定義 S を集合とする。 S から S への全単射全体は写像の合成で群となる。 この群を S 上の対称群と呼び Sym(S) と書く。
7 :
定義 S を集合とする。 Sym(S)(>>6)の元を S 上の置換と呼ぶ。 Sym(S) の部分群 G を S 上の置換群と言う。 このとき S は忠実(過去スレpart5の843)な G-集合(過去スレpart5の77)となる。 逆に忠実な G-集合 X は X 上の置換群と見なされる。
8 :
定義 K を可換体とする。 L/K を拡大(過去スレpart4の512)とする。 S を L の部分集合で K 上代数的独立(過去スレpart5の7)であるとする。 L = K(S)(過去スレpart4の539)となるとき L を K 上の純超越拡大体 または L/K は純超越拡大であるとも言う。 このとき L は S を不定元の集合とする K 上の有理関数体とも言う。 S = {X_1、...、X_n} のとき K(S) = K(X_1、...、X_n) は K 上の n 変数の有理関数体とも言う。
9 :
命題 K を可換体とする。 S を任意の集合とする。 このとき S を不定元の集合とする K 上の有理関数体 K(S)(>>8)が K-同型(過去スレpart4の514)を除いて一意に存在する。 証明 S を不定元の集合とする K 上の多項式環 K[S] の存在は良く知られている。 K[S] の商体が K(S) である。 K(S) が K-同型を除いて一意であることは K[S] が K-同型を除いて一意であることから明らかである。 証明終
10 :
命題 S を集合とする。 G を S 上の置換群(>>7)とする。 K を可換体とする。 このとき G は Aut(K(S)/K) の部分群と見なされる。 証明 K(S) の任意の元 r は r = f(s_1、...、s_n)/g(s_1、...、s_n) と書ける。 ここで s_1、...、s_n は S の元の列であり、 f(s_1、...、s_n) と g(s_1、...、s_n) は K[s_1、...、s_n](過去スレpart4の539) の元である。σ ∈ G のとき σ(r) = f(σ(s_1)、...、σ(s_n))/g(σ(s_1)、...、σ(s_n)) と定義すればよい。 この定義が矛盾なく行えることと、 この定義により G が Aut(K(S)/K) の部分群と見なされることは明らかである。 証明終
11 :
定義 G を群とする。 G の単位群を e とする。 H = {e} とおく。 G は G の H による左剰余類全体の集合 G/H と同一視される。 よって、過去スレpart5の108より G は推移的(過去スレpart5の107)な G-集合となる。 このとき G は忠実(過去スレpart5の843)な G-集合である。 よって、忠実な表現(過去スレpart5の843)G → Sym(G)(>>6)が得られる。 この表現を G の正則表現と呼ぶ。 このとき G は G 上の置換群(>>7)と見なされる。
命題 (G_i)、i ∈ I を群の族とする。 G = ΠG_i を (G_i)、i ∈ I の直積とする。 各 i ∈ I に対して S_i を (G_i)-集合(過去スレpart5の77)とする。 S = ΣS_i を族 (S_i)、i ∈ I の直和集合とする。 σ = (σ_i) ∈ G と x ∈ S_i に対して σx = (σ_i)x と定義することにより S は G-集合となる。 このとき、各 S_i が忠実(過去スレpart5の843)な (G_i)-集合であれば S は忠実な G-集合である。 証明 自明である。
補題 K を可換体とする。 L/K をGalois拡大(過去スレpart4の848)とする。 E を L/K の中間体(過去スレpart4の854)とする。 T を Aut(L/K)(過去スレpart4の847)の有限部分集合とする。 任意の σ ∈ Aut(L/K) と任意の x ∈ E に対して σ(x) = τ(x) となる τ ∈ T があるとする。 このとき [E : K] ≦ |T| である。 ここで |T| は T の要素の個数である。 証明 任意の x ∈ E に対して x の K 上の最小多項式(過去スレpart4の554)を f(X) とする。 f(X) の L における根の集合を S とする。 x ∈ S であるから任意の τ ∈ T に対して τ(x) ∈ S である。 逆に任意の y ∈ S に対して過去スレpart4の613より K-同型(過去スレpart4の514)ρ:K(x) → K(y) で ρ(x) = y となるものが存在する。 過去スレpart4の887より σ ∈ Aut(L/K) で ρ の拡張であるものが存在する。 仮定より σ(x) = τ(x) となる τ ∈ T がある。 σ(x) = ρ(x) であるから y = τ(x) よって、S = {τ(x);τ ∈ T} である。 よって、|S| ≦ |T| である。 よって、f(X) の次数は |T| 以下である。 E/K は分離代数的(過去スレpart4の843)だから過去スレpart1の434より [E : K] ≦ |T| である。 証明終
21 :
次の命題の証明はやや長いのでいくつかのステップに別けて証明する。 命題 (G_i)、i ∈ I を有限群の族とする。 G = ΠG_i を (G_i)、i ∈ I の直積とする。 このとき、ある可換体 K と Galois拡大(過去スレpart4の848)L/K が存在し G は Aut(L/K)(過去スレpart4の847)と同型になる。 このとき K の標数(過去スレpart4の667)は任意に取れる。
22 :
命題 (G_i)、i ∈ I を有限群の族とする。 G = ΠG_i を (G_i)、i ∈ I の直積とする。 各 i に対して忠実(過去スレpart5の843)な (G_i)-集合(過去スレpart5の77)S_i が存在する。 例えば S_i として G_i を取り G_i の正則表現をとればよい(>>11)。 S = ΣS_i を族 (S_i)、i ∈ I の直和集合とする。 >>13より S は忠実な G-集合(過去スレpart5の77)となる。 k を任意の可換体とする。 >>9より S を不定元の集合とする k 上の有理関数体 k(S)(>>8)が存在する。 L = k(S) とおく。 >>10より G は Aut(L/k) の部分群と見なされる。 K = {x ∈ L;各σ ∈ G に対して σ(x) = x } とおく。 このとき L/K はGalois拡大(過去スレpart4の848)である。 証明 L は G-集合と見なされる。 x を L の任意の元とする。 過去スレpart5の848より x の軌道(過去スレpart5の92)O(x) = {σ(x); σ ∈ G} が 有限集合であることを示せば良い。 各 i ∈ I に対して G_i は G の部分群と見なされる。 I の有限部分集合 J があり x ∈ k(∪{S_j;j ∈ J}) となる。 σ = (σ_i) を G = ΠG_i の任意の元とする。 J = {j_1、...、j_n} のとき σ(x) = σ_(j_1)...σ_(j_n)(x) となる。 よって、|O(x)| ≦ Π[i ∈ J] |G_j| である。 ここで |O(x)| と各 |G_j| はそれぞれ O(x) と G_j の集合としての濃度を表す(過去スレpart1の180)。 各 G_j は有限群であるから |O(x)| は有限である。 証明終
補題 X を位相空間とする。 A と B を X の部分集合で B ⊂ A とする。 B の X における閉包を B~ とする。 このとき B~ ∩ A は部分空間 A における B の閉包である。 証明 A における B の閉包を B’とする。 B ⊂ B~ ∩ A であり B~ ∩ A は A の閉集合であるから B’⊂ B~ ∩ A である。 逆の包含関係を示せば良い。 x ∈ B~ ∩ A のとき x ∈ B’を示せば良い。 V を x の A における任意の開近傍とする。 V = U ∩ A となる X の開集合がある。 x ∈ B~ で x ∈ U だから U ∩ B ≠ φ である。 U ∩ B = U ∩ A ∩ B = V ∩ B だから V ∩ B ≠ φ である。 よって、x ∈ B’である。 証明終
32 :
命題 >>25と同じ状況を仮定する。 このとき L は (E_i)、i ∈ I の合成体である。 証明 (E_i)、i ∈ I の合成体を E とする。 Galois理論の基本定理(過去スレpart5の288)より Aut(L/E) = {1} を示せば良い。 先ず G ∩ Aut(L/E) = {1} を示す。 σ ∈ G ∩ Aut(L/E) とする。 σ ∈ G = ΠG_i だから σ = (σ_i)、i ∈ I と書ける。 >>25の証明より、各 i ∈ I と任意の x ∈ E_i に対して σ(x) = σ_i(x) となる。 σ ∈ Aut(L/E) だから σ_i(x) = x である。 よって、σ_i の E への制限は E の恒等写像である。 よって、>>30より σ_i = 1 である。 よって、σ = 1 である。 よって、G ∩ Aut(L/E) = {1} である。 Aut(L/K) = G~ だから>>31より G~ ∩ Aut(L/E) = Aut(L/E) は G ∩ Aut(L/E) = {1} の Aut(L/E) における閉包である。 よって、Aut(L/E) = {1} である。 証明終
33 :
命題 >>25と同じ状況を仮定する。 このとき K = ∩{F_i; i ∈ I} である。 証明 任意の σ ∈ G と任意の x ∈ ∩{F_i; i ∈ I} に対して σ(x) = x を示せば良い。 σ ∈ G = ΠG_i だから σ = (σ_i)、i ∈ I と書ける。 ここで、各 σ_i ∈ G_i である。 >>22の証明より I の有限部分集合 J = {j_1、...、j_n} があり σ(x) = σ_(j_1)...σ_(j_n)(x) となる。 よって、σ(x) = x である。 証明終
34 :
命題 >>25と同じ状況を仮定する。 I の部分集合 J に対して (E_j)、j ∈ J の合成体(過去スレpart4の298)を E_J とする。 このとき I の任意の有限部分集合 J と任意の i ∈ I - J に対して E_i ∩ E_J = K である。 証明 j ∈ J のとき E_j ⊂ F_i である。 よって、E_J ⊂ F_i である。 任意の k ∈ I - {i} に対して E_i ⊂ F_k である。 よって、全ての k ∈ I に対して E_i ∩ E_J ⊂ F_k である。 よって、>>33より E_i ∩ E_J = K である。 証明終
命題 (G_i)、i ∈ I を有限群の族とする。 G = ΠG_i を (G_i)、i ∈ I の直積とする。 各 i ∈ I に対して G_i に離散位相を与えて G = ΠG_i を位相群と見なす。 このとき、ある可換体 K と Galois拡大(過去スレpart4の848)L/K が存在し G は Aut(L/K)(過去スレpart4の847)と位相群として同型になる。 このとき K の標数(過去スレpart4の667)は任意に取れる。 証明 >>35と>>30より明らかである。
37 :
命題 >>22と同じ状況を仮定する。 各 i ∈ I に対して G_i に離散位相を与えて G = ΠG_i を位相群と見なす。 このとき Aut(L/K) は G と位相群として一致する。 証明 過去スレpart5の242より、各 i ∈ I に対して Aut(L/K) の各元を E_i に制限することにより 連続準同型 f_i:Aut(L/K) → Aut(E_i/K) が得られる。 族 (f_i)、i ∈ I は連続準同型 f:Aut(L/K) → ΠAut(E_i/K) を引き起こす。 >>35より f は位相群としての同型である。 f を G の制限した写像を g:G → ΠAut(E_i/K) とする。 各 i ∈ I に対して g を G_i に制限した写像を g_i:G_i → ΠAut(E_i/K) とする。 Aut(E_i/K) を ΠAut(E_i/K) の部分群と同一視したとき g_i(G) = Aut(E_i/K) である。 >>30より g_i:G_i → g_i(G) = Aut(E_i/K) は同型である。 よって、g:G → ΠAut(E_i/K) は全単射である。 ι:G → Aut(L/K) を包含写像とする。 fι = g である。 g は全射だから任意の σ ∈ Aut(L/K) に対して f(σ) = g(τ) となる τ ∈ G がある。 fι = g より f(σ) = f(ι(τ)) である。 f は単射だから σ = ι(τ) である。 よって、ι は全射である。 よって、Aut(L/K) = ι(G) = G である。 よって、f = g である。 f = g:G → ΠAut(E_i/K) は位相群としての同型であるから Aut(L/K) の部分群としての G の位相は (G_i)、i ∈ I の直積としての位相に一致する。 証明終
38 :
命題 G を任意の副有限群(過去スレpart5の705)とする。 有限離散群(過去スレpart5の712)の族 (G_i)、i ∈ I があり G は ΠG_i の閉部分群と位相群として同型である。 証明 G の開正規部分群全体を Ψ とする。 過去スレpart5の706より G = lim[H ∈ Ψ] G/H である。 過去スレpart3の494より G は Π[H ∈ Ψ] G/H の閉部分群と見なされる。 過去スレpart5の711より各 G/H は有限な離散群(過去スレpart5の712)である。 証明終
39 :
命題 G を任意の副有限群(過去スレpart5の705)とする。 このとき、ある可換体 K と Galois拡大(過去スレpart4の848)L/K が存在し G は Aut(L/K)(過去スレpart4の847)と位相群として同型になる。 このとき K の標数(過去スレpart4の667)は任意に取れる。 証明 >>38より、有限離散群(過去スレpart5の712)の族 (G_i)、i ∈ I があり G は G’= ΠG_i の閉部分群と見なされる。 >>36より、ある可換体 F と Galois拡大 L/F が存在し G’は Aut(L/F) と位相群として同型になる。 このとき F の標数は任意に取れる。 G’と Aut(L/F) をこの同型で同一視したときの G の固定体(過去スレpart4の863)を K とする。 Galois理論の基本定理(過去スレpart5の288)より Aut(L/K) = G である。 証明終
40 :
任意の有限群 G は副有限群であるから>>39より G はあるGalois拡大のGalois群と同型になる。 しかし、この事実は次のように簡単に証明出来る。 命題 G を任意の有限群とする。 このとき、ある可換体 K と Galois拡大(過去スレpart4の848)L/K が存在し G は Aut(L/K)(過去スレpart4の847)と同型になる。 このとき K の標数(過去スレpart4の667)は任意に取れる。 証明 忠実(過去スレpart5の843)な G-集合(過去スレpart5の77)S を任意にとる。 例えば S として G をとり G の正則表現をとればよい(>>11)。 k を任意の可換体とする。 >>9より S を不定元の集合とする k 上の有理関数体 k(S)(>>8)が存在する。 L = k(S) とおく。 >>10より G は Aut(L/k) の部分群と見なされる。 K = {x ∈ L;各σ ∈ G に対して σ(x) = x } とおく。 Artinの定理(過去スレpart1の438)より L/K はGalois拡大で G = Aut(L/K) である。 証明終
41 :
>>40から次の問題が自然に浮かぶ。 [与えられた可換体上のGaloisの逆問題] 有限群 G と可換体 K を任意に与えたときに Galois拡大(過去スレpart4の848)L/K で G が Aut(L/K)(過去スレpart4の847)と同型になるようなものが存在するか? この問題は K が素体(過去スレpart4の667)の時が最も重要である。 K が有限体(過去スレpart4の681)であれば後で示すように G としては巡回群しか有りえない。 よって、K が有理数体の場合が問題になる。 この問題は現在のところ未解決であるが種々の結果が知られている。 例えば G が次の場合は上の問題は肯定的である。 ・対称群(Hilbert 1892) ・交代群(Hilbert 1892) ・可解群(Shafarevich 1954, 訂正 1989) ・Mathieu 群 M23 を除く25個の散在単純群(Matzat et al 1986, the Monster group Thompson 1984)
定義 K を可換体とする。 過去スレpart4の636より K は代数的閉包(過去スレpart4の634)K~ を持つ。 K の K~ における相対分離的閉包(過去スレpart4の890)を K の分離代数的閉包と言う。 過去スレpart4の648より K の代数的閉包は K-同型(過去スレpart4の514)を除いて一意に定まる。 よって、>>44より K の分離代数的閉包は K-同型を除いて一意に定まる。
46 :
命題 K を可換体とする。 L/K を正規拡大(過去スレpart4の844)とする。 K の L における相対分離的閉包(過去スレpart4の890)を L_s とする。 このとき L_s/K はGalois拡大(過去スレpart4の848)であり Aut(L_s/K)(過去スレpart4の847)は Aut(L/K) に位相群として同型である。 証明 K の L における相対純非分離閉包(過去スレpart5の334)を K~ とする。 過去スレpart5の361より以下が成り立つ。 (1) L_s/K はGalois拡大(過去スレpart4の848)である。 (2) L は K~ と L_s の合成体(>>298)である。 (3) K = K~ ∩ L_s よって、過去スレpart5の335より、Aut(L_s/K) は Aut(L/K~) に位相群として同型である。 一方、正規拡大に関するGaloisの基本定理(過去スレpart5の282)より Aut(L/K~) = Aut(L/K) である。 証明終
47 :
定義 K を可換体とする。 K の代数的閉包(過去スレpart4の634)を K~ とする。 K の分離代数的閉包(>>45)を K^sep とする。 >>46より K^sep/K はGalois拡大であり G = Aut(K^sep/K) は Aut(K~/K) に位相群として同型である。 K^sep/K を K の絶対Galois拡大と言い、G を K の絶対Galois群と呼ぶ。
48 :
K を可換体とする。 K の絶対Galois拡大(>>47)K^sep/K は>>45より K が定まれば K-同型を除いて一意に定まる。 K^sep は K の分離代数的拡大、特にGalois拡大を K-同型を除いて全て含む。 よって、Galois理論の基本定理(過去スレpart5の288)より K の絶対Galois群(>>47)G は K の分離代数的拡大のほとんど全ての情報を含むと考えられる。 K が与えられたとき G の構造を決定することは可換体論において重要な問題である。 特に有理数体の絶対Galois群の構造を決定することは未解決の非常に重要な問題と考えられている。
49 :
命題 K を可換体とする。 L/K をGalois拡大(過去スレpart4の844)とする。 G = Aut(L/K)(過去スレpart4の847)とする。 G に標準位相(過去スレpart5の216)を入れる。 G の開部分群全体を Ψ とする。 L/K の中間体 M で M/K が有限次拡大となるもの全体を Φ とする。 H ∈ Ψ に対して H の固定体(過去スレpart4の863)を k(H) と書く。 M ∈ Φ に対して Aut(L/M) を g(M) と書く。 このとき k(Ψ) ⊂ Φ、g(Φ) ⊂ Ψ であり k:Ψ → Φ と g:Φ → Ψ は互いに逆写像である。 証明 H ∈ Ψ に対して M = k(H) とする。 H は過去スレpart5の249より G の閉部分群である。 よって、Galois理論の基本定理(過去スレpart5の288)より H = g(M) 過去スレpart5の325より [M_s : K] は有限である。 ここで、M_s は M における K の相対分離的閉包(過去スレpart4の890)である。 L/K はGalois拡大であるから M/K は分離代数的である。 よって、M_s = M である。 よって、M ∈ Φ である。 逆に任意の M ∈ Φ に対して標準位相の定義より g(M) は開部分群である。 よって、g(M) ∈ Ψ Galois理論の基本定理(過去スレpart5の288)より k:Ψ → Φ と g:Φ → Ψ は互いに逆写像である。 証明終
50 :
命題 K を可換体とする。 L/K をGalois拡大(過去スレpart4の844)とする。 G = Aut(L/K)(過去スレpart4の847)とする。 G に標準位相(過去スレpart5の216)を入れる。 G の開正規部分群全体を Ψ とする。 L/K の中間体 M で M/K が有限次の正規拡大となるもの全体を Φ とする。 H ∈ Ψ に対して H の固定体(過去スレpart4の863)を k(H) と書く。 M ∈ Φ に対して Aut(L/M) を g(M) と書く。 このとき k(Ψ) ⊂ Φ、g(Φ) ⊂ Ψ であり k:Ψ → Φ と g:Φ → Ψ は互いに逆写像である。 証明 H ∈ Ψ に対して M = k(H) とする。 H は過去スレpart5の249より G の閉部分群である。 よって、Galois理論の基本定理(過去スレpart5の288)より H = g(M) よって、過去スレpart5の308より M/K は正規拡大である。 よって、>>49より M ∈ Φ である。 逆に任意の M ∈ Φ に対して過去スレpart5の308より g(M) は正規部分群である。 標準位相の定義より g(M) は開部分群である。 よって、g(M) ∈ Ψ Galois理論の基本定理(過去スレpart5の288)より k:Ψ → Φ と g:Φ → Ψ は互いに逆写像である。 証明終
命題 K を有限体(過去スレpart4の681)とする。 L/K を有限次拡大とする。 n = [L : K](過去スレpart4の560)とする。 過去スレpart4の686より |K| は素数冪 q = p^m である。 このとき L は X^(q^n) - X ∈ K[X] の根全体と一致する。 従って L は X^(q^n) - X の K 上の最小分解体(過去スレpart4の542)である。 証明 |L| = q^n である。 過去スレpart1の332より L の乗法群 L^* は巡回群である。 |L^*| = q^n - 1 である。 よって、L^* の任意の元 α に対して α^(q^n - 1) = 1 である。 よって、α^(q^n) = α である。 即ち α は多項式 X^(q^n) - X の根である。 0 は X^(q^n) - X の根であるから L の全ての元は X^(q^n) - X の根である。 |L| = q^n であるから L は X^(q^n) - X の根全体と一致する。 証明終
53 :
命題 K を有限体(過去スレpart4の681)とする。 過去スレpart4の686より |K| は素数冪 q = p^m である。 L/K を有限次拡大とする。 n = [L : K](過去スレpart4の560)とする。 ψ:L → L をFrobenius自己準同型(過去スレpart1の220)とする。 このとき L/K はGalois拡大(過去スレpart4の844)であり Aut(L/K)(過去スレpart4の847)は ψ^m で生成される位数 n の巡回群である。 証明 >>52より L は X^(q^n) - X の K 上の最小分解体(過去スレpart4の542)である。 よって、過去スレpart4の876より L/K は正規拡大(過去スレpart4の844)である。 X^(q^n) - X は分離的(過去スレpart4の694)であるから L/K はGalois拡大である。 φ = ψ^m とおく。 α ∈ L のとき φ(α) = α^(p^m) = α^q である。 φ:L → L は単射であり L は有限集合であるから φ は全単射である。 よって、φ は L の自己同型である。 >>52より K は X^q - X の根全体と一致する。 よって、φ は K の元を動かさない。 よって、φ ∈ Aut(L/K) である。 >>52より L は X^(q^n) - X の根全体と一致する。 よって、φ^n = 1 である。 過去スレpart1の332より L の乗法群 L^* は巡回群である。 α ∈ L^* をその生成元とする。 |L^*| = q^n - 1 である。 φ^r = 1、1 ≦ r < n とする。 α(q^r) = α よって、α^(q^r - 1) = 1 これは α の位数が q^n - 1 であることに矛盾する。 よって、φ の位数は n である。 |Aut(L/K)| = n であるから Aut(L/K) は φ で生成される巡回群である。 証明終
54 :
>>53 φ の位数が n であることは次のように証明したほうが良い。 φ^r = 1、1 ≦ r < n とする。 全ての α ∈ L に対して α(q^r) = α よって、多項式 X^(q^r) - X が q^n 個の根を持つことになって矛盾する。
55 :
命題 有限体(過去スレpart4の681)は完全体(過去スレpart1の222)である。 証明 K を有限体とする。 K の標数(過去スレpart4の667)を p とする。 ψ:K → K をFrobenius自己準同型(過去スレpart1の220)とする。 ψ は単射で K は有限集合だから ψ は全射である。 よって、K = K^p(過去スレpart1の229)である。 よって、過去スレpart1の238より K は完全体(過去スレpart1の222)である。 証明終
56 :
命題 K を有限体(過去スレpart4の681)とする。 K~ を K の代数的閉包(過去スレpart4の634)とする。 このとき K~/K はGalois拡大(過去スレpart4の844)である。 証明 K~/K は正規拡大(過去スレpart4の844)である。 >>55より K は完全体(過去スレpart1の222)である。 よって、K~/K は分離代数的(過去スレpart4の843)である。 よって、K~/K はGalois拡大である。 証明終
補題 K を可換体とする。 K 係数の奇数次の多項式は K において常に根を持つとする。 L/K を任意の有限次Galois拡大(過去スレpart4の844)とする。 このとき G = Aut(L/K)(過去スレpart4の847)の位数は 2 の冪である。 証明 L ≠ K と仮定してよい。 原始要素の定理(過去スレpart1の335)より L = K(α) となる α ∈ L がある。 仮定より α の K 上の最小多項式(過去スレpart4の557)の次数は奇数では有り得ない よって、G の位数は偶数である。 |G| = (2^n)m で m は奇数とする。 過去スレpart5の802より G は位数 2^n の部分群 P を持つ。 P で固定される L の部分体を M とする。 [M : K] = m は奇数だから上と同様の理由により m = 1 である。 即ち M = K である。 よって Galois理論の基本定理(過去スレpart5の288)より G = P である。 証明終
63 :
命題(代数学の基本定理) 複素数体は代数的閉体(過去スレpart4の628)である。 証明 R を実数体とし C を複素数体とする。 過去スレpart4の635より R 係数の次数 ≧ 1 の任意の多項式 f(X) が C において1次式の積に分解することを証明すればよい。 f(X) の C 上の最小分解体(過去スレpart4の542)を L とする。 L は (X^2 + 1)f(X) の R 上の最小分解体であるから L/R はGalois拡大(過去スレpart4の844)である。 >>61の(1)と>>62より G = Aut(L/R) の位数は 2 の冪である。 よって、H = Aut(L/C) の位数も 2 の冪である。 過去スレpart5の782より H は可解群(過去スレpart1の550)である。 よって、|H| > 1 とすると過去スレpart1の564より H は指数 2 の正規部分群 N を持つ。 N で固定される L の部分体を F とすると [F : C] = 2 である。 これは>>61の(2)に矛盾する。 よって |H| = 1、即ち L = C となり f(X) は C において1次式の積に分解する。 証明終
64 :
定義 A を可換環とする。 B = A[X_1、...、X_n] を n 変数の多項式環とする。 G を集合 {1、...、n} 上の対称群(>>6)とする。 σ ∈ G、f = f(X_1、...、X_n) ∈ B のとき σf = f(X_σ(1)、...、X_σ(n)) と定義する。 f → σf は B の環としての自己同型である。 よって、準同型 π:G → Aut(B) が得られる。 ここで Aut(B) は B の自己同型群である。 π は明らかに単射である。 よって、B は忠実(過去スレpart5の843)な G-集合(過去スレpart5の77)となる。 Fix(G)(過去スレpart5の770)は A を含む B の部分環である。 Fix(G) を A[X_1、...、X_n]_sym と書く。 A[X_1、...、X_n]_sym の元を A 係数の n 変数の対称多項式という。
65 :
命題 A を可換環とする。 B = A[X_1、...、X_n] を n 変数の多項式環とする。 f ∈ A[X_1、...、X_n]_sym(>>64)に対して f = Σf_k を同次多項式への分解とする。 このとき、各 f_k ∈ A[X_1、...、X_n]_sym である。 証明 自明である。
66 :
定義 A を可換環とする。 B = A[X_1、...、X_n] を n 変数の多項式環とする。 各整数 k、0 ≦ k ≦ n に対して集合 {1、...、n} の部分集合 H で k 個の要素からなるもの全体を P_k とする。 各 k に対して s_k = Σ[H ∈ P_k] Π[i ∈ H] X_i とおく。 s_k は明らかに k 次の同次多項式であり対称多項式(>>64)である。 s_k を次数 k の基本対称多項式と言う。 例 s_0 = 1 s_1 = X_1 + ...+ X_n s_2 = Σ[i < j] X_iX_j
67 :
命題 A を可換環とする。 B = A[X_1、...、X_n] を n 変数の多項式環とする。 B[U, V] を B 上の2変数の多項式環とする。 このとき (U + VX_1)...(U + VX_n) = Σ[k = 0、...、n ] s_k U^(n-k)V^k ここで、各 s_k は次数 k の基本対称多項式(>>66)である。 証明 自明である。
68 :
命題 A を可換環とする。 B = A[X_1、...、X_n] を n 変数の多項式環とする。 B[V] を B 上の2変数の多項式環とする。 このとき (1 + VX_1)...(1 + VX_n) = Σ[k = 0、...、n ] s_kV^k ここで、各 s_k は次数 k の基本対称多項式(>>66)である。 証明 >>67において U に 1 を代入すればよい。
69 :
>>68 >B[V] を B 上の2変数の多項式環とする。 B[V] を B 上の1変数の多項式環とする。
70 :
命題 A を可換環とする。 B = A[X_1、...、X_n] を n 変数の多項式環とする。 B[U] を B 上の1変数の多項式環とする。 このとき (U - X_1)...(U - X_n) = Σ[k = 0、...、n ] (-1)^(n-k) s_(n-k) U^k ここで、各 s_k は次数 k の基本対称多項式(>>66)である。 証明 >>67において V に -1 を代入すればよい。
71 :
記法 Z を有理整数環とする。 集合 {n ∈ Z; n ≧ 0} を Z+ と書く。
72 :
哲也はR
73 :
定義 n ≧ 1 を整数とする。 (Z+)^n を Z+(>>71)の n 個の直積集合とする。 a = (a_i) と b = (b_i) を (Z+)^n の元とする。 a ≠ b のとき k = min{i;a_i ≠ b_i} が定まる。 a_k < b_k のとき a < b と書く。 a = b または a < b のとき a ≦ b と書く。
命題 I を順序集合とする。 I が整列集合(>>84)であるためには I の空でない任意の部分集合が最小元を持つことが必要十分である。 証明 必要性: I を整列集合とする。 J を I の空でない任意の部分集合とする。 仮定より J は極小元(>>77) a を持つ。 I は全順序集合であるから J の任意の元 x に対して a ≦ x または x ≦ a x < a では有り得ないから a ≦ x よって、a は J の最小元である。 十分性: I の空でない任意の部分集合が最小元を持つとする。 I の任意の2元 a, b に対して {a, b} は最小元をもつ。 よって、a ≦ b または b ≦ a よって、I は全順序集合である。 I の空でない任意の部分集合の最小元はその集合の極小元でもあるから I は整列集合である。 証明終
86 :
定義 I が整列集合(>>84)とする。 (M_i)、i ∈ I を順序集合の族とする。 M = ΠM_i を族 (M_i)、i ∈ I の直積集合とする。 a = (a_i) と b = (b_i) を M の元とする。 I は整列集合だから a ≠ b のとき k = min { i ∈ I;a_i ≠ b_i} が定まる。 a_k < b_k のとき a < b と書く。 a = b または a < b のとき a ≦ b と書く。
87 :
命題 >>86の ≦ は M の順序を定める。 証明 a < b かつ b < c のとき a < c を証明すれば良い。 k = min { i ∈ I;a_i ≠ b_i} s = min { i ∈ I;b_i ≠ c_i} とする。 a_k < b_k かつ b_s < c_s である。 I は全順序集合だから以下の3通りの場合がある。 1) k = s の場合: i < k のとき a_i = b_i = c_i a_k < b_k < c_k であるから a_k < c_k よって、a < c 2)k < s の場合: i < k のとき a_i = b_i = c_i a_k < b_k = c_k であるから a_k < c_k よって、a < c 3)s < k の場合: i < s のとき a_i = b_i = c_i a_s = b_s < c_s であるから a_s < c_s よって、a < c 証明終
88 :
定義 I を整列集合(>>84)とする。 (M_i)、i ∈ I を順序集合の族とする。 M = ΠM_i を族 (M_i)、i ∈ I の直積集合とする。 >>87より>>86の ≦ は M の順序となる この順序を M の辞書式順序と呼ぶ。
89 :
命題 I を整列集合(>>84)とする。 (M_i)、i ∈ I を順序集合の族とする。 各 M_i は空でないとする。 M = ΠM_i を族 (M_i)、i ∈ I の直積集合とする。 このとき M が辞書式順序(>>88)により全順序集合となるためには 各 M_i が全順序集合であることが必要十分である。 証明 必要性: M が辞書式順序で全順序集合であるとする。 ある k ∈ I に対して M_k が全順序集合でないと仮定して矛盾を導けば良い。 M_k の元 x、y で x ≦ y でも y ≦ x でもないものがある。 1)k が I の最小元の場合: 各 M_i は空でないから選択公理より M の元 a = (a_i) で x = a_k となるものがある。 同様に M の元 b = (b_i) で y = b_k となるものがある。 このとき辞書式順序で a ≦ b でも b ≦ a でもない。 これは M が全順序集合であることに矛盾する。 2)k が I の最小元でない場合: 各 M_i は空でないから選択公理より M の元 a = (a_i) で x = a_k となるものがある。 同様に M の元 b = (b_i) で y = b_k となるものがある。 M の元 c = (c_i) を以下のように定義する。 i < k のとき c_i = a_i k ≦ i のとき c_i = b_i このとき辞書式順序で a ≦ c でも c ≦ a でもない。 これは M が全順序集合であることに矛盾する。 十分性: 自明である。 証明終
90 :
明らかだろうが
91 :
命題 I を有限な整列集合(>>84)とする。 (M_i)、i ∈ I を整列集合の族とする。 M = ΠM_i を族 (M_i)、i ∈ I の直積集合とする。 このとき M は辞書式順序(>>88)により整列集合となる。 証明 I = {1、...、n} として一般性を失わない。 各 i ∈ I に対して f_i:M → M_i と g_i:M → (M_1)×...×(M_i) を射影とする。 N を M の空でない部分集合とする。 各 i ∈ I に対して M_i の元 a_i を以下のように帰納的に決める。 f_1(N) の最小元を a_1 とする。 a_1、...、a_i まで決まったとき f_(i+1)((g_i)^(-1)(a_1、...、a_i) ∩ N) の最小元を a_(i+1) とする。 このとき (a_1、...、a_n) が N の最小元である。 証明終
命題 M を整列集合(>>84)とする。 N を M の部分集合とする。 x を M の任意の元とする。 { y ∈ M; y < x } ⊂ N なら x ∈ N とする。 このとき M = N である。 証明 M ≠ N と仮定する。 M - N は空でないから最小限 a を持つ。 { y ∈ M; y < a } ⊂ N であるから a ∈ N となって矛盾。 証明終