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2012年2月創作発表59: ジョジョの奇妙なバトルロワイアル3rd第二部 (305) TOP カテ一覧 スレ一覧 2ch元 削除依頼
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ジョジョの奇妙なバトルロワイアル3rd第二部


1 :11/12/25 〜 最終レス :12/02/04
               __       \
         l` ー=ニ--\ノ\  _/  こいつに
        「¨ /  / ,.、 \〈 `ヽ、  ジョジョの奇妙なバトルロワイアル3rdを
       /, 〈 i'´/l / jノヽ i ヽ  ) 読ましてやりたいんですが
        〈// ,ノ ,≧! i  ,.ィォレi  |  /  かまいませんね
         V/! ヽtツV / i、ヒリ l / _/  !!
        ,.┴v'、     ヽノ    j‐{  ヽ
 .     { ,ヘ !. ',   ,ィニ:、  /ri l   )
       ヽニl ',   { Y`l /レ'  ∠ -──- 、   _
            ト、  ヽニフ /          ___∨´   ̄\
         /i  丶、  _./l        ,ィ::´:::::::: ̄:¨゙丶
       /l \   ̄ / l、      ,人:_:::::::::::::::::::::::::::\
    ,.--='フ / !   \_ /  l \     ト、_ `ヽ:::::::::::::::::::::::ハ
 /ヽ    /  l、  /lー-、 j  ト、.,__ /¨i:r‐‐ヽ. \::/::::/::/:::i
     ∨´ ̄フ l ヽ/  ト、/ ∨l   l r-、 \./ i'tiハ ',  ノ::ノ::::/::::::l
 ´)   ',ヽ_〈  i     l::::l   l ヽ i._ノ l ノ  `ー' _ V'" /:ノ:::::::::!
   ,  V  ヽ  ',   i:::::l   ,'  /  / 〉 i   〈 ノ ヽノ イ:/:;/
   i ,-、 i  i´\ ヽ  l:::::::l / /¨} _ノ  i∧ f‐)   l >イ¨
   l ! _j l ` ̄  ヽ \::::::::l/ // /!  l\ ヽ--‐ T¨ /ノ
 、     /i     \ ヽ::://i  / }  i/   // ./ i
  V´ヽ  l  i⌒ヽ  Lヽ.V__//´i   i  l   /::/___/ {
  l   l   !  ヽ-'   __ i /   Lノ ,.---‐つ::::::/l /  /
  l、_ノ .r‐l     /_i/__  ./  ´ ̄ニ⊃./  /
このスレでは「ジョジョの奇妙な冒険」を主とした荒木飛呂彦漫画のキャラクターを使ったバトロワをしようという企画を進行しています
二次創作、版権キャラの死亡、グロ描写が苦手な方はジョセフのようにお逃げください
この企画は誰でも書き手として参加することができます
詳細はまとめサイトよりどうぞ
まとめサイト
http://www38.atwiki.jp/jojobr3rd/
したらば
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/15087/
前スレ
ジョジョの奇妙なバトルロワイアル3rd第一部
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1322211303

2 :
名簿
以下の100人に加え、第一回放送までは1話で死亡する(ズガン枠)キャラクターを無限に登場させることが出来ます
Part1 ファントムブラッド
○ジョナサン・ジョースター/○ウィル・A・ツェペリ/○エリナ・ジョースター/○ジョージ・ジョースター1世/○ダイアー/○ストレイツォ/○ブラフォード/○タルカス
Part2 戦闘潮流
○ジョセフ・ジョースター/○シーザー・アントニオ・ツェペリ/○ルドル・フォン・シュトロハイム/○リサリサ/○サンタナ/○ワムウ/○エシディシ/○カーズ
Part3 スターダストクルセイダース
○モハメド・アヴドゥル/○花京院典明/○イギー/○ラバーソール/○ホル・ホース/○J・ガイル/○スティーリー・ダン/
○ンドゥール/○ペット・ショップ/○ヴァニラ・アイス/○ヌケサク/○ウィルソン・フィリップス/○DIO
Part4 ダイヤモンドは砕けない
○東方仗助/○虹村億泰/○広瀬康一/○岸辺露伴/○小林玉美/○間田敏和/○山岸由花子/○トニオ・トラサルディー/○ヌ・ミキタカゾ・ンシ/○噴上裕也/
○片桐安十郎/○虹村形兆/○音石明/○虫喰い/○宮本輝之輔/○川尻しのぶ/○川尻早人/○吉良吉影
Parte5 黄金の風
○ジョルノ・ジョバァーナ/○ブローノ・ブチャラティ/○レオーネ・アバッキオ/○グイード・ミスタ/○ナランチャ・ギルガ/○パンナコッタ・フーゴ/
○トリッシュ・ウナ/○J・P・ポルナレフ/○マリオ・ズッケェロ/○サーレー/○プロシュート/○ギアッチョ/○リゾット・ネエロ/
○ティッツァーノ/○スクアーロ/○チョコラータ/○セッコ/○ディアボロ
Part6 ストーンオーシャン
○空条徐倫/○エルメェス・コステロ/○F・F/○ウェザー・リポート/○ナルシソ・アナスイ/○空条承太郎/
○ジョンガリ・A/○サンダー・マックイイーン/○ミラション/○スポーツ・マックス/○リキエル/○エンリコ・プッチ
Part7 STEEL BALL RUN 11/11
○ジャイロ・ツェペリ/○ジョニィ・ジョースター/○マウンテン・ティム/○ディエゴ・ブランドー/○ホット・/
○ウェカピポ/○ルーシー・スティール/○リンゴォ・ロードアゲイン/○サンドマン/○マジェント・マジェント/○ディ・ス・コ
JOJO's Another Stories ジョジョの奇妙な外伝 6/6
The Book
○蓮見琢馬/○双葉千帆
恥知らずのパープルヘイズ
○シーラE/○カンノーロ・ムーロロ/○マッシモ・ヴォルペ/○ビットリオ・カタルディ
ARAKI's Another Stories 荒木飛呂彦他作品 5/5
魔少年ビーティー
○ビーティー
バオー来訪者
○橋沢育朗/○スミレ/○ドルド
ゴージャス☆アイリン
○アイリン・ラポーナ
参戦部未定
○ロバート・E・O・スピードワゴン

3 :
名簿忘れてたごめんねごめんね >>2

4 :
クレイジー・乙・ダイヤモンドユカイ

5 :
スレ立て乙です。
前スレにていただいたご指摘を踏まえまして後日wiki収録します。
相変わらず書き込みの調子が不調……orz

6 :
スレ立て乙

7 :
スレ立て乙です

8 :
もう2スレ目とか早過ぎだろ〜ッ
乙です

9 :
そういえば今日で開始一ヶ月ですね
ものすごいペースw

10 :
wiki収録しました。不足がありましたらご指摘ください。

11 :
トリッシュ・ウナ、ウェカピポ
前スレから引き続いて投下します。

12 :

 アメリカ国民としての市民権と地位が保証されるはずだった任務にも失敗したといえる。
 タッグを組まされたマジェント・マジェントは死に、オレはジャイロ・ツェペリを越えることができなかった。
 慢心を捨て、着実な戦いをし通したとしても、運命の女神はどちらかにしか微笑まない。
 それをわかっていながら、ルーシー・スティールを護ってほしいという願いを聞き届けたのは、まだ巻き返すことができると、愚かしくもどこかで考えていたからだ。
 その後、なにが起きた?
 ルーシー・スティールの居場所を探るため市庁舎の周辺を張っていたところだったはずだ。
 不自然に制止していた馬車を見つけた瞬間、──暗転。
 気が付けば、護るはずだったルーシー・スティールの夫、スティーブン・スティールが『し合え』と、信じられないようなことを宣言していた。
 今度こそ、盾にしてきた『信条』や『正しさ』のようなものは消え失せた。
 オレはいつでも正しく思える大多数の味方であろうとし、その都度坂道を転がり落ちてきた。
 今のオレはどこにも属さず、誰にも与しない。
 かといって、強い情熱や信条もない。
 オレが護ろうとしていたものは、消え失せてしまった。
 誰が正しいのかもわからない。行き場所はない。帰る場所もない。
 オレの居場所は、もう、完全に……。
 闇雲に歩いてきた途上、歌が、かすれたアルトがきこえてきたのは、そのときだった。
 * * *

13 :

 声は近くに見える小屋の方からきこえた。周囲にはばかるようにひっそりとおさえられている。
 すぐそばを通りかからなければ気付けなかっただろう。
 そっと、歩み寄る。
 薄暗い小屋の中、物音はひとつしかない。デイパックの中身を確認しているようだ。
 彼女は歌っていた。
 低くかすれたアルトが、ゆったりとした甘美な旋律を紡ぐ。
 若々しく伸びやかな声は、同時にいたいけで今にも壊れてしまいそうな儚い響きも宿していた。
 どうして自分が耳聡くも歌に引き寄せられたのか、そばできいてわかった。
 彼女の歌声には懐かしい響きがある。
 下品でやかましいアメリカ人の口調ではない、故郷ネアポリスの言葉。なめらかで暖かな響きにオレは惹かれたのだ。
──ナポリターナ──
 幻想的な情景に、郷愁の念を重ねながら漁師が海をゆく。
 彼が愛し、彼の帰りを待っているその土地は、美しい故郷ネアポリス。
 耳にしていながら、娯楽など必要ないと、頑なに興味を持たないでいた歌。
 なぜ、いままで不要なものだと決めつけていたのだろう。
 雪がいつの間にか溶け、春を実感するように、つまらない思い込みはすっかり消えていた。
 誰もが不条理の中で生きている。歌を聴いてもそれが解決されるわけではない。
 けれど人はおそらく、歌に自らの思いを託し、明日への活力とするのだろう。
 それを、今、はじめて理解した…………。
「オレの、故郷の歌なんだ……。
 なんという曲なのか、教えてもらえないだろうか?」
 一つしかない扉の方向を、少女は緊張した眼差しで見つめた。
 やがて、微笑み、彼女は手招きをする。
 戸口に佇む男の頬は、静かに濡れていた。
 * * *

14 :

 小屋にオレを招き入れた少女は、名をトリッシュといった。
 突然の来訪者に対して過剰に緊張することもなく、彼女は落ち着き払っていた。
 過去を悔い、道を見失っていたオレより、彼女は精神的にずっと年上のように感じられる。
 『なぜ危険を省みず歌っていたのか?』というオレの質問に、彼女は『少し長くなるわ』と答えた。
 それから語られた彼女の波乱に満ちた半生。
 母親の急、父親からの意、信じられる仲間たち、父親との訣別、新しい生活を始めようとした矢先の『し合い』。
 肉親に裏切られたというわりに、父親のことを話す彼女は淡々としており、もう過ぎたことと受け止めていることがわかった。
 かわりに、彼女の瞳が壮絶の色を帯びたのは、仲間との別れを語ったときだった。
「あたしのために彼らが死んだのだと思うと辛かった。やりきれなかった。
 なにも知らないで、あたしなりに必死だったことさえもバカバカしく思えて、すべてにやる気がなくなったの。
 あたしは護られるに値する人間だったのかしら。
 ボスの娘だというだけの、特別な力も、誰もが手をさしのべたくなるような性格でもない、ただの娘に彼らはなにを見出したのかしら。
 どうしてあたしが生き残って、彼らが死んだのかしら、って。
 彼らの葬儀がすんで、しばらくは落ち込んでいたわ。
 自分に価値があると思わなきゃいけない。でも思えない。
 そうやって鬱ぎ込んでる自分に、もっと自信がなくなっていって、どんどん悪い方に考えてしまって。
 でも、あるとき気付いたの。いいえ、気付かされたの。
 彼らはね、彼らが信じることのために命を懸けたの。
 あたしはそのきっかけにすぎなかった。
 あたしがあらわれる前から、彼ら、いいえ、彼は悩んでた。
 ずっとずっと、自分の中の正義が失われていくことに悩んでいたのよ。
 正しいと思うことを言い出せないで、心だけが死んでいくの。
 それって死ぬより辛いことだと、今では思うわ。
 あたしが哀れな娘だから護ってくれたんじゃない。
 自分の中の正義に殉じたんだって。
 あたしが護られていたのは、あたしが生き残ったのは、その結果でしかなかったのよ。
 彼が悩んでいたことを知って、彼がどうして死んだのか理解したとき、ふっと心が楽になった気がした。
 正しいことを正しいっていいたいのはあたしも同じだって。
 あたしも彼らと同じだった。誰も、特別じゃなかったのよ。
 だから……、たとえし合いを命じられて、それを強要されたとしても、正しいと信じることをしたい。
 私の愛した人たちに恥ずかしくない人間でいたいから」

15 :

「羨ましいことだ……」
「え?」
「オレの周りには、君の友人たちのような人種はいなかった」
 彼女のすがすがしい瞳に、思い返すも恥ずかしいが、オレは憎しみを抱いた。
 嫉妬していたのだ。若干16歳の少女に対して。
 それからオレが吐き出した言葉は、現状を打開するための情報などではなく、後悔と恨みばかりだった。
 妹の夫を責め、ネアポリス王国を責め、アメリカ合衆国を責め、ジャイロ・ツェペリを責め、スティーブン・スティールを責めた。
 汚い感情に汚い言葉。話の繋がらない箇所も多かっただろうか、彼女はほとんど質問を挟まず、オレの話を聞いていた。
「ウェカピポさんは、これからどうするつもり?」
 しばしの沈黙の後、彼女が口を開いた。
 試しているような挑みかかるような目をしていた。
「話したとおりだ。オレには行く場所もなければ、目的もない。
 死にたくはないが、生き残れるほどの強運を自分が持ち合わせているとも思えない。
 スティーブン・スティールの真意もオレにはわからない。
 つまり、なにも展望がない。
 …………トリッシュ、君が良ければだが、君の護衛をさせてもらえないだろうか」
「そうくると思った。お断りよ」
「なぜ?
 巻き込まれた人々がみなし合いに積極的だとは思わないが、ひとりでいることがどれほど危険だと思う。
 オレの次に会う人間は、有無をいわさず君をすかもしれないんだぞ」
「あたしの問題じゃない。ウェカピポさんの問題よ。
 偉そうなこと言うと思うでしょうけど、言うわ。
 他人を傷つけてでも正しいことをしようとしたら、心から信じられることでなければ、必ず後悔すると思ったの。
 誰かを護ることも正しいことなのかもしれない。
 でも、自分が正しいと思えることを見極め続けなければ、なにを護っているのかわからなくなってしまうって、あたしはそう思うわ。
 だから迷ってるウェカピポさんには、護ってもらいたくない」
 正論を述べることは難しい。
 無知は子供の目を曇らせ、保身は大人の口を重くする。
 彼女は本当に辛い経験を乗り越え、成長してきたのだ。わがままではない意見を、必要あらば誰にでも伝えられるほどに。

16 :

「…………君は、大人、なんだな。オレなんかよりよっぽど」
「尊敬できる、いい友人に囲まれていただけよ」
「……………………」
「そうね……もし、ウェカピポさんが、年齢や性別のような差を問題に思わない人ならの話よ。
 その……、あたしが『彼ら』みたいに、あなたにとってのいい友人になれたら、嬉しく思うわ」
「…………!」
 少し照れたようにトリッシュは視線を逸らしている。
 分不相応なことをいってしまったとでも思っているのだろうか。
 オレが、どれだけ驚いているのか考えもしないで。
 彼女の言うとおり、オレはなにかを護ることで自分が正しくあろうとし、そのたびに後悔を重ねてきた。
 自分でも嫌気がさすようなこのオレに、彼女は心から信じられるものを見極めろと言った。
 主と護衛という関係ではなく、友人同士になれるのなら、嬉しいと。
「オレは…………まだ迷っている…………。
 だが、ここを脱出して妹に再び会いたい。
 そして今度こそ自分が正しいと信じられることを選び取りたい。
 そのために、君に協力したい。かまわないだろうか?」
「そういうことなら、もちろんよ」
 差し出された手は小さいが、暖かかった。
「……なぜ、歌っていたのか、って聞いたわよね?
 あたし、怖かったの。
 すべてはあのとき終わったんだと思いたかった。夢ならば醒めてほしいって願った。
 自分が育った街を思い出したら、少し勇気が湧いてきた。
 偉そうなこといってごめんなさい。
 あたしも怖くてしょうがないの。誰かにされることも、自分で自分の気持ちを裏切ることも。
 でも仲間がいれば平気よ」
 トリッシュが笑う。
 その表情はどこか、遙か遠い故郷の妹に似ていた。
 嫁入りの話が出る前の、海を見たことがなかった頃の彼女の微笑みに。
「それで、これからどうするつもりだ?」
「……まず、ウェカピポさんの話をきいていて疑問に思ったところを確認したいわ。
 『ネアポリス王国』ってなにかの組織名?」
「…………?
 オレの祖国、つまり国の名前ということになるな」
「ネアポリス……ナポリはイタリア、カンパニア州の県。国じゃあないわ。
 あたしはイスキアの出身だから、間違えるはずない」
「オレは、君が街の暗部の話をしているから認識がずれているのかと思っていた。
 まさかオレが離れているうちにネアポリス王国は滅亡を……?」
「ナポリ、というか両シチリア王国は1861年にイタリアに併合されたんだったわよね。
 だとしたら、ウェカピポさんはとんでもなく若作りなおじいさんか、『過去から来た人』になっちゃうわ」
「オレは1859年生まれの31歳だ」
 『両シチリア王国』『イタリア』聞き慣れない単語が並んだ。
 気色ばむトリッシュに対し、当然のことを言ったまでだったが、それをきいた瞬間彼女の表情はさらに色を失った。

17 :

「…………!?
 ちょっと待って、今年は2001年でしょう?」
「…………オレの認識では、1890年だ。
 冗談を言っている顔ではないな。どういうことだ……」
「まさか……、場所も人の命も、この世界という概念自体をも、自由に扱うことのできるスタンド……?
 それならほかのいくつか引っかかったところも、説明はつくわ。
 だけど…………それは…………」
「ああ……、人の身には過ぎる能力、と思いたいものだ。
 ひとりの人間の仕業とは考えたくない……」
 小屋内の空気が急に冷えだしたように感じた。
 口の中が乾き、嫌な汗で手がぬめる。
「あなたの知り合いのスティーブン・スティールという男が、黒幕なのかしら」
「彼についてはグレーだ。
 先ほどは彼を否定したが、彼に直接会ったことはない。
 きいていた情報と今回の件とで印象が違うのもまた事実」
「そう……、敵については未知数ってことね」
 ふぅーっとため息を吐いたトリッシュの眉間にはシワが寄っている。
 怯えだろうか。彼女のまつげの先が微かに震えて見えるのは。
「された3人に見覚えは?
 3人ともオレの知り合いではなかった」
「されたうちの1人は、あたしの友人だったジョルノ。ほかの2人は知らないわ」
「それは…………」
「大丈夫。辛くないといったら嘘になるけど。
 ……ステージ上で3人がされたとき、あたしは父が実は生きていたのかと思った。
 おかしいと思われるかもしれないけどね、あたしは父の『気配』のようなものを感じることができるのよ。
 さっき、ステージが見える場所にいたとき、あたしはたしかに父の『気配』を感じた。
 あのとき、父は逃げ延びていて、ジョルノやあたしたちに復讐しに来たんじゃあないかと」
「つまり裏にいるのは君のいうギャングの首領だった人物で、アメリカ合衆国との連携までして、関係者をし合いの舞台に立たせたと?」
「いいえ、それはないと思う。
 ついさっきあたしは、おそらく父の、『気配』が消えるのを感じた。
 つまり、父のような人種でさえ、『巻き込まれた』側に属するのよ。
 最初から父ではなく、父に類する人間だった可能性もあるけれど。
 あたしが恐れているのは、父よりももっと邪悪で、あのジョルノを軽々と拉致してせるような人間がいるってこと」
 トリッシュの視線が薄暗い小屋の天井を仰いだ。
 そこは濃い闇に支配され、天井の木枠はほとんど見えない。
「結局は、事情を知っているヤツを探して、できるかぎり協力関係をつくるしかないだろう。
 ジャイロ・ツェペリやジョニィ・ジョースター、ほかにもこの『し合い』自体について思うところのあるヤツが参加させられている可能性は高い。
 余計な消耗をしないうちに、積極的に関わっていった方がいいだろうな」
「同感よ。あたしにとって、頼りになる友人はもうひとりしか残っていないから」

18 :

 グイード・ミスタ。彼女が特別に信頼を置いている人物。
 お互い、負傷のないうちに出会うことができればいいが……。
「トリッシュ、出発前にひとついいか。
 オレには武器がない。いつも所持していたはずの鉄球は取り上げられてしまったらしい。
 紙に記されていたのも、武器にはなりえないようなものだった。
 君に銃火器があるなら貸してもらえないだろうか?」
「そうね、あたしはスタンドがあるからいいけど……。
 ごめんなさい。紙を開いてみたけれど、こんなものしか入ってなかったの」
 デイパックをごそごそさせ、トリッシュが彼女の支給品を取り出す。
 それは風変わりな模様の入った鉄球だった。
「『ジャイロ・ツェペリの鉄球』って紙には書いてあったけど、あたしにはよくわからなかったわ。
 一発勝負になるけど、なにもないよりマシかしら?」
 トリッシュはその手で鉄球をもてあそんでいる。
 彼女は知らない。ネアポリス王国に伝わる技術を。
 オレやジャイロ・ツェペリが辿った運命を。
 鉄球を受け取る手は震えていた。
 もし、一番最初に出会った人物がトリッシュでなかったのなら、オレはなにも見出せないまま、ボロ雑巾のようになって死んでいただろう。
「いや、いい。これで、十分だ。
 感謝しよう、トリッシュ…………」

19 :
【G-5 トウモロコシ畑 小屋内 一日目 深夜】
【トリッシュ・ウナ】
[スタンド]:『スパイス・ガール』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』ラジオ番組に出演する直前
[状態]: 健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:し合いを止め、ここから脱出する。
1.ミスタ、ジャイロ、ジョニィを筆頭に協力できそうな人物を探す。
2.あのジョルノが、された……。
3.父が生きていた? 消えた気配は父か父の親族のものかもしれない。
4.二人の認識が違いすぎる。敵の能力が計り知れない。
【ウェカピポ】
[能力]:『レッキング・ボール』
[時間軸]: SBR16巻 スティール氏の乗った馬車を見つけた瞬間
[状態]: 健康
[装備]:ジャイロ・ツェペリの鉄球
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:トリッシュと協力しし合いを止める。その中で自分が心から正しいと信じられることを見極めたい。
1.感謝する……トリッシュ……。
2.ミスタ、ジャイロ、ジョニィを筆頭に協力できそうな人物を探す。
3.スティール氏が、なぜ?
4.ネアポリス王国はすでに存在しない? どういうことだ。
【備考】
トリッシュの支給品は『ジャイロ・ツェペリの鉄球』のみでした。
ウェカピポの支給品は武器にはならないものです。

20 :
以上で投下完了です。
タイトルは「遥かなるサンタルチア」
誤字脱字、矛盾等ございましたら、ご指摘をお願いします。

21 :
投下乙
予約された時からウェカピポがトリッシュの護衛することになるのかと思っていたけど、友人ってのはいいな……
ドキッ☆イタリア人だらけのジョジョロワ3rd 〜ポロリもあるよ〜
自分が見つけた誤字は前スレ>>473の読点重なりのみ
>オレが引き合わせた夫は、仕事をこなす能力に関しては申し分なかったが、、妹を

22 :
投下乙です
帰る場所をウェカピポは今度こそ見つけられるのだろうか

23 :
シュトロハイムさんは気さくで豪快な人だった。少し高慢ちきで無神経なところもあるけどその率直さが今の僕をホッとさせた。
身の丈に合わない期待、過剰なプレッシャー。もしシュトロハイムさんもそんな風に僕を扱っていたらさぞかし参ったと思う。
シュトロハイムさんにとって僕は単なる日本人の少年、僕に対してああだこうだと望むようなことはしない。ただの一人の人間として、等身大の僕でいられる。背伸びしないでいいことが僕の肩の荷を下ろしてくれた。
「なァに、康一ィ! 貴様は何ぞ悪いことはしとらん、少年は少年らしく健全にまっとうに、大船に乗った気でいるがいいッ
 し合いなんぞにこのシュトロハイム、そしてわれらが同盟国民を巻き込んだ事を後悔させてくれよォオオ―――――ッ!!」
シュトロハイムさんは何を考えてるのか……。こう言ったら失礼かもしれないけど、もしかしたらなんにも考えてない人なのかもしれない。
けどその見た目の奇天烈さ、常に高いテンションからは想像もできないぐらい実際頼りになる人だ。凄い人だと思う。
玉美さんがいなくなった後、僕らは互いに話した。それは主にこの数時間何があったか、だった。
僕が話に詰まった時、シュトロハイムさんは上手く言葉を引き出してくれた。うまく要点をつかみ、情報を整理し、僕の言いたい事はだいたいは理解してくれたみたいだった。僕自身、ほとんど言うべきことは言えたと思った。
シュトロハイムさんと話をして驚いたのは、スタンド使いでないシュトロハイムさんにスタンドが見えるようになっていたことだ。何故だか僕にはわからなかったけど、ここではだれでもスタンドが見えるようになってると考えたほうがいいかもしれない。
それと、シュトロハイムさんが話してくれた話はびっくり仰天の連続。柱の男、波紋使い、石仮面、エイジャの赤石……。僕自身がスタンド使いでなければきっと正気を疑っていただろう。それだけぶっ飛んだ話だった。
「気ィイイイになるぞォオオオ!! スタンド、未知の可能性ッ 異なる能力、常人には与えられぬ天武の才能ッ
 であるならば我ら崇高なるゲルマン民族にスタンドを授けることが不可能であるはずがないッ
 なぜならァアア……ドイツの科学力は世界一ィイイイ―――ッ!
 スタンド能力の分析と研究による人工的能力開発……、フフフ……もしこれができたならば戦線は拡大、そして…………」
シュトロハイムさんはスタンドのことを考えてるのか、ゲルマン、スタンド、待ちきれないッ と小さな声で呟き、ニヤニヤしていた。
僕はそんな横顔を見ながらどこまでこの人を信頼すればいいんだろうかァ、と悩んでいた。
シュトロハイムさんが悪人だとか信用できない、ってわけじゃあない。僕を助けてくれたし、一人の人間として僕に敬意を示してくれてる。
簡単なようだけどし合いの中でそれをするってのはなかなか簡単ではないと思う。とても立派で尊敬できる人だ。
けど少し“おかしい”のだ。
今は1999年だし、戦争なんて歴史の教科書に載るぐらい昔の事。日独伊なんちゃらかんちゃらなんてものはもはや存在しないし、アドルフ・ヒトラーはとっくに死んでいる。
シュトロハイムさんの言っていることはめちゃくちゃだ。
それに加えてその体は機械で作られていて、まるで漫画やアニメのサイボーグみたいだ。僕の知る限りじゃ最近ようやく二足歩行のロボットができたとかできてないとか、そのレベルだったはずなのに。
本人いわく ドイツの科学力は世界一ィイイイ―――ッ! だ、そうだけれども。
はたしてシュトロハイムさんは何者なんだろうか? 一体どこまで信じればいいのだろうか? 全部作り話なのだろうか。それとも僕を笑わせるための悪趣味なびっくりなんだろうか。
……違う。僕は即座に自分の思いつきを否定する。とてもじゃないが冗談ではない、それだけは断言できる。
シュトロハイムさんは言っていた。一番最初、ホールでの事、シュトロハイムさんの友人があの首輪を爆破された三人のうちの一人だったらしい。
快活で、いつも騒がしいシュトロハイムさんがこの時ばかりは神妙で真剣な顔つきになっていた。友人の死を語る軍人の顔になっていた。
そんな人がめちゃくちゃな嘘をつくだろうか? ありもしない作り話を大真面目に語るだろうか?
僕も名前と顔を知っている空条承太郎さんが目の前でされたことは相当ショックだった。今でも信じられないぐらいだし、仗助君のことが心配だ。
人の生き死には決して冗談で済まされない。死んだ人のことを想って、今を生きているシュトロハイムさんのことを信じたい。

24 :
けれど釈然としないんだ。僕は今、混乱している。
どうすればいいんだろう? 一体何が起きてるんだろう? シュトロハイムさんはいったい何者で、なにがどうなってるんだ?
「止まれィイイイッッッ!」
突然の大声に、文字通り僕は飛びあがった。
見るとさっきまでニヤつき顔だったシュトロハイムさんは険しい顔で橋の向こうに広がる暗闇を睨んでいる。
「警告だッ それ以上近づくようであれば30mmの鉄板をも貫く重機関砲が貴様らをハチの巣にするぞォオオオ―――ッ!
 ……康一、車のキーが俺のポケットに入っておる。タンクローリーのライトをつけてきてくれないか」
僕にだけ聞こえるように出された指示に従い、僕はタンクローリーに向かう。車を運転している両親の姿を必死で思い出し、ああでもない、こうでもないと悩みながらもなんとかライトをつけることに成功した。
     ピカァアアアア―――……ッ
ライトに照らされ、姿を現したのは二人。
一人はテンガロンハットをかぶった、まるでカウボーイのような恰好の男の人。ルックスもイケメンだ。
もう一人も負けず劣らずのハンサムな学生。バッチリと決めた学ランを着、首から下げたスカーフがとても似合っていた。
突然の光に反射的に二人は手をかざし、眩しそうに目を細めていた。
「まずは名乗ってもらおうかッ 忘れるなよ、余計な事を言おうものならすぐさま撃つぞッ」
「マウンテン・ティム、保安官だ」
「……墳上裕也」
役に立つのか、足を引っ張ることになるのか。今の僕は正直どっちだろうか。
ただの子供でありながら、普通の子供とは違いスタンドという不思議な力が使える。けれどもその不思議な力というのはたかが音を張り付け、相手を惑わしたりだます程度の、ちっぽけな能力。戦力と呼ぶには心もとないんじゃないか……。
結局僕はシュトロハイムさんの後ろに立ち、何か起きたとしてもすぐに行動できるよう、気持ちだけは準備しておくことにした。
シュトロハイムさんならすべき事があればすぐに指示をくれるだろうし、邪魔になりそうだったらはっきりそう言ってくれるだろう。
子供は子供らしく。シュトロハイムさんの言った通り、僕はまだ大人に頼るべき少年なんだ。
「……康一? おい、康一じゃねーかッ!!」
その時、タンクローリーの光に目が慣れたのだろう、煌々とライトで照らしだされた内の一人が突然声をあげた。
見ると高校生らしき男の子が僕のほうを向き、叫んでいる。銃を突きつけられている以上、動くことはできないが、僕のほうを確かに見て嬉しそうな顔をしている。
だけど僕には全く心当たりがなかった。彼とは一切面識がなかった。覚えている限りじゃ、僕は“今”初めて彼と会ったはずなんだけれども……。

25 :
そもそも僕の高校生活は始まったばかりで、クラスメイトの顔もまだ覚えきれていない。友達どころか、知り合いすらまだまだ少ない段階なのだ。
クラスのみんなは僕のことを広瀬とか広瀬君、って呼ぶし康一、なんて親しげに読んでくれるのは覚えてる限りじゃ仗助君ぐらいなもんだ。
シュトロハイムさんが顎を撫でながら僕のほうをちらりと見た。きっと僕が困っているのが顔に出ていたのだろう、声をかけてくれた。
「知り合いか?」
「……いえ、多分ちが……――」
「この不届きものォォオオオオ――――ッ!! 我々を騙そうとしてもそう上手く事は運ばんぞォオオ―――――ッ!!」
「は、何言ってんだよ、お前! 俺だよ、忘れちまったのか?
 そりゃ確かにおめ―とは実際つるんだり、一緒に飯食ったりするようなことはしなかったけどよォ、一緒に戦ったじゃねーか!
 あのクソゲスな紙使い! 仗助が本にしちまったスタンド使い! 覚えてねーのかよッ!?」
そっからさきは訳がわからなかった。彼の言うことには全く覚えがなかった。けれども何故だ変わらないけど全部が全部、嘘じゃなかった。
僕と仗助君に関して、杜王町について、ぶどうヶ丘高校について、承太郎さんについて、虹村億泰君について。
その一方で僕がまるで知らないことも次々と話題に出てくる。
人鬼”吉良吉影、“超人気漫画家”岸辺露伴、弓と矢について、僕のスタンドとその能力。
何より一番驚いたのは山岸由花子という女の子についてだ。
彼女は僕のことが好きらしい。そして僕も彼女のことが好きで、なんと付き合っているらしい!
この僕が、女の子と付き合っているッ!? 墳上君の言葉を信じるならば自分のことらしいんだけれども、とてもじゃないが信じられない……。
「貴様ァアアアア さっきから黙っておれば言いたい放題ぬかしおってェエエエ――――ッ!!
 スパイかッ 陽動作戦かッ どっちにしろ我々を混乱に陥れる情報錯乱戦術だというのならば容赦はせんぞォオオ! これは最終警告だッ!!」
「康一……、一体どうしちまったんだよ…………?」
シュトロハイムさんは少年の前に立ちふさがるように一歩踏み出すと、これ見ようがしにマシンガンを大きく揺らす。それをわかってか、墳上君は弱り切った表情で僕を見ている。切実そうな目に僕は思わず視線をそらしてしまった。
どうすればいいのか、ほんとうにわからなかった。墳上君は悪い人じゃなさそうだった。言ってる事は無茶苦茶だというのに全部が全部そうじゃない。
知り合いであるはずがないのに、彼は僕の事を信頼している。僕の事を気のいいやつだ、裏切るはずがない、そういう眼で見てくる。
けど……わからないんだ。だって、違うんだもの。僕は人鬼なんか知らないし、山岸由花子さんとは会ったことも見たこともない。
一体なんなんだ……。 僕に何をしろって言うんだよ……。
それでも僕は必死でシュトロハイムさんをなだめていた。銅像のごとく直立不動、銃身を逸らすことなく突きつけた状態でいる彼の前に立ち、なだめすかし、説得しようとしていた。
友人じゃないけど、友人かもしれない人。よくわからないけど、決して悪い人じゃない人。僕はどっちの人にも悲しんでほしくなかったし、僕のせいで誰かが傷つくなんてそんなことは絶対に嫌だったから。

26 :
「……ユウヤ、さっき話した事、覚えてるか? 君がそんなことありえるか、馬鹿馬鹿しすぎる、そう言った話だ。」
「あれは……!!」
その時、今まで黙って静かにしていたカウボーイの男の人が口を開く。
墳上君が何か言いかけたが、カウボーイはそれを無視すると遮るように強く太い声が続いて響き渡った。
シュトロハイムさんは動きを止め、その言葉にじっと耳を傾ける。
「マウンテン・ティム、一人の平和を愛す保安官としてッ 約束を貫き通す一人の男としてここに宣言するッ
 我々に敵意はないッ! 戦闘の意志もなく、貴方達を陥れようなんてことは神と愛する祖国に誓い、ないと断言しようッ
 ミスター・シュトロハイム! どうか矛を収め俺たちの話を聞いてほしい。これはもは俺たちだけの問題でもなく、君たちだけの問題でもない。
 事件に巻き込まれ、今この時もし合いを強要されている全ての被害者の問題。フェアな情報交換をお願いしたいッ!!」
力強い宣言だった。沈黙の中、シュトロハイムさんがマウンテン・ティムを見る。マウンテン・ティムがシュトロハイムさんを見返す。
僕のようなひよっ子にはわからない。けど二人は無言の会話を通して言葉以上にわかりあったようだった。
これ見ようがしに振りかざしていた銃を収め、シュトロハイムさんが二人を手招きした。
僕を含め全員をタンクローリーまで誘導すると、ライトを切り僕ら四人は車内で膝をつき合わせた会話にうつる。
それが更なる混乱と驚愕になるとは知らずに。


27 :
運転席に座ったシュトロハイムさんが、神経質そうに一定のリズムを指で刻む。コツコツと金属製の指が心地いい音をたてていた。
助手席に座るティムさん、整った顔の眉間に皺が寄り、外を眺めながら物思いにふけっている。
そして隣に座る墳上君は戸惑いの表情。苛立ち気に首から下げたスカーフをもてあそび、しきりに鼻を鳴らしていた。
僕はと言うと、暗闇の中、当てもなく視線を泳がしている。車のライトは消え、薄暗がりの中で僕は混乱する頭を必死で沈めようとしていた。
さっきの話声と光で、他の参加者を引きつけることになるだろうからとティムさんは移動したがっていた。だがシュトロハイムさんは四人での情報共有を優先した。
それは彼がこの情報交換がすぐに終わるものと思っていたからだ。僕という前例があったからそんなに時間はかからないものだ、そう思ってたのかもしれない。
だが四人での会話、そこから見えてきたものはまるでおとぎ話のような真実。僕ら二人の会話が砂粒ほどに見えるほどのビッグインパクト。
「それで……結局どうすんだよ?」
重苦しい雰囲気を破るように墳上君が言った。僕の隣、後部座席からバックミラーに映る前の二人を見つめている。
シュトロハイムさんは無言で僕らを見つめ返し、ティムさんはテンガロンハットをかぶりなおした。
墳上君も本気で返事を期待したわけでもないのだろう、顎を二、三度かくとまた黙りこむ。僕を含め、今わかったことを誰もが受け入れきれてないのだ。
僕らが時間を、あるいは時空をこえて集められたということに。
「俺はし合いに乗る気は一切ない。平和を守り、市民の安全を確保するのが俺の仕事であり、俺は自分の仕事に誇りとプライドを持っている。
 俺の提案としては当面は仲間探しだな。主催者に反抗するグループの結成、し合いの破壊、そしてここからの脱出。
 人数が多ければ多いほどアイディアは出てくるだろうし、技術者もいるかもしれない。コイツを分解できるような、誰かがな。
 それにせっかくこんな立派な“足”があるんだ。使わない手はないだろう?」
いくらか経った後、ティムさんの落ち着いた声がした。シュトロハイムさんが続いて賛成の意見を唱えた。
墳上君も納得したように頷いている。僕には反対する理由もなく、これからの行動方針は決まった。
協力者集め ―― 僕らはこれからいくつか施設を周り共に戦ってくれる人を探すことにした。
ティムさんの宣言の後、僕らは互いに話をした。いろんな事がわかったが一番の衝撃は決定的な矛盾。時代の違い、歴史の違い、認識の違い。
一人や二人ならまだもしかしたら“たまたま”知らなかった可能性もある。だけど四人が四人ばらばらの事を言い、知らなかったじゃ説明できないほどの矛盾があった。そして何より僕と墳上君の証言が決定的だった。
ティムさんは1890年のアメリカ、シュトロハイムさんは1938年のドイツ、僕と墳上君は1999年の“二つ”の日本。
僕らは違う時代を生きていた。そして違う歴史、違う世界を生きていた。小説や漫画でよく目にするパラレルワールドってやつだ。
さっきの墳上君の話しは“未来の広瀬康一”のものだったみたいだ。人鬼吉良吉影との死闘も、山岸由花子さんとのラヴロマンスも、杜王町に存在する七不思議も全て未来の僕が経験すること。
三人は地図を広げどのルートをどう取るべきかで熱い議論を繰り広げていた。僕は車の運転経験もないし、これといった案もなかったのでお任せすることにした。窓越しに広がる暗闇をぼんやりと眺めていた。
あまりに突拍子がなさ過ぎて、いまいち現実感がわかないというのが今の僕の正直な気持ちだった。そりゃ確かにスタンドなんて不思議でなんでもありな力がある以上、時間や空間を超えるスタンドがあってもおかしくはない。
けど不思議と恐怖は湧いてこなかった。突拍子がなさ過ぎて僕にはピンとこないのだ。
軍人、保安官、豊富なスタンド経験。三人はそれぞれ脅威に思える基準がある。これがどれだけ大きな力で、恐ろしいかということが直感的にわかる。
今もその気持ちがあるからこそ真剣にルートを議論し、可能な限り素早い行動に移ろうとしている。それが今までの経験上でどれだけ大切なことがわかっているから。

28 :
でも僕は違う。数週間前までただの中学生だった、この僕には。
『少年、君はたいした英雄(ヒーロー)だったぞォ!!』
僕は違う。ただの学生だ。ただの子供だ。
たまたまスタンド使いになっただけ。それ以上でもないし、それ以下でもない。
そう繰り返し言い聞かせているのに、こんなにも苦しい。
ダイアーさんが最後の力で治してくれた腕がズキズキと痛む。墳上君が“過去の僕”を見て、拍子抜けしたような表情をしていたのが忘れられない。
未来の僕はどうしてそうなれたんだ。どうして強く立ち向かえたんだ。
どうして……『  』なんかに…………―――――
「静かにッ」
「……どうした、ユウヤ?」
車内に突然鋭い声が響いた。声の元は墳上君、指をたて神経を集中させ、何かを探っている。いきなりの警告にティムさんが辺りを警戒しつつも尋ね返す。シュトロハイムさんも大きな身体を捻り、窓越しに鋭い視線を辺りに飛ばしていた。
墳上君に僕ら3人の視線が集中する。彼は静かにしてろ、と口の前で指をたてしきりに鼻を鳴らす。真っ暗やみの静寂に、衣擦れや風の音が響いた。
時間にしたら数秒だろうか、気配を察知した墳上君が口を開いた。表情は険しく、その口調には若干の焦りが含まれていた。
「シュトロハイム、さっきてめー言ってたよな? 柱の男、だっけか。奴らは全身で相手を捕食して、一つ一つの細胞で人間や吸血鬼を食う。そう言ったよな?」
「ああ」
「…………臭い、だが一体何の臭いだ? 鼻が曲がっちまいそうだ……生臭い、けど魚や肉じゃねェ。
 新鮮な肉じゃねェくせに、妙に刺激が弱いのがさっぱりわかんねェ。なんだ、これは……? こんな臭い、嗅いだことがねェ」
「一体どうしたっというのだ、墳上よォ? まさか柱の男がいるとでもいうのかァ?
 だとすればいったいどいつだ? カーズか、ワムウか、それとも我々が知らぬ新たな柱の男か?」
「…………ッ?! 車を出しやがれッ、シュトロハイムッ!」
急発進しようとした車体。ギアが入ってたなかったのか、大きなタンクローリーは揺れ、黒い煙が噴あがった。
油断していた僕はしこたま頭を天井にぶつけ、眼から火花が飛んだ。痛みのあまり涙目になりながらも見ると、シュトロハイムさんが大急ぎで発進の準備に取り掛かっている。
急発進の元凶、墳上君はと言うと席から身を乗り出し、運転手をしきりに急かしていた。それにしても尋常ない焦り方だ。
焦らされるほうはたまったもんじゃない様子で、シュトロハイムさんが盛大に悪態をついた。

29 :
「一体何が何だって言うんだッ」
「イイから出しやがれ!状況は走りながら説明する! いいから今は…………ッ」
ヘッドライトが灯され、それを合図にしたかのように彼は黙りこんだ。墳上君をのぞく僕ら三人も彼の焦りと言わんとした事を今目の前にして、黙りこむ。
ブジュル、ブジュルと微かにガラス越しに聞こえる音は耳触りで、不愉快極まりないもの。目の前に広がる光景も負けず劣らずの吐き気を催す、惨劇場。
二人と言えばいいのか、何人かと何匹と言えば正確になるのだろうか。とりあえず確かな事は一つの捕食者と、一つ以上の被捕食者がいる。
食べられているほうはもはや虫の息。一体どうなってるのかまるで分らないが顔から突き出た何匹かの蛇も、まるでつまみのように一緒くたに食べられてしまっている。
身体の大部分ももはや消化され、僅かに残った食べ残し具合がグロテスクさに一層拍車をかけている。隣で墳上君が口を押さえていた。
これが、シュトロハイムさんが口にしていた“柱の男”……ッ
「つまり、こいつがアンタが言ってた柱の男、というやつかシュトロハイム?」
「3人とも……今すぐシートベルトをつけろ。怪我をしても俺は保障何ぞせんぞ」
言葉もない僕とは対処的に眉一つ動かさず、冷静な声でティムさんが話しかける。
話しかけられたシュトロハイムさんはしばらくの沈黙の後、言葉を返す。質問には答えず、黙って従え、という意が容易にそこから読み取れた。
胃の底に響くような音をたて、タンクローリーのエンジンがうねりをあげる。獲物を前にしたライオンが喉を鳴らすように、低い音。
シュトロハイムさんの唇がめくり上がる。容赦など一切なく、目の前の敵を排除する。残忍さむき出しの、ゾッとするようなゆがんだ笑顔だった。
「貴様が何故生きているのか知らんが……今ここで再び、始末してくようぞ、サンタナァアア―――――ッ!
 貴様に与えれた痛み、屈辱ッ その身に刻んでやろうではないかァアア―――ッ!」
咆哮とともにタンクローリーは直進していく。超重量級のこの列車でシュトロハイムさんは引きすつもりなのだッ
打撃、斬撃、弾丸、圧力。全てに対して並はずれた抵抗力を持つ奴らに対抗すべく、シュトロハイムさんはさらにアクセルを踏み込んだッ
「くらえサンタナァアア――――ッ!!」
衝突音、車体に走る衝撃、暗闇で何が起きたか僕からはよくわからなかった。フロントガラスを遮るように一度だけ影が走り……そして静寂。
息をのむような沈黙だったがそれはすぐに破られる。僕が黙ったいたのは現状がよくわかっていなかったから。だけど他の三人は違ったようだ。
額に汗を浮かべ、引きつった表情。前の席に座った二人は一切警戒心を解いていない。墳上君がぽつりと、望むようにつぶやいた。
「……やったのか?!」
「あれッ!」
その時、僕は見た。何気なく視線を向けただけだった。別にそれを見つけようとしたわけではなく、言うならば見てしまったのだ。
口から飛び出た声は僕が思ったよりずっと大きく、緊張で高くなっていた。僕が指差したサイドミラーを一斉に三人は見た。
ゾッとするような怖気が走る。サイドミラーに映ったのは今しがた跳ね飛ばしたはずの……今しがたシュトロハイムさんが始末したはずの、柱の男だったッ

30 :
「おいもっと飛ばせねーのか?! このままじゃ追いつかれんぞッ!! あんな化け物野郎、俺たちだけじゃ無理だッ 追いつかれようもんなら俺たち、皆しだぞッ!?」
「慌てるな、ユウヤ……いざとなったら川に飛び込めれば逃げ切れる可能性もある。本当の最終手段だが、まだあわてるような状況ではないッ」
「それもできんようだぞ、マウンテン・ティム……」
混乱の中、それぞれがありのままの言葉を口にする。
墳上君は焦り、恐怖を前に叫ぶ。ティムさんは努めて落ち着いて口調で冷静を呼びかけようとするも、柱の男の規格外のタフさを前に額に冷や汗を浮かべる。
そしてシュトロハイムさん。ひきつった笑顔に余裕は一切ない。強がりでもなく、ただただ驚愕の事実を前に笑うしかない、そんな感じの表情だ。
一瞬だけ視線をミラーに向け、アクセルを一踏み。うねりをあげて、車が加速する。シュトロハイムさんが食いしばった歯の間から言葉を捻りだす。
「くそッ、我々は決して奴を侮ったわけではないッ だがそれでもここまでの……これほどの化け物だったとはッ
 奴はこの“車”という機械の構造を完ぺきに理解している! このし合いの中での数時間で身につけたのか、あるいはそれ以外の場所で知識として理解したのか。
 とにかく今の一瞬の交錯の際、奴は肉片を利用したのか、直接その身で行ったのか……。
 このタンクローリー……もはやブレーキが利かんッ! この車はたった今、この瞬間から……」
開き直りににも似た表情、悟り切り覚悟した眼で僕らの顔を順に眺めると、最後の一言を言いきった。
「暴走列車になるッ……!」
呆然とする僕ら二人を脇目に、大人たちは動きを止めない。
シュトロハイムさんは片手でハンドルを動かし、ポケットから地図を取り出す。そんな彼に向ってティムさんはでデイパックをあさりながら、一言二言、言葉を交わした。
その眼に星屑のように輝く、力強い希望を宿して。
「運転は君に託したぞ、シュトロハイム。コーイチ、ユウヤ、腹をくくれ……四の五の言ってる暇はない。
 俺たち三人で奴を……叩くッ もしがそれができなければ……」
止められない。僕らはもう進むしかない。後戻りはもう、できない。
どうしてこうなった、そんな不平や不満を言っても何も変わらない。嘆き悲しみ、それでも僕らには突っ切るほか、道は残されてない。
「俺たち四人は全員、朝日を拝むことなく……死ぬことになるッ」


31 :
数時間……たった数時間で僕の周りは劇的に変化した。
僕はそんな状況に出会うたび、慌てふためき、嘆き、苦しみ、それでも最善の選択肢を目指しもがいてきた。
突然見ず知らずの男に襲われた時、僕のような弱い人を戦いに巻き込くまいと必死だった。
倒れ伏し、死にそうな怪我負った命の恩人に僕は逃げてほしかった。
そんな人がそれでも立ち上がり、一歩も引かずに戦った時、なんとか手助けがしたかった。
僕を信頼し、期待してくれる人の期待に、僕は何とかこたえたかった。
そして今、またこうやって途方もない困難に立ち向かうしかない状況に直面する。
なんで僕がこんな惨めで、残念な気持ちにならなきゃならないんだ……? そんな気持ちがわいてくる。開き直り、そして怒りが僕の中で込み上げる。
やつあたり? ああ、そうだ、そうかもしれない。だけどし合いに巻き込まれて誰に怒りを向けずに素直にし合う……そんなとはまっぴらだッ
ああ、いいさ! いいとも、やってやるとも! やるしかないんだもの!
化け物だろうが、なんだろうがかかってくるがいいさッ
やってやる……僕は、僕らは…………負けてなんかやらないぞッ!!


さぁ、お手並み拝見と行こうか……、“勇敢なる”ヒーローたちよ!
【F−5 南東部路上/一日目 黎明】
【広瀬康一】
[スタンド]:『エコーズ act1』 → ???
[時間軸]:コミックス31巻終了時
[状態]:左腕ダメージ(小)、錠前による精神ダメージ(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品1〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:とりあえずし合いには乗らない。
0:サンタナをどうにかする。
1:各施設を回り、協力者を集める。
【ルドル・フォン・シュトロハイム】
[スタンド]:なし
[時間軸]:JOJOとカーズの戦いの助太刀に向かっている最中
[状態]:タンクローリー運転中。
[装備]:ゲルマン民族の最高知能の結晶にして誇りである肉体
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:バトル・ロワイアルの破壊。
0:サンタナをどうにかする。
1:各施設を回り、協力者を集める。

32 :
【マウンテン・ティム】
[スタンド]:『オー! ロンサム・ミ―』
[時間軸]:ブラックモアに『上』に立たれた直後。
[状態]:なし
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品1〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:し合いに乗る気、一切なし。打倒主催者。
0:サンタナをどうにかする。
1:各施設を回り、協力者を集める。
【墳上裕也】
[スタンド]:『ハイウェイ・スター』
[時間軸]:四部終了後
[状態]:なし
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:生きて杜王町に帰るため、打倒主催を目指す。
0:サンタナをどうにかする。
1:各施設を回り、協力者を集める。
【サンタナ】
[スタンド]:なし
[時間軸]:後続の書き手さんにお任せします
[状態]:なし
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本行動方針:???
0:???
【備考】
四人と一人は東に向けて爆走中です。どのぐらいの速さ、ルートは次の書き手さんにお任せします。
61 :GO,HEROES! GO!    ◆c.g94qO9.A:2011/12/30(金) 18:30:42 ID:JqMC3wR6
以上です。また規制されてたのでどなたかすみませんがお願いします。
何かありましたら指摘ください。
あだ名を下さった方、ありがとうございます。名前負けしないよう、これからもがんばります。

33 :
代理投下乙です
ティムとシュトロハイムかっこいいなあ。しっかりした大人だ
やっぱ柱の男は脅威だな
全員で朝日を拝めると良いけど、サンタナという強敵を相手にどうなるか

34 :
代理投下乙です
>>31ですが
死にそうな怪我負った

死にそうな怪我を負った
ですかね?
サンタナ対シュト様の因縁の対決の行方wktkです

35 :
代理投下乙です。
「未来の」康一君を知ってる墳上に会ったことで、どう康一君が変わっていくのか楽しみで仕方ないです。個人的にエニグマ戦の墳上が格好良くて好きなのでロワでも是非頑張って欲しいですが……どうなるやら。

36 :
一話目も書かれないメンバーが居る中康一君は三話目か
さすがだ

37 :
投下乙です
シュトロハイムはまた早々に柱の男とエンカウントか
ツイているのかいないのか…
康一くんは今回こそ長生きしてほしいがどうなる事やら
指摘は2点
墳ではなく噴です。噴上ですよ。
怪人ドゥービーは破棄でしょうか?

38 :
ドゥービー食われてるよ?

39 :
投下乙です
イケメンとハンサムコンビかっこいいじゃねえの
上手くいけば安定したチームになりそうだ
康一君が逆ギレ状態なのが少し不安か
>>37
ドゥービー立派に死んでたじゃないですかやだー
以下指摘
>>25
何故だわからないけど → 何故かわからないけど
>>25、26
これ見ようがし → これ見よがし
>>27
誇りとプライド
同じ意味では?
>> 29
身体の大部分ももはや → 身体の大部分はもはや
>>29
貴様に与えれた → 貴様に与えられた
>>29
黙ったいた → 黙っていた
>>30
開き直りににも → 開き直りにも
>>31
巻き込くない → 巻き込むまい
タンクローリー
4人乗り可能? 一般的には二人乗りだと思います
シュトロハイムからサンタナへの思考
サンタナを細切れにしてす実験を行っているので、ひいたくらいじゃ死なないと思いそう
ティムの思考
スティール氏とルーシーに対する考えがどこかにあればもっといいと思います

40 :
投下乙です
初の奇麗な噴上。
1stだと最初に会った相手から不運の連続でしたから・・・
異色の対主催チームは果たして生き延びる事が出来るのか?
とても楽しみです。
一応、自分の作品も完成したので、今から投下します。

41 :

無造作に伸ばした髪に、生気の感じられない灰色の肌。歴戦の兵である事を想起させる甲冑は、ところどころ錆び付いている。
『中世の騎士』という言葉がシックリくる。彼の名は黒騎士ブラフォード。
(最初の広間で死んだ男。似てはいるが、ジョナサン・ジョースターではない……)
直接見た訳では無い。だが、ブラフォードは勇気ある青年の気配をどこかに感じ取っていた。
この場にいるとあらば、いずれどこかで相対する。向かってくるならば受けて立とう。
ブラフォードは青年の事を頭の片隅に置き、思考の海に浸る。
彼にとって、し合いという現実はそこまで重い物ではない。『77の輝輪』の試練もある意味では命の取り合いであったし、戦場で剣を立てる事が日常だったのだ。歴戦の騎士にとっては100人程度の戦争など『その程度』でしかない。
彼の心を揺さぶったのは、主催者のかけた言葉一つ。
「どんな望みも叶える。その言葉が真実ならば、俺は……」
ブラフォード自身に託すべき願いはない。元より天涯孤独の身。望みがあるとするならば、死力を尽くした戦いのみ。
思うは、失われた主君唯一人。
戦で全てを失ったブラフォードを包んでくれた慈愛の女神。
全てを捧げてもいい。そう思っていたのだ。
しかし、現実は残酷だ。
卑劣な老女は、女神を迷宮に叩き落とした。
黒騎士は、命を差し出した。
待っていた物は、主君の変わり果てた姿だった。
「呪ってやるッ!てめえらの子孫末代にいたるまで呪いぬいてやるゥ!」
世を恨み。人を呪いながら、死んでいった。
朽ち果てた肉体は、吸血鬼の手の平で弄ばれながらも、生前の意識を鮮明に保っていた。
主君を失い。世への復讐を誓い続けた男が抱く望みはただ一つ。
「我が主君メアリー・スチュワート!彼女を黄泉路より連れ戻し、俺は彼女の傍で剣を振るい続ける!そして理不尽極まりない女王の選定をやり直す!」
高潔な人間の魂を残していれば、その思考のおかしさに気づいた事だろう。
何の根拠もない言葉に縋り付き、誇大妄想を描く。
元より、彼の崇めた聖女は、戮の上に立つ我が身など望みはしない。
望みを果たしても、聖女は決して微笑んではくれないだろう。
生前の忠誠心をそのままに人の心を失った屍生人は、その矛盾に気づかない。
「この戦場にいる猛者共よ!かかってくるがいいッ!能力と能力!技と技!精神と精神!最大を尽くし!このブラフォードと闘えィィィィ!」
騎士道と復讐心の奇妙なコントラスト。朽ち果てた体を引き摺り、騎士は呪いの声を、世への恨みを掲げながら、名乗りを上げる。

42 :
ふと、主催者の言葉が蘇る。選りすぐりの品を、武器を用意していると。
背中の荷物には、重量を感じない。期待はできないと、ため息一つ。
中を見る。そこには紙切れ1枚と、用途の分からないもの。地図。
地図だけは残しておく必要があったが、他の物は不要と感じる。
100s相当の重りを以てしても苦としないブラフォードだが、余計な荷物はいらない。
荷物を無造作に捨てた。
放物線を描いて、荷物が飛んでいく。その内の一つでしかなかった紙切れが、地面に落ちると共に、鉄塊に化けた。
大型スレッジ・ハンマー。それが武器の名称。
紙がハンマーに変化した現実にブラフォードは目を見開くも、一瞬で鋭い眼光に戻り、ハンマーを拾う。
いたるところに手をあて、感触を確かめる。
3回程素振りを繰り返した後。片手に強く握り締める。
超重量のハンマーだが、屍生人の怪力ならば扱う事は容易。
よく手にじませたそれを、力の限り振り下ろす。
    ド グ ォ ン !
奇妙な破壊音とともに、クレーターが出来上がった。
もう一度、ハンマーをじっと見つめ、何の感慨もなく呟く。
「ふむ、剣に比べれば扱い難いが、武器としては充分か」
得物の感触を確かめ、地図とそれ以外の荷物を全て捨てる。
戦闘準備が整えられた。
ふと遠くを見つめると、巨大な鏡がそびえていた。
真一文字に引かれた赤い線は、どこか禍々しさを孕んでいる。
そう思ったブラフォードが鏡を覗き込んだのと、その中に人影を見つけたのは、それとほぼ同時だった。
「俺の姿が見えたのなら……おまえはもうおしまいだッ!」
敵の攻撃が始まった。
◆◆◆

43 :
川のほとりで立ち尽くす。
そこにあるのは間違いなくティベレ川で、イタリア人の俺いるのに違和感が無い様にも思える。
問題はそのティベレ川を挟んでエジプトの町並みが見えるって事だ。俺の知ってるイタリアと違ーぞ。
一体どうしてこうなっちまったのか。これまでの出来事を思い返す。
俺は確かフーゴの野郎のウィルスに浸食され、腕を犠牲に『鏡』から外に出た。
命からがら鏡の外に出たら、そこにはフーゴのスタンドが待ち構えていた。
パープリン野郎。紫とイカレタ奴って意味をかけてる。ちっとも笑えねーがな。
とにかく、あの人スタンドの腕を止めて、賭けに勝ったと思った。
そう思ったら、その拳からウィルス入りのカプセルが出てきてーーー
気がついたら、下っ端のジョルノの野郎と、知らねえ男二人の首が吹っ飛んでいた。
鏡の世界に置いてきた右腕と、グズグズに崩れるはずだった体は至って健康だ。
そういう意味ではラッキーかもしれねえが、その代わりがし合いだ。
運がいいんだが悪いんだがわかりゃしねえ。
人から恨まれる仕事をしちゃいるが、それとは関係ない様に思える。
怨恨目的にしちゃあ人を集めすぎだ。
数にして100人以上。それだけの人間を逆恨みする奴なんざビビって冷蔵庫にでも隠れるのが関の山だ。
とすれば、あのカリメロ頭の言う通り、道楽という事になる。
俺の体を治したスタンド使い。拉致したスタンド使い。どうやらバックはかなり大きいみてーだな。
暗者の俺にし合いを強要するなんていい度胸だ。
御期待に添えられる様な仕事をしてやるぜ。ついでにテメーの命も頂いてやる。
取りあえずの行動として、持ち物の整理を始める。
デイパックの中に入っていた地図。
子供がおもちゃ箱とテレビの知識で作った様な滅茶苦茶な地形だった。
ローマにカイロ、東洋の町。不気味な事この上ない。
その地図によれば、俺の現在地はC−4の南って事になる。
川に潜れば、エジプト行き下水道。
出来れば世話になりたくねえ。
その出てきたのは、食料とか時計とか、そんな物ばかり。
し合いだかキャンプだかわからなくなってくるな。
鉛筆は、使い様によっては凶器になり得る。
頼りない事この上ないが、俺のスタンド『マン・イン・ザ・ミラー』は力そのものは弱いスタンドだ。無いよりマシだろう。

44 :
最後に残ったのは、折り畳まれた紙が2枚。
何かの隠し場所でもメモしてあるのか?どの道大した物は入ってなさそうだ。
大した期待もなく紙を開く。その瞬間、巨大な物量が降ってきた。
(これもスタンド能力か?いや、ここは喜ぶべきか)
眼前に、俺の全長を映せる程大きい鏡が広がっていた。
なんという幸運ッ!やはり運は俺に味方している様だ。
これで、俺の取るべき戦法は決まった。
鏡の世界に入り込み。『待ち』に徹する。
後は興味本位でバカが釣られるのを待てばいい。
それこそ、鏡を消し飛ばされない限り、俺は無敵だ。
歌でも歌いたくなる様なハイな気分を抑え、二枚目の紙を開ける。
そこには、冷たい水で濡れてる様な美しい刃物が落ちていた。
東洋の品か?工芸品の様に作り込まれたそれを、拾い上げた。その瞬間
「ヒィィィィィ 孤独だよーっ」
……刀が喋った
それ自体はスタンドで説明がつく。メローネの『ベイビィ・フェイス』みたいな、自立型スタンドだ。
それにしても喧しい。どうでもいい事に突っ込むギアッチョ並みじゃねーか?
取りあえず、地面に落としてみる。
声が聞こえなくなった。
せっかくの武装を放っておくのもアレなので、もう一度触る。
「うわあああああああああああああああああああ」
「うるせえ!次喚いたら叩き折るぞ!お前のスタンドについて全部教えろ!でなきゃやっぱり叩き折るッ!」
「うう………グスッ…うわあああああああああああああ」
止まらない。止められない。
「操ろうと思ってもなんか出来ねえしよ〜ッ、なんでこんな目にあわなきゃならねんだよおおおおおお」
「うるせえって言ってんだよッ!川に沈めるぞ!」
「川は!川だけはやめてくれええええええええええええ」
「黙れえええええええええええええ」
どうして、こうなった。
◆◆◆

45 :
鏡の世界に入り、イライラと共に剣を叩き付ける事数十回。
泣き止んだこいつから、話を聞き出した。
名前は『アヌビス神』
本体は色々会ってこの場にはいない。
能力を纏めると
・刀身に触った相手を操る(何故かこの場ではできないみたいだが)
・物体をすり抜けて攻撃が出来る
・相手の攻撃を『覚えて』強化出来る
犬みたいな像で泣き喚く姿は、不気味としか言いようがない。
なんでも、敵スタンドに負けて川底に沈んで、ここに来たらしい。
面倒くせえが、強力なスタンドである。
鉛筆を武器にするよりは大分マシだ。
問題としては、刀と腹話術する必要がある事だが、鏡の世界ではあまり関係ないだろう。
「まあ、この『アヌビス神』がいるからには勝ったも同然だな!
何故なら絶……〜〜対に負けんからだあ!」
「一回負けてるじゃねえか。パワーの方はともかくとして、オツムの方はあんまりよくないみてーだな。操れなきゃただの犬か?え?」
「細かい事は気にするァァァァ!!俺に使われるだけありがたいと
うわやめて捨てないでごめんなさいいい!!!!
取りあえず、『マン・イン・ザ・ミラー』に持たせる事にする。
どの道声は聞こえてくるが、一応『当たり』に部類される物みてえだ。多少なりとも我慢はする。
意識を外の世界に傾けると、甲冑の擦れる音が聞こえる。
人だ。それも、随分と時代錯誤な格好をしていやがる。体もがっちりしている。
最も、どんな力を持っていようが、鏡の世界では無意味だがな。
鏡を見た時があいつの最後だ。
そして甲冑野郎が鏡を覗き込んだ。
うるさく吠える刀をスタンドに持たせ、俺の攻撃は始まる。
俺の近くにきたのが運のツキだ。早いとこかっ切ってやるぜ。
◆◆◆

46 :
ブラフォードが認識した次の瞬間には、既に世界は反転していた。
彼が手に携えた武器が無い事にも、その世界の異常にも素早く気づいたのも、鏡に引き込まれるという異常事態に狼狽える事が無かったからだ。歴戦の騎士は、冷静さを失わない。
気がつくと、胸に違和感を感じた。体から鉄が生まれた様な、そんな感触。
戦場で決して倒れる事のなかった彼の、屈辱的初体験。
胸から、剣が咲いていた。
背後を振り返る間もなく、ゆっくりと崩れ落ちて行く。
「あっけないと言えばあっけないが、当然か」
辻斬りというにも、あまりに味気ない一瞬。
素早く刀を引き抜く。
騎士の死体は微動だにしない。
外の世界の荷物を回収しに行こうと思ったイルーゾォは、刀が震えている事に気づく
アヌビス神は、犬の顔に冷や汗を浮かべて喋りだした
「刺した感覚がなかった!死体を刺している様なそんな感触ッ!この腐った臭い、まさか……まさか!」
アヌビス神の狼狽えように、イルーゾォの顔も青ざめる。
彼はアヌビス神の言葉を反芻する。死体。腐った臭い。
思い浮かぶのは、ゲームや映画にしかいない筈の架空の存在。
いる訳ないのだ。いてはならないのだ。
振り返ろうとするも、不吉な予感が耳に囁く。
振り返ったなら、よくない事が起きる。
恐れず、振り返る。
胸に穴が開いた死体が、ゆっくりと起き上がる。
フィルムの逆回しを思い起こさせるそれは、まさにホラー映画で。
立ち上がった『騎士』の拳が飛んでくる。
咄嗟にアヌビス神を持ったスタンドの右腕が防御も図ったが、なす術無く
 
「うおあああああああああーーッ!!」
反応の遅れたアヌビス神と共に、右肩の根元から吹っ飛ばれた。

47 :
「なんて事しやがるんだあああああああああああ」
鏡の男が、吠える。
苦痛に腕を抑える事も適わない。抑えるべき腕はもう無いのだから。
どこかのドラマの脱獄する囚人の様に吹き飛んだ右腕とアヌビス神を抱え、距離を取る為に走る。目の前の『化け物』から逃れる為の、必死の行動。
騎士、或いは化け物は、その様を滑稽そうに見つめる。
力を振り絞らなくても、結果は変わらなかったのだ。
腕無しの状態でも脅威の精神力を発揮したイルーゾォは、己の半身に命令する。
「『マン・イン・ザ・ミラー!』あの化け物が外に出る事を許可しろォォォーーッ!」
死にもの狂いの中で思いついた。勝利策
「だが首から上は許可しないいいいいいいいいいいいいい」
いつの間にかブラフォードに投げつけられた鏡の破片。そこに縋り付いた彼の半身は、仕事を忠実に実行していた。
黒光りする首輪から上。まさに生首が、乱雑に地面に転がった。
◆◆◆

48 :
「俺の右腕の償いはッ!おまえのクソみたいな死で払ってもらうぜッ!」
踏む、蹴る、飛ばす。
目の前の男から、屈辱的な仕打ちを受ける。
その顔は、俺たち屍生人に勝るとも劣らない。
そんな醜悪な顔を携えながらも、す算段はしっかり立てている様だ。
「そこでゴミみたいにころがってろッ!サッカーボールにしてやるぜッ!」
言葉の意味はよくわからないが、生首の俺をボールに見立てようとしているらしい。
生首
その言葉に、何かが揺さぶられる。頭の中の何かが。
生前の記憶が蘇ってくる。それも末期の、最悪の記憶。
「ほーれ!あそこにゴミみたいにころがっとる奴!あれが彼女さ!」
横たえる彼女の首。その肌は生気がなくて、白くて、まるで−−−−−−−−−−
「 う お お お お お お お お お お お  」
−−−−−−−−−−今の俺の様だった−−−−−−−−−−
「エリザベスウウウウウウウウウウウウウウウウウウ」
てめえらクズは皆しにしてやる!!
貴様如き血袋!首だけで十分だ!
伸びろ、伸び続けろ!全て喰い尽くすまで!
◆◆◆

49 :
「なっ!?」
イルーゾォは、今起こった状況を理解出来なかった。
生首から髪の毛が伸び、足に絡み、体に絡む。
その全てが肉に食い込まんとしていた。
食い込んでいった部位から、生気が失せて行く。
血が、吸われていたのだ。
「首だけならばせると思っていたッ!死なない化け物だろうと何も出来ないと油断した!全身に食い込む前に、アヌビス神で……」
残った左腕、最後の希望。一振りの刀が吠えた。
「任せておけッ!ウシャシャシャーーッ!!!
 妖刀乱舞とでも言おうか、アヌビス神は絡み付いた髪の毛を寸断していく、
妖刀は、数秒にも満たない時間で全てを切り落とした。
明らかにイルーゾォ本人の腕ではない刀の切れ味。
強い怒りが身を焦がしがらも、怨念の化身はアヌビス神を凝視した
「成る程、あの刀が自体が一つの意思を持つ妖刀と言う訳か」
首だけの騎士は一瞬静かになる。その胸中に飛来した物は怒り。
「その様な物で俺を倒そうなどと、愚弄するにも程があるぞッ!そのおかしな人形といい、貴様自分の力で戦おという気はないのかッ!」
不意打ちの時から燻っていたその怒りは最高潮に達していた。
瞬間。首から下に感覚が戻る。
反転した世界も、全て元に戻った。
全身の血を吸われたイルーゾォが、精神の疲弊と伴ってスタンドを維持出来なくなったのだ。
(このままだとされる……何もできないままに終わる!落ち着け、何か方法を……)
手足が冷える。思考が鈍る。血が、血が足りない。
その時思いつく。最後の、文字通り決死の策
(場所は目の前ッ!あの場所に……行きさえすれば)
精一杯の抵抗。鏡を割って投げつける。
恥もへったくれもないその攻撃は、ブラフォードの足を一瞬止める事に成功する。
鏡の男は、大きな水しぶきをあげて川に飛び込んだ
◆◆◆

50 :
「なにやってたんだイルーゾォ!水の中じゃ俺を振る事ができねーだろうがッ!
それに川はやめろって言っただろッ!錆びちまうよォ〜ッ!」
知るか馬鹿、刀が2〜3分で錆びてたまるかと、アヌビス神の意見を完全に無視する。
俺が取った最後の手段、それは川に入る事だった。
何の映画かは忘れちまったし、自身も無かったが、ゾンビは川を渡れねえってのがあった筈だ。
あの化け物と映画が合致するかもわからないが、他に手はなかった。真っ向からやっても勝ち目はない。鏡の世界に引きこもる事もできなくなった。
イチかバチかの賭けだったが、どうやら成功らしい。
野郎は追ってこねえ。
それにしても、畜生!せっかく右腕が戻ったと思ったらまたサヨナラする羽目になっちまった!
命があるだけ儲けもんだが、切断面に水がしみていてえ……
「イルーゾォ!」
だから気づかなかった。完全に逃げ切れたと思っていた。
油断をしていた。
「イルーゾォ!」
あの時、化け物に攻撃をしていなければ。
今更そう思っても、何もかもが遅い。
「イルーゾォーーーッ!!後ろだァァァァァァ!!!」
振り返ると、奴がいた。
『鏡の世界』に持ち込む事を許可しなかったハンマーを握りしめて。
なにか、なにか方法は−−−−−−−−−−
「URYAAAAAAAAHHHHHHHHH―――!」
水面でアヌビス神をまともに振るう事は出来なかった。
化け物の怪力は、水中の重力をもろともしなかった。
最後に感じたのは、かぼちゃが割れる様な頭蓋の感覚。
最後に見たのは、化け物の恐ろしい形相。
それを最後に、俺の意識は途切れた。
◆◆◆

51 :
「MUOHHHHHHHHHHHHHHHH―――――!!!!!!」
頭がら胸にかけてぱっくり割られた死体を睨みつけ、黒騎士は吠えた。
どんなに狂っていても彼の中の騎士道精神は、イルーゾォの様な者が生業とする『暗』を決して認めない。土台、相容れぬ存在だったのだろう。
イルーゾォは、屍生人は川を渡れないという仮定の元からこの策に打って出た。
しかし、それこそが大きな間違い。
そもそも、屍生人は川を渡る事が出来る。
ましてやブラフォードは三十キロの甲冑を身につけたまま五キロの湖を泳ぎきった男。
彼にとって水中は苦手どころか、ホームグラウンドも同然だったのである。
そして、成す術も無くされた。
誤解のない様に言っておくが、イルーゾォは決して馬鹿だった訳ではない。
彼のスタンドは鏡という媒体さえ見つければ、それこそ無敵なのだ。
最も、相手が人間だったらの話だ。
無敵と言った彼のスタンドにも弱点は存在する、それは人間並みの力しかない事。
スタンド使いならまだしも、体一つで超人的パワーを誇る屍生人には無力なのだ。
す為には必ず首を取らなければならない。屍生人の弱点は頭部と日光しか存在しない
だが、その頭部だけでも、人間以上のパワーを持っているとしたら、彼に勝ち目はない。
詰まる所、体のどの部位を鏡の世界に持ちこんで行動不能にしようが、動かずとも攻撃手段のある屍生人には勝ち目はないのだ。
加えて、ブラフォードは毛髪を伸縮させ展開出来るという、屍生人の中でも特異な能力を持っていた。
月並みの表現だが、相手が悪かった。例えるならイルーゾォはジャンケンのグー。ブラフォードはパー。
グーは、パーに勝てない。
武装としては頼りになるアヌビス神も、不死の者に対する経験は皆無。
可能性はあったかもしれないが、波紋や紫外線の様な明確なチョキにはなれなかった。
もう一度言おう、相手が悪かったのだ。
頭がぱっくり割れた死体から、一振りの刀が離れて行く。
ジャンケンのチョキであり、グーになれなかった男。アヌビス神だ。
刀のスタンドは、とにかく焦っていた。持ち主が死んだ事ではない。そんなの日常茶飯事だからだ。
問題は、自分の数秒後の未来、このままではまた、川に沈んでしまうという恐怖……といいよりは現在進行形絶賛沈没中なのだが。
(また沈んじまう!こんなどこかもわからない様な所でッ!)
目の前には、イルーゾォの死体。その下手人の不死の怪物。
漆黒の瞳が、こちらを見つめた気がする。哀れな妖刀は、最後のチャンスに輝きを放つ。
(あんたは見た所剣の達人だ!誰よりも強い!そんなあんたがこの俺と組めばまさに無敵!倍率ドン!熟練剣士と妖刀の二刀流!お互い化け物同士でお似合いだろなあ頼む頼むから俺を使ってくれ〜ッ!)
勿論、声は聞こえない。たまたまブラフォードの目線が剣にいっているだけだ。
ブラフォードは、剣の前まで泳ぎ、見つめた。
(いいぞ〜〜ッ!もう少しだッ!さあ握れ!握ってしまえ〜〜ッ!)
しかし、騎士は妖刀をよしとしない。こんな物の力は頼らない。己の力のみで戦う。
結局、アヌビス神を放って、地上へと戻っていった。
その場にいるのは、一緒に沈んで行く死体と、魚達のみ。
餌になりそうな死体だって、もっと細切れにしなければ食指も動かないだろう。
(見捨てないでーッ ヒイイイイイ また孤独だよーっ)
妖刀の沈没物語は、第2章に突入した。
◆◆◆

52 :
地上に戻ったブラフォードは、腹の傷跡を気にかける事も無く。呆然と立ち尽くす。
「我が女王よ……もう暫く待たせる事になるが、必ず―――」
その顔は、どこまでも暗い。
生きる事を、考える事を放棄した屍生人は、かつての理想郷を取り戻すため、呪われた戦いに身を投じる。死体すら朽ち果てるその前に。
その先に、何が待ち受けているのだろうか。どんな未来が用意されているのだろうか。
己が望みを果たすまで、彼は止まらない。
【イルーゾォ 死亡】
【アヌビス神 沈没】
【C−4 ティベレ川付近 / 1日目・深夜】
【黒騎士ブラフォード】
 [種族]:屍生人(ゾンビ)
 [時間軸]:ジョナサンとの戦闘中、青緑波紋疾走を喰らう直前
 [状態]:腹部に貫通痕(戦闘には支障なし)
 [装備]:大型スレッジ・ハンマー
 [道具]:地図(基本支給品にあった物)
 [思考・状況]:
 基本行動方針:失われた女王(メアリー)を取り戻す
 1:強者との戦いを楽しむ
 2:ジョナサン・ジョースターと決着を着ける。
 3:女子供といえど願いの為にはす
 4:もしタルカスもいるとすれば……助力を得られるか?
 
※見せしめで死んだのはジョナサンでは無いという事に気づきました。
[参考]
どこへ向かうかは次の書き手さんにお任せします。
C―4のどこかに、ブラフォードの荷物が散乱しています。基本支給品のみなので、あまり意味はありません。
イルーゾォの支給品は、【アヌビス神@三部】【大女ローパーの鏡@ゴージャス☆アイリン】でした。
C−4のティベレ近辺に、鏡の破片が散らばっています。
アヌビス神がティベレ川に沈みました。回収出来るかはどうかはわかりません。
【支給品紹介】
【大型スレッジ・ハンマー@二部】
ブラフォードに支給
ジョセフVSワムウの戦車戦で使用された。
ブラフォードはジョジョロワ1stで因縁あり
【アヌビス神@三部】
イルーゾォに支給
今回設けられた制限は2ndと同じ物です。
【大女ローパーの鏡@ゴージャス☆アイリン】
同じくイルーゾォに支給
ローパーの館にあった大きな鏡。
真ん中に口紅で線が引かれている。

53 :
以上で投下完了です。
タイトルは「朽ち果てるその前に」です
ご指摘、問題点等がありましたらよろしくお願いします。

54 :
乙っす
イルーゾォは支給品の引きは良かったのにな・・・
しかしブラフォードは思っていた以上に強いな
身体能力は高く、強靭な意志も持っている。よほど相性が良いスタンド持ちか柱の男じゃないときついな

55 :
プロシュート マジェント・マジェント 投下します

56 :

とりあえず、これから登場する男の事について話しておこうか。
その男の名前はマジェント・マジェント。
彼は、アメリカ合衆国大統領から雇われたし屋であり、スタンド使いだ。
これから、し屋がし屋に出会う物語が始まるのだが、それはまた後にして彼の話を続けよう。
彼のスタンドは『20thセンチュリー・ボーイ』。
能力は簡単だから一回で理解してくれるとありがたい。
『20thセンチュリー・ボーイ』の能力は、攻撃を受け流すだけだ。
着るタイプのスタンドで、『20thセンチュリー・ボーイ』を着ている間は、物理的にも、科学的にも、どんな攻撃も効かない。
この情報だけなら、『20thセンチュリー・ボーイ』はとても強そうに感じるだろ?
残念ながら、一つだけ大きな弱点があるんだ。
それは、動けない事なんだ。
『20thセンチュリー・ボーイ』を着ている間は指一本、いや、1mmたりとも体を動かす事ができない。
頭の回転の速い人ならもう気づいたかもしれないけど、彼が生き残るためには『パートナー』が必要だ。
『基本世界』では、彼の『パートナー』はウェカピポと呼ばれる鉄球使いだった。
鉄球使いに関しての説明は省かせてもらうけど、ウェカピポという男は最終的には彼と敵対する事となり、彼はウェカピポに敗北したんだ。
つまりだ。
今、彼には『パートナー』がいない。
必要な物は新しい『パートナー』なんだよ。
この物語は、彼、マジェント・マジェントが、違う世界のし屋と出会う物語だ。
それじゃあ、そろそろ始めようか。
  ★

57 :

「スティールさんよぉ、一体全体ここはどこなんだよ。
デラウェア河から助けてもらったのは感謝するけどよ、し合いをしろ、だとぉ?
全く……大統領の命令どころじゃあねぇぞこりゃ……」
とりあえずは状況把握か。
懐中電灯……懐中電灯……っと。
スイッチをポチッとな。
「……ありゃー。
こりゃ、悲惨な状態だ……死体が乗ってないだけマシか……」
つい最近聞いた飛行機ってやつが地面に突き刺さってやがるじゃねぇか。
それに飛行機ってのは空を飛ぶんだろ?
見たところ、ここは地上では無さそうだがなぁ……さっぱり意味が分からねぇ……
まぁ、ここへ入ってくる道は一本らしいし、籠城戦にはうってつけの場所って訳だな。
とりあえずグルリと探索はしたが、飛行機の中にもその周りにもめぼしい物は無かったな。
次はデイパックの中身だな。
食料やら何やらの必需品と……折り畳まれた紙が二枚か。
開いてみますかね。
まずは一枚目。
「……額縁がズラッと並んでらっしゃる……よな?
中には……こりゃまた悲惨……」
額縁の中に輪切りの人間とは……これを作った奴の美的センスは常軌を逸しているね……
なんていうか……すごく悪意を感じるな……
さて、気を取り直して二枚目だ。
  ★

58 :

「おっ、人がいるじゃあねぇか。
開始早々ラッキーだな。」
ランダム支給品の双眼鏡でマジェント・マジェントを覗く彼はプロシュート。
さっき話した、違う世界のし屋なんだ。
彼はギャング組織『パッショーネ』の『暗チーム』のメンバーであり、彼もまたスタンド使いだ。
彼のスタンドは『グレイトフル・デッド』。
能力としては、ガスに包まれた人間を老化させるんだけど、これにもまた弱点がある。
それは、冷やされたら老化しない、って事だ。
まぁ、それが無きゃ自分も老化しちゃうから仕方ないだろうけど、今の彼には冷やせる方法が、支給品の水を被るしかない。
つまり、長時間スタンドは使えないって事だ。
冷やせる仲間がいればいいのに、とかプロシュートは考えているけど、残念ながら彼の目に写っている人に期待はできない事はみなさんの方も知っているはずだから敢えて言わないよ。
まぁ、期待させておこうか。
おや?動き始めたみたいだよ。
  ★

59 :

さて、気を取り直して二枚目だ。
「おい、お前、そこのお前だ。
ちょっとした質問がある。
お前、どっち側の人間だ、って聞けば伝わるよな?
返答次第では……俺の前で死体になってもらう。
雰囲気が表側の人間じゃあ無いが、俺はお前を確実にせる、とだけ言っておくさ。」
なんだあいつは?
全身ビシャビシャでカッコいいスーツが台無しだぜ?
んでもって、確実にせる、ってカッコつけちまったけど、ありゃ嘘だな。
俺の『20thセンチュリー・ボーイ』を破れるとは思えないしな。
まぁ、し合いに乗る気は無ぇし、良い返事を返してやるかな。
けど、ジョニィ、ジャイロ、ウェカピポ、Dio、スティールは別だからな。
「し合いに乗る気は無ぇ。
そういうあんたはどうなんだ?」
軽く笑って、こっちに近づいて来やがる。
俺の質問に答える気は無し、って訳ね。
俺の近くまで来てやっと飛行機の存在に気付いたらしいな。
あいつは懐中電灯も使ってないから仕方ないか。
「飛行機の残骸か……酷い有様だな……」
そう言ってあいつは両手を合わせ、胸の前に持って行き、深く礼をした。
東洋の礼儀作法って言ってたから俺も真似してみたが、これって意味有るのか?
「ところであんt」
「お前あれは何だ、あの額縁はよ?」
なんだ?あぁ、あれな、気持ち悪ぃよな。
「表側の雰囲気がしねぇとは思っていたが……
あの会場にはイルーゾォやホルマジオもいた。
お前の後ろにあるあの額縁は忘れたくても忘れられねぇ。
お前がボスなのか?
もしそうなら、復活できたソルベを同じ方法ですとは……
邪悪って言葉はお前のためにある言葉だな。
お前がボスじゃなくても謝っちゃやらねぇぜ。
死んでもらう……
『グレイトフル・デッド』ッ!」
「なッ!?『20thセンチュリー・ボーイ』ッ!」
なんだあいつッ!
イルーゾォとかホルマジオとかボスとかソルベとか超訳分かんねえぞッ!
いきなりスタンド攻撃とか……狂ってんのか?
クソ……どうする……
あいつを倒さなきゃどうしようもねぇ……
スタンド像が見えるのが唯一の救いだな。
あれが消えた瞬間しかチャンスはないと考えようか。
とは言っても攻撃手段が……
……そうだ、二枚目……二枚目があるじゃないかッ!
開ききれなかった二枚目がッ!
消えた瞬間に二枚目の紙に賭けるッ!
  ★

60 :

効いてない……だと?
チッ、ボス……し損ねたか。
お前は刺し違えても俺がす。
『暗チーム』への手向けにしてやるよ。
それにしても……近づいたとは言ってもまだ効いていないか。
そうなると、近づいて直触りしかないな。
水も温まってきているな……この際全部かけてやる。
スタンドを解除して一気に走る。
終わりにしようぜ……ボス……
「『グレイトフル・デッド』ッ!解除だッ!」
このまま走り抜けて直に触ってやる。
「『20thセンチュリー・ボーイ』ッ!解除ッ!」
何ッ!
解除だと……ッ!
デイパックに向かって走っている?
まさか……体を濡らした事で弱点がバレてしまったか!?
「悪ぃな……リーダー、ペッシ。
後はお前らに任せて、俺はボスと戦う……
ペッシ……済まねぇッ!」

61 :
  ★
よしッ!辿りついたッ!
二枚目……二枚目……あったぞ
この紙は俺の運命……生死を決めるネットに弾かれた運命のテニスボールだ。
運命に打ち勝つんだマジェント・マジェント。
『パートナー』無しで勝たなくちゃあならないんだ。
運命を引き寄せろッ!
開けッ!二枚目ッ!
ドスンッ!
……終わった……何もかも。
紙から出てきたのはSBRトロフィー入りの南極の氷だった。
だが、あいつが走ってくる音も止まった……止まった?
「……ハハッ……ハハハハハッ!
運すら完膚無きまでに負けるとはな……完敗だ、ボス……
一思いにしてくれ。
今はなんだか清々しい気持ちでいっぱいだよ。
……悪いなペッシ、お前は生き残れよ。」
おいおい、なんであいつが完敗ムードになってんだよ……
俺が負けたんじゃねぇのか?
これは……聞くしかねぇだろ。
「完敗ムード満点の時に失礼するけどよ、イルーゾォとかホルマジオとかボスとかソルベとかって何なんだよ。
それによ、負けたのは俺だろ?
こんな氷塊じゃああんたを倒すなんてできやしないぜ。」
「お前、ボスじゃあないのか?
じゃあその額縁は、ソルベの入った額縁は何なんだ。
見間違えるはずがねぇ……そいつはソルベじゃあねぇかよ。」
  ★

62 :
彼らは、知っている情報を話し合ったんだ。
最初はマジェント・マジェントからね。
額縁の真相、互いのスタンド、時代背景、その他必要な事を話し合った。
するとね、プロシュートから疑問点が挙がったんだよ。
「すると、矛盾があるんだ。
まず第一に、俺は1890年の人間じゃねぇ。
ということは、俺とお前は違う時代を生きている事になる。
そして第二に、俺はファニー・ヴァレンタインなんて大統領は知らねぇ。
つまりだ、俺とお前は違う歴史を生きている事になる。
時代も歴史も違う人間が、お前らの世界の人間に干渉されている、って訳だ。
んでもって、俺らには共通目的がある。
ターゲットの害と、元の世界への帰還、の二つだ。
前者に関しては至極単純だが、後者に関しての推測としては、十中八九スタンドの仕業だろう。
そして、スティーブン・スティールを倒せばこのスタンドは解除されると考える。
そこでだ、疑った矢先、悪いとは思うが共闘しないか?
後者は、人が多ければ多いほど遂行しやすいだろう。
考えてみてくれ。」
まぁ、マジェント・マジェントの判断は決まっているよね。
ウェカピポに代わる人間が欲しい彼にこんなに美味しい話は無かった。
「考える間でもないな。
俺のスタンドじゃあ、この先闘えねぇ。
さっきの早とちりは許さねぇが、仲間にはなってやるぜ。
よろしく頼むぜプロシュートさんよ。」
「ありがたい。
ところで聞きたい事があるんだが、パイナップルみたいな頭をした奴とか、どっかに飛んでいく釣り糸とか見なかったか?
俺の弟分なんだが、なにせよマンモーニでな、とにかく世話を焼かせる奴なんだ。
あの会場では見かけたんだが……」
彼には、柱の男との悲惨な闘いは教えないでおいてあげようか。
きっと、使い物にならなくなっちゃうしね。
「いいや、見てないな。
力になれなくて済まなかった。」
「俺も期待なんて最初からしてなかったさ。」
彼らの同盟は成立した訳だけど、プロシュートの探すペッシはもういない。
『パートナー』のいない物どうし、せいぜい頑張ってくれよ。

63 :

【G-8 墜落飛行機の記憶 南側 1日目 深夜】



【プロシュート】
[スタンド]:『グレイトフル・デッド』
[時間軸]:少なくとも護衛チームとの戦闘開始前
[状態]: 健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(水は使い切った)  双眼鏡
[思考・状況]
基本行動方針:ターゲットの害と元の世界への帰還
1.暗チームを始め、仲間を増やす
2.この世界について、少しでも情報が欲しい
3.この氷塊、当分スタンドは使い放題だな

【マジェント・マジェント】
[能力]:『20thセンチュリー・ボーイ』
[時間軸]: 『考えるのをやめた』後
[状態]: 健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:ターゲットの害と元の世界への帰還
1.暗チームを始め、仲間を増やす
2.この世界について、少しでも情報が欲しい
3.氷塊 を引き当てる俺ってツいてる

【備考】
プロシュートの支給品は『双眼鏡』のみです。
G-8には『SBRトロフィー入り氷塊』と『輪切りのソルベ』があります。
これからの短期的な行動方針は未定です。

64 :
投下完了です
タイトルは『1/2+1/2=』です
指摘よろしくお願いします

65 :
追記です
支給品は
双眼鏡@現実
輪切りのソルベ@5部
SBRトロフィー入り氷塊@7部
です

66 :
投下乙です
ペッシ・・・なんで死んだんだ・・・
兄貴が不憫でならんな

67 :
三作も来てた! 投下乙
>GO,HEROES! GO!
康一くんの成長に期待
異色のチームだけどシュトロハイムとイケメンティムが何とかしてくれそうな安定感。
>朽ち果てるその前に
ブラフォードは首だけでも強い、ていうか髪の毛があるからなあ 鏡を支給されたけどイルーゾォ残念。
イルーゾォの思考の中にカリメロ、って単語が出てくるのはどうなのかな、と思って調べたら
カリメロの原作はイタリア、しかもアニメって日伊共作だったんですね。知らなかったー
>1/2+1/2=
マジェントもマンモーニ体質だよねw でもウェカピポよりはプロシュートの方が彼のことを雑に扱わなさそう。
一点だけ指摘。プロシュート本人がグレフル使う時って
氷で冷やさないと老化する、という制限はなかったと思うんですけどいかがでしょうか?

68 :
投下乙です
20thセンチュリー・ボーイは負けないけど勝てないスタンドだから、パートナーは重要だな
このコンビは強いと思うが、果たしてどうなる事やら
指摘ですが、グレイトフル・デッドは本体に限り老化の解除が自由に行えます。

69 :
>>67
表記の矛盾点ですかね?
どこにあったか教えていただけると幸いです
>>68
「『20thセンチュリー・ボーイ』ッ!解除ッ!」のところですか?
もし、そこだったら、20thセンチュリー・ボーイを解除した、という意味で書いたのですが

70 :
>能力としては、ガスに包まれた人間を老化させるんだけど、これにもまた弱点がある。
>それは、冷やされたら老化しない、って事だ。
>まぁ、それが無きゃ自分も老化しちゃうから仕方ないだろうけど、今の彼には冷やせる方法が、支給品の水を被るしかない。
>つまり、長時間スタンドは使えないって事だ。
ここです。原作中でプロシュートが自分の体を氷で冷やすシーンはなかったですし。

71 :
Oh My God!!
俺がマンモーニだったよ兄貴
修正スレに上げて置きます

72 :
投下乙です
まず「朽ち果てるその前に」の方から。
イルーゾォ相手が悪かったな……まじで
でも、念願の(?)ロワ出演が果たせて良かったじゃないか
ブラフォード今回はマーダーか。タルカスと遭遇したら血を見るな。
以下指摘
>>43
俺いるのに → 俺がいるのに
運がいいんだが悪いんだが → 運がいいんだか悪いんだか
>>45
色々会って → 色々あって
>>50
自身も無かったが → 自信も無かったが
>>51
頭がら胸にかけて → 頭から胸にかけて
>>43 川に潜れば、エジプト行き下水道
地下地図はないので、下水道はわからないはず
>>51 明確なチョキになれなかった。(略)〜チョキであり、グーになれなかった男。アヌビス神だ。
結局チョキなのか?
続いて「1/2+1/2=」
なんだか楽しそうな二人だなw
ウェカピポよりはいいコンビになるだろうよ
ペッシのことを気にかけてる兄貴に泣ける
すでに指摘されている点以外で気になった箇所はありません

73 :
お前らあけおめ(><)

74 :
まだ明けてないぞw

75 :
あけおメッシャァァァァァ!!

76 :
あけましておめでとうございます 今年もよろしくお願いします
年越し投下は無理でしたが今日中に仮投下したものを手直しして本投下します

77 :
あけおメメタァ

78 :
お前らあけWRYYYY!!

79 :
スゲーッ爽やかな気分だぜ 新しいをはいたばかりの正月元旦の朝のよーによォ〜ッ
あけましておめでとう

80 :
あけおメメタァ
2012年も精進していきますのでw
よろしくお願いします

81 :
もう収録されてしまったようですが、ドゥービーの支給品などはどうなりましたか?

82 :
そういやドゥービーの死亡表記がないね

83 :
どこに書いて良いのかわからないんでここに書かせてもらう
前作2ndのwikiの支援絵にある偉大なる死の絵って別の絵じゃないか?
確かスナイプさん作で倒れ伏した兄貴が描かれてたと思うんだが勘違いしてたらごめん

84 :
質問を遮ってしまうようで申し訳ないのですが、
シーラE、投下します

85 :
私は空っぽだった。
立っているのか倒れているのか、生きているのか死んでいるのか、それすらひどく曖昧だった。
ほんの少し前に見た、現実味のないバカげた映像だけが何度も何度も脳裏を廻る。
あの方の――ジョルノ様の、首、が。
「……あ、あ、アアアアアァァァァァァァァァァアアァァァァ!」
堪らず絶叫し、床を殴りつけていた。あらん限りの力を込めて打ちつけた拳は、磨き抜かれた床にぴしりと小さなクモの巣のようなヒビを入れた。
(何故、何故、なぜ!?)
あの方が、ジョルノ様が、あんな――あんな。
(何故――されなければならなかった?)
あの方の涼しげな声を憶えている。
あの方の凛とした眼差しを憶えている。
あの方がしてくださったことを……憶えている。
「ジョルノ、さま」
ぽとりと落ちた声は、まるで自分の声じゃないみたいに弱々しくてかすれていた。
そのとき、視界の端に何かが映った。
(荷物……支給品)
そうだ、あの男。あの気の狂ったようなジジイが言っていたこと。
「バトル・ロワイアル……」
何でも? 願い事を叶える? 望むもの全て?
――願えば、人が生き返るとでも?

86 :
そんなことはあり得ない。
それは私の人生において常に突きつけられてきたことでもあり、あの方に救って頂いたことでもある。
された姉、その仇を取ってくださったジョルノ様。
私はあの方に救われ、あの方についていこうと思った。
それなのに……されてしまった。奪われてしまった。
あの方の刃となり、楯となり、あの方の正義に尽くしていくために生きていた私だけ、残ってしまった。
「……望むことはたったひとつ」
私は誰だ?
シーラE。Eは――復讐(エリンニ)のE。
「あの方を奪ったこと、地獄で後悔しろ」
そのために邪魔なもの、力づくでもいい、薙ぎ払ってやる。
あのクソジジイをブチしてジョルノ様の仇を取る、そのためならなんだってやってやる。
私はシーラE、復讐者のシーラE。
そう決めて、私は辺りを見回した。
室内だが、窓などは見当たらない。出口を探さなければ。
暗闇に目を凝らすと、壁に掛っている絵に気がついた。
上半身裸の男が、生首を掴んでいる絵だ。なんだか妙に滑稽に見える。
さらに視線を巡らせると、扉があった。
あのクソジジイからの手土産だというのが気に食わなかったが、荷物を改めてこの部屋を出ることにする。さしあたっての手掛かりはこれだけだから。
「――行こう」
デイパックを背負い、扉に手をかけて、ふと思いついた。
あのクソジジイの首を、あの絵のように切って落とそう。
ジョルノ様を手に掛けた罪を思い知らせてやろう。
そのとき、きっと私は微笑んでいた。

87 :

【A-2 ルーヴル美術館内・1日目 深夜】
【シーラE】
[スタンド]:『ヴードゥー・チャイルド』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』開始前、ボスとしてのジョルノと対面後
[状態]:利き手にダメージ(小)、健康、スティーブンへの復讐心で視野狭窄気味
[装備]:素手
[道具]:基本支給品一式、確認済みランダム支給品1〜2(武器ではありません)
[思考・状況]
基本行動方針:ジョルノ様の仇を討つ
1.主催者のクソジジイを探す、す
2.邪魔する奴は容赦しない
[備考]
参加者の中で直接の面識があるのは、暗チーム、ミスタ、ムーロロです
元親衛隊所属なので、フーゴ含む護衛チームや他の5部メンバーの知識はあるかもしれません
行き先は次の書き手様にお任せします

88 :
以上で投下完了です
仮投下時に指摘して頂いた部分は修正したつもりです
が、何かありましたらご指摘ください

89 :
投下乙
ジョルノがああなったら、こうなるよなぁ……
でも、勢い余ってマーダーにならなくてよかった
スタンドも強いし期待!
>>ドゥービー
単純に抜けてるっぽいね
したらばの方にも乗っけた方がいいだろうか
>>83
すまん。当時見てなかったからわからん……

90 :
シーラE心酔しきってからなぁ
再会できてもジョルノ五部終了前…ジョルノなら何とかなりそうだけど
>>83
すみません、当時見て無かったからわからないです
多分ピクシブにあるあの絵だと思うのですが…

91 :
投下乙です
シーラEちょっと危ういなあ
でもジョルノとそんなに離れてるわけではないから再開できるか
>>83
ジョジョロワで検索したら出るね
確かに今wikiに載ってるのは違うんじゃないかと思ってた

92 :
投下乙です
恥パーにはジョルノ信者もいるもんね 特にシーラEはその傾向強いし
個人的にジョルノ様、って呼び名に慣れなくてちょっと困る
という事で今から投下します 仮投下スレで意見下さった方ありがとうございました

93 :

ジャニコロの丘を歩く男女が一組。
両手で顔を覆い、震えた浅い息をしているルーシー・スティールに対して
ブローノ・ブチャラティが肩を支える以外に何もしなかったわけもなく、泣き止まない少女を励ますつもりで
自分の出身地であるイタリアやこのし合いに巻き込まれているかも知れない仲間のことについて少し話した。
――ここに来る直前はサルディニア島にいたんだ。バカンスじゃあなく、まあ、仕事みたいなもんさ。
  知ってるかい? エメラルド海岸と呼ばれる所が美しくて……
――オレの仲間に変わったヤツがいるんだよ。でも信頼できる男だから、もしこの場にいたら合流したいんだが……
  ソイツ、数字の4を極端に怖がるんだ。4だぜ? 変わってるだろ? 良いヤツなんだがなあ。
身の上話をしたのはルーシーを落ち着かせるため、という側面が大きいものだったので
自分がギャングであることはもちろん、彼女を不安を煽るような話は一切しなかった。
ここに来る直前、サルディニア島でチームの一員だったレオーネ・アバッキオが暗され悔しい思いをしたことも、
今しがた自分の目の前で見せしめとして爆されたジョルノ・ジョバァーナが大切な仲間だということも。
何の力も持たないであろう一般人の彼女が知らなくていいことは隠すべき、というのがブチャラティの判断。
これ以上動揺させる必要なんて無いし、ただの少女をこんなし合いに巻き込むことは極力避けたかったのだ。
まるで、ヴェネツィアまでの道中で、自分たちのいる裏の世界に巻き込まないよう
トリッシュ・ウナの質問に対してずっとうやむやな回答を続けていたように。
ルーシーに話しかけながら、ブチャラティは少しずつ自分の現状について考察を始める。
……街並みはイタリアそのものだ。それにしてもどんな方法を使ってオレ達を集め、ジョルノ達をしたのだろうか?
 主催者の男曰く、100人近くの人間がこのゲームに参加させられている。
 どうにか協力できる人材を集め主催者を打倒したいところだが、今思いつく限りでの大きな問題は二点。
 一つ目は、先の参加者(ジャック・ザ・リパー)のようにし合いに乗った人物のこと。
 出来れば説得を試みたいが、止むを得ない場合は始末するしかないだろう。
 二つ目は、全参加者に掛けられている首輪のこと。威力の程はジョルノ達が身を持って示している。
 無理矢理外そうとするだけでなく、大きな衝撃を与えただけでも爆発するらしいから適当には扱えない……
少し言葉数が減ったのを察して、少し落ち着いたのか泣き止んだルーシーはブチャラティをジッと見つめ、どうしたの、と問いかける。
何でも無いよ、とブチャラティは囁き、あの教会で少し情報交換しないか、と続けた。

94 :
 *
先に中に入って様子を見たブチャラティは誰も居ないからおいで、と合図をした。
窓から差し込む月明かりで十分だと判断したあたしたちは、照明を探すことなく荷物を置き椅子に腰かける。
「オレはさっき歩きながら話したことがすべてだ。仲間のことも、どこから来たかということもね。良ければ君の話を聞かせて欲しい、ルーシー」
「あたしはアメリカ、ニューヨークのトリニティ教会にいたわ。ここはあなたの国なの? 見たことない街並みだったわ」
「ああそうだ。それにしてもアメリカ? なぜそんな遠くから…… 知り合いはいそう? さっきのホールで見かけた?」
主催者のスティーブンが自分の夫だなんて言えるわけがない。
ついさっき悪漢に襲われたあたしを助けてくれたことから、目の前にいるブチャラティという男は正義感が強いのだと想像がつく。
たぶん彼は『良い人』だ。悪を許さず、黄金のような精神を持って行動出来る人物。
だからこそ、真実を告げたらどうなるか分からない。あたしのことを『し合いを主催する男の悪妻』だと考えるかも知れない。
問い詰められて、脅されて、されるかもしれない。あたしもスティーブンも……
さっきまで泣いていたせいで喉も唇も乾いてしまったわ。唇を舐め、唾液を飲み込み、少しゆっくりと息を吐き出してからあたしはこう続けた。
「いなかったわ、知り合い…… 今は少し落ち着いたけれど、周りを見る余裕も無かったし」
スティーブンに釘付けになって周りを見られなかったことだけは真実。
夫がこんな残虐で卑劣なし合いをプロモートするだなんて信じたくない。信じられない。
彼はあたしのことをずっと守ってくれていた。マフィアに売られそうになったあたしを助けてくれた時からずっと。
彼があたしを危険な目に晒すはずがないけど、このブチャラティという男が助けてくれなければ自分がされていたのも事実。
スティーブンを信じたいのに!
……ヴァレンタイン大統領が死んだ後に、別の世界から出てきたディエゴ・ブランドーが遺体を持ち逃げしたのをあたしたちは見ている。
つまり、あのスティーブンもあたしの知っているスティーブンとは別人の可能性が存在する?
会って、直接スティーブン本人と話がしなければ……
「君は、オレに嘘をついているな?」

95 :
心臓を掴まれたような気がした。なんで? なんで嘘がばれたの? この男は一体……?
「オレね…… 人が本当のことを言ってるかどうかわかるんだ。なぜ君は嘘をついた?
オレは君を助けたことから分かるように、し合いに乗る気なんてサラサラ無いぜ。君のような普通の女の子を守ったりもするさ。
さっき話した仲間を探して、主催者を打倒するのが目的だ。なあ、何か隠していることがあればオレに教えてくれないか?」
主催者を倒すですって? スティーブンをどうするつもりなの?
もしかしたらブチャラティはスティーブンの居場所を突き止めてくれるかも知れない。
でも、その後、彼とあたしの身の潔白を証明することは出来るかしら?
既に彼は大人数を巻き込んだし合いを開催し、三人もの人間を衆人環視の場でしてしまったのに!
トリニティ教会でディエゴ・ブランドーを待っている時に、いいえ、もっと前から、あたしは夫のために命を懸けるって決めていたわ。
スティーブンに会わなくてはいけない。強くそう思う。いつまでも『誰かに助けてもらうルーシー』じゃあない、
自分の手で、自分とスティーブンを守らなければいけない。そのためには、この人と一緒にスティーブンの居場所を探し出す!
「そうだわ。あの、主催者の男は見たことあるかも。ごめんなさい。SBRレースの主催者のスティール氏でしょう?」
何も今すべてを教える必要はない。あたしのファミリーネームも隠したままでいい。
スティーブンに会うために、ブチャラティと行動すればいいだけよ。彼が知らなくてもいいことは隠すべき。
このまま夫に巡り合うことが出来たなら、その時に真実を打ち明ければいいだけ。
隠し事の理由は『主催者のスティーブンがあたしの夫だとあなたに話したら、何をされるか分からず、怖かったから。
あなたが最初に出会った参加者にしたように、あたしもバラバラにされてしまうかも知れないと思ったから』とでも言えばいい。
実際にそう思ってるし、今真実を告げた所でブチャラティがあたしに協力的になってくれるかどうかなんて本当に分からない。
「教えてくれてありがとう。ところでSBRレースって何だい? F1みたいなヤツ?」
F1って何だろう。よく分からないけど、外国の方だからSBRのこと知らないのかな?
ところで、SBRの参加者がここに呼ばれた可能性はないのかしら? あたしの知り合いはもうジョニィくらいしかいないけど。
もしいるとすれば、SBR参加者に会うのはマズイ。あたしはとっくに大統領の関係者から追われる身になっているし、
主催者スティーブンの妻だからと恨みを買い、しのターゲットにされるかも知れない。
……少しこんなことを言うのは心苦しいけど、『あたしと彼は何の関係も無い』と言うことにしましょう。
それよりも、何か、遠くの方から近付いて来るような音が聞こえてきたけど……
「君も気付いた? あれは車が走ってる音じゃあないか?」
車ってあの? そんな珍しいものがこの近くにあるの? 窓の外を見ても、車が走っているのは分からないわ。
「ちょっと様子を見てくるよ、オレの荷物はここに置いていく。話の続きは後にしよう」
ブチャラティは立ち上がると教会の外へ出ていった。あたしは拷問から解放された囚人みたいだった。
ずうっと放っておいた荷物を確認しながら、見つからないように外の様子を見ておこうかな。

96 :
 *
教会に面している少し広い道路に出たブチャラティはルーシーとの会話を思い出しながら車が通るのを待っていた。
助けた時はただのか弱い少女だと思っていたが、涙を拭いてからは力強い意志を感じさせる目をしていた、と評価する。
些細な嘘については――顔の汗の変化だけでなく、唇を舐めたり喉を鳴らしたりする仕草を見て、
彼はルーシーが嘘をついていると判断したのだが――取るに足らないことだと考えることにした。 
少しすると、教会の方に車が近づいてくる。ローマナンバーのワゴン。運転しているのは男。薄い色のスーツに、黒い斑点。
自分の服装に少しばかり似ている、とブチャラティは男を見て考えた。
最も、服装だけでなく社会の闇の中を生きている(生きていた)ギャングという境遇も似ている、と言えるだろう。
――一つを例に挙げても、その考え方や行動理念すべてが正反対なのだが――
その運転手は、日本のタクシードライバーではないが、
手を上げて道端に立っているブチャラティを見つけると車を止め、荷物を持って降りてきた。
「おう兄ちゃん。オレに何か用か? オレがとんでもねえ悪人ならテメーのこと轢きしてたぜ」
「そうか、悪人ではないんだな? オレはこのし合いに乗らない人を募っている」
月明かりに照らされる二人。ブチャラティの顔は車から降りてきた男にとってひどく青白く見えた。まるで死体のように。
「オレさぁー教会探してたんだよ。教会って大体納骨堂あるだろ? 隣接した墓地は見つからなくても、納骨堂のある教会は多い」
「何言ってるんだ?」
「でもそれよりオレ今すげえモノ見た気分だぜェェー! 墓地や納骨堂に行かなくても死体を手に入れられるんだからな」
「今、何て……」
『闇の中から蘇りし者リンプ・ビズキット…… 我とともに来たれ…… リンプ・ビズキット…… 闇とともに喜びを……』
怪しい呪文を唱え始めた男に対してブチャラティは警戒を強める。
いつでもスタンドを出せるつもりでいるし、そのための間合いを詰める準備もする。
話を聞かない男はスポーツ・マックスと言う名の囚人。彼は目の前のブチャラティへの興味が尽きない。
彼のスタンドの名は『リンプ・ビズキット』。ホワイト・スネイクに与えられた死骸を操るスタンド。
――彼と直接戦ったエルメェス・コステロはそのスタンド能力を『透明のゾンビをつくり出すこと』と表現した――
今のブチャラティはヴェネツィアでディアボロにされる間際にジョルノから生命エネルギーを与えられた、生ける屍。
心臓がとっくに動いていないことも、呼吸を全くしていないことも、死骸使いにはすべてお見通し。
「何だテメエェェーー! 死体じゃあねーのかよォォオ!」

97 :
ブチャラティは自分が既に死んでいることを看破され驚いたが、
スポーツ・マックスは目の前の死体が操れないことにブチャラティよりも大きな衝撃を受け、冷静さを失った。
普通は死体が動いていることに驚きそうなものだが、自ら動き出す骨や生物の死骸を日常的に見る男にとってはそんな常識は通じない。
スポーツ・マックスは一つ勘違いをしていたのだ。本来、彼が操ることが出来るのは生物の死骸。
ブチャラティの身体には生命エネルギーと魂が残っているのだ。生者を操るのは、『リンプ・ビズキット』の領域では無い。
「やれやれ話を聞いてくれ」
「そうだ、れば操れるはずだッ! でも何でテメエの身体は動いてるんだよォー!」
尻ポケットに隠していた切れ味の良いハサミを手に、ブチャラティに向かって急接近。
元ギャングの囚人は、刃物を振り回すというあまりスマートではない自身のり方には少々うんざりしていたが、
ここで退くよりはこの死体を手に入れて透明ゾンビに使える人材を確保しておく方が有益だと判断した。
どんどん距離を詰めていき、銀色に輝く鋭いハサミをブチャラティの身体に突き刺す。
しかしスポーツ・マックスの右手には男の腹をつらぬいた感覚が無かった。のれんに腕押し、という表現が合うだろう。
ブチャラティの腹には刺し傷では無いスキ間がポッカリと空いている。
『スティッキィ・フィンガーズ』、それはジッパーを繋げて空間を造るスタンド能力。
彼が刺された腹のジッパーを閉じてしまえば、たちまち男の右手はハサミごと腹から抜け出せなくなってしまった。
ブチャラティはもう一度だけし合いゲームについて男に問うたが、
恨み辛みを零すだけのイカレた玩具のようになってしまったスポーツ・マックスを助けることもせず、
首輪に触れないよう細心の注意を払って男の全身をバラバラにし、腹に埋まったままのハサミと右手を後から取り出してやった。
一度し合いに乗ってしまったら、元に戻れない哀れな男もいるのだと感じながら、
お決まりの掛け声の後にアリーヴェ・デルチ、と叫び、一仕事を終えた。
バラバラの死体を見て、ブチャラティはこの惨死体がルーシーの目に入ることを想像した。
やっと落ち着きを取り戻した少女にこんなものを見せるわけにはいかないな、と結論付け、
幾つのも部位に分かれてしまった死体をパズルみたいに元の形へ戻した。
その後近くの柔らかい地面にスティッキィ・フィンガーズでスキ間を造りだし、死体を埋め、ハサミを墓標の代わりに刺してやった。
自分を襲ってきたゲームに乗った悪人だったが、こんな所に呼び出されて狂ってしまったのだと思い、わずかに同情した。
男が乗って来たワゴンに乗って移動する方が人探しには有効だと考え、
スポーツ・マックスのデイパックを拾ったブチャラティはルーシーを呼びに教会へと戻っていった。

98 :
 *
ブチャラティが出て行くとすぐにあたしは荷物を調べることにした。
パンや水、地図等をデイパックの中から外に出していくうちに、余った紙が一枚。
そっと開いてみると、ただの小さな紙切れの中から鉈。これ、良く見たらさっき使った、ディエゴ・ブランドーの首を切り落とした鉈だわ。
ホット・が下水道から『肉スプレー』で出てきたように、ものの大きさを変えるスタンドでこの紙切れにしまっていたんだろう。
この鉈のことを知っているのはスティーブンしかいないから、彼があたしのために持たせてくれたものなの?
確かにあたしは聖なる遺体集めに携わってから、そのつもりは無くても多くの人を手に掛けてきた。
夫を守って、二人で幸せになるために、制止を振り切ってあの首を手に入れた。……いざという時の覚悟ならもう出来ているわ。
そうだ、窓の外はどうなっているかしら? 意外と近くに止まったみたいだから見えるかも。
それにしても、あんな珍しい車を見るのは初めてだわ。男が出てきたけど、口の動きもここからなら見える……
『し合い』『納骨堂』『死体』『リンプ・ビズキット』
あッ! あの男刃物を隠し持って…… ブチャラティが危ないッ! ……刺されても平気なの? お腹に刺さっているのに?
それより、ブチャラティの隣にヒトのようなものがいる?
あの男まだ何か言ってるわ。 『死体』『お前が死体』『死んでいる』
どういうことなの? ブチャラティが死体? 奇跡でも起きなければ、死体が動くはずなんて無いわ。
そして、あっと言う間にバラバラになったみたい。たぶんあれはスタンド能力!
ブチャラティの隣にいるヒトがやったようにも見えるけど、怖ろしい能力……
死体に何かしているようだけど、位置が低すぎてよく見えないわ。でも一応片付いたし、彼はそろそろ戻って来るかしら。
 *
教会に戻って来たブチャラティは、行く時には無かったデイパックを背負いながらルーシーに車が手に入ったことを告げた。
バラバラにして土に埋めた男の遺品だ、とは言えずはずも無く、乗っていた男のことは一切話題に出さなかった。
ルーシーとしても、一部始終を見てしまったのだから、特に何も聞く必要が無いと思い、そのことに関してはわかったわ、とだけ返事をした。
彼女がデイパックの鉈以外の支給品について大方説明すると、地図を見てブチャラティは大きな溜息をついた。
ローマだけどローマでは無い狂った地図。ブチャラティは今まで歩いてきた道や建物、そしてこの地点が少し高い場所にあることから
自分たちの現在地点を『ジャニコロの丘』だと判断した。
主催者を打倒するための人材集めと、この地図に乗ったローマを調査するため、ブチャラティは車での移動を提案。
彼はSBRとやらについては車内で聞いても大丈夫だろう、と考えた上での選択だった。
ワゴンに乗りこむと、ルーシーは初めて乗る車に少なからず興味を持ったが、
それよりも先に、隣で運転している男についてどうしても一点だけ調べたいことがあった。
月明かりに照らされたブチャラティの顔をまじまじと見つめる。血の気の無い、土気色をしている。
ギアを握るブチャラティの右手に自分の手を上から重ねる。死体のように冷たい。
どうした、と聞く男に、何でも無いわ、と囁き、人差し指と中指を彼の手首に当てる。彼女が想像していた通り、脈は無い。
年頃の女の子のことはよく分からない、と苦笑いするブチャラティに対し、ルーシーは唇を噛み、また浅い溜息を付いてから、素朴な疑問を投げかけた。

「どうしてあなたは死んでいるの?」


99 :
 *
――オレ、何してたんだっけ? そうだ、教会に死体を探しに行くんだった……
  死体を操って、オレがし合いに勝ってやる…… ああ、ここに落ちてるのオレのハサミじゃねーか。もうすこしで教会だ……
「ヒヒヒヒヒヒヒヒィィィ、あの承太郎が死んだわァァァァァ DIO様もさぞ喜んでくだしゃるじゃろう」
――なんだこのうっせーなァ、コイツも教会目指しているのか。
「ハア、ハア、しかし、年寄りにはこの坂道は億劫じゃのう…… 高台の上からなら、地図にあったDIO様の館がどこに
あるのかすぐ分かると思ったんじゃが、教会を見つけたのは好都合じゃ。納骨堂には我が『正義』の操り人形の元がたくさんいるからのォォ〜」
――も納骨堂狙いかよ…… 怪しい感じのする系だが声かけてみるか……
  おいバアさん、あんたも教会に用があるのか?
「ヒィィィー疲れるわい、教会まであと少しじゃ」
――聞こえてねーのかこの。しょうがねえもっと近づいてから声かけるか。
「ケエェェェェッッーー! あれはわしがジョースター達をブッすために磨いておいたハサミィィ! どうして浮いているんじゃ?」
――ハサミが浮いている? 何言ってんだこの?
「ここに来てから我が『正義』を発動するにはなぜかいつもよりもしんどいのじゃが、このハサミが浮いている辺りだけでも霧を巡らせてみるかのォ」
――なんだこの霧 もうメンドくせえなこの…… なんか喉渇くしよォ、の脳ミソを喰らえば……
「グエェッ!」
いくら『正義』の霧を自分の周囲に張り巡らせても、スポーツ・マックスは傷ついた死骸ではないので、死霊使いとしてに彼に与える効果は無い。
スタンド使いにはスタンドが見える法則があるが、『透明なゾンビ』になったスポーツ・マックスには誰の目にも映らない。
教会の近くでブチャラティに埋められたスポーツ・マックスは、一度バラバラにされ心停止した後、土の中よりゾンビとして復活。
同じく死骸を操るスタンド使いであり、納骨堂の死体を求めに来たエンヤ婆と教会付近で遭遇。
噛みあわない会話を一通り満喫した後、しびれを切らしたスポーツ・マックスが喉の渇きを満たすことで二人のは幕を閉じた。
エンヤ婆と呼ばれた女の首はすべてスポーツ・マックスの胃の中に収まっていく。
吐き気を催すようなピチャピチャ、ズルズルという咀嚼音がジャニコロの丘の教会前に響く。
もしこの光景を目の当たりにした人間がいるとすれば、耳障りな音だけでなく闇夜に突如浮かびあがった血塗れの口許にも恐怖するだろう。
「あぁ、これだッ! 脳ミソを喰らいたかったんだッ! それでも、まだ、渇くッ!」
渇きを満たし恍惚としている男は本能的に血を求めるリビングデッドそのもの。
蘇ったばかりなので生前の記憶は生前の記憶はほとんど思い出していない。
それでも、墓標代わりに己の死体の上に突き刺さっていたハサミを拾うくらいの知性は残っていたようだ。
頭部を食べた時の残りカスである老女の白髪がはらはらと舞い、地面へと落ちていく。
エンヤ婆は首が無くなったことで、『バトル・ロワイアル』の参加者の喉元にまとわり付いていた煩わしい首輪からは解放された。
スポーツ・マックスは支えを失って地面へ転がっていった首輪には興味を持たなかったし、デイパックにも目をくれなかった。
先程まで彼女を拘束していた首輪と、小さな手に握られていたデイパックは持ち主を失ったままずっと教会の前に放置されるのだろう。
ゾンビに喰われた哀れな老婆は透明ゾンビとしての新たな人生を歩み始め、スポーツ・マックスの後を付いて歩く。
口の周りを紅く染めたゾンビは自分がゾンビだと気付くこと無く、次の獲物を探して闇の中を徘徊する。
【エンヤ婆 死亡】

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