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2012年2月レズ・百合萌え138: Sound Horizonで百合 第二の地平線 (396)
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Sound Horizonで百合 第二の地平線
- 1 :11/01/24 〜 最終レス :12/01/29
- Sound Horizonのキャラクターや中の人などの女の子に萌えるスレです。
前スレ
http://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1213769262/
- 2 :
- >>1乙です
- 3 :
- 僕の理想の>>1乙はどこにいるのだろう!
雪白姫×男装子の王子がキャッキャしている妄想の果てに
ともゆめに目覚めた…なんてことだ!
- 4 :
- >>3
それは新しい ともよちゃんは大人びてそうだから、二人で話してる時に結女さんが「最近の子はませてるな…」とか思ってたらいいのに
ふと思ったんだけど、野薔薇姫が目覚めた後でもアルテローゼが生きてるってことは、賢女ってすごい長生きなんだろうか。
それと、復讐BGMのところでは、アルテローゼは大広間に自由な状態でいるってことだよな、捕らえよって言ってるし
何で逃げなかったのかなーとか、何で老いないのかなーとか考えるうちに、アルテローゼも眠ってたんじゃないかと思いついた。
床で倒れたはずの野薔薇姫がいつの間にか寝台に移動してるのも、アプアルが二人で運んであげたからだと可愛いなーと。
確かネズミーの眠り姫では、妖精(魔女)達が自分たちにも眠りの魔法をかけるんだよな?
もしそうなら、やっぱり魔法をかけたのはアプリコーゼかな。野薔薇姫が目覚めた後にアプリコーゼは出てこないし。
長文&チラ裏スマソ
- 5 :
- 歓びて父が催したのは>>1を乙る祝いの宴
よーしお父さん、新スレ祝いも兼ねて野薔薇姫と赤王子の呪い誤爆の話投下しちゃうぞー!
前スレで知恵を貸してくださった皆さんに感謝です。
基本設定・ラストでアルテローゼから野薔薇姫を庇った王子に呪いが誤爆していた。
「呪いと祝いの境界。姫君達の孕む想い。砂のように流れる時の中。
薔薇の塔。二人の乙女。君達は何故、この境界を越えてしまったのか。
さぁ、唄ってごらん……」
- 6 :
- 「まさか王子が妊娠するとは思いも寄りませんでしたわ」
「そうだね。僕もこんな予定無かったよ」
「うふふ。女の子同士では逆立ちしたって子供は産まれませんからね」
野薔薇姫達がわいわいとお茶を楽しんでいる。
王子のつわりは先ほどの煎じた薬草でだいぶ収まったようだ。
(本当は野薔薇姫も呪っちゃったんだけど黙ってよ……)
アルテローゼは会話の輪には加わらず、息をし、存在をもしてティーカップに口づけた。
それにしても悪いことをしてしまったな。野薔薇姫はともかく、王子は無関係なのに。
でも呪いをかけてる最中にいきなり飛び出してくる方が悪い。
そうだとも。私は悪くない。フフンッ。
「ですけど、だからこそアルテローゼには感謝しないといけませんね」
「ブッ!」
「いやですわ、アルテローゼ。気高き王女にお茶を吹きかけないでくださいます?」
アプリコーゼが変なことを言いだすから噎せてしまった。
野薔薇姫は睨んでくるし、最悪。
また更に呪ってやろうかとも思ったが良心が痛んだので止めておく。
「何故です、アプリコーゼさん?」
「何故って簡単なことだわ、王子。あなた達二人だけでは決して手に入らなかった子供を、
アルテローゼがあなた達に授けてくださったんだもの。感謝しなくてはね?」
「言われてみると、そうですね」
「少しだけ、感謝しますわ」
「ありがとうございます、アルテローゼさん!」
100年の呪いについてまだ蟠りを感じているらしい野薔薇姫とは対照的に、
王子が無邪気にお礼を言ってくる。アルテローゼは少々居心地悪く思った。
実は王子が女の子じゃなかったらマジやばかったとは言えない……。
たまたま偶然女の子だったからいいようなものを、
もし男性だったらあの呪い誤爆によってどんな被害が出ていたことやら。
ぬだけならまだいい方で、もっと悲惨なことになっていたかもしれない。
例えば……痛すぎて考えたくもない。
「ゲコッ」
「カエルさんまだいたんですの?」
「ゲコ、ゲコゲコゲコッ」
「あらまあカエルさんが何か言ってるわ。聞いてみましょう」
「おーっと、私はそろそろ帰るよ!カエルが鳴くから帰ろうってね、オーホホホッ」
アルテローゼはカエルを引っ掴んで、部屋を飛び出した。
危ない。野薔薇姫も呪っていたことがバレたら、また王国を追われるところだった……。
というかもう既に王国を追われているのだが、アプリコーゼの進言により
アルテローゼは度々城に招かれていた。今回も彼女の招待で姫達とお茶会をしていたのである。
あの野薔薇姫なんぞとお茶会なんて……とは思うが、招かれて悪い気はしない。
アプリコーゼの作ってくる様々なお菓子はとてもおいしいし、お茶も素晴らしい。
王子は単純で素直で思いこみ激しいから、からかい甲斐がある。
野薔薇姫もまあそれなりにほどほど――私の次くらいには可愛い。
べ、別に喜んでお茶会に参加してるわけじゃないんだからね!
呼ばれるから仕方なく参加してやってんだからね!
しかしどうしてアプリコーゼは私などを庇ったり、招いたりするのか……可笑しな女だ。
「あんなに慌ててどうしたのだろうね」
「さあ?カエルが鳴いたから帰るだなんて下手な冗談ですこと」
野薔薇姫は王子と顔を見合わせて、肩を竦めた。
(カエルさんは「野薔薇姫も」と何かを言いかけてたわ。もしかして、アルテローゼ!)
アプリコーゼがすっと立ち上がる。
あまりに突然のことだったので、何事かと野薔薇姫達は怪訝そうに視線を向けた。
「私もそろそろお暇しますね。王子も野薔薇姫もお体にお気をつけて」
「はい。お気遣い感謝します」
「またいらしてくださいませね」
野薔薇姫は王子と共にアプリコーゼを城の外まで見送った。
- 7 :
- アプリコーゼが見えなくなると、二人はじーっと見つめ合った。
結ばれたばかりの若い二人にとっては、二人きりの時間が何よりこの上なく大事なのであった。
勿論、野薔薇姫を救ってくれたアプリコーゼとのお喋りも楽しかったが、
やはり二人きりの時間が一番だった。ただ見つめ合っているだけで、時間が砂のように流れてゆく。
愛し合う二人の時間はいくらあっても足りないくらいだった。
「この間は王子に守られていた私ですけれど、今度は私が王子を守りますわ!
王子のことも、王子のお腹の中の私と王子の子供のことも、みんな守ってみせますわ!」
「無理はしないでほしい。僕は自分の身は自分で守れるし、姫のことも守ってあげる」
「けれどそれでは私の気が済みませんわ。今までの私は誰かに守られてばかりのお姫様でしたが、
これからの時代のお姫様は自ら立ち上がって王子様をも守らねばならないのですわ!」
「そうなの?」
野薔薇姫は力説する。現代の女性には自立が必要であるッ!
故に王子様が迎えに来るのを眠って待っているだけでは駄目だッ!←でも野薔薇姫寝てたよね?
とにかく女性は強く生きるべきなのであるッ!
「だが女の子は守られるべきだ。だって小さくてか弱いんだもの」
「それなら王子も同じですわ。王子も小さくてか弱い女の子です」
「面と向かってそういうこと言われると照れちゃうな」
王子は上気した薔薇色の頬を掻いて、話を摩り替えた。
「そういえば野薔薇姫の誕生を告げたのも、カエルさんだったね」
「はい、そうですわ。母が水浴びの最中にお告げを聞いたのです。
それを聞いた父は大層喜んで、私の誕生を祝う宴を準備したそうですわ」
遠い遠い昔の話。野薔薇姫は俯き、今はいない両親を思った。
優しい父と美しい母。そして幼い私。そんな日々がいつまでも続いてゆくと信じてた。
しかし時は無情に流れ落ち、私は齢十五の朝を迎えて――。
「あ、すまない」
「いいえ。気にしないでください。私は寂しくなどありませんわ……」
「そうだ。僕らもこの子の誕生を祝う宴を準備しよう!」
「えっ」
「確か国中に散らばる神通力を持つ賢女様達を全て招いたのだろう?今から招待状を送ろうよ」
夜伽話に聞かせたことを王子はよく覚えていた。
些細なことも聞き逃さずに憶えていてくれる。野薔薇姫はそれだけで嬉しかった。
「ですけどやめた方がいいと思いますわ」
「何故だい?」
「だってその宴で私は呪いをかけられたのですもの」
「黄金の皿が一枚足りずに?」
「ええ」
「なら僕が黄金の皿を探しに行くよ!」
「いけませんわ、あなたはもうお一人だけの体ではないのですから」
「心配しないで。僕こう見えて丈夫だから」
こう見えてと言っても、王子はどこにでもいる風が吹いたら飛ばされてしまいそうな女の子。
彼女を男性だと思い込んでいたうちは、野薔薇姫の目にはさぞ立派な殿方に見えていたが、
今にして思えば男性にしてはやはり線が細い。
あの細腕で剣を振り回して、棘の生け垣を越えてきたのかと思うと胸がキュンとする。
いや、胸がギュッと締めつけられる。
「あぁ〜あ♪唯 野薔薇姫の夜伽話を聞いただけで、運命感じた〜♪
これこそがきっと僕の《我が子の為に出来ること:使命》なのだろう(キリッ
ならばどんな困難も乗り越えてみせよぉ〜う♪
――そうして僕は産まれてくる子供の為に、黄金の皿を捜す旅を始めたッ!」
「あぁん王子、そのようなお体でいけませんわ」
「ダンケシェーン!うんっ、王子頑張るっ!」
「お待ちになってー!」
行ってしまった……。私も付いていくべきだったかしら。
けれど足手まといになるくらいならここに残っていた方が……。
「あ、あらら……んん、なんだかめまいがしますわ」
「ゲコゲコ」
「カエルさん、帰ってきたんですのね。あら何か私に伝えたいことがあるのかしら?」
「ゲコッ!ゲコゲコゲコッ!」
「日本語でおkですわあ〜」
- 8 :
- ――カラカラ、カラカラ。
空を望む薔薇の塔に麻を紡ぐ孤独な音色が響く。
一人きりで作業をしていると寂しい……。いや、寂しいはずが無い!私はいつも一人だった。
勿論ハブられていたからでない。一人でいたかったのだ。そう、ハブられてなどいない!
だが実際普段から賢女仲間にハブられてさ……泣きたくなってきた。
でもいつからかアプリコーゼが色々と私を誘ってくれるようになって……嬉しかったなあ。
しかし、そんなことで気を許す私ではない!大体アプリコーゼは野薔薇姫の誕生祝いのときに、
私のことを皆と一緒になってハブにしたのだから。一生忘れてやらない!
嗚呼、でも一人で作業するのは寂しい……。誰もいないし、少し歌おうか。
「塔の上で、糸を紡ぐ、指先はもう♪あーん、擦り切れて緋い血を出して〜」
「紅く糸巻きを染め上げーたーかーらー♪」
「!?」
「御機嫌よう、アルテローゼ。ご精が出るわねえ」
「どっ、どこから入ってきたッ!?」
「普通に表からよ。ノックしたのだけど、聞こえなかったかしら?うふふっ」
「食えない奴め……。いいから帰れッ!」
「優しい人ね。これから産まれてくる子供達の為に麻を紡いで産着を作ってあげているのでしょう?」
「違う、違ぁーう!」
「うふ、照れなくてもいいのよ。……あらアルテローゼ、指先から血が出ているわ」
「これくらいどうってことない」
「見せて」
「……うん」
ああ、まただ。アプリコーゼと一緒にいるといつもペースを乱される。
こんなはずではなかったのに。気を許すつもりなどないのに。
「大した応急処置も出来ないけれど、ごめんなさいね」
「べ、別に……きゃあっ!」
パクンッと緋く滲んだ指先をアプリコーゼが食べた!
いや食べたというか、舐めたというか……とにかく口に含んだ。
「な、何をするッ!」
「んー?舐めれば治るかと思って……ぺろぺろ」
「キィーッ、食べるなッ!指を離せッ!舐めるなーッ!」
あ、あれ。何故だかおかしい。変な気分。
うう……きっとアプリコーゼが変な魔法をかけたに違いない。
「――これでよしと。おうちに帰ったらちゃんと消毒をして、包帯を巻いておいてね」
「それくらいわかっている!」
「うふふっ。ね、私も麻を紡ぐのお手伝いしてもいいかしら?」
「えっ、あ……見られたからにはただでは帰せない!手伝え!」
「勿論よ、アルテローゼ。一緒に頑張りましょうね」
嗚呼本当にアプリコーゼと一緒にいると調子が狂う。心を乱され、平静ではいられなくなる。
あのときだって姫の誕生を祝う宴に貴女がいたから、私は冷静でいられなくなった。
どうして私を呼んでくれなかったのか?傲慢なる王に私を呼ぶように進言してくれなかったのか?
アプリコーゼは私を裏切ったのだ!そう思った私は祝いの宴席に呪いを添えようとした。
『いいえアルテローゼよ。不吉な言の葉、退けよう』――貴女は私をまた裏切った。
しかし裏切られたと感じていたのは私だけ。
13人のうちで最も発言力のなかったアプリコーゼ――姫へのお祝いを後回しにされていたことから、
それは明白な事実。そんな彼女がどうして王に進言できよう。
心根の優しいアプリコーゼは何も出来なかったことを今も悔やんでいて、
だからこそ私に優しくしてくれるのだろうか。そんなのは悲しい。
「あのときの罪滅ぼしのつもりなら、もう私にちょっかいを出すな」
「いいえアルテローゼ。私はそのような気持ちで貴女に会いに来ているのではないわ」
アルテローゼは僅かながらの期待を込めてアプリコーゼを見つめた。
「私は貴女と一緒にいたいのよ。この気持ちを人は恋と呼ぶのかしら?」
アプリコーゼが真顔でそんなことを言うものだから、アルテローゼは照れてしまいそっぽを向いた。
「知るはずないだろう!…………でも嬉しいよ。ありがと、アプリコーゼ」
「うふふっ。どういたしまして、アルテローゼ」
――カラカラ、カラカラ。
空を望む薔薇の塔に麻を紡ぐ二人の愉快な笑い声が響く。
- 9 :
- ――そして十ヶ月後……。
「はあ。まずいですわ。最近太ってるような気がしますわ」
野薔薇姫は姿見に自分を映し、まるまるとしたお腹を撫でた。
王子が黄金の皿を探しに出かけてもう十ヶ月近く経った。臨月もいい時期である。
しかしいつまで経っても帰ってこないどころか、便りさえもなかった。
便りが無いのは元気な証拠というが、心配で仕方なかった。
さて、冒頭のお腹の話に戻る。
愛しい人がいないからといって決して怠けていたわけではない。
しかし心なしか丸くなった気がする。いや気がするどころか、絶対丸くなっている。
お腹なんてぽんぽこりんである。マジぽんぽこりんである。
「でも王子を思うと食が進んでしまいますの。王子はちゃんと食事をとっているかしら?
お腹の子は元気かしら?お腹の子もお腹いっぱい食べてるかしら?
あぁん、私が食べてもお腹の子には栄養はいかないのに。ついつい食べてしまいますの」
カエルさんに愚痴っても仕方ないですわね……。
野薔薇姫は深々とため息をついた。
嗚呼、王子は何処にいらっしゃるのかしら?私、寂しくてんでしまいそうですわ。
「ゲコッ」
「カエルさん、王子は何処にいると思います?」
「ゲコッ、ゲコゲコッ」
「えっ、王子がピンチ?」
「ゲコッ(ちげーよw」
「こうしてはおられませんわ!王子、待っていてくださいませね!」
「ゲコーッ(だからちげーよw」
「一緒に参りましょう。私を導いてくださいな、カエルさん」
「ゲコゲコーッ(話を聞けーッ!」
――ところ変わって古井戸の底で。
「あなたも今日まで陰日向無くよく働いてくれたわ」
「はいっ!」
「身重の体で御苦労でしたね」
王子としてはここで羽ぶとんを振るう簡単なお仕事よりも、
黄金の皿を探して、西も東も、北も南も、雨にも負けず、風にも負けず、
駆けずり回った時期の方がよっぽど御苦労だった。
「いえいえ。ここにくると金の延べ棒がもらえると働き者の女の子から聞きまして」
「もしかしてあの子かしら……でもね、欲深い子にはあげませんよ」
「困ります。黄金の皿が足りないとお腹の子が呪われてしまうのです」
「それは大変ねえ。では帰郷の願い、特別に叶えてあげましょう!ほれっ!」
大きな門が開くと 黄金の皿が降ってきて あっという間に 全身 覆った!
↑黄金の皿が全身に降ってきたらぬような気がした↑
↑嗚呼、でもそれは気のせいよ↑
「あっ王子!」
「野薔薇姫!どうしてここに?」
「王子がピンチだとカエルさんに聞いて、ここまで参りましたの!」
「ゲコゲコッ(んなこと言ってない」
野薔薇姫の肩でカエルがけたたましく鳴いたが、見つめ合う二人はそれを完全に無視した。
半年以上離れ離れだったのだ。こう、込み上げてくるものがある。
二人はしっかりと抱き合った。ん?抱き合おうとした……?
「あれ?」
「あらあら?」
うまく抱き合えない。
「もう一度やってみよう」
「はい」
しかしどちらのお腹もばいーんと張っていて正面からは抱き合えそうになかった。
「なんてことだ……」
「まあ……」
- 10 :
- 「おかしいな」
王子が首を捻る。野薔薇姫は原因が自分にあると察して頬を染めた。
「あらいやですわ……。あの、私のこと嫌いにならないでくださいね?」
「嫌いになるはずがないよ」
「ありがとうございます。私は王子が旅に出てからというもの、食欲が止まらなくて。
ついつい食べ過ぎてしまいましたの。だって王子のことが心配で、お腹の子も心配でしたの。
こんなぽんぽこりんなお腹、恥ずかしくてたまりませんわ……。王子も嫌でしょう?」
「女の子は少しぽっちゃりしてた方が可愛いよ」
「まあ。ですが、体型も維持出来ないようでは女の子として失格ですわ」
野薔薇姫はしゅんと肩を窄めて小さくなった。
その姿があまりにも可愛くて、愛おしくて、王子は思わず肩を抱き寄せる。
「僕のお腹もこんなに大きくなってしまったのだから、気にしなくともいいんだよ、姫」
「王子のお腹には御子がいるのですから当然ですわ。
私のお腹は単純にまるまる肥えているだけなのですわ。
どうか私のことを嫌いにならないでくださいね……?」
野薔薇姫は頬を押さえて恥ずかしそうに体をくねらせた。
「あははっ、可笑しなことを言うね」
「だって笑いごとではありませんわ」
「僕は外見で姫を好きになったのではない。どんな姫でも僕の愛する女性だよ、野薔薇姫」
「まあどうしましょう、王子。私嬉しくてんでしまいそうですわ」
「おやおや、それは大変だ。また僕のキスで起きてくれるね、姫?」
「はい。貴女のキスで起こしてくださいませ」
何度呪いをかけられようと、私は何度でも愛しい貴女の口づけで目覚めることでしょう。
だから今は、今だけは私から口づけることを許してくださいね。
僅かに踵を持ち上げて、薔薇色の唇をそっと頬へ近づける――。
「ゲコッ、ゲコゲコッ」
「カエルさん、静かにしてないと切るよ?」
「後にしてくださいます?」
「ゲコッ、ゲコゲコゲーッ!」
「あぁもうっ!」
王子が腰の剣に腕を伸ばす。細腕で大剣を振り下ろそうとした瞬間。
「だから野薔薇姫も身籠ってんだよ!」
「まあ……」
「カエルが喋った!?……って、野薔薇姫も身籠ってるぅ?」
「ゲコッ!(うん」
「あら気付きませんでしたわ。私のお腹にも新しい命が宿っていたのですね」
不思議な感じがして野薔薇姫はお腹に手を這わせた。
そんな野薔薇姫の手を王子のあたたかな手が包みこみ、二人は暫くお腹を撫で続けた。
「つらくはなかったのかい?体の異変に気付いたりは?」
「いいえ全く」
「女の子の日が来ないとか」
「そういえばそんな日もありましたわね。100年眠っていてコロッと忘れてましたわ」
「おいおい」
王子はうなだれて、すぐにむくっと起き上がった。
「だが一体誰が?」
「私は浮気などしてませんわ!」
「勿論信じているよ。しかし」
「きっとアルテローゼの仕業ですわ!またしても私に呪いをかけたに違いありません。
しかも私だけでなく王子まで巻き込んで……絶対に許しませんわ!お城に帰りましょう!」
「じゃ、お皿を拾ってっと」
大きなお腹を抱えながら、王子が地面に屈みこんだ。
野薔薇姫もそれに倣って屈みこんで黄金の皿を拾い集める。
「一枚、二枚、三枚、四枚――」
「――十枚、十一枚、十二枚、十三枚」
「まだまだ沢山ありますわね」
「うん、これだけあれば大勢呼べるね」
結局全ての黄金の皿を拾い集めるのに夕刻までかかり、お城についたのは深夜であった。
- 11 :
- 「ただいま帰りましたわー。さあ誰ぞアルテローゼを捕らえよ!」
「ただいま。っていきなりぃ?疲れてるし明日にしようよ……彼女にも悪気はないと思うよ」
「王子は甘いですわ!お菓子の家より甘いですわ!
気高き王女を二度も呪い、王子まで巻き込んだ罪は重いのですわ!」
「まあまあ」
ぷんすか怒る野薔薇姫を王子が宥めていると、そこにアルテローゼが引きずられてやってきた。
随分と早いご到着だ。その後ろからいつも通りのニコニコ笑顔なアプリコーゼも付いてくる。
「あらおかえりなさい、野薔薇姫、王子」
「「ただいま帰りました(わ)」」
「ちょうどアルテローゼとお茶をしていたのですよ。勝手にお城を借りてしまってごめんなさいね。
でもお城で野薔薇姫達が呼んでいると言わないとアルテローゼったら来てくれないのよ。
私が一人で招待するとね、意地を張っちゃって……」
「余計なことを言うなッ!」
アルテローゼが顔を真っ赤にして暴れ回る。しかし両腕を掴まれているので普段ほどの迫力はなかった。
「それで今日はどうしたのですか?」
「アルテローゼが気高き王女を二度をも呪い、王子まで巻き込んだので
今日こそは本気で王国を追放しようと思いましたの!」
「あらまあそれは物騒ですね。王女にかけられた呪いとは?」
「御子を孕む呪いですわ!」
「?」
アプリコーゼがきょとんと目を瞠る。思わず野薔薇姫と王子も同じように目を瞠ってしまう。
「あら野薔薇姫も気付いているのだと思っていたわ」
「全然気付いてませんでしたわ!」
「王子と同じときにかけられていたのよ。でもね、それは呪いではないかもしれないわ」
「「呪いではない?」」
野薔薇姫と王子は揃えて小首を傾げる。その様子はさながら番いの小鳥のようであった。
「前にも言ったように、あなた達二人だけでは決して手に入らなかった子供ですもの。
アルテローゼは呪いではなく、あなた達が出会った記念に祝いの魔法をかけた」
「うーん、そう言われてみると」
「そうかもしれませんわ」
「違う!私はそんなつもりでは……!」
「アルテローゼはあんなこと言ってますけど、本当は照れてるだけなのですよ」
「違う違う!」
じたばたしているアルテローゼをにこやかに見つめて、アプリコーゼが止めを刺した。
「アルテローゼは二人の赤ん坊のために産着まで用意しているのですよ、ほら」
アプリコーゼの手には可愛らしいピンクの産着が二つ。
これはアルテローゼが手に血を滲ませながら作ったものらしい。
(血が滲んだからピンクになったのではない)
「お優しいですね、アルテローゼさん」
「見直しましたわ。そうですわね、特別にこの国に戻ることを許してやっても良いですわ」
「ッ!これは別に、お前達のためでは……だってその子は私の子供なんだから、
私の子供のために作っただけだからねッ!これ以上余計なこと言うつもりならまた呪ってやろう!」
「ああっ!う、うう……」
「王子?……まさかアルテローゼ、また王子に!?」
「えっえっ、私まだ何もしてない」
うろたえるアルテローゼと野薔薇姫をよそに、アプリコーゼがうずくまった王子に駆け寄る。
「いけない、赤ちゃんが早く外に出たいと暴れているのだわ。皆さん、準備をお願いします!」
「あら、あらら?どうしたのでしょう、私もお腹が痛くなってきましたわ」
「あわあわ。え、えっと、私は何をしたらいいのアプリコーゼ!」
「大丈夫よ、私に任せて。アルテローゼ、私の助手をお願い!」
「わ、わかった!」
その日、彼女達にとってめでたいことが起こった。
一つは野薔薇姫と王子、愛し合う二人それぞれに一人ずつ御子が産まれたこと。
もう一つはアルテローゼが御子の養育係として、再びこの国の土を踏めるようになったこと。
後者を一番に喜んだのは言うまでもなくアプリコーゼであった。
――めでたしめでたし。
- 12 :
- 「祝いと呪いとは、案外似たようなものなのかもしれないね」
「デ、復讐ハ?復讐ハ何処ヘ行ッタノ?」
「めでたしめでたし」
「メデタクナーイ!」
おしまい。
ラフレンツェ関係なくなってしまったすみません。
ホレお姉さんに黄金のお皿をもらう展開はいつだかの本スレで
ホレお姉さん(=アプリコーゼ?)がホレ子に黄金あげちゃったから一枚足りないんじゃね?
という話を参考にしました。
改めて前スレで知恵を貸してくださった皆さんありがとうございました。
>>4
即ちアプリコーゼは…サンホラらしい悲恋に仕上がるね
姫のために城全体に魔法をかけるが自分にはその効果が無い
もうアルテローゼには会えないけれど、姫のために…だったら泣ける
- 13 :
- なんか こう ほのぼのしました ありがとうございます
- 14 :
- >>12
野薔薇姫も赤王子ちゃんも天然ボケで可愛いw
王子頑張るっ!はそう言われてみれば赤王子の日のネタだったな
アルテローゼは相変わらずツン:デレの黄金比で、みんなの保護者アプリコーゼさんが頼もしいですw
- 15 :
- GJ!!
ニヤニヤしました!ありがとうw
- 16 :
- >>12
GJ!相変わらず王薔薇かわいいなw 機会があったら是非また王子×雪白姫も書いてほしいものだ
Märchenの流れ豚切りで申し訳ないが、クロセカ萌えの同志はいないのだろうか。
歌姫二人が自分の中でのトップなんだが
- 17 :
- >>16
同志…!!歌姫2人は萌える。
俺的には、ほわほわしてると見せかけて腹黒いジュリエッタとツンデレロベリア…って感じに妄想。なんかアプアルも似たものを感じるがw
- 18 :
- >>17
おお…!仲間がいて嬉しい!
俺は、腹黒×ツンデレなジュリロべもお姉さん×ピュアなロべジュリもいける。
ただ、前者はやっぱりアプアルと同じ香りがするので、どちらかというと後者派かな…
ロべジュリSS書きたいんだが需要あるのかな
- 19 :
- 需要あるよ、ありまくるよ、是非ともお願いします
つっけんどんながらも意外と面倒見のいいロベリアお姉様が
田舎から出てきたばかりのジュリエッタちゃんをお世話してあげてたら萌える
「仕方なく面倒見てやってんだからねッ!勘違いしないでよねッ!
あんたがトチるとライバルの私の格まで下がるでしょ!しっかりなさい!」
「はい、お姉様!頑張ります!」みたいなのがおいしいです
でも腹黒ジュリエッタ様も捨てがたい…
- 20 :
-
「ジュリエッタ」
ロべリアはきっと、魔法が使える。
小石をケーキに変えてしまったり、枯れてしまったお花を元通りにしてしまうような魔法とはちょっと違う。
ロべリアの声は、何でも歌に変えてしまう、魔法の声だ。
たとえば、二人でお話しているとき。
彼女の発する言葉のひとつひとつが、彼女が呼んでくれるわたしの名前が、音として耳を抜ける。
一つ話題が終わるごとに、わたしはなんだか長い音楽を聴き終えたような気分になるのだ。
「ジュリエッタ、聞いてる?」
「えっ?あ、ああ、ごめんなさい」
少し不機嫌そうな顔で、ロべリアがわたしの顔を覗き込んできた。
聞き惚れていたとは、恥ずかしくてさすがに言えない。
困ったように笑って誤魔化すと、もう、と一言だけ言って黙り込んでしまった。
…あ、あれ、もしかしなくてもご機嫌を損ねちゃった…のかしら。
そうだ、ロべリアは小さいころから大勢の使用人に囲まれて生活してきたのだ。
わたしという対等な話し相手が出来たことは嬉しいって、前に言っていたけど…
自分の話を聞かない人になんて、きっと今まで出会ったことがないのだろう。
「ごめんね?お昼だから、その、少し眠たくなっちゃって。ちゃんとお話聞くから、怒らないで?」
「…………一回、一回だけよ。次やったら、もう一緒にピアノ弾いてあげないんだから」
ロべリアの眉間の皺がふっ、と消えた。
安堵から、自然に顔が綻ぶ。
「ジュリエッタ」
ああ、やっぱり。
彼女の歌はなんでも大好きだけど、やっぱり一番はこの歌かしら、なんて。
「顔がニヤけてるわよ」
「えっ!?ほ、本当に?」
「嘘」
「…え?あ、遊ばないでよー!」
この歌が聴けるのは、世界でわたしだけなのだ。
end
お城で二人でお茶してる…イメージ
初SSなもんで色々変なところとかあるかもしれんが申し訳ない
ありがとうございました
- 21 :
- >>20
GJ!
お姉さん×ピュア、イイな…!!
- 22 :
- GJ
魔法の歌声。うまいなあ
- 23 :
- GJ
歌姫萌えるなぁ
ところで高級遊女萌な同志はいないか?
- 24 :
- >>23
ヘタイラよいよね 自分はストレートにカッサンドラ×メリッサ派
メリッサの「お姉さまぁ〜ん」だけでものすごく妄想が広がる
メリッサがミーシャに若干キツいのも、ちょっと嫉妬しているというようにしか考えられなくなってきた
お姉さま大好きなメリッサと、「仕方ないわねぇ、いつになったら姉離れできるのかしらぁん」とか言いつつ満更でもないカッサンドラおいしいです
- 25 :
- ちーちゃんとともよちゃんの百合ネタは難しいか
- 26 :
- ともよちゃんのツイッターアイコンの写真に雪白姫と小人の人形しか写ってない
ということはお花の上に一緒に飾ってあった青王子人形はゆめさんにあげたんだろうか
渡すところを想像すると和むw
- 27 :
- >>25
考えてみたけど難しいなぁ。ちーちゃんは継母か井戸子がベスト
- 28 :
- ホレ子と雪白姫のどちらから投下しようかと悩んでたらドンピシャな話題がキタ!
投下するなら今のうち
ホレ子と古井戸の面々の話
名前がわからないキャラクターで三人称の話を書くのは難しい
硝子と薔薇がやたらと書きやすい理由がヒロインの名前がわかってるからだと気付いた
とりあえずホレ子一人称で誤魔化した
「生との境界。憾みを抱いた少女。迷いの淵で揺れながら――。
古井戸の境界。残された者の想い。君はいつ気付くだろうか。
さぁ、唄ってごらん……」
ぱたぱた、ぱたぱた。
今日も元気に羽根ぶとんを振るう。
ふわふわ、ふわふわ。
地上に真っ白な雪の花が降り注ぐ。
私は今日も、お父さん(ファーティ)頑張っているよ!
「さあ今度はこっちのおふとんもお願いね」
「はーい、ホレおばさん!あいたっ!」
「これ!おばさんじゃなくて、お姉さんとお呼びなさい」
ポカッと雪の結晶が先っぽについた可愛らしい杖で頭を小突かれる。
このおばさん……じゃなくてお姉さんはホレおば、お姉さんと言って
よくおとぎ話に出てくるおば……えっと、お姉さん。
私の仕事はホレお姉さんのおうちを綺麗にすること!
今日もせっせと炊事洗濯。でも一番大切なのは羽根ぶとんを振るうこと。
振るうと地上に雪が降るんだって。ということは私は可愛い雪の妖精?わおっ!
あれ、なんだか……大事なことを忘れているような?
ま、いっか。そういうわけで、私は明日も、お父さん(ファーティ)頑張ってみるよ!
くるくる、くるくる。
糸車が回り続ける。いつも見る夢。
くるくる、くるくる、
夢の中では私は糸車を回し続ける。
私、大事なことを忘れてる気がする。
指先が擦り切れて緋い血を出して、糸巻きを紅く染め上げる。
私は糸巻きについた血を洗い流そうと井戸を覗きこんで……。
「ああっ!」
夢の中の私が悲鳴を上げる。
手にした糸巻きが井戸の底に吸い込まれるように落ちてゆく。
いつもならそこで目覚めるはずの夢が今日は続いた。
泣きながら家へ帰った私を待っていたのは、意地悪な継母と性悪な義妹。
糸巻きを落としてしまった私を酷く怒鳴りつける
「この愚図っ!潜ってでも取ってきなっ!じゃなきゃ晩飯は抜きさっ!」
私はどうしても糸巻きを取ってこなくてはと宵闇の迫る道を走った。
晩御飯を食べたいから急いでいたのではない。
それもちょっとはあったけど、でも急いでいた本当の理由は……。
「はやく家に帰りたかったから……」
私は暖かなベッドの上で目覚めた。柔らかな羽根ぶとんを押し退けて起き上がる。
私はどうしても糸巻きを取ってこなくてはいけなかった。
だって、はやく家に帰りたかったから!
意地悪で性悪な継母と義妹だけど、私に残された大切な家族。
捨てられたくない!そんな思いで私は井戸の底へと落ちたのだ。
「でも私はんじゃったの?天国なの?気のせいなの?わからないわ……」
もしんでいたとしても、家に帰りたい。
もう会えなくても、二人に会いたい!
- 29 :
- 「ホレおばさん!」
「お・ね・え・さ・ん!」
「あ、えとホレお姉さん」
「おはよう。今日も天気がいいわ。おふとんを振るう絶好の日和ねぇ」
ホレお姉さんに促されて台所に立つ。朝ご飯を作るのも私のお仕事。
「今日は起きるの遅かったわね。お腹空いちゃった。はやくお願いね」
「うんっ、私頑張るっ!」
パンケーキと目玉焼きを焼いて、昨日用意しておいたスープを温め直して、
野菜を適当に盛り合わせて、テーブルに並べれば出来上がりっ!
「いただきます」
「ホレおばさん」
「お姉さん」
「お姉さん」
「よろしい」
「お願いがあるんです。私、家に帰りたい!」
小さく切ったパンケーキを口に運ぼうとしていたホレおばさんの目がまんまるになる。
ナイフとフォークを取り落とす。ガシャンッと乾いた音がした。
ついでに大きく見開いた目まで落っこちてしまうのではないかと、
私はハラハラしたが別にそんなことはなかった。
「今、何と言いました?」
「家に帰りたいんです」
「どうして?私の元で働いている方がきっと幸せよ」
「それでもどうしても帰りたいんです」
「……」
ホレおばさんは表情を曇らせ、それ以上何も言わずに自室へ引き返した。
私、いけないこと言っちゃったのかな?
ホレおばさんには大事にしてもらったのに、家に帰りたいなんて悪いこと言っちゃったかも。
でも帰りたい。けどホレおばさんを悲しませることになるのかな……。
暫くしてホレおばさんが部屋から出てきた。
と思ったらパンケーキと目玉焼きを持って引き返して行った。
空腹には勝てなかったらしい。
炊事洗濯全て終わらせて、私はおうちの前の草原で寝そべって空を見上げた。
今日はホレおばさんが部屋から出てこないから羽根ぶとんを振るえない。
今朝言われたことを思い返してみる。
『私の元で働いている方がきっと幸せよ』
そうだ。ここにいる方がきっとたぶん幸せ。
無理難題を押し付けてくる意地悪な継母もいないし、炊事洗濯全て押し付けてくる性悪な義妹もいない。
ここは平和で、時間もゆったりとそよ風のように流れてゆく。
けれどあの家はお父さんとの思い出が沢山詰まった家で、
継母や義妹との(あまり楽しくはない)思い出もいっぱい詰まった家。
帰りたい、ような。帰りたくない、ような。
「どうしよう!お父さん(ファーティ)私、全然わからないよ!」
でもお父さんは雨にも嵐にも負けずに大海原を乗り越えたんだよね。
私は今も覚えている。お父さんが聞かせてくれた話。
海の向こうの大きな街の話。大海原で出会った巨大な鯨の話。
波間を飛び跳ねるイルカの群れ。歌う海鳥に誘われ、迷い込んだ珊瑚の樹海。
お父さんは数々の困難を乗り越えて、大海原を渡ったのに
お父さんの娘の私が意地悪されたくらいで負けてたまるものか!
私は帰るんだ!帰って、復讐してやる!
- 30 :
- 「ここにいたのね」
ホレおばさんが頭上から覗き込んでくる。私は慌てて飛び起きた。
お仕事はちゃんと終わらせたつもりだけど、こんなところで寝転がってたら怒られちゃう!
「あっ、ホレおばさん」
「だ・か・ら」
「お姉さん!」
「よろしい」
「私やっぱり家に帰りたいです!」
「……」
「ホレお姉さん、お願い!」
ホレおばさんは俯き、すぐに顔をあげた。一瞬だけ悲しそうに顔を歪ませて、笑顔に戻る。
「わかったわ。あなたも今日まで陰日向なくよく働いてくれたわ。
帰郷の願い、特別に叶えてあげましょう!ほれっ!」
ホレおばさんが雪の結晶の杖を振るうと、目の前に大きな門が現れた!
大きな門が開くと 黄金の雨が降ってきて あっという間に 全身覆った!
美しい草原に宵闇が訪れ、ホレおばさんはふっとため息をついた。
あの子もまた帰ってしまった。
帰郷を望む者、怠惰ゆえにこちらから追い出す者。
数々いたけれど、結末はいつも一緒。
「これでまた、寂しくなるわね……」
また一人ぼっち。羽根ぶとんを振るって地上に雪を降らすだけの簡単なお仕事が始まる。
「キッケリキー!うちの黄金のお嬢様のお帰りだよぅ」
「ただいまーっ!」
扉を蹴破る勢いで家に帰ると、玄関には大きな箒で一生懸命掃除をしている義妹がいた。
箒があまりに大きいのでまるで義妹の方が箒に振り回されてるようにも見える。
下手くそ。そんなんじゃ日が暮れても綺麗にならないから。
心の中で悪態をつく私を見るなり、義妹は飛び上がって、箒を放り出して室内に逃げ帰っていく。
「ムッティ、ムッティー!あの子だよ、あの子が帰ってきたよー!」
私のことを言ってるみたい。
その騒ぎを聞きつけた継母が慌てて台所から飛び出してくる。
「本当かい、ちーちゃん。……ひゃっ!」
「ムッティ!」
義妹が継母にしがみつき、継母は私を見てやはり飛び上がる。
まるでお化けでも見たかのような態度に、私はムッとした。
「ただいま!」
「……」
「……」
「ただいまっ!」
「お、おかえり」
「どこに行ってたの?」
義妹が恐る恐ると近づいてくる。私は胸を張って答えた。
「井戸の底のホレお姉さんのところよ!」
「???……でもよかったあ、帰ってきてよかったね、ムッティ」
「えっ?」
「この愚図っ!」
継母にいつものように怒鳴られて、私は身を竦める。
「本当に井戸に潜ることないだろう、この愚図っ!」
「で、でも潜ってでも取ってきなって」
「それは例えだよ。ああもうそんなこともわからないなんて、やっぱり愚図だねっ!」
なんか不条理に怒られてる気がする……。
「帰ってきてよかった。あのね、愚図がいなくて、あたい、たいへんだったんだよ」
「炊事洗濯全てしなきゃならないから?」
「そう。まだ半日だけど、とってもたいへんだったんだから」
やっぱり帰ってこない方が良かったかな。
私のこと、ていのいいお手伝いさんだと思ってる!ううん。これでは奴隷や下僕よ!
- 31 :
- 「それに愚図がいないとさびしい。そうだよね、ムッティ」
「ち、ちーちゃん!余計なこと言ってはいけません」
「さびしい?」
「そうだよっ!あんたがいないと意地悪する相手がいなくて退屈なんだよ!」
「ムッティ、昨日と言ってることちがう」
「ちーちゃん!」
継母が義妹を黙らせようと腕を引っ張って、家の奥へと連れて行こうとする。
しかし義妹はその腕を振り払い、私の元へ駆け寄った。
「あたいも、愚図がいなくてさびしかった」
「意地悪言う相手がいないから?」
「ううん。わかんないけど、いないとさびしかった!もうどこにも行かないでっ!」
義妹が突進するように抱きついてくる。私は避けきれずに鳩尾にタックルをかまされた。
「ぐはあっ!」
わざとやったのなら赦さないからね……。
「よくわかんないよ。離して、ちーちゃん」
「やだやだやだ!離さない、離さないから!」
「……」
必に抱きついてくる小さな義妹が何だか不思議と可愛く思えて、
私は戸惑いながら彼女の小さな背中に腕を回した。
「ちーちゃん」
「……おねえちゃん」
義妹はぎこちなく私を呼ぶ。
ああ、そうよね。血は繋がってないけど、私はこの子のお姉さんなんだよね。
「あははっ。私もう離れないわ、ちーちゃん!」
私も意外と可愛いところもある義妹をギューッと抱きしめる。
すると義妹が悲鳴をあげた。
「痛いっ!痛いよ、離してよ、おねえちゃん!」
「どうしたの、ちーちゃん?」
じたばたしだす義妹を見て、継母が慌てて私達を引き離そうとする。
「ちーちゃんに何をするんだい。今すぐ離しなさい!」
「えー、でもちーちゃんが離れたくないって言ったんだしぃ?」
「痛いよー、痛いよムッティ」
「こんなに良い子がどうしてこんな目に!いいから離しなさーい!」
継母の馬鹿力で私達は強引に引き離される。義妹のぬくもりが消えて、少しだけさびしかった。
それは義妹も同じようで、彼女はほんの一瞬だけ切なげに私を見上げた。
しかし継母が私達の間に入り込んで、それを遮った。
「大丈夫、ちーちゃん」
「うえーん、愚図の胸、かたいよー痛いよー」
「この愚図っ!胸パット山盛りで大きく見せかけてるね、良い気になるんじゃないよっ!」
ポカッ。頭を殴られた。とてもいい音がした。
空っぽだといい音がするって聞いたことあるけど、本当かなあ?空っぽってどういう意味なのかなあ。
んん?そういえばなんか胸の部分が重いなー。硬いってのも案外当たってるのかも……。
もぞもぞと服の中を探ってみる。硬いものが指先に当たる。引っ張り出してみる。
「わあ!」
服の中から金の延べ棒が出てきた!
「なっ!?」
「それなあに、おねえちゃん?」
「ホレおばさんがくれたのかも」
「すっごーい。よくわかんないけどすっごーい!」
「ねー、すごいね。すごいねー、ちーちゃん!」
きゃいきゃいしてると金の延べ棒に目が釘付けだった継母が義妹の頭を撫でた。
「貴女も貰っておいで、ちーちゃん!」
「うん、あたい頑張る……」
とぼとぼと義妹が井戸の元へと歩いていく。
その背中はとても小さく、義妹の心細さが手に取るようにわかった。
私はふと面白いことを思いついた。
私は復讐しに帰ってきたんだもの。二人に復讐しないとね。
「私も一緒に行くわ!」
「ほんと、おねえちゃん!」
「うんっ、私も頑張るっ!一緒に頑張ろうねっ!」
- 32 :
- 私を呼び留める継母の声を無視して、私達は手に手を取って井戸の底へと落ちていった。
目覚めれば綺麗な草原。幾千の花が咲き誇るホレおばさんのお庭。
憾みの唄を指揮する男が私達に手を振る。男の抱いていた女の子が暴れ出して、何か叫んでいる。
私達は彼らを無視して草原を走り抜けた。
喋るパンの願いを聞いてシャベルで全部掻き出して、
熟しきった林檎の木を揺らし、散らばる林檎を積み上げるだけの簡単なお仕事!
そして辿りついた可愛いおうちに佇んでいたのは――
「あら帰ってきたのね」
「ただいま、ホレおばさん!」
「お・ね・え・さ・ん!」
「えとホレお姉さん」
「おかえりなさい。おうちはどうだった?」
私は家に帰ってからのことを説明して、誇らしい気持ちで義妹を紹介した。
「私の義妹です!」
「まぁ可愛い子ね。こんにちは」
義妹は警戒しているのか、単に面倒なだけか、ホレおばさんを無視した。
「おや悪い子は瀝青塗れにしないとねぇ」
あららっ。それも面白そうだけど私の考えた復讐はもっと凄いのよ。
こんなところで簡単に終わらせてあげないから!
「ほらちーちゃん、ご挨拶は?」
「……こ、こんにちは」
「よろしい。ではあなたにも今日からここで働いてもらうわ」
「えーいやだよぉ」
「大丈夫。私がお仕事教えてあげるからね」
「お仕事いやだよー」
愚図る義妹の手を引いて、ここでの仕事を教える。
そして私は炊事洗濯全てやらなくて(・∀・)イイ!
「これ!あなたもお仕事するの!」
「あいたっ!」
日が替わり――
「そろそろ帰らないと親御さんが心配するでしょう?また遊びに来てね。ほれっ!」
ホレおばさんに見送られて大きな門をくぐれば――
「キッケリキー!うちの黄金のお嬢様方のお帰りだよぅ」
「ただいまーっ!」
「ただいま、ムッティ!」
扉を蹴り飛ばさんばかりの勢いで帰宅ッ!
慌てて飛んでくる継母。私のことは完全に無視して、ちーちゃんを抱きしめる。
「おかえりなさい、ちーちゃん。無事でよかったわ」
「ただいまムッティ。何かお手伝いすることは?」
「えぇ?」
「あたい、ムッティの役に立ちたい!」
「どうしたのちーちゃん。何か悪いものでも食べたの?」
「食べてないよ」
無邪気に笑う義妹。戸惑う継母は私を睨み、怒鳴りつけた。
「この愚図っ!私のちーちゃんになんてことをしてくれたんだい!キーッ!」
「あははっ。ちーちゃん、一緒にお夕飯作ろっ!」
「うんっ、おねえちゃん!」
健やかで良い子な私の復讐!
性悪で意地悪が大好きだったちーちゃんを健やかな良い子にしちゃった!
今度は意地悪で低能な継母を大変身させちゃうから、楽しみにしててねっ!
しゅびどぅびどぅびどぅー!ダンケシェーン!(ぱちぱちぱちー)
「今回は随分と可愛い復讐だったね。復讐、だった……よね?」
「コンナノ駄目ヨッ!私達ノ復讐ハ、モット……!」
「めでたしめでたし」
「メデタクナーイ!」
- 33 :
- 姉妹ってどうしてこんなに萌えるんだろう
復讐になってないね、ごめんねエリーゼ
ホレ子行方不明で継母とちーちゃんが慌ててたら可愛い
本当は心配だったのにホレ子帰宅後はまた冷たくしちゃう
でも以前より少し優しくなってたらさらに可愛い
>>26
「せめて私の代わりにこの子を一緒に連れて行ってね」
「ぜったい、ぜったい、また一緒に歌おうね!」
「うん、約束さ」
またライブに参加してほしいなー
- 34 :
- >>33
GJ!ちーちゃんのおねえちゃん呼びの破壊力を甘く見ていた…ちーちゃん可愛いよちーちゃん
これは一応ホレ子×ちーちゃんのフラグなのか…な?
今度継母を連れて行ったときには、ホレおb…お姉さん×継母フラグが立つんですね分かります
- 35 :
- おらこういうの待ってただよ!
- 36 :
- ちーちゃんくらいの年頃だとお姉ちゃんのお手伝いが楽しくて仕方ないだろうな
何でも真似したがって後ろをついて回ってたりしたら萌える
赤王子ちゃんに金の延べ棒の話を教えてあげた働き者の女の子がちーちゃんだとしたら胸熱
- 37 :
- >>33
やりとりの可愛さに悶えた
ともよちゃん結女さんがまたライブで
キャッキャウフフしているところが見たいぜ…
- 38 :
- メルヒェン出てからえらい盛り上がってるな
もう前の歌姫の需要はないか…そうか…
- 39 :
- >>38
そんなこと言わないでくれ…!!
かおゆうかお、れみまり、みきれみ、はるみきはる、みんな大好きだ!!
- 40 :
- 盛り上がるのはいいことだよ
このスレは元々中の人萌えの横でキャラ萌えしたりとカオスだったじゃないか
今更新旧が入り混じろうと誰も気にしない
この際地平線飛び越えようが、中の人×キャラだろうがなんでもどんとこいですよ
過去の地平線もマルチェンも中の人ネタもどしどしお待ちしてますよー
- 41 :
- 中の人×キャラと聞いて
ドSで性格歪み気味だけど実は淋しがり屋の雪白たんと優しいお姉ちゃんなともよちゃんを受信してしまった
ロリコンと蔑むなら蔑むが(ry
- 42 :
- >>38
ゆーかお好きな自分もROMってるだけでまだいるから安心してくれw
過疎ってるより賑わってたほうが嬉しいから新旧関係なくssが上がるのを期待
- 43 :
- みきさんのブログ見てて、
手料理を囲んできゃっきゃっ
とか、お料理教室的なのを開いてきゃっきゃっ
という電波を受信した。
既出だったらごめんね
- 44 :
- >>43
みき先生…いい…
俺的には、みきれみ→ゆうまり→かお→しもつきん くらいの順番で料理上手なイメージ
- 45 :
- >>44
俺は、みき>れみまり>はるかお>ゆう かな
ゆうきが料理下手だったりしたら萌える
というかどこかでそんな話を聞いたような気もする、気のCeuiかもしれないけど
女優さんたちだと、ぶらん子≧ホレ子>火刑子>エリーザベト・青髭子>野ばら姫・雪白姫って感じ
野ばら姫は自己流アレンジで悲惨な事態 雪白姫は消し炭にしそうなイメージ
というか貴族・王族が多いから料理の経験少ない人が多そうだな
- 46 :
- >>45
たしかに料理ヘタなゆうき萌えるな…
正月の煮物って母親と作ったんだったっけ?
しもつきんはうまくいった例がないから料理自体やらない…とか、そんな話を聞いたんだが…
ぶらん子とホレ子は上手そうだなー、シスターも料理は習ってそうだし
スレチで悪いが、青髭子より青髭の方が料理上手だったらかわいい夫婦になりそうだ
- 47 :
- >>46
なんだ…と…そうなのか…
じゃあ、しもつきんとゆうきに上手い人二人がついて教える…みたいな感じだろうか。
個人的にはしもつきんにはみきさん、ゆうきにはれみこがついてほしい
それで放ったらかしにされた二人がちょっといじけてたりしたら 可愛い のに
そういえばもうすぐバレンタインシーズンか。チョコネタ投下されたりするかな
- 48 :
- なに雪白が料理下手だと…
白雪姫は小人さんちの家事を手伝うからおうちにいさせてもらったということで
雪白姫も意外に料理上手設定で書いていた
なんてことだ…
- 49 :
- 何度もすまない
>>48
いや、全然構わないと思うぞ!俺は!
あくまで俺の個人的な想像だからな、>>48にも自分のイメージがあるし、人それぞれでいいと思うぞ
いや、決して野ばら姫と雪白姫に左右からすごい料理押し付けられてあたふたしてる王子が見たいとかそんなことは
- 50 :
- >>49
レスどうもです
よく考えれば家事手伝うのはデゼニーだけだったかもしれない
> 野ばら姫と雪白姫に左右からすごい料理押し付けられてあたふたしてる王子
こういうことですね
メル「バレンタイン。追い詰められた王子。君は何故ry唄ってごらん」
二人「「さぁどうぞ召し上がれ」」
王子「な、口にするものとは思えないおぞましい紫色のデロデロ……」
薔薇「野薔薇姫特製チョコケーキですわ。隠し味に(ピー)を入れましたのよ」
王子「チョコって色では無いのですが」
雪白「私のもちゃんと見てよぉ」
王子「こっちはこっちで身の危険を感じる黒い物体……」
雪白「クッキーよ。失礼しちゃうわ!」
王子「消し炭にしか見えませんが」
雪白「いいから食べなさぁーい!可愛い雪白姫の手料理なのよぉ?」
薔薇「召し上がってくれますか?くれますよね?全部食べてくださいね?食べろ」
王子「イヤちょっと待っ――嗚呼、なんてことdもごもご」←強引に押し込まれた
雪白「おいしい?おいしいよねぇー。雪白姫様のお手製クッキーだものねぇ?」
薔薇「ふんふん。とてもおいしい?まあありがとうございます。嬉しいですわあ」
王子「」←返事がないただの屍のようだ
メル「なるほど。それで君は毒されたわけだね。如何でしょうエリーゼさん?」
エリ「バーカw」
メル「復讐はなかったことにw」
- 51 :
- 紫ww
なんとなく王子ちゃんは料理上手そうなイマジナシオンがある
嗚呼でもそれは中の人補正ってやつか…?
- 52 :
- 期待せずに戻って来たら旧歌姫の名前がいっぱいで思わず涙目
やっぱりまたここに通おうと思った みんなありがとう
過疎ってることに比べたら賑わってるほうが嬉しいよな
自分も今の歌姫達が仲良しなのももちろん好きだし
そして旧歌姫のことも忘れずに話題にしてくれたら嬉しい
ところでアルテローゼが一番可愛いと思っているのは自分だけだろうか
- 53 :
- >>52
同志だ!!アルテローゼ可愛いよな…!!
アルテローゼ好きすぎてにハマりすぎて生きるのがつらい…
中の人×キャラになるが、すぐ拗ねて意地を張るアルテローゼの頭を撫でて甘やかすみきさん…なんて萌えないか
アプアル前提みき+アル
みき「…(可愛いなぁ…)」←頭なでなで
アル「…ッな、何よ…!!」
みき「アプリコーゼさんが野薔薇ちゃんに構ってばっかりで淋しい?」
アル「違っ!!どうして私が…あんなやつ別に…!」
みき「…あ、アプリコーゼさん」
アル「っ!?」
みき「あ、気のCeuiだった。ごめんなさいね?」
アル「…な、」
みき「ふふ…アプリコーゼさんが来るまでお茶でもしてましょうか。ローズティーでいい?」
アル「笑うな!!…アンタといいアイツといい…癪に障る…!」
みき「もっと素直にしたらいいのに…お砂糖いくつだったかしら?」
アル「…っ…ひとつでいい」
みき「あ、お茶する気になってくれた?」
アル「紅茶が飲みたいだけよ…!」
みき「はいはい」
アプ「あら、2人でお茶?」
アル「…!!」
みき「えぇ。アプリコーゼさんもどう?」
アプ「喜んで。どうしたのアルテローゼ、そんな拗ねた顔をして…」
アル「…拗ねてなんかない…!!」
みき「アプリコーゼさんがいなくて淋しかったのよねぇ?」
アル「違う!!アンタ適当なこと言うんじゃないよ!!」
アプ「あらそうなの?ごめんなさいね、淋しい思いをさせてしまって…」
アル「だから違うって…!!」
アプ「今度お菓子を焼いてくるから、機嫌を直してくれないかしら…?」
アル「もういい…!」
みき「仲直り?相変わらず仲良しねぇ」
アル「な、仲良くなんて…!!」
アプ「ふふ、そうでしょう?」
アル「アンタと仲良くなった覚えは…」
アプ「あら、この紅茶おいしいわね…」
みき「ありがとう。アルテローゼがくれた薔薇で淹れたの」
アプ「みきさんは紅茶淹れるの上手よねぇ…」
アル「話を聞け!!」
…みたいな。
他の歌姫たちがアルテローゼをからかいに、お茶会に参加しててもおいしい(笑)
無駄に長くなってしまって申し訳ない…うまくまとまらなかったしorz
- 54 :
- >>53 GJ!!
やっぱりアルテローゼさんかわいい!
- 55 :
- >>52
おかえり!
アルテローゼ可愛いよアルテローゼ…>>53で中の人×キャラに目覚めた
- 56 :
- 初SSです。ラフレンツェに冥府の番人を継いだ後のアプアル妄想。
「そんなに彼が欲しいなら、恋の呪いをかけてしまえばいいじゃない」
「なっ!?」
またこいつは、いきなり押しかけてきて自宅のように寛いでると思ったら……!
しかも、アドバイスのようでいて平然ととんでもないことを言っているのが恐ろしい。
「うふふ、隠してたつもりなのかしら? 貴女がずうっと前から彼を愛してることくらい、
私にはお見通しよ。ねぇ、純潔の結界はもう守らなくていいのでしょう?何を悩むことがあるの?」
図星を突かれて怯む私に、彼女は若い娘のようにうきうきと質問を畳み掛けてくる。
「そ、そんなこと……できるもんか」
「何故?」
きょとんと。おどけた仕種は妙に可愛らしい。
云百歳のくせに!と内心で罵倒してから、自分も大して変わらないことを思い知らされてちょっぴり凹む。
「だっ、だって……」
「だって、なぁに?」
私は気恥ずかしさから、無意味に紅茶を掻き回しながら下を向いて声を落とす。
「……すっ、好きな人には……自分の魅力で、振り向いてもらいたいじゃないか……。
ア、アンタだって、恋をすればきっとそう思うはずさ!」
嗚呼、絶対に笑われる。そう覚悟して呪詛の言葉を吐こうと顔を上げると、
意外なことに彼女はカップを揺らしながら神妙な面持ちで空を見つめていた。
「……アプリコーゼ?」
「そうね、貴女の言う通りだわ。相手を惑わして得た心なんて、偽りの愛でしかないものね」
想定外すぎて一瞬処理が遅れたが、彼女の台詞を脳内で反芻して、私は得心した。
これは……普段やり込められている彼女に反撃する絶好の機会かもしれない。
「おやおや、なんだいアプリコーゼ。その語り種……もしかしてアンタも、懸想してる人がいるんじゃないかい?」
「ええ、いるわ」
「……え?」
あっさりとした告白に拍子抜けして、思わず変な声が出た。
「でもね。その人にはもう、好きな人がいるから。私の出る幕はないわ」
「気持ちも伝える前に諦めるなんて、アンタらしくないじゃないか」
「いいのよ。恋仲にはなれなくても、私はその人と下らないことを話しながらゆっくり時間を過ごすのが好きなの」
「ふんっ、残念だ。アンタがその彼を射止めれば、私のとこに押しかけてくる回数も減ってせいせいするだろうに」
「ふふ、淋しいのかしら? 大丈夫よ、そんなことにはならないから」
「だ、誰が淋しいなんて言った!」
おかしい、主導権を奪ったはずなのに、いつの間にやらまた彼女のペースに乗せられている。
彼女は昔からこうして人を手玉に取るのが上手かった。
彼女の話術をもってすれば魔法など使わずとも容易く人の心を搦め捕れるだろうに、
彼女の想い人というのは、よっぽどひねくれた、手強い男なのだろうか?
「今日は楽しかったわ、アルテローゼ。また一緒にお茶しましょ?」
「二度と来なくていい!」
「今度は、杏のパイを焼いてくるわ」
憎まれ口にも動じず柔らかく笑う彼女はやけに幸せそうで。
「……まずかったら、呪うよ」
「うふ、楽しみにしていてね」
私は一生、彼女には敵わないのだろうか。
彼女を追い出した後の室内は、静寂が嫌に耳に響いた。
アルテローゼ片思いネタと見せ掛けて永遠の片思いなアプリコーゼオチ。
アルテローゼのお相手は俺も知りません。
お粗末さまでした。
- 57 :
- アルテローゼさんもアプリコーゼさんも可愛いよぉ
片思いネタは切なくていいね
毎日のように燃料投下があってうはうは
ところで雪白姫ってなんて呼んでる?
「ゆきしらひめ」「ゆきしろひめ」
どちらにせよ変換が面倒だから「ゆきしらひめ」で単語登録した
王子は変換するたびに皇子が第一候補に出てきて間違いそうになるw
- 58 :
- ラジオで偉い人が控え目にゆきしろひめって言ってた
- 59 :
- >>58
ゆきしろちゃんか
ありがとう今度からそう呼ぶよ
- 60 :
- アルテローゼさん萌えの流れですがぶった切ってすみません。
王子に首ったけな雪白姫と蕾も花も愛でる青王子のお話。
「生は朽ちゆく運命。は永遠との約束。
ふくらんだ蕾は美しい花を咲かせ、やがては枯れ果てる。
花の命は短くて。命短し恋せよ乙女。さぁ、唄ってごらん……」
- 61 :
- 「王子ー?どこにいるのー?」
ここに来てもうだいぶ経つけど、やっぱり慣れない。
昔住んでたお城とは違うし、この間まで住んでた小さな可愛いおうちとも違う。
王子やお城のみんなは優しくしてくれるけど、でもちょっぴりホームシック。
といっても、もう帰るお城なんてないのだけど……。
うぅ、こんなこと考えてたらとっても寂しくなっちゃった。
こういうときは王子に甘えるに限るんだけど、肝心の王子が見つからない。
「王子ってばー!もうどこに行っちゃったのよ……」
こんな可愛い私を放ってどこかに行っちゃうなんて、ぜったい、ぜったい、許さないんだからね!
そういえば、最近王子が私を避けてるような気がする。
やっぱり私があんなことするからかなぁ?
でもでも仕方ないのよ。私は悪くないの。悪いのは全部王子なんだから。
だって王子は女の子で、私にそのことをずぅーっと隠していたんだもの!
――結婚したばかりの頃。
一緒のベッドに寝るのが恥ずかしくて、でも女の子としてそれなりに期待はしてて。
『おやすみなさい、雪白姫』
『おやすみなさい……』
そう言って王子は燭台の焔を吹き消して、ベッドに横臥った。
どきどき。どきどき。
目を瞑って待ってるのに、いつまで経ってもこないから、私は飛び起きた。
『寝ちゃったの?しないの?ねえ王子ってばぁ!』
『うぅん……何かしなきゃいけないことあった?』
『うー』
女の子の口からは恥ずかしくて言えない。
『そっか、おやすみのキスしてなかったね。おやすみ、雪白姫。チュッ』
『あ……』
ふわりと優しい額へのキス。思わず照れてしまい、額をこする。
『ふふっ、また明日ね』
ベッドに沈む王子を恨めしく見つめているうちに私も眠りに落ちた。
そんな日が何日も続けば、女の子なら誰しも不安になるもので。
私に魅力が無いのかしら?他に女がいるのかしら?
もしかして王子は私がまだ小さいから、大きくなるまで待つつもりなのかもしれない。
けれどそれはいつまで?今はまだ小さな蕾が大輪の花を咲かせるまで。
……そこまで待っていられない!
うー、くよくよ悩んでいるのは私らしくないわ!
ということで寝起きも超スッキリな美少女の私は王子に突撃したのであった!
『おうじー!』
『なんだい、雪白姫?』
『はぐっ』
不意打ちで後ろから抱きつく。王子からは甘い花のような香りがした。
そして意外にも体は細くて、ふわふわしてる。
男の人ってこういうモノなのかしら?お腹が出てるのかな?
さわさわ……うーん、そうでもないみたい。
『ゆ、雪白姫』
『王子、どうして私のことを抱いてくださらないの?』
『それは』
さわさわ……心地よくって王子のお腹を撫でていると、手に柔らかいものが当たった。
『ん〜?』
もにゅ。何気なく手で掴むと王子が甲高い悲鳴をあげた。
『きゃあっ!』
『きゃあっ?』
随分と可愛らしい声を出すのね……って、アレ?
『こ、これは……』
『あぅ〜』
『ええええええぇぇぇぇッ!?』
とまあこれが簡単なあらましである。
- 62 :
- 私としては王子が男だろうと女の子だろうとどうでも良かったので、
その点については特に咎めなかった。また帰る場所もないし、別れることも無かった。
どうでも良いと言っても、別に王子自体がどうでも良いわけではない。
最初は復讐に利用するためだけだったし、かなりどうでも良かったんだけど。
一緒に過ごしているうちに王子の人となりを知って好きになりかけてるのは私自身気付いていた。
だから男だろうと女だろうとどうでもいっかなあーって。
だって私のことを好きでいてくれているのは間違いないんだもの。
だよね?王子は私のこと好きだよね?あまり王子からは言ってくれないのでちょっと心配。
それとね、王子が女の子で良かったって思うこともあるの!
あのね、ぷにぷにってすると気持ちいいんだー。
マシュマロみたいに柔らかくてね、ふわふわなの。
しかも釈然としないことに王子って結構胸あるのよね。
私よりずうっと大きくてね、羨ましいやら何やらって……
あっ。今、雪白姫はぺったんこだから当然じゃんって思った子、手を挙げなさい!
後で復讐しに行くからね!いいこと?今から必こいてダンスの練習でもしてらっしゃい!
もぅ油断も隙もないわね。私はこれからもっともっと――おっと、閑話休題。
あれかな、さらしできつく締め上げてると逆に大きくなっちゃう現象かな?
私もきつく巻いておけば大きくなるかなあ……あ、違う違う。私の話でなくて王子の話だった。
うーんと……そうそう、王子の胸をぷにぷにって話だったわね。
ぷにぷにむにむに気持ち良くって、私は王子が女の子だとわかった日から毎日ぷにぷにしてた。
ご飯を食べる前、おやつを食べる前、お風呂に入る前、眠る前にゆったりしてるとき、
お散歩してるときやお昼寝をしてるとき、お仕事をしているとき、
ぐーてん☆もるげんっ!な目覚めの朝、ぐーて☆なはとっ!なおやすみの夜。
とにかく朝から晩までぷにぷにむにむにしてたら、王子がいきなり怒りだして……。
『あぁもうやめてっ!どうして雪白姫は僕のおっぱいをぷにぷにむにむにするんだ!』
『えー。だってえ。せっかくあるんだからいいでしょーお』
わきわきと宙を揉みしだいていると、王子が泣きそうな顔をして逃げだした。
よく考えてみれば朝から晩までは不味かったかなあ?
せめて国民の前でだけはやめておけば、まだ許してもらえたかもしれない。
臣下達の前では、ばんばんぷにぷにむにむにふにふにするけどね!
えっ、それって羞恥プレイじゃないかですって?
やだあ。雪白姫、まだ子供だからそうゆう難しいことわかんなぁーい。
とにかく突然怒りだしたあの日から私は王子に避けられているのだった!
「どこにいるのー?王子ー?」
怒るのも当然よね。私も悪かったと思っているわ。
だからはやく私の前に現れてよ。私、寂しくてんでしまうわ!
お城を抜けて広いお庭を回る。なんだかくたびれちゃった……と思ってた矢先に!
お城から遠く離れた真白な雪に一面を覆われる裏庭にに王子を見つけた。
地面はまっさらで足跡一つ残っていない。
王子がつけた足跡はしんしんと舞い降りる雪が消してしまったらしい。
寒いのにずっとここにいたのかしら?
私は冷えた指先をこすり合わせ、白い息を吹きかけた。
一瞬だけ指先が暖かくなり、すぐに冷たくなった。
何度か繰り返し、大して意味のないことに気付いて、私はそれをやめた。
手袋してくれば良かったと思いながら、王子の様子を窺う。
王子はこちらに背中を向け、ぼんやりと足元に降り積もった雪を見つめていた。
こんな寒いのに何してるのかしら……少し呆れながら、息をひそめて近づく。
幸い、足音は真白の雪が消してくれた。また降り注ぐ雪も味方してくれた。
そして私は無防備な背中を向ける王子に勢い良く飛びついた!
「王子っ!」
「!?」
バランスを崩した王子が前のめりになる。
私は咄嗟に雪だらけの青いケープを引っ張って、留めた。
「ぐえぇ、く、首が絞まるぅ」
「あっごめんなさい!」
慌てて手を離すと王子が雪の中に倒れ込んだ!
- 63 :
- 雪の中に倒れ込んだ王子はなかなか起き上がらない。
もう少し待ってみる。……まだ起き上がらない。
「王子、起きて!んじゃいや、いやいやいやー!おうじー!」
「勝手にすなッ!」
むくっと王子が起き上がる。私はほっとして気が抜けたのか、その場にへたり込んだ。
「良かったあ」
「雪白姫?」
「王子、すっごく冷たいんだもの。まるで体みたい」
「えっ」
王子は自覚がないらしくきょとんと首を傾げる。
私は先ほど抱きついたとき、王子の体がどれだけ冷たかったかを説明した。
「氷のように冷たくて体みたいだったから、怖くなったの」
「心配かけてごめんね」
「うん。王子が無事で良かった」
「あっ!」
王子は忙しなく立ち上がると、さっきまで倒れ込んでいた場所に何度も目をやった。
「どうしたの?」
「あ、えと……。ほら寒いだろう?雪白姫も立って」
さあと差し伸べられた手を掴んで立ち上がる。王子の手はやはり氷のように冷たかった。
王子は寒くないのかしら。
そういえば私の息は白いのに、王子の息は白くない。
きっと体の芯まで冷たくなっていて、吐く息まで凍てついてしまったんだわ。
「……」
「……」
私達はそれ以上会話を交わすことなく、沈黙した。
なんだかとても気まずすぎるのでとりあえず話題を振ってみる。
「どうしてこんなところにいるの?もしかして私と一緒にいたくないから?」
もとい、お城にいれば間違いなく私に見つかって、おっぱいむにむにされるから?
「なんとなく歩いてたらここにいて」
「足跡が降り積もる雪で消されるくらい長時間ぼーっとしてた?」
「……うん」
こんな寒いのにぼーっとしてたなんて言い訳にもならないわ!
ぜったい、ぜったい、何か隠してるに違いない!
「本当に?何かがあるからここにいるのではないの?」
「……えっと」
目を逸らした!嘘をついている証拠だわ。
王子がまたしても先ほどと同じように私に背中を向けようとするので、
私は回り込んで正面を陣取ろうと真っ赤な靴に飾られた小さな足を持ち上げた。
すると王子が全身を使って、私を抱き留めるようにしてそれを拒んだ。
「離して、はーなーしーてー!」
「駄目だ、離さない!今すぐ足をどけて!」
「どうしてよ!」
「いいから!」
王子は私を軽々と抱き上げて、そこからだいぶ遠くに離れた場所に下ろした。
そして私を残して王子はさっさと先ほどいた場所へ引き上げていく。
「むー。そんなに私のことが嫌いなのね!どっか行っちゃえって思ってるのね!酷いわ!
嫌いになったのならそう仰ればいいのに!もういい、私も王子のこと嫌いになるから!」
そりゃ私だって王子には悪いことしたと思ってる。世界で一番可愛いのは雪白姫だけど、
王子には我が儘いっぱい言っちゃう可愛くない子だとも自覚している。
でもね、これでも一生懸命に王子のお嫁さんをやってたつもりなのに……。
「待って雪白姫!」
「もう知らない!」
「違うんだ、ここに来てこれを見てよ」
「いや!」
「ほらこっちにおいでよ」
「……むぅ」
「おいで」
そんな優しい声で言われたら従うしかないじゃない。……貴女って罪な人だわ。
もしも復讐するとしたら、貴女の罪は私の心を奪ったこと。
奪われて空っぽになってしまった部分は貴女を想うことでしか埋められないの。
- 64 :
- 隣に立つと、王子はにっこりと笑って視線を落とした。
意味がわからず横顔をじぃっと見つめていると、下を見るように促される。
足元なんて見てもどうせ雪しかないのに……同じように視線を落とす。
するとそこには青々とした緑の葉とぷっくらとした蕾があった。
蕾は今にも開きそうだ。けれどこんな寒い中で咲いても誰も見てくれないのに……。
と、そこまで考えて私はハッとした。そうか、王子はこの蕾をずっと見ていたんだわ。
王子は男みたいな仕草で男みたいにお喋りするけど、本当は意外と乙女ちっく。
私は王子と過ごすうちに、彼女の王子様らしい立ち振る舞いが、
全て意識して行われているのだと知った。何が彼女をそうさせているのかはわからないけど。
とにかく王子はこう見えて女の子らしい一面を持ち合わせているのだ。
最もわかりやすい例をあげると、王子はお花が好きだった。
今は真白に塗り潰されたお庭だが、ついこの間までは色鮮やかなお花が至る所に咲いていた。
私はその中を王子と一緒にお散歩するのが好きだった。
ちょうちょになった気分で花から花へ、お花畑を散策する。
その殆どは専属の庭師達の手で育てられたものだったが、一区画だけそうでない場所があった。
そこのお花は王子が育てているらしく、毎日せっせと水を撒いていた。
けれど長い間ほったらかしにしていたそうで(理想の花嫁を探していたらしい)
なかなか芽が出ないうちにこうして冬になってしまった。
お花を見てるのは好きだけど、咲かないお花を、芽吹くことのないお花を育てることに、
何ら意味を見いだせなかった私は一度だけ王子に訊ねたことがある。
『毎日、咲かないお花に水をあげて楽しい?』
『楽しいよ。いつかきっと咲いてくれるよ』
『でもずーっと咲かないわ』
『これから咲くよ』
『つまんない』
『こうして愛情を注げば、注いだ分だけ綺麗な花が咲くんだよ』
『でもまだ咲かない』
『咲かなくても与え続けなくてはいけないよ。花には毎日一杯の水といっぱいの愛情が必要なんだ』
……正直に言うと、私はお花に嫉妬した。
王子はお花を踏まれちゃいけないと思って、私を抱き上げたんだわ。
そんなにお花のことが大事なのかしら。私よりももっとずっと?
「可愛い花だろう?まるで雪白姫みたい」
「どっ、どうして?」
びっくりして声が裏返ってしまった。そんな私を見て、王子はおかしそうに笑う。
「雪の下で頑張ってるから。知らない土地で頑張ってる雪白姫に似てる」
「そうかしら」
「蕾のままなところも似てる」
「私がまだ未熟だと仰りたいの?」
「未来があると言いたいんだよ。この蕾が開いたら、どんな色の花が咲くだろう?
雪白姫が大人になったら、どんな女性になるだろう?
君は沢山の可能性を秘めている未来に開く蕾。どんな女性にもなれる」
「なんか年寄りくさい」
「そ、そうかな。ハッキリ言われると傷つくんだけど……」
どうやっても越えることの出来ない年齢の差を思ってか、王子が項垂れた。
私こそ項垂れたいくらいだわ。いくら背伸びをしても王子には追いつけないんですもの。
「このお花は今度こそ咲くよね?」
「きっと綺麗な花を咲かせるよ」
「うんっ」
「くしゅんっ」
王子は大きなくしゃみをしたかと思うと、体を震わせ始めた。
「急に寒くなってきた。雪白姫に見せたら、安心したかな」
「もしかして私に見せようと思ってずっとここにいたの?呼びにくればいいのに」
「離れたら雪に埋もれてしまうのではないかと思って。柄でもないと君は笑うかい?」
「ううん。お花が好きな王子らしいわ」
勇敢な王子様はずっとお花を守っていたらしい。……嫉妬しちゃう。
もしも嫉妬が罪なのだとしたら、私は間違いなく復讐されてしまうわ。
そのときは貴女が助けに来てね、私の王子様。
- 65 :
- 「お花は雪に埋もれてもなないわ。そんなに弱くないもの」
私は体温を分け与えようと冷たい王子の体に抱きついた。
微かに残っていたぬくもりが触れ合ったところから逃げていき、震えが私に伝染する。
けれど離さない。もう離してあげない!
「でもね。お花はなないけど、私は王子がいなくなったら寂しくてんでしまうわ!
もう黙っていなくならないで、お願いよ……」
「ああ、約束するよ。……しかし雪白姫もそんなに弱くないだろう?」
「そうよ、私は弱くない。けど」
王子の氷のような手に白い息を吹きかける。
意味のないことだと知りながら、何度も何度も繰り返した。
「王子はいつか、お花には水と愛情が必要だと教えてくれたわ。
だからね、あのね……蕾に似てる雪白姫には大好きな王子と愛情が必要なの」
「ふふっ、あはははっ」
王子がお腹を抱えて笑いだした。私は頬をぷくーっと膨らませる。
恥ずかしいけど頑張って伝えたのに。王子は何もわかってない。私は本気なのよ!
「もぅ笑わないで!」
「だって可愛いこと言うから」
「私が可愛いこと言っちゃだめなの?」
「可愛い子が可愛いこと言うのは反則だよ。ギューッてしちゃう!」
王子の両手が背中に回り、私はきつく抱き寄せられた。
剥き出しの頬に王子の冷たい頬が触れて悲鳴を上げる。
「きゃあっ!王子ってば冷たい!」
「なら暖かくしてよ、雪白姫」
耳元で囁かれて私の体は煮え滾る鍋に蹴飛ばされたかのように一瞬で熱くなった。
心臓が大きく脈打って、王子に聞こえてしまうのではないかと心配になる。
どうしよう。きっと真っ赤になってる。
真っ赤な顔を見られたくなくて、王子のふかふかな胸に頬を押し付けた。
体温を取り戻し始めた王子の胸から血潮の響きが聞こえる。
早鐘を打ち鳴らすような私の心臓の鼓動とぴったり重なる。
王子もどきどきしているの?――それともこれは私の鼓動かしら?
どこまでが私で、どこからが貴女かわからなくなる。
「うーん。雪白姫がぬくくなってきた」
「人を湯たんぽみたいに言わないで頂戴」
「言い直す。雪白姫が興奮して熱くなってきた」
「興奮してないもん!」
「どうかな、顔が真っ赤だよ?」
王子は冷たい手で私の両頬を掴み、うっとりと微笑んだ。
ひんやりとして火照った頬には気持ち良い。私も微笑み返す。
「王子のほっぺも林檎みたい」
「少し熱くなってきたかな」
「おいしそうだから食べちゃうね。いただきまーす!」
ぐいっとケープを引っ張って王子を前屈みにさせると(悔しいけど背伸びだけじゃ届かないの)
血潮のような唇で真っ赤に熟れてる林檎を啄ばんだ。
首筋に腕を絡ませ、乱暴に唇を重ねる。
柔らかい唇に吸いついて、強引に割り込ませて、舌を絡めとる。
相手が食いついてきたところで引っ込めて、もう一度唇からはじめる。
何度も繰り返すうちに焦れた王子が私を力強く引き寄せた。
「んんっ」
奪い合い、求め合い、互いを確かめ合う。息継ぎも儘ならない目眩がするほどのキス。
なんだか、頭ががんがんして、ふらふらする……。
私は「離して!」と王子の肩を叩いて押し返した。
唇をぺろりと舐めて、名残惜しそうに王子の唇が離れていく。
「ごちそうさま」
「あんっ……ってあれれ?」
私が「いただきます」したのに、王子が「ごちそうさま」してるのはどうして?
目蓋をぱちぱちさせて唇を撫でる。王子がくすくすと笑いだす。
意味がわからず小首を傾げた瞬間、がばっと王子が勢いよく襲い掛かってきた!
「きゃあん!」
か弱い私はなす術もなく真白の雪のベッドに押し倒されるのであった。
- 66 :
- 雪のベッドはふわふわで柔らかかったけれど、とても冷たかった。
けれど体はとても熱くて、今にも溶けてしまいそう。
このまま溶けだしたら二人を隔てる境界がなくなって、一つになれるのかな?
「雪白姫……」
私に覆い被さった王子が熱い吐息を洩らす。もう寒くない。痛さも何も感じない。
どうしてかな?今日の王子は積極的。そんな貴女も素敵。
私も貴女の名前を呼んで見つめ返す。王子がふっと微笑み、私に倒れ掛かってくる。
一瞬重みを感じたかと思うと、体がふわりと浮かび上がり、今度は王子の上に乗っかっていた。
目を白黒させていると、また私が下に移動していて王子が覆い被さっていた。
やっぱり目を白黒させていると、また王子の上にいた。
抱き合って雪の上をくるくる転がっているのだと理解するのに、私は数秒の時間を要した。
「このままじゃ雪だるまになっちゃうわ!」
「あははっ、それもいいね。二人で雪だるまになっちゃおうか」
「きゃあっ!うふふっ、きゃはははっ」
寒さでどこかおかしくなったのか、王子が無邪気に笑っている。
私もおかしくなって笑い転げる。くるくる回る。くるくる回る。
終いには二人雪塗れで真白のベッドに転がっていた。澄み渡った高い高い冬の空を見上げる。
「ねぇ雪白姫。君は未来に開く蕾だけど、時々その美しさを永遠のものにしたいとも思うよ。
美しい君を硝子の棺に閉じ込めて、永遠に枯れることなく、僕だけのものにしたい。
いいや硝子の棺の中で二人きり、永遠に美しいままで眠り続けたい。素敵だろう?」
王子はまるでの淵へと誘惑する悪魔のように艶やかな笑みを浮かべた。
悪魔に心を奪われた弱い乙女のように私は恍惚として王子を見つめ返す。
「永遠という林檎の甘い蜜の毒を喰らう覚悟があるならば共にのう」
私の心は揺れ動く。永遠を手に入れられたら、永遠に貴女と一緒にいられたら。
けれど時間を止めてしまったら、貴女との日々を紡げない。
「んでしまったら毎日が楽しくないわ」
進むことも戻ることも出来ない暗い世界に二人きり。
私は貴女と毎日新しいことを見つけたい。新しいことを知りたい。新しいことをしたい!
「だがによって永遠を手に入れることが出来る」
永遠って何なのかしら?停滞した時間のことを言うのなら、私はそんなのいらない。
だって私は貴女と流れる時間の中を歩み続けたいから。
「私にとっての永遠はもうここにあるわ。貴女と過ごす時間が、私の永遠なのよ!」
愛する人と共に過ごす時間はまるで砂のように流れてしまうけれど、
同時にとても穏やかに和やかに流れてゆくもの。
その愛しい時間にまだ名前がないのなら、私はそれを「永遠」と呼びたい。
「そうか、雪白姫と共に過ごす時間こそが永遠だったんだね。僕は既に永遠を手にしていた――。
…………可笑しいな。なんだか、目蓋が重くなってきた。先に、眠るね……」
王子は空のように柔らかく微笑んで、ゆっくりと瞳を閉じた。
そして私も彼女の肢体にそっと寄り添い、同じように瞳を閉じるのだった。
――折り重なった二人を覆い隠すかのように雪が降り積もってゆく。
どこまでも続く白の世界は全て二人のためだけに……。
「永遠とは一体何なのだろうね?」
「復讐ハ何処ヘ行ッタノ?」
「あっ、家来の人ー!こっちに姫君達が倒れてますよー!」
「メル〜!モゥ放ッテ置ケバ良イノヨ。ンダラ復讐サセヨウネ」
「こっちですよー!急がないと大変ですよー!」
(――ああっ、こんなところに殿下と雪白姫が埋もれてるぅ!?)
(――急いで担架を持ってこないと。いや毛布?ホットチョコレート?)
(――暖炉暖めてきまーすっ!あっ焚き火の方がいいかな?おいも取ってきまーすっ!)
「めでたしめでたし」
「メデタクナーイ!」
- 67 :
- 蕾も花も(中略)愛でても(以下略)と歌っていたので青王子はお花好きと強引に変換。
途中の「おっぱいぷにぷに」は元々書こうと思っていた話の名残。
ぶっちゃけると最初はおっぱいぷにぷにしてるだけの話でした。
>>56
GJ!
幾つになっても恋する乙女なアプアル可愛いよアプアル
- 68 :
- >>67
GJ!!王子×雪白姫リクエストしたので、書いてくれて嬉しい
新スレになってからSS職人さんが頑張ってくれて幸せな毎日
- 69 :
- 共にのうって青王子ちゃんは女の子でもそういうキャラかw
アンコールネタの使い方うまくて禿げる
王子の武勇伝(笑)もうまい具合に調理してくれておいしいです
> ぶっちゃけると最初はおっぱいぷにぷにしてるだけの話でした。
さて、おっぱいの話をはやくだな…
- 70 :
- ちーちゃんのブログに百合フラグ発生
- 71 :
- みきれみの劇判の正体が…プリキュア…だと…!?
「ふたりはプリキュア☆」とか言いながらきゃっきゃしてるみきれみを受信した←
- 72 :
- >>71
ちょっと待て、何ソレ萌える
- 73 :
- >>60の続き。嫉妬深いヤンデレ雪白姫とぞっこんベタ惚れ青王子のお話。
前半2レス分は王子と家来さんらのお話。全部で11レスです。
「硝子の棺から飛びだして、永遠を手に入れた姫君。
だが、はたしてそれは幸せの始まりなのかな?
嫉妬の焔がその身を焼き尽くす前に、さぁ――」
「メル、マダコノばかっぷる見テルノ?趣味悪イワァ」
「エリーゼさんorz」
「サァ、唄ッテゴラン……」
「お願いですから台詞取らないでください」
「馬鹿ですねw」
「馬鹿王子w」
「ばーかw」
「馬鹿っていうな!」
全く主君になんて口の利き方だ。
相手が僕で助かったな。もしも他の誰かだったら、今頃宵闇の森で憾みを唄ってるところだぞ。
この生意気な三人は僕の優秀で忠実なる臣下。いや優秀は言い過ぎか。
ともかく僕が物心ついた頃から影のように付き従うお世話係。
元々はお姫様(と自分で言うのも照れるけど)の遊び相手兼お世話係として雇われていたが、
僕が突然むちゃくちゃを言って理想の花嫁を探す旅を始めたときから、彼女達の仕事は一変した。
お姫様が王子様に変わって、お世話係のメイドは付き従う騎士へと変わった。
勿論僕が彼女達にそうなるように強要したわけではない。
寧ろ僕が「来なくていい」と言ってきかせたのに付いてきたのだ。
三人曰く、僕は一人では何も出来ないお姫様らしい。別にそんなことはない、と思う。
僕が男の恰好をして理想の花嫁を探す旅に出ることを、父をはじめとする城の面々は皆反対した。
けれど三人だけはいつも味方でいてくれた。何があろうとずっと僕の味方。
それがどれだけ心強く、嬉しかったことか。だからこそこのような物言いも許しているわけだが。
「だって馬鹿じゃないですかw」
「どこをどう見ても馬鹿w」
「ばーかばーかw」
やはり少しばかり、いいやとっても物凄く失礼な口の利き方だ。
そりゃまあ多少は自分でも馬鹿だなと思うこともあるが、自分で思うのと他人に言われるのは違う。
「お前達、剣の錆にされたいのか!?」
「やれるものならどうぞ」
「どうせ出来ない癖に」
「痛くしないでくださいね」
……もうやだ。ところで、何故僕が三人にからかわれているのかというと。
「それは我々がご説明致しましょう」
「えっ」
「極寒の冬空の下。雪白姫とお話していたら気分が盛り上がってしまって」
「雪の上をぐるぐるぐるぐる、いちゃいちゃラブラブしてたら」
「いつの間にか頭ががんがんして気が遠くなって……。ですよね、殿下」
その通りなのだが、他人の口から聞かされるとやはり馬鹿ではないか……。
「あのときは本当に驚きましたよ」
「城のどこにも殿下と姫の姿が見当たらないので外に探しに出かけたら」
「な・ん・と!雪の下に埋まっているではありませんか!」
「これは大変と掘り起こして城まで運んであげたのですよ」
三人は揃って肩を竦めた。何を言いたいのかはわかる――「馬鹿王子」
「そういえば僕が気がついたときに食べてた焼き芋はなんだ?」
「それよりあのときの白い男の人は誰だったのでしょうね」
「いい歳してお人形抱いてる時点でお察しください」
「あー、あの人がいなければ今頃お二人は根雪の下で春を待つようでしたね」
「「「あはははっ」」」
うまくはぐらかされたような気がする……。
しかし根雪の下で春を待ってたら、こうして文字通り姦しくお喋りする彼女達とも
永久に会えなくなるわけで。その謎の白い男の人には感謝しないといけないな。
- 74 :
- 「それからがまた大変でしたよねー。殿下は高熱を出して一週間も寝込むし」
「馬鹿は風邪ひかないって嘘だったんですね」
「だから僕は馬鹿ではないぞ」
「あれ、馬鹿はんでも治らないじゃなかったっけ?」
「良く言うねえ」
「残念でしたね、殿下」
「だから僕は馬鹿ではないと」
ここはやはり剣の錆にしておくか?腰の剣へと手を伸ばす。
「我々がいなくなったら生活していけるのですか?」
「炊事洗濯全てお一人で出来るのならご自由にどうぞ」
「羽根ぶとんを振るうだけの簡単なお仕事は出来ますよね?」
うう、僕は何と無力なんだ……。致し方あるまい。
「よし続けよ」
「「「ありがとうございます、殿下」」」
「殿下は一週間も寝込んでましたけれど、姫はすぐに治りましたね」
「やはり若さでしょうかねえ」
「ぜんぜん年齢違いますもんね!」
「僕が老けてると言いたいのか。たかが五歳や七歳や十歳十二歳十云歳程度の年齢差……うぅ」
気にしてないつもりでも実際に口に出してみると胸に突き刺さるものだ。
年齢の差など気にするものか。でも雪白姫が美しい女性に成熟した頃の自分を考えると……ぐすん。
「今から沈んでどうするんですか」
「だいたい五十年後の方がヤバ――」
「余計なこと言わないの。今だって充分ヤバイ」
「五十年もすればお二人とも薹が立って久しいクソババアですし気にせずとも良いのでは?」
「そもそも天と地ほどの年齢差より性別を考慮すべきです」
「お前達、毒舌だな……というかそこまでボロクソに言われるほど年齢は離れていない」
だが彼女たちの言うとおりだ。雪白姫はまだ幼いから、僕を優しくて頼りになる
少し特殊な性癖=女の子大好きな男装の「おねにーさま」位にしか思っていないだろうが、
思春期を迎えたら彼女は僕をどう感じるだろうか。
雪白姫の血潮のように赤い魅惑の唇で「気持ち悪い」と言われたら立ち直れそうにない。
「そういえば雪白姫はどこへ?」
「姫でしたら殿下のお花に水やりに出かけてますよ」
「病み上がりの体では無理ですとお止めしたのですがどうしてもと仰るので」
「姫は王子と違ってすぐに元気になりましたからね。回復してから毎日のように行ってます」
今日もしっかりと暖かい格好をさせて送り出したのだという。
「そうか。雪白姫は優しいのだな……」
なんていじらしいのだろう。戻ってきたら温かいお茶を入れてあげよう。
頭を撫でて、ぎゅっと抱きしめてあげよう。それでそれで……。
「殿下、顔が緩みまくってます」
「えっ」
慌てて頬を押さえる。し、指摘されるほど緩みまくっていたのだろうか。
「それはもうニヤニヤデレデレでしたよ」
「姫がごらんになったら幻滅ですね!」
「ガーン」
き、気をつけねば。あーん、けれど雪白姫を考えると自然と頬が緩んでしまう。
僕をここまで魅了するとはなんて可憐で美しく罪深い姫君。
「馬鹿」「馬鹿」「馬鹿」
「おい、本気で斬るぞ」
見事なジェットストリーム馬鹿を決められて、僕はとても傷ついた。
いいもん。雪白姫に慰めてもらうから!
「ですから顔が緩みまくってますって」
「うるさい。いいの」
「ほんとベタ惚れですねえ」
「可愛いのだから当然だ。あれだけ可愛い雪白姫は実は天使なのではないかと最近思うんだ」
「本気で言ってるんですかw」
「天使でないのなら女神かな。お前達もそう思うだろう?ま、絶対渡さないけど」
「「「あーはいはいごちそうさまですぅ」」」
三人は投げやりに声を揃えて、同じうんざり顔で肩を竦めた。
- 75 :
- ――今日もお花にたっぷりお水をあげて、たっぷり愛情を注いでお城へ帰る。
王子が大事にしているお花。ちょっぴり嫉妬しちゃうけど、
この間の「雪白姫に似てる」ってお話を聞いて考え直した。
王子はきっと私に似てるからあのお花を可愛がっているのだわ。
そう考えるとお花がとても愛おしく思えた。
今日はお部屋に寄って行こう。そろそろ王子も起き上がっていい頃だってお医者様が言ってたわ。
あっ、その前に厨房へ行って何か貰ってこようっと。
あの日、雪の中で埋もれていた私達は王子の三人の家来に助けられてお城に運ばれた。
一時はかなりの高熱でうなされていたらしいけど、私はすぐに元気になって目覚めたの。
お医者様から「風邪は治りました」と言われて、さあこれからは王子の看病をしなくちゃ!と
張り切ったのだけど、あの三人が「姫の風邪がぶり返したらいけません」と私と王子を引き離した。
それから私達は毎日一時間しか会えなくて、しかも王子は眠っていて名前も呼んでくれない。
ううん、眠っているのならまだいい方で、うなされてる日もあった。
そんな日は私はすぐにお部屋から追い出されちゃうの。
王子が病気だから仕方ないとわかってはいるけど、私は寂しくてんでしまいそうだった。
でもそんな日々とも今日でおさらばよ!
厨房からお部屋へ帰る途中でお医者様に王子の病状について訊く。
お医者様はもう王子は完全に良くなっていて、既に起き上がっていると教えてくれた。
私はお礼を言って大急ぎで走り出す。
起きたのならどうしてまず最初に私に会いに来てくれないの?
「おうじー!」
「あははっ。お前達は相変わらずだなあ」
「いえいえ殿下にはかないませんよぉ」
楽しそうな笑い声。王子があの三人と仲睦まじくお話してる。
何を話しているのかわからないけれど、仲がよさそうで――私が入り込む隙間などないように思えた。
いつか王子から聞いた。あの三人とは幼い頃からずっと一緒にいるらしい。
思い出を語る王子はとても楽しそうで、私はあの三人に嫉妬した。
私の知らない王子を彼女達は知っている。
私の知らないところに私の知らない王子がいるなんて堪えられない!
王子は私の王子なの。私だけの王子なの。他の誰にも渡さない!
今回の件だってそうだわ。あの三人は私と王子のことを邪魔してるに違いない。
ぜったいに、ぜったいに、許さないんだからっ!
憎しみをこめた眼で三人の背中を睨んでいると、王子がこちらに気づいた。
「雪白姫?」
「姫が会いに来て下さったようですね」
「良かったですねえw」
「くすくすっ」
「笑うな!……雪白姫もそんなところにいないでこちらにおいでよ」
「うんっ!」
王子に手招きされて私は駆け寄った。王子の胸に飛び込む。
「うわっ」
「「「危ない!」」」
椅子ごとひっくり返りそうになる王子を三人が支えた。
「すまない、ありがとう」
「「「いいえ〜」」」
「むぅ」
何よお〜。早くどっか行っちゃえ!――念を込めて粘着質な視線を向ける。
三人は怪訝そうに顔を見合わせ、曖昧な笑みを浮かべた。
「ええっと。如何なさいましたか、姫?」
如何も何も邪魔してる自覚ないの?やっぱりわざと邪魔してるのね。
私は三人を無いものとして無視すると、王子に満面の笑顔を向けた。
「ねぇ王子、林檎を貰ってきたの。一緒に食べましょ」
「じゃ、僕がお茶を入れてあげるよ。外は寒かっただろう?」
「ありがとう!王子、だーいすき!」
「お前達も座るといい。今日まで苦労をかけたな。お茶を入れてやろう」
「いえいえ、滅相もない」
もぉ王子のいじわる。私の渾身の告白をどうして無視するのよ。
この三人はいらないの。二人っきりになりたいの!
- 76 :
- 「うーっ、うーっ」
早く出てけー出てけーと低く喉を鳴らして獣のように威嚇すると、
ぼんやりさんの三人もさすがに気づいたらしく顔色を変えた。
「ありがたいお言葉ですが、我々にはまだ仕事が残っていますので」
「後回しにすればいい」
「あー。そういえばお庭にいっぱい雪が積もってて歩きづらかったなぁ。
雪かきの人手が足りてないのかなー?こんなところに三人もいたら人手不足にもなるわよねー」
「雪白姫、彼女達の仕事は僕達の世話であって雪かきではない」
「いいえ、姫の仰る通りです。人手が足りないのでしたら、私達が行います。
油を売ってばかりでは、ハウスキーパーに怒られてしまいます」
「だが」
「あなた達、肉体労働は得意そうだものねー?行ってらっしゃーい!」
「雪白姫」と咎める声色の王子を遮って、三人がぺこりと頭を下げる。
「構いませんよ、殿下。では行って参ります!」
「ばいばーい!」
これでさ・よ・う・な・ら!雪の下で凍えんじゃうといいわ!
私と王子の邪魔をする人はいなくなっちゃえばいいのよ!きゃはははっ!
「あぁ。せっかくみんなでお茶しようと思ったのに」
「王子は何もわかってない」
「えっ?」
「ううん何でもないの。林檎剥いてあげるね」
私は王子の向かいの席に腰を下ろすと、籠から真っ赤に熟れてる林檎とナイフを取り出した。
用意周到にも準備してあったポットに茶葉を入れ始めた王子が目を丸くする。
――あの三人とお茶しようと思って前々から用意していたの?
目覚めたらすぐに私に会いに来てほしかったのに。
私よりもあの三人とお茶するのが大事なの?王子の浮気者!
「雪白姫が林檎を剥くのかい?」
「他に誰が剥くの?王子は出来るの?」
王子は私が剥いてあるリンゴを持ってきたのだと思っていたらしい。
「えとそれは……なら三人にいてもらえば良かった」
「私にだって林檎くらい剥けるわ!」
ああもう!どうしてあの三人のことばかり話すの!?私をイライラさせないで!
今なら「硝子の棺に閉じ込めたい」という貴女の気持ちもわかるわ。
停滞した永遠なんていらないけれど、貴女が私だけのものにならないのなら、
他の誰かに奪われる前に、貴女が私から逃げ出す前に、硝子の棺に閉じ込めてしまいたい。
この世界でただ一人の愛しい貴女。私だけの麗しい貴女。もう誰にも見せたくない!
私の手には鈍く輝く鋭いナイフ。これは林檎を剥くための物。
でもこれ以上私をやきもきさせるつもりなら、このナイフで貴女の心臓を刺すわ。
私の気持ちなど爪の先ほども気づかぬ王子がナイフを指差す。
「でもナイフを使うなんて危ないよ」
「大丈夫よ。私、お料理上手なんだから!」
「!?」
どうしてそんなに驚くのよ。私って何も出来ない女に見えるのかしら……?
王子は知らないかもしれないけれど、私は色々苦労してきたんだから。
お城では継母に冷たくされつつも、それなりに慎ましやかに暮らしていた。
そしてお城を追い出されてから、私は――。
「小さな可愛いおうちで、お料理お掃除お洗濯をしていたのは私なのよ」
「それは大変だったね」
「小人さん達が何もわからない私に優しく根気強く教えてくれたの。
失敗もいっぱいしたけど、私はいつの間にかお料理もお掃除お洗濯も出来るようになった」
恥ずかしいから王子には教えたくないけど、つらくて泣いた日もあったわ。
継母に幾度もされかけ、その都度に奇跡的に復活し続け、またされかける繰り返しの日々。
だけど貴女がそれを終わらせてくれた。私を悪夢の日々から目覚めさせてくれた。
「今度お菓子を作ってあげるね」
「本当?嬉しいなあ。あっ、なら一緒に作ろうよ」
「うんっ。王子はお料理上手なの?」
王子が一緒にお菓子を作ろうって誘ってくれた。楽しみ!
しかし私の問いかけに王子の表情が曇った。茶葉の缶を閉めて、難しい顔をする。
「うーんと確か森に迷い込んで五日目だったかな。食料が底をついて――」
- 77 :
- ――宵闇の迫る森の奥で。
「えぇー?食糧がなーいー?」
「仕方ないじゃないですか。あれほど言ったでしょう」
「まだ道がわかるうちに引き返しましょうと」
「なのに殿下がどんどん進んでいくから」
「だってこっちの方に理想の花嫁がいるような気がしたんだ……」
でも見つからないし、いつの間にか迷ってるし、お腹空いたし、一体どうしたものか。
「お腹が空いてはなんとやらだ。皆、各自食料を取ってくるように!僕も行ってきまーす!」
「「「ああっ!待ってくださいよ、殿下ー!」」」
――そして小一時間後。
僕はしっかりちゃっかりと野ウサギを捕まえたのだったッ!
「ただいまっ!お待たせー産地直送の野ウサギだよー!みんなも何か見つかった?」
「ええまあ」
「って木の実ときのこだけか。お前達、それでお腹がいっぱいになると思っているのか?」
「でも他にありませんし」
「これだけ見つかればいい方ですよ」
「まあいい。野ウサギを焼いて食べよう。まずは毛を剃る?皮を剥く?」
僕は腰の剣を引き抜き、小さな野ウサギに向けた。
冷静に考えると腹の足しにもならないレベルだったが、極限状態なのでそこまで頭が回らない。
「ストップ!ストーップ!」
「何事だ騒がしい」
「何をなさるのですか!?」
「食べるから皮剥く。そして焼く。そうだ、調味料はあるのか?」
「ウサギが可哀想でしょう?」
「うむ、生きたまま皮を剥くのは惨い。ここは一思いにしてやるのが情けというものだな」
「そうでなくて。いいからウサギさんはポイしましょうね。逃がしましょうね」
「はあ、以前は虫もせぬ優しい姫君でしたのに。はいさようならして!」
「あぁ〜ん僕の焼き鳥ぃ〜」
「……言っときますけどウサギは鳥ではありませんからね」
「えっ」
こうして僕はウサギは鳥でないと学んだ――ってそんなこと最初から知っていたに決まってる!
「ざっとこんな感じかな」
えへん。と王子は胸を胸を張って回想を終えた。
「王子はサバイバル精神旺盛なのね。順応力たかーい。すごーい!」
元お姫様が野ウサギを狩るようになるなんて……誰も思わないわよね。
「いやいやそれほどでも」
王子は照れ笑いを浮かべて、それを誤魔化すかのようにポットにお湯を注いだ。
砂時計をひっくり返す。文字通り時間が砂のように零れ落ちてゆく。
「どうしてこんな話になったんだっけ?あっそうそうお料理の話。王子はお料理出来るの?」
「だから今の話」
「ごめんなさい。今のどこが料理の話だったのかちょっとわからないです……。
結局ウサギさんは剥いてないし、剥いたところで丸焼きは料理ではないと思うの」
「そ、そうだよね」
大雑把でワイルドな男のサバイバル料理ではあるかもしれないけど、
それを伝えると意外と繊細で乙女な王子が傷つきそうなのでやめておく。
「でもあの人達が拾ってきた木の実やきのこで何か作ったのよね?」
「何の足しにもならなかった……」
「本当にあの人達ってダメダメよねー。ボケっとしてるし、道に迷ったのだって三人のせいじゃない」
敵愾心丸出しな私に対して、まるで自分の悪口を言われたかのように王子がムッとする。
「だが彼女達には本当に助けられたよ。彼女達がいなかったら、僕は今頃きっと……」
「むぅー!」
「どうしたの?」
「もぅ知らない!」
何よお、あの三人のことばっかり。どうして私の前で他の子の話をするの!?
王子は私の話なんて全然してくれない。いつも私の話をニコニコ聞いていて、
たまに自分からお喋りするかと思ったら、お花の話にあの三人の話、
あとは天気やご飯の話に、難しい国内の政治の話に、やっぱりあの三人の話。
嗚呼、王子は私を愛してない!気付かない振りしてきたけれど。
もうこれ以上は偽れない。私は誰よりも愛しているから!
- 78 :
- 「どうしたんだい、雪白姫?落ちついて話してごらんよ」
ぽむぽむと王子が優しく私の頭を撫でてくれる。
普段なら大好きな王子の柔らかな手も、今は憎悪の対象でしかなかった。
王子は私を妹だとか、お人形さんだとか、何かだと思っている。
頭を撫でて、ギュッと抱きしめて、可愛く着飾って、愛でる。私はまるで王子のお人形。
王子の愛はきっと私とは違う。私はこんなにも貴女が好きなのに、愛しているのに。
貴女の愛は単に可愛いものを愛でる――お花を愛でるだけのそれと同じ。
そうよ、そうに決まっているわ!どうして、どうしてわかってくれないの!
「もうあの人達の話をしないで。いいえもうあの人達に会わないで、誰にも会わないで。
貴女は私だけの貴女なの!貴女は私だけを見ていればいいの!どうしてわかってくれないの!
でなかったら私は貴女を硝子の棺に閉じ込めなくてはいけなくなるわ」
私の手には鈍く輝く鋭いナイフ。これは林檎を剥くための物。だったけど。
たった今、貴女の心臓を刺す物に変わった。貴女の胸をめがけて振り下ろす――!
「えーいっ!」
「ああっ!雪白姫、一体何が……?いやっやめて!」
王子が寸のところで椅子ごと床に倒れこむ。ナイフが宙を切った。
今度こそと私は床に寝転んだ王子に飛びかかる。寝返りを打たれてかわされる。
「全部貴女が悪いのよ!私だけを見ていてくれないから、他の子の話をするから。
私はこんなにも貴女が好きなのに!私はもう貴女だけの私なのに……どうして!?」
「な、何を言っているのか……わからない」
「私だけの貴女でいてくれないのなら、私は貴女を硝子の棺に閉じ込めるってことよ!」
起き上がろうとする王子に向けて、力任せにナイフを振り回す。
王子はよろめき、仰向けに倒れた。私は彼女に馬乗りになりナイフを振りかざして――
「君はっ、んだら楽しくないと、一緒の時間こそが永遠だと、僕に教えてくれたはず!」
「それは貴女が私だけを見ている場合よ。他の誰かを見ていて、他の誰かを愛するようになって、
他の誰かに貴女を取られてしまうくらいなら、貴女をして私だけのものにする!」
「!?」
「あうっ!」
手首をきつく掴まれ、私はナイフを取り落とす。王子は落ちたナイフを遠くへ放った。
ナイフを失ってしまえば私はただの無力な子供で、大人には到底かなわない。
「雪白姫は何か勘違いをしている」
「お願い止めないで!」
「僕には雪白姫しか見えてないのに」
「貴女をして私もぬのぉ!…………えっ?」
「だから、僕にはもう雪白姫しか見えてないのに」
「?」
「だから、僕にはもう君しか見えていない。雪白姫にぞっこんってことだよ」
「いつも三人の話ばっかりしてる癖に……」
なんだか勝手に体中の力が抜けてしまって、私はぐったりとする。
王子は私の頬を撫でて、俯いた顔を持ち上げた。
「三人からはいつも雪白姫の話ばかりと言われるよ。今日だって雪白姫の話ばかりするから、
からかわれてたんだ。そこに君がやってきたから冷やかしのつもりかニヤニヤされっぱなしで」
「あの人達の前では私のお話をするの?ならどうして私の前では私の話をしてくれないの?」
「そんなの決まってる。面と向かって言うのは恥ずかしいからだよ」
「恥ずかしいこと考えてるの?どんなこと?」
「言うの?」
「言ってほしいな」
「……ごほん。雪白姫があまりに可愛いから、その、天使なのではないかって思うんだ……。
でも天使でなくてよかった。天使だったら僕の元に来てくれなかったかもしれない。
天使は天に帰ってしまうから、君が天使だったら僕は羽根を毟ってでも引き止めていただろうね」
「ほ、本気で言ってる?照れちゃうわ」
「本気だよ。僕の可愛い天使さん。今日まで心配掛けたから、明日からはいっぱい埋め合わせをしよう。
花に水をあげて、手を繋いで庭を散歩をしよう。いつまでも笑って過ごそう。
夜は眠るまでお喋りをして、君が眠ったら君の寝顔を眺めながら安らかな眠りに落ちたい。
本当はあんなことやこんなこともしたい。でもね、時間はたっぷりあるのだから
二人で順番にゆっくり歩んでいけたらいいな……って。もっと言う?」
王子はしどろもどろに言い終えて、不安そうに瞳を揺らして私を見つめた。
話を聞いていた私も、話をしていた王子も顔が真っ赤だった。
王子が私をこんなにも思っていてくれたなんて、知らなかった。
- 79 :
- 「僕は四六時中、雪白姫を考えているんだよ。わかってもらえたかな」
「ならどうして言ってくれないの?今の半分も伝えてくれないから、私はいつも不安なの。
だっていつも抱きつくのは私から、キスするのも私から、好きだと言うのも私だけ。
これで安心していろって言う方がどうかしてるわ」
頬に涙が伝うのがわかった。幾筋も流れ落ちて止まらない。
本当は泣き顔なんて見せたくないのに。いつも綺麗な私を見ていてほしいのに。
でも涙が止まらないの。きっと今の私はへんな顔をしてる。
「不安にさせてごめん。何も言わずに何もせずにわかってほしいなんてエゴだよね」
王子のあたたかい手がそっと私の頬を撫でて、細い指先が涙をぬぐう。
私はその手に自分の手を添えて、おずおずと王子を見つめ返した。
視線が絡み合うもすぐにふいっと逸らされてしまう。
「でも」
「でも?」
「僕も不安だった。僕は女だから。君を騙していたから、嫌われていたらどうしよう。
雪白姫が僕の胸を揉みしだくのも、きっと私が女だったから嫌がらせをしているのだと」
私に対して騙していた手前、王子はそれを悪い意味に受け取っていたらしい。
「あれは嫌がらせでなくて、ぷにぷにすると気持ちいいからよ」
「そ、そうなの?でも私は退屈な女だから……話すのも上手ではないし。
僕の話は聞いていてつまらないだろう?いつもそういう顔してる」
「つまらなくないわ!あ、けれど政治のお話はよくわかんない……かな?」
つまらないというか、より正確に言うと嫉妬していた。
王子があまりにも楽しそうにお花の話やあの三人のことを話すんだもの。
「と、なると日常の話か、あの三人のことしか共通の話題が無くて」
あっそうか。王子は私を気遣って、私の知ってる話をしようとしてくれていたのだわ。
私と王子が同じように知っている話。お花の話、天気の話、ご飯の話、あの三人の話。
「嫌われたくなくて一生懸命お話してたけど、それが不安にさせる要因だったんだね」
「王子の心遣いに気づけなくてごめんなさい」
「いいや僕の方こそごめん。三人は僕の妹みたいなものなんだ」
「彼女達は王子より年上だと思うけど?」
幼少より王子の世話役だったことからして少なくとも五つ以上は離れてそうなものである。
しかし王子の言いたいことはわからないでもない。
彼女達はそれだけぼけぼけしているというか、頼りないというか。
好きだから無意識に補正してるだけで王子もそこまでしっかりしてるとも言えないけど。
そういえば王子は小さい頃はどんな女の子だったのかしら?
私は貴女が好きなのに、貴女のことを全然知らない。貴女も私のことを全然知らない。
「これから貴女のこともっとよく知りたいな。私のことも知ってほしい」
「僕も君をもっとずっと深く知りたい。僕のことも今より知ってほしい」
少しずつ順番に貴女の全てを知って、私の全てを教えてあげたい。
互いの胸から心臓を抉り出して、触れ合わすことが出来たのならば……
何もかも飛び越えて一瞬で全てをわかりあえるのかしら?けれどそれでは味気ないわ。
ゆっくり時間をかければかけるほど、二人の時間は永遠に続いていくの。
「じゃ手始めに「あんなことやこんなこと」ってどんなこと?」
「……言いたくない」
私の問いに王子は顔を赤くしてそっぽを向いた。睫毛を揺らして答えようとしない。
もぅ最初からこれでどうするのよ〜。これでは先が思いやられるわ……。
「私には言えないことなの?私が子供だから?私は貴女が思ってるほど子供じゃないのよ」
オトナの貴女から見れば、コドモの背伸びなのかもしれないけれど。
それでも同じ高さで歩けるように頑張るから!
「恥ずかしいから言いたくない」
「言えないようなことがしたいの?えっちなこと?」
「女の子がそういうの考えちゃいけません」
「王子も女の子でしょ」
「大人はいいの」
「ずるい」
「いつか教えてあげるよ」
「本当?ぜったいよ、約束だからね!」
大人はいつも「子供だから」って線引きするから嫌い。
でも王子は大人だけど大好き。私はぎゅーっと抱きついた。
- 80 :
- 王子の血潮の響きが聞こえる。どきどき。どきどき。大急ぎで流れてる。
ほっぺが熟した林檎のように真っ赤に染まっている。
「王子、なんだか嬉しそう」
「そうかな?」
「うん。とってもニコニコしてる」
私の指摘に王子はハッとして緩んだ口元と頬を両手で押さえた。
あわあわとうろたえて、すぐに表情を引き締める。
「僕のこと嫌いになった?」
「どうして?嫌いになんてならないわ」
「だって雪白姫にああしたい、こうしたいって考えてるときの顔だから」
「私も王子とあんなことやこんなことしたいなって考えるわ。それはいけないことなの?」
よく、わからない。私は毎日のように貴女との今日を、明日を、未来を考えているのに。
「いや。いけないことではないよ」
「なら私と何がしたいの?一緒にしようよ」
「いいの?」
「うんっ、いいよ」
「どうしよう。可愛すぎてにそう」
王子の頬がまたでれっと緩んだ。クールで格好良い王子も好きだけどかわいい王子も好き。
ところでそういうときの因はなんて言えばいいの?
雪白姫がこの上なく可愛すぎたため亡?エリーゼさん、これって復讐になりますか?
「ね、キスしてもいい……?」
「うんいいよ。しよ」
「んー」
「ちょっと待って」
私は手の甲で頬をごしごし擦って涙の跡を消そうとする。しかしその腕を王子が掴んだ。
「肌に傷がつくよ」
王子はいつも優しい。だからこそ……。
「いつでも一番美しい私を貴女の瞳に映してほしいんだもの」
「ふふっ。どんな雪白姫でも僕の世界で一番美しいのは君だよ」
「えへへありがと」
「心の準備はよろしいかな、お姫様?」
「うんっ」
王子の透き通る潤んだ瞳に私が映っている。その瞳が長い睫毛が縁どる目蓋に覆われると、
さらさらな黄金の髪からふわりと甘い花の香りがした。大好きな貴女の匂い。
ねぇ私も貴女のことを天使ではないけれど、おとぎ話の王子様みたいに思うわ。
でも違った。貴女は絵本の中の王子様じゃない。ページの外側でも私の傍にいてくれる。
これからどんな物語が始まるの?予定調和なおとぎ話とは違う物語を二人で歩んでいきたい。
「あーっ!!」
「!?」
「どうしよう!私、復讐されちゃうわ!」
私の魂の叫びを間近で受けた受けた王子は涙目で耳を塞いだ。
キスの直前だったということもあり、げんなりした様子で肩を竦める。
「誰に?」
「私、三人に凍えんじゃえばいいんだって念じたんだもの。もしも本当にんじゃったら……」
嗚呼どうしよう!私は嫉妬の罪で復讐されてしまう。
きっとそろそろ宵闇の森で白い男の人が憾みの唄を指揮している頃だわ。
私はバネ人形のように飛び上がって窓辺へ向かった。
遅れて王子が片膝をついて「よっこらせ」と立ち上がる。
でもすぐにはこちらに来ず「なんてことだ……」と口を覆っていた。
何が「なんてことだ……」のかよくわからなかったので私はスルーした。また訊ねる余裕もなかった。
私はバルコニーに飛び出ると、柵に身を預けるようにして見渡した。
外は一面の雪世界。木々や遠くに見える山までもが真白な雪に覆われている。
「危ないよ」
いつの間にか隣まで来ていた王子が私を抱えて柵から引き剥がした。
私は身を捩って元の場所に戻ろうとしたけど、やはり大人と子供。かなうはずなかった。
「離して。私は三人をどうしても見つけなきゃいけないの」
「彼女達ならすぐ下にいるよ」
王子は柵の真下を指差した。身を乗り出して下を覗き込むと三人が、いた。
- 81 :
- 三人は何やら姦しく騒ぎながら雪を丸めたり、大きくなった雪玉に何かつけていた。
雪かきというより、雪遊びをしているようにしか見えない。
良かったあ、んでない。と私はほっと胸を撫で下ろす。
「だめだこりゃ」
王子は肩を竦めて嘆いた。呆れ声で呼びかける。
「おーいお前達何してるんだー?」
「ゲッ」と彼女達はあからさまに嫌な顔をして大きな雪玉を背後に隠した。
「ややっ殿下は病み上がりですからお部屋の中にいてくださいってば」
「私達は一生懸命雪かきしてる最中ですから」
三人のうち二人は目を泳がせ、腕をぶん回しながら、
シャベルも何にも持ってないのに雪かきしてるアピールを始める。
そして残りの一人はこちらに背を向け、大きな雪玉と見つめ合っていた。
「赤い実を並べてお口っと。目はどうする?石ころにする?」
「シッ、黙って」
「なんでもありませんよー」
どうやら雪だるまを作っているらしい。雪かきついでに遊んじゃうなんていい御身分ね。
私は王子と顔を見合わせた。王子も同じ気持ちらしくため息をつく。
「遊んでるのなら部屋に帰ってこい」
「遊んでなどいませんよ!」
どこをどう見ても遊んでいるというのに彼女達はまだ遊んでいないと言い張るらしい。
さすがに言い訳しきれないと判断したのか、三人は私達に背を向けて何かの相談を始めた。
暫くして結論が出たらしくこちらに向き直る。
「……そうなんです。私達遊んでたんですよー」
「雪だるまを作りましてね」
「とっても可愛く出来たんですよ」
三人は先ほどとは一転して雪かきをサボって遊んでいたと認め始めた。
そして「「「じゃっじゃーん」」」と出来上がった雪だるまを披露する。
石ころの黒い目に赤い実の唇、植物の蔓で出来た王冠を被った歪な雪だるま。
だから何なの?と私が言おうとしたとき、彼女達は遮ってこう大きな声で言った。
「「「雪白姫でーす!」」」
えぇ!?あのぶさいくな、いやえっとあの美しい雪だるまが私?
でも彼女達の懸命な気持ちは確かに伝わってくる。
私はあんなに彼女達に嫉妬して邪魔者扱いしてたのに、意地悪言って困らせたのに、
彼女達は私を思って、私の雪だるまを作ってくれた。
こみ上げてくるものを感じた私は王子の服の袖口を掴んだ。
「みんなーありがとー!」
「いえいえ、どういたしまして〜」
「次は殿下を作りましょう」
「姫は寂しがり屋さんですからね」
「ぐずっ」
鼻の頭を真っ赤にして泣き出してしまった私の手のひらに、王子の手が滑りこんでくる。
指先を絡めとられ、ぎゅっと手を繋ぐ。
見上げると穏やかな笑顔を浮かべた王子がいて、私は思わずその胸に頬を押し付けた。
「というかむしろ殿下の方が寂しがり屋ですよねw」
「寝込んでたときだって気がつくたびに「姫どこー姫どこー」ってw」
「うなされながら姫の好きなところ数え始めたときはさすがに笑ったw」
ふるふるふるふる。
王子が小刻みに震え始める。身の危険を感じて私は体を引き剥がした。
俯いてくれたので背の低い私には王子の表情がよく見える。
唇を一文字に結んで顔を真っ赤にしている。潤んだ瞳が可愛い。
ふと私と視線がかち合うと目を泳がせて終いにはそっぽを向いた。見られたくないらしい。
どうせなら私にも私の好きなところ聞かせてほしかったなあ。
お返しに私も王子の好きなところいっぱい教えてあげるのに。
ひとつずつ交互に言い合いっこするのも楽しそう。
「好きなところ108つは余裕に越えてた」
「姫が聞いてたら呆れ果てて離婚の危機だったね」
「あんな細かいところまで見てるなんてただの変態だよね……」
むむっ、そんなにいっぱいあるのね。私も負けてられないわ。
あれ?へん、たい……?
- 82 :
- なんというバカップルwwGJwww
もしや連投規制に引っかかった?
- 83 :
- 「王子ってへんたいなの?」
「……それはあの、えと。あーもう!おーまーえーたーちーはー!」
私が首を捻っていると王子が顔を真っ赤にして叫んだ。
「はい、殿下」
「変態王子w」
「ロリコンw」
「こら!本当のこと言ったら悪いでしょうが」
笑い転げる二人を諫めてるこの人も何気に酷いこと言ってる。
私としても好きな人が変態だって笑われてるのは良い気がしない。
それが事実であれ、虚構であれ、事実であれ、事実であれ良い気分ではない。
「頼むから勘弁してください……」
「もぉーみんな王子のこと泣かせちゃダメよ」
「雪白姫〜みんなが僕のこといじめるぅ」
「よしよし」
王子が私の胸に泣きついてくるので、私はぽむぽむと頭を撫でてあげた。
いつも甘えてばかりの私だけど、こうやって甘えられるのもいいかも。
「はあ。姫にはかないません」
「さっさと雪かきしよっと」
「あまりの熱さに雪も溶けちゃいますね」
三人は雪の上に投げ置かれていたスコップをそれぞれ拾い、雪かきを再開させた。
王子の雪だるまはもう作らないのかな?と思ってた矢先に泣きついていた王子が復活した。
「こらーお前達ーッ!」
「なんですかもう……」
「僕の雪白姫はもっと可愛い!」
「「「あーはいはいごちそうさまですぅ」」」
王子が誇らしげに胸を張り、三人は苦笑いを浮かべた。
やだもう……私、鼻の頭だけでなくて全身が真っ赤になってしまいそうよ。
「ふふっ。耳まで真っ赤になってる」
王子が笑いながら私の耳に唇を寄せた。熱い吐息がくすぐったい。
「三人は口は悪いけどさ」
いつもよりトーンを落とした低めの声で囁かれる。
「彼女達のおかげで僕は君に出会えたのだから感謝してるよ」
「えっ」
――迷い込んで一週間。宵闇の迫る森の奥で。
「おなかがすいてうごけない……」
「しっかりしてください殿下!」
「あちらからいい匂いがしますよ」
「ほんとに?」
「本当ですってば」
こうなったのは自分の責任だが、僕はもう1ミリだって無駄な体力は使いたくなかった。
地面にうずくまり、視線だけで三人を見上げる。今思えば三人も同じ状況だったのに、
弱音を吐かずに(文句は大量に吐いたが)よく頑張ってくれたと思う。
「おまえたちは、食いしん坊だったからな……」
「そっくりそのまま殿下にお返ししますよ。私達のおやつを何度盗み食いされたことか」
「とにかく行ってみましょう!」
宵闇の迫る陰が 進む道を呑み込んでゆく
迷い込んだ見知らぬ森の 小さな可愛いお家
「!?」
その瞬間。僕の心に稲光が走った。途端に生気がよみがえり衝動がわきあがる。
目眩がするほどの衝撃に揺さぶられ、いてもたってもいられない!
それの意味を、それの名前を当時の僕は知らなかった。けれど今ならわかる。
「早速食料を分けて貰えるようお願いしてきます」
「いいや僕が行こう」
「ですが」
「僕が行く。僕が行かなければならない」
それはきっと赤い糸に手繰り寄せられた運命という名の導き。
- 84 :
- 「運命だなんて……えへへ」
「そして小人達にたらふく御馳走して貰って」
「運命の導きってご飯のことだったの?」
「勿論雪白姫だよ」
でも今の言い方はご飯のおまけみたいに聞こえたんだけど。
……。
もぉ。王子ってば照れ屋さんだからそうやって誤魔化してるのね。うふふ。かわいいんだから。
「なら三人は私達の愛のキューピッドね」
「今のは内緒だよ。聞いたらきっと調子に乗るから」
「またいじめられちゃうよね。そのときは私に甘えていいのよ?うふふっ」
王子は恥ずかしがってる様子でコクコクと頷いた。
本当はもうちょっとからかって照れる王子を見ていたかったけど、
私達にはまだ時間はたっぷりある。だから今は、私は私達のキューピッドを呼ぶ。
「みんなー!王子を作り終わったら今度はあなた達の雪だるまも作ってあげて。
私達にはあなた達がいるのに、雪だるまの私達にはあなた達がいないんじゃ寂しがるわ!」
三人は顔を見合わせ、頷き合うとこちらに向けて笑顔の花を咲かせた。
「「「はい超特急で作ります、姫!」」」
ここは私のおうちではないと思っていたけど、本当はそうじゃなかった。
ここは私が暮らしていたお城とは違うけれど、私のことを大切に思ってくれる人達がいる。
ここはもう私のおうち。新しいおうち。そしてみんなは私の新しい家族。私の大切な人達。
「ねぇ王子。私、これからはみんなと仲良くやっていけそう」
「でも僕と一番に仲良くしてくれないと今度は僕が嫉妬しちゃうよ」
王子は柔らかく微笑み、私の頬にキスをした。
「女の子の嫉妬は可愛いものだね」
「復讐ハ何処ヘ行ッタノ?」
「エリーゼの嫉妬も可愛いものだね」
「本当?嬉シイ!ッテ、誤魔化サナイデ頂戴、メル」
「めでたしめでたし」
「メデタクナーイ!次コソ、次コソハ復讐サセルンダカラネ!」
頻繁に書き込みするのも申し訳ないのですが、バレンタインまでに終わらせたかったのでサクッと。
ナイフを振り回すのはやりすぎたと反省している。
雪白姫と王子は一回り以上年齢が離れてると萌える。
ジェネレーションギャップに困惑しつつ、背伸びして大人ぶる雪白姫と精一杯若い子ぶる王子超萌える。
- 85 :
- >>82
支援ありがとうございました
- 86 :
- GJ
ニヨニヨしましたw
雪白姫と王子っていくつだと思う?
原作にいるらしい7歳の超絶ロリコンだとしたら一回り年上(と仮定した場合)の王子は19歳
ともよちゃんと同い年の14歳だとしたら王子は26歳
雪白姫が大人になるの待ってたら王子さんじゅう×歳www
おやどこからかテッテレのテーマが聞こえる…
ホレ子とちーちゃんも結構歳が離れてるイマジナシオン
ホレ子とホレおねえさんはげふんげふん
- 87 :
- 自分の中では井戸子18〜20歳くらいでちーちゃん9〜12歳なイメージ
ホレおば…お姉さんは、実年齢は…見た目なら魔法で何とか誤魔化せr(r
- 88 :
- 赤王子は野薔薇姫とそう歳は変わらないイマジナシオンだけど
青王子はせっかくだから百合+ネクロフィリア+ロリコンの3拍子揃ったキャラの方がいっそ面白いwww
ホレおば…お姉さんはゲルマン神話にも出てくるらしいし見た目なぞ関係ないッ!くらいの心意気でお願いします
- 89 :
- バレンタインのお話
ドイツでは男性から女性に花束を贈る日とのこと。
でも細かいことはキニシナイ。
・古井戸
今日も朝から炊事洗濯。私は今日も、お父さん!頑張っているよ!
義 妹「おねえちゃーん」
ホレ子「どうしたのちーちゃん?」
義 妹「バレンタインってなに?」
ホレ子「ちーちゃん、耳が早いなあ。バレンタインはね、大切な人に贈り物をする日なのよ」
義 妹「そうなんだー」
ホレ子(ちょっぴり期待だよー。どきどき。どきどき)
義 妹「ならあたい、ムッティに贈り物したい!」
ホレ子「……そ、そうだね。ムッティだよね(がっくし)」
義 妹「おねえちゃんどうかした?」
ホレ子「ううん全然」
《チョコを溶かして固めてデコレーションするだけの簡単なお仕事》
ホレ子「出来たぁー!あれぇ、ちーちゃんいっぱい作ったね」
義 妹「おねえちゃんにもあげるっ!」
ホレ子「マジで!ありがとーっ!(ハグッ)」
義 妹「へへっ」
ホレ子(ハッ、でももしかして作りすぎただけかも?)
継 母「いつまで夕飯作ってんだい、この愚図っ!」
ホレ子「うわあっ!」
継 母「台所をこんなに汚して、ちゃんと片付けておきな」
義 妹「ムッティ、バレンタインだからこれあげる!」
継 母「まあちーちゃんありがとう。可愛らしいチョコレートねぇ」
義 妹「バレンタインは大切な人に贈り物をする日だっておねえちゃんが教えてくれたんだ」
ホレ子「良かったら私のもどうぞっ!」
継 母「……まああんたの分ももらっといてやるよ」
ホレ子「今すぐお夕飯作りますね!」
継 母「今日の仕事はもういいから、二人とも遊んできな」
ホレ子「えーでもぉ?」
継 母「愚図に任せておくといつまで経っても食べれないからね。今日は私が作るよ」
義 妹「やったームッティのごはんー!」
ホレ子「ありがとうっ!」
継 母「今日だけだよ。明日はないからね」
義 妹「ごはん出来るまでお外で遊ぼうよ、おねえちゃん!」
ホレ子「うんっ!」
その後、お散歩がてらに古井戸を覗き込み、チョコレートを落とすと私達は家路についた。
義 妹「おねえちゃん」
ホレ子「なあにちーちゃん?」
義 妹「……あたいにはチョコくれないの?」
ホレ子「!」
義 妹「おねえちゃんからほしかったな」
ホレ子「あわわっ。ど、どーしよう!作り忘れちゃったよ!」
義 妹「がっかり」
ホレ子「ご、ごめんねっ」
義 妹「でもいいんだ。おねえちゃんからは毎日いっぱい大切なことを教えてもらってるから!」
ホレ子「えへへ照れるなぁ。これからもよろしくね、ちーちゃん!」
義 妹「うんっ!」
明日も明後日もそのまたずっと先もこうしてみんなで一緒に過ごせたらいいな。
だから私は明日も、お父さん!頑張ってみるよ!
- 90 :
- ・硝子
雪白「おうじー。今日はバレンタインよ。大切な人に贈り物をする日!」
王子「そうだね。何をくれるのか、楽しみだなあ」
雪白「一緒にお菓子作ろうよ。約束したでしょ?」
王子「よし。では何を作りましょう、先生」
雪白「さぁ真っ赤に熟れてる林檎。今日はこれでアプフェルクーヘンを作りましょう!」
☆雪白姫と王子のお料理教室☆簡単なアプフェルクーヘンの作り方☆
雪白「まずは毒入りでない林檎を用意します。最重要だよ☆」
王子「あとは皆さんで各自お調べください(ぺこり)」
雪白「最初に生地を作ります。材料をまぜまぜします」
王子「そして型に流して、とんとん。とんとん。型をとんとん」
雪白「次に林檎を切って並べて……オーブンで焼きまぁす」
雪白「嗚呼、ケーキは素早く、おいしく焼かなきゃ駄目なんだわ!」
王子「まずくなる前に焼かなきゃヤ・バ・イ!生地をドン!と投入!」
生地「ぎゃあぁぁぁぁ!」
雪白「妬いたのがお前の罪なら♪」
王子「おいしくなるまでこんがり焼けろー♪」
――そして小一時間後。
生地「ひっぱりだしてぇ×2もうとっくのむかしにやけてるんだよぅ♪」
二人「「まじで!?」」
雪白「焼き上がったらジャムを塗って冷まして出来上がり!」
王子「おいしそう。早速食べさせてよ。あーん」
雪白「じゃ三人を連れてきましょ」
王子「へっ。あれ、僕の為に作ってくれたんじゃないの?」
雪白「えっ。だって今日は大切な人に贈り物をする日なのよね?」
王子「僕は?」
雪白「みんなーおやつにしようよー」
王子「無視された……」
王子(今頃四人で楽しくケーキ食べてるんだろうなー。嫉妬しちゃうぞ)
雪白「おうじー。もぅむすっとしてどうしたの?」
王子「僕抜きで食べるケーキはおいしかったかい?」
雪白「うん、おいしかったよっ!」
王子「むー」
雪白「あのね、王子にはとっておきの贈り物があるのよ!」
王子「ほんと!?」
雪白「もぞもぞ(首にリボンを巻く)」
雪白「私をプレゼント♥」
王子「ありがとう……嬉しいよ(むぎゅ)」
雪白「えへへ。三人に教えてもらったんだぁ」
王子「ちょっと待っててね」
王子「こーらー!僕の雪白姫に変なこと吹き込むなーッ!」
家来「お褒めに預かり光栄です」
王子「褒めてない」
家来「本当は嬉しいんですよね?」
王子「まあね(でれっ)」
家来「特別手当はホワイトデーに三倍返しでいいですよ」
王子「考えておこう……ってオイッ!」
- 91 :
- ・薔薇
王子「わあ、チョコレートがいっぱい」
薔薇「うふふ。お気に召しましたか?」
王子「うん、おいしいね。でも何故だい?」
薔薇「今日はバレンタイン。大切な方に贈り物をする日なのですわ」
王子「大切な方って(でれっ)」
薔薇「勿論王子のことです♥」
王子「照れちゃうよ」
薔薇「気に入ってくださって嬉しいですわ。国中に散らばるお菓子職人に作らせた甲斐がありましたわ」
薔薇(本当はお菓子の作り方を教わろうと思って招いたのですけれどごにょごにょ)
王子「もぐもぐ。野薔薇姫も食べなよ」
薔薇(喜んでくださったのですから結果オーライですわね)
薔薇「では私もお一ついただきますわね」
王子「あっ」
薔薇「如何しました?」
王子「今日は大切な人に贈り物をする日なんだよね?」
薔薇「はい」
王子「僕としたことが何たる不覚。何も用意してないなんて!今から作ろうにも時間と材料がッ!」
薔薇「うふふ。王子ったらじたばたしちゃって可愛いですわ」
王子「笑い事ではないよ。僕も姫に贈り物がしたかったのに……」
薔薇「構いませんわ。私は貴女の気持ちだけでいっぱいです」
王子「それでは僕の気が済まない……」
薔薇「貴女が傍にいてくださるだけで充分ですわ♥」
王子「うーん。あ、そうだ!(チョコをパクッ)」
薔薇「?」
王子「いただきます。んんー」
――そして小一時間後。
薔薇「あぁん。こんな甘いチョコレートは初めてですわあ」
王子「ふふっ。喜んで貰えたようで嬉しいよ」
薔薇「もっと欲しいと言ったら、はしたない女だとお思いになります?」
王子「ううん。僕ももっと食べたいな」
薔薇「うふふ」
王子「じゃあ」
二人「「いただきます……」」
その後二人は唇が真っ赤になるほどチョコレートを食べましたとさ。
- 92 :
- ・薔薇2
アプリコーゼ「お邪魔しまーす」
アルテローゼ「帰れ」
アプリコーゼ「またまたつれないこと言っちゃって。ねぇ今日は一緒にお菓子を作りましょうよ」
アルテローゼ「一人でやれ」
アプリコーゼ「そんなぁ、お願いよアルテローゼ」
アルテローゼ「うるうるした目で見つめるな!ええい仕方ない、一緒に作ってやろうじゃないか!」
☆アプリコーゼとアルテローゼのお料理教室☆簡単なザッハトルテの作り方☆
アプリコーゼ「まずは」
アルテローゼ「以下略」
アプリコーゼ「各自お調べくださいね(ぺこり)」
アルテローゼ「ケーキの生地が出来たら燃やす!」
アプリコーゼ「燃やしちゃダメよ」
アルテローゼ「見よ、これが《深紅の魔女》と謳われたアルテローゼ様の実力だッ!」
――そして小一時間後。
アプリコーゼ「一時はどうなることかと思ったけど、上手に出来てよかったわ」
アルテローゼ「私が作ったのだから当然だ」
アプリコーゼ「今日のザッハトルテはどうだったかしら?」
アルテローゼ「私が作ったのだから当然おいしいに決まってる」
アプリコーゼ「ね、今日は何の日か知ってる?」
アルテローゼ「さあね。あんたの誕生日とは違うと思うが」
アプリコーゼ「まあ私の誕生日を覚えていてくれたのね!」
アルテローゼ「か、勘違いしないでよねッ!たまたま覚えてただけだからねッ!」
アプリコーゼ「私も貴女との記念日を忘れたことはないわ。今日はね、バレンタインデーよ」
アルテローゼ「だからなんだって言うんだ。私には関係ないね」
アプリコーゼ「大切な人に贈り物をする日。アルテローゼ、今日はおいしいケーキとお茶をありがとう」
アルテローゼ「なっ!?」
アプリコーゼ「貴女の気持ち、しかといただいたわ」
アルテローゼ「わ、私はあんたに付き合って作っただけであって……」
アプリコーゼ「また遊びに来るわね」
アルテローゼ「もう来なくていい」
アプリコーゼ「あらあら。今度はアイアシェッケでいい?」
アルテローゼ「おいしくなかったら呪う」
アプリコーゼ「ええ、頑張るわね」
- 93 :
- ・黒き女将
女将さん「おはよぉーん、今日もいい朝ねェ。って誰よぉ、調理場に花を並べたのはぁ」
女将さん「……あの娘しかいないわね。もぅこんなに沢山どうするつもりなんだか」
ぶらんこ「あ〜の日の空の色〜♪……あ、女将さん」
女将さん「あんたどこ行ってたの。朝は忙しいんだからさっさと調理場キレイになさい!」
ぶらんこ「わぁーかったつってるべ。女将さん、怒ってばっかだと皺増えるっぺ(ボソッ)」
女将さん「あぁ〜ン?あんたね、花摘んでどうするつもりぃ?」
ぶらんこ「……えと(並べた花を集めて)女将さんにあげようと思って」
女将さん「ハァ?」
ぶらんこ「今日は大切な人に贈り物をする日だってお客さんから聞いたべ。だ、だから……ええっと」
女将さん「だからぁ?」
ぶらんこ「ん、あげる」
女将さん「……まぁ貰っといてやるわぁーん。んふふっ、小さな青いお花ね」
ぶらんこ「おらの好きな花だべ」
女将さん「艶やかな私にはちょっち地味だけどォ」
ぶらんこ「……(しゅん)」
女将さん「まぁ美しいあたしは何でも似合うからぁ〜。ほらそれより今日もしゃかりき頑張るのよぉ」
ぶらんこ「チッ、今日も人使い荒いなクソババア」
女将さん「なんか言った?」
ぶらんこ「何でもないっぺ」
女将さん「ふんっ、今日くらいはつまみ食い許してやってもいいわよ」
ぶらんこ「やった!」
女将さん「ちょっとだけよぉ〜って早速チキンにかぶりついてぇ、高いのよォ!」
ぶらんこ「もぐもぐ。女将さんが食っていいって言ったべ」
女将さん「女の子なんだから丸かじりはお止しなさぁい。あたしのような妖艶な女になれないわよぉ〜ん?」
ぶらんこ「ずぇ〜ったい、女将さんみたいなアバズレにはなりたくないっぺ」
女将さん「なぁんですってぇ!?」
ぶらんこ「でも優しいところは見習いたい……あっ今のはナシ」
女将さん「あーら可愛いこと言うじゃなぁーい?」
ぶらんこ「違うべ、これは何かの間違いd」
お客さん「おぉい、いいから早く朝食を作れ」
・詩女神
フリュギア「お姉様〜、チョコレートって何?」
ド リ ア「さあ。イオニア姉様はおわかりになります?」
イオニア 「……わ、わかるわ」
アイオリア「さすがイオニア姉様!」
リュディア「チョコレートとは一体なんでしょう?」
イオニア (やはりわからないとは言えない……)
ロクリア 「お姉様!私、下界でチョコレート見てきたわ」
アイオリア「ホント?」
リュディア「ロクリアったらまた黙って遊びに行ったのね」
ド リ ア「危ないから一人で行ってはだめよ」
フリュギア「それよりチョコレートのこと教えて!」
ロクリア 「風の都で神官さんが」
イオニア 「嫌な予感がするから言わなくてよろしい」
フリュギア「それにしてもチョコレートってどんなものかしら〜」
アイオリア「ロクリア、こっそり教えてよ」
ロクリア 「神官さんは小さい女の子に〜」
イオニア 「だから言わなくてよろしい」
リュディア「小さい女の子?」
ド リ ア「チョコレート……?」
詩女神姉妹「にんげんのひとってへん……」
おしまい。
- 94 :
- GJ!
みんな可愛いな…!!
そういえば、ここの職人方ってサイトとかやってらっしゃるのか…?
サイト運営してないならもったいないレベルの文才だなぁと思ったんだが…
- 95 :
- GJ
不覚にも女将かわいいと思ってしまったw
- 96 :
- ツイッター上のともよちゃんと結女さんのやりとりに思わずパーンとなった
なんて息の合った挨拶ww
- 97 :
- なんてことのない朝の挨拶「オハヨ」がここまで萌えるとは、な…
燃料投下にずっと躓いてた雪白姫と王子ネタが峠を越えて一気に形になり始めた
と思ってた矢先にPC規制されてたw
ちょっと宵闇の森で憾み唄ってくる
- 98 :
- 野薔薇姫×雪白姫の同志はおらぬか
- 99 :
- >>98
おるぞ
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