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2012年09月漫画サロン69: HELLSINGのキャラがルイズに召喚されました part14 (328)
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HELLSINGのキャラがルイズに召喚されました part14
- 1 :2012/02/14 〜 最終レス :5)
- HELLSINGのキャラがルイズに召喚されました part13
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1284495777/
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part306
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1327821877/
まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
※左のメニューの【お預かり作品】に作品があります。
我らはSS投下者の代理人
保守のスレッド代行者
,___
/゙ ` ̄ ̄`-,―ー,ハ、 _ ,--、 ,_
l | ゙//:´::::|(二二,)
゙l \ヽ`ー―−- - | ,iii,,ゝ:::::|(二二 ) 我らが使命は
| _`、_ 。 。 。.|。 。,ii,l iノ ̄ヽ(゙~l`) 投下者に襲う規制を
゙l i ` ̄~`tーーl_,_:/:lヽ、___,/-´ そのレスの最後の一片までも
゙| i ー´~l::::::::::::::::://::::_,(二) ―――保守する事―――
l i |::::○ ::::○::::: | ,ー´
l, i イ ゙l::::::::::::::::::::::::::|i:::|ヘー、_
く i i |:::(二)ヽ::::::::::|i:::|lノ ゙゙ `ヽ
゙ゝ`i ノ ,i⌒i⌒i⌒l~ヽ i ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`ー、
<´ゝ- (二| ,i l i , |iiニ,__i ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ i ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
゙\ ,_,ー´ ̄ー ,/ /:゙ヽ,_,_,_,,ノ゙> |i:::|y _,ー´ ̄/
ヽ ヽ, _-ー´,,ノ:::::::。,>`-ーー、,ゝ.|i:::| i  ゙̄/
|ー,く (,_,ー゙ ̄´ :::::::。゚::: )/ゝ::/ ゙̄/゙|i:::| ,i ヽ_」
゙| ヾ\ \:::::::::::::::。゚:::::::::i// / , .|i:::| \i ,l/
ヽイ-`ヽ ゙\;:::::::::゚。::::::::。\_,/゙。 .|i:::| ヽ, l゙
\ \ヽ \ ゙\ :::::::゚。_。゚:::::::`\ 。 .|i:::| 丶 ,|ノ゙
- 2 :
- 死んだ子の歳を数える様なまねをするな
- 3 :
- 本当かー本当に
- 4 :
- すれたておつ
- 5 :
- もうこのスレは終わりか?ウォルター
- 6 :
- リップ中尉を大尉もどきの人狼にしちゃまずいかしら
- 7 :
- いいんじゃないかしら
- 8 :
- もう完全な不定期だし、本スレのほうに投下するほうがいいんじゃないっすかね
- 9 :
- http://book.geocities.jp/sakusasaya/top.htm
- 10 :
- ウォルター!
- 11 :
- ゼロリカの完成度が高すぎて
- 12 :
- _,,....,,_ _人人人人人人人人人人人人人人人_
-''":::::::::::::`''> ゆっくりしていってね!!! <
ヽ::::::::::::::::::::: ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
|::::::;ノ´ ̄\:::::::::::\_,. -‐ァ __ _____ ______
|::::ノ ヽ、ヽr-r'"´ (.__ ,´ _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ 、_ イ、
_,.!イ_ _,.ヘーァ'二ハ二ヽ、へ,_7 'r ´ ヽ、ン、
::::::rー''7コ-‐'"´ ; ', `ヽ/`7 ,'==─- -─==', i
r-'ァ'"´/ /! ハ ハ ! iヾ_ノ i イ iゝ、イ人レ/_ルヽイ i |
!イ´ ,' | /__,.!/ V 、!__ハ ,' ,ゝ レリイi (ヒ_] ヒ_ン ).| .|、i .||
`! !/レi' (ヒ_] ヒ_ン レ'i ノ !Y!"" ,___, "" 「 !ノ i |
,' ノ !'" ,___, "' i .レ' L.',. ヽ _ン L」 ノ| .|
( ,ハ ヽ _ン 人! | ||ヽ、 ,イ| ||イ| /
,.ヘ,)、 )>,、 _____, ,.イ ハ レ ル` ー--─ ´ルレ レ´
- 13 :
- >>5
Non,ありえません! 初代スレに比べればこの程度ピンチにも入りませんぞ
というわけでショルター出していい?
- 14 :
- 13です。今日は遅いんで明日の晩ぐらいにまた来てなにかあれば投下するか考えます。
一応、タルブ戦の直前まではできてるんですが・・・あまり満足いかなければ投下も不定期になるかもしれません。
こういうのを、というか小説を書くのは初めてですが完結はさせるつもりでいます。終わりはみえてるので。
つたない文章力で申し訳ないと思いますがよろしくお願いします。
- 15 :
- なんか寝つき悪いのでプロローグだけ掲載します。心理描写以外原作コピペなんですが
よろしくお願いします。
- 16 :
- ゼロの執事 プロローグ
「あんたも立派な出来損いさ 博士 あんたも あんたの作ったモノも全て この僕も」
爆炎に包まれつつある飛行船の一室、ナチスの研究室ですでに血まみれ、体すら実験台にもたせかけ座り込んでいるボロボロの少年が、やせた、眼鏡の白衣の男に対し口を開く。
「茶番劇は終わった。演者も消えなければ そうだろう 大博士(グランドプロフェッツォル)」
大博士と呼ばれた男は追い詰められた様子ながらも言葉を返す。
「茶番・・・茶番劇だと!? どの口がほざく・・・欠陥品のどの口が!?」
その言葉に少年は自嘲気味に笑いながらも博士を見据え言う。
「一夜一幕の茶番劇さ この戦も この世の中も 僕は・・・僕はその中でできるだけいい役が演じたかっただけさ」
そういうと少年は実験台に手を掛けながら立ち上がる。が、支えにした右手は立ち上がると同時に指、手首、腕と砕けるかのように爆ぜた。
「ひっどい末路さ アーカードの言う通りだ みっともないよねぇ」
だが、少年は爆ぜた右腕を気にするそぶりも見せず、博士を目にとらえ続けていた。そんな少年の言葉を聞き、博士は歯を食いしばりつつ言い返す。
「そんな欠陥品の貴様が・・・ッ 失敗作の貴様が・・・ッ 私達を笑うと言うのか」
茶番、という言葉に反応し博士から怒りの言葉が飛び出す。
- 17 :
-
「貴様なぞに!!私の研究を茶番呼ばわりされてたまるか 少佐殿の大隊を笑われてたまるか!!お前なんかに!!お前みたいなものに!!」
博士は怒りに体を震わせながら、布で覆われた物体を指し示し言葉を続ける。
「理論は飛躍する!!研究は飛躍する!!いつの日かこれに追いつく いつかアーカードを超えてみせる!!」
「馬鹿言っちゃいけない お前も僕も皆死ぬ 欠陥品は全部死ぬ」
「黙ァれえ!!」
博士はそう叫ぶや否や素早く自らの懐に手を伸ばし、リモコンを取り出す。
ボタンを押すために。少年の体内にある爆弾を起動させるために。
だがたったのボタンを一つ押すだけのその刹那、その一瞬は
少年にとっては十分長く、片腕一本で対応できる時間だった。
一瞬で博士の腕、足に鋼線が巻きつき、博士の胴から切り離す。
「お、おお、お」
- 18 :
- リモコンを取り落し、あたりに血をまき散らしながら、片手、片足を失った博士は
バランスをとろうと手を周囲にのばし、つかもうとする。
だがつかんだものは、先ほど示していたものにかかった布。つかむとすぐに布はビリビリと千切れていってしまった。無様に博士がたおれこむなか、その布の下から姿を現したのは人の全身の骸骨。
頭蓋骨に付けられたプレートには、―MINA―NO.00000、とある。
「ミナ・ハーカー そうだろうさ これがお前たちの教材」
少年は動揺することなく、骸骨を見据え、言葉をつづける。
「アーカード「ドラキュラ」が血を吸われた唯一の存在「全ての始まり」
ヘルシングに「ドラキュラ」が倒され人に戻った、という
だがアーカードは死んでいない!!彼女の中にはアーカードがいる
彼女自身がどうなろうと彼女の奥深くには存在する
聖餅でも聖水でもどうにもできない吸血鬼の血が
だからお前たちは「そこから始めた」「アーカードの模倣」
そのためにお前たちは彼女をあばき残骸のような彼女を残骸にしつくした」
- 19 :
- 年は鋼線をたぐり、展開する。鋼線は意思を持っているかのように骸骨に絡みついていく。
「結局のところ お前たちのやった事はコピー商品さ
これが茶番劇でなくて一体何だ」
ぐおお おぉおお、と博士のうめき声が上がる。少年はさらに鋼線をあたりのものに張り巡らせていく。
「かわいそうな彼女(ミナ)」
少年は煙草をとりだし、くわえ、つぶやく。
「全部 消えろ 退場するんだ お前たちも この俺も」
- 20 :
- あ、あ、あ、あああAAAAAAAAAA
悲痛な博士の悲鳴が響く。ミナ・ハーカーの残骸は炎に包まれていく。博士の頭上から鋼線によってからめとられたブロックや実験台、様々な器具が頭上から降り注ぎ博士を潰す。大博士と呼ばれた男の無残な死に方だった。
「At Pinball!! 」
それを見て少年はしてやったりと歓喜する。だがもう体は限界に達し悲鳴を上げていた。仕方なく少年はふたたび実験台に身をもたせかけ腰を下ろし煙草を深く吸い込む。
最期の一服だ。
「ああ 畜生」
少年はぽつりとつぶやく。博士を殺し笑顔を浮かべていた少年の顔の表情は、むなしさを表したものにゆっくりと変わっていく。煙草を深く吸い込み、はきだしながら。
- 21 :
- 「勝ちたかったなあ あいつに」
勝ちたかった。自分の手で勝ちたかった。この手であいつの心臓を刺し、勝ちたかった。そのために全てを賭けた。自分の人生、自分の家臣、自分の信義、自分の忠義、Rなあのデブの少佐から賭け金を借り出してまで。
一晩明けて鶏が鳴けば身を滅ぼす法外な利息だとしても、あいつを倒すことのできる力を手に入れるために、あいつと戦うために一夜の勝負に全てを賭けた。
だが、もうそれはかなわない。あいつは、アーカードはもう消えてしまったのだから。
少佐によって。あの猫耳のシュレディンガーを使われて。
- 22 :
- part間違えました 再投します
- 23 :
- 「勝ちたかったなあ あいつに」
勝ちたかった。自分の手で勝ちたかった。この手であいつの心臓を刺し、勝ちたかった。そのために全てを賭けた。自分の人生、自分の家臣、自分の信義、自分の忠義、Rなあのデブの少佐から賭け金を借り出してまで。
一晩明けて鶏が鳴けば身を滅ぼす法外な利息だとしても、あいつを倒すことのできる力を手に入れるために、あいつと戦うために一夜の勝負に全てを賭けた。
だが、もうそれはかなわない。あいつは、アーカードはもう消えてしまったのだから。
少佐によって。あの猫耳のシュレディンガーを使われて。
- 24 :
- 少年は視線をひび割れていく天井に向けていた。だが、その眼はうつろで何もみていなかった。
迫りつつある炎に囲まれた研究室、崩壊寸前の天井、逃げ場はない。
最期に彼は自らの主の姿を思い浮かべる。
あのデブの少佐ではなく、二代にわたり仕えてきたヘルシング家の末裔 アーサー・ヘルシング、
そして幼い時から仕え続け、成長を見守った
サー・インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシングの姿を。
だがその仕え続けた彼の人生はすでに終わった。すべてを失った。幕引きだ。
「御然らばです お嬢さま」
その言葉を待っていたかのように天井は崩壊し、炎が彼の周りを包み込んだ。
彼は安らかな顔を浮かべ、目を閉じる。煙草を落とし、最期の時を待つ。
崩落していく瓦礫が落ち、爆炎が彼を包み込む直前、彼は、消えた。あとかたもなく。
- 25 :
- これでプロローグは終わりです。タイトルはゼロの執事、としました。
召喚の01は明日の晩でも投下します。
しかし初心者で投下の仕方がわからず、ミスが多すぎてごめんなさい。
こんな自分ですがよろしくお願いします。
- 26 :
- やったー!新作来てくれたーめっちゃ嬉しい!ショルター乙乙
- 27 :
- これは期待!期待!おつです
- 28 :
- 晩になりました。ゼロの執事01投下します。状況的に最初らへんが、他作品様と被ってしまいました。
変えたかったのですがどう考えても原作の設定的にこうなってしまいました。
次からは気を付けますのでよろしくです。では投下します。
- 29 :
- ショルターに頑張ってほしい
- 30 :
- 第一話 召喚
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
ここはトリステイン魔法学院。桃色の髪の少女が呪文を唱えている。
「五つの力を司る五角形。 我の導きにこたえ強く美しい使い魔を召喚せよ」
少女―ルイズが呪文を唱え終わり杖を振り下ろすと爆音と共に光が炸裂した。
「はっ、また失敗か〜 ゼロのルイズ」
「いや 成功だろ いつも通り爆発だ」
まわりがはやし立てる中、ルイズは呆然としていた。ああまた失敗か、使い魔すら呼び出
せないなんて―――。だが、煙の中を見た生徒の一言で一変する。
「おい 見ろよあれ」
「えっ 何? ! キャアアアアアア」
女子生徒の悲鳴にはっと我に返ったルイズは何事かと周りをみてみると自分が起こした爆発の煙がうすれて中の様子が見えるようになっていた。そこには何かがいた。
(やった 成功じゃない これでどう? わたしもやれば――――あれ?)
よくみるとそこの何かは人の形をしている。
(まさか呼び出したのは人間?うそよ そんな 私が・・・)
しかし煙がはれ、はっきりルイズの側でも見えるようになると見えてきたのはまぎれもなく仰向けに倒れている人間だった。顔立ちは中性的だが男の子だろう。だが全身、おびただしく出血し、血まみれである。ルイズは愕然とした。
- 31 :
- 「ミスタ・コルベール!」
少年が召喚されたという前代未聞の事態にコルベールも固まっていたが、ルイズの声に我
に返る。すぐに少年のもとに駆け寄り状態を見る。
「これは・・・・出血がひどいですな。気絶している。誰か水のメイジの方はこの子に治
療を。応急処置程度で構いません 止血を」
「は、はい! わかりました」
モンモランシーを始めとした幾人かのメイジが少年に治療を施す。出血が止まり何とか命を取り留めたようだった。
- 32 :
- 「終わりましたか、ではミス・ヴァリエール。この少年とコントラクト・サーヴァントを」
「え・・・?え!?」
コルベールに言われるまで、大けがをした少年の出現にすっかり頭から契約のことが飛んでいたルイズ。確かに契約はしなければならないが相手は・・・。
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください!やり直しをお願いします!それにこの子ケガしてるのにそんな事・・・!」
「この儀式は神聖なもの、やり直しは認められません。君の運命に従いし者としてこの少年が選ばれた以上、この少年と契約する以外ないのです。」
「うううう・・・・」
呻いても無駄だった。
ああ、なんでこうなってしまったんだろう・・・
- 33 :
- 倒れている少年の前に立ち、顔を近づける。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
呪文を唱え、口付ける。
契約の儀式が終わり、少年の左手にルーンが刻まれていく。
そのときかっと少年の目が見開いた。なんだ、おまえは?そう言いたげな目を一瞬するも
すぐに少年はうずくまり動かなくなる。ルーンが刻まれ、その痛みで気絶したのだ。
「終わりましたね、おめでとうミス・ヴァリエール。ではこの少年は私が医務室に運びます。ミス・ヴァリエールも後ほど来て下さい」
「はい・・・」
- 34 :
- ルイズの気分は沈んでいた。呼び出した使い魔が平民だなんて・・・
一方、少年は医務室に運ばれた。
(さてと。とりあえずけがは医務室の先生に診てもらえますね。終わったらミス・ヴァリエールといっしょに部屋に運びましょう。ん?)
コルベールは少年の右腕がないことに気付いた。おびただしい出血に気を取られ気付かなかったのだ。
(これは・・・さすがに再生させることはできないな。あとで義手になりそうなものを見つけておくとしましょう。む・・・これは・・・)
次にコルベールが見つけたのは左手に刻まれたルーンだった。
(珍しいルーンだな)
コルベールは少年が眠っているうちに、と紙に熱心に書き留めていた
そんなコルベールの様子に気づきもせず少年はこんこんと眠り続けていた。
- 35 :
-
少年は夢を見ていた。
見慣れた街並み―――ここは、そうロンドンだ。
昼であるためか人々が騒ぎ、活気にあふれている。
特徴的な時計塔もある。
少年は人々が行き交うとおりの真ん中で佇んでいた。
(・・・・・・・)
少年はその様子を何の感慨もなく眺めていた。
人々はみな少年を無視し通り過ぎていく。
少年のことは眼に入ってないかのように。
少年は動けない。
歩いてみようとしたが足が動かないのだった。
- 36 :
-
「これは・・・・」
少年がつぶやくと同時に周りが暗くなっていく。夜になったのだ。
それでも相変わらず人々は動き回っていた。
違うのは少し静かになったことぐらいだろうか。
ふと、上を見上げ月を見てみる。青白く、大きな月。
だがしばらく眺めていると中心に黒い点が出て、どんどん大きく広がっていく。やがてその点の正体に少年はきづいた。
あれは飛行船だ。何機もいる。
突如、飛行船から何かが放たれる。
それらは無数に、すべてロンドン帝都内にばらまかれていく。
そのうちの一個がこちらをめざしてきて――――――目の前で爆発した。
- 37 :
-
はっと我に返る。周囲の様子は大きく様変わりしていた。
周りは死体であふれかえり建物は崩れ、ガラスや鉄骨がそこかしこに飛び散っている。
少年はただ一人、立っている。おどろいて自分の体を見やる。
どこもけがをしていない。目の前で爆弾が爆発したというのに。
そこできづく。生きている人の姿がなくなっていることに。
「ヴヴヴ・・・」
周りからうめき声が聞こえてくる。どこからくるのかなんとなく少年はきづいていた。
喰人鬼(グール)だ。まわりに倒れていた死体が起き上がりわらわらと少年を取り囲む。その腐った淀んだ眼はみな、少年を見つめていた。
「ははは なんだ グールか?」
少年はその視線に動じることなく鋼線をふるい周りのグールたちを、首、手足、胴体を切り刻んでいく。ばたばたとグールは瞬く間に倒れていく。
- 38 :
-
「グールが、何をしてるのやら。おれは、ゴミ処理係の――――」
ゾクリ。背後に何かがいるのを感じとり、振り向きざまに、鋼線を飛ばし、背後にいたモノの首を飛ばす。だがそいつはみるみるうちに首の付け根から影のようなものが出て元の形を作って再生していく。その顔は――――
「ッ〜ーーーーーー!」
憎たらしい、少女の顔をした化け物だった。
「アーカード!!!」
- 39 :
- またミスりました。ごめんなさい。
- 40 :
-
「グールが、何をしてるのやら。おれは、ゴミ処理係の――――」
ゾクリ。背後に何かがいるのを感じとり、振り向きざまに、鋼線を飛ばし、背後にいたモノの首を飛ばす。だがそいつはみるみるうちに首の付け根から影のようなものが出て元の形を作って再生していく。その顔は――――
「ッ〜ーーーーーー!」
憎たらしい、少女の顔をした化け物だった。
「アーカード!!!」
- 41 :
- ギリ、という音が聞こえそうなぐらい歯をくいしばった少年の様子に、少女の形をした化け物―――アーカードは高らかに笑う。
「ほら 気張れよ あと何万回かそこらだ」
少女がそう言うと周りに赤黒い触手のようなものが伸びていく。その触手から人々がメリメリと今にも飛び出そうな勢いでわきでてきて少年に手を伸ばしてくる。その数は何百、何千、いや何百万か。あまりの多さだ。少年がいる通りを覆いつくし空をも覆い尽くすほどの。
「ッ〜ーーーーーー!チィ」
少年は舌打ちをすると鋼線を振りぬこうとする。が、気が付く。さっきまであった右腕がない。
- 42 :
-
「な・・・・・・・!?」
だが亡者はそれに構わず少年をとりこもうと手を伸ばしてくる。少年はすぐに左手と口で鋼線を操作し迫りくる亡者の手をさばき、切断する。
「くそっ 多過ぎる!!」
両腕ならまだしも片腕と口では迫りくる亡者の進軍を止めるにも限度がある。やがて足をつかまれ引きずり倒され、腰に群がれ、手を押さえつけられる。首に亡者の手が伸び、締め付けられる。苦しい。畜生。ここまでか。
「く・・そ・・」
「は は は は はは は ははは ははははは!」
意識を失う直前、見えたのは高笑いをする憎たらしい吸血鬼の顔と、
「じゃあね〜」
楽しげな顔でこちらに手を振る猫耳のナチスの軍服を着たシュレディンガーの姿が見えたのを最後に少年の意識は、途絶えた。
- 43 :
- これで終わりです。こんなのでよろしいでしょうか?
これの次の章をよく見てたらゼロリカさんの影響ってやつをものすっごい
受けた文章、もといコピペみたいなことになっていたため直します。
そのため一週間以上間隔があくかもしれません。ではまた。
- 44 :
- 乙乙
- 45 :
- >>44 ありがとうございます。
なんか頭の中でやっぱ最初の一日だけは連続で出させなきゃダメ、と頭の中の
清川ウォルターがささやいてくるんで超特急でなおしました。
よくみたら吸血鬼の描写のとこだけコピペでした。
では、02章投下します。
- 46 :
- 第二話 新たな主人
「!!!!」
目が覚め跳ね起きる。気のせいか息が荒い。
「ハア ハア 畜生 なんだ、夢か・・・・」
ひどい悪夢だった。なんだ、あれは。あいつを、アーカードを倒せなかった自分へのひど
い嫌がらせとしか思えない。最恐の敵の前の、最悪の状況の、最低の夢。極めつけは、最
終的にやつを打倒した原因となったシュレディンガーの満面の笑み。思い出しただけでも
やはり腹が立つ。
「あ、目が覚めた?」
「?」
- 47 :
-
声がした方に目を向けると桃色の髪をした少女が椅子に座って自分を眺めていた。服装は
もう寝る時間らしくネグリジェのようなものをつけている。
「・・・・・あなたは?」
「私はルイズ ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ
あんたを召喚したの。今日からあんたのご主人様よ」
「・・・・・・・」
いま聞きなれない単語が聞こえた気がする。召喚?何だそれは?
「ちょっと 黙ってないでなんかいったらどう?」
「ああ すみません」
とりあえずお嬢さまに接するような言葉づかいでしゃべろう。どうやら手当をしてくれた
ようだし。一人称は外見相応に・・・僕、でいいかな。
「僕はウォルター。ウォルター・C・ドルネーズ」
「へえ 苗字があるのね もしかして貴族かなんか?」
「いえ 僕はとあるお屋敷で執事をしていました」
「そう・・・執事・・・平民ってことね・・・」
- 48 :
-
心なしかこの少女は沈んだ顔をしている。そんなに気に障ることを言った覚えはないのだ
が。それよりも・・・ここはどこなのだろうか。辺獄(リンボ)か、それにしては想像し
たのとは違い過ぎている。体も幽霊というものでもない。ちゃんと右腕がない以外はすべ
て健康、しっかり体の感触はある。
「あの・・・うかがってよろしいでしょうか?ここはどこでしょうか」
「? ここはハルケギニアのトリステイン魔法学院よ」
「ハルケギニア?トリステイン魔法学院?」
言われたことを繰り返してみる。聞いたことがない地名だ。やはりここは死者の来る場所
だろうか。だがそれにしては生々しい感覚がある。つかんでいるこのベッドのシーツの感
触、この部屋の空気。どちらも雰囲気は違えど現実で感じたことのあるものだ。
- 49 :
-
なによりも・・・僕はここにいる。あの時、崩壊していく飛行船の中で死ぬつもりだった
のにここにいる。この少女の目の前にいることを僕は知覚できる。チラリと外を見るとも
う夜のようだ。ほっとした。夜であれば都合がいい。とりあえず安心だ。いま自分は吸血
鬼なのだから。粗悪品ではあるこの身は日光を浴びればどうなるかわからない。
しかし、月を見て驚く。二つあるのだ。赤い月と青い月が。まさか・・・ここは異世界?
その後ルイズは一気に説明し始めた。
ここは貴族達が一人前の魔法使いになるための学校の様な所であり、貴族のほぼ全員が魔
法使い=メイジだという。聞いたことがない。やはりここは異世界らしい。
- 50 :
-
「使い魔とは何をするのでしょうか?」
ルイズに疑問を投げかけながら考える。今わかっていること、ここは異世界でありこの少
女ルイズが自分の新たな主人。この少女がこの僕をあの死に場所から「召喚」したらしい。
では何のために?そこがわからない。
「まず、使い魔は主人の眼となり、耳となる能力が与えられるわ」
「?」
「使い魔が見たものは、主人もみることができるのよ」
「・・・」
「でも、あんたじゃ無理みたいね。わたし、何にも見えないもん!」
「左様ですか」
本当だろう。さっきの夢をみていればこのお嬢さんはいまごろひっくり返っているだろう。
本来その能力がどの程度かはわからないが、とりあえず僕のことはただの使い魔としてみ
ている。
- 51 :
-
「それから、使い魔は主人の望むものを見つけてくるのよ。たとえば秘薬とかね」
「秘薬とは?」
「特定の魔法を使うときに使用する触媒よ。硫黄とか、コケとか・・・・」
「それは場所がわかればなんとかなりますね」
「そう、そうよね。なんとかなるわよね 別に幻獣とかでなくてもいいものね」
さきほどとくらべて少し明るくなったようだ。ルイズは続けて言う。
「そして、これが一番なんだけど・・・・、使い魔は、主人を守る存在であるのよ!その
能力で、主人を守るのが一番の役目!でもあんたは右腕が・・・・」
ルイズの声が小さくなっていく。なるほど、ルイズの視線をたどると右腕を見ている。
どうやら再生はできなかったらしい。ルイズの先ほど取り戻した明るさもすぐに消えてし
まったようだ。
- 52 :
-
ウォルターはその様子は見ていられなかった。自分のせいで主を困らせるようでは執事失
格だ。前科はあるが、ここは励まそう。
「大丈夫ですよ。片腕でも何とかなります。それに僕は・・・」
少しつまる。
「僕は、なに?」
ルイズが先を促してくる。困った。どうしようか。今吸血鬼だと明かそうか。どうやらこ
の子は自分に仕えてもらう存在が必要だったから召喚し、呼び出したのがたまたま僕だっ
たということらしい。
ウォルターはしばらく考える。
死を逃したのは惜しいがこうして自分を必要としてくれる人がここにいる。
自分にはもう何もない。ならば、ここが自分にとって全く未知の世界である以上、
ご主人様だというこの少女が自分の新しい居場所だろう。
- 53 :
-
そう決意したそのとき、ずきり、と体が不調を訴えてきた。粗雑な施術痕に体がきしむ。
まずい。今の体は不安定そのものだ。今後のためにも血が要る。体を安定させるためには血が要る。この少女に仕える
ためにはどちらにしろ明かさなければならない。
「僕は・・・・吸血鬼ですから」
「あんた・・・吸血鬼?」
「ええ まあ」
ルイズは嬉しそうだが同時に考え込むような表情をしている。やはり、まずかったのだろうか?
「あの・・・吸血鬼だとまずいでしょうか?」
「・・・! いや、いいのよ。ほんとはまずいんだけど、でも十分すぎるぐらい・・」
「?」
(やった ただの平民じゃなくて吸血鬼だったなんて!)
- 54 :
-
平民だと思っていたが、吸血鬼だという少年。
改めてじっと眼の前の少年を見る。吸血鬼、といわれても外見は私と変わらない年頃の少
年だ。吸血鬼と言われても実感がわかない。
でもこの子とやっていこう。この少年からはそんなに邪悪さは感じられない。
自分とこの子を信じよう。そうルイズは決めたのだった。
「ええ いいわよ あんたがなんであろうとね あんたは私の使い魔よ」
「・・・・・・ッツ!!」
その言葉がウォルターにとってさらなる後押しとなった。
よかった。じゃあここではっきりと表明しよう。
「それではこれからあなたにお仕えします。あなたが僕の主です。ルイズお嬢さま」
「ッツツ〜〜〜〜〜〜!!」
なんだろう。ルイズは顔をプイと背けてしまった。先ほどルイズはご主人様だと自分で言
っていた。だから僕はお仕えします、言っただけなのに。変だっただろうか?
- 55 :
- 一方、ルイズは喜びを抑えるのに必死だった。私が、家族にも認められない私が、ゼロの
ルイズと呼ばれ続けてきたこの私が、今こうして使い魔ではあるがこの吸血鬼の少年に主
として認めてもらえた。どんな形であれ、誰かに認めてもらえたという事実はルイズにと
ってとてもうれしいことだった。
一方、ウォルターは急がねばならない事情があった。体の痛みがひどくなってきている。
「あの・・・喜んでいるところ言いにくいのですが・・・」
「え、な、なによ 別に使い魔に忠誠を誓われたぐらいでよろこんだりしていないんだか
らね!!」
「別にそれは構わないのですが。実は少し困ったことがありまして・・・」
「こまったこと?」
- 56 :
- 「ええ 僕は吸血鬼です」
「それはわかってるわよ」
「ですから・・その・・」
ええい まどろっこしい。さっさと言ってしまおう。
「お嬢さまの血をいただきたいのですがよろしいですか?」
「そ、そんなの駄目よ」
「? なぜでしょうか」
「・・・だって血を吸われたら吸血鬼になるんでしょ?」
吸血鬼に血を吸われたら、グールになることくらいは知っている。
「もしかして血を飲まないと、死んじゃうの?」
「はい。左様です。」
即答。困った。使い魔に死なれては困る。
- 57 :
-
「ねぇウォルター、吸血鬼の特徴を教えてもらえる?」
まず吸血鬼の特徴を聞こう。これから自分の使い魔になるもののことは知っておきたい。
「良いですよ」
ウォルターは詳細を話し始めた。内心は急いでいたのだが、痛みをこらえつつ話す。
ごそごそ、とポケットをウォルターはまさぐる。やがて一冊の本を取り出す。
ブラム・ストーカー著「吸血鬼 ドラキュラ」だ。文庫本型の。
そしてウォルターはぱらぱらとそれをめくりながらルイズに語るのだった。
吸血。血を吸うことでドラキュラは力をまし、吸った対象を自分の眷属とする。
だが、ウォルターはこれについて切り傷から滴る血を飲むだけでよいので
その場合、ルイズから血を飲んでもルイズが吸血鬼になることはない、という。
あと、吸血鬼の簡単なわかりやすい特徴、力が強い、ということだった。
吸血鬼は人間よりも格段に力が強い。デコピンだけでも人を気絶させるほどの力があるという。ルイズはそんなばかな、と笑おうとしたが、ウォルターの目は真剣だったためわらうのをやめた。
「とりあえず、こんなところが吸血鬼の特徴です。おわかりいただけましたか?」
「ええ、わかったわ。ありがとう。」
- 58 :
-
とりあえず半信半疑だったがウォルターの説明は納得できる。
問題の自分が吸血鬼になるかもしれない、というのは解決した。
「ねえ 本当にいますぐ必要なの?血が?」
「ええ いますぐに」
しかたがない。ルイズは溜息をつくとテーブルに置いてあったナイフを手に取ると、ため
らいつつもひとさし指の腹に強く押し当てた。痛みが走ったが声を上げるほどではなかっ
た。血ができた傷からあふれてきた。少し切りすぎたせいか結構出血している。
「ほら。飲みなさいよ。」
だが、ルイズは構わず、ウォルターに指をつきだした。
- 59 :
-
ウォルターは静かに歩みより、ルイズの足元に膝をつく。下へ滴り落ちていく血を飲もう
とウォルターは、くぱ、と口をあけ、舌を伸ばす。滴った血を舌で受け止め、ごくりごく
りと嚥下していく。ルイズの傷がふさがるまでウォルターはそうし続けていた。
ルイズはなにか変な気持になっていた。自分とさほど変わらない少年が自分の前に膝をつ
き舌を突き出している。こころなしか少年の息は荒く、頬が赤かった。
(なんだろう・・・なんだか人に見せられない光景のような気がするわね)
ルイズがそんなことを考えている一方、ウォルターは必死だった。
血をとりこみなんとか体を維持するために体内の構造を造り直していく。
- 60 :
-
とりあえずこれ以上、体が幼児化しないように体自体を調節する。
つぎに右手を再生しようとするがルイズからの血の量や不完全な吸血鬼であるため再生は
到底不可能だということにきづき、断念。
長期間体を維持できるようにした後は粗雑な施術痕をなんとか回復させる。
これで並みの吸血鬼くらいには動けるようになる。
そして最後に余った回復量を皮膚にまわした。
これで一週間は太陽にさらされても大丈夫だ。
大きなけがをしない限り日光を浴びても皮膚を回復し続けることで平気にする。
まあ、これはバッテリーのようなもので一週間に一度はルイズから血をもらわなくてはな
らないが。
「はあ はあ はあ」
ルイズからの血がすっかり止まってしまう頃にはすべて終わっていた。とにかく必要なこ
とはすべてやった、そう思い、やり終えて息が絶え絶えながらルイズに礼を言う。
「ありがとうございます。お嬢さま」
「え、ええ」
- 61 :
-
変な気持になりつつも終わってルイズはほっとしていた。なんだかドキドキする。だがど
うしてこうなったのかルイズはわからないでいた。使い魔の前でなにをドキドキしている
んだろう?ルイズは原因が分からず一人悶々としていた。
その後、ルイズはウォルターに明日からの掃除と洗濯、雑用を言いつけると、あんたは床
で寝なさい、と毛布をなげ、さっさと寝てしまった。
ルイズが指を鳴らしランプの灯りを消したあと、ウォルターはぼんやりと考えていた。
この少女は自分を男と認識していないだろうか。同じ部屋に使い魔とはいえ男を置いてお
くなんて。ルイズは気にしていないようだが・・・。別にどうこうするわけでもないが。
英国紳士にふさわしい礼儀としてはこのまま外に出ておくべきだろう。
明日、やることが多くて大変だと思いながらウォルターは音を立てないようドアを開け廊
下で毛布にくるまって寝た。あ、吸血鬼だから棺桶もさがすかつくるかしないと、と考え
ながら、ウォルターはふたたび眠りに落ちた。
こうしてウォルターの召喚されてからの異世界で最初の一日は終わった。
- 62 :
- これで02終了です。
ウォルターの一人称、少年形態、ショルターだから僕、にしましたが
基本、主の前では僕、とします。やっぱ執事言葉って難しいです。
次は一週間後、かな。訂正と制作しつつがんばります。
自分、不器用なんでどなたかがまとめとかに入れていただければ幸いです。
ではまた。
- 63 :
- おつおつ
次も期待して待ってます
- 64 :
- ごめんなさい。
ところどころ一行目を改行していたせいで
異次元に吹っ飛んだ部分が出てしまったことをお詫びします。
毎度すみません。
- 65 :
- ウォルター!
- 66 :
- 遅くなりました。ゼロの執事03、04を投下します。
長いかもしれませんがおつきあいよろしくお願いします。
- 67 :
- 第三話 夢の続きとゼロの理由
ウォルターは再び夢を見ていた。
また悪夢かと思ったが様子がおかしい。まわりは書けないような奇妙奇天烈なものばかり。
それらが散乱し、空を飛んでいる。ウォルターは一人、わけが分からず、
ぼうぜんとしていた。
その中でこちらに進んでくる人影が一人。アーカードかと思い鋼線をだし身構えるも違っ
た。
グラサンかけた中年太りしたおっさんがリモコン片手に
宙を浮きながらこちらによってくる。
- 68 :
-
ウォルターはまたも唖然として動けない。おっさん自体がこちらによってくるのも奇妙な
ことだがもっと奇妙なのは格好もだった。四角い毛皮の帽子に腰まで届きそうなコート。
それも真っ白の。
同じく白く長いマフラーをつけ、明らかにカツラとわかる長い黒髪おかっぱ頭
をしている。唖然としている間にふわふわとそいつが目の前に来た。
「よう ウォルター ひさしぶりだなウィリス」
「・・・・・あぁ?」
ウォルターはおもわずイラついてしまう。どこかで聞いたそのセリフに。
おっさんからかけられたその第一声はウォルターを怒らせるに十分だった。
怒ったウォルターは鋼線を飛ばし、ブルー○・ウィリス似のおっさんを切り刻もうとまわ
りに展開され、つつみこもうとする。
だが、おっさんはぬるぬると鋼線の包囲網をよける。
しかし、よけた拍子に帽子とコートは外れ、
オレンジ色のシャツとはげた頭が代わりに姿を現す。奇妙なおっさんはシャツとズボン姿
の正真正銘ただのおっさんとなった。
- 69 :
- 「あ、危ない。ちょっと待って、待ってください ウォルターさん、ごめん、謝るから許
してウィリス」
「許して、だと。やっぱり悪意あってさっきのセリフ言いやがったんだなテメエ」
「あ、わかってたのね それじゃあ許してくれるウィリス?」
「ああ 今その素ッ首叩き落として炉にくべて脂肪燃やして暖を取ってやる」
「待って お願い 話を聞け 聞いてくださいウィリス」
なにやら必死そうに頭を地面に擦り付け懇願してくる。その様子にはさすがに話だけ聞い
てやろうかと鋼線を止める。仕方ない。言い分も聞かなくてはイギリス紳士(ジョンブル)
の面目がないだろう。ウォルターはそう思い鋼線をしまう。
「わかった 話だけ聞いてやる」
おっさんはそう聞いて安心したようだった。
「ふう よかったウィリス」
そういうとおっさんはおもむろにリモコンのボタンを押す。
バグム、と爆発音が近くで聞こえたと思った瞬間ウォルターの体がぐらつく。
- 70 :
- 「な・・・」
見ると左足がない。突然のことに驚いたウォルターは片足では立てずうつぶせに地面に倒
れこんでしまう。
「ぐ・・」
それでもなんとか倒れる体を左手で支え、顔をおっさんの方に向ける。
「てめえ なにしやがる」
「はは ザマアミロウィリス 少しは爆破されたものの痛みが分かったかウィリス?」
「何言って・・・ ! 」
「答えてやろうウィリス 私はお前が作った銃、そしてお前に爆弾を埋め込まれ爆破され
た銃、そう、ジャッカルの精だウィリス」
「なんと!」
本当なのか、今の名は吸血鬼アーカードに、とある敵を打ち倒すために僕が特別に作って
やった、ジャッカルという銃の名前だ。
のちにアーカードと対決した時のためにその銃に爆弾を埋め込んでおいた。
そしてその時が来て爆破してやったのだ。
まさかそのジャッカルがこうして精霊になって僕に復讐してくるとは・・・。
- 71 :
- 「ははは ここは私 ジャッカルの精空間 『ウィリス空間』なのでウィリス」
「なに・・・」
「おまえはもうここから出られないんだウィリス ここでおまえは持っていかれた―持っ
ていかれた―と叫びながら、くそ生意気な鎧の弟と一緒に賢者の石もとめて鉄骨にぶっ
さされたり、国を救おうとして敵の親玉に触手でとらえられたり、挙句の果てには錬金術
を使えなくなって無職になって、奥さん泣かせながら自分探しの旅に出て一生さまようん
だウィリス」
「いい加減にしろよ テメエ 全然違う話だろが、内容全然違うだろが、全然違う話にす
るな、やめろ。いろいろ誤解されるからやめろ 足りねえもんもあるし」
「え アへ顔ダブルピースもあったウィリス?」
「ダブルピースはぜったいにしてねえ!!」
ウォルターの悲痛な声が響く。ここでウォルターはアへ顔については否定しない。
ウォルターが頭を抱え悶えている中、ジャッカルの精は目を光らせながらグラサンをかけ
なおす。
「ところでウィリス」
「ああ?」
怪しむウォルターに構わず、まじめそうにジャッカルの精は続ける。
- 72 :
- 「おまえさ なにあれ 痴男なの はずかしくないの?ウォルター君」
「今度はなんのことだ?」
「昨日の晩のことだウィリス おまえはルイズたんの前にひざまずいて、はあはあ言いな
がらなにをごくごくのんでいたんだウィリス?」
「は? ああ、血だろ 飲まなきゃ体が崩壊してさらに幼児化が進むし死ぬだろうが」
「ちがーうう!!」
いきなりおっさんが大声を出した。なんだ。いきなり。
「おまえはなぜあんな体勢をとったのかと聞いてるんだウィリス!なにあれ エロいウィ
リス! 文章のつたない描写でなんとか大丈夫だったがお前はただでさえショタ顔で、男
か女かわからないような顔してるくせに、ひざまずいて舌出して、はあはあ喘ぎながら
血をごくごくと飲むんじゃないウィリス!!
想像しただけでやばいじゃないかウィリス!! はあはあ」
「おい、何言って・・・」
「それにウィリス お前が飲んだのはルイズたんの血なんだウィリス!!三次元で言えば
キリストの血みたいに神聖なもんだウィリス!!
それを飲んだ上に一つ屋根の下で一緒に暮らす?
どんだけうらやましいんだウィリス!!」
- 73 :
- 「おい」
「毎日罵倒されて最後にはデレだろうがウィリス!!下着も洗濯とかこつけて見放題だろ
がウィリス!!なんてうらやましいんだウィリス!!わしにも分けさせろウィリス!!」
だめだこいつ 何とかしないと・・・、とウォルターが思った瞬間、ぱあんと銃声が響き
おっさんの額に穴が開いて血が噴き出し、おっさんはばたり、と倒れる。
何事かと見回してみると高い建物のテラスから今度はエドワー○・フォックス似のスーツ
姿のダンディなおっさんがライフルを構えて颯爽と現れた。
「そいつは偽物だ 危ないところだったな」
「!! お前は!」
「そう 私が本物だ なに別に君のことは恨んでなどいないさ
さ そろそろ起きたまえ おまえの新たなご主人様が待っているぞ 」
そしてダンディなおっさんはこちらに握り拳をつきだし親指を立てて高らかに宣言する。
「I’ll be back!!」
その瞬間、まぶしい閃光が走りウォルターは目を覚ました。現実に、新たな主人の元に。
- 74 :
- 「!!! 畜生 なんだってんだ あの夢」
目を覚ましたウォルターは起きるなり毒づいた。変な夢だった。これで二回連続だ。
吸血鬼が夢を見るなんて・・・と思いながらかけていた毛布をはがし確認する。
うむ、両足とも大丈夫だ。さすがに夢の出来事は現実にはならないようだ。
はあ、と安心した後、起き上がり、きづく。ああ、そういえば替えの服もな
かった。今日中に執事服も調達しなくては、と考えながら立ち上がる。
ルイズの部屋のドアをノックせずにはいる。一応、礼儀として
「お嬢さま 入りますよ」
そういいながら入った。案の定、ご主人様はグースカ寝ていた。あどけない寝顔だ。昨夜
見せた高慢そうな顔はすっかりない。ねてるだけならかわいらしい顔立ちだ。
ウォルターは棚に置いてあった紅茶セットをつかって紅茶を入れながらそう思った。
しかし、その顔をあの高慢そうないつもの顔にもどすのも使い魔の仕事のうちだろう。
ウォルターは紅茶を入れたカップを棚に置き、主人のベッドに近づく。
- 75 :
- 「お嬢さま、ルイズお嬢さま 起きてください 朝ですよ」
「うふふ どうよ キュルケェ・・・私の使い魔はあんたの使い魔なんかめじゃないんだ
からぁ」
む 夢の中で僕のことをキュルケってひとに自慢しているのだろうか。ウォルターはこそ
ばゆくなった。嬉しいが起こさなくては授業に遅れ、
「どう 見事でしょう このドラゴン・・・」
ふとウォルターは起こすのを止める。は、ドラゴン?
「人間なんかじゃないわよ りっぱなドラゴンなんだからあ zzzzz」
「・・・・・・・・ふむ」
お嬢さまはどうやら睡眠不足らしい。体調管理も使い魔の仕事だろう。さてご主人様のた
めに心を鬼にして起こさないでおこうか。
おや、お嬢さまの表情が変わった。違う夢を見ているようだ。
「ニィサァァァン そんなんだからいつまでたってもチ・・」
ドカッ。ベッドを軽く蹴り飛ばしルイズを叩き落とした。なんとなくむかついた。
特に最後の方の寝言がなぜか無性に腹が立った。
- 76 :
- ベッドから転げ落ちてルイズはようやく目が覚めたようだ。
「ふえ? あれここは?」
「お目覚めでございますか。お嬢さま?」
「あ、あんたは誰よ・・・あ・・・昨日私が召喚したんだっけ・・・私の使い魔を・・・
そう、そうよね。そうだったわね」
どうやら昨日のことを思い出したらしい。床に膝をつきながら眠そうに起き上がるルイズ。
「あれ、なんで私、床に転がっているの?」
「ああ、それは、さきほどお嬢さまはご自分で起き上がろうとなさり誤ってベッドから転
落したのでございます。はい」
しゃあしゃあとうそをつくウォルター。別に執事は正直である必要はない。
「なによ。そばにいたなら受け止めてくれてもいいじゃない」
「それは気づきませんでした。次、同じことがあればそうします。申し訳ありません」
「まあ いいわ あら、いい匂い。紅茶をいれてくれたの?」
「はい、どうぞお嬢さま。シロルの特級葉でございます。」
- 77 :
- ウォルターから渡された紅茶のとてもいい匂いがルイズの鼻をくすぐった。
「ありがとう。」
そういってルイズは紅茶を飲んだ。その後、コップを置き、立ち上がると
「おいしかったわ、じゃ、服」
と言ってきた。どうやら服をもってこい、という意味らしい。
「はっ」
椅子にかかった制服を渡す。ルイズは寝ぼけ眼でウォルターの目の前でネグリジェを脱ご
うとする。それを見てウォルターは、そこではた、と精霊の言葉を思い出しにやりと笑う。
「そういえばお嬢さま。まだお聞きしていなかったことが。」
「ん、なによ?」
「使い魔は、主人を着替えさせるのも仕事ですか?
執事は主を着替えさせるのが仕事のうちなので問題ないのですが。
でも執事である以前に僕は使い魔なので使い魔の勝手がよくわかりません。」
ルイズはそうウォルターに言われ、今自分が何をしようとしているのかきづく。
- 78 :
- 確かに自分と同じ年ごろの男の子の前で自分は下着を脱ごうとしている。
でもそれがなんだというのか?目の前の少年はただの使い魔にすぎないのだからあわて
る必要はない。なのに今の言葉のせいで一瞬、自分は躊躇してしまった。
なかったはずの羞恥心が湧き上がってくる。でもそれを無理やり押さえつけ使い魔に
威厳たっぷりに命令しなくては、と決意を固めるルイズ。
「・・・・・―――――ッ!!ええ、そそ、そうよ。あんたは私の使い魔、いわば召使。
召使は身の回りのことをするの だから着替えさせてもらって・・・・・」
しかしルイズの脳裏に昨夜の出来事が思い出される。色っぽい表情で自分の血を飲んだウ
ォルター。血を与えているだけなのになぜかドキドキしてしまった自分。
「お嬢さま?」
「・・・・・・や、やっぱりき、着替えは自分ですることにするわ。こ、紅茶ありがとう。
すぐ行くから外で待っててくれないかしら?」
「わかりました、お嬢さま」
一礼し、外へ出ていくウォルター。出ていくウォルターの背を見つめるルイズの顔は真っ
赤に染まっていた。
- 79 :
- 部屋から出て主を待つウォルター。あんまり女の子の着替えを仕事とはいえしたくはない。
年端もいかない子供の時から着替えさせてもらうというのもどうかと思ってもいたのだが。
ルイズは着替えを済ませると、外へ出てウォルターを呼びつけ威厳を保つかのように上着
となる学生服だけをウォルターに着させた。
その後、ルイズは赤くなった顔を隠しながらついてこいと言って下に降りていく。
ウォルターはしずしずとそのあとをついていくのだった。
トリステイン魔法学院の食堂につくとどうやら生徒と先生が全員集まっているらしい。
ここで一斉に食事をとるらしい。
いわれた業務の中に料理、がない理由がわかり納得した。
食堂は豪華そのもの。おそらく、ここにいる全員が魔法使いであり貴族なのだろう。
目で食堂の様子を眺めていたことにきづいたらしい。
ルイズが得意げに指を立て言った。とび色の目がいたずらっぽく輝く。
- 80 :
- 「トリステイン魔法学院で教えるのは、魔法だけじゃないのよ」
「ほお」
「メイジのほぼ全員が貴族なの。『貴族は魔法をもってしてその精神を成す』のモットーの
元、貴族たるべき教育を、存分に受けるのよ。だから料理も貴族の食卓にふさわしいもの
でなければならないのよ」
「左様でございますか さすれば僕のような身分の低いものが入ることはできないのでし
ょう」
「そうよ でもあんたは私の特別な計らいで使い魔だけど入らせてあげてるの。感謝しな
さいよね」
「ありがとうございます。お嬢さま。ではここにお座りください」
そういってウォルターは空いている椅子をひく。
「あら 気が利くわね さすが執事ね そうでなくっちゃ」
そういって椅子にすわる。ウォルターは机に並べられた料理を見て、目を見張る。無駄に
豪華だ。少佐あたりが喜びそうな料理が所せましとならんでいる。
後で少しもらえるだろうか。吸血鬼になってしまった今、普通の料理が食べられるかため
してみたい。
- 81 :
- そう考えていると突然、つんつんとルイズお嬢さまに指でつつかれる。
「なんでございましょう お嬢さま」
「言い忘れたけど あんたの食事はそれね」
「?」
ルイズが指差したほうをみると床に皿が一枚置いてある。
申し訳程度に小さな肉のかけらが浮いたスープと端っこには固そうなパンが二切れ、ぽつ
んと置いてあった。いやはや床で食事とは・・・。
アーサー卿ですら床で食えとは言わなかったのに。いや、かわりに仕事で魔女の窯の底の
ような場所に行けと言っていたな、と懐かしくウォルターは思い出す。
だがこれは完全に下僕、もしくは狗扱いだ。自分はたしかに使い魔、狗と成り下がってし
まっているけれど、誇りはまだわずかばかりかは持ち合わせているつもりだった。
しかし、ウォルターは怒りを感じながらも、不平もいわず、表情にも出さず、じっと立っ
て主が食べている姿を眺めていた。なぜかルイズは食事の間、背筋が寒かった。
- 82 :
- みんなの食事が終わるころ、さっそく、ウォルターは先ほどの皿からとりだしたパンのか
けらを口に含んでみた。
「む・・・」
思わずむせてしまう。まずい。味が、ではなく体が拒否し、そう認識させているのだ。ど
うやら体は血以外のものは受けつけがたいらしい。でもなんとか胃の腑に収めた。
次に匙でひとすくいのスープを口に運ぶ。口をあけ―――それでもかなりの抵抗があっ
たが―――口に含む。
とたんに体中が拒絶反応を示し、吐き出そうと喉からせきを出す。
「ッツ〜〜〜〜〜〜〜〜」
だがむりやり意思の力で飲み込む。口をおさえなんとか嗚咽の音を抑える。
苦しみながらウォルターは昔の仲間、アーカードの下僕、半吸血鬼のセラスのことを思い
出していた。吸血鬼になりたての彼女は最初、食事の時血を飲むことを拒否し今の自分と
同じように人間と変わらないものを食べようと努力していた。人であろうとして。
- 83 :
- ごめんなさい 書き込めなくなりました。
残りは明日の晩、投下します
- 84 :
- と思ったら書き込めるようになってた。
とりあえず03を今残り投下して、04は様子見します
では続き投下します
- 85 :
- あのときセラスは苦しがっていた。あのときウォルターはかたくなに人間のものを食べよ
うとするセラスにあきれていたのだが、いま自分はこうしてセラスと同じ状況にいる。
皮肉にもセラスの苦しみがこのような形で理解できてしまい、むせながら一人心の中で苦
笑していたウォルターであった。
食事が終わると皆授業へ向かっていく。
向かった教室は石でできた大学の講義室のよう。食堂の時と違い、ここには様々な使い魔
がいた。普通の生き物もいるが本から想像するしかなかった架空の生き物もいた。
「ほほお」
ウォルターは感心しながら見とれる。想像上の生き物をこの目で見れるとは。
長生きはしてみるものだな、とそう感じずにはいられない光景だった。
ウォルターは教室の一番後ろ、最も高い場所に立つ。
ここなら授業の邪魔をしないし主を守りやすい。
- 86 :
- しばらくして中年の女性が入ってきた。優しげな雰囲気を漂わせている女性が生徒たち
を見わたすと、笑顔で口を開いた。
「みなさん。春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって
春の新学期に様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」
どうやらシュヴルーズというらしい。シュヴルーズは教室を見渡していく。使い魔たちを
眺めているのだろう。その視線がウォルターの前で止まった。
「あら、あなたは・・・」
「ゼロのルイズの使い魔ですよ 先生」
答えようとしたウォルターに代わり太った少年生徒が言う。
「あら 変わった使い魔ですわね」
シュヴルーズの感想に教室中がどっと笑いに包まれる。
「ゼロのルイズ!召喚できないからってその辺歩いてた平民をつれてくるなよ!」
ルイズが立ち上がって怒鳴る。
「違うわ!きちんと召喚したもの!こいつがかってに来ちゃっただけよ!」
「嘘つくな!“サモンサーバント”ができなかったんだろう?」
- 87 :
- ゲラゲラと教室中の生徒が笑う。ルイズは顔を真っ赤にして唇をかみしめている。
その様子は後ろから見ていたウォルターからでもわかるほどだったが、執事はかばおうと
しない。
(どうやら僕の主はいままでなにかしらの理由でゼロのルイズと呼ばれてきたらしい。
それは教室中の生徒の知ることのようだ。だがこれに関して僕はどうすることもできない。
自らの過去の汚点はその自分自身に責任がある。
主の過去は膨大な未来によって壊さねばならない。だから、反論は僕はしない。)
「みっともない口論はおやめなさい」
シュヴルーズはそう一喝し、教室を静かにさせる。シュヴルーズは咳払いをして続ける。
「では授業を始めます。今日は『土』系統の魔法の基本である『錬金』の魔法を覚えても
らいます。基本は大事です。もう一度おさらいしましょう」
そういうとシュヴルーズはポケットから小石を取り出し短いルーンを唱え杖を振る。する
とただの石ころはピカピカ光る金属に変わっていた。
「ゴ、ゴールドですか?ミセス・シュヴルーズ!!」
赤髪の少女が身を乗り出す。
- 88 :
- 「違います。ただの真鍮です。ゴールドを錬金できるのは『スクウェア』クラスのメイジだけです」
ウォルターはおや、と思う。また聞きなれない言葉が出てきた。あとで主に聞こうとそう
思っていると、主がシュワルーズに指差された。
「そうですね ではミス・ヴァリエール!」
「は、はい!」
「あなたに錬金で小石を望む金属に変えてもらいましょう」
「わ、わかりました」
ルイズはつかつかと前に出ていく。
ウォルターは困った。これでは何かあったときに守れないではないか。だが、先ほどしたことをするだけなら危険はないだろう。
そう考えてウォルターは見守ることにしたのだが、生徒たちの様子がおかしい。
皆椅子の下に隠れたり机に隠れたりしている。青髪の子にいたっては教室から出ていって
しまった。さきほど身を乗り出していた赤髪の子が何事か教壇に近づくルイズに言ったが
無視されてしまっていた。「やめて」とか聞こえたがどうしたのだろうか。
ついにルイズが先生の机にたどり着き、ルーンを唱えつつ先ほどの先生と同じことを行う。
だが、杖を振り下ろした次の瞬間、机ごと石ころは爆発し、教室は阿鼻叫喚の大騒ぎとな
った。
- 89 :
- 「ッ!! お嬢さま!!」
すぐに、元、と呼ぶしかないほど原形をとどめぬ教壇の机の場所に駆け寄る。よかった、
ルイズは無事のようだ。服がところどころ破けているがけがはなさそうだった。
だが魔法の結果はどうみても失敗だ。それも大失敗。
落ち込んでいるのでは?と主の方を見やると違った。
ルイズは余裕たっぷりに
「ちょっと失敗みたいね」
そうのたまったのだ。当然、ほかの生徒たちから猛然と反撃を食らう。
「ちょっとじゃないだろ!ゼロのルイズ!」
「いつだって成功の確率ゼロじゃないかよ!」
ウォルターは悟った。どうしてルイズが『ゼロのルイズ』と呼ばれているかを。大騒ぎの
周囲の様子を見て、どうやらこの新たな主とは大変そうだと予感せずにはいられなかった。
- 90 :
- これで03終わりです。04は
03と量が同じくらいあるので
次の晩にまとめて出します ではまた
- 91 :
- 乙です!
さるさんだったら1時間程度で解除されるそうですよ
ttp://info.2ch.net/wiki/index.php?Good-By_Monkey
- 92 :
- しょるたー乙乙
- 93 :
- ショルターの人乙
過去ログざっとみたがpart付けなくても話数表記だけで大丈夫ですぜ
- 94 :
- >>91,93
指摘どうもありがとうございます。
よければ何かあったらこれからも指摘してください。
では04話投下します。
- 95 :
- 第四話 決闘
ミスタ・コルベールは急いで学院長室へ向かって走っていた。一刻も早くこの事実を伝え
なくてはと思うと足に自然と力が入る。やがて学院長室の扉の前につくと勢いよく開け放
つ。幸いオールド・オスマン一人だけのようだ。
「オールド・オスマン!」
「なんじゃね、騒々しい」
「たた、大変です!」
「大変なことなどあるものか。すべては小事じゃ」
「ここ、これをみてください!」
「む?この書物がどうかしたのかね?」
「これも見てください」
そういうとコルベールはウォルターの左手に現れたルーンのスケッチを渡す。
「!! 詳しく説明するんじゃ。ミスタ・コルベール」
- 96 :
- そのころウォルターはルイズがめちゃくちゃにした部屋の片づけをしていた。片腕にも
かかわらず、てきぱきと掃除をしていく。あっという間にがれきは姿をけし、チリひとつ
ない教室となり、教壇の机がない以外は授業の時よりもきれいになっていた。ルイズも手
伝っていたがあまりの手際の良さに驚いている間に終わってしまっていた。もう少し手伝
いたかったと思うほどウォルターの手際ははやく、見事だった。
「さ・・・さすが執事ね す、すごいじゃない」
「いえいえ この程度、元の世界にいたころに比べれば掃除のうちにも入りません」
「へ、へえ そう。」
若干ルイズが引いていたがウォルターは気にせずせっせとゴミをまとめていく。
掃除を終えるとウォルターはふと気が付く。ルイズの表情が少し暗い。先ほどの失敗が
影響しているのだろうか。いつもの高慢そうな顔はすっかり影に潜んでいる。
(少し励まそうかな)
そう思いウォルターはルイズに向かって口を開く。
「ルイズお嬢さま。少しよろしいですか。」
「な、なによ」
- 97 :
- 声を掛けられ我に返ってウォルターを見つめるルイズ。そんなルイズに優しくウォルター
は言葉を続ける。
「重要なものは二つ。経験と目標です」
「え、ええ」
「どちらも密接な関係です。経験は決して無駄にはなりません。
経験は積めば積むほど財産になります。失敗してもあきらめずになにかを目標とし進む
ことは大きな経験となり目標に近づく確実な一歩となるのですよ」
「・・・・・・」
「成功からは何も学びません 失敗から私たちは学ぶのです。」
励ましてくれているのだろうか。ルイズは下を向いて考える。
どうして自分とさほど違わないはずの少年がこんなことを言えるのだろう?
自分もできるだろうか。みんなに認めさせることを。ううんウォルターが
さっき言っていたじゃない。あきらめなければ目標へ近づけるって。
そう考えるとやる気があふれてきたルイズはお礼を言おうとウォルターを向き直る。
- 98 :
- だが、ルイズは礼を言いそびれてしまった。目の前の少年の姿が違って見えてしまって
いたのだ。驚いてまばたきをしてもう一度よく見てみると目の前には元の少年がいたが
一瞬、目の前の少年が少年ではなかった気がしたのだ。
(・・・・さっき、大人みたいに見えたわね。変ね。気のせいかしら?)
戸惑うルイズの様子が先ほどとは違い、明るいものになったと感じたウォルターはにっ
こりとルイズに笑いかけた。
「さて、ルイズお嬢さま」
「なに?」
「掃除が早く終わったのでお昼にしてはいかがですか?」
「そうね 行きましょう」
ウォルターは安心した。機嫌がよくなったようだ。よかった。やはり、いつも
の主が一番主らしい。
- 99 :
- 食堂についた後、ルイズに食事と昼休みの間少し調達したいものがある、と言って時間
をもらってウォルターは外に出た。
日の光は強くはなかったがそれでもつらいことには変わりない。
日光はなんとか皮膚を再生し続けることでしばらく平気になってはいるが、それでもな
るべく再生力を消費しないよう、日陰を歩きながらウォルターは厨房に向かっていた。
とりあえず今、必要なものが二つある。替えの服と棺桶だ。
二つとも単純な理由から必要だった。
まず替えの服がなければ主人に迷惑がかかる。同じ服を着続けるのも限界がある。今の
執事服はところどころ見えないところにこの世界に来る前についた血の跡があった。医
務室で服を洗ってくれたらしいがいつまでもつかわからない。
棺桶はもっと単純、棺桶で寝なければ力が弱まる一方だからだ。
吸血鬼は棺桶で寝なければ力が弱まる。あの吸血鬼と同じことをする羽目になったのは
腹立だしいが、自分の弱さのせいで主が危機にさらされるのはもっと腹立だしい。
必要なのは布と木材だ。厨房になら布と薪があるだろう、そう思ってウォルターは厨房
へと入っていった。
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