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2012年3月創作発表205: クロスオーバー創作スレ5 (259)
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クロスオーバー創作スレ5
- 1 :
- ともかく何かと何かをクロスさせてみるスレ。
せっかくの創作版ですから、冒険的クロスでも堅実なクロスでもお好みで自由にどうぞ。
まとめwiki
http://www31.atwiki.jp/crossnovel/pages/1.html
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/13627/
前スレ
クロスオーバー小説創作スレ4
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1274222526/
- 2 :
- 移転前のスレが落ちていたのでスレ立てしました。
スレタイトルがちょっと間違えてしまいましたね
すみません
- 3 :
- >>1乙!
- 4 :
- 保守age
- 5 :
- 保守
- 6 :
- ほしゅ
- 7 :
- 聖お兄さんのイエスとHELLSINGのアンデルセンが出会ったらどうなるんだろうね
- 8 :
- hosyu
- 9 :
- hoshu
- 10 :
- hoshu
- 11 :
- ホシュ
- 12 :
- 以前、このスレに投稿していた◆jPpg5.obl6です。
せっかく、新サーバーでスレが立ったので投下させていただきます。
今回は、以前◆ht8000sikさんが書かれていた<仮面ライダーW × とある魔術の禁書目録>を
自分なりに書いてみました。
オリジナル設定が多々ありますが、それでもよろしい方はお目汚しにどうぞ。
ちなみに、時間軸としてはウェザー撃破〜劇場版の間とお考えください。
- 13 :
- とあるマンションの一室。
<上条>という表札がかかった部屋の一室で禁書(インデックス)は悪夢にうなされていた。
「・・・とうま・・・とうま・・・。」
「とうま!」
混沌とした暗黒の世界。
その中では、禁書を世話している上条 当麻が、ボロボロになりながらも何者かと戦っていた。
自身の右手に潜む能力<幻想し(イマジンブレイカ―)>を武器にその何者に攻撃を仕掛けようとする上条であったが、
敵の持つ超高速移動に対応出来ず、そのままサンドバックと化していた。
「とうま、逃げるんだよ!」
叫ぶ禁書。
だが、その言葉は上条に届くことはなく、彼はついに力尽きてしまった。
傷だらけになった状態で倒れこむ上条のもとへ禁書が駆け付ける。
「とうま!お願い・・・しっかりして!!」
禁書は一生懸命に呼びかけるが、上条からの反応は一切無かった。
そんな禁書のもとへ、上条が相手をしていた影がゆっくりと現れた。
相手を見る禁書。
彼女の眼には、大きな刀のような武器を持つ、青い装甲に包まれた何者かが映りこむ。
そして、何者かは言い放った。
「絶望が・・・お前のゴールだ。」
自身の武器を振りかざす何者か。
その武器は禁書へ、そして当麻へと振り下ろされるのであった。
- 14 :
- 「・・・ぅわぁあああああっ!!」
勢いよく飛び起きる禁書。
彼女が着ていた、カエルの着ぐるみパジャマは尋常じゃない汗でぐっしょりとなっていた。
「・・・!とうま!とうま!!」
突然、彼女はベッドから飛び降りると、床で寝袋を敷いて寝ている上条へ大声で叫ぶ。
「とうま!とうま!!とーおーまーぁっ!!!」
「・・・おい・・・なんだよ・・・禁書・・・。」
「とうま!生きてるんだね?!」
「・・・まだ5時じゃねぇか・・・明日は・・・というか今日は土曜なんだから・・・遅くまで寝かせてくれよ・・・。」
「生きてるよね?生きてるよね?!」
「・・・お前の所業で死にそうだよ・・・。」
そう言って、上条は再び寝てしまった。
- 15 :
- 「ボディガード?」
「そうだよ。今日一日、私がとうまのボディガードになってあげるんだよ!
だから、感謝するんだよ!!」
上条の言葉に禁書が答える。
一方の上条は大きめのフライパンを振り回しながら、ご飯を炒めていた。
「・・・ったく、3時間前に禁書の夢で叩き起こされるわ、
今度は『ボディガードになりたい』と言いだすわ、
終いには『感謝しろ』と言いだすわ・・・どうしたんだよ、いったい。」
「どうもこうも無いんだよ!」
上条の後ろでプンスカ怒る禁書。
それに対し、上条はその様子に目を向けること無く山盛りのドライカレーを完成させると、
一杯を自分の皿へ、残りのドライカレーをフライパンごと禁書に出すのであった。
「とりあえず、これ食って落ち着・・・って、もう食い始めてるか。」
無言で食べ始めた禁書を後目に、上条は自分の分の朝食をさっさと済ませると、
簡単な身支度をし始めるのであった。
「・・・あれ?とうま、どこかに出かけるの?」
「ああ、ビリビリと映画の約束しちまったからな。」
上条の様子にようやく気付いた禁書が、靴を履こうとしている彼に言う。
「映画?」
「ああ。えぇっと・・・『ジェシカの彷徨と恍惚・傷だらけの乙女は何故西へ向かったのか:漂流編』
・・・って随分とタイトルの長い映画だこと。」
ポケットに突っ込んであった前売り券を見ながら上条が言う。
「・・・あ、ちょっと待って!」
突然、声をあげる禁書。
その数秒後、彼のもとへ不思議な格好をした禁書が現れた。
「・・・おい。なんだよ、鍋なんか頭に被って・・・。」
「だって、今日はとうまのボディガードなんだよ!だから多少は武装しないと!」
そう言って、右手のオタマを振りかざす。
「お前な・・・そんなフザケた格好で連れて行けるワケ無いだろ。」
「心配ご無用なんだよ!だから、安心するんだよ!!」
自信満々に言う禁書。
それに対し、上条は何かを考え付いたのか、禁書の頭をさするのであった。
「・・・じゃあ、俺の提示した条件を守ったら、ボディガードとして連れてってやる。」
「ホント?!その条件って何、ナニ?!」
「・・・服を着ろ。」
「・・・え?」
そう言って、自身の格好を見る禁書。
先ほどまで彼女の体は修道服に包まれていた・・・はずだったが、
先ほど上条が禁書の頭を撫でた際に彼の持つ<幻想し>が発動、
それによって彼女の服はバラバラの布の塊と化したのであった。
「な・・・な・・・な・・・とおまぁっ?!?!」
玄関で裸体を晒しながら、大声をあげる禁書。
だが、上条は禁書が取り乱しているうちにさっさと外へ出掛けてしまったのであった。
---------------------------------------------------------------------------------------------
OP:http://www.youtube.com/watch?v=MYbQpDocz6A&feature=related
- 16 :
- 「・・・それにしてもビリビリの奴、随分と待たせるな。」
学園都市と呼ばれる巨大空間、その中の一画にある映画館の前で上条はひとり立っていた。
「どうせ、またヤンキーかなんかに絡まれて、そいつらをボコって遅刻・・・ってのが関の山だろうな。
別にやっても文句は無いが、さすがに時間は守って欲しいよ・・・ったく。」
愚痴りつつ、映画館のネオンを何の気無しに見る。
「それにしても・・・。」
上条はふと思い返していた。
それは今朝、朝食の製作にかかる前の出来事だった。
「『青の通り魔』が俺を襲っただって?」
今朝見た悪夢の内容を説明する禁書に対し、上条が聞く。
「そうなんだよ、とうま!夢の中に『青の通り魔』が出たんだよ!それに・・・とうまが・・・。」
禁書は悲しそうな顔をしてうつむく。
『青の通り魔』・・・。
それは、数週間前から学園都市に出没するようになったという、
学園都市に住む人々の命を狙って暗躍する謎の犯罪者の通称であった。
その存在はまったくの謎に包まれており、唯一分かっているのは風のごとく被害者の前に現われ、
そして被害者をサンドバックのように何十発も殴って害するという残忍かつ奇怪な犯行手段をとるということであった。
これまでに20人もの屈強な男が被害に遭っているのだが、唯一ひとりの男性が奇跡的に生存したことがあった。
のちに、その被害者は搬送先の病院で息を引き取ったのだが、死ぬ前に彼はこう言ったという。
「青い・・・悪魔だ・・・。」
「『青い通り魔』・・・か。それにしても、禁書は随分と物騒な夢を見てくれたもんだよ。」
つぶやく上条。
その時、彼の頭に禁書の言葉がフラッシュバックする。
『それに・・・とうまが・・・。』
禁書の悲しげな言葉、そして寂しげな顔。
今思えば、夢だったとは言え、禁書は精いっぱいに自分のことを心配していた。
なのに、自分はそんな気持ちを理解せず、それどころか邪魔扱いしてしまった。
「・・・禁書に悪いことしっちまったな。」
ポツリと言う上条。
「・・・しょうがない。映画が終わったらアイツにケーキでも・・・。」
- 17 :
- 上条が言いかけたその時だった。
遠くの方から聞こえてくる爆発のような音。
その直後、映画館のネオンが・・・いや、ネオン以外にも電灯や自動販売機といった機械が次々とストップするのであった。
「・・・まさか!!」
爆発音の聞こえた方向の空を見る上条。
目線の先には、彼の予想通り、地面から雷のような雷撃が無数に発生していた。
「ビリビリの奴、また何かしでかしやがったな!」
そう叫ぶと、上条は雷撃の方向へ全速力で走りだした。
一方、雷撃の中心地にふたりの姿があった。
そのうちのひとり、青い装甲に包まれた男が言う。
「貴様、いつまで抵抗するつもりだ!!」
「そっちこそ・・・女の子だからってなめるんじゃないわよ!」
一方、もうひとりの存在・・・学校の制服を身にまとった少女も負けじと答える。
「こういうセリフは本来、黒子が言うべきだけど・・・『ジャッジメントですの』だ!覚悟しなさい、『青の通り魔』!!」
「『青の通り魔』だと?勘違いも甚だにしろ、『ドーパント』め!!」
そう言うと、青い装甲の男は右手に持つ大きな剣にUSBメモリ状の何かを挿入し、剣の引き金を引いた。
ENGINE!!ELECTRIC!
響き渡る音声。
すると、青い装甲の男は刀をライフルのように構え、彼女に向かって数発の光弾を発射した。
「おっと!」
飛んでくる光弾に対し、回転して避ける女性。
そして立ち上がり、スカートのホコリを払いながら、ポケットから数枚のコインを取り出した。
「それがあなたの能力?」
「ん・・・?」
「教えてあげる、光線技っていうのはね・・・こうするんだよっ!!」
少女の指から弾き飛ばされる数枚のコイン。
・・・と、次の瞬間、その軌道を追うかのように、
彼女の持つ能力<超電磁砲(レールガン)>によって発生した大量の電気エネルギーが指から放出された。
青い装甲の男を襲う光線。
そのうちの一本は男が持つ刀を吹き飛ばすのであった。
「なんてパワーだ!くそっ・・・人間態にやるのは気が引けるが・・・仕方がない!!」
そう言って、男は腰にある『バイクのハンドルを模したベルト』のクラッチレバーに手をかけた。
- 18 :
- TRIAL!MAXIMUM DRIVE!!
音声が響き渡ると同時に、体を青白い炎で包み込む男。
そして、ベルトのアクセルを思いっきり引くと、空高く跳び上がり、キックの体勢に入った。
「甘い!」
一方の少女も、上空の男に向かって再び光線を放つ。
男を捕らえる光線・・・だったが、男の足先から発せられる多量のエネルギーによって光線は無効化されてしまうのであった。
「何っ?!」
驚く少女。
しかし、男はお構いなしに少女との距離をどんどん縮め、ついには彼女を捕らえた。
目前まで迫るキックに対し、思わず腕で顔を覆う少女。
そして目をつぶり、無駄な抵抗とは分かっていながらも、彼女は全身に力を込め、キックからのダメージを抑えようとする。
・・・だが、いつまで経っても、彼女へキックのダメージが来ることは無かった。
この状況を不思議に思ったのか、ゆっくりと目を開ける少女。
その目線の先には、彼女の前に立ち、男の放つキックを右手のみで阻止する者の姿があった。
「・・・上条 当麻!!」
一方の男も叫ぶ。
「・・・!お前、上条じゃないか!!」
着地する男。
その直後、上条は右腕を押さえながら、膝をついてしまった。
少女が上条のもとへ行く。
一方の男もベルトを外し人間の姿に戻ると、彼女同様に上条のもとへ駆けつけた。
「上条!・・・腕が折れているのか?」
「しっかりして!!」
「・・・おい、女!この近くに病院はあるか?!」
「・・・え・・・病院?」
「早く答えろ!」
「・・・え・・・あ・・・ここから5kmほど直進した所です。」
男の表情に対し、思わず敬語で話す少女。
「近くか・・・よし!」
そう言うと、男は再びベルトを腰に付け、赤いUSBメモリ状の物=ガイアメモリを構えた。
「変っ・・・身っ!!」
ACCEL!!
ガイアウィスパーとともに発せられた赤い装甲が男を包み込む。
そして、男は赤き装甲の戦士に変身すると、上条を背負い、なんと自らの体をバイクに変形させるのであった。
エンジンを噴かせ、発進体勢に入る男。
- 19 :
- この状況にポカンとする少女であったが、突然ハッとし叫ぶ。
「ちょっと、あんた何者なのよ!私に襲いかかるわ、コイツを助けるわ、青くなるわ、赤くなるわ・・・。」
「俺に質問するな。」
「・・・へっ?」
「だが、答えてやっても構わない。答えが聞きたかったら、俺についてくるんだ。」
そう言って、男は猛スピードでその場を後にした。
「え・・・あ・・・ちょっと・・・。」
呆然とする少女。
その時、何者かが彼女の肩をトントンと叩く。
「・・・ん?うおぅっ?!」
驚く少女。
その先には、戦車のような形をしたロボット=ガンナーAがいた。
「な・・・何なのよ、あんた!!」
叫ぶ少女。
それに対し、ガンナーAはマニピュレーターを動かし、彼女と自身の背中を交互に指していた。
「・・・乗れってこと?」
彼女の答えに対し、嬉しそうに首を縦に振るガンナーA。
「・・・まあ・・・とりあえず。」
そう言って、ガンナーAの背面にある、足の掛けられそうな場所に足を置く少女。
そして、ガンナーAも彼女の搭乗を確認すると、先ほどの男を追うかのように猛スピートで発進するのであった。
----------------------------------------------------------------------------------------------
Aパートはここまでです。
ここまで私の駄文にお付き合いいただき、ありがとうございます。
Bパートは間を空けて投下しますので、よろしければもう少しの間、私の駄文にお付き合いください。
- 20 :
- それではBパートを投下します。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
数分後、少女とガンナーAは病院に到着した。
駆け足で病院に入ろうとする少女であったが、ガンナーAも一緒に入ろうとしていたため、
ガンナーAの前に立ち塞がる。
「えぇっと・・・君はホラ・・・あの・・・駐車場で待ってて・・・ね?」
少女の言葉を聞き、少々悲しげな顔をしながら駐車場へ移動するガンナーA。
一方、彼女はそれを見届けると、再び駆け足で病院の受付へと移動した。
「すみません!先ほど入ってきた、腕を怪我した『髪の毛トゲトゲ男』と・・・あと!赤い『バイク男』を見ませんでした?!」
「おい、『バイク男』って呼び名は感心しないな。」
「え?」
振り向く少女。
そこには、先ほどバイクへの変形を披露した男が変身を解除した状態で立っていた。
「あ・・・あ・・・あ・・・バイクおとこぉっ!!」
「黙れ。病院内は静かにしろ。」
そう言って、男は病院に貼られた『院内ではお静かに』と書かれたチラシを指差す。
「あ、ごめんなさい・・・じゃなくて、あんた何者なのよ!」
再び大声をあげる少女。
「・・・名乗ったら静かにしてくれるか?」
「え・・・あ・・・はい。」
「照井 竜、風都警察:超常犯罪捜査課の課長だ。」
そう言って、照井 竜は警察手帳を少女へと見せた。
「風都・・・警察・・・?」
「・・・そうだ。おい、お前。」
「な・・・何よ?」
「名前と住所・・・あと、お前が持っているガイアメモリの名前を言え。」
「ガイアメモリ?」
「そうだ。さっきの戦いから察するに『サンダー』とか『ビーム』とか・・・あとは『エナジー』ってとこか?」
「・・・もしかして、私の『超電磁砲(レールガン)』のことを言ってるの?」
「そうだ。あんな攻撃性のある能力を持った少女がどこにいる。そんな所業をやってのけるのはドーパントぐらいだろう。」
「ど・・・どーぱ?」
- 21 :
- 「照井さん、ビリビリはドーパントじゃありません。」
その時、照井の後ろから聞こえてくる声。
その声の主は、腕に包帯を巻いた状態で診察室から出てきた上条であった。
「どういうことだ?」
「俺たち学園都市に住む人間は、能力開発によって多種多様な特殊能力を開花させているんです。
俺の<幻想し>しかり、ビリビリの<超電磁砲>しかり・・・。」
「まるで『ハリーポッター』みたいな話だな。」
「確かに、学園都市以外の人から見ればそうかもしれませんがね。
それにしても・・・どうして風都にいるはずの照井さんが学園都市に?」
「ああ、実は・・・。」
「ちょっと、ストップ!」
話そうとする照井の前に少女が立ち塞がる。
「何だ、ビリビリ?」
照井が言う。
「アンタまで『ビリビリ』って言うな!私にはね、御坂 美琴って名前があるんだから!!」
「・・・で、要件は何だ?」
「えぇっと・・・照井刑事だっけ?何でそんなにコイツと親しげなのよ?!」
「ビリビリ、病院内では静かに・・・。」
「うっさい、バカ!!」
「・・・。」
「早く答えなさい!アンタとそこのバカとの関係は?!」
「さっきも言ったはずだ、俺に質問するな。」
「な・・・な・・・な・・・?!」
クールにあしらう照井によって、いつもは冷静な御坂が爆発寸前と化す。
「・・・ったく。ビリビリ、俺が説明してやるから聞け。」
この状況を見て、上条が口を開く。
「照井さんはな、中学時代に俺がよく行ってたカレー屋さんの店員だったんだよ。」
「・・・カレー屋?」
「ああ、何年か前まで学園都市にあった『恐竜や』って店だ。
当時、俺はバイクの修理に必要なパーツがあって、一時期資金集めのためにそこでバイトをしていたんだ。」
照井も口を開く。
「バイク・・・。」
ポツリという御坂。
その言葉を照井は逃さなかった。
「ああ・・・お前の壊したディアブロッサのな。」
「壊した?」
「実はな・・・。」
- 22 :
- それは、少し前のこと。
学園都市に着いたばかりの照井は長い信号待ちに耐えきれず、暇つぶしにと周りをキョロキョロ見ていた時だった。
ふと目線に入る少女の姿。
それは御坂 美琴であり、彼女はなかなかお札を認識しないジュースの自動販売機と悪戦苦闘していた。
「このポンコツ!何度やったら認識するのよ!!」
いつもは冷静な彼女が怒りを露わにし、そして自販機を蹴りながら言う。
この光景に対し、警察官である照井はバイクを止め、彼女に注意をしようとしたのだったが・・・。
ついにお札の排出回数が10回を記録した時、彼女の怒りは頂点に達し、
そして自身の持つ<超電磁砲>を暴走させてしまうのであった。
彼女の周囲に発生する雷撃。
突然の事態に対し、照井は反射的にアクセル・トライアルへと変身、
超高速移動による防御で雷撃からのダメージを防ぐことは出来たものの、
路端に止めてあったバイクに関してはどうすることも出来ず、雷撃の直撃によって半壊してしまったのであった。
「・・・。」
唖然とする上条。
一方の御坂は冷や汗をかきながら明後日の方向を見ていた。
「照井さん・・・。」
「なんだ?」
「ドーパントだろうが無かろうが、とりあえずビリビリを逮捕しちゃって結構です。」
「な・・・?!」
「心配するな。逮捕はせん・・・が、慰謝料が十二分に貰う。」
「ななな・・・?!」
- 23 :
- その時だった。
「とおま〜!」
御坂の後ろから聞こえてくる、上条にとって聞き慣れた声。
上条が声の方向を見ると、そこにはバイクのフルフェイスを被り、大きなオタマを手に持った少女がいた。
「・・・禁書?!」
上条が大声をあげる。
一方の禁書は上条の腕に巻かれた包帯をジッと見ていた。
「あ、怪我してる・・・ってことは、やっぱり『青の通り魔』が出たんだね?!」
「これは・・・まあ何だ、ちょっと腕の筋肉を痛めただけだ。心配はしなくて・・・。」
「私を家に置いてったから罰が当たったんだよ!とうまは当分反省するんだよ!!」
「・・・お前な、それが『ボディガードになる』って言った奴のセリフか?
・・・ていうか、お前どうやってここまで来たんだよ?」
「家にいたら急に胸騒ぎがしてね、それでとりあえず病院に行ってみようと思ったんだよ。」
「『とりあえず』って・・・随分神がかり的な勘だな。」
「へへーん、神を信じる者は救われるんだよ!だから、とうまも神様を大事にするんだよ!!」
「はいはい・・・。」
「・・・でね、どうやって行こうか考えてたらね、マンションの駐車場にバイクに乗った人がいたから、
その人に頼んで連れて来てもらったんだよ!」
「バイクに乗った・・・?」
「君が禁書の言っていた『とうま』か。」
彼らの輪に加わるもう1人の影。
「遅かったな、フィリップ。」
照井が言う。
「ああ、頼まれたとおり『青の通り魔』に関しての検索をしてみたが、
学園都市内の情報はロックのかかった物がほとんどでね。
とりあえず、ロックのかかってない情報から出来る限りのデータを集めてみたんだが・・・
熱中し過ぎて遅くなってしまった。」
そう言って、フィリップは照井に1冊のファイルを渡す。
「・・・もしかして、あなたが学園都市に来た理由って・・・。」
御坂が照井に言う。
「ああ、『青の通り魔』を逮捕するためだ。
今回の事件に関しては警備員(アンチスキル)でもお手上げらしくてな。」
「そこで、僕たちに依頼が来た・・・ってワケさ。」
フィリップが言う。
「ところで・・・禁書・・・と言ったか?
君は上条に対して『やっぱり『青の通り魔』が出た』と言っていたが、どういうことなんだ?」
照井が禁書に聞く。
「・・・あのね、夢を見たんだよ。」
「夢?」
- 24 :
- 禁書は照井に説明した。
夢の中で、上条が『青の通り魔』に襲われたことを。
また、禁書の目の前で彼を葬り去ろうとしたことも。
そして・・・。
「『青の通り魔』は最後にこう言ったんだよ。『絶望がお前のゴールだ』って・・・。」
「何・・・?」
顔を曇らせる照井。
『絶望がお前のゴールだ』・・・この言葉は、彼がドーパントと敵対した際に言う言葉のひとつである。
いくら夢とは言え、何故『青の通り魔』がその言葉を・・・?
偶然なのか、それとも・・・?
「・・・あ!!」
突然、大声をあげる禁書。
「どうした?」
「もうすぐ、『フーティックアイドル』の時間なんだよ!
今日はジミー中田のリベンジ3週目なんだから見逃せないんだよ!!」
「・・・フィリップ、到着してすぐで悪いが、上条と禁書を家まで送ってやってくれないか?
駐車場にガンナーAが待機してるはずだから、それを使えば2人を同時に送れるだろう?」
「了解した。禁書・・・あと、君も来てくれ。」
そう言って、フィリップは禁書と上条を外へ連れ出そうとする。
「・・・あ、照井さん、先に失礼します。」
そう言って、頭を下げる上条。
一方の禁書は何も言わずにさっさとフィリップの所へ行ってしまった。
「・・・じゃあ、私もこれで。」
「待て。」
自然に帰ろうとする御坂を照井が止める。
「ハハハ・・・やっぱりね。」
「言ったはずだ、『慰謝料を払ってもらう』と。」
「何よ!確かにバイクを壊したのは悪かったけど・・・こんなか弱き女子中学生からお金を取ろうってワケ?
それとも・・・まさか、『体で払え』とか言うつもり?!」
「そのつもりだ。お前には『体で払ってもらう』。」
「・・・え?」
- 25 :
- その日の夜・・・。
「お待たせ。」
学園都市の一画でパトロールを行なう照井のもとへ、ハードガンナーに乗ったフィリップが再び現れた。
「・・・その様子だと、良い情報を得られたようだな。」
「ああ。それにしても、よく彼女が風紀委員(ジャッジメント)と関係あると気付いたね。」
「簡単なことだ。アイツと戦った時、風紀委員のひとりである白井 黒子のことを『黒子』と親しげに呼んだこと。
そして、アイツが白井 黒子と関係の深い『御坂 美琴』だと名乗ったこと。そこから結びつくのは・・・ってとこだ。」
「なるほど、翔太郎ばりの推理だね。」
「アイツと一緒にするな。・・・それにしても、左の容体はどうなんだ?」
「僕が出掛ける直前まで熱でうなされてたが・・・まあ、問題無い。」
一方、風都の鳴海探偵事務所では・・・。
「まるで遠足前の子供ね。竜くんとの調査前日の夜になって、急に風邪引くなんて・・・。」
鳴海 亜希子がベッドで赤い顔で横になる左 翔太郎の氷のうを取り換えながらつぶやく。
「馬鹿野郎、俺だって好きで夏風邪を・・・フェックショ〜イ!!」
「わぁ?!汚い!!」
そう言って、亜希子は<健康第一>と書かれたスリッパで翔太郎を勢いよく叩くのであった。
「ところで・・・地球(ほし)の本棚での再検索の結果は?」
「ああ、これだ。」
照井の問いに対し、フィリップが1冊の本を取り出す。
学園都市へ来る前、地球(ほし)の本棚にて『青の通り魔』に関する検索を行なったフィリップであったが、
学園都市側からのセキュリティで検索は不十分に終わってしまった。
そこで、照井は偶然出会った御坂に目をつけ、彼女を通じて風紀委員へ協力を依頼、
ハッキングによるセキュリティ解除を行なったのだった。
照井の言った、御坂への『体で払ってもらう』・・・それは御坂の交友関係をフルに利用した協力のことであった。
そして、セキュリティの有無に関係なく検索可能になったフィリップは再度『青の通り魔』に関する検索を再開。
『青の通り魔』、『学園都市』、『風』、『高速移動能力』、『連打攻撃』・・・。
思いつく限りのワードを入れていくフィリップ。
その結果、ついに1冊の本へとたどり着いたのだった。
- 26 :
- だが、その本のタイトルは・・・。
「犯人は・・・トライアルのメモリの持ち主だと?」
本を読んで、声をあげる照井。
昼間の御坂との戦いで使用したように、トライアルのメモリの持ち主である彼が驚くのも無理は無かった。
「フィリップ、これは悪ふざけのつもりか?」
照井がフィリップに迫る。
これに対し、フィリップは冷静に答える。
「落ち着くんだ、照井 竜。確かに『青の通り魔』の正体はトライアルのメモリの持ち主だ。
・・・だが、誰も犯人は君だと言ってはいない。」
「・・・どういうことだ?」
困惑する照井に対し、フィリップがもう1冊の本を手渡す。
「これは・・・?」
「それも『トライアルのメモリ』に関する本だ。
・・・ただし、それは『君の持つトライアルのメモリ』のほうだが。」
「俺の持つ・・・?どういうことだ?本来、地球(ほし)の本棚には1つの存在に対して1冊の本しか存在しないはずでは・・・。」
「『本来』はね。・・・しかし、何らかの作用が記憶に対して働くことで本が増えることもある。
以前、1つの存在が善と悪に分離したことで本が2冊になったこともあるけど・・・今回の場合は少し違う。
言うなれば、『新しい存在が誕生し、かつての存在に取って替わりつつある』という表現が正しいかもしれない。」
「新しい・・・トライアルだと?」
「トライアルだけじゃない。僕が調べた限りじゃ、僕たちのジョーカーやヒート、
他にもナスカやウェザーといったデータにも『新しい存在』が生まれつつある。」
「どうしてこんなことに・・・?」
「・・・そこで、僕はある仮説を立てて検索を行なった。」
無数の記憶や存在に関するデータが保管されている<地球(ほし)の本棚>。
その中央に立つフィリップは検索するワードを唱えた。
「キーワードは・・・『学園都市』、『能力開発』、『ガイアメモリ』、『新たな記憶』。」
4つの言葉によって、またたく間に数を減らしていく本。
その結果、1冊の本が彼の前に現われた。
その本の名は・・・。
「T2ガイアメモリ?」
「ああ。一部のデータは閲覧できなかったが、
この学園都市に存在する特殊能力・・・<幻想御手(レベルアッパー)>を使って、
何者かがこれまでのガイアメモリの能力を強化した新型ガイアメモリを開発していることは確かだ。」
「そして『青の通り魔』は、そのT2ガイアメモリのひとつであるトライアルのメモリで罪もない人を襲っているのか・・・。」
- 27 :
- 「お〜い、フィリップぅ〜!てるい〜!!」
突然、彼らの耳元に届く少女の声。
彼らが振り向くと、その先には上条の家に帰ったはずの禁書の姿があった。
「禁書!どうしたんだ、こんな時間に?」
「私に質問するな!なんだよ。」
「・・・はい?」
「冗談ジョーダン!・・・はい、コレ!とうまからの差し入れ!!」
そう言って、おにぎりの入った包みを照井に渡す禁書。
「そうか、これを届けに・・・。」
「ところで・・・禁書、彼は一緒じゃないのか?」
フィリップが聞く。
「とうまなら家に置いてきたんだよ。
『俺が行く』なんて言い出したから、オタマでスネを引っ叩いてなんとか阻止してきたんだよ。」
そう言って大きなオタマを取り出し、嬉しそうな顔をする禁書。
「なんともアクティブなお嬢さんだ・・・。」
そう言って、照井は受け取った包みをフィリップに手渡す。
「とりあえず、禁書は家に帰るんだ。いつ『青の通り魔』が現れるか分からんし・・・それに、もう22時だ。
良い子は家で寝てなくちゃダメだ。」
「むぅ〜、子供扱いするぅ!それにわたしはとうまのボディガードなんだよ。
だから、てるい達と『青の通り魔』をふん捕まえて、ボッコボコにしてやるんだよ!!」
そう言って、オタマを振り回す禁書。
それに対し、照井は強めに彼女の肩を掴むのであった。
「?・・・てるい、ちょっと痛いよ・・・。」
嫌がる禁書に対し、照井が厳しい表情で言う。
「禁書、お前が上条を守りたい気持ちは分かる。だが、お前には危険過ぎる任務だ。
だから・・・ここは俺達に任せてくれ。」
「でも・・・。」
「お願いだ、禁書。俺達を信じてくれ。」
「・・・分かった。でも、絶対にとうまを守るんだよ!そして、『青の通り魔』をボッコボコにしてやるんだよ!!」
「約束しよう。」
「・・・でも、もし約束を守れなかったら?」
フィリップが横から、場の空気を読めてないセリフを言う。
「フィリップ・・・お前な・・・。」
「大丈夫だよ、フィリップ。私はてるいのことを信じるよ。」
禁書が言う。
「禁書・・・。」
「でも・・・約束を破ったら承知しないんだよ!
破ったら、私に満腹になるまでご飯をご馳走するぐらいのことはしてもらうんだよ!!」
「・・・。」
-------------------------------------------------------------------------------------------
30分ほど席を外します。
それと、投稿時のタイトルから何故か<仮面ライダーW>が消えてたみたいです。
気付かなくてスミマセン。
- 28 :
- 再開します。
あと、また投稿タイトルを間違えた・・・。
-----------------------------------------------------------------------------------
その時だった。
会話をする3人のもとへ、ひとりの女性の叫び声が聞こえてくる。
「・・・今の声は!」
「確か・・・みさかの友達の・・・くろこ!!」
「フィリップ、俺が行く!お前はこの子を頼む!!」
「待て、照井 竜。」
駆け出そうとする照井に対し、フィリップが小さなアタッシェケースを渡す。
ケースを開ける照井。
その中には、フィリップが変身に用いる3本のガイアメモリと、メモリガジェットのひとつであるデンデンセンサーが入っていた。
「敵は超高速移動能力の持ち主だ。おそらく、それが必要になる。」
「分かった。」
そう言って、照井はアタッシェケースを持ち、声の方向へ急ぐのであった。
「・・・くっ・・・なんて速さなの・・・。」
一方、風紀委員のひとりである白井 黒子は、傷つきながらも何者かと戦っていた。
学園都市の闇夜を利用し、闇から闇への高速移動を繰り返し、そして移動の度に攻撃を行なうという手法を採る相手。
これに対し、自身の持つ<空間移動(テレポート)>での戦線離脱を図ろうとする白井であったが、
能力を発動させる際に出来る隙を狙われ、逃げることが出来ずにいた。
どうすることも出来ず、防戦一方の彼女に対して攻撃を繰り返す敵。
そして、何度目かの攻撃によって白井は片膝をついてしまうのであった。
何者かが言う。
「ふっふっふ・・・良いものですね。
屈強な男が一瞬にして倒される様子も滑稽ですが、今日のようにか弱い女の子が徐々に痛めつけられていくというのも・・・。」
「・・・まさか・・・あんたが・・・『青の通り魔』・・・?」
「名乗るほどの者ではありませんよ。もうすぐ私に倒される者に対してね・・・。」
そう言って、『青の通り魔』は一直線に白井へとどめを刺しに行こうとする。
その時・・・。
- 29 :
- CYCLONE!MAXIMUM DRIVE!!
『青の通り魔』の耳に入るガイアウィスパー。
その直後、サイクロン・メモリの力をまとったビートルフォンが超高速で『青の通り魔』に迫る。
「む?!このガジェットは!!」
突然の事態にビートルフォンの体当たりを正面でガードする『青の通り魔』。
「おのれ・・・ん?」
攻撃体勢に入ろうとしたその時,『青の通り魔』があることに気付く。
先ほどまで自身が攻撃を加えていた白井の姿が忽然と姿を消していたのだった。
「まさか・・・このガジェットは囮!」
「そうだ、『青の通り魔』!」
突然、学園都市の闇夜に響き渡る声。
『青の通り魔』が声の方向を見ると、そこには月夜に照らされた仮面ライダーアクセル トライアルと、
アクセルにお姫様だっこをされた状態の白井の姿があった。
「ありがとうございますわ・・・仮面ライダー。」
「礼は後にしろ。今はこの場から離れるんだ。」
「・・・分かりました。」
そう言って<空間移動>を行ない、白井は戦線離脱する。
一方のアクセルはゆっくりと『青の通り魔』の前に立ち塞がった。
「ジャッジメントだ・・・『青の通り魔』!!」
声をあげるアクセル。
それに対し、『青の通り魔』は言い放った。
「ふふっ・・・まさか、また君に会うとは・・・これも運命なのですかねぇ・・・。」
「・・・『また』・・・だと?」
『青の通り魔』の言葉にアクセルが戸惑う。
「ええ・・・まさか、忘れてしまったのですか?君にとっての『復讐の相手』だった私のことを・・・。」
「・・・!そんな馬鹿な!!お前は死んだはず?!」
「なら、ここにいる私が幽霊かどうか、君の体で確かめてあげましょう。」
そう言うと、『青の通り魔』はトライアル・メモリの持つ超高速移動でアクセルに襲いかかる。
突然の攻撃に吹き飛ばされ、体を壁に叩きつけられるアクセル。
一方の『青の通り魔』は、白井との戦いの時のように闇から闇への高速移動をしてアクセルからの捕捉を逃れていた。
「くそっ・・・フィリップの言ったとおり、これが必要のようだな。」
起き上がるアクセル。
そして、フィリップから手渡されたデンデンセンサーをどこからか取り出すと、ヒート・メモリを挿入した。
- 30 :
- HEAT!MAXIMUM DRIVE!!
続いて、今度は自身のトライアル・メモリを抜き、代わりにデンデンセンサーの疑似メモリをドライバーに挿入する。
DENDEN!
メモリから流れるガイアウィスパー。
この音を確認すると、アクセルはデンデンセンサーを空高く放り投げるのであった。
空高く跳ぶデンデンセンサー。
そして空中で一時停止すると、上空からヒート・メモリの力を利用した熱源探知を行ない、
そのデータを即座に疑似メモリを通じてアクセルへと転送するのだった。
「・・・そこかっ!!」
『青の通り魔』の所在を突き止めたアクセルがエンジンブレードにルナ・メモリを装填して構える。
LUNA!MAXIMUM DRIVE!!
勢いよく振り下ろされるエンジンブレード。
剣先からは青色に輝くエースラッシャーが放たれ、引き寄せられるように一直線に『青の通り魔』に向かっていく。
そして、ついには『青の通り魔』を捕らえ、大爆発を起こすのであった。
「やったか・・・。」
そう言って、エンジンブレードからルナ・メモリを抜くアクセル。
- 31 :
- だが・・・。
「君はお忘れのようですね、私の能力のひとつに『幻影を作り出す』能力があったことを・・・。」
突然、アクセルの背後から聞こえてくる声。
振り向こうとするアクセルだったが、その隙を狙って放たれた『青の通り魔』の一撃がアクセルと捕らえ、
彼はエンジンブレードを手放してしまった。
『青の通り魔』はエンジンブレードを拾い上げ、倒れこむアクセルのもとへゆっくりと近づきながら言う。
「もうひとつ、君が行なった熱源探知・・・確かにすばらしいアイディアですが、所詮は虫けらの考え。
私の『冷気発生』能力の前には意味を成さない代物ですよ。」
ついに、アクセルの目の前まで迫る『青の通り魔』。
「何故・・・何故だ・・・お前は・・・俺が倒したはず・・・。」
「そう、確かにあなたはトライアルの力を手に入れ、そして、私のウェザーのメモリを破壊した。
だが・・・『ウェザーのメモリを破壊した』からと言って、それが『私を倒した』ことには繋がらないのですから。」
「どういう・・・ことだ・・・?」
「簡単なことですよ。冴子くんの部下に『私』を演じさせただけのこと。
ちょうど、彼女の部下のひとりがダミーのメモリの持ち主でしてねぇ・・・。」
「何だと・・・。」
「そこで、私は彼に不必要になったウェザーのメモリを譲渡し、風都を出ました。
ウェザーのメモリではテラーの力に勝てないと分かった今、さらに強いメモリを手に入れる必要があったのでね。
そんなある時、私はこの学園都市で極秘に開発されていたT2ガイアメモリのことを知り、
そのひとつをとあるお方から譲ってもらいました。」
そう言いながら、『青の通り魔』は自身の耳から出現したトライアル・メモリを引き抜く。
変化する体。
そして『青の通り魔』は、山高帽を被った紳士へと姿を変えた。
「そして、私はついに手に入れました。
君たち仮面ライダーや園崎家の連中が持っているような古いガイアメモリには無い、頂点ともいうべき力・・・最強の力をね!」
高らかに叫ぶ男の姿を見るアクセル。
その姿は間違いなく『奴』であった。
かつて自分の家族の命を奪い、そしてウェザー・ドーパントとして仮面ライダーたちと死闘を展開したあの男・・・。
「井坂・・・ 深紅郎・・・。」
つづく
--------------------------------------------------------------------------------
前編はこれで終了です。
後編ですが・・・実はまだ書きあがっていません。
ですので、続きはいつになるか分かりませんが、
後編が完成した際には私の駄文に再度お付き合いしていただけるようお願いします。
- 32 :
- >>31
おお!忘れかけていた作品を新たにリメイクとは!! GJ!!
私は◆ht8000sik氏が書いていたWと禁書の作品の続きかと思いました。
◆ht8000sik氏はもうあの作品を書かないでしょうし、◆jPpg5.obl6さん
なりの作り方で◆ht8000sik氏の作品の続きを書いてもらいたいです・・・。
原作扱いされていたあの作品と、◆ht8000sik氏がどうしても不憫で・・。
出来れば私が書きたいのですが、文書力と構成力のない私ではあの続きを書くの
は不可能だと思いました。
- 33 :
- >>32
ご意見ありがとうございます。
私も正直なところ◆ht8000sikさんのW×禁書に対しては微妙だったのですが、
題材としては面白い組み合わせだっただけに、叩きによる連載ストップが残念でした。
そこで◆ht8000sikさんの続きを・・・と思ったものの、やはり文才の無い私には書くことが出来ず(泣)
結果として、今回のような独自路線に走りつつ、井坂先生の再登場のように◆ht8000sikさんの作品を部分的にパク・・・
もといインスパイアさせていただく形となりました。
- 34 :
- >>33
◆jPpg5.obl6さん。ご返事ありがとう御座います。続きではないにしろ、◆jPpg5.obl6さんの書くW × 禁書に◆ht8000sik氏の書いた
W × 禁書に登場したアラブ人兄弟を登場させてもらえないでしょうか?やはり十字教を憎むあのキャラはどうしてもあのままにして
おくのは勿体無い気がします。(原作の禁書自体、あれほど十字教を憎悪するキャラはまだいないですし)十字教に怒りを抱く二人の
兄弟との決着を◆jPpg5.obl6さんなりの決着方法で描いてもらいたいのですが・・・
やはり無理でしょうか?
- 35 :
- >>34
すみません、現状を話しますとすでに後編Aパートまで書きあがっているため、キャラの追加は無理です・・・。
アドバイスをいただき感謝しますが、ご期待に答えられず申し訳ありません。
ただ>>34さんの言うように、◆ht8000sikさんのアラブ人兄弟は何かで使えそうですよね。
例えば・・・電王×禁書とかですかね?
十字教への憎しみがイマジンを呼び、さらにそれが新たなダークライダーを生み・・・みたいな。
妄想失礼しました。
- 36 :
- 投下乙。Wと禁書録のコラボ!とっても面白いぜ。
仮面ライダーアクセルの登場に美琴たちとのバトル!
うまくクロスしてて最高。
そして、蘇った伊坂ァ…!じゃなかった!井坂!
再び訪れる因縁の戦いにワクワクドキドキだな。
続きが気になるぜ。
僕はあんまり◆ht8000sikさんのキャラは登場させてほしくないな。
こう言うの言ってしまうと申し訳ないんだけど、あのキャラには
好感が持てないんだよね。あんまり活躍してるところは見たくない。
それに、◆ht8000sikさんではないとあのキャラは生かせないと思う
他の人が書くとまったくの別キャラだと思う。
僕もあの人が再び書いてくれるのを楽しみにしてるんだけどね
- 37 :
- 同じく投下乙。まさかの井坂先生の復活w 上条さんの説教が井坂先生に通用するのか
気になりますw
>>36
やはり◆ht8000sikさんのキャラは不評みたいですね。いっその事複数の作者さんで
◆ht8000sikさんのキャラを使用するということにしてみては?クトゥルフ神話みたいに
作者のラヴクラフトだけでなく、複数の作者に描かせるという手法がありますし。十字教を
憎むアラブの兄弟という設定はそのままに、他の作者がその設定を踏まえつつ、作中にキャラ
クターとして登場させるという書き方もありますが、ストーリーの描き方次第であの二人を
好感の持てるキャラにできるとは思います。やはりどんなキャラにもバックボーンは必要だと
いうことですね。
- 38 :
- >>36
>>37
駄文ではありましたが、気に入っていただきありがとうございます。
後編に関しましては、皆さんになお気に入ってもらえるよう最善を尽くしますので、よろしくお願いします。
とりあえず、10月あたままでに書き上げたいと思っている次第です。
>アラブ人兄弟
>>35でも書きましたが、個人的には『使わずに放置しておくのはもったいないキャラ』と思う反面、
既存のキャラと違い◆ht8000sikさんのオリジナルキャラのため、
>>36さんの指摘のように◆ht8000sikさんの意向に沿った使い方が出来るかは難しいところなんですよね。
「じゃあ、お前は既存のキャラを作者の意図に沿って使えてるか?」と言われると返答しづらいのですが(汗)
>>37さんの意見のように独自に設定を作り上げていくの良いかもしれませんが、
とりあえずは◆ht8000sikさんに復帰してもらい、自身によるキャラ設定の完結が行なわれるのがベスト・・・ですかね?
ものすごく他人事な意見でスミマセン。
- 39 :
- おぉ、W禁書の続きが投下されてた!
今後も禁書キャラがハーフボイルド探偵(笑)に蹂躙されるストーリーを期待しております!
こういう禁書へのアンチ要素を含んだ小説は非常に好みです!
続きも楽しみにしています!
これは私見ですが、いっそフィリップか翔太郎にインデックスでもさせたらどうですか?
より禁書アンチ色が強まって良くなると思います!
- 40 :
- ◆jPpg5.obl6です。
待っている人・・・がいるかは分かりませんが、<仮面ライダーW × とある魔術の禁書目録>を投下させていただきます。
とりあえず、井坂との対決の行方・・・なんですが、いろいろとシーンを詰めていたら長くなってしまいました(汗)
ですので、だらだらとした展開が続くと思われますが、それでも構わないという方はお付き合いくださいませ。
- 41 :
- BGM:http://www.youtube.com/watch?v=daYKIeUFvH8&feature=related
仮面ライダーW、今回の依頼は?
「『青の通り魔』が俺を襲っただって?」
「夢の中に『青の通り魔』が出たんだよ!それに・・・とうまが・・・。」
「『ジャッジメントですの』だ!覚悟しなさい、『青の通り魔』!!」
「『青の通り魔』だと?勘違いも甚だにしろ、『ドーパント』め!!」
「犯人は・・・トライアルのメモリの持ち主だと?!」
「この学園都市に存在する特殊能力・・・<幻想御手(レベルアッパー)>を使って、何者かがこれまでのガイアメモリの能力を強化した新型ガイアメモリを開発していることは確かだ。」
「そして、私はついに手に入れました。頂点ともいうべき力・・・最強の力をね!」
「井坂・・・ 深紅郎・・・。」
- 42 :
- ----------------------------------------------------------------------------
学園都市の闇夜を疾走するハードボイルダー。
それに乗るフィリップと禁書(インデックス)は一路、禁書の家を目指していた。
「禁書、もうすぐ君の家だ。」
フィリップが、自身の背中に捕まる禁書へ言う。
「うん、ありがとうなん・・・ちょっと待って!!」
禁書が言いかけたその時、彼女の目に何かが飛び込む。
「フィリップ!あれっ!!」
「あれは・・・白井 黒子・・・?」
禁書の指差す方向を見るフィリップ。
その先には、コンクリートの壁に寄り掛かるようにして座り込む、
息も絶え絶えな白井 黒子の姿があった。
すぐさまハードボイルダーを止め、彼女のもとに駆け付けるふたり。
「くろこ!大丈夫?!」
禁書が声をかける。
「・・・禁書・・・ちゃん・・・。」
「喋っちゃダメなんだよ!今すぐ病院に連れてってあげるんだよ!!」
「・・・お姉さまが・・・お姉さまが・・・。」
「お姉さま・・・?」
「フィリップ!みさかのことなんだよ、ソレは。でも・・・みさかがどうしたの?」
「・・・お姉さまは・・・お使いに行った・・・あなたを・・・あの男とともに・・・
探していて・・・それで・・・偶然・・・逃げてきた私に・・・出会って・・・。」
「『あの男』って、まさか・・・とうま?!」
大声をあげる禁書。
それに対し、白井は静かにうなずいた。
禁書は思い出していた。
夢の中で上条 当麻が『青の通り魔』に襲われていた光景を・・・。
そして、自分の目の前で上条の命が奪われようとしていた瞬間を・・・。
突然、走りだす禁書。
「・・・!禁書、どこに行くんだ?!」
叫ぶフィリップであったが、彼女は一目散に来た道を戻って行った。
「・・・早く・・・行って・・・ください・・・。」
戸惑っているフィリップに対し、白井が言う。
「しかし、君のその怪我は!」
「・・・大丈夫です・・・もう少し休めば・・・病院まで・・・
<空間移動(テレポート)>・・・出来るくらいの・・・力は・・・取り戻せますから・・・。」
「・・・分かった。僕からは何もすることは出来ないが・・・気をつけてくれ!」
そう言うと、フィリップは再びハードボイルダーにまたがり、禁書同様に来た道を戻るのであった。
- 43 :
- その頃・・・。
大きな衝撃とともに吹き飛ばされる人影。
その影はコンクリート造りの塀に叩きつけられ、そして大きな穴を開けるのであった。
「やれやれ、人間態の私にさえ太刀打ち出来ないとは・・・仮面ライダーの名も地に堕ちたものですねぇ・・・。」
そう言って、エンジンブレードを下ろす井坂 深紅郎。
一方、井坂からの一撃を受けた仮面ライダーアクセル トライアルは瓦礫の中からなんとか立ち上がろうとするが、
先ほどの戦いで体力をほとんど使い果たしており、起き上がるどころか腕を上げるのもままならない状況となっていた。
「・・・このまま・・・やられる訳には・・・。」
「いえ、君にはこのままやられていただきましょう。そうすれば・・・君の愛していた家族に地獄で会えるのですから。」
そう言って、井坂が再びエンジンブレードを構えたその時だった。
「・・・ん?」
井坂の目に映る、飛来するコイン。
次の瞬間、そのコインは多量の電気エネルギーをまとい、巨大な光線となって井坂に襲いかかった。
突然の事態に光線を避けることが出来ず、多量の電気エネルギーを受ける井坂。
その光景を見ていたアクセルのもとに2つの影が現われた。
「照井さん、大丈夫ですか?!」
「・・・上条!それに御坂!!」
「べ・・・別にアンタを助けに来た訳じゃないわよ。
本来なら、こういうのは私たち風紀委員(ジャッジメント)の管轄だから・・・って理由だからねっ!!」
御坂 美琴がツンデレ混じりに言う。
だが、アクセルはすぐに反論した。
「・・・駄目だ・・・ここから逃げるんだ・・・。」
「ちょっと、何よ!せっかく助けに来た・・・。」
御坂も反論しようとするが、アクセルは遮って言う。
「あいつは・・・違う・・・。俺達が戦ってきたドーパントとも・・・上条たちが相手にしているような能力者とも・・・。」
「違うって言われても・・・そんなの、戦ってみなきゃ・・・。」
「いいえ、戦わなくても分かりますよ。」
突然、彼らの会話に割り込む声。
その声の主は、御坂の<超電磁砲(レールガン)>の直撃を受けたはずの井坂が無傷で立っていた。
「?!そんな・・・ビリビリの<超電磁砲>を・・・しかも直撃で受けたら、普通なら無事で済まないはず!!」
「残念ながら私は普通の人間では無いんでねぇ、Lv.0の上条 当麻くん。」
「!」
「そして、Lv.5・・・学園都市No.3と言われた御坂 美琴くん。君の能力は確かにすばらしい。
だが・・・素晴らしいのは能力だけであって、君自体は虫けら以下だ。」
「な・・・?!」
「本来、素晴らしき能力は素晴らしき人間が使ってこそ、その真価が現われるものなのです。私と・・・このメモリのように。」
そう言うと、井坂はT2トライアル・メモリを取り出した。
TRIAL!
ガイアウィスパーを聞き、メモリを自身の耳に刺す井坂。
そして、その姿は『青の通り魔』・・・いや、トライアル・ドーパントへと姿を変えた。
「さて・・・実演へと参りましょうか。素晴らしき能力も持つ者が虫けらなら何の意味も持たないという証明のね!」
----------------------------------------------------------------------------------------------
- 44 :
- 「はっ!!」
御坂の手から放り投げられるいくつものコイン。
そして、それらに向かって彼女は電気エネルギーを送り、何本もの光線を完成させてトライアル・ドーパントを狙う。
だが、トライアル・ドーパントは全ての光線を避けてしまう。
しかも、一度に全ての光線を避けるのではなく、ひとつひとつの光線をまるで反復横とびのように避けるのであった。
「そんな・・・早過ぎる!!」
超高速で移動するトライアル・ドーパントに対し、急きょ第二陣のコインを用意しようとする御坂。
だが、トライアル・ドーパントは御坂に急接近、手に持つエンジンブレードの柄で御坂の手のコインを叩き落とし、
さらにはアクセルを思わせるハイキックを彼女の胸に叩きこんだ。
空高く吹き飛ばされる御坂。
「ビリビリ!!」
これに対し、上条 当麻は思わず肩にかけていたアクセルを突き放し、そして吹き飛ばされた御坂を受け止める。
「ビリビリ!!」
上条の腕の中で倒れこむ御坂に声をかける上条。
だが、トライアル・ドーパントの強烈な一撃によって完全に気絶していた。
「くそっ・・・『青の通り魔』!今度は俺が相手だ!!」
御坂を抱えながら叫ぶ上条。
それに対し、トライアル・ドーパントは冷やかであった。
「仮面ライダーでもLv.5でも勝てない私にLv.0の君が挑もうとは・・・虫けらの考えていることは私にはどうも理解出来ませんねぇ。」
「俺達は虫けらじゃねぇ!てめぇのその幻想・・・ぶちす!!」
そう言って、上条がトライアル・ドーパントに襲いかかる。
「やれやれ・・・それでは相手してあげましょうかね。」
一方、トライアル・ドーパントはエンジンブレードを再び構えると、上条目がけて叩きつけるのであった。
響き渡る、金属同士がぶつかったような大きな音。
この音にトライアル・ドーパントは勝利を確信した・・・はずだった。
だが、彼の目の前には右手でエンジンブレードの刃を掴む上条の姿があった。
「・・・何?!貴様、この剣を腕1本で・・・。」
「悪いな、周りから『不幸体質』だの『Lv.0』だのと馬鹿にされてるけどな・・・
俺の<幻想し(イマジンブレイカー)>に関しては絶対的な自信があるんでね!」
そう言って、右腕に力を込めてエンジンブレードを抑え込もうとする上条。
確かに、彼の<幻想し>はエンジンブレードの持つ攻撃性を抑えることには成功した。
だが、エンジンブレード自体の武器としての物理攻撃性を抑えることは出来ず、彼は右手から真っ赤な血を流すのであった。
「ん・・・?なるほど、どうやら単なるやせ我慢だったようですね。」
上条の血に気付いたトライアル・ドーパントが言う。
「やせ我慢して悪いか?」
「医者として忠告しましょう。やせ我慢は・・・いや、身の丈に合わない無理は自身の身を滅ぼすと!!」
そう言って、腕に力を込めるトライアル・ドーパント。
すると、刃を握った上条ごとエンジンブレードを振り回し、力任せに上条を吹き飛ばすのであった。
地面に叩きつけられる上条。
一方のトライアル・ドーパントはエンジンブレードを肩にかけて、上条に迫る。
- 45 :
- その時だった。
「とうま!」
上条の耳に届く聞き慣れた声。
その声の主は禁書であった。
「い・・・インデ・・・。」
喋ろうとする上条だったが、先ほどの一撃で予想以上のダメージを受け、うまく喋れずにいた。
「とうま!・・・お前が『青の通り魔』だな!!」
そう言って、駆けだす禁書。
そして、トライアル・ドーパントの足にしがみつき、得意の噛みつきを始める。
だが、トライアル・ドーパントには何の効果も無かった。
「おやおや、なんとも元気なお嬢さんだ。だが・・・。」
そう言って、噛みつかれている足を上げるトライアル・ドーパント。
「女の子なら女の子らしく、静かにしていただきましょう。」
そう言うと、トライアル・ドーパントは足を勢い良く振りかぶり、噛みついていた禁書を無理やり引き剥がした。
吹き飛ばされ、地面に落とされる禁書。
一方のトライアル・ドーパントはターゲットを上条から禁書へと変更し、彼女へと近づいて行った。
「・・・そうは・・・させるか!!」
TRIAL!MAXIMUM DRIVE!!
声のする方向を見るトライアル・ドーパント。
目線の先には、ボロボロになった体を無理やり起こし、アクセルグランツァーの体勢をとるアクセルの姿があった。
「ほほう・・・まだ立ち上がる力が残っていたとはね。」
全身を青白い炎に包み、トライアル・ドーパントへと駆けていくアクセル。
そして、トライアル・ドーパントを射程圏内に捕らえると、必のアクセルグランツァーを放つのであった。
だが・・・。
「・・・何?!」
本来なら技を決め、着地しているはずのアクセルだったが、トライアル・ドーパントも同様にアクセルグランツァーを放ち、
ふたりは同じ体勢で空中に留まっていた。
「互角・・・だと・・・?」
「『互角』?いいえ、私の勝ちです!」
そう言って、着地するアクセルとトライアル・ドーパント。
次の瞬間、アクセルの足の装甲が割れ、そして連鎖するようにアクセルの装甲が全て剥がれ落ちるのであった。
倒れこむ照井 竜。
その姿を見て、上条が駆けようとする。
「て・・・照井さん・・・。」
「おっと、彼に会いたいのでしたら私がお手伝いしましょう・・・地獄への旅を!」
そう言って、上条への連続攻撃を開始するトライアル・ドーパント。
超高速で移動するトライアル・ドーパントは上条を囲むように移動し、
さらにパンチやキックといった打撃攻撃を目にも止まらぬ速度で仕掛ける。
この光景に禁書が叫ぶ。
「とうま、逃げるんだよ!」
叫ぶ禁書。
だが、その言葉は上条に届くことはなく、サンドバックと化した彼はついに力尽きてしまった。
傷だらけになった状態で倒れこむ上条のもとへ禁書が駆け付ける。
「とうま!お願い・・・しっかりして!!」
禁書は一生懸命に呼びかけるが、上条からの反応は一切無かった。
そう、まるであの悪夢のように・・・。
- 46 :
- そして、禁書のもとへアクセル・ドーパントがゆっくりと現れた。
上条を守るかのように、彼に覆いかぶさる禁書。
そんな光景にトライアル・ドーパントは冷笑するだけだった。
「美しい友情ですねぇ・・・。しかし、今の君たちに待っているのは友情でも希望でも無く『絶望』なのですから。
・・・そうだ、せっかくですので君たちにすばらしい言葉を贈ってあげましょう。」
そう言って、トライアル・ドーパントは再びエンジンブレードを手に取り、剣を大きく振り上げた。
「絶望が・・・お前のゴールだ。」
勢いよく振り下ろされるエンジンブレード。
そして、その刃は禁書と上条の体を貫いた・・・と思われたその時だった。
再びエンジンブレードから発せられる、金属同士がぶつかったような大きな音・・・いや、エンジンブレードを阻止するため、
ぶつかってきた『剣』がそこにはあった。
「・・・む?!君たちもまさか学園都市に来ていたとは・・・。」
振り下ろされたエンジンブレードをはじき返す何者か。
そして、間髪入れずに自身の持つ『盾』でトライアル・ドーパントを弾き飛ばし、間隔を空けるのであった。
そして、彼は『剣』と『盾』を構えて言った。
「井坂深紅郎、ここからは僕が相手しよう。」
「『僕』・・・じゃなくて『僕たち』だろ?相棒。」
その正体は仮面ライダーW サイクロンジョーカーエクストリームであった!
「その声・・・フィリップなの?!」
「禁書、大丈夫かい?」
Wが持つフィリップの意識が言う。
「うん!・・・そんなことより、てるいと・・・みさかと・・・とうまが!!」
「分かっている。翔太郎・・・病み上がりだが、準備は良いかい?」
「ああ。エクストリームメモリのおかげでバッチリだぜ!」
W内の左 翔太郎の意識が言う。
数時間前まで重度の夏風邪を引いていた翔太郎。
だが、フィリップの危機を察して活動を始めたエクストリームメモリによって風都から学園都市へ搬送され、
その際にエクストリームメモリの持つ治癒能力によって彼の風邪はたちどころに完治したのだった。
それは、かつてウェザー・ドーパントによって重傷を負ったフィリップを完治させるほどの力を持ったエクストリームメモリにとって他愛も無いことであった。
「おのれ・・・W!貴様もT2ガイアメモリの力に屈するがいい!!」
「おーっと、残念ながら俺達は忙しいんでね。またの機会させてもらうよ。」
翔太郎の意識がそう言うと、自身が持つビッカーシールドに3本のガイアメモリを刺し始めた。
- 47 :
- JOKER!!MAXIMUM DRIVE!!
METAL!!MAXIMUM DRIVE!!
TRIGGER!!MAXIMUM DRIVE!!
「こいつで仕上げだ!」
PRISM!MAXIMUM DRIVE!!
4つの強大なエネルギーが集約するビッカーシールド。
これをWは大きく掲げるのであった。
「「ライダー・プリズムフォーメーション!!」」
強烈な光を発するビッカーシールド。
そして次の瞬間、シールドからは3つの光の塊が飛び出し、
それらはそれぞれ仮面ライダーWのサイクロンジョーカー、ヒートメタル、ルナトリガーの形となって次々とトライアル・ドーパントに向かっていった。
「おのれ・・・こんな技にやられてたまるか!」
自身のメモリの力をエンジンブレードに伝え、マキシマムドライブ状態となったトライアル・ドーパント。
そして、次々と襲い掛かるWに怯むことなく、全てをエンジンブレードで真っ二つに叩き斬るのであった。
だが、トライアル・ドーパントはすぐにあることに気付いた。
「・・・!しまった、これは囮!!」
辺りを見回すトライアル・ドーパント。
だが、トライアル・ドーパントがWの放った幻影に気を取られているうちに、Wたちは怪我をした面々を連れてとっくにその場を後にしていたのであった。
「まさか、私の十八番(オハコ)を彼らが使ってくるとは・・・。」
元の姿に戻り、笑みを浮かべる井坂。
だが、彼の心は完全なる怒りに震えていた。
「良いでしょう・・・最強である私をここまでコケにした罪・・・それがどんなに大変なことであるか、身を持って教えてあげましょう!!」
夜の学園都市に井坂の叫びが響いた。
学園都市内にある大きな病院。
その一室で御坂は目を覚ました。
「ここは・・・?」
キョロキョロとしている彼女の目に病室の窓が目に入る。
窓の外は事件の時の夕闇から昼を通り越して夕焼けへと変化していた。
起き上がり、ベッドから降りようとする御坂。
だが、トライアル・ドーパントから受けた一撃による痛みはまだあるらしく、彼女は自身の胸を押さえながら苦痛な表情を見せた。
そんな時、彼女のもとへ2人の少女が病室へと入って来る。
「・・・!お姉さま!!」
「御坂さん!」
苦しむ御坂のもとへ駆け寄る少女たち。
ひとりはトライアル・ドーパントとの戦いで怪我を負った白井 黒子、もうひとりは風紀委員(ジャッジメント)のメンバーである初春 飾利であった。
「お姉さま、大丈夫ですか?!」
「・・・痛みはだいぶあるけど・・・黒子の怪我に比べたらまだ大丈夫な方よ。」
そう言って、白井の姿を見る御坂。
その目線の先には、ギブスで固定された白井の左腕があった。
「それにしても・・・よくご無事でしたね。」
口を開く初春。
そして、彼女は発言を続ける。
「のちの調査で分かったのですが・・・あのドーパントの名はトライアル・ドーパント。
風都署から来た照井刑事が変身する仮面ライダーアクセル トライアルと同等の能力を持ち、
しかもその性能は最新型ガイアメモリの力とガイアドライバーを介さない直刺しによって仮面ライダーの10倍近いパワーを持っているとか・・・。」
「調査乙。それにしてもあの刑事の10倍のパワーか・・・。そりゃあ、頑丈な私も一発で気ぜ・・・。」
突然黙りだす御坂。
その光景を見て、白井と初春が彼女の顔を覗き込む。
- 48 :
- 御坂は思い出していた。
トライアル・ドーパントと戦い、相手から猛スピードで繰り出されたキックを自分は防御する間も無く受け、そして吹き飛ばされてしまった。
しかし、今考えればおかしい。
あの夜、戦っていたのはコンクリートの外壁が並ぶ住宅街。
そんな環境で吹き飛ばされようものなら、アクセルのように勢いよく壁に叩きつけられるか、
またはアスファルトの地面に叩き落とされるか・・・いずれにせよ、五体満足ではいられなかったはず。
・・・なのに、自分は軽い怪我で済んでいる。
これはいったい・・・?
そして、御坂は思い出した。
あの攻撃を受けて気を失う直前、彼女のもとへ駆け寄り、そして身を挺して御坂の体を捕えたひとりの男の姿を・・・。
「・・・ねぇ!あの男は・・・上条 当麻はどうなったの?!」
今度は突如として大声を上げる御坂。
この声に驚きの表情を浮かべる白井と初春であったが、御坂は彼女らに構うことなく再度上条の安否を問うのであった。
「早く答えて!あいつはどうなったの?!」
「お・・・落ち着いてください、お姉さま!あの男なら、この病院に収容されてますから!!」
「・・・あ、そうなのね。良かった、無事で・・・。」
「・・・いえ、『無事』とは言えない状況なんです。」
割って入る初春。
そして、突然の発言に理解できない表情を見せる御坂に対し、初春は白井とともに病院内を移動した。
とある病室の前で止まる3人の少女。
その病室には<上条 当麻>と書かれた名札、そして<面会謝絶>と書かれた札がぶら下がっていた。
そっとドアを開ける御坂。
その目線の先には呼吸器を付け、意識不明のままで横たわっていた傷だらけの上条の姿があった。
「そんな・・・そんな・・・。」
受け入れたくない状況を目の当たりにし、目を背ける御坂。
だが、その目線の先にはさらに受け入れがたい現実が待っていた。
彼女の目に飛び込む1枚の名札。
そこには<照井 竜>の名と、先ほど同様に<面会謝絶>の札。
何かに魅かれるように病室のドアを開ける御坂であったが、
そこに待っていたのは上条と同じ様に呼吸器を付けて意識不明のまま眠り続ける照井の姿であった。
- 49 :
- ドアの向こうの現実を忘れるかのように急いでドアを閉める御坂。
そして、彼女は子供のように大声で泣き崩れた。
病院内に響き渡る、御坂の悲しき声。
だが、白井と初春は彼女に対して何もすることが出来ず、ただただ泣き叫ぶ彼女を見るしか出来ないでいた。
そんな時、この雰囲気を打破するかのように初春の携帯電話の着信音が飛び込んでくる。
すかさず出る初春。
「ハイ!・・・あ、刃野さん!・・・え?・・・はい、分かりました。」
風都署の刑事である刃野 幹夫からの電話に顔を曇らせる初春。
「どうしたの?」
「・・・トライアル・ドーパントが出現し、警備員(アンチスキル)と交戦に入りました。」
初春の言葉に驚く白井。
そして、御坂もその言葉に反応するのであった。
「しかし、今までのスキルアウトとは異なるため、警備員や風都署の方も不利な状況にあるそうです。」
「くそぅ・・・こうなったら私たちも出動を・・・。」
「待って。」
いきり立つ白井の前に立ちふさがる影。
それは御坂であった。
「ここは私ひとりで行く。あなたたちはあの男と照井刑事の看病を。」
「ちょ・・・?!お姉さま、何を言ってるんです!仮面ライダーの10倍も持つ怪人にひとりで挑もうなんて・・・。
こんな時こそ、風紀委員3人の力を合わせて戦わなくては!!・・・もし、私や初春のことを戦力として扱えないというのでしたら、
我々が壁となって命と引き換えにでもお姉さまの命をお守り・・・!!」
熱弁する白井。
だが、そんな彼女の顔面にひとつの拳が強襲した。
吹き飛ばされ、病院の床に叩きつけられる白井。
すかさず初春が彼女の元へと駆けつける。
「白井さん!・・・御坂さん・・・どうしてこんなことを!!」
御坂を睨む初春。
その目線の先には、稲妻が走る右手を強く握りしめた御坂がいた。
「・・・軽々しく、『命と引き換えに』とか言わないで・・・。」
「・・・え?」
「・・・もう・・・誰も・・・死んで欲しくないのよ!!」
大粒の涙を流しながら、怒りの形相を表わす御坂。
その顔を見て、ふたりは言い返すことが出来なかった。
「もう・・・誰も死なせない・・・私が・・・私が決着をつける!!!」
駆ける御坂。
これに対し、とっさに声をかける初春であったが、怒りに燃える彼女の耳にその声が届くことはなかった。
- 50 :
- そこは、ただただ真っ暗な『闇』の世界だった。
前を見ても黒い光景、後ろを見ても黒い光景、そして上空は黒い空・・・。
そんな空間で照井と上条は立ち尽くしていた。
彼らは考えていた。
自分は井坂と戦い、そして敗れ、気が付いたらこの場所に立っていた。
まさか・・・自分は死んだのだろうか?
「正解だ、ボウズども。」
突然、照井の耳に入る男の声。
照井が振り向くと、そこにはひとりの威容な姿の男が立っていた。
ドクロのような顔、漆黒のボディ、手には傷のついた帽子、そして腰には仮面ライダーWのベルトに酷似した何か・・・。
それはまるで死神のようであった。
思わず、照井が男に質問する。
「お前・・・死神か?」
「死神・・・か。・・・ふっ・・・ふふっ・・・ハッハッハッハ!!」
そう言うと、その男は異様なほど大声で笑い出すのであった。
「何がおかしい!」
笑う男に対し、声をあげる上条。
「はっはっは・・・いやぁ、すまねぇな。まさか『同業者』から『死神』なんて言われるとは思ってなかったんでね。」
「『同業者』・・・?」
「確かに、俺は死神だ・・・だが、それは罪を重ねた悪人に対しての話だがな。一般的に人々は俺のことをこう呼ぶ・・・『仮面ライダースカル』。」
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Aパートはここまでです。
Bパートはちょっとだけ間を置いて投下させていただきますので、もう少しお付き合い願います。
- 51 :
- それではBパートです。
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「確かに、俺は死神だ・・・だが、それは罪を重ねた悪人に対しての話だがな。一般的に人々は俺のことをこう呼ぶ・・・『仮面ライダースカル』。」
そう言って、変身を解除する仮面ライダースカル。
風に乗って剥がれ落ちる装甲の中からは、白い背広を着たひとりの男が立っていた。
「あんたは・・・いや、あなたは!」
「照井さん、あの男を知ってるんですか?!」
「ああ。所長の父親で・・・確か、名前は・・・。」
「鳴海 壮吉だ。」
「・・・いや、待て!左の話によれば、あなたは死んだはずでは・・・?」
「・・・え?」
「そう、確かに俺は死んだ。だから、この世界にいるんだよ。」
「・・・じゃあ・・・俺たちのいる世界は・・・。」
「そう、お前さんの予想どおり『死の世界』だ。」
鳴海 壮吉の言葉を聞き、愕然とする照井と上条。
だが、一方の鳴海は涼しそうな顔をしていた。
「そう早とちりするなよ、若人。」
「・・・え?」
「ここは『死の世界』・・・と言っても、まだ地獄の1丁目。つまり、生と死の境目みたいなところだ。」
「・・・じゃあ、まだ生き返れる可能性もあるんですね?!」
嬉しそうな顔をする上条。
「ああ・・・だが。」
「だが?」
「・・・さっきも言ったはずだ。俺は罪を重ねた者への『死神』だとな。」
「罪・・・?」
「これを見な。」
そう言って、指でパチンという大きな音を鳴らす鳴海。
すると、漆黒の空にひとつのヴィジョンが映し出された。
照井と上条の目に飛び込む光景。
それは、傷だらけになりながらもトライアル・ドーパントと戦う御坂
「あれは・・・井坂!それに御坂!!」
「ビリビリの奴、ひとりで戦ってるのか?!」
「これが・・・お前たちの『罪』だ。」
冷淡に言う鳴海。
「俺たちの・・・『罪』?」
「ああ、彼女はどうしてひとりで戦っていると思う?」
「ひとり・・・?待ってくれ!ビリビリには風紀委員の仲間がいるはずだ!それなのにどうしてひとりなんだ?!」
「彼女が望んだんだ・・・ひとりでの戦いをな。」
「・・・どういうことだ?」
「あの子は今、復讐の心のみであのドーパントと戦っている。悪と戦う仮面ライダーという存在、そして自らが愛する男という存在、
これを2つ失った悲しみや怒りによって生み出された心のみでな・・・。」
再び目に入る、トライアル・ドーパントと御坂との戦いが映し出されたヴィジョン。
そこには、トライアル・ドーパントの高速移動による四方八方から繰り出されるキックによってサンドバック状態と化しつつも、
気力のみで立ち上がりファイティングポーズをとろうとする御坂の姿があった。
「分かるか?あの子は刺し違えてでもあのドーパントを倒すつもりだ・・・いや、自しに行ってるが近いかもしれないな。
もう、自分の愛する者を奪われないために・・・そして、自分が二度と悲しまないために。」
「・・・ビリビリ!止めるんだ!!」
思わず叫ぶ上条。
- 52 :
- 「・・・そしてもうひとつ。」
そう言うと、鳴海は再び指を鳴らす。
現われるもうひとつのヴィジョン。
そこには、リボルギャリーのドックにてフィリップとともに何かを作っている禁書の姿であった。
「禁書!」
ヴィジョンに映った禁書の顔を見る照井。
その顔は、寝る間も惜しんで作業に徹していたのか、生気の薄れた顔となっていた。
だが、そこには何かを信じて待っているかのような希望も感じられるのであった。
「あの子はフィリップとともに、あのドーパントを倒すための武器を作っているそうだ。細かいところに関しては俺も不明だがな。」
「禁書・・・。」
三度、指を鳴らす鳴海。
すると、その上空のふたつのヴィジョンが消え、彼らの周囲は再び闇の世界へと戻った。
「・・・それじゃあ、ここで最後の選択だ。返答によってはお前たちを死の世界へ連れていくから覚悟しな。」
そう言って、鳴海はガイアメモリを構えた。
SKULL!!
「変身。」
鳴海の腰に巻かれたロストドライバーに挿入されるスカルのメモリ。
そして、紫の光が包み込み、再び彼を仮面ライダースカルの姿へと変えるのであった。
「さあ・・・お前の罪を数えろ。」
照井と上条を指差すスカル。
これに対し、ふたりはゆっくりと答えた。
「俺の罪・・・それは、悪の手から人々の心を守れなかっただけでなく、さらにはその命までの危険にさらそうとした罪!」
「2つ目・・・帰ってくること、そして悪を倒すことを願っている人がいるにもかかわらず、こんな闇の世界に留まっている罪!!」
「そして・・・最後の罪・・・。」
「それは・・・。」
「「正義が悪に負けた罪!!!」」
漆黒の世界に照井と上条の大きな声が響き渡った。
「・・・。」
無言でスカルマグナムを取り出し、スカルのメモリを挿入するスカル。
SKULL!MAXIMUM DRIVE!!
- 53 :
- 「何をするつもりだ?!」
「こうするのさ・・・。」
そう言って、照井たちに向けてギルティシュートを放つスカル。
だが、その弾丸はふたりの間を通り過ぎ、そして漆黒の壁に衝突した。
砕け散る壁、そしてそこからは神々しいほどの光があふれていた。
「これは・・・。」
「まあ、点数としては70点だが・・・ある程度自分の罪が分かってるから良しとしよう。」
「鳴海さん・・・いや、仮面ライダースカル!」
「その光の道を抜ければ現世に戻れる。そして・・・自分たちの言った罪を十分に償ってこい!
またここに戻ってきたら承知しないからな!!」
「ありがとうございます!!」
そう言って、駆けだす上条。
続いて照井も駆けだそうとしたその時だった。
「照井 竜・・・と言ったな?」
「え・・・あ・・・はい。」
「・・・いや、なんでもねぇ。」
「・・・?」
「照井さん!早く行きましょう!!」
「あ・・・ああ!!」
そう言って、光の道を駆けていく照井と上条。
そして、崩れた壁は再生し、スカルの周囲は再び漆黒の闇と化した。
「照井 竜・・・か。」
つぶやくスカル・・・いや、鳴海 壮吉。
「まるで若い頃の俺を見てるようだ。だからこそ、亜希子が惚れたのかもしれないな・・・。
頼んだぜ、仮面ライダーアクセル!上条 当麻!!学園都市と風都の平和を、そして家族としての未来を!!!」
「まだ戦おうというのですか?虫けらの存在で・・・。」
一方、トライアル・ドーパントと御坂の戦いはまだ続いていた。
トライアル・ドーパントの攻撃を受け続け、立ち上がるのもままならない御坂。
だが、彼女の闘志は自身を無理やりにでも立たせるのであった。
「いやはや・・・医学、生命、ガイアメモリとこれまで色々なことを研究し自分なりに理解してきた私ですが、
未だに君たち虫けらの考えや行動というのが理解出来ませんねぇ・・・。」
そんな時、御坂がポツリという。
「・・・とう・・・ま・・・ライ・・・ダー・・・。」
「・・・ん?」
「もう・・・失い・・・たくない・・・。」
涙をこぼしながらつぶやく御坂。
だが、その言葉は意識を失いかけながらも立ち上がろうとする心の叫びだったのかもしれない。
「そうですか・・・では、失うことのないようあなたも地獄に送ってあげましょう。仮面ライダーが遺した武器によってね!」
そう言って、アクセルから奪ったエンジンブレードを振りかざし、御坂に襲いかかるトライアル・ドーパント。
しかし、限界まで来ていた御坂に動く力など無く、エンジンブレードを前に立ち尽くすのみであった。
「これで・・・最後です!!」
- 54 :
- 御坂に振り下ろされたエンジンブレード。
だが、その刃が彼女を襲う直前、何者かが立ちふさがり、刃の進行を止めた。
「何?!・・・!!」
「残念だったな、井坂。」
トライアル・ドーパントの前に立ち、真剣白羽取りをする赤き装甲の男・・・それは仮面ライダーアクセル=照井 竜であった。
「貴様・・・生きていたのか?!」
「『貴様』?残念ながら俺も生きてるぜ!!」
トライアル・ドーパントのもとへ現われるもうひとりの影。
その影は右手でトライアル・ドーパントの腕を握ると、何かを送り込むかのように右手に力を込めるのであった。
「な・・・う・・・腕の力が・・・?!」
「だから言っただろ?<幻想し>をなめるな・・・ってね。」
その声の主は上条 当麻であった。
<幻想し>によるエネルギー吸収によって腕の力を失うトライアル・ドーパント。
そして、ついにはエンジンブレードを支えることが出来ず、そのまま落とすのであった。
「今だ!」
即座に反応に、地面に落ちたエンジンブレードを拾い上げるアクセル。
そしてトライアル・ドーパントに連続して切りかかり、相手との間合いを取るのであった。
倒れるトライアル・ドーパント。
・・・と同時に御坂は目を覚まし、現在の状況に気づくのであった。
「・・・あれ・・・私・・・?!」
「ビリビリ、大丈夫か?!」
駆け寄る上条。
「上条・・・。」
「ビリビリ・・・心配かけ・・・?!」
「あんたねぇ・・・この・・・大馬鹿ヤロォおおおおお!!」
御坂のもうひとつの能力である<電撃使い(エレクトロマスター)>が発動、膨大な電気エネルギーが上条の体に流れ、
彼の体はまるでギャグ漫画のような真っ黒焦げのアフロヘアーとなってしまうのだった。
「ちょ・・・待てよ!助けに来て、この仕打ちは無いだろう!!もう一回、地獄の一丁目に行ったら問答無用で地獄行きだってぇのに!!!」
「何をワケの分からないこと言ってるのよ!こっちはどんだけ・・・どんだけ・・・心配したと思ってるのよぉ!!」
大声をあげる御坂。
・・・と同時に、心情が高ぶり過ぎたためか、彼女は子供のように泣き出してしまうのであった。
「・・・ったく。上条、何やってるんだよ。」
「え・・・俺のせいですか?!」
「何言ってるのよ!ぜぇ〜んぶ、アンタのせいなんだから!!だから・・・明日はちゃんと映画に連れていくなり食事をおごるなり・・・
とにかく私のしもべとして働きなさいよ!!!」
「せっかく現世に帰ってきたのに・・・不幸だ・・・。」
- 55 :
- 「何が不幸だ!それがレディに対して言うセリフか!!」
「やれやれ・・・!おい、上条の処遇についてはあいつを倒してから話したほうが良さそうだぞ。」
そう言って、エンジンブレードを構えるアクセル。
その目線の先には、先ほどの攻撃でダメージを受けながらも立ち上がるトライアル・ドーパントの姿があった。
「おのれ・・・貴様ら虫けらどもにT2ガイアメモリの力が負けるはずがない!」
怒りの声をあげるトライアル・ドーパント。
これに対し上条が言う。
「あんたは重大な勘違いに気づいてないようだな。」
「勘違い・・・だと?」
「確かに俺らはあんたから見れば虫けらだ。力も能力もあんたに劣っている。だが・・・それは見方のひとつでしかない。」
「見方・・・?」
「そう、あんたは子供の頃に習わなかったか?物事というものはひとつの目線で捕えるんじゃなく、色々な目線で見つめ、
総合的に考えていく・・・ってね。あんたは『力』や『能力』といった点からは優秀だ。だが・・・それ以外は0点だ。
人の心を理解出来ず、命という存在を軽視するあんたはな!」
「Lv.0の分際でベラベラと・・・言いたいことはそれだけか?!」
「俺もあるぜ。」
アクセルが上条の隣りに立つ。
そして、トライアル・ドーパントを指差して言い放った。
「お前の罪を・・・数えろ。」
「罪だと?フン、私に罪など無い!
君の家族の命を奪ったのも、学園都市の者を襲撃したのも私の最強への道の実験台でしかないのだからな!!」
「・・・0点。」
「何だと?!」
「もう一度言ってやる。井坂、お前の全てが0点・・・いや、それ以下だ。」
「貴様ら、虫けらの分際で・・・私にそんな減らず口が叩けないようにしてやる!!」
怒りが頂点に達するトライアル・ドーパント。
この言葉に上条とアクセルが構える。
「その幻想・・・。」
「俺たちが・・・。」
「「振り切るぜ!!」」
- 56 :
- 怒りが頂点に達し、マキシマムドライブ状態となるトライアル・ドーパント。
これに対し、上条が後ろの御坂に向かって叫ぶ。
「ビリビリ!俺たちに向かって<超電磁砲>を放て!!それも生半可なもんじゃねぇ・・・お前の全身全霊を込めた<超・超電磁砲>をな!!!」
「はぁ?!何、そのネーミング!しかも、なんで?!」
「俺たちに質問するなっ!!」
叫ぶアクセル。
「だぁあああああ!!こうなったら、ヤケクソでその・・・えぇっと・・・
<超・ウルトラ・スーパー・ミラクル・ハイパー・超電磁砲>とやらをお見舞いしてやるから覚悟しなさいよ!!!」
「おい、ビリビリ!名前が盛大に間違・・・ぅおっ?!」
ツッコミを入れようと上条が後ろを見ると、そこには今までにないほどの電気エネルギーを解放していた御坂の姿があった。
彼女の両腕に集められる多量の電気エネルギー。
そして、それらは手のひらという小さな空間に集められることによって凝縮され、プラズマエネルギーと化する。
だが、今までの<超電磁砲>に使っていたような電気エネルギーと違い、
莫大な熱量を持ったプラズマエネルギーの制御に御坂は苦戦を強いられていた。
「くっ・・・行くわよ!!」
叫ぶ御坂。
「OK!・・・照井さん、行きましょう!!」
「ああ!!」
返事をするアクセル。
そして、自身のアクセルドライバーに挿されたアクセル・メモリを抜くと、エンジン・メモリへと差し替えるのであった。
ENGINE!MAXIMUM DRIVE!!
ガイアウィスパーが流れるや否や、バイクモードへと変形するアクセル。
一方、上条は変形したアクセルにまたがり、再度御坂に向かって叫んだ。
「ビリビリ!今だ!!」
「どぉりやぁあああああ!!」
御坂の手から解放されるプラズマエネルギー。
そのエネルギーの塊は流星の尾のような光を描きながら、一直線にアクセルたちに向かっていった。
「上条、行くぞ!!」
アクセルドライバーのアクセルを勢いよく引き、飛び上がるアクセル。
その体は宙に浮き、そしてタイミングを合わせたようにプラズマエネルギーと合体、
光り輝くバイクとなってトライアル・ドーパントに向かっていくのだった。
「うぉおおおおお!!」
高速移動で一直線に襲いかかるトライアル・ドーパント。
同じく、敵に向かって一直線に突撃していくアクセル。
磁石のように引きあうふたつはやがて激突する・・・かと思われた。
だが・・・。
「・・・残念ですが、ここは勝ちに行かせてもらいますよ!!」
そう言って、今まで進んできた直線コースから突如として横に逸れるトライアル・ドーパント。
一方のアクセルは敵の突然の行動に対応することが出来ず、そのままトライアル・ドーパントの横を通り過ぎてしまうのであった。
- 57 :
- 「私を『0点』呼ばわりしたワリには、こんな猪突猛進な攻撃とは・・・やはり君たちは・・・。」
「いや、あんたは0点だよ。この攻撃をただの体当たりとしか思っていない限りはな!」
叫ぶ上条。
すると、まるでサーフボードの上に立つかのようにバランスをとって立ち上がるのであった。
「・・・何のつもりです?」
「お前を倒すつもりだぁ!!」
右手の<幻想し>に力を込める上条。
そして極限まで力を溜めると、その手をまるでテニスのラケットのごとく勢いよく振るのであった。
右手から放たれる<幻想し>のエネルギー。
それは手の動きをなぞるかのようにカーブしたエネルギー体となってアクセルの前に現われ、
そしてアクセルの軌道を再度トライアル・ドーパントに向けるのであった。
「何っ?!ならば!!」
再び一直線に向かってくるアクセルに対し、高速移動で避けるトライアル・ドーパント。
だが、今度は<幻想し>の力を使うことなくアクセルはUターン、三度トライアル・ドーパントへの攻撃を仕掛けるのであった。
「これはいったい?!」
「<超電磁砲>・・・それはビリビリらしい『一直線にしか進まない』攻撃技だ。だから、あんたはこの攻撃も一直線にしか来ないと考えたんだろう?
そこで、俺と照井さんはその考えを逆手に取った作戦を採ることにしたんだ。<幻想し>で<超電磁砲>の特性である『一直線にしか進まない』性質を消し、
お前の高速移動に対抗した攻撃を・・・そして、固定概念に縛られたお前の動揺を誘うという作戦をな!」
上条の言うとおり動揺していたため、ついにアクセルの体当たりを受けるトライアル・ドーパント。
一方のアクセルは再度Uターンを行い、体当たりを行なう。
繰り返される、アクセルの攻撃。
その移動によって残された光の軌道は∞(無限)の文字を描き、トライアル・ドーパントにダメージを与えていく。
そして何度目かの攻撃の時、光の軌道を残したまま、アクセルがバイクフォームを解除して現われる。
ACCEL!MAXIMUM DRIVE!!
アクセルドライバーに刺さっていたエンジン・メモリを抜き、再度アクセル・メモリへと差し替えるアクセル。
そして、アクセル・メモリのマキシマムドライブを発動させると、エンジンブレードを構えてトライアル・ドーパントを睨むのであった。
アクセルの脳裏に浮かぶ光景。
それは『笑顔』であった。
父、母、妹、鳴海 亜希子、上条、御坂、白井、そして・・・禁書。
全ての笑顔を守るため・・・仮面ライダーとして戦い続けるため、アクセルは自らの闘志を燃やした!
- 58 :
- 「・・・ぅおぉおおおおお!!」
闘志同様、アクセル・メモリの力によって燃え上がる体。
その炎はエンジンブレードへと集約され、エンジンブレードを炎の刀へと作り替えた。
「井坂!これで最後だ!!」
叫びとともに炎の刀を振り下ろすアクセル。
その一撃はトライアル・ドーパントを、そして相手の動きを拘束していた∞のプラズマエネルギーをも真っ二つにするのであった。
無限をも打ち砕く一閃・・・新技インフィニティスラッシャー完成の瞬間であった。
「そんな・・・馬鹿な・・・。」
「絶望が・・・お前のゴールだ。」
大爆発を起こすトライアル・ドーパント。
「やった!!」
「照井さん!ついに・・・倒したんですね!!」
アクセルのもとへ上条と御坂が駆けつける。
一方のアクセルもこの爆発を見て戦いが終わったのだと思い、変身を解除しようとベルトに手をかけようとしたその時だった。
突然、3人の体に走る電気のような恐怖の感情。
予測不能の事態にアクセルは再び構え、また上条たちも急いでアクセルのもとに現われる。
「これはいったい・・・?」
「・・・!」
「そんな!!」
爆発によって出来た火柱を見る3人。
その目線の先には、倒したはずの井坂の姿が、そして彼の手にはメモリブレイクしたはずのT2トライアル・メモリがあった。
「馬鹿な・・・メモリブレイクしたはずなのに・・・。」
「残念ですが・・・T2ガイアメモリは普通のとは・・・違いましてね・・・君たちのような虫けらには・・・
ブレイク出来ない構造に・・・なっているのですよ・・・。」
息も絶え絶えになりながら語る井坂。
「メモリブレイク出来ない・・・だと?」
「そう・・・だから・・・。」
TRIAL!
残された力で再度耳にメモリを挿入する井坂。
その姿はトライアル・ドーパントに・・・しかも、先ほどのアクセルたちの攻撃など無かったかのような無傷の姿となっていた。
「私を倒すことは出来ないのです。ましてや、虫けらごときが神に等しき力を持った私を倒そうなど不可能にも程がある!」
井坂が言う。
その声も先ほどのような満身創痍の声ではなく、ハツラツとした声であった。
「さあ、どうしますか?このまま素直に私に倒されるか・・・それとも、無駄に抵抗して私に倒されるか?」
- 59 :
- 「答えはひとつ・・・お前をメモリブレイクするだけだ。」
突然割り込む声。
トライアル・ドーパントが声の方向を見ると、
そこにはハードタービュラーに乗った仮面ライダーW サイクロンジョーカーエクストリームと禁書の姿があった。
ハードタービュラーを操作し、アクセルのもとへ現われるWと禁書。
その姿を見て、アクセルが声をあげる。
「禁書!それにフィリップと左!!」
「待たせたね、照井 竜。だが、今はおしゃべりする暇など無いようだ。」
「・・・ああ。しかし、どうやってメモリブレイクするつもりなんだ?」
「へへぇ〜ん!それに関してはフィリップと禁書が対策済みさ!!」
翔太郎の意識がそう言うと、Wは右手を前に掲げた。
「「プリズムビッカー!!」」
胴体のクリスタルサーバーから現われるWの武器プリズムビッカー。
それを受け取ると、Wはアクセルに渡すのであった。
「これは・・・。」
「もうひとつ・・・禁書、君の番だ。」
「ハイハイなんだよ!」
そう言って、禁書がアクセルに何かを渡す。
「これは・・・ガイアメモリ?」
「そう・・・正確には『地球の記憶』と魔術や超能力といった『特殊能力』を組み合わせたハイブリットメモリといったとこかな?」
「てるい!これとてるいのメモリの力を合わせて、『青の通り魔』をボッコボコしてやるんだよ!!そうすればきっと勝てるんだよ!!!」
元気よく叫ぶ禁書。
「・・・。」
「てるい、どうしたの?」
黙るアクセルに対して問いかける禁書。
それに対し、アクセルが答える。
「禁書・・・今度こそ君との約束を果たす!」
「うん!ファイトなんだよ!!」
禁書の言葉を聞くと、アクセルは自身のドライバーからアクセル・メモリを抜き、
マキシマムカウンターを挿入した。
TRIAL!
響き渡るスターティングシグナルの音。
・・・と同時に黄色くなるアクセルの装甲。
そして、スターティングシグナルの音が最高潮に達した時、アクセルの装甲は砕け、
新たなる青い装甲が包み込むように装着された。
- 60 :
- 「頼んだよ、てるい・・・うぅん!仮面ライダーアクセル トライアル!!」
Wから受け取ったプリズムビッカーを掲げるアクセル。
そして、彼はプリズムビッカーのマキシマムスロットにガイアメモリを挿入していく。
ENGINE!MAXIMUM DRIVE!!
RAILGUN!MAXIMUM DRIVE!!
IMAGINE BREAK!MAXIMUM DRIVE!!
ACCEL!MAXIMUM DRIVE!!
マキシマムスロットから飛び出す4つの光。
それらはひとつの球体となってトライアル・ドーパントを包み込んだ。
「な・・・なんだこれは?!」
驚くトライアル・ドーパントを上空へと持ち上げる光。
対するアクセルはプリズムソードを右手に持つと、左手のプリズムビッカーを投げ、マキシマムカウンターに持ち替えた。
押されるマキシマムスイッチ、そして勢いよく回転しだすトライカウンター。
それを確認したアクセルはマキシマムカウンターを空高く放り投げると、プリズムソードを構え、
そして上空で拘束されたトライアル・ドーパントに対しプリズムトルネードの体勢に入った。
「全て・・・振り切るぜ!!」
勢いよく飛び上がり、トライアル・ドーパントを球体ごと斬ろうとするアクセル。
だが、その瞬間、トライアル・ドーパントは自身を捕えていたエネルギーを破壊、
さらにはアクセルの持つプリズムソードをも掴んでしまうのであった。
「何?!」
「言ったはずです!神に等しき力を持った私が負けるはずないと!!」
「そんな!あいつにはプリズムトルネードも効かないのか?!」
上空での光景に対し、叫ぶ翔太郎の意識。
「照井さん・・・。」
上条も落胆した声をあげる。
だが、そんな状況に禁書が叫んだ。
「とうま!そんな悲しい声をあげてる暇なんて無いんだよ!!今はてるいを応援するんだよ!!!」
「禁書・・・。」
「だから、ホラ!みさかも、フィリップも!!仮面ライダー!!!」
「・・・うん!もうひと踏ん張りよ、仮面ライダー!!」
「照井 竜・・・見せてくれ、君の仮面ライダーとしての力を!!」
「照井!!」
「照井さん!・・・いや、仮面ライダー!!」
「仮面ライダー!!!」
- 61 :
- 『仮面ライダー!!!』
アクセルの耳に届く仲間の声。
その声が、再びアクセルに力を与える。
「井坂・・・お前の力は『神に等しい』と言ったな?」
「ん?何を急に・・・。」
「ならば貴様の負けだ。何故なら俺は・・・罪を重ねた者への『死神』なんだからな!!」
その時、上空からひとつの光が現われ、プリズムソードのメモリスロットに挿入される。
アクセルの耳に飛び込む、ひとつのガイアウィスパー。
それはハッキリとこう言っていた。
SKULL!MAXIMUM DRIVE!!
「ぅおぉおおおおお!!」
両手でプリズムソードをしっかりと握り、力を込めるアクセル。
「こ・・・この力は・・・!!」
耐えるトライアル・ドーパントであったが、突如力を増したプリズムソードに耐えることが出来ず、手を離してしまう。
その瞬間、全ての人の思いが詰まった一撃がトライアル・ドーパントの体を貫いた。
プリズムソードを手に、地面へ着地するアクセル。
・・・と同時にマキシマムカウンターも彼の左手に収まる。
TRIAL!MAXIMUM DRIVE!!
「9.8秒・・・やはりこれが・・・井坂の絶望までのタイムだ。」
その言葉の直後、大爆発を起こすトライアル・ドーパント。
その直後、噴煙からはT2トライアル・メモリが飛び出すが、
『地球の記憶』と『特殊能力』のふたつの力を持ったメモリブレイクによって機能を停止、
さらには地面に激突し、そのショックで粉々に砕け散るのであった。
こうして、学園都市で起きた『青の通り魔』の事件は終焉を迎えた。
- 62 :
- 「てるい!」
アクセルのもとへ駆けつける禁書。
そして勢いよくジャンプし、そのままアクセルに抱っこされるのであった。
「禁書・・・やったぞ!!」
「うん!」
「照井さ〜ん!」
「仮面ライダー!!」
駆けつける上条と御坂。
アクセルは禁書を下し、変身解除する。
「これで・・・終わりよね?」
御坂が問いかける。
「ああ、これで・・・。」
「いや・・・終わりじゃないかもしれない。」
照井の言葉をさえぎる声。
その声の主は変身解除したフィリップであった。
「どういうことなんです?!」
上条が言う。
「確かに井坂のメモリブレイクは出来た。だが・・・井坂自体の姿が見えない。」
そう言って、破壊されたT2ガイアメモリの方向を見るフィリップ。
仮面ライダーたちが行うメモリブレイクはガイアメモリ自体を破壊することであり、
素体となった人間に対してはダメージを与えることはあっても破壊することは無い。
だが、この戦いの場に残されていたのはメモリの破片のみであった。
「それじゃあ・・・また、あのドーパントが出るかもしれないって言うの?!」
「いや、それはねぇ。だが、井坂が生きてる可能性がある・・・って話だ。」
翔太郎が言う。
では、井坂はどこへ消えたのか?
学園都市、戦いの場から少し離れたエリア。
そこに、ひとりの白い服装に包まれた男に肩を貸してもらいながら歩く井坂の姿があった。
「申し訳ありませんね・・・加頭くん・・・こんな醜態を・・・さらす羽目になるとは・・・。」
「いえ、私は上からの命令に従っているだけですから。」
「・・・と言うと・・・財団Xは・・・私を・・・助けると・・・。」
- 63 :
- 「いえ。」
「何・・・?」
「上からの命令はこうです。『井坂 深紅郎に財団Xからの言葉を伝えろ』と。」
そう言って、唐突に井坂を突き放す加頭 順。
「どういう・・・ことだ・・・。」
「あなたを助けたのは、あなたに上からの言葉を伝えるという命令が遂行できなくなる故の措置。
あなたの命を助けるつもりなど財団Xも・・・そして私も毛頭ありません。」
「そんな・・・。」
「財団Xからの言葉をお伝えします。『試作型T2ガイアメモリに関するデータの収集は完了した。
以後、今回のデータをもとにT2ガイアメモリを量産させる。
しかし、T2ガイアメモリは財団Xの秘密事項であるにもかかわらず、仮面ライダー側に一部データを露呈させてしまった。
そのため、少しでも機密漏えいを阻止するため、井坂 深紅郎の口を封じさせてもらう』・・・とのことです。」
「そんな・・・助けてくれ・・・助けてくれ!」
「残念ですが、私は上の命令に従うしかないサラリーマンですから・・・。」
そう言って、加頭はガイアメモリを取り出して構える。
UTOPIA!
変貌する加頭の体。
そして、現われた異形の存在は無抵抗な井坂へゆっくりと迫る。
「う・・・うわぁあああああ!!」
学園都市に木霊する井坂の断末魔。
だが、その声に気づく者は誰ひとりとしていなかった。
・・・いや、ひとりだけその声を聞いていたものがいた。
「随分と派手にやってるな、兄弟。」
加頭の背後に現われるひとりの男。
「おや、あなたは・・・確か、風都でのNEVER増員計画の指揮を執っていたはずでは?」
「ああ・・・だが、Xビッカー一基だけじゃ不安でな。そこで財団Xに何らかの援助を・・・と思って来てみたら・・・。」
「言っておきますが、T2ガイアメモリの譲渡は出来ませんよ?」
「ばれたか。しかしよう、兄弟!なんとかならないのかい?」
「さっきの会話を聞いていたなら分かるでしょう。私は上の命令に従うだけのサラリーマン。
いくらあなたと同じNEVERと言えど、私の一存であなた方への援助は出来ないのです。」
「そうか・・・。」
「・・・しかし・・・これは私の独り言です。」
「・・・ん?」
「T2ガイアメモリは原本完成後、空路でディガルコーポレーション地下の工場で量産化する予定です。輸送日はまだ未定ですがね・・・。」
「ほほう・・・こりゃ、たいそうな独り言だな。」
「この言葉をどう捉えるかはあなたにお任せします。では、私は次の仕事があるので・・・。」
そう言って、男の前から立ち去る加頭。
「・・・兄弟、ありがたく使わせていただくよ。その言葉も・・・そしてT2ガイアメモリもな!」
叫ぶ男。
その男の手には、ガイアコネクタを模した<E>のガイアメモリがあった。
- 64 :
- 『青の通り魔事件』から2週間後。
風都にある風都警察署、その中の会議室に大勢の人が集まっていた。
上条、御坂、禁書、白井、初春、翔太郎、フィリップ、そして亜希子。
何も知らされずに来た8人はどうしたら良いか分からず、なんとなく椅子の上でソワソワとしていた。
「それにしても・・・突然呼び出すなんて、竜くんどうしたんだろうね?」
「さあな・・・照井なりのサプライズでもあるんじゃねぇの?」
「・・・ん?」
突然、禁書が小さな鼻をヒクヒクさせる。
「どうしたんだい、禁書?」
「ねぇ・・・良い匂いがしない?」
「ん?・・・む、これは・・・。」
「・・・間違いなく、『アレ』ですわ。」
「確かに・・・『アレ』の匂いですね。」
「・・・いや、ただの『アレ』じゃねぇ・・・まさか!!」
上条が叫んだ瞬間、会議室の扉が開き、エプロン姿の刃野とその部下で同じくエプロン姿の真倉 俊、
そして割烹料理人のような姿をした照井が現われた。
「待たせたな。刃野、真倉!」
照井の声を受けて、ドアの外から何かを持ってくるふたりの刑事。
真倉は小山のように盛られたご飯が入った平皿が何枚も乗ったカートを、
刃野は先ほどの匂いを発する大きなズンドウ鍋が乗ったカートをそれぞれ会議室に入れるのだった。
刃野からカートを受け取り、ズンドウ鍋の蓋を開ける照井。
そこに入っていたのは・・・。
「照井さん・・・これって・・・。」
「ああ、『恐竜や』バイト中に教わった<フルーツスパイシーカレー>だ。」
「やったぁ!カレーだぁ!!・・・でも、なんで?」
禁書が照井に聞く。
それに対し、照井はさらにカレーを盛り、禁書の前に置いてこう言った。
「約束したろう?トライアル・ドーパントを倒せなかったら、禁書に腹いっぱいご飯を御馳走してやる・・・と。」
「え・・・でも、倒したんじゃ・・・。」
「結果的にはな。だが、一度は敗れ、禁書や御坂を悲しませることになってしまった。
その罪滅ぼしになるかは分からんが・・・まあ・・・とにかく、俺に質問しないでさっさと食え!」
照井が笑顔で答える。
「えぇっと・・・うんっ!!」
その笑顔に答えるかのように、禁書もいっぱいの笑顔で返事する。
全ての行き渡るカレー。
そして、禁書の「いただきます!」という言葉を合図に勝利の宴が始まった。
「辛っ!でも旨っ!!」
「この味・・・このスパイシーさ・・・ゾクゾクするねぇ!」
「おかわりなんだよ!」
「私も!」
「早っ!ビリビリも早っ!!」
「満腹が・・・お前たちのゴールだ。」
- 65 :
- 会議室に響き渡る嬉しそうな声。
その声は外にも伝わっていた。
そして、その光景をひとりの男が見ていた。
「さすがだ、仮面ライダーアクセル!そして、上条 当麻!!あの時は70点なんて言っちまったが・・・これで100点だ。」
そう言って、頭の帽子を被り直す男。
それは鳴海 壮吉であった。
「もう、心配はいらないようだな。風都には翔太郎、フィリップ、そして照井 竜。学園都市には上条 当麻と御坂 美琴。俺の出る幕じゃねぇ・・・。」
そう言って、鳴海がその場を去ろうとしたその時だった。
彼の頭上を通り抜ける一台のヘリコプター。
そして、それを追いかけるかのように飛ぶ一機の飛行機。
そのふたつが通り抜けた瞬間、風都に何とも言えない不気味な風が流れた。
「これは・・・。」
飛行機の飛んで行った方向を見る鳴海。
「・・・もう一仕事必要かもしれないな。」
その数十分後、風都上空にてヘリコプターが謎の大爆発を遂げるという事故が発生。
さらに、ヘリコプターに積まれていた26本のガイアメモリが爆発の衝撃で飛散、風都中に巻かれるのであった。
今まさに、新たなる『死神』によるパーティタイムが始まろうとしていた・・・。
おわり
---------------------------------------------------------------------------------------------
以上で◆jPpg5.obl6版の<仮面ライダーW × とある魔術の禁書目録>は終わりです。
お目汚し、失礼しました。
- 66 :
- 乙でした
- 67 :
- 遅ればせながらGJ!
しばらく見ないうちにこんな名作が投下されていたとは嬉しい驚き。
偏ってるわけでなく両方の作品にちゃんと見せ場があるし、やはりクロスSSはこうでなくちゃ!
そして井坂ざまあwwww
- 68 :
- >>66
返事が遅くなりましたが、ありがとうございます。
>>67
お誉めの言葉をいただき、ありがとうございます。
「『仮面ライダーW』と『とある魔術の禁書目録』のクロスを自分なりに完結させたかった」という気持ちと
「T2ガイアメモリ誕生までの過程ってTVや映画じゃ触れられてなかったよな・・・」という考えから書き始めた今作。
当初は「『W』と『とある・・・』は結構似た点(能力者、独立した都市の中でのストーリーなど)が多いので書きやすいだろう」と思っていたのですが、
主要キャラのほとんどが仮面ライダー並みのパワーを持っているために井坂先生が早めに退場しそうになったり、
逆に井坂先生を強くしすぎたら「あれ・・・とどめはどうしよう?!」と困ってしまったりと、
パワーバランスを保つために(駄文にもかかわらず)何度も書き直したりしました。
そのおかげで最終回前の完成が出来なくなってしまいましたが、結果的に>>67さんやwikiの方などから誉めていただけたのでホッとしている次第です。
- 69 :
- 先ほど、wikiのほうへの<W×禁書>の掲載を確認しました。
掲載してくださった方、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
ありがとうございます。
- 70 :
- (´・ω・`)
- 71 :
- #
- 72 :
- ◆jPpg5.obl6です。
どうやら今まで使っていたトリップが>>70に盗まれたみたいなので、トリップを変更させていただきます。
wikiのほうもこれに変更しますので、よろしくお願いします。
- 73 :
- トリを◆jPpg5.obl6から上のに変えました(wikiのほうへの申請も完了しました)。
今後、書く機会がありましたら◆n2NZhSPBXUのほうを使いますのでよろしくお願いします。
- 74 :
- ・・・どうしよう、トリ作成ソフトと別のトリが出てきてしまった。
原因が分からないので、このトリを使っていきます。
あと、もう一回wikiの管理人に申請をしなくては・・・。
- 75 :
- あの〜かいてもよろしいですか?
- 76 :
- よさそうだな・・・
- 77 :
- 朝、私は目が覚めた、時刻はAM9;14
「まだ・・・朝か・・・」
私は久しぶりに取れたこの休暇を
存分に楽しむつもりだ、あのウイルスのおかげで疲れている体を休めたい。
と思っていた
すると下の階から声が聞こえた
「ねぇ、アル朝ご飯はいらないのかしら?」
などといつものように嫌みったらしい声を聞き私は身なりを整えた
- 78 :
- 出だしミス
- 79 :
- これは投下の予感!?
- 80 :
- >>75
どうぞドウゾ。
- 81 :
- では書きますもう一度
- 82 :
- はっきり言えば世界は終わりを迎えようとしていた
空気中に広がったGウイルスは世界中の人に感染した
それにより世界は荒廃し、世界は終わりを迎える・・・と
大半の人間は考えていた
- 83 :
- しかしそんな人の中にもイレギュラーは存在する
その一人が「アルバート ウェスカー」
彼は新しい世界を作るために
エクセラ・ギオネ、リカルド・アーウィングらと共に
「ウロボロス計画」を企んでいた
- 84 :
- 支援、必要かな?
- 85 :
- また明日書きますね
- 86 :
- 必要です・・・・文章苦手です
- 87 :
- そうですか、残念。
あと気になったんだけど
投下する時60行もあるんだし、一つのレスにまとめてもらえるとありがたいな。
- 88 :
- あ、了解です
今後まとめさせていただきます
明日の朝ごろに更新しますね
- 89 :
- そしてウェスカー達とは裏腹に世界中に拡散したGを
減らしていこうとする物その名は
ルーク・フォン・ファブレら率いる
軍勢が存在していた、その2つの軍勢は言うまでもなく
敵対していたなぜなら
その2つの軍勢のリーダーの考えている事は
「新たな世界の創造」 「世界を救う」
これほどに差が存在していた・・・
ーーーーラクーンシティ周辺ーーーーーー
「・・・たくなんなんだ!?あの化け物は!?」
そんなルークの言葉にジェイドが返事をした
「仕方無いでしょう?ルーク・・・これはマルクトやあなたのお父さんの意志でもあるのですから・・・」
そんなジェイドの諭すような言い方にルークが返す
「わかってるよ・・・目的は敵組織「アンブレラ」の位置特定、及び研究所の破壊だろ?」
そんなのんびり会話している二人にティアが話す
「そろそろ休憩はやめて先に進まない?」
そのティアの言葉に二人は同意した
そのルーク達の前にある死体はG-ウイルスに適応していなかったため
まるで怪物の様な姿をしていたルークはその死体を見てジェイドに質問する
「なぁ・・・ジェイドこいつらってさ不適合者なんだろ?」
そんなルークの質問にジェイドが答える
「えぇ・・・この怪物はおそらくGウイルスに適応しなかったのでしょうね」
そしてルークがさらに質問をする
「ならさ・・・・もし適応したらどうなるんだ?」
そしてルークの質問にジェイドが答える
「それはわかりませんね・・・」
その言葉が終わる前にまるで銃声の様な音が辺りに響き渡った
「なっなんだ!?」
「わかりませんが、とりあえず向かいますよ!!」
そしてその場所を目指して三人は走り出した
- 90 :
- とりあえずこんなもんです・・・(泣)
文才0なのであまりいい話にはならないと思います
とりあえずここまでで一話の前置き終わりです
しばらく投下できないかもしれませんのでそこらへんよろしくお願いします
今日はちょくちょく確認しますのでもしも
アドバイスをいただけるのならお願いします
- 91 :
- バイオは分かったけどもう片方の元ネタが分からん
- 92 :
- テイルズオブジアビス
- 93 :
- 2作品以上のクロスってきついですかね?
- 94 :
- 相性とか混ぜ方次第じゃないか
多いほうが取り扱いは慎重になるだろうね
- 95 :
- とりあえず触れ込みだけ。
続くかどうかはわからんです
◇
―――『テメェ』がどこの誰かなんて知らねぇ
少年は言った。
相手にではなく自分自身の中にある、何かに。
―――とうの昔に言ったはずだ
『テメェ』と呼ばれた者は答えた。
―――『テメェ』が何をしようとしていたかも知ったことじゃねぇ
少年はさらに言った。
『テメェ』は再び答える。
―――魔術師。
―――荒耶宋蓮。
- 96 :
- ◇
目を覚ますとそこは、どうも学園都市の外部らしかった。
というか、日本の中なのか或いは……
「あら、目が覚めたみたいね」
巫女装束だ……とはかろうじてわかるが、なんか違う。
巫女さんは、あからさまに腋を主張しないと思う。
「……ッ、痛ってぇ……」
「下手に動かない方がいいわよ。布キレみたいになってたからね、さっきまで」
見ると、体中にアザや擦り傷ができていた。
それもそのはず、大天使を相手にして傷一つない方がおかしいのだ。
―――大天使?
自分は、『右方のフィアンマ』という男と戦っていたのではなかったか?
自分は、かろうじて勝利を得、『ベツレヘムの星』を害なく着水させようとしたのではなかったか?
自分は、その寸前に現れた大天使、『ミーシャ・クロイツェフ【ガブリエル】』と対峙したのではなかったか?
自分は、
―――
そこまで思い出して、意識は戻った。
眼前には、心配そうな目つきでこちらを覗きこんでくる巫女の顔がある。
「だいじょうぶ?茫然自失としてるようだけど」
「うわぁ!」
驚いて、飛び退く。
体の傷が疼くが気にしてはいられなかった。
鏡を見れば、耳まで赤に染まってるに違いない。
「……人が心配してるのに。欲情でもしたわけ?思った以上にはしたないわね、男って」
巫女は裸だった。
それも、着替え中のような、半端な裸【脱ぎかけの巫女装束】で。
「いやっ、決してそんなことはないでございますのよ、姫?」
姫と褒めたところ(並み以上に可愛い相手ではあるが)で機嫌は直らんだろうと思いつつも、ひとまずこのピンチ【フラグ建設現場】を回避しようとする。
「……まぁ、いいわ。あなたが男性だということ、しかもこんなにも性欲旺盛だということを忘れていた私の方にも非があるし」
確かに俺は男性だが……、と発言を思い返すが、
―――へ?性欲?
「あの……私めは姫様に何かよからぬことを……」
「あら、見えないの?あのグチョグチョの服」
―――なんだかすごく嫌な予感がする。
ザァー
と、大振りの雨が地面を打つ音も聞こえないくらい、俺の心臓は鼓動を速めている。
しばしの沈黙の後、
「申し訳ございません!」
高速で土下座の態勢に入る。
巫女さんは新しい服に着替えつつ、答えた。
「あら、そんなに悪いと思ってるなら」
言いながら、多分台所だと思われる場所を指した。
「お茶汲んで。濡れたから寒くて寒くて。まったく、雨が降ってる中で女性を労働させないでよね」
新しい服に袖を通し終えると、
「ふぅ。だいたい、なんで大の男があんなところで寝っ転がってんの?あ、気にしてるなら『性欲』以下の言葉は冗談だったんだけど」
このとき。
俺は半分以上本気で巫女を殴ろうと思ったが、止めた。
- 97 :
- ◇
俺の名前は上条当麻。
科学によって超能力が開発され、脳の開発さえすれば誰でもスプーンぐらい曲げられる時代。
そんな時代に逆行するがごとく、この家(?)は古臭かった。
自分の担任である月読小萌の家よりワンランク以上古臭く、どうも科学が異常に発展した超能力開発機関、『学園都市』の中には思えなかったのである。
巫女にも聞いたぜ、こっちの世界のこと。ついでに名前も教えてもらった。
ところで、俺の右手に何があるか知ってるか?
『幻想し【イマジンブレイカー】』。”異能の力ならどんなものでも打ち消せる”。
原爆級の火炎だろうが、戦略級の超電磁砲だろうが―――
なんて触れ込みなんだけど、実際そうでもない。あまりに強すぎると、消しきれないこともある。
誰かさんの黒翼然り、聖ジョージの聖域然りな。
でもまあ、さして問題でもない。
そんなことより、重要なのは俺が今立ってる場所だ。
巫女―――名前は博麗霊夢。
話によると、”ここは幻想郷。忘れられたものが来る、素敵な楽園”
俺の能力をもう一度説明する。
”幻想し、異能の力なら―――”
そう。
こんなファンタジックな土地が、一体どうして異能の力によるものではないというのだ。
- 98 :
- ◇
「安心なさい、この土地を消し飛ばすほどの力を、”あなたはまだ取り戻していない”」
突然、最初からいたかのように、後ろから声がした。
「―――ッ」
驚き、振り向くが誰もいない。
今度は前から、
「今のあなた程度の『幻想し【イマジンブレイカー】』にはこの土地を消すほどの処理能力はないわ」
思考を読んだが如く、上条の疑問を一撃で粉砕した。
「思考と現実の境界を無くす。それだけであなたの思考はダダ漏れよ、上条当麻」
見えた。
女。
―――頭から足先まで見渡す。
気色の悪い目玉がのぞく『空間』に座り込む、女。
「こちらが名乗ってなかったわね。八雲紫よ」
わざとにしか聞こえない、挑発するような声色だ。
上条は答える。
「……つまり、別に”今の俺”程度じゃこの幻想【セカイ】は壊れねぇってことか」
「正確には”今の右手では”ね。まあ、あなた自身と関係がないと言えば嘘になるけど」
上条はほっとする。
彼女―――紫は、聞きたくもないことをだらだらと言っているようだが聞こえないふりを―――
「誰がだらだら話してるって?」
ドガッ
「うぺぇ!?……ケガ人なんですけどぉー!?」
脇腹を蹴られた。普段なら何ともないだろうが、やはりケガのせいか体中が軋む。
「続けるわ。あなたの右手に関してこれ以上言うと約束に反するので言えない。後言うことはないわ。あ、一応、”これから生活する上で質問は?”」
「―――はい!?私めは元の世界へ帰ることを所望しているのでございますが……」
「無理ね。というかさせない。あなたには試練が待っているから、くれぐれも死なないように」
暴言臭いセリフを上条に放ち、彼女は『境界』に足を入れて―――
「待てやごるァ!!」
唐突に、上条の右手が境界に触れた。
「さすがに、『スキマ』程度じゃ右手には敵わないか」
「……外はどうなった。インデックスは?世界は無事なのか?」
上条の視線は、今まで実際に見た物の中でもとくに『真面目』だ。
それは、ひとえに大切なものを気にかけているからである。
「心配はいらないわ。こちらで過ごした日々は向こうではほんの一瞬だと思うから」
そうか、とだけ短く言って、上条はうつむきそれ以上何もいわない。
―――会えないつらさ。
―――独りににさせてしまうこと。
それらをかみしめて、こらえて、うつむいている。
去り際に、紫はこんな事を言う。
「あなたに次会うときには、取り戻しておいてよ、その力。
用意した試練は三つ」
―――『互いに絡み合いながら』
―――『相克する螺旋で待つ』
以上です。
意見お願いします
- 99 :
- 続きです。
ここから先は自己見解多めになると思います。
度が過ぎるほどではないかと思いますが、苦手な方はご留意ください。
◇
「……」
赤い液体に満たされた容器の中に、人間といえるかどうかすらわからぬ、ヒトガタが浮かんでいる。
―――生命維持は機械に頼り。
―――知能さえも機械に預け。
世界最高峰の魔術師と言われたものは、今や科学技術の塊と化している。
そんな、男にも女にも、老人にも成人にも囚人にも聖人にも見えるものは、一言、
「この野郎…………………………………!!!!」
怒りを込めて呟く。
目の前に、一つの天使【エイワス】が現出する。
「おや、ここしばらくで見ない感情の現れだね」
器の小ささが知れるぞ、と呟く。
「別に望んで感情を排しているわけではないのでね。必要とあらば、排出する他ない」
と、アレイスター。続けざまに、
「……見逃せない誤差だ。一方通行【アクセラレータ】は魔術を会得。浜面仕上は『素養格付【パラメータリスト】』を手に入れる。何より『幻想し【イマジンブレイカー】』が―――」
普段にはない饒舌ぶりが、彼の怒りを露わにしている。
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