し、失礼します……」
コトネを抱えて、ヒビキが今度こそビルを出て行った。
- 99 :
- 「行ったか。騒がしかったな」
残された兄妹二人。やや疲れた表情でレッドが息を吐く。此処が禁煙でなければ即、煙草を咥えている所だ。
……あの二人がテレビに映っていた子供である事は間違いない。一期一会かと思ったが、どうもそうはならない様な気がする。
自分達と同じ匂があの二人からはしていたのだ。
「兄貴」
「あ?」
リーフの声と共に思考を中断する。レッドが向き直った。
「さっきの、本気?」
……何だろう。リーフの顔が若干赤い気がする。そしてそれ以上に瞳が真剣さを訴えている気がする。
先程の自分の言葉に対する問い質しだと言うなら、答えは決まっている。
「嘘を言う必要が何処に?」
レッドは臆する事無く言い切った。
「そっか」
目を閉じて、レッドの言葉を反芻するリーフ。そうして目を開けると、嬉しそうにレッドの腕に抱き付いた。
「おい。何だ」
突然の事にレッドも流石に戸惑った。リーフは嬉しそうに答えた。
「べっつにぃ? か・れ・し☆ に甘えてるだけよん?」
「う……」
……そうだった。ヒビキ達の前で彼女発言をしたのだった。つまり、今は自分を妹では無く彼女として扱えと言うリーフなりの甘え方だろう。
少し、判断を誤ったかも知れないとレッドは思った。
「あはは。じゃあ、ちょっくらデートしてこうよ。……レッド♪」
でも、リーフが笑ってくれるならそれも良い。レッドはそう思い直す。兄貴、ではなくて名前で呼んでくれたのが嬉しいと言うのもあった。
「……了解した、リーフ」
レッドは帽子を目深に被り直した。こう言うのも偶には悪くない。妹……否、彼女相手にサービスするなんて滅多に無い事だから。
……少なくともその時はそう思った。
「やっぱり、甘い顔何てするもんじゃねえな。特にこいつ相手には」
散々連れ回され、最後にミルク絞りを喰らう迄は確かにそう思っていたのだ。
「ん〜? 何か言ったかしら」
「……言ってない」
自分の腰の上で上下に跳ねるリーフにげんなりした表情でレッドが呟く。
もう残弾が空なのでそろそろ勘弁して欲しいと、レッドはホテルのベッドの上で思ったのだった。
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